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宮本参考人 技術的なことをお
答えする前に、初めにちょっと基本的なことを申させていただきたいと思います。
私は、
昭和三十四年と三十六年の間に、三回にわたりまして当
委員会で、
地震予知を
国家機関が強力に行うべきだということを陳情いたしまして、幸い非常にうまく進行いたしまして、結果的には、
昭和四十年度から第一次五カ年
計画、それから続いて第二次五カ年
計画、現在は第三次五カ年
計画を着手しておると思いますが、実は私から見まして、その当初の
計画に重要な
欠点があったのです。
どういうことかと言いますと、
地震予知の
実用化を急速にやろうという意思がゼロ%、全くないのです。どういう
意味で
計画を立てたかというと、いかなる手段がどの
程度有効であるかという
目的で全国的に
観測の
器械をばらまくという、はっきり言えば研究的な色彩が非常に強過ぎた。そのために現在、たとえば南
関東あるいは
東海地方に大
地震が切迫しておるという
現状であっても、実用的には非常に不満足な
状態ということが現在生じてしまったわけです。
さて、いまお問いになったことに対する技術的な点についてお
答えをしたいと思いますが、私は、この際幾つかの提案をまとめてしたいと思います。
いま、
末広課長が御紹介になりました埋め込み式のひずみ計、これは私も最も信頼ができると思います。ただし、いま
課長が言わなかった点をまず申し上げますと、感度は百億分の一まで精度はよろしいのでありますが、測定
範囲がわずかに半径二十キロ以下という一つの
欠点と言えば
欠点がございます。現在、
課長が言ったのを図にいたしますと、実は大体七十キロから八十キロぐらいの間隔で二年間に展開をするわけでございます。ところが、いま言いましたように二十キロの測定
範囲しかございませんので、測定の穴が
発生するわけであります。ゆえに、もちろん急速に五十カ所も六十カ所もやれということは不可能とは存じますが、でき得べくんば引き続いて
観測網を充実していただいて、
観測点と
観測点の距離は是非とも三十キロ以下の領域にしないと、
観測漏れが
発生をいたします。たとえば
東京の直下型の
地震というと、こういった穴が残る。そうすると、海岸線だけではとうてい追いつかない。でございますから、面積的にカバーするためには、
関東地方だけで最低の最低で三十カ所ぐらい、理想を言うならば五十カ所ぐらい、それから
東海地方でも当然もっと
観測点をふやさなければいけない。関西あるいは東北地方な
ども考えますと、少なくとも百カ所に近いような相当多くの
観測点を必要といたします。二年や三年ではできないとしましても、十年に近い歳月をかけるならば、せめて全国的に百地点ぐらいの
観測網を是非張っていただきたい。この際、
課長も言いましたように、
東京で電話線を利用いたしますと集中的に遠隔記録ができますので、
人手は非常に少なくて済む。それから、もう一つの大きな利点は面積が非常に小さくて済む。従来の
地殻変動観測所は、何せ五十メートル前後の穴でもだめなんですね。相当深く掘って、さらにそれから四十メートル以上の穴を三方向ぐらいに掘らなければいけない。そのためには
土地問題が絡んで、新しい建設はまず不可能と
考えられます。
続いて、非常に簡単に申し上げるのでお許し得たいのでございますが、このひずみ計と並行して東大においても開発中であるようでございますが、
傾斜計もでき得べくんば将来相当な密度で展開をしていただきたい。まずこのひずみ計の
欠点を言いますと、方向性がわからないのですね。つまり、あらゆる方向からの圧縮と膨張だけはわかるのですが、どの方向から力が加わったかということはわからない。でございますから、
観測点はたとえ少なくてもいいから、埋め込み式の
傾斜計を是非設けていただきたいという要望もございます。そうすれば徹定的な追求ができる。
それから第二点としましては、現在約三十カ所近いところの
地殻変動観測所にあるところの水平振子型の
傾斜計も
連続記録はできますが、実は一番上にあるところの水管
傾斜計、これな
ども連続記録はできるのでありますが、これは十分開発されておらない
状況でございます。で、実は水晶管
伸縮計は十分に
連続観測しておりますが、大体二週間または一週間に一回ずつの現像ですから、数日前あるいは数時間前の大きな変動が出ても、これは実際上
予知には全く使うことができない。ゆえに、これも三十カ所近い
観測所でございますが、是非とも、
器械で記録するだけではなくて、電流の変換を行って、電話線を利用して
東京で集中
観測をしていただきたい。
あと二つか三つ簡単に申し上げますが、
電気抵抗の
変化は東大の研究者によって非常にうまいぐあいに進展をしておりまして、ある
程度、百キロ以上の距離でありましても三百キロ以内でございますと、しかも
マグニチュードが六前後でありましても、その
地震の五時間ないし六時間ぐらい前から
電気抵抗が増加し、
地震とともに回復しております。これは最近のショルツ理論でみごとに
説明ができます。これも是非とも急速に展開をしていただきたい。
それから
地下水のラドン濃度測定、
地下水位の
変化、これも是非とも自動
観測記録を少なくとも何十カ所か展開をしていただきたい。実は私の属しておるところの
日本地震予知研究会の一つの重要なテーマとしまして、一日一回ずつ、人間が読み取るのでございますが、現在七地点で行っておりますが、
地震との
関係は非常によろしい。大きい
地震であるならば三十日ぐらい、小さい
地震であるならば一週間ぐらいというふうに、その二週間ないし三週間後に
地震が起こっておりまして、一年間の数十個の
地震についてほとんど一対一の対応を示しております。是非とも
自動記録装置をその
観測者に貸与していただきたい。これは是非とも強調するわけでございまして、全く官庁においては行っておりません。ラドン濃度測定をやる以上は当然のことでございますが、
地下水位の
自動記録も方々でやっていただきたい。
それから、最後にちょっと希望を申し上げますと、国
土地理院の所管の業務でございますが、御承知のように、光が一定の速さで進むということを利用しまして、光波
測量器が非常に大きな威力を発揮しておりますが、山から山へ移動するために非常な
人手及び苦労が要って、短周期の繰り返し
観測が実現不可能でございます。ゆえに、
東京でございますと、千葉県の鹿野山の地磁気
観測所には十分に人が泊れる設備がございまして、常に十名近く滞在をしております。ここに一人の増員を許可していただいて、そうして一台八百万円の光波
測量器を固定して、鹿野山を中心として三百六十度いろいろな方向の山頂の距離を測定するならば、現在レーザー光線を使いますので、数十キロの距離がわずか数分で
答えが出る。何回も繰り返しても、結局三時間くらいで一等
三角測量よりもはるかに精度の高い百万分の一の精度で出てきます。ゆえに、もしも緊急事態になればなるほどでございますが、一週間ごとにでも十数地点の距離を測定しますと、非常に大きな
効果を発揮するわけです。
なぜ私がこれを強調するかというと、いままでの
地殻変動観測所では、わずか四十メートル
程度の長さの伸び縮みでございますから、局部的な豪雨あるいは気温の
変化、そのほかいろいろな
地殻潮汐その他もろもろが入ってきまして、相当大きな
変化が生じましても、果たして
地震の前ぶれかどうかわからないわけなんです。ところが、この光波
測量器でございますと、少なくとも四十キロ、五十キロの
変化がたちどころにわかりますので、これは確かに大
地震の前ぶれかどうかということを即時
判断できる。光波
測量器の利用
方法も是非
考えていただきたい。
最後に一つ、背景をちょっと述べたいのでございますが、なぜこの水管
傾斜計の
自動記録の開発がおくれたか。これは四十年の
松代地震が起こるまでは全部一日二回の読み取りだった。全然
自動記録が行われておらなかった。実は
萩原教授がいろいろな書物に書かれておりますが、この
器械の最高というか、最大の
目的は、一年にどれだけずつ
傾斜が起こるかという永年
変化というものを測定すればよいのだ、つまり、
地震の何時間前に
変化があるかないかということは実は論外であって、
地殻変動というものは徐々たる
変化だから、一日二回の読み取りで大丈夫だという
観測を何十年かされた。本に書いてございますが、
松代地震のときに、何と三十分ごとの
観測を
観測者に命じたために、
観測者は悲鳴を上げてしまった。これでは生命が危なくなる。そこで、あわててこの水管
傾斜計の
自動記録装置が開発されたのですが、その後数年たってやっと試作品ができたというふうに、現在でも約三十カ所の
地殻変動観測所で十分にはそのような
自動記録が働いておりません。現在でも一日二回の測定が重要視されておる。
もう一遍改めて言いますと、
地震の直前の
予報をするための設備は全然ないわけです。ところが、ちょっともう少し述べさせていただきますが、京都大学の長年の大変な御努力でございますが、時間の
関係で一例だけちょっと図示させていただきますが、
マグニチュード八の東南海道
地震のとき、何と震央から百五十キロメートル離れた京都の上賀茂の
傾斜計においては、九時間前、五・九時間前、一・二時間前に、
傾斜の方向の百八十度変換が
自動記録されています。単に下がりっ放しじゃなくて、
傾斜方向の数回の大
変化で
地震の直前の
予報ができるわけです。しかもその量たるや、平常の
傾斜量の少なくとも十倍、あるいはそれを超える
程度の大
変化でございます。そしてこの場合、それ以外の、南海道
地震などにおきましても、そのほかの
地震におきましても、大体一月ほど前からふだんと全く違う方向に
傾斜を始め、しかも、一週間前には突如、やはり六カ所であろうと五カ所であろうと、ほとんど同時に
傾斜の方向が百八十度変換するわけです。
ですから、単にはかっておれば何とかなるだろうではなくて、京都大学の、私の知っている限り、十例かあるいは十数例ございますが、一月前と一週間前と数時間前、それぞれが顕著な
傾斜の大
変化の特徴を持っております。ゆえに、少なくとも、いま言ったところの自動的な記録装置で、しかも、集中的にこの
東京なら
東京でこれを監視できるという体制をとるなら、大
地震の二日前、一日前あるいは直前という、いままで予想もしなかった実用性のある
予報ができると確信を持って主張できます。ゆえに、もしもこれが確立いたしますと、人命の損失を従来の予想の〇・〇何%に局限することもできるだろうし、火災
発生件数も、恐らくは一%の何十分の一ぐらいに防ぎ得るのではないかと思います。
私は、だからして、
地震予知連絡会がいままでの
方針を、一部は少なくとも根こそぎ改めていただいて、テレメーター方式をあらゆる
観測器械に利用をしていただきたい、これを強く要望いたします。