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力徳参考人 大都市を
中心にする
私鉄の
大手企業の
現状は、今日では
運輸部門ではほとんどが
赤字経営だと言って差し支えないだろうと思います。
高度成長時代では、
私鉄の
経営というのは
発生自体からある
程度そういう性格を帯びておりましたが、
不動産経営あるいは
関連事業と相まって
経営が存立をしていた。今日のように
地域住民の
監視もやかましくなると土地も簡単に売れないし、売っても税制の
関係で利幅が薄くなってくるということで、今日
私鉄の
大手でも
自立自営というものが非常にむずかしくなってきた。
私鉄の
大手の中でも、従来までは一割
配当を堅持しておったところが、御
承知のように、今期、阪神においても八分に
配当を落とし、南海においても八分、京成も八分、名鉄、西鉄は九分というように、
配当も漸次最近は落ち込んできております。ますますこの傾向は強まっていくだろうと思います。
そういうような状態を見てまいりますと、
私鉄の
大手の
経営を存立させていくためには、
私鉄といえども国家的な
見地において
通勤、通学の
輸送を確保していくという
対策が
助成の面を含めてどうしても当然
考えられていかなければいけないのじゃないか、だから、
私鉄も、
国鉄も、単に利潤を
中心に
考えるということでは
交通機関としては今日はもういけない
時代じゃないか、と、そういう
考え方を私は基本的に持ちます。
労働組合の問題ですが、これは非常に言いにくい言い方でありますけれども、
民間の場合でも、
労働組合が分裂をするというときには陰に陽に
当局が介入をしておることは否定できない事実です。
国鉄の
労働組合においても、今日幾つかの
組合ができておりますが、これについて何ら
経営者が関知していないということはないと思うのです。そういうふうに
労働組合を分裂させていく、特に極端な例を言うならば、
マル生のような
弾圧攻撃を
労働者にかけていく、そういうようなことで、
労働組合の協力を求めるという形よりも、
労働組合を痛めつけて力を弱めて
経営を
再建していこうという
考え方を基本的に改めるということが第一番目に大切なことじゃないかとぼくは思うのです。
今日、
日本の
労働組合はすべてが
企業組合でございますから、
自分の
会社をつぶしてまでというような
考え方を持っておる者は
日本の
労働者にはほとんどおらぬと言って差し支えないだろうと思うのです。ぼくは
民間人でありますが、
民間の
組合で
自分の
会社をつぶしてまで
自分らの
要求を通すなんという
考え方を持っておる
労働組合は
一つもないと言って差し支えありません。それは官公労の
労働組合においてもしかりだとぼくは思うのです。問題は、やはり、
当局の
労務政策、
労務対策にかかって問題が派生的に起きてくるのではないかと思います。
今日、
国鉄の
総裁が
民間の社長のような
権限を持っておるのかと言えば、全く
権限は持っていないわけですね。そういう
権限のない
総裁と
労働条件なりあるいは賃上げの問題を論争していくわけでありますから、なかなか
解決がしにくい。そういうようなところに根本的な問題があるだろうと思う。したがって、この四十万の大世帯の
国鉄を
経営していくためには、相当の
権限を
国鉄の
総裁以下の幹部に国は与えるということが大事だろうとぼくは思うのです。しかし、
国鉄でありますから、
国民的な
監視機構というものも十分に備えていかなければならぬだろうし、総合的にはいろいろとあるだろうと思います。ぼくは
経営者ではありませんから細かい
経営論まではくちばしを入れることは差し控えますけれども、基本的な
あり方として、
経営者に
責任体制をとらせるということがやはり一番大切なことではないかというふうに思います。
国鉄再建について、どういうふうにしたら
国鉄が
国民に愛される
国鉄になるかという点については、それはいろいろ問題もありますから、きょう
勉強不足のところで余り簡単に危ない話をすることも危険ですから、これは御勘弁を願いたいと思います。