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1974-12-16 第74回国会 衆議院 本会議 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年十二月十六日(月曜日)     —————————————  議事日程 第三号   昭和四十九年十二月十六日    午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑     ————————————— ○本日の会議に付した案件  国務大臣演説に対する質疑    午後一時三分開議
  2. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  国務大臣演説に対する質疑
  3. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) これより国務大臣演説に対する質疑に入ります。石橋政嗣君。   〔石橋政嗣君登壇
  4. 石橋政嗣

    石橋政嗣君 三木総理大臣、私は、この壇上であなたに向かって、このように呼びかける最初の議員となりました。これも何かのめぐり合わせだと思いますので、本論に入る前に、やはり一言、お祝いことばを述べたいと思います。  ほんとうに御苦労さまでございます。お祝いといえば、本来なら、おめでとうございますと申し上げるべきかもしれません。しかし、敗戦直後の混乱期を除けば、戦後のどの時期よりもきびしく重苦しい時代に総理大臣に就任されたあなたには、やはり御苦労さまということばのほうが、私にはふさわしいように思えてならないのであります。あなた自身も、自民党の総裁に指名されたおりに、身の引き締まる思いだと言われておられたことですし、私なりの祝辞をすなおに受けとめていただけるものと思います。  さて、私は、日本社会党を代表いたしまして、これから三木総理大臣所信表明演説に対し、若干の質問を行ないたいと思いますが、どうか率直、かつ誠意ある御答弁をお願いいたします。  総理は、みずから議会の子をもって任じておられるのですから、議会における質疑応答を、いままでのように形式的なものに終わらせず、充実したものとし、親たる議会の権威を高め、議会の子にふさわしい親孝行ぶりを身をもって示していただきたいと思うものであります。(拍手)  ところで、総理、具体的な質問に入る前に、ちょっと次の演説に耳を傾けていただきたいと思います。  「私は、今日の時局を戦後最大の危局であると思っています。このままいくと、日本の議会民主政治の崩壊に通じかねない危局であると深く憂えております。世間の論議は文芸春秋の記事に集中していますが、今日の危局を生んだのはもっと深く早くからであり、その原因は少なくとも三つあると思うのです。  第一は、金力、権力に依存し過ぎて、世論の動向を軽視した田中政治の行き詰まり、第二は、国民の一番心配している物価、不況、エネルギーの問題に対する見通しの不明確さと対策の不十分さに対する国民的不満、第三は、自民党党内センスでしかものごとを考えない閉鎖的政党となり、国民的視野と立場で考えないことに対する国民のいら立ち、こういうことが互いにからみ合って今日の危局を招いたのであります。」  総理はすでにお気づきだと思いますが、これは私の言いたいことをそのまま述べてはいますけれども、私の演説ではありません。去る十一月五日、徳島において「岐路に立つ日本政治」と題して行なった、あなた自身の演説なのであります。  日本の現状は、あなたがこの演説の中で指摘しているとおり、この機会に思い切ったメスを入れなければ、まさにたいへんなことになるのであります。確かに、田中内閣の退陣、三木総理の出現によって、現在は小康状態にあります。それはなぜか。それは言うまでもなく、国民の多くがあなたに一るの望みを託しているからにほかならないのです。  総理、あなたは、あなたがこの国民の期待を裏切ったらどういうことになるか、それを片時も忘れないでください。それが、あなたと同じように日本の議会制民主主義の将来に多大の危惧を抱いている私の腹からの訴えであります。  さてそこで、私はこの訴えを基調として、これからいろいろと総理にお尋ねしてみたいと思います。  第一は、先ほどから引用しております十一月五日の演説であなたも指摘している、金力政治権力政治についてであります。いま国民の政治に対する信頼を取り戻すためには、何はともあれ、この金力政治の芽をつみ取り解消することが絶対に必要であることは言うまでもありません。そのためには、まず、現在国民の疑惑の対象となっている一連の金脈問題の真相を国民の前に明らかにすることであります。  総理、この場で、金脈問題の真相究明には積極的に取り組むと約束してください。そして、当面最大の障害となっている公務員の守秘義務、秘密を守る義務についても、議会の子らしく、国権の最高機関たる国会の国政調査権のほうが優先することは当然であると言明し、国会の調査に協力すると言明していただきたいのであります。  同時に、公職選挙法を改正して選挙公営の拡大をはかる、国務大臣の資産の公開等に関する法律を制定する、政治資金規正法を抜本的に改正して、会社、企業等営利団体からの政治献金を一切禁止し、会費たるといなとを問わずすべて献金はガラス張りにするということをも、あわせて約束していただきたいと思います。(拍手)  そして、まず隗より始めよ。法律の制定または改正を待たず、国務大臣の資産の公開を実行し、三木派としては営利団体からの資金集めを直ちに中止するということをも、この場で言明していただきたいのであります。そうすれば、おそらく国民はひとしく、あなたの掲げる清潔、誠実のスローガンに対し、心からなる称賛の拍手を贈るに違いないと思うのであります。もしこれすらできないというのであれば、総理、あなたは口舌の徒という非難を受けるおそれすらあるのではないでしょうか。  自分の派閥のことですから、よもやお忘れではないと思いますが、念のために三木派の集めた献金の総額を申し上げておきますと、自民党総裁選挙のあった年、すなわち昭和四十七年が十億五千万円、翌四十八年の分が政策懇談会近代化研究会、合わせて五億三千百十万円であります。これは自治省に届けられた分でありますが、決して少ない金額ではありません。総理の明快な答弁を期待いたします。  第二は、これも先月五日の総理の演説の中で触れられている物価高と不況の問題であります。あなたは演説の中で、これらの問題に対する田中内閣見通しの不明確さと対策の不十分さをきびしく批判しておられますが、それでは一体あなた自身はどうなさるつもりなのかという点であります。  歯にきぬを着せずに申し上げますと、一般の評価は、新首相は経済に弱いとされているのであります。しかし、これだけ明確に田中内閣の政策の貧困と無策を国民とともに嘆き、かつ憤っておられるあなたが、具体的な対策を持ち合わせていないはずはない、私はそう思います。そう思って、期待を持って先日の所信表明演説を待っておりました。しかし、残念ながら期待は完全に裏切られたのであります。所信表明演説を聞き、そのあと何度読み返してみても、そこには総論あって各論なく、精神訓話を読む思いしかしなかったのであります。これは何も私一人の感想ではないはずです。あの演説を聞いて、これで不況下物価高がやがて何とかおさまるであろうと納得し、安堵した人がはたしているでありましょうか。  私は、総理が十一月五日の徳島演説で、今日の日本の高度成長をささえた条件が、国際的にも国内的にもすべてくずれ去ったと断定している点は、全く正しいと思っております。この判断があればこそ、安定成長路線に切りかえ、資源輸入を節約し、財政支出も切り詰めるという政策が打ち出されてきたのだと思います。しかし、それが度を越せば不況を深刻にし、大きな社会問題を引き起こす。そこで、総需要抑制ワク組みをくずしてはならないが、そのワク組みの中では、実情に応じ、きめこまかい現実政策もとらなくてはならないというわけです。  しかし、これでは、評論としてはりっぱでも、具体策は何もないといわざるを得ないではありませんか。肝心なことは、そのきめこまかい現実政策こそが示されるべきだということです。実情に応じた現実政策だからといって、場当たり的なものであってよいはずはありません。それとも、これから先情勢がどのように動くか全く見当がつかないので、対策の立てようがないとでもいうのでありましょうか。まさかそうではありますまい。  そこで、お伺いをいたします。  第一は、安定成長路線に切りかえるというのでございますが、安定成長とは一体どの程度の範囲の伸び率をいうのか。本年度の経済成長率は大体どの程度になる見通しなのか。そして来年度はどの程度に持っていく計画なのか。  第二は、目標とする経済成長を遂げるために必要な石油の量は幾らなのか。資源、特に石油の量を節約するというのですが、一体どの程度の節約を見込んでおられるのか。節約の要請と、さきの宮澤外務大臣の、石油の輸入は前年度より五%増しという発言との矛盾は一体どうなのか。同時に、石油などの輸入に必要なドルの保有量の現状及び来年度の見通しを、外貨準備高だけではなく、為替銀行ポジションの面からも御説明をお願いいたします。  第三は、財政支出を切り詰めるというのでありますが、来年度予算の規模をどの程度に押えるつもりなのか、前年度比でお示しを願います。  第四は、総需要抑制ワク組みはくずさない、財政支出は切り詰めるということは、結局のところ金融を緩和するということなのか、もしそうだとするならば、私には若干意見があります。  総需要抑制の究極の目標が物価の安定にあるとするならば、不況の深刻化を防止するというかね合いで考えられるべき措置は、いたずらに金融の緩和をはかることではなく、生活福祉重点地方財政充実、特に、おくれている老齢年金と住宅、下水道等の整備のための予算をこそ思い切って増額し、財政投融資の配分についても重点的に行なうべきではないのでしょうか。金融緩和はあくまでも中小企業の分のみに限定すべきです。この主張に対してもあわせてお答え願えれば幸いであります。  ところで、私たちがいま一番不満なのは、物価を安定させるために必要であり、そしていますぐにできることを、すべてこれからスタートする経済対策閣僚会議の討議にゆだねると言って逃げていることであります。いま直ちに決断しなければならない問題をしばらく凍結し、ほとぼりのさめるまで待つというのでは、総理の言う誠実という看板に反する、全く不誠実な態度と断ぜざるを得ません。(拍手)  総理、なぜあなたは物価抑制策の一つとして、また、インフレ物価高に悩む庶民へのせめてもの思いやりとして、焦眉の問題となっている酒、たばこ、塩、郵便料金電信電話料金国鉄運賃等値上げは当分行なわないと言明しないのでありますか。  また、公共料金値上げとともに、物価高のいま一つの主因となっているやみカルテルを撲滅するためにも、独占禁止法改正案を必ず通常国会に提出すると言わないのでありますか。社会党は独自の案を示していますが、カルテルをやればひどい目にあうということをはっきりさせるためにも、また、カルテルがつくりにくい企業構造にするためにも、せめて公正取引委員会の案を最低のものとして、早急に政府案をまとめると言明していただきたいと思います。(拍手)  ところで、私たち政治に携わる者がいま一番真剣に考えなければならないいま一つの重要問題は、インフレによってますます拡大した社会的不公平、格差をどうして解消するかということだと思います。高度経済成長の中でたっぷりともうけ、力をつけた大企業や商社が、投機や便乗値上げによってさらにぼろもうけをしているのに、これを放置したまま、労働者に向かってのみ賃上げの抑制を説き、勤労国民に対して節約と耐乏のお説教をたれてみたところで、一体だれが承服するでありましよう。  インフレ不当利得を得た大企業、大規模資産に対し、土地再評価益課税や富裕税を新設して、これを吸い上げ、他方、四人家族二百八十万円まで無税とするような低所得者重点の思い切った緊急の調整減税を断行するといったことこそが必要なのであります。租税特別措置法の改廃も必要であります。  さらには、全国一律の最低賃金制度をつくり、生活保護世帯心身障害者母子世帯などの給付の底上げを行ない、年金はすべて賦課方式によって生活できる水準まで引き上げるといったことを実行することが大切だと思うのですが、いかがでございますか。(拍手)あなたの言われるとおり、三十年もこつこつつとめ上げてきた人々が、退職後の生活設計が立たないなどというばかげた現状を改めるために、年金の思い切った引き上げ、これは、いま直ちに実現に着手すると、ここで言明していただきたいと思います。(拍手)  次は、エネルギー問題と外交姿勢についてであります。  エネルギー問題は、あなたのおっしゃるとおり、確かに「日本にとっては経済の分野を越えて政治外交の分野にわたる問題」であります。あなたは、このような観点から「日本のエネルギー政策、特に石油政策は、どうしても多角的な方式にならざるを得ない」と言い、「人類に与えられた有限の資源をめぐって、人類が若し、政治的、軍事的争いをやれば、それは人類共滅の道といわざるを得ない。だから産油国と、消費国との対決などは、絶対に回避しなければならない」と主張しておられるわけです。  これは、あなたが副総理としてイギリスを訪問し、ロンドン商工会議所で行なった講演の一部でありますが、まさに達見だと思います。  このような見識に基づいて、あなたは、日本のエネルギー政策は多角的にならざるを得ないという結論を導き出しているわけですが、それでいながら、しかし「中ソ関係とか、アメリカアラブ関係とか、いろいろ複雑な政治的、軍事的関心がからんできたので、多角的政策もなかなか容易なことではありません」と、ここでもまた評論家のようなことを言っているのであります。せめて所信表明演説では明確な方向が示されるのではないかと期待したわけですが、ついに何も聞くことはできませんでした。  総理、あなたは、どのように困難であろうと、国家、国民のために正しいと信ずる道を歩むべきではないのですか。この際、明確に、アメリカに追随し、産油国と対抗的な消費国同盟に加わることはない、また資源略奪的な開発輸入は直ちに中止する、そして、これからは、日米安保ワク組みから脱して、真に自主的な外交を展開し、互恵平等の国際協力への道に転換すると、あらためて明言したらいかがでございますか。(拍手)  そのような決意表明がない限り、「三木内閣にかわっても、日米友好関係の維持・強化が日本外交の基軸であることにいささかの変化もありません。」ということは、どのように弁明しようと、従来の一辺倒外交を続けるということにほかならず、就任前のあなたの抱負経綸は早くも消し飛んでしまったものといわざるを得ないのであります。  このほか、あなたの主張が大幅に後退したのではないかと思わせるものに、日韓の友好関係の強調があります。  総理、あなたは、金大中氏の事件や早川、太刀川両君の問題は完全に解決済みという見解をとっておられるのですか。韓国と対等に話し合いもできないで、何が自主外交ですか。自主外交どころか、外交不在というべきではないのですか。(拍手)  それに、朝鮮民主主義人民共和国に対してはどのように対応しようというのですか。全アジア諸国との間の友好関係をいう以上、隣国に対する態度に何ら触れないということはまことに不自然だと思うのであります。明快な御答弁をお願いいたします。  次は、食糧問題です。  もし日本の農業、食糧事情が現状のまま推移するならば、主たる輸入先アメリカやカナダの作柄や政策上の変化次第で、日本は確かに石油危機以上の騒ぎとなることは必然であります。そして、それこそは、歴代自民党内閣農民切り捨て政策安上がり農政をとり続け、一九六〇年代には、現在のECと同程度の自給率九〇%を維持していたにもかかわらず、いまではわずか総合で四〇%台に落ち込んだ結果にほかならないのであります。総理、石油の次は食糧だなどとささやかれていることは、先刻御承知のことと思います。このような杞憂を現実のものとしないためにも、いまこそ農業の再建をはかるときであります。  この面からも、いたずらにアメリカ食糧戦略に加担し、追随するのではなく、少なくとも、今後十年の間に自給率九〇%への復帰を目ざして、農業基盤の整備や農産物価格保障等、抜本的な対策を樹立する必要があるのではないのですか。御意見を伺いたいと思います。(拍手)  次は、公害・環境問題です。  あなたは、さきにも引用したロンドン商工会議所における講演の中で、「公害問題の緊急性は世界一だと思います。私は環境庁長官として、空気や水の汚染の予防規制について、個別的発生源についての厳重な規制と、さらに、地域全体としての厳重な総量規制をも行なおうとしています。いろいろ抵抗もありますが、将来の世代に対する現代政治家の責任を強く感じますので、きびしく規制を貫く覚悟です」と述べておられます。私は、この姿勢、かかる心がまえに対しても心から敬意を表します。  ついては、総理になられたいま、あらためてこの考えを実行に移すことを約束していただきたいのであります。直ちに、懸案となっている完全な原因者負担の原則、無過失賠償責任制、公害の内部告発制挙証責任転換制等について決着をつけ、これらを全面的に受け入れた抜本的な改革を緊急に実施する意思をこの場で表明していただきたいと思います。(拍手)  さらに、当面焦眉の問題である自動車の五十一年排ガス規制の問題でありますが、いま、中央公害対策審議会は大型、小型の二段階制をとり、規制値を緩和し、規制を二年間延ばそうという態度を示しているのでありますが、まことに遺憾にたえません。  総理、あなたは、ロンドンの講演でさらに、「日本商品は過去と比べてかなり国際競争力が、価格の点で落ちています。現に、自動車の対米輸出については、日本のトヨタも日産も、アメリカの小型車より割り高になっています。割り高のおもな理由は、輸入原材料の値上がり、人件費を筆頭とする諸経費のアップ、円の切り上げなどですが)それにもう一つつけ加えなければならぬことがあります。それは、三木という環境庁長官が指令したきびしい公害対策のためのコストであります。私はこれからの政治の最重要問題はエコロジーではないかとさえ思っています」と胸を張って高らかに宣言しているのです。もし、この自動車排ガス規制が大幅に後退するようなことがあれば、それこそあなたの国際的な信用問題にまで及ぶと言っても、決して言い過ぎではないのではないでしょうか。(拍手)  総理、政府はいま、国民の命と健康を尊重するか、それとも自動車メーカーの利益を優先させるか、重大な政治判断の岐路に立たされているのです。中公審答申のいかんにかかわらず、必ず昭和四十七年十月の告示どおり実施するというき然たる決意をここに明確に表明してくださるよう、お願いをいたします。(拍手)  次に、教育問題について、三木総理並びに永井文部大臣にお尋ねしたいと思います。  教育の重要性についてはここであらためて申し上げません。総理が派閥のエゴを排して民間から永井文相を起用したことに対しては、これまた敬意を表するにやぶさかではありません。しかし、率直に申し上げて、永井文相によって、従来からの反動的な教育政策の転換が可能なのだろうかと考えますと、どうしても否定的にならざるを得ないのであります。  総理できるかできないか、そのかぎを握っているのはやはりあなた自身であります。あなたは、中教審路線に対して批判的な立場をとり、教育委員公選制に賛成し、大学公社論を提唱した水井氏を文相に起用して拍手を浴びたわけですが、ほんとう永井文政をささえることができますか。もしこれをささえることができなかった暁には、あなたは、三木内閣フレッシュPR用永井道雄という人の顔と名前を利用しただけにすぎないと非難されることを覚悟すべきであります。(拍手)  総理、あなたはほんとう民主教育の原点に立ち戻って、反動化した教育制度を再検討する意思を持っておられるのですか。持っているというのであれば、そのあかしとして、中教審を廃止し、教育職員団体の代表をも含むほんとうに民主的な、内閣直属教育審議機関を持つべきだと思いますが、いかがですか、お尋ねいたします。  次に、永井文相にお聞きしたい。  あなたは文部大臣に就任直後、「教育を国民のものにするために、教育内容に干渉するのでなく、その充実に努力する。そのために、文部省はサービス機関であるとの信念のもとに話し合いに徹して、日教組との対立をなくしたい」と前向きの所信を表明しておられます。  他方、日教組槇枝委員長も、永井文相の誕生に敬意を表し、「永井新文相の教育に対する識見が今後の文教政策に生かされるならば、日教組は協力して日本の教育の荒廃を救うことができるものと期待している」との談話を発表しています。  私は、このような両者の発言を聞くに及んで、自民党内閣における限界を知りながらも、やはり一つの期待を持つものであります。  ついては文部大臣、次の四点についてお答えください。  第一、大学進学制度の抜本的な改革を断行する意思がありますか。  第二、私学に対し大幅助成を行なう意思がございますか。  第三、中教審答申を再検討して、制度、条件を改革する意思がございますか。  第四、これらの改革を実行するために、話し合い行政に徹し、政治と教育の不一致の是正に全力を注ぐ決意がありますか。  以上、四点についてお答えを願います。(拍手)  次は、原爆被爆者援護法の制定についてであります。  三木総理、あなたは昭和四十七年八月八日、国務大臣、副総理であった当時、三木事務所において、全国被爆者団体の代表に対し、国家補償による被爆者援護法を制定することは当然であると言明されたことをよもやお忘れではないと思います。自民党内においても、三木派を中心に、百名をこえる衆参両院議員援護法制定賛成署名をしていることも全被爆者周知の事実であります。  政府は口を開けば、日本は世界唯一被爆国であると言ってきましたし、二発の原爆による死没者は三十万人余といわれ、この人柱の上に今日の世界平和があることからしても、再びこの悲劇を繰り返さぬという決意を、国の責任による被爆者援護法によって明らかにすることは当然のことです。  日本社会党は他のすべての野党とともに、今臨時国会に、人道上の見地、恩恵的立場からの政府の被爆者対策二法案を乗り越えて、国家補償の精神による原子爆弾被爆者援護法案を提出いたしました。今後われわれはいつでも、政府・自民党の要求があれば、野党案を基礎とした超党派的な法案作成話し合いに応ずる用意があります。  三木総理、来年は被爆三十周年に当たります。もうこれ以上待てないという全被爆者の願いと、再び原爆による犠牲者を出すなという原水爆禁止の全国民の願いにこたえて、次の国会に必ず被爆者援護法案を提出してください。このことを強く要求し、これに対する見解を求めるものであります。(拍手)  次は、ラロック証言を中心とする核問題であります。  アメリカラロック提督が、本年九月十日、米上下両院原子力合同委員会軍事利用小委員会において、「私の経験から言えるのは、核兵器積載の能力を持っているすべての船は、核兵器を積載しているということです。それらの船が、日本など他の国の港に入る時も、核兵器をはずすことはありません」と証言していることは、すでに御承知のことと思います。  総理、あなたは、所信表明演説の中で「清潔で偽りのない誠実な政治を実践し、国民の政治に対する信頼を回復することに精魂を傾ける」と誓われましたが、このラロック証言をお聞きになってどのような感想をお持ちでございますか。提督の言うとおりだろうと思われますか。それとも、ラロック提督アメリカの国会でうそをついているとお考えでございますか。偽りのない誠実な政治を目ざす三木総理の忌憚のない御意見を伺いたいと思います。(拍手)  このラロック証言は、われわれが、日米安保条約に基づき、アメリカの核のかさの下に入り、その軍事力によって日本の安全の確保をはかろうという政策をとりながら、一方において、アメリカの装備に何らかの制約を加えるなどということができるはずはないと一貫して主張してきたその主張の正しさを裏づけるものであることは言うまでもありません。  アメリカの原子力潜水艦や航空母艦が日本の港に入るとき、一々核兵器を取りはずすなどということを信ずるほうがどうかしているのではないのですか。率直な御意見を伺いたいと思います。  総理、あなたは外務大臣当時、オーストラリア国立大学において講演した際、「私は、政府として国民を説得し得ないことは外国に対し約束してはいけない、しかし、約束したことは何としてでも国民を納得させて、その約束を守らねばならぬと思っている」と述べておられます。私は、このあなたの信条を全面的に支持いたします。  ついては総理、幸いにもというべきでしょうか、去る十二月九日公表されたアメリカ上院外交委員会の二つの分科会合同聴聞会の記録によりますと、シュレジンジャー国防長官は、「核兵器の存在場所について肯定も否定もしない」という従来のアメリカ政府の基本原則を再検討していると述べ、さらに「関係当事国が同意すれば、アメリカはその国に置いている核兵器の数を公表することに異論はない」と証言していることが明らかとなっているのであります。  総理、あなたの信条に従がって、国民にこれ以上うそをつかないようにするために、アメリカに事実の発表を要請したらいかがですか。この証言の内容は後日訂正されたなどという逃げ口上を言わず、偽りのない誠実な政治を目ざす者として、やってみますと答えていただくことを期待してやみません。(拍手)  なおこの際、核拡散防止条約の批准問題についてのお考えをもあわせてお答えいただきたいと思います。  最後に、二点の質問をいたします。  一つは、どんな理由があろうと、三木内閣は、議会制民主主義のルールを無視して、自民党内のたらい回しによって誕生した内閣でありますから、なるべく早く国会の解散を断行し、国民に信を問うべきだと思うがどうかという点であります。  いま一つは、野党との対話についてであります。  あなたはかって、対決と挑発は、一時は勇ましいが長続きしない、混乱を招くだけだ、政治的勇気とはそういうものじゃないと喝破されました。これまた至言であります。この考えの上に立って、野党との対話をも強調されておられるのだと思います。  そこで注文したいのです。対話は当然のことであり、けっこうです。しかし、話し合いは単なる形だけのものであってはなりません。実のあるものでなければ意味がないのです。その意味で、国会の運営についても、与野党が共同で責任を持つために、国会役員の構成を改めていただきたいと思います。また、各種の審議会等にはどんどん野党代表を加え、原案作成の段階から意見をくみ上げるようにしてください。それに、強行採決は絶対にやらない、野党の主張が正しいと判断したら、これまたどしどし修正に応ずることも、この際約束していただきたいと思います。(拍手)  総理、おっしゃるとおり、時局はまさに重大であります。しかも、この難局を乗り切り、政治の信頼を回復することができるかどうか、それはやはりあなたの双肩にかかっているといわざるを得ないのであります。そして、その成否のかぎこそは、一にかかって、あなた自身が言ったことを実行するかどうかなのです。  私のこの質問演説の中でも、私が支持し、称賛した部分がずいぶんあったことにお気づきだと思います。これらを絶対に後退させないでください。所信表明演説を聞いた限りでの感想は、弁解あって反省なく、解説はあっても対策なし、早くも退却が始まったという印象が非常に強烈なのであります。評論家などという、政治家にとって恥ずべき風評を裏づけることのないよう、明快な答弁と今後の実行をお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)   〔内閣総理大臣三木武夫君登壇〕
  5. 三木武夫

    ○内閣総理大臣三木武夫君) 尊敬すべき石橋君から、あたたかい、しかもきびしい励ましのことばを最初に承りまして、感謝いたします。  たいへんに広範にわたる質問でございますので、できるだけその問題に触れて具体的にお答えいたしますが、他の閣僚方も答える問題もあろうかと思います。  第一点は、いわゆる金脈問題の真相究明について、協力するかということでございます。  今日、政治の倫理、これはもう確立をせなけりゃならぬということは申すまでもないことで、したがって、その方法が妥当である限り、真相の究明には協力をいたします。また、田中氏自身も、疑惑を解くために、みずから詳細に調査中であると聞いております。一日も早く、すみやかに疑惑を解いてくれることを願っておるものでございます。  また、国政調査権守秘義務の問題でございますが、私も人生の大半をこの国会で過ごしておる者として、国会の権威を高めたいということを常に願っておるものでございますが、やはり国政調査権というものは、裁判所や検察の犯罪摘発とはわけが違って、非常に政治的なねらい、目的でありますからして、したがって、常に絶対であるとは私は考えていない。だからこそ、税務署の資料の公開などについても主務大臣の承認を必要としておるわけであります。大平大蔵大臣は、ケース・バイ・ケースで判断をすると申しておるので、私は大蔵大臣の判断にゆだねたいと存じます。  また、政治資金規正法の問題についてでございます。  政治活動に資金を要することは、これは申すまでもない。今日、相当な資金を政治活動には必要とするわけでございます。結局は、政治資金の問題は、私は政治資金の集め方、使い方ということに問題があるのだと考えております。したがって、政治資金というものに対しては、世論も非常にきびしく批判をいたしておるわけでございまして、この機会に、通常国会に提出する目標のもとに政治資金規正法改正をしたいと考えておる。そして、それは、政治資金の集め方、使い方というものにもつと節度と明朗化をはかりたいということでございます。これは通常国会の提出を目途にして自民党で検討をいたすことにいたします。  また、財産の公開制度、これは石橋君いまお話しでございましたけれども、この制度は、まだ世界的に制度としては確立していない。確立というよりか、熟していないのです、どの国でも。したがって、これは石橋君のほうにおいても御研究を願いたいと私は思うのであります。しかし、これは政治姿勢に関連をする問題でございますので、まだ制度としては熟していないけれども、私自身制度の確立に先立って、みずからの財産は近く公開する考えでございます。  また、三木派政治資金について、こういう点まで御質問がございましたが、私自身総理総裁の重要な責任を持つわけでございますから、これはやはり抜本的に検討しなければならぬと考えております。しかし、私のは、私がつくっておる団体ではない、別の人格による一つの団体でございますので、それは十分にその団体とも相談をして、来春を期して、私の後援をしておる政治団体の政治資金の集め方あるいは使い方については、根本的な改革を加えたいという所存でございます。  また、次に経済の問題に移って、安定成長路線に切りかえるということを明白にせよということでございますが、私の所信表明においてもこれは明白にいたしたところで、もう今日は、資源とか、あるいはまた環境とか、あるいは労働力もそうでしょう、こういう条件から考えてみて、高度経済成長をささえた条件はすべてくずれ去ったのであります。これからの日本は、安定経済成長の路線を行くということは、これはもう当然のことでございます。  それならば、本年度の成長率はどうかという、いろいろ将来の見通しについて御質問がございました。四十九年度は、御承知のように見通しを改定いたしまして、名目成長率一九%程度、実質マイナス一ないし二程度、閣議でこういう口頭了解も得たわけでございますが、しかし、来年度ということになりますと、これは予算編成の前提となるわけでございますから、今月末にこのすべての経済成長その他の見通しについては閣議決定をいたしまして、国民の前に明らかにする予定でございます。それまでこの発表については御猶予を願いたいと思います。  また、石油節約の問題等にも触れて、石油輸入量の問題についても、これは経済見通し策定の作業のおりに検討をいたしたいと考えておるわけでございます。  それから、外貨準備のあらわれと見通しについてでありますが、外貨準備は十一月の末で百三十七億ドルであります。この見通しについては、国際金融の情勢がきわめて流動的でありますから、現在、まだ確固たることは申し上げられませんが、大体年内はこういう数字だと考えております。  また、為替銀行のポジションは、十月末で約百二十一億ドルの負債超過であります。この見通しも、国際金融市場の動向や輸入の動向などがまだ不安定なので、見通しということについては、いま、私は、この段階で確たる見通しは申し上げられないわけでございます。  その他の将来の見通しに関する数字は、いま申したように予算編成の時期にこれは明らかにいたしたいという考えでございます。  また、総需要抑制について、私は、石橋君の考えと同じ考えを持っておるので、総需要抑制というものについて、金融緩和をやるのではないか、こういうふうなお考えでございますが、それは考えていない。ただ、中小企業というものが、年末を控えて、総需要抑制のために非常に弱い立場にあるわけですから、しわ寄せがいくということに対しては、われわれとしては非常に警戒をしなければなりませんので、政府系の三金融機関が融資規模を七千億円ふやしたわけでございます。必要があったならば、これはさらに追加をする準備をいたしておるわけでございます。こういうので、金融の引き締めを緩和するというのでなくして、特に中小企業などの弱い立場にあるものの動向についてわれわれは注目して、それに対する対策をきめこまかくやっていくということでございます。  また、お話のありましたように、生活福祉重点、地方財政の充実、特におくれておる住宅——住宅というものはこれはもう力を入れていく。道路よりも住宅、下水道の整備のための予算は、今後財投などにおいてふやすべきではないかというお話でございますが、私どもも同じように考えておるわけです。こういうことで重点的に配分をいたしたい考えでございます。  また、公共料金のことについてお話がございました。公共料金はもうすべて上げぬと、こう言えば国民の耳には快い響きを持つと思いますが、私は最初にも申したごとくに、そんなに国民の耳に快いことばかりを申し上げることは、これからもいたさない。だから、公共料金は絶対にみな上げないということは、やはり私はそういう政策はとれるものでない。それをとれば、その赤字は全部国民が税金で負担するよりほかにない。しかも、それは一挙に負担するようなことになって、やはり受益者が適当な負担をするということが原則だと思うのです。  ただ、しかし、タイミングというものがある。いまのこの内閣は、物価を安定させたいということを内閣当面の最大課題としておるときに、次々に公共料金を上げるという考え方は私は持ってないのです。これはやはりいまのタイミングというものは考えなければならぬ。公共料金というものは受益者負担の原則というものは維持していかなければならぬが、タイミングとか、あるいは上げ幅とかいうものは、これはもう慎重でなければならぬ。  そういうことで、今後、この公共料金の問題は経済政策閣僚会議で十分検討してもらいますが、ただ検討するということではなくして、この際、公共料金値上げはもうできるだけしないという、抑制するという、そういう方針のもとで経済政策閣僚会議の検討をしてもらいたいというのが私の方針でございます。  また、独占禁止法改正についてでございますが、これは、私は初閣議のときにも申したわけでございます。  私は石橋君と見解を異にして、社会主義経済というものではなくして、自由主義経済体制を維持したいという論者である。統制経済の時代も私は経験をしたわけです。けれども、統制経済というものが何か経済の活力を失わしめ、あるいはまた人心を暗くして——やはり自由経済体制を維持することが、経済の維持発展のためには一番いい体制だと私は信じておる。(拍手)  ただ、しかし、今日において自由経済、自由経済体制ということは、何でも自由放任というようなことが許されるわけではない。社会的な制約を受けなければならぬ。そのためにはやはりルールが要るわけです。ルールが要るし、あるいは交通整理と言ったらいいかもしれない。弱い者が押しつぶされたり、また何か壁ぎわに押しつけられたりするような、そういう自由経済というものは、公正な自由競争の原理というものが発揮できるとは思わない。  だから、私は、独禁法の改正にはきわめて熱心な主張者の一人でございまして、これは通常国会には独禁法の改正を必ず提出をいたします。その内容については、これは石橋君からいろいろ御提案がございましたから、これはきわめて慎重な検討を要します。  要は、独禁法のねらいというものは、消費者とかあるいは中小企業、下請とかいう弱い立場の人々というものを、経済一つの仕組みの中で保護していこうということがねらいだと私は思うのです。しかし、その内容については、これは慎重に検討しなければなりませんので、政府部内に独禁法の改正に関する懇談会を設けて、民間の各団体、労働組合の代表者も入ってもらって、オープンにこの問題を論議して、できるだけ国民の納得のいくような形で独禁法の改正というものの成案を得たいと考えておる次第でございます。  それから、エネルギー政策について自主外交を進めるのかということでございますが、私は、御承知のように、昨年の十二月に石油特使として中東に参りました経験もあって、エネルギー外交に対してはいささか経験も持っておるものでございます。石油の問題というものは、どうしたってやはりこれは国際協力というものを必要とするので、日本で独力で解決するといったところで、エネルギー源の七〇%が石油で、そのうち石油の九七%といっていいくらいのものが輸入に依存しておるわけでありますから、どうしたって日本の独力というわけにはいかない。初めからやはり国際協力というものは前提にしておるわけでございます。その国際的協力というものを進めていくについても、日本はよその国よりもずっときびしいエネルギー条件を持っておるわけです。アメリカにしても、ヨーロッパにしても、もっとエネルギーは高い自給率を持っておるわけですから、やはり日本日本の事情に従って自主的な外交をやらなければならぬことは申すまでもない。  私の石油に対して考えておる外交というものは、産油国消費国とが互いに対決して、そうしてその間に石油エネルギーの問題を解決できるとは私は思っていないのです。やはり産油国石油消費国との間は、お互いに相補完すべき関係にあるわけですから、そういうことで相協力して、相互の協力関係という中で石油問題というものを解決したいというのが私の方針でございます。現にあれほど意見が違っておると世間でいわれておったアメリカとフランスの間においても、現在カリブ海の仏領のマルチニーク島において両国の大統領が話し合って、アメリカとフランスとの意見が食い違っておるようなことは、意見が調整をされるであろうということを私は期待をいたしておるわけでございます。そして、産油国消費国やはりお互いに対決ではなくして、協調しながら、このいま世界の最大問題である石油問題を解決していきたい、これが私の願いであります。  また、食糧の問題についてお話がありました。確かに食糧というものは、非常に国際的な食糧事情も変わってきて、食糧不足というものがいわれておるわけでございますから、したがって、自給率を高めるという必要は私は日本も確かにあると思う。いまの自給率は低過ぎる。そういう点で、農業の生産の基盤整備とか、価格対策とか、技術経営対策とか、これはいままでの惰性でない農政というものが展開されなければならぬ。石橋君の言う九〇%にせよということについては、これはまあ目標としてでありますが、この点はそこまで、九〇%までもいくということは、総合自給率でございましょうが、私はそれまでの自給率というものの上昇は考えておりませんが、とにかく自給率を高めなければならぬことは事実であって、しかしすべて自給するというわけにはいきません。どうしても輸入にたよらざるを得ない食糧というものはたくさんあるわけですから、その輸入の安定というものをはかるために対外的に外交的努力も必要で、やはり食糧においても、国際協力というものを除いて、日本だけで自給するということは不可能でございます。しかし、自給率を高めよというお説には私は賛成でございます。これに対して対策を講じたいと思っております。  また、公害についてお話がございましたが、公害原因者負担の原則というものは、すでに大原則は私は確立しておると思うのです。また無過失の賠償責任についても、大気汚染防止法であるとか水質汚濁防止法の法制上の整備もできておりますが、これをさらに進めたいと思います。こういう施策を今後強化していきたい。  挙証責任の問題を非常にお取り上げになりました。挙証責任転換、これはなかなか複雑な問題を含んでおりますが、これはやはり今後十分に検討したい、こう考えておるわけでございます。  また、公害問題に関連して、自動車の排気ガスの規制についていま中公審で御審議を願っておるわけですが、中公審の答申のいかんにかかわらず、私に独断的に決定せよというお話でございましたが、それは石橋君よりも私はもっと民主的にものを処理していきたいという考えでございます。(拍手)この問題は、やはりたてまえがそういうふうになっておるわけです。大気部会で結論が出たわけですが、自動車の排気ガスの規制というものを大気部会だけで告示をするということは私はよくない。排気ガス、ことに窒素酸化物の問題は、光化学スモッグなどの大きな原因であるともいわれておって、都会の人たちの非常に関心の高い問題ですから、大気部会だけの決定で告示するのはいけない。もっと広い国民的視野で、いわゆる中公審というものの総会で慎重に審議してもらいたいということを私は望んで、それを受けて中央公害対策審議会で審議をしてくれることになっております。その結果が出ましたならば、私はその中公審の結論というものを尊重したいという考えでございます。この点は石橋さんと残念ながら意見が違うわけで、中公審の結論が出て、それにもかかわらず、私が独断するというようなことはいたしません。そういうことをすれば、いろいろな公害問題に対する重要な役割りを果たしておる審議会というものは、全部もう不可能になりますから、それはひとつ石橋君にもお考えを願わなければならぬわけでございます。  また、原爆被爆者に対する援護法をつくれというお話でございますが、私はたいへんにこの被爆者現状というものには同情的でございます。したがって、この原爆被爆者というものがどういうふうな状態にあるかということは、私も調べてみた。いま医療の面では原子爆弾被爆者の医療等に関する法律、生活の面では被爆者の特別措置法などで施策をやっておるようでありますが、もう少しこれは実態というものを調べてみて、そういう人たちの施策というものを強化していきたいと思うわけでございます。  また、ラロック証言というものに対して私の評価を求められたわけでございます。核の抑止力の有効性を確保するために、核の所在を明らかにしないというアメリカ政策というものは、われわれも理解しておって、それをまだアメリカが変更したというアメリカ政府からの通告は受けてはいないわけでございます。  また、日本に対しての、非核三原則などに具現されておる日本国民の核に対する特殊な感情というものは、もうこれはよく理解するということを、これは佐藤・ニクソン共同声明にもいっておりますし、先般のフォード氏の来訪の際にもまたこれを繰り返して、安保条約に基づくアメリカの誓約を誠実に守ることを確認をしたわけでございます。  また、そういう点から考えて、ラロック証言というものもいろいろございますけれども、私は、アメリカ政府日本に対して約束する事柄、これに対して、これを日本外交中心に置きたいと考えておるわけでございます。また、アメリカの艦船がどの艦船も全部核兵器を積んでいるとは考えていない、アメリカ政府がそう言っておることもわれわれはそのように信じておるものでございます。そういうことを含めて、アメリカ政府日本に対する発言というものを中心にしてこの問題は処理していくというのが私の考えでございます。  また、核兵器の拡散防止条約、これはどうするのだということでございますが、私はこの批准を進めていきたいと考えておるわけでございます。しかし、そのときには、この核拡散防止条約を日本が批准することによって、日本の原子力の平和利用というものが他国に比して非常に不利な条件に置かれるということは、これはわれわれとしても非常に細心の注意を払わなければいかぬ。これから日本は原子力の平和利用ということは大きな問題になってくるわけですからね。  核兵器は開発はしないということはわれわれの国民全体の非常な決意でありますが、原子力の平和利用というものは大いにやらなければならぬ。それが、われわれが不平等な扱いを受けるなんということになれば、これはたいへんな国家のマイナスになるわけでありますから、どうしても国際原子力機構との間に、国際査察の問題——一番心配になる国際査察の問題について、保障措置協定の締結をしなければならぬ。欧州の原子力機構と日本のとが非常に差別をされたような国際査察を受けたのでは、これは原子力の平和利用に支障を来たしますから、こういうことで、いま、予備交渉を進めるための所要の準備を進めておるわけでございます。そうして、予備交渉の経過を見まして批准をするという方針だけれども、いつ、どういうふうにしていくかという日程は、いま申したような国際査察に対する協定についての予備交渉の経過を見て申し上げたいと存ずる次第でございます。  それから、金大中氏事件につきましては、これは東京で起こった事件であるだけに、日本政府としては、当然に金氏の人権問題に重大な関心を持っておることは申すまでもございません。日韓両国には、近来いろいろな不幸な事件が重なっておりますが、何としても韓国は一番日本に近い隣の国でありますからして、私としては、いろいろあるわだかまりが解決をされて、そして日韓関係の正常な状態が樹立されることを望んでおるわけでございまして、たとえば、さらに学生事件などの、二学生の問題についの御質問もございましたが、これは韓国国内の問題であって、韓国が公正な措置をとられることを期待をいたしておる次第でございます。  次に、国会運営についてのお話が最後にございましたが、議会制民主主義をささえておるものは自民党ばかりではむろんないわけです。野党の皆さんも共同して議会制民主主義をささえておる。この議会制民主主議というものがくずれた先というものは、これは国民の自由、民意というものが制度的に尊重される制度はほかにないのですから、だからお互いにこうして激しく言い合っておっても、議会政治を守るということについては共同の責任を持っておるということでございます。  そういう意味から、やはり国会の中において与野党の間に激しい議論が起こることは当然であります。激しい議論が起こることは当然としても、やはり国会の運営というものが、国民の目から見ても政治国会にまかせるという信用を、国民信頼感といいますか、それを国会が持てるようなりっぱな国会に与野党が協力して築き上げたいと私は心から願っておるわけであります。だからして、政治も力の対決ではなくして、対話と協調によって進めようという強い信念を私は持っておる。  強行採決をやらぬということを約束せよということでございますが、これは自民党にそういうことを要求されるばかりでなしに、野党の方々においてもそういう事態に国会を追い込まないように、十分な審議を尽くして、これはやっぱりお互いに反対の立場にあるような問題があることばやむを得ないのですから、立場が反対は反対としても、十分に審議を尽くして、そうして強行採決などという異常な事態で採決が行なわれることのないように、野党の諸君も一段と御協力を願いたいと思うわけでございます。(拍手)われわれはそういうことをできるだけいたしたくないわけでございます。  また、役員の問題についても、いまは特別委員長は野党から御選出を願っておるわけでございますが、他の役員については、いま議長のもとに議会制度議会が開かれて、非常に与野党の間で話し合いが進められておるわけでございますから、こういう場においても十分お話し合い願いたいと思う。  また、私は、党首会談も、これは形式ばった党首会談でなしに、問題があればひんぱんにやりたいと思っておるものでございます。そういう意味からして、そういう場合においてもこういう問題をお話しするような一つの機会を持ちたい。  そして、与野党が話し合って、与野党話し合いの中で、野党の皆さんのおっしゃることで国家の、国民のためになるということがあったら、何でも採用いたします。われわれは自民党という党利党略で考えていない。また、自民党という一つの党利党略だけでこれが乗り切れる時局でないのです。やはり野党の諸君の知恵もかりたい。協力も得たいのですよ。総ぐるみになってこの問題を解決する以外にないのですから、大いにいろいろ建設的な意見野党の諸君から承りたいということを期待いたしまして、お答えといたします。(拍手)   〔国務大臣永井道雄君登壇〕
  6. 永井道雄

    国務大臣永井道雄君) 石橋議員から文教行政の原則にかかわる御質問をいただきましたから、私も文部大臣の重任をお引き受けすることになりましたから、まず原則的なことについて御答弁を申し上げましょう。  私が入閣をいたしましてから、党員でない教育界の人間が文部大臣就任いたしますと、それは文部省や日教組という敵地に乗り込むことではなかろうか、あるいは、文部省と日教組というのは敵味方の関係にあるんですよという発言を耳にしたり、また御注意も受けたわけであります。しかし、私は、世界平和実現への協力を国是としておりますわが国の中に、敵とか敵地というものがあるべきではないと考えております。  しかしながら、さらに突き詰めて考えますと、人間の生活というものにはやはり敵がございます。それは私自身の心の中にある虚名、権力、集団への過度な依存を求めようとする煩悩であります。この敵は是が非でも克服しようという考えであります。また、それこそが、国民の文教活動への奉仕を任といたします文教担当者の原則であると考えております。  さて、石橋議員の御質問は、中教審制度の問題ほか四点にわたっておりますので、順を追って御答弁申し上げましょう。  まず、中教審を廃止して、教育職員団体代表者を含む民主的組織による内閣直属教育審議機関を持つ考えはないかという御質問でございます。  さて、中央教育議会と申しますのは、教育、学術及び文化に関する基本的な重要施策につきまして調査審議し、文部大臣に建議する役割りを持っております。その審議会の委員は、人格高潔にして、教育、学術または文化に関して広くかつ高い識見を有する者のうちから、文部大臣が内閣の承認を経て任命することとなっております。私は、これを改めることは考えておりません。(拍手)  ただ、これまでも、問題に応じて、審議会の構成、運営の方法はきわめて多様でありました。今後の問題は何であるのか、また、問題に応じていかような構成、運営の方法が必要であるかにつきましては、これから検討いたします。  そこで、教職員団体の代表を含めるかという御質問がありましたのは、おそらく日教組や日教連を頭に置かれての御質問ではなかろうかと考えますが、組合の役員を含めることは、いまのところ考えておりません。  さて、次の四点について申し上げます。  第一に、これからの教育改革を実現いたしますためには、話し合い行政に徹して、政治教育の不一致の是正に全力を注ぐ決意はあるかという御質問改革を行なうにあたって、広く国民各層の意見を徴することは当然であります。また、国民の御理解と御支持を得て行政に当たるという原則は、初めに申し上げたとおり。  さて、この御質問にも、教職員団体との話し合いをどうするかという問題が含まれているかと推察いたします。  ところで、日教組ないし日教連というような組合は、わが国が地方自治の原則をとっておりますために、任意団体であります。そこで、それを構成する都道府県の組合が、登録された職員団体であります。したがって、都道府県の教育委員会と、それから組合との間に労使の関係がございますが、文部省との間には、現行法上、労使の関係はございません。しかしながら、国民の要望にこたえて、これまでも給与問題などについて意見を交換してまいりましたが、今後は、対話と協調という現内閣の方針がありますが、これが特に教育界においては重要であるというのが私の考えでありますから、文部大臣との関係につきましては、従来の経緯を勘案いたしまして、慎重かつ適切に対処する決意でございます。(拍手)  さて、第二に、では大学進学制度の抜本的な改革を断行する意思はないかという御質問がありますが、わが国の大学入学者選抜の現況については、多くの問題がございまして、私は大学におりましたが、大学教育だけではなく、高等学校以下の教育にきわめて重大、深刻な影響を及ぼしていることは、国民ひとしく憂慮していることであります。  どうしてそうなるか。学歴偏重の社会的風潮があるではないか、国公私立大学に格差がある、あるいは大学入試制度など、多くの要因がございます。文部省といたしましては、これらの問題の解決に努力いたしておりますし、また、高等学校長が作成する調査書の大学進学への活用や、あるいは大学が行ないます学力検査問題の改善など、従来から入試制度の改善に努力はいたしてきておりますが、これは強化しなければなりません。関係者の衆知を集めた共通学力検査というようなものも必要でありますし、国立大学においても、われわれに協力をしてくれているわけであります。  私自身も、家庭では父親でございます。この問題について悩む者の一人でありますから、問題の背後にある要因が複雑でございますから、解決には時日を要すると思いますが、全力をあげて解決に当たる考えでございますので、各党、各界の方々の御協力を切望する次第でございます。(拍手)  第三に、中教審答申を再検討して、制度条件改革する意思はないかという問題であります。  中央教育議会答申は、幼稚園から大学までの学校教育全般にわたって、教育が人間形成の上においてこれから取り組むべき基本的な課題とその改革の方向を示した重要なものでありますが、また、これを実現するにあたっては、政府や文部省だけではなく、教育関係者の努力と国民各層の理解を得て実現すべきものであります。  ただ、現代は歴史が急速に動いている時期であります。そこで、あの答申のように八万六千七百字に及びますこうかんな文書の内容を理解してこれを政策に生かそうとする場合には、よほど慎重、柔軟な思考をもってしなければなりません。  といいますのは、私は過去五年間足らず新聞記者をやっておりました。そうするというと、私が大学教授をやっておりましたときの友人が、君は日刊紙の仕事をするようになってよかったね、いまは時代の動きが激しいよ、どうも未来学とか経済政策などについて本を書き始めたときと、やっと本ができたときと、数カ年を経ていると、社会が変わっているから困るという人があります。日本に限らず、諸外国も、いまや世界的にそういう情勢だと思います。  そこで、中教審答申を書かれた先生方はりっぱな方ですけれども、諮問以来すでに七カ年を経ています。だから、たとえば答申に、長期的な教育費予測の試算というものがございますね。こういうものは経済の激変の中で当然検討されるべきものでございますし、また、この種の問題があります場合には、十分検討、配慮しなければならないと考えております。  さて、第四番目に、私学に大幅助成を行なう決意はないかという問題であります。  私学振興の重要性、それを考えますと、昭和四十九年度予算において経常費補助金として六百四十億円を計上したところでございますけれども、本年度においては異常な人件費の上昇がございますことは、皆さまも御承知のとおりであります。そこで、補正予算として七十億四千八百万円を計上することにいたしました。  また、そればかりでなく、高等学校以下の私学も問題でございますから、国の例に準じた経常費補助ができますよう地方交付税制度において財源措置を講じているところです。  今後の私学振興方策というものは、私学の実態に応じて適切な助成をいたします。それは私学振興のためでありますから、絶対に進めていきたいというのが私の決意であるということを申し上げて、答弁にかえたいと思います。(拍手)     —————————————
  7. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 倉成正君。   〔倉成正君登壇〕
  8. 倉成正

    ○倉成正君 私は、自由民主党を代表して、国民期待と衆望を集めて新たに発足した三木内閣の施政に関し、当面国民の関心の深い諸問題及びわが国の今後の進路に関する基本的課題の若干について質問を行なうものであります。  まず第一にお伺いしたいのは、転換期を迎えた世界の中において、わが国の果たすべき役割りについてお伺いしたいと思います。  いまや世界は、先進諸国のほとんどすべてがインフレ、成長の鈍化に伴う失業、国際収支のトリレマンに悩んでおり、ひいては政治不安をひき起こしております。石油問題を契機として起こった世界経済の変革は、新しい秩序を模索して、いまだその見通しもついていない現状であります。  今日ほど、世界のすべての国がその協力を要請される時期はないと思っています。このような情勢の中で、従来より国際協調をその外交の基本としてきたわが国は、現在の世界経済の混迷に直面し、真にその外交姿勢が問われるところであります。  一言で国際協調といっても、そのことばの響きはよいが、世界各国の結びつきが緊密になればなるほど、当然のこととして各国間の利害も錯綜し対立することも、否定できない事実であります。また、平和国家を標榜し、資源に乏しく、貿易立国として立たざるを得ないわが国のとり得る外交経済政策の選択の幅と可能性はいかなるものでありましょうか。今日のような国際環境の中で、具体的に何ができるのか、当面の課題と長期の目標は何であるか。すなわち、世界の中において日本の果たすべき役割りについて、三木総理は具体的にどのようなお考えをお持ちであるか、承りたいと思います。  また、日米関係については、さきのフォード大統領の来訪をいかに評価しているか、また、フォード大統領より両陛下にあらためて御訪米招待があったと聞いているが、この件をどのように進めていく方針であるか、お伺いいたしたいと思います。  次に、現下国民最大の関心事であるインフレ対策及び不況対策等についてお尋ねいたします。  最近の物価の動向は、政府のきびしい総需要抑制策を中心とする物価抑制策により、卸売り物価をはじめ、ようやく落ちつく傾向を示してきておりますが、その前途についてはなお楽観を許さない現状であります。すなわち、最近の物価鎮静の傾向は、きびしい総需要抑制策の効果によるものであって、国民経済の中に広がっているインフレママインド及び潜在需要を考えるとき、本格的物価安定に結びつくためには相当の期間を要すると考えられ、そのことは、これからの経済運営のいかんにかかっております。物価問題の正念場はいよいよこれからだと言っても過言ではありません。  三木総理は、インフレ克服、不況の防止、社会的不公正の是正に言及されましたが、最近におけるわが国経済をめぐる状況は、不況色を一段と深め、雇用情勢の悪化、倒産件数の増加となってあらわれてきております。欧米各国においては、景気停滞が長引き、物価は上がりつつあるにもかかわらず、失業の増大に対する配慮から総需要抑制策を弾力化する動きも出てきております。  こうした中で、景気の現状判断をいかに見るか、総需要抑制策と不況克服という二律背反の要請をいかに調和させるのか、いつになったら物価は落ちつき、景気は上向くであろうかということが国民のすべてが知りたいところであります。  国民の消費動向を示す百貨店の売り上げにおいても、ことしの十月には前年同月比一六・六%の増加で、昨年の二四・〇%に比し大幅の鈍化であります。買いものの中身も、生活に密着した食料品や実用の衣料品が中心であり、つつましい庶民の生活防衛の姿を示しているといえましょう。  こうした経済環境の中で、今回提出された四十九年度補正予算は二兆一千億円に及ぶ超大型であり、大蔵大臣は、今日の状況の中でやむを得ないもののみ計上したと説明しておられますが、はたしてインフレ刺激の要素にならぬかどうかお伺いしたいと思います。  また、来年度予算についても、当然増経費だけでも三兆六千億にのぼると聞いておりますが、これは本年当初予算に比し二一%の増加であり、それに政策増を加えると、相当の大型予算にならざるを得ないと考えるが、いかなる考え方で来年度予算編成に当たられるか、大蔵大臣の御所見を伺いたいと思います。  なお、このような情勢の中でも、各産業の実態を十分把握し、きめこまかい配慮をすることの必要性を総理は述べておられ、先ほどの石橋君への答弁の中でも言及されました住宅建設に一例をとってみたいと思います。  本年初頭以来、住宅建設は昨年に比し三分の二と著しい落ち込みを示している現状であります。確かに住宅公庫の財投融資については、さきの財投追加において千七百八十六億円という大幅の追加が行なわれました。この点、財政当局の労を多とするものであります。しかしながら、個人住宅融資については、五月末以来、例年になく申し込みが殺到し、七月二十日をもって締め切られ、国民に大きな失望を与えていることも事実であります。他方、中小工務店、建材店の経営難も深刻であり、木材、合板等の資材在庫も十分あり、かりに需要がふえても価格上昇のおそれは全くないと思うが、この際、庶民のささやかな夢をかなえるためにも住宅公庫の個人住宅受付を開始し、国民期待にこたえる考えはないか、大蔵大臣にお伺いしたいと思います。(拍手)  次に、公共料金に関し、その基本的考え方について、福田経企庁長官にお伺いいたします。  公共料金をできるだけ抑制する政策は、歴代政府が一貫してとってきたところであり、昭和四十一年より四十八年の一般物価上昇率五四%に比し、公共料金は二九%であることを考えれば、おのずから明らかであります。  公共料金政府が介入し得る価格であるところから、今日のような経済情勢の中で、できれば全部ストップさせたいという希望は、すべての人々が、だれしも考えるところであります。しかしながら公共料金といえども料金である限り、ばく大な財政負担を覚悟せざる限り、いつかは上げざるを得ないとすれば、見通しのない安易な引き延ばしが大きなツケとなって回ってくることは、自明の理であります。  そこで私は、公共料金について財政負担をどの程度まで行なうべきか、そのことは他の政策との選択の問題として、あらかじめ広く国民的合意を得ることが大切と思うのであります。今年度中は主要公共料金はストップすることは前内閣の方針でありましたが、来年以降値上げが伝えられる郵便、電話、たばこ、麦、高速道路、授業料等々の扱いの基本方針について、国民にわかりやすく、福田経企長官より御説明をお願いいたします。  次に、賃金と物価の問題についてお伺いします。  四十九年春闘の大幅賃上げは、昨年末からことし初めにかけての狂乱物価企業の高収益がその背景にありました。しかしながら、日本経済の成長率は昭和四十九年度において、実質マイナス一ないし二%と予想され、昭和五十年度の成長率もかなり低い成長が予想されるとすれば、賃金をめぐる環境は大きく変わったと申さなければなりません。  これまでの賃金と経済成長率の関係を見ると、実質賃金と実質成長率が大体において見合っておりました。これは経済成長を通じて賃金が上昇してきたことを示すものであります。  来年度の経済成長が低いにもかかわらず、賃金だけが今年のような大幅な上昇が続けられるならば、労働分配率が高まるだけでなく賃金コストが高くなり、物価上昇の原因となることは明らかであります。インフレがすべての国民の共同の敵であることを考えると、来年の春闘が、ある意味において日本経済の将来にとって大きな分岐点となるといえましょう。  私は、この際、インフレを克服するためには、成長率、労働分配率、物価と賃金との妥当な関係について、国民各層の間に十分なコンセンサスが必要と思うのであります。(拍手)また、失業問題も忘れてはなりません。わが国特有の終身雇用制度により、欧米諸国のような深刻な失業問題は発生しておりませんが、引き締め政策いかんによってはさらに深刻化するおそれもあります。  これらの事態を踏まえ、この際、政府、労働組合、企業が同一土俵の上に立って、率直に話し合うことが大切であると信ずるものでありますが、三木内閣がこの点に関し積極的姿勢を示されていることに対し、ここに深い敬意を表するものであります。  話し合いに際して何よりも大切なことは、政府をはじめ話し合いの当事者間の相互の信頼関係であります。まず、政府は誠意を尽くして、勤労者の生活を守るための具体的政策を準備しなければなりません。  私は、日本の勤労者は、企業内のモラル、その勤労意欲において世界最高の水準にあると確信いたしております。政府は、このまじめに働く人々に対して、誠意を尽くしてこたえることがまず何よりも大切なことであります。  同時に私は、組合の幹部諸君にも望みたいと思います。日本経済転換期に際し、従来のようなスケジュールをきめての争議行為をとりやめ、新しい立場に立って政府と話し合う雅量を期待するものであります。(拍手)  以上申し述べました私の考え方に関し、福田副総理の御所見をお伺いしたいと思います。  次に、社会的不公正の是正についてお尋ねいたします。  インフレーションはすべての人々に不満足感、不安定感を与えるのみならず、その一番の弊害は、かろうじて生活をささえている恵まれない人々、預貯金の利子や年金などの固定収入で生活をしている人々には大きな打撃を与えることであります。一方、土地やその他大きな資産の所有者に対し、ばく大な利益を与えるものであります。また、同じ勤労者でも、安定した大企業従事者や親方日の丸の官公労職員と、あすの運命が危ぶまれる中小企業、不振産業従業員間の格差も無視できないものがあります。国税庁調査によれば、全国高額所得者上位百名の中で、土地を中心とする譲渡所得者が昭和四十六年九十五名、四十七年九十四名、四十八年九十七名を占めているという事実は、いかにも庶民にとって納得しがたいところであります。このような土地投機による不当利得、税の不公平は一日も早く是正されなければならぬと思うが、いかがでありましょうか。三木内閣のもとでは、正直者がばかをみる世の中であっては断じてならぬと思います。  また、今日のインフレ下において、社会保障の中心である年金制度については、その再検討を迫られているところであります。私は、年金制度について、専門家の立場から多くの提言がなされていることも承知しておりますが、要するに、国民立場に立てば、年金制度を単純明瞭化して、すべての国民が容易に理解できるようにすることであります。すなわち、公的年金を官庁やいわゆる専門家の聖域からすべての国民の問題に移すことが第一であり、第二は、老後の生活を十分に保障する額を確保することであります。このような観点に立って年金制度を抜本的に見直す用意ありやいなやをお伺いいたします。  次に、インデクセーションの問題であります。  インフレにより一般国民金融資産の目減りが生じている。特に、老齢者の貯蓄や零細な貯蓄の実質的な価値の低下は、社会的公正の立場から重大な問題と思われますが、政府はあらゆる技術的困難を乗り越えてこの問題に取り組む用意ありやいなやをお伺いいたしたいと思います。  なお、年末を控えて、老人、身障者、母子家庭など、恵まれない方々の生活はたいへんのことと思います。これらの恵まれない人々に対して、あたたかい配慮のほどがあれば承りたいと思います。  以上、三木内閣の大きな柱ともいうべき社会的不公正の是正につき、総理並びに大蔵大臣より御答弁をおい願いいたしたいと思います。  次は、高度成長より安定成長に大きく転換を迫られているわが国の経済路線についてお伺いします。  わが国経済は、資源エネルギー食糧、環境、労働力、国際環境、国民の価値観の変化など、あらゆる面から大きな転換が求められています。しかしながら、いまだ政府の施策、産業界、国民一般のものの考え方は、従来の発想、尺度、価値観で事を処理しようとしています。この際求められているのは根本的な発想の転換であり、産業構造、農業政策、財政、金融、流通、福祉、交通、国民生活、教育、すべての部門にわたって従来の政策の見直しが必要であると思うが、この点に関しては福田副総理よりの御答弁をお願いいたしたいと思います。  次に、独占禁止法改正についてお伺いいたします。  そもそも、わが国の独占禁止法は、昭和二十二年制定以来、二十四年、二十八年の改正を経て今日に及んでいますが、昨年末の狂乱物価時における企業の行動、特に大企業価格支配や投機的行為、便乗値上げ等に対し、国民のきびしい批判が行なわれました。このような情勢の中で、独禁政策に対し国民各層の間に大きな期待が寄せられたのは、けだし当然のことであります。このような国民期待にこたえることはもちろん大切なことでありますが、独禁法は市場経済における企業活動の基本的ルールを定めた、いわば経済基本法ともいうべきものであり、その改正問題は、長期的視野に立って、各界の衆知を集め、冷静に議論を積み重ねて検討を進める必要があると思います。自由民主党は、この問題に関し、専門の検討を行なうため独禁法問題懇談会を設け、鋭意検討を進めてまいりました。また、本年九月には海外に独禁政策調査団を派遣したのは、わが国よりはるかに長い独禁政策運用の歴史を持つアメリカをはじめ、欧米各国の政策運用の経験等を調査し、これを参考にすることが必要であると考えたからであります。  私は、市場経済における自由かつ公平な競争が行なわれるためには、その障害となるべき諸条件を取り除くことが必要であり、現代社会における企業その他の組織の巨大化、経済の集中化のデメリットにつき検討を加え、独禁政策の強化により経済社会の活力を維持することは何よりも大切なことと信じております。また、あとを絶たないやみカルテルの横行に対しては断じて許さぬ強い姿勢が必要と思います。このことが自由社会の基盤を守るゆえんのものと信ずるからであります。  同時に、その改正にあたって留意すべき若干の諸点を申し上げまして、総理の御意見を伺いたいと思います。  その第一は、独禁政策が有効に働くためには、独禁法の強化のみでは不十分であるということであります。いかに公取が張り切っても、産業政策を担当する諸官庁、さらには民間企業国民各層における独禁法マインドの定着と協力がなければ独禁政策は有効に働かないということは、諸外国の例に徴しても明らかであります。  第二は、最近の経済情勢のもとにおいて、インフレ対策としての独禁政策への過重の期待がなされている点であります。物不足の場合には、増産政策輸入政策あるいは需要抑制策等、他の政策があって初めて独禁政策が有効に機能し得るのであります。独禁政策で何が可能であり、何ができないかを明らかにするとともに、他の産業政策との斉合性についても検討を進める必要があると思います。  第三は、消費者保護の見地からの検討であります。競争政策は、自由競争を通じて資源の最適配分を行ない、消費者はそのことにより反射的な利益を受けるという間接的な役割りを有するものであります。私は、独禁法の改正の問題と並行して、消費者の立場に立ってそのニーズを積極的にくみ上げ、消費者のこうむる損害を未然に防止するための消費者保護機構を抜本的に強化する必要があると信ずるものであります。  以上、若干の問題点を指摘して、独禁法改正に関する総理の御決意のほどを伺いたいと思います。  次に質問申し上げたいのは、三木新内閣の政治姿勢であります。  内外の時局はいよいよ重大さを加えつつあるときに際し、国民の大きな期待を衆望をになって登場した三木新内閣の使命、責任は、まことに重かつ厳粛なものがあります。私は、国民の一人として、三木内閣が現下の難局に対する施策を誤りなく選択せられ、それを責任をもって実行し、厳粛な使命を全うせられんことを心から念願するものであります。およそ三木内閣においては、不誠実、不公正、不実行、不当なストライキなど、不のつくものは一切あってはならないと思うのであります。  政治姿勢でまず何よりも大切なことは、百の言論よりも一つの実行ということであります。三木総理は、清潔で、偽りのない、誠実な政治の実践を約束されましたが、実行の政治は、キャッチフレーズや美辞麗句から生まれるものではありません。綿密周到にして実行可能な政策の立案と、それを必ず実現するリーダーシップが必要であります。もちろん、その背景には国民の強い支持がなければなりません。歴代の内閣に対する国民の支持の推移を顧みますと、首相指名直後は未知の期待もあって支持率が高く、歳月を経るに従って支持率の低下するのが通例であります。これは政策の実施が評価される結果であると思われます。  三木内閣国民の大きな期待を負って発足されたのでありますが、一にも実行、二にも実行、これが国民の信をつなぐ絶対の要件であると信ずるのであります。三木内閣の初仕事としていかなることをお考えになっているか、御用意があればお伺いしたいと思います。  次に、選挙粛正の問題でありますが、今春の参議院選挙の経験にかんがみ、来年四月統一選挙に関し、各党とも十分協議の上、思い切って金のかからぬ明正選挙を実施せしむる決意ありやをお伺いいたしたいと思います。  次は、法秩序の維持の問題でありますが、国民生活を破壊する違法ストは慢性的に行なわれ、過激テロリストの爆破事件は繰り返され、相手を平気で殺傷する過激集団の内ゲバはあとを断たず、善良な市民の生活が脅かされている現状をどう見るか、これらの点にいかに対処されるつもりであるか、お伺いしたいと思います。  最後に、三木総理議会政治に関するお考えについてお伺いいたしたいと思います。  総理は、さきの施政演説において、政治に対して国民信頼が失われようとしていることに深い憂慮を示されました。おそらく、総理のこの気持ちは、党派を越えて、議会に席を有する私どもの共通の感慨であろうと思います。議会制民主主義は、激動する時代の流れの中で、はたして十分な役割りを果たしてきたでありましょうか。  議会政治は、転換期を迎えた新しい時代の挑戦を受けております。大衆の政治参加、経済社会の変化に伴う国民各層の利害の対立、国民の価値観の多元化、このような変化の中で真の国民のニーズにこたえるためには、議会政治はいかにあるべきか。そのためには、政治のモラルの確立が第一であり、さらには制度、党派の利害を越えた創意とくふうに満ちた弾力的な議会政治の運用によって、新しい挑戦にこたえていかなければならないと思います。はたして政治に対する民衆の信頼を取り戻すことができるか。これらのことは、われわれ議会人に課せられた共通の課題でなければなりません。まさに、今日は、現代における議会政治の存立の意義そのものが問われているものと思われます。  この時代の流れを洞察し、国会が与野党の単なるかけ引きの場でははく、真の国民の声に耳を傾け、論議を尽くす話し合いの場となることが必要ではないでしょうか。議会政治に対する民衆の信頼を取り戻すことこそ、戦前戦後を通じて三十七年間風雪に耐え抜いてこられた議会の子といわれる三木総理、あなたに与えられた厳粛なる天の使命ではないでしょうか。総理の信念、覚悟のほどをお伺いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣三木武夫君登壇〕
  9. 三木武夫

    ○内閣総理大臣三木武夫君) 先般の石橋君の御質問に対して答弁漏れがございましたので、補足してお答えをいたします。  一つは、朝鮮民主主義人民共和国との国交正常化についての御質問であります。  われわれの望んでいるものは、朝鮮半島の平和と安定であります。そのために朝鮮半島における緊張が緩和されることを願っておるものであります。しかし、現状では、朝鮮半島の南北は微妙な関係にあり、したがって、われわれの外交というものも慎重を期さなければならぬと考えております。朝鮮民主主義人民共和国との国交正常化については、まだ諸般の情勢が国交正常化というところまでは熟していないのであります。現在の段階では、したがって、文化とか、スポーツとか、経済とか、そういうものの交流を積み上げておるわけでありますが、この方針は今後も続けていきたいと考えておるわけでございます。  第二点は、教育でございますが、今日はインフレとか物価の問題、これは当面の最大課題でございますが、長い目で見れば、国政の最重点問題は、私は教育だと思います。教育改革こそ国政におけるプライオリティーはナンバーワンの課題だと私は思うのであります。  ところが、現在の教育の状態が正常な状態であるとは思わない、教育界の雰囲気というものは一新されなければならぬと思うのでございます。そして、教育の場を政治の争いから中立の場に日本教育は置かなければいけない。これは、あの学生時代というものは、人生の中であのような恵まれた時期は、再び来るわけではないわけでありますから、勉強、あるいはまた人間の形成に対して、静かな環境で十分教育の目的が果たせるように日本教育改革されなければならぬ。そういう点で、長い間教育問題に専念してこられた永井文相を起用して、この問題と取り組んでもらうことにいたしたわけでございます。  また、解散の問題についてはいま考えておりません。インフレ物価等のこの緊急の課題に、私は真剣に取り組んでまいりたい所存でございます。  なおまた、かつてキャンベラ大学において私がいたしました演説、五月にロンドンの商工会議所において行なった演説等、私の演説の内容を御引用になりまして、あるいはまた、徳島における最近の演説等の内容を御指摘になって御質問がございましたが、私の申し上げたことをいささかも変更する考えはないわけで、あのとおりに考えておるわけでございます。  次に、倉成君の御質問に対してお答えをいたします。  こういう時代における日本の国際的役割りは一体何かという、たいへんにこれは広範な問題でございますが、とにかく日本がこれだけの経済的な国力を持って、いまは世界に対して大きな影響力を持ってきたわけである。しかも、どの問題をとらえても、国際協力なくして解決のできる問題は一つもないわけでございますから、今後はお互いの相互依存性というのはますます強くなっていくわけです。世界に対してこれだけの影響力を持っておる日本は、いままで私は努力が足りないと思うのです。もう少し積極的に、国際協力日本は参加していくということが、一つの大きな問題点だと思います。  もう一つは、日本はアジアの一員でありますが、やはり日本は、日本ほど平和に依存しておる国はないわけで、日本の今日の経済的繁栄というものは平和の上に築かれておるわけで、もし平和がくずれてくれば、日本の繁栄などというものはすぐにくずれ去るわけである。そのために、平和に対して日本はこれから寄与していかなければならぬ。その平和というものは、ただ口で言っておるだけで平和は来るわけではないので、やはり平和には私は代償が要ると思うのです。  その代償というものは、アジアにおいてはどの国もまだ、発展途上の国々は貧しい状態に置かれておるわけでございます。貧困は平和をくずしていく大きな条件である。平和と貧困というものは両立する条件ではない。こういう点で、軍事的には日本はどうこうということはできませんが、経済、技術の面で、この苦しい中においても、できるだけ相手の立場に立って、アジア諸国、まあアジア諸国ばかりでなしに、その他の発展途上国というものに広く目を配るべきでありましょうけれども、そういう国々の経済的自立の達成にできるだけの協力をするということが、日本の一番、日本の国が存立の基礎条件になっている平和への貢献だと思いますから、こういう点で、大きな役割りが今後日本にはあると私は考えておる次第でございます。  また、日米関係でございますが、まあいろいろ石橋君御異存もあったようでありますが、私は実際的に考えてみまして、あるいは軍事的にも、あるいは文化的にも、経済的にも、これだけ両国が密接な関係を持っておる国際関係というのは、日本ではないわけであります。日米関係をおろそかにするということには私は賛成できない。どうしてもやはり日米関係というものが友好な関係を維持していくというところに、日本という国の外交一つの安定性というものがそこにあるわけで、太平洋の平和というものがなければ、日本の平和も安定もないわけでございますから、日米関係というものは大事にしなければならない。社会党の方々も近く訪米されるようでありますが、どうか対米関係というものに対して注目をさるべきだと私は願っておる次第でございます。  アメリカとの関係は、いま二国間の関係というものは、かつてのようないろいろ両国対立するような問題は少なくなってきたので、むしろ二国間の関係というよりか、広く世界的な視野において、両国が国際社会の諸問題についてお互いに役割りを果たし合うというような、こういう世界の中の日米関係といわれるような日米関係になってきたと思うのでございます。こういう点で、日米は大いに協力をする余地は非常にある。日米の協力というものは、世界の諸問題の解決のためにたいへん大きな役割りを果たすと評価するものでございます。  また、天皇陛下の御訪米の時期についての御質問でございましたが、フォード大統領より正式に御招待をしたい旨の表明があって、天皇陛下よりも訪米の時期等については、政府ともよく相談の上決定したい旨をお答えになりました。今後十分検討の上、宮内庁の意見も聞きまして、米国政府と打ち合わせをいたしたい所存でございます。  それから、独禁法の問題についていろいろ御質問がありました。  倉成議員はこの問題に対して、この独禁法の改正に対する委員会の委員長として、非常な見識をお持ちになっておるわけで、非常に傾聴をいたしているのでございますが、言われるとおりに、独禁法というものは、ただ公取だけが独禁法の改正をやったということだけでは、これは有効に働かないことは事実であって、国民の協力というものが要るわけでございます。そういう点で、私はやはり内閣の中で、国民各層からオープンにこの問題をいま論議することが必要である。ただ政府案をつくるというのではなくして、国民の各層の意見というものを、この際懇談会のような形式で十分に尽くして、国民の前でこの問題を取り上げることが必要であると考えまして、明日の閣議で、独禁法の改正に関する懇談会を設置する予定でございます。各方面から少数の委員の方々をお選びして精力的に懇談会をおやり願わなければならぬ。どうしてかといえば、次の通常国会に提出するというのでは、少なくともこの二月の下旬には、懇談会としての結論を承らなければならぬからでございます。  そういうことで、どうしても自由経済体制を守るためには、独禁法というものを、日本経済人もこれをいやがらないで、今後の自由経済体制を守るためには、このルールというものがなければ、ルールなしで自由経済体制を守るということは無理であります。どうしてもちゃんとしたルールをつくって、そのルールの中で大いに自由競争の原理を発揮するということでなければ、国民的支持は得られる体制にはならぬ。そういう点で、独禁法というものはぜひ来たる通常国会において改正をいたしたいという決意でございますので、議員の各位の御協力を得たいと私は思うわけでございます。  それから、このごろ頻発いたしますこの爆弾事件について、私も非常に倉成君と同様に憂慮いたしております。先般も警視総監あるいは警察庁長官とも打ち合わせて、あらゆる手段を講じて、未然の防止、あるいはまた犯人の検挙等を行なって、こういう人心を動揺さすような事件というものの根絶を期したい。この点については、国民の皆さんの御協力も私は得なければならぬ。こういう事件が頻発することは、人心の上からいっても、非常に人心を動揺さすことでありますから、絶対にこういうことの起こらないような、こういうことに対して国民的協力を得て、治安の確立をはかりたいと願っておるわけでございます。  また最後に、政治姿勢に対してのお話でございましたが、私も戦前から引き続いて議席を有しておる唯一の議員でありますが、戦争中にやはり議会政治というものが、その精神というものがくずれ去ったことを、私は議員の一人としてそれを自分で体験しておるものであります。どうしても議会制民主主義というものは——ほかの右にせよ左にせよ、独裁的な政治形態というものは国民をしあわせにするものではない。どうしてもやはり議会制民主主義を守っていくことが必要であると考えております。そのためには、いろいろな弊害が伴うわけですから、それを守るためには、与野党とも共同の責任者である。  こういう点について、国会運営などについても、いろいろとこれから改革を加えるべき点は私は多いと思う。国民国会にまかしておけば政治はだいじょうぶということになりませんと、政治信頼というものは回復されないわけでありまして、そのためには、いま倉成君の御指摘になったように、政治は清潔でなければならぬ。金にまつわる国民の不信というものはなくしなければ、政治信頼は取り戻せないし、また言ったことは必ず実行する。実行のできないことは言わない。これもまたいま倉成君が非常に御指摘になりましたように、実行というものに対する政治責任というものも確立する必要があるし、また国民に対してはあまり包み隠さないで、このような非常に報道機関の発達したときですから、国民はみなはだで知っておるわけですから、国民に隠せると思うことは非常に誤りであって、常に真実を国民に語って、国民とともにこの難局を乗り切っていくという態度日本議会政治に生まれることが、私は日本議会政治信頼を回復する道であると考えております。  それについて選挙の話がありましたが、どうしても現行の選挙制度は——私は、与党ばかりでない、野党の諸君といえども、こんなに金のかかる選挙を繰り返したのでは日本の民主政治は成り立たないという弊害をお考えになっておられると思うのであります。そういう点で、やはりこの選挙というものが議会制民主政治の基盤であります。非常にこれは重要な、これがやはり議会制民主主義の基盤をなすものですから、選挙法というものに対してわれわれが守れるような、何か選挙法が、選挙法の違反になった人を運が悪かったというような、そういうことでは民主政治というものは守っていけないわけでございますから、選挙法の改正、選挙の粛正をもとにした選挙法の改正なども、これは与野党相談してやる必要が私はあると思っておるわけであります。  ことに、選挙法の改正ができないその時期に統一地方選挙があるわけでございますから、これはどうか与野党で共同決議などをしまして、年末年始にかかるわけでありますから、むちゃくちゃな金のかかるような選挙が行なわれないように、厳重な取り締まりもいたします。われわれのほうとしても、現行選挙法の範囲内において厳重な取り締まりもいたしますから、これは国会の各位においても、どうか御協力を願いたいと思うのでございます。  以上でございます。(拍手)   〔国務大臣福田赳夫君登壇〕
  10. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まず第一に、公共料金についてお答え申し上げます。  お話しのように、公共料金は、これはいま人件費が非常に上がってきた、また物価も上がってきたという際に、材政論としますと、当然これは改定すべきである、さように考えます。しかし、いま国が当面しておる最大の問題は何かということを考えてみますと、これはやはりインフレを撲滅することである。このインフレ退治のためにこの公共料金政策、これは非常に慎重に扱わなければならぬというふうに考えておるのであります。  私は、今回企画庁長官就任と同時に、いままで事務的にこの公共料金問題の扱い、昭和五十年度における扱いが進んできておる、しかし、この問題は、その事務的の進行にまかせるわけにいかぬ、これは白紙に還元して再検討しなければならぬ、こういうふうに言っておるのでありますが、その私が言っている趣旨は、倉成さんがいま御指摘のような方向を目ざしての考え方である、さように御理解を願いたいのであります。具体的には、昭和五十年度予算編成の過程においてこれを決定いたします。  次に、経済政策の基調を転換すべきではないか、かようなお話でございますが、私は、この問題は非常に重要な問題だと思います。つまり、いま世界情勢が非常に変わってきておる。世界は資源無限時代から資源有限時代に入ってきておるのであります。資源を保有しておる国におきましては、この資源を、あるいは戦略的に使おうというような動きもある、あるいは経済的な側面から見ますると、資源保有国の売り手市場というような側面も強く出ておるのであります。そういう傾向の中で、資源を消費する国の立場はどうかといいますると、それらの動きに対して身がまえをするという形になってくるのであります。  そういうことを総合いたしますと、これからの世界経済というものは、いままでの繁栄とは違いまして、これは六〇年代の繁栄というような状態はありません。これから長きにわたって低成長時代が来る、かように思わなければならぬ。そういうさなかにおいて、わが日本経済をどういうふうに運営していくか、この世界の動きを見なければならぬということもありますが、同時に、これは今日のような物価状態を復元しては相ならぬ、物価政策の見地もあります。あるいは公害、この問題も静かにこれは反省してみなければならぬという問題もあります。  そういうことを総合して考えますと、一昨年までの十三年間のようないわゆる高度成長というようなことは、もうこれはあり得ないし、あってはならない。これからは控え目の静かな成長、総理安定成長と言われましたが、そのような考え方を基調に大きく転換をしていかなければならぬ。はっきりそのことをさせなければならぬ。夢よもう一度というような考え方を、国民、特に企業家等において持つようなことがあったならば、これはたいへんな間違いをおかすことになる、さように考えるのであります。  そのような状態のもとにおいて、いま倉成議員からお話がありましたが、賃金問題は、これは非常に変わった意義を持つというふうに考えるのであります。高度成長下におきましては、賃金が安定しておった。つまり高賃金、高成長、そういうさなかにおいて、さらにこの物価もまた安定しておったのです。しかし、これからのわが国の経済を展望してみますと、それほど高成長というわけにいかない。低成長という形をとるということになりますれば、低成長、高賃金ということはもう許されないのです。高成長、高賃金の中で物価がなぜ安定したかといいますれば、高成長でありますから、企業の生産性、これが上がります。したがいまして、賃金が上がりましても売り値にこれを転嫁しない、そういう状態でありましたが、これから低成長になれば、賃金の上昇がおおむね物価にはね返る。生産性の向上が見られないからであります。そういうことを、これは日本国民全部が認識しなければいかぬと思う。特に経営者、勤労者、この双方の理解というものが非常に必要だと思うのです。  私は、低成長下の状態のもとにおきまして、賃金が従来の惰性で上がったということになると、日本経済インフレどころの話じゃない、もうほんとうに壁に突き当たって脳天をぶち割るというような事態になるだろうと思うのです。そういうことを避けるためには、どうしてもこれからの賃金問題というものをなだらかな解決に持っていかなければならない、なだらかな解決に持っていくためには、政府も全力を尽くしてそのための条件を整うべきだと思うのです。それが物価の安定である。私が先ほど公共料金政策について、白紙で考えたいと申し上げましたのも、その一つなんです。  また、いわゆる弱者対策というか、社会的公正、こういう問題、これも強力に進めなければならぬ。あらゆる努力を政府が尽くしまして、そうして経営者とも、あるいは勤労者とも話し合います。話し合って、そして公正ななだらかな賃金問題の解決を導き出す。もしこれに失敗すれば、これは私は、ほんとうにえらいことになりはしないか。私は、これからの日本経済というものの前途を展望しますと、特に来年の春闘は、これは日本経済の、あるいは日本国経営の上から見まして、もう天王山であり、関ケ原である、そういうふうな理解を持っておるのであります。(拍手)  そういう理解のもとに、政府におきましても全力を尽くす、また、国民、特に経営者、勤労者に深い理解を持っていただく、これがみんなの利益である。私は、そういうコンセンサスが必ず得られる、そういう決意のもとに皆さんの御協力を賜わりたい、かように存じております。(拍手)   〔国務大臣大平正芳君登壇〕
  11. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 私に対する質問の第一は、予算規模、性格ということが第一でございました。  ただいま二兆一千億近くの補正予算を提出いたしまして、御審議を願っておるわけでございます。  これは御案内のように、人事院勧告の実施という至上課題にこたえる予算でございまして、内容をごらんいただきましても、これを削減していく弾力性のきわめて乏しい費目ばかりでございます。しかしながら、われわれといたしましては、既定予算節約をお願いいたしまするし、また定員の今後の増加につきましても、行管を中心にいろいろ自重していただき、また、執務管理体制そのものも十分各省各省においてお考えいただくということを前提といたしまして、この大型な補正が、今後の財政経済の運営に大きな支障のないようにお願いをいたしておるところでございます。  明年の予算も、財政、金融を通じまして、総需要を抑制し、需要インフレを回避するということでお願いいたしている以上、まず政府抑制型の予算を組まなければならぬことは当然と心得ておるわけでございます。しかし、この抑制型の予算の中におきましても、三木内閣といたしまして、いま異常な緊張を呼んでおりまする社会的な不公正をどう是正してまいるか、そして、先ほど倉成さんからも御指摘がございました住宅政策その他、放置できない問題もあるわけでございまして、この抑制型の予算の中でわれわれは当面の需要をどのようにこなしてまいるか、せっかくいま検討をいたしておるところでございます。  それから、第二の住宅政策につきまして、本年度内に住宅金融公庫の申し込みを受けることを再開する用意はあるかという御質問でございました。  倉成さんも御承知のように、これまで政府は、たいへんこの住宅政策は勉強してまいったつもりでございます。すなわち、住宅公庫の貸し付け規模も、去年に比べまして六〇%もふやしてございまするし、戸数も増加いたしておるばかりでなく、民間の金融機関におきましても、私ども絶えずお願いをいたしまして、住宅ローンの消化を進めてきておるわけでございます。金融機関の貸し出し増加額に比べまして住宅ローンの占めるシェアは、月々これは上昇を見ておりますことは、たいへんけっこうなことと思っております。したがって、ただいまの段階で、ことしさらに住宅金融公庫の貸し付けにつきまして、申し込みを受けることを再開するつもりがあるかと問われるならば、私は消極的に答えざるを得ないのであります。しかしながら、もう間近に明年度の予算編成を控えておるわけでございまして、今明年を通じまして、わが国の住宅政策をどうすべきかという観点から、もう一度建設大臣とお話し合いを進めてみたいと考えております。  それから第三の問題は、社会的不公正の是正に関連いたしまして、インデクセーションについて考えてみるつもりはないかという御質問でございました。  なるほど、御指摘のインデクセーションという思想は、今日のインフレによる不公正を除去する機能は確かに果たすわけでございますけれども、しかし、これは本格的にインフレ抑制するとかいう作用は持たないばかりか、インフレを促進させる危険性があると思うのであります。したがって、この問題につきましては、私は、倉成さんのお話もありますが、政府として検討する必要はあろうと思いますけれども、いま直ちにこれを実行に移すというようなつもりはありません。  御指摘の年金につきましても、四十八年度、四十九年度を通じまして、拠出制の年金ばかりでなく、福祉年金につきましても、大幅な水準の改定あるいは物価スライド制の導入をいたしたところでございますので、ただいま政府といたしましては、こういうことを着実に予算化していくくふうをすべき段階じゃないかと思うのでございまして、全体として、賃金とか家賃とか、金融資産全体の処理に及ぶインデクセーションを考えるというところまで、私は時期はまだ熟していないと思います。御指摘の点は、今後検討をさしていただきたいと思います。(拍手)     —————————————
  12. 前尾繁三郎

    議長前尾繁三郎君) 田邊誠君。   〔議長退席、副議長着席〕   〔田邊誠君登壇〕
  13. 田邊誠

    ○田邊誠君 私は、日本社会党代表して、石橋書記長の総括的な質問に続き、三木新内閣の立ち向かうべき基本的施策について、総理及び関係閣僚に対し、具体的にただしてまいりたいと思います。(拍手)  二年四カ月前、内外の好意あるまなざしと、数多い賛辞の中で登場した田中内閣は、いまや国民のかってないほどの批判と、冷ややかな眼に見据えられながら退陣していったのであります。  しかし、この田中政権の瓦解は、一内閣の運命が断たれたというだけではないのであります。戦後、日本政治に君臨してきた保守政治への訣別を意味することを自民党の諸君は知らなければなりません。しかるに、国民意思とは相反し、野党第一党に政権を渡すべき憲政の常道を踏みにじって、相も変わらない密室取引の中から三木自民党総裁は誕生したのであります。自民党近代化、総裁公選を主張してきた三木自身が、皮肉にも最も非近代的手法をもって選ばれたところに、自民党のぬぐいがたい古い体質があるのであります。(拍手)  新たに政権の座についた三木総理が、まず最初に考えをめぐらすべきことは、歴代の自民党内閣、特に田中内閣が退陣せざるを得なかった原因と、その背景についてであります。そのいずれもが、大資本優遇の経済政策によって国民を犠牲にしてきた失政、国民を欺瞞し続けてきた核政策中心とする外交の蹉跌、そして田中前首相の資産問題を氷山の一角とする金権政治に対する国民の離反が、その中心であったことを思い知らなければなりません。したがって、新内閣は、過去の自民党政治への厳粛な反省と、その根本的是正なしには、国民の支持を得ることはとうていでき得ないのであります。  戦後いまだかってないほどの危機的様相を呈している今日の政局に、十字架を背負って登場したと言われた総理は、歴代内閣にあって常に枢要の地位にあった立場からも、過去の自民党政治に対する国民的な批判に対して、どのような認識をお持ちであるか、まずその所見を承っておきたいのであります。  以下、内政問題にしぼって、具体的に質問を展開してまいります。  現下最大国民的課題は、インフレ阻止、物価安定による国民生活の改善にあることは言うまでもありません。  今日の日本経済は、深刻な不況と進行度をゆるめない物価高の中で呻吟しています。今日まで政府は、物価高原因を、そのときそのときに応じて、過剰流動性に求めたり、石油値上げなどの対外要因によることを訴えたり、最近では労働者の賃金引き上げに責任を転嫁しようとしているのであります。  しかし、経済の危機は、このような個々の現象によって生じたものではもちろんありません。この狂乱インフレからスタグフレーションと進んできた危機的様相は、長期的要因の中で生まれたものであり、二十年に及ぶ自民党政府高度経済成長政策体系と、戦後急速に形成された巨大企業の活動とが相乗的働きを行なった結果が、狂騰インフレの現出となったことは明らかであります。海外要因がこれに拍車をかけたことも否定できませんが、その特徴的なものは、何といっても日本列島改造に象徴されるインフレ財政金融政策であり、為替政策、円切り上げ対策の失敗であり、そして独占のためのカルテルの温存であったことは明々白々たる事実であります。(拍手)  さらに、経済の好況期には引き締め政策をとるのは当然の経済原則であるにもかかわらず、政府は、大企業の要求に屈して、その時期に財政金融の拡大政策をとることによってインフレに拍車をかけ、これを増幅する結果となったことは、四十七年度、四十八年度の超大型の調整インフレ予算を見れば歴然としているではありませんか。このさか立ちした経済政策を行なってきた結果が、今日の狂騰インフレを決定的にしたことに対して、歴代自民党内閣に大きな責任が存在することの自覚に立つべきであると思うが、総理のお考えをお伺いしたいのであります。(拍手)  以上の前提に立つときに、不況の中の物価高という今日の異常な危機を打開する道は、経済体制の根本を転換させる以外にはないのであります。現在の総需要抑制策が大きな効果をあらわしていないのは、大企業の市場支配力と反社会的行動が変わっていないからではありませんか。すなわち、あの狂乱インフレをつくった産業構造そのものが不変であるというところに、その根本原因があることに目をおおうわけにはいかないのであります。  いまや、真にインフレ抑制し、物価を安定させるためには、現在まで築かれてきた大資本による経済支配秩序にメスを入れ、その寡占体制をやめさせる以外には達成できないのであります。現在行なっている引き締め政策では、来年三月までに、政府のいう物価を一五%以下に押えることは、とうていでき得ない相談であると思うが、政府に確信があるかどうか回答を承りたいのであります。  したがって、われわれは提言いたしたい。それは、政府の総需要抑制という量的政策から、いまこそ高度成長型の経済構造と、独占企業支配の経済体制を変える、質的政策転換すべきであるということであります。  提案の第一は、通貨の乱発を押え、資金を計画的に配分する措置を講ずるとともに、単なる競争原理だけでは物価を押えることは、とうていでき得ない現状から、大企業のかって気ままな経済支配を民主的にコントロールするため、重要産業への公的管理の強化を柱とした計画的経済の運営をはかることであります。すでに政府の諮問機関である産業構造審議会の最近における答申を見ても、「わが国産業構造の方向」は、政府が計画的に産業界を誘導する「計画的市場経済方式」をとるべきことを提唱しているのであります。総理も、自由経済を守るが、一定のルールは必要であると言っておるではありませんか。産業構造の転換と、国による経済の計画化は、避けて通ることのできない世界的潮流となっているのであります。私の考えに基本的に同意されるかどうか、総理の所見を承りたいのであります。  第二の提案は、今日の物価値上げの要因の根源をつき、これを是正するための独禁法の改正、土地の所有と利用の規制、生活の基礎的部分にかかわる産業の社会化、国有化、公共料金の据え置きという具体策についてであります。  その第一、独禁法の改正については、石橋書記長が質問いたしましたけれども、十分なお答えがありませんでした。私どもの主張の中で、一、企業分割規定の復活、二、原価公表、三、価格の原状回復命令、四、課徴金制度の導入、五、会社の株式保有制限というこの五項目は、最低実施しなければならない事項であると思います。  ところが、産業界の抵抗によって、政府内部にはすでに企業分割の復活は困難だ、原価公表は勇み足だという意見が出されておるのであります。今日の経済危機を考えるとき、寡占的市場構造そのものにメスを入れず、不当なカルテル行為への制裁規定の強化を取り入れないような独禁法改正は、まさに羊頭狗肉の欺瞞政策であるといわれてもいたしかたないのであります。国民の側に立ってインフレを克服するあかしとして、五項目実施のため蛮勇をふるうよう要求するものでありまするが、さらに明確な答弁を求めるものであります。(拍手)  その第二の具体策としての土地問題は、土地投機で取得した土地資産を、不況下にあっても手放さないで保有する大企業、大商社に対して、土地の売却をすすめ、これを公共団体が公的住宅用地等のために優先的に確保できるよう推進することを求めるものであります。  さらに、第三の具体的な提案である国民生活に直接かかわる産業の社会化については、医療制度の社会化、医薬制度の供給公営化、地方交通機関の公的管理、エネルギー産業の公有化など、実際的検討に入るべき時期に到達しているのではないかと考えるが、政府考え方をただしたいのであります。  第四の公共料金については、総理は、先ほどの質問に対しても、また記者会見においても、これを洗い直すが、上げないとは言えないとの消極的態度に終始しております。この際、国庫補助、利子補給、財政投融資を振り向けることにより、消費者物価が安定するまで当面一切の値上げをストップすること、たとえば物価が一〇%以下におさまるまでは、一切公共料金には手をつけないことを国民の前に約束すべきであると思うが、もう一度率直な御答弁をいただきます。(拍手)  私の第二の質問の柱としてお伺いしたいことは、インフレによって大きな犠牲を受けている国民への救済策についてであります。そしてこの施策は、当然インフレによる企業の利得は社会的に配分する、インフレによる国民の損失は社会的に補償する、こういう原則に立つべきであります。  総理所信表明でも、社会的公正の確保を掲げましたけれども、残念ながら何一つ具体的な中身が聞かれなかったことに、国民は大きな失望を感じているといわなければなりません。あなたの言う社会的不公平をなくすというのは、一体具体的に何をさすのか。  以下、私の福祉の充実と税制の改革中心とした質問に対して、国民の心に響く率直、具体的な答弁を求めてやみません。  まず第一は、社会福祉への国民的指標、ナショナルミニマムの確立であります。  総理所信表明で、三十年もつとめた人が退職後の生活設計が立たないという事態は、決して公正でないと言われました。ところが、今年の厚生白書によれば、六十五歳以上の老齢者に対する社会保障給付費はわずかに年十五万四千八百六十九円にすぎないのであり、まさに高度経済成長によって取り残された福祉水準、三流国の実態をあらわしておるのであります。もう何万円年金といった政府のお題目では、国民は幻想としてしか受け取らないのでありまして、何よりも優先した政策として、次の内容を盛った国民福祉の指標を定めた長期社会保障計画を確立することを強く要求するものであります。(拍手)  その一は、総理の言うように、老人が安心して老後を送ることのできるような社会を実現するために、生活できる年金支給を目ざし、賃金動向に比例して最低六割水準を確保することです。したがって、これに見合うスライドは、毎年度四月から実施することになります。  その二は、将来の年金制度の統合を展望しながら、各年金間の格差を年次計画で解消することです。  その三は、福祉年金は、先ほど大蔵大臣は、引き上げをしないと言っておりまするけれども、福祉年金自身を、生活保障としての性格を明確にしなければなりません。現在、不十分きわまる生活保護基準であっても、一人平均にすれば、実費を入れて二万六千円になるところから見ても、来年度の福祉年金は、三万円は当然支給さるべきであります。  その四は、生活できる年金制度にするため、インフレのときにこそ、急いで積み立て方式賦課方式に切りかえる必要があります。その財政計算の最終年次は、働いている人がお年寄りを養う負担割合が、現在の十分の一から五分の一になる二十五年後の紀元二〇〇〇年とし、そのための実施検討機関を直ちに設置することです。  このようなミニマムを設定するためには、もちろん財源確保に次の目標を設定し、これを実施する不退転の決意が必要であります。  一つには、国民所得に占める社会保障給付費の割合を、現在の六%から五年間で一五%に引き上げる目標を設定し、そのために、国の一般会計予算の中に占める社会保障の給付費を、三年間で四分の一にすること。二つには、財政投融資計画を全面的に洗い直し、四十九年度三兆円に及ぶ産業基盤整備は、今後増額について厳重にチェックし、年金資金は住宅、生活環境整備、厚生福祉施設以外には絶対に使用しないことを明確にする。三つには、国民の負担は、現在の保険料主義から税方式に改めることを検討するが、当面、使用者負担をふやし、労働者負担を軽減する措置をとるとともに、保険料率を累進的比率に改めることにより、所得再配分機能を強めていくこと。以上の給付と負担の具体的提案に対し、国民に向かって恥じない答弁を求めるものであります。(拍手)  医療の荒廃は、今日日をおおうものがあります。特に大都市の過密化、環境破壊と生活不安からくる有病率の増加は著しいものがあります。健康が破壊されている状況を、このまま放置するわけにはいきません。政治はこれに無関係ではないのであります。現在の出来高払い保険システム、医薬分業も進んでいない売薬医療制度のもたらした弊害は、諸外国にも類を見ない大きさになっているのであります。われわれが何回叫んでも、改革に手を染めようとしなかった医療保険制度を、厚生大臣の老人医療保険構想も含めて、あるべき姿への検討に着手し、診療報酬の中身も、この際医療担当者の技術料中心に再評価するとともに、四兆円をこすと思われる医療費の増大を防ぐためにも、薬の占める割合を、現在の四〇%から、五年計画をもって外国並みの二〇%に引き下げるよう改めるべきであります。さらに、医療制度の抜本改正に乗り出し、僻地をはじめ、何としても不足している医師、看護婦などの医療担当者の充足の手だてをはかると同時に、公的医療機関を中心とした供給体制の整備のための長期計画を策定することを要求するものであります。  社会福祉問題として、現在緊急に対処が要請されているものに、障害対策があります。  総理、あなたは、先日の記者会見の際、重度身障者の一人である宮尾さんの投書に感銘されたと言われました。今日、障害児施設は崩壊の寸前にあります。腰痛症に悩みながら犠牲覚悟で、動く障害児のために働いている人たちも、もう限界に来ているといえましょう。どのようにしてこの施設を立ち直らすことができるのでありましょうか。これと同時に、施設、病院に入れないでいる家庭の障害者に対する看護は、家ぐるみの犠牲において行なわれております。障害福祉年金の引き上げ、家族介護手当の創設を認めるとともに、長期慢性内部疾患も障害者福祉の対象とするなど、これら不幸な人たちは、社会と国全体で解決する方策を講ずることを強く要請するものであります。(拍手)  総理、この壇上から、この障害者の人たちにあなたの考えを語っていただきたいのであります。厚生大臣からも、具体的な答弁を求めます。  自動車排ガス規制に対する答弁には、全く失望いたしました。業界の圧力に押され、非科学的に出された公害審の意見と大気汚染に悩む国民の声と、一体どちらを大切にするのか、国民の声を聞くと言われた総理の決断を再度要求いたします。(拍手)  インフレ救済策としての第二の質問は、公正な税制改革についてであります。  その改革の第一は、インフレ下にあって実質的増税に泣く国民に対して、負担軽減のための大幅減税を断行することです。総理府家計調査報告によれば、税金等を差し引いた勤労者世帯の九月の所得は、前年比二三・七%増となっていますが、消費者物価が二三・八%上がったため、実質〇・一%減少となっているのであり、台所は昨年よりも苦しさを増しているのであります。勤労者、低所得の方々を中心に、一律三万円の税額控除による所得税減税を年度内に断行すべきであります。所要額六千八百億円は、税の自然増収で十分まかなえるものであります。さらに、来年度は同じ税額控除方式による四人家族年収二百八十万円まで無税となるよう、減税措置をとる計画を立てる考えがあるかどうか、お伺いいたしておきたいのであります。  税制改革第二の課題は、進行するインフレを前にして税制をインフレ抑制に役立てるよう改めていくために、土地や株や利子所得の税金が極端に安く、法人税も同様、金持ちほど税率が低くなるという逆累進の仕組みをやめることであります。これこそ社会的不公平是正の重要な柱ではありませんか。  そのため、一つには資産所得優遇の措置を大胆に廃止すべきであります。すなわち、利子、配当所得分離課税は優遇措置を廃止し総合課税とする、土地譲渡所得の低率分離課税は、特別措置の期限である五十年末で廃止に踏み切ること、さらに、大法人に軽度の累進税率を採用し、交際費に対する課税強化、政治献金課税とあわせて、もうけたところから多く取り、もうけの少ないところには低くするように法人税制を改めるよう要求するものであります。  さらに二つには、土地の高騰が資産と所得の激しい不公平を生み、大商社や資産所得者に大きな不労所得を与え、これがインフレ原因となってきたことを考えるとき、土地の値上がり利益を吸収することが重要であります。東京証券取引所一部上場会社の所有地だけで、土地の含み資産は六十八兆から七十二兆であるといわれております。全国では五百兆にものぼると推計されるのであります。これらの含み資産を再評価し、課税を行なうことにより、不公平是正の第一歩としてもらいたいのであります。(拍手)この際、石橋書記長の提言した大規模資産に対する一%から三%程度富裕税創設とあわせて、ゆがみを断ち切る政府対策をお聞かせいただきたいのであります。  石橋質問で指摘いたしました農業問題について、正確な応答がありませんでした。曲がりかどに立ったこの課題について、もう一度ただしておかなければなりません。  歴代の自民党政府は、土地と水と人間を農村から奪い取ることによって日本農業を破壊し、酪農、果樹を奨励しながら価格政策を怠り、農業再生産への道を全く閉ざしてしまったのであります。日本の穀物自給率四三%は、イギリスの六五%、西ドイツの八三%に比べても、まさに累卵の危うきにあるといえます。安保条約でアメリカの核のかさに閉じ込められ、石油戦略で中東の動向に左右され、そしていま食糧政策で外国に生殺与奪の権を与えてしまって、何で日本国民の生存権、日本の安全保障が保たれるといえるでありましょうか。(拍手)  食糧の自給度を、石橋質問にあるとおり、昭和三十五年の八三%まで回復することは可能であります。そのためには、新内閣は、田中内閣による無謀な三十万ヘクタールの農地転換計画を直ちに撤回すべきであります。また、国の投資による農業基盤整備、主要食糧の管理制度の確立、特に畜産物、飼料穀物の価格補償政策による計画的な増産体制の促進により、国民経済中心に自立できる農業を据えることこそが、独立国として最低の国是であると信じまするけれども、その計画を明らかにしていただきたいのであります。(拍手)  今日、不況は全産業に及んでおります。中小企業は引き締め圧力が直接転嫁されており、年末には史上最高の倒産になると憂慮されております。社会的不公平をなくす公約を掲げた新内閣が、企業間の不公平を解消するためにも、中小企業の産業分野最大限確保し、下請代金支払い促進の措置を講ずるとともに、担保力のない零細企業が金を借りられないという現実に即して、思い切った長期、低利の融資を行ない、自治体の小口融資に対しても、国の資金を投入することを考えるべきであると思うがどうか。また、その実をあげるため、長い懸案である中小企業省設置に踏み切る用意があるかどうかも、あわせてお伺いいたします。(拍手)  さらに、インフレ不況の中で、生活難と雇用不安にあえいでいる労働者に対する救済策についてお伺いいたします。  来年三月には失業者は百万人に達するといわれている状況にあります。賃金の遅欠配、解雇、特に臨時工、パートタイマーの切り捨てが行なわれ、雇用労働者の最も弱い層にすでにしわ寄せがあらわれているのであります。このような不安定な労働者の雇用を保障し、安易な首切りを防止するため、いかなる対策を講じようとしておられるのか。また、たとえ操短、休業になっても、一〇〇%の賃金保障が可能な公的制度の確立について政府対策があるのかどうか、さらに、当面する雇用不安と失業の増大に対処するための緊急立法を行なう考えがあるかどうか、政府の対応策をお伺いするものであります。(拍手)  また、中小零細企業の低賃金労働者インフレの魔手から救う道は、全国全産業一律最低賃金制の確立以外にはありません。労使対等の立場で構成される賃金委員会によって賃金を決定するというこの方式を取り入れるよう、政府の所見をこの際承っておきたいのであります。  インフレを回避するためと称して賃金抑制の動きがあります。日経連の賃上げを一五%以下に押えたいというガイドポストを設定したことによって、政府は賃金抑制のムードづくりに懸命になっているのであります。しかし、賃金以外の要因に触れない所得政策は、労働者の犠牲で短期間の冷却をねらうにすぎないのであって、アメリカ、イギリスの例を見るまでもなく、賃金を自粛しても物価が下がる保証はないのであり、当面を糊塗する所得政策は断じてとるべきでないと思うが、この際政府考え方をただすものであります。  最後にお伺いいたします。民主政治のとりでである地方自治体は財政的に大きな危機にあります。財源を強化するため、基本的には税配分を国から地方に重点を置きかえるとともに、病院、学校、保育所等の社会福祉施設などへの国の補助単価を実態に見合うものに改め、三カ年のうちに超過負担を完全に解消する方策を打ち立てなければなりません。さらに地方交付税の引き上げ、事務所事業所税の新設など、財源を豊かにすることにつとめ、住民要求がほんとうに聞き届けられるような、生き生きとした自治体に衣がえをするよう最大限の努力をすべきでありますが、政府の計画について承りたいのであります。(拍手)  以上、私はあげ足をとるような追及は一切やめて、具体的政策の提案を中心質問をしてまいりました。  総理、あなたはかつて演説を通して、大衆の心をゆり動かす魅力ある政治をつくると語ったことがあります。しかし今日、にじのような美しいことばだけでは、国民の同意を求めることは断じてできません。国民政治に対する信頼を回復するためには、具体的実践こそが求められていることに思いをいたし、答弁も抽象的美辞麗句でなく、できるものはできる、できないものできないというはっきりした回答であることを求めて、私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣三木武夫君登壇〕
  14. 三木武夫

    ○内閣総理大臣三木武夫君) 田邊君の御質問、非常に広範な点にわたっておりますので、もし私が漏れるようなところがあれば、各担当大臣から補足いたす点もあると思います。  第一点には、田中内閣の退陣についていろいろお話がございましたが、結局は、人心の動向というものがやはり田中内閣から離反したということは事実でございます。私も自民党の党員、ことに田中内閣の閣僚であったわけでございますから、責任を痛感しておる一人であります。そういう点で、今後自民党が、党の体質の改善、近代化等を行なって国民政党に脱皮せなければならぬ、そういう党の改革に専念をしたいということで、私も最近はやっておったわけでございます。こういうことについては、一応私の成案も得ておるので、自民党にこれを提案して検討をしてもらいたいと願っております。  また、今日の経済危機というものに対して、高度経済成長が大企業の利潤追求ばかりであったというような、これに対する評価というものは非常にきびしいわけであります。むろん私も、たとえば昭和四十六年、三百六十円の円レートを堅持するために無理をした、昭和四十七年に過剰流動性に対する対策を怠った、また、予算規模、補正予算規模を含めて大き過ぎた、こういうことは、その当時は一生懸命に考えてやったことでありますが、あとから考えてみれば、これは反省をしなければならぬ点があることを率直に認めます。  しかし、高度経済成長によって国民の生活水準は高まって、あるいは、一方においては、戦後、働く機会も若い人たちにはなかったわけですが、国民の雇用の機会も増大し、国民の所得、生活水準も上がってきた、こういう点の、高度経済成長日本国民生活あるいは日本経済力という点にもたらした貢献ということも、これは無視することができないと思うわけでございます。ただ、速度があまりに速過ぎた、これをこれからは世界並みな速度に落としていこうということでございます。しかし、十分な反省も当然に行なわれなければならぬ。  また、インフレ克服の道は産業構造そのものの質的転換を必要とするのではないか、私もさように考えておるわけです。それは、いままでの日本の重化学工業というものを中心として、エネルギーを非常に使う消費型の産業構造でありますから、資源とかエネルギー価格が高騰すれば、影響を非常に強く受ける結果になったことは事実であります。これからの資源というものについては、資源エネルギーにしても、そういう資源保有国が、非常に有限な資源を細く、長く使おうという意識が共通のものになってきている。資源とかエネルギーというものが安く手に入る時代は過ぎたということであります。どうしてもこれは、資源エネルギー等は相当な高い水準が続くものと見るほうが安全である。  そういうことになってくると、どうしても、こんなに日本のようなエネルギーの消費というものが非常に多いという産業構造というものは、今後転換をはかっていくことが必要である。これはすぐにはできませんから、計画的にそういう転換をはかるべきであるというお説には、私も賛成でございます。  また、どうも田邊さんのお考えと、私の考えとの違いは、田邊さんは計画経済経済は社会化、国有化していけ、こういう立場日本の産業構造をお考えになっておるわけですが、どうも日本の国情からして、そういう社会化、国有化ということで統制経済的な方向にまいります。どうしてもそうなります。そういう形になることは、どうも官僚的な経営におちいって非能率にもなるし、何か人間の経済のバイタリティーを失わしめる。むしろ独禁法のようなルールをつくった中の自由経済体制が日本の体制に合っている。だから、田邊君のお考えになっているような産業の国有化を進めていこうという考えはないわけでございます。いわゆる社会的ないろんな制約のもとにある自由経済体制を維持していこうというのが、政府考え方でございますから、この点は、遺憾ながら考え方が平行線であることは、これはやむを得ないわけで、根本の考え方の違いがある。  また、独禁法について五つの項目をいろいろお並べになって、これはぜひ実行するようにという御意見でありました。それはよく拝聴はいたしておきますが、とにかく独禁法というものは、各方面の人たちの——明日の閣議で懇談会というものを置くと申したのですが、みながやはりいろんな角度から独禁法の改正というものに対しての内容を検討してもらって、みなが衆知を集めて、それが国民的支持のもとに、自由経済体制の新しいルールとして、国民的支持のもとに有効に働くような独禁法の改正をやりたいと思いますから、いま五項目おあげになりましたが、その五項目というものを、この場合に、それを今度の改正に盛り込むというお約束はできないわけでございます。もう少しいろんな角度から、各方面の意見を徴して政府の原案をつくりたいという考えでございます。  また、土地の所有と利用についていろいろ規制を強めるべきだという御意見の開陳がありましたが、明日の閣議で、国土利用計画法というものが施行されることになるわけであります。私は、この国土利用計画法というものが的確な施行をされれば、土地の取引や開発行為の規制というものの強化に非常に役立つと思うのでございます。そういう点から、この法というものを活用して、そして国民の諸活動の基盤である土地について、公共の福祉優先という見地に立って土地利用計画が行なわれるように進めてまいりたいという所存でございます。  それから、公共料金のお話でございましたが、この公共料金というものは、物価問題というものが当面の最重要課題でありますから、この際は、公共料金というものは上げたくないということがわれわれの本音であります。これは全部上げないというようなことでなるべくいきたいとは思っておりますが、しかし、これは財政上のいろんな支出もふえるわけでありますから、いろんな政策を進めてまいるについて、福祉政策だけ積極的に進めていけといっても、その財源の裏づけがなければ実際はできないわけでありますから、こういう点から考えまして、この点は極力抑制するという方針のもとに、経済対策閣僚会議において検討したいということで、この場合の御答弁といたしたいのでございます。  それから、これからの福祉政策というものの重点として考えておりますのは、社会的不公正にも関連するわけですが、生活保護世帯、とにかくこの恵まれない環境に置かれておる人々の状態、これがやはり一番インフレの影響というものをもろに受けるわけでありますから、生活保護基準の引き上げ、社会福祉の処遇費の改善、児童扶養手当の引き上げ等、物価の諸情勢等もにらみ合わせて、十分に今後こういうふうな福祉政策というものに対して充実していくような方向で考えてまいりたいと思うわけでございます。  また、年金に対して、賦課方式を採用せよというお話でございますが、私は、これはやはりこれからの大きな問題点の一つだと思います。したがって、そういうことも頭に入れながら、日本年金制度というものは、ここでやはり十分に検討する必要な時期に来ておる、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから、食糧の問題のお話がございましたけれども、これは先ほどもお答え申したように、いまの食糧自給率は、これは引き上げる必要がある。こういういまの状態は、いろいろな条件はあるにしても、困難な条件はあるにしても、非常に低い水準でありますから、食糧自給率を高めるために、農業生産の基盤整備であるとか価格対策も必要でしょう。技術経営対策とか、総合的に食糧の自給度を高めていく、思い切って高めていくというような見地に立って、日本農業政策というものを、農林大臣を中心にして見直してもらいたいと考えておるわけでございます。  中小企業省のお話がありました。何か中小企業の施策の拡充強化についてのお話も触れられたと思いますが、これはやはり、中小企業の問題というものは、この中小企業というものが近代化されなければ、日本の近代化というものは完成をしないわけで、日本の産業政策の中で重要な位置を占めるわけでございます。  中小企業省をつくれという声が強いわけでございますが、機構ばかりをつくっても屋上屋になる場合もありますから、機構よりも、中小企業というものを、困れば救済するというのではなくして、中小企業が長期的に安定して経営していけるような中小企業対策というものを、今後講じてまいることに対して特に力を入れたい、産業政策の中では特に力を入れたいと思っておる次第でございます。  税制改正については、税制調査会の意見も聞いて、来年度の予算の財源の事情も勘案して、これは十分いま検討をしておる段階でございます。  それから所得政策は、現在の段階で私も、先般、昨年の五月、イギリスに呼ばれてウィルソン首相とも話をしたのですが、イギリスのような国でも所得政策は失敗であったということで、何か法的な規制によって所得政策を行なうということに非常に無理があると言う。ましてや、日本はそういう政策になじんでもおりませんし、いま所得政策を行なう意思のないことを明らかにいたしておきます。(拍手)   〔国務大臣大平正芳君登壇〕
  15. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 第一の御質問は、土地の売却を促進して、公的資金でそれを買い上げるつもりはないかということでございますが、結論として、そういう考えはございません。いま土地の値段は、幸いにいたしまして落ちついてまいりましたが、公的資金を買い入れ資金として放出することはインフレを促進するおそれがございますので、そういうことはいま考えておりません。  それから第二の御質問は、財政投融資を産業基盤の充実から福祉生活環境の整備のほうに回すべきであるという御意見でございます。現に、田邊さんのおっしゃるような方向に財投は逐年シフトされつつあるわけでございます。しかし、産業基盤と申しましても、エネルギーでございますとか、公害投資でございますとか、ゆるがせにできない投資もございますことは御理解をいただきたいと思うのであります。  第三の御質問、税制改正でございます。いま総理から言われましたように、政府並びに与党の税制調査会でいま御審議を願っておる最中でございまして、具体的なことを申し上げられる段階ではございませんが、第一の所得税の課税最低限の引き上げにつきましては、すでにことし実行いたしました大幅の減税によりまして、世界最高の水準に達しておりますことは、たいへんしあわせなことであると思います。これをさらに引き上げるべきかどうかということにつきましては、私といたしましては消極的に考えておりますけれども、税制調査会の調査の結論を待ちたいと考えております。  第二の特別措置の整理でございますが、御指摘のように、利子、配当課税、その他若干の特別措置の期限が参っておるわけでございまして、いま税制調査会に御審議をいただいておりますけれども、私といたしましては、前向きな御答申が得られることを期待いたしておるわけでございます。  法人に対する累進課税をとるべきでないかという御意見でございますけれども、累進税率というのは、そもそも自然人に最終的に所得が帰属する場合のことを考えての制度でございまして、法人にはなじまない制度ではないかと考えておりまして、いまそういう考えはございません。  資産所得に対する課税を考えろということでございます。これは非常にむずかしい税制上の問題でございまして、いま直ちにこれを実行するつもりはございませんけれども、仰せのような問題につきまして検討は進めてみたいと思いますけれども、これは思想上の問題ばかりでなく、技術上たいへんむずかしい課題であることを申し添えさせていただきたいと思います。  最後に、地方財政の問題でございます。この点につきましては、今日まで自治省と相はかりまして、地方行財政の充実、その水準の向上には鋭意つとめてまいったわけでございますが、これからもそういう方向で鋭意努力してまいることだけを申し添えて、御答弁といたしたいと思います。(拍手)   〔国務大臣田中正巳君登壇〕
  16. 田中正巳

    国務大臣(田中正巳君) 田邊さんにお答え申し上げます。  田邊さんは厚生行政についてたいへん御造詣が深く、したがいまして、ただいまの御質問もきわめて具体的であり、また広範多岐にわたっておりますが、できるだけ要約して御答弁いたしたいと思います。  第一に年金の問題でございますが、これにも幾つかの内容の御質問があったようでございます。  第一に、賃金の六〇%を確保せよという御主張でございますが、老齢年金におきましては、昨年の制度改正により、大体標準的水準を本人の平均賃金の六〇%とすることにいたしましたけれども、なお平均賃金の計算のしかた、スライドの具体的な手法等について、いろいろ検討すべきものがあると存じておりますが、とりあえず、本来五年ごとの財政再計算による制度の見直し、つまり、これは五十二年になるのですが、これを一年繰り上げまして五十一年度にこれを実施し、相当思い切った改革を実施いたすべく、今日せっかく努力中でございます。  第二は、スライドの時期を四月に実施せよという御要望でございますが、昭和四十九年度には、スライドの実施時期については特例措置として、厚生年金では十一月を八月に、国民年金では来年の一月を本年九月にそれぞれ繰り上げたところでございます。  明年度の予算においてこれをどうするかということになりますが、ただいまの予算要求は従来の時期に戻しておるわけでございますが、こういう時期でもございますので、できるだけ早い時期にスライドを実行いたしたいと思って、目下関係省庁の間で協議をいたしております。しかし、技術的な問題、財政上の問題もあり、田邊さんのおっしゃる四月実施というのは、私はむずかしかろうと思います。できないことはできないとはっきり言えと言いますから、はっきりお答えをいたしておきます。(拍手)  次に、年金賦課方式をとれということでございますが、これについては、先ごろ総理からも御答弁がありましたが、わが国の年金の財政方式については、種々再考いたすべきところがあるものと私も思っております。しかし、わが国人口の老齢化、年金の成熟化が急速に進むことを踏まえまして、健全かつ合理的な制度でなければならないことは論をまたないわけであります。そのためには、綿密な数理計算をいたしていかなければならないと思っておりまして、政府としては、このような観点から、いま直ちに不用意かつ拙速に賦課方式に切りかえることは穏当でないと思っておりますが、今後における財政方式としては、私は賦課方式というのは十分に検討に値する財政方式だと思っておりますので、この点については、そのような点について、いろいろと前向きで検討いたしていきたいというふうに思っております。  福祉年金を三万円支給せよということでございますが、どうも福祉年金というのは、昭和三十六年に国民年金法ができたときに、いわゆる経過的、補完的年金と称して、当時すでにもう相当の年になっておりまして、拠出制年金にお入りになれない方に何も差し上げないのはいかがかと思いまして、月千円差し上げたわけでございまして、当時でも、あれで食べていかれるとは思っておらなかったわけであります。しかも、相当、あれはあれなりに喜ばれたものでございます。しかし、今日では、福祉年金で食べていけないというような御批判や御不満がありますので、率直にいうて、福祉年金というものに対する国民考え方というものが微妙に変わりつつあるということ、厚生省当局並びに政府はこれを踏まえて、再検討しなければならないということをしんから私は考えております。  福祉年金は、しかし一般会計によって支弁されておりますので、しかも数が多いものですから、相当の財政負担を要することは、田邊さん御案内のとおりであります。大体、百円上げるのに年間六十億の金がかかるわけでございますから、したがって、三万円と申しますると、相当の金がこれ以上かかることについて、皆さんはお考えになっていただけると思います。  そこで、今後は、福祉年金について、このように金額を上げなければならないということになってまいりますると、一般会計にだけ依存する福祉年金のやり方というものは限度があるということも考えられますので、先ごろ申した財政方式を含めまして根本的な改革をいたさなければ、御高承のような福祉年金の金額の支給というのは、私は簡単にできるものではないと思います。さっき申し上げました年金の財政方式の、いわゆる再検討と時を同じゅうして、その方向にどうやったら近づけることができるかということについて、考えていきたいと思っております。  医療保険制度の抜本的改正についていろいろお話がございましたが、医療保険制度の抜本策といろいろ人がおっしゃますが、このことばにはそれぞれの人々によってそれぞれ内容や範囲がまちまちでありますが、政府は昨年の健康保険法の改正で、給付内容の改善及び国庫補助の制度的導入をいたしましたが、今臨時国会におきましても、日雇健康保険法の改正をぜひ御審議願い、成立さしていただきたいというふうに思っております。  なお、抜本的改正には、給付の内容の充実と薬剤、薬を含めて給付の態様、パターンの合理化、制度の立て方の問題、財政の健全化等種々の問題があり、今後とも総合的見地から逐次改革につとめていくつもりであります。  次に、医療制度の問題も未解決のものが多く、改善を急がなければなりませんが、明年はとりあえず、医療の機会を国民ができるだけ公平に受けることのできるよう、僻地医療対策中心に医師、看護婦等の養成確保につとめることになっております。  なお、病院と診療所の機能の調整につきましては、ぜひ前向きでこれを実行していくように考えておりまして、いろいろと努力中でございます。  身体障害者の問題につきましては、先ごろ来いろいろお話がございました。身体障害者の施設の整備、在宅者に対する保護、いろいろございますが、施設等については逐次増設をしてまいったところでございます。在宅者についてもいろいろと手厚い、血の通った施策をとらなければなりませんが、特に、この種の人たちが家庭におられる場合に、家庭の人々の非常な肉体的、精神的苦悩は、これは思い半ばに過ぎるものがあると思いますので、何とかしてこれを取り進めていきたいと思っております。特に、いわゆる介護手当という制度の実施でございますが、これにつきましては、支給の対象者の範囲をどの程度にするか、寝たきり老人まで含めるかどうか、あるいは金額をどうするのか、いろいろ考えてみるとむずかしい問題が多々あり一また、ちょっと計算しても相当の財政負担を必要とすることもありますので、今後ひとつこの問題についても、十分に検討をいたしたいというふうに思っております。  以上、お答え申し上げます。(拍手)   〔国務大臣長谷川峻君登壇〕
  17. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) お答えいたします。  最近の経済情勢の中に、一番弱いパートタイマーあるいは日雇い、臨時労働者、こういう雇用情勢の不安の方々に対しましては、その事業主に対してかねてから指導を行なって、常用化の援護措置等、実施を推奨しておりますが、いまから先もなおこの制度を推進してまいりたいと思います。  さらに、雇用不安と失業増の解消のために緊急立法をすべきじゃないかという御質問がありましたが、おっしゃるとおり、景気の停滞に伴いまして、有効求人倍率は十月から求職者が超過に転じまして、失業も増勢を強めているところであります。  こういう情勢に対しまして、政府といたしましては、失業保険法あるいは雇用対策法等に基づいて各種の援助措置を講じておりまして、失業者の生活の安定と再就職の促進に全力を注いでいるところでありますが、しかし一方、経済的理由から休業手当を必要としている、そういうところに対しては、この国会で実は雇用保険法案を提案しております。これなどが御審議をいただき、可決されましたならば、非常に雇用対策の万全を期せられるもの、こう考えているところであります。  それから、全国全産業一律最低賃金制についての御質問がありましたが、これは田邊先生よく御存じのとおり、最低賃金は昭和四十五年に中央最低賃金審議会から提出された答申を踏まえまして、労働市場の実態に応じ産業別、地域別に設定されまして、現在ほとんどの労働者にその適用が及んでいるところであります。しかし、そのあとといえども、現下の物価、賃金の動向を考慮して、その改定をすみやかに進めているところであります。同答申において、全国全産業一律最低賃金制につきましては、なお地域間、産業間等の賃金格差がかなり大きく存在しているという事実を確認せざるを得ず、現状では実効性を期待し得ないとしております。これに対する御要望もありますので、労働省としては検討を進めているところであります。  この問題は制度の基本にかかわる問題でありますので、慎重に検討が必要であると思っております。  なお、賃金についてのお話がありましたが、賃金は労使が自主的にきめるべきものでありまして、政府としては、労使自治の原則に介入する考えはありません。しかしながら、先ほどからお話のありましたように、きびしい日本経済現状にかんがみまして、労使が真に国民経済的視野に立って、良識をもって行動することを心から期待しているものであります。総理の御答弁がありましたように、その観点から、いわゆる所得政策を行なう考えは持っていないことを御答弁しておきます。(拍手)      ————◇—————
  18. 森喜朗

    ○森喜朗君 国務大臣演説に対する残余の質疑は延期し、明十七日午後二時より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
  19. 秋田大助

    ○副議長(秋田大助君) 森喜朗君の動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 秋田大助

    ○副議長(秋田大助君) 御異議なしと認めます。よって、動議のごとく決しました。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時二十七分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  三木 武夫君         法 務 大 臣 稻葉  修君         外 務 大 臣 宮澤 喜一君         大 蔵 大 臣 大平 正芳君         文 部 大 臣 永井 道雄君         厚 生 大 臣 田中 正巳君         農 林 大 臣 安倍晋太郎君         通商産業大臣  河本 敏夫君         運 輸 大 臣 木村 睦男君         郵 政 大 臣 村上  勇君         労 働 大 臣 長谷川 峻君         建 設 大 臣 仮谷 忠男君         自 治 大 臣 福田  一君         国 務 大 臣 井出一太郎君         国 務 大 臣 植木 光教君         国 務 大 臣 小沢 辰男君         国 務 大 臣 金丸  信君         国 務 大 臣 佐々木義武君         国 務 大 臣 坂田 道太君         国 務 大 臣 福田 赳夫君         国 務 大 臣 松澤 雄藏君  出席政府委員         内閣法制局長官 吉國 一郎君         外務省条約局長 松永 信雄君      ————◇—————