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柳田桃太郎君 私は、
自由民主党を代表いたしまして、ただいま
議題となりました
昭和四十九
年度一般会計補正予算外二件に対し、
賛成の
討論を行なうものであります。(
拍手)
今日の
わが国経済は、目まぐるしい
世界経済環境の中で、かつてないきびしい試練に直面いたしております。戦後三十年、
国民の英知と努力によって、
世界に例を見ない高い
経済の
成長を遂げ、
国民生活水準の向上と
国際社会における重要な地位を築き上げましたが、昨年秋の
石油危機を契機として、
世界的な
規模で進行する
インフレのもとで、
景気の後退と
不況の増大による各国の
国際収支の不均衡の発生という
世界経済の新しい
環境の激変は、
資源の乏しい
わが国にとって、他の
先進工業諸国に比較して特に深刻であり、今後の
財政金融にいかに対処していくか、きわめて困難な時期を迎えております。
こうした国際的な
経済情勢の中にあって、今日、
わが国経済に求められるものは、まず
物価を安定し、
国際収支の均衡をはかり、国際協調を確立し、従来の
高度成長経済から安定
成長経済へ
転換することでありまして、いまこそ将来の展望を踏まえた
対策が必要であります。
過去一年を回顧いたしますと、
政府の
財政、金融両面にわたるきびしい総
需要抑制策や
国民生活安定のための各種立法
措置等により、今春以降
物価の騰勢は鈍化し、最近ようやく卸売り
物価、
消費者物価とも安定化の
方向に向かい、明るいきざしが見られますことは、
政府の
物価政策の成果であると同時に、
国民各位の御協力によるものど存じます。
しかしながら、
石油をはじめとする燃料、原料、食糧、飼料などの主要部分を
輸入に依存しなければならない
わが国にとって、いままでの、外貨さえあれば無制限に
資源が買える時代は過ぎ去り、量的制約と
資源の
高騰という
資源有限時代になっているにもかかわらず、なお依然として根強い
インフレマインドや春闘に向かっての
賃金動向などを予測いたしまするときに、物資の節約と
物価の安定は現下の最大急務となっております。
政府においては、以上申し述べましたきびしい国際
環境の激変に対処した国内
経済体制をとるため、さきに
経済対策閣僚
会議を設置して、
財政金融政策をはじめ、流通、輸送、
独禁法、
公共料金などについて総合的な
対策を展開されんとしておりますことは、一応新
内閣のなみなみならぬ決意がうかがえますが、さらに一段の努力を期待するものであります。
以下、今回提案されております
補正予算について二、三触れてみたいと思います。
第一は、
補正の
規模についてでありますが、今回の
補正予算は、当初
予算作成後に生じた事由に基づいて緊急にしてやむを得ない事項に限って
補正措置がとられたものであります。
歳出の主要項目は、国家公務員の
給与改善費、食糧管理
特別会計への繰り入れ、
地方交付税交付金、
災害復旧事業費、
建築単価の改定
措置、
福祉年金等改善実施日の繰り上げによる経費等でありまして、既定の
法律、施策に基づき、今日の
状況下において真にやむを得ないものであります。
補正規模の総額が二兆九百八十七億円の大型に達していることにより、現在とっておる総需要の
抑制策が年末から来年にかけて
消費にはね返り
インフレの助長にならぬかとの御
意見があるようでありますが、歳出項目は必要最小限で、中身も人件費、資材費など過去の
上昇分を精算するものがほとんどでありまして、新規に直接需要を誘発する投資的経費は、
災害復旧事業費の八百五十五億円だけであります。これらの点を見ますと、一般的には、この
補正予算が引き金となって
消費需要を喚起するおそれはないと思うのであります。しかしながら、
政府と
国民の長い努力で
物価鎮静のめどが実を結びかけようとしている重大な時期だけに、今後の
経済の推移に十分なる注意をお願いしたいのであります。
第二は、公務員の
給与改善についてであります。国家公務員につきましては、本年七月二十六日の
人事院勧告に基づき、実施時期を本年四月に遡及して平均二九・六四の改善を行なうため七千二百十一億円が計上されておりますほか、これに準じて地方公務員の
給与改定費として、
地方交付税交付金七千八百四十二億円のうち五千五百九十億円の
財源がこれに充てられることになっておりまして、両者をあわせベアに伴う人件費は一兆二千八百億円で、今回の
補正規模の実に六割以上を占めているのであります。これらは
物価上昇に伴う必要な改定でありましたが、どうか公務員
諸君におかれても、
国民の公僕としてその使命に徹し、綱紀を正し、行政事務の能率向上に一そう研さんされんことを期待するものであります。
第三は、食糧管理
特別会計への繰り入れでありますが、一般会計から三千七十六億円が同
特別会計に繰り入れられることになっております。これらは、国内米及び国内麦のほか、
輸入される食糧、飼料の
政府買い入れ価格が当初
予算において予定していた価格を上回る見込みとなったことに伴いまして、食管
特別会計の損失を補てんするため、一般会計より追加繰り入れを行なうもので、価格安定上やむを得ない
措置であります。
なお、
世界一の穀物
輸入国の
わが国にとって食糧の
確保はきわめて重要でありまして、米をはじめとし、国内生産可能なものは極力国内でまかない、自給度を高める必要があります。そういう意味で、食管
特別会計への繰り入れは、
国民食糧の
確保と農家経営の安定のため適切なる
措置であります。
以上述べましたごとく、今回の
補正予算は、当初
予算作成後に生じました緊急にしてやむを得ない
国民生活上のものに限って
予算が計上されておりまして、適切なものと存じます。
最後に
政府に要望いたしたいのでありますが、内外のきびしい
事態に対処して、今後の
経済の運営にあたっては、従来の
抑制的基調を堅持するとともに、
インフレによって影響を受ける社会的、
経済的に弱い
立場にある
中小企業に対するきめこまかい十分なる配慮を切に望みたいのであります。
いまや、
国民は、新しい
三木内閣の門出に大いなる期待を抱いております。どうか三木
総理には、この難局に際して、国家民族の将来のために勇断をもって、新しい時代の
政治に取り組まれることを切望してやみません。
以上をもって、
補正予算三案に対する私の
賛成討論を終わります。(
拍手)
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