○
田中寿美子君 私は
日本社会党を代表して、主として
経済、
国民生活問題について
三木総理並びに
関係閣僚に
質問いたしたいと存じます。
三木総理は、このたび
田中内閣二年半の失政のあとを受けて、
政治的、
経済的に最悪の
事態を収拾すべき至難の任務を背負って内閣首班として登場されました。まことに御苦労さまでございます。が、
国民はいまやあなたがことばでなく具体的な
政策を示されることを渇望しております。あなたが野党との話し合いを進めると言われるのが真意であれば、野党の
意見を十分取り入れ、具体的で誠意ある御回答をいただきたいということを最初に念を押しておきたいと存じます。
まず最初に、
三木内閣の
経済政策の基本
姿勢をお尋ねいたします。
総理、悪性
インフレと不況の共存する、あなたの言われる戦後最大の難局をもたらしたのは一体だれなんでしょうか。
総理の
所信表明演説にも、
インフレ、高
物価、不況などがあたかも
世界経済の影響で自然に起こってきたかのような表現しか見出されません。私は何よりも初めに
総理に対して、歴代
自民党政府の
経済政策が今日の難局をもたらしたものであるということを徹底的に反省していただかなければならないと存じます。(
拍手)
総理、そのような反省の上に立って、
国民生活優先の
福祉型
経済に
転換させるのがあなたの使命ではありませんか。いかがお
考えですか。
総理、あなたが
自民党総裁に就任された直後には、しばしば
自民党の立て直しのために
企業との癒着を断つと公言されました。その後このことばがあなたの口からはあまり聞けなくなりましたが、あなたの御心境に変化が起こったんでしょうか。これまでの
自民党政権は、財界と結合して大資本に異常な利潤の蓄積を保障してきた一方で、
国民大衆には絶えず
物価高騰による
所得や
預貯金の目減りを押しつけ、
インフレの最大の
犠牲者であるいわゆる社会的弱者の生存権すらも危うくしてきました。
ことに四十七年七月
田中内閣発足以来、蓄積された過剰資本は、
日本列島改造
計画の強行と投機の横行で、大
企業による
土地、証券、為替、各種の商品などの買い占めが続発し、石油ショックに便乗してつくられた物
不足、
狂乱物価状況を引き起こしました。その間に大資本は笑いがとまらないほどもうけたのです。これは
国民がまざまざと見せつけられたことであり、今春七十二
国会でいわゆる悪徳
企業の追及でも暴露された事実であります。あなたはここで、大資本と
政府の癒着を断って、
国民生活優先の
福祉型
経済に
転換する御決意のあることをお誓いくださいませんでしょうか。
総理の
経済政策に対する基本
姿勢をお伺いいたします。(
拍手)
それでは、
国民生活優先の
福祉型
経済に
転換するために、
総理、あなたは具体的にどのような
政策を持っていらっしゃいますか。私は、四点について御提案申し上げ、
総理並びに
関係閣僚のお
考えをお聞きしたいと思います。
まず第一に、
インフレによってこれまで過大な利潤をあげてきた大資本のもうけを吐き出させ、
インフレの
犠牲者救済の
財源に充てよということであります。
三木総理は、安定成長路線を宣言されました。これまでの
自民党政府は常に、高度成長の中からのみ
福祉や
弱者対策の
財源はつくれると主張してこられました。一体、安定成長に
転換される場合、
福祉のために必要な膨大な費用はどこからどのようにして捻出されようとするのですか。従来の
政府のやり方でどこからそれを生み出させるのですか。私は大
企業の過大な利潤を吐き出させてそれに充てよと主張いたします。
総理はたびたび、甘いことばかりは言わない、苦しいことも
国民にお願いする、と言っていられますが、私はこの
発言はまず財界に向かって発せられるべきものであると
考えます。
法人企業統計によって見ても、これまでの十年余の高度
経済成長
期間に
法人企業のあげた利益は膨大な額にふくれ上がっており、利益率も大幅に伸びております。本年九月期決算においては、鉄鋼その他の大手の
会社、銀行の利益は特に高額にのぼっております。総需要抑制下でも一部の
企業は利益を大きくふやしているのです。私は、七十二回
国会においてわが党の提案に基づいて成立した
会社臨時特別税法は、
三木総理の言われる野党との話し合い方式の
一つの成果であると
考えますが、この特別税法の実施で、今
年度の補正予算の
収入に一千九百八十億の税収が加えられております。これは二
年間の時限立法ですが、このような大
企業の過大な利得に対する税の徴収の
制度を今後もお続けになるお
考えがありますか、
総理並びに
大蔵大臣にお尋ねいたします。
次に、私は
法人税法を改革し、大
企業の負担を強化することが必要だと
考えますが、いかがですか。
日本社会党は、
法人の基本税率を四二%に引き上げること、また、本来取るべき税金を免除して大
企業や高額
所得者の便宜をはかってきた租税特別措置法の廃止を基本的な方針としております。また、ここ数年来
法人が大量に取得した
土地の含み
資産に対して再
評価課税を行なうとともに、
土地譲渡
所得の一〇〇%分離課税を実施するなどによって大
企業の過大な利潤を吐き出させるべきだと
考えますが、これらを実行する用意がおありでしょうか。高額
所得者を優遇する利子配当分離課税などの特別措置廃止によれば、四十九
年度でも減収分七百十億円の
財源が確保できるではありませんか。そのような税制の改革を断行して、総需要抑制下で
インフレの
犠牲者救済の
財源を捻出すべきではありませんか。
他方、勤労
所得者、サラリーマンの
所得税は、この激しい
物価高の中で実質上増税され、
物価の高騰とのはさみ打ちにあい、不満が満ち満ちております。
国民生活審議会の十一月二十七日の
中間報告でも、
物価上昇が
国民生活に及ぼすゆがみ、すなわち不公平を指摘し、
所得税、住民税の免税点を
物価上昇に応じてスライドさせて引き上げるべきことを提言しております。
総理、税の面でのこのような不公平に対して何らかの
物価調整減税を直ちに行なうよう大蔵省当局に指示される意思がおありになりませんか。
日本社会党は、
所得税の免税点を四人家族で二百八十万円まで引き上げること、
生活必要経費として教育費、医療費、家賃その他を控除すること、内職
収入を非課税にすることなどをかねて要求しております。特に、年末の緊急要求として年内
所得税の三万円税額控除を申し入れております。これが不当な要求だとお
考えになるでしょうか。お伺いいたします。
総理、あなたは就任以来、社会的弱者救済を急がねばならないと言ってこられました。ところが、今回の補正予算総額、二兆九百八十七億の中身を見ますと、いわゆる
弱者対策費は
福祉年金等改善のための経費として四百二十二億が組まれているにすぎません。これらはすでに本年六月と十月の
給付改定によって増加した経費のあと追いにすぎません。
政府は、昨
年度にならって
生活保護世帯並びに
福祉施設入所者に年末一時金を予備費から
支給することを決定したと伝えられますが、
総理、この激しい
物価高のおり、一時金二千円余で、もちが何切れ買えるとお思いになりますか。もちろん、全然
支給しないよりはましですが、昨年末には
老人、身障者、母子世帯にも一時金が
支給されたことから比べると、後退したと言わねばなりません。もっと本格的な取り組みができないでしょうか。
まず、
福祉年金を引き上げることについてですが、
総理、あなたはかつて
昭和四十七年一月の「中央公論」誌上で、「
福祉国家と国際協調の道」と題する一文で、
老齢福祉年金はさしあたって一万円に引き上げるべきである、と述べていられるのを記憶していられるでしょうか。四十七年に一万円必要だったとしたら、四十九年末の現在の必要額が幾らになるとお思いでしょうか。
老人たちは、せめて食費の実費として二万円はほしいと血の出るような叫びをあげております。
国民生活審議会も、無
拠出制年金も、
拠出制年金もともに
物価スライド制の導入が必要であること、しかも
インフレの進行に間に合うような速度で
スライド制を実施せねば
インフレの被害の救済にならないと指摘しております。本年十月から七千五百円になった
老齢福祉年金を来年四月から一万円にするというのではゆうちょう過ぎます。
総理、この際年末に繰り上げ、
福祉年金を相当大幅に引き上げるお
考えはありませんか。社会党は、補正予算組みかえ案では年内に
老齢福祉年金二万円実施を要求する予定ですが、これを不当な要求とお
考えでしょうか。
同様に緊急の救済を必要とするのは
生活保護世帯です。不慮の交通事故で夫を失い貧困におちいった
母子家庭などの状況はこの激しい
インフレの年末にどのように難儀なものか、
総理、あなたの想像にも及ばないところです。
生活扶助は本年六月と十月にわずかの引き上げがありましたが、もともと低
基準でありますから、打ち続く
公共料金の値上げと米代その他食品の値上げでとほうにくれている状況です。この際、
生活保護基準を大幅に引き上げること、また
国民生活審議会の
報告にあるような低
所得層に対する必需物資の現物による補助、その
制度も検討してみるおつもりはありませんか。
このような弱者救済には
財源が必要です。私がさきに提案しましたように、
法人や高額
所得者の優遇をやめて増税して
収入をはかり、補正予算の増額修正を行なう意思がおありにならないか、お伺いします。大蔵省当局の見積もる税の自然増収額は本
年度も、毎度のことながら、実際より六千億から八千億少な目に計算されております。うそを言わない
政治を看板にされる
総理、
財源を正直に検討してください。いかがですか。
さらに、
インフレの大きな
被害者には
老人、身障者、児童などの
社会福祉施設があります。これらに対しても、
措置費の
物価にスライドした上昇がなければ、
自分自身で
収入を得ることのできないこれらの弱者は生命を脅かされることになります。
ここで特に問題になるのは、これらの施設に働く職員の
不足と労働条件の劣悪なことであります。民間の施設の中には
インフレで経営の危機にさらされているものもあり、働き手の
不足で解散寸前のものもあります。
総理、あなたは記者会見で、身障者の宮尾修さんの投書を引用され、こういう人の声を生かしたいと言われました。そのおことばが真実ならば、身障者などの施設に働き、その世話をしている職員の増員と待遇改善のために必要な
措置費の思い切った増額を実行していただかない限り、あなたの美しいことばも生きてこないと
考えますが、いかがですか。あなたは
福祉施設の職員の多くが過労から腰痛症に倒れている実情を御存じでしょうか。聞くところによりますと、厚生省は来
年度福祉施設職員一万九千九百二十三人の増員を必要と
考え、
措置費の増額を要求しているとのことです。これはこれらの施設の職員の労働条件に労働
基準法違反の多いことが繰り返し指摘されているためです。もともと
犠牲の多いこの種の仕事に携わる職員の善意や信念が踏みにじられることがないように
総理のあたたかい御配慮を要望いたしたいと
考えますが、いかがですか。大蔵、厚生両大臣の御
答弁も求めます。
次に、
インフレ激化の中の
国民の
預貯金の目減り
対策についてお尋ねいたします。
インフレのもと、大資本に多額の融資をしてきた原資は主として
国民の
預貯金であります。ところが、
国民大衆の
預貯金の金利は、
物価上昇に追いつかぬどころか、元金まで目減りしてきたのですから、まさに大衆収奪と言うべきではありませんか。
総理、もはや何らかの手を打つべきときだとお
考えになりませんか。
たびたび引用いたしますが、
国民生活審議会の
報告でも、
零細貯蓄者や
老後の備えとして
貯蓄にたよっている
退職者などの
貯蓄の目減りは深刻な問題であるから何らかの
対策をとるべきであるとしています。少なくとも緊急には、零細な
貯蓄者と
年金生活者など高齢者の
貯蓄に対して元本を保証する
特別貯蓄国債のようなものを発行するなど、かなり思い切った目減り
対策を講じなければ、社会的不正義をいつまでも許すことになります。大蔵省でも検討しているということでありますが、先ほどこの点について
福田副
総理と
大蔵大臣との
答弁にはニュアンスの違いがありました。
総理御自身、急いで間に合うように
対策を実行するように御指示になりますか、お聞かせください。
次に、
公共料金についてお尋ねいたします。
総理は、
公共料金についてはタイミングと幅を検討すると言っていられます。それは一体どういう
意味ですか。予想されている
公共料金を、たばこ、麦、酒類、郵便、電信電話の順に上げるという報道もされています。タイミングとは、四月統一地方
選挙と春闘を考慮に入れて、そのあとでという
意味ではありませんか。そのようなこそくな方法をとられても、
公共料金を引き上げる限り、それは
政府主導の
物価引き上げ
政策をまたまた繰り返すものだという非難は免れません。
総理、あなたは
インフレ克服が最大の課題だとお
考えになるなら、まず
公共料金の値上げをストップされるべきだと思いますが、白紙検討というだけではなく、はっきりとした御
答弁をお願いいたします。
大蔵大臣や大蔵省当局は
公共料金引き上げの必要を説いているのです。
日本社会党は、一年ないし三年の
公共料金引き上げの中止を主張しております。私は、その間に公共性の原則に基づいた
福祉型料金体系をつくり上げるべきだと思います。
公共料金はいわゆるナショナルミニマム、すなわち
国民生活の最低
基準を保障するために、できるだけ低廉に押え、低
所得層や社会的弱者に対して低くスライドさせる料金体系にすべきだと
考えますが、
総理の御
意見はいかがですか。
総理、あなたも
公共料金にも受益者負担の原則を説かれております。また先ほど
大蔵大臣は、コストが上がったら
公共料金も引き上げるべきであるというようなことをこれまでおっしゃっております。
公共料金の場合はコスト、
企業ベースで
考えるべきではないと思います。
公共料金の場合は低
所得者ほど
収入に比べて高く支払う逆進性を持つ間接税にもひとしいものではありませんか。
総理の御
見解を伺いたいと思います。
以上、
三木内閣が発足して、GNP第一主義のこれまでの高度
経済成長
政策からいまや安定成長に切りかえようとしつつあるとき、
経済政策に対して根本的に
日本経済の方向を
福祉型に
転換させる意思があられるかどうか、その意思があれば当然手始めに実行せねばならない数点の
政策についてお尋ねいたしました。具体的に
お答え願います。
次に私は、
インフレ、高
物価の推進力である大資本の寡占体制を規制するために、
政府は
独禁法をどのように
改正強化するつもりかをお尋ねしたいと
考えます。
これまでの高度
経済成長期に、
政府は常に総需要を拡大し、大資本の生産を増大させ、価格つり上げによる大きな利潤を許してきました。
三木総理、あなたは大メーカーの製品の価格がつり上げられる原価の秘密についてよく御存じのはずであります。かつてあなたが通産大臣の当時、いまだ
カラーテレビが売り出されて間もないころ、「
カラーテレビの輸出価格が六万円で国内価格が二十万円、これでは開きが大き過ぎる」という有名な
三木発言をされたことをよもやお忘れにならないでしょう。当時、
カラーテレビの原価は六万円以下だったということになります。同じように、アメリカでもラルフ・ネーダーが、自動車の原価がとてつもなく安いのに大メーカーの寡占体制によって値段がつり上げられている事実をアメリカの上院の公聴会で暴露して大騒ぎになったことがあります。
総理、独占禁止法を強化して大資本の寡占体制による価格つり上げのメカニズムを規制しない限り、市場を支配する大メーカーはたやすく価格をつい上げられます。
その上問題なのは、
政府が価格つり上げにしばしば
協力していることです。ごく最近の例でも、石油の在庫量が七十二日分もあってだぶついているのに、消費者価格を引き下げるかわりに、通産省は六百万リットルの減産を行政指導して価格つり上げに
協力しているではありませんか。今春の
国会で石油資本を通産省との癒着を摘発をされたことがもはや忘れられたかに見えます。砂糖についても同様のことが言えます。十月末砂糖の
不足、続いて値上げが農林省によって指導されました。ところが、実際には砂糖の生産は九月末四%増でしたのに出荷が一五%減ということで、明らかに出荷
制限によって価格をつり上げた形跡があります。
総理、もしこのような価格つり上げの仕組みを不当とお
考えになるなら、この際、
独禁法の強化をためらうことなく実行していただきたいと
考えますが、いかがですか。
公正取引
委員会はすでに
独禁法の
改正原案をつくっていますが、財界や
自民党内からの圧力がかけられていると報じられております。
総理が総裁に就任された当初の
独禁法改正への意気込みが最近やや鈍ってきたように見受けられます。社会的公正実現の重要な項目である
独禁法の強化
改正についての
総理の決意がどのくらいかたいか、お聞かせください。
日本社会党は前
国会以来
独禁法改正案を提案しております。私は
独禁法強化のために次の諸点を主張いたします。すなわち、一、巨大化した独占
企業の分割を命令する権限を公取委に与えること、二、大
企業の合併、カルテル行為、株式保有による系列支配を
制限すること、三、不当な価格引き下げ命令権を公取委に与えること、四、株式保有の
制限、五、在庫届け出、原価の公表、六、再販
制度の禁止、七、公正取引
委員会の立ち入り調査権を認める、八、その他流通
関係を含めて不当な取引を規制し、真に自由で公正な取引を保証することなどであります。
総理、これらの点に御賛成いただけますでしょうか。
欧米資本主義諸国では
独禁法の規制はきびしく、特にアメリカでは消費者である市民が
企業を告発する権利を持ち、訴訟に勝てば、市民は損害額の三倍までの
補償を要求することができます。いまや消費者は目ざめております。大資本は自己の利益にのみきゅうきゅうとすることは許されません。近代
経済学者グループ、法学者グループからも、
独禁法の強化なくして
インフレへの克服はないとして
政府への要望が出されているではありませんか。
総理の勇断を希望いたします。
次に、春闘に向けての労使間の賃金交渉に対して、
政府が干渉に似た指導をやめるべきだと思いますが、
総理のお
考えをお尋ねします。激しい
インフレ下の
日本の勤労者の
生活が、名目上の大幅賃上げにもかかわらず、
家計の圧迫にさらされていることは説明を要しません。
総理府の
家計調査によっても、九月にすでに今春闘の大幅賃上げは
物価上昇によって実質的にはわずか〇・一%増、税金を差し引くと逆に〇・一%減となり、春闘の賃上げは帳消しになってしまったとされています。ところが、
政府は労働大臣や大蔵事務次官の口を通じて、また財界は経団連などを通じて早くから、来春の賃金引き上げ幅を一五%のところに押え込むべきであるという趣旨のガイドライン的な
発言をしてきました。
総理も労働大臣も一昨日以来の
国会で、
所得政策はとらないと公言されますが、事実上労働者にのみ押しつける
所得政策と言えるではありませんか。この
狂乱物価の中にあって賃金のみにたよる勤労者は、せめてあと追いにすぎなくとも、
政府統計の
物価上昇率以上の賃金引き上げがなければやっていけません。
総理、あなたは
ほんとうに
物価を三月末一五%上昇率に押える自信がおありになりますか。もしその自信がないなら、賃金引き上げ幅を一五%ぐらいなどという指導を
政府がすることは慎むべきだと思いますが、いかがですか。
この際、認識していただきたいことは、
日本の勤労者のフローの
所得、すなわち現金などの
所得が年々上がって西独に近いところまで来たにもかかわらず、ストックの富が格段におくれているために
生活が苦しいという事実です。
総理は
外国をよく御存じのはずですが、欧米諸国の勤労者に比べて
日本の勤労者の
生活ほど
生活基盤となるべきストックの富の貧弱なものはありません。住宅、光熱、暖房、上下水道、道路、その他の
生活環境施設あるいは
年金、医療その他の
社会保障や
福祉施設を含めて、勤労者の
生活を豊かにする基盤がひどく立ちおくれております。であればこそ、労働者の賃上げ分で
インフレに対して
生活防衛するかたわら、その中から自己の負担で住宅、暖房その他に投資し、子供の学資や
老後のために
貯蓄をせざるを得ないのです。その上、
日本の労働者の分配率はいまだに四三、四%と欧米諸国に比べて低く、しかも、この分配率は最近の統計で見るとむしろ下がりぎみです。それだけ資本の取り分が多いということなのです。こう見てくると、日経連の言う「国際水準に達した
日本の賃金」という言い方は、フローの数字だけの比較であって、ごまかしと言わねばなりません。
総理、あなたは労働者の節度を求めるならば、
政府、
企業側も本気で
物価を押え、欧米諸国並みの
生活基盤の確保をはかることが必要です。思い切って社会的投資に予算の配分を切りかえることこそ緊要であるとお
考えにならないでしょうか、御
所見を伺います。
次は不況
対策ですが、すでに同僚議員の
質問に対して答えていられますので私は反復を避けたいと思いますが、四十八
年度に放漫にふくらませた超大型予算のあと、急激に総
需要抑制策で引き締めた結果生じた不況に対する
政府の
責任は重大です。
政府はすでに財投からの七千億の融資を発表され、必要とあらばさらに支出するということですが、私は特に零細
企業の救済、並びに家電や繊維
産業などに大量に一時帰休とか一時休業の名において実際には解雇となってしまうのが通例の女子労働者、出かせぎ農民の不就労者、パートタイマーの婦人たちの不就労者、採用延期者など、失業統計にあらわれないものの雇用
対策をお聞かせください。現在の不況
対策は、総需要抑制のワクの中で
政府が来
年度予算の中身をいかに配分するかにかかっております。さきにも述べましたとおり、勤労者の
生活基盤のための社会的投資や弱者救済のために
財源を大きく回し、不要不急の公共事業を切るといった思い切った
政策を実行しない限り、来
年度二五%増の予算の範囲では不況
対策は実行されないと思いますが、
総理のお
考えばいかがですか。
総理、あなたも大平蔵相も四国の出身ですが、
日本列島改造
計画に基づく予算のうち、本四架橋予算や高速道路網、新幹線網などの予算支出を一部中止し、または延期し、不況
対策に回すことが必要かと存じますが、そのようなことを実行する勇気がおありになりますか。
田中内閣の失政を正すために登場された
三木総理にそのくらいの勇気がなければ、
日本経済の
転換もむずかしいと
考えますが、いかがですか。
次に私は、
日本農業の危機に立って
三木内閣が農政の
転換をいかにされるかを伺いたいと思います。
農政についても、
総理、まずこれまでの失政を認めていただかなければなりません。
自民党政府の高度
経済成長
政策は、
農業を軽視し
農業を
犠牲にする
政策でありました。このためEEC諸国、イギリスなど各国が
食糧自給率を高めている中で
日本だけが急激に
自給率を低下させ、
食糧輸入を激増させました。特に
田中内閣の
日本列島改造
政策のもとで、
農地、山林のすさまじい買い占め、地価の暴騰が引き起こされ、農民は生産意欲を失い、
農業破壊に拍車をかけました。この失政をお認めになりますか。
食糧不足が騒がれるようになって、最近にわかに
農業見直し論が起こっていますが、安易な増産奨励では
日本農業は救われません。長期的展望と総合的
計画がなければ農民は意欲を持たないのではないでしょうか。
政府の
農業に対する基本的な、長期的な
計画をお尋ねいたします。
最後に、私は、一九七五年が国連の設定した「国際婦人年」に当たることを
三木総理に想起していただき、来
年度にあなたが婦人の権利擁護のために実質的に何をする決意がおありになるかを伺いたいと思います。
何ゆえに国連が「国際婦人年」という年を設定したのでしょうか。それはそもそも、国連によって
世界人権宣言が発せられて久しいにもかかわらず、
世界じゅうに婦人に対する相当の差別が、法制上も
実態上も存在する事実が認められているからです。そこで一九六七年の国連総会で、「婦人に対する差別撤廃要求宣言」が採択されたのに端を発し、この宣言を実りあるものとするために「国際婦人年」が設定されたのです。したがって、来年、一九七五年は「婦人年」であり、国連加盟国があげて女性の差別撤廃、能力の
開発のために一大キャンペーンを行なうこととしたのであります。
この際、
総理に要望したいと存じますのは、私たち女性が、「国際婦人年」を機会に、国連や
政府の行事のあるなしにかかわらず、すべての法律、
制度並びに慣習の中にある男女の不平等と差別を撤廃し、
日本国憲法で保障されている両性の平等を実現するための行動に立ち上がる決意を持っていることを認識していただきたいということであります。
現在の
日本は男性
中心の社会であります。この
国会の議場においても、女性はりょうりょうたるものではありませんか。最も問題なのは、雇用における不平等です。
日本の婦人は、全就業者及び雇用者総数の約三分の一以上に当たり、
日本経済の重要なにない手であるにもかかわらず、雇用機会、待遇、労働条件においていまだ多くの差別が存在しております。また、社会でも家庭でも、法的にも、慣習上にも、いまだ不平等が無数に残っております。これは女性に希望を失わせ、一個の人間としての能力を十分に伸ばし発揮することを妨げたり、活動を阻害したりしております。これらの問題について、来年、一九七五年には徹底的に解明し、調査し、要求を起こすために全
日本の女性が立ち上がる
計画をいたしております。私はこの際、
総理に婦人の持つ問題を認識し、行事
中心でなく、実質的な成果のある
協力をしていただきたいと存じます。その
一つとして、アメリカの大統領直属の
委員会である平等雇用機会
委員会に類する権威ある機関を設置し、雇用に関して性別による差別を排除するための勧告を行なう権限を持たせ、実質的に男女差別撤廃の実をあげることができるような機能を果たすものとしていただきたいと
考えますが、
総理、検討していただけるでしょうか。これは女性の要求のほんの一端ですが、
総理の婦人問題に対する御
意見をいまだお聞きしたことがありませんので、この際お尋ねいたします。
以上をもって私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣三木武夫君
登壇、
拍手〕