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1975-02-26 第75回国会 衆議院 外務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年二月二十六日(水曜日)     午後二時九分開議  出席委員    委員長 栗原 祐幸君    理事 石井  一君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 小林 正巳君 理事 水野  清君    理事 毛利 松平君 理事 河上 民雄君    理事 堂森 芳夫君 理事 正森 成二君       坂本三十次君    福田 篤泰君       福永 一臣君    細田 吉藏君       江田 三郎君    土井たか子君       永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         外務政務次官  羽田野忠文君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省欧亜局長 橘  正忠君         外務省経済局長 宮崎 弘道君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      杉原 真一君         水産庁漁政部沿         岸漁業課長   平井 義徳君         資源エネルギー         庁長官官房総務         課長      平林  勉君         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君     ————————————— 委員の異動 二月二十二日  辞任         補欠選任   竹内 黎一君     西村 直己君   加藤 紘一君     森山 欽司君   大久保直彦君     正木 良明君 同日  辞任         補欠選任   西村 直己君     竹内 黎一君 同月二十六日  辞任         補欠選任   小坂善太郎君     黒金 泰美君 同日  辞任         補欠選任   黒金 泰美君     小坂善太郎君     ————————————— 二月二十五日  国際電気通信条約及び関係議定書締結につい  て承認を求めるの件(条約第五号)(予) 同月二十六日  日本国政府オーストラリア政府との間の文化  協定締結について承認を求めるの件(条約第  一号)(参議院送付) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鯨岡兵輔君。
  3. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 外務大臣、きょうは日中の問題と、それからこのごろソ連船日本近海へ来て漁民が非常に恐慌を来たしている、これと海洋法会議の問題と関連して三番目、三番目に、核拡散防止条約について伺いたいと思います。  まず日中の問題ですが、これはいろいろいまお骨折り中のようで、毎日、新聞にも中華人民共和国との間の平和友好条約について、外務省のお骨折りが伝えられておりますが、いまどの辺まで煮詰まっておられるか、十分に煮詰めなければならぬ問題だと思いますが、それについて答弁をひとつ。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 交渉中のことでもあり、相手国の立場もあろうと思いますので、私、なるべく具体的なことを従来控えさせていただいておるわけでございますが、しかし概して申しまして、鯨岡委員も報道等々で御存じでいらっしゃいますと存じます。また概して大筋で報道されていることは事実と遠からぬものでございます。  そこで、東郷外務次官と東京の中国大使との間ですでに幾たびか話し合いが続けられておりまして、実は一、二私どもとしてにわかに同調できないような問題の提起がなされておる。が、それを除きまして、基本的には日中国交正常化の際の共同声明、これに書いてございます趣旨をもって、将来の日中の文字どおり友好関係の基礎にしたい、そういう意図は両者一致いたしておりまして、したがいまして、会談は概してきわめて有効裏に行われているように存じます。  したがいまして、ただいまの懸案になっております問題につきまして、先方がわれわれの主張に同調してくれるということでございましたら、恐らくそれ以外にそうたくさんむずかしい問題はないであろう、かりに幸いにしてそのようになりますれば、次の段階としてお互いに条文を書いてみる、基本的には一致しておりましても文字にいたしますといろんなことが出てまいるかもしれませんので、文字を書いてみよう、そうして全部スムーズにいけば、あるいはこの国会で御審議が仰げるかもしれない。しかし、まだその文字を書くところまでまいっておりませんものでございますから、私どもいいことと思いますので、なるべく急いでやりたいとは思っておりますものの、そうかといって、この国会という期限をつけますと、交渉そそうを来たすこともございますので、私そうは申しておりませんが、概して懸案の点を除きますと、その他のことについては非常に大きなむずかしい問題はないのではないかというふうに考えております。
  5. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 一、二にわかに同調しがたい点はあるが、もしそれがうまくいけば今度文字にあらわす、文字にあらわすときもそう簡単なことではないが、文字にあらわすということになれば、この国会に提出するようなことになるだろう。ということは、この国会に提出することの方が非常に公算が多いというふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実は懸案懸案といたしまして、場合によりましてその他の部分文字にしてみようかと、並行してやるのも一案かとも考えておるわけでございます。この国会に御審議を願えるかどうかは、結局その懸案になっております点についてどれだけ早くお互いの同意が得られるかということにかかっておりまして、この点はちょっとその部分につきまして見通しが定かでございません。
  7. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 しつこいようですが、外務大臣としては、何とかこの国会にというふうに余り考えるとそそうになるといけないからということはわかりますが、この国会にというふうにお考えになっておられると考えてよろしゅうございますか。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういうことをこいねがっておるわけでございます。そのように先方が同調してほしいと思っておるわけでございます。
  9. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 次の問題ですが、きょうは農林省から来てますか。おとといですか、私福島県の方へちょっと行きまして、そうしたら漁業組合あたりが海岸で大騒ぎでございまして、見えるところでソ連の船が網を切ったりなんかする。これは前からあったことでございますが、最近この問題で受けたわが方の損害はどのくらいと農林省見積もっておられるか。
  10. 平井義徳

    平井説明員 最近、ソ連船団による日本近海漁業被害が頻発しておるわけでございますが、被害といたしましては、ふえてまいりました昭和四十六年くらいから四十八、九年までで約一億円くらいの被害でございましたが、ことしに入りまして一年で一億円を超えるような被害が出ておりまして、現在のところ総計で約二億一千万というのが十二月現在でございます。その後、未確認でございますが、さらに一億から二億の損害があるというふうな話を聞いております。
  11. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 そうすると、三億だの四億だのという損害になりますが、その損害漁民の網が切られたり何かするわけですが、それはだれが補償しますか。
  12. 平井義徳

    平井説明員 これは漁具だけの被害の算定でございますが、それにつきましては、法律的には民事的な性格のものでございますので、被害を受けた人が加害者に対して請求をするというのがたてまえかと思います。
  13. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 そうすると、それは被害を受けた漁民ソ連に要求しなさい、こういうことですか。
  14. 平井義徳

    平井説明員 本来、これは民事的な性格を持っておりますので、そうするのが筋道だと思いますが、事実上非常にむずかしい問題がありまして、水産庁の方にも被害報告が来ておりますので、われわれはその問題につきまして外務省を通じましてソ連政府の方に、こういう被害が来ているからよろしく善処してほしいということを申し入れいたしております。
  15. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 ちょっと御注意申し上げておきますが、おまえさんの網がソ連の船にちぎられてこわされちゃった、その受けた損害は、それは本来は民事的なものだから、あなたソ連に要求するのですよ、そんな不親切なことを言っちゃだめですよ。そんな不親切な話ありますか。  外務省はこれをどうお考えになりますか。大臣じゃなくてどなたでも結構です。関係の方言って下さい。
  16. 橘正忠

    橘政府委員 ソ連船日本近海における操業が公海の上であるために、いま水産庁からも御説明ございましたように、たてまえといたしましては公の法律の関係という性質のものではなく、本質的には民事的なものと考えますので、水産庁の方から先ほど御説明がございましたように、漁具等に生じました被害、これの連絡を受けまして、外務省としてはそれをソ連政府に伝達して善処を求めているという状況でございます。
  17. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 あなた、話も矛盾しているじゃないの。公海上でございますからやったって仕方がないのですか、それだったら文句言うことないじゃないか。ソ連の方に文句言うて善処を求める必要はない。公海上だ、話は矛盾していませんか。時間がないのですから簡単に大急ぎでやってください。
  18. 橘正忠

    橘政府委員 漁具等に生じました損害につきましては、それが本質的に当事者の問題でございますので、それをソ連側に、加害者と認められればそれに求める、その求める経路を水産庁から私ども連絡を受けまして、外務省からソ連側に要求しているということでございます。
  19. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 ソ連の方に、あなたが与えた損害については日本漁民に返してやってちょうだい、そういうふうに要求しているのでしょう。そうしたらソ連の方は、悪うございましたからお払いしましょうと言ってくれますか。
  20. 橘正忠

    橘政府委員 ただいままでソ連からは、その点につきましては何の返事も参っておりません。
  21. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 外務大臣日本は一海里ですから、三海軍の外の四海里のところでやっていれば仕方がないのだ。ソ連の方は十二海里だから、向こうが人ってくるだけこっちが入っていくと向こうにつかまっちゃう。そこで、いただいた参考書、これなんかを読みますと、もう三海里と言うところはないのですが、農林大臣なんかも十二海里がいいと言っているのですが、日本も十二海里説をとるという御意思はありますか。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その前に、いまの先の方のお話でございますが、政府委員としてはあのように御答弁を申し上げるのが私はぎりぎりいっぱいのところではないかと思うのでございます。  それからまた、外交的に申しますと、明らかにソ連側がいたしました不法行為については、ソ連側責任を負わせるというのがやはり筋でございますので、その点はわれわれ放棄するわけにはまいらぬと思うのでございますが、実際は被害の実証というようなことは非常にむずかしいこともございますし、漁民はすぐに困るわけでございますから、その間どうするかということはやはり政治の面で何か考えなければならぬではないかと私は考えております。  それから十二海里のことでございますが、海洋法会議でそれが大勢になりつつあることはよく存じておりますけれども海洋法会議で、わが国として、いろいろ大きな国益の上からやりとりをいたしたい点が幾つかございますので、できればそれとの関連において十二海里ということをその段階で決めていきたいと思っております。
  23. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 それじゃ、海洋法会議で十二海里というふうに決まらなかったならば、依然として三海里説を維持していくつもりですか。
  24. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もし、万一、海洋法会議で十二海里ということが決まらずに海洋法会議が終わったということになりましたら、それは、しかし、その段階では、わが国としてはやはり——これは私だけの一存で申し上げられませんけれども、十二海里ということにせざるを得ないのではないか。つまり、いまの段階は、いろいろな全体のやりとりをいたします一つバーゲンの問題として持っておきたいという気持ちがあるわけでございます。
  25. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 外務大臣、そうすると、海峡を通過するようなときのことやいろいろな問題がありますから、ちょっと待って、海洋法会議でそういうものを一括して解決したいと思うが、そのとき十二海里ということにならなかった場合には、外務大臣の御意思としては十二海里に日本もしたい、こう言われたと解釈してよろしゅうございますが。
  26. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 つまり、そういう形で海洋法会議というものが何かの形でもう終わってしまったあるいは流産してしまったというようになりますと、バーゲンとしての意味合いを持たないことになってまいりますので、私としては、その際にはやはりそのように考えるべきではないかと思っておりますけれども、これは政府部内で実は討議をいたしておりませんので、私は、と申し上げておきます。
  27. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 私も全くそのとおり思うのですが、もう一つ教えていただきたいのは、このごろ経済水域が二百海里に固まると、こういうのですが、経済水域というのは漁業専管水域とどういう関係がありますか、きわめて簡単に……。
  28. 杉原真一

    杉原説明員 経済水域と申しますのは、漁業だけではございませんで、水中生物資源、それから海底の非生物資源すべてを含めて沿岸国管轄権に属するというのが経済水域考え方でございます。
  29. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 そうしたら、従来の大陸だなという考え方とどこが違いますか。
  30. 杉原真一

    杉原説明員 大陸だなは、沿岸国の沖合いに張り出している海底部分における資源に対する沿岸国管轄権で、水産資源は入っておりません。
  31. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 それじゃ経済水域は鉱物も入っていますね。そうすると、大陸だなは、ずっとやってきて、ぽんと深い海峡までの間は大陸だなだというふうにわれわれ承知していたのですが……。それは深いところはどうにもならないからそこは別にして、そこまでと。ところがそれでなく今度は二百海里ということになりますと、大陸だなと関係なく二百海里ということになって矛盾するというふうに、きわめて常識的に考えられますが、そう思いませんか。
  32. 杉原真一

    杉原説明員 いまアフリカ諸国を中心にして言われております経済水域概念は、海底の地形が大陸だな、いわゆる地質学的な大陸だなであろうとなかろうと、距岸二百海里までの水中海底はすべて沿岸国のものであるというふうな考え方でございます。
  33. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 ここにきょうの日本経済新聞がありますが、経済水域二百海里が固まって漁業既得権を認めない、日本も最悪の事態になってくる、これは海洋法会議の事前の話で、政府筋がそういうふうに言っているということを書いてあるのですが、これに対して責任をとってくださいとかなんとか、そんなことを言っているのじゃないのですがね。もし仮にこうだとすれば、大陸だなの考え方と矛盾しないかと承っているのです。アフリカの話を聞いているのじゃないのです。
  34. 杉原真一

    杉原説明員 経済水域考え方がそのまま、先ほど申し上げたように通りますと、従来、一九五八年来存在いたしました大陸だな条約における大陸だなが、二百海里に関する限りは経済水域に包含されてしまうということでございます。
  35. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 矛盾しますね。いまあなたはアフリカの例をとられたけれどもアフリカのような考え方、すなわちここにある考え方がこのまま仮に通ったとすれば、前に言っていた大陸だなの問題は包含されてしまうというふうに解釈してよろしゅうございますが。
  36. 杉原真一

    杉原説明員 実は二百海里の外に出ている大陸だなを持っている国が世界にまだ三、四十あるわけなのでございますむそういう国が、現在の大陸だな条約に基づく権利としてこれを主張しているわけです。
  37. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 外ならばわかっているわけですよ。すぐそこに海峡があって——ここが陸ですよ。この前にすぐ海峡があった場合には、大陸だなといったらすぐそこまでしかないでしょう、いままでの概念なら。今度二百海里というと向こうの方まであるでしょう。海溝の向こうまで私の経済水域だと考え考え方になりますが、それでもいいのですかと、こう言っているのです。
  38. 杉原真一

    杉原説明員 そのとおりでございます。
  39. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 わかりました。これは後日にいろいろ大きな問題になりますから、よく覚えておいていただきたいと思います。  それから核防条約ですが、外務大臣、時間がないから簡単に御質問申し上げますが、核兵器を持たないでいた国が、この五年の間に、署名して批准をしようといまわが国がしている間に、たとえばインドみたいに、やり始めましたね。ああいうような事態はどう考えたらよいでしょう。これからもまたあんなことをやりそうな国が——国の名前を挙げないでもいいですが、外務大臣、あると予想されますか。
  40. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 予想は実は非常に困難でございますけれども、いわゆる平和利用のために原子炉を渡すというような——現在の核保有国が渡しますときに、それが核兵器に転用されないようにということは、大分みんな厳格に条件をつけ始めておりますので、そう簡単には出てはきまいと私は考えます。
  41. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 この条約を早く批准することが核の平和利用のために必要もしくは核の平和利用のために前提条件になるという説がありますし、また日本エネルギー政策上、どうしても早期にこの核拡散防止条約は批准した方がいいという説がありますが、この説に対して、外務大臣、どうお考えになりますか。
  42. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは私はやはり肯定的に考えております。理由は幾つかございまして、一つはやはりこの条約を結ぶことによって燃料なりあるいは施設、資材などが安定的な供給を得られることになるという点、もう一つは現在の二国間協定によりますIAEAの査察というのはきわめていわば過酷かつ煩瑣であるのみならず、わが国の開発した技術が漏洩する心配もある。その点では新しく私どもが先般協議しました保障措置協定の方がわが国にとってはるかに有利であるし、産業をそういう意味で保護することにもなる、そのような点からさように考えます。
  43. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 この五月に核拡散防止条約運用についての会議が行われるということを聞いていますが、あれはどういう目的で、どこでどんな国が集まってやるのですか。
  44. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 この五月にジュネーブで開かれる予定のレビューコンファランス、再検討会議は、実はこの条約自体の中の規定、これは八条の三項にございますが、そこで予定されている会議でございます。この会議目的は、この三項にも書いてございますように、核拡散防止条約の「前文の目的及びこの条約規定が実現されることを確保するようにこの条約運用検討するため、」すなわち、この条約運用、特にこの中で主要な条項でございます核兵器国核軍縮がどの程度進展するであろうか、それから、非核兵器国平和利用の面においてどの程度の恩恵を受けているであろうか、そういうような点が、主としてこの検討の対象になろうかと思います。
  45. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 もしわが国がそれまでに批准してないとしたら、その会議には出席しないのですか、出席するのですか。
  46. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 この再検討会議は、この条約運用検討をするということでありますために、当然にこの条約当事国がこの検討会議に参加する資格を持つわけでございます。  ただ、この検討会議を開くために三回ほど予備会議がございまして、その討議を通じましてわれわれにわかりましたことは、この条約署名はしたけれどもまだ批准してない国についても、この条約重要性にかんがみ、特にそれらの国に対して十分にその意見を発表する機会を与える、あるいは書類を提出する権限を与えようじゃないかという声が強くなりまして、大体そういうかっこうで非核兵器国、特に日本に対しても、恐らく招請が来るものと期待いたしております。
  47. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 国際原子力機関との間に第五次の予備交渉で、ユーラトム諸国との間に査察なんかの不平等がないようになすった外務省の御労苦に対して敬意を表しますが、この原子力機関との間に何か協定を結ぶということは、作業として今後残されているのですか、もうこれでおしまいですか。
  48. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 この予備交渉の結果がいま確定しつつございますが、日本がこの条約の本体にいよいよ入るという場合には、当然、この条約に基づく保障措置協定という性格を持つわけでございます。つまり、いまウィーンで話し合いをしました結果が、この条約に基づく保障措置協定というかっこうになろうかと思います。したがいまして、それ以外に、国際原子力機関との間に、二国間の関係条約なり協定をする必要はございません。
  49. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 この質問で終わりにいたしますが、署名をいたしましたのは五年前で、そのときに、いずれ批准しなければならぬが、批准するまでの間には、ある国に持つことを認めるのですから、その核兵器を持っている国もだんだんとなくすようにしなさい。それからもう一つは、われわれは持たないのですから、持たないわれわれをどうやって守ってくれますか。それから三つ目は、平和利用の問題についてでございましたが、その持たないわれわれをどうやって守ってくれるかという問題について、この五年間に見るべき成果があったと外務大臣はお思いになりますか。
  50. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この五年間と申しますと、特にこのような条約が、あるいはこのようなことがということよりは、全体にやはりデタントと申しますか、そういう方向が進んできたということ。それから、特に著しいことを一つ申し上げれば、やはり日中間の国交が正常化した、あるいは米中間もああいうことになりつつある、このようなことは大きな方向としては、ただいまの一つの例として申し上げられるのではないかと思います。
  51. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 一九六八年の六月十九日に非核兵器国安全保障に関する安全保障理事会決議というのがありますが、この決議はまことに何かやわらかい、われわれ核兵器を持たない国がこの条約に思い切るためには、そんなに頼りになる決議だとは思わないのですが、五月の会議のときには、そういうような問題を持ち出して、何かもっと強く、われわれ持たない国を守ってくれる、持っている国は軍縮をするというようなことも議題とする用意が日本にありますか。
  52. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 この再検討会議議題は、恐らくこの条約当事国予備会議で大体決まることだと思います。ただ、先ほど申しましたように、この条約運用の中で、核軍縮の進展なりあるいは非核兵器国安全保障というのは、非常に重要な問題でありますだけに、いかなる議題かわかりませんが、その適当な議題との関連でこの問題を出すことは、十分考えられる次第でございます。
  53. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 これで終わりにいたしますが、十分に考えられるというんじゃなしに、私は積極的に——これしかないのですもの、これを読んでいると時間がなくなるから読まないですが、これはまことに頼りない。だけれども、まあ人のことを疑ってばかりいたんじゃしょうがないから疑わないけれども、こんな頼りないことじゃなしに、これだけ思い切ったことをやるのですから、おまえさんは持っていていいよ、おれは持たないよということをやるのですから、持たない私がいじめられたときにどうするかということについては、やはりもっと真剣にやらなければならぬと思うのです。ただ、これからのエネルギー政策や何かのことを考えますと、やはりわれわれは前向きに、もう持たないとかつくらないとかという三原則があって、初めから自分の手を縛っているのですから、思い切って諸国のこの正義に信頼してやるということは私、賛成なんですが、外務大臣、このことについて御決意をもう一ぺん御表明を願いたいと思います。
  54. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私も、結論といたしまして、鯨岡委員の言われるように考えますし、いわゆるフリーハンド論というものは、実体が之しいものであるというふうに私自身は考えています。  それで、先ほど言われました前の方の二つの条件、ことに非核保有国の安全の問題、これはいかにも六八年の安保理決議というのはちょっと心もとないではないかということは、私も同感をしておりまして、たとえば五月の会議において、あるいはその他の場において、それをもっとしっかりしておくべきであると言われることは、大変に大事なことだと思いますので、そういう機会にその問題をもっとはっきりさせたいと考えております。
  55. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 終わります。
  56. 栗原祐幸

    栗原委員長 河上民雄君。
  57. 河上民雄

    ○河上委員 きょうは、宮澤外務大臣に基本的な外交姿勢について少しお尋ねしたいのでございますが、宮澤さんは、外務大臣に就任されましてから、日中友好平和条約の問題あるいは核拡散防止条約の問題その他等々において、しばしばこの委員会で、その姿勢が前後したり、大臣が言われたこととまたよそから聞こえてくることとは違ったりいたして、いわゆる腰が座ってないような印象を、この質疑応答の中では与えているのではないかというような印象を私ども持っているわけでございます。これは就任早々のためということもあろうかと思いますが、さらに日韓の問題などについても同様でありますが、しかし、この委員会でそういうまちまちな印象といいますか、前へ進んだり後へ行ったりというような感じを与えているとすれば、外国に対して一層そういう感じを与えるのではないかという懸念を私は持っておるわけでございますが、だんだん日中平和友好条約交渉が少しずつ煮詰まってきたようでございますので、ひとつここで宮澤外務大臣の基本的な、不動の姿勢を示していただきたい、こういうふうにお願いしたいと思うのでございます。  まず、日中平和友好条約交渉が具体的に進んでいるという御報告を先ほどもいただきましたが、先ほどの大世の御答弁の中に、一、二にわかに同調しがたい点もある、それにもかかわらず、的な条約の条文の詰めを並行して始めつつある、全体としては、雰囲気としては非常にいいと思っている、一、二のにわかに同調しがたい点を克服できれば今国会中に調印、提案できるようになるだろう、こういうようなお話がございますが、大体そういうふうに承ってよろしいわけでございますか。
  58. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先刻、私の声がちょっと小さかったのかもしれませんけれども懸案懸案として、場合によりまして、その他の部分文字に書いてみるのも一案かもしれないというようなことを考えておりますということを申し上げましたけれども、実はまだその段階に至っておらないわけでございますので、その点はそのようにひとつ御理解を願いたいと思います。
  59. 河上民雄

    ○河上委員 そういたしますと、同時並行といいますか、懸案懸案として残しながら、個々の条文の詰めや突き合わせまではまだ人っていない、こういうことでございますけれども、しかしもし必要であればそういう方向で行きたい、こういうことでございますね。一、二と言われましたけれども、にわかに同調しがたい点というのは、もうすでにこの委員会でも、あるいは他の委員会でも大臣が示唆されているやに報道されておりますけれども、具体的にはどういう点でございますが。
  60. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは先方のお立場もあり、公の場で交渉しておるわけではございません。公開交渉しておるわけではございませんので、私はそのものをちょっと申し上げないことにしておるわけでございますけれども、これは先日来この委員会でしばしば御議論になり、あるいは報道もよくされているような種類の問題でございます。
  61. 河上民雄

    ○河上委員 そういたしますると、すでに二十六日の新聞で報道せられておりますように、台湾の帰属問題については共同声明の基礎に立ってとか、あるいは基づいてとかいうような表現で処理する方針をとりたい、それからいわゆるアジア・太平洋地域での第三国の覇権反対というこの共同声明の第七項にある部分につきましては、そのように明記することは政府としては適当でないと考えている、この二点を大体指しておるわけでございますか。
  62. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 賢明な河上委員の御推察にお任せいたしますけれども、そういう種類のことにつきまして、私どもいろいろ頭を悩ましておるわけでございます。
  63. 河上民雄

    ○河上委員 いま東郷次官と陳楚大使との間で事務的に東京で折衝しておられるわけでございますから、いまのような御答弁もある程度やむを得ないかもしれませんけれども、もしそういうような実務的な立場の違いからなかなか先へ進まないという場合、これは日中友好の立場から見ましても、この条約締結するというのは共同声明の精神からいっても当然やらなければいけないととでございますので、ここに政治的な解決を図るというようなこともやはり必要になってくるのではないか。そういう場合に、大臣として先方の首脳に対していわゆるスキンシップといいますか、ひざを交えるような機会を持つ必要があるのではないかというふうに私は思うのでございますけれども宮澤外務大臣のお考えではいかがでございますが。たとえば、いま北京へ行くにはかつてと違いまして、蓼承志氏の表現ではないですけれども、朝、浅草でてんぷら食って、夕方北京でアヒルが食えるというような時代でございますので、あまり実際の政治日程に差し支えなくそういうことも考えられるのじゃないかと思うのでありますが、大臣、こういう問題についていかがでございますが。
  64. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この条約交渉との関連では、私ただいまそういうことを考えてはおりませんで、先方の東京におられる大使も有能な人であり、本国からの請訓に対しては忠実な方でありますし、私どもも次官が交渉に当たっておりますので、大局的に両方が物事を考えれば妥結の道はあるであろう、そのルートで交渉を完結したいと考えております。
  65. 河上民雄

    ○河上委員 かつて日中航空協定締結に先立ちまして、大平外務大臣が北京に足を運ばれた先例もあるわけでございますが、それはさておきまして、これは非常に率直な表現になるかもしれませんけれども、田中内閣に対する中国側の評価というものは非常に高い、日中共同声明締結するために非常に決断した指導者という形で非常に高い評価を与えておるわけでございますけれども、その田中内閣が倒れた後、今度の三木内閣はどういうような姿勢で臨んでくるだろうかという期待と、やや手探りの感じもあるのではないかというふうな気もいたすわけでございます。  昨年の参議院選挙の後、三木、福田、保利三有力閣僚が引き揚げたわけでありますが、それが今回の内閣では三木、福田両氏が主要閣僚として入閣しておるわけです。もう一人の保利氏をこの前北京に招待したというようなこともあるわけでございまして、そういうようなことをいろいろ考えますときに、宮澤外務大臣としてはこの条約締結交渉とは別にしたいということでございますが、もし別にするとしても、北京に行かれること、そしてまた中国首脳を日本に招くというようなお考えはないかどうか、私はぜひそうされたらよいと思うのでございますけれども大臣のお考えを伺いたいと思います。
  66. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまお答えできますほど具体的な案を持っておりませんけれども、いずれにいたしましても、両国の首脳が行き来をするということは、これは日中間に限りませんけれども、大切なことであると思っております。
  67. 河上民雄

    ○河上委員 三木内閣の外交の姿勢というものを基本的に中国側と腹を打ち割って話す、そして理解を求めるという機会を持つことが、具体的ないろいろの条約あるいは実務協定締結促進あるいはその他一般的な日中友好関係を増進するために非常に重要ではないか、こんなふうに思っておるわけでありますが、ぜひそれを早い機会に、適当な時期を選んででありましょうけれども、ぜひ早い機会にされることを強く求めたいと思うのでございますが、重ねてひとつ大出のお答えをいただきたいと思います。
  68. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま具体的な計画を立て得ない段階でございますけれども、御意見はよく参考にさせていただきます。
  69. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、さきも鯨岡委員から御質問がありましたが、日ソ漁業の紛争についてちょっと伺いたいと思うのでありますが、この問題については、政府はいま沿岸の操業協定交渉ソ連側に申し入れ、東京とモスクワに政府間の紛争処理委員会を設けることを考えているというふうに伝えられておりますけれども、この方針はどの程度具体化しておるか御報告いただきたい。
  70. 橘正忠

    橘政府委員 日本近海でのソ連漁船の操業につきましては、昨年の十一月末から十二月にかけて専門家が集まりまして会議を開きまして、その際にいま御指摘の協定を結ぼう、そういう交渉をやろうという双方の合意がございました。したがいまして、ただいまわが方でソ連との間に協定交渉に入るべく準備を進めますとともに、ソ連側に対しましても、三月前半の早い時期にそういう交渉に入ろうではないかということを、外交ルートを通じて申し入れておる状況でございます。
  71. 河上民雄

    ○河上委員 最近国内問題にもなっておりますけれども日本の沿岸漁業紛争が起きております場所は、三海里説をとる限りいわゆる公海であって、しかも日ソ間に全くの漁業協定がない、そういう状況では交渉を進めていくしに非常にまずいということでございますけれども、それでは日本側から具体案をもうすでに用意しておられるのかどうか、それとも、ともかく紛争処理機関をつくるということにいまはとどまっておるのか、その辺を伺いたいと思います。
  72. 橘正忠

    橘政府委員 ただいまソ連との間での本件に関します協定、その協定の折衝を申し入れておりますので、わが方もその時期までにはわが方としての協定考えを固めるべく、ただいま鋭意準備を進めておるところでございます。
  73. 河上民雄

    ○河上委員 最近の新聞の報道にも出ておりますけれども海洋法会議の事前折衝の段階で、経済水域二百海里というのはほぼ固まるだろう、こういうようなことでございますが、そういう体制の中で、一体日本の沿岸漁業をめぐる日ソ間の紛争というのはどういうふうになるだろうか、私ども非常にそういう点を憂えるわけでございます。いま政府がソ連交渉しますのは、三海里説を前提としたいまの紛争だと思うのでありまして、その範囲内において日本漁民をどう救済するかということ、あるいは補償を求めるかということだろうと思うのでありますが、もしこの三百海里経済水域、エコノミックゾーンが認められた後これは一体どういうことになりますか。特に日本の場合は北太平洋の漁場との関係がございますので、もし日本ソ連に対しまして、北太平洋で日本漁業既得権というものを二百海里説の中で主張した場合、今度は逆にソ連の方から現在の日本沿岸の漁業一つの既得権として主張される、そういうおそれはないのかどうか、そういうふうなことを含めて考えますときに、いま行われております交渉というものは、そういうことを踏まえながらやっておるのかどうか疑念なしとしないのでございますけれども、いま政府はその点どういうふうにお考えになっておられますか。
  74. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど政府委員から申し上げました交渉は、現在日本沿岸に起きておりますところのあのような出来事について、いわゆる漁具、漁船等についての災害を与えた場合の補償の問題であるとか、あるいはまた日本漁船と競合しない形で漁をするならしてもらいたいとか、そういったような当面のあの問題につきまして日ソ間で取り決めをしたいということでございます。  他方で河上委員の御指摘になりましたような問題は確かに非常に複雑な影響を持つと思います。わが国経済水域が二百海里になるということになりますと、恐らくはいまの太平洋岸におけるああいうソ連漁業というもの、これは既得権というほどのものは私はないように存じますから、それには多分有利な結果になると思いますけれども、今度は別途、わが国が出漁しております北方の水域における問題というのは、逆にむずかしい問題になってくる可能性が高うございます。この場合、やはり二国間の交渉というものがその後に残ってこなければ困るのではないか、そこのところは非常にむずかしいことでございますけれども、海洋法ができて経済水域ができたから全部それで新規まき直しというようなことでは実際困りますので、二国間交渉というものはどうしてもその後に残ってこなければならないし、またいわゆる既得権を持っておるわが国といたしまして、それを主張することは別段間違いでない、主張しなければならないのではないかと思っております。
  75. 河上民雄

    ○河上委員 そういたしますと、この問題は、いま起きております日本沿岸での漁業紛争について、いまある紛争処理委員会というのは、当面の三海里、十二海里を前提とした紛争処理であって、今後の問題は別途日ソ間あるいは日米間あるいは日加間、そういうような形で二百海里の経済水域の中における漁業既得権を今度は国際条約じゃなく二国間で主張したい、こういうふうに伺ってよろしいわけでございますね。
  76. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのように考えておるわけでございます。
  77. 河上民雄

    ○河上委員 ちょっと条約局長に伺いますけれども海洋法会議ではそういう個々の二国間の交渉の問題というのは、日本だけの問題じゃなく、それぞれの国であると思うのでありますけれども、そういう二国間交渉海洋法会議の中でどのように位置づけられるのか、それとは全く別個に、それぞれの国が従来の外交交渉の形でやるのか、その辺ちょっと伺いたいと思う。
  78. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 御承知のように経済水域がどういうふうな制度になってまいりますか、まだ実はその結果をいま判断することはできないわけでございます。ただ、在来と申しますか、昨年のカラカスにおける海洋法会議におきまして提案されておりますいろいろな考え方、ないしは提案というものから見ますると、またわが国の立場から行っております主張からいたしますと、経済水域三百海里の中において、すでに持っておりますところの漁業利益、これを尊重しなければならない、考慮されなければならないということを主張しているわけでございます。こういう考え方というものがどの程度今度の経済水域の中で取り入れられますか、これは会議の帰趨を待たなければならないわけでございます。しかし、わが国としましては、そういう経済水域、海洋法制度のもとにおいて、わが国の持っております漁業利益が、できる限り最大限に認められることが望ましいという観点から、この海洋法会議に対処してまいりますことは、御承知のとおりだろうと思います。  恐らく、私どもが想定しておりますところでは、経済水域の中でそういう漁業利益が認められるということになってまいります場合に、具体的な漁業の操業あるいは規制の問題は、関係国間で協定を結んで合意をするという形になってこざるを得ないだろうというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、いまの近海漁業における日ソの協定の問題についても、それが、経済水域ができるという場合にどういう形になってくるか、どういう調整を必要とするかということは、その時点において検討せざるを得ないというふうに考えているわけでございます。
  79. 河上民雄

    ○河上委員 ちょっとしつこいようでありますけれども、そうすると、AとBという二国間だけが経済水域における既得権を相互に認め合うというようなことが仮に起こりまして、Cという第三国が、それはおかしいじゃないか、おれにもどうこうという場合、既得権がないものは認めないということで処理ができるのかどうか。新しい漁獲の能力が、技術水準が高まってきて、おれたちにも認めさせろというふうなことを仮に言ってきた場合に、排除するだけの力を持っておるのかどうか、その点だけ伺いたいと思います。
  80. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 その点も、経済水域がどういう形になってまいりますか、まだわからないものですから、まだ非常に明確な形でお答え申し上げることはできませんけれども、基本的な考え方としましては、経済水域については沿岸国管轄権が及ぶというのが前提でございますから、その沿岸国とその第三国、いまCとおっしゃいましたけれども、との間の関係の問題ということになってこざるを得ないだろうと思います。
  81. 河上民雄

    ○河上委員 それでは、当面の問題と海洋法会議との関係はかなりはっきりわかりましたので、次の問題に移りたいと思うのでありますが、日韓経済協力の問題について大臣のお考えを承りたいと思うのであります。  新聞報道によりますと、韓国の南副総理がアメリカから帰国する際に日本に立ち寄られまして、大臣と会見をされたやに伺っておりますが、その際、近い将来日韓閣僚会議を開きたいという点で合意ができたやに伝えられるのでありますけれども、この報道は事実でございますか。
  82. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私との間の話に関します限り、韓国副総理の言われましたことは、日韓閣僚会議は、もう今日ではいわゆる具体的な経済協力等々の話をする機会ではないのであるから——これはかつて両国でそういう合意をいたしたわけでございます。そういう機会ではないのであるから、これは過去のいろいろの一、二年の不幸なことはもうここでひとつ忘れて、もう一遍本当の友好関係に戻ろうという、象徴的な、モメントという言葉を使いましたのですが、そういうモメントとして考えようではありませんかと、そんなようなお話でございました。
  83. 河上民雄

    ○河上委員 南副総理はそう言われたわけでございますけれども大臣の方ではどういうふうにお答えになられたわけですか、
  84. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点は、はからずも私の考えておりましたことと同じことでありまして、ただただ急ぐということではなく、そういう環境がいま申しましたような目的に適したところまで熟してきたときにと私も考えておりましたものですから、その点では、はからずも似たような考え方先方もしておられるということを私としては確認することができたわけでございます
  85. 河上民雄

    ○河上委員 そういたしますと、いわゆる日韓経済協力の時期とかあるいは額を決めるのは日韓閣僚会議ではなくて、そこでサインするというか、ゴーのサインをするのではなくて、もうすでに実務的な段階に、実務的なレベルに任せてしまっている、こういうふう印象づけられるのでありますけれども、そういうことでございますから。
  86. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのとおりでございまして、それは、たしか一昨年でございますか、一番最後の閣僚会議のときに、今後そういう扱いにしようということは両国で合意をしてございます。
  87. 河上民雄

    ○河上委員 大臣は、また南副総理は、経済援助を含めてそういう交流を再開するにふさわしいモメントであり、またそういう雰囲気である——南副総理の言葉によればモメントと言い、宮澤外務大臣は、そういう雰囲気ができた、雰囲気づくりができたというふうに判断したとおっしゃっているわけですけれども……。
  88. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いや。できましたときに開こうではないか、また、開くとすればそういうモメントにしようではないか、こういうことであったわけでございます。
  89. 河上民雄

    ○河上委員 そういたしますと、日韓閣僚会議を開催するための条件ということにつきましては、実はいままで、大平外務大臣あるいは木村外務大臣の時代にいろいろ論議され、確認されてきたと思うのでございます。特に木村外務大臣の時代には、日韓外相会議の開催問題については、金大中事件のフォローアップなど、日韓間の友好的雰囲気が整うことが前提だというような条件がつけられておったように思うのでありまして、そういうことはこの国会委員会でも再三確認されたところであります。この金大中事件の解決ということが一つ条件であるということは、いままで何度も確認されたはずでありますが、そして宮澤外務大臣も、金大中事件のこともあり、様子を見守りたいというような御発言もかつてあったわけですが、そういうことと、南副総理との会談でお互いに語られたこととかなり食い違いがあるように思うのでありますけれども宮澤外務大臣はいまでも、木村外務大臣の言明のように、日韓の友好的な雰囲気というものの一つを見分ける条件として、金大中事件の解決というものを、やはりかたくこれに重きを置かれるのか。置かれなければいけないと思うのでありますが、外務大臣のお考えはいかがでございますか。
  90. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 雰囲気とかモメントとかいうのは、ある程度総合的な、全体的な判断の問題でございますので、何がどうならなければというふうに必ずしも結びつけて申すわけにまいらないと思いますけれども、ただいまとして私は、その雰囲気がもう一つだ、雰囲気がいま熟しているというふうにはやはり考えておりません。  その一つのそう考えます理由を申せとおっしゃれば、たとえば金大中氏事件の、いわゆるわが国における警察の捜査と韓国側における調査の結果がいかにも突き合わないまま現在残っておりますので、こういうことあたりも、やはり私が何となくもう少し雰囲気が足りない、熟さないなと考えておる一つの理由ではございますけれども、どれどれがどうなったらというような雰囲気とかモメントとかいうのは、そういうふうに厳密に結びつけて考えるべきものではないと思っております。
  91. 河上民雄

    ○河上委員 先般、民青学連事件に関連して逮捕せられました諸君の釈放ということがありましたけれども、その問題に関連しまして金大中氏がいろいろ述べた言葉の中に、自分も日本から強制的に拉致された被害者の一人であり、自分の人権問題は依然未解決であるというふうに言っておるわけでございます。そういうような点から見ましても、この問題は、今回のいわゆる釈放をもってすべて解決がついたというふうなことになることは非常に困難であると私どもは思いますが、いま大臣がいま一つというふうに言われましたのは、どれということは言えないというお話でございますけれども、そういうことを全部含めて、やはりいま一つというふうに感じておられるというふうに私どもは理解してよろしゅうございますか。
  92. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その御理解で結構だと思いますが、実は金大中氏の人権ということにつきまして、私どもは、金大中氏がいわゆる韓国市民並みの、一般並みの政治上の政治活動の自由等々を与えられるべきだというふうに考えておるわけでございます。よくはっきりしたことは申し上げられませんけれども、報道等で見ますと、金大中氏は現在かなり韓国としては許される限りと思われる政治的な活動をしておられるようである。それをわが国における政治的自由というものと比べることは、私は無理であろうと存じますが、韓国市民に与えられていると同等の政治的活動の自由は与えておられるように、はっきりはいたしませんが報道などで想像をしております。  他方で、出国の自由、もし希望されれば出国の自由ということがもう一つ考えられておるわけでございますけれども、それは韓国の国内の問題と選挙違反の問題がある。これが済まなければということになりますと、それはそれで確かに出国を妨げる一つの理由であると韓国が判断されるなちば——だからといって、韓国市民並みの自由がそこにないとはちょっと申しにくい。でございますから、韓国における自由とわが国における自由とは違いますものの、一般的に金大中氏が韓国市民並みの自由を回復したと考えても、余り事実と遠からざるところではないかというふうに思ったりもいたしますけれども、いずれにしても、その辺が直接に私どもが知り得ないことでございますから、きちんとした判断はできずにおるわけでございます。いろいろなことを含めまして、日韓閣僚会議を開く雰囲気はまだ熟していない、熟しているとはまだ申しがたいということに考えております。
  93. 河上民雄

    ○河上委員 いま宮澤外務大臣が、金大中氏の人権問題についての一つの解釈を示されたのでございますけれども、私がちょっと紹介いたしました金大中氏の言葉にも端的に出ておりますように、自分も日本から強制的に拉致された被害者の一人でありと、こういうことになっておるのでありまして、拉致されたというこの問題がはっきりしない。つまり金東雲氏の事件というものがはっきりしない限り、やはりこの人権問題というのは完全に解決したとは言い切れないのではないか。私は、その点をちょっと御注意申し上げたいのでありますが、その点はいかがでございますか。
  94. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういう意味でございますと、私が先ほど金大中氏事件についてのわが国の警察の捜査、韓国警察の調査云々と申しましたのは実はその面でございまして、その点については私どもはまだ十分に納得をしていない、そのとおりでございます。
  95. 河上民雄

    ○河上委員 そういたしますと、日韓閣僚会議を開くにふさわしい雰囲気づくりがまだできていないといたしますならば、いま韓国でしきりに報道されております、二億ドルないしは二億五千万ドルとも言いますけれども、そういう対韓経済援助というものが開始されることはまずあり得ない、先ほど事務的なレベルに任したとは言いますけれども、あり得ないと、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  96. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは先刻も申しましたとおり、閣僚会議というものと経済協力というものはいわば別である、経済協力は両国の実務者の間で決めていこうということにすでになっておるわけでございますので、いま私ども本当に韓国の国民の民生安定向上に役立つと考えられますような、適当なプロジェクトは何であろうかということを各省の間で検討いたしております。これは七四年分と一般に言われているものでございますけれども、その結論がほぼ出ましたら、韓国の実務者と相談をいたしまして、その目的にかなうプロジェクトがありましたら決定をしてまいりたいと思っておりまして、そのことと閣僚会議の開催とは、冒頭に申しましたように、分けて考えるということに両国の間にすでに閣僚会議において合意されておるわけでございます。
  97. 河上民雄

    ○河上委員 そのゴーのサインを出すことについては、国会の論議とは全く無関係にやるというのですか。この国会の論議というものを踏まえないで、実務者だけでやれるというようにお考えですか。
  98. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もとより国会の御論議は十分私ども承り、また重大な決定の際の判断要素として考えております。すなわち、国会でしばしば御指摘がございますのは、韓国の政治のあり方の問題、あるいは過去において経済協力が必ずしも適正な効果を上げていないといったような問題、あるいはまた御指摘なさるお方によりましては、むしろそこから好ましからざる事態が生まれているといったようなこと等がしばしば国会で御指摘を受けておるわけでございますので、私どもその点は十分考えまして、できるだけ民生そのものの安定向上に役立つような、韓国の経済、社会がよりよくなるようなプロジェクトがあるものならば選んでみたい。もとよりそれを取り行うに当たりましては、国会でなされました御議論をその場合でも十分に頭に置いてやっていきたいと思っております。
  99. 河上民雄

    ○河上委員 余り時間がございませんから、次の機会にさらに詰めて伺いたいと思いますけれども、初めは日韓経済協力の活動を再開するために日韓閣僚会議を開きたい、その開く雰囲気はまだできていないということで、今日まで事実上七四年度分も引き延ばされてきているわけですけれども、今度は日韓閣僚会議はそういう経済協力とは無関係とは言わないけれども、それとは別に実務者レベルで行い得るんだということになってきておるようでございます。そうなりますると、この金大中事件の解決あるいはその他の問題がたな上げされて経済協力というものが再開される、進んでいくという危険を非常に強く感ずるのでありますが、私はその意味におきまして、当委員会を初めとする国会のこの問題に対する論議というものが、対外経済援助に対してはっきりともっと反映するようなことがどうしても必要である、こういう感を一層強くしたようなわけでございます。この問題はさらに今後詰めてまいりたいと思いますけれども、金大中氏の事件以来ここで論議せられたことが、やはり今後の対外経済援助のあり方に、あるいはその方法に反省として生きて来なければ、国会論議というのは全く無意味になってしまうわけです。そういう意味で、私は特にそのことを申し上げたようなわけでございます。  最後に一つ、もう時間が参りましたので伺いたいと思うのでありますけれども、この前、石油の問題につきまして御質問いたしまして、IEAで二月説明されましたキッシンジャー構想、これに対して各国政府はこれを正式提案として受け取っていろいろ論議をしたというふうに御報告がございました。ところがきのうきょうの新聞を拝見いたしますと、肝心なアメリカ政府がキッシンジャー構想、つまり石油の価格の最低限度を決めるというあの考え方は、米政府の正式の政策ではないというようなことを言い出しておるのでありますが、そうなりますと、この委員会に御報告のありましたキッシンジャー構想、またそれに対する日本政府の対応の仕方というのは一体どうなるのか、宙に浮いてしまうのではないかと思うのでありますけれども、この点、外務省当局としてはどういうふうにお考えでございますか。
  100. 宮崎弘道

    ○宮崎(弘)政府委員 アメリカ側はいわゆる新しい油田の開発であるとか、それ以外の代替エネルギーの開発の投資の促進ということを非常に強く主張しているわけでございまして、そのための方策の一つとしまして、たとえばフロアプライスということを考えたらどうだということを言っているわけでございます。しかしながら、フロアプライスの具体的な水準であるとか、あるいはどういう仕組みでこのフロアプライスを実施するかというような点につきましては、詳細はいまだ明らかにしておりませんで、先般のサイモン財務長官の発言もそういったようなことを言っているわけでございます。他方、その後またキッシンジャー国務長官がきのう記者会見で述べておりますが、これまた石油価格が将来仮に非常に下がってきた場合を想定いたしまして、現在これから新しい油田の開発の投資を行う場合に、一定の石油の価格レベルを前提として投資を行うわけでございますが、それが石油の価格が非常に下がってきたために、その投資がだめになるということのないような何らかの方策を合意すべきであるという点につきましては、一貫して主張しているところでございまして、細目の点につきましてなおこれからさらに詰めていかなければいけないことは、アメリカ自体も十分承知しているということでございます。
  101. 河上民雄

    ○河上委員 まあ骨組みはやはりアメリカの提案として受け取っておる、細目についてはまだあまり承知していない、こういうことだと思うのでありますが、しかし、それでは重ねて伺いますけれども、その骨組みについても、つまりキッシンジャー構想について、日本政府としてはこれに反対なんですか、賛成なんですか。
  102. 宮崎弘道

    ○宮崎(弘)政府委員 新規油田が開発されるということは、これはエネルギーあるいは石油の需給の面で好ましいことだと思います。そのために、しからばどういう方策をとればいいかということにつきましては、その方策の内容につきましてなお各国の間で意見が分かれておりまして、日本もこの次のいわゆる国際エネルギー機構の理事会におきまして各国とさらに議論をする予定でございます。  なお、フロアプライス自体につきましても、このフロアプライスが一体どういう機能を果たすのか、あるいはまたそのレベルがどうであるのか等々、いろいろ問題点がございますので、かつまた、いずれ行われると予定されております産油国との対話の際に、産油国側もこのフロアプライスの問題に非常に関心を持っておりますことにもかんがみまして、そのもの自体が困るとか好ましいとかいうことよりも、その内容をわが国にとっても受け入れられるものにし、かつまた、産油国にとってもあるいは消費国、その他のアメリカ、ヨーロッパの消費国にとっても受け入れられるものはどういうものがあり得るかということは、いま部内でも検討している段階でございますし、さらに各国の間で国際的に話し合いをするということを予定しておるわけでございます。
  103. 河上民雄

    ○河上委員 時間が参りましたので私、これで終わりますけれども、三木内閣が成立してもう二月余りになるわけですけれども、その三木内閣の外交姿勢ということを内外に示す一つのメルクマールと、やはり中国との関係をもう一度再確認する意味において、私は重ねて外務大臣に訪中をされること、また締結一つの機に中国の首脳を日本に招くこと、この二点について特に希望をして、大臣に一言だけお答えいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  104. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど申し上げましたように、この交渉中の条約との関連ではただいま私、それを考えておりませんし、その後に具体的にどういう案ということを持っているわけではございませんけれども、両国の首脳の行き来は、日中に限らないことでございますけれども、大変に必要なことであるという点は、河上委員の言われるとおりに考えています。
  105. 栗原祐幸

    栗原委員長 正森君。
  106. 正森成二

    ○正森委員 私は、いま河上委員が質問されたことに関連いたしますけれども、石油の最低価格の問題についてIEAと関連させて伺いたいと思います。  いま局長の方から、意見の食い違いと言うけれども、石油が下がるのをそのままにしておくわけにはいかないから、内容の細かい点については違いはあるかもしれないけれども、大筋は米政府当局では変わりがないかのように受け取れる発言がありました。私の聞き違いであれば結構ですが、しかし二十四日の夜にナショナル・プレス・クラブでサイモン・アメリカ財務長官の話された内容は、報道するところでは、いまの需給関係から見て一バレル当たり数ドル下がるはずだ、市場の動きに任せることが妥当である、これがサイモン財務長官の意見だと報道されているんですね。そうだとするとキッシンジャー長官が、たしか二月三日だったと思いますが、同じくナショナル・プレス・クラブで演説をされた内容というのは、単に商品協定であることだけでなしに、代替エネルギーの開発のためには一定の高価格が必要なんだという考え方になっておるわけですね。そうすると、これは小さな意見の相違じゃなしに、一方は市場の動きに任せるのが当然だと言い、他方は単なる商品協定どころか、国内における代替エネルギー開発のために高価格を維持しなければならない、こういうことでありますから、根本的に食い違うと思うんですね。それについての外務省の認識及びそれに対する対策を明確に伺いたい。
  107. 宮崎弘道

    ○宮崎(弘)政府委員 新規の油田の開発ないしは代替エネルギーの開発のための投資を促進する必要性についてはほぼ異論のないところでございます。ただし、そのための方策につきましてはいろいろな方策が考えられておりますし、議論されているわけでございます。仮にいまの石油の価格を前提といたしまして新しい投資が行われたと仮定いたします。ところが、その後、石油の価格が非常に下がったという場合に、いま行われている投資が完全に失敗に帰さないようにするために、アメリカ自身、四つほどの方策を述べているわけでございます。その中で、最低価格の設定というのも一つの方策であり、アメリカがこの方策に対して相当の関心を示していることは事実でございます。  そこで、日本側におきましても新しい投資が行われて油が掘り出されるということ、あるいは代替エネルギーが開発されるということ自体には賛成でございますし、そのための何らかの手だてを合意するということにつきましても、前向きに対処しているわけでございます。  ただし、最低価格の問題につきましては、これが一体どういう価格水準であるのか、どういう機能を果たすのか、これを決めました場合に、産油国あるいはアメリカあるいは日本、こういったような異なった経済事情にある国の間にどういう利害があるのかというような問題につきまして、目下国内でも、あるいはまた国際的にも議論が闘わされている状況でございます。
  108. 正森成二

    ○正森委員 いまいろいろお話がありましたが、私が伺いたいのは、端的に言ってサイモン・アメリカ財務長官は、数ドル下がるはずだから、市場の動きに任せるのが妥当だと言っている。キッシンジャー長官は別のことを言っている。そこでサイモン財務長官のこの考え、みずから、キッシンジャー長官の提案はアメリカの正式提案ではないと、こう否定しているのですけれども、サイモン財務長官のこういう考えと、キッシンジャー長官のさっきの提案と見られるものには、根本的な見解の相違があると認めるのかどうか、それをまず最初に伺いたい。
  109. 宮崎弘道

    ○宮崎(弘)政府委員 キッシンジャー国務長官の考え方によりましても、いま言われております最低価格と申しますのは、現在の価格よりもかなり低いレベルに設定することを前提としているわけでございます。他方、サイモン財務長官の方も、やはりいまの価格よりも下がってくる、これは、市場の状況に任しておけばもっと下がってくるのではなかろうかという点をとらまえて言っているわけでございまして、その間に必ずしも矛盾があるとは考えておりません。ただ、ニュアンスの差があるやに見ております。
  110. 正森成二

    ○正森委員 どうもわが国外務省局長がそういうような認識で、果たしてエネルギー関係について確固とした方針が立てられるのでしょうか。これは根本的に違った考えじゃありませんか。一方のサイモン財務長官は、市場の動きに任せることが妥当と、こう言っているのです。輸入課徴金にしろあるいは関税にしろ、そういうものはやらないで、市場の動きに任せることが妥当だ、こう言っている。キッシンジャー長官は、それはとんでもないことだ、IEAの間に他国の主権にも関係するような共通関税をつくろうということも提案の一つとして入れているぐらいですね。ですから、これはニュアンスの相違などというものじゃなしに、明確な意見の相違があって、それをどう調整するかはアメリカ政府が決めるでしょうけれどもわが国の外交当局としては、アメリカ政府内部に深刻な意見の相違があるということをまず認識してかかるというのが政策を立てる第一歩、初歩的なことじゃありませんか。それがニュアンスの違いだぐらいのいいかげんなことで、対策なんか立てられるわけがないんじゃないですか。サイモン財務長官自身がキッシンジャー長官の政策を否定して、これはアメリカの正式政策ではないと。わが国の閣僚なんかでこんなことはめったに言う人はおらぬと思うんですね。同僚の大臣、しかも国務長官の言うことを、わが国の正式の政策ではないというような思い切ったことを言っているのですから。それをどう思っているのですか。単なるニュアンスの相違だと思っているのですか。そうすると、わが国外務省のニュアンスというのは大分幅の広いものですね。
  111. 宮崎弘道

    ○宮崎(弘)政府委員 サイモン財務長官の演説の当該部分、原文がございますが、サイモン財務長官も、国内の投資が油の価格の低下に対するメカニズムを大統領に与えることが必要であるということを言っているわけでございます。さらにそれに続きまして、そのメカニズムはいろいろな方策で実施できる。たとえば一律の最低価格、フロアプライスを決めるということや、あるいは関税をかけるということや、あるいは可変的な関税をかけるということ、こういったような方策でできるということを言っているわけでございます。したがいまして、サイモン財務長官の発言も、投資が失敗に帰さないためのいろいろな政策手段が必要だということを言っている点におきまして、先ほど申し上げましたように、キッシンジャー長官の発言と非常に際立って違っている点はございません。  なお御参考までに、サイモン財務長官の発言の後に、キッシンジャー国務長官が再び記者会見をいたしまして、先般のキッシンジャー国務長官の演説は、大統領の承認を得てなされたものであるということを明らかにいたしておりますので、アメリカ政府の見解は、このキッシンジャー長官の発言を基礎にしているというふうに考えております。
  112. 正森成二

    ○正森委員 いまいろいろと言われましたけれども、キッシンジャー長官がサイモン財務長官のナショナル・プレス・クラブでの演説の後でわざわざ記者会見して、自分の言ったことが大統領の承認を得ているというようなことを言わなければならないこと自体、いかに深刻な意見の相違があるかということをみずから認めていることではありませんか。ですから、いま局長が演説を自分なりに訳したようなものを読み上げられましたけれども、後でその原文をお持ちでしたら、委員長を通じて私に提出していただきたいと思います。私はそれが、局長はどういう部分を読み上げたのかわかりませんけれども、恐らくそれは、サイモン財務長官としては、石油の価格がずうっと下がってきた場合に、国内の代替エネルギー開発のためにとるべき手段としては、関税をかけるという場合もあるし、消費税をかけるという場合もあるし、あるいは国内のその産業に国家が補助金を出すというような、いろいろな可能性のある政策があるということを言った上で、なおかつ、石油の輸入の値段というのは市場の動きに任せることが妥当であって、それ以外の方策をアメリカはとることは好ましいということを言ったに違いがないと思うのですね。そうでなければ、キッシンジャー氏がわざわざ後から記者会見をするわけがない、こう思うのです。  そこで、局長ではなしに大臣にお伺いいたしたいと思いますが、二月五日に私が予算委員会の総括質問で伺いましたときに、大臣としましては、石油の最低価格というのは、商品協定としてはある場合には消費国との間の交渉考えるという余地がある、しかしそれを代替エネルギーの開発という問題に結びつけて、そのために輸入課徴金とか関税をかけるということになると、そこには論理の飛躍があって、そういう場合には、そういう産業に対して国内的にいろいろ奨励する措置もあるはずである。こういう見解、つまり私が言いました国内で補助金を出すとか、そういう方策もあるので、それを一律に諸外国を巻き込んで、共通の関税を取るとかいうようなのには商品協定プラスアルファが入っておるから、これは論理の飛躍がある、たしか私の理解に誤りがなければそういう御答弁だった、こう思うのですね。いまアメリカ政府部内に、私の見るところでは、局長はひたすらニュアンスの相違だと言っておりますが、重要な意見の相違があるということが見られるときに、外務大臣としては、前の予算委員会総括質問での私の質問に対する答弁と現在もお考えが変わっておらないかどうか、あるいはこういうサイモン財務長官の言明によってお考えが変わったかどうか、それをまずお聞かせ願いたいと思います。
  113. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私が最初にいわゆるキッシンジャー提案なるものを聞きましたときに考えましたことは、これは恐らく何かの商品協定というものを考えているのであろうなあ、それはまあ一つのものの考え方だろうということ、ともう一つ新規油田なり代替エネルギーを開発するために何か奨励策が必要である、そういうことをきっと言っているのであろう、しかしそうかといって、フロアプライスだけがただ一つの案ではないはずであって、いろんな考えがそこにはあるはずだということを私思いましたし、また予算委員会でもこの委員会でも実は申し上げたと思います。  その考えはいまも私変わっておりませんで、ただこういうことはあろうと私は思うのでございます。キッシンジャー氏にしましてもサイモン氏にしましても、アメリカがこういう案であると言ったら、それが即実行されるというふうにはむろん思っていないわけで、これは多数国ことにIEAというようなところでいろいろの議論をして、それでどこかへ船が着くわけでございますから、それは悪い意味でなく戦術的ないろんな網の投げ方をする、あるいはボールの投げ方をする、これはよくあることでございますから、それがそのまま即実行できる、するというつもりで言っておるとは限らない。現に先ほど政府委員が申しましたように、キッシンジャー氏自身もフロアプライスということをIEAで議論をしてもらいながら、それがどのくらいの価格だということを全然言っておりませんし、ただフロアプライスだけなのか、上限下限になるのか、その辺のことも何も申しておりません。ですから私の想像では、キッシンジャー、サイモン両氏合わせまして、とにかく新しい油田あるいは新規エネルギーを開発するときに、何かの特段のことをしておかなければ新しい投資は行われませんよ、危なくってなかなかやる人がいないだろう、そういう点での世界的な合意、世界的といいますか消費国側の合意、それをいまのところはねらっているのではないか。それから先はまだ千変万化いろいろ、ことにIEAの会議がございますから、まだこれからいろいろな変化があっていくんではないかと思っております。
  114. 正森成二

    ○正森委員 大臣の方は、千変万化という非常に含みのある言葉で、米政府内部でもいろいろ意見が違うのはあり得ることだということをお認めになったと思うのですね。そしてまた、直接には触れられませんでしたが、予算委員会総括での考え方わが国としては大きく変わるわけではない、そういうことを言われたと思うのですね。そう承っていいと思います。  そこでわれわれは、消費国側の同意のもとに石油価格が下がるならそれは非常に結構なことだ。わが国として代替エネルギーを開発する場合には一般石油の消費者に迷惑をかけないかっこうで、その産業に特別のいろいろな施策を講ずるということはできるわけですから、アメリカ政府内部でも異論のあるようなことについて、IEAで軽々しく追随をなさるということはよもやあるまいと思いますが、新聞の報道を見ますと、これは原油の最低価格制度について、わが政府は三月下旬に開催予定の消費国・産油国合同会議準備会議に臨む基本方針について検討を進めているが、キッシンジャー提案については、そういう措置を支持せざるを得ないという態度を固めたという報道が二月二十日ごろ出ているのですね。それは事実そういうことなんでしょうか、それとももう少し含みのある態度になっておりますか、お答え願いたい。
  115. 宮崎弘道

    ○宮崎(弘)政府委員 キッシンジャー長官の演説につきまして、IEAにおきます米国代表が最低価格というのを含めまして、四つくらいの手段について論議をしておるわけでございます。私どもは、さらに四つ以外にまだいろいろなほかの手段もあり得るのではなかろうかということで、いろいろな手段についての利害得失を鋭意検討中でございまして、三月の上旬にございますIEAの理事会に備えまして関係省の間でこれを詰めておるわけでございます。  他方におきまして、欧州共同体の方でもいろいろな意見が出つつございますので、そういうものもにらみ合わせ、かつまた、将来予想される産油国、消費国の会議の際、この際にやはり産油国側からも、この最低価格ないしは何らかの意味の価格についての提案があるということも頭に入れながら、とりあえず三月の上旬のIEAの理事会に対します方針を目下策定中であるということでございまして、それ以上にまだ出ておりません。
  116. 正森成二

    ○正森委員 それでは、それ以上に具体的な案が出ていないというように聞かしていただきます。  そこで通産省が来ておられたら伺いたいのですけれども、IEA「国際エネルギー計画に関する協定」というのがあります。そこでは条文自体にも、メジャーがいろいろ活動するということを決めておりますけれども、アメリカ政府では、そういうメジャーが国際エネルギー協定に基づいていろいろ作業をするということは、アメリカの独禁法にはっきりと触れるわけですね。そこで、国際エネルギー協定に基づいていろいろ行動する場合には、独禁法に触れないという免責をするということになっておるようであります。それは事実そうなのか。  それから、わが国の石油会社も、この国際エネルギー協定によっていろいろな作業に参加すると思うのですね。たとえばこの規定を見ますと、十九条などを見ますと、国際諮問委員会の意見を聞くというようになっておりますが、この国際諮問委員会には私の承知しておりますところでは、日本の石油連盟が参加しておるというように聞いておるのですね。  そこで通産省としては、国際エネルギー協定に参加するわが国の石油関係の会社について、ある場合には独禁法の免責をするという用意があるのか、あるいはそういうつもりでエネルギー協定署名したのかどうか、その点について伺いたい。
  117. 平林勉

    ○平林説明員 このIEPの関係とそれから独禁法の関係につきましては、御承知のようにアメリカと日本とでは独禁法の体制も違いますし、またこの国際緊急融通計画を動かします場合のメジャーなり日本の会社なりの役割りが非常に違いますので、先ほど御指摘のように、アメリカでは独禁法に関していろいろ検討を進められているようでございますが、私どもといたしましては、現在なお日本の石油会社がどのようにこれに関与するかまだ検討中の段階でございまして、もし参加する、日本の石油会社が関与するということでございますれば、改めてその独禁法問題等について政府部内で検討する必要があろうかと思っております。  なお、先ほど石油連盟が参加しているという御指摘がございましたけれども、現在まだ石油連盟は参加しておりませんで、参加を検討中の段階でございます。
  118. 正森成二

    ○正森委員 国際諮問委員会に石油連盟が参加するために出発したという新聞報道がありましたが、それでは違うんですか。
  119. 平林勉

    ○平林説明員 御承知のように、日本の石油会社は、メジャーと関係のある会社、ない会社、いろいろございますが、いま先生御指摘の、日本の石油企業が出発したという報道は、恐らくメジャーと関係のある会社が、そのメジャーとの打ち合わせに参ったんであろうかと考えております。
  120. 正森成二

    ○正森委員 もう一点伺いたいと思いますが、いろいろあるんですけれども、二十七条を拝見いたしますと、いろいろな情報を事務岡に定期的に提供するということになっております。それを見ますと、hのところに「原油及び石油製品の原価」というのも情報を提供するというようになっておるわけですね。いまわが国の独禁法では、この原価の点は非常に問題になっております。国際エネルギー協定では、こういう「原油及び石油製品の原価」についても、情報を提供するというようになっておりますが、そうすると、国際エネルギー協定によって、こういう原油の原価というようなもの、あるいは石油製品の原価を提供なさるおつもりですか。あるいは、条文上の留保条項に基づいて、それはわが国の国内法ではまだ許されていないから提供しないということになさるおつもりですか、どちらですか。——それくらいのことは勉強して、すぐ答えられるようにしておきなさい。
  121. 平林勉

    ○平林説明員 その国際機関の融通計画が実際に動きます場合に、どのような情報を交換するかということでございますが、その作業グループがいろいろございまして、そこの段階の話でございまして、現在、日本がどのような関与をするかはまだ正式に決めておりません。
  122. 正森成二

    ○正森委員 日本がどのように関与するか決めてないと言っているけれども、条文の中では、原油だとか石油製品の原価を情報提供するということがはっきり決まっているでしょう。ですから、それに対してどういう態度をとるかというようなことは、独禁法の制定でもあれだけ問題になっているんだから、ある程度態度を決めているのはあたりまえでしょう。
  123. 平林勉

    ○平林説明員 現在検討されております点は、いろいろございますけれども、その情報を国として出すか会社別に出すか、これらの点につきましても、まだ検討中の段階でございまして、日本としては態度を決めておりません。
  124. 正森成二

    ○正森委員 時間がもうありませんので、別の方向に行きますが、宮澤外相は、きのう、私も傍聴しておりましたが、予算委員会の第二分科会で、二十年間の長い経緯で見なければならないけれども、朝鮮半島は心配した状態であるという意味のことを同僚議員の質問に対してお答えになっております。これは木村前外相の認識を変更されたというように見ていい発言だと思いますが、そういう御認識ですか。
  125. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昨日申し上げましたことは、私は、かつて昭和二十五年ごろの朝鮮大動乱、あのようなことはその後絶えてなく、また一時は南北の対話すら開かれた。しかし最近になりますと、その対話というものも、どうも当初期待されたほど展開しそうもなくて、小競り合い程度ではあるけれども、少しずつ衝突のあるような状態と、こう見ておりますと、そう申し上げまして、木村前外務大臣も、脅威云々というのは、これは当事者の考えることではあるがという前提でおっしゃいましたので、私の考えておりますこととそんなに違ったことを言われたとは思っておりませんと、このように申し上げたと思います。
  126. 正森成二

    ○正森委員 きょうの御答弁は、木村前外相の御意見と余り変わらないという方を強調されておりますが、しかし私が分科会で実際に傍聴しておったところでは、少しニュアンスは違ったと思うのです。  しかし、それはさておいて、そういう状況のもとで、先ほど河上委員からも質問があったと思いますが、もう少しずばりと聞きますと、福田副総理と南副首相の間では、日韓閣僚会議というのは六、七月ごろには再開できるだろうという見通しを言われているのです。これは外務大臣には直接そういうことはなかったというようなことでありますが、もしそうだとすると、外交の責任者である外務大臣としては、日韓閣僚会議を開くには、もう少しその雰囲気が足りないというか、よくなるという意味のことを言うておられるわけですが、そうすると、政府としては、これはニュアンスの相違があるのかもしれませんけれども、六、七月ごろまでに雰囲気がよくなるという確たる見通しがあるわけですか。その雰囲気の内容はどういうものですか。
  127. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 福田経済企画庁長官と南副総理との間でそういうお話があったということを、私、実は確認をいたしておりませんのです。もしそういうことであれば、私にも何かお話があってしかるべきかと思いますけれども、そうでもございませんので、別段非常にきちっとしたそういうお話があったのではなかろうと考えています。  どのようなことがあれば機が熟することになるかという点につきましては、先ほどもお答えいたしましたとおり、雰囲気とかモメントとかいうものはきちんと定義のできないものでございますから、これがありましたらというふうにはちょっと申し上げかねます。いまちょっとまだ十分でないなという感じを私は持っておるわけでございます。
  128. 正森成二

    ○正森委員 それでは、外務大臣としては、六、七月ごろに再開できるであろうという確たる期日を言うところまでいまはいっていない、こういうように承ってよろしゅうございますか。
  129. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それで結構でございます。
  130. 正森成二

    ○正森委員 時間があと二分ですのでもう一問だけ伺いますが、これは予算委員会の分科会あるいは参議院でも聞かれていることですが、OTHレーダーが、三月から六月にかけて撤去されるということを、二十三日ごろ外務省に通告があったというように新聞報道に出ているところがあります。ところが、答弁によりますと、米側に確かめたところでは、まだそういう確たる返答が来ていないというような答弁があったというようにも聞いているのですが、実際はどういうようになっているのか、もしきょう現在の段階でわかっている一番新しい見解がございましたら、聞かしていただきたいと思います。
  131. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 政府といたしましては、わが国におきますOTH送信施設の廃止に関しまして、アメリカ政府から正式の通報は受けておりません。  ただ、二月十二日に発表されましたシュレジンジャー国防長官の国防報告の中で、一九七五会計年度中、つまり本年の六月の末までに、このOTH関係の送信及び受信施設を逐次廃止する、フェードアウトするというふうに書いてぐざいます。したがいまして、これは米政府の正式の方針であろうとわれわれは解しております。  したがいまして、われわれはこの記述があることを見まして、早速アメリカ側に、日本における ○TH送信施設はどうなるのかということを問い合わせたわけでございまして、まだこれについてアメリカ側の回答は受け取っておらないわけでございます。ただ、そういう国防長官の正式の言明もございますので、われわれとしては、大体その方針に従って決定が正式に発表されるのであろうと考えておる次第でございます。
  132. 正森成二

    ○正森委員 一問だけ。  OTH基地がフェードアウトされた場合に、その基地の跡について、米軍の他の目的に使用せずあるいは自衛隊が使用せず、地元に返還されるというように政府としては考えているわけですか。外務省あるいは大蔵省、どちらでもよろしいが、お答えください。
  133. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 このOTHの施設の廃止の問題につきましては、そういう探知機能が停止されるということでございまして、その通信施設そのものが米軍の他の目的に用いられるかということはまだわかっておりません。現在でもOTH施設は通常の通信施設には用いられておるわけでございます。そういうわけで、米軍としても、これを今後ほかの目的に用いるかもわかりませんし、また仮にそうでないとしても、その後の利用についてはどうなるかということは、米軍の方針が決まった上でわれわれとしてもアメリカ、関係方面と相談してまいるわけでございまして、このOTH機能の廃止ということが、直ちにその施設の全面撤去につながるとは限らないと考えております。
  134. 栗原祐幸

    栗原委員長 永末君。
  135. 永末英一

    ○永末委員 三月にジュネーブで海洋法に関する会議が行われますが、この機会に、政府のこれに対する考え方をただしておきたいと思います。  昨年行われましたカラカスの海洋法会議において、わが政府はどういう点を重要点だと考え、それぞれに対してどういう態度をとったかをこの際報告を願いたいと思います。
  136. 杉原真一

    杉原説明員 昨年のカラカスの海洋法会議におきまして、わが方が最も重点を置きましたポイントと申しますのは、結局、日本が従来、海洋自由の原則に基づいてでき上がっておりました海洋国の伝統的な国際法が根本的に変わる場合に、日本が受けるであろう影響、最も大きなものが海運、漁業というふうなものであることは御案内のとおりと存じます。したがいまして、もちろんそのほか海洋汚染の問題とか海底鉱物資源の問題、深海海底の問題とかございますが、やはり大きく分けまして海運、漁業の問題とお答えできるかと存じます。
  137. 永末英一

    ○永末委員 いま問題点の指摘がございましたが、それぞれについてどういう方針で臨んだかということをお答え願いたい。
  138. 杉原真一

    杉原説明員 まず、海運の問題からお答えさせていただきますが、海運につきましては領海の無害通航の問題、それから海峡の通過の制度の問題、それから海洋汚染防止の問題、それから群島水域の問題等、こういうものがございます。  沿岸国の規制が、今度の新しい海洋法によって拡大され、強化されるという趨勢の中で、日本の伝統的な海運の実績が支障なく行われ得るような制度になるように、もちろん沿岸国の利益にも十分な考慮を払いながら、利用国の立場にも妥当な配慮が払われるような制度にしたいということで、それぞれいま申し上げました問題につきまして主張をいたし、提案をいたしておるわけでございます。  それから漁業の問題につきましては、御案内のとおり 発展途上国側を中心にいたしまして、経済水域二百海里という広大な海域を沿岸国管轄権のもとに置く、こういう基本的な性格を持った新しい制度の提案がございまして、このもとで、日本あるいはソ連等のような、伝統的に遠洋漁業に従事しておる国が受けます被害を最も少なくとどめたいという趣旨から、経済水域の内容を、単に沿岸国が排他的に自分勝手に所持することができるというふうなものでないように、遠洋漁業国の実績にも、あるいは他の内陸国等々にも、妥当な考慮が払われるような制度に持っていくように各種の提案を考え、また主張いたしております。
  139. 永末英一

    ○永末委員 この海洋法会議につきましては、特に発展途上国は重大な関心を持ち、海洋法会議とは別に、それぞれの国々が会合をして方針を固めて臨んでおったと思いまして、これが終わりましても、三月の会議を目前にいろいろな動きがあります。わが国はどこの国と利害を共通しているから、あるいは同じゅうしているからというので相談したり何か準備しておりますか。
  140. 杉原真一

    杉原説明員 これは、海洋法会議が正式に始まります前の準備会議段階から先進諸国の集まり、それから先進諸国の中でも船は船の関係、それから漁業漁業関係等々、持っております利益の関係での集まり、それから地域の集まり、あるいは利益が相反する国がお互いに意見を交換し合って、妥協を図るという意味での集まり等々無数の会合がありまして、わが国の利害に関する限りのグループには属しまして、もう数年来継続して非公式の会議をやってきておるわけでございます。
  141. 永末英一

    ○永末委員 この海洋法会議で論ぜられる問題は、先ほどから話がございましたように、わが国の海運にも、またわが国漁業にも、さらにはまた新しい海底資源の開発にも、さらには安全保障の問題にも関係のある問題である。言うならば、政府としては各省にわたる問題である。したがって、この海洋法会議に臨むに際して、政府としては何らかのこれに対応する総合的な機関を設けましたかどうですか。
  142. 杉原真一

    杉原説明員 第一義的に条約作成会議のことでございますので、一昨年の三月に、外務省海洋法会議関係事務推進本部、略称いたしまして海洋法本部というものを設置いたしまして、直接関係のあります十四省庁に定期的に集まっていただきまして、訓令の作成、情報の交換等々をやっております。もちろんその他の官庁につきましても、問題について必要がある場合には御連絡して御協議申し上げております。
  143. 永末英一

    ○永末委員 先ほど外務大臣は、同僚議員の質問に答えまして、領海十二海里を主張するがごとくせざるがごとく言われておりました。ほかの条件、ほかのいろいろな問題と一括して考えるのだ。ずばり申して主張されるのですか。
  144. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはただいま政府委員が申し上げましたように、いろいろな国の利害が問題ごとにばらばらでございますから、わが国として、できるだけいわば有利な結論に導きたいと考えておりますので、そういう他の問題との関連考えていく必要がある。これは一種のあるいは戦術と仰せられるかもしれませんが、そういう関連がございますので、先ほどお尋ねのように、いま沿海にいろいろな問題がございますから、いますぐにどうかということについては、実は海洋法会議にまちたい、こう思っておるわけでありまして、世界の大勢がほぼ十二海里になりつつあるということは、私どももよく承知はいたしております。
  145. 永末英一

    ○永末委員 十二海里ということになりますと、いわゆる国際海峡問題が新しい様相を呈してくるわけでございまして、もし国際海峡というものがまとまってくるとしますと、わが国の場合どこが国際海峡になりますか。
  146. 杉原真一

    杉原説明員 重立ったところで申し上げますと、北から宗谷海峡、それから津軽海峡、それから対馬西水道、それから名前は詳しくは存じませんが、南西諸島の間に、二十四海里より狭い海峡で外国の船舶が通航している海峡幾つかございます。
  147. 永末英一

    ○永末委員 わが国は、この国際海峡の通過に際してどういう立場をとっているのか。三大別いたしますと無害通航を主張する国と、自由通航を主張している国がございます。わが国の立場はどうなんです。
  148. 杉原真一

    杉原説明員 これはいま先生が無害通航、自由通航と二つに分けて御質問になったのでございますが、実は無害通航に偏ったと申しますか、無害通航的な考え方をしているグループと自由通航に重点を置いているグループとございまして、その間にまた幾多の提案があるわけなんでございます。したがいまして、簡単に、当初米ソが主張いたしておりました公海と同じ完全自由通航派というものは現在もうほとんどなくなっておるわけで、無害通航にいたしましても、最初に八カ国が提案いたしました、完全に一般領海の無害通航だけであるという主張は、かなり影が薄れてきているというのが現状でございまして、現状ではすでにその中間的な各種の提案があるわけです。ところが、現在どれが優勢であるかということはまだ申せない状況です。日本がどの立場をとっているかということにつきましては、提案そのものが、まだどれが優勢であるか、あるいはどれが今後どういうふうな変更を受けていくかということが明らかでない関係上、どれを日本は支持しているとは申せませんが、基本的立場といたしましては、日本は国が貿易によって立たざるを得ず、その貿易の九九・九%は船舶による輸送に頼らざるを得ない国柄といたしまして、端的に申しまして、海峡の通航が、たとえばマラッカ海峡とかロンボク海峡とかの通航が不自由になるということには耐えられないわけで、そういう意味では、基本的には一般領海におけるよりは自由な通航が望ましいという立場に立っております。
  149. 永末英一

    ○永末委員 わが国は軍艦を持たぬのでありますから、自由通航か無害通航かの問題は——特に軍艦に関して激論が交わされたと聞いております。アメリカやソ連は当初自由通航を非常に主張してきた。ところがわが国は軍艦なんというものはないし、海上自衛隊の船もそんなところをうろうろする任務を持っているわけではございません。したがって、現在の外国の領海をわが国の海運関係の船が航行する場合も、国際海峡になった場合にわが国のそういう船の航行するのも、無害航行であってほとんど変わらないのじゃないかと思いますが、いかがですか。
  150. 杉原真一

    杉原説明員 無害航行という概念は、御案内のとおり、沿岸国が自国の平和と秩序と安全に害があるかないかを一義的に判断する権利をもって、他国の船舶の航行を認めるという権利でございまして、その意味では、特に海峡のような場合に沿岸国が、たとえばこれは日本の例でございますが、日本のタンカーは危険であると考えた場合には、直ちに一方的にこの航行を規制する措置をとることができるというふうな制度になるおそれがあるわけでございまして、これでは日本としては非常に困るわけで、国際的にそれが認められるような仕方でなされるならばいたし方ないといたしましても、したがいまして、そういうふうな国際的に承認されるような方法で、船舶の航行の安全とかあるいは海洋汚染防止の措置とかがとられるような制度を織り込み、かつ、通過する船舶には、一義的に沿岸国から通航をとめられないという規定を盛り込んだような制度が実は提案されておりまして、その種類の提案、概括して申しますれば一般領海におけるよりはより自由な制度を織り込んだ提案をわが方は支持する立場に立っております。
  151. 永末英一

    ○永末委員 御答弁が長いのでありますけれども、どうも無害航行よりは自由航行の方に傾いているようで、先ほどお答えになりました宗谷海峡、津軽海峡または対馬の西水道、これに対してわが国は自由通航を認める立場でこの会議に臨みますか。
  152. 杉原真一

    杉原説明員 今度領海が三海里から十二海里になることによってカバーされてまいります主要な国際海峡が世界で百二十ばかりございまして、その中に、いま御指摘の日本関連いたします三つの海峡も含まれておるわけでございます。したがいまして国際航行に利用されている海峡の制度はどういうふうなものになるかという世界的な見地に立って、また日本の利益も十分に守られるということを考えて対処しなければならないということで、特に三つの海峡について、日本がどういう意見を表明するとかいうことはいまのところ考えておりません。
  153. 永末英一

    ○永末委員 私が申し上げているのは、何も国際会議で自分の方に関係のある三つのことを主張せよ、そんなことを言うておるのではありません。ただ、わが国安全保障上、この国際海峡における航行権の問題は重要な問題点であると私は思います。  外務大臣に伺いますが、わが国安全保障上、いまの三つの国際海峡は、私は、無害航行の方針を定め、したがって、全般的にもその方法を堅持しつつ会議に臨むべきであると思いますが、大臣はどう思いますか。
  154. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大事な問題でございますから、もう少し次期までに検討させていただきますけれども、先ほど政府委員がお答えしましたニュアンスにちょっと出ておりますように、どちらかと言えば自由航行というものが望ましいというのが海運国であるわが国の立場であるという点もございますので、統一した立場をとるといたしますとその辺をどういたしますか、問題はよくわかっておりますので、もう少し会議が始まりますまでに検討させていただきたいと思います。
  155. 永末英一

    ○永末委員 この問題は、あるいは海運とか漁業とかいうところに重点が置かれがちでございますけれども、きょうは質問しなかったのですが、郡島理論ということについても、政府は特に小木曽大使をインドネシアへ派遣して研究されておられるはずでございます。この理論もまた、わが国は島国でございますので、どのような適用があるかということもあわせて、安全保障という観点でわが国の方針を定め、そして私は、その方針を持って海洋法会議、ジュネーブに向かわれるよう、ひとつ強く希望しておきます。  終わります。
  156. 栗原祐幸

    栗原委員長 本日はこの程度にとどめ、次回は来たる二十八日金曜日、午後零時三十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、これにて散会いたします。     午後四時十九分散会