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1975-06-03 第75回国会 衆議院 運輸委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十年六月三日(火曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長代理 理事 加藤 六月君    理事 佐藤 文生君 理事 佐藤 守良君    理事 西銘 順治君 理事 増岡 博之君    理事 太田 一夫君 理事 金瀬 俊雄君    理事 三浦  久君       大竹 太郎君    佐藤 孝行君       關谷 勝利君    徳安 實藏君       三原 朝雄君    宮崎 茂一君       綿貫 民輔君    久保 三郎君       兒玉 末男君    斉藤 正男君       梅田  勝君    松本 忠助君       河村  勝君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 木村 睦男君  出席政府委員         運輸省海運局長 薗村 泰彦君         運輸省船舶局長 内田  守君         運輸省船員局長 山上 孝史君         運輸省港湾局長 竹内 良夫君         海上保安庁長官 寺井 久美君  委員外出席者         大蔵省銀行局保         険部長     徳田 博美君         水産庁研究開発         部漁場保全課長 山内 静夫君         工業技術院標準         部機械規格課長 逢坂 国一君         気象庁海洋気象         部海洋課長   安井  正君         消防庁予防課長 永瀬  章君         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正己君     ————————————— 本日の会議に付した案件  油濁損害賠償保障法案内閣提出第六四号)      ————◇—————
  2. 加藤六月

    加藤(六)委員長代理 これより会議を聞きます。  木部委員長海外旅行中でありますので、その間委員長の指名によりまして私が委員長の職務を行います。  油濁損害賠償保障法案を議題とし、質疑を行います。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。太田一夫君。
  3. 太田一夫

    太田委員 最初に、本法に直接関係する細かい部分でありますが、本法趣旨本法の本当のねらいを明らかにする意味においてお尋ねをしていきたいと思いますから、そういう意味お答えをいただきたいと思います。  これは御提案の趣旨にありますように、油濁損害賠償責任について行為者の船側の故意または過失の存在を前提とするいままでの不法行為責任一般原則では、これからの現状の油濁の状況にかんがみますときには適切でない、こういう反省が世界各国の間に行われまして、それで賠償の万全を期するという意味から二つ条約ができ上がってきた、こういう経緯がありまして、その条約に基づいてこれを批准するとともに、国内条約国内規則としては現行法制度を改正をしていこう、こういうことでございますね。  こういうことから考えてみますと、いままで船舶所有者責任が明確にされておらなんだということはないと思うのですが、これはひとつ海運局長さんのお答えでよろしいのですが、いままで船舶所有者責任が明確にされておらなんだのか、おったけれども、それではその責任無限大なものがあって、いわゆる現行のまる投げ制度と申しますか、船体一切をどうぞ御自由にしてくださいというようなまる投げ制度、この商法上の制度は、いまの油濁の損害を受けた側にとってみればそれでは利益がない。だからとにもかくにも制限をすることによって船主の持つ賠償能力を強くすること、同時に被害者をも救おうという空気、こういう意図が強く出てきて本法が生まれてきたのか、それともいままで船舶所有者責任制度というのが不十分であったから、それで船舶所有者責任のみを広げるためにこの条約が提起され、わが国もこれを批准しようとしておるのか、そのねらいですね、これをちょっとお尋ねしたい。
  4. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 先生ただいまお話ございましたように、確かに現在の船舶所有者損害賠償責任というのは、商法の六百九十条にあるところの委付主義ということである種の制限がなされているということについては、これは十分でないという認識から始まりまして、それでもっと船舶所有者責任をはっきりさせたいということでございます。そのために責任制限の一種として、いままでの委付主義という、先生ただいままる投げとおっしゃいましたが、そういった不合理な制度をやめて、一定金額制限をしてその責任をはっきりさせようということが一つのねらいでございます。  そこで、当然金額責任ということが出てまいりまして、油濁の場合には特に被害が大きいという場合も予想されますので、一般の物的な損害賠償に対して二倍という金額を設けて、トン当たり四万八千円というような値段に大体なりますが、そういった二倍という金額を設けて所有者責任を明らかにして、金額の上で賠償義務をはっきりさせるということでございます。ただ、金額ではっきりさせますということになりますと、その金額が場合によって高い場合、場合によって低い場合ということがございます。そこで、まずはその金額内の賠償責任強制保険ということで保険をかけさせることによって完全に履行する準備をさせる、しかしながら、なおもっと事故が大きくてその船舶所有者責任だけでは全うできないという場合が予想されますので、それは国際基金という制度をつくって、それによって補っていこうということを二重に考えているというのが今度の新しい制度と考えております。
  5. 太田一夫

    太田委員 だから、保険完全賠償をさせようということは、完全賠償させるのですから、受ける側にとってみればそれは安全な制度でありますから、被害者を救うという相当の大きなねらいがある。しかし相当大きい場合にはこれに限界を設けて限度額以内に抑えて船主保護しようというものがある。ウェートはどちらにあるのですか。
  6. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 委付主義にしましても金額主義にしましても、一定限度にやはり船主責任を抑えたいというのが共通した海事関係損害賠償の思想だと思うのですが、それによって船舶所有者責任というものを一定限度制限するということは基本的にございますけれども、この油濁の場合には特にそういった損害額が大きくなった場合に船主だけの責任で全うできないようなときに、国際基金制度をつくってそれを国際的に保護していこうということで、油濁の場合についてはそういった二重の構えをつくることによって被害者保護に万全を期していくという考え方でございます。
  7. 太田一夫

    太田委員 そこでお尋ねいたしますが、伊良湖の沖で発生しました日聖丸、それからもう一つ日興丸事件二つありましたが、これはこの前何か御説明いただきました数字が、聞いておりました分において詳細明らかでありませんでしたので、重ねてひとつ細かくお尋ねしたいのですが、日聖丸日興丸二つ事故に対する船主保険保険金幾らであったのか、それから賠償要求額幾らであったのか、そして最後、損害賠償実行額幾らであったか、この三つの点についてひとつ数字お答えいただけませんか。
  8. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 損害要求額というものが幾らであったかということはちょっと明らかでないのですが、日聖丸日興丸について本法を適用すれば責任限度額幾らになるか、それからそれに対して損害賠償額は実際幾らであったかということを申し上げてみたいと思います。日聖丸重油を約九百キロリットル流したという四十八年五月の事故でございますが、この場合に今度の責任制限を適用いたしますと、責任限度額は三千万円程度でかなり安い金額が出てまいります。それに対しまして実際の損害賠償額は、漁業損害補償が一億六千万円それから防止措置費用が三億円、合わせて四億六千万円と実際に損害賠償額は非常に高くなっております。これはおそらく全額が日本PI保険の手によって支払われたものと思っております。それから日興丸ですが、これは四十八年十月の事件でございまして、重油を約三百八十キロリットル流したということでございます。本件にこの制限額を適用いたしますと、制限限度額は千九百万円くらいになる、それに対しまして実際PI保険から損害賠償が行われた額は、漁業損害賠償額が約二億五千万円それから防止措置費用が一億二千万円、合わせて三億七千万円程度のものが出ているということでございます。したがって、今後こういう事故が起こりましたならば、もちろん保険金によって支払われるということは当然でございますけれども、もし万一この限度額を超えまして、保険によるところの所有者賠償責任というものが十分でないという場合がございましたら、これは被害者が直接国際基金補償を求めるという制度によって国際基金によって支払われるという制度になると思います。
  9. 太田一夫

    太田委員 そういたしますと、日聖丸の場合は三千万円の責任限度額、これに対して実際上PI保険の払いましたのが四億六千万円。四億六千万円ということになりますと、その差が余りにも大き過ぎますね。これは日興丸とて同様でありまして、限度額千九百万円という制限をされた場合に、それでは不十分だからといって国際基金補償を求めた場合に三億七千万円にはならないでしょうね。そういうことはどうなのですか。
  10. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 掛けたPI保険によって、あるいはまた示談によってこの損害賠償責任をどうするかという問題がありますけれども、もしそういう保険制度補償金額が不十分な場合には、国際基金被害者が直接請求をしてその補償を求めることができるという新しい制度になります。
  11. 太田一夫

    太田委員 だから、そのことを具体的に言いますと、日聖丸は四億六千万円では不十分だ、日興丸の場合は三億七千万円では不十分だといいましたときには、国際基金にさらにそれに上乗せをする補償を求めることはできますか。
  12. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 示談の結果もっと大きな金額が出ても、国際基金補償を求めることができると思います。
  13. 太田一夫

    太田委員 国際基金補償を求める金額は、限度はどこまで求められますか。
  14. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 一応国際基金補償できる限度は百八億円までということであります。それからさらに、そういった事故が頻発して、もっとふやすという必要がある場合には、総会の決議によって二百十六億円までその金額をふやすということができるような国際基金の規定になっているということでございます。
  15. 太田一夫

    太田委員 そうすると、そういう日聖丸日興丸のような小さな船の場合には、トン数によって限度額は小さいけれども、国際基金に求めることのできる補償というのは百八億まで船の大小を問わずに行うことができる、こういうことですか。
  16. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 そのとおりでございます。
  17. 太田一夫

    太田委員 そうしますとジュリアナ号の場合は、これはあの大きな事故でありましたにもかかわらず限度額にも達しない賠償金でございましたが、そういう場合が多いのですか。
  18. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 今度の制限金額トン数単位に、船の大きさを単位に、それに四万八千円という責任限度額を乗ずるということによって責任限度額が決まるというたてまえになっておりますので、たとえばいまお話がございましたジュリアナ号ですと、船のトン数が大きゅうございますから、これは総トン数で申しまして一万一千トンございますので、そのトン数責任制限額の四万八千円というものを掛けてまいりますと、責任限度額は約四億五千万円という大きな数字になります。それに対して先生お話がございましたように、実際の賠償額示談でいろいろな金額を含めて約二億七千万円で済んだということでございまして、大体傾向として、船のトン数が大きい場合には責任制限額が大きくなる、その実際の事故はそれほどでもないという場合には示談でそれを下回った金額が出てくるということになると思います。
  19. 太田一夫

    太田委員 そこで現在のPI保険付保状況についてちょっとお尋ねをいたしますが、二千トン未満であろうがなかろうが、現在ほとんどのタンカーは付保されておると聞いておりますが、そういう状況でありますか。それとも付保されておらないタンカーもあるのでしょうか。
  20. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 二千重量トン上下を問わず一〇〇%タンカーは付保されておると御理解願って結構でございます。ただ、詳しく調べてまいりますと、実は百トン未満タンカーPIが付保されている隻数はわかりますけれども、百トン未満タンカー隻数というものがちょっとつまびらかにできませんので、百トン未満の一番小型のところだけ一〇〇%であるということをちょっと申し上げられないのですが、百トン以上の船については二千トンの上下を問わず一〇〇%付保されていると御理解願って結構でございます。
  21. 太田一夫

    太田委員 そうしますと、かかっておる保険金というのは、そのトン数ごと平均をいたしますと、どのようになっておるのでしょうか。
  22. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 日本PIに付保されている金額階層別に当たってまいりますと、百トン未満のものが平均保険金額が四億二千三百万円、それから百トンから二百トンまでのものが六億八千二百万円、それから二百トンから三百トンのものが十億四千六百万円、それから三百トンから四百トンまでの間のものが十二億八千九百万円、それから五百トンから千トンまでのものが二十五億円、それから千トンから二千トンまでの分が六十五億円九千五百万円、それから二千トンから三千トンまでのものが六十七億八千六百万円、それから三千トンから一万トンまでの分が五十七億八千万円、それから一万トンから一万五千トンまでの分が二百億円、それから一万五千から二万トンまでの分はたまたまございません。それから二万トンから三万トンまでの分が同じく二百億円、三万トンから四万トンまでの分が同じく二百億円、四万トンから五万トンまでの分が二百四十一億円、五万トンから十万トンまでの分が二百一億円、十万トンを超えて十五万トンまでの分が二百二億円という保険金額になっております。ただ、これは油濁分だけの保険ではございません。PI保険全般でありますから、第三者に与える損害補償のために掛けておる保険金額ということでございます。
  23. 太田一夫

    太田委員 したがって、相当高額の保険が掛かっておるというわけでありまして、ほとんどの場合の油濁は、実例から見ますると、本条約基金に要求するとかあるいは制限をしなければならぬとか、あるいはまた示談が調わなくて紛糾するというようなことはあり得ないですね。その点、御見解いかがですか。
  24. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 なるべくこの保険範囲内で示談によって被害者との間の話をまとめていくということが大事なことだと思っております。
  25. 太田一夫

    太田委員 というようなお話から承りまして、本法が施行された場合、だれがどういう場合に利益を得ることができるであろうかということを想像してみますると、非常に希有な例にしか当てはまらないのではないかと思いますが、だれがどのような場合に利益するかと、これによって非常に助かるか、どういう場合が想定されますか。
  26. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 いままでの例と違いまして、まず委付主義だけで船をまる投げにして終わってしまうというようなことがないという意味被害者保護に十分役立つと思います。  それから、いままでだったら大体不法行為責任というものは過失責任主義でございましたけれども、今度は無過失責任主義という厳格な責任主義になりますので、被害者保護に欠くるところがないようになると思います。  それから、船舶所有者が集中して責任を負うことになります。その点でも責任の所在が裁判所で争われることなどの手数がなくて、所有者が一元的にその責任を持つということで責任の主体が明確になると思います。  それから責任制限制度を援用することでございますけれども、もし万一船舶所有者賠償能力に欠けるところがあるという場合には国際基金がその補てんをするということで、被害者保護に欠くるところがないように国際的になるということでメリットは出てくると思います。
  27. 太田一夫

    太田委員 たとえば二千トンの船は六十五億九千五百万も保険が掛かっておると先ほどおっしゃいましたですね。二千トンで六十五億九千五百万の保険が掛かっております場合に、輸送中の油が流出いたしまして損害を与えたというような場合に、先ほどの具体的な例から言いまして、この保険金額以内の示談で話がつかないというようなことはちょっと考えられないと思いますが、いかがですか。
  28. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 外国の例を見ましても、日本の例を見ましても、一応掛けた保険金額範囲内でおさまるという実態だと思います。ただ、先ほど申し上げましたように、日聖丸だとか日興丸だとかいうような例がございまして、その船のトン数が小さいときには責任限度額は小さくなりますので、恐らくこういった責任制限制度を援用しますと、保険金額の中で一部の支払いが行われてあとは国際基金にその保障を求めていくという制度が出てくると思います。
  29. 太田一夫

    太田委員 そこでもう一つ局長お尋ねいたしますが、外国船わが国領域の中における油濁において、向こうが保険に入っておらなかった場合に、いままでの場合、非常に損害賠償交渉がむずかしくなる。今度は保険に入っておらない船は入れない、そういう利点が出てくるのですか。これは予想されますか。
  30. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 お話のとおりでございまして、その保険に掛かっている船でなければ港に入れないという制度にいたします。
  31. 太田一夫

    太田委員 それが一つ利益でございましょうね。  そこで、PI保険について重ねてお尋ねしておきますが、PI保険そのもの経理状況収支状況は最近どのようになっておりますか。保険支払いが多くて収支は苦しいのであるのか。それとも、これは剰余金を出しておるのかどうか。
  32. 徳田博美

    徳田説明員 お答え申し上げます。  日本船主責任相互保険組合の最近の経理状況でございますが、四十九年度の決算はまだ確定しておりませんので、四十八年度の数字で申し上げますと、収入保険料が年度間で五十二億二千九百万円ございますが、このうちからかなりの部分を再保険に出しておりまして、三十六億二千六百万円を再保険に出しております。したがいまして正味保険料は十五億九千五百万、こうなっております。このほかに再保険手数料収入が一億一千二百万ほどございまして、この二つ収入になるわけでございますが、一方、支払いの方を申し上げますと、支払い保険金は二十七億二千三百万円でございます。このうち再保険金として受納した金額が十五億四千一百万円ございまして、この組合の負担した正味支払い保険金は十一億七千六百万円でございます。これに対しまして事業費が二億一千三百万円、それから支払い予備金、これはまだ未払いの保険金でございますが、これが七億三千八百万ございます。これを差し引きますと事業損益では四億二千万円の赤字になります。これに対しまして事業外損益、これは主として資産運用収益でございますが、これが四億二千一百万円ございまして、差し引き当年度につきましては約五十万円の黒である、ほぼ収支とんとん状況である、こういうことでございます。
  33. 太田一夫

    太田委員 それは、さらにこの経理状況から予測いたしますと、     〔加藤(六)委員長代理退席西銘委員長代理着席〕今度のこの保障法案ができ上がりました後においては、その数字に何らかの要素が加わって大きく変動するということはあり得ますか、プラスにしても、マイナスにしても。
  34. 徳田博美

    徳田説明員 その点でございますが、これは先生御承知のことと思いますけれども、相互保険組合保険仕組みでございますが、これは定款、業務方法書によりまして、みずから保有することのできる保険金額につきましては限度が定められておるわけでございます。これはこの保険組合支払い能力あるいは資産状況から申しまして無限に自分のところで持つわけにいきませんので、それに見合った特定の限度しか保有しないで、それを超えた分は全部再保険に出すという仕組みになっておるわけでございます。たとえば総トン数六千トン未満船舶については三千万円、総トン数六万トン以上の船舶については二億五千万円、このような限度額が決まっているわけでございまして、これを超した分は全部再保険に出しております。したがいまして、その分が収入保険料の約六割に達しているわけでございますが、このような場合に事故が起こりますと、まず、いま申し上げました保有限度内の事故であれば、これは全部自分組合のところで負担して保険金を出すわけでございます。それを超した大きな損害が起こりますと、これは再保険先から保険金をもらう、こういう仕組みになっておるわけでございます。  そこで、現在のこの制度が、いま御審議いただいている制度が導入された場合に、御指摘のように経理にどのような影響を及ぼすかということでございますが、現在二千トン以下の船舶につきまして当組合で保有している額は、これは船の大きさによって異なりますけれども、トン当たり一万五千円から二千五百円までの間に抑えられているわけでございます。したがいまして、トン当たりこれ未満の災害であれば全部自分のところで保険金を支払う、こういう仕組みになっておるわけでございます。ところが、現在御審議願っております法律案によりますと、トン当たり限度は四万八千円ございまして、これと比べますと、現在各組合が保有している保険はこの限度を下回っているわけでございます。したがいまして、常にフルに保険金を支払う、この限度内においては常に保険金を支払うということについては、本制度が行われた際でも現在とも少しも違いがないわけでございます。したがいまして、本制度はこの相互保険組合経理には影響はないと、このように考えております。
  35. 太田一夫

    太田委員 そうしますと、これは局長お尋ねいたしますが、今度この法律ができますと、これは無過失事故による賠償責任が出てくるわけでありますから、それだけは大きく態様が変わってくるわけですね、油濁の損害賠償の。で、いまの保険経理には余り影響がないとおっしゃったから、この点についてはそれならそれでいいと思うのです。ならば、無過失事故というのはいままで保険賠償になっておらなかったのであると思いますが、新しく入ってくるこの無過失事故はどんなものがあるか。この前、たしか台風のときの事故ということで一つおっしゃったことがあったのですが、台風時の座礁したとか何かのほかに、どのような具体的な態様事故のことがあるでしょうか。
  36. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 無過失の一番端的な例を申し出すと、相手方船舶の一方的な過失によって本船が衝突されて油が流出するというような例が考えられると思います。それから、台風お話が出ましたが、この法律案では一応一般的に無過失賠償責任を負うということになっておりますが、ただし戦争、内乱または暴動の場合、それから二番目に異常な天災地変の場合、それから三番目に第三者の悪意の場合、それから四番目にもっぱら国または公共団体航路標識等の管理の瑕疵によってその事故が起きた場合ということが立証されますと無過失責任は負わないということ、賠償責任は負わないということになっておるわけでございます。  このうちで、実は異常な天災地変という場合はどういう場合であろうかということを考えねばならないのですが、これは条約原文によりますと、例外的な、不可避的な、さらに不可抗力的な自然現象ということが条約原文に書かれておりますので、先般もちょっと本委員会お話が出ましたように、たとえば海底の爆発というようなことは、この異常な天災地変の中に入りますけれども、普通の台風のような場合にはこの中に入らないということであります。したがって、そういった場合も、普通の台風のような場合にはやはり損害賠償の責めに任ずるんだということに解釈をしていいと思うのであります。
  37. 太田一夫

    太田委員 局長台風の場合の事故というのが無過失事故の中心をなすということですか。過失を負うべき相手方の船が一方的に追突をしてきた場合とか、そういう場合もあるでしょうが、台風の場合の事故というのが一番多いのでしょうか。
  38. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 そのとおりでございます。
  39. 太田一夫

    太田委員 そこで、ちょっと、これはだれになりますか、局長ではなく水産庁ですか。  これには原因者不明の油濁損害補償というのは取り入れられておりませんから、何かこの間の御答弁だと六年間に二十三件、三億六千五百万円の事故が発生をしておると、こういうことでありましたが、その問題に対して、何か民間で公益法人をつくって何とかやるからいいよというような御答弁だったと思いますが、将来もう少し積極的な構えがあってもいいのじゃないかと思いますが、これはいかがですか。どなたがお答えいただけますか。
  40. 山内静夫

    ○山内説明員 先生御指摘のように、現在原因者不明の油濁事故につきましては財団法人をつくりまして、そこでこの制度とは別に自主的に救済金を支払う、こういう仕組みをとったわけでございます。この問題につきまして、油濁等による財産被害補償の問題につきまして、ことに原因者不明の場合には、従来、事例がなくて非常に法律制度化することがむずかしい、こういうことから、この二年間、ことし来年の二年間にわたりまして環境庁を中心といたしまして、この問題の法的検討を詰めると、こういうことになっております。その後におきまして新しい法律制度と、こういう方向に現在進んでおります。
  41. 太田一夫

    太田委員 その場合は主として漁業被害でございますね。もちろん、ノリだとか魚だとかいう海産物の被害が多いことはわかりますが、海岸の汚染というのもありますね。これは運輸大臣、運輸省は環境保全について非常に熱意を持って、海岸の保全とか、あるいはその海岸をさらに美しくする美化だとか、そういうことのためにも予算を要求されておったと思うのです。ですから、海岸の汚染は一体どうなんですか。この財団法人で、公益法人で補償ができますか。
  42. 山内静夫

    ○山内説明員 現在、漁業被害を与える海岸の汚染等につきましての防除清掃費というものはめんどうを見ると、こういうたてまえになっております。
  43. 太田一夫

    太田委員 観光地の観光資源ということになると、ちょっと違うですね。大臣どうですか。
  44. 木村睦男

    ○木村国務大臣 いま水産庁から答えられましたようなことで、いまの機構で見てもらうことになっておりますが、その油による損害が、観光資源がやられたというふうな場合にはどういうふうになりますか、水産庁の方でどういうふうな解釈をされて、いまの機構の中でそれが見れるかどうか、ちょっと私も答弁ができませんが……。
  45. 太田一夫

    太田委員 いま水産庁の山内漁場保全課長のおっしゃったように、ある程度海岸の汚染までこの損害賠償の対象になるようにおっしゃったが、いいことでありますし、将来これは立法化して、さらに完全なものにするとおっしゃったんですから、原因者不明の事故汚染に対しても将来明るい展望があると私ども理解しておきたいと思いますが、海岸環境の整備事業というのは、これは観光施設の整備あるいは観光地区の整備、海洋性レクリエーション施設・地区の整備というような意味で、昭和五十年度においては相当額の予算を投入してやるんだと、海岸環境整備事業というのは五十年度事業費五十億一千万円ということが何かに発表されておったように思います。ですから、そういうのもあることですから、将来これは系統的に一つにしないと、一体海岸はどこだということになりますと、海岸の問題を議論するのには、運輸省、建設省、農林省あるいは環境庁というようなぐあいに、非常に対象ですか、管轄官庁が多うございまして、どこが中心だかわからないという、それに自治省が加わりますね、地方自治体が加わります。私は、この海岸の汚染というのはほっておくことはできないと思いますが、とにかく原因者不明の油濁損害本法の対象外であることは明らかだ。そこはいいです。これも本法はそういう意味のことを、船主責任を言っているわけで、しかし、もとを言えば船がほとんどだと思いますから、船主であることが判明できなかった方に落度があるといえば仕方がありませんが、しかし船が油を流したことは間違いない。これは九分九厘間違いない、これは陸上からも来るでしょうけれども。そうしますと、いずれかの船ということになるならば、船主は連合してその賠償に任ずべきものだと思いますが、その制度ができ上がらないのは仕方がありません。けれども、いまのただ民間の公益法人に一任するということも心もとないと思いますから、これは大臣、ひとつ海岸美化の問題はひとつ観光政策ですか、何かのところで関連して考えてください。
  46. 木村睦男

    ○木村国務大臣 観光資源といいますか、観光という観点から、この油による被害を受けてそれを清掃するという問題は、やはりいまちょっと資料も見てみたいのでございますが、その海岸を管轄しております地方公共団体がやはり中心になって清掃に当たらなければいけない、こういう仕組みになっておるようでございますし、私もそれが妥当な措置ではないかと思っております。
  47. 太田一夫

    太田委員 しかし、海岸環境整備事業は五十年度五十億一千万円あるじゃありませんか。それは地方自治体でもありますけれども、九十九里浜何とか開発計画とかよく運輸省はおっしゃいますけれども、きょうは観光政策を私はお尋ねしておるわけではありませんので、大臣、海洋汚染は、そういう意味で漁場とか、あるいは海上交通安全施設等とか、あるいは油防除設備、薬品等の損害ということのみならず、人間の健康というもの、海岸に住む人たち、あるいは日本国民すべての人たちの健康に非常に影響してくることでありますから、レクリェーションというより、観光レクリェーションというのは国民の健康を守りそれを増進するというところに目的があるんですよ、単に娯楽じゃございませんから、そういう点でひとつこれも閣議等においては何らかの御関心をお示しをいただきたい。  先に急ぎます。  領海の問題について重ねてお尋ねをいたしますが、三海里説、これをいま大臣にお尋ねして、大臣なり局長なりがこうだとおっしゃることができないとは思いますが、本法現行領海三海里という問題を前提としていまのところは適用されることになる。だが、十二海里になりましたならば本法の効果は大であるのか、同じなのか、その点どうですか。
  48. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 この一九六九年条約が審議されるときに、やはり現在海洋法会議で世界じゅうで論議されているような問題があったと思うのです。それぞれ各国三海里をとっているところもあれば十二海里をとっているところもあるというような、各国の利害関係はいろいろございましたが、一九六九年のこの条約をつくるときには、そういった各国の立場はまちまちであっても、一応その領海内ということで統一しようじゃないかということになったと私は承知しております。したがって、現在のところわが国で申しますと三海里の領海内で生じた油濁事故について適用されるということでございまして、その領海の外になりますと公海ということで、本法は適用にならないということでございます。ただし、油濁事故が公海上で発生しても、領海の中にまでその油濁の損害が押し及ぼされるような場合には本法が適用されるということは、この法案に盛られている内容でございます。
  49. 太田一夫

    太田委員 だから局長さん、十二海里になったら本法はさらに効果が大になるのか、同じなのかと聞いているわけだが、どちらでしょう。そこのところをちょっと……。
  50. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 当然十二海里になりますとその分も、自動的にこの法律案の表現の中で領海内と書いてある、その領海内に入ってくると思います。
  51. 太田一夫

    太田委員 入ってくるが、入ってきたってその被害者の受ける利害というのは何も変わりないんだと、三海里であろうが十二海里であろうが一緒だということなのか、十二海里になれば非常にメリットは大であると予見されるか。
  52. 木村睦男

    ○木村国務大臣 これは、領海の範囲が十二海里になると広がるわけでございますから、この法律が、そもそも船主の救済にもなりますし、また被害者の救済にもなる、両方立場を考えてつくられている条約であり、法律であるわけでございますので、領海が広がりますと、その広がった中で起きた事故がすべてこの適用を受けるわけでございますので、私は、領海が広がれば、この恩典を受ける範囲が広がるということで、有利になる範囲が広くなる、こういうふうに考えてよろしいんじゃないかと思います。
  53. 太田一夫

    太田委員 そういうことであろうと私も思います。それは常識ですね。いま三海里説をとっておるわが国が、漁業の問題あるいはいまの油濁の問題、その他やっぱりそれだけの制約を受けておるだろうということは容易に想像できることでありますので、これはいま運輸省が云々とかどうということじゃなくて、海洋法会議の結末ということを、現在お話し合い中でいらっしゃるようでございますから、その結果によって決まることでしょう。将来それが変わったときには、言うならば法の活動も活発化すると受け取っておきます。  次の問題に移りますが、海上汚濁の監視方式でございますが、海上保安庁と気象庁の両方からお答えをいただきたいんですが、海上保安庁は大型タンカーの航路の監視を強化していらっしゃるようでありますし、那覇にタンカーの主要航路の監視をするための航空基地をつくるというようなことの動きもあるようでございますから、この海上汚濁の監視方式というのは相当整備されておると思いますが、近海の、あるいは外海の汚濁の監視方式、船がたれ流しして逃げたり、あるいは大きな事故をうっかりそばまで来るまで、領海内に入るまで知らなんだというようなことのないように監視方式が整備されておると思いますが、その現況について海上保安庁と気象庁からお答えをいただきたいと思います。
  54. 寺井久美

    ○寺井政府委員 海洋汚染の監視につきましては、当庁といたしまして組織、要員の増員を図ってきておりますし、また、監視用のヘリコプターの増強、あるいは汚染度を分析いたします分析測定器の整備を毎年図って増強をしてまいっておる状態でございます。具体的に申しますと、タンカーなどの船舶の航行の実態と、それから汚染源の密度に応じました監視海域を定めまして、この海域で巡視船艇と航空機を連携させまして配備して監視を続けております。たとえば東京湾、伊勢湾、瀬戸内海などにつきましては、原則として毎日二回航空機を飛ばし、これに数隻の巡視船艇を連係させて監視をするという仕組みをとっております。また、夜間につきましては、赤外線を利用いたしました油の排出検索装置を装備した航空機を飛ばせて、これも海上の船と連係をして監視を実施いたしております。現在の御討議とはやや外れますが、工場排水も汚濁に非常につながっておりますので、工場排水に関しましては臨海工場につきまして随時あるいは定期的に水質の検査を行っております。また、多少違反の疑いがありますときには継続してこの調査を実施しております。  このほか、海事あるいは漁業関係者にお願いいたしまして、海洋汚染防止モニターということで六百五十六名の方をモニターにお願いいたしまして、海洋汚染の発見、通報を迅速にしていただくようにお願いいたしております。もうすでに御案内と思いますが、海洋汚染防止法に基づきまして、油が広範囲に海洋に広がっているものを発見した場合には、遅滞なくこれを最寄りの海上保安庁の事務所に通報することになっております。こうした制度とかみ合わせて現在海洋汚染の監視を行っている状態であります。
  55. 安井正

    ○安井説明員 いまの太田先生の御質問でございますが、気象庁といたしましては、昭和四十七年度より海洋汚染の問題に取り組んでおりますが、気象庁といたしましては主といたしましてバックグラウンドと申しまして、地球の基本的な汚染の状態を担当さしていただいております。そういたしまして、気象庁の主たる海洋業務といたしまして、海洋観測、海上気象観測というものを持っておりまして、西太平洋の広いところの観測をしておりまして、それにかぶせまして汚染観測いたしておる現状から申し上げますと、外洋の方の油の汚染といいますのは薄められておりまして、非常に薄いものでございます。そういたしますと、当庁が汚染業務を開始いたしました昭和四十七年ごろの技術水準からいたしますと、なかなか最小の検知能力までにも及ばず、そういう汚染観測をいたしましてもなかなか引っかからないという問題がございまして、一応そういう西太平洋のような広いところの油汚染については気象庁として手をつけておりません。沿岸の部分につきましては、いま海上保安庁長官お話のように監視いたしておる次第でございます。
  56. 太田一夫

    太田委員 寺井海上保安庁長官、大型タンカーの主要航路の監視強化のための那覇の航空基地というのはあなたの方の基地でしょう。これは発動しておるのですか。
  57. 寺井久美

    ○寺井政府委員 那覇の航空基地はまだ発動いたしておりません。本年度内に整備することになっております。
  58. 太田一夫

    太田委員 急がれることを期待しておきます。  最後に、臨海地帯にありますタンクの問題についてちょっとお尋ねをしておきます。  水島の事故に端を発しまして、各地臨海工業地帯に近接する油のタンクの危険度につきまして、それぞれ消防庁が指示を出しまして現地の消防局において調査を進めておったようでありますが、この五月の三十一日に名古屋市の消防局は、日石、兼松江商、出光興産、三社の一万リットル以上のタンク四基について改修命令を出した、こういうことでございます。  そこでお尋ねしたいのは消防庁と通産省でありまして、この両方にひとつお尋ねをしますが、通産省の方にはタンクの設計を決めるJIS規格、私どもそう思っておりますが、何か最近はタンクの大型化とともに軽量化が進んできまして、コストダウンを図るために鉄板の厚みが薄みを求めて、高張力炭素鋼を使っておるタンクがふえてきた。そのために、側板と底板との間の継ぎ目部分のひずみとかいうようなものが相当指摘をされておるようでありますが、JIS規格そのものというのは何か聞きますと、アメリカのAPIの基準をそのまま持ってきたものだとかいうような話もありますが、一体これは現状において再検討を加えられておるか、タンクの安全のためにはJIS規格そのものをさらに改めるという必要に迫られて何か検討を加えていらっしゃるか、このままでいいということになっておるだろうか、その点についてまず通産省の御見解を承りたいと思います。
  59. 逢坂国一

    ○逢坂説明員 石油タンクのJISにつきましては、現在JISのB八五〇一という規格番号のものがございます。これは昭和三十七年に制定のものでございますが、当時から比較的中小規模のものを対象に想定いたしまして、地上部分についての構成部分が主体でございます。したがいまして、その内容につきましては、材料でありますとか溶接部分の設計などでございます。この規格の改正につきましては、昭和四十九年の三月に日本工業標準調査会というところに付託いたしまして、一般機械部会の石油貯ソウ専門委員会で検討中でございます。  これの改正の主眼点でございますが、先ほど先生からもお話しございました大型大規模のものについての設計を考える、それから高張力鋼などの新鋼材について追加する、あるいは最近とられております風圧耐震設計というようなものについても加えたいというようなことでございます。その後先般の水島事故がございまして、この件につきましての教訓を取り入れるということにつきまして、あわせて委員会にお願いしているところでございます。
  60. 太田一夫

    太田委員 ひとつ、これは通産省の方も一はだ脱いでいただかなきゃならぬと私は思うんです。ほとんどのことは、その安全基準の問題は消防庁のものだということではいけないのでありまして、JIS規格によってつくられたタンクがでこぼこに相なるというようなことになれば、今度は消防庁がそれは危いから直せということになる。つくる、直す、直す、つくるなんというようなことの繰り返しでは困ると思いますから、ぜひひとつ一奮発してください。  消防庁にお願いいたしますが、消防庁通達の安全基準、不等沈下量が直径の百分の一を超えるか、または三百ミリを超えたとき、あるいは内部底板の傾斜沈下が三百ミリを超えたとき、これは直さなきゃならないということであるようでありますが、この消防庁の通達の基準というのは、いままで不等沈下量がタンクの直径の二百分の一以上ということに通達の基準がなっておったようでありますが、最近安全基準として百分の一というふうにお改めになったというふうに聞いておりますが、そういうことでありますか。
  61. 永瀬章

    ○永瀬説明員 先生お尋ねの件でございますが、おっしゃいますとおりに最初不等沈下をしているタンクについて調べましたときは、一応の目安として直径に対しての傾斜量が二百分の一以上のタンクにつきまして内部点検をするようにという考え方で指示いたしまして、それから次に、先生いまお話の点でございますが、五月二十日に、内部点検をいたしましたタンクをあとどのように措置すればいいのか不明確でございましたので、それに関しまして通達を出したわけでございます。この中で二百分の一の傾斜のものはすべて基礎を直さなければならないということには必ずしも相ならないのではないかというので、二百分の一の半分の傾斜でございます百分の一以上の大きな傾斜のあるものと、それから内部をあけてみますと底板が波を打って局部的な沈下をしているものがございますので、このような局部沈下のものは絶対値が三百ミリ以上傾いている、これも基礎を修正していただくものとして、一応の基準として出したわけでございます。内部点検するものと基礎を直すものというのは、基礎を直す方は傾斜の大きいものという考え方でございます。
  62. 太田一夫

    太田委員 傾斜の大きなものに対して改修命令を出すということについては常識的に理解できるわけですね。ですが、どっちみちこれらのタンク四基は名古屋港の九号地にあるわけですから、埋立地で基礎が弱いのです。どこでもそうなんです。水島もそうなんです。ですから、日本全国にタンクから油が流出するおそれのある地域というのは非常に多いと見なければなりませんから、消防庁の基準も百分の一が妥当であるなら百分の一でもいいと思いますから、厳しくそれを調べて見逃すことなく何とかしてほしいと思うのですね。三重県の方の関係では、四日市のタンク群はパスしておるという話があるが、甘い基準ではいけないのではないか、こう思います。なるべくこれは厳格にやってほしい。そこで消防庁は、先ほど工業技術院の課長さんのお話にありましたように、JIS規格の問題もありますけれども、あなたの方からも意見は言って、陸上からの油流出による海洋汚染の絶滅を期すという心構えについては、後追いでなくて先導型の御指導をひとついただきたいと思いますが、いかがですか。
  63. 永瀬章

    ○永瀬説明員 先ほど通産省の方からお話もございましたが、私どもといたしましても、現在消防庁に設けました水島のタンク事故事故原因調査委員会の審議はなお続いておりまして、それの結論が出ますれば、タンクのどういう部分が悪かったから起こった、あるいは基礎のどういう部分が悪かったから起こったのかというようなことは明確になってくると思います。明確になりました後、私どもで対策を打ち立てたいと思っておりますが、さらに、外国の事例等もございます関係上、専門家によるタンクのあるべき姿というものをさらに検討していただき、将来に向かってきちんとした規格をつくっていただくということをさらに継続して考えていきたいと考えております。その結果等についてはまた技術院の方とも十分連格をとりたいと考えております。
  64. 太田一夫

    太田委員 終わります。
  65. 西銘順治

    西銘委員長代理 久保三郎君。
  66. 久保三郎

    ○久保(三)委員 本法についてはすでに皆さんからそれぞれしさいに質問がありましたので、私から質問するものはそうたくさんはないのでありまして、ただ航行の安全という問題を中心にしてお尋ねをしたいと思うのです。  その前に、いま太田委員からの質問の中にありました海岸の汚染についてでありますが、御答弁を聞き漏らしたのでありますが、この法律によります制度は領域に及ぼした油濁損害補償するということになっていますから、太田委員が指摘された海浜といいますか、こういうものの汚染についてもその費用はあるいは損害は当然補償するもの、こういうふうに承知してよろしいかと思います。それはどうお考えですか。  それからもう一つ、続いて領海の問題もいまお尋ねがありましたが、領海の問題はいまお話があったとおりだと思うのですが、ついては関連して、経済水域の問題ですね。これは日本の国にとっては漁業関係においてかなり深刻な問題があると思うのです。こういうものはこの法律ではカバーしないと思うのですね。経済水域は領域の中に入るのかどうか、これをお尋ねしましよう。
  67. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 最初の、油濁の事故が原因がはっきりしておりまして、それでその原因に基づいて海岸に汚染の損害を生じたときに、その被害請求は当然この法律によって、原因がはっきりしているところの原因者に対して、いわば船主に対して本制度によって賠償の請求をしていただくことは可能である、そういう制度はこれによってできているということでございます。  それから経済水域のお話が出ましたが、この法律は領海内における事故、そのための賠償義務、そのための責任の所在ということを書いてありますので、あくまでも領海に限るということでございますので、経済水域には及ばないということでございます。先ほどちょっとお答えしましたが、公海の中で事故が起こった、その被害が領海の中に及んでくるという場合には、これは領海内の問題として取り上げることができるどいうことでございます。
  68. 久保三郎

    ○久保(三)委員 次には、これも皆さんからお尋ねがあったと思うのですが、本法での最高責任額はそれぞれ決められているわけでありますが、この決められた額以上にはいまのところは損害を予想しないのかどうか。概念としては、この法律によって決められた最高責任額ですか、限度額、これは普通の場合は一億二千五百万金フラン、トン当たり千五百金フラン、これが責任額ですね。それから限度額は二億一千万金フラン。それ以外に、いわゆる基金補償する限度というのがその上積みにあるわけですね。そうしますと、その上積みされても四億五千万金フラン、日本円に直して約百八億円、こういうものが限度なんですね。日本の国の油濁損害は、御承知のようにトリー・キャニオンみたいに外洋に面した余り漁業に関係のないイギリス海岸のようなわけにはいかないと思うのですね。東京湾にしても瀬戸内にしても、特に漁業の問題は単に魚をとるという漁業だけではなくて養殖の問題もございますから、そういう問題を含めて考えますればかなり多額のものが予想される。そういう考え方からいくならば、これで足りるであろうか。最大限のというより最大の損害が起きた場合にはどうなんだろう。限度以上のものについては一般のこれまでのとおりの保険というか、そういうものでカバーするのだろうと思うのでありますが、せっかくできた制度ならば完全無欠にやってみたらどうだろうという気持ちもあるわけなんですね。その点どうですか。
  69. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 やはり、漁業補償などの点から日本の事情に特異なものがあるのじゃないかという先生お話、確かにそういう点はあろうと思います。ただ、具体的な例としまして、先ほどもちょっとお話が出ましたが、例の新潟のときのジュリアナ号ですが、これも漁業補償も入れまして、それから魚屋さんの被害補償というものも入れまして、流出した原油が七千二百キロリットルだったのですが、損害賠償額は二億七千万円余りで済んだというのが四十六年の新潟のジュリアナ号の例でございます。  それから、四十九年の最近の例を見まして、日本PIに加盟している船舶の起こした油濁事故百二十三件について、私ども平均賠償額幾らかということを実績として調べてみましたら、平均賠償額が二百十九万六千円ということで、四十九年の実績として一件当たりの賠償額はそんなに高いものでないということが一つ判明しております。それから、一番高い賠償額が、そのうちで件数を拾って幾らであったかというのが七千九百万円でございます。しかも本件の責任限度額トン当たり四万八千円というものを超すのがその百二十三件のうちでただ一件だけでございました。  そういったいままでの例から見て、私どもは現状において百八億円までの用意を国際基金にしておいてもらえば、日本の特殊な事情にかんがみても大丈夫ではないかと思っておるわけです。  それから、タンカーの技術革新もございますので、しかし水島事故では大きな被害が出たではないかというお話もよく出るのですけれども、タンカーの技術革新ということもございまして、一挙に全部のタンカーから何十万トンという油が出るというようなことは、そういう面からも技術の開発が行われて、だんだん避けられているような事情になっているということから、ひとまず私どもは百八億円の国際基金補償に頼るということで十分ではないかと思っております。願わないことですけれども、もし事故が起こってそれを超えるというような不幸な事故が出てきたら、われわれは国際基金で、あるいはこの百八億円を二倍の二百十六億円まで上げてくれということを国際会議の場で日本として主張しなければいけないかもしれませんが、そういう事故がないことを願ってひとまず百八億円でいいのじゃないかということを考えておるわけでございます。
  70. 久保三郎

    ○久保(三)委員 そこで、いまお話がありました国際基金の総会の決定があった場合は二百十六億ということなのでありますが、どうしてこういうものを設けてあるのか、御説明だけではちょっと納得がいかない。もしもこれから大きいものが出た場合には二百十六億までやろう、こういうことのようでもありますが、これから起きるのはどの程度のものになるのかわからぬのにどうして二百十六億というか、そういうところに限度をつけたのか、それはどうですか。     〔西銘委員長代理退席加藤(六)委員長     代理着席〕
  71. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 実は、私ども国内法化を条約に基づいてやるということでございまして、七一年条約のときにこの四億五千万金フラン、それから九億金フランというものがどういうかっこうで国際会議の場で金額が出てきたかということをちょっとつまびらかに承知していないということでございます。
  72. 久保三郎

    ○久保(三)委員 別にさしあたって大したことはないのですが、提案されるからにはその説明をされるのは当然じゃないのですか。だから、本来ならば、私のような心配を持っていれば、これは当然何か総会の決定があったならば、大きい事故があって、この補償限度では間に合わぬような大きいものがあったときには、総会にかけてそこの決定がなされればこれまでは補償しますというふうにとるのですよ。ところが、これはそうじゃないのですね。今後の話なんですね。今後ケースが非常に大きくなってきた、だから四億五千万金フランではどうもカバーできない、だからひとつ総会の決議にかけてやろう、こういうことなんですね。そういう意味でとればとるほど、何も前もって九億金フランというふうに決める必要もなさそうに思うのですがね。これはどうなんですか。もっとも、おわかりにならないという答弁では……。
  73. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 やはりこれは一九六九年条約でこの金額が決まったときに、一番その必要が出てきたのは一九六七年のトリー・キャニオン号事件だったと思うのです。そこで、実際の賠償額は二十一億円ほどで済みましたけれども、やはり実際の賠害額はその当時七十五億円程度あるのじゃないかということも言われたわけですが、そういったことで、この条約がつくられるときに国際的に論議をされた結果、ひとまず百八億円ぐらいまでということが決められたのじゃないか。これは私の推測でございますので、先生の御質問に対する明確なお答えにならないと思いますけれども、ちょっと経緯だけ私の感じとして申し述べさせていただきたいと思います。
  74. 久保三郎

    ○久保(三)委員 さしあたってすぐに大きい事故ができることを予想してはいませんからいいのですが、形から行けば変じゃないですか。どう思いますか。常識的に見れば四億五千万金フランを限度にするが、非常に大きい特殊な事故が起きたというときにはその倍まで総会の決議にかけて補償しますよというのが普通のやり方なんですよ。ところが、この説明を非公式に聞いたら、そうじゃないのですね。これからの話なんですね。これからだんだん事故が大きくなってきた、これじゃとても四億五千万金フランではカバーできない、だから総会にかけてやろうじゃないか——総会にかけたらば九億フランだというのですね。そうならば九億フランというものを決める必要はなさそうに思うのですよ。総会の決議で幾らにするか決めたらいいのであって、その辺のところおわかりになればいいのですが、わからなければ後にしましょう。
  75. 薗村泰彦

    ○薗村政府委員 これもいまちょっとお答えするのに考えながら言っているわけなんで、明確なお答えにならぬかと思いますけれども、国際基金のもとはCRISTALの協定だったと思うのですが、CRISTALの協定のときに、最高限度額が三千万ドル、したがって九十億円という線がございましたので、恐らくCRISTALという国際協定を世界じゅうの石油業者が集まってやったときに、その九十億円というものを最高限度額にして一応拠出したそれぞれの分担、負担というものがございますので、それと余り遠くないような数字でその負担を考えて、国際基金にCRISTALが移行するということを考えて、各国の石油業界に持たせる負担能力というようなもの、負担限度というものを考えて、日本円で言いますと百八億円ですけれども、四億五千万金フランぐらいのものを考えたのじゃないかということを私の感じとして申し上げるのですが、ただそこで、やはり恐らくいまのCRISTALの制度も、現に拠出している金でできるだけ事故を補てんをして、さらに大きな事故ができたときにはその限度額を上げるということをその機関に図ってそれから上げるというようなCRISTALの現状の制度にもなっているんじゃないか。そういったことが国際基金に移ってこういう制度になったんだと思うのですが、したがって、やはり世界じゅうの受益者、石油業界を中心とする受益者の負担限度というものも考えて、次の総会にかけてそういった負担額を上げていくということではないかと思うのです。  もう一つは、やはり事故が起こらない、一番最大の事故がトリー・キャニオンで二十数億円の補償で済んだわけですから、そういった事故の現状を見ながら、もし百八億円を上げていく必要があるんだったら上げていこうということで、世界的に見たら恐らくいまの国際間の感じとしては百八億円はそんなに低いものじゃないという感じがあるのじゃないかということでございます。したがって、そういった実例が出てきたときにもう一遍国際会議で考え直そうじゃないかというようなことではないかと思います。
  76. 久保三郎

    ○久保(三)委員 ちょっと常識的というか、素人の考えではどうも常識的でないので、倍になる、百八億というか四億五千万金フランの倍にまで上げましょうということの何というか距離はわかりますよ、倍というのはね。何となく倍というのはわかる。しかしそれはこれから総会にかけて、ある場合は決めましょうというのなら何も倍に決めておくこともなさそうだというふうに思うのですよ。そういう疑問があるのですが、ちょっとよくわかりませんな、これは。  それじゃ次にいきましょう。次に船舶局長お尋ねしたいのですが、大型タンカーについては特に船舶の構造、さっきもお話があったのかもしれませんが、構造というより一つは船型といいますか船の形、特に後部ブリッジですね、ブリッジが非常に後尾にある。これは操船上やはり問題があるんじゃなかろうかというのが一つありますね。こういうもの、まあ経済性からいくならば中央にブリッジを設ける従来の方式よりはこの方が経済的なのかもしれませんが、これは安全性が、いわゆる安全操船というか、そういう見地からいくならばこれは問題があるんじゃなかろうかという、これに対してどういうふうに考えておるのか。もちろん最近はへさきにテレビか何かを置いてそのものによって操船するということもあり得るんだろうと思うけれども、いずれにしても何かこの船の構造の革命的な一つであったと思うのですね、後ろに船橋を持っていくというのは。こういう問題についてどういうふうに運輸省は思っておられるのか。  それからもう一つタンカーの大型化ですね。これは従来もいろいろ批判があったのでありますが、経済性を中心にして大型、高速化という問題が出てきたと思うのですが、最近のような事故を経験しますと、大型、高速化についてもやはり反省の時期に入ったと思うのですね。最近のタンカー市況の問題もあれかもしれませんが、いまタンカーの大きさや構造というか、そういうものについて反省するいいチャンスだと私は思っているのです。これはもちろん日本の国だけでできない問題もあろうかと思うのでありますが、国際的にもやはり問題を提起していくべきではないかというふうに思うのです。だから大型タンカー制限ですね、トン数制限というか大きさの制限というか、そういうものについてひとつ考えるべきだと思うんだが、これはどうなのか。  それから速度ですね。速度については従来安全性の観点あるいは操船上の難易の問題からそういうものを検討されているのかどうかですね。  それから船は急には、車ばかりじゃなくて船はもっと急にはとまらないというのもありますし、非常に操船上問題が、操船というか操縦するのに、おかにあるあるいは飛行機のような簡単なわけにはいかないというふうに思うのでありますが、操船についての安全性の観点から船の構造を研究しているのでしょうかどうですか。そういう三点についてお尋ねします。
  77. 内田守

    ○内田政府委員 御指摘の第一点の船橋の位置の問題でございますけれども、確かにタンカーが大型化していくにつきまして船橋を船のどこの位置に置くかということはいつも問題になっておることでございます。それで私どもの方は、こういう大型化に伴いまして、造船技術審議会で十年ばかり前に徹底的にその辺のことを議論し始めまして、専門家の意見も集めまして、現在もいろいろ検討しておるわけでございますけれども、ただ常識的に操船上の観点だけから言いますと、一般的には船首であるとかあるいは中央部に船橋があった方がそういう意味では望ましいわけでございます。しかしこの場合、たとえば衝突の可能性の問題とか、それからもう一つ居住区が必然的に中央へ来ますと貨物油タンクの上にそういうブリッジとかそういうようなものを配置せざるを得ないような状況になってきて、かえって安全上は逆に好ましくないとか、それからもう一つは、むしろ船が大型化してきますと、船尾の方が、すぐ近くの操船の問題は別にいたしますと、かえって船の中心の線等の見通しがとられやすいのだという御意見もございまして、一概にブリッジ、船橋が船の中央部あるいは前方にあるということが好ましいということにはならない。むしろそういう大型船につきましては先ほど御指摘ありましたように表の見張りとかあるいはテレビの配置とかいうようなことによっていま申し上げましたような逆の短所をカバーした方がいいというような意見であります。  それから第二点の大型船の問題でございますが、御承知のように大型化というのは過去十年来特に進められてきたわけでございまして、現在のところ動いております最大の船はデッドウェートで四十七万七千トン、約五十万トンでございます。それからなお建造中と申しますか、まだ竣工してないもので建造計画のあるものも五十万デッドウェートが限度になっておりまして、それ以上の大型船は現在のところ具体的な話は日本はもちろん世界的にも聞いておりません。  大型化の傾向の規制につきましては、現在一つは国際的も含めましてデッドウエートを直接の尺度として規制するという方向はまだ出ておらないわけでございますけれども、御承知のたとえば性能が鈍重になるとかあるいは衝突したときに流出量がそのままだったら多くなるとかいうようなことから、御承知のタンクサイズを規制するとか、それから航行レーダー等の航海施設の整備とかあるいは防火構造とかあるいは運航性能とかそういうような規制、直接的な規制が大型船であればあるほど厳しくなるような形で規制している、規制を志向しておるというのが現在の動きでございます。  それから特にわれわれの方も、巨大船につきましての、特にいま申しました点につきまして、国内的にも後進力であるとかあるいは操舵の性能とかあるいは旋回の性能であるとか、そういうようなものについて現在それらの基準あるいは規制等について研究をしているという段階でございます。  それから、第三点の速度とか操船という問題でございますけれども、これは、先生御承知のように、大きい船ですと、スピードがある一定限度になりますとかえって操船の性能が落ちるというようなことで、むしろこれらの大型船につきましては、狭水道あるいは制限水路における低速での航行、そういうようなものに対しての、たとえば急速停止装置であるとか、あるいは後進力を上げるとか、そういう形で大型船のタンカーにつきましての規制と申しますか、基準と申しますか、そういうようなことについて現在いろいろ検討が進められているという段階でございます。
  78. 久保三郎

    ○久保(三)委員 先に行きましょう。  次には港湾局長お尋ねするのですが、港湾の整備計画は、一連の整備計画というか、そういうことで港湾の新設も含めましてそれぞれ整備をされてきているのでありますが、大体港湾整備の進度よりは船の数あるいは船の大きさ、こういうものが非常に早くやってきたと思うのですね。それが証拠に、港湾整備五ヵ年計画は、今度は第六次かそこらになるかもしれませんが、一応扱いの貨物量は二、三年するとその計画を上回っておる。いままでの傾向はそうですね。そういう傾向から見ても、港の整備を追い越して船の入出港というか、そういうものが大型化し、あるいは数が多くなってきた。そこで、いやな言葉ですが、後から入ってきて港湾の悪口を言うのは変かもしれませんが、欠陥港湾というのが最近言われまして、これはどっちが欠陥かわかりませんけれども、入ってきて、ここの港はどうも大型船を回すのには鼻がつっかえるとか、泊地がないとか、あるいは航路が浅いとか、いろんな問題があると思うのですね。特にこの間事故を起こした水島、これは船が起こしたのではありませんけれども、これも事故を契機にして、港湾内のいわゆる設備が大型のタンカーの回転には非常に問題があるというようなことがある。それから、数年前という、もっと前かもしれませんが、函館でたしかやはり、当時は五、六万トンのタンカーだったと思うのですが、あれが回転するときに鼻面をひっかけて、たしかこれも火事になりまして幾日か燃えていた経験がありますね。そういうのを含めて今度の、来年度から新しい港湾整備五ヵ年計画をつくると思うのですが、いまのそういう、いやな言葉だが欠陥港湾と言われるものは幾つくらいあるのですか、大体。しかもそれはどういうものであるのか、こういうものについてこれからどう進めようとするのか。あるいは港湾の側から船の大きさなり船の数なりを規制することも、これは当然港湾管理者なり港長の責任としてあるべきだと思うのでありますが、いまだかつてそれを聞いていないのでありますね、勝手に入ってくる。こういうものを含めて、港湾管理の問題も改めて考える時期だと思うのですが、その点についてのお考えを。
  79. 竹内良夫

    ○竹内(良)政府委員 従来までの港湾の計画あるいはその整備に対しまして、その整備をしている段階におきまして船の方がもっと大きくなってしまうというようなことは間々確かにございました。大体において、十年後の目標を決めまして、その目標に応ずるところの港をつくっていく。ところが、十万トンの船を目標としてつくっていったところが、十五万トン、二十万トンの船になってしまうというような点が確かにございまして、従来の考え方といたしましては、港湾といたしまして、十万トンなら十万トンの目標の計画をし、整備をしていく、それに対する、今度はできた港の管理とか運営、これにつきましては港長の責任におきまして考えていくというようなスタイルでやっております。そういうわけでございますけれども、確かに水島のような事故もいろいろございましたので、今後私ども、今度新しい五ヵ年計画等をつくる場合には、十分きめの細かい、現在の計画で及ばなかったようなところ、たとえばすみ切りの問題であるとか航路を拡幅する問題であるとか、あるいは泊地が足りないというものに対しては何とか泊地を増強するというような、きめの細かい整備を進めていきたいというように考えている次第でございます。なお、先ほど先生のおっしゃいましたような欠陥港は幾つかというお話でございましたけれども、実は海員組合の方々が全国的に日本の港を全部調べまして、その一つ一つの港について、こういうところは欠陥があるということを細かくデータも出しているわけでございまして、私どもそれを十分参考としてやっていきたい、一つ一つの港に対してその欠陥をできるだけカバーしていきたいというように考えている次第でございます。今後の新しい計画は、これからつくっていくわけでございますけれども、従来のようにどんどんつくっていくというだけでなく、一つ一つのきめ細かいことを十分管理者に考えてもらいまして、その実情をキャッチいたしながら整備を進めていきたいというふうに考えている次第でございます。
  80. 久保三郎

    ○久保(三)委員 港湾局長、なかなかむずかしい問題だと思うのですが、私は、一遍港湾局サイドから見た、港湾サイドから見た、いわゆる船の収容能力というか、そういうものはどうあるべきかというのは港湾ごとにやはり策定する必要があると思うのですね。そうでないと、事故は絶え間がないと思うのです。入ってくるものは仕方がないから受け入れましょうというのは、大変良心的だかしらないが、かなりこれは問題があると思うのです。そういう問題について一遍実態をわれわれは知りたい。海員組合から指摘があったそうでありますが、港湾局はそれに対してどう思っているのか、できますれば後で資料をちょうだいしたい、こういうように思います。よろしゅうございますか。
  81. 竹内良夫

    ○竹内(良)政府委員 いまの海員組合の指摘に対しましては、これは各管理者に全部指示いたしまして、それに対応する考え方で整備を今後進めていきたいというふうに考えているわけでございます。  それから、港湾の方として、このくらいの能力だからこれ以上云々というところまでは、なかなか現実にはできません。そこで、現在の考え方は、先ほども申し上げましたように、港長の判断でそこの船の航行規制等その他やるということでございますけれども、港湾管理者は港湾管理者の立場から、やはり常に港長と連絡を保ちながらやっていけ、というふうなことで指示している次第でございます。たとえば十万トンの航路をつくった、そこへ二十万トンの船が来るわけでございますが、その二十万トンの船が荷物を半分にして持ってまいりますと、十分深さなどは大丈夫である、あるいは幅の方も安全であるというような場合に、二十万トンの船は入っていけないということは、現在の段階ではできないわけでございますので、そのときにはやはり港長の指示に従って安全にそれを運営していくということで現在は対処しているわけでございます。
  82. 久保三郎

    ○久保(三)委員 先へ行きます。  次には保安庁長官にお尋ねしたいのでありますが、航路の警戒船については、この委員会で前にもちょっとお尋ねしたのですが、どうも余り性格的にもはっきりしていないのでありますが、この間の第十雄洋丸の衝突事件の海難審判の裁決の中をちょっと見ますと、警戒船というのは大体本船の先に立って、早く言えば露払い的な任務だと思ったらば、これはそうじゃないのですね。結局本船である雄洋丸がオリオン一号、警戒船にどんどん近づいてくるわけです。最後には並行して走っていた。そこで、並行して走ったので警戒船の方はレーダーの映像が判別困難になったというようなことがあるわけです。それでありますから、パシフィック・アリス号が来るのがわからなかった。雄洋丸の方からは警戒船に対して並行になった、おまえそのまま走れと、こういう指示を受けて走っているようであります。これはもちろん本船の従属的な立場にある警戒船であるからそういうことになったんだろうと思うのでありますが、警戒船本来の任務というのが明確でないのじゃないか。陸上で言うならば、その辺の警備会社のパトロールみたいな、あれも会社の社長が来て、おまえどけと言われればどいてしまうのではないかと思うのですが、そういうことでいいのかどうか。しかもおかの方の警備会社の警備員、パトロールをやる人はその会社だけの財産を守ることだから、社長がおまえどいてもいいと言えばそれでいいと思うのです。ところが海上における警戒船というのはそうじゃないのですね。頼まれた本船、雄洋丸の安全をもちろん確保しなければいけませんが、それと同時に全体の安全というものを考えていかなければ、雄洋丸自身の安全も確保できないと思うのです。  だから、そこで私が申し上げるのは、この制度はこの制度でいいだろう。しかしながら、任務というか、そういうものをもう少し明確にすることが一つ。それから、この警戒船は雄洋丸よりは速度が出なかったのかどうか。性能的に劣っているのかどうか知りませんが、性能的に劣っている船などを警戒船にしても大人が赤ん坊を連れて歩くようなもので、赤ん坊に先導してもらっても仕方がないのでありますから、これはちょっと考えものだ。だからこの警戒船の選定に当たっては厳しい条件を、もちろんいままでもつけているのだろうと思うのですが、一定の条件をつけていく。  それからもう一つ、法的に何かこれに根拠を与えてやらなければ、どうしても従属的な立場になりがちではないのか。そういう意味で、警戒船の位置づけについて何か考えておられるかどうか。  それからもう一つは、海上交通安全法で航法その他は大変きめ細かになってきてはいるのでありますが、陸上の交通管制あるいは航空管制などに比べれば、まだまだ海上の交通管制というのは非近代的だと思うのです。もちろん態様も違うからなんでありますが、これの近代化をもっと促進しなければいかぬと思うのです。ところが、なかなかどうもはかどらぬというふうにわれわれは見ているわけなんです。これについては、もう少し思い切った施策が必要だと思うのですが、これについては運輸大臣からも御答弁いただきたいのですが、いまの数点についてお話をいただきたいと思います。
  83. 寺井久美

    ○寺井政府委員 進路警戒船の性格がはっきりしないという御指摘でございます。昨年の雄洋丸の事故のときの状態、またこの経験にかんがみまして、警戒船の性格なり機能なりというものをもう少し明確にする必要があるということを十分痛感いたしまして、あの当時当委員会でもお答え申し上げたと思いますが、何をやるべきかということをもっと明確にする必要があるということで、自来この警戒船のマニュアルと申しますか、そうしたものの検討に入りまして、最近ほぼまとまってまいった状態でございます。とりあえず打ちました手段といたしまして、この警戒船は消防能力を持っていることが基本的な要件でございます。ところがそれだけではだめだということがはっきりしたわけで、次に手を打ちましたのは通信設備の問題それからスピードの問題、この二つの点についてやはり進路警戒に当たれる性能を持つ必要があるということで、これは逐次そういう指導をいたしましてそういう方向に進んでおります。  それでこの進路警戒船の基本的な性格は、やはりその当該船の船長の指示を受けて動くという考え方でございます。したがいまして、向こうから来た船がどっちを向いているかわからないからそれに注意をしろという指示を与えられれば、その行動をするというような基本的な考え方で、この性格を整理いたしております。ただ進路警戒船が実際問題として、第三者に対してそこをどけろと言ってもなかなかどかないというのが実情でございます。この意味で、何か法的な根拠をという御指摘だと思いますが、この点につきましてはさらに検討をして何らかの手を打ちたいと考えておりますが、さしあたりはこの進路警戒船を緊急船舶というものに指定いたしまして、航路内の制限スピードその他をオーバーして走れるというふうなかっこうにしなければならないというふうに考えております。  それから第二点の交通管制の問題でございますが、御案内のとおり現在横浜あるいは川崎等で非常に原始的といいますか、管制を行っております。この近代化を図る必要は御指摘のとおり必要であろうというふうに考えておりまして、もともと管制とは申しましても航行に必要な情報の提供という発想からスタートいたしまして、入港、出港の一つの流れの規制を現在やっておるわけでございます。近く観音崎のレーダーが動くようになりますので、東京湾内の状態が相当詳細に把握できるようになります。その際にさらにきめ細かい情報の提供ができるというように考えておりますが、これを航空の管制に似たようなもの、もう少し管制らしい管制ができるようにどうすればいいかということで、これはアメリカ等にも例がございますが、先進国その他の実例をも参考としながら新しいシステムを考えて、全体の管制ができるように目下検討を進めておる段階でございまして、先生の御指摘のように一日も早くそういう新しい管制システムが完成することをわれわれとしても期待いたしておるわけであります。
  84. 木村睦男

    ○木村国務大臣 いま保安庁長官が申し上げたのでございますが、とにかく狭い港湾の中に非常に船がふくそうして入ってくる、しかもその船が大型化してくるというところに、やはり私は一番問題があろうかと思うわけでございます。それらの交通を本当にうまくさばくためのパトロールカー的な機能を持っております警戒船の機能のあり方、これはいま御指摘になっておりますように、いろいろこれからまた改正をしていかなければならない点もあるように先般の事故からも考えられるわけでございます。それから、さらに港湾内の海上交通の管制につきましても、これは一部テレビ、コンピューター等で機械化いたして操作をいたしておるところもございます。ございますが、御指摘のようにまだ非常に幼稚な、前近代的なところもございます。こういうようなこともやはりある程度長期の計画を決めまして整備していきませんと、単年の計画ではどうにもならないというふうなことで港湾の整備等もやっておるわけでございます。同時に、保安庁の仕事として海上警備もやっておるわけでございますが、現状はわれわれとしても非常に不十分である、こう思われる点が多々ございますので、これらにつきましては五十一年度を契機といたしまして、港湾につきましてもさらに次の長期計画を持つ予定にしております。また、海上保安庁の仕事につきましても、特に最近タンカー事故等もあのようにたくさんあるわけでございますので、今後はこれらの問題についての器材の整備、訓練の徹底等、そういうことにさらに意を用いてやっていきたい、かように考えております。
  85. 久保三郎

    ○久保(三)委員 次に保安庁長官にお尋ねするのですが、第十雄洋丸の審決というか審判ですね、審判の調書の中の水路通報というか運航の通報ですね、保安庁からは日本にある外国船の協会というものを通してこういうものがパシフィック号の本社であるイースタンシッピング株式会社には届いているのですね。ところが肝心かなめのパシフィック号には到達していなかった。それからもう一つは、シンガポール沖合いで事故を起こしました祥和丸ですか、これも聞くところによると、何かファックス、そういうものがとっていなかった、あるいは誤認かも知れませんが。いずれにしてもそういう指示というか情報が的確に現場に到達していないというのがやはりあるのですね。これはいまの制度というかシステムが欠陥がある証拠だと思うのですね。たとえばこのパシフィック号にしても木更津を出港する、あるいはそれに水先が乗っていたのでありますから、下船するときにそういう情報を念のために置いてくるというか、これが必要だと思うのですね。紙切れ一枚で用が足りるのでありますから、そういうものをもう少し安全第一に制度を改革する必要がありはしないか。いまの制度で安心しているわけにはまいらない。船を動かす人にもっと的確に情報が伝わる方法を考えてみるべきだというふうに私は思うのですが、その点はどうなのか。  それから、時間もありませんから続いてお尋ねしますが、防災体制の問題です。先ほどもお話がありましたが、防災センターというのができて、これまでもやっているのですが、本格的な活動はこれからだというのでありますが、防災センターは言うなら連絡と手配が中心になっているのですね。あとは船社の責任で防除する、そういう会社をつくっているわけでありますが、その制度も結構なんでありますが、最終的にだれが責任を持って防除を最後まで完全に遂行するかというのは、これはかかって政府じゃなかろうかと思うのですね。もちろん原因者負担の原則は変える必要はございません、PPPは。これはこれでいいと思うのですよ。しかしその仕事をやる最終的な責任あるいはやらせる責任というのはもう少し明確にしなければいけないのじゃないか。防災センターという財団法人か何か知りませんが、そういうものだけではいけないのじゃないか。もう少し、これの性格を含めて機能を強化するなり何なりしていく必要があると思うのだが、この点はいかがかという二点であります。  それから、予定された時間もたくさんありませんので、続いてこれは船員局長お尋ねします。  先般、この四月でありますか、いわゆる強制水先についての中間答申が出たわけでありますが、これでそれぞれ強制水先をするところを指摘されているわけなんです。指摘されていると同時に、特に問題の多い東京湾については、水先業務の諸条件が整備されるまでの間、当面は一万トン以上、四年を目途に三千トンという勧告というか答申があるわけなんです。これはなるほど急に言われてもパイロットの数がそう急速に養成できない問題もあるだろう、あるいは上下船の施設というか、そういうものもある、そうい理屈はよくわかるのでありますが、だからといってこれは単純に一万トンということに切り上げをすることがいいのかどうか。いまは強制水先の原則は御承知のとおり三百トン以上になっているわけです。だからこれはかなり底上げというか、きついわけなんです。それで、いまの海上交通の現況からすれば、強制水先は当然必要だと思うのです。しかし、その条件を緩和する、原則を緩和するということはやはりいかがかと思う。例外的なものとして、暫定的なものとしてやむを得ず重要なものだけやりましょうということは、話としてはわからないわけじゃない。それらに対しての見解はどういうふうに持っておられるか。  それからもう一つは、当委員会でもたびたび問題になりますが、水先人の増員というか養成の問題、これは今度は焦眉の急になりました。いままでのように強制水先は六港ですか、それくらいのあれで、あとは適当に——適当にと言ってはおかしいが、やっているわけにはまいりませんで、こうなれば、強制水先が大半になるということになればどうしても要員の問題を解決しなければならない。そうなれば現在の制度にもあるいは手をつけなければならぬかと思うのでありますが、今後これはどうなさいますか。いろいろ問題があると思うのですが、要員の問題は直ちにはできないかもしれませんが、少なくとも一年後になり二年後にはそれぞれ充足する。ここに書いてあるように四年目に三千トンというのもどうかと思うのですね。四年には大体原則に戻りましょうくらいなのが常識的だと思うのですが、そういう問題をどう思うか。それが一点、水先案内人。  それから次、二点目は、便宜置籍船というのが船員の操船技術というものにも関係して問題になっているわけですね。そこで、従来からも申し上げているように、船員の技術的水準を国際的に平準化する必要がある。平準化するというのはおかしいが、これを高めていく必要がある。どうしてもこれは日本だけで解決できないので、IMCOならIMCOで解決しなければならぬと思うのでありますが、日本の国としてはかなり港に船が入ってくる、しかも外国船もたくさん入ってくる、便宜置籍船もたくさん入ってくるような実態でありますから、これらに対して積極的に行動を起こすべきだと思うのですが、この点についてはどう思いますか。  大体以上です。
  86. 寺井久美

    ○寺井政府委員 まず第一点の水路通報の関係でございますが、雄洋丸の事故相手方であるパシフィック・アリス号につきまして、これが木更津港を出港して衝突したという事情にございます。この事故の実態にかんがみまして、特に外国船日本の港湾あるいは特殊なルールについてふなれな点が多うございますので、こうしたルールを解説いたしました外国文のパンフレットを配りまして、周知徹底を図るということを早速始めております。特に木更津港につきましては、港長がその船長等に直接注意をするようにということを指示をして、これを実施しておりますし、また現に中ノ瀬を上がってくる船があるといったような情報もそのつど出港に際して船長に提供するようにいたしております。  それから、以上は直接水路通報とは関係がないわけでございますが、水路通報そのものにつきましては、その海域を管轄いたします国が通報を出すのが第一義的な義務になっておりますが、当庁といたしましても、マラッカ、シンガポール海峡の重要性にかんがみまして、同海峡に関する水路通報の取り扱いについては、従来から特別の注意を払っております。たまたま事故の起こりました原因となっておりますヘレンマース灯標の新設につきましては、昨年の十二月二十日にマラッカ海峡協議会からの連絡で、これが十三日に点灯したことを知ったわけでございます。その十二月二十日の二十一時過ぎに無線で航路警戒警報を出しております。この警報の中には灯標ができたという位置とその光の性質等を船舶向けに通報したわけでございまして、翌日さらにこれをやっております。また、先生御指摘のファックスは共同通信のファックスですが、これは十二月二十日二十時にファックス放送をまずいたしまして、その後七回、合計八回船舶向けに放送を行っております。これを聞いていなかったかどうかという点につきましては、私まだ聞いておりませんけれども、通常航海に出る前に必要な航海情報を入手、整備しておくというのが一応シーマンの基本的な態度であろうかと思いますので、こういう点も十分注意をしていく必要があるのではなかろうかというふうに考えております。  それから、第二点の防災体制の問題につきまして、確かに今回できました海上防災センターと申しますのは連絡、手配を中心にやることになっております。ただ、消火防除活動の一部を直接やるということにもなっておりまして、これを今後どういうように活用していくかということは、このセンターがもう少し基礎がしっかりして、十分ついていけるという段階になりまして考えたいと考えておりますが、基本的には、当庁が指導いたしまして主要コンビナート地区あるいは主要港湾につきまして流出油災害対策協議会というのを設けておりまして、これを通じて防災活動をやるという体制に現在なっております。これをさらに効果あるものにしていく必要があろうかというふうに考えておりまして、現在いろいろ法制上の問題あるいは技術的な問題もあわせて検討を進めておる段階でございます。
  87. 山上孝史

    ○山上政府委員 第一点の東京湾の強制水先についてでございますが、昨年の四月に運輸大臣の諮問機関であります海上安全船員教育審議会に強制水先のあり方につきまして諮問中でございましたところに昨年の十一月第十雄洋丸の事故が発生いたしました。これを契機といたしまして、衆参両院におきまして強い御要請があり、早く浦賀水道あるいは中ノ瀬につきまして強制水先にせいというお話でございました。私どもといたしましては、せっかくこの審議会で日本全体の水先のあり方につきまして検討中でございましたので、国会の御要望をお伝えし、審議会にできるだけ早く、中間答申でもいただきたいということをお願いしてまいりましたが、去る四月の三十日に中間答申をいただきました。  その内容につきましては、さっき御指摘のとおり、浦賀水道、中ノ瀬航路を含んだ東京湾の全域につきまして、できるだけ速やかに強制水先にすべきである、ただその場合の対象船舶につきましては、小型の船舶まで極力含めるべきではありますけれども、そのためには航行の安全と運航能率等を考慮して水先人の員数、いわゆる水先能力、それから乗下船位置、それから水先業務用の施設等の諸条件を早急に整備することが必要である、これらの諸条件が整備されるまでの間、当面は総トン数一万トン以上の全船舶を強制の対象とし、四年を目途に総トン数三千トン程度以上の船舶を強制の対象とするよう措置することが適当であるという御答申をいただいたわけであります。なお、これにはさらに、これらの諸条件の整備促進状況を毎年水先部会——この審議会の水先部会ですが、この水先部会において検討することが必要であるということで、毎年この条件の整備をチェックしながらさらに今後の施策を考えていくという御指摘でありました。  そこで、現在の水先法の十三条によりますと、先生も御指摘のように、水域につきましては政令で指定いたしますと直ちに強制の対象になります。ところが対象船舶につきましては、十三条の法律上、簡単に申し上げまして外航船については三百総トン以上、内航船につきましては一千総トン以上が当然に対象になってしまいます。こうなりますと、東京湾全域を強制いたしますと、東京湾の入り口でパイロットが乗りおりをする必要があります。そうしますと、たとえば一千総トン以上を仮に対象としますと、推定でございますけれども、月間四、五千隻が対象になります。そういうようなことになりますと、小さい船、大きな船が数珠つなぎになりまして、いわゆる交通麻痺を起こすということで、むしろ海上交通の不安全をもたらすというようなお考えで、そこで当面一万総トン以上のものを対象にすべきではないかという御判断のようでございます。  私どもといたしましては、水先能力の増強、すなわち水先人をふやすということにつきましては、これは水先法に厳重な資格要件がございますけれども、督励してふやすことについてはやぶさかではございませんけれども、いま申し上げましたパイロットの乗下船のための交通麻痺、この方がかえって不安全になるということに留意いたしまして、この中間答申に沿ってできるだけ早い機会にこの十三条の対象船舶の規定を改正していただければと念願している次第でございます。これが第一点でございます。  それから第二点の水先人の養成の問題でございます。これにつきましては、まず一般的には水先人の適正な員数につきましては、毎年一回、水先の業務量、それから水先人の廃業、それからその廃業の見込み、それからサービスの状況等を勘案いたしまして、水先業務の遂行上支障のないように水先区ごとに検討を行いまして、それで海上安全船員教育審議会の御了承を得て増員計画を策定しております。たとえば五十年度の増員につきましては、特にこの浦賀水道の関係もございますので、全国で三十五人増強する予定でございます。なお、廃業が五人ございますので、純増は三十人でございます。それからなお東京湾の強制水先の実施に伴いまして、一万総トンを対象とする場合には、現在横須賀の水先区が担当しておりますが、三十二人いるところを約倍増にする必要があります。これをできるだけ早く、できれば一年半程度でもって増強いたしたい。さらに四年を目途に三千総トンという強制水先を将来実施する場合には現在三十二人の約四倍必要であります。これにつきましても極力その実現を図るように行政指導をしてまいりたいと存じております。  それから最後の乗組員の技術水準の問題でございますが、これにつきましては先生も御承知のとおり現在国際的な取り決めはございません。したがいまして、各船籍国の政府が主管いたしまして、たとえば日本におきましては船舶職員法というので規制をいたしております。したがいまして、先ほども問題になっておりました一九六七年のトリー・キャニオン号の事故を契機といたしまして、IMCOにおいてできるだけ早くこのような当直士官の資格基準の統一基準をつくるべきであるということで一九七二年からIMCOに訓練当直基準小委員会というものを設置いたしまして、現在まで五回審議を続けてまいりました。この会議には日本はもとよりリベリア等のいわゆる便宜置籍国からも代表が参加しておりますので、私どもといたしましては、この第六回がこの六月の九日から十三日までございますので、担当の船舶職員課長を参加をさせる予定でございます。このような国際協力の場を通じまして国際的に統一的な基準をつくり、それを条約化し各国に批准してもらって、それに沿った国内法の制定で足並みをそろえてまいりたい、このように存じております。
  88. 久保三郎

    ○久保(三)委員 以上で終わりますが、強制水先の場合の東京港の浦賀水道かの問題で一万トン以下の外国船ですね、特に近海船などが多いんじゃなかろうかと思うのでありますが、そういうものが、ここが強制水先に一万トン以上がなれば、従来どおりそれは任意の水先をつけるかどうか、いまやっているように。いまやっているかどうかわかりませんが、やっているのだろうと思うのですが、かえって逆な立場になりはしないかという心配もちょっとひらめくのですよ。問題の近海船、一万トン以下でしょう、三、四千トンぐらい、五千トンかそこら、そういうものの外国船の船員が乗った船がいまたとえば水先をとっているのに今度はとらぬでもいい。逆に、ここは一万トン以上が強制だということになればかえって外れはしないかという心配、その辺のところはどういうふうに縛るのか。いかがですか。
  89. 山上孝史

    ○山上政府委員 現在は、御指摘のように浦賀水道につきましては、海上保安庁を通じまして外国船に対してはできるだけ全船舶に水先を乗せるようにという行政指導をしているわけでございます。その結果の実績は、外国船の全船舶で約三分の一が水先をとっております。それからなお巨大船につきましてはほとんど九十何%が水先をとっております。というようなことでございますので、今後この水先法の改正が実現いたしまして強制する場合でも、一万総トン以上は当然強制でございますが、それ未満につきましても海上保安庁を通じて極力行政指導してまいりたいと存じます。
  90. 久保三郎

    ○久保(三)委員 時間もありませんが、そうだとすれば今度は強制水先になるのですから、一万トンであろうがなかろうが、なかろうがというより一万トン以上はどこの船であろうがなるわけですね。そうですね。日本の船は大体経験者の船長が乗っていればこれはつけなくてもいいわけですな。そうですな。そうなるというと、従来以上に船は浦賀水道の入り口でとまらなければならぬ。そうですね、そういうこともあり得る。一万トンに底上げはしてみたものの、海上保安庁の指導で従来どおりの任意の水先をつけろということになりますと、同じだとするならばやはりそこでふくそうしやしないか。その辺のところを考えているのかどうか、どうですか。
  91. 山上孝史

    ○山上政府委員 いま先生御指摘のパイロットの乗下船位置で船舶が交通が錯綜するということにつきましては御指摘のとおりです。そこでいま法律にありますように、三百トンとか千総トンという対象船舶にすることなく、浦賀水道のように数港の港に出入りする船が集約的に通るところですから、したがって、それを勘案して一万総トン以上、あるいは四年を目途にそこら辺のことをさらにいろいろ整備をしまして、泊地等の整備をいたしまして、四年を目途に三千総トンにすべきである、これが審議会の中間答申の趣旨でございます。そういった点は十分に水先部会あるいは専門の小委員会で検討してこの中間答申を得た、こう聞いております。
  92. 久保三郎

    ○久保(三)委員 終わります。
  93. 加藤六月

    加藤(六)委員長代理 次回は、来たる六日午前十時理事会、午前十時三十分から委員会を開くこととし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時四十七分散会