運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1974-12-24 第74回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年十二月二十四日(火曜日)     午前十時七分開議  出席委員    委員長 有田 喜一君    理事 石井  一君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 水野  清君 理事 山田 久就君    理事 河上 民雄君 理事 堂森 芳夫君    理事 松本 善明君       加藤 紘一君    小林 正巳君       坂本三十次君    深谷 隆司君       勝間田清一君    土井たか子君       渡部 一郎君    永末 英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         外務政務次官  羽田野忠文君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省欧亜局長 大和田 渉君         外務省中近東ア         フリカ局長   中村 輝彦君         外務省経済局長 宮崎 弘道君         外務省条約局長 松永 信雄君         外務省国際連合         局長      鈴木 文彦君 委員外出席者         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君     ————————————— 委員の異動 十二月二十日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     篠田 弘作君   深谷 隆司君     永山 忠則君   渡部 一郎君     岡本 富夫君 同日  辞任         補欠選任   篠田 弘作君     加藤 紘一君   永山 忠則君     深谷 隆司君   岡本 富夫君     渡部 一郎君     ————————————— 十二月二十一日  世界連邦樹立の決議に関する請願(有島重武君  紹介)(第二一七四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 有田喜一

    有田委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堂森芳夫君。
  3. 堂森芳夫

    堂森委員 宮澤さんが大臣になられまして初めての委員会でございますので、時間が三十分ぐらいしかございませんので、ほんの一、二点について質問を申し上げたい、こう思うのであります。  宮澤外務大臣は、大臣に就任されまして初めての記者会見でいろいろなことを発言しておられるのでありますが、その中で、これからのわが国外交の大きな柱は、自由主義国家群共産主義国家群社会主義国家群との間のいろいろな調整問題等一つの柱となる。それからもう一つは、先進国資源を持った開発途上国との間の問題というものがさらにもう一つの大きな柱になる、こういうふうに思う。これについては、いろいろと調整の道はさして困難なことではないというふうに思う。これには全力を注がねばならぬ、こういうふうなことを言っておられたと思うのであります。そうして、わが国における今日の不況、あるいは国民生活の不安、そういう原因の七割方は外交努力によって解決されていくようなものであると考えておる。それについて大いに資源外交というものを推進していかねばならぬ。もちろん、そのとおりではありませんが、そういう意味のことを言っておられると思うのであります。外務大臣資源外交についてどのような具体的な抱負をお持ちになっておるのでありますか。まずこの点について承っておきたいのであります。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 戦後先進自由主義国家群デモクラシースト・フリー・エコノミーとでも申しますか、そういう間でつくられましたいろいろな秩序が事実上機能しなくなった時点で、同時に、体制を異にする国家群並び発展途上国がいろいろな形で力を持つようになりまして、したがってそういう国々、そういう国家群との間にもこれから一緒になってどのような世界をつくっていくかということが、長期的に見て外交の課題であろうということを確かに申したわけでございます。  当面の問題として、同時に、石油を中心にして資源の問題がございます。これについては、一方において長いこと資源保有国が、彼らのことばを使いますれば、不当に抑圧されてきたというそういう感じ、それは私どもとしても理解をすることはできるのでありますけれども、かといって、あまりに急激な衝撃を与えられますと、世界経済秩序というものはこれまたこわれてしまうということでございますから、私どもとしてはそういう資源保有国立場を十分理解しながら、しかし同時に、世界経済の破綻のない運営を続けていかなければ、結局は資源保有国のためにもならないということを考えまして、関係者がみんなよくその辺の話し合いをしながら、その中にエモーションがあるということは理解いたしますけれども、しかし、最終的にはやはり理性的な解決に到着しなければならない、その努力をいたさなければならないというふうに考えるわけでございます。
  5. 堂森芳夫

    堂森委員 いまのような御答弁で、そういうふうに努力せなければならぬ、こういうことを言ったのだ、こういうお話のようでありますが、資源外交その主たるものは今日石油だと思うのでありますが、石油をめぐっての外交について具体的にどういうふうにしていこうとしておられるか、こういう点を承っておきたいのであります。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 基本的にはやはり産油国立場主張というものを理解をしてかかるという心がまえが必要だと思うのでありまして、ただこれに対決をするとか、力で対処しようということではこの問題の解決はしょせんできないであろうと思うのでございます。したがって、最終的にはそういう国々との直接の接触話し合いということがどうしても欠かせないと考えますが、それに至る道程消費国側共通の問題を議論し合うということは、これもまた有意義であろうと思いますから、道程としてそういうことがなければならぬということはよく理解いたしますが、最終的には産油国との話し合い接触ということがありませんと、石油の問題も、そこから生ずる通貨の問題も解決が困難である、かように考え努力をいたさなければならぬと思います。
  7. 堂森芳夫

    堂森委員 前の木村外務大臣の当時も、石油に関する安定供給、しかもできるだけ安い値段消費国に安定的に供給されるような体制ができるために、木村大臣の当時、私もこの席でお聞きしておったのでありますが、フランス側主張というか立場というものとアメリカ側立場やり方というものはやはりかなり違うと思うのであります。木村さんのときも、日本政府フランス側立場やり方に同調するのですか、アメリカ側考え方やり方に同調していくのですか、非常に違うじゃないですかとこういう質問をしておるのでありますが、いやそう違わないのだ、宮澤さんも大臣になると同時に記者会見で、いやそれはそう違わないのだ、必ず同調していけるんだ、米仏の間の話し合いというものは、そういうことには産油国に統一的な態度で臨んでいくようになると考える、こうあなたも言っておられるのでありますが、はたしてそういうふうになっていくといまもお考えでありましょうか。これを承っておきたいと思います。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先般アメリカフォード大統領キッシンジャー国務長官が来日されましたときとほとんど時を同じくして、フランスソーバニャルグ外務大臣が訪日せられまして、木村外務大臣はその時点で、両者の考え方の中から共通点を発見したいという努力を非常にされたように伺っておりまして、それはマルチニク会談というものが当時行なわれることはわかっておりましたので、それを終着点として、そのような外交努力木村外相はたいへんなさいましたようでございます。このことは、マルチニク会談で御承知のような合意が見られたということにあずかって力があったように私拝見をいたしておったわけでございます。  マルチニク会談であのような合意ができましたので、今後多少の曲折はあろうと思いますけれども、一番基本合意はあれで敷かれた、産油国もこれに対して基本的には決して反対ではないというふうに考えられますから、大きな路線は敷かれたものというふうに考えております。  まあ、やってみますと、それはまず話し合いに至りましても、それからどういう結論になっていくかということはたいへんなむずかしい問題であろうと思いますけれども、ただいま御指摘消費国側におけるアプローチの考え方の違いというのは、一応いまの段階で調整されつつあるというふうに考えております。
  9. 堂森芳夫

    堂森委員 いや、私は必ずしも、そうした米仏の意見が一致点にいくというふうには、そうは即断できないと思うのであります。  そこで、たとえばフランスサウジアラビアに四十億ドルの武器輸出の契約をすでに結んで、そしてアラブ諸国に今後どんどんと武器輸出によって大きく経済的にも結びついていく、そして、アラブ諸国の間ではやはりアメリカよりもフランスのほうに異常な傾斜をするような、そういう方向に、外交的にも経済的にも、しかもキッシンジャー外交というものに対して、フランス外交というものに信頼度が高くなってきておる、こういう傾向が、私はやはり、いろいろな外電等を見ておると考えられると思うのです。そして、きのうあたりイラン新聞等日本に伝えるところによると、フランス外相イランの皇帝と会見したりして、そして米仏首脳会談消費国産油国等代表が集まってそうした会議準備を三月にやろう、こういうことをきめておるのに、すでにイラン政府フランス外相との間にもっと早く話し合いをするような、そして各国首脳を集めてそうした会議をやろうじゃないかということがきめられたことが新聞報道されておるのであります。  たとえば、その集まる首脳の中には日本三木総理大臣も加わるだろうとかあるいはアメリカフォード大統領も来るだろうとか、あるいはフランス大統領も来るだろうとかあるいは西独の総理大臣もこれに加わるだろうとか、これはもちろん新聞報道でありますが、フランス産油国側に対する働きかけといいますか外交的な攻勢といいますか、それは非常に目ざましいものがあるわけでありまして、そういうような情勢等外務大臣はキャッチしておられるのでありましょうか、あるいはキャッチされておるならばどうお考えでありましょうか、これも聞いておきたいと思います。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 フランスシラク首相サウジアラビアを訪問しておられるということは、報道としては存じております。  そこで先般のマルチニク会談と、うものの結果が一種の妥協の産物であると思いますので、妥協ということの性格上、そこに至るまでの過程あるいは今後について、私は何がしかのことはいろいろあるだろうと当然予想しております。  それから他方でいわゆる消費国産油国が直接に接触をするということは、消費国側から見ますと当然そうもしたいことであると思いますし、産油国としても今後自国産の油がふえていく、いわゆる外国企業接収等によって、国有化によって自国産の油がふえていくということがおそらく当然考えられるわけでございますから、その処理というようなことについても産油国側にも二国間の接触を希望する動機があるのではないか。これは私はあって一向に差しつかえないことであると考えておりまして、消費国側が足並みをそろえて産油国と話をしようということは大事なことでありますけれども、同時に、いわゆる二国間による接触ということも、両方のことは矛盾をすることではないというふうに基本的には考えております。
  11. 堂森芳夫

    堂森委員 そういうふうなフランス政府産油国に対する強烈といいますか、非常に激しい働きかけがあって、そして産油国消費国との、あるいは他の石油のない発展途上国等代表とが集まって、何か国際的な石油の安定的な供給といいますか、あるいはそういうものについて日本政府としては外交的に大いにイニシアチブをとって働きかけていく、日本世界における大きな石油消費国なんでありますから、そういう働きかけというものがあって当然だと思うのでありますし、またあなたも日本の生活不安あるいは不況等解決するためには、これは外交によって七割方解決していくことができるんだ、したがって資源外交を推進しなければならぬ、こういうふうにいわれておるのでありますから、具体的にわが国はどういうふうにこれからやっていこうとしておられるのか、これを承りたい、こう思うのであります。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 基本的にはマルチニク会談できまりましたようなことが基本の筋道だというふうに考えておるわけでございますけれども他方で、もしかりにそれはそれとして、各国首脳部がいわゆる頂上会談をやることに意味があるのだ、そういうことをやろうというような考えが出てまいりましたときには、普通考えますとやはり事務的な準備を十分した上でそこにいきませんと、それは一片のドラマに終わってしまうというのが一応まともなものの考え方だと思いますけれども、しかし他方で、その基本線はくずさないが、そういうこともまたひとつ促進材料になるのではないかというふうに関係国がみんな合意をいたしますならば、確かにそういう面もないとは申せません。ですから、みんなの合意の上でそういう舞台が設けられるということであれば、何もそれに反対いたす理由はなかろうと思います。
  13. 堂森芳夫

    堂森委員 御答弁を聞いておりますと、日本政府としては積極的に日本立場というものを主張して、考え方主張して、国際的な会議というものを早く開かせようとするような努力というか、主張といいますか、そういう態度を鮮明にしていくということはおやりにならない。米、仏等動きを見てその大勢に従っていこうと、こういうことでございますか。
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは主として私の前任者あるいは前々任者のおやりになったことでございますけれども、今年の二月十一日から今日までのわが国動きは、一つはいわゆる産油国との心と心の触れ合いということが大事であるということ、これはある意味で、伝えられるキッシンジャー氏の当初の考え方とは違っておったかと思いますけれども、結果としてはそういう努力マルチニク会談合意になったと考えますし、他方で、先般つくられました国際エネルギー機関というようなものを、独立の機関としてではなくて、既存のOECD、国際協力を旨とした機構の下に置いておきませんと、入りたい人も入れなくなるし、産油国側からも疑いを受けるということで、この点もわが国が非常な努力をいたしまして、結果としては御承知のようにそのようになったわけでございます。この二点が、主としてわが国が二月以来今日まで払いました努力の結実であるというふうに考えるわけでございます。
  15. 堂森芳夫

    堂森委員 私は御答弁を聞いておって思うのでありますが、この資源外交というものの主張、これが今後の日本外交の大きな柱の一つである、こういうお話であるならば、もっと積極的に日本態度というものを鮮明にして、そして私は世界のいろいろな国々働きかけていくという態度が必要ではないだろうか。ぜひそれはそうしなければならぬ、こういうふうに思うのでありますが、これ以上お聞きしておっても、あなたの御答弁は、米、仏の動きというものを見つつ世界情勢を見守っていこう、こういうふうにしかとれぬのでありまして、私は非常に自主性のない資源外交であるという印象を持たざるを得ない、こう思うのであります。  そこでもう少し石油について質問をしてみたい、こう思うのであります。あなたは外務大臣になられましたが、自他ともに許すなかなか経済についても精通した国務大臣でありますからお聞きしたいのであります。深まる世界不況というものを背景に、今日は産油国消費国との関係が非常に険しくなってきておる。そしてこれは一体どうなるのか。来年からの石油価格体系というものは一体どうなるのであるか。これは世界各国か非常な注目をしておるところであるし、またそれぞれの国の、特に消費国にとっては今後の経済の行くえに大きな、ある意味では生殺与奪の権をすら持っておるような問題である、一体どうなるのかということで非常に注目を浴びておったウィーンでのOPECの会議というものが、すでに報道されているような結果になってきました。そして、メジャーの力は弱まってきて、産油国DD原油というものの値段と、それからメジャーが売る石油値段というものは、もうあまり変わらなくなってきた。DD原油というものの力が非常に大きくなってきたのでございます。そして産油国がかねてから熱望しておった石油価格の原価が一本化の方向にどんどん進んできておる、こういうことでありますが、ここで一体、来年の石油価格というものはどういうことになっていくのであるか。外交を担当しておる国務大臣としての宮澤さんとしても、これについては大きな見通しをやはりお持ちにならなければならぬわけでありますが、どういうふうにお考えでございますか。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のように、産油国側がだんだん自国産のいわゆるDDオイルをよけい持つようになって、そうしてそれをいろいろな形で直接に取引をしたいという、これはおそらくこれから逆戻りをすることのない傾向になると私は思うのでございまして、そんなことから、せんだっての産油国の取り分十ドル十二セントでございますか、アラビアンライトの場合、というような決定が出たのだと思います。あの際に、この価格は一月から九月でございましたか、までは不変であるという決定がなされたように承知しておるわけでございますから、中東不慮事態がないということを前提にいたしまして、一応それを信じてよろしいのではないか。その間に消費国側の協議あるいは産油国側接触というものが本格化してまいりまして、さてそこでどういう答えが出てくるかということでございますけれども、いまの時点で判断いたしまして、中東不慮事態がないということを前提にいたしますと、原油価格がこれ以上何かの理由で突然上がるというようなことは、これは考えなくてもよろしいのではないかということと、供給量についてあまり心配しなくてもいいのではないかということは申し上げられそうに思います。  ただ、いかにもいまの価格が高うございますし、国際通貨からいきましても、こういう状態か産油国消費国との了解に達しないまま何年も続けられるかといえば、これはもう御承知のように、そういうことでないことは明らかでございますから、理性が支配する限りあるいはいわゆる貨幣経済というものが国際的に続いていく限り、何かの解決が見出せないはずはないというふうな感じを持っております。
  17. 堂森芳夫

    堂森委員 時間がありませんので、もう少し先に進みたいと思いますが、キッシンジャー消費国に向かって、石油消費をできるだけ節約しよう、こういう提唱をわが国にもしてきていると思うのでありますが、今度の通商産業大臣の河本さんは、やはり大臣になられた当時の記者会見で、節約ということは、石油価格を安定的にもっと下げていく意味にはあまり効果がないと思うというような意味の談話を発表しておりまして、まあ三%ぐらいは消費を節減していこうというようなことを言っております。しかもそのときに、これはあの大臣見通しでありましょうが、来年の後半になると、石油は当然、いろんなそうなるべきファクターがあって、石油価格は下がるであろう、こういうふうに言っておられるのでありますが、大臣もそういうふうにお考えでございましょうか。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 節約をしなければならないということは、われわれ消費者としてはこういう際に当然でございますが、産油国側消費国石油節約してくれることを望んでおるわけでございますから、節約をやりましても産油国に対して決して非友好的なことにならない。そこまでは問題のないところだと思うのであります。  そこで、世界的なそういう節約の結果が、いわゆる需給関係でもって価格をどれだけ下げることになるかということは、端的に申せば、そのカルテルの力と、それから需給によって価格が影響されるという自由経済との両方力関係といったようなものによって左右されるのではないだろうか。他方産油国側には、九月まではいまの価格が通るわけでございましょうけれども、そのころになってインフレ条項というようなものを持ち出す気配もございます。ただ、そういういわば産油国側の団結、純粋に経済的なことばとすればカルテルと言ってもいいんだと思うのですけれども、そういうものに対して需給関係がどのように価格要因として反映するか、そういうことのかね合いになるのではないだろうか。で、中東不慮事態がない限り、したがって、これ以上価格が上がることはないのではないかと申し上げております意味はそのような意味でありまして、見方により、見る人によりましては、それをやや弱含みの要因ととられる方もあろうかと思います。
  19. 堂森芳夫

    堂森委員 時間がありませんが、きょうの新聞を見ておりますと、外務省は、中近東にあるいは今日のイスラエル側アラブ側との間に小ぜり合いが続いておるが、さらにこれがもっと大きい紛争に拡大していく心配があるのではないか、こういうようなことを外務省考えておる、こういうような記事も出ておりますが、あなたは答弁の中で、大きな紛争が起きてこないという前提において、これからの石油の安定的な供給があるというふうに答弁をしておられるのでありますが、外務省中近東に大きな紛争はないと考えておられますか、どうでございますか、きょうの新聞に出ていますよ。
  20. 中村輝彦

    中村(輝)政府委員 中東情勢は、御案内のとおり、ことしの一月及び五月に兵力分離協定ができて以後、実質的な進展はないわけでございます。そのために、アラブ側イスラエル側も非常にいわばいら立っているような気持ちで、早く和平に向かっての実質的進展がもたらされることを非常に希望しているわけでございまして、だんだん日がたってまいりますに従いまして、和平がなかなか実現しないのでは、武力に訴えざるを得ないのではないかといったような気持ちがだんだん出てきているわけでございます。十一月に、シリア戦線のほうの兵力分離監視のための国連軍駐留期間が六カ月延長されるというようなことがございまして、その直前あたりかなり緊張が高まっておりましたけれども、そのときば一時緊張がゆるんだという事情がございます。ただ、その後アメリカを仲介といたしまして行なわれておりました和平交渉も目ざましい進展がやはりないということでございます。それからその後は、御案内のとおり、国連におきましてパレスチナ解放機構というものがアラブ代表者であると認められるというようなことで、イスラエル側はこれに非常に反発を示すというようなことがございましたし、その間に、両方ともまた兵力の回復、武器の新しい調達というようなことを努力いたしておりまして、だんだん緊張がまたできてきているという現状でございます。  これが今後どうなるかということは、もちろん両当事者といえどもあるいはわからないことかもしれませんし、何とも言いかねますけれども、ただ、いまのような複雑な問題でもって争っているわけでございますので、どういう拍子で、時の勢いというものもございますし、どうなっていくかわからないといった要素があることは事実だと思います。しかし同時に忘れてならないのは、やはり依然としてアメリカを介します和平への努力というものが、いわゆるキッシンジャーの静かな外交というような形で着実に積み重ねられているという事情も片っ方にございます。したがいまして、私どもといたしては、いたずらにこの緊張というものを過大視することは避けなければならないと思います。アメリカのやっております努力というものが実を結ぶことをひたすら願うわけでございますし、何らかの手段がございますれば、これをエンカレッジするという方向でやっていくべきものと思います。同時に、片面ではいまのような緊張というものもやはりあるわけでございまして、両面のからみ合いが今後どういうふうに動いていくかということによるわけだろうと思います。  割り切った答えはちょっとできかねますけれども、そういった状況で、緊張はあるけれども、必ずしも悲観すべき要素ばかりではないというようなところが現状かと思います。
  21. 堂森芳夫

    堂森委員 時間がございませんからやめますが、それでは外務省としては確たる見通しは持てぬ、こういうことでございますね。  これで終わります。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 堂森委員に申し上げますが、これはどうも私からうかつなことが申し上げられない、事の性格上そうでございますし、戦争というのはもともと非合理的なことで、ございますので、ただいま政府委員が分析して申し上げたようなことに尽きると思います。
  23. 有田喜一

  24. 土井たか子

    ○土井委員 まず核兵器問題についてお尋ねをしたいと思います。  去る九月十日に、アメリカの上下両院の原子力合同委員会軍事利用小委員会におきまして、周知のとおりラロック氏の証言がございまして、これが日本国内においては十月七日に公表されて以来、いままで核問題につきましていろいろな角度から国民に疑惑を投げかけております。当委員会におきましても、幾たびかこの問題について質問を展開しているわけでございますが、これに対して政府はいまだ十分国民に対して答えていないというのが現状であります。それは核兵器があるかないかということ。核兵器の存否については肯定も否定もしないというアメリカ基本原則、つまり核の存否は米国の最高機密として明らかにできないという基本原則があるわけであって、この核の疑惑について国民の不満を晴らすという意味からしても、これが俗なことばでいうとたいへん外務省の隠れみのになっているという観を呈しているわけであります。  そこでお尋ねするわけでありますけれども、いまこの核の疑惑について国民の不満を晴らすという意味から、米国の核に対する、核兵器の存否は明らかにできないという基本政策、つまり核の存否をあいまいにしておくという方針について、外務省当局はどのように評価をされているかをまずお尋ねしたいのです。
  25. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 現在の世界における核兵器の作用は、それが抑止力になっておるというところにあると考えておりますので、したがって、その抑止力たることをより有効にするために存在を明らかにしないという立場は私は十分に理解ができる。そうでありませんと、抑止力たるの機能をそこなうおそれがあるのみならず、核武装がさらにエスカレートする危険をすら含んでおると思いますから、そういう見地からアメリカのそういう立場は十分に理解ができる、こういうのが基本的な考え方でございます。したがって、それを改めてほしいというふうには私は考えておりません。
  26. 土井たか子

    ○土井委員 いま宮澤外務大臣のおっしゃったことは、アメリカの核に対する基本政策そのものに対するコメントであります。アメリカ側はそのような核基本政策があるのに対して、それがアメリカの重要な国家政策というのならば、わが国にも重要な国家政策がある。国家政策というよりも、これは先日私が前木村外務大臣にお尋ねしたときに国是であるとはっきり言われたのですが、御承知のとおり、非核三原則という堂々たる国家政策が日本にはあるわけであります。したがいまして、米国との核の対話の中から国民に対して公表でき得るような外交努力をやはり積み重ねていくべきだ。これは展開しなければならないと私は思うわけでありますが、この点はどうお考えなんですか。
  27. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 アメリカの政策に対するコメントだと抑せられましたが、そうでもございますけれども、同時に、核が戦争抑止力として機能してほしいと考えることはわが国の政策でもございますし、また核武装がこれ以上エスカレートしてほしくないということもわが国の政策でございますから、コメントでありますと同時に、それはわが国基本考え方であるというふうに御了解願ってよろしいと思います。そのことといわゆる非核三原則というものは矛盾するところがないというふうに考えております。
  28. 土井たか子

    ○土井委員 それならば具体的にお尋ねをいたしてまいりましょう。  昭和四十三年に、当時の外務大臣であったただいまの内閣総理大臣三木さんが答弁の中で、核艦船が日本の領海内を通過する場合、通過するだけでは核持ち込みにはならないというふうな答弁をされていたわけであります。ところがその後、一時通過も事前協議の対象になるというふうに外務省当局が答弁を変えられているのです。これは先日の当委員会においてもそのような答弁がございました。そうして今日に至っておる。  そこでお尋ねをしたいのは、三木外務大臣当時までは核艦船は日本の領海内を通過していたというふうに考えていいのかどうか。  先日私は、十一月にアメリカのワシントンに参りましてラロック氏に会ったわけでありますが、その節ラロック氏が言われるには、アメリカにおいては政府や議会やどの部門の人たちの間でも、アメリカの船が核兵器を積んで日本の領海や港に入っているということは疑う人はいない。このことはむしろアメリカにおける常識になっている。したがって、自分はあのあたりまえの証言をやったことが、日本でたいへんにショッキングな事例として取り上げられていることにむしろ驚いたという発言をしているわけであります。  したがいまして、こういう点から考えましても、いま申し上げたことについて、昭和四十三年当時、三木外務大臣が、領海内を通過するだけでは核を積載している艦船の場合においても核持ち込みには当たらないというふうな答弁をされていることから、領海内を通過していたというふうに、当時、核を積載した艦船について推察をしてよいかどうか、いかがでございますか。
  29. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 ただいまの御質問は、四十三年にいわゆる領海条約が国会において審議されましたときに提起された問題について、三木大臣がお答えになられたことを御指摘になったのだと存じます。これは、そのときの論議を振り返ってみますと明らかでございますけれども、一般国際法上の無害通航の問題として日本の領海をかりに外国——その当時はポラリス潜水艦か主たる問題の中心になっておりますけれども、かりにそういうものが領海をかすめて通る場合にどうかという問題の提起がございまして、それに対して三木大臣が、そういうものは核の持ち込みだとは思わないという趣旨の御答弁があったわけでございます。これはそのときに非常な論議が行なわれました結果、たしか四十三年の四月十七日であったと思いますが、政府のほうからいわゆる統一見解というものを出しまして、ポラリスその他これと類似の常時の核装備艦の通航は無害とは認めないという見解を統一して表明しているわけでございます。したがいまして、これはその当時、日本の領海を核装備の軍艦が通航しているということがあたりまえのことだというふうに考えてそういう見解を申し上げたのでございませんで、全くかすめて通るような仮定の問題ということで論議されていたというふうに私は承知しております。
  30. 土井たか子

    ○土井委員 それは、種々それについての御説明を賜わったわけですが、議事録を読めば、それはそこにちゃんと答弁も書いてあるわけでありまして、これは説明を要しないわけです。そこで、その答弁から推して、こういうふうに推論ができるがいかがかという質問を私はさせていただいているわけでありますから、ひとつ時間のかげんもありますので、的確に質問に対する御答弁さえ賜わればけっこうであります。  しかし、いずれにいたしましても、三木外務大臣当時は、領海通過は事前協議制度に違反していなかったというふうに考えられる。つまり事前協議の対象外だというふうに考えられる。それが先般来、これは事前協議の対象になるというふうに変わってきたわけでありますから、事情変更というふうにいわなければならない。四十四年以降は、したがって事前協議の対象になるということでありますので、領海について核を積載している艦船が通過する場合に、もし事前協議なしでいろいろ通航するということになると違反することになるわけですね。そうしますと、この四十四年以降は事前協議の対象になるということで、核積載の艦船が領海内を通航する場合については、やはり事前協議なしに通航できないと考えなければならないと思いますが、この点ひとつ確認させてください。
  31. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのとおりでございます。
  32. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、これはアメリカ政府に対して日本政府側から、これは事前協議の対象になりますよ、領海を通過する際には、核積載艦船に対して、事前協議の対象になるのですというふうなことを通告をしておかなければならない事項だと私は思うのです。これはたいへん大きな事項だと思いますが、そういうことに対してはどういう形でいつ通告なすっているかをひとつお知らせ願います。
  33. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 領海、領空、領土すべてわが国の領域でございますから、ここに核を持ち込むときには事前協議の対象となるということは、昭和三十九年以来一貫して両国の間でわかり合っておることでございまして、何もそれ自身は少しも新しい事態ではございませんで、したがっていま確認するしないという問題は起こらないというふうに私は考えています。
  34. 土井たか子

    ○土井委員 異なことをおっしゃいますね。宮澤外務大臣は、そうすると三木外務大臣当時のあの答弁に対して、どういうふうに責任をお持ちになりますか。これは領海内に対しては核積載をしている艦船が通航する場合については核持ち込みに当たらないという答弁が当時あったわけでありますから、これは当然のことながら事前協議の対象からはずされるのです。問題になるのは、先般来当委員会での答弁で、領海内において核積載した艦船が通航する場合にも事前協議の対象になると明確に答えられているということであります。そうしますと、これは、三木外務大臣当時と事情が変わっています。たいへんに変わっている。たいへんな変わりよう。相手国に対して、そのことに対しては明確な答えようがある。通告をどういう形でいつされたか、これはたいへんに問題になってくることだと思います。どういうようにお考えになりますか。
  35. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど昭和三十九年と申し上げましたが、失礼いたしました。三十五年、一九六〇年でございます。  いまお尋ねになりましたことは、先ほど条約局長がお答え申し上げましたこととの関連があるわけで、十分その点のお尋ねの詰めがなかったのではないかと思いますが、つまり領海条約との関連で、ポラリスのようなものはこれは無害通航にはなりませんよと、そういうことを外務大臣答弁をしておられるだけであって、ですから、その場合に、領海に核を持ち込むことは御自由ですという答弁を実はしておらないわけでございます。そのときでも領海に核を持ち込むことは事前協議の対象であったことに変わりはない、そういうふうに私は思っているわけでございます。
  36. 土井たか子

    ○土井委員 宮澤外務大臣、もう少し議事録について目を通していただきたいと思います。  四十三年四月十七日、当時の三木外務大臣答弁にこうあります。「通航の場合は持ち込みとは考えていない。」——これは核持ち込みの意味ですね。「持ち込みとは考えていない。港へ入ってきたときにはもう核兵器の持ち込みである。ただ通り抜けるような場合は持ち込みとは考えていない。だから、核兵器の持ち込みを認めないという政府基本政策に抵触するものではない。」という答弁があるのですよ。だから、領海内でも、通航する場合については核兵器の持ち込みに当たらないという答弁なんです。どうなんです、一体。
  37. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 いまのお示しになりました三木大臣答弁がありましたこと、私も承知いたしております。それは、先ほど私が申し上げましたように、実はそのときに三木大臣答弁は、領海をかすめて通るような、公海から公海へ通り抜けてすっと通るというような場合のことを、これはまさしく一般国際法上の無害航行に該当するからいいのだ、それは許されるのだ、そういう趣旨で御答弁になったと私は了解しております。
  38. 土井たか子

    ○土井委員 そういうただし書きは、これはどこにもないですね。そういう趣旨だというふうに考えるのは、その場にいらした方の雰囲気からそういうふうにお考えになることは御自由であります。ただ、客観的にはやはり議事録によってわれわれは問題を認識するわけでありますから、それからすれば、これは端的に、いま私が読んだ限りにおいてどういうふうにお考えになりますか。日本の領海において核積載の艦船が単に通航する場合については持ち込みに当たらないとはっきりおっしゃっているのですよ。そうすると、核持ち込みに当たらない以上は、これは事前協議の対象からはずされるということになるのじゃないですか。これは論をまたないところです。理屈の上からいうとこんなことは明確ですよ。したがいまして、先日ここで、領海内においても核を積載した艦船が通航する場合は事前協議の対象になるという御答弁は、たいへん重大になってくるのです。はっきりしていただきましょう。このことについて、従前から変わらないとおっしゃる宮澤外務大臣の認識というのは、こういう点からすると少しずれているんじゃないかと思います。当委員会においていままでずっと経過かあった。そして三木外務大臣当時のこの答弁からすると、先ほどの御答弁というのはちょっと矛盾していると私は思うのです。事実に合致しないと思うのですよ。  さて、再度お尋ねをいたしますが、これは、ただいまは事前協議の対象になるというふうにお考えになっていらっしゃるわけですね。
  39. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのとおりでございます。
  40. 土井たか子

    ○土井委員 そうしますと、三木外務大臣当時から事情はそのように変わったというふうに確認をさせていただいていいのですか。
  41. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 三木外務大臣答弁、前後のコンテクストにもよりましょうし、これが領海条約との関連で議論されたということもありまして、それは先ほど条約局長が申し上げたとおりでございますから、いろいろ解釈に余地はあろうと思います。三木さんが頭に置いておられましたのは、おそらくは、常備艦でない限り、それもいわゆる公海から公海の間で、領海にちょっとさわったというような場合には、これはいわゆるイノセントパッセージである、無害航行であろうということを頭に置いて言われたと思いますけれども、そのことと事前協議とはまた別の系列のことである、私はそういうふうに考えておるわけでございます。
  42. 土井たか子

    ○土井委員 核持ち込みに当たるか当たらないかというところの論点が一つ問題点になっています。したがいまして、これは領海内で核を積載した艦船が単に通航する場合は、核持ち込みに当たらないというふうに答弁されているところが問題になっているのです。いま外務大臣の御答弁とずれますね。ひとつこの点については外務大臣、議事録によってもう一度確認をしてください。確認をしていただきまして、そして事前協議の対象に置いて当時は考えていなかったかどうかということもひとつ確認をしていただきたいです。これは理屈からすると、こういうふうな答弁からすれば、当然当時は事前協議の対象外に認識をしていたというふうにしか考えられないのですよ。しかし現在は事前協議の対象だということをはっきりおっしゃっているわけでありますから、そうなってくると先ほど私が御質問申し上げたとおり、アメリカ政府に対して事前協議の対象になりますよ、事前協議なしに核積載の艦船が日本の領海を通過するだけでもこれは問題になりますよ、違反ですよということを通告しなければならない。どういう形で通告されたかが問題になる、いつ通告されたかが問題になってくるからお尋ねをしているわけであります。外務大臣、その間の事情をもう一度確かめていただけませんか。
  43. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実は仰せられるまでもなく、その点は私は当時の外務大臣、現在の三木総理大臣にお確かめをしてございまして、総理大臣お話では、自分はあのときに無害航行、有害航行ということを頭に置いて答弁をしておったのであって、核を領海に持ち込む場合に事前協議の対象にならない場合があるというふうには自分は考え答弁をしたのではなかった、そういうお話でございます。
  44. 土井たか子

    ○土井委員 ただ考え答弁をしたのでなかったとあとでいろいろと説明を賜わっても、持ち込みに当たらないとおっしゃったその答弁の事実は消えないのです。したがって、消えない部分について、どういうふうにただいま宮澤外務大臣としては、いまの外務省当局の姿勢として臨まれるかということを私は先ほどからお尋ねをしておるわけでありまして、それに対する御答弁はまだいただいてない。いかがです。
  45. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 とにかく、当時答弁をされた方の意図はどうであったかという問題については、そうであったというふうに三木総理大臣は言っておられます。文章にあらわれましたところが、ひょっとしますとその部分だけとりますと土井委員のおっしゃるようになっているかもしれません。これは私、後ほど速記録を読ませていただきますけれども、とにかく答弁者の意図は、無害航行、有害航行ということを議論をしておったことは事実であるけれども、核が軍艦に載せられてわが国の領域に入るということは、これは事前協議の対象になると一貫して考えておったというお話でございます。  ただいま政府がどういう立場をとっておるかということは先ほども申し上げました。どういう形であれ、わが国の領域に核が入るということは一切事前協議の対象になる。
  46. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、それはすなわち核の持ち込みに当たるという認識を持たれているわけですね。  先日宮澤さんは、広島、長崎にあらわれた核兵器がさらに戦術核、戦略核というふうな小さな核に変化をしてきたという事実に着目をされて、新聞記者との会見の中で「一時通過にしろ寄港にしろ事前協議の対象になるのだから心配はない。」という前置きで、「ただ、事前協議制を決めた十五年前には核兵器が戦術的な小さなものになるというところまで考えが及ばなかったということはあるだろう。」と述べられています。  そこで、そういうことからすると、宮澤外務大臣自身は、事前協議制度について、何らかのこういう意味においての手直しをする必要があるというお考えなんですか。いかがです。
  47. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そうではありませんで、確かにそういうことを申しておるのでございますけれども、これは何度か過去においてお尋ねがあって、たとえばサブロックというようなものは昭和三十五年時代にはなかったではないか、こういうような御設問が何度か過去において国会であるわけでございます。それに対して、なるほどサブロックというようなものは当時おそらくなかったのだと思いますけれども、いってみれば、ナイキハーキュリーズみたいなものはたしか当時議論をされておったわけでありますから、その当時でも戦術核兵器というものの観念がなかったわけではない。しかし多くの人がその後これだけ発達するということは予想しなかったでございましょう。そういう背景があってああいうことを申しましたので、当時から戦術核兵器という観念が全然なかったわけではございません。したがって持ち込みを許す、許さないというときに、それが戦略核兵器であるか戦術核兵器であるかということは第二義的な問題であって、いずれも核兵器である、こういうことが背景になってああいうことを申しておるわけでございます。
  48. 土井たか子

    ○土井委員 そうすると、いまの事前協議の問題の中身については手直しをするというお考えがないというふうに承ってようございますね。  さて、そういう前置きでそれじゃ一つお伺いしたいのですが、来年の五月におそらく予想される国際海洋法会議で、例の十二海里領海の問題が正式に決定をされるという段取りになれば、それに伴って、例の国際海峡の自由航行が認められるかどうかということがたいへん問題になってまいります。その節、先日私がお伺いした限りでは、日本外務省当局とされては十二海里に対してほぼ賛成をされる向きまでお示しになっている。そうするとこれはやはり国際海峡の自由航行をめぐって、これを認める場合に、核積載の艦船あるいは潜水艦等々が通航する場合、事前協議の対象としてやはり取り扱うことになるのか、あるいは事前協議からはずすということになるのか、あるいは事前協議の制度はいまのままに置いておいて、解釈論でまかなっていけるという見通しをおつけになっているのか、この点をひとつお伺いしたいです。
  49. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 前から何べんか申し上げておりますけれども、海洋法会議におきましていわゆる国際海峡、すなわち領海の幅員か十二海里に広がることによって生じてまいります国際海峡における外国一般船舶及び航空機の通航の問題は、海洋法会議におきまして実はいろいろな議論が出され、案が出されているわけでございます。来年のジュネーブの会議においてどういう結果が出ますか、いまのところまだ全く実は予断を許さないという状況でございます。したがいまして、国際海峡がどういう国際法上の地位を認められることになるか、その見きわめを得た上で、この問題については政府として慎重に検討すべきである、こう考えているわけでございます。
  50. 土井たか子

    ○土井委員 慎重に検討だけがあとに残るわけでありまして、具体的な中身は一切お答えにならないという答弁でありましたけれども、ひとつそれでは具体的に、これについてははっきりお答えをいただかなきゃならないことを核問題について最後にお尋ねしておきましょう。どこまで国際海峡の問題についてお尋ねをしても、おそらくはただいまの答弁以上には出ないと思いますから。具体的にひとつこれについてはお答えをいただきます。  先日、米ソ首脳がウラジオストク会談で合意をして、攻撃用の戦略兵器の制限問題を具体的に取りつけたといわれておりますが、その内容がいろいろと報道機関を通じて明らかになってくるにつれまして、これは核軍縮というよりも、核均衡の長期安定を目ざしたものにほかならないというふうな認識がおおよそ強く出てまいっております。私もそう思うわけでありますけれども、これに対してどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  51. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私はこう考えておるのでございます。ああやって交渉をしていきまして、一定の天井を設けようというのがあの交渉の趣旨だと思いますが、その天井というのは確かにいまの水準よりは高い、そういうことを土井委員はおっしゃっていらっしゃるんだと思います。しかし、その天井を設けませんと、へたをやると青天井になる、それよりはよかろうではないか、そういうことであろうと私は思っております。
  52. 土井たか子

    ○土井委員 いまの抽象的なお答えではどうもよくわからないのですが、具体的に、これは次期通常国会に提出されるかどうかということがたいへん問題になっている核防条約にも関係をしてくるわけです、その認識いかんが……。  実は御承知のとおり、一九七〇年の二月三日に「核兵器不拡散条約署名の際の日本政府声明」というのがございまして、その中の大きな一の「軍縮および安全保障」の中の小さな4でありますが、「日本政府は、条約批准までの間、軍縮交渉の推移、安全保障理事会による非核兵器国の安全保障のための決議の実施状況に注目すると共にその他日本国の国益確保の上から考慮すべき問題につき引続き慎重に検討するであろう。」という中身になっております。この「核兵器不拡散条約署名の際の日本政府声明」の中で述べられている、核軍縮交渉の推移がなければ核防条約は批准をしないとの立場から、いまの核防条約を次期通常国会に提出するという段取りはどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、ひとつそれを外務大臣からお聞かせいただきましょう。
  53. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それでSALTの第二段階というものは、天井を設けよう…私ともからいえば、天井どころではなくていまの床より低いところへ、現存のものを破壊するぐらいまでいってくれればいいわけですけれども、まあ天井は低ければ低いほどいい。ただ、それでも合意がなければ青天井になるから、それよりはましであろう、こういう見方をいたしておりますので、そこであの三条件の中の一般的な軍縮、ことに核軍縮の話が進展をするということ、今回のウラジオストク、それから今後行なわれるであろうような交渉は、まあ不満足ながらそういう線に向かって話が進んでおるというふうに認識をして、そして核拡散防止条約の国会に対する提案のための準備を進めていきたい、おおまかにはそういう考えでございます。
  54. 土井たか子

    ○土井委員 次期通常国会には提出をしたいというお気持ちでいまの作業をお進めになるというふうに承っていいわけですか。
  55. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 よく御案内のとおり、これについては平和利用についてのいわゆる管理でありますとか保障協定を国際原子力機関と詰めてまいらなければならない。そういう予備会談をできるだけ早く続けてやりたいと考えておりまして、それがととのいましたところで、実はこれについては私どもの党内にもいろいろな議論があろうと思いますので、十分その辺のいわゆるコンセンサスも得まして、その上で御提案を申し上げたいと考えておりますので、できるだけ急いでということは申し上げられますけれども、それがすぐに次の通常国会ということを、次の通常国会もおそらくあまり長い会期でないと考えられますので、きちっとただいまお約束いたすわけにはまいりません。しかし、できるだけ急いでまいろうという気持ちには変わりはございません。
  56. 土井たか子

    ○土井委員 半ば消極論だというふうに私は承っておきたいと思うわけです。  時間の限りがありますので、きょうは日ソ関係について少しお伺いをしたいのですけれども、二点ばかりお許しをいただいて簡単にかいつまんでひとつお聞かせいただいて、私は終わりにします。  一つは、最近日本近海でイカやサバをとる漁船とソ連の漁船団との接触事故というのが頻発をいたしております。そこで、この接触事故の頻発に対して、伝えられるところによりますと、政府とされましては、日ソ漁業相互条約というふうなものを締結なさる御用意があるかのように承っているのですが、それは条約という形でお考えになっていらっしゃるか、あるいは行政協定のような形でお考えになっていらっしゃるか、あるいは覚え書き交換のような形でお考えになっていらっしゃるか、いずれであるかを承りたいです。
  57. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 ただいま御質問になられました協定につきましては、現在なお交渉中でございます。したがいまして、その交渉の結果がどういうことになりますか、まだいまのところわからないわけでございます。その交渉の結果合意に達しました内容、それによってただいま御質問のありました問題についての政府態度決定することになるということでございます。
  58. 土井たか子

    ○土井委員 これはまだまことにあいまいな御答弁なんですけれども、やはり条約となりますと、また行政協定となりますと、国会の承認を必要とするというふうな中身も持ってまいりますので、したがいまして、交渉中とおっしゃいますが、それは具体的にいうと、いつごろ実現させるというふうな予定で交渉がいま展開されているかというあたりもはっきりさせておいていただかなければならないと思うのです。  それから紛争処理委員会制度というのがここの中で問題にされているようでありますが、一体どういう形の紛争処理委員会を設置することを考えつつ交渉を展開されているか、その辺いかがです。
  59. 大和田渉

    ○大和田政府委員 先ほど条約局長から御答弁申し上げましたとおり、交渉を継続中でございますが、具体的には十一月の末から十二月の初めにかけて第二回の交渉をいたしまして、内容としましては、このような不幸な事故をどうやって防止するかという問題が一つと、それから、しかも事故が起きた場合にこれをどう処理するか、この二点に尽きるのではないかと思います。  紛争の防止をどうするかという点につきましては、たとえば標識をどういうふうに設けて、漁網を張っている場所を明示するかというような問題も入りますし、また、不幸にして事故が起きた場合に、その損害賠償をどうやって処理するかというような内容をいま先方と協議中でございます。第二回目の交渉は十二月の初めに終わりましたけれども、次の交渉は年が明けましてなるべく早い機会にやろうと思っております。  御指摘紛争処理委員会、はたして委員会の形になるのかどうか、これも先方と交渉してきめたい、いずれにしても紛争は処理しなくちゃならないという考え方でおります。
  60. 有田喜一

    有田委員長 土井君に注意しますが、もう約束の時間が過ぎておりますので、これで終わってください。
  61. 土井たか子

    ○土井委員 あと一点。実はチュメニの石油やヤクートの天然ガスやサハリンの大陸だなの探鉱というふうな予定しているプロジェクトについて、アメリカで先日御承知のとおりに、新聞紙上を通じても出ているわけでありますけれども、新通商法案というものが議会を通過いたしまして、三億ドルの総額限度が対ソ輸銀借款について設けられて、一件当たり五千万ドル以上の融資には議会の事前承認を必要とするというふうなことがきめられました。それからすると、やはり米国の参加をそれぞれのプロジェクトに対して要望していた日本としては、年が明けて外務大臣は訪ソされるわけでありますから、平和条約締結問題のみならず、当然にこの問題も出てこようと思いますので、それについてひとつ簡単に、ソ連に対して話を進めていく考え方を承って私は終わりにしたいと思います。
  62. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 通商法が成立したわけでございますけれども、それと同時に、輸銀法が延長された際のソ連向けに対する融資をどう取り扱うかというようなことも同じ時点できめられたようでございますけれども報道された以上にその内容が多少複雑のようでありまして、私どもに十分まだそこがはっきりわかっておりません。したがって、それについて正確にコメントを申し上げることができな小わけですけれども基本的には、もしかりに訪ソいたすことになりまして、そしてそういう話がまた出てまいりましたときには、やはり大規模な石油であるとか天然ガスであるとかいうものの開発については、アメリカ側と一緒になって三者であるいは二者でやっていくことが好ましいのではないかという気持ちは変わっておりませんので、それは腹に置いておくつもりでございます。そういうときにアメリカ側がどの程度に弾力性を持っておるのかということは、今回の通商法及び輸銀延長法の成立のときに伴いますいろいろな了解事項がただいまの時点ではっきりいたしておりませんので、これをもう少し確かめまして見通しを持ってまいりたいと思っております。
  63. 土井たか子

    ○土井委員 終わります。
  64. 有田喜一

    有田委員長 松本善明君。
  65. 松本善明

    ○松本(善)委員 私は韓国問題について若干伺いたいと思うのですが、外務大臣が就任以来いろいろ新聞で語っておられますが、十二月二十一日の朝日新聞によりますと、日韓問題について金大中事件以後、木村外務大臣が言われた二との反対をやる。「木村さんが積極的なことをいってくれたから、私は逆のことがやれるわけだ。」というふうに言われているということが報道をされております。この真意を聞きたいわけでありますが、木村外務大臣がやられた積極的なことというのは一体どういうことなのか、そしてその逆のことをやられるというのは一体どういうことなのかということを御説明いただきたいと思います。
  66. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 わが国といたしましては、できるだけどこの国とも仲よくしてまいりたいというのが、これはいずれの国でも外交というものはそういうものでございましょうと思いますが、ことにわが国のような憲法を持っております国といたしましてはその必要性が高いわけでございます。したがって、韓国に対しても起こったことは起こったことといたしまして、あまりあと味の悪い時間が長く続きますことはお互いの友好のためによくないではないか。そういう面をあの際に申しましたわけで、むろんまたその逆の面、裏の面もあるわけでございますけれども、あの際取り出して申しましたのはそちらのほうの面であったわけでございます。
  67. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、具体的に聞きますが、金大中事件についてサンケイ新聞の十二月十七日によりますと、外務大臣は金大中事件については、金鍾泌首相がやってきたことについて「一国の首相が来日して遺憾の意を表したことは大変なことだ。」これは「一応の決着がついたことになっているが、」というような趣旨の質問に対してそういう答えをしておる。これは金大中事件についてはもう一切終わったというふうに考えておられるのかどうか、この点を伺いたいと思います。
  68. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 たとえば金東雲書記官がわが国でなしたとわれわれが、捜査当局が考えております行為については、完全に両国間が意見の一致を見ておらないというようなこともございまして、この事件が完全に終わっておるというふうには私は考えておりません。  私が申しましたことは、世間であまり考えられていないようであるけれども、一国が首相を派遣して、そうしてどういうことばであれ、遺憾であったというようなことを言われることは、これはお互い政治家としてはすぐわかることでございますけれども、これはもう容易ならないことであって、そういう先方の立場考えてあげなければならぬではないかということを申したのでございますけれども、この事件が完全に決着しておるというふうには私は考えておりません。
  69. 松本善明

    ○松本(善)委員 六日付の「ワシントンメリーゴーラウンド」というコラムには、ジャック・アンダーソン記者の朴大統領との単独会見記事が出ております。  これは金大中拉致事件について、朴大統領は、拉致事件は多分中央情報部の犯行であろうということを認めた、それから事実朴大統領は、中央情報部長に拉致事件の責任を負わせて解任したというふうに語った、こういうふうに報道をされております。  この金大中氏の拉致事件がKCIAによるものであるということになるならば、わが国の主権侵害は明白であると思います。この点について外務大臣は御存じなのか、どう考えておられるのか、お聞きしたいと思います。
  70. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ジャック・アンダーソンのそのなには読んだ記憶がございますけれども、そうかといって、これを全部信用しなければならないということでもございませんでしょう。少なくとも金東雲氏のわが国における行為については、わが国の捜査当局はわが国の捜査当局なりに、幾つかの証拠を持っておるというふうに聞いておりまして、そのことが韓国側の捜査とつき合わない、こういうのが現状であろうと思います。したがって、そこに疑問は残っておる。それが金東雲氏の公務としての一部であったのか、全くそうでなかったかというような次の問題もございますけれども、事実関係について、わが捜査当局と韓国の捜査の結果が一致しておらないという問題は、現在まだ残っておるというふうに考えています。
  71. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務大臣は、わが国の捜査当局が、この金東雲氏がやったというふうに考えられる点について捜査をしておることについては信用してないということですか。韓国とのつき合わせが完全に一致しない限りはこれは信用できない、こういうことでありますか。
  72. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 むしろその逆でありまして、わが捜査当局がかなりの自信を持って幾つかの証拠をあげているということに対して、韓国側がまたそれなりの違う結論を得つつあるようであるので、その間の食い違いというものはやはり究明されなければならないのではないか。したがって、この部分は完了していない、こういう考え方をしておるわけです。
  73. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務大臣がいま次の問題といわれた、これは公務としてなされたかどうかというところが非常に大きな問題で、その点について朴大統領自身がアンダーソン記者に対して、これはKCIAのやったことだというふうに認めたということは重大なことであります。私は、外務大臣が全部を信用しなくてもいいだろうというような態度で、このわが国に対する主権侵害の問題を考えているとすればたいへんな問題だと思うのです。当然に、直ちにこの問題を新しい問題として調査をするということは、外務省としてなさなければならないことだと思いますが、いかがでしょう。
  74. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御承知のように「ワシントンメリーゴーラウンド」というのは昔からなかなか有名なコラムでございますが、逐一全く正確であるという評判のあるコラムでも必ずしもないわけでございますから、それをもとに何かするということは必要のないことだと思います。  私の申したいのは、第二段云々と申しましたのは、それより前に、どういう資格であるということを別にしまして、事実関係として、わが捜査当局が事実であると信じておることと、韓国当局がそう考えておることとが食い違っていると思われます。わが国の捜査当局の捜査が誤りであったと考え理由はございませんので、したがって、その間のそごというものがやはり埋められませんと、この問題のこの部分は解決しないという感じを私は持っておるわけです。
  75. 松本善明

    ○松本(善)委員 アンダーソン記者に確かめるとか、朴大統領にこういうことはどうかと、調査することがどうして不必要なことなんですか。そういうような程度のこともやるという気はないのですか。
  76. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ありていに申しまして、「ワシントンメリーゴーラウンド」というのをもとに何かをしようという気持ちは私はございません。
  77. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務大臣は、十二月二十一日の朝日新聞で、やはり韓国は自由と民主主義とはほど遠い国であるというふうに述べたということが報道されております。韓国のいまの状態は民主主義的な状態ではないということでありますか。
  78. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 こういう公の席で、よその国のあり方について何か申しますことは差し控えたいと思います。
  79. 松本善明

    ○松本(善)委員 椎名さんが特使として韓国におもむいたことがありますが、これは陳謝特使というふうに韓国では言っていますけれども、そういうふうに考えていますか。
  80. 高島益郎

    ○高島政府委員 お答えいたします。  椎名特使がいわゆる八・一五事件の決着にあたりまして、訪韓された際に、いろいろ先方の大統領お話ししたりあるいは親書を御携行になってその内容を説明したりした趣旨は、陳謝ということでは全然ございませんで、日本の本事件に対する態度を正確に椎名特使御みずから大統領に説明するために行かれたというのが訪韓の性格でございます。
  81. 松本善明

    ○松本(善)委員 そのときの椎名メモがありますが、それは条約と考えているのかどうか、外務大臣に伺いたい。
  82. 高島益郎

    ○高島政府委員 いわゆる椎名メモと称せられるものは、田中総理の朴大統領に対する親書の内容につきまして、椎名特使が口頭で御説明になりました、その説明になったことを、将来先方の誤解を招くというようなことがないようにするために、正確に文字に表現いたしまして、それに駐韓後宮大使がイニシアルをしたという文書でございまして、この文書の性格は条約とか何とかというものとは全然性格の異なるものでございます。
  83. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、一切拘束力のないもの、こういうふうに考えていいですか。
  84. 高島益郎

    ○高島政府委員 要するに、拘束力があるとかないとかというそういう法的な文書ということではなくて、椎名特使が口頭でお話しになったことは、日本政府考えていることを述べたことでございますので、その内容をただ文書にしたということにすぎません。したがって、椎名特使が口頭でおっしゃったことは、もちろん政府として信ずることを述べたことでございますので、おっしゃったことば日本政府関係ないということではございません。
  85. 松本善明

    ○松本(善)委員 日本政府をやはり拘束するということになりますか。
  86. 高島益郎

    ○高島政府委員 政府がいろいろ外国と話をしたりあるいは交渉したりする際に、政府代表して述べるということは、広い意味ではもちろん政府の信用にかかわる問題でございますので、これから自由であるということにはなりません。しかし、いわゆる協定とか条約とかいうような法的な文書による権利義務を定める、そういう文書ということとは性格が違うということを申し上げている次第でございます。
  87. 松本善明

    ○松本(善)委員 この椎名特使の派遣に関係する問題というのは、きょうは時間がありませんのであまりできませんが、これは椎名さんにこの委員会に出席をしてもらって審議をすべきであると思いますが、その点について委員長に要望したいと思います。
  88. 有田喜一

    有田委員長 これは他日理事会で相談したいと思っております。
  89. 松本善明

    ○松本(善)委員 いま金大中問題については終わっていないということを先ほど外務大臣言われましたが、この韓国との問題については、たくさんのいろいろな問題がまだ残って、日本の国民は少しも釈然としておりません。こういう状態のままで経済援助を続けるということは、これはアメリカの上院でも問題になっております。   〔委員長退席、石井委員長代理着席〕 外務大臣も、公式の場ではないけれども、自由と民主主義とはほど遠い国だということを言われておる。そういう国に対して経済援助をこのまま続けるということは、私は正しくないと思います。経済援助は打ち切るべきであるし、閣僚会議も開くべきでないというふうに思いますけれども、この点について外務大臣の見解を聞きたい。
  90. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまのお尋ねは、非常にむずかしい問題に触れておると思います。  従来、わが国がいろいろな国に対して経済援助をし技術援助をしておりますけれども、それは、その国の国民生活が幾らかでもよくなるように、経済が安定するようにという気持ちからやっておるわけでございまして、相手の政権がどういう性格であるから、あるいは相手の政治がどういう政治であるからというようなこととそのこととをからませますと、これは韓国の場合をいま頭にお置きにならずに、一般論としてお聞き取りいただきたいのですが、誤まれば内政干渉ということになりかねません。われわれが心に思っておることはあっても、正統の政府は正統の政府として扱わなければ、こういう政府であるから援助はしない、あるいはこういう政府が好ましいというようなことは、これはもう内政干渉にほとんど近いところまでいくわけでございますから、それをこう二つ結びつけるということはいろいろな意味で問題があるであろう。よく御批判のありますことは、われわれがその国の国民のためによかれかしと思ってやりましたことでも、結果として、現にある政権を強化するに役立ったではないかという御批判がよくございます。しかし、そのことを突き詰めていきますと、われわれが相手の政権をえり好みをするというような結果に非常になりやすい。これは一般論として私は申しておりますけれども、そういうことがございますので、その辺はよほどやはり注意をしてやらなければならないのではないか、こういうことを私は一般論として感じます。  さて、具体的な問題になりますが、韓国の場合にも、われわれは韓国国民の福祉のために役立つように、経済が安定するようにと考えまして、技術援助、経済援助をやってきておるわけでございます。したがって、そのことと、政権に対してのわれわれが心の中でひょっとして考えておるかもしれないいろいろな思いとは、すぐに結びつけるということにはいろいろ問題がある。ただ、また同時に、援助にいたしましても、相当な額になりますれば、これは日本国民自身の理解というものがなければ長続きはいたすものでございませんから、その辺のところのかね合いであろうというふうに考えております。
  91. 松本善明

    ○松本(善)委員 具体的に閣僚会議、それから援助をどうするかということについて伺いたいわけであります。その問題もお答え願いたい。
  92. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 従来いわゆる実務者の間で話の継続をしております案件については、話を継続さしていきたいと考えております。  閣僚会議につきましては、開きます以上、これが、もう一ぺん、両国の今後における友好関係、信頼関係を完全に回復をして、さらにそれを増進していくような、そういう第一歩にしたい、そういう環境ができました上で開いてまいりたい、そういうふうに考えております。
  93. 松本善明

    ○松本(善)委員 木村外務大臣は、朝鮮の問題について、北からの脅威は現在客観的にはないということを答弁したことがあります。そしてそれについていろいろの議論がありました。いま外務大臣はどのようにお考えになっていますか。
  94. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もともと脅威を感じる感じないというのは、基本的には主観的な問題であると思います。この点は、木村大臣もそういう前提のもとに言われたようでありまして、客観的には、しかし何年か前に比べればだいぶん情勢はよくなっているではないかということを言われたように思いますが、またその後に、しかし最近は、海上あるいは平和国境線などをめぐって少しずつトラブルがあるようであります。いずれにしても、私は、脅威があるないということは、これは第三者が言うことではなくて、当事者の主観的な問題ではないかというふろに考えております。
  95. 松本善明

    ○松本(善)委員 六九年佐藤・ニクソン共同声明は、朝鮮半島は依然として緊張状態が存在するということに注目をした。韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要であるというふうに総理大臣が述べたということがうたってあります。この状態は変わりませんか。
  96. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 あれは、たしかプエブロ事件の直後であったかと思いますけれども、その後、南北間のいろいろな、赤十字会談であるとか、接触が開かれるに至りまして、かなり緊張緩和が進んだのではないかと思われた時期がございます。最近、しかしまた、先ほど申し上げたようなことがございまして、ちょっと一進一退というところであろうかなというふうに見ておるわけでございます。
  97. 松本善明

    ○松本(善)委員 「韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要である」という立場は変わりませんか。
  98. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのことを否定していいようなところまで事態は改善されていないと思っております。
  99. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうだとすれば、外務大臣、そのことの当否は別として、朝鮮半島に脅威があるかどうかということは、日本自身としても考えなければならない点ではありませんか。外務大臣は、この点については無関心でいていいということでありますか。この点については日本は第三者だという考えでありますか。
  100. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そうではございませんで、冒頭に御引用なさいました木村外務大臣の御発言といわれるものは、韓国自身がどのように考えておるだろうかということにお触れになったのではなかったかと思いますので、われわれはわれわれなりの見方をしなければならぬことは、これはもう確かでございます。
  101. 松本善明

    ○松本(善)委員 それでは、われわれなりの見方、日本政府としては、朝鮮半島について北からの軍事的脅威があるというふうに考えているのかどうか。この点を伺いたい。
  102. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはどちら側からどちらへの脅威ということではなくて、朝鮮半島全体の情勢がなお非常に不安定である。したがって、これはわが国にとって云々と、こういう考え方でございます。
  103. 松本善明

    ○松本(善)委員 日本におりますアメリカ軍は、第五空軍でありますとか第七艦隊、あるいは具体的にはたとえば第一八戦闘航空団とか第三海兵師団とか、こういう部隊というのは常に韓国へ配備をされるということで一体となっているわけであります。アメリカとしては、日本と韓国の防衛というのは同じ立場で行動しておるというふうに考えられるわけでありますが、そういうふうに考えてよろしいでしょうか。
  104. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 わが国といたしましては、日本におります米軍は、日本の安全に寄与するため、及び極東における国際の平和と安全に寄与するために駐留を認めておるわけでございます。他方、米国は米韓相互防衛条約に基づいて韓国におるということでございまして、それぞれその目的は異なっておると思います。
  105. 松本善明

    ○松本(善)委員 米韓共同声明は、このようにいっています。「朴大統領は、」「北朝鮮の敵対行為による平和と安定に対する脅威を説明した。両大統領は、韓国軍と駐韓米軍が侵略を防止するため高度の戦力と準備態勢を維持すべきことに合意した。」とありますが、日本政府としては、この認識についてどう考えているか伺いたいと思います。
  106. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 その声明は、あくまで米国と韓国との間の共同声明でございまして、それはそれなりに受けとめておりますけれども、われわれとしては、これについてコメントする立場にはございません。
  107. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、日本アメリカとの間に、朝鮮情勢の見方について食い違いがあるということでありますか。
  108. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 食い違いがあるとかないとかという問題ではございませんで、それは米国と韓国との間の一つの認識であるというふうにわれわれは了解しておりまして、それについてわれわれとしてはコメントする立場じゃないということを申し上げておるわけであります。
  109. 松本善明

    ○松本(善)委員 その点について一致しておるのか違っておるのかということだけを聞いておるのです。
  110. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 ただいま私は米韓共同声明を手元に持ち合わせておりませんので、その点もう一度お読み上げ願いたいと存じます。
  111. 松本善明

    ○松本(善)委員 「北朝鮮の敵対行為による平和と安定に対する脅威を」朴大統領は「説明した。」そのあと「両大統領は、韓国軍と駐韓米軍が侵略を防止するために高度の戦力と準備態勢を維持すべきことに合意した。」
  112. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 これは、いまのお読み上げになりましたところからも明らかなように、韓国軍と駐韓米軍の問題でございまして、これは米国と韓国がそれぞれ判断してやることでございます。この点に関して日本側としてやはりとやかくコメントすべきものではないと存じます。
  113. 松本善明

    ○松本(善)委員 やはり米韓共同声明には、韓国軍の近代化五カ年計画がうたわれております。日本政府は、これを政治的に支持をしているかどうか。
  114. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 韓国軍の近代化計画というものは、もちろんわれわれは承知しておりますが、それは先ほどから申し上げておりますように、これは韓国と米国との間の問題でございまして、われわれとしては、それについてとやかく申す立場にはないと存じます。
  115. 松本善明

    ○松本(善)委員 そうすると、韓国軍近代化計画については、日本政府は全く関係がないというふうに考えていいか。
  116. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 先ほどから申し上げておりますように、それは米国と韓国との間の問題であるということでございます。
  117. 松本善明

    ○松本(善)委員 先ほど申しましたが、在日米軍は、米軍としては韓国と日本と同じ立場で当たっておりますが、   〔石井委員長代理退席、委員長着席〕 こういう関係にありますと、韓国で事が起こった場合に、日本が戦闘作戦行動の基地になるという危険性がきわめて多い。この戦闘作戦行動の基地に日本が使われるという問題につきましては、これはたびたび、ベトナム侵略戦争の場合に本委員会でも問題になりました。そのときの六十七国会での福田外務大臣答弁は、ああいう遠隔な地域ではわが国は火の粉をかぶる事態にならないと思うのでそこに対する出撃はノーだと思う、こういうふうに言っておられたわけですが、韓国はきわめて近いわけであります。そうすると、近いところで何か起こった場合には、この裏を言えば、戦闘作戦行動についてイエスが言われるというおそれはきわめて多いというふうに言えるかもしれないと思う。この韓国の事態に対する戦闘作戦行動の基地になるということについての事前協議問題について、政府考えを聞きたいと思います。
  118. 山崎敏夫

    ○山崎(敏)政府委員 戦闘作戦行動に関しましての事前協議に関して、わがほうがイエスかノーかを言うという基準は、あくまでわが国の国益を中心にして考えるということでございます。それは日本の安全を確保するという見地からでございまして、もちろんその際に、極東の平和と安全というものがなくしては日本の安全を十分に確保できないということは認識しておるわけでございまして、そういう認識のもとに考えるわけでございます。したがいまして、韓国の問題に関しましても、そういう観点からそのときどきの状況に応じて判断するということでございます。
  119. 松本善明

    ○松本(善)委員 最後に聞きたいのは、朝鮮民主主義人民共和国を外務大臣は侵略国と考えているかどうか。
  120. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 朝鮮民主主義人民共和国を侵略国と考えているか。それば侵略ということの定義にもよりますし、そうだというふうに申し上げることもないと思います。わが国とは現在国交がございませんし、したがって、実はその間の情報もさだかでありません。お答えを差し控えることがおそらく外務大臣としてはしかるべき御返事ではないかと思います。
  121. 松本善明

    ○松本(善)委員 韓国問題については、非常にたくさんの問題がございますので、今後ともこの問題については論議をしていくということにして、きょうはこの程度にしたいと思います。
  122. 有田喜一

  123. 渡部一郎

    渡部(一)委員 外務大臣に、日本外交政策の中で核政策についてお伺いをしたい、こう思っておるわけであります。  言うまでもなく、核兵器は、一般軍事兵器と違って、その巨大な破壊的エネルギーの結果、政治的影響力を越えた兵器としてひとり歩きをする性質かあります。アメリカで公表された例でも、過去の原子爆弾の六十一万発分がすでにアメリカによって保有され、またそれに匹敵するだけのものがソビエト側に存在するという段階において、人類的な規模においてこの核兵器問題、私たちの取り組む態度からいうならば、核軍縮問題というものは外交の主要な柱として位置づけられなければいけない、こう思っているわけであります。  しかしながら、今日までの日本外交の特色として、核問題に対しては、米ソ二大国がこれに取り組む、そしてわれわれはそれに対応し調子を合わせるというだけで、非常に受け身で来ていたものであった点が多い、こう思うわけであります。世界における唯一の被爆国としての日本立場をあらためて言うまでもありませんが、私どもとしては、核軍縮のために日本のあらゆる機能、あらゆる外交努力を傾注するときが来たのではないか、まず、そういう一番基本的な話からきょうはお伺いをしたいと思っておるわけであります。  まず総括的に、核軍縮問題について新政府はどういうふうにお取り組みになるつもりであるか、大臣からお答えをいただきたいと思います。
  124. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 巨大国、超大国の核戦力及びその抑止力によってきょうの世界の平和が保たれておるという現実は、これは否定をすることができませんけれども、本来わが国の憲法がその前文で述べておりますところと、現状はほど遠いということもまた事実であります。われわれとしては、憲法の定めるところの精神にもかんがみまして、いわゆる非核三原則を堅持し、そしていつかの時代に、世界がみんなわが国の例にならってくれるように、そういう外交努力を続けていくべきだというのが基本考えでございます。
  125. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そこで、非核三原則につきまして一つだけ念のためにお伺いするわけでありますが、いわゆる核兵器のわが国に対する一時的持ち込みあるいは核兵器の日本領土、領海、領空等の通過等は、非核三原則に抵触するとお考えであるか。それとも、それはそうしたものでないとお考えになっておられるか。その辺をこの際、明らかにしていただきたいと思います。
  126. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは先ほど土井委員にも申し上げておったことでございますけれども、いずれも安保条約との関連におきましては事前協議の対象になるというふうに考えておるわけでございます。
  127. 渡部一郎

    渡部(一)委員 事前協議の対象になるという意味は、非核三原則の存在にもかかわらず、非核三原則は、ある場合によっては破る場合があり得る、こういう意味でございますか。それは非核三原則の範囲内でそういうことは許容されておるとお考えですか。
  128. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘の場合は、非核三原則のうちの持ち込まず、持ち込ませずという部分に該当するわけでございますから、通常の状態において非核三原則が優先をするというふうに考えます。
  129. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうすると、事前協議の対象になるが断わる、こういう意味ですか。
  130. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 通常の場合でございましたら、そういうことでございます。
  131. 渡部一郎

    渡部(一)委員 通常の場合とは、どういう場合ですか。
  132. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 もともと事前協議というのが、論理的にはノーと言うこともあり、イエスと言うこともあるということでございますけれどもわが国に核が持ち込まれるというような状態は、わが国の安全が、もう現実に目の前で脅かされておるというような非常に異常な事態でない場合には、これは事前協議というものは、そもそも行なわれないでありましょうし、行なわれてもノーと言う、これが非核三原則の精神だと思います。
  133. 渡部一郎

    渡部(一)委員 その辺は、多少問題を将来に含むかと私は思います。  今度は、飛び飛びに一つずつ伺いますが、核兵器を全廃するために、あるいは核兵器の大幅な軍縮ダウンを行なうために、政府としてはとりあえず何から手をつけたらいいとお考えでございますか。
  134. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、わが国のように、憲法のもとにこういう体制を二十何年続けてきて、そして繁栄をしてきている、自由な国であるというような、そういうわれわれが始めましたこの偉大なる実験を完成をさせていく、そういうことによって、世界人類にああいう行き方があるということをわかってもらう、この努力が私は基本だろうと思います。
  135. 渡部一郎

    渡部(一)委員 少しそれは大まか過ぎますし、そこまで総合雑誌みたいにお答えになると、ちょっと私もやりにくいのですが、じゃ私の聞き方をもう少しこまかくいたしましょう。  核を当初に使わないというふうに中国が言っております。また、ソビエトは、核不使用宣言をしてから話し合いをしようじゃないかという提案をいたしております。私は、ここで核大国の首脳会議をとことんまで突き詰めて行なうべきであるという持論を持っておるわけでありますが、ともかく核は最初に使わないという程度の合意をするために、核保有国は会議なり意思表示をするべきだという強い日本の意思表示というものがあってしかるべきだと思うのですが、これについてはどうですか。
  136. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは核拡散防止条約をわれわれが考えておりますときに、非核保有国の安全ということを何度も申しておりますのは、やはりそういう意味合いを含んでおるわけでございますから、われわれとしては、やはりそういうことであってほしいということを考えておるわけです。
  137. 渡部一郎

    渡部(一)委員 あらためてそういうことを声明するなり、要求するなり、積極的になさるおつもりはありませんか。
  138. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのような核保有大国間の申し合わせが行なわれるということは非常に願わしいことでございますけれども、その申し合わせが実効性を持ちますためには、やはりそれなりの、それらの国の間の信頼感、それらの国に対する信頼感、これが先立たなければならないというのもまた事実であろうと思いますから、ただ言って、それが紙の上でできたというだけでは、それは紙の上のことであって、やはりそういうことが現実に守られ、行なわれていくというお互いの間の信頼感、それらの国に対する信頼感というものが成熟していかなければならないのではないかと思います。
  139. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それは、いままで私がおつき合いしていた宮澤さんがお話しになるなら、それはもう満点の答弁であると思うのです。宮澤さんはいま外務大臣におなりになったところですから、まだおなれになっていなくて、御自分が偉大な力を手にしておられて、少なくとも日本代表しておられるわけですから、積極的に働きかけるほうに回っていただきたい。評論家としての宮澤さんがおっしゃるなら、これはいまの答弁は満点。自民党員としての宮澤さんがおっしゃるとしたら、それはもう満点におつりがくる、私はすばらしい答弁だと思います。  いま私が申し上げているのは、超大国間に信頼が回復しなければならない、それは評論としては成り立ち得るが、外務大臣としての御発言としてはいかがかと思います。そこのところを一歩前に出て、その問題にはおれが取り組むぞという姿勢を示していただきたかった。その意味でもうちょっと何とかおっしゃられたほうがいいんじゃないでしょうか。
  140. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 われわれが大事に思いますのは、幻想ではなくて現実でございますから、もちろん外交当局におります者としてできるだけの努力はして、そういう現実が成熟していくように、微力ではありますけれども、最大の努力をいたすつもりでございます。
  141. 渡部一郎

    渡部(一)委員 まあそのぐらいの答弁でいいですけれども、この次はそんな答弁じゃだめで、この次私が質問したときには、あれ以後深く反省しましてこういうふうにやろうと思っておりますと言わなければいけません。  ではその次、韓国で核武装するという話がいまいろいろ出ておるわけであります。先日のAP電でも報告されております。俊敏なる外務省としては情報はすでにキャッチされておると存じます。これについての見通しと情報についてどういう判断を持っておられますか。
  142. 高島益郎

    ○高島政府委員 韓国はNPT条約にすでに署名しておりますし、もちろんまだ批准はいたしておりませんけれども、そういう署名という事実からも韓国政府の核所有、核保有についての基本態度はうかがえるかと思いますが、私どもといたしまして、いま先生の御指摘のような、韓国は現在並びに将来にわたって核武装をするかもしれないというふうには考えておりませんし、そういう情報も全然持ち合わせておりません。
  143. 渡部一郎

    渡部(一)委員 韓国政府側がAP電に対して全く批評を加えていないのも妙なことでありますが、最近に至りましてイスラエルの言明あるいはインドが核保有を述べたということ等を考えますと、科学技術的に見ますと非常に簡単なものであるようであります。一発の製造単価は千五百万ドル程度というような情報すらある時代であります。そうしますと、こうしたものが持ち込まれるということは、政治情勢の急変を意味するわけであります。われわれとしては韓国に内政干渉をするつもりはありませんけれども、少なくともアジア地域、また日本周辺の諸地域において、これ以上核が持ち込まれたりあるいは保有されたりすることを食いとめなければならないし、そのための手を打たなければならないと思いますがどうですか。
  144. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまのお話そのものについて、私どもそういう情報を持っておらないし、韓国の従来核拡散防止条約に署名をしたという立場から言いますと、ちょっと考えにくいことでございますけれども、もとより仮定の問題としてそういうことがあれば、それはたいへんに困ったことであるし、われわれとしてはわれわれの周辺でそういうことが起こってほしくない。これはわれわれの外交努力でそういうようなことをしなければならないような局面をつくらない、これはそこまでは内政干渉になりませんので、そういう努力をすべきだと思うのでございます。
  145. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そこで、アジア非核地帯構想というのがいろいろな形で識者の間から説明されたり言われたりしております。少なくとも韓国側が、核を持たないとか、持ち込まないとか、つくらないとかという原則について、日本側ともし同じであるならば望むべきことでありますし、それをさらに助長して、韓国もあるいは北朝鮮もあるいは台湾もあるいはフィリピンもインドネシアもビルマもタイもあるいはオーストラリアもと、こういうふうに伸ばしまして、そのいずれを入れるかはまた詰めるべき問題ではございましょうが、アジア非核地帯などというようなものを進めるというような、一歩前進の構想を検討なさってはいかがかと思いますがどうですか。
  146. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは、将来の構想としては真剣に考える必要のある、ものの考え方だと思っておるのでございますけれども、どうもいっときアジア諸国の中にもそういう空気がありましたのに、この節また各国のお考え方が以前ほどではないようでありますし、他方で、アジアに関係のある核を持っております超大国の間での信頼関係がもう一つ十分でない。またアジアに対するそれらの国の思惑もはっきりせずに不安定であるというようなことがございまして、いま目先の問題として現実性を持っておるとは考えにくいわけですけれども、将来の大きな構想なり、ものの考え方としては、私は常に念頭に持っているべき課題だとは思っています。
  147. 渡部一郎

    渡部(一)委員 核のかさの評価について一言お伺いしておきたいわけでありますが、外務大臣は核のかさというのはどういうふうに評価されていますか、いわゆる核のかさといわれている考え方
  148. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 米ソ両大国がいわゆる核兵器の手詰まりとでも申しましょうか、その結果世界的にデタントが生まれておるということ、それから、わが国は、安保条約によってわが国自身には核を防止する力はございませんから、安保条約によってわが国が自分の安全をそれによって保っている、そういう姿を核のかさというのであろうと理解しています。
  149. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それはちょっと私はうなずけない議論なんですが、次の委員会で少し時間のあるときに十分申し上げますが、核のかさ論は、外務大臣、それはちょっとお古い議論だと思います。いまの議論はもうちょっと変質しておりますから御研究をお願いしたい。  それから、核防条約の締結についていろいろなお計らいやらお話やらがいま出ております。核防条約の締結の前提といたしまして、国際原子力機関、IAEAとの間で、国際的な査察に関する取りきめをしようというお話を先ほども申しておられましたし、前大臣からも伺っておるわけであります。そのIAEAとの保障措置あるいは査察に関する協定、どういう態度で交渉なさっており、かつ、それがどの辺まで進んでおるか、お示しをいただきたい。
  150. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 お答えいたします。  国際原子力機関との間の予備的な話し合いは、実は昨年の十一月に四回やりまして、一応原則的合意ができました。その予備交渉の目的は、日本が核防条約に署名いたしましたときの政府声明の中の第三点、特に日本の原子力平和利用の面におきまして、第三国との間に不利な扱いを受けないという点を政府としては重視しているという点を受けまして、予備的な話し合いで原子力機関との間に四回話をかわしました結果、大体ユーラトムと同じ並みの待遇を与えるという話し合いができたわけです。したがいまして、それを受けまして、実際にユーラトムと同じような取り扱いになるかならないかということを、もう少し具体的な形で話し合いを再開しようというのが、現在、政府考え方でございます。このために、関係省、特に科学技術庁は関係庁として一番関係がございますが、それとの間に事務的に話し合いの方針といいますか、対処のしぶりにつきまして検討を進めておるというのが現状でございます。
  151. 渡部一郎

    渡部(一)委員 その交渉のしかたについて、ほかの点についても問題がありますが、まず交渉のしかたについて一つ私、要望を申し上げておきたいのですが、それは、不平等な取り扱いを受けないという方向でお話し合いが出ていると同時に、このIAEAの考え方で一番抜けておりますのは、原子力開発における安全性の問題ですね。普通に言えば公害問題です。この機関はその問題に関する研究がおくれているのです。むしろ各国とも、おれのアイデアなりあるいはメソッドというのをかっぱらわれないようにするというところに重点がかかって交渉が行なわれている。ところが、一番まずいのは、軍事優先で行ないました原子力開発、つまり超大国による原子力開発というもの自体が公害問題に関心が向いていないわけです。それを実際の原子力発電等に回しますと、原子力発電そのものが非常に危険なものとしてスタートしてくる。安全保障に関する情報交換は、それは幾らやったっていいことなんですけれども、その部分がこのIAEAの考え方や交渉の際に欠落している。ところが、現在アメリカでつくられた原子力発電所のほとんどというほとんどは、住民運動の対象になり、あるいは汚染の対象になり、大騒動を起こしている。そうしてそれに対する情報公開というのがなされないために、非常にとんざしているのが実情であります。当委員会ではあまり問題になっておりませんが、原子力発電所の公害汚染問題というのは、これからの日本の最大課題になります。それをお考えになりましたら、この際にそういう公害情報の相互交換についても、交渉の際に、IAEAとの話し合いの中で、明らかに一項目くぎをさしておいて、具体的な詰めを行なわれたらいかがか、これは提案しておきます。よろしく御検討ください。
  152. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 ただいま御指摘のありました安全性の問題でございますけれども、国際原子力機関の設立目的から申しまして、軍事転用を防止しながら原子力の平和利用を促進するということから申しまして、実は御指摘のとおり、若干安全性の問題についての重点が、従来必ずしもわれわれの考えているほどではなかったということは、御指摘のとおりでございます。ただ、この問題があるということは意識としてございまして、各国における原子力発電施設が増大するにつれまして、これをもう少し真剣に、詳細に検討する必要があるということから、ことしの九月の国際原子力機関の総会におきまして、この問題を相当重点的に取り上げまして、関係の専門家会議を開いて、優先的に検討を進めるということになったことをちょっと申し上げておきます。
  153. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それも百も承知で申し上げたわけでありますが、そのときの日本側の代表の発言が、大臣、非常に帳じりが合わなかったわけであります、つまりうしろ向きで、あまり関心のない態度を装っておった。それで、各国の公害問題の方々、傍聴に行かれた方々から伺えば、日本側の態度というものが、そういう公害なんかを無視した、非常に開発優先の態度であった。交渉の際にそういったタイプの人までこちらで用意することができなかったことはわかるのですが、今後大臣、その辺お含みいただきまして御配慮願えますか。
  154. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 適切な御注意でございますので、よく留意いたします。
  155. 渡部一郎

    渡部(一)委員 さて、それから私がさらに申し上げたいのは、そのIAEAのいまのお話でも明らかでありますが、核防条約の日本政府調印の際の声明の三項に関しては、こういう努力をなさっておられる。ところが、第四項に対しての日本政府努力というものですね。超大国が核軍縮を進めることを条件とした第四項目であります。その第四項目についての日本政府側の努力というもの、それがあっていいんじゃないかと私は思います。まあ米ソ超大国がそうした考え方を持っておってぐいぐい進めておる、それはいかぬぞという意思表示をして、わがほうがそれに入るためにはそういうことをやめてくれよということを宣言した、それはりっぱである。だけれども、それをじっと座して待っているという関係では私はうなづけないと思います。日本努力は、少なくとも外交努力としては小さくて影響性が少ないというふうに見えるかもしれない。しかし、日本政府がこの核軍縮問題について熱烈的に取り組んだという証拠がない。  大臣、おかしなことを申し上げますけれども、この前予算委員会でも私同じようなことを幾つか御質問しようとして準備をしたわけでありますが、私は、この質問をするために、核軍縮問題について政府に要求して、資料をとろうとしました。それで三週間たつわけであります。私の手に資料は一枚も来ない。日本政府側の、核軍縮に対してどういうことをやったのかという資料を要求したのです。ない。図書館のほうにも要求してありますが、これまたなし。世界の核装備というものがどの程度の限界にいったのかというような基本的なものにまで、私はいろいろ各種類資料を要求しているのですが、入手不可能であります。  つまり、私が申し上げることば、材料を持っていないものについて議論をすることはできない、議論をすることのできないものについて意思をきめることはできない、意思をきめることのできないものについて交渉することは不可能だと私は思います。私は、だから日本外交で核軍縮政策というか、非核政策というか、名称はどういうふうに言うのが適切かわかりませんけれども、そうした問題について相談されたことがないのではないかという疑いをいま持っておるのです、重大な疑惑を。あのめんどくさい韓国の経済援助に対して資料を要求した際、やはり同じようなことが起こりました。ですけれども、あのときに経済協力局から私のほうは二週間後に資料をちょうだいしました。今度は核といったとたんに全然出てこないで三週間たちました。つまり、私は中身はないんじゃないかと心配いたしております。きょうは私は直ちに政府にあれこれ答弁を迫っているのではない。ただ基本的なことをいま幾つか大臣から率直なお話を伺いました。だけれども、御答弁の節々から見ても、そういう調査資料が一枚もあがってこないところから見ても、日本に非核政策というのはないんじゃないかという疑いを抱いているわけであります。大臣、この辺はひとつ解明をし、そしてルールをつくり、路線を敷いていただいたらどうかと私は思っております。
  156. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 自分がお手本を示すというのが私は一番雄弁な非核政策だと思いますけれども、実はそのことの結果、核兵器というものはそういう意味ではわれわれに全く無縁なものでございますので、それについての知識等々がどうしても欠けやすい。自分でしないことをきめておりますものですから、そういうことをしょっちゅう考えると申しますか、専門的な知識がどうしてもおくれてくるというようなことはありがちなことであると思いますが、自分の気持ちははっきりしておきました上で、いろいろそういう研究もし、また、自分の立場を人に対してどうやってわかってもらい、実行してもらうか、努力は常にいたさなければならないことと思います。よく注意をいたします。
  157. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは私は最後に、核問題に関する資料の提出をこの場で外務省当局に要求したいと思います。  世界における核保有の状況について、各国の核軍縮に対する態度について、あるいはSALT協定その他をめぐる判断について、あるいは世界における非核政策、幾つかの国々がかろうじてやっておるわけでありますが、非核政策に関するその態度について、総合的な資料の御提出を私、求めたいと思います。いかがですか。
  158. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 いまあげられました諸点について、できる限り資料を用意いたしまして提出することにいたします。
  159. 渡部一郎

    渡部(一)委員 時間がありませんで、これを最後にいたしますが、先ほどの土井先生の御質疑の間にございましたが、自由航行における核保有艦船の通過の問題につきましてお話が出ておりました。自由航行、無害航行、両方に分けまして、核保有艦船の日本領海に対する進入をどう考えられておるのか、私はもう一回ちょっと御確認をしたいと思うのです。総括して述べていただきたい。  それからもう一つは、今度の海洋法会議において国際海峡問題が明らかに取り扱われております。先ほど条約局長は、それの様子がきまったら、それに応じて、こちらの何かをきめるというふうな言い方をなさいました。私は逆で、海洋法会議に臨むときに核保有艦船の通過の問題についてこっちは何を言おうとしておるのか、それを伺いたい。きまってからどうするのではなくて、いまきめている最中なんですから、こっちはどうきめているか、そっちを伺いたい。お願いします。
  160. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 第一の御質問の自由航行の問題につきましては、実は御質問の趣旨を私、必ずしもはっきりつかんでおりませんけれども、先ほど申し上げましたのは、一般国際法上の無害航行というものと核装備をした軍艦との関係について申し上げたわけでございます。  四十三年に政府が統一見解で出しておりますのは、ポラリス潜水艦その他類似の、核を常備した軍艦の通航は無害とは認めないという政府の統一見解を出しておりまして、それは今日まで変わっていないわけでございます。  第二番目の海洋法会議の際の国際海峡の問題につきましては、この前のベネズエラのカラカスにおきます海洋法会議におきまして、いろいろな国からいろいろな考え方あるいは提案というものが出されておりまして、その間の調整と申しますか、話し合いというものが実質的にはまだあまり進んでいないというのが現状でございます。政府といたしましては、一般的に申しますならば、国際航行の自由はできるだけ確保されることが望ましいという考え方に立っているわけでございますけれども、実際の会議におけるこの問題の論議の進展をもう少し見きわめる必要があるというふうに考えているわけでございます。
  161. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は、海洋法会議に臨んで国際航行の自由を確保するという方針でやられたのは伺いましたが、核保有艦船の拡大された領海における航行の自由をどの程度認めるかについて、日本側の態度が申し述べられているであろうと私は思うので、伺っているわけであります。そういう点には一切触れておられないで、もう少し黙っておられるおつもりなのか、その際どういう意思表示をされたのか、それを伺っております。
  162. 松永信雄

    ○松永(信)政府委員 海洋法会議におきましては、核という問題の観点からこの問題が論議されているわけではございませんで、船舶及び航空機の航行をどういうふうに規制するかという観点から、実は問題が論議されているわけでございます。したがいまして核の問題につきましてはどうなるかということは、やはりそこにでき上がってきますものによって考え方を検討しなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  163. 渡部一郎

    渡部(一)委員 では最後に御要望を述べておくわけでありますが、少なくとも日本は海峡を幾つか自分でも持っている国であります。それで海洋法によって、たとえば十二海里に広がれば、日本の各種海峡というものが核保有艦船によって無害航行的な扱いをされる可能性もあると思います。これは重大問題であろうと思います。それについて、日本側が海洋法会議においていち早く意思表示を強力にしておくということは大事な問題であろう。そうでないと十二海里になりました、国際海峡としてどことどことどこが指定されてしまいました、そのとき核保有艦船が通ることを認めざるを得ませんでしたという段階から何かを考えるというのではおそいのではないか。少なくとも、海洋法会議のときにも核保有艦船通航問題をあわせて御審議をいただき、研究もしていただきたい、こういう要望をいたします。
  164. 有田喜一

    有田委員長 永末英一君。
  165. 永末英一

    ○永末委員 中東に関する外務大臣の御意向をただしておきたいと思います。  十二月十六日のある新聞資源に関する座談会で、外務大臣は、資源ナショナリズムというのはとことん考えてみると結局価格の問題になってしまうのではないかという御意見を述べられました。中東における油の問題もそのようにお考えですか。
  166. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういう面があるということを申したわけでございますけれども中東における油の問題というのは、たいへんに長くなってはいけませんので簡単に申し上げますが、やはり彼らの気持ちでは長いこと圧迫をされ、不当に扱われてきた、それに対して資源ナショナリズム、そういう動き、その面が根本になっておりますことば見のがせないと思います。
  167. 永末英一

    ○永末委員 いまおっしゃったのは、いわゆる植民地的な扱いを受けてきた後発国の人々の気持ちが、いわば先発国に対して持っておるそういう感情をおとらえになったようでございますが、私、伺いたいのは、油の価格の問題というのは具体的には、やはりこの前の中東戦争ではっきりと産油国側が油を武器として使うという政策をとったことによって、きわめて明らかに出てきた問題だ。その意味合いで、これからわれわれが油のことを考える場合に、あるいは油と関連して中東問題を考える場合には、単なる価格の問題ではなくて、その地域、中東地域におけるアラブ諸国、すなわち産油国とイスラエルとのきわめて政治的な問題にかかわり合いがある、こういうことで考えなくてはならぬのではないかと私は思いますが、あなたはどう考えておられますか。
  168. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのように考えております。
  169. 永末英一

    ○永末委員 これに関連いたしまして二、三伺っておきたいのでありますが、十一月にユネスコ総会の第十八セッションにおきまして、イスラエルがエルサレムにおいて宗教的ないしは考古学的に、いえば破壊をやっておるのだという非難決議がなされまして、それに関連して、イスラエルがこのヨーロッパ委員会から追放されたという事件がございました。日本はこの事件に対してどういう態度をとりましたか。
  170. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 いま永末委員の御指摘になりました点、実は二つこのユネスコ総会で扱われた議題に関係しておると思います。一つは、エルサレムの文化財保護に関する問題、それから第二は、ユネスコの地域活動のための地域にどの国が属するかという問題であろうかと思います。  いま言われました、ユネスコ活動からイスラエルが追放されたという報道がございましたけれども、これは第二の決議に関係する問題であろうかと思います。で、イスラエルが追放になったという表現で報道された向きがございますけれども、これは必ずしも正確ではございません。つまり、イスラエルは依然としてユネスコのメンバーでございますが、この第二の決議、つまり、ユネスコの地域活動のための地域の定義に関する問題に関連しまして、従来イスラエルは、アメリカ、カナダあるいは豪州、ニュージーランドという数カ国と一緒に、ユネスコの地域活動を行なう場合の特定の地域に属しておりませんでした。それを、今度の総会においてどの地域に属するかという問題が扱われましたときに、他の国はそれぞれ関係の地域に編入されましたが、イスラエルについてのみ欧州地域に所属するという提案が否決されたわけでございます。で、この表決におきまして日本は棄権いたしました。
  171. 永末英一

    ○永末委員 日本の棄権の理由はどういうことですか。
  172. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 ユネスコは、元来その機関設立の目的が文化的あるいは教育的、人間の価値に関係することを取り扱う機関でありますだけに、問題が政治的に取り扱われたり、あるいは政治問題を討議する場としては適当でないという考え方基本的にあるわけでございます。そういった観点から、この問題につきましては、わが国としては、やはり棄権するのが穏当であるということで、棄権いたしたわけでございます。
  173. 永末英一

    ○永末委員 イスラエルがヨーロッパ地域において活動すべきであるかどうかという点について、ユネスコには加盟したままであるけれども、そのヨーロッパ地域については反対なんだという票数が多かったので、いわばヨーロッパ地域における活動を認められなかった、こうでありますが、あなたのいまの解釈では、そのことが政治的な判断を要求せられたので棄権したんだということでありますが、イスラエル人は、われわれはアジアに属すると言っております。アジア委員会なら賛成しますか、棄権しますか。
  174. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 特定の国がどの地域に属するかという問題は、このユネスコの慣行におきましては、その当該国がどの地域に入りたいという希望に基づいて問題が取り扱われるわけでございます。その場合に、すでにその地域に属している国がこれを受け入れるか受け入れないかということが問題になろうかと思います。具体的に、イスラエルが欧州地域に入ろうという提案がありました場合に、その地域に属するヨーロッパの国の中においても意見が割れておったというのが事実でございます。
  175. 永末英一

    ○永末委員 これは総会の決議であったと思いますが、総会の決議なら、あなたがいまおっしゃったところでは、ヨーロッパ地域において活動するために、ヨーロッパ地域に属する国々の表決のごとき説明のように聞こえたのでありますが、総会であるならば、アラブ諸国も入っておるし、結果的にはアラブ諸国の表決によってヨーロッパ地域における活動、略称ヨーロッパ委員会への参加というものは認められなかった、こういうことじゃないのですか。日本も棄権している。日本も投票権はあったじゃないですか。
  176. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 この表決にあたりましては、いま先生御指摘のような点があったかと思います。実際問題として、アラブ諸国を中心とする反対票が非常に多かったということ、及びそれを受けまして、やはり欧州諸国の中にも若干政治的考慮を働かした国もあるのではないかという推測もできますが、いずれにしましても、この表決がきまりましたときの、特に否決されたときの、つまり反対票の中には、相当程度そういった政治的考慮が動いておったのじゃないか、つまり、それらの投票した国から見まして、そういう判断も一応できるのではないかというふうに考えております。
  177. 永末英一

    ○永末委員 少し急ぎますから簡潔にお答え願いたいのですが、ユネスコというのはもともと非政治的な目的を持っておるわけでありますから、政治問題にかかわるようなものになった場合には棄権だ、これが日本政府態度だといたしますと、同様な問題が国連機関でございますWHOやFAOで起こった場合には、日本政府はどうしますか。
  178. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 FAOは、御存じのように食糧と農業を担当する専門的技術的機関でございます。従来のFAOの活動ぶりを見ます限り、政治的な色彩の問題あるいはそういう取り上げ方はいままで一件もないというように了解しております。
  179. 永末英一

    ○永末委員 中国と台湾との関係において、われわれはそういう問題が起こったことを承知しておりますが、一件もありませんか。
  180. 鈴木文彦

    ○鈴木政府委員 いま御指摘の点は、新しい国があるいは加盟する、あるいはすでに加盟している国のステータスがどうであるかという関連の御質問かと思いますが、この場合には、国連総会でこれについての決定があった後に、これを国連の各関係機関、特に専門機関について、これに従うかどうかという問題は出てくるかと思いますが、専門機関自体において、そういった政治的な性格をまず最初に取り扱い、これを決定するという慣行にはなっておりません。
  181. 永末英一

    ○永末委員 ユネスコからその問題が出ているので私はお伺いしたのですが、事務手続を聞いているのじゃございませんので……。外務大臣、イスラエルという国家はあの地域で存在すべきものと日本政府はお考えですか。
  182. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国連決議二四二にもございますとおり、そのように考えております。
  183. 永末英一

    ○永末委員 十一月の十三日に、PLOの議長でございますアラファト氏が国連総会に出席をして演説をいたしました。日本政府はこの出席の場合に賛成をいたしましたが、どういう意向でPLO議長アラファト氏の総会出席に賛成をいたしましたか。
  184. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私どもといたしましては、PLOのいわゆる団結権というのでございましょうか、レジティメイトライトというものは認める、こういう考えでございますし、ことにあの場合、当該自分の問題が議題になったわけでございますから、それについてPLOの代表が、たとえ国家でなくとも意見を述べるということはしかるべきことである、こういう立場をとったわけでございます。
  185. 永末英一

    ○永末委員 PLOのほかにいろいろなパレスチナ人の政治的な意向を代表する団体がございますが、いまはPLOは国家ではないかもしれませんか、これか国家——領土かとうなっているか問題でございますけれども、国家というものを主張してきた場合には、日本政府は、国連総会にPLOの代表が出席することに賛成をした経過にかんがみ、承認をする用意はございますか。
  186. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その問題は、先般も国連で問題になりましたように、同時に、国連決議二四二号というのは、イスラエルの生存権というものについても、これを積極的に認める立場をとっておるわけでございますから、それが否定されるような形でPLOだけが認められるということは、私ども考え方あるいは国連考え方とも違うと思うのでございます。同時に、しかしそういう条件がいれられて、そうしてPLOのレジティメイトライトを認めるかということになれば、それは認めるということが私ども考えでございます。
  187. 永末英一

    ○永末委員 アラファト氏はあの演説の中で、イスラエルのベリー・エグジステンス、存在そのものをアニヒレイト、否認する、そういう意味合いの演説をいたしたと伝えられておりますが、いまちょうど外務大臣が言われましたように、あなたはPLOにもそういうレジティマシーを認める、イスラエルの存続、存在も認める、二つ共存を認めておいでのようでございますが、アラファト氏は、イスラエルの存在そのものを認めない、具体的にはヨルダン川から以西の地にアラブ人もイスラエル人、ユダヤ人も混在した独立主権国家をつくろう、こういうことでございまして、その言い分はお認めになるのですか。
  188. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはそんたくいたしますと、アラファト氏がただいま御指摘になりましたいろいろなグループの中で立っておる位置、立場というものも、アラファト氏自身は穏健派に属すると思いますけれども、内部にいろいろ事情があろうということも頭に置いておかなければなりませんし、やがてどういった形でか、ジュネーブでございますか、どこかで交渉することになりますから、そういうこともおそらくアラファト氏は考えながらいろいろな発言をしておるであろう、そういうことも考えておかなければなりませんので、その辺の読みの問題になると思うのでございます。
  189. 永末英一

    ○永末委員 ヨルダン川西岸の地、前の戦争のとき以来イスラエルが占領いたしておるといわれておる土地でございますが、これらの土地の上に日本政府はどういう政権ができることを望んでおられるのですか。
  190. 中村輝彦

    中村(輝)政府委員 中東問題の核心の一つは、パレスチナ人の将来をどうするかということで、まさに先生いま御指摘になりましたヨルダン川西岸の地域がそれにからんでくるわけでございますけれども、これをどう扱うべきかということにつきましては、アラブ諸国の間にもいろいろ意見があるようでございますし、また、パレスチナ人自身の間にもいろいろ意見があるようでございますし、私どもといたしましては、そういう関係者がイスラエルも含めまして満足のいくような案が出れば、それで差しつかえないわけでございまして、私ども立場といたしましては、そういう当事者の意見を差しおきまして、こうすべきであるとか、ああすべきであるとかと言う立場にはない、そういうふうに考えております。
  191. 永末英一

    ○永末委員 先ほど当初に、中東の油の問題は、価格だけの問題でなくて、きわめて政治的なからみ合いの上で上がってくる問題であることについて、外務大臣は賛成されたと思いますが、だといたしますと、われわれと産油国との関係というのは、いわゆる自由市場の価格だけの関係ではない。他の消費国、たとえばアメリカ、イギリス、フランス、ソ連——ソ連とアメリカは完全な消費国ではございませんけれども、それがアラブ産油国とのかかわり合いはきわめて政治的であり、また軍事的であります。われわれは政治的であるといっても軍事的であり得ないのでありますから、一体どういう意味合いで政治的に関与しようと日本政府はしておられるのか、お考えを伺わせていただきたい。
  192. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ちょっと最後の部分のお尋ねを正確に受け取っておりますかどうか、われわれとしては、冒頭に申しましたように、彼らが長いこと抑圧されてきたと言っておること、そのことを、表現はともかくといたしまして、そういう気持ちであるということには理解を持たなければならないと思いますし、したがって、彼らがよくなってほしい、有限な油がなくなる前に、生存し得る国家にしておきたいという気持ちはよくわかるわけでございますから、それに向かってわれわれとして、軍事的なことは何もできませんけれども、技術的な援助をするとか経済的な援助をするとか、そういうことをいたさなければならないと思いますし、何よりもそういうことを通じて中東和平がともかくもたらされて、あそこから戦火が去るということについて、外交面での努力もいたさなければならない、こういうふうに考えるわけです。
  193. 永末英一

    ○永末委員 きょうは総論でございますから、これで終わります。
  194. 有田喜一

    有田委員長 この際申し上げます。  本委員会に付託になりました請願は四件であります。各請願の取り扱いについては、理事会において協議いたしましたが、委員会での採否の決定は保留することになりましたので、さよう御了承願います。  なお、本委員会に参考のため送付されました陳情書は六件であります。念のため御報告いたします。  本日は、これにて散会いたします。   午後零時四十七分散会