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久保(三)議員 ただいま議題となりました
地方陸上交通事業維持整備法案、
中小民営交通事業者の
経営基盤の強化に関する
臨時措置法案、
交通事業における
公共割引の
国庫負担に関する
法律案並びに
中小民営交通事業金融公庫法案について、
提出者を代表し、提案の理由並びにその概要を御説明申し上げます。
まず、
地方陸上交通事業維持整備法案の
内容について申し上げます。
高度経済成長の中でのモータリゼーションの進展は、全国的に過疎、過密の現象をつくり出し、国民生活に重大な影響を及ぼしております。
とりわけ交通の分野における混乱は際立ったものがあります。すなわち大都市の通勤地獄、交通の渋滞、地方における生活路線の休、廃止、そして絶えることのない交通
事故と、公害の激増、そして地方交通企業の倒産、交通労働者の離職等深刻な事態に直面しております。
中でも過疎地を含む地方における公共輸送の衰退は、地方住民から通勤、通学の手段を奪い、雇用と教育に制約を加え、あるいは二重生活を強い、ひいては自家用車の激増に拍車をかけ、交通
事故の増加にもつながっております。そればかりではなくほかに交通の手段を持たない老人、子供、主婦及び身体障害者等は交通から疎外され、その生活は一層苦しいものがあります。またこうした交通事情が過疎現象を起こさせております。
このように見てまいりますれば、これら地方における交通を維持
整備し、地域住民の生活をいかに守るかは、当面する交通政策の重要な課題と言えましょう。これに対し現に行われている国及び地方自治体の政策は徹底を欠き、多分にびほう的であります。これは公共輸送の確保はそれぞれの当該企業の責任にあり、国はその規制や監督だけが責任であるとする古い制度的観念と、住民の生活を守り、足を確保すべき立場にある地方自治体には、公共輸送に対する積極的な権限のないことにも起因しております。
こうした情況のもとでの公共輸送は、地方住民にとって、与えられるものであっても、住民の要求するものではなく、情勢の
変化に会えば一方的に運行の休、廃止となり地域住民の生活は無視されております。
このような地方における公共輸送を改善し、住民生活を守るためには従来の政策を抜本的に改め、それぞれの地域において総合的な地方交通の維持
整備計画を利用者、地域住民等の参加のもとに民主的に策定し、地方自治体がその中心となって、推進する必要があります。これが本法案提案の理由であります。
以下本法案の
内容について、その概要を申し上げます。
まずこの法律はすでに申し述べましたとおり経済的社会的な変動により、輸送需要が低下して陸上
交通事業の経営が困難になった地方における地域の輸送確保を図るため、特別な
措置を講じ、その地域における住民の福祉と陸上
交通事業の従業員の雇用安定を図ろうとするものであり、都道府県知事をして該当すべき地域における
国鉄を除く鉄道、軌道、乗り合い旅客自動車の事業の維持
整備計画を立てさせ、その実施によってその
目的を達成させようとするものであります。
この維持
整備計画には当該地域における輸送需要の見通し及び陸上
交通事業の維持
整備の目標、輸送施設の
整備改善のほか目標達成のため必要にして適切な方法を定めるものといたします。この維持
整備計画は当該地域における陸上
交通事業の維持
整備のみを
目的とするものではなく、当然のことながら
関係地域住民の日常生活の利便を確保するために特段の考慮を払うべきことを義務づけております。
またこの維持
整備計画の策定に当たってはあらかじめ、
関係市町村長、
関係する陸上
交通事業者とその企業の従業員の代表、さらには利用者の意見を聞かなければならないこととし、民主的な
計画の樹立とその推進を図ることにし、またこの場合には当該陸上
交通事業の従業員の雇用安定についても配慮すべき旨
規定いたした次第です。
この維持
整備計画の実施に当たって、都道府県知事は
関係陸上
交通事業者に対し、輸送施設の
整備改善等の維持
整備計画で決めた事項の実施について勧告することとし、これを受けた地方陸上
交通事業者はこれを尊重し、その実施に努めなければならないことにし、かつ、国及び地方公共団体をして、そのために必要な資金の確保あるいは税制上の優遇
措置を講じさせ、
計画の円滑な実施をいたさせようとするものであります。また都道府県知事は地域における陸上
交通事業の維持
整備を円滑に行わせるため、必要により
関係陸上
交通事業の合併、譲渡、管理の委託、業務運営の
調整等について、あっせんすることができることといたしました。
維持
整備計画の目標達成のため、地域住民の生活に必要不可欠の生活路線の運行確保による欠損について十分に補助できるよう制度化し、予算
措置を図ることにいたします。
運輸大臣及び建設大臣、陸運局長または都道府県知事が、維持
整備計画に係る地域の陸上
交通事業の路線の休、廃止等、住民の利便を減少するおそれのある処分をしようとするときは、
関係市町村長等の意見を聞かなければならないこととし、地域住民の意向によって処分を決定させようとするものです。
なお都道府県知事が維持
整備計画を策定するに当たっては、都道府県の議会の議員、
関係市町村長及び学識経験者のうちから都道府県知事が都道府県の議会の同意を得て任命する者をもって構成する地方陸上
交通事業維持
整備審議会に諮問することとし、
計画策定に万全を期した次第です。
以上で本法案の説明を終わります。
次に、
中小民営交通事業者の
経営基盤の強化に関する
臨時措置法案について申し上げます。
最近におけるインフレ、物価高、そして過疎過密の激化という著しい経済社会の変動の中で、公共輸送を担当している
交通事業者のほとんどが経営の悪化に悩んでおり、なかんずく中小と言われる陸上中小民営
交通事業の経営は深刻な事態に追い込まれております。これら中小民営
交通事業の背負っている財政的重荷を軽減し
経営基盤を強化することは、他の施策とともに公共輸送確保のため必要な施策であります。このため借入金の利子の支払いを猶予する等の
措置を講じようとするものであります。
これが本法案
提出の理由であります。
次に、法案の概要について申し上げます。
この法案は、資本金または出資の総額が五億円以下の鉄道、軌道及び一般の乗り合い自動車、路線トラック、区域トラックの事業を経営する中小民営
交通事業を対象として行うものでありますが、これらの
交通事業者の経営する公共輸送が地域住民の生活に必要不可欠のものであり、かつ、
政府がこれら事業者にかわって利子の支払いを肩がわりすることが、事業の経営再建に役立つものである場合に限って実施しようとするものであります。
利子の支払いを
政府が肩がわりしようとするものは、
政府が政令で指定した金融機関から
中小民営交通事業者が借り入れた昭和五十年三月三十一日現在の借り入れ残高について、承認の日から五年間にわたって行い、当該
中小民営交通事業者は、肩がわりを受けた利子相当額を元本の返済に充てなければならないことにし、債務の軽減をいたし、財政基盤の強化を図ろうとするものであります。
政府によって利子支払いの肩がわりを受ける
中小民営交通事業者は、五年間の猶予期間経過後、十年間の間に肩がわりを受けた利子相当額を指定金融機関に支払うこととし、利子の支払い猶予の期間中、その決算の額が資本金または出資の総額に対し政令で定める率八%以上の利益を生じた場合は、その年度の猶予利子分を当該
中小民営交通事業者が支払うものとし、また、その利益が政令で定める率一二%以上の場合は、その年度の猶予利子分及びその率を超えた額の二分の一に相当する額の猶予利子分を指定の金融機関に支払わねばならないことといたしました。
さらに、当然なことではありますが、この制度の適用を受けている
中小民営交通事業者に対し、運輸大臣が経理や事業
内容の改善について勧告することができることとし、単に利子支払いの猶予にとどまらず、
経営基盤の強化を図ろうとするものであります。
以上で本法案の提案の説明を終わります。
次に、
交通事業における
公共割引の
国庫負担に関する
法律案について申し上げます。
従来から行ってきております
交通事業の旅客貨物に対する運賃割引のうち、その
交通事業の営業上必要とする割引のほか、国の政策に起因する運賃割引があり、これらは法律によるものもあるが、その多くは慣行により行われてきたものでありまして、一部を除いて大半はそれぞれの
交通事業の内部補助
方式にゆだねられ、一般利用者の負担において実施しているところであります。
しかるに最近の経済社会の激変によって、公共輸送を担当している多くの
交通事業の経営が悪化し、これを維持し継続することに困難を来しております。このように経営の悪化せる事業に国家政策の遂行の責任まで背負わせることは、まさに不公正であり、また
交通事業の健全な発達により国民の足を確保することにも逆行するため、これら国の産業政策、文化政策、社会政策等の要請による
公共割引につき、
国庫負担の原則を打ち立てようとするものであります。これが本法案を
提出する理由であります。
次に、
法律案の概要について申し上げます。
この法律の適用により
公共割引を実施した場合に
国庫負担を行う
交通事業は、
日本国有鉄道の行う鉄道、連絡船及び自動車運送の各事業、地方鉄道法、軌道法による
交通事業、一般乗り合い旅客自動車並びに貨物定期航路及び旅客定期航路事業とし、
国庫負担をいたす
公共割引としては、一、
国鉄が
国鉄運賃法によって割り引く身体障害者及びその介護者の割引額、二、通勤定期乗車券及び通学定期乗車券の運賃を普通旅客運賃の十分の七より低くしたものについて、その差額、三、国が運輸審議会に諮り、産業政策、文化政策、社会政策その他の政策上の必要から運賃割引を政令で定める場合の割引額といたします。
これによって、
交通事業の不当な負担を解消し、事業の健全な発展により公共輸送の確保を図るとともに、交通機関の機能を利用し国家政策の円滑なる遂行を期そうとするものであります。
以上で本法案の説明を終わります。
次に、
中小民営交通事業金融公庫法案について申し上げます。
最近における
交通事業の経営、中でも中小民営
交通事業の経営は、インフレ物価高に加えてモータリゼーションの急速な進展により大きな打撃を受け、いずれも深刻な経営危機に立たせられております。特に過疎地を中心とする地方における多くの中小
交通事業は、従業員に対する賃金の遅欠配をはじめ、人員整理、さらには会社更生法の適用を申請するなど、公共輸送を維持するに大きな支障を来しております。このように極度に悪化した経営を改善し、地域における公共輸送を確保するためには、各種の施策の遂行が強く要求されているところであります。なかんずく中小民営
交通事業の経営に必要な長期かつ低利の資金を供給することは、当面の経営危機から抜け出し、健全な経営に発展させるための必要な施策であり、これら中小民営
交通事業が、ともすれば一般金融機関から円滑に資金の供給を受けられない現状に照らし、かつその公共性にかんがみ特別な金融制度の設立が強く望まれているところです。これが本法案を
提出する理由であります。
次に、本法案の
内容についてその概要を申し上げます。
中小民営
交通事業金融公庫の設立は既存のこの種金融公庫に準ずることといたし、この金融公庫によって資金の融資を受けられる中小民営
交通事業は、資本金もしくは出資の総額が五億円以下の会社、協業組合等政令で指定した組合または個人の経営による鉄道、軌道、バス、ハイヤー・タクシー、路線及び区域トラック運送事業、並びに船舶運航事業(外航及び特定を除く)といたします。
この公庫の資本金は
政府の全額出資二百億円とし、資本金の二十倍を限度とする債券の発行及び
政府からの借入金によって貸し付け業務を行うことにいたします。
この公庫が融資する資金はこれらの経営者が当該事業に必要な施設の
整備のためのもの、または運営のための必要資金を貸し付けるものであり、また、中小企業等協同組合のほか商工組合、内航海運組合等の政令で定める組合もしくはその連合会に対し、業務の運営に必要な資金を貸し付けることができることにいたしました。
以上で本法案の説明を終わります。(拍手)