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宮之原貞光君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、
昭和四十九年度補正予算
関係三法案に対して反対の意見を表明いたします。
反対理由の第一は、本予算三案は矛盾を深める一方の超大型予算案で、
国民の期待にこたえるものでないということです。
総理は、高度成長に訣別をした安定成長路線に立って
財政支出を切り詰めるという方針を明らかにされておるのでありますが、木三案はこれとは逆の水ぶくれ予算案であります。当初予算を含めますと、予算総額は実に十九兆一千九百八十一億円という大型で、対前年比で二五・七%増で、これは四十七年度の一五・五%、四十八年度の二六・〇%増と何ら変わらない総需要抑制とは名ばかりのマンモス予算です。私も、本補正予算三案が
田中内閣崩壊に伴う政変劇の落とし子で、言うならば前政権のお仕着せ予算であることは理解をいたしておるものの、
総理発言とはあまりにも大きな隔たりがあると
指摘をせざるを得ません。あるいはまた、本三案は人勧に基づくところの人件費増が中心で、言うならばインフレあと始末予算で、いわゆる
三木色が出るのは来年度の予算だとの弁明もあるかもしれません。しかしながら、どう抗弁しようとも、本補正予算三案は、新たな需要を誘発をし、物価を押し上げるところの役割りを果たすものであることは間違いないと見ています。これでは物価安定最優先を期待をしている
国民の願いを裏切るものと言わなければなりません。
当初予算審議の際、わが党の同僚議員が
指摘をいたしました、公共事業
関係費の伸びはゼロであるといっても、前年度の八%の繰り延べや財投の三四・八%増を考慮に入れると、
政府の総需要抑制政策はごまかしだと言ったことがありますが、そのことは、四月以降の公共投資を中心にしたところの
財政支出の急増を見れば実証できるのであります。現に、四月から九月に至りますところの
財政資金対民間収支の実績は、
政府の
財政政策はむしろ引き締め緩和の要因となっていることさえ示しておるのであります。このような現実に何ら反省を加えることなく、本三案にさらに
多額の公共事業
関係費を計上しているというこのことは、
財政面でも、総需要抑制よりも不況
対策にウエートを置いた景気刺激策をとっておると見ていいのではないでしょうか。金融政策は、この点はよりはっきりいたしました。
政府、日銀は、表向き総需要抑制の堅持をうたいながらも、その実、秋ごろから日を追って微調整とか手直しの
措置を強め、十二月に入って選別
融資規制の解除、外資取り入れ規制の緩和等の処置をとって、引き締めの緩和に拍車をかけていることは周知のとおりであります。
このように、
政府の総需要抑制策は、すでに
財政、金融の両面からなしくずしにくずれ始めておって、本三案はこのことに一そうのはずみを加えておると言ってもいいのであります。確かに不況
対策、特に中小
企業対策を早急に確立するということは、今日的な緊急課題です。したがいまして、この不況
対策と物価
対策とには、
財政、金融をどう組み合わせて調和をはかるかということは、確かにきわめて重要であります。しかし、それには今日の抑制政策の質的な再編成が私は絶対に不可欠だと思うのであります。たとえば独禁法の抜本的改革によるところの管理価格に大胆なメスを入れるとか、
税制の所得分配の大変革をはかるとか、列島改造論の破棄をするという等の思い切った施策なしには、この両立は私は困難だと思うのであります。この点、残念ながら
政府の態度は、いままでの質疑の中にも終始態度をあいまいにされておりますし、予算案からはこの点はうかがうべくもありません。
第二の理由は、このような抑制策のなしくずし緩和をはかりながら、
国民に対しては総需要抑制の堅持を喧伝をし、その目をあざむきながら、物価騰貴の責めを労働者の賃上げに押しつけようとするところのこの態度であります。賃上げこそは物価高騰の最大の元凶という一大キャンペーンを張って、みずからの政策の失敗を労働者に転嫁しようとするところの魂胆は、断じて許すわけにはまいらないのであります。
政府は、本年度経済見通しの改定試算の中で、消費者物価は最終的に二二%程度、卸売り物価は二五%程度と言いながら、消費者物価を三月末には一五%前後に押えたいと述べております。しかし一方では、先ほど来
指摘をしてまいりましたように、補正予算三案は、なしくずしの緩和予算を組み、また、一連の公共料金の凍結の約束を拒んでおいて、一体、三月末に一五%にこれを押えることができるでしょうか。ノーと言いたいのであります。まさに、いまのような状態において、三月末に一五%に押える云々というのは、木に登って魚を求めるところのたぐいだと申し上げても私は決して言い過ぎでないと思うのであります。その上、例の二兆円減税は、文字どおり金持ち減税で、インフレ南進によって名目所得の上がった労働者には増税になっておるのであります。その上に労働者は、いま、この増税と物価高というダブルパンチを受けておるのであります。それでいて春闘一五%説を喧伝をし、資本に働きかけているというこのやり方は、労働君に一方的な犠牲をしいるものと言っても言い過ぎではございません。
第三の理由は、本予算案は、依然として地方自治を無視したところの中央集権型の予算案であるということであります。
論争点になっておりますところの地方交付税の
政府の保留分はそのままにしておいて、交付金の追加と、前年度剰余金の先払いの七千八百四十三億円と、超過負担解消の三百二十八億円を計上いたしておるのでありますけれども、
地方財政の現状を直視をいたしましたときに、これでは全く不十分であり、一体
政府は、地方自治の本質というものを無視しておるのではないかと書いたくなります。市町村段階では文教、社会福祉
関係が、県段階では住宅
関係に超過負担が集中をしておりまして、各自治体はその
処理に非常に困窮をいたしておるのにもかかわらず、
政府はいろいろの口実を設けてこれを放置しておるばかりか、
地方自治体の固有財源であるところの地方交付税のピンはねさえをもしておるというのは許されません。このような事態は、国が少ない予算で、できるだけ
地方自治体に仕事を受け持たそうとする、いわゆる補助金の薄まき政策に起因をするものだと私は見ておるのであります。それだけに
政府は、国が果たすべきところの最低の行政水準、すなわちナショナルミニマムは何か、そうして
地方自治体のなすべきシビルミニマムは何かということを明確にし、その調整を明確にすべきであると思うのであります。そうしてまた、税源配分率を変更をして、
地方財政の大幅な充実をはかるべきだと
考えるものであります。
第四の理由は、本補正予算三案は、物価問題とともに緊急の
政治課題であるところの社会的不公正の是正の施策がきわめて不十分であるということでございます。
確かに本三案にも、医療費値上げに伴う当然増や、実施期日の繰り上げ等に伴うところの年金改善費等が計上はされていますが、これらは言うならば大部分は事後
処理のものばかりで、
総理みずからも強調された、物価高で最も深刻な影響を受けておるところの生活保護世帯、老人、心身障害者、母子世帯の救済にはほど遠い予算案であります。それだけに、これらの人々に対するところの対応策を緊急に樹立をするということが、今日要求をされておるのでございます。
さきに
衆議院で、わが党が公明党とともに、生活保護費と失対賃金の五〇%の引き上げ、老齢福祉年金の月額二万円への引き上げ、交通遺児、母子世帯への年末一時金の支給等を内容としたところのインフレ救済
対策費として、三千九百六十億円の増額を織り込んだ予算組みかえの動議を提出したところの理由もここにあることを付言申し上げまして、討論を終わるものであります。(拍手)