○山上
政府委員 第一点の東京湾の強制水先についてでございますが、昨年の四月に運輸大臣の諮問機関であります海上安全船員教育審議会に強制水先のあり方につきまして諮問中でございましたところに昨年の十一月第十雄洋丸の
事故が発生いたしました。これを契機といたしまして、衆参両院におきまして強い御要請があり、早く浦賀水道あるいは中ノ瀬につきまして強制水先にせいという
お話でございました。私どもといたしましては、せっかくこの審議会で
日本全体の水先のあり方につきまして検討中でございましたので、国会の御要望をお伝えし、審議会にできるだけ早く、中間答申でもいただきたいということをお願いしてまいりましたが、去る四月の三十日に中間答申をいただきました。
その内容につきましては、さっき御指摘のとおり、浦賀水道、中ノ瀬航路を含んだ東京湾の全域につきまして、できるだけ速やかに強制水先にすべきである、ただその場合の対象
船舶につきましては、小型の
船舶まで極力含めるべきではありますけれども、そのためには航行の安全と運航能率等を考慮して水先人の員数、いわゆる水先
能力、それから乗下船位置、それから水先業務用の施設等の諸条件を早急に整備することが必要である、これらの諸条件が整備されるまでの間、当面は
総トン数一万トン以上の全
船舶を強制の対象とし、四年を目途に
総トン数三千トン
程度以上の
船舶を強制の対象とするよう措置することが適当であるという御答申をいただいたわけであります。なお、これにはさらに、これらの諸条件の整備促進
状況を毎年水先部会——この審議会の水先部会ですが、この水先部会において検討することが必要であるということで、毎年この条件の整備をチェックしながらさらに今後の施策を考えていくという御指摘でありました。
そこで、現在の水先法の十三条によりますと、
先生も御指摘のように、水域につきましては政令で指定いたしますと直ちに強制の対象になります。ところが対象
船舶につきましては、十三条の
法律上、簡単に申し上げまして外航船については三百総トン以上、内航船につきましては一千総トン以上が当然に対象になってしまいます。こうなりますと、東京湾全域を強制いたしますと、東京湾の入り口でパイロットが乗りおりをする必要があります。そうしますと、たとえば一千総トン以上を仮に対象としますと、推定でございますけれども、月間四、五千隻が対象になります。そういうようなことになりますと、小さい船、大きな船が数珠つなぎになりまして、いわゆる交通麻痺を起こすということで、むしろ海上交通の不安全をもたらすというようなお考えで、そこで当面一万総トン以上のものを対象にすべきではないかという御判断のようでございます。
私どもといたしましては、水先
能力の増強、すなわち水先人をふやすということにつきましては、これは水先法に厳重な資格要件がございますけれども、督励してふやすことについてはやぶさかではございませんけれども、いま申し上げましたパイロットの乗下船のための交通麻痺、この方がかえって不安全になるということに留意いたしまして、この中間答申に沿ってできるだけ早い機会にこの十三条の対象
船舶の規定を改正していただければと念願している次第でございます。これが第一点でございます。
それから第二点の水先人の養成の問題でございます。これにつきましては、まず
一般的には水先人の適正な員数につきましては、毎年一回、水先の業務量、それから水先人の廃業、それからその廃業の見込み、それからサービスの
状況等を勘案いたしまして、水先業務の遂行上支障のないように水先区ごとに検討を行いまして、それで海上安全船員教育審議会の御了承を得て増員計画を策定しております。たとえば五十年度の増員につきましては、特にこの浦賀水道の関係もございますので、全国で三十五人増強する予定でございます。なお、廃業が五人ございますので、純増は三十人でございます。それからなお東京湾の強制水先の実施に伴いまして、一万総トンを対象とする場合には、現在横須賀の水先区が担当しておりますが、三十二人いるところを約倍増にする必要があります。これをできるだけ早く、できれば一年半
程度でもって増強いたしたい。さらに四年を目途に三千総トンという強制水先を将来実施する場合には現在三十二人の約四倍必要であります。これにつきましても極力その実現を図るように行政指導をしてまいりたいと存じております。
それから最後の乗組員の技術水準の問題でございますが、これにつきましては
先生も御承知のとおり現在国際的な取り決めはございません。したがいまして、各船籍国の政府が主管いたしまして、たとえば
日本におきましては
船舶職員法というので規制をいたしております。したがいまして、先ほども問題になっておりました一九六七年のトリー・キャニオン号の
事故を契機といたしまして、IMCOにおいてできるだけ早くこのような当直士官の資格基準の統一基準をつくるべきであるということで一九七二年からIMCOに訓練当直基準小
委員会というものを設置いたしまして、現在まで五回審議を続けてまいりました。この
会議には
日本はもとよりリベリア等のいわゆる便宜置籍国からも代表が参加しておりますので、私どもといたしましては、この第六回がこの六月の九日から十三日までございますので、担当の
船舶職員課長を参加をさせる予定でございます。このような国際協力の場を通じまして国際的に統一的な基準をつくり、それを
条約化し各国に批准してもらって、それに沿った国内法の制定で足並みをそろえてまいりたい、このように存じております。