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1974-12-24 第74回国会 参議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年十二月二十四日(火曜日)    午後一時三十六分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         二木 謙吾君     理 事                 稲嶺 一郎君                 木内 四郎君                 秦野  章君                 田  英夫君     委 員                 糸山英太郎君                 大鷹 淑子君                 増原 恵吉君                 亘  四郎君                 小谷  守君                 田中寿美子君                 戸叶  武君                 羽生 三七君                 黒柳  明君                 塩出 啓典君                 立木  洋君                 野坂 参三君                 田渕 哲也君    国務大臣        外 務 大 臣  宮澤 喜一君    政府委員        外務政務次官   羽田野忠文君        外務省アジア局        長        高島 益郎君        外務省アメリカ        局長       山崎 敏夫君        外務省条約局長  松永 信雄君        外務省条約局外        務参事官     伊達 宗起君        外務省国際連合        局長       鈴木 文彦君        文化庁長官    安達 健二君        特許庁長官    齋藤 英雄君    事務局側        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        警察庁警備局外        事課長      金沢 昭雄君        防衛庁防衛局調        査第二課長    三好富美雄君        法務省入国管理        局入国審査課長  小林 俊二君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○千九百六十七年七月十四日にストックホルムで  署名された世界知的所有権機関を設立する条約  の締結について承認を求めるの件(第七十二回  国会内閣提出、第七十四回国会衆議院送付) ○千九百年十二月十四日にブラッセルで、千九百  十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五  年十一月六日にへーグで、千九百三十四年六月  二日にロンドンで、千九百五十八年十月三十一  日にリスボンで及び千九百六十七年七月十四日  にストックホルム改正された工業所有権の保  護に関する千八百八十三年三月二十日のパリ条  約の締結について承認を求めるの件(第七十二  回国会内閣提出、第七十四回国会衆議院送付) ○千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百  二十五年十一月六日にへーグで、千九百三十四  年六月二日にロンドンで及び千九百五十八年十  月三十一日にリスボン改正された虚偽の又は  誤認を生じさせる原産地表示防止に関する千  八百九十一年四月十四日のマドリッド協定の千  九百六十七年七月十四日のストックホルム追加  協定締結について承認を求めるの件(第七十  二回国会内閣提出、第七十四回国会衆議院送  付) ○千八百九十六年五月四日にパリで補足され、千  九百八年十一月十三日にベルリン改正され、  千九百十四年三月二十日にベルヌで補足され並  びに千九百二十八年六月二日にローマで、千九  百四十八年六月二十六日にブラッセルで、千九  百六十七年七月十四日にストックホルムで及び  千九百七十一年七月二十四日にパリ改正され  た千八百八十六年九月九日の文学的及び美術的  著作物保護に関するベルヌ条約締結につい  て承認を求めるの件(第七十二回国会内閣提  出、第七十四回国会衆議院送付) ○国際情勢等に関する調査(日中平和友好条約締  結問題に関する件)(朝鮮問題に関する件)(  日米安保体制わが国の非核三原則に関する  件)(嘉手納米空軍基地の「災害対策書」に関  する件) ○対韓政策抜本的転換に関する請願(第八八二  号)     —————————————
  2. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  千九百六十七年七月十四日にストックホルムで署名された世界知的所有権機関を設立する条約締結について承認を求めるの件  千九百年十二月十四日にブラッセルで、千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にへーグで、千九百三十四年六月二日にロンドンで、千九百五十八年十月三十一日にリスボンで及び千九百六十七年七月十四日にストックホルム改正された工業所有権保護に関する千八百八十三年三月二十日のパリ条約締結について承認を求めるの件  千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にへーグで、千九百三十四年六月二日にロンドンで及び千九百五十八年十月三十一日にリスボン改正された虚偽の又は誤認を生じさせる原産地表示防止に関する千八百九十一年四月十四日のマドリッド協定の千九百六十七年七月十四日のストックホルム追加協定締結について承認を求めるの件  千八百九十六年五月四日にパリで補足され、千九百八年十一月十三日にベルリン改正され、千九百十四年三月二十日にベルヌで補足され並びに千九百二十八年六月二日にローマで、千九百四十八年六月二十六日にブラッセルで、千九百六十七年七月十四日にストックホルムで及び千九百七十一年七月二十四日にパリ改正された千八百八十六年九月九日の文学的及び美術的著作物保護に関するベルヌ条約締結について承認を求めるの件(いずれも衆議院送付)  以上四件を便宜上一括して議題といたします。  まず、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。羽田野政務次官
  3. 羽田野忠文

    政府委員羽田野忠文君) ただいま議題となりました千九百六十七年七月十四日にストックホルムで著名された世界知的所有権機関を設立する条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、一九六七年ストックホルムにおいて開催された知的所有権会議において採択されたものであります。  この条約により設立された国際機関は、広く知的所有権全般保護の促進を目的とし、あわせて工業所有権及び著作権保護に当たっている諸同盟間の管理面での協力を確保する役割りを有するものであります。  したがいまして、わが国がこの条約締結し、この機関に参加することは、知的所有権の分野における諸国間の協力に資する上で有意義であると考えられます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、千九百年十二月十四日にブラッセルで、千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にへーグで、千九百三十四年六月二日にロンドンで、千九百五十八年十月三十一日にリスボンで及び千九百六十七年七月十四日にストックホルム改正された工業所有権保護に関する千八百八十三年三月二十日のパリ条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、一九六七年ストックホルムにおいて開催された知的所有権会議において採択されたものであります。  この条約は、工業所有権保護に関する従前のパリ条約改正し、発明者証出願優先権主張基礎として認めるとともに、世界知的所有権機関の設立と相まってパリ同盟管理機構を近代化することを主たる内容とするものであります。  わが国は、従来からパリ同盟に参加してまいりましたが、わが国がこの条約締結することは、近代的な内部機構を備えた新たなパリ同盟の活動に参加することとなり、工業所有権保護のための国際協力を促進する上で有意義であると考えられます。  なお、発明者証出願優先権主張基礎として認めることにつきましては、わが国としては目下必要な国内法改正を行なうべく前向きに検討中であります。したがいまして、政府はこの条約の第二十条第一項の規定に基づき、さしあたりは、わが国批准の効果が同条約の第一条から第十二条までの規定には及ばないことを宣言するという方針で同条約批准いたしたいと考えております。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  次に、千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にへーグで、千九百三十四年六月二日にロンドンで及び千九百五十八年十月三十一日にリスボン改正された虚偽の又は誤認を生じさせる原産地表示防止に関する千八百九十一年四月十四日のマドリッド協定の千九百六十七年七月十四日のストックホルム追加協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この協定は、虚偽の又は誤認を生じさせる原産地表示防止に関する千八百九十一年四月十四日のマドリッド協定及びその後の改正協定加入書の寄託にかかわる事務を、従来のスイス政府から、世界知的所有権機関に移管することを主たる内容とするものでありまして、その趣旨は、知的所有権保護目的とした諸条約に関する事務手続統一をはかるとの見地から望ましいものと考えられます。  よってここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  最後に、千八百九十六年五月四日にパリで補足され、千九百八年十一月十三日にベルリン改正され、千九百十四年三月二十日にベルヌで補足され並びに千九百二十八年六月二日にローマで、千九百四十八年六月二十六日にブラッセルで、千九百六十七年七月十四日にストックホルムで及び千九百七十一年七月二十四日にパリ改正された千八百八十六年九月九日の文学的及び美術的著作物保護に関するベルヌ条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  一八八六年に作成されたベルヌ条約文学的及美術的著作物保護万国同盟創設ニ関スル条約)は、その後、七回にわたって補足、改正されて今日に至っており、この一九七一年に作成されたパリ改正条約は、ベルヌ条約の最も新しい改正であります。  このパリ改正条約は、著作者権利保護に関する諸原則ベルヌ同盟の組織及び運営近代化等について規定するとともに、特に、開発途上国の経済的、社会的、文化的発展必要性を考慮して、翻訳権複製権について開発途上国のために便宜をはかる措置を講じたものであります。  わが国は、一八九九年以来ベルヌ同盟の一員となっておりますが、わが国がこのパリ改正条約締結することは、著作者権利保護における国際協力を促進する見地から、また、開発途上国との友好関係を促進する見地から有益であると考えられます。  なお、この改正条約締結に際しては、第三十条(2)(a)の規定に基づき、翻訳に関する従来の留保を一九八〇年十二月三十一日まで維持する宣言を行なう方針であります。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  以上四件につきまして、何とぞ御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  4. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) それではこれより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 田英夫

    田英夫君 まず、ただいま議題になりました四条約のうち、最初提案された三つ部分、つまり工業所有権に関する部分を中心にした三つの問題について御質問をして、外務大臣おいでになりましたところで、あと著作権の問題について、大臣からお答えをいただきたい分がありますので、その部分あとに残したいと思います。  最初に伺いたいのは、この工業所有権著作権の四つの条約が、実は今臨時国会提出されるということは予想されていなかったにもかかわらず、きわめて突然出てまいりまして、われわれも前国会以来問題をとらえていたわけでありますけれども関係者にとっては、かなりこれは重要な条約であるものが、衆参それぞれ一回の審議で上げなければならないという状況に追い込まれまして、これは国会立場からするとまことに遺憾なことだと思いますが、そうなりました事情をひとつまず御説明いただきたいと思います。
  6. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) お答え申し上げます。  先生御指摘なりましたように、これは継続審議案件であることは申しながら、実は臨時国会で御審議いただくことを私どもは希望していたわけでございますが、しかし期間も短かいので、臨時国会が始まります直前まで、臨時国会は若干あきらめたという形になっていたわけでございますが、しかし、何と申しましても、これから申し上げる理由によりまして、やはりこの臨時国会で御承認いただかなければならないということになったために、急遽御審議お願いするという形になったわけでございます。  その理由と申しますのは、実はこの四条約関連する点がございまして、この世界知的所有権機関を設立する条約というもの——世界知的所有権機関ができますと、それに従来なかったベルヌ同盟パリ同盟のそれぞれにおける機構改正を伴わないと、この世界知的所有権機関に入れないという形に関連してなっております。ところが、このストックホルムでの世界知的所有権機関条約は、すでに七〇年の四月二十六日に発効しておりまして、従来の経緯から、それぞれのベルヌ同盟パリ同盟メンバーとして加わってまいりましたわが国のような国に対しては、五年の猶予期間が認められていたわけでございます。そのために、この五年の猶予期間の間は、現在御審議お願い申し上げますパリ条約ベルヌ条約締約国でなくとも、一応その世界知的所有権機関内部運営管理に関与いたします調整委員会でございますとか、一般総会とかいうところに、従来のパリ同盟ないしはベルヌ同盟メンバーであるということで参加いたしまして、それぞれの会議の場においてベルヌ同盟パリ同盟及びこの世界知的所有権機関管理運営にかかわってきたわけでございます。ところが、先ほど申し上げましたように、この五年の期間が一九七五年、つまり来年の四月二十六日をもってその猶予期間がなくなりまして、そうなりますと、従来行使してまいりました管理運営機関への参加ということは今後はできなくなると、有効に参加することができなくなるというような事情がございますので、実際上日本が一九七五年、来年の四月二十六日までにこれらの条約メンバーとなっておりませんとそういう事態が発生いたしますので非常に困る。したがって、日本が来年の四月二十六日までにこれらの条約メンバーとなっているためには、批准書を寄託するのがそれよりも三ヵ月前、すなわち、来年の一月二十五日ないしは六日までには批准書を出さなければならないという事情にあるわけでございます。物理的に申しまして、通常国会でこれらの条約の御審議お願いして、一月の二十六日までに批准書を寄託するようになることは不可能でございますので、非常に緊急で、皆さまに御迷惑をおかけする次第でございますが、あえてお願いを申し上げた次第でございます。
  7. 田英夫

    田英夫君 いまの御説明にありましたように、一月二十六日という期限があるからだということのようでありますが、ここで一つ外務省お願いをしたいんですが、われわれの立場からすれば、行政府日本政府として調印をされたもろもろの条約協定というものを、国会立場から審議をし、批准すべきかどうかということをきめていくという、言うまでもないそういう段取りでありますから、われわれとしてもあらかじめそうした期限的なもので縛られて審議を急がなければならないということはまことに遺憾でありますので、いますでに調印をしていて国会批准を求めるという段階にある条約協定が幾つあるのか。そしてその内容はどういうものなのか、これをひとつ一見してわかるような資料にしてお出しいただけるかどうか、その点いかがでしょうか。
  8. 伊達宗起

    政府委員伊達宗起君) ただいま田先生からお求めのありました資料は、若干の時日をいただきますれば御提出申し上げることができると思います。
  9. 田英夫

    田英夫君 これはひとつ通常国会再開——来年でけっこうですから、ぜひわれわれにお示しくださるようにお願いをしておきます。  で、今度の条約内容に移りますが、先ほど政務次官からの御提案の中にありましたように、わが国は一条から十二条までの実体規定には加入しないという宣言をするんだということでありましたけれども、これは当然国内法との関係だと思いますが、その関連をもうちょっと詳しく御説明いただきたいと思います。
  10. 齋藤英雄

    政府委員齋藤英雄君) お答え申し上げます。  先ほど政務次官からお話し申し上げましたように、このパリ条約の二十条の(b)項によりまして、各加盟国批准または加入効力が一条から十二条までの規定あるいは十三条から十七条までの規定いずれかに及ばないことを宣言することができるという規定がございます。その規定に基づきまして、いわゆる一条から十二条までの実体規定につきまして効力が及ばないというふうに宣言をするふうに考えておるという御説明を申し上げたわけでございますが、私のほうのこれに関係をいたします法律は、特許法以下実用新案、意匠、商標法不正競争防止法と、それだけ関連規定がございます。この実体規定の中で、発明者証というものを優先権主張に関しまして他の特許出願と同様に取り扱おうと、こういうのが実体規定の主たる改正部分でございます。  で、これにつきましては、特許法の十七条等にパリ条約を引いておりまして、そのパリ条約の中にはストックホルム改正というものが含まれないような引き方になっております。したがいましてその条文、あるいはそれを引いて、その後に四十三条という「優先権主張手続」の規定がございますが、その規定も当然それを受けておりますので、その規定につきまして発明者証出願が受け切れない、そういうことがございますので、四十三条にそういう規定がございますので、したがいまして、特許法、それに関連する法規の改正を要するのでございます。  で、本件につきまして、私どもちょうどこの一九六七年にストックホルム改正がございましたが、その当時非常に特許出願が多くて、非常に未処理案件も多い関係で、大体処理をするのに非常に私どもその当時不十分でございましたが、おおむね五年前後出願をしてから処理までにかかるという、非常に長期間を要したわけでございます。したがいまして、私どもはこの発明者証の採用より以前に、まず、通常国際的に考えられております審理期間は大体二年前後でございます。それを早く縮めるということを考えまして、所要の措置をいろいろ努力をいたしてまいりました。最近に至りまして、大体まあ三年をちょっと切るぐらい、しいて申しますれば三年前後ぐらいに縮まってまいりました。ほぼ国際的な審理期間の水準に近くなってまいりましたので、この際発明者証というものを優先権主張に取り上げる必要があるのじゃないかと思いまして準備を進めておりました。  それで、一方私どものほうは特許法自身、これも国際的ないろいろな要因によりまして、物質特許あるいは多項制という項目につきまして特許法改正を実はやろうと思っておりました。それは工業所有権審議会というものにかけまして過去数年間やってまいりましたが、たまたまその内容がかなり複雑かつむずかしいものがございましたために、その審議会審議が実はおくれてしまいました。したがいまして、ことしの初めにその審議が終わるところが、実は審議は九月までかかりまして、九月十七日に最終答申をいただいたわけでございますが、そういう関係でそこの辺の審議はおくれました。したがいまして、それと一体に考えておりました特許法改正というものは、実はまことに私ども遺憾に思っておりますが、前通常国会には提出できない事情に相なりました。したがいまして、実体規定のほうは一応この際、いま申し上げましたような事情効力が及ばないというふうな宣言をするように考えておる次第でございます。
  11. 田英夫

    田英夫君 いまのその国会法改正ですけれども、今度の問題に関連をして言えば、ソ連、東欧などの発明者証優先権を適用するという部分ならば、その部分改正は実は簡単なはずでありますから、他の問題のほうの改正特許法改正がおくれているというような部分に巻き込まれて、この1項へ加入するという、せっかく加入しておきながら、実体規定は参加しないと宣言をすると、まあ他国から見れば、いかにも執行委員国に居残るためにとにかく実体なしで加入するんだと言われてもしかたがない。できることならば、これはその部分だけでも国内法を早急に改正をして、一日も早くこの実体規定についても加入できるような方向に向かうべきだと思いますが、そういうお考えがあるかどうか。また、国内法をそういう形で改正すればいつごろ実体規定にも加入できるのか、この辺はいかがですか。
  12. 齋藤英雄

    政府委員齋藤英雄君) お答え申し上げます。  ただいま先生がおっしゃいました前段のお話、私どもまことにそのとおりだと思います。ただ私どものほうの、審議会のことばかり申し上げて恐縮でございますが、審議会中間答申が一月の末ごろに出まして、ちょうど中途はんぱな時期になりましたものですから、その辺で特許法改正の全体のものを実は見送ったという経緯でございます。私どもは、今後それは注意をいたしたいと思います。  それから第二段の御質問がございました。今後どうするかという問題について、いま申し上げましたように、本年の九月に審議会最終答申をいただいておりまして、現在法制化を急いでおりまして、すでに内閣法制局審議がほぼ終わるような段階にまできております。したがいまして、私ども予定といたしましては、この特許法等改正につきましては、ことしの十二月から始まると予定をされております通常国会提出をする予定でございます。
  13. 田英夫

    田英夫君 先を急ぎますが、もう一つ特許協力条約、これは一九七〇年に作成をされているようでありますが、これが発効すれば、もう優先権というよりもさらに一歩進んで、自国に出願をすれば自動的に他国すべてに及ぶという、加盟国に及ぶということになるようでありますが、このほうの見通しはどうなのか。日本政府としてのこれに対するお考え、これからの発効見通し、この辺をこの際聞かしておいていただきたいと思います。
  14. 齋藤英雄

    政府委員齋藤英雄君) 特許協力条約、俗称いわゆるPCT——パテント・コーポレーション・トリーティと申します、PCTと俗称しております。このPCTはいまお話ございましたように一九七〇年六月に締結をされておりまして、現在各国批准のために一応オープンになっております。私どもこの条約は、当然ヨーロッパ諸国あるいはアメリカ等加入をいたしまして、世界的に一歩進めた、少なくとも形式面における特許の国際的な統一と申しますか、そういうものに一歩進める条約ではないかと思っております。しかしながら、同条約発効につきましては、やはりヨーロッパ諸国が現在ヨーロッパだけで特許条約をつくろうと思っております。これは第一条約と第二条約と二つございますが、その動向等がございまして、私どもが聞いておりますところでは、ヨーロッパ諸国は、その第一条約のほうができ上がるとほぼ同時にPCT加入をしたいという意向を持っておるようでございます。その辺を考えますと、大体一九七七年の後半から七八年ぐらいに発効するんじゃないかというふうに考えております。  それで、まあ日本ももちろんこの発効の時期に合わせまして、私ども国会の御承認をいただければまことにありがたいというふうに考えておる次第でございます。
  15. 田英夫

    田英夫君 もう一つ関連した条約で伺いたいのは商標登録条約のことですが、これはわが国はまだ未加盟のようですが、これも現在のたいへん商標登録の出願が激増しているという状況の中では、国内のその事情からおそらく加盟できないんじゃないかと思いますが、そのとおりなのかどうか。これに対する政府のお見通しもこの際伺っておきたい。
  16. 齋藤英雄

    政府委員齋藤英雄君) いまお話がございました商標登録条約でございますが、トレードマーク・レジストレーション・トリーティと申しまして、俗称TRTと申しておるものでございます。TRTにおきましては、簡単に申しますと審査の期間が十五カ月ということになっております。したがいまして、わが国商標は、先般申し上げました実は特許と同じような状況に現在なっております。非常に出願も多いし、かつ未処理案件も非常に多うございまして、そのために非常に苦慮をいたしておるわけでございますが、したがいまして、そういうところから現在すぐこれに加入をするということは非常に困難な事態であると思います。このTRTに関しまして、一体いつごろにこれが発効になるであろうかということは非常に先行き見通しがむずかしい問題でございますが、これもいわゆるアメリカあるいはヨーロッパ諸国が当然加入をするわけでございまして、その辺に実は多少いろいろ問題がございます。したがいまして、PCT発効よりはやや遅れるのではないかと思います。どのくらいということは非常にこれは見通しが困難でございますが、少なくとも一年ないし二年は遅れるのではあるまいかというふうな感じを持っておるわけでございます。
  17. 田英夫

    田英夫君 あと大臣がおいでになってから質問することありますので、ここで一応中断します。
  18. 立木洋

    ○立木洋君 工業所有権保護に関するパリ条約ストックホルム改正条約なんですが、これについて国内法、特に特許法改正をしなければならないという条項はどこどこですか。何条と何条ですか。
  19. 齋藤英雄

    政府委員齋藤英雄君) 特許法におきましては、特許法の十七条で、これは手続の補正と申しまして、手続を一ぺん出願したものを訂正する規定でございますが、そこに期限の制限を付した規定がございまして、「特許出願の日から一年三月を経過した後」云々という規定でございますが、その特許出願の日の特例としまして、優先権の主張を伴う特許出願にありましては、このパリ条約を引きまして、そのパリ条約の最初の出願の日、すなわち第一国に出願の日をもってこの特許出願の日とするという、そういう規定がございます。したがいまして、十七条のこのままの規定でございますと、当然これはストックホルム改正を引いておりませんので、入っておりませんから、この十七条につきましては、改正を要するのではなかろうかと思われます。それから以下、実際の優先権主張手続をきめました四十三条というのがございますが、これは先ほどの十七条の規定で、いろいろこう何とかで何とかで改正されたというのを、以下パリ条約というというふうに引いておりますので、パリ条約をそのままここで受けております。したがって、条文上は改正を要しないと思うのでございますけれども実体的にはここに優先権主張に基づきます発明者証の問題というのは入ってこないわけでございますけれども実体的にはここのところもややぐあいが悪いのではあるまいかというふうに考えられます。  それからこれと同じように、実体的に言えば、特許法の六十五条の二という「出願公開」の規定がございます。出願公開と申しますのは、特許出願をいたしました者が、その日から一年半たちますと、その発明の内容出願内容を公開しなけりゃいけないという、いわゆる早期公開の制度でございます。この起算点がやはりこの優先権主張の場合には特例になるわけでございます。その辺も、これは条文自身を直す必要はないと思います。実体的にはそこがぐあいが悪いわけでございますが、それも実体的に修正を要する点でございます。  以下、実用新案法にも同様な早期公開の規定がございまして、そこの規定も同じように修正を要するように思います。実用新案法は十三条の二でございます。十三条の二に同じようにパリ条約としまして「千九百年十二月十四日にブラッセルで」と、以下こういうふうに書いております。そこの規定ストックホルム改正が入っておりません。これも改正を要するところだと思います。それ以外に商標あるいは不正競争防止法にも規定がございます。
  20. 立木洋

    ○立木洋君 しかし、特許法の第二十六条に、「特許に関し条約に別段の定があるときは、その規定による。」という条項が特別にうたってあるわけですが、別に問題ないんじゃないかと思いますが、この点はどうなんですか。
  21. 齋藤英雄

    政府委員齋藤英雄君) 二十六条には、いまお話がございましたような規定がございます。したがいまして、条約に別段の定めがあります場合には、それによることになっております。現在、たとえば特許で申します優先権主張で、特許実用新案は十二カ月以内に優先権の主張をしなければいかぬとか、意匠、商標については六カ月以内であるという規定は、特許法そのほか工業所有権四法には規定がございません。直接これは条約の適用になっております。しかしながら、いま申し上げましたいろいろ優先権の主張等の条文につきましては、これは条約自身につきまして、やはりきっちりと自分でこまかいところまで、いわゆる自分で執行するような規定がない場合、たとえばその条文自身で国内法規定によるんだというふうにまかせられている部分があるわけでございます。そういうものがもしあります場合には、それはやはり条約だけでは受け切れませんで、法律で具体的な手続を受けなければいけないということに相なるわけでございます。たとえば先ほど申し上げました例の中でございますが、四十三条に優先権の主張の手続がございまして、これはパリ条約優先権主張をしようとする者は、同盟国の国名とか、出願の年月日等、いろいろ書いた書面を特許出願と同時に特許庁長官提出しなければいけない、こういう規定が四十三条でございます。それで一方パリ条約でございますと、パリ条約の四条のDの(1)のところでございますけれども、最初の出願に基づいて優先権を主張しようとする者は、その出願の日付及びその出願がされた同盟国の国名を明示した申立てをしなければならない。各同盟国は、遅くともいつまでにその申立てをしなければならないかを定める。」という規定がございます。「いつまでにその申立てをしなければならないかを定める。」といいますのは、ここは国内法にゆだねられておるというふうに私どもは理解をいたしております。したがいまして、日本特許法の四十三条では、特許出願と同時に特許庁長官提出をしなければいけないという規定でございます。ここの規定は、直接条約発明者証規定がございましても、そのままでは条約自身が自己執行的になっておりませんので、国内法でそのままでは受け切れないという規定でございます。国内法は当然その発明者証も入れたものをこの四十三条で受けるようなかっこうにいたしませんと、その辺は十分ではないんではないかというふうに思います。それが一例でございます。  なお、それ以外にも二、三ございますが、まことに趣旨は同様の趣旨でございます。
  22. 立木洋

    ○立木洋君 これらの特許法のいまに関連する部分というのは、大体いつまでに解決するのか、その時期的な見通しはどうなんですか。
  23. 齋藤英雄

    政府委員齋藤英雄君) この特許法改正につきましては、先ほど申し上げました十七条のところを改正しまして、以下それをこう受けていくということになるわけでございますが、現在、これにつきましてはすでに工業所有権審議会審議も終わりまして、私どものほうは条文をいま作成をしておる最中でございまして、すでに内閣の法制局のほうでも御審議をいただいておりまして……。
  24. 立木洋

    ○立木洋君 簡単に、時期だけでいいです。時期の見通しだけで。
  25. 齋藤英雄

    政府委員齋藤英雄君) 十二月に始まると予定されております通常国会には、私ども提出をする予定でございます。
  26. 立木洋

    ○立木洋君 著作権保護に関するベルヌ条約パリ改正条約に関して文化庁にお尋ねしたいんですけれども、昨日ですか、東京新聞に出されておりましたが、同条約の十四条二の第三項、ここに映画的著作物の「主たる制作者」という訳文になっているけれども、これは原文は主たる監督というふうになっている。安達長官はこれに対しては、「”制作者”としたのはまずかった。”監督”に直させます」というふうにお答えになったそうですが、事実相違ないんでしょうか。
  27. 安達健二

    政府委員(安達健二君) この「主たる制作者」の原文は、英文でプリンシパル・ディレクターというようになっておるわけでございます。この翻訳と申しますか、条約日本文としてどういうものをしたらいいかということにつきましては、いろいろと研究をしておったところでございますが、それについて四月の中旬ごろに映画の監督協会のほうから、これをひとつ監督に改めてもらいたいというような陳情書が、衆議院の外務委員会の調査室のほうへ入ったということを伺ったわけでございます。それで四月の二十二日、これは文化庁で優秀映画を十本出しておりますが、その優秀映画の表彰式のときのパーティで、理事長の五所さんからこのお話がございました。それで私は、このプリンシパル・ディレクターをどう訳すかについては、なかなかむずかしい問題だと思っておりましたところ、そういうような五所理事長からのお話ございましたので、これを一ぺん、パーティの席でございましたので、明快にどういうことを申し上げたかはちょっと忘れましたけれども、とにかく一応検討して、あなたのほうにも相談してみましょうと、こういうことを申し上げたわけでございます。この条約の案文というのは、外務省と法制局が中心になっておつくりになり、文化庁が実態的な面で御相談にあずかると、こういうような状況でございますので、いろいろ相談いたしましたところ、やはりこのプリンシパル・ディレクターの訳としては、いろいろ考えたけれども、「主たる制作者」が、最善ではないけれども、まあ次善の訳としてやむを得ないんじゃないかと、こういうお話があったわけでございます。そこで、私もいろいろ聞いてみまして、やむを得ないというようなことで、ただこれを、一般で誤解があるといけないので、法令集等に誤解のないような注記でもするようなことでしたいというようなことを監督協会のほうへ、これは著作権課長から連絡をさせたというのが事実関係でございます。
  28. 立木洋

    ○立木洋君 宮澤外務大臣にその点お尋ねしておきたいんですけれども、この執行に関しては、単なる翻訳という問題ではなくて、監督の権利に関する問題にもかかわることなので、衆議院の外務委員会では、その点について外務大臣が述べられたそうでありますけれども、当外務委員会においても、その権利に関する分には抵触しないというはつきりとした御見解を述べていただきたいんです。
  29. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 確かに、ただことばの使い方だけでなく、実態問題として誤解を生じることがあるのではないかというふうに、私も事情を聞きまして考えておりまして、ここにディレクターといいますのは、いま文化庁長官からお話しのありましたように、通例の場合、監督または演出を担当する者をさすのであるという意味のことを、誤解がありませんように、いま条約集と言われましたか、解説書と言われましたか、そういうところへ明記をしておく必要があるというふうに考えております。
  30. 田英夫

    田英夫君 いま立木委員からお話がありました点を、私も大臣御出席になりましたら伺おうと思っておりました。いまお答えありましたのでわかりますけれども、あらためて、いまも文化庁長官からのお答えにもありましたように、この問題は、関係者にとってはきわめて重要な問題でありますので、私からも確認をしておきたいんですが、パリ改正条約の十四条の二の(3)項というところにある「主たる制作者」ということば、これは通常の日常会話の中にはきちんとした定義のないことばでありますから、この条約翻訳の中で、速記録に残すという形で明確にしておいていただかないと、いろいろこれから混乱を起こすんじゃないだろうか。いま立木さんからもお話のあった、昨日の東京新聞の特集記事は、映画監督協会の御立場の主張だと受け取っているわけですけれども、同時に、最近では映画もさることながらテレビのドラマこれも非常に国民に親しまれているわけですが、これは監督ということばを通常使いませんで、演出家と言っておりますね。もとのことばはディレクターでありますから、ディレクターということばを、日本語にもテレビ局では使っているわけで、そうなりますと、先ほど文化庁長官のお答えにありましたが、原文は、これ正文はフランス語のはずですが、英語に翻訳するときにはディレクターと翻訳をしているそうでありますから、先ほどのお答えのとおり、日本語でもディレクターと言っており、演出家と言っておるわけですから、国際的なそういう関係からも、テレビの制作者は当然含まれると、しかもそのテレビは以前のスタジオドラマならば、オンエアしてしまえばそれでおしまいですけれども、最近はビデオテープになり、それからまたフィルムに残すということも可能なわけでありますから、当然著作権の問題の対象になるということからすると、映画の監督、テレビの演出者ということ全部を、そういう種類のものを全部含むと、こういうことを確認しておいていただきたいし、それを総称することばがないとすれば、制作者ということばが、文化庁長官のおことばのように、それで一言でわかるという意味ではベストでないけれども、ほかになければこれが次善のことばだという意味も込められると思います。それをひとつこの機会に外務大臣のおことばとして残しておいていただきたいと思いますので、その辺を正確にお答えいただきたいと思います。
  31. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 御指摘のございました本条約第十四条の二(3)にいう制作者につきましては、これは英語のディレクターの訳語であり、すでに御説明申し上げましたとおり、通常の場合、監督または演出を担当する者をさすものでございます。
  32. 田英夫

    田英夫君 それに関連をいたしまして、わが国の現行の著作権法によりますと、映画著作物著作権は映画製作者、この製作者というのは、つまり映画会社、メーカーをさしていると思います。これは著作権法二十九条一項の規定がそうしていると思いますが、そうなりますと、この部分ではいまのこの条約の解釈とはうらはらに、映画監督、演出家などは除外されているわけであります。これは矛盾すると思いますし、このパリ改正条約の中を見ますと、この加盟国は一応国内法著作権の決定をしてよろしいということが十四条の二の(2)できめられているわけですけれども、同時に国内法令で映画監督あるいは演出家を著作権者に含めるという規定をしている国では、映画監督を特に手厚くするという意味の規定がまた別に十四条の三にあるわけでありまして、これをどう読むか、微妙なところではありますけれども、この条約の精神は、先ほどの問題もあわせて考えると、映画監督、テレビの演出者という者にも著作権があるというふうに国内法を定めている国、これが望ましいと、そしてそれを手厚く遇するべきだ、こういうふうに考えられます。わが国の法律は一応除外しているわけでありますし、この辺の矛盾をどうお考えなのか。将来はといいますか、次に早急に映画監督あるいは演出家にも著作権を認めると、こういうふうに国内法改正すべきではないかと思いますが、この点は長官いかがですか。
  33. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 映画の著作者著作権の帰属等につきましては、非常にむずかしい問題がございますが、新しい著作権法の第十六条におきましては、映画の著作者はだれであるかということにつきまして、この原作者を除きまして、「制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者とする。」というように、監督以下の方々が著作者であるということを、まず第一前提にいたしておるわけでございます。  著作者の有する権利は、一つ著作者の人格権という問題でございます。それから経済的に利用する権利を単純に著作権といっておるわけでございます。したがいまして、監督等の著作者は映画に関する著作者としての人格権、これを無断で変更されない、変更禁止する権利というような、要するに、著作者の人格的な権利は保有するということをまず第一前提にいたしておるわけでございます。ところがもう一つ、映画の著作物を経済的に利用する、これを複製し、頒布し、映画館で上映するという権利になりますると、これは映画の著作権の経済的利用を有効にするためにはできるだけ簡明にしなければならないということで、その経済的利用権は、映画の製作者、メーカー、主として映画会社等に帰属すると、こういうような現行法になっておるわけでございます。  それから一方、ただいま御審議していただいておりまする条約の考え方でございますが、この映画の著作権——ここで言っている著作権は経済的利用権でございますが、その著作権者をだれにするかということが、それぞれの国内法で定めてよろしいということにいたしておりますが、その次の(2)の(5)項でもちまして、しかしながら、この映画の「製作に寄与した著作者」、まあ監督等その他ございますが、あるいは実演家の俳優等もございましょうが、こういうことについて、映画の製作に参加することを約束してしまえば、「反対の又は特別の定めがない限り」は、その映画の著作物の経済的利用については「反対することができない。」ということで、国際的に見ますると、そういう映画の著作権は映画の製作者に帰属したものとして扱って差しつかえないと、こういうのが(2)の(5)項の規定でございます。ところが、国内法によりまして、映画の監督にも経済的利用権としての著作権を与えている国もある、そういう国が困るではないかということで、これはこの前のこの規定ができましたストックホルム改正会議の最終段階になりまして、主として東ヨーロッパの国等におきまして、映画の監督にも著作権を与えているから、一般的に映画の監督権に著作権をなくすることは困るからということで、(3)項の規定が入ったわけでございます。しかしながら、その後段におきましては、そういうことをきめている国、すなわち、映画の監督に著作権を留保している国は、逆にそういう旨を同盟国に通知しなきゃならぬということで、すなわち、そういうのは国際的に言いますと、いわば例外的になるわけでございまして、そういうような国は、外国に通知しておきませんと非常に困るからというので、そういう国は特に通知をしなさいという規定でございます。したがいまして、考え方といたしまして、あるいは世界の傾向から言いますると、映画の著作権を製作者等に統一的に処理して、経済的利用をはかる必要があるだろうというのが大勢でございますけれども、なおしかし、監督等に留保するような国については、他の国にも通知をしてそれも認めようというのがこの条約の一般的な考え方でございます。そういう考え方から言いますると、新しい著作権法は、この条約に沿っていることはもちろんでございますけれども、世界的な大勢からしては、大体そういう線に近いものではないだろうかという感じがいたすわけでございます。  で、ただ映画の監督等の方々におきましては、映画の監督等にも、一そういう経済的な利用権についての権利もほしいという意見は前々からあるところでございまして、この新著作権法案の御審議の祭にも、いろいろとそういう意見が出されまして、この問題はなかなかむずかしい問題だから、ひとつ将来の検討課題にするようにということで、衆参両院とも附帯決議に、今後検討すべき課題として、映画の著作権の帰属の問題が掲げられているところでございます。
  34. 田英夫

    田英夫君 この問題は、非常に、いまおっしゃったとおり重要な問題でありますし、文化庁といいますか、文化政策の上で基本的な姿勢を問われる問題だと思いますので、これはまた別の機会がありましたら討議をしたいと思います。  最後にもう一つ、このパリ改正条約の中で、開発途上国の問題がストックホルム改正条約よりも後退をしている部分があるわけなんですが、この考え方については、時間がありませんから省きますが、この機会に、その開発途上国という言い方が簡単に使われていて、しかも、その規定がないわけであります。外務省は、こうした条約の中に出てくる開発途上国というものをどういう範囲でお考えなのか、どこに線を引かれるのか、これをこの機会に明確にしておいていただきたいと思います。
  35. 鈴木文彦

    政府委員(鈴木文彦君) この附属書に定めております特権が、開発途上国のみに与えられるという規定になっておりますが、この開発途上国は、どういう範囲の国を指すかという点につきましては、まず、当該国がこの特権を利用し得る開発途上国であるかどうかということを、まず、その国自身が判断するというたてまえをとっております。もっともこの判断は、純粋に主観的なものであってはなりません。他の同盟国もこれを納得し得るような客観的なものでなくてはならないことは言うまでもございません。そこで、一九六七年のストックホルム会議でも、より客観的な基準を採用するように努力をいたしましたけれども、結局意見がまとまりませんために、国際連合総会の確立された慣行という表現によって開発途上国かいなかを判定するという、現在の文案に落ちついた次第でございます。しかしながら、その国際連合総会の確立された慣行とは何であるかという点になりますと、これについて必ずしもはっきりしておりませんので、いまだにこれについては議論が分かれているのが実情でございます。で、この知的所有権保護合同国際事務局——IBIRPIと申しますが、この事務局長が国連事務屋長と協議した結果とか、あるいはパリ改正会議の際の報告者の個人的意見等などから判断しますと、いま申し上げましたばくとした表現は何を意味するかということについて、若干御参考になることがあろうかと思いますが、それによりますと、第一義的には、国連の分担率の算定にあたりまして特別の考慮が払われている開発途上国があげられるのではなかろうかと。具体的に申しますと、これは一九七三年の決議で、各国の国連分損率の決定しましたときに、一人当たりの国民所得が、平均して三百ドル以下である国についてこの開発途上国であると、一応形式的な判断あるいは基準というものを与えたわけでございます。で、こういった基準をもし採用いたしますと、現在のベルヌ同盟同盟国の中で、十七の国がこれに該当するかと思います。たとえばカメルーン、チャド、コンゴというようなアフリカの諸国、及びモーリタニア、モロッコのような中東の諸国及びパキスタン、フィリピンあるいはスリランカ、タイというようなアジアの諸国、これらの国が一応、先ほど申しました開発途上国に該当するかと思います。
  36. 田英夫

    田英夫君 質問終わります。
  37. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。これより討論に入ります。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  千九百六十七年七月十四日にストックホルムで署名された世界知的所有権機関を設立する条約締結について承認を求めるの件  千九百年十二月十四日にブラッセルで、千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にヘーグで、千九百三十四年六月二日にロンドンで、千九百五十八年十月三十一日にリスボンで及び千九百六十七年七月十四日にストックホルム改正された工業所有権保護に関する千八百八十三年三月二十日のパリ条約締結について承認を求めるの件  千九百十一年六月二日にワシントンで、千九百二十五年十一月六日にヘーグで、千九百三十四年六月二日にロンドンで及び千九百五十八年十月三十一日にリスボン改正された虚偽の又は誤認を生じさせる原産地表示防止に関する千八百九十一年四月十四日のマドリッド協定の千九百六十七年七月十四日のストックホルム追加協定締結について承認を求めるの件  千八百九十六年五月四日にパリで補足され、千九百八年十一月十三日にベルリン改正され、千九百十四年三月二十日にベルヌで補足され並びに千九百二十八年六月二日にローマで、千九百四十八年六月二十六日にブラッセルで、千九百六十七年七月十四日にストックホルムで及び千九百七十一年七月二十四日にパリ改正された千八百八十六年九月九日の文学的及び美術的著作物保護に関するベルヌ条約締結について承認を求めるの件  以上四件を一括して問題に供します。  四件に賛成のお方の挙手をお願いいたします。   〔賛成者挙手〕
  38. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 全会一致と認めます。よって、四件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  40. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題といたします。  これより質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  41. 田英夫

    田英夫君 宮澤外務大臣、御就任後私は初めてお考えを伺いますので、きょうは、現在の国際情勢全般について、特におもな点について外務大臣の基本的なお考えを伺いたいと思いますので、ひとつ率直に基本姿勢という点をお答えいただきたいと思います。  最初に、日本との関係で、アメリカとともに最も重要であると言っていい中国との関係は、日中国交回復という形ができ上がりまして、すでに交流も深まっているわけでありますけれども、さらにこれを確立するために、日中平和友好条約締結が強く望まれていることは言うまでもありませんが、外務大臣は、この日中平和友好条約締結についてどういう基本的なお考えを持っておられるのか、伺いたいと思います。
  42. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 一昨年の日中国交正常化以来、共同声明の精神に基づきまして、幾つかの実務協定締結されたわけでございますが、共同声明で述べましたいわゆる日中平和友好条約締結につきまして、先般、中国から外務次官がわが国を来訪されまして、外務省との間で締結について、両国相談を始めようではないかということで合意をいたしました。これから両国の間で、外交ルートを通じまして話を進めてまいりたいと考えておりますが、まず最初に、この条約にどのような事項を盛るべきかということにつきまして話を始めたいと考えております。おそらくは、今後両国が長く友好関係を続けてまいりますための、基本的な心がまえ、原則といったようなものを中心に条約を結ぶことになろうと存じますが、それがどのようなものであるか、どの範囲に及ぶものであるかというようなことについて話を進めてまいり、実体をほぼとらえました後に、それを法律的にどういうふうに表現したらいいかという作業に入ろうということで、つい先日大まかな合意がございました。したがいまして、これから両国間の外交ルートを通じましてそのような話し合いを始めまして、なるべく早い時期に平和友好条約を結びたい、かように考えております。ただいまのところ、したがいまして、まだ実体的な話に入っておりませんので、どのような問題が出てまいりますか、十分に予測はできないところでございますけれども、なるべくお互いに協調の精神をもちまして、話し合いを進めてまいりたい、かように存じております。
  43. 田英夫

    田英夫君 そこで具体的な問題ですが、まず、次の通常国会の間にその調印が終わり、批准を求められるということが可能かどうか、その点はいかがでしょうか。
  44. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 条約内容がそのような性質のものでございまして、末長く両国の友好関係規定してまいりたいと思いますので、この際、いついつまでにしなければ時間切れになるという性格のものではなく、むしろよく両者が一致いたしました上で決着をしたいと考えておりますので、ただいま、話し合いに入る前の段階で、まだ前途を予測することが必ずしも十分にできません。極端にむずかしい問題が出てまいるとも思っておりませんけれども、しかし、両方で話をしてまいりますと、おのずからあちこちでは意見を調整する必要が出てまいると思います。で、この次の通常国会中にというお尋ねでございましたが、おそらく来たるべき通常国会は比較的会期が事実問題として長くないであろうということも考え合わせますと、それまでに必ずというお約束をちょっとただいまいたしかねますけれども、私どもとしては、できるだけ早く話を始めたいと考えておりますことには変わりございません。
  45. 田英夫

    田英夫君 いまの外務大臣のお答え、現状ではそういうお答えが当然かとも思いますが、そのお答えを積極的な姿勢を持っておられると考えていいのか、やや消極的であると考えなければならないのか。つい十月には自民党の国会議員の方、七十八人が、こぞってムロ湾を訪問されるという問題もありました。こういう状態の中で、日中平和友好条約を早期に締結をされるという御決意があるかどうか、あらためて伺いたいと思います。
  46. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) この条約を結びますこと自身は、共同声明ですでに合意をしておるところでございますので、ことさらに話し合いを、テンポをゆるめるというような意思は全然私ども持っておりません。両方の話が早く合意いたしますればもうそれでいいのでございまして、何かの、ほかのことへの顧慮のゆえにテンポをそれで調節をしようというような考えは持っておりません。
  47. 田英夫

    田英夫君 外務大臣は、来年、年明け早々にも、ソ連を訪問されるということが伝えられておりますけれども、それは事実でございましょうか。
  48. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) ただいまの段階で結論だけ申し上げますと、一月に訪ソをいたしたい。先般、前大臣の名においてブレジネフ書記長から招待もあったことでございますので、それにこたえるという意思表示を先方にいたしているところでございますけれども、双方の日程の調節が今日現在でまだできておりませんので、それができるようでございましたらさようにいたしたいと考えております。
  49. 田英夫

    田英夫君 先ほどの日中平和友好条約関連をして、その締結の交渉は主として事務当局におまかせになるのか、ある段階で、早い機会に外務大臣御自身が北京を訪問されるという御計画がおありかどうか、この点はいかがでしょうか。
  50. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 実は私、基本的には少し本省におりまして、いままでのいろいろな外務省全体の問題の経緯方針等も勉強をいたしまして、それから後に、必要があれば外国を訪問したいというのが私の基本的な気持ちでございまして、ただ日ソの場合に、御記憶のように、昨年の田中首相訪ソの際の首脳会談によりまして、いわゆる戦後の処理のために一九七四年中にも平和条約交渉に入ろうという合意がございましたために、政変でそれが幾らか延びましたけれども、そういういきさつがございますので、訪ソをしなければならない日程に実はなってきておったわけでございます。したがって、私の本来の気持ちは、前段に申し上げましたとおりでございましたが、これだけはどうも従来の経緯から、年が明けたらできれば訪ソをしなければならないというようなふうに実は考えるに至ったわけでございます。  他方の日中平和友好条約でございますが、これは基本的には外交ルートを通じて相談を進めてまいるということでございまして、それとの関連で訪中をするという計画をただいまのところは持っておりません。
  51. 田英夫

    田英夫君 中国問題ももっと伺いたいことがたくさんありますが……。
  52. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと関連。いまの中国問題に関連して一点だけ。  中国に限らず、日本と中国、あるいは日本とソ連、その他の国もそうですが、不可侵条約が私たちとしては希望しておる一つの目標なんです。その場合に、日中間で話し合いする場合に、条約本文の中にそういう精神を盛り込むことがあるのか、あるいは別途、別の協定あるいは条約として不可侵をうたうこともあると思うんです。だから、先の話ですから、まだ日中間で外交交渉が進んでおらない現段階でそういうことを想定するのはいかがかと思いますが、外務大臣個人のお考えとして、不可侵にはもちろん御異議がないと思いますが、その場合には条約本文のような形がいいのか、あるいは別個の不可侵条約という形がいいのか、どういうふうにお考えになっておりましょうか。その一点だけをお伺いいたします。
  53. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 一般に不可侵条約というふうに申しますと、あたかも軍事的あるいは国防上の安全保障というようなことに連想がされやすいかと思いますが、おそらく日中平和友好条約を結びます場合、たとえば主権尊重であるとか内政不干渉であるとか、あるいはお互いの不可侵であるとかいう、そういう国交上の基本原則を述べ合うことはあろうかと思います。しかし、これはおそらくは、今後のことでございますけれども条約の本体の中でそのようなことを申すことはあろうかと思いますが、別途に不可侵条約といわれるようなものを締結する考えはございません。
  54. 田英夫

    田英夫君 次に朝鮮問題も、最も近い隣国でありますので、非常に重要だと思いますし、現在残念ながらそれが二つに分かれているという現実です。  そこで、まず外務大臣に基本姿勢を伺いたいんですが、現在二つに分かれている朝鮮半島がそのままであるほうが望ましいのか、つまり、南北の力の均衡が保たれていることが望ましいのか、あるいは一つ統一されることが望ましいのか、これはある意味で非常に重要な基本姿勢だと思いますので、その点をまず伺いたいと思います。
  55. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 従来の経緯の結果、朝鮮半島の姿が現在のような不安定なことになっておりますことは、本来好ましい状態ではないというふうに考えております。で、どういう形でかこれが安定化し、正常化することが望ましいことはもとよりでございます。その姿が、南北が両方で話し合いまして、どういう形に決着いたしますにせよ、朝鮮半島全体に平和と安定がもたらされることが望ましい、かように考えております。
  56. 田英夫

    田英夫君 そうしますと、一昨年七月四日の南北統一についての、自主的統一についての共同声明を支持されるお立場かどうか、この点を伺いたいと思います。
  57. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) あの線に沿いまして、両者間に平和のうちに話し合いが深まることを心から望んでおる立場でございます。
  58. 田英夫

    田英夫君 その点は非常に重要なことだと思います。残念ながら、従来、歴代の自民党の外務大臣は、明確なおことばはなかったと思いますが、二つの朝鮮を肯定される方向をとってこられた、現実の問題として。たとえば国連における日本政府の態度などにあらわれるように、二つの朝鮮を固定化するという方向だと思わざるを得ない政策をとってこられたと思いますが、いまの宮澤外務大臣のお答えはそれと違っていると私は解釈をしたいと思います。この点に、もし私の解釈の違いだということがあれば、訂正をしておいていただきたいと思いますが、いかがでしょう。
  59. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 一昨年の南北の話し合い、いろいろな種類の段階で、いろいろな種類の会談がその後何回か行なわれたわけでございますが、私の理解するところでは、これは韓国政府も望むところ、北側も望んだがゆえにああいう話し合いが始まったのであろうと考えております。その後これがとだえがちになり、昨今また陸上、海上などで小さな紛争が起こっておるようでございますけれども、私は、もともとあれは南北両側が意思が一致して始まった会談であったというふうに聞かされておりますので、そうであれば、そのような両者の合意が実を結ぶことを望むということは、わが国政府としても当然のことではないかと考えております。
  60. 田英夫

    田英夫君 次に、最近アメリカの政治家を中心にして、アメリカ政府と言ってもいいかと思いますが、アメリカ政府だけでなくて、民主党の側の中にもそうしたお考えがあるようでありますが、朝鮮半島の平和について、現在のように二つの朝鮮に分かれているほうが望ましいと、しかも、分かれたままで、軍事力を含めてその力が均衡状態にあるということが最も望ましい、その力の均衡を保つように努力をしていくことが必要だと、こういう主張があることは事実だと思います。そうして私自身がワシントンで聞いたところによりますと、そのために、政治的な力の均衡をはかるために、アメリカ及び日本が北朝鮮を承認し、あるいは国交を樹立し、同時に中国及びソ連が韓国を承認または国交を樹立するという形で、相互にクロスした形で承認し合うという、交流を持つという、そういうことを実現すれば、よりかたくこの二つの朝鮮の力の均衡の固定化ということができる、こういうことを明快に論じているアメリカの政治家もいたわけでありますが、この考え方について外務大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  61. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) この問題を考えますのに一番基本になりますのは、朝鮮半島全域に住む人々が、朝鮮半島がどのようなことになるのを一番望んでおるか、民族あるいは住民の意思というものが私は一番大切なことであると思うのでございます。全部が一緒になって一つの国家をつくることが望ましいと朝鮮半島に住む人々が思っておりますのか、あるいはそうでない形が望ましいと思っておりますのか、最善のことはそれとして、次善にはこうでしかあるまいと思っておられるのか、その住む人々の意思というものが私はやはり基本でなければならないと思っております。  さて次に、ただいま田議員が御指摘になりましたようなこと、もしそれが朝鮮半島における関係者たちの望むところでございますならば、われわれ外におります者としても、そういうことになれば現在の事態はより安定化するのではないかということは申し上げても差しつかえなかろうかと思います。
  62. 田英夫

    田英夫君 この問題は実はたいへん大切な問題だと思いますし、われわれもそういう方向に進むならば放置し得ない問題である。率直に申して、この考え方はいわゆる大国主義的なエゴイズムをむき出しにしたやり方だ。本来、いま大臣がおっしゃいました前段の部分の、朝鮮の問題は朝鮮民族自身が決定をするという、だからこそ朝鮮の問題については自主的ということが何よりも大切にされている、朝鮮の人たちによって大切にされていることだと思います。したがって、前段の大臣が言われた部分を押し通していくとすれば、いまのようなクロスした承認というような考え方は出てこないはずでありますから、これに日本政府が加担をされるというようなことになると非常に重大な問題だと、こう言わざるを得ないと思います。ところが、先日フォード大統領が来日をされ、キッシンジャー国務長官も同行をされたわけですけれども、フォード大統領自身も日本から韓国へ飛び、さらにウラジオストクでソ連首脳と会談をしている。一方、キッシンジャー国務長官はさらに北京へ飛んで、中国首脳と会談をいたしたわけでありまして、キッシンジャー国務長官の足跡をたどってみますと、まさにいまクロス承認という問題に関係をする四カ国——日、米、中、ソという四カ国が結びついて、そこに朝鮮半島の南半分を支配しているにすぎない韓国が入ってきているということになってくるわけでありまして、この話し合いを通じて、しかも木村前外務大臣は、キッシンジャー国務長官とその機会に前後五回にわたって会談をしておられて、しかもその会談の内容のおもな点は朝鮮問題であった、こういうふうに伺っております。さらに木村外務大臣とキッシンジャー国務長官の会談五回のうち、外務省首脳の皆さん、国務省首脳の皆さんを交えての話もあったようでありますけれども、木村・キッシンジャー会談という形で、お二人だけで話された部分がかなりあったと伺っている。そうなりますと、宮澤外務大臣はそうした二者だけの会談の微妙な、しかも重大な部分をどの程度引き継がれていらっしゃるのか。当然そうしたものは大臣同士の引き継ぎの中で行なわれていると信じますけれども、そうしたキッシンジャー会談の内容を通じて、キッシンジャー国務長官がそうしたクロス承認というような問題を提起していたのかどうか、その点を聞かせていただきたいと思います。
  63. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 前任者の木村前外相からは、外務省所管の問題について概括的には引き継ぎをいただいたわけでございますけれども、ただいまのようなことについては引き継ぎで承っておりません。事務当局も承っていないようでございます。
  64. 田英夫

    田英夫君 これは私自身も実はキッシンジャー国務長官からそうした提起があったと信じたくないのでありまして、しかし、キッシンジャー国務長官を含めてアメリカの政界の中にいまそうした考え方が、つまりクロス承認という考え方が次第に強まっているのではないかという疑いを、あえて疑いといいますが、疑いを私は強く持っているために、このことをお聞きしているわけであります。したがって、あらためて伺いますけれども、宮澤外務大臣はこうしたことに加わるおつもりがあるかどうか、この際明快にしておいていただきたいと思います。
  65. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 抽象的に考えますと、かりにそのような問題提起について、それは現状よりは一歩前進ではないか、いわばベターではないかという発想であろうかと思われますけれども、同時にしかし、それはよりよいものをしばらくはあきらめるということにも通じることになろうかと思います。私は、いま現実にそういうことが真剣に考慮されておるかどうか存じませんけれども、いまのようにも抽象的には考えられますので、よほど慎重でなければならないのではないかと存じます。
  66. 田英夫

    田英夫君 まあ外務大臣お答えのとおり、ぜひこの問題は慎重に対処をしていただきたいと思います。現にアメリカの中では、今回国連で問題になりました、韓国からの国連軍の撤退の要求に対して、日本政府を含めてアメリカその他の国々が韓国を支援をして国連軍撤退の問題を事実上たな上げにしてしまいました。しかし、アメリカの側の考え方の中には、なぜ国連軍の撤退を延ばすのか、あるいは反対をするのかという根拠として、先ほど申し上げたように、南北朝鮮が現在のように二つに分かれてそれが固定化していることが望ましい、しかも軍事力を含めて均衡状態にあることか望ましい。だから南朝鮮——韓国の国連軍——空軍か主体でありますか、これか引き揚げたならばその力の均衡が失なわれる、だからいけないのだ、こういう論理がアメリカの中ではまかり通っているのであります。われわれはそうではなくて、朝鮮戦争が終わってすでに二十五年たっている、そうした中で外国軍隊が、しかも国連軍の帽子をかぶって韓国にいるということこそが統一を妨げているという考え方に立っておりますし、一昨年の自主的平和統一についての共同声明の精神も、そうしたことを盛り込んで、第一項目で、外部勢力を排除して自主的に統一をすると、こう述べていると思いますが、その外部勢力という最たるものが韓国にいるアメリカ軍、つまり国連軍である、こういうことを金日成主席も明快に言っているわけでありますから、この国連軍を撤退をさせろという要求に対して、日本政府がこれを阻止する側に回った。今度の国連総会は、やはり明らかに日本政府代表は韓国側に立ってこれをたな上げという形ですけれども、とにかく撤退を妨げる方向に働いたことは事実であります。私、先ほど申し上げたように、宮澤外務大臣は朝鮮民族の考え方を尊重すべきだということ、そして統一ということが望ましいと、こうおっしゃっているわけですけれども、実際には自民党政府は、歴代の外務大臣は国連軍の撤退を妨げるという形で、二つの朝鮮の固定化に加担をしていらっしゃるというふうに言わざるを得ない。来年からはそれを改めて、そうしたことには加担をしないということをこの際お約束いただけるかどうか、この点はいかがでしょうか。
  67. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 国連軍ということでお尋ねがあったものと考えまして、お答えを申し上げますが、そのような動きが国連の中にも目立ってきておりますことは承知をしております。で、この問題について私どもも非常にかたくなな態度をとる必要があるとは考えておりませんけれども、御承知のように、国連軍が休戦協定の一方の当事者になっておるわけでございますから、今後、平和が保障されるという意味で、休戦協定、あるいはそのあとを引き継ぐべき体制、仕組み、それをどのように考えていくかということをはっきりさしておきませんと、せっかく保たれております平和に障害が起こるかもしれない。先般の国連総会においてわが国があのような態度をとりましたのは、むしろそのような配慮からであったというふうに私は聞かされております。
  68. 田英夫

    田英夫君 観点を変えて朝鮮問題を伺いたいんですが、この質問は田中前総理大臣にも、木村前外務大臣にもお聞きをしてまいりましたので、あらためて宮澤外務大臣にも伺いたいんですが、朴政権が支配をしている現在の韓国の状態を民主主義の状態とお考えになっているかどうか、この点はいかがでしょうか。
  69. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) それにつきまして、私、ただいまの仕事をお預かりする以前、自分の考え方を申したことは何度かございますけれども、このような公の席で、ただいまの私の立場で外国の政治のあり方についてとやかく申しますことは差し控えるべきであろうと思います。
  70. 田英夫

    田英夫君 具体的に伺いますが、もうずいぶん長い時間がたってしまいましたが、昨年八月八日に起きました金大中事件、そしてそのあと日本政府は、金大中氏の再度の来日ということを含めてその自由を保障するということを、朴政権と約束をしたはずであります。にもかかわらず、選挙違反の裁判にかかっているということを理由にして、韓国政府はその自由を保障していないのが実情でありますが、この問題について前外務大臣からどのように引き継がれているのか。そしてそれに関連をして、ことしはついに日韓閣僚会議が開かれなかったわけでありますけれども、木村前外務大臣は、金大中氏の自由も保障されないという現状ではそれを開く雰囲気にないと、こう明言をされて開いてこられないわけですが、宮澤外務大臣はこの点はどうお考えなのか、開くめどをお持ちなのか、あるいは金大中氏の自由が保障されない限り開かないのか、この点はいかがでしょうか。
  71. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 金大中氏が現在でも出国を希望しておられるのであれば、それが実現することは望ましいとわが国が考えておりますことは、しばしば韓国政府に対して表明をいたしております。現実には、御指摘のように選挙違反事件の公判が係属中でございまして、その公判を含めまして韓国政府は、金大中氏には裁判はもちろん、その他のことについても一般市民に与えられた権利と、不利な扱いはしない、そういうことは私どもに保証をしておるわけでございます。したがいまして、いまの段階といたしましては、その係属中の公判がどのように決着するのかということを待たなければならないという段階ではないかと考えております。  他方で、そのことと日韓閣僚会議との関連でございますけれども、本来私自身は、わが国はいかなる国ともできるだけ友好関係を保ちたい、ことに隣国である韓国にはその必要性がきわめて高いと考えておるものでございます。日韓閣僚会議どもそういう目的を持って創設されたものでございますが、この際それを開くということになりますと、それは将来に向かってもう一ぺん、やや傷つきましたこの関係をさらに友好的なものに発展させるという雰囲気、環境の中で開きませんと意味を失うというふうに考えますので、当面はそのような会議が開かれ得る、そうして将来への発展の第一歩になるというような環境をつくることが大事である、このように考えております。
  72. 田英夫

    田英夫君 先生の新聞報道によりますと、外務省筋は五月に開催のめど、つまり通常国会終了直後をめどに日韓閣僚会議を開催する、こういうことを語っておられるという報道がありました。まあ外務省筋というのは通常情文局長か、高官筋と言えば外務次官かというのが新聞記者の常識でありますが、そういうことについて責任ある大臣のお立場から、そういうめどを実際お持ちなのかどうか、あらためて伺いたいと思います。
  73. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) おそらくそのことの意味は、ただいまから現実的に日程を繰りましても、五月以前に、これは閣僚が何人か関係をいたしますことでございますので、そのような会談を開くことが事実上、日程上むずかしいという問題がございます。したがって、そういう背景説明がなされたといたしますと、それはむしろそのような意味であったろう、私どもとしては、先ほど申しましたような環境をできるだけ整えたいということは一生懸命念じておるわけでございますが、そうにいたしましても、現実の日程の問題として、五月以前に閣僚会議が開けるというようなことは日程の都合でむずかしいのではないか、こう考えるわけでございます。
  74. 田英夫

    田英夫君 警察庁の方がおいでと思いますが、文世光が、まあ率直なところあっと言う間に死刑になってしまったということでありますが、したがって、従来捜査中であるということで内容をなかなかお答えいただけなかったのですけれども、いまやもう本人が死刑になっているというこの状況の中で、日本側の事件以後の捜査の状況をもう知らしていただける状態と思いますので、この機会に聞かしていただきたいと思います。
  75. 金沢昭雄

    説明員(金沢昭雄君) 文世光に関します国内法違反の捜査の概要について申し上げます。  国内法違反の容疑としましては、窃盗、それから殺人予備、旅券法違反、出入国管理令違反、以上四つの容疑で捜査を行なったわけでございます。そのうち現在までに旅券の不正入手につきましては関係者を調べました結果、吉井行雄氏名義の旅券で去年の十一月に香港、それからことしの八月に韓国、以上二回渡航したことが明らかになっておるわけでございます。この二回にわたります旅券の不正受給、これに関しまして吉井美喜子、これが出入国管理令違反の幇助、それから旅券の不実記載、以上二点につきまして、ことしの八月十八日、検察庁のほうに送致をしてございます。  それから、拳銃窃盗に関する捜査につきましては、この犯行に使われました拳銃が、大阪府警から盗まれました拳銃であるとの確認、それからまた、文世光の韓国における自供に基づきまして捜索を行ないました結果、奈良県の大和川で拳銃の付属品と、それから手錠、そういったものが発見をされました。それから、文世光の所有しております車の中から発見されましたプライヤであるとかレンチ、これが拳銃窃盗の現場であります大阪の高津派出所の犯行現場の工具痕といいますか、ツールマーク、これに一致をする、こういったことで、拳銃窃盗の関係は、まず文世光の犯行であるというふうに私どものほうも断定しておるわけでございます。  以上、国内法関連につきまして、いま申し上げましたように、いずれもほぼ捜査を終了しておりますので、近いうちに検察庁のほうに送致をするという予定にしております。  以上でございます。
  76. 田英夫

    田英夫君 そうした捜査の内容は、もちろん韓国政府関連のある部分は向こうに国際機関を通じて知らされたと思いますが、向こう側の捜査の内容というのは一体警察庁に連絡がきているのかどうか。事件はソウルで起こったわけでありますけれども、はたして陸英修婦人のなくなった原因のたまは、その問題のピストルから発射されたたまなのかどうか。一般に対する発表では、盲管銃創か貫通銃創かさえも知らされていないわけで、たまが発見されたかどうかも私どもは知らないわけでありますけれども、通常の捜査の常識でいえば、たまが発見されたならば条痕をあわせて、それを確認するのがあたりまえでありますが、そうしたことは一般には発表されておりませんが、そのことを含めまして、そういう韓国側の捜査の結果、そして死刑に至る根拠になる捜査の結果は逐一日本側に伝達されたのかどうか、その点はいかがですか。
  77. 金沢昭雄

    説明員(金沢昭雄君) ただいまお話ございました拳銃の弾丸につきましてライフルマーク、これにつきましては韓国のほうからこちらのほうにございました。こちらで合わせました結果、先ほど申し上げました大阪府警で盗難にあった拳銃のライフルマークに一致するというようなこともございます。また、文世光の韓国における供述、この内容につきましては、外務省等通じましてこちらのほうに連絡がございました。  以上でございます。
  78. 田英夫

    田英夫君 文世光の供述の内容というのは、これは日本の裁判の常識でいえば、また法律の規定によれば、これは裁判の一つ資料でしかないわけでありまして、捜査の実際の状況というものが知らされない限り、死刑にまでする根拠というものは成り立たないはずであります。しかも率直に言って韓国のKCIAをはじめとする捜査当局のやり方、私も実態は知っているつもりでありますが、したがって、その自供というものを信頼するわけにいきませんので伺っているわけですが、きょうは時間がありませんから、あまりこの点、深くお聞きすることはできませんけれども、われわれの知っているさまざまな問題、たとえば外国特派員が撮影をしたフィルムを見て、ストップウォッチではかってみたんですけれども、それによると文世光が発射したたまで陸英修婦人がなくなったという根拠にはならないと思わざるを得ない、そういう材料もあります。われわれは外部からそれを間接的に知る以外ありませんので断定はできませんけれども疑問はさまざま残っている。私は日本と韓国の友好のためにも、これは捜査当局がお持ちの材料はやはり日本国民に知らせて、そうして文世光が死刑に至る根拠になった点は、やはり日本国民に知らせていただいたほうがいいと思います。いまのお答えでは、死刑に至る根拠は日本政府には全く示されていないというふうに解釈せざるを得ないので、この点は時間がありませんから、きょうはこれ以上お聞きすることはやめますけれども、次に、法務省の入管の方がおいでになると思いますが、こまかいことのようでありますけれども、昨日の新聞報道によると、北朝鮮の万景峰号が横浜に来たおりに、その乗り組み員の上陸をめぐって問題があったということを韓国の朝鮮日報が、日本政府が上陸を拒否したと報道しているのですが、この点は実情はどうなのか、簡単にお答えいただきたいと思います。
  79. 小林俊二

    説明員(小林俊二君) お答えいたします。  今回、万景峰号は十二月十三日に青森港に入港いたしまして、十五日に横浜に入ったわけでございますが、横浜港におきまして、乗員二名のショアパス、寄港地上陸の申請がございまして、その行動範囲を東京まで拡大してほしい、東京へ行きたいという要請がございましたので、万景峰号の管理に関します従来の方針に基づきまして、代理的の職員の付き添いを条件としてこれを許可するという方針を示したわけでございます。それに対しまして、先方から申請書を提示したまま、代理店職員の付き添いということについて何ら連絡がないまま、それを受け取りにまいりませんので、私どもといたしましては、その申請は取り下げたものと考えたわけでございまして、上陸そのものを拒否する理由、あるいは意向は全くなかったということでございます。
  80. 田英夫

    田英夫君 そうしますと、日本政府は、従来と方針を変えたわけではなくて、朝鮮日報が報じた上陸を拒否したというのは誤報であると、こう言っていいわけですね。
  81. 小林俊二

    説明員(小林俊二君) そのとおりでございます。現に、万景峰号はその後新潟へ入港いたしておりまして、昨日及び本日、私どもの付しました代理店職員の付き添いという条件をのみまして、乗員は上陸いたしております。
  82. 田英夫

    田英夫君 最後に外務大臣一つだけ伺いたいのですが、いわゆる核拡散防止条約、木村前外務大臣は国連総会の演説の中でも、これをぜひ通常国会提出して批准を求めると、こういうことを明言をされているわけでありますが、宮澤外務大臣もこのお考えは変わりないかどうか、このことだけ伺って質問を終わりたいと思います。
  83. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 御承知のとおり、この条約国会提出いたします前の段階になさなければならないこととして、まず国際原子力機関との保障協定締結という問題がございます。これにつきましては、予備的な打ち合わせばすでに昨年来数回にわたっていたしておりまして、ユーラトム並みという原則そのものはほぼ了解ができたように思いますが、これからその詰めをいたす必要がございます。これを科学技術庁等とも連携をしながら、できるだけ早く話し合いを再開したいと思っておりますのが現在の段階でございます。そこで満足すべき保障内容が確立いたしましたら、実はこの条約につきましては、私どもの与党の内部でも多少意見調整をする必要がございますので、大切な条約でございますから、そういうこともいたしました上で国会提出をいたしまして皆さまの御審議を仰ぎたい、こう考えております。   〔委員長退席、理事木内四郎君着席〕 そこで、来たるべき通常国会ということが、ただいまの段階で必ずとお約束いたしかねる、そのような間に踏まなければならないステップがございますけれども、私どもとしてはできるだけ早くそういうステップを踏みまして、御審議をいただきたいと考えております。
  84. 田英夫

    田英夫君 ありがとうございました。
  85. 黒柳明

    ○黒柳明君 私、核の問題を外務大臣にお伺いしますけれども、最近、ラロック証言はさておきまして、アメリカの政府あるいは議会筋等の議事録の公表ないし談話が日本に伝えられてきておりますけれども、シュレジンジャー国防長官が核の存在について肯定、否定もしないという政策を変えるんではなかろうかと、一時新聞報道ではアメリカの核の政策の変更ではないかと騒がれましたけれども、あるいはハルペリン国防次官補代理ですか、もう台湾、フィリピンないし沖繩に核があったこと、あるいはあること、一時寄港の艦船に核を積んでいることはもう当然なんだと、こういうような話、あるいは軍事調査委員会のメンバーである下院議員が、核倉庫の保管管理が非常にずさんである、こういうような話等々、伝えられてきております。当然外務大臣ももう知っていらっしゃると思いますけれども、こういうものについてどのように、まず受けとめられますか。
  86. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) このようなものにつきと最後に言われました部分が、どの部分でありましたか。
  87. 黒柳明

    ○黒柳明君 いやいや、ぼくはいま三つ具体的にあげたんじゃないですか。三つのほかにもまだあるでしょう。
  88. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) このようなと言われますのは……。
  89. 黒柳明

    ○黒柳明君 じゃ、いまからもう一回質問し直しましょうか。では、これから質問し直しますよ。いいですか、大臣。  最近、ラロック証言はさておきまして、アメリカの政府筋ないしは議会筋等から議事録の公表等を含めまして、核についての報道が伝わってきているんです。もう、外務大臣御存じだと思いますけれどもね、シュレジンジャー国防長官が核について、いままで存在については肯定も否定もしていなかった、それについて政策の変更があり得るんではなかろうかと一時マスコミでも相当騒がれました。あるいはハルペリン国防事務次官補代理が、台湾やフィリピンやあるいは沖繩に核があった、あること、一時寄港の艦船に核を積んでいることはあたりまえなんだと、こういう表現、あるいは軍事調査委員会のメンバーである下院議員が核の保管してある倉庫というものが非常に管理がずさんである、こういうような報道はあるわけです。まだありますよ。マンスフィールドの話もありますし、アジア・太平洋委員会の話もありますし、このような一連の核についての報道がどんどんなされていますね。これについて外務大臣はどう受けとめられておりますか。
  90. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 第一点のシュレジンジャー国防長官、これは現職のアメリカの政府の職員でございますから、このいわゆる核の存在、非存在を明らかにしないというアメリカの政策について再検討を考えているという発言が、伝えられましたのは比較的最近でございますけれども、たしか今年の三月ごろの証言であった由でございます。   〔理事木内四郎君退席、委員長着席〕 で、その後、アメリカ政府から再度、やはり存在、非存在を言わないのが方針であるという言明がなされましたので、その間の関係を紹介をいたしてみますと、三月の段階でシュレジンジャー氏がそういうことを言ったことは事実であるけれども、実はこの問題は国防省だけできめられる問題ではなく、上下両院の原子力合同委員会等と国務省も含めまして、関係方面がたくさんあり、さらには大統領自身の決裁ということにもなるので、結果としては、このような再検討はそれ以上進まなかった。したがって、従来の方針に変更がないという旨が、その後きわめて最近もまた再確認をされております。  第二に、ハルペリン氏は、これは現在民間人でございますから、どのように申されましたか、この点は特にコメントを私どもとしてすることはないのではないか。  第三番目に、下院議員が言われましたというアメリカの核の管理体制がずさんであるということにつきましては、私どもその事実を存じませんのでいずれとも判断がつきかねるということでございます。
  91. 黒柳明

    ○黒柳明君 国防長官の談話、日本の新聞に発表されたのがまだつい最近ですけれども、その後どういう手続をとられて、アメリカの従来と変わりないと、これはどういう手続をとられたのですか。
  92. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 一番最近のことを申し上げますと、私どもワシントン駐在の大使館を通じまして、このシュレジンジャー氏の三月における発言がその後どうなったのかということをアメリカ政府に確かめまして、その結果、ただいま申し上げましたような報告を受け取ったわけでございます。
  93. 黒柳明

    ○黒柳明君 それはいつごろですか。
  94. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) シュレジンジャー国防長官がこの証言をいたしましたのは、正確に申し上げますと四月四日の聴聞会でございますが、われわれといたしましては、その後ラロック証言に関連しまして、インガソル副長官からの見解表明もあり、その点からも判断いたしまして、アメリカの政策は変わっていないというふうに確信しておったわけでありますが、この証言が最近公表されまして、日本でも大きく報道されましたので、念のため、アメリカのほうに問い合わせたわけでございます。その結果、この十二月十七日にアメリカの国務省から、在米大使館に対して、その検討は行なわれたが、やはり従来どおりの政策に変更はないという旨の回答があった次第でございます。
  95. 黒柳明

    ○黒柳明君 それで、あの報道で、これまた伝えられるところによりますと、一時は政策の変更ではなかろうかと、こう言われたのが、従来の政策に変更なしと、こう言われたのは、アメリカ側ではアジアの国々ではやっぱり核に対して政府の異なった方針があると、これに対して政策を変更してもらわないほうがいいんだと、こういうアジアの国々の観点にこたえてだと、こういうようなことが言われているんですが、その点どうですか、外務大臣。要するに、むしろ日本から、そんなことを言ってもらわないほうがいいと、こういうことだったんじゃないんでしょうか。
  96. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) いま政府委員が申し上げましたインガソル国務長官代理の言明は、たしか十月十二日であったと思いますが、そのときにはシュレジンジャー証言云々ということはたしか私どもも別に存じませんでしたので、そのことからも何もこちらが働きかけたということでなかったことはおわかり願えると思いますが、最近の照会にあたりましても、アメリカ側の返答は、ちょっと私が申し上げました、実はこのようなことは国防省だけできめられることではなくって、上下両院の原子力合同委員会、あるいは最終的には大統領といったようなことになるので、一部の人がそう考えたかもしれないが、結果としてはアメリカの政策は変更がないという返事でございまして、特にそれがアジアに対してとか、よその国の働きかけによりということではないようでございます。また、私どもそういう働きかけをいたしたことはもちろんございません。
  97. 黒柳明

    ○黒柳明君 最終的には大統領と外務大臣くしくもおっしゃいましたけれども、先日大統領が来日したあの四日間——アメリカ大統領の核に対する権限、権能というものを常識から判断すると、あの四日間というのは、日本は全くアメリカの核戦略の中に組み込まれた四日間と、こう常識的に判断せざるを得ない。どうでしょう、外務大臣
  98. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) お尋ねの御真意がちょっとわかりかねるのですが。
  99. 黒柳明

    ○黒柳明君 外務大臣、それじゃたばこすったり、わき見しないで真剣に聞いてなさいよ。同じことを何回も何回も言ったってだめだ。  大統領が四日間日本に来ましたね。大統領の核に対する権限、これはもう御存じのとおりです、最終的には。いま外務大臣おっしゃったわけですからね、核に対して。その四日間というものは、日本がアメリカの核戦略の中に巻き込まれた四日間ではなかろうかと、常識的にこう見られてもしかたないんじゃないんですか、そう言えるんじゃないですか、どう思いますかと。
  100. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほどそのようにお尋ねを承ったのですが、そのことの意味がちょっと私にわかりかねるので、もう少し具体的にお尋ねくださいませんか。
  101. 黒柳明

    ○黒柳明君 だって、局長、アメリカ大統領、核に対してどんな権限持っているんですか。外務大臣いまおっしゃったじゃないですか。最終的には核については大統領だ、こうおっしゃったじゃないですか。それを踏まえていま私言っているんです。
  102. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 最終的に大統領の権限でございますことは、先ほど申し上げたとおりですが、四日間その核戦略にわが国が組み込まれたと言われました意味がちょっとわかりかねますので……
  103. 黒柳明

    ○黒柳明君 だって、その大統領が日本に来たんでしょう。大統領が日本にいたんじゃないんですか。
  104. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 私の推測が間違っておるかはしりませんが、黒柳先生のおっしゃいました意味は、アメリカの大統領は核の引きがねの最終的な権限を持っているという意味でおっしゃっているのかと思います。そして、日本におる間、その意味で大統領とともにその権限がついて回っておるという意味でございましたらそのとおりでございますが、しかしそういうことでございますと、まさに韓国にも行き、ソ連なんかにも行って、ウラジオにも行っているわけでございまして、それだからといって、ソ連がアメリカの核戦略に巻き込まれたということではないと思いますから、その点はあまり深く考えるほどのことではないのではないかと存ずる次第でございます。
  105. 黒柳明

    ○黒柳明君 いま局長お話、全くおかしいですね。外務大臣お聞きになって、いいですか、いまの局長お話。いま局長答弁されましたでしょう。あの答弁は全くおかしな答弁じゃないですか、そう思いませんか。
  106. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほどからのたびたびのお尋ねでございますので、こういう意味で仰せられておるのであろうかと、いろいろ私ども考えてお答えを申し上げておるわけで、御不満でございましたらもうちょっと……
  107. 黒柳明

    ○黒柳明君 いや、そうじゃない。そんなことを言っているんじゃない、いまのとおりです。局長の言ったとおりなんですよ、ぼくの真意は。だけど、局長がそれに対して答弁した。けっこうですよ。だけどその答弁は全くおかしく思いませんかって外務大臣にまた聞いているの、ぼくは。思いませんか。局長のとおりなんです、私言いたいことは。どうでしょう。
  108. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) お尋ねの意味は、大統領が行くところには必ず、いわゆるブラックボックスがついてくるのであるからという意味でございますか。そういう意味合いでございますか。
  109. 黒柳明

    ○黒柳明君 そんなものあるかどうかわかりませんけれども、そんなことははっきり知りませんけれどもね。そうじゃなくて、核に対しての権限があるということじゃないですか、こういうことに対して答弁したでしょう。そのとおりだと言うんですよ。局長のいまの答弁がおかしくないですかといま言っているの、ぼくは。
  110. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) アメリカの核政策及び核政策の発動は、大統領のみが持つ最終的な権限でございますので、その大統領が移動をされるというときにアメリカの核政策及びその発動についての最終の権限者が、その訪問する国々で最終権力がそこにおり、あるいは他の国へ移動する、そういうことであったろうとおっしゃるのであれば、まさにそのとおりであったと思います。
  111. 黒柳明

    ○黒柳明君 だからそれについて、そうしたらソ連に行ったって韓国に行ったって、みんな行ったんだから、日本だけそんなこと言う必要ないじゃないかと局長がおっしゃった。それに対しておかしく思いませんか。
  112. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 局長の申しましたのは、冒頭に黒柳委員の言われました、したがって、その国はアメリカの核戦略の中に——どうおっしゃいましたか、まさに組み込まれた数日間であったという御表現であったと思いますが、局長のおそらく申し上げようとしましたのは、そうでありましたら、韓国しかり、ソ連しかりということになりますれば、必ずしもそういうことには相ならぬのではないかと思いますと、こう申し上げたのではないかと思います。
  113. 黒柳明

    ○黒柳明君 だからそれがおかしく思いませんかと。だって、韓国と日本と核政策違うじゃないですか。ソ連と日本と核政策違うじゃないですか。
  114. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 率直に申し上げまして、大統領が日本に見えたので、その四日間わが国はアメリカの核戦略のまさに中心に組み込まれたのではないかというお尋ねの意味がはっきり把握できませんでしたので、何度かお伺いをして恐縮であったのでございますが、その点のことであったと思います。
  115. 黒柳明

    ○黒柳明君 何だかわかりませんな、言っていることがもうチンプンカンプンで。核の最終的権限は大統領が持っているわけでしょう、核に対してのね。いま大臣が最終的権限はとおっしゃったから、それを踏まえてぼくが質問したわけですよ。  そうすると、結局在日中の四日間というものはやっぱり日本に核の最高の権能者がいるわけでしょう。しかも、エアフォース1からオマハと国防総省に絶えず直通電話がいって指揮をするということを、中国でニクソン大統領の当時報道官が発表していますね。そういうものもある。そういう四日間というものは、核戦略の中に当然日本も組み込まれていたんじゃないか、そういうことですよ。それに対して局長が、じゃ韓国だってソ連だって行っているじゃないかと。いや政策が各国と日本とは違うじゃないかと。そういうことですよ、大臣。韓国へ行ったっていいのさ、核持っている国だもの。ソ連には非核三原則ないじゃないですか、けっこうですよ。日本は違うじゃないですか。核についてはきびしいやっぱり国民の合意というものがあるじゃないですか、持ち込ませないという。
  116. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) ちょっとまだ御質問が十分私のみ込めませんけれども、もし、アメリカの大統領が確かに核政策、その遂行についての最高責任者ですが、その方が日本に訪問されたということで、わが国の非核三原則と何か違った事態が起こっているではないかという、もしもしそういうお尋ねであれば、私どもはそう考えてはおりません。
  117. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから、それじゃどう考えているんですか。だって、最高の権力者がい、もしこの四日間に何か事が起こったらそこから通信が出るんですよ。指揮系統が出るんですよ、日本から。大統領の専用機というのはそういう機能を備えたもんなんですよ。
  118. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) アメリカの核戦略についての最高責任者というものと三原則、あるいは安保条約に申します核兵器というものとは別のものであるという認識でございます。
  119. 黒柳明

    ○黒柳明君 どういう別のものですか。どういうふうに別ですか。アメリカの核戦略の中に日本は組み込まれちゃいけないんでしょう、絶えずこれは国会で論議になってるじゃないですか。組み込まれてないと。OTHのときだってそういう論議があったじゃないですか、これは組み込まれてないと。アメリカの大統領が核に対してのすべての権力を持っているわけじゃないですか。しかも、そのアメリカの大統領とともには、ブラックボックスなんてぼくは知りません。それはそれこそうわさでしょうから。私はうわさなんかあんまり信じませんからね。その大統領とともに、いついかなるときでもアメリカの国防総省ないし戦略空軍に、直通の電話です、通信できるエアクォース1というものは絶えずあるということは、これはジーグラー報道官が中国へ行ったときはもう公表しているわけですよ。すべての指揮系統はエアフォース1から出ると。それも羽田にいるわけでしょう。この四日間もし事があれば、大統領がそれで核に対しての指揮をすることは間違いないんじゃないですか。完全に指揮をするということは、日本はその戦略の中に組み込まれていると、こう見ざるを得ないんじゃないですか。最高の指揮系統が日本にあるということじゃないですか。
  120. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 核戦略の最高責任者がわが国を訪れるということは、安保条約に申します事前協議の対象になるものではございませんし、三原則に違反するものでもないというふうに考えておるわけでございます。
  121. 黒柳明

    ○黒柳明君 それじゃ、わが国が核戦略体制に組み込まれちゃいけない、それはどういうことですか、核戦略というのは。
  122. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 実はそれがお尋ねでございますので、その点を先ほどからもう少し具体的にお示しくださればお答え……
  123. 黒柳明

    ○黒柳明君 そんなことは、ぼくたちは示す権限ないですよ。核戦略体系は何であるか、私は聞いているんだ、むしろ外務大臣に。そういうおかしな答弁するから、それじゃ核戦略というものはどういう体系なんですかと、こう聞いているんです。
  124. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 実は最初に御質問に伺われたので……
  125. 黒柳明

    ○黒柳明君 そんなこと関係ない。もう、いまの質問答えなさい。いまはいまの質問答えなさい。
  126. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) そのことの意味を承りませんと……
  127. 黒柳明

    ○黒柳明君 いいですよ、そんなことは。いまの質問答えてください。
  128. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) お答えができないと申し上げたのであります。
  129. 黒柳明

    ○黒柳明君 核戦略体系というのはどういうものを言いますか。最初なんか関係ないですよ。いまの質問でいいですよ。
  130. 三好富美雄

    説明員三好富美雄君) 〇THのときに、アメリカの核戦略に日本は組み込まれておるかと、こういう御質問があったように記憶しておりますが、日本の安全保障は、核についてはアメリカの核の抑止力に依存するというふうに表現しております。そのことが、先生のおっしゃる核戦略に組み込まれているということと同様かどうかは確信を持てませんが、私ども日本の安全保障は、核についてはアメリカの核の抑止力に依存すると、こういうように考えております。
  131. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうじゃなくて、核のかさの下にいると言うんでしょう。だけれども、かさの下にはいるけれども、まあどういうかさかわかりません。実際には役に立たないらしいですよ。だけれども、私言っているのは、抑止力の下にあるということ、これについての論議しているんじゃないんです。日本がアメリカの核戦略体系の中にいるかどうかという論議をそのときやったんです。組み込まれていないというわけだ、そのとき、OTHがあっても。それじゃその核戦略体系というものはどういうものなのか。引きがねは入らないんですか、最高の権力者というもの、あるいはそこの指揮系統というものは入らないですか、核戦略体系の中に。当然入るでしょうよ。出先だけが核戦略じゃないでしょう。全部ひっくるめているんじゃないですか、戦略体系というのは。外務大臣。まあ委員会何も応酬する場じゃなくて、お互いに考える場所でもあるから、じっくり考えてもいいんですけれども、時間が限りあるんですね、こういう委員会というものは。だから、あんまり考えていられると。
  132. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 政府として核戦略体制というものをどのように定義をいたしますか、ただいま防衛庁から確たる自信がないがというお答えがあったわけでございますが、黒柳先生の言われますように、アメリカに核戦略体制というものがあって、その中心をなすのは大統領であろう、したがって、その大統領がわが国を訪れたときに、わが国はその核戦略体制にまさに巻き込まれたということであろうと、こういう御指摘であったわけでございます。  で、そういたしますと、先ほど政府委員が申し上げましたようなあの答えはおかしくはないかというような、ソ連に行った場合、どこに行った場合というようなことに実はなってしまって、それはおそらく黒柳委員がお尋ねの御趣旨とは違うんでございましょうから、ちょっと私どもどのように正確にお答えしていいのか、正直わかりかねているというところでございます。
  133. 黒柳明

    ○黒柳明君 正直わかりかねるつたって、質問に答えられなきゃ困っちゃうですな。もう一回整理しましょうか。  局長は、アメリカの大統領は核の引きがね持っている、それが日本に来たらうまくないと言やあ、韓国だってソ連だって行ったじゃないかと、そんなことは日本だけ言えないじゃないかと言ったの。いいですか、外務大臣。だけどそれに対して私は、各国は核戦略が違うじゃないか、政策が。こんなことはいいですね。韓国とソ連と日本と枝に対して性格は違うことなんていうのは同じです。それを局長は平々として言っているわけですよ。ソ連にも行って、韓国にも行って、そんなことを言ったらおかしいじゃないかと。私ならそんなことは全くおかしな議論だと。それはいいですね、どうですか。おかしいじゃないですか。日本と韓国と核に対する政策が全く違うじゃないですか。あるいは韓国に行った、ソ連に行った、だからそんなことを言ったら日本だけ大統領が来て、核戦略の中というのはおかしいでしょうというのは、全くそんなのおかしい。  それからもう一つは、OTHのとき盛んに論議したんです。それはほかのときだって論議していますよ。こういうものがわが国にあるということは、アメリカの核戦略の中にわが国が含まれているんじゃないか。それに対して核戦略というものは何かということについて疑問があるんでね、私は。それじゃ、どういうものなのか。それは私はその中には核の引きがねを持つ指揮者ないしはその指揮系統ないしは当然出先のそのもろもろですな、含まれたものを言うんじゃないんでしょうかと。私はこう私なりの見解を提示しながら外務大臣の意見を聞いている。
  134. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) そうしますと、黒柳委員の仰せられておりますのは、まあいわば核兵器に伴うシステムとでもいうべきものですか。
  135. 黒柳明

    ○黒柳明君 ですかって、外務大臣がそうだったらそうで答えてくださいよ。私がこうやったって、私は、外務大臣、何だったら席変わんなきやならない。
  136. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) もしお尋ねの意味が、核兵器のいわゆる黒柳委員の言われる戦略というものが、伺っておりますと……
  137. 黒柳明

    ○黒柳明君 私が言っているんじゃないんだ。これは何回も国会で論議されて、最近はOTHということを言っているだけなんですよ。何も私が核戦略なんていう新語を編み出したわけでも何でもないんですよ。私は大統領来たことについては御存じのように反対も何もしない。いいですか。そんなことはもう古いことなんです。だけど、最終権限は大統領がとさつき外務大臣言われたから、答弁の中で。それを踏まえて、私、いまの質問をたったったっと、してきたわけですよ。
  138. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) それでは私なりに理解をいたしましてもう一度お答えを申し上げますと、核兵器には一連のシステムというものがあって、そのシステムの最高にいるものが最終決断者である大統領である、そのシステムはいわゆるソフトウェア、ハードウェアを含めて一連のものであるから、わが国が安保条約の事前協議の対象とするもの、あるいは非核三原則の対象としているものは、そのようなシステム全部であるかというお尋ねとしてかりに私が了解をして申し上げますならば、私どもが三原則あるいは事前協議の対象としておりますものは、現実に核弾頭あるいは中長距離のミサイル、それらのための基地建設、それらのものが事前協議の対象になる、そういう範囲で考えております。これが正確なお答えになろうかと思います。
  139. 黒柳明

    ○黒柳明君 もう一回繰り返しますよ。外務大臣、いいですか。外務大臣のいまおっしゃったことをもう一回繰り返しますよ。事前協議の対象になる、それは核弾頭、それからそれを建設する基地、これだけに限るのですか。
  140. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 中長距離ミサイル。
  141. 黒柳明

    ○黒柳明君 中長距離ミサイル、これだけですか。あと、その指揮系統とか、通信網とか、そういうものは全然入りませんか。
  142. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) これは相当因果関係ということになろうかと思いますけれども、厳格に定義いたしまして、いわゆるエクイプメントといわれている部分の私どもの定義は先ほど申し上げたところに尽きると思います。
  143. 黒柳明

    ○黒柳明君 だけど、そういうものはそれだけで発射するわけでもなきゃ、戦争に出るわけでもないんでしょう。それを扱う中心がいなければ、結果は出ないじゃないですか、もとがなければ。
  144. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 仰せのとおり、それだけでは動きませんけれども、しかし、その目玉の部分がなければ核というものは発動いたしませんから、私どもはその最重要部分だけを事前協議の対象にしておけば足りる、こう考えておるわけでございます。
  145. 黒柳明

    ○黒柳明君 これはいろいろな問題あります。外務大臣もちょっと——私の質問か悪かったのか、あるいは理解しかねたのか。  この次またやることにして、ちょっと私、沖繩のことを一、二聞きたいんですよ、もう八分だっていうから。時間がものすごくなくなった。  これは民間じゃありません。外務大臣、知っているでしょう。下院外交委員会のアジア・太平洋分科会ですね、そのニックス委員長質問に対して国務省の回答ですよ、これは。これももう新聞報道されております。沖繩を永久的に基地にする、これに対しては外務省は何らかの問い合わせなり あるいは向こうの反応というものを求める姿勢はあったんですか。どうでしょう、これ。
  146. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) その国務省回答で、沖繩の基地及び日本の基地一般について期限があるかということについては、無期限である、期限は特に定めてないということを言ったのでありまして、アメリカ側がこれを永久に持つんだということを言っておるわけではございませんと思います。
  147. 黒柳明

    ○黒柳明君 原文、どうなっていますか。
  148. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) ちょっとお待ちください。
  149. 黒柳明

    ○黒柳明君 一番大切なとこだ、そんなことは。だから、さがさなくたって、そこはどういう解釈かということはしていたんじゃないですか。さがしてくださいよ、原文。それ、うしろでさがしているんですね。
  150. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) はい、さがしております。
  151. 黒柳明

    ○黒柳明君 じゃあ、いま局長言われた無期限ということは、原文を忠実にやらなきゃならないですけど、永遠じゃないと思いますというのは、御自分の主観的な判断ですか。
  152. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 御承知のとおり、日米安保条約は双方が一年の予告……
  153. 黒柳明

    ○黒柳明君 いいよ、時間がないから。御自分の主観的な判断かどうかだけ。
  154. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 予告をすれば廃棄できるわけ……
  155. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうじゃなくて、御自分の考えかどうかということを、問い合わせたものであるかどうか。
  156. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) その点は、原文をちょっと当たっておりますので、しばらくお待ち願いたいと思いますが、双方ともにこれは一年の予告で廃棄できる条約でございますから、向こう側もわれわれの意思に反して永久に持つことはできないと考える次第でございます。
  157. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうじゃなくて、いま私が言ったのは、その前の答弁、無期限ということは永久じゃない、こう思いますとおっしゃったことは、向こう側に何らかのそれを聞くかまえがあったのか、それとも御自分が主観的に判断して答えられたのか、こういうふうに尋ねたんですよ。
  158. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 原文はたしかインデフィニットということばだったと思います。
  159. 黒柳明

    ○黒柳明君 どういう原文ですか。
  160. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) インデフィニットであったと思います。これを無期限と申し上げたわけでございますが、無期限ということは期限を付さないということでございまして、それは永久にという意味とは同一の意味ではないと存じます。そういう意味で、また先ほどから申し上げておりますように、かりにアメリカが永久に持ちたいと思っても、それは日本条約を廃棄する権利はあるわけでございますから、その意味でも永久に向こうが持ち得ないことは当然であると考えたわけでございます。ただ、申し添えておきますが、日本がそういうことを考えておるということはないということは当然のことでございます。
  161. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから、私はそんなことはもう知っているんですよ。外務委員会九年間もやっているから、そんなことは知っているの。だからそれを、そういうことばについて往々にして意思の疎通に欠けるところがあるから向こうに尋ねたんですかと、そういうふうに言っているのですよ。このインデフィニットということばについてどういうふうに解釈したらいいのかと。
  162. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) われわれはいま申し上げたような認識を持っておりますので、これは尋ねるまでもないと考えた次第でございます。
  163. 黒柳明

    ○黒柳明君 外務大臣、もう時間がないので、先ほど民間の人だからコメントするあれはないと、こう言われましたけどね。この国務省の回答については、さらに通信網も——ほらそこでいま原文やっていますけれども、私も原文を問い合わせて、新聞のこの解釈を、日本語の解釈のほうが便利がいいから言っているのですけれども、通信網も、沖繩がすべてのアジアの通信網の中心になる、こんなことも言っている。そんなことからいろんなコメントを言っているのです。それから例の抑止力ですね、これはいろいろありました、仮想敵国としてはしてないと。こういう内容が国務省から出ていることについて、この前本会議で、議員の話し合いしたほうがいいと、こういう社会党の先生提案ありました。それについては政府が判断することであります。議員の交流というものはやっているんですけれどもね。こういうものについて、もうすべてこちらだけの考えを前提にして、こうだから問題ないというよりも、聞くのは何も文句ないじゃない。損は何もないのじゃない。それに対してお互いの合意を得ておくということについては、全然時間もかかるわけでもないし、こちらの政府が核に対して全く疑惑を持って向こうをやり込めるという姿勢でもなかろうし、そういう姿勢がないと、やっぱり核に対しての私たちの不安あるいは疑問というものがいつまでも晴れないで、アメリカが一方的に言ってきたのだからそれはもうだめだと、そういうことはいいか悪いかというときも、段階も私はいろいろあると思うんです、いままでのいろんな国会審議というもので。だけれどもこういうものについて、ただ単にマスコミが報道して、政府はそれに対して自分の見解を述べるだけで積極的な姿勢も起こさないということについては、やっぱり今後の日米間、特に核に対する疑惑や不安というものが何かこうすっきりしないままに、さらに積み重ねていくという可能性がある。この国務省の問題回答、これは正式な国務省の委員長に対する回答です。少なくともこういうものについては今後も曲るでしょう、いままでも出た。民間人はいざ知らず、外務大臣が言ったんだ。民間人もやれといったって外務大臣はそれはだめだとおっしゃるならば、せめてこういう政府機関、公の場所から流れた報道ぐらいは、もっと意思の疎通をしっかりしておいて、それで国会答弁においても、きちっとこちらはこう思っている、向こうもこう返答があったとか、しっかりしたものをやっぱり出していただかないと私はうまくないと、こう思いますよ。外務大臣、最後に一言、またこれはあとでやりましょう。この核とこれについては。
  164. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) もしアメリカの国務省が、沖繩の基地を永久に利用できるものであるというふうに考えておるといたしますと、これは問い合わせの問題ではなくて、誤りでございますから、安保条約の解釈から申しまして、むしろ訂正を求めるほうが適当ではないか。もしそういうことをいっておりますのならば、法律的には安保条約規定は御存じのとおりでございますから、いまのようなことは申せない。いずれにしても、これは事実関係を確かめまして、とるべき措置があればとりたいと存じます。  第二段にあらゆる方法、あらゆる段階を通じて双方に誤解の起こらないようにしておくことが大事ではないかと言われる点は、黒柳委員のおっしゃることに私はまことに同感でございます。
  165. 黒柳明

    ○黒柳明君 だから、まず具体的に一番最近のこの国務省の問題について、やっぱり向こうの意思をきちっと、インデフィニットも含めて、インデフィニットはいいというならいいですよ。ほかにまだ問題点がある、それをやってください。
  166. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) それは事実関係を調べまして、必要であればそういう措置をとります。
  167. 黒柳明

    ○黒柳明君 すみません、長くなりまして。
  168. 立木洋

    ○立木洋君 私も、わが国に核兵器が持ち込まれておるという重大な疑いがますます深くなっております。この点、最近私が入手いたしました米軍内部の文書に基づいて政府の考え方をお尋ねしたいと思います。  核の問題についての審議というものは、いつもピントが多少ずれるような傾向がありますので、ひとつ焦点を合わしてお答えいただければ幸いかと思います。  委員長質問に関する資料をお配りするように、ちょっと指示をしていただきたいんですが、お願いいたします。
  169. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 資料を配ってください。
  170. 立木洋

    ○立木洋君 これに入る前に、ちょっと最初に一言、外務大臣にお尋ねしたいんですが、沖繩の伊江島におきまして、米空軍の第一八戦術戦闘航空団が核模擬爆弾の投下訓練をしておるということは御承知だろうと思うんですが、これにつきましては、佐藤内閣時代の福田外務大臣は、これは模擬爆弾だといえどもこういう事態は好ましいことではないと、アメリカ側にそういうことがないようにいたしたいという趣旨の答弁を国会でなされました。で、田中内閣時代の木村外務大臣は、こういう訓練はアメリカとしてはいろいろな訓練があるのだからやむを得ないんだと、アメリカに中止を申し入れる気持ちはないという趣旨のことを木村外務大臣が答弁されたわけですが、この伊江島で行なわれておる核模擬爆弾の投下訓練について、宮澤外務大臣はどのようにお考え、またどのように処置されるお気持ちなのか、最初にそのことをお答えいただきたい。
  171. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 事実関係を存じませんので、政府委員からお答えを申し上げます。
  172. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) この点に関しましては、すでに御答弁申し上げた次第でございますが、国会の議員の方からたびたびこの点のお話がございましたので、われわれとしてもアメリカ側と話し合いましたところ、アメリカ側としては、こういう核模擬爆弾の訓練は海外に配備されておるアメリカの軍隊によって通常実施されている訓練計画の一環であって、米軍の全般的な即応態勢を確保するための重要な要素であるという説明がございました。さらに、日本の国民感情を考慮に入れて、訓練に当たっては安全対策上十分な留意を払ってこれを実施すると。そして訓練そのものは、米軍の任務の遂行上必要最小限度にとどめるという回答があった次第でございまして、これはあくまで模擬爆弾の訓練でもございますから、われわれとしてはこの趣旨を了として、これについて中止を求める考えは持っておりません。
  173. 立木洋

    ○立木洋君 山崎局長の答弁は、もう何回かお聞きしているので、きょうは外務大臣じきじきにお答えいただきたかったのですが、それはやむを得ないでしょうが、ここに私が持っておりますのは、ことしの九月三十日、嘉手納の基地で第一八戦術戦闘航空団が作成した嘉手納基地第三五五作戦計画書、基地災害対策というアメリカ軍の内部文書であります。これは嘉手納の基地内で発生の可能性のある災害状況を具体的に特定して、これに対する対策、手続を具体的に規定した内容になっております。これはきわめて重大なことでありますが、潜在的災害状況として、核兵器の事故が同基地内で発生する可能性がある。明確に述べておるわけです。そして核兵器の事故の発生は、「放射性物質による地域的汚染のために広範な放射能傷害を引き起こしうる。」と、こういうふうに内容では断定をいたしております。災害が発生したときにとるべき措置としてはこまかく指定がありまして、たとえば入院の問題に関してですが、最後の項にありますけれども、「可能なかぎり入院は、キャンプ桑江の米陸軍医療センターで完治する。患者の入院の調整は、医務指揮所がキャンプ桑江とおこなう。必要な場合、嘉手納初等学校を、応急手当または限定的手当を必要とする負傷者のための仮入院施設として利用できるようにする旨の要請書を基地司令官に出す。」こういう具体的な問題が出されているわけです。核兵器が持ち込まれていなければ、米軍はこのような核兵器事故発生状況を具体的に規定した災害対策書をつくる必要がないわけですが、この事実について外務大臣どのようにお考えですか。
  174. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 第一に、この御配付になりました文書がどういう性格のものであるか、私どもいまちょだいしただけで、つまびらかにいたせません。  第二に、推測でございますが、おそらく軍、米軍といたしましては、起こり得るあらゆる可能性のある事態についていろいろ想定をしておるということがありましても、別段それは異とするに当たらないと思います。  第三に、特にこれは拝見いたしますと、核による攻撃というようなことが書いてございますから、推測でございますけれども、嘉手納基地が核攻撃を受けた場合にどうするかというような想定を設けておるのかもしれない。しかし、これらのことは全部私の推測でございまして、以上三点お答え申し上げます。
  175. 立木洋

    ○立木洋君 外務大臣も御承知だろうと思うんですが、米空軍では各級機関、各級部隊ごとに災害対策書があるんであります。そしてこれら一般的原則を示したものとしては、米空軍教範三五五−一、災害対策その計画と運用という文書があるんです。その文書によりますと、米軍の中では特にそれぞれの基地は、それぞれ具体的状況に合わせて、それぞれの基地単位の災害対策書をつくるようにということが書かれてあるんです。これはまさに米軍の一般的な教範ではなくて、嘉手納基地でつくった文書なんです。そのことが重大な問題であるわけです。ここに最近、アメリカの太平洋空軍の指示文書としまして、ザ・プロフェッショナルということの七月号の文書があるわけですが、この中でも明確に書かれている点で申し上げますと、災害対策は各級司令官の責任であるが、基地レベルの計画は、計画実行時の行動のほとんどがその基地で行なわれるので特に直接性がある。基地災害対策計画書は計画の核心であり云々というふうに述べられているわけです。つまり、これは一般的な問題ではないんです。どこでも起こり得ることを想定して書かれた文書ではない、嘉手納基地でつくった文書なんです。この点について、これでも問題がないというのか、どういうふうにお考えなのか、お答えいただきたいと思うんですが。
  176. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 大臣が先ほど申し上げましたように、われわれはこの文書の性格をまだつまびらかにいたさないわけでございますが、かりにこれが正しいものであるといたしましても、それが対象としておりますものは、核兵器事故のみならず、核戦争の場合、航空機事故、その他通常型戦争、暴動あるいはサボタージュまでも含めておるわけでございます。それで先ほどからも申し上げておりますように、アメリカの軍隊は世界に展開されておるのでありまして、ことに空軍はしかりであります。したがいまして、空軍の場合は特にいかなるところへ行ってもその災害対策というものの訓練は受けておるわけであります。したがいまして、その訓練の一環としてこういう災害対策書が作成され、それを嘉手納に当てはめたならばこういうふうになるというひとつの手引きであろうと思います。先ほども申し上げましたように、この対象は核兵器事故にも限られておりませんし、またこれは一般的なパターンの災害対策書をただ嘉手納に当てはめた、ことに救急措置について当てはめた文書ではないかと推測する次第でございます。
  177. 立木洋

    ○立木洋君 山崎局長、いつもそういうふうに逃げられて私は困るんですが、ここに書かれてあるように、これは核戦争というふうにわざわざ区別して書いてあるんですよ。核戦争という場合には敵から攻撃を受けたということ、これはだれでも常識でわかるんです。核戦争とわざわざ分けて核兵器事故と書いてあるんですよ。核兵器事故が起こった場合のことまでちゃんと書いてあるんですよ。敵から攻撃を受けたという問題であるならば、わざわざ分けて書く必要がないというのが常識的に考えられるんじゃないですか。つまり核兵器があるという可能性をこのことは意味して嘉手納基地の災害対策の文書としてつくったものではないんですか。その点どうなんですか。ちょっとぼけないように、焦点を合わしてお答えください。
  178. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 繰り返すようで恐縮でございますが、アメリカの空軍は世界に展開しておりますので、その要員たる者は、各地において核兵器事故にあうこともあり得るわけでございます。したがいまして、どこにおろうとそういう訓練は受けるというふうに承知しております。したがいまして、ここにまた、たとえば嘉手納に配属された人間が、そういうことの、嘉手納には核兵器がないから受けないということであれば、あしたになってほかの基地に転属になってそこに核兵器があるとしますれば、その訓練がなければやはり米軍としては困るんであろうと私は想像するわけでございます。したがいまして、こういうものが書いてあるからといって嘉手納に核兵器があるということにはならないと存じます。
  179. 立木洋

    ○立木洋君 局長はなかなかりっぱな米軍司令官になり得ると思うんですよ。それなら私はもっと端的にお答えいただきたい。それでは、核兵器がないところに核兵器の事故が起こり得ますか。端的にお答えいただきたい。核兵器がないところに、事故が起こりますか。起こらないと思うんですが、どうですか局長
  180. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) そういう原因がないところに結果は起こらないわけでございまして、それは核兵器がなければ核兵器事故はない、それは倫理的にはそのとおりでございます。
  181. 立木洋

    ○立木洋君 いまの答弁一つだけ私の見解と一致しました。  次に、では核兵器の事故が起こり得る可能性がないところに核兵器事故に対する災害対策は必要ですか。核兵器事故が起こる可能性がないところに、それの災害対策というものが必要ですか。これも私と一致させてください。
  182. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) 先生は、事故というものに着目されてお話しになっておるようでございますが、私はこれは事故、その事故に対処する人間を訓練するということがこういう手引き書の主眼であろう。その人間というものは動くものである。したがって、米空軍の要員が各地に移っていくわけでございますから、どこにおろうとそういう訓練があり、ことにそういう手引き書が配付されることは当然であろうと思います。
  183. 立木洋

    ○立木洋君 これは嘉手納の基地でつくられた対策書なんです。そういうどこにでも受ける必要があるならば、一般的な教範として米軍が出しておけばいいんじゃないんですか。嘉手納の基地で、特にそこの直接性が重視されるものとしてそれぞれの基地に適用した文書をつくれという指示に従ってつくられたものなんですよ。  それならもっとわかりやすいことを聞きましょう。地震のない国に地震対策なんというのは必要ですか。必要ないでしょう。問題は具体的なんですよ。嘉手納の基地でつくった文書なんです。一般的どこにでも行って訓練を受ける必要があるならば、教範として米軍全体どこにでも訓練が受けられるような文書を出しておればいいんです。なぜ嘉手納の基地に具体的に適用した文書として出されたのか、その点どうお考えでしょうか。
  184. 山崎敏夫

    政府委員(山崎敏夫君) これは抜き書きでございまして、私たちは全部を承知しておるわけではないのでございますけれども、拝見いたしました限りにおきましても、ここに言っておる、特に嘉手納に言っておりますのは医療関係、つまり救急関係のことでございまして、その救急関係については、それはその土地土地の救急体制があるべきでありまして、それを当てはめたということであろうと思います。したがいまして、一般的な対応策というものは、これは私の想像でございますけれども、共通であるが、その救急体制というものは、その土地土地の状況に応じてそれを具体的に書いてあるというだけのことではないか。  それから、たびたび申し上げますけれども、この教範、ここで拝見した限りにおきましても、別に核兵器事故に限って書いてあるわけではない次第でございます。
  185. 立木洋

    ○立木洋君 つまり、いま山崎局長は嘉手納で起こり得る状態に対する医療体制の問題として述べられた、書かれておるものと考えると、こう言われたわけですね。そうすると、嘉手納で起こり得る核兵器事故も含めたものに対する医療体制の必要としてここで述べられているわけです。そうすると、核兵器事故は核兵器がないところに起こらないとあなたはさっき認められた。この点あまりやりとりしますと時間がなくなりますので……。  この間、どこの新聞でしたか、宮澤外務大臣のことをだいぶほめて書いてありましたし、賢明な外務大臣で、科学的な見通しを持たれるというふうな、何かそういう記憶があるんで、科学的な見通しでちょっとお答えいただきたいんですが、嘉手納の基地で核兵器事故が起こった場合の災害対策を具体的に嘉手納の基地米軍当局がつくったということですね。ですから、核兵器が存在する可能性を意味していると思うんですが、どうでしょう。
  186. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど申し上げましたように、これはもう全く推測でしか申し上げられませんで、この文書がどういうものであるかすら、それは実ははっきりわかっておりませんので、そこでいまおっしゃいましたように、論理の筋だけをかりに追って考えてみますと、これには核戦争の場合というような想定が第一にございます。おっしゃいますように、第三に核兵器事故というようなことが書いてございます。そこで論理の筋だけを考えますと、核戦争という容易ならない事態をも想定した災害対策書でございますから、そういう事態になって、沖繩に核兵器を置くことが事前協議の結果許されることがあり得るだろうとこれを書いた人は想定しておるかもしれません。そういう想定の場合にはそれに事故が起こる場合があり得るであろう。また、そうなっておるのであろうかと思います。もとより私どもは、事前協議があるわけでございますから、核兵器を持ち込むというようなことをそう簡単に承知したと言うはずはないわけでございます。これはもうよく御承知のとおりですが、軍が最悪の場合を考えて、核戦争などということを考えておりますから、想定によりますと。そういう想定のもとでこういうこともあり得るかと、こう考えたのであろうか。これは論理的に推していきますと、そういう推測ができるのかもしれませんが、これはあくまで推測でしかないわけでございます。現在沖繩に核兵器がないということは、これはもう何度も申し上げてございます。
  187. 立木洋

    ○立木洋君 私は、核兵器が沖繩にいま存在しているんですかという質問をしたんじゃないんです。核兵器が存在する可能性があるのではないかということを質問したんです。この文書から考えられるならば、存在する可能性があるということを想定して米軍がつくった文書ではないか。
  188. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 将来でございますね。
  189. 立木洋

    ○立木洋君 いや、将来というより、存在する可能性があると考えてつくられた文書ではないかということです。将来、いま、なには問いません。
  190. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 現在ないということは、私どもにはっきりしておることでございますから、そのような可能性としては将来ということになろうと思います。米側から見れば、これは核戦争という事態を想定したりしておりますから、まあわれわれがちょっと考えられない最悪の事態というのを想定して、そういうときにはこういうこともあり得るかと、そういう論理だけを推していきますとそういうことででもあろうかと、あくまで推測でございますけれども。可能性としてもきわめて乏しい可能性、われわれが事前協議でイエスと言わなければ起こらない可能性でございますから、そういうことはまあまあ普通の状態で起こり得ることではない。こういうふうに申し上げたらいいのかと思います。
  191. 立木洋

    ○立木洋君 私は、存在する可能性ということだけをお答えいただければよかったんですが、いろいろそれに形容詞をつけられましたので……、しかし、先ほどの外務大臣とそれから局長の御答弁の中で、この文書がどういう種の文書かよくわからないので、というふうにおっしゃられたわけですが、これがことしの九月三十日に作成された。そして作成したのは第一八戦術戦闘航空団というマークが入って提出されたものです。この戦術戦闘航空団というのは、嘉手納培地を代表する部隊にこの文書を発表した同日付になっているわけです。そして同基地所属の他の部隊もこの第一八戦術戦闘航空団を中心に再編されたわけです。そういう意味でもこの文書というのはきわめて重要性を持っている。ですから、私はこのことについて特にお願いしたいわけですが、この文書の事実を米側に問い合わし確めてみられるお考えがないかどうか。どういう文書かわからないということを繰り返し述べられたわけですから、どうか外務省のほうでお確かめいただきたい。いかがですか、大臣にひとつ。これはこんな厚いのを一々翻訳して外務省のためにつくってやるだけの力がないんですよ。あなた方がちゃんともらってきて調べてごらんになったらいかがですか。
  192. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) 公の委員会において御配付のあった資料で、御質問もございましたので、どういうものでございますか、私どもでできるだけ調査いたしてみます。
  193. 立木洋

    ○立木洋君 調査した結果について、御答弁いただけますか。
  194. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) たいへん短い期限をおつけいただかなければ、調べました結果を申し上げます。
  195. 立木洋

    ○立木洋君 この嘉手納に私たちはいままでも繰り返し核兵器が持ち込まれておるという重大な疑惑があるということを指摘したわけでありますが、いま大臣のお答えにあったように、この文書の所在を調べて、これがどういうものであるかということを御検討いただくということになったわけですが、もう一つは、この核兵器が事実上存在するかどうか、存在する可能性という問題もあるわけですから、政府のほうとして、重大な疑惑のあるこの嘉手納の基地をひとつ御点検いただけないかどうか。その点はいかがでしょうか。
  196. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) それでは、この文書を離れましてお答えいたします。  政府といたしましては、沖繩が返還されましたときに核がない状態であったということは、何度も申し上げましたとおり全く明らかであると考えております。その後、事前協議を受けたこともございませんので、その状態は今日まで続いております。かりに将来事前協議がございましても、通常の事態において私どもがそれを承諾するという気持ちは持っておりません。したがって、それが私どもの事実関係なり方針でございます。そういうことでございますから、嘉手納基地を政府において調査するか、私どもはその必要を認めませんし、そういう意思もございません。
  197. 立木洋

    ○立木洋君 私たち野党は、常に核兵器の持ち込まれておる重大な疑惑がある。野党の人たちは、みんな努力をしてその事実をあげて、危険な状態があるんではないかということをいつも政府のほうに指摘をして、そのことについてわれわれは努力をしてきたわけですが、ところが、政府のほうとしましては、いままで、この問題については、持ち込まれていないということを米軍からの伝えだということで、常にそういう答弁をされてきたわけですが、ですから今日、政府の側が具体的な事実資料によって明確に裏づけられた核兵器は持ち込まれていないと主張し得る立証、つまり、挙証責任があるんではないかと思うんですが、今日までの事態になれば。この点についてはいかがお考えですか。
  198. 宮澤喜一

    ○国務大臣(宮澤喜一君) それにつきましては、アメリカのロジャーズ国務長官がアメリカの議会で証言もしておりますし、返還時におきましてわが国の外務大臣に正式にそういう書簡を寄せられております。また先般、アメリカの大統領がそれについてわが国で言明されたことも御承知のとおりでございます。で、われわれは事前協議という制度を持っておりますので、十分われわれの意思、われわれの政策は行ない得るものと、かように考えています。
  199. 立木洋

    ○立木洋君 最後に一言。  私たちは今後ともこの問題に関しては重大な疑惑がある。いま最後におっしゃられました事前協議の問題についても問題点が多分にあるわけでありまして、今後引き続いてこの問題を究明して、日本の平和と安全をほんとうに守り得るような状態にするためにいろいろ今後とも質問をしていきたいと思います。  きょうはこれで終わります。
  200. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 本調査についての本日の質疑はこの程度にいたします。
  201. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 次に請願の審査を行ないます。  第八八二号、対韓政策抜本的転換に関する請願を議題といたします。  まず、専門員から説明を聴取します。
  202. 服部比左治

    ○専門員(服部比左治君) 本国会外務委員会に付託されました請願は、お手元の表のとおり一件でございまして、その内容は、韓国の朴政権の自由と民主主義の抑圧を看過できないという立場から、政府に対し、朴政権への一切の援助の停止、対韓政策抜本的転換、南北朝鮮の自主的平和的統一運動への不干渉、在日朝鮮人への差別と弾圧の中止を求めるとともに、金芝河、早川、太刀川氏らの即時釈放と金大中氏の無条件来日を韓国政府に要求されたいというものであります。  以上でございます。
  203. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  204. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 速記を起こして。  第八八二号対韓政策抜本的転換に関する請願は、保留と決定することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  205. 二木謙吾

    委員長二木謙吾君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十一分散会      —————・—————