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1975-03-19 第75回国会 衆議院 外務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年三月十九日(水曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 栗原 祐幸君    理事 石井  一君 理事 小林 正巳君    理事 水野  清君 理事 毛利 松平君    理事 河上 民雄君       宇野 宗佑君    大村 襄治君       坂本三十次君    塩谷 一夫君       福永 一臣君    増岡 博之君       綿貫 民輔君    土井たか子君       松本 善明君    渡部 一郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         外務政務次官  羽田野忠文君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省中近東ア         フリカ局長   中村 輝彦君         外務省経済局次         長       野村  豊君         外務省経済協力         局長      鹿取 泰衛君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省条約局外         務参事官    伊達 宗起君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君         水産庁長官   内村 良英君  委員外出席者         法務省入国管理         局次長     竹村 照雄君         外務省中近東ア         フリカ局アフリ         カ課長     黒河内 康君         農林省農林経済         局国際部長   山田 嘉治君         食糧庁業務部長 志村 光雄君         通商産業省通商         政策局西欧アフ         リカ中東課長  野々内 隆君         外務委員会調査         室長      中川  進君     ――――――――――――― 委員の異動 三月十八日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     古屋  享君   正示啓次郎君     水田三喜男君   竹内 黎一君     伊能繁次郎君 同日  辞任         補欠選任   伊能繁次郎君     竹内 黎一君   古屋  享君     加藤 紘一君   水田三喜男君     正示啓次郎君 同月十九日  辞任         補欠選任   小坂善太郎君     綿貫 民輔君   原 健三郎君     増岡 博之君   細田 吉藏君     大村 襄治君   山田 久就君     塩谷 一夫君   金子 満広君     松本 善明君 同日  辞任         補欠選任   大村 襄治君     細田 吉藏君   塩谷 一夫君     山田 久就君   増岡 博之君     原 健三郎君   綿貫 民輔君     小坂善太郎君   松本 善明君     金子 満広君     ――――――――――――― 三月十九日  核部隊核基地撤去等に関する請願(庄司幸  助君紹介)(第一六五九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦  貿易規約及び食糧援助規約有効期間の延長に  関する議定書締結について承認を求めるの件  (条約第三号)  関税及び貿易に関する一般協定譲許表変更  に関する第二確認書締結について承認を求め  るの件(条約第四号)  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河上民雄君。
  3. 河上民雄

    河上委員 外務大臣並びに外務省事務当局に伺いたいと思います。  昨日報道せられましたところによりますと、韓国国家冒涜罪という法案国会に提出いたしまして、伝えられるところによりますると、その趣旨は、政府批判を完全に封ずることをねらったものである、そして、海外での言動処罰対象になる、こういう内容のようでございます。しかも、この法案は、韓国国会通過成立をいたしましたら即日発効であるというようなことでございまして、事態はかなり緊迫をしているように思うのでありますが、その海外での言動処罰対象になるという点と政府を誹謗するという内容、その内容の判定は韓国政府にすべて任されている、こういうようなことでございます。そういう場合、もし国家冒涜罪を規定する新しい法律対象在日韓国人がなった場合、日本政府としてはどうするのか、私は伺いたいと思うのでございます。
  4. 松永信雄

    松永(信)政府委員 報道されました韓国法律改正内容につきましては、私ども、まだ実はその内容及びその適用関係について詳細な情報等持ち合わせておりませんので、一般論としてお答え申し上げたいと存じます。  一般的に申しますと、自国利益保護するために、その利益を害するような行為について、外国にある自国民に対して刑事罰をもってその利益保護するということは一般的には認められているわけでございます。したがいまして、今回の韓国法律改正がその枠内の問題であるということでありますと、これは法律的にあまり問題にならないことではないかというふうに考えております。
  5. 河上民雄

    河上委員 すでに先般、民青学連事件などで関係もあったわけでございますけれども、郭東儀氏の場合など、先方では被疑者不在のまま起訴いたしておりまして、本国ではすでに罪人扱いになっておる、こういうようなケースがございます。在日韓国人本国罪人扱いになっている場合に、日本政府としてはこういう人をどういうふうに考えるつもりか、その点を伺いたいと思います。
  6. 松永信雄

    松永(信)政府委員 御質問趣旨、私必ずしも正確に把握していないかもしれませんけれども、外国が、日本にいるその外国の人に対して物理的に管轄権を及ぼすということは、日本同意がない限り認められないという大原則があるわけでございます。したがいまして、いま御提起になりました問題について、韓国が、日本における韓国人について管轄権を行使して措置をとるということでありますれば問題になるわけですけれども、単に向こう法律訴追を受けているという事態だけでございますれば、日本としてどうこうという問題ではないというふうに考えております。
  7. 河上民雄

    河上委員 そういたしますと、すでにかつて金大中事件というような非常に不幸な事件も起こっているわけですけれども、そういうふうに物理的に韓国政府が特別な機関を使って、今度の国家冒涜罪に基づく措置をとった場合には、日本政府としてはこれをはっきりと断られるおつもりかどうか。
  8. 松永信雄

    松永(信)政府委員 金大中事件についてのお話ですと、私には状態がよくわかりませんけれども、仮定の問題としまして、日本にいる韓国人、あるいは日本に一時的に滞在している人でも同じだと思いますけれども、それについて韓国日本国内で公権力を行使して処罰する、あるいは逮捕するというようなことがありますれば、日本政府としては当然韓国に対して抗議をしなければならないということだと思います。
  9. 河上民雄

    河上委員 それはもう当然そうしてもらわなければならないわけでございますけれども、そこで、もし物理的な手段を講じて逮捕し、あるいは拉致するというようなことでなくても、本国で、向こう法律に基づいて罪人扱いをしている人について、日本国内に合法的に滞在することを、短期にせよ長期にせよ認めている人物につきまして、日本政府としては当然その生命の安全と人権を守る義務があると思うのでありますけれども、日本政府としては、今後こういう新しい法律ができました場合にどう処置していくつもりか。たとえば、当然こちらには韓国の駐日公館というものがあるわけでございますが、そういう場合に、そういうものを通じてたとえば永久の滞在権の問題とか、あるいは帰化の問題とか、そういうようなことで差別をするというようなことが当然出てくると思うのですけれども、そういうような場合に、いわば社会的な制約、それに加えまして、たとえば銀行の融資の問題とかいろいろあると思うのです。そういうような社会的な制裁が加えられるような場合に、日本政府としては、自分のあずかり知らないことでそういうことが行われた場合に、一体どうされるおつもりですか。合法的に滞在を許可した外国人につきましては、当然あくまでもその人権生命の安全を守るという立場で貫かれるのか、それとも、こういう法律ができた場合に、それを配慮せざるを得ないというのか、その辺のことを伺いたいと思います。
  10. 松永信雄

    松永(信)政府委員 ただいまの御質問、二つ問題があるんじゃないかと考えます。  一つは、日本に合法的に滞在をしている外国人、平穏無事に生活をし、滞在をしている外国人について、その人の属する国において、日本における法体系と違った法体系があり、日本では違法でないとされていることがその国においては違法であるとされ、そしてその違法であることによって訴追その他の手続きがとられるということ、このこと自体をもってその国が国際法に違反しているということは言えないと思います。ただ他方、日本にいる外国人について、日本がその人の滞在を合法的に認めているという場合には、当然のことながら、日本におります一般外国人について、日本政府はその管轄権の範囲内においてできる限りの保護を与えるというのは、これはまた当然のことでございますから、その際に、日本政府同意なくして、外国政府日本国内で権力を行使するというようなことは認められないわけでございます。  その場合、もう一つの御質問の点といたしまして、外国でそういう訴追その他の手続がとられているという事実、あるいは外国政府からの申し入れ等によって、その人の日本における滞在の資格が変更されるとか、あるいは日本における待遇が影響を受けるとかという問題につきましては、日本みずからの、日本自身の意思によって決めるべき問題である、そういうふうに考えております。
  11. 河上民雄

    河上委員 大臣、いま韓国国会は、私もあまり正確でないかもしれませんが、三月の二十日まで開かれておるようでございまして、新聞報道によりますと、明日までにこの法案は強行して、しかも即日発効であるというような状況でございます。したがって、事態は非常に切迫しておるわけで、在日韓国人が、この法律が出ることによりまして――ことに金大中事件があのようなあいまいな結果で終わっておるだけに、また一九六九年の尹さんという方の事件がありますけれども、その場合などは韓国大使館に呼び出されて、そして韓国大使館員に伴われた形で韓国に渡って、そのまま向こう処罰対象になるというような事件が起こっておるわけです。そうなりますと、一見合法的にパスポート及びビザをとって出るというようなケース考えられる。そういうように、今回の法律在日韓国人に対して非常な脅威を与えて、正当なる政治的な批判言論活動というものも封殺されるという危機感を持つのは当然だと思うのでありますけれども、こういうような事態が起きておりますことについて、大臣としてはどういうふうにお考えになりますか。いま事務当局条約局長からいろいろお答えがありましたけれども、それを踏まえて大臣お答えをいただきたいと思います。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのような報道を私自身も耳にいたしておりますが、そのことにつきましては、他国政府あるいは国会における出来事でございますので、コメントを差し控えるべきかと存じますが、しかし、そのようなことがどういう推移をたどるにいたしましても、わが国政府としては、わが国におります外国人に対して最善保護を加える義務がございます。したがいまして、一般的問題として申し上げますならば、そのようなわが国の従来からの態度変更はないものというふうにお考えくださいまして結構でございます。
  13. 河上民雄

    河上委員 それでは伺いますけれども、日本韓国両国政府の間にはいわゆる椎名メモというものがございまして、この椎名メモは必ずしも公表されておらないのでありますけれども、韓国側から報道せられておるところによりますと、このメモ在日朝鮮総連の規制を初め、韓国に対して批判的な団体取り締まりについて、日本政府協力合意しておるというふうに伝えられておるわけです。そうなってまいりますと、いまの大臣の御答弁にもかかわらず、今回の国家冒涜罪に関する新しい法律がもし成立した場合に、これと日韓両国政府間で交わされております椎名メモとダブらした場合に、一体どういう事態が起こるか、われわれは非常に危惧せざるを得ないのであります。まさに、今度の法律で明文化し対象化しようとしておるのは、実は椎名メモにおいて日本政府韓国政府にかつて協力約束したものを向こう側法律で規定してくる、こういうことになってくると思うのですが、その意味で、韓国のいま開かれております国会における国家冒涜罪の成否というのは非常に重要な意味を持っておると思うのであります。大臣は、内政問題だからこれにはコメントを差し控えるとおっしゃいましたけれども、椎名メモによれば必ずしもそういうことで済まないような状況になっているんじゃないか、その点を非常に心配をいたします。  そこで、椎名メモ性質が実は非常に問題になると思うのでありますけれども、最近、金東祚外務部長官韓国国会外務委員会において、椎名メモについて発言をしておられますけれども、それによれば、これは法的な拘束力はあるんだ、こういうようなことなんでございます。そしてまた、韓国側から椎名メモに関し、最近日本政府にその性格をめぐって照会をしているというように伝えられておりますけれども、韓国側から椎名メモに関する照会があったのかどうか、それをまず伺いたいと思います。
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 基本的な認識の問題といたしまて、他国がどのような法令をつくりましてもそれによってわが国方針影響を受けるようなことはない、この場合そういうことを基本的に申し上げて間違いはないと存じます。  それから、いわゆる椎名特使が訪韓に当たりまして言われましたことは、わが国法律に照らして違反の事実があれば、どのような個人であれどのような団体であれ、巌正に法の適用をいたしますということを申したのでありまして、それ以外のことは椎名特使はその点について言っておられません。このことはその後の経緯に照らしましても御了解がいただけることであろうと存じます。  なお、椎名メモにつきまして最近照会がありましたかどうか、この点は、もし政府委員が存じておりましたらお答えをいたします。
  15. 高島益郎

    高島政府委員 恐らく照会という意味は、先般衆議院の予算委員会における質問に対する大臣の御発言に関連して、予算委員会での発言趣旨がどういうことかという点についての照会のことかと思います。改めて椎名メモというものだけを取り出して、これについて照会ということは全然承知いたしておりません。
  16. 河上民雄

    河上委員 この椎名メモ法的拘束力につきましては、当委員会におきましても何度か論議がございました。高島アジア局長の御答弁がありましたけれども、それによりますと、権利義務を定める文書とは性格が違うということと、椎名特使日本政府代表として言われたことだから、日本政府と全く関係がないということではない、こういう二つのことを答えておられるのですね。この椎名メモによりますと、反韓国団体とは朝鮮総連のことであるというふうに椎名さんが口頭で述べたというふうに金首相韓国全国放送で述べているのであります。そうなりますると、改めてもう一度申し上げますけれども、法的拘束力というのは一体どの程度なのか。また、こういうような新たな法律向こう側でできた場合に、それに縛られることがないのだろうか。こういう疑念が改めて出てくるのです。確かに国際条約上、条約局長が言われたとおり、権利義務を定める文書でないとすれば、それに直ちに拘束されないかもしれませんけれども、日本政府代表合意したものである以上、全く無関係ではないという御答弁もございますので、その辺非常に微妙です。この点もう一度伺いたいと思うのであります。
  17. 高島益郎

    高島政府委員 前に本委員会におきまして私、答弁したことがあるように記憶いたしておりますが、この椎名メモと申しますのは、当時の田中総理朴大統領あて親書内容につきまして、椎名特使が特に敷衍説明をされた、その口頭によって敷衍説明した内容を誤りなきを期するために、文書にして念のために先方に渡したという性質のものでございますので、もともと合意とか何とかいこととは関係ございません。要するに、日本政府韓国政府に対して申し述べた考え方文書にしたものということでございまして、そういう意味合意文書ではない、しかし、日本政府が言った内容につきましては、政府として言ったことでございますから、責任を負うというのはきわめて当然のことでございます。  当時、特使がいらっしゃったときに、随行の政府代表の方から椎名メモ内容につきまして新聞記者会見で披露いたしております。その朝鮮総連等関係部分は、もう二度繰り返して申しますと、韓国政府の転覆を意図するテロ活動等犯罪行為は取り締まる、朝鮮総連等団体構成員によると否とを問わず、犯罪行為取り締まりによって防止に最善を尽くす方針であるという説明をいたしたわけでございまして、このことは、わが国が現在持っておる法令に基づき、政府として当然なさなければならないそのことを、ただ韓国政府に対して確認をしたということでございまして、きわめて当然の政府方針であるというふうに私ども考えております。
  18. 河上民雄

    河上委員 このメモ日本側公表していない、文書公表はしていないわけですね。
  19. 高島益郎

    高島政府委員 そのメモの基礎になる田中総理大臣親書そのもの公表しておりませんし、したがって、その親書内容についての敷衍説明に当たりますメモそのもの公表はいたしておりません。しかし私がいま申しました、当時政府の随員が新聞記者に対しまして発表しました内容は大体そのとおりでございます。
  20. 河上民雄

    河上委員 公表しないというのは相互の約束なんですか、それとも日本側だけの一つ態度ですか。というのは、向こう側は発表しているわけですから。どちらでございますか。
  21. 高島益郎

    高島政府委員 元来親書というものは、いまだかって発表したことはないわけでございまして、そういう性質のものでございます。したがって、ましてや親書内容について説明をしたためた文書、これも発表しないのが国際慣行でございまして、私ども日本政府としてそういう決心をしていままで発表しておりません。しかし、この内容は隠す性質のものではございませんので、大体その内容は、先ほど申しましたとおり新聞を通じて発表いたしておるわけでございます。
  22. 河上民雄

    河上委員 今度新しくできる法律におきましては、単に現在の現政権を批判しただけで、いわゆる言論活動だけでも国家冒涜罪になる。具体的に言えば、金大中氏がアメリカあるいは日本で行った活動もその法律処罰対象になるということのようでございますけれども、椎名メモ合意さされました活動というものと、今度の法律対象として意味せられておるものとの間に少し違いがある、拡大されたというふうに感じておられるかどうか、その点を伺いたい。
  23. 高島益郎

    高島政府委員 椎名メモにつきましては、先ほど来再三御説明いたしておりますとおり、わが国としては、朝鮮総連その他いかなる団体であろうとこれを規制するというふうなことは一回も申したことはございませんし、そういうことができる立場でもございません。ただ、いかなる団体であろうとそういう犯罪行為は法によって取り締まる、これもまた当然でございまして、それ以外のいかなる約束もいたしておりません。したがって、いま先生が御指摘韓国考えておるところの法律案というものと、この椎名メモとは全く無関係であると考えております。
  24. 河上民雄

    河上委員 大臣にちょっと伺いたいのでありますけれども、この前、日韓閣僚会議の開催にふさわしいような環境というものができるのを待っているというような意味の御発言がございまして、その一つとして、民青学連事件関係者も、全部ではありませんが、一部を残しまして、まだ残っておること自体非常に問題でありますけれども、釈放せられた。太刀川、早川両氏も釈放せられた。金大中氏も政治的な活動は自由のようであるというような御発言がございましたけれども、その後の経緯というものは必ずしもそうなってはおらない。金芝河氏は再逮捕せられておりますし、金大中氏もまた新たな拘束が加えられておるようでございます。大臣としては、こういうような実態がある中にまたこういう法律ができる、そういうそもそもの原因というのは、やはり金大中事件をあいまいなまま、つまり、犯人もわからぬまま、一応決着がついたという判断日本政府がしたかのごとく向こうには印象を与えておるところに問題があるのではないか、こういうように思うのでありますけれども、大臣は、この金大中事件というものが、日韓関係を再出発させるために、どうしてもやはり一応ちゃんとした結末をつけなければならないというお考えを持っておられないかどうか。また、こういうことをあいまいにしておるということが、現在こういうようなことになっているという御判断を持っておられるならば、それを御披露いただきたいと思うのです。
  25. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 金大中氏が、韓国人のいわゆる一般市民並みの政治的な自由を現在与えられておるかどうかにつきましては、先般一日だけ何かあったように存じていますけれども、一般論として、報道によれば、金大中氏はかなり活発に政治的な動きをしておられるように私どもは考えておるわけでございます。  それで、御指摘のような法律が仮に韓国においてつくられるといたしました場合、これは特定の人を対象にした法律ではないであろうと考えられますから、そのこと自身がすぐに金大中個人の政治的な自由というものと結びつくものではなかろう、それはそう理解をしてよろしいのではないかと考えます。  それから、このような法律ができることが、日韓閣僚会議を開催するための雰囲気づくりにどのような関係があるであろうかということにつきましては、これはやはり法律をつくろうというそのような考え方についての評価をすることにつながりますので、そのような評価を申し上げることは適当でないと存じますから、その点については答弁を差し控えさせていただきます。  それから金大中事件が、河上委員の言葉を拝借しますと、うやむやのうちに終結した云々ということでございましたけれども、前にも申し上げておりますように、いわゆる犯罪の捜査あるいは調査の点につきましては、韓国警察当局所見とわが警察当局所見とが食い違った状態にございまして、そしてその点についてさらに解明をわが国韓国政府に求めておりますことは、前回にも申し上げたとおりでございます。したがいまして、その点について最終的な決着を見ていないということは、韓国政府も恐らく承知をしておられることであろうと思います。
  26. 河上民雄

    河上委員 それではこの問題につきまして、最後に大臣にもう一度結論的に伺いたいのでございますが、大臣はこの一連の問題は韓国の内政問題であるので、日本政府としてはコメントしたりすることは差し控えたい、こういうことでございますが、今度海外での言動処罰対象になっておりますので、在日韓国人に対する保護の問題にしぼって伺いたいと思うのです。  金大中事件のように、何らかの形でこの法律に基づいて、いわばすいすいと連れ去られるというような事態が起きたらどうするのか。また第二点としては、もっと合法的に、たとえばパスポートをとりあるいはビザが出されたという形をとりながら、この前オーグル牧師が羽田空港に立ち寄られた場合においても、本来なら日本政府管轄権ではありますけれども、あそこでオーグル牧師が行動の自由を奪われているという、いわば日韓に関しては第三国人であるアメリカ人ですらそういうことをされているわけですから、合法的な形で連れ去られるというようなことも十分考えられる、過去の経緯から。そういうようなことが起きた場合に、日本政府としてはどういう対応をせられるか。私は、これは在日韓国人――先ほども申し上げますように、合法的に日本が長期ないしは短期に滞在を許可した外国人の安全と人権を守るという責任から見まして、これは非常に重要なことだと思うのですけれども、この点についてひとつお伺いしたいと思うのであります。
  27. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私からは基本的な考え方を申し上げまして、政府委員に補足をしてもらおうと思いますが、韓国で仮にどのような法律ができましても、わが国として、わが国に在留しております外国人、あるいは永住権を持っております人たちを保護しなければならないという方針は、従来と少しも変わるものではない、この点は基本として申し上げておく必要があると思います。  次に、万一わが国他国の公権力が行使されるというようなことになりますれば重大なことでありますので、当然そういうことに対処する措置わが国としてはとらなければなりません。また公権力でなくとも、個人の自由を力によって拘束をするというようなことがもしございますと、それはそれなりのわが国の法に照らして処置をしなければならない、基本的には私はそういう方針でございます。  なおパスポート云々というようなことになりますと、多少技術的な問題になりますので、必要がありましたら政府委員から補足をいたします。
  28. 高島益郎

    高島政府委員 ただいま大臣お答えになった範囲で十分でないかと私は思いますが、これ以上仮定の問題に対してどうこうということは現在何も考えておりませんし、いずれにいたしましても、日本に住む外国人のことでございますから、その生命、財産の安全は他の外国人と同様に保護する、そのための必要な手段を講ずるということ以上に申し上げることはできないというふうに考えます。
  29. 河上民雄

    河上委員 それではもうあまり時間がございませんので、私はただ一つ申し上げますが、在日外国人人権生命の安全を守るということは、いわば日本の世界に対する顔というものをつくるということだと思うのでありまして、そういう意味で、いまやや抽象的でございましたけれども、大臣の決意を述べられましたが、これはひとつ、具体的な経過の中で私どもも監視させていただきたいと思うのでございます。  大変申しわけないのですが、海洋法会議あるいは日ソ交渉に関連して二つだけちょっと御質問をさせていただきまして、私の時間を終わりたいと思います。  第一は、内村水産庁長官が日ソの交渉につきましてかなり明るい感じを与えるようなニュースをもたらしておられるのでありますけれども、日ソ間で相互に既得権を尊重する可能性というものがどの程度あるのか、また海洋法会議において、日ソ両国が遠洋漁業に多く依存している二つの国、二つの国だけで世界の漁獲量の四分の一を占めているわけですが、そういう立場から、共同で主張できる可能性というものがかなりあるのかどうか、この点をまず伺いたいと思います。
  30. 内村良英

    ○内村政府委員 ただいま先生からお話しのございましたように、わが国とソ連は今日世界の二大遠洋漁業国でございます。したがいまして、今後ジュネーブにおける海洋法会議、特に経済水域の問題について両国の立場が似ているのではないかということで、実は今般、日ソ間の漁業問題についての話し合いをいたしますときに、海洋法の問題についても一つの議題としたわけでございます。  そこで御案内のように、ソ連はカラカス会議の際に、社会主義九ケ国提案ということで一つの提案を出しております。その中の経済水域の考え方については、一応これを認めながら、しかしながら資源の合理的利用という観点から、沿岸国が利用をしていない資源は、非沿岸国に漁獲させるべきであるということを基本にいたしました案を出しているわけでございます。そこで、その案につきまして細かく向こうの意見をただすとともに、私どもの意見を述べたわけでございますが、一番基本的なところは、要するに鉱物資源の場合にはその資源がなくなることはない、しかし生物資源の場合には利用しなければ死んでしまう、短いものは一年、長いものも三、四年で死んでしまうというところから、やはり資源の完全利用ということはもう絶対に譲れないということを非常に強く強調したわけでございます。この点につきましては、わが国も同調し得るということは当然でございまして、わが国といたしまして、経済水域について、沿岸国の管轄権の問題について議論のありましたときに、そういったそれに近い線でやはり対処しなければならないのではないかと思っております。  それから問題の遡河性魚類の問題でございます。これにつきましても、ソ連はその社会主義九カ国提案の中で一つの案を出しております。その案は一応優先権をうたいながら、一方実績国あるいは共同保存措置について協力する国についてはとらせるという案でございます。しかし案の内容がきわめてあいまいであったものでございますから、その点についてソ連の意見を聞きましたところ、自分たちとしてはアメリカやカナダのように公海漁業を原則として禁止するという方が望ましいのだ、しかしそれでは日本が困るであろうから、日本案と米加の中間案としてソ連案を出しているのだ、したがって、政府間の交渉で、今後日ソ間のサケ・マスの問題その他の漁業問題については話を進めていって、海洋法の原則がどうなろうとも、日ソ間の漁業問題は政府間の話し合いで決めたいというようなことをかなりはっきり言ったわけでございます。
  31. 河上民雄

    河上委員 なお少し詳しく伺いたい点もございますけれども、私の時間が参りましたので、きょうはこれで終わりにしたいと思うのです。
  32. 栗原祐幸

  33. 土井たか子

    ○土井委員 私は、これから外交上の問題というよりもむしろ人道問題にかかわることについてまずお尋ねをしたいと思うのです。  私たちは、昨夜は冷えましたねと何の気なしにお互い朝あいさつを、けさも取り交わすわけでありますが、そのゆうべ少し冷える数寄屋橋のところで、中学校一年生のお嬢さんを頭に、五人のかわいい子供たちとそのお母さんが、お父さんあるいは夫の無実をハンストで訴え続けておられるわけであります。  これは崔哲教さんの家族でありますが、崔哲教さんの家族と申しますともう新聞にも一部報道がされておりますので、外務大臣も恐らくは内容についてあらましはご存じでいらっしゃると思います。皆様にもかわいらしいお子たちがいらっしゃるに違いない。この父親が、昨年の四月二十五日、韓国訪問のとき、金浦空港で韓国睦軍保安司令部に逮捕されて、昨年十月二十一日に第一審の判決で死刑、本年の二月二十八日に第二審の判決でともに死刑がもう宣告されているわけであります。  ところが、これに対しての起訴事実も裁判の経過も何ら家族に対して明らかにされておりません。ただ、聞くところによりますと、二度の朝鮮民主主義人民共和国に対しての訪問が唯一の理由であるようでありまして、この問題について少し私はお尋ねをしたいと思うのであります。  死刑判決というとこれはもう極刑でありまして、ゆゆしい事柄でありますけれども、こういう事件について、外務省に崔哲教さんにかかわる問題の問い合わせがあったかなかったか、ひとつこれからお伺いをいたしましょう。
  34. 高島益郎

    高島政府委員 ございません。
  35. 土井たか子

    ○土井委員 全くそれは現在に至るまでなかったわけでありますか。
  36. 高島益郎

    高島政府委員 全くございません。
  37. 土井たか子

    ○土井委員 そうしますと、この二度北朝鮮への渡航という事情は、日本国内における韓国のある特務機関、あるいは情報機関であるかもしれませんが、それが調べたということにならざるを得ないわけでありますね。この事実について御確認を願いましょう。
  38. 高島益郎

    高島政府委員 私どもこの崔氏の容疑につきまして、どういう方法で韓国側で調べたかということにつきましては、全く承知いたしておりません。
  39. 土井たか子

    ○土井委員 在住韓国人の方が韓国において死刑が宣告される裁判を受ける、それは日本国内における生活にかかわり合いのある問題が唯一の理由になっているわけですよ。それに対して、そのときに、日本政府に何の連絡もなしに判決がなされたということを確認さしていただきましょう。そうですね。
  40. 高島益郎

    高島政府委員 事実問題はそのとおりでございます。
  41. 土井たか子

    ○土井委員 この死刑を判決される理由には、北朝鮮への渡航が二度という、これが唯一の理由になっているやに伺っているわけでありますが、一度目は一九六五年の六月二十八日から七月二十八日まで、二度目は一九七〇年の七月二日から八月五日まで、こういうことになっているわけであります。そこで、これはこういうふうに日時がはっきりと明記をされているわけでありますから、その間、やはり渡航に対しての申請を政府にしなければ、日本に在住する韓国の方々は行けるはずがないわけであります。このことに対しての渡航申請というものがあったかなかったをひとつお尋ねしたいと思うのですが、いかがでございますか。
  42. 高島益郎

    高島政府委員 これは外務省の所管ではございませんで、法務省の所管でございますので、私ども承知いたしておりません。
  43. 土井たか子

    ○土井委員 昨日、私は法務省の入管局長に出席を求めているんであります。先ほどから御出席でない これは一体どういうことなんでしょうか。委員長、いかがですか。
  44. 栗原祐幸

    栗原委員長 速記をとめて。
  45. 栗原祐幸

    栗原委員長 速記をつけて。  土井君。
  46. 土井たか子

    ○土井委員 ただいま法務省の竹村入管局次長がお見えになりましたので、質問を続行させていただきますが、先ほど来、実は崔哲教さんの問題についての質問を進めてきたわけであります。事件の概要については、もう一度繰り返しになりますからこれは割愛しまして、端的に必要なところだけを申し上げますと、崔哲教さんは一九七四年の四月二十五日に韓国に訪問のとき、金浦空港で逮捕をされて、昨年の十月二十一日に一審判決で死刑、本年二月二十八日に二審判決で死刑という判決に現在なっているわけですが、この崔哲教さんの裁判の記録、もちろん起訴状も含めて、法務省の方に韓国政府から送達をされてきておりますか、どうですか。それからひとつお尋ねしましょう。
  47. 竹村照雄

    ○竹村説明員 法務省の方には来ておりません。
  48. 土井たか子

    ○土井委員 この事件についての裁判記録も起訴事実も明らかじゃないところがこれはもう大変な問題だと思うのですが、ただしかし、容疑事実についていままで明らかにされた限りでは、北朝鮮へ二度渡航したということが唯一の容疑事実になっているわけであります。この二度の朝鮮民主主義人民共和国への渡航は、日時を申し上げますと、一九六五年の六月二十八日から七月二十八日まで、これが第一回目、二度目は一九七〇年の七月二日から八月五日までということになっているわけです。これが事実といたしますと、旅券の申請をしなければならないはずなんでありますが、この旅券の申請ということがあったかどうかをお尋ねしたいのです。
  49. 竹村照雄

    ○竹村説明員 在日朝鮮人の人たちが海外へ出る場合は、わが入管に対して、再入国の許可の申請をいたしまして、それに基づいて許可をして、出国するということでございますが、そういう御質問の時に、本人から北朝鮮向けの再入国の許可の申請があった事実はございません。
  50. 土井たか子

    ○土井委員 それならば、まずこの日時に北朝鮮へ行かれていたということであるならば、密出国ということになるわけでありますね。一つこういうことについて考えてまいりますと、これは日本国内に在住している在日韓国人の方が、日本国内法を犯して密出国をしたということになるわけでありますから、こういうことに対しては、入管の当局とされては関知せずとは言えないと思うのです。いかがでございますか。
  51. 竹村照雄

    ○竹村説明員 もとより、必要に応じて調査すべきときには調査いたします。
  52. 土井たか子

    ○土井委員 そうならば、北朝鮮へ行かれた先ほど申し上げた日時、これは韓国政府が称する日時でありますが、この日時について、北朝鮮へ行った事実があるかどうかという問い合わせは韓国側から入管当局にございましたか。
  53. 竹村照雄

    ○竹村説明員 そのような問い合わせはございません。
  54. 土井たか子

    ○土井委員 実はほかに起訴事実というのは全くなく、この一点に尽きるわけでありますから、これは大変重大なキーポイントなのであります。判決は極刑ですから。死刑なんですから。死刑という判決のこの裁判においての起訴事実、容疑事実というのはこの一点に尽きるという意味で、入管当局とされては、韓国側からのそういういろいろな問い合わせがないということで振り切ってしまうわけにはもはやいかない問題だろうと思う。これが起訴事実になっているということが明らかになれば、この裁判過程についていろんな資料が届いてないということでありますから、起訴状から裁判についての審理記録、それをひとつまず要求をしていただきたいと思いますが、いかがでありますか。
  55. 竹村照雄

    ○竹村説明員 事がそういう外国政府との関係のことでございますから、そういうことになりますと、外務省とよく相談して、いかにすべきかを検討したいと思います。
  56. 土井たか子

    ○土井委員 これは、本来日本に在住をされている在日韓国人の方が、北朝鮮へ行かれたということを唯一の理由に、韓国に訪問をされたとき逮捕をされてそうして死刑という判決を受けているわけでありますから、日本における崔哲教さんの生活そのものについてこれは関連のある事件ということになってまいります。日本におけるこの崔哲教さんに対しての生活態度であるとか、あるいは出国についての問い合わせが何らなく、また死刑という判決をする前夜、これに対しての起訴事実も明らかにせず、言うまでもなく、審理における過程に関する一切の関係資料も日本に対して送達もせず、事情も明らかにしないで、こういう事実が白昼堂々とまかり通っているという事情については、外務大臣、どのようにお考えになりますか。
  57. 高島益郎

    高島政府委員 法律的に申しますと、日本に在留しております外国人が、その本国で法に照らして何か処罰されるという場合におきまして、通常、日本政府日本人の外国における行動について、生命、財産の保護のためにいろいろ手を尽くすという場合とは違いまして、一般的には日本政府とは直接の関係のない問題であるというふうに考えられます。他面、日本に長く在留しておられる外国人につきまして、生活の本拠が日本にあるわけでございますので、そういう関連から、その人が、その人の属する本国で何か法に触れて処罰されるという場合に、日本政府としてなし得る措置の限界、これもあることは先生御承知のとおりであろうと思います。いままでこの崔氏のほかに、そういう在日韓国人の方が韓国に行ったとき、法に照らしていろいろ処罰されるというケースが間々ございますが、そういう場合に、日本政府としていままでやってきたことは、いろいろ嘆願書の転達とかあるいはその他面会のあっせんだとか、そこら辺のところが外国人に対して日本政府がなし得る措置の限界だろうというふうに考えております。
  58. 土井たか子

    ○土井委員 嘆願書云々ということを早くもおっしゃいましたが、事情についてお確かめにならないうちに、嘆願書云々ということを早くもおっしゃるわけですか。韓国側からいままでこれに対しては何の事情も明らかにしていなかったのでしょう。だから私は先ほど最初にお尋ねしたわけであります。外務省としてはこの問題について事実を御存じか、存じておりませんとおっしゃった。韓国側からこれについての何らかの伝達があったか、ございませんとおっしゃった。法務省についてもしかりであります。だから言うのですよ。唯一つの理由になっているのは、日本国内に在住していた在日韓国人の方が日本の国から外に出て、北朝鮮を二度訪問されたということが唯一の理由になっている。これが日本政府に対して無関係とどうして言えましょう。手続をとっていないのなら密出国であります。こういうことに対して関知せずとは断じて言い切れない、言えないです。どうなさいますか。
  59. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 承っておりますと、こういうことではないかと思います。つまり、いままで外務省としては、このことについて韓国側から照会を受けたこともなく、また御本人ないし親族からも別段の照会を受けたことがない。法務省としても、再入国に関する申請の記録はない、それについての照会は受けていない、こういうことでございます。そこで、このような外務委員会の場を通じて、土井委員がそういう事実関係をお尋ねになり、政府お答えをするということも一つの事実関係の究明でございますし、あるいはまた、御本人の親族のようなお方が当然おられるわけでございますから、御本人がこれこれこの日に北朝鮮に渡った、そしてそのときに再入国の申請もしてある、してないという事実関係政府にお確かめになりますと、当然政府としては、そうであるかないかということは、御親族にならお答えをいたさなければならぬと思います。もちろん国会で御質問がありましてもお答えをいたさなければならない。そういったような方法によって、事態が解明されるということになるのではなかろうかと考えておりまして、政府としては、従来御本人あるいは御本人の親族からそのような照会に接したことがございませんので、したがって、そのような一身に専属することについて、政府の知識を公にする機会が今日までなかった、こういうことではなかろうかと私は思います。
  60. 土井たか子

    ○土井委員 むしろ御家族の方から問い合わせがなかったというのはしごく当然のことでありまして、その期間には日本にいられるのであります。るるそのことを証明するところの客観的な証拠があるのです。  たとえば、一九六五年の六月二十八日から七月二十八日の間には、七月二日に次女が出生、そしてこれに名前をつけて、七月の十二日には当人の崔哲教さんが町田市役所に出生届を提出しているという事実がある。このことは、家族は言うまでもなく知人、友人間では確認済みであります。また一九七〇年の七月の二日から八月五日と言われるこの二度目を問題にしていっても、家業はパチンコ店を経営されているわけでありまして、その六月の四日にはこれを新装開店をされ、七月中は小切手、手形等々を御自身が発行されている。まだほかにもガソリンスタンド等々で売り掛け伝票等々を御自身がサインして、それを出しているというのも現に証拠としてあるわけであります。  こういうことから推して言いますと、これはぜひひとつ事実を明らかにしていただくと同時に、いま申し上げたような、日本にその間在住されていたということであるならば、これは人道上の問題ですよ。韓国政府に対して、その事実を日本政府から伝えるということが必要ではないかと思われますが、いかがでございますか。
  61. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘になっておられることは私どもよく理解をしておるわけでございますし、またいわゆるお役所式な官僚的なことを申し上げるつもりもないのでございますが、御本人がそのような旅をされたかされないか、そのときに再入国の申請をしておられるかおられないかということは、やはり一身に専属することであると思われますので、したがいまして、御本人の親族からその確認をお求めになるというようなことが必要なことであろう、私ども、一身に専属することでありますので、そう申し上げるのでありますが……。したがって御本人の親族からお問い合わせがあれば、これは政府としては当然にお答えをいたしてよろしいし、またいたすべきものと考えます。他方で、国会において国政審議のお立場から、国内においてどのような行政が行われておるかということについてお尋ねがあれば、これもやはり私どもお答えをしなければならない。そのいずれかの方法によって解明をせられるべきことではなかろうかと存じます。
  62. 土井たか子

    ○土井委員 そうしますと、その結果いろいろ親族の方々にも事情聴取をされて、そして事実関係が明らかになったという上で、これはやはり事人命にかかわる問題でありますから、もう死刑が宣告されているわけでありますから、韓国政府に対して、その事実を日本政府の名において伝達なさるということもこれはお約束いただけますね。
  63. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私ども、一般に外国人が当該国籍のある国との関係で起こりました裁判関係について、口をはさむ立場にはないと思いますけれども、たまたま御本人の場合にはわが国に永住権を持っておられて、そして営業もし、家族もありということでございますから、普通の外国人の場合と同じではない立場を持っておられるというふうに考えることができます。したがいまして、他国の内政に干渉しない範囲でわれわれとして何ができるか、何をなすべきかということは検討をいたす必要があろうと存じます。  同時に、先ほど申し上げましたように、やはり御本人が韓国籍を有せられ、御本人の家族も同様でございますから、そのお立場からも自国政府に対して、わが国政府の持っております情報、資料等について自国政府に意思表示をされる、伝達をされるということも、これも必要なことであろうと思います。
  64. 土井たか子

    ○土井委員 これは外務省としては毅然とした態度をとっていただきたいと思いますよ。日本国内に在住をされている在日韓国人の生活について、そうなってくると日本政府は果たして責任持っているのかと言いたいです。これはやはり理由として裁判の過程で唯一のこれが容疑事実となり、そして判決をされているといういきさつからすると、日本政府あるいは国内政治というふうなものが無関係じゃ決してあり得ない。そういう点からいたしまして、いまの外務大臣答弁というのはもう少しきっぱり、やはり韓国政府に言うべきことは言わなければならぬということであって私はしかるべきだと思うのであります。ひとつはっきりと約束していただいて、もう時間ですから、次一問だけやって私は終わりにしたいと思います。
  65. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ちょっとただいま私が間違ったことを申し上げた由でございます。  御本人が日本に永住権を持っておられる云々ということは事実ではない由でございます。が、それはそれといたしまして、いずれにしても日本に家族もあり、平穏に営業もしておられたというお人でありますから、旅行中の外国人というようなものとは当然に違うわけでありまして、私どもとして何をどうすべきか検討さしていただきますが、やはり御本人の親族が自国政府に対して事実について述べられるということが、これが第一義的には必要なことであろう。政府としてその上で何をすべきか、何ができるかにつきましては、大事なことでありますから、検討さしていただきたいと思います。
  66. 土井たか子

    ○土井委員 先ほど河上委員の方からも御質問の中に出てまいりました、韓国の刑法が国家冒涜罪の名において、国外における発言までもその対象として処罰するということに今度中身がなろうとしている。このことに関連をして確認をしておかなければならない問題が二、三点あるのです。  韓国政府から日本政府に対して被疑者を引き渡してほしいという請求があった場合は、どのように外務省としては対処なさいますか。
  67. 松永信雄

    松永(信)政府委員 御承知のように、日本韓国との間には、いわゆる犯罪人の引き渡しに関する条約、取り決めは何らないわけでございます。  したがいまして、そういう請求がありました場合には、そのときにその事案の内容に応じて検討して、政府態度を決定するということでございます。引き渡さなければならないという法律的な義務日本韓国に対して負っているわけではございません。
  68. 土井たか子

    ○土井委員 いずれにいたしましても、国外発言対象にするというのならば、その発言の現場で発言確認している当事者が必要なんであります。そういうことからすると、日本における在日韓国人の方々について、その言動を問題にしていく何らかの機関がそれにはなければならない、それを監視している何者かがなければならない。そういうことからしますと、その言動について監視をするある特定の機関の活動というものを日本国内において認めることに当然相なっていくと思うわけでありますが、このことに対しては黙認をなさるわけでありますか。
  69. 高島益郎

    高島政府委員 そういうふうな活動日本政府が黙認する、あるいは認めるということはあり得ません。
  70. 土井たか子

    ○土井委員 ならば、それに対してもし韓国刑法がこのようになるということになれば、これは日本政府としても全く関知せざるところとは言い切れない問題が出てくると思うのですよ。どのように対処なさいます。いま全くそれについては黙認するということではございませんとおっしゃいましたが、それならばどういうふうに対処なさいますか。(宮澤国務大臣「御質問意味がちょっとわかりかねます」と呼ぶ)  これは国外発言対象になるのですね。国外発言という中には日本ももちろん含まれるわけであります。日本に在住されている在日韓国人の方々についての言動が、この節韓国刑法のこの犯罪の中身に問われるという場合が間々出てくるわけでしょう。  そうしますと、日本国内における在日韓国人の方々の言動自身がその節問題にされる。この言動が問題だ、こういうことを言ったことが悪い、その一々の事実についてのはっきりした事実認定ということがなければならない。事実認定は一体だれがやるのかと言ったら、韓国政府ですよ。だけれども、日本においての言動が問題になるわけであります。したがって、日本国内におけるそれらの言動について、何らかの機関あるいは何人かがこれを監視し、それを聴取し、その事実を確認しておかなければ、それは具体的事実としては認定できないと思うのですよ。  したがいまして、日本国内にそういうことを目的としたある特定の情報機関の活動というものをお認めになるということになりますか、このことを黙認なさるのですかと先ほど聞いたのです。(宮澤国務大臣「認めないと言いました」と呼ぶ)ですから、認めないということになれば、どういうふうにその措置を講じょうとなさいますか。認めないということに対して、具体的にこういうことで認めないことになるのだという担保がなければならないですよ。
  71. 松永信雄

    松永(信)政府委員 ただいまの問題につきまして、たとえば韓国日本においてそういう言動、行動を調査する機関を日本に設置したいという申し入れがもしあるとすれば、日本政府としてはこれを断るということは、先ほどアジア局長が申し上げたとおりだと思うのです。  問題は、そうしました場合に、じゃそういう事実関係調査するために日本政府協力を求めてくるということがあるかと、こういう御質問の御趣旨ではないかと思いますけれども、その場合に、日本政府韓国政府の要請を受けて協力しなければならないというような関係は全くないと考えております。
  72. 栗原祐幸

    栗原委員長 土井君、時間が来ておりますので……。
  73. 土井たか子

    ○土井委員 時間が参りましても、私の質問趣旨から大分ずれた御答弁なんです。まだ質問を十分御理解なさっていないのかもしれません。  ただしかし、これを黙認することは断じてあり得ないという先ほどの局長答弁でありますが、これはほかの例を引き合いに出しましょう。おたくの国でただいまからスパイ活動をいたします、お認めいただけますかと言いに来るスパイ機関はどこにもないはずであります。また、そのスパイ機関が活動するのについて、その当事国の政府協力を依頼するというようなことは正面切ってないはずであります。そういうことを具体的にやると、これはスパイではなくなる。正面切って政府の表戸をたたいてこういうことがなされないところに問題が実はあるのですよ。断固こういうことについては認めないとおっしゃいますね、いかがです。それを確認しておきましょう。
  74. 松永信雄

    松永(信)政府委員 抽象的なお答えにしかならないので申しわけございませんけれども、韓国日本にあります機関、これはいわゆる大使館なり総領事館というものがあるわけでございます。これらの韓国の機関が日本において活動を認められますのは、国際法上の範囲、枠内における外交機関としての活動あるいは領事機関としての活動、これ以外にはないわけでございます。この機関として認められる活動の範囲を越えて、韓国の何らかの機関が設置されることを、私どもとしては認めるわけにはいきませんし、また、これらの機関が、その外交活動なり領事活動の範囲を越えて行動をする、活動をするということを、日本政府として認めるわけにまいらないことも、これもまた当然のことであろうと思います。  現在、問題になっております法律改正、これに基づいて韓国が、いま申し上げましたような日本における外交機関なり領事機関の活動の範囲を越えたものを日本で行おうということになりますれば、それは当然、日本政府同意を求めなければならないだろうと一応、私どもは推定いたします。そういう場合がありました場合に、日本政府がこれを認めるということは、これはあり得ないのではないかというふうに考えるわけでございます。
  75. 土井たか子

    ○土井委員 それでは、私はこれで質問を終わりますが、そういう意味においても、先ほどの崔哲教さんの事件については、一体、北への渡航があったのかなかったのかという事実関係から具体的にひとつ明らかにしていただいて、そして政府の名において、このことに対しての善処をなさいますことを最後に申し上げて質問を終えたいと思います。
  76. 栗原祐幸

    栗原委員長 石井君。
  77. 石井一

    ○石井委員 きょうは私は、日中平和友好条約を初め漁業交渉などについてお伺いをしたいと思うのでございますが、まず最初に、北ベトナムの使節団が一日おくれて昨日来日したという報道がございますが、これはどういう目的で、どういう内容について話し合う予定なのか。北ベトナムに対する経済協力というものに対して、政府はどういう御所見を持っておられるのか、この点からお伺いしたいと思います。
  78. 高島益郎

    高島政府委員 一昨年九月、日本とベトナム民主共和国との間に外交関係が設定されまして以来、日本と北越とのもろもろの問題につきまして、自来、一年数カ月にわたって、ビエンチャンにおいて交渉を続けてまいりました。それが、つい最近話が妥結いたしまして、まず、日本と北越との間に無償の経済協力日本が行うという点について合意ができました。  その全体の額につきましては、まだ今後継続して交渉した上で、最終的な結論に達せざるを得ないわけでございますけれども、そのうち、とりあえず五十億円という額につきまして、その使途並びに手続についてこれから交渉するというために、急遽、先方の方からタン・アジア第一局長のほか七名の団員を引き連れまして、昨日日本に参ったわけであります。  けさから会議を続けておりますけれども、その経済使節団の目的は、いま申しました日本の北越に対する五十億円に上る無償経済協力内容について、具体的な詰めを行って取り決めを結ぶということが、その目的でございます。
  79. 石井一

    ○石井委員 北ベトナム側は賠償を要求するという、そういう目的は持っておらないのですか。
  80. 高島益郎

    高島政府委員 率直に申しまして、先方は、国交樹立以前、そういうような主張を持っておりまして、日本に対して賠償を請求するという立場でございましたけれども、国交樹立に当たりましては、そのような問題を提起しないで、一昨年九月に外交関係を設定したわけでございます。  その後、話し合いの内容は、先方としては、このいわゆる賠償に準ずるような内容のものを日本政府に期待するということでございましたけれども、結局におきまして、日本が各国との間に行っておりますいわゆる無償経済協力という形でもって、この政治問題を一切解決することで結論が出まして、先ほど申しましたように、そのうちの五十億円について無償協力内容を定めるということが、現在、交渉の目的になっているわけであります。したがいまして、いわゆる賠償の問題というのは、そういう形でもって解決したというふうに御理解いただいて結構だと思います。
  81. 石井一

    ○石井委員 それじゃ、いまの問題は、その賠償要求というものは向こうが放棄して、そのかわりに無償の経済協力というものにかわってこれから話を詰める、そういうことで了解してよろしゅうございますね。  次に、中国との関係について、数点お伺いをいたします。  まず、漁業の交渉でございますけれども、大臣は、三月二日の松山空港での記者会見で、中国側が無理な要求をしてくる場合には、必ずしもこの交渉に応ずる必要はないというふうなニュアンスの発言をされたようでございますけれども、これは間違っておるのかどうか、どういう意味でやったのか、これは基本的な漁業交渉に関する大臣の御所見ということにもなろうと思いますけれども、お伺いしたいと思います。
  82. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのような趣旨のことを申しました。ただいまもそのように考えております。
  83. 石井一

    ○石井委員 それは具体的にどういうことを想定されておるのかということでございますが、この再開されました交渉で、たとえば軍事警戒区域の問題が解決されないままで、資源保護のための規制措置というものが現在、議題になっておるというふうなことでございますけれども、交渉の経過がいまどういうふうになっておるのか、また向こう側が無理だということを言ってくるところは、日本としてはどういうところを想定されておるのか、御報告いただきたいと思います。
  84. 高島益郎

    高島政府委員 昨年六月、北京で第一回の交渉を行いまして、双方それぞれの主張を展開したわけでございますが、その後約八カ月たちまして、その間に先方もまたわが方も、どの程度双方の立場を接近させ、かつ、妥協し得るかという点についていろいろ検討を加えました結果、今回の第二回会合になったわけでございます。  主な問題点といたしましては、いわゆる協定水域としてどういう水域を協定の対象にすべきかという問題が第一点。それから第二点は、資源の保存のためにどのような共同の規制措置をとるべきかという点でございまして、その他いろいろ問題がございますけれども、この二つの問題が一番重要な問題でございます。  これまで三月一日からずっと交渉を重ねておりますのは、この二点につきまして双方の見解を述べ合っておりますわけでございまして、この段階におきまして、どういうふうな交渉の内容になっているかということは、現に交渉中でございますし、先方立場もありますので、ここで明らかにするわけにはまいりませんけれども、双方ともかなりそれぞれの相手側の立場をよく理解するようになりまして、これからそういう理解の上に立って、どういう妥協を図り得るかというところまで現在来つつあるというふうな感じでございます。  具体的な内容につきまして、具体的にお話しできないのは残念でございますけれども、そういうことでございます。
  85. 石井一

    ○石井委員 そうすると、余り細かく追及はしませんけれども、大臣が当初に危惧されておったような無理な要求というものは出てこずに、非常にスムーズに行っておる、したがって、妥結になる見通しは非常に明るいと、こういうことになるのですか。
  86. 高島益郎

    高島政府委員 いかなる条約、協定の交渉におきましても、無理な要求を受けるということはお互いにあり得ないわけでございまして、そういう点から申しまして、大臣の御発言は当然のことだと思います。私どもいまの段階で楽観も悲観もいたしておりません、正直申しまして。果たしてあと今月一ぱいくらいの間に妥結し得るのかし得ないのか、正直言ってその結論は申し得ないわけでございます。ただ私どもとしましては、すでに二週間たちましたし、さらにあと二週間ぐらいのうちに最終的な結論を何とか見出すべく努力したい、こう思っております。
  87. 石井一

    ○石井委員 次に、日中平和友好条約の交渉でございますけれども、過去四回予備交渉が行われ、いよいよもう両者の主張も大変明らかになってきておる、こういうことですが、問題はこの覇権条項ということでございます。覇権条項に関して平行線をたどっておるというのが現状だろうと思うんでございますけれども、気持ちはわかる、しかし書き込まないんだ、こういうことがわが国の方の主張のようでございます。これは中国側が原則として主張しておって、結局は原則が相手国に理解されれば後ろへ下がるというふうな非常に簡単なものなのか、あるいはこれだけは断じて挿入されない限りこの友好条約全体がつぶれてしまうのか、また日本側の主張は先ほど申しましたように、気持ちはわかるんだけれども、字句だけ入れないというのもこれまた少し弱いような感じがするのですが、大臣はこの覇権条項というものに対して、個人的にどういうふうにお考えになっておりますか。
  88. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点は御承知のように、日中国交正常化の際の共同声明の中にそういう趣旨のことがうたわれておりまして、物の考え方といたしまして、私どももそういう物の考え方に別段異議があるわけではございませんが、二国間の条約というような形、一応権利義務を定めるというような場において、そのことを書き入れますことはいかがなものであろうかということを、やはり私どもとしては思っております。  したがいまして、中国側に対して、そういう考え方そのものにわれわれは異存があるわけではないということは十分申してございまして、ただ条約というものにはそういうことはなじまないではないか、二国間条約でございますから、ということを申しておるわけでございます。
  89. 石井一

    ○石井委員 たとえばこの条項が入ることによって第三国、たとえばソ連その他に対して、今後その外交交渉において非常に阻害条件になる、こういう御判断もあるわけですか。
  90. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私どもは第三国という特定の国を考えておるわけではございません。中国の立場ははっきりいたしませんけれども、私どもはそういうことではございませんが、しかしそのような誤解を受けるおそれはある。そのような誤解を与えるようなことは、やはり差し控えることが適当ではなかろうかと存じます。
  91. 石井一

    ○石井委員 これは相当押し迫ってきておると思うんですが、当委員会の審議におきましても、これがどうなるかということは非常に重要な問題でございます。他のいろいろな審議状態にも大いな影響を与えるものでございます。きのうですか、総理は中国大使に会われたし、正式にこの国会で批准するということになっておるわけですから、覇権条項に対して悠長なことを言うとるわけにまいらぬわけでございますけれども、そうすると、わが国の過去四回の予備会議で主張はかなり向こうに説得力を持って伝達されておる。ぼつぼつこの次の会談あたりから次の議題に入り得る、こういう見通しですか、いかがですか。
  92. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 わが国としては、この問題について何度も繰り返しましてわが国立場を述べておりますので、先方はそれはよくおわかりのはずでございますが、しかしいまだに立場を変えられないところを見ますと、まだまだそういう意味では説得力が足りないということになるかもしれません。説得を続けなければならないと考えておりまして、なお場合によりましてしかるべき段階で、その他の問題についての中国側の考えが、具体的にどのようなものであるかというようなことについて討議をすることもあるいは有用であるかも知れない、まだその段階が来たとは思いませんけれども、あるいはいま御示唆になられましたようなやり方も全体をまとめる上で効果があるかもしれないと存じております。
  93. 石井一

    ○石井委員 覇権問題以外にどういうことが問題になるのか。大して長文にわたるしさいのものではない、非常に精神的なものだと私たち思うのでございますけれども、その点は一体どの程度のものになるのか。これは教えていただいても特に差し支えないと思うのですが、いかがですか。
  94. 高島益郎

    高島政府委員 日中共同声明第八項に書いてありますとおり、日本と中国との間の将来にわたる平和友好関係を強固にするための条約でございまして、協定内容といたしましては、同声明の第六項にあります日中関係の基本原則、つまりあそこにありますのは、いわゆる平和共存五原則でございますけれども、この原則を文章に書きあらわすというのが主たる内容になろうかと思っております。
  95. 石井一

    ○石井委員 そうすると非常に簡単な原則的な条約になるので、いま問題になっておるような大前提と申しますか、覇権問題などが解決すると、たちどころに解決する、こういう性格のものだと思うのでございますけれども、それは御確認いただけますか。
  96. 高島益郎

    高島政府委員 いままでのところまだ日中間で予備交渉ということで、どういうようなことを条約内容に規定しようかということについての非公式な意見交換を重ねてきたわけであります。その結果、ただいま申しましたとおり、日中共同声明第六項にあるようなことを中心とした条約にするということで大体の合意ができておりますが、まだ条約案についての相互の交換をいたしておりませんし、具体的にそういう表現を見た上でないと、果たして一気かせいにまとまるのかまとまらないのかという点は、現在の段階ではまだ即断いたしかねるというふうに考えております。
  97. 石井一

    ○石井委員 私はもっと進んでおると思うのですよ。そうでなかったらこれは当委員会の審議はなかなか大変なことになってくる。そういうことを憂慮して私はお伺いしておるわけでございますけれども、条約文は五条か七条の簡単なものだし、原則的な議論をやっておるのですから、それじゃぼつぼつ条文化という段階の一歩手前なのか、それともまだまだかなり紆余曲折があると予想するのか、この点はどうですか。
  98. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 予備交渉の何回かの過程におきまして、お互いの考えておりますところは大体わかっておるつもりでございまして、それに関します限り意外な問題というのはなさそうに存じますけれども、実際には本交渉になりましてお互いの条約文を見てみませんと、思わぬところに何か問題があるかもしれない。大抵、大きな問題ならばもう予備交渉で出ておるはずであるとは思いますけれども、正確に申しますとそういう要素もございます。先ほど石井委員が言われましたように、いずれはそういうことに進んでまいりまして、大体の全体のでき上がりの見当をつけたいと思ってはおりますが、まだそこまでいたしておりません。
  99. 石井一

    ○石井委員 この交渉の過去四回の予備交渉の中で、領土問題について議論がなされてましたか。
  100. 高島益郎

    高島政府委員 本来、日中平和友好条約というものの性格について日中間で非公式な話し合いをしたわけでございますれけども、その段階におきまして、要するに過去の清算という点はすべて日中共同声明で終わっているわけでございますので、将来についての日中関係を規定するという趣旨のものにしたいということでございますので、そういう観点からいたしましても、本来いわゆる平和条約でもって処理すべき性質を持っておる領土問題については、もともと議題にならないというふうに私ども考えております。したがって、現在までのところ、いわゆる領土問題というのはこの条約関係では一切出ておりません。
  101. 石井一

    ○石井委員 そうすると、領土問題に関しては今回の平和友好条約は触れないということですが、そこで日本側と中国側の見解にちょっと違いがあるのではないかという感じがするのです。中国側はあくまでも領土問題をたな上げしてこの交渉をやり、妥結するのだという考えだろうと思いますし、大臣の御発言などを見ておりましても、領土問題に関しましては全く問題がないのだ、したがって議論する余地もないのだ、こういうようなことだろうと思うのですが、こういう最終的な両国の将来の関係を決めるというふうな問題のときに、やはりこの辺でお互いに誤解があったり、未処理の問題が残るということも少しまずいのじゃないかと思うのですけれども、この辺の危惧はございませんか。
  102. 高島益郎

    高島政府委員 石井先生がおそらく頭に描いておられる領土問題というのは尖閣諸島のことじゃないかと思います。本来、この尖閣諸島は明治二十八年以来日本の領土であって、現に日本の有効な支配のもとにある島でございます。これが日本の平和条約に基づきまして、沖縄の一部としてアメリカの施政下にございましたが、沖縄の返還と同時に日本に返ってまいったわけでございます。  この尖閣諸島に対しまして領土の主張をいたしましたのは、いわゆる台湾の政府が最初でございます。当時あの近海における海底資源の問題が国際的に問題になってまいりまして、それ以来、台湾政府が最初にあれは台湾の一部であるという主張をいたしてまいりました。その後、これに約半年おくれまして、北京政府の方も尖閣は台湾の一部であるという立場から、台湾と同じ主張をいたしましております。日中正常化以来、正常化に当たりましてもそうでございますけれども、尖閣諸島については何ら問題になっておりませんし、今回の平和友好条約の交渉におきましても、この尖閣諸島を先方は問題にしておらぬわけで、もともとこれは日本のものでございますし、日本の有効な支配のもとにある島でございまして、これについて先方の理解を求めるということはもともと必要のないことであって、当然日本のものであるという立場で臨んでおりまして、平和友好条約とはまして一切関係のない問題であるというふうにわれわれ理解しております。
  103. 石井一

    ○石井委員 たとえば昨年十月の鄧小平副首相の発言には、尖閣列島問題をたな上げし、平和友好条約を結び、その後両国間でこの問題について話し合う、こういう発言までしておるわけですから、当面要求をしておらないし、この交渉においては必要ないことかもわからぬけれども、これはやはりペンディングの問題のように聞こえるわけで、いまのような主張のままでやれたらいいのですけれども、そこには少しニュアンスの違いがあるように思うのでございます。これはこの席でこれ以上お尋ねをいたしません。一つの問題だということを私は御指摘しておきたい。韓国との間の竹島の問題にいたしましても、結局非常に根が深い問題で、これは後にまで続いてくる問題だという感じがいたすわけでございますから、一応この点を御指摘しておき、今回の交渉においては、こういう問題は論議されておらないというふうに納得いたしておきたいと思います。  この間、外務委員会から、ソ連のいわゆる漁船の問題、日本船の拿捕の問題などについて視察にも行き、非常に重要な問題になっておるわけでございますけれども、この問題に関しまして、もう時間がありませんから簡潔にお答えをいただきたいのですが、今月の十二日からモスクワで交渉をやられて、その間、日本漁船に対する賠償の要求その他、そういうふうなことについて話し合いされたか、その結果はどうなってきておるか、簡単にお答えいただきたいと思います。
  104. 内村良英

    ○内村政府委員 ソ連との近海操業の操業協定につきましては、ただいま先生から御指摘がございましたように、十二日から重光大使とイシコフ漁業大臣との間で交渉が開始されたわけでございます。そこで、交渉自体につきましては、日本側がつくりました条約案を基礎にいたしまして審議中でございます。その中でいろいろソ連漁船の賠償の問題その他も論議されるわけでございまして、私は、今日までのソ連の操業につきましての一般的な損害については話はいたしましたけれども、個々の具体的な問題につきましては、その協定を待っていろいろ解決されるということになると思います。
  105. 石井一

    ○石井委員 今後こういうふうな問題が起こらないようにやらなければいかぬわけですが、具体的なトラブルを回避するために調整委員会を設置するというふうなこととか、あるいはもっと細かい問題で船のランプだとかマークだとか、そういうふうなものに対して新しい発想を出してやるというふうないろいろなものがあると思いますが、どういうふうな骨子で進んでおるわけですか。
  106. 内村良英

    ○内村政府委員 協定の内容は、まず最初の方に操業に関するいろいろな約束といいますか、たとえば網を揚げるときにはどういう旗を掲げなければならないとか、ランプをつけているところからは何メートル離れて操業しなければならないとか、漁場におけるいろいろな紛争を解決するための技術的な問題、さらに相互に操業の情報、日本側からいきますと、ここに定置の網があるとかいうようなことを通報する、向こうからもソ連の操業に関する一般的な情報をもらってあらかじめ紛争が起こらないようにする。さらに紛争が起こりまして問題の解決を要するものにつきましては、政府間の委員会をモスクワと東京につくりまして、裁判の前にそこでいろいろな調整措置をとって調停するというようなやり方になっているわけでございます。
  107. 石井一

    ○石井委員 そうしますと、向こう側は相当反省の色を深くして、いろいろな形で日本側の要求というものに対して譲歩をしておる、こういうふうに受け取っていいのですか。
  108. 内村良英

    ○内村政府委員 現在までのソ連の操業は公海の漁業でございます。したがいまして、向こうが申しますのは、われわれとしては公海の漁業をやっておる。そこで私どもの方からは、公海の漁業といえども、相手国の漁民の網を切るというような操業は国際慣習に反するのではないかということを申したわけでございます。それに対してイシコフ漁業大臣は、われわれとしては現地の船団に対して日本法律を守れということを強く言ってあるということで、反省というかどうかわかりませんけれども、先方といたしましては、とにかく早くこういった問題を解決するために操業協定を結びたいということで、操業協定の締結についてはかなり積極的な態度を示したわけでございます。ただ向こうは、公海漁業であるという立場から、謝るとか、そういうことは全然ございませんでしたけれども、早く操業協定を結んでこういった問題を解決したいという熱意は非常に有していることがわかりました。
  109. 石井一

    ○石井委員 最後に、いま海洋法会議が行われているわけでありますけれども、海洋法会議でおそらく経済水域というふうなものが相当広がるとか、そのほかの変更が起こってくると、いま行われておる日ソの漁業操業交渉との間に予盾なり何か食い違いというものが起こってくるのではないかということを危惧するわけですけれども、そういう場合にやはり二国間での交渉というものが先行するのかどうか、この点何か問題はありませんか。
  110. 内村良英

    ○内村政府委員 御案内のように、海洋法会議におきましては領海の幅員、経済水域が議論されているわけでございます。そこで、領海の幅員が国際的な合意に基づいたものとして十二海里になるということになれば、当然わが国も十二海里の領海になると思います。そうなりますと、現在日ソ間で起こっております操業上の紛争は、約七割が解決するというふうに私どもは考えております。残りの三割につきまして、ただいま申し上げましたような操業協定を結んで紛争を避けていくということにすれば、ことしの漁期に起こったような、競合する漁場におけるいろいろなトラブルというものは、絶滅することはなかなか無理かもしれませんけれども、今日のように大きな社会問題になるというようなことはなくなるのではないかと思っております。
  111. 栗原祐幸

    栗原委員長 渡部一郎君。
  112. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は、まず最初に最近のプノンペンにおける情勢の緊迫、それに対するわが国外交の対応についてお伺いしたいと存じます。  現在、プノンペンにおける現政権は非常に状況が悪くてもはや陥落寸前にある。また、アメリカの上院等においては事実上の経済援助というものを差し控える動きも非常に急になっているように見えるわけであります。この時期においてわが国政府は、最終段階を迎えたカンボジア情勢に対して、ジュネーブを初めとするその他地域において各種の根回し活動を行い、そうして政権の交代の最終段階について熱心な努力を続けているやの報道も伺っておるわけであります。  まずこの問題に対して、政府はいま何をやっておられるのか、そして、現在該当地域に駐留する日本大使館及び大使館員に対して退去の指示についてはいつ出されるおつもりなのであるか、また、解放戦線側は、大使館がいずれ政権交代の後、新大使館として存続する意向を示すならばそのまま認める用意があると述べていることに対して、どういうふうに反応されるおつもりであるのか、まだ、アメリカ政府と一緒になって、日本政府はどうやらプノンペンの現政権の政権交代について努力をされているやに報じられているわけですが、その点はどんなものであるか、また、現地日本大使館の退去の際、日本側アメリカの航空母艦及び海兵隊の救助作業に頼って退去なさろうとしているのか、その辺のところをひとつ御説明をいただきたい、こう思っておるわけであります。
  113. 高島益郎

    高島政府委員 御質問が大変多岐にわたっておりますので、あるいはお答え漏れがあるかとも思いますけれども、現在のプノンペン市を中心といたします政府軍と反政府軍とのいわゆる攻防戦につきまして、私ども非常に重視いたしております。現実にはメコン川は完全に封鎖されておりますし、それからポチェントン空港は、封鎖はされておりませんけれども非常に危険な状態にあるというのが現状でございます。ただ、反政府軍のこれからの行動が、プノンペン市に対してどういうことをねらっているのかという点につきましていろいろ憶測をいたしておりまして、軍事的にプノンペンに侵入してこれを制圧するということではなくて、むしろ現在の締めつけをさらに強化することによって現在の政府、ロン・ノル政府を内部崩壊に導くということを考えているのではなかろうかというような説が多数のように思っております。  私ども、昨年の国際連合総会、及び一昨年の国際連合総会においてもそうでございますけれども、アジアの国、特にいわゆるASEANの諸国、つまりカンボジアと隣接するアジアの諸国が、一番このカンボジアの運命の帰趨について深い関心を持っておるわけでございますので、こういう国々とともに早く流血の惨をとめて、平和的な話し合いによってカンボジアの統一を図るべきであるということで、国際連合総会におきましては、いわゆる代表権というような観点からでなくて、いずれにしても早くこの戦争を終結させることによって、平和的な話し合いを促進すべきであるということを主張いたしまして、非常に僅差でございましたけれども国際連合総会の指示を得たわけでございます。自来、このような基本方針に従いまして、関心のある諸国といろいろと話し合いをいたしておりますけれども、これは非常に機微な問題、つまり内政干渉にわたるようなこともあり得ますので、そういう点は細心の注意を払って、とにかく早く内戦を終わらせるためにどういうことができるかという点について、いろいろ関心のある国と協議あるいは相談をいたしております。このことは事実でございますけれども、具体的な内容については、この席で申し上げるのはちょっと差し控えさせていただきたいと思います。  それからプノンペンにいまなおおります日本人でございますけれども、大使館の館員は現在夫人一名を含めまして七名でございまして、その他商社員が一名、現地の合弁会社の職員が七名、それから報道関係者が二名、それから短期滞在者三名、合わせまして全部で二十名でございます。一月以来再三にわたりまして、カンボジアの情勢をこの邦人に説明するとともに、用事のない不要不急の方はなるべく早く撤退するようにということを再三勧告いたしておりますし、最近では、三月に入りまして、もうぜひ出国するようにということを強い勧告を持って皆さまに申し上げておりまして、いま申しました二十名のうち、大使館の館員は別でございますけれども、新聞関係者その他は随時、便のあり次第撤去するということに話し合いができております。ただ大使館の館員につきましては、現在七名おりますが、これはもう少し整理して本当に必要最少限、大使以下ほんの数名に、もっと少ない数にとどめたいというふうに考えておりまして、そういう指示を与えております。最終的にどういう時期にどういう方法で撤去すべきかという点につきましては、現在まだ確たる具体的な方針が決まっておりませんけれども、いずれにいたしましても、大使館としては本当の危険がない限り、できるだけ最後までとどまるというのを基本方針にいたしております。しかしそれにもかかわらず、大使の判断によって、非常に危険である、危険が急迫しているという場合には、全部近隣国に避難して差し支えないという訓令は出してございます。最終的な撤退の命令はいたしておりませんけれども、大使の判断で、現地情勢が非常に急迫するというふうに考えられる場合には、全員撤去しても差し支えないということを申しております。  以上でございます。
  114. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 一つの国が政権交代して、武力によって衝突し、変転することはこれからもあり得るわけですし、こういうときの扱いというのは、ある意味での日本の外交の基本的な立場を明瞭に示すし、その後に樹立される政権との交渉の上でも非常に重大な問題を含んでおると私は思っているわけであります。  いまお話を伺っておりますと、おおむねその点では私は遺漏はなかろうとは思いますが、私が心配しているのは、一つは新政権との交渉、新政権との意思疎通というものは当然あってしかるべきだ、こう思っておるわけであります。しかも、中国にカンボジアの代表である方がおられる以上、中国国内でも接触ができますでしょうし、あるいはその他の地域でもできると思うわけでありますから、その辺はいかがなっておるか、該当大使館をその政権交代の後もそのまま持続できるかどうか、その辺はどうでしょうか。
  115. 高島益郎

    高島政府委員 率直に申しまして、北京におられますシアヌーク殿下のいわゆる反政府側の内部における地位につきましては、いろいろ微妙な状況があるそうでございまして、そういう観点からも、まだいままでのところ北京ではシアヌーク殿下との接触はございませんけれども、しかし将来、あるいは近い将来かもしれませんが、プノンペンがそのような危機に陥って現在の政府が交代するという場合に、これに対応して、引き続き日本の大使が新しい政府関係を持つという点については、十分細心の注意を持って抜かりのないようにいたしております。
  116. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると、日本外交の態度としては、プノンペンにおける攻防戦が一段落すれば、新政権をして現政権の継承政権として認める、こういう方向で対処するという意味ですね。
  117. 高島益郎

    高島政府委員 現在の状況は非常に切迫した状況であるという点は認めますけれども、その結果どういう政府ができるかという点については、われわれ政府の一員として言うべきことではないと思います。しかしいずれにいたしましても、新しい政府ができた場合にこれとの関係を持つということは当然のことでございまして、その方向に向かってあらめる手段を講じたいというふうに思っております。
  118. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 非常に慎重な言い方ですけれども、新政権とはわが国との友好関係を保つ方向で準備が整えられている、こういう意味ですね。
  119. 高島益郎

    高島政府委員 私の発言でひとつ御了解いただきたいと思います。
  120. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 大臣にお伺いしますが、こういう東南アジアの諸国におけるいままでの紛争の中で、ベトナムにおけるアメリカ政府の介入の仕方で、決定的な一つのしくじりの例として証明されているわけだと私は思うのですけれでも、現地の政権の中で、とかく腐敗政権と手を結ぶ、新政権と敵対関係に入るというタイプの自由主義諸国側の対応というものは、もはやすでに時代おくれというか、適当でない段階を迎えたと私は思っているわけであります。その意味で、カンボジアに対する処理の仕方というのは日本外交は明らかに明快な処理の仕方を迫られている、こう思っておるわけであります。そこで、その姿勢において、少なくともプノンペンの新政権の樹立に最後まで抵抗したとか、旧政権の維持のために最後まで努力をしたと思われるような方向というものは、慎まなければならない段階を迎えておるのではないかと私は思うのですが、いかがですか。
  121. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 問題が非常に微妙でございますけれども、政府委員が先ほど申し上げましたのは、正直を申しまして、この問題の処理について、わが国が各方面から非常に頼られておるというようなことがあるようでございます。意見を求められて、どうあるべきかというようなことについて、まあ意見を求められますから申しておるわけで、差し出がましいことをしておるわけではございませんけれども、そういう情勢に現在あるように存じます。したがいまして、国連決議の線に沿って、事態がこれ以上流血の惨に陥らないように処理されるためにはどうしたらいいかということについて、実は、連日のようにわが国の現地大使が各方面から意見を求められておるというような事情のようでございます。したがいまして、わが国のそのような努力が各方面から感謝されることはあっても、恨みをもって見られるというようなことにはならないような情勢と考えております。
  122. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 在沖縄の米軍海兵隊一万八千人が、最近に至り軍需物資の輸送その他を含めまして実戦配備態勢をとり始め、出動命令に応じて出動の準備を開始した、こういうことが現地の原水禁沖縄県協議会等から話が出ております。中には、第七艦隊に千六百人からの海兵隊がすでに乗り込み、海上待機中であるとまで、こうした動きが出ておるわけであります。このようにわが国の沖縄県に駐在している米軍部隊が臨戦態勢に臨むことについて好ましいと思うかどうかについて、御返事をいただきたいと私は思っておるわけであります。  というのは、こうしたことを条約上、法律上から押せば一つの解釈が出ることは想像できるわけでありますが、こうした段階でそうした動きについて黙認するということは、少なくとも、あときわめて好ましからぬ状況をつくり出すのではないかと私は考えるからでありまして、慎重かつ賢明な御答弁をこの際披瀝していただきたいと思います。
  123. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 条約上、法律上のことは言う必要はないということでございますので、それではそれを省きまして、現在の情勢から考えますと、よくよく御承知のように、アメリカ自身がこの地方において新たな戦闘行動をとろうという考えにないことは、アメリカ国会の空気などを見ましても十分想像のつくことでございます。したがいまして、現在そのようなことがあるといたせば、それはやはり広い意味での人道的な見地、最後にはあるいは相当の各国人の引き揚げというようなこともしなければならない事態であるかもしれませんし、そのような人道的な見地に立って行われているものであって、軍事的な攻勢をとるというような意味で行われているものではないというふうに私ども理解をいたしております。
  124. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうしますと、沖縄の米軍が臨戦態勢であるはずではない、つまり軍事的行動ではないのであって、もし臨戦態勢をとるとするならば、それはおもしろいことではない、こういうような意味でございますか。
  125. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点では、法律論、条約論を省略してと言われましたので、私もそれに触れませんでした。現状は少なくともそういう情勢ではないというふうに考えております。
  126. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 非常に言いにくいことをいまわざわざ伺っておるわけでありますから、御答弁がそういうところでとまるのはわかるわけでありますが、私は、少なくともこの問題について、わが国が直接、あるいはわが国に駐留するところの軍隊がそうした形でカンボジア情勢に巻き込まれていること、そして次の時代のマイナスを引き起こすことに少なくともブレーキをかけるべきである。そういう消極的なのだけじゃなくて、新しい東南アジア情勢の平和と統一のために積極的な努力をするべきではなかろうか。少なくともASEAN諸国との協議もそうした方向で進められるべきではないかと思うのですが、最後にちょっと。
  127. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど、わが国がいろいろな意味で問題の最終解決に頼られているような状況だと申し上げましたが、これは実はわが国だけが考え、行動をしておるわけではありませんで、御指摘のように、いわゆるASEANの国々と共同でそのような意見を求められて考え方を述べる、こういうふうな行動をいたしておりまして、その点は渡部委員の仰せられますような方向に向かっておると考えております。
  128. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それでは、外務大臣は、四月に訪米なさいまして、核防条約批准に関して米国側と接触する決意を固められた旨を昨日外務省の首脳部は公表されたそうでありますが、その辺を少し明快にお話をいただきたいと存じます。  核拡散防止条約の批准に関して、まず何のために米国首脳と会おうとされるのか、いつの時点でお行きになろうとなさっているのか、また核防条約批准に対する問題と絡んでおるならば、そういう目的のどういうところを目指しておられるのかお伺いいたします。
  129. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 総理大臣から、かねてなるべく早く訪米をして、アメリカの国務長官と話をするようにということは言われておりまして、他方でアメリカの国務長官も都合がつけば、できるだけ早く話をしたいと、特に議題があるわけではないけれどもということは、招請を以前から受けておるわけでございますけれども、何分にも国会の開会中でございますし、また幾つかの法律案条約案も御審議を願っておるというような状況でございますから、しかるべき時期がなかなか見つかりませんで、たまたま昨日ホッドソン大使に申しましたのは、もし、国会がある時期に事実上の自然休会というようなことにお決めになりますのであれば、その間、短い期間でありますけれども、あるいはそのようなことが可能であるかもしれないということを申しました。ただ、先方も大変忙しいお人でございますので、どこで、いつ、どのようなチャンスがあるかということがいまのところはっきりいたしておりません。  なお、そのような、会って話をするということにつきましては、特に特定の話題があるわけではございません。もとより御指摘の核防条約についても質問があれば現状を話すつもりでございますし、あるいはその他の各国とのいろいろな交渉についても意見交換をいたすことは当然あろうと存じておりますけれども、特に核防条約についてアメリカに何かを質問する、あるいは何かを要請するといったような気持ちは、私ただいまのところ全然持っておりませんで、いわば一般的な、お互いに知り合う、そして情報を交換し合うということを目的にいたしたいと考えておるのでございます。  繰り返して申しますように、その時期、場所等々、ただいま全然見当がついておりませんで、昨晩アメリカの駐日大使に対して、そのような意思のあることだけを伝えた段階でございます。
  130. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 その時期はいつごろになりそうですか。
  131. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは私からは非常に申し上げにくいことでございまして、国会におかれまして、しばらくの間、事実上の自然休会をお決めになる時期がいつであるか、その時期が一番早い時期でありまして、もしそれが事実上不可能だということになりますと、恐らくは国会の会期の終了を待たなければならないのではないかと思っております。
  132. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 大臣のただいまの御答弁は非常にあいまいもことしておられて、キッシンジャーと同窓会をやりに行くような雰囲気で御答弁をいただいていますが、日米外交当局者がお会いなさるのに、同窓会や顔見知りになるなどという段階ではとうていないだろうと私も思いますし、それは余りにも御自分の交渉態度というものを謙虚に表現されたと言うべきか、あるいはあいまいとされることを効果的とただいま判断されているのか存じませんが、それではちょっと当委員会に対する御説明としては不足かと存じます。どの辺に視点を置いてお話しになるか、もうちょっとお話しになっていただいた方がいいのではないでしょうか。
  133. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 幸いにして、ただいま日米二国間に早急に解決を図らなければならない問題というものは、大きなものはございませんので、したがいまして、全般についての日米関係の問題と、それから別途日米が協力して処理しなければならない国際的な幾つかの問題がございます。二国間の問題でなく、むしろ多国間の問題というのが、御承知のように幾つかございますので、それらについても意見を交換をいたしたいと考えておるわけでございます。
  134. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 日中平和友好条約の交渉が、いまや最後的な段階を迎えて、とんざしているのではないかと思われる節が非常にあるわけであります。交渉の経緯等を私たちは伺っているわけではありませんが、問題点はそろそろしぼられてきておるニュアンスが明らかであります。しかし、覇権という問題に関して両者の意見の対立が強いという事実と、もう一つは、この平和友好条約を積極的に今国会で討議しない方が、通さない方がいいのではないかという自民党内の判断というものに、外務当局は振り回されているのではなかろうかと私は疑っているわけであります。その辺いかに御判断になっておられるか。
  135. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のように、一つの問題をめぐりまして両者の意見が、数週間話をいたしましても一致しないということは、今日までの現状でございます。しかし私といたしましては、何とかその問題についても先方の理解を得て、できるならばこの国会に御提案をして、御審議を仰ぎたいと考えておりますことには変わりがございません。  それから、これにつきまして自民党内がどういうふうになっておるかということでございますけれども、ただいまの問題についての私どもの処理いかんにもよりますけれども、大勢といたしましては、わが国にとってまずこれならばという程度のまとめができますといたしますと、自民党内にそんなに強い批判、反対があるというようなふうには私、考えておりませんで、できにもよることでございますけれども、そのようには考えておりませんので、いまの問題が幸いにして先方の理解を得ることができて解決をいたしますと、まず私どもの党内に大きな問題があろうとは思っておりませんで、したがいまして解決ができましたらこの国会で御審議を願うことができるのではないだろうかという希望は、やはり依然として持っております。
  136. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 そうすると大臣、こういうことになりましょうか。私は外交というのは当然こちらの主張と向こうの主張とが――どちらか一方の主張が押し通されるというのは、それは交渉とはなり得ぬだろうと思う。戦争でしかそういう解決はない。両者の間にある程度の妥協と筋というのが引かれてしかるべきだ。ところが、この間から心配をいたしておりますのは、両者とも原則論を主張し合って一歩も引かぬという立場で協調が行われないとしたら、それは問題であろうかと思うわけです。ですから、覇権反対ということは、基本的精神については両者異議がないことであり、共同声明にも盛り込まれていることであるから、問題は扱う立場でありますが、日本側の主張は終始一貫絶対変えないという路線でいかれるのか、交渉、話し合いに妥協の余地があるという立場でこの交渉をまとめようという姿勢に立っておられるのか、私が心配しておりますのはその辺ですね。お伺いしたい。
  137. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 両方自分の主張を述べ合いまして、お互いにこれは早くやることが望ましいのだという共通の認識もはっきりしておるわけでございますから、もう少し話を詰めていきますと、何かそこに共通の道が発見できるのではないかというふうには考えておりますが、しかしこのこと自身は、わが国としましてはやはり外交の基本的な考え方に関連がございますだけに、先方の言っていらっしゃることはわからないわけではありませんで、これは先ほど石井委員にも申し上げたとおりでございますけれども、条約ということになりますと、やはりここはよほど慎重に考えなければならない問題だというふうに私自身考えております。まあ、もう少し進めていきますと、あるいは先方わが国立場についてさらに理解を示されるのではないかということを思っておりますものの、まだ先をどういう形で予測をするということは、今日現在できにくいというのが現状でございます。
  138. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 終わります。      ――――◇―――――
  139. 栗原祐幸

    栗原委員長 国際情勢の質疑はこの程度とし、次に、千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦貿易規約及び食糧援助規約有効期間の延長に関する議定書締結について承認を求めるの件及び関税及び貿易に関する一般協定譲許表変更に関する第二確認書締結について承認を求めるの件、以上両件を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡部一郎君。
  140. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 小麦協定及び一般的な食品協定に関しまして、先委員会におきまして、ココア協定に見るように、一般的に商品協定は経済条項を含まないものが次第次第と多くなり始めている、また、その経済条項を含んでいたものであったとしても、価格安定や需給安定確保という二つの所期の目標とはかなり違ったものとなりつつあるということについては、種々論証をいたしたところであります。   〔委員長退席、水野委員長代理着席〕  したがって、こうした協定群について、まず、かなり役に立たない面が多くなってきたという国際経済上の諸点を踏まえまして、今後いかにこの問題を扱っていくべきか、その辺についてひとつ大臣から御見解を承りたいと思っておるわけであります。  すなわち、その基本的な命題といいますのは、わが国にとって食品の価格安定、需給安定ということは大問題でありますが、その二つの大きな目標を達成するには、こういう商品協定というスタイルのやり方では限界がきた、この一つだけでは、ある部分の効用はあるにせよ、もうこれだけではそういったことを達成するというわけにはいかなくなってきた、もっと新しい何らかの手が必要ではないか、当然そういうことが考えられてしかるべきだろう、こう思っておるわけであります。  そこで、外務当局としては、特に責任者でいらっしゃる大臣といたしましては、どういう構想を持たれてこうした難問にこたえられるか、その辺をまず基本的にお伺いをしたいと思うわけであります。   〔水野委員長代理退席、委員長着席〕
  141. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは私は、世界食糧会議であのように問題になりました、あそこに出ました問題が、やはり大きな要素であろうと考えております。すなわち備蓄にいたしましても、そのための支援措置にいたしましても、あるいは増産にいたしましても、またそのための支援措置にいたしましてもさようでございますが、それから情報といったようなものもやはり大切であろうと考えます。そういう要素を幾つか組み合わせまして施策を考えていく、その中で商品協定というものも私は一つの有力な要素であろうと考えるわけでございます。  従来、御指摘のように、商品協定というものが供給側あるいは需要側どちらかが一方的に非常に優勢な場合には、実際にはなかなか動かないという経験がございます。ことに経済条項を設けましてもそれが十分に動き得ない、両方がある程度の不安を持っておりますときに一番この商品協定というものが有効に動くというような経験が過去にしばしばございました。  で、現在の状況は、穀物の場合に緩衝在庫が極端に減ってきたということもありまして、その他気候の変化であるとか食生活の変化であるとかいろいろな事情はございますけれども、供給側が強い立場でございます。しかし先ほど申しましたようないろいろな施策をやってまいりますと、そこにやがて一つのバランスが出てくるであろう、そういう場合には商品協定というのはうまく動く可能性が出てまいります。そういったような手段の組み合わせではなかろうかというふうに考えております。
  142. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 この問題について、農林省と外務省との間で連携が食糧の輸入政策についてもうまくいってないのじゃないかと思われる節が前委員会でしばしば拝見された。これから大臣がお立ちになりますそうですから大臣御不在中にがっちり論議をしておきますけれども。たとえば食糧庁の方は輸入すればいいだろうというのでがんがんやる。そうすると向こうの東南アジアの諸国では、マイロであるとか一般飼料穀物のために、インドネシアのごときは日本の全耕地面積に匹敵するような土地が次から次へ荒れて荒蕪地になっていく。そして、日本は穀物を担いで帰ってしまう、おれたちの緑の島はいまや荒れ果てた赤土の島になっているという運動に火をつける。そしてそういう運動に相当火がつきかかってから、日本政府は厳かに工場に対する援助というものを開始する、そして例によって二階から目薬程度の文化的予算をぱらぱらとふりまく、そしてますます問題をこじらせていく、そして総理大臣が行ったらののしられる。大体こんなようなスタイルで事態が推移しておる。  また一方では、食糧がどれくらいの供給が必要であるかということについて、農林省側の予測というものが外務省の施策の上に影響されていない。つい一年ぐらい前までは、食糧の需給というものは安全であると通産省は信じ切っておって、食糧を買って工業品を押しつけるというパターンで終始してきていた。そうしたことについての打ち合わせ、話し合いというものが全く行われない。農林、外務、通産のこの三省の間で、食糧政策についての打ち合わせがろくに行われていなかったんじゃないかという疑いを、いまからがっちり議論するつもりでいるわけでありますが、大臣その辺について、総括的にどういう方針で今後臨もうとされておるか伺いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  143. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点は先ほど申し上げたことと関連をするわけでございますが、たとえば小麦について、つい先ごろまでと申しますか、小麦協定ができ始めましたころ、小麦の相場というのは一ドル六十セントなんというものが実際保てずに、もっとそれより低かったというような段階があったわけでございます。そういう意味では、それはアメリカが過剰農産物を持っておった時代でもあるわけでありまして、世界的にやや供給過剰であるというふうに考えられた時代が、まだまだ十年それからたっておらないような現状でございます。  その後、一昨年でございましたか、ソ連がアメリカから大量の買い付けをやったというようなことがあったりいたしまして、急に在庫が減って様子が変わってまいりました。気候の問題があり、食生活の変化の問題があり、いろいろなことがありまして、昨年シカゴの相場なんかは一番高いところへ行きまして、最近はまた少し落ちついてきたということでございますから、なかなか全体の情報というものを的確に知るということがだれにもむずかしい、わが国の役所ばかりではありませんで、だれにもむずかしいというのが過去十数年の経過ではなかったかと思うのでございます。  しかしそうは申しましても、昨年の食糧会議なんかでほぼ共通の認識になりましたように、どうも先を考えるとやはり、少なくともいまの状態は決して安心できる状態ではないということでございますから、わが国自身もできるだけのことはしておかなければいかぬということが、ほぼ共通の認識になりつつあるというのが昨今の情勢であろうと存じておりまして、そういう共通の認識のもとに、各省さらに緊密に連絡をしてまいらなければならないと思っております。
  144. 栗原祐幸

  145. 土井たか子

    ○土井委員 千九百七十一年の国際小麦協定を構成する小麦貿易規約及び食糧援助規約有効期間の延長に関する議定書締結について承認を求めるの件というので、ただいまから質問をいたしますが、この議定書に基づく食糧援助を、米または農業物資で日本の場合には行う方針でおありになるようであります。そうしますと、この需給あるいは備蓄というふうな問題について担当大臣はいずれかということになると、これは何といっても農林大臣ということになるのでありましょう。この農林大臣の最近の発言の中に、日本の領海十二海里というものをやはり促進しなければならないという大変積極的な発言があるわけでありますが、外務大臣とされましては、この農林大臣発言に対してどういうふうにお思いになるかということと同時に、十二海里がまとまらなかったときに、日本としては十二海里というものを一体領海について宣言なさるということなのかどうなのかをまずちょっとお尋ねしたいと思うのです。
  146. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点につきましては、先般閣議で内閣としての方針を決めましたわけでありまして、すなわち、今回の海洋法会議については十二海里が大勢になりつつあるということは、すでに御承知のようにはっきりしてまいりましたので、この海洋法会議がまとまっていくということにわが国としても積極的に努力をするということでございます。  なお、まとまらなかった場合にどうするかということについても、実はその際多少の議論がございまして、これは関係省庁が非常に多いことでもございますので、その段階において協議をしようではないか、当面海洋法会議がまとまる方向で努力をしようということが内閣としての基本方針でございます。
  147. 土井たか子

    ○土井委員 この議定書について、いろいろ参考資料として外務省当局からいただいた資料によっても、それは数字の上で明らかなのでありますが、言うまでもなく、わが国アメリカに食糧の輸入を頼っております。またアメリカも、わが国に食糧の安定供給というのを約束しているという関係にございます。そのアメリカが、この海洋法会議の席においてもそうでありますが、かねてより、国際海峡の自由航行というものを条件としての十二海里ということを非常に強く推進しようとしておるわけであります。わが国としては、十二海里ということに対して積極的にいろいろとその立場を表明する場合、国際海峡の自由航行ということをその条件としてお考えになっていらっしゃるのかどうか、ひとつこれについて確認をしておきたいと思うのです。
  148. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点につきましては、十二海里という合意がほぼ大勢になりつつあるわけでありますけれども、それに付帯する条件ということになりますと、発展途上国と先進国と海運国とそうでない国とは、実にいろいろな千差万別の主張がありまして、内容については、これが現在ジュネーブで議論されつつある一つの問題であるわけでございます。  わが国としては、ともかく海洋法会議一つの将来条約になり得るような具体的な結論に、この点について達することに努力をしようではないかということでございまして、したがいまして、絶対にこうなければならぬという考えはいたしておるわけではありません。ありませんが、わが国はやはり海運国の一方の雄であることはもう御承知のとおりでございますから、どちらかと言えば、領海が十二海里になりました結果、海運の自由というものが非常に脅かされるということになりますと、それは国益に沿わないというふうに考えつつ対処をいたしたいと思っております。
  149. 土井たか子

    ○土井委員 今回のこの議定書についても、担当省庁というと外務省ということになるわけでありますが、しかし中身を促進するという側面からすると、通産省あるいは農林省、運輸省ということも関係としてあるわけであります。この通産、運輸当局の考え方からしますと、先ほどおっしゃったとおりで、海運国としての日本のあり方、商船であるとか、なかんずく大型タンカーの航行をめぐって、やはり国際海峡については自由航行であってしかるべきだというお考えが非常に強いということを聞かされております。したがいまして、外務省としては、この国際海峡の自由航行ということに対して、これをどういうふうにお詰めになるか、現にどういうお考えを持っていらっしゃるか、これはやはり気にかかるところでありまして、ひとつその点について、外国のいろいろな状況コメントでなく、外務省当局として、外務大臣はどのようにお考えになっていらっしゃるかをお聞かせいただきたいのです。
  150. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど私が申し上げましたことは、外務省としての意見を申し上げたのではありませんで、申しましたとおり、閣議におきまして基本方針として決定いたしましたことについて御説明をいたしたわけでございますので、これは各省のほぼ合意の上に立って申し上げているというふうにおとりくださいまして結構でございます。
  151. 土井たか子

    ○土井委員 ちょっと気にかかることがそこで出てくるわけなんですが、この自由航行ということになりますと、いままでにこんな国際海峡という概念はございませんから、したがってこれはもはや領海ではない、領海としての取り扱いからは外されるということにならざるを得ないということになるかと思うのですね。そうしますと、この日本の近海にある現に領海である部分について、今回の十二海里という立場に立って考えた場合に、国際海峡化する場所、これはもう先般私は当委員会においても聞いたわけでありますが、その二、三の例をここでお述べになったのにとどまるわけでありまして、日本について、現に領海である場所が国際海峡となるという場所を、ひとつそれぞれの個所について明示をお願いする資料を提出いただければまことにありがたいと思うわけであります。それ、お願いできますでしょうか。
  152. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 承知いたしました。
  153. 土井たか子

    ○土井委員 そこで、その資料をいただいた上でこれは聞くべきかとも思いますけれども、もう一つ確認しておきたいのは、昨今非常に新聞紙上でもこのことが取りざたされておりますから、この問題についてのお考えのあらましをお伺いしたいわけでありますが、現に日本の領海を通航する外国艦船については無害航行でなければならないということになっております。今度は、この無害航行として問題にしている領海の中で国際海峡になる部分ができ、しかもそれに対しては自由航行を認めるということになりますと、問題になるのは、商船とかタンカーのたぐいではないので、どこまで行っても、やはりこれは戦力としてある艦船という問題にかかわってくると思うわけですね。  そこで、潜水艦も含めまして軍艦のたぐいについて、これを例外として外して問題にしていらっしゃるという態度でお臨みになるのか。それは、いわば日本は非核三原則というのを国是としておりますから、非核三原則の例外としてこれを見るというふうな態度でお臨みになるのか。それとも非核三原則というのを、今回持ち込ませずという部分を外して、非核二原則というふうに変則させていくというふうな態度でお臨みになるのか。このことが私としては大変気がかりになるのでありまして、それについてのあらましの御説明を承りたいと思うのです。
  154. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生よく御承知のように、海洋法会議におきまして、国際海峡という全く従来の国際法の観念になかった制度というものについて検討が行われているのでございます。したがいまして、日本といたしましては、先ほども大臣から御説明がございましたように、どちらかといえば自由航行で物事が決まっていくことが望ましいという態度は持っているわけでございます。  しかし、それが具体的に通る船、商船、タンカーないしは軍艦ということでもってどのような制度が究極的にでき上がっていくかということにつきましては、これからのジュネーブにおきます会議の結果を見定めませんと判断がつきかねるところがございます。したがいまして、日本政府といたしましては、そのような、全体において日本も満足し得るような、また各国も参加国がコンセンサスを得て満足し得るような国際海峡の制度というものができました暁には、その国際海峡の制度というものに従って行動したい、そのように考えているわけでございます。
  155. 土井たか子

    ○土井委員 小麦の輸入あるいは輸出の問題について、食糧備蓄の問題について具体的に詰めたいわけでありますけれども、いまお答えになった限りで一つひっかかることがあるので、ちょっとそのことについてさらに確認をしておきたいと思うのです。  日本を満足し得る状況での話を国際会議の場で詰めていくということをおっしゃいましたね。日本が満足し得る状況というのは、この非核三原則というものを国是という意味で揺るがしてはならない、絶対に譲れないということが満足すべき日本としての条件なのであるか。それとも、この非核三原則の中の部分である持ち込ませずということについて、もうこれは譲っていいのではないか。したがって、端的に言うと、非核二原則というのが確保されれば、それは満足すべき状況と言えるのではないか。いずれでありますか、この問題について言うならば。
  156. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題は、先ほど政府委員が申し上げましたように、海洋法会議が最終的にどういう経緯でどういう結論を出すかということに従って、その時点で決定をいたしたいと思っていますけれども、私どもとしては、少なくともいまの状況より悪い状況にはいたしたくない、こう考えております。   〔委員長退席、水野委員長代理着席〕
  157. 土井たか子

    ○土井委員 いまも、小麦それから食糧需給の問題について詰めなければならないのが核の問題の方に移ってしまいますので、私は不本意でありますけれども、現在よりも悪くならない状況ということになると、それじゃ大臣、非核三原則ということをここで確認させていただいておいてよろしゅうございますね。それが現状でございますから、現状よりも悪くならないということを確認させていただく意味において。
  158. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ですから、その問題は、海洋法会議決着の時点において政府判断をいたしますと申し上げております。
  159. 土井たか子

    ○土井委員 それはいつでもその決着を見てからということに譲られてしまうわけですから、一番大事な過程の段階でどういうふうに問題が推移しているかというのは、われわれ国会の席上では具体的に知り得る機会になかなか恵まれないのであります。事が終わってしまってからこうでございますというふうな御報告を承るにとどまるわけでありまして、その節は国会の意見というものを代表してこの審議の場所でるる意見を申し上げても、それはもはや意味としてなさないというふうな場合が多分にございますので、ひとつ推移する過程についても、大臣は、これくらいまでは言っても大勢に影響ない、国際会議の場所で日本立場というものを阻害しないというふうにお考えになった節には、これはひとつ勇気をもって、この場所で具体的な問題についての御答弁をお述べくださいますように申し上げたいと思うわけであります。  同じようなことが今回この議定書にも言えるわけなんですよ。もう暫定的適用宣言というものを政府間でやってしまわれてから、あとで国会承認というかっこう、これも同じような意味で言えるのじゃないでしょうか。ですから、そういう点からしますと、問題が推移しているときこそ私一番大事な段階だということを認識するがゆえに、先ほど来の質問をさせていただいたわけであります。大臣、それでもなおかつ、国際会議の席での具体的な結論を待ってしかこの問題に対しては十分な御説明はいただけないということでございますか。
  160. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点につきましては繰り返し申し上げるようでございますけれども、関係各省庁非常にたくさんの関係がございますので、私一存で申し上げるべき問題ではなく、海洋法会議決着を待って政府態度を決める、こういう意味でございます。私がいまここでこうしたい、ああしたいと申し上げるべき問題ではございませんで、やはり閣議等の席におきまして、各省庁の意見をよく調整した上で申し上げるべき段階があろうと存じております。
  161. 土井たか子

    ○土井委員 そうしますと、各省庁のお立場であるとか国際会議の席での推移ということによって、多分にこの非核三原則が揺らいできたというふうなことも言えるわけでございますね。なぜかと言うと、やはり外務大臣として、非核三原則というものは日本の国是だ、これについてはどんなことがあっても譲るわけにいかないというふうなお考えがあるならば、各省庁の間での協議の場所でもあるいは国際会議の場所においても、その点は譲れない鉄則としてお立てになるはずだと私は思うのであります。それについて確たる御答弁をお聞かせいただけないということは、要は非核三原則の中身というのが多分に揺らいできたというふうに理解をいたしておいてよろしゅうございますね。
  162. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 非核三原則というのは、ことに第三の問題を御提起になっておると思いますけれども、領土あるいは領海に核兵器を持ち込ませないという原則でございます。そこで、この国際海峡というものは、先ほど土井委員自身が御指摘になりましたように、全くいままでなかった新しい制度でございますから、その制度ができましたときに、非核三原則との関係をどうするかという新しい問題になるわけでございます。それは先ほど申し上げましたように、将来の時点において政府内部の意見を調整いたしまして、その後に申し上げよう、こういうふうに思っております。
  163. 土井たか子

    ○土井委員 わかりました。非核三原則を鉄則として貫き通すということではない、少しそのことに対しての再検討をいま迫られておるんだというふうな御趣旨と理解をさせていただきまして、先に進みたいと思います。どうぞ外務大臣、お時間のようですから結構です。  まず、お伺いしたいのは、二月十日と十一日の両日にわたってロンドンで食糧備蓄主要国会議が開かれたわけでありますが、どのようなことがそこの場所では検討されたかをあらましまず御説明を承りたいと思います。
  164. 野村豊

    ○野村政府委員 本年二月十日と十一日にロンドンで開かれました会議は、主として食糧備蓄の問題に関しまして開かれたわけでございます。御承知のとおり、昨年の十一月の世界食糧会議におきまして、キッシンジャー国務長官は、世界の穀物の通常在庫の上に六千万トンの備蓄を積み増しするため、主要輸出入国で話し合ったらどうかというふうな提案を行ったということもございます。かつまた、その前からFAOのバーマ事務局長も、世界全体として常時必要最低限の食糧が確保されるよう、各国がいろいろな政策の範囲内で適正な在庫の水準を持つべきだという趣旨の構想も提案しておったわけでございます。そういった背景を受けまして、世界食糧会議におきましては、この両方の構想を受けまして、主要食糧生産、消費国及び貿易国の間で、できる限り早くそういった問題について討議を開始すべきだというふうな決議が採択されたわけでございます。そういった決議を受けまして、いま申し上げたとおり、二月十日、十一日の、両日にわたりましてロンドンで開かれたわけでございまして、わが国のほかアメリカとか、アルゼンチンとか豪州とかというような国、合計十一カ国が集まって会合が開かれたわけでございます。  この会合におきましては、先ほど申し上げましたとおり、アメリカが将来のあり得べき食糧生産の動向というものを踏まえまして、各国の穀物備蓄につきましての国際的制度をなるべく早くつくりたいというようなことを強調したわけでございます。しかしながら、必ずしもその具体的な内容というものは明らかにされておらなかったということでございまして、主として意見の交換に終わったわけでございます。今後いつ会合するかということはまだ具体的には決まっておりませんけれども、とりあえずいろいろアメリカの話を聞きまして、いま申し上げた十一カ国の中で意見を交換したということでございます。
  165. 土井たか子

    ○土井委員 そうしますと、そこの場所では、食糧備蓄主要国会議ということで、特に備蓄量であるとか、各国の備蓄分担割り当てなんかについての話し合いはなかったというふうに理解させていただいていいわけですか。
  166. 野村豊

    ○野村政府委員 ただいま申し上げましたとおり、今回の会合におきましては、アメリカからきわめて大まかな話だけ提案がございまして、必ずしも具体的な内容につきましては詰めた議論というものがなかったわけでございまして、もちろんその備蓄というものを輸出国、輸入国あるいはまた後進国も含めて持とうというふうな考え方ではございますけれども、具体的な備蓄の割合とか、そういったものにつきましては具体的な決定はもちろんございません。
  167. 土井たか子

    ○土井委員 そうしますと、今後そういうふうなことを討議するための国際会議というものはいつ催されるという見通しがあるわけでありますか。
  168. 山田嘉治

    山田説明員 お答え申し上げます。  先般のロンドンの会議に私出席いたした者でございますが、先ほど野村次長から話がございましたように、米国が提唱した会議ではございますけれども、具体的な提案をアメリカがいたさなかったというようなこともございまして、自由な意見の交換ということは行われましたけれども、何らの結論を得るに至らず、実は次回以降の会合をどうしようかという話も出たのでありますけれども、これにつきまして何らの結論を得ませんで、ここで自由に話し合った成果と申しますか、結果を、各国それぞれ持ち寄りまして本国政府で検討しようということで終わりまして、次回いつどこでやるということも決められずに終わったという状況でございます。
  169. 土井たか子

    ○土井委員 農林省の山田国際部長は、米国の食糧備蓄提唱の問題について、その感想を新聞紙上で述べておられるのを拝見したわけでありますが、アメリカの食糧備蓄提唱についてどういうふうにお考えになっているか、ひとつ率直に山田国際部長の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  170. 山田嘉治

    山田説明員 お答え申し上げます。  この会議の事実上の提唱者、招集者は米国でございまして、世界食糧会議以来の経過によって、こういう会議が開かれたということは先ほど野村経済局次長から申し上げたとおりでございまして、昨年十一月の世界食糧会議においてキッシンジャー国務長官が、現在の世界の食糧事情をつらつら考えると、まず一つは、世界の在庫の水準が非常に低い水準に落ち込んでおる、それから、今後の需要と供給の見通しを考えると、もし相当大幅な不作等の異常事態があった場合にはきわめて憂慮すべき事態が予見される、それで、これに対しまして世界各国が協力して備蓄と申しますか、ストックの増大を相談する必要があるという趣旨で、この種の会議を主要国の間でやろうということを提案しております。それから、これと同じような趣旨で、FAOのバーマ事務局長も、各国のこの種の、備蓄の増強についての協調についての提唱をしております。  その限りにおきまして、わが国といたしましても、世界の食糧需給の安定のための一つの手段として、現在の世界のストックの水準がいかにも低過ぎるということを念頭に置きますと、世界が協力をしてストックの増強に努めるという話し合いには、日本としても積極的に参加をしていくべきであるというように私どもも感じております。  ただ、ストックの増強、備蓄というようなことにつきまして、これが協定とかいうような形で各国に義務と申しますか、負担も負うという形で実行されるということになりますと、負担と、それからそういう負担を負いましてつくった備蓄によって、各国がどういう利益を受けるかという費用と利益のバランスと申しますか、そういう問題につきましては、これはいずれの国といえども相当慎重にならざるを得ないということはむしろ当然だと思うわけでございます。そういう意味で、わが国も含めまして、私、せんだってロンドンの会議に出ておりまして、アメリカがこれを積極的にやろうじゃないかということを提唱はしましたけれども、率直に申しまして、私の受けた印象は、各国は、これに対して相当慎重に受けざるを得ないという態度がいずれも表明されたわけで、むしろそれは自然ではないか。各国が納得して、本当にこれをやっていこうというためには、提唱者である米国が、具体的にどういうふうにこれをやっていくのかという具体案でございますね、特に各国の分担の仕方とか、あるいはそのストックをどういうふうに管理運営していくかというような具体案を示さないことには、なかなかすらりと各国がそれじゃやろうということにならないことになるのは、むしろ自然ではないかと私は感じたわけでございます。今後ともこの種の会議が続けられるのであれば、やはりそういった一番の問題点につきましは、米国の具体的な考えというものにつきまして、十分なクラリフィケーションを求めていくことが必要ではないかというふうに考えております。また、私は会議の冒頭でそういうことが必要であるということを発言した次第でございます。
  171. 土井たか子

    ○土井委員 大体そのような趣旨のことが新聞紙上にも掲載をされていたわけでありますけれども、いまの御見解の中身は、この協定、さらには議定書の根幹に触れる重大問題をはらんでいると思うわけであります。やはり備蓄量というものを義務づけするという、その備蓄量についての負担分野をいかに考えていくかということのコンセンサスというものが会議で得られない限りは、やはりそういう問題に対しては各国も消極的にならざるを得ません。したがってそういう点からすると、この議定書が一年更新をして、期限を延期したもとにあるその協定の持つ意味というのも、やはりこれはもとに戻って、コンセンサスというものが果たしてどういうふうな方向で得られるべきであるかという問題も含めて考えながら、再検討を要する分野もあると思うのであります。  ところで、いまの農林省の山田国際部長の方からの御見解披瀝の中にもございましたけれども、やはり具体的な量というふうなものに対しての検討が進まない限り、アメリカのいわゆるキッシンジャー構想というふうなものについて、いろいろな思惑というのがうごめくということも事実あろうかと思うのですね。  そこで次官御出席でありますから政務次官にお尋ねをしたいわけでありますけれども、大体このキッシンジャー構想の食糧備蓄ということに対しての目的は、緊急事態に備えるためというところにその名目があるわけであります。ところが中身はどうも、アメリカが備蓄肩がわりを図って、財政の負担の軽減ということを意図しているのではないか、それ以外の何物でもないというふうにも考えられる節がある。日本政府としては、このキッシンジャー構想という問題に対してどのようにお考えになり、今後どのようにこの問題に対しては対応をなさるおつもりであるか、ひとつそのことについてお尋ねいたします。
  172. 羽田野忠文

    ○羽田野政府委員 食糧問題は、現在から将来に向かって非常に重要な問題でございます。特に食糧は非常に自然現象に影響される要素の多い生産物でございます。そういう関係で、やはりある程度の備蓄をしておくということが、世界的食糧の不足が叫ばれる現在においては私は必要であると思います。しかし、この備蓄の負担を、食糧を生産して輸出している国の方がするのか、あるいは輸入して消費する側がするかという問題は非常にむずかしい問題だと思います。この点、食糧が供給過剰のような状態の場合であるならば、むしろ生産して輸出する方がそれを負担してやるということが妥当だと思いますが、需要が多くて供給の方が少ないということになると、輸入して消費をする国の方がある程度の負担をせなきゃならぬのじゃないか、こういうふうないろんな関連が出てまいります。キッシンジャーの主張している備蓄の問題も、アメリカ利益のために、消費国の方にその負担をさせるということが主たる目的であるとは考えませんが、その負担の割合は、やはりむしろ生産して供給する方が多く負担をするという考えに立つべきではないか、こういうふうに考えております。
  173. 土井たか子

    ○土井委員 基本的な物の考え方はいまの次官の御発言でわかったようでございますけれども、それならば二月十日、十一日のロンドンにおいての食糧備蓄主要国会議の席で、米国側が一本の具体案をなぜ出し、なぜ取りまとめの努力をすることがなかったかという問題も出てくるわけでございます。米国側が具体的な提案をなぜしなかったか、その辺の理由はどの辺にあるとお考えでいらっしゃいますか。
  174. 山田嘉治

    山田説明員 お答え申し上げます。  私がお答えするのは適当かどうか、問題もあるかと存じますが、米国側からこの会議を招集しておきながら具体的な提案が出なかったということは、率直に申しまして非常に意外でもあったわけでございまして、これは恐らくアメリカ国内的な事情によるものであろうということは多分に察せられるわけでございますけれども、何が本当の理由であったかということにつきましては、これはとうてい自信をもって正確な御答弁を申し上げることは困難でございます。
  175. 土井たか子

    ○土井委員 それじゃ答弁にはあまりならないわけでありまして、アメリカ国内事情だから関知するところではないというふうな意味であるかもしれませんけれども、やはり主要国会議の一員として日本が加わり、その席上いろいろな発言をし、取り決めをしていく当事者であるわけでしょう。そうしますと、その原因についてもやはり明確な糾明というのはしておく必要があると思うわけであります。だてや酔狂で二月十日、十一日の両日、ロンドンに集まったわけじゃないわけでありますから、やはりそのことに対しての、予期していったことが予期どおりにいかない、肝心かなめの具体案というものがアメリカから提案されない、これでは会議が始まらないも同然じゃありませんか。なぜこういうことになったかということに対しての糾明はなさいましたか。
  176. 山田嘉治

    山田説明員 お答え申し上げます。  もちろんアメリカの具体的な提案がなかったということは非常に意外な事実でございましたので、会議の舞台裏等におきましてはアメリカ代表団員などを極力つかまえまして、どうして提案できなかったのだろうかということは私も聞いてみました。聞いてみましたが、これはアメリカ代表団もいろいろな、各省から構成をされているというようなことがございまして、どうもこれが一番的確な理由だということで私どもがすとんと納得のできるような説明はございませんので、そういう舞台裏で非公式な、個人的な見解というのを聞いたにとどまりますので、それを申し上げるということは、ひとつ御容赦賜りたいと思うわけでございます。
  177. 土井たか子

    ○土井委員 端的に言うと、アメリカというのは、一言で言えば市場の拡大と高価安定というのを図ろうというふうな意図があるのじゃないですか。この点が問題になるから、具体的な案というものを提示するに至らなかったということだろうと私は思うわけでありますが、この点はどうでしょう、確認をさせておいていただきたいと思います。
  178. 山田嘉治

    山田説明員 アメリカはもう世界最大の穀物の輸出国でございますので、アメリカの生産者、あるいは役所で申しますとそういう生産者の利益代表すると考えられますアメリカの農務省等におきましては、これは本来できるだけアメリカの農産物の市場を拡大したいという考え方を持っておることはもう想像にかたくないところでございます。  それから価格につきましては、これはそういった関係者とも常日ごろ、ごく最近もいろいろ話し合っておりますけれども、もちろん彼らといえども高い価格を要望すること、これは自然でございますけれども、彼らといえども、価格がやたらと高騰いたしまして非常に不安定になるということは、これはむしろ市場を失うもとになるというように考えておりまして、ある程度の安定ということはもちろん考えておりますし、それからたとえば土井先生御存じのように、昨今ちょっと小麦その他の価格が相当下がってまいりまして、こういうことでは生産費を償えなくなるんじゃないかというような心配をアメリカのそういう生産の当事者はしております。したがいまして、価格の問題について、アメリカの生産関係者がある程度の価格とそれから市場の安定拡大ということを意図していることは、これは間違いないと思います。  ただ、この提案をしてまいりましたアメリカのもともとの提唱者は、先ほどキッシンジャーという話が出ましたが、国務省サイドでございまして、この提案の目的がもっぱらアメリカの穀物の市場の拡大、高値安定ということだけを目標にしてこの提案があったというように考えるのも、これはやや一方的に過ぎる見方ではないかというように考えております。
  179. 土井たか子

    ○土井委員 そればかりではないということにしても、備蓄の問題に対して具体的な案が提示できなかったということは、多分に戦略的な色彩が強くあるということは認めざるを得ないと思うわけなんです。わが国は、言うまでもありませんが、アメリカに食糧の輸入を非常に頼っております。一番大きく頼っているのが対アメリカであるということは言うまでもありません。アメリカわが国に対して食糧の安定供給というのを約束している、そういう間柄にある。そういうことからしますと、この備蓄計画というふうなものに対して、アメリカが提示している中身を、次官先ほどおっしゃいましたとおりの御趣旨に沿って、具体的に日本発言しようとしたら、かなり強腰でアメリカに対して言わなければならないときには言うという必要があると思うのです。発言をしなければならない、その立場を表明しなければならない、そういうことが国際会議の場所でも必要になってくるということだろうと思うのです。そういうだけの御覚悟とそういう御用意がおありになりますか、いかがでございますか。
  180. 野村豊

    ○野村政府委員 ただいま政務次官からもお話がございましたし、かつまた、農林省の山田国際部長からも、日本立場につきましてはるるお話があったわけでございますけれども、いま申し上げたような立場で先般のロンドンの会議にはわれわれ臨んだわけでございまして、その点は山田国際部長からもお話があったと思います。  御承知のとおり、特にこの備蓄の問題というものはいろいろな面があるわけでございますけれども、この備蓄の問題というのは貿易にも非常に関係もございますし、現在、在庫水準というものが非常に落ち込んでおるわけでございまして、当面一番要望されることは、食糧の先産国、特になかんずくアメリカのような先進国が今後増産に努めるということでございまして、そういった各角度から先般の会議には代表団としても臨んだはずでございまして、その点はいま山田国際部長からもお話があったというふうに考えております。したがいまして、国際会議におきましては、わが国の主張というものは十分貫くようにしておるというのが現状でございます。
  181. 土井たか子

    ○土井委員 御出席の方々は意気高揚たるものがあるわけでありまして、そういうふうな御覚悟とそういうふうなお気持ち、おつもりで御出席をなさるわけでありますが、肝心の議定書を見ますと、日本は正式の締約国じゃないのであります。先日の当委員会でも、私はそのことの質問を時間いっぱい、時間切れまで伊達参事官に対して行ったわけでありますけれども、外務大臣も、これに対してはみなす締約国という、適当であるかどうかは別として、耳新しい用語でこのことを表現されているわけであります。そうなると、しかとした態度でこういう問題に対しても臨む、日本としての発言は大変重視されるような状況で臨むという点から言っても、これは大変に残念なことじゃないですか、みなす締約国というのは。強い発言をやったって、あなたのところまだ正式に締約国じゃありませんよ、批准はまだしてないじゃありませんかと言われたら、ぎゃふんだと私は思うのですよ。こういう問題に対して、伊達参事官はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  182. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  ただいま世界食糧会議の、ロンドンの会議との関連でのお話でございますが、ロンドンの会議は、いま御審議を願っております小麦協定に入っている、入っていないにかかわらず、世界食糧会議ないしは世界の食糧安全保障構想ということについて、関係国がアメリカの提唱によって集まった会議でございまして、そこにおきます日本立場といいますものは、この小麦協定の締約国であるか、暫定的な適用をしている国であるかによって影響されると思います。  ただ、暫定適用に関して申し上げれば、この暫定適用考え方というものにつきましては、先週も申し上げたとおりに、私どもは……
  183. 土井たか子

    ○土井委員 暫定適用は、後でまたじっくりやりますから、そこはまだ聞いておりません。いまの問題についてどうかというのです。
  184. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 申し上げましたように、この会議におきましての日本立場は、この小麦協定に入っている、入っていないというものとは直接的に影響がないものと私は了解しております。
  185. 土井たか子

    ○土井委員 それは外務省の官僚的な認識からしたらそのとおりだと思うのですよ。けれども、会議の現場に御出席になる方々からすれば堂々と日本関係していく協定なり議定書なりに批准しているか批准してないかということは、いろいろな発言の機会に心情的に影響が多分にあるということだけは私は事実だと思うのです。いま問題になっておるのは食糧援助規約についての議定書小麦協定に対する議定書でしよう。したがって、そういう点から言うと、備蓄の問題についても取り扱うということになると、食糧援助規約あるいは小麦の問題に対して、どういう態度で、いま国際間に取り交わされている条約なり協定なり議定書日本が臨んでおるかということは、陰に陽に関係なしとしないんですよ。御出席になった農林省の山田国際部長は、こういうふうなものの言い方で私が質問を進めますとお答えにくいだろうと思いますけれども、こういうことが全く関係ないかあるかだけを一言聞かしていただきたいと思います。
  186. 山田嘉治

    山田説明員 お答え申し上げます。  先般のロンドンの会議は、会議の場所といたしまして、確かに国際小麦理事会の場所を借りたのでございますけれども、国際小麦理事会の場所を借りたというだけでございまして、国際小麦理事会とは全く別のメンバー、別の会議という性格のものでございますので、率直に申し上げまして、正式の締約国であるかないかということについて、私は何ら影響を受けなかったと感じております。
  187. 土井たか子

    ○土井委員 そういう御気分で当たられるのなら結構ですけれども、客観的に見ておりますと、やはりこれは関係のある問題であるというふうに万人が認識をするだろうと思うのです。直接協定なり議定書に基づいて招集された国際会議でないことは、事実、それはおっしゃるとおりでありますけれども、そこで問題になる議題そのものが関係ございましょう。議題そのものが無関係とは言えない。関係のある議定書なり協定なりに対して、どういう態度日本が臨んでいるかということも、したがって、そういう場合には外国から日本立場を見る場合の参考となるということは、事実あり得ると私は思うわけであります。だから、日本側としてはそんなことに関係ございません、私たちは拘束されないで堂々とやってまいりましたとおっしゃるかもしれないけれども、国際間というのは相手があっての問題でございますから、日本が独善的に幾ら考えていたってそのとおり行かないのが国際間のいろいろな取り決めであり、外交上行われる具体的な事実の推進でございます。  そういう点からすると、この議定書について正式に批准しているのと、批准してないのとでは一体どっちがいいかというと、こういう場合についても正式に批准国である場合がいいというのはもう言うまでもない話でありまして、したがってこういうことについて少しお伺いしてみたわけであります。これに対して全然拘束を受けなかったと御出席の当事者がおっしゃるならその限りで結構ですよ。しかし、やはり国際間の問題でございますから、日本が独自でどう考えておるかということと、外国から日本を見た場合にどういうふうにそれが映ったかということとは合致しない場合もございますので、そういうことで申し上げたわけであります。  さてもう一つ、少し話が飛びますけれども、今回の資料の一つに統計関係の参考資料がございますが、それを見てまいりますと「小麦の輸入実績」という場所がございます。確認をしておきたいのですが、南アからの小麦の輸入を日本の場合はどのように取り決めておりますか。
  188. 志村光雄

    ○志村説明員 お答えいたします。  食糧庁は小麦を買っておりますけれども、小麦の買い入れの仕組みはグローバルテンダーと申しまして、世界で安いところがあれば買うという仕組みになっておりまして、そういう仕組みの中で、いま御質問の南アから輸入をした事実がありますけれども、別に協定的なものはありません。
  189. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、小麦の輸入実績ということで、配付された参考資料に掲げられております一九七二年から七三年についての実数というのはどういうふうに理解をすればいいわけでありますか。
  190. 志村光雄

    ○志村説明員 御案内のように一九七二年、七三年は合計二万四千トン買っておりますが、七二年は特に豪州が非常な不作、いわゆる半作と称しますか、非常に不作でございまして、わが国としても約百万トン程度の輸入計画を持っておったわけですが、二十万トン前後しか入らないというようなことで、輸入のソースを振りかえなければいかぬというような事態があったわけです。そういう背景の中で、たまたま南アからわりあい安い価格で物があるという話がございまして、そこでその物を買ったという、緊急避難的に買ったということでございます。
  191. 土井たか子

    ○土井委員 緊急事態に備えて買うということは、したがって七四年、七五年、七六年と、今後についてもあり得るということですか。
  192. 志村光雄

    ○志村説明員 小麦は農作物でございますから、気象条件によってはいろいろな変更があろうかと思いますし、七二年のような、豪州に期待をいたしておった際に豪州からの物が半作だというようなことになりますと、やはりグローバル的に見て安い物があればそれを買っていくということになろうかと思います。
  193. 土井たか子

    ○土井委員 もう一つこれは確認をしておきたいのですが、七二年以前には南アからの輸入については実績が全くないわけでありますね。
  194. 志村光雄

    ○志村説明員 御説のとおり、ございません。
  195. 土井たか子

    ○土井委員 ところで、第二十八回の国連総会における南アに対する決議というのはどういうものだったかというのをひとつ外務省から御説明をいただきたいと思います。
  196. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 いま土井委員指摘の第二十八回総会におきます南ア関係の決議は、実はその前年の六二年の総会決議とつながるようなかっこうになっておりますが、主として貿易をやめるべしという趣旨の決議は六二年に採択されております。六二年の決議が最初に貿易関係断絶の決議ということで、これは二十二回総会です、失礼いたしました、訂正させていただきます。次いで、七三年の総会決議、この決議の目的とするところは、第一に南アにおける貿易振興事務所閉鎖を要請する、それから第二に対南ア貿易にかかわりますクレジットの供与を拒否してほしいという要請の決議でございます。
  197. 土井たか子

    ○土井委員 それに対して日本がどういうふうな態度をとられたか。それからさらに、昨年十月二十九日にアフリカ諸国四十二カ国でできておりますアフリカ統一機構が、日本政府と南アの関係を、経済関係が大変深いものがあるということで激しく非難をしたという事実がございますけれども、それに対してどういう対応をなすったか、あらましをまずひとつお聞かせいただきたいと思います。
  198. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 私から二つの決議についての日本の表決態度を御説明申し上げます。  六二年の貿易関係断絶要請の決議に対しまして、賛成が六十七カ国、反対十六、この中に日本が入っております。それから棄権二十三カ国というのが表決態度でございます。それから第二番目の一九七三年の決議でございますが、賛成が八十八、反対が七、棄権が二十八、日本はこの棄権の二十八の国の中に入っております。
  199. 土井たか子

    ○土井委員 もう一つ質問に対してのお答えがないわけでありますが、それならば角度を変えて先ほどお尋ねした質問に移ってまいりましょう。  二十九回国連総会で南アは総会と委員会における参加権を停止されておりますね。これをまず確認したいと思います。
  200. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 これはいま委員が言われましたように、結論として総会議長のルーリングによりまして、南アフリカは総会に参加することを拒否されるという裁定がおろされたわけでございます。ただ、南アの加盟国としての地位については何ら影響を持っておりません。
  201. 土井たか子

    ○土井委員 日本立場はその場合いずれであったわけでありますか。
  202. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 この総会議長のルーリングに対しましてアメリカがチャレンジいたしまして、つまり、これに対してその正当性に疑念を表明しましてこれが表決に付されました。そのときに日本は棄権の国の一国になっております。
  203. 土井たか子

    ○土井委員 日本と南アとの貿易というのは現にどういうことになっておるのか。過去三年くらいの実績、総額についてお尋ねしたいと思います。
  204. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 過去三年、特に近い数字をとらしていただきますと、一九七二年におきます日本と南アとの輸出輸入を含めました貿易総額は七億六千三百万ドルになっております。それから次の七三年に至りますと十一億一千七百万ドル、それから一九七四年、これは実は、一月から十月までの統計で恐縮でございますが、十三億二千九百万ドルになっております。
  205. 土井たか子

    ○土井委員 そのように年を追ってふえていっているわけですね、増加していっている。今後一体それについてはどういうふうな見通しを持って臨んでいらっしゃるわけでありますか。
  206. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 貿易の実態の動きにつきましては私から申し上げますのは必ずしも適当でございませんが、国連の場におきます南ア問題との関連で、わが国の基本的な考え方から申しますと、南アとの貿易を不必要に奨励し、その貿易額がふえるということは、南アをめぐります微妙な国際情勢なり、南アに関係します国連の諸決議を考慮いたしますときに、必ずしも適当でないと考えております。したがいまして、南アにつきましては、御承知のように、従来とも南アとの貿易あるいは経済関係は通常貿易の枠内にとどめる、しかもその貿易政府が積極的に支持措置をとらない、できれば、物によっては多角的な買い付け先の可能性も考えるというふうな方針で現在まで来ておるわけでございます。
  207. 土井たか子

    ○土井委員 そこで、先ほど御質問させていただいたところの二問目に移るわけでありますが、昨年の十月二十九日に、アフリカ四十二カ国から成るアフリカ統一機構が、日本政府と企業が国連決議を無視して南アなどと深い経済関係を結んでいると、大変厳しく非難したということが伝えられているわけであります。このアフリカ統一機構の非難に答えて、日本代表部は、日本とアフリカの貿易は現在あるけれども、貿易量の急増を抑える政策をとっているということを何度も説明しているではないかというふうな答え方をしているようであります。これは事実でございますか。
  208. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 南アとの貿易の伸び方は、先ほど過去三年間の数字で申し上げましたように、若干ふえていることは事実でございます。ただ、南アとの貿易が、南アを除くサハラ以南のアフリカ諸国との貿易の総額の伸び率と比較いたしますと、伸び率が非常に低いということと、それからもう一つ日本貿易総額の伸び率から比べましても相当下回っておるということから申しまして、日本の南アとの貿易が、政府が先ほど申しましたように促進措置もとってないということもございますし、南アとの全体の関係考えた上での慎重な配慮から、必ずしもOAUが非難するほどの伸びを示していないことは事実でありますし、また今後ともその傾向は続くものと存じております。
  209. 土井たか子

    ○土井委員 南アに対する国連の決議は、何がゆえにとられたのでありますか。南アに対する国連での取り扱いがこのようになるのは一体那辺に理由があるのでありますか。その点は、日本としては明確に率直に確認をしておかなければならぬと思いますよ。先ほど来、そのことに対しては、私は具体的に問いただしをいたしておりませんが、どのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  210. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 南アに対するそのような国連の決議を通じての一つの大きな態度表明と申しますのは、言うまでもなく、南アがとっておりますアパルトヘイト、人種差別政策に対する国際的非難の一つの結集ではないかと思います。わが国は、御存じのごとく、明治維新以来、ほかの国に先駆けて、むしろ人種差別には反対するたてまえをとり、そういう日本立場なり見解をいろいろな国際会議の場においても表明しておることは事実でございます。日本の基本的な考え方、つまり、アパルトヘイト、人種差別政策を撤廃させるためにはどういう方策が一番有効であろうかという観点から考えた場合に、従来日本のとってまいりました立場なり態度は、できるだけ国連の内外の場を通じて話し合いによって平和的に、しかも道義的に南アに圧力を加えることによってその問題を解決させるのが一番望ましいし、またそれが有効である、結果として非常に実効的であるという考え方で南アに関する国連の問題に臨んできておるわけでございます。
  211. 土井たか子

    ○土井委員 道義的に圧力を加えることが適当であるということを確認しながら進めましょう。  木村前外務大臣が昨年アフリカを訪問されました。その際に、アフリカの心というものを理解して、政治的、精神的な面での支援を誓って、技術協力を通じて協力を実現に移していきたいというふうに述べられていたわけであります。さらに、南アの態度が変わらない場合は、アフリカ諸国が出す南ア共和国国連追放決議案に日本も賛成するといった重大な決意をすることもあるというふうにはっきり述べられたわけであります。いま、外務大臣はいらっしゃいませんが、政務次官がいらっしゃるわけでありますから、私はこのことを政務次官にお伺いしたいわけでありますが、宮澤外務大臣にかわって、木村前外務大臣が御発言になった、また公にされたこととも絡めて、対アフリカ政策についてどうお考えになっていらっしゃるかを確認させていただきたいのです。
  212. 羽田野忠文

    ○羽田野政府委員 人種差別ということは、どの国がとっても、やはり世界的に非難されるべきことでございます。そういう政策をなるべく早く改めてもらいたいというのは、世界のすべての国の要望であると思いますし、国連もそういう姿勢をとっております。日本もそれに協力するにやぶさかでない。したがいまして、木村前外務大臣がおっしゃられたことも、そういう基本的な考え方を踏まえて御発言なさったものと思いますし、現在日本の外務当局がとっている考え方も同じことでございます。
  213. 土井たか子

    ○土井委員 そこでお伺いしたい一つの例があるのですがね。これは日本に留学を希望しておりました南アフリカ共和国の黒人青年の例でございます。実はこの黒人青年は、国際キリスト教青年交換計画日本委員会が受け入れ側になって、現に留学について具体的に、受け入れる高等学校も受け入れる家庭も全部決定をし、その手続も済ませておりました。ところが、これについて南アの日本領事館へビザの発給を受けに行ったところ、突然これが拒否されたわけであります。理由のほどは、外務省が国連決議に沿ってこの六月から南アとの交流中止を行うからという趣旨であったと、当の留学生になるはずの黒人青年は聞かされたわけでありますが、この事実についてまず確認をしておきたいと思うのです。御存じですか。
  214. 中村輝彦

    ○中村(輝)政府委員 南アとの関係は、経済関係以外にも、南アのアパルトヘイト政策をやめさせるという趣旨から出ておりますけれども、文化、スポーツ、教育という面におきましても制約を加えようということで 国連でそういう趣旨の決議ができております。わが国もそれに基づきまして、その趣旨に沿うべく、スポーツ交流、文化交流あるいは教育の面での交流というものについても措置をとることに去年いたしました。そのために、ただいまお話しのございました南ア国籍の人の入国も事実上できないということになったわけでございまして、その点では事実そういうことがあったわけでございます。
  215. 土井たか子

    ○土井委員 先ほどの御答弁の中に、南アに対しては道義的な制裁というものをすることが好ましいという御発言があったのです。いま問題になっている青年は黒人の青年なんですよ。黒人青年というのは、もう言うまでもございません、人種差別の被害者でしょう、差別を受けている側でございます。その被害者の入国を拒否するということになれば、実際問題アパルトヘイトという問題を助けているということにもならざるを得ない。道義的制裁という意味がこれにありますか。黒人青年の留学を拒否することに道義的制裁という意味がありますか。いかがでございますか。
  216. 中村輝彦

    ○中村(輝)政府委員 ただいまのスポーツ、文化交流に関しまして国連で採択されました決議は、具体的にそういうものの交流を行わないことを確保することができるような必要な措置をとれというようなことを決議で要請しているわけでございます。日本が去年とりました措置も、その決議の趣旨に沿ったものであるわけでございます。  それから、ただいまお話しのように、黒人である、それに対していまのような措置をとるのはということでございますけれども、この点は確かにそういう面があり得るかとは思うのでございますけれども、ただいま申し上げました決議ではその辺を区別していないわけでございまして、なぜしていないかはわかりませんけれども、恐らく南アの国籍を持ち、パスポートを持っている者はアパルトヘイトに対して反対かどうかはあれですけれども、特に異議がない者という推定をしなければ法的に扱いにくいという面があるのかも存じません。しかし、いずれにいたしましても、実体的には黒人にまでいまのような措置を及ぼすのはおかしい場合が全くないとは言えないとは思いますけれども、いまのようなことでございますので、これは将来の検討課題ということになるかと思います。
  217. 土井たか子

    ○土井委員 なかなか歯切れの悪い御答弁でございますがね。要は非常にしゃくし定規に事をお取り扱いになったということは御確認願えますね。まことにしゃくし定規である。中身について、なぜこういう決議がもたらされたかということを十分に御認識になってお取り扱いをなさるなら、もっと違った取り扱いがあったに違いない、こういうことが言えると思うのです。ただ、スポーツとか文化の交流ということを以後シャットアウトする、中止するというふうな決め手に従って、しゃくし定規に事をお取り扱いになったという、こういう取り扱いだったということは言えると思うのです。それは確認さしていただきますよ。  それと同時に、日本と南アの関係については、先ほど道義的な制裁が好ましいとおっしゃった。道義的という中にはいろいろなやり方があると思うのです。社会的に、経済的に、政治的に、文化的にいろんなやり方があると思うのです。特にアフリカ諸国からは、南アに対して経済制裁を加えるべきだというふうなことを国連決議でちゃんと決めているんです。この事柄を無視して、日本の場合には南アとの貿易をふやし続けているということに対して大変な非難があったということは事実であります。片やこういう留学生であるとか、スポーツ交流であるとか、文化交流というふうな問題に対しては交流中止をしておきながら、いま日本は経済人は自由に往来しているじゃありませんか。日本に来ている南アの人たちの中では、百人近い経済人というものが大半であります。こういうことから考えていくと、この南アとの経済交流というふうなものについて、今後どういうふうに考えてこれに対して取り扱いを進めるのかというのは大きな問題だと言わざるを得ないのです。  と同時に、これはいずれが先かというと、御承知のとおりに、これは黒人差別、人種差別の中で経済的交流を続けながら、経済的利益というものを直接受けるのは、被害を受けている側の被害者、差別を受けている側の被差別者で絶対ないのです。差別している側であり、加害者の側が経済的交流の結果直接利益というものを自分のものにしているわけですよ。したがいまして、国連決議に従って日本が正確にその中身を実行しようとすると、いずれが先かというと、道義的な制裁の中身は、経済的な交流というものを中止することから始まらなければうそだと思うのです。それがやれスポーツだ、やれ文化だ、やれ教育だというふうな、本来は大事に考えていかなければならない問題が先に交流中止をされて、相も変わらず経済交流というのは野放しになったまま、これはまるで逆立ちのありさまじゃありませんか。こういうふうに私が考えるのは間違っておりましょうか。次官、どういうふうにお考えになります。
  218. 羽田野忠文

    ○羽田野政府委員 経済関係の取引も、先ほど御答弁申し上げておりましたように、順次縮小の傾向にあるということは事実のようでございます。  それから、いま黒人青年の日本入国について、これを阻止したということについての先生の御提言、私も非常に傾聴したのでございますが、こういうことではないかと思います。確かに、人種差別を原因として南アフリカ連邦に対して一つの道義的な制裁を加えて、それをやめてもらおうということが発端でございますので、一番の被害者はなるほどおっしゃるように黒人青年でございますから、その人だけは入れることの方がむしろその目的に合致しているのじゃないかという先生の御理論、なるほど伺える点があるのでございますが、ただ道義的な制裁を加える側というものはどういうものかというと、結局国家対国家の関係でございますので、その南アフリカ連邦の国家の中の国民といいますと、その中に白人、黒人あるいはその中間という者を分けて考えることができない。いわゆる国家対国家になりますので、勢い被害者の方もその国民の方に含められるということで、先生御指摘のような不合理が出てくると思いますけれども、これはやはり一つの組織である国家を中心とするとやむを得ない面ではないかというふうに私は考えております。
  219. 土井たか子

    ○土井委員 これは国家対国家の関係とおっしゃる、まことにそのとおりでありましょう。国家対国家の関係日本と南アとの間でいろいろ今後考えていくべき問題というのは、南アにある人種差別、アパルトヘイトという問題が続く限り、日本として南アについて他国と同様の交流というのをするわけにはいかないという国家対国家の関係があるわけなんですね。そこで、この人種差別、黒人差別というふうな問題を考えていった場合に、経済交流を中止するということと、スポーツであるとか、それから文化であるとか、教育であるというふうな問題を以後交流中止することと、一体どっちがより多く日本と南アとの間のお互いの交流を中止させていくという本来の問題の趣旨にかなうことでありましょうか。むしろスポーツであるとか、文化であるとか、教育というふうな問題は中止をしないで、かの地から日本に呼んで、大いに来てもらって、日本においては人種差別を認めないんだ、人種差別というのは本来間違っておるんだということをこの日本において知ってもらうくらいのつもりで、交流を私は大いにやっていいと思うくらいであります。経済交流の結果利益を得ているのは一体だれであるかというと、先ほども申し上げましたけれども、直接的な利益というものは差別を受けている側ではない、差別をしている側が南アにおいては受けるわけでありましょう。直接的な経済の利益というものは加害者である側が受けるわけでありましょう。直接的利益というのは被害者である側じゃないのです。そういう点から言うと、交流を中止しなければならないというのは、むしろ経済的交流じゃないですか。この経済的交流は相も変わらず認めていって、先ほど申し上げたとおりで、スポーツであるとか文化であるとか教育の面については一切交流を中止する、以後は認めないというのは、まことに片手落ちというよりも、逆立ちしているありさまだということを言わざるを得ないのです。次官、この問題についてはどうお考えになりますか。
  220. 羽田野忠文

    ○羽田野政府委員 これは、経済あるいは文化、スポーツ、あらゆる面についてやはり南アの方に反省を求めていくという動きを総合的に発動せなければならないと思います。一方において、文化やスポーツの方はオープンにして、経済だけを締めていけということもこれもどうかと思いますし、かといって、それでは文化、スポーツの方だけを締めて、経済は野放しということ、これは先生御指摘のように非常に意味のないことでございます。  そこで、やはりこういうものは、一国対一国でなくして、国連あるいはアフリカ四十二カ国、こういう人々との協調的立場に立って、南アフリカ連邦の方に反省をしていただくという動きにならざるを得ないと思いますので、両方とも私は進めなければならないものじゃないかというふうに考えております。
  221. 土井たか子

    ○土井委員 そういう御趣旨からすると、現在のあり方というのはまことにかたわの状態なんですね。御趣旨のとおりに沿っている状態とは言えないのですよ。次官としてはどのように御努力なさいますか。
  222. 羽田野忠文

    ○羽田野政府委員 経済ベースの問題ですが、政府並びに政府関係の経済的なものというものは、すべてこれをとめておるわけでございます。民間ベースのものについて、これは政府の介入がどこまでできるかという問題がありますが、民間ベースの面も、そういう指導によりまして順次圧縮しているということが現在の実情でございますので、やはり今後もそういうふうな方向で進めていきたいというふうに考えております。
  223. 土井たか子

    ○土井委員 幾らおっしゃっても、現に圧縮する圧縮するということを言いながら、経済交流を認めていらっしゃるわけでしょう。経済交流があっての圧縮であります。片やの文化交流とか教育の交流とかスポーツの交流というのは、もう圧縮も何もあったものじゃない。全部これは中止したのですよ。一切交流を認めないというかっこうになってしまったのです。したがって私は申し上げているのです。交流を以後中止するということに対して順序があるとおっしゃるのなら、いずれが先かということもある。しかし交流を中止するというのなら、全部ぱっしりと一斉に中止してしかるべきじゃないですか。それを、片や本来は認めていってもいいような内容のスポーツであるとか文化であるとか教育の問題は、一斉にこれを中止しておいて、経済交流というのは認めていきましょうというのは、逆立ちしていると、だから私は言うのですよ。  いま、圧縮する方向にあるようだという御答弁ですが、現にそういう交流を認めていらっしゃる上での圧縮であります。したがいまして、一斉にこのことは中止しなければならない時期に中止されていないということを御確認願えますね。いかがですか。
  224. 羽田野忠文

    ○羽田野政府委員 これは国のサイドで、たとえば入国だとかそういうふうなことで、国の方で、これはいけぬということですっかりとめられる部門と、それから経済サイドで国のやるべきようなことは国が一切向こうへやらないということでとめられますが、民間サイドのものでは、いわゆる自由主義経済の日本のもとにおいては、政府の命令ですべてのものをとめるということが完全にでき得ないのが実情でございます。だから、政府の方でとめられるものはほとんどとめている実情、指導によってとめることのできるものをできるだけ圧縮するような指導をしておる、これがいまの実情であると考えます。今後もやはりそういう方向で進みたいというつもりでございます。
  225. 土井たか子

    ○土井委員 お伺いしていると、この問題についてはいつまでも切りがない話になりそうでありますけれども、きよう実は外務省のアフリカ課長さんがもし御出席であるならば、じきじきに私はお伺いをしてみたいと思っていたわけであります。黒河内アフリカ課長がきょうは御出席ではございませんね。――御出席ですか。  そうすると、この南アからの留学生について、先ほど来私が御質問をさせていただいていたこととも関連して、やはり教育、文化あるいはスポーツ等々の交流というのがこれで中止をされ、相も変わらず経済文流というのは続いている。その中で、黒人の留学生については、これは一律に取り扱うというたてまえから受け入れることができなかったといういきさつについて、どういう御見解をお持ちでいらっしゃるかということを、ひとつ率直にお聞かせいただきたいのです。
  226. 黒河内康

    ○黒河内説明員 説明員として私に許されている範囲で、ただいまの先生の御質問に対してお答えさせていただきたいと思います。(土井委員「率直におっしゃってくださることが許されている範囲ですから、どうぞ」と呼ぶ)  先ほど、政府委員である中村局長からの御説明がございましたように、国連決議では、有色人種であると、ないと、そういうような区別の方式は特にとっておらずに、南アの人種差別政権あるいは人種差別政策を実施している団体、組織とのスポーツ、文化、教育交流を停止するようにという趣旨の文言を使っております。  そういう意味で、実務的にやり得る点を制定いたしましたのが昨年の措置でございますので、そのラインで、先ほど先生が御指摘になりました黒人留学生の問題も対処することになった次第でございます。  ただ、これが一番正しい方法かどうかというような点について、実はその当該のキリスト教の関係の方々が、昨年十二月二日、私のところにもお見えになられまして、その国連の決議その他一般的な状況というものを一時間半ぐらいにわたって十分に御説明申し上げまして、私どもの考えているところを十分御理解いただけたんじゃないかというふうに考えております。ただ、お見えになられた方々は多少釈然としない点がおありであったかもしれませんけれども、少なくとも、私どもができるだけ国連の決議を守っていきたいという趣旨で実施した措置であり、その目的を達成しようと誠実に努力しているという点だけは、御理解いただけたんではないかというふうに存じております。
  227. 土井たか子

    ○土井委員 それはどうも独断のようでございまして、なかなかその辺は御理解をなすっていらっしゃらないようですよ。  それで、ただいまの御答弁の中に出てまいりましたが、政府並びにそれを取り扱う組織、機関がこの人種差別というふうな認識がある場合ということで、国連決議に従っての取り扱いをすることが必要という前提で、この問題についてもお取り扱いになった趣旨を私はお伺いしました。  この黒人留学生は政府留学生じゃないんですね。この黒人留学生の留学について、これを取り決めた組織なり団体というのはどこでございますか。
  228. 黒河内康

    ○黒河内説明員 私、ちょっといま手元に見つからないのですが、その名前は国際キリスト教青年交換計画という、まあキリスト教関係者がつくりました国際的な交換計画というふうに理解しております。
  229. 土井たか子

    ○土井委員 これはおっしゃったとおりです。国際キリスト教青年交換計画日本委員会なんですが、そうしますと、この日本委員会の名において、人種差別を考えている委員会というふうに御認識になったわけでありますか。また現に人種差別をしている委員会というふうに御認識になっていらっしゃるか。これは重大ですよ。
  230. 黒河内康

    ○黒河内説明員 先ほど御説明をいたしました政府措置と申しますのは国連の決議に基づくものでございまして、日本側の招待の側がどうこうということよりも、むしろその決議の文言に従いますれば、アパルトヘイトを実施している南アの団体、組織という趣旨のことになっておりますので、この招待の当事者であります日本側委員会というものについてどうこうという判断の問題ではございませんでした。
  231. 土井たか子

    ○土井委員 それでは、この問題になった留学生というのは政府交換留学生ではないわけでありますから、南ア側から日本に派遣をしようとしていた組織はいずれでありますか。
  232. 黒河内康

    ○黒河内説明員 いま先生御質問の、向こう側の派遣母体が何であるかという点については、私どもは直接にはタッチいたしておりません。先ほど来話に出ております外務省と申しますか、文化、スポーツ、教育交流に関する査証停止の措置内容は、南アの国民がそういった目的を持って査証申請をしてまいりました場合には、申請の受理を拒否するという形に規定しておりますので、したがいまして、現地つまりプレトリアにあります日本の総領事館がその受理を拒否したという形になっております。
  233. 土井たか子

    ○土井委員 では、一応そのことをちゃんと確認いたしておきましょう。これは政府交換留学生でなくとも、いわゆる民間の留学生交換計画に従って、南アから日本にいろいろ留学生が往来するという場合については、一律にこれを政府の名において受け入れることは絶対まかりならぬというふうな御趣旨でこれもお取り扱いになったわけでありますね。
  234. 黒河内康

    ○黒河内説明員 正確な表現については私も余りここで突き詰めるというよりは、おおよそのラインはいま先生がおっしゃられたような形で、確かに政府の招待であるかないかというようなことではなくて、国連決議に従いまして政府がとりました措置は、文化、教育、スポーツを目的として入国する者については、その中には当然留学も含みますけれども、そういう場合には査証申請の受理を拒否するというふうに定められております。
  235. 土井たか子

    ○土井委員 そうしますと、これは一律にお取り扱いになるという態度でございますから申し上げざるを得ないのですが、南アの国内において、ある民間の組織が人種差別反対を主張し、そのために活動している。その組織から日本に対しての留学を申請された場合にも同様に拒否なさるわけでありますね。
  236. 黒河内康

    ○黒河内説明員 たしか昨年の六月の上旬だったと思いますが、私どもの行いました発表にもありますように、政府がとりました対南ア文化、スポーツ、教育交流停止の措置内容を簡単に御紹介させていただいた方が、一番この場合の御質問に対するお答えになるのではないかと思いまして、お時間をいただけますれば、これを簡単に御説明させていただきたいと思います。  まず、本邦におけるスポーツ活動への参加を目的とする南ア人に対しては、プロ、アマを問わず、在外公館は入国査証申請の受理を拒否する。次に、本邦及び南アとの間の文化、教育交流、その中には講演、留学あるいは交換教授、その他学術、芸術上の活動も含んでおりますけれども、それを目的として入国を希望する南ア人に対しても、入国査証申請の受理を拒否するという趣旨の規定になっております。ただ、在外公館長が特に特別な事情があると判断した場合には、本省に経伺するという余地も残されております。  以上のような措置が昨年六月十五日から実施されたわけでございまして、このラインに基づきまして、先般の黒人の留学希望者については御存じのような決定が行われたというふうに御理解いただければよろしいと思います。
  237. 土井たか子

    ○土井委員 外務政務次官、これは先ほど来お聞き及びのとおりでありまして、この問題については一言で言うとしゃくし定規の取り扱いということでありますが、そのもとにある問題は、いま御答弁の中にも出てまいりましたとおりに、外務省の南アフリカとの教育、文化、スポーツ交流禁止のガイドラインなんです。このガイドラインのあり方というのが果たしてこのままでいいかどうかという問題、大変にあると私は思うのです。南アの国内にはたくさんのいろいろな実質的な民間団体がございます。この団体の中には、人種差別反対を主張し、行動しているという団体だってたくさんあるのです。その団体も全部一律に、いま外務省にあるこのガイドラインからすると、スポーツ交流にしても、教育にしても、文化にしても、交流は一切禁止されるということになるわけでありますから、どうも本来の対南アということでの、この政府間のいろいろな交流についてどうあるべきかという趣旨から、十分な内容がこのガイドラインの中には盛り込まれていないと私は思うわけであります。次官、そのようにお考えになりませんか。
  238. 羽田野忠文

    ○羽田野政府委員 土井先生は、その国内一つ一つの実情について非常にきめ細かい御配慮をいただいておりますので、先生のおっしゃるような御意見が出てくると思いますし、それ自体は私も非常に参考にさしていただいております。ただ、外務省の方といたしまして、この南アフリカ連邦の人々に対する関係は、一応一番基本が国連決議に基づいてきております。これを基本にして、それで日本側の取り扱いのガイドラインというものが出てきております。これは、私が何回も申し上げましたように、国対国ということを前提にして、そうして比較的画一的なラインになっておりますので、先生御主張のように、その中に入って、それでは被害者はだれであるか、あるいは人種差別反対運動をしている人はだれであるか、そこまできめ細かい配慮をすべきだという御主張もわかりますけれども、一応外務省としてはその画一的なラインによらざるを得ないんだと私は考えます。
  239. 土井たか子

    ○土井委員 そういう御答弁を踏まえて私はさらに言いたいのは、少なくとも、教育、文化、スポーツについての交流を禁止するという時点で、片や経済交流というふうな問題がこれからもまだ続いていくわけであります。これのあり方は先ほど何遍か御答弁いただいたわけでありますが、私は、具体的にそれならばこの問題について以後どうなるかということをここで明確に御答弁を願いたいと言ったって恐らく御無理でありましょうから、資料によってひとつ要求したいと思うのですよ。  一つは、一九七六年から向こう十一年間、南アから二千七百万トンの石炭を購入するというふうな契約を政府は結んでおられます。この契約が南アに七億四千万ドルの外貨を約束しておりまして、これは投資にまさる南ア経済に対する強力な援助にほかならないということははっきりしているわけでありますが、ひとつこの中身についての資料をいただきたいのです。  同時に、南アの鉄鉱石の開発計画に日本も参加をいたしております。石炭購入同様に鉄鉱の購入というものも計画をされているようでありますから、これに関係のある資料をひとつ要求したいと思うのです。  ほかにもいろいろ言い出したら切りがないのですが、直接政府関係をしておられる今後の問題について、参考資料としてぜひ提出をお願いしたいのです。
  240. 野々内隆

    ○野々内説明員 お答え申し上げます。  いま石炭と鉄鉱の長期契約についてお話がございましたが、これは日本政府が関与いたしたものではございませんで、民間企業の長期契約かというふうに考えております。  どの程度まで資料をお出しできますか、早速調査いたしまして、後ほど御回答をさせていただこうかと思っております。
  241. 土井たか子

    ○土井委員 それならば、通産省がここにいらしているわけでありますから、現に南アと長期契約を結び、具体的に年間のこの数字も出るはずでありますから、石炭、鉄鉱は言うまでもなく、関係の民間企業の間でどれだけのものがどういうふうに取り扱われているかということを、できる範囲でひとつ資料として提出してくださいませんか。
  242. 野々内隆

    ○野々内説明員 お答え申し上げます。  長期契約につきましては、政府の許可が必要ございませんので、私どもも、確実にどこまでつかめるかということにつきましていまお約束をいたしますのはむずかしゅうございますけれども、可能な範囲で調査いたしまして、後日御報告させていただこうかと思います。
  243. 土井たか子

    ○土井委員 次官、こういうことなんですよ。経済的な交流というのは、政府が長期契約については関知しない、スポーツとか文化とか教育なんかの問題については、民間がお互い同士の間で交流を計画し、現にいままで考えてきたことについても、政府間で全部シャットアウトをするということになっているわけなんですね。いよいよこれは片手落ちというふうにお考えになりませんか。いかにさきに経済的な投資というものを日本は縮少していくんだとおっしゃっても、いま政府としては長期の問題については関知できないとおっしゃっていますよ、いかがですか。
  244. 羽田野忠文

    ○羽田野政府委員 先ほどから先生の御質問を聞きまして、私も非常に得るところがございました。先生の御意見を十分拝聴しまして、この点はまたこれから参考にさせていただいて、検討していきたいと思います。
  245. 土井たか子

    ○土井委員 これは大変耳ざわりのいい御答弁なんですが、それじゃ具体的にどういうふうに何をなさるかというのはさっぱり中身がないので、これについては私も聞きおきましようというような程度の質問の中身になってしまうのです。いまのそういう御趣旨に従って、具体的にどういう努力をなさるんですか。
  246. 羽田野忠文

    ○羽田野政府委員 これはやはり日本立場としましては、国際社会の一員として、国連の方向に一緒に協力していくという立場ですから、国連が決めておることこれ自体はわが国もやはり守っていく。だからいまの南アフリカ連邦の行き方は悪い、これについていろいろな経済的な面あるいは文化、スポーツ、教育、こういうふうな面で、南アフリカ連邦自体に国家的孤立というか不利益をもたらすような、世界各国の力によって行き方を改めてもらおうということなんですから、土井先生のおっしゃることは、経済的な面を断ち切ることが一番効果的じゃないか、文化や教育やスポーツ、これはなるべく断ち切らぬで、こっちの方を断ち切れ、こういうことなんでしょうけれども、先生の言うことはわかるのですが、すぐぽんと断ち切るということになると、これ自体が出る、入ることについての直接の支配をし得るスポーツや文化や教育、出入国にいきますし、経済の方はなかなか支配というものが全面的にいけない。だから国自体がやめられるものはばっとやめておるわけです。民間のものだけが残っている。これは私が先ほどから申し上げておるように、やはり日本が統制国家あるいは独裁国家ならば、やめい、こう言えばいくかもしれませんけれども、なかなかそこまでいけないので、国家もできるだけの努力をしておる、それで今後もしていくということで御了解をいただきたいと思います。
  247. 土井たか子

    ○土井委員 これはさらに押していっても、もう限度が先に見えたような感じがいたしますけれども、国連の決議に従って、日本もその国連の決議どおりに行うことが、まずはとるべき態度じゃないか、おっしゃるとおりでありますが、日本も国連に加盟している国でありますから、国連で決められることについて積極的に発言の場があるわけであります。こういう問題を取り上げて、決められたことさえ守っていればいいということじゃまさかないと私は思う。やはり日本としての主張があるはずですね。その主張を十二分に国連の場において反映させていくという努力が、もう一つこういう問題に対してなされたかどうかということになってくると、まことに消極的ということを言わざるを得ない。  それから現に国連でのいろいろな動き、特に決議に対してはこれを守ることが大事だ、おっしゃったとおりですが、その中に忘れていただいて困るのは、アフリカ諸国、アフリカ統一機構から、日本政府日本の企業が国連決議を無視して、南アなどと深い経済関係を結んでいるという非難があることであります。このことをひとつ心して思っていただきたいのですよ。このことが、一つは南アとの関係ということを考える場合に、スポーツよりも文化よりも教育よりも先に考えるべき問題ではないか。だから私は先ほどから逆立ちをしているということを申し上げているわけであります。  したがいまして、具体的なお考えというのは、なおかつ私はお伺いすることができないままに、きょうは終わらなければならないことは大変残念ですけれども、次官は、そのことに対して御努力を願う、また努力を払うという決意のほどを先ほど申し述べられたのでありますから、具体的に今後どういうふうにそれをおやりになるかということはひとつ注目をさせていただきたいと私は思います。よろしゅうございますね。  もう時間がかなり経過しましたので、伊達参事官にひとつお伺いしたいのです。  いま審議をいたしております議定書というのは、失効するのはいつでございますか。
  248. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 本年の六月末をもって失効いたすことになっております。
  249. 土井たか子

    ○土井委員 本年の六月末までにもし国会での承認が得られない場合は、どういうことになりますか。
  250. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 国会承認が六月三十日までに得られない場合の御質問でございますが、その場合には、日本は暫定適用の国といたしましてこの一年間の期間を終わるということになると思います。
  251. 土井たか子

    ○土井委員 いま現に暫定適用を、この議定書に従って一九七一年当時のこの協定を一年間延長された今日、認めているという立場にあるわけですね。それを適用しているということになるわけでしょう。だからこの有効である期間は、この協定並びに議定書日本拘束を受けるという立場にあるわけですね。だからそういう立場からすると、国会承認のあるなしにかかわらず、この立場は別に変わらない、そういうことですね。いかがですか。
  252. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  この協定によって日本拘束を受けているということでございますが、その拘束は暫定適用の国といたしましての拘束でございまして、協定自体の拘束を受けているもの、つまり協定におきます拘束の百%を受けているものではないというふうに私どもは考えているわけでございます。
  253. 土井たか子

    ○土井委員 百%受けますためには、この議定書の六条に書いてありますとおり、自国の憲法上、または制度の手続に従って批准をしなければならないのですね。批准をする際の日本における手続には何が必要なんです。これはわかり切ったようですけれども、お答えいただきたいと思います。
  254. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 一般的に私どもの考えます国会承認条約の場合には、国会の御承認を得ることが必要でございます。
  255. 土井たか子

    ○土井委員 条約というものは通常批准をし、発効するという順序になっているわけでありますが、この議定書については、暫定的適用宣言をして締約国政府とみなされているわけでありますから、現に発効しているこの議定書によって日本はやはり拘束を受けているのでしょう。このことをもう一回確認願いますよ。
  256. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 先ほど申し上げましたように、拘束を受けるという言葉なんでございますが、日本は暫定適用国といたしまして、日本政府として、国会承認を得ることなくできる限度においてのみこの条約の規定に従っていこうということを言っているわけでございまして、したがいまして、単純に拘束を受けるといいました場合に、この条約の本来の加盟国として百%の権利義務関係を生じているというものではないわけでございます。
  257. 土井たか子

    ○土井委員 権利義務関係を言っているのではないのです。この議定書について拘束を受けていますねということを私は問いただしているだけの話でありまして、それについてイエス、ノーをおっしゃればいい。いまの御答弁趣旨からすると、拘束を受けているということに結論としてなるのですよ。ただその権利義務関係は、正式にこの締約国となっている場合と多少違いましょう。違うかもしれない。だけれども、この議定書によって拘束を受けているということは紛れもない事実です。これは八条に従って日本はもう手続をとったわけですから、政府が手続をおとりになったわけでありますから、したがって暫定的適用がされているわけです。そうして八条がいうとおり、暫定的にこの議定書の締約国政府とみなされているわけですよ。  ところで申し上げますが、第六条で「自国の憲法上又は制度上の手続に従って批准され」という中身は、日本の場合には憲法七十三条の三号にいう国会承認が必要だということは、伊達参事官おっしゃったとおりであります。だから、本来日本が正式にこの議定書の締約国にならんとするならば、憲法七十三条の三号にある国会承認を得て後、批准というものが正式に成立するというたてまえになるわけですね。いかがですか。
  258. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 先生の最後の結論のところについて申し上げますと、そのとおりでございます。  ただここに、若干議論がわき道にそれるかもしれませんが、第六条に申しております「それぞれ自国の憲法上又は制度上の手続に従って」と書いてありますのが、必ずしも全部日本の憲法、制度上にいいます……土井委員「そんなのはわかっていますよ。日本のことをいま問題にしているのです。これは日本国会ですから」と呼ぶ)したがいまして、日本国会の御承認を得るものすべてが、こう書いてあるからといって、その条約国会の御承認を得べきものであるというふうには私どもは考えていないわけでございます。結論といたしましては先生のおっしゃったとおりだと思います。
  259. 土井たか子

    ○土井委員 この議定書自身が、第六条という条文で明らかにしているのは、自国の憲法上または制度上の手続に従って批准をされなければならないということを規定しているわけですね。いま伊達参事官の御答弁からすると、制度上の手続というのは日本の場合どうあるべきか。それは、当議定書に対しては、国会承認を必要とするという憲法七十三条の三号に基づく手続が必要だというふうに認識をされているわけなんでしょう。どうなんです。
  260. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 どうも大変むずかしい問題になっているのでございますけれども、「制度上の手続に従って批准され」この場合、日本の場合には批准という言葉を用いますと、これはすべて国会承認条約についてのみ用いられる言葉になっているわけであります。ただここに、「制度上の手続に従って」というのを、「受諾され、承認され又は締結されなければならない」というふうに、「批准され」からさらに続けて読みますれば、制度上の手続に従って結局締結されなければならない。その場合には、先週も御議論に出ましたように、国会承認条約であるか、行政取り決めであるかという問題が生じます。行政取り決めとして政府がその時の法令、予算の範囲内において他国と国際約束をし得る範囲におきまして処理することができるわけでございまして、その場合に、それを締結いたしましたとする場合、これは制度上の手続に従って締結されたものと言い得るものだと思います。
  261. 土井たか子

    ○土井委員 そういうコメントはいいのですが、端的にお答えください。  これは、いま政府としてこの議定書国会で審議をし承認を求めておられるのは、第六条にいうところの「自国の憲法上又は制度上の手続に従って」云々の個所に対する理解を、国会での承認が必要だと御理解になったからでしょう。この六条に基づいて考えていった場合に、日本としては国会承認を得ることが必要だというふうに政府当局が御理解になったから、いま国会でこの議定書を審議し、国会承認というものを具体的に、これはできるかできないか知りませんが、審議しているわけじゃありませんか。そうでしょう。
  262. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 この小麦貿易規約及び食糧援助規約に関しましては、そのとおりでございます。
  263. 土井たか子

    ○土井委員 としますと、これはまず国会がこのことに対して承認をしないと、この議定書に対して日本は正式に認めたということにならないという御認識があるから、いま国会に対しての承認を求められているというふうに私たちは理解するのですがね。しかしもう、こういう国会承認をお求めになる以前に暫定的適用宣言をすでになさっているわけでしょう。国会承認が求められなくとも、暫定的適用宣言というふうなことをこの議定書有効期間が切れるまで、つまり失効するまで続けていっても、大勢には影響ないのですね。わざわざ国会承認を必要となさるというふうな趣旨は、一体どこから出てきているのですか。これは第六条からでしょう。それならば当初から、まずは暫定適用宣言をやらず、国会承認をどこまでも求めるという態度でいくのが「自国の憲法上又は制度上の手続に従って」云々のこの規定にかなうゆえんだと思うのです。いま、期限切れ間際に国会承認を求める。この議定書というものは、すでにずっと存続してきた一九七一年の協定の有効期間が切れて、さらに一年それを延長するということを事実暫定的適用宣言で日本の場合にはすでに認めてしまった。この事柄についてひとつお認め願います。私はこの前の委員会でお尋ねしたのは、七十三条の三号にいう事前承認ときっぱり言い切れる承認には当たりませんね、すでに動いてしまっている議定書に対して、このことを承認いただきますという事後承認の形になるのじゃないかということをただしたわけです。これに対して事前承認というふうに伊達参事官は相も変わらず御答弁になったわけであります。ならば、なぜ事前承認になるかという根拠がもう一つはっきり出されていないのです。きょうはその辺の御説明を承って、私は時間ですからいいかげんにやめたいと思っております。
  264. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 この協定延長の議定書国会に出しますのは、先生もおっしゃいましたように、これは小麦貿易規約及び食糧援助規約に入るに際して、国会承認が必要であるという判断に基づいてお出ししているわけでございます。と申しますことは、すなわち七一年の協定を一年間延長することについても国会の正式の御承認を得なければ、七一年の協定は日本国として正式に延長を認めたものとならないからでございます。ところが、この暫定的適用と申しますのは、第六条ではなくて第八条に書いてあるのでございますが、第八条の暫定的適用というのは、日本議定書による七一年協定の一年間の延長を正式に認めたということではなくて、一年間延長の趣旨に賛成である、したがって正式に加盟した批准、ないしは正式に受諾をし、正式に締結をした国々の間において一年間の延長を取り扱っていただいて結構である、自分たちは暫定的にその趣旨に賛同して、それ以上の義務は負いませんということで暫定適用をしたわけでございます。したがいまして、今回国会の御承認を得て、初めて日本はこの一年間の延長議定書の正式なメンバーとなるわけでございますので、やはり従前申しておりますように、私どもとしては、これは事後の御承認を仰ぐものではなくて、事前の御承認を仰いでいるものだというふうに考えている次第でございます。
  265. 土井たか子

    ○土井委員 そういう御認識があるならば、初めから国会承認を求められるのが順当であります。時間切れ間際になって正式のメンバーになる、わざわざそのための国会承認を必要とするというのは、何と考えてもおかしなかっこうですよ。いまから国会承認を得て、そして批准手続をとって後――だから最初にお伺いしたのは、いつ失効するかと言ったら、六月いっぱいでしょう。どれほどの日数があるのです。そういう点から言うと、伊達参事官がいかに御説明をなすっても、この第八条にいう暫定的に適用宣言をやった以上は、伊達参事官の御趣旨とは別に、国際間においてこの議定書の締約国政府日本はみなされているという現実があるわけであります。したがいまして、正式メンバーになるならぬとおっしゃるけれども、締約国政府日本はすでにみなされてしまっているのですよ。それで今日まで来たわけでしょう。支障がなかったんです。一年間更新することに対してよろしゅうございますと言って、しかもそのことを認めているのですから、そういう点から言うと、もうすでに発効し、効力のある議定書日本拘束される一国として、現に政府は暫定適用宣言をなすっておる。その事柄を期限切れぎりぎりに、事後に国会承認を求めるというかっこうにいまなっておるのだ、順を追って言うとこういうことになるのじゃないですか。次官はどのようにお考えですか。
  266. 羽田野忠文

    ○羽田野政府委員 先生の実質論と伊達参事官の形式論、両方とも私聞いていてもっともだと思います。ただ私思いますのに、日本国会は、実際にやってみまして、御審議をいただいて承認をいただくのに相当期間がかかります。そういうのに、条約の更新、一年ずつ更新していく、こういうのが国会の審議や承認になじむかどうかというその基本的な問題があるのだと私は思うのです。だから、こういうところから本当に考えていかないと、形式論から言えば伊達参事官の言うとおりになるのだけれども、実質からいけば先生のおっしゃるとおりになってきて、両方の言うことは非常にわかるけれども、本当に割り切れないものが出てきますから、そういう基本的なものから解決していかぬとなかなかむずかしい問題だと私は思います。
  267. 土井たか子

    ○土井委員 何だか大岡裁きみたいな答弁でありますけども、しかし小麦協定が私は小さい問題だとは思わない。暫定適用宣言という問題の持つ意味は大きいと思うから、大変にしつこく今回私は質問を続けたわけなんです。  暫定適用宣言の問題についても、当委員会に対して、外務省からいたしますという事前通告を委員長理事会にして済む問題ではないと私自身考えておるのです。そういうことで済む問題であるならば、国会承認要らないですよ。暫定適用宣言だけでこの議定書もおやりになればいいのです。わざわざ国会承認を必要とするという案件については、憲法の明示する国会の持っている意味は何であるかということをひとつお考えいただきたいのです。国会というものは国権の最高機関であり、国の唯一の立法機関である。なぜそういう国家機関になっておるか。国民の代表機関だからでしょう。その国会承認を得るという意味をかみしめていただきたいんですよ。そういうことからすれば、本来国会承認が必要な案件だとお考えになったら、どうして国会承認を得るという努力を最大限にお払いにならなかったか。もうすでにやってしまった暫定適用宣言について、単にそれを通告で済ませようということ、それをやらなかったことはまことに申しわけなかったという謝辞で終わるということは、私は断じて認める気持ちになれないのです。  これからいろいろな条約や協定や交換公文やあるいは議定書というのが続々出るでしょう。そういう問題について、そこの中にある暫定適用について政府がよろしいと言えば、その限りでそれは適用を受ける、拘束を受けるということを続々やられていった場合にはどうなるかと思うと、憲法の七十三条三号の言っていることが全面的に意味をなくしてしまうのじゃないか。ひいては、国会は何のためにこの外務委員会という席を通じて審議をし、国会承認を各重要な条約や協定や覚書や交換公文に対して必要とされておるのであるか、その意味がなくなってしまうということを考えるから、それがゆえに伊達参事官にこれほどしつこく私は質問してきたわけであります。この気持ちはわかっていただけますね。  そういう点から言うと、今回の場合、正々堂々と正面切って事前の国会承認をいただいておるのでありますなんてどうして言えましょうか。すでにやってしまわれたこの暫定適用宣言について、もう議定書は有効に働いている、それは日本政府の名において認めたのだ、このことに対しても時間切れぎりぎりであって恐縮であるけれども、国会承認をわざわざ必要とするのである、正式の締約国になりたいんだというふうな御趣旨でいま承認を求められているのならば、これは事後承認ですよ。もう発効してしまっているのですから、効力はあるのですから。憲法が言っている事前、事後の問題というのは、国会承認をして後に条約というのは本来発効いたしますよという趣旨で書かれているということは、どこまでも忘れてもらいたくないのです。そういうことから言うと、どうして伊達参事官、事前だ事前だということをこだわるのか、私はそのお気持ちもお立場もわかりますが、わかればわかるほど国会承認ということが持っておる重みというものを私は申し上げたい。ひとつこれを肝に銘じていただきたいのです。お願いしますよ、いかがですか。
  268. 伊達宗起

    ○伊達政府委員 お答え申し上げます。  先生のおっしゃることもよくわかるわけでございますが、私どもといたしましては、当然のことながら、国会の御承認というのを軽視いたしておるわけでもなく、その重みというものは十分承知しているわけでございます。今回暫定適用をしながらも、かつ六月三十日に切れる議定書につきまして国会の御承認を仰ぐことになりましたのも、国会の御承認というものを軽視しているわけではない証左であるというふうにおとりいただきたいわけでございます。私といたしましては、もちろん当然国会承認を得べき条約につきまして、暫定適用をしなければならないような事情にあったために暫定適用をせざるを得なかったので、これがあるからといって簡単に用いたわけではございませんし、また国会承認を得るべき条約につきましては、本来暫定適用ということをすることなく、国会の御承認を得るのが常道であるということは、私どももよく承知しておるところでございます。
  269. 土井たか子

    ○土井委員 これで終わります。この問題について伊達参事官にまだ質問を展開しても、同じ答弁しか恐らくは外務省の立場としては出てこないと思うのですよ。ただ、憲法の七十三条の三号に言うところの国会承認という問題に対して軽視をなすったのではない、だからかっこうつけのために、時間切れすれすれに国会承認を必要としているんだという事実だけは、ひとつ確認をさしていただきましょう。なぜか、このことに対していままで最大限の努力を払っていらっしゃらないという過去の事実があるからです。この議定書に対して暫定適用宣言をされてからどれくらい時間がたっているのですか。暫定適用宣言を暫定的措置である、国会承認を得るに時間が足りない、便宜的にひとつ仮のあり方として、外交関係を処理するという外務省の取り扱いとしてこれをやるのであるという、あくまでそういう立場で臨まれたのならば、もう少し努力の跡が見えていいんだけれども、これはやっぱり時間切れすれすれに、あっと気がついて、ほっておいたら六月三十日になる、とんでもない、早く国会承認をということでいま大急ぎでやられているという態度がありありと見えてならない。したがって、私は前回、今回引き続いて伊達参事官に対して執拗に質問を展開したわけであります。  以後のこういう暫定適用宣言あるいは国会承認を得べき条約、協定、覚書、外交文書議定書等々の取り扱いについて、これはいままでどおりであってはならない。今回のような、これは安易なと私は申し上げてもいいと思いますよ。安易な取り扱いで国会承認というものを考えられてはならないということをひとつ肝に銘じていただきたいと思います。このことを私は質問じゃない、最後に申し上げて、終わりにします。ありがとうございました。
  270. 栗原祐幸

    栗原委員長 渡部一郎君。
  271. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私は幾つかの問題について心配いたしておる面について、いまから当局側の御説明を伺いたいと思います。  一つは、本委員会の質疑の席上でお話が詰まったような詰まらないような形になっておりますので、まずそれを最初に、完全に話を早く詰めてしまいたいと思います。  一つは、農林省から提出されておりまする農産物国際商品協定の概要に関する御説明の書類の中で、いわゆる商品協定群の効用につき、かなりドライに割り切って記されております。商品協定群の価格安定、需給安定という目的にこれらが役に立っていないじゃないかという点を私は何点か指摘して申し上げた。大体いろいろな意味での御答弁はあったわけでありますが、ココア協定、すず協定、コーヒー協定、砂糖協定、そしてオリーブ油協定、これらにつきまして、商品協定の当初の目的からいって、価格安定、需給安定という目的からいって、経済条項を含んでいるものも含んでいないものも、かなりその効用というのは、現在の急速な商況の変化に追いついていけない段階を迎えたのではないかという点について、関係各省の御答弁をまず承りたい。
  272. 野村豊

    ○野村政府委員 先生御承知のとおり、わが国の加盟しております商品協定五つの中で、現在いわゆる経済条項というものがございますのは、すずとココアだけでございます。そのほかの小麦、砂糖、コーヒーというものにつきましては、それぞれ、特に最近、七三年前後を通じますところの協定の改定を通じまして、経済条項につきまして合意を見なかったということで、現在経済条項を欠いておるということでございますので、そういった意味から、当初この商品協定が意図したところの目的というものは、必ずしも十分達成されておらないということはあるわけでございます。  かつまた、それでは商品経済条項のあるものについてはどうだろうかということかと思いますけれども、まずココアにつきましては、御承知のとおり、この協定ができました当時からすでに非常にココアの市場価格が高うございました。そういった意味から、この協定が発効した当時から、すでにこの協定の予期したところのいわゆる緩衝在庫というものも十分働かなかったということもございまして、そういった意味からこのココアの協定というものも、その市況というものを十分コントロールするということはできなかった。非常に市況が上がってまいったわけでございます。  それから、すずの協定でございますけれども、すずの協定は経済条項がございまして、これも御承知のとおり、いわゆるバッファーストックというものを通じましていろいろ操作をするわけでございます。かつまた、いろいろな輸出統制というものもかみあわされておるわけでございます。この協定につきましても、もちろん一時的にはその協定の目されたところの最高価格というものを超えたというようなこともございます。しかし、最近ではすずの市況というものは、現在の取引されておりますところの価格帯というものに大体おさまっておるというのが実態であるわけでございます。こういうふうに一概に見てまいりますと、商品協定というものはそれぞれ商品の特性なり、できました背景、いろいろなことによりまして違うかというふうにわれわれは考えておるわけでございます。  当面の商品協定の最大の目的というものの一つは、いわゆる価格の安定、供給の安定、市場の安定というようなこともございます。しかしながら、小麦外のたとえば砂糖とか、すずとか、ココアとか、コーヒーというような協定につきましては、これは御承知のとおり、主として生産国は後進国というか、発展途上にある国でございまして、そういった国々がかねがねそういった輸出所得の保証、あるいは収入の増大ということで、いわゆるこうういった商品協定を非常に強く望んでいたというふうなこともございまして、わが国といたしましては、そういった国との協力ということも考えまして、こういった協定にも参加しておるという面もあるわけでございます。  おっしゃいますとおり、確かにこの商品協定というものが経済条項のあるもの、ないものを含めまして、近年におきますところの商況の急激な変動というものには必ずしも十分対応し切れないという点があることは、われわれといたしましても否めない事実じゃないだろうかというふうに考えておるわけでございます。ただし、これは先ほど来大臣も申されたとおり、ただ、商品協定というものだけではやはり十分コントロールできないわけでございますけれども、これも一つの機構としていろいろな、あるいはまたそのほかの機構とかみ合わさって十分な機能が果たされるということが期待されるわけでございますけれども、商品協定だけではある程度の限界があるということはわれわれ十分承知しておるところでございます。
  273. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 前委員会の御答弁より現実を非常によく見られて、当協定群の効用の限界について率直な御認識をいただいたわけでありますから、私は話をもうちょっと前へ進めまして、そこで後どういうふうにしたらいいかという問題点を多少方向づけをしなければいけないのではないかと思います。  ただいまは商況、商品の急激に変動する市況に対抗し切れなくなったという問題から一つの問題点が出ていたわけでありますが、その市況を変動させるものとして、世界的な八大商社によるところの買い占めであるとか、あるいは社会主義国の一部で行われた大量買い付けというようなものが実質的に急激な需要の増大を招き、それによって市況がむしろ人為的に操作されたという面も明らかに見てとれるわけであります。したがって、商品協定の背景というよりも、世界的なこうした商品群、食品群の安定的な需給関係については、これらのばかばかしいほどの大量買い占め、あるいはつり上げに対抗する措置というものが当然とられてしかるべきではないのか、そのために国際会議における意思表示とか、あるいは直接的の関連機関の創設等について、わが国は積極的な関与をなすべきではないか、こう考えるわけでありますが、いかがですか。
  274. 野村豊

    ○野村政府委員 先ほど来申し上げますとおり、商品協定というものが十分機能することができれば、市況の変動に応じまして、たとえばある一定の商品の価格が非常な買いだめとか、いろいろなことによりまして騰貴しましても、緩衝在庫というものが十分働けばある一定の限界はございますけれども、機能を果たし得るわけでございます。  そこでいま先生のおっしゃいましたとおり、大商社等がいろいろ関与しておるということは、商品の需要によってあるいは違うかと思いますけれども、そういった一次産品につきましては、大商社といいますか、大企業というものが相当な面で関与しておるということもある点では事実かと思います。たとえば小麦に例をとりますと、御承知のとおり、大商社、大企業と言っていいのでしょうか、そういった企業がいろいろ関与しておるわけでございます。そういった企業の活動というものは、小麦を例にとりますと、アメリカとかあるいはまたヨーロッパの国は比較的自由市場でございますので、そういった点で非常に活動の余地がある。ただしほかの、たとえば豪州とかアルゼンチンとかカナダとかそういうふうな国を例にとりますれば、小麦の例について見れば、それぞれの国におきまして小麦局とかいろいろな公的な機関も介入いたしておるわけでございます。かつまた米穀の例をとりましても、これはもちろん大企業だけでございませんで、幾多の企業というものが競争関係にあるわけでございます。したがいまして、そういった大企業というものは、国内取引から輸出に至るまで、一貫して流通に関係しておるという非常な強みもございましょうし、あるいは場合によっては非常に国際的な流通網といいますか、ネットワークを持っておる、そういう強みがあることは否定できないというふうにわれわれは感じておるわけでございます。しかしながら、さっきから申し上げております、たとえば小麦の例をとりましても、基本的にはそういった価格の問題とかそういう問題は需給の関係というもので決まるわけでございまして、そういった意味から、大企業がたとえば全部連合すればともかく、そうでない限りにおいては、その大企業だけで世界の市場を完全に左右するというところまではいかないのではないだろうか。これはいろいろ商品によって違うかと思いますけれども、私は小麦をちょっと例に挙げまして申し上げた次第でございます。
  275. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 食糧及び資源の問題に関しては、石油の問題でいま世界的な紛争が起こっているわけでありますが、この問題ともあわせて考えていかなければならないだろうと私は思います。つまり、今日の資源エネルギー危機と一括して言われるこういうピンチに世界が立ったということは、資源産出国側と、資源消費国との関係性というものをもう一回わが方が見直さなければならぬ時期がきたのではないか、こう思うわけであります。この両者の間の関係は、一九六〇年代において圧倒的に悪化し始めておる。これは各国におきまして一人当たりの所得というものを、日本のような先進工業国と開発途上国を比べてみますと非常に差がある。一九六〇年において大体一対七ぐらいの関係になっているわけでありますが、一九七〇年にはそれが一対十三に広がってきておる、こういうふうに所得格差というものがますます広がってくる。これと同時に、開発途上国においては先進国から買う物が高くなってきて、実際的には物が買えない。自国産品は安いから交易条件も悪化するという状況になっております。  また日本とアジアについて言いますと、この例はさらにひどくなりまして、一九六〇年には七対一になっているわけであります。七が日本で一がアジアでありますが、七〇年には十五対一に広がってくる。このまま広がってまいりますととんでもない数字になってまいりますので、一九八五年の段階で五十六対一、この辺まで広がるわけであります。したがって開発途上国やアジアの国々におきましては経済的困難が増す、そういうところからこのトレンドを回復するためにも自国産出資源は自国で使う、自国で使わないものはつくっても仕方がない、こうしたような形というものが生まれてきておる。そういう意味において、現今、日本とオーストラリアとの協定における牛肉の産出をめぐる幾多の紛争というものは、そうした関係を開発途上国とは違う国でありながら、オーストラリア政府日本との間で招いておるということにすらなっておる。したがって先進国が、日本も先進国側の一つでありますが、その海外投資あるいは多国籍企業の進出というものがこれらの国々の経済的な自立を破壊してきたという意味において、日本側立場は全面的に考え直されなければならないのではないかという面が一つあると思うのです。  私の意見を先に申し上げてしまいますが、第二のポイントは、それでは先進国としても問題ができたというので、節約しようということが石油を中心として行われているわけであります。わが国においても、食糧において言うならば、自給政策を強化しようという考え方もこれに近いわけでありますが、この節約するということによって価格というものを凍結していく、そしてそれに対する対抗措置というものを考えていく、このような考え方が油の場合には全面的に表面に出てきているわけであります。  このように安定的供給を図るという考え方の裏にあるものは、開発途上国と先進国という対立関係でとらえてみるならば、同じく開発途上国の経済的な自立を破壊する方向にのみこの政策は立てられておる、そしてわれわれがこれらの国々との友好関係を適切に処理していくという意味では非常にマイナスがあるのではないか、こう思われるわけですね。ですから、一つは、昨年の国連総会ですが、国家間の経済的権利義務憲章というものが出た際に、日本側は、田中前首相がメキシコにおいてこれを支持する旨を表明しながら、実際は支持しないで棄権してしまったというとんでもないやり方の中で、日本は、要するに後進国を締め上げ、しぼり上げ、後進国を搾取し、自分だけは飯を食い、がらくたを売りつける国として一つ定義されており、その基本的方向は変わらないという尊大な面があるわけであります。そうすると、日本の食糧及びエネルギー政策というものの基本は、こういう二本の柱に乗っていていいのか、そういう基本的反省の中にいま考え方をもう一回つくり直す必要があるのではないか、こう思っているわけでありますが、こういう基礎的な問題については、ひとつ今後御検討をいただいて、基本的に改める必要があるのではないか。  私は、商品協定というものは、こういう考え方、つまり古い古い、自分の国だけ何とかなればいいという考え方のもとに、先進国としての国益を優先し、共存共栄の精神に立たなかったところに存在する一方的な独占資本的な構造のもとに築かれた協定の古き残滓ではなかったかという反省もあってしかるべきだと思うわけであります。その意味で、この協定の実質的な内容が削減されることもまたやむを得なかったんではないか、こうも思うわけであります。その辺の基本的な方向づけ、反省等について御意見を承っておきたいと思います。
  276. 野村豊

    ○野村政府委員 ただいま先生の御指摘になりましたことはきわめて広大なかつまた重要な問題でございまして、われわれとしましてもそのとおりだというふうに感じておる点が多々あるわけでございます。日本のように非常に資源の恵まれておらないという国にとりましては、いわゆる資源の保有国というものとの間でやはり協調的な関係を保っていってこそ、初めてこの資源問題というものが解決できるというふうな認識にわれわれは立っておるわけでございます。先ほど先生は石油の例もお引きになりましたけれども、そういった考え方というものはわれわれ従来からとってまいっておるわけでございまして、御承知のとおり、近々いわゆる産油国との間でもいろんなそういった対話のための準備会が開かれようというふうな動きがあるわけでございます。わが国といたしましては、基本的にはそういった方向は非常に歓迎しておるというのが実情であるわけでございます。  それから、いわゆる商品協定というものもそういった新しい角度からやはり見直すべきだ。従来はいわゆる資源を持たない国、輸入国がただ資源を安く買えばいいというような観点があったから、非常にうまくいかなかったという点も確かに御指摘のようにあったかというふうにわれわれ思っております。われわれも商品協定も、先ほどもちょっと申し上げましたとおり、ココアとかコーヒーの例あるいはすずの例にいたしましても、ただ日本に――もちろんわが国にとりまして安定的にかつ合理的な価格で輸入される、かつまた供給が保証されるということは望ましいことではございますけれども、同時にかつまた、そういった発展途上国の輸出所得というものを増大をしていくという面で協力していくというふうな面もあったわけでございます。そういった考え方に立ちましてわれわれまいってきたわけでございますけれども、先ほど来先生の御指摘のございましたとおり、いろいろな問題がいま出ておるということは事実でございます。特に先進国と後進国との所得格差の問題があるわけでございまして、そういった問題も、開発途上国に対する援助でございますとか、あるいは国際的な機構を通じまして協力していくというのが当然望ましいことでございましょうし、そういったことは従来からの日本政府としての考え方であるというふうに考えております。  まだいろいろ、先生の御指摘になりました点は非常に多岐にわたっておりますけれども、その点十分傾聴さしていただきたいと思っております。
  277. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 次に、原料資源について対決的な節減政策というものは、長期的視点で言いますならば、対決色を強めるという点は避けなければなりませんけれども、資源を長期的に温存するという考え方あるいは自給色を強めるということは当然とらなければならぬところであります。そうしますと、わが国自国の経済発展というものを高度なレベルに置いて、諸外国に物を売りつけ、そうして資源を収奪するという産業から離れて、もはや先進工業国として低成長路線に切りかえ、そしてその低成長路線は、すなわち安定的な原料資源の確保とまた安定的な日本の穏やかな発展の上に築かれなければならぬわけであり、その意味ではわが国の経済路線はまだ混乱中であって、問題も多々あろうかと存じます。その意味で東南アジア諸国の問題点を考えますとき、わが国の方向性というのは非常に問題が多い、基本的な方向ができてないというところに問題があるように思うわけであります。したがって、国際的なインフレーションの中でさまざまな後発国側の要求が取り上げられておる。たとえば関連諸国の中では、開発途上国側ではガットの問題にかかってくるわけでございますが、ガットの場では開発途上国の二国間取引あるいは政府間ベースの協定に基づく取引の推進というようなものが問題になってきておって、ガットの自由、無差別原則というものと非常に反する動きも出てきているわけであります。そうした意味で、一律に関税を引き下げるというやり方が、先進国と開発途上国の両者に一方的に網がかぶせられてくるという問題では、わが国のような先進国と東南アジア諸国のような開発途上国との間には、当然その利益というものが相反する立場に立ってくるかと思われるわけであります。わが国は、ある意味でガット条項を盾にとって今日までの経済発展を一方的に推し進めたという事情があるわけでありますから、むしろそういった意味では開発途上国が行なわれている工業化の措置に対して、これを保護するべき大きな施策、基本的な施策というものを考え直していかなければいけない。ガットの中の原則というものを盾にとるだけでは後発国を守り得ないという状況に追い込まれておる。その辺の微妙な立場日本政府は一番理解してしかるべきだと思うのですけれども、どうやら国際会議場裏における日本政府立場というのは、必ずしもそういう点を理解しているとは言いがたい点があるのではないか、私はそう思っているわけであります。その辺をどうお考えであるか、多少見解を述べていただきたいと思います。
  278. 羽田野忠文

    ○羽田野政府委員 先生の先ほどからの御質問、私は非常に傾聴をするものがございます。私は、日本のいわゆる工業の関係と食糧の関係、これは世界政策似ておりますけれども、別途に分けて考えるべきじゃないかと従来考えておりますが、エネルギーを含めて工業の関係、これは先生御指摘のように、従来、日本の高度成長の中にあって、世界の資源をなるべく安く買い集め、そして日本で大量な生産をして、それをなるべく多くの利益を得て諸外国に売りつけるという、いわゆる日本の経済成長、所得をふやすということに重点を置いておったその結果は、国内的には非常な成果をおさめたけれども、国際場裏において相当の批判を受けているということは先生御指摘のとおりであります。  今度の石油の問題に出てきましたように、世界の資源保有国の自覚が強まってきた現在におきましては、やはりそれぞれの国々の立場を理解し、尊重しながら、協調の上にそれぞれが繁栄をしていくということを考えていきませんと、長期的な世界社会における日本の発展というものもございませんし、世界社会に日本が寄与するという面も非常に少なくなって、孤立してくると私は思います。そういう面から、先生御指摘のように日本利益を守って伸ばしていくためには、世界のそれぞれの国の立場を理解し、それぞれの国を発展、繁栄さしていくという立場に立たなければいけませんし、その面では、先進国グループの中において日本はどういう役割りを果たすべきか、やはり発展途上国の発展、繁栄に大いに協力をして、そしてその市場の力も強くし、日本も伸びていくという形にせなければならないと思います。  だから、ガットを日本利益のためにのみ利用するというような形でなくして、やはり世界の利益の平等性というものを踏まえて、このガットの問題も考えていかなきゃならないと思いますし、発展途上国が工業化して伸びていくという面についても、技術的あるいは資本的その他の協力もしていくというような、お互いに協調的立場をとってこの発展途上国の発展に力を注ぐという立場こそ、日本のこれから持つべき指導性であるし、また日本が世界社会の中で評価され、そして日本が伸びていく方向であると私思います。  もう一つの食糧の面、この面は、私はもうちょっと違う観点から考えていかなきゃならぬのじゃないかと思います。これこそ人間の健康と命に直接連なるものでございますので、食糧が余りにも経済利益追求の具に供される、あるいは投機の対象にされるということは、世界的に最も慎むべきことだと私は考えております。これこそ本当に人類愛というものに立脚して、世界政策としてこの問題は片づけていかなきゃならない問題だと思います。その意味で国連の世界食糧会議などというものは、私は非常に高く評価さるべきであると思いますし、日本はやはり先進国としてこの場においても主張するときは大いに主張し、そうして実行するという態度をとっていくべきであると思います。  日本自身の食糧問題、食糧の自給度の向上ということもまず焦眉の急でありますが、より多くのものは世界の食糧の安定的供給を図る。そのためには、特に開発途上国の食糧増産というようなものを図っていかなければなりませんから、その面では日本が進んでおるところの技術だとかあるいは肥料だとか、農機具だとか、こういうふうなものをどんどん提供をして、開発途上国の食糧増産を図っていくという面で大いに寄与するべきであると思います。  もう一つは、量の供給と同時にやはり価格の安定、これが非常に必要でございますので、食糧の備蓄というものも、そういう量の安定と同時に、価格の安定を前提として進ませなければなりませんし、冒頭に申し上げましたようにこれが投機の対象になったり、利益追求の対象になりますと、結局価格が非常に高騰したり低落したりというようなことが起こりますので、これは世界政策として、日本が指導的立場に立ってこれを解決していくべきだと私は思います。  その意味で先生が先ほどおっしゃられた、商品協定があるがいいか、ないがいいかという問題、これは商品協定が確かに古くなっておりますし、その実効性が非常に弱くなっているということをこの前にも先生の御指摘で私、答弁申し上げましたが、共通の食糧問題を検討し、そうしてよくしていくというテーブルを持つ意味においては、やはり個々の小麦なら小麦、ココアならココアという商品協定の場があって、これを、前向きによくしていくというところを残しておいて前進の方向に使うべきじゃないかというふうに私は考えます。  先生の御質問が非常に広い範囲でございましたので、触れないところもあり、あるいは触れ過ぎたところもあったかと思いますが、まだこの後御質問がございましたらお答えします。
  279. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 もう少し大きいことを言っておきますと、世界食糧会議においては致命的な欠陥があることをひとつわかっておいていただきたいと思うのです。というのは、食糧の投機、それから食糧の買い占め等に対して何一つ対策が打たれていないという重大欠陥がある。それは、国連において世界的企業、つまり多国籍企業の問題を扱う特別委員会をつくろうという提案がなされているわけでありますが、そうしたところとも関連してその対策がとられてこなければならないことを示しております。したがって、ここは非常にいいお話が並んでいるにもかかわらず、骨組みの基礎を欠いているという点で特徴的であると私は思っているわけであります。ですから、食べ物についてはこれは基礎だという御認識を持たれておる、それは非常に結構でありますけれども、現実的には、食糧問題は国際紛争の最大問題として突如としてあらわれてくる可能性があり、この世界食糧会議はそれに対してほとんど無効であることを示しておるわけです。したがって、私は当委員会において小麦協定の審議の際、こうした点を指摘して、政府に重大な反省と基本的な方向の組み直しをお願いしたい、こう思っているわけです。日本政府がそうするという段階ではなくて、世界がどう取り組まなければならないという大きな世界的な、国際的な問題点を持たない限り解決策は出てこないことを示しておる。したがって、食糧の自給度を達成するために財政上の措置がどうとられているか大蔵省の御関係に伺おうとした。ところが、食糧の自給については何%前年よりふえておりますという答弁で終わりになってしまう。じゃ世界的な食糧の自給の問題はだれが考えるのだ。そうすると、それは外務省所管でございます、こうなる。外務省は、そんなことは関係ない、わが方はそういうのは外交案件になじまないというようなお答えになってくる。この御質問をするに当たって、私が伺ったときに、これほど大きな穴が抜けていたのでは政府はいかぬのじゃないか、こう思いまして改めて御質問したわけなんです。  だから政務次官にお願いしたいことは、私は個個の問題をお願いしようとはしていない。少なくともそういう自給の基礎的な根幹的な問題について、日本政府の方向をひとつきちっとやっていただくという意味で政務次官の御活躍をお願いしたい。いかがでございますか。
  280. 羽田野忠文

    ○羽田野政府委員 先生のおっしゃられること、私全面的に同感でございます。国連の世界食糧会議がまだやっと生まれたばかりでございまして、先生御指摘のように、一番重要な食糧が投機の対象になるあるいは買い占めの対象になる、こういう一番大事な安定供給並びに価格の安定を阻害するその重要な要因を排除することについて、何らの施策がなされていないということは非常に残念なことでございます。  そこで、いま成長しつつある国連の世界食糧会議の中において、日本が、これは外務省の所管とか大蔵省の所管とか、そういう小さな問題でございません。やはり世界の先進国の中で指導的立場にある日本としての地位と自覚から、積極的に日本の方から発言し、行動して、そういう排除をせなければならない点は排除する、進めなければならない点は進めるという姿勢で臨んでいきたいと思います。
  281. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 商品あるいは食品の輸入に関して、われわれは、これから資源産出国の同盟あるいは資源産出国における独占的商品の協定というやり方によって攻撃されるような立場になろうかと思います。また、ある意味ではインデクセーションのような、世界的なインフレの進行に伴って原料価格、資源価格、食糧価格というものを引き上げられる、こういうようななまなましい問題に直面すると思います。そうした問題に直面したときに、外務省当局はその都度どういう態度をおとりになるかは存じませんけれども、改めて再検討するというのでは食糧政策はできないのではないか。私、この前の委員会でも申し上げたのですけれども、外務省当局と農林省当局との関係、あるいは通産当局とのお打ち合わせというのは、食糧問題についても非常に悪いことは明らかです。出てくる統計資料は、何部かいただきましたけれども、一々違っておる。資料の一つずつの読みの重点もことごとく変わっておる。したがって私は、食糧問題について関係当局の十分なお打ち合わせを定期的に確立した機構でお願いしたいと思うのですが、いかがですか。
  282. 羽田野忠文

    ○羽田野政府委員 この問題は、外務大臣が、日本の経済的な問題で、七割は外交問題で解決しなければならないというような趣旨のことをおっしゃっておられたと私は記憶しておりますが、あらゆる問題が日本国内サイドだけで片づかなくなってきております。国際経済の中でどう物事を片づけるかということが、日本国内問題の解決の場合に必ず必要になってきます。特に食糧などは、先生御指摘のように、もう世界サイドで片づけなければならない問題でございますので、日本の中において外務省と農林省、大蔵省というものの連携が密でないというようなことで、対外的な問題の解決がおくれたり渋滞したりするようなことがあれば重大でございます。外に向かっては何と申しましても窓口は外務省でございますので、外務省の方も積極的に関係各省と連携をとりまして、対外的に遺憾のないように処理してまいります。
  283. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 私の申し上げているのは、食糧の自給問題に関してほとんどお打ち合わせができてない、それをきょうは細かく論証するのは省きますが、定期的にでも基本的にでもいいですから、お打ち合わせを一遍かっちりとしていただきたい。いかがですか。
  284. 羽田野忠文

    ○羽田野政府委員 これは外務省の方も農林省の方もその必要を認めておりますし、先生御指摘のように、これはいままで十分でなかった点もあると思いますが、今後はそういうことのないように、内部の接触、連絡を十分密にして処理してまいります。
  285. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 では、くどいようですけれども、日本の食糧エネルギーの自給問題に対する関係各省のお打ち合わせの結果、でき上がった基本方針なりレジュメなりを、なるべく早急に当委員会理事会に御提出をお願いしたいと思います。
  286. 羽田野忠文

    ○羽田野政府委員 承知いたしました。
  287. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 先ほど渡部委員のお話の中に、今度の食糧会議が、商社の投機的な行動その他による心配について、何も配慮されておらないではないかということがあったかと思いますが、これは委員すでに御存じかと思いますけれども、食糧会議で採択されましたたくさんの決議の中の貿易に関する決議の中に、この点の懸念というものが食糧会議自身でも表明されまして、結論としまして、これはかっちりした措置ではございませんけれども、こういうような要旨で載っております。すなわち、市場の不安定化あるいはエキストラな利益を獲得することを目的とするような投機的な慣行を阻止するための措置をとるために、関係政府協力することを求めるという趣旨がございますので、問題点としては意識に上っており、ただ具体的な措置として必ずしもはっきりしたかっこうに出ておらないということだけ申し上げさしていただきます。
  288. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それでは、そういうふうに問題を出していただければ、また数時間質問しなければならぬのですが、この食糧会議の宣言及び決議については、申しわけないのですが、あなた方は、これはもうほとんど実行の気力を衷失しておるということが数次の質問のやりとりの中から出てきておる。これはお話だと言わんばかりの調子である。  いまあなたは、そのお話を持ち出して、御自分でおっしゃっているわけだが、実行するぞという決意よりも、一応そういうのが、対応策として十分でないがと、御自分で白状しながらおっしゃった。非常に正直な答弁をなすった。その意味では非常に正直でいいですけれども、そういう気魄のないことでは困るわけですね。少なくともこの中のいい項目はやっていただかなければならない。その意味で当委員会は、そういう食糧会議のおつき合い風の御答弁では困るわけなんです。だから、その問題は一生懸命やると決意をしていただけるかどうか、それをもう一回伺っておきたい。そうでないと、私は、国連局長はまたこの食糧会議風にふんわりしかきょうのお話を聞いていなかったのではないかという疑いを強く抱いているわけですから、ひとつ御答弁いただきたい。
  289. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 食糧会議の決議は、これから世界食糧理事会というものの第一回会合もございますし、いろいろな場を通じて、フォローアップの努力というのがこれから積み重ねられていかれることと思います。  食糧の投機につきましては、どちらかと言いますと、日本はむしろ被害者の立場に従来立っておりますので、この点についての日本の従来の経験にもかんがみまして、このフォローアップにつきましては、政府としてできるだけ、そういう好ましくない慣行によってこの食糧会議の決議の基礎が崩されないように努力してまいりたい、こういうように思っております。
  290. 渡部一郎

    ○渡部(一)委員 それからもう一つ、くどいようですが、同僚委員からもお話がございましたから、私はあえて余り申し上げないで片づけておきますが、当協定の暫定適用について多数の疑点が表明されたのは御承知のとおりであります。  政務次官にお答えをいただいておきたいのですが、この暫定適用というものは、日本国憲法の精神から言ってなじまぬものであるというむしろ野党側の見解に対して、暫定適用は行政権の範囲内で当然やり得べきものだという考え方等が開陳され、当委員会において決して一致した見解とならず、平行線になっていることは、審議の経過を通して明らかであります。  しかし、私はここでその決着をつける前に、少なくとも行政権の範囲内だと述べるならば、政府は、立法府から委任された権限の範囲内だと言えるように、その行動が慎重であらねばならない。当協定が実行に移って九カ月も後に、初めておっ取り刀で当委員会へ提出されるなんということがしゃあしゃあとして行われるというのは望ましくない。少なくとも、今後においては暫定適用なんというのは、施行された直後に出されてしかるべきである。そういう零囲気がこの委員会の審議を通してなかったところに実は問題があったのではないか。今後においてはそういうことをしないようにするという意味合いのことについて、大臣もごたごたの末申されましたけれども、政務次官としても、省を代表して、暫定適用のような異常なもの、私はそう思うのですが、こうしたものについては、速やかに当委員会の了解ないしは了承を得るために、早急に御連絡をとりながらやるという姿勢を明示していただくということは、御発言あってしかるべきではないか、先ほどの同僚委員の御質問の締めくくりを聞いておりまして痛感したわけですが、いかがですか。
  291. 羽田野忠文

    ○羽田野政府委員 これは非常にむずかしい問題だと思うのです。条約に署名をする、そして国会で御審議をいただいて批准をする。これは条約に署名したらできるだけ早く国会の御審議をいただき承認をいただいて批准すべきだと、私も一般論として考えておるわけでございますが、具体的に今度の場合、先ほど土井先生にも御答弁申し上げたのですが、一年の期間延長というようなことを、署名をする、そして国会に出して御審議いただいて御承認をいただく、その間にもう期限がほとんど切れてしまうというような関係になってきて、これは何のために国会で御審議いただいて承認をいただくのかと、土井先生のおっしゃられることももっともなんです。  それで私は、今度のこの具体的な小麦協定の一年延長についても、どうしていまの時点で出したのかという問題、それから先生の御指摘の暫定適用している問題について、いろいろ呼んで聞いてみたわけでございますが、一年延長の署名をして、いよいよ国会の御審議をいただかなければならないという時点では、もはや国会が開かれていなかった。その後の昨年の臨時国会で御審議いただき御承認をいただけば、これは一番初めの機会の国会であったわけでございますが、これは非常に期間が短い関係で、御審議いただく期間がないのではないかというようなことで、恐らく今度の通常国会に出たと思います。そうするといまの時点になってしまって、一年が切れてしまう、こういう経過でございまして、私も非常に矛盾を感じております。だから、原則としては、やはりなるべく暫定適用などというようなものはすべきでないということ、それから、署名をしたならばなるべく早く御審議いただき、御承認をいただいて、そうしてその条約が本当に批准をした上で長い間の効力があるようにすることが望ましい。そういう意味では、一年などというような期間更新というのが、国会審議や承認等の関係で非常に矛盾がそこはあるような、先ほどからもやもやを私自身も感じております。しかし、先生の御質問の暫定適用というものを気楽にいつでもするというようなことは、私はなるべくやらないことがいいと考えておりますので、そういうことで御了解いただきたいと思います。
  292. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて両件に対する質疑は終了いたしました。  本日はこの程度にとどめ、次回は、来る二十六日水曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、これにて散会いたします。     午後四時十八分散会