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1975-08-08 第75回国会 衆議院 運輸委員会日本国有鉄道に関する小委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年八月八日(金曜日)     午後一時一分開議  出席小委員    小委員長 増岡 博之君       加藤 六月君    佐藤 文生君       佐藤 守良君    關谷 勝利君       宮崎 茂一君    太田 一夫君       久保 三郎君    梅田  勝君       石田幸四郎君    河村  勝君  小委員外出席者         運輸委員長   木部 佳昭君         運輸省鉄道監督         局長      住田 正二君         運輸省鉄道監督         局国有鉄道部長 杉浦 喬也君         日本国有鉄道常         務理事     小林 正興君         参  考  人         (日本私鉄労働         組合連合会委         員長)     力徳  修君         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正己君     ————————————— 八月八日  小委員佐藤孝行君及び松本忠助君同日小委員辞  任につき、その補欠として宮崎茂一君及び石田  幸四郎君が委員長指名により小委員選任さ  れた。 同日  小委員宮崎茂一君及び石田幸四郎君同日小委員  辞任につき、その補欠として佐藤孝行君及び松  本忠助君が委員長指名により小委員選任さ  れた。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国有鉄道に関する件(国鉄問題)      ————◇—————
  2. 増岡博之

    増岡委員長 これより、運輸委員会日本国有鉄道に関する小委員会を開会いたします。  日本国有鉄道に関する件について調査を進めます。  本日は、国鉄問題について、参考人として日本私鉄労働組合連合会委員長力徳修君に御出席をいただいております。  力徳参考人に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本日は、本問題につきまして忌憚のない御意見を承りまして、調査参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げますが、御意見を三十分程度に取りまとめてお述べいただき、次に委員質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  それでは、お願いいたします。
  3. 力徳修

    力徳参考人 御紹介をいただきました私鉄総連力徳でございます。  国鉄財政再建問題について意見を述べよということでありますが、私は民間労働組合委員長でありまして、民間人としての立場から現在の国鉄経営を見た場合に、経営論としては全くに成立をしないという状況の中で今日の国鉄経営が行われておるということを第一番目に申し上げたいわけであります。  この国鉄財政再建問題について、聞くところによりますと、運賃を上げる、あるいは従業員を削減するという合理化を行うというようなことで再建を行うという計画のようですが、そういうようなことでは抜本的な再建はできないのではないかというふうに私は思います。国鉄の今日の再建問題については、国家的な見地から抜本的に解決策を立てて、これは運賃問題も含まれるでありましょうが、総合的に解決をされていかなければならないだろうと思います。  特に、国鉄再建問題については、単に財政問題という観点からだけでなく、労使関係を正常化していくという問題が解決をされなければ根本的な解決策に進んでいくことはできないのではないかと、このように私は思います。民間労働組合では大体一企業一つ労働組合というのが常識でありますし、原則であろうというふうに私は思いますが、今日国鉄の中には複数の労働組合がある。いろいろな事情はありましょうが、あるべき姿として、労使関係を正常化していくためには労働組合というものは一企業組合という立場をやはり考えなければならないのではないかというふうに一つは思います。  いま一つは、国鉄の問題は単に国鉄だけの問題でなく、日本全体の交通問題とのかかわり合いが深いわけでありまして、国鉄の今日の独占力というものは弱まってはおりますけれども、陸上交通で主導的な地位にあることは否めない事実であろうと思います。国鉄財政が大幅な赤字で破局に瀕していることは、これまた他の陸上交通事業にも大きな影響を及ぼすのでありますから、国鉄が早く健全になることが日本全体の交通を健全にしていくという道につながるというふうに思います。  特に、この際私が強調したい点の一つとしては、公共性という立場で見た場合に、首都交通圏定期定期外と区分をして乗客の動きを見てまいりましたが、首都圏においては、国鉄私鉄において四十八年度の数字ではほとんど変わりがありません。定期で、国鉄は二十五億五千四百万人で、私鉄が二十五億七千九百万人ですから、ほとんどとんとんです。そして地下鉄が十二億六千八百万人です。定期外において、国鉄が十三億七千七百万人、私鉄が十二億、地下鉄が六億五千四百万人、こういうような状況になっております。中京圏においてははるかに私鉄の方が公共性は強く、国鉄は七億であるのに対して私鉄は三十五億であります。関西においても私鉄国鉄乗客移動割合というのは大体二対一ないし三対一というような割合である。  そういうような状況から見てまいりますときに、今日、私鉄労働者ストライキ権が与えられておるにかかわらず国鉄労働者ストライキ権が与えられていない。公共性という観点から見るならば、今日、はるかに私鉄の方がウエートが高いにもかかわらず国鉄ストライキ権がない。そういう点がやはり正常な労使関係を妨げておる一つの大きな要因になっておるのではないかということを主張したいわけであります。  いま一つの問題は、大体、日本民間企業で一番大きな会社は新日鉄の八万人ぐらいで、次が日本通運で六万五千人ぐらいですが、国鉄は四十万人を超える大会社であります。この四十万人の大会社管理なり運営というものについてはやはり抜本的に検討がされなければならないのじゃないかというふうに思います。  特に、この管理運営機構の問題なり、あるいは権限の問題なり、当事者能力の問題なり、そういう点において四十万人の会社をきちっと運営して、国民国鉄として運営していくためには、現状のような当事者能力のない——政治家が勝手に政治路線要求していき、それに対して国鉄経営者は何ら抵抗するすべがない、そういうような犠牲、負担を国鉄に強いて、単に国鉄独立採算制で賄っていくという、そういうような経営あり方が抜本的に改正されていくということでない限り、民間でもそうですか、十万人以上の会社なんというものは簡単に管理運営なんというものができるものではないわけでありまして、特に、その中で労働組合三つも四つもあるというようなことでは、だれが国鉄総裁になったって、運輸大臣になったって、国鉄再建というものは非常に困難だろう、と、そういうことをとりあえず申し上げておきたいと思います。  以上です。(拍手)
  4. 増岡博之

    増岡委員長 ありがとうございました。  参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  5. 増岡博之

    増岡委員長 これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。  この際、小委員長から申し上げますが、質疑は、時間の関係もあり、簡潔にお願いいたしたいと存じます。加藤六月君。
  6. 加藤六月

    加藤(六)小委員 ただいま力徳参考人には貴重な意見をお述べいただきまして、ありがとうございました。  小委員長から三十分程度意見を承ろうじゃないかというのでまとめておる最中でございましたので、御意見を承るのがあちこちに飛ぶと思いますが、まず第一点にお聞きいたしたいのは、私鉄公共性ということを定期の客並びに定期外の客ということでお述べになりましたが、国鉄には今日国の助成がいろいろありますが、私鉄には開銀融資とか鉄建公団P線関係しかございません。大都市通勤輸送から考えた場合に、力徳委員長民間人立場ということでお述べになりたいとおっしゃったわけですが、そうしますと、助成国鉄だけにして私鉄にしないという問題についてはどうお考えになっておられるかということが一点でございます。  それから、第二点は、一企業組合の方がまあまあいいんではないか、民間の場合なら一企業組合が、原則ではないけれども大部分そうであるというようなお話しがございましたが、国鉄の内部においては五つないし六つの労働組合がございますが、民間人立場から力徳参考人がごらんになって、しからばこれを一本化する方法があるのかないのかということが第二点でございます。  それから、第三点は、いま、四十万人以上、四十三万何千人おるわけですが、四十万人以上の大会社管理運営は非常に困難である、そのためには機構権限当事者能力等の問題について考えなくてはいけないとおっしゃいましたが、この機構権限当事者能力等について、国鉄のその三つの問題について何か具体的なお考えがあるならお示しいただきたい。これが第三点でございます。  それから、第四点目としましては、一番冒頭に参考人がお述べになりましたが、運賃アップとか人員削減だけでは国鉄再建はできないということについては私も全く同感でありますが、しかし、抜本的に考えた場合に、国鉄国民の足として考え、しかも、わが国内陸上交通における最も主導的な立場国鉄が占めておるんだという認識はお持ちのようでありますが、参考人がお考えになって、他の交通機関に及ぼす影響が大であるとおっしゃいましたが、他の交通機関サイドから見た場合にこういう国鉄になればいいんだ、そのためには一番ポイントになるのはこういうことをすれば労使双方とも国民から信頼され、国民から本当に手となり足となっておる国鉄だという感謝の気持ちを持ってもらえるような国鉄になるんだ、そうすれば新しい国鉄がっくり上げられるのだというような方法と案が何かありましたらお教えいただきたい。  余り時間がございませんので、以上四点について御質問申し上げてみたいと思います。
  7. 力徳修

    力徳参考人 大都市中心にする私鉄大手企業現状は、今日では運輸部門ではほとんどが赤字経営だと言って差し支えないだろうと思います。高度成長時代では、私鉄経営というのは発生自体からある程度そういう性格を帯びておりましたが、不動産経営あるいは関連事業と相まって経営が存立をしていた。今日のように地域住民監視もやかましくなると土地も簡単に売れないし、売っても税制の関係で利幅が薄くなってくるということで、今日私鉄大手でも自立自営というものが非常にむずかしくなってきた。私鉄大手の中でも、従来までは一割配当を堅持しておったところが、御承知のように、今期、阪神においても八分に配当を落とし、南海においても八分、京成も八分、名鉄、西鉄は九分というように、配当も漸次最近は落ち込んできております。ますますこの傾向は強まっていくだろうと思います。  そういうような状態を見てまいりますと、私鉄大手経営を存立させていくためには、私鉄といえども国家的な見地において通勤、通学の輸送を確保していくという対策助成の面を含めてどうしても当然考えられていかなければいけないのじゃないか、だから、私鉄も、国鉄も、単に利潤を中心考えるということでは交通機関としては今日はもういけない時代じゃないか、と、そういう考え方を私は基本的に持ちます。  労働組合の問題ですが、これは非常に言いにくい言い方でありますけれども、民間の場合でも、労働組合が分裂をするというときには陰に陽に当局が介入をしておることは否定できない事実です。国鉄労働組合においても、今日幾つかの組合ができておりますが、これについて何ら経営者が関知していないということはないと思うのです。そういうふうに労働組合を分裂させていく、特に極端な例を言うならば、マル生のような弾圧攻撃労働者にかけていく、そういうようなことで、労働組合の協力を求めるという形よりも、労働組合を痛めつけて力を弱めて経営再建していこうという考え方を基本的に改めるということが第一番目に大切なことじゃないかとぼくは思うのです。  今日、日本労働組合はすべてが企業組合でございますから、自分会社をつぶしてまでというような考え方を持っておる者は日本労働者にはほとんどおらぬと言って差し支えないだろうと思うのです。ぼくは民間人でありますが、民間組合自分会社をつぶしてまで自分らの要求を通すなんという考え方を持っておる労働組合一つもないと言って差し支えありません。それは官公労の労働組合においてもしかりだとぼくは思うのです。問題は、やはり、当局労務政策労務対策にかかって問題が派生的に起きてくるのではないかと思います。  今日、国鉄総裁民間の社長のような権限を持っておるのかと言えば、全く権限は持っていないわけですね。そういう権限のない総裁労働条件なりあるいは賃上げの問題を論争していくわけでありますから、なかなか解決がしにくい。そういうようなところに根本的な問題があるだろうと思う。したがって、この四十万の大世帯の国鉄経営していくためには、相当の権限国鉄総裁以下の幹部に国は与えるということが大事だろうとぼくは思うのです。しかし、国鉄でありますから、国民的な監視機構というものも十分に備えていかなければならぬだろうし、総合的にはいろいろとあるだろうと思います。ぼくは経営者ではありませんから細かい経営論まではくちばしを入れることは差し控えますけれども、基本的なあり方として、経営者責任体制をとらせるということがやはり一番大切なことではないかというふうに思います。  国鉄再建について、どういうふうにしたら国鉄国民に愛される国鉄になるかという点については、それはいろいろ問題もありますから、きょう勉強不足のところで余り簡単に危ない話をすることも危険ですから、これは御勘弁を願いたいと思います。
  8. 加藤六月

    加藤(六)小委員 国鉄に、国民に愛され、国民の手となり足となってもらうためにはこういうようにすればいいんだという点を一つだけ挙げてもらうとすれば何になるでしょうか。参考人としていろいろと差し支える問題がおありになるならそれで構いませんが、一つだけ考えた場合、それは何でしょうか。
  9. 力徳修

    力徳参考人 一つだけ考えれば、サービスの面から見るならば、非常に言いにくいけれども、私鉄の方がはるかに国鉄よりもサービスがいいと思うのです。端的に言って、私鉄看板列車の小田急の箱根行きのロマンスカーと東武の鬼怒川行きなどはきれいな娘がちゃんとおしぼりでも出しますよ。国鉄の新幹線など、世界的な看板列車サービスなんというのは非常に悪いですね。そして、ピストルかこん棒を持ったような警察官みたいな人が出入りして、眠っているお客をたたき起こしてまで検札をするというサービスの態度というものは、ぼくらは民間人として考えた場合には余りいいことじゃないと思いますね。言いにくいことを言いますけれども……。
  10. 加藤六月

    加藤(六)小委員 どうもありがとうございました。
  11. 増岡博之

    増岡委員長 久保君。
  12. 久保三郎

    久保(三)小委員 いろいろとお話しがあったのでことさらどうかと思うのですが、いままでのお話し以外にもしお考えがあったらお聞きしたい点は特にスト権ですね。  スト権にもいろいろあるというので、もちろん来月あたりには約束どおり政府は結論を出すことになっているようでありますが、しかし、素直に出るようにも見受けられない。ついては、民間労働組合の、しかも同業というか、同じような企業におられる参考人から見て、スト権あり方というものはどういうふうなことが一番望ましいか。と同時に、スト権を与えても、世間でよく言われるように、また、これは常識的でありますが、お話しのように当事者能力の問題があるが、当事者能力というものにもいろいろ制度上の問題もあるし、銭金の問題も当然出てくると思うのですね。そういう問題について、私鉄経営者国鉄管理者というか、そういうものの間には大変な違いがあると思うのですが、そういう問題についてどういうふうに考えるべきか。あるいは、スト権といわゆる当事者能力というものを関連させることは誤りであるのかどうかという問題。  それから、もう一つは、お話しにもありましたが、管理運営制度を抜本的に改善しなければいかぬ。お話しのように、国鉄は四十何万人かの大企業なんですね。大企業であるためにいままで世間でも分割経営論も出てきております。そういう点について参考人としてはどういうふうにお考えであるのか。  大体その辺のところについて御意見がありましたらお伺いしたい。
  13. 力徳修

    力徳参考人 国鉄分割論については、直ちに賛成するという立場は私はとりません。やはり、日本陸上の大動脈でありますから、これは一本の姿の方がよかろうというふうに思います。  管理機構の問題で言うならば、人材登用という面をもう少し考えていくべきじゃないかと思います。これもまた非常に言いにくい話ですけれども、東京帝国大学を出なければ国鉄の重役には絶対なれないというようなことでは下で働く者は魅力はないわけであります。民間会社一つ管理あり方としては、人材を広く登用するということが勤労意欲なり業務意欲を増していくわけでありますから、東京帝国大学を出なければ絶対に一〇〇%会社首脳部にはなれないというような会社運営なんというのは、民間人立場として考えるならばうまくないというふうにぼくは思います。  スト権の問題と当事者能力の問題は、これは密接不可分の問題であります。相手に当事者能力がなければ問題の解決はできないわけですから、解決する能力のないやっと幾ら団体交渉をやったって、ストライキをやったって、これは問題は解決できないわけでありますから、きちっと当事者能力をつけてもらうということが大事です。  国鉄ストライキ私鉄ストライキに比べて数が多い。これはやっぱりストライキ権がないということと、当事者能力がないということと、それから管理運営というものが末端まできちっといっていないということ、この三点が一番大きな原因だというふうに思います。そういう面で、東京でも御承知のように営団地下鉄スト権があって、都営地下鉄スト権がない。相互乗り入れをしておるわけですから、同じ労働条件、同じ立場にあって、片側にストライキ権がないというのは、世の中の出来事としてこれは全く不思議でならぬわけであります。国鉄においてもしかりであります。私鉄並みスト権をこの際は当然に国鉄に与えるべきだ、そういうことにおいて国鉄労働者もみずからが自覚をして、国民に迷惑をかけるようなストライキの回数を減らしていくような努力が当然に行われていくだろう、そのように思います。
  14. 増岡博之

    増岡委員長 梅田君。
  15. 梅田勝

    梅田委員 共産党革新共同梅田勝であります。  本日は力徳参考人の貴重な御意見を拝聴いたしまして、本当にありがとうございます。  国鉄財政再建の問題は非常に重要な問題でありまして、当小委員会におきましてもたびたび参考人の方々から御意見を伺って検討してまいったところでございます。  そこで、再建計画が破綻したという問題でありますが、これはいろいろ原因があろうかと思います。国が必要な出資をしないで、そして輸送力増強ということで借金政策運賃値上げでやってきたというような問題とか、あるいは工事資金をつくるために減価償却方法等を変えまして資金をつくってくるといったような問題とか、あるいは運賃体系におきましては、独占の商品に対しては輸送コスト独占の側に非常に有利なような方法で奉仕をしてきたというような問題とか、さらには公共補償が十分になされていないといったような、国鉄をめぐる構造的な欠陥といいますか、そういうような問題が基本的なものとしてございます。さらに、政策的な問題として、今日の歴代の自民党政府でありますが、高度成長政策ということでモータリゼーションの政策をとったり、それからインフレーション政策、それから農業破壊というような問題も関連して過密過疎という問題も起こる。そこから地方線赤字にならざるを得ないといったような問題が出てくる。そういうようにいろいろ数えたら切りのないくらいの政策的な問題点がございます。そして三つ目に、国鉄が立てました財政再建計画というものが、先ほど述べました二つの問題と絡んで打ち出しましたのが、十年間で十兆五千億の投資をやる、それから労働者に対しては過酷な合理化を押しつけるということで、最初からこれはもううまくいかないとわかっていたような計画を出して、そして私どもが警告いたしましたように、初年度において計画が破綻ということになったわけですね。借金の方だけは予定どおり進行というよりも、ちょっと一年ぐらい早い速度で借金がふえたというようなことでございます。  そこでお伺いしたいのですが、あなたは先ほど運賃値上げでは再建ができないというように断定された御発言をされましたが、となると、どのようにして国鉄財政再建をやっていくのかという問題が当然出てまいります。その点で基本的にどういう方向を考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
  16. 力徳修

    力徳参考人 それは皆さんの方で真剣に考えてもらわなければいかぬ問題であって、ぼくは参考人として参考的な意見を述べる以上のものはないわけであります。それは政治家が真剣に考えてもらわなければならぬ問題だとぼくは思います。  運賃問題でも、運賃が上がることは全く反対という立場はぼくはとりません。やはり、国民納得のいく、労働者納得のいく問題で解決されていかなければならないだろうという立場をとるわけですね。一方的に非民主的な形で二倍も国鉄運賃を上げるなんていうことは、言うだけであって、今日国民がそれを許すとは考えられないから、そういうようなこそくな手段では再建はできないだろうというふうに私は申し上げておるわけであります。  どういうふうにしたら再建できるかということは、それはぼくらみたいな素人が言うよりも皆さんの方が真剣に考えてもらわなければいかぬ問題だろうと思うのですよ。それは金利のたな上げの問題もあるでしょうし、助成の問題もあるでしょう。いろいろな再建方法はあると思いますから、それは真剣にひとつ皆さんの方で御検討願ってもらいたいと思うのです。幾らかの学説なり論文なり、たくさんにいま出ている世の中でありますから、短い時間で多くを語ることはお許しを願いたいと思うのです。
  17. 梅田勝

    梅田委員 参考人で来ていただきましたのでお伺いをしておるのでございますが、ことしの三月に全日本交通運輸労働組合協議会、すなわち全交運が、「交通運輸政策に関する要求書」というものを出されておりますが、この中で国鉄関係につきまして六項目内容が出ております。その中の一つに、「国鉄基礎施設固定施設部門建設整備は国の責任に於いて行ない、運営維持費に対しても国の財政措置を強化し、他の公共料金および物価への影響を配慮し、国鉄運賃値上げは行なわないこと。」というのが出ております。また、一つには、「国鉄がこんにちかかえている借入金及び利子、債務費は総て国庫に肩替りすること。」というような要求が出ております。これは力徳参考人も参加されている全交運労働組合が決めて、そして当局なり政府に対して要求されていることでございますので、これが皆さん方労働組合としての国鉄財政再建についての御意見というように承っておりますが、大体それでよろしいのでございましょうか。
  18. 力徳修

    力徳参考人 そのとおりです。
  19. 梅田勝

    梅田委員 そこで、皆さん方のこの各、項目を私も拝見して検討もしているのでございますけれども、くしくも、日本共産党運賃値上げを抑えて国鉄財政を民主的に再建するために国鉄財政項目の改善に関する提案というものを出しましたが、その五項目内容とこれが大体において一致しておるように思うのでございます。  そこで、国鉄財政再建するためにはこの五項目の私どもの提案が一番いいのではないかというふうに確信を持って提案しているのでございますけれども、その点について参考人の御意見はいかがなものでしょうか。
  20. 力徳修

    力徳参考人 共産党政策内容については不勉強でありますので、ここで答弁することを差し控えたいと思います。(「もういいじゃないか」と呼ぶ者あり)
  21. 梅田勝

    梅田委員 時間が十分ございますのでもう少し聞きたいと思うのでございますが、国鉄のようにレールをつくって走る輸送機関と、それからバスのように国道なり地方道なり既設された道路を走るという場合の競争条件は著しく違うわけですね。そういう点で競争条件を同一にするということで、基礎建設部分については少なくとも国が出資をして、昭和三十二年以来長期にわたって輸送力増強計画ということで莫大な借金をしてきた。その結果利払い部分だけで累積赤字に匹敵をするというくらいの状況が従来ございました。これを改善するためには、基礎建設部分についての国の出資というものをどうしても要求しなければならない。過去において発生した問題につきましてはそういう考え方に立って国に対して補償を要求していくということは当然正しい考え方だろうと思うのです。  第七次道路整備五カ年計画が昭和四十八年から五十二年度に向けて十九兆五千億で組まれております。これは莫大な関係がございますが、国の一般財源におきまして、たとえば国の道路につきましては二兆八千八百九十三億円、地方の道路におきましては四兆九千八百四十六億円国が出している。これだけ国が一生懸命道路に力を入れているのですから、国鉄について国からその部分についての出資を保証させていくということは当然だと私は思うのですけれども、参考人の御意見はいかがでしょうか。
  22. 力徳修

    力徳参考人 余り細かい話になってくると、ぼくらも専門家ではありませんのでよくわからない部分もありますから、ひとつ皆さんの方で十分御判断願いたいと思うのです。
  23. 増岡博之

    増岡委員長 石田君。
  24. 石田幸四郎

    石田(幸)小委員 公明党の石田でございます。  まず一つお伺いをしたいことは運賃の改定の問題でございますけれども、この間も経企庁長官の福田さんといろいろ議論したのでございますけれども、こういうような国鉄のいまの累積赤字の中におきまして運賃改定の原則をどうするかということについては、福田さんは受益者負担が原則だと言う。受益者負担の原則というのは国民のすべてが基本的には納得している問題だと思うのですよ。ところが、新幹線のように社会開発的な事業をやる、金も借りなければならぬ、赤字がふえる、利子は払わなければならぬというようなものは、そういう意味からいきまして受益者負担という原則だけで運賃問題は処理できない段階に来ているのではないか、したがってもう二、三本新しい柱が必要なんじゃないか、と、このようにぼくは思うのですが、これに対する何か御意見がありましたら承りたい。  それから、先ほどストライキ権の問題についてお話しがございましたが、私も基本的に同感なわけでありますけれども、国鉄赤字の大きな原因の中で貨物輸送の減退が大幅になりつつあるということがある。しかも、その国鉄の貨物輸送が減退したということは、あの高度経済成長の中においても余りお客がなかったが、これは多分にストライキの乱発に関係があったのじゃないかと思う。先ほど組合自体の自覚ができるからというようなお話しがございましたけれども、こういう問題が労使の間できちんとある程度協調ができなければ、国鉄の貨物輸送そのものがもうだめになってしまうのではないかというふうに私は思っておるわけです。前年度からたしか二〇%ぐらい貨物の収入が減っていますね。そういう点から考えまして私はそう思うのですけれども、これに対する御意見を伺いたい。  それから、もう一点は、いわゆる連休問題でございますけれども、レジャーブームというようなことで、景気が悪くても連休なんかの場合には大変な人出になります。国鉄私鉄ともに運輸機関というものはストックがきかないわけでございますので、これは交通機関が整備されるまではある程度抑制策というものが必要なんじゃないかと思うのです。ただいまの同一地における価格変動制ですね。カナダあたりは一部やっておるようでありまして、その価格が高いというような、そういう抑制政策があるようでございますけれども、この辺の御意見が何かございましたらお聞かせいただきたい。  この三点についてお伺いをしたいと思います。
  25. 力徳修

    力徳参考人 受益者負担の問題ですが、今日、国鉄運賃にしろ私鉄運賃にしろ、一般の物価に比べて低位にあるという事実はぼくは否定はしません。しかし、簡単にいま運賃値上げを行うことができないというむずかしい今日の実情をお互いに認識しなければいかぬだろうと思うのです。このインフレの中で国鉄運賃なり私鉄運賃が大幅に上がるということは国民生活に大きな影響を与えていくわけでありますから、そういう観点で単に安易な形で運賃値上げをすることについてはぼくらは賛成はしがたいということを申し上げておるわけでございます。  運賃だけで採算を合わせていくということになると膨大な運賃値上げをしていかなければなりません。それは今日国民が許すかと言えば、とうてい許すということには相ならぬだろうとぼくは思うのです。したがっておのずと限界がある。その限界をどういうふうに解決していくかということはやはり国が解決していく以外にないとぼくは思うのです。だから、私鉄の場合においてもこれは一緒であります。したがって、金利を安くしてやるとか、国鉄の場合だったらいままでの借金をたな上げにしてやるとか、そういう国家的な見地再建問題が考えられていかないと、単に運賃を受益者負担という立場だけで考えていくという考え方では根本的な解決にならないし、現実的にも解決が困難であろうというふうにぼくは思います。  貨物の問題については、これはもう自動車輸送との関係において国鉄独占性を全くなくしておるわけです。新幹線は旅客一本ですから、完全黒字経営なんですね。この問題をどうするかということは国鉄経営にとって非常に大きな悩みの一つだとぼくは思うのです。これは非常にむずかしい問題だと思います。簡単にトラック輸送を削減していいのかどうか。日本のような狭い国でトラック輸送を抑えて国鉄中心の貨物輸送で賄えるのかどうかということは簡単な問題ではないだろうというふうにぼくは思います。したがって、総合的に国鉄の旅客、貨物を再建していくという問題についてはいま少し時間をかけて考えていかなければならぬ問題だろうというふうに思うのです。  それから、レジャーの問題については、先生から質問がありましたが、これはよけい乗るなら値段を安くしてもらえという意見もあるし、それはレジャーのときだけ運賃を上げろということはなかなか簡単に——国鉄はいま季節運賃というものを取っておるのは、伊東線なんか取っておりますね。土曜とか休日の前とか休日とかというのは、あれは三倍ぐらいよけい取るのじゃないですか。二倍ぐらい取っておりますね。——取っていないですか。それはまあいいですが、だからそれは簡単に、よけいに乗るからそのときよけい運賃を高くするというのもぼくは一概に賛成はしにくい問題だと思うのですね。
  26. 増岡博之

    増岡委員長 河村勝君。
  27. 河村勝

    ○河村小委員 民社党の河村勝でございます。  参考人からも御意見があり、先ほどから皆さんが質問されておるように、運賃値上げ人員削減だけで再建はむずかしいということはそのとおりだと思いますが、それに関連しまして、人の面で、私は関西の私鉄はよく知らないのですけれども、関東の私鉄を見ておりますと、勤務時間あるいは定員といいますか、そっちの問題でかなり組合側の方も弾力的に対応して、具体的な例で言いますと、年休が二十日あり、週休と全部合計して幾らになるかちょっとはっきりしないが、その場合、週休、祝日休というものに対する予備員は手当てをするけれども、年休二十日についての予備員までは見ないで、年休をとる人の抜けた分は二徹をするとかなんとか、そういうようにほかの人が超過勤務によってカバーをして賄っていくというようなことをやっておられるように思われる。これもどこまでがいいのかという単純な議論じゃないのですけれども、そういうことであると組合側の対応する姿勢というものもずいぶん違うのではないかという気がするのですが、その辺はどういうふうにお考えになっておりますか。
  28. 力徳修

    力徳参考人 労働時間は平均的に見るならば私鉄よりも国鉄の方が三十分長いです。基準労働時間で言うと国鉄労働者の方が労働時間は長いです。  それから、経営あり方の問題ですが、ことし私鉄大手の中で南海電鉄に千二百名の人員整理が出ました。これは戦後初めてのことですが、私鉄全体で約六千人ぐらいの人員整理が出るという、非常に厳しい状態にもなってきております。ぼくは民間人ですからずばり物を言わせてもらいますが、学校の先生に首切りが出るかといえば、首切りなんというものは出ないと思うのです。地方自治体の公務員の労働者にいま首切りの問題があるかといえば、部分的にはあるかもしらぬけれども、大きな首切りというものはないですね。だから民間立場で言うならば、労使関係が正常でないために経営に対する労働者の認識の度合いというものが、民間労働者と官公労の労働者とはやはり違うものがある。これは単に労働者側だけを責めるべきでなくて、経営者側にそういう根本的な姿勢というものが改善をされていかなければならない大きな問題がたくさんあるというふうに思います。  これは一つには何といっても当事者能力がないということは、経営者を信頼せいと言ったって、何ぼ何でも力のないやつを信用するわけにいかぬわけです。ですから、何といっても国鉄再建は労使間の安定であり、労働組合を一本化することであり、四十万の大企業管理運営をきちっとやることであり、そして労使の信頼関係を取り戻すということが大前提でなければならないというふうに私は思います。
  29. 河村勝

    ○河村小委員 もう一つ伺います。  私鉄でも運賃をどんどん上げるわけにいかないし、最近は不動産兼業などもうまくいかなくなっているから運賃だけで賄えるというわけにはいかないというお話しでありましたが、地方の中小私鉄は別にしまして、都市の私鉄に関して言えば、赤字になっておる理由というのは、通勤輸送がどんどんふえて、そのために複線化をやったり、あるいは場合によっては線路を延ばしたりなんかしなければならぬ。それが土地が高くなったりなんかしてばかばかしく金がかかる。だから、その建設費の負担が過大になってくるためであって、したがって、そこのところさえ助成ができれば、あとは適正運賃を決めれば成り立っていくという感じではないかと思うのですが、これはどうお考えでしょうか。
  30. 力徳修

    力徳参考人 大都市輸送というものは、やはり都市政策と無関係では考えられないと思うのです。ただ、運輸政策だけで問題を解決しようと思っても今日解決はできない。都市政策との総合的な観点大都市交通機関のあるべき姿を検討していただかないと根本的な解決はできませんよ。これはイタチごっこになっていくばかりですからね。そういうふうに私は思います。
  31. 増岡博之

    増岡委員長 これにて質疑は終了いたしました。  この際、力徳参考人にお礼を申し上げます。  本日は御多用のところ当小委員会に御出席をいただきまして、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。本小委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日は、これにて散会いたします。     午後一時五十分散会