○田口説明員 ただいま
先生から御指摘いただいたように、ただいまわが国の繊維産業、なかんずく繊維中小企業は前古未曽有といっていいくらいの非常な不況に直面しておるということで、私
ども対策に腐心しているわけでございます。なかんずく中小零細企業の方が多いというだけでなくて、同じ地域にたくさんの繊維
関係の
業者が集まっておられる地域が多い。いろいろな町へ行ってまいりましても、市民、町民の大
部分が繊維に
関係しているというようなことで、地域社会ぐるみの問題になりかねないといったような問題がございますので、特にそういった中小企業が地域社会の中でかたまって産地を形成しておるというところに対しては、いろいろ不況
対策の面等におきましてもできるだけ重点を置いて
努力しておるつもりでございます。
なかんずく御指摘の大島つむぎにつきましては、やはり中小零細企業が非常に多いということ、のみならず今回伝統産業振興法に基づきまして伝統工芸品として指定する準備をいたしておるわけですが、そういった面からもきわめて重要であるということ、それから
先生からも御指摘いただきましたように、奄美群島振興の特別
措置法という観点から見ましても特に留意しなければならないといったようなものであるということで、分け隔てをすることもなかなかむずかしゅうございますが、率直に申しまして私の所管しております繊維の各業種の中でもやはり大島つむぎというのは特段に重要な業種であるという気持ちで、従来から行政をやっておるつもりであります。
具体的な不況の実態につきましては、実は昨日から担当官を二名派遣いたしまして、実態のさらに一そう正確な把握に
努力しているところでございますけれ
ども、大体現在把握しておりますところによりますと、大島つむぎ、これはいわゆる鹿児島の分、それから奄美群島の分、両方含めまして、
昭和四十年に約三十六万五千反の生産だったものが、四十七年までは
比較的順調にふえてまいりました。四十七年が八十四万三千反というふうなことになっておると聞いております。四十八年には八十二万九千反ということで若干減少しております。最近の数字でございますけれ
ども、私
どもが鹿児島県庁を通じて
調査いたしましたところによりますと、本年度の一-十月までの生産は約六十七万三千反という数字になっておりまして、昨年の一-十月、つまり前年同期に比べますと五・三%の生産の減少になっておるという県庁からの報告を得ておるわけでございます。なお、工賃等につきましても昨年に比べまして相当の低下をしておるということでございます。しかしながら、もっともっと具体的な個別の実態を把握すべく現在実態把握に
努力しておるつもりでございます。
それから、
対策面でございますけれ
ども、できれば輸入問題を中心にいたしましたいわゆる対外政策面の
関係、それから国内
対策の
関係ということで二つに分けて御説明させていただきたいと思います。
先ほど
板川先生からの御
質疑にもございましたけれ
ども、業界からは輸入の全面的な禁止をぜひしてほしいというお話が再々あるわけでございますけれ
ども、私
どもお気持ちがわからないわけではないわけですけれ
ども、やはり一方的な輸入禁止あるいは輸入制限をするということは、国全体としても非常に大きな問題になるのではないかということで、いわゆる直接的な輸入禁止に至る前にできるだけの
措置を講じたいということで従来から
努力しているつもりでございます。
輸入
関係での第一の
対策は、先ほど来実は
質疑がかわされておったわけでございますけれ
ども、
一つは表示の問題があるわけでございます。関税法第七十一条の規定に基づきまして、
大蔵省にお願いして、いわゆる原産地についての虚偽の表示あるいは原産地について誤認に導くような表示をつけた輸入品についてはこれを輸入許可しないということで
指導していただいておる。これは具体的には昨年の春からやっていただいておりますけれ
ども、この春に入りましてさらに
指導とか実施を強化していただいておるということでございます。同時に、表示の国内的な問題につきましては、
公正取引委員会にお願いいたしまして、いわゆる不当景品類及び不当表示防止法に基づきます告示を五月一日施行で出していただいておるということで、いわゆる原産地、原産国に関して不当な表示を行なってはならないといった
趣旨の告示を出していただいておるということでございます。
それから次に、いわゆる輸入の直接規制には至りませんけれ
ども、やはり
行政指導の面でできるだけ本場の大島つむぎが圧迫されないように、いわゆる伝統的な日本の中小企業がつくっておるものと競争的な製品をわざわざ外国から入れることはないではないかといった方針で
行政指導をやっておるわけでございます。具体的にいままでいたしておりますことは、ことしの八月あるいは十月、大手商社の繊維の担当重役を当省に呼びまして、ほかの品種も含めました全般的な繊維問題について
行政指導を十分いたしましたかたわら、特に大島つむぎについては名前をあげまして、やはり大島つむぎの重要性、あるいは非常に困窮しておる実態にかんがみて、大手商社はいわゆる外国の大島つむぎ類似品を扱ってもらいたくないということを申し述べ、大手商社のほうは
扱いませんということで、今後取り扱わないという確認をとっておるわけでございます。しかしながら、大手商社ばかりが扱っているわけではないという業界の声も当然あるわけでございまして、
行政指導についてさらに強化する
方向で検討していきたいというふうに
考えております。
それから次に、輸入の
行政指導をいたします場合でも、実態を十分に把握してからでないと十分な
行政指導ができないということから、率直に申しまして、従来繊維は輸出産業ということで輸出統計は総体的によく整備されておったと思いますけれ
ども、輸入統計が非常に大ざっぱであったということは事実だったと思います。ことしの一月分から入着しました貨物についてインボイス統計をさらに整備するということで、従来よりは
内容をもう少し具体的に把握するという
努力もいたしておりますけれ
ども、かたがた本年の十二月分、つまり今月分からいわゆる輸入成約統計、輸入契約を結んだ
段階で届け出させるということを発足させていく。予定といたしましては、来年の二月になるとことしの十二月分の契約の結果が出てくる予定でございます。
こういったことで、やはりできるだけ前広に、物が入ってきてしまってから押えるというのではやはりおそ過ぎるので、入ってくる前の契約の
段階で実態を調べて、これを背景といたしまして
行政指導をするというふうに
努力したいと思います。
ただ、これも率直に申し上げておきますが、大島つむぎが幾らで村山つむぎが幾らでといったような――つむぎ類というところで一応統計を整備しておりますけれ
ども、大島つむぎと村山つむぎとどこが違うかということを技術的にいろいろ
議論してまいりますと、これは定義が非常にむずかしい問題がございます。もちろんむずかしいといって放置してまいるわけにはいきませんが、やはりつむぎ類ということで一応統計をとる。それで、あといわゆることばで定義をぴしっと、大島つむぎと大島つむぎでないつむぎというような分類をつけるのはむずかしいといったような問題もございますけれ
ども、しかしこれはできるだけ
内容を厳密に把握することができるような
努力を実は現在もしているということはございます。
ただ、申し上げたかったことは、大島つむぎということで何反ということがすぐにわかるという状態には残念ながらなっていない。それから、背景的には技術的な非常にむずかしい問題がある。しかしながら、何とかその技術問題を乗り越えて少しでも厳格に把握しようではないかという
努力はしているつもりでございます。
それから、従来から日本から糸なら糸、
原料を出しましていわゆる逆
委託加工契約と申しますか、外国で加工して製品を日本に持ってくるという逆
委託加工契約の形をとる場合がございますけれ
ども、これは輸出貿易管理令の第一条六項の規定によりまして、逆
委託加工契約は許可を要することになっておるわけでございますけれ
ども、当省といたしまして、大島つむぎ
関係につきましては、この契約の申請があっても不許可にするという処置をとっておるわけでございます。
なお、外国にいわゆる合弁企業の形で進出いたしまして大島つむぎをつくるといった案件につきましては、従来実はケースがあったわけでございますけれ
ども、
行政指導いたしまして、その結果これを翻意しているといいますか、
考え方を変えて合弁進出することを思いとどまったといったようなケースもあると聞いております。
それからなお、非公式ではございますけれ
ども、通産省のほうから韓国の
政府の方に対しまして、大島つむぎという問題がある。大島つむぎに関連する方々が非常に困窮しておられるというような、当省といたしましてもきわめて重要な問題であるといったその大島つむぎの実情を十分伝えるように
努力しておるつもりでございます。
大体以上が対外
関係、特に輸入問題を中心といたしました対外
関係の
施策でございます。
それから、国内
関係でございますけれ
ども、先ほ
ども出ましたが、とりあえず伝統産業振興法に基づく伝統工芸品として指定する。具体的には一月に告示をする準備をいたしておりますが、十二月十二日の
審議会でいろいろ技術的な説明も申し上げ、
審議会の御了解も得ているということで、大体予定どおりやれるんじゃないかと思います。
これとあわせまして、指定いたしますとすぐ伝産法に基づく振興計画をつくるわけでございますけれ
ども、これにつきましてもできるだけその業界の将来の成長のためにプラスとなるような計画がつくられるように、私
どももあるいは県にもお願いしてできるだけ
努力もしたいと思いますが、とりあえずのところは伝統工芸品として指定する。指定に基づいて本場大島つむぎの表示をする。その表示を日本国民にPRする。いわゆる本場のほんとうの大島つむぎの表示はこういうふうになっているんだといったようなPRについても、できるだけの御協力というか、推進を通産省としてもしたいというふうに
考えております。
さらに、新しい繊維の構造改善臨時
措置法に基づく構造改善事業につきましても、できるだけ産地のお役に立つように積極的に御相談、助言をしてまいりたいというふうに
考えております。
それからなお、短期的な
対策でございますけれ
ども、不況
対策としていろいろ中小企業の金融
措置が講ぜられておるわけでございます。これは御高承のとおり、
政府系の中小企業三
機関から各中小企業に金が流れていくということで、
政府が直接に関与するたてまえのものではございませんけれ
ども、私
ども大島つむぎにつきましては、
政府系の中小企業三
機関に対しまして、冒頭申し上げたようにあらゆる面で特に重要な業種、産地であるので、中小企業金融を行なう場合に、どうしても必要な資金はぜひ貸し出すようにお願いをするということで、大島つむぎについては特段に中小企業の
政府系三
機関に対しまして配慮を要望しておる。これは実はことしもやっておりますし、昨年の年末もやっておるということで、国内の金融
対策に
努力しているわけであります。
それから、業界の不安も高まっているようでございますし、政策のほうもまだまだ十分でない面もあるかもわかりません。やはり直接規制というわけにはなかなかまいらないと思いますが、それに至らずにまだできることがないかということで、今後ともさらに煮詰めてできるだけの
施策を講じたいというふうに
考えております。