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政府委員(
高橋寿夫君) 十一月一日から六大都市のタクシー
運賃がかなり大幅に上がったわけでございます。三割強の値上がりがございました。その結果、予想されたことでございますけれども、実車率——要するにタクシーがお客さんを乗っけて走っているキロ数の割合でございますが、これが値上げ前に五割八分、要するに一日を一〇〇といたしますれば五八%ぐらいはお客を乗っけて走っておったと。これを実車率と申します。この実車率が十一月の初めには五一、二%に下がりたということがございまして、その後若干回復をいたしておりますけれども、もちろん十月の五八%にまでは至っておりません。ただ実車率はあくまでもそういうお客さんが乗って走った距離の比率でございますけれども、その走って収受する
運賃は三割がた上がっているわけでございますから、したがいまして、実車率が減りましても水揚げは若干ふえております。
したがいまして、いま直ちにタクシーが実車率が低いから
経営が不振、倒産ということは起こっておりませんし、起こり得ないと思います。ただ申せますことは、昔に比べましてかなり——昔といいますか、戦後に比べましてかなりタクシー
運賃は高くなりました、他の
運賃に比べまして。したがって従来のような乗せてやるぞという形で
経営をいたしておりますと、お客さんが乗らなくなるということから、むしろこれからはタクシーの、これは労使ともにそうだと思いますけれども、ほんとうにサービスをよくするという点に努力いたしませんと、そちらのほうからまいってくることがあるだろうというふうに考えます。このことはしかし市民から見るならば、タクシーのサービスがよくなるという方向でございますので、私どもも値上げによる実車率の低下という点についてはある程度やむを得ない、しかし、これはサービス改善に努力することによりまして必ず回復するはずであるというふうに思いまして
指導をいたしております。現に十三月に入りましてからは相当回復をいたしております。
それから三番目のお尋ねの需給の問題でございますが、これにつきましては、戦後、
昭和三十五、六年ごろまでは六大都市につきましては需給
計画をつくりまして、東京は適正タクシー車両数三万台というふうなものをつくりまして、二万台を一台でも多くしないということで、二万台のワクの中で厳格な供給制限をした。これはどちらかといいますと、
輸送秩序を保つことによりましてサービスを水準以上に保つということがあったわけでございますが、なかなか大都市になりますと何台タクシーがあったらいいかということは実はわからないわけなのであります。そこで、どうしても策定いたしますと、諸般の
関係から供給制限的な
計画になる。要するに業者から見たら車が少ないんですから実車率が上がって非常に
経営のしやすい形になるし、逆にお客さんから見たら非常にタクシーが拾いにくいという形になると思います。それが乗車拒否等がたくさん生まれた原因であったわけであります。
そこでオリンピックを迎えましたときを境目にいたしまして、一切大都市におきましては需給
計画をつくらないということにいたしました。それを受けまして、つい数年前に
運輸政策審議会の
バス・タクシーに関する
答申の中でも、いわゆる大都市につきましては自由参入、自由脱退ということで、ある
一つの料金水準を目安にいたしましてお客さんがタクシーをいかに選択するかあるいは業者のほうがタクシー事業というものにいかなる車を投入するか、どれだけ投入するかということはすべて市場原理にまかせるというふうにしてしまったわけでございます。その結果、六大都市におきましては特に東京などそうでありますけれども、法人の新免は全然ございません。増車もほとんどございません。そのかわり個人タクシーが大体年に二千件から三千件ぐらいふえておりますから、そちらのほうの面で供給はふえておりますけれども、法人の新免はございません。私どもは六大都市につきましては、したがいまして、もしも供給の余地があるならば申請をしてくるはずである。それが出てこないのは、大体供給力がバランスするからだというふうに考えまして、いわゆる役所が客観的といいますか、役所の立場で頭からこの都市は何万台、この都市は何千台という基準をつくることはやめたわけでございます。そのほうがかえって実勢に合って無理のない
行政ができるというふうに考えたわけでございます。しかしながら地方の中小都市につきましては需給
計画をつくろうと思いますならば、これはかなりまだつくるデータもございます。そしてまた需給
計画を左右することによりまして
輸送秩序を守ることも可能でございますので、五大都市以外の小、中諸都市につきましては陸運局がそのときどきの需給
関係を見ながら需給調整をしている、こういう現況でございます。