○津金
委員 私は、日本共産党・革新共同を代表して、政府提出の
昭和四十九年度補正予算に対し反対、日本社会党、公明党及び民社党共同提出にかかわる修正動議に棄権、日本共産党・革新共同提出にかかわる修正動議に賛成の討論を行ないます。
その理由は、政府提出の補正予算は、大
企業奉仕、軍国主義強化の四十九年度当初予算の骨格をそのまま温存しつつ、公務員給与の若干の引き上げなど、当然に
支出しなければならない経費を計上したにすぎず、この物価高、インフレと不況の中で
国民が切実に求めている緊急
措置に対しては、ほとんどこれを無視するものとなっているからであります。
第一に、社会保障、福祉を守る緊急対策、失業防止と失業対策、中小零細
企業の危機打開の緊急
措置、農業経営を守る緊急対策、勤労者に対する年度内減税、緊急地方財政交付金の交付などの諸緊急
措置は、
国民の最低生活を保障する上で当然とられなければならないにもかかわらず、この補正予算ではほとんど放置されたままであります。
たとえば、生活保護世帯への年末一時金は、一級地でもわずか二千六百五十円、まさにスズメの涙というべきであって、しかもこれは
田中前
内閣が内定した額にわずか百五十円つけ加えたにすぎません。直ちに保護費の一カ月分を支給することを強く要求するものであります。
福祉年金等について見ると、年金額改定の実施期日を一カ月繰り上げたほかは、ほとんど見るべきものがありません。老齢福祉年金は月額二万円に、拠出制老齢年金についても、
国民年金の五年年金は月額二万二千円、十年年金は二万五千円、厚生年金の最低保障額は四万円にそれぞれ引き上げ、障害年金、母子年金等もこれに準じて引き上げるべきであります。また、生活保護費と社会福祉施設の
措置費は、四十九年三月に対して五割引き上げるとともに、福祉年金受給者等の低所得者に対しては、期末生活防衛一時金を直ちに支給すべきであります。
三木総理は、しばしば社会的公正を口にしてきましたが、今日失業者が優に百万人をこえるだろうという事態の中で、失業防止の具体策を何ら行なわず、失対賃金は十月に日額わずか三十円引き上げたままであります。
わが党は、早急に次の
措置をとるよう要求します。すなわち、失対事業、特定地域開発就労事業等の拡充、失対賃金の五割引き上げ、失対事業の費用の全額または五分の四の国庫補助、失業保険金の日額を八割にし、給付日数を一年最高三百六十日に改め、パートタイマーにも適用すること、また、不況に便乗した不当解雇を制限し、中小零細
企業のやむを得ない休業に対して、一定期間賃金が払えるよう休業補償融資ができるようにすることであります。
次に、中小零細
企業の危機打開の
措置についてでありますが、政府案では何ら対策らしきものは講ぜられておりません。今日、中小零細
企業は深刻な経営難におちいっております。この不況の中で、中小
企業向けは特にきびしく、その上仕事も減少した結果、倒産件数は戦後最高に達しようとしております。
わが党は、政府が次の緊急
措置をとるよう強く要求するものであります。すなわち、官公需は中小
企業への発注を最優先させること、政府
関係中小
企業金融機関の融資ワクを広げ、金利引き下げ、貸し付け条件の改善を行なうこと、住宅金融公庫の貸し付けワクを拡大すること、民間金融機関による中小零細
企業向け融資をふやさせ、かつ、もっと有利な条件にするよう行政指導を強めること、さらに、特別小口保険や無担保保険の限度額を二倍に引き上げるべきであります。また、小規模
企業経営改善資金の貸し付けは、商工会等の推薦をやめ、限度額を引き上げることや、関連倒産防止制度の改善、倒産関連
企業、不況業種指定を受けた中小
企業への政府系金融機関の金利を引き下げ、特に零細業者に対しては、地方自治体の長の認定がある場合、二百万円までの無担保、無保証、無利子融資をすることを要求いたします。
次に、政府案では、米作に対する食管会計その他で若干の手当てと、配合飼料
関係の補助若干を計上したのみで、これでは今日農民が直面している危機を打開することはとうていできるものではありません。直ちに農家に対する制度融資の償還期限を延期する
措置をとるべきであります。とりわけ、畜産農家の経営を守るために、さしあたり、牛肉を畜産物の価格安定等に関する法律の指定食肉とし、国の資金で畜産振興事業団が生産農家から買い上げ、生産者価格の一定水準までの回復をはかるとともに、消費者価格を安定させる
措置をとるよう要求するものであります。
次に、地方自治体の財政でありますが、今日の地方財政のかつてない危機的状況に対し、政府案は、三税の増収による地方交付税交付金の追加と、四十八年度地方交付税の未繰り入れ額二千六百九十億の計上をしたほかは、わずか公立文教施設及び社会福祉施設の建築単価を若干引き上げたにすぎません。わが党が要求しているように、政府は三税の六%相当額を緊急地方財政交付金として、また
昭和四十八年、四十九年度に減額された地方交付税相当額を直ちに交付すべきであります。
勤労者に対する
措置については、インフレ下の名目所得増加に伴う重い所得税を軽減するため、
昭和四十九年分の所得税額から、三万円の税額の控除による年内緊急減税を実施するよう強く主張いたします。
政府は、本補正予算において、何ら、われわれの要求する、以上述べた緊急対策を講じようとしておりません。これが政府案に反対する第一の理由であります。
第二に、
三木内閣が社会的公正を口にする以上、膨大な利益を得ている大
企業に対してきびしく課税をしてしかるべきであります。すなわち、大
企業五十社だけでも七兆五千億にのぼる膨大な内部留保に対して、これを公正に吐き出させなければなりません。わが党は、資本金十億円以上の大
企業で、
昭和四十五年度から四十八年度までに土地資産及び有価証券資産を五割以上増加させた
企業に対して、その資産増加分の一〇%を資産課税として臨時に徴収するよう要求するものであります。これは、私がこれまで要求してきた緊急対策の財源として重要な意味を持っているのであります。しかるに、政府案は全くこれに手をつけておりません。これが反対の第二の理由であります。
政府案に反対する第三の理由は、四次防や列島改造など、不要不急の経費を削減しないのみか、新たに増額さえしていることであります。すなわち、陸上自衛隊の車両等の維持費、甲型警備艦の建造費、国際交流基金など、合わせて六十億をこえる追加補正を行なったことは、
三木内閣が軍国主義復活強化、海外膨張の道を踏襲する危険な
内閣であるといわざるを得ないのであります。
わが党は、この際、あらためて四次防の中止と、列島改造の完全取りやめを要求するものであります。具体的には、さしあたり艦船、航空機、戦車など装備の未発注分の予算を全額削減するとともに、既契約の主要装備の契約でも、これをできる限り解除し、研究開発費
支出は中止すべきであります。
列島改造
関係では、高速自動車道路、港湾、空港、新幹線など、産業基盤整備のための予算の繰り延べ分はすべて減額修正し、未発注分は大幅に削減すること、また、外航船舶建造利子補給金など、大
企業への補助金の未
支出分は全額削減すべきであります。
なおまた、対韓援助、サイゴン政権への援助などを打ち切るほか、海外経済協力基金、国際協力事業団、輸出入銀行への交付金、出資金、投融資などは削減するよう要求いたします。
以上のように、生活と経営の深刻な危機に見舞われている多くの
国民や中小零細
企業、地方自治体の切実な要求にもかかわらず、政府案はほとんどこれにこたえていないばかりか、不要不急の経費を削減せず、むしろ追加さえしているのであります。よって、私は、
国民生活を守る上で緊急に必要なわが党の道理ある要求と緊急
措置を対比しつつ、政府案に反対するものであります。
同時に、日本社会党、公明党及び民社党共同提出による修正案については、わが党の主張と一致する点もありますが、緊急地方財政交付金の交付、大
企業に対する臨時資産税の徴収など、当面の緊急施策について重要な意見の相違がありますので、これに対しては棄権、日本共産党・革新共同提出にかかわる修正の動議に賛成する態度を表明し、私の討論を終わります。(拍手)