○松本(忠)
委員 大臣、お聞きのとおりなんです。この問題は決裁は済んでいるけれども、報告書を出していないのですよ。しかも、その決裁の日時というものに大きな疑問点がある。これはお帰りになってお調べになった方がよろしい。私はそれ以上のことは申し上げません。
次に、これも発足以前の
事故でございますが、四十七年の十一月二十八日にモスクワのシェレメチェボ
空港で起きましたところの日航のDC8、JA八〇四〇、これの
事故でございます。この辺につきましても、私、四十八年の二月二十三日に運輸
委員会において取り上げまして、いろいろとやりとりをいたしました。まだまだ疑問が残っております。この点について少し私は触れておきたいわけでございます。
御
承知のように、先ほどもお目にかけましたが、これは
事故調査の報告書、ソ連
政府が、ソ連邦民間
航空省
事故調査委員会が発行したものでございまして、この肝心なところのロシア語並びに英語のも持っておりますが、これを四十八年の一月の十七日に
運輸省で記者会見をいたしまして、この
事故の
原因について発表をいたしました。これはそのときの原稿でございます。この原稿とそれからこちらの
事故調査報告書にこれは全くどういうことでそうなさったのかわかりませんが、わずかな違いでございますけれども、表現の違いがあるのです。そういう点は、これは
日本語ですから、まあいいのじゃなかろうかと思ったのですけれども、これはやはり今後の
事故調査報告書をつくる上において新聞記者会見をしたときに発表した原稿というものは、やはりこの
事故調査報告書というものを基礎にして当然発表されなければならないと私は思うのです。わずかな点でございますけれども、これはいろいろな問題になっているところだけに御注意をしていただいた方が今後よろしいのじゃないかと思う。
その第一は、この中に、
事故原因のところで、aというところで、これは
日本語の訳でございます、「飛行中スポイラを誤って出し、」と、こう書いてあります。そしてこちらの本物の方は「飛行中誤ってスポイラを出し、」片っ方は「スポイラを誤って出し」こういう違いなんです。わずかな違いでございます。後先の違い。だから、そんなに大きな問題にしなくてもいいというのですけれども、これを問題にしている人もあるのだということをお耳に入れておきたいわけであります。そうしてさらにこの問題について、飛行中に誤つつスポイラーを出したということは、これは機構上の異常などでなくて、パイロットの人為的に誤って出したという表現と私は受け取るのです。パイロットが誤って出した、そのように判定した根拠というのは一体どこにあるのかということを私は聞きたいわけでございます。また誤って操作したとするならば、どのような操作をパイロットがしょうとしていたのか、それを誤ってスポイラーを出す操作をしたのか、この点が全く明確になっていないのです。こういう点は非常に私は明確にしておかなければならないと思いますので、これが第一点。
次は、この
事故から約四カ月前にカナダのトロントで発生しましたDC8型機のグランドスポイラーの誤作動による乗員、乗客の全員死亡
事故というのがございます。この
事故を
調査しました
委員会が、DC8のグランドスポイラーは飛行中作動しないように設計されなければならないし、現用の——現在使っているところのDC8には危険
防止のシステムの変更が必要であるというふうにこの
委員会は発表しております。しかし、日航のモスクワ
事故機も、その後の日航機におきましても、そのような改修が行なわれていないのでございます。このことは当然
運輸省も
承知していると私は思います。かつて、このDC8のカナダのトロントの
事故のこの報告を聞き、早く改修させないといけないぞというところの処置を、一体やったのかどうか。わずか四カ月の違いでございますから、できなかったというふうに言われるかもしれませんけれども、少なくともそういう
事故が過去にあって、しかもその
事故調査委員会が発表した中に、現用のDC8には危険
防止のためのシステムの変更が必要である、こういう発表をされた。それを
日本の
運輸省でも聞いているわけなのです。それなのに、なぜ改修に対する命令を出していないのか、これが第二点の
質問です。
それから第三点でございます。
私が、かつて四十五年の十月の九日に、当
委員会で羽田のボーイング727のJA八三〇二の
事故の問題を取り上げたことがございます。そのときもグランドスポイラーの問題でございました。あの
事故もパイロットミスをにおわせるところの
原因不明で片づけられてしまいました。御
承知の山名教授の機体欠陥説というものが大変めんどうな実験の結果割り出されたものでございましたけれども、少数
意見として報告書には記載されませんでした。ついでになりますが、その少数
意見の併記ということをこの中に特に私は入れていただきたいのは、そこにあったのです。この少数
意見を報告書に記載されないそのために山名教授は、
大臣に対して報告書の
提出される以前に
委員を
辞任をされた、こういういきさつがございます。しかし、この問題はいまもってまだいろいろ取りざたされているわけでございます。
いまここに、
日本航空機操縦士協会が発行したところの「PILOT」という本がございます。この本の中にも、木暮右太郎さんという方がこういうことを書いています。これは非常に私は興味を持って読んだのですが、「教授の結論」——これは山名教授を指しております。「教授の結論が正しいか否かは歴史の流れがおのずから明らかにすることである。
ただ、今の時点で確信をもって言えることは、
事故調査という事柄には単なる推論よりも実験を基盤とする科学的な取り組みが本道だろうということである。」またさらに、抜粋でございますから御了解願いたいのですが、「今後発生する
事故の
一つ一つに山名教授が行なったような
調査や研究を期待することは到底ムリというものであろうが徹底した探究を行わないでシタリ顔で結論めいたことを言うのがいかに危険であるかを痛感させられた。」というふうに、この木暮右太郎さんは言っているわけです。こういうふうに、まだいろんな問題が残っています。
私も思いますのに、この当時私も
質問いたしました。
調査委員の山名教授が、証拠に基づいてわざわざ実験して立証された、いわゆる飛行中、グランドスポイラーが開の
状態になっていたということを、そんなはずがないというへ理屈をつけて否定してしまった。727の
事故調査団は、
原因不明というふうに出してしまったわけです。全くの
原因不明ということは本当にどうも残念でならないわけでございます。もし、山名教授の物理的に正しい実験を素直に認めて、飛行中グランドスポイラーの異常開きに対するところの
事故防止対策が行政上行われていたならば、モスクワのDC8の
事故も、
防止に関しては確実に可能であったと私は推定するのです。しかも、その四カ月前にカナダのトロントの問題があります。これもいまお耳に入れたとおり。ゆえに、ボーイング727の
事故調査団の出したところの
原因不明というのは、モスクワのDC8の
事故の拡大再生産につながった因果
関係を有するものだ、私はこう思います。モスクワのDC8の
事故の発生から多くの犠牲者の死を招く結果となったわけでございますけれども、これはあの山名教授の唱えたところの機体欠陥説が正しいか正しくないかは、これは全く歴史が証明するだろうと思います。しかし、いずれにしても、この727のJA八三〇二の
事故調査団が出したところの
原因不明ということは、未必の大量殺人を犯してしまったのではないかというふうなことを、いまでも悔やまれるわけでございはす。
そうした点から、もう
一つだけ私はここで文藝春秋に載った記事を、皆さん方に御披露しておきたいと思う。これは文藝春秋の四十八年の四月、百八十九ページから百九十ページにかけまして、有名な柳田邦男さんが、こうういふうなことを書いています。「
事故調査の第一
権限は」これはシェレメチボ
空港のDC8の
事故のことでございますが、「
事故調査の第一
権限はソビエト
政府にあったにせよ、
運輸省航空局として独自のつっこみはできなかったもとだろうか。
モスクワ
事故の
原因に関して、私は二つのことを思った。
一つは、
航空専門家が「そんなことは起る筈がない」といい切ったことが悲劇的に起ってしまったということであり、もう
一つは、こうした
事故が起ったときに、“パイロット・ミス”という個人の責任ですべてを納得してしまおうとする
日本の精神的風土についてである。
もう三年前のことになるが、羽田沖の全日空ボーイング727型機
事故の四年間にわたる
調査が打ち切られたときのことである。
調査団の
木村秀政団長は、山名正夫
委員の機体欠陥説を否定した理由について、記者会見で次のように語ったものである。
「山名説は前提が誤っている。第一に、スポイラーが“上げ”であるとしてしまった点です。それから機首が下がったときに、あわてて引き起すということは考えられません。そんなときは、スポイラーを引っこめるべきです。
それに、失速によってエンジンガがフレームアウトを生じるということは絶対に考えられないし、いままでもあったことがない。また、異常爆発を起すということは、きわめてマレのマレのことです。」この「マレのマレ」ということを言葉を強めて言っているわけでありますが、「そんなものを
原因と断定したら大変なことになりますから、これをとり上げるわけにはいきません」 と言って、ついに
木村調査団長は、この山名教授の説は全然取り上げなかった。
そこでこの後に、ちょっと飛ばしますけれども、「もちろん、羽田沖の727型機とモスクワのDC8型機は、操縦
方法も構造も違うし、スポイラーが立ったいきさつも違う。問題は、「考えられない」「筈がない」「べきだ」といった論理——パイロット養成所の教官が口にするならいざ知らず——は、
事故を考えるときには最も忌避すべきものであり、そこからは真の安全哲学は決して生れて来ないということを、モスクワの悲劇が羽田沖の体験に照らして明らかにしたということである。」
このように、これは四十八年です。四十八年までも、まだまだこの羽田沖の
事故というのは尾を引いているわけです。こうしたことを考てみたときに、私はもう一度この問題を振り出しに戻して考えてみる、
調査をしてみる必要があるのじゃなかろうかと思うのです。
もう最後でございます。
一つだけ言わせていただきますと、これは「
航空機
事故調査についての国際標準及び勧告方式 国際民間
航空条約第十三付属書」にございます。ページ数で言うと二十九ページ、五章の十五項に、「
調査完了後に、新しくかつ重大な証拠が利用できるようになったときは、
調査を開始した国は、
調査を再開しなければならない。」という条項がございます。この条項を盾にとるならば、やはり私はもう一遍羽田沖の
事故についても
調査をしてみる必要があるのじゃなかろうか。あるいはまた、モスクワのDC8の
事故についても、ソ連の
政府が当事者であったからといって、そこに任せ切りでおくのではなくて、
日本側からもやはりもっともっと究っ込んだ
調査をすべきではなかったか、こう思うわけでございます。
いずれにいたしましても、発足以前の
事故についても再
調査をしないなんということを言わない、なさるのだ、こういう
お話が先ほど
大臣からもございましたので、お忙しいとは思いますけれども、こうした疑問の数々を今日まで残しているわけであります。これは私は、ぜひともやはりやっていただきたいと思うわけでございます。
この二つの公開
質問の問題は、先ほど
お話がございました。中華
航空の問題についてもよくお調べになった方がよろしいと思います。
それから、ただいま、申し上げましたDC8に関する三つの問題、この問題についてひっくるめてごく簡単に、時間が超過しておりますので、述べていただきまして終わりにしたいと思います。
委員長から先に、後
大臣から、ごく簡単で結構でございます、やるかやらないか、そういった点についてのお答えがあれば結構でございます。よろしくお願いいたします。