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1974-09-09 第73回国会 参議院 法務委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年九月九日(月曜日)    午前十時二十一分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     理 事                 棚辺 四郎君                 佐々木静子君                 白木義一郎君     委 員                 中村 禎二君                 山本茂一郎君                 山内 一郎君                 松永 忠二君                 矢田部 理君                 橋本  敦君                 下村  泰君    事務局側        常任委員会専門        員        二見 次夫君    説明員        警察庁刑事局長  田村 宣明君        警察庁警備局長  山本 鎮彦君        法務政務次官   高橋 邦雄君        法務大臣官房長  香川 保一君        法務大臣官房審        議官       鈴木 義男君        法務省民事局参        事官       加藤 一昶君        法務省刑事局総        務課長      筧  榮一君        法務省刑事局公        安課長      俵谷 利幸君        法務省入国管理        局次長      竹村 照雄君        公安調査庁次長  渡邊 次郎君        外務省アジア局        次長       中江 要介君        外務省条約局長  松永 信雄君        大蔵省証券局企        業財務課長    小幡 俊介君        通商産業大臣官        房参事官     下河辺 孝君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (朴大統領そ撃事件に関する件)  (刑法改正に関する件)  (商法に関する件)  (丸の内ビル街爆破事件に関する件)     —————————————   〔理事白木義一郎委員長席に着く〕
  2. 白木義一郎

    理事白木義一郎君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  この際、委員長から政府側に対し一言注意を喚起いたします。  当委員会は、検察及び裁判運営等に関する調査の一環として、当面する諸問題について先般来より委員会を開いて調査を進めております。しかるに、本日の委員会政府側の十分なる出席を得られなかったことは、まことに遺憾であります。政府側においては、今後本委員会審議のため、委員各位の要求する大臣等出席については十分配慮するよう、委員長から強く要求いたします。
  3. 香川保一

    説明員香川保一君) 御指摘の問題は、本日の委員会安原刑事局長が外遊中のために出席できませんことをおしかり受けていることだと思いますが、私どもの手落ちでさような結果になりましたことはまことに申しわけない、以後このようなことのないように十分注意いたしたいと考えております。     —————————————
  4. 白木義一郎

    理事白木義一郎君) 検察及び裁判運営等に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 矢田部理

    矢田部理君 私は、冒頭に刑法改正問題についてお尋ねをしたいと思っていたのでありますが、その責任者の一人である刑事局長出席されない。いま注意がありましたけれども、たいへん私も遺憾だと考えております。  そこで、法務政務次官に最初にお尋ねをしたいと思うのでありますが、五月二十九日、法制審議会から法務大臣に対し改正刑法草案答申されました。これを受けて大臣は五月三十日の当委員会で、一年をめど成案を得たい、そういう意味答弁をしておりますけれども答申を受けてから三カ月を経た今日、成案を得るためにどんな作業をしてきたのか、今後の予定と段取りなどについてまず第一にお伺いをしたいと思います。
  6. 高橋邦雄

    説明員高橋邦雄君) 刑法全面改正につきましては、御承知のとおり五月二十九日に法制審議会から、刑法を全面的に改正を加える必要があるということ、また、改正の要綱は同審議会の作成した改正刑法草案によるという答申があったことは御案内のとおりでございます。そこで政府では、法制審議会答申を尊重いたしまして、これに対処いたしたい考えでおるのでございます。何ぶんにも刑法全面改正という問題でありまして、一国の刑政基本法でもありますし、国民の生活にも深い関係を持っておるものでありますので、慎重に作業を進めなければならないというふうに考えておるのであります。  なお、この改正草案につきまして、日本弁護士会その他の団体から批判的な意見ども出されておるわけでございまして、こうした意見ども十分耳を傾けまして、各方面意見を十分に考慮しながら、いまの時代に適応した新しい刑法というものをすみやかに実現をいたしたいということで、いま努力をいたしておるわけでございます。  具体的にいつごろ、どうということはまだ決定いたしていないわけでございますけれども政府案を作成するにあたりましては、できるだけひとつ内容につきましても十分な検討を加えたいと思いますし、なお、これに伴って刑事訴訟法でありますとか、あるいは監獄法とか、関連の法案の改正等につきましても検討しなければならないわけでございます。したがいまして、成案を得るためにはなおかなりの準備期間が要るのではないかというふうに思っておるのでございますが、できるだけ国民の皆さまの理解を得ながら、またいろいろな御意見を聞きながら、ひとつ慎重に準備を進めたい、こういうことで現在おるわけでございます。
  7. 矢田部理

    矢田部理君 法務大臣の述べた一年をめどにという、その時期的な設定は、そうしますと大幅におくれる見込みですか。
  8. 高橋邦雄

    説明員高橋邦雄君) 法務大臣が一年ということをおっしゃったのでありますけれども、なるべく早く、できるだけ一年くらいということを目標にと、こういう意味でおっしゃられたのではないかと思いますが、私どももできるだけ早くいい成案を得ますように努力をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  9. 矢田部理

    矢田部理君 私が質問しておりますのは、できるだけ早くとか、そういうようなことではなしに、一年をめどにということで、すでに三ヵ月の期間を経たわけですね。その現状から考えてみて、一年をめどにというのはさらに先へ延びるのかと、こう聞いているのです。
  10. 高橋邦雄

    説明員高橋邦雄君) なるべく早くということでございますが、一年以上をめどにというつもりでやりたいと思いますけれども、なかなか一年のうちにというわけにいくか、どうもちょっと私も自信がございませんが、できるだけひとつ早く成案を得るように努力をいたしたいというふうに考えます。
  11. 矢田部理

    矢田部理君 そこで次の質問として、法制審議会答申性格についてお尋ねをしたいと思うのですが、従前、佐々木委員などの質問に答えて、法制審議会答申はあくまで参考意見であるというふうに述べておられますけれども、そのとおりに伺ってよろしゅうございますか。
  12. 高橋邦雄

    説明員高橋邦雄君) 法制審議会意見は十分これは尊重しなければならないと思っておりますが、あるいは政府のそのまま成案になるというふうには考えていないわけでございまして、先ほども申しましたように、いろんな方面からいろんな意見があるわけでございますから、そうした意見には十分ひとつ耳を傾けて検討いたしたい、かように考えておるわけでございます。
  13. 矢田部理

    矢田部理君 私の問いに正確に答えてほしいのですが、尊重するかしないかを聞いておるのではなくて、この答申性格参考意見だと考えてよろしいかという質問です。
  14. 高橋邦雄

    説明員高橋邦雄君) あの法制審議会答申案に従わなければならない、こういうふうにはなっていないわけでございます。ですから、そういう意味参考と言えば言えるかと思いますけれども、長い期間にわたりまして各権威者が苦心をされてつくられた草案でありますから、改正草案は十分尊重しなければならない、かように考えるわけでございます。
  15. 矢田部理

    矢田部理君 どうも答えがはっきりしないのでありますけれども、いずれにいたしましても、今後各界各層意見を聞いて十分に再検討するということは、いまおっしゃられたとおりでございますね。  そこで、各界意見でありますけれども、すでに草案に対しては日本弁護士連合会、あるいは刑法研究会、さらには日本精神神経学会新聞協会などから強い反対があるのは御存じだと思いますけれども、全体としては草案に対する賛成意見よりも反対意見が多いということは御承知でしょうか。
  16. 高橋邦雄

    説明員高橋邦雄君) いまお話しのように弁護士会、それから刑法学者の一部、日本精神神経学会日本新聞協会日本雑誌協会等々から批判的な意見が寄せられておることは、いまお話しのとおりでございます。しかし、これも私の承知しておるところでは、改正草案全体というよりは、個々条文についていろいろ意見があるのではないかというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、私どもはこの草案をできるだけひとつ皆さんによく理解していただく、そうした努力をいたし、そうした理解の上に立ちまして、いろんな批判その他が出てくるわけでございますが、そうしたことにつきましては十分ひとつ耳を傾けて慎重に検討いたしたい、こういう態度でおるのでございます。
  17. 矢田部理

    矢田部理君 どうも同じ質問を二度繰り返さなければならぬのですけれども、私が伺っておるのは、改正刑法草案に対する賛成意見よりも反対意見のほうが多いということを御承知かと伺っている。
  18. 高橋邦雄

    説明員高橋邦雄君) なかなか賛成反対意見がどっちが多いかということは、一がいに私は言えないのではないかと思いますが、意見として団体の名において表明されましたその団体の数は、確かにいまお話があり、また先ほど私が述べましたように、いろんな団体から批判的な意見が寄せられている、こういうことはあるのでございます。
  19. 矢田部理

    矢田部理君 これはあとで質問をする予定でありますけれども、たとえばつい最近、法務省刑事局の出そうとしている「刑法改正をどう考えるか」というPR資料を見ましても、「新聞雑誌あるいはテレビなどにあらわれたところから見る限り、賛成意見より反対意見の方が多いようです。」と、法務省自身そう認めているのじゃありませんか。
  20. 高橋邦雄

    説明員高橋邦雄君) これは「刑法改正をどう考えるか」、こういう冊子をつくりましたので差し上げる予定でございますが、ここのはしがきにもありますように、改正草案につきましては「各方面から賛否の意見が数多く表明され」ということが書いてございますし、いままで各方面からさまざまな意見が出されておるわけでありますが、「新聞雑誌あるいはテレビなどにあらわれたところから見る限り、賛成意見より反対意見の方が多いようです。」と、こういうことが書いてあるわけでございます。これにありますように、新聞雑誌その他にそういう反対意見のほうがいまたくさん出ておる、こういうことをこれは申し述べたものかというふうに私は理解をしておるのでございます。
  21. 矢田部理

    矢田部理君 そこで問題は、賛成意見より反対意見のほうが多いということを法務省自身認めておられるわけでありますが、その反対意見を今後どういうふうな機会、どういうような方法で聞こうとしておられるか、その点をお伺いいたします。
  22. 鈴木義男

    説明員鈴木義男君) 現在までにも、この法制審議会改正刑法草案につきましてはいろいろな御意見が出ておるわけでございまして、先ほど指摘もございましたように、従来の新聞雑誌あるいはテレビ等意見を出された方々あるいは団体等の数の上から見ますと、反対意見あるいは批判的な意見というほうが多いようでございまして、今後もおそらくさまざまな形でいろいろな御意見が出るであろうというふうに考えております。  この反対あるいは批判の御意見を聞く具体的な方法については、さらに詰めて考えたいというふうに思っておりますけれども、少なくとも今後各言論機関言論機関と申しますか雑誌新聞テレビ等では、さらにいままでよりも多くの意見が出てくるのではなかろうかというふうに考えますので、第一には、そういうあらわれた意見を十分私どものほうでそしゃくいたしまして、この法制審議会改正刑法草案をどう扱うかということについての参考資料にさせていただきたいと思っております。こちらから積極的にどういう方法意見を聞くかという点については、まだ具体的なことを考えておりませんけれども、こういう刑法改正の問題について御研究をなさるような団体があれば、そこへ出向いて御説明するとともに御意見を伺うということも考えておりますし、また場合によっては、法務省の主催と申しますか、法務省から一つ刑法問題をディスカッションしていただくための機会というようなものも考えたいというふうに思っております。
  23. 矢田部理

    矢田部理君 次に、先ほど申し上げた「刑法改正をどう考えるか」という表題PR資料についてお尋ねをしたいと思います。  この資料は、もともと「刑法はどう変るのか」という表題準備されたようでありますけれども、その後表題自身は変わったようですが、内容はほぼ前と同じように思われます。この資料草案内容紹介——その紹介にも非常に問題があるわけでありますが——にととまらず、反対意見批判に対して、「法制審議会ではどういう考え方がとられたかを明らかに」すると注意深く断わり書きはしておりますけれども反論反駁を加えて、しかも法務省刑事局長名義でこれを発行するということになりますと、事実上法務省考え方草案と同様であるという印象を受けざるを得ないわけです。  しかも、草案に対する疑問や批判に対してはその結論だけを紹介をし、反対の論拠や批判理由等についてはほとんど触れておりません。これでは法務省各界各層意見を謙虚に聞いて再検討するといっても、信用ができないことになりはしませんか。むしろこのような資料を出すこと自体、その紹介のしかたも含めて、批判意見を聞き、尊重し再検討するということと矛盾をしているように思われますが、いかがでしょう。
  24. 鈴木義男

    説明員鈴木義男君) この資料内容につきまして、あるいはまたいろいろこの資料そのものについて御意見が出る可能性もあるとは思いますけれども、私どものほうでこの資料をまとめました趣旨は、この資料の「はじめに」という、はしがきに当たる部分に書いておきましたように、法制審議会草案についてその内容説明し、法制審議会はこういう理由でこういうことを考えたのであるということを御説明することによりまして、今後この刑法改正問題について十分な御意見が各方面から出てくるということを期待してつくったものでございます。
  25. 矢田部理

    矢田部理君 いまの答弁は不正確だと思うのです。このPR資料答申内容紹介だけではないでしょう。こういう反対意見があるけれども、その反対意見理由がない、こういう理由で当たらないという書き方をほとんど大部分についてしているのではありませんか。
  26. 鈴木義男

    説明員鈴木義男君) 草案に対する批判について触れております点もかなりございますが、この資料批判的あるいは反対の御意見を取り上げております場合には、それは批判が間違っておって草案が正しいのであるという考え方法務省がそう考えておるということであれしておるわけではございませんで、この改正草案法制審議会でどういう考え方でできておるのか、御批判の中にはもちろんいろいろな御批判があるわけでございまして、法制審議会の案にも相当な理由があるし、反対意見にも理由があるという場合ももちろんございますので、そういう場合については全く触れておるわけではございませんで、法制審議会内容について、初めにはしがきのところにも出ておりますように、かなり内容を間違って理解した上での御発言と思われるようなものについて、これはそういう趣旨でできておるのではないということだけを説明しておるつもりでございます。
  27. 矢田部理

    矢田部理君 私は内容を詳細に検討させていただいたのでありますけれども、いまの答弁とはこの内容はだいぶ違っております。重要な事項について、大きな反対があると思われる部分を一々項目ことにつくって、その批判に対して一つ一つ反論を加えております。そういう反対意見を、ある意味では法務省の名において封ずるような印象を随所で受けるような体裁になっております。これはどうも私ども理解できない、納得できないのでありますので、再度答弁を求めたいと思います。
  28. 鈴木義男

    説明員鈴木義男君) 先ほども申し上げましたように、この資料におきましては法制審議会考え方を、法制審議会改正草案ができた理由を明らかにいたしますとともに、それに対してやや何と申しますか、必ずしも正確でない理解のもとに批判がなされております部分につきましては、そういう批判について、法制審議会ではこういうふうになっておるので、その批判には根拠がないと申しますか、案に対する批判として必ずしも適当でないということは書いてございますけれども、いろいろな個々の問題につきまして、たとえば問題になっておりますような個々条文についての御批判をあれするについては、これは反対意見も、法制審議会の案だけが唯一の案であってその他の反対はすべて理由がないということではなくて、反対意見の中で案についての理解が十分でないものについて指摘するという考え方でつくったものでございます。
  29. 矢田部理

    矢田部理君 それではこう伺いましょう。反対意見に対する反論、論駁を加えておりますが、法制審議会は、反対意見批判に対する反論まで意思統一をされておったのですか。
  30. 鈴木義男

    説明員鈴木義男君) 法制審議会はそういうことはいたしておりません。
  31. 矢田部理

    矢田部理君 そういたしますと、反対意見批判に対する反論が相当書かれているわけでありますけれども、「はじめに」という部分では、その反論も「法制審議会ではどういう考え方がとられたか」という断わりをつけてやっておられるわけですね。法制審議会がそこまで意思統一をしていないとすれば、その点でも行き過ぎじゃありませんか。
  32. 鈴木義男

    説明員鈴木義男君) 法制審議会による反対意見に対する反論というものではございませんで、これは私どものほうで、法制審議会草案というものの趣旨あるいは解釈というものはこういうふうなものという理解をいたしました上で、それについての意見について、それに対する批判あるいは反対意見のうち、この法制審議会審議経過等から考えられる、趣旨に反する、趣旨理解が十分でないというふうに思われるものについて書いたものでございます。
  33. 矢田部理

    矢田部理君 そうしますと、批判反対意見に対する反論は、法制審議会のものではなしに、法務省考え方法務省からの反論というふうに伺ってよろしゅうございますか。
  34. 鈴木義男

    説明員鈴木義男君) この批判について、ここで反批判と申しますか、再批判あるいは反論をしております部分は、この法制審議会の案を前提といたしまして、この批判法制審議会の案の趣旨誤解というふうに考えられます場合に——考えられますと申しますのは、私ども法務省刑事局の目から見まして批判が十分な根拠がないという場合には、それを指摘する、すなわち法務省刑事局指摘しておるわけでございます。
  35. 矢田部理

    矢田部理君 法務省として、答申を受け、それは参考意見だと説明をし、各界からさらに多くの意見を聞いて再検討するとも述べておられる法務省が、批判意見に対する反論までPR資料の中で出すというのは、法務省先ほどから述べておられる態度と明らかに矛盾するものじゃありませんか。私たちはそういうまぎらわしい文書、まだ配布をされておらないようでありますので、配布することを差しとめるように強く要請をしておきたいと思います。  そこで関連した質問といたしまして、この法務省PR資料に対し、八月二十日に読売新聞社説を出しました。その社説では、法務省は「草案通り刑法改正しようとしている」、そういう指摘をした上で、いま申し上げたPR資料をその一つの大きな理由にあげているわけでありますが、法務省刑事局はこの社説に対して直ちに抗議の申し入れをしました。刑事局長名義社説抗議をする、このこと自体各界各層意見を謙虚に聞くという姿勢がないのではないかというふうに私たちは考えます。どういうことなんでしょうか。
  36. 鈴木義男

    説明員鈴木義男君) 法務省刑法改正に対する態度について、八月二十日の読売新聞社説におきまして、法務省は「法制審議会答申した改正草案通り刑法改正しようとしている」、こういう点についての批判部分があるわけでございますが、先ほど来あるいはこの国会でもしばしば申し上げておりますように、法務省といたしましては、法制審議会の案を尊重はしながらも、さらに広い角度から各方面の御意見を聞いてこの刑法改正の問題を扱いたいというふうに考えております。そういうことを読売新聞をも含めまして各新聞等にも申しておりますし、国会等でもそういう答弁をしておるわけでございまして、そういう考え方に変わりはございませんので、この社説にあらわれましたように一方的に、法制審議会の案をそのまま案どおり刑法改正しようとしているというふうにはっきりおっしゃっていらっしゃる場合には、これはやはり事実に対する誤解と申しますか、そういうものに基づきますので、私どもといたしましては読売新聞社に対して抗議をするということにしたわけでございます。
  37. 矢田部理

    矢田部理君 いまのいろんな応答の中からも明らかになったと思いますし、それからこのPR資料を読んでみて、客観的に見れば読売新聞社説指摘したとおりだと私は思うのです。いずれにいたしましても、そういうことに対してマスコミから意見が出された場合に、どうも謙虚に聞くという姿勢ではなしに、刑事局長名でものものしい抗議を申し入れるという態度、これでは、これから各界各層意見を聞くといっても口先だけのことではないかという疑問を抱かざるを得ないわけです。その姿勢を私は問題にしている。どうなんでしょうか。
  38. 鈴木義男

    説明員鈴木義男君) 私どもといたしましては、結局この法制審議会の案なりあるいは法務省態度なりについていろいろ御批判が出る、あるいは御意見が出るということを、先ほどから繰り返しておりますように期待し、そういう御意見をも十分考慮しながら刑法改正問題を扱っていきたいというふうに考えておるわけでございまして、そういう際に、この読売新聞社説はかなり一方的に法務省はこういうふうであるというふうにきめつけられておりますので、そういう観点からではなしにこの刑法改正の問題を扱ってほしいということで抗議をしたわけでございます。
  39. 矢田部理

    矢田部理君 繰り返しはやめたいと思いますけれども、私どもが見てもこのPR資料は、言ってみれば法制審広報担当局みたいな役割り法務省刑事局が果たそうとしているのじゃないかという感じを強くしております。特にこの小冊子はしがきの「はじめに」というところでも、「批判反対意見のうちには、改正草案に対する誤解に基づくと思われるものも少なくありませんし、自分の立場だけが絶対に正しいという前提に立った一方的な主張も見受けられます。」というような記載まであるわけです。全体として考えてみますと、どうも法制審答申に決定的な重きを置いて、各界各層意見に対しては非常に強い拒絶反応を持っているのじゃないでしょうか、というふうに思われますので、その点、このPR資料配布を中止をしてほしい。そのことを再度求め、同時に法務省にも、これまでとってきた態度を反省をしてほしいということを強く申し上げて、関連質問を終わりたいと思います。  それから、法制審議会議事録の公開の問題についてお伺いをしたいと思います。  当委員会は、かねてから法制審議会あるいはそのもとにある刑事法特別部会議事録を公表するように求めてまいりました。これに対して法務省は、従来、委員の発言の自由を確保するためということで、私はこの理由自身も納得できないのでありますけれども、これを拒み、かわって審議会の経過の要約、説明書的なものを出してきましたけれども、これでは不十分ですので、全議事録を公表すべきであると考えます。特に、法務省のこれまで述べてきた委員の自由な発言の確保という理由は、すでに答申が出された以上消滅しているわけでありますから、議事録全部を当委員会に提出するよう求めたいと思います。
  40. 香川保一

    説明員香川保一君) 法制審議会議事録、これは総会のみならず、部分、小委員会議事録は一切公開いたしておりませんが、御納得いただけないようですが、その理由は、当該問題だけではなくて、法制審議会は今後もいろいろのことを諮問に応じて審議していただく場でございますので、その審議の場における各委員の発言が一般に公表されるということになりますれば、ややともすれば審議会における御意見の開陳が十分なされないおそれもある、かような理由によっておるわけでありまして、一般的に政府の諮問機関におきましては、そのような考え方法制審議会のみならず議事録は公開いたしていないわけであります。この姿勢は、やはり今後も法務省としては法制審議会について貫いていきたいと考えておりますので、議事録の公表は差し控えたいと、かように考えております。
  41. 矢田部理

    矢田部理君 非常に納得できないのですけれども、一方では先ほどPR資料のように、法制審考え方はこうだということで、法務省考え方も織り込めてPR資料を出そうとしている。他方では国民批判を十分に受け入れ再検討すると言いながら、どういう審議経過、どういう意見のもとに草案が出てきたのか、国民はこれに対しては非常に重要な関心を示しているわけです。現にそのことを法曹界などでは非常に強く要望をしておるわけでありますが、それに対して法務省は従来、委員の発言の自由を確保する——私はその議事録を公開したから発言の自由がそこなわれる、確保できないという考え方も、それ自体非常に問題だと思うのでありますけれども、少なくとも草案として固まったわけであります。それについていまだに公開、公表できないというのはどうしても私には理解ができない。再度提出を求めたいと思います。
  42. 香川保一

    説明員香川保一君) 今回の刑法改正に関する法制審議会答申それ自体をいろいろ御批判いただく場合には、審議会の場においてどなたがどういう意見を言われたということでなしに、こういう意見もあり、こういう賛成意見、こういう反対意見が開陳されたということをお示しするだけで私どもは十分じゃないかと思っているわけであります。なるほど法制審議会の総会、部会、小委員会を通じまして、選任されておられる委員先生方は、あるいはその発言内容が公開されても、事後におけるいろいろの今後の問題の審議における発言の自由、十分な発言が阻害されるというふうなことはあるいは主観的にはないかもしれませんけれども法務省といたしましては、やはりいろいろの発言内容が個人と結びついて外に出るということになれば、万一でもその今後における意見の開陳の自由が阻害されるというおそれがあれば、やはり公開しない。公開を求められるそれぞれの御趣旨、御需要に応じて十分事足りる形で、こういう審議内容でございますということを外に発表するだけで十分じゃないか、かように考えておるわけでございます。
  43. 矢田部理

    矢田部理君 いまの説明に私は納得しませんので、今後委員会としてひとつ御検討いただきたいというふうに考えております。時間の関係もありますので、次の質問に移ります。  第二の質問として、九月七日控訴棄却の判決があった早川、太刀川両氏の問題についてお尋ねをしたいと思います。  外務省は、九月七日の控訴棄却の判決で再び実刑二十年という内容の判決が下されたわけでありますが、この事態をどう受けとめ、どう考えているのか、まずその点をお聞きしたいと思います。
  44. 中江要介

    説明員(中江要介君) このたびの控訴審の判決については、第一審のときと同様に、われわれの感じとしては非常にきびしい決定であったと、こういうふうに受けとめております。
  45. 矢田部理

    矢田部理君 大平外相は五月二十七日ですが、この両氏が起訴されたときに、事件の処理については両国民の納得のいくものであることを求める、公正な裁判と人道的な扱いを要請すると述べてきましたけれども、一、二審を通じてとられた措置について、判決だけではなく、韓国側の措置については外相の要請にこたえたものというふうには全く考えられませんけれども、この点どう思いますか。
  46. 中江要介

    説明員(中江要介君) 大平前外務大臣が御指摘になりました裁判の公正という点と、人道的な扱いがあったかどうかという点につきましては、まず裁判自身に関しますと、非常に厳格に申しますと、最後まで結審されるまでは、これは一義的には韓国の司法権の行使ということでございますので批判がましいことは言えない立場にありますけれども印象として非常にきびしい判決になったということは先ほども申し上げたとおりでございます。  人道的な扱いにつきましては、当初から弁護人の選任あるいは家族との面会、弁護人がきまりましてからは弁護人との面会、通訳のあっせんその他、いろいろの面でできる限りのことは韓国側と折衝してまいっておりますが、そのすべてが先生がおっしゃいますように日本側の希望どおりに満たされているかというと、これは残念ながら満たされていない面がかなりあるということは、だれも否定できないところだろうと思うのです。ただ、これを国際法上の問題として、相手側の法的責任を追及し得るような意味での重大な非人道的な扱いがあったかどうかという点については、現在までのところ、私どもはそういう事態はないというふうに認識しております。
  47. 矢田部理

    矢田部理君 控訴審の裁判の状況を見ておりますと、弁護人に対し控訴理由を述べさせただけで、証人申請は全面的に却下、本人の意見陳述の機会も認めない。言ってみれば、事実審理を全く行なわないで非常に過酷な判決を再度にわたって下した。これはもう裁判を知る者の常識からいえば裁判の名に値しないものだ、暗黒裁判であり、文字どおりファッショ裁判だと私たちは考えるわけですけれども、これについて外務省はどう考えられますか。
  48. 中江要介

    説明員(中江要介君) 現在までのところ外務省としてこの裁判をどう見ているかという点は、先ほどもちょっと申し上げましたように、第一義的には韓国の法律に従って現在裁判が行なわれておりますので、その間は、日本政府としては公式チャネルからはそれをどうこうということは、やはり差し控えるのが一般の国際の常識ではないかという感じをしております。しかし同時に、この二人の日本人が問われている罪の内容、またその根拠になっております法律その他について、日本で通常考えられているような感覚といいますか、認識からは、必ずしもそう一〇〇%納得できるというものではない点もあるように思われるものですから、政府としていままでの段階でできることというのは、そういった外国人による、非常に緊急な事態に出された法令にかかわる事件であるだけに、そこのところは、韓国で韓国人が犯した場合とは違った面があり得るではないかということも言及しながら、韓国政府としてはやはり最終的な本件の司法手続が終わった段階では適切な配慮をしていただけるものということを期待するという意味では、再三再四先方に申し入れている、こういうことでございます。
  49. 矢田部理

    矢田部理君 それではさらに具体的に伺いたいと思いますが、被告人などの人権を守る上に弁護人の選任とか活動というものは非常に重要だというふうに考えますけれども、この早川、太刀川両氏の場合に弁護人の活動はどの程度保障されてきたのか。たとえば被告人との接見なども自由にできたのかどうか。さらには、弁護人と被告人の接見というのは官憲の立ち会いなしに行なうというのがこれまた常識でありますけれども、そういうことはどうなっておったのか。弁護人が希望したときには接見ができたのかどうか。さらには接見の回数などはどうなっているのか。その点をひとつお尋ねしておきます。
  50. 中江要介

    説明員(中江要介君) 弁護人との面会の回数、その態様については、弁護人側の希望がすべていれられているかというと、そうではないように聞いております。これは弁護人の弁護活動ということでございますので、日本政府が直接弁護の立場で行動することはもちろんできないわけでございますけれども、被告が日本人でありますだけに、その弁護が間違いなく行なわれているかどうかということは、これは関心を持って見守る義務があるので見守ってきておるところでは、希望したときに希望しただけの十分な会見というか、面会が許されているかというと、これは十分でなかったと、こういうふうに思っております。  その弁護の状況その辺は、韓国側の説明によれば、韓国の軍法会議の一般の慣習に従っておって、これが日本人であるから、あるいは韓国人であるからということで差別をしてない。これはどうもそのとおりだと思うのですけれども、ただそれが、われわれの期待と比べますと、必ずしも期待どおりではなかったと、こういうふうに受け取っております。
  51. 矢田部理

    矢田部理君 もう一つ質問しておったのは、弁護人が被告人と面会をするときに、あるいは打ち合わせをするときに、官憲の立ち会いなしでできたのかどうか、その点いかがですか。
  52. 中江要介

    説明員(中江要介君) 私どもに来ております報告によれば、官憲といいますか、付き添い人といいますか、向こう側の人間がその席にいたようでございますから、逆にいいますと、弁護人と被告とが二人だけで話をしたという場面はなかったようでございます。その点につきましても向こうでは、これは韓国の手続規則といいますか、慣例といいますか、つまり韓国の一般の扱いに従っているものである、こういう説明をしております。
  53. 矢田部理

    矢田部理君 そうしますと、接見等の問題についても、早川、太刀川氏が自由に弁護人と相談できる、意見が述べられるということでは必ずしもなかったということになりましょうか。  そこで、さらに大使館自身、日本の大使館が早川、太刀川氏と接触することはできたのでしょうか。
  54. 中江要介

    説明員(中江要介君) 館員と被告との面会につきましては、事件が発生しました当初、四月十二日に一度館員と両名との面会が実現したということはございますが、その後は十四回にわたって面会の申し入れをしておりますけれども、現在までのところは館員との面会は実現しておらないというのが実情でございます。
  55. 矢田部理

    矢田部理君 両氏に対する差し入れ、たとえば食物、衣類、日用品、書物などの差し入れの関係はどうなっていますか。
  56. 中江要介

    説明員(中江要介君) 差し入れに関しましては、私どもの聞き及んでいるところでは、書物、食物その他肌着、そういうものを含めまして、自由にといいますか、希望どおりに行なわれているというふうに聞いております。
  57. 矢田部理

    矢田部理君 そこで、これからの問題でありますが、非常に重刑が再度にわたって下された。これからの法律的な道としては、例の大法院に対する上告ということが軍法会議法九条によってできることになっているようでありますけれども、したがって舞台は大法院に移るというふうに考えられるわけであります。この大法院というのは日本の最高裁に当たるんだというふうに私には思われますが、したがって大法院自身は本来、通常事件の処理に当たる最終審というふうに考えます。  そこで、早川、太刀川両氏が上告をして、大法院に事件が係属するということになれば、取り扱いは一般刑事事件と同じものになるのか。たとえば先ほど申し上げた接見の問題、あるいは保釈の問題等も含めて、一般刑事事件の取り扱いと同じようなものになるのかどうか。その点はあるいは法務省のほうが御存じかもしれませんので、どちらでもけっこうですから述べていただきたいと思います。
  58. 中江要介

    説明員(中江要介君) あるいは技術専門的な点について法務省のほうから御補足いただくことになるかもしれませんが、私ども承知しております限りでは、今回の控訴審の判決を踏まえて上告するかどうか、まだきまっておらないようでございますが、かりに上告されますと、これは最終審は、先生のおっしゃいますように大法院に上るわけでございます。この非常軍事裁判法廷から大法院に上がった場合と、通常の手続から大法院に上がった場合とに差があるかというと、それは差がないようでございますから、いわゆる大法院の扱いで、手続で進められると思いますが、ただ私どもの知る限りでは、法律規定上の問題としては、いままでの非常軍法会議の場合と今度の大法院に上がった場合とでは特に差がないというふうに承知しておりますので、実際にどうなるかということは別といたしまして、法律規定制度上は、これはいままでと同じようなことではなかろうか。特に家族などとの面会につきましては、いままでの軍法会議法によりましても、一般の刑事訴訟法によるということだけが書いてありまして、法令の定める範囲内でということだけになっておりますものですから、法律の規定制度上は特に違ったことはないというふうに認識しております。
  59. 矢田部理

    矢田部理君 そうしますと、通常の刑事事件の処理と同じように扱われる。一般刑事訴訟法が手続的には適用になるというふうに伺ってよろしいわけですね。
  60. 中江要介

    説明員(中江要介君) 軍法会議法によりますと、たとえば家族との面会につきましては、法令の定める範囲内で認める。この法令の定める範囲というのは、一般の刑事訴訟法であるということでございますので、刑事訴訟法の定める範囲内で認められるということがいままでの法制度であり、そのもとで行なわれてきた実態が、先ほど来私が御説明しているような形で実行は行なわれてきている、こういう認識を持っておるわけでございます。
  61. 矢田部理

    矢田部理君 そこで、その大法院における審理の状況ですけれども、これは最終審はどこでも法律審というふうにいわれている。事実審理はなかなかやらないというたてまえになっておるようでありますが、韓国の大法院の場合には法律審だけなのか。それとも一部事実審なども扱うのか。特に軍法会議関係から上がってきた事件等については、その取り扱いはどうなっているのか。その点をお聞きしたいと思います。
  62. 中江要介

    説明員(中江要介君) ちょっとその点、私専門的に研究したこともございませんし、いま知識がございませんので、もし法務省のほうで御研究になっておれば御説明いただいたらと思います。
  63. 筧榮一

    説明員(筧榮一君) 私どもも韓国の刑事手続につきましては必ずしも十分に把握いたしておりませんので、承知しております範囲内でお答え申し上げたいと思います。  韓国の刑事訴訟法三百八十三条によりますと、上告理由が列挙されております。主たるものは、憲法、法律、命令、規則の違反、それから大法院の判例違反、それから高等軍法会議の判例違反、判決後、刑の廃止、変更、赦免があるとき、再審事由あるとき、その他。ただいま申し上げました点から申し上げますと、やはりわが国と同じく法律審であるというふうに解せられるわけでございますが、なおそれに付加されまして、「重大な事実の誤認があって判決に影響をおよほすとき」、それから「刑の量定が不当であると認定すべき顕著な事由があるとき」という規定がございます。しかし、これは軍法会議の手続から上がった場合にどうなるかという点については十分承知しておりませんので、あるいはここに例外等があるかもしれませんけれども、知っております限りでは、いま申し上げたような点でございます。
  64. 矢田部理

    矢田部理君 そうしますと、単なる法律審というだけではなしに、重大な事実誤認とか量刑不当も一応審理をするたてまえになっているということですね。  そこで、大法院に係属をした場合に、たとえば日本弁護士連合会などは弁護団を送ろうじゃないかという準備がなされておりますし、あるいは関係の東京弁護士会などでは、本件は重大な人権問題なので調査団を派遣しよう、こういう用意もしておるようでありますけれども、外務省として、こういう準備なり用意が具体的に実現できるよう外交的な努力をする用意があるかどうか、考えがあるかどうか、その点を伺っておきたい。
  65. 中江要介

    説明員(中江要介君) ただいま御指摘のような弁護団の派遣あるいは事実調査団の派遣という問題は、これは扱いようによっては非常にデリケートな問題を含んでおりますので、いまここでどういうふうにすると最終的な立場はなかなか申し上げにくいのでございますけれども、私どもといたしましては、弁護の問題は、まず第一義的には韓国で主任弁護人として選任された二人の弁護人がまずその弁護の責めを果たしておられるわけでございますが、その弁護人の方の御判断で、さらにどういう弁護をすることが有効かというような考え方から、あるいは日本の弁護士会その他との協力あるいは意見交換その他を経まして、こういうことをしたいということに具体的な話が出てまいりまして、そのことについて韓国政府がどういう反応を示されるか、これは予見できないわけでございますが、いずれにいたしましても外務省としてできることというのは、御承知のようにこれは政府政府の間の問題として取り扱うわけでございますので、直接裁判に介入するという形でなしに、裁判の公正迅速な遂行のために役立つことならばできるだけそれに御協力していきたいという一般的な姿勢は、これは従来持ってきておるわけで、その範囲内で本件も具体化しましたときには検討をさせていただくことになろうかと、こういうふうに思っております。
  66. 矢田部理

    矢田部理君 この大法院というのは、本人の人権問題にとっては最終審なんですね。感じとしては非常にきびしい判決だったと外務省も言っておられるわけですから、それが再三にわたってそういうことにならないようにするために、どういう努力をするか。韓国との関係もありましょうけれども、問題は人権問題なんで、その人権が守られるように最大限の努力をする。単に判決の最終的な結論待ち、それから外交、外務省が動くんだというような将来の問題としてではなく、現実の問題としてこれはやっぱりとらえていく必要がありはしないか。そのためには、いま弁護士会などが各種の準備をしておるわけでありますので、外務省として最大限の努力を払ってほしいということを強く要望しておきたいと思います。  それから第三番目に、朴大統領夫妻の狙撃事件についてお伺いしておきたいと思います。  これはすでに各委員会等でも議論されてきたところでありますけれども、この狙撃事件について日本政府の責任論議がずっと重ねられてきました。当初は法律的、道義的責任なしという態度をとられた。ところが八月二十日、韓国の金総理から厳重な申し入れと批判があると、今度はあたかも道義的責任があるという見解に変わったように見受けられます。そこで、もう一度確認をしておきたいと思うのでありますが、法律的な責任はないと、この見解はいまでもとっておられるわけですね。そして、道義的には責任ありという立場に変わったのかどうか。その点を確認させていただきたい。
  67. 中江要介

    説明員(中江要介君) まず御質問前提になっております、当初日本政府としては、法的、道義的に責任なしというふうに伝えられた報道自身について御説明しておく必要があると思うのですが、そのことは、その報道がなされた日の夜、外務省で、正式にそういうことを外務省見解として発表したことはないという説明で修正しておるわけなんでございまして、あの法的、道義的に責任なしという報道は一部の新聞紙面に大きく出て、そしてその見出しの部分が韓国にそのままキャリーされて、韓国の金国務総理がテレビ演説でそれを外務省見解、さらには日本政府の見解というふうに説明しながら放送されたために、非常な議論を巻き起こしてしまったというのが実態でございまして、まず最初に日本政府としては、また外務省といたしましても、外務省の見解として法的、道義的責任なしという見解を出した事実は全くないわけでございます。この点はひとう御了解いただきたい点だと思うのです。  そうは言うけれども、一体それじゃどう認識しているかという問題につきましては、その報道の出ました夜の外務省における外務事務次官の記者会見で、その後いろいろ事実関係で韓国側から伝えられてきたところを踏まえてみますと、この犯人が日本で生まれた在日韓国人である、またその韓国への渡航に使った旅券が虚偽の申請に基づく日本の旅券であったということ、それからまた、その使用したピストルがどうやら日本で盗まれた警察官の拳銃であったというような事実が出てまいりますと、こういうふうになりますと、どうもこの事件について日本政府は全く無関係で知らぬ顔しているというような性質の問題ではなくなってきている、そういう意味で、この狙撃事件の準備が日本で行なわれたということについてははなはだ遺憾であるという意見を出されまして、これが政府関係筋でいままで公に出ている唯一の見解ということになっておるわけでございます。
  68. 矢田部理

    矢田部理君 遺憾であるという意味内容でありますけれども、それは法律的に遺憾であるということなんですか。あるいは政治的にそうなのか。さらには道義的なものなのか。それはどういうことなんですか。
  69. 中江要介

    説明員(中江要介君) この責任という字を使いますと非常に法律的な意味合いが強く出てまいりますので、この字を使うことは無用の誤解を招くということもございますので、それにまた道義的責任という字は、字としては使われるのですが、実体についてはなかなかむずかしい概念でございますので、現在のところ政府といたしましては、さらに捜査が進んでいろいろ事態がはっきりしてくれば、またそのときの考えというものはあり得ることはもちろんでございますが、現在までに明らかになっている事実から見ますと、この狙撃事件の準備が日本で行なわれたというその事実に関しましては、日本政府としては非常に遺憾に思っているという、その表現ですべてをあらわしているというふうに御理解いただきたい、こう思います。
  70. 矢田部理

    矢田部理君 そうすると、責任があるとかないとかということには触れないで、遺憾であるということで態度をあらわした、こういう趣旨ですね。  そこで、遺憾であるという前提として、日本国内において犯行の準備がなされたということを一つあげておられるわけですけれども、同時に、事件が起こったのは韓国内で起こったわけですね。韓国内で起こった一連の犯行の事実認識を外務省としてはどうされてきておるのか、その点を伺いたいと思いますが、より具体的に申しますと、たとえば国民の間にあの狙撃事件については相当な疑惑を持っている人があるわけですね。そこで私のほうで国民にかわってお尋ねをしたいのは、一つは、幾つもこまかい質問をほんとは用意してあったのですが、時間の関係がありますので簡単に伺いますが、文世光がどうしてあのものものしい警備をされている会場に入れたのだろうか。招待状もない、リボンもつけていないという点ではどう考えられるか。中に入ってから、座席などは指定席だったのか、それともどこにでもすわれるような状況だったのかどうか。この点はいかがでしょう。
  71. 中江要介

    説明員(中江要介君) その点は前回の当委員会でも御質問を受けておりまして、私どもも調べておるわけでございますが、まず、どういうふうにして会場に入っていったかという点につきましては、私どもはまだ韓国側から十分な説明をいただくに至っていない問題でございまして、この点は、わがほうの捜査当局もある程度捜査協力をする上で承知したい事実として、韓国側に照会していく事項の中に入っておるわけでございます。これはこまかい問題は幾つもございまして、捜査当局の専門的な立場からの疑問点として、韓国側にその補足説明を求めていくという態度でございます。韓国側から第一次的にわがほうに送られてきました捜査報告によれば、私の聞いております限りでは、いま御質問の点について明快な説明がないというふうに聞いております。  第二の座席の点でございますが、これはその後政府レベルで先方に照会しましたところでは、大ざっぱなところで大体こういう団体が一階のこの辺、あるいはこういう団体が二階、その数は大体これぐらいという報告といいますか、説明はあるのですが、それ以上こまかい点については明らかにしてもらえないままで現在に至っておりまして、これもその状況によりまして、これからの捜査協力の前提としての、事実についての認識を深めるという段階で明らかにされていくものと期待しておるわけでございます。
  72. 矢田部理

    矢田部理君 関連して伺いますけれども、文世光の使用した拳銃と大阪の高津派出所で盗難にあった拳銃の同一性は確認できたのでしょうか。
  73. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 結論から言いますと、同一性は確認できました。これは向こうからかねてから拳銃の写真なり番号を送ってきておったのですが、使用した拳銃によって弾丸を試射して、その弾丸を送ってもらって、それを見ますと、線条痕というのがありまして、各拳銃ごとにそういう記録は全部こちらに保管してございますので、いわば指紋のようなもので、それが一致するかどうかという判定をいたしましたところ、これが結果としてぴたっと一致したという報告がきておりますので、この結果から見て、韓国で文世光によって使われた拳銃、これはSWチーフス回転式38口径でございますが、これと七月十八日高津派出所で盗難にあった拳銃、これは一致するというふうに考えております。
  74. 矢田部理

    矢田部理君 拳銃の同一性は確認できたようですけれども、陸夫人が被弾をした弾丸が、大阪で盗難にあった拳銃から発射されたものであるかどうかの確認はどうですか。
  75. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) その点に関しては、現場における犯行状況、要するに何発、どういう角度で発射して、それがどこに当たったか、そういうことについて詳しく向こうのほうにその結果の通報を求めているわけでございますが、これがまだ来ておりませんので、その点は未確認であります。
  76. 矢田部理

    矢田部理君 それから陸夫人が被害を受けたわけでありますけれども新聞などによりますと頭部に被弾したというふうな報道がありますが、頭部のどの部分なのか、その部位は明らかでしょうか。
  77. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) この部位についても同様、照会しておるのですが、いまのところまだ回答が来ておりません。
  78. 矢田部理

    矢田部理君 拳銃盗難事件は文世光の犯行と確定をしたのかどうか。たとえば、この点も疑問視されておるのは、指紋や残された足あととの矛盾をどう説明されるのかということも含めて、お答えをいただきたい。
  79. 田村宣明

    説明員(田村宣明君) 拳銃の盗難事件でございますが、一応文世光の犯行ではないかというふうに考えられますけれども、本人に対して直接の取り調べということはできないという状況にございます。したがいまして、いままでの日本国内の捜査から見ますと、まず文の留守宅から、同時に盗難にあいましたもう一丁の拳銃が出てまいっております、それからやはり文の使用しておりました自動車の工具、この工具と高津派出所のドアのところに残されました痕跡、これが一致をするという点、それから韓国から送られてまいりました当時の犯行時の状況が、派出所の中の当時の現場の状況と大体一致をする、そういうふうな点から、文が拳銃を窃取をした被疑者であるということを確定的に申すということは、若干まだ詰め切らない点はございますが、大筋といたしましては、文が高津派出所に入って拳銃を窃取した犯人であるというふうに考えてよかろうと思います。  それから、いま足跡の点がございましたけれども、これは私どもも現場を見た限りでは、あの足跡は直接この犯行と結びつくかどうかという点は非常に疑問がございまして、その点から否定するような材料というふうに考えることは、ちょっと無理ではないかというふうに考えております。
  80. 矢田部理

    矢田部理君 あと二、三点で終わりたいと思いますが、どうも今度の朴夫妻狙撃事件を見ておりますと、光復節の現場の状況の把握がほとんどなされない。韓国側からその詳細の発表もない。そして日本に対しては非常に背後関係の追及、これを強調して、政治的なにおいが強過ぎる感じがしてならない。その点、まずものごとを論ずる場合には、事実関係を的確に把握する。すでに照会をしておられるようでありますけれども、それについてほとんど返答らしいものはない。そして朝鮮総連を解体せい、いろんな日本の内政に干渉してきている傾向が強過ぎると思う。その点で、これはいろいろもう少しお聞きしたかったわけでありますけれども、対韓外交のあり方についてもう一回洗い直していかないと、道義的責任があるとかないとか、外相発言がどうだとかいうことで、発言しては訂正し、弁解せざるを得ない、こういうやり方そのものに日本政府の責任があるのじゃないかというふうに私どもは考えています。  とりわけ、もう一年以上も前の金大中事件もそのままほうりっぱなし、早川、太刀川事件についても非常に見通しが甘過ぎて、ゆゆしき人権問題になってきている。その点で今後の外交政策として、たとえば西ドイツのとった伊桑氏に対する措置など十分に他山の石としながら、対韓外交にき然たる態度をとるべきだと私たちは考えております。  ここ二、三日の動きは、総理の親書方式で糸口を開くというような意味合いのことが新聞に出ておりますけれども、親書を出すというようなことで、いまの日韓関係は基本的には解決をしないというふうに私たちは思います。どんな親書を出したらいいでしょうかと相手国の外務大臣にお伺いするのも、これはいかがなものかというふうに私は思うわけでありますけれども、いずれにいたしましても、本格的に対韓外交について基本的な態度を確立をしていく。その中で金大中氏の原状回復、早川、太刀川氏の早期の釈放を含む、主権と人権を守るための措置を外交的に打ち立てる必要があるのじゃないか。同時に、韓国がそれにも耳をかさないということであるなら、私どもは従前から主張しておるわけでありますけれども、経済援助の全面的な打ち切りなどをやるべきだというふうに考えます。  その点について、最後に外務省の考え方お尋ねしたいと思います。
  81. 中江要介

    説明員(中江要介君) 私どもといたしましても、昨年の金大中事件以降、この一年間に展開されてきました日韓関係というものは決して満足しておりませんし、また、その先行きについては非常に憂慮すべき面もあるという感じを持っております。これを打開するのに、いま先生がおっしゃいましたように、き然として筋の通った外交をしていくのが一番いいのではないかという点は、私どもも全く同感でございまして、その線に沿ってやろうということで努力を重ねてまいったわけでございますけれども、不幸な事件が次々と出てまいりまして、当面はどういうことになっておりますかと言いますと、そういった冷静な話し合いというものができにくいような雰囲気になっておって、過般来のデモ事件あるいは大使館の乱入、国旗引きさき事件その他に見られますように、非常に衝動的な感情的なムードが韓国を支配している。  まず私どものいましなければならないことは、双方が冷静になること、特に韓国側で、先ほどの責任問題でもございますように、あまり一つ一つの事象について感情的な反発が繰り返されて、それがエスカレートしていく、それを静めることがまず第一歩だ。それが静まった暁には、おっしゃいますように筋を通した話し合いで、昨年の金大中事件以来のもろもろの事件をきちんと解決していかなきゃならぬ。まずその雰囲気を鎮静化させるという点で、もし、先般金国務総理から寄せられた親書に対する返事を出すことによって、日本政府の考えている立場をはっきり向こうに最高首脳間の話し合いとして了解していただくことによって、この鎮静化の第一歩ができるならば、それは意味があろうという意味でいま親書の問題が検討されておるわけでございまして、これによって何もかも全部解決してしまう、また、それができるなどというようなことは考えておらないわけでございます。
  82. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、いま矢田部委員の御質問で、非常に韓国問題が白熱した状態になっておるわけでございますが、御指摘がありましたように、この親書をめぐるここ二、三日の問題が、日韓の外交問題の将来をきめる上で大きなポイントになってくると思うのでございますが、この問題はあとに譲りまして、今度の朴大統領狙撃事件の捜査の問題について、矢田部委員の質問に引き続いて私からお伺いしたいと思います。  まず警察庁に伺いたいのでございますが、今度の朴大統領狙撃事件についての取材という名目で、非常に多くの韓国の新聞記者の方が日本に来日していらっしゃる。何人ぐらいの記者が来日しているというふうにつかんでいらっしゃるのか。  これが問題になりますのは、この記者がKCIAの部員を兼ねている人が多い。KCIAがこのことに乗じて約千人ほど来日しておるといううわさもあれば、六百人ぐらい来日しているといううわさもあるし、そのうちの過半数はいま大阪周辺にうろついているということがいろんな人からささやかれているわけで、実際のところ、大阪周辺にいる在日韓国人はもとより、吉井夫妻はじめいろんな関連を持つ日本人まで非常に警戒しなければならない状態にいま立たざるを得ない。警察のほうは、この事件に端を発して、韓国CIAの人たちが何人ぐらい日本に来ているというふうにつかんでいらっしゃるのか、まず御答弁いただきたい。
  83. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) そういうことは、私どもはつかんでおりません。
  84. 佐々木静子

    佐々木静子君 そういうことを全然つかんでないとすると、警察はほんとうに日本人や在日韓国人の人命の安全というようなことを考えるつもりがあるのかどうか、私どもはなはだ疑問に思うわけです。  これは全国的にもあるようですが、特に大阪でいろいろ起こっておりますのは、韓国の新聞記者、あるいは新聞記者じゃないかもわからない、KCIAかもわからないが、日本の大新聞の記者の名前をかたっていろいろ取材をしているわけです。その事実を把握していられますか。
  85. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) そういう事実は把握しておりません。
  86. 佐々木静子

    佐々木静子君 そういうのんきなことじゃ困りますね。現実の問題として、まあ新聞社の名前をあげてまた営業上差しつかえがあってもいけないので申しませんが、日本の三大紙の一つである新聞社の名前をかたって、このことの取材と言って、たとえばこれは現実に起こったことですが、総連の中へ入ってきて、そして片っ端から写真を写し回る。どうも日本の大新聞の記者にしてはあまりにも礼儀を失しているというので、おかしいということで追及したところ、記者証を見せろと言ったら記者証を持っておらない。そういうことで、あなたは知らないかもしれないけれども、一一〇番に通報しておりますよ。そういう事件は全然御存じないのですか。
  87. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 詳しいことは存じません。
  88. 佐々木静子

    佐々木静子君 こういうことはひんぱんにいま起こって困っているわけですよ。日本の新聞記者だと言っても、これはKCIAかわからない、おそろしいということで、市民はおびえているわけです。また実際問題として、取材してくる記者が千円とか、多い人は一万円つかますわけですね。日本の新聞記者で、座談会にでも招いて意見でも聞いたというのであればお礼をすることがあっても、単に聞いただけで金を置いていくという記者はあまりいないものだから、だから市民がふしぎに思って、あれはほんとうに日本の新聞記者であるかということで本社へ問い合わせたりすると、いやそういう人はおらぬということで、これはおそろしいことだというようなことが起こっているわけです。  これは、ひいては日本の新聞社の方々の行動の自由にも関係する問題じゃないかと思うのですけれども、そこら辺のところをもっと警察は真剣に取り組んでもらわないと困ると思います。そのあたり、もしそういうことがいろいろ起こっているということを御存じないとするならば、さっそく調査なすって真剣に取り組まれるということは約束されますね。
  89. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) その間の事情は、よく調べてみたいと思います。
  90. 佐々木静子

    佐々木静子君 あまり警察のほうはのんきなことを言っていらっしゃると、これは警察も一枚かんでいるんじゃないかなというようなうわさまで出てくるわけですよ。私どもそういうことは思いたくないですけれどもね。  と申しますのは、実はこれは私、先日大阪府警へ朝鮮総連の幹部の方と御一緒に伺って、府警本部に抗議を申し込んだわけですけれども抗議というよりお伺いに行ったわけなんですけれども、私も韓国語のほうはよくわからないので何でございますが、「韓国日報」八月二十一日の新聞によりますと、朝総連の最高幹部の方がその主治医に命じて文世光を入院させ、そして文世光にいろんな指示を与えたというようなことが大きくこういう新聞に出ているわけなんですが、これが大阪府警の発表として出ているわけなんです。大阪府警はこういう発表をされたのかどうか、その事実はどうなんですか。
  91. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) そういうことはしておりません。
  92. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは実は私そのときに、しておらないのなら全然しておらないと——これだけの大きな記事ですよ。これは日本人の中にもたくさん出ております。ソウルの新聞ですけれども、特に大阪のように在日韓国人の多いところでは、この新聞は相当部数出ているわけです。これが単にソウル発の情報として向こうの検察庁から出ているというのであれば話は別ですけれども、大阪府警の発表として出ているわけなんです。そういう事実がないとすれば、なぜ大阪府警はこの新聞社に対して訂正の申し込みをしないのか、訂正させないのか。どうしてそれに対して訂正させないのですか。あるいは私どもの要求をいれて、ちゃんと訂正させましたか。どうなっておりますか。
  93. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) それはしかるべき処置をとっておると思いますけれども、一度調べてみます。
  94. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはのんきなことは言っておれないわけで、これだけのことが、全然関係がないのに大阪府警の発表として出ている以上は、やはり府警の名前、日本の警察の名前が冒用されているんですから、断固とした処置をとっていただかないと困ると思います。  というのは、それがそのままになっているから、また次に同じような問題が起こっているわけです。これも九月五日付の「東亜日報」によりますと、この事件は単に朝総連のみならず、いわゆる民族統一協議会の首席議長である表東湖氏外一名が指示したものであるということが、いろいろと具体的に写真入りで大きくトップ記事に書かれているわけです。そしてこれも日本の警察庁発表として出ているわけです。こういう事実はありますか。発表されたことがありますか。
  95. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) その発表した事実はございません。
  96. 佐々木静子

    佐々木静子君 発表されたのでなければ、これはちゃんと翻訳もついておりますが、警察にもたくさん翻訳なさる方おられると思いますから、確認の上で早く適切な処置をおとりにならないと、次々にいろんなことが起こってくると思います。そのたびに、これはやはり日本の警察がそう言っているのならと人が思うからこそ、いろいろと日本が南に対する何かの基地になっているとかいうようなことで、日本政府はけしからぬということになって反日感情が高まるわけなんです。私はむしろ、そういう適切な措置をおとりにならない日本政府自身が、反日感情を高めるだけの要素を幾らでもばらまいていらっしゃるんじゃないかと思うのです。もうこれは誤解のもとですね。こういうことに対してやはり警察庁はきっちりした処置を早くとってもらわないと困ると思います。  それからついでに言いますが、これを取材した記者、これは申用淳という人なんです。調べてみますと、「東亞日報」の社会部長になっていられる方らしいのですが、これが「東京五日発」と東京からの発になっているのです。また別の新聞を見ますと、この申用淳という人は九月三日の日に東.京からソウルへ帰ったという記事も載っているわけで、そこら辺も非常に矛盾した記事なんですけれども、この申用淳という方について警察は何か情報を把握しておられますか。
  97. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 何も把握しておりません。
  98. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは一体何を警察はやっていらっしゃるのかと思いますね。全然知らないのですか、申用淳という人について。
  99. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 何も存じません。
  100. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはむしろ私が言うのじゃなくて、警察庁から言っていただくべきことだと思うのですけれども、前に金大中事件がございましたね。あれが去年の八月八日の日でしたね。その八月一日ないし二日に、金大中氏誘拐未遂事件が横浜で起こったことは御存じないのですか。
  101. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 存じません。
  102. 佐々木静子

    佐々木静子君 あなたが知らなければ何ですが、そのときの未遂事件で金大中氏を横浜のさるところへ誘い出そうとしたのが、この申さんであったというようなことは、これは東京におられる韓国の方々はたいてい御存じのことだと思うのですけれども、これは確定的なことじゃありませんけれども、本気になって捜査していただいているのかどうかということは、はなはだ私も疑問に思わざるを得ないような気持ちになるわけです。  といいますのは、実はその前にちょっと時間の関係がありますから警察庁に伺っておきたいのですが、大阪の在日韓国人の方で民団のかなり幹部の方なんですけれども、沈載寅という人を今度の朴大統領事件との関係で警察が何か参考人として意見をお聞きになったことがあったのかどうか、先にそれを伺いたいと思います。
  103. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 私のほうにはそういう報告は参っておりません。
  104. 佐々木静子

    佐々木静子君 入管がお越しでしたらお伺いしたいのですけれども、この沈載寅という、ちょっと私も読み方がわからないのですが、この方が実は八月十五日、大統領狙撃事件のあったときに光復節に参列をしておられたのですけれども、この方がいつ日本を出国され、いつ日本に帰国されたか、入管でわかっておられたらおっしゃっていただきたいのです。前もってこれは通告しておりませんので、いま急にわからなければ大急ぎで調べていただきたいのでございますが。
  105. 竹村照雄

    説明員(竹村照雄君) 調べてみます。
  106. 佐々木静子

    佐々木静子君 たいへんにおそれ入りますが、いますぐにでも、委員会終わるころまでに調べていただけましたら、この点について私は質問をあとに保留しておきたいと思うわけですが。
  107. 竹村照雄

    説明員(竹村照雄君) ちょっとお答えしますけれども、今度の式典に在日韓国人で招待された人、それで再入国の許可を受けた人は、全国で三百五十一名おります。大阪の方というふうに特定ができておりますと、出入国の記録カードはまだ電算機に入っておりませんので手で調べなければいけませんけれども、あるいはあらかじめそういうのは全部調査するように指示しておりますので、でき上がっておりますかどうか、至急やってみます。
  108. 佐々木静子

    佐々木静子君 たいへんおそれ入りますけれども、大阪のほうの団の団長格で行った人のように聞いておりますので、住所はちょっと私いま手元にございませんが、お調べいただけましたらたいへんにけっこうだと思います。なるたけ早くお調べいただけましたらと思うのでございますが。  それから、これは警察のほうに重ねてまた質問をしたいと思うのですが、実は私一昨日大阪におりますと、夜分に総連の方が緊急な用事でぜひ会いたいということで御連絡をいただきまして、たいへん急いでいらっしゃる様子だったので、私も急いでお会いしたわけです。そうすると、大阪市生野区で親朴派と申しますか、そういう考え方の青年の方々数十名がいま結集して、そして反朴派といいますか、あるいは総連系といいますかの方々を急襲しようと結集している、たいへんあぶない状態なのだ、何とかそれを阻止して被害が起こらないように緊急な措置をとってほしいという話で、そして私も梅田から生野まで行く時間もないものですから、生野警察にすぐ電話を入れまして、こうこう言う事態なようなので、けが人その他が出ないように警備に万全を期していただきたいということをお願いしたわけなんです。  むろん生野警察のほうは、すでにその情報を把握しておられて、いまそのことで相当数の警備員が現地に急行しているから御心配ないようにというお返事をいただいて、安心しておったわけなんですけれども、夜分また生野の在日朝鮮人の方々から連絡があって、警察のほうへも頼んでいただいたそうだけれども、やはり急襲されて、けが人数人が出ていま病院へ運び込んだという話でございまして、私もまた生野警察のほうへ電話をしまして被害状況その他を聞いてみたところ、いやガラスが割れただけで、けが人などはだれも出ておりませんということなので、私も大したことがなかったのかと思って安心しておりましたら、きのうの朝刊を見ますと、やはり相当数のけが人が発生したというようなことなんでございますね。そのあたり、警察のほうも次々でたいへんだとは思いますけれども、ほんとうに警備をお願いしておいてこれでだいじょうぶなのだろうかどうだろうかというふうな感じが、これはやはり市民の中に起こってくるわけなんです。  このもとといいますのも、お互いといいますか、親朴派の方々が金日成主席のことを悪く書いたプラカードを総連の家の人の前に大きく無断で立てていく。そうすると、総連の方あるいは朴政権に批判的な方々はそれを取りはずす。そういうふうなことが紛争のもとのようなんですけれども、そこら辺でもう少し警察が、いろいろ冷静に考えるとかなんとかおっしゃるけれども、現に日本と勧国との間もそうだけれども、日本の中にある対立というものについてもう少し、何といいますか、対立を助長しているような感じ方にわれわれ受け取らざるを得ない。  たとえば昨日も、これはずっと前からの計画だったのだそうですが、総連のほうの青年部が民青学連事件などに反対する自転車によるデモ行進を、これは早くから届け出てやった。ところがその後一昨日の夜になってわかったところ、同じコースを民団の青年部が朝総連の解体を望むデモ行進を、同じ時間に同じコースで自転車でデモ行進する届けを警察に出して、警察がそれを許可している。これなんかは、ほんとうに警察は両者のトラブルを起こさないようにする気があるのか、あるいは起こすように持っていっているようにも見ざるを得ないわけで、そこら辺、警備は一体どう考えておられるのか。私どもというよりも、非常に不審に、もう少し市民の安全を考えてほしいという考え方が強いのですが、そのあたりはいかがでございますか。
  109. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 民団と朝総連との間のトラブルが一昨日夜あったということは、承知いたしております。これについてそれぞれ警備、機動隊が出て、できる限りの措置はしたわけですが、若干のけが人が出たということで、その事実の調査はいたしております。  それから、いまのデモ行進の許可の件はまだ私承知いたしておりませんが、これも調べておきますけれども、もちろんわれわれの考え方といたしましては、朝総連、民団、それぞれ主義主張は違うかもしれませんけれども、日本において平穏に行動してもらわなければ困るわけであって、この両者の衝突など起こらないように、われわれとしてはいろいろな手を打っていきたい。もちろん違法行為があれば、これは取り締まるという立場で処置いたしたいというふうに考えております。
  110. 佐々木静子

    佐々木静子君 国内法の範囲で国内法の範囲でということを再三政府は強調されているのですが、このようなトラブルを制圧しないで、むしろこういう状態を置いておいて、別の罪名で彼らを検挙しようとしているのじゃないかというふうなことも考えられないではないことで、やはりこれは非常にみんなが迷惑する、日本人も迷惑することですからね、万全を期していただかないと困るわけなんです。  それから、いまこの捜査について矢田部委員から突っ込んだ質問がございましたので、若干私も補足させていただきますと、文世光から譲り受けたライトバンがあるという届け出を受けたのが何日の何時で、それがどこの警察ということですね。これは弁護人が付き添って届け出まして、その弁護人からも私詳しい事情は聞いておりますけれども、警察のほうからお答えいただきたいわけです。
  111. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 私も、ライトバンがある人に譲られて、その人が届け出があったということは承知いたしておりますが、時日等詳しいことは、きょう持ってきておりませんのどわかりません。
  112. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは東淀川区の中島三丁目、ここは高架下にいろいろ車が置いてあるところで、私もよくそばを通ることがあるのでそこを知っておりますけれども、それは、届け出があったその日に、すぐその場で警察が行って中を調べたら問題のいま説明されたスパナが出てきたとかいうのじゃないでしょう。届け出があってから何日後にその自動車を調べに行かれたのですか。わからなければ、すぐ聞いてお答えになってください。私ども、そこら辺でも非常に警察の捜査に疑惑を持っているわけです。
  113. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) その点については私いま材料を持っておりませんので、すぐ調べてお答えいたします。
  114. 佐々木静子

    佐々木静子君 それからもう一つ、文世光の屋根裏から出てきた拳銃というもの、これは油紙に包んでありましたね。油紙は一番指紋が出やすいものだと思うのですが、その指紋検出はどうなっておりますか。
  115. 田村宣明

    説明員(田村宣明君) 油紙もものによりますけれども、どちらかといいますと、油紙は指紋が出にくい場合が多いようでございますが、本件の場合にも指紋は出ておりません。
  116. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま矢田部委員からも質問ありましたが、ソウルのこの殺害、殺人事件の起こった現場検証調書というものを、警察はすでに入手されているのかどうか。
  117. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 入手いたしておりません。
  118. 佐々木静子

    佐々木静子君 矢田部委員もそれをおっしゃりたかったんだと思いますが、結局、これはだれもが考えることですが、日本のいまの当該ピストルで、文世光の自供どおり二十メートルの距離の、しかも下側から拳銃を発射した場合に、これが陸夫人の頭部に当たった場合にテレビで見れるような状態が起こるかどうか。これはまず常識的な被弾のしかたではないかというようなところから、われわれも、また拳銃事件などについての関心を持っている法医学者の方々も、非常にこれは問題点が多いと考えているわけで、警察の方もむろんその点はまず第一に考えておられると思うのでございますけれども、やはりそこら辺の足固めからかからなければ、ただあやまるの、ただ何のといったところで、これは話にならぬじゃないですか。前から言っていますように、そういう意味において、いまの沈載寅とかいう方もその場に居合わせたというので、参考人として様子を聞いたかどうかということを伺ったわけなんです。  そういうことでいろいろわれわれが、たいした役には立たなくても、いままでも情報を警察にわれわれが調べてわかったところは提供している。ところが、ほんとうにこれを調べてくれているのかどうか。いま言いましたこのライトバンでも、いまのお話ではそのライトバンから出てきた工具がきめ手だとおっしゃるけれども、ライトバンを届け出て、警察は行っていないんですよ。一日置いてから初めてそのライトバンを見に行っているんですよ。そして工具が出てきた出てきたといっても、われわれはにわかにそのライトバンの中に最初からそういう工具が入っていたということは信用できないわけです。なぜそういうおかしな捜査をされるのか。私は日本の警察がそんな変な捜査ばかりはされないと思うのですけれども、この事件に限って特になぜそういう変な捜査をされるのかということをお尋ねしたいわけなんです。だれが聞いてもおかしな話だと思いますよ。  これは私も昨年、お隣の白木先生とともに金大中事件でだいぶ追及させていただいたわけですが、あのときにも、捜査のじゃまになってはいけない、あるいは私のほうで知っている情報でも、これが捜査の妨げになるといけないからというので、ずいぶんいろいろなことを国会の論議の中には出さずに、しかしこれは必要だと思うことは警察へは申し上げているわけです。そういう事柄についてほんとうに捜査してくれたのかどうか、はなはだ疑問を持つわけです。  たとえば私がこの金大中事件に関しまして 役に立ったか立たないかはわからないけれども昭和四十八年の十一月八日の日に質問した、私が調べた範囲での「アンの家」、「アンの家」からかけた電話、この電話は私も「アンの家」こところまでいって調べてみて、電話の工事によってここの家の電話番号を確認した。そしてその電話が、これは電話帳を逆に繰るというのはたいへんな作業なんです、人の名前がわかっていて番号を調べるのは簡単ですけれども、番号からその番号がだれが加入者かということを調べるのはたいへんだけれども、いろいろ調べた結果、神戸の韓国領事館がその電話の所有者である。そのことは警察に申し上げましたね。あなたじゃなくて佐々外事課長だったと思います。この〇七八の四三一の二五四〇、これは駐神戸大韓民国領事館の所有電話ですね。これが八月八日の日に国際電話何番にかけられたか、このことについての捜査はされましたか。
  119. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) そういう捜査はわれわれとしてはちょっとできないことになっておりますので、捜査いたしておりません。
  120. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると警察庁のほうは、私どものほうには捜査の支障になるから国会の論議には出さないでくれというお話で、だから私どもも金大中の捜査は警察は一生懸命やってもらわないと困るから、それを激励する意味で捜査のじゃまになりそうなことは何もいってない。むしろ警察へ全部届けているわけです。ところが、捜査することができないから何もしなかったじゃ、結局国会における審議発言をそういう捜査の妨害という名目で封じてしまったわけじゃないですか。それじゃこれから通用しませんよ、いろいろな事件が起こってきたときに。  捜査上の、いまちょっとそれを出してもらうとせっかくの捜査ができなくなるということで、われわれが集めてきた情報をなるべく国会の中へ出さずに、これはいまちょっと出されると非常にまずいんだがということで、それでいていま聞いてみると、そんなことはわれわれは捜査しない、一体どういうことなんですか。いろいろ調査して、韓国の相手方のどこへ、何番へ電話したかまで私のほうは警察へ申し上げましたよ。むしろ警察庁が教えてくれと言われたわけです。それはどういう意味なんですか。全く必要がないことを、そういうことを言われるわけなんですか。国会の場に出さずにひそかに言ってくれ、捜査に協力してくれ、一体どういうことなんですか。それが何も捜査しないというのじゃ、話にならぬじゃないですか。
  121. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) われわれは、犯罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があればいろいろと捜査をするわけでございますが、ただ単にどこどこへ電話をかけたということの事実を確認するためには、やはり強制捜査をしなければわからないわけでございますので、そういう材料がとれなかったということでございます。もちろん一般的には、いろいろ情報の提供をいただいて、これはたいへん参考にしておりますけれども、その点については通信の秘密をおかすおそれもあり、そういう点についてはやはりしかるべき手順を踏んでいかなければならないのだけれども、その手順まで踏めなかったと、こういう意味で結論だけ申し上げたわけでございます。
  122. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは国会審議でも佐々外事課長は何回も言っておりますよ。大いに参考にさせていただいてこれから捜査に使いたい、いろいろ情報もできるだけ教えていただきたいと。それでいて、それじゃほんとうに……。これは最初から金大中事件の起こったその晩に、社会党の大阪の府本部委員長が警察へ情報をちゃんと入れているわけです。それも結局警察は動かなかったわけです。一体警察は、ほんとうに日本の国民のため国益のためにやってくれているのか、何らかの日韓癒着の政治目的のために動いているのか、この点はほんとうにおかしいですね。  問題の「アンの家」のことについても前回衆議院のほうでたいへんに問題になったようですが、半年前に調べてきたこの「アンの家」のことなども、これは警察のほうが捜査上使うから、国会審議では捜査の秘密だからというようなことを言っておいて何もお使いにならぬじゃ、これは話にならない。そこら辺のところ、ほんとうに提供しても警察はなさらないのならば、われわれが調べてきたところを国会でぶちあけて、国民が調べるよりしかたないようなことになるんじゃないですか、実際問題として。  そういう意味で、まずライトバンのことにしても、われわれは非常に疑惑を持っている。届け出を受けて、なぜすぐ行かずに、日をおいて行って、そのときになって初めてスパナ、工具が出てきたというようなことを言われるのか。届け出をしてそのときに、その届け出をした弁護人と警察官が一緒にその場に行って、あけてみたらこんなものがあったと言うなら、これは話はわかりますよ。どこの何丁目の、どこの角にとまっている車だということを先に警察に言ってあるんですよ。それから日をおいて行ったら入っていたじゃ、われわれはにわかに日本の警察の捜査というものに対して、非常に残念なことですが、首肯できないような気がするのです。  この「アンの家」のことでも、これは住所をいち早く御連絡してありますよ。神戸市東灘区本山六丁目のマンションの、そしてそこに住んでいる住民の名前も全部調べて、その中の人々からもかなりな話を聞いておりますよ。ですけれども、それも捜査上の秘密、捜査上の秘密ということで言っておいて、そして事態が起こってしまう。これはどこまでがほんとうのことかわからないけれども、そのときの所有者と今度の文世光のおかあさんとがかなり因縁のある人であるということは、これは社会党の調査で明らかになってきているわけですね。そこから辺にも私は、日本の捜査がもうちょっとしっかりしてくれればこういう問題も起こらないで済んだのではないかと、非常に残念に思うわけです。  こればかりやっているわけにはまいりませんから、別の問題に移りたいと思いますが、先ほど来申し上げておりました朝鮮総連の最高幹部に対する誹謗した記事、あるいは表東湖氏外一名を非常に誹謗した記事、いずれも警察庁発表として出されていることについて、これは警察からちゃんと訂正の申し入れを文書でしていいただけるかどうか。あるいはこれは間違いであるということを警察庁から発表していただけるかどうか。その点まずはっきりと御答弁いただきたいと思うわけです。
  123. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) そういう点についてはわれわれのほうとして調査して、いまおっしゃったとおりであれば、われわれのほうで一番いい方法をとってきちっといたします。
  124. 佐々木静子

    佐々木静子君 一番いい方法というのはどういうことですか。
  125. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) その内容についてでございますが、向こうの何というか、新聞でございますか、新聞の訂正記事なら訂正記事という形、あるいはそれができないというなら、それについてのまたこちらの対応いろいろとございますので、いずれにしろ一番いい方法で正確にやっていきたいと思います。
  126. 佐々木静子

    佐々木静子君 ぜひそうしていただきたいし、早くやっていただかないと次々と同じようなことが起こる。それからいまのの記者の名前を冒用するというのも、これも早急に手を打っていただきた。重ねてお願いしておきます。  そして今後は韓国関係の外交政策につきまして、これは中江アジア局次長にもお尋ねしたいのですが、時間の都合もございますから、また別の機会お尋ねさせていただきたいと思います。  入管のほうはわかりましたでしょうか。まだわかりませんか。
  127. 竹村照雄

    説明員(竹村照雄君) まだきておりません。
  128. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは別の議題に移りたいと思います。  警察のほうも次々と事件が起こってたいへんだろうとは思いますが、例の八月三十日の丸の内三菱重工ビルの爆破事件のことについてでございますが、このことについて、まず警察のほうから捜査の現在に至るまでの経過を簡単に御説明いただきたいと思います。
  129. 田村宣明

    説明員(田村宣明君) 概要につきましてはもうすでに御承知のところと思いますけれども、八月三十日の午後零時四十三分ごろに、三菱重工の本社に男の声で、三菱重工前の道路に爆弾二個を装置したからすぐ避難するように、これは冗談ではないぞという予告電話がございまして、その直後の零時四十五分ごろに、同ビル一階正面玄関前のコンクリート製の植木鉢付近で突然爆発が起こりました。付近にいた通行人等が八人死亡されまして、約三百人近い方が負傷する、近くのビルの窓ガラス等が破損をする、また付近に駐車中の車両九台が大・中破するという事件が発生をいたしたのでございます。  警視庁においては所要の警備措置等を講じ、その後は本件の捜査に当たっておるわけでございます。  それで現在までの捜査の状況でございますけれども、まず爆発物でございますが、これは現在までに採取をいたしました資料を総合して中間的な、何と申しますか鑑定の結果で、まだ確定的な結論は出てございませんけれども、残滓のいろんな反応、化学的な反応、あるいは爆発の態様、破壊力というようなものから、硝酸系の爆薬であって、しかもその中ではダイナマイトの線が最も強いというふうに推定をいたしております。薬の量につきましては、被害状況等から見まして大体二十キログラム以上であろうというような推測でございます。  それから起爆装置でございますが、これは現場から積層乾電池の外側あるいは時計の歯車というようなものが出ておりますので、電池と時計を組み合わせた時限式のものであろうというふうに推定をいたしております。ただ非常に破損が激しゅうございますので、これも確定的なことはなかなかむずかしい状態でございます。  それから爆発の直前に現場の、先ほども申し上げましたコンクリート製の植木鉢の付近に、高さ四十センチぐらい、直径が三十センチぐらいの円筒形の紙包みが二個置かれておったということが数名の者の目撃からわかっておるわけでございます。それで犯人と思われる者について、そのほか目撃があるわけでございますが、当日の零時十五分ごろに、お茶の水駅の近くからタクシーが若い二人連れの男を乗せまして、現場のビル前で一名をおろし、その際円筒形の先ほどのような荷物を二個持っておりた。一名は東京駅のほうに行った。それでなお零時二十分ごろに、この現場付近で白い手袋をはめた二人の若い男が立っておったというのが目撃をされております。これがどのように関連をするかということについては、現在のところまだ明らかでございません。  いままでの捜査の結果、そういうふうなことがわかっておりますけれども、現在なおそれ以上にはなかなか進展をしておらないという状況で、今後現場付近から出ましたいろいろな資料の検討、それから関係の個所等についてのいろいろな聞き込み、それからいろいろ寄せられております情報の追及、検討、その他必要と思われます捜査を懸命に遂行いたしまして、本件の一日も早く解決をするように努力をいたしたい、このように考えております。
  130. 佐々木静子

    佐々木静子君 いろいろとたいへんに御努力なさっているということは、いまの御報告並びに新聞の報道なんかでもよく伺っているわけですけれども、こうした事件というものが、これは承っているところでも、二百九十二件のうち百六十一件が最近の分でもまだ解決しておらないというようなことで相当捜査が困難なのであろうと思うのですが、実はこのもとになる爆発物の管理などがどのようになっているのか、これは警察庁あるいは通産省などからも伺いたいと思うわけです。
  131. 下河辺孝

    説明員(下河辺孝君) 通産省からお答えいたします。  火薬類の保管でございますが、いろいろな様態のところで実は保管をするわけであります。これは製造、販売、運搬、消費と四つの段階に分けてあれしてみますと、火薬類取締法上でいきますと、製造の権限と申しますのは、原則として通商産業大臣になっております。その中のある種のものについては各都道府県知事に権限が委譲されている。それからまた、販売と消費の面につきましては各都道府県知事の権限になっております。運搬は大部分の場合において公安委員会、警察が所管するというようなことになっておりまして、各取り締まり官庁がそれぞれその段階におきまして保管につきまして監督を行なっているということになっております。
  132. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま大体伺いましたが、非常にそういう事故が、盗難が多くて、新聞報道によりますと、いままでの盗難を合わせても、この間の三菱の事故ぐらいのが十数回行なえるくらいにたくさんの量が紛失しているのだというような報道になっているわけですが、今後、まずこれから先そういう盗難が起こらないような状態をつくっていくという意味で、どのように努力されておられますか。
  133. 下河辺孝

    説明員(下河辺孝君) 数年前から実は過激派集団等によります火薬類の盗難あるいは不正処理というようなものがあったわけでございますが、通産省といたしましては、このような事態に対処いたすために、従来よりも警察当局と協議しつつ各種の対策を講じてきたわけでございます。  ざっと申し上げますと、まず四十六年に、当時の火薬類の盗難は主として火薬庫のとびらを破るとか、あるいは天井を破って侵入して取られるというような事例もあったことにかんがみまして、すべての火薬庫に警鳴装置、これはとびらをあけたりあるいは電線を切ったりしますとサイレンが鳴るというような装置でございます。あるいは天井に盗難防止用の金網等を設置するというような対策を講じたわけでございますが、その後、建物の側壁も破って侵入するというような事例も出てまいりましたので、本件につきましても警察等と十分協議いたしまして、またそのお知恵もいただきまして、四十八年、昨年の十一月に規則の改正を行なっております。  その内容は、従来から一級火薬庫と申します恒久的な火薬庫につきましては措置がとられておったわけでございますが、建設現場等に設けます臨時の火薬庫につきましては、従来木造の鉄板張りでよろしかったわけでございますが、これらも鉄筋コンクリートづくり等でやるようにというようなことで、構造そのものをきわめて厳重にしたということが第一点でございます。  それから第二番目の、消費現場には一般的に火薬取り扱い所というものを設けまして、ここで火薬類の仕分け等をいたすわけでございますが、そこに常時見張り人を置くような場合を除きましては、これも鉄筋コンクリートづくりの容易に破られない構造にするというような点を対策としてやっております。  次に、消費場所におきましては法定の場所以外には火薬類を置かせない、存置させないということを一つの手段といたしまして、さらに、従来は火薬庫あるいは火薬類取り扱い所等にだけ帳簿を設けて、そこの出し入れ、受け払いを記載させておったわけでありますが、加工所あるいは実際の第一線の消費現場におきましても帳簿等をつくりまして、そこに火薬類の受け払いを明確に記載させるということで、その間の員数合わせというものが正確にできるような手を打っておるわけでございます。  また、本年に入りまして、爆竹がある種のいたずらあるいは悪質な事件に使われているというような事態がございましたので、爆竹に関します取り扱いの規制を強化いたしまして、容易に入手できないような形に改正いたしております。  なおそれ以外に毎年、年二回全国の火薬類の消費場所等に対しまして、これは警察と合同でやっておるわけでございますが、一斉の立ち入り検査を行なっております。特に本年の実施に際しましては、各都道府県の担当課長に臨時に東京に参集してもらいまして、警察庁の出席も求めた上でいろいろ御指示もいただきながら、盗難防止とか、あるいは火薬類の保管管理の徹底をはかるというような意味合いにおきまして、今後厳重な処分をするように強く指導をいたしてまいったというような事実等がございます。  また盗難防止等につきましては、今年二月に事故が発生したことにかんがみまして、各都道府県並びに各団体等に対しまして、盗難防止に万全の措置をとるよういろいろと指示をしている次第でございますが、なお本年の六月から行なわれました危害予防週間等におきましては、盗難防止というものを主体にして指導を行なったというような次第でございます。  なお、先月発生いたしました三菱重工ビル爆破事件に際しましても、直ちに各都道府県知事及び関係団体に対しまして文書をもって指示した次第でございますが、本年十月に実施いたす予定にしておりました立ち入り検査を早急に繰り上げて実施するよう特に要請しておるというようなことで、若干後手後手になった点はあるのでございますけれども、われわれといたしましてはできる限りの対策をとりつつやってまいった、今後そういう方針で進めてまいりたいと存じておる次第でございます。
  134. 佐々木静子

    佐々木静子君 今度のは、ちょっとした火炎びんなどとまるでスケールが違うものですけれども、二年前に社会党も提案者の一人になって火炎びん法を議員立法で提案させていただいて、そのとき法務省のほうでも、これさえできればそういう事件は相当数、事前に検挙することが容易であるというような御説明もるる伺っていたわけなんですが、火炎びん法ができて、事実上それによって事前にこういうふうな事件が検挙されたというケース、法務省の刑事局もお見えですので、それはどのくらいあって、どれだけ効果を発揮しているのか、簡単でけっこうですから……。
  135. 俵谷利幸

    説明員(俵谷利幸君) 御質問の点でございますが、火炎びん処罰法は昭和四十七年の五月の十四日から施行になっております。この施行の前後におきまして事件の発生状況というものを見てみますと、私どものほうで全国の検察庁から受理の報告をいただいておりますものを見ますと、昭和四十四年度におきましては六千八百六十六件、それから四十五年では一千九件、四十六年では五千五十件、こういうことになっております。それから四十七年の途中でございますが、この火炎びん処罰法施行前まで、つまり四十七年の五月十三日までを見ますと百三十六件ということでございます。その後の状況でございますが、昭和四十七年五月十四日以降が四十七年分が三十三件、四十八年が十一件、四十九年、本年でございますが、八月末現在で十二件ということになっております。  したがいまして、火炎びん使用事犯に限りますと非常に顕著な減少を見ておる、こういうふうに申して差しつかえないのではなかろうかと思います。まあ治安情勢全般が表面は比較的平穏に推移しておりますので、その辺の事情も加味する必要があろうかと思いますが、全般的に申しまして、こういう火炎びん事犯は法律の施行によりまして相当の効果をあげておる、こういうふうに見られると思っております。
  136. 佐々木静子

    佐々木静子君 それからその審理の際に、その当時の過激派といわれる集団の動きというものを、公安調査庁のきょうお越しになっている渡邊次長に伺っているわけでございますが、そのときの御答弁にも御説明があって、時々刻々と日本の過激派集団というのが変化しつつあるというお話でしたが、時間もありませんので簡単に、いま公安調査庁が把握しておられる日本の過激派集団の動き、もちろんこの事件はマニアがやったという説もありますので、一がいにどうのこうのというわけじゃありませんが、参考までに聞かせていただきたいと思います。
  137. 渡邊次郎

    説明員(渡邊次郎君) 現在のところ過激派諸集団は、当面は政治的集団暴力闘争の展開を控えておりまして、組織勢力の強力、人事体制の整備、そういうところに重点を置いて活動しております。
  138. 佐々木静子

    佐々木静子君 こうした問題もほんとうはもう少し伺いたかったのですが、時間がありませんので次の機会にさせていただきます。  それでは、この十月一日からいよいよ全面施行になります商法の問題について若干お伺いいたしたいと思います。  実はこの商法の審議、これは当委員会におきましても非常にいろいろと勉強させていただいたわけでございますけれども、そのときの当時の法務大臣のおことばでも、この商法さえできれば売り惜しみ買い占めも解消するし、物価の値上げにも企業のもうけ過ぎにも歯どめはかけられるし、何でもできるような、いいことずくめのようなお話であの物価国会の中で通過したわけでございますけれども、どうもこの商法のいよいよ全面施行という段になってきまして、一般的にこの商法の規定を見て、これではたして企業の行き過ぎとかそういうふうなことが是正されるのであろうか、むしろこれは、あまりこれだけのことをやっても効果はないのじゃないだろうかという声がたいへんに多いわけなんです。そういう意味におきまして、ほんとうにわれわれが法務当局あるいは大蔵当局から承っていたような成果がはたして発揮できるのかどうかということに対して、はなはば危惧の念を持たざるを得ないわけなんです。  そのことについて、まず大蔵省のほうにお伺いしたいのですが、これはそのこと自体じゃないのですが、商法改正に伴って、参議院の附帯決議第二項でも、この公認会計士の方に対するところの業務制限というようなことについての政令を全面施行までに出していただくというようなことは、これは附帯決議にはそこまでうたっておりませんが、国会の御答弁の中ではいただいていたわけですが、いままだその政令ができておらぬということで、関係業界などでも非常に関心も持っておられるし、また一部不満の声も起こっておる。そういうことで、いま大蔵省ではその政令化についてどのように努力なさっているのか、また、いつその政令が出るのか、政令の内容はどうなのか、その点についてお答えいただきたいと思います。
  139. 小幡俊介

    説明員(小幡俊介君) お答え申し上げます。  ただいま先生からお話しいただきましたように、商法の一部を改正する法律施行に関連いたしまして、関係法律の整備法というのが成立をしたわけでございますが、この整理法も、商法の監査の関係部分と同様にこの十月一日施行というふうになっておるわけでございます。この整理法の中で公認会計士法の一部改正が行なわれたわけでございますが、この内容といたしまして、公認会計士あるいは監査法人が監査をいたします場合に、著しい利害関係があるような会社の監査をするということでは公正妥当な監査ができないということで、その基本的な「著しい利害関係」の内容は政令に規定をしようということになっておるわけでございます。  そこで、その政令のことでございますが、十月一日に法律が施行になるということでございますので、その施行にあわせて政令も施行したいというふうに考えておるわけでございまして、現在法制局といろいろ調整をしておるということでございます。  内容といたしましては、従来、大蔵省令でございます財務諸表規則に関連いたしましての監査証明省令あるいは監査法人に関する省令におきまして、公認会計士の利害関係等を規定しておったわけでございますが、今回公認会計士法が改正され、その中で政令に基本的な「著しい利害関係」の内容を織り込むということになりましたので、それらの内容を織り込むように準備しておりますが、先生からいま御指摘いただきました四十九年の二月に本委員会におきまして附帯決議のございました問題すなわち監査法人が監査をいたします場合に、その社員の中に一人でもその会社の税理士業務をやっているような社員がおれば、その監査法人というものはその会社の監査を行なうことは適当ではないという御趣旨の附帯決議をいただいたわけでございます。その附帯決議の内容につきましては、当時も本委員会におきまして政令に織り込むということをお話し申し上げたわけでございますが、私どもといたしましては、その答弁のとおりでございまして、この附帯決議の御趣旨のとおりのことを政令の内容に織り込むということで、目下法制局と案文の調整をやっておるわけでございまして、十月一日にこの法律施行になるまでに政令を出したいということで目下鋭意努力をしているということでございます。
  140. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは日本税理士連合会のほうからこの政令化の問題についていろんな要望が出ているわけでございますが、むろんこの附帯決議というのは、これは国会での附帯決議でございまして、その趣旨を生かしていただかないといけないわけでございますが、大蔵省自身とすると、その政令の内容をどうきめられるかということがたいへんに問題だと思うのです。  税理士会が非常に希望しておりますところは、この監査法人の「社員」ということばの表現が非常にあいまいである。いわゆるパートナーシップの場合のパートナーだけであれば、日本においてはほとんど制約を受けることがない。もちろんこれはその監査法人を構成しているところの、少なくとも公認会計士全部は含むのであろうという、これはいろいろと税理士会からも要望が出ておりまして、税理士会の強い主張といたしますと、この「社員」ということばはきわめてあいまいである。いまも申し上げたようにパートナーシップの場合のパートナーたる公認会計士だけでは該当するものがきわめて少ないので、そこで働いているところの公認会計士あるいは監査補助者なども含まなければ、ほんとうの意味におけるところの監査というものは期せられないということで、そうした点について議論が展開され、またそうした運動も活発に盛り上がっているわけなんでございますけれども、そこら辺の、大蔵省がいま行政指導として考えている、政令ももちろんですし、今度どのように行政指導していこうとしていられるのか、そのあたりのところをもう少しお聞かせいただきたい。  実はこの会計監査の制度は、アメリカの会計監査の制度をかなり持ってきている部分があると思うのでございますけれども、アメリカは日本より人口が倍であって公認会計士の数が十数万と聞いておるわけでございますし、日本はその半分の人口で公認会計士が四、五千人というような状態で、ほんとうに公認会計士が監査業務だけをやろうと思っても手が回りかねる状態であるというような実情から考えると、やはりここら辺で公認会計士が監査業務を十分にやるためには、監査以外の仕事ばかりをやっておったのでは数少ない公認会計士が十分にその活動を期しがたいのではないか、そういうふうな声も相当起こっているわけでございまして、そのあたりも含めまして、大蔵省の今後出される御予定である政令の内容及び今後の行政指導を承っておきたいと思うわけです。
  141. 小幡俊介

    説明員(小幡俊介君) ただいまの公認会計士と税理士との利害関係の問題というものは、本委員会におきましても商法改正をめぐりまして御議論いただきましたときに、非常に大きな問題として取り上げられたわけでございます。その議論のいわば集約したものといたしまして、本委員会におきまして、先ほど先生もおっしゃいました附帯決議の第二項におきましてその内容が規制をされたわけでございますが、それは監査法人がその社員が税理士業務をやっている場合において、その監査法人は当該会社の監査業務を行なわないということで附帯決議がまとめられたわけでございまして、それ以前の段階、すなわち現在の私どもが大蔵省令で規定をしておりまする利害関係の規定のしかたにおきますると、監査法人の社員につきましては、そのうち一人でもそういう利害関係があればだめだという規定にはなっておりませんで、監査法人の社員の過半数の人がその会社といろいろな利害関係がある場合には、その監査法人はその会社と監査契約を結び、監査をしてはならないということになっておるわけでございますが、それでは不十分だということの議論があり、そしていろいろな関係方面の議論、またいろいろな先生方の御議論がありまして、それが集約されてこの附帯決議というふうにまとめ上げられた、そして商法及びその関係法案が成立を見たと、こういう経緯であるというふうに思うわけでございます。  その集約されました附帯決議におきまして、「その社員が」ということで結局まとめ上げられたわけでございますので、ただいま先生御指摘になりましたように、監査法人の社員に限らず、その従業員についてもという議論は確かに御議論としていろいろあるわけでございますが、私どもといたしましては、関係の先生方並びにいろいろな問題を検討したこの附帯決議に集約されておりまする内容を、忠実に政令に織り込むというふうに考えておるという次第でございます。
  142. 佐々木静子

    佐々木静子君 御趣旨はよくわかるのですが、ただ今後の商法監査のあり方ということにかんがみまして、これはもう各答弁で出ておったところですが、これが公正な監査というものが期せられるかどうか。やはり公正な監査が現実に期せられるような状態をつくっていくように今後、国会論議はむろんのこととして、その趣旨も織り込んでいただいて、ただ時々刻々と情勢は変わっているわけでございますから、公正な監督というものが期せられるような状態というものをつくっていくという点においては、厳正な監査人と独立といいますか、そういうふうなことによほど御指導のウェートを置いていただかないと、最近にも商法改正についてのいろんな著述が出ておりますけれども、これは全くこの商法改正というものが全くナンセンスであり、意味のないものである、むしろ証取監査だけのときよりも後退するものであるというような議論すら出ておるわけでございまして、それでは全くわれわれの望んだところが生かされていないことになるわけでございますから、そういう意味において、行政指導の面において相当に強力な行政指導をしていただかなくちゃ、どうにもならないと思うわけなんです。  まず、このときにはまだ起こっておりませんでした——山陽特殊鋼の事件がこの商法監査制度の改正ということの一番の直接的な原因になったように承っておるわけでございますが、その後に起こりました戦後最大といわれる日本熱学の倒産の問題ですけれども、この監査報告書をさっそく取り寄せて調べてみたのですが、これは大阪地裁の第六民事部に提出されている裁判所からの依頼による等松・青木監査法人の監査報告書なんですが、この監査について二人の公認会計士の方が日本熱学の監査をしていられたわけでございますが、その会計士の方々の限定意見というようなものはどういうものであったか、これをまず教えていただきたい。  また資料として、裁判所に提出した等松・青木監査法人の監査報告書のほかに、倒産する前の日本熱学の監査報告書というものがどういうものであったか、これは公認会計士による監査ですね。それを資料として、これは大蔵省にあるわけですか、法務省にあるわけですか、提出していただきたいと思うのですが、いかがでございますか。
  143. 小幡俊介

    説明員(小幡俊介君) ただいまの資料につきましては後ほど、これは私どものほうに提出をされておりまするものは、日本熱学の有価証券届け出書及び有価証券報告書でございます。これは日本熱学が増資をいたします場合には届け出書というものが提出されております。それから毎期の決算が終わりました後におきましては、有価証券報告書というものが提出をされております。したがいまして、これらのものにつきましては後刻お届けをしたいと思いますが、冒頭にお話になりました等松・青木監査法人の報告書の件でございますが、これは先生も御指摘になりましたとおりに、裁判所が等松・青木監査法人に対して調査を委託された、そのレポートというふうな性格のものであろうかと思います。したがいまして、私どものほうが直接所管しておる内容のものでございませんので、その点については私どものほうから直接先生のほうにお届けするというのはいかがと思いますが、有価証券届け出書及び有価証券報告書につきましては私どものほうにございますので、その写しを後ほど提出したい、かように思います。
  144. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは関連する資料を提出していただきたい。  それと、いま申し上げました公認会計士がこの日本熱学の監査について、どういう限定意見をいままでつけてきておったかということを御説明いただきたいわけです。
  145. 小幡俊介

    説明員(小幡俊介君) ちょっといま手元に持ってきておりませんので、詳細は後ほど、その報告書の中に監査報告書というものも一緒についておりますので、お届けさせていただきますが、総合意見といたしまして、公認会計士の監査におきましては、適正であるというふうな意見がついておったというふうに考えております。
  146. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは前の、商法改正にならなくても証取監査のときにおいても、監査上の当然チェックしなければならない点を適正監査をした場合に、公認会計士個人についても損害賠償の問題が証取法にも規定されておったと思うのでございますが、その証取法の場合、公認会計士自身が損害の責任を負った例はあるわけでございますか。あるとすれば何件ぐらいあるのか、ちょっと簡単でけっこうですから。
  147. 小幡俊介

    説明員(小幡俊介君) 現在までのところ、この証券取引法の損害賠償責任を規定いたしました規定に基づきましての問題というのは、事例はないというふうに承知いたしております。
  148. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは商法施行前ではございますが、この証取監査によってももちろん公認会計士の個人的な責任も生じてくるわけで、今度の場合なども日本熱学自身は倒産しているわけでございますから、すでに訴訟も起こされているというようなことで、そのような場合に、私の承っているところでは、株価が下がった損害が八億というふうに公認会計士個人の責任がかかってくるのじゃないかと、そういうふうに私は聞いておるわけなんです。これは公認会計士個人としてもたいへんなことであるというようなことですが、これは公認会計士の責任というものを大きくし、会計監査というものの意義を大ならしめるためには当然責任も強くしていかなければならないし、さりとて、大きな監査法人によって運営されている公認会計士制度と、日本のように、監査法人もあるけれども、きわめて微々たるごく零細企業の公認会計士の場合と、現状の違いというようなものから考えた場合に、これから先の公認会計士に対する行政指導というような事柄ですね、これは大蔵省はどう考えていらっしゃるのですか。
  149. 小幡俊介

    説明員(小幡俊介君) 日本熱学の問題につきましては、検察庁及び警察当局でもいろいろ内容をお調べのようでございますが、私どもといたしましても証券取引法の立場から、その事態の内容につきまして調査をいたしております。本件の、この事件の実態がどういうものであったのかというふうな具体的な内容はまだ調査中でございまして、内容が判明するまでに至っておらないというのが現況でございます。  私どもといたしましては、この日本熱学事件につきましては、その内容が具体的に判明した段階におきまして、ただいま先生からいろいろ御指摘がありましたような証券取引法上の問題としても検討し、所要の手直しをすべき点があるかないか、そういう点もそういう実態が明らかになった上でありませんと、いまの段階でどこがどう直したらいいのか、あるいは直す必要がないのかというふうなことについて軽々に申し上げる段階ではないのじゃないかというふうに思っておりまして、目下のところに、日本熱学事件の実態というものがどういう実態であるのかということについての事態の究明を鋭意やっておる、こういう段階でございます。
  150. 佐々木静子

    佐々木静子君 法務省の民事局に伺いたいのですが、公認会計士のいま申し上げました責任ですね、これは商法上会計監査人の責任だけが強化されたというふうに思うのですが、これは無過失賠償責任と申しますか、挙証責任が公態会計士以外にあるようになっていると思うのです。そのあたりはどのように御解釈なすっているか。またその場合に、実際のところそういう粉飾決算をしたりするのは企業の一番指導的な取締役だと思うのですけれども、取締役の責任との均衡でどのように法務省はお考えになり、また今後御指導していこうと思っていらっしゃるのか。
  151. 加藤一昶

    説明員(加藤一昶君) 特例法の会計監査人の責任に関しましては、会計監査人が任務を怠ったときには、当然会社に対して損害賠償の責任を生ずると同時に、会社以外の第三者に対しましても、重要な事項について虚偽の記載をしたことにより損害を生じさせたときには、その責任を生ずる。それからただいま先生から御指摘ございましたように、その際には挙証責任が転換されておりまして、会計監査人の側で注意を怠らなかったということを証明しない限り責任を負うということになっております。  なお取締役につきましても、これは今回改正はされておりませんけれども、従来からの規定によりまして商法の二百六十六条の三におきまして、取締役が任務を怠ったときには当然会社に対して責任を負うと同時に、重要な書類につきまして虚偽の事項を記載して会社以外の第三者に損害を加えたときには、損害賠償の責任を負うということになっておりまして、この場合につきましても挙証責任は転換されているということになっております。
  152. 佐々木静子

    佐々木静子君 もう時間がありませんので何ですが、こういうふうに商法を改正して監査法人並びに公認会計士の監査制度というものを新たに設けた以上、やはりその効果が一〇〇%期せられるようにしていかなければ意味がないわけですが、率直に申しまして、公認会計士の試験というものは非常にむずかしいといわれるけれども、事実上それだけ個々の監査法人あるいは公認会計士個人の方々が企業に対して強い独立の姿勢を持って臨んでいられるかどうかという点においては、これは私のわずかな感じから言いましても、必ずしもそうというふうには受け取りがたい場合が非常に多いわけです。それはやはり公認会計士制度の歴史の浅さなどからくるものだと思うのですけれども、やはりこうなった以上は非常な独立性を発揮してもらわなければ、これはどうにもならぬわけで一部非常にたたかれているような結果が起こらざるを得ないようなことも心配されるわけですが、そういう点について、法務省の民事局とすると今後どのように指導していかれるつもりか、その点を伺いたいと思います。
  153. 加藤一昶

    説明員(加藤一昶君) 会計監査人といたしましては、これは十分に企業から独立をいたしまして、厳正な監査をしなければならないというふうに思いますけれども、やはりただいま先生から御指摘もございましたように、まだ歴史の長さというものがそうございませんから、この点につきましては大蔵省のほうとも協力いたしまして、今回の特例法による会計監査人の制度を十分全うさせるように、会計士協会などとも連絡をとって措置をいたしたいというふうに思っております。
  154. 佐々木静子

    佐々木静子君 それではもう時間がありませんので、この件はこのあたりにいたしまして、先ほどの結果、入管のほうはおわかりでございましょうか。
  155. 竹村照雄

    説明員(竹村照雄君) 沈載寅、この方は、再入国許可申請書の記録によりますと、民団大阪府本部の副団長で、今回の光復節慶祝団の大阪のほうの団長として再入国をしたいということでございました。出国したのは八月十三日、伊丹から金甫に向けて出国しております。KALの二十四便。ところで、帰ってきた記録につきましては、八月二十三日までの分は手作業で検討しましたけれども、まだ入国しておりません。なお、これは出入国港別に出入国カードというものは整理されて本局に送ってまいり、本局のほうで電算機に入力する作業をしておりますが、伊丹空港の分は八月三十一日までの分が送付されております。それ以降の分はまだ送付されていない、あるいは送付の途中にあるという段階でございまして、全体的に確認するのにはまだ一両日かかるかと思います。  以上でございます。
  156. 白木義一郎

    理事白木義一郎君) 午前の質疑はこの程度にとどめます。  午後二時に再開することとし、休憩いたします。    午後一時十分休憩      —————・—————    午後二時九分開会   〔理事白木義一郎委員長席に着く〕
  157. 白木義一郎

    理事白木義一郎君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、検察及び裁判運営等に関する調査を進めます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  158. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、先ほどの私の午前中の質問に対しまして御答弁が保留になっていた点について、警察庁の方、いかがでございますか。
  159. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 先ほど質問がありました自転車デモの関係でございますが、調べましたところ、時間帯において重なってはおりますけれども、デモコースとしては三カ所交差するだけで、この点しさいに検討したところ、同一時間帯に交差するということはないということで許可したわけですが、結果的に見ても、トラブルはなく終わったという報告が来ております。
  160. 田村宣明

    説明員(田村宣明君) ライトバンの件でございますが、これは届けがございましたのは、先ほど質問にございましたように、八月の十九日の夜九時ごろに、東淀川区に住む韓国人の方が弁護士の方と一緒に警察にまいりまして、八月の五日に文世光からライトバンを預かって、いまも保管をしておる、こういう申告がございました。捜査本部ではこの話を聞きまして、さっそくその確認にかかりました。確認と同時に捜査員、所轄署員等十名がこれの監視にあたっておったわけでございます。そして監視を続けると同時に、慎重を期するために捜索差し押え許可状の交付の申請をいたしておりまして、監視を続けておりましたところ、十時ごろに昨晩の申告をしてきた方がまいりまして、ここで車のかぎを渡してくれました。これは預かった車のかぎで、自分がずっと保管をしておって、他の者が入ったということはできないはずであるというようなことをそのときに話をしておるわけでございます。それで、捜索差し押え許可状が発布をされまして、大体昼の十二時ごろから捜索差し押えを開始いたしまして例の工具を差し押えた、こういう経過になっておるわけでございます。  なお、文世光が本件の被疑者かどうかという点について、先ほど矢田部委員の御質問には、確定的でないということを前提にしてお答えをいたしましたが、佐々木委員の御質問の中にも、この工具がきめ手であるというような御発言がございましたけれども、これは同時に盗まれた拳銃が自宅で出た、それから工具とドアの傷とが一致する、それから通報されました供述の内容と現場とが大筋において一致するというようなことで、直接取り調べはできませんが、したがって確定的とは申せませんが、本件の被疑者である疑いが相当強い、こういうふうに考えておりますので、もしことばの足りない点がございましたら、このように補足をさせていただきたいと思います。
  161. 橋本敦

    ○橋本敦君 最初に、韓国問題について若干お尋ねしたいと思いますが、まず第一に、大使館に対するデモが行なわれて国旗が棄損されるという事態まで起こって、後宮大使を外務省が呼んで事情も聴取されたと思いますが、韓国の反日デモの基本要求は一体どういうことなのか、どういう要求で大使館へデモで押しかけたのか、この点をまず明らかにしていただきたいと思います。
  162. 中江要介

    説明員(中江要介君) 九月の六日に発生いたしましたソウルにあります日本の大使館に対するデモ一それから国旗引きおろし事件、あのデモそのものには特に要求を突きつけるとか、あるいはこういうふうにしなければというようなものはなくて、前々から一般的に高まりを見せておりました反日運動と言いますか、反日ムードというものが高じて、そして予期以上の大きな人数のデモになったと、こういうふうに私どもは受けとめております。
  163. 橋本敦

    ○橋本敦君 その日は直接要求がなかったとしても、一般的に、最近瀕発している反日デモに見られる基本的な要求というのはどういうものなのか、それはおわかりでしょう。この点について明らかにしてください。
  164. 中江要介

    説明員(中江要介君) デモそのものにつきましては、いずれの場合も文書によるあるいは口頭による要求というものは出されておりませんけれども、一般に考えられておりますことは、元首夫人が狙撃されたその狙撃事件について、日本政府があたかも何の責任もないような立場をとっているというふうに報道されて、これはけさ申し上げましたように間違って不正確に報道されたわけですが、それを前提といたしまして、日本政府に誠意がない、また、その後の捜査協力についても何となく熱意が欠けているという、一般的な不満というものが主体になっているように私どもは見ております。
  165. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで後宮大使を呼び、七日の夜に外務省で首脳会議が行なわれた結果、田中総理の親書を相手国政府に提出をすることによって現状の打開を期待するという方向が出されたという新聞報道が、けさの朝日新聞にも出ています。このことによって外務省としては、どういう点をどのように具体的に期待しておるのか。日韓関係の正常化打開についての見通しをはっきり述べていただきたいと思います。
  166. 中江要介

    説明員(中江要介君) いま伝えられております田中総理の親書というものは、これは金国務総理が葬儀委員長としてあの葬儀について重要な任務を帯びておられたわけですが、その金国務総理から、田中総理がわざわざ葬儀に参列していただいたことに対するお礼をかねて、日韓間のいま好ましくない不幸な状態についてひとつこれを改善するために、ぜひこの狙撃事件について日本側も十分捜査その他、事実の究明に協力してもらいたい、こういう趣旨の手紙が参ったわけでございまして、それに対して、総理からそういう親書がきました以上は、いずれは返事をして日本政府の誠意のあるところを示さなきゃならぬ、こういう考えでおりましたが、その後ますます今回の大使館乱入事件のように反日ムードが高まるものですから、それではこの親書をすみやかに出して、その中で、日本政府が誠意を持って日韓関係の改善維持に当たろうとしているんだ、つまり韓国側で一部デモをするときに伝えられているように、日本が捜査協力に熱意がないとか、あるいは韓国についていままでと政策を変えるのではないかとか、そういった誤解を払拭しまして、政府の誠意のあるところを最高責任者である田中総理から先方に手紙の中で伝えることによって、一般的な誤解、曲解を避けて、冷静に話し合えるような雰囲気に持っていこうというのが期待する趣旨でございます。
  167. 橋本敦

    ○橋本敦君 いま答弁のあった問題について、けさの新聞によると、その親書の骨子は三点というように報道されています。まず第一点は、重ねて狙撃事件、とりわけ陸英修夫人に対する弔意をかねて陳謝の意を表明するといいますか、弔意を重ねて表明する。二つ目の問題は、この事件の事前準備が日本で行なわれたことについて、遺憾の意を表明する。  三つ目の問題は、日本側は事件の裏づけ捜査を誠実に行なっており、今後も続ける。  この三点を骨子として親書を構成するというように報道されていますが、この報道については誤りは基本的にはありませんか。
  168. 中江要介

    説明員(中江要介君) ただいま御指摘の点につきましては、外務大臣もすでに国会の他の委員会審議お話しになったと聞いておりますが、金国務総理の親書に対する返事ということで考えますと、いま御指摘のような点は常識的に考えましてもそうでございますし、私どももそういうものであるべきだというふうに思っております。
  169. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで、これを骨子とした親書を相手方に送って、いまの日韓関係が打開できるという見通しがあるというお考えですか。その点が知りたいのです。
  170. 中江要介

    説明員(中江要介君) これは韓国側がどういうふうに受け取るかということについては、予測は現状ではきわめて困難でございまして、確信があるかと聞かれましたら、いまの段階では何とも申し上げることができませんが、日本政府としてなし得ることは、その誠意の限りを尽くして、それを先方に伝えるということ以外にはない、こういう確信のもとに、誠意に終始した手紙を用意して、それを先方に送るということにいまのところは努力を集中しているわけでございます。
  171. 橋本敦

    ○橋本敦君 したがって、いま外務省はこの方針をとっているけれども、外務省自体がこれによって日韓関係が打開できるという確信は持てないという状況にあるということですが、たとえば一つの問題として、この第三項に狙撃事件の「裏付け捜査を誠実に行っており今後も続ける」ということを骨子として書く、こう言っているわけです。ところが、ここに言われておる狙撃事件の裏づけ捜査を今後も続けるというのは、具体的に何の点についてどういう捜査を続けるという趣旨なのか。この点について警察庁との打ち合わせはできていますか。いかがですか。
  172. 中江要介

    説明員(中江要介君) その捜査協力の前提になる事実についての認識がまだ必ずしも十分に合致していないといいますか、資料についてまだ不十分な点もあるというような点は、けさも申し上げましたように、これから双方でさらに意見交換、資料交換を必要とするわけですけれども、田中総理の親書をこの段階で発出するという場合には、そういうあいまいな事実を前提にして具体的な約束をすることのできないことは当然でございますので、この親書の中で、いまこの親書を出すということになりますと、いきおい、どちらかというと一般的な考え方といいますか、姿勢といいますか、そういったものが表現されることになろうかと、こう思います。
  173. 橋本敦

    ○橋本敦君 私はむしろ外交姿勢としては、いま答弁された点を一番心配するんです。つまり具体的に、日本国内で、国内法に基づいて捜査をしなければならない具体的な事実と問題があって、それをやるというなら別ですよ。だけど、向こう側のわが国に対する捜査をしっかりやれとかなんとかいういろんな要求について、事件の本質について韓国捜査当局自体が明らかにしていない段階である。しかも抽象的に一般的に、今後捜査を続けるというようなことを親書で軽々に送るなら、今後さらに引き続いて日本側の捜査協力態度が足らぬとかあるいは不熱心であるとか、いま言われている、現に反日デモの中核になっている問題が、さらに激化をする種をまく危険性さえある。私はそのことをまず第一に心配するのです。具体的な捜査方針も捜査対象も警察庁と十分打ち合せがないにかかわらず、一般的にこのような親書を出して、政府は責任を負えますか。いかがですか。
  174. 中江要介

    説明員(中江要介君) その点は先ほども申し上げましたように、今回日本政府の捜査協力に関する一般姿勢を出すということが、本来とても困難でできないことまでもしようということをもし含むような形で受け取られるならば、これはいまからそういう間違いは避けるべきだと、こういうふうに思いますが、ただ、この事件が日本と全く無関係ではないという点はいろいろ、るるいままで事実の問題として指摘があるわけでございますので、日本側で捜査協力をする余地が全くない事件ではそもそもないわけでございますので、そういう捜査協力については、韓国側の協力も得ながら、日本としてできることはするべき立場にあるという一般的な考え方をとる以外にはいまの段階では言えない、こういうふうに思っております。
  175. 橋本敦

    ○橋本敦君 そのような一般的な意見の表明は、すでに外務省筋を通じてなされていますよね。そうでしょう。重ねてここで親書という形においてこういう問題を出すことによって、さらに問題が深まってこじれるということを心配するわけですよ。たとえば、朝鮮総連の活動に対する制圧を要求するといった問題が向こうから出されてきた。この内容資料として私は要求したのですが、外交公文書であるからどいうことで私の手元には届かないんです。現に朝鮮総連に対する活動の抑圧、制圧、規制、こういった問題が向こうから要求されている。これに対しては日本の憲法と法の立場において、とてもそういうことはできることではないし、やるべきではないという見解が、政府の見解としてこれははっきりしているということを確認させていただいてよろしいですか。
  176. 中江要介

    説明員(中江要介君) 政府の立場についていろいろ報道され、あるいは国内で説明していることが表に出ているということはいま御指摘のとおりでございますけれども、韓国政府との間について言いますと、それは先ほど私が申し上げましたような一般的な日本政府考え方というものを、すでに外交経路を通じて先方に伝えていることは事実でございますが、にもかかわらず韓国では、まだ日本政府姿勢について必ずしも十分な理解と納得を得ていない面があるものですから、その点を今回の親書によって、最高責任者たる総理の手紙によって再確認して、そして韓国側にもし誤解があるならばそれを解いて、そうして冷静に日韓間で話を進めていきたいと、こういう趣旨でございます。
  177. 橋本敦

    ○橋本敦君 それならば、そういう立場で誤解を明確に解くことを前提とするならば、まず韓国政府が要求している朝鮮総連に対する活動の規制とか抑圧、こういった問題は、現状において何らそれを向こうの要求に応じて規制する法的根拠もなければ、やるべき筋合いのものでもないということは、具体的に公的に説明する必要があると思いますが、その点のお考えはいかがですか。
  178. 中江要介

    説明員(中江要介君) この事件に関する韓国側の捜査協力の対象になっております事項は、大小いろいろございまして、いま御指摘の朝総連という団体の扱いもその一つであり……
  179. 橋本敦

    ○橋本敦君 まずそれから答えていただきたい。
  180. 中江要介

    説明員(中江要介君) それを一つ一つ総理の親書の中でどうしていくということではなくて、日本政府の一般的な姿勢をこの際韓国側にはっきりさせる。あとの個々の具体的な問題については、これは日本側の捜査当局にもいろいろ御意見、御注文があるわけでございますので、十分協議しながら、先方とさらに不明な点は解明を急ぐというふうに進めたい。いまここで具体的な問題について一つ一つ白と黒をはっきりさせてしまうというには、まだまだ前提になる事実関係その他については明確でない点がございますので、いまこの段階で親書を出すということになりますと、えてして、先ほどから申し上げておりますような一般的な基本姿勢を先方に正しく伝えるということに眼目が置かれるようになろうかと、こういうふうに思っております。
  181. 橋本敦

    ○橋本敦君 問題はまた逆戻りしましたけれども、それでは基本的に正しくないということなんですよ、私が言っているのはね。だから、韓国政府が日本国内における朝鮮総連の皆さんの活動を制圧してもらいたいというような要求、意向があるときに、それは一般的に日本憲法の立場からしても当然できることではないということは、日本政府として責任もってこれは明確にいまできるではないか。これをまずやらなければ、いつまでもその要求は、一般的抽象的に今後誠実に捜査に協力しますと、言うだけでは、問題は残ってしまうではないか。朝鮮総連の向こう側の見解と要求については、これは日本国法としてとても受け入れることはできない、こういう姿勢がまずなければならないのではないか。これが一つなんですよ。これを一般抽象論にごまかして——ごまかすということばは撤回をいたしますが、一般抽象論で親書を送ったところで、日本政府の真意も実際の実情も伝わらない。一向打開の展望が開けないと私は思います。重ねてその点、日本政府の立場として向こう側にはっきりさせるという、そういう立場をとる意思があるのかないのか、もう一度その点だけおっしゃっていただけませんか。これははっきりしていることですから。
  182. 中江要介

    説明員(中江要介君) 朝総連の取り扱いというものが先方から提起されております前提といたしましては、今回の事件と朝総連との関連性をどう認識するかによって出てきている問題だと、こういうふうに思うのですが、これはわがほうの捜査当局とのただいままでの御相談のところでは、必ずしもそこは、日本側としてももう少しその因果関係といいますか、直接の結びつきについて事実をきわめる必要がある。いまここで、朝総連という団体が今回の事件と関連があって、それを規制する必要があるかないかを議論するような段階にまで来ているかというと、その点を含めまして、この事件の全貌についてまだはっきりしていないという段階なものですから、そのこと自身に触れることは、いまではまだ尚早であるというふうに私どもは考えている次第でございます。
  183. 橋本敦

    ○橋本敦君 現段階において、朝総連の活動に違法性があるとか、規制しなければならない必要性があるとかいう具体的事実は一切ない、これははっきりしてますね。
  184. 中江要介

    説明員(中江要介君) これは外務省としてお答えすべき性質のものでないと思うのでございますが、この事件に関連してでございますれば、その団体なり個人が何びとであれ、この事件に関連して日本において犯罪行為があればこれは規制しなければならないということ以上には、ちょっと団体自身の性格は外務省では申し上げることがむずかしいかと思います。
  185. 橋本敦

    ○橋本敦君 奥歯にはさまったものの言い方ですが、これはたとえばきょうの新聞報道でも、後宮大使がソウルへ帰った記者会見で、韓国側が要求している在日朝鮮総連組織に対する制圧については「関係当局の意見は」——外務省も私は含むと考えていますけれども、後宮大使がこう言っているという報道だから。「関係当局の意見は、国内法の範囲を越えることは一切できないという点で一致している」、つまり日本国内法を越えて、韓国が言うような制圧なり活動規制をいま直ちに行なうという状況にないということをはっきり言っているものと理解すべきだと思いますが、それは外務省もそういう考えじゃないのですか。
  186. 中江要介

    説明員(中江要介君) それは先ほど私も申し上げましたように、それが朝総連であれ、その他の団体であれ、法に違反するものはこれを法に従って処断するというのは当然でございますし、また法に触れないものをどうこうすることは憲法上できないということもはっきりしておるわけでございますから、その点は私ども誤解はないので、私が申し上げようとしましたのは、今度の狙撃事件との関連における特定の団体についての行為その他についてはまだ何とも言えない、こういうことでございます。
  187. 橋本敦

    ○橋本敦君 それに関連して法務省の見解を問いたいと思うのですが、これはこの前佐々木議員が問われたことにも関連をするのですけれども、わが国の刑法第二条の関係において尋ねておきたいと思うのです。  御存じのようにわが国の刑法第二条は、日本国外において特定の犯罪について罪が犯された場合には本法を適用するということになっていて、その第二条には百九十九条の殺人罪の規定は適用はない。したがって日本国外における殺人罪については、原則的には何びとであるといえども日本国法を適用して処罰するということはあり得ないということは、刑法第二条の関係からいって明白だと思います。その点について法務省の見解は、私が言うとおりですか、いかがですか。
  188. 筧榮一

    説明員(筧榮一君) たとえば外国におきまして外国人が殺人を犯した場合に、わが刑法は適用されないという点ではそのとおりだと思います。
  189. 橋本敦

    ○橋本敦君 そうですね。そういたしますと、わが刑法は、殺人という実行行為の本来の犯罪をかりに教唆した場合においても、一般的に共犯との関係における問題として、わが刑法では殺人罪と別個に殺人罪の教唆を独立して処罰する規定を置いていませんから、したがって二条の関係で、外国で犯された外国人の犯罪行為について、つまり殺人行為について、教唆という問題で日本国内においてこれを問題にして取り上げるということは、日本の刑法の適用上不可能ではないか。なさるべき問題ではないと、こう考えますが、いかがですか。
  190. 筧榮一

    説明員(筧榮一君) 私が先ほど申し上げましたのは、外国人が外国で殺人を犯したという点でお答えしたわけでございます。  ただいま先生御指摘の共犯関係でございますが、たとえば外国で実行行為が行なわれました殺人行為につきまして、日本国内においてこれに、いろいろな形の共犯形態がございますが、何らかの形でこれに関与する行為が行なわれたという場合に、その者について国内法、日本の刑法が適用があるかないかという点につきましては、そのもととなります事実関係が基礎となると思います。その事実関係に基づきまして判断されるべきことと思いますが、しいて一般論として……
  191. 橋本敦

    ○橋本敦君 共犯論としていえば。
  192. 筧榮一

    説明員(筧榮一君) 先生御承知のとおり積極、消極、いろいろな談があろうかと思います。しいて申し上げますならば、その行為の形態、その犯罪の実態いかんによりましては、犯人の国籍いかんにかかわらず、わが国の国内法、刑法を適用し得るといいますか、適用する場合もある得ようかと思います。ただ、あくまでもこれは事実関係に基づいて判断さるべきことであろうかと思います。
  193. 橋本敦

    ○橋本敦君 あなたがおっしゃったのは事実関係に基づいてと、こう言うのですが、法務省の一般的法解釈の見解として、本犯が処罰される可能性がないのに、それの教唆その他の従犯もしくは幇助、こういった関係の行為が処罰の対象とされる筋合いがないというのは、いわゆる共犯従属性説といわれる説、最高裁の判例もこの説をとっていますが、その説からいって一般理論としては当然だ、これは法務省だってそうじゃありませんか。もう一ぺん答えてください。
  194. 筧榮一

    説明員(筧榮一君) ただいまの共犯従属性の理論はございますし、ただいまの共犯関係の犯罪地等につきましてもいろいろ判例もございます。しかし、これにつきましては、これを積極に解する説もございます。したがいまして、この点につきましては、私どもとしては具体的事犯が起こりました場合には、その事犯に基づきまして慎重に検討して結論を出したいと考えておりますが、いま一般的に、しいてということでお答え申し上げるとしますならば、わが国内法を適用する場合もあり得ようということになろうかと思います。
  195. 橋本敦

    ○橋本敦君 これは法務省の立場として私ははっきりしておきたいのですが、あり得よりというのは一つ可能性であって、刑法理論の通説的見解に従えば、これは共犯従属性説をとる限りはあり得ない。通常はですよ、原則的にはあり得ない。これは当然ではありませんか。法務省は共犯の問題について、独立性説をとっておるのか、従属性説をとっておるのか、統一見解でもあるのですか、いかがですか。
  196. 筧榮一

    説明員(筧榮一君) 何説をとっておるということではございませんで、それぞれ具体的事犯に関して最もといいますか、法律を適用して裁判を求めておるわけでございますが、ですから、ただいまの御指摘の場合におきましても、具体的事犯が起こった場合に慎重に検討することになるわけでございますが、いま最初のお話のように、そういう共犯については全く適用の余地がないんだというふうには考えておらないという趣旨でございます。
  197. 橋本敦

    ○橋本敦君 そういう見解は、学者の見解の中で少数説だということは認めますか。多数の学者は共犯従属性説をとっておるということではありませんか。
  198. 筧榮一

    説明員(筧榮一君) 共犯従属性説、独立性説と二つに分けて、どちらかが多いかというようなことは言えないかと思います。私ここで申し上げますことは、このような特殊な形態の場合に、はたして国内法を適用されるかされないかという点については、そう詳細に論じた学者もいないかと思いますが、積極説、消極説、両方あると承知いたしております。
  199. 橋本敦

    ○橋本敦君 私が言うのは、積極説、消極説、両方あることは私だって知っていますよ。日本の刑法学会なり大かたの見解が共犯従属性説を基本としているという事実、これについては御存じでしょうと、こう言って聞いているのです。いかがですか。
  200. 筧榮一

    説明員(筧榮一君) いま先生のおっしゃるとおりだと思いますが、従属性説、独立性説、その内容にもいろいろニュアンスがあると思いますし、そのいずれの説をとりましてもと申しますか、ただいま問題になっておりますようなきわめてまれな場合に、どう解釈すべきかということはまた別といいますか、それに派生する問題であろうかと思います。
  201. 橋本敦

    ○橋本敦君 それじゃ、具体的な事実関係を検討しながら見解を伺いましょう。  まず第一に、大統領狙撃事件について「被疑者文世光の陳述内容」というものが警察庁に寄せられているようです。それの要旨あるいは大要についてはすでに八月二十八日の毎日新聞等で報道されている問題ですが、この「文世光の陳述内容」、いわゆる日本で言えば自供調書に該当しますけれども、これは読んでみて、決定的にこの事件の解明に欠落している重大な問題が幾つかある。これは山本警備局長にお聞きしたいのですが、そのまず第一は、午前にも議論がありましたが、どのようにして文世光がその会場へ入ったかという問題、どの距離からどのようにピストルをかまえて行動したかという自分の行動の問題それからさらに何発発射したかという発射態様の問題、こういう実行行為そのもの自体、これがまさにこの自供といわれる陳述内容には全く欠落していますが、これは間違いありませんか、山本警備局長。
  202. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 全く間違いございません。
  203. 橋本敦

    ○橋本敦君 そういたしますと、大統領狙撃事件と関連して「文世光の陳述内容」として韓国のほうから寄せられてきた書面は、まさに背後関係が朝総連あるいはその他の者が教唆その他の態様で協力をし、あるいはこれを使嗾したということ、まさに背後関係を中心とした供述、ピストルの窃盗に関する供述、この二つであって、事件そのものを本質的に解明する狙撃犯という殺人行為それ自体の事実解明が全くなされ得ない資料しか送ってきていない。これはもう警察庁もお認めのとおり。  こういう程度の段階のときに、しかも警察庁から向こうに具体的にこれらの点について照会をしても答えてこないという段階のときに、外務省がいやしくも総理の親書によって、今後捜査には協力するということを重ねて日本政府からこれを言うというような問題は、時期尚早どころか、まさに事案の解明を全くなそうとする姿勢を忘れたものと言わねばならぬし、問題をさらに紛糾させる、こういうおそれがあると私は心配をしておるのですが、こういう状況のときに、なおかつ一般的に捜査協力しますということを親書で言って、政府は責任が持てますか。韓国政府自体が捜査に、事案の本質的解明に努力をしない、協力もしない、日本に捜査だけ協力を求める。肝心なことは隠していて言わない。それで日本政府が親書で捜査に今後も協力します、こういったことを言って、日本政府は今後起こり得るであろう紛争一切について責任が持てますか。この事態をどう考えますか。次長、いかがでしょう。
  204. 中江要介

    説明員(中江要介君) ただいまの点は、私ども考え方は、先生のおっしゃったのとは逆なところから考えておるような感じがいたすわけでございますが、これはまず事件が日本国と無関係のものでない、その中には日本の法律違反を前提とするような事実関係が出てきているというふうなことでございまして、そういうこともあり、日本側の捜査の協力を得たいということをまず先方はわがほうに、金国務総理の文書その他をもって申し入れてきているのに対しまして、わがほうはいままで口頭その他では回答しておりますけれども、田中総理の書面という形ではまだ回答していない段階で、この数日来、韓国における反日機運というものが異常に盛り上がっている。  したがって、かりに捜査に関する資料の要求、あるいはそれについての解明を求めるにいたしましても、冷静な雰囲気の中で話し合わなければ事柄が進まない。したがって、いまの反日ムードの根源になっております日本政府姿勢に対する誤解といいますか、誠意がないときめつけておるその考え方は事実ではないんだということをまず示すことによって、日韓間のいまのさめ切っている機運を冷静なものに鎮静化して、その上で個々の具体的な問題については話し合いをしていこう、こういう考え方、発想になっておるわけでございまして、今回一般的な姿勢を明らかにすることによって、将来の個々の具体的な問題についてまで、すべて日本政府が責任を負うような形になるというふうには私どもは考えていない、こういうことでございます。
  205. 橋本敦

    ○橋本敦君 外務省は今度の親書をそういう趣旨で送ると言うのだけれども、そもそも韓国政府自体が、文世光があの会場へどうして入ったか、どの位置からピストルを発射したか、こういった事件の具体的事実そのものについて、捜査に協力せいというならば、まず明らかにしなさいということをまず指摘しなければ、話は一向進まぬのじゃないですか。  田中総理が異例の、外交慣例を破ってあちらへ行って弔意を表し、その際捜査に協力しますということを言ってきているというのは、もうすでに新聞報道に出ていますよ。だから、捜査に協力するということを言い続けること、重ねて親書で言うことが問題の解明になることは考えられぬですよ。むしろ向こうの捜査に協力せよと言う、そのこと自体が不法な要求を含み、かつまた日本国法の適用できない要求を含んでいることを積極的に明らかにして、そのことを明確にすることが反日デモの誤解を解く、鎮静する前提であるというのがわれわれの国民的常識なんです。そういう国民的常識に立って親書を検討するという姿勢にどうしてなれないのですか、重ねて答弁を求めます。
  206. 中江要介

    説明員(中江要介君) 御指摘のような点につきましては、もう先方から要求がありました時点から、わが国の捜査当局と緊密に連日協議を重ねまして、どの点をどういうふうに解明していかなければならないかというような質問事項その他をまとめて、事務的に韓国とは交渉しておるわけでございますけれども、他方、いま日韓間にありますこのムードの問題、特に韓国における反日機運の問題は、これは事務レベルで捜査の具体的な個々内容についての解明を待っておるほどの時間的余裕がないという判断が他方にあるわけでございまして、これは高度の政治的な問題として、まずこの反日機運のムードを鎮静化するということが何よりも先決である。またそれは一週間、二週間といって時間的余裕を持つほどのものでないという認識があるものですから、したがっていまのところは、個々の具体的な問題は別途、鋭意解明なり補足説明を求めることは当然でございますし、その場合には、先生も御指摘のように、わがほうとしてはできること、できないことをはっきりしておるわけでございまして、その点は十分意を尽くして説明しながら事柄の究明に当たるわけですけれども、この数日来の動きというものは、これは韓国における反日ムードが日本で想像している以上に緊迫したものであるという認識が前提となって、いまのところは総理親書を考える段階にきている、こういうのが政府の判断でございます。
  207. 橋本敦

    ○橋本敦君 いまの方針はとうてい納得できませんが、時間がないので次の質問に進みます。  向こうから「文世光の陳述内容」を通読した一つの特徴は、朝鮮総連の金政治部長が約一年間にわたって毎月平均二回程度、文世光の家に出入りをしている、その間、朴狙撃事件を教唆したという書き方が、これが一貫してなされているという筋書きになっているのです。これは朝総連及び金政治部長は全面的に否認をしている。いままでの日本警察の入った情報ないしそれに関係する公安調査庁の情報で、こういう事実は把握されておりますか、おりませんか。警備局長、いかがですか。
  208. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 金浩竜氏が機関紙を配布しておったという形で、文の家へそういうものを持っていったということは認められますが、月に二度、長期間会ったというところまでわれわれは事実を把握しておりません。
  209. 橋本敦

    ○橋本敦君 機関紙じゃなく、果実酒、ニンジン酒等ですね、こういうものを持っていっているという供述になっておりますね。そういう事実は把握しておられない。  ところで、最後に金政治部長と会ったと文世光が主張するのは、これは七月二十四日の夜八時ごろだというように陳述をしている。ところがこれがまた、文世光の家の入り口の路地のかどで会おうというような電話連絡をしている。午後の八時ごろといえば、七月の夜、まだ人通りもたくさんある宵のころですね。自宅付近の路上で会って、しかも八十万円渡したというようなことを言っている。これはまさに、人目につく路上でこういうことを毎月平均二回も文世光の家を訪れている人間がなし得るかどうかということについては、客観的に重大な疑問のある信用できない供述だというにおいが、これ自体強いと思います。こういう点につきまして一体、信用性があるのかどうか。警備局長のいままでの経験からの御判断、いかがですか。
  210. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) まあ、重要な問題だということで、特定の場所で会うと発見されるので路上で会うというようなことを考えられないわけではないのですけれども、これまで捜査では、そういう事実を確認するには至っておりません。
  211. 橋本敦

    ○橋本敦君 さらにピストルの問題について言えば、韓国から、赤不動病院で射撃訓練を受けたとかなんとか、これは全く事実に反することは一見明白になりましたが、そういうことが言われていたわけですが、この文の陳述書のどこを読んでも、実弾射撃の演習を一回でもやったという事実は全然ないですね、全然ない。全くのしろうとである。ところで、あの拳銃を発射して、一回も射撃をやったことのないしろうとが射撃をするとして、どのくらいの距離が命中度のある距離だというようにお考えになりますか、通常の判断として。
  212. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 通常の判断といって、あれでございますが、普通の人は、普通の身体的能力を持っており普通の判断力を持っている人がやれば、それは常識的には、必ず当たるという距離はこれは数メートルの中だと思います。
  213. 橋本敦

    ○橋本敦君 それについて文の自供によれば、一メートルの至近距離まで接近して撃てば一〇〇%命中するというように言われたと、こう言っている。これは子供でも言えることですよ。一メートルまで行って撃ったら当たるというのは、あたりまえのことです。こんなことを言われたと文世光は供述をしておるんだが、こういうことは全く子供が言うことであって、ほんとうにピストルによる殺人の教唆をする技術者、もしくはしろうとに対する教唆指導という点から言えば、こんな子供の言うようなことを言うということは、通常考えられないと私は思うのです。  もう一つの問題として言えば、文世光の自供によれば、どうやってどう撃ったらいいかという、しろうとに対する技術的な教唆なり指導が全然ない。書いてあるところは、一メートルから撃ちなさい、しかも、引金は「真夜中に霜がおりるように静かに引っ張らねばならない」、こんなことはもうピストルを発射する技術上の問題じゃないんですよ。だれでも、子供でも言えることです。こんなことを金政治部長から言われたと、こう言っているです。こういう供述自体、もうすでに信用性がないと言わねばならぬと私は見ているのですが、そのような検討をなされたことはありますか、いかがですか。
  214. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) ただいま拳銃関係の問題でございますが、そういう意味では先生のおっしゃるとおりだと思いますが、しかし全般的に、また特に拳銃の窃取の関係とか、あるいは出入国の関係ですね、こういう面では実際そういう事実もあったということもあるわけでございますので、われわれはどこまでも客観的にこれは追及して真実をつかもうということで、予断、即断なくいま進めているところでございます。
  215. 橋本敦

    ○橋本敦君 その客観的事実はしっかり把握するという意味でけっこうですが、聞きますが、あの現場の写真で、拳銃をかまえて発射している写真まで毎日グラフその他で報道されておりますね。あれから推定し、情報を総合すると、何メートルぐらい前から文世光は発射したと推定されますか。大体でけっこうです。
  216. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 全くの推定でございますが、大体二十メートルぐらいからじゃないかと推定されます。
  217. 橋本敦

    ○橋本敦君 したがって、そういう意味じゃ文世光は、かりにそれを言われたということであっても言われたとおりにしていないし、言われていないから、そういうように一メーメル近づいて撃てというようなことは言われていないから、実際そうやっていないんだと見ることができるし、しろうとが撃って命中度が高い距離よりはるかに遠い距離から撃っている。しかも情報によれば、小走りに走ってきて撃っている。なおさら命中度は低いというのはあたりまえです。こうなりますと、文世光のこの自供には、日本の捜査当局が冷静に客観的に検討して、これ自体信用できないと考えねばならない疑わしい状況が、幾つもの点にわたってあるというような検討はなされておられませんか。当然あり得ることだと私は思って聞くのですが、いかがですか。
  218. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) まあ、そういう点も確かに若干ございます。
  219. 橋本敦

    ○橋本敦君 たとえば文世光は、この前も佐々木委員や私が申し上げましたけれども、万景峰号の船に乗ったその日時をすぐ書いてきた。この陳述内容によりますと、船に乗って、朝鮮民主主義人民共和国の者と考えられる人から特別工作員として指示を受けたとまで、こう言っていますね。ところが、ふしぎなことに、その人に会うように案内した人の人相書は、彼は絵で書いていますね。ところが一番大事な、朴大統領を狙撃せよということを命にかけてやれとまで言った、その人の人相書は書いていない。これは一つの問題だ。しかも、その人相の特徴たるや、彼の供述によりますと全く抽象的、一般的な、人を特定するに足る特徴といえない程度のことしか言っていない状況があります。これは山本警備局長も御存じのとおりだと思います。  たとえば身長が百六十二センチ程度であるとか、それからさらに着ていたものが紺色の上着、それから下着を着ていた。年齢は四十歳ぐらい、こういう程度では全然特定できない。かろうじてあるのは、頭部がはげていた、こういうことですね。通常、印象として人相あるいは人を特定する場合、めがねをかけていたかどうか、目の輝きはどうか、顔色はどうか、面長かどうか、幾つかの特徴があるんですが、一切言っていない。案内人は顔の絵を書いている。ここらあたりも、ものごとの比重から考えて、なぜこの特定ができないのかという点に疑問を持つのです。  これは特定できないのは、そういう工作員と会った事実がないから一般抽象的なことしか言えないという推定も、私は可能だというように考えるのですが、いずれにしても、このように客観的に常識的な捜査の情報ないし判断からすれば、文世光の供述は、これ自体全面的に信用して軽々にこの線に沿って捜査の裏づけをするというような行動を、日本警察はとるべきでないという判断に私は到達しますが、この点について警備局長の御意見はいかがですか。
  220. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 部分的にはおっしゃるとおり不明確な点、あるいは何といいますか、不十分な点、多々ある面もございますが、しかしまた一方、かなり正確な面もある、いろいろとございますので、先ほど申し上げましたように、われわれはどこまでもこれは一つ参考といたしましてその真実をきわめていきたい、こういうつもりでやっております。
  221. 橋本敦

    ○橋本敦君 たとえば、いま正確な点とおっしゃいましたが、ピストルの窃取について、これは先ほど佐々木委員あるいは矢田部委員に対する答弁の中で、文世光がとったものであろうという推定が高いといいますか、そういう判断がされている。ところが、私はそのピストルの窃取についての文世光のこの陳述を見ても、これはにわかに信用することができないという幾つかの問題をこの陳述内容から考えるのですが、たとえばこう言っていますよ。ピストルの窃取を一九七四の七月初旬ごろから考えた。そして実際にとったのは七月の十八日ですね。だから、ほとんど時間がない。その間どの派出所からとろうかと思って、神戸、奈良、京都、大阪、この近畿四県の派出所をずっと見て回った。そうすると大部分の派出所が二階建てで侵入しがたいので、高津派出所が一階なのでねらったと、こういう言い方をしている。実際、初旬ごろに考えて、この四つの県のたくさんある派出所を全部見て、大部分の派出所が二階に位置しておって侵入がむずかしいというようなことを、この十八日まで実際にやれるような状況なのかどうか、これだって問題だと思うんですね。  一つ聞いておきますけれども、京都、奈良、大阪、神戸、ここらの派出所で、大部分は二階に位置して侵入しがたいという、どういう意味かよくわからぬところもありますがね、こんな派出所は二階が多いという状況はありますか。いかがですか。
  222. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 私、どの程度の数の派出所を彼が調べたか存じませんが、必ずしもそういう全部二階だというはずはないと思います。
  223. 橋本敦

    ○橋本敦君 私だって大阪だから、よく知っています。一階は高津だけじゃないですよ。したがって、正確なところもあるとおっしゃったけれども、こまかい議論はしませんが、基本的に日本に届けられた文世光の現在の陳述内容それ自体は、矛盾もしくは客観的に信用しがたい点が多い、軽々にこの線に沿って動くことはできないという慎重な態度を警察は基本的にはとっておられると思うし、とるべきだと思いますが、その線は変わりありませんか。確認的にお伺いします。
  224. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) いずれにしろ、この陳述要旨はわれわれの捜査の参考ということで、これは十分参考にはいたしますが、これをうのみにして捜査するというようなことはいたしません。
  225. 橋本敦

    ○橋本敦君 そこで法務省に重ねてお伺いするのですが、いま明らかになっている事実関係は、この陳述内容に見られること以上には出ないわけですね、資料は。吉井氏に対する旅券法違反の幇助という問題は、これはもう別に起訴されている事件ですから、それはそれで終わりですよ。少なくともこの狙撃事件に関連して、いわゆる共犯論で処理できるような、と見られるような事実関係は現にありますか、ありませんか、いま私が聞いた程度で。いかがですか、あなたは事実によって考えると、こうおっしゃった。
  226. 筧榮一

    説明員(筧榮一君) 捜査上の捜査の内容については私ども深く承知いたしておりませんが、先ほど申し上げましたのは、事実関係が明らかになった上で、共犯といいますか、その形態、実態等に応じて国内法を適用し得る場合もあるということでございますので、いまの事実関係でどうかといわれましても、ちょっと結論を申し上げかねると思うのです。
  227. 橋本敦

    ○橋本敦君 そうお答えになるだろうということは予期はしておったのです。少なくとも、いま警察がこういう慎重な態度をとる。金政治部長を被疑者というような扱いでは絶対しておられないでしょう。山本局長、この点は間違いありませんね。
  228. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) はい。
  229. 橋本敦

    ○橋本敦君 これははっきりしていますよ。大阪の毛利与一弁護士以下が、この金政治部長に対する警察の取り調べ、介入ということがあってはいけないので、弁護人選任届を持って面会に行き要請をしたら、被疑者で扱っているわけじゃありませんから、弁護人選任届はお受けできませんということで、これは返されていますからはっきりしている。  そうなりますと、基本的にこの狙撃事件に関して、現段階においてわが日本国内法の適用と事実関係の調査の段階では、捜査を積極的に協力して朴狙撃事件の共犯もしくは共犯に類する行為として捜査を遂げねばならないような事情と事実関係は基本的にはないのだと、これははっきりすべきじゃないか。それをはっきりしないで、親書で捜査に協力をしますというようなことを言うことは、さらに今後に禍根を残すことになるのではないか。こういう捜査状況なり法律上の問題があるということは、外務省で検討されましたか、されませんでしたか、その点をお伺いしたいと思います。
  230. 中江要介

    説明員(中江要介君) 事件の捜査に関しましては先方から来ます捜査報告書その他の判断、それに対するわがほうの捜査当局の反応、そういうものにつきましては捜査当局と緊密に連絡をとりながらやっておりますし、その判断は、もっぱらわが国の捜査当局の御判断に従って行動しているつもりでございます。
  231. 橋本敦

    ○橋本敦君 それなら聞きますよ。重ねて最後に聞きます。今後捜査に誠実に協力します、こういうことを親書で書くというのだから、何をどう協力するのですか。これは先ほどおっしゃったように、一般論ですと断りますか。それとも具体的に捜査協力することがあるのですか。いかがでしょうか。
  232. 中江要介

    説明員(中江要介君) 先ほど申し上げましたように、具体的にどれとどれに協力できる、できないということを判断し得ない状況、換言いたしますと、いま捜査当局がおっしゃいましたように、非常に慎重な態度で臨んでいるということでございますので、今回の親書に捜査協力に関する一般的な姿勢を表明いたしましても、そのことは、具体的な問題についての日本政府の立場をあわせて何らかの形で明らかにしているものとはならないように、細心の注意を払う次第でございます。
  233. 橋本敦

    ○橋本敦君 細心の注意をほんとうに払ってください。次から次へ要求が出てきますよ、政治的な要求が。そのために、この親書では、一般的に捜査に協力しますというようなことをやめて、現段階を正確に向こうに伝える、そうして日本国法の適用の問題をむしろ明確にするということこそ望ましいことであると私は考えるのです。しかるべき時間の余裕があれば再検討をしていただきたいということをお願いをして、次の質問に移りたいと思います。  早川、太刀川両氏の問題なんですけれども、これは懲役二十年の判決によって、たいへんな問題にまたなってきました。昨日の新聞報道でも、その手続においても内容においても説得力に乏しい判決だというような新聞は報道したし、家族はまさに胸張り裂ける思いであるというように言っております。  ところで、法務省あるいは次長お尋ねをしたいのですが、国連憲章、それに関連して世界人権宣言が出されているのですが、この人権宣言は、一般的にいって今日の国連加盟国及び世界の各国が当然尊重すべき人権擁護の基本原則であるというふうに理解すべき性質のものだ、これは異論はないと思います。その点は政務次官、いかがですか。
  234. 高橋邦雄

    説明員高橋邦雄君) 私もそう思います。
  235. 橋本敦

    ○橋本敦君 そうすれば、この人権宣言の第十一条の一項を読み上げさせていただきましょう。「何人も、刑事犯罪の告訴を受けた者は自己の弁護に必要なすべての保障を与えられた公開の裁判において法律に従って有罪と立証されるまでは、無罪と推定される権利を有する」ということが明記されているわけです。  こういう点で、控訴審の事実調べも行なわず、弁護人との独立の接見、面会も認めず、金芝河氏の事件に至っては弁護人の法廷での言論を懲役十年に処するといったような裁判手続が行なわれている韓国の現状は、まさに世界人権宣言の十一条にまっこうから反している。これは疑いのないところだと思いますが、そうは思われませんか。いかがでしょう、政務次官。
  236. 高橋邦雄

    説明員高橋邦雄君) 人権宣言の精神というものは、いま仰せられたとおりでありますし、私もそう思うのでありますが、それぞれの国に裁判制度にいたしましても行刑制度にいたしましても、いろんな差のあることもこれは事実でございます。早川、太刀川両氏に対しては、韓国において犯罪を犯したというふうに認定をされまして、韓国の法律に基づいて処置がなされておる、こういうことでありまして、その韓国の制度なりあるいは法律なりが適当であるとかないとかということを、私がここで論評するのは差し控えるべきであろうというふうに考えます。
  237. 橋本敦

    ○橋本敦君 もう一つ問題として、いわゆる刑罰不遡及の原則ということにも大統領緊急令が違反しているという問題は、法務委員会でも議論されたとおりです。今度は緊急令一号あるいは四号が解除された。普通の場合、日本の国内法の立場でいえば、処罰の基本法である一号あるいは四号が解除された以上、当然今度の控訴審判決においてはどういう判決が、日本の法の立場ではあるべきでしょうか。法務省、いかがでしょう。
  238. 筧榮一

    説明員(筧榮一君) 本件を離れまして、一般的に日本の国内法で申し上げますと、刑罰規定がありまして、その裁判中にその罰則が廃止されたという場合には、免訴になろうかと思います。ただ、本件の場合には、私ども承知しておりますところでは、廃止の大統領令でございますか、それには、すでに確定した者あるいは裁判係続中の者はこの限りでないという附則を設けているように承知しております。
  239. 橋本敦

    ○橋本敦君 だから、わざわざ解除したとはいうものの、実際は解除していない事例なんですよ。いまおっしゃったとおりです。本来は判決として当然免訴判決がなされなければならない。しかるに、かわいそうに二十年の懲役にまたなっている。こういう問題です。  大体この人権宣言は、結社の自由を当然の権利として認めているし、いま言った事後刑罰法の禁止、これを十一条で認めているし、さらに適正な裁判、とりわけ、保障された公開の法廷において裁判を受ける権利を世界のすべての人の人権として認めているし、何一つとってみても、現在の韓国の体制が国連が予定した人権宣言に違反している数々の事例は、数えるいとまがないです。  ところで、日韓基本条約についてどううたわれているかという問題を検討してもらいたい。日韓基本条約の第四条によれば、(a)項で、日韓「両締約国は、相互の関係において、国際連合憲章の原則を指針とするものとする」、(b)項において「両締約国は、その相互の福祉及び共通の利益を増進するに当たって、国際連合憲章の原則に適合して協力する」、こういうように日韓条約では明記されている。つまり日韓条約の基本原則は、国連憲章並びに国連が今日世界的基準としている人権保障の規定、これを守ることを指針とするということを日韓条約で明確にうたっている。  ところが、現に行なわれている実態と裁判、早川、太刀川両氏を含む問題は、明白に国連憲章のあれこれの条項に違反をしておる。韓国の国内法のあれこれを問題にするのじゃなくて、客観的に国連人権保障規定に違反するこの事実が存在すること、早川、太刀川氏にこのような重刑を科しているという現実の状況は、日韓条約に違反するのではないか。この点どう考えられますか。次長、いかがですか。この点、検討されたことがありますか。これは日韓条約の基本条項ですよ。
  240. 松永信雄

    説明員松永信雄君) 日韓基本条約第四条の規定は、ただいま先生がお読みになりましたとおりでございまして、日韓両国とも、この第四条の規定のみならず、日韓基本条約のすべての規定は厳重に尊重して順守すべき義務を相互に負っているわけでございます。  ただ、ここで申しております第四条の「国際連合憲章の原則」という場合の「原則」と申しまするのは、国際連合憲章第二条に掲げておりますところの諸原則のことをうたっているわけでございます。そしてこの規定は、この国際連合憲章第二条の原則に従って両国が行動するということを約束しているものでございまして、私ども日本国はもちろんでございますけれども、韓国も日韓基本条約の諸規定は厳重に守っていると考えております。
  241. 橋本敦

    ○橋本敦君 あなたは二条だけを問題にされるが、国連憲章の前文総則は、ごらんになったらおわかりのように、国際関係を維持する基準として人権の尊重、これが基本的に重大な問題になっています。そうですね。二条は国家間の主権の維持、この問題が問題になっています。だから、二条だけおっしゃるけれども、この日韓条約でいう「国際連合憲章の原則」というのは、明文で二条だけと特定していませんよ。一般的に国際連合憲章が示す人権保障規定を含む原則、これが適用されるというのはあたりまえのことじゃありませんか。これは二条だけだという限定解釈が日韓条約で附則で、あるいは覚書でも締結しているんですか。その点、はっきりしてください。
  242. 松永信雄

    説明員松永信雄君) ただいまの私が申し上げました国連憲章の原則ということは、第二条に掲げる原則であると私は解釈いたしております。
  243. 橋本敦

    ○橋本敦君 人権規定は関係ないと言うのでしょう、あなたは。
  244. 松永信雄

    説明員松永信雄君) 直接には関係ないと思います。
  245. 橋本敦

    ○橋本敦君 関接的には……。国連憲章の原則という音一味において。
  246. 松永信雄

    説明員松永信雄君) これは実は、先ほど指摘がございました世界人権宣言の問題につきまして私どもの解釈を申し上げれば、これはすべての国民、国家が達成すべき共通の基準として人権宣言というものは宣言されているわけでございます。これが直ちにその中に書いてあります事項について各国が、国内でこれを法的に実現する義務を持っている、法的な拘束力を持っているとは解釈されておらないわけでございます。あくまでも一つの指針と申しますか、基準として考えていくという性質のものだろうと考えております。
  247. 橋本敦

    ○橋本敦君 時間がもうありませんから、この問題は、要約しておしまいにしますけれども、世界人権宣言の示す人権規定と原則が、これが条約として法的拘束力を持っているというように私は言ってないですよ。少なくとも各国家が目ざすべき今日の規範的な原則を示しているし、各国家はこれを尊重して国内的にも人権尊重をやるという、そういうような一般的な意味における義務が今日の国際社会においてはあるんだ、こういう立場に立たなければ世界人権宣言というのは意味をなしませんよ。だから、いまあなたがおっしゃった解釈は、法的拘束力がないということをおっしゃったその限度においては、その解釈は成り立つ余地は私も法律家として認めますが、現在の国際法の動向なり、現在の考え方は、これが法的拘束力を持つかどうかということ以上に、これをやっぱり守るという原則をどのように国際的に各国が、あるいは国際間においてやっていくかということのほうがむしろ課題になっている時代なんだ、そういう趨勢なんだということは御理解くださっているでしょうね。いかがですか。
  248. 松永信雄

    説明員松永信雄君) 一般論として申し上げますれば、先生がいま抑せられましたように、国際法の分野におきまして、人権擁護の問題が非常に広く近年論議されるようになっております。そしてまた、そのためにいろんな条約の締結が試みられております。私どもといたしましても、こういう国際的な努力が積み重ねられまして、そういう国際実定法と申しますか、条約ができるだけ多く結ばれていくことがきわめて望ましいというふうに考えているわけでございます。
  249. 橋本敦

    ○橋本敦君 この問題の最後に次長伺いしますが、金大中事件についての原状回復の問題、あるいは早川、太刀川両氏の即時もしくは早期釈放、完全な人権保障の擁護という問題を、これを韓国に正式に強く申し入れるということを今度の親書と並んで早急に行なう必要があると考えますが、この点の判断はいかがですか。
  250. 松永信雄

    説明員松永信雄君) 金大中事件及び太刀川、早川両氏に関連する日本政府態度は、方針はいままでどおりで何の変更もございません。ただ、先ほど来累次申し上げておりますように、いま異常に高まっている反日ムードがもう少し鎮静化して冷静になりましたら、できるだけ早い機会に私どもの基本方針に従って韓国政府と問題の解決に努力したい、このことは片時も忘れずに私どもは対処しておるつもりでございます。
  251. 橋本敦

    ○橋本敦君 最後に一点指摘をしておきますが、次長も御存じと思いますが、条約法に関するウィーン条約というのがあって、その六十条では、相手国が重大な条約違反を行なった場合には、条約の終了もしくは運用の停止を通告するという権利が条約上留意されている。これはもう国際法上明白ですね。  そこで、この早川、太刀川氏の問題について、現に韓国が国連人権宣言に見られる近代諸原則に違反している。あるいは国旗の損傷を伴うような反日デモ、これをいま激化させている事情で大使館がデモで襲撃をされている。あるいは金大中事件についても、わが国の要請にこたえて誠実に現状回復に努力しない。そういった問題あるいは狙撃事件に関連をして、いまわが国法で当然できない、内政干渉ともいわれるような朝鮮総連の解散を要求するようなことを言ってくる。いろいろな意味で、日韓条約に見られる、特に二条の解釈の問題で議論はあったけれども、国連憲章を誠実に指針とするという原則に違反をしていると見られる重大な事情が最近続発しているわけです、国民の立場から見れば。  こういうときに、二学生の即時釈放なり、金大中問題なり、あるいはデモの大使館乱入なり、こういったことをきちっとやっぱりさせておきなさい。それをやらなければ、基本である日韓条約をわが国は運用停止もしくは終了通告をする権利がウィーン条約によってあるということを相手方に通告をして、日韓条約それ自体を廃棄して日韓関係を全面的に改める、これほど強い対韓姿勢の外交を検討をされる用意があるのかどうか。いまあなたがおっしゃったように、冷静になったら、その次に二人の問題を考えます、金大中を考えますといっているうちにどうなるか心配しているのですから、こういう強い姿勢で対韓外交を見直す、まさに国連憲章と法に従って見直すという、日本の主権を守る立場に立った外交を早急にやるというような腹づもり、これは外務省で検討される余地があるかどうか、いかがですか。
  252. 中江要介

    説明員(中江要介君) いま先生御指摘の一九六五年の日韓基本関係条約といいますのは、長い歴史を踏まえての日本と朝鮮半島との問題解決の一環としてなされた非常に重要な基本的な文書でございますので、私どもはこの日韓基本関係条約を基礎にして、できるだけ直接の隣国でございます韓国との間の友好関係というものを維持していきたいという熱意をもって事態に対処しております。にもかかわらず最近、不幸な事件が起きておりますが、現在までのところでは、私どもの判断としては日韓基本関係条約に対する違反というような問題はまだない、むしろ日韓間の相互理解の不十分さというものが痛感されております段階でありますので、いまのところはこのこじれを早くもとに戻したいという努力に専念したいとこう思っております。
  253. 白木義一郎

    理事白木義一郎君) 本日の調査はこの程度にとどめます。本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十七分散会