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1975-02-10 第75回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年二月十日(月曜日)     午前十時二分開議  出席委員    委員長 栗原 祐幸君    理事 石井  一君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 水野  清君 理事 山田 久就君    理事 河上 民雄君 理事 正森 成二君       宇野 宗佑君    小坂善太郎君       竹内 黎一君    福永 一臣君       保利  茂君    綿貫 民輔君       土井たか子君    渡部 一郎君       永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         法務省入国管理         局長      影井 梅夫君         外務政務次官  羽田野忠文君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省欧亜局長 橘  正忠君         外務省中近東ア         フリカ局長   中村 輝彦君         外務省経済協力         局長      鹿取 泰衛君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君  委員外出席者         警察庁警備局外         事課長     大高 時男君         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君     ————————————— 委員の異動 二月五日  辞任         補欠選任   渡部 一郎君     正木 良明君 同日  辞任         補欠選任   正木 良明君     渡部 一郎君 同月十日  辞任         補欠選任   中村 梅吉君     綿貫 民輔君 同日  辞任         補欠選任   綿貫 民輔君     中村 梅吉君     ————————————— 二月七日  日本国中華人民共和国との間の海運協定の締  結について承認を求めるの件(条約第二号)  日本国政府オーストラリア政府との間の文化  協定締結について承認を求めるの件(条約第  一号)(予) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国中華人民共和国との間の海運協定の締  結について承認を求めるの件(条約第二号)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 栗原祐幸

    栗原委員長 これより会議を開きます。  日本国中華人民共和国との間の海運協定締結について承認を求めるの件を議題とし、政府から提案理由説明を聴取いたします。外務大臣宮澤喜一君。     —————————————  日本国中華人民共和国との間の海運協定締結について承認を求めるの件     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま議題となりました日本国中華人民共和国との間の海運協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明申し上げます。  政府は、昭和四十七年九月の日中共同声明第九項において交渉を行うことを合意いたしましたわが国中華人民共和国との間の海運協定締結するため、昭和四十九年七月以来東京及び北京で交渉を行いました結果同年十一月十三日に東京において、わが方東郷外務次官先方韓念龍外交部副部長との間でこの協定の署名が行われた次第であります。  この協定は、十二ヵ条から成り、船舶の開港への出入の権利、港に関する規則及び手続等港における待遇乗組員の出入国、海難救助等に関する事項につき相互に最恵国待遇を与えることとしているほか、船舶の国籍の認定、積量測度証書の互認等について定めております。  この協定締結により、昭和四十七年九月の国交正常化以前においても相当な実績を有しておりました両国間の海運関係は、より安定した基礎の上に一層促進されるものと期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第でございます。何とぞ御審議の上、本件につき速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  4. 栗原祐幸

    栗原委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  本件に対する質疑は、後日行うことといたします。      ————◇—————
  5. 栗原祐幸

    栗原委員長 国際情勢に関する件について、調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石井一君。
  6. 石井一

    石井委員 外務大臣外交演説は非常に広範でまた意欲的な部分、そういう姿勢がよくうかがえるのでございますけれども、現実の外交問題の処理ということを考えますと、非常にむずかしい問題が山積をいたしておる。特に、当委員会審議ということを考えますと、この国会、十数本に上る相当条約があるわけで、これらの審議を進めていくわけでございますが、その前提として、やはり具体的議題には上っておりませんが確実にこの国会中に問題になってくる問題といたしまして日中平和友好条約核防条約それから日韓大陸だな条約、こういうふうな大きな問題が山積いたしておるわけでございます。また、これらの処理というものが宮澤外務大臣にとっても非常に大きな問題であり、またある意味では試練だというふうにも考えられる点が多いわけでございます。  いま申しましたこれら三つ条約は、理屈の上では別につながっておる問題ではございませんけれども、政治的には複雑にからみ合っておる、こういうふうな様相を持っておるわけでございまして、私たちといたしましては、基本的にこれらの問題に対して外務大臣はどういう御所見を持っておられ、どのように取り組もうとしておられるか、この点についてひとつ簡潔にお伺いをしていきたいと思うわけでございます。  そこで、一番最初に日中平和友好条約に関する問題でございますが、最近第三国との複雑な関係も提起されてきております。そのほか名称の問題等々あるわけでございますけれども、最近の新聞報道などによると、非常に国会批准が微妙な段階に入ってきたというふうな印象国民にも与えております。しかし、これに対する国民の期待というものも非常に大きいという一面があるわけでございますが、この条約締結に関して、政府はこれらの問題を処理して、この国会ではやはり確実に提出をしたいという御意向なのか、この辺についてまず外務大臣の御意見をお伺いしたいと思います。
  7. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまお尋ねの日中平和友好条約でございますが、すでに両国間におきまして何度かの話し合いをいたしておりまして、さらに続けて行いたいと考えております。  昭和四十七年の日中国交正常化に際する共同声明にございますように、両国間の友好関係を強固にし発展させるために日中平和友好条約を結ぼうということが書いてございます。  ただいま名称の問題についても御指摘がございましたが、これは新たに平和を創設するという趣旨のものでなく、今後にわたる両国関係基礎となるべき諸理念について定めようというものと私ども考えておりますので、したがって名称日中平和友好条約共同声明にございますとおりのものにいたしたい、また、これにつきましては、その年、昭和四十七年十一月に、本院におきまして全会一致の御決議で日中平和友好条約締結を促進すべしということもございまして、名称は、それで院議に沿ったものと考えております。  話し合いがまだほんの数回、正確には二回でございますけれども、でございますので、両者が余りむずかしい問題がなく早く合意に達するものか、あるいは多少問題があるものについて、ただいまのところにわかに見きわめができずにおりますけれども、もしむずかしい問題がないということでありますと、比較的早く話し合いを完了することができるかもしれない。私どもとしてはそういう希望を持っておるわけでございますが、ただ、それが今国会に御審議をお願いできるかどうかということになりますと、話し合いが始まって比較的早い段階でございますので、確たる見通しをただいま申し上げることがちょっとむずかしゅうございます。将来にわたって重要な条約でございますから、時間に期限をつけるというようなことをいたしますと、大事な条約であるだけに、またそれなりの弊害もあろうかと思います。できるだけ急いでやりたいという気持ちには変わりがございません。
  8. 石井一

    石井委員 名称の問題はいまの御答弁のとおりでございますし、三木総理もそういうことを予算委員会答弁をされておるようでございますが、たとえば領土問題これは尖閣列島ということでございますけれども、これと関連して、最近ソ連大使がこの条約に関する反対の意向を表明したというふうなこともございますが、この領土問題に関しては、ソ連との関連においても見通しが明るい、こういうお考えでございますか。
  9. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 現在尖閣列島は、御承知のようにわが国の有効な管理のもとにございますので、これにつきまして領土問題というようなものがあるとは私ども考えておりません、したがいまして、先ほど申しましたように、領土の得喪とか処理とかいうことがこの平和友好条約の対象になるはずのものではないと私ども考えております。そういう関連では、ソ連との間におきまして、現に領土問題が未解決であるという状況とは基本的に異なっておるというふうに考えます。
  10. 石井一

    石井委員 ソ連トロヤノフスキー大使が椎名副総理ソ連側意向を表明されたといいますが、この行為に対しては外務大臣は何か御意見をお持ちでございますか。
  11. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 詳細に会談の内容を承っておるわけではございませんけれども外交官として本国の趣旨を体して外交活動を任地でされるということはあってしかるべきことでございますから、私としてただいまとやかく申さなければならないというふうには感じておりません。
  12. 石井一

    石井委員 最近ソ連を訪問されたりいたしまして、ソ連との平和条約、また領土問題についても意欲的に推進をされておるわけでございますが、そういうことを配慮すると、その正常な大使行為というものに対して何らかのやはり配慮をしなければいかぬ、そういうお気持ちでございますか、いまの答弁は。
  13. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 端的に申しますと、別段御奨励をする気持ちもないけれども迷惑に感じているところでもない、端的な言葉を使えばそういう感じでございまして、恐らく、先般の日ソ交渉におきまして今年内にグロムイコ外相わが国を訪れられるということになっておりますので、そういうことをも考えられての上で、大使外交活動をしておられるのではないだろうかと私は想像をいたしております。
  14. 石井一

    石井委員 ソ連側の主張だと、日ソ関係では領土問題をたな上げせずして友好条約は結べない、ところが、日中の関係では、これは尖閣を指すわけですが、たな上げしてこれをやるということは遺憾だ、こういうふうなことを言っておるわけでございますが、それには有効なコントロールをしておる尖閣に対してと北方の場合は全然意味が違うということでございますから、そういう形ではそこには確実に説明のつく理由がある、両者は別に考えるべきだ、こういうお考えなのか、そこにはやはり日ソと日中の平和条約というものに関して何らかの関連性がどうしても出てくるというお考えなのか、この点はいかがですか。
  15. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 尖閣列島の問題についてたな上げというような表現が使われることを私もときどき見ますけれども、これは基本的に不正確というか誤った表現であると思っております。すなわち、尖閣列島については現在紛争は何もありませんで、わが国のいわば施政のもとにあるわけでございますから、この問題は領土問題としてイシューになってはいない。したがってたなに上げるという性格の問題でない。そういう意味では、ソ連との間にありますこれはまさしくイシューになっておる領土問題があるわけでございますから、両者は基本的に異なると考えておるわけでございます。
  16. 石井一

    石井委員 もう一つ問題になろうかと思いますのは、これは間接的でございましても日台航空路線回復という問題でございます。これは、やはりこの友好条約締結に直接、間接に非常に大きな影響を持っておると私は判断しておるわけでございますが、この交渉はどうなっておるわけですか。外務大臣としてはどういうお気持ちを持っておられる、またいつごろをめどにこれを解決しようとされておるのか。
  17. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題は、御承知のとおり日台間に国交関係がない状態でございますから、政府として積極的になし得ることはもうきわめて限られておる。政府が直接にあれこれと言うわけにはまいらない問題でございます。しかし、政府といたしまして、日台間の航空路線あるいはもろもろの関係というものが安定して、ことに航空路線の問題について言えば、再開をされるということは好ましいことである、さように考えておりますが、さりとて政府がなし得ることは政府自身としてはない、そういう認識を申し上げるにとどめるということになると思います。
  18. 石井一

    石井委員 たとえば日台路線回復された時点に友好条約を結ぶのと、あるいはいまのこのままの状態でするのとやはり中国側の受け取り方、考え方というのは非常に違ってくると思います。そういう意味では、政府は何もされることはないかもわかりませんが、この外交交渉には非常に重要な意味があるというふうに考えるわけでございますけれども、そういう意味外務大臣は、いまの御答弁では、日台路線回復した方が望ましい、そしてまた回復することによってこの交渉には何も阻害要件にはならない、こういうお考えなのですか、ここはいかがですか。
  19. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 航空路線もさようでございますが、日台関係全般は、昭和四十七年の日中正常化に伴う共同声明の枠内で処理をされなければならない、そういう大きな枠と原則がこれは動かせないものがあるわけでございます。したがって、日台路線が仮に回復をされる、その時期がいつでありましても、この大きな枠、原則の中でなければならないわけでございますから、そのことが日中の関係にあるいは平和友好条約交渉影響を与えるとは考えませんし、また与えるような性格のものであってはならない、かように認識をしております。
  20. 石井一

    石井委員 非常に微妙な名答弁で、本当はその辺をもう少しやりたいのですが、時間がありません。  最後に、日中平和友好条約に関しまして、いまの議論でも、多少むずかしい問題があるにしても話し合いは二回だ、これから短期間のうちに話し合いを詰めたい、話し合いが詰められた限りにおいては直ちに国会提出をして批准を求める、そういう積極的な意欲で今後交渉を進めていくというのが大臣の御見解でございますか。
  21. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大事な条約でございますので、ここまでで期限をというような気持ちをわが方の交渉当事者に持たせてはならないと考えておりますけれども、自然に両方の合意がきわめて早くできたというときにはあるいはそういうこともあろうか、しかし、それを目途にして交渉をやれというふうには私は申しておらないわけでございます。
  22. 石井一

    石井委員 それでは次に核防条約に関しましてお伺いをいたしますが、これも、これは特にわが党内の問題なんでございますけれども、いろいろとこの条約も困難に向かっておるというふうなことが報道されておる。これも非常に残念なことだと思っておるのですが、きょうの新聞では、査察その他に関しての実質的の合意がなされた、これは予備交渉は終わったとこういうことを意味するのでございますか。
  23. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 予備交渉をやっておりまして、非常に正確に細部まで私、報告を受けておるわけではございませんけれども、わが方の交渉団が所期をしておった、希望しておった条件がまず満たされたというふうに代表団判断をいたしておるようでございます。  そこで、私どもといたしましては、これは御承知のようにセーフガーズの関係だけでも条文で百条近いもの、付帯するものを合わせますと百条を超えるというもののようでございますので、交渉外国語で行われておりますから、ひとつ交渉の結果を持ち帰って、そして、それをきちんと日本語の立場から精査をいたしまして、これでまず問題がないということになりましたら、余り時間を置かずにイニシアルをしようか、そういたしますと、ほぼそれで完結ということになるわけでございますけれども、ただいま実質的に、まず代表団の、訓令の範囲内希望するところが満たされたということであれば、とりあえずそのものを持って帰ってこい、その上で精査をして、よろしければイニシアルをしよう、こんなふうにただいま現在考えておる、そんな段階でございます。
  24. 石井一

    石井委員 この協定文、前文、本文九十八条、附則の取り決め等々、もう一つ、この核防条約の中の条約三条四項に、本交渉という規定がございまして、そこで条文を決めるというふうにもわれわれ受けとめられるわけですが、現在完結しました予備交渉において、もうすでに協定文はできておるのだ、本交渉という必要はないのか、この辺の、これは事務的な問題でございますけれども、少し明らかにしておいていただきたいと思います。
  25. 松永信雄

    松永(信)政府委員 ただいまの御質問は、核不拡散条約批准するまでに保障措置協定調印することが法律的に必要であるかどうかという御質問かと思いますが、法律的にはどちらも差し支えないのではないかというふうに考えております。  すなわち、批准する前に保障措置協定の一切の交渉が終了いたしまして調印が行われましても、あるいは批准後に保障措置協定の本交渉が行われまして、その上で調印されるということも、両方差し支えない。ただ、この条約から見まする限り、普通のあり方は、むしろ批准が行われて、それから本交渉が行われ、保障措置協定調印が行われる、そういう段取りが予想されているというふうに考えております。
  26. 石井一

    石井委員 そうすると、予備交渉において大体の詰めができておる、あとは本交渉に入っていくから時間は余りかからない、こういうことになると思うのですが、国内体制整備状況がどうなのか。これは詰めていきますと、科学技術庁その他にも相当質問をしなければいかぬ問題で、そのときにやりますけれども、現在本省に入っておりますいろいろの報告その他から、ヨーロッパの諸国で佳日本は少し特別に優遇されておるではないかというふうな印象まで持っておるような感覚でございますけれども、この現在まとまったと考えられる予備交渉内容は、国内体制と照らし合わせまして、国内整備情勢というのは十分にいっておるというふうに御判断されておるのですか、これはいかがですか。
  27. 鈴木文彦

    鈴木政府委員 お答えいたします。  今度の予備交渉の眼目は、もうすでに御承知のとおり、ユーラトムと同じような保障措置の適用を確保するということにあることは申すまでもございませんが、その前提となりますのは、ユーラトムそれ自身がそうでありますように、自主的な国内査察の制度を整備するということが条件になっておるわけでございます。  その点につきまして、わが国にはそれだけのものがあるかどうかということでございますが、十分それを満たすような形のものは、少なくとも形としてはまだ十分できておりませんが、ただ、科学技術庁原子力安全局というものが新設される予定になっておりますが、それを、中核の一つとしまして、この保障措置、つまり軍事転用防止のための考え方一つメカニズムとしてできておりますので、それの整備状況いかんによりまして、ユーラトム並み前提が満たされるということになろうかと思います。つまり、若干時間がかかるかと思いますけれども、ただ、予備交渉におきましては、その形の問題よりも、それがどういうファンクションを果たすかという実質に着目した説明をしまして、向こうが大体了承しているというふうに了解しております。
  28. 石井一

    石井委員 ただいまの短いやりとりですが、外務大臣と二局長答弁を聞いておりますと、この核防条約予備交渉が完了したということで、かなり進展したというふうにもうかがえます。この国会に対してこれに批准を求めるかどうか、われわれ委員といたしましてもこれは最大の関心事なんでございますが、しかし、今後、非常に政治的な問題をはらんでいる問題ですから、いろいろの問題もあろうかと思いますが、大臣所信表明演説の中で、要するに、国民合意を得られれば批准を願いたい、これは、国民合意というのはどういうことを具体的に指しておられますか。
  29. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず、いわゆる保障措置協定満足のいくものとして実体が固まったということを前提にいたしますと、本条約を署名いたしましたときの政府声明にありますあと二つ条件は、各国の軍縮状況満足であるかということと、非核保有国の安全が十分に守られるか、その二つ、合わせて三つ条件があったわけでございます。  そのうち一つ条件が仮に充足いたしましたとなりますと、あと二つ条件がどうであるかということについては、これを検討いたさなければならないことになります。  政府といたしましては、他の二つ条件も、まずまず、十全とは言えないまでも、大勢としては改善しつつあるのではないかという判断を持っておりますけれども、これらについては各方面において判断の分かれるところであろうというふうに考えます。  この条約は、御承知のように有効期間が少なくとも二十五年、ただいまから考えましても二十年ございますので、わが国のこの問題についての今後二十年の姿勢をここで規定をすることになることでございます。わが国の場合、過去二十年を考えましても非常にいろいろなことがございました。今後の二十年というものも、あるいはそれ以上になかなか予測のしがたい二十年であろうというふうに考えるにつきましては、文字どおり各方面のそれらについての御意見はやはりよく伺って、政府としても判断をする必要がございます。  政府そのものは、他の二条件もまずまず改善をしつつございますから、これは国会の御承認を得るために国会提出をいたしたいと考えておるわけで、それが総理大臣所信表明にも、また私の本会議で申し上げましたことにも入っておりますけれども、事が重大でありますだけに、十分に各方面意見を、保障措置協定が定まりました段階でお聞きをしてみたい、こういう意味合いをあそこに述べたわけでございます。
  30. 石井一

    石井委員 そうすると、この国会提出するということは非常に悲観的な、時間がかなりかかる、こういうことですか。
  31. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実は、欲を申しますと、なるべく時間をかけたくないという気持ちが他方でございます。と申しますのは、ただいま保障措置協定内容がほぼわれわれの満足のいく方向でまとまりつつあると申し上げましたが、これを正式に国会条約審議の際の、少なくとも重要なる参考資料でございますので、それに仕上げますためには、百数十条のものでございますので、技術的にかなり時間がかかるように承知をしております。ただいまからでございますと一カ月半近いものがかかるのではないか。それだけいたしますと、きちっと事務的な準備が整うということでございますので、その間、実態はもうはっきりしてまいりましたから、各方面に御説明をして回り、御意見も聞かせていただいて、いざ国会に御提出ができるという事務的な準備が整うまでには、それらの意見交換意見表明もできるだけ承っておきたい、こういうふうに考えております。したがいまして、そのために実態的に国会提出する手続がおくれるというようなことではなく、幸か不幸か手続そのものにまだかなりの時間がかかりますので、その間にそれらのことをできるならば済ませておきたいと考えておるわけでございます。
  32. 石井一

    石井委員 もう少し詰めたいのですが、日韓問題を最後にお伺いいたします。  日韓大陸だな条約がございまして、これをこの国会提出されておりますので、批准を求めるのに与党理事としては大変苦労いたしておるわけでございますが、韓国の情勢を客観的にながめましても、国民投票などございまして、政情もますます不安であるし、金大中事件とか二学生事件もまだ解決しておらないという状態でありますから、客観的なアトモスフィアというものはよくないということが言えると思うのでございますけれども、大陸だな条約に関しては、また別の、前国会からのペンディングマターであるというようなこともございます。そこで、これはどうしても批准を求めるというかたい御決意なのかどうか、まずこの点簡潔にお答えいただきたい。
  33. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この条約は、特に韓国にフェーバーを与えるという条約ではなく、わが国にも韓国にもフェーバーを分かち合おうという条約でございます。前国会にも御提出をいたしましたし、韓国はすでに国内手続を終わっておりますので、私どもとしては、国会の御承認を今国会において求めたいと考えております。
  34. 石井一

    石井委員 そこで、金大中事件でございますが、私が前の国会質問いたしましたときに、十二月二十五日の委員会でございましたか、金東雲の指紋の問題に関しては再度十月の何日かに韓国側に問い合わせをしておる、こういうことでございます。この問題は非常に科学的な証左でございますから重要だと思うのですが、その後おそらく何の報告もないんじゃないかと思います。何も聞いておりませんから。その間そのままほっておったのか、それとも、再度繰り返しそのことに関しての問い合わせをしたのかどうか、この点ちょっとお答えいただきたいと思います。
  35. 高島益郎

    ○高島政府委員 ただいま御質問の金東雲の捜査につきましては、昨年八月十四日でございますか、韓国政府から通報がありまして、金東雲書記官がこのらち行為に加担したとの証拠が得られなかったために、捜査を中止するという趣旨の通報をいただきました。御承知のとおり、わが国といたしましては、金東雲につきましては、指紋を挙げたほか、いろいろな証拠から事件に加担しているというように考えまして、そういうことで韓国政府にいろいろ申し入れをしてきたわけでございますけれども、このような通報に接しまして、警察当局はもちろんでございますけれども、わが政府としては、納得ができない、もう少しわが方の納得のできるような十分の説明がほしいということを昨年十月二十五日に照会いたしました。その後依然として回答がございませんので、本年に入りましてから、この照会に対してさらに催促をいたしております。しかし、依然としてまだそれに対しましての回答はございません。これが現状でございます。
  36. 石井一

    石井委員 金大中事件に関しまして、私、昨年十二月の二十八日に金鍾泌国務総理に会いまして、大変長いこと時間をかけて話をいたしました。金大中事件はもう忘れることが一番いい、こういうのが金総理意見でございます。大臣もそれが一番いいというふうにお考えになるだろうかどうかということが一点。  時間がもう来ましたので、まとめてお答えいただきます。  第二点は、もしそうでないとすれば、それじゃこの疑惑を晴らすのにどうすることが一番いいというふうに大臣はお考えになっておるのかということがもう一つ質問。  それから第三点に、二学生の問題でございますけれども、向こうは釈放する意思がございます。ただ何となく、日本政府から声がかからぬじゃないか、私はそういう気特ちがあるように思えてならないのでございますけれども、もう大法院の特赦も目前だという時期ですから、これに対してどう対処されようとしておるのかという点が、これが第三点。  これをひとつ時間をかけたいのですが、お気持ちだけで結構でございます。お答えいただきたいと思います。
  37. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 金大中氏の事件につきましては、ただいま政府委員石井委員からお尋ねがございましたように、いわゆる金東雲書記官の問題について、最終的に私どもが了解ができるところまでまいっておりませんで、したがって、その部分がいわば未解決の状態にあると思います。  金大中氏そのものにつきましては、この節かなりの政治活動を実際にしておられるように様子を拝見をしておりますけれども、それが一般市民並みに自由なものであるのかというようなことにつきましては、必ずしも定かでない。選挙違反事件があったということでございますから、これはこれなりの処理を韓国としてなさらなければならぬものだとは思いますものの、出国を含めて一般市民並みの差別を受けない待遇であるかどうかということ、これは実は私どもいずれとも定かにいたし得ない。まあいわば現政権に対してかなり批判的な政治活動に加わっておられるような報道をときどき目にし、耳にいたしますけれども、その程度がどのようなものであるかということについては、ちょっと私どもに十分に判断ができないというのが事実でございます。  二学生の問題につきましては、石井委員にもいろいろ御奔走、御心配をいただいておりますことを政府としても知っておりますし、その点感謝をいたしております。これにつきまして韓国側が、第一義的には韓国の国内問題でございますけれども両国の親善友好関係考えて特段の措置に出られるならば、私どもとしては非常にそのような措置を多とするということを、希望の問題としてはしばしば韓国側にお伝えをしてございますし、また、ただいまかように御答弁を申し上げることも、政府の正式なそのような気持ちでございます。
  38. 栗原祐幸

    栗原委員長 水野清君。
  39. 水野清

    ○水野委員 私は、最近日本の新聞や特に週刊誌などが中東戦争の再発の問題を興味本位に取り上げておりますが、このことについて少し外務省の方々にいろいろと伺ってみたいわけであります。  まず第一に、この中東戦争の可能性とかそのいろんな予想ということは、これはかなり遠い国のことであり、とても外務省の機能でその情報を収集できるというものでもないと思いますが、たとえばイスラエルとエジプト、シリアの両陣営にすでに核装備、戦術核兵器が装備されているというような記事も出ておりますし、比較的著名なジャーナリストがそれを肯定したりしております。  時間がありませんので、そういうことをまとめてこれから伺ってみたいと思います。  まず第一に、第五次中東戦争——非常にずばりとした話で恐縮ですが、第五次の中東戦争というのがこの四、五月ごろまでにあるかどうか、これも非常に週刊誌的な結論の出し方でありますが、確率を何%ということでも結構ですから、お答えをいただきたいと思います。
  40. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 四、五月まででございますと、国連の監視軍、勢力引き離しのための軍隊がシナイ半島にもゴランハイツにもおるわけでございますから、しかもいまかなり活発に和平を求めての動きがなされておるということから考えますと、いまおっしゃった期限においてどうかというお尋ねであれば、戦争回避する、平和を回復するための努力が最もクライマックスに達する期間でございますから、平和へのチャンスが多いと考えるべきではないかと思います。
  41. 水野清

    ○水野委員 そこで、たとえば最近グロムイコがカイロを訪問して、その後キッシンジャーが二月の中旬、もう間もなくカイロを訪問するというようなことが新聞に伝えられております。これは両国とも、ジュネーブ協定の目標に向かってどういうふうな手順で行こうかということの一つの道程であるかともとれますが、先ほどは中東戦争の可能性のことを伺いましたけれども、それでは逆にジュネーブ協定、ジュネーブの平和会議の招集とかその手順についてはどういうふうに大体理解をしておられるかということを伺っておきたい、
  42. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先月モスクワで日ソ会談が行われましたときに、私とグロムイコ外相との間でもこの話は当然に出たわけでございます。そのときにグロムイコ外相が私に与えました印象は、この問題の決着はジュネーブ会議でなければならない、しかしながら、その間に行われてまいりましたアメリカのいろいろな努力そのものに対しては、グロムイコ氏はきわめて穏やかにそれについて言及をいたしておりました、したがいまして、その後の動きあるいはその後の動きに伴う真意は、十分に把握することはできませんけれども、ただいま申しました私とグロムイコ氏との会談から判断をいたしますと、終局的にジュネーブ会議であるという原則原則として、これはウラジオストク会議でも確認されておるわけでございますから、その原則に至りますまでの間のいろいろなアメリカ側の努力、それについては、ソ連は少なくともそれを妨げるような行動に積極的に出るという意思は、私は先月の段階では感じませんでしたし、おそらくただいまも、基本的には私が先月感じましたことが間違っていないのではないだろうか、こういう感じを持っております。
  43. 水野清

    ○水野委員 いまのお話は非常に機微に触れた興味深いお話でございますが、そういうことならば、キッシンジャーの個別的な和平への手探りをソビエトが待っているのじゃないだろうか、むしろある段階になってジュネーブの平和会議を招集する。どうも私は、最近のソ連の動きは、アメリカはそういうことを言っているけれども、同時にソビエトは必ずしもまとまらなくてもよろしい、早くジュネーブに各国を招請したいというふうな動きにもとれるのでありますが、これはここで議論をしてもしようがないことなんで、全く遠い国のことではありますが、私どもは、その背景に第五次中東戦争の可能性ということがやはり何分の一かはあろうと思うのです、非常に心配をしているわけです。  最後に、これは第五次中東戦争があった場合、アラブの産油国が再び石油戦略というものを行使するであろうか、これもむずかしい仮定の、また先の仮定の話でありますが、大臣、博学でいらっしゃるようですからひとつお答えをいただければ幸いだと思います。
  44. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これについてはいろいろな説、観測があるようでございますけれども、いかにも仮定の、しかもわれわれが決して望んでいない仮定の問題でございますので、この席で申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  45. 水野清

    ○水野委員 この間予算委員会で、これはどなたの御質問でしたか、渡部一郎さんの御質問であったと思いますが、総理に対して、PLOの日本における代表部を設置するかどうかということがあって、総理がかなり前向きな答弁をしておられますしそのことについて私、少し突っ込んで伺ってみたいのですが、外務省はまず現段階ではどうお考えでいらっしゃるか、いわれる代表部をつくってもいいと考えておられるか、まだ時期尚早と考えておられるか、まず承りたい。
  46. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 基本的に考えておりますことは、いわゆるアラファト議長が代表されるいまのいわゆるPLOでございます。そこから事務所を置きたいというお話がいまございませんので、かりにありましたときに、その時期、環境にもよりますけれども、それが外交特権を伴うということになりますとこれはまた別の問題になりますので、それはいま考えることは適当でないと思いますけれども、そうでない、いわゆる事務所というようなものをとおっしゃれば、日本政府としてはそれは基本的な態度としては前向きに考えてもよろしいのではないか。そういう際に、しかるべき代表の方々が政府の者に会いたいとおっしゃれば、それはお会いすることもまたやぶさかでない。仮定の問題でございますけれども、ごく常識的な形で事が起こってまいりましたときには、基本的にはそういうふうに対処をしてまいりたいと思っておるわけであります。
  47. 水野清

    ○水野委員 任意の団体というような御回答でしたが、たとえば、いまアラブの諸国間でつくっている国際機関でアラブ連盟というのがあります。これはカイロのエジプト大使館の何か外交官の資格で日本に滞在をしておって、実際はアラブ連盟という別の組織の仕事をしている、外務省としては非常に苦肉の策でしょうが、そういう扱いをしておられます、そういう扱いのもとにおやりになる意思はないか。これは外交特権を部分的に与えることになるわけです。ですから、たとえばエジプトの政府の一外交官として、PLOの代表部の代表者だけでも外交特権を与えるのかどうかという技術的な問題が私は出てくると思うのです。その点について御検討をしておられれば御回答をいただきたい。  それから、実は御承知だと思いますが、かつてPLOの一員ではないかと思われる人がアルジェリアのたしか外交官として日本に来ておったことがあって、現実にはそれはまた国外に自然に退去されたようでありますが、そういういきさつから見て、いまのような問題が私は起こってくると思うのであります、エジプトということでなくて、たとえばアルジェリアの外交官として入ってきておって、実は自分はPLOの代表であると突然名のられたような場合に、これはアラブ諸国にありがちなことでありますので、どういうような処置をとられるかということも御検討される必要が私はあろうかと思うのであります。  時間がありませんからもう一つ続けて御質問申し上げますが、御承知のように、私どもとPLOとの関係は、中東戦争の起爆薬みたいになっているPLOでございますが、ハイジャック事件が起こると私どもには非常にありがたいような、御迷惑のような関係が生じてくるわけなのでありまして、ところが私の知っている範囲では、ハイジャック事件のときに、さっきも申し上げたアラブ連盟の人は非常に協力をしてくれて、実はアラブの書記官に連絡をとってもらったり何かして、非常にサービスをしてもらった、そのPLOの配下に、ブラックセプテンバーのようなはね上がりの独立したような機関がたくさんあるわけで、そういうものに連絡がつきがたい、これはどこの国の大使館も連絡をつけてくれない、PLO自体も探してみなければわからぬというほど、末端は非常にあいまいな組織のようでありますけれども、それだけに、逆に言うと、ハイジャック事件が起こることを期待しているわけじゃありませんが、また起こったときにこのPLOの代表部というのは意外にまた別な効能も持っておるんじゃないかという私は気がしております。  先ほど申し上げたことについて、お答えをいただける範囲で結構でございますが、御見解をいただければ幸いです。
  48. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 過去において、国際機関とも思われる身分を持つ人が某国の外交官の資格でというようなことは確かにあったようでございますけれども、今回の場合にはそういうケースでございませんと思いますので、原則としてやはりそういうことはきちんとしておいていただくほうがよろしいのではないかと考えております。  またハイジャックについての水野委員の過去のそういう御苦心も存じておるわけですが、今度かりにそういうPLOの方がということであれば、ハイジャックというようなことにこれはもう御関係のない、むしろそれを否定する立場の方々と私ども考えておるわけでありますから、いまおっしゃったことはわからぬわけではありませんけれども、そういうものとしてむしろ考えたい。しかし、いろいろなきちんと白黒割り切れないことがあり得るであろうから、いろいろな場合を考えておけとおっしゃいますことは十分私ども研究をいたしておきます。
  49. 栗原祐幸

    栗原委員長 河上民雄君。
  50. 河上民雄

    ○河上委員 ただいま日中平和友好条約についてすでに御質問があったわけでございますけれども、重ねて宮澤外務大臣のこの問題に対する基本的な態度を伺っておきたいと思います。  三木総理大臣はこのたびの施政方針演説でも「日中間に平和友好の条約締結して、子々孫々にわたる日中永遠の友好関係基礎を固める年にしたい」というふうに述べられました。また、宮澤外務大臣外交演説でそのことを裏づけられたのでありますけれども、最近新聞の報道によりますると、いろいろ複雑な要素が交錯をして、今国会提出について懸念する声さえ起こっておるわけでございますけれども外務大臣としては、この施政方針演説で表明された基本的な姿勢に変わりがないのかどうか、その点をまず初めに伺いたい。
  51. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 施政方針演説並びに外交演説で申し上げました政府の立場、変わりはございません。
  52. 河上民雄

    ○河上委員 先ほど具体的な交渉については二回行っているだけであって、先の見通しについてはあまりここで確言できないというようなお話でございましたけれども、このたび陳楚駐日大使が四日に帰任されまして、これからいよいよ本格的な交渉に入ると思うのですけれども、陳楚大使と近くお会いになるお考えはございませんか。
  53. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私自身は予定をいたしておりませんけれども、陳楚大使が日本に帰ってこられましたので、したがいまして、従来のルートでございます東郷外務次官と陳楚大使との、いわば第三回目になるわけでございますが、そのような接触はこれは遠からずあるものと私ども考えております。
  54. 河上民雄

    ○河上委員 報道記事によりますると、中国政府は一九七二年九月の日中共同声明第三項の台湾の帰属と、第七項のアジア・太平洋地域における第三国の覇権反対について、条約に明文化するように求めてきたというように伝えられておりますけれども、そうした事実があるのかないのか。また政府はこれに対してどのように対処するおつもりですか。
  55. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま前段でお触れになりました一部の報道でございますけれども、あの報道そのものが、実は私どもいずれとも確認ができないでおるわけでございます。それを離れまして、今度交渉段階でただいまのようなことがどうなりますかは、現在までのところいずれともはっきりいたしておりません。
  56. 河上民雄

    ○河上委員 先ほど来トロヤノフスキー駐日ソ連大使が椎名さんにお会いになって、いろいろ意見を述べられたということが問題になっておりますけれども、先般自民党の保利代議士が中国を訪問されて帰ってこられたのでございますが、この椎名さんあるいは保利さんに、外務大臣として公的あるいは私的にお会いになって、それぞれの先方の意向というものを非公式にもお聞きになりましたかどうか。
  57. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実は国会開会中であるせいもございまして、そのいずれの方からも直接お目にかかって話は伺っておりません。  しかし、非常に大切で、私がぜひ心得ておかなければならないことがございましたら、おそらく御両所とも何か御連絡をいただくであろうと実は考えておりますけれども、特にそういう御連絡もいただいておりませんので、私が従来考えてまいったようなことと特段の何か新しいことがあったのではなかろうという想像はいたしております。
  58. 河上民雄

    ○河上委員 先ほど来質疑応答の中で国会提出の時期については明言を避けられたのでございますけれども、そのときに、交渉の結果、その時期が早くなるかもしれないし、あるいはおくれるかもしれないと、こういうような表現がありました、一体、おくれるかもしれないという場合のそのおくれる要因が日中間にあると予想しておられるのか、あるいは国内的な要因に主たる原因があるというように予想しておられるのか、その点は外務大臣として国会提出される以上、ある種の見通しというものをお持ちと思うのでありますけれども大臣の御所見はいかがでございますか。
  59. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その二つのことが実は厳格には切り離せない点でございますけれども、主として私は万々一おくれるような場合には、日中間の接触、いわば交渉におきましてわが方が期待していなかった、わが方が考えていなかったような問題提起がありました場合を主として考えております。そういうことになりますと、接触、話し合いそのものが長引くという可能性がある、主としてその方のことを私は考えてああいうことを可能性として申し上げたわけでございます。
  60. 河上民雄

    ○河上委員 外務大臣はそういうことを実際に懸念しておられるのか、それとも、日中平和友好条約というタイトルにつきまして、新聞報道にも伝えられておりますように、自民党内の一部で、その名称から平和の二字を削除するようにという主張があるやに聞いておるわけですけれども、これは、日中共同声明第八項にすでに両国政府合意していることですから、全く無理だと思うのでありますけれども、そういう名称変更の要求に応ずるようなことは、ここに絶対ないというようにわれわれは考えてよろしいわけですか。
  61. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これにつきましては、日中共同声明八項、御指摘のようにそこにも述べられておりますし、同年の昭和四十七年の十一月の何日でございましたかに、本院におきまして全員一致、議院運営委員会の提案によります御決議がございまして、その中に、速かに日中平和友好条約締結せよという御決議になっております。したがいまして、名称そのものについては院議において確認されておるというふうに考えておりますので、それについて、内容の問題であればともかくといたしまして、名称そのものについて新たな議論が起こることは、恐らく院議にかんがみましてもないのではなかろうかと思っております。
  62. 河上民雄

    ○河上委員 私も昨年八月、中国へ参りまして、日中友好議員連盟の訪中団の一員として先方の方とお話し合いを何度かいたしましたけれども中国側日中平和友好条約締結については非常に、積極的でございますので、私は、先ほど大臣が懸念されたようなことはまず非常に少ないのじゃないか、国内的にもそういう点について全く懸念がないとすれば、これはもう当然、今国会提出することは非常に条件としては整備されているというように判断すべきだと思うのでありますけれども大臣は、先ほどおくれる場合も考えておられるような御発言がありましたが、そういうことは全くないのではないかと思うのでありますが、いかがでございますか。
  63. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いままでの接触がごく概括的な基本の理念を述べ合っただけでございますので、具体的に一つ一つの問題になりますとどういうことになってまいりますか、ちょっと将来を見通して、大体問題はないものと思われますと申し上げるにいたしましては、多少まだ接触の回数、深さがそこまで行っていないと考えますので、そのように申し上げておるわけでございます。
  64. 河上民雄

    ○河上委員 いずれにせよ、これは非常に重要な問題でございまして、先ほど来、外務大臣が言われたように、子々孫々にわたる関係規定するものであるだけに、慎重にしたいというお気持ちもわかりますけれども、しかし同時に、条約を結ぶタイミングというものも非常に重要でございまして、ここで日中平和友好条約を結ぶことが、さらにかたい両国関係を固めていくという意味におきまして、外務大臣の慎重なことは結構でございますけれども、私はもう少し積極的な取り組みを期待をいたしまして、次の質問に移りたいと思うのであります。  外務大臣は、先般ソ連を訪問されまして、日ソ平和条約交渉についていろいろ話し合ってこられたようでございますが、領土問題でソ連側が現実的な処理によって前進したいと主張されたということでございますけれども、現実的な処理というのはどういうものであるかということについて、外務大臣としてどういうような感触を得ておられるか。いかがでございますか。
  65. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これにつきましては、先方からついに詳しい説明はなかったわけでございますけれども、会談の全体から判断いたしますと、恐らくは、ソ連として第二次大戦後今日までの問に、すでに現実の問題として固めてまいりました東欧あるいは中国等々との関連の国境問題それに変更を加えるというようなことが、現在の世界全体のバランス、ソ連にとりましてはもとよりでございましょうが、そういう観点からすると好ましいことでない、このような政策、考え方の上に立って申したことではなかろうかというのが私の感触でございました。
  66. 河上民雄

    ○河上委員 なお、今回の会談で、アジア集団安全保障構想について、ソ連側の方から何か提案はございませんでしたか。
  67. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今回はその点について非常に具体的に長い時間というような話し合いはございませんでした。しかし、基本的にそういう構想を持っておるということについては、従来どおり話がございました。
  68. 河上民雄

    ○河上委員 その際、アジア集団安全保障構想ということになりますと、当然朝鮮半島の平和的統一について考えがなければおかしいわけでございますけれどもソ連側から朝鮮半島の統一問題について、特に言及されたことはございませんですか。
  69. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私の方から、むしろそのような構想について、中国はどのように考えておるであろうか、北鮮はどのように考えておるであろうかという問題の提起をいたしてみたのでございますけれども、中国については賛成の態度ではない、むしろ中国について、ソ連としてかなり批判的なことをいろいろグロムイコ外相は述べておったわけでありますけれども、北鮮につきまして、私の質問には直接にはグロムイコ氏は答えておりません。
  70. 河上民雄

    ○河上委員 わかりました。  それから、昨年アメリカのキッシンジャー国務長官が日本に来られたわけですが、その後、韓国、ウラジオストクにフォード大統領について参りまして、そして一たん日本に来た後、また今度北京に行きまして、そしてまた日本に帰って、それからアメリカに帰国をしたわけでございますけれども、そのキッシンジャー国務長官の行動範囲から考えまして、アジアの問題について、ことに朝鮮問題について、彼なりの感触を持ってアメリカに帰国したと思うのでございます。その際、再三必ず日本に立ち寄っておるわけです。そしてそのたびごとに日本政府の指導者と会っているのですけれども、そのキッシンジャー国務長官の足跡を考えまして、キッシンジャー長官から日本政府に対して、何らかの情報をもたらしたようなことはなかったのかどうか、この点について伺いたいと思います。
  71. 高島益郎

    ○高島政府委員 これは前外務大臣当時のことでございますけれども、キッシンジャー国務長官がフォード大統領に随行しまして訪韓され、さらにまたウラジオストクに行かれた後に日本に来られまして、その訪韓あるいは訪ソの結果についてのお話はいろいろ承っております。しかし、この公開の席でその内容をどうこうということを、私どもの立場としまして申し上げるわけにはまいりません。
  72. 河上民雄

    ○河上委員 恐らくそういうことかもしれませんけれども宮澤外務大臣にお伺いしたいのですけれども、先日、新聞で拝見いたしますと、わが党の参議院側から、田英夫議員を初めとする議員の提案に係る、対外経済援助の国会承認の件に触れて、外相は感想を述べられておったのでありますけれども、つまり、その感想につきまして、その真意というものは一体どういうところにあるのか。きょうの新聞報道によりましても、アメリカの議会でも、この非民主的な国家体制の援助につながる経済援助というものについての深刻な反省が、アメリカの議会の外交委員会から報告書として、ライアン議員の名で出ているわけですけれども外務大臣の、一体そういう感覚でおられるのかどうかですね、この前の新聞報道の真意をちょっと伺いたいと思うのです。
  73. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは、田英夫議員外の方々が構想されております法律案そのものについて意見を申し上げたわけではございませんが、そのことに確かに、事実上関係があるではないかとおっしゃれば、そのとおりでございます。  今朝、報道されましたような、いわゆるライアン議員の報告にございますようなこと、私としては、当然、いろいろな共感を持っております。したがいまして、そのような意味で、田議員その他の方々がお考えのあのようなものの考え方にも共感を持てるところが、正直のところ相当ございます。しかし、そのことを現実の法律なりあるいはルールとして、どれまで実際問題として適用できるであろうかということについては、いろいろ考えてみなければならないことがあろう。それで、私はその記者会見で、少しわが国の過去についても申したのでございましたけれどもわが国がかつて敗戦後、占領を受けました際に、いろいろな援助を外国、主としてアメリカでございますが、から受けました。それで、私はそのときの行政の面で、アメリカ側といろいろ接触した経験のある一人でございますけれども、せっかく援助をくれるときに、その援助の使い方などについて、余りはしの上げおろしまで細かく言われるということは、少なくとも当時、援助を受ける側であったわが国あるいはそれに関係しておった私として、余り細かいところまで干渉をされるということは、本来の援助の目的あるいは援助に盛られた好意というものを結果として損なってしまう。相手方の善意は十分にわかることであるけれども、われわれも一つの独立国として、占領下であるとはいえ、われわれの考えがある。どうすれば日本のためにいいかということにはわれわれの考えがある。あなた方の善意は疑わないけれども、大まかなことはこちらに任してもらわなければ困るというような、ずいぶんそういうやりとりをした記憶が私自身にもございます。それは、そんなに昔のことではないわけでございます。  他方でまた、河上委員もよく御承知のとおり、アメリカ自身が第二次大戦後、世界各国に理想主義のもとにいろいろな援助をしてまいりました。その結果が、必ずアメリカの理想どおりに素直に受け入れられてきたかと申しますと、必ずしもそうではない。善意であるからといって、それがそのまま真っすぐに相手に受け入れられ理解されるとは決まらないという、相当苦難に満ちた経験をアメリカ自身がしてまいっております。これはもう河上委員がよく御承知のとおりでございます。  今日、わが国は援助を受ける側から援助をする側になったわけでございますけれども、そういうときに、過去にそういう経験をわが国もし、また他国もしておったということを、やはりもう一遍思い出してみる必要がある。こっちが善意であり理想主義を掲げれば、必ず素直に相手方にそれが受け入れられるというほど、割り切って考えられない場合があるということを、自分の感想として申し述べたわけでございます。  このことは、しかし基本的に、われわれがそういう善意を持ち、そういう理想主義を持たなければならないということを一向にそれにチャレンジするものではございませんし、また国会自身が、国民の税負担において他国に援助をする、その結果が有効に目的を達しておるかどうかについて関心を持たれることも、これも当然である。ですから、基本的には、私は、ああいうお考えは十分わかっておるし、自分も同じように考えるものでございますけれども、同時に、過去にわが国が援助を受ける側として、あるいはアメリカが援助をする側として、過去三十年間経験をしたことも、これも考えておかなければならない、こういう意味のことを申したわけでございます。
  74. 河上民雄

    ○河上委員 まあいまの外務大臣の御感想は、ある意味において、占領下の経験に根差したものかもしれませんが、ある意味で非常に重要な意味合いを持っておると思うのでありまして、これは、日本がいまどういうかじをとるかというもう非常に重要な分かれ目に立っておると思うのです。  後ほど同僚の土井委員からもいろいろお尋ねがあろうと思うのでありますけれども、いま問題になっております対韓援助については、いまおっしゃったような意味ではなくて、むしろ、そういうことを理由に、一見中立性を守るようなポーズをとりながら、現実には韓国政府に気がねをしている、支持しているというような状況が、随所にあらわれているところに問題があるわけでございまして、最近の、オーグル牧師が日本に立ち寄られましても、政治活動にくぎを刺すというような政府の態度もあるわけです。これは今後、対外経済援助の国会承認の件に関する問題を審議するときに、いま言われた宮澤外務大臣の基本的な立場というものも、一つの討議すべきテーゼになると思うのでありますが、いま新聞では、非常に短い報道でございましたので、大臣の御感想を承ることができたのは非常に参考になりますけれども、いまは単にそれだけではない、もっと別な問題が、完全な癒着という問題が起きているというところに、実は、今日の不幸な関係が生まれているわけです。そういう過去の経験だけで、いわゆるこの経済援助の中立性というものを守るために、現実には非常に反動的な国家の基礎を強化するということになっておるということをもっと真剣に反省してもらいたい、こう思うのでございます。  それで、余りもう時間もございませんので、少し話題を変えまして、昨年の暮れに起こりましたマラッカ海峡の座礁事件につきまして、二、三質問をさしていただきたいと思います。  御承知のとおり、昨年、石油の流出事故が国内では水島で起り、そして海外ではマラッカ海峡の座礁事件という形で起こりまして、戦後三十年の日本の発展、いわゆる高度成長というものの路線の挫折を非常に浮き彫りにした感が強いわけですけれども、この二つの問題にどう対処するかがこれからの日本の行くべき道を占う非常に大事なことだと思いますので、幾つか質問さしていただきたいと思います。  余り時間がありませんのでまとめて伺いますが、沿岸国各国は損害賠償をどのくらい要求しておられるか。またその損害賠償が非常に膨大なものになった場合、その損害賠償を負担する責任者は海運会社であるというふうに考えるのか、それとも国として何かをするというお考えなのか、そういうことをまず初めに伺いたいと思います。
  75. 高島益郎

    ○高島政府委員 本件は、直接には祥和丸という船がああいう事故を起こして、それが原因となっていろいろ被害が生じているという事案でございまして、いまだ現在の時点におきまして事故の原因、被害者の被害の範囲等が必ずしも明らかになっておりませんし、そういう段階におきまして補償の問題について確定的なことを申し上げることはできないと思います。ただ、事故の原因が解明されまして、責任の所在が明らかになった段階におきましては、その責任を問われる当事者が、誠意を持って補償の問題に当たるということば当然だと思います。  先ほど先生の御質問にありました、具体的にいまどの程度の補償の請求があるか、それに対してどう対処するかという問題がございますけれども、現在のところ、私どもといたしまして、各国からどういう補償を求められているかという点につきましては、まだ確たることを承知いたしておりません。いずれにいたしましても、直接的には事故を起こしました祥和丸の所有者たる会社の問題というふうに私ども考えております。そういうことでございますので、政府といたしまして、この補償の問題について何かはっきりしたことを述べるということは適当でないというふうに考えております。
  76. 河上民雄

    ○河上委員 沿岸国の政府から日本政府に対して、その損害賠償の問題について何か言ってきているかどうか。
  77. 高島益郎

    ○高島政府委員 沿岸三国から日本政府に対しましては、何らこの補償の問題につきましては申し出がございません。
  78. 河上民雄

    ○河上委員 そういたしますと、水島の場合と同様でございまするけれども政府が一会社の、一企業の起こした事件についての損害補償については責任を負担しない、あくまでそれは会社の責任、当事者が責任を負うべきものであるという立場をとっておるのかどうか。
  79. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 このような災害の場合、一般論としまして、先ほど政府委員が申し上げましたPアンドIの保険これは国際的な組織でございますので、したがいまして、そのエージェント、弁護士などが現地におりますし、またロンドンでございますか、からも現地に参りまして、そうして保険契約者である会社にかわりまして先方と賠償の交渉をする、こういうのが普通でございますので、今回もそのような形をとって保険関係の折衝が続いておるわけでございます。  他方で、関係政府からわが国の在外出先に対しても照会などもございますし、わが国の出先としても、わが国の船の関係で起こったことでございますから、できるだけ在外公館もこの円満な処理に協力をするということで今日までまいりました。しかし、現実に起こりました被害並びに関係会社が付保しております金額等から判断をいたしますと、損害賠償そのものは保険の金額で十分にカバーができるように考えております。で、事柄の本質として、また、これに政府が直接に補償の責めに任ずるというようなことは適当なことでないと思いますし、また恐らく必要になることもなかろうというふうにただいまとしては判断しております。
  80. 河上民雄

    ○河上委員 わかりました。ただ、戦後の日本政府がとってまいりました高度成長政策によれば、全世界から安い資源を海上輸送という、陸上輸送に比べて非常に安いコストで資源を運んでくるということによって、高度成長政策を可能にしてきたわけでございますけれども、そのためにタンカーの大型化というもの、あるいは石炭を運ぶ船、鉄鉱石を運ぶ船などの大型化をずっと政府としては奨励してきたと思うのでありますが、二十万トンあるいは技術的に可能な船として五十万トンというようなことを今日までやってきたその政策の一つの破綻として、今日の座礁事件が起こっておるわけですが、そういうことについて、政府はいままでの政策を反省しているのかどうか、それを伺いたいと思います。
  81. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに船舶の大型化について政府は積極的に奨励をしてまいったわけでございます。しかし、今後、従来のような路線の上ではこのような政策を推進していけなくなってきたということは、政府も十分認識しております。したがいまして、わが国だけの都合ということでなく、それが各国にどのような影響を与えるかというようなことについては、今後わが国の経済政策を将来に向かって考えてまいります場合に、十分に考慮をしておかなければならないことであるというふうに思っております。
  82. 河上民雄

    ○河上委員 その点について、沿岸国諸国の政府と今後協議するおつもりがあるかどうかです。
  83. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは、さしずめ海洋法会議の席上で、間もなくまた再開されるわけでございますから、関係各国からいろいろな要望、意見というものが出てまいると思います、これには十分われわれも耳を傾けて対処をいたさなければならないと思っています。
  84. 河上民雄

    ○河上委員 その問題と関連してでありますけれども、最近政府や海運石油業界で、巨大タンカーの中東からの輸送ルートにつきまして、マラッカ海峡でああいう事件が起こったので、マラッカ海峡経由から、ロンボク海峡経由に変更しようというような意見がずいぶん出ているのでありますけれども、われわれが非常に心配いたしますのは、ロンボク海峡経由が果たして安全なのかどうかですね。世界地図で見るとそっちの方がずいぶん広いように見えるのですけれども、実際にはそうなのかどうか、非常に心配をするわけです。雑誌エコノミストに海上保安庁の方が対談で出ておりますけれども、それによりますと、ロンボク海峡も必ずしもまだ水路、海図の調査も済んでおらないというようなことでございますが、一体何の根拠もなしに、こっちがだめならあっちというようなことでいいのかどうか、ロンボク海峡の経由につきまして、政府はいまどういうような態度でおられるのか。またインドネシア政府に対してどういうような交渉をいましておるのか、その点を伺いたいと思います。
  85. 高島益郎

    ○高島政府委員 ただいま御質問のロンボク海峡の問題でございますけれども、インドネシア政府は、かねてから二十万トン以上のタンカーにつきましては、ロンボク海峡を通航することを希望しておるように伺っております。しかし、ただいま先生御指摘のとおり、ロンボク海峡につきましては、マラッカ海峡と違いまして海図の作成等についてまだ十分でございませんし、そういう意味におきまして必ず安全であるかどうかという点については、まだ政府としては確信を持っておりません。  それから、トン数によりますのか、また喫水線によりますのか、そのいずれを基準とすべきかという点につきましてもいろいろ異論がございまして、単にトン数ということではなくて、やはり喫水線を基準として、どちらの安全な海峡を通るのがいいのかという問題があるように聞いております。そういうことでございますので、現在関係政府意向はもちろんでございますし、また日本の一部の海運組合等におきまして、ロンボク海峡を通航することを希望するというような意見も聞いておりますけれども、いろいろ考えなければならない前提の問題がございますので、そういう問題を十分に政府としても考え、かつまた、関係政府と十分協議し、さらにまた、これを国際的な場を通じて、納得のいくような解決を図った上で、航行の安全を図るというのが理想的な姿ではないかというふうに考えております。
  86. 河上民雄

    ○河上委員 その問題はまた海洋法会議の開催とともにいろいろ伺いたいと思うのでありますけれども最後にもう時間がございませんので、一つだけ中近東局長伺いたいのであります。  いまの総理大臣の三木さんが先般副総理のころ、特使として中東諸国へ参られまして、そのほか中曽根さんとか、いろいろ政府のあるいは党の有力者が中東諸国を回りまして、石油の輸入の確保のためにいろいろ経済援助を約束してこられたわけでありますけれども、その後、報告によりますると、日本の約束は余り進んでいない、実行に移されていない、そういう不満が中東諸国の首脳者からかなり出ているわけでございます。  私は、かつて三木副総理に、あなたはこれだけ大きな約束をしてきたけれども、本当に実行する気があるのかどうかと、これは要するに油をもらうために、いわゆる油を売ってきたんじゃないかということを言いましたら、そんなことはもう絶対しない、そういうことが起こっては、もう一度石油危機が来た場合に大変なことになるしというようなことで、必ず実行するというようなことを言われましたけれども、その後一年余りたちまして、ほとんど進んでいない、進んでいるものも若干ありますけれども、進んでいない、あるいは日本側が提起するいろいろなプロジェクトの値段も高いという不満が新聞報道などによりますと、向こうの首脳からいろいろ出ているわけでございますが、外務省に対しまして、具体的に中近東諸国の正式の機関を通じて、公式あるいは非公式にそういうことについて強い不満が示されておるのかどうか。もし示されておるならそのことをここで報告していただきたいと思いますし、大臣は、今後、そういうような現状についてどういうふうにされるおつもりか決意を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  87. 中村輝彦

    中村(輝)政府委員 一昨年三木特使がおいでになりましてから、いまお話しのとおり小坂特使、それから当時の中曽根通産相が中東地域いろいろな国においでになりまして、経済技術協力のお話をされたわけでございますけれども、その中には、もちろん政府としてできるだけやろうというお話を、そういう意味でのお約束をされたものとか、民間企業がやるものについてできるだけ協力をしましょうとか、いろんな形でのお話があったわけでございます。たとえば、当時セメントが非常に足りないので、緊急にセメントを供給してほしいけれども政府としてこれを大いにバックアップしてくれないかというような話もサウジアラビアなどでございました。そういうものにつきましては、向こうが必要だという当時の状況に応じまして、できる限り日本の民間の企業が供給に応じられるように、側面から政府としても話をいたしまして、大体向こうの要望を満たしております。それからエジプトなどにつきましても、スエズ運河の拡張工事のための話、これに対する政府の援助も、日本企業との間での話が煮詰まりましたので、間もなくできる。政府の方でもそれに応じた処置を進められるという状況にございます。したがいまして、部分的にはかなり進んでいると言えるわけでございまして、特に政府レベルの話というものは、大体、向こうに約束あるいはお話してきたとおり、ほぼ進んでいるわけでございます。  問題は、民間企業の関係している大きなプロジェクトなどでございますけれども、これは企業の方が話が詰まっていきませんと政府としても協力するということになっても、どういうふうに協力できるか、細かく検討する段階に至らないわけでございますので、その辺問題であるわけでございます。  なお、先方から公式、非公式に不満があるかというお尋ねでございますけれども、公式、非公式ということは一応おきましても、いろいろな機会に私どもの方に対しまして、日本の協力の方がなかなか早く進まない、時間がかかるというような不満はいろいろ聞いております。これは、日本が積極的に協力する意思がないという意味じゃなくて、どうも日本は検討に時間がかかる、こういうような不満が主でございますけれども、そういうような話は、いま申しましたようにいろいろな機会に聞いておりますし、もちろん事情も説明しますし、日本側の関係の企業に対しましても随時それを伝えまして、できる限り検討なり何なり促進するように話はしております。  日本側が遅いというのはかなり一般的でございますけれども、その理由は、現在の日本の経済全般の状況というものがもちろんございます。特にいまお話しのように、日本で出しますコスト見積もりが非常に高いというようなこともあるわけですし、特に大型のプロジェクトに先方は関心があるものでございますから、大型のプロジェクトとなりますと数年の年数がかかるわけで、したがって、数年の先を見越しましての各見積もりが非常に出しにくいというようなこともあります。それから技術者の人を確保する問題をどうするかとか、製品の売りさばきまでやったらどうかといったような問題もありまして、向こうは日本が遅いと言いますけれども、日本側にもまたもっともな理由もあるようではございます。
  88. 河上民雄

    ○河上委員 大臣の答えを聞いて終わりますから、一言。
  89. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまお聞き及びのように、主として問題は大型の民間のプロジェクトにあるわけでございます。国としては、とりわけイランとサウジアラビアにございます。  そこで大型プロジェクトのうち、ことにイランの場合一番問題になりましたのは、従来からありましたパンダルシャプールと申しましたか、あの石油化学のなにでございますけれども、これは現地で日本大使が非常に政府側といろいろ接触をしておりまして、仮に見積もりが非常に大きく違った、そのとおりでありますが、それだったらいま現実的な見積もりはどうか、それについてはイラン側もある程度自分の方の外貨も使ってもいいというような意向がようやく、これは現地及び東京で、私自身も実はイランの大使と何度か話しておりまして、そういう意味で誤解がだんだん解けつつあるということになりつつございます。  それからサウジの場合は、やはり経済技術協力協定を早く結びまして、両方の混合委員会のようなものがお互いの事情を話し合うというところへ持ってくるのがいいのではないか。つまり、わが国の経済体制というものがすぐには向こうの国にわかってもらえませんでしたし、先方の国も、上層部が判断をされるものでありますから、技術的な細かいことが必ずしも伝わっていかない。諸外国は二十億ドル、三十億ドルという大きな金額をぽんと出して、つき合いましょうということになるわけでございますが、わが国の場合には、やはり一つ一つ話を積み上げてまいりませんと、予算制度との関係もありまして、そう大づかみにものを言うわけにいかないというようなことが両国の具体的な接触によってお互いにわかってくる、これが現在の先方の不満、誤解を解く一番の道ではないかというふうに考えております。
  90. 栗原祐幸

  91. 土井たか子

    ○土井委員 昨年の十二月十四日に韓国政府から強制退去命令を受けられましたジョージ・オーグル牧師について、私はけさほどから実はジョージ・オーグル牧師にいろいろと事情を承ったわけであります。きょうこの外務委員会があるということで、先ほどから傍聴席の方にもオーグル牧師がお見えになっているわけでありますが、大変貴重な時間を割いてこの席で聞かれているオーグル牧師の前で、まず私お尋ねしたいことは、一体どの関係省庁がお取り扱いになっていらっしゃるのかわかりませんが、ひとつ、大韓航空機が十四日夜羽田に寄港した際の事情について、またそのときの取り扱いについて、少し事情説明をまず求めたいと思います。
  92. 大高時男

    ○大高説明員 ただいま土井先生からお尋ねの件でございますけれども、十二月十四日の大韓航空〇〇二便でアメリカ人のオーグルさんが送還されるということにつきましては、警察側には事前にどこからも、何の通告もなかったわけでございます。  当日の状況を申し上げますと、十四日の午後十時十分ごろ、運輸省の東京空港事務所航務課というのがございますが、これから電話によりまして、五十二番スポットに出発準備のために駐機中の大韓航空〇〇二便に、外人二人が搭乗券を持たないで入っておる、機長が困っておるので警察官の派遣を要請する、この旨の連絡が東京空港警察署の方にございました、この通報を受けまして、警察では直ちに十一人の警察官を現場に派遣したわけでございます。  現場に派遣しましたところ、この〇〇二便というのはジャンボジェット機でございまして、すでにトラブルは中で起こっておるような様子でございましたので、中に入って事情を聞いたわけでございます。そうしたところ、外国人の方二人がおられまして、乗組員の話では米国人の記者の方であるということでございますが、これと乗組員の方と口論をされておる、こういう実情にあったわけです。  それで警察の方では両方のお話を聞きましたところ、まずこの外国人の方はワシントンポストの者である、この飛行機に韓国から強制送還されるオーグルさんが乗っているはずである、われわれとしてはこの人から直接取材したいのだ、こういうような話であったわけです。一方、クルーの方に聞いてみますと、クルーの方では、搭乗券を持たない人はここへ入ることができないので出てくれ、こう言っているのですが、なかなか出てもらえない、こういうようなことを言っているものですから、それではそのオーグルさんという名前は乗客名簿に出ているのかということを、大韓航空の東京支店の地上の勤務員がおりますから、これに聞いたところ、そういう名前は載っておりません、こういう返事であったわけです。しかしながら記者の方も大変熱心に言っておられますので、それじゃ機長に確認をとろうということで機長室まで警察官が参りまして、機長にオーグルさんという人が乗っておるかということを聞いたら、機長は、乗っておりません、こういう返事であったわけです。したがいまして警察官はやむなくまた下へおりてまいったわけでございますけれども、この二人の記者が確かにいるはずだとおっしゃるものですから、それでは機内を探してみましょうということで、出発間際の大変あわただしいときでございましたが、五人の警察官が手分けをいたしまして中を探したわけです。  探し方といたしましては、中には英語のできないのもあり、できるのもありというぐあいで、呼び方もまことに区々でございますけれども、ミスターオーグルと言ったのもおりますし、ミスターオーグル・カムヒアとか、あるいは日本語でオーグルさんというふうに呼んで回ったというような状況でございます。ただ、その際には、飛行機の後ろの方に至りますまで、前部はもとよりでございますが、全体としてそういうふうにやったわけでございますが、その段階では特に自分がオーグルだというふうに名乗り出てくる人もございませんし、また何らかのいわゆる監禁状態等にあるので助けてくれというようなアッピールをする人もない。また、ましてそういう状況もなかった。  すでに飛行機の出発時間の十時三十分も近づいておりましたので、やむを得ずもとへ戻り、この段階でワシントンポストの二人の方にお話しして下におりてもらった。もっとも、一人の方は警察官が戻ってくる前に機外にすでに出ておられたように思います。この方は、後でわかったのですが、たしかワシントンポストの東京局長でございますか、オーバードーファさんという方だったと思います。  そういうことで一応外に出たわけで、飛行機は警察官が出ると同時にとびらを締め、すでにツイニングカーがつくということで、間もなく出発をしていったわけでございますが、私どもでは、大変にごたごたした問題でございますから、当然お二人の外人の方に来ていただいて事情を聞いてみようということで、署の方に来て詳しいお話を伺いたいというふうにお願いしましたところ、快く署の方に来ていただきましたので、署の方で事情を聞いたわけでございます。そらしたところ、この外国人二人の方は、一人は牧師さんでジェームス・ステンツェルさんという方でございます。もう一人はワシントンポストの記者でドナルド・オーバードーファ、私の呼び方が正確かどうかわかりませんが、オーバードーファという方でございました。それで、お二人とも、なるほどランプ腕章があれば入れるというふうに思ったのは間違いであった、若干トラブルを起こしたのは恐縮であるという旨のことをおっしゃいまして、あと、どういうわけですかと聞きましたところ、確かにあの飛行機にオーグルさんが乗っていたと思うのだけれども、結局わからなかった、われわれとしては直接会って取材したかったというような話をされたわけでございます。  ただその際に機長に聞いたところ、確かにオーグルさんは乗っているけれども、会わせるわけにはいかない、こういうふうに機長の方は言った、こういうふうにおっしゃるものですから、私どもに対する機長の返事とオーバードーファ氏に対する機長の返事が違っておったということに警察としては気づいたわけでございます。  また、さらに乗客リスト等も精密に見たわけでございますけれども、その段階でも名前がない、これはおかしいというふうに思っていましたところ、翌日の新聞でもってオーグルさんがロサンゼルスに着いたということが報ぜられるということで、大韓航空の東京支店長を通じて機長並びに乗務員から事情聴取をしたい、こういう申し入れをしたわけでございます。その結果、十三月の十八日それから二十日の両日にわたりまして、十二月の十八日にはチーフパーサーとスチュワード、それから二十日につきましては機長をそれぞれ機内で事情聴取をするということになったわけでございます。その際に、機長は確かにオーグルさんは乗っておりましたというふうに、オーグルさんが乗っていた事実を認めました。しかし、オーグルさんが東京に飛行機が着いたときにおりたいというふうに言ったのだけれども、自分としては立場上大変困るので残ってほしいというふうに話したところ、じゃわかったということで座席に戻られたものであって、別に飛行機の中でオーグルさんの動きをとめるようなことをしたこともないし、またオーグルさんを監視する人をつけたこともない、まして監視するような人もなかった、こういうような供述をいたしておりますし、またほかの乗務員につきましても、オーグルさんは機内で新聞を読んだりしておったというような話を聞いております。  以上が警察の方が調べた状況でございまして、いま先生のお申し越しの趣旨に合うかどうか疑問でございますが、簡単に状況を申し上げました。
  93. 土井たか子

    ○土井委員 いま承りました経過説明からいたしますと、大分、けさほど来私がオーグルさんからいろいろお伺いしたことと主要な部分で食い違いがあるのです。大変に隔たりがある。たとえば一つ挙げれば、機内に立ち入ってミスターオーグルとか、ミスターオーグル・カムヒヤと言ってくまなく捜し歩いたけれども、該当するような人物はなかった、拘束を受けているような気配のある人物はなかったというただいまの経過報告でございますが、御本人のオーグルさんは、ミスターオーグルとか、ミスターオーグル・カムヒヤという声も耳にいたしておられませんし、そういうふうな警察の方が機内に入って捜されたような事情はないときっぱり言われました。ということはなぜかというと、お二人の米国人の記者を警察の方が連行された。連行されて機外に出た。その途端にドアを閉めて飛行機は滑走を始めたというわけでありますから、したがいまして、これは警察側が機内に立ち入られる時間的な余裕というのは、その前後左右のつじつまを合わせるとなかろうということは想像にかたくない。これはもう十分に推論できるところであります。また、ほかの点でもそれは食い違いは多々あるわけでありますが、きょうは時間の関係からいって細かい点については一切いろいろああでもない、こうでもないということは差し控えたいと思うのです。  というのは、おそらくこのことの論議を進めてまいりますと、警察側は警察側として、報告報告なので、こうであるということを突っぱねて言われるに違いない。水かけ論だと思うのです。ただしかし、これは水かけ論ではありますけれども、いずれかがうそをついているということになるのですよ。事実がそれほど食い違っているのならば、いずれかがうそをついている。しかし、オーグルさん側には、たまたま同じ飛行機に米国に帰られるという方が乗っていらっしゃったりして、証人があります。現にどうだったかという実情に対して、はっきり実情を言っていただける証人があります。このことだけはひとつ銘記しておいていただきたいと思うのですね。したがいまして、警察側がいろいろ事情に対してこうである、ああであるという御説明を賜っていることに対して、一体事実どうなんであったかということは、これからやはりオーグルさん、あるいはオーグルさんと同じ飛行機に乗っていられた証人の方々などの事実についての経過がこうであったということがはっきり出るに及んで、ずいぶん事情も変わってくるだろうと思いますから、ひとつそこのところ御認識をいただきたいと思うのです。  さて、これはちょっとお伺いしたいのです。  国外退去者について、国際法上の地位というのは一体どういうふうに考えられなければならないのでしょう。
  94. 松永信雄

    松永(信)政府委員 ただいまの御質問は、外国において強制退去の処分を受けた人が外国においてどういう取り扱いないし地位を認められるかという御質問だと思いますが、その点につきましては、国際法上特段の規定、定めというものはないと考えております。
  95. 土井たか子

    ○土井委員 国際法上の定めはないとただ一言のお答えでありますけれども、世界人権宣言からいたしますと、その十四条というのはどういうふうに書いてございますか。世界人権宣言の十四条あたりを見ると「すべての人は、迫害を免れるため、他国に避難することを求め、かつ、避難する権利を有する。」「この権利は、もっぱら非政治犯罪又は国際連合の目的及び原則に反する行為を原因とする訴追の場合には、援用することはできない。」こうございますね。これはやはり基本的には主として尊重しなければいけないんじゃないでしょうか。どうなんです。
  96. 松永信雄

    松永(信)政府委員 ただいまの御指摘がありました世界人権宣言第十四条には、確かにそういう規定があるわけでございます。これは、主としまして迫害を逃れるために自由によその国に避難を求めることができるということであろうと思います。ただ、このことから、すべての避難を求める人をある国が受け入れなければならないという実定法上の義務がここで定められているものとは考えられないと思います。
  97. 土井たか子

    ○土井委員 世界人権宣言というのは確立された国際法規ですね。確立された国際法規を遵守するというのは、少なくともわが国の憲法を見るとちゃんと明記してあるわけでありまして、それからすれば、日本の国としては、この人権宣言の十四条というものを尊重しなければならないということがやはり基本的に考えられてしかるべきだと思うわけであります。  そこでちょっとお伺いしたいのは、国外退去の節は、各国にその旨を通告するのが国際慣例だと私は聞かされているわけでありますが、今回韓国政府から日本に対して、オーグルさんについて強制退去令というものを発行し、しかもオーグルさんが乗られる大韓航空というのが羽田に寄港して、さらにアメリカに行くということについての事前の通告があったかどうか。いかがです。
  98. 松永信雄

    松永(信)政府委員 ある飛行機に強制退去処分の対象になった人が乗っている場合に、必ずしも通過国に対して通報しなければならないということではないと思います。  それから、今回の事件について事前にわが国が通報を受けていたという事実はないと思います。
  99. 土井たか子

    ○土井委員 必ずしもないとおっしゃるなら、日本の場合も、日本から外国退去を命ずる人物について、それを通告することなくして退去させているという事実があるわけでございますね。そういうふうにお取り扱いをなさっているというふうに考えていいわけでありますね。
  100. 松永信雄

    松永(信)政府委員 たとえば、外国で日本国民が犯罪を犯して日本で訴追をされているという人を、日本から警察官が行って連れて帰ってまいりますような場合、通過国に対しまして事前に通告をするということをいたしてはおります。しかし、それは原則としてでございまして、すべての場合についてそれをやっておりますかどうか、その事実は私は確認いたしておりません。
  101. 土井たか子

    ○土井委員 今回の韓国から日本の羽田に寄港して、そうしてアメリカに強制退去を命じられたオーグル牧師の場合、これは事前に通告がなかったということに対して、外務省としてはどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  102. 松永信雄

    松永(信)政府委員 事実関係を私必ずしも全部知悉いたしておりませんけれども、仮定の問題といたしまして、たとえば、日本に滞在している間に日本の警察なり官憲なりの協力を必要とするというような状況がもしございましたならば、当然事前に通告をして、日本政府の了解なり協力を求めるべきであっただろうというふうに考えます。
  103. 土井たか子

    ○土井委員 今回の場合は、それでは事前に通告がなかったという状況については、どのように御理解なさっていらっしゃるわけですか。
  104. 松永信雄

    松永(信)政府委員 事前に通告がなかったということから考えますと、韓国側として日本政府に何らかの了解を求める、あるいは協力を求める必要を恐らく認めていなかったのじゃないかというふうに考えられる次第でございます。
  105. 土井たか子

    ○土井委員 それならばお伺いしますが、羽田空港に駐機中の外国の航空機の場合は、これを治外法権というふうに見なければいけないのでしょうか、治外法権ではないのでしょうか。いかがです。
  106. 松永信雄

    松永(信)政府委員 一般的には、外国の航空機に対しましては当該国、すなわち今回の場合ですと日本になりますけれども、日本の管轄権が及ぶという考え方でございます。
  107. 土井たか子

    ○土井委員 そうしますと、機内に拘束されているという人物がいて、拘束されている、機外に出たいというふうな訴えを聴取したときに、その事実があるかどうかということの確認をすることも必要であるわけでありますね。
  108. 松永信雄

    松永(信)政府委員 これも仮定の問題になりますけれども、もしも拘束されていたという事実があったといたしますると問題であろうかと存じます。
  109. 土井たか子

    ○土井委員 実は今回の例について申しますと、オーグルさんは韓国で大韓航空に搭乗される前に、機長によってそのパスポートが取り上げられているわけであります。パッセンジャーのリストには名前が載っていない。これはどこまでいっても、調べ上げたところで、リストにないから当人はいないだろうというのは、机の上での認識ということになるわけです。さらに機長に当初尋ねたときには、先ほど警察の事情についての御説明の中にもございましたけれども、機長はそのような人物はいないというふうに答えられた。しかし、事実その機長はパスポートを取り上げて、その人物を搭乗させているということをよく知っての上のことであります。  こういうときに、まず空港の警察のほうに、二人の搭乗券を持たない外国人がいて困っている、お願いしたいというふうな要請があるのは普通の状態とは言えない。異常なありさまだとまず考えなければならない。しかも二人の新聞記者の方から、機内にいるはずのオーグル牧師にインタビューしたいのだ、機内にいるかどうかということをひとつ確認していただきたいというふうな要請もあったわけであります。これら総合して考えますと、普通の状態とは言えない。しかも先ほどは、何ら身柄を拘束するような状態になかった、関係の人を呼んでいろいろ事情聴取なすったときにはそういう説明があったようであります。しかし、オーグルさん自身にしてみますと、外に出たい、ほかの乗客と同じようにあの出口のほうに向かおうとしたら、パーサーと、それからさらに後にわかったことだけれどもという前置きで、韓国中央情報部員の手によって押さえられた、そして席に連れ戻されて、軟禁状態のかっこうで監視つきであったということをはっきり言われているわけであります。  したがいまして、こういうふうな状況のままで、羽田で機中にあったオーグルさん自身の、ほかの乗客と同じように機外に出たいというその意思が全然認められず、しかも軟禁状態のようなありさまで機中にあって、しかもそのまま羽田を出発してアメリカに向かったというふうな状況については、これはやはり人権侵害の疑いありと言わなければならない。取り扱いに対して果たして適当であったかどうかということになると、どうも後で考えて適当とは言えない点というのが十分に出てくるわけであります。  この状況からして、機長は後で、あのときいないと言ったけれども、実はいたのだというふうに前言を翻すような発言をされておるようでありますけれども、総合して考えて、事前に通告がなかったということが一体どういう意味をこの際持つのか。それから後のオーグルさんに対する取り扱いが日本側として果たして適切であったのかどうなのか、ひとつこの間の問題について御答弁をいただきたいと思うのです。
  110. 松永信雄

    松永(信)政府委員 いまの御質問、すべての点について私がお答えするのが適当かどうか存じませんけれども、最初に旅券を機長が持っていた、あるいは飛行機の乗客名簿に名前が載っていなかったという点につきましては、機長が旅券を預かるということ、あるいは乗客名簿に載ってない人を航空機が運ぶということ、そのことだけで違法であるということは言えないのじゃないだろうかというふうに考えるわけでございます。  まさしくいろいろな人からの訴えがあって、日本の警察としては、いわゆる警察権の行使として機内に入って状況を調べられたのだろう、その結果、もし拘束というような状態が出てくるとすれば、それに対しては警察側においてば適応した措置をとるという考え方をもって臨まれたのだろうと思います。その結果、先ほど御説明がありましたような状況で、警察としてはそれ以上の手を打たれなかったということでないかと私は推測するわけでございます。
  111. 土井たか子

    ○土井委員 機内にいるはずのオーグル牧師について、そのオーグル牧師の存在を確認することに対して十分であったかどうかですね。さらにオーグル牧師自身が、機外に出たいというふうに羽田空港で意思を表明されていることについて、それを十分に尊重し得たかどうか。この問題は後々に私は残る問題だと思うわけであります。  羽田空港というのは国際空港でありますから、そういう点からすると、単に韓国ということだけでなしに、各国の羽田空港を利用する外国機について、やはりその機内にあるところの人権を尊重するということは本来考えられなければならないことでありまして、この大韓航空のみならず、外国機の中にある乗客の人権というものが、いささかでも羽田空港に駐機中において侵害されるというふうなことがあっては、ゆゆしい問題だというふうに考えられるわけでありますから、この点についてはどのようにお考えになるかということを外務省から御答弁願いたいと思います。
  112. 松永信雄

    松永(信)政府委員 先ほど私が申し上げましたように、航空機が自国の領域内にあります場合には、その国の管轄権がそこに及ぶわけでございます。当然日本といたしましては、日本の領域内にあります外国の航空機の航行の安全あるいは秩序の維持につきましては、重大な関心を持っておるわけでございますから、万が一にもそういうことが起こらないように、できる限りの注意と配慮をすべきことは、これは当然であろうと考えるわけでございます。
  113. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、そういう点からしての配慮が今回欠けていたということは確認願えますね。  すでに私は、一月三十一日に、「東京国際空港におけるジョージ・オーグル牧師の人権に関する質問主意書」を提出いたしております。これはこの回答期間が過ぎてなおかつ——回答引き延ばしということに対しての理由を先日お聞かせいただきましたが、なかなか事実に対しての確認ということがむずかしいことと、それから関係国際法に照らし合わせて、どの国際法に関連する事実であるか、それからその国際法をどのように解釈すればよいかということに手間取っておりますというような理由でありました。不本意ながら、私としてはそれは理由にならない理由だというふうに申し上げたわけでありますけれども、二月の末ごろに回答がいただけるようであります。この中には種々具体的に質問をさせていただいているわけでありますから、これは追って御回答いただけるものと思いますけれども、今回こういう事件を通じて、羽田で駐機中の外国機の場合、治外法権ではあり得ない、そういう意味で、もし韓国政府側がオーグル牧師の身柄を拘束していたのが事実であるということが明るみに出るのであるならば、外務省としてはどういうふうにお考えになりますか。
  114. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまのお話を承っておりまして考えることでありますが、羽田に飛行機が現にとまっておって、しかもそのとびらもあいておったという場合には、機内においてできましたことは、明らかにこれはわが国の管轄に属することだと思います。そこで、警察も、先ほどお話を伺いますと、私が聞きました限り、かなり警察としては十分だと思われる措置をとっておるように私は先ほどのお話を聞きました。  でございますから、問題は、それにもかかわらずオーグル氏が機内において、しかも強制力をもって自由を拘束されておったのであるかどうかということになろうと思います。警察当局の知り得た範囲では、そういうことは当夜としては発見できなかったということでありますし、土井委員のお話によりますと、オーグル氏は強制力をもって自由を拘束された状態で機内にいたというようなお話でございますから、その間の事実関係がどうであったのだろうかということ、これが一番大切な点になろうかと思います。仮に、オーグル氏が駐機中の、しかもドアがあけ放たれた機内において自由を拘束された状態であったといたしますと、その自由を拘束した者はだれであるかということになろうかと思います。  仮に、これも仮説でありますが、機長が機内において自由を拘束しておったといたしますと、その機長のなしたそのような行為は、わが国の法に照らしてどのような罪を構成するであろうか、しないであろうかというようなことになってくるのではないだろうか、機長はこの場合公務員ではございませんので、私人としての機長ということにだろうかと思います。飛行機が飛んでおります間でありますと、機長がある程度の権限を機の安全に対して持っておることは慣例上あり得ることでありますけれども、駐機中の、ドアがあいておる機内において、機長がそのような公務員としての権能、公務員に近い権能を持っておるとは考えられませんから、私人としての機長の、仮にオーグル氏の身体の自由を拘束した行為があった場合に、それはわが国の法に照らしてどのようなことになるであろうか、こういうことに問題はなってくるのではないだろうか。  もとへ戻りますと、したがいまして、オーグル氏が駐機中の機内で何者かによって自由を拘束されておったかどうかという事実関係をきわめることが大切になるというふうに考えます。
  115. 土井たか子

    ○土井委員 そうして、早急にその事実関係はお確かめになるということでありましょうと確認をさせていただきたいと思いますが、さて、入管の方がせっかくいらしておりますから、入管の方にこれはだめ押しという形で確認をしておきたいのは、国外退去を命じられた人物が本国に行くか他国に行くか、これは未知数であります。ただ本国側は受け入れる義務がある。しかし、本国に行くか第三国に行くか、これは自由でありますから、第三国に行くとおぼしき国に対しては、入管当局者は、関係国入管当局からその国外退去を命じられている人について、事前に通報するということが慣例であると私は聞かされておりますが、いかがなんですか。
  116. 影井梅夫

    ○影井政府委員 お尋ねの件でございますが、一般的には私どもそういう通報を行っておりません。ただ例外的に韓国との間におきまして、御承知のように韓国からの密入国者その他がかなりございまして、この人たちを、従来大体一年に二回ぐらいこちらから船を仕立てまして送還しておりますので、この場合には通報しておりますけれども、それ以外には一般には通報は行っておりません。
  117. 土井たか子

    ○土井委員 今回の場合にも事前通報はなかったかどうかをひとつ確認させておいていただきたいと思います。
  118. 影井梅夫

    ○影井政府委員 私のほうに対しまして事前の通報はございませんでした。
  119. 土井たか子

    ○土井委員 このオーグル氏の問題については、具体的な事実がだんだん推移するに従って、また再度質問の機会を持ちたいと私は存じますが、いまさしずめ、特に宮澤外務大臣一つ伺いしたいことがございます。  それは昨年の秋、実は木村前外務大臣がアメリカのワシントンで、韓国の金東祚外務大臣との会談の結果、これまでの日韓定期閣僚会議を廃止をして、そうしてそれにかわる新しい外務大臣定期会議を開くということを確認されているわけであります。両者の間で了承されているわけであります。木村前外務大臣は、すでに日韓両国間の関係というのは、多数の閣僚が参加をしなくても、外相レベルだけで話し合いがつくところまで成熟しているというふうに考えられていた。そうしてまた、これは外交一元化というふうなことからしても、その取り扱いというものはやはり適当であろうというふうにも考えてみれば考えられるわけであります。したがいまして、今回韓国に対していろいろな、十年の期限が切れるあの三億ドルの無償借款であるとか、その後に出てくるところの農業開発基金五億ドルについて、これがすでに先日来、日韓協力委員会の席では確認をされて、これを政府としてはどうお取り扱いになるかというふうな問題もございますし、また新たに、新規二億ドルの借款についての話も出ているわけであります。こういう事柄を全部めぐりまして、先ほど来宮澤外務大臣は、国会が終わり次第、日韓閣僚会議というものをお持ちになる御用意がある旨の御発言がちらほらするわけでありますけれども、一体この木村前外務大臣がワシントンで金東祚外務大臣との間で約束になったあの外相会議というのは開かれる御用意がおありになるのかどうか、この点ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  120. 高島益郎

    ○高島政府委員 ただいま土井先生からお話しございました、韓国の金外務大臣が当時の木村前大臣に対してお話をなすったという、その外相レベルの会談につきましてお答えいたします。  当時、確かに新聞でも伝えられましたし、私どももそのような情報を得ておりますが、金外務大臣の方からそういうふうな、つまり定期閣僚会議にかえてということでは必ずしもございませんけれども、外相レベルの会談を開くことばどうかというようなサゼスチョンがあったということは伺っておりますが、これはその後、金外務大臣自身の方から取り消しがございまして、実際に定期閣僚会議にかえて外相レベルの会談を開くというふうな構想は、いまのところ、公式にも非公式にも全然ないわけでございます。
  121. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、外務大臣自身は、この外相会議というものを開くという御予定はおありにならないというふうに了解してようございますか。
  122. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま政府委員から申し上げましたように、先方がそれを希望をしておられない前に、そういう話をしかかったことは撤回をすると言っておられる由でございますので、そうなりますと、私の方からそういうことを考えるということにはなるまいかと思います。
  123. 土井たか子

    ○土井委員 そこで確認をしておきたいのは、例の三億ドルの無償援助というのは今年度で終わるはずでございます。そこで、最近出てまいっております日韓協力委員会からの肝いりもございまして、農業開発基金というふうなものが問題にされておりますけれども、これは無償援助にかわるべきものというふうに理解していいのかどうか。それから、このこと自身政府としては具体的に取り決めたいという御意思がおありになるのかどうか、その辺をひとつ伺わせていただきたいと思います。
  124. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 前段のお尋ねと関連してお答え申し上げますけれども、従来、日韓閣僚会議というような場所でよく援助の具体的な金額等をめぐりまして、大変にいわば詰めて、激しいやりとりをしておったものでございます。私も何度かそういう経験がございますが、今後そういうことはもうやめようではないか、閣僚会議はもっと大所高所の話をしようということは、これはその後了解ができまして、今後、ただいまのような問題は専門家、実務家の間で話をしようということになったわけでございます。  それから、ただいま幾つかの経済援助についてお話がございました。私どもといたしましては、いわゆる経済援助の中で、たとえば農業に関するもの、あるいは社会開発等に関するもの、これは直接民生に一番関係がございますので、そういうようなもので十分メリットがあるというものでありましたら、日本の国力の許す限りで、具体的に相談をして実施をしていってあげることがいいであろう、基本的にはそういうことを考えておりますけれども、いま、昭和四十九年度あるいは五十年度において具体的に、どれとどれについて経済協力をしようかというようなことをまだ最終的には決定をいたしておりません。気持ちとしては、なるべく農業振興であるとか社会開発投資であるとか、そのようなものに重点を置いていくことが韓国の民生の安定、向上に役立つのではないか、基本的にはそういう考えをいたしております。
  125. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、いまるる御説明になって、肝心のところについてははっきりお答えをなさらなかったわけでありますが、無償援助の引き継ぎというふうに、いまの農業開発基金については理解してよいのかどうかですね。  それと、その筋の専門家について詰めをしていくべき問題であって、日韓閣僚会議においてはもっと程度の高い、高度の政治性を持つ問題で討議を進めたいという御発言でございましたが、その筋の専門家というのはどういう人たちを指して言うのか、ひとつ確認をしておきたいと思います。
  126. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 無償の延長として考えておるわけではございません。  それから、専門家と申しますのは、韓国はよく実務者と申しますのですが、局長であるとか何かそういう、いわゆる閣僚でないという趣旨でございます。
  127. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、日本側については外務省の、各省庁の局長あるいは場合によっては課長というふうに具体的に理解しておいてようございますか。
  128. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 関係各省の、さようでございます。
  129. 土井たか子

    ○土井委員 時間が来ましたので、これで終わりたいと思いますけれども、この問題については、まだまだこれはこれからということでございますから、ひとつ次の機会も続けて私は質問をすることを通告させていただいて終わりにしたいと思います。
  130. 栗原祐幸

    栗原委員長 正森君。
  131. 正森成二

    ○正森委員 一月三十一日にわが党の不破哲三議員が予算委員会質問いたしましたことに関連して私も質問したいと思います。  そこで、不破議員が、沖繩にいる米軍部隊が常時ローテーションで台湾へ出かけていって防衛の演習をしておる、あるいは防衛任務についておるということを指摘いたしましたが、その後、沖繩駐留の米軍報道部は、五日にこう言っておるのですね。同基地の第一八戦術戦闘航空団所属のF4ファントム二個中隊が、六週間置きのローテーションで交互に台湾の防衛任務に当たっていることを公式に認めた。そして同報道部によると、最近では一月末に、同航空団の第四四戦闘機中隊F4ファントム十八機が台湾から嘉手納に帰任し、第六七戦闘機中隊同十八機がこれと入れかわりに台湾の防衛任務についている、こういうことになっておりますが、この事実を政府当局は確認されますか。
  132. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 御指摘の、第四四及び第六七の二つの米軍の戦術戦闘中隊が、交互に台湾に派遣されておるということは事実のようでございます。
  133. 正森成二

    ○正森委員 そこで伺いますが、米軍がこういうような台湾地域へ出かけていって、清泉崗というのですか、そこを常時の基地としておるようですが、こういうことを、沖繩の嘉手納基地を中心基地としてローテーションで行っておるということば、これは米華相互防衛条約によってやっているのか、それとも日米安全保障条約によってやっておるのか、あるいはその両方なのかどうか、そこをお答え願いたい。
  134. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 日米安保条約のもとにおいて、こういう飛行部隊の戦闘中隊程度が移動するということは、安保条約上何ら問題がない次第でございます。その部隊の台湾における行動任務の問題については、われわれとしてはお答えする立場にはないと存じます。
  135. 正森成二

    ○正森委員 私が言っているのは、米軍がこういうことをやっているのは、米軍はどういう根拠に基づいてやっているのか、こういうことですが、それでもいまのお答えでいいのですか。
  136. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 米国が現在の台湾との間に一つの防衛関係があるということは事実でございますが、その部隊が、この飛行中隊が台湾に行った後の任務その他については、私たちとしてはお答えする立場にないということでございます。
  137. 正森成二

    ○正森委員 それでは申しますが、同じ沖繩駐留の米軍報道部は、さきに私が申しました発表をするに当たりまして、その根拠は一九五四年に結ばれた米華相互防衛条約の責任を果たすためである、こういうように公表をしているわけであります。そうすると、米華相互防衛条約の責任を果たすための部隊が事実上沖繩にいて交互に出かけていっており、しかも不破議員が言いましたように、核攻撃の訓練もやっておるということになりますと、これはどういうことになるのか。私が承知しておりますところでは、三十五年五月十二日に岸国務大臣が安保国会において答弁をしておりますけれども、その答弁を見ますと、アメリカが米比あるいは米台というように条約を結んでおっても、それは安保条約とは関連を持っておるんではないんだということを言っておるのですね。これは当然、安保条約の極東の平和と安全とかあるいは事前協議とかそういうものによって独自に法的な根拠、見解というものは考えらるべきであるということだと思うのです。そうしますと、いまアメリカ局長がお答えになりましたけれども、米軍がこういうように出かけていくということ、これは安保条約の目的から考えてどういうように考えられますか。
  138. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 先ほどから申し上げておりますように、この戦術戦闘中隊が台湾に参りました後の具体的な任務というものは、われわれとしては承知する立場にはございませんが、ただ一つはっきりしておりますことは、この中隊は台湾に派遣されました場合にはフィリピンに司令部を置いております第一三空軍の指揮下に入るわけでございます。したがいまして、在日米空軍の指揮下を離れるわけでございます。
  139. 正森成二

    ○正森委員 指揮下から離れるということでございますけれども、しかし同じく三十五年四月一日に岸国務大臣が安保国会答弁をいたしておりますが、そこではこういうように言うておるのです。米軍の行動というものは本来これは自由であります。したがってその自由な行動を持っておるところのものを無制限に行動をさせるようなものを日本に駐留せしめておくということは、これは適当でないということでその在日駐留目的を制約しております。さらにその行動につきましては、事前協議によってさらにこれを制約しようということをとっております。こう答えておるのですね。つまり駐留目的というのがまず一つ枠が掲げられて、それがいよいよ戦闘作戦行動その他の具体的行動をとる場合には、事前協議の三つの条項でまた枠がはめられる、こうなっておるのです。しかし、そういうような政府のいままでの考え方からいきますと、これはアメリカ局長は非常に気楽に、四四の部隊と六七の部隊が出かけていってただ単に移動するだけである、そして移動したら別の指揮系統にあるというように言うておられますけれども、しかし現実には嘉手納に本拠を置いて、四四と六七が交互に出かけていって台湾防衛の任務を持っておるということになれば、その沖繩にいる四四、六七の部隊は、しかも六週間おきですから、それは駐留目的の一つの中に当然入っておると考えなければならない。そうするとこの駐留目的というのは、結局は安全保障条約の極東の平和と安全ということになるというように解釈せざるを得ないと思うのですが、いかがです。
  140. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 この第四四及び第六七戦術戦闘航空中隊が沖繩におりますときは、当然安保条約の枠内で行動しておるわけでございまして、日本の安全及び極東における国際の平和と安全に寄与するためにおるわけでございます。また事実そういうように寄与しておるとわれわれは認識しておりますししかし、その一個中隊が台湾に移りましたときは、それはその移ること自体は安保条約上何ら問題はないのでございますが、さらに台湾に移りましたときは、先ほどから申し上げておりますようにフィリピンに司令部を置いております第一三空軍の指揮下に入るわけでございまして、そしてこれはいわば米国と台湾との防衛関係の問題でございまして、その任務についてはわれわれとしてはとやかく言う立場ではないということを申し上げている次第でございます。
  141. 正森成二

    ○正森委員 アメリカ局長はそういうような答弁に終始するつもりのようですが、それでは私は宮澤外務大臣伺いたいと思いますが、現在のわが国は安保条約を結んだときのわが国とは違っておるわけですね。すでにだれも否定することができないわけですが、日中共同声明というものが結ばれております。そうすると、日中共同声明が結ばれて、日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認するというようになりました以上は、極東の平和と安全といいますか、極東の範囲あるいは台湾条項というものは当然変わってくるべきだと思うのですね、それについていままでに政府の見解も若干あるようですが、それを申し上げる前に、現大臣としてはどういうようにお考えになっておりますか。
  142. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 かつてあの地域は中華民国政府と言っておったわけでございますけれども、それは現在台湾の地域、こういうふうに認識することが正しいであろうというように考えております。
  143. 正森成二

    ○正森委員 私は、台湾の地域というように中華人民共和国の領域の呼称が変わったかというようなことを聞いておるのではなしに、日中共同声明を結んだこととの関係で台湾条項はまだ生きておるのか、極東の範囲はどういうぐあいになるのかということを伺っておるのです。
  144. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その地域がいわゆる極東の範囲、地理的な概念ではございませんけれども、日米安保条約に言う極東の範囲に入っていることには一向に変わりがない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  145. 正森成二

    ○正森委員 日米共同声明のいわゆる台湾条項も、それではそのままですか。
  146. 高島益郎

    ○高島政府委員 正森先生の御質問意味は、かつて佐藤総理訪米の際の佐藤・ニクソン共同声明文で言及しております。いわゆる台湾の安全についての日本の立場だろうと思います。  御承知のとおり、確かにあの当時ああいう表現でもって日本の台湾の防衛に関する認識を述べておりますが、その後、御承知のとおり米中関係、さらにその後の日中正常化というような新しい国際関係の発展を背景にいたしまして、私ども台湾に関する認識はその後非常に変わっているということは、しばしば総理大臣及び外務大臣国会のあらゆる場で表明しておられるとおりでございまして、その点に関しまして私ども認識は変わっておりません。
  147. 正森成二

    ○正森委員 それでは確認しますが、ここに四十七年六月七日の外務委員会での楢崎委員質問に対する福田国務大臣答弁があります。そこでは非常に明確に「日中国交正常化の暁におきましては、六九年日米共同声明のいわゆる台湾条項は消滅する、このように確認をしておってよろしゅうございますか。」「福田国務大臣 私も同様の理解をいたしております。」こう言っておりますが、このときは六月七日、日中国交正常化の前ですけれども、現在はすでに正常化してあるわけですから、これは確実に、あるいは明確にこのとおりであるというように高島局長は御答弁になったというように理解してよろしいか。大臣、それでいいのですね。
  148. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは事態を実質的に考えます限り、実質的にそういう変化があったということはもう認めるべきだと思います。
  149. 正森成二

    ○正森委員 そうだといたしますと、事態は実質的に変わったという表現で、台湾条項が消滅したということを反論はなさらなかったわけですが、そうだといたしますと極東の範囲という考え方についてもおのずから変わるのがあたりまえではないか。極東の範囲というのは何も地理的な範囲ではなしに、日米両国が、そしてわが国の立場からすれば日本国が、共通の関心を持っておる地域、その地域の平和と安全が脅かされたならば、わが国の平和と安全にも非常に重要な関係がある、こういう地域を言うわけであります。ところが非常に大事な一九六九年の日米共同声明で台湾条項というものを言うておりますが、これが消滅しておるというように考えるならば、これは安保条約の極東の範囲というのから事実上除かれるということに論理的になるべきだと思うのですね。また、それが、日中共同声明中華人民共和国を唯一の合法政府だと認めているわが国の政治的責務でもあるというように思うのですが、それはいかがです。
  150. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 極東の平和と安全を維持するという安保条約の目的は、どの国がどの国によって攻撃を受けたということを想定をいたしておるわけではございません。いろいろな関係で、ある地域の平和と安全が破れることがある、そういうことを防ぎたい、平和と安全を維持したいというのでございますから、仮に台湾という地域が第三国によって攻撃を受けることがあるかもしれません。そういうことを私どもは望んではおりませんけれども、そういう場合にはやはり極東の地域の平和と安全が保たれないということになるわけでございましょうから、そういう場合には安保条約はやはりそれに対応して、平和と安全を維持することを目的とするということになろうと思います。
  151. 正森成二

    ○正森委員 いまの御答弁は非常に意味深長かつ理解困難な答弁でありまして、前半では台湾条項は消滅した、こう言い、後の、それでは極東の範囲はどうだ、こういうように問題を詰めていきますと、第三国が攻撃する——第三国というのはこれまた意味がわかりませんが、宮澤外務大臣の御心中を読心術か何かでそんたくするに、これは中華人民共和国でもなく、また台湾、あるいは別のことばでいえば中華民国でもない第三者、たとえば某々国である、そういうような場合には安保条約は発動するのだ、こういうようなお考えと承っていいですか。
  152. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は、条約の専門家ではございませんが、ごく普通に考えてみました場合に、安保条約がだれだれを攻撃するということを想定していない以上、そのようなことはやはり考えるのが条約の範囲内ではないかというふうに思うわけでございます。
  153. 正森成二

    ○正森委員 いろいろ御苦心の答弁ですけれども、なかなか理解できないですね、たとえば佐藤氏とニクソン氏の共同声明を見ますと、佐藤さんの言っている言葉だけなら「総理大臣は、台湾地域における平和と安全の維持も日本の安全にとってきわめて重要な要素であると述べた。」これがいわゆる台湾条項なんですね。そうするといまの宮澤さんの答弁だったら、前半で台湾条項は消滅したと言い、安保条約というのはあらゆる国の場合を含めるのだ、こうなりますと、日米共同声明自体も別に台湾において中華人民共和国と台湾側が紛争が起こったときというようなことは限定していないわけですから、その直前には「大統領は、米国の中華民国に対する条約上の義務に言及し、米国はこれを遵守するものであると述べた。」こう言うてはおりますけれども、しかし、必ずしもお互いの台湾海峡を離れる両側のことだけを言うているわけではないわけですから、そうすると、いろいろ回り回って、台湾条項は消滅したなんて言っておきながら、やはりそれは極東の範囲内に入り、安保条約の対象地域に入るのだ、わが国としてはその平和と安全というのは重大な関心を持つのだ、こういうもとのところへ返ってくるのですか。結局あなたは御自分の最初の答弁を回り回って御否定なさる、こういうことになるのですか。
  154. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 さようではございませんで、いわゆる台湾条項というものは、実質的には先ほど申しましたように情勢が変わった。したがってわが国が中国政府国交正常化をいたしまして以来、私どもは中華民国政府というようなことは申しませんし、あの地域を台湾地域と言っておる。そして何度も申しますように、そういうことでありますから、台湾海峡をめぐるところの、いわゆる正森委員か言われますところの、それは内戦ではないかとおっしゃいますそういう部分でございますが、幸いにしてそういう事態は起こりそうもない、まことに結構なことだというふうに申し上げておるのです。そうかといって、その台湾という地域にほかの平和と安全を乱すような事態というものは考えられないかといえば、これは条約としては考えておる事態でございますから、したがってその地域が極東の地域でなくなったというわけにはまいらない、こういうことだと思います。
  155. 正森成二

    ○正森委員 大体お考えがわかってきましたが、しかしお考えがわかったということはそれがごもっともだということにはならないんですね。  そこで、それなら私は伺いますが、国際法には不干渉の義務というのがあります。これは国家というのは、他の国家の国内、国外事項の処理に関して干渉してはならない義務のことであります。干渉にもいろいろあるけれども、その中で一番重大なのは、国家または国家群が一定の状態を維持または変更するために、その意思を他国に対して強制的に押しつけること、つまり単なる勧告とかそんなのじゃなしに、強制力を持って一定の状態の維持、この場合には維持だと思いますが、それを押しつけること、これは明白な干渉であります。そうすると、わが国は台湾地域を、これは中華人民共和国が唯一の合法政府だということを認めており、そして不破議員の質問に対しても、そこでもし海峡の両側の間でいろいろなことが起こる場合には内戦状態だ、あるいは内戦と見るべきだという答弁をしておりますが、さらにその問題があらわれて、それを両当事者以外のところが侵略したというようなことが仮にありましても、それば中国の一地域について紛争が起こったことであります。それを唯一合法政府と認めている中華人民共和国からわが国に何とかしてほしいというような話し合いがあった場合は別でありますが、そうではないのに、こちらからのこのことおせっかいをして、それが極東の平和と安全にとって重要な関心があり、要素であるのだから、やはり安保条約の極東の範囲内に入るというようなことを言うのは非常なおせっかいであり、明白な干渉であります。安保条約というのは強制力を持って米軍が出かけて行って、それに武力を発動する、そういうことを前提にしておる条約ですから、そうなると干渉の中の一番大きな強制力を持って一定の現状を維持する、こういうことになります。そうすると、そういう国際干渉というのを条約上明確に認めたものをそのまま維持する、こういう答弁になります。それは日中平和友好条約をこれから結ぼうとしていく上での外務大臣の発言としてはきわめて重大なことでありますが、どう思いますか。
  156. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 たとえばフィリピンの北の方で何か国際的な紛争が起こったといたします。そういたしますと、これは極東の平和と安全が乱されてわが国の平和と安全に直接関係がある。その場合に安保条約は働き得る状態と思いますが、それはフィリピンの内政に干渉することにはならないというふうに考えます。
  157. 正森成二

    ○正森委員 外務大臣は非常におつむがいいから何かそれでおわかりになったつもりかもしれませんが、フィリピンの少し北の方で何か起こった場合に安保条約がどういうように発動するのですか。フィリピンに爆撃でも加えるというのですか。フィリピンは一つの国で二つ政府なんか対立していないですよ。ただ、中国において、いま私が問題にしているように、一方は中華人民共和国であり、一方は台湾である。しかもそれに対して、日米共同声明の前なら、わが国中華人民共和国を唯一合法政府と認めていなかったんだから、だから米軍が台湾へ出かけていってもその間に一定の法律上の整合性はあった。しかし現在では、中国は中華人民共和国が唯一合法政府だと認めているわけですから、そして台湾地域というのは、日中共同声明でも「ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」こう言っているのでしょう。結局、カイロ宣言の条項を遵守するわけですから、台湾が中華人民共和国の領域内にあるべきだということは認めているわけでしょう。いま問題になっているのは、その台湾へ出かけていって米軍がいろいろなことをやるというようなこと、それを事実上極東の平和と安全だと認めておって、それで日中共同声明のあの精神、そしてそれに基づいて締結しようとする日中平和友好条約、子々孫々平和である、そういうたてまえと一体矛盾なく理解できるのかどうかということを聞いておるのです。フィリピンの北のどこかわからぬけれども、絶海の孤島で何か起こったというようなことは聞いてない。
  158. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 つまり、ある地域においてある紛争が起こった場合に、それは内戦だとは限らないということを申し上げておるわけでございます。
  159. 正森成二

    ○正森委員 内戦と限らなくても、台湾でいろいろなことが起こって台湾に第三国が攻撃したという場合に、台湾は明白に中国の領土なんですよ。中華人民共和国の領土なのに、中華人民共和国が別に日本国に何か助けてくれ、助力してくれと言わないのに、いいや、おれはおまえのところの台湾のところで何か起こったら、それが第三国のだれが攻めたものであれ、内戦であれ重大な関心があり、アメリカ軍に行って爆撃してもらう、あるいは軍事行動をしてもらう、それを安保条約で認めているのだというような立場が、一体、日中共同声明やこれからの日中平和友好条約を結ぼうとする立場と、矛盾なく整合的に理解し得ると思っておられるのかと言っているのです。そんなことはだれが考えたって理解できないですよ。そこから出てくる結論はただ一つ、台湾条項は消滅したということは前半においてあなたが明確に御確認になったように、そしてそこから出てくる結論は、台湾地域というのは、極東の平和と安全の極東の地域、すなわち、わが国が重大な国際的関心を持っておる地域には入らない、こうするよりほかないのです。そうしなければ、中国に対する重大な内政干渉にわが国が加担するということに国際法上はならざるを得ない。だからこそ、この点についてあなた方の態度があいまいだから、中国側日中平和友好条約の中に、日中共同声明の第二項と第三項、「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。」という部分を入れてくれと言っているのです。それは今後の交渉の上で非常に重要な問題ですね。そこで、あなた方が子々孫々平和だと、それで平和という文字を入れるのだ、友好というのはこれからずっと友好的にやっていくのだという条約の上から見て、この台湾地域の問題をどういうようにお扱いになるつもりですか。私のいままでの質問の観点とあわせてお答えください。
  160. 松永信雄

    松永(信)政府委員 ちょっと法律的、技術的な側面がございますので、私からお答えいたします。  先ほど正森先生が御指摘になられましたように、日中共同声明におきまして「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」これが日本政府の立場でございます。他方におきまして、事実問題といたしまして、台湾地域について中華人民共和国政府の実効的な支配が及んでないという事実がございます。  またアメリカと台湾との間には、これまた先生御指摘のとおり、米華防衛条約というのが締結されているわけでございます。  そこで、具体的なアメリカの軍隊の行動というものについて考えますと、これも再三御説明申し上げておりますけれども、アメリカの軍隊の行動というものについては、基本的な制約といたしまして国際連合憲章というものがあるわけでございます。現在この国際連合憲章のもとにおきましてアメリカ軍が行動することが許されております場合というのは、憲章第五十一条にいう自衛権に基づく行動という以外にはあり得ない。すなわち、具体的に申しますならば、これは外部からの違法な武力攻撃が起こった場合に対してのみ行動するという基本的な制約があるわけでございます。したがいまして、先ほど外務大臣がフィリピンの例を挙げて申されましたけれども、そういう地域に対して外部から違法な武力攻撃が加えられた場合に、その攻撃を排除する自衛権に基づく行動、これはアメリカが条約上当然とり得る行動であるというふうに考えているわけでございます。
  161. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま条約局長から申し上げましたとおりです。
  162. 正森成二

    ○正森委員 私は、ただいま条約局長から答弁したとおりでありますというようなことを、これから日中友好平和条約を結ぼうとしている外務大臣が言うべきことではないし、条約局長答弁では、何を答弁しておるのやら、さっぱりわからぬ。大体、台湾地域に事が起こったときに自衛権を発動するのは中国人民ではありませんか。それをアメリカや日本が自衛権がどうこうなんと言うのはおこがましい。そういう認識もなしに、日中友好平和条約を結ぼうなどと考えて、自衛権を発動する場合だからどうこうなどというような認識で、本当にあなた方、平和友好条約を結べると思っておりますか。アメリカでさえ共同声明の中で「米国は、台湾海峡の両側のすべての中国人が、中国はただ一つであり、台湾は中国の一部分であると主張していることを認識している。米国政府は、この立場に異論を唱えない。米国政府は、中国人みずからによる台湾問題の平和的解決についての米国政府の関心を再確認する。かかる展望を念頭に置き、米国政府は、台湾からすべての米国軍隊と米国軍事施設を撤退ないし撤去するという最終目標を確認する。」こういう意味のことを言うているのですね。  だから、そのアメリカの部隊が台湾からいなくなって、沖繩に引き揚げてきているんじゃないですか。引き揚げてきているならいいけれども、その引き揚げてきている部隊が、台湾にはおれなくなったけれども、沖繩を中心にしてときどき出かけていくというような、いわば米中間でさえ厄介払いになった軍隊をわが国が、しかも米国よりもさらに一歩進んで、中華人民共和国を唯一合法政府と認めているわが国が置くなんという必要はさらさらないと思うのですね。  私は、そういう意味から言うて、米国と日本ではさらに問題が違うし、米国にとっては、いや私は中華民国と防衛条約を結んでいるから内政干渉にならないということであっても、わが国の立場からは明白な内政干渉になる、そういう性質をこの問題は持っておるということを指摘して、時間ですから私の質問を終わらしていただきます。
  163. 栗原祐幸

  164. 渡部一郎

    渡部(一)委員 お疲れのようでありますが、継続して質問いたします。単純に、わかりやすくお答えをいただきたいと存じます。  まず、アラブとの外交の問題につき整理してお伺いをしたいと存じます。  まず、アラブ諸国に対する態度の中で最も問題になるかと思われますのは、PLOの取り扱いであります。将来パレスチナに国家が建設された場合、それを仮定するわけでありますが、PLOはその中心的な存在になるかと思いますが、政府はどう見通されておられますか。
  165. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先般の国連決議におきましても、PLOがその主要な部分であるということが述べられておりますので、そのように考えるのが相当であろうと思います。
  166. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この間の予算委員会総理委員との応酬の際に、総理はPLOはパレスチナ人民の唯一の合法的な代表であるという旨の答弁を押し詰められたような言い方で述べられたようでありますが、これをきちっと御説明をいただきたい。
  167. 中村輝彦

    中村(輝)政府委員 PLOは、昨年のラバトのアラブ首脳会議におきましては、パレスチナ人の唯一の合法的な代表であるというふうに決議ができたということを聞いております。それから昨年の国連の総会におきましては、パレスチナ関係の決議が三つございますけれども、その際に、決議においては、PLOはパレスチナ人の代表ということで書かれてございます。したがいまして、私ども直接関係がございましたのは、国連のパレスチナ問題に関する決議の審議の際でございまして、ただいま申し上げましたように、PLOはパレスチナ人の代表ということで審議参加の招請決議というものが出され審議されたわけでございますので、私どもはそういう意味におきまして、PLOはパレスチナ人の代表であろう、こういうふうに認識しているわけでございます。そのときにどうして唯一合法的な代表であるというふうになってなかったのか、これは私どもの問題ではないわけでございます。そういうことが実情でございます。
  168. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私はニュース解説をお伺いしているんじゃなくて、日本政府はPLOをパレスチナ人民の唯一合法的な代表と認めると言うんですかと、もう一回伺っているんです。そうするつもりなのかと聞いておるわけです。ほかの国がどうこうと言っているわけじゃありません。
  169. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 せんだって、予算委員会におきまして、唯一合法かというようなお尋ねが何度もありまして、総理大臣は、実体的にこれがパレステニアンを代表するものでしょうという答弁で終わっておりますけれども、唯一合法といいますと、国家がありまして、政府と称するものが幾つか、自分が正統政府であるというようなことを主張しました場合に、これが唯一合法の政府ですというようなときに使われる言葉であって、唯一合法というのは、まだ国家を構成していないときには言葉としてはちょっとなじまないのではないかというのが恐らく法律の専門家の意見であったのであろう。したがって、総理大臣としては、紛らわしいからそういうお言葉をお使いにならない方がいいでしょうということであったのであろうと思います。総理大臣が、実質的にはこれでしょうとおっしゃったことで、考え方としては私は足りておるというふうに考えます。
  170. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうすると、PLOは実体的には唯一合法の代表であるが、法律論、国際法的な立場から言えば、日本政府としては唯一合法と言うべきではない、こういう立場ですね。
  171. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国家を構成しておりませんから、唯一合法という言葉を使うのは用語としては必ずしも適切でないであろう。しかし、先般の総理予算委員会における答弁でもお聞き及びのように、今後パレスチナ人が国家を構成するときには、恐らくPLOというものがその主たる部分であるという認識は持っておる、こういう意味でございます。
  172. 渡部一郎

    渡部(一)委員 もうそこまで微妙におっしゃらずとも、唯一合法と言われても差し支えないんではないかと私は思います。  というのは、亡命政権やそれらのものの扱いについては慎重でなければならぬのはわかりますが、この場合、明らかに、アラブという、日本にとって致命的な影響性を持つ地域の問題を扱う場合において、そういう微妙な言い回しが、結局日本政府はPLOをその代表と認めがたいと言っているように感じられるおそれがあると私は思うからです。ですから、実体として国家を形成してない、領土がないということは、第二次大戦中におけるドゴール政権を見ても、あるいは日本政府がギニア・ビサウの独立の以前に、そのギニア・ビサウを唯一合法的な政権として取り扱い、交渉を進めた前例においても明らかなとおり、これをもう少し明確な立場で扱われてもいいのではないか。むしろ法律的な立場とか領土という問題を考えて、領土を持ち合わせてないという議論はいかがなものかと思われます。おまけに、パレスチナ人の主張する領土要件は非常に広域的な地域名称であって、御承知のとおり、彼らの現在居住しておるところは、彼らがパレスチナと呼ぶ地域にすでに住んでおるということさえもあるわけであります。そうすると、領土を持たないあるいは領土権が全くないというような表現もいかがなものかと思われます。したがって私は、そういう御説明ではなく、パレスチナ人民の合法的な代表であると認めると、一言きちっとおっしゃった方が話はすらっと通るのではないか、また後の取り組みとしてはいいのではないかと思いますが、大臣どうお考えでしょうか。
  173. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 将来いつかの時期にパレスチナ人が一つの国家をつくったといたします。わが国がその国家を承認したといたします。その国家の唯一合法の政府はどれであるかというときに使われるにふさわしい言葉であろう、こう考えておるわけでございます。
  174. 渡部一郎

    渡部(一)委員 この押し問答を繰り返してもいいのですけれども外務大臣はきょうは失言を恐れておられるようですから、次にいきましょうか。  第二十九回国連総会でわが国はPLO招請決議案に賛成いたしましたが、パレスチナ民族の民族独立、国家主権、祖国復帰などの原則を確認する決議案並びにPLOに国連常駐オブザーバーの資格を与える決議案には棄権をし、アラブ諸国の非常に大きな失望を買っております。わが国は本年から国連安全保障理事会の非常任理事国ともなったことでございますから、こうした紛争の中で中途半端な態度というのは許されないのではないかと思います。国連常駐オブザーバーの資格を与えるのに棄権するとか、彼らの民族自立の権威に対して、少なくとも故障を申し立てる雰囲気のあるような行動をとるということは、それこそいかがなものかと思われます。私はその意味政府のそうした態度というものは余りにも首尾一貫せぬという感じを抱くのでありますが、いかがでありますか。こうした行動については、大臣としては今後再検討なさるおつもりがあるかどうか、お伺いをしたいわけであります。
  175. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御承知のように、わが国は、いわゆるPLOがパレスチナ人の利害に重大な関係のある国連の討議に参加することは、積極的に賛成をいたしたわけでございます。しかし、現在まだ国家にはなっていないというのが現状でございますから、あらゆる国連の機関に参加をし、討議に入ってくるということは、これは国連加盟国と加盟国でないものというけじめが一つございますから、慣例にもかんがみてどうであろうかということ。それからもう一つのほうの三二三六という決議の方は、安保理決議二四二号というものが同じく重大な意味を持つ決議でございますから、その二つの間がどのような関係になるのか。端的に申せば、イスラエルの場合も大事な問題があるわけでございますから、その両方が満たされなければ中東の紛争というものは円満には解決しない、こういうふうにわが国考えておるわけでございます。  そこで、今後の問題でございますけれども、要するにわれわれの目的とするところは、中東紛争か関係者のみんな満足した形——まあ全部が全部自分のいいようになるというふうには参らぬでございましょうが、ともかく関係者が一応これで納得できるという形でなければ本当の解決点にはなり得ない。その関係者にはPLOもございますし、イスラエルもあるわけでございますから、一つの決議を積極的に推進することによって、中東紛争の解決に事態が遠のくというのであってはいけない。それに近づいていくという、あくまで中東紛争の解決というものが最終の目的でございますから、それに寄与するというふうに判断をいたしましたら、筋道の通る限り、やはり前向きに事態を考えていく、こういうことがこれからわが国が、ことに非常任の安保理事国として常に念頭に置くべき問題であろうと考えております。
  176. 渡部一郎

    渡部(一)委員 大臣は、恐らく経済問題に対して練達でいらっしゃいますから、第五次中近東戦争が勃発したらわが国に致命的な工業的影響があらわれることは御承知のとおりであろうと存じます。しかし、現在私どもが知る限り、キッシンジャー米国務長官の発言を見れば、サウジアラビアを中心とする諸国の軍事占領計画であるというようなものがすでに報道されております。そして、日本の国はどういうところにランクされているかというと、中近東諸国の中でわが国の国連に対する態度、国連総会におけるこうした態度というものが非常に不満を持って感じられている。サウジアラビアの中央企画庁次官は、中近東方面における日本の経済外交は口先だけで誠意がないと不信感を明瞭に述べております。またOPECの閣僚会議においては、OPEC内の一国が軍事的な攻撃の対象になった場合、その攻撃国に対して、OPECの全加盟国が一致して石油禁輸措置をとるということを明確にし、また禁輸措置の対象国として、日本が明らかに敵性国家として認められていることを示しております。こうしたことは、わが国にとってはまさにきわめて危険な状況が現出していることを示していると思うのであります。この時期に、国連におけるわが国の行動はきわめて危険な行動であったのではないか。しかも私はあえて言うのでありますが、キッシンジャー氏の発言に対して、日本政府は抗議をした形跡が全くない。キッシンジャー氏の、石油問題において禁輸措置がとられたら軍事占領するという恫喝は、国連憲章第二条第三項、第四項及び第五十一条の関係で憲章違反とも言われかねないものであります。  すなわち、三項には、「すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危くしないように解決しなければならない。」四項「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。」と記してあります。  国連外交を少なくともわが国の外交の基礎とされる日本外交が、こうした問題について発言がない、仮定の問題として拒否する、これは明らかにアラブ諸国から見れば敵性国家と位置づけられる行動であります。  今日平穏に推移しているということば単なる奇跡でしかない。今日平穏であるというのは単なるフロックでしかない。こうしたときにこそ日本外交の反アラフ政策——私は親イスラエルになれとか親アラブになれと言っているのではない。反アラブ政策というものをこの際方針を改め、こうした明らかな国際的恫渇に対し、日本政府は一言の意見の表明があってしかるべきものではないか。少なくとも当委員会の席上で外務大臣はその意向を表明されてしかるべきではないか、できるならば総理意見を表明されるのがあたりまえではないかと私は考えるのでありますが、いかがでありますか。
  177. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この問題は、渡部委員も御出席の他の委員会において総理大臣がお答えをしておられますので、詳しくは申し上げませんけれども、いわゆるストランギュレーションという発言は、結局自衛を必要とするような緊急事態という、極端な想定された仮想の場合を言ったものであろうと私ども考えておるわけでございます。アメリカとしては、これだけの込み入った紛争でございますから、紛争を平和的に処理するために、場合によって硬軟両様の表現をする、あるいはそのような顔つきをする、これはまあ、わが国はそういう哲学を持っておりませんけれども、アメリカとしてはそういうところがあるのであろう。ですから、要は、総理大臣が言われますように、終局的にアメリカがどのような行動をとるのか。この場合、つまり平和裏に事態を解決するというのがアメリカの考えであると自分は思うが、そこをやはり見ておけばいいのではないかと総理大臣がしばしば言われますが、私どももそのように思っています。  昨年来の経緯で、わが国がアラブ諸国からいわゆる敵性を帯びておると考えられたかどうかという点でございますけれども、私は、わが国がその間にあっていろいろ努力をしていることは、アラブ諸国も知っておると考えておりますし、また、過般のアルジェの会議でもそうでございましたよように、産油国と消費国とが一緒に話をすることは、産油国としても賛成であるという結論になってまいっておりますから、まずまずその間大きな誤解はなかったのではないかというふうに考えております。
  178. 渡部一郎

    渡部(一)委員 時間がありませんから、次のことにいきますが、わが国においては、武器輸出というものに対して、輸出貿易管理令により三条件を立てこれを禁止をいたしております。しかしながら、従来までの御説明によりますと、アラブ、イスラエルの両方に対し武器輸出の可能性はきわめて高いのであります。むしろ制限されていないと言っていいのではないかと思います。政府はこれについての実態を報告していただきたいと私は思います。  それと同時に、今日までの実態とあわせて、この中近東紛争当事国に対して輸出を継続されるおつもりがあるかどうか、お伺いをしたい。
  179. 中村輝彦

    中村(輝)政府委員 中東紛争に関係のありますイスラエル並びにアラブ諸国、これは現に過去から紛争当事国そのものでもございましたし、わが国はこれらの国に対しまして武器輸出をしておりません。
  180. 渡部一郎

    渡部(一)委員 あなたはしていらっしゃらないとおっしゃるけれども、私は実態について伺っていない。従来は紛争当事国とはみなしていませんでした。ですから私はお伺いしている。いままでの武器輸出の行われたりストを提出していただきたい。今後こうしたものについては武器輸出をやめてほしいというのが私の要求です。これにお答えいただきたい。
  181. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは恐縮でございますが、そういうお尋ねであれば、貿管令を管理しております通産省当局から資料を御提出いたします。  今後の政府の方針といたしましては、武器輸出に関する三原則をかたく守ってまいるつもりであります。
  182. 渡部一郎

    渡部(一)委員 次に、政府のアラブ方面に対するさまざまな約束でありますが、この約束が履行されていないという発言が同僚委員からもございました。私は外務省御当局から「三木、小坂両特使及び中曽根前通産大臣が中近東諸国に対し約束した経済技術協力案件とその実施状況」、一月三十日付の資料をここにいただいております。先ほどおっしゃいましたことと大分話が違う。たとえば四十八年十二月二十二日、三木特使、カタール、経済協力について「両国の協力分野を見出すため先方よりの経済使節団派遣を提案」、これは実施されていない。  実施されていないのだけ申しますが、イラン、三木特使、四十八年十二月二十四日、これは「中曽根大臣訪イの際に行なう」ということで、具体的な交渉は現在予備交渉段階である。また、四十九年一月の中曽根大臣のイラクの経済技術協力協定締結前提にした三点の合意は全く行われていない。また、小坂特使のリビア・アラブ共和国の研修員受け入れの問題については、先方が辞退するということで行われていない。また、レバノンに対する小坂特使の約束は、これまた行われていない。これは石油資源探査であります。また、スーダンにおける三十億円の円借款供与方約束についても、これもまた行われていない。  こういう事実について、総括的に向こうから断られるあれがあるとかいうような単純な言い方で、先ほどの答弁は終始されておる。私はそれはごまかしだと思います、ああいう答弁は非常に態度がよろしくない。少なくとも、当委員会委員に対してこうやって資料を提供しておいて、その上でああいうしらを切った答弁をなさるのはよろしくない。したがって、現在の状況についてはここにリストが出ているからこれに対してどうこう言わないが、これからどうする気であるかについて御返答いただきたい。  私の質問時間はあと三十秒ぐらいですから、とてもゆっくり御答弁伺っているわけにいかぬので、大臣、一括してこの次の当委員会で結構でありますが、これらについて約束をどう果たす気か果たさない気か、政府を代表して御答弁をいただきたい。いかがですか。
  183. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 サウジとイランにつきましては先ほどちょっと申し上げましたが、その他の国々につきまして、これらの約束がどのような状況になっておるのか、先方との接触がどうなっておるのかというようなことにつきまして、次回までに調べましてお答えを申し上げます。
  184. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私の時間これでいよいよきっちりでありますから、もう大事な話はできないのですが、最後日中平和友好条約の推進につき町で述べられているところは、きわめてこの交渉を遅延せしめ、あるいは後ろへ下げようという動きが政府あるいは自民党内に強い旨の報道が行われており、私たちもまたその疑惑を強く抱いているものであります。大臣の御決意を最後に承りたい。
  185. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 たとえばソ連がこの問題についてどう考えておりますかは、いろいろの推測がございますと思いますが、それは別にわが国の基本方針に関係のあるところではございません。ただいままでのところ、この交渉は比較的順調に推移をしております。まだこれから何度か話し合いをいたさなければならないと思っておりますが、したがっていまの時点で、党内というようなことも仰せられましたが、それまでを含めまして、余り大きな困難を感じておらないというのが実情でございます。
  186. 栗原祐幸

    栗原委員長 永末君。
  187. 永末英一

    ○永末委員 外務大臣は現在わが国と中国との間の関係条約上の平和状態にあるとお考えだと思いますが、いかがですか。
  188. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 さように考えております。
  189. 永末英一

    ○永末委員 それは一九七二年の日中共同声明両国の不正常な状態が終了した、それが根拠ですか。
  190. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その事態がただいま御指摘の声明によりまして確認されたと考えております。
  191. 永末英一

    ○永末委員 同時に、逆に日本とソ連との間の条約上の関係は平和ではない、こういう御見解を予算委員会外務大臣は表明されておいでですが、そうですか。
  192. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 あの際申し上げましたことは多少舌足らずであったと考えておりますが、つまり一九五六年の共同声明によりまして戦争状態条約上終結をした、しかしながら、平和のために不可欠の条件である領土の問題は解決をしておらない、こういう状態認識しております。
  193. 永末英一

    ○永末委員 日ソ共同宣言は最初に両国の戦争状態は終了した、いま外務大臣は領土の問題が残っておる、こう言われたが、戦争状態が終了した、そのせしめたものが共同宣言という両国の共同行為であるとするならば、条約上の平和状態と見られると思います。もっとも、共同宣言で最後に歯舞、色丹だけを取り上げて、それはいわば停止条件つき解決のような形でまだこれは充足されておりません、実現されておりませんが、とにもかくにも戦争状態が終了したならば、それは条約上の平和状態と言えないのかどうか、もう一度お答え願いたい。
  194. 松永信雄

    松永(信)政府委員 日ソ間につきましては、大臣が申されましたごとく、日ソ共同宣言によって法律的な戦争状態というのは終結いたしております。したがいまして、両国間には法律的には平和的な状態、平和関係があるということでございます。
  195. 永末英一

    ○永末委員 そういたしますと、外務大臣予算委員会での発言は舌足らずと言われましたが、日ソ間は明確に条約上の平和状態ではないということは訂正されますね。
  196. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私が残った問題があるということを強調いたしたいために申しましたことは、正確な表現ではなかったと考えております。
  197. 永末英一

    ○永末委員 さて、日中平和友好条約につきましては、すでに日中両国間は条約上の平和状態にあるのだから、そこでは領土問題などはとりたてて問題にはならないはずであるという旨の御見解のようでございますが、そうですか。
  198. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それが条約締結交渉に臨んでおりますわが国の基本的な態度でございます。
  199. 永末英一

    ○永末委員 先ほどから尖閣列島の話が出ておるのでございますが、尖閣列島につきましては、台湾のオーソリティーは昭和四十五年、四十七年に、一度はその尖閣列島周辺地域の石油の採掘権に関し、もう一つ四十七年の場合には沖繩のわが国への返還に際し、それぞれこの尖閣列島が自分の方に帰属するものだということを申し、中外に発表し、そのオーソリティーの内部では手続も了したようでございますが、これは御存じですね。
  200. 高島益郎

    ○高島政府委員 尖閣諸島につきまして、台湾の外交部及び中国の外交部からそのようなクレームを出したということは承知しております。
  201. 永末英一

    ○永末委員 中華人民共和国政府も、国連に加盟しました後で、この尖閣列島中華人民共和国に帰属すべきものであるということをはっきりと表明をいたしておる。だといたしますと、わが国は、この土地はわが国のものであると主張し続けておりますが、いよいよ日中平和友好条約を結ぶ場合に、中華人民共和国側がそのことについて争わないという確信を外務大臣はお持ちですか。
  202. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 沖繩返還の際、返還地域にこの部分は明らかに含まれておりますので、わが国としてはただいま、事実上わが国の施政が尖閣列島に及んでおる、また、現に巡視艇を向けて巡視もいたしておる現状を見ましても、そう考えてしかるべきものと思っております。したがいまして、わが国としては、この問題について日中平和友好条約話し合いの過程で、中国側から何かそれと異なる特段の意思表示があるというふうには考えておらないわけでございます。
  203. 永末英一

    ○永末委員 ただいまの御答弁の最初に、アメリカの施政権下からわが国に沖繩の施政権が返りました場合に、この地域も含まれておる旨の御答弁がございましたが、中華人民共和国は、アメリカのその措置に対してもやはりクレームをつけておるのでございまして、いまの御答弁最後に、何ら中華人民共和国側からこの件についてクレームはつかないだろうというお見込みのことがございましたが、それはしかと承ってよろしいですな。
  204. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私どもはそのように考えております。
  205. 永末英一

    ○永末委員 この前の予算委員会外務大臣は、訪ソされました場合に、あちら側から日ソ友好親善条約に関する交渉の提案を受けたが、わが方としては領土問題が解決しない以前の段階においてそういう交渉に応ずるわけにはまいらぬ、こういう外務大臣側からの態度の表明があったと伺いました。  さて、この日ソ友好親善条約というソ連側の提案と、それからいま中国との間で交渉が進められております日中友好平和条約というのは、同じ性質のものだと外務大臣はお考えですか。
  206. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ソ連側がどのような内容考えておりますかを私は聞いておりませんので、全面的に比較をすることは困難でございますけれども、少なくとも領土問題が片方との関連では解決しておる、片方との関連では領土紛争があるという意味では、どう申しますか、ソ連との間に、中国とわれわれが考えておりますのと同じような条約を結ぶわけにはまいらない関係である、そう認識をしておるわけでございます。
  207. 永末英一

    ○永末委員 日中共同宣言の第七項で、日中双方ともにアジア・太平洋地域において覇権は求めないという、それぞれの意思の発表と、同時に、この地域で日本、中国両国以外の他の国、あるいはまたその国々、国の集団が覇権を確立しようとする試みをした場合には反対をするということが盛られておる。覇権というのはどういうものですか、
  208. 高島益郎

    ○高島政府委員 覇権という言葉につきまして、特に日中間で定義を議論したことはございません。これは同じ年の二月、当時ニクソン大統領が訪中した際の上海コミュニケにも同様の文言がございまして、これを大体同じ趣旨として受け継いだものでございます。まあ俗に言いますと支配というようなことであろうかと思います。
  209. 永末英一

    ○永末委員 この日中両国がそれぞれ覇権を求めない意思を表明したということは、一国で一〇〇%充足できることでございますから、これは私はわかるのでありますけれども、さていよいよ日中平和友好条約をまとめようとする場合に、この日中共同宣言の後半の部分、すなわち、他の第三国あるいは他の第三の国々、これが覇権を求めようとしたときには反対をするということが、日中両国の申し合わせになっておる。反対をするというのなら、反対の仕方はどうあるべきか、どういうことを、そしてそれは日本並びに中国が単独でそれぞれ反対するのか、あるいは共同で反対するのかということが入ってきませんことには反対をする内容がない。だといたしますと、共同宣言では方向が示されておるけれども、これをいよいよ平和友好条約でまとめ上げようとするとなると、その辺のところがやはり内容として入らざるを得ないのではなかろうかと私は思うのですが、外務大臣のお見込みはいかがですか。
  210. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ここらあたりがこれから話し合いを続けていきます中で一つ出てくるか出てこないかというところと思いますが、私としましては、第三国のことを日中の平和友好条約であれこれ言うのはどうであろうか。もしそういうことになりますと、ほかにもいろいろ第三国に関連することがお互いにあるわけでございますので、それを二国間の友好条約で言う必要があるのであろうか。まあ共同声明では申したことではございますけれども、これからの両国関係規定していく、しかも二国間の条約ということで、ともすれば第三国に誤解を与えるかもしれないようなことを、果たして言わなければならないのであろうか、どうであろうか、そこらを考えていかなければならないというのがいま私の考えなんでございますが、もう少し話し合いをしていきますと、先方の意向というものが少なくともどういうものであるかわかってくるであろう。ただいまはその程度の状態でございます。
  211. 永末英一

    ○永末委員 日中平和友好条約は戦争状態をおさめるものではないという性質の定義づけがございました。しかしこれまでの国際法史上、ある戦争状態がおさまるという場合の二国間条約に第三国のことを触れておる例はたくさんございますね。全然触れないということではなくて、ほとんどが何らかの形で、あるいは明示的にあるいは黙示的に触れておる。それはその双方が維持すべき平和の状態を破る第三国に対して、双方が共同して何かをするとかしないとかということが書かれてあるのがむしろ通例ではないかと私は思う。だといたしますと、いま外務大臣は二国間の条約に第三国のことに触れるのはどうかという懸念の表明がございましたけれども、私はむしろ率直に、この共同宣言で触れておるのでありますから、共同宣言の趣旨をそのまま受けて平和友好条約をつくるとするならば、当然事項として、わが国も中国とのかかわり合いのしにおいて、太平洋地域で覇権を求める国ないし国々に対する対処の仕方というものは意思を持たれるべきではないかと思いますが、いかがですか。
  212. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 純粋な条約の問題としては永末委員の言われますようなことがあるいは多くの例であるかもしれませんが、わが国は、御承知のようにこういう特殊な、世界でも例のない憲法を持っておるたてまえの国でございますから、そのようなことを条約で書きましたときに、それが政治的にどのように第三国によって解釈されるだろうかということは、わが国にとって実態的にやはり関心を持つべきことである、そういうふうに考えますので、純粋な条約論としてはともかく、やはりそういうことも考えておかなければならないというのが私のただいまの考えでございます。
  213. 永末英一

    ○永末委員 外務大臣の御懸念のほどはわかりますが、もし、たとえばでございますが、中国側から、この第七項後半の部分に関することについて、平和友好条約の中で成文化したいという提案があった場合には受けられますか。
  214. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これはただいま交渉を始めました交渉中のことでございますので、御発言の御趣旨は私よく心にとめておきますが、私からの御答弁を御遠慮させていただきたいと思います。
  215. 永末英一

    ○永末委員 外務大臣が過般訪ソせられましたときに、その双方の交渉の場には、ソ連がかねてから主張しておりますアジア集団安保に対する考え方説明されたと聞いております。しかしながら、外務大臣の御意思で、両方の共同声明等には、これまた第三国に関することでございますから、一切明文化することは日本国外務大臣として反対だという理由で、これがわが国ソ連とのあの際の共同声明には全く出ておりませんが、しかし日本国民としては、ソ連がアジア集団安保という形で一体何をわが国に期待しておるのか、知りたいところだと私は思いますので、この際、その辺の経過について御説明を願います。
  216. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その部分につきまして余り長い議論が行われたわけではございませんでしたが、したがって、非常に正確には先方の主張を御紹介することができませんけれども、恐らくは、アジアにおきまして現在ある姿、これを、ソ連考えなりに現状を肯定といいますか、固定といいますか、そういう立場に立って、このアジアにおける武力不行使、主権尊重まで行くのでございましょうか、そのようなものをいわば確定したい、固定したい、そういう考えであるのではないだろうか。したがいまして、それに対して中国がどのような反応であるか、北鮮がどのような反応であるか、わが国考え方等々、私が質問をしたり説明をしたりしたわけでございますから、大体基本にあるのはそういう思想ではなかろうかというのが私の推測でございます。
  217. 永末英一

    ○永末委員 ここ数年かかりましてソ連のヨーロッパ政策は、いまちょうどお話がございましたように、第二次大戦後の現状を固定化をして、その上に、ある意味での西側と東側との軍事的な凍結、ないしは望むらくは双方の武力の減少等々を目指しつつ、ヨーロッパ全体の安全保障の交渉が持たれている段階だと思います。その同じもの、同じような思想をアジアにおいて持とうとしておるのでしょうか、それとも、違うことを考えているのでしょうか。
  218. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そこまでのところは議論を詰めておりませんので、実は余り議論を詰めることに私が利益を感じなかったからでもございますけれども、詰めておりませんので、的確には申し上げかねますけれども、やや似通った思想が貫かれておるのではないかと感じました。
  219. 永末英一

    ○永末委員 このアジア集団安保というのをソ連が持ち出した真意は、先ほど外務大臣は、現状固定が前提ではなかろうかとおっしゃいましたが、現状固定が前提であるとしますと、北方領土問題などは現状を変えることになりますね。だから、アジア集団安保というソ連の主張は、北方領土に対して現実的処理すなわち現状を認める、こういう主張だと受け取ってよろしいか。
  220. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私にはそのように考えられたわけでございます。
  221. 永末英一

    ○永末委員 アジア集団安保を考える場合には、だれが考えても、やはり中国、これがこういう構想に対して好意を示し、それを是としなければ成り立たぬ話だと考えますが、ソ連は中国がこの種の構想に参加をしてくる可能性があると思っているとあなたは判断をされましたか、どうですか。
  222. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのようには思っていないように判断をいたしました。
  223. 永末英一

    ○永末委員 先ほども触れました日中平和友好条約における覇権の問題さらにまたソ連が提案をしようといたしておりますアジア集団安保の問題は、わが国が戦後三十年にわたって持ってまいりました日米安保体制そのものと、終局的には、枠組みの問題としてはいろいろな変化を来す問題だと思います。ただいまのところでは、ソ連も中国も日米安保体制というものに少しも手を触れようとしているとは思えませんが、しかしこれら二つの問題の処理につきましては、当然日米安保体制というものが形を変えてこざるを得ないとわれわれは思っておりますので、きょうは時間がございませんからあと進められませんが、十分慎重にひとつお取り扱いを願いたい。  質問を終わります。
  224. 栗原祐幸

    栗原委員長 本日の質疑はこれにて終了いたしました。  次回は、来る十四日金曜日、午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会をいたします。     午後一時四十七分散会      ————◇—————