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1974-12-24 第74回国会 衆議院 農林水産委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和四十九年十二月九日)(月曜 日)(午前零時現在)における本委員は、次の通 りである。    委員長 仮谷 忠男君    理事 笠岡  喬君 理事 坂村 吉正君    理事 湊  徹郎君 理事 柴田 健治君    理事 芳賀  貢君 理事 津川 武一君       愛野興一郎君    伊東 正義君       今井  勇君    上田 茂行君       内田 常雄君    小沢 一郎君       金子 岩三君    吉川 久衛君       熊谷 義雄君    小山 長規君       佐々木義武君    島田 安夫君       白浜 仁吉君    染谷  誠君       中尾 栄一君    中川 一郎君       本名  武君    粟山 ひで君       渡辺美智雄君    井上  泉君       角屋堅次郎君    島田 琢郎君       竹内  猛君    野坂 浩賢君       馬場  昇君    美濃 政市君      米内山義一郎君    諫山  博君       中川利三郎君    瀬野栄次郎君       林  孝矩君    稲富 稜人君       神田 大作君     ――――――――――――― 十二月九日  仮谷忠男君が委員長辞任した。 同月十四日  澁谷直藏君が議院において、委員長補欠選任  された。 ――――――――――――――――――――― 昭和四十九年十二月二十四日(火曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 澁谷 直藏君    理事 笠岡  喬君 理事 坂村 吉正君    理事 中川 一郎君 理事 渡辺美智雄君    理事 柴田 健治君 理事 芳賀  貢君    理事 津川 武一君       愛野興一郎君    伊東 正義君       今井  勇君    上田 茂行君       金子 岩三君    吉川 久衛君       熊谷 義雄君    倉成  正君       佐々木秀世君    島田 安夫君       染谷  誠君    丹羽 兵助君       本名  武君    井上  泉君       角屋堅次郎君    島田 琢郎君       竹内  猛君    野坂 浩賢君       馬場  昇君    美濃 政市君       諫山  博君    中川利三郎君       山原健二郎君    瀬野栄次郎君       林  孝矩君    稲富 稜人君       小沢 貞孝君  出席国務大臣         農 林 大 臣 安倍晋太郎君  出席政府委員         農林政務次官  江藤 隆美君        農林大臣官房長 大河原太一郎君         農林省農林経済         局長      岡安  誠君         農林省構造改善         局長      大山 一生君         農林省農蚕園芸         局長      松元 威雄君         農林省畜産局長 澤邊  守君         食糧庁長官   三善 信二君         林野庁長官   松形 祐堯君         水産庁長官   内村 良英君         消防庁次長   森岡  敞君  委員外出席者         環境庁自然保護         局鳥獣保護課長 相馬 昭男君         環境庁水質保全         局企画課調査官 小川 洋二君         大蔵省主税局税         制第一課長   福田 幸弘君         国税庁直税部所         得税課長    田口 和巳君         農林大臣官房審         議官      二瓶  博君         農林大臣官房審         議官      高須 儼明君         農林省構造改善         局農政部構造改         善事業課長   関口  尚君         資源エネルギー         庁石油部計画課         長       小津 修二君         海上保安庁警備         救難部長    山本 了三君         自治省行政局振         興課長     竹村  晟君         農林水産委員会         調査室長    尾崎  毅君     ――――――――――――― 委員異動 十二月九日  辞任         補欠選任   小沢 一郎君     宇野 宗佑君   金子 岩三君     山崎平八郎君   仮谷 忠男君     倉成  正君   佐々木義武君     丹羽 兵助君 同月十二日  辞任         補欠選任   山崎平八郎君     金子 岩三君 同月十三日  辞任         補欠選任   宇野 宗佑君     澁谷 直藏君 同月十四日  辞任         補欠選任   内田 常雄君     佐々木秀世君 同月二十四日  辞任         補欠選任   中川利三郎君     山原健二郎君   神田 大作君     小沢 貞孝君 同日  辞任         補欠選任   山原健二郎君     中川利三郎君   小沢 貞孝君     神田 大作君 同日  理事安田貴六君及び山崎平八郎君十一月十五日  委員辞任につき、その補欠として渡辺美智雄君  及び中川一郎君が理事に当選した。     ――――――――――――― 十二月九日  国が行なう民有林野の分収造林に関する特別措  置法案(芳賀貢君外十名提出、第七十一回国会  衆法第一七号)  農業振興地域整備に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出、第七十二回国会閣法第  八四号) 同月十六日  養殖わかめ危機対策に関する請願津川武一君  紹介)(第八四号) 同月十八日  漁業危機に伴う緊急救済措置等に関する請願外  十五件(坪川信三紹介)(第六五五号)  同外二十四件(木部佳昭紹介)(第七六六  号)  水産物価格安定政策早期確立に関する請願  (鈴木善幸紹介)(第六五六号)  韓国わかめ等輸入抑制に関する請願鈴木  善幸紹介)(第六五七号)  畜産農家経営安定に関する請願鈴木善幸君  紹介)(第六五八号)  農、漁家負債整理に関する請願鈴木善幸君  紹介)(第六五九号)  沿岸漁業振興に関する請願鈴木善幸紹介)  (第六六〇号)  圃場整備事業における通年施行奨励補助金増額  に関する請願鈴木善幸紹介)(第六六一  号)  農林漁業等融資金利引上げ案撤回に関する請  願(鈴木善幸紹介)(第六六二号)  農業近代化資金融資わく増額等に関する請願  (鈴木善幸紹介)(第六六三号)  農林年金制度改善措置に関する請願愛野興  一郎紹介)(第七六五号) 同月十九日  農林年金給付算定に関する請願柴田健治君  紹介)(第一二八五号)  農畜産物価格安定等に関する請願山口鶴男  君紹介)(第一二八六号)  養蚕農家危機打開に関する請願山口鶴男君  紹介)(第一二八七号) 同月二十日  外国生糸輸入規制及び中間買数量限度  拡大に関する請願小沢貞孝紹介)(第一四  八三号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第一四八四号)  同(羽田孜紹介)(第一四八五号)  同(吉川久衛紹介)(第一九〇一号)  同(小坂善太郎紹介)(第一九〇二号)  牛肉価格安定対策に関する請願小沢貞孝君  紹介)(第一四八六号)  同(唐沢俊二郎紹介)(第一四八七号)  同(羽田孜紹介)(第一四八八号)  同(吉川久衛紹介)(第一九〇三号)  同(小坂善太郎紹介)(第一九〇四号)  飼料安定供給に関する請願北澤直吉君紹  介)(第一四九二号)  みかん農業危機打開に関する請願關谷勝利  君紹介)(第一八九八号)  畜産経営危機打開に関する請願關谷勝利君  紹介)(第一八九九号)  漁港整備促進等に関する請願熊谷義雄君紹  介)(第一九〇〇号) 同月二十一日  牛肉価格安定対策に関する請願中澤茂一君  紹介)(第二四二七号)  同(中村茂紹介)(第二四二八号)  外国生糸輸入規制及び中間買数量限度  拡大に関する請願中澤茂一紹介)(第二四  二九号)  同(中村茂紹介)(第二四三〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十二月十六日  食糧自給政策に関する陳情書外十六件  (第六七号)  昭和五十年度農業委員会関係費増額等に関する  陳情書  (第六八号)  休耕田復旧のための財政援助等に関する陳情書  外一件(第  六九号)  農用地確保等に関する陳情書  (第七〇号)  農業基盤整備事業費国庫負担率引上げ等に関  する陳情書  (第七一号)  積寒地帯土地改良事業に伴う稲作転換に関す  る陳情書  (第七二号)  畜産経営緊急安定対策強化に関する陳情書外七  件(第  七三号)  蚕糸業危機打開に関する陳情書  (第七四号)  野菜価格安定対策拡充強化に関する陳情書外  一件  (第七五号)  農畜産物価格安定対策確立に関する陳情書  (第七六号)  みかん産業振興対策に関する陳情書外五件  (第七七号)  園芸施設共済制度の充実に関する陳情書外一件  (第七八号)  生鮮食糧品流通情報利用者経費負担軽減に関  する陳情書  (第七九号)  東京都の水産市場配置に関する陳情書  (第八〇号)  自然林保護対策に関する陳情書外一件  (第八一号)  大規模林業圏開発林道事業推進に関する陳情  書外一件  (第八二号)  松くい虫防除対策に関する陳情書  (第八三号)  沖繩県産とうきび最低生産者価格算出方式に  関する陳情書外二件  (第八四号)  漁業経営安定対策緊急実施に関する陳情書  (第八五号)  沿岸漁場整備開発法による事業助成に関する陳  情書外一件  (第八六  号)  漁業調整委員会運営費に対する全額国庫負担等  に関する陳情書  (第八七  号)  漁業災害補償制度における養殖共済種目拡充  に関する陳情書  (第八八号)  遠洋漁業漁場確保に関する陳情書外一件  (第八九号)  捕鯨産業安定強化対策推進に関する陳情書  (  第九〇号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  国政調査承認要求に関する件  農林水産業振興に関する件  閉会中審査に関する件  請 願   一 養殖わかめ危機対策に関する請願(津     川武一紹介)(第八四号)   二 漁業危機に伴う緊急救済措置等に関する     請願外十五件(坪川信三紹介)(第六     五五号)   三 同外二十四件(木部佳昭紹介)(第七     六六号)   四 水産物価格安定政策早期確立に関する     請願鈴木善幸紹介)(第六五六号)   五 韓国わかめ等輸入抑制に関する請願     (鈴木善幸紹介)(第六五七号)   六 畜産農家経営安定に関する請願鈴木     善幸紹介)(第六五八号)   七 農、漁家負債整理に関する請願鈴木     善幸紹介)(第六五九号)   八 沿岸漁業振興に関する請願鈴木善幸君     紹介)(第六六〇号)   九 圃場整備事業における通年施行奨励補助     金増額に関する請願鈴木善幸紹介)     (第六六一号)  一〇 農林漁業等融資金利引上げ案撤回に関     する請願鈴木善幸紹介)(第六六二     号)  一一 農業近代化資金融資わく増額等に関す     る請願鈴木善幸紹介)(第六六三     号)  一二 農林年金制度改善措置に関する請願     (愛野興一郎紹介)(第七六五号)  一三 農林年金給付算定に関する請願柴田     健治紹介)(第一二八五号)  一四 農畜産物価格安定等に関する請願(山     口鶴男紹介)(第一二八六号)  一五 養蚕農家危機打開に関する請願山口     鶴男紹介)(第一二八七号)  一六 外国生糸輸入規制及び中間買数量     の限度拡大に関する請願小沢貞孝君紹     介)(第一四八三号)  一七 同(唐沢俊二郎紹介)(第一四八四     号)  一八 同(羽田孜紹介)(第一四八五号)  一九 同(吉川久衛紹介)(第一九〇一号)  二〇 同(小坂善太郎紹介)(第一九〇二     号)  二一 牛肉価格安定対策に関する請願小沢     貞孝紹介)(第一四八六号)  二二 同(唐沢俊二郎紹介)(第一四八七     号)  二三 同(羽田孜紹介)(第一四八八号)  二四 同(吉川久衛紹介)(第一九〇三号)  二五 同(小坂善太郎紹介)(第一九〇四     号)  二六 飼料安定供給に関する請願北澤直吉     君紹介)(第一四九二号)  二七 みかん農業危機打開に関する請願(關     谷勝利紹介)(第一八九八号)  二八 畜産経営危機打開に関する請願關谷     勝利紹介)(第一八九九号)  二九 漁港整備促進等に関する請願熊谷義     雄君紹介)(第一九〇〇号)  三〇 牛肉価格安定対策に関する請願中澤     茂一紹介)(第二四二七号)  三一 同(中村茂紹介)(第二四二八号)  三二 外国生糸輸入規制及び中間買数量     の限度拡大に関する請願中澤茂一君紹     介)(第二四二九号)  三三 同(中村茂紹介)(第二四三〇号)      ――――◇―――――
  2. 澁谷直藏

    澁谷委員長 これより会議を開きます。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  このたび、はからずも、私が農林水産委員長重責をになうことになりました。  御承知のとおり、世界的な食糧不足により、わが国においても自給率向上等重要課題となっており、本委員会の使命はまことに重大であります。  委員会運営につきましては、幸い練達たんのうなる委員各位がおられますので、皆さま方の格別な御協力、御支援を賜わりまして、委員会の円満なる運営をはかり、その職責を果たしてまいりたいと存じます。何とぞよろしくお願い申し上げます。  簡単でございますが、委員長就任のあいさつといたします。(拍手)      ————◇—————
  3. 澁谷直藏

    澁谷委員長 この際、理事補欠選任についておはかりいたします。  委員異動により、理事が二名欠員となっておりますので、これよりその補欠選任を行ないたいと存じますが、これは先例によりまして、委員長において指名することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 澁谷直藏

    澁谷委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長は、       中川一郎君    渡辺美智雄君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  5. 澁谷直藏

    澁谷委員長 国政調査承認要求に関する件についておはかりいたします。  一、農林水産業振興に関する事項  二、農林水産物に関する事項  三、農林水産業団体に関する事項  四、農林水産金融に関する事項  五、農林漁業災害補償制度に関する事項以上の各事項について、衆議院規則第九十四条により、議長に対し、国政調査承認を要求することといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 澁谷直藏

    澁谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、その手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 澁谷直藏

    澁谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう取り計らいをいたします。      ————◇—————
  8. 澁谷直藏

    澁谷委員長 この際、安倍農林大臣及び江藤農林政務次官より、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。安倍農林大臣
  9. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私は、このたび農林大臣に就任いたしましたが、世界食糧問題が深刻化しつつある状況の中で、我が国農林水産業振興し、国民食糧安定供給確保することがきわめて重要となってきており、その職責の重大であることを痛感している次第であります。  私は、微力ではありますが、全力をあげてこの重責を果たしてまいる決意でありますので、委員各位の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。  さて、一昨年の世界的な不作等に端を発して逼迫基調に転じた穀物等国際需給は、夏以降、天候不順異常気象によりアメリカ等の作況の低下が見通されることにより、逼迫の度合を強めております。中長期見通しにつきましても楽観を許さず、穀物国際市場は、従来のように、アメリカ等過剰在庫背景とした低位安定の時代から高位不安定の時代へと変化を遂げつつあると言えましょう。こうした状況の中で、去る十一日にはローマにおいて世界食糧会議が開催され、世界食糧問題解決への第一歩が踏み出されたことは御承知のとおりであります。  ひるがえってわが国経済を見ますと、過去十数年にわたる高度経済成長農村過剰人口を解消し、農家所得の増大をもたらしましたが、同時に、わが国農業農村農業労働力脆弱化、地価の高騰等、真にむずかしい問題を投げかけたことも否定できないところであります。また、経済高度成長とともに日本人の食生活水準も著しく向上し、増大する需要背景農産物輸入が増大してきたことも事実であります。このように内外を通ずる多難な状況の中で、わが国としては、一億をこえる国民水準の高い食生活をささえていくために、将来にわたって食糧安定供給確保する体制整備していかなければならないわけであります。  食糧供給の安定の基本をなすものは、言うまでもなく、国内農業自給力を高めることであります。国内農業生産体制整備するためには、農業にとって必要な土地及び水資源確保し、これを良好な状態で管理するとともに、高度に利用していくことが基本であります。このため、まず、長期的視点に立った需要見通し生産目標を設定する必要があり、現在、農政審議会にその審議をお願いしているところであります。このような考え方に立って、農業生産基盤整備優良農地確保水田裏利用促進等のための施策を推進してまいる所存であります。  現在継続審査となっております農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案が早急に成立の運びとなりますよう御審議をお願いし、この法律に基づき農用地利用増進を進めるとともに、集団的生産組織の育成、制度金融強化相続税制度改善等をはかり、中核的にない手が土地利用を集積し得る条件を整備してまいりたいと考えております。また、最近における物価高騰農業経営に少なからぬ影響を与えておりますので、農業生産安定的拡大に資するよう、農産物価格政策についても特に慎重な配慮をしてまいる所存であります。特に、需要減退等により短期的な需給の不均衡を生じ、経営の不安定を招いております牛肉やミカンにつきましては、これまでも、それぞれ、輸入抑制措置消費促進措置等や全国的な摘果奨励措置等を講じたところでありますが、今後は、中長期的視点に立って需給及び価格安定のための基本的な対策推進してまいる考えであります。  私は、今日、国際的視野で日本の食糧問題を考えることが大切であると考えます。世界食糧会議の決議によるまでもなく、わが国世界食糧事情改善のためにできるだけの国際協力を果たしていかなければならないと考えております。また、同時に、世界穀物市場基調が変化していく様相を十分見通し国内で自給することが困難であると思われる農産物等については、輸入を安定化するための方策を講じてまいる所存であります。  また、私は、今日の物価問題の重要性にかんがみ、国民の生活に直結する食料品については、内外を通ずる安定的供給確保と、適正な水準による価格の安定を期することが必要であると考えております。このため、需要に見合った十分な供給確保対策、コストに対応した適正な価格形成便乗値上げ抑制等、適正な行政指導を通じ、物価対策の的確な運営をはかってまいる所存であります。  林業につきましては、内外を通ずる木材安定供給の道を確立するとともに、時代の要請を受けとめて、森林の持つ公益的機能を重視した行政を展開していかなければなりません。このため、国内林業生産基盤整備、海外からの安定輸入につとめるとともに、短期的な需給の不均衡による価格変動に対処するため、木材備蓄対策拡充強化してまいる考えであります。また、保安林整備治山事業推進林地開発許可制度の適切な運用等により、森林の持つ公益的機能の発揮につとめてまいりたいと考えております。  水産業について見ますと、先般開催された国連海洋法会議で、経済水域設定動き等に見られる国際的規制問題等わが国漁業をめぐる内外の環境はきびしさを加えつつあります。しかしながら、水産業わが国国民動物性たん白質の過半を供給する重要な産業であります。このため、国際協力に基づく漁場確保、新漁場確保、優良な沿岸漁場整備開発漁場汚染の防止、漁港計画的整備等推進してまいる所存であります。また、流通加工対策強化等により、漁家経営の安定をはかってまいりたいと考えております。  以上、所信の一端を申し述べましたが、農林水産行政推進のために、本委員会及び委員各位の御支援、御協力を重ねてお願い申し上げる次第であります。(拍手
  10. 澁谷直藏

  11. 江藤隆美

    江藤政府委員 このたび安倍農林大臣のもとに政務次官を拝命いたしました。  もとより浅学非才でございますが、委員各位のあたたかい御指導と御鞭撻を賜わりまして大臣の補佐の任を全うし、当面しておるわが国農林水産業の発展のためにいささかなりとも全力をあげてまいりたい所存でございますので、よろしくお願いを申し上げます。(拍手)      ————◇—————
  12. 澁谷直藏

    澁谷委員長 農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柴田健治君。
  13. 柴田健治

    柴田(健)委員 大臣に、時間の関係上簡単にお尋ね申し上げたいと思います。  御承知のように、去る十八日の午後二十時四十分、水島三菱石油製油所の二百七十号のタンクが破損をいたしました。あのタンクにはC重油が入っておる。そのC重油が流出いたしまして、毎日新聞等で報道されておりますように、備讃瀬戸紀伊水道を含めて、関係県五県にわたる地域がたいへん汚染をされまして、年末を控えての漁民の苦しみというものがまざまざと胸に刻まれるというか、いまやそれを痛いほど私たちは感じるわけでありますが、これについて大臣としてはどういう気持ちか、そして対応策はどうするのか、その点をまずお聞きをしたいと思うのであります。
  14. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回の水島流出油事故によりまして、関係県関係漁民がたいへんな迷惑を受けられたことに対しては、まことに遺憾しごくだと思っておるわけでございます。これは原因者はもちろん明らかでございまして、三菱石油でございます。したがって、これが補償につきましては、原因者負担の原則により被害漁業者に対する補償がなされることは当然しごくであろうと思っております。農林省といたしましても、補償について早急に適切な解決がはかられるように、関係者を十分に指導してまいりたいと思うわけでございます。  さらに、いままで聞きました範囲におきましては、被害補償につきましては、香川県においては、漁業者団体会社側との間で交渉を行なった結果、被害漁業者に対する緊急の金融措置等について原則的な了解に達したという報告を受けておるわけでございます。また、岡山県につきましては目下交渉中であるということでございます。
  15. 柴田健治

    柴田(健)委員 加害者負担の原則ということになれば、加害者がはっきりしておるのだからそれで処置させていくんだということだけでは、行政官庁としては、責任の度合いというものについて、感じ方がちょっと薄いのではないかという気が私はいたします。なぜかというと、今日まで、あの水島の石油コンビナートの基地から起きる災害発生の可能性というものは十分あったと思うのです。それを事前に予防しなかったということは、ただに農林省だけの責任ではなくて、国全体の責任である。しかし、当面の被害者である漁民農林省の管轄である。被害者の立場からものを見なければならないというのが農林省の立場だと思うのですが、そういう立場から申し上げても、加害者がはっきりしておるんだから加害者のほうでやらせたらいいんだとか、窓口は出先の機関で、県なら県でやったらいいんだとか、ただこういうことだけでは漁民は安心しないと私は思うのですよ。積極的に農林省が乗り出していくべきだ。ただ各県の報告だけではいけない。今日まで農林省が報告だけでやっておるという印象を強く私は受けておるわけですが、それではいけない。積極的に現場に乗り出していき、この被害額、被害現状というものを十分確認すべきだ。それを農林省が十分確認しておるとは私には思えない。そして、その確認の方法ももう少し積極的な姿勢で当たるべきではないかと私は思うのですが、大臣、どうですか。
  16. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま柴田委員が御指摘のことは全くそのとおりであると思うわけでございまして、農林省としても、積極的な立場で指導をして、完全な加害者負担という原則にのっとって補償ができるように十分配慮していかなければならぬと考えておりますし、いまお話しのように、被害の状況を的確に把握するということが、これまた大切なことであると思います。そういう意味におきまして、実は、本日、水産庁の次長を現地に派遣をいたしまして、被害の実態を早急につかむように指示したところでございます。
  17. 柴田健治

    柴田(健)委員 それで、この補償の区分なんですが、たとえば漁業補償、施設補償、休業補償、そしてまた当面年末を控えて年越しもできないという漁民に対する緊急救済措置というように分類をしていくということを考えたなら、もう少し手が打てるのではなかろうか。当面この緊急救済措置はどうするかという方法、そしてまた休業補償というものがその次に必要ではないかということ、こういう順序があると思うのです。そしてまた、この補償交渉について、窓口はどういう形で指導するのか。農林省としては県が対象か、県、市を含めて漁業団体というものを各県ばらばらにさせるのか、一本化して折衝するのか、どういう考え方があるのか、その点を明らかにしてもらいたい。
  18. 内村良英

    ○内村政府委員 ただいま先生から御指摘がございましたような点について補償を要求していくということになるわけでございます。そこで、ことしの年の瀬も迫りまして、関係の漁業者の方々が非常にお困りだということでございますので、大臣からもただいま御答弁がございましたけれども、現在、漁業者側が会社側三菱石油に対しまして、年内に補償金の仮払いをすることを要求しております。そこで、香川県につきましては原則的な了解がついた、岡山県については現在交渉中という情報を得ております。  そこで、今後交渉をどういうふうにするのかということでございますが、これらの点につきましては、県の実情等を十分把握いたしまして、私どもといたしましては、やはり、被害を受けた漁業者が一本の窓口で会社側に交渉したほうがいいのではないかというふうに考えております。  なお、現在油が流れておりまして、徳島あるいは兵庫の一部にも被害が出かかっておりますので、そういった全体の状況を見た上で最終的には態度をきめ、十分関係者指導したいというふうに考えております。
  19. 柴田健治

    柴田(健)委員 海上保安庁にお尋ねしたいのですが、海上保安庁の平素からの指導行政というものが、今度の事故発生からわれわれが現地で見て、非常に手落ちがあるということを第一点に感ずるわけであります。それから、油の流出の量によって、われわれはたとえば火災現場にいて、風向きをすぐ見るわけでありますが、海上保安庁は、この事故ならどれだけの油の量が流れてくるかということを、どこから情報を得て判断をしてそういう防除作業に当たったのか、その点をまず聞いておきたいのです。
  20. 山本了三

    ○山本説明員 お答えいたします。  海上保安庁の大量な油流出事故等に対する対処方針でございますけれども、大量の流出油がありました場合には、通常オイルフェンスで第一次的には拡散を防止する。それで、そこにたまりました油を回収船とか吸着剤というものを使用して回収する。オイルフェンスから外に油が流れたような場合には、油の処理剤といったものをもって化学的な処理を行なう。これが流出油処理の方式でございます。  こういった作業を行ないますためには、オイルフェンス、それから処理機材といったものの整備がもちろん必要でございます。そういったものの整備を行なうと同時に、こういった作業を行ないます処理体制というものを確立しておかなければなりません。海上保安庁としては、こういった見解からもちろん海上保安庁自体がそういった体制をとっており、機材等も整備をはかっておりますけれども、これだけでは国の力ではとうてい及ばないというふうに考えておりまして、まず、タンカー等が入ります港、コンビナート地区ですが、こういったところにはその港の流出油災害対策協議会というものを結成いたしまして、官民合同して総力を結集して大量流出油に対処するという体制をとります。また、大規模の流出油に対しましては地区の災害対策協議会を結成する。さらに大規模のものに対しましては、一つの湾、たとえば東京湾とか、伊勢湾とか、大阪湾とか、瀬戸内海の場合ですと瀬戸内海というように、湾とか地域の総力を結集します協議会を結成する。そういう体制をとっております。  今回の場合には、水島港には水島港の災害対策協議会というものがありまして、水島の海上保安部長を会長といたしまして、官民合同の処理体制を確立いたしております。それから、水島地区といいますか、水島海上保安部の管轄区域である水島地区におきましては、地区の災害対策協議会がすでに結成されております。それから、瀬戸内海におきましては、瀬戸内海の災害対策協議会というものがこれまた結成されております。したがいまして、こういった体制で私ども大量流出油には対処しようとしておったというふうにお答えいたします。  それから、油の量をどこから聞いたかという御質問でございますけれども、当初、水島海上保安部の当局は、三菱石油のほうから、五万トンタンクに亀裂が起こって油が海面に流れておりますという報告を受け取っております。その量につきましては、会社側もわからないし、私どもでも把握できなかったというのが実情でございます。
  21. 柴田健治

    柴田(健)委員 海上保安庁はいまいろいろ言われました。たとえば協議会は、水島地区保安防災協議会は、これは大手企業二十七社が加盟してつくっておる。それから水島港湾災害対策協議会、これは六十社が加盟してつくっておる。今年の八月に保安庁の出先の保安部、県、倉敷市、大手企業十九団体が加入してつくっておる水島地区大量流出油災害対策協議会というもの、これは形式協議会なんです。今度のこの事故には何にも活動していないじゃないですか。平素協議会だけつくって、一つも訓練もしていなければ、何もしていない。形式だけで、これで万全だとは言えない。今度の活動状況を見てみるのに、平素訓練をやっておれば、この活動が幾分なりともあったはずだ。それが組織活動がゼロだ。連絡が不十分である。まことに形式だけの協議会で、海上保安庁がこれにたよっておったということはたいへんな誤りをおかした。同時に、事故発生のタンクから海に流れていくまでの距離が五百メートルあるのですよ。水とC重油の流れ方の速度というものは違う。五百メートルの陸上を走る間に土のうの防止作業をなぜさせなかったのか。会社のほうは、なるべく流出量を少なく発表すれば、今後の漁業の被害補償についてはある程度の逃げの手が使える。実質的には四万八千トンのタンク、最高限度五万トン、それに三万七千三百トン入っている。隣の二百七十一号タンクはなぜバルブを手動で動かしたかということ、これは消防法に関係するわけですから、あとで消防庁に聞きますけれども、この陸上から海に流れる五百メートルの間にどういう措置を海上保安庁は指導したのか。オイルフェンスなり、また油回収船なり、また油の清掃剤というものがいろいろあるわけですけれども、このC重油に対する考え方というものについて、今日まで海上保安庁はどういう考えを持っていたのか。普通のガソリンとか、また普通の石油だとかというものとは違う。あの油は、吸収紙をばら巻いてみたところで、油の上へ乗って走るぐらいのことで、木の葉をまくぐらいのものだ。こんな常識的のことを海上保安庁がわからないということは、何としてもお粗末な限りだと私は思う。回収船やなんかをなぜあの地域に配船しないのか、その常備という施設整備になぜ強力な指導をしなかったのか、海上保安庁は十分反省しないと、再び大事故が起きたときにはどうするのかという気がいたします。  水島は、大小の屋外のタンクが千三百五十三基ある。その中で、石油関係が千三百十八基あるわけです。一タンクに二万トンの油が入っておるとしてもたいへんなことなんです。いなかで三万トンや四万トンのため池が、堤防が切れてごらんなさい。どんな災害が起きるかぐらいのことは常識でわかっている。そして、何万トンのタンクなら油がどの程度流れてくるかは常識でわかっている。その防除作業、防止作業ができないというのは、ただ企業の秘密、会社の一方交通の報道だけで、三千キロリットル流れたということで、その三千キロリットルを中心に防除作業をするということ、そういうところに事故を拡大させた、油をますます拡散させていった原因がある。そういう結果になっておるのじゃないか。海上保安庁は十分反省しなきゃならぬと私は思う。  この問題については、災害対策なりその他でいずれ質問を申し上げたいのですが、きょう当面は、いまの緊急問題としてわれわれが御質問申し上げているのですから、庁内において、今後の検討課題として十分検討してもらいたい。  環境庁、これ以上油をどんどん拡散させたらたいへんなことになるのですが、この対策というか、いつごろまでにこれを防げるのか、いつごろまでにこれが回収できるのか、この見通しを聞かせてもらいたい。
  22. 小川洋二

    ○小川説明員 お答え申し上げます。  今回の貯油タンクの事故によります油の流出は、防災上の観点から、消防法などで十分な流出防止措置を講ずることになっておるわけでございますが、今回の水島におきます油の事故の原因はいろいろ調査中で、原因がまだはっきりしないと思いますが、いままでの現地からの情報によりますと、タンク自体の構造上の欠陥あるいはバルブの操作ミスといったような、予想もできないようなことが重なりまして今回のこういう大事故になったと思うわけでございます。  それで、予想以上に流出油の量が多くて、瀬戸内海一帯に広がっているわけでございます。現在のところ、潮の流れとか風の影響で非常なスピードで広がっているわけでございますが、これだけ広範囲にわたりますと、いままで予想された以上の量でございますので、環境からいつ完全に油が回収されるかということはちょっと見通しが立っておらない状態でございます。そういったわけで、環境庁といたしましても、現地に調査官を派遣いたしまして、いま詳細にその状況の把握につとめているところでございます。
  23. 柴田健治

    柴田(健)委員 環境庁は、この備讃瀬戸全体におよそどの程度の油が流れたと見通しておるのか。海上保安庁は、会社の都合で三千キロリットルということを基軸にして、それを基本にして対策をしたという。環境庁のほうは、どの程度流れたという量の確認ができているのですか。
  24. 小川洋二

    ○小川説明員 現地に派遣いたしました係官からの報告によりますと、バルブの操作ミス等も加わりまして、約二万キロリットルが防油堤の堤外に流出して、その大部分が海上に流れ出たと伺っております。
  25. 柴田健治

    柴田(健)委員 結局、三万七千三百キロリットルが流れて、それは二百七十号タンクで、隣の二百七十一号タンクからは六千キロリットルということになると、少なくとも四万五千キロリットルくらい流れている。現場へ行ってごらんなさいよ。その中で回収したというのは三分の一くらいの回収ですよ。三分の二は海に流れているのですよ。そうすると三万キロリットル以上海に流れている。初めの三千キロリットルから言うと十倍以上流れておる。そういう見通しで、防除作業、清掃作業というものをもう少し考えたら、そう広がらないうちにある程度の防ぎができた。大体見通しが誤ったと私は思う。これは海上保安庁からその点をお答え願いたい。会社の三千という数字にただとらわれて、初期動作というものに非常に誤りがあった。事故を拡大させた最大の罪は保安庁だと私は思う。保安庁のお答えを願いたいと思います。
  26. 山本了三

    ○山本説明員 当初、流出油につきましては、先生のおっしゃるとおり、比較的少なく発表されたように思います。現に、私どもが処理剤等を使用いたしまして回収できたであろうと考えておるものがすでに三千キロに近いと思っております。それはそのとおりでございますけれども、海上保安庁といたしましては、先刻御報告申し上げたとおり、われわれが考えられるところの、動員できるといいますか、そういう勢力を動員し、機材を集め、関係の地方公共団体等にお願いし、もちろん当の責任者である会社側を督励して、最大限の努力をいたしたつもりでございます。
  27. 柴田健治

    柴田(健)委員 私たちは、水島地域のコンビナートを市町村だけの一自治体で防災対策をやれというのは無理だ、国をあげて防災対策を本気でやらなければだめだということをあらゆる機会に叫んできた。それは、いままでは、災害対策基本法から言うと総理府の責任だという。今度は国土庁へ移った。けれども、国のほうは依然として考えていない。ばらばら行政の中で、環境庁は環境庁でかってに判断をし、保安庁は保安庁のほうでかってに判断をして行動する。形式的な協議会はあるけれども、一つもやらない。消防庁のほうは消防庁のほうで、通産省は通産省のほうで——先ほど保安庁が言われましたが、消防庁はまだ来ておらぬようですけれども、各タンクの周囲に防油堤というものをつくる基準になっておる。土堰堤の場合、鉄筋の場合——鉄筋の場合でも一・五メートルの高さ、厚さは十五センチ、こんな小さな基準がどこにあるか。十五センチの幅というたら普通の水路ぐらいのものだ。何万トンという油が一ぺんに流出したときにはどうなるぐらいのことはわかっておる。ひょっとしたら流れて出るだろうという、そういう災害が起きる可能性を考えそういう防油堤をこしらえる基準を立てている。その基準そのものにもう誤りがある。タンクの構造においても、これは消防庁と通産省に責任があるわけですが、あの膨大な千三百五十三のタンクのあることを国は率直にもっと理解をしない限り、いついかなる災害が起きるかわからぬ。被害を受けるのは漁民や住民であります。  保安庁は、あの油流出に対する防備体制というものをなぜ平素からもう少し充実しなかったのか、なぜ油回収船を一隻も用意させなかったのか、そういう指導をなぜしなかったのか、その点をお答え願いたい。
  28. 山本了三

    ○山本説明員 先ほどからお答え申し上げておりますとおり、私どもといたしましては、大量流出油対策といたしまして、その組織、その資機材等の整備について懸命の努力をいたしておる次第でございます。  訓練をしなかったかどうかというような御質問もございましたけれども、水島地区におきましても、ほとんど毎年一回は関係者が集まりまして、大量流出油対策の訓練を実施いたしております。  それから、回収船の整備でございますけれども、回収船につきましても、石油会社といいますか、コンビナートのいわゆる石油取り扱い者といいますか、これに対しまして、回収船等あるいは防災艇等を整備するように常日ごろから指導いたしております。
  29. 柴田健治

    柴田(健)委員 環境庁に聞きたいんですが、今度のこの防除作業に出動しておる漁船の数、漁民の出動人員ですが、これらは漁民がみずから立ち上がって、みずからが自分の漁場、生活の基盤を守ろうということで努力しておるんですが、これらの出動に対する要請は保安庁がしたのか、環境庁がしたのか、県がしたのか、会社がしたのか、農林省水産庁がしたのか、どこがこういう出動要請をしたのか、しなくて、漁民がみずから出ておるのか、その点を、どなたさんでもいいが御回答願います。
  30. 山本了三

    ○山本説明員 県サイドあるいは漁業者に対する出動の要請は、海上保安庁がいたしております。岡山県につきましては、もちろん水島地区の大量流出油災害対策協議会が発動いたしておりますので、県からも漁連からも関係者が参っております。  したがいまして、その席上でもありますけれども、事件が起きました十八日の零時ごろには、すでに、岡山県の漁連に対しましては自衛措置を考えるようにということを連絡いたしております。
  31. 柴田健治

    柴田(健)委員 消防庁がまだ来ておらないから午後に回しますが、私の与えられた時間は大臣のおる間ですが、大臣、各省の、ほかの省のいろいろな欠陥というか、矛盾というか、適切な処置の怠慢というか、そういうものが複合して今度の大事故を起こしたということを農林大臣としてよく知ってもらって、漁民漁場整備をするなり、漁民の生活を守っていくなり、今度の災害の補償なり、農林大臣として漁民の立場を守るという意味で、今後総合的に指導権を十分発揮してもらいたいと思うのです。  これは農林省が悪いことはないんだけれども、各省の法の不備、たとえば消防法の不備もある。危険物の規則の不備もあるというふうにわれわれは判断をしているわけです。そういう総合的な国の指導の欠陥がほかの省にある。それを今度農林省がもろにかぶるわけですからね。この点については、農林大臣は、漁民の立場で、将来瀬戸内海の沿岸をどう守るか、漁場をどう守るかということで指導性を発揮してもらいたい。そういう力をこの際出してもらいたいと思いますが、ひとつお考えを聞かせていただきたい。
  32. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 今回の不幸な事故を見ますと、農林大臣としてよりは、政府の閣僚の一人といたしまして、いまおっしゃいましたような総合的な防災対策といいますか、そういう面についてまだまださらに充実をしていかなければいけないという感じを強く持つわけでございます。農林大臣といたしましてはいつも被害者の漁民の立場に立つわけでございますが、今回も、漁業被害だけでも五十億をこえるのではないか、まださらにどんどんふえる情勢にあるというような報告を受けておりまするだけに、今後とも——この事故は加害者がはっきりいたしております。農林省からも次長を派遣いたして実情の調査をいたしておりますが、この被害が完全に補償される、そして漁民が守られるということのために今後とも全力を尽くして指導をしていきたい、こういうふうに考えております。
  33. 柴田健治

    柴田(健)委員 大臣、災害対策基本法の今度の窓口が国土庁になっておるのですが、国土庁ができてからどうももたもたしておるような気がするのですよ。だから、国土庁を中心としてこういう大事故を予想しなかったということで——われわれは予想しておったんですよ。予想しなかったのは政府なんですよ。予想しなかったのは政府と会社なんです。われわれ住民は常に災害の立場でものを見て、現場で取り組んだときにはもう予想されておった。いつ起きるかなあという予想をしておった。だから、知らぬのは政府なんですよ。総理府から国土庁へ移した、このブランクというか、ここが空洞化されておるというような気がするわけですね。だから、農林大臣は閣僚会議で国土庁にハッパをかけてもらいたい。これは相当長い間後遺症が起きると思うのですね。この後遺症について、万全の対策をするよう強くあなたには望んでおきたい。  私の与えられた時間は済んだから、午後に残った時間で消防庁なりその他関係庁にいずれただしていきたいと思いますから、私の時間はこれで終わりたいと思います。
  34. 澁谷直藏

  35. 山原健二郎

    ○山原委員 今度の被害につきまして質問をいたしますが、大体どの範囲までこの被害が拡大、拡散をするかという予想を最初に伺いたいのです。これは水産庁でもいいですし、海上保安庁でもいいですが、最初に伺っておきたいのです。
  36. 内村良英

    ○内村政府委員 今後被害がどの程度まで拡大するかということにつきましては、この流れておりますC重油がどの辺まで流れるかということと関係があるわけでございます。  そこで、私どもが把握しておるところでは、昨日の五時現在で、東のほうに向かって流れまして、鳴門海峡のあたりまで流れております。すなわち、徳島県の那賀川の河口から十マイル沖と、それから兵庫県の沼島の沖あたりまでずっと広がっております。したがいまして、今後どういうふうに被害が広がるかということは、この油の流れ方がどうなるかということによって変わってくるわけでございまして、現在のところ、どういうかっこうになるだろうかということを的確に申し上げるところまで必ずしも固まっていない段階でございます。
  37. 山原健二郎

    ○山原委員 大体、あの紀伊水道の海流調査などは知っておらにゃあいかぬですよ。阿南市の橘湾へ原油基地をつくるということで大騒ぎになったのはごく最近のことですね。あの海流がどういうふうに流れていくかということは、これはもう当然知っておかなければならぬことなんですね。いま西のほうは坂出の王越のところへ行っているわけです。王越のところでは重油の層がすでに二十センチですよ。こういう状態ですね。それから、東のほうは蒲生田岬をもう突破して、室戸岬のほうへ向かっていくという状態ですね。その間に重油が外洋へ流れることを期待しておるなどという意見もありますけれども、重油が通ったあとはノリだってハマチだって全滅していくわけです。だから、被害は明らかに拡大する一方なんですね。そういう状態にあるわけですから全くやり切れない話で、しかも、御承知のように丸亀のノリは全滅、それから鳴門海峡のワカメ、ノリ、ハマチですが、これは赤潮の発生で、あそこの燧灘、播磨灘付近がいままでもしばしばやられてきておるにもかかわらず、今度この被害によってまた全滅という状態になるわけです。これはまさに深刻な問題でして、しかも、年末でノリは最盛期のときですが、こういう状態です。この被害総額は一体どれくらいになるか、これに対して、この年末にどういう融資をして漁民の生活を守るか、こういう点について簡明に伺っておきたいのです。
  38. 内村良英

    ○内村政府委員 十二月二十三日、昨日午後五時現在、関係県からの報告による被害でございますが、岡山県はノリの養殖業が二十六億二千六百万円、ハマチが二千万円、ワカメが千百万円、それからなお、漁船漁業の休業についてはまだ数字が入っておりません。したがいまして、岡山県からの被害報告は二十六億五千七百万円になっております。  それから、香川県でございますが、これはハマチが相当な被害を受けているようでございますけれども、業者の人が市場に対する影響その他を考えまして、正確な報告がまだ入っておりません。そこで、ノリにつきまして二十億三千万円、漁船漁業の休業が二億二千八百万円、二十二億五千万円の被害報告が入っております。それにハマチの被害があるはずでございます。  それから、兵庫県につきましては、ノリが八百さく被害を受けたということで、金額その他はまだ不明でございます。  以上が水産庁に入っております被害報告でございます。  そこで、年の瀬を控えまして、被害を受けた漁業者の方が非常に困られるわけでございますので、県漁連が三菱石油と交渉した結果、現在、香川県につきましては、年内に補償金の一部を前払いするという協定ができたようでございます。  なお、岡山県につきましては、現在折衝中でございます。
  39. 山原健二郎

    ○山原委員 おそらく、被害は相当拡大するであろうと予想されます。しかも、中和剤を使いましても第二次公害が出てくるという問題もいままでしばしば論議されておることですね。そういう問題も出てくるわけですから、これはまだ徳島県の被害なんか出ていないわけでしょう。これも出てくるわけですね。兵庫県の場合は、御承知のように、沼島のところから徳島県の伊島の間の一直線に結ぶ線を全部やられているわけですね。そういうことに対してほんとうに適切な手が打たれなければならない。単に三菱石油と県側との交渉だけにまかせるのでなくして、ほんとうに漁民の立場を守るということで、水産庁はこれに全力をあげてやっていただかなければならぬと私は思うのです。被害はもう歴然と出てくるわけですからね。被害があるだろうか、ないだろうかなんという問題じゃないわけです。あることはもう明らかなわけですから、この点をぜひお願いをしておきたいと思います。  それから、もう一つ、こういう問題が起こる。石油の備蓄基地あるいは原油基地というものについてでございますけれども、いま、たとえば、長崎県の福江島の備蓄基地については大協石油がほぼ断念をしたのではないかという新聞記事も出ています。ところが、高知県の宿毛湾の備蓄基地は、漁民の圧倒的な反対があるにもかかわらず、依然としてこれが進められておる。そして、一方では紀伊水道を通って南下するこの汚水があり、それから瀬戸内海沿岸の屎尿の処理が沖合いでなされるという状態の中で、土佐湾というところがいろいろな意味でもうすでに汚染をされておる。屎尿で汚染をされる、油で汚染をされる、さらに産業廃棄物によって汚染をされるという状態で、そのまん中にある宿毛湾に巨大な原油基地をつくるという計画がいまだに依然として進められておる。しかも、日本経済新聞を見ますと、やはりこの計画は進められておるという状態です。通産省もしばしば現地へ行ってこれを推進をする役割りを果たしておるそうでありますが、この計画について、簡単でけっこうですから、現在の計画ではどこへだいたいどの程度のものをつくるのか、どういう話をしておるのか、伺っておきたい。
  40. 小津修二

    ○小津説明員 昨年の石油危機以来の経験に徴しまして、石油の備蓄の増強はいまや国民経済的な要請でございまして、このために、現在、政府部内におきまして、どの程度の規模の基地をどこに設置をするかということを含めまして、備蓄増強計画全般にわたりまして鋭意検討中でございます。私どもとしては、備蓄増強計画を進めるにあたりまして、今般のような事故の経験をさらに考慮いたしまして、公害、安全対策上万遺漏のないような注意を払いましてこの計画を進めてまいりたいというふうに考えております。  ただ、現在の段階におきましては、どこの地域にどの程度の石油備蓄基地を設けていくかということについては全く白紙の状態でございまして、今後もろもろの情報等をもとに計画の具体化を進めてまいりたいというふうに考えております。
  41. 山原健二郎

    ○山原委員 もう一言聞いておきますが、水島の場合だって、公害については万全の対策をとっておる。教科書まで、水島はもうコンビナートの中の一番公害のない模範の場所だと書いてあるんですよ。ところが、こういうものすごい事故が起こるわけですね。これは油漏れだけではなくして、水島一帯の汚染問題は、大気汚染だってもう御承知のとおりだと思うのです。そういうことを言うけれども、実際には被害は起こってくる。こういう状態ですね。宿毛湾にいままでいろいろな問題が出ましたけれども、いま、宇須々木、藻津に六百万キロリットルの原油基地をつくる、あるいはそのそばには大島に五万トンの岸壁をつくる、あるいは内ノ浦というところには中型の原油基地をつくる、大月というところにはLPの基地をつくる、と、こういう一連の基地群を計画して、すでに通産省へ話も出ておる、通産省のほうもそれを知っておるというふうに私は聞いている。日本経済新聞にもそれは出ているが、こういう事実も知らぬのですか。話も出ていないのですか。
  42. 小津修二

    ○小津説明員 通産省に対しましては、各方面から備蓄基地の候補地につきましてそれぞれ情報が寄せられております。私どもとしては、それらに対してどういう判断を下し、どういう評価を下していくかということも含めまして、現在検討を続けておりますが、いまだに結論は得ておりませんので、今後、備蓄増強計画を具体化するまでに、候補地の選定等を含めまして、具体的にきめてまいりたいというふうに考えております。
  43. 山原健二郎

    ○山原委員 大臣に伺いたいのですが、この宿毛湾というところは、御承知のように、国立公園に昇格をした地域の渭南宇和島国立公園の中心になっています。しかも、宿毛湾というのは、漁業にとりまして、モジャコの生まれるところとかいう意味で非常に重要な漁場なんです。そこへ降ってわいたように伊藤忠が巨大な原油基地をつくるということで、この数年間そのためにすったもんだの大騒ぎをしておる。漁民もたまったものじゃないわけですね。私たちはこんなところにつくるのはいやだ、しかも、調査によれば、もし事故が起こって油が漏れた場合には、宿毛湾一帯が死の海になってしまうということで反対している。現在でも沖合いで廃油を流しておりまして、廃油ボールが流れ着いておる。こういう状態の中でそういうものはつくってもらっては困るということで、県庁へもしばしば漁民の方たちが押しかけるけれども、幾ら反対してもやるというわけですね。これは、「日本列島改造論」の田中角榮さんの書物の中に、ここへつくるということが出ているわけです。そういうことが依然として進められて、依然としてこれが政治的な紛糾の種をまき散らしておる。そういう段階で今度の水島問題が起こってくる。だから、みんな不安を持っているわけですね。  そういう意味で大臣にお伺いしたいのですが、漁民がほんとうに自分たちの漁場を守ろう、自分たちの生活権を守ろうということで一致してこれに反対をしておるにもかかわらず、なぜこういうことを強行していくのか。場所が適地だからやるということに対して、農林省としてはほんとうにき然とした態度をもって漁民を守ってもらいたいと私は思うのでございますが、これについての大臣の御意見を伺っておきたいのです。
  44. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 漁業と特別に関連のある大型プロジェクトをつくるというふうな場合におきましては、漁業者の理解と協力を得ることがやはり前提になるのではないかと私は思います。漁業者との間のコンセンサスができなければ、そういう大型プロジェクトというものをつくり上げることは非常に困難でございます。さらに、また、そういう際における漁業補償というものが確保されるということも、これまた前提ではないかと思うわけでございまして、農林省としても、各地区にそうしたいろいろな問題が発生している事情もよく承知しておるわけでございます。そういう中にあって、漁業者の利益が守られるように農林省としても十分な配慮をしていくのは、これまた当然のことであると考えております。
  45. 山原健二郎

    ○山原委員 時間がありませんので最後に伺いますが、今度の場合も、こういうまさに予想せざる事故というものが起こって、被害を受けるのは漁民ですよね。そういうことを繰り返すということは、これはいかぬわけですよ。したがって、こういう一番いい漁場と言われるところで生活をしておる者の、その生活を破壊するようなことは——これは、おそらくこの一月、二月、三月ごろ、宿毛湾の原油基地問題がまた大きな山場を迎えるだろうと新聞にも出ておりますけれども、そういう際に、地元の漁民の反対がある場合にはやらないのだ、そんなことを強行突破しないのだという歯どめを農林大臣としてもかけるぐらいのことはぜひともやってもらいたいと思いますが、これについて最後に意見を伺っておきたいと思います。
  46. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほども申し上げましたように、そうした国家的要請のある備蓄基地であっても、漁民の理解、協力が得られなければ、こうした大きなプロジェクト等の建設はむずかしいわけでございますから、農林省として、漁民が納得をするといいますか、漁民協力が得られるようなことに対して十分配慮をしていくという立場は、漁民を守るという意味においてはこれは当然のことである、こういうように思うわけであります。
  47. 澁谷直藏

  48. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 緊急な問題として、水島コンビナート基地からの重油流出事故について、農林大臣を中心に質問をいたします。  御承知のように、十二月十八日の二十時四十分に倉敷市三菱石油水島製油所タンクから流出した重油は四万キロリットル以上と言われる流出となりまして、現在、鳴門海峡を抜け、一部は紀伊水道に入り、これらの油による汚染地域は瀬戸内海の岡山、香川、徳島、兵庫の沿岸四県下に及び、汚染距離は約百キロ以上にも達していると言われております。また、和歌山県でも対策本部を設けて、今後の対策が憂慮されているという状況になっておりまして、今後被害はかなり広範囲にわたるものと考えられます。  そこで、重油は毎時一・二キロぐらいの速さで東へ流れておると言われておりますので、この汚染地域によっては今後相当な被害額が出てくると私は思っております。現在、岡山、香川両県の調べによっても、先日の調査では四十六億五千七百万円というような被害額が出ておるのでございまして、現在、徳島、兵庫両県の海域では、大型の油回収船が水島事故の応援に出かけたため一隻もなくて、回収対策はお手上げの状態であるということで、聞くところによると、六万人の人海戦術によって、ひしゃくでくみ取るというようなことをやっているようであります。今後の拡散による被害が漁業に対しては特に拡大されるということで、これは重大な問題となって、現在までに史上最大の油流出事故となったことは御承知のとおりです。  そこで、農林大臣にまず最初にお伺いしますが、被害はただいま申しましたように相当広範囲にわたっていくと考えられますが、あなたは、三菱のいわゆる原因者負担ということをあくまでもやらせるというふうにおっしゃっておりますけれども、現在でさえも岡山、香川両県で四十六億五千七百万円というのですが、おそらくこれは百億円以上、数百億円に及ぶのではないかと思いますが、大臣は、今後被害が拡大しても必ず原因者負担でやらせるという決意で検討し、臨んでおられるのか、その見解をまず最初に伺いたいと思います。
  49. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま御指摘のように、被害はどんどんふえております。正確な実態につきましては、次長も派遣をいたしましたし、近日中に把握をいたすわけでございますが、この原因についての加害者はあくまでも三菱石油であります。加害者がこの負担をする、補償をするということは、これはもう大原則であるわけでございますので、この被害の補償につきましては、加害者であるところの、原因者であるところの三菱石油があくまで負担すべきものである、そういうふうに思っております。
  50. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、今回の被害によって、漁具等の施設補償、休漁補償という問題が起きてまいります。地元では黒いクリスマスプレゼントだということで、年を越すにあたってたいへん心配いたしておりますけれども、こういった施設補償、休漁補償、漁具に対する補償ということも含めて、当然加害者負担ということで考えておられるのか。大臣、どうですか。
  51. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 当然それは被害の中に入るわけですから、原因者が負担すべきものであると思います。
  52. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに、この漁民はたくさんの金を借り入れてノリの養殖、ワカメの養殖またはハマチの養殖ということをやっておりますし、魚介類の採貝によって生活しているわけですが、この借金の返済等がなかなか困難になります。そこで、この点についても同じく三菱のほうへ交渉して補償させるというふうに考えておられますか。
  53. 内村良英

    ○内村政府委員 借り入れ金の返済の問題につきましては、私どもといたしましては、まず、漁業者の方々がそういった場合に困らないように、借りかえとか、そういったような金融措置を検討する必要が起こってまいるかと思います。  なお、そういったものを補償の中に入れるかどうかということにつきましては、先例等も十分研究して措置したいと思います。
  54. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ノリ、ワカメ、ハマチ、カキまたは魚介類といったものが、御存じのように、油がたいへん流出したために、異臭魚というふうな名前のもとに、今後の売れ行きその他の問題にも商売上影響するということは当然考えられます。今回のこういったことで、この周辺の魚も、いわゆる油に汚染された地域以外の魚も、広島には有名なカキもありますが、そういったものまでほとんど影響してくるというような問題が付随して起きてまいりますけれども、これに対する対策補償問題はどう考えておられますか。
  55. 内村良英

    ○内村政府委員 この異臭魚の問題は非常にデリケートな問題でございます。すなわち、魚を見たところ別ににおいがするわけではないが、焼いてみたり煮てみたりするとにおいが出てくるということで、それが非常に影響して価格が暴落するとか、売れないという問題が起こってくるわけでございます。したがいまして、この異臭魚の問題につきましては、当然補償を請求すべきものだと思います。過去の例をとりますと、そういった異臭魚の出るような海域につきましては、一定期間休漁をさせまして補償を求めているというようなケースもございます。したがいまして、こういった問題につきましては、今後事態の進展を見ながら、漁業者の立場を十分守れるような措置をとらなければならぬと考えております。
  56. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 もう一つそれに関連して伺いますが、こういった異臭魚というレッテルを張られますと、油汚染地域もさることながら、瀬戸内海沿岸の油に汚染されない地域もあるわけでございますが、そういった魚まで、異臭魚という名のもとに市場においてもいろいろと買いたたかれる。また、市場当局においても、瀬戸内海産の魚介類またはノリにしても、ワカメにしても、相当値をたたくというようなことがすでにもう言われて、うわさされている。これじゃ漁民もたまったものじゃありませんが、そういったものについても今後かなり続くと思いますけれども、その辺についての対策はどう考えておられますか。
  57. 内村良英

    ○内村政府委員 ただいま申し上げましたように、異臭魚の扱いは非常にデリケートな問題を取り扱い上含んでおりますので、私どもといたしましては、異臭魚の出る海域については、これを休漁にするというほうが補償問題を明確にすることができると思っております。したがいまして、関係機関とも十分相談しながら、異臭魚の問題については対処したいと思っております。
  58. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに、被害を受けるのはことしばかりではありません。この油はかなり長期にわたって滞留をする。または、長く期間がたちますと、きょうでもう八日ぐらいになりますが、海の下に沈んでいくということになるわけです。一部は沈んでいく。こういうようなことが起きてきております。そういったことから、ノリ、ワカメにしても、そのほかの魚介類にしても、ことしだけの被害ではなくて、海のよごれは、おそらく来年までも、相当続くのではないか。これが完全になくなるためには相当時間がかかる。こうなりますと、来年以降の養殖または漁業を営んでいる人たちの経営上の問題にも相当支障を来たしてくるということが当然懸念されます。  御承知のように、瀬戸内海は七年間で水がかわるということのようですし、学者の説によると、六十年とか百年に一回しかかわらないということですが、この瀬戸内海はいわば一つの湖みたいなものであるから、日本海のほうが水位が高いので、場合によっては、日本海から日本列島を横断して瀬戸内海に水を引き、その落差によって、海流を鳴門海峡と下関あるいは豊後水道に分けて水を流していき、そうして水をかえたらいいという説もありますし、一つには、四国のどまん中にものすごい大きなトンネルを掘って、太平洋にぶち抜いて、太平洋の水と交流するということをせねばならぬというようなことも、将来のビジョンとしていろいろわれわれは考えておりますけれども、いずれにしても、水が滞留してよどんでいる。こういうことで、現在の状態では相当長く瀬戸内海は死の海と化すると思います。  そうすると、現在ばかりの問題でなく、年越しの補償、越年資金だけでなくて、来年度も再来年も養殖あるいはいろいろな問題に補償問題がからんでくるというように思われて心配でならないが、こういった問題も含めて、農林大臣は、いわゆる原因者負担で将来にわたって負担をさせるという決意であるか。その点を確認したいので、さらに答弁をお願いしたい。
  59. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 原因がはっきりしておる場合においては、原因者負担という原則も、これまたはっきりしておるわけでございます。  瀬戸内海におけるいろいろの御構想を持っておられるようでございますが、瀬戸内海の保全法が昨年立法されまして、その結果、公害関係に対する規制措置等もいろいろ講ぜられまして、瀬戸内海も多少海の水がきれいになっているというふうな状況も生まれつつある現状でこうしたような不幸な事故が起こったということを私は非常に残念に思うわけでございますが、それに関しても、災害防止対策といったことをもっと充実をしていく必要があるということは、これまた、われわれ政府としては、今後とも十分配慮しなければならぬと思うわけであります。
  60. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 海上保安庁に一点お聞きしますが先ほども申しましたように、今回の油の回収にあたっては、吸湿紙を使ったり、あるいはオイルフェンスを使ったり、いろいろやっておられますけれども、六万人という膨大な人海戦術によって、ひしゃくでくみ取ってドラムかんに詰め、海岸にいまどんどん持ってきておられるということでございますが、この問題について、集めた重油をどういうように処分されるのか。二次公害が起きてはたいへんであります。また、人海戦術に要した六万人の方に対する日当費用等、いろいろとたくさん経費もかかるわけですが、こういったものについてはどういうふうに対処しておられるか。その点答弁をいただきたい。
  61. 山本了三

    ○山本説明員 ただいま御質問の、集めた油をどうするかということは、これは陸上の処理施設あるいは廃油等を処理いたします船舶もございます。そういったものに持って行きまして処理を行なわせるという方針であります。  それから、人海作戦で油の回収を行ないますが、その費用につきましては、原因者である三菱石油のほうで支払うということになります。
  62. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 最後に、農林大臣にもう一点伺いますが、こういった重大な事故が起きたわけでありますが、農林大臣も若くて今度就任されて、いま精力的にいろいろと検討しておられますが、農林水産業のこの危機にあたり、特にこれは史上最大の事故でありますけれども、大臣みずから早急に現地を調査し、この対策に陣頭指揮をとっていただきたいと思うのですが、大臣にそのような決意があるか、お答えいただきたい。
  63. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま、次長が現地に行きまして、実態の把握をいたしておるわけでございますが、いまお話しのございましたように、まださらに事故は広がっていきつつあるという状況でございますので、次長の報告を受けまして後に、それによりまして、私が飛んでいく必要がもしあるとするならば、現地に飛んでいくことはやぶさかではございません。まる瀬野委員 よろしくお願いいたします。  以上で一応質問を終わります。
  64. 澁谷直藏

    澁谷委員長 井上泉君。
  65. 井上泉

    井上(泉)委員 きょうの大臣の所信表明を途中から聞いたわけでありますが、いままでの日本の農業政策というものは、高度経済成長政策に合わせた農業政策によって減反政策もとられ、そして外国食糧輸入の政策がとられてきたことは大臣も御承知だと思いますが、そこで、いわゆる農政の大転換をはからなければいかぬ時期にある。それで、国においても、新全国総合開発計画とかあるいは経済発展計画とかいうようなものを全部見直すということになって、新しく検討されるということになっておるのであります。農業の面におきましても、昭和四十九年度ももう間もなく終わろうとしておるわけでありますが、昭和五十年度の予算編成の中において、農業の転換期にあたって、計画的な農業の政策というものを新農林大臣として立てて臨むべきであると私は思うが、そういう点についての、新年度の予算に対する大臣の見解を承りたい。  さらにはまた、年末にあたって物が高いという印象は、食料の高い低いで一番敏感に伝わってくるわけでありますが、いつでも年末には非常な値上がりをするわけです。農林省所管の生鮮食料品の値上がりによって、国民物価高というものに対する恐怖というか、そういうものがまた再現をするというようなことになってはならないと思うし、年末だといって暴利をむさぼらないような、そういう安定をした生鮮食料品を十分に供給のできるような安心した体制にあるということを、国民に向かって農林省としては表明ができる手はずになっておるのかどうか。  この二点について農林大臣の見解を承りたいと思います。
  66. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 農業政策につきましては、私も、いま御指摘がありましたように、一つの転換期に来ているというふうに考えております。これまでの高度成長経済からゼロ成長、低成長という方向へ日本経済も移っていくわけでございますし、同時に、世界食糧逼迫というものは相当恒常的に続くのではないかというふうに判断をいたしておるわけでございますが、そういう中にあって、食糧自給力を高めていくということがいまの農政に与えられた最大の課題ではないだろうかというふうに私は考えるわけでございますが、それにつきましても、やはり、長期的な見通しの上に立った需給計画といいますか、生産目標というものを設定していく必要があるのじゃないか。幸いにして、現在農政審議会農産物需要見通しとその長期目標といったものを検討していただきまして、来年の初めごろには需給部会の報告を経て農政審議会の検討をいただき、この農政審議会の結論を踏まえて総合的な食糧政策というものを何とか打ち出していきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  当面の五十年度予算につきましては、私も、農林大臣になりまして、事務当局が作成しておりました予算を見直しまして、その中に将来とも自給力を高めていくという農政の方針を打ち出さなければならぬ、あるいは自給力を高める上におきましては、飼料作物を開発することであるし、あるいはまた農家の中核的なにない手を確保することが大事であるという、そういうふうな見地から、自給飼料確保するための予算措置をさらに積み上げて要求し直しておるわけでありますし、あるいはまた米の場合につきましても、五十年度は百二十五万トンという生産調整を行なうという予定で組んであったわけでございますが、やはり、国民食糧確保ということにおいて在庫の積み増し等も考えなければならぬ、将来に対してはある程度は備蓄も考えていかなければならぬということで、百二十五万トンを百万トンというふうなワクに直して、あらためて要求し直したわけでありますし、同時にまた、近代化資金等のワクも、大幅にこれをふやして要求している。そういうふうな三点等につきまして、現在、私としての予算の要求を行なったわけでございます。  また、いま御指摘がありました年末年始の食料、特に生鮮食料品につきましては、何としてもこの価格を安定していくということは、国民に対する安心感を与えるということにおいてもたいへん大事なことでございます。私も、一週間前に築地の市場とか神田の市場等を視察をいたしたわけでございますが、ことしは物によっては多少上がっておる生鮮食料品もありますけれども、全体的に見ますと落ちついておるというふうな状況に見受けられるわけでございます。しかし、さらにこれが値上がりを防ぐ意味におきまして、量の確保あるいは出荷体制等もいろいろと事務当局に指示をいたしまして整えておるわけでございますし、その他加工食品等につきましては、これは指導でなければできませんが、当分の間価格上昇は押えるということで厳重に指導いたしておりまして、現在のところでは、年末年始については、生鮮食料品について特に値上がりするということはないものと私は確信をいたしておる次第であります。
  67. 井上泉

    井上(泉)委員 それでは、大臣のせっかくの御健闘を願って、大臣に対する質問は終わっておきたいと思います。  そこで、時間がもうあとわずか十二分しかありませんので、答弁者の方は簡単に要領よく答弁していただきたいと思うわけですが、海上保安庁ではずいぶん訓練をやったということを言われておったのでありますが、今度の水島タンクの事故については、やった訓練が功を奏したか奏しないのか、そのことだけ明確に御返答願いたいと思います。——それでは、通産省もこの訓練にはやはり参画をしておったと思うのですが、通産省のほうではこの防災については万全であったかどうか、その点についての見解を承りたいと思います。
  68. 小津修二

    ○小津説明員 石油企業の製油所の保安につきましては、所管が消防法を持っております消防庁において全面的に行なわれておるわけでございますが、通産省といたしましても、石油企業を所管する立場におきまして、製油所の運転等につきまして、保安の確保という観点から消防庁の行政に当然に全面的に協力を申し上げておるわけでございます。
  69. 井上泉

    井上(泉)委員 全面的に協力を申し上げておっても、結果的には何にもならなかったでしょう。被害をもたらしたでしょう。だから、その被害をもたらしたことによって、これからそういう事態というものが——新聞によると、前にもそういう被害があったが、それを新聞発表を押しつぶしておったということでありますが、石油タンクというものは日本国じゅう至るところの海岸地帯にあって、そのタンクに事故があった場合にはすぐ海面に流出するという仕組みになっておるし、そういう点からも、油の流出を防ぐために早急に防災対策、防災工事というものをすべきであると思うが、それについて通産省はどう考えておるのか。  そしてまた、水産庁としても、海を守るという点からもその工事を積極的に要請せねばならぬと思うが、それについての見解を承りたいと思います。
  70. 小津修二

    ○小津説明員 製油所のタンクの建設等にあたりましては、通産省といたしましては、消防法によります保安の基準というものを厳格に守り、保安に関しまして万遺漏なきを配意いたしておりますし、製油所の運転あるいは製油所の管理という点につきましても、私どもとしては、行政の立場から定期的に適切な注意を再々行なってきております。  今回の事故がどういう原因において発生いたしたかという点につきましては、これから公正な調査のもとに究明されてまいると思いますので、さらに新しいことがわかりましたら、その段階におきましてまた保安の一そうの確保ということを進めてまいりたいというふうに考えております。
  71. 井上泉

    井上(泉)委員 こういう被害が出ておるのだから、何ぼやったやったと言いましても、やったことが効果をあらわしていないからだめですよ。だから、さっき山原議員も言っておったのですが、日本が高度経済成長政策から今度はゼロ成長というような状態の中で、これ以上石油を三%も節約をするという、工業の生産もダウンするという、そういう中で新しい石油基地構想を海岸の豊富な漁場に求めるということは無謀きわまることだと思うし、宿毛湾の原油基地に対する通産省の構想なんかは撤回したらどうなんですか。その点について伺いたい。
  72. 小津修二

    ○小津説明員 申し上げるまでもなく、石油につきましては、国民経済のあらゆる活動及び国民生活の基幹を形成いたしますエネルギーでございます。したがいまして、これを十分な量において確保をはかっていくということは、わが国としては、政府といたしましても絶対の要請でございます。国際的にも、石油基地というものに対しまして現在六十日の備蓄を持っておりますが、これを九十日にふやしていくということは日本の全体に課せられた責務であろうというふうに考えております。したがいまして、これをどういう基地に、どういう場所に確保を進めていくかということは、現在、政府の中におきまして、諸般の事情を考慮しながらきめてまいりたいというふうに考えております。
  73. 井上泉

    井上(泉)委員 時間がないから、くどくどした答弁は要らぬです。あれだけ漁民が猛反対をしておる、そういう大切な漁場に石油基地を設けるということは絶対に反対だから、その構想を白紙に戻さないと、何ぼ通産省が備蓄を計画しても、それを宿毛湾へ持っていこうと考えても、これは実行不可能ですから、もうそれは撤回すべきであるということを強く私は申し入れておくわけですが、それについてもう一回御返事を承りたいと思う。
  74. 小津修二

    ○小津説明員 備蓄の具体的な地点を選定するにあたりましては、当然、地元の関係の方々との十分な御理解、話し合いのもとにこれを進めていくということでございます。したがいまして、お話しのような地点につきましては、そういう点も含めて今後慎重に配慮してまいりたいというふうに考えております。
  75. 井上泉

    井上(泉)委員 それはむだな努力ですから、宿毛湾はやめなさい。そのことを強く申し入れておきます。  そこで、官房長がおいでになっておるわけですが、先ほど大臣から私の質問に対していろいろと御答弁をいただいたわけですが、来年度から新しい農政の転換期である。もう転換をせねばならない時期であるから、来年度におきましては、かなり思い切った農政の方向というものが国民の前に、そして農民の前に提示をされなければならないと思うわけです。そこで、事務当局として、そういう面で、少なくとも来年の通常国会あたりには、日本の農業を、国民食糧自給率をこの五カ年間ではこういうようにするのだというように、国内国民食糧自給率を高める目標に向かって、国内農業生産や農地の生産性を高めるための構造改善だとかその他の諸政策というものがそれに裏づけされねばならないと私は思うわけですが、そういうものを相結合させた計画というものを通常国会の再開堅頭なり、あるいは通常国会の会期中くらいには農民に一つの目標として示して、これだけ国民食糧自給率を高めなければいかぬ、高めるということが今日必要な段階だ、だからそれに基づいて日本はどうせなければいかぬとか、日本の農地をどうするかというようなアウトラインぐらいは示すことができるかどうか、官房長にその見解を承っておきたいと思います。
  76. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 お答え申し上げます。  先ほど農林大臣から御答弁申し上げましたように、最近の穀物等国際需給動向なり諸般の状況を踏まえまして、かつて一昨年、五十七年目標の農産物需要見通し生産目標の試案を発表いたしましたが、情勢が大きく変わりまして、諸般の検討を要するということで、新たに六十年を目標年次とする需要見通し生産目標の設定を急いでおります。農政審議会におきましての需給部会で現在検討中でございますが、その検討を待ちまして、農林省といたしましても、あるいは今後の政府全体の方針といたしましても、その生産目標にのっとって、ただいま先生御指摘のような自給力強化のための施策を進めるということを考えておるわけでございまして、いずれにいたしましても、最終の成案を得ないまでにいたしましても、ある段階でこの内容を明らかにいたしまして御批判を仰ぎたいというふうに考えております。
  77. 井上泉

    井上(泉)委員 時間がありませんのでこの一点で終わりたいと思いますが、そういう中で、土地というもの、そして作物というもの、その関連においての肥料というものがどうしても重要な役割りを示すことはもう言うまでもないことですが、ところが、その肥料も、いわゆる化学肥料によって日本の農地の地力が低下をして、いまや地力は瀕死の重症にあるということが言われておるわけです。そうすると、勢い自給肥料というもの、肥料の体制というもの、いわゆる肥料政策というものを変えなくてはならなくなってくると思うのですが、農蚕園芸局長はこの肥料政策というものをどういうふうに考えておるのか。その点を承っておきたいと思います。
  78. 大河原太一郎

    ○大河原(太)政府委員 農蚕園芸局長を他の委員会にとられておりますので、お許しを願って便宜お答え申し上げますが、御指摘のとおり、地力問題を今後の長期のわが国農業生産力維持のために再検討しろという意見がしきりでございます。特に、水田におきましては、地力の維持、リザーブが畑に比べると比較的程度がよろしいわけでございますが、畑地における地力減耗という問題が特に最近指摘されておるわけでございます。これにつきましては、五十年度予算要求等にもその要求をしておりますが、堆厩肥の施用の増加その他の地力の維持、培養のための各般の施策ということで、時間の関係がありますから具体的に一々申し上げませんが、関係予算を農業生産振興の柱の一つとして現在要求しておりまして、差し迫った予算編成におきましても、その経費の確保につとめたいというふうに考えております。
  79. 井上泉

    井上(泉)委員 委員長、終わります。
  80. 澁谷直藏

    澁谷委員長 諫山博君。
  81. 諫山博

    諫山委員 部落解放同盟朝田派が、窓口一本化と称して、さまざまな同和対策事業を私物化する、独占化するという事態が起こっていることが今度の臨時国会で非常に大きな問題になりました。解同朝田派に属していない者については同和対策事業の適用からはずされる、これは新しい差別ではないかという観点で、わが党は、民主主義の基本に触れる問題としてこの問題を取り上げております。予算委員会では、東京都の応急生活資金あるいは大阪府の同和住宅、同和奨学金等、さまざまな問題が取り上げられていますが、これが農業分野にも及んでいるということを私たちは無視するわけにはいきません。  十一月二十八日に部落解放同盟正常化連の代表の人たちが農林省交渉をいたしました。この中で、同和対策事業が農業分野でも不公正に運用されている、これを是正すべきだという問題提起があって、たとえば群馬県の農業共同事業に補助金が出ているけれども、それが適正に使用されていないのではないか、大阪府の同和食肉事業協同組合にも問題があるではないか、広島県福山市では、農機具、農道、農業金融などでいろいろな新しい差別がつくり出されている、と、こういう問題が提起されています。  きょうは時間の制約がありますから、その一、二についてのみ質問しますけれども、福山市の農業関係の同和金融でありますが、私たちは、同和地区の住民に農業関係の特別の融資制度がつくられていることには賛成です。これは積極的に推進すべきだと考えていますけれども、ただ、福山市同和対策農業経営資金要綱に基づいて貸し付けられている貸し付けのやり方には非常に問題があるというふうに考えております。そこで、この要綱は昭和四十七年十月三日から施行されていますが、現在までこの要綱に基づいて何件貸し出されたのか、貸し出し金額は幾らだったのか、農林省調査を求めていましたから、御説明ください。
  82. 関口尚

    ○関口説明員 御説明申し上げます。  福山市の融資に関しましては二つございまして、福山市同和対策農業振興資金というものがございます。その中身は、近代化資金の利子の軽減をはかる市単独事業と、それから後進地域経営改善資金、同和地区の経営改善資金でございますけれども、これに対する利子の軽減をはかる。この二つございますが、後者の公庫資金によりますところの経営改善資金につきましては、いまのところ実績はございません。前段の近代化資金につきます利子補給につきましては、実績はあるということでございますけれども、具体的な内容、数字については把握してございません。  以上です。
  83. 諫山博

    諫山委員 私が読み上げた農業経営資金要綱に基づく貸し付けが何件であり、総額が幾らであるかということは一週間ほど前から調査を求めていたわけですが、まだわからないのですか。
  84. 関口尚

    ○関口説明員 先ほど申し上げました経営改善資金、公庫資金につきましては実績が一件もございません。近代化資金のほうに対する利子補給については実績があるという報告を受けてございますけれども、件数、数量につきましては把握してございません。
  85. 諫山博

    諫山委員 私が一週間も前から調査を要求した点で明確になっていないのは非常に残念ですが、それにしましても、この要綱の第三条の(イ)には、「福山市内に住所を有する同和地区住民およびその出身者で農業を営むもの」とあって、この人が貸し付けの対象になっております。これはけっこうです。ところが、どういう手続で借り受けるかというと、第五条の融資の手続に、「融資を希望する者は、申請書に該当事項を記入し、福山市生活相談員または部落解放同盟福山市協議会支部役員の意見を添え、市長に提出する。」となっております。つまり、生活相談員あるいは解同朝田派の支部役員の意見が添えられなければ借り受けられないという仕組みです。生活相談員というのはどうして選ばれるかというと、生活相談員設置要綱では、「生活相談員は、部落解放同盟福山市協議会との協議を経て、市長が委嘱する。」という規定になっております。つまり、部落解放同盟朝田派の意を受けた人の意見を添えなければこの特別の農業関係の同和融資が受けられないという仕組みになっているわけです。こういうやり方は正しいと思っているのか、間違っていると思っているのか、農林省、いかがでしょう。
  86. 大山一生

    ○大山政府委員 福山市で行なわれておりますところの、いま先生が読み上げられましたところの、要するに、生活相談員または解放同盟の支部の役員の意見を必要とするというふうなことがあることは県から聞いておりますが、この近代化資金制度なるものは、県、そして市町村におきます独自の金融助成措置であるということでありまして、同和対策行政というものは、同対審の答申にもありますように、地域の実情に即して行なわれる、こういうことでございます。そういうように、農林省から見るならばいわば地方自治体の範囲の問題でございまして、農林省として、そういうあり方について一律に評価することは適当でないというふうに考えます。  ただ、同和対策事業というものが、同じくあの精神に出ておりますように、地域住民をひとしく対象として実施するものであるというようなことでございますので、その点から言うならば行政の公平性を欠くような事態というものはないであろう、あるとするならば遺憾であるということであると思います。
  87. 諫山博

    諫山委員 私は、抽象的な説明はもう要らないということを事前に繰り返し繰り返し農林省の人に言いました。この運営要綱は、あなたが言われたところのひとしく公平という立場から見まして正しいかどうか、その具体的な回答をお聞きします。
  88. 大山一生

    ○大山政府委員 市の判断でありますと、市がその種のことを判断すること自身が差別問題になるのでできないというのが市の姿勢のようでございます。地方におきます独自の措置に関する評価でございますので、一律にいいとか悪いとかということは言えないというふうに考えるわけでございますが、いずれにしても、この間の福田大臣の予算委員会における答弁じゃございませんけれども、とにかく地方において仲よくやってもらいたいというふうな方向になるということであると思っております。
  89. 諫山博

    諫山委員 農林省はいまに及んでも答弁を逃げております。具体的にいいとか悪いとか答えないわけです。これは行政指導の放棄じゃないですか。  そして、これは農業金融にあらわれているだけではありません。福山市を調査しますと、たとえば大学同和奨学金支給要綱、就職支度金支給要綱、老人手当支給要綱等、そのほかすべての同和事業に同じようなことばが盛り込まれているわけです。つまり、こういう同和対策事業の利益を受けるためには、生活相談員あるいは解同朝田派の幹部の意見をもらわなければその手続がとれないという仕組みになっているわけです。そして、たとえば解同朝田派に所属していない人が意見書を添えずに申請したところが、福山市の同和奨学金では、生活相談員宮川義行氏の所見を記入してもらってくださいということを書いて突き返した例があります。あるいは、正常化連福山市協副委員長の意見を添えたところが、部落解放同盟支部役員あるいは生活相談員だれそれの所見を記入してもらってくださいということを書いて突き返しているわけです。これはほとんどすべての同和事業に同じようなことが行なわれているというので、裁判所にまで提起されているのですが、自治省、こういうやり方で自治省は公平にひとしく同和事業が行なわれると思っておりますか。自治省の見解を聞きます。
  90. 竹村晟

    ○竹村説明員 ただいま、農林行政を中心にいたしまして、そのほかの部門にもわたりまして同和行政の進め方につきまして御質問があったわけでありますが、この同和行政を進める上におきましていろいろ手続の関係があるわけでありますが、それらの手続につきましては、やはり、地域の実態に応じまして、あるいは専門部局のそれぞれの行政に適するような方法でやるべきではないかというふうに考えるわけであります。しかし、いずれにしても行政の内容というものは公平でなければいけないし、自治体として責任を持ってやらなければいけないというふうに考えます。
  91. 諫山博

    諫山委員 そういうことは総理大臣が答弁すればいいことであって、私がいま読み上げたような運営要綱というものは、ひとしく平等にというたてまえから見て正しいか正しくないかと聞いているのです。この点で明確な結論が出なければ行政指導ができないでしょう。どうですか。
  92. 竹村晟

    ○竹村説明員 その点につきましては、地方団体が地方自治の本旨に従いまして自主的な判断でやるべきである、ただ、その場合にも公平な行政確保ということは非常に重要である、こういうふうに考えます。
  93. 諫山博

    諫山委員 正常化連の役員の意見書を添えたところが却下された、解同朝田派の意見書を添えて申し込めばこれが認められる、こういうやり方はひとしく公平に行なわれていることになりますか。具体的に答えてください。
  94. 竹村晟

    ○竹村説明員 この点につきましては、やはり、地域の実態に応じまして地方団体が自主的に判断すべきであるというふうに考えます。
  95. 諫山博

    諫山委員 もちろん、地方自治の本旨に従って行政が進められるべきは当然です。しかし、この問題については、ひとしくとか公平にとかいうことは、あなたたちの次官の名前の通達で各自治体に流しているでしょう。こういう具体的な問題で明確な結論が出ずにどうして行政指導ができますか。  こういう問題というのは金融だけではありません。たとえば農機具について言いますと、福山市の天神前地区、ここは解同朝田派が支配している地域ですが、ここには十三世帯で四年間に総額二百三十九万円分の農機具が提供されております。草刈り機、田植え機、バインダー、ハーベスター、耕運機、こういうものが四年間二百三十九万円分です。ところが、隣の神村十二区、ここは農家が八戸ですが、解同朝田派が支配していない部落です。全員が正常化連に加盟しております。ここには一台の農機具も来ていないわけです。明白にこれは部落の中に新しい差別をつくり出す行政ではありませんか。こういうやり方を農林省は是認するのか、そして、こういう問題を是正するつもりがあるのかどうか、農林省にお聞きします。
  96. 大山一生

    ○大山政府委員 先ほど来申し上げておりますように、この農機具の導入という問題につきましては、これはいわば県なり市の単独事業として実施されているわけでございます。そこで、いま御指摘の導入地区数でございますけれども、いま言われました神村町十二区は、確かに導入地区としては入っておりません。福山市におきます同和地区は二十二地区ございまして、過半の地区がまだ未導入になっているようであります。そこで、市のほうにおきます同和対策の長期計画に基づきますと、五十年以降に御指摘の地区についても実施するという旨の報告を受けているわけでございます。  なお、先ほど来先生が言われました国の補助事業の用途を見てみますと、大体が農道等の生産基盤の整備が重点的に取り上げられているようでございますけれども、その実績は五地区になっておりまして、その中にはいま言われました神村の十二地区の事業も含まれている、こういうふうなことでございます。  いま先生が言われました農機具につきましては、市の長期計画によりまして、五十年以降に実施する旨の報告を受けております。
  97. 諫山博

    諫山委員 五十二年以降というとずいぶん将来ですが、いつごろどういう農機具を入れるつもりですか。同時に、また、農道のことも正常化連の農林省交渉で提起されております。福山市では全体で四年間一億二千万円の農道の整備が行なわれたのに、神村十二区にはゼロだ、放置されたままだ、これは全員が正常化連に入っているからつくり出された新しい差別だ、こういう問題提起がされているのですが、いつごろどういうふうに是正するつもりか、具体的にお答えください。
  98. 大山一生

    ○大山政府委員 私、先ほど五十二年と申し上げたのではなくて、五十年以降と申し上げたわけでございますが、福山市の神村十二区に対する農機具の倉庫なり共同利用農機具等の導入計画は、これは長期総合計画、四十九年から五十三年ですが、それで見ますと、五十年に三つ、それから五十一年、五十二年と、こういうふうに分かれて入れる計画になっている旨のことを聞いています。  それから、生産基盤整備につきましては、農道とため池が五十年に一つ、それから五十一、二年にわたって農道が一つ、こういうのが総合計画になっているようでございます。
  99. 諫山博

    諫山委員 こういう問題は広島県だけではありません。私は群馬県の榛名町に調査に行きました。ところが、榛名町のある部落にことしの秋新しく農機具が入ったが、しかし、解同朝田派の幹部の人たちは、朝田派に所属していないなら農機具は使わせないと言っているというので、たいへん問題になっております。こういうことは許されてはならないと思うのですが、事前にそういうことが行なわれないように行政指導できるかどうか。農林省、いかがですか。
  100. 大山一生

    ○大山政府委員 農林省といたしまして、補助事業については、事業主体がそれをどう活用するかということについての基本原則というものにつきましては、次官通達ですでに出されているわけでございます。末端におきまして行なわれております事業に対して国が補助する場合があるわけでございますけれども、それは末端における事業主体において直接指導されることであり、その指導の精神については、同和対策事業特別措置法の精神に基づいて当然行なわれるべきものである、こういうことであろうと思っております。
  101. 諫山博

    諫山委員 自治省に答弁してもらいます。  榛名町では、現在起こっているのではなくて、将来、解同朝田派に所属していなければ農機具を使えなくなるのじゃないかということが懸念されているわけです。ここには、解同朝田派にも所属していないし、どこの団体にも属していないという人もいますし、正常化連に入っている人もいます。そういう状態の中で、朝田派の人でないとこの農機具を使えないということが許されるのかどうか。許されないとすれば、自治省としてはどういう行政指導をしていただけるのか、説明してください。
  102. 竹村晟

    ○竹村説明員 行政につきましては、やはり、あくまで公平性が確保されなければいけないわけでありますが、その行政の公平性の確保につきましては、政府といたしましても、それぞれ所管する行政分野に従いましてこれは指導をしておるところでありますし、特に、同和行政につきましては、総理府の同対室等があるわけでありますが、地方団体を指導する場合には、たとえば地方団体の同対室ですと、政府のほうの総理府の同和対策室が指導するというような形をとっておりますし、農林行政あるいはそのほかの部門につきましても、それぞれ所管の省庁があるわけでございます。  しかし、この問題につきましては、やはり各省が協力してやる必要があるように思うのであります。われわれといたしましても、公平の行政が行なわれますように、その趣旨の徹底についてさらに努力をしたいと考えます。
  103. 諫山博

    諫山委員 公平な行政が行なわれるようにするのは当然です。私が言ったようなことは不公正ではないかという質問についてはどうですか。一般的なことはもうわかっております。朝田派に所属していなければ農機具は使えないということが公平かどうかと聞いているのです。一言答えてください。結論はイエスかノーかで済むでしょう。——それに答えられないというのは、あなたたちが行政指導を放棄しているということじゃないですか。  答えがないようですから続けますが、福岡県で調べたら、やはり同じような問題が至るところで出ております。たとえば行橋市、方城町なんかでも同じような問題が出ております。ただ、私が農林省にいろいろ質問して非常に驚いたのは、全く実態をつかんでいないということです。これが町から県、県から農林省と行くに従って実態がぼやかされております。  そこで、政務次官に質問します。こういう実態というものが相当広範囲に行なわれているということは、予算委員会なんかを通じてもう大体御理解いただいたと思いますが、農業分野でもっと具体的な実態を農林省がつかむこと、これが第一に必要だと思います。そして、こういう行政のやり方が正しくないことはもうわかり切ったことですから、こういう問題について積極的に農林省が是正策を進めていくということを要望しますが、次官、いかがでしょうか。
  104. 江藤隆美

    江藤政府委員 御存じのように、農林省の行なっている同和対策は、同和対策事業特別措置法及び同和対策長期計画に基づく政府の同和対策の一環として実施しておるものでございます。地区住民との緊密な調和を保ち、それぞれの地区の実情に即応して行なわれるものでありますが、同時に、また、関係地区住民をひとしく対象とし、公平に実施すべきものであることは当然でございます。必要な事項がございましたならば、今後ともに十分検討してまいりたいと思います。
  105. 諫山博

    諫山委員 私たちも同和事業を積極的に進めることには賛成です。ぜひ実態をつかむように努力していただきたいという点はどうでしょうか。
  106. 江藤隆美

    江藤政府委員 できるだけ御意向の趣旨に沿いまして努力をいたしたいと存じます。また、全国各地にまたがっておることでございますから、私たちの目の届かないところ、あるいはまた調査の及ばないところ等も今後あるやもしれませんけれども、その点は諫山委員におかれましても、私どもに率直な御意見なりまたいろいろと事情のお知らせをいただければたいへんありがたいと思いますので、あわせて御協力をお願いを申し上げます。
  107. 諫山博

    諫山委員 終わります。
  108. 澁谷直藏

  109. 美濃政市

    美濃委員 私は、加工原料乳の対策牛肉価格のみについて、時間の関係もありまして、簡単に質問いたしたいと思います。  まず、第一に、畜産局長にお尋ねいたしますが、加工原料乳補給金に基づくいわゆる保証価格は、いまの時点になりますと、さきにてん菜、砂糖類関係、沖繩のサトウキビその他、きまりました米価をはじめとして、ほとんどの政府の買い入れもしくは支持価格、あるいは国際的な農産物はかなり暴騰しておりますから、その支持価格に伴う具体的な取引価格というものから出る現時点の農民の労賃補償部分、これは男女込み大体六百円になっておる。切れても十円ぐらいの差で五百九十円。若干ですけれども、六百円をこえておるものもあります。まあ男女込みで六百円と言えるんです。これは六百円になっても、労働省が発表しております現時点の最近の都市製造業労賃は一時間七百円をちょっとこえておるわけでありますから、その格差はいまここで論じませんが、しかし、この加工原料乳補給金に基づく保証価格は極端ですね。これが百キロあたりで表示されております家族労働が四百六十円、それから粗飼料を生産する労働がたしか三百二十円だったと思うのです。百キロあたり一・四時間でございますから、これを両方加重平均すると、酪農の加工原料乳の生産労働は三百九十円、一時間当たり二百円下回っておるわけですね。  こういう状態でありますから、過般も私は加工原料乳地帯、特に北海道の釧路、根室地帯を二日、三日歩きましたが、その中で、数軒の農家の二十三歳から二十五歳の者が——全部の町を歩いたわけでないが、私が三日歩いた中で、三戸の農家のむすこさんが職を求めて出てしまった。あとに残るのはもう六十近い人なんですが、総合資金を一千数百万、あるいは二千万借りて、膨大な畜舎を建てて、いわゆる搾乳牛で、二十頭、三十頭くらいの規模のものをつくっておるが、これはもう維持することはできない、牛は値下がりしておる、売っても借金は払えない、政府借り入れ金が払えないという現状です。こういう状況がかなり出てきております。これでは酪農はもう崩壊してしまうと思います。あとから肉の話をしますけれども、現時点のこのままでおけば酪農はたいへんなことになる。先ほどからも話を聞いておると、新大臣は、食糧需給計画には特に力を入れる、来年度予算についても見直して需給計画の方向で検討するというようなことを言っておりますが、これに対してどういう考えでおるか、これが第一点。  それから、もう一つは、御存じのように価格決定の時期ですね。あの計算方法で三月に決定するとそういう問題ができる。最大の基準が、大体前年度の労賃が基準となって決定される。五人規模労賃と言っておりますが、パリティじゃございませんから、保証価格が、たとえばそれが五人規模労賃であったとしても、前年度価格が基準とされて、今日になると、この物価高の年の瀬を迎えて、ことしの労賃というのがほとんど加味されない三月時点に決定されておる。これは修正するのが当然ですね。四十九年度春闘によって、三月以降の労賃、物価の変動率によって特に労賃均衡ができるわけですから、労賃、物価の変動から起こる労賃の均衡、特に労賃の均衡修正、これを主体にして年度内に価格を修正するということは当然の行政措置であろうと思うのですが、それについてどういうふうに考えておるか、いまどういう作業をしておるか、これをお伺いいたしたいと思います。
  110. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 四十九年度の加工原料乳の保証価格は、三月末に、当時の資料をもとにいたしまして、また、種々生産者の方々から御要望のございました算定方式も改めまして、四四・三%という、最近では非常に大幅な改定をしたわけでございます。その後諸物価が上がっておるという点、労賃を含めまして上がっておるという事情はもちろん御指摘のとおりでございますし、さらに、子牛価格等副産物収入につきましても、当時算定したものに比べまして、乳雄の子牛につきましては確かに低くなっておるというような点から、酪農経営が苦しいという点につきまして、われわれもその点を特に否定するつもりはございません。  ただ、現在の価格の算定のやり方につきましては、法律上、すでに御承知のように、再生産を確保する、加工原料乳の生産地帯における牛乳の再生産を確保することを旨として定めるというように明記してございますし、さらに必要ならば年度内に改定するということももちろん規定がございます。「物価その他の経済事情に著しい変動が生じ又は生ずるおそれがある場合において、特に必要があると認めるときは」「改定することができる。」という規定はもちろんあるわけでございますが、特に必要があるかどうかということを、判定といいますか、考える場合に、生乳の再生産が確保されているかどうかということは、先ほど申しました価格算定の基本的な考え方、法文に明記されております基本的な考え方から、一番そこがポイントになるのではないかというようにわれわれは考えておるわけでございます。そういう意味からいたしますと、全国的に生産が伸び悩みだという面はございますけれども、主要な加工原料乳の生産地帯である、いわゆる一道四県の本年度四月以降十月までの生乳生産の推移を見てみますと、前年よりやや上回るという傾向で推移をしておるのが現状でございます。  そういうことでございますので、ただいま直ちに年度内の改定をするということは非常に困難ではないかということで、生産の推移等を慎重に見守っておるというのが現状でございます。
  111. 美濃政市

    美濃委員 これは畑だけでなくて、水稲を含めてもいいのですが、農作であれば、いまのような考え、いわゆる再生産の確保とか、あるいは価格やその他の関係で減ったからこれは奨励金をつけにゃならぬとか——奨励金をつけるとぐっと回復しますけれども、酪農は、崩壊した場合にはそうはいきませんよ。いまの答弁は、主要生産地帯で多少伸びておると言うけれども、牛が全然売れないのですよ。売れないから、しかたなくてしぼっておるというのが現実ですね。えさは高くてできません。北海道における酪農地帯の負債は増加します。膨大に増加します。その増加した実績は、来年も引き続く国会ですから、一月の国会までには資料をつくって提示しますがね。あなた方は少しおかしいのじゃないですか。  いまの答弁のような、そういう姿勢で見守っておるのだ。上げる必要はないという姿勢だね。政務次官、どうですか。一時間当たり二百円労賃の格差ができておるわけですね。申し上げておるようにこれははっきりしておることなんだ。これをこのまま放置して、ですから所得が低い、それに肉が安いときている。この肉安というのが、たとえば生まれ落ちの犢を九千円で、副産物収入で、収入算入でことしの保証乳価を計算しておる。その子っこは平均二千円か三千円にしか売れない。また、乳牛償却の計算の中では、搾乳が終わったものは二十万で売れるという計算をしておるが、いわゆる廃牛というものが八万円ぐらいにしか売れない。この部分だけでも、多頭飼育しておる農家になると何十万ということになります。一戸当たりにすると、北海道の大飼育をしておる頭数になると、牛肉一キロにつき、私の計算では約一円五十銭ぐらい乳価が安いのと同じ結果になるわけです。賃金が男女込み労賃で一時間当たり二百円の格差、農産物賃耕の中でも安くて、そのほかに、乳価算定の基準である乳牛償却を計算するときに、二十万で売れると計算したしぼり上げた牛が半分にも売れない。十万円にも売れない。九千円で売れると計算した生まれ落ちの積は二千円か三千円にしか売れない。この違いだけでも大きいわけです。それは二百円一時間当たり労賃が落ち込んでおるほかに、それだけの肉安による経営不振というものが起きておるわけです。   〔委員長退席、中川(一)委員長代理着席〕  それで、因については、畜安法の指定に入れて、何か政策的な手段を打ってくれるだろうということを期待しながら、歯を食いしばって年越しを迎えておるのが酪農の現状です。それを、いま畜産局長の言うように、加工原料乳地帯は若干牛乳の量が上回っておるからいま値段なんか上げる必要はないということは、まことに冷酷むざんなものの考え方だと思うのです。酪農というのは、崩壊したらもとへ戻れませんよ。農作じゃないですからね。農作物であれば、価格が安くて、反別が減って、自給が怪しくなってくれば、奨励金でも一たとえば麦の奨励金が二千円だとか、大豆の奨励金が二千五百円だとかというと、かなり反別が伸びますね。生産回復がすぐできます。しかし、酪農というものは、一たん破壊したらもうもとへ戻らないです。どうしてそういうふうにものを考えておるのか。生産が伸びておるからだいじょうぶですという答弁には私は納得できないわけですね。その見解をはっきりと承りたいと思います。そういうことで間違いないのか。それと、私が提示をしておるところの、一時間二百円の格差が生じ工おるということを認めるか認めぬか、そんなことがないならないとはっきり言いなさいよ。一時間二百円という労賃の格差、それから製造業労賃との格差は一時間当たり三百円。都市製造業労賃の半分の所得補償、そんなもので生計ができるのかどうか。その見解をはっきりしてください。私が間違っておるなら間違っておると、そのとおりならそのとおりだと、その回答を求めます。
  112. 江藤隆美

    江藤政府委員 御案内のように、ことしの春に乳価を四四・三%引き上げるということにいたしました。そのとき豚肉が三三・四であったかと思います。その後、御存じのように、米価が三二、奨励金その他を入れて三七・四であります。たばこがたしか四三・九だったかと思います。それから、サトウキビがちょうど五〇%になります。根っこの大きい小さいは別として、四四・三という引き上げ幅はかなりのものであったと私は現在思っております。  ただ、御案内のように、その後国際的に畜産の情勢が非常に変わってきた、えさが高くなってきたということが一つと、それから、日本に限らず、EC諸国でも、あるいはアメリカでも、豪州でも、それぞれ肉の売れ行きが減ってくる。肉価格が値下がりをする。そういう問題がもう国際的な問題となって、ひとりわが国だけではなくて、いまや大きな政治課題だと私は思っております。  したがって、御案内のように、なるほで四月と七月に四千円ほどえさの値下がりはいたしましたものの、再び十月に値上がりをするということでございましたから、私どもとしては、団体にも要請をいたしまして、一カ月引き延ばしをして、十一月の一日から平均七千六百円の配合飼料の値上げということにしたことは御承知のとおりだろうと思います。そのときに基金の取りくずしをして、おおよそ平均二千四百円を補てんする、同時に、実は、来年の四月から指定食肉に乳雄を入れるという時期と一緒にえさの基金制度を発足させようということであったわけですけれども、それではえさの値上がりが急なために間に合わないではないかということで、非常に無理なことでありましたけれども、先般来御審議をいただいた補正予算の中に六十億を計上して、そして一月から親基金制度を発足させる。原料価格が一五%、配合飼料価格が八%以上値上がりしたならば、その分について親基金から補てんをして、農家の皆さんの負担の軽減をしよう、こういうことを実はやってきたわけであります。  一方、いまおっしゃるように、老廃牛の価格が下がったではないか、負債が急増しておるではないかという点も、私どもも存じております。したがいまして、実は、五月の三十日現在で、肥育をやって負債の焦げついておる農家に対しては、どうしてもこの負債整理をしようということで緊急対策を打ち出しました。しかしながら、それは前年度からかなりよかった時代もありますし、あまり負債があがってこない。そこで、実は、この報告に四カ月以上費やし、それを取りまとめて調整するのに締めて半年もかかる、その中で市況の回復ははかられないという事態になりましたので、先般来、御承知のように、今度はさらに、その時点で農家が保有しておった肉牛の対策として、一頭十万、金利を四分にして、実質運用上据え置きを一年にして、合計五年のたな上げをしよう、五年の償還にして、とにもかくにもいま肉が下がっておる、子牛が売れないということに対処しようということで、実は、二百八十億の緊急対策をいたしたわけでございます。  実は、途中で、一月から指定食肉に入れてこれをやるべきではないかという意見のあったことも事実でありますし、内部においてもこのことについては十分議論を戦わしたのでありますが、えさの場合と違いまして、規格の問題あるいは取り扱いをどうするかという問題等、各省間の調整等もいろいろとございまして、どうしても間に合わない。そこで、予算だけはとにもかくにも新年度予算に織り込んで、来年の三月一ぱいには準備万端整え、四月からこの制度を発足させようではないかということで鋭意いま努力をいたしておるさなかであります。  いま、畜産の農家が非常な苦しみの中で歯を食いしばってがんばっておられる姿は、私どももほんとうによく理解できるつもりでおります。そして、また、一たび家畜の頭数が減ったならばなかなかもとに戻らないということも存じておりますがゆえに、農林省としては最大の努力をしてこの問題に取り組んでおることを御理解を賜わりたいと存じます。  労賃評価について、二百円あるいはそれ以上の差額が出ておるではないかという御意見でありますが、単純明快に感じを申しますと、そのような程度になろうかという感じがいたします。
  113. 美濃政市

    美濃委員 そうすると、一時間二百円という所得格差というものは大きい格差ですから、あるいはそのほかえさも高いわけですから、融資対策の話がございましたが、これは融資で済ます問題ではないと思うのです。先ほど申し上げたように、一面そういう急激な経済変動があったものは、法律にもあるわけですから、価格政策で補てんすべきものは補てんしなければ——融資対策は、私は全面否定はしません。たとえば天災融資法のように、天災によって平年収量の収穫が得られないという場合、それはその年度の価格政策でそれを補てんするとか、そういうものではないと私は思います。やはり価格は平年度収量で、そうして物賃の均衡をとった行政価格で行なわれるべきであろうと思いますから、それが天災等によって、収量の減によって一時的に所得が確保できない場合に、天災融資法等によって、融資対策でその所得減を補てんして、そうして農業経営の持続をはかっていくという方法については、私は、そこに融資対策というものも必要であると考えております。しかし、最近のようなこういうインフレの経済変動によって起きてくる現象を融資で済ませたって、いまの酪農家には支払いのめどがありません。これはやはり価格政策で補てんすべきが当然であります。えさが値上がりしたり、あるいは他の企業や公務員の労賃等から比較しても、所得の政策上の不十分というものを、融資で、利子を付して返さなければならぬ金で補てんして経営を持続せよという政策は、それが行なわれる農家にしてみればとんでもないことでありまして、政策としては全く間違った政策である。  同時に、再生産確保と言いますけれども、いまやめるにやめられぬからがんばっておる。しかし、負債が高額に達してもうやれないし、一面、もう崩壊する農家が出てきたということです。それから、各地に自殺者が出ておる。これがまた新たな特徴だろうと思う。新聞によっても、北海道地域でも出ております。指導上の責任を感じて自殺をしたとか、具体的な負債でどうにもならなくて自殺をしたとか、各地で自殺者が出ておりますね。特に牛の関係で、肉の関係で出ている。これは悲惨な状態だと思うのです。これはこのままでは置けないし、いま行なわれておる融資対策というものは、政策的な方向としてそういう政策をとったんだからそれでいいというものではないと私は思いますが、どうですか。  これは鋭意やられております。それも聞いております。政務次官から聞かぬでも、前に畜産小委員会で論議をしておりますから、その話は正式にも私は聞いております。しかし、起きておる現象というものは、そんな手当てをしたって支払うめどがありません。私に言わせるならば、これは融資で済ますべき問題ではなくて、政策の責任で、利子がかからぬで、払わなくてもいい金で始末するべきだ。そして早急に価格改定をするべきだ。てん菜はやったでしょう。一トン五千円近い措置をやったじゃないですか。これでは酪農の再生産もできない。どうして畜産局はそれをやらないのですか。私に言わせたら、これは誠意がないと思う。おのおのの価格で比較をしてみてください。甘味対策はやれて、畜産対策はやれないのですか。そうなると、局長の手腕が悪いのか、どこが悪いのか。片一方はとにかく改定をやったじゃないですか。   〔中川(一)委員長代理退席、委員長着席〕  いずれにしようと、三月にきめたのと、今日時点の経済的なその格差は非常に食い違っておる。しかし、畜産のほうは依然としてやる必要がないという考えだ。この点、どうですか。
  114. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 先ほどもお答えしましたし、また、政務次官からもさらに詳しくお答えがございましたように、われわれといたしましては、法の規定から言いまして、再生産を確保するということを旨として価格をきめております。その後の生産の推移等も先ほど申し上げたとおりでございますので、現在直ちに改定をするということはきわめて困難であるというふうに考えておりまして、なお、今後の生産の推移を慎重にいま見守っております。  なお、酪農経営が非常に困難であるということの理由の一つとしては、肉牛の価格あるいは牛肉価格が低落して、それが酪農家の雄子牛の価格の低落を来たして副産物収入が減っているという、こういう点にある点も考えまして、牛肉価格安定対策については、来年度から指定食肉に加えるということも検討はいたしておりますが、当面の対策といたしまして調整保管を実施し、あるいは消費拡大を実施するということも、先ほどお話しもございました低利融資を含めていろいろやっておるわけでございまして、きのう現在でございますが、ようやく千円台もこえた。これはこのままでいくかどうか、にわかにまだ断定できませんけれども、そういう努力をいたしまして価格の回復に全力を尽くしておるというところでございますので、われわれといたしましては、対外的な関係もございまして、輸入の再開ということに対する要望も強く参っておりますけれども、現状ではそれもできないというかたい態度で臨んでおります。  それらの対策を通じまして早急に適正水準まで価格を回復するということによりまして、酪農経営にもプラスになるということを現にやっておりますし、今後も引き続き努力をしてまいりたいというように考えております。
  115. 美濃政市

    美濃委員 当面の対策は、いまのような答弁では私は納得できませんが、時間もないし、ここで価格政策をこれ以上きょうやりますという詰めはちょっとできぬと思います。いずれ年がかわれば通常国会に入るわけですが、きょうのようなやりとりでは了解することもどうすることもできません。ですけれども、時間の関係でいつまでも平行線をたどっておるわけにいきませんから、そこで根締めをしておきたいのですが、来国会には、通常国会には、指定食肉に入れる畜安法の改正を——これはどういうふうに出てくるかわかりません。それは出てからまた審議をして、不十分であれば修正ということもあり得るわけですからね。それとえさ安定対策、えさのもと基金をつくるということ、この立法措置ですね。この二つは次の国会には出しますね。これを通常国会提出するということを明らかにしておいてもらいたい。
  116. 江藤隆美

    江藤政府委員 えさのほうは法律は要らないものと私ども考えております。  それから、ただいまの牛肉を指定食肉とすることの立法措置については、御案内のように、畜産物の価格安定等に関する法律の一部改正をできるだけ早い機会にお願いをいたしたい。そして、先ほど私が乳雄と申し上げましたけれども、この中には乳雄と和牛も含めたい、このように考えていま作業を急いでおるところでございます(「乳廃牛はどうするのですか」と呼ぶ者あり)  廃牛は入れる考えは現在持っておりません。と申しますのは、品質のアンバランスが非常にひどいのであります。したがって、この規格をつくる場合に容易でない。これはもう御案内のとおりです。これは黒牛でもそのとおりでありまして、できるならば全体を含めることが一番いいのじゃないかという考え方を私自身も持っておりまして、そういう方向で実は検討してまいりました。ところが、豚でありますと、御存じのように、大体子供のときから肥育があがるまで同じような日数でありますから、ほとんど品質が均一なんです。ですから価格制度というものがとれますけれども、いまのような状態で老廃牛まで入れるということになりますと、一般の肥育も入れるべきではないか、そうするとそれは種々雑多な規格をつくらなければならない、そうなると、実質運用上その目的を欠くおそれもある、こういうことから、一番主軸になるところの乳雄の肥育と和牛を組み入れよう、和牛の中でも、一番大事なのはやはり去勢牛の肥育でありますから、その程度が適当ではないか、こういうふうに考えておるところでございます。
  117. 美濃政市

    美濃委員 きょうの質問は以上で終わりたいと思いますが、公式に一時間当たり二百円の労賃格差を農作物間に認めながら、それに対して乳価改定の措置をしないという農林省の態度については、私どもは断じて許すことができない。  これを最後に申し上げて、時間がないですからきょうの質問は終わります。
  118. 澁谷直藏

    澁谷委員長 暫時休憩します。    午後一時十六分休憩      ————◇—————    午後一時三十八分開議
  119. 澁谷直藏

    澁谷委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。芳賀貢君。
  120. 芳賀貢

    芳賀委員 先ほど安倍農林大臣から、就任のあいさつを兼ねて農政に対する所信の披瀝がございましたが、この際、農林大臣としての心がまえとして、単に自民党の農林大臣ということでなくて、真に農民のための農林大臣国民のための農林大臣としての気魄の上に立って十分な活躍をしていただきたいことを期待いたします。  基本的な問題については通常国会に譲ることにいたしまして、きょうは、就任された大臣に対して、その基本になる点をいささか伺っておきたいと思いますが、まず、第一に、大臣が就任されました際に、従来の守る農政から今度は攻めの農政に転ずるという力強い姿勢を示されたわけでございますが、問題は、来年度五十年度の農政に関する具体的な施策、その裏づけとなる農林予算の問題等について、これはやはり切り離して考えることができないと思うわけでございます。そこで、農林省といたしましても、四十九年の八月の末に農林省の概算要求予算を取りまとめをして大蔵省に要求を提出しておるわけでありますが、これからは攻めの農政、積極農政に転換するということになれば、来年度の農林予算というものは相当積極的に活動ができるような、そういう財政規模というものを確保する必要が当然あると思うわけですけれども、この点に対しては、もう概算要求を出したものはそのままでやむを得ぬということでいくのか。積極農政を実行する場合においては、やはり根本的な概算要求の内容の手直しをしてやるというのか。その点はどうですか。
  121. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 私も、農林大臣になりまして、未熟ではございますが、わが国の農政の発展のために全力を尽くしたいと思いますし、まさに現在は農政の転換期に来ておるのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。  農村を取り巻く客観的な情勢が、一つは高度経済成長から安定成長の方向へ移っていくということ、さらにもう一つは、国際的な食糧事情がだんだんと逼迫してきて、恒常的に食糧不足が続いていくというふうな中にあって、日本のこれからの農政というものは、食糧自給力を高めていくということが一番大きな課題であろうと思いますし、同時に、また、自給できない農産物については、これが輸入の安定をはかっていくということも、これまたこれからの農政については大きな課題であろうと思うわけでございまして、そういう見地に立ちまして、実は、農林大臣になりまして、やはりこれは長期的な見通しのもとに総合的な食糧政策というものをこの際打ち立てなければならないという考えを持ったわけでございますが、幸いにいたしまして、現在、芳賀先生も御存じのような農政審議会におきまして、農産物需要の長期見通しとその生産目標について検討していただいておるわけでございまして、来年の初頭にはその結論が出るものというふうに期待もいたしておるわけでございます。  さらに、いま、明年度予算は要求をどういうふうに組み直したかというお話しでございますが、事務当局の案といいますか、要求案はすでにできておったわけでございますが、しかし、先ほどから申し上げましたような見地に立って、総需要抑制という予算方針の大きな基調というものはあるわけでございますが、その中に自給力を高めていく措置を少しでも講じていかなければならないし、あるいは食糧不安というものを解消する努力もやらなければならぬし、また、これからの農村をになう中核的にない手に希望を与えるような措置も講じなければならぬというふうな見地から、実は、三点にわたりまして修正をいたしまして、追加要求を行なうことといたしたわけでございます。  その第一点は、米について十分な在庫積み増しをすることといたしまして、稲作転換対策数量を手直しをいたしまして、百万トン——これはいままでの要求が実は百二十五万トンであったわけでございますが、これを百万トンに手直しをいたしました。  それから、二番目といたしましては、自給飼料の生産対策をより一そう強化することといたしまして、粗飼料緊急増産対策として約三十億円、いままでの要求分に対してさらに三十億円の追加要求を行なうことといたしました。  また、三番目は、農家の生産意欲を高めるとともに、農業の資本装備の高度化をより一そう推進をするために、農民から非常に要望の強い農業近代化資金の融通ワクを四千五百億に増額要求をすることにいたしたわけでございまして、これは三千五百億ということであったわけでございますが、思い切って一千億積み増しをいたしまして、四千五百億増額要求をすることといたしたわけでございます。
  122. 芳賀貢

    芳賀委員 詳細については次の機会に譲りたいと思いますが、特に、大臣、先ほども述べられました十一月のローマにおける世界食糧会議においても、出席した各国から、日本は世界先進国の中で一番自給率の低い食糧不足国ではないか、大半を外国に依存をしておる中において、日本政府が米の減反政策をいまだに継続しておるのは問題がある、自分の国内だけで、米だけを取り上げれば余裕があるとしても、世界の飢餓に当面しておる国々もあるわけだからして、この際、食糧不足国日本として、減反政策というものについては十分反省すべきである、と、こういう指摘が行なわれたということは私も聞いておるわけでございますから、政府は来年もう一年米の転作による減反政策を続ける予定のようでありますが、この際、こうした消極的な米の生産制限、食糧全体の生産抑制等については、すみやかにこれは廃止をして、備蓄制度と合わせた積極的な食糧の自給度の向上、自給体制の確立という方向に将来は進むべきだと思うわけであります。  したがって、この資源問題というのは一番大事ですから、食糧にしても、穀類の自給率が四三%、水産資源にしても、カラカスの海洋法会議でも議論されたとおり、来年から世界沿岸国が二百海里の経済水域をそれぞれ設定するということになれば、いままでの年間一千万トンの水産の生産量というものは直ちに四五%も低下するということになるわけでありますし、木材資源についても、年間一億立方以上の需要に対して、国内供給が四一%ぐらいしか力がない。だから、農林省関係の、食糧にしても、水産資源にしても、木材資源にしても、わが国の資源対策ということになれば、鉱業資源とか地下資源は別として、一番大事な国民生活にとって不可欠な資源というものは、結局農林省行政努力の中で向上をはからなければならぬということになるわけですね。だから、この点はよほどしっかりした気がまえでやってもらわなければいかぬ。安倍さんだけが号令をかけても、いままで、農政の撤退作戦を農林省の官僚諸氏はやってきたわけですね。退却退却でやってきた慣習がありますから、今度攻撃に転ずると言ったって、それぞれの部隊長なんかが、攻撃に転じ、陣頭指揮するだけの気魄と能力がはたしてあるかどうかということもわれわれは心配しておるのですよ。内外非常に問題をかかえておるわけですから、この際決意のほどを明らかにしてもらいたい。
  123. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま芳賀さんが御指摘になりましたように、国内におきましても生産調整をやめるべきであるという議論があることは私も承知いたしておるわけでございますが、生産調整は五十年度で打ち切りということになっておりますし、四十九年度からは休耕田は廃止をいたして、積極的な稲作転換をいたしまして、飼料であるとか、大豆であるとか、そういうものの自給力を高める措置等も講じて、これはある程度成功をいたしておると私は思っておるわけでございます。  米も一挙にやれという御意見もあるわけでございますが、来年度百二十五万トンを百万トン程度の生産調整にいたしまして、再来年くらいには米の在庫を百五十万トンくらいに持っていきたい。この辺はまた議論のあることと思いますけれども、私どもはそういうふうな計画でもって、米についてもいろいろ問題が起こる可能性もあるわけでございますから、国民に安心をしていただくようにしなければならぬということで、二十五万トン削りまして、百万トン生産調整ということにいたしたわけでございます。  さらに、お話しのありましたように、水産の情勢もまことにきびしい情勢であるわけでございまして、海外におきまして、ソ連だとかあるいはアメリカとの漁業交渉等で、海洋法の関係等があって、海外諸国の態度が非常にきびしくなっておりますので、いままでのような資源を獲得するということはとうてい不可能である。むしろこれは減退の方向にいくのではないか。ですから、この際は海外においても新しい漁業資源を獲得するための積極的な方策を講じていかなければなりませんし、同時に、沿岸漁業を——沿岸が、ずいぶん汚染されておったり、いろいろと公害等の問題がたくさんあるわけでございますが、これはまたさらに漁場造成等に積極的に取り組んでいけば、海外で失う分の漁獲量というものはまだまだ確保できるのではないかと思います。  だから、水産資源の獲得についても、沿岸漁業に特に力を入れなければならぬと思うわけでございまして、客観的に非常に時代が変わる転換期に入っておりますし、私も委員皆さま方の御激励を賜わりながら期待にこたえていきたいと思いますし、農林省も非常に優秀な人材をかかえておりますので、この事態にあたって省をあげて取り組んでいけば、必ず農民、漁民の期待にこたえられる方向に政治を進めることができる、こういうふうに考えておる次第でございます。
  124. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、当委員会として年内に解決すべき懸案の事項がございますので、この点について大臣から処理方針を明らかにしてもらいたいと思います。  まず、第一に、昭和四十九年産の加工原料乳の保証価格の改定の点ですが、これは農林委員会においても、今年度は委員会の中に特に畜産に関する小委員会を設置いたしまして、原料乳価あるいは畜肉の問題等については精力的に審議を進めてきておるわけでございます。そこで、委員会におきましては、十一月の十二日に、私から、懸案になっておりました加工原料乳の保証価格の改定の問題について、四点にわたる改定理由を指摘して、すみやかに実現するように要求したわけでありますが、いまだにこれは改定が実現されていないわけであります。  そこで、大臣、就任直後ですから、私どもが指摘した改定の理由として要点を申しますと、まず、第一は、自家労賃の改定の問題であります。ちょうど四月以降に、国民春闘等を通じまして、労働者の全国的な賃金が約三二%上昇しておるわけでありますからして、これらがなま乳の再生産に従事する農家の自家労働について大きな変化が生ずるわけであります。これを適正に勘案する必要がある。第二点は、四月の保証乳価告示後においても、大事な飼料価格というものが、購入飼料にいたしましても、自給飼料の評価がえにいたしましても、相当上昇しておるわけでありますからして、これについても乳価の中に適正に反映させる必要がある。第三点は、保証乳価の算定の方針に関する問題ですが、いわゆる副産物収入と言われるところの、たとえば生産された雄子牛あるいはまた搾乳牛の廃用牛の販売処理等の分は、これは副産物収入として計上して、なま乳の生産費から控除するということになっておるわけでありますからして、保証乳価告示後において、特に前年に対して牛肉あるいは肉牛の価格が暴落したわけですね。前年度の価格から見ると大体一割ぐらいの、いまだかつてない低価格ということになっておるわけでありますからして、この点の見直しが必要である。第四点は、加工原料乳の決定が行なわれたあとで、同じ生産されるなま乳の飲用向け乳価というものが加工向けの乳価に比べて相当大幅に値上げ改定が行なわれておりまして、現在、平均的に見ると、飲用向けの生産者価格というものはキロ当たり百円程度で取引をされておるわけです。保証乳価のほうは政府決定によりましてキロ当たり七十円二銭ということになっておるわけであります。  いま述べた四つの事項というものは、それぞれ加工原料乳の生産者補給金法の十一条第八項に照らしても、経済事情の著しい変化ということで、政府としても当然これは進んで改定をすべきなわけです。ところが、九月になっても十月になっても一向に改定の意思を示しておらぬということで、十一月十二日に農林委員会においてこの点を指摘したわけであります。  そこで、新任の安倍大臣においては実情を十分御承知のことでございますが、時期としては、十二月をはずして明年に改定を延ばすということになれば、来年の三月末には五十年の新しい乳価の決定ももう迫ってくるわけでありますからして、年末ぎりぎりではありますが、この際やはり適正な保証乳価の改定を行なうべきである、すみやかに案を立てて、畜産物価格審議会を開催していそこで審議会の意見等も聴取して決断されたらいいじゃないか、というように思うわけです。
  125. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 やはり、各方面から、畜産審議会を開いて保証価格を上げるべきであるという御意見を承っておるわけでございますが、四十九年度につきましては、生乳の再生産の確保を旨として、御承知のとおり算定方式も大幅に改めまして、一キログラム当たり七十円二銭と引き上げたわけでございますが、その後、北海道の加工原料乳の主要生産地帯の生乳生産は前年をやや上回っており、著しく再生産が阻害をされておるということは認めがたいというのが農林省の、私たちの見解でございまして、したがって、当面保証価格の改定はきわめて困難であろうというふうに考えておるわけでございますが、なお、これらの地帯の今後の生乳の生産事情等を慎重に見守っていくことにしたいと思うわけでございます。  なお、決議の点につきましては、私も就任早々で勉強もまだ十分いたしていないわけでございますが、国会の決議を尊重して、これに善処していくということは、政府としては当然のことであろうと思うわけでございます。  また、いろいろと御指摘がございましたが、飼料価格の上昇等につきましては、御存じのような基金制度を活用し、さらに、また、補正予算で御審議いただきましたような、異常な値上がりの場合の補てん分のための親基金制度もつくったわけでございまして、これはやはり農家の経営に対しては相当大きなメリットが出てくるのではないか、こういうふうに判断をいたしております。
  126. 芳賀貢

    芳賀委員 いま農林大臣の述べられたのは、年内に改定する必要がないという趣旨であろうと思いますが、おそらく、それは、畜産局長かあるいは乳製品課長が書いたメモをただお読みになったと思うのですよ。大臣の言われたような発言は、もうしばしば澤邊局長からも当委員会において繰り返しておるわけでして、その再生産に支障がない、ただ現象的にその後乳の生産総量が減少しておらないので再生産が持続しておるというような、生産の数量だけをとらえたそういう発言というものは、法律の十一条八項の、著しい経済変動が生じた場合においてはすみやかに価格改定をしなければならぬという規定には全然関係のない点なんですよ。  もう一つは、これは大臣に言うまでもありませんが、なま乳以外の米にしても、あるいは畑作農産物にしても、日本においては一年一作でしょう。一回だけ再生産のための労働力の投下とか、あるいは生産に必要な経費の投入をして、収穫は年一回で終わるわけでしょう。ところが、なま乳の場合は、一年三百六十五日、毎日毎日再生産のための努力をしておるわけですよ。自家労働の投下にしても、毎日高いえさを支給しなければ再生産はできないわけでしょう。諸経費にしても、物価上昇の中において毎日毎日投下する経費が上昇しておる。そうすると、物価上昇とかインフレで、生産に要する費用というものが一年間傾斜的にどんどん上昇しておるわけですから、それが年三〇%か三五%生産費が上昇する。そうしたら、一年一ぺんの改定ということになれば、結局、その中途における投下経費の増額分というものは乳代の中においては全然回収ができないということになるのですよ。  だから、他の米や農産物と違って、そういう特殊な生産形態を持っておるわけだからして、たとえば年に二回ということであれば、四月に決定すれば、中間の十月なら十月初旬に再計算をして、そこで改定する必要があれば改定するということをやるべきなんですよ。それを全然怠っているのですからね。乳量が減らぬから再生産が持続しておる、だから改定の必要はない、労働力が幾ら上がっても、えさ代が上がっても、乳の生産量が減らぬから改定の必要はないという、こういうでたらめな答えを繰り返している。全国の生産者の代表に対しても、生産者直接に対しても、それだけえらそうに繰り返して、だから改定する必要はない、乳の生産量が激減した場合に初めて取り上げてやる、と、こういう間違った行政の取り組みというものをいままでやっておるわけですよ。  だから、この際、大臣がかわられた機会に、そういうことじゃなくて——何のために十一条第八項に価格改定の条項があるか。法律に条項がある以上、それを発動する場合の基準というものが具体的に行政的になければならぬと思うわけですよ。やる気がないのであれば、じゃ、この十一条八項を発動する場合の著しい経済事情の変化という場合は、どういうような状態になった場合に発動するかという、いわゆる保証価格改定の基準といいますか、それをこの際明らかにしておいてもらいたい。基準がなければ発動も何もできないということになるわけですからね。
  127. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いろいろ御議論がありますけれども、私は、審議会を開いて特に保証価格を上げるということは現在考えていないわけでございまして、いま御指摘がございましたように、法律の中の、経済事情に著しい変動が生じたとき、という御指摘もあったわけでございますが、また、そのあとで、「変動が生じ又は生ずるおそれがある場合において、特に必要があると認めるとき」という文句も入っておるわけであります。現在では主要生産地帯において量もふえておるというふうなことで、再生産は確保しておるし、特に必要があると認めるに至っていないということでございますが、今後の状況は見守ってはいきたいと思っております。
  128. 芳賀貢

    芳賀委員 ですから、やる意思がないということであれば、それでは法律の規定というものはどういう場合に発動するかという基準をこの際明らかにすべきだと思うのです。これは食管法の場合も、農産物価格安定法の場合も、政府が行政価格としてきめる責任を持っている法律については、ほとんど改定の規定というものはあるわけですね。これは何もアクセサリーでただつけておるわけではないわけでしょう。やる気がないが、ただていさい上改定規定を載せているというものではないのですよ。規定がある以上、どういう場合に一体発動するか、再生産が量的に減少していない場合には絶対改定しないというのであれば、それじゃその再生産が量的にどうなった場合に改定するか、ということになるでしょう。これは大臣から即答するというわけにいかぬなら、局長からでもいいですよ。どういう場合に発動するか。
  129. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 具体的に何%物価が上がり、あるいは何%生産が下がるということはあらかじめきめておりませんし、また、きめられるべきものでもないと思います。そのときどきのケース・バイ・ケースで総合的判断をするということを考えておりますけれども、やはり、十一条の一項第一号にございますように、価格をきめます場合、主要加工原料乳の再生産地域におきます再生産を確保することを旨としてきめるという文言が入っておりますように、再生産が維持できておるかどうかということは、それだけじゃございませんけれども、やはり大きな一つの判断の基準になろうかというふうに考えております。
  130. 芳賀貢

    芳賀委員 そういうことを聞いておるのじゃないのだよ。十一条第八項というのはどういう場合に発動するかという、行政的な基準をここで明らかにしなさいというわけだ。これはいまに始まっておるわけじゃないのだから、先月から、この委員会をやった場合にはこの点を質問するからちゃんと用意しておくようにということを言ってあるわけですからね。
  131. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 同じようなお答えになって恐縮でございますが、あらかじめ何%というようなことをきめて、それに該当した場合は改定するのだということはきめられない性格のものだというふうに判断しておりますので、総合的に必要性の有無を判断すべきだと思いますが、先ほど申し上げましたように、価格は、再生産を確保することを旨として、というようになっておる点から言いますと、再生産が現に確保されているかどうかということは重要なファクターになるというように考えております。
  132. 芳賀貢

    芳賀委員 大臣、よく聞いておいてくださいよ。担当の畜産局長なるものは何もわからぬでしょう。一体発動するかしないかという場合の基準あるいは尺度ですね。これは一定のものさしを用意しておかないと、ではこの尺度に照らしてこれは発動すべきだとか、まだ発動すべきではないとかという判断ができぬわけでしょう。何もわからぬで、ただ、ことしの四月以降全国的になま乳の生産量が減っていないから再生産が行なわれておる、だから改定する必要はない、と、こんなばかな態度でいったら、畜産なんてもう全滅してしまうでしょう。牛肉価格が幾ら暴落してもなぜ再生産を全面的に放棄しないかという事情はわかるでしょう。それ以外に生きる道が北海道の酪農地帯においてもないのですよ。それでは酪農をやめて何をやるかということになれば、全面的に農業を放棄して離農する以外にないということになるわけですからね。だから、同じ再生産といっても、内容的には、窮迫生産、窮迫販売の中で量産にすがってようやく経営維持とか生産維持をやるというところまでもう追い込まれているわけです。それを血も涙もない態度で、総量が減っていないじゃないか、おまえらまだやめないでやっておるじゃないか、だから改定する必要はないというような、こういう冷酷な農政というものはないと思うのです。だから、この際、一体どういう場合に改定するのだと聞いているわけです。  たとえば皆さん方の公務員の給与の改定にしても、人事院勧告が出る前の尺度として、物価事情とか民間の労働賃金というものが五%以上上昇した場合においては公務員の給与改定の作業を開始するということになっているでしょう。これが基準じゃないですか。物価あるいは労賃の五%というのが基準でしょう。あるいはまた年金制度についても、ことしは各年金が自動スライド制を実行できるようになって、もう第一回をやったでしょうその場合にも、これは賃金スライドではなくて、物価が五%以上上昇した場合においては自動的に年金額をスライドさせて改定するということがわかっておるでしょう。だから、ものさしをみんなもう持っておるわけだ。農林省だけ、畜産局長だけがものさしも何も持たないで上げるとか上げないなんと言うのはごまかしじゃないか。一体どういうものさしでやるわけですか。全国の生産者が来たときだって、何でも、おまえさんたち再生産やっておるじゃないか、やめないではないかと言ったようだが、そういう追い返すような態度というものは、先ほどの安倍農林大臣の就任並びに所信の趣旨とは違うじゃないですか。いまできないというのなら、すみやかにものさしをつくって、そして年内に畜産審議会を開くのなら開く——これも農林大臣が開けと言わぬでも、片柳会長は農林省のOBでしょう。自分で進んで開くこともできるんだけれども、なかなか開く気はない。彼が開かないのなら大臣が開かせるよりしようがないということになるのですね。だから、いまどれだけ上げるということはものさしがなければ計算できないのですから、まず、発動の基準というものをすみやかにつくることと、もう一つは、年内に畜産審議会を大臣の発意で開かせて、そこでこの基準の問題並びに改定の問題について意見を聞くということは最低の条件としてぜひやる必要があると思うが、いかがですか。
  133. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま、酪農地帯が非常にきびしい情勢であるということはよくわかっておるわけでございますし、飼料の値上がり等に対しては、そのためにいろいろと対策を講じておることもよく御承知のとおりだと思うわけでございますが、いまの、保証価格を上げろ、その基準をつくれというお話しでありますが、第十一条第八項に、「経済事情に著しい変動が生じ又は生ずるおそれがある場合において、特に必要があると認めるときは、保証価格等を改定することができる。」ということで、特に必要があるかないか、それにつきまして、結局、飼料対策等も講じ、さらに四十九年度は大幅にアップしたわけでございますし、その後なま乳の生産が確保されておるというふうな事態にかんがみて、これは特に必要があるとは認めがたいということで、いまのところは審議会を開く考えはない、こういうことでございます。
  134. 芳賀貢

    芳賀委員 これでは大臣は三木総理と同じじゃないですか。たてまえだけりっぱなことを言って、具体的事項になれば何もやる意思がないのでしょう。特に必要があると認めるときに、経済事情の変化に対応して再計算をやった結果これだけ上げなければならぬという実態に即して、だから改定の必要があるとかないとかということを判断するのであって、その計算をしない前にすでに必要があるとかないとかということはきめるべきではないですよ。やらないで判断はできないじゃないですか。ものの順序というものはそうじゃないですか。だから、とにかくやってみたらいいでしょう。これも、四十年の国会で成立するまでの審議のときにも、この改定条項というものはわれわれは議論しておるわけだ。中川理事も、そのころまだ若い時代ですが、農水で発言したこともあるのですよ。だから、行政的な作業としてまずものさしをつくり、そして、そのものさしに照らして再計算をした結果、上げる必要があるかないかということを大臣がみずから判断すべきである。  それから、畜産振興審議会については、とにかくいろいろな問題があるわけだから、片柳会長に開いてくれということを大臣から要請して、これは開かすべきであると思いますが、いいですか。
  135. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 たいへん同じような答弁をするわけでございますが、現在の段階におきましては、畜産審議会を開くという考えは持っておらないわけでございます。しかし、酪農の振興対策等につきましては、飼料対策もあり、それ以外にもさらにいろいろの対策を強力に講じていかなければならない、こういうふうには考えております。
  136. 芳賀貢

    芳賀委員 もう約束の時間をちょっと経過したのですが、これは私のせいじゃないですよ。大臣局長がつまらぬ答弁を繰り返しているから時間が食われちゃったわけですからね。  それでは、この問題は、ほおかぶりで逃げるということでなくて、ぜひ年内に、やはり安倍大臣は前向きにやった、攻める農政でやったと言われるように努力してもらいたいと思います。  最後に、これは岡安経済局長に対してですが、事前に通告してありますので要点だけ申しますが、ことしの五月八日の農林水産委員会において、農林漁業団体職員共済組合法を最終的な審議をして、委員会で修正可決をしたわけです。その際私から倉石農林大臣並びに岡安経済局長に対して質問したのですが、今後の農林漁業団体の、つまり農協や漁業協同組合の職員等に対する給与の改善をはかる一助として、農林省としてはできるだけ適正な努力をして、まず第一には農林漁業団体の職員の給与体系というものを——これは農林省がきめるというわけじゃありませんが、指導的な立場で農林漁業団体の職員の給与体系というものをできるだけ統一的に整備をして、しかも最低の賃金、最低の給与というものが維持されるような指導的な努力をするべきではないかということをたてまえにして、一つは給与体系の改善をする。そのめどとしては、毎年、農林年金の改正等に伴って、標準給与の別表というものがあるわけでありまして、ことしの改正では標準給与月額の二万六千円を三万九千円に引き上げたわけですからして、年金制度から言えば、三万九千円の月額というのは農林漁業団体職員の最低給与ということになるわけです。最高は従来の二十二万円が二十四万五千円ということに改定になっております。ですから、農林省として、農林年金の給与の基準等を踏まえた場合において、まず、最低給与というものを全面的に確保できるような給与体系と、それから毎年の定額的な昇給の内容であるとか、そういうものを整備して示す必要があるのではないか。もう一点は、いま農協においても漁協においてもそうですが、職員の退職給与金に対する支給というものが非常に大きな問題となっておるわけです。これも支給基準というものが単協ごとに規程として定められておるわけでありますからして、統一を欠いておるわけですね。だから、給与体系の改善とあわせて、職員の退職給与の規程等についてもできるだけ内容を整備して、少なくとも準則的なものを出す必要があるのではないか。その質問をした際、大臣並びに岡安局長からも、全中等ともよく相談をしてできるだけ適切なものを作成して、行政面からも給与体系の改善協力をしたいということを言ったわけですね。ところが、その後何にも連絡がないのですよ。こうやりましたとか、こういうものができましたとか、全国の農協に通達をしましたとか、何にもあいさつもなし、報告もないわけです。おそらくこれも何にもやってないと思うのですよ。しかし、いまは年末ぎりぎりですからね。委員会における約束というものは実行してもらわなければいけないのです。それはどうなったかということを明確に答えてください。
  137. 岡安誠

    ○岡安政府委員 先生の御指摘のとおり、先般の農林年金法の改正に際しまして、御質問がありまして、農林漁業団体職員の給与の改善につきましては、私がお答えしましたのは、まず第一には農林漁業団体の経営基盤をしっかりするということが先決であるということをお答えし、それにあわせまして、先生の御指摘のとおり、給与に関します規則とか退職給与規程等の模範例等につきまして、必要があるならば全中その他中央団体と相談をいたしまして模範的なものをお示しをするということも考えたいということをお答えいたしたわけです。  現在、この給与の基準並びに退職給与規程の案等につきましては、全中が労務問題基本調査会というものを設けまして、昨年考え方を示したわけでございます。その内容は、賃金体系のあり方と退職金制度のあり方ということに要約をいたしましてこれを示し、現在、県中に対しましてその指導等を行なっているという段階でございます。私どもも全中等のこの指導協力をいたしまして、県中段階で、末端の農協等に、これらの考え方につきまして徹底をするようにというようなことをやっております。  しかし、これは先生ももう十分御承知だと思いますけれども、全中の案にいたしましても、具体的に給与のベースを固定的にきめるというわけにはまいらないわけでございまして、たとえば「賃金体系のあり方」という文書の中にも、あるべき賃金水準としては、地域における社会的な水準確保するとか、常に従業員の生活を安定させるものとするとか、系統段階間の賃金格差を是正するというような方針が示されているわけでございます。私どもとしましては、こういうような目標に向かって各段階の系統機関が現在の給与体系または退職金制度の改善につとめることが必要であると思いますけれども、その基盤は、やはり、各団体の経済的な基盤といいますか、これを拡充強化しなければ目標である賃金体系、退職金制度というものが実現できないというふうに考えておりますので、こういうような基準の作成とあわせまして基盤の整備というものをやらなければならないということを考えて、その方向で現在も努力しているということを御報告申し上げておきたいと思います。
  138. 芳賀貢

    芳賀委員 それじゃ何もしなかったということじゃないですか。いいですか、大臣、こういう状態ですよ。畜産局長にしても何もやっておらない。経済局長も、いま全中の資料をもらってきてちょっと読み上げただけでしょう。何もやっていないのですよ。先ほど言ったとおり、もう農政の退却退却の号令だけかけてきているわけだから、前向きに進むということを忘れているわけですよ。せっかく大臣が守りの農政から攻めに転ずると言ったって、将軍だけ転じたって、あとはみんな退却しているのではどうしようもないですからね。これは一事が万事とは言いませんよ。一生懸命にやっているところもありますが、私が見ると、率直に言ってやっていないところが相当多いんじゃないかと思う。それを留意してください。委員会に来てだけりっぱなことを言ってもだめですよ。日常やっているかやっていないかということが大事です。  きょうは時間がありませんからこれでやめておきます。
  139. 澁谷直藏

  140. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 臨時国会における補正予算等に関連して、若干の見解を農林大臣に承っておきたいと思います。  いろいろございますけれども、まず農林大臣に最初にお伺いしたいことは、大臣就任にあたって、国会の代表質問に対しても、また予算委員会あるいは各団体の新聞等にもいろいろと決意を発表しておられますが、今日このように農業が衰退してきた根本原因はどういうことにあるのか。大臣は守りの農政から攻めの農政へとおっしゃっておりますけれども、どういうところにこの根本原因があるのか。この認識がなければ攻めの農政にならぬと私は思いますが、その認識について大臣はどういうふうに思っておられるか、その辺をまず最初に承りたいのであります。
  141. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 先ほどもお答えいたしましたが、高度経済成長がずっと続いてまいりまして、一面におきましては農村過剰人口が解消し、農家の生活水準は確かに向上したことは事実でもありますし、農家の所得もふえたと私は思うわけでございます。しかし、反面、農業労働力がたいへん脆弱化してきたし、あるいは、農地がたいへん値上がりをしてくると同時に、農地の転用等が非常に行なわれたということで、農業の基盤が相当くずれたということは間違いはないのではないか、そうした高度経済成長の余波といいますか、そういうものがやはり農政に波及をしてきていろいろな問題が起こってきたことは事実であろう、と思うわけでございます。  そこで、高度成長経済というものからゼロ成長、低成長へと移る客観的な情勢に入ったわけでございますし、また、さらに、世界食糧事情というものが非常に逼迫をしてきた。そういう中であらためて農業というものが見直される時期になった。これは、ドルがあれば安い農産物をドルで買えばいいじゃないかというふうな経済合理主義的な考え方が経済界等には圧倒的にあったわけでございますが、最近では経済界からも日本において食糧の自給体制をつくらなければならぬという声が出ておるというふうなことで、農業というものが見直されるような時代になってきて、客観情勢も変化した。そういうことをとらえて、この際積極的な農政を行なって自給力というものを高めていくチャンスが来たのではないか、と、私はそういう意味において言ったわけでございます。
  142. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 三木総理も衆議院の代表質問で、食糧の問題については、自給率を高める必要がある、いまの自給率は低過ぎる、そういう点で、農業の基盤整備とか価格、技術経営対策など、いままでの惰性でない農政の展開がなされなければならぬと言い、さらには、農林大臣にはもう少し長期的な展望に立って総合的な対策推進するよう指示をしている、したがって農林大臣もその意向を体して、総合的食糧政策を進めることにしていると述べている。あなたもいろいろ見解をお述べになって、農政はいま転換期に来ているということから、先ほども申しましたように、守りの農政から攻めの農政へ、というふうにおっしゃる。  攻めの農政ということについてはいままでもいろいろと質問に対する答弁等もあったようですが、大臣就任にあたって、これについて具体的にどういうふうに考えて進めていかれるのか、その点もひとつ明確にお答えをいただきたいと思うのです。本格論戦は来春の通常国会でやる予定にしておりますけれども、それまで、本年最後の委員会でもありますし、かなりの期間がございますので、その間、あなたのいわゆる斬新的な考えをぜひこの機会にお伺いしておきたい、かように思うわけです。
  143. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いまお話しのように、わが国農業農産物の総合自給率が七三%、穀物については四三%と、非常に低下をしてきたわけでございますが、これはまた畜産物の消費等が非常に増大したという半面もあって、穀物自給率も低下したということにもつながっていくわけでございますが、いずれにいたしましても、世界食糧が非常に逼迫をし、世界の穀倉地帯の穀物のダムがもうほとんど底をついた。来年でもう、アメリカやカナダで不作というふうな事態になったときは、これは石油以上の世界的な大きな問題になるんじゃないかと私は思っております。  そういうふうな世界的な立場から、十一月には世界食糧会議が開かれまして、全世界的な規模において食糧の増産を行なわなければいかぬし、あるいは備蓄体制も整えていかなければならぬ、あるいは開発途上国に対する食糧の援助ということも共通な課題として取り上げていかなければならぬということが食糧会議でも議題になったわけでございます。そういうふうな世界的な食糧事情というものを背景にいたしまして、わが国自給率をこの際何とかして高めていくということが最大の課題であろうと思います。  そこで、先ほども述べたわけでございますが、明年度予算につきましても、生産調整の量を減らして、百二十五万トンから百万トンということにいたしたわけでありますし、あるいはまた飼料作目の自給体制をつくっていくためにさらに三十億円増額要求をいたしたし、あるいはまた農家の相続税のほうも、これは軽減をする措置が大体ここにきまっておるわけであります。あるいはまた金融面につきましても、近代化資金を一千億ばかりさらに増額をする等、こういうふうな来年度予算に対する再要求をいまいたしておる段階でございます。
  144. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間が短いものではしょって申し上げますけれども、大臣からいまも答弁がありましたように、これからの農政は自給率を高めることが一番大きな課題であるということは十分わかりましたが、本会議でも、三木総理から、自給率は九〇%まで高めることは考えていないというふうに答弁がありました。しからばこの自給率は何%ぐらいを考えておられるのか、その点を明快にお答えいただきたい。
  145. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 いま私は自給力と言ったわけでございますが、自給率につきましては、これは人口の増加とか畜産物の消費が非常に増大をしておる。それから、日本人の食生活が非常に向上してきたというふうなことがあって穀物の消費がたいへん盛んになり、これが結局外国輸入に待たなきゃならぬということでございますので、やはり、自給力が高められる農産物と、どうしても外国に依存をしなければならない農産物というものがあるわけでございますが、とにかく、全体的に自給力を高めていくということで、いま農政審議会で長期的な需要見通し生産目標というものを御検討願っておるわけでございまして、来年早早に、御検討をしていただきました結果が出た段階におきましてはっきりしためどをつけて、そしてわが国の農政をその目標に向かって位置づけをし、推進をしていきたい、こういうふうに考えるわけであります。
  146. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 長期的視点に立った需要供給に対しては農政審議会にいろいろ諮問をして、来年初頭には答申を受けるというようなことでいろいろ検討しておられるようですけれども、実際に自給率という問題が一番問題にもなるわけです。まあ、それは近く検討して示したいということでありますので、それは待つとしても、そのために実際に具体的にはどういうふうなことをしたいという決意で今回あなたは考えておられるか。部分的な答弁もいろいろございましたが、あらためて具体的な施策を簡潔にお答えいただきたいと思う。
  147. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 やはり、自給力を高めるといいましても、国内において自給できる農産物と申しますか、自給力を高められる農産物、たとえば麦であるとか、あるいは大豆であるとか飼料作目等は、これはまだわが国において相当自給力を高めることができると思うわけでございますが、反面、トウモロコシとかコウリャンとかいった農産物につきましては、現在のわが国の客観的な条件、まあ天候の問題もあり、あるいはその地理的条件等もあるわけでございますが、そういう面から見るとやはり外国に依存をせざるを得ないのではないか。ですから、米については潜在的な生産力があるわけでございますから、まだまだ生産過剰という状態にあるわけでございますが、その他、いま申し上げました麦とか大豆とか飼料作目といったものについては相当思い切った措置を講じて自給力を高めていくべきじゃないだろうか、こういうふうに思っております。
  148. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 あと時間がわずかでございますので、三点かいつまんで申し上げますので、大臣からそれぞれ御答弁いただきたい。  米の備蓄という問題があるわけですが、大臣は二百万トン備蓄というようなことをいろいろとおっしゃっておいでになりますけれども、五十年度百万トン、五十一年百五十万トンというようなことも先ほど答弁があったようでありますが、二百万トンはいつまでにやるのか、また、現在の生産調整のやり方から言って実際にこの見通しはどうかというようなことについてのお考えを明快にお答えいただきたいということが一つと、休耕田の復元に対する補償費ということが問題でありますけれども、休耕田の補償は四十八年で打ち切られております。現在休耕田の復元はほとんどできていないと私は見ておりますが、できていてもわずかであります。これの進捗率はどのくらいか。この復元のために復元補償費を当然国が助成すべきだ。これは国の施策によってやったのですから、ひとつやっていただきたい。現在一年休耕で約一万ないし二万円くらい、場所によって違いますが、かかります。また、二年ないし三年休耕したところでは四万ないし五万円くらいかかると言われています。こういったことに対する国のいわゆる助成ということを農林大臣はぜひ考えてもらいたい。ローマの食糧会議等が十一月にありましたが、今後の食糧問題についての長期展望から、こういった復元費に対する助成ということをぜひやってもらいたい。この点に対する見解。  最後に、もう一点は、生産奨励補助金と協力特別交付金、米に対してはこの二つがありますが、所得税法三十四条の規定によりまして、一時所得ということで税金がかけられておりますけれども、米については政府の施策によって減反政策をとられたわけでありますからこういうことはやむを得ないと一応は言えても、今回自給率を上げるための麦、大豆、飼料については生産を奨励するという、米と逆な立場で、これは奨励金であります。これに税金をかけるということは酷である、当然非課税の措置をとるべきである、かように思うわけです。  新しく就任されました大臣のこれらに対する考えを、この機会に三点だけぜひ承っておきたい。時間がございませんので簡潔でけっこうでございますから、御答弁をいただいて質問を終わります。
  149. 安倍晋太郎

    安倍国務大臣 備蓄の問題でございますが、現在米は生産過剰という基調が続いているわけでございますけれども、しかし、国民食糧確保と、国民に不安感を少なくとも主食については与えないという意味におきまして、来年生産調整を二十五万トン減らして百万トンにするわけでございますが、再来年には少なくとも百五十万トンぐらいの食糧の在庫が持てるような段階には持っていかなければならないのじゃないだろうかという方向で五十年度はやるわけで、五十年度は百万トンという規模に生産調整を押えたわけでありますが、五十年度で生産調整は一応終わるということになるわけでございます。  休耕田につきましては、休耕田の実態がどうなっておるか、実は私もまだ十分承知しておりませんので一たとえば谷間の間の休耕田なんかは、そのままほっておいてまたたんぼに返るということはおそらく不可能なような状態もあると思いますが、しかし、その他まだまだ再建することができるというふうな休耕田もずいぶんあるわけでございますし、これはまず実態調査をするということが一番大事でございますから、来年は休耕田でどれだけ復元できるのかというふうなことを全国的に精密に実態調査をやることをきめております。これはぜひともやりたいと思っておるわけでございます。  また、麦、大豆等につきましては、先ほど申し上げましたように、自給力を高めていく上から奨励金等も出して生産者にお願いをし、ある程度の成功をいたしておるわけでございますが、まだまだこれからもいろいろな措置を講じまして、さらに生産を奨励していきたいと思うわけであります。  税法上の問題をいま御指摘になりましたが、私もそういう陳情は受けておりますけれども、現在の税法ではなかなかむずかしい問題があるようでございますが、これはひとつさらに検討してみたい、こういうふうに考えております。
  150. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 ひとまず、以上で終わります。
  151. 澁谷直藏

  152. 柴田健治

    柴田(健)委員 消防庁に伺いますが、午前中に消防庁が見えていたらもっと早く済んでおるのに、午後にわたって、どうも気合いが抜けたようなんですが、簡単にお尋ね申し上げます。今度の水島の事故について消防庁にお尋ね申し上げる点を一括して申し上げますから、お答えも順次お答え願いたい。  今度の事故が発生して、まず、通信連絡で、第一回の出動要請は救急車要請をした。それが三十分後。そして今度は、救急車はだめだということで消防車出動、これは一時間後。その間被害は拡大されておる。この通信連絡の欠陥は何かという点、これが第一点。   〔委員長退席、中川(一)委員長代理着席〕  それから、防災機材は、国の基準から言うと、この処理材でも二百五十キロリットル以上の用意をしなければならぬのに、その四分の一程度の備蓄しかしてなかったという、この欠点。なぜこれはこういうことになったのか。平素の指導がどうなっておったのか。その他の防除資材という点について、たとえば油の種類によって防除資材を用意すべきではなかったか。油なら同じような油だという考え方自体が今度の事故を拡大させた。そして、海に流した量というものを防ぎ得なかった。普通のような石油なら石油だけの取り扱い、A重油だC重油だという重油の取り方、特にC重油は海に流れたらどういう形になるかということを考えておったかどうか。この油の種類によっての防除機材の対策というものを今後十分検討すべきだと私は思うが、いままでなぜこれを怠ったかということ。  それから、いまのタンクの実態なんですが、地上二十五メートル、三十メートルというような、あれだけ高いタンクを地上に認めていいのかどうか。もうこの辺で考え方を変えて、半分くらいは地下に埋没するタンクに切りかえたらどうか、そういう基準に変えたらどうか、こういう気がする。と同時に、予測ができなかった。予測ができなかったのならなぜ初めからタンクのぐるりに防油堤というものを基準をきめたか。タンクからいつかは油が漏れるだろうと、そういうものを予測されて防油堤という堤をつくるべきだという基準をきめて、高さ一・五メートル、幅が十五センチ程度、これはもうブロックでも何でもいいのだというようなことで、ただ高さと幅ぐらいきめた。油が漏るということを予測されてそういう基準をきめた限りは、何万トンとためておるタンクが漏れた場合にはその防油堤が役に立つかどうか。これは常識の問題だと思う。こういう基準をきめておる危険物の規制というものが正しいのかどうか。この点を今後検討する必要がある。これは消防庁等に重大な責任があると私は思う。  まず、以上三点をお答え願いたい。
  153. 森岡敞

    ○森岡政府委員 石油その他危険物の保安、防災につきましては、御承知のように消防法あるいは危険物関係政省令でいろいろ整備を進めてまいりました。また、各市町村の消防本部を通じまして検査、点検などにも鋭意努力してまいったつもりでございますが、今回水島製油所におきまして事故が起こり、かつ、油が海面に流出をして関係住民にたいへん御迷惑をかけたことはまことに申しわけないことだと深くおわびを申し上げたいのであります。  それで、いま先生が御指摘の諸点でございますが、まず、通信連絡につきましてはお話しのとおりでございまして、当初救急要請という形で、情報の体制といたしましては非常に場違いな要請が出てまいりました。その後消防車が出動いたしました。消防車の出動は、市町村消防本部の消防車と、関係企業の自衛消防と、両方合わせて出動して警戒に入ったわけでございますが、その間油がどんどん流出していくという事故に相なったわけでございまして、御指摘のように通信連絡体制が必ずしも十分でないという点が反省されると思います。  地元では協議会などを設けまして、いろいろと十分に横の連絡をとるような仕組みにはなっておったのでありますけれども、現実問題といたしましてきわめて不十分な状況であった。当初それで相当の時間経過があったということはまことに遺憾なことだと思うのであります。今後さらに連絡情報体制が的確にとれますような仕組みあるいは運営考えていかなければならぬと思います。  それから、防災資機材の備蓄でございますが、特に油処理剤のお話しがございました。油処理剤につきまして、油の種類によってもっと幅広く備蓄をさせるということを考えるべきでないかという御指摘は、私どもまことにもっともだと思います。ですから、今後、油の種類に応じました必要な処理剤などの備蓄につきましてはもっと拡充をしていかなければならぬ、かように考えております。  それから、タンクの形態につきまして、御指摘のように、地上に高いものが林立しておるということはこの際考え直すべきではないかということでございますが、これも私どもも確かに問題だと思います。ただ、私もあまり技術的なところまでよくわかりませんが、地下に持っていきます場合の構造とか基準につきまして、率直に申しまして研究がまだ十分行き届いていないと思います。そういう点も含めまして今後検討をしてまいりたいと思います。  それから、関連いたしまして、防油堤の問題でございますが、防油堤の高さなり幅につきましてはいま御指摘のとおりでございます。危険物の省令では鉄筋コンクリート造あるいは鉄骨鉄筋造ということで一応構造に基準を設けておるわけでございます。ただ、今回の事案から考えますと、いまの防油堤の基準で万全かと申しますと、今度は防油堤が吹き飛ばされまして、はしごによりまして破損して、そこから油が流れ出たという状態でございますので、いまの防油堤の政令で定めております容量基準というものももう一ぺん見直すということが必要でございましょうし、それからまた構造につきましてもそれと並行して検討し直すということがぜひ必要だと思います。  いずれにしても、御指摘のありました点は、私どもといたしまして今後それぞれ早急に措置をしなければならぬ重要な検討課題だと思います。同時に、今度の事故発生原因につきまして、私どもといたしましては早急に原因究明調査をして結論を早く出したい。非常に技術的な問題もございますので、学者に依頼いたしまして、事故調査委員会をできるだけ早く発足させまして、それによりまして原因究明調査を早くやる、そしてその結果に基づいて、今後かような事故が他の地域あるいは水島自体においても生ずることのないように万全の措置を講じたい、かように思います。
  154. 柴田健治

    柴田(健)委員 今度の二百七十号のタンクは、昨年八月完成で、十二月に検査を受けて、ことし三月に使用開始をして、使用開始後八カ月で事故が発生した。それは新しく設備をしたタンクだ。ところが、あの辺にはもう十年を越したタンクが八百ほどある。十年以上経過しておるタンク整備、点検、検査というものを今後どうするのか。  それから、通信連絡については先ほどあなたは率直に認めたんだからこれ以上追及いたしませんが、しかし、私たちが考えてみて、企業防衛意識の中で企業秘密は、外部からなるべく干渉を受けない、指導を受けない、自衛消防組織ということで、それのみに依存をした欠点があるんではないか。自衛消防意識、自衛消防隊という企業一辺倒で、企業に全部まかせたところにこの通信連絡の不備があらわれてきた。この点は十分今後考えなければいけないのではないかと私は思う。今後十分検討を願いたい。  今度の発生した事故が拡大をされた最大の原因は明らかに過失だと私は思う。あの二百七十号タンクから二百七十一号タンクへのバルブの連結、この操作を明らかに誤った。これから考えると、それはもう危険物の取り締まり政令に違反しておる。二十四条の十一号に違反している。また、極端に衝撃を与えた場合には、という条文が入っておる。そうすると、消防庁がこの辺で過失罪として、会社の責任を明らかにするために告発すべきだ。これは海上保安庁はお見えになっておると思いますが、海上に不法投棄した場合でも、刑事責任を問う、告発するということがある。消防庁も重大な過失の場合は企業を告発すべきだと思う。これだけ世間を騒がせ、国を騒がせ、関係県五県にわたる大犯罪を犯した企業が、ただすいませなんだということだけではいけない。消防庁がこの責任の所在というものを明確にするためには、刑事責任を問い、告発すべきだと思うのですが、消防庁はどうですか。
  155. 森岡敞

    ○森岡政府委員 通信連絡体制の不備を補うには自衛消防組織にあまりに寄りかかっていてはだめではないかということはおっしゃるとおりだと思います。もちろん自衛消防組織は、企業の社会的責任として持ってもらわなければいけません。相当な経費を負担して自衛消防組織を整備してもらう。ただ、市町村消防と自衛消防組織とが並行して防災に当たるということになりますと、これは御指摘のように連絡なり調整がなかなか十分でない場面がしばしば出てくる可能性があるわけでございます。ですから、その場合に、企業が外部に実態を知らせることを拒むとかあるいはいやがるとか、そういうことがあってはもちろんならないと思うのであります。そういう意味合いで、市町村消防主導型の防災体制というものは今後ともぜひ整備をしてまいりたいと思います。  それから、原因調査と、それに基づく措置あるいは責任の問題でございますが、私は、まず第一に原因調査を明確にすべきだと考えております。先生御承知のように、このタンクの構造は高張力鋼と申しますか、通常のやわらかい鋼材とは違った張りの強い鋼を使っておる。そこで溶接の際にいろいろ問題が出ているんではないかというふうな議論もあります。それから、いま御指摘のように、隣のタンクへ移した、バルブを開いた、それが一体どういう過程を経て、どういう効果を及ぼしたのかという点につきまして、綿密な調査をまず行なうことが必要だと私は思うのであります。その上に立ちまして、それぞれ責任をとるべきところは責任をとってもらわなければいけないし、また、追及すべき責任は追及する必要がある、かように私は考えておる次第でございます。
  156. 柴田健治

    柴田(健)委員 海上保安庁はどうですか。
  157. 山本了三

    ○山本説明員 三菱石油からのタンクが亀裂を生じて油が流出したのは事実でございます。したがって、その限りにおきましては企業の流出責任というものは明確でございますけれども、その原因等につきまして十分検討をして、海上に流出した場合の責任がありということであれば、われわれとしては、海上保安庁としては捜査をし、送致いたします。
  158. 柴田健治

    柴田(健)委員 こういう事故発生のときには、十分なる正確なる通報というものが初期動作、初期防災という立場から言って一番大事なんですよ。虚偽の報告、虚偽の申告、虚偽の連絡というものは明らかに犯罪行為なんですよ。それを調査研究してみてというのはおかしいと私は思う。それも必要でありましょう。けれども、これだけインチキの報告をまともに受けて、海上保安庁も三千キロという数字を基礎に置いて右往左往したという。そして消防庁のほうの報告を聞くと、通信連絡においても、まことに子供の連絡なんですよ。防火管理者の立場から言って、こんなでたらめな連絡は、そんな無責任なことはできないはずですよ。どういう指導を防火管理者に対してしてきたのか。どういう講習をさしてきたのか。消防庁、これは重大責任だ。そんなことをして、予測できなかったとか、まことに天災的なとか、そういうことで逃げようとしたって漁民承知しませんよ。農林省は、これだけ漁民が被害を受けて、これだけ漁民がこれからの生活の基盤を奪われて路頭に迷うような災害を出しておいて、監督官庁として、いままでのルーズな指導というものがどれだけ災いを起こしたかということに思いをいたさないのか。  消防庁にもう一つお尋ねしたい。時間がございませんが、石油コンビナートに関する防災対策費の予算獲得はどうですか。毎年毎年われわれが何回言うても、消防庁は自治省の外局だといって、島流しにあったような感覚で、消防予算をどれだけ取っているか。あの水島のコンビナートから国税がどれだけ取られているのですか。過去十二カ年の間に四千五百億の税金が入っている。その中で自治体が取っているのはたった一二%余りで、八〇何%は全部国が取っているんですよ。三千六百億以上は全部国が取っている。これだけ税金を取る国はもっと思い切って消防予算を取るべきじゃないか。自治省、どうですか。消防予算の取り方を反省しなさい。五十年度の予算編成期の前ですよ。石油コンビナートの対策費はどれだけ取るのですか。
  159. 森岡敞

    ○森岡政府委員 たいへん強いおしかりと、また反面御激励を受けたわけでございますが、石油コンビナートの防災対策は、まことに大事な、しかも緊急を要する問題だと私どもは考えております。その関係の経費といたしましては、御承知かと存じますけれども、まず一つは防災資機材の整備費の補助、それから化学消防車その他のポンプ自動車あるいはその他の消防施設の補助金、それから第三には総合的な防災診断というものを進めてまいること、こういうふうなことで本年も相当程度の予算を計上いたしましたが、明年度これを大幅に増額したいということで予算要求を強く要請しております。  御指摘のように、消防庁はまことに力が十分でない点がございまして、いままでなかなか十分な予算獲得ができていないわけでございますが、御指摘の線に沿いまして明年度は思い切って予算の大幅増額を獲得いたしたい、かように考えます。
  160. 柴田健治

    柴田(健)委員 いまの水島コンビナートの消防施設全体の整備能力というものを、いまの現状でいいとあなたは思っているのか。消防艇が三隻しかないですよ。大型消防車が何台しかないという現状だ。数字をぼくが言わなくても、あなたもう知っておられるでしょう。現状でいいという前提に立って、これから少しずつふやそうという予算獲得運動か。抜本的に検討し直す、思い切って予算をつける、たとえば消防庁の出先機関として、自治体消防だけではどうにもならないので、国があそこに防災事務所を設けて、みずから千三百五十三のタンクでも常時検査をする、新しいタンクが施設されたら、鉄の質の検査から構造の検査をすぐに全部してしまう、と、このくらいのことをしないと市町村にまかせてできるはずがない。そういう構想はないですか。
  161. 森岡敞

    ○森岡政府委員 コンビナートを中心といたしました防災のための規制の問題でございますが、国がそういう規制の組織をつくり、運営をして、直接政府の職員がそれを行なうというたてまえがいいのか、あるいは現在やっておりますように、市町村の消防の機能を充実いたしまして、それによってやっていくのがいいのか、これは両論があると私は思うのであります。率直に申しまして、おしかりを受けるかもしれませんが、国家公務員がやれば何でもうまくいくというわけにはまいらないと私は思うのであります。そういう意味合いで、現在の組織がそのままでいいとはもちろん思っておりません。でございますから、都道府県の指導体制あるいは資材の備蓄体制というものも思い切ってふやしていかなければいけないと思います。   〔中川(一)委員長代理退席、委員長着席〕  また、国の、政府の補助あるいは助成、指導というものも強くしてまいらなければいかぬと思いますが、いま御指摘のように、直ちに国家組織をコンビナート地域に規制するための組織として設けるというところまでは、実は私はまだ踏み切る考え方はないのでございます。その辺のところは、もう少しさらに研究さしていただきたいと思います。
  162. 柴田健治

    柴田(健)委員 時間が来ましたけれども、いろいろな協議会をつくらせて、何の連絡も活動もさせないというところに問題がある。あなた方はとにかく形式だけをやらしているのですね。形式論ですね。形式消防ならやめたほうがいいですよ。金は出さぬが口を出すならやめたほうがいいですよ。もっと金をつけてやるということですよ。五十年度の予算ではそれを大幅増額するという考えがあるのですか。もう一ぺん聞いて、もう終わります。
  163. 森岡敞

    ○森岡政府委員 先ほど申しましたが、消防施設の補助金、それから防災診断あるいは防災資機材の備蓄整備、これらにつきましての予算を大幅に増額するように努力いたしたい、かように思います。
  164. 柴田健治

    柴田(健)委員 終わります。
  165. 澁谷直藏

  166. 津川武一

    津川委員 私たち共産党の国会議員団が十一月二十五日に、「田中総理への公開質問状 金脈問題をめぐる十大疑惑をただす」ということを公表し、田中総理あてに提出しました。この公開質問状の中で、私たちは総理に、この公開質問状に列挙しておる疑惑について国会で責任をもって答えることを要求もしました。  この公開質問状は、その内容として、「一、地位利用の疑いについて 二、利権と政治献金にからむ疑惑について 三、脱税の疑惑について四、ユウレイ企業群をめぐる疑惑について 五、日本電建をめぐる疑惑について 六、宅地建物取引業法、建設業法違反について 七、詐欺、恐かつなどの疑惑について 八、言論抑圧、出版妨害問題について 九、国会軽視と議会制民主主義のじゅうりんについて 十、政治家としての道義について」という十項目でありますけれども、この中で、農林に関係する部分としては、田中総理が二十八頭の競走馬を持って一億三千万円近い所得をあげたこと、また、私たちの農林関係の問題では、田中総理が奥さんのはなさんに馬を譲って贈与税の問題、こういう点を指摘しておるのでございます。  そこで、質問ですが、農林省と大蔵省、この公開質問状を見ておられるでしょうか。答えていただきます。
  167. 江藤隆美

    江藤政府委員 公開質問状につきましては、農林関係に関する分については拝見をいたしております。
  168. 田口和巳

    ○田口説明員 拝見しております。
  169. 津川武一

    津川委員 そこで、大蔵省にお尋ねいたします。  贈与税の問題で、田中前総理の奥さんのはなさんが出てまいりますが、田中はなさんには所得があったでしょうか。所得のない妻として税務関係は扱われているでしょうか。まず、この点をただします。
  170. 田口和巳

    ○田口説明員 課税の内容になりますのでお答えがいたしかねますが、先生の御指摘のように、所得はないものと見ております。
  171. 津川武一

    津川委員 そこで、農林省に尋ねますが、いまから指摘することは、「中央競馬年鑑」と、それからいろいろなものを農林省からもお借りして一緒に作業した分もあるのですが、内容の一つの、「わが党の調査によると、総理は、昭和三十四年から四十八年までに二十八頭の競走馬をもち、その間に獲得した賞金は一億三千万円以上におよんでいる。なかでも昭和四十五年には三千四百五十二万円の賞金収入があり、また四十三年から四十七年までの五年間にマキノホープが獲得した賞金は六千百五十六万円に達している。」ということですが、このマキノホープというのは田中さんの所有馬でございます。  こういう事実がございましたでしょうか。農林省
  172. 高須儼明

    ○高須説明員 お答えいたします。  私、畜産局の審議官でございますが、ただいまの先生の御質問の中にございましたような内容につきましては、業務資料等で調査いたしますればあるいはわかるかと思いますが、何ぶんにもこの資料は前総理個人の問題にかかわる問題でもございますので、私どもとして、このような場合に発表いたすことはいささかためらうものでございまして、委員会の御指示をいただきますればさっそく取り調べの上、と考えておりますが、いずれ委員会での御指示をいただきたい、かように考えております。
  173. 津川武一

    津川委員 委員会の指示があればあとで出すそうですが、委員長、ひとつあとではかって出させるようにしていただきたいと思います。お願いします。  そこで、政務次官にお尋ねしますが、こういうものにあるものを発表できないのでございましょうか。「中央競馬年鑑」は農林省にあるわけですが、これを拾うと、いまみたいに一億三千万円の賞金が入ったこと、マキノホープ一頭で六千百五十万円の賞金が入ったことはわかるのですが、農林省はそれを覚えておるが、この委員会で言えないのか。
  174. 江藤隆美

    江藤政府委員 競馬年鑑に出ておりますものは、たくさんのものの中でごく限られた高額の賞金を得たもの、そういうものになっておるのではないかと思います。したがいまして、この問題はもっと広範囲にわたることでもございますので、本日ただいま準備が整わなかったものと考えます。したがいまして、先ほど審議官が申し上げましたように、委員会の指示がございますならば、鋭意調査を進めまして御期待に沿いたいと存じます。
  175. 津川武一

    津川委員 政務次官、適当なことを言わないで。ここは国会の場です。「中央競馬年鑑」にはもちろん大きな賞金をもらったものが入っておる。それから、馬主の一覧表がおたくにあるのです。調教師の一覧表もあるのですよ。それは私は農林省の皆さんのおられる前で計算したんですよ。覚えておる。だから、国会審議の場だから、そんなことを言わないで。審議をもう一回やらなければならなくなりますよ。  そこで、きょうは時間がないから先に進めますが、大蔵省、私が指摘したような馬の賞金で田中さんがどのくらい所得をとって、どのくらい税金を払ったか、お答え願います。
  176. 田口和巳

    ○田口説明員 御説明いたします。  先生も重々御承知のことかと存じますが、競走馬の賞金にかかります所得の計算方法は、一般の場合と同様に収入金額から必要経費を控除する方法によるわけでございまして、収入金額には本賞金のほか付加賞などの賞金品が含まれ、必要経費といたしましては、賞金を収得した場合に調教師、騎手、馬丁に支払われます進上金、これは通常の場合、賞金の二〇%ということになっております。また、馬の調教管理の費用として毎月調教師に支払いますところの預託料、それから馬の減価償却費、こういうようなものが主要な必要経費で、このほかにも出走登録料とか治療費、補助馬糧費、出張費、損害保険料などがございます。  お尋ねの課税の具体的な内容につきましてはお答えいたしかねますが、賞金収入につきましては、付加賞等を含めて、競馬会からの資料に基づき、いわばガラス張り的に把握される状況にございますし、経費の面につきましても、税務当局の調査によりまして経費の実額が捕捉される体制になっておりますので、競走馬の収支に関する課税は適正に処理されておりますのが一般でございまして、田中氏の場合も同様とお考えいただいてけっこうかと存じます。
  177. 津川武一

    津川委員 私たちの調査で言うと、昭和四十五年、田中角榮さんが七頭の競馬馬を持ち、この七頭のうち、マキノホープ、マキノハルカゼ、マキノスズカゼ、マキノアカツキ、マキノカツラの五頭で賞金を得ております。その賞金や付加金の合計を合わせると、何と三千四百五十三万円になり、あなたがいま言われたような進上金、厩舎関係、減価償却費、交際費等いろいろなものを勘定してみましたが、私たちの計算では千五百六十七万円の所得を昭和四十五年に田中角榮さんがあげております。  それにどのくらい税金を払っておりますか。もう一回お答え願います。
  178. 田口和巳

    ○田口説明員 御説明いたします。  まことに申しわけございませんが、課税の内容になりますので、お答えを遠慮させていただきます。
  179. 津川武一

    津川委員 公務員の税務関係の人の守秘義務については、きょうわれわれの党で法務委員会でやっております。そこで、いま私が指摘した四十五年の名前をあげた七頭の馬の所得三千四百五十三万円、これに対して、進上金、厩舎関係の費用、減価償却、交際費というものを引くと千五百六十七万円の所得になると私は数えた。このことを大蔵省としては課税の対象としてどうつかんでおるか、報告書類として出すように委員長からまず取り計らっていただきたい。これは第二の、委員長に対するお願いです。  第三の質問。私たちの調査によると、「贈与税については、はな夫人についても脱漏の疑惑がある。わが党の調査によれば、総理は昭和四十六年七月二十六日に三頭、四十七年六月三日に一頭、同年七月十日に一頭の競馬用のサラブレッドおよびアラブ馬をはな夫人の名義に変更しており、そのうちの一頭であるマキノホシは四十七年三月十四日にはな夫人の名義で登録され、」となっているが、これが同年六月三日に田中角榮の名義変更になっております。農林省、この事実は御存じでございますか。
  180. 高須儼明

    ○高須説明員 お答え申し上げます。  先ほどの資料の問題と同じような事情がございまして、委員会の御指示がございますればさっそく調査の上資料を提出いたしたい、かように考えております。
  181. 津川武一

    津川委員 これも私たちは農林省関係者と一緒に作業してつくったもので、農林省が私以上に覚えているものをそういう取り扱いをすることを、これは政務次官に、答弁でなく、強く抗議して、そして委員長には、この書類を後刻委員会提出していただくようお願いいたします。
  182. 澁谷直藏

    澁谷委員長 津川君に申し上げますが、ただいまの件は理事会で協議したいと思います。
  183. 津川武一

    津川委員 次の質問ですが、そこで、贈与にかかわる贈与税ですが、大蔵省、田中はなさんからどのくらい贈与されておるのか、どのくらい贈与税をかけたのか、明らかにしていただきます。
  184. 田口和巳

    ○田口説明員 御説明申し上げます。  一般論として申し上げますと、贈与税は、贈与の事実がございました場合に、贈与を受けた人に対して、贈与財産につきまして計算しました税金を納付していただくものでございます。したがいまして、単に無償による財産の名義変更がございましても、直ちに贈与税が課税されるというものではなく、実質に従って処理することとなります。したがいまして、名義変更がございました場合にも、その馬の飼料等の管理や入賞した場合の賞金の取得等の事実関係によって、実質の所有者が変わっているかどうかを検討いたしまして、所有者が変わっていることを確認した上でなければ贈与税の課税関係は生じないこととなります。
  185. 津川武一

    津川委員 この点で、馬の所有者の名義変更はわれわれ贈与と思うのですが、実質上変わったかどうか実体論でやるというわけですが、田中前総理のところから何か特別上申書がありませんでしたか。
  186. 田口和巳

    ○田口説明員 現場のほう、国税局、署のほうに、実質的には自分のものであるという趣旨の確認書のようなものが出ていると聞いております。
  187. 津川武一

    津川委員 それはいつごろのことでございましたか。
  188. 田口和巳

    ○田口説明員 ちょっと正確に聞いておりません。
  189. 津川武一

    津川委員 この点も明確に委員会に出していただくよう、委員長からの取り計らいをお願いいたします。
  190. 澁谷直藏

    澁谷委員長 同様に取り計らいます。
  191. 津川武一

    津川委員 私は、きのう私のところに説明に来た国税庁の人からこれを四十七年と聞いているわけですが、四十七年ではありませんでしたか。大蔵省。
  192. 田口和巳

    ○田口説明員 先ほど申し上げましたように、ちょっと現場のほうに確かめておりませんので……。  なお、つけ加えさせていただきますと、事実がどうであるかということをわれわれが判断する、いわば判断材料として、確認書のようなものが出ていれば、それも一つの材料にするわけでございまして、確認書が出ているとか上申書が出ているとかということが特段の問題を意味するものではないと私どもは考えております。
  193. 津川武一

    津川委員 馬の名義所有者と、実際の馬の賞金を受け取る人、この人が変わっていいのですか。軽種馬育成指導上、農林省はどう考えておりますか。
  194. 高須儼明

    ○高須説明員 お答えいたします。  原則として、賞金授与の権利者は登録した人でございまして、また、その馬でございます。ただし、特定の事情のある場合にはこの限りでないということも取り扱いとしてございます。
  195. 津川武一

    津川委員 競馬法の第十三条に、馬主の登録を受けることができない者、つまり馬主となれない者として、「一、禁治産者、準禁治産者及び破産者であって復権を得ない者 二、競馬法に違反して罰金以上の刑に処せられた者 三、一年以上の懲役に処せられた者」となっているが、私は、田中前総理大臣がこの三つには該当しないと思いますが、特殊の事情というのはほかに何がありますか。
  196. 高須儼明

    ○高須説明員 お答えいたします。  ただいま先生がお読みになりましたような、そういう事項に該当されるというようなことは全く信じません。  特別の事情というような場合でございますが、これは日本中央競馬会競馬施行規程の中の運用でやっておることでございまして、「ただし特別の事情があると認められるときは、この限りでない。」という、この文句でございますが、この条文ないしはこの制度の背景が若干ございまして、はっきり申し上げてよいかどうかわかりませんが……(津川委員「一般論でなく、田中さんの場合を聞きたいのです」と呼ぶ)私ども、どのような事情があるか、総理から直接お伺いいたしたことはございませんので、その点は類推の域を脱しないわけでございます。そういう方もございますので、総理の立場ということでございます。
  197. 津川武一

    津川委員 一般論として、実際の馬の所有者と競馬法上の名義者が違うことが、指導上望ましいことですか、望ましくないことですか。
  198. 高須儼明

    ○高須説明員 この規定は、一般的に申し上げますなれば、望ましくないということでただし書きになっておるわけでございます。
  199. 津川武一

    津川委員 わかりました。一国の総理ともあろうものが、自分が大蔵大臣や幹事長をしたときにこういうことをしておったということを私は強くこの場で指摘しておいて、次に質問を続けていきます。  そこで、マキノヒメは百六十六万五千円、マキノアサカゼは二百九十七万六千百五十円、ベロナは千四百六十一万九千三百円、マキノサクラという馬は四百六十五万七千百五十円の賞金、付加賞をもらっております。これらの馬の中で、昭和三十九年から四十二年の三月十五日の間に、マキノチカラ、マキノウメ、マキノホマレ、マキノユタカ、マキノアラシという五頭の馬が田中はなさんの名義から田中角榮さんの名義に逆に移っているのです。この事実は農林省、御存じでございますか。
  200. 高須儼明

    ○高須説明員 この資料につきましても、委員会の御指示によりまして、一緒に処理させていただきたいと思います。
  201. 津川武一

    津川委員 委員長、同時に取り計らいをお願いいたします。
  202. 澁谷直藏

    澁谷委員長 同様に取り計らいます。
  203. 津川武一

    津川委員 そこで、大蔵省に質問いたしますが、田中角榮さんがこの贈与税を払っているでございましょうか。お答え願います。
  204. 田口和巳

    ○田口説明員 課税の内容にわたりますので、お答えを差し控えさせていただきます。
  205. 津川武一

    津川委員 田中角榮さんが、現地の官庁から言うと昭和四十七年には田中はなさんに名義は変わったけれども、実体はこれはおれの馬だと特別上告しております。昭和四十二年三月十五日、奥さんから角さんに移ったときに、こういう特別な申請書が出ているでございましょうか。私は出ていないと聞いているのですが、いかがでございますか。大蔵省。
  206. 田口和巳

    ○田口説明員 特段聞いておりません。
  207. 津川武一

    津川委員 昭和四十二年の三月十五日を中心にして、奥さんのはなさんから角榮さんに移った、この事実、これの贈与税をどうやっているか、所得と贈与とをどう見たか、この点について、大蔵省は資料、報告をこの委員会に出すようにしてもらいたい。そして、この点で特別な申告が田中角榮さんから、田中はなさんからあったかどうか。この二点を、委員長、また後刻報告させていただくようお願いいたします。
  208. 澁谷直藏

    澁谷委員長 同様に取り計らいます。
  209. 津川武一

    津川委員 これで質問を終わりますが、最後に、証人として、田中角榮さん、田中はなさんを私は申請しますので、委員長の格別な取り計らいをお願いいたします。
  210. 澁谷直藏

    澁谷委員長 理事会において十分協議いたします。
  211. 津川武一

    津川委員 最後に一つ。農林政務次官、日高地方でいま競馬馬が売れない。七百頭も余っている。かつては四百万円にも売れたものが、いま、馬肉として、馬として十万円ぐらいしかしない。農民が破産しそうになっている。大事な産業なので、この軽種馬、競走馬の育成方法に対して農林省の方針を聞かしていただいて私の質問を終わります。
  212. 江藤隆美

    江藤政府委員 最近競馬が盛んになるとともに、生産頭数もとみにふえてきたということは私も存じております。昭和四十五年からことしを比べますと、おおよそ八千頭程度のものが、一万頭をはるかにこすようにことしはなったのではないかと思います。したがいまして、御案内のように、競馬は開催日数、回数、あるいはまた出走馬の制限等がございますものですから、なかなかこれを全部消化することができないという情勢にありまして、ただいまそのような馬産地においていろいろ問題のあることもいささか私も承知をいたしております。老廃馬の更新、あるいはその他能率の悪い馬の更新等で若干はいくにいたしましても、やはり、ある程度需要に見合った生産を続けるように農林省としても十分心得ていくべきであるし、生産者の皆さん方にもこの点を進んでよくお話し申し上げて、御協力を仰いでまいるように私は今後も努力をしてまいりたいと思います。
  213. 津川武一

    津川委員 軽種馬生産農民の生活が保障されるように、また、日本で軽種馬が育つように、強く農林省に要求し七、私の質問を終わらせていただきます。
  214. 澁谷直藏

  215. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 配合飼料の問題並びに野鼠対策等についての質問を当局にいたします。  まず、時間がかなり制約がありますので、はしょった質問になるかと思いますが、最初に配合飼料の問題でございますけれども、全農は配合飼料の工場出荷価格を、十一月、十二月供給価格として、十一月一日からトン当たり全国総平均で七千六百十八円、現行に比して一一%の引き上げをいたしております。御承知のように、昨年は三回、ことしも三回の値上げである。その間三回の値下げが若干ありましたけれども、結局配合飼料価格というものが七万六千百円となりまして、わずか二年間で約二倍となっておることは御承知のとおりであります。全農では、配合飼料の原料となる輸入穀物相場が、最大の生産国である米国での穀物収穫予想等が悪化しておるということを背景に、さらに来年一月に四千円値上げして八万円台になるということで、畜産農家はたいへんなピンチに追い込まれておることは御承知のとおりでございまして、畜産農家は、いわゆる需要減退とまたこういった配合飼料の値上げ等によりましてはさみ打ちにあったということで、さらに畜産危機が深刻になることは必至でございます。そういったことから農林省は十一月十八日に、十一月からの飼料値上げに対する飼料、肉牛対策をいろいろ講じておられるわけでありますけれども、この飼料値上げについては、当委員会でもかねがね指摘しておりますように、全農が飼料の六〇%のシェアを持っており、メーカーが残り四〇%のシェアを持っておる、こういうことになっておりますが、この全農の値上げによってメーカーももちろん上げるということになりますから、まず、来年の値上げを前に全農の原価というものを公表すべきである、と、かように私は申し上げたいのであります。  従来から私はこのことを言っておりますけれども、なかなか原価公表がなされておりません。こういったことについて当局はどういうふうに行政指導しておられるのか。原価を公表すれば当然これほど値上げしなくてもいい、かように私はいろいろデータを取りそろえて検討いたしておるわけでありますが、まず、その点について当局の見解を承りたいのであります。
  216. 高須儼明

    ○高須説明員 先生のただいまの御質問の中にございました建て値の問題でございますが、もう少し低い価格になっております。  それから、原価公表の問題でございますが、私どもは原価すべてをお伺いしておるわけではございません。いろいろな個々の原料代の値上がり状況であるとか、あるいは円為替レートの変化であるとか、その他主要な諸要因をそれぞれお伺いいたしまして、それらについて客観的に判断をいたして、畜産農家のためになるべく低い水準に押えていただくようにお願いし、指導しておるわけでございます。
  217. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 それでは、来年の一月に予定されている四千円の値上げで八万円台になるわけですけれども、これについてはやむを得ないというふうに農林省は見ておられるのですか。その点、どういうふうな行政指導をしておられますか。
  218. 江藤隆美

    江藤政府委員 当初私どもが聞き及んでおりました限りにおきましては、来年一月の値上げはかなりの額が出てくるものと実は考えておりまして、農林省としても、これについては相当の期間を要しまして、査定と言いますとおこがましいわけでありますが、いろいろと資料の提出を求めまして、鋭意検討した結果、大幅に下回る四千円ということで、一応私どもはやむを得ざるものという結論に実は達したわけでございます。したがいまして、この算定基礎についてはかなり検討を加えたつもりでございます。特に、四千円そのものが農家の負担になるわけではないわけでありまして、今回補正予算でお認めいただきました六十億を基金とする親基金でもって補てんをし、さらに現在までの積み立て金でもって補てんをし、うまくまいりますと四千円のうちの三千四百円程度は何とかこれでもって補てんをいたしたいものだ、こういうことで各方面の話し合いをいま詰めておる段階であります。したがいまして、直接に生産者負担となる分はトン当たり六百円程度になるものかと考えます。  そこで、全農が値上げをいたしますとメーカーがこれに追随するという形でございますから、過般来、全農に対しまして、せっかくここまでがんばってきたんだから全農もひとつ一カ月程度、わずか六百円のことだからがまんできないのかという要請もいたしまして、一カ月まるまるというわけにはまいりませんけれども、半月分ぐらいは生産者団体でもございますので何とかがんばってみたい、と、このような回答も実はいまもらっておるところであります。
  219. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 親基金の問題が出ましたが、御承知のように、現在、畜産関係には基金制度があるわけです。私は、親基金といえども最終的にはこれは農家の負担になると、かように言っているわけです。したがって、いま政務次官から答弁がございましたが、この親基金も、政府のお考えによりますと、四年間、すなわち五十年から五十三年までに総額八百億円ぐらいを考えておられるようでありまして、国が四百億、民間四百億。そこで、五十年度は八十五億ぐらいが見込まれておるように聞き及んでおりますが、その中から六十億円を本年度補正予算で見込みますと、結局、あと残りは二十五億円ということで、来年度は二十五億円ということになる心配があります。そういったことを見ましたときに、一時しのぎにこれをやりますけれども、現在もうすでに底をついておりますし、この基金がはたしてどこまで功を奏するか、これは疑問であります。  こういった基金制度については、すでに現在ある基金に対してこのように親基金制度を設けられるのであれば、いまこの畜産が最大のピンチにあっておりますし、こういったことが将来長く続いては困るし、また、これが来年も再来年もということはあってはなりませんが、いま一番最大のピンチではないかというふうに思うときに、むしろ積極的に大蔵省と折衝をして、この五十年から五十三年の四年間に考えておられる四百億をむしろ現在ある基金の中に入れて、そしてこのピンチを乗り越える、そして農家負担を軽くしていく、こういったことが望ましいというふうに思うのですが、そういったことについての当局の見解はどうか、どういうふうに検討されたか、御答弁いただきたい。
  220. 江藤隆美

    江藤政府委員 それも一つの考え方だと思います。当初検討の過程で、親基金制度がいいのか、いまおっしゃるような三つの基金にそれぞれ金をつぎ足したものがいいのか、それとも、配合飼料ではなくて、トウモロコシ、マイロというような主原料に対する輸入の際の何らかの処置によって解決したほうがいいのか、いろいろなことを実は想定いたしまして検討を加えた結果、団体等の意見を聴取して親基金制度ということにいたしたわけであります。  御案内のように、現在あります基金は、全農系、それから専門農協糸、それから商社系と三つあるわけでありまして、それぞれの背景とそれぞれの力がずいぶん違います。そこで、これをまとめてめんどうを見るという組織にしたほうがよかろうという結論に達して親基金の制度を設けることにいたした次第でございます。
  221. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 まあ、いろいろ見解の相違があろうかと思いますけれども、この親基金制度も、いま申し上げたような予算であっては、おそらくもうすぐ底をついてパンクする。しかも、親基金制度についても、これには御承知のように、これを発動する基準というものがございます。来年の一月の値上げに対してはおそらく発動する考えで政府は準備をしておられるかと思いますけれども、これに触れると時間が相当かかりますので、私は、先ほど申しましたように、あくまでも現在ある三つの基金に対するいわゆる補てんを行なって、今後農家負担を軽くするという方向でぜひあってほしい、かように考えておるわけです。十分検討をいただきたい。  さらに、この配合飼料については、食管同様あくまでも国による一元管理の方向で検討すべきである。すなわち、事業団を設けて二重価格にすべきだということで、今回社会党、公明党、民社党三党案を、臨時国会にも修正案を提案していろいろ審議を願ったわけでございます。すなわち、事業団構想ということは一足飛びにはできないことはよく承知はしておりますけれども、いわゆる現行基金に対して多額の直接補てんを促進する、すなわち農家負担を軽減していく、こういう意味でぜひこういった構想を当局においても検討していただきたい、かように私は申し上げたいのですが、その辺については本会議等でも一応の答弁はあったのでありますが、さらに当局としての見解を承っておきたい。
  222. 江藤隆美

    江藤政府委員 一つの考え方であると思います。また、そのような御提案がありますならば、私どもも十分それは検討させていただきたいと思っておりますが、もともといままで自由企業でもって成り立ってきたこの業界を直ちに事業団構想の中に組み入れていくことがはたして実態に沿うかどうかについては、私はまだ若干の疑問を持っておる次第でございます。
  223. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 事業団構想については、今後の問題として十分検討をお願いしたい。  次に、昨年九月の時点で値上げの際に大蔵省が補てんしましたところの二百十億円に対する特別積み立て金の問題でございますけれども、これは五十一年以降五年間で返済ということに一応はなっておるわけでありますが、このことについては、今回の親基金の問題等が出ておりますけれども、これを取りくずすということになるのかどうか。その点について私はいろいろ疑問に思うのですが、畜産農家がこれほど苦しんでおるときに、返済の処置、すなわち二百十億円の特別積み立て金の返済については過酷であるということから——来年度またさらに上がってきて畜産農家をたいへんな窮地に追い込む状態になってまいりますが、そこで、この二百十億については返済義務を解除するという方向で検討すべきであると思うのですが、その辺は農林省は新年度予算折衝にあたってどういうような考えで臨んでおられるか、その辺の見解を明らかにしていただきたい。
  224. 江藤隆美

    江藤政府委員 返済の義務が生じてまいりますのは五十一年以降の問題でございますので、五十年度の予算の中においてはこれを返済してもらうという考え方は持っておりません。したがいまして、五十一年以降にそのようなわれわれの予測し得ざる問題ができてまいりました節には、またその時点で検討させていただきたいと思います。
  225. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、輸入穀物に関連してお伺いしますけれども、現在、輸入商社から業界が、すなわち飼料メーカー等が輸入穀物を入手する場合は無税の特別措置があるわけです。ところが、生産農民が単品でそれを求めるときには、私の調査によりますと、キログラム当たり八円六十銭の関税がかかるということになっております。農林省も十分承知だと思いますけれども、飼料原料の単品購入を無税扱いにして、窓口を設けることが必要である、こういった飼料の実にきびしいときにあたってはこういうことも考えてやるべきである、いわゆる輸入業者と生産農民、これは無税扱いにするということは当然じゃないか、かように思うのですが、農林省はこういったことについて当局とはどういうような折衝をしておられるか、これに対してはどういうような見解をお持ちであるか、対策等があればお答えをいただきたいと思います。
  226. 高須儼明

    ○高須説明員 ただいま先生のおっしゃいました輸入商社、これはえさメーカーでございますが、えさメーカーが輸入いたしますのは飼料原料ということで、無税扱いになっております。その場合には厳重な保税工場というような形で、横流れができないような仕組みになって、厳重な監視のもとに配合飼料に転化されていくわけでございます。ところが、単体で入ってまいりますと、それは輸入いたしました方が横流しするというわけじゃございませんけれども、そこらあたりの関係がなかなかむずかしゅうございまして、そしてこれがどういう影響を与えるかと申しますと、もし横流れ等をいたしますとでん粉になってくるわけでございまして、農林省といたしましては、でん粉対策もまた非常に微妙な問題でございます。したがいまして、配合飼料の原料分についてだけ、厳重な監視のもとに、横流れさせないという保証のもとにそのような特別措置をとっておるわけでございまして、単体飼料につきましてはまことにむずかしいわけでございます。  そこで、現在試験的に圧ぺん加工等をいたしまして、変形加工いたしましたものだけを単体飼料として、約三万トン関税割り当て制度をいま試験的に実施いたしておるわけでございますが、この場合には関税率一〇%でございまして、トウモロコシをコーンスターチ等の原料に入れる場合と同じでございます。  畜産側といたしましては、先生のおっしゃいましたような御趣旨と同じような立場にございまして、でん粉対策との種々の問題の調整をはかりながら、できるだけ畜産農家の方々のための御便宜をはかる方法はないものかと種々検討いたしておる段階でございます。
  227. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間の関係でもう一、二点だけ飼料問題についてお聞きしておきますが、飼料価格の問題もさることながら、量の問題ということがたいへん心配になっております。委員会が久しぶりに開かれたのでありますし、また、来年度は通常国会でかなりの期間が過ぎるわけでございますので、この量の確保ということを真剣に当局も考えておられると思いますけれども、これまた十分対策をとっていただくためにあえて私は申し上げるわけですが、昨年からことしにかけて六回値上げをしまして、来年もまたさらに上がるということで、価格が上がった上に量が足らなくなるということになるとまたたいへんな問題である。ちなみに、アメリカの飼料穀物を含む穀物の期末在庫というものが、私の調査によると、小麦が七五年六月で六百六十一万から七百九十七万トン、トウモロコシがこれまた七五年九月現在で六百七十三万から七百二十四万トンで、大豆が七五年七月現在で百六十三万トンに落ち込む見通しということが言われております。そして、この期末在庫水準というものがいずれも本年度の在庫に比べて約半減する形となっておるというふうに言われておりましてたいへん憂慮をしておるところでございますが、この量の問題について、今後の見通しについては国としてどう対策をとっておられるか、その点も明らかにしていただきたい。
  228. 江藤隆美

    江藤政府委員 世界的なきびしい中でございますけれども、すでに、来年の新穀物年度の九月まで、必要量のおおよそ九九%近くを成約いたしておりますので、いまのところ心配はないものと思います。特に、世界的な天候の変化その他につきましても、私どもは十分情報を収集しながら見通しを誤らないように鋭意留意をしておるところであります。したがって、よく議論をされますが、えさの金目の問題と、それから量の問題と、もう一つ質の問題があります。これは今後大事なことでありますから、この三つをあわせて十分取り組んでまいりたい、このように考えております。
  229. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 飼料問題でもう一点伺いますが、飼料については、輸入先の多元化、開発輸入、備蓄の問題がいろいろと問題になるわけでありますけれども、基本的には国内生産の強化を優先させるべきであり、酪農、畜産の体質改善こそが先行されねばならないと私はかねがね申しておるところであります。そこで、五十年度の政府予算案の編成にあたりまして、政策行政基本姿勢というものがきわめて重要であるということになるわけでありますが、農林全体では対前年比二五%のアップ、また、自給飼料については四割アップということでありまして、御承知のように、五十年度政府予算は、総需要抑制、インフレ対策として相当強い緊縮財政になるであろうということは、今回の臨時国会その他答弁を聞きまして十分われわれも認識しておりますけれども、中でも公共事業の圧縮が相当強いわけでございます。  そこで、公共事業はこれを五%押えようという考えのようでありますが、国民食糧確保という重大な問題から、また、こういった切実な問題であるがゆえに、来年度は農林省では草地開発を百六十一億円、すなわち飼料基盤整備事業に百六十一億円の予算を計上しておられるようだが、私は、これを単に公共事業の範疇に入れるというのではなくて、圧縮のワクの中からこの草地改良をはずして、むしろこの機会に最大重要事である畜産問題で、飼料の量の確保なりあるいは酪農畜産の体質改善に強く予算を振り向けるべきであるというふうに考えておるわけですけれども、この公共事業の扱い方の考え方について、特に畜産がこういうようにたいへんなときになっておりますので十分検討をしていただきたいと思うのですが、その辺の農林省当局の検討の内容と見解を承りたいのであります。
  230. 江藤隆美

    江藤政府委員 御存じのように、わが国のおもなえさの輸入国でありますアメリカが、あれほどの穀物生産国でありながらもえさの消費量を一五%も減らしていこうというきびしい穀物状況にあります。したがって、私どもはすでに成約はいたしておりますものの、安倍農政になって以来、もし不測の事態が起こって日本に対する穀物の輸出がいささかなりとも削減されるようなことがあってはならないと、このようなことも実は配慮をいたしまして、けさほど大臣が御答弁になりましたように、濃厚飼料の自給ということはもう容易ではございませんので、とにもかくにも草資源をひとつ思い切ってやろうではないかということで、実は、予算の途中でありましたけれども三十億を、追加要求をする。たとえて言いますと北海道でも、けさほど来乳価の問題がございましたが、牧草地を二年、三年ほっておきますというとかなり収量が落ちてきます。いままでは制度がございませんでしたので、そういう牧野の再開発について、農協でもけっこうでありますから、そういうものをまとめてもう一度この牧草地を更新しようではないか、あるいは裏作を集団化して、そういうことについてもこの際思い切って草資源を開発していこうではないかということで、おっしゃるように公共事業の伸び率もさることながら、私どもは、今日のインフレの要因をつくったのは農村であるとは思っておりません。  むしろ、高度経済成長に取り残され、そしてインフレのしわ寄せをこうむっているのは農村であるという認識のもとに立って、全力をあげて要求・しておるこの予算の獲得に努力をしたい、このように考えておりますので、委員の皆さん方にもまた一そうの御鞭撻とお力添えを賜わりたいと存じます。
  231. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、三宅島の野鼠対策について若干お伺いしたいと思います。  三宅島の人口は約五千人、島のおもな産業は、第一次産業としての水産業農業の年産額というものが約三億円あります。近年、離島観光ブームにまり観光業の進展は著しく盛んとなりまして、年間八億円をこすということになっておりますが、この三宅島で深刻な問題となっているのが、野鼠の繁殖とそれによる農産物の被害でございまして、年間二億円にものぼるというふうに推定をされております。このことについては、私は四十六年の三月二十六日にも当委員会で当時の林野庁長官に対していろいろと質疑をし、この対策を講じていただいたわけでありますが、この島の農産物中、サツマイモ、トウモロコシ、スイカ等の被害が甚大でありまして、この対策としてネズミの天敵動物とされておるイタチの放獣案が検討されて、またたいへん問題になっております。伊豆小笠原諸島自然協会というものがございまして、この対策に相当苦慮されて、いろいろ検討されておりますけれども、昭和四十六年にこの三宅村はイタチの捕獲及び放獣について東京都へ許可申請を提出したわけでありますけれども、これに対し、私が、イタチ放獣が及ぼす二次的な影響として、すなわち生態系の破壊、ひいては自然破壊に通ずるということを憂慮しまして、イタチ放獣については反対であるということから、その他の薬剤散布等によって十分野鼠対策を行なうべきであるということで指摘したのでありますが、これについて、実は、本年十二月五日から十二日の間の一週間にわたって東京都の関係職員と農林省の鳥獣科長の宇田川科長等が現地を調査されておられます。このことをまず最初に農林省当局から報告を願いたいと思います。
  232. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘のような三宅島につきましての調査でございますが、今月の五日から十二日まで七日間につきまして、東京都が独自に行なったものでございます。主として野鼠の生息数とかあるいは被害状況、さらには野鼠の種類、防除対策等について行なわれた模様でございます。現在私どもは東京都のほうに照会いたしておりますけれども、近くその結果の概要について発表するというようなことで、いまのところ詳細はわかっていない、こういうことでございます。
  233. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 そこで、林野庁長官、おたくのほうから関係職員は環境庁に移っておるけれども、当時、四十六年の三月二十六日に私が指摘したときに、薬剤散布によってこの野鼠対策をやるようにということをいろいろ指摘したわけですが、これに対してどういうふうに処置をされ、結果はどうだったかということは御承知でありますか。
  234. 松形祐堯

    松形政府委員 お答え申し上げます。  もう先生御承知のとおり、森林病害虫等防除法に基づきまして、森林被害、野鼠の被害がありました場合は対策をとっておりまして、現在私どもすでに一億八千万円という予算を計上いたしておるわけでございます。ところが、三宅島に発生いたしておりますネズミはクマネズミ、ドブネズミでございまして、実はこれは森林に対して被害はほとんどないというようなことでございます。ちなみに、農作物に被害を与える野鼠でございまして、森林に被害を与えますのはハタネズミ、スミスネズミというようなことでございまして、三宅島で発生いたしておりますのはそういうものでないものですから、実は、私ども、都のほうからの要請がございませんので、森林病害虫等防除法に基づく防除はやってない、こういうことでございます。
  235. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 時間の制約があるのではしょって数点お伺いしますが、環境庁にちょっとお尋ねしますけれども、本年に入ってこの野鼠がずいぶんふえた。実際には三宅島の農耕地というものは、過疎現象が起きたために東京都または関西方面に出かせぎに行き、そのためにずいぶん狭まって、ある限られた農地に野鼠が集中するためにふえたかのように思われるわけですけれども、この野鼠は三宅島で推定約二、三十万匹と言われております。こういったものに対して現在地元では野鼠対策協議会を開催して、再度イタチの放獣を考えておる。八丈島から持ってくる。または本土からも持ってくる。または、いわゆる狩猟法の、鳥獣保護及狩猟二関スル法律の第十二条によって雄イタチはとっていい、雌イタチの捕獲は禁止されておる、学術研究その他の場合には東京都ないしは環境庁長官の許可があれば別だ、ということでいろいろ規定されておるわけですが、これをいたずらにとりますと、いわゆる雄イタチということでわなにかけてとりますと、わなには雌でも雄でもかかるということになります。また、地元でこれをどんどん放獣しますと、今度はネズミをとるばかりでなく、実際には得がたい鳥がおるわけですが——三宅島にはついこの前の十二月六日に天然記念物に指定されましたところのアカコッコという珍鳥の生息地がありますが、これは日本、フランス、ドイツの三国にしか生息しない貴重な鳥で、地面をはうように飛ぶし、卵も畑なんかに産むというようなことで、これらをイタチが食べますと、得がたい鳥の絶滅ということで、環境保全または自然保護の見地からもたいへんな問題であると思う。これに対して環境庁はどういうような見解をお持ちであるか、簡潔に承りたい。
  236. 澁谷直藏

    澁谷委員長 簡潔に願います。
  237. 相馬昭男

    ○相馬説明員 三宅島のネズミの駆除をどう行なうかにつきましては、現在東京都において調査が行なわれた段階でありまして、その結果を待って対処したいと思っておりますけれども、一般的には、こういうような島に新しい天敵を人為的に移入するということにつきましては、ただいま御指摘のように自然の生態系を乱すというようなこともありますし、また、この島には、伊豆七島に特有な鳥類がアカコッコをはじめとしてたくさんおります。こういうような鳥類に害を与えるおそれもあるというようなことがありますので、一般的には好ましくないというふうに私どもは考えております。
  238. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 簡潔にもう一点伺います。  この問題については、地元三宅村から、野鼠対策協議会等がございますので、村当局より東京都を経て環境庁にイタチの捕獲に対する申請等がもし出た場合は、私は、許可すべきではない、別な方途で駆除すべきであるというふうに思っておりますけれども、その許可についてはどういう考えですか。この点簡潔にお答えください。
  239. 澁谷直藏

    澁谷委員長 簡潔に願います。
  240. 相馬昭男

    ○相馬説明員 一般的には好ましくないので、許可はしたくないと思っております。しかし、ただいま申し上げました調査団の結果等が出てまいりますので、それによっていまのイタチ以外の方途でその対策が立てられるかどうか、そういう点も考慮しながらきめてまいりたいと思います。
  241. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 最後に、それでは時間がございませんので一点だけお尋ねして終わりますが、イタチを放すとなりますと、これは相当な量を放さなければ二十万ないし三十万匹という野鼠に対しての駆除はたいへんであります。そうしますと、イタチによって得がたい鳥類が絶滅したり、たいへんな問題が起きてくる。こういうことになりますので、このイタチ放獣に対しては十分慎重に対処してもらいたいと同時に、四十六年の三月二十六日にも当時の林野庁に私はいろいろ提案して質問をしたわけでありますが、薬剤による駆除というものがあるわけです。先日薬剤を当局に私が渡しておきましたけれども、そちらにあげておきましたが、この薬剤はシリロシド製剤でありまして、野鼠防除試験によって十分効果が出ております。これは愛媛県の衛生研究所でもすでに試験を何回もやりまして、効果が出ております。これは農林省も許可しているように聞いておりますが、その点はどうなっているか。そしてこの薬品の名前はスチールエラン三一二、また三一三というふうにいろいろ種類はありますが、ほとんど同じような性質のものでありますが、これをまきますと、いわゆる人畜にはほとんど無害でありまして、犬、ネコなどの家畜や鳥類、魚類に対しても無害である。ネズミだけには効果があるということで、生殖機能もおかされて、生殖機能の破壊のために今後繁殖もしないということで、実に効果的な薬剤であります。  ところが、これをまくためには相当また助成しなければ金が要るわけであります。現在三宅島は年間村財政が六千万くらいで、たいへん窮乏財政でありますので、これらの問題について助成をして、これらを空中散布するなり、あるいは農家に配付して時期的に随時これをまくというようなことをしてまいれば野鼠はかなり絶滅するというふうに言われておるのであります。  こういったものを使って野鼠対策をするという考えについて、当局の見解を承りたいのであります。
  242. 澁谷直藏

    澁谷委員長 簡潔に願います。
  243. 二瓶博

    ○二瓶説明員 ただいま先生からお話しがございましたシリロシド製剤につきましては、農薬取締法に基づきまして、野鼠防除剤ということで農林大臣の登録をいたしております。  なお、野鼠の防除という観点からこれについて助成措置を考えるかというお尋ねでございますが、三宅島におきます被害状況につきましては、まだ東京都のほうから正式な報告もございません。したがいまして、現在のところ都のほうからもこの防除の補助金の支出の要望等も全然聞いておりませんので、現段階では補助金の支出について具体的に検討はいたしておりません。
  244. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 東京都の報告を得て、十分検討して対策を講じていただきたい。  以上で質問を終わります。      ————◇—————
  245. 澁谷直藏

    澁谷委員長 請願審査に入ります。  今国会において本委員会に付託になりました請願は全部で三十三件であります。  本日の請願日程第一から第三十三までの請願を一括して議題といたします。  各請願の内容につきましては、請願文書表等によりましてすでに御承知のことと存じます。また、さきに各党理事間におきましても慎重に検討いたしましたので、この際、各請願についての紹介議員からの説明等は省略し、直ちに採決いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  246. 澁谷直藏

    澁谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  これより採決いたします。  先ほどの理事会において決定いたしましたとおり、本日の請願日程中、第七、第八、第一一、第一二、第二一ないし第三一の各請願は、いずれも採択の上、内閣に送付すべきものと決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  247. 澁谷直藏

    澁谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  ただいま議決いたしました各請願に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  248. 澁谷直藏

    澁谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  249. 澁谷直藏

    澁谷委員長 また、本委員会に参考送付されました陳情書は、食糧自給政策に関する陳情書外二十三件でございます。  右、御報告いたします。      ————◇—————
  250. 澁谷直藏

    澁谷委員長 この際、閉会中審査に関する件についておはかりいたします。  すなわち、  芳賀貢君外十名提出、国が行なう民有林野の分収造林に関する特別措置法案  内閣提出農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案 以上の両案につきまして、閉会中もなお審査を行ないたい旨、議長に申し出たいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  251. 澁谷直藏

    澁谷委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。本日は、これにて散会いたします。   午後四時十九分散会