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1975-03-26 第75回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年三月二十六日(水曜日)     午後一時十六分開議  出席委員    委員長 八木  昇君    理事 伊藤宗一郎君 理事 田川 誠一君    理事 竹中 修一君 理事 粟山 ひで君    理事 石野 久男君 理事 瀬崎 博義君       梶山 静六君    羽田  孜君       藤波 孝生君    原   茂君       山原健二郎君    近江巳記夫君       内海  清君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      佐々木義武君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     片山 石郎君         科学技術庁計画         局長      安尾  俊君         科学技術庁研究         調整局長    伊原 義徳君         科学技術庁原子         力局次長    福永  博君         科学技術庁原子         力局次長    半澤 治雄君  委員外出席者         原子力委員会委         員       井上 五郎君         経済企画庁長官         官房参事官   藤井 直樹君         環境庁水質保全         局企画課長   松田豊三郎君         文部省学術国際         局学術課長   七田 基弘君         厚生省環境衛生         局水道環境部環         境整備課長   吉崎 正義君         海上保安庁警備         救難部海上公害         課長      広瀬 好宏君         気象庁観測部地         震課長     末広 重二君         参  考  人         (京都大学教         授)      小澤 泉夫君         参  考  人         (気象庁総務部         企画課補佐官) 根本 順吉君         参  考  人         (東京大学名誉         教授)     萩原 尊礼君         参  考  人         (日本地震予知         研究会会長) 宮本 貞夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術振興対策に関する件(地震予知及び原  子力安全性確保に関する問題等)      ————◇—————
  2. 八木昇

    八木委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  本日、地震予知に関する問題調査のため、京都大学教授小澤泉夫君気象庁総務部企画課補佐官根本順吉君、東京大学名誉教授萩原尊礼君及び日本地震予知研究会会長宮本貞夫君、以上四名の方々に参考人として御出席願っております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用のところ本委員会に御出席くださいましてありがとうございます。どうか、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べくださるようお願いいたします。  なお、御意見の聴取は質疑応答の形で行いますので、さよう御了承願います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。原茂君。
  3. 原茂

    ○原(茂)委員 きょうは、いま委員長もごあいさつ申し上げたように、四名の参考人先生方にわざわざおいでいただきまして、どうもありがとうございます。また、気象庁末広先生もおいでいただきましたので、順次これからお伺いをしてみたいと思います。  その前に長官に、例の「むつ」の定係港問題新聞によりますと種子島といい、あるいは五島列島といい、一体どういうふうに落ちついていくのか、現在の見通しと、この間も方針はお伺いしたわけですが、余りばらばらに報道がされておりますので、その真意のほどを先にお伺いしておきたいと思います。
  4. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 ただいまの役所としての進行状況は、先週御報告したとおりでございまして、第二定係港を選択するための作業を煮詰めているところでございます。お約束の四月の中旬までに決めるということでございますので、それまでにぜひとも決めたいと思いまして、ただいま努力中でございます。  しかるところ、ちょうどお休みだったので私もくにへ帰っておったのですが、新聞にいろいろ載っておるということですけれども役所としては、別に発表したものでも公表したものでもございません。ただ、プレスの皆さんが大変努力なすって、それぞれのところからだと思いますが、いろいろ取材いたしまして書いたものじゃないかと思います。
  5. 原茂

    ○原(茂)委員 そうすると、この間お伺いしたとおり、いままた御答弁のありましたとおりで、新聞等が勝手に憶測して書いている、こう理解していいわけですね。
  6. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 私自体に関しましては、少なくともそう理解していただいて結構だと思います。  ただ、出たところが信憑性いかんという問題になりますと、そうでもある、そうでもない、ちょうど核を積んだ潜水艦が核を積んだまま入っているかどうかという答えみたいなもので、真実真実でないか、いずれとも言えないという状況だと思っております。
  7. 原茂

    ○原(茂)委員 これが目的ではありませんので、余り時間はとれませんが、少なくともいまの御答弁にありましたように、長官の側からいっても、何とかこれを早く決定したいということから、ひそかなある線を通じての打診などは行われている、その一部がいろいろな形で新聞報道となってあらわれる、こういうことだろうと思うのですね。  したがって、なるべく早くというよりは、大至急に、科学技術庁としての実際の方針と態度というものを、交渉する、しない、その場所予定は一応ここだというようなことが言える時期が来たら大胆に打ち出して、その中から世論の反響等もお知りになった方が、かえって私はいいんじゃないかと思うのです。余り何かの線であちこちつついているうちに、みんな生殺しみたいになっていきますので、そのやり方を少し基本的にはっきりと決めて、しかも、二、三のこうした予定地等に関して、考えているとかいないとかというようなことも早期に打ち出せるようにすべきだと思うのですが、その点どうでしょうか。
  8. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 まことにお説のとおりしたいのでありますけれども、客観的な情勢と申しますか、現状は、御承知のように統一地方選挙の真っ最中でございまして、この問題と絡むことが事を成就さすゆえんなのか、ぶちこわしなのか、大変むずかしい判断の要るところでございまして、そこら辺が非常に苦慮しておるところでございます。
  9. 原茂

    ○原(茂)委員 それでは、きょうの本論に入りたいと思います。  最初に、萩原先生なり末広先生にお伺いをしてみたいと思うのですが、川崎、京浜のいま予想されております、連絡会が発表した俗に直下型地震かと言われております、大変東京関東にとっては重要な関心のある地震予知が、すでにいろいろと問題になり、各地方自治体においては条例などをつくって、この対策をいま一生懸命におやりになっている。国はこれに対する手当て、援助をどうするかというような問題が起きているわけです。  この予知の問題が出ましてから、予知連絡会あるいは東京都の防災会議地震部会専門家などを呼んで、東京都が、これは一体真相はどうなんだということを問い合わせたものが新聞にも報道されておりますし、事実その内容が私どもにも伝わってきているんです。そのときの正式の答えで、とにかくこの四年ないし五年の間が危ない、起きる可能性がある、しかし、最も可能性の多いのはことしじゅうだ、こういうふうな発言をされたことが、大変ショッキングな、自治体の側から考えてみますと、急速な手当てが必要だろうというので、どたばた条例などの作成に入るというような、あるいは国に対して、防災対策に関する自治体自治体独自の要請が行われるということが起きて今日に至ったわけです。  いま、予知連絡会萩原先生のお立場で、四、五年の間に起きるだろう、しかし、最も起きる危険のあるのは年内だ、こう伝えられておりますことを、やはりいまでもそうお考えになっておられますか、あるいはそれを訂正すべき何か根拠がおありでございましょうか、最初にそれをお伺いしたいと思います。
  10. 萩原尊礼

    萩原参考人 地震予知連絡会といたしましては、川崎を中心にした土地隆起地震関係があるおそれがあるということで、いろいろと調査を進めております。ただ、最初から申し上げておりますように、川崎というところが、かつて非常に地盤沈下をして、地下水の規制をしてその地下水水位が回復しつつあるところであるというところから、そういったことの影響によって、地盤隆起が起こったのではないかということもまた大いにあるわけでございまして、地盤沈下影響でそういう現象が起こったとすれば、これは地震とは関係ないことになるわけでございます。  それで、ただいまのところはどちらとも判断つけがたい状態でありまして、これを明らかにするためにいろいろな調査をしている段階でございますが、何分にも川崎及びその周辺は非常に重要な所でございますので、万が一を考慮してできるだけの調査をしようというのが現状でございます。  ただ、仮にこの地盤の異常な隆起地震発生に結びつくと考えましたときに、この隆起の起こりました範囲から考えまして、起こり得べき地震の大きさはマグニチュードにして六程度ということが推定されますし、また、マグニチュード程度地震だといたしますと、こういった異常隆起その他いろいろな前兆と思われる現象があらわれる期間は、地震の起こる二、三年前からと言われております。そういうことを考えますと、異常隆起が始まりました一九七一年あるいは二年から考えまして、大体三年ぐらいということになるわけでございます。そういうことから考えますと、もし仮に現在の異常隆起という現象地震と結びつくといたしますと、大体今年の末ごろに地震が起こる確率が五〇%ぐらい、つまり、現在からだんだん確率がふえて、おおよそ今年の末ごろ五〇%ぐらいになって、それからまただんだん先へ行くほど確率が一に近づいていく、確率論からいきますとそういうことになるわけでございまして、そういうところから、およそ今年の末前後ということを申し上げたことがあるかと思います。  ただ、こういう地震発生というものは、いついつから危険期に入るというようなことは言えないのでありまして、だんだんに確率がふえていくといった状態であります。
  11. 原茂

    ○原(茂)委員 つい先日の衆議院地方行政委員会萩原先生が、この川崎地震に関しては、あと半年程度たてばもっと詳細にはっきりした予報ができる状態になるという答弁をされておいでになるのですね。いま三月でございますから、あと半年、九月になると、いまお話しの五〇%というのは大変な確率でございますが、この年末が危ないと言ったのがもっと大きな確率で、年末にあるとかないとかいうようなことが、この九月になると非常に明瞭におわかりになるという印象の御答弁があったわけですけれども、八月、九月ごろになりますと、その年末五〇%という問題が、もっとしっかりとした確率で恐らくおわかりになるのかと思うのですが、そう考えてよろしゅうございますか。
  12. 萩原尊礼

    萩原参考人 あと半年ぐらいと申し上げましたのは、現在いろいろな角度から調査しておりますが、何分にも地球相手観測ということはそう急に結果が出るわけではございませんし、たとえばトリチウムの分析一つにいたしましても、相当な日にちを要するわけでございます。そういうことから、あと半年もたてばいろいろな観測測定資料がそろう、そういうことで、いま一番もやもやとした地盤沈下との関係、こういったようなことが現在よりはっきりと言えるのではないか、そう申し上げたのでございます。
  13. 原茂

    ○原(茂)委員 これは後でお伺いいたしますが、中国で去年、それからことしの二回にわたって相当大胆な地震予報を行って、八カ月前から大きなものが来るよ来るよと言い、三カ月前にそれを確認し、一カ月前にはっきり来ると言い、そして三日、二日、一日と小刻みにその間際に発表をして、それが効果を上げて、よけるものはよけ、退避すべきものは退避しというようなことから、大体その月の八日ごろだろうと言ったのが六日にあったということで、大変死傷者を少なくし、損害を軽微にすることができたというような例が中国に二件ございます。  この中国の場合の予知は、大陸というのはやはり非常に単純な地震予知ができるせいか知りませんが、海底に震源のある問題はまだまだ中国でもできていないようです。大陸における地震予知ですから、ある意味では大変簡単にできたのかなという感じもいたしますが、しかし、予知をする方法に関して人海戦術といいますか、日本がいま器械などに頼っておりますのを、これを人手に頼って、水位がどうの、あるいは魚がどうだったとか、パンダが鳴くとか、象が横になって食欲がなくなっちゃったとか、何だかんだというものを詳細に、大衆動員をして、専門家技術者大衆とか直結をして大がかりな、その意味人手を使った地震予知というものが功を奏した、その例が中国の二つの例だろうと思うのです。  アメリカなんかにしますと、岩石電気抵抗をはかって、ついこの間、やはりこれも計画的にやったところ、マグニチュード三・九という小さいものではあったけれども、予想したとほとんど変わらないものが、二カ月前に指摘をされたとおりにやはりこれも予知ができたということです。  そういうことを考えますと、いまの先生のお話が一体——まあ、私みたいな素人が、どういう測量の仕方を、あれもこれもやってそういう予知をなさるのかというようなことを聞いてもわかりませんが、ただ、きょうも実は参考人として小澤先生なりあるいはまた宮本先生、または別のことで根本先生にも来ていただいておりますので、たとえば、宮本先生のお考えになっているような現在日本にある傾斜計等が、ある程度有効に作用してこの種の地震予知に寄与しているのか。末広先生にもおいでいただいておりますが、これはもとはアメリカじゃないかと思いますが、地下ひずみ計が、十何カ所かに設置をされようとしているのかされているのか知りませんけれども、こういったものが、やはり地震予知に相当の効力を発揮するのか。そういう意味で、現在施設されておりますわが国の地殻変動観測所内容に関して、ここで萩原先生末広先生かどちらでも結構ですが、概要の説明をちょうだいして、これがいま地震予知にどういう寄与をしているのか、あるいは現在使っているもの、これから計画しているものに、不都合があり、不都合がないということもあわせてお聞かせいただいて、同時に、末広先生からは地下ひずみ計に関して、その歴史と、現在それがどう使われているのかということを特にお聞かせをいただいて、宮本先生なり小澤先生にはまた後で御質問いたしますが、これに対してこうすればいいし、こういうものを使うべきだと思うし、予算の面もあるが自分はこういうことを考えているし、そうすれば完全に中央において自動記録をしながら、コンピューターを使いながら常に瞬間、瞬間の変化に対して的確な判断かできるから、地震予知に対してはこうすべきではないかという御意見を、その後で宮本先生からついでに一緒にお聞かせいただいた上で、また改めて質問を申し上げたい、こう思いますので、萩原先生から先に、次に末広先生、それから宮本先生の順でお願いをしたい。
  14. 萩原尊礼

    萩原参考人 傾斜計伸縮計のように、土地変形連続的にはかる器械は、これは地震予知にとりまして非常に重要なものでございます。  たびたび申し上げておりますように、この地震予知の一番のもとになりますことは、地殻にひずみがどう蓄えられているかということを知ることでありまして、このためには三角測量水準測量あるいは距離測量といったような測地的な測量をたびたび行って、そのひずみが蓄積されていく過程を追求するということが最も確実でありまして、地震予知土台石といったようなことになるものと思っております。  ただ、測量はある期間を置いてまた行うというために、連続的な変化をとらえることはできません。そのかわり、日本全域といった広い面積にわたっての変形を知ることができるわけでございます。その測地測量欠点を補うために、一点だけの変形でありますが、そこで土地傾斜変化あるいは伸び縮みの変化、そこでのいわゆる圧力の変化、つまり体積の伸び縮みの変化、そういったものをはかりますと、一点ではありますが、そこでは器械的に連続にその変化をはかることができます。ですから、そういうものと測地測量とを組み合わせていけば、日本全域の、あるいはある限られた地域のひずみの蓄積の状況を追跡することができるわけでございます。そういう意味で、傾斜計伸縮計等連続測定というものは非常に大切なものと思っております。
  15. 末広重二

    末広説明員 お尋ねのございました気象庁計画しております埋め込み式ひずみ計の展開について御説明申し上げます。  ただいま萩原先生がおっしゃいましたように、測地測量を補完する意味連続観測というのが大変必要でございますが、これは観測する場所が一点に縛りつけられますために、やはり重要な情報を得ますためにはその観測点をふやしまして、網のようなものを形成する必要がございます。これは連続観測でございますので、私ども気象庁の業務の範囲に入ると思いまして、いまから数年前に、日米科学協力というのがございますが、この線に沿いまして、アメリカカーネギー研究所気象庁気象研究所との間で協力研究をいたしまして、そして埋め込み式のひずみ計というものを開発したわけでございます。  これは、いま申し上げましたとおり、網で観測網をつくる必要がございますので、一点一点が余り複雑かつまた多額の費用を要するようなものは実行が非常にむずかしゅうございますから、できれば観測点はなるべく簡略化し、それでそれを集中制御するようなかっこうで網をつくりやすいような測器が大切なわけでございます。この測器の説明は、余り詳しいことは省きますが、要するに、地面に井戸を掘りまして、これは差し渡したかだか二十センチ程度井戸でございますが、これを百メーター前後掘りまして、その中に岩石の圧縮と膨脹をはかります測器を埋め込んでしまいまして、そしてそれから適当なところへ情報を送りまして、そこで集中的に情報を整理しかつ解析するという方法を開発したわけでございます。  これは、四十五年に松代近郊に三点設置いたしまして、その後三年の試験観測を経まして、大変高成績であることを確認いたしましたので、これは、昭和四十八年六月二十九日に測地学審議会から出ました第三次地震予知計画に関する建議の中の一項に、こういった観測を、気象庁、大学あるいは国立防災科学技術センターなどで計画に入れて実行すべきであるということが建議されたわけでございます。それを私ども受けまして、五十年度に、これから簡単に御説明いたしますような計画で、こういった連続観測の網をつくりたいということを計画いたしまして、幸い五十年度の政府予算案の中にこれが盛り込まれております。  これは、まず東海地方目的にいたしまして、伊良湖、それから浜松近郊の三ケ日、御前崎、静岡、石廊崎の五点に、それぞれいま申し上げましたひずみ計を埋め込みまして、全部の出力を東京へテレメーターいたしまして、私ども二十四時間の監視体制を持っておりますから、これを東京で二十四時間、各点におけるひずみの変化状態がどうであるかということを、連続観測あるいは連続監視をする計画でおります。  以上でございます。
  16. 原茂

    ○原(茂)委員 宮本先生の前にちょっと……。  いま、五十年度の予算で五点お話しになりましたね。関東地方に何か新たにまた考えていませんか、この五十年度に。
  17. 末広重二

    末広説明員 現在、五十年度の予算案の中に入っておりますのは、いま申し上げました東海地方の五点でございまして、気象庁といたしましては、五十一年度に、引き続き南関東へさらに五点追加すべく準備、計画を進めております。  ただいま計画しております場所は、網代、久里浜、それから房総半島の南端の館山、勝浦、それから銚子の五点でございます。
  18. 原茂

    ○原(茂)委員 千億分の一の誤差までぴたりと出すというのですから、相当精度の高いもので信頼感が持てると思うのですが、これは特定地域予知には余り効果はないのだという話を聞いていますが、そういうことばありますか。
  19. 末広重二

    末広説明員 特定地域ということは、先生、どういうことを意味なさいますのか、ちょっと……。
  20. 原茂

    ○原(茂)委員 たとえば松代地震がある。いま三点やってあります。松代というあの群発地震に関しては、このひずみ計が二点、三点あっても大した予知の上からの効果はないのだ、非常に広範囲にわたってこれを中央に集めて全体のひずみというようなものを見たときに、初めて予知という問題で効果が出てくる、小さな特定地域における、そこに一点あった、二点あったからといって予知の上では大した効果を期待できない、こういうように説明しているのを見たことがあるのですが、そんなものでしょうか。
  21. 末広重二

    末広説明員 御説明申し上げます。  私どもは、むしろ逆ではないかと思っております。つまり、あるところにこのひずみ計を埋め込みますと、このひずみ計を埋め込みました場所の周囲の何がしかの範囲のひずみはこのひずみ計で捕捉することができますが、余り離れますと、このひずみ計はそういう遠いところのひずみまでは恐らく情報としてとらえないと思いますので、先生のいまおっしゃいました、あるところの付近に二点なり三点なりありますと、その測器の埋め込まれております周辺地震発生状況ともし関係があるとすれば、こういった測器がとらえるわけでございまして、したがいまして、相当広範囲のひずみの連続変化を見ますためには、いま申し上げましたとおり、むしろ数多くの点を、その注目しております地域にばらまきまして網にすることが必要かと存じます。
  22. 原茂

    ○原(茂)委員 ついでに、いまの本年度の五カ所、それから来年度の五カ所、一カ所当たり平均どのくらいの予算なのか。
  23. 末広重二

    末広説明員 お答え申し上げます。  この五十年度の計画の総額が、伝送システムまで全部含めまして一億二千万程度でございますから、これを五で割りますと二千万強になりますか。しかし、これは全部のテレメータリングシステム、あるいはこれをすべてコントロールいたします電子計算機、これは小型でございますが、そういうものをすべて含みました予定額でございます。
  24. 原茂

    ○原(茂)委員 現地の施設もね。
  25. 末広重二

    末広説明員 はい。
  26. 原茂

    ○原(茂)委員 それでは宮本先生、いまお聞きになりましたことに対して、恐らく宮本先生のお考えだと、関東周辺に五十カ所ぐらいという傾斜計設置等をやらないと、本当の、一カ月前、半月前、一日前、何時間前という、地震が近づくに従って大きな変化のあるその変化をとらえることができないために、有効に予知というものができないのじゃないかという御意見もあるだろうと思うのですが、ひとつここでざっくばらんに御意見をお聞かせいただきたい。
  27. 宮本貞夫

    宮本参考人 技術的なことをお答えする前に、初めにちょっと基本的なことを申させていただきたいと思います。  私は、昭和三十四年と三十六年の間に、三回にわたりまして当委員会で、地震予知国家機関が強力に行うべきだということを陳情いたしまして、幸い非常にうまく進行いたしまして、結果的には、昭和四十年度から第一次五カ年計画、それから続いて第二次五カ年計画、現在は第三次五カ年計画を着手しておると思いますが、実は私から見まして、その当初の計画に重要な欠点があったのです。  どういうことかと言いますと、地震予知実用化を急速にやろうという意思がゼロ%、全くないのです。どういう意味計画を立てたかというと、いかなる手段がどの程度有効であるかという目的で全国的に観測器械をばらまくという、はっきり言えば研究的な色彩が非常に強過ぎた。そのために現在、たとえば南関東あるいは東海地方に大地震が切迫しておるという現状であっても、実用的には非常に不満足な状態ということが現在生じてしまったわけです。  さて、いまお問いになったことに対する技術的な点についてお答えをしたいと思いますが、私は、この際幾つかの提案をまとめてしたいと思います。  いま、末広課長が御紹介になりました埋め込み式のひずみ計、これは私も最も信頼ができると思います。ただし、いま課長が言わなかった点をまず申し上げますと、感度は百億分の一まで精度はよろしいのでありますが、測定範囲がわずかに半径二十キロ以下という一つの欠点と言えば欠点がございます。現在、課長が言ったのを図にいたしますと、実は大体七十キロから八十キロぐらいの間隔で二年間に展開をするわけでございます。ところが、いま言いましたように二十キロの測定範囲しかございませんので、測定の穴が発生するわけであります。ゆえに、もちろん急速に五十カ所も六十カ所もやれということは不可能とは存じますが、でき得べくんば引き続いて観測網を充実していただいて、観測点観測点の距離は是非とも三十キロ以下の領域にしないと、観測漏れが発生をいたします。たとえば東京の直下型の地震というと、こういった穴が残る。そうすると、海岸線だけではとうてい追いつかない。でございますから、面積的にカバーするためには、関東地方だけで最低の最低で三十カ所ぐらい、理想を言うならば五十カ所ぐらい、それから東海地方でも当然もっと観測点をふやさなければいけない。関西あるいは東北地方なども考えますと、少なくとも百カ所に近いような相当多くの観測点を必要といたします。二年や三年ではできないとしましても、十年に近い歳月をかけるならば、せめて全国的に百地点ぐらいの観測網を是非張っていただきたい。この際、課長も言いましたように、東京で電話線を利用いたしますと集中的に遠隔記録ができますので、人手は非常に少なくて済む。それから、もう一つの大きな利点は面積が非常に小さくて済む。従来の地殻変動観測所は、何せ五十メートル前後の穴でもだめなんですね。相当深く掘って、さらにそれから四十メートル以上の穴を三方向ぐらいに掘らなければいけない。そのためには土地問題が絡んで、新しい建設はまず不可能と考えられます。  続いて、非常に簡単に申し上げるのでお許し得たいのでございますが、このひずみ計と並行して東大においても開発中であるようでございますが、傾斜計もでき得べくんば将来相当な密度で展開をしていただきたい。まずこのひずみ計の欠点を言いますと、方向性がわからないのですね。つまり、あらゆる方向からの圧縮と膨張だけはわかるのですが、どの方向から力が加わったかということはわからない。でございますから、観測点はたとえ少なくてもいいから、埋め込み式の傾斜計を是非設けていただきたいという要望もございます。そうすれば徹定的な追求ができる。  それから第二点としましては、現在約三十カ所近いところの地殻変動観測所にあるところの水平振子型の傾斜計連続記録はできますが、実は一番上にあるところの水管傾斜計、これなども連続記録はできるのでありますが、これは十分開発されておらない状況でございます。で、実は水晶管伸縮計は十分に連続観測しておりますが、大体二週間または一週間に一回ずつの現像ですから、数日前あるいは数時間前の大きな変動が出ても、これは実際上予知には全く使うことができない。ゆえに、これも三十カ所近い観測所でございますが、是非とも、器械で記録するだけではなくて、電流の変換を行って、電話線を利用して東京で集中観測をしていただきたい。  あと二つか三つ簡単に申し上げますが、電気抵抗変化は東大の研究者によって非常にうまいぐあいに進展をしておりまして、ある程度、百キロ以上の距離でありましても三百キロ以内でございますと、しかもマグニチュードが六前後でありましても、その地震の五時間ないし六時間ぐらい前から電気抵抗が増加し、地震とともに回復しております。これは最近のショルツ理論でみごとに説明ができます。これも是非とも急速に展開をしていただきたい。  それから地下水のラドン濃度測定、地下水位の変化、これも是非とも自動観測記録を少なくとも何十カ所か展開をしていただきたい。実は私の属しておるところの日本地震予知研究会の一つの重要なテーマとしまして、一日一回ずつ、人間が読み取るのでございますが、現在七地点で行っておりますが、地震との関係は非常によろしい。大きい地震であるならば三十日ぐらい、小さい地震であるならば一週間ぐらいというふうに、その二週間ないし三週間後に地震が起こっておりまして、一年間の数十個の地震についてほとんど一対一の対応を示しております。是非とも自動記録装置をその観測者に貸与していただきたい。これは是非とも強調するわけでございまして、全く官庁においては行っておりません。ラドン濃度測定をやる以上は当然のことでございますが、地下水位の自動記録も方々でやっていただきたい。  それから、最後にちょっと希望を申し上げますと、国土地理院の所管の業務でございますが、御承知のように、光が一定の速さで進むということを利用しまして、光波測量器が非常に大きな威力を発揮しておりますが、山から山へ移動するために非常な人手及び苦労が要って、短周期の繰り返し観測が実現不可能でございます。ゆえに、東京でございますと、千葉県の鹿野山の地磁気観測所には十分に人が泊れる設備がございまして、常に十名近く滞在をしております。ここに一人の増員を許可していただいて、そうして一台八百万円の光波測量器を固定して、鹿野山を中心として三百六十度いろいろな方向の山頂の距離を測定するならば、現在レーザー光線を使いますので、数十キロの距離がわずか数分で答えが出る。何回も繰り返しても、結局三時間くらいで一等三角測量よりもはるかに精度の高い百万分の一の精度で出てきます。ゆえに、もしも緊急事態になればなるほどでございますが、一週間ごとにでも十数地点の距離を測定しますと、非常に大きな効果を発揮するわけです。  なぜ私がこれを強調するかというと、いままでの地殻変動観測所では、わずか四十メートル程度の長さの伸び縮みでございますから、局部的な豪雨あるいは気温の変化、そのほかいろいろな地殻潮汐その他もろもろが入ってきまして、相当大きな変化が生じましても、果たして地震の前ぶれかどうかわからないわけなんです。ところが、この光波測量器でございますと、少なくとも四十キロ、五十キロの変化がたちどころにわかりますので、これは確かに大地震の前ぶれかどうかということを即時判断できる。光波測量器の利用方法も是非考えていただきたい。  最後に一つ、背景をちょっと述べたいのでございますが、なぜこの水管傾斜計自動記録の開発がおくれたか。これは四十年の松代地震が起こるまでは全部一日二回の読み取りだった。全然自動記録が行われておらなかった。実は萩原教授がいろいろな書物に書かれておりますが、この器械の最高というか、最大の目的は、一年にどれだけずつ傾斜が起こるかという永年変化というものを測定すればよいのだ、つまり、地震の何時間前に変化があるかないかということは実は論外であって、地殻変動というものは徐々たる変化だから、一日二回の読み取りで大丈夫だという観測を何十年かされた。本に書いてございますが、松代地震のときに、何と三十分ごとの観測観測者に命じたために、観測者は悲鳴を上げてしまった。これでは生命が危なくなる。そこで、あわててこの水管傾斜計自動記録装置が開発されたのですが、その後数年たってやっと試作品ができたというふうに、現在でも約三十カ所の地殻変動観測所で十分にはそのような自動記録が働いておりません。現在でも一日二回の測定が重要視されておる。  もう一遍改めて言いますと、地震の直前の予報をするための設備は全然ないわけです。ところが、ちょっともう少し述べさせていただきますが、京都大学の長年の大変な御努力でございますが、時間の関係で一例だけちょっと図示させていただきますが、マグニチュード八の東南海道地震のとき、何と震央から百五十キロメートル離れた京都の上賀茂の傾斜計においては、九時間前、五・九時間前、一・二時間前に、傾斜の方向の百八十度変換が自動記録されています。単に下がりっ放しじゃなくて、傾斜方向の数回の大変化地震の直前の予報ができるわけです。しかもその量たるや、平常の傾斜量の少なくとも十倍、あるいはそれを超える程度の大変化でございます。そしてこの場合、それ以外の、南海道地震などにおきましても、そのほかの地震におきましても、大体一月ほど前からふだんと全く違う方向に傾斜を始め、しかも、一週間前には突如、やはり六カ所であろうと五カ所であろうと、ほとんど同時に傾斜の方向が百八十度変換するわけです。  ですから、単にはかっておれば何とかなるだろうではなくて、京都大学の、私の知っている限り、十例かあるいは十数例ございますが、一月前と一週間前と数時間前、それぞれが顕著な傾斜の大変化の特徴を持っております。ゆえに、少なくとも、いま言ったところの自動的な記録装置で、しかも、集中的にこの東京なら東京でこれを監視できるという体制をとるなら、大地震の二日前、一日前あるいは直前という、いままで予想もしなかった実用性のある予報ができると確信を持って主張できます。ゆえに、もしもこれが確立いたしますと、人命の損失を従来の予想の〇・〇何%に局限することもできるだろうし、火災発生件数も、恐らくは一%の何十分の一ぐらいに防ぎ得るのではないかと思います。  私は、だからして、地震予知連絡会がいままでの方針を、一部は少なくとも根こそぎ改めていただいて、テレメーター方式をあらゆる観測器械に利用をしていただきたい、これを強く要望いたします。
  28. 原茂

    ○原(茂)委員 そこで、小澤先生にお伺いしたいのですが、地震予知に関しては地殻変動をはかるということが大事なんでしょうか、唯一の手段なんでしょうか。他にもあるんだけれども地殻変動を抜きにしては地震予知は不可能だ、こういうことになるのかどうか、それが一つ。  それから、地殻変動を測定するということに関しては、いま宮本先生が、国が予算がないかどうか知りませんが、なかなか思うようにあれもこれもできていないが、こうすべきであると言われた。たしか昭和三十四年、三十五年当時、私は一生懸命に、地震予知、それから防災という体制をつくろうというので、あの当時も宮本先生においでいただいて、いろいろなことをお伺いしている。確かに、おっしゃるとおり、今日、まあまあ前よりはよくなったということは言えますが、それでも、宮本先生のいま御指摘になりましたような数々の問題点が、ある意味では予算上、ある意味では学問上、ある意味では実験上必要がある、ないというようなことも含めて、行われていないんじゃないかということを実は考えているわけです。  そういう前提に立って小澤先生にお伺いしたいのは、やはり予知というものをより正確にといったときに、この傾斜計の存在が絶対的なものなのか、万が一予算その他で、いま言った自動記録計もない、何にもない、人命問題まで起きるというようないろいろな心配があるのですが、地球物理学といいますか、小澤先生のいままで専攻されました範囲でお考えになりまして、予知の上でまだこういうことをすべきではないか、こういう配慮がないと予知が完全にいかないのではないかということ等、三つに分けてできましたらまずお聞かせをいただきたいと思います。
  29. 小澤泉夫

    小澤参考人 お答えいたします。  まず最初に、地殻変動の観測というものが地震予知に対して絶対的なものであるか、あるいは唯一のものであるかという御質問でございます。皆様のお手元に参考資料をお配りいたしましたが、いろいろな地震の場合の前兆現象といいますか、地震の前後にあらわれます変化観測されました例の資料をお配りしたわけでございます。これは、そういったふうなことが観測されたということは確かに事実でございます。しかし、これと似たような変化、こういったものが地震が起こらない場合でも起こることがよくあるわけです。  それで、三番目の質問とも一緒になりますが、現在私たちは、いろいろな変動が出てまいりますが、これが地震関係のある変動であるか、あるいは地震関係のない変動であるか、そういったことを研究することに主力を置いております。  地震地殻変動が絶対的なものであるかどうか、唯一のものであるかどうかということに対しましては、私、決して唯一のものであるとは思っておりません。むしろ地殻変動の連続観測と、それからいろいろなほかの微小地震観測であるとか、あるいは地磁気の観測であるとか、ラドンの変化観測であるとか、いろいろなものがございますが、そういったふうなものを総合した結果で判断しなければならない。それから、いまいろいろ挙げられておりますが、そのほかにもずいぶんたくさんの方法考えられるのではないかと思っております。  それから、宮本先生からいろいろのお話がございました。資料を挙げて御説明になりました。また、原さんが中国の場合についてお話しになりました。科学行政の立場からでなくて、一人の科学技術者、研究者、そういった立場からお答えいたしますと、そういったふうな事実は、私たちがある方法を始めます初期の段階においてあったわけであります。なるほどこういったふうな変動が出たから、いつごろ地震が起こるかもしれないということは、私たち観測者自身が予想して、たまたま当たった、そういったふうなこともあったわけでありますが、現在は、そういったふうな評価の仕方がどこまで信用度があるかということを高める、そういうふうな研究をいまやっております。  中国の例を見ましても、私個人は、確実な情報は得ておりませんのでわかりませんが、恐らくそれほど信用度の高いものではないのではないかという気がしております。むしろ日本の方で現在やっております方法の方が、かなり信用度の高いものにまで来ているのではないかと思います。そのほかに、中国は、ああいったふうな大陸性の土地でございますので、予知がしやすいということもあるかもしれません。  それから、末広先生がおっしゃいました東海地区の五点の場合でございますが、それから原先生特定地区云々といったふうなこともおっしゃいましたが、それは確かに末広先生のお答えが正しいわけでございます。それで東海地区の五点でございますが、これは私の判断では、五カ所のうちのどれかに何か疑わしい変化が出てくれば、その付近にさらに観測を強化してやる、そういったことを前提として行われておるという意味では意味があることであると思います。ですから、地震予知のある場所を見出す手がかりとして行われる、そして実際の地震予知を行う場合には、そこに精力を集中して研究をやる、そういったことが必要であると思います。  予算のスケールでございますが、私の見たところでは、恐らくこれは非常に微小なものにすぎないのではないか、そういったふうに思っております。  それから三番目の質問になりますが、どういったふうなことをやりたいか。最初に申しましたように、地震の前後にいろいろな異常な変化が出ておりますが、これが果たして地震関係のある変化であるのかどうか、あるいは地震関係のある変化だけをどうして取り出せばよろしいか、そういった研究がいま必要なことではないかと思っております。それで、たとえば地震関係のあります地殻の変動と申しますのは、マグニチュード六ぐらいの地震でありましても、少なくとも一キロ以上のスケールを持った変動をするであろう、それから七になりますと、十キロ以上数十キロといったスケールの変動をするだろう、そういったことが考えられますので、観測されました変動が果たして数キロ以上、あるいは数十キロ以上にまたがる変動であるかどうか、そういったことを確かめる必要があるわけであります。  それで、たとえば東海地方のある点で異常変化観測されたといたしますと、その変化が果たして広範囲変化にわたるものかどうか、そういったことを確かめる必要があるわけであります。埋め込み式の地震計につきましては、これは十年以上も前でございますが、私、苦い経験がございます。もう一度アタックしてもよかろう、そういったふうな考えもございますが、不用意にやりますと失敗するだろうということは私、心得ておりますので、埋め込み式の場合でありますと、非常に深いところへ埋め込んだといたしましても、地質というものはそれほど一様のものでございません。それから穴を掘りましたための影響というものがございます。それで地表面の気象的な影響からは逃れることはできますけれども地殻そのものの異常性の影響というものが出てまいりますので、そういったふうな観測でやりますときには、かなり大きなスケールの器械を埋め込む必要がございます。そういったことが必要である、私は現在そのように思っております。  でありますので、私から申しますと、埋め込み式の大きなスケールの器械を使うという意味では、非常に大きなスケールのものですから、水平坑道の方が有利で、望ましいのであります。観測立場から申しましても、据えつける立場から申しましても。しかし、水平坑道の場合でございますと、地上権の問題がからんでまいります。非常に広い面積の地上権が必要になってまいりますが、地震観測予知というものは国家的な事業として行わなければならない問題でありますので、国家の協力という意味で国有地などを利用いたしましたとき、鉱山とかそれから交通機関の場合でありますと、坑道を掘る特定の権利が認められております、公共の事業であるということで。ところが、地震予知観測所の場合にはそういったことはまだではないかと思います。全国にはずいぶんたくさんの国有林のような国有地あるいは県有林、そういったものがあるわけでございますから、地上権問題でそういった官庁と協力していただければ、それはそれほどむずかしい問題ではないと思います。立て穴を掘る経費と、それから水平の坑道を掘る経費とはそれほど大きな差はないようであります。ところが、実際観測する者の立場から考えますと、水平坑道の方がはるかに使い安い、器械設置も有利でありますし、それから観測器械の維持ということもやりやすい。そういったことがございますので、大きなスケールの水平坑道を使った観測ということは、国家的な事業としてされるということが望ましいんではないかと思います。  それから、観測システムでございますが、いままでおっしゃいましたことは確かに結構なことばかりでございます。そのようなことが実現されますと大変私たち地震予知関係の者としてはありがたいことであると思います。ただ、国家予算というものはある程度限られたものでございます。それでどういったことから始めるかということにつきましては、その方式につきましては、もう一度真剣な検討が必要ではないであろうか、そういったふうに思っております。  せんじて言いますと、地殻変動の連続観測と申しましても、年代的には歴史は古いのでございますが、研究の成果を上げるのは非常に長い年月を要します。それでありますのでまだまだ初期の段階にある。それから、観測方法の原理というものはある程度確立されましたけれども、どういった規格の観測をするのが最も有効であるか、そういったことはいま現在行うべき研究ではないか、そういったふうに思います。国家としてどうしても緊急にやらなければならない、そういった事柄が優先するといたしますと、それは予算を無視してでも秋スケールの観測器械を使ってやることが有効ではないか、そのように私は考えております。
  30. 原茂

    ○原(茂)委員 末広先生にちょっとお伺いしますが、いま五十年度、五十一年度で五カ所、五カ所の説明がございましたね。お聞きになったとおり、私など素人が考えても確かに穴があってはいけないので、もっとたくさんやってもらわなければだめじゃないかという感じがするのですけれども、五十年、五十一年で大体終わって、何年か様子を見て、それからまたこの種の施設の数をふやそうというお考えなんでしょうか。やはりもっとたくさんふやしていく、あるいは埋め込み式の傾斜計に関して新たに予算を取って、五十一年何カ所というようなことを計画なさるのか。いまのところは、まあとりあえずことしと来年の気象庁計画の五点、五点で、できたときに当分様子を見るということになっているのか、どうなんでしょうか。
  31. 末広重二

    末広説明員 御説明申し上げます。  先ほど御説明申し上げましたとおり、やはり相当慎重な開発段階、それから試験観測段階を経まして、初めて業務観測へ進むということに踏み切ったわけでございまして、この第三次の五カ年計画の終わります時点では、東海地方の五点あるいは南関東の五点がどういう結果をもたらしたかということが相当評価されると思いますので、その時点で今度はさらに第四次と恐らく進むと思いますが、その中で改めて皆さまの御批判、御検討を得まして、もしもっとこういう種類の観測網を広げるべきであるという結果が出ましたらば、気象庁はもちろんそれを受けまして、これをさらに進めたいと思っております。
  32. 原茂

    ○原(茂)委員 これは萩原先生からのお答えもいただいた方がいいかと思うのですが、いま小澤先生お話しになった一番最後に、もっと大型の水平坑道による観測というものが、大きな予算はかかるけれども、やはり国家としてはいま急速にやるべきではないかという御意見もあったわけです。これはやはり必要であるならやらなければいけないと思いますので、そんな構想がおありかどうかが一つです。  それからもう一つは、いまもいろいろとお話がありました中で、やはり結果的には、萩原先生のお立場でもあれもこれもやりたい、小澤先生なり宮本先生の言われた中で、確かに場所もふやしたい、自動記録的な集計方式もとりたい、だが、これは予算がないからだというようなことになって、ついできないでいるものがあるんだということになるのかどうか、二つ目に。  それから三つ目に、これは末広先生にお答えをいただきますが、現在の五点だけでも総額一億二千万円ですね。一カ所二千何百万円足らず。現在、東海地方にしても房総沖にしても、とにかく危険があるよと大胆に予知連絡会がわが国で初めて地震予報を出されたわけですね。確かに、予知公害と言われるほど予知されてがたがたしたんじゃ困るのですが、しかし、的確な予知がとにかく大胆に出されるという慣習のついた点では非常にいいと私は思うのです。パニックを防ぐ上から言っても、事前に心構えを持つ 住民の教育もできるという点では非常にいいと思うのですが、現に、東海あるいは房総沖に大きなものの危険があると言われているときに、先生方考えになっても、いまの地殻変動観測というものが必要だということだけは否定はできない。しかしこれだけが、小澤先生のおっしゃるように、絶対予知との関連において不可欠のものかというとそうではない。いろんな、ラドンの測定その他水位がどうのこうのというものを全部やりながら、あるいは光波測量をやりながら総合されなければ本当のものは出てこない、これはおっしゃるとおりだと思うのですが、しかし、その中の地殻変動観測というのは、非常に大事なものであるということに現在立っていることは間違いないと思うのです。これがある種の予知効果があると考えたときに、やはりいま小澤先生最後に、また宮本先生の言うような数多く、たとえば三十カ所、五十カ所というのができれば非常に理想的だと思います、こうおっしゃっていたその理想的なことに全部したって三十カ所か五十カ所ですね。そうすると、一億二千万で五カ所できるなら、大体その六倍見たところでせめて十億足らずでできるわけですね、三十カ所やろうとしても。  私は、とにかく地震国である日本が、予知が発表されていつ地震があるかというので非常に大きな関心を持っているときですから、多少でも効果がある地殻変動を観測しようということになるなら、そのことが有効であるという前提にいま立っているとするなら、五カ所なんて言わないで、三十カ所、五十カ所といったところでせめて十億前後なんですから、このくらいの予算の要求をしながら、何とかしてこれを実現しようという決意があっていいんじゃないか。第三次計画の終わりになってからまた第四次がということで、こう行くにしては、予知が発表された今日の段階で、少し時間がかかり過ぎるように私は思う。もしむだになったにしても、地震予知のために十億前後のお金がむだになっても、国民は何とも言わないと思うので、現在これが必要だ、ある程度有効だと考えている以上は、十億、二十億のものをこの種のものに使うということは、もっと思い切ってやって、場所がなければだめですけれども宮本先生の言われる穴をふさぐという最小限度三十カ所くらいのことは、やるという計画がすぐあっていいんじゃないかという感じがしますから、三つ目には末広先生からその点のお答えをいただく。  それから、科学技術庁の伊原局長もおいでになっておりますからお伺いしたいのですが、いまお聞きになったようないろいろな問題の中にずいぶんたくさんの問題があります。せめて自動記録装置をその場所、その場所で貸してもらいたい、あるいは買って設置してもらいたいといった問題なり、あるいは光波測量機器に関しての提案が一つありました。また、現在幸いに予算のとれた五地点、五十一年度予想の五地点というような問題もお聞きになったとおりです。科学技術庁として、地震に関する各省庁との連絡会議の中で、いまやっているもののほかに、まだ地震予知関係してこういうものを考えている、こういう予算を次年度はとろうと思う、今年度の予算の中には、地震予知関係してはこういった予算がとれて、やろうとしておるのだというようなことがおありだろうと私は思いますので、それもあわせてお聞かせをいただき、話の出ましたようないろいろ貸してもらいたい、あるいは光波測定をやってもらいたい、やるべきだといったようなことに関して一体どうお考えになるか、それをまことに恐縮ですが、時間の都合で四人目にお答えをいただきたいと思います。
  33. 萩原尊礼

    萩原参考人 小澤さんの言われました大型水平坑道というのは、恐らく横穴式の観測による伸縮計傾斜計をおっしゃっておるのだと思います。いわゆる地殻変動観測所として現在二十カ所ばかりございますものがこれに相当するのではないかと思いますが、これは気象庁松代地震観測所を除きまして現在全部が大学の所管になっております。こういった地殻変動の連続観測、これは微小地震観測もそうでございますが、まだ非常に研究的色彩が強いために、まだそのまま業務に持ち込めないというところから、大学が研究的立場から観測をいたしておるわけでございますが、こういった地殻変動の観測所は、研究観測といいましても、その仕事の内容はかなり業務的でございまして、現在、研究を使命といたします大学におきまして、これ以上の観測所の数を持つということはちょっと不可能だと思いまして、大体この辺が限度ではないかと思っております。  なお、地殻変動の観測所は数は非常に少ないわけでございますが、この観測所が、一つの研究あるいは観測の基盤となるものと私は思っておりまして、ちょうど微小地震観測所が幾つもの衛星観測点を持っておると同じように、現在開発されました、いわゆる井戸の中に据えつける傾斜計、あるいは先ほど末広課長のお話に出ました井戸の中の圧力計、こういったものを使いました衛星観測点というものを幾つか使うということで補っていくのがよいのではないかと思います。それにしても、余りに観測点をふやしますことは、現在この仕事が大学で行っております以上、制限を受けるわけでございます。  なお、この観測点の密度につきましては、たとえば、先ほど末広課長のお話に出ました井戸の中の圧力計、こういったものは非常に密に、たくさん置けばよろしいわけでございますが、それにしても、こういうものを全国的にたくさん置くということはおのずから限界がございます。そういうために、ただいま地震予知連絡会がとっております、地震予知連絡会と申しますより地震予知研究計画におきましては、現在の観測で何か異常を見つける、そうした場合にそこの観測を強化する、あるいはさらにそこの場所観測を集中するということによって、こういった欠点を補っていこうという戦術をとっております。つまり、国土地理院が担当しております精密測地網、これは一例でございますが、これによってある異常の地域を見つける、そしてそこにいろいろな観測を集中する、つまり、まず臭いところを見つけるわけでございますが、そして、そこに集約的な観測を行う、そういう方策をとっているわけでございまして、この方策については、現在のところ変える考えはございません。  ただ、かつて松代地震そのほか十勝地震等に際しまして、それまでのいろいろの研究成果にかんがみまして計画を変更、改良するという事態が生じましたときは、五カ年計画というようなことを申しておりますが、その途中でその計画も変更いたしておりますので、また現在、第三次の五カ年計画と言われます地震予知研究計画がこれでよろしいか、さらに修正する必要がないかということは、文部省測地学審議会におきましていろいろと作業委員会をつくって検討いたしておるところでございます。したがって、必要がありました場合は逐次変更はいたしていくつもりでありますが、このいわゆる強化地域あるいは集中地域、そういうものをつくって、そこに集約的に観測を行う、全国的に細かい密度で観測を行うということは言うべくして不可能である、こういう考え、これは現在のところ変わっておりません。  以上でございます。
  34. 末広重二

    末広説明員 御説明申し上げます。  なぜもっと個所数をふやさないのかという御質問であろうと存じますが、もちろんより多くの情報をとりますためには、より稠密な目の細かい網が必要なことは、これは論を待たないところでございます。ただ小澤教授、それからただいまの萩原教授の御説明にもございましたとおり、やはり地震予知技術開発は地殻変動の連続観測だけではございませんで、国土地理院のなさる測地測量の繰り返し、あるいは気象庁、大学の研究陣がやっております大、中、小及び微小地震観測その他のすべての観測施設が向上し、また、それから得られます情報を処理する能力が進みまして初めて地震現象を総合的に包囲して把握するという方途をとっております以上、やはり各方面においての強化が歩調をそろえて進むことが望ましいわけでございます。私ども、決して現状に満足しているわけではございませんが、十年前から比べますと、今日の観測体制等は、これは原先生を初め諸先生の御鞭撻、御支援により格段に強化されたわけでございまして、私ども、さらに将来これを一層強化すべく努力するつもりでございます。
  35. 伊原義徳

    ○伊原政府委員 科学技術庁といたしましては、先生御高承のとおり、みずからの業務といたしまして、国立防災科学技術センターにおきまして、深井戸によります微小地震観測などを強力に進めておりますほか、地震予知研究推進連絡会議のお世話役といたしまして、関係各省庁の地震予知研究につきましての連絡、推進を行っておるわけでございますが、この研究推進連絡会議の性格を申し上げますと、これは御専門の立場から地震予知連絡会の場でいろいろの御検討がありまして、それを行政面に効果的に反映する、迅速にかつ重複なく、かつまた穴もないという形で行政局として対応いたしたいというのがその目的でございます。したがいまして、先生の御指摘のございました自動記録装置の貸与あるいは国の適当な機関に設置する問題、あるいは光波測量の問題、そういう問題につきましても、地震予知連絡会の場におきましてその有効性なり具体的な対応というものをある程度御検討いただきまして、それを各行政官庁がどういうふうに対応していくかということで、各省庁と十分連絡をとって、これから強力に進めてまいりたいと思っておるわけでございます。  それから、五十年度の予算あるいは五十一年度の予算でどういうふうな新しい展開があったかという御質問でございますが、五十年度につきましては、従来からの原先生の強力な御鞭撻もございまして、予算が、総需要抑制のもとにおきまして非常によくつけていただいたと思っておりますが、たとえば新しい仕事といたしまして、国立防災科学技術センターの三号井に着手することができることになりましたし、文部省の関係では名古屋大学の地域センターが認められた。それから、先ほど気象庁からもお話のございました東海地区におけるひずみ計の問題、その他観測の強化、さらには、現在問題になっております川崎地区におきましての観測の強化につきまして、かなりのものが実施できることになったということで、大変ありがたいと思っております。  五十一年度につきましても、引き続きその重要性を関係方面に御認識いただきまして、これは各省庁からさらに具体的な案を御提示いただきました上で、来年度の予算をさらに充実いたしたい、こう考えております。
  36. 原茂

    ○原(茂)委員 伊原さんは後にして、先に萩原先生の先ほどの御説明の、現段階ではこれが限界だ、特に大学が主になってやるのだというようなお考えをお聞きしたのですが、それは人的、予算的、そういう総合的な力関係で、いまもっとあれもこれもやりたいと考えてもむずかしいということなのか、それとも現在やっている範囲予知に関しては最高で、これでいいんだ、これ以上現在、拡大してみたりもっと細かくという考えはない、これでいいんだということですか。末広先生が後からおっしゃった、できればやりたいという御意向があったようですが、萩原先生のお話を承ると、現在のところこれを変える考えはない、これで大体やっていくんだ、こうおっしゃったその理由は、もう予知に関してはやるだけのことはやっているから、これで十分だというのか、予算あるいは人的、そういう問題から、やはりやろうといっても急にできるものではないので、いま限界だと思う、こうおっしゃっているのかをひとつ萩原先生からお答えをいただきたい。  それから、伊原さんにお伺いしていいのか、あるいは主に大学のことですから萩原先生かどうか知りませんが、調べてみると、四十九年度より五十年度の方が人員が減っているところが大分あるのですね。東大なんか定員二名、技官一名、一般一名というのが、今度は定員一名、技官一名に五十年度なるのですね。これは地震研究所、油壷です。それから松山はまあいいとして、鋸山なんかも定員三名、技官一名、一般二名、これが五十年度になると定員一名、助手一名というふうに減るのですね。それから弥彦なんかも定員二名、技官一名、助手一名のところを定員一名、助手一名になるのですね。技官が減って助手がふえてみたりしているところも多少ありますが、いずれにしてもこの種の観測所で四カ所、こう顕著に人を減らしているのはどういうわけなんでしょうか。油壷、鋸山、弥彦、それから後は同じようなところですが、何か自動化などが進んだためにこうして人を減員するということになるのかどうか、これはどちらのお答えかは知りませんが、ちょっとお答えをいただきたい。
  37. 萩原尊礼

    萩原参考人 私が申し上げましたのは、地殻変動の観測所あるいは微小地震観測所、こういうものの数は、これは大学が担当する限りにおいてもう限度であろうということを申し上げたのでございまして、これは大学は研究の場でございますので、研究観測とはいえやはり業務的の色彩の強いこういう観測の仕事を、これ以上ふやすことは非常にできにくいということでございます。  ただ、もうこれでよいのかというと決してそうではないのでございますが、現在のこの地震予知というものが、研究から実用化へとちょうど移り変わりのときでございまして、非常に特殊な状態でございますので、こういう大学でいろいろの研究によって確立されましたことは、やがて、これはもうこれでよろしいということになりますと、それはいずれかの官庁において業務的にやっていただくということになるべきだと思います。     〔委員長退席、石野委員長代理着席〕 ただ、いまそのちょうど移り変わりの段階で、非常にデリケートなところだと思います。  ですから、私どもの理想といたしますところは、いま現在行われているような地震予知に必要な観測、こういうものがすべて一元化される、一つの機関で行われる、そういうことが将来のビジョンとしては持っておるわけでございますが、なるべく早い時期にそういうときに到達するように努力しているわけでございます。いまその段階でございますので、非常に問題がデリケートなところがあるわけでございます。
  38. 七田基弘

    ○七田説明員 お答えいたします。  先生からいまお話がございましたように、観測所によりましては若干定員の異動がございます。それから現員と定員との間にまた若干の食い違いがございます。これは実は私どもの方の定員の管理といたしましては、一応大くくりといたしまして研究所に定員としてくっつけておるわけでございまして、その研究所がまたさらにそれぞれの観測所につきましてそれぞれ定員それから現員の割り振りをやっておるわけでございます。  それで、実は先生がいま御指摘になりましたのは、いずれも東京大学の地震研究所が中心でございますけれども地震研究所は、御承知のとおり長い紛争がございまして、その結果あるものは本所の方に引き揚げる、あるいは非常に弱いところに回すというようないろいろなことがございまして、いま流動状態のようでございます。そういうことで若干の定員及び現員のあれがあるのだろうと思っております。ただ、せっかくつけました定員でございますので、私どもの文部省といたしましても、この定員の管理の問題につきましては、さらに地震研とか各大学研究所とも御相談いたしまして、必要なところにはやはり人員をちゃんとつけていくという形にいたしたいと思っております。
  39. 原茂

    ○原(茂)委員 先ほど小澤先生のお話の最後にありましたように、いまやはり大事なのは、地震予知に関して、どういう方法でどんな順序で何をまずやるかという順序をつけることが非常に大事だというお話がありましたが、これは予知連絡会が中心で、観測方法なりその順序に関して常に検討をされていると思うのですが、いろいろ問題がありますから、これが一でこれが二だというふうにはつけられないにしましても、大まかに言って、現在地震予知連絡会としてできるだけ早くこういう順序で考えていっているのだという、何かそういう基本方針みたいなものがおありかどうか、もう一度萩原先生からお伺いしたいのです。  同時に、小澤先生宮本先生からざっくばらんなお話で結構ですが、いまの地震予知連絡会を中心にしたこの種の地震予知というものに関する作業を進めていく上で、先生方立場で実はこうあってほしい、こういうところがどうもやはりわれわれの意思が十分に反映できないといったような、隔靴掻痒の感といいますか、何かおありなら、ざっくばらんに、それも小澤先生宮本先生からお伺いをしておきたい。
  40. 萩原尊礼

    萩原参考人 現在の地震予知研究計画の基本は、私ども基本観測と申しておりますが、全国的に日本全域にわたる観測、つまり国土地理院の担当の精密測地網及び一等水準測量、それと気象庁マグニチュード三以上を検測するという観測業務、これがまず基本である。それと並びまして微小地震観測、あるいは地殻変動の連続観測、その他活断層の調査とかいろいろございますが、研究的色彩を持った諸観測、こういうものを並行して行う、こういう方針で進んでおります。
  41. 小澤泉夫

    小澤参考人 地殻変動の連続観測、そういった立場から申しますと、大学側ではまだ質的な向上ということが必要でございます。それで現在では、人員の場合でございますが、まだ研究員の方に重きを置きたい、そういったふうに思っております。  それからもう一つ、埋め込み式のボアホールを試みられる、そういった計画を基本にされるようなお話でございますが、なるほど大変結構でございます。  それから、水平抗道の方が何か土地の問題で見放される、そういった傾向がございますが、実際に使っております地表面というのは、垂直抗道の場合も水平抗道の場合も同じでございます。ただ、そういう地上権の問題を、国有林とか県有林は林野庁でしょうか、そういった関係の方で解決していただきました場合には、予算的にも水平抗道は不利ではない、そのように私は思っております。
  42. 宮本貞夫

    宮本参考人 実は、同じようなことを繰り返す可能性がありますので、できるだけ与える印象を改めるため、少し変わった内容を持つ表現をいたしたいと思うのでございます。  繰り返しますが、いまの観測組織では、二日前、一日前、直前の予報がまず不可能ということは明白でございます。そして、私は里京都の防災対策関係の方へ、一年間ほどいろいろな会議で列席をしまして、防災関係の出版物の執筆も頼まれまして、多少地方自治体の災害対策部の意向も知ったのでございますが、とにかく、数日前の予知はできないというようなたてまえからの発想で、大地震が起こってから幾つかの広域避難地域に何十万人ずつという人たちを狭い道を通って行かせる計画です。これはもう自殺行為であることは明らかなんです。これははっきり言いまして、直前の予報考えていないのは地震予知連絡会の重大な怠慢であると、私はこの際指摘したいのであります。  すなわち、病人あるいは婦人あるいは老人、そのような人たちがどうして五キロも六キロも歩けるかということでございます。でございますから、直前、すなわち一日、二日前の予報をぜひとも、何が何でもやり抜いていただいて大地震の何日か前に、少なくとも大都会の中心から離れた小学校でも村役場でもいいから、とにかく郊外に、まずそういった行動のできない人たちを安全地帯に持っていく。そのためには、非常事態宣言ができるように、いま言ったようなボアホール型、すなわち埋め込み式のひずみ計を全国に、少なくとも百カ所以上と思いますが、さしあたって関東、東海地区に五十カ所以上は何が何でも全力を挙げてやり抜いてもらいたい。あす起こるかもしれないということは、いろいろな書物においても発表されております。場合によれば、ちょっと言葉が行き過ぎるかと思いますが、末広課長の非常に妥当なる御意見ではございますが、勇気が非常に足りないと私は思う。つまり、五カ所でわずか一億五千万円でございます。さすれば、いま原代議士からおっしゃったように、あと三十カ所、四十カ所というものを、審議会が言うならばやらぬこともないというのではなくて、でき得べくんばいろいろな審議会に強く働きかけて実行していただきたい。末広課長専門家中の専門家でございますから、自己の信念を持って直前の予報をする努力をしていただきたい。  ボアホール型がなぜいいかと言いますと、傾斜計に比べて埋め方が非常にたやすい。私も相当調べましたが、新しい埋め込み式傾斜計は一応東大その他で開発中でございますが、これは設置するのに大変な技術が要るわけです。ところが、埋め込み式のひずみ計だと、多少曲っておっても精度に全然関係がない。方向性を記録するわけじゃございません。周りから圧力がかかるかあるいは膨張するかということでございますから、多少曲がっておっても、どっちを向いておっても百億分の一の精度を持っております。でございますから、私は、もしも大地震が起こったときの人命の損害あるいは火災発生件数をより少なくするという意図を、測地学審議会あるいは地震予知連絡会の人が持つならば、あらゆることをなげうってでも関東、東海地区に数十カ所を緊急に、少なくとも数年以内に実現をしていただきたい、これを強く要望いたします。
  43. 原茂

    ○原(茂)委員 地震予知関係について、少し専門的なことを勉強させてもらったわけですけれども、いままでお聞きになっていて、長官として感想をここで述べていただけますか。
  44. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 私、聞いておりまして、ちょうど原子力とか、あるいは宇宙開発とか海洋開発とか、ナショナルプロジェクトと称するものがいままで進んできたのですが、原さんのおっしゃるように、やはり国としての大きいスケジュールがあって、どういう手順でどういうふうに進めていくかという大方針がこの際必要じゃないか。学術的な勉強の方は勉強、応用の方は応用の方で、いろいろまた各方面から注文があったりなかったりということでいいのですが、これは、そのまま過ごせる問題ではないのじゃないかという感じがいたします。したがって、単に受け身で各省の連絡をして、それで足りるという問題じゃなくて、もう少し積極的に皆さんの御協力を得ながら問題を進めていくべきではないかというふうに非常に痛感しております。  それから、恐縮でございますが、先ほどの原委員の冒頭の御質問にお答えいたしました際に、潜水艦云々という比喩を用いましたが、これは適当な比喩とは思われませんので、訂正させていただきたいと思います。  私のお答えは、「むつ」の新定係港の候補地についての最近の新聞報道の中身については、現時点では否定も肯定もしないということでございます。
  45. 原茂

    ○原(茂)委員 大臣おっしゃったように、地震というものはいつ起きるかわからないので、急速におっしゃったようなことを実行していただくように特にお願いしておきたいと思います。  それで、予算関係の人的な問題もあるでしょうけれども末広先生も実際に当局者としてはずいぶんがんばって、これだけやってもらったのだからという御遠慮もあるだろうと思うのですけれども、もっとふやすべきものをここでふやしたところで十億、二十億だったら、考えていただくようなことはぜひお願いをしておきたい。  それから、根本先生にお伺いしたいのですが、私はもちろん素人でよくわかりませんので、三つ四つずつ二回に分けてお伺いします。  第一は、いままで一番最初の貞観、西歴八百六十何年ですか、あれからつい十勝沖地震に至るまで、三十七回の地震がリストを見るといつでも出ていますね。その地震の中で、そこに月が書いてないのですが、地震というものは何月ごろが一番大きいものが来るということは関係あるのでしょうか、ないのでしょうか。一月、二月、三月、ずっと十一月、十二月までで、何か十、十一、十二月が非常に多くて、一月がちょっとあって、二月、三月が少なくて、五月に行ったらぐっと多いとか、素人なりに見ると、何かそこに関係するものでもあるのかなということを思うのですが、ひとつお伺いしたいのです。  それからもう一つは、気候の変化が非常に激しいとき、気温の上がったとき下がったときと地震との関係というのはあるのでしょうか。  それから、特に海水温ですが、海水温の変化が最近は非常に激しいわけですね。その海水温の変化の関連で、海底における地震状態というものが起きることがあるのかないのか、その関係は一切ないのか。  それから、火山活動と地震、これが関係のあることは、あの三原山などの過去を見てもわかるわけですが、こういう意味で顕著に関係があるのかないのかということを、先ずお伺いしたい。
  46. 根本順吉

    根本参考人 お答え申し上げます。  実は私、地震の専門ではありませんので、いま御質問がございましたそのいずれの項目に対しても、的確なお答えはちょっとできないのですけれども、私の知っている範囲で申し上げます。  一番目に、一年間のうち地震がいつ多いかということですけれども、これは東大の坪井先生がお調べになりましたものがありまして、これは大きな地震と小さな地震では年変化が違っているようであります。大きな地震は、私の記憶する範囲では、年の後半に多く、小さい地震ではそういう傾向が出ていないという結果を私、読んだ記憶がございます。  それから、気候の変化が激しい、気温の上下が顕著なときに地震も多いのではないかということですけれども、私自身は気象が専門なものですから、いろいろな気象現象を調べてみますと、太陽の活動が非常に不活発なときにいろいろな現象の極値が出ている。非常に異常高温とか異常低温とか、それから雨が非常に多いとか少ないとか、そういう記録を調べてみますと、それが太陽の活動が不活発なときに集中しているのがわかります。そういうことはどういうことかといいますと、つまり気象の変動が非常に活発なときでありまして、いわゆる気圧配置、北半球全体にわたるような大規模な気圧配置の変動が大きいときには、たとえば炭坑の爆発にしても火山の爆発にしましても、気圧が非常に顕著に下がってきて、ミニマムを過ぎてからちょっと上がったところで起こっているということが、これは気象庁の島田課長、いま羽田におります島田課長によって調べられております。ですから、つまり万物相関といいまして、いろいろなものが関係があるものですから、やはり地震に対しても、外因的な気象の条件というのは、一つの引き金作用を与えると思われますので、やはり気候の変動の激しいようなときには、地震の活動というものも一応注目しなければいけないのではないかと思います。  それから、海水温の問題になりますと、これはやはりいま申し上げました二番目の問題と一緒に考えるべき問題だと思います。火山についてもやはり同様のことが言えると思います。  実は、私、二年ほど前に、昭和四十八年の四月二十六日に、この委員会で、地震の起こり方が月の月齢と非常に関係あることを申し上げたのですけれども、これは事実としてそうなっておりまして、理屈はさっぱりわからないのですけれども、この研究は私がやったのではないですけれども、ソ連のタムラジャンという方がやった研究によりますと、日本で起こりました非常に大きな、死者とかそれから倒壊個所の多い、そういう地震を調べてみますと、九九%月齢の二十日過ぎてから、それから三日月を過ぎてから二日くらいまでの間に地震が集中しております。こういうことは理屈はともかくとして、そういう規則性があるんですから、やはりそれを使ってみようという、つまり私の思想というのは漢方の思想なんです。漢方の思想というのは、つまり薬が効くかどうかその理屈はわからないけれども、非常に効くならそれを使ってみようということで、私が実はカレンダーをつくって、そして月齢の移動に伴う地震の起こる、起こらないということを調べたわけですけれども、これについて、その後一つの大きな発展がありまして、これは私の専門が地震でないものですから詳しく調べることができなかったのですけれども、幸い東大の地震研究所の長沢先生が非常に詳しい吟味をなさってくれたんです。それで私の求めました結果がある程度裏づけられまして、つまり、月の上弦と下弦付近で地震の回数が非常にふえているということを、かなり厳密な統計的な吟味をやって出していただきました。  ですから、地震予知と申しましても、私、長い間予報をやっておりました経験から申しまして、短期予報、長期予報、季節予報、それから夏になれば暑くなる、冬になれば寒くなる、そういうのもやはり予報でありまして、そういうことでも非常に役に立つわけであります。つまり、これから将来、月齢が五日過ぎから二十日までの間は破壊的な地震が起こっていないということがわかっただけでも、地震のきらいな人はこの期間はまくらを高くして眠れるわけです。ですから、一般の人にとってはこれはそういう意味では非常に役に立っておると思いまして、幸い、私七四年までこのカレンダーをつくりましたところが、非常に皆さんから要望がありました。七五年、ことしはまだつくっていないのですけれども、やはりそういう危険な日がわかるなら教えてくれという人が非常におりますので、非公式にプリントしてそういう方には差し上げております。  最後に申し上げたいことは、つまり地震予知といいましても、予知にはいろんな形があるということ、何時何分どこでぴたっと起こる、それだけが予知ではないということを申し上げたいと思います。
  47. 原茂

    ○原(茂)委員 根本先生から、カレンダーができたらぼくもちょうだいします。安心して眠られるようにひとつ……。  それから、東大の長沢先生は何か物を書いているのですか。ありましたら、後でどういう本かをちょっとお知らせいただきたい。  それから、あと三つ大きな意味でお伺いしておきたいのですが、その第一は、また地震に直接関係ございませんが、長期、短期に見て、ことしのわが国の気象は寒冬と暖冬が入りまじった気象になっているのか、なりそうだとお考えかどうかをお伺いしたい。ということは、もう御存じのように、ことしの作物などの予想にも関連する大きな問題で、かつて六年くらい前ですか、そういう御指摘が根本先生からありました。ことしがまた同じような状態じゃないかと素人なりに感じていますので、そのことをお伺いしたいのが一つ。  それから、これは大きな問題ですが、ことしの地球上の気象の変化、これが一体どういう状態になりそうだとお考えなのか、地球全体を覆う気象の状況というものが、ことしどうなりそうだということをお伺いしたいのが二つ目です。  それから、これはそれらに関連する問題ですが、今後のわが国の食糧問題あるいは水に関連する問題というものを、気象との関係先生がどうお考えになっているかをお伺いして、その三つだけ根本先生にはお伺いしたい。
  48. 根本順吉

    根本参考人 一番目のいま原委員がおっしゃいました寒冬、暖冬ではなくて、寒い夏ということですね、冬ではなくて。これについては、気象庁の担当、長期予報課がありまして、正式な予報が出ておりますので、私、担当ではありませんのでちょっと詳しいことを申し上げられませんけれども、これはこういうことが一般的傾向として申し上げられます。  それは、現在太陽の活動が非常に不活発になっております。恐らく極小、一番弱くなるのは来年であろうと考えられております。先ほども申し上げましたように、太陽の極小年の前後には非常に地球上の気象が乱れて異常気象が発生しやすい。これはもうはっきり出てまいりますので、したがって、そういう大まかな見通しから申しますと、やはりことしは干ばつ、それから北日本の低温、そういうようなことは一応は考慮に入れておかなければいけないと思います。それで、何月寒くなる、何月それが回復するというようなことは、恐らく季節予報で出ておりますので、それをぜひ見ていただきたいと思うのですけれども、私、ちょっといま記憶しておりませんので、正確なことは申し上げられません。  それから、ことしの地球上の気象の変化ですけれども、やはり非常に大まかな、場所によって偏差の大きな状態、たとえばシベリアの東部では非常に低温、それからヨーロッパでは非常に高温、それから、たとえばインドあたりでは非常に低温が続いておりまして、毎日たくさんの人が凍えているというようなニュースがたくさん入っておりますので、やはりおさまっていないように思われます。そして北半球全体を見た場合に、やはり低温化は一九七〇年代になってから非常に顕著になってまいりまして、特にこれが、いままでは極地の寒冷化と申しましても、それが東半球側、つまりシベリアの北岸に偏っておりましたのが、七〇年代になりましてからそれが全地球的に広がってまいりまして、わが国も非常に食糧を依存していますカナダあたりで非常に顕著になってきております。しかも、この顕著になり方が、徐々にではなくて、かなり突然になっておりまして、一九七二年のごときは、カナダのハドソン湾の周辺で年平均気温が平年よりも四度低くなっております。これは実に驚くべき低下でありまして、一年間の平均温度が四度下がるということはちょっと例がないと思います。日本でいままで一番下がったのは、明治十七年に平年より一・五度下がったのがこれは記録でありますけれども、それと比べましても、いかに大きな変化であるかということがわかるわけであります。したがって、このカナダというのは場所が広いですけれども、小麦のとれるところは非常に限定されておりますので、そういったところに非常に影響が多いので、したがって、そういった穀物を輸入するような場合も、ある地域だけに目をつけて輸入するということは、非常に危険な状態になってきているのではないかと考えます。  それから、現在非常に問題になっております畜産の飼料の問題でありますけれども、これは七二年にいわゆるペルーの沖のアンチョビーが大変な不漁になりまして、それが日本の大豆の値上げにまでもつながってくるわけですけれども、ことしはその見込みに対して、純粋に気象的なものかどうかということがなかなかむずかしいのですけれども、ことしもこのアンチョビー、つまりカタクチイワシの漁が非常に危険な状態になるのではないかという見込みが出ております。大体、ことしの限度は八百万トンであろうという見込みが出ております。  それから水の問題で申しますと、これは気候の非常に長い間の変動で、東海道のメガロポリスといわれる非常に人間がたくさんおるところで、年平均の雨量が三百ミリぐらい減っておるのです。一年間の日本の年降水量というのは千八百ミリですけれども、千八百ミリで三百ミリ減っておりますから、これは大変なことであります。逆に裏日本の——裏日本と言ってはいけませんが、日本海側の過疎地帯で、今度は雨が三百ミリぐらいふえておる。つまり、これは人為的ではありませんで、日本付近を通ります低気圧の経路が太平洋側よりも日本海側に偏って、その結果そういうことになっているわけですけれども、水の問題は、大都市や何かで非常に需要が伸びている問題と関連しまして、それに加えていまのような自然条件の悪化、それからもう一つは、これは皆さんよくお気づきだと思いますけれども、雨の降り方にむらがあるということ、一様にこう降ってくれない。したがって、水の管理ということが非常に大事になってまいります。  したがって、これから水の問題、つまり水源地を持たない長崎県とか沖縄とかそういうようなところでは、非常に水が大問題になると思います。ただし、日本は東南アジア、アフリカなどに比べますと非常に灌漑が進んでおりまして、東南アジア、アフリカでは干ばつになりますと、これがもうすぐ飢餓につながるのでありますけれども日本では干ばつになりますと、一九七三年のごときは、北海道から九州まで全部大干ばつだったのですけれども、大豊作であります。これは灌漑をやっておるからであります。灌漑をやって水があるから豊作になるのであります。したがって、干ばつという問題は灌漑によって十分カバーできる問題ではないかと私は思います。  食糧の問題でありますが、過去においては、大体冷害というのはオリンピック並みと言われまして、四年に一回だったのですけれども、この十年ぐらいは、大体二年ないし三年に一回ぐらい起こっております。したがって、北日本の冷害というようなことも、ことしなる、ならないは別にしまして、非常に懸念されることでありますので、やはりこういうことについても、気象庁から出ております長期予報を十分御利用になって、それを将来の計画に勘案していかなければならないと思っております。  こういう問題については、イギリス、ドイツ、ソビエトあたりは非常に進んでおりまして、予報がもう直接ポリシーに取り入れられて、イギリスのごときは、予想ではなくて、いわゆるオペレーションリサーチで、夏の収穫が何%減ったならばどうしなければいけないというような計画を立てて、実際にいろいろなことをやっているというふうに伺っておりますけれども、わが国の場合でも、こういう点についても十分考えて、予報ということを利用していくべきだと考えます。
  49. 原茂

    ○原(茂)委員 どうもありがとうございました。ちょうど時間が参りましたので、これで終わります。先生方、どうもありがとうございました。
  50. 石野久男

    ○石野委員長代理 参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、本問題調査のため大変参考になりました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  次に、山原健二郎君。
  51. 山原健二郎

    ○山原委員 原子力船「むつ」の問題につきまして、最初に大変初歩的な質問を申し上げたいと思います。  「むつ」の新母港の決定をめぐる問題について、四十九年十月十四日の協定書、これはもうすでに論議されましたが、協定書のIの2に、原子力船「むつ」の定係港については、「入港後の取扱いに関しては、入港後六ケ月以内に新定係港を決定するとともに、入港後二年六ケ月以内に定係港の撤去を完了することを目途として、昭和四十九年十一月一日からその撤去の作業を開始する。」と、こうなっておりますが、先日、二十日ですか、この委員会が開かれまして、各委員から政府に対する質問が行われまして、その同日に政府・自民党筋から、その新母港について種子島とかあるいは対馬とかという名前が出ておりますが、この経過について最初に伺っておきたいのです。
  52. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 きょうの委員会の冒頭に、原委員からも同じ質問がございましたのでお答えしておきましたが、第二定係港と申しますか、新定係港の選定をただいましている最中でございまして、政府といたしましては、新定係港はこうでございますという発表はいたしてございません。  ただ、記者諸君はそれぞれの立場で非常な努力で取材をなしたと見えまして、あのようなことがいろいろ新聞に出たことと存じます。しかし、私どもは、新聞に出ましたその中身自体が、イエスかノーかという点も、とれまた言えない段階であります。
  53. 山原健二郎

    ○山原委員 いま長官のお話では、記者諸君の非常な努力でキャッチをされたのだろうという意味の御発言ですね。記者の皆さんがキャッチするような材料はあったのでしょうか。
  54. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 詳しく申し上げますと、この問題は専門に進めなければいけない問題で、片手間でできぬ問題でございますから、一月の初頭でございましたか、科学技術庁、それから運輸省、それから原子力船事業団の中からそれぞれ人を選びまして、そして私どもの政務次官が首班になりまして選定に入りました。それが逐次進んでまいっておりますので、恐らくは、私は役所の方からは出ていないんじゃないかと思いますけれども、しかし、新聞の皆さんのことでございますから、取材のもとはもちろんおっしゃらぬでしょうし、どこから出たかは私、存じ上げません。
  55. 山原健二郎

    ○山原委員 いまのお話では、多少それをにおわすような状態があったということがわかるわけです。  この協定によりますと、四月十四日というのが新母港決定の期限ということになるわけですね。それで、現在まで約五カ月経過をしているわけですが、この五カ月の間にどのような努力がなされたのか。調査その他、あるいは地元住民、自治体に対する話し合いとかいうことがなされておったのでしょうか。
  56. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 この半年間と申しましても、初めの間は、あの始末の後でございますから、お約束の予算的な措置に必要なものはもう全部お約束どおり実行しましょうということ、あるいは「むつ」の燃料棒、「むつ」の凍結等に関する問題については、お約束どおりこれこれのことをいたしましょうということで、これは全部済ましたわけでございます。  最後に残ったのが第二定係港の問題でございますけれども、それに関しましては、その間方々から御要望の向きもございました。また、港湾の問題でございますから、これの条件に合う地点を机上作戦的に選んだものもございますが、そういう資料の収集にかかっておりまして、いよいよその資料がある程度まとまりましたので、先ほど申しましたように、コンパクトな作業に入った、こういう経過でございます。
  57. 山原健二郎

    ○山原委員 いろいろ協定を結ばれまして、撤去その他の予算問題等はやられておるんですが、新母港をどこにするかということが、いわば一番肝心の問題ですね。これは協定の一つの大きな目玉であるわけで、しかも、それは期限が切られているという状態です。しかも、今日の状態では、四月十四日といえば、あと半月しかないという状態ですね。  いろいろ検討されあるいは要望も出てきた、あるいは机上で検討もしてきたということなんですけれども、そういう中で、それら政府筋において検討されておるものを記者の皆さんがキャッチされて、そこから出てきたものが対馬であり、あるいは種子島である。ところが、その対馬、種子島における反応というのは、私も現地へ連絡もしてみましたし、それから新聞紙上で見る限り、ある町長さんは全く寝耳に水だとおっしゃるし、長崎県の知事さんは反対だとおっしゃるし、種子島に至っては、余りにもばかにしておるというような話が、ぽっぽっと自治体の長の方やあるいは漁協関係の方から出るわけなんですね。そうしますと、一体これはどうなっているのかという、非常に意外な感じを受けるわけですね。恐らく、新聞社の方たちがこの取材をされる中で、一番の焦点がその二カ所へ出てきたとしますと、その焦点になっている二カ所すら、知事さんも反対だと言われるし、自治体関係者、漁協の方たちも、寝耳に水だ、こう言われると、そのほかの候補地として考えておったところは、より一層何も話し合いがないということが予想されます。あるいはアドバルーンとしてこの二つの地域がその筋の方からほのめかされてきたのかというような点を考えますと、この二十日以来数日間の新母港についての国民の知る限りの問題としては、非常にあいまいもことして、いろいろな問題が考えられるわけなんですね。  科学技術庁としては、こういう政府・自民党筋から漏れた対馬、種子島という問題が出まして、迷惑に感じておられるんですか。一体その辺はどうなんですか。
  58. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 私は、別に迷惑とも考えておりません。しかし、いまの統一地方選挙のさなかにこういう問題が出るということは、できるものもできなくなるというおそれが多分にありますので、私どもといたしましては、約束どおりの責務を果たしたいものでございますから、またそれを青森県の皆さんも望んでいることだと思いますので、その期待にもこたえる意味から申しますと、この際は、どういうところまで進み、どういうふうになっているかという詳細、あるいはどの地点を選んでいるかといったようなことは出さないということ、これがそれにこたえる道じゃなかろうかということで、実は、冒頭申しましたように、現在その経過は一切申し上げないことにしております。  ちなみに、あなたの申しましたように、御丁寧に現地へ問い合わせてくださったそうでございますが、早速大反対という電報をちょうだいしておりまして、これはとても出せたものじゃございません。
  59. 山原健二郎

    ○山原委員 いまおっしゃったように、一番肝心の、一番むずかしい問題が残っているわけですね。しかも、鈴木善幸氏が政府代表として行われた協定というのは、いわゆるIの2の「むつ」の定係港の問題ですけれども、これは非常に文章として明確になっておりまして、いわば四月十四日というのは文章の面から見ましても、「六ケ月以内に新定係港を決定するとともに、入港後二年六ケ月以内に定係港の撤去を完了することを目途として、」この後のところは、二年六カ月が目途というふうに読めることは読めるのですね。それだけに一方の母港、新定係港の決定は、一層強烈に期限が切られておると読むのが、この協定書の読み方だと私は思っておるのです。その点でも前に質問をしたことがあるのです。  そこで、そういうことが六カ月と期限を切ってできるのかというと、いま長官のおっしゃるところによりますと、統一地方選挙が終わるのが四月二十七日なんですね。そうしますと、すでにもうそこで、地方選挙中はそういうことはやりたくないということになりますと、四月十四日というこの線は消えてしまいまして、四月二十七日以降、こういうことになるわけですね。算術計算からするとそうなるのですが、この協定というものは、いわばそれだけ強烈な期限となっておれば——これは私の計算違いですかね。計算違いだったら指摘をしていただきたいのですが、もうそこで崩れるんじゃないかという感じがするんですが、どうですか。
  60. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 私は、当時あの取り決めをしたときはもちろんいなかったのですけれども、その当時の状況を聞いてみますと、二年半後というこの現物を移動させるということは、これは動かせざる問題であって、半年の間に決めるというのは、いわば政府が節をつけておかないと、なかなか引き続いてこの問題の処置に、懸命にかからぬのじゃないかというおそれが多分にあったので、半年後までには新定係港を決めるというふうにしておいたのだというお話を関係者から聞きました。と申しましても、政府といたしましては、これはそういう責務も持っておるわけでございますから、その責務にもこたえるように、先ほど来申し上げましたように、エキスパートを動員いたしまして、これ専門にただいま検討を進めておるところでございます。  しからば、四月十四日がぎりぎりでございますから、それまでに決まるのかという御質問でございますので、決まりますと、こういうふうに答える以外にしようがございません。
  61. 山原健二郎

    ○山原委員 四月十四日までに決まるというお答えですか。
  62. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 私はそのつもりでおります。
  63. 山原健二郎

    ○山原委員 大変こだわるようですけれども、それはなぜかと言うと、あのときにずいぶんこの協定書の問題でお互いに論議しておりますのでこだわるわけですが、一方は二年六カ月を目途、一方の新定係港の決定というのはそれなりにまた非常に厳密に出ているわけで、その点で、いま四月十四日までに決める、こういうお話ですが、しかし、いま巷間出されておる候補地、対馬、種子島ですね、そういうところでは長官に対して反対の電報が来ておるという状態でしょう。  そうしますと、何かほかに意中の場所がもうあるんですか。もう長官としては、いろいろあるけれども、しかし、あと残された四月十四日まで半月の間に、ほぼここへ行けるんだという確信があるんですか。
  64. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 現地で反対しているという話は、私はまだ聞いておりません。ただ、あなたの党の現地からでございますか、私、反対の電報は受け取っております。それが事実です。
  65. 山原健二郎

    ○山原委員 私の党の方からの反対ですか。  長崎の知事さんが反対だというのは新聞に出ておりますが、これはお聞きになっておりますか。
  66. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 私、聞いておりません。まだ交渉もしておりません。
  67. 山原健二郎

    ○山原委員 それは、私の調べたところでは、私の党だけではもちろんありません。各地域における政党あるいは労働組合なども反対しておるということを私は聞いておるわけです。それはここで論議することでもないと思いますが、そういうふうに聞いております。  ところで、この協定を結ばれたのは、政府を代表して鈴木善幸氏でございますけれども、この新母港決定の責任者はだれでしょうか。
  68. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 これはあの当時、鈴木善幸氏が政府の委任を受けまして現地で取り決めをしたのでございますが、その取り決めをいたしましたものは、あくまでも政府としての責任と受け取りまして、政府の責任で処置するのが当然と心得ております。  したがいまして、この新母港を決めますのは、私は科学技術庁長官の権限じゃなかろうかと思っております。
  69. 山原健二郎

    ○山原委員 この重大な、しかも非常に困難な新母港決定が、いま長官のお話では、科学技術庁長官ではなかろうかというお答えなんですね。科学技術庁長官であるということではないのですね。一体どこで、どういう決定がなされているのですか。
  70. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 運輸大臣も共管になると思います。
  71. 山原健二郎

    ○山原委員 運輸大臣ですか。
  72. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 運輸大臣と科学技術庁長官の共管になると思います。
  73. 山原健二郎

    ○山原委員 お二人が新母港決定の最高の責任者と判断をしてよろしいですか。
  74. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 そういうふうに御理解いただきたいと思います。
  75. 山原健二郎

    ○山原委員 では、母港決定についての候補地その他のことについては、いまの長官のお話では、いまここで、いろいろ検討した経過その他を発表する時期ではないということで、お聞きをしましてもそれはいまお答えになれないわけですね。
  76. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 また現地の意向などを聞かれますと大変困りますので、いまの段階では話せない、また話をするつもりはございません。
  77. 山原健二郎

    ○山原委員 候補地の中に対馬、種子島というのはあったのでしょうか。
  78. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 それも、イエスともノーとも言えません。
  79. 山原健二郎

    ○山原委員 その候補地選定の基準というのは、どこでつくられているでしょうか。
  80. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 先ほど申しましたように、作業班をつくりまして、その作業班で作業を進めておりますので、詳細は政府委員から御答弁申し上げます。
  81. 福永博

    ○福永政府委員 技術的な内容でございますので、私から御説明させていただきます。  大臣から申し上げましたように、私どもの方の政務次官を長にいたしまして、運輸省、これは船舶局、港湾局、そういったところでございますが、運輸省の関係者、それから科学技術庁、これは原子力局を中心といたしておりますが、その担当官、それから原子力船事業団、この三者で作業グループを編成いたしましてその作業を進めておるわけでございますが、その作業に当たりましては、選定の基準と申しましょうか、条件と申しましょうか、そういった項目を策定いたしております。  その条件の内容でございますけれども、一つには、港湾、それからその港湾に伴います気象、海象といった技術的な要件でございます。もう一つは、社会環境と申しましょうか、その候補地あたりが、たとえば交通の便の問題でございますとか、漁業の状況でございますとか、そういったようなことを含む要件を何項目か設定して作業を進めているわけでございます。
  82. 山原健二郎

    ○山原委員 その、いま衝に当たっておる方たち、政務次官を長とする作業班の選定の基準、たとえば港湾とか、それから気象、海象その他ありますね。たとえば一例ですが、港湾の水深はどれくらい、そういうふうなところまでいっているわけですか。その基準をお見せいただけませんか。
  83. 福永博

    ○福永政府委員 先生いま御例示されました水深でございますが、ただいまの原子力船「むつ」は、いま手元の資料を探しますが、満載喫水で約七メートルぐらいであると私、記憶しております。そうしますと、七メートルは満載喫水でございますけれども、船の技術的な言葉で恐縮でございますが、トリミングというものがございます。それで若干の余裕と申しましょうか、幅を持っていなければならないわけでございまして、その幅のとり方でございますけれども、七メートルに一、二メートル上乗せするとして、八ないし九メートルぐらいであろう、こういうようなことを、個々にそれぞれ専門の技術者に相談しながら設定しているわけでございます。
  84. 山原健二郎

    ○山原委員 そうすると、その選定基準に合致する個所はどれくらいありましたか。
  85. 福永博

    ○福永政府委員 合致するというのが、たとえばいまの水深の例で申しますと、たとえば現在は八メートルであった、しかし、しゅんせつ、掘削等が容易にでき得るというような土質であれば合致するわけでございます。したがいまして、そういう意味では、その八メートルなり九メートルを画一的な基準として、それに合致する、しない、こういう議論には私はならないのじゃないかと考えております。
  86. 山原健二郎

    ○山原委員 この社会的条件の中には、地元の了解とか住民の動向も入っていますか。それは作業班の中には入っていなくて、トップの運輸大臣あるいは科学技術庁長官の方におまかせするという状態ですか。
  87. 福永博

    ○福永政府委員 作業班といたしましては、ただいま申し上げましたような技術的と申しましょうか、事務的と申しますか、そういったような見地から選定をいたしまして、その条件に対してはかくかくしかじかな状況になっておる、こういうような作業をしておるわけでございます。
  88. 山原健二郎

    ○山原委員 この地理的な立地の条件ということになりますと、これは比較的、簡単とは言いませんけれども、たとえば、水深が浅ければ深くするという工事ができますね。一番残されておる問題は、やはりむつで問題になった経験からするならば、いわゆる住民の動向、自治体意見というのが一番とにかく肝心のところですね。作業班はずっと進めておるのだけれども、肝心のところがいま残っておる、こういう状態があるのじゃないかと私は思います。  そうしますと、これは残された半月の間にやると長官は言われましたが、私は至難のわざをやってのけなければならぬ時期に立っておるのではないかと思うのです。大変なことです。本当にそれができるのか。ここの委員会でいまできるとおっしゃったわけですけれども、そうすると、先ほど統一地方選挙が済むまでは云々と言われたことと、四月の十四日までにはやりますと言われたこととは矛盾しなくて解決できるとお考えでしょうか。
  89. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 失礼でございますけれども、私どもは別に山原委員と契約しているわけではございませんので、そういう点は、ひとつ政府の方へおまかせいただきたいと存じます。
  90. 山原健二郎

    ○山原委員 もちろん、私と契約しているわけではありません。しかし、この協定は少なくとも本委員会においてもう数日間にわたって論議をされ、国民的にも大きな関心を持っているわけでございまして、私と契約していないからということでは問題は解決しないと思うのです。だから、私が聞きましたように、四月十四日までに決定をする確信があるわけですね。
  91. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 ですから、それは先ほどから申し上げましたように、行政事項の一つに入っている問題でございますから、おまかせくださいと言っているのでございます。
  92. 山原健二郎

    ○山原委員 では、経過を見守っていきましょう。原子力船懇談会についてお聞きしたいと思うのですが、この懇談会は何を目的としてつくられたのでしょうか。
  93. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 この懇談会は、「むつ」の問題が起こりまして以来、お話しのように時間が経過してまいったわけでございますが、その間、御承知のように油の問題等から、特に燃料問題を中心にして、発電であれ原子力船であれ相当変化を来しておることは事実でございます。  そこで、世界の原子力船の将来はどういう傾向だろうかという点をまず検討してみますと、もちろんまだ結論を出しておるわけじゃございませんが、ただいま知っている範囲のわずかの資料ではございますけれども、どうも長距離で大型あるいは定期的なものであれば、あるいは採算点に近づくのじゃなかろうかというふうな傾向にもなっておりますので、世界の先進国は原子力船に対して相当意欲を燃やしているやに承知しております。したがいまして、日本も海運国でございますから、将来長きにわたって原子力船は私の方はつくりません、あるいは港には入れませんということで、一体海運国の将来というものは許されるものであろうかといったような点を考えますと、相当憂慮にたえぬ点もございますので、この際、国といたしましてはそういう世界の動向を見定めつつ、日本としては一体将来原子力船をどうするかという点がまず第一点かと存じます。  続きまして、それでは第二船をどうするか。これは実験船でよかろうと言う人もおるでしょうし、あるいは実用船に踏み切ったらどうかと言う人もおるでしょう。あるいはどういう形態が一番世界の動向から見て望ましいかという議論もあるでしょう。あるいは第二船はつくらない方がよろしいという議論になるかもしれません。そこで、第二船というものはどうしたらよろしいか、そういうものから割り出していきますと、おのずから、「むつ」の第一船は実験船ではありますけれども、実験が済んだ後にどういうふうな利用法をしたらよろしいかといった点もおのずから出てくると思います。  そういうふうに出てまいりますれば、来年で期限の切れます事業団もこのまま存置すべきかどうかという問題も当然出てまいりますので、そういう点もあわせまして、この際達識の学識経験の豊かな人たちに御参集いただいて、ひとつ慎重審議をいただこうじゃないかという着想から生まれたのが、この原子力船懇談会でございます。
  94. 山原健二郎

    ○山原委員 第二船の問題、さらには世界的な動向、それから事業団の問題までこの懇談会の論議の対象ということになりますと、非常に重要な懇談会だと思うのです。  それで、この懇談会は、たとえば事業団の問題については、結論といいますか、答申といいますか、その辺はよくわかりませんけれども、いつごろ出すという計画ですか。
  95. 福永博

    ○福永政府委員 懇談会は、ただいま大臣から申し上げたようなことで発足することになりまして、ただいま第一回の会合の準備を進めているところでございます。  この懇談会を開きまして、委員先生方の御意見をちょうだいしなければ、私がいまここで予測的なことを申し上げるのはどうかと思いますけれども、事業団の問題と申しますのは、来年の三月いっぱいが現行法の期限でございますので、それに間に合うように、と申しますのは、なるべくここ数カ月ぐらいのところで結論を出していただくようにお願いしようと思っているところでございます。
  96. 山原健二郎

    ○山原委員 この懇談会のメンバーの選考の基準は、どういうふうにお考えになりましたか。
  97. 福永博

    ○福永政府委員 懇談会のメンバーにつきましては、先生御案内のことだと承知いたしますが、ただいま申し上げましたように、将来の原子力船開発のあり方、それに伴って第二船の開発の進め方、それに応じて原子力船開発事業団のあり方といったようなことで進めてまいりますので、造船、海運が特に関係が深いわけでございますので、そういった学識経験の豊かな方ということで、造船、海運、それから学識経験者というところを中心にして選定されておるものと考えます。
  98. 山原健二郎

    ○山原委員 私はここに大変な問題があると思うのです。この原子力船懇談会、これはいまおっしゃったように、第二船の問題とか事業団の問題——事業団にしたって、「むつ」の問題でこれだけのことが起こっているのです。しかも、この「むつ」問題の中心はやはり安全性の問題です。その問題について一体どうなるのかというのでこのメンバーを見てみますと、何のことはない、造船業界の代表が過半数を占めているわけです。学者の方といいますと、私のいただいた名簿によりますと、学者と呼ばれる方はお二人しかいらっしゃらないのですね。まさに「むつ」の問題から何を引き出すかという原子力船問題の懇談会が、「むつ」の経験、すなわち安全性の問題とか、こういうことから問題を引き出して、そして将来の展望を導くということよりも、いわゆる造船業界が過半数を占めるという、こういうあり方に私は大変問題を感じているわけです。そこの辺にやはり、政府が「むつ」問題から本当に反省と、何を学ぶかという点についての慎重な配慮が足らぬのではないか、こう思うのですよ。このままでいけば、まあ少々のことがあっても先へ突っ走った方がいいんだという、そういうメンバーの集まりじゃないですか。まさに業界の集まりじゃないですか。どうですか。
  99. 福永博

    ○福永政府委員 私がお答え申し上げましたように、造船、海運が構成員の比率から申しますと確かに多いわけでございます。しかしながら、先生御指摘の安全の問題と申しますか、あるいは学者の先生方と申しましょうか、そういった面につきましては、一つには、「むつ」放射線漏れの技術検討委員会、東大の安藤先生に座長をやっていただいておる技術検討委員会でございますが、この技術的な検討の結果も踏まえるという意味で、安藤先生に入っていただいておるわけでございます。それからもう一つ、さらに技術的な問題は、総理府で「むつ」放射線漏れ問題調査委員会というのをつくって、大山先生が座長になってやっていただいておるわけでございますが、そういった意味におきまして、大山先生も入っていただいているということで、先生御指摘のように、技術的見地をないがしろにしているということは全くございませんので、その両委員会の代表の両先生に入っていただいておるというふうに御理解いただきたいと思います。
  100. 山原健二郎

    ○山原委員 それ以上の説明はできないと思いますけれども、やはり偏っていますよ、どんなに考えましても。ずらっと過半数造船業界が並んでいる。しかも、原子力船の懇談会と言えば、安全性の問題その他はあることはもちろん存じておりますけれども、場合によっては原子力船の第二船問題まで検討していくという懇談会に、本当に安全性の確認なしに、ほぼ業界の方たちが過半数を占める、こういう懇談会を持つことが、今日の国民の気持ちに合致するものかどうかと言えば、私は、むしろ国民のほおを逆なでにするような結果を生んでおると思うのですよ。その点だけいま指摘をしておきたいと思います。  長官、どうでしょうか、その点、私はこのメンバーを見ましてちょっと驚いたのですが、妥当だと思いますか。
  101. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 お言葉を返すようで恐縮でございますが、いま福永次長から御説明ございましたように、「むつ」の放射線の漏れましたのはいかなる原因なりや、設計かあるいは現物の検査か、あるいはメーカーそのものにミスがあったか、こういう点をいろいろ究明しておる最中でございまして、その人たちが入るのでございますから、私は一番的確に反映すると思います。  もう一つ、お話しのように、いわば実験途上の故障でございまして、原子力船そのものが、いまの軽水炉に関する限り、夢々第三者、すなわち乗組員あるいは海洋汚染等ということはあり得ない、もしありとしても、去年のアメリカの原子力委員会の結論のように、ほとんどゼロに等しい確率であるという、そういう点から踏んまえまして、少なくとも第三者あるいは周辺の汚染に対しては安全であるという立場に立っておることは間違いないのでございますけれども、しかし、さらばといって故障はないにこしたことはございませんので、そういう故障に関しましては、原因を究明して、今後そういうことのないように、また、どういうところを修理したら一番よろしいか、どこで修理したらよろしいか、そういう点を含めて私は結論が出るもの、こういうふうに考えております。
  102. 山原健二郎

    ○山原委員 長官はこの委員会にもずっとおられた、しかも専門家でございますから、私は、森山長官が安全性についての過信の発言を次から次へやって、あのような状態が起こった轍を絶対踏まないようにしてもらいたいと思うのです。そのことを、この問題では最後に申し上げておきたいと思います。  次に、時間が余りありませんが、電源開発調整審議会の問題について伺いたいと思います。  三月十七日に電調審が、東電の福島第二原発の二号炉、それから四電の伊方二号炉の計画を決定したわけですが、この電調審の会は三月十八日にやることになっておったと思いますけれども、一日繰り上がって行われたのはどういう理由ですか。
  103. 藤井直樹

    ○藤井説明員 三月十七日に第六十六回の電源開発調整審議会を開催したわけでございますが、実は私ども、本年度第二回目の審議会になりますが、もう少し早くからこの開催をしようと思って努力していたわけでございますが、何分、地点も多く  て、それについての調整が調わないというままに……
  104. 山原健二郎

    ○山原委員 何が多くてですか。
  105. 藤井直樹

    ○藤井説明員 地点の調整ができないということで……
  106. 山原健二郎

    ○山原委員 何の調整ですか。
  107. 藤井直樹

    ○藤井説明員 やはりこの地点を計画に組み入れるに当たりましては、いろいろな面の検討が必要でございます。環境面もございますし、それから電力需給面の問題もございますし、そういうような点についての検討を各省とまず行わなくちゃなりません。そういうようなことで、この調整が整い次第ということでございますけれども、その地点が今回は全部で十三地点でございますが、その十三地点が全部そろうまでに非常に時間がかかるということでございまして、直前までやっておりまして、審議会としていつかということについては、いまおっしゃいましたように、十八日ということについて御指摘がございましたけれども、一切そういうようなことはございませんで、私どもとしてはまとまり次第やるということで準備を進めてまいったのでございます。  その結果、三月十七日に各委員の方々の御参加もいただけるということで、これを開くという運びになった次第でございます。
  108. 山原健二郎

    ○山原委員 十八日というのは計画としてはなかったわけですね。
  109. 藤井直樹

    ○藤井説明員 十八日に開くという計画はございませんでした。
  110. 山原健二郎

    ○山原委員 そうすると、この電調審という、しかも最終決定をする会ですし、重要決定がなされるわけですが、これは大体幾日ぐらい前に会議を招集するということは、公表しないのですか。公表というか、何日に開かれるということは一般的には公報に出すとか、そういうことはやられるのですか。
  111. 藤井直樹

    ○藤井説明員 公報に出すようなことはいたしません。ただ、委員の方々の御参加をいただくためには、事前に委員の方の御都合等は十分聞いておかなければなりませんので、その十七日の前後につきまして委員の方々の御都合は伺っておりました。ただ、それはまとまり次第ということでございまして、直前にまとまりましたので、それについては、十五、十六日に各委員の方々の御都合を伺いながら、最大多数の方が出られる日を選ぶということで十七日にいたしたわけでございます。
  112. 山原健二郎

    ○山原委員 かなり便宜的にやられているという感じですね。やっているうちにまとまりがつけばやる。しかし、この電調審に対しては、国民や関係者の立場からするならば、最終決定をされるまでには私たちの意見も聞いてほしいとか、あるいは署名を集めておるその署名も受け取ってほしいとかいうことが全く行われないで、要するに、話し合いを進めて大体まとまり、審議会委員の方が集まれる日にぽっとやるんだ、そんな会ですか。たしか内閣総理大臣が会長でしたね。
  113. 藤井直樹

    ○藤井説明員 会長は、内閣総理大臣でございます。
  114. 山原健二郎

    ○山原委員 内閣総理大臣が主宰する審議会が、いままで審議してきて、あしたやるんだとかあさってやるんだとか、そんなことなんですかね、電調審の会というのは。内閣総理大臣が主宰する会なら、何月何日にやりますと、あるいは話し合いがついた時点で一週間なら一週間おいて、その時点で何月何日、場所はここでやりますというぐらいの権威があっていいと思うのですよ。話し合いがついた、さああさって出られるかということでやるのですか。経企庁の態度というのはそういう態度ですか。余りにもずさんなと言うか、便宜的なやり方じゃないですか。
  115. 藤井直樹

    ○藤井説明員 この審議会を開催するまでには関係各省、現在のところでは通産省、建設省、それから農林省、環境庁、国土庁、その他各省と十分事前に打ち合わせを何回も行っておりまして、各省庁の立場から、この発電所が今回の計画に組み入れられていいのかどうかということについては十分検討してまいっておりますし、また一方で、現在の原電立地の問題から見まして、やはり地元の意向というものも十分承らなければならないということで、各県の知事の意見を事前にいただくというふうなことをいたしておりまして、地点の調整についてはかなり時間がかかっておるわけでございます。そして、この審議会の委員には関係、各省も入っておりまして、そういうことで十分事前の調整をしたところでこの審議会にかける。  そこで、この審議会は現在のところ十六人の委員でございますけれども、学識経験者八名、それから関係省から八名ということで十六人の委員で開催するわけですけれども、そういうようなことから言いまして、何月何日に開くということでやれば一番いいのでございますが、年度末も大分迫っておりますし、私どもとしては前から早く、まとまり次第やりたいと思っていた審議会でございますので、やむを得ず今回のようなことになった次第でございまして、それであるからといって、審議会の議事そのものについてないがしろにしていくということではない、このように考えております。
  116. 山原健二郎

    ○山原委員 その問題、これ以上申しませんけれども、やはりもうちょっと格式のある態度をとることが必要じゃないかと思うのですよ。しかも、その翌日の三月十八日は、やはり総理大臣の主宰する原子力行政懇談会が開かれることになっているわけですね。この原子力行政懇談会においては、やはり今後の行政についての基本的なことが話し合われるのでしょう。だから、そんなにばたばたとしなくても、あなたの方ではばたばたとしたとはもちろんお考えになっていないでしょうけれども、その辺のことも私は非常に疑惑を感じましたので、申し上げたわけです。  しかも、電調審のメンバーを見ましても、ここも学識経験者の中には開発銀行総裁、それから興業銀行頭取とか旭ダウだとか、どうもわからぬですね。学識経験者の中に東海大学の伊東教授がお一人、学者としてはこの方だけじゃなかろうかと思うのですけれども、こういう状態ですね。こういう審議会とかいうもののメンバー、しかも科学や技術に関する問題、国民の安全に関する問題などの審議会というのは、メンバーの選定に当たっての基準は相当綿密なことをやっておかないと、私は国民の疑惑を招くと思いますので、その点も指摘しておきたいと思います。  ところで、電調審が、現在安全性の問題がずいぶん問題になって、政府みずからも安全審査体制に欠陥があった、こういった状態の中で、しかも日本の安全審査に必要な体制というのは、アメリカ等に比べても相当の立ちおくれがあるわけです。そういう状態の中で決定をされるわけですが、そういう安全問題については、この電調審というのはどの程度の論議をされているのでしょうか。  それから、電調審の議事録は提出をしてもらえるものですか、伺いたいのです。
  117. 藤井直樹

    ○藤井説明員 最初に、電源開発調整審議会の委員のことでお話がございましたので、ちょっと御説明申し上げますと、実は今回の審議会から委員の方のメンバーの変更をやっておりまして、その観点は何かと申し上げますと、従来の学識経験者八名の内訳は、電力関係者三名、それから、経済、金融関係が四名、それから水産関係一名ということで八名でございましたが、問題の性格にかんがみまして、八名の中で経済、金融の方を一人減らす、それから電力関係も一人減らす、そしてその減りました二名につきましては、環境問題の専門家、それから水産関係の方、それぞれ一名を追加するということで委員の構成を変えております。その第一回の審議会が今回の審議会でございます。  それから、原子力の安全問題についてでございますが、この電調審の現在の原子力発電所に対する態度といたしましては、安全審査という非常に重要な問題これは原子力発電そのものにかかわる重要な問題でございますが、これにつきましては、この審議会で計画に組み入れますれば、その後に事業者からの認可申請が出る、そしてその認可申請に基づいて安全審査を始める、そしてその安全審査の結果、安全が確認されるということでございますれば、そこで初めて着工の運びとなる。そういうようなことで、原子力発電については手続的な問題としては、審議会の後に特別にそういう安全審査の手続を設けまして、特に原子力発電所の安全についての配慮をしている、こういう状況でございます。  それから、審議会の議事録につきましては、これは審議会の性格上非公開にいたしておりますので、議事録を提出するということはできませんので、御了承いただきたいと思います。
  118. 山原健二郎

    ○山原委員 過去に、電力会社の代表が電調審の中に三名も入って、しかも経済代表が四名も入っておった。これは少し改善をしているわけですけれども、それだって大して大きな改善ではないと思う。一応反省されて前進は認めますけれども、電力会社が入って電力の立地計画を決定するなんて、いきなり通ることはわかっているわけですよ。そういう審議会が何だか隠れみのになるということは、今後は好ましいことではないと私は思います。  たとえば、今度決めましたところの伊方の二号炉にしたって、あそこは問題がいっぱいあるわけです。いま二号炉に対して、関係住民の中で賛成している人は少ないのですよ。それから土地の問題が解決していませんね。埋め立ての問題は裁判で係争中ですし、それから幾つかの裁判が行われております。その内容はもちろん申し上げませんけれども、たとえば里道裁判だって、いま私が聞きますと三つの裁判が行われておる。土地の問題だってまだ解決していないし、境界線だってまだ四国電力は明らかにしていない。そんな問題もありまして、住民の方たちは署名を持ってこられて、各政党の方へ要請もされておるそうです。約二千名の署名も集めてこられているわけです。そして時間があればもっと集まるというような状態ですね。二号炉についてはもう特に皆反対ですが、こういうことも一つ一つ無視されていくわけなんです。  そのことはきょう申し上げることはおきますけれども、電調審は、たとえば伊方原発における使用済み燃料はどうやって運んでいくのか、これなんかは検討されておりますか。
  119. 藤井直樹

    ○藤井説明員 先ほど申し上げましたように、原子力発電所のそういう安全問題は、その後におきます原子炉等規制法、電気事業法に基づきます安全審査の方で十分その内容を審査していただいて、それがはっきりしたところで具体的に工事にかかるというような、そういう手続で考えておりますので、この審議会で、御指摘のような問題について検討はいたしておりません。
  120. 山原健二郎

    ○山原委員 第一号炉はもうすでに建設中、六割できておるという現状ですが、伊方原発の場合、前は瀬戸内海です。この瀬戸内海における原子力発電所、その使用済み燃料はどうやって処理するのですか。これは科学技術庁考えになっていますか。どこへお聞きしたらいいのかわかりませんが、お聞かせください。
  121. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 現在建設を進めております動燃事業団の東海における再処理施設に、海上輸送をもって運ぶこととされております。
  122. 山原健二郎

    ○山原委員 それはどこで決定していますか。
  123. 半澤治雄

    ○半澤政府委員 設置許可の申請書に対する安全審査の過程で確認しておるわけでございます。
  124. 山原健二郎

    ○山原委員 瀬戸内海では、この間水島のあれだけの問題が起こっているわけですね。それも初めて私は聞くわけで、不勉強であったかもしれませんが、瀬戸内海を通るということ、これも大変なことだと思います。  もう一つ伺いたいことは、福田経企庁長官、三木総理あるいは科学技術庁長官も言っておりますように、原子力について六十年、六千万キロワットを見直す、こう言っておるこの段階で、電調審は、そういう総理を初めとする発言を今度の電調審の審議でどういうふうに反映しておりますか。
  125. 藤井直樹

    ○藤井説明員 最近の原子力に対するいろいろな不安といいますか、これについて、国民の皆様の信頼を得るために原子力行政のあり方を考えていくというようなこと、それから、それに関連して今後の原子力発電の規模について、従来の計画でございます六千万キロワットについて、これを検討していくというようなことは、もちろん私どもとしては十分承知しておるのでございますが、最近の電力需給の見込みその他からまいりまして、実際に需要面で現在多少落ちてきておりまして、それが反映して、従来の計画が二年ぐらい延びていくのではないかという感じを持っております。  ただ、各地域につきまして電力需給の見通しを立ててみますと、現在まで、開発地点の工事の方がかなりおくれておりますことや、それから、御承知のような電源立地に伴いますいろいろな問題によりまして立地がむずかしくなってきたということも考えますと、伊方は五十五年度に供給に参加する、福島の場合は五十七年度に参加するということになるわけでございますが、そういう時点におきます需給から見ますと、やはり現在においてこの地点の組み入れを行わなければならないのではないか。特に、原子力発電につきましては安全審査に非常に時間をかけなければならないということから考えますと、電調審を通ってから実際に運転を開始するまでの時間というのは相当長くなる。そういう長期のことを考えますと、いまのうちからそれについて手を打っておかなければならないということで、全体の原子力発電の見通しももちろん頭に置いてやっているわけでございますけれども、四十九年度において二地点の計画組み入れを行う必要がある、そういうふうに判断をいたしまして、今回の審議会で計画を決定していただくということになったわけでございます。
  126. 山原健二郎

    ○山原委員 最後ですが、いま言いましたように、総理も長官も、いわゆる六千万キロワットというものについて見直しをしなければならない時期だと言っているわけですね。そういう点についての審議会における論議などは国民に対して当然聞かすべきですよ。どういう見解を持っているのか、発表すべきだと思う。  それから、いまおっしゃったけれども、各地における電力の需要供給の関係ですね。四国電力の伊方なんか、私、聞きたいのですが、四国電力がつくり出しておる電力は一体どこへ使われておると思っていますか。そんなことも計算しないで、ただ需給の関係で必要だ、それだけの論法でいくならば、どこへだってつくらにゃいかぬということになるわけですね。また住民の動向もあるわけですしね。そういった需給関係ももちろんですけれども、それももっと精密に検討してもらいたいと私は思うのですよ。  もう時間がありませんからこれでおきますけれども、もう少し慎重な態度ですね。しかも、いま言ったように六十年、六千万キロワットということさえ見直しをされようとする時期ですから、そういう点でさらに慎重な態度を要請しまして、本日の私の質問は終わります。ありがとうございました。
  127. 石野久男

    ○石野委員長代理 次に、近江巳記夫君。
  128. 近江巳記夫

    ○近江委員 原子力問題につきましては、「むつ」の事故が象徴的な事件として非常に大きな問題になったわけでございますが、根本的に、わが国の原子力行政をどのようにやっていくかということが問われておるわけであります。  そういう中で、かなめとなる原子力委員の間で次々と辞退が続いておる。稲葉委員が辞意表明をされておるということを聞いておるわけですが、事実であるのかどうか、またそのいきさつ、あるいは原子力委員会としてはどういう受けとめ方をなさっておられるのか、こういう問題についてお聞きしたいと思います。
  129. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 稲葉委員は、私が就任して間もなく、あれは一月くらい前でございましたか、私のところへ参りまして辞意を漏らしておりました。しかし、いますぐ何もやめぬでもいいじゃないですか、いろいろ問題も山積している折から、もう少しがまんしてひとり助けてもらいたいということで、私の長い間の友人でございますのでよく頼みまして、それではそういうことにしましょうということで、そのままになっております。  しかるところ、先般何新聞でございますか、大きく出まして、私もびっくりしたのでありますが、よく聞いてみますと、その前日かに原子力産業会議がありまして、そのパネルか何かの会合で発言したのがああいうふうに伝わったというふうに聞いております。現在は、別にいますぐやめにゃならぬというふうには私、聞いておりません。
  130. 近江巳記夫

    ○近江委員 正式に辞表なり何なりは受け取っておられないわけですね。確認しておきます。
  131. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 私のところまでは来ておりません。
  132. 近江巳記夫

    ○近江委員 火のないところに煙は立たないわけでありますし、田島委員に続きまして、二人目のそうした問題がまた浮かび上がってきておるわけです。原子力委員会も、今後どうしていくかという大きな問題をいま抱えておられるように思うわけです。その点、そうした稲葉さんの気持ちというものも非常に複雑なものがあるんじゃないか、このように思うわけですね。  仲間として、井上さんはどういうようにその間のいきさつについてはお聞きですか。
  133. 井上五郎

    ○井上説明員 私、昨年田島委員から辞任の申し出がありまして、そのときに田島委員に慰留をいたしましたが、同時に稲葉君も、私と一緒に辞任を思いとどまるようにということで、説得という言葉がいいかどうか知りませんが、慰留をいたしました。残念ながらそれができませんでした。その責任を負って自分もやめたいということを、当時私は稲葉委員から聞いたのでありますが、しかし、田島委員には田島委員のお考えがあったであろうけれども、やはりこうした重要な時期であるからぜひ御留任願いたいと申し上げました。稲葉委員は、稲葉私案を当国会においても御披露申し上げましたし、事実、いろいろ御尽力を願っておりますが、御承知のように、あの方は他にもいろいろ業務がありまして、適当な時期に辞任をしたいという御意思はあったように聞いております。  しかし、今回直ちに辞表を提出されたということは、田島委員のときのようには私は聞いておりませんし、先般原子力産業会議においてパネリストの一人としてあの方が意見を述べられたのでありますが、あの方の御意見は、原子力の安全体制についてはもっと強力なものでなければならない、そういうふうな委員会のあり方が決まったときには、自分のような文学士は必要なくなるんではないかといったような御発言があったように、私は出席をいたしておりまして聞いたのでありますが、必ずしも新聞紙が伝えるごとき御発言であったようには聞いておりませんし、ただいま長官からお話がありましたようなわけで、私もいま直ちにおやめになるというふうには了解いたしておりません。
  134. 近江巳記夫

    ○近江委員 田島さんの辞任を思いとどまらすことはできなかった、そうした責任もお感じになっておる。もちろん「むつ」の件についてもお感じになっていると思うのです。  私は、もっと大きな問題として、今日の原子力委員会というものが、いわゆる規制か開発かという大きなジレンマに立っておると思うのです。そういう点におきまして、今後の原子力委員会のそういうあり方というものにつきまして、アメリカ等では二つの方向という線で行っておりますし、この点については、井上さんはどのようにお考えでございますか。
  135. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 実は、そういう問題が安全問題等にからんで非常にむずかしい問題になっておりますので、原子力委員会が自分のことを自分でこう改善したいということは尊重すべきでございますが、しかし、第三者が公正にこういう問題を判断していくのが至当じゃなかろうかというので、内閣に原子力行政懇談会を設けたことは近江さんの御承知のとおりでございます。したがって、その結論によるべきだと思います。  ただ、ただいま申されましたアメリカ等と同じでよろしいかという点になりますと、少し疑問な点がございます。それはどういう点かと申しますと、なるほど開発と規制の問題を同じ局がやるという問題に対しては、これは大変疑問でございます。しかし、わが原子力委員会は原子力基本法そのものを忠実に遵奉しつつ、開発あるいは安全を守っていくというのがたてまえになっておりまして、そういう意味からいたしますと、アメリカの原子力委員会のように軍事利用まで兼ねた、平和利用も軍事利用も両方扱っていくという機能がないわけでありまして、もっぱら平和利用に限って進めていくわけでございますから、いかなる場合でもわが国では軍事利用は許さぬという精神を体得し、あるいはそれを見守り、実施に移していくのが原子力委員会の一つの大きい任務でございますから、その点は、今後の改組等ある場合でも決して忘れてはいけない、日本のどこかしらでそういう問題を厳格に認識しているところが必要だというふうに実は考えますので、そういう点もあわせて、恐らく今度の行政懇談会では、今後のあり方等も考えてくれるというふうに観測しております。
  136. 近江巳記夫

    ○近江委員 こういう問題点をお聞きしますと、その行政懇談会の結論待ち、これが隠れみのになっておるということは何回も申し上げておるわけですが、この行政懇談会自身も真剣にいまそれだけの動きをやっておられるのか。やはりこれだけ多くの問題を抱えておるわけですから、長官初め関係者が全部いわゆる懇談会待ち、これでは全然進みませんですよ。何もあなた方から中身が出てこない、何か少し問題を提起しましても懇談会待ち、これではどうなるんですか。
  137. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 私が就任いたしました以後におきましても、たとえば核防条約に対しては原子力委員会はこういう見解でございます、こういう希望でございます、あるいは原子力船の将来に対してはこういう機関で半年くらいの間に日本の態度を決めますというふうに、大きい問題は大きい問題として処理していることは事実でございまして、ただ、その機構あるいは職能、そういうものをどうするかという問題は、もちろん原子力委員会でも井上さんは井上さんで独自の考えで井上私案を持っておられますけれども、しかし、さっき申しましたように、近江さんの御指摘はそういう問題に限っての御質問でございますから、それに関しましては、先ほどお答えしたような状況でただいま進めております。ただ、その進み方の一つの点といたしましては、アメリカと同様には考えられない問題もありますよという点を話しただけでございます。
  138. 近江巳記夫

    ○近江委員 ちょっと具体的な問題をお聞きしたいと思うのですが、いわゆる原発でのそうした廃棄物の問題、またアイソトープ等の利用も全国的に非常にふえてきております。そういう点のいわゆる処理の問題が浮かび上がってくると思うのです。これはいつも申し上げておるわけです。  まず、原発の廃棄物ですね、これはいま、ドラムかんで何本たまっておるか。それからアイソトープ等の放射性廃棄物の集積容器、ドラムかんでどのくらいたまっておるのか。いま現在でどのくらいありますか。
  139. 福永博

    ○福永政府委員 先生御質問の第一点の、原子力発電所においては処理済みの廃棄物がドラムかんで幾らあるかということでございますが、非常に概略の数字でございますけれども、二百リットルのドラムかんに換算いたしまして大体二万本程度でございます。  それからアイソトープは、アイソトープを使用しております各事業所と申しましょうか、これに日本アイソトープ協会と申しますのがドラムかんを貸与いたしまして、使用済みの廃棄物はそのドラムかんに入れて保管しておるわけでございます。その保管しているのを定期的にこのアイソトープ協会が集荷いたしまして処理場に運び処理するわけでございますけれども、いま貸与されているアイソトープドラムかんの数、これが概数でございますけれども、大体五千本程度でございます。
  140. 近江巳記夫

    ○近江委員 数字が全然違いますね。私の調査では原研に約二万本、原子力施設に二万本、それから低レベル加工工場で五千本、計四万五千本。どうなんですか、その辺、数字をはっきり言いなさい。
  141. 福永博

    ○福永政府委員 私がお答えいたしました発電所で二万本と申しますのは、原子力発電所の分でございます。  それから、ただいま先生のお言葉にございましたのは、先ほど私がちょっと触れましたアイソトープ協会の集荷いたしましたものを、実は原研の処理場で処理いたしております。それから、原研の所内で発生いたしますものも原研の処理場で処理いたしております。そういうものを原研の構内の一カ所に保管廃棄しておるわけでございますけれども、その数は別途二万本ございます。  それから、核燃料加工工場にもそれぞれに保管廃棄いたしておりますのが約五千本、これは先生のお話のとおりでございます。
  142. 近江巳記夫

    ○近江委員 現在、四万五千本ドラムかんであるわけですね。そうしますと、いまから推計いたしますと、昭和六十年には何万本になるのですか。
  143. 福永博

    ○福永政府委員 六十年度に累計どれくらいかといいますのは、発電の規模によって大きく左右されるわけでございますけれども、六十年、六千万キロというのを想定いたしますと、六十年度で約三十一万本、その間の累積量としましては百三十二万本程度という推定をいたしております。
  144. 近江巳記夫

    ○近江委員 それは、いわゆるアイソトープの関係であるとか、全部ひっくるめて百三十二万本ですか。
  145. 福永博

    ○福永政府委員 私が百三十二万本と申しましたのは、原子力発電所から発生する廃棄物の量でございます。アイソトープ関係につきましては、ちょっとただいま手元に資料がございませんので、御了承願います。
  146. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま四万五千本という点からいきますと、このアイソトープ関係も入れますと、約二百万本ぐらいになるのと違いますか。
  147. 福永博

    ○福永政府委員 大変申しわけございませんけれども、いま手元に資料がございませんで、アイソトープ関係がはっきりいたしませんので、ちょっと明確なお答えができなくて恐縮でございます。
  148. 近江巳記夫

    ○近江委員 大体そういう推計ができていないこと自体、廃棄物処理についての皆さん方のずさんさが出ているわけですよ。そのくらいのことは当然計画をお立てになるべきですし、また、これだけの本数を置くところもないわけですよね。いろいろと検討なさっておると思うのですが、委員会でも私が何回も申し上げたわけです。  いままで、房総沖にドラムかんを海中投棄をやっていますね。何回、何本ほうったのですか。
  149. 福永博

    ○福永政府委員 館山沖に海洋投棄いたしましたのは、昭和三十年から四十四年にかけまして十五回でございます。ドラムカンの数といたしましては約千六百本見当でございます。
  150. 近江巳記夫

    ○近江委員 それで、皆さん方はまた昭和五十二年から海中投棄をするということを計画なさっておられるようですが、これは本当にそういうようなことをして影響ないのですか。いまや、国際的にも海洋法の問題が討議されております。もちろん領海の問題であるとか経済水域の問題であるとか、いろいろな問題があるわけですが、この海の汚染ということが問題になってまいりますと、当然これはわが国だけではなく、国際的にも大きな問題になってくるわけです。それで、この廃棄物の処理ということを、昭和五十二年からまた海洋投棄する、そういう安易な取っ組みでいいのですか。これは問題ですよ。
  151. 福永博

    ○福永政府委員 廃棄物の処理の問題につきましては、原子力委員会に環境・安全専門部会という専門部会を開催いたしまして、専門の先生方に慎重に御検討願っているわけでございます。その御答申を昨年秋ちょうだいいたしまして、その中で、海洋投棄、固体廃棄物の処理の方法ということも御検討願っているわけでございますが、その答申によりますと、五十二年を目途に海洋投棄に移るよう各種の試験研究を進めるべきであるということで御答申をいただいておりまして、私どもといたしましては、原研、動燃あるいは関係省庁、水産庁、気象庁等でございますが、そういった関係省庁とも協力いたしまして、海洋投棄の方法、固化体の安全評価の問題、あるいは深海のモニタリングの方法はどうしたらいいか、こういうことをただいま鋭意研究を進めているわけでございます。
  152. 近江巳記夫

    ○近江委員 五十二年から投棄をしたいということで研究を進めておる。いままだ、いわゆるどれだけ弊害が出るかわからないということで研究を進めているわけですよ。にもかかわらず、施行規則においては、いわゆる海中投棄をしてもよろしいとうたっているわけですね。こういう矛盾ということを感じませんか。
  153. 福永博

    ○福永政府委員 先生御指摘のように、原子炉等規制法あるいは放射線障害防止法、いずれも同じ内容でございますけれども、海洋投棄の条項がございます。そこで各種の条件を提示しておるわけではございますけれども、私どもとしましては、ただいま申し上げましたような研究の推移等も見守りつつ海洋投棄に移っていきたいということで、実行面においてはそれは実施されていない、こういうことでございます。
  154. 近江巳記夫

    ○近江委員 五十二年に海中投棄する、その目標に向かっていまやっておるということでありますが、これだけ海の汚染、特に今後領海幅の拡大、経済水域の問題等何回も申し上げておりますが、国際的にもそういう方向になってくると、特に沿岸の汚染ということにつきましては、これは非常に重要な問題になってくるわけです。そういうような状況がだんだん強くなってきておるにもかかわらず、五十二年に投棄するんだという方向で進めていくということについては、長官はどのようにお思いですか。
  155. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 いま申しましたように、そういう専門部会の御答申のようでありまして、それを実現するようにただいま準備中でございますが、近江さんのお話のように、この問題は大変むずかしい問題で、しかもわが国のみの問題ではなくて、いわば原子力をつかさどっておる万国共通の問題でございます。  ただ、国によっては、アメリカのように岩塩の地帯に埋めるとかいうふうに、土地の広いところではそれぞれの特殊な対策もあるようですが、それ以外のところではほとんど同じ条件でございまして、こういうものは一体どこでどうするのか。やはり御指摘のように、その国々で思い思いに考えることも必要でしょうけれども、しかし、やはり万国的に、せっかく国連機関等があるわけですから、そういうところでいろいろ各国の資料を持ち寄って、要すれば海洋学者等も加えて、こういう問題をどうするかということを、もう少し新しい世界秩序として、いわば新しい原子力社会の便所みたいなものですから、便所を考えないでただ開発するだけじゃ問題になりませんので、そういう意味で、もっと広い視野で考えるべきじゃないかと私は考えます。  ただ、そういう機運がどういうふうになっているか、実はよく知りませんけれども、むしろ井上原子力委員等から、それに対する広い見解をお聞き取りいただきたいと思います。
  156. 福永博

    ○福永政府委員 国際的に、海洋投棄の問題がどういうふうに取り扱われようとしているかという点につきまして、少し補足させていただきます。  海洋投棄の問題は、原子力の廃棄物だけではなくて、海洋投棄の規制に関する条約という、俗称ロンドン条約と言っておりますが、この条約がただいま検討されております。そのうちの原子力に関する廃棄物に関しましては、海洋投棄を禁止すべきものはどういうレベルのものであるかとか、あるいは投棄に当たっての国際的な規格と申しましょうか、基準と申しましょうか、そういったものはどうあるべきかということをIAEAにロンドン条約は付託しておりまして、IAEAでその内容を検討しまして、その検討はほぼ終わりまして、ロンドン条約の方に戻しております。いま世界的には、このロンドン条約に基づいて、海洋投棄を進めるに当たって、その規定、基準、こういったものについて国際的勧告をどういうふうに最終的にまとめるかというところで、そういった方向で作業中と承知いたしております。
  157. 近江巳記夫

    ○近江委員 いずれにしても、開発ばかり進めて、いわゆる処理という問題について余りにも漠然としておると思うのですよ。安易に海を捨て場と考えている。まだ皆さん方の発想は変わっておらぬわけですよ。非常にそれはよくないと思いますね。ですから、いわゆるこうした発電システム全体の中でこれはもう大変な問題なんですよ。この取っ組みという問題について、いまのようなそういう政府の姿勢ではだめだと思いますよ。具体的に長官、何かお考えですか。
  158. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 いまお話がございましたように、やはりこれは国際的な問題でございますから、国際的に世界の英知を集めて、そうして結論が出たものでありますれば、これ以外にあり得ようはずがございませんので、そういうお決めに従いまして、わが国ではわが国で特殊事情がございますから、さらに厳密にするのであればもっと厳密にするとかいうような方途を講じまして、方針を立てて、それに従って問題を処理していくという以外にしようがないと思います。
  159. 近江巳記夫

    ○近江委員 それはしようがないと思いますと言ったって、言葉のあやを別に言うわけじゃないですけれども、いずれにしても、もっとひとつ真剣に取っ組まなければいけませんよ、これは。言わなければ五十二年からほうりますよ、このまま予定どおり。そういう安易なあれにつきましては、本委員会におきましてこのように申し上げておるわけですから、そういう安易な処理の仕方は絶対にしてもらったらいかぬということを強く申し上げておきます。  それから、この海洋投棄とか、いろいろ今日、社会的な問題がたくさんあるわけでございますが、いま原子力の問題を私たちは特に集中してやってきたわけですけれども、いわゆる産業廃棄物という問題ですね。これ自体も、見てまいりますと、科学技術庁も全然放置なさっているとは私は言わぬわけです。特調費でそれぞれの研究には金も出しておられるし、資源調査所におきましては、廃棄物の処理体系に関する報告、これは昭和四十四年の十一月二十八日、かなりりっぱな中身であります。このレポートに基づいて関係省庁は実行しなければいかぬわけです。法律もできているわけですよ。  ところが、調べてみますと、恐るべき状態になっているわけですね。政府がいろいろ、科学技術庁等が中心になって、環境庁もやっているわけですが、実際上、現場等を見てまいりますと、全然実態が違うわけです。新技術開発事業団等においてもいろいろな研究もなさっておりますが、これでは海が汚染する一方ですよ。また、埋め立てだって全く野放しに等しいような状態が行われておるわけです。こういうことは放置できないですよ、実際。  そこで、この廃棄物の問題、特に有害産業廃棄物ですね、この実態はまことに寒心にたえない状況だと思うわけで、まず厚生省にお伺いしますが、有害産業廃棄物は年間どのくらい発生しているか、把握なさっていますか。
  160. 吉崎正義

    ○吉崎説明員 産業廃棄物全体につきましては、一日当たり約二百トンという推計をいたしておりますけれども、残念ながらただいまのところ、その中で有害物質を含有するものはどれくらいあるかということにつきましては、把握をいたしておりません。
  161. 近江巳記夫

    ○近江委員 把握しておらないということ自体、結局、これはもう話にならぬですよ。あなたはいま二百トンなんておっしゃっているけれども、このデータでいきますと、昭和四十六年度末推計排出量が、一日に百九十五万五千トンになっておるのですね、これは全部ひっくるめてですけれども。そうしますと、これは三百六十日を掛けますと七億三百八十万トンとなるわけでしょう。その中で有害産業廃棄物というのはどれだけあるのですか。大体のパーセントなり何なりわかるでしょう。どうなんです。
  162. 吉崎正義

    ○吉崎説明員 ただいま、ちょっと間違えました。二百トンじゃございませんで、一日当たり約二百万トンでございます。  有害物質を含有するものにつきましては、先ほど申し上げましたけれども、いまのところ実は正確なデータがないわけでございます。幾つかの理由がございますけれども、たとえば、産業廃棄物の排出動向が経済の事情によって変わってくる。それからまた、各都道府県が現在各種の調査をやっておりますけれども調査方法でございますとか、推計の方法でございますとかがそれぞれ違っておりまして、なかなか一律に調査ができないわけでございます。  そこで、私どもといたしましては、ただいまの有害物質を含む産業廃棄物の処理は重大な問題でございますので、有害物質を含む産業廃棄物の発生過程に関する調査、研究を行っております。これは製品の生産に伴いましてどういう廃棄物が出てくるか、こういうことであります。それから一つ、ただいま産業廃棄物は十九種類定められておりますけれども、この分類ではなかなか調査しにくい面もございますので、こういう分類の方法を、もっと細かい分類の仕方、それから全国的な規模で実態調査をやる手法の開発、こういうものに関する調査、研究をやっておるところでございます。  個々の例といたしましては、たとえば、大阪府は非常によく産廃行政をやっておるわけでございますけれども、有害物質を含有する産業廃棄物を排出するおそれのある事業所、約六百ございますが、この全部に立ち入り検査をいたしました。その結果十事業所から基準以上のものが検出された、こういうことでございます。これを直ちに全国に延ばすわけにもまいりませんので、現在そういう調査、研究をいたしておりまして、その結果に基づきまして、正確なる調査をいたしたいと考えておる次第でございます。
  163. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうは警察庁も来ていただいておるわけですが、警察庁のデータでいきますと、昭和四十八年中に廃棄物処理法を適用して検挙した事犯が千五十六件、廃棄された廃棄物を見ますと、総量二十七万二千九百四十五トン、この中で、いわゆる有害物質を含有するおそれのあるものが三二・六%に達しておる。ということは、これに三二・六%を掛けますと八万八千九百八十トン、こういう数値が出てくるわけですね。  昭和四十八年二月十七日、環境庁の告示で、産業廃棄物に含まれる有害物質の検定方法を示しておられるわけですが、有害産業廃棄物の発生量すらわからないというような状況では、法律をつくったってこれは何にもならぬと思うのです。また、産業廃棄物処理施設は各県で届け出を受けており、また、産業廃棄物処理業者は各県の許可を受けることになっておるわけですが、それぞれの処理能力、キャパシティーすら数字としてわからない。そういう統計すらつくっておられないということにつきましては、政府はこの種の問題に対して、真剣に取り組んでいないのじゃないかということがはっきり言えると思うのです。  そこで、いろいろなそうしたデータなり、そうした点から推定をしますと、全国で少なくとも年間百八十万トンの有害産業廃棄物が出ておるのじゃないかと推定するわけですけれども、先ほどの七億トンというような数からいきますと、非常に微々たる数のように思うわけです。しかし、これが処理技術の未熟さ等で、不法投棄を初め、また正規に投棄されたとしても、その影響というものは大変な問題だと私は思うのです。科学技術庁としてこれだけの報告書もお出しになっておられるのですけれども、実情というものはこういう実情なんですよ。これに対して長官、どう思われますか。
  164. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 いまの報告は、資源調査会の報告でございますか。
  165. 近江巳記夫

    ○近江委員 資源調査会です。
  166. 安尾俊

    ○安尾政府委員 お答え申し上げます。  先生御承知のように、資源調査会から長官あてに出されました勧告、報告等につきましては、長官名をもちまして関係各省庁大臣あて、各省庁におきます施策に十分反映するよう要請をいたしております。と同時に、担当の部課の事務レベルの連絡会議を開催いたしまして、内容説明するとともに、その趣旨の徹底を図っておる次第でございます。  なお、資源調査会から出されました勧告等につきまして、各省庁がそれをどういうふうに行政施策に反映しているかということにつきまして、資源調査会といたしましてもこれを調べておりまして、ただいま先生御指摘の廃棄物の処理体系に関する調査に関しましては、厚生省におきまして、廃棄物の処理及び清掃に関する法律、これは昭和四十六年九月に施行されております。また同じく、廃棄物処理施設整備緊急措置法も昭和四十七年六月に制定されております。  そのほか、各省庁で事業を実施いたしておりまして、農林省におきましては、園芸用の廃プラスチック処理施設設置事業^それから広域きゅう肥利用促進事業、それから家畜汚水処理施設整備実験事業等を行っております。また通産省におきましては、重要技術研究開発補助金制度として、民間におきます廃棄物処理の研究開発を助成するため、四十六年度には公害対策技術枠というものを持っておりますし、四十七年度にはクローズドプロセス技術枠というものを新たに設けております。さらに四十八年度には、公害防止技術企業化開発枠というものを新たに設けております。  それから調査、研究、観測等につきましては、科学技術庁におきましても、昭和四十六年でございますが、廃棄物の回収利用・処理の最適システムの設計に関する調査等々、七件の調査を実施いたしております。農林省におきましては、農林漁業におきます環境保全的技術に関する総合研究のほか、二つの調査、研究を行っております。通産省におきましても、プラスチック廃棄物の処理技術に関する研究等、数件の研究、調査を実施いたしておる次第でございます。
  167. 近江巳記夫

    ○近江委員 そういういろいろ研究をなさっているとおっしゃっていますけれども、現場にはそれが徹底していないわけですよ。結局は、処理技術がまだ確立されていないとか、そういうようなことで不法投棄もどんどんやっている。不法投棄の問題にしても、昨年の水島地区の内陸埋め立て処分については検挙されており、横浜地区の海上埋め立て処分を初め、海上保安庁、警察庁の手入れがあった、こういうことを厚生省は知っていますか。
  168. 吉崎正義

    ○吉崎説明員 倉敷市の産業廃棄物処理業者の件につきましては、承知をいたしております。
  169. 近江巳記夫

    ○近江委員 こういうことが数多くあるわけですよ。先ほど私は警察庁のデータを読んだでしょう。四十八年度だけでも千五十六件あるわけですよ。二十七万二千九百四十五トン、そういうような不法投棄もされているわけです。なぜかと言うと、技術ができてない、どんどん量が来る、仕方がないからほうるんです。現状に追いついてないですよ。そういうような肝心の、一番大事な技術革新なり何なり、そういう問題にこそ科学技術庁は力を入れるべきですよ。  有害物質の百八十万トンのうち、埋め立て処分するものと海洋投棄するものと分かれますけれども、海洋投棄しておる量は推定何万トンぐらいですか、厚生省。
  170. 吉崎正義

    ○吉崎説明員 大変申しわけございませんけれども、私どもの方では、ただいまのところ把握をいたしておりません。
  171. 近江巳記夫

    ○近江委員 だから、いわゆる基本的な数字をつかんでないわけですよね。私たちは推定五万トンと見ておるわけですが、そうしますと、百七十五万トンは埋め立て処分ということになっておるわけですけれども、その中には、いわゆる企業が保管処分として保管しておる量が相当あるわけです。その数量、把握しておられますか。
  172. 吉崎正義

    ○吉崎説明員 先ほども申し上げましたように、そういう全国的な数字は、ただいまのところ把握をいたしておりません。
  173. 近江巳記夫

    ○近江委員 結局これが実態なんです。私は、いま水島の例とか、そういうようなことを申し上げたわけですけれども、これらは刑事事件となったものの一部でありますけれども、いわゆる根本的には、有害廃棄物を無害にして処分してないところに非常に大きな問題があるわけです。環境庁の告示で有害物質の決定方法は指示していても、また処分許可を与えても、しかし、処分数量や種類についての最終的な確認がなされておりませんので、実際にはむちゃな処分が行われる結果になるわけです。結局、警察に見つかれば運が悪いというようなこととなっておるわけですね。実際は大変、私たちの想像する以上にひどい実態になっておるわけです。こういうような処分をされておらない物がどんどんほうられていく。結局、先ほども申し上げましたように、これは技術が確立されてないわけです。また、そうした施設等につきましても、いわゆる充実していくだけの体制がないわけですよね。  こういうことにつきまして、この海洋投棄の処分を見てみますと、特にA、B、C海域のうちA海域につきましては、全数量、全種類についての海上保安庁のチェックが行われて、可能な限り無害化の規制を受けまして最終的な処理をされていると思われるわけですが、海上投棄そのものの賛否は後で触れたいと思いますが、それはともかくとしまして、ルーズな処分は許されないという点では、これはもう申し上げるまでもないわけでございますが、先ほどお聞きしましたように、海洋投棄処分をされておる数量すらも厚生省はつかんでおられない。きょうは海上保安庁も来ていただいておるわけですが、どの程度と見ておられますか。
  174. 広瀬好宏

    ○広瀬説明員 産業廃棄物並びに一般廃棄物でございますけれども、こういうものを船によりまして海上に投棄することにつきましては、海洋汚染防止法に基づきまして、投棄船舶自体について登録制度をとっております。そして各年間どれくらいの廃棄物を排出したかという点につきまして、私ども海上保安庁の方に届け出ることになっておるわけです。  昭和四十八年の一月から十二月まででございますが、一般廃棄物につきましては五百三十八万トンでございます。そして産業廃棄物につきましては二千八百八十六万トンが海洋に投棄されております。またそのほか、水底土砂をしゅんせついたしまして、その土砂を一部別の海域に移すような場合がございますが、それが約八千二百七十万トンという数になっております。
  175. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま数字の発表があったわけですが、いわゆるそれだけの無害にしての処分であれば、規定どおりやっておられるなら一応は納得できる面もありますけれども、いわゆる警察庁なり海上保安庁なりがそうやって検挙した数だけでも四十八年度においてはこれだけの数値に上っておる。ほとんど処分されずに不法投棄がどんどん行われておるわけです。こういうような状況につきまして、環境庁等はどういうように見ておられるのですか。
  176. 松田豊三郎

    ○松田説明員 廃棄物の行政の分担につきましては、先生御指摘のように、厚生省が主管ではございますけれども、私どもの環境庁といたしましては、処分基準を担当しておるわけでございます。業界の指導等につきましては、通産省等の関係各省の御協力も必要になるわけでございますけれども、そういうことで、確かに関係各省にまたがってございます。  そこで、環境庁といたしましても、ただ単に基準を設定するということだけではなくて、そういう物が実態に即して環境を汚染しないようにしなければならないというようなことば常に考えておりますけれども、先ほど厚生省から御答弁がありましたように、現在、そういうふうな状況につきましては調査を進めておるところでございますし、なお、厚生省等におきまして廃棄物行政、特に産業廃棄物等につきまして新しい対策といいますか、総合的な対策を検討中というふうにも聞いておりますので、そういうふうな行政の対応策と関連いたしまして、環境庁といたしましても、実際の廃棄物の処分におきまして、環境を汚染することのないように努めてまいりたい、そういうふうな立場で常日ごろ関係省とも連絡いたしまして、基準の設定等につきましては十分配慮するつもりでございます。  なお、そういうふうな廃棄物行政全般につきましての改善といいますか、そういうことにつきましても、関係省となお連絡をとりまして努力してまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  177. 近江巳記夫

    ○近江委員 冒頭に触れた問題に戻るわけですが、政府は厚生省、環境庁あるいは科学技術庁、警察庁、海上保安庁などの関係省庁で、言うならば一つのプロジェクトチームみたいなものをつくって、いわゆるまず企業が排出する産業廃棄物の種類と数量と処分方法、あるいは処分数量等の実態を点検し把握することが、この問題の解決、また公害の絶滅につながっていくんじゃないか、このように思うわけです。要するに雲をつかむような話なんですね。この点については、大臣、どのようにお考えですか。
  178. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 古い話ですけれども、戦後、私はアメリカに参りまして、汽車から見ますと、もう自動車の古なんかみんな山のように捨ててあって、ずいぶんもったいないことをするものだという感じがしておりました。また、最近大陸の方に行ってみますと、今度はもうかん詰めでも何でもみんな集めて、乏しいながら利用するというような行き方、いろいろ国によってずいぶん違うものだと思っておりましたが、日本お話しのように、いわば豊かな国と申しますか、その例に漏れず、物が余って、余ったものを一体どうしようか、あるいは廃物をどうしようかという問題に対しては、私は、どうもいままでの傾向では、中央官庁は縦割りでございますけれども、地方は一本でございますから、そういう地方、ローカルにわたる問題はどうも地方の自治に任しておくために、県とか市は大変困るということ、中央じゃ何か対策があるかというと、これはまた非常に各省に分かれておるために、総合的な政策というものが行われない。言うなればにわか成り金のようなもので、成り金になった後始末が、付随物といいますか、そういうものに対する対応策というものがなかったんじゃないか。  いまの近江さんのお話を聞きまして、まさしく本当にポイントを突きました問題で、これを解決するためには、恐らく各省間の問題のみならず、中央と地方自治団体との関係をどうするか、そういう問題まで含めて、国として総合的に考える問題ではないか。そういうために、何か内閣にでも総合審議会みたいなものがあるかというと、これはないです。ですから、私も非常に、時宜に適したと言うと語弊がありますけれども、非常にいい問題で、切実な問題ではなかろうかと思います。機会がありますれば、私自体でとても全部賄える問題ではございませんから、関係閣僚にもお話をいたしまして、どうしたらよろしいかよく考えてみたいと思います。
  179. 近江巳記夫

    ○近江委員 国全体としてこの問題については取り組むという大臣の非常に前向きな発言がありましたので、その点は非常に期待をしておるわけであります。特に科学技術庁長官とされましては、いわゆるこの有害の物を無害にした上でそういう処分ということになるわけでありまして、いま問題は、無害にしてないわけですよ。無害にせずに、たとえば各府県で許可をもらった、一枚の鑑札があれば、そこには、もういわゆる処理をしておってもおらなくても、また量も、全然ノーチェックなんですね。警察官がどうなっているんだ、私は許可をもらっていますよ。また、警察官だってこれが有害か無害かわからぬわけですよ。許可をもらっていますよ、だからその許可どおりやっているんだなと安心するわけですね。そういうことでもってずいぶん不法投棄なり何なりが行われているわけです。  ですから、私は本当に大問題だと思うのです。今後沿岸の魚を食べておったって、一体どういうものがその中に蓄積され、私たちに循環してくるかと考えてきますと恐ろしいことですよ。  特に長官に重ねて要望しておきたいのは、いわゆるこの有害を無害にしていく技術開発ですね、それぞれ研究をなさっていると思うのですが、本当にこれだけの大量の有害物質もあるわけですから、それを処分していくということになってきますと、本当に効率的にまた経済的に処分をしていける、やはりそういう技術なりを開発することが大切だと私は思うのです。これに対する政府のもっと真剣な取り組み方法が必要じゃないかと私は思うのです。この点につきまして大臣から決意をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  180. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 これはまさしく大変重要な問題だと思います。先ほど申しましたように、前向きで、私の役所だけで処理できる問題でもなし、もっと広範な問題でございますので、いろいろ関係閣僚と相談いたしまして対策考えてみたいと思います。
  181. 近江巳記夫

    ○近江委員 終わります。
  182. 石野久男

    ○石野委員長代理 次に、内海清君。
  183. 内海清

    ○内海(清)委員 私は、この前の本委員会長官の所信表明について、言葉じりをつかまえたわけではございませんでしたけれども、結局、この原子力安全局を設けることによって原子力に対する国民の不信感を除去し、そうして理解と協力を求めると、こういう提案の仕方はいささかどうかということを申し上げて、私の申しましたことに対して長官も御理解いただいたと思うのです。それで、本日はさらにこれに関連するわけでありますが、直接この所信表明でございませんけれども、ひとつ原子力委員会の問題につきましても、いささかお尋ねを申し上げたいと思うわけであります。  今度、総理大臣の私的な諮問機関として原子力行政懇談会が設けられている。それから科技庁長官の諮問機関として原子力船懇談会が設けられた、こういうことであります。こういう問題が生まれましたそもそもの問題は、やはり「むつ」に返ると思うのであります。「むつ」の放射線漏れという、これは事故と言えばお役所はおきらいになるから、トラブルと申し上げてもいいわけでありますが、放射線の漏れでありますからあるいはそう言った方がいいかもしれませんが、これはわが国の原子力開発体制に大きな欠陥があったということを教えたと思うのです。これはいろいろな教訓があるはずであります。その教訓に基づいて今度のそういう懇談会も生まれたと私は思うのです。  あの当時のことを思い出しましても、ずいぶんいろいろ皆さん議論したわけでありますが、原子力委員会の原子炉安全専門審査会、これにおきましても、当時「むつ」の欠陥というものはなかなか発見できなかった。解明できなかった。というのは、その審査会は基本設計だけの審査であって、詳細設計は運輸省がやったのだということであったのであります。だから私どもは、どうもこういう二元の管理体制が責任のなすり合いで、これを一元化しなければならぬ、こういうことを当時盛んに申し上げたわけであります。そういうことは、これは少し極端かもしれませんが、わが国には原子炉の安全性を保障できる審査体制がまだ整っていないということ、こう言えると思うのであります。  そういう面から見ますと、原子力委員会、これは開発推進それから安全規制という矛盾するこの二つの機能を持っておるわけです。これもいろいろ問題になりました。しかし、そういうことから考えていけばどうしたらいいのか、これも一つ疑問が当然生まれてくるわけであります。この問題については、当時も私どもいろいろ申しましたけれどもアメリカのNRCのような、いわゆる原子力規制委員会というふうな行政委員会をつくったらどうかというような議論も盛んに出ました。いずれにしてもこれが一つ問題である。  それから、先般所信表明に関連して申しましたが、二元管理はまだそのままである。ただ、科技庁の原子力局が分離して原子力安全局ができただけである、こういう体制なんですな。そしてこの原子力委員会にもいま言った問題が一つあります。さらには、「むつ」の問題から申しますと、地域の住民やあるいは一般国民の原子力に対します不信感を除き、理解と協力を求めるのにはどういうふうにやったらいいのかという問題も同時に必要であるということが痛感されるわけであります。  ところが、これに対して原子力委員会はどうしたらいいか、こういう二つの問題、まだあるかもしれませんが、今度は、原子力行政懇談会ができてからそういうことをやるのだから、ここにげたを預けておけばいいということでは、私は済まされぬと思う。私は、六時前に大蔵委員会に行かなければなりませんので、時間がありませんから一気に申し上げますけれども、第一回の懇談会を見ましてもいろいろな問題が提起されておりますね。国民の理解と協力を得るための方策はどうかとか、あるいは政府、地方公共団体と民間の責任分担はどうあるべきかとか、あるいは各省庁の行政分担はどうあるべきか、あるいは原子力発電所建設の際の手続のあり方、いろいろな問題が出ておるようです。もちろん、この懇談会は、広範にわたりまして各界の意見を吸い上げて検討されるでありましょう。大体これを一年以内でやろうということのようであります。  ところが、仮にこの懇談会で結論が出ましても、これを実行に移すまでには、やはり相当な期間がかかると考えなければならぬ。できたからすぐこれが実行、現実のものとはならぬと思うのであります。そうすれば、検討するのが一年、さらに結論が出てそれを実現するまでに何ぼかかるか、相当の期間がかかると考えなければならぬ。そうすると、その間の原子力開発に対する責任を持つ原子力委員会はどういう体制でやるのかということ、これはいままで何にも出てないわけなんです。いままでのとおりかということです。それでは国民の不信感も晴れぬであろう、解消できぬだろうし、国民の理解と協力も得られぬであろう、こう思うのであります。  私は、原子力委員会が当面考えなければならぬ問題は、最も適切に早く対処しなければならぬ問題は、実はわが国の原子力開発に何が最も重要であるか的確にとらえ、その責務を果たす姿勢ができるかどうか、こういうことになると思うのであります。でありますから、原子力委員会としてはその間、懇談会が結論を出すでありましょうが、しかもそれが実行に移されるまでの間、どういう体制でどういうふうにやっていくのかというこの問題についてお尋ねいたしたいと思うのです。
  184. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 いまのお話を要約いたしますと、もし間違ったら御指摘いただきたいのですけれども、要するに、行政懇談会が結論を出す、それを実施に移すのに二年間かかるとすれば、その二年間にわたる原子力委員会としての経過的措置がどういう体制でどういうことでいくのかという御質問のようでございます。  私は、原子力行政懇談会がどういう結論を出そうと、いつから実行に移そうと、これは別の問題でありまして、関連はありますけれども、しかし、原子力委員会としては、当然本来の任務があるわけですから、そういう本来の任務の中で、お話しのように一番緊急に処理する問題は何々か、それに対してはどうして処理していくかといったような当面の問題がたくさんございますから、その当面の大きい問題は、権限があるわけですから、どんどん片づけていくという行き方が私は一番妥当だと思います。そのこと自体がまた、どう機構が変わろうと国民の信をつないでいくゆえんでありまして、もう懇談会が結論を出すまで、わしゃ知らぬ、遊んでおればいいやということじゃないのでありまして、行政府というものはそういうものじゃなくて、やはりその日その日が一番重要であります。  さっきもお話がありましたが、たとえば電調審で計画を立てても、あれはただ計画だけでございまして、実際の行政処分は、原子力委員会が安全審査を行い、その委員会の報告を受けて総理大臣が許認可の権限を持っておるわけですから、そうなりますと、これは非常に重要な行政事務でございますので、これをなおざりにするというわけにいきません。ですから、そういう問題の中で、特にさっきお話のありましたいろいろな廃棄物処分の問題等は、やはりぴしっと原子力委員会として早く、いますぐに結論を出すべき問題で、そういう点等考えまして、いささかも、行政懇談会ができたからどうという問題とはかかわりなしに進めるべきだ、こういうふうに考えております。
  185. 内海清

    ○内海(清)委員 もちろん、行政は一刻も停滞を許さぬものであります。ところが、この「むつ」問題において原子力の行政はいかにあるべきか、いろいろ問題を起こしたじゃないですか。ところが、いままで原子力委員会がそれに対して何も、あるいはいろいろ計画もしておられるかもしれませんが、今日まで何も動きが外からはわからない。果たして原子力委員会をどういうふうに持っていこうとしておるのか、それもさっぱりわからない。その点についてはもちろん、懇談会で二年かかれば、それまでにほっておくわけにいきません、行政は。ことに今日一番問題になっておるのはやはりエネルギー問題です。これを二年間も、あっちが出るまでと言ってほっておくわけにいかぬ問題です。そうしたら、これの開発推進は、安全性が確保されて国民の不信感がなくなり、理解と協力が得られなければ進まぬわけですよ。そうでしょう。いまのままじゃ進まぬのです、実際において。それをどういうふうに持っていこうと考えておるのかということなんですよ。その問題です。
  186. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 国民の理解を得るということは、いろいろ理解を得るためのアプローチの仕方等もございますけれども、何を一つやれば理解が達成されるという性格のものじゃなくて、私は総合的のものじゃなかろうかという感じがします。ですから、機構自体に対する不信感もありましょう。それから安全研究に対する不信感もありましょう。それから炉自体の、私の主張のようにいわゆるリスクと故障という、そういうものに対するいわば混同したと申しますか、そういう理解がまだ不十分な点から、それに対する不安感といったような問題もあるかもしれません。あるいはお話しのように、審査、検査の問題に対して不信感を持っておるかもしれない。あるいはもっと初歩的な問題に対して、たとえば爆弾とリアクターとはどこが違うのだということに対してすらまだ理解を持っていないというところもあるかもしれない。  そういう問題に対して、丹念にそういう問題を解きほぐしていきつつ、その過程において、国民の皆様には逐一わかるようなアプローチの仕方、これは行政府もしかり、電力会社もしかり、あるいは地方の自治団体もしかり、こういう原子力時代に入るわけですから、みずからの分野でみずからでき得るものは住民と接触を保つ、あらゆる面で接触を保ちながら順次理解を深め、また協力をお願いしていく、こういうあり方が望ましいのであって、一気にどうすればすぐ理解するか、こういう短兵急な問題じゃなかろう、奥深い問題ではなかろうかという感じが私はしております。
  187. 内海清

    ○内海(清)委員 もちろん、長官の言われるように短兵急に、こう言ったからぱっとこうなったというものが出るものじゃございません。  それでは、いままで進まなかったものを解きほぐすためには、一つ一つ具体的にこうやっていくんだというその具体案がなければだめなんですね。だから、原子力委員会の体制にも問題があるならば、これも直すように手をつけなければならぬであろう。あるいは科技庁の問題、これは今度安全局をつくられましたけれども、あるいは二元管理が非常な問題になっておれば、これもどうほぐしていくかということを考えなければならなぬ。ただ一つ一つほぐしていくというだけでは国民はなかなか納得しないんです。いま言ったように、こういう問題がある、これはこういうふうにやったらどうかということが提示されなければ、国民は判断のしようがないじゃないですか。だからそれをお聞きしておるわけですよ。井上委員長代理にも、ひとつ御意見があればお伺いしておきたいと思うのですね。
  188. 井上五郎

    ○井上説明員 最初にお断りを申し上げておきたいのでありますが、私は、原子力委員会を含む現在の行政機構に若干意見がございまして、井上私案というものを書きました。本日は政府側の説明員としてお呼び出しをあずかっておりますので、その席で私案を申し上げることは適当であるかどうかは存じませんけれども、これは委員会を代表する意見ではない、しかし、私はかく考えるということでひとつお聞き取りをちょうだいしたいと思います。  冒頭に先生からお話がありました、現在の原子力行政体制の中には欠陥があるじゃないか。私はさよう思っておりません。しかし、現在の体制は不十分じゃないかという御指摘であるならば、「むつ」の問題が起こりましたときに、私自身、やはり国民の多くの方の御納得がいくような体制でなければいけない、それには現在のものは不十分であるということはみずから反省した点でございます。  したがいまして、昨年の夏ごろでございましたか、森山長官のときに、ある調査をいたしまして、森山私案というものが提示をされました。そして、日本の原子力開発については何が重点であるかといったようなことを指摘をされまして、当時私どもは、六千万キロを実現するためにはかくかくのことが要るということで整備に移ったのであります。しかし、いろいろなことに妨げられて進まないでおりますうちに「むつ」の問題が起こりました。と同時に、一カ月ほど時間はずれましたけれどもアメリカにおきましてエネルギー改革法案というものが通りました。といたしますならば、日本の原子力体制もひとつ考え直すべき時点ではないか、さようなことから、私が考えておりますることをまとめたのでございます。  ところが、それはほとんど十二月か一月ごろにまとめ上げたのでありますが、その中で私は、やはり日本の国策としてエネルギー開発をいかにすべきかという根本問題は、内閣の最重点政策として取り上げるべきであり、その中において原子力の役割りがいかにあるべきかということをお決めになる、その中で原子力委員会はその線に沿って開発を進めるべきであるということがどうしても根本になる、それには原子力委員会だけでは片づかないと申しますか、あるいは原子力委員会のあり方そのものが世間の批判にさらされておる以上は、それより高い次元においてこの問題をお取り上げ願うべきであるということを書いたのであります。  ところが、すでにその問題は内閣でお取り上げになることが決定をいたしました。原子力委員会は、申し上げるまでもなく総理大臣の諮問委員会として、そうしたことを込めまして、原子力の開発、あるいはその計画的な開発についての意見を具申し、それを内閣総理大臣は尊重しなければならないという法的義務を持っておるわけでございますから、せっかくそうした機関において御審議が願われるならば、私が個人の意見を前もって発表することはいかがかと思いまして、私は発表を差し控えた次第でございます。  しかし、もしお許しを得ますならば、ただいま御指摘がありましたような点は、ただ漫然と何とかしなければいけないと言うだけでは不十分でございまして、たとえば、ただいま御指摘がありました開発と安全規制とは相矛盾する課題ではないか、こういう問題が確かに指摘をされております。私の個人的考えを申しますると、開発と安全とは矛盾いたしません。原子力なるものは、いやしくも開発を進める上において、安全というものが前提であります。安全の成り立たない開発はあり得ません。だから、私は、原子力を本当に推進する上において、安全というものは第一条件と申しますか、前提条件であるのですから、開発と安全とを分けるということは必ずしも最善の策であるとは思いません。  しかし、理屈だけではなくて、「むつ」以来起こりました一種の国民的感情から申しますれば、開発と安全規制を守るという立場とは矛盾しているかのごとき誤解があるのではないかということは、やはり現実の行政問題として考慮しなければならない点である。  そこで、科学的とかあるいは技術的、強いて申しますならばハードウェア的な点に在来原子力委員会は十分力を注いだつもりでございますけれども、今日は、社会的あるいは環境的、行政的、あるいは中央と地方との関係等々、そうした問題が多々ございます。そういう意味から言いまして、今回内閣でできました懇談会において、やはり開発と安全規制の問題は分けた方がよろしいという御結論であるならば——世界諸国におきまして、たとえばアメリカ、ドイツ、フランス、イギリス等では分かれております。イタリアでは分かれておらないようでございまして、必ずしも分けるということが最善であるかどうかには、私は若干個人的には疑問を持っておりますが、そうしたことをあわせて考えてみなければならない。  また、「むつ」につきまして、私もこの席へお呼び出しを受けまして、当時いろいろ御議論を拝聴いたしたのでございまするが、原子炉の安全審査会において基準を決めたことと、それが運輸省の手に渡って現実に原子力船ができたときの安全とは、どこが一体責任を持つのか、あるいはそこに一貫性がないじゃないかといったような御指摘がございました。これについて、やはり原子力委員会が安全については一貫した責任を持つべきである、こういったような点については、御指摘のとおり、私どもとして十分考えなければならない点である、かように考えておるわけでございます。  私、内閣でできました今度の行政懇談会であるいはお呼び出しがあって、原子力委員会の一員としての御諮問があるかもしれませんし、あるいはそれは佐々木原子力委員長がお答えになるのかさえも、まだ内部でも決めてございません。したがいまして、今日私が、原子力委員会はこう考えるということを申し上げることはいささか僭越でもございますし、先回りに過ぎると思いますので、このくらいでお許しをちょうだいしたいのでございまするが、先生御指摘の点はやはり具体的に決めなければならぬし、その具体的に決めることの基本的の考え方は、私は、政府がいやしくも認可した以上は、それは安全であるという国民の信頼を得なければいけないし、そのためには、原子力行政の基本に安全の強化というものがある、かように考えております。
  189. 内海清

    ○内海(清)委員 大蔵委員会から呼び出しがあったようだからもうやめますが、原子力委員会に欠陥があるか、それが不備であるかということは、また別の議論にせなければならぬと思いますが、さっき申しましたようないわゆる原子炉の安全専門審査会、ここは基本設計だけだから、詳細設計は運輸省だというふうなあの当時も発言があったわけです。それで委員からもずいぶん問題が出たわけです。だから私は、そういうふうな点はやはり委員会の組織としては一つの欠陥じゃないかというふうなことを考えましたが、まあそれはいずれにしても結構です。  しかし、こういう問題は、基本的にもっと十分論議されて具体的に進んでいかなければ、原子力委員会はいまのまま、それから、いわゆる二元管理とやかましく言われたものもいままでのままである、今度変わったのは原子力局が二つに分かれただけである、それでいいのかということなんです。だから、真剣にやっていただかなければならぬけれども、もっと真剣にやるということになれば、具体的に一つ一つを詰めていくという、これは初め、国民の信頼を取り戻して理解と協力を得るのはそれだと言われた、長官のあのお言葉どおり具体的にやっていただけば、真剣にやっていただけば、私は国民も理解すると思うのです。この点が、ただいままで、口で言われただけであって何ら進展してないと私どもは見ておるのであります。  したがって、また今後もいろいろ議論になりましょうけれども、お考えになっておることは非公式でもいいからやはり問題として出して、お互いに考えてみる、議論してみるという姿勢がなければ、この委員会だけのコンセンサスもなかなか私はできぬと思うのですよ。そういう点を強く要望しておきたいと思う。  それから、原子力商船の問題でちょっとお尋ねしようと思いましたが、もう時間がありませんけれども、この間私は、第二船の問題で海運業界も造船業界も、「むつ」でああいう問題が起きて以来、敬遠ぎみだということを一つ申し上げておきましたが、あれは少し言葉が足りませんからつけ加えておきたいと思いますのは、また反面ではこれは石油問題もあります、きょう長官お話しのように。ところが、この船の使います石油というのはごくわずかです。わが国の使用量の一〇%にも足らぬくらいのものです。だから、燃料はむしろそれほど大きな問題にならぬ。なるのは、今後わが国が海運国として世界に対抗していくためには、高性能な船をつくらなければならぬということ、この問題ですよ。その問題から言うてどうしても原子力船が必要になってくる、そうしなければ海運界で勝利はできない、こういうことを私は思っておるわけです。確かに業界も、先進国にそういうことで立ちおくれはせぬかという一つの欠陥も持っておるのですよ。  さらにもう一つ問題は、原子力船の舶用炉というもの、これは時間がかかる。舶用炉の開発をどうするかということがいま非常な問題だと思うのです。ところが、いま開発すべきか、また問題が起きたんじゃ困るというジレンマにかかっておる。こういう問題については、むしろ政府が将来を見越し、わが国の海運貿易の問題を見越して誘導的に指導していかなければならぬと私は思うのです。その点を、ひとつ長官の御意見を聞いてやめたいと思います。
  190. 佐々木義武

    佐々木国務大臣 前段の問題はお説のとおりであります。ただ、たとえば検査あるいは審査の一元性等を具体的に定めるのにはどうするかと言いますと、典拠法規は一方は原子炉等規制法、一方は電気事業法といったようなことであって、これを変えぬ限りは実際の思い切ったことというのはできないわけで、その間、経過的措置としては、やはり行政行為をどういうふうに有効にやるのかといったような問題になってくるわけですから、そこら辺は抜本的にやらなければいかぬじゃないかと言っても、これはなかなかむずかしい問題だと思います。しかし、できる限り、そういう体制であっても円満にできるように、効果が上がるようにしたいということで、いませっかく研究中でございます。  二番の点はお説のとおりでございまして、これはもうそういう意味で本当に真剣に研究しなければいかぬと思っております。
  191. 内海清

    ○内海(清)委員 ありがとうございました。
  192. 石野久男

    ○石野委員長代理 本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十六分散会