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1974-12-20 第74回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年十二月二十日(金曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 荒舩清十郎君    理事 井原 岸高君 理事 栗原 祐幸君    理事 櫻内 義雄君 理事 細田 吉藏君    理事 山村新治郎君 理事 小林  進君    理事 田中 武夫君 理事 林  百郎君    理事 山田 太郎君      稻村佐近四郎君    植木庚子郎君       小澤 太郎君    大久保武雄君       大野 市郎君    奥野 誠亮君       北澤 直吉君    黒金 泰美君       笹山茂太郎君    塩谷 一夫君       正示啓次郎君    瀬戸山三男君       田中 龍夫君    竹下  登君       谷垣 專一君    塚原 俊郎君       西村 直己君    根本龍太郎君       藤井 勝志君    保利  茂君       前田 正男君    松浦周太郎君       綿貫 民輔君    渡辺 栄一君       安宅 常彦君    阿部 昭吾君       赤松  勇君    岡田 春夫君       多賀谷真稔君    楯 兼次郎君       辻原 弘市君    中澤 茂一君       楢崎弥之助君    武藤 山治君       八木 一男君    湯山  勇君       田代 文久君    津金 佑近君       松本 善明君    山原健二郎君       岡本 富夫君    坂井 弘一君       広沢 直樹君    矢野 絢也君       渡部 一郎君    安里積千代君       小平  忠君    竹本 孫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  三木 武夫君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      福田 赳夫君         法 務 大 臣 稻葉  修君         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         大 蔵 大 臣 大平 正芳君         文 部 大 臣 永井 道雄君         厚 生 大 臣 田中 正巳君         農 林 大 臣 安倍晋太郎君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 木村 睦男君         郵 政 大 臣 村上  勇君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 仮谷 忠男君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長         北海道開発庁長         官       福田  一君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      井出一太郎君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)         (沖繩開発庁長         官)      植木 光教君         国 務 大 臣         (行政管理庁長         官)      松澤 雄藏君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 坂田 道太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      佐々木義武君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 小沢 辰男君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 金丸  信君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         内閣法制局第一         部長      角田礼次郎君         総理府賞勲局長 秋山  進君         公正取引委員会         委員長     高橋 俊英君         公正取引委員会         事務局長    熊田淳一郎君         警察庁刑事局長 田村 宣明君         警察庁警備局長 山本 鎮彦君         防衛庁長官官房         長       斎藤 一郎君         防衛庁防衛局長 丸山  昂君         防衛庁経理局長 亘理  彰君         防衛庁装備局長 山口 衛一君         防衛施設庁総務         部長      安斉 正邦君         防衛施設庁施設         部長      銅崎 富司君         経済企画庁調整         局長      青木 慎三君         経済企画庁国民         生活局長    岩田 幸基君         経済企画庁物価         局長      喜多村治雄君         経済企画庁総合         計画局長    小島 英敏君         科学技術庁原子         力局長     生田 豊朗君         法務省刑事局長 安原 美穂君         法務省人権擁護         局長      萩原 直三君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省欧亜局長 大和田 渉君         外務省中近東ア         フリカ局長   中村 輝彦君         外務省経済局長 宮崎 弘道君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君         大蔵大臣官房日         本専売公社監理         官       西沢 公慶君         大蔵省主計局長 竹内 道雄君         大蔵省主税局長 中橋敬次郎君         大蔵省理財局長 吉瀬 維哉君         大蔵省銀行局長 高橋 英明君         大蔵省国際金融         局長      大倉 眞隆君         国税庁長官   安川 七郎君         文部省初等中等         教育局長    安嶋  彌君         厚生省医務局長 滝沢  正君         厚生省社会局長 翁 久次郎君         厚生省児童家庭         局長      上村  一君         厚生省保険局長 北川 力夫君         厚生省年金局長 曾根田郁夫君         社会保険庁年金         保険部長    河野 義男君        農林大臣官房長 大河原太一郎君         農林省構造改善         局長      大山 一生君         農林省農蚕園芸         局長      松元 威雄君         農林省畜産局長 澤邊  守君         食糧庁長官   三善 信二君         林野庁長官   松形 祐堯君         水産庁長官   内村 良英君         通商産業大臣官         房長      濃野  滋君         通商産業省貿易         局長      岸田 文武君         通商産業省産業         政策局長    和田 敏信君         通商産業省立地         公害局長    佐藤淳一郎君         通商産業省機械         情報産業局長  森口 八郎君         通商産業省生活         産業局長    野口 一郎君         資源エネルギー         庁長官     増田  実君         資源エネルギー         庁石油部長   左近友三郎君         中小企業庁長官 齋藤 太一君         運輸省鉄道監督         局長      後藤 茂也君         郵政大臣官房電         気通信監理官  田所 文雄君         郵政大臣官房電         気通信監理官  佐野 芳男君         郵政省人事局長 神山 文男君         郵政省経理局長 廣瀬  弘君         労働大臣官房長 青木勇之助君         労働省労政局長 道正 邦彦君         建設大臣官房長 高橋 弘篤君         建設省道路局長 井上  孝君         建設省住宅局長 山岡 一男君         自治省行政局長 林  忠雄君         自治省税務局長 首藤  堯君  委員外出席者         自治省行政局選         挙部長     土屋 佳照君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      森永貞一郎君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ――――――――――――― 委員の異動 十二月二十日  辞任         補欠選任   瀬戸山三男君     綿貫 民輔君   野田 卯一君     塩谷 一夫君   安宅 常彦君     楯 兼次郎君   中澤 茂一君     武藤 山治君   田代 文久君     不破 哲三君   松本 善明君     山原健二郎君   岡本 富夫君     渡部 一郎君   坂井 弘一君     広沢 直樹君   竹本 孫一君     安里積千代君 同日  辞任         補欠選任   塩谷 一夫君     野田 卯一君   綿貫 民輔君     瀬戸山三男君   楯 兼次郎君     安宅 常彦君   武藤 山治君     中澤 茂一君   山原健二郎君     松本 善明君   広沢 直樹君     矢野 絢也君   渡部 一郎君     岡本 富夫君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十九年度一般会計補正予算(第1号)  昭和四十九年度特別会計補正予算(特第1号)  昭和四十九年度政府関係機関補正予算(機第1  号)      ――――◇―――――
  2. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより会議を開きます。  昭和四十九年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十九年度特別会計補正予算(特第1号)、昭和四十九年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して議題といたします。  この際、参考人出頭に関する件についておはかりいたします。  本日、日本銀行総裁出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     ―――――――――――――
  4. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 質疑を行ないます。坂井弘一君。
  5. 坂井弘一

    坂井委員 国民の心を政治の根幹に据えると、三木総理所信表明で言明をされました。また、いま何よりも大事なことは、失われた政治に対する国民の信頼を回復することであるとも申されております。私もまことにそのとおりであろうと思います。そこで、いま国民が最も知りたいこと、また強く求めていること、それを私は国民の立場に立ちまして、遠慮なく率直にお尋ねをしてまいりたいと思います。  質問の第一は、金権政治を打破する観点から、三木内閣政治姿勢について。第二は、当面するきわめて深刻な不況、物価対策について。さらに三つ目は、外交、沖繩の核問題。以上三点でございますが、質問に先立ちまして申し上げておきたいと思います。  戦後の保守主流を受け継ぎました田中内閣が、金脈問題を直接の契機といたしまして崩壊をいたしました。ここで問われるべきは、戦後この方、いわゆる高度経済成長政策に呼応いたしまして、大企業と癒着してきた自民党政治体質そのものでありまして、このことは、田中退陣によって決して解決をしたというわけのものではありません。いま多くの国民が非常にやるせない思いの中でなおきびしく政治を見詰めながら、いま三木さんに、せめてわれわれのために三木総理は何かをやってくれるのではなかろうか、そうした一るの望みを託していると思います。したがいまして、どうか総理は私の率直なる質問に対しまして、総理もまたことばを濁さないで率直にお答えをいただきたいことをお願いいたしまして、質問に入りたいと思います。  最初に、政治資金のあり方について、具体的に触れていきたいと思います。  まず、自治大臣に確認をしておきたいと思います。いわゆる政治団体は、政治資金規正法第六条の届け出がございます。届け出義務というものを六条において明確にいたしておりますが、もし届け出しないで寄付を受け、あるいは支出をするというようなことがありますならば、これは八条の違反になるということでもって、罰則二十三条、五年以下の禁錮もしくは五千円以上十万円以下の罰金に処する、こうなっておりますけれども、そのとおりでございましょうか。
  6. 福田一

    福田(一)国務大臣 お説のとおりでございます。
  7. 坂井弘一

    坂井委員 そういたしますと、さらに自治大臣にお尋ねいたしたいと思いますけれども、今日まで八条違反の具体的な事例というようなことはあったでしょうか。
  8. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいままでのところ、私、承知いたしておりません。
  9. 坂井弘一

    坂井委員 つまり、届け出がされていないのですからその実態は不明である、したがって八条違反はない、こういうことであろうかと思います。  総理にお尋ねしたいと思いますが、三木総理が御関係される政治団体には、どのような団体がおありなんでしょうか。
  10. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私が自治省届け出をいたしておる後援団体、この後援団体は独立のやっぱり人格を持った団体でございますが、政策懇談会近代化研究会二つだと記憶しております。
  11. 坂井弘一

    坂井委員 政策懇談会近代化研究会、これは三号団体としてお届けになっているようであります。ほかに政策調査会政経同志会政策同志会政経研究会、同じような名前で非常にややこしゅうございますが、この四つ団体がありますが、この四団体というのは一体どなたの関係政治団体でしょうか、総理はよく御存じだと思いますが。
  12. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、十七日でございましたか、本会議浅井さんの質問が出るまで、そういう団体というものがあることを実際に知りませんでした。
  13. 坂井弘一

    坂井委員 では、その後お調べになったかと思いますけれども、念のために申し上げたいと思います。政策調査会政経同志会、これは千代田区五番町の十二、番町会館、つまり総理のあの三木事務所でございます。政経研究会政策同志会、この二つは衆議院第一議員会館七百十二号室、つまり総理のお部屋でございます。  自治大臣にお尋ねいたしますけれども、この四団体届け出られておりますか。一号、二号、三号とございますが、もし届け出られておるとするならば、その何号団体届け出をしているか、お答えいただきたい。
  14. 福田一

    福田(一)国務大臣 政府委員から答弁をいたさせます。
  15. 土屋佳照

    土屋説明員 お答えいたします。  先般の本会議での御質問もございましたので、調べてみましたところ、政治団体としては届け出がなされておりません。
  16. 坂井弘一

    坂井委員 総理にお伺いしたいと思いますけれども、あの本会議浅井質問、あのあと届け出ていないことが初めてわかった、こういうことでございますが、少なくともあなたの事務所でございます。お部屋でございます。知らなかったということはずいぶんうかつだったのだなとしか言いようがないのですが、どうしてこの四つ団体届けられていなかったのでしょうか。届け出をしなかったのでしょうか。わけがあったかと思いますけれども、総理からお答えいただきたいと思います。
  17. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この機会に、私が真相を申し上げておきたいと思います。  私は、三十七年間、金銭に対する疑惑を一度も受けたことはありませんでした。また、戦後営利事業に関連をいたしたことも一度もございませんでした。また事務所の者にも、金銭に関しては特に厳重に気をつけるようにということを常々申しておったわけであります。したがって私は、これは当然のことですけれども、また誇りにも感じておったものでございます。  ところが、十七日の本会議浅井議員から私に対して、無届け政治結社があるということをほんとうに初めて聞いたんですよ。そうして私は驚きまして、したがって何を言われるのかということで、浅井さんに対しての私の答弁も、礼を失した点が確かにあったと思うのでございます。ところが、そういう御指摘がありましたので、念のために私の後援団体に問い合わせましたところが、どうもそういう団体があるような様子であることがわかりました。  これは私は、国民の皆さんもお聞きになっておるのだと思いますので申し上げておるのですが、責任を転嫁するつもりはないのです。私自身として全責任を負いたいと思っておるのですが、政治家後援団体というものは、別のやはり会長があって、別の人格で、どういうふうに運営をされておるかということは、私には連絡はほとんどないわけであります。したがって、その金というものが――不正な金でありませんよ。不正な金ではないわけだけれども、どういうふうに集められ、どういうふうに使われておるかということを、実際に本人、私自身はよく承知していないんですよ。これは何も責任を回避しようとして言っておるのではないのです。政治資金というものに対して、将来改正をしなければならぬ点だと私は思います。しかし現実はそういうことでございます。ところが、そういうことがどうもそういう様子らしいということで、まことにうかつであり、不面目の至りであると考えておるわけでございます。したがって、これに対しては、私は、後援団体ですから、私自身ではないわけですから、直ちに適当な処置をとるように要請をいたしたわけでございます。こういうことで、これが真相でございます。何も包み隠しもないわけでございますので、どうか御了承を願いたいと思うのでございます。  私は、この内閣を通じて、責任は回避したくない、うそは言いたくない、これに終始したいわけでございますが、実際に真相はこういう点であって、政治資金規正法というものを、私は、来週早々、私自身の一つの提案を自民党に対していたそうと思っております。確かに政治資金規正法というものに対しては欠陥がある。こういう点で、これが真相でございますので、どうかこの真相は御了承を願いたいと思うのでございます。
  18. 坂井弘一

    坂井委員 総理が、いまこれが真相だということでお述べになりました。私もすなおにお聞きしたいと思いますが、ただ、申し上げましたように、これは北海道とか沖繩とか、遠いところにある事務所ではございません。総理がいつもいらっしゃる議員会館のあなたの部屋なんです。番町会館のあなたの事務所なんです。そこに後援会が存在しながら、その後援会のことについて、総理は一々報告は受けていないからわからなかったという話では、これはだれしも納得しがたい問題ではなかろうか。確かに後援会は別人格でございます。総理、直接あなたが主宰されている団体ではない。しかしながら、少なくともあなたのためにといって結成されましたところの後援会であることは、これまた間違いないことであります。適当な措置をとられた、それはあとでお聞きしたいと思いますが、その前に、もう少し私から、この後援会がどのような実態であるかということにつきまして申し上げておきたいと思う。どうも総理ははっきりつかんでいらっしゃらないんじゃないかと思いますので、私は念のため親切ということで申し上げたい。  つまり、いま言いましたこの四つ届け出していない政治団体に、政策懇談会近代化研究会から、四十六年から四十八年の三年間にわたりまして、調査費組織活動費賛助費、こういう名目で五億三千万円支出がされておる。つまり無届け団体に三年間で五億三千万という金が入った。この五億三千万がどのような形で使われたか、これは全く第三者にはわかりません。こういう形です。年間にいたしますと約一億七千万円、一カ月に換算いたしましても千四百万円、これは非常に大きなお金であります。政策懇談会近代化研究会がこの三年間に受け入れました献金総額が二十億二千七百九十二万円。これを支出ベースで見ますと、いま問題の無届け団体支出しました額が五億三千万でございますから、これは全支出の二七%、約三割、それだけ四団体が受け入れをして、無届けなるがゆえに、どのような形でこの金が使われたか、全く不明である。こういうことに相なってまいりますと、現行政治資金規正法そのものざる法であるとはいわれながらも、せめてこのワク内で、政治活動する者は届け出をいたしまして、そして政治活動を行なっておる。少なくとも収支を明らかにいたしております。総理関係のこの四団体は、全く無届けで、そのような形で全然第三者にはわからない。こういうことでは、私は許されることはできないではないか。  その後いろいろとお調べになっていらっしゃると思いますので、この際にお伺いしておきたいと思いますが、それでは、一体この四団体主宰者及び会計責任者、どなただったんでしょうか。
  19. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 うかつな話でございますけれども、事務所なども――浅井さんの質問があるまで、このこと自体、私は知らなかったわけでありますから、事務所なども、一体そういうものがどこにあったかということも知りませんでしたが、政策懇談会は春日井氏が会長であり、また近代化研究会――ちょっと待ってください。平川篤雄という者が責任者に、会長になっておると思いますが――責任者を申します。政策懇談会佐々木敏行、それから近代化研究会平川篤雄という、佐々木敏行平川篤雄。前のはなにで、これが責任者になっております。
  20. 坂井弘一

    坂井委員 総理、勘違いなさっていらっしゃるのでしょうか。それは届け出られた政治団体なんです。私、申し上げておるのは無届けの四団体、つまり政策調査会政経同志会、それから政経研究会政策同志会、この四団体会計責任者責任者はどなたでしょうか、こうお伺いしているわけです。
  21. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 その点は、あると言われている四つ団体責任者は、浅井さんの質問があって、ちょっと問い合わせたわけでございますので、その点はわかっておりません。自治省届け出政策懇談会近代化研究会だけのことはわかっておりますが、その四つ団体責任者というものは、詳細に承知しておりません。
  22. 坂井弘一

    坂井委員 総理、そういうことをお答えになりますと、たいへんおかしいなということになるんですよ。総理、適当な措置をされたとおっしゃいましたから、おそらく当然、会ですから、その会を主宰する責任者がある、あるいは会計責任者がある。つまり五億三千万というたいへんなお金を扱っているわけですから。それが、たいへんうかつだった、しかし浅井質問を聞いてあと届け出ていなかったことがわかった、これは申しわけないことだ、それで調べた、適当な措置をした。どういう措置をされたのでしょうかと、こういうことになるわけですね。責任者もわからないで措置のできるはずがないと私は思う。  わからぬとおっしゃるんですから、私、これ以上、いまここで申し上げようとは思いません。思いませんが、なお一つお尋ねしたいと思いますけれども、この四団体には企業から献金を受けていらっしゃいますか。その辺をお調べになったでしょうか。
  23. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、処置をとるというのは、これは別の人格のものですから、この近代化研究会政策懇談会に対して適当な処置をとるように要請はしましたが、これは私自身がやることではないので、別の人格を持っておる団体にそういう要請をしたわけでございまして、いま坂井さんの言われる四つ団体というものは、これ自体企業から献金を受けておるものではないわけです。献金を受けておるものは、政策懇談会近代化研究会でございます。
  24. 坂井弘一

    坂井委員 総理、人ごとのようなことをおっしゃっておる。確かに別人格、それはわかります。しかし、この政治団体はあなたに関係のある政治団体なんですよ。その辺の認識を十分お持ちでありませんと、せっかく総理が、政治資金規正法を前向きに改正するんだというようなことをおっしゃってみても、総理はりっぱなことを言うけれども、いまのようなお考えであれば、これはもうどだい無理な話だということに受け取られてしまうと私は思う。  ですから、私は、少なくともこの質問では、いま問題になっております金権政治、金脈の問題、常に政治に金がまつわりつく、これが日本の政治を毒している、こういう国民の怒りにこたえて、総理自身が、前向きに政治資金規正法を改正するのだ、法人からの献金はよろしくない、収支もこれは明確にしてオープンにする、こういうことが好ましいのだということを常々あなたがおっしゃっている。私も全く同感であります。したがって、前向きにあなたが取り組まれるというお考えを述べられておりますので、うそ偽りのない政治、信なくんば立たず、まことにけっこうであります。ですから、それを信じて、そういうことであれば、あなた御自身の全く身近な、あなたが一番よく御存じのはずの、あなたに関係のある政治団体において、このような実態のあるということはまことに遺憾なことではないでしょうかと、しかしながら、そこにこのようなもし誤りがあるとするならば、これをこのようにして是正して、そうして政治資金規正法のこれからの抜本的な改正を目ざすのだ、こういうあなたの答弁をいただきたいと思うがために、私はあえてこのようなことをくどくどしく申し上げているわけであります。どうかことばを濁さずにお答えいただきたい。私も遠慮なく申し上げたいと言いました私の意図というのは、そこにあるわけでございます。どうかそういう点をさらに総理はよくお考えいただいて、お答えをちょうだいいたしたいと思います。  協同主義研究会、よもや総理は、この研究会のことについてわからないとはおっしゃらないと思います。よくお知りだと思います。協同主義研究会からも政治献金がなされております。御存じでしょうか。
  25. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これはまことに相すまぬですけれども、私はこの答弁責任を回避しておるのではないのです。逃げないですよ。責任を回避しようとは思わない。だけれども、実際の政治家後援団体というものは、別の人格で運営しておって、実際にその詳細は本人自身は知らないんですね、これはいままでの実態が。この実態が私はいいとは思わぬ。改革しなければならぬが、実際はこういうことになっておるわけでございまして、いかにも私がこの席上で責任を回避しておるというふうに、どうかおとりにならないように。これが真相なんですよ。これはやはり改革を要する点だと思います。  いまお尋ねの協同主義研究会というのは、私は協同党という党を持っておって、そういう点で協同主義の研究というものもやっておって、それはそこから資金の出し入れが、政策懇談会近代化研究会ですか、どちらかに資金の出入りがあることは事実でございます。事実のようでございます。
  26. 坂井弘一

    坂井委員 協同主義研究会というのは、あなたの大番頭である井出官房長官御関係政治団体なんです。そこから三木総理の御関係政治団体政治献金がされておる、こういうことを私は申し上げておるわけです。  そこで総理、お調べになったんでしょうから、せめてこのぐらいはおわかりでしょう。つまり、私が指摘いたしました五億三千万を無届け団体が受け取っておりますが、だれが受け取ったんでしょうか。これは別人格だからそんなことを私は知らぬ、そんなものじゃないと思います。少なくとも、浅井質問以来きょうまでもう四日間、総理もお調べになって驚いた、初めて無届けだったことを知った、そこで措置をしたとおっしゃったわけですから、一体五億三千万というような大金を、事もあろうに総理の私の事務所議員会館部屋です。それから三木事務所、番町会館、そこに入った。だれが受け取ったのか、当然お調べになったと思います。だれが受け取ったんでしょうか、お答えいただきたい。
  27. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いま申したように、浅井さんの質問があって、私、初めて知ったわけで、三年という期間にわたっておりますので、詳細な調査をまだしたわけではない。どうもそういう団体があった様子だということがわかって、まことにうかつなことであったとここで申しておるわけですから、この点はいま、どういうふうに実際にその金を使ったかということは、少し時間をかしていただきたいと思うのです。調べるのには時間をかしていただきたい。
  28. 坂井弘一

    坂井委員 責任者がだれかもわからない。お金を受け取ったのは、それもわからない。五億三千万という大金が少なくとも三木総理の御関係のところに入ったことだけは間違いない。これはあなた自身届け出された後援会がそれを証明しておるわけだ。そんなようなことであれば、五億三千万はどこかへ宙に舞って消えてしまった、あるいは三木総理自身が、私はそんなえげつないことを言いたくはありませんが、お隠しになったのだろう、自分がかってに使われたのだろう、こんなようなことになりますよ。そういうようなことになりますと、税法上の問題も起こります。少なくともこの四団体は寄付金として受け入れた。これが正しく申告し納税されたか、そういう問題が起こってくる。ですから、人ごとみたいなことを総理はおっしゃいますけれども、これはとんでもないことであります。  もう一回確認いたしますけれども、政治団体でありながらも無届けであったということを、明確に総理はお認めになるのですね。
  29. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私自身はその金は一銭も――私自身政治活動に、後援団体ですから使ったことは事実でしょうが、私が個人の所得としてこれを使ったことは絶対にございません。またいろいろ調べまして――急ですから、浅井さんの質問からのことですから、そういうふうな、どうも届け出を怠っておった――その金自身に不正があったわけではありませんよ。不正な金を何も集めたわけじゃないのだけれども、届け出を怠ったということ、どうもそういう要素らしいということがわかりましたので、これは適当な措置をとってもらうように、私の正規の後援団体要請をいたしますと、こういうことでございまして、実際にその金はどういうふうに使われてどうだということは、ついこの間、私も知ったばかりで、そういう点も時間をかしていただいて調べてみることにいたします。ただ、私自身がこれを私自身の個人の生活に使うような金は一銭もございませんでした。
  30. 坂井弘一

    坂井委員 私がいま申し上げておるのは、届け出されていない政治団体、収支が全然わからない。とりわけ支出が全く不明である。通常政治団体として届け出たならば、その収支については、少なくとも現行政治資金規正法のワクの中で、われわれは収支を報告いたしております、透明度が悪いとかなんとかいわれながらも。それすらも問題がある。だから改正しなければならぬ、こうなっているわけです。皆さんも全部後援会届け出ているわけです。少なくとも収支については明確に届け出をいたしております。あなたに御関係のある四団体は、五億三千万どこへ使ったかさっぱりわからぬ。こんなばかな話がありますか。それでもって適当な措置をするように申しつける、責任者もわからない、金を受け取った人もわからない、どこへどのように使われたかもわからない、時間をかしてくれぬとわからぬ、そんなのん気なことを言える問題でしょうか。  八条違反ということは、総理、明確なんですよ。単に届け出することを忘れておりましたという問題と違うわけです。なぜか。八条においては、届け出しないで金を受け取ったりあるいは支出をした場合には、罰則二十三条、明確にこの二十三条が適用される、そう規定しているわけです。  法務大臣にお伺いしますが、この場合、罰則二十三条は適用されますか。
  31. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 ただいまのはきわめて具体的な問題でありますので、法務大臣として、罰則に触れるかどうかをこの場で判断すべきではない、こう存じます。
  32. 坂井弘一

    坂井委員 法務大臣、あなたは政治資金規正法をお読みになったのですか。何をおっしゃるのですか。具体的であるのでお答えできないとは、一体どういうことですか。法務大臣、第八条を一回お読みください。
  33. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 問題は具体的事案に関しますので、国会議員といえども、その発言の内容を、直ちにここで法務大臣が判断をして、二十三条の罰則を適用すべきであるかどうかの判断を下すものではない、それは検察当局の調査の結果判断すべき問題である、こう申し上げているわけです。
  34. 坂井弘一

    坂井委員 警察当局の判断の結果と法務大臣おっしゃいますけれども、それならば、あなた御自身がいま私が申し上げることを具体的にお聞きになって、これはもしかりにあなたの言をかりるならば、警察当局の判断にゆだねるべきであるというようなことに――法務大臣が、あなた自身がそのように御決定されれば、警察当局の判断にゆだねてしまうということにならざるを得ませんよ。これはたいへんなことです。私は、政治資金規正法に基づいて、きわめて忠実にこの法の解釈に照らして、この具体的な事実がこの法の適用を受けますかどうですかということを聞いている。どうなんですか。自治大臣は冒頭の私の質問に答えて、もしそのようなことがあるならば罰則二十三条が適用されるということを明確にお答えになっていらっしゃる。だから法務大臣に聞いた。いかがですか。再度答弁をお願いします。
  35. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 先ほど答弁したとおりでございます。
  36. 坂井弘一

    坂井委員 それでは、これだけ具体的に申し上げたわけでありますが、なお主宰者会計責任者、金を受け取った人、これは明らかでないわけでありますから、調査されますか。
  37. 稻葉修

    ○稻葉国務大臣 捜査当局に対しあなた方の要求があって、初めて捜査当局は動くものと存じます。
  38. 坂井弘一

    坂井委員 要求があってやる問題ではないです。政治資金規正法に厳然としておるわけなんです。無届けで金の出し入れをした場合には罰則二十三条を適用すると、はっきりしておるわけなんです。あなた、いまのようなことをおっしゃって、言を左右にしながらのらりくらりされますから、それなら調査されますかと私は聞いたわけです。されるならされるとおっしゃってください。その上でなければ結論は出せないということであれば、そのようにお答えいただきたい。具体的な事実、この事例については、いま直ちに答えられないというのだから。だがしかし、このようにはっきりしておる。事実ははっきりしておりながら、責任者もわからない、金を受け受った人もわからない、支出された先は全く不明であるというのだから、はたしてこの違反であるかどうかということについて確認しようと思えば、調査するしか方法がないじゃありませんか、あなたの論法をもってすれば。だから調査されますかと、こう聞いているわけであります。
  39. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいまの問題につきましては、政治資金関係のあることでございますので、自治省としても、やはり一応調査をしなければならないことであると存じます。そこで、具体的な、どういう経緯でどうなっておるかというようなことは、ひとつ時間をかしていただいて調査をさしていただきたい、かように考える次第でございます。私のほうで、やはりこの法律の問題に関連をいたしますから、調査をさしていただきたい、かように考えます。
  40. 坂井弘一

    坂井委員 非常に簡単なんです。いま電話でお問い合わせください。責任者はだれか、会計責任者はだれか、それだけでもけっこうです。すぐにわかる話じゃありませんか。時間をとる問題ではありません。責任者名だけは明確にしてください。
  41. 山田太郎

    ○山田(太)委員 関連。  ただいまの総理並びに坂井委員のやり取りを聞いておりまして、無届けの四政治団体、それの責任者も言えないという現状であります。また同時に、その支出等についても、これは全国民の前で明確にするのが、クリーンを売りものにする三木内閣の当然の責務であり、三木総理の責務であると思います。したがって、いまの質問は、電話で聞いてもすぐわかる問題等も含まれておりますので、休憩をいたしまして、そうしてその扱い等、理事会の問題もあるし、同時に電話で聞いて、直ちにその答弁をしてもらいたいと思いますが、委員長どうでしょうか。
  42. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 責任者は明白にいたしたわけですが、責任者は、最初申したように、政策懇談会佐々木敏行、それから近代化研究会平川篤雄、これが責任者であるということは明白にいたしておるわけでございます。したがって、この点は……   〔「それはわかっておる」「四団体だよ」と呼び、その他発言する者多し〕
  43. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ただいま山田君からの御発言もあるし、また坂井君からの御発言、質問等もございます。しかし、答弁質問との間で多少時間が要ると思いますので、日を切って、いつまでにこれを、答弁をはっきりいたしますということで、いかがでしょう。
  44. 坂井弘一

    坂井委員 そういうことになりますと、私は次の質問が続けられない。次の質問も、いまの答弁をいただいて、そして政治資金規正法の改正案の中身について、私は具体的な問題を提起しながら、三木内閣の、三木総理の見解を求めていきたいということでの質問でございます。したがって、これだけ具体的に提示をするということは、そうした意味を持っておるわけであります。よろしくお取り計らいをいただきたいと思います。
  45. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、ごまかそうとは思っていないわけであります。ただ、三年間にわたってのことでございますので、そういうことには多少の時間をかしてくれ、こう言っておるわけです。これは前から知っておったわけではないのですよ。この間の浅井さんの質問で、私自身も知らなかったわけでございますから、そういうことですから、多少の時間をかしてください、よく調べてみますと、こう言っておるので、これをごまかすために言っておるのではないのですよ。それまで実際に知らなかったことは事実ですから、それをよく調べますから時間をかしてください。これは電話ですぐに聞けるような問題ではない、三年間にわたってのことですから。そういうことで御了解を願って、そうして政治資金のことに関しては、私の考え方を申し述べていいわけでございますから、これには多少の時間をかしていただきたいと申しておるので、私はあまり無理なことを申しておるとは思わない。   〔発言する者あり〕
  46. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 どうだ、きょうの夕方の最後の質問までに調べて報告するということではどうか。(発言する者あり)坂井君の質問の終わるまでに出すということでどうか。どうですか。
  47. 坂井弘一

    坂井委員 私も決して無理な要求を申し上げているわけではございません。会があるのですから、責任者は当然おありのはずです。会計責任者もいらっしゃるであろう。しかるに、その支出が不明なものですから、会計責任者をここではっきりしてもらえれば、そのことについてもまた、問題の具体的解明の中から規正法の改正の問題に入れる、こう思いましたのでお尋ねしたわけであります。電話一本で事済むことじゃなかろうかと思いましたので、決して無理に総理をいじめるようなつもりで申し上げたのではない。あなたも無理なことをと、こうおっしゃいますけれども、私も無理な要求はしたつもりはございませんので、そのことはひとつよくお心得置きいただきたいと思います。  それが出れば、この際に総理に確約をお願いいたしたい。つまり、この支出について、どこにどのように支出されたか、この明細を資料として本委員会に提出をしていただきたい。いかがでございますか。
  48. 山田太郎

    ○山田(太)委員 議事進行。  ただいまの坂井委員の資料要求等も含めて、すぐ直ちに間に合うものでないというお話でございます。また私どもといたしましても、ただ三木総理を責めさえすればいいなどという、そういう狭い気持ちでやっているわけじゃありません。あくまでも全国民の清潔な政治を求める声にこたえんがためにやっていることでございます。その点をまず委員長了承していただいて、この予算委員会の終わるまでに出していただけるよう、その措置を講じていただいて、質問を続けてまいりたいと思いますので、その配慮をお願いしたいと思います。
  49. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ただいま坂井弘一君並びに山田太郎君からの御発言、まことにごもっともだと思います。したがいまして、本日の最終の時間までに御要望の件をお知らせすることにいたしますが、よろしゅうございますか。
  50. 山田太郎

    ○山田(太)委員 けっこうです。
  51. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 よろしいですな。――間違いないようでございますから、さよう御承知を願います。
  52. 坂井弘一

    坂井委員 収支明細をお出しになるのでしょうね。
  53. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 代表者の名前を申し上げますが、同時に、明細はきょうの最後までには出ないようですから、なるべく早い機会に提出するということでよろしゅうございますか。
  54. 坂井弘一

    坂井委員 臨時国会中に。本国会中に。
  55. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 いいですか。――けっこうでございますそうです。  続いてどうぞ御質疑願います。坂井弘一君。
  56. 坂井弘一

    坂井委員 では質問を続けます。  なお、念のために総理に申し上げておきたい。  政策懇談会近代化研究会、この二団体から、あなたの、つまり三木派の国会議員の方々に、その政治団体に対しまして賛助費、つまり寄付金名目でかなりの資金が支出をされております。ところがそれを見ますと、寄付金を受け入れた政治団体の収入の中に、その収入が記載されていないものが十七件あるようであります。これは報告書の中です。あなたのほうの団体からは出た、受け取った団体には収入として記載されていない、そういうものが十七件。金額の食い違うものもあるようであります。三木さんは非常にクリーンですから、たいへんそういう点についても神経を使われて、きちんとされていらっしゃるんだろう。またあなたはそう信じていらっしゃるだろう。しかし、そういう三木総理自身に御関係のある政治団体にしても、そのような収支間の不明確というようなものが現実にあるようでございますから、この際、一回総点検されたらばいかがであろうか、これは私から御忠告申し上げておきたい。  さらに、総理が多くの大企業から政治献金を受けていらっしゃいます。自動車、私鉄、海運、造船、建設、電力、ガス、石油。たとえば総合商社を見ますと、日商岩井、丸紅、伊藤忠、口綿実業、三井物産、トーメン、三菱商事のこの七社、軒並みです。一覧表にしました。ここに資料があります。総理、こんなにたくさん。これは商社だけです。これはいただいている。  日商岩井といいますと、あの昨年、狂乱物価の際にたいへん問題になった。脱税までやった。国民から、物価をつり上げた、大商社がこんな不当な利得を得た、悪徳商法をほしいままにした、われわれ国民の生活を苦しめたと、非常な糾弾を受けました。おりもおり、そういうときに、日商岩井から三木さんの、あなたの政治団体献金がなされておる。あるいはトーメンも同じであります。脱税のさなかに献金をしておる。これは御存じないのだろうと思う。そういう報告がなされておる。  ですから、こういうことになってまいりますと、これは総理が常日ごろ、道義的にもあるいは政治的にもきわめて清潔でなければならぬということを盛んにおっしゃいますけれども、少なくともそういうことになってまいりますと、総理自身政治的、道義的には重大なやっぱり責任をお感じになるであろうと私は思います。いかがでございますか。
  57. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 坂井議員から非常に御詳細な、私自身の知らないことをここでいろいろ承って、それはしかし総理国民の審判の前に立っておるわけですから、そういう御熱心な態度に敬意を表します。当然に私は国民の審判の前に立っておるわけです。ただ、しかし、いまの後援団体というものは、私自身が金の出し入れをしておるのではないわけですから、したがって、どういうところからいつ幾ら受け取ったかということは、実際にこれは承知をしないわけであります。  これは、こう言ったら、私がごまかしとるように思うかしれませんが、実際にいまの仕組みはそうなっておるのですよ。私自身がいま言われてみて、そういうふうなことであったかということを、あなたが私よりもずっと詳細に知っておるわけでありますが、実際にこれはどういうことかといえば、そういう政治献金そのことで、私が政治上に持っておるいろいろな地位を利用するというようなことは一回もない、われわれは顧みて。だから、一体どこからどういうふうに入っておるかということは、あなたからいま御指摘があって知るぐらいで、これはルーズではないか、おまえの後援団体に対して、おまえ自身がそういうことを一々知らぬのは不都合じゃないかと言われますが、事実はそうなんです。どこからどういうふうにいつ入っておるかということを知らないで、それをこう集めて、後援団体が私の政治活動を助けておるというのが、これは真相なんですよ。ごまかしていないのですよ、坂井さん。  そういうことですから、いま言われてみて、そういうところから政治資金が入っておることは不都合ではないか、こう言われてみて初めて、やっぱりそういうことがあったのかと、こう思うことでありまして、ただ言えることは、このことによって、私が献金を受けたからといって、これを政治的に、その献金というものに対して何らかの便宜をはかるということは断じてない。一度もない。その指摘がもしあるならば、私はどんな責任でも負うことを明らかにします。明らかにする。これはたいへんなことであります。  そういうことで、一々どこからどう入ったということを実際にあなたから指摘されるまで、私は知らなかった。これはいまの政治資金規正法の中がそういう点がルーズだと言われればしかたがないですが、後援団体がいろいろそういう活動をするのであって、実際に私が承知しなかった。このことだけは、私がこれほど言っておるのは、実際に正直に言っておるのですよ。ごまかそうとはしない。しかし、言っておる事実はそうなんだということをあなたにも理解してもらいたい、こういうことです。
  58. 坂井弘一

    坂井委員 総理、私は、あなたがごまかしているというようなことは、つゆほども思ってはおりません。そんなつもりでは言ってはおりません。  中央公論の九月号に、総理、あなたが「企業から多額の献金を受けた候補者は企業の代弁者となり易い」、こうおっしゃっておる。全く私もそうだと思う。それから、この際政治献金は禁止してしまったらどうか、短い準備期間を置いてその体制をつくることが必要だと思うのです、とあなたはおっしゃっている。全く同感なんだ。いま確かに、このような大企業から、とりわけ悪徳商法をほしいままにして物価をつり上げた、脱税までやった、そのような大商社、大企業から政治献金を受けること自体は、これは政治家として厳に慎みましょう、そのような企業献金はよろしくない、日本の政治を毒するその最たるものである、こういう認識にあなたはお立ちになっているであろうと思うから、なお御念のために、総理自身もこのようなことがおありですから御注意されたらいかがでしょうか、こう私は聞いておるわけであります。一番関心のある問題、あなたが一番清潔であらねばならぬと言われたこの献金の問題、うそ偽りのない政治国民に信頼を回復するためには、みずからがきれいでなければならぬ、この企業献金、ここに問題があるんだ、こう言われるあなたの認識は全く同感でありますから、わざわざ私はそのようにあえて、あなたに知らないところがあろうから、こういうことでございますよということを申し上げた。だから私は、総理答弁としては、こういうことがあるということはきわめて遺憾だ、いや実は私は知らなかったけれども、このような企業献金はもう受け取るべきではない、いさぎよく、政治資金規正法を改正する前に、総理自身が、私は企業からの献金はもう受けません、こう明言されたらどうでしょうか。美辞麗句を百並べるよりも、一つの勇気ある総理の実行です。それを国民は望んでいる。それによってこそはじめて政治の信頼は回復できる。私はこう信ずるから、あなたに申し上げているわけであります。総理の勇気ある決断を、企業からは献金を受けないと明言してください。この場で国民に確約をしていただきたい。
  59. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いろいろときょうは坂井議員から質問を受けて、どうも金の問題というものに私はもっと関心を持たなければいかぬ。私自身は実際に関心は、金よりもやはりいろいろな政策の問題について非常に関心を持った政治家ですから、金のことは実際に後援団体にまかしてあるのですよ。こういう点ですが、そういうふうに御指摘を受けてみると、どうも自分の後援団体で別の人格といっても、何か国民から見れば、私の直接のさいふみたいな印象を国民が受けるということは非常に残念だ。私のさいふではないので、別の団体であって、あまりこのことに対して私自身が関心を持たなかったということはうかつなことだと思います。  また、企業の問題については、企業からの献金がすべて悪だとは私は思わない。けれども、国民の疑惑を受けるということについては、これは注意をしなければなりません。私の献金というのは、御承知のようにそんなに飛び抜けて大きい献金ではないのですよ。やはり普通の程度の献金だと思いますよ。しかし、このことについてはやはり私は考えなければならぬので、だれの質問であったか本会議質問に対して、明春を期して、私は政治資金のあり方についても抜本的な改正をする決意である、私自身のことを、そういう決意を表明いたしたことがございます。そういうことで、これは真剣に私がいま考えておる点でございます。この点は、そのときの言ばかりでなしに、政治資金のあり方について、少なくとも私自身は、根本的に考えてみたいという決意であることだけは申し上げたいと思います。
  60. 坂井弘一

    坂井委員 総理、あまり私は時間をとりたくないと思います。思いますが、いまあなたのそのような答弁を聞いて、国民はたいへん失望すると思います。偽りのない政治をやるのだ、公約です。金の問題、これは大事なことなんだ。金権政治というものは打破しなければいかぬ。だからこそ私はあなたに期待したのです。だからそこまで申し上げたわけであります。あなた御自身のことを、これほどまでに何だかんだと三木総理だけに、あなただけにこれを言っておるというようなことを、印象としてお受けになるかもしれませんけれども、決してそうじゃありません。あなたは公人中の公人であります。一国の最高権力者であります。最も国民の信をつなぎとめなければならぬ方が三木総理であります。ほかの政治家、ほかの後援団体に比べて、なおかつ、あなた御自身はお知りじゃなかろうけれども、このような無届け団体があって、五億三千万の金が全然行くえがわからない。このようなことは許されないことでしょう。あるいはまた収支の食い違いがある。このようなことはもっと厳正にされなければいかぬことでしょう。あるいはまた、いま申し上げましたような、そうした金の問題、人の問題、そういうことについて厳正な立場をあなたがおとりになったときに、初めて政治資金規正法の改正も前を向くと私は思う。いまの答弁は全くの後退であります。金を受けることはしかたがないのだ、企業から金を受けて何が悪いのだ、それは人さまがやっておることであって、私は直接関係がないのだ、何たることをおっしゃいますか。政治家関係あるのです、後援会に。だからこそ、われわれみずからが政治資金規正法、これを改正して、国民には信頼をつなぎとめるように、いやしくも金でもって疑惑を受けるようなことのないように姿勢を正しましょうというのが、今国会における政治資金規正法の一つの大きな柱でもあるのじゃありませんか。金権問題を正すというその本質はそこにあるということを、私は冒頭申し上げたわけであります。
  61. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は近く自民党に対して、政治資金規正法に対しての私の見解を明らかにしようと思っておりますが、その中で、やはりいま御指摘のように、政党の資金は党費と個人献金でまかなうことが理想だと私は思っておるわけなんです。ただしかし、今日の現状からすれば、直ちにそれを実行するということには、現実問題として無理がありますので、多少の経過期間を置かなければならぬというのが私の意見であります。政党自身が、今日、政治資金というものはすべて悪だというのではなくして、その政治資金というもののもらい方、使い方というところに問題があると思います。しかし、いろいろと国民の疑惑を生ずるのでありますから、将来はやはり政党は党費と個人献金によってまかなうように持っていくことが理想だということに対して、坂井さん自身の説に私は同意するものであります。しかし、私自身は、いま政党の資金についてはそういうふうに考えますが、私自身に対しては、総理大臣がこんなに国会で長時間を費やしていろいろ御質問を受けるということは、まことに私の不本意なところであります。私自身については、これに対して適当な処置をとりたいという決意であることを申し述べておきたいと思うのです。
  62. 坂井弘一

    坂井委員 次の質問では、いわれるところの裏献金という問題について、問題解明の一端として、この際あえて申し上げておきたいと思います。  裏献金というのは五倍から十倍ある、世上こういわれております。うわさされております。具体的事実を提起します。大商社が政治献金をしなければならぬその必要に迫られて、そのために脱税をした、政治献金をした、裏献金をした、こういう事例であります。国税庁御出席だろうと思います。おそらくや守秘義務を理由にお答えにならないと思いますので、私のほうから、これまたきわめて親切に、具体的に申し上げておきます。  総合商社トーメンの脱税調査を大阪国税局がされております。四十七年八月から四十八年三月にかけてであります。その際に、トーメン本社の海外経理部からマル秘事務引き継ぎ書、マル秘文書、裏帳簿及び機密費捻出の方法とその資金受け渡しの経路を明記したメモ、これを入手されているはずであります。  なぜ脱税をしたか。調査の結果判明いたしました。二つあります。悪徳商法をほしいままにして暴利を得た、その高利益を隠さんがために、海外法人を利用してそこにプールをした。これが一つ。いま一つの目的は、政治資金など機密費の捻出の必要があった。これは国税庁当局は調査の結果よくおわかりのとおりであります。どういう方法でそういう資金をつくり上げたかといいますと、経理本部長の指示で、必要に応じて、海外経理部独自で捻出をいたしておるようであります。本部長には現金で手渡しておる。これは通称、会社内では本部内、こう称しております。  方法といいますと、米国トーメン社の代理支払いに必要な資金としてまず伝票を切ります。現金は本部長に渡します。伝票だけはアメリカに送るわけです。アメリカからは、このつけかえ伝票に確認サインをします。同時に、外人サインを模写した架空の領収書をつけます。それを一緒に本社に送り返しております。本社ではそれを帳簿処理をする。非常に念が入っておる。財務部の金銭出納帳、これの提出を求めていらっしゃるはずであります。機密費の不正支出金、四十五年から四十七年にかけまして、三年間で七千五百万円支出をした。これは内外地で要する政治資金として使われておる。  私がいま申しましたことを、国税庁長官、お認めになっていただけますか。それとも否定されるでしょうか。具体的に申し上げました。
  63. 安川七郎

    ○安川政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘になりましたトーメンでございますが、かなり詳細な調査はいたしております。ただ、御指摘の具体的なポイントはきわめて細目でございまして、私どもが知り得た調査上の秘密でございますので、そういう事実があったかどうか、あるいは御指摘のような帳簿をとりましたかどうか、これは、私の立場といたしてはお答えできませんので、ごかんべんを願いたいと思います。
  64. 坂井弘一

    坂井委員 押し問答をいたしません。私は問題として、具体的な事実だ、こういう立場を踏まえながら責任を持って申し上げました。総理、お聞きになっていただいたとおりでございますが、そういうような大企業が、政治献金をしなければならぬ、そのために脱税をする、こんなばかなことが行なわれるということ、こういう問題こそ、私は鋭く勇敢にやはり解明していかなければならぬ。国民の疑惑は晴れますか。したがって、その意味において、一つの具体的な事実を問題提起として申し上げたわけであります。真剣にお考えいただきたいと思います。総理は、こういう事実があるとすればどういうふうにお感じになりますか。総理の御所見、どう考えられるか、率直にひとつお答えいただきたい。
  65. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 事実は、これはいま事務当局からも話があったように、真相が明らかにされなければなりませんが、全般として言えることは、そういうことは遺憾なことでございます。
  66. 坂井弘一

    坂井委員 まことに遺憾なことであります。機会を別の場所に移したいと思います。少なくとも総理、先ほど申されておりました政治資金規正法を改正しなければならぬ、しかし望ましい方向というものは個人献金に限る、企業からの献金は受けない、そして収支を明確にする、こういう方向、これは評論家が評論しているのじゃないのです。三者が言っているのじゃないのです。われわれ自身の問題なんです。総理自身の問題でもあるわけです。御自身は、私はき然としてというようなことですから、御決意のほどはあろうと思います。そういうお立場を踏まえて、どうかこの政治資金規正法――ざる法であるといわれております。まさに政治献金奨励法みたいな法律であります。事実上の脱税の合法化に利用されるというような法律、とんでもない法律であります。こんなとんでもない法律の中でも、いまのようなことが具体的に行なわれるということは、これまたきわめて遺憾なことであります。どうか重大な決意を持って、総理は、政治資金規正法改正に一日も早く踏み切られるように、これはここで押し問答をしても答えが出ないようでありますから、私は強く要請をしておきたいと思います。  次の問題として、中小企業の金融の問題に触れたいと思います。  申し上げるまでもなく、いま非常に不況でございます。年末を控えまして、中小業者の倒産が相次ぎ、十月来、月に千件以上を数える。まことにきびしい冬、正月を迎えようとしております。とほうにもくれております。そういう現状を踏まえながら、私は、具体的なこれまた事実をもちましてお伺いしてまいりたいと思いますので、どうか誠意のある御答弁をちょうだいいたしたいと思います。  まず概括的に。政府は来年度におきましても総需要抑制策を堅持する。私自身も、やはり当面する今日の経済情勢から見まして、その認識は同じでございます。しかし、総需要抑制策をとらざるを得なくなったという背景、これは政府・自民党のとり続けてまいりました高度経済成長政策、この政策のすべての行き詰まりとその失敗、そういう結果、総需要抑制策をとらざるを得なくなったのだという認識に私は立っております。  三木総理が、社会的不公正をもたらすインフレ、物価高、これに対しまして、これを克服する決意をしばしばお述べになっていらっしゃいますけれども、現実には総需要抑制策によって、そのひずみがややもすれば非常に弱いところにしわ寄せされがちであります。しかもそのようなことで社会的不公正というものがさらに拡大しつつある、こういう現状認識というものを真剣にやはり踏まえなければ、総需要抑制策によってさらに大きな被害が弱いところにしわ寄せをされていく。年金生活者、あるいは老人であるとか生活保護世帯、あるいは身障者、母子家庭、あるいはまたこの中小企業者、そうした立場の方々に、三木総理はあたたかい思いやりをいたしながら、そしてこれからの経済政策あるいは中小企業対策、あるいはまたそのような弱者に対する政策に、私はあやまちがあってはならぬと思いますので、具体的に中小企業の金融問題についてお尋ねをしてまいりたいと思う。  最初に伺いますが、商工組合中央金庫、これと中小企業金融公庫につきまして、本年度末には最終的に一体幾らのワクになりましたでしょうか、貸し付け規模で。同じく昨年の状況と比べて。これは規模だけでけっこうでございます。数字でけっこうでございます。簡単に御説明をいただきたいと思います。
  67. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 具体的な数字でございますので、中小企業庁長官から答弁をさせます。
  68. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 四十八年度が、中小公庫が、年度当初計画でございますが、六千三百六十六億円でございます。国民金融公庫が八千四百七十七億円、商工中金が二千三百八十八億円でございまして、一兆七千二百三十一億円でございます。それから四十九年度でございますけれども、中小公庫が年度当初が七千四百三十九億円、国民金融公庫が九千九百二十八億円、商工中金が二千八百六十六億でございまして、合計二兆二百三十三億でございましたが、その後七千億の追加をいたしましたので、一応年度間の融資規模としては、四十九年度は二兆七千二百三十三億になっております。
  69. 坂井弘一

    坂井委員 最初に商工中金のほうから、その融資について伺ってまいりたいと思いますが、四十九年九月現在の総貸し出しの残高の内訳といたしまして、組合貸しと、組合貸しの中でまた共同事業分、転貸分、この二つがございますが、それに分けて、同時に構成員貸し、つまり直貸しですが、それぞれ幾らになっておりますか。つまり商工中金の融資につきましては、中小企業等協同組合法に基づきますところの協同組合に貸す分、組合の構成員に貸す分、それから組合に貸しながら組合が組合員に貸すいわゆる転貸ですね、この三つがありますが、いま申しました三つに分けて、それぞれの金額はどうなっておりますか。
  70. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 商工中金のことしの九月末の貸し出し残高は二兆六千二百三十四億円でございますが、組合員貸し、組合貸しといったふうに分けての内訳は、ただいまちょっと手元に持ってまいっておりません。
  71. 坂井弘一

    坂井委員 大事だから、私聞いたわけですがね。総貸し出し残がざっと二兆六千二百億ですね。そのうち組合貸しが一兆五千三百億あるわけです。お調べになってください。あなたのほうが御専門だからよくわかっておるはずなんだ。その組合貸しの一兆五千三百億のうち、共同事業分につきましては二千六百億、転貸が一兆二千七百億。転貸と申しますと、組合が借りて組合員に組合自体が貸す分ですね、これが一兆二千七百億。それから直接商工中金から組合の構成員に貸している分が一兆一千億ございます。そういたしますと、組合直接ではなくて組合の構成員、組合員に商工中金が貸す分が約九〇%、こういうことになっておるわけです。この認識をまず踏まえていただいて、その上で質問いたしますが、その中に大企業が相当含まれておる。商工中金の金を大企業が融資を受けておる。一部上場、二部上場の大企業、こういう大企業に融資した企業数と融資の残高、これはどのくらいございますか。
  72. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 商工中金の貸し出しの実績の中で上場企業に対します貸し出し残高は、ことしの九月末で見まして、一部上場会社向けが二十六社、六十四億円、二部上場向けが百二十四社、三百三十九億円、合計百五十社、四百三億円でございますが、これは全体の商工中金の貸し出しの中では、貸し出し口数が十二万口ございますので〇・一%、金額で申しますと残高の一・五%が上場会社向けとなっております。
  73. 坂井弘一

    坂井委員 十分認識していただきたいのですよ。いま申しましたのは一部、二部ですよ。非上場でも大企業が一ぱいあるわけです、あとでお聞きしますが。一部、二部とっただけでもそれだけあるということ、つまり四百三億ですね。一・五%だとおっしゃるけれども、そういうことにはならぬですね、全大企業から見ますと。この残高で見ますと、総貸し出し件数が十二万六千六十二件ございまして、平均いたしますと一社当たりざっと二千二百万円ですね、大企業を含めて。ところが、この一部、二部上場企業は一社当たり平均二億七千万円借りている。つまり十倍以上。商工中金の金を借り受けた大企業は、中小企業者に対してその十倍の額の融資を受けておる。これまた、ひとつこういう実態をよく踏まえた上でお答えいただきたい。  協同組合の構成員になっているところの大企業にはどれくらい融資をされておりますか。大企業数と融資総額を明らかにしてください。
  74. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 上場会社向けの残高の調べはいたしておりますが、中小企業と大企業というふうに分けました調べはいたしておりません。
  75. 坂井弘一

    坂井委員 つまり調査していないので全然わかりませんというわけですな。商工中金の金は、本来的にはこれは中小企業者向けに……。総理、政府の中小企業三機関の一つとして、中小あるいは零細業者にとりましては、いまたいへん苦しい状態の中で、この政府系の商工中金の融資に大きな期待をいたしております。そういう中で、大企業に商工中金の金がどんどん流れておる、その実態が全然わからぬ、まずこういうことでございます。理由はいろいろあろうと思いますけれども、これは立法の趣旨に反することはもう明らかなんです。  通産大臣にお伺いしますけれども、一部、二部上場の会社がどんどんとこの中小企業系の商工中金の金を食っている、あるいは大企業がどれほどこの商工中金の金を融資を受けたか、その実態もわからない、こういうことでございますが、それはしかたがないんだということでしょうか。それとも、たいへんこれは好ましくない、遺憾なことであるということでございましょうか。まず認識からお伺いしておきたいと思います。
  76. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 御案内のように、中小企業の定義は、資本金と従業員と両方からあるわけでございますが、商工中金の場合は、できるだけ中小企業向けを中心として融資をしておるわけでございます。そこが中小企業金融公庫と商工中金の違うところだと思います。中小企業金融公庫は、御案内のように全部政府資金でございますし、厳密に中小企業を対象として金融をしております。しかし商工中金の場合は、その資金のほぼ八割が商工中金債というふうに民間から集められております。したがいまして、厳密に中小企業でなければならぬ、こういう規則はございませんけれども、しかし、おっしゃるように、あくまで中小企業を中心として運営をしていくというのが当然でございます。  そこで、お尋ねのように、なぜしからば一部大企業あるいはまた中小企業の範疇を越えた中堅企業お金が出ておるか、こういうことについて申し上げますと、私は二つの理由があると思うのです。  一つは、初めは中小企業のワク内にあった企業が、たとえば五年とか、一定の期間で金を借りるわけですが、その期間の間にだんだんと成長いたしまして、そして資本金が三億とか、あるいはまた従業員がふえるとか、そういうふうな例もございます。それからもう一つは、初めから中小企業のワクを越えました中堅企業を入れておきませんと、協同組合活動が思うようにいかない、その中堅企業が入ってこないと実際は運営ができない、こういうことのために、むしろ頼んで初めから中堅企業に入ってもらっておる、こういう例もあろうかと思うのです。しかし、その二つの場合につきましては、やはり公取に一カ月以内に届け出をしまして、公取のほうでその程度はよかろう、こういうことになれば、公取のほうも認められますけれども、しかし、それが不適当である、こういうことになりますと、組合から脱退するように、こういうふうに公取のほうは指導しておるわけでございます。おっしゃるように、あくまで中小企業金融が中心でございますけれども、そういう例外があるということを申し上げておきたいと思います。
  77. 坂井弘一

    坂井委員 公式的な、形式的な、通り一ぺんの御答弁、通産大臣御用意なさったのでしょう。それはそのままちょうだいします。そのとおりなんです。あなたのおっしゃるとおり。ところが、私が申し上げたいのは、現状はそうではなくして、本来的に商工中金の融資を受けることのできない大企業が、いろんな形で入り込んできて、擬装して食いものにしておるという実態が随所にあるということを私は申し上げようとしているわけであります。あなた方のほうでは、つまり前段お聞きしましたけれども、大企業がどのくらい入り込んで、大企業がどのぐらいお金を借りているのか、全然つかんでいらっしゃらない。大企業が協同組合に入ろうと思えば、公正取引委員会届け出すれば入れる。私もとくと承知をいたしております。しかしその際に、どのような形で大企業がこの協同組合の中に入り込んでくるか。そして本来的には、商工中金の金は中小企業向けの国家的な金融機関として、柱は中小商工業者、中小企業者に対する融資機関としてこれが存在するという、その趣旨からはずれて、大企業が食いものにしておるという実態に、ひとつ目をさましていただきたいから申し上げているわけでございますが、こちらから具体的に申し上げましょう。  最初にお断わりしますけれども、いろいろな態様がございます。これは見本的に一つの具体例だということでお聞きください、企業名をあげますから。こんな企業だけというのではありません。いっぱいあります。ありますが、具体的に代表的に言わないとおわかりいただけないと思いますから申し上げますが、組合が大企業の支配下で、その大企業と一体である、そういう組合があります。大企業支配下でその組合自体がその大企業と一体だ、そういうところに商工中金の融資がなされる。たとえば保谷事業協同組合、組合員が九名。一部上場の大企業でありますところの保谷硝子、これが親であと八つは子の関係です。全部子です。親子の関係関係会社、つまり保谷硝子の組合です。八社のうち大企業保谷硝子一〇〇%出資の二社は子会社であります。ほかに一〇〇%出資の会社があって、全部合わせまして三社あります。他の子会社、これは全部株式の取得や役員の送り込みで一体になっている子会社。つまり、この保谷事業協同組合というものは、大企業保谷硝子そのものの組合なんです。ここに融資がされております。これが四十八年九月の決算で見ましても一億二千二百万円、これは返済期限が五十二年の九月、四十八年九月決算ですよ。これはもともと中小企業であった時代にある協同組合に入ったというんじゃない。つくり上げたんじゃありませんか。保谷硝子という大企業が、子会社を全部網羅いたしまして、一つの協同組合をつくって、その大企業である一部上場の保谷硝子にずばり商工中金の金が融資される、こういうことが行なわれている。  これは保谷だけじゃありません。代表的な例として申し上げました。たとえば緑屋だってそうですね。緑屋信用販売協同組合、これは組合員八名。株式会社緑屋とその各部門担当の関係会社でつくられた協同組合八社のうち二社は大企業です。緑屋商事は、緑屋の社長が兼務をいたしております大企業です。この組合の実態は、一部上場の大企業である株式会社緑屋のつまりダミー組合であります。この緑屋に対しまして、商工中金が四十八年度末二億二千二百万円の融資残、こういう実態。  あるいはほとんど大企業で構成されている組合に多額の融資をしているというような例もあります。たとえば佐賀県の産業振興工業協同組合、組合員これが五社でございます。そのうち四社までが全部大企業であります。この組合に対する四十五年末の商工中金からの融資残高が八億三千一百万円。それからだんだん上がります。申しますと、四十六年度末九億四千三百万円、四十七年度末十億六千三百万円、四十八年度末十四億五千三百万円と、年々ふえております。それからこの中の一部上場の大企業でありますところの久光製薬、これはことし四十九年の八月十三日に一億二千三百五十万円の組合員融資の残高がある。これは中小協同組合といいながら、その実態は大企業集団なんです。ここに中小企業者向けの商工中金の融資がこれほど多額に出されておる。融資されておる。こういうことは私は許せない。中小企業者、零細業者はこれはおこりますよ。  いま資金繰りにもたいへん困っております。あなた方は口を開くと、年末の手当てをした、七千億、だからこれで十分だ、まだ余っておる、来年の三月ぐらいまでどうやらもちそうだなんというような、のんきなことをおっしゃっている。むしろ問題は何か。総理がこの間おっしゃっておりました、仕事がない、それもそうでしょう。これもたいへん深刻であります。しかし、何とか転業したい、もうこの業種、仕事はだめだというのがある。何とかして経営を維持していかなければならぬ、従業員をかかえておる、しかし、いまの仕事ができないからほかの仕事にかわりたい、そのための転業資金も必要だ、そういう方々も一ぱいある。そんなワク組みの商工中金の金なのに、いまのような大企業がこんな形でどんどんどんどん入り込んできて、擬装してダミーである、一体の関係である、形だけ協同組合をつくり上げて商工中金の金が融資される。  私は、いま二つ、三つばかり、その全く一例、ほんの一例として申し上げたわけでありますが、総理、通産大臣、具体的に私申し上げましたけれども、お聞きになっていただいていかがでございますか。こういう実態に対しまして、率直にひとつ御所見を伺っておきたいと思います。
  78. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 確かに御指摘のような点はございます。ダミーと申しますのは、五〇%以上が親会社に持たれておる、これを普通ダミーといっておるわけでございますが、その中には、初めから計画的に親会社の完全なダミーである、こういう場合と、実質は独自の経営者が存在しておったのだけれども、経営がうまくいかないために、結局、親会社、取引先に五〇%以上の株を持ってもらった、しかし依然としてこの経営者は親会社と別個に存在をしておる、こういう二つの例があろうかと思うのです。でありますが、このいずれの場合におきましても、おっしゃるような融資が若干ございます。詳細につきましては、中小企業庁の長官から御答弁を申し上げますが、極力そういう融資は避けていくように、こういうふうに指導をしておるところでございます。
  79. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 いま二、三例を御指摘いただきましたが、たとえば保谷硝子の例で申し上げますと、昭和二十五年からの取引でございまして、取引当時におきましては中小企業であったわけでございます。それが、取引が続いております間にだんだん規模が拡大いたしまして、その後上場するに至った。こういう事情でございましたので、上場後は、融資の残をふやさないで、むしろだんだんと減らしていく、こういうふうな運用をいたしております。佐賀県の佐賀県産業振興の場合も似たような事情でございまして、三十年からの取引でございまして、むしろ地元の中小企業の育成という見地から、商工中金が融資を行なったものでございますが、その後、やはりだんだん発展をいたしまして、中小企業の定義からはみ出ると申しますか、より大きくなってきた、こういう事情がございます。  私どもといたしましては、御指摘のように、上場企業等に大きく成長しました場合に、こういうものに依然として融資を拡大していくということは好ましくないと考えまして、既往の取引先が上場等に至りました場合には、以後は原則として漸減させるという指導をいたしております。また新規に取引をします場合には、少なくとも上場会社については新規の取引はしないように、こういう指導をいたしておりまして、原則として中小企業にこの資金が回るように指導いたしておるところでございます。
  80. 坂井弘一

    坂井委員 協同組合法と金庫法の間に、私はその接点にずいぶん問題があろうと思うのですね。これはあとでお伺いいたしますけれども、いずれにしても、具体的ないまの金融の現状というものをよく見てみる中で、いまあなたがそのような御答弁でございますけれども、必ずしもそうではないわけであります。この間の具体的な問題に入っていきますと時間をとるようでございますけれども、たとえば久光あたりは、いま貸すという理由なんか何もありませんよ。何のために貸したかといいますと、あなた方のほうでたまたまお考えになっていらっしゃるが、つまり下請業者等に対する支払いに困るから出さざるを得なかった、その理由はわかる。それならば、こんなところに貸さないで、そのような中小業者に直接貸したらどうですか。そういう方向を明確に出したほうが、また出さなければ、せっかく中小企業、零細企業、そうした業者がわれわれのためにといってつくった協同組合の中に、大企業がいまのような形でどんどん入り込んでおる。また、それに対する融資そのものに何らの規制もないというような考え方でおりますと、食いものにされてしまうということですから、やはり厳正に扱っていただきたいと思うわけですね。  もう一つぐらい例をあげますが、大企業一社で組合を構成しておる、そこに多額の融資をしている。こんな組合はあるはずがないですけれども、あるのです。富山県車体銭金工業協同組合、この組合の組合員構成はどうなっておりますか、おわかりでしょうか。
  81. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 ただいま手元に資料がございません。
  82. 坂井弘一

    坂井委員 私のほうで聞きました。調査しました。組合員は五社だそうであります。この組合の理事長は、呉羽自動車工業の社長が理事長であります。この組合の理事長が社長でありますところの呉羽自動車工業、これは大企業ですね。これは三菱系の大企業であります。資本関係、株の関係、それから人的関係、これは三菱のまあ子会社ですね。ここに商工中金から融資がされております。組合員五人だということでございますが、五人の組合員で構成される協同組合、この場合、各組合員の出資比率というものは何%になりますか。制限がたしかあると思いますが。
  83. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 一社当たりの出資の限度は二五%までとなっております。
  84. 坂井弘一

    坂井委員 この会社の四十九期有価証券報告書、これによりますと、組合の出資金総額が七百万に対しまして、その一〇〇%の七百万を同社が出資しております。これは明らかに報告されております。有価証券報告書であります。これは協同組合法違反じゃありませんか。商工組合中央金庫法違反じゃありませんか。たいへん明確だと思いますけれども、いかがですか。
  85. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 もし御指摘のように、一社で組合の出資が全部出されておるといたしますれば、協同組合法違反であろうと思います。
  86. 坂井弘一

    坂井委員 お調べください。これは提出されました有価証券報告書に基づいて、私は申し上げておるわけです。これははっきりある。あなた方はこんなものを提出させながら、なぜごらんにならないのですか。これはずいぶんおおらかな、ばかにした話じゃないかと思いますよ。ここにちゃんとある。この工業協同組合の出資金総額は七百万円で、当社が全額出資しており、当社取締役社長が同組合理事長を兼務している。それで表をつけまして、ちゃんと七百万円全額出資をした、こんなことがまかり通るのですか。これは組合じゃないわけですよ。そんなばかな組合が……。
  87. 齋藤太一

    ○齋藤(太)政府委員 協同組合は現在全国に四万ございまして、その監督は府県にゆだねておりまして、県が認可をいたしたわけでございますので、富山県を通じまして、実情を至急調査いたしたいと存じます。
  88. 坂井弘一

    坂井委員 お調べください。こういうような実態がたくさんある。非常に大企業は悪質巧妙です。協同組合を隠れみのにしておる。そして中小企業を食いものにしておる。こういうことが許されるはずはないと思う。会計検査院、検査をされていらっしゃるかどうかわかりませんが、いかがですか、このことについて見解を求めたいと思います。
  89. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 会計検査院は来ておらぬようでございますが、至急に取り調べをいたしまして、措置をとります。
  90. 坂井弘一

    坂井委員 河本大臣に申し上げますが、あなた、ひとつ厳格にやってくださいよ。そうでありませんと、とかくこのような実態がありますと、通産大臣もどうもおかしいのじゃないかというようなことを勘ぐられますと、あなた自身も立場上ぐあいが悪いかと思いますし、厳正にやってもらいたいと思いますね。  それで、私、提案しておきますけれども、やはり問題はあるようです。つまり中小企業等協同組合法、ここでは大企業が入れるわけですね。今度、一方では、商工組合中央金庫法、明らかにこの目的は中小業者に対する融資が柱です。しかし、入ってきたものに貸さぬわけにはいかぬというようなところに、一つの盲点があるようであります。つまりこの接点の問題だと思いますけれども……。この法律をもう一回洗い直して検討されたらいかがですか、大臣。いかがでしょう。
  91. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先ほどの御指摘のような点は十分調べまして、あくまで厳格に運用いたしますが、ただ、先ほど御答弁申し上げましたように、一部中堅企業または大企業に近いものが入っております経過につきましては、二つ、三つその理由がございます。特に経済変動の激しいときでございますから、中堅企業または大企業をこれから一切排除するということでありますと、かえって運営がうまくいかない、こういう面もございますから、したがいまして、私どもは現行法を適切に運用することによりまして、御趣旨のような点は十分目的を達成できる、かように考えております。
  92. 坂井弘一

    坂井委員 総理、お聞きになっていただいたとおりですけれども、中小業者等ほんとうにたいへんな状態であることをよく御認識だと思います。そういう中で、少なくとも商工中金、こういう金が大企業に食われるということは、私は決して好ましいことではないと思う。大企業はそれだけの資本力もありますし、資金力、信用力、そのほうは基盤が非常に安定しておる。中小企業の健全育成のためにという本来的な趣旨で、この金庫法に基づいて商工中金の金が出されておる。しかしその運営において、いまのようなことで大企業がどんどんと中小企業者向けの金融を食っておる。これは決して好ましくないと思う。  ですから、これからはせめて、いまのような実態を踏まえながら、もし組合の構成員である大企業でありましても、それに対する融資は、これからひとつ厳正に扱うということ。それから二つ目には、中小企業の融資は最優先して行なうということ。中小企業の融資は最優先するということ。それから、従来中小企業であって、いま組合に残っておる大企業がありますね。これは先ほど通産大臣の御答弁のとおりであります。やむを得ない事情等もあると思います。これはやはり実情に即して慎重に扱う、こういうこと、いま申し上げました三つだけは、私はきわめて常識的な話であろうと思いますので、総理いかがでございますか。その点については、お約束いただけると思いますが。
  93. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、従来中小企業対策には力を入れてきたものでございます。昭和四十一年の通産大臣当時にも、官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律というのを、私は提案したわけであります。中小企業の人たちへの官公需からの発注というものはできるだけ重点を置いて、少なくとも五〇%くらいまでは中小企業に持っていきたいということで、まだいま中央官庁は二八%くらいですか、地方は六〇%をこえたようでありますが……。そういうことでありますから、いま御指摘のような三金融機関は、中小企業への金融に専念する性質の機関でありますから、中小企業から大企業に大きく発展していったものに対する融資がまだ残っておるようでありますが、今後は極力、中小企業の金融に専念するという本来の目的に沿うように指導をいたします。  また、相互銀行などに対しても、二割程度はやはり中小企業以外に対しても融資ができることになっておりますが、中小企業の現状にかんがみ、そういう中小企業の金融を主たる目的とする銀行は、極力中小企業に融資のできるように、大企業の融資を抑制するような指導をいたす覚悟でございます。
  94. 坂井弘一

    坂井委員 最後に、独禁法の改正問題について、かなり時間が迫っておりますので、はしょってお尋ねをしておきたいと思います。  総理が前向きに取り組むということを再三おっしゃっておるわけであります。これは社会的、経済的な不公正を生み出す独禁法違反というものをきびしく取り締まっていかなければならぬけれども、これが現行独禁法においてはどうも十分ではない。あるいは社会的、経済的不公正を生み出す大企業のルール違反、この企業行動及び独占、寡占の状態に現行独禁法がこれまた無力である、こういう認識に立たれているからであろうと私は思うわけであります。しかし、改正をやると言いながら、中身についてはなかなか総理はおっしゃらない。これからの検討だというようなことですね。  独占禁止法違反というものが現在の最も大きな社会的な犯罪である、カルテルは現在の経済犯罪の典型である、こういう強い認識というものを総理はお持ちにならなければ、独占禁止法違反の横行を許して、カルテル行為等によってどんどん物価をつり上げる、そのしわ寄せば物価高ということで、国民に多大の犠牲をしいるということになるわけでありますから、物価問題を論ずる場合に、確かにいま国民は、何よりも物価を下げてくれ、安定せよ、それが一番大きな願いでございますし、また、物価に対する無策というものが、政治に対するやはり大きな不信になっておるわけでございますので、その経済憲法の柱である独占禁止法の改正ということについては、やはり国民の立場に立って、重大な決意で――物価作戦は、これは一大作戦としてやるのだ、こうおっしゃっておる三木内閣でございますから、独占禁止法の改正は必ずおやりになるんでしょうね。つまり公取試案に基づいて、これを尊重しておやりになるんでしょうか。
  95. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、日本の実情には自由経済体制が一番好ましい、これを維持していきたいという考え方でございます。そのためには、自由経済体制といっても、弱肉強食の自由経済体制というものは社会的公正を害することは明らかでありますので、一定のルールというものがなければいかぬ。そのルールというものに対して、独占禁止法という法律は重要な要素をなすものである。したがって、初閣議の最初に私が指示いたしましたことは、独占禁止法の改正をやろうではないかということを提案したわけでございますから、私の決意は変わらないわけでございます。  しかし、この独占禁止法の改正は、広く国民の理解と支持を得ることが必要であります、これを実施するためには。そういう点で、内閣の中に独禁法の改正に関する懇談会を設けて、各方面の意見をオープンにいろいろと討議をして、一番好ましいような成案をできるだけ得たいというので、公取のいろいろな試案もよく承知しておりますが、そういうことも踏まえて、国民の納得のいくような法案をつくって、必ず通常国会には提案をしたい。しかし内容については、いま懇談会も発足するばかりでありますので、私自身がこういう内容だということを申し上げることは適当でない。しかし、消費者であるとか、中小企業であるとか、下請であるとか、こういう弱い立場にあるものが、自由経済体制の中で守られなければならぬ、これが独禁法改正の私の根底にある考え方でございます。
  96. 坂井弘一

    坂井委員 中身について、実は時間がございません、別の機会に譲りたいと思いますが、大企業が政府系の多額の融資を受けながら、この独占禁止法違反を繰り返し行なう、物価をつり上げる。そして物価をつり上げながら、どんどんどんどん政治献金をする。特に国民協会に対する政治献金というものはずっとあるようでございますね。もともと国民の血税、その税金を融資する。融資を受けた企業が悪いことをする、そしてもうける。悪いことをするかわりに、物価高というものが残って、それが国民にしわ寄せされる。これでは国民は踏んだりけったりなんですよ。こういう悪循環は断ち切らなければいかぬ。したがって、こういう中身については、別の機会に内容等についてひとつ十分質疑をして、改正の実あるところを求めていきたい、こう思っております。  時間がございません。核問題につきまして、いわゆる非核三原則、これを最高の国是としておりますわが国に、核が持ち込まれたのではないかという非常に大きな疑惑がございます。こうしたときには、もう一回、この核持ち込みということに対して禁止をすることを明確にうたうところの、新たな日米の取りきめということが必要であるのではないか、というような実は提案をいたしたいわけでございますが、具体的な問題点につきまして、渡部一郎委員質問をかわりたいと思います。
  97. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 渡部一郎君より関連の質疑の申し出があります。坂井君の持ち時間の範囲でこれを許します。  坂井君に申し上げます。先ほどの時間の消費がありましたので、最後の時間十分間あなたの質疑を許します。  渡部一郎君。
  98. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは、沖繩における核兵器の存在の調査及び日本本土内における米軍基地における核兵器の調査等を、わが党として精力的にやってまいりましたが、きょうはその一部を申し上げ、総理、外務大臣及び関係閣僚にお伺いをしたいと存じます。  時間がありませんので、恐縮でありますが、ことばで言っている間がありませんから、写真を見ていただこうと思って持ってまいりました。  一つは、私どもの調査の範囲内で、米軍が従来言明を避けていた沖繩における核兵器の存在を証言をしております。これは第四〇〇MMS、すなわち弾薬整備隊司令官ホーレンバウフ中佐の手によって行なわれました。当人の言明によれば、嘉手納基地のエリア4と称せられる二重バリケード内の十五むねの倉庫がそれにあてられており、その中の六カ所について、私は現認をしてまいりました。  ただいまお渡しした資料の中にございますように、タイプが三つばかりございますが、そこに核兵器が存在していたことが、向こうから説明されたわけであります。こうした形で説明されたのは最初であります。またエリア6と称する、嘉手納地区の南東の方角でありますが、この地域にやはり核兵器があったことが証言されております。これがこの図面でありまして、こちらにくくられたところがいまの写真の地域でありまして、これが南側の地域であります。それから核兵器は、ばらばらになっている場合とまとまっている場合がありますが、これは組み立て工場です。  こうした倉庫群についての応答の中で、重大なことが一つあります。それは、従来あったという説明に加えて、現在あるのかという質問に対しては、アメリカの軍人たちは答えておりません。しかしこういう言い方をしております。それは、いままで存在していたと同時に、これから持ち込もうとすればいつでも持ち込むことが可能である、こう述べているわけであります。そうしてそのために、核倉庫群というものは、ある意味でそのままの状態で、現在は通常弾薬その他が入れられておる、こういう状況になっております。  私は、日本に対する核の持ち込み、沖繩における核の持ち込み、こうした問題の疑いを晴らすためには、少なくとも二つの要件が必要であろうかと思います。一つは、核倉庫に使い得る倉庫の存在を許すのだったとするならば、これは常時査察することがわが政府によって行なわれなければならない。そうでなければ、倉庫は撤去するように要求しなければならない。これが一つであります。第二は、沖繩において核があったかなかったか、押し問答がさんざん続いておりましたが、こうした過去に存在した証言が明確になり、そしてその倉庫群の証拠から、私どもは、核は、その他の本土側の地域、たとえば横須賀とか横田とかの地域には明瞭に存在するという確証をほぼ得たということを申し上げておきたいと思うのであります。したがって、わが国政府としても、米国を信頼しておるとか、米軍を信頼しておるとかというような単純な論理ではいかないのではなかろうか、私はそう思うわけでありまして、この辺から、政府の御見解、総理の御見解をまずお伺いしたいと存じます。
  99. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 沖繩返還以前に沖繩に核が存在したかどうかということは、政府としては知り得なかったわけでございます。返還に際しまして、核が存在しない状態が生まれておるということは、これはもう御承知のとおり、当時のロジャーズ国務長官がアメリカ議会で証言をし、また当時の福田外務大臣に、返還の日にそういう書簡をよこしておられます。したがいまして、返還後は、返還協定、佐藤・ニクソン声明によりまして、事前協議が沖繩にも適用されるということでありまして、私ども事前協議を受けたことはございませんので、現在核がない状態になっておるということは明らかであると思っております。
  100. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ところが、問題はこのしるしなんですけれども、これは赤地に「4」という字がついております。これは消防信号でありまして、一番危険なものに第四というしるしがついているのは御承知のとおりであります。核があった場合には「4」というしるしがついておりますが、しかし「4」があったから核があるという意味にはなりません。ところが、この下のところにパーソナル・エクスプルーシブ・リミッツと書いてありまして、このところにクラスが明示されております。私どもさんざん調べてみたのですが、ここにクラス7とついております。このクラス7というのは、核倉庫が存在している場合であります。われわれは消防信号その他を全部調べてみまして、いま簡略に申し上げたわけでありますが、詳しくはまた申し上げますけれども、このようなものが存在しております。つまり常時核倉庫として使用可能なものが、こうして立て看板にも残っておる。これは私が見つけたのは一カ所であります。ですから、アメリカのロジャーズ国務長官がおっしゃったとおっしゃいましたね。ロジャーズさんのお話はけっこうでございますけれども、依然として核が存在しているという疑いを捨て切ることができない。また、エリア6というところは、私は見ることができませんでした。エリア6に対しての調査をする必要がある。  私はその意味で、いまのような御答弁では話にならぬ。だから、やるとするならば、もう一回当委員会として調査をするか、政府として明らかに、それについて内部立ち入り調査を含めて、防衛庁の職員でも何でもいいのですから、するなり、おやりになるのがほんとうだと思いますが、いかがでございますか。
  101. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 返還後から今日まで、沖繩に核兵器が存在していないと政府が考えておりますこと、その理由につきましては先ほど申し上げました。  なお、政府がそれについて調査をするかということにつきましては、そういう意思はございません。
  102. 渡部一郎

    渡部(一)委員 委員長、いまおっしゃいましたように、外務大臣は職務怠慢であります。これだけ言っているのに、何も知らないで、ただアメリカを信じているようであります。私はこの前も申し上げたが、そういうのは信仰の態度であって、政治家の態度ではない。ほんとうにそれでは話にも何にもならない。だから委員長、これは当委員会で、該当地に対して、エリア4、あるいはエリア6、あるいは瀬長島、あるいは横浜、あるいは横須賀、横田、秋月ですか、こうしたところの弾薬庫について調査をされるように要望します。
  103. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 渡部君の御意見ですが、予算委員会でそういうことを視察するというのは、ちょっと的はずれだと思っております。そこで、いろいろの議論もありましょうが、どうぞひとつ他の委員会等で御発言願いたいと思います。
  104. 渡部一郎

    渡部(一)委員 委員長、ちょっとおかしいのじゃないでしょうか。
  105. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 おかしくても、そうです。  山田太郎君。
  106. 山田太郎

    ○山田(太)委員 ただいまの委員長の御発言では、当予算委員会にはなじまないというような御発言でございましたけれども、ちゃんと七千万ドル出しております。そのためには、当委員会でやっても全く当然のことであると思いますので、この点を理事会においてはかっていただきたいと思います。   〔「委員長、おかしい」と呼ぶ者あり〕
  107. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 何がおかしいんですか。私は、さっき申し上げたとおりでございます。当委員会ではちょっと該当しないと思います。――ただいま理事の協議でございまして、理事会で研究するということにいたします。
  108. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理がいないじゃないですか。どこに行ったのですか。ぼくに断わらないよ。そんな失敬な話があるか。私は知りませんよ。
  109. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 いますぐ参ります。
  110. 渡部一郎

    渡部(一)委員 じゃ、その間、委員会を停止しなさい。
  111. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 停止します。その間待ってください。  審議を続行いたします。渡部一郎君。
  112. 渡部一郎

    渡部(一)委員 核の存在につきましては、総理は、佐藤総理時代に、核の存在云々について議論が衝突され、核抜き本土並みの証言を得るために閣外に出られた、そういう信念の人だと私は伺っております。ところが、現在疑わしい証拠は山ほどある。  もう一つ私申し上げておくが、これはあまりよくとれていなくて残念なんでありますが、ここのところに白く見えるのがある。これはヤギなんです。瀬長島にヤギが存在しておる。この瀬長島という弾薬庫は、前から毒ガス存在地域と見られておる。ところが、現在もなおかつヤギが飼われておる。そして私は毒ガスの標示板も手に入れて帰ってきた。こういうような問題がある以上は、これはもう一回ちゃんと調査をし直す必要がある。アメリカの言うことは全部正しいとか、アメリカ政府は信ずるに足るなんということを言っている段階ではないと私は思う。だから私は、政府がちゃんと調査をするか、本委員会でちゃんと調査をするかと、いま申し上げた。本委員会で調査をするということについては障害があるようでありますから、いま政府に明確に求めるわけでありますが、これはちゃんと一回調査なすったらどうですか。そちらでなさらないのだったら、私は一々毎月毎月のぞきに行くしかない。それなら、私を弾薬庫調査係に任命なさいよ、政府のしかるべき職責をもって。これはもう話にならぬ。だからこそ、信じていると、ここで総理が発言されるたびに、アメリカに対する不信は醸成されてくる。もうこの間から、毒ガスあるいは核弾頭があると思われた地域の周辺住民は、だれが最初に核弾頭を手に入れるかと夢中になっているような雰囲気さえ出てきておる。あなたが信じられておるアメリカ政府との友好関係だって、そういう雰囲気の住民の中に弾薬庫があったとしたら、その弾薬庫は存在することは不可能である。住民の信頼を得ない日米関係なんというのは、それはもう成り立ち得ない。私は、その意味でも、ちゃんと調査なすったらいかがですか、こう申し上げているのです。  ところが、外務大臣みたいに、信ぜよさらば救われん調の答弁をする。そんなものではしょうがない。私は正当な職責を果たしているとは思われない。申しわけないのですけれども、総理、その点について御返事をいただきたいと思います。
  113. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま軍人がそういう気持ちであるというお話がございまして、あるいは軍という立場はそうであるかもしれません。しかし、その後におっしゃいましたように、ほんとうに両国民の協力が得られなければ、安全保障というお互いの約束は、こういう大きな体制は、信頼がなければできないんだということのほうが私はより真実であって、したがって、より高度の政治的な立場から、両国間の事前協議というものができておるわけであります。そういう信頼がなければ、またこういう体制は全うできない、私どもはそういうふうに考えております。
  114. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は外務大臣に聞いているのではないのです。いま総理に聞いたのです。委員長、ちゃんとお指図をお願いします。
  115. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 いや、出てきたから……。あと気をつけなさい、外務大臣。言わないうちに出てきちゃだめだ。
  116. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 内閣は一体でございますから、ときに各省大臣が答えることがあることはお許しを願いたいと思います。  渡部さんの言われるように、日米安保条約は両国の信頼の上に成り立っておることは事実でございます。ところが、ラロック証言などのあったときにも、国民が非常な不安を持つことに照らしまして、政府はアメリカ政府に対して、アメリカ政府の見解を求めた。それに対してアメリカ政府は、日本の国民が核に持っておる特殊な感情というものはよく理解をしておる、深く理解しておる、安保条約に約束したことは必ず守る、ということでございますし、また先般フォード大統領が訪日されたときに、そのアメリカ政府の見解をさらに確認されて、そうして日本国民の核に対する特殊な感情をよく理解する、いままでのアメリカの約束は守る、ということを再確認されたわけでございまして、両国の信頼というものが基礎である。とするならば、アメリカ政府、並びに大統領自身が日本に参りまして、そして田中総理にもそういうことをアメリカ政府が誓約をされたということに対して、これに疑いを持って政府自身が再調査をするということは、信頼の上に成り立っておる安保条約というものからして、政府自身としてはそういう意思はない、ということを外務大臣が申したわけでございます。私も同様な見解でございます。
  117. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それは総理、おことばでございますけれども、総理は非常にまずいことをいま言われた。私、ここのところにもう一つ証言を持っておるのです。これは日本語で書いてありますけれども、米軍基地内で仕事をし、基地を建設した人であります。この人は核が存在していると証言しております。日本人です。そしてまたミッドウエーに乗っている米海兵たちがこれを証言しているのは幾つか報道されております。その核があるということは、現場において証言されておる。その上でなおかつ信じろと言っても、それは無理です。権力の高みにある者は民衆の声を聞かなければならない。あなたは、いま、民衆の声を聞いていない。そういうことではほんとうの信頼を得る政治をすることはできない。それはフォードさんが言ったのだから、表面から疑うということは、あなたにしてはやりにくいかもしれません。しかし、その実態を確かめようとすることは、国民の側に立つ政治家ならば、やらなければならないことです。そういう立場でいかなければ、この問題はさらに悪化されることでしょう。私はさらにこうした問題を今度もう少し詰めます。これだけの委員会では、とても無理です。時間がなくなってきましたから。  だけれども、総理、いまの御態度は、それは木で鼻くくったと言われてもしようがないような答弁です。それはあなたのイメージをこわすだけではなく――さっきからさんざんイメージはこわれているが、さらに悪化させる。私は、それではまずい。いまの御答弁はちょっとまずかった。それは外務大臣の答弁ならまだかんべんできる。総理答弁としては、含みがなさ過ぎた。私はそう思うのですが、いかがですか。
  118. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 渡部議員に申し上げますが、アメリカ大統領はアメリカ国民を代表するものであります。そのアメリカ大統領が日本の政府に誓約をされたことを疑う、大統領の言うことは信用できぬということで、政府が現地を視察をするということは、私は両国の信頼を保つゆえんではない。国会でいろいろ独自のことでおやりになることは別でありますが、政府としてそういうことをやることは、日米間の信頼を維持する道ではないと総理大臣として考えることは、私は適当だと思います。
  119. 渡部一郎

    渡部(一)委員 時間がありませんので、私、最後に一言申し上げます。  ほんとうの信頼を回復するためには、政治は動かなければならない。アメリカが核基地を撤去したということを沖繩について言ったとき、アメリカ政府側のことばだけではなく、日本は自衛隊将校を派遣して、現地の核倉庫内を点検させた事実があります。これは明らかに、ことばの外交だけではない、信頼を回復するためにとられた措置であった。そういうことは前例がある。その前例のある行為を、いま私は迫っているにすぎない。私はその意味で、総理が慎重なのはわかりますけれども、国民の信頼をつなごうとする態度ではない。それはこれからの日本の民主政治の発展のためにはまずかろうと申し上げて、私の質問といたします。
  120. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて質疑は終了いたしました。  午後一時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時二十五分休憩      ――――◇―――――    午後一時三分開議
  121. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。八木一男君。
  122. 八木一男

    ○八木(一)委員 まず最初に、外務大臣にお伺いをいたします。  本日、横須賀に空母ミッドウエーが入港したということを聞いておりますが、その事実があるかどうか、伺っておきたいと思います。
  123. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 事務当局からお答え申し上げます。
  124. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 事実関係は、いま直ちに照会いたしまして、すぐ御返事申し上げます。
  125. 八木一男

    ○八木(一)委員 その問題について、同僚楢崎弥之助君が関連質問をしますので、お許しをいただきたいと思います。
  126. 荒舩清十郎

  127. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いまのミッドウエーの点について、ミッドウエーに核兵器の要員が乗っておる。しかも乗り組み員の証言では、ミッドウエーの中に核兵器貯蔵庫があることが明らかになったところですが、ここにアメリカ海軍省の公文書がありますので、総理と外務大臣にはちょっと見ていただいて……。  時間がありませんから、簡単に申し上げます。この海軍省の公文書は、一九七四年、つまりことし十月十八日付の公文書であります。内容はおわかりのとおり、まずミッドウエーに関する一九七四年七月二十二日付、民主党の米下院議員ロナルド・V・デラムス氏の照会に対するD・S.ポッター海軍長官代理の署名入りの回答であります。回答の日付は一九七四年十月十八日で、これはミッドウエーの乗艦拒否事件にかかわる人種別兵員配置に関するデラムス議員の照会に対しての海軍省人事局長の報告でありました。回答内容のデータは本年九月二十日現在のものであります。  この二枚目を見ていただきたいのですが、この二枚目の兵器部、これは(9)でありますね。兵器部、ウエポンズデパートメント、ここにスペシャルウエポンズがあります。これはおわかりのとおり、スペシャルウエポンというのは普通NBC兵器のことをいいますけれども、特に核兵器の場合は、いまニュークリアウエポンというのはあまり使わないのですね。スペシャルウエポンというのを使っています。この兵器部の中に、スペシャルウエポン、すなわち特殊兵器班というものがあるわけです。それでこの要員は、つまりミッドウエーの特殊兵器班、すなわち核兵器要員は白人二十三名、黒人一名、計二十四名となっております。同時に、このミッドウエーの核兵器を警備することをおもな任務にしておりますマリーンデタッチメント、海兵隊分遣隊、これもこの兵器部の中に派遣をされておる。  まさに問題は明白になってまいりました。先ほどの公明党委員質問にもありましたとおり、私はこれはぜひ事実を解明していただきたい。当委員会からの調査団を派遣してもらいたいところですけれども、先ほどの委員長の裁断もありますので、われわれはわが党で調査団を派遣しますので、外務省としては最大の協力をしてもらいたい。ミッドウエーが寄港中にそれをやりたい。きょう外務省に申し入れたところであります。外務大臣、どうでしょうか。
  128. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま資料をちょうだいいたしまして、楢崎委員の御指摘のようなことが書いてございますが、これがどういう意味でありますか、私どもつまびらかにいたしませんので、これに基づいて判断を申し上げることはできません。  次に、御承知のように軍艦が不可侵権を持っておりますことは、これは安保条約よりはるかに以前の国際法上のもう通則でございます。したがいまして、私どもとしては、政府としてそういう調査をいたす、あるいはそのような要請を行なう気持ちはございません。
  129. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、われわれが調査団を派遣しますから、協力をしてくださいと言っているんですよ。外務省を経過しなければいかぬから、そう言っているのです。
  130. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 口頭の申し入れであれば、お取り次ぎはいたします。
  131. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いま一つ、簡単に申し上げます。  沖繩国会のときに、私が明白にした岩国の核貯蔵庫関係であります。依然として核貯蔵の疑いがある。それで、ここでちょっと地図をやっておきますから……。この個所です。  それでこれはMWWU-1という部隊の問題です。場所は、いま総理に差し上げましたとおり、建物番号一八一〇、これは滑走路北端から八百メートル南東にある建物群の中に入っております。で、この建物には二重の有刺鉄線や夜間照明用ライトがあって、これがいま夜間はもうつけっぱなしです。それから二棟の監視塔があります。そしてこの一八一〇という施設の前に、MWWU-1という部隊の看板が立てられております。ここには米兵がいつもライフル銃を持っておりまして、二十四時間警戒。定期的にここには給食車が食事を運んできておる。施設の中には核兵器関係の将校がいるのであります。それで秘密保持のために外出が非常に大幅に制限をされております。もちろん日本人従業員は絶対に入れません。米兵でも特別の証明のある人でなくちゃ入れない仕組みになっております。こういう厳重な警戒をしている施設は、岩国基地ではここだけであります。  このMWWU-1という部隊、これは一九六九年八月版の基地電話帳では、この一八一〇という施設内には、NBC関係、つまり核・生物・化学兵器関係の将校がずっと入っておったところですね。それが、私が指摘したものだから、一九七一年の春期版の電話帳には、今度はこの一八一〇の隣に一八一一という建物があります。同じところですが、そこにMWWU-1という部隊が初めてあらわれる。これは、マリーン・ウイング・ウエポンズ・ユニット・サブ・ユニット、この略であろうと思います。それで、これはもちろん海兵航空師団の兵器部隊の分遣隊、さっきのミッドウエーの核兵器警備をやる部隊と同じ性格を持っておるのです。ここには、いわゆる核関係の将校、装てんとか経理とか安全点検、作戦、補給、訓練の各将校及び責任下士官が入っているはずであります。  かつて私が岩国問題をやったときに、防衛庁は高官を調査に派遣されました。今回もぜひこの内容について明白にされたい。  以上です。
  132. 八木一男

    ○八木(一)委員 ただいま緊急な問題について質問をし、終わりました。これから本格的な御質問を申し上げたいと思います。  私は、三木内閣に本格的な諸種の提言をいたしたいと考えております。そしてそのほかに、昨日村上委員の発言で、八鹿高校の問題について、その背景等の説明が足らず、非常に誇張した宣伝がありましたので、この問題を……(「誇張じゃないよ」と呼ぶ者あり)黙れ。(「事実だ」と呼ぶ者あり)この問題を明らかにすることが必要になってまいりました。したがって、それにかなりの時間をとりますので、提言については、率直簡明に、心からお訴えをしたいと思いますので、総理はじめ各大臣から、ぜひこの点について、その提言を率直に受けとめていただきたいと思うわけであります。  まず、政治姿勢について申し上げます。  昨日、わが党の岡田春夫委員から、政権交代のルールについて三木内閣総理大臣に御質問を申し上げました。そこで、その点について意見の食い違いがありました。食い違った状態の中で、三木内閣がしばらく日本の政権を担当しておられる状態であります。その政権交代論は別にいたしまして、いま三木内閣がしばらく政権を担当しておられる。私どもは、日本社会党員として政治運動を展開し、議会の論議を展開し、早く社会党の主張する国民連合政府の樹立に向かって邁進する決意であります。しかしながら、当分の間、三木さんが政権を担当されるとするならば、国民のために三木内閣がよい政治をやってもらいたい、また、後の政治に対し、よい体制を確立をしていただきたいということが国民の願いであろうと思います。その意味において私は、これから御質問を申し上げたいと思うわけであります。  それで、もちろん当然のことでございますが、三木内閣総理大臣に伺いますが、総理大臣が政治をやられるときに、日本国の憲法を完全に順守する立場からやられることは当然であると思いますが、それについて端的にお答えをいただきたいと思います。
  133. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 八木さんのお尋ねをまつまでもなく、憲法の条章を厳粛に守って、私は政権を担当してまいります。
  134. 八木一男

    ○八木(一)委員 日本国の憲法では、国権の最高機関は国会ということになっております。これは主権在民の憲法の立場からであります。その国権の最高機関の国会がほんとうに生きたものになっておらないという状態がありますことは、いま首を縦に振っておられるように、議会政治家としての三木さんがかねがね考えておられるところであろうと思います。私もそのことについて真剣に考えているわけであります。ただ、与野党の攻防戦ではなしに、与野党がこの国会をほんとうの生きたものにする努力を、これからぜひしていかなければならないと思います。  まず第一に、国会は言論の府であります。その言論について、発言の人数制限とか、あるいはまた時間制限ということが、国会の慣例として、あたかも当然のことのようにいままで行なわれているわけであります。もちろん期間の問題もありますし、また人間の体力もございます。具体的には、おのおのの自制によって時間を制限しなければならないという状態は生まれるでありましょうけれども、しかし、その言論を制限するということ自体は、国会を非常に不自由なものにさせ、生き生きとしたものにさせないというふうに考えるわけであります。  たとえば一党の党首が本会議で堂々とした質疑をやるときに、ほかの人は三十分、党首のときは四十分、十分だけの違いで、これで各党の党代表に、その点で非常に敬意を表したというようなことが、国会にまかり通っているわけでございますが、一党の党首が大事な政治の問題について行政府のリーダーに質問をいたしますときに、その党首の議論が延々三時間の余になるというようなことになりましたならば、その党の良識が疑われ、その党首の人格が疑われることになるわけであります。重要な問題について、おのずから節度のある質疑なり討論が行なわれるでありましょう。それにもかかわらず、それを四十分という時間で制限をする、こういうことが言論の府である議会を自縄自縛におとしいれております。このような、制限が当然であるという間違った慣行を改める。自主的な制限が行なわれる、言論は完全に尊重される、そのような風習を国会の将来のために確立する必要があろうと思いますが、三木内閣総理大臣の明確な御答弁をいただきたいと思います。
  135. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 国会の運営は、いろいろな規則というよりも、やはり各党各派の自制によって運営をされることが理想的だと思いますが、何ぶんにも、二大政党の対立の国は、わりあい八木さんの言われるようになっているのですが、日本は多党化と申しますか、そういう傾向がございます。しかも国会の審議には、ある一定の会期もあるわけです。補正予算なら補正予算にも一つの時間的なリミットがあるわけでありますから、その間、野党各派があって、それぞれ御発言を希望されることは当然でありますから、八木さんの言われるように、各党の自制によって、しかも審議期間というものがきめられておるときに、自制だけでうまくいくというなら、私はもうそれはけっこうだと思うのですが、それは将来各党間でお話を願って、各党がひとつ自制をして、きちんときめられた時間があるわけですから、その中で審議が終わるようにするように、各党がしていただけるということならば、これは非常に好ましいことだと思うのです。自民党はあんまり質問の時間というものはないわけで、野党の諸君の間でお話し合いがあって、全体の時間をきめて、そうしてその間野党各派で自制してやるのだということにお話がきまってくだされば、これも非常にけっこうなことで、これは自民党の問題よりも野党各派の問題で、どうぞ御相談願って、そういうふうにしていただければ、非常に歓迎するところでございます。
  136. 八木一男

    ○八木(一)委員 現在までのやや硬直した議会運営では、一ぺんにぴたりとした御回答が出ないようでございますけれども、方向としては言論をとうとぶ、そのような発言の制限、人数制限なり時間制限をするということが、基本的には議会を生きたものにするためにはマイナスであるということについて、総理が御確認をされたものと私は確認をしていきたいと思います。  もちろん、これは国会できめることであります。しかしながら、その問題に、行政府が時間を少なくしてくれというような間接的な圧迫といいますか、そのような要望で、議会運営がくずれるところがあります。また、多数党のリーダーであるところの三木さんとしては、多数党がそのようなよいルールをつくるという態度をみずから示されるべきであるということで、国会の問題でありますが、政治のいま頂点におられる三木さんに、そのことを伺ったわけでございまして、今後ともに、そのような言論の府が生き生きとしたものになるように、与野党ともに前進をする体制を進めていただきたいと思います。  次に、国会の中で審議といいますと、質疑と討論というものがございます。大体、質疑というものが全部になっているわけでありますが、これは私は根本的に片寄っていると思うわけであります。みな各議員が討論をし、討論をした中で、自分の意見よりも他の人の意見のほうがすぐれているという場合にはそれに従う、そのことがなければ議会政治というものは前進がありません。ところが、議員が政府に対して、政府委員に対して質疑をするという傾向の審議だけが行なわれている。質疑などは、ほんとうをいえば、事前に準備をすればほとんどしないで済むわけであります。その議案がよいかどうか、そのような討論があってこそ、議会の審議が生きてくるわけであります。いままでの討論というのは、議案の最後に、方向が決定しているのに、ただおざなりの式のような調子で言うだけである。討論が済んでからすぐ採決だ。相手側の討論がよかったか悪かったか、自分たちもそれをいれることを考える必要があるかどうか、そういう時間的の余裕がないうちにすぐ採決であります。こんなものは全く形骸化した審議であります。そういうものをなくするために、あらゆる議案について、各議員間で、そしてまた政府の閣僚とも、自由濶達に討論をして、その問題の決着をつける。そのようなことがなければ、議会というものは硬直化していくわけであります。討論は一回に限りません。議案の最初に討論をする、間に五回もする、最後にもする、そのような慣習をお互いにつけていかなければならないと思います。その件についての三木さんの御見解を伺いたいと思います。
  137. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 こういう政党政治の時代ですから、やはり討論が各党の間で行なわれることは、政治の進歩のために好ましいと思います。そういう意味において、私は議員提出の法案というものがもっとあっていいという論者です。たいてい法案は政府提案でしょう。これは議員の提出する法案があったならば、八木さんの御指摘になるような実際的な討論が行なわれるわけであります。質疑の間でも、討論というような目的はある程度ございますね、質疑といっても。しかし、本格的な政党間の討論というものは、議員提出法案という場合に一番顕著にあらわれる。私は、もう少し立法府として議員提出の法案があってしかるべきだ、そのことが一番八木さんの理想達成のためには好ましい形である、こういうふうに思います。いまは政府の提出法案がもうほとんどでしょう。だから、どうしても質疑もあり、その中に討論という目的も達成できておるんで、しかし、本格的にはやはり議員提出の法案というものがもう少しあったほうが好ましい、こう思うのです。
  138. 八木一男

    ○八木(一)委員 三木さんの言われたように、議員提出法案をどんどん各議員が、各党が出す。それに対して、閣法だけを先に審議するようなことではなしに、別な党がそれに対して審議をするという風習をつけることは、たいへん大切なことであります。私はそのことをみずから実行してまいります。  議員提出法案の提出者の中では、私は一番多いほうだと思います。それについて、自民党の方では坂田君と年金法案の討論をしたときもありますが、幸いに私の提出した議案については、大ぜい与党の方から質問がございました。そこで議員間の討論という場がございました。しかしそれはレアケースであります。なかなかにその努力をしても質問もしてくれないということが多いわけであります。でありますから、議員提出法案であろうが、閣法であろうが、それをおのおの討論する。政府に対して議員がではなしに、議員間で、各党間で論議をする。そのような討論の場をつくっていかなければならないと思うわけであります。  三木さんの議員提出法案重視、これはけっこうでありますが、それではいままでいわれてきたことだけであります。ほんとうに国会を生きたものにするために、議会政治家である三木さんにその積極的な見解を伺って、それを議会を生きたものにする飛躍台にしたいと思って、私はあえて提起をいたしました。もう少し積極的な御見解を伺いだいと思うわけであります。
  139. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 議長のもとで、国会運営に対していろいろな改革を考えておられるようですが、どういうふうな形式にしますか、質疑と別に討論の時間という、こういうふうな形は、いままでの日本の慣習にはなじんでおりませんから、確かに研究すべき課題だと思います。
  140. 八木一男

    ○八木(一)委員 次に、時間もありませんから、私の見解だけ言っておきまして、あとで御検討いただきたいと思います。  本会議という場が、また形式的な審議に流れている。国会法の中には、議員が発言を求めたときに議長がそれを許し、自由に発言をすることができる規定がある。私の経験では一回もそれがあったごとがない。もっと前の三木さんなら、そういう経験おありかもしれませんが、私もかなり長い議会経験を持っておりますが、そのようなことがない。本会議が形骸化している。こういう問題も、各党がほんとうに真剣に考えて、そういうことを直していかないと、国会というものは形骸化します。  それから、この予算委員会であります。予算委員会は、予算案を審議するということが主要任務であります。しかし実際は、最も大事なあらゆる政治の問題について討議が行なわれております。したがって、これを政治委員会とするか、総括委員会とするか、そのような委員会を設けて、予算委員会は歳出だけの委員会にする、そのようなことが考えられてしかるべきであると思う。二十年もたって、ただ慣例慣例で、その中のよいところは残したらいいけれども、その欠陥をみんなが気がつかないで、気がついても、それを提言する場がないというようなことであってはならないと思います。そういうことについて深くお考えをいただきたい。これは三木さんだけではなしに、あらゆる同僚の皆さま方にお願いをしておきたいと思います。  次に、国会がほんとうに形骸化している具体的な問題は、おもに閣法でありますが、法律の修正とそれに伴った予算の修正が非常に窮屈であることであります。そのことは、ざっくばらんに申し上げますが、予算編成のときに、政府のほうはいろいろ方針を立てられる、そして与党の議員の方は、これがよかれかしということについて、おのおの各省にそれを主張をなさる、そういうことが行なわれている。そして一たん予算がきまり、予算関係の法律案がきまったならば、私の仄聞するところによれば、予算に関係のある法律案については、一切の修正のようなことについては食いとめるべしというような指令か決定があるように伺っております。したがって、私の長年の経験の中で、与党の議員の方が、そのとおりだ、これは直すべきだというお気持ちを持っておられても、与党の決定のために動きがつかない。したがって、これは即時やるべきであるけれども、附帯決議で、来年でがまんしてもらえないかと、ほんとうに熱心な政治家は、すなおにそれをおっしゃるわけであります。それはどこの委員会でもあります。こういうことがほんとうに国民の負託にこたえることであるかどうか。  予算の提出権は政府にあります。具体的には大蔵省がつくられるでしょう。そのときには、その前に政治討議をやる。これからの政治の方針はどうであるか、したがってそれに裏づけをする予算をつくらなければならないという大まかな討議はして、それに従って、政府が当然予算案をつくられる。つくられるときには、議員は個々にタッチをしない。予算案並びに予算関係法案が議会に出てきたときに、これを徹底的に論議、討議をして、そこで意見の一致したものについては、予算の関係の法律案でも、必ずこれを修正する。そしてそれに対応した予算案の修正が行なわれる。それがなければ、生きた政治にならないわけであります。国権の最高機関で、国民の代表者――憲法を何回も読んでください。このわれわれが政治をしなければならない。ところが議会で論議ができない。与党の方が主張されることがあっても、それが非常に強力な政治家だったらこうやれと言われても、まだ若い政治家だったら、こうやってくださいませんかというようなことを、大蔵省や主計局に言っていかなければならない。そんなばかな話が世の中にあるでありましょうか。そうではなしに、そこで与野党が討議をして、この法案はさらによくしなければならない、したがって予算を増額しなければならない、それについては予算案も修正をしなければならない、そのようなことが行なわれなければ、国会というものは生きたものになりません。  もちろん、予算については総ワクが必要でありましょう。特に総需要抑制のいまのときにおいて、そのことを申し上げることについては抵抗があるでありましょう。現在の問題だけではありません。将来、全体の問題として、予算の総ワクは議員がおのおの良識をもって知っている、その中でこれだけはふやさなきゃならない、あるいはこれだけは減らさなければならない。歳入についても同様であります。そういうことについて、ほんとうに議会の審議が生きるようにする。附帯決議というようなことで、翌年まで、国民を代表した国会議員の、国民の意見が即時実現をしないというような、硬直したこのような議会運営は改められなければならない。したがって、予算というものは修正するのが当然である、修正しないのが例外である、そのような慣習をつけていく必要があろうと思うわけであります。その点について、三木総理の御見解を伺いたいと思います。
  141. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 予算は修正するのが当然だとは私は思いませんが、国会の審議を通じて、予算の修正はあってしかるべきである、こういうふうに考えます。
  142. 八木一男

    ○八木(一)委員 三木さん、ほんとうに思い詰めて言っておりますので、ひとつ心を開いて受け答えをしていただきたいと思う。私の言っていることは、決定的なことを、一〇〇%のことを言っているわけじゃない。いま申し上げたように、予算の提出権が政府にある。それが完ぺきであれば、これは修正しなくてもいいです。ところがそうではない。国民の要望に従わない点がたくさんある。しかし、総ワクは守らなければならないでしょう、特にいまのインフレを抑制しなければならない時代には。しかし、その中に、これのほうが先だ、これのほうがあとだ、そういうことは当然国民の代表者の中で意思の多数の統一があるはずです。それを自民党という党で、あるいは三木内閣という内閣で、あるいはその下として大蔵省が原案をつくり、主計局がその作業をしたというワクを一つも離れられないのでは、国会がほんとうの国民の負託にこたえられない。そういう意味で、神さまがつくったものでないのに、一円でも十円でも狂いがない完ぺきな予算案というものはあるはずがない。それを当然国会の論議によって直さなければならない。そうなれば、それがたとえ五十億円であろうと三千万円であろうと、ある場合には一千億円であろうと、当然国民の負託に沿って即時予算案を修正して、翌年回しでなしに、その年から国民の要望にこたえなければならない。そうなれば、完ぺきな予算案があるはずはないから、したがって修正をするのが当然であるということになります。そういう意味で修正が当然である。修正をしないことは、神のごとき大蔵大臣なり総理大臣がいた場合にのみ。それはほとんど百年に一回しかない。修正が当然であるというルール、慣行をつくるべきである。その点について、三木総理の再度の国民の負託にこたえた御答弁をいただきたいと思う。
  143. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私は、予算の編成の途上において、党首会談を行ないたい、そして野党各派の意見なども徴しまして、取り入れられるものは取り入れて、予算の編成を行ないたいという方針を、五十年度の予算からとりたいと思っております。国会は少数者の意見というものを尊重しなければなりませんから、そういうことで、取り入れられるものがあれば取り入れて、そしてできるだけ理想的な予算案をつくりたい。しかし、神さまのすることでないですから、八木さんの言われるような、いろいろ野党の方々がお考えになって、修正を要する点があるという場合も多いでしょう。そういう場合にはやはり修正をして、国民のための予算ですから、できるだけよい予算をつくるということが、自民党内閣として国民の負託にこたえるゆえんだと思います。いつでも修正はしなければならぬものだという原則があるとは思いませんが、しかし、そういう修正は、国会の場において野党が修正をされることは、これはもうあってしかるべきだと思います。
  144. 八木一男

    ○八木(一)委員 野党の党首と会談をされて、翌年度の予算について協議をされる、たいへんいいことであります。それはぜひ実現をされる必要があろうと思いますが、それとともに、党首という党の決定の一番のリーダーだけでは、こまかいところにわからないことがあるわけです。どんなりっぱな政治家でも、三木さんはいま総裁でいらっしゃるけれども、あらゆる問題について全部通暁しておられるわけではありません、農政について、あるいはまた社会保障について。そういう問題については、それぞれ各党の中で一番研究にいそしんでいる議員があるわけです。それぞれがその委員会に所属をいたしているわけです。そこでやはりほんとうの意味のそういう審議をして、そういう点の修正をするということが、党首会談と並んで必要であるという意味で申し上げたわけでございまして、どうかそれは、いまおっしゃったようなことで、これから運営をしていただきたいと思うわけであります。  次に、これも提言であります。これは各党の同僚諸君にもお訴えをすることになりますが、いま政党政治で、責任をもってやっていることはいいことであります。しかしながら、その中にやはり長所もあれば短所もあります。各党の基本的な路線について、各党の議員が一致してそれを主張することは当然であります。しかしながら、昨日、岡田委員三木総理との討論にありましたことに関連をするわけでございますが、国民の生活に関係するようなものについては、やはりほんとうの話し合いが必要である。それと同時に、党と党だけではなしに、議員と議員の話し合いが必要であるという問題があります。生活に直接関係がなくてもございます。  一つ例を申し上げますと、たとえば優生保護法の改正案というのが先年の国会で出てまいりました。われわれ野党は、これは反対でありました。与党の方も、反対の方がずいぶんおられるわけなんです。ところが多数党の与党で、これはわが党案として決定して出すときめられると、与党は絶対多数でありますから、採決までいったら通るにきまっているわけであります。ところが野党の大半の人は反対である。与党の人も、私の想像では四割ぐらいは反対であろうと思います。そうなると、与野党を越えてこれを全部計算すると、反対のほうが多いと私は想像をいたしております。一つの例であります。このような問題について、党の決定した問題について必ずそのとおりの採決をしなければならないという締めつけがあまりにもきびしい。基本路線はどんどん党に結集してやったらよろしい。しかし、国民生活のこまかいところ、たとえば身体障害者のためにもう少し手厚くしよう、それよりは母子家庭のためにもう少し手厚くしよう、どっちが先であるかという問題のようなときに、それからいま言ったような法案のような問題のときに、その議員の規制を、いますぐと言いませんが、各党でそのような状態に合わせて解くということが将来考えられてしかるべきだと思う。そういうことの問題提起をいたしておきます。  それでは、時間がありませんから、先に進みます。選挙法の改正の問題であります。いわゆる定数是正や、政治資金規正法の改正や、あるいはまたもう一つ公営の拡大等のことは、賢明な同僚諸君がどんどん発言をしておられますから、よい決着が当然出なければならないと思います。あまり提起をされていない問題について、問題を提起しておきたいと思います。いわゆる戸別訪問禁止であります。   〔委員長退席、櫻内委員長代理着席〕  戸別訪問禁止ということについては、これは――三木さん、お疲れのようですけれども、大事なことですから。戸別訪問禁止については、家の中に入って買収、供応、利益誘導が行なわれる、それを防ぐために禁止条項ができたものといわれております。しかしながら、イギリスの選挙においては、総理大臣も野党の党首も、戸別訪問を選挙運動の主眼としているわけであります。議員候補者と国民がほんとうに対々で話し合う。そして信頼を得る、批判を得る。これがほんとうにできましたならば、一番いい方法であります。それを、その裏のことを禁止するために戸別訪問を禁止した。裏のほうの買収とか供応はほとんど取り締まられておらない。このような間違った選挙法の運営がありますが、この問題と離れて、この戸別訪問禁止ということが、国民政治に対する意欲をそいでいる。何らか選挙の期間に選挙の話をしたならば警察につかまるのではないか、このようなことが全国民に及んでいる。電車の中で、散髪屋さんで、ふろ屋さんで、あるいは市場で、どの政党がいい、だれがよかろう、農業政策は大事だ、公害に対する防止政策は大事だ、そういう話が国民の中で活発に討議をされるようにならなければ、日本の政治というものはこれまた死んだものになります。その活発な国民の世論を高揚させるために、このような戸別訪問禁止、それに対する形式的な警察のノルマのいろいろの行動、これが非常にマイナスになっていると思うわけであります。  この問題については、大きな問題ですから、あなたの御意見を伺おうとは思いませんが、戸別訪問禁止がいいか悪いかは別として、国民がほんとうに政治を自由に家族内でも討議をできる、そういう世論に基づいて、多数党ができ政権が構成されなければ、ほんとうの日本の政治にはなりません。選挙が形骸化をしている、国会が形骸化をしている、この問題について真剣にみんなで考える、それを直していくということが必要であろうと思うわけであります。  では、具体的な質問に入ります。  福田総理に伺います。経済というものは国民生活を維持するためにあると、私は考えております。そうしていろいろのときがありました。経済の状況によっては、総体的に耐乏というものをしなければならない時代もありましょう。しかし、それをするときには、富める者、余裕のある者がその耐乏をまずすべきである。弱い者にそのしわ寄せが来てはならないと思う。それについての御見解を伺いたいと思います。
  145. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まことに御説のとおり、私も考えております。
  146. 八木一男

    ○八木(一)委員 きっぱりとした御答弁で、けっこうであります。この経済が生活のためにあるということを忘れて、ただ経済、経済ということで、生活が圧迫されるような傾向がいままで多分にあったわけであります。そういうことをみんなでなくしていかなければならないと思います。  いま、インフレと不況が残念ながら併存をしている。そのときに総需要抑制をやってインフレをとめなければならない。しかし、不況で中小企業が困っている、その労働者が困る、家族が困る、こういう問題については急速な万全な対策をとられるべきであることは、各同僚委員から指摘のとおり、政府は全力をあげてやっていただかなければなりませんが、それとともに、最も焦点として、社会保障というものが積極的に前進、確立をされなければならないということは当然のことだろうと思いますが、三木総理大臣から、その点のお答えをいただきたいと思います。
  147. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 選挙のいろいろお話がありましたが、戸別訪問はこれからの研究課題だと思います。イギリスの場合は選挙区が小さいですから、それでいいんです。日本の場合の中選挙区というものに対しては、なかなか研究を要する問題がございます。(八木(一)委員「いま社会保障の問題です」と呼ぶ)  社会保障の問題については、これはこの内閣で、インフレ下の問題について、インフレ下で社会的に不公平な立場に立つ人に対しては、特別の考慮をしていきたいということが大きな柱でございますので、社会保障制度全般について、あるいは給与基準の引き上げ等、全般につきましては昭和五十年度の子算編成を通じて考えてまいりたいと考えております。
  148. 八木一男

    ○八木(一)委員 どうも少しお疲れの方が多いようですから、ちょっと目をさましていただきます。  日本国憲法の中で、財政負担を伴うような具体的な政策、それを規定しているのが五つあります。それについて、総理大臣、副総理、大蔵大臣、厚生大臣、労働大臣、その他の大臣、いますぐ御承知の方があったらお答えをいただきたいと思います。法制局長官の答弁は要りません。――お答えがないから、おわかりにならないものと思いますが、このくらいのことはやはり憲法完全実施のたてまえから――たいていの方がお知りにならないから、あなたをばりばり言うわけではありませんが、今後そのくらいのことは全部が知っておいていただきたいと思う。  もちろん、主権在民、基本的人権の尊重、平和主義、大きな問題があります。自由権や何かの規定があります。しかし、具体的な政策については五つであります。憲法第二十五条第二項、国は、社会保障、社会福祉、公衆衛生については不断にこれを増進しなければならないという規定、憲法第二十六条第二項、義務教育はこれを無償とする、そして憲法第九条、陸海空軍は持たない、戦力は持たない、これが具体的な規定であります。具体的に掲げられている以上、あらゆるものに先行してこれが重視されなければなりません。それができないようであれば、憲法順守の九十九条の規定に反する。総理大臣にも国務大臣にも国会議員にもなる資格もないということになります。そういうことについてちゃんと腹に入れていただいて、これから質問に御答弁をいただきたいと思います。  総理に伺いますが、社会保障については、社会保障制度審議会という、社会保障についての一番の権威のある機関があります。この勧告、建議、答申について十二分に尊重される意思があるかどうか、伺っておきたいと思います。
  149. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 当然に、審議会から出されました答申については、政府は尊重する責任があると思います。
  150. 八木一男

    ○八木(一)委員 主としてこれから厚生大臣に伺います。しかし、総理大臣も副総理も大蔵大臣も、よく聞いておいていただきたいと思うのです。厚生大臣に伺ったことをすぐそちらに切り返します、時間がかかりますから。  まず、田中厚生大臣に伺うわけでございますが、田中厚生大臣が、自民党の中で社会保障の最も権威者であり熱心な方であることは、私も前から存じております。特に年金の問題については、野田卯一先生を会長にされて、田中さんが事務局長で、実際に国民年金のときに推進をされた、この御努力に敬意を表しているわけでありますが、今度就任されて、社会保障をその熱意で急速に拡大されるように期待をしながら、質問をいたすわけであります。  まず、生活保護についてであります。生活保護について、昭和三十七年に出ました社会保障制度審議会の勧告、その勧告は昭和三十六年の国際水準に対して、四十五年、十年後に追いつこうというものであります。その中で特に生活保護については、その当時から実質三倍に昭和四十五年までにしなければならないと、具体的に最も大事な柱として書いてあるわけであります。現在の生活保護基準は三十六年に比べて――伺うと時間がかかりますから、こっちから申し上げます。田中さんも御承知ですが、二・四倍であります。すでに昭和四十九年、五十年の予算を組もうというときにこういうこと。全くこの生活保護の拡充については停滞をしておる、それをお認めになると思いますが、どうですか。
  151. 田中正巳

    田中国務大臣 いま総理も仰せになりましたとおり、社会保障制度審議会の答申、建議は十分これを実行していくつもりで、諸般の政策についてはこれをやってまいりました。しかし、この一点だけが実はたがえておるのでありまして、まことに申しわけないと思っております。今後生活保護基準については、大いにひとつこれを向上させるよう努力をしなければならないというふうに存じております。
  152. 八木一男

    ○八木(一)委員 積極的な御答弁で、けっこうであります。この生活保護世帯について、この物価高騰が続いているときに、年末の対処をすべしということは、各党がすでに要求をしておられます。その問題については、各党の要求に従って対処をせられたい。ほかの方が言われておりますから、そうでない問題に触れます。  この生活保護費というものは、生活保護法の規定によれば、厚生大臣の決定によって、毎月この金額を動かすことができるわけであります。昨年のような物価高騰期に、健康で文化的な最低生活費が物価高騰によって食い込む。そうすると健康を害する、そうすると人権を害するということになります。したがって、他のものにも先んじて、そのような急騰の場合には毎月でも改定をしなければならない。そのことは、この前の前の厚生大臣の齋藤君が、この予算委員会で確認をされました。齋藤君と同様、あるいはそれ以上この問題に熱心なはずの田中厚生大臣も、当然このような確認をなさると思いますが、ひとつ端的にお答えをいただきたいと思います。
  153. 田中正巳

    田中国務大臣 生活保護世帯はニードがぎりぎりの人たちでございますので、物価高騰等のときには、できるだけすみやかにそれに値するように基準をアップしなければならぬと思っておりまして、今年も、御承知のとおり三度引き上げをいたしました。しかし、先生仰せのとおり毎月ということになりますると、いろいろと事務的にも無理なことがあろうと思いますが、これはできるだけひとつ、このような人たちでございますので、機動的に、おくれないように引き上げるべきであるということについては、全く同意見でございます。
  154. 八木一男

    ○八木(一)委員 物価高騰がいまの予想よりもはるかに多くなったときには、当然毎月改定をされるというものとして確認をいたします。  同様にして、失対賃金について、長谷川労働大臣は、この前の前の内閣でも同じ任に当たっておられました。同様の答弁をいただいておりますが、ひとつ失対賃金について、同様の答弁をいただきたいと思います。
  155. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 同様な考えをもって進みたいと思っています。
  156. 八木一男

    ○八木(一)委員 生活保護の問題について、この前の予算委員会で、齋藤厚生大臣は、総理大臣、大蔵大臣等のおられる前で、四級地の撤廃というものを確約せられました。それにもかかわらず、まだ四級地の撤廃が行なわれておりません。理由は申し上げなくても、田中さんおわかりだと思います。四級地の撤廃を即刻やられるかどうか。やられるべきであると思いますが、ずばりとお答えをいただきたいと思います。
  157. 田中正巳

    田中国務大臣 生活保護基準の級地問題につきましては、私自身も、いまのように四級区分というものをする必要があるかどうかということについては、問題があろうというふうに思っております。そこで問題は二つあろうと思うのであります。いまの級地区分が、地域的にはたして公正な指定がされているであろうかどうかという問題が一つあろうと思います。いま一つは、御説のとおり、四級地、これを撤廃したらどうかということでございますが、実は齋藤前々厚生大臣の速記録を読んでみましたが、はっきりと廃止するとは申しておりませんけれども、私といたしましては、できる限りそのような方向で努力をいたしたいというふうに思っております。
  158. 八木一男

    ○八木(一)委員 齋藤君はまことに巧妙な逃げ答弁をするんです。しかしそれは、四級地を撤廃するか、いま田中厚生大臣が言われたように、撤廃ということじゃなしに、級地区分を変えていまの四級地の低水準をなくすか。そのような両方にとれるような答弁をしましたが、少なくとも、いまの低劣な四級地の給付というものは、それを上げるという意味の答弁であります。齋藤君の答弁答弁として、いま田中さんが厚生行政を預かっておられる。当然この五十年度から四級地の撤廃をされなければならないと思いますが、それについての積極的な決意を伺っておきたいと思います。
  159. 田中正巳

    田中国務大臣 私としては、できるだけお説のとおりにやりたいと思っております。
  160. 八木一男

    ○八木(一)委員 次に、生活保護の問題については、戦後これが制定されましてから、ごく一万分の一ぐらいの事務的な改正はございましたけれども、内容に触れた改正は一切ございません。この社会保障の基盤である生活保護法について非常に問題が多いわけであります。たとえばその第四条の問題、補足性の原則の問題は、この法律を金縛りにし、非常に残酷なものにしております。第一条の自立助長、その問題については、この第四条によって、ほとんどその効果をあげ得ないということになっております。またいま言った級地の問題があります。また世帯主義と個人主義の問題があります。そして、生活保護基準決定について、厚生省が熱意を持ってその予算折衝をしても、大蔵省がなたをふるうというようなけしからぬことがある。健康で文化的な最低生活というものは、憲法の第二十五条第一項の条章で決定をされた、その条文に直結した法律であります。これだけは財政がどうであるから削るということは許されないものであります。財政のいかんによってこれを削るというのは、国民の生存権を大蔵省や内閣が削るということになります。このようないろいろな欠陥がある生活保護について、二十数年間を経た後、当然これの抜本的改正に取り組まれる必要があろうと思います。その改正について着手をされる決意があるかどうか、ぜひ積極的な御答弁をいただきたいと思います。
  161. 田中正巳

    田中国務大臣 生活保護法については、長い間実施をいたしましたが、問題がいろいろございます。ことに、いまおっしゃいました補足性の原則をあまり強くやりますと、いろいろと社会の常識と違和感を生じまして、しばしば新聞の社会面等に出るのも、これが原因だろうと私は思っております。また生活保護法も、実は今日あの条文どおり実施をいたしておらないわけでありまして、ずいぶん通牒等でこれを緩和していることも、先生御案内のとおりであります。したがいまして、私といたしましては、就任早々、関係局に対しまして、生活保護法の条文と通牒等での運用の実態とが変わっている部面がたくさんあるだろうと思うので、これを表にして出してもらいたいということを命じました。この命じたゆえんのものは、私自身、生活保護法については、これを時代の要請に合ったものに、この際抜本的に改正をいたしたいものというふうな底意で、実は命じたわけでございますが、何ぶんにも非常に広範なものであり、また一つの社会に定着したプリンシプルもあるものでございますから、その作業はなかなか容易ではございませんし、またあまり極端にこれをゆるめますと、いろいろとまた、国民の税金からこの種のものを払うものでございますから、程度問題もあろうかと思いますが、できるだけこの生活保護法は近代的な思想に合うように改善いたしたく、近くこれを事務当局に命じようかと思っておったところでございます。
  162. 八木一男

    ○八木(一)委員 総理大臣、いま非常に大事な問題について厚生大臣と討議をし、厚生大臣は積極的に取り組む決意をされました。これは非常に大事なことでございますから、大事な点を三木総理大臣に詳しく申し上げたいのですが、重要な質問がありますので、厚生大臣からよく伺われまして、これについては総理大臣が指導力を持って、急速に抜本的改正が進むようにやっていただきたいと思います。それについて、ひとつ決意のほどを伺っておきたいと思います。
  163. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 厚生大臣を大いに督励いたしまして、厚生大臣の考えておるような趣旨が実現いたしますように努力をいたします。
  164. 八木一男

    ○八木(一)委員 大蔵大臣に伺います。  いま、生活保護について一連の問題を申し上げました。そして厚生大臣、さらに総理大臣から御答弁をいただきました。前段の問題は、抜本的改正までのごく手直しの問題であります。すべて即刻にやらなければならない問題であります。その問題について、大蔵大臣が全面的に協力をされることが必要であろうと思います。それについての御決意をひとつ伺っておきたいと思います。
  165. 大平正芳

    ○大平国務大臣 田中厚生大臣に、できるだけ御協力申し上げます。
  166. 八木一男

    ○八木(一)委員 では次に、時間が経過しましたが、早足で年金制度のことについて問題を提起いたしたいと思います。  田中厚生大臣が、財政方式の問題についていろいろ言っておられました。いまの厚生省や政府の中、そしてまた与党である自民党の中で、財政方式の問題の中で、賦課方式と修正積み立て方式の問題で、世代間の公平というものを一つの論点として、それはすぐやるにはどうであろうか、そのような論議があるようであります。世代間の公平ということを形式的に解釈した論議が多いようであります。  いまの労働者なり国民は、非常な低賃金、重労働で苦しみ、あるいは零細企業の圧迫で苦しみ、農業の圧迫で苦しみ、そして物価の値上げで生活は苦しい。したがっていま保険料の値上げはたいへん困難な状態であります。しかし年金は上げなければならない。そういう状態の中でこれは当然賦課方式に移行すべきものであります。いまの労働者あるいは国民が困難な境涯にあることは、何党の内閣でもこれを改革していかなければなりません。  いま経済成長は停滞いたしておりますけれども、この難局を国民が乗り越えて、健全な成長が当然行なわれなければならないと思う。そこで、当然労働分配率がふえてこなければならない。中小企業や農業の収入もふえてこなければならない。そうなった場合に、将来の国民はその負担にたえるのに困難性が少ない。しかも、先輩にそのような年金が保障されている、自分にも完全に保障されることが目の前に見えている、そういう場合、これが税になるか保険料になるかは別として、そういう人たちのそのときの負担の困難は、いまの国民の困難とは違うわけであります。それを、そうでない、形式的な世代間公平論で賦課方式移行にブレーキをかけるようなことは、非常に不当である、妥当でないと思うわけでありますが、それについての田中厚生大臣の見解を伺っておきたいと思います。
  167. 田中正巳

    田中国務大臣 拠出制年金の賦課方式については、本会議で申し上げましたとおり、今後の財政方式としては、十分に検討に値する方式であるというふうに私は思っております。ただ、私がただいま直ちに賦課方式に切りかえるということを言明することについてためらうゆえんのものは、いまお話しのありましたとおり、日本の人口構成が今後急激に老齢化すること、そしてまた年金の受給権者並びに受給額が非常にふえるということを考えまするときに、私は、この問題についていま少しく数理計算等をいたし、十分な確信を得たところでもって、このことを打ち出したいというふうに思っておりますので、いましばらく御猶予を願いたいというふうに思います。
  168. 八木一男

    ○八木(一)委員 賦課方式について、積極的にこれを考慮していきたいということはけっこうであります。私の提起した問題についても、この問題の推進のために、ひとつお役立てをいただきたいと思います。  次に、スライドの問題であります。スライドの問題で、賃金と物価の問題が非常に論議をされております。いま物価高騰のときに、物価スライドというものが適当であるという論議が一部にありますけれども、賃金というものであれば、働いた先輩に後の働いた人の熱心な努力が反映をする。物価だけでは、その年金制度ができたものが横すべりになるだけです。完全であっても。世の中の経済の発展、若い世代の一生懸命の働き、そして生活の向上が先輩には及ばないということになる。そういう点で、賃金スライドというものは重視されなければならない。いま、年金制度は物価自動スライドをとっているけれども、再計算期において賃金の要素を入れるということが政府の態度であります。その再計算期を早めなければならない。齋藤前々厚生大臣は、昭和五十年度に再計算を言っておる。田中厚生大臣はこれを早くしなければならないと思うが、これについての見解を伺いたい。
  169. 田中正巳

    田中国務大臣 年金の財政再計算期については、五十三年ということになっておりますが、これをできるだけ早めてやっていこうと思っております。私もこのことについて意欲を燃やしておりますが、先生御案内のとおり、きわめて複雑な制度でございますので、五十年施行は困難だと思いますので、五十一年度に向かって、これについてかなり抜本的な改善をこの節にやりたいものと思って、いろいろいま努力中でございます。
  170. 八木一男

    ○八木(一)委員 五十年に再計算をぜひやっていただきたいと要求をしておきます。しかし、あなたのおっしゃるように、どうしても間に合わない、五十一年になるということには、私ども承服はできませんが、その場合でも、再計算まで待つというのじゃなしに、必要なものは五十年度からどんどんやるということは絶対にやらなければならないと思います。首を縦に振っておられますから、時間の関係上、あらゆる問題について推進をすることを確認して、前に進みます。  次に、年金制度が形式的にでき上がっているようでございますけれども、その年金制度の網からすっかりはずれてしまったり、あるいは大部分はずれてしまっている人が、日本の国の中にたくさんあります。その人たちの年金権を確立することをしないで、社会保障の確立ということはできません。そういう問題についてぶつ続けに提起をいたしますから、それについてまとめてお答えをいただきたいと思います。  まず、通算年金通則法が非常に不完全でありまして、老齢の通算しかありません。したがって、途中で職業を転換しなければならないという不幸な事態に立った人で、その人がさらに不幸にも自分が傷害を受ける、その人が早死にをして奥さんたちが困るという、その場合の年金権がはずされているわけであります。まことに言語道断な怠慢な状態であります。通算年金通則法のその改正については、これまた齋藤君が、おととし、去年出すことを約束したわけです。そしてそれもなまけたわけです。ことしも出てこなかった。こんな怠慢なことは許されないわけであります。田中厚生大臣は直ちにこれを提出する。提出のしかたは、むずかしければ、いまの老齢年金と同じように、じゅずつなぎでけっこうであります。各制度間の制度はそのまま生かして、期間の通算だけでけっこうであります。そして国民年金の拠出制については、奥さんの分とだんなさんの分が、他の制度とシステムが違っておりますが、一世帯で同じ資金から出ていることを考慮して、これは主人が奥さんの分を出す、そのように擬制をしてやるならば、これは一週間で通算年金通則法の改正案は出ます。そのことをやっていただきたい。  それから次に、免除者に対する優遇措置であります。これは衆議院社会労働委員会で十数回にわたって附帯決議になっております。田中厚生大臣自体、この問題にタッチをしておられます。一番貧しくて保険料を払うことができない人が老齢になったときに、年金が三分の一しか保障されない。こんな年金制度ではあってもなくても同じであります。したがって、この免除を受けた人の優遇措置を直ちに実現してもらわなければならない。  さらにまた、掛け捨てで、厚生年金等の対象になっていない人があります。これは、戦中戦後に職業を転換して、そのつとめ先がなくなってしまった。そういうことについては、個人にそれのいろいろな資料を求めても無理であります。社会保険庁に台帳があります。それによって全部拾い出して年金権を回復する、そのような措置を即刻講じなければならないと思います。  さらに、国民年金の被用者の妻の問題であります。これは長らく提起されておりますが、労働者の配偶者は任意適用でありますけれども、複雑な年金制度の理解が足りないために、その個人の年金権が保障されておりません。この問題について、拠出制国民年金の労働者の配偶者である妻の強制適用についてこれを考慮し、各方面と協議をしながら推進をする決意があるのかどうか。  まとめて率直に簡明に、積極的なお答えをいただきたいと思います。
  171. 田中正巳

    田中国務大臣 たいへん複雑な問題について、いろいろ並べ立てて御質問がございましたから、的確にお答えできるかどうかわかりませんが、第一に、免除者の問題でございますが、確かに免除者については、その期間を三分の一に勘定するということになっております。これはおそらく、国民年金の場合、三分の一は国庫が負担をいたしますので、国庫負担分についてだけはめんどうを見ましょう、したがってゼロにはいたしません、こういう制度だろうと思います。このことについても、八木先生かつていろいろ御努力になった結果やっとここまで来たことを私は覚えているわけでございますが、これについても、やはり、困っている人が困っているだけに、これについていろいると免除を受けるという事情もありますので、十分考慮しなければならぬというふうに思います。しかし、現在、免除については非常に手続が簡単でございまして、へたをすると逆選択が起こる場合も考えられますので、満度にということはいかがかと思っておりますが、できるならばいま少しくこの種の人に優遇をいたすべきものだというふうに思っております。  それから、高齢者で国民年金に任意加入しなかった人たちの問題でございますが、これはわれわれも委員会でずいぶんお互いに議論したことがございますが、かつて十年年金に入れということを言いました。その後も、五年年金に入れということを二度言ったわけですが、それでもなおかつお入りにならなかった方でございまして、これをいまどうするかということについては、私どもとしてはなかなか結論を得られないでいるというところが、率直なところでございます。  それから、被用者の妻の問題でございますが、これについてはいろいろ問題があるようであります。これを強制適用にいたしますると、今度は厚生年金等々の受給権等々の問題も出てくるだろうと思いますし、また、先般来、遺族等について五割以上の給付をせよというような御意見がございましたが、こういうことについて、私、本会議で申し上げましたとおり、積極的に取り組みたい、かように思っていますが、この問題とも、実は抵触する幾つかの理論的な問題がございますので、こういったような、いまおっしゃった問題については、この次の抜本改正の節に、皆さま方の御意見を聞いて、できるだけのことをいたしたいというふうに思いまして、一つの問題であることは、私どももよく存じ上げております。
  172. 八木一男

    ○八木(一)委員 国民年金に入らなかった人の問題は質問をいたしませんで、次の順番でございましたが、お答えをいただきました。この問題については、さかのぼってやればできることですから、ぜひやっていただきたい。きょうは時間がないので、詰められないで残念ですけれども、それはぜひともやっていただくということで、確認をしておきたいと思います。  それから、厚生年金の在職老齢年金であります。あれはもってのほかであります。保険料を払って権利があるのに、働いているからということで、在職者の年金を六十五歳以上は八割しか払わない。六十歳から六十五歳は十二級以下の人が二割から八割まで。こんなものは、内容を申し上げませんけれども、とんでもない制度であります。その人の権利を侵害している。年をとった人が、年金権があるのにほかで働かなければならないというのは不幸な事態であります。むすこや嫁がいなくて、孫を育てなければならない人もいる。家族に病気があって働いている人もある。その人が年金権が侵害をされて、その安くなった賃金と両方でかつかつ暮らす、そういうような不合理な制度、これは断じて改めていかなければならないと思います。問題提起だけではなしに、これは必ずやっていただくものとして要求をし、確認をして前へ進みます。  それから次であります。特別児童手当という制度がございますが、これについて、二級障害の児童がある家庭にいまだこれの適用がございません。障害福祉年金に二級ができた以上、当然これの実現をしなければならないと思いますが、これについて端的にお答えをいただきたいと思います。
  173. 田中正巳

    田中国務大臣 特別児童手当の二級新設の問題については、かねがね委員会等で御議論があったように承っております。これも実はいろいろな議論があるようでございますが、障害福祉年金の児童版という考え方をとるならば、このことは理論的には可能だと私は思いますが、しかし、これについては、障害福祉年金と特別児童扶養手当とは、受ける客観情勢が若干違うというところに実は問題があるようであります。特別児童手当の場合には、こういうお子さんを看護しておられる親御さんに差し上げるという制度でありますので、そこで、親御さんの場合の稼得能力というものを考えなければいかぬ。障害福祉年金の場合は、その人ずばりが稼得能力が落ちるといったような問題も若干あるのですが、しかし、今日までのいろいろな委員会の審議過程を通じて見ますると、いまやこれについては積極的に取り組むべき時期が来たものというふうに思っておる次第でございます。
  174. 八木一男

    ○八木(一)委員 次回、通常国会に提出をしていただくものと確認をして、前に進みます。  それで次は、非常に時間がありませんから、児童手当法の問題でありますが、日本の児童手当というのは第三子からしか支給されておりません。いろいろこまかいもっと積極的な理由がありますが、端的に中心の問題を申し上げると、日本の若い世帯で三人の子供を持っておられる方は非常に少ないわけであります。名前があって制度がないと同様の問題であります。ILO問題にも関係がありますけれども、日本の児童手当ほど低劣な制度はありません。ILO条約を胸を張って批准できないのもここにあるわけであります。この児童手当の一番貧弱にでき上がったものも、一応その階段的な時期は過ぎましたので、当然、児童手当法の抜本的改正を提出されなければならない。当然、児童の権利という立場から、第一子からの児童手当をつくらなければならない。しかしながら、政府はなかなか抵抗があるようです。少なくとも、児童の関係の審議会で言っているように、第二子からのものぐらいは来年度において当然これを提出されなければならないと思いますが、決意のほどを伺っておきたいと思う。
  175. 田中正巳

    田中国務大臣 児童手当についても、先生御唱道のような御議論が世間にあることは知っております。しかし私は、これについてはやや所見を異にしているわけであります。と申しまするのは、わが国の風土的土壌に児童手当というものが一体ほんとうになじむものかどうかということで、私は、この制度創設のころに実はたいへん悩みました。というのは、皆さん御承知のとおり、ヨーロッパで今世紀の初めごろに児童手当制度ができた節には、向こうはいわゆる能率給制度でありまするので、したがって、子供が多くなりますると非常に生活が苦しくなる。あまりにもドライな能率給制度の上に、この反省から、児童手当というものができたもののように私は承ったわけであります。しかしわが国においては、これまた極端な年功序列型賃金ということになっており、その上にまた、家族手当などという、ヨーロッパ等に見られない制度があるわけでございまして、こうした日本の独特な賃金あるいは労使関係の中に、児童手当というものが一体なじむだろうかどうかということを疑問に思いつつ、この制度の策定に参加をいたしましたが、財政上の問題もございますし、現在の児童手当法という法律を改正すればそれまででございますが、多子家庭における児童養育費の家計負担の軽減ということを考えるときに、これについて、いまにわかに一子ないし二子というふうに持っていくことについては、限られた財政の中で社会保障をやらなければならないというならば、他にもっと強いニードがあるように私自身思われますものですから、絶対にやらぬとは申しませんけれども、これについてはできるだけ後日に譲っていただきたい。これは八木さんはたいへん御不満だろうと思いますが、私自身まじめにさように考えている次第であります。
  176. 八木一男

    ○八木(一)委員 たいへん不満であります。健康で文化的な最低生活をする権利が児童にもあります。年寄りだけではない。障害者だけではない。あらゆる国民にあるわけです。その児童の生存権を保障するためにこれがあるわけであります。御説のほうは労働者のことだけを言われました。農家の人も子供があります。中小企業者の子供もあります。そのような労働者の制度から発展をした一部の古い昔の歴史をたどるのではなしに、児童の生存権という立場から、当然この児童手当法の抜本的改正に取り組まれなければならないと思います。その問題について、十二分に私どもの意見を頭に入れられて、これを実現するための促進を願いたいと思います。  これからあと、こういう問題で大事な問題が七点ほどありますが、ほかの重大な問題がありますから、論点を変えます。そしてほかの重大な問題が済んでから、時間があれば申し上げます。  問題点だけを申し上げますと、ILO条約の批准の問題、あるいは国民健康保険の、田中君の提唱された府県移管の問題、あるいはガン対策の問題、そのような問題がありますが、あと回しにして、もう一つの大事な問題に移りたいと思います。  三木内閣総理大臣はじめ各大臣にじっくりと聞いていただきたいと思いますが、この前の本会議で金子満広君の質問がありました。そして昨日の予算委員会で村上君の質問がありました。あまりにも一方的に、原因の説明をせず、現象面だけをとらえて、しかも激烈な調子でこれを言ったことについて、総理大臣はじめ各大臣も悪い影響を受けておられるのではないかと思いまして、この背景についてぜひ申し上げておきたいと思うわけであります。  委員長、これについて不規則発言がありましたら、その退場を命じてください。(「きのうさんざん言っておいて何だ」と呼ぶ者あり)退場を命ぜられたら、私も退場するよ。いま退場を命じてくれ。  私は、実は、村上君や金子君がいろいろのことばで非常に誹謗をされました部落解放同盟、朝田善之助氏を委員長とするその部落解放同盟の役員をただいまいたしておりますが、昭和三十二年に、実は部落解放運動の先覚者であった先輩の松本一郎先生の要請によりまして、当時、共産党員であった国民救援会の難波君や、あるいは野間宏君たちと一緒に中央委員になりました。そして私のみが――三木さん、よく聞いてください。お水を飲んで少し目をさましてください。私のみが、そこでその常任中央委員という役になりました。その中に日本共産党の方がたくさんおられました。そして社会党の者も幾分おりました。もちろん保守系の方もおられました。無党派の方もおられました。差別をなくするために非常に一生懸命にやっている団体として、すばらしい団体だと、その当時思ったわけであります。  そして、その運動を展開しまして、そのときに、三木さんはよく御存じだろうと思いますが、昭和三十三年に四谷の主婦会館で、部落解放のための、同和対策樹立のためですか、国策樹立のための全国の代表者会議がありました。私はその会議の議長をいたしておりました。自由民主党を代表して、時の幹事長であられました三木さん御自身がおいでになりました。社会党は鈴木茂三郎委員長、共産党は野坂参三議長がおいでになりました。そして全国民的にこの問題の解決のために一生懸命やろうということを、自民党三木さんも言われました。非常にすばらしい集会でありました。そのことによって世論が高まり、そして昭和三十三年の私と岸さんの質問のやりとりがあり、その方針がきまり、同対審等審議会ができ、同対審答申ができ、それから特別措置法ができ、この問題の解決の方向に向かって、その歩みは非常に鈍いんでございますけれども、前の方向に向かって前進をしているわけであります。  ところが、この過程の中でいろいろの問題が起こりました。ずばり申しますが、日本共産党の方は、この中で、昭和三十四、五年まではほんとうによくやっておられました。その点については敬意を表します。しかし、三十五、六年ごろから非常な偏向を来たされたわけであります。というのは、この部落解放を望む運動のエネルギーを共産党の方の勢力拡充のために使いたいと、そのような傾向の姿勢を示されたわけであります。そこで、その傾向の中で、部落解放運動の最も特徴とする、いわゆる差別に基づいた行政的な差別をなくするという、行政闘争という大切な項目を、そのとき共産党が指導された自治体闘争というものに一緒にしてしまおうというようなことが具体的な例でありますが、要は、共産党の指導方針に部落解放運動を全部持っていこうという傾向を示されたことに対し、部落の大衆がそれに対していろいろ考えたわけであります。  共産党の方も理想を持ってやっておられるかもしれない、しかし、われわれはいま就職が困難だ、いま学校に行けない、環境が悪い、衛生状態が悪い、住宅が悪い、小さな商売しかできなくて、それがうまくいかない、この問題を解決する、そのことがわれわれの一番大切な方法である、大事なことであるということで、運動の方針について徹底的な論議が行なわれ、そのいま言った方針の方向に戻ったわけであります。戻って、その論戦の結果、共産党の指導部の方が大部分落選をしました。そして事務局を全部占めておられた共産党の活動家の方が、ほかの方々に入れかわったわけであります。  この団体は政党支持自由団体であります。自民党だろうと、共産党だろうと、社会党だろうと、公明党だろうと、民社党だろうと、無党派だろうと、部落の解放のために、同和問題の解決のために努力をしていただく方とは一緒にやっていく、そしてそういう方々には積極的に組織内にも入っていただく、そういう運動体であります。でございますから、そのようなことがあっても、共産党の方がその運動を共産党寄りに指導されたことを改められたならば、喜んでその運動体は共産党の方々とも一緒にやるでありましょう。ところが、それをなさらないで、御自分の意見と違った指導部をいろいろの方法で誹謗をなさる。そのことによって、解放運動の中の主導権を取り返そうとなさったわけであります。それがいまの問題の発端であります。  そして、京都の厚生会館事件という問題で、まず、いまおっしゃっているような、暴力集団朝田一派というようなことをさんざんと、その機関紙を通じて流されました。そしてその後、大阪の矢田教育差別事件というのがあります。このことも内容を詳しく申し上げたいのですが、湯山さんの八鹿の実態をごらんになった質問がありますので、残念ながら要約をいたしますが、そこでも、そのようなことをなさいました。それからまた、「橋のない川第二部」というのを、これは差別映画であると部落の人が一生懸命にとめようとしているのを、無理やりに撮影させるということを、奈良と高知でやってこられたわけであります。  そして「赤旗」という新聞が非常に影響力がある。これは共産党の人の長年の努力のたまものでありましょう。しかしながら、そのたまものであるものが間違ったことを言う、正しい運動を誹謗する、そのような言論の暴力によって事態を変えようとする、そのようなことが、この十数年間行なわれてきたわけであります。(「物理的な暴力はどうするんだ」と呼ぶ者あり)黙れ。
  177. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長代理 静粛に願います。
  178. 八木一男

    ○八木(一)委員 そこで、暴力というものは――三木さん、ちょっと聞いていてください。暴力というものは一般的に悪いことだ、そう言えば、ほかで一生懸命やっている部落解放同盟の指導部が悪い者になって、そして自分たちのほうに主導権が返ってくるだろうということで、暴力、暴力、暴力、暴力と、朝から晩まで言い続けてきているわけであります。その暴力というものは、八鹿では不幸にして負傷者が出ているようでございますけれども、ほかではほとんど出ていないものを暴力と称する。しかもそれは挑発をして誘発をする。たとえば議論をして、私が三木さんのほうにぐっと胸を突きつけるくらいに議論をして、つばがひっかかるくらいに議論をする。三木さんが無礼なやつだということで手で押し戻す。その時点だけとれば、私の胸を三木さんが突っついたという暴力になります。その前に耐えられないような侮べつをする。それに対してのことは考えない。ただ、迫ったときに胸を押し返したものを暴力とする、こういうようなやり方がずっと続いているわけであります。こういうような問題について、そういう背景があるということをぜひともひとつ理解をして、問題についての判断をみんなにしていただかなければならないと思います。  村上君はきのう、私が不規則発言で皆さんに御指摘をいただいたけれども、あまりにも失礼なことを言いましたから指摘をいたしました。朝田、丸尾と呼び捨てにしているわけであります。人権を尊重する政党が、人をこの中で呼び捨てにする。呼び捨てにすることによって、それを悪者にしようとする意図がある。(「宮本糾弾と言っておるよ」と呼ぶ者あり)
  179. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長代理 御静粛に願います。
  180. 八木一男

    ○八木(一)委員 そのようなやり方の中に、そしてあまりにも激烈なあの論議の中に、村上君や金子君がどういう意図をもってこの問題を国会の問題にしたかということは、賢明な皆さま方にはおわかりをいただけると思う。そして、そのような暴力と称するもの、多分に起こっているという村上君たちの言った問題は、大部分がいわゆる共産党の党員の人やその影響を受けた人、主として最近は、その影響を受けた教師集団のある学校において起こっているということ。(「だから暴力はいいのか」と呼ぶ者あり)だからその原因は、それを言っている人たちがそれをつくり上げている形跡がある。(「うそを言ってはいけない」と呼ぶ者あり)そういうことになるわけであります。  そこで、三木さんに伺いたいわけでありますが……(「一度行ってこいよ。父兄や先生の言うことを聞いてこいよ」「議会でうそを言ってはいけない」と呼ぶ者あり)  委員長、議場を制してください。
  181. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長代理 私語を禁じます。
  182. 八木一男

    ○八木(一)委員 もう一回言ったら退場を命じてください。  そういうことで、そういうふうになっておりますが、三木さんは、たとえば、あらゆる国で民族の違う人がいる、そのときには、独立を主張する、あるいは自治を主張する、そのような世界的な状況になっていることを把握しておられますね。また、資本家階級と労働者階級の中に圧迫がある、収奪がある、それを防ぐために労働基本権が制定をされて、弱い者が団結をして、むちゃくちゃな低賃金でごき使われないように、労働条件を要求する権利がある。ありますね。これは資本主義社会のこと。  ところが、被差別部落に対する差別は、徳川時代の封建時代から淵源を発している。そしてそれは支配者がつくったものですけれども、支配者だけでとどまっているのではないのです。空気や水のように全国民に広がってしまっているわけです。明治の太政官布告のときに、それに抵抗したのは岡山県の農民であります。農家の人が、自分より下の身分層にあった人が同じになるのはおもしろくないと、襲撃をした。こういう事例からして、あのようなけしからぬ身分的差別の影響は全国民に及んでいるわけであります。そしてこのような、ほんとうにそのことばによって自殺をした青年男女もたくさんありますが、死ぬような苦しみをする人に対して、差別言動が絶えない。それについて法務省は人権擁護のためにどのように動いたか。何万件の差別事件があるのに、解決したのはほんのスズメの涙であります。  そうなったときに、差別によって抑圧をされる人が、その考え方を正すために懸命な努力をするのはあたりまえの話であります。それがいわゆる集団闘争であります。集団闘争というのは、誤った考え方を正しく直すという意味であります。水平社運動の初期のときには、あまりにも残酷な、あまりにも露骨な差別が多かったから、個人を取り巻いたいわゆるそういう糾弾という歴史がございました。いまはそうではなしに、誤った考え方を正していく。そのようなことを糾弾闘争と称しているわけであります。それを、村上君や、いま不規則発言のあるように、あたかもそのことが暴力そのものであるように「赤旗」で書いて書いて書きまくって、日本国じゅうまいてまいてまき散らして、そしてそのような状況をつくろうとしておるわけであります。  そのような状態の中で、この八鹿高校の中で、これから湯山さんが言われますけれども、子供たちの切なる希望を、先生たちが退けて退けて退けて、そしてこの紛糾のもとを起こしたのは、その教師集団の中に日本共産党の教師の人がいる、その影響を濃厚に受けた教師の人がいる、そのことが問題の背景であるわけであります。そのことが、共産党の方々が口をすっぱくして、本会議で、この予算委員会で、あのようなオーバーな、あのような過激な、むちゃくちゃな言語で、政府の方々を追及している背景にあるということをぜひ理解を深めていただき、これから同僚の湯山勇さんの実際を見られた質疑に対して、まともにお答えをいただきたいと思うわけであります。
  183. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長代理 湯山勇君より関連質疑の申し出があります。八木君の持ち時間の範囲内でこれを許します。湯山勇君。
  184. 湯山勇

    ○湯山委員 ただいま八木委員から、八鹿の問題あるいは同和対策の問題について御質問がございました。関連してお尋ねをいたしたいと思います。  まず、直接担当しておられる総務長官にお尋ねいたしますが、部落解放同盟との接触は、総理府においてはかなり密接に行なわれておると思います。これがはたして暴力的な集団なのか、あるいは正しく同和対策、同和行政に協力しておる団体なのか、この点をお伺いいたしたいと思います。――ちょっと待ってください。時間があまりございませんので、答弁の時間が入ると時間が延びますから、ずっと質問を申し上げますから、あとで、そのことを総務長官から最初に答えていただくということにしたいと思います。  その次に、いま八木委員から御指摘がありましたように、今度の八鹿の問題を、現象面にとらわれて、あるいは物理的な暴力の事件というような形で、暴力がいけないということを皆さん御答弁になりましたけれども、しかし、新しい日本の憲法の柱は、民主主義と同時に人権尊重、これを忘れてはならないと思います。この点からの、つまり差別による人権の侵害という点からの把握に、御答弁を拝聴して、欠けているんじゃないかということを私どもは感じますので、その点をひとつお尋ねいたしたいと思います。  もちろん私どもも、暴力を肯定するものではありません。八鹿の事件において傷害があった、負傷者が出たということについては、私ども他のどの党よりも心を痛めております。ただ、きのうも質問にありましたように、教育長とか、あるいは校長とか、警察署長とか、PTA会長とか、あるいは幾人かの人に聞きましたけれども、現場を見たという人に会わなかったということは、きのうの質問でも、村上さんが指摘した部分もあります。ただ問題は……(「見ているよ」と呼ぶ者あり)
  185. 櫻内義雄

    ○櫻内委員長代理 御静粛に願います。
  186. 湯山勇

    ○湯山委員 問題は、そういうことで片づけていいかどうかという点です。そこで、まずお尋ねをいたしたいのは、法務大臣ですが、一体差別を人権問題として法務省が取り上げているかどうかという問題、つまり人権相談所で差別事件として扱った件数、これは昭和四十五年には約一万七千、四十六年には二万、四十七年には三万一千六百八件あります。この中で適切に処理したもの、つまり説示とか援助措置、排除その他の措置、こういう措置をとったものが幾つぐらいあるとお感じになりますか。三万一千六百八件のうちで、一年間に法務省がそのような措置をとった件数は、私が前に尋ねた法務省の御答弁によると、わずかに三十八件です。三万件をこえる件数の中で、三十八件しか処理されていない。説示が二十六件、援助措置が二件、排除措置が一件、その他九件。つまり、千人の人権が侵害された中で、差別された中で、たった一人しか措置されていない。あとの九百九十九人は野放し、やられ損、やったほうはやり得、こういうことになっている。これを一体放置しておっていいかどうか。  ことに、この相談の中の一番多いのは結婚問題、それから次は職場の問題、近所のつき合い、家庭の中の問題、学校の問題、こういう順序になっております。特に結婚問題では、いま八木委員もおっしゃいましたけれども、私が直接知っておるだけで、自殺した人が一人、自殺未遂が二人、家出が二人、傷害が一人、ノイローゼになった人が一人あります。つまり差別による人権侵害というのは――確かに、こん俸でなぐるのも刃物で刺すのも暴力、いけないことです。これは断じて許せませんけれども、そうではなくて、この差別は刃物よりも深い傷を負わしている。このことを私はしっかりひとつ認識していただきたいというように思います。  ただ、こうやって人権擁護に訴えていっても、千人の中の九百九十九人が野放しになっている。それでは結局、自分たちの手で差別をなくさなければならないということから糾弾になっていく。その糾弾が怒りを込めた糾弾になってくれば、それは多少の行き過ぎもあるかと思います。しかしこの糾弾を、たとえば、ちょっとこっちへ来てくれと、いやというのを引っぱる、これは逮捕、それから時間がかかれば監禁、それから強いことばで言えば脅迫、こういうことで告訴、告発しています。今度のもそうです。告発なんです。告訴、告発の内容を、あたかも事実のようにきのうもおっしゃっておりました。しかし、これは調べていかなければわからないことで、それをもって事実だというところに、私は問題があると思います。告発があれば警察が調べなければなりません。そうすると、これは人権を侵害された上に、糾弾することによってまたあらためて警察ざたになってくる。二重の被害を受けております。このことをよくおわかりいただきたいのです。これをほっておいていいかどうか。  昭和四十年の同和対策審議会の答申にはこう書いてあります。「差別がゆるしがたい社会悪であることを明らかにすること。差別に対する法的規制、差別から保護するための必要な立法措置を講じ、司法的に救済する道を拡大すること。」こう答申には示してあります。   〔櫻内委員長代理退席、委員長着席〕 それ以後九年間、一体何をおやりになりましたか。わずかに千人の中の一人に措置をした。その措置の一番強い勧告、説示、これも強制力はありません。そんなことをおれは聞かぬと言えばそれまで。それでほうっておいて、一体この人たちのそういう糾弾を、あるいは逮捕だ、監禁だ、脅迫だといって告発して、それを事件だといって、一体警察庁は発表していいものですか。私は、今日のこの事態は明らかに政府に責任がある、ほうっておいた政府に大きな責任がある、このことを指摘しておきたいわけであります。新しい憲法の柱はそこなんです。ですから、ただ単に、暴力はいけない、いけないということだけでは済まないんです。私に言わせれば、あなたたちのうちでもし罪のない者は石をもて打てというあのことばを、実は皆さんに申し上げたい。これなくして、ただ単に現象をつかまえて、告発をとらえて、取り締まります、それはどうしますということでは済まされない問題だと思います。  次に私は、司法的に排除するということについて、気持ちの上では賛成しておりません。こういうことでほんとうの解放がなされるとは思っておりません。やはり問題は、差別をなくしてほんとうに完全解放する道は教育にあると思います。その教育の場でこういうことが起こったことについての理解、認識がもっともっとあっていい。私は、幸い今度は文部大臣が教育者であった方ですから、こういう議論をぜひしたいと思っておりました。そういう機会を三木総理がお与えいただいたことに感謝をしております。こういう文部大臣でないと、こういう議論はできないと思っておりました。そこで、そのためについ失礼なことを申し上げましたが、奥野先生にはまことに申しわけありませんでした。  つまり、今度の問題は、解放研をつくってもらいたいという生徒の希望を学校側が拒否したことから端を発しております。もし解放研に何らかの欠点があり、そして何らかの背景があるというのであれば、それを断ち切ってやるのが教師の役目じゃないか。もし顧問に就任するという人があれば、これは就任さすのがほんとうなんです。ところが、この顧問就任後、職員会議で、他の顧問になることは本人の意思だけれども、この解放研の顧問になることについては職員会議の許可が要るという差別的な決定をいたしております。これも私は、教師の立場から、同じ教育に携わった者として非常に残念に思っております。  直接生徒たちが先生に要求したことは何かと申しますと――これは直接その生徒たちから聞きました。解放研に入っている生徒というのは二十一名で、女子が十八名、男子が三名、しかも女子の大部分は一年、二年の生徒です。その生徒たちが先生たちに訴えたかったことは、月に一回同和教育の時間がありますが、その教えてくれる内容というものが、中学で受けた同和教育とここの高校のとはあまりにも違い過ぎる。ここでは、差別の実態、差別の歴史、それを教えるのだということで、部落の歴史やみじめな生活など、そういうことを教えられて、実際に自分たちが暗い気持ちになる、それからそのために、恥ずかしくて頭が上げられなくなる、授業に出るのがいやになる。友達からは、部落出身の生徒に対して、今度はだれだれさんの時間だといってひやかされる。そしてまた先生が、部落差別というものは男女の差別やからだの不自由な人の差別、それと同じようなものだ、こういうことを言われるので、それじゃ先生、同じからだの悪い人でも、部落の者とそうでない人には差別があるじゃありませんかと言うと、そんなことはいま考えなくてよいことだと言って突っぱねて、教えてくれない。この子供たちの意見、希望というもの、この教育を変えてもらいたいという希望がはたして不当なものでしょうか。  私は自分の経験から見て、こういう希望、要求が子供から出てくることは、同和教育に携わっておる教師としては喜んでしかるべきである、そのときこそまことにいい同和教育の機会である、こう思わなければならないのに、この純真な、ほんとうに子供たちの率直な――高校一年生の子供は中学と違う、こういう訴えを聞かなかった。この話し合いに応じなかった。ここに問題があると私は思います。教師というものは、教師と生徒というつながりにおいて教育が成り立っている、その原点を捨てて、子供たちとの話し合いをしないということは一体どういうことなんだろうか。こういう点について、文部省なり教育委員会は指導に欠くるところがあったのじゃないか。一体正しい同和教育を指導しておったかどうか、私は非常に疑問に思っております。また、生徒と話し合ってもらいたいということについては、PTA、父兄も泣いてその一部の教師の集団に訴えています。これも聞かれていない。こういうことも私は理解に苦しむところです。(「先生の意見は」と呼ぶ者あり)  先生の意見はいま申し上げます。  直接、二十二日の遺憾な事件についてです。これは当日朝、先生たちは集団で通用門から入って、それから平静にホームルームを行ないました。ここは全く平静に行なわれています。この先生の代表の方四名にお会いをいたしました。そうしたら、こういうことを言っておられます。その日、黒板に、いまから門の近くで何が起こるかよく見ておけということを書いた先生がありました。さすがに先生ですから、私が書きましたということをはっきりおっしゃいました。他の三人の先生に、あなた方はどうですかと言ったら、大かた全部の先生は口頭で同じような意味のことを言った、その三人の先生も同じようにそのことを言った、こう言っておられます。これは直接、書いたその先生方から聞いたことですから間違いございません。  さて、そうすると、何かが起こるということを、もう朝予知しておったということになります。それは、そういう予知があったのも、集団登校するという状態ですからそうかもしれません。あるいは十八日から集団で登校、下校し、それから宿舎は全部かん詰めになって、泊まり込んでやっております。城崎のほうへ泊り込んでやっておりました。あぶないということをもし感じておったのだとすれば、私が理解に苦しむ点は、通用門から入った先生、その門の付近には若干の共闘の人がおりました。あえてその正門のほうをしかもスクラムを組んで出ていく。どうしてそういうことをしたのだろう。学校におったらなぜあぶないのだろう。学校におったら押しかけてくる、あるいは危害を加えるということになれば、これはほうっておけません。ところが、その正門を隊伍を組んで、スクラムを組んでその先生たちの集団が出ていく。その集団に対して、それは福田大臣が本会議で御答弁になったように、十数名の人たちが学校へ帰ってくれ、授業してくれということを訴えた。これは大臣が本会議で御答弁になりました。それを、帰らないで、その人たちを排除しながら、引っぱりながら、そして三百メートルばかり行進していっている。それだけ用心深い、集団で登校、下校し、かん詰めになる先生たちが、どうして一体その方向へそんな時間に出ていったのだろう。また、前のほうに何百かの集団が見えます。見えたら、せっかくこれだけの集団、デモを組んでおるのですから、とまるなり引き返すなり、いやなときには、うしろがあいておるから逃げることもできたはずです。にもかかわらず、それへぶつかってすわり込んだということは、一体どういうことなんだろう。暴力をなくするためには、危険を排除するためには、この先生たちは、女の子は一人歩きしちゃいかぬ、夜は早くうちへ帰れ、山へ登るのは一人で登っちゃいかぬ、あるいは盛り場へ行っちゃいかぬと、そういう事故の起こらない教育を事前にしておる先生が、どうして予知できておって、しかも、それをとめておる父兄、あるいはそういう一部の人たち、そういうのがあるのに、なぜ一体そこへ行ったのか、私はどうしてもここの理解ができません。こういうことは、先生として、私は同僚のような気持ちで残念に思うし、私ならばこういうことはしない。文部大臣がもしここの先生だったら、どういう態度をおとりになりますか。これを真剣に考えてもらいたい。  こういう事実を見てまいりますと、これは私は、八木委員が指摘されたように、周囲の人たちから、あれは計画的じゃなかったのか、挑発があったのじゃないかと指摘されてもやむを得ないという点が多々あるということを、実際に見聞きしてまいりました。しかしそのことで私は、この先生たちをとがめる気持ちは毛頭ありません。そうじゃなくて、いまのようなことを考えてみていくと、この同対審の答申には、「同和教育に関しては遺憾ながら国として基本的指導方針の明確さに欠けるところがある。」こう指摘してあります。国として同和教育に関しての明確な指導方針というものがいまだに欠けている。現象面じゃなくてその根本は、文部大臣は、敵は私の中にあるとおっしゃいましたが、暴力がいいかいかぬかの問題じゃなくて、政府自体この問題に反省する必要があるのじゃないか。そしてまた、法務大臣に申し上げましたように、この日本憲法の大きな重大な柱の人間尊重がこうしてそこなわれていっているのを、いまだかつて何の手をも打たないで、ただ来年は十倍くらい予算がふえる。一〇〇〇%以上の予算を要求しておられますけれども、それじゃ済まない。それをこうほうっておった政府の責任はきわめて重大であるといわなければなりません。  私はこの問題に関連して、特にいまの点、もしこういうふうにしておったら、この不祥な事故は避けられたんじゃないかということを、事実を一番よく知っておられる公安委員長から御答弁いただきたいのと、残余の問題を文部大臣にお答えいただきたいのと、そして私は、これこそ、災いを転じて福となすという勇断を持った、しかも強力な対策をこの際打ち出す責任が政府にあると思いますので、最後に、三木総理から締めくくりの御答弁をいただきたいと思います。
  187. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 湯山君に申し上げます。  時間がもう超過しておりますから、最後に総理大臣の答弁をして、終わりといたします。
  188. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 八木さんや湯山さんから、同和問題の背景の複雑さについていろいろ御説明を承りました。認識を一そう深めた次第でございます。同和問題は基本的人権に関連する問題でございますので、政府は、同和対策事業特別措置法、それに基づく長期計画によって、今後一そう同和問題の解決に努力をいたす所存でございます。お答えをいたします。
  189. 田中武夫

    田中(武)委員 ちょっと、議事進行でお願いします。  いま湯山委員あるいは八木委員質問して、具体的に各担当大臣にお願いした件につきましては、文書をもって後刻御回答をいただきたいと思いますが、お願いします。
  190. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 よろしゅうございます。  これにて八木君の質疑は終了いたしました。  次に竹本孫一君。
  191. 竹本孫一

    竹本委員 私は、民社党を代表いたしまして、当面の政治、外交、経済の問題について、建設的野党の立場から、いろいろ質問をしてみたいと思います。  田中金権政治が致命的に行き詰まりまして、自民党分裂の危機を前にして、三木政権ができました。われわれは、もちろん政権たらい回しには反対でありますが、野党のあり方にも問題があることを反省いたしておる次第であります。  さて、民社党は、三木内閣の発足以来、三木総理政治改革への異常な意欲的な取り組みを評価いたしまして、しばらくその実績を見守りたいと思っておる次第であります。ただにわれわれだけではありません。日本の国民は、いま日本の政治の致命的な腐敗と行き詰まりに対しまして、新たなる政治の展開を非常に強く待ち望んでおるのであります。  たまたま、東京新聞並びに私の地元の中日新聞が世論調査をやりました。これを見ますと、清潔な姿勢を好感して三木内閣を歓迎するという人が七五・〇、三木内閣を支持していいというのが五九・四%であります。また本日の毎日新聞を見ましても、これまた四七%が三木内閣を支持しておるというような状況でありまして、国民政治の転換をいかに熱意を持って待望しておるかということは、この数字でわかるわけでございます。この国民の大きな政治転換への期待を、もし今度の三木内閣が裏切るようなことがあれば、政治に対する不信、全くどうにもならないところまでいってしまうだろうと憂えております。この国民の期待に対して、三木総理はいかなる取り組みをやるお考えであるか、御決意のほどを簡潔にお伺いいたしたいと思います。
  192. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 この難局に政権を担当いたしまして、いま竹本議員が御指摘になったように、国民の私に対する期待も非常に高いことに対して責任を感じております。私は、民社党の塚本書記長からも竹本さんからも、党派を越えて協力するものには協力しようという、非常に公正な態度で御激励を受けたことに対して、感銘を深くいたしております。私は微力ではございますが、各位の御協力を得て、全力を傾けて難局の打開に当たりたい覚悟でございます。
  193. 竹本孫一

    竹本委員 総理から前向きの御答弁をいただきましたが、民社党は、今日は非常な政治不安、社会混乱、この今日的状況の中にありましては、政党の第一の任務は、国民の痛切なる生活要求にいかにこたえるか。物価の問題もありますし、福祉の充実の問題もありますが、これを具体的にいかに解決して国民の要望にこたえるか、ということが第一義でなければならぬと思います。そうした意味におきまして、三木内閣に対しましても、是は是とし非は非とし、さらにわれわれが積極的に提案をするものも含めて、ひとつ何らかの意味において実績をあげて、国民の期待にこたえるということにしたいと思います。  われわれは野党でございますけれども、従来ともそうでございますが、常に反対のための反対はいたしたことはありません。私どもが反対をする場合には、必ず批判、代案、この代案を持っているんだ、これでいってもらいたいんだという立場で常に反対をしておるつもりでございます。今後もそうやりたいと思います。  そこで、これはことばの問題でございますが、よく自民党の皆さんが責任政党ということばを使われますけれども、これはしかしいかがなものだろうかと実は私は思うのです。責任政党と言うならば、私は、いま与党も野党もみんな責任政党であって、野党は何だか無責任政党のような、与党だけが責任を重んずる政党のような表現、ことばは、理解と協調を言われる三木内閣のもとにおいては、もうおやめになったほうがいいのではないか。それがほんとうに信頼と協調の党のあり方ではないかと思いますから、これは一言御注文を申し上げておきたいと思います。  なお、外交や予算の問題、あるいは重要な法案等については、前もっていろいろ協議、協力すべきものはそういう形をとりたいという御発言も、先ほど来いろいろありましたし、党首会談もやられるということでございますから、これはその機会に譲ることにいたします。  私は、三木総理にここで御提案をしたいことが一つあるのですが、それは憲法六十八条の問題でございます。今回の三木内閣の人事におきましては、永井文相が民間から出現をいたしましたし、また法務大臣には稻葉さん、科学技術庁長官には佐々木さん、厚生大臣には田中さん、いずれもそれぞれの道の専門家が御就任になりまして、適任者を得たように思っております。しかし、基本的には、検察権を握っている法務大臣、教育の中立性がいわれる文部大臣、また科学技術の開発が非常な今日的課題になっておる場合の科学技術庁長官と、この三者だけは、本来ならばやはり民間の英才、偉才を抜てきするということが新しい行き方ではないか。政党の党利党略にからまるような――今度の人事ではありません、一般論として、人が法務大臣、文部大臣、科学技術庁長官には、私はあまり適任と思わない。現に憲法も第六十八条では、国会議員の過半数を占めればいいということでございますから、反面解釈をすれば、半分近くの者は在野の遺賢を大いに抜てきしなさいと憲法は保障しているわけでございますが、さらにこの三者だけでなくて、やはり三木内閣というのが新しいスタートを切られたんですから、厚生大臣も田中さんという専門家が今度はなっておられますけれども、原則論からいえば、私は婦人の大臣も一人ぐらいあってもいいと思うのです。ことに、福祉国家をつくるというきめこまかい配慮をしなければならぬような問題については、女性のきめのこまかい配慮も必要であろうと思います。まあ、これは今回は過ぎた話でございますが、これからの日本のいまの政党不信の中で、新しい政治を打ち出すということから考えれば、憲法六十八条の精神に沿って、法務大臣、文部大臣、科学技術庁長官は民間の英才を抜てきする、厚生大臣等には婦人その他適任者を選んでくるということも考えてみる価値があると思うが、三木総理のお考えを伺っておきたい。
  194. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 いろいろ建設的な御提案を賜わったわけでございますが、現行の憲法の規定においても、いまならば九名民間から起用してもよろしいわけでございますが、御承知のように、自民党は有能な方がたくさんおられまして、いま御指摘の田中さんにしても佐々木さんにしても、なかなか多年この道で努力をされた人であって、民間の人にもまさるということで、重要な地位におつきを願ったわけでございますが、法務大臣について民間からどうぞということは、一つのお考えとしては貴重な御意見だと思います。永井さんの場合は、私は、教育の雰囲気というものを、過去の行きがかりにとらわれないで一掃する必要がある、こういう点で特に教育というものを重視したいと思いますから、永井さんの文部大臣御就任を、私が特に願ったわけでございます。  婦人の大臣をつくれというお話でございますが、ちょうど明年は国連婦人の年にも当たりまして、やはり婦人というものが人口の半分以上を占めておるわけで、婦人大臣というものが確かにあってよろしいと思いますが、まあそれは適任者を得ませんと、ただの婦人の大臣が一人おるというだけでは国民責任を果たせないと思いますが、将来一人や二人婦人の大臣があることは、私はたいへんに必要だと思うわけでございます。そういうことで、いまの御提案は非常に建設的なお話として、私としても心にとめておく次第でございます。
  195. 竹本孫一

    竹本委員 この機会に、文部大臣に一つだけ質問をいたしたいと思います。  スウェーデンの経済学の専門家でございますが、「機能的社会主義 中道経済への道」という、こういう書物があります。世界の経済は、資本主義は社会主義のほうへ、社会主義は資本主義のほうへだんだん寄っていくんだという結論で、スウェーデンは社会主義が資本主義に近づく代表であり、日本は資本主義が社会主義へ近づきつつあるというようなことを書いておるんですけれども、非常に痛烈なる批判を一ついたしておるのです。というのは、日本には、大臣御承知のように、たとえば下水道の建設五カ年計画がある、住宅建設の五カ年計画もある、道路建設の五カ年計画もあるが、私は精神建設五カ年計画はないと思うんですね。そこで民社党は、教育国家の建設をいち早く主張もいたしましたし、さらに大学基本法も具体的な案をつくって国会に提案をいたしました。そういう形でわれわれは、特に教育の問題、精神の問題、道義の問題に重点を置いて考えておる。その立場から、この書物に日本の批判が痛烈に書いてある。  ちょっと参考のために読みますが、「日本の権力体制は、相当な利益のために」――要するに、経済的価値と非経済的の価値との調和が必要だというんですね。「相当な利益のために非経済的価値」、すなわち、伝統美とか人間らしい生活といったものを「明らかに売ろうとしておる。西欧の新聞は、伝統美の全滅について、あるいは富士山でさえ食欲な投資家によって削られていることについて、工業用水の汚染で死ぬ漁師のこと、怠慢で手ぬるい産業の安全装置のために手足を切断した労働者のこと、何千という児童が大気汚染で毒されていること、全日本人口がまもなくガスマスクをして歩かねばならないかもしれないことについての恐ろしい話でいっぱいである。」こういうことを書いております。いずれにいたしましても、経済的価値ももちろん大事でありますし、私はゼロ成長論者ではありませんが、同時に、経済以前の精神の問題、伝統美とか、こういった問題について、日本は全くいまどうかしているのではないかということをきびしく批判しておるわけですね。  そこで、大臣にお伺いしたいのですけれども、精神建設五カ年計画というものをつくるかつくらぬかは一応別にいたしまして、今日の教育のあり方の中に、一体そういうものの精神的な、非経済的な価値をどれだけウエートを置いておるのであるか、これが一つ。さらにこれからの教育の問題について、どこまでそういう精神的な面に力を入れようとしておられるのであるかといったような問題について。  これにまた関連をいたしまして、世界にいま百五十の国がありますけれども、日本のように愛国心を見失ってしまっている国というのは幾らもないと思うんですね。この愛国心教育というものは、ある意味においては教育の原点であるかもしれない。それがどこに行ったか行くえ不明になっておる。愛国心を言えば反動であるといったような考え方さえ一般的になっておりますが、この精神教育、非経済的価値の尊重とともに、愛国心教育、あるいは道徳的な教育、あるいは宗教教育といったようなものについて、大臣はどういうお考えであるか。時間がありませんので、簡潔に御答弁を願いたいと思います。
  196. 永井道雄

    ○永井国務大臣 御質問をいただきました点、すべて重要な点なのでございますが、簡潔に申し上げさせていただきます。  まず、長期的に考えることが必要ではないか、全くそうであります。中教審の答申というのも、長期的に考えて出てきたものでありますが、しかしながら、これは私も申したことがありますけれども、当時の経済五カ年計画を下敷きにしておりますために、教育試算、長期計画試算というものも変更を要するような状況になっておりますから、こういう意味での長期計画というものも考えて、もう一度十分に柔軟に考えていかなければいけないというふうに考えております。それは中教審答申をやめてしまうということではなくて、柔軟にこの問題を考えて、長期計画をもう一回どうするかということであるかと思います。  次に、精神教育の問題についてお触れになりましたが、私は、世界的に一九六〇年代というのは、高度成長、技術革新の時期でございまして、わが国だけではなくて、やはり世界的に、人間の文化の問題をどうしていくかということが非常に深刻な事柄になっているというふうに認識いたしておりますから、必ずしも、それはセガースタット教授か何かの本だと思いますけれども、わが国だけではありませんが、わが国に深刻な問題があるということについて、全く御意見に賛成でありますから、これをどうやっていくかということを早急に具体化したいと考えております。  これにつきましても、中教審というものがいままであり、それの運営や構成というものは、問題に応じていままでも変わってきております。そこで、そういうふうなものをよく検討いたしました上で、いまのような精神の問題あるいは文化全般の問題、これは中教審が文化、学術、教育と申しておりますが、その問題を考えていくようにしなければならないと思います。  特に、愛国心の問題をおあげになりましたので、それについて一言申し上げたいと思いますが、私は、わが国において非常に重要なる問題は、確かに愛国心の問題あるいは伝統の問題であるかと考えます。その理由は、わが国は、明治維新の初めもそうでありますが、特にまた第二次大戦の敗戦を経験いたしましたために、過去の伝統というものと断絶いたしまして、そうして新発足するという非連続の面が目立っているわけでございます。そこで非常に重要なことは、過去からの選択ということを考えなければならないわけでありまして、わが国のように、きわめて豊富なる文化を持っている、長い歴史のある国におきましては、現時点において、一体、わが国の先人が築いた非常に豊富な文化的伝統の中から、いかようにして、将来を目ざしてこれをわれわれが選択いたしまして生かしていくかということを考えていくことは、きわめて大事であるかと考えます。しかし同時に、そのような愛国、一つの国の文化、郷土、それを愛する精神というものを考えます場合に、私が未来と申し上げましたが、過去からの選択をやります場合には、これは教育基本法も述べていることでありますけれども、今日以後におきましては、世界の人類の協調、そして平和の実現ということがきわめて大事であるということは申すまでもないことであります。なかんずくわが国におきましては、この世界平和の実現に協力するということが国民全体の強い願いであるというふうに私は考えておりますから、愛国という問題を考えていきます場合にも、偏狭なる自国中心主義というのではなくて、そういう世界の国々との協調、平和の実現という精神に基づいて、過去からどのように文化を選択していくか、こういう問題についての検討というものを行なわなければならない、かように考えている次第でございます。
  197. 竹本孫一

    竹本委員 次は、時間がありませんので、政治、選挙の粛正の問題等につきましては、公営の問題にいたしましても、あるいは定数是正の問題にしても、いろいろ御議論もありましたので、残念ながら割愛をいたしまして、政治資金規制の問題について二つだけ。  これはすでに御承知のように、もう八年前に第五次答申ができておりますから、この点を内閣においては積極的に取り上げていかれるつもりであるかという結論だけ一つ。  もう一つは、これからは個人の献金が中心にならなければならぬということをよくいわれるのですけれども、具体的な環境づくりがない。そこで私は、積極的提案でございますけれども、たとえばアメリカでは、御承知と思いますけれども、少額の政治献金に対して二つの方法をとっておりまして、一つは献金額の半額に対して税額控除をやる、もう一つは、そうでない場合については、献金額について所得控除をやる、こういう方法で、政治献金がやりやすいように便宜をはかっておる。西ドイツにおきましても、政党に献金した個人または法人については、一定額を限度としまして寄付金控除、損金算入という手を打って、そうした努力がやりやすいようにやっておるが、そういう個人的な献金を奨励する意味で、税法上の裏づけをしてやる御意思はないか、この二つだけお伺いしたい。
  198. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私も、竹本さんの言われるとおり、これはどうしても将来は個人献金に中心を移行していかざるを得まいと思います。私も午前中、いかにも政治献金の不正があるような印象を受けるような質問で、それは届け出に対して少しは手落ちがあったわけですが、そういう点で政治資金規正法というものは非常に不備な点がある、これは改正をすべきだという意見でございます。そしていま言ったような点も、これはもう所得控除あるいは無税にするか、そういうことにしないと、個人献金中心に移行するといっても、そういう社会的慣習が日本の社会には生まれてこない、全くお説と同感でございます。
  199. 竹本孫一

    竹本委員 税法上の改正については、これは大蔵大臣に要望しておきますが、いま総理の御答弁にもありましたけれども、やはり個人献金が中心になるのだと言っただけではどうにもなりませんので、そういうことがやりやすいような条件をつくるという意味において、個人献金については税法上の特別な配慮をするということをひとつ検討していただきたい、これはお願いであります。  次に、最も不愉快な問題になりますが、金脈問題であります。  私は先ほど、富士山がどん欲な投資家のためにはらわたを出すようになったというのを見ると申し上げました。私は静岡ですから、汽車の中でよく富士山を見て、このことばを非常にショックをもって受けとめたのでございますけれども、富士山がはらわたを出しておるのを見るのは最も不愉快なことだが、聞いて一番不愉快なことは金脈問題だ。そこでこの金脈問題は、これは野党の同志の皆さんもいろいろと追及を重ねておられますし、また追及しなければならぬ問題だと思います。しかし、これをどこまで持っていくつもりであろうかということになって考えてみると、私は自民党の内政干渉をする意思もありませんけれども、本来ならば、自民党さんの中にこの金脈問題追及の特別調査委員会でもつくられて、まことにすまなかったけれども、われわれ調査したらこういうことだったといって、自民党の中にプロジェクトチームをつくるぐらいの進歩的な決意というものがあることが望ましいのではないかと思いますけれども、これはまあよそさまのことでございますから、私の意見だけ申し上げておく。  しかし、それとはまた別個に、内閣として、三木総理の御答弁を聞いておると、それは田中さんの問題だから、そのうち田中さんがまた御報告になるであろう、こういうような御答弁が多いように思いますけれども、やはりこれは日本の政治の基本的な姿勢に関する問題でございますから、文芸春秋に出たあれをみんながむさぼり読んでおるわけですね。そして政治というものはこんなに腐ったものかと思って、みながっかりしておる。夜眠れなかったという人さえおるのです、あんなの読んでいやになったといって。ですから、この誤解を――誤解か本解かまあわかりませんが、疑惑を解く責任があると思うのですよ。これは政府にある。したがって私は、時期を限って、政府のほうから、来年の何月になれば、国税庁の調査も会計検査院の調査もまとまるはずだから、そのまとまったものをまとめて、文芸春秋で読んだ人がこの政府の発表を見れば、大体話の経過はわかるということを理解させるぐらいの資料をまとめて発表されたらどうだろう。まあ金脈白書といってもいいですよ。いろいろ白書がはやりますからね。金脈白書といってもいい、あるいは政治公害白書といってもいい、名前はどうでもいいが、要するに国民が持っている疑惑を解かなければいかぬ。解けるまでは、やはり野党としては、責任からいっても追及しなければならぬが、お互いに追及している過程において、やる人もやられる人も不愉快だし、まじめに聞いておる国民はもっと不愉快だろうと思うのですよ。だから、そういう意味で、政府のほうから、積極的にまとめて御発表になってはどうかということが一つ。  それから同時に、この問題はやはりきちっとしたケリをつけなければいかぬので、これは総理としてか、自民党総裁としてか、やはり三木さんが、いやなお仕事かもしらぬけれども、国民にわびるべきだと思いますよ。こんな問題を引き起こして申しわけなかったということばが一つなければ、遺憾であるといったような演説だけでは、国民にけじめがつかぬとぼくは思うのですね。この二つをひとつお伺いいたしたい。
  200. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私はこれを責任回避するわけではないのですけれども、竹本さんも御承知のように、田中氏の経済活動というのは、実際私は知らぬのですよ。ああいうふうないろいろな出版物で知識を得たということで、一応個々の経済・実業界から入ってきた人もおられますけれども、どういうふうな事業経営をやっておったのかというのは、実際に詳細に知っていないのでして、一番知っておる者はやはり田中さん自身ですね。そういうことで、田中さん自身総理大臣をおやめになったわけですから、これはたいへんなことであります。だから、何とかして国民の疑惑に答えたい、あの疑惑に対してすべて答えたいということで、一生懸命自分で詳細な調査をしておる、少し時間をかしてもらいたい、そうしたら国民の前にその全貌を明らかにして、国民の理解を求めたいと言っておるので、私はこれが出発点だと思うのですよ。ほかの者は雑誌でといっても、雑誌だけで個人を追及するということは、必ずしも雑誌というものが――田中さん自身からした言い分が、雑誌に対してあろうと思うのです。それだから、自分自身真相を明らかにされるということがまず第一番であって、いま国会などでも、真相究明などに対していろいろおやりになっておる点につきましては、政府として法律の範囲内において極力御協力申し上げる、また違法なことがあれば、三権分立の原則に従って、公正な処置をとることは当然である、こう言っておるのでして、私は責任回避しておるのではないのですよ。それなら、これ以外にいまどういう方法があるかといったら、ないのですね。  また、この金脈問題に関連して、党の体質の改善というものに対しては、自民党総裁として、これを大きな教訓として当たろう、こういうので、これ以上、私に何かこの問題に対して決着をつけろと申しましても、これだけの一つの手続を経ないと、決着をつけるということにはならない。私自身としても、こんな問題が毎日毎日国会で論ぜられる事態を、日本の議会政治のために非常に不幸なことだと思っておりますが、こういうふうな一つの経過をたどらなければ、この問題に対しての決着をつけるわけにはいかないという事態を御了解願いたいのでございます。
  201. 竹本孫一

    竹本委員 私がいま言っておるのは、総理、事務的なことを言っているんじゃない。追及して違反があったから国税庁がどう処分するとか、会計検査院がどういうことを問題にするとかいうことを大いにやりなさいと言っているんではなくて、政治の姿勢の問題として、現に田中さんは確かに責任をとってやめられたのかもしれぬ、おわびを言ってやめられたのかもしらぬが、国会においては一言もおわびを言ってないじゃないですか。だんまり劇の続きで、風とともに去りぬで、消えちゃったじゃないですか。全然、国会の中ではっきりとこの問題について、道義的責任であるか刑事的責任であるかは別として、責任をとってやめる、国民がりゅういんが下がるというか、納得ができる形において結末をつけておりませんよ。私はそれをつけるべきだということを言っているんですから、その点もひとつよく理解をしていただけばけっこうです。御答弁はけっこうです。私が言うのは、事務の問題を言っているんではないということを御理解いただきたい。  それでは、次に外交の問題に入ります。  外交の姿勢の問題について、私はまず問題にしたい。外交というものは、国益を中心にして英知と勇気をもってあらゆる問題に取り組まなければならぬ、その原則の上に立っての不変、不動でなければならぬと思うのです。ところが、日本の外交姿勢というものを見ておりますと、右と左で非常に考え方が違う。姿勢も違うと思うのですね。たとえば、この前フォードさんがおいでになりました。御承知のように、民社党はフォードさんは歓迎すべきものとして、歓迎をするという態度をとりました。同時に、フォードさんに、ラロック証言等の問題もありますから、いろいろ注文をつけなければならぬ問題がある、国民として、民族的立場に立って言わなければならぬ問題があるから、それは言う機会を持ちたいということで、春日委員長がお会いもいたしました。要請もいたしました。私はこれが外交の基本的姿勢でなければならぬと、我田引水ではないが、思うのですね。ところが政府のほうでは、大いに歓迎はされたけれども、どこまで国民の疑惑を晴らすための注文をつけられたか、少なくとも新聞ではあまり明確に承ることができない。一方、野党の一部には、これは御承知のように、フォード訪日反対ということでございました。これはどちらも両極端で、私は、歓迎すべきものは歓迎する、同時に注文つけるべきものは勇気をもって注文をつけるということが基本の姿勢でなければならぬと思うのです。  これは、従来アメリカと日本との特別な関係もありますから、一がいに理論的にだけはいきませんけれども、私はずっと前にこの予算委員会でもたしか言ったことがありますが、アメリカで最も日本をよく知っておるし、佐藤さんとも一緒に写真に写って、その写真がその書物の裏のほうに載っておりましたブレジンスキーの「ひよわな花日本」という本がありますが、あの本の中に書いてある。「日本はこれから外交路線はどう進むであろうか、どこへ求めるであろうか」、アンビギュイティ――「あいまいもことしておる」「これから大きな役割りを果たそうという気持ちはわかるが、路線がはっきりしてない」と書いてある。そして彼は「やはり日本はアメリカと協力関係を深くしていくだろう」ということも書いておりますが、その書き方に注目すべき点があるのです。どういうふうに書いておるか。「日本はアメリカとともに立っておる」――イット スタンズ ウィズ ザ ユナイテッド ステーツ、そしてハイフン、棒を引っぱってありまして、ビハインド ザ ユナイテッド ステーツ――「アメリカのうしろに立っておる」、こう書いてある。これはなかなか意味深長でございまして、やはり私は、日本はアメリカとともに立つ、平等な立場でともに立つということでなければいかぬ。アメリカの家来ではないのですから、アメリカのうしろに立っておる必要はない、対で並んで立つべきだ。これをひとつ私は三木政権にも、そういう批判をアメリカのブレジンスキー教授さえしておるんだから、その点は今後留意してやってもらいたいという、これは要望にとどめておきます。  同時に、日本の野党のあり方についても、私はやはり、センチメンタリズムだけでは政治はできませんから、現実に足を踏みつけた立場に立って外交は考えなければ、いま日本がアメリカを敵に回したり、迎合しろとは申しませんけれども、そっぽを向いて、一体日本で何ができるかということも考えてみなければならぬと思うのです。  そういう意味で、外交の基本の姿勢について一口に申し上げましたが、これは時間がありませんから要望にとどめておきまして、ひとつ外務大臣にお伺いしたい点は、この委員会においてもまだあまり問題になっておりませんけれども、石油の問題を中心に、私は中東の情勢というものはたいへん深刻だと思うのですね。それに対して一体どういうふうなお考えを持っておられるかということでございます。  と申しますのは、いろいろ調査を見てみると、いまアラブに戦争が起こるだろうということについて、起こるか起こらないかということはほとんど問題になっていない、いつ起こるかということだけが問題になっておる。八〇%までは大体もう戦争になるんだろう。あるいは早ければ数週間内だ。テルアビブの市長は防空壕を掘れとみんなに言うんだけれども、間に合わぬと言っているじゃないか。そういう情勢で、これはまたアメリカはアメリカの立場、世界の消費国の立場に立って、石油を守るといったような立場から、石油出兵をやるかもしれないということも心配される。そういう情勢の中で、外務大臣は日本の経済の将来にもきわめて楽観的な意見を持っておられるようだけれども、まず当面の中東情勢について、戦争になるかならないか、その心配はないか、また日本としては、その間に立ってどういう役割りを果たそうとしておられるのか。また、もし問題が起こった場合には、日本の経済にはどの程度のダメージが与えられるものと考えておられるのか。その点について、きわめて簡単でけっこうですが、お考えを承りたいと思います。
  202. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先般、国連の引き離し監視軍の滞在期間延長につきまして、シリアの合意があったこともありましたので、ゴランハイツを中心とした危機は一応緩和されたと考えております。しかし他方でPLO、パレスチナ解放機構のアラファト議長が国連で演説されました事実にもあらわれておりますように、予定よりもかなり早く、かつ広く国際的な認知を得つつある状況がイスラエルを相当に刺激しておる。両者の間の関係がかなり緊張した状態にあるということも、これはマイナスのほうの面でございますが、事実であるように思われます。  この間、わが国としては、国連決議二四二号を中心に、片方でイスラエルの生存権というものは認めつつ、他方でPLOの団結権というものも認める、そういう立場から、両者の合意がジュネーブにおいてあるいは何かの形において成立をして、戦争の危険が終結をするというために、われわれなりの国連等における外交努力をいたし、また関係国がそのように進まれることを希望いたしておるわけでございます。
  203. 竹本孫一

    竹本委員 外務省は外務省なりに取り組んでおられるということはわかりましたが、念のために申し上げますが、外務省の情勢判断というのは、私の知っている限り、あまり当たったことはない。繊維交渉の場合にも、沖繩返還の場合にも、あるいは東南アジアのいろいろな紛争の問題についての場合でも、おおむね見当違いが多かった。手近なところで申しますならば、台湾の問題、中国の国連加盟問題でも、最後の瞬間まで外務省は見通しを誤ったじゃないか。でありますから、われわれなりにとおっしゃいますから、これは要望にとどめますが、情勢判断が外務省は常に甘過ぎるということも事実でございますから、中東の問題は問題がシリアスですから、非常に真剣に受けとめてもらいたいということを要望しておきます。  そこで、具体的な問題、日中平和友好条約の問題でございますが、これはどこまで進んでおって、いつまでにまとめ上げられるつもりであるか。この小林先生と一緒にこの間中国に参りましたときにも、鄧小平さんも非常に前向きに言っておられましたが、その問題について、外務省の日本側としての取り組みはどうであるか、いつごろにこれがまとまるつもりであるか、見通しを聞きたい。  もう一つ、ソ連との関係でございますが、私は、記憶に間違いがなければ、今年中に日ソの間には平和条約の問題について話を始めるということを約束して帰られて、コミニュケでは発表になっておったと思うのですね。それは一体どうなったんだ。それから、来年早々に外務大臣は向こうへ行かれるような新聞の記事がありますけれども、いかなる成算と準備を持っておられるのか。この二つだけを伺いたい。時間がありませんので、簡潔にお願いしたい。
  204. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 日中平和友好条約につきましては、先日も申し上げましたとおり、今後の両国の末長いつき合いの基本的な心がまえを定めるというような観点から、ただいま両国の外交チャネルを通じまして、どういうことを盛り込むべきかという協議を始めつつあるところでございます。出てきます問題等々、まだはっきりいたしておりませんので、いつまでということは申し上げられませんが、できるだけ早く交渉を進めたい、相談を進めたいと思っております。  それから、日ソにつきましては、御指摘のとおりでございますが、たまたま私の前任者木村外相が、ニューヨークでグロムイコ・ソ連外相に対して七四年云々ということもこれあり、場合によって訪ソというようなことを漏らされまして、その後政変があったわけでございます。したがって、そういうこともございますので、私としては、七四年中というのはむずかしくなりましたが、先方はその点は当然わかっておられますので、できれば一月の日程が合えば、合う時期に訪ソをいたしたいと考えております。  これは、その七四年云々の、いわゆる戦後残されました問題を処理する、その中には北方領土問題が当然含まれるわけですが、その最初の交渉になるわけでございますので、従来からの先方の主張、立場等を考えますと、特に北方領土問題はなかなか簡単に解決できる問題とは思いません。しかし、これが平和条約の根幹になる問題である、こういうふうに考えております。
  205. 竹本孫一

    竹本委員 さらに核防条約の問題があるのですけれども、触れる時間がありませんから、要望を申し上げておきますが、これは御承知のように、やがて国会に出てくる批准の問題ですが、三つの前提条件があるはずです。この三つの条件を十分充足させるということは、政府の当然の使命でございますから、万遺憾なきを期してやってもらいたい。  同時に、この核防条約を取り巻く米ソの姿勢の問題でございますけれども、先ほど私は、アメリカのうしろに立っておったのではいけません、並んで立ってくださいということを言いましたけれども、それと関連をしまして、どうもこの間のウラジオストックにおけるフォードさんとブレジネフとの会合等の結論を見ておりますと、一体、核防条約を語る資格があるかどうかというところに問題があると思うのですね。MIRVにしても、いまソ連は一つも持ってないものが千三百二十発持つというのでしょう。アメリカは八百二十二発しかないものを千三百二十発に持っていこうというのでしょう。核を押えるのではなくて拡張することじゃないか。軍縮ではなくて軍拡ではないか。こういう点をやはり日本は日本の立場から、堂々とアメリカにもソ連にも言うべきことは言ってもらわなければ困る。自分のほうは核をどんどんふやす。バランスはいいけれども、高い次元におけるバランスで、核を拡大しながらバランスをとろうとしておる。縮小しながらバランスをとって、日本にも核は持つなというのならわかりますよ。自分たちはどんどんふやしておきながら、日本は持ってはいけない、その条約に判を押せなんというような態度は、覇権主義であるのか、巨大国主義であるのか、理屈は別としまして、われわれとしては納得ができない。世界の平和をほんとうに愛する立場にあるならば、まず米ソは核の軍縮につとむべきであって、こんなに拡大、拡張をすべきでないということ、そして彼らは道義的な資格において、われわれにそんなものを押しつける資格があるかないかということについては、もっと勇気をもって言ってもらわなければいかぬ。この点について、ひとつ政府は十分留意をしてもらいたいということであります。(「答弁答弁」と呼ぶ者あり)心がけてもらえばいいです。  経済の問題に入ります。  経済の問題で、まず第一はインフレーションの問題でございまして、御承知のように、十一月にもまた卸売物価は二五・一%、消費者物価は二四・四%と上がりまして、幾ら何してもどうにも間に合わないほど、物価が上がって困るわけでございますが、ただ解釈の問題として、政府に一つ私は注文があるのですが、三木さんもこの間、インフレの問題は世界の共通の問題である、こういうふうに言われた。田中総理、前の総理は、インフレは世界的な現象である、経済が伸びれば物価が上がるのはやむを得ないのだ、こういうふうに言われたのだけれども、それは認識不足であります。確かにおおむねの国がそうであるけれども、たとえばドイツの物価は、御承知のように、十月、十一月は大体六・五%から七%しか、消費者物価で上がっておりません。去年は日本の大体四分の一である。ことしになって上がり始めても大体三分の一である。これは、世界じゅうがインフレだと言う場合に、ただしドイツを除くと言っていただくならばわかる。それを言われない。あるいはまた共産主義国では、これは、権力の統制とか、資源が豊富だとか、賃金があまり上がってないとか、いろいろの条件がありますけれども、たとえば中国でも、あまり物価は狂乱物価にはなっておりません。世界じゅうがインフレであると言うのは、責任のがれのことばに聞こえ過ぎますので、世界じゅうではない。  私は、二年前にこの予算委員会においても、ドイツのような財政金融政策をとるべきであるということを強く主張したときに、政府は聞かなかったじゃないか。そしてその結果、全部ドイツと逆の手を打ったのです。ドイツが予算を削ったとき、日本は補正予算を一兆円ふやしたじゃないか。ドイツが公定歩合を引き上げたときに、日本は逆に下げていたじゃないか。ドイツが増税をしたときに、日本は減税ばかりをやったじゃないか。全部逆をやって、これで物価が上がらなかったならば上がらなかったほうがふしぎだとぼくは言うのだ。要するに、ドイツのような財政金融政策をまじめに、日銀総裁にもあとで注文するつもりですが、タイミングを誤らずにやりさえすれば、物価を押えることができる。現にできておるのです。それを何か世界現象みたいなことを言って、あたかも日本政府に責任がないような響きを持つ説明は間違いでありますから、今後、世界じゅうがインフレであるという、そういう言い方はやめてもらいたい。それが一つ。  もう一つは、いま申しました日本の財政金融政策のあり方と並んで、どうしてもここで真剣に考えてもらいたいのですが、私どもは民主社会主義政党ですから、我田引水になりますけれども、ドイツが六・五%くらいのときに、スウェーデンは、これは九月でございますが九・八、あるいはオーストリアでも九・九。大体、民主社会主義の国は財政金融政策よろしきを得て、物価が上がらないように押え込んでおる。だからそのことをいま申し上げたのですが、この財政金融政策のあり方について、一つだけ私は言わなければならぬのだが、特に財政金融政策はあとで少し申すことにしまして、まず公共料金の問題について、これは主として経企庁長官福田総理に、ひとつお伺いをしてみたいと思うのです。  公共料金を上げるか上げないかということは非常に問題で、福田総理は洗い直しをやるのだということはよく言っておられますけれども、私はその洗い直しについて一つ条件があるのです。大蔵省あるいは政府の立場で洗い直すということももちろん大事でございますが、もっともっと根本に洗い直さなければならない問題があると思うのです。それは心の問題もあるし機構の問題もある。  公共料金を上げるという場合に、いままで説明を聞いておりますと、みんな赤字の報告をするだけなんですよ。一体ここに、どんな真剣な民主的な、しかも積極的な労働秩序があるか。それは何を検討したか。あるいは会社が銀行から金を借りてこの危機を突破しようと思えば、銀行はいろいろな条件をつけますが、そういうような企業努力をどれだけやった上で、その公共料金の値上げを要請するのであるか。そういう問題について、さっぱり政府のほうのやり方については私は納得ができません。ただ、赤字が出ましたからよろしく、値を上げます、郵便はがきは三十円にします、たばこも五五%上げます、こういうことで、どれだけ真剣に企業努力をやりながら、しかも赤字が出たので国民にもがまんしてもらいたいというのであるか、その辺がさっぱりわからない。  そういう意味で、まず一つお伺いしたいのは、これは運輸相や郵政大臣にも関係があるから、そちらから聞いてもいいですが、一体、皆さん方がやっておられる国鉄にしても郵便事業にしても、企業である以上は、企業経営の原則というものがなければならぬでしょう。その経営原則というのはあるのかないのか。また、皆さん方のやっておられる事業の労働秩序というものは、あれで労働秩序がありと考えておられるのかおられないのか。さらにもう一つ。これだけ赤字が出ましたという場合には、どれだけの企業努力をやった上で言われておるのか。  簡単な例を言いましょうか。たとえば今度ははがきがぐんと上がるということになりますね。はがきを売っておる人は堂々たる力の強い男の人が売っておるが、はがき十枚差し出すのは女の子でけっこうですよ。労働力がこれだけ足らないとか、あるいは賃金が上がって困るとかいう問題がありますときに、労働の再配置についてどれだけの努力をしておられるか、そういう点も伺いたい。  私はこの前ドイツに行ったときに、駅で切符を切っている人が足が片一方ないというのを見てびっくりしまして、ちょっと質問をしましたところが、いや、切符は手で切るのだから、足でやるのじゃないのだ、これは身障者をいたわる意味で、ちゃんとここで労働してもらっておるのだと言われて、身障者に対するいたわりの気持ちからいっても、あるいは労働力の配置計画の面から見ても、感心をして帰りました。日本では、普通の女性で十分間に合うところに大の男がすわって、年功序列で賃金だけ上がっておる、そして結果から見て赤字だなんといったのでは、われわれは納得できない。一体、公企業、あるいは公共料金といわれる値上げを要請される方々は、どれだけの自主的な企業努力というものをやっておられるか、経営努力というものをどれだけやっており、経営原則というものを持っておられるか持っておられないか、その点だけ聞きたい。
  206. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 先般、衆議院で塚本さん、それから参議院では藤井さんから、公企体の秩序の問題、これを承りまして、私は非常に感銘を受けたわけなんです。これは私も詳しいことは存じませんけれども、そういう種類の問題がある。これはどうしても思いを新たにしてこの問題と取り組まなければならぬ。それを抜きにして公共料金問題を論ずるというわけにもいかぬじゃないか、こういう気持ちだったわけですが、私はぜひ、公共料金を扱うそういう当局に対しましては、そのことを要請したい、こういうふうに考えます。  それから、公共企業料金の問題につきましては、これは竹本さんも非常によく御承知のとおり、むずかしい財政論があります。しかし、私の気持ちとしては、これはいまとにかくインフレ問題に一刻も早く終止符を打つ、これが最大の課題だ。そういうことを考えますと、普通平常時の財政論だけではいかぬじゃないか、そういう気持ちがするのです。しかし、これは予算編成とも非常にひっからまりの多い問題でありますので、財政当局ともよく相談して、物価関係に支障のないようにこの料金問題はさばかなければいかぬ。私はとにかく、なるべくこれを抑制するという方向で相談をしてみたい、こういうふうに考えております。
  207. 村上勇

    ○村上国務大臣 企業努力は、従来もいまも変わらない努力を続けておるのでありますが、郵便料金につきましては、すでに先生御承知のとおり、四十九年度予算編成の際に、すでに郵政審議会からは、郵政省の諮問に対して、その諮問の骨子を尊重するからというので、値上げを許されたのでありますけれども、いわゆる政府の物価抑制というこの線に沿って、昨年は見送ったのであります。すでにその当時の赤字が六百九十九億円であった。その後、本年五月のあの公労委裁定による二九・九%というまことに大きなベースアップのために、本年度の赤字は千四百億円ということになりまして、いま御審議を願っておる補正予算でその措置をいたしておるのであります。そういうようなことで、今後三年間を計算してみますと、約八千億円というものがどうすることもできないというような状態でありますので、できる限り押えようと思っておりますけれども、郵便事業はそのほとんど、九〇%が人件費でありますので、関係方面ともよく相談いたしまして今後措置いたしたいと思っておりますので、さよう御了承願います。
  208. 竹本孫一

    竹本委員 私が言うのは、大部分が人件費だから、大体その人件費を使ってやるときに、親方日の丸ということばもありますが、生産性向上に反対しながら、赤字を出しては困りますとは、一体どういうことですか。公企業は公企業の立場において、生産性の向上に真剣に取り組まなければならぬと思うのです。公の税金でやるならなおさらのことだ。それが生産性向上には反対の組合が多いじゃないか。そんなことで赤字が出るのはあたりまえじゃないか。生産性向上には反対する、さらに全体として経営というものに対する真剣な取り組みがないと思うのです。  私は、資本主義は最も経営に真剣であるかと思ったら、必ずしもそうでない。逆に、経営というものはイデオロギーでどうでもいいのかと思ったところが、共産主義の国をいろいろ勉強してみると、そうでないのです。たとえば、皆さん御存じないかもしれぬから少し申し上げますよ。スターリンが「レーニン主義の基礎」という本を書いておりますが、その最後のところに何と書いておるか。これから共産主義ソビエトにおいて必要なことは、ソビエト的熱中プラスアメリカ的ビジネスと書いてある、これが新しい革命家だというのです。イデオロギーがなければならぬからソビエト的熱中だ、しかしプラスアメリカ的ビジネスがなければだめだということをいっておる。日本の企業にはイデオロギーもろくにないが、ビジネス、能率というものは一体どうなっているかということをぼくはいま問題にしておるのです。  さらに、これも皆さん奇異に感ぜられるかもしれぬが、レーニンが革命をやりましたときに、われわれはこれからソビエトの経済をになっていくんだ、一番必要なものは経済を振興することだ、諸君は革命的なだぼら吹きをやめろ、諸君は簿記を学べ、こう言ったのです。これはレーニンが言ったのですよ。諸君は簿記を学べ――私は、日本の国鉄総裁にも郵政の当局にも簿記を学んでもらって、もう少し経営原則というものを確立してもらいたいと思うのだ。それがなければ、赤字だ赤字だ、値上げだ値上げだと言っても納得できない。そうでしょう。総理、どうですか。
  209. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 全く竹本議員の言われるとおり、そういうふうな見地で、これからの難局に当たるのには、いままでの発想の転換が必要である。発想の転換には、竹本さんの御指摘になったようなことは、重要な問題を含んでおると傾聴をいたします。
  210. 竹本孫一

    竹本委員 経営ということで、ひとつついでに農林大臣にこれを伺っておきますが、私は、日本の農業も簿記を学んでもらわなければ困ると思っておりましたところが、きのうの朝のNHKのラジオで、農業にも簿記が要るのだ、これを学んで近代経営にしなければだめだということを、七十六歳の老人が話しておられました。そこで考えるのですが、私は、日本の食糧にしても何にしても、大体アメリカの二倍や三倍になっている。これは日本の農民がなまけているからじゃないのです。経営条件が悪いからなんだ。構造改善が不徹底だからなんですね。なまけている問題とは違うと思うのです、これは農民の場合は。そういう意味からいえば、自然的条件や社会的条件、いろいろの条件を整えてあげるということが、これからの農業が日本の大きな食糧自給の重大課題を解決する根本だと思うのです。  そこで、二つ農林大臣にお伺いするのだけれども、簡潔に御答弁をいただけばいい。農業は、私に言わせますと、農ではあるけれども業ではないのです。近代的企業にはなっていない。そろばんはとれないようになっているんだ。だから農業を農業たらしめるために、その近代化に真剣に何年計画かで取り組むという決意を持たれなければ問題にならぬと思うが、それはどうか。  その上で、きのうもお話が出ましたけれども、相続税の問題を解決しなければならぬと思うのです。しかし、相続させてみてもあとは経営が成り立たないような、いまの農業の基礎的条件ではだめだと思うのです。だから相続税の解決について熱意ある取り組みも願いたい。同時に、相続されたあとの農業が業として、近代的企業として成り立つように、基礎構造の改革についていかなる御決意であるか、この点を伺いたいですね。
  211. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 御存じのように、最近の世界的な食糧情勢は非常に逼迫をしておるわけでありますが、そういう中において、わが国としては、これから自給力を高めていくということを基本的に考えていかなければならぬわけであります。いま先生の御指摘のように、企業経営として成り立っていくような農家のシェアを高めていくということも必要であると思います。しかし、農業の形態は専業農業――社会的あるいは地理的、気候的ないろいろな条件等の制約もあるわけでございますが、そういう中にあって、生産基盤の充実等をはかって、ひとつ近代農業を確立していくように努力したいと思います。  それから、いまお話のありました農家の相続税の軽減措置につきましては、政府部内で検討もいたしておるわけでありますが、私といたしましても、最近土地が値上がりをして、それによって農家の相続税の負担が非常に過重になっておる、そこで、相続する場合に農地を手放さなければならぬというふうな事態も起こっておりまして、農業経営を維持する上に支障も起きておる今日でございますので、軽減措置については積極的に努力をしていきたいと思います。
  212. 竹本孫一

    竹本委員 公共料金の問題について、さらにもう一つだけ念を押しておきたいのでありますが、企業の体制、あり方を変えなければだめだ、その上で赤字の問題に取り組むということになるわけですけれども、しかし、ここにまたもう一つ問題があると思うのです。それは、たとえば国鉄の運賃を上げまして、赤字は解消するかというと、逆に倍になったでしょう。それは何だ。結局賃上げの問題です。しかし私は賃上げを批判しようとは思いません。大体において賃上げというものは、物価騰貴をあとから追認する形のものが多いのですから、労働者にだけ犠牲を要求するということは間違っておると思います。  ここで、福田総理が真剣に取り組もうとしておられるインフレの問題について申し上げますが、幾ら公共料金を上げてみても、物価が上がる、したがって賃金が上がらざるを得ない、そして上げたものはまたどこかへ消えちまった。まあ国鉄もそうでありますが、そういう悪循環を幾ら繰り返してみてもどうにもならぬと思うのです。そこで、公共料金を上げなければならぬというのは、ここに大平さんがいらっしゃるけれども、大蔵省事務当局の事務的良心からいえば、当然だと思うんですよ。しかし、いまはその事務的良心を乗り越えて、政治判断が必要ではないか。すなわち、賃上げをやって、毎年三〇%だ、四万円だ、三万円だと重ねていったら、どこまで行くかわからない。  そこで、ここで私は、イギリスではないが、ひとつ社会契約の考え方を取り入れて、政府もここまで公共料金を押えて、たとえば私の案でいえば、消費者物価が一けたになるまでは公共料金を上げないという約束をされたらどうかと思うのです。一けたになるまで上げないということになれば、政府は早く上げたいでしょうから、早く一けたにしなければならぬというので、政府自身も縛られる。同時に、一けたになるまでは上げないというんだから、それならば、労働組合にも自粛をしてほしいということが、道義的な背景においても、堂々と言えるじゃないか。自分はどんどん物価を上げておいて、そして労働組合にはがまんしろというようなことは通る話じゃありません。だから、ここで一つの大きな決断で、三木内閣の大旋回をやるためには、公共料金は物価が一けたになるまでは上げない、そのかわりに労働組合も自粛してほしい、こういう訴えをされたらどうかと思うが、その決意はありませんか。もしそうでなければ、幾ら公共料金を上げてみたって、それ以上に賃金をまた上げてしまって、上げたやつはみんな賃金で食われてしまって、赤字は逆にふえているじゃないか。こんなばかな悪循環はやるべきでないと思いますが、いかがですか。
  213. 福田赳夫

    福田(赴)国務大臣 一けた云々の具体的な問題になりますと、お答えいたしかねますが、考え方としては、私は全く同じなんです。やっぱり政府があらゆる努力をして、物価を下げなければいかぬ。その環境を労働組合も尊重してもらいたい。そうして何とかして物価と賃金の悪循環を断ち切らぬと、日本経済はたいへんなことになるだろうと思うのです。私はその分岐点というものは今度の春闘だろうと思う。この春闘を間違うということになれば、これはもうやっぱり賃金、物価の悪循環が定着するという方向へ日本経済は行っちゃう。そうなれば、これはインフレどころの話じゃありません。これはわが国の対外競争力、ここまでくるのです。もう日本経済はほんとうに壁にぶち当たるというところまで行っちゃうんじゃないかということを心配し、そのためには、ここで政府は難きを忍んで、まあ財政論からいえばむずかしい問題ではありましょうけれども、公共料金問題なんかは、ひとつこれは政治的な判断を必要とする段階ではあるまいか、そういうふうな考え方なんです。貴重な御意見として承ります。
  214. 竹本孫一

    竹本委員 政治的配慮が財政原則に優先しなければならないという福田総理のお考えは、私は全く同感でございます。ただ、一けたか二けたかという問題でございますが、たとえばいまの一五%の問題にしても、一五%に絶対するという保証を、三木さん、内閣はなぜやらぬかということです。あれは努力目標でしょう。絶対一五%にもしできなかったら、内閣総辞職でもしますというぐらいの約束をすれば、それは労働者だって納得しますよ。一五%は努力目標でしたけれども、うまくいきませんでした、海外のいろいろな条件がありまして、なんというような中学生の論文みたいなことを言ったのでは、大衆は納得しません。だから政治原則が優先する。私が一けたと言う点については、福田総理と意見が違うかもしれませんが、それにしても、努力目標なんていうような、明確でない、でたらめなことを言っておったのでは、大衆は納得しないということを十分腹に入れてもらいたい。要望だけいたしておきます。  次に、日銀総裁にひとつお伺いをいたします。  まず第一は、日銀総裁の決意の問題でございますが、新総裁になられました森永さんに、私はたいへんきびしい条件をつけるわけでございますけれども、かつて西ドイツの中央銀行の総裁でありましたフォッケ博士が言ったことばが二つあります。一つは、ドイツの内閣、政府はたびたびかわるであろう、しかしドイツ民族は永遠である、この永遠なるべきドイツ民族のマルクは、その価値が永遠に安定したものでなければならぬ、それを守るのが中央銀行総裁の使命である、こう言った。まことに至言であります。また彼は、通貨政策には勇気が要る、すなわちしばしば不人気に耐える勇気が必要である、こう申しました。この二つともまことに名言であります。  佐々木前総裁は非常に聡明な人で、私も敬愛しておりますけれども、何となく勇気が足らなかった。インフレマインドの田中内閣に対して彼がどれだけの抵抗を示したかということについて、私は非常に遺憾に思っているのです。その意味で、決意の問題について一つ私は不満がありました。  もう一つは、あの円の切り上げというか、金融引き締めというか、この問題に取り組む時期が、大体において先ほど申しました西ドイツの場合に比べ六カ月おくれました。大体、日本銀行の手を打っているのは、常に六カ月おくれておると思えばいいのです。そのタイミングが大事だ。私はスイス国立銀行総裁に会ったことがありますが、彼が、ドイツのインフレ、スイスのインフレについてお話をしたときに、インフレ問題で一番大切なものはタイミングです、こう言った。そのタイミングを、前の日銀総裁は誤ったように私は思っておるのです。これは見解の相違もあるでしょうけれども。  そこで、森永総裁にまず第一に伺いたいことは、この不人気で不愉快な仕事でも、断じてやるだけの勇気と決意を持って御就任を願ったかどうか。また、今後はタイミングを誤りなくやられるだけの御決意と構想があるかという点について、お考えを承っておきたいと思います。
  215. 森永貞一郎

    ○森永参考人 まだ新任早々でございまして、よく勉強をいたしておりませんが、ただいまは竹本議員からたいへんな御激励をいただきましたことを、たいへんありがたく思っておる次第でございます。  日本銀行の、最大と申しますか、あるいは唯一の使命と言ってもいいかもしれませんが、とりもなおさず通貨価値に対する国民の信認の維持ということでございまして、私といたしましても、この使命達成のために、日本銀行に与えられましたあらゆる政策手段をタイミングをあやまたず活用することによりまして、粉骨砕身、職責を全ういたしてまいる決意でございますので、御了承いただきたいと存じます。
  216. 竹本孫一

    竹本委員 そこで、もう一つだけお伺いしておきたいのですが、日本銀行法というのは昭和十七年二月二十四日にできた法律であります。したがいまして、これを読んでみると、第一条には「国家経済総力ノ適切ナル発揮」ということがうたってある。第二条には「専ラ国家目的ノ達成ヲ使命トシテ運営セラルベシ」と書いてある。お聞きになればすぐわかるように、国家目的、国家総力の発揮というのは、どちらも戦争用語でございます。したがいまして、昭和十七年当時の軍国の要請に応じてつくられた日銀法は、福祉国家建設だといわれておる今日の日銀法の基本法律としては、あまりにも時代とかけ離れておると思うのです。昭和十七年から三十何年たっておる。そして、時代はまるきり変わって、戦争から平和へ、高度成長から福祉へと変わっていった。その中心の中央銀行が、三十数年前の古い法律で――古い頭でとは申しませんよ。古い法律で中央銀行の使命を果たそうとしても、それは無理である。新しい衣にひとつ脱ぎかえなければうそである。日銀総裁としては、この日銀法の改正には真剣に取り組んで、今後の金融政策のあり方というものは庶民のための金融であるということの明確な使命感を打ち出し、通貨価値の維持ということを第一条にうたってもらいたい。現に金融制度調査会の答申にも、「日本銀行国民経済の健全な発展のために通貨価値の安定をはかることを使命とする」と書いてある。これがほんとうですよ。通貨価値の安定のためには、大蔵大臣とも激突をする、総理大臣ともけんかをするくらいの信念と使命感がなければ、日本のインフレはおさまりませんよ。その点についてお考えを承りたい。
  217. 森永貞一郎

    ○森永参考人 お話のごとく、現行法は昭和十七年の戦時立法的な色彩が濃厚でございまして、表現の問題のみならず、内容におきましても、今日の時勢に適合しないものが多々含まれておることはお話のとおりでございまして、したがいまして、昭和三十五年に、金融制度調査会でも改正の答申がなされ、四十年にはその立法の準備も行なわれたのでございましたが、改正に至らずして今日に至っておるわけでございます。私といたしましても、できるだけ早い機会に改正せられるべきものだとは心得ておるのでございます。しかしながら、さしあたっての問題は運用でございまして、運用の面におきましては、現行法にも通貨、金融の調節並びに信用制度の保持育成とございますように、それがあくまでも日本銀行の本来の任務であるわけでございまして、運用に気をつけまする限りにおきましては、いますぐに改正しなければどうにもならないというような差し迫った問題もないやにも見受けられるのでございます。  加うるに、昭和四十年に立法の準備が行なわれたのでございますが、その後の十年間におきまする経済情勢の変化はまた相当大きいのでございまして、日本銀行法のごとき、いわば金融の基本法を改正するに際しましては、よほど慎重な検討と準備が必要かとも思う次第でございまして、今後そういった周到な配慮のもとにこの問題が取り上げられるであろうことを、私といたしましても期待をいたしておる次第でございます。
  218. 竹本孫一

    竹本委員 第一の運用論の問題は間違っておると思います。これは、たとえば日本の旧憲法、マッカーサーがやってきましてこの憲法を変えろと言ったときに、日本の政府あるいは日本の指導階級の大部分は、この憲法はきわめて抽象的に書いてあるのだから運用で間に合う、こう言ったでしょう。美濃部達吉博士もそう言われたと思うのですよ。ところがマッカーサーから原案まで突きつけられるような事態になってしまいました。運用には限界がある。法律が生まれたには歴史的背景がある。したがって運用で間に合うなら国会は要らないです。みんな運用すればいいのです。国会で新しい法律をつくるのは、運用だけでは間に合わない限界があるからです。それは政治判断で、森永さんも大いに検討していただいて、運用だけで間に合わないと思ったならば、時代の要請に合ったような日本銀行にするために、日銀法の改正に取り組んでもらいたいということ。  特に運用の問題で大事なのは、政府の言いなりほうだいになってはいけないということですよ。これは三木内閣を前にして申しわけないが、田中内閣のように前へ前へと進むときに、日銀が一体何回ブレーキをかけましたか。だからこんなインフレになったんですよ。「信なくんば立たず」、森永さんは三木さんのことばを引用されて記者会見をやっておられましたが、文字どおり、通貨に対してこそ、信なくんば立たずですよ。このインフレマインドを消すためには、日銀は独自の使命感の上に立って、き然としてやってもらいたい。大蔵省銀行局日銀課であってはならぬ。これだけはっきりお願いを申し上げておきます。  次に、銀行法改正についてでございますが、これは一口だけ公取の委員長にも聞きたい。まず初めに総理にお伺いしたいのです。  日銀法が昭和十七年で、いま言ったように戦争目的みたいなことばかり書いてある。使命感を果たそうといったって、果たせないようにワクがはまっている。だから、日銀はどこまでも中立に通貨価値の維持のためにやらなければいかぬ。同時に銀行法というのは、大蔵大臣もいろいろ御検討いただいておるかと思いますけれども、昭和二年にできた法律なんです。昭和二年というと、約五十年前の話ですよ。われわれが生まれてなかったか生まれているかというときの問題だ。(笑声)その昭和二年の銀行法に書いてあることは、金を預かります、貸し付けますと書いてあるだけですよ。第一条を見ても、第二条を見ても、今日の銀行の社会的使命というものは何も書いてない。だから、きょうは銀行罪悪史をひとつ申し上げようと思ったけれども、時間がなくなりましたから、残念ながら割愛をいたします。  ただ言えることは、今度大口融資を規制するということになりましたけれども、三木さん、現実にあの商社の買い占めのときでも、私は思ったのです。自民党の皆さんにも考えていただきたい。物価はどんどん上がる、銀行は商社に金は幾らでも貸す。自己資本の三十倍以上貸したのですよ。三万円持っていれば百万円の物の買い占めができるのですよ。そして物価がどんどん上がる。銀行は担保をとっておりませんよ。担保なしで金は幾らでも貸してくれる。このときに金を借りて物を買い占めなかったら、買い占めないほうがばかと言われますよ。そういう環境をつくっておいて、そして商社はけしからぬといって、ここへ商社を呼びつけたのは、ぼくは少しとんちんかんだと思いますよ。経済を少しまじめに考えてみれば、そういう条件をだれがつくったかということが問題なんです。  そういう意味からいって、担保はとらずにどんどん金を貸してやる。たとえば一つの例を言ってもいいですよ。ある会社は、九千七百四十九億円借りておるのに、担保に入れておるのは千三百二十五億円だから、担保の割合は一三・六%です。中小企業は担保がなくて困っておる。連鎖倒産で、担保がなくて困っておるときに、商社は一割、二割足らずの担保を入れれば、あとは幾らでも金は借りられるというときに、その金を借りて物を買い占めて、おまけに国会でしかられたというのでは、商社もかわいそうかもしれぬ。別に同情はしませんけれども。そういうことをつくったのは銀行でしょう。だから、銀行法の改正ということはやはり真剣に考えて、そういうことができないようにしようというて、われわれがわいわい言ったら、今度は大口融資規制ということになったけれども、あれは銀行局長通達ですよ。  そこで、政治家として、国会の中で三十数年の大先輩の三木さんに申し上げますが、法治国ですから、法律に基づいてのみ行政はやるべきなんです。自分の預かった金を貸してはならぬといって、何の根拠で大蔵省は銀行局長通達でやりますか。銀行行政の、やってもいいかやっても悪いかということは、大蔵省の設置法に書いてあるでしょう。あれはなわ張りと守備範囲をきめているのです。どこまでいけるかということは、法律の根拠が要るのですよ。それを銀行局長の通達で、これ以上貸してはいけないとやる。何を言うのですか。それ自身が問題ですが、それは別としても、そういうような無理ばかりしなければならなくなっているということが今日の銀行法です。もう四十何年前だ。そういう銀行法の改正については、日銀法と同じように、福祉国家建設のあり方を考えながら銀行の社会的使命を位置づけた、そういう銀行法につくってもらいたいと思うが、お考えはいかがですか。
  219. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 銀行法は五十年も前のものでございますから、やはり時代に即応しない面もあって、これは大蔵省に再検討をしてもらう考えでございます。
  220. 竹本孫一

    竹本委員 これは大蔵大臣にも、いずれまた大蔵委員会においてもう少し具体的にお話をいたして、論議を深めてまいりたいと思います。  何と申しましても、今日一番大きな力を持っている銀行は、銀行法を見ても何も使命がない。金は預かる、金は貸しますと書いてあるだけだ。大企業に対してどれだけ節度を持たなければならぬか、中小企業のためにどれだけ金を回さなければいかぬか、住宅ローンについてどれだけ配慮をしなければならぬか、何も書いてない。こういうような銀行法では問題になりませんし、今日の銀行のあり方が、われわれから言うと、全く社会の新しい要請に沿っておりませんが、きょうは時間がありませんから、総理の御検討をお願いして、次へ参りまして、最後に、公取委員長に一口だけお伺いしたいのです。  今度の独禁法の問題でございますが、私はこの独禁法の取り扱いはなかなかむずかしいと思いますが、まず第一に公取委員長から伺いたいことは、これは市場経済と申しますか、あるいは資本主義経済をむしろ守るものである、こういうマナーをちゃんと正しておかなければ、それこそ、それが資本主義経済、自由市場経済というものに全面的な不信感を招くものです。  総理、私ども民社党は混合経済の立場に立っているのです。したがって、あるものは国営にしなければならぬと考えております。しかし大部分のものは、プライベートイニシアチブを生かしながら、自由なる創意を生かしながら、国民にがんばってやってもらわなければいかぬ、公正な競争をやってもらわなければいかぬ、こう思っておるのです。だから、私どもが独禁法に熱心に取り組むのは、われわれは何でも国営にやればよいという考えではなくて、やはり資本主義のいいところはある程度まで残しておきたい。その市場経済の一番いいところは競争原理。その競争原理が十分機能しないようなものを機能させるために、独禁法その他の大きな改正を考えておられるのだろうと思う。だから、結果から見れば、これはむしろ資本主義を守るものである、自由市場を守るものである。これに反対する通産省とか財界の一部とかは、何を考えているんだということですね。中身についていろいろ注文があるのは当然ですよ。私にもありますよ。しかし、独禁法改正ということで、新たなる時代的要請に沿いながら、正しく自由企業を守っていこうという考えであろうと思うが、公取委員長、いかがですか。
  221. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 基本的な考え方は、ただいまおっしゃったとおりであります。自由主義体制といいますか、私企業を基盤とする経済体制、私はこれに相当な意義があると思います。経済を最も効率的に運用するのはどういう方法かといいますと、これは共産主義というふうな全体主義の立場もありますけれども、私どもは、従来行なわれていた日本の私企業を基盤とする体制が最も効率的に運用されるならば、それは確かに日本の経済の発展、国民の福祉に非常に寄与するものであると思います。そういう確信をもって原案をつくったような次第でございます。
  222. 竹本孫一

    竹本委員 したがいまして、独禁法に対する財界の一部等にある反対論というものは、それでは自分たちは日本の経済をどこへ持っていくつもりであろうか、私はそれを深刻に疑問に持つのですね。そういう意味で、公取委員長はいま述べられたような自信と信念をもって、ひとつがんばってもらいたいと思っておるのです。  ただ、個々の問題については、私も問題点があると思います。私も問題点を持っておるのです。たとえば企業の分割といったような問題につきましても、これは技術的に考えてみても、なかなかむずかしいと思うのです。たとえばビールが一つの例になります。そのビールは、麒麟麦酒が六一%シェアを持っておる。これを分割する。分割して二つに割ったって、やはり寡占状態は変わらない。あるいは麒麟麦酒という商号は一体どこへくっつけるか。同じグループが全部つければ、やはり麒麟麦酒の独占的な支配というものは同じことになっちゃう。そういう意味で、どういうふうに割るのか、どういうふうにあとの商号はつけるのか、そういう点から考えてみましても、なかなかむずかしい。  それからもう一つ大きな分割についての問題は、やはり私はスケールメリットというものはあると考えておるし、尊重しなければならぬと考えておるのですが、独占的状態ということそれ自体で、もう分割する、あるいは原価公表だ、こういうふうにいくというところに少しむずかしいところがある、問題点があると思うのです。  そこで、これは独禁法が出た段階においてさらに具体的にお互いに詰めていけばいいと思うのですが、いずれにしても「この姿勢の問題として、これは三木内閣の新しい目玉商品として、やはりどこまでも押してもらいたい。政治資金の規制と同じです。ぐっと押してもらいたい。  ただ、これは私どものもう一つ積極的な提案になりますが、独禁法というのは、総理も通産大臣もよく御存じのように、自由な、公正な競争をやらせることによって、価格を下げるという法律ですね。フェアコンペティションというやつだ。フェアプライスじゃないのです。そこで、日本の経済には大体三つの層があると思うのですね。先ほど申しました自由競争を大いにやってもらわなければならぬ分野、国営でやらなければならぬ分野、それから独占、寡占の状態である程度押えていかなければならぬ分野、こう三つに分かれていると思うのです。独禁法が特に大事なのは、その自由に競争をする、公正な競争をやらせるということなんだ。ところが、ビールにしても、ガラスにしても、フィルムにしても、もう競争そのものがなくなった社会条件ができている場合が多い。それをどう押えるかということになると、これは主として価格の問題だ。そこで、独禁法というものは、フェアコンペティション、公正な競争をやらせるための独禁法なんです。ところが、競争そのものがなくなっている条件のできたそういうところのものに、法律で処置していこうというところに少し無理がある。  そこで私どもは、やはり寡占状態については、寡占として独立な法律で取り締まっていくということにしたらどうか。すなわち、業種にしても品種にしても、これこれこれこれは寡占業種、寡占商品であるということにする。そして寡占商品については、値上げをしようという場合には届け出をさせる。届け出をさせたものは、当局が見て、これはどうも不当な値上げだということであれば、引き下げの勧告をできる。勧告を聞かない場合に初めて原価の公表をさせる、あるいは引き下げの命令も出すということにしたらどうか。あるいはその場合に、どうしてもできなかったら分割も考えていい。すなわち、事前に一応電圧をおろして、まずは話し合いだ。届けをさして、資料を検討して、値下げの勧告をしてみて、それで聞かない場合に最後の手を打つ、こういうふうにするために、いまの独禁法では、それを全部持っていくということはもともと少し無理がある。そういう意味で、独禁法の限界というものがあるわけです。だから独禁法は、自由競争を公正にやらせるという分野に独禁法として強くいく。しかしながら、寡占状態ができた第二の段階のものについては、その寡占の状態に応じた新しい法律体系をつくる。そしてまた、あるものは国営なら国営をやる。三つに世の中が割れておるのに、二つで縛っていこう、こういうところに少し無理がある。私どもは、そういう意味で、寡占の問題については、別個独立の、別建ての法律で取り締まるべきであると思うが、この点について、公取委員長はどういうふうにお考えになるか。
  223. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 お説のような御意見もあるかと思いますが、私どもは、独占とか寡占とかいう問題は、それこそ独占禁止法の本来の対象となる問題である、そういうふうに理解しておりまして、アメリカで初めて独占禁止法の元祖ともいうべきシャーマン法ができたときも、まず先にあげているのが、独占をしてはならない、独占をはかってはならぬ、こういうことになっておりますし、それから、ただいま仰せられました寡占の問題で非常に典型的な例は、西独にすでにあるわけです。昨年法律が通って、寡占企業を定義しております。寡占ということばは使いませんで、市場支配力の乱用というふうなことで、あまりにも過大な市場支配力を持ったものは、その行為について、これをはっきり規制する、乱用を禁止するということになっております。乱用を禁止するとは何であるかといいますと、価格が不当に形成された場合には、これはカルテルという形をとらなくても、その価格に対して政府が介入する、こういうふうな規定になっておりますので、これは独禁法にかわる同じような――名前は違いますけれども、独禁法なんです。  西独の例は一つの参考かと思いますが、ただ、わが国でそれをいまやれるかということになりますと、あの規定はたいへん広範な範囲に及ぶものでございますから、ちょっと現実的でない。そういうことから、多少私どもとしては、現実に即したような、原価公表などの規定を織り込むべきである、こう考えておりますが、やはり別建てでなくて、独禁法の中の本来の目的である、こういうふうに考えております。
  224. 竹本孫一

    竹本委員 独禁法の問題につきましては、また機会を改めて十分論議ができると思いますので、このぐらいにして、最後に、大蔵大臣がいなくなったけれども、これは三木内閣の姿勢の問題として、きょうは財政金融の問題は全部抜いたような形でございまして、残念でございますが、これは大蔵委員会に譲るとしまして、最後に目減り補償の問題を一つだけ申し上げて、終わりにしたいのです。  これは私どもが一番最初に取り上げまして、また、われわれの仲間である全繊同盟でも、結婚の支度をと思って金を預けた、あるいは子供の教育のためと思って金を預けたのに、全部だめになっちゃった、そこで憤慨をしまして、目減り補償ということでいま裁判を起こしておることは、総理も御承知のとおりです。ところが政府の答弁は、インフレを押えることが一番大事な目減り補償だ、こう言いますけれども、それは一カ月後にインフレがおさまってくれるならそれでいいけれども、現実には何年後かわからない。こういうときに、私どもはそういう意味で、この目減り補償というものは、インフレは容認するとかなんとかへ理屈を言わないで、現に事実がそうなんだから、それに応じたインフレに対する補償を考えるべきだと思います。ところがそれに対して、一方ではインフレを押える、一方で言われているのは、この間〇・五%だけ金利を上げた、あれもそういうことに対する配慮だろうと思うのですね。私はインフレ弱者ということばはあまり好きでない。弱者なんというような、いばったようなことばは大体きらいですが、インフレの被害者だ。このインフレ被害者に対して政府は何を考えておるか。  特に、この間〇・五%上げましたが、たとえば、大蔵大臣御承知のように、銀行の預金が四十四兆円あります。そして物価は最近、荒っぽく押えて二四%ぐらい上がっておる。それに対して〇・五%上げてみたところで、割合は物価騰貴に対して二・〇八%です。それでは、三木内閣の社会保障とか社会福祉とか、あるいは社会的不公正の是正というのは二・〇八%だということになりますよ。二%の問題だ。そういうことではいけませんので、大きく目減りしておるもの、たとえば四十四兆円で二四%物価が上がる、そういうことでわずかに〇・五だけ補償してもらいますと、私の計算では十四兆三千億円ばかり大衆は損なんです。この目減り補償をどうするかということについては、もう少し誠意の片りんを示すべきであると思いますが、大蔵大臣のお考えを承っておきたい。
  225. 大平正芳

    ○大平国務大臣 竹本さん御指摘のように、インフレ対策には二つございます。インフレを起こさない、あるいはインフレ自体を押え込むという問題が一つでございます。一つは、あなたが御指摘のように、すでにインフレートいたしました犠牲者に対しましてどういう対策を講ずるかでございまして、政治といたしましては、両方とも周到な配慮をしなければならぬことは、申すまでもないことでございます。私どもといたしましては、まず最初に、新たなインフレを高進させないようにすることにまず力点を置くべきでないかということを申し上げておるわけでございまして、総需要抑制策を軸といたしましてやっておりまする一連の施策は、国民にたいへん御不自由をかけておりますけれども、これはインフレの高進を押え込もうという努力として御評価をいただきたいと思うのであります。しかし、あなたが御指摘のように、すでにインフレートいたしまして、その犠牲になっておる階層に対しましては、これは総理も言われておりますように、社会的不公正是正という立場から、歳出面におきましても、あるいは歳入面におきましても、それぞれ施策を講じていかなければならぬと考えておるわけでございます。現に、生活保護世帯等に対しまして、ことし何回かにわたりましてその給付水準を是正いたしましたことは、御案内のとおりでございます。  預金者に対する目減り補償という問題の御指摘でございます。私どもといたしましては、これは預金利子に対する手当てだけで済む問題ではなくて、金融資産全体に及ぶ問題であるというように思っておりますし、そういうことをやりますと、インフレの上にあぐらをかくと申しますか、あるいはそれを促進する作用を持つおそれを感ずるのでございまして、なるべくそういうことはやりたくないわけでございます。したがって、四十八年から始めました総需要抑制策の中におきましても、五回にわたりまして預金利子の改定はやってまいったわけでございます。そういう正当な手段によっての対応策をやらせていただきたいと考えておるわけでございまして、特に特定の階層の預金利子だけを政策対象といたしました特別措置は考えたくないわけでございます。
  226. 竹本孫一

    竹本委員 最後に、三木総理要請をしておきます。  三木内閣は総論内閣という批判もあります。しかし私は、三木内閣はある意味においては総論内閣であってもいいと思います。哲学を持ってもらいたい、方向を持ってもらいたい。いま必要なものはステーツマンシップなんです。行政事務ではありません。官僚はテクノクラートとして、みんなそれぞれ専門家です。しかし、その専門家に正しい位置づけをして、歴史の要請に沿った方向を与えるのが政治なんですよ。三木さんは、あくまで三木内閣らしい哲学と総論を持った、方向を持った内閣として、ステーツマンシップを発揮していただくように要請をして、終わりにいたします。
  227. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて竹本君の質疑は終了いたしました。  次に、小林進君。
  228. 小林進

    ○小林(進)委員 総理大臣にお尋ねいたしますが、昭和四十九年度の経済見通しについて、政府は十二月十三日の閣議において、この見通しをたいへん大きく改められました。その改められた理由が一体どこにあるのか、その理由が一つであります。  それから、国民総生産で申し上げますと、実質成長率二・五%に対し、これがマイナスの一、二%、名目のGNPで一二・九%という当初の見通しに対し、一九%というたいへんな見込み違い、総生産の金額において約九兆円の大きな見通しの誤差を生じているわけであります。こういう経済の見通しの大きな誤差を生ぜられたのでは、国民生活はたまったものじゃない。国民は大体政府の経済見通しに基づいて、経済生活もやる、サラリーマン生活もやる、あるいは消費生活もやるのです。それが途中でくるっと狂われるから、国民全般がはなはだ迷惑をこうむる。この問題について、なぜ一体責任ある政府がこういう大きな見通しの間違いをされるのか、これを一言でひとつお答えをいただきたいと思うのであります。
  229. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まあ、たいへん大きな見通しの違いになったわけですが、経済で一番大事なのは、何といっても成長の高さ、それからもう一つは国際収支、それから物価です。そのうちの国際収支につきましては、そう見通しが違わなかったわけです。ところが、成長の高さにおきまして、これが二・五%と見たものが、逆に一、二%のマイナス成長だということになった点が一つ。それから物価の面におきまして、これが大幅に狂うことになったわけです。まあ、たいへんなだらかにはなってきたものの、見込みよりはたいへんまだ高い水準にある。この二点が狂ってきた。国際収支だけが大体見通しのとおりであるということでございます。
  230. 小林進

    ○小林(進)委員 いずれにいたしましても、この経済の見通しを誤ったということ、これはどうしても政府が責任をとってもらわなければいけない。この責任感がないから困る。四十八年度におきましても、ここに資料がありますが、前年度もたいへんな経済の見通しの誤りをしている。実質の総生産が七十二兆七千億円、一一%という政府のふれ込みが、名目成長が百十六兆四千億円、二一.九%。これでさしあたり労働者が全部生活を破壊された。こういうふうに経済の見通しを誤り、いわゆる消費者物価をこれぐらい上げていくから、これで労働者が生活を破壊されて、これがすなわち秋闘にはね返ったり、年末一時金になって、去年の暮れは、生活をしていけないという労働者の怒りがうっせきして、年末一時金をよこしなさいと、こう言った。ところが、昨年度のおそるべき経済見通しの誤りに基づく損害を、ことしの春闘という戦いの中でようやく三〇%前後獲得して、あと追いでバランスのとれるところまで追い込んできた。ところが四十九年に入ってみたら、いま経済企画庁長官、副総理が言われたように、また国内の経済の見通しを誤って、驚くべき消費者物価の値上がりを来たした。だから、労働者が血みどろで戦って獲得をした春闘の賃上げ分も、これでパアなんですよ。パアパアなんだ。それでありますから、この年末へ来て、この大きな政府の経済見通しの誤り、この大きな消費者物価の値上がりに見合うだけの、われわれの損失を補ってくれというのが、年末のインフレに基づく一時金の手当をくれ、あるいは弱者に対するもち代をくれという要求になってくるのであります。  どうもこの予算委員会の話を聞いておりますと、政府の言い分は、たくみに言いながらも、物価値上がりの主たる犯人が何か賃上げにあるように、労働者の賃金要求にあるように言われているけれども、これは本末転倒もはなはだしい。政府の経済見通し、消費者物価の値上がりの見通し、そういうものに対する誤りが労働者の生活をここまで苦しみに追い込んできて、やむを得ずこの暮れの戦いを繰り返さなければならないということになるのでありますから、この点はひとつ政府のほうでようく反省していただかなければならないのであります。  その結果、まず公共企業体でございますけれども、この政府の経済見通しの誤り、驚くべき二四%から二五%、ことしの八月なんか二五・八%まで消費者物価が値上がりをしているのですから、政府の見込みの三倍以上も消費者物価が引き上がっているのでありますから、これではたまらぬというので、ひとつ年末の一時金を支給してもらいたいという正当な要求が、いわゆる三公社五現業から出てまいりました。政府がこの経済の見通しの誤りに一片の責任があるならば、当然その要求に応ずべきであるにもかかわらず、応ぜられなかった。仲裁裁定にこれをまかせた。その仲裁裁定の結論が今月の十九日に出たわけでございますが、この問題に対して、私はいまも言うように、政府が責任を感じたら、仲裁裁定をまたないで、調停にまたないで、政府みずからが労使対等の話し合いの上で、この一時金を支給せよという要求に応ずべきが、私は政府の正当な姿勢だと思うが、なぜ応じなかったのか。一片の反省があるならば、その反省を込めて、ひとつ御答弁をいただきたいと思う。  だれですか。総理大臣、おやりになりますか。あなたはあまり経済がおじょうずでないという話でございますから、何ならちょっとお休みになって、副首相でもよろしい、大蔵大臣でもよろしい。――大蔵大臣はまあしばらく。あなたの答弁を聞いていると、どこがしっぽか頭かわけがわからぬ。はなはだ迷惑だから、必要なときに伺いますけれども、答弁の明快な人、ひとつ反省も込めて答弁をしていただきたい。
  231. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 小林委員御案内のように、仲裁裁定において、これは第三者機関である公労委が、労使双方の要請を受けまして、慎重に審議の上に、公正に判断されて、ゼロ裁定ということになったわけであります。
  232. 小林進

    ○小林(進)委員 私は、公労委の裁定が出ない前に、なぜ一体、政府がこの経済の見通しの誤り――最初九%で押えるといった消費者物価の値上がりが二五・八%まで来ているんだから、その被害をもろに受けた労働者が、この年末を迎えて、それに相当する一カ月分の特別の手当をくれという要求は、ちっとも不当じゃないじゃないか。その正当性を認めるかどうかということを言っているのであって、私は裁定が出たかどうかなんということを聞いているのじゃないのだ。総理見てください。あなたの内閣が生まれてから、私はずっと二日間見ているが、あなたの内閣の中で満足な答弁のできる大臣はいませんぞ。なるほど頭がさえているわい、これはクリアだなと思わせるのは、本人を前にして悪いけれども、副総理福田さん、それから外務大臣、これはなかなかクリアでさえている。あとはみんなドングリの背比べと、そう失礼なことは申し上げませんけれども、実にこれは答弁になっていない。これはいまの内閣の最大の弱点だと私は思う。特に大蔵大臣なんか、眼っているのかさめているのか、頭があるのかしっぽがあるのかわけのわからないことをがちゃがちゃと言う。結局、長い答弁だが、せんじ詰めてみると何もわからない答弁だ。そういうようなことじゃ、私はふまじめきわまると思う。勉強が足りぬです。いま少し閣僚は自信を持って勉強して、質問にぴたりぴたりとあうんの呼吸をそろえて、答えに応ずるような態勢というものをつくらなければなりません。  それで私は申し上げますが、昨日の仲裁裁定のこの中には、二つの問題が含まれております。一つは、いわゆるこの裁定に際して裁定委員長が見解を示しているが、その中には、三公社五現業における期末手当は、国家公務員の制度に準じて取り扱われておる、民間のこの種の手当の状況の反映がかなりおくれているという経済状況にあるから、このような期末手当のあり方について、今後労使間で検討されることが望ましい、こういう委員長の発言がついているのです。言いかえますと、公共企業体というのは、まず民間の労働者の賃金、一時金がきまると、これを見て、人事院は期末手当の勧告をするのです。この人事院の勧告が出て、それで公務員の期末手当、いわゆる一時金がきまって、それに準じてようやく一番最後に公共企業体の労働者の一時金がきまる、こういうからくりなんです。だから、きまったときには、もはや物価はばあっとはね上がっている、こういう状態ですから、これは公共企業体の労働者に対して実にお気の毒だ。だから、公共企業体労働法が設けられた趣旨にものっとって、労使の間で話し合いをして、民間の一時手当がきまるようなときと見合って、こちらのほうも、労働大臣、これに当事者能力を与えて、労使の間でちゃんと一時金の話がつくように制度を変えなさいと、仲裁裁定委員長が忠告している。あなたはこれをおやりになるかどうか。私の言っていることに無理はないと思うのでありますが、やりますと言ってくだされば、質問は次に移ります。おやりになりますか。やらなければいけないです、これは。
  233. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 これは、やはり従来の方式に非常な変更を加えるわけですから、十分な検討をしないと、直ちに私がここでやりますというお答えをすることは、慎重でないと思います。
  234. 小林進

    ○小林(進)委員 三木総理、あなたにほしいのは勇気と決断なんですよ。いま少し勇気と決断を持ってほしい。こういうことは、だれが考えてもあたりまえのことなんです。当然やるべきことなんだ。もはや公共企業体の諸君は、ストライキ権をよこせと言っているが、ストライキ権を当然持つべきだ。これは各国みんな持っている、先進国は。それで、来年度までにその結論を得ようというさなかに、期末手当だけでも担当の大臣がきめられなくて、人事院の勧告があって後にしかきめられないなどという、こういう古典的な制度を残しておくこと自体が政府は古いのです。前向きで考えてください。  それからいま一つは、三公社五現業は、四十八年、去年の経済見通しを誤ったために、年末に一時金闘争で非常に戦ったその結果、年度末の手当、来年の三月の期末にくれるその一時金を繰り上げて、ことしの暮れ、つまり去年の暮れに労働者に差し上げて、問題を鎮静したという前例があるのです。ことしもその前例にならったらどうか、こういう仲裁裁定委員長の裁定のことばが出ているのでありますが、これはどうも……(発言する者あり)委員席ならいいけれども、大臣席で不規則発言をしているなんというのは失敬千万です。こういうものは注意してください。
  235. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 厳重に注意をいたします。
  236. 小林進

    ○小林(進)委員 仲裁裁定委員長は、繰り上げ支給を含めて話し合われることは自由であるという、正確に言えばこういう答弁を与えておる。それは裏を返せば、話し合って去年どおりにおやりなさいということと同じことなんです。これはおやりになりますか。
  237. 植木光教

    植木国務大臣 小林議員の御質問に対しまして、御満足いただけない答弁かもしれませんけれども、仲裁裁定が昨日出たことはただいまお話があったとおりでございますが、いま一般の公務員の給与諸法につきまして、内閣委員会において御審議をいただいております中で、一時金の支給の問題が出ているのでございますが、御承知のとおり、公務員の給与を決定いたしますためには、人事院の勧告と同時に、この国会で法定をしていただくという手続が必要でございますので、そのたてまえでいきませんとどうにもならない、こういう状況でございますので、御理解をいただきたいと存じます。
  238. 小林進

    ○小林(進)委員 先ほど総理大臣に注意したばかりのことを、何も私の言っていることを聞かないで、また同じことを繰り返している。これだから時間を浪費するのでございまして、一つは、制度上、人事院の勧告等は抜きにして、公共企業体という公務員とは別個の現場に働いている人たちなんだから、当事者でちゃんとそういう一時金の話し合いができて決定できるような、そういう資格を担当大臣に与えなさいということが一番なんだ。いま一つは、去年に準じて、年末の手当金を、インプレー時金を繰り上げ支給をおやりなさい、こういうことなんです。ですから、私は時間がありませんから、それを強く要求しておきます。おやりにならなければ、この問題ではまた場所を改めて、これは三木内閣の軽重に関する問題ですから、ひとつ度胸をきめておやりいただきたいと思います。こんなことをしておると、だんだん時間を食いますから。何かしゃべりたいことありますか。――じゃ簡単におしゃべりしなさい。
  239. 長谷川峻

    ○長谷川国務大臣 委員長の見解は、三公社五現業における期末手当の基本的なあり方について、労使間で十分検討することを示唆しているのです。この問題は、御趣旨のように労働省が働きかけるという問題じゃありませんで、それぞれの主務省庁があることですから、労働省だけで先行することは適当でないと思っております。制約があるものに対しましては、まず当事者能力が認められておりますので、関係の労使間で十分に話し合うことが先決です。いずれにしましても、制度の問題といたしますと、労働省としては、労使の話し合いの推移を見守りながら今後検討してまいりたい、こういうことでして、ことしの春の〇・三の繰り上げというものは、あれは去年の分の繰り上げでして、それは小林議員のおっしゃるのと全然わけが違うことも御理解いただきます。
  240. 小林進

    ○小林(進)委員 ここではなんですから、この問題は、むしろ総理大臣の勇気と決断にひとつ信頼を置きまして、次に行きたいと思います。何しろ時間がありません。問題はたくさんあるのでございますから、ひとつ簡潔、明快にお答えをいただきたいと思う。  ところで、ことしの四十九年度の経済の見通しはこれで終わりましたが、今度は来年度の経済の見通し。けさの新聞によりますと、二十八日か何かにきめるとかおっしゃいますけれども、もはや主要閣僚の腹の中には、ちゃんとそういうものができていなくちゃならぬと思います。来年の経済の見通しはどのようにお考えになるのか。来年の消費者物価の値上がりをどれくらいにお考えになっているか。また、いま一つ、先ほども竹本委員質問がありましたけれども、来年三月末の消費者物価の値上げを一五%以内に断じてとどめ得るという自信と、そのために具体的な方策をお打ちになっておるかどうか、この三点をお答えいただきたい。
  241. 福田赳夫

    福田(赴)国務大臣 まず本年度の問題ですが、来年三月の消費者物価水準を一五%程度の年間上昇、こういうところにとどめたい、これはもうほんとうに生命線ぐらいなつもりで死守したい、こういうふうに考えております。そのためには、年末年初の物資の価格、輸送、各方面についての対策、これはもとより万全を期しております。それから年度内の公共料金は全部これを凍結する。それから総需要抑制政策は引き続きこれを堅持する。その辺を柱といたしまして進めていくのですが、卸売り物価は非常に鎮静してまいりましたが、消費者物価はそれよりはややまだ高い水準にありまして、しかし十一月の上昇は〇・五%という程度になってきておるわけです。十二月、一月、二月、三月、これが〇・七%くらいで毎月いきますと、これは一五%、こういうことになりますので、まあ大体その辺のことが実現できるんじゃないか。これからの情勢の推移を見なければなりませんけれども、何とかしてそれを実現いたしたい、かように考えております。  それから、五十年度につきましては、目下鋭意検討中でございますが、引き続いて物価の問題に最重点を置きたい、こういうふうに考えておりまして、消費者物価につきましては、来年度中の上昇を一けた台にいたしたい、つまり一〇%以内にとどめたいという念願なんです。そのためにはいろいろ手段を考えなければなりませんけれども、これから予算の編成の過程を通じまして、鋭意努力をしてまいりたい、かように考えております。
  242. 小林進

    ○小林(進)委員 大体まだ具体的な数字はお示しになりません。来年の見通しでございますけれども、一けたとおっしゃいましたが、私はここで言っておきますが、この三月末の消費者物価の値上がりが一五%以内におさまらないときには、来年の労働者の春闘は、いかに賃上げが物価値上げのファクターの中心だと言われたところで、労働者は承知できません。さらに今年より激しい春闘が行なわれることをひとつ覚悟しなければなりません、当然なんだから。それはわれわれ労働者は生きていけないんだから。同時にまた来年の一けたもそのとおりです。それは、五十年度の経済見通し、消費者物価の値上がりが一けたになるか二けたになるか、これもやはり労働者の生活問題に直ちに響いてくるのでありますから、何と低賃金とおっしゃっても、それは生き死にの問題ですから、なかなか簡単にはおさまりません。そういう点をやはり念頭に置いていただきたい。賃金は後追いなんだ、物価が先なんですから、そこをひとつ明確にしていただきたい。  このインフレの問題に介在して、やはり次に問題になってくるのは五十年度の財政規模です。総需要とおっしゃるなら、規模の大きさも大体腹の中にあると思う。どれくらいの規模を予定せられておるのか。いま余分なことを言うと時間を食いますけれども、四十九年度の当初、死んだ愛知さんが二二%か二三%と言ったときに、あなたはくしくも大蔵大臣になられて、一九%、二〇%以内にとどめられた。ちょっとわれわれもりっぱだなとほめたけれども、だんだん見たら、こういう補正予算で二兆円もくっつけて、実質上、前年度比較で二五%も物価は上がってしまった。なお見るというと、ごろごろ出てくる。二五%以上になったら、もはやこれは大規模予算です。需要抑制の予算なんということはだれが見たって言えない。規模をどれくらいに一体考えておられるのか、せつなさそうな顔をしておりますが、大蔵大臣、あなたの担当のことをお聞きしているのでありますから、一言でよろしゅうございます、一言でそれをお答え願いたい。
  243. 大平正芳

    ○大平国務大臣 それは、来年度の経済の見通し、それからそれに伴う税収の見積もり等との関連がございまして、せっかく検討中でございます。どのくらいのことになりますか、具体的数字はまだお示しを申し上げられる段階ではございません。ただし、仰せのように、インフレとの戦いをいどんでおりまする大事な局面でございます。物価も所定の目標に押え込んでまいらなければならぬ決意で当たっておる段階でございまして、極力抑制してまいりたいと考えております。
  244. 小林進

    ○小林(進)委員 まだ具体的に数字をお示しにならない。もはやいままでなら来年度の予算の骨格ができていなくてはならないのです。金脈問題や何かでもめて、多少おくれているにしても、いかにも自信がなさ過ぎる。あとで時間があれば言いますけれども、私はアメリカの議会のことも研究した。イギリスの議会も研究した。この両国の議員がこういう予算委員会を聞いたら、この機会を利用して、いかに国民に真実を訴えようか、このインフレマインドをおさめるためにどこまで国民に真実を知ってもらおうかといって、実に意欲的ですよ。しかし、あなた方の答弁を聞いていると、いかにしてうそでごまかし、あげ足をとられないようにとられないようにという、さもしい根情が見えて、いやになってしまう。全く逆ですよ。いまちゃんと、来年はこれくらいの規模でいきたい、単純じゃないですか。二四%とか二五%とか、あるいは二三%とか、そういう規模でいきたいという、呼べば答えるような答弁がさっさと出てこなくてはいけませんよ。  次に申し上げますけれども、一体財政投融資などもやはりインフレと切り離せない。規模をどれぐらいにお考えになっておりますか。これも聞いてもだめですか。答弁してください。
  245. 大平正芳

    ○大平国務大臣 このように需要の抑制をやっておる段階でございまして、財政投融資につきましては、極力抑制的にやりたいと考えておるわけでございますが、まだ具体的な数字を申し上げられる段階じゃございません。
  246. 小林進

    ○小林(進)委員 これは全部来年の通常国会の予算審議における布石を私は打っているのでありまするから、その意味において、ひとつ申し上げておきましょう。  財政投融資につきましては、ともかく生活福祉関係の分野にひとつ重点を置いていただく。道路とか港湾はあと回し、住宅、下水、公園とか、そういうところに重点を指向して、福祉を中心にしていただく。それからいま一つは財政投融資で、開発銀行とか輸出入銀行への融資は大幅に縮小していただいて、大商社、大企業への融資はできるだけひとつ返済をさせるという方針をとっていただきたい、これは注文をつけておきます。  次には、やはりインフレの問題に関係いたしまするのは国債です。いま国債の発行を一体どうお考えになりますか。  これは副首相に申し上げますけれども、あなたはなかなか明快な答弁をされまするけれども、日がたって考えてみると、どうもだまされたという感じがする。それで私は言いまするけれども、われわれの仲間に、福田財政三大ペテンということばがあるのであります。そのペテンは何かというと、昭和四十年に健全財政を看板にしながらあなたは初めて国債を発行されたということです。わが日本の財政を借金政策に持ち込まれた第一年であります。一つのペテンであります。  第二番目は、いわゆる四十四年、土地の分離課税です。あなたが土地の分離課税をおやりになって、あるいは一〇%、一五%、二〇%の分離課税だったものが――なるほど地主さんは土地を全部解放いたしました。四国よりも大きいくらいの土地を売りに出しました。そうして一位から百位までの多額所得者は全部土地持ちになったけれども、四国以上の大きく解放した土地が、われわれのねらいとする庶民の住宅に変わったか。変わっていません。みんな大企業がこれを買い上げて投機の対象にして、この狂乱の物価をつくり上げた元凶になった。あなたの間違った土地分離課税のおかした第二のペテンであります。  第三であります。第三番目は、同じく四十四年だ。あなたは地方財政からの借り入れをおやりになった。あの地方交付金です。あなたは初めて地方交付金の借り入れをやった。その借り入れをしたときにあなたは念書を入れて、これはこれ一回です、二度といたしません。くどくくどく言われたそのことばのさめないうちに、四十九年、ことしの初年度において、一千六百億円の地方交付金の借り入れをされた。これはたいへんな偽りです。  この三つを称して福田財政三大ペテンというのでございますが、それは別にいたしましても、そういうことをいたしまして、一体、国債の依存度、国債の発行は、ことしはどれくらいおやりになる気か。これは大蔵大臣ですか。――副総理ひとつお答えになってください。
  247. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私もペテン師のようなことを言われてはなはだ心外でございますので、ちょっと釈明をさせていただきますが、公債発行をいたした、それが私が詐欺か何か罪悪を犯したようなお話ですが、あれは私は、あの不況を救済するためにどうしても公債発行が必要である、こう考えたのです。しかしこれは漸減をしていきますというので、だんだん毎年毎年減らしたじゃありませんか。そして五年間でもう国債の依存度が五%を割るというところまで来たのですよ。もうその次の年は国債は発行せぬでもいいかというところまで来たのです。決して私は、当時申し上げたところにいささかの間違いもない、きわめて健全な公債政策を実行してきたということを御了承願いたい。  それから分離課税の問題ですが、あれは土地の放出を非常に刺激したのです。ただその後、いわゆる過剰流動性というものが発生いたしまして、買ったほうが、私どもが考えておったのと違った状態になってきたので、これは私は、そういう国際情勢の見通しができなかったといえば不明でありましたが、決して悪意を持ってやったわけじゃございません。  それから第三の地方交付金の借り入れは、あれは非常な措置としてやったので、ああいうことは再びしまい、こういうふうに考えたのですが、しかし、狂乱の財政、そういう際で、四十九年度には、あの公約にもかかわらずそういうことをおかしたということにつきましては、その際心から皆さんにおわびをしておるようなわけでありまして、ひとつ御了承おき願いたい。
  248. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっとお待ちください。ただいま小林君の発言中、ちょっと聞きようでは国民の誤解を招くような節もあると思いますが、速記録を見て、適当な措置を講じたいと思いますが、御了承願います。
  249. 小林進

    ○小林(進)委員 尊敬すべき委員長の御発言でございますから、特に私も譲歩をいたすことにいたします。  私は、インフレの問題になお関連いたしまして出てくるのは、これからの外貨の問題も、たいへん重要なわが日本経済のファクターになると思います。現在の政府の外貨の保有高はお幾らでございますか、お伺いをいたしたいと思います。
  250. 大平正芳

    ○大平国務大臣 百三十七億ドル強でございます。
  251. 小林進

    ○小林(進)委員 その中で、自分の固有の手持ちと、いわゆる借り入れと、あるいはまた為替ポジションとか、その点の内訳はどうなっておりましょうか。
  252. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 ただいま大臣がお答えいたしました百三十七億強の金・外貨のうち、金が九億ドル足らずでございますが、残りは保有の外貨でございます。主としてドルでございます。
  253. 小林進

    ○小林(進)委員 この保有の外貨の中で、日本の借り入れ分が幾らになっているのか。オイルダラーとか、あるいはユーロダラーとか、それが幾ら含まれているかと私は言っているのです。あるいはアメリカ銀行とか……。
  254. 大倉眞隆

    ○大倉政府委員 小林委員質問の中のユーロの借り入れあるいは米国からの借り入れでございますが、これは年初来、為替銀行の対外短期債務は約九十億ドル近くふえております。それが借り入れの増と大体お考えいただいていいと思いますけれども、これは実は政府の保有外貨とは関係ございません。民間の銀行が借りて運用しておるわけでございます。で、政府ベースで中期の外貨の取り入れがございます。いまのところ十億ドルございます。それが政府ベースでございます。
  255. 小林進

    ○小林(進)委員 私はこれは、時間がありませんから結論だけ伺いたいと思いますけれども、将来外貨の借り入れは一体どの程度まで日本は可能であるか。これは個人の家庭も国家も理屈は一つで、自分の国力から見て、借り入れの限度というものはおのずから見通しがつくわけであります。あるいは一年間に百二十億ドルか百三十億ドルくらい借り入れるとすると、日本はあるいは破産をするのではないかというふうな意見がある。現在イタリアが、石油消費のために、主として外貨不足のために破産寸前にあることは私が申し上げるまでもない。こういうイタリアのような状況に日本が立ち至るような心配はないかどうか、お伺いしておきたいと思います。
  256. 大平正芳

    ○大平国務大臣 これからの国際収支の展望でございますけれども、貿易収支が御案内のように黒字に転じておりまするし、長期資本収支も健全な足取りを示しております。したがって、経済の運営が節度あるものである限りにおいて、大きな不安は私はないと考えております。去年からことしにかけての大きな国際経済の動乱期にありましても、石油の値上がりだけで百億ドルの外貨を支払わなければならないような状況にございましても、外貨の取り入れに成功してきた日本でございます。去年からことしにかけてありましたような事態は、いま予想されないわけでございます。この狂乱の段階も乗り越えることができた日本でございまして、明年以降われわれが節度ある運営をやる限り、心配はないと考えております。  一体どのくらいの金が借りられるかということでございますが、わが国の信用がしっかりしている限りにおきまして、必要とする外貨の手当てに、私は心配はないものと考えております。
  257. 小林進

    ○小林(進)委員 かけ足で申しますが、昭和四十八年には、わが国は原油の輸入代金は約六十億ドル、これが本年に入って一月から十月までにもう百五十五億ドル、おそらく年間原油の輸入だけで二百億ドル近くを必要とするだろう。昨年の約三倍のドルが産油国に支払われることになる。こういう形が、これは毎年続いていって、それでなおかつ、あなたの言われるような健全な国の財政をささえていくことができるかどうかということが一つ。  いま一つは、アラブの産油国の石油収入は現在約六百五十億ドルと推定をせられておるが、これが十年たったら、現在のままで進んでいくと、産油国の石油収入は、自国の開発に使った額を差し引いても、なおかつ累計一兆二千億ドル近くのものがそこへ流れていくのではないかと推定をせられておる。これは十年を待たずして、世界経済というものはくるっと変わってしまうのではないか。その時点における日本の将来は一体どんな形になっていくのか。これは副総理
  258. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 国際収支についてたいへん御心配のようでありますが、これはいまの状態では心配ありません。ただ賃金、物価の悪循環が始まると心配なんです。その点は特に申し上げさしていただきたいのですが、とにかく本年度の見通しといたしましても、経常収支、これは大体とんとんなんです。貿易収支のほうは、数字は確かには覚えておりませんけれども、四、五十億ドルの黒字になるのですから。したがって、長期資本収支において、いま対外経済協力を活発に進めておりますので、そこで赤字になるというので、ことしも四、五十億ドルの赤字になろうか、こういうふうに考えておりますが、とにかく経常収支というものが非常にしっかりしておるわけです。その経常収支がしっかりしておるというのは何かと言えば、輸出力を持っておる、こういうことなんで、その辺が、これからの物価政策をあやまたず、対外経済競争力を持ちますれば、私は日本の国際収支は、アラビアのほうで今日程度の状態が続くといたしましても、心配はない、こういうふうに考えております。
  259. 小林進

    ○小林(進)委員 まだこの問題で幾つも問題がありますけれども、時間がありませんから次に移ります。  これは私の質問の中に予定されなかったのでありまするけれども、党からの要請でございまするから、簡単に外務大臣に申し上げておきますが、いま特にわが日本がかかえている一番困難な外交問題、また国民が腹の中から憤慨している問題は韓国問題です。その韓国問題について、私は個条的に申し上げます。  金大中事件、主権の侵害に対して、まだこの問題が解決をいたしておりません。金東雲という一等書記官が、この金大中拉致事件の主犯であり、これは警察のほうでもちゃんと指紋がある。それらのことが明らかにされたけれども、ことしの八月、韓国側から一片の通牒ですか、あいさつですか、金東雲は白でございましたということで、問題はそのまま放置せられておる。こんなことで主権を侵され、独立を侵され、名誉を侵されたわが日本として、これは黙っておってもらっては困ります。この問題をやる気があるかないか。  それから第二番目は、文世光さんの事件です。文世光氏が朴大統領の陸夫人を殺戮したというけれども、問題の本質は少しも明らかにされておりません。何で神戸からピストルを盗んでいって、どうして一体韓国へ入っていって、あの厳粛なる八月十五日の式典の式場へ、朴大統領の身近の席まで、どうして一体あの文世光が入っていくことができたのか、これも明らかではありません。しかも、あの会場において文世光が撃ったピストルのたまと、陸夫人が撃たれたピストルのたまと、たまの数が違っております。同時に、文世光がボンボンと三つ撃って押えられて、四つですか、一つは自分のからだに当たっているのでありますが、倒れたまでが二秒、その二秒たった十六秒後にバンバンというピストルの音がして、それから二十一秒たって、計四十一秒になったら陸夫人がやられたと言って倒れられた。一体この間の間隔は何なのか、こういうことも明らかになっていません。この点もひとつ明確にしてもらわなければいけない。しかも文世光に対しては日本は被害者だ。ピストルを盗まれたり、旅券まで詐称されたり、その被害者である日本が、なぜ一体陳謝に行かなければならぬのか。特に椎名副総裁が韓国の朴政権のところまで陳謝に行かれて、しかも朝鮮民主主義人民共和国が韓国政府転覆の陰謀を日本国内でしているとかしていないとか、相当密度のこまかい密談をされたというのでありますけれども、これは単なる椎名特使一人の問題ではありません。国政全般にかかわる問題でありますから、どういう内容の話をされたのか、これは国民の前に明らかにしていただきたいと思います。  それから、私はどうしてもいまの政府の姿勢で気に入らぬことは、こういう問題まで陳謝を出したり、わび証文を出したり、おわびに行ったりしておるそのさなかに、今度はまた韓国のほうで、閣僚会議を開きましょう、あるいは閣僚会議の下の事務局長レベルの会議を開きましょうといって、金を貸してくれ、補助をしてくれという。右の手で陳謝を要求せられ、左の手で金をよこせ、物をよこせ、そういう要求を突きつけられている。日本国民としては、これはまことにどうもふに落ちかねている。こういう問題は、金大中氏事件の問題をはじめとし、事件が解明するまでは、閣僚会議はやめてもらいたい。経済的援助もやめてもらいたい。そういう事務的レベル、やめてもらいたい。まあ、岸元総理は経済懇談会か何かでしばしば行ったり来たりされておりますけれども、これは現役じゃありませんから御自由でございますが、政府レベルでやることはひとつやめてもらいたいが、この点はどうか。  それから今日も、日韓会談ができてから無償三億ドル、有償二億ドルか、民間ベースで四億ドル、以下、これを境にして数年の間閣僚会議が開かれて、海外経済協力基金から輸銀を通じて、私の計算でも約二十億ドル以上の金が韓国に投資されたり援助されたりしているのではないかと思う。それはどんなぐあいに使われているのか。国民の金ですから、細大漏らさずこれは文書をもって御提出を願いたいと思います。  こういうようなことがありまして、九月十四日でございますか、ハーバード大学のコーエン教授がワシントンのプレスクラブにおいて、日本の政界の最高の指導者が――私はあえて名前は申し上げません。最高の指導者が、経済的に韓国の朴政権と密接に結びついており、リベートを取り、そして実に不正な金でもってやっているのではないかということが報道せられておる。コーエン教授は、日本の政府も、あるいは日本のジャーナリストも、なぜ一体その真実を追及しないのかということを言われておるのでありますが、政府は一体、この問題をその後どう処置をされたのか。これは国家の名誉に関する問題です。日本の独立の名誉と同時に、日本国民、全人民に関係する重大問題であります。決して、外務省はほおかぶりをしてじんぜん日がたつのを待っているような、なまやさしい問題ではありません。これもひとつ外務大臣から、きょうはもう時間がありませんから、ひとつ詳しく書面をもってお聞かせを願いたい。  特に私は言いますけれども、この金大中氏事件の日は、大平現蔵相、元外務大臣は、日本の歴史の上にたいへん恥ずべき歴史をつくられたものであると、これは国民あげて憤慨しております。しかし、そのあとに出られた木村外務大臣が、この日本の国辱外交を修正するために苦労された。私ども野党は、いま言いますけれども、もろ手をあげて木村前外務大臣を支持いたしました。どうか修正してください、韓国問題にも筋を通してくださいと、私どもは心から彼の成功を祈り熱望しておりましたけれども、残念ながら、三木内閣が生まれたら、木村さんは去られた。ほんとうに野党はみんな涙を流すほど木村さんを信用した。今度外務大臣が生まれました。いまの外務大臣、なかなか頭脳は明断でありますけれども、残念ながら、俗にいう大平派の、大平元外務大臣の直系に所属せられるものでありますから、一まつの不安がありますけれども、この点はひとつ総理大臣からも外務大臣に注意してやって、この筋の曲った、民族の独立に関するような問題は、外務大臣、ひとつ腹をきめてやってほしいということが一つであります。これをお願いしますが、ひとつ簡単に決意のほどだけを承っておきます。
  260. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 どういたしましょうか。二、三点お尋ねがありましたからお答えをしなければならぬかと思いますが、お時間のかげんで、もうそれは申し上げないほうがよろしい……
  261. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 言ってください。
  262. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そうでございますか。それでは、金大中氏につきましては、私ども、同氏が出国を希望しておるのであれば、それがかなえられることが望ましいということを、実は再三韓国に希望として申しております。ただいま選挙法違反の事件で公判が係属中のようでございますが、その公判についてはもとより、その他の処遇についても、韓国の一般市民に与えられておる待遇より決して不利なことはしないというのが韓国側の言明でございます。  金東雲書記官につきましては、韓国側は犯罪の事実が発見できなかったという結論に達した由でありまして、これはわがほうの警察当局の集めました証拠と異なりますので、何ゆえにそのような結論を出したのか、わが警察当局はそれに満足ではないということを先方に通報をしてございまして、したがってこの点は決着をいたしておりません。  文世光のことにつきましては、たまたま今日ああいうことが行なわれたようでございますので、この際、政府としての意見を申し上げることを今日は差し控えさせていただきたいと思います。  それから閣僚会議、これも開くのであれば、このいまの気まずい関係が解消して、将来に向かって新しい友好関係が生まれるというような環境において開きたい。そういう環境が早く来る努力はできるだけいたさなければならないと思いますけれども、気まずい環境で開くということは、かえってよくないであろうと考えております。  ジェローム・コーエン氏の発言につきましては、これは全く私人、個人の発言でございますので、政府としてどうこう取り上げる気持ちはございません。
  263. 小林進

    ○小林(進)委員 時間もありませんし、まあこの韓国問題は、わが党には専門家がおりまして、通常国会では、この問題を専門に取り上げて、根本的にやることになっておりますので、私はほんの前ぶれでございますから、きょうはこれで幕を閉じますが、ただ一つ申し上げたいことは、たしか韓国の国会で、この文世光事件を中心にして、何か日本との国交を凍結すべきである、国交断絶まではいかぬけれども、凍結すべきである云々ぐらいの決議がなされているはずであります。どうか外務省を通じて、その決議をひとつわれわれにもお届けを願いたいと思う。私は、むしろおこらなければならぬのは日本の国民であり、日本の国会ではないかと思うが、韓国はそういうふうな強硬な態度に出ておいでになるそうでありますから、それでもひとつ見せていただいて、われわれ国会も、その場で非常な決意をしなければならぬと思っております。韓国問題は、そういうわけで、次の国会ではわれわれの同志、専門家が大いにやりますので、私はこれで終わります。  いま一つ、外交問題で申し上げておきます。それは、先ほどの質問にありましたように、あなたは来年の一月にソビエトへ行かれるということでございました。ソビエトへ行かれるその内容は、私はやはり平和友好条約が話の中心になるんじゃないかと思います。そのときに、これは国民の希望として申し上げますが、われわれ日本国民は、千島は日本の固有の領土だと思っています。明治八年の樺太千島交換条約に基づいて、千島は明確に日本の固有の領土になったと私は考えておりますので、交渉の優先順序をここに置いていただかなければ、民族の悲願は全うされません。そのために平和友好条約が長引いてもやむを得ません。ともすると、シベリア開発だとか、チュメニの石油開発だとか、サハリンのガスだとかというような、経済的なもろもろの話に交換せられて、この領土問題が水増しされるのではないか、これを国民は非常におそれております。でありまするから、そこらの点も一ひとつ腹をきめて、是は是、非は非でありますから、この領土問題を明確に――通る通らぬは別であります。日本国民の立場をひとつ明確にしていただきたいということを要望いたしますが、決意のほどをひとつ承りたいと思います。
  264. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いわゆる北方領土の問題は、われわれがどこに主張をいたしましても誤りのない権利であると考えておりますので、これが解決いたしませんと、平和条約というものをつくるわけにはまいらないと思います。また交渉の過程において、その問題と経済協力の問題とを混同し、あるいは結びつけて交渉するというような気持ちはございません。
  265. 小林進

    ○小林(進)委員 その点は明快でございましたから、外交問題はやめまして、次に、今度は独禁法の問題に入りたいと思います。  独禁法の問題は、これは十二月十七日の閣議でありますが、そこで、独禁法の改正について、事務的作業や自民党側との調整を進める一方、民間の声を反映するため、総務長官の協議の場として独禁法改正問題懇談会を設けて、二月の中旬ないし下旬を目途に成案を得たいという方針に変わった、こういう報道がなされている。実に私どもはこれで驚いたのであります。三木総理は、就任をされたときに、独禁法は自由主義経済のルールなんだから、何をおいても早急にこれを改正するということをおっしゃった。そのときには、河本通産大臣は、まあこれは二月の終わりごろかそのころになりましょうと言って、たいへんズレがあった。おかしいなと思っているうちに、こういう機関を設けることになったのでありますが、この懇談会というのは一体何だといったら、これは私設機関だ。法律にも何にも基づかない、総務長官の私設の機関だ。こういう機関を設けて、しかも二月の下旬、二月の下旬といえば、もはやわれわれの予算委員会の予算は、まずまず順調にいけば――いまのようなこういう心もとない状態では、二月末に予算が通るか通らないかわかりませんけれども、かりに通っていったとすれば、三月から地方選挙です。国をあげて地方統一選挙がありますから、皆さん、与野党を問わず、おちおちここにいられないのであります。とても独禁法の法案の審議など落ちついてやれる状況ではないと思うのです。(「いや、やるよ」と呼ぶ者あり)やるといたしましても、どうも政府の考えは、そういうことも勘定に置いて、通常国会では独禁法の改正をやらせない、そういう腹黒い予定のもとに、二月の中旬などということを考え出したんじゃないかと、われわれは憶測せざるを得なくなったのであります。  なぜ一体、いまさらこういう懇談会なんか設ける必要があるのでございますか。ここに公取の委員長もおられる。政府の機関です。精魂を尽くして、ちゃんと改正要綱、改正案というものをつくり上げていられるじゃないですか。あなた方のところへも、この独禁法に対する――ここに倉成君がいるけれども、ちゃんと委員会を設けて、高い金をもって外国の独禁法の調査もして、各国を回って様子を見て、そして作業をしておられる。野党もありますけれども、野党は全部国会に独禁法の草案を出しています。みんな用意しております。こういうふうに、与党も野党も公正取引委員会も、全部もう草案をつくり上げているのですから、それをいま国会の場に出して、国会の場でやったらいいじゃないですか。国会の側で論議を尽くしたらいいじゃないですか。なぜあらためてそういう私設の機関を総務長官などのところに置く必要があるか。私は、じんぜん延期をする以外に目的はないんじゃないかと勘ぐらざるを得ません。もし広く学者の意見を聞く必要があるならば、このわれわれの委員会で審議しながら、公聴会をやってもいいじゃないですか。参考人に来ていただいてもいいじゃないですか。あるいは一般大衆の意向を聞くというならば、北は北海道から南は沖繩まで、みんな公聴会を開いて、順々に意見を聞けばいいじゃないですか。  こういう形が全部あるにもかかわらず、その一切を否定して、二月の中旬から二月の下旬、そのうちには統一選挙がありましてパアパアになりますなどという、そういうことを勘ぐらせるようなやり方、これでありますから、ジャーナリストも、一夜明けるたびに三木総理の姿勢は後退に次ぐ後退ではないかといい、大衆も非常に嘆いているのでありますよ。これをおやめになりまして、私の言う主張が間違っておるかどうか、正しいと思ったら、私に賛成だと言ってください。総理、いかがでございますか。
  266. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 小林さんはものごとがあっさりしていて、実に男らしい男性として、私は常に敬意を表しておるのですが、どうもこの独禁法に関しては、あなたに似合わぬ疑い深い点がある。独禁法は、私が組閣をいたして閣議で指示をした第一号に属する。やはり自由経済体制にはルールが要る、これはもうきのうきょうに始まった私の考え方ではないわけでございます。きわめて重視をするわけです。こういうことがなければ、自由経済体制というのは維持できるものじゃない。こういうことでありますから、ぜひともこの通常国会に提出をするという方針は変わらぬのですが、御承知のように、通産省、公取、財界、いろいろな議論がこの問題に出まして、どうしても独禁法には国民的理解と協力というものが要るので、この機会にひとつ懇談会というようなもので、オープンに国民の前で議論をして、できるだけ国民の納得するような成案を国会に出したい。こういうことで、地方選挙もおありでしょうけれども、やはり国会の審議が大事ですから、二月中には成案をつくって、国会の御審議に間に合うように出しますから、どうぞいつもの小林さんに返って、この問題だけはあんまり政府の態度を疑わないようにお願いをいたしたいのでございます。
  267. 小林進

    ○小林(進)委員 私の言っている趣旨が、どうも総理にはまだ通じないようでございますが、ここで足踏みをしていてはどうも先に進みませんし、時間が刻々迫ってまいりますから言いますが、現在、独禁法の改正に、私が言っているように、二月の下旬までそういう懇談会なんか設ける理由は一つもないじゃないかと、私は申し上げたのですけれども、総理があるとおっしゃるならば、まあやむを得ません。二月中にお出しになることは間違いございませんですな。
  268. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 二月中に成案を得て、三月に提出をいたします。
  269. 小林進

    ○小林(進)委員 若干また少しずれました。聞くたびにずれてくるのでありまして、まことに情けないのでありますけれども、これにこだわっているわけにはいきません。  独禁法の改正にいま反対する勢力なんてのはわかっているのです。率直に申します。一つは経済団体連合会である。大企業の集まり。しかし、ここも時勢のおもむくところを知ったと見えまして、きのうあたりの新聞に、「「全面反対ではない」 経団連会長、微妙な軌道修正」ということで、少し変わってきたと思いますけれども、これは、変わった態度を見せながら、独禁法をみんな骨抜きにしようという意図は明らかなんです。――あなたは私を腹黒いなんて考えちゃいけませんよ、総理。私みたいに竹を割ったようないい男はいないのです、心身ともに。腹の中を見せていいくらい、私は思うことを言っているのですからね。それから第二番目は通産省なんですよ。むしろ経団連よりも、この問題にまっこうから反対しているのは通産省なんです。産業庁です。これはもう大企業ペースで、絶対やる気がない。それから第三番目は、自民党の内部における、企業と結びついている多数派の国会議員でございます。これら三つの勢力が反対しているのです。これはもうみんな意図があるのですから、何ぼ懇談会開いたって、何ぼ会議開いたって、これはだめなんだ。だめなのに妥協したんじゃ、総理、これはいつまでたったってものになるわけはございません。しかし国民の声を聞いてください。国民はもういま、わが日本のこの狂乱の経済をつくり上げた元凶は――私が総理に言うんじゃない。皆さん方はもう先ほども言うように、賃金をもってその犯人に仕立てようと思って、いま盛んに言っておられますけれども、この物価をつり上げた元凶は高度成長政策なんです。その裏を返せば列島改造論なんです。これで土地のブーム。第二番目のファクターは食糧なんです。七〇%も自給率のある食糧をそのままにしていけば、あんな高い外国の食糧を買わぬでよかった。第三番目はエネルギーですよ。しかし、いま持続して今日この物価を下げない元凶、犯人は公共料金なんですよ。二番目は寡占価格なんですよ。独占価格、寡占価格なんです。これがこの物価を高めている理由なんです。これはなかなか総理はおっしゃらぬ。これは大蔵大臣も、副総理も、なかなかおっしゃらない。そんなことは国民はよう知っているのです。寡占価格なんですよ。でありまするから、独禁法を早くつくって、この寡占価格、独占価格を押えてもらわなければ、この物価の値上がりなんか押えられるものじゃありません。それを知っているから、国民は命がけになって、早く独禁法をつくってください、つくってくださいといって、野にも山にも、その早期実現を望む声が満ち満ちているのであります。でありまするから、知っているから、近代的な学者も、御承知のとおりグループをつくって、独禁政策懇談会というものをつくって、早くこれをやるべきだという主張をいたしております。それから、先ほども言うように、社会党をはじめとする野党全員が――これは国民を代表する数からいえば、自民党よりこっちのほうが多い。その多い国民の支持を得ている野党は、全部独禁法の改正をいま要求しているのです。それをあなたが、そういうところで反対勢力に押されてもじもじされるということは、せっかくの三木総理に対するイメージが日に月に薄れていくということでございまするから、その点をひとつよくお考えいただいて、これは早期に解決をしていただきたいと思うのであります。  そこで、公取委員長にお尋ねをいたしますけれども、けさの新聞を見ますると、ちょうどあなたが告発をせられたいわゆる石油連盟でありますか、石油協会でありますか、あの悪いやみの親方諸君がようやく起訴をせられて、きょうは初めての公判でありますが、公判が開かれているようでございまするが、告発をされた公取委員長は、いまなお、この石油連盟のカルテル行為を実際に告発するに足るものという自信をお持ちになっているかどうか、一言でよろしゅうございます、お尋ねをいたします。
  270. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 独禁法始まって以来、カルテルに対する刑事制裁は行なわれなかったのです。それを初めてあの石油の事件に適用したわけでございます。それはそれなりの十分な事実、事実の理由、それから証拠、そういうことについて自信があって行なったものでございまして、その考えはもちろん現在も変わっておりません。
  271. 小林進

    ○小林(進)委員 実になかなかき然たる態度で、ごりっぱでございます。  それに対して、通産省が実に驚くべき発言をしているのであります。こういう自分たちの管下にあるこの石油業界が、これほど明確なるやみカルテル、いわゆる価格協定、数量協定をやって、去年のいまごろ自殺した者もいるじゃないですか、石油も買えなくて。そういう現実を見ながら、今年の十月十八日の商工委員会において、前の通産大臣中曽根康弘君、それから通商産業省産業政策局長小松勇五郎君なる者が、実に恐るべき発言をしている。私はりつ然たるものを感じた。  これは、独禁法改正の趣旨について公取委員長質問をするという形なんであります。十六項目あげている。その第一に、「現行独禁法では対処できないような独占、寡占の弊害がいかなる産業においてどういう形で具体化しておるのか、実証的な資料」で説明せい。いまのように、国民を命をなくするほど苦しめたあの去年の暮れの動乱は何だ。あれはみんな通産省の指導が誤った。一億の国民が泣きぬれた、あれは恐るべき行為じゃないか。それがどこにどういう形であらわれているのか示せとか、「今回の改正は物価対策にどの程度貢献するのか。つまり今次のインフレは海外の要因や国内の需給要因による物不足を中心とするものか、それとも独占、寡占の弊害が出て、それが中心として上がったものであるか、」どうなんだ、公取委員長にこういう質問をしている。  先ほどから言っているように、国の政治がよければ、食糧政策がうまくいっていれば、日本列島改造なんかやらなければ、ああやってエネルギー資源だといったって、イスラエルなんかに味方しないで、積極中立をやってアラブの味方していれば――去年のいまごろ、副総理はアラブにあやまりに飛んでいったじゃないか。通産大臣も飛んでいったじゃないか。自民党の小坂善太郎も飛んでいったじゃないか。みんな外交政策の失敗のために飛んでいったのだ。そしてこのエネルギーのために日本は苦しんでいる。これが物価の狂乱の理由じゃなくて一体何だ。この政治の失敗と寡占や独占の弊害のために一億国民は苦しんでいるのに、この物価が上がった理由が、海外の理由なのか、国内の理由なのかなどという、そういう失敬なものの言い方がどこに一体言われるのかと言うのだ、私は。産業行政の庁としては、いまこそ頭を坊主にしてあやまらなければならぬ通産省の立場にいまあるにかかわらず、そういう思い上がったことを言っているから、政治が進歩してないのです。総理、わかりますでしょう、私の言うことが。こういうことを、通産大臣、きょうは三光汽船のこと質問しないから、あなた答弁しなさい。
  272. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先ほど総理は独禁法改正についての強い決意を表明せられました。私も全く同意見でございます。
  273. 小林進

    ○小林(進)委員 全く同感だと言ったって、あなたの下にいるこういう諸君が、まさに独禁法に反対だと言って、みんなまだ言っているじゃないの。企業分割にも反対だ、やれ原価公表にも反対だ、原状回復命令にも反対だ、課徴金にも反対だ、株式保有の制限にも反対だ、とは言わぬけれども、問題は困難であり、むずかしいからと。  その内容をお尋ねします。公取委員長、あなたがもらわれた十六項目の内容について、私はあなたに言っているのでありますけれども、あなたはこれに回答を寄せられましたかどうか。
  274. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 実態を申しますと、その十六項目というのは、私のほうには何ら届いておりません。これはどういうことかと申しますと、九月の十八日に試案の骨子を発表いたしました。その十日後の朝刊に、各紙おそらくほとんどそろっていたでしょうが、いまの十六項目の質問をしたというふうな記事が出たのです。そこで私どものほうは、そういうものはどういうことであるかということを問い合わせたところ、いやそういうものを出した覚えはないと。ですから、これはどういうことなのかと言ったら、あまりこまかいことを申し上げるのはどうかと思いますが、まあ一応各局あたりの、この試案に対するいろいろな反応を寄せ集めてみたというふうなことであって、その後も私どものほうから、審議官、専門の改正案に取り組んでおる者が参りまして、通産省にも再度にわたって説明しています。最初、試案の発表の段階でも説明いたしましたし、それからその後もなお説明に伺っておりますが、やはりそれはいろいろ疑問は呈されております。ですから、その十六項目がそろった形で、私どものほうに文書で出されたというようなことは、全くないわけでございます。
  275. 小林進

    ○小林(進)委員 これはたいへんなことでございます。公取委員長は、そういう話し合いをしたことはないとおっしゃる。けれどもこの速記録の中に、小松勇五郎君が何と言っていますか。こういうことを言っていますよ。「改正の趣旨でございますが、現行独禁法では対処できないような独占、寡占の弊害がいかなる産業においてどういう形で具体化しておるのか、実証的な資料をもって説明をしていただきたい」と公取に言ったというんです。「それにつきましては、資料はないというお話でございました」、公取のほうは資料はないという返事でございました、こう言っている。  第二番目だ。第二の事項では、「今回の改正案は物価対策とは直接結びつかないものであるという御説明がございました」とか、あるいは「不完全競争のもとでは介入することもやむを得ないという答弁がございました」とか、「明確なお答えをいただけませんでした」とか、あなたの答弁がみんな載っているわけだ。この十六項目の一つ一つの項目にみんなあなたのほうから回答があったように述べているじゃないですか。これは国会の速記録だ。通産大臣、答弁
  276. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 私はその文書は見ておりません。あるいは小松君の真意も聞いておりません。しかし、かりに小松君が一時的にそういう意見を持っておったにいたしましても、ただいまは通産大臣である私の意見が先ほど申し上げたとおりでございますから、私の申し上げた方向に指導していきたいと思います。
  277. 小林進

    ○小林(進)委員 国会で速記をつけて、公の場で回答も話し合いもなかったものを、答弁があったなどと一々言って、その責任もとろうとしないで、彼がどういう答弁をしようと、と言うのは、失敬千万じゃないですか。あなたは直接の主宰者じゃないですか。あなたは、通産省は、局長なんかに全部こういう答弁をさせるのですか。これを見てごらんなさい。私はないことを言っているのじゃない、いま見せるから。こんな答弁をさせていいのですか。(「公取委員長にうそだと言わせろよ」と呼ぶ者あり)公取委員長はうそだと言っているじゃないか。話し合ったことはないと言っているじゃないですか、あなた、それでいいのですか。
  278. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 私はその文書は見ておらぬわけです。しかし、人間は意見が変わるものでありますから、その当時そういう意見がかりにあったといたしましても、現在は通産行政の責任者は私でございます。私の考えている方向に指導していきたいと考えております。
  279. 小林進

    ○小林(進)委員 公取委員長、いま一回あなたは答弁をしてください。
  280. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 和田産業政策局長
  281. 小林進

    ○小林(進)委員 そんなのの答弁、何も関係ないじゃないですか。
  282. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 いや、小松君が……。
  283. 小林進

    ○小林(進)委員 私は、小松に何も関係ないです。公取委員長にいま一度、いまのお話を話し合ったことがあるかどうかをお聞かせを願いたい。私が質問しているのであって……。
  284. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 私どもが申しましたのは、そういう質問書というような形でいただいたことはない、そういうことを申し上げたのです。しかし、たとえば第二回目の私どもの担当係官が行って通産省の事務当局の方とお話をした、そういうときの話し合いについて印象を述べられたと思います。しかし私どもは、たとえば独占、寡占の弊害について、具体的な事例というふうなものについて、具体的な事例ということについては、お答えするわけにはいかないという考えでございます。具体的な事例といえば、それは寡占でカルテルが非常にやりやすくなっているということでありますから、そういう事例はありますけれども、どの産業がどういう害をもたらしているかということを具体的にあげて言うのは、たいへん弊害がございます。たとえば、独占に近いものでこういう弊害があるというようなことを言うのは、それは差し控えるべきであるということでありますが、具体的なそういうものがなければすべて法改正はいかぬのだ、こういうふうに言われては困ると、おそらく私のほうの担当官は答えたものと思います。それを端的に、そういう返事がなかった、こういうふうにおっしゃられているのだと思います。
  285. 小林進

    ○小林(進)委員 公取委員長の回答で明確でございました。あとの問題では、私どもは、通産大臣、あなたの答弁には了承できません。国会の速記をつけたこの場所でかってなことを言っておいて、状況が変わったから、それはそのときだなどということは、あなた商売をして株でも売っているときはそれでいいだろう。国会はそんなに簡単に言ったり前言を引っ込めたりするところじゃないんだ。不謹慎きわまる、君は。大臣は大臣らしい責任ある答弁をしなさい。  これは私は了承できません。時間がありませんから、委員長、この問題は理事会において処理することを提案いたしまして、委員長がのんでいただきますならば、次の問題に入ります。
  286. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 小林君、ちょっとお尋ねしますが、どういうことを理事会でやるのですか。
  287. 小林進

    ○小林(進)委員 理事会でこの食言の問題をどう取り扱うかということです。
  288. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 わかりました。それでは理事会で検討をいたします。
  289. 田中武夫

    田中(武)委員 ちょっと議事進行。委員長、ちょっとすみません。  いま小林委員が申し上げたのは、現在小松君は事務次官で、ここへ出てきませんから、理事会へ呼んで、そこでいろいろ聞くということも含めて提案したんだと思います。そうでしょう。
  290. 小林進

    ○小林(進)委員 そうです。
  291. 田中武夫

    田中(武)委員 あるいは、説明員としてここへ呼んでもいいと思います。
  292. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 じゃ、申し上げます。  理事会で検討した上において、もし必要とあれば、小松事務次官も呼ぶこともあるかもしれません。しかし、理事会でよく研究して、小林君のおっしゃったことに間違いのないようにいたします。
  293. 小林進

    ○小林(進)委員 私はこういう新聞の、これは広告についてお尋ねをしたいと思います。ナショナルであります。「エレックさんは、均一加熱 電波のシャワーがくるくる回転電子レンジにムラ焼け防止装置がついているのは、いわば当り前。エレックさんは、上から電波をシャワーのように浴びせかける電波かくはんシャワー方式を採用しています。」これは、電波をさっとやると魚でも肉でも全部むらなく焼けるという、こういう電子レンジの広告なんであります。それで、そのむらなく焼けるという、ナショナルのこういうおそるべき広告が全部出ておる。ごはんからカレーから、キャベツからトンカツから、おしぼりからサツマイモ、冷凍シュウマイ、こういうことで、これはもう黙ってこれを入れておけば、電波のシャワーで全部むらなく焼けるという。そこでたいへん多くの人たちがこれを買いました。買って使ってみたら、ちっとも広告どおりに焼けないのであります、これは。何も焼けないからふしぎに思って、このシャワーのレンジの中に入っている使用説明書というものを今度はよく読んでみた。読んでみたら、その説明書のはじっこに、「焼きムラを」――焼きむらです。むらができますから、「焼きムラを防ぐには、調理途中で食品の位置を前後、左右入れかえたり、上下を返してください」という、こういう説明書が入っている。これはあなた、むらなく焼けますといってこういう広告を出しておいて、買って使ってみたら焼けないから、初めて説明書を読みましたら、上下左右にくるくる手回しをおやりなさいという。  そこで、これを買った奥さんから血を吐くような手紙が来ている。「呼称シャワー方式は、昨年のスターラーファン方式と同じで何も変わっていない。」去年の古いやっと何も変わっていない。「私も商品のことについてあまり調べなかったのですが、お客様より“新聞、テレビ、ラジオでムラ焼け防止装置がついているというので買ってみたが、あまりにムラ焼けするので、使用説明書をよく見ると八番にムラ焼けすると書いているので、これはメーカーと販売店にだまされた”と言ってきたのでびっくりして調べてみたら、新聞やテレビのコマーシャルとはまるで違うものであることがわかり、通産省及び公取の鑑識課に言ったところ、公取は調べます、通産省はメーカーに言うとのこと。」また、松下の会社のほうに、お金を返してくださいと言ったら、「お金は返さないと言われ、非常に困っています。メーカー側に言わせると、一度使用したものは返品の引き取りはできないと言っています。使用説明書はレンジの中に入っており、封をあけてみないと見られない」ということだ。これはみな封の中に入れてある。見られないようにしてある。封をあけてみないと見られないようにメーカーはしておるのだ。そして茶わん蒸し四個を入れてテストすると、一年前のものもいまのものも何も変わっていないというのだ。この機械は変わっていない。「ただ標準価格を上げただけである。」値段が上がっただけだ。シャワー方式とは、前の方式のスターラーファン方式の扇風機の上のシャフトを少しずらしているだけで、何ら変わりがない。  これは一つの例なんです。例だが、私はいま初めてこれをやったものじゃありませんよ。通産省関係の商工委員会、あるいは決算委員会その他の委員会で、家庭電器の大メーカーがいかにこういう消費者をいじめているかということを、もはや十数回にわたって通産省に訴え続け、泣き続けてきた。私が知っているだけでも、家庭で電気毛布をかけて、電気毛布が焼けて、まさに命をなくしようとした人も現実に知っている。いいですか。現実に冷蔵庫から火をふいて、家を一軒まる焼けにした例も私は知っている。しかしこれはみんな、生産者に言っても、生産者が賠償したものは一つもありません。そして通産省もこの問題を解決したことはありません。これが通産省の実態なんです。これは通産大臣。
  294. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 そういう事実があったことは承知しております。詳しいことにつきましては、政府委員から答弁させます。
  295. 森口八郎

    ○森口政府委員 御指摘のとおり、ナショナルのいわゆる電気攪拌シャワー方式、これは電波を攪拌する攪拌扇を容器の上部に取りつけたものでございます。こういうものを採用した製品がございます。この製品は、在来の攪拌しておらないものに比べまして、電子がむらなく当たるというような利点はございまして、同社の在来型に比べてはかなりのむら焼け防止効果を持っているというように私どもは考えております。ただ、御指摘のように、広告を見てみますと、全くむら焼けを生じないかのような広告をいたしておる。こういう点で消費者に誤認を与えるおそれがあるというように私どもは考えておりまして、この辺はきわめて遺憾に思うわけであります。  この点につきまして、通産省としましては、すでに業界全体に対しましてきびしく指導をしておりまして、同社では、最近、新聞広告及びテレビコマーシャルについて、この点の誤解を生じさせないような表現に改めるように、すでに措置をいたしておるわけであります。当省といたしましても、本件については早急に趣旨を業界に徹底させて、業界を指導させてまいりたいというように考えております。
  296. 小林進

    ○小林(進)委員 これが通産省の答弁です。五年も十年も、話したら必ず、広告をさせた、取り消しをさせたと、お手盛りの答弁だけです。こんなことで被害者は救われますか。こんなことで家をまる焼けにされたものが救われますか、あなた。通産省というのはそれなんです。産業庁がこれでりっぱな答弁をしたと思っているのですから。消費者のことなんか一つも考えない。  私も、数字がここにありますが、四月にもう二万四千七百三十九、五月に二万二千八百三十三、六月に一万八千三百十六、七月に三千百四十三、八月に四万六百一、九月になって四万五千百、もうこれで約十六万台からのものが出ているのです。なぜこんなのを回収しないのですか。一台残らず回収させればいいじゃないか。この被害を受けた者に賠償金を払うのがあたりまえじゃないか。現金をみな返すのがあたりまえじゃないか。返してなおかつ賠償金、わび状、わび金を出す、それくらいの行為をするのがあたりまえだ。業者に向かって――業者とは何だ、これはナショナルだ、松下幸之助だ、松下幸之助先生だ。この先生に文句を言えばいいじゃないか。業者とは一体何だ。そういう抽象的な言い分だから、われわれは業界と癒着しているとしか考えざるを得ないのであります。こういうようなことをやって、消費者の泣いている損害は一つも賠償もしていないのです。泣きの涙でいる人に対して損害賠償させればいいじゃないか。それを指導するのが通産省なんだ。  私はまだ通産省に言いたいのでありますが、時間がないから言うけれども、一体こういう松下幸之助あたり、人を殺している者に対して、賞勲局、まさか勲章なんかやっていないだろうけれども、ちょっと勲章なんかやっているかどうか、よく教えてちょうだい。こういう企業なんというものは、みんなこうやって、知らないところで弱者を泣かしているのです。
  297. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 ちょっと、勲章の問題よりさっきの問題をもう少し徹底したらどうですか。
  298. 田中武夫

    田中(武)委員 関連して、簡単に申し上げます。  いま小林委員の指摘した点は、公取委員長、誇大広告、虚偽表示防止法の違反だと思うが、それによってひとつさっそく調査というか、この法律の発動を考えられるかどうか、一言でけっこうです。
  299. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 いま承っておりまして、私はそういうのは事実であると思います。ただし私、実はうかつにも本日まで部下から報告を受けておりませんので……。しかし、それが事実であります以上、当然不当表示に該当いたします。これは包みの中をあければほんとうのことが書いてあるといっても、それは買ってみなければわからぬことですから、それでなくて、表に出ている部分に正確にそういうことは記載すべきであるということでありまして、それは不当表示として、不当表示防止法によりまして排除命令を出したいと思います。
  300. 小林進

    ○小林(進)委員 大体、何とか一代記を書いたり、りっぱなことを書いているけれども、その大企業の本質というものはこれほど庶民に対して残酷非道である。もうけのためには人の命をとることも平気なんだということを私は言いたかったんだ。こういうものに対して政府は、賞勲局は勲章をくれているのだろう。一体どんな勲章をくれているのか、参考にいま教えてくれというのだ、賞勲局に。どんな勲章をくれているのか、ちょっと一言で簡単に言ってくれよ、これ。
  301. 秋山進

    ○秋山政府委員 松下幸之助先生には、昭和四十五年の春の叙勲で、勲一等瑞宝章を受章されております。
  302. 小林進

    ○小林(進)委員 これが政治企業の癒着だと私どもはいわざるを得ないんです。あなたたちのところへは紳士だけれども、裏を向くと、庶民階級にはいつもこういうことを言って泣かしているのです。   〔委員長退席、欄内委員長代理着席〕  まだ私は言いまするけれども、あの石油狂乱で、いま、きょうあたり公判になっている、あの石油カルテルをやった、つくったいわゆる張本人は、それは日石と出光ですよ。裏の委員会をつくって、そうして協定を結びながら悪いことをやった。その出光から、ことしの三月には、アラブの石油の値段が変わったから早く値段を上げてくれと言われたときに、中曽根通産相は、不当価格でもうけた分だけを吐き出させるまでは石油の値上げは認めませんと言って、舌の根もかわかないうちに、もう三月の六日には、新価格の値上げをすることを認めた。いいですか、通産大臣はそのとき何と言ったか。いま認めなければ企業が全部倒れるから、やむを得ず石油の値上げを認めるという。一体その石油企業がことしの九月の決算期にどんな利益をあげていますか。私は時間がないから、ここにみんな資料がありますが、その元凶の一つである出光なんというのは、四割の株の配当をやっているじゃないですか。四割ですよ、四割。これは世間のていさいもあり目もあるのだ。何ぼ隠してもうけたにしても、社会的責任を感じたら、せめて一年や二年ぐらいは人並みの配当金でいいじゃないか。四割の配当とは何事です。東京電力だってそのとおりだ。まさに電気料金はどうにもならぬ、破産絶対だ、早く何とかしてくれといって、株の配当金をこの三月には六分にしたやつを、九月になったら八分に上げたですな。みんな理屈はあるでしょう。どろぼうにも三分の理屈があるのでありますけれども、しかし、天をおそれず人をおそれず、こういうかってなことをしている企業、それを指導している、監督しているのは通産省なんです。通産省は国民の敵ですよ。産業経済第一主義だといっているけれども、国民不在の行政です。  賞勲局長、その出光佐三なる者も、一体勲章は何をもらっているか、ひとつ参考までに言ってくれ。
  303. 秋山進

    ○秋山政府委員 石油関係の褒章賜与につきましては、昨年の秋以降は推薦がございません。それから出光社長につきましては、昭和三十四年に藍綬褒章を受章されております。
  304. 小林進

    ○小林(進)委員 悪いやつほどよく眠るといって、そうしてはみんな国から勲一等をもらったり褒章をもらったりして、そしてこの狂乱物価に国民を泣かしながら、四割の株の配当をしているなど、私は実に不謹慎きわまると思わざるを得ないのでありまするが、まずもとへ戻りまして、このナショナルの家庭電器でありまするけれども、これは全部、いわゆる一台残らず回収をせしめて、なおかつ一人一人のこの損害を明確に賠償させるかさせないか。通産大臣、ちょっと明確に答えてください。
  305. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 そういう事実があるということは承知しておりましたが、なお具体的に詳細に検討いたしまして、後日決定をしたいと思います。
  306. 小林進

    ○小林(進)委員 この偽りの品物を買わされて困り抜いている消費者に、どういう償いをする考えかと私は聞いているのです。
  307. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 具体的な事実を私はいまつまびらかにいたしませんので、詳細に検討いたしまして、どうすればよいか判断をしたいと思います。
  308. 小林進

    ○小林(進)委員 全くこれは、通産大臣の答弁には一言も私は了承はできません。できません。だから、あなた方のこれからのやり方を見て、この問題はまたずっと尾を引いていきます。  そこで、この問題を打ち切りにいたしまして通産大臣にお伺いしますが、この家庭電器その他安全の問題について、一体この国会の中で何回同じ論議が繰り返されたか、その速記録を戦後から全部集めて、その資料をよこしていただきたいと思います。これはすぐできることですから、お願いいたします。  そこで次の問題に移ります。私はもう時間を費やしましたので、エネルギーの問題でほんの一言だけお聞きしておきますが、いま石油の問題、食糧の問題、これがみんな輸入のために、われわれ国民は苦しんでおりまして、食糧については自給体制をつくり上げなければならない。他国の資源に生命を託している者のいわゆるはかなさ、危険さというものを、去年からことしにかけて、国民は痛くなるほど知ったわけであります。弱りました。で、そういうさなか、いま、もはや石油も戦略物資ですね。食糧も戦略物資の扱いを受けている。われわれは自分たちのエネルギーと生命を、運命を他国にまかせるという状態に投げ込まれた。これを何とか脱出したいというのが国民の祈るような気持ちでありますが、その中で、今度は原子力発電というものがいま軌道に乗ってきた。その原子力問題について、安全性の問題と公害の問題が論ぜられておりますけれども、私はそれは言わぬが、すなわち他国に運命を、エネルギーを託するという、このいわゆる原子力の問題です。いわゆる濃縮ウランの問題です。いま、石油を輸入することが困難だから、ひとつウランにわが日本のエネルギーを託そうというふうな主張が流れておりますが、しからば、石油事情が変わっても、そのウランが、将来長期にわたって一体わが日本が安心して輸入できるという見通しがあるのかどうか。このウランの長期の見通しであります。それがなければ、石油と同じように、やはり将来ふらふらするものならば、私どもは、その原子力行政というものに対しても、その面から真剣に考え直さなければならぬと思いますので、あなたにこの点だけ一点お伺いしておきます。
  309. 佐々木義武

    ○佐々木国務大臣 初め簡単に申し上げまして、深い御質問があれば、続いてお答えいたします。  六十年まで、大体いまから十一年間くらいでございますが、その原子力発電に所要する濃縮ウラン、または濃縮ウランをつくる原料である天然ウラン、この両方に関しまして、完全に手当て済みでございます。十年以降、十カ年たった後の問題に関しましては、ほぼ見通しがついておりますけれども完全とは申せませんので、その解決のためにいろいろな手段を講じまして、ただいま努力中でございます。
  310. 小林進

    ○小林(進)委員 まあ佐々木さんは、私と一緒に中国へ行った仲間同士でもありますし、初めての大臣ですから、まあこの程度におさめておきますが、しかし結論から見て、十年の見通しでは心もとない。十一年後は、これから努力したって見通しはない。日本のエネルギーを託するからには、少なくとも五十年、百年の見通しがつかなければ、落ちついてわれわれの子孫にまかせるわけにはいきません。実にそれは心もとない政策であるといわなければならぬのでありまして、また石油のような混乱が、十五年後に、今度は濃縮ウランという形で起きてこないと、だれが一体保証できますか。たいへんな問題をかかえているということだけを、私は警告を発しておきます。  次は食糧問題に入りますが、先ほどから私は繰り返しておりますけれども、食糧問題は、いまの燃料よりもむしろ日本にとって重要な問題であるということが、最近ようやく日本の中でも叫ばれてくるようになりました。自給の体制をつくろうといっておるのであります。  総理大臣、あまりこまかいことを言うようで申しわけありませんけれども、あなたは少しお眠いようでございますから、眠けざましに申し上げたいのですけれども、あなたは毎朝何を一体お食べになっておりますか。あなたがお食べになっているものは何でございますか。必ずグレープフルーツを食べてエネルギーの源泉としておられるということでございますか。間違いございませんか。
  311. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  312. 小林進

    ○小林(進)委員 総理、あなたのくににはミカンはとれませんか。
  313. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 私もあまりぜいたくしないもので、朝、グレープフルーツぐらい食べることはお許しを願いたい。
  314. 小林進

    ○小林(進)委員 私は決してあなたに、グレープフルーツを食べるなと言うのではないのであります。ただこれはアメリカの品物だ。日本の国会でたいへんもめたものです。しかしあなたの徳島には、温州ミカンといって、これは日本にも誇るべきりっぱなくだものがあると聞いておりますから、何でまた三木総理は、これほど国を愛し、産物を愛し、土地を愛し、妻を愛するこのりっぱな人が、何で自分の足元にあるこの温州ミカンを食わなくて、アメリカのグレープフルーツを食わなければならぬのかというその点、一点疑義を持ったものでありますから、あなたに質問したわけでございますけれども、いま一回、理由をお聞かせ願いたいと思うのであります。
  315. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 人間の一つの嗜好というものを一々理由を言うことはなかなか困難でございますが、私はくにのミカンを全然食べていないのじゃないのです。朝だけグレープフルーツを食べて、その後は、ミカンは好きですから、くにのミカンもたくさん食べておりますから。グレープフルーツによって、私の愛郷心を疑われることは心外に存じます。
  316. 小林進

    ○小林(進)委員 安倍農林大臣は、「食糧問題は、石油問題以上に大切な問題だ。経済合理主義とやらで、安い食糧をどんどん輸入してきたが、ここでばたりと輸入がとまったら、石油危機どころの騒ぎではない。食糧自給率を上げることは国民的課題だ。国民に信頼される政策を進めたい。」あなたはこう語っておられますな。この点は全くわれわれも同感です。それほどこの食糧というものはエネルギー以上に重要な問題であったにもかかわらず、なぜ一体歴代の自民党は今日まで農業を荒廃させたのですか。食糧自給率を低下させて、高い食糧を日本に輸入しなければならない事態をつくって、その食糧が引き金となって、このおそるべきインフレが巻き起こった。私は食糧問題がわが日本インフレの大きなファクターの一つだと思っている。かつては八〇%くらいの自給率を持ったわが日本の食糧を、カロリー計算で三五%まで低下せしめた、この大きな政治の誤りに対して、あなたがほんとうに食糧の重要性があると思うならば、歴代のこの自民党の農政というものに対して、まず反省を持たなくてはいけない。いいですか。あなたにこの反省がありますか。時間がないから言いますけれども、あなたに一片の反省がないのです。ない証拠に、あなたはこういうことを言っている。しかしそれならば、自民党は最も反農民的政治、反農村的政治をやってきたことをすなおに認めるか、こういう質問に対して、あなたはこう答えている。いや認めない、「高度成長政策をとることによってこれだけ豊かになったのだから、」「農業はその飛ばっちりを受けた」のであり、「基本的には間違っていなかった」と答えている。この答弁に間違いありませんか。どうぞお答え願いたい。
  317. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 高度経済成長が農村にいろいろの問題を持ち込んだことは事実でございますが、また反面、農家の所得の増大あるいは生産性の向上、また食糧の生産の拡大といった面についても、高度成長の影響というものはあったわけでございます。しかし私たちは、この高度成長によるところの、たとえば農村人口の流出であるとか、あるいは農地が荒廃をしたといったような面は、率直に認めておるわけでございます。現在、高度成長から安定成長に切りかえられるという、農村を取り巻く客観的な情勢もありますし、また、さらにいま御指摘のように、国際的に食糧が逼迫をするという情勢にあるわけでございますから、この際さらにひとつ自給力をあらためて高めていかなければならぬ。同時にまた、なかなか日本農業では生産できない農産物については、国際協力のもとに輸入の安定化をはかっていくということが、これからの基本的な農政の課題である、こういうふうに私たちは考えております。
  318. 小林進

    ○小林(進)委員 私の質問に答えてもらいたいと思う。農業基本法の農政を認めて、いわゆる高度成長下における自民党の農政が成功したとあなたは言っているが、これに間違いないかとこう言っているのだ。いままでの農業が成功したとあなたは答えているが、それで間違いないか、こう言っているのです。
  319. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 農家の所得もふえたわけでございますし、あるいは生産性も高まった。成長率の点は、高度成長の中において低かったことも事実でございます。しかしその反面、いろいろの問題があったことも事実でございます。しかし私たちは、今日の段階においては、農村を取り巻く客観情勢が違ってまいりましたので、新しい角度で農政の転換をはかっていきたい、こういうふうに申しておるわけでございます。
  320. 小林進

    ○小林(進)委員 あなたは私の質問にさっぱり答えてはおりません。それからまた、あなたは、いままでのように、この高度成長下における農業は成功したんだ、決して失敗じゃないんだ、そのために農民の所得もふえたんだという考えは、いま一度高度成長が必要のときが来れば、またいつでも農業を捨ててしまうという、そういうことばの裏づけだ。そういうような農林大臣に、日本の農業をまかすわけにまいりません。あなたは実におそるべき答弁をしておられる。私は農民の所得を聞いているんじゃない。農業を衰退させた根本の原因が、重化学工業最優先の高度成長政策をゴリ押しに進めた、農業を切り捨てる道を突っ走ってきた自民党の農政の結果であるという、この農業の政策の失敗をあなたは認めない限り、反省しない限り、新しい農政というものは生まれてきませんよ。高度成長になろうと重工業になろうと、この四つの島の中に囲まれた日本においては、何といっても農業だけは自給自足の体制をつくり上げていかなければならないという、高度の哲学から発生した農政でなくちゃ、とても農民はついていけない。あなたにはその一片の反省もないじゃないですか。だめですよ、そんなんじゃ。  これは福田総理にもお尋ねいたしますけれども、あなたはかつて、だれよりもだれよりも農民を愛すというキャッチフレーズをしばしばおつくりになった。ところがあなたが、だれよりもだれよりも愛すと言いながら、食管を骨抜きにされた。それから、この前の田中総理のもとの三十万ヘクタールの農地をつぶすという政策にも、あなたは賛意を表された。どこまでも農民を愛すという実績は、あなたの長い業績の中に出てこない。どこまでもどこまでも農民をだますという、そういう実績しかあらわれてこないのでありますが、この点いかがでございますか。今後のあなたの経済閣僚キャップとしての、農政についての信念ある主張を聞きたい。反省のことばをお聞きしたい。
  321. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、世界情勢が非常に変わってきておる、こういうふうに思うのです。エネルギーの問題と並んで食糧問題という問題が、これは見直さなきゃならぬ時期に来ておる、そういうふうな認識でございます。その認識に立ちまして、日本の農政も出直しをしなきゃならぬ、その中心は自給度の向上である、かように考えております。
  322. 小林進

    ○小林(進)委員 もはやそれを不動のものにしていただいて、また時勢の移り変わりによっては輸入食糧がいいなどといって、方向を転換されることのないように、私どもは希望しておきたいと思うのであります。  そこで農林大臣。あなたは五十年度の予算に対して、農業の自給率を高めるということに対して、具体的に一体どういう新規の予算措置をいま考えておられるか、私はお伺いしたいのです。   〔櫻内委員長代理退席、委員長着席〕  実はあなたの発言の中にこういうことがある。五十年度の予算はすでに総需要抑制型で固まっており、来年度まで生産調整をやることになっているので、これは従来どおりやります。五十一年以降初めて、生産調整を見直すことや食糧備蓄の問題などを真剣に取り上げたいと思っております、こう発言しておる。来年度の予算の中には食糧自給の問題は一つも扱わないで、やはりたんぼをつぶすほうの方向へやるのだと言っておられる。これはおそるべき農政じゃありませんか。
  323. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 私の発言が正確に伝えられていないわけですが、生産調整のほうは五十年までやるということはもうすでにきまっておるわけでございますが、しかし五十年度予算につきましては、先ほど申し上げましたように、自給力を高めていくという意味におきまして、飼料作物の増産、あるいは裏作の活用、生産基盤の充実等、万般の政策を積極的にとっていきたい。そういう意味において、五十年度の予算要求も、現在私の手元で見直して、新しい要求を出す段階にあります。
  324. 小林進

    ○小林(進)委員 ともかくあなたの発言の中には、生産調整は、もはや予算ができ上がっているからやめられないと言っておる。いまローマ会議においてしかり、世界の発展途上国からしかり、先進国の日本が世界じゅうの食糧を買いあさっている、この食糧の非常な窮乏を来たした現犯人の一人だとまで非難をされているさ中に、来年は依然として米をつくらない調整政策を進めていくとは何事ですか、一体。何をおいても、そんなことは直ちに廃止をしなければならぬのが、新しい農林大臣の農政でなくちゃいかぬ。だめですよ、その姿勢は。麦の裏作なんというのは当然やるべきものだけれども、生産調整じゃない、自給体制を一日も早くするために取っ組まなくちゃいけない。五十一年からやりますと、あなたは再来年もその次も農林大臣をやっているような気持ちで言っておる。そうはいきませんぞ、そんなことは。そういうふまじめな発言では断じてわれわれは了承するわけにいきません。来年からきちっと生産調整をやめなさい。自給体制に入りなさい。その約束ができるかできないか。
  325. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 ことしから休耕田はやめて、稲作の転換によりまして、飼料作物、麦等の拡大をはかっておるわけでございまして、これは、来年度の米の需給等も見まして、蓄積等も考えまして、来年度もやはり依然として飼料作物等にも転換をしていかなければなりませんから、その調整する全体のワクについては現在検討をいたしておりますが、一応来年度まで生産調整を行なう。そして、さらに米の需給状況を見ますし、また、現在御存じのように、米の消費というものも以前のようにだんだん下がっていなくて、横ばいから少しずつ上昇しているという段階にもあるし、また世界的な食糧情勢もありますから、そういうものを十分考えて、再来年は新しい考え方のもとにやらなければならぬ、こういうふうに思っております。
  326. 小林進

    ○小林(進)委員 わが日本で、自給体制を一番先に進めなければならぬのは麦です。大豆です。飼料です。もう時間もありませんから、かいつまんで言いますが、この畜産とえさの関係について、飼料が高いから牛肉を食えないのです。畜産農家はみんな泣いているのです。この農家をして、日本国民に安心して牛肉を食わせるためには、えさの問題と真剣に取り組まなくちゃいかぬ。そのために、まず、飼料の高騰に対処するためのえさの管理と、輸入公社を設立して輸入の一元化と価格の管理を行なうべきであるということが第一番目です。おやりになるかならぬか。これは緊急を要する問題ですから……。  第二番目には、この畜産の中に、豚肉については畜産振興事業団ができているけれども、牛肉についてはこれがない。だから畜産振興事業団の中に牛肉も含めて、豚と同じような扱いをして、いわゆる高値と安値を管理するかどうか。この問題について、私は農林大臣の決意をひとつ承っておきたいと思います。簡単でいいです。
  327. 安倍晋太郎

    ○安倍国務大臣 主要原料全体を、政府が一元的に食管でやるということは、現在の食管の状況から見まして、人員等も膨大になる、あるいは経費等も膨大になるわけでございます。これは現在、食管で輸入飼料勘定というのがあるわけですが、飼料用大麦、小麦がそうですが、しかし、トウモロコシ、コウリャンといったような輸入飼料原料については、国が介入するということは考えておらないわけであります。公社等をつくって一元的に輸入するということは、国際的にもガットの問題等がありますので、これは考えておりません。  それから牛肉の問題につきましては、これは何としても安定をしていきたいと思っております。したがって、現在、外国からの輸入はとめておるわけでございますが、来年からは、いま御指摘がありますように、畜安法を改正いたしまして、何とかひとつ指定肉という形に持っていきたい、指定をしたい、こういうふうに考えております。
  328. 小林進

    ○小林(進)委員 私は、農業問題では、最後に相続税の問題についてお尋ねをしたいと思いますが、これはもはや議論の余地はなくなりました。農地の相続税をやるかやらぬかの問題でございます。きのうあたりも、自民党で何か調査に行かれたようでございますが、そこでも、調整区域の中で山林について十六億円の評価を受けて十億円の相続税をかけられた農家もあるとか、あるいは固定資産税の評価の三十五倍から百六十倍の高値で課税をせられて、もはやとても農地の相続が事実上困難であるという悲鳴を実際に聞いてこられたようでありまするけれども、これに対して、大蔵大臣、やるかやらないかだけ、簡単にひとつ言ってください。
  329. 大平正芳

    ○大平国務大臣 相当思い切ったことをやりたいと存じまして、調査会と相談中です。
  330. 小林進

    ○小林(進)委員 積極的な答弁をいただきまして、まあ私も先を明るくいたしましたが、この評価方式を収益還元方式に切りかえる。明治から、たんぼ、畑、山林、みんな収益方式が深まってきたのでありますから、その辺も十分加味いたしましてやっていただくように、ひとつ最大の御努力をお願いいたします。  まだ用意いたしました問題は半分しか片づいていないのでありまするけれども、時間が参りましたのであれですから、これは年がかわって、また来年の二月に、あらためて御質問を申し上げることにいたします。  地方税の問題やら、社会的不公平の問題やら、あるいは制度改革の問題等、一番重要な問題が残りまして、残念にたえませんけれども、私は、時間の制約がありますから、最後にこれ一問にしてやめます。  先ほど質問しましたときに、私は、総理大臣に、よく聞いてくれ――大体時期を同じくして大統領になられたアメリカのフォード大統領が両院合同会議の中でどういう発言をされているか、ちゃんと資料があるから、それを見て、三木総理大臣の国会における発言と比較対照してくれということを私はお願いしておきましたから、見ていただいたと思います。  時間がありませんから、この項目だけを申し上げまするけれども、フォード大統領が一九七四年十月八日、いわゆる両院合同会議で、十項目の新経済政策というものを演説されている。この演説の内容を聞きますと、まことにそのまま日本の今日のインフレの状況に当てはめて、名前をフォードから三木にかえて、三木総理大臣の演説にしてもいいような項目がある。彼は、何といってもいまはこのインフレを克服しなければならないんだと言う。アメリカですが、これは日本と同じだ。そのためにやらなければならないインフレ克服の第一は食糧だと彼は言っているわけだ。アメリカの食糧生産は世界第一であるけれども、食糧価格と石油の価格、これはアメリカにおけるインフレの第一なんだから押えなければいけないということを、切々として国民に訴えているわけです。  第二項目は、彼はエネルギーと言った。エネルギーはアメリカのインフレと消費者の生活を苦しめている一番のファクターである、一七%のファクターを持っているから、このエネルギーを節約しなければならないと、切々として訴えていますよ。一日に百万バーレルの石油の輸入品を節約しましょう、そのためにはマイカー族もマイカーをやめて石油の節約をしよう、こう訴えています。  第三番目には、いわゆるインフレを克服するためには、これは制限的慣行といって、独占禁止法を積極的に運用していく決意だ、価格協定や談合入札に対して、法律の積極的運用をはかることによって精力的に注意をして、そうして料金を引き下げて国民生活を安定すると言っていますよ。しかも、そのために被害を受けた失業者及び弱者救済のために、これこれこれこれの政策を行なう。弱者救済の政策、そして住宅の建設の促進、零細金融機関の救済、これは議会を通じて、実にきめこまかに国民の心情に訴えていますよ。そうしてエネルギー危機の中で、貴重な燃料を節約するために、ドライブを少なくし暖房を弱めてほしい、こう両院合同会議の中から訴えていますよ。それから食料については、奥さん方にこう言っていますよ。食料をあなた方はいつも残しているでしょう、その残している食料を、朝昼晩三回残さないことにしてください、それだけでも、アメリカの食糧問題にたいへん大きく影響するのですと、議会を通じて訴えていますよ。  あなた、今晩お帰りになったら、これをいま一回読んでみてください。そうしてインフレ克服のために、外国人の私が読んでも切々として心情を打たれるような、実に具体的な方策を、議会を通じて国民に訴えています。これが政治なんですよ。あなたが演説の中でどう言われても、花は咲けども山吹の実の一つだになきぞ悲しきというのが国民の批判であった。この批判は決して間違っているものじゃないんです。これと比較対照していただければすぐわかるのであります。そういうことから、いま少し国会という場を通じて、国民に真実を語り、真実を訴え、しかも国民を指導していくという体制をつくっていただかなければならないと思いまするけれども、ちょうど時間が参りましたものですから、ちょっと総理大臣の決意のほどを承って、私の質問を終わりたいと思います。
  331. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 フォード大統領の演説は、私もその当時よく読みました。きわめて具体的に言われておりますが、私も自分の所信表明の中で、項目としてはほとんど変わらないわけですが、整理をされて具体的に言われていることは、国民に訴える方法としては一つの効果的方法だと思いますが、問題のとらえ方としては違ってはいない。しかし訴え方に対して、ああいう訴え方というものは一つの訴える方法だなあというような感じがしたわけでございます。
  332. 小林進

    ○小林(進)委員 それでは委員長、時間が参りましたから、残念ながら、あとは明年に残すことにいたします。
  333. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて小林君の質疑は終了いたしました。  この際、坂井弘一君の保留分の質疑を許します。  三木総理大臣から発言を求められておりますので、これを許します。
  334. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 坂井さんの質問に対して、問い合わせました結果をお知せをいたします。  政策懇談会及び近代化研究会会計責任者に連絡して調査いたさせましたところ、会計責任者の説明するところによりますと、昭和四十六年から昭和四十八年までに、相当な額が政策同志会政経研究会政経同志会政策調査会名義で支出されておりますが、これらはいずれも、政策懇談会または近代化研究会のプロジェクトチームともいうべきもので、その実態政治団体というほどの組織に熟したものではないそうでございます。そしてそのプロジェクトチームの世話役と申しますか幹事役は、政策同志会政経研究会にあっては、東京都杉並区梅里一の四の三十八、岩野美代治、政経同志会政策調査会にあっては、千葉市祐光町一の十八の二、林幸一だそうでございます。
  335. 坂井弘一

    坂井委員 いわゆる政治団体ではない、問い合わせた結果そういうことだという総理の御発言でございますけれども、私は、これは明らかに政治団体であるということを申し上げておったわけでございます。この問題につきましては、ここで重ねて議論をしてまいりましても、限られた時間でございますし、この結論を出すことはきわめて時間的には困難であろうと思います。  ただ一点お伺いいたしますが、先ほど約束いただきました収支の報告につきましては、国会に御提出いただけるんでしょうか。
  336. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 長い期間のことでございますから、しばらく時間をかしていただきたい。その収支の計算は、これは報告をいたすことにいたします。
  337. 坂井弘一

    坂井委員 時間をかしてくれということですから、確かに三年間という期間にわたるわけでございますから、かなりな時間を要するだろうと思います。それを待ちまして御提出をいただくということでございますから、それを待ちまして、その上で重ねて質問をさしていただきたい、こう思います。  そこで、さらにこの問題の質疑というわけにはまいりませんので、独禁法の問題につきましてもきわめて中途はんぱに終わっておりますので、要点だけ具体的にまとめて申し上げたいと思いますが、四十八年一月からことしの十二月十九日といいますと、きのうまでの独占禁止法違反の件数を実は業種別に調べてみました。そういたしますと、たいへんな状態でございまして、石油及び石油製品販売、それから石油化学製品、紙、セメント、プロパンガス、鉄・非鉄金属、食品、その他、こういう業種、これが、昭和四十八年に独禁法違反が五十三件、うちカルテルが五十二、それから四十九年は同じく五十三件でカルテルが四十六、それから四十七年は二十三件で、うちカルテルが十三ということでございますから、ずいぶんたくさんな独禁法違反が四十八年、四十九年に行なわれておる。中でも、この狂乱物価の主役でありました石油、石油製品販売、石油化学製品、セメント、プロパン、これがほとんどなんですね。こういう実情であるということをまず御認識ください。  さらに、昨年一月からことしの六月までに独占禁止法違反を三回以上重ねた大企業が、昨年一年間で自民党国民協会にどのくらい政治献金をしたか、こういう表も実はまとめてみました。  二、三申し上げますと、住友化学工業、これの違反件数が四十八年一月から四十九年六月までに六件あります。献金額が八百四十八万三千円、宇部興産が違反件数五件、献金額が九百三十四万円、昭和電工が違反が三件、献金が五百五十三万三千円、三菱化成工業が違反が三件、献金が九百六十四万一千五百円、三井東圧化学が違反が三件、献金が六百五十四万三千円、ざっとこういうふうなことになるわけです。いま申し上げたことを、公取委員長ちょっと御確認いただきたいと思いますけれども、間違いないでしょうね。いかがでしょう。
  338. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 この表のうちで、実は三回以上、一年半の間に違反を繰り返した企業については、ほぼ間違いないと思いますが、十八社のほかに二社あると思います。たいしたことではございませんが、ほとんど誤差がない。  それから、なお、次にある業種別の違反件数、審決件数でございます。これは勧告でなくて、おそらく審決をとられたと思いますが、審決件数、ほぼ間違いがないものと思います。
  339. 坂井弘一

    坂井委員 御確認いただきました。三回以上審決を受けた大企業ですが、十八社あるようですね。そのうちおよそ同時期に十三社までが多額の献金をしておる。狂乱物価の全く主役を演じた。物価つり上げがなされた。先ほど、あまり物価には関係ないんだというような、通産省のたいへん不謹慎な発言だと思います。まあ一回、二回というようなことまで数えますと、ものすごい数になるわけですね。ですから三回にしぼってみますといまのような実態であります。それから石油連盟に至っては、四十七年は一億二千万円、四十八年の違反の同時期において七百五十万円献金しております。こんな献金は少なくとも受けないほうがよろしいと思う。  それから、総理もこれは御注意いただきたいという意味で申し上げておきますけれども、あなたの政治団体、つまり政策懇談会、これにもやはりこういう企業からの献金がある。つまり、独禁法に同じ時期に違反する企業、これもよくひとつ御注意いただきたいと思いますね。大阪セメントとか日本ゼオン、それから日本軽金属、こういうところからかなりな献金があるようです。時期は四十八年の十二月あるいは四十九年の五月。日本ゼオンは四十九年の二月、日本軽金属が四十九年の三月、こういう時期であります。これらもお断わりになったほうがよろしかろう。あえて申し上げておきたいと思います。  私は、独禁法違反でもうけた金をすぐに献金した、そんなことを言っているわけじゃありません。ありませんが、少なくともこのような疑惑を持たれる。国民がこの物価高で苦しんでおる、独禁法違反企業が繰り返す、けしからぬことではないか、これは非難の的になっているわけでありますから、心されたほうがよろしかろう、こういうわけで申し上げておるわけであります。  しかもこれらの大企業に政府の資金が多額に融資されるわけですね。日本開発銀行、日本輸出入銀行、北海道東北開発公庫、それから海外経済協力基金、これらに限ってみましてもずいぶん多うございますよ。いま申し上げました住友化学工業、これが同じ時期に十五億円、宇部興産は四十二億九千万円、昭和電工が八億七千四百万円、三菱化成工業が二十億四百万円、それから三井東圧化学が十五億七千万円、こういう政府系の金の多額の融資がしてあるのですね。これを融資したこと自体、私は悪いと言っているのではないのです。これほどたくさんな融資をするのは国民の税金からですが、それでカルテルをやる、独禁法違反をやる、物価をつり上げる。違反ですね、経済的犯罪。それで国民協会へ献金する。こういうことはおやめになったほうがよろしいということを申し上げておるわけです。  ですから、結論として申し上げたいと思いますが、この独占禁止法改正の内容ですが、われわれ公明党は、今国会にも独占禁止法の改正案を提出いたしました。価格の引き下げの措置、あるいは課徴金、それから消費者の損害賠償制度の容易化、こういうことが主要な柱になっている。いま述べましたように、独占禁止法違反をした会社は、政治献金などする前に引き上げた価格を引き戻す、国はその不当利益に対しては課徴金として徴収をして、消費者行政のために使う、それから消費者の損害請求を容易にする、こういうことを含めまして、少なくとも公正取引委員会改正試案、これを最小限度として独禁法の改正をする。これは国民の前に確約をしてもらいたいわけですね。  そこで、公正取引委員長に一言、簡単でけっこうでございますが、公取試案について見解だけを求めておきたいと思います。これはぼくは最小限だと思う。いかがでしょう。
  340. 高橋俊英

    高橋(俊)政府委員 公取試案の骨子を発表しておりますが、これらの項目につきましては、ただいま最小とおっしゃいましたが、私は、現在の段階においては、一番現実に即した、そしてまた絶対に欠かせないものであるという考え方に立っておるわけでございまして、その点は多少食い違うかもしれませんけれども、必要でかつ適当である、こう考えておる次第でございます。
  341. 坂井弘一

    坂井委員 総理に最後に一言だけお伺いしまして終わりたいと思いますけれども、ただいま高橋公取委員長は、現下の情勢に最も即し適当なと、こういう発言であります。総理はどうかこの公取試案を尊重されまして、そして次の国会に改正案を提出される、ひとつこの御決意を御披露いただきたい。
  342. 三木武夫

    三木内閣総理大臣 独禁法に対する公取の試案は、これは長い間研究された重要な試案でありますから、十分参考にはいたしますが、単に公取委員会ばかりでなしに、広く国民各層の意見を徴して、できる限り国民の納得できるような独禁法の改正を行ないたいと考えております。
  343. 坂井弘一

    坂井委員 いずれあらためまして独禁法改正の問題につきまして議論をいたしたいと思います。これで終わりたいと思います。
  344. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて坂井君の保留分の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、昭和四十九年度補正予算に対する質疑は全部終了いたしました。  この際、御報告いたします。  昨日の楢崎弥之助君及び本日渡部一郎君から申し出のありました懸案事項については、本日の理事会でそれぞれについて具体的に協議の結果、今後なお検討を重ねてまいることといたしました。なお、先ほどの小林進君の御要望についても、あわせて検討いたすこととしましたので、御報告申し上げます。     ―――――――――――――
  345. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 田中武夫君外十六名より、日本社会党、公明党及び民社党共同提案にかかる昭和四十九年度補正予算三案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議が、また、林百郎君外三名より、昭和四十九年度補正予算三案につき編成替えを求めるの動議が、それぞれ提出されております。
  346. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより、各動議について、順次その趣旨弁明を求めます。広沢直樹君。
  347. 広沢直樹

    広沢委員 私は、ただいま議題とされました日本社会党、公明党、民社党三党共同提案にかかる昭和四十九年度一般会計補正予算昭和四十九年度特別会計補正予算及び昭和四十九年度政府関係機関補正予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議につきまして、提案者を代表して、その提案の趣旨を御説明いたします。  今日、インフレの高進と不況の深刻化の中で、国民生活は破綻の一途をたどっております。この現状をもたらした原因は、二十数年に及ぶ、自民党政府が大企業と一体となって推進してきた高度経済成長政策にあることは言うまでもありません。  インフレは、富める者を一そう富ませ、貧しい者をより乏しくし、富と所得の不公平、不平等を拡大して、社会的、経済的不公正をますます顕著にするばかりでなく、国民の生活破壊とともに、政治不信を増大し、社会的荒廃をもたらしているのであります。この現状をわれわれは深刻に受けとめるべきであります。  したがって、今日緊急の課題は、大企業、独占資本本位の政策を国民生活優先の政策に転換し、インフレ、物価高騰を押え、インフレ被害者を救済し、社会的、経済的不公正を是正することでなければなりません。  しかるに、政府が提出した昭和四十九年度補正予算案は、この緊急の課題にこたえず、三木内閣は、前内閣の編成した補正予算案をそのまま踏襲して提出し、当面する難局を国民の犠牲によってくぐり抜けようとしているのであります。そこには、新内閣としての意欲も責任も全く示していないというべきであります。  日本社会党、公明党、民社党三党は、政府に対し、国民生活を優先して総需要抑制政策の質的転換を行ない、四十九年度補正予算三案は、インフレ被害者の救済、不況の克服、地方財政強化など、物価調整措置の三点を重点とした強力な財政措置をとるよう、すみやかに組みかえをし再提出することを要求するものであります。  以上の基本的立場に立って、最小限度次の諸項目にわたって編成がえすることを要求するものであります。  まず、歳入関係につきましては、勤労者に対する三万円年内減税の実施を要求いたしております。  今日、異常な物価狂騰のもとで、勤労者には二兆円減税の効果も完全に失われ、逆に実質増税となり、しかも物価上昇による賃金の目減りによって、税金等を差し引いた可処分所得は、実質的にマイナスになっております。  この際、勤労者のインフレによる税負担増を軽減するため、昭和四十九年分の所得税額から一律三万円の税額控除、ただし、所得税額が三万円未満の場合は、その全額を控除する方法による年内緊急調整減税を行なうべきであります。これにより四人家族年収百九十三万円程度まで無税となります。なお、減税に伴う減収額は約六千八百億円と見込まれるのでありますが、本年度税収実績等を考慮いたしますと、その財源は十分年度内自然増収で確保できるものであります。  次に、歳出関係でありますが、第一にインフレ被害の緊急救済を要求いたしております。  インフレ、物価高騰の害悪は、何より生活保護者、心身障害者、老人など、弱い立場の人々の生活の方途を完全に奪ってしまっていることであります。これらの低所得者層に対し、最小限度インフレによる給付の実質的削減を食いとめ、極端に低い給付水準の調整をはかることは、社会的不公正、不平等を是正するための最優先課題の一つであります。  そのため、生活保護基準を当初予算に対し五割引き上げること。失対賃金を五割引き上げるとともに、事業量を拡大して仕事を確保すること。老人、児童保護費等については、措置費を中心に増額すること。老齢福祉年金を当面現行の七千五百円から月額二万円に引き上げ、各種年金も大幅に引き上げること。また生活保護者、福祉年金受給者、交通遺児、母子家庭等に年末一時金を支給することが必要であります。これに必要な追加補正は三千九百六十億円であります。  第二に、地方財政の緊急対策であります。  地方財政は、これまでの国の中央集権的な財政支配のもとで、財政それ自体の脆弱な構造に加えて、インフレによる被害を真正面から受け、いまや破局的な危機に立たされています。  このような激化する地方財政危機を打開し、超過負担の解消を目ざし、緊急に公立文教施設、社会福祉等の単価補正を行なうとともに、健保財政の補てん、給与財源をはじめ、緊急地方財政援助を強化する必要があります。そのため、緊急措置として千四百億円の財源対策を講ずることにいたしております。  同時に、今日の地方財政危機の実態はきわめて深刻であり、一時的な地方財源の先食いや臨時的補てん措置ではとうてい克服できません。来年度においては、地方自主財源を強化し、地方財政の基盤確立のための抜本対策を早急に講ずる必要があります。そのため、大企業の土地再評価益課税、事務所事業所税の新設等、地方財源の強化をはかることを要求するものであります。  第三に、インフレと不況の谷間で、かつてない困難に立たされている中小零細企業の不況対策と農業緊急対策を要求します。  政府の弱い者いじめの総需要抑制政策を質的に転換し、中小企業、とりわけ小零細事業者に資金と仕事を確保する手段を講ずべきであります。したがって、中小零細企業の仕事を確保するため、官公需の優先配分をはじめとする対策を強化するとともに、政府系金融機関の資金ワクの拡大、中小零細企業の不況融資対策のための政府出資及び利子補給を行なう必要があります。  また、農業経営に対しましては、農畜産物の価格と供給の安定をはかり、生産コストを引き下げる観点から、農畜産物、飼料は、輸入を含め国の一元的管理の方向を目ざすとともに、当面、牛肉を指定食肉とし価格の安定をはかり、また飼料価格の安定緊急対策を強化するものであります。  第四に、教育関係費の増額であります。  私学経営の危機は、わが国教育行政の貧困を象徴的に示しております。授業料の値上げ、国民の教育費負担の増高、研究費の不足は、国民の教育権と研究の自由を脅かすものとなっております。  私立大学の経常費の補助、国立大学等の研究費の増額、学校給食に対する補助等を大幅に増額する必要がありますが、この際、最小限度の緊急措置として三百億円を追加することといたしております。  以上、四項目の追加補正による経費の増額は、合計五千八百六十億円と予定いたしております。  次に、歳出の減額についてであります。  インフレ抑制と経費の硬直化を打開し、財政構造を国民生活に手厚く組みかえていく観点からは、不要不急の経費を思い切って削減することはもとより、防衛費の削減、産業基盤中心の公共事業費の削減等をはかる必要があります。  そのため、防衛費については、兵器装備費のうち未発注分を中心に大幅に削減すること、公共事業費については、事業繰り延べ予定分のうち、生活環境、中小企業関係分は実施を繰り上げ、高速道路等、大企業、産業基盤整備の事業を削減することといたしております。これとあわせて、その他不要不急経費を削減することにより、合計五千八百六十億円の歳出の削減をはかるべきであります。  なお、これにより補正規模は、政府補正総額と同規模となります。  以上、三党組みかえ動議の要点のみ御説明申し上げましたが、これらは国民にとって最小限度の緊急要求であります。どうか委員各位におかれましては、この国民要求の重大性を御認識賜わり、本動議に満腔の御賛同あらんことをお願い申し上げ、趣旨説明を終わります。(拍手)
  348. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 次に、林百郎君。
  349. 林百郎

    ○林(百)委員 私は、日本共産党・革新共同を代表し、昭和四十九年度一般会計補正予算(第一号)、昭和四十九年度特別会計補正予算(特第一号)及び昭和四十九年度政府関係機関補正予算(機第一号)につき編成替えを求めるの動議を提出し、その趣旨の弁明をいたします。  動議の趣旨はすでにお手元に配付してありますとおりでございまして、昭和四十九年度一般会計補正予算(第一号)、昭和四十九年度特別会計補正予算(特第一号)及び昭和四十九年度政府関係機関補正予算(機第一号)については、政府は左記の要綱によってすみやかに組みかえをなすことを要求するものであります。  以下、動議の内容について説明をいたします。  現在の国民生活の危機が、今日までの自民党政府の対米追従、大企業本位の財政、経済政策によってもたらされたことは周知の事実である。とりわけ当初予算成立以後石油危機と新価格体系への移行を口実にした電力料金、大手私鉄運賃、国鉄運賃、消費者米価など公共料金、石油製品価格に始まる一連の大企業製品価格の相次ぐ大幅値上げは、異常な物価高、悪性インフレを促進した。その上、大企業の被害は最小限に押え、犠牲を国民に転嫁するための総需要抑制政策のもとで、首切り、一時帰休などが増大し、失業問題が激化している。史上最高の企業倒産に見られるように、中小零細企業の経営は破滅的ともいえる困難に見舞われている。  こうした状況は、補正予算において、国民生活の防衛、中小企業や農業の経営危機、地方財政の危機打開の措置を緊急にとることを強く要求している。  しかるに、政府提出にかかる補正予算三案は、公務員給与の若干の引き上げ、食管会計の赤字補てん、地方交付税交付金の追加など、全体としてはすでにきまっておる当然支出しなければならない経費を計上するだけにすぎず、軍国主義強化と大企業奉仕の昭和四十九年度当初予算が、国民生活の破壊とインフレを促進したことはいまや明らかであるにもかかわらず、政府案はその骨格をそのまま温存して、国民の緊急、切実な要求の多くを無視するものとなっております。  よって、昭和四十九年度一般会計補正予算昭和四十九年度特別会計補正予算及び昭和四十九年度政府関係機関補正予算については次の緊急措置を新たに盛り込まなければなりません。  一、インフレから社会保障、福祉を守る緊急対策。老齢福祉年金は現行七千五百円を直ちに月額二万円に、拠出制老齢年金についても、国民年金の五年年金は月額二万二千円、十年年金は二万五千円、厚生年金の最低保障額は月額四万円に引き上げる。障害年金、母子年金等もこれに準じて引き上げる。生活保護費と社会福祉施設の措置費を四十九年三月に対して五割引き上げる。生活保護者への期末一時金扶助は保護費の一カ月分に増額する。福祉年金受給者等の低所得者に期末生活防衛一時金を支給する。  二、失業防止と失業対策の強化。失対事業、特定地域開発就労事業等を拡充し、失業者に仕事を保障する。その際、就業状態の悪い小零細業者、農民等にも必要な仕事が確保できるようにする。失対賃金を五割引き上げる。失対事業の費用は全額または五分の四を国の補助とする。失業保険金の日額を賃金日額の八割(現行六割)に、給付日数を一年最高三百六十日(現行百八十日)に改め、失業保険の適用をパートタイマーなどにも拡大する。不況に便乗した不当な解雇を制限する措置をとる。中小零細企業の余儀ない休業に対して、一定期間、賃金が支払えるよう休業補償融資ができるようにする。  三、中小零細企業の危機打開の緊急措置。官公需は中小企業への発注を最優先させ、中小企業の受注分野と直接納入を広げる。政府関係中小企業金融機関の融資のワクを広げ、金利の引き下げ、貸し付け条件の改善を行なう。住宅金融公庫の貸し付けワクを拡大し、小零細建設業者に仕事を保障する。制度融資の返済期限を延長する。民間金融機関による中小零細企業向け融資をふやさせ、信用保証協会の保証ワクの拡大、貸し付け期間の延長、金利の一割以下への引き下げなどの行政指導を強める。特別小口保険の限度額を三百万円(現行百五十万円)、無担保保険の限度額を一千万円(現行五百万円)に引き上げる。小規模企業経営改善資金の貸し付けは、商工会、商工会議所の推薦をやめ、限度額は三百万円(現行二百万円)にする。関連倒産防止制度を改善し、対象企業のワクを広げる。倒産関連企業、不況業種指定を受けた中小企業への政府系金融機関の金利は現行の半分に、特に零細業者に対しては、市町村長の認定がある場合、二百万円までの無担保、無利子融資とする。  四、農業経営を守る緊急措置。農家に対する制度融資の償還期限を延期する緊急措置をとる。牛肉を畜産物の価格安定等に関する法律の指定食肉とし、国の資金で畜産振興事業団が生産農家から買い上げ、生産者価格の一定水準までの回復をはかるとともに、消費者価格を安定させる措置をとる。  五、三万円の所得税税額控除の実現。インフレ下の名目所得増加に伴う重い所得税を軽減するため、勤労者に対して昭和四十九年分の所得税額から三万円(ただし所得税額が三万円未満の場合には、その全額)の税額の控除による年内緊急減税を実施する。  六、地方自治体に緊急地方財政交付金約一兆円を交付する。地方自治体の財政危機を救うため、来年度以降三年間で、過去五カ年間の超過負担の完全解消に取り組むこととし、さしあたりは緊急地方財政交付金法を早急に立法し、所得税、法人税及び酒税の六%相当額に、昭和四十八年、四十九年度に年度間調整によって減額された地方交付税相当額を加えた額(約一兆円、ただし政府補正予算案による特別措置二千六百九十一億円相当額を含む)を都道府県、市町村(特別区を含む)に交付する。その際、過疎地域の市町村への交付額は特別に割り増しする措置をとる。  七、教育、研究補助の増額。私立大学に対する経常費補助は、政府補正予算案より三百億円以上ふやし、授業料の値上げをしないで済むようにする。教官等積算校費(研究費)を三割ふやし、国立大学の研究活動が継続できるようにする。  八、公正取引委員会の民主的強化。大企業の横暴、価格つり上げを規制する対策を立て、公正取引委員会を民主的に強化するため、機構の整備拡充に必要な予算措置をとる。  これらの緊急対策の財源として、次の措置をとることを提案いたします。  一、大企業への臨時資産税。資本金十億円以上の大企業で、昭和四十五年度から四十八年度までに、土地資産及び有価証券資産を五割以上増加させた企業に対して、その資産増加分の一〇%を資産課税として臨時に徴収する。  二、四次防、列島改造など不要不急の経費を削減する。  四次防の中止。艦船、航空機、戦車など装備の未発注分の予算(十月末日現在、輸入品を除て二千二百四十六億円)を全額削減し、既契約の主要装備の契約はこれを解除する。研究開発費の支出は中止する。  列島改造の完全取りやめなど。高速自動車道路、港湾、空港、新幹線など産業基盤整備のための予算の繰り延べ分はすべて減額修正する。未発注分は大幅に削減する。外航船舶建造利子補給金など大企業への補助金の未支出分は全額削減する。  経済協力費などの削減。対韓援助、対南ベトナム・サイゴン政権援助など新植民地主義的対外援助を打ち切り、海外経済協力基金、国際協力事業団、輸出入銀行への交付金、出資金、投融資などを削減する。  以上が、われわれの提案する動議の内容であります。何とぞ同僚議員の御賛同を願います。(拍手)
  350. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 以上をもちまして、各動議の趣旨弁明は終わりました。     ―――――――――――――
  351. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これより討論に入ります。  昭和四十九年度補正予算三案、並びに田中武夫君外十六名提出の撤回のうえ編成替えを求めるの動議、及び林百郎君外三名提出の編成替えを求めるの動議を一括して討論に付します。  討論の通告がありますので、順次これを許します。山村新治郎君。
  352. 山村新治郎

    ○山村委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております昭和四十九年度一般会計補正予算外二案に対し賛成し、日本社会党、公明党、民社党三党共同提案の組み替え動議並びに日本共産党・革新共同提案の組み替え動議の両動議に反対の討論を行ないます。  現下の政治、経済情勢は、過去に例を見ないほどの課題が山積しており、これが解決のためには、多くの努力を必要とする時期であります。  このときにあたり、対話と協調、偽りのない政治を旨とする清新な三木内閣の誕生を見たことは、まことに喜ばしいことであります。三木内閣においては、多くの課題を一度に解決するような方法をとることなく、一つでも二つでも、実行可能なものを着実に取り上げ、実りある成果を得るよう大いに期待するものであります。  最近の経済情勢については、昨年の石油ショック以来、特に、物不足等による異常な物価高騰が生じましたが、政府において財政、金融を含む総需要抑制政策を堅持した結果、幸いにして、本年二月ごろから卸売り物価の上昇速度は鈍化してまいりました。  しかしながら、消費者物価の上昇は必ずしも期待どおりの効果が得られず、需要面からの上昇要因は減少したものの、コストアップによる上昇要因にはなお根強いものがあるため、引き続き総需要抑制の措置をとってきたのであります。他方、この総需要抑制政策による景気の後退は、企業の倒産、失業者の増加をもたらしつつあります。したがって、これらの現象に対しては、きめこまかな対策が必要であるとともに、経済運営のむずかしさがあると考えられます。  かくのごとき経済情勢を踏んまえ、昭和四十九年度補正予算が、特に緊要にしてやむを得ない事項に限るとともに、資源配分の不公正を是正しながら、経済の安定的発展につとめるものとして編成されたことは、適切な措置であると考えるものであります。  次に、政府原案のおもなる点について、簡単に私見を述べることといたします。  第一点は、国家公務員の給与改善に必要な経費についてであります。  この経費は、民間給与との格差是正を目的とするものであり、去る七月人事院勧告による二九・六四%アップの完全実施を行なうものであります。  今日、行政に対する国民の要望にはきびしいものがあります。したがって、公務員は国民全体の奉仕者としての精神を堅持しつつ、行政の能率を高め、国民のための行政に徹すべく心がけるよう強く望むものであります。  第二点は、食糧管理特別会計への繰り入れの経費についてであります。  この経費は、四十九年産国内米及び国内麦について、去る七月政府買い入れ価格を三二・二%及び二七・四%に引き上げたこと、並びに輸入小麦等の価格上昇に伴い、それぞれ当初予定した価格を上回ることとなり、十月の国内米政府売り渡し価格三二%アップにもかかわらず、全体として損失が増加する結果となったため、一般会計から同特別会計へ経費を補てんするとともに、輸入飼料の買い入れ価格の上昇分についても同様の繰り入れ措置をとるものであります。  わが国の農産物の総合自給率は満足できるものではありません。今日、世界は、人口増加、気象条件の変化等により、一部の学者たちは食糧危機の予測を述べております。  わが国の今後の農政については、農業基盤の拡大はもとより、多種類の農産物生産のための施策と備蓄のための方途を、自給率向上のために検討する必要があります。  第三点は、社会福祉関係の経費についてであります。  この経費は、国民年金、社会保険の国庫負担金、児童扶養手当給付諸費及び恩給費等の改定の実施期日を繰り上げることとし、所要の経費追加の措置をとり、生活保護費については、物価動向、米価改定に伴う経費及び児童、身障者、老人等の保護費、失業対策事業費等についても同様な措置を講ずるためのものであります。さらに、診療報酬の改定により、社会保険、国民健康保険等についても、経費追加の措置をとっております。  インフレ、不況の中にあって、これら経費支出の対象者はいわゆる社会的弱者であります。今回の措置により、これらの方々に対し不公正の是正を行なうことは、まことに時宜を得た適切なものとして、賛意を表するものであります。  第四点は、地方交付税交付金についてであります。  この経費は、所得税及び法人税の収入増加に伴い、その三二%を歳入に計上したことによる地方交付税交付金の追加額並びに四十八年度の地方交付税交付金の精算額を、地方財政の窮状を考慮して、一般会計から交付税及び譲与税配付金特別会計へ繰り入れるために必要なものであります。  最近の地方財政について、政府はその現状を十分認識し、財政の許す範囲で、今回も、公立文教施設及び社会福祉施設の整備のため、建築単価の改定などにより、超過負担解消の措置をもとっております。これらの追加措置は、適切妥当なものとして賛意を表するものであります。  三木内閣においては、物価安定、インフレ克服のため、経済対策閣僚会議を設け、また、賃金と物価の関係について、産業労働懇話会等において話し合いを進めつつありますが、特に賃金問題については、賃金上昇がコストプッシュの要因となり、物価に対し悪循環を起こす結果ともなるので、所得政策の導入とまでは考慮せずとも、労使双方の節度ある態度を望むものであります。来たるべき五十年度予算案には、新しい角度からの政策が加えられ、国民のための政治が反映されることを心から期待するものであります。  最後に、日本社会党、公明党、民社党提出の組みかえ動議並びに日本共産党・革新共同提出にかかる組みかえ動議について述べますと、これら動議の中には、今後の課題として検討すべき事項もありますが、限られた本補正予算においてすべてを盛り込むことはむずかしいことであり、今日の経済情勢の実態から見て、緊急を要するものは一応措置されておりますので、二つの組みかえ動議に反対し、政府原案に賛成の意を表するものであります。(拍手)
  353. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 次に、阿部昭吾君。
  354. 阿部昭吾

    ○阿部(昭)委員 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となりました昭和四十九年度一般会計補正予算、同特別会計補正予算及び同政府関係機関補正予算三案に反対し、日本社会党、公明党、民社党の三党共同提案の昭和四十九年度補正予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議に賛成し、あわせて、日本共産党・革新共同提案の動議に反対の討論を行なうものであります。  以下、反対の理由を五つにしぼって簡潔に申し述べます。   〔委員長退席、細田委員長代理着席〕  その第一の理由は、インフレ下で苦しんでいる弱者の救済が放置されていることであります。  老齢福祉年金受給者は、今年も余すところ旬日といった押し詰まった年の瀬を迎えながら、一カ月わずか七千五百円の年金額しか与えられず、インフレで実質低下している失対賃金に対する措置も皆無にひとしい状況であります。しかも、不況の影響は失対事業を縮小させ、中小零細企業、出かせぎ農民などの仕事を奪う事態をもたらしております。政府の総需要抑制の犠牲は、ここにこそ手厚い救済措置が求められている経済的、社会的弱者に集中しているのが実態であります。  反対の第二の理由は、勤労者の税負担の軽減が全く配慮されていないことであります。  インフレは、労働者の名目賃金の上昇に伴い、なしくずしに税負担の増加をもたらすものであり、二兆円減税のかけ声も、実質的には物価調整減税にも当たらないのであります。事実、三二%の賃上げもすでにインフレに食われてマイナスになっており、九月の総理府家計調査によれば、可処分所得の上昇は実質〇・一%の減少になっているのであります。二兆円減税どころか、まさに実質増税であります。勤労者には重税、金持ちには天国というわが国税制の不公正を是正するためにも、勤労者は三万円の緊急調整減税を望んでいるのであります。その財源は、自然増収の推移から見ても十分確保できる状況にあります。しかも、来年もミニ減税に押えつける勤労者重税策をとり続けようとしていることは、大きな問題であります。また、取るべき税を取らずして、減税のインフレ効果を云々することは、まさに本末転倒の詭弁であります。  反対の第三の理由は、地方財政危機対策が不十分なことであります。  地方財政は、三割自治という貧弱な財政構造に加え、インフレの中で予算を食われて、事業量の確保すら困難になっており、累積超過負担額は一兆円をこえる状況であります。地方財政圧迫政策のもとで、超過負担の解消を求める声は、摂津市をはじめ、国を訴えるまでに怒りが広がっているのであります。これらは、政府がみずからの責任をすら果たしていないからであります。しかるに、その責任をほおかむりして、一部の建築単価の補正程度で表面を糊塗し、根本的反省の態度は何ら見られないのであります。これまでの政府のやり方は、国の景気政策に地方財政を追随させ、地方自主財政の国への強制借り上げ、起債の抑制など、地方財政を圧迫しながら、自主財源の充実には何ら意を払おうとはしてこなかったのであります。今回も、来年度財源の先食いといった場当たり的対処策をとっているにすぎません。  いまや、地方財政は小手先の対策では解決できない深刻な事態を迎えているのであります。自主財源強化、インフレ利得の吸収等、地方財源充実のために抜本的な対策が講ぜられなければなりません。その取り組みが全く見られないことはまことに遺憾であり、特に、福祉財政確立のために、強く反省を求めるものであります。   〔細田委員長代理退席、委員長着席〕  また、私学の経済的危機は深まり、一連の公共料金の値上げに加えて、授業料や教育費の負担、さらには寄付金、納付金の軒並み値上げが行なわれているとき、これへの対策の欠落は国民に対するいわば挑戦といわなければなりません。  反対の第四の理由は、不況に苦しむ中小零細企業に対する措置が全く行なわれていないことであります。  不況の嵐は、中小零細企業の倒産を激増させ、かつてない首切り、レイオフ等のきびしい事態に追い込んでおります。最近の倒産の実態は、十一月で一千百件をこえ、今年一年間では一万五千件に達するという重大な状況にあります。政府は、財政投資の融資ワクを七千億円拡大するといっておりますが、昨年に比して一千億円の増加にすぎないのであります。実際に中小零細企業はその恩恵に浴することができないのであります。政府金融機関の貸し出し対象の拡大、都道府県の制度融資の財源的裏づけ措置等、中小零細事業者の危機を真に救済できるような措置をとるべきであります。悪平等、画一的総需要抑制は、弱い者の犠牲で続けられるもので、日本経済における中小零細企業者への融資拡大は、インフレ刺激とは実質的に無関係であります。問題は、大企業、大商社への金融引き締めを堅持することが根幹であり、中小零細企業には生業資金を含めて手厚い金融措置が必要であります。  第五の反対理由は、今日のインフレのもとで財政が完全に硬直化し、インフレ抑制のための資金の効率的運用は全く期待できない危険な状態になっていることであります。  財政構造の根本的転換を行なわず、景気刺激効果の大きい産業基盤整備の大型投資、不要不急の事業の削減、また、アジアと世界の平和に逆行する防衛費支出の縮小、いたずらにインフレ被害者、弱い立場の人々を放置し、公務員賃金、福祉財源を圧縮し、公共料金の値上げ政策を続けることは、日本財政破綻への道を突き進むものであります。したがって、補正段階におきましても、なし得る限りの財政構造転換に取り組むことが必要であり、またそれは可能であり、三党共同の組みかえ動議においても要求しているところであります。  以上の立場から、インフレ、物価高の責任を回避し、その犠牲を国民負担に転嫁し、総需要抑制に名をかりて、労働者、農民、中小零細事業者、社会的弱者に対し破滅的打撃を与えようとしている事態をさらに悪化させるような政府補正予算案を断じて容認することはできません。  最後に、このような立場から、わが党は、公明党、民社党と共同して最小限の補正予算の組みかえを要求しておりますが、その方向で組みかえることこそ、三木内閣が単なる口舌の内閣でなく、国民生活に顔を向けた政府であることを証明することになると信ずるものであります。  なお、日本共産党・革新共同の組みかえ動議につきましては、共産党も当初、国民的立場に立って共同組みかえのテーブルにつき、共同作業を進めてきたのでありますが、遺憾ながら、一部意見の不一致から、共同提案に至らなかったことはきわめて遺憾であります。  共産党主張の臨時資産税については、わが党はかねてから大企業の土地再評価益課税、事務所事業所税の創設等を強く主張しているところでありますが、税収面では、本年度実質的にはあと二カ月を残すのみで、形式的財源づくりの手段として取り上げることは必ずしも実際的とはいえないものであり、来年度予算編成に向けて抜本的取り組みを強化していく必要があります。  また、地方財政の赤字問題は、一時的救済措置では処理できない状況にあります。最小限度の緊急措置をとることは当然に必要でありますが、政府の中央集権的財政支配を排し、真に福祉財源強化のために、根本的財源対策についての取り組みを強化することが必要であります。  以上の観点から、日本共産党・革新共同の動議は、補正予算という制約のもとでは、補正ワクそのものが大幅にふくれ上がり、その内容もかなり無理のある内容であり、賛成することはできません。  以上、日本社会党の立場を申し上げ、政府案に反対、日本社会党、公明党、民社党三党共同動議に賛成、日本共産党・革新共同提案の動議に反対の態度を表明し、討論を終わります。(拍手)
  355. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 次に、津金佑近君。
  356. 津金佑近

    ○津金委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、政府提出の昭和四十九年度補正予算に対し反対、日本社会党、公明党及び民社党共同提出にかかわる修正動議に棄権、日本共産党・革新共同提出にかかわる修正動議に賛成の討論を行ないます。  その理由は、政府提出の補正予算は、大企業奉仕、軍国主義強化の四十九年度当初予算の骨格をそのまま温存しつつ、公務員給与の若干の引き上げなど、当然に支出しなければならない経費を計上したにすぎず、この物価高、インフレと不況の中で国民が切実に求めている緊急措置に対しては、ほとんどこれを無視するものとなっているからであります。  第一に、社会保障、福祉を守る緊急対策、失業防止と失業対策、中小零細企業の危機打開の緊急措置、農業経営を守る緊急対策、勤労者に対する年度内減税、緊急地方財政交付金の交付などの諸緊急措置は、国民の最低生活を保障する上で当然とられなければならないにもかかわらず、この補正予算ではほとんど放置されたままであります。  たとえば、生活保護世帯への年末一時金は、一級地でもわずか二千六百五十円、まさにスズメの涙というべきであって、しかもこれは田中内閣が内定した額にわずか百五十円つけ加えたにすぎません。直ちに保護費の一カ月分を支給することを強く要求するものであります。  福祉年金等について見ると、年金額改定の実施期日を一カ月繰り上げたほかは、ほとんど見るべきものがありません。老齢福祉年金は月額二万円に、拠出制老齢年金についても、国民年金の五年年金は月額二万二千円、十年年金は二万五千円、厚生年金の最低保障額は四万円にそれぞれ引き上げ、障害年金、母子年金等もこれに準じて引き上げるべきであります。また、生活保護費と社会福祉施設の措置費は、四十九年三月に対して五割引き上げるとともに、福祉年金受給者等の低所得者に対しては、期末生活防衛一時金を直ちに支給すべきであります。  三木総理は、しばしば社会的公正を口にしてきましたが、今日失業者が優に百万人をこえるだろうという事態の中で、失業防止の具体策を何ら行なわず、失対賃金は十月に日額わずか三十円引き上げたままであります。  わが党は、早急に次の措置をとるよう要求します。すなわち、失対事業、特定地域開発就労事業等の拡充、失対賃金の五割引き上げ、失対事業の費用の全額または五分の四の国庫補助、失業保険金の日額を八割にし、給付日数を一年最高三百六十日に改め、パートタイマーにも適用すること、また、不況に便乗した不当解雇を制限し、中小零細企業のやむを得ない休業に対して、一定期間賃金が払えるよう休業補償融資ができるようにすることであります。  次に、中小零細企業の危機打開の措置についてでありますが、政府案では何ら対策らしきものは講ぜられておりません。今日、中小零細企業は深刻な経営難におちいっております。この不況の中で、中小企業向けは特にきびしく、その上仕事も減少した結果、倒産件数は戦後最高に達しようとしております。  わが党は、政府が次の緊急措置をとるよう強く要求するものであります。すなわち、官公需は中小企業への発注を最優先させること、政府関係中小企業金融機関の融資ワクを広げ、金利引き下げ、貸し付け条件の改善を行なうこと、住宅金融公庫の貸し付けワクを拡大すること、民間金融機関による中小零細企業向け融資をふやさせ、かつ、もっと有利な条件にするよう行政指導を強めること、さらに、特別小口保険や無担保保険の限度額を二倍に引き上げるべきであります。また、小規模企業経営改善資金の貸し付けは、商工会等の推薦をやめ、限度額を引き上げることや、関連倒産防止制度の改善、倒産関連企業、不況業種指定を受けた中小企業への政府系金融機関の金利を引き下げ、特に零細業者に対しては、地方自治体の長の認定がある場合、二百万円までの無担保、無保証、無利子融資をすることを要求いたします。  次に、政府案では、米作に対する食管会計その他で若干の手当てと、配合飼料関係の補助若干を計上したのみで、これでは今日農民が直面している危機を打開することはとうていできるものではありません。直ちに農家に対する制度融資の償還期限を延期する措置をとるべきであります。とりわけ、畜産農家の経営を守るために、さしあたり、牛肉を畜産物の価格安定等に関する法律の指定食肉とし、国の資金で畜産振興事業団が生産農家から買い上げ、生産者価格の一定水準までの回復をはかるとともに、消費者価格を安定させる措置をとるよう要求するものであります。  次に、地方自治体の財政でありますが、今日の地方財政のかつてない危機的状況に対し、政府案は、三税の増収による地方交付税交付金の追加と、四十八年度地方交付税の未繰り入れ額二千六百九十億の計上をしたほかは、わずか公立文教施設及び社会福祉施設の建築単価を若干引き上げたにすぎません。わが党が要求しているように、政府は三税の六%相当額を緊急地方財政交付金として、また昭和四十八年、四十九年度に減額された地方交付税相当額を直ちに交付すべきであります。  勤労者に対する措置については、インフレ下の名目所得増加に伴う重い所得税を軽減するため、昭和四十九年分の所得税額から、三万円の税額の控除による年内緊急減税を実施するよう強く主張いたします。  政府は、本補正予算において、何ら、われわれの要求する、以上述べた緊急対策を講じようとしておりません。これが政府案に反対する第一の理由であります。  第二に、三木内閣が社会的公正を口にする以上、膨大な利益を得ている大企業に対してきびしく課税をしてしかるべきであります。すなわち、大企業五十社だけでも七兆五千億にのぼる膨大な内部留保に対して、これを公正に吐き出させなければなりません。わが党は、資本金十億円以上の大企業で、昭和四十五年度から四十八年度までに土地資産及び有価証券資産を五割以上増加させた企業に対して、その資産増加分の一〇%を資産課税として臨時に徴収するよう要求するものであります。これは、私がこれまで要求してきた緊急対策の財源として重要な意味を持っているのであります。しかるに、政府案は全くこれに手をつけておりません。これが反対の第二の理由であります。  政府案に反対する第三の理由は、四次防や列島改造など、不要不急の経費を削減しないのみか、新たに増額さえしていることであります。すなわち、陸上自衛隊の車両等の維持費、甲型警備艦の建造費、国際交流基金など、合わせて六十億をこえる追加補正を行なったことは、三木内閣が軍国主義復活強化、海外膨張の道を踏襲する危険な内閣であるといわざるを得ないのであります。  わが党は、この際、あらためて四次防の中止と、列島改造の完全取りやめを要求するものであります。具体的には、さしあたり艦船、航空機、戦車など装備の未発注分の予算を全額削減するとともに、既契約の主要装備の契約でも、これをできる限り解除し、研究開発費支出は中止すべきであります。  列島改造関係では、高速自動車道路、港湾、空港、新幹線など、産業基盤整備のための予算の繰り延べ分はすべて減額修正し、未発注分は大幅に削減すること、また、外航船舶建造利子補給金など、大企業への補助金の未支出分は全額削減すべきであります。  なおまた、対韓援助、サイゴン政権への援助などを打ち切るほか、海外経済協力基金、国際協力事業団、輸出入銀行への交付金、出資金、投融資などは削減するよう要求いたします。  以上のように、生活と経営の深刻な危機に見舞われている多くの国民や中小零細企業、地方自治体の切実な要求にもかかわらず、政府案はほとんどこれにこたえていないばかりか、不要不急の経費を削減せず、むしろ追加さえしているのであります。よって、私は、国民生活を守る上で緊急に必要なわが党の道理ある要求と緊急措置を対比しつつ、政府案に反対するものであります。  同時に、日本社会党、公明党及び民社党共同提出による修正案については、わが党の主張と一致する点もありますが、緊急地方財政交付金の交付、大企業に対する臨時資産税の徴収など、当面の緊急施策について重要な意見の相違がありますので、これに対しては棄権、日本共産党・革新共同提出にかかわる修正の動議に賛成する態度を表明し、私の討論を終わります。(拍手)
  357. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 次に、岡本富夫君。
  358. 岡本富夫

    岡本委員 私は、公明党を代表して、ただいま議題となりました政府提出の昭和四十九年度補正予算三案に対し反対し、日本社会党、公明党、民社党三党共同の組みかえ動議に賛成、また、日本共産党・革新共同提案の動議に反対の討論を行ないます。  当面しているわが国経済は、きわめて難局に立たされております。言うまでもなく、物価高騰、インフレは果てしなく続き、いまや国民生活は破壊寸前に追い込まれております。このインフレ、物価高騰の被害をまともにこうむるのは、老人、生活保護者、母子家庭、身体障害者等、社会的に弱い立場に置かれた人たちであり、また経済的には中小企業者、農業者等であるということは言うまでもありません。  一方では、政府・自民党の長年にわたる大企業優先の高度経済成長と、ニクソン・ショック以来激動する国際経済を背景とする中における政策の失敗は、狂乱物価を引き起こし、これを押えるためにとらざるを得なくなった総需要抑制策によって、景気後退を余儀なくされております。この結果は、中小企業の倒産、失業者の増大が急激に増加していることは御承知のとおりであります。  三木総理は、インフレ、物価高を押えなければ社会的公正を実現されないと強調しているにもかかわらず、現実には公共料金の据え置きは明言しない、あるいはインフレ、物価高騰をもたらしている背景となるわが国経済の寡占化傾向に対しメスを入れようとする独占禁止法改正の内容については、言を左右にしているのであります。結局、物価安定の見通しは立たない。ただ一つ、総需要抑制策は堅持するというものの、その総需要抑制策は各種のひずみをもたらし、三木総理のことばとはうらはらに、さらに不公正が拡大され、弱者いじめになっているのが現実であるといわなければなりません。  このような経済情勢の中で編成される補正予算案は、何よりも国民生活を擁護することが第一義とされなければならないことは、あえて私が申し上げる必要はないのであります。しかるに、政府が今回提案された補正予算案は、従来からとられている国民生活を無視した高度経済成長政策を何ら反省することなく、その延長線上で若干糊塗的な対策を講じているにすぎないのであります。本来であるならば、まず国民生活を奈落の底に突き落とした高度経済成長政策を反省し、その上に立って、その被害を救済し、かつ国民福祉優先の経済路線への転換の緒とする補正予算でなければならないはずであります。  以下、本補正予算案に反対するおもな理由を申し上げます。  第一には、インフレ、物価高騰、さらに不況によって生活を圧迫されている老人、生活保護者、母子家庭、身障者等に何らの救済策が講じられていないということであります。  日本社会党、公明党、民社党の三党共同で提案した組みかえ動議案では、少なくとも、生活保護基準を当初予算に対し五〇%引き上げること、失対賃金を五〇%引き上げること、老人、児童保護等については措置費を中心に増額すること、また老齢福祉年金を月額二万円に引き上げることをはじめ、各種年金の大幅引き上げ、生活保護者、福祉年金受給者、交通遺児、母子家庭等への年末一時金の支給を要求しております。  これらは、インフレ被害者の救済のためきわめて緊要な課題であり、政府がその気にさえなれば現実に実現の可能な措置なのであります。三木総理が、その発言のとおり、真に社会的格差の是正に全力をあげるとされるならば、当然のこと、インフレ、物価高、不況によって被害を受ける人たちの救済に全力をあげるべきでありましょう。国民生活の苦しみを見ておって、それを放置するという姿勢は許すことはできないのであります。  反対の第二の理由は、同じようにインフレ、物価高、不況の被害を直撃されている中小企業者及び農業者に対し、何らの配慮がなされていないということであります。  わが党は本日の本予算委員会で、今日までの政府の中小企業対策が、明らかに大企業優先の経済政策の中で軽視されている事実を取り上げました。すなわち、政府関係中小企業金融機関の一つである商工組合中央金庫が、事業協同組合の仮面をかぶった大企業に多額の融資をしている事実であります。中小企業者は、政府関係の中小企業金融機関においてすら、このような実情の中で締め出しを食い、しかも、都市銀行からは歩積み両建ての融資で実質金利を引き上げられ、金利負担にも耐えかねているのであります。このことを物語るかのように、中小企業倒産件数はウナギ登りに増加しているのであります。  わが党は、今国会にも、中小企業者を救済するため、中小企業省設置法案、小規模事業者生業安定資金特別融資措置法案等の法律案を提出しております。これは、当面の中小企業者の苦境を救済すると同時に、中小企業者の経営の安定なくしては、わが国経済の健全な発展はあり得ないというために提出したのであります。政府の中小企業政策を抜本的に改革するよう要求するものであります。  また、当面牛肉を指定食肉とし、また畜産飼料とともに、その価格安定対策を強化することはきわめて緊要であります。  反対の第三の理由は、多額の自然増収の増加があるにもかかわらず、勤労者の税負担の軽減に手を加えていないということであります  勤労者の多くは、年末を控え年末調整に不安をいだいております。勤労者世帯の実収入の実質増加率は、すでに九月において前年同月比〇・一%に落ち込み、インフレ下において、名目所得の上昇で大幅に税負担がふえているからであります。一方では、大企業や高額所得者がインフレ利得、超過取得を獲得し、平然と生活している事実が存在するのであります。本年の二兆円減税がいかにかけ声だけであったかは、いまさら申すまでもありませんが、税負担の不公平はますます拡大するばかりであります。国民が一致して要求していることは、本補正予算において、せめて物価調整減税でも実施してもらいたいということであります。三党共同の組みかえ動議では、昭和四十九年分の所得税額から一律三万円の税額控除による年内緊急調整減税を要求しておりますが、これすらも顧みようとしていないのであります。  反対理由の第四は、まさに危機におちいっている地方財政に対する措置がきわめて不十分であるということであります。  地方財政の窮迫は、そのまま国民生活へはね返ってくるのであります。言うまでもなく、国民生活と密着した社会福祉施設や病院、学校など、整備、増設をやむを得ず見送らざるを得なくし、加えて、政府の不当な財政措置によって、超過負担が増高しております。今回の補正予算では、政府は単に若干の建築単価の引き上げを行なっているのみであります。これではとうてい地方財政の窮状を打開することはできないといわなければならないのであります。  わが党は、地方自主財源を強化し、地方財政の基盤確立のため、大企業の土地再評価益課税、事務所事業所税の新設を要求しておりますが、当面緊急に、公立の文教施設、社会福祉施設等の単価の補正を行なうとともに、国保財政の補てん、給与財源をはじめ、緊急地方財政援助を強化することを強く要求するものであります。  この他、防衛費の削減、高速道路等、産業基盤整備の削限が行なわれていないのも、全く納得ができないのであります。  このような理由から、政府補正予算案に対し反対をするものであります。  また、日本共産党・革新共同の組みかえ動議につきましては、その主張点においては多少一致点もありますが、補正予算という制約のもとでは必ずしも実際的ではなく、むしろ実現可能の範囲で補正予算の組みかえが適切であると考えます。  以上申し上げ、政府補正予算案に反対、日本社会党、公明党、民社党三党共同の提出の組みかえ動議に賛成、日本共産党・革新共同提案の組みかえ動議に反対して、討論を終わります。(拍手)
  359. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 次に、安里積千代君。
  360. 安里積千代

    ○安里委員 私は、民社党を代表して、政府提出の昭和四十九年度一般会計補正予算案、特別会計補正予算案及び政府関係機関補正予算案に反対し、日本社会党、公明党並びに民社党の三党による政府案の組みかえを求める動議に賛成の討論を行ないます。  まず、政府三案に反対する第一の理由は、国の内外あげて、経済的、社会的な事情から、超高度の成長が不可能な情勢にあるにかかわらず、ひたすらこれを追い求めつつ、金権、汚濁の政治でついに退陣せざるを得なかった田中内閣の案をそのまま提出してきたという、三木内閣の無定見な方針に対してであります。  およそ、内閣の交代にあたって最大に求められるものは、これまでの政治を一新し、国民の輿望にこたえる最善の姿勢を示すことにあると思うのでありますが、三木内閣の初仕事ともいうべき予算の補正が、汚辱に満ちた前内閣の遺産をそのまま提出するというにあっては、クリーンな三木内閣とは全く相反するものといわなければなりません。  反対の第二は、激しく進行するインフレにあって、その最大の犠牲者といわれる年金生活者、特に福祉年金受給者への対策、生活保護世帯対策、交通遺児の家庭、母子家庭並びに社会福祉施設対策などが、現状に照らして手厚く改善されなければなりません。  三木総理政治的信条の一つには、社会的公正の実現が織り込まれていると承っておりまするし、また、過日の所信表明演説におきましても、社会的、経済的に弱い立場の人々の生活安定を主張されたことであります。にもかかわらず、福祉年金に例をとりまするならば、月額五千円から七千五百円へと、既定のベース変更を一カ月繰り上げた措置にしかすぎません。これでは、決して老人の念願にこたえるものとはいえないのであります。この年金支給を受ける老人の切なる願いは、せめて生活費の半分でもよいからということにあります。  われわれ三党共同提案にかかる組みかえ動議の方針では、これら老人の切望にこたえるために、月額二万円の福祉年金実現を求めると同時に、生活保護、身障者、母子、交通遺児、そして社会福祉施設の措置費等を大幅に引き上げ、しかも現実の財政のワクの中で十分実現できることを提案しているのであります。政府は、この点に特段の配慮と反省を行ない、早急に組みかえを行なうべきであります。  次に、政府案では、中位以下の勤労者所得に対し、インフレ、物価急騰に対応する減税が全く配慮されていない点であります。  インフレが債務者利益を不当に高め、勤労の価値を不当に低下せしめるという分配の不公正にあることは、国民のだれもが知る厳然たる事実であります。勤労国民の切なる願いが、年末を控え、はたまた四月からの子弟の入学に備え、一万円でも二万円でもよいから税金を軽くしてほしいということにあります。  われわれ三党は、この切願をかなえるためには、この際、課税対象所得が四人家族で年収三百万円以下の層に対し、年度内三万円の税額控除を断行すべきであるということを提案いたしておるのであります。この点、政府は真剣に再検討し、勤労国民の上に思いをいたすべきであります。  次に、私は、教育における私立学校の果たしている役割りの大きいことに比し、その財政が破綻の危機に直面している現実を取り上げなければなりません。  もちろん、わが民社党といたしましては、日本民族の経てきた歴史を顧みると同時に、日本人たるの誇りと国際性の調和を求め、それに対応する教育改革に国民の合意を形成せんとする基本政策を掲げて、それを世に問うているところでありますが、少なくとも今日の段階では、私立学校の健全なる発展をいかに確保するか、ここに重点を置かなければなりません。  しかるに、政府は、今回の補正において七十二億円足らずしか計上しておらず、また、国立大学等の研究費の実情に照らし、その増額補正に配慮を欠くことは、教育の現状に対する政府の認識を疑わざるを得ないのであります。  われわれ三党の共同提案では、財源調整が乏しいにもかかわらず、政府案に三百億円を加算計上するよう努力したのであります。この点もまた政府は強く反省し、早急に組みかえの上、再提出をすべきであると考えます。  以上申し述べました理由をもって、私は、政府補正予算三案に反対し、日本社会党、公明党並びに民社党の共同提案にかかる組みかえ動議に賛成の意思を明らかにする次第であります。  なお、日本共産党・革新共同の提案する組みかえ動議には、その内容においてあまりにも非現実的であり、せっかくの御苦労には敬意を表しまするが、明確に反対の意思を表明しつつ、私の討論を終わります。(拍手)
  361. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず、田中武夫君外十六名提出の昭和四十九年度補正予算三案につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議を採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  362. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 起立少数。よって、田中武夫君外十六名提出の動議は否決されました。  次に、林百郎君外三名提出の昭和四十九年度補正予算三案につき編成替えを求めるの動議を採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  363. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 起立少数。よって、林百郎君外三名提出の動議は否決されました。  これより、昭和四十九年度一般会計補正予算(第1号)、昭和四十九年度特別会計補正予算(特第1号)及び昭和四十九年度政府関係機関補正予算(機第1号)、以上三案を一括して採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  364. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 起立多数。よって、昭和四十九年度補正予算三案は、いずれも原案のとおり可決すべきものと決しました。  おはかりいたします。  委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  365. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     ―――――――――――――   〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  366. 荒舩清十郎

    荒舩委員長 この際、一言ごあいさつを申し上げます。  補正予算の審査をここに終了するに至りましたことは、ひとえに委員各位の御理解ある御協力によるものでありまして、心から感謝の意をささげます。審査に精励されました委員各位に深く敬意と謝意を表しまして、ごあいさつといたします。(拍手)  これにて散会いたします。    午後八時十五分散会