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1974-08-22 第73回国会 参議院 法務委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年八月二十二日(木曜日)   午前十時八分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長                 多田 省吾君     理 事                 棚辺 四郎君                 永野 嚴雄君                 佐々木静子君                 白木義一郎君     委 員                 中村 禎二君                 山本茂一郎君                 山内 一郎君                 中村 英男君                 藤田  進君                 松永 忠二君                 矢田部 理君                 橋本  敦君                 岩上 妙子君                 下村  泰君    事務局側        常任委員会専門        員        二見 次夫君    説明員        警察庁刑事局長  田村 宣明君        警察庁警備局長  山本 鎮彦君        法務政務次官   高橋 邦雄君        法務省刑事局長  安原 美穂君        法務省矯正局長  長島  敦君        法務省保護局長  古川健次郎君        法務省入国管理        局次長      竹村 照雄君        公安調査庁次長  渡邊 次郎君        外務省アジア局        次長       中江 要介君        外務省アジア局        北東アジア課長  妹尾 正毅君        自治省行政局選        挙部管理課長   山本  武君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (朴大統領そ撃事件に関する件)  (在日朝鮮人出入国問題に関する件)  (金大中事件に関する件)  (選挙違反に関する件)  (恩赦に関する件)  (中野刑務所の移転問題に関する件)  (受刑者更正保護及び保護司の待遇改善に関  する件)     —————————————
  2. 多田省吾

    委員長多田省吾君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  高橋法務政務次官から発言を求められておりますので、この際これを許します。高橋邦雄君。
  3. 高橋邦雄

    説明員高橋邦雄君) 一言ごあいさつを申し上げます。  去る七月の十二日に法務政務次官を拝命いたしました参議院の高橋邦雄でございます。  私にとりまして法務行政は全く経験の乏しい分野でございますが、最善を尽くしまして、法秩序の維持と国民の権利の保全という法務行政に課せられました重大な使命の達成に努力をしてまいりたいと思いますので、どうか今後よろしく御指導、御鞭撻を賜わりますようお願いを申し上げまして、ごあいさつといたします。     —————————————
  4. 多田省吾

    委員長多田省吾君) 検察及び裁判運営等に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは私はまず、この八月十五日に勃発いたしました朴大統領狙撃事件についての疑問点その他を若干お伺いさせていただきたいと思います。  この思いがけない不祥事によりまして、韓国大統領夫人陸女史が不慮のこのような事件でおなくなりになったということにつきましては、私ども日本国民としても、ほんとうに深い哀悼の気持ちで一ぱいでございます。それだけに、隣国の大統領殺人未遂狙撃未遂に終わったのは不幸中の幸いだと思うわけでございますが、夫人が不幸にしてなくなったこの事件、二度とこの忌まわしいテロというようなことがこのアジアの地で起こらないようにしていただきたいと思うためにも、この朴大統領狙撃事件についての真相というものをぜひとも究明したい、そういうふうな立場から、この事件について投げかけられておる疑問点につきまして、日本政府立場においてお答えしていただける範囲内において、できるだけ質問をしぼってお尋ね申し上げたいと思います。  まず私どもは、あの日、朴大統領が十五日の午前に行なわれたこの式典において、どういうわけでいま韓国政府によって発表されておりますところの犯人と目される文世光という者が、この式典に入ってきたのかというようなことに、これはまずだれしも疑惑を抱くわけでございます。彼の韓国政府発表しておるところの供述どおりといたしましても、二十二歳の若年の文が、中年以上の参列者の多いこの式典で、どうして演説が始まって二十分以上もたった時点におけるまで奇異に映らなかったのかというようなところも、さしあたり非常に疑問と思うわけでございますけれども、そこら辺のところは、これは日本政府にお伺いしてもにわかにお答えいただけない事柄であろうと思いますので、まずこの式典状況というようなものを、日本政府立場において把握していらっしゃるところをお尋ね申し上げたい。  そういう意味におきまして、この間決算委員会で若干関連質問をさせていただいたのでございますが、木村大臣がそのとき、朴大統領狙撃状況韓国政府側からしかお聞きになっておらないという御答弁を、私たいへんふしぎに思ったわけでございます。と言いますのは、日本大使館韓国にあるわけでございますから、日本大使館からの報告はどうなっているのかということをたいへんに疑問に思ったわけでございますが、これはまず外務省に伺いたいわけですが、当日この式典招待状参列をするように招待されていた日本大使館員が何人おったのか、そのことをお答えいただきたい。そしてまた、それはどういう人であったか、その氏名も当然外務省でおわかりだと思いますので、その肩書きと氏名をお教えいただきたいと思うわけです。
  6. 中江要介

    説明員中江要介君) 先生質問の、ソウルにあります日本大使館館員の中で、だれとだれに招待状が来たかという点についてはちょっと正確に調べておりませんが、はっきりしておりますことは、後宮大使招待をされて当日会場に出席しておられた。出席しておられた後宮大使からは、当時の大使の目で見、耳で聞かれた部分については御報告がありましたけれども、他の館員について招待状があったかどうかという点は、ちょっと調べてみたいと思います。
  7. 佐々木静子

    佐々木静子君 なぜそういう大事なことを外務省は、事件発生一週間もたっているのに、だれに招待状が来たか、あるいは後宮大使以外の大使館員が何人出席したかということもおわかりにならない。私はわかっていないはずはないと思うのですけれども、どうしておわかりにならないのですか。
  8. 中江要介

    説明員中江要介君) 別にどういう理由ということではございませんけれども、その点については照会しておりませんので、至急聞いて調べてみたいと思います。
  9. 佐々木静子

    佐々木静子君 私このことを木村外務大臣お尋ねしたのは、この間の十九日の日だったと思います。三日前だったと思います。そのときにまだ聞いておらないというお返事で、三日もたつのに同じことをお答えになっているようでは話にならぬじゃないですか。どうしてもっと出先大使館なり外務省が真剣に——そんなことはどこのだれでも、この日に大使館から何人来ていたのだろうか、どういう日本人がおったのだろうかということは、これはもうまずこの事件を聞けば、普通の常識人であれば一番初めに十分以内に思いつくことがそのことだと思うのです、十分もかからぬのじゃないですか。どうしてそれをお尋ねにならぬのですか。
  10. 中江要介

    説明員中江要介君) 私どもといたしましては、日本の国を代表して韓国に駐在しておられる大使みずからが出席して、また大使みずから報告をいただいておりますものですから、それをもって十分だというつもりでおったわけでございます。
  11. 佐々木静子

    佐々木静子君 何が十分ですか、あなた、いいかげんなことをおっしゃるけれども文世光がいまの韓国政府発表では犯人ということになっておるけれども、一番最初犯人だと発表されたのは、吉井行雄という日本人だというふうに発表されたのですよ。向こうも非常に驚いておったとか、びっくりしたとかいうようなこともあると思いますけれども日本人吉井行雄というのが犯人であると韓国政府発表し、しかも全世界のマスコミに吉井行雄なる日本人がやったのだと、たちどころに電波の波に乗せられて全世界に広がり渡った。それくらい韓国政府からの発表というものが不確かな状態であったのですからね。なぜそこにいた日本人、それは日本人といってもだれかれなしにあなたのほうからは聞くわけにいかないかしらぬけれども外務省外務省出先機関である大使館館員にいろいろ聞きただすというのは、あたりまえのことじゃないですか。そんなに外務省というところは何もせぬ役所なんですか。
  12. 中江要介

    説明員中江要介君) 吉井行雄さんの名前が出ました段階では、もちろんその吉井行雄という人がはたして韓国に渡ってこの式典招待されていたかどうかと、吉井行雄さんにしぼりましては急拠八方調査したわけでございますけれども日本人が全部で何人招待されたか、あるいは大使館員のだれに招待状が来ていたかという点をあわせて調査をしなかったという点は多少不十分であったかと思いますが、現在までのところ、そういう日本人招待者リストというものは特にまだわれわれの手にはしておりません。
  13. 佐々木静子

    佐々木静子君 あなたが、外務省がろうばいしていることはわかりますよ。そしてまた金大中事件なんかでも、まあ金大中事件のときにはあなたはもう少しまともなものをおっしゃったのですけれどもね、気が動転していらっしゃるにしてはちょっと時間がたち過ぎると思いますよ。いまの話で、人違いで事もあろうに、日本人犯人じゃないのに日本人犯人だと全世界に報道されたのですよ。そうしたら、直ちにそのことについてどういうことなんだと、そのために出先大使館というものがあるのでしょう。それの調査もようせぬような大使館だったら、大使館なんか置く必要ないですよ。そのために日本政府から韓国に行っているわけでしょう、大使館というものがあるわけでしょう。日本人犯人じゃないのに、全部にそのように報道されたのに、それについてそこに居合わせた者からの報告もこない、事件が始まってから八日も九日もたとうというのに、それについて聞きもしておらぬというのは、一体何なんですか。もう外務省は、外務省仕事は何もやらぬことにきめたのですか。どういうことなんですか。
  14. 中江要介

    説明員中江要介君) 決して外務省仕事をやらないことにきめているわけでございませんで、私どもとしては精一ぱいやっているわけでございますけれども、当時は最高の責任者としてソウルにおります大使自分で出て、大使自分報告電話、電報でしてきておりました。それで大体その当時の状況を推察し、吉井行雄さんという名前が出ましてからは、この吉井行雄さんにしぼって、全力をあげてそれが真実であるかどうかということを調べて、それが間違いであるということがわかりまして、韓国側最初発表が訂正されるといういきさつがあったわけで、そういう思いがけない事件の当初のいろいろの事務の錯綜する中で、いま先生お尋ねのような点についてまで十分即刻調べなかったという点は、非常に私どもとしても不行き届きであったと、こう思います。
  15. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、吉井行雄という人はあのときにもう、私もちょうどタクシーに乗っていてラジオを聞きましたけれども住所も何もはっきりしているんですよ。私あのとき聞きながら、あっ大阪府の人間かと。私はそのとき吉井行雄という人はどういう人かわからなかったけれども、はっきり住所も何も出ておりましたよ。あとで聞くと、あそこの家は電話もあれば、ちゃんとすぐソウルからだって電話をかけてみれば一ぺんにわかるわけですよ、本人はそこにいるのですから。それを一体何ですか。吉井行雄犯人じゃないということがわかったので、あとでどうのこうのとあなたはおっしゃったけれども、それは何時にわかったのですか。
  16. 中江要介

    説明員中江要介君) 私どもが調べましたのは、韓国金東柞外務部長官後宮大使に一番最初に申したところによると、吉井行雄パスポートを持っている、そしてそのパスポート写真本人とが一致するので、これは間違いなく吉井行雄だと、こういう言い方であったわけです。したがって、私どもとしてはそのパスポートが一体どういう人間に発行されているのか、そしてその写真がどういう写真になっているのかという点を確かめることによって韓国側最初の認識を修正させることができるわけで、吉井行雄さんにつきましては外務省もすぐに、先生がおっしゃいましたように電話もわかっておりまして、すぐ係官が電話いたしました。そうしましたら、吉井行雄さんの奥さんが電話に出まして、主人はけさから大阪にいます、こういう話でありますので、これは非常に奇怪なことであるというので、そのパスポート本人吉井行雄さんとの関係を調べて、確かな証拠に基づいて韓国側日本側調査の結果を通報した、こういうことでございます。
  17. 佐々木静子

    佐々木静子君 私のお尋ねしているのはその経過じゃなしに、何時に吉井行雄じゃないということがわかったかという、時間的なことを伺っているのです。
  18. 中江要介

    説明員中江要介君) 警察のほうの御協力を得まして、当日の五時過ぎにはっきりしたことがわかった、こういうことでございます。
  19. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、それまでは吉井行雄犯人だというふうにまず大使館は思っていたわけなんですね。三時でしょう、後宮大使韓国外相に出会ったのは。どうなんですか、その時間のいきさつは。
  20. 中江要介

    説明員中江要介君) 後宮大使金東祚外務部長官から、吉井行雄という日本人犯人であることについて確証を得ていると韓国側が言って、それがどういうことであるかということは、私ただいま申し上げましたように直ちに電話をして、吉井行雄さんが当日朝から大阪にいるということを確認した段階で、すでにそれが非常にあやしい、疑わしいものではないかということはもう大使館もすぐに承知しておったわけですけれども、ただそんなはずはありませんというだけでなくて、はっきりその旅券の申請書に基づく、申請書にはってある写真とか、当時、当人吉井行雄さん自身の所在を確認して、そしてこれは韓国側の誤認であるということをはっきり認識したのは五時過ぎであったと、こういうことでございます。
  21. 佐々木静子

    佐々木静子君 大使館は、ほんとに一体何をしているんですか。その日全員、田中総理お好みのゴルフにでも出かけておったのじゃないですか。私ども日本におって、この事件狙撃犯人文世光だと、韓国ラジオ放送されていることを十一時のニュースで聞いているんですよ。私はじかに聞かなかったですけれども、午前十一時ですよ。あなた方は一体何をしているんですか。韓国にいて韓国放送も聞いてないのですか。
  22. 中江要介

    説明員中江要介君) 八月十五日という日が韓国にとって非常に歴史的な日であって、この日の朴大統領演説というものは、現在の国際政治のもとで非常に重要な意味を持つということで、式場に参列しました大使はもちろんでございますけれども館員もそれぞれの場所テレビラジオでその放送をフォローしておったわけでございます。それが途中で中断されて、何かが起こったというので即刻電話東京に入りまして、東京韓国と密接に連絡をとりながらその事件の推移を見ておったわけでございまして、決して八月十五日という日をないがしろに考えているわけではございません。
  23. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは八月十五日という重大な日の、光復節という韓国で一番大きな行事、その日に出席した日本大使館館員名前も何もわからぬで、何が一番重要な日ですか。あなたの言うことはたいへんな矛盾があるじゃないですか。一体、韓国日本大使館日本館員は何人いるんですか。その一人一人がその日にどういう行動をしていたかということを、まず一覧表にして資料として出していただきたいと思いますね、それほどこの日が一年じゅうで一番大事な日で皆さんが非常に熱心に執務していたとおっしゃるなら。いかがですか。
  24. 中江要介

    説明員中江要介君) まず先ほど冒頭に御質問のございました、招待状が来ましたのは大使だけでございました。これはいま確認されました。  大使以外の大使館員は次席の前田公使以下、テレビを見、ラジオを聞いて、この朴大統領演説というものを早くキャッチして、その意味を分析するという身がまえでおりましたわけでございまして、日本政府を代表して韓国に駐在しているわれわれ仲間の外交官が、先生がおっしゃるようにいいかげんなことをしているような印象をもし与えましたとすると非常に残念なことだと思うのですけれども、それぞれ各部署において十分に仕事を遂行していると、私ども東京から見ておるわけでございます。
  25. 佐々木静子

    佐々木静子君 あなたが見ていてそう思うかしらないけれども国民は見ていて、五時ごろにならなければ吉井行雄犯人であったかなかったかもはっきりせぬようなことをしているような日本大使館員ですね、一体何をしておったのかと、この疑惑は晴れませんですよ。いま申し上げたように館員名前と、その日にどういう執務についておったかということ、それは文書にして御報告いただけますね。
  26. 中江要介

    説明員中江要介君) 委員会からの御要求ということで御要請がございましたら、私ども調べまして御提出する用意がございます。
  27. 多田省吾

    委員長多田省吾君) 速記をとめて。   〔速記中止
  28. 多田省吾

    委員長多田省吾君) 速記を始めて。  ただいま佐々木要求資料は、法務委員会として外務省要求しますので至急提出を願います。
  29. 中江要介

    説明員中江要介君) 御要求に応じまして至急提出するようにいたします。
  30. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは警察庁に伺いたいのですが、実は日本人も、何人かの日本人がこの八月十五日午前十一時の、これはソウル発東亜放送ラジオによりまして狙撃犯人文世光であるという放送を聞いているわけなんです。この放送内容警察庁のほうは確認しておられますか。
  31. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 私のほうは確認いたしておりません。
  32. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは実は私のほうで調査いたしましたところでも、NHKで大体外国放送というものは一応全部キャッチしていられるという話なんですが、そのテープ、これは押収してあるわけですね。
  33. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) そういうことはいたしておりません。
  34. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはしていられないということであれば、いま日本放送協会にお越しいただいておりませんので、私のほうとしても申し上げる相手がないようなわけですが、警察庁はその事柄を確認しておられることは事実ですね。どういう放送内容であったか、ここでお述べいただきたいと思います。
  35. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) いや、最初に確認しておりませんとお答え申し上げました。
  36. 佐々木静子

    佐々木静子君 確認してないのですか。
  37. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 存じません。
  38. 佐々木静子

    佐々木静子君 それではやむを得ないです。私がNHKで調べたところによりますと、外国放送、これはソウル発東亜放送で十一時のニュースの時間に犯人文世光であるということが報道され、ソウル放送なので日本にいる人たちの中でも東亜放送に興味を持って聞いていた人たちの耳には間違いなく入った。それから、私の聞いておるところでは、NHKではこのような各種外国放送というものはみんな入ってきておって、そしてこれは全部じゃないと思う、ちょっとそこのところはっきりいたしませんが、あるいはテープになって残っておるのじゃないかということも伺っておるわけですけれども捜査当局も、これはこの殺人事件あとで伺いますが、裁判権の問題がありますので、一がいになぜその点の資料を集めておらぬのかということはいまにわかに申し上げられないかもわからないけれども、そういうものがあるということ、これは私のほうから申し上げておきます。  そうすると、これは外務省に伺いますけれども後宮大使がその日に出席されたわけですね。後宮大使以外には招待状は来なかったわけですね。ソウルの報道によると、文世光なる者は警備員にとがめられて、日本大使館員だと言って案内されたというふうな話なんですが、そのあたりのところは、外務省韓国政府のほうにどのように尋ねておられるのですか。どういうことになっているのですか。普通常識的に考えると、そう言ってすっと案内されて入ったのであれば、後宮大使がその日行っているわけでしょう、後宮大使の顔はまずみんな知っていますね、それ以外の人にも招待状が出ていなければ非常につじつまの合わぬ話ですけれども、そのあたりはどうなっているのですか。
  39. 中江要介

    説明員中江要介君) ただいま御質問の点を含めまして、私どもといたしましては、この離れております東京で想像いたしますに、あれだけ重要な式典参加者出入のコントロールといいますか、管理といいますか、そういうものがどういうふうに行なわれていたのか、警備がどうなっていたのかについては必ずしもまだ十分にわからないわけでございまして、この事件が起こりましたいきさつ全般につきましては、それに関連するわがほうの捜査協力をする上において重要な前提として事情を向こうに照会しております。で、いまの点についてまだ向こうから正式に、当時の出入者管理はこういうふうであったというような点については外交経路を通じてはまだ報告がなくて、一方的な向こう捜査発表調査報告が新聞に発表されているというのが現段階で、私どもといたしましては重大な関心を持って、どうしてそういう間違いが起きたのかということについては先方の説明を求めていきたいと、こういうふうに思っております。
  40. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは韓国政府からまだ説明がこないとすれば、当日の後宮大使は、自分はどういう報告外務省に出しているのですか。たとえばこの国立劇場がどういう座席になっておって、本人が行っているのだからわからぬはずはないと思いますが、どういう座席になっておって、自分は前の何番目にすわって、どういう席であって、その狙撃状況はどういうことであったかと、その詳細な報告はもちろん聞いているんでしょうね。それも聞いてないほど外務省は怠慢じゃないでしょうね。どうですか。
  41. 中江要介

    説明員中江要介君) 私どもといたしまして、後宮大使が何列目の何番にすわっておられたかと  いうところまではつまびらかにしておりませんけれども会場の前のほうに在日韓国人招待された一グループが場所を占めていたということ、それから外交団席には各国の大使が、もちろんのことでございますけれども、列席していたというようなことを報告されてきております。
  42. 佐々木静子

    佐々木静子君 後宮大使はどこにすわっていたということもあなたは聞いてないのですか、外務省は。こんなもの、どこのだれでも聞くじゃないですか、常識的に考えて。たいへんなことだったと、これはもう全然外務省にも関係ない、全く何の職務上の関係のない人だって、そこに居合わせた人に、それじゃあなたはどこにすわっていたんだ、どういう角度に犯人がいて、どういうことだったのかと、これは聞かぬのがおかしいので、聞くのがあたりまえじゃないですか。一体どういう心理状態なんですか、あなたのほうは。後宮大使がどこにすわってたかも知らないのですか。  まず確認しますと、後宮大使が前から何列目、横から何列目の場所にすわっておったかどうかということを、知っておるのか知らないのかということをまず答えていただきたい。
  43. 中江要介

    説明員中江要介君) 前から何列目で横から何番目というような詳細な場所は、承知しておりません。
  44. 佐々木静子

    佐々木静子君 詳細じゃなければ、一列や二列狂うかわからないが、どこら辺にすわっておったのですか。
  45. 中江要介

    説明員中江要介君) ただ私ども後宮大使から、何かが起こったけれども、それがどういうことであったか、議場が混乱して後宮大使の席から見えなかったということは報告を受けておりましたのですが、それは何列目でどうであったかというところまではちょっと、一部始終を後宮大使に直接会っていろんな様子を聞いたわけでございませんので、現在までのところでは、その詳細な描写的な報告というのはまだいただいておらないわけでございます。
  46. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは大使として向こう行くのは、日本政府を代表して行っているわけでしょう。あなた、こういう事件があったら四つか五つの子でも、おかあちゃん、ぼく何番目のここら辺にいたらこんなことがあったんだという話をしますよ。知能指数が六〇ぐらいあればそのぐらいの話はだれでもしますよ。あなた知っているんでしょう。何か隠しているでしょう、外務省は、ほんとうに聞いていないのですか、後宮大使がどこら辺にいたかいうことも。聞いてなければ、やっぱり何もしてなかったと言われたって全くしょうがないじゃないですか。
  47. 中江要介

    説明員中江要介君) 日本を代表して駐在しております大使としましては、事件の詳細、その警備状況、その犯人の捜査、そういったものについては確実な情報に基づいて正確な判断をして、そして対処しなければこの日韓間の、そうでなくても微妙な状況のもとではむずかしいということで、大使としてはその後は韓国の当局と密接に連絡して事件の真相の究明に当たっておられるわけで、後宮大使からの東京へのとりあえずの電話連絡というのは私が先ほど申し上げたような連絡がございまして、それ以上詳細なことについて、あるいは電話に出た係員が聞いておるかもしれませんけれども、私どもとしてはいま申し上げたこと以上は承知しておりませんし、また、重要なことは、本件の全貌について韓国政府と十分に協力して早く真相を明らかにしていくということだと思っておるわけでございます。
  48. 佐々木静子

    佐々木静子君 あなた、私の質問は目撃者としてどうだったかという話をしているんですよ。慎重も何も、目撃者の話を聞いているんですよ。政治判断を聞いているのじゃないですよ。後宮大使がそこに居合わせた者としてどういう光景を見たかということを私聞いているのです。何を韓国政府と相談せんならぬのですか。私が一番おそれていることをあなたのほうがかってにしゃべっているんじゃないですか。正確な見たものをそのまま後宮大使日本政府報告することができない状態に置かれておる。また、後宮大使自分が見聞きしたことをストレートに日本政府報告しないわけですね、いまの話を聞きますと。全部韓国政府と相談した上じゃないと日本政府に、外務省にも報告しないという、そういう貫例になっているというふうにお受け取りしてよろしいわけですね。あなたの御答弁はそうですよ。そのとおりですね。
  49. 中江要介

    説明員中江要介君) そのとおりではございませんで、私が申し上げましたように、後宮大使日本大使館からたった一人出席しておられて、その場は混乱でどういうことが起きたかわからないけれども、たいへんなことが起きたようだということで、その混乱が数分後に静まって、朴大統領は引き続き演説を続けて、それを聞いて帰られたわけでございまして、その場の大使場所からはそれ以上のことはわからなかったこと。ただ、演説が始まって十数分過ぎたときに何かが起きた、そして議場は混乱した、そして大統領夫人がその混乱が終わった場所にはその席にはおられなかったという、そういうなまなましいその場の情景の報告はすぐに電話であったわけでございまして、日本大使として本国政府に報告するにあたって、何かをわざと報告しないとかなんとか、そういうことは絶対にございませんので、誤解のないようにしていただきたいと思います。
  50. 中村英男

    中村英男君 ちょっと委員長。  余分なことを言われるから話が混乱するので、佐々木君が聞いておるのは、招待大使一人だった。そうすると、その犯人日本大使館員じゃなかったかと、そう申して入ったかもわからぬ、そういう答弁であったから、それだったら近くにおったらわかるじゃないかと、こういうことを申すのです。ほかのことをあなたは言うことはないので、おおよそ大使はどの辺におったか、それと犯人との距離はどんなだったかということぐらいは御報告を受けておるわけですな、近くにおったか、遠くにおったかね。わからなかったということは、うんと遠くにおったということでしょうね、やっぱり音がしたんですからな。大使館員じゃないかということで入ったかもわからぬわけなんで、そういうことになれば、少なくとも日本大使館の席の近くにおるわけなんだからな。だから、それが近かったか遠いかったか、そこら辺のことを明快に、ほかのことを言うことはないのです。
  51. 中江要介

    説明員中江要介君) 繰り返しになりますが、大使館員では後宮大使だけが招待されて出席した。したがいまして後宮大使としては、自分以外の大使館員がその場にいるということは想像してなかったことは明らかだと思います。先ほど大使館員というのが出ましたのは、韓国側本人大使館員と言って入ったという説明をしているというふうに報道されている点に限って申し上げたわけでございます。  後宮大使の当時の模様についての報告は、私が先ほど申し上げましたように、途中で何かが起きて、何が起こったか自分にはよく見えなかった、しかしたいへんなことが起こったようだということの報告があったと、それに尽きておるわけでございます。
  52. 佐々木静子

    佐々木静子君 ほんとうに日本大使館がこれくらいたよりないともう話にならぬわけで、私どもソウル発の報道を聞くか——はどうもわけのわからぬことがたくさんある。せっかく大使が行っているけれども、それはもう急におしになってしまってものが言えぬ。知能指数が五〇ぐらいに下がってしまう。しかたがないからアメリカの「ニューズウイーク」とかなんとか、いろんなアメリカの新聞からそのときの情報を判断するよりしょうがないような状態にわれわれは立たされているわけですよ。  アメリカの新聞記者なんかでもかなり詳細に書いておりますよ、「ニューズウイーク」を読んでも。これは「天声人語」にもその一部が載っています。第一発日がどうなって、そのときに何メートルほど走ってどうなってこうなってと。少なくとも日本大使になる人は、アメリカの新聞記者よりも何分の一ぐらいしか能力のないような人間日本大使になってもらったら困りますね。これは外交折衝できるはずがないですよ。少なくともこのアメリカの新聞社の人は、ちゃんと自分はどこの席にすわっていたらどういうことが起こって、第一発目はどうだったといって、それが全部載せられたかどうかはちょっと私もあれですが、まだ調べればもっといろんな情報があるんだと思うのですけれどもね。しかしそれにしても、第一発日を撃った位置、そのたまがどうなって、第二発日を撃った位置というようなものがはっきり出てきていますよ。そんな人しか日本外務省には人間がおらぬのですか。どうなんですか。これは急におしになった人をつかまえて言ってみてもしかたないけれども。  そこで、私のほうも非常に遺憾に思うのですけれども、まずきょうの「天声人語」に出てきた「ニューズウイーク」の記事の一部を翻訳したのを見ても、これはちゃんと書いてあるじゃないですか。何メートルの距離でどうして、しかも韓国警備員がコーラスをする予定であったはずの女子高校生を殺害したと。向こう警備員の撃ったたまが韓国の女子高校生に当たったという話まで書いてあるじゃないですか。そのぐらいの一そのぐらいといって、ニュースを取る人もこれはたいへんな仕事ですから一生懸命になっていることはわかるけれども、もしそういうことをほかの人がわかっているのに、後宮大使だけわからぬというのじゃ緊張度があまりにも足らぬじゃないですか。  それで、初めの報道からずっとそうですよ、いまでもそういう報道が出ていますよ、大統領夫人と女子学生が日本人によって殺害された、あるいは日本人の共犯らしい者もいる在日韓国人によって殺害されたと。ちゃんとアメリカの新聞が書いているじゃないですか、そのたまがどうなってこうなったという話は。これは二発目のことまでしか書いてないから、三発目、四発目のことも私は聞きたいと思う。この大統領夫人狙撃されたたまのことについては、日本の新聞は翻訳しておらないわけです。「ニューズウイーク」も取り寄せてみたけれども、いまのところではまだ出ておらぬわけです。しかし、いずれこれも判明すると思いますけれどもね。そんなことを韓国の政府に聞いたりアメリカの新聞記者に泣きついて教えてもらわなければわからぬというのじゃ、話にならぬじゃないですか。だれもいなければしょうがないですよ。日本大使がいるんですよ。外務省はその点どういうふうに責任を感じているわけですか。
  53. 中江要介

    説明員中江要介君) 後宮大使がその式典日本を代表して参列しておられたときに、佐々木先生がおっしゃるような報道関係者が報道するような詳細なところまで十分に観察し得なかったことが、それがどういう意味を持つかということについて、なかなか私どもはにわかに判断いたしかねるところでございますけれども、政府を代表してソウルに駐在して、そしてその任国で起きた事件について報告するという以上は、これは正確な事実に基づいたものでなければならないというのが私ども常日ごろの心がまえでありますものですから、時間的におくれたり、あるいはその観察観点が違ったりして御批判をいただく点は今後われわれ努力しなければならないことかと思いますけれども、いまのところは、正しい情報をまず握らなければならない。そのためには、大使が一人で見聞きしたこともさることながら、そこの場所を全面的に管理しております韓国側の当局の客観的な調査の結果を待って、それに基づいて正確に判断していこうという姿勢で私どもは対処しているわけでございます。
  54. 佐々木静子

    佐々木静子君 そういう事実関係も何にもわからないとすれば、軽々と何が外交交渉ができるんですか。マスコミの仕事も大事ですよ、真実のことを一刻も早く世界の人に報道する。しかし大使館の場合は、日本の国益を代表して行っているんですよ、日本人の権益を守るために行っているんですよ。日本の利益を守るために日本大使館というものはあるわけですよ。それが何ですか、何にもわからぬというのじゃ、そして韓国の政府に教えてもらわなければそのときの状態は何にもわからぬというのじゃ、話にも何にもならぬですね。  これはあなたのほうは非常にそんな簡単に言いますけれども、たとえば吉井行雄、私はこの人が白か黒か、何もそんなことを論じているのじゃない、それは捜査当局なり何なりがやることであって、私は私なりにいろんな関係者の話も聞き、私は私なりにこの事件についてのある程度の心証は持っております。しかし、これは別に私の主観を抜きにして言うことですけれども、ともかく狙撃したのは吉井行雄じゃないのに、これは東京の新聞にもなかったようですけれども、きのうだってこの関係者のところへは  これは私在日韓国人を非難するつもりは毛頭ないのです。在日韓国人はやはり自分の国の大統領夫人が殺されたということになれば、国民とすると怒りがこみあげるのは当然のことであり、しかも自分の母国の政府から犯人日本人であるとか、日本人のミスのために殺されたのだということを毎日のように放送されたら、これはもう日本人は悪いやつだ、特に関係したような人間はものすごく悪いやつだ、ただでは生かしておけぬという気持ちになる。  私はこの在日韓国人の方の気持ちがいけないということを非難するつもりは毛頭ないわけなんで、そこを誤解ないようにしていただきたいのですが、たとえば後宮さんが軽率に、これは日本にいる者でも十一時のニュースを一部の者はちゃんと聞いているというのに、三時ごろにのこのこ韓国の外務大臣に会って、しかもいまだにまだ真相がわからぬとかいうようなことを言うているから、たとえば吉井さんの家でも連日何百人という人が押しかけていって、殺してやる、殺してやると言ってたいへんな騒ぎになっているのですよ。ここに若干写真がありますけれども、あなたのほうもそれぐらいのことはわかっていると思いますけれどもね。きのうだって大阪のあるところへ大型バス六台で在日韓国人の方が来られて、かたき討ちをしてやるというようなことでたいへんな騒ぎになっているわけです。  私は後宮さんなり外務省が、日本人の利益を守らなければならない立場人間が、何にもわからぬとか韓国政府の言うなりになっているために、それはソウルもいまたいへんでしょう、しかしソウルがたいへんだからといって、自分だけその場でうまいこと頭下げておけばそれで済むという問題じゃないですよ。これは後日たいへんな問題が起こると思いますよ。私は金大中事件よりもはるかに尾を引く問題だと思っております。そして日本大使館なり外務省が非常に腰の弱い姿勢で、日本独自の真相究明をしないで、韓国に追随して韓国大本営発表のみを日本国民なり韓国国民なり特に在日韓国人に押しつけた日には、これは私はどういうことになるかということは火を見るよりも明らかだから、もっとしっかりしろと言っているわけです。なにもどうやれと言っているわけじゃないですよ。日本大使館として日本の独自の見解というものをなぜ持てないのかということを言っているわけです。  そういう事柄が、少なくとも事件の起こったのはソウルだけれども関係者は大阪が一番いまのところ多い。東京も若干あるけれども。そして犯人でない者が、またわれわれの目から見ると、とうてい犯人と言えないが多少関連があるかと思われるような人たちが、全くまだ関係ないというふうにしか私どもとしたら考えることのできない人たちが、どんどんと韓国政府名前もあげて発表されている。それを外務省がそのまま何らそれについて反論もようしない、批判もようしない、ごもっともごもっともということで頭を下げていた日には、ソウルの暴動はそれで静まって大使は助かるか知らないけれども、現地の大阪ではどうなるんですか。大阪だけじゃない、日本在日韓国人同士の紛争、それからそれに好むと好まざると、全く好まなくっても巻き込まれなければならない日本人の運命はどうなるんですか。そういうところ辺はどう考えているのか、外務省としてどういうつもりでいるのか。あなたに聞いても無理かしらぬけれども、もう少し責任のあることを言ってくださいよ。  その写真を見たってわかるでしょう。吉井さんの家に、このときも二百人ほどの在日韓国人の方が殺してやるということで来られた。それからそこに二歳の子供がいる。国民が殺されたのだからその子供を引き渡せという要求も出ている。いま大阪府下には置けないので某所に、捜査当局とも御相談の上で身柄を隠している。そういうことが、しかしこれが三日とか五日ぐらいのことだったらそれでいいけれども、こういう状態じゃこれはどうにもならぬじゃないですか。  これはすべてが外務省の弱腰から出ているのです。殺したのが、ソウル発表によっても在日韓国人でしょう。韓国人が韓国大統領夫人を殺害した事件です。外務省はなぜもう少し筋を通さないのか。非常に日韓関係というものがむずかしい状態であるということは、これはわれわれでも十分わかっております。しかし、だからといってそのために在日韓国人が非常な危険な目に置かれる、また日本人までも好むと好まざるとにかかわらず、どうなるんだろうかという不安な状態に置かれる。そういうことについて外務省はどう考えているのですか。そんなのんきなことを言っていていいのですか。
  55. 中江要介

    説明員中江要介君) 外務省といたしましては、この事件の持つ重要性を十分認識して対処しておるわけでございまして、筋を通して正しい解決を望んでおるわけでございます。不幸なことは、一番最初韓国側がとらえた犯人パスポート日本パスポートであって、そこにある写真犯人が同じ顔をしておって、そしてそのパスポートの名義が吉井行雄という日本人名前になっていた。その事実が、当初韓国側をしてこの犯人日本人であると一応断定してかかったということが、そのあと誤解が解けるのに時間がかかっておるわけで、外務省といたしましては、先ほど申し上げましたように、警察当局の御協力を得ましてこの犯人吉井行雄さん自身と違うということがはっきりしてからは、犯人日本人であるというようなことは全く考えておりませんし、そういう間違った考えでものを処理していることは一切ございませんので、犯人在日韓国人文世光であるということを前提といいますか、それをまず既定の出発点として、その後の事実の捜査にできる限りの協力をするという体制でやっておりまして、私どもとしては佐々木先生のおっしゃるのと同じように、筋を通して間違いのない処理をしようということで努力をしておるわけでございます。その辺はひとつ誤解していただかないように、私どもは誠心誠意やっているわけでございまして、御理解いただきたいと思います。
  56. 佐々木静子

    佐々木静子君 そんなのんきなこと言うておられはせぬじゃないですか、現実にいろんな問題が起こっているのに。誤解するの、せぬのと言うておる問題じゃないじゃないですか。
  57. 藤田進

    ○藤田進君 ちょっと関連して。  どうも、きょう私ども重大な時期だと思ってこうして調査に加わっておりますが、事実問題をまず究明しながら、お互いに共通の事実認識の上に立って、そして問題の核心に触れながら本件についてどうあるべきかということを国民とともに考え、対処しなければいかぬ。したがって、出席を要求された以上、当然それらの事前の十分な検討をして委員会に出席なされるべきであったと思う。しかし、いま聞いてみますと、入口でどうも釈然としないままでこの調査が進行しないことはまことに遺憾です。これは出入国の管理体制についても問題があります。御承知の玉本がタイのほうに自由に行ってきたりするというようなことが最近出てきた。その他いろいろな犯罪が、シージャックとかハイジャックとかいろいろな問題がやはり出てきている。これは法務省当局の問題にもなるでしょう。  そこで私は、二、三このまま過ごしていいかどうかについて問題を残すように思うので聞いてみますが、後宮大使とは私は久しく会っておりませんが、日韓条約その他、彼が局長時代はよく国会にも出席した。当時の状況からすると、つんぼでもなければ、めくらでもなかった、心神喪失もしてなかった、こう思う。しかしその後会っておりませんから、目も見えない、耳も聞こえないということはあり得るでしょう、人間のからだから。これだけの事件が起きて、会場にいて、何事か起こったらしいが、よくわからない混乱であったということが電話での報告であったというんですね。これは間違いありませんね。しかし、われわれは新聞の、文言は別として写真等から見ても、四発を撃ち、しかもその一発は演壇の上から撃って、いま指摘されたように韓国の女子学生が一人死んだ。それはピストルをかまえているのも写真が出ていますね。そうして必ず音がしたはずです。新聞には音のほうは出ておりませんが、これは出たでしょう。その音が四発ないし五発が出て、そして演壇のところから事をかまえて、そして朴大統領夫人は負傷の結果、急遽場外にかついで出るというような事態が、われわれそこにいない者でさえもわかった。しかし、後宮大使がちょうどたまたま居眠りでもしていたのかどうか、そうでない限り、正常な心神の状態であれば、何事か起こったらしいが混乱で何もわからなかったという電話報告だと、こういう点が私はどうしてもふに落ちません。  そこで聞きますが、その電話はだれからだれにあったのか。後宮大使からあなたに直接あったのかどうか。まずその点を明らかにしてもらいたい。あなたはまた聞きなのかどうか。この議会の調査でそういう答弁で、ああそうか、後宮さんはそんなことでわからなかったのか、さもあらんと、そうは思えない。おそらくここの委員会場にいる皆さんはみなそうじゃないでしょうか。あなた自身は電話を聞いてそれで納得したですか、これはあなたでなかったかもしれぬが。その辺からどうもあなたの答弁に対する姿勢というものを私は問題にせざるを得ないのです。そして事実問題がわからなければ、だれか出席している者に命じて、すぐ電話で足りない点は補足報告を受けてください。だれが電話を聞いたのですか、だれからだれに。  それから招待は一人であったというけれども招待は一人でも、その随行があったのかどうか。招待者と出席者が必ずしも同一でない場合がああいう場合あり得る。そういうところに大使館員だということの問題が出た可能性もなしとはしないと私は思う。しかし、それも明らかでないのですね。  問題点、わかりますか。後宮大使電話してきたのか、代理がしてきたのか。それから受けたほうはだれなのか。いつ何時ごろ、だれが受けたのか。その受けたのがあなた直接なら直接、直接でなければ受けた人から何人を経由してあなたが聞いてここへ出てきているのか。これはわからないとは言えない。まずその辺から明らかにしてもらいたい。
  58. 中江要介

    説明員中江要介君) まず、後宮大使電話を受けましたのはアジア局の北東アジア課長でございまして、その後宮大使電話式典が終わってすぐにかかってきたわけでございます。それと相前後いたしまして、テレビを見ておりました館員から、テレビの途中でこういうことがあったという電話連絡もございまして、東京では各方面からのいろいろの情報を集めるということで待機したわけでございまして、後宮大使電話の一部始終全部を私が報告を受けているわけでございませんで、私が受けたのは、その要点として北東アジア課長が私に申しましたのは、先ほど私が申し上げましたように、後宮大使がその式場でたいへんなことが起きたようだ、自分の席からは何がどうであるかということについてははっきりわからなかった、ただ終わったあとでは演壇上に大統領夫人の姿が見えなかったので、大統領夫人はあるいはけがをされたのかもしれないという、そういうばくたる印象で、混乱の興奮の中での観察としてそういう報告を受けたわけで、私どもはそれをすなおに受けまして、より客観的な詳細な事実をおいおい明らかにしつつあるというのが現状でございます。
  59. 藤田進

    ○藤田進君 そうすると、確かめますが、後宮大使自身からその式典が終わった直後電話が課長にあった。その課長は局長に報告した。その局長から次長が聞いた、こういうことですか。
  60. 中江要介

    説明員中江要介君) 当時、局長は海外出張しておりましたので、私が北東アジア課長から直接聞いたわけでございます。
  61. 藤田進

    ○藤田進君 その直接聞いた課長はきょう来ていますか。
  62. 中江要介

    説明員中江要介君) この席には来ておりません。
  63. 藤田進

    ○藤田進君 すぐ呼んでください。
  64. 多田省吾

    委員長多田省吾君) 速記をとめて。   〔速記中止
  65. 多田省吾

    委員長多田省吾君) では速記再開。
  66. 佐々木静子

    佐々木静子君 それではいまの話は課長がお見えになってから直接の話としてお伺いさせていただくことにしまして、当日、在日韓国人の方がかなり多数招待されておるわけです。一つの報道によると三百六十人ぐらいという説もあれば、二百五十人という説もあれば、あるいは百三十数名という説もあるわけです。そのあたり大使館としてはどう把握しておられますか。
  67. 中江要介

    説明員中江要介君) 多数の在日韓国人招待されていたということ以上には、何名でどうということは調べておりません。
  68. 佐々木静子

    佐々木静子君 何でそんなことを調べないのですか。これは外務省が旅券を出して向こうへ行っているわけでしょう。——そうじゃないですか、これは法務省の管轄になるかしらぬが、ともかく、しかしこれはこういう大きな事件で、一々どういう会合にどういう人が行ったというようなことは調べる必要はないけれども、これだけの問題が起こっておるわけでしょう。在日韓国人がその日、何人招待されたかぐらいのことをなぜ韓国政府によう聞かないのですか。
  69. 中江要介

    説明員中江要介君) 在日韓国人招待の件についてはいま向こう調査を依頼しておるという段階で、確たる人数その他、どういう人間が選考されたとか、その辺の事情はこれは韓国側招待の基準でございまして、まだつまびらかにしておりません。  それから、在日韓国人韓国に行きますには、日本の旅券は関係ございませんので、その点は日本政府が旅券を発給するということはございません。
  70. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、何人行った、その住所氏名というものをいま問い合わせ中なんですね。大体の見当とすると何日ぐらいで返ってくると思いますか。それは相手のことだからわからぬと、また外務省は非常にのんびりとゆうちょうな方ばかりおそろいだからおっしゃるかもわからないけれども、一応日にちの見通しとしていつ返ってくると思いますか。交渉するのだから、何日までに返事をくれということをあなたのほうは言っておるでしょう。何日までに返事をくれということになっているのですか。
  71. 中江要介

    説明員中江要介君) 事件直後に聞いておりまして、いつまでにというちょっと私自身では判断いたしかねるのですけれども、その後、次から次へと照会、調査事項が向こうに行っておりますので、ちょっといつまでということは私は申し上げられないのでございます。
  72. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは担当者はだれが直接交渉しているのですか。何日までという、住所氏名を寄こしてほしいという要求をしたのは。たくさんしたから、もうごっちゃになってわからないようになったというわけですか。
  73. 中江要介

    説明員中江要介君) いえ、たくさんやってごっちゃになってわからぬという意味ではなくて、その後追加照会事項が次から次へ行っておりまして、一番最初に照会したことの中に、在日韓国人文世光犯人だということがわかった段階で、それでは在日韓国人というのは一体どれくらい、どういう基準で招待されたのかということを、在ソウル大使館から韓国の政府当局に問い合わせておる、こういうことでございます。
  74. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはあなたに聞いても無理なことだと思いますが、かりに一番少ない百三十数名という説をとっても、在日韓国人の方の三分の一が大阪におられる。そのうちの四分の一か三分の一は多分大阪から行っていられるだろう。私は在日韓国人の、これは呼ばれるには民団のかなり上層部の人ではないかと思う。韓国政府から見て功労者の方ですからね。私はちょっとそういう人たちに聞いてみたのですが、たいていの人が文世光ならよく顔を知っている、あの狭い生野の中でずっと生活しているのだから、そのうちのたいていの人間文世光の顔を知っているだろう、そういう答えなんです。私はそこを非常に奇異に思うわけです。まあうまくもぐり込んだにしても、民団から除名されたような文が何でこんなところにいるんだということは、当然そこで起こる可能性があるのじゃないか。それがふしぎなことに起こっておらぬ。  しかも、事件が起こってから八日も九日もたつのに、日本へ帰ってきている人があって当然だと思うのです。これはハイジャックがあったとか何とか事件があれば、それに遭遇した人は、日本へ帰ればしゃべりたくてしようがないのがあたりまえですよ、これだけの事件なんですから。自分がここにいたらこういうことだったと、いろいろなところで自分は出席していてこういうことが起こったという話が、一番少ない百三十数人説をとっても、当然あるはずだと思うのです。それが、自分がそこに出席しておったという人が、私の調査の範囲ではだれも名乗りをあげる者がおらない。これはどういうふうに外務省は考えておられるのですか。
  75. 中江要介

    説明員中江要介君) ちょっと、どういうわけと言われましてもむずかしいところだと思うのですが、推察いたしますと、自国の大統領夫人がなくなったという非常なわれわれとは違った衝動的な事件の直後でございますので、そういうことをあまり話したくないというような心理があるのじゃないかというふうにも推察されますが、これは私は何とも申し上げられない問題だと思います。
  76. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは聞いてもしかたないですけれどもね、もう外務省は全部おしになられたのだから。これはどこの地でもやっているし、私もそれは知っておりますが、私の地元の大阪でも民団中心に千人ぐらいの人が集まって大統領夫人の追悼集会を持ったわけです。そのときに、衝撃が強ければ強いだけ、よけい帰ってきた人がこういう痛ましい御最期であっというような報告をして、みんなで追悼の涙をと、これはあたりまえのことじゃないですか。たとえば日本の要人が、まああっては困るけれども外国でそういうことがあったとすれば、そういうふうなところでこういう御不幸な目に会われたんだと、同国人として目撃していたら当然そういう話をするのがあたりまえじゃないか。だれが考えてもおかしいです。民団が主催でやっている追悼集会に、大阪からも民団のおもな方々が行っておられるその模様、これは民団のことだからあなたに伺っても無理なことは最初からわかっておるわけで、私は民団がどうのこうの言うつもりは毛頭ないわけなんですけれども、そこら辺はどうなっているんですかと。  これはいまお尋ねしているところでは、毎日のように韓国政府と折衝して、いろいろと正確な情報を集めておるとあなたがおっしゃるから、そうかしこばった何日までの書面による回答といかぬでも、どうもそういう話が日本の中で一向にないんだが、これはどういうことになっておるんだという話が、あるいは私が知らぬだけで、外務省はそういう話を帰ってこられた方々がいろいろなところでしておられることをあるいは知っているということも、私が知らぬのだということもあり得るし、そこら辺についてどういうふうに対話がなされているのか、全くそのことについては一言も聞いておらぬのか、どういうことになっているんですか。  私がこれを何ゆえに——もうここらはだれでも感ずる疑問ですけれども大統領夫人の追悼の会が大きなところで催された。そのとき当然その場に居合わせた、帰国された在日韓国人の方が追悼演説をなさるのかというふうに普通の常識として考えるわけですけれども、そこら辺の疑問がわれわれは解けないから、といって私どもが直接お伺いに行くわけにいかないから、外務省にそこら辺の対話はどうなっているのだということを聞いているわけです。  早川、太刀川事件のときに、早川、太刀川さんが逮捕されたということを知った日本人が、あるいは在日韓国人もあったかもわかりませんが、非常に帰国を延期させられたという話があるわけです。これは事実足どめをされた人からの話なんです。今度日本人は二日ほどの足どめで帰ってきたようですけれども在日韓国人が足どめをされているというようなことはないのですか。そこら辺のところは外務省はどのように把握しておられますか。
  77. 中江要介

    説明員中江要介君) 私どもの承知しております限りでは、在日韓国人であるがゆえにすべて足どめされているという事態は聞いておりません。
  78. 佐々木静子

    佐々木静子君 先ほどからの質問についてはどういう態度ですか。
  79. 中江要介

    説明員中江要介君) 外務省はその職掌上、在日韓国人管理といいますか、動向を直接どうするということはたてまえ上できないことでございますし、本件の日本国内における捜査ということになりますと、これは捜査当局のほうの主管されることでございまして、その結果に基づいて外交交渉なり外交折衝が必要だというときには、外務省がその国内関係諸官庁の御協力なり御要請に応じて行動するというたてまえでございますものですから、ただいまおっしゃいました在日韓国人がその後日本でどうしているか、本件に関連して捜査上必要であるかどうかという判断を含めまして、これは日本捜査当局のほうにおまかせしておるというのがいまの外務省立場でございます。
  80. 佐々木静子

    佐々木静子君 あなたとお話ししていてもしかたがないので何ですが、この問題の文世光ですね、これは現在どこにおって、どういう状態であるのか。そういう点はどのように韓国政府から聞いておられるわけですか。これはやはり在日韓国人という立場をとっただけで、日本に永住権を持っておる者ですから、当然外務省として知っているのじゃないですか。どうなんですか。どういうふうに報告を受けておりますか。報告というか、聞いておられますか。
  81. 中江要介

    説明員中江要介君) 私ども外務省で承知しております限りでは、文世光犯人として逮捕されて取り調べを受けているということ以上には、特に承知しておらないわけでございます。
  82. 佐々木静子

    佐々木静子君 一番最初の報道では、だれが撃ったたまか知らないけれども、たぶん最初の報道では警備員だと思うのですけれども警備員が撃ったとは書いてなかったですけれども、おなかにたまが当たって、貫通して重体だという報道が一番最初に入ったわけですよね。これはどういう状態なのかということを外務省は聞いておられないのか。  それから私は、日本の捜査と韓国の捜査のやり方がだいぶ違うということはよくわかりますが、これだけのことを供述しょうと思えば、五体健全でも二日かそこらで、これは二日ほどで非常にたくさんな供述がなされておるようにソウルからの発表では聞いておるのですが、おなかに貫通して重体な人がそれだけの供述ができるかどうかということに、私はこれは韓国政府を信用しないというのじゃないですよ、疑惑を持っているわけなんです、どうも合点がいかぬと。そこら辺のところは、外務省文世光の現在の状態をどういうふうに把握しているのか。健康状態その他についても何にもわからぬのですか。  一部には死亡説というようなものも、これは全くの風評ですが、出ておるわけです。根拠がないわけでもない。というのは、文世光についてパスポート以外の写真というものがあらゆるところから一切出てこない。普通いままでの韓国の法廷の、法廷じゃなくても犯罪者の写真というのはあまり出ないですけれども、それにしても、その取り調べを受けている写真とかなんとかいうのが普通韓国の場合でも出るわけで、ほかの国の場合はもちろん出ますけれどもね、パスポート写真しかわれわれは目にすることがないということで、そういうふうなことからも、非常にいろいろなうわさが出ているわけです。外務省はそうした国民疑惑にこたえるためにも、どのように現在の状態を聞いておられるわけですか。何も聞いてないのですか。
  83. 中江要介

    説明員中江要介君) その犯人文世光の負傷しているのじゃないかという点につきましては、最も最近の新聞報道では、太ももに傷を受けて約二週間の負傷だということでございますけれども、それについて、確かなところはどういうことであるかということは照会しております。  向こうからわがほうの照会に答えましてぼつぼつ出てきております向こう調査なり捜査の結果についての評価でございますが、これはそのままわがほうの捜査当局に移牒しておりますし、また別途捜査当局のほうで国際刑事警察機構その他を通じても情報は集めておられるように聞いておりますので、その評価のほうは私どもはちょっと差し控えなければならぬかと、こう思っております。
  84. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから次は、これは警察のほうにも関係するのじゃないかと思いますが、まず外務省に答えていただくことになると思いますが、この間、田中総理が葬儀に参列された。全くほかの会合は一切持たないということを前もって重々お約束の上に行かれたように伺っておるわけでございますけれども、帰ってこられた翌日の新聞のトップ記事として、日韓の捜査協力というものを確約して帰って来たということが各紙見出しで大きく報ぜられているわけです。具体的に日韓の捜査協力というのはどういうことなのか。具体的にですね、抽象論じゃないですよ、具体的にどうしようということなのか、外務省の見解をお聞きしたいと思います。
  85. 中江要介

    説明員中江要介君) まず第一点といたしまして、田中総理朴大統領と話された内容では、そういう具体的な話にまではいく時間的余裕もございませんでしたし、また、そういうことは事実なかったということでございます。  外務省が考えております捜査協力といいますのは、この事件が単なる韓国人による韓国大統領夫妻狙撃事件というだけでなくて、その韓国人というのは在日韓国人である、またその韓国人が日本を出国し、韓国に入国するにあたって日本国の旅券を行使したということ、それからその使用したピストルがどうやら日本で盗まれた警察のピストルであったということなどございまして、日本としても全く無関心であるはずがございませんので、冒頭に先生がおっしゃいましたように、日韓関係全般から見ましても重要な、将来の日韓関係を展望しましても重要な問題であるということでありますので、その真実を究明するにあたって、そういう日本とのかかわり合いの部分について韓国側が捜査し調査しているところと突き合わせたり、あるいは日本韓国の要望に応じてもし捜査し得るものがあれば十分捜査して、その韓国の捜査に協力して、犯人はあがっておるわけでございますので、真相の究明に貢献していきたいと、こういう姿勢でございまして、韓国側から捜査の具体的な内容について照会がありましたときには、外務省といたしましてはそれを日本捜査当局に渡しまして、そして捜査当局の御協力と御努力を期待する、こういう姿勢でございます。
  86. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは本論からはずれますが、文世光を出国させ、入国させたのは日本政府の責任だと。これは入国させたのは日本政府が入国させたのですか。ビザというのはどこの政府が出すのですか。
  87. 中江要介

    説明員中江要介君) 入国といいますが、韓国への入国については日本政府は直接関与いたしませんで、ビザは当然韓国の在日公館が出す、こういうことでございます。
  88. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから昨日、外務省と法務省が中心になって、警察庁、法制局まで入って捜査についての会合をお持ちになったようですけれども、これは以前から計画されておったものですか。突如としてそういう会合を持つようになったのか。
  89. 中江要介

    説明員中江要介君) きのうの会合の主目的は、日本の警察当局が法務省に事件の概要を報告するために打ち合わせをしたということで、外務省が主催したとか、外務省が考えておったものではないということでございます。
  90. 佐々木静子

    佐々木静子君 それじゃ法務省はどうなんですか。
  91. 安原美穂

    説明員(安原美穂君) 御指摘のような会合が昨日、法務省で行なわれたことは事実でございまして、その目的は中江次長の申されたのとやや違いまして、本件は国際的な問題でもございますので、外務省、それから警察庁の方においでをいただきまして、本件に関する情報の交換を行なったとというのが目的でございます。
  92. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま、吉井美喜子というのが先日勾留状を出されて勾留中である。捜査の対象になっておるわけですが、その罪名及び勾留事実はどういうことになっているわけですか。
  93. 安原美穂

    説明員(安原美穂君) この吉井行雄の妻吉井美喜子に関する勾留の罪名は、文世光に対する旅券法違反及び出入管理令違反の幇助の容疑だということでございます。
  94. 佐々木静子

    佐々木静子君 新聞報道によりますと、旅券法違反の事実、これは香港へ去年の秋に行ったというようなことも出ておりますが、いまの勾留状の出ているその被疑事実ですね、これはどういう被疑事実か、もう少し具体的にお述べいただきたいと思います。
  95. 安原美穂

    説明員(安原美穂君) 旅券法違反の事件に関する勾留の被疑事実は、いま御指摘の香港にまいりました場合のものと、今度韓国にまいりました場合のものと、二つの事実についての被疑事実でございます。
  96. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは捜査の状態というようなことは、これは捜査上の問題だからおっしゃるわけにもいかぬということかもわからないと思いますが、新聞である程度本人がどういう自供をしたとかというようなことが載っておりますので、この国会で、香港へ行った事実は認めておるのかどうなのか、あるいは今回の事実は認めておるのかどうなのかという程度でけっこうですから、お答えいただきたいと思うわけです。
  97. 安原美穂

    説明員(安原美穂君) いま佐々木先生御指摘のとおり捜査の段階でございますので、詳しいことは申し上げかねますが、いまお尋ねでございますので申し上げますと、いわゆる犯意の点については心ずしも自供はしておりませんけれども文世光とともに香港に行った、あるいは文世光の旅券の申請して交付をするについて、戸籍謄本等を交付して便宜をはかったという外形的事実だけは認めておるという報告を聞いております。
  98. 佐々木静子

    佐々木静子君 これも私もこの事件をおかしく思うのですが、いま戸籍の閲覧のことで問題になっているわけですけれども、戸籍謄本なんていうものは何も吉井美喜子に頼まないでも、文世光吉井行雄の戸籍がほしければ正々堂々と区役所に請求すれば、どこのだれでも第三者の戸籍をとることは自由なんだから、何ゆえに吉井美喜子にわざわざそれを頼んだか。むしろそれには裏があるのではないか。文世光大阪生まれで、大阪で育って小学、中学、高校を出ておる。しかも韓国人の学校あるいは朝鮮人の学校へ行かずに、日本の学校をずっと卒業している。しかも学級委員などをずっとやっていて人望のあった学生だとなれば、同年配の日本人の戸籍を入手することくらい本人の単独でできることではないか。それをわざわざ、どういうわけでこの吉井行雄というのに関連を持たせようということになったのかは知らないのですが、自分一人で戸籍謄本なんてだれでもとれるものを、吉井美喜子に頼んで吉井行雄なる人物の戸籍謄本をとったか、この事件を解く一つの大きなかぎではないかというふうに、これは捜査当局はもちろんのことですけれども、私どもも見ておるわけなんでございますけれども、この旅券法違反の正犯というのはもちろん文世光ですね。
  99. 安原美穂

    説明員(安原美穂君) 御指摘のとおりでございます。
  100. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは実は法律上も、もう私どもから申し上げるまでもなく、最初からこの事件が起こったときに法律家とか弁護士の中で非常に問題になっておった。まずこれが文世光が正犯であった場合、これは戸籍法違反で旅券法違反というのは日本内部で起こった犯罪であるから、これは幇助犯も日本の刑罰の対象になる、これは考えられるわけですけれどもあと事件ですね、たとえば外国人が正犯で外国で犯罪を起こした場合、その共犯者が日本人の場合、これはいまの刑法では処罰の対象にならないのじゃないか。そのあたりの見解、これは大体の人がそういう意見で常識的な意見じゃないかと思いますが、それはどのように刑事局は考えておられますか。
  101. 安原美穂

    説明員(安原美穂君) いま御指摘の、日本人外国人の外国で犯した刑法に規定する罪の共犯である場合に、国内におる日本人は刑法の適用があるかという問題として考えますと、もう申し上げるまでもなく、刑法の第二条に「国外犯」という規定がございまして、ここに規定するような罪であれば、それが日本国外で本犯が行なわれた場合におきましても共犯という関係で適用があるはずでございますし、第三条で「国民の国外犯」という規定がございますので、この場合、たとえば殺人の罪というものは、たとえ外国で行なわれました場合にも、その共犯関係にある日本国民につきましては適用があるというふうに理解すべきであると思っております。
  102. 佐々木静子

    佐々木静子君 ちょっと私最後のところがよくわからなかったのですが、正犯が外国人で外国事件を起こした。それの共犯が日本人の場合ですね、その場合にどうなるかということですと、どうも私どもの常識では日本の刑罰が及ばないのじゃないか、そういうふうに考えているのですが。
  103. 安原美穂

    説明員(安原美穂君) 事殺人の罪に限定いたしますと、第三条で「本法ハ日本国外ニ於テ左ニ記載シタル罪ヲ犯シタル日本国民ニ之ヲ適用ス」とございますので共犯関係というものについて、正犯が外国で行なわれた場合には、これを国外において犯されたものと見ましても、日本国民に関する限り殺人であれば適用があり得るということを申し上げたわけでございます。
  104. 佐々木静子

    佐々木静子君 あり得る……。
  105. 安原美穂

    説明員(安原美穂君) はい。あり得るというより、できるということですね。
  106. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは共犯の場合でもですか。たとえば従犯ですよ。幇助犯なんかの場合もですか。どうも一般の法律常識と比べるとたいへんに逸脱していると思うのですが、従犯でもあり得るというふうに考えられるわけですか。
  107. 安原美穂

    説明員(安原美穂君) 事が殺人であります場合には、刑法で、それの行なわれた場所が国外であろうと国内であろうと適用が日本国民にあるわけでございますから、共犯関係についても同じであるというふうにわれわれは考えておるわけでございます。
  108. 佐々木静子

    佐々木静子君 そういうことだとすれば、たとえばいまの場合、韓国政府は次々と、私は韓国政府を誹謗するつもりはありませんが、いろいろな人の名前が出てくる。そうすると、これはかりに日本人名前が出てきた場合に、一応日本では犯罪の、殺人の容疑者と見るつもりであるというお考えですか。
  109. 安原美穂

    説明員(安原美穂君) 殺人の容疑者と、いま具体的に韓国からそういう通報があれば見るかという具体的な問題に限定されますと、それはケース・バイ・ケースでございますけれども、抽象論として、わが国の裁判権の対象になるかという一般論としてのお尋ねならば、日本国民の殺人の罪につきましては、国内であろうと国外であろうと適用があるわけでございますから、正犯が国外で起こった場合も、共犯関係で結びつくならば、やはり日本の刑法の適用がある。したがって裁判権の対象にはなり得るということを一般論として申し上げたわけでございまして、韓国から通報してきたらすぐ容疑が出て、裁判の対象、捜査の対象にするかというお尋ねだとすれば、ケース・バイ・ケースだということでございます。
  110. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、非常に抽象的な歯切れの悪い言い方ですが、たとえば本件の場合ですね、文世光の今度の狙撃事件に、日本人もこれを知っておったと名ざしで二名の日本人名前をあげておりますけれども、こういう場合に、日本でこれは殺人容疑で捜査を始めるというようなことも考えられるのかということを言っているわけです。
  111. 安原美穂

    説明員(安原美穂君) 御指摘のとおり、一般論としては考え得るということだと思います。
  112. 佐々木静子

    佐々木静子君 そういうことになると、たとえば逮捕状あるいは勾留状ですね、勾留状といたしましょう、勾留状はどういう手続でどういう勾留事実にされ、そしてどういう勾留手続で勾留請求なさるおつもりなんですか、もしそういうあり得るという考え方に立てば。
  113. 安原美穂

    説明員(安原美穂君) 別に変わったことはございません。日本の刑事訴訟法に基づきまして、日本国内におるとされる容疑者に対する疎明資料を添えて請求して、そして勾留を求める、こういうことになるだけで、特に変わった手続ではないと考えております。
  114. 佐々木静子

    佐々木静子君 そういうことになってくると、これは日本と外交関係がある国は、はっきりした数は知らないけれども、ずいぶんある。そういうふうな国でいろんな背景をもって犯罪が起こる。それによってとらまえられた外国人がいろんな人の名前を口走る。そういう場合に一々日本は捜査権を発動するつもりでいるのですか、どうなんですか。
  115. 安原美穂

    説明員(安原美穂君) その点が先ほど私が申し上げましたように、通報があれば必ずやるという御指摘であれば、そうではございません、ケース・バイ・ケースでございますと申し上げたのはそういう趣旨でございまして、通報があれば必ずやるということを申し上げたつもりはございません。
  116. 佐々木静子

    佐々木静子君 それじゃ、たとえば本件の場合に限定しましょう。もう問題が具体化しているんですから。どういう資料があれば殺人罪としての令状請求ができるというふうに捜査当局は考えているのですか、いま二名の日本人について。
  117. 安原美穂

    説明員(安原美穂君) 刑事訴訟法の文言を繰り返すようで恐縮でございますが、それらの者が殺人の罪を犯したと疑うに足りる相当の理由のある資料があれば、逮捕請求もし、勾留もできるということでございます。
  118. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま問題は具体化しているわけですよ。殺人が起こったかどうか、そのことは、そのわずかな狭い会場にいた日本代表の後宮大使ですら何もわからなかった。全くわからなかった。そういうような殺人であった場合ですよ。それでも韓国政府の、後宮大使は何もわからない、しかし韓国政府がそうおっしゃれば御無理ごもっともということで殺人の捜査を始めるというふうなことも考えておられるわけですか、いまのこの具体的な場合に。話として全然おかしいじゃないですか。日本大使がその場にちゃんとおったけれども、何にもわからなかったというような、そういうややこしい事件ですね。いまも聞いてみると、心神耗弱でもなかった、めくらでもなかったし、目が見えないわけでもないし、耳も聞こえたとおっしゃるのですね。それが何にもわからなかったというような、そういうややこしい事件でも、やはり日本政府日本の捜査権を発動しょうというようなつもりがあるのですか。
  119. 安原美穂

    説明員(安原美穂君) もし佐々木先生御指摘のように、もやもやとしたいいかげんのことであるならば、日本政府捜査当局として、断固として捜査権の発動はいたしません。
  120. 佐々木静子

    佐々木静子君 最初十六日ぐらいの新聞によるとこの殺人罪についての共謀共同正犯あるいは幇助犯があった場合に、犯人引き渡しというようなことも要求するつもりだというようなことを韓国政府発表しておるのですが、こういうような事柄について日本政府の見解はどのように考えておられるのですか。
  121. 安原美穂

    説明員(安原美穂君) 逃亡犯罪人引き渡しというようなことはきわめて外交上もたいへん問題でございますので、一般論といたしましては、事案の内容や、逃亡犯罪人引き渡しの請求につきましては、先ほど来たびたび申し上げております罪を犯したと疑うに足りる相当の理由の資料が添えられるはずでございますから、そういうものを十分に検討いたしまして、わが国の逃亡犯罪人引渡法による引き渡しできる犯罪であるかどうかを慎重な検討を得た上で、法務大臣から東京高等検察庁の検察官を経て東京高等裁判所の審査を請求するということになるわけでありまするが、いずれにいたしましても、たいへん重要な問題でございますので慎重な判断がなされるべきものと考えております。  なお、ついでながら、韓国とわが国との間には、日米間のような逃亡犯罪人引渡条約というものはございません事態でございますので、なおさら慎重に行なわれなければならないものと考えております。
  122. 佐々木静子

    佐々木静子君 私どもが一々御指摘申し上げるまでもない、この殺人事件についても日本人の感覚から見るとたいへんにうやむやである。特に、韓国の場合に自白中心主義をとっておられるようであって、証拠裁判というものが行なわれておらない。そういうふうなので、供述調書などというようなものが、韓国の場合はおそらく一番重要視される証拠として、そういうことになってくれば提案されるのではないか。  もしそういうことで、これは賢明な日本の捜査官がそのようなことで日本の捜査における供述調書と同列に考えるというようなことはもちろんないと思いますけれども、しかし、韓国の捜査の実情というようなことについて、これはこの間も「この目で見た韓国の実態」、これは私が主観を入れて言っているのじゃなく、アムネスティ・インターナショナルの、国際法律家協会の国連代表であるアメリカの弁護士ウィリアム・バトラーという人が、韓国における政治犯の拷問というようなことについていろいろ調査をしたところ、政治犯の場合は、いま元大統領をはじめ国会議員であった者あるいは知識人あるいは詩人、文化人、宗教家に対しての取り調べの状態は、さかさづりにされた上からだのあちらこちらを炎で焼かれたというような、こういう取り調べの状態が行なわれている。これは国連に報告されているわけですね。こういう状態の捜査が行なわれておる。  そういうふうな、日本と非常に国情の違う捜査のやり方の国がいろいろある。そのときに、やはり日本の捜査機関なり日本の政府は、私は先ほどから外務省は一体どこの国の外務省かと腹を立てているわけでございますけれども、これはよほど慎重に考えないとたいへんなことになるのではないか。これは私ども言うまでもないことですけれども。それについて自分も全く同感だということは、きょうは法務省としてもちょっと答えにくいかもわからないから、私のほうはあえてそのことについて刑事局長がどう考えているかということを答弁はいただこうとは思わないですけれども、これは世界的にそういう資料が国連にまで提出されている状態だ。これは単なる政治犯の場合であって、今度は、在日韓国人の方々も非常に憤慨されて、これくらい激怒されているような大統領狙撃するという事件である。その犯人と目されている文世光の取り調べというものは、まあ大体想像がつくのじゃないか。ですから、その自供によっていろんな人が振り回されるということは、これは日本人の権益を守る上からもたいへんな問題ではないかというふうに私は考えるのです。  そういう点について十分な配慮を持って臨んでおられるとは思うわけですけれども、重々軽率なことがないようにお願いしたいと思うと同時に、いま日本人のことについて伺いましたが、在日外国人がこの事件の犯罪者、共犯者というふうに目された場合に、これは日本政府としたらどのような態度をおとりになるつもりなのか、具体的に説明していただきたいと思います。
  123. 安原美穂

    説明員(安原美穂君) 先ほどは日本国民についてのお尋ねでございましたが、今度は日本国内におる外国人の問題につきましては、一般論といたしまして、御案内のとおり刑法は、外国人の場合におきましての国外犯として殺人罪というものを規定しておりません。したがいまして、問題は、日本裁判権があるかどうかということは、当該外国人が犯した行動が、日本国内において罪を犯した者に該当するかどうかということに帰一するわけでございまして、そういう意味において、その外国人がお尋ね事件について日本国内で罪を犯した者に該当するかどうかという事実判断の問題でございまして、きわめてデリケートな問題として、やはり事実のある程度の確定を経ませんと、わが国に裁判権があるかどうかということを断定するわけにはいかないという状況でおるのが現在の状況でございます。
  124. 佐々木静子

    佐々木静子君 たとえば本件の場合に、在日韓国人の方がかりに本件の容疑者というようなことが起こった。そういう場合に、むろん韓国の官憲が日本で取り調べをするというようなことは絶対あり得ないわけですね。それから捜査協力で捜査員の交換というようなことも、何か一部新聞には報ぜられておりますが、そういうことは絶対に考えておらないわけですね。どうですか。考えてないと思われるのですが。
  125. 安原美穂

    説明員(安原美穂君) 捜査員の交換の問題につきましては、やや具体的でもございますし、捜査当局がせっかく御出席でございますので、山本局長からお答えいただければ幸いかと思います。
  126. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 捜査員の派遣、相互派遣、こういうことは現在全然考えておりません。
  127. 佐々木静子

    佐々木静子君 将来はいかがですか。
  128. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 将来どういう問題が起こるかわかりませんけれども、いまのところ、われわれとしては基本的には捜査員の相互派遣というようなことにはならないというふうには思ってはおりますけれども、まあ将来のことでございますので、はっきりはお答えできないと思います。
  129. 佐々木静子

    佐々木静子君 私もあまりいまの国際情勢から事を考えて御答弁はしいていただこうとは思わないのですが、いま在日韓国人のことをお尋ねいたしましたが、在日朝鮮人に対する問題ですね、そういうことについて、やはりこれはもうすでに韓国政府は一方的な発表で被疑者としておる。そういうふうな微妙な国際情勢に立たされており、朝鮮総連のほうでは、もちろんとんでもない事実無根であるという発表もしておられ、本人からも全然関係はないということを明白に断言しておられる。そういうふうな複雑な情勢の中で、これは金大中事件のときもそうであったけれども日本にとって全く降ってわいたような非常にむずかしい立場に立ち一非常に朝鮮半島で起こっておる不幸な事態というものがそのまま日本に持ち込まれて、いやでもおうでも踏み絵をしいられるというふうな立場にいま日本政府は立たされておると思うわけです。  これは非常に結論的なことを申し上げますが、私は今度の事件を通じて、ここでやはり日本政府がいまの外務省の御答弁のような姿勢では、とてもこの問題の解決はできないのではないか。いまのような非常に韓国出先機関であるかのごとき態度でいる限り、これは日本の場においてたいへんな紛争が持ち込まれるのではないか。また、それによって今後、在日朝鮮人あるいは在日韓国人というものがどのような立場に置かれるであろうかということを非常に懸念すると同時に、また、その問題に好むと好まざるとにかかわらず多くの日本人が巻き込まれる。吉井さんが今度の事件ではたまたまこういうことになっておるわけですけれども、そういう事柄だけじゃない、いろんな問題に巻き込まれる。しかも、それについていまの刑事局長のような御判断を示されておられる限り、これはたいへんな事態が起こってくるのじゃないかというようなことを非常におそれるわけです。  これはほかの委員からもまたその点について御質問があると思いますので、私はそれ以上深くは申し上げませんけれども、ともかくこれは橋本先生も白木先生大阪の御選出ですが、私もこの間から東京大阪を往復いたしまして、東京大阪は何と距離が離れているかということを痛感したわけです、非常に近いつもりであったところが。というのは、この東京におりますと、全く机上の空論としてこの事件が取り上げられている。正直言ってマスコミの方にしろ何にしろ、非常に理屈だけで感じておられる。しかし大阪に着けば、これはあの人がこうなった、どうなった、あの人はいまあぶないんだ、ああなった、こうなったということで、たちどころに具体的な問題として、たとえば金大中対策委員会などには連日千人からのデモが来る。殺してやるという通告がきておる。  私は、その言ってきておるほうのことはここでは言っておらぬわけですけれども、これは日本政府に責任があると思うのです。そしてもしそういう事態が起こったならば、在日韓国人の中に犠牲者が出るということも私は非常に憂慮すべき状態だと思うし、またそれとともに、関連している日本人がどういうことになるかということも、やはり日本政府はもっと考えるべき問題だと思う。のんきなことを言っておる状態じゃないということ。  たとえば金大中対策委員会につとめておった某氏などは、これは文世光とはほとんどつき合いがないわけなんですけれども、それでもその金大中対策の仕事をしておったというだけのことで連日連夜押しかけられて、もう家にも全然おられない。ある店を出しているのに、店もずっと締めたままになっておる。アジア局次長はのんきなことをおっしゃるけれども、たいていの人は生活もかかっておるのですし、どうにもならないわけです。生野区などというのは、日本人よりも在日朝鮮人とか在日韓国人の方のほうが多いわけです。そこで激しい二つの対立、それからあるいはこれは韓国内部の二つの対立という考え方もできないではない。それらの対立の中に、在日韓国人が困られるということももちろんのことながら、全然日本人も無縁の立場でおれるはずがないわけなんです。やはり日本の外交はもう少し朝鮮問題について本気になって考えていただかないと、これはたいへんなことになると思うのです。  ともかく黙っておれ黙っておれ、言われっぱなしでもいい、何でもいい、みんな日本が悪いのだと、それはそれで現地の大使は御安泰でしょう。しかし、そういうことになったならば、日本の国内に六十何万という在日韓国人の方、朝鮮人の方がいらっしゃる。そこの中でどういうトラブルが起こるか。そしてまた、これは私は日本人にそもそも歴史的に責任があることながら、反日感情というものはこれはぬぐい切れないものである。その反日感情というものが、この事件を契機にして再び盛り上がるという危険もある。むろん、すべての方がそう思っていられるというのじゃ全然ないです。非常に友好的な考えをお持ちの在日朝鮮人の方もあれば、在日韓国人の方もある。また日本人の中でも、これから非常に朝鮮民族の方と友好的な立場に立ってやっていきたいとこいねがっている人が、日本人のうちのほとんどすべてじゃないかと思うのですけれども、それが、日本外交が全く行き当たりばったりの精神分裂の立場をとっているばかりに、たいへんな犠牲をみんながしいられている。  私は実は、大阪の新聞社の記者の方々にきのうの夕方お会いして、深夜東京の新聞社の方々にお会いして、こんなに東京大阪とがほかの国のように離れていると思ったのは、これが初めてだということを申し上げたい。特にこの国会とかこういう建物の中にいると、またそこが非常にずれがある。そういう意味において、外務省は役所の中の机に向かって日韓関係を考えている限り、これは在日朝鮮人在日韓国人も、そして日本人も含めて、不幸のどん底に追い込むことになるということ、第二第三のテロ事件だって起こらないとは限らない。もっと真剣に考えてもらわないと困ります。韓国に対する外交路線を一つの党利党略、自由民主党だけじゃない、そのうちの派閥の利益のために韓国外交を推し進めることによって日本国民を売り渡すようなことになりかねないわけです。もっと外務省はしっかりしてもらわないと困ると思います。  これはいま私最後に申し上げようと思っていたことを先に申し上げたわけですが、これに関連して警察庁にちょっとお伺いしたいのですが、拳銃の事件というものがたいへんに、この拳銃が日本の警官が所持しているものを盗まれたのだということから、これは日本政府に責任があるし、ひいては日本人が悪いのだということの最も重要な根拠の一つにされておるわけでございますけれども、この捜査の状態はその後どうなっているのか、わかる範囲でお答えいただきたい。
  130. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 拳銃について、最初韓国のほうから犯人の持っていた拳銃、これの番号、型、写真、こういうものを送付してまいりまして、これはどこで盗難にあったのか、こういう照会がございましたので調べましたところ、その番号や型、これが南警察署の高津派出所で盗まれた拳銃と全く一致するということがわかったわけでございますが、したがいまして、大体高津派出所から盗まれた拳銃の一丁は現在韓国にある。もう一丁についても、その提報に基づきまして、文世光がこれの盗難に関与した疑いがかなりあるということで彼の自宅を捜索いたしましたところ、そこの二階の何というのですか、床下ですね、下から見れば天井裏ですが、ここにもう一丁の拳銃が発見されたのですが、これを調べましたところ、やはり先ほど申し上げました高津派出所の盗難拳銃のもう一丁であるということが、これも型とか番号とかその他から確認されたわけでございますので、盗難の二丁の拳銃の行く先はわかったわけでございます。  それではだれが犯人であるかということでございますが、韓国当局からは文世光の指紋、掌紋等も送られてきておりますので、これを高津派出所の中における遺留指紋、掌紋等と照合いたしましたけれども、現在までのところ一致するものはないということでございますので、犯人についてはだれがやったか、あるいは何人でやったか、そういう特定はできておらないわけでございますが、捜査のこれまでの方針を、やや捜査本部としてはこの点にしぼって捜査を進めておりますので、さらに新しい事実その他を把握してこの事件の解決に現在努力しておる、こういう状況でございます。
  131. 佐々木静子

    佐々木静子君 いままでの捜査の中で、文世光というような人がこの事件が起こるまで拳銃事件の捜査の容疑線上に全く出てこなかったのか、多少ともでも出てきたのか、そのことを述べていただきたい。
  132. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 全く出てきておりませんでした。
  133. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは公安調査庁にお伺いいたしたいのですが、私も公安調査庁の活動ということについて先日もいろいろお聞かせいただいたわけなんでございます。そして公安調査庁の調査二部の中の第二課に、外国勢力と日本国内における調査指定団体との関係調査というものがなされておるということを承ったわけでございます。今度の事件について公安調査庁が、これはそのためにある役所ですけれども、事前にどのぐらいの情報を集めておられたか、そのあたりを述べていただきたいと思います。
  134. 渡邊次郎

    説明員(渡邊次郎君) 文世光という犯人と目されている人間については、従来公安調査庁の調査対象に全然なっておりませんでしたので、事前には全然情報を得ておりません。
  135. 佐々木静子

    佐々木静子君 第三課に、過激な右翼団体の組織及び活動に対する調査というのがありますね。それから調査一部の第四課に、過激派諸集団の組織及び活動に関する調査というのがございますね。この対象になっている団体名を、これの調査対象というのは公安調査庁の長官がおきめになるというふうに伺っておりますので、これは情勢の変化に応じていろいろと変わってくると思うわけでございますが、この調査第一部の第四課あるいは調査第二部の第三課の対象団体の名前をあげていただきたいわけです。
  136. 渡邊次郎

    説明員(渡邊次郎君) 過激派の集団を調査対象団体にしていることは事実でございます。しかし、一般的に調査対象団体の名前を公表することはちょっと問題もございますので、できるだけ差し控えたいと思います。
  137. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは前にも法務委員会で、あなたじゃないけれども、前の公安調査庁長官はちゃんと具体的に各団体名をおっしゃったわけです。前の長官の言われたことを、あなた言えないわけはないでしょう。
  138. 渡邊次郎

    説明員(渡邊次郎君) 重ねてのお尋ねでございますので申し上げます。  過激派諸集団で調査対象団体にしておりますのは七つございまして、一つは全日本学生自治会総連合、二番目は共産主義青年同盟、三番目は共産主義者同盟、四は日本マルクス主義学生同盟中核派、いわゆる中核派と呼ばれている団体です。五は日本革命的共産主義者同盟、いわゆる革共同、六は革命的労働者協会、それから最後に日本マルクス主義学生同盟革命的マルクス主義派、いわゆる革マル派といわれている団体、以上でございます。
  139. 佐々木静子

    佐々木静子君 それらの御調査をなすって、その中に文世光という人間名前は出てきておらなかったわけですね。そうですね。それからそのほかに文世光が出てきておらなかったかということと、それからいま韓国側発表によると、他の日本人名前が出てきたかどうかということもあわせて伺いたいと思うわけです。
  140. 渡邊次郎

    説明員(渡邊次郎君) 出てきておりません。
  141. 佐々木静子

    佐々木静子君 私この春以来、公安調査庁の御調査が朝鮮総連に対してかなり顕著に行なわれているのじゃないかというような懸念を持ちまして、これはどういうことなのでしょうかとお伺いさせていただいたことがあるわけなんでございますけれども、その御調査の中に文世光というのが出てきたことはありますか。この方はむろん総連の方じゃないけれども、総連を対象にするのは実情に合わないのじゃないかということは私前回申し上げた事柄ではありますけれども、いまもそういう気持ちは変わっておりませんが、あなたのほうはその朝鮮総連について相当に御調査なさっておる。御調査なされば、朝鮮総連と関係のある人の名前、これも当然調査の対象にいやがおうでも浮かんでくると思いますが、調査庁のほうの御調査文世光というのが名前にあがってきたことはございますか。
  142. 渡邊次郎

    説明員(渡邊次郎君) 朝鮮総連は調査しておりますけれども、その関連においても文世光名前は出てきておりません。
  143. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうしますと、公安調査庁がいままでいろいろとお調べになった結果においては、文世光という人と朝鮮総連とはにわかに結びついている、何かの関連があるというようなことは、調査資料では全然出てきておらぬということでございますね。
  144. 渡邊次郎

    説明員(渡邊次郎君) ええ、従来は出てきておりません。
  145. 佐々木静子

    佐々木静子君 いままでの、この事件が起こるまでのことでけっこうです。
  146. 渡邊次郎

    説明員(渡邊次郎君) さようでございます。
  147. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは私も前にも伺ったのですが、調査一部の一課から三課が日本の左翼に対する調査、四課が過激派の問題、あるいは調査二部にしても、どうも調査の対象が非常に片寄っているような感じがするわけです。たとえば今度の事件、これなんか、公安調査庁という役所があるという前提に立てば、こういうことこそ調査しておいてほしいと私ども思うわけです。この間もちょっと私は北海道地区だけでも公安調査庁の職員が何人動いていらっしゃるかということも伺ったわけですけれども、それだけの人がほんとうにいま日本国民が必要としていることの調査をやっていただいたら、これは単独犯であればしかたがない、しかし、いろいろと揣摩憶測されているようにいろいろな支援団体なり何なりがあるとすれば、これはもっとはっきりするのじゃないか。そこら辺で、公安調査庁のほうでもう少し国民の期待にこたえる調査をやっていただきたい。全然こういう役所がないなら何ですけれども、あるのですからね。あって、これだけの事件が起こっているのに、どうも私どもは、どうしておられたのかなということを感ぜずにはおれないわけなんですけれども、そのあたりはどうなっているのですか。非常にこの春ぐらいは忙しいように、また何ゆえに忙しいのか私どもわからなかったわけですけれども、どういうことなんですか。
  148. 渡邊次郎

    説明員(渡邊次郎君) 私のほうの役所では、一応従来のその団体の行動、それから将来の危険性というものを考えまして、調査の対象にする団体を一応特定をしております。ところが、今度の文はそのいずれの団体にも属していないもので、そういう調査対象からずれておりますので、結局把握できなかった次第でございます。
  149. 佐々木静子

    佐々木静子君 この調査の対象というのは法律できめているのじゃなくて、公安調査庁の長官が指定された方が調査の対象になっているわけですよね。だから、これはあなた方の内部の問題なわけです。その指定されていなかったか、されていたか、ちょうどこれに当てはまる団体が私はどういう団体か知りません、全く何もわからんで言っているのですけれども、うまいこと上がってこないというのは、調査の対象になっていなかったから上がってこないのじゃないかと思うのですけれども、そうなると、これは対象にされていなかったからというのじゃなくて、やっぱり対象にすべきものが対象にならずに、対象にならないでいいものが対象になっていたということに私はなってくるのじゃないかというふうに思うのですけれども、そのあたりはどうなんですか。
  150. 渡邊次郎

    説明員(渡邊次郎君) 被疑者の文がどういう団体に所属しているか、これは現在警察でも調べ中だと存じますけれども、そういう捜査の結果を待ちまして、そのグループ、団体の危険性等も考慮して、その段階で考えてみたいと存じます。
  151. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから、これはソウルのほうからの発表ですけれども、話がまた変わりますが、文世光の自供によって、ことしの五月五日の日に、文世光が万景峰号の共和国直属の工作員から殺害の指示を受けたというふうな供述がなされておるわけなんでございますが、これは捜査当局の御発表によっても、ことしの五月五日の日には万景峰号はもう午前十時に大阪港を出港して、日本人は近寄っておらない、もちろん在日朝鮮人も近寄っておらないという御回答をいただいておるわけです。  実はこの万景峰号というのは、これは法務省の御資料でいただいても大阪に五回来ている。私も万景峰号が来るたびに招待状をもらっている。行ったのは一回だったかと思うのですけれども。これは新聞報道で非常に暗いイメージとして、何か万景峰号に行くと非常に悪いことでもしているんじゃないかと。しかし正直言って、万景峰号へ行っている招待の対象というのは、私もいま白木先生と話していて、国会議員はみなきていたのじゃないだろうかなという話をしていたのですけれども一実は私は一々確認はしておりませんが、知事夫妻、それから大阪府下の市長は全部万景峰号に招待されている。各級議員も全部招待されている。また大阪のいわゆる各界の代表者とか、いわゆる知名人とか団体の会長とか労働組合の役員、あるいは労働組合じゃない、むしろ保守系の関係者というようなものもたくさん招待されている。私の行った記憶でも、ちょうどモナリザの絵を見に行くようにずっと縄を張って順番に並んでいて、入管と府警とが大出動して万景峰号へ乗る人を次々に整理して順番に並んで、ちょうどモナリザの絵を見に行くような風景であった。  そういうような事柄から考えて、これは万景峰号に限らず、東京はあまりそういうことがないのか知らないですけれども、横浜に行けばそういうことは当然あると思いますけれども、いろんな国のめずらしい船が入ってきたら招待が来ますよ。特に進水式とか、初航路とか何とかいうようなときにはいろんな国の船が来る。そしてそこで各界の代表者なりが招待されてパーティが行なわれる。そういうふうな状態で、これは吉井行雄さんと美喜子さんがここへ行ったからといって、全く奇とする問題じゃない。  第一回の万景峰号に訪船した人の数が、これは大阪港の寄港中、一番初めの昭和四十七年九月二十一日に入港したときに一万六千七百七十九人の人が訪問しているわけです。その次の十月十七日には五千二百六十五人、翌年の四十八年四月二十五日には六千四百六十八人、四十九年の四月三十日には四千五百十二人、また一番新しい四十九年五月三十日には八百七十五人、これは法務省の調べによってもまたそうだと思います。  私も招かれて行っているからよくわかりますが、ちょうど上野動物園にパンダが来たときにみんなが押しかけていったように、まあパンダと万景峰号と一緒にするのはたいへん失礼な話でなんでございますけれども、そういう何か密約をするというような雰囲気じゃ全くない。押すな押すなでみんな行ってパーティで食事をして、そして次から次へ入れかわり交代してなにをしている。非常に大きなホテルのパーティなら、すみで話をするということがあっても、狭い船室のパーティでそういうふうな話をするひまがないというようなことで、そういう雰囲気じゃない。いろんな各界の代表者が呼ばれて、吉井行雄君も行った。彼は労働組合の常任書記だから当然招待状がきただろうと思う。それで行ったということなんですが、そのあたりについて、これは新聞にソウル放送しか載らないからやむを得ないとは思うのですけれども日本捜査当局として万景峰号の件はどういうふうに把握しておられるのですか。
  152. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 向こうの当局の発表によると、五月五日に文世光がこの船を訪船したというふうになっておりますが、私どものいままでの調査の結果によると、五月五日に本人が訪船したという事実は、われわれのほうは把握できないということでございます。それ以上はちょっと調べようがないのでございます。
  153. 佐々木静子

    佐々木静子君 入管に伺いますけれども、この万景峰号に乗船する人、これは万景峰号に限りませんが、どこでもそうだったろうと思うのですけれども、乗船する人は、たとえば大阪港で外国の船に行くときには、入管の大阪事務所の人が出張して、そして住所名前とを控えて乗船させる。この万景峰号のときは人が多かったから、印刷した用紙に氏名を書き入れて、それと引きかえに乗船する。そして、おりるときにはその数を確認しておりてくる。そういうことで、およそそういう変なイメージと結びつく状態でないと思うわけなんですが、ただ、その五月五日の日には訪船者がなかった、そう思います、朝もう出港しているんですから。その出港前にひそかに会いにいくことができるような日本の入管、出入状態なのか。あるいは数をごまかして船の中にでも隠れておるとか、あるいはそのまま出国するとか、そういうことができる状態なのか。そこら辺は、入管の大阪事務所の実情なんかはどのようでございますか。
  154. 竹村照雄

    説明員(竹村照雄君) 日本式に言いますと「万景峰」という船の名前でございますが、これへの訪船者につきましては、入管の警備官におきまして舷門、タラップを上がっていくところでございますが、舷門で立哨しておりましてチェックしております。したがいまして、それ以外のところから入る可能性があるかどうかは別といたしまして、そういう限りでは、これは二十四時間やっておりますので、あそこを通る者以外であやしい者が行くということは一応ないたてまえになっております。ただ、本人名前をみなが使っているかどうかということはわかりませんけれども、われわれの現在までの調査では、文世光という人の名前は全然あがっておりません。
  155. 藤田進

    ○藤田進君 妹尾課長、来ていますね。この際、とりあえず三点について伺っておきたいと思います。  その第一点は、中江次長の答弁によると、今時韓国における式典の際の事件について、この式典終了直後、後宮大使から直接電話があり、これを受けたのが妹尾課長であるということが明らかになった。その第一点は、外務省の場合、たまたま課長がいたからこれを受けたのか。名ざしであなたを、担務課長でもあるしということであったのか。その業務態様について。これが第一点です。  第二の点は、長年の外務省の仲間ですから声でわかるでしょうから、これは人定しながら、もしもしから始まったと私は思う。これをプロポーショナルにありのままを、どういう連絡、報告があったのか、内容をそのまま偽らずに説明してもらいたいと思います。  第三点は、あなたはその受けた電話の内容を少なくとも上司に報告したと思うが、どういう人に報告したのか。その内容を含めて職・氏名を聞いておきたい。
  156. 妹尾正毅

    説明員(妹尾正毅君) お答えいたします。  第一点でございますが、これは私ということで向こうから特定してきたかどうか、はっきり記憶しておりませんが、大使から北東アジア課に電話が直接かかる場合は、私がいる限り原則として私が出るようにしております。ですから、後宮大使からですという場合は、私が席におれば私が電話に出るということでございます。  それから第二点でございますが、正確な内容ということでございますが、私申しわけありませんけれども、正確な表現までは記憶しておりません。最初に連絡が入りましたので、これは大使が出ておられるはずだからと思っておりまして、大使からどう言ってこられるかということだったわけでございますが、私の記憶では、要するに趣旨としては、その場の状況ははっきりとわからなかったということでございました。ただしそのあと、実は大使から連絡がある前の段階で、すでに館員があちこちに情報をとりに回っておりまして、それで大使の記憶と、それからいろいろのところで聞いたこと、テレビを見ていたこと、そういうものを総合した連絡がその後にございましたので、その点を補足させていただきます。  それから、どういう人に報告したかということでありますが、大使も一番最初段階はよくわからないということでございましたので、私の記憶では、あまりたくさんの方には御報告してなかったと思います。しかし、そのあとまとまった報告が来ましたところでは、外務省の幹部全員、それから政府の主要関係者に連絡いたしました。  以上でございます。
  157. 藤田進

    ○藤田進君 後宮大使は、要約すれば何事が起こったのかわからないという報告に尽きるわけですか。あるいは狙撃された模様であるとか、銃弾を少なくとも五発撃っていると見る、これは警護を含めてですが、そういう狙撃事件があったというそのこと自体にも触れないで、何事かどうも会場にいたら起こったようだと、それでわざわざ電話してきたという受け取り方をあなたはしたのですか。
  158. 妹尾正毅

    説明員(妹尾正毅君) お答えいたします。  大使は、電話してこられたときには狙撃事件があったことはもう御承知だったわけですが、大使御自身ではどういうことだったのか具体的な状況はわからなかったということでございます。一瞬のできごとでよくわからなかった。したがいまして、いまお話のございましたように銃が何発撃たれたかとか、その音を確認したとか、そういうお話はございませんでした。
  159. 藤田進

    ○藤田進君 そういう狙撃事件があり、それから大統領夫人はこういう状態であると、そういう全然目あきつんぼでない限りわからないはずがないところに、ぼくらは疑問を持つ。それほどの能力不足の後宮君であるかどうかということもあわせて、私は考え合わせたい。きょうは時間がないので、あらためて本件を含むこの事件については、全般として政府のそういったものを含めて私は追及せざるを得ない。  後宮大使がわざわざ国際電話をかけて報告してくる。あるいはどういう方法であったのか、国際電電であったのか、何だったのか、その辺もつまびらかではないが、わざわざ報告してくるのに、全く状況がわからない。それはいまの、文世光がどうであってこうであってというようなことまでその瞬間でわかるはずはないので、そこまで認識を持てというのは無理だと思うけれども、しかし場内における、その限りにおける直観的なものはその任務上報告すべきであるし、彼の場合、したに違いないと私は実は思っていたわけですが、いまあなたの直接聞いたものによっても、何事か起こったらしい、わからないということだけで、そうでしたかという受け取り方をした課長、妹尾君自身もまたどうなっているのか。外務省はそんな者ばかりが集まっているのならば、これは考え直さなければならない。もっと詳しくひとつ答弁をしてもらいたい。
  160. 妹尾正毅

    説明員(妹尾正毅君) 御説明申し上げますが、私ども式典大統領狙撃事件があったらしいということで、その式場には後宮大使が行っておられたから、大使が帰られたら詳しいことはわかるのじゃないかと思いまして、さっそく大使館にその話をしたわけです。大使からありました電話は、そういうこちらからの連絡を受けて、自分は出席していたけれども一瞬のできごとで詳しいことはわからなかったという連絡でございまして、大使がとにかく現場にいてもその辺の詳しいところは一瞬のできごとでわからなかったと言われる以上、私どもとしてはそうかと言うしがなかったわけでございまして、むしろ別途いろいろな方法で情報を収集して現地から送ってきて、それを活用しているということでございます。
  161. 藤田進

    ○藤田進君 まあ、これは続けてもしようがないことですからまた時間をとってやりますが、わからなかったというのは、これは結論的にそういう判断をされたのかも知らないが、狙撃事件が起き、負傷者が出たなり何らかの具体的なものがあってこそその報告の価値があるわけで、場外にいた者さえもまず連絡では、狙撃事件があったようだと、あなたの言をかりて言えば。場外にいた者でも、狙撃事件があったようだ、詳しいことはということで、大使からこの終了後電話があったと、こういう順序でしょう。それが文世光かどうかということはわからない。先ほど指摘したようにね。しかし、何もわからなかった、何事か起きたようだ、それだけのこととは思えない。  向こうから狙撃事件があり負傷者が出たなり何なりのことは、これは常識的にあったはずなんです。それをなぜ隠さなきゃならぬかというふうにぼくは疑問が発展していくのです。  もっとそうじゃなくて、狙撃事件場所の者でさえわかっておるのだから、後宮大使から電話があった場合に、それよりは場内にいた者はいたらしい報告がなければ、それは価値がないものじゃないでしょうかね。狙撃事件があったことも触れなかった——。その辺をもっと具体的に。
  162. 妹尾正毅

    説明員(妹尾正毅君) 御報告いたします。  私ども大使館に連絡したときは、大統領殺害未遂といいますか、それで大統領夫人が撃たれた、大統領夫人が場外に運ばれたというのが前提になっておりまして、それに対して後宮大使が現場にいて何か追加的に現場で見られてあったかということを聞いていたわけでございまして、それに対して大使は、一瞬のできごとで自分にはよくわからなかったと言ってきたということでございますので、そういう趣旨のものと御了解いただきたいと思います。
  163. 藤田進

    ○藤田進君 了解できない。
  164. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、この問題は非常に疑惑点が多く、本日私どものさせていただきましたわが党の質問では、全くそれに対するまともな答弁がなされておらないように思うわけでございますので、次もまた引き続いてぜひともこのことについての質問を続けたい。そして先ほど要求しました資料もそれまでに出していただいて、それに基づいてまた質問を続けたいと思います。  そして外務省に、最後に金大中事件ですね、これについて。  この不幸な事件の起こった前日に一方的に捜査打ち切りの、日本側から考えるとわれわれの期待に全く反した打ち切り宣言が韓国から通告されてきた。それに対して再調査要求されるという一とを新聞でも拝見しておるし、この間も木村大臣からもそのような国会答弁があったようでございますけれども、そのことについていま外務省は具体的にどういうことをやっておられるのか。そしてほんとうにわれわれ国民の期待するとおりの再調査をちゃんとやるだけの確信があるのか、そのことについて述べてください。
  165. 中江要介

    説明員中江要介君) 大統領夫妻狙撃事件の前日の金東雲元一等書記官に関連する捜査報告韓国側の捜査の結果報告については、わがほうの警察当局が満足していないということは何度も言われていることでございますし、われわれとしても、昨年の外交的決着の了解事項の一つとしてあの件が十分満たされたというふうには見ておらないということもはっきりしておるわけで、直ちにこの報告では不十分である、われわれとしては納得しがたい点があるということについて、韓国側に再度申し入れようというやさきにいまの不幸な事件が起きたものでございますので、木村大臣も御答弁になったと思いますけれども、この事件が一段落しましたところで、あらためてあの件についてのわがほうの考え方、そしてあの報告の中の日本側として納得のいかない、あるいは補足説明を要する点について詳細に韓国側に照会しようという決意には変わりはございません。  どういう内容についてどういう点をさらに求めるかということについては、わがほう捜査当局と協議中でございまして、はっきりしました具体的な点について再度韓国側に強く要求していく、こういう態度でございます。
  166. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはぜひ強く要求していただきたいと思いますが、それと同時に、私はこの不幸な狙撃事件というものはそう簡単に解決はしないのじゃないか、少なくともいまの外務省の姿勢である限り。それが解決してからじゃ、とても話にならないと思います。それとこれとは別々の問題なんだから、それをもっと、いまからでもどんどんすぐにかかったらどうなんですか。
  167. 中江要介

    説明員中江要介君) 私はいまの狙撃事件が解決してからということでなくて、狙撃事件で国をあげてなくなられた大統領夫人に哀悼の意を表しておられるその雰囲気がある段階では、われわれが予定していたような措置をとるのは必ずしも適当ではないのではないかという、そういう判断で一段落ということばを使ったわけですけれども、できるだけ早く本件については強く申し入れたいと、こういうことでございます。
  168. 佐々木静子

    佐々木静子君 これも時間がもうあとわずかで、ほかに二つの問題点がございますので、この問題もまた次の機会に重ねて質問させていただきます。  次の問題で警察にお伺いいたしますが、今度の選挙違反事件というものが、まず買収だけに限りましても、前回の参議院選の場合に千五百五十件あって、これも決してほめた話ではありませんが、それが実に今度の参議院選においては一躍千件以上ふえて二千四百六十三件、対象になっている人間については倍以上の数にふえている、五千六百五十三人という数にふえているという資料をいただいているわけでございますが、そのうちで最も大きな買収事件として、これは昨日の新聞にも糸山派違反ということがあげられております。  この糸山派違反について、林さんという人が総括主宰者と断定されたというふうな記事が載っておりますが、捜査の御当局に伺いたいのですが、そのとおりでございますか。
  169. 田村宣明

    説明員(田村宣明君) 現在の段階では、総括主宰者という認定を警視庁としてはいたしておりません。
  170. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、昨日の新聞でこのように書いておるのが、総括主宰者というふうにはまだ断定はしておらないというわけでございますか。そうすると、この事件についての捜査はまだこれから始まるという段階にあるわけでございますか。どういうことですか。
  171. 田村宣明

    説明員(田村宣明君) この総括主宰者としての認定に関する捜査ということはこれから始まるかというふうに御質問を理解いたしますと、現在までいろいろ捜査をいたしてまいっておりますので、そういうふうな積み重ねの中で、総括主宰者としての認定をし得るかどうかという検討を行なうということでございます。
  172. 佐々木静子

    佐々木静子君 もう時間がございませんので、この問題についてはほかの委員も御質問があるようでございますから、もうそれ以上何にいたしまして、この糸山派違反で現在起訴になっている人の数、氏名、そういったものを法務省のほうから御報告いただきたい。また、これより大きな違反事件がいま参議院選挙についてあるのかどうかについてもお伺いいたします。
  173. 安原美穂

    説明員(安原美穂君) 糸山派の選挙違反事件の受理の状況、八月十五日現在の報告に徴しますと、この派の選挙違反検察庁が事件を受理した数は一千八十四名でございまして、そのうち身柄拘束を百三十六名について行なっておりまして、なお相当広範囲の違反事件でございますので、まだ処理を終わった者はその一割強の百三十一名でございまして、なお捜査中の事件が大部分でございます。  なお、この関係で罪種別にみますと、買収で受理した者が千八十四名のうちの千五十名であるというのが概況でございます。
  174. 佐々木静子

    佐々木静子君 この糸山派事件の問題も、私の持ち時間もあとわずかでございますので後日に譲ることにいたします。  きょうは法務省の矯正局長と保護局長とお越しでございましたらお伺いしたいのでございますが、これはさきに昨年の予算委員会であったかと思うのでございますけれどもお尋ねいたしました点で、これはいまより二十六年前に起こりましたいわゆる帝銀事件、平沢貞通さんのことでございますけれども、そのときにも当時の保護局長のほうから、特別の恩赦についての対象にして検討する、しつつあるというお話でございました。それからも相当な年数がたっておるわけでございます。  平沢貞通さんは現在もう八十二歳の年を迎えまして、そして私もこの事件の内容についても、本人さんからの詳しい手紙を毎度のようにいただいておりまして十分にまだ検討させていただくところまでには至っておりませんが、事件のことはさておきまして、ともかく八十二歳で二十六年間独房で死刑の執行を待っているというような、そういうきわめて不幸な状態に置かれている。しかもたいへんにからだが衰弱して、この間も心臓の発作で一時はもうだめかというような状態におちいったということでございます。そして本人さんからも、あるいは家族の方々からも非常にその点を心配され、ともかぬ歯が全部なくなっておるが、刑務所の中では歯の治療が十分にできないので、入れ歯もないし、そういうことで私も歯の治療のことについても矯正局のほうへもお願いに上がったこともあるのでございますけれども、その件もまだ解決しておらずに、歯がないために一年以上流動食しか食べておらぬというような事柄で、もうどうにも健康の維持がむずかしい。こういう非常に問題になった事件の被告の方であり、しかもこういう老齢になられて病気で苦しんでおられる、そういう現状です。  これは矯正局長に先に伺いたいのでございますが いま申し上げましたような容体にほぼ近い健康状態であることは間違いございませんか。
  175. 長島敦

    説明員(長島敦君) ただいま御指摘ございましたように、本人は八十二歳という年齢に達しております。したがいまして全般的に老化現象と申しますか、そういうような状態で、消化器が弱っておるということがございます。お話がございました七月の何日でございましたか、七月二日でございましたか、朝方、心臓の不整脈と申しますか、その訴えがございまして、いろいろ診断いたしましたが、やはり心臓の脈搏に結滞がございまして、ただこの結滞につきましては、治療いたしましたらその日のうちになおりまして、その後この脈搏の不整脈という状態は解消いたしております。  現在の状態でございますけれども、現在は食欲も非常に良好になりまして、特にいろんな点から健康診断をいたしておりますけれども、医学的に見ました場合には病気という点は現在ございません。先ほど申し上げましたようにたいへん高齢でございますので、もしほかの病気にでもかかりますと、これはたいへん危険な状態になるかと思いますので、全力を尽くして医療の手配をいまやっておる状態でございます。
  176. 佐々木静子

    佐々木静子君 矯正局としても、いろいろと手配をしていただいているということは非常にありがたいと思います。しかし、食欲があるといっても歯がないのでございますから、食欲はあってもどうにもならないというような気の毒な状態で、何とか民間の病院、これは御当局のほうで御指定なさる設備のいい、東北大病院でもいいし公立の某病院でもどこでもいい、設備の整った総合病院で十分な治療を、まあ最後に受けさせてやってほしいというのが、家族並びに本人あるいはこの平沢の救援活動をしてきた人たちの、この事件自身についての当否は別として、これは人道的な立場に立って、八十二歳の人間をこのままこうしてじりじりと殺してしまうというのは非常に残酷じゃないか、せめて十分な治療だけは受けさすべきじゃないかと、そういうふうに私どもも思うわけですが、これは民間といいますか、御当局の御指定の病院で十分な治療をさせる、そういうお考えはございませんでしょうか。
  177. 長島敦

    説明員(長島敦君) 御承知のように、現在の監獄法「病院移送」という規定がございます。この規定は、収容者が施設の中では適当な治療を施すことができないと認める場合で「情状ニ因リ仮ニ之ヲ病院ニ移送スルコトヲ得」という規定があるわけでございます。この規定の趣旨といたしますところは、施設内の医療体制で十分でないというような状況が出てまいりました場合に、施設の医者の意見等を聞きまして、そういう状態で外部の病院に移すのが適当だというときに動く規定でございます。現に全国的に見ますと、年間この規定で外部の病院に治療のために移して、また連れ戻すというようなケースは相当の数にのぼっておるわけでございます。問題はすべて具体的な状況によるわけでございまして、医師の判断等によりましてこういう状態だという判断になりますれば、病院移送ということも法律上可能であるということでございます。  いまおります仙台の宮城の刑務所は、あの地区の医療センターでございまして、医者が相当おりますし、現在主治医がつきまして毎日見ております。それから外部のお医者さんにも、ときどき専門の有名な方に来ていただきまして診断も受けておるということで、ただいまのところは施設内で万全の措置をとっておるということでございます。  以上御報告申し上げます。
  178. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは私の微々たる弁護士としての経験から申し上げましても、いよいよ病院へ移すことになったからというふうに刑務所から御連絡いただくときには、もう手もつけられないというようなことが非常に多いわけです。どうして病院に運んだらいいのかというふうな、もう半分死体となって出てくるような、私はそういう事件に何回も出会っているわけです。手続はわかりますけれどもね、やはり御当局とすると、もう少し人道的な立場に立って、まあ見方によればたいへんに気の毒なこの御老人の最後に、せめて医療だけでも、せめてものを食べることのできる歯だけでも入れさせてあげる、そういうことをぜひとも考えていただきたいと思うわけです。  保護局長、この恩赦の件ですね、そのことについて保護局長はどういうお立場でいらっしゃいますか。
  179. 古川健次郎

    説明員古川健次郎君) お答えいたします。  ただいま、御承知のように平沢貞通につきましては、昭和四十六年八月十日に刑務所長のほうから恩赦の上申がございまして、現在中央更生保護審査会で審査中でございます。  審査会の意向といたしましても、現在死刑囚から恩赦上申のございますのは十名ばかりございますが、やはり死刑囚からの上申はできるだけ早くしたいという御意向のようで、しかもその中の平沢については、特にやはり高齢というような点でおやりになっている御意向に承っております。そこへ先般、矯正局のほうから病状を伺いました。さっそく審査会のほうへもその病状をお伝えしまして、促進していただいているような状況でございます。もちろん、審査会で恩赦の当否を審査いたしますのには、犯情でありますとか、病状とか、社会感情等が考慮されるわけでございますが、その際には当然本人の年齢、健康状態、精神状態も考慮されるわけでございまして、現在、ただいま申し上げましたように審査会においては慎重に御審議中というふうに御了解願いたいと思います。  ただ問題は、御承知のように非常に複雑な事件でございまして、現在高等裁判所にも再審の事件がかかっておりまして、記録がそちらに行っておるということ、それからまた委員が昨年来二名御交代になりましたので、新たな委員の方もこの記録をお読みになったりなどしておられるという状況で、鋭意審査をいただいておりますが、現在審査中であるということでございます。
  180. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはもう私が申し上げるまでもなく十分御承知のとおり、さきに平沢さんを含めて七人の非常に問題のある事件の、占領当時に起こった実に不可思議な事件のしかも死刑判決を受けている七人の方に対して、恩赦特例法を設けるべきだという神近市子先生をはじめとする方々の議員立法もすでにずっと前に提案されて、そのときの政府の御答弁が、そのようなものをつくらないでも、この七人の方には恩赦のことを当然特別にちゃんとやりますということで、その法案は取り下げられているいきさつがあるわけなんです。そういうことから考えましても、しかもあの当時のあの占領中の、いまの日本状態からは考えられない異様な状態の中で起こって、しかも二十六年というとたいへんな年月ですね、ただもういつ死刑が執行されるかわからないという状態に立たされて、いよいよ老境に入っておられるわけです。  それからいまの恩赦の審査会、これは更生保護法改正のときも私法務委員で、その審査会の審議するについて、このような事件もいろいろあるんだから、お年寄りの方が非常に能力が劣るというわけじゃありませんが、もうお目も悪くなった方々が審査会の委員になったのでは事件がはかどらないから、スムーズに審査のできるメンバーにしていただきたいということも申し上げて、そして非常にスムーズにできる、非常に事務能力の長じた方ばかりということで、更生保護法の改正も二、三年前にできたわけなんでございますので、委員の交代云々もございました。そういういきさつで選ばれた委員でございますから、やはりこういう問題は一刻も早く恩赦をぜひとも考えていただきたいと特にお願い申し上げたい。この点について高橋政務次官、いかがお考えでございますか。
  181. 高橋邦雄

    説明員高橋邦雄君) ただいま保護局長から申し上げたとおりの経過でございまして、私どもとしましては、中央更生保護審査会ですみやかにひとつ適当な判断を下していただきまして、その結果を待ちたいというふうに考えておる次第でございます。
  182. 多田省吾

    委員長多田省吾君) 午前の質疑はこの程度にとどめます。  午後一時三十分再開することとし、休憩いたします。    午後零時四十七分休憩      —————・—————    午後一時四十一分開会
  183. 多田省吾

    委員長多田省吾君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、検察及び裁判運営等に関する調査を進めます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  184. 白木義一郎

    白木義一郎君 最初中江さんにちょっとお尋ねするのですが、先ほど来の佐々木委員との質疑応答を伺っておりますと、非常に心配になってまいります。ということは、いま国際的にも非常に問題になっております狙撃事件につきまして、外務省がどのような真剣な態度でこの処置に当たっているかということを冒頭に私は当委員会で伺えるのじゃないか、非常にそういう関心を持って伺っていたわけです。当委員会としましてはこの問題について、初めてこの委員会で取り上げられた問題ですので、当然外務省の代表としては、その経過詳細な経過をつぶさに報告をされて、そしてしかもわが外務省はこの事件についてこれだけ真剣に取り組んでいるんだという報告を実は伺えるのじゃないか、その上で私どももこの両国の友好という問題についてお互いに真剣に対処していかなければならない、このように思っていたわけですが、残念ながら先ほど来の御説明並びに御答弁を伺っておりますと、言いたくないこともおありでしょうけれども、非常に本省と出先大使館との間の疎通が欠けているのじゃないか。端的に申しますと後宮大使の能力の点まで心配せざるを得ない、そんな感じを率直に受けたわけであります。  その点外務省として、今後この問題を大きく将来の日韓関係の友好という問題に発展せしめていく目標に向かって、現在の体制で心配ないのかどうなのか。ということは、これだけの大きな事件があったにもかかわらず、先ほどの御説明を伺っておりますと、まことにたよりない。どこがたよりないかという率直な感じは、いかにも出先大使館の体制が弱いのじゃないか。あるいはあなた方のほうがもっともっと真剣に出先大使館を通してこの問題を解明して、どうわが国が乗り出していくか。きのうの時点では、外務省の首脳が韓国に対して遺憾の意を表したというような報道がありますけれども、それにしましても、この短期間の経過を通して、かくかくしかじかであるがゆえに当然政府は韓国に対して遺憾の意を表さなければならないという結論でそういう発表をしたのか、とりあえず遺憾の意を表しておけば何とかなるのじゃないかというようなことで、そういう声明なりあるいは外務省の考えを発表したのじゃないかというような点も、伺っていて非常に心配になるわけです。  ですから、大使大使として日本の代表であり、看板である。それにそれだけの能力が欠けるとすれば、それを補う優秀な人材を現在配置してあるのかどうなのか、あるいは非常に重要な日韓両国の問題について、外務省はもっともっと積極的に出先大使館の人材を充実して、そうして真剣に検討しょうというようなお考えをお持ちなのか、どうなのか。この一点だけ、まず最初にお伺いしておきます。
  185. 中江要介

    説明員中江要介君) 私のけさの答弁から、非常にたよりないという印象をお持ちになったといたしますと、現場及び東京で日夜一生懸命本件のために働いている先輩、同僚の皆さんに、私の答弁がまずくてそういうようになったということで、御迷惑をかけているような感じをしながら聞いたわけなんですけれども、現在は、本件はもうすでに捜査の段階に入っておりまして、日本政府としてなし得ることといいますのは、事件の起こりました韓国における韓国捜査当局の捜査に、日本捜査当局としてできる範囲内で十分な捜査協力をして、本件の真相の究明が早く行なわれるということによって、日本政府として全くかかわり合いのない事件でない事件であるだけに、先生もおっしゃいましたように日韓両国の関係を踏まえながら、満足のいく真相の究明が行なわれるように努力するということに尽きるかと思うのですが、事件が起こりました当座におきましては、大使は、けさほども申し上げましたようなことで、予期しない事件で、その場では捜査官のようにはなかなか捜査をするわけにもまいりませんし、その印象をすなおに御報告されたというように私どもはとっておりますし、その前後からテレビ、新聞報道、ラジオ放送その他で刻々入るニュースの裏づけをしながら、在ソウルの在韓日本大使館の全員をあげて今日まで日夜努力しているわけでございまして、もちろんそれでも至らない点はあろうかと思いますけれども、私どもとしてはフルに東京ソウルも、もう電話線を切ることないほどに電話連絡もしながら本件の推移を見守っていままでに至っているわけでございまして、私の立場で見ております限り、在韓大使館の力が弱いとか足りないために、何らか当初において間違いがあったというようなふうには思っておりません。  それで、最初日本人ではないかといわれた犯人につきましても、いまは在日韓国人ということについてはっきりいたしたわけでございまして、その在日韓国人たる犯人をめぐる本件がどういうように進展したかということについては、これは捜査の結果を待つ以外には、いますぐ外交的にどうということではございませんので、これはひとつ冷静に間違いないようにあとのフォローアップをしていきたい、こういう覚悟で全員努力しておるわけでございます。
  186. 白木義一郎

    白木義一郎君 すると、まとめて伺えば、この現在の大使館の体制で今後も心配ないと、結論的なことですが、そういうお考えですね、というように伺っておきます。私はきょうはこの問題に直接触れるつもりはなかったわけですが、先ほどの非常に不本意な質疑応答を伺ってちょっと確かめておきたかった、こういうことでございます。  そこで金大中氏事件の問題ですが、御承知のとおり、昨年この問題が起きた当初に、いち早く取り上げたのがこの法務委員会でございます。したがって、ようやく満一年間を経過した現在、その間にいろいろな当委員会でも質疑が行なわれたわけでございますが、結果的に、結論的に申しますと、非常にわれわれは不満足である、納得のいかない点がたくさんあるわけでございますが、まず最初に、一年を経過しましたので、捜査当局のほうからこの不幸な金大中氏事件の総括をお願いしたい。そして私どもの不満あるいは不明の点を解明をすると同時に、われわれは何としてもこの金大中氏事件をできるだけ国民に、あるいは世界が納得するような形で終了しなければ、なかなか日韓両国の友好の問題に進んでいかない、こういう観点から、まず総括をお願いしたいと思います。
  187. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 昨年の八月八日事件発生以来、警視庁に特別捜査本部を置きましてこの捜査に従事したわけでございますが、一年間の捜査の総括ということでございますが、捜査員は警視庁関係で延べ二万六千七百五十七名という者が従事いたしました。それからアジトである「アンの家」あるいは連行車両、あるいは船舶の関係、モーターボート、こういうような捜査等、おもに関西方面の警察に担当を命じまして、この関係の者が延べ三万一千六百三十五名、計五万八千八十名が本件の捜査に従事いたしました。  この間いろいろの経緯はございますが、結論だけ申し上げますと、この間容疑がきわめて濃厚であるということで韓国大使館であった金東雲一等書記官を割り出しまして、これについては九月五日に任意出頭の要求をいたしたわけでございます。そのほか、この連行車両に使われた容疑がきわめて濃いという形で、当時の横浜の領事館の劉永福副領事の所有している車が浮かび上がってきたものでございますので、これについてもこの関係調査韓国のほうに要望をいたしておいたわけでございますが、その他いろいろな事実が解明され、多くの集積があったわけでございますが、被害者である金大中氏が来日できない。金大中氏から直接いろいろな話が伺えない。それから当事件に当時立ち会っていたといいますか、一緒におった金敬仁、梁一東氏の出頭も実現できない。その事情聴取も詳しくできない。それから金東雲氏も来れない。それから金東雲氏についてのいろいろな調べの内容についても韓国政府のほうでは連絡してまいってきてないわけです。それから連行したと思われる船の関係調査等についても、韓国のほうから具体的な有力な資料の提報がないというようなことで、基本的な問題について多くの障害があるために、一年間の捜査の結果としては私どももきわめて不本意なことではございますが、いま申し上げた程度しか解明できなかったわけでございますが、去る十四日には韓国政府のほうで、特に金東雲元一等書記官等の捜査について、一応打ち切るというような形の通報を外務省を通じて受けたわけでございます。  われわれとしては、少なくとも金東雲一等書記官の容疑、こういうものについてはきわめて捜査結果に自信を持っておるわけでございまして、これらの通報には不満であり、納得できない点が多いのでございまして、こういう点についてはさらに外務省と打ち合わせて、もっとこまかい点について韓国側の回答をお願いするということを外務省といま話し合っているわけでございます。  それはそれとして捜査のほうも、まだ捜査本部は、人員のかかるような仕事はいまないものでございますので若干縮小はいたしましたけれども、捜査本部としての中核的な体制はそのまま存続させておりまして、これまでのいろいろな捜査情報のもう一度の掘り起こし、それからさらに情報ネットを拡大し、あるいは視点を変えて新しい捜査情報の収集につとめて、何とかして自主的にわれわれの力でこの事件の核心に迫りたいと、そういう意欲に燃えて捜査員は現在まだ捜査続行中でございます。  以上でございます。
  188. 白木義一郎

    白木義一郎君 私はいま伺ったように、この一年間捜査当局の方々が延べ二万六千人にも及ぶような動員をされてこの問題の解明に当たられた、その苦心が、先日の一方的な打ち切り、金東雲の捜査は韓国は打ち切ったという通告で、非常に不本意だと。われわれもたいへん不本意でありますけれども、一応表面的に言いますと、日本の警察はどう言おうと金東雲には関係がないんだというような結末に現在なっているわけです。そういう点についてわれわれは非常に不本意なわけです。まして、直接その捜査に当たってこられた警察官の方々の苦労を思えば残念なことでありますけれども、表面的にはもうこの問題は韓国としては終わったというようなことにならざるを得ない。  そこで、今後捜査当局としては、外務省を通してこの問題を解明し追及をしていくというお答えがあったわけですが、その一年間の間に、昨年の十一月の二日に両国の首脳会談が行なわれたわけです。そして韓国の総理大臣が大統領の親書を持って首脳会談に臨んだ。その会談の了解事項が幾つかあるわけです。この了解事項と、それから現在の外務省立場、考え方、どのようにこれをとらえているかということをお伺いしたいと思います。
  189. 中江要介

    説明員中江要介君) 昨年十一月二日に両国の総理の間で了解された事項、いわゆる了解事項というものでございますが、これは外交的決着ということでございますので、当時からはっきりしておりますのは、外交的にはこれで決着がついたということにするけれども、もちろん国際刑事事件としての捜査は継続するという、まず基本的な立場については了解ができておる。その上での、了解事項というのは大きく分けまして五つあるというふうにいわれておったわけでございます。  一つは、韓国人が日本の国内で韓国人を拉致するという事件を起こした。そういう意味日本国に御迷惑をかけたということで、朴大統領の親書を携えて国務総理が来日されまして遺憾の意を表された、これが第一点でございます。  それから第二点といたしましては、この事件を起こしたことについて責任者はこれを処分するということでございまして、その責任者の処分というふうに私どもでみなしておりますその後の発展といたしましては、当時の駐日大使でありました李ホ大使がいまの金永善大使に更迭されるということが一つと、それから中央情報部の李厚洛部長がその地位を去るということでございました。  それから三番目に、もし犯人がおりましたら、これは当然のことですけれども、法に従って処分する。その場合には、日本側からは金東雲元一等書記官の指紋という証拠を先方に提示しておりまして、この特定個人たる金東雲元一等書記官につきましては、日本のそういう証拠の提示もこれあり、捜査を継続して、その結果、法に従って処理するという了解ができておったわけでございます。  第四番目が金大中氏、つまり被害者である金大中氏の身柄の自由の問題でございまして、十一月二日の時点では、金大中氏はソウルにおいて自由であるし、出国を含めて自由が保障されるということが了解されておったわけでございます。  最後に、韓国側から、今回のような事件を再び日本で起こすことのないように十分注意して事に当たりたいという、再びこういう事件を起こさないことについての保証というものが与えられた。  この五つの事項の了解はありましたけれども、冒頭に申し上げましたように捜査の継続の結果、韓国の公権力が日本で行使されるということについてはっきりいたしまして韓国による日本の主権の侵害の問題が生じた場合には、そういう問題として日本としては再びこの事件韓国側に提起することあるべしということについて了解されておるという状態でありました。  その後、その最初の陳謝のところと責任者の処分、それから再発防止の保証というところは、そのところで一応了解されておったわけですが、犯人の処罰のところと金大中氏の自由というこの二点について、まだまだ私どもといたしましても満足のいく結果が得られないままに一年が経過している、こういうふうな認識でございますので、まず犯人の一人、有力な容疑者と見られております金東雲元一等書記官につきましては、今回の捜査報告では抽象的、簡単過ぎてわれわれとして納得できないので、その部分について、なぜそうであるのか、特にわがほうから提起しております指紋とか自動車とか船とか、そういったものについての納得のいく説明を求めていくということで、強く要求していきたい。金大中氏の出国の自由の問題につきましても、これは私どもといたしましては、当時の最高首脳の間の了解事項でありますので、これは必ずやそのとおり守られるものという期待のもとにしんぼう強く要求していく、こういう姿勢でおります。
  190. 白木義一郎

    白木義一郎君 そこで、いま御報告いただいた五つの了解事項の内容ですが、金東雲の監督責任についてそれぞれの相応の処置があったというお話ですが、ということは、金東雲は明らかに犯罪を犯した、犯人であるという了解のもとに関係の監督者が処分を受けたと、こういうふうなことになるわけです。そうなりますと、金東雲の犯行である、ただし公権力は介入してないんだというような矛盾が私たちにどうしても残るわけです。さらに、金大中氏の身柄は自由である、出国を含めても自由であるというような了解事項があるわけですが、これが現時点においてほとんど守られていないという点について、外務省はどのように考えられているか。あるいはまた金東雲、当時書記官であった、押しも押されぬ韓国外交官であった金東雲が、個人の犯行でというわけにいくのかどうなのかという点もあわせて、今後の交渉の問題もあろうかと思いますが、現時点においての外務省の考え方をお尋ねしておきたいと思います。
  191. 中江要介

    説明員中江要介君) 金東雲元一等書記官の問題でございますが、これは当時、日本側では指紋が検出されたということで、きわめて強い容疑があるということでございました。したがって韓国側では、そういう容疑者を出したということで、まず金東雲一等書記官を免職にいたしまして、いまや向こう外交官の身分は失ってしまっておる。これに対して日本側でも、好ましからざる人物ということで、将来外交官として日本に受け入れるということは一切しないという、国際慣例に従ってペルソナ・ノン・グラータの措置をとって、金東雲は外交官の身分を完全に失っておるわけでございます。責任者の処分のところは、これは金東雲が犯人であるということをきめつけたというところまでいったのではなくて、そういう事件を起こしたことについての責任ということで、犯人がだれであるかということについては捜査を継続するということでおったわけでございまして、私どもといたしましては、責任者に対する処分の問題として大使の更迭、中央情報部長の更迭というものをみなす場合でも、これは刑事事件として落着してその責任をとってというふうな考え方ではないわけでございまして、その点は引き続きこの捜査は継続されるべきであるし、その結果を踏まえて再び問題を考え直すこともあり得べしと、こういう考え方でおるわけでございます。  もう一つの金大中氏の自由の問題につきましては、これは最高首脳の間の了解といたしまして非常にばくとしておりまして、その具体的な内容について一字一句きめて文書にして残してあるというようなものではございませんけれども、当時私どもの得ておりました印象としては、一般人と同様に自由である、つまり金大中氏であるからといって特に優遇もしないし冷遇もしない、一般人と同じ自由は享有する身分になっているということでございましたので、私どもといたしましては早期に、不法に連れ房された金大中氏でございますので、これは自由意思に従って出国を希望するならその出国が認められることを期待していたわけでございますけれども、はなはだ遺憾なことながら現在までそれが実現していない。しかし、これはいつまでにということでもございませんから、これは一日でも早くそういう事態が、金大中氏が出国を希望するのであればそれが満たされるようにということで強く呼びかけていく、働きかけていくということについては、いまも一年前も変わらない態度でおるわけでございます。
  192. 白木義一郎

    白木義一郎君 ともあれ、指紋の割り出しまでした捜査当局立場に立ちますと、どうしても韓国の金東雲の捜査は打ち切ったという通告では、全くいままでの苦労が水のあわであったというようなことになりかねないと思います。  そこで、この了解事項とそれから韓国からのそういったような報告等、どうもわれわれは納得がいかないわけです。一年間の経過をたどりますと、どうしても金東雲の容疑が非常に濃厚であるというようなことで来たわけですけれども、それが一年たって、そして一方的でありますけれども打ち切った。前の法務大臣は、これは某国のCIAのしわざであると、確信をもってこの席で答弁をされていたような経過があるわけですけれども、今後の問題として、一つはこの金大中氏の事件は人権問題としてあくまでも重要視していかなければならないと思いますし、もう一つは、犯罪の容疑をあくまでも晴らすべきではないか。それが行なわれなければ韓国との友好問題はなかなかむずかしいのじゃないか、こう心配をしているわけですが、すでに捜査本部を縮小をしてしまったわが国の捜査当局が、縮小はしたけれども、さらに今後も具体的事実の割り出しを縮小しながらも続けていく、こういうことをおっしゃっているわけですが、これは何としても解明していかなければならない問題だと思います。  それで、先ほども外務省のほうから、何といいますか、今回の狙撃事件の間隙を縫って今後もねばり強く、根気強く要請をしていくということですが、いままでのいきさつから考えますと、どうしても月日の経過とともにこの問題がうやむやになって、そしてわが国の人権問題に大きく汚点を残す心配がどうしてもあるわけです。その点ひとつ確たる見通しと方針のもとに進めていかなければならないというのが私ども国民立場の考えですが、もう一度外務省捜査当局の決意をお尋ねをしたいと思います。
  193. 中江要介

    説明員中江要介君) 先ほど私が御答弁申し上げましたように、外交的決着がつけられた時点から、すでに私どもは国際刑事事件としての本件の捜査は継続していかなければならない、真相の究明はあくまでも続けていかなければならないということを強く韓国側要求し、またそういう了解を取りつけておったわけでございますが、その時点から私どもが一番おそれておりましたのは、いま白木先生もおっしゃいました、本件が時間のたつのとともにうやむやになるというようなことは、これは日韓両国が正常化いたしましてかれこれ九年をオーバーしたわけでございますけれども、これから末長く隣国としてつき合っていく上において決していいことではない。したがって、この事件については最後まで筋を通してきちんとやっていかなければいけないし、また、そうすることが長い日韓両国のお隣同士のつき合いとして臨むべき態度であるということは、私どももいまも微動もしない確信でありますので、先ほど来申し上げておりますように、時間がたって非常に不本意におくれてはおりますけれども、いつまでも粘り強く韓国側の善意と誠意に訴えて、そして本件の筋の通った解決といいますか、了解事項の履行というものを迫っていきたい、こういうふうに思っております。
  194. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 先ほども申し上げましたけれども、捜査本部は縮小はいたしましたけれども、中核的な体制はくずしておりませんので、これまでの捜査結果の洗い直しはもちろんのこと、新しい角度からする情報の収集、そういうものにつとめまして、何とかこの事件の核心に迫って解決をしたいという意気込みで、そういう決意を捜査員一人一人が持って、いま一生懸命やっておるところでございます。
  195. 白木義一郎

    白木義一郎君 それでは一つだけ具体的なことでお尋ねしたいのですが、自衛官が金東雲に金大中氏の見張りを依頼されたという問題がこの間にありました。現職の自衛官がこういう事件にタッチしていたというのでたいへん問題になったわけですが、この件について当局はどのような結論を出されているか、一つだけお伺いしておきます。
  196. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) この件についてはその節もお答えをしたと思いますけれども、結局、その人はすでに自衛隊を退職しており、あるいはすでに退職の手続をとっておった方で、新しい仕事として調査業務をするということで、会社をすでに設立、業務を開始しておった。そこへこういうことをやるということをどこかから聞いてきて、「佐藤」と思いましたが、そういう人からこういう人物の行動をひとつ見てもらいたい、こういうふうに言われてその状況を見ていたということを、その調査に当たった方からいわば警察に情報を提報してくださった、こういう関係になっておるわけです。したがって、その事実関係だけははっきりいたしておきましたし、それからそういう自衛隊の関係であるということで、防衛庁のほうにもその事実関係のほうは私のほうで連絡をいたしておきました。そしてこの犯罪全般には、この調査に当たった者は関係していたことはないという結論でございます。
  197. 白木義一郎

    白木義一郎君 いまのようなことはいままでにも伺ったわけですが、それ以上お尋ねしてもしようがないと思いますが、いずれにいたしましても、繰り返し申し上げるようですが、この事件は人権問題として私たちはどうしてもなおざりにできないという気持ちを持ち続けていかなければならないと思います。そういう点について、最後に政務次官からお考えを伺っておきたいと思います。
  198. 高橋邦雄

    説明員高橋邦雄君) 先ほど来、捜査当局外務省のほうからいろいろお話がございました。この金大中事件につきましては、現在もなお捜査機関で捜査が継続されておるわけでございますし、事件の内容、真相が必ずしも十分に明らかにされていない、こういう段階であるわけでございます。韓国側は捜査を打ち切ったということでございますけれども、わが国においてはさらにひとつ捜査資料の提供などを求めまして、事件の真相を明らかにする、そしてそれに対して適切な処置をする、こういう扱いをすべきものというふうに考えておる次第でございます。
  199. 白木義一郎

    白木義一郎君 次に移りますが、刑務所の移転の問題についてお伺いをしておきたいと思います。  初めに、刑務所の移転の問題が現在どういう状態になっているか、全般的にお伺いしておきたいと思います。言うまでもなく、刑務所が設置された古い時代から見ますと非常に環境その他が変わってしまって、そのために地元住民が非常に迷惑をしている。各所でその移転の要望の声が強くあがっているわけです。そこで現在移転が要望されている刑務所はどのぐらいあるのか、御説明を願いたいと思います。
  200. 長島敦

    説明員(長島敦君) ただいま地元住民等から移転要求が出ております施設が、全国で五十四カ庁ございます。この中には、刑務所の本所でなくて支所がございますが、支所も含めてございますけれども、庁数にいたしますと五十四カ庁ということでございます。
  201. 白木義一郎

    白木義一郎君 五十四カ所という、支所も含めて移転の要求が出ているということは、これは単に一地域の問題として取り上げるだけではなくて、当然国政のレベルで刑務所の再配置を検討すべきだと思いますが、次官の見解をお伺いしたい。
  202. 高橋邦雄

    説明員高橋邦雄君) いまお話のありましたように、市街地に所在をする矯正施設の周辺がたいへん過密化してきた、あるいは都市化してきた、また都市計画の事業の遂行上必要が生じたというようなことで、数多くの矯正施設の移転という二とが求められておるわけでございますが、法務省としましては、矯正局の中にプロジェクトチームをつくりまして、なるべくひとつ全国的な視野に立ちまして、合理的な計画的な配置をしようという考えでおるのでございます。世の中の情勢も非常に変わってきましたし、また犯罪の動向などということも考えなければなりませんので、それらの点を考えながら、全国的な適正配置計画の策定の作業をいま進めておるわけでございます。  具体的な矯正施設の移転の問題につきましては、それらの配置計画の考えに照らし合わせまして、可能なところから逐次ひとつ改築なりあるいは移転をはかる、こういうことを基本の方針といたしまして進めておる次第でございます。
  203. 白木義一郎

    白木義一郎君 そこで、このおひざ元の中野の刑務所の件につきましては、本年一月、地元の代議士が直接法務大臣に申し入れをしている。そのときに法務大臣は、本年一ぱいに移転のめどをつけたい、またそのためにも、いま次官からお話があったようなプロジェクトチームをつくって検討するというようなお答えがあったわけですし、さらにこの三月の分科会では法務大臣は、この刑務所を中野区に長く居すわらせるようなことは絶対にないと、こう発言をされているわけですが、この点について法務省はどのように了解をしていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  204. 長島敦

    説明員(長島敦君) ただいま御指摘がございましたように、当時の大臣はそういうお考えでございましたし、それは私ども事務当局の考えでもございます。そういう方向でただいま努力を重ねてきております。
  205. 白木義一郎

    白木義一郎君 それでは、いまお答えがありましたプロジェクトチームの検討内容、あるいは進行状況等について御説明を願いたいと思います。
  206. 長島敦

    説明員(長島敦君) 先ほど政務次官から申し上げましたように、プロジェクトチームは全国的な規模で移転が問題になっております施設をとらえまして、これをどういうふうに配置していくかという規模で検討しております。したがいまして非常に複雑な作業でございまして、全体の計画がかりにペーパープランでできましても、実際にそれが実現できるかということになりますと、これはもとより地元の了解が必要でございますし、職員、収容者の処遇、そういったいろんな問題があります。予算問題も関係いたします。そういうわけで、これは相当長期を要する長期計画ということになるわけでございますが、御指摘の中野の刑務所の問題につきましては、従来からの経緯もございますので、その全体計画の中でいわば最優先ということで取り上げて検討をしてきております。  幾つもの考え方を過去に取り上げまして、それぞれについてずっと検討を続け、ある案はどうしてもこの点がまずいということで捨てた案もございますし、そういうことで順次選定をしながら作業を進めてきておる段階でございますが、現在のところそのような状況でございまして、できるだけ早く結論と申しますか、一応のめどを立てたいというふうに考えておるわけでございます。
  207. 白木義一郎

    白木義一郎君 この中野の刑務所というのは、もう御存じだろうと思いますが、二カ月ほど前に中野区において火事があった。非常に密集しているために消防車が現場まで入れなくて大火になった。そのために避難する住民が非常に混雑をしたというようなことで、その中野刑務所は駅から直線で五百メートルのような近いところに位置をしているために、非常に周囲が住宅が密集して、中野区としては、住民としてはぜひとも避難場所がほしい。現在ありませんから。それで避難場所は代々木公園に指定されているそうでありますけれども、中野区から代々木公園まで避難するなんていうことはこれは全くナンセンスなことで、いまや地元の住民は切実にこの刑務所の移転を要望しているわけです。災害の発生ということについても、法務省は真剣に考えていただかなければならないと思います。  それからわが党の議員が視察をしたときに、刑務所の移転のネックとしては、この中に分類センターがある、この問題が非常にむずかしいのでなかなか進まないのだと、こういうような説明があったそうですが、この分類センターというのはどういう規模、内容であるか、ちょっと御説明願いたいと思います。
  208. 長島敦

    説明員(長島敦君) 分類センターは、中野の場合を例にとりますと、東京矯正管区でございますから関東一円でございますが、そこで、おとなの場合でございますが、おとなにつきまして刑がきまりますと、大部分の者が中野へまいりまして、そこで専門的に調査をいたします。調査をいたします目的は、どういう性格の人であるか、どういう仕事が向いているかというようなことが中心でございます。そういう調査の結果によりまして、その人の性格とか、非行の進みぐあいとか、あるいは適している職業とか、あるいは将来の生計はこういうふうに立てたらいいのじゃないかというようなものを見分けまして、それによって受刑者を分類と申しますか、いろんなグループに分けていくわけでございます。それぞれ、それに最も適した刑務所のほうへ送っていくという、そういうより分け作業をいたしております。  そのために、あそこに実験工場のようなものもございますし、それから分類の専門の心理の技官が多勢入っておりまして、性格検査その他をずっとやっておりまして、そういうことをやっておるわけでございますが、同時に、中野ではいろんな処遇の実験を少しやっております。どういう人にどういう治療方法と申しますか、処遇をすれば一番有効かというような研究もいたしておるわけでございます。そういうのが分類センターとしての機能でございます。
  209. 白木義一郎

    白木義一郎君 その分類センターというのが刑務所の中にあるわけですね。それはどのくらいの規模でございますか。
  210. 長島敦

    説明員(長島敦君) ただいま分類センターで収容しております収容者は、約四百名でございます。
  211. 白木義一郎

    白木義一郎君 その分類センターというのは、各方面の受刑者を集めているわけですね、収容して、そこで分類をして、そういうことですか。
  212. 長島敦

    説明員(長島敦君) さようでございます。約三カ月ぐらい、そこでそういう調査をいたしましたり、実験作業につけましたりしまして分類をしまして、それでほかの施設へ送ってまいりますが、そういうふうで順番に確定した者がそこへまいりまして、三カ月ぐらいいてはほかへ出ていくということで順転をしております。
  213. 白木義一郎

    白木義一郎君 その点はわかりましたけれども、そういうようないろいろな予算、それから候補地等非常にむずかしい問題があると思いますが、しかし大臣の発言もあったことですので、もう少し重点的に、五十四カ所も要望が出ているわけですから全部一ぺんにというわけに当然いかないわけですけれども、優先順位というものがおのずから分けられるのじゃないかと思いますが、そういったような大臣の確約があった問題についてはもう少し具体的な、あるいはどの方面にとか、いつごろとかいうようなお答えをいただきたいわけです。
  214. 長島敦

    説明員(長島敦君) 先ほど申し上げましたように、この問題は私どもとしては最優先に取り上げて努力をしております。どの方面にというお話でございましたけれども、実は先生も御承知だと思うのでございますけれども、あらかじめそういう情報が漏れますと、十分に根回しがついておりませんと、その先のほうからまたいろいろな問題が出てまいりまして、非常に計画自体がむずかしくなって実現がむずかしくなるのでございまして、その点はごかんべんいただきたいと思いますが、先ほどから申し上げましたように、これは最優先ということで鋭意努力をいたしております。非常にむずかしい問題がたくさんございますけれども、何とかして解決するという方向で努力をいたしております。
  215. 白木義一郎

    白木義一郎君 それでは当然おわかりのことと思いますが、この中野刑務所の問題はいまから二十年も前からの住民の要望だそうで、ぜひとも最優先に、しかもできるだけ早くその実現をしていかなければならないということを重ねて申し上げて、私の質問を一応終わります。
  216. 橋本敦

    ○橋本敦君 それでは私から伺います。  昨日ついに韓国において大きな反日デモが行なわれて、日本大使館がデモに襲われ乱入される、そういった事態にまで発展をしたというニュースが入っております。そういう中で、外務省韓国に在住の同胞に対する身辺の安全について申し入れる、こういう事態にまで発展をしたわけです。こういう事態を見ても、いまの日韓関係は政府の意図するところとは逆に、まさに最悪の事態に落ち込もうとしている。こういうことを私ども国民は心配するのです。そういう認識を持っておられるのかどうか、その点についてアジア局次長のまず見解を伺いたいと思います。
  217. 中江要介

    説明員中江要介君) 御指摘のとおり、昨日来デモが、ソウルにありますわが大使館の近辺にいろいろ働きかけてきておりまして、ただいまも入りましたところでは、本日の昼過ぎに約四百名の高校生のデモがまた押しかけて参りまして、大使館業務に支障が出、私どもの主要な任務の一つであります在留日本人の保護という事務が、これでは十分に行ない得ないということが憂慮されますので、重ねて韓国政府にこの事態の収拾といいますか、正常化について申し入れますと同時に、十二時過ぎには、政府といたしましても官房長官が談話を発表されまして、こういうことでははなはだ将来は憂慮されるという懸念を表明されたということでございます。  外務省といたしましては、まさしく先生のおっしゃいますように、そういうことのない日韓関係というものを絶えず念頭に置いて処理してきたつもりでございますけれども、結果が必ずしもそのようにまだ実を結んでいないということについては、反省すべき点もございましょうし、また努力も足りない点も考えておるわけですが、私どもといたしましてはやはりこれは日韓関係の、金大中事件以降特にいろいろの事件が重なっているその関係を、どういうふうに解きほぐしていくのが一番将来にいい結果を生む方法であろうかということを日夜念頭に置いてやっているわけでございまして、今後とも各方面の御意見、御助言をいただきながら間違いのないようにしていきたいと、こう思っております。現状では非常に憂慮される事態があるということで、これははなはだ残念、不幸なことだと、こういうふうに思っております。
  218. 橋本敦

    ○橋本敦君 われわれは南北朝鮮の平和的統一、あるいは韓国人民との真の友好の促進を心から望んでいるわけです。そういう観点からしても、まさに最悪の事態になりつつある。こういうことが現に起こっている最大の原因は、一つには日本の政府が日米共同声明韓国条項、これに縛られて、金大中事件にしろ二学生事件にしろ、あるいは今度の狙撃事件にしろ、わが党はじめ各野党が強く要求をした、き然たる態度で処理をする、対韓援助も含めて対韓関係を洗い直す、こういうことを強く要請したにかかわらず漫然と今日まで推移してきたわが国の外交政策、この中に根本的な深い原因があると私どもは考えるわけですが、それについて一言でいいですから、あなたの立場としてどう考えていますか。
  219. 中江要介

    説明員中江要介君) 私ども日本人といたしまして、朝鮮半島の人たちとの関係といいますのは、これは戦前、戦中の関係を背景といたしまして……
  220. 橋本敦

    ○橋本敦君 なるべく簡単に。
  221. 中江要介

    説明員中江要介君) はい。戦後不幸な朝鮮半島二分という歴史の流れの中で、その二分化された南北朝鮮というものがいままで続いているところに大きな困難の一つがあると、こう思います。
  222. 橋本敦

    ○橋本敦君 私の質問に答えてくださいよ。
  223. 中江要介

    説明員中江要介君) で、最近、外務大臣もおっしゃいましたように、例の韓国条項といわれますものは、あれはあの当時における日米両国政府の認識であった。いまは、先般の田中・ニクソン声明にもございますけれども朝鮮の平和と安定、大韓民国の平和と安定というのではなくて、朝鮮の平和と安定というものが日本の平和と安定に非常にかかわり合いがあるという認識でございまして、南北を問わず、一昨年の七・四声明といわれます南北の話し合いというああいういい雰囲気に早く戻って、話し合いによって長年の悲願である朝鮮の統一が実現されるようにということは、基本的な態度としては持ち続けておる、こういうことでございます。
  224. 橋本敦

    ○橋本敦君 私の質問は、金大中事件以来今日までとってきたわが国政府の対韓外交政策のき然としない追従的態度、あるいはそれにからまる野党各党の要求にかかる対韓外交政策を根本的に検討し直せという要求をすなおに聞かなかったところに、一つの今日の事態を招いた大きな原因があるではないか、あなたは反省すべきは反省すると言ったが、そういう点について反省しなければならぬという考えはあるのかないのか、それを聞きたいと、こういうことです。
  225. 中江要介

    説明員中江要介君) おっしゃいますような考え方というものは、私どもも対韓政策を考えますときに何度も検討しておるわけでございますが、日本政府としては、独立国としての大韓民国の正統政府として承認しているいまの政府との外交交渉ということをやります上には、やはり国際社会での一つのルールといいますか、その筋道がありますので……。
  226. 橋本敦

    ○橋本敦君 結論だけでいいですよ。反省するところがあると思うのか思わないのか、結論だけでいいですよ。
  227. 中江要介

    説明員中江要介君) それは、私どもがよかれと思ってやったことがいま現在の時点では結実していないという点については、どこが悪かったかということは反省しなければならないとは思っております。
  228. 橋本敦

    ○橋本敦君 金大中事件が起こったときに、衆議院本会議でも田中総理は、第一に真相究明し、筋の通った解決をと、これは本会議で言明をしてます。これは御存じのとおりですね。現在の時点において真相は何一つ解明されていない。この結果が一つある。しかも筋の通った解決として金大中氏の原状回復としての来日は、いずれも見通しが立たないという現状になっている。こういう結果になっていることについて、その最大の原因が田中総理韓国金首相との十一月のいわゆる外交的了解決着ということにあるように思いますが、アジア局次長はどうお考えですか。
  229. 中江要介

    説明員中江要介君) 私どもは、外交的決着としての昨年十一月二日の両首脳の了解の内容といいますものは、国際慣例に照らしてみましても、それなりに意味のあるものであったというふうにいまでも思っております。  問題は、国際刑事事件としての捜査はこれは別途継続するという了解で、そのほうについては現在までのところ納得のいく結果をみていない、これについては不満であるということは先ほど来申し上げておるとおりでございます。
  230. 橋本敦

    ○橋本敦君 すでにその問題について新聞各紙が、たとえば手元にある八月八日の毎日新聞は「〃主権侵害〃うやむや、あいまいな了解事項解釈」ということで大きく報じている。各紙がこういうような見方をしていることは、次長としては十分当時知っておられたわけですね。
  231. 中江要介

    説明員中江要介君) まず、主権侵害はうやむやではなくて、主権侵害があったかなかったかについて十分な証拠が当時においてなかったので、これは捜査を継続していって黒白をつけざるを得ないという立場であったわけでございます。了解事項と申しますのは、これは両首脳の間の話し合いでございまして、こまかい条文をつくるような作業とは違いまして一字一句詰めてはおりませんけれども、これは首脳間の約束である以上は、韓国もその首脳の約束したことは履行する責任があるということでそれを追及していく、こういう考え方でございます。
  232. 橋本敦

    ○橋本敦君 この了解事項の自体の中に重大な問題が含まれている。たとえば田中法務大臣は衆議院の法務委員会でも、あるいは参議院の法務委員会でも、常識的に見たらだれが考えても主権侵害事件だという判断はつくと。これは第六感じゃありませんよ。常識的に見てそういう判断がつくと、こう言っている。各野党はじめ国民は、これはわが国に対する明白な主権侵害事件としてとらえる、もう一つは金大中氏の人権侵害事件としてとらえる、こういう大きな問題意識を持って国民なり国会でも論議されたことは十分御承知のとおりです。ところが驚くべきことに、この了解事項を見ると、まず第一に、本件は金元書記官個人の犯行であって、公権力の介入はしていないという韓国金首相の申し出を了解したということになっている。間違いありませんか、その了解について。
  233. 中江要介

    説明員中江要介君) ただいまおっしゃいましたような、金外務部長官の申し入れをわがほうが了解したというような……。
  234. 橋本敦

    ○橋本敦君 田中総理が了解をした。
  235. 中江要介

    説明員中江要介君) 田中総理が了解したということは、私ども聞いておりません。
  236. 橋本敦

    ○橋本敦君 いない——。
  237. 中江要介

    説明員中江要介君) はい。
  238. 橋本敦

    ○橋本敦君 新聞では明らかにそう書いておるわけです。そうすると、この八月八日の毎日新聞は誤報だと、こういうことになりますか。あなた、責任持ってそれを言えますか。
  239. 中江要介

    説明員中江要介君) 昨年十一月二日の両首脳の了解事項の中で、いま言われたようなことがあったというふうにもし報道しているとすれば、それは誤報であると言わざるを得ません。
  240. 橋本敦

    ○橋本敦君 それでは、この点についてあなたは誤報だと言うけれども、毎日新聞あるいはその他の新聞が同様に報道している事実に対して、誤報だとあなたが責任を持って言うということは、これは新聞に対する重大な問題だから責任を持ってくださいよ。  いずれにしても、そういうようにしてまさに主権侵害ではないか、あるいは国際法上の違法行為が公然と行なわれたという客観的事実があるではないかと、この問題が国会で論議されているときに、いやしくも田中総理が、国会の意見も聞かず、向こうの首相との間の外交的な話し合いの中で、このような主権侵害ではないという方向へ明らかに動くような形で了解を与えたとすれば、田中総理のはなはだしい国会軽視であり、政治責任は重大だということになることは当然ですね。これが新聞に報ぜられているようなことが事実であるとすれば、田中総理の責任は重大であるというように外務省としては考えませんか。
  241. 中江要介

    説明員中江要介君) その点につきましては、昨年の十一月二日現在においては主権侵害があったという確たる証拠がない状態のままでありましたために、その点はさらに捜査を日韓双方で続けまして、主権の侵害という事実が明らかになった暁には、これは主権侵害の問題としてもう一度本件を韓国に対して提起する権利を留保するという了解はございました。したがって、そういう権利を留保しましたことから見ましても、当時において主権侵害はなかったということを前提にして両国で了解事項があったというような観測は、正しくないと私は思います。
  242. 橋本敦

    ○橋本敦君 あなたはそういう見解に立つけれども、新聞報道によれば、明らかに金元書記官の個人的な行為である、こういうことが了解されたと報ぜられているからね。これが事実であり、これを田中総理が了解したとすれば、主権侵害かどうかを断定する以前の問題として、わが国にとっては主権侵害の疑いがきわめて濃厚であるとわれわれは断定していますけれども、そういう事態の中でこういう了解事項が得られるということは政治責任は重大ではないかと、こういう質問ですよ。だから、私の聞く前提が事実そのとおりであれば、外務省としては、これは総理の政治責任は重大だと言わざるを得ないということになりませんか。
  243. 中江要介

    説明員中江要介君) 私自身が私の立場で総理の政治責任云々ということは別といたしまして、いま言われたような新聞記事が事実とすればということですが、そこのところは私どもは事実と違うというふうに思っておるものですから、したがって、そのあとの考え方も違ってくるかと思います。
  244. 橋本敦

    ○橋本敦君 その点はそれ以上あなたに聞くつもりはありませんが、臨時国会でも所信表明をやらず、野党の質問も受けず、こういう大事な問題について田中総理が全然、新聞に公表された事実についてこれは違うという言明もしていない。そのまま今日まできているという事実は重大ですよ。  さらに次の問題として、韓国から捜査の中止の通告があったということですが、外務省から私が手に入れた韓国の決定書というものによれば、捜査の中止ではなくて、金東雲元書記官については明らかに容疑がないとはっきり書いてある。これについて山本警備局長はどう考えられますか。
  245. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 私ども捜査当局としては、金東雲一等書記官のこの件に関与した容疑がきわめて濃いという捜査の一連の過程については自信を持っておりますので、この韓国政府の通報はわれわれは納得できない、きわめて不満である、こういう考えでございます。
  246. 橋本敦

    ○橋本敦君 すでに今日までの捜査で指紋の割り出しができている。あるいは使われた車が横浜領事館の館員の所有のものである。一連の具体的事実が明らかになっていますが、これがかりに日本の刑事訴訟法の立場で逮捕令状の請求をするとすれば、令状が出る十分の法律上の疎明資料となり得るという状況であると私は思いますが、どうですか、山本警備局長。
  247. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) そのような状況にあると思います。
  248. 橋本敦

    ○橋本敦君 ところで、外務大臣の決算委員会における答弁なり、いまのアジア局次長あるいは山本局長の答弁でも、今後は捜査を進めるということを強調されているけれども、実際問題として端的に言って、今後捜査を進める最大の障害は、韓国政府が一切の協力に応じないという処置にあるということは明白ではありませんか。山本警備局長、いかがですか。
  249. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 私としても、先ほど申し上げましたとおり韓国政府かちの捜査結果、これは御承知のとおり被害者も参考人も被疑者も向こうにおるものでございますから、そちらからの通報ということは捜査の進展の大きな要素であるというふうに考えております。
  250. 橋本敦

    ○橋本敦君 いやしくも主権が侵害されたという疑いがきわめて濃厚であるし、さらに金大中氏の基本的人権が侵害された客観的事実が明白であるというこの事件の処理について、今後、いまの韓国の政治情勢からして、向こう側からの新たな通告を期待することは一切できない。向こうは捜査を中止したとこう言っているのですから。こういう段階でわが国がとるべき態度としては、いままで金大中事件について捜査をした結果及びその資料、その内容、これを全部正式に捜査の結果として国民発表をする、あるいは国会に正式に提出をする、こういう断固たる処置を一つはとるべきだと思うが、その点についてのお考えはいかがですか、山本警備局長。
  251. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 先ほど申し上げましたように、まだ捜査すべき点も主体的に残っておる状況でございますし、捜査の実態というものについては、まだいろいろと秘匿しなければならない問題もございますので、直ちにこれをいま現在発表するという気持ちはございません。
  252. 橋本敦

    ○橋本敦君 捜査上の秘匿すべき事実あるいは今後捜査すべき事項というのがまだ残されているというお話ですが、しかしながら、捜査本部は縮小されるということは、これもおっしゃったとおりです。だから、今後の捜査の継続を国民は期待し、私どもは期待するけれども、中間発表という形にしろ、秘匿すべき点は秘匿するとしても、韓国は容疑がない、捜査を中止する、明確にこう言っているときに、わがほうは確信を持ってこうであるということを国民の前に明らかにすることによってわが国外交のき然たる態度をとる一環になり得る、そうすべきだと私は思いますが、重ねて答弁を願います。全部出せとは言っていません。留保すべきはしてよろしい。だけれども、確信のあるところを出すべきだと、こういう意見です。
  253. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 金東雲一等書記官の点についての件だと考えますけれども、この点については、これまである程度発表していい点は発表されておるわけでございまして、たとえば指紋の点、あるいは目撃者、これもきわめて確度の高い、しかも何といいますか複数である、状況もきわめていい。それからその他状況証拠においてもそれぞれ幾つかの証拠が出ておる。こういうことについてはこれまで捜査本部の中間発表的なものですでに出ておるわけでございまして、あらためてこれから出すような問題はいまのところないわけでございます。したがってわれわれとしては、こういう自信のある捜査であるということはこれまでもたびたび外務省のほうにもお話をいたしておりますし、そういうことについては外務省も十分確固たる自信を持っておられていますので、その上に立って、外交的な信念あるいは方法によって解決していただきたいというような気持ちも強く持っておるわけでございます。
  254. 橋本敦

    ○橋本敦君 順次発表されている経過は私も知っておりますが、今後外交的交渉にまってほしいという、そこのところがまさに見込みのつかない状況になっている。その中でどうするのかということ、これがまさにいまの課題ではないか。それを打ち破っていくために、いま私が言ったような処置をとる意思がないかと、こう聞いたわけですけれども、重ねての答弁はけっこうです。  さらに次の問題として二学生の事件について伺いますが、新聞が報じたように、あの二学生、控訴審の段階において面会が許されなかったということを私どもは非常に心配をしておる。幾ら向こうの国で判決上有罪と宣告されたからといって、控訴をする手続をとるについて弁護人及び肉親との面会さえ許されないという事態は、驚くべき人権侵害だと私は思います。これについてどういうように考えられますか、法務省の安原刑事局長にお伺いしたい。
  255. 安原美穂

    説明員(安原美穂君) いまお尋ねの点が事実であるという前提で考えますときに、何よりも刑事訴訟手続におけるそういう制限であろうと思いますので、そういう意味におきまして、韓国の立法の問題としてその立法のなされた手続の範囲で行なわれるとすれば、わが国としては特にその点を違法だというわけにはいかない問題であろうとは思いますけれども、他面、自国民の保護という観点から考えますならば文明国の一般的な水準に基づく処遇が行なわれることについて、権利とまではいかないにしても、そういう扱いはしてもらうように、在外公館を通じて自国民の保護の立場から韓国政府にお願いをするということは当然の措置として考えられるのではないかと、私は一般的には思います。
  256. 橋本敦

    ○橋本敦君 まさにあなたのおっしゃるとおりですよ。たとえばわが国の刑事訴訟法によれば、面会の禁止は捜査官がかってにできますか。裁判官の接見禁止という裁判官の客観的判断なしに、これはできないですよ。ところが韓国では、一審判決が終わった後の控訴をするかどうかという段階で、その際弁護人にも家族にも面会させない。こういう驚くべき非近代的な状況の中で人権が侵害されている。これは明らかですよ。  しかも、刑の重さをごらんください。民青学連、これはでっち上げ事件だといわれておるが、それに接触したか、あるいは取材活動をしたか、それだけで二十年という懲役だ。これは刑事局長に伺いますが、二十年という懲役がその程度の行為に科せられるという、この感覚はいかがですか。単に刑が重いという程度を越えているのじゃありませんか。どう思われますか。
  257. 安原美穂

    説明員(安原美穂君) 刑罰法規における人権保護ということの観点から、不相当に重い刑罰というものは禁止さるべきだということは、一般的には刑罰の原則として言われておるところでございますが、その点、具体的な問題といたしまして、その刑が重いか軽いかということは、また多分にその国におきますいろんな状況における立法政策の問題でもございますので、私この点につきましては、韓国の立法の当否を、それは長過ぎるというふうに一がいに言い切るだけの自信はございませんが、感じとしては重いなという感じはいたします。
  258. 橋本敦

    ○橋本敦君 韓国の立法を批判せよとは私も言ってないです。この程度の行為で懲役二十年、驚くべきことですよ、これは。それ自体が、有罪か無罪かを越えて、その結果自体が人権侵害ですよ、こんな重い刑を科すことは。こういうことが韓国で行なわれている。これに対して、この早川、太刀川両氏をすみやかに人権回復をさせる処置としてどんな処置を一体外務省なり法務省はとったのか、その点を明らかにしていただきたい。
  259. 中江要介

    説明員中江要介君) 外務省といたしましては、申すまでもなく、日本人の問題でございますので、事件の当初から深い関心を持って憂慮しながらその成り行きを見ておりまして、最初はまず弁護人のあっせんのところから始まりまして、面会の問題、差し入れの問題日本との通信の問題、送金、つまりお金の問題、それから拘禁されておりますときの読書の本の差し入れの問題いろいろその便宜につきましては、在韓日本大使館の担当官が先方の当局と常時接触いたしまして、便宜をはからってきておるわけでございます。  一審の判決がありましてから、これは非常にきびしいものだというふうに私ども受け取りましたが、控訴するかどうかという点について、家族、弁護人との面会についてはこれは強硬に申し入れておりましたけれども、遺憾ながら面会の実現する前に本人の個人的な判断で控訴が決定されていたと、この点については私どもは非常に遺憾だと思っております。しかしながら、その後早川さんにつきましては奥さんとの面会が許され、太刀川さんとは弁護人の面会が許されて、第二審を迎えるにあたってのいろいろの話し合いをする機会は一応与えられておりますけれども、何ぶんまだ裁判が進行中でございますので、最終的な形でどうこうというわけにはまいりませんけれども、いま、先生のおっしゃいましたように、在外にある日本人の人権が侵されることのないように、公正な裁判と国際的に見て人道に反しない取り扱いが、処遇がなされているようにということは、常時見守っているというのが現状でございます。
  260. 橋本敦

    ○橋本敦君 現に人権侵害が行なわれているわけですよ。客観的事実としてそうなんですよ。こういうことをこのまま放置しておくということは許されない。しかもあの事件については、これは言うまでもないけれども、まさに本法において罪になるような法律どころか、大統領緊急措置令という異常な事態の法律によってやられているということですよね。しかもその結果、訴訟手続においても、刑の判決の結果においても、法律制度云々を越えて人権侵害だという、重大な問題だとだれしも思わざるを得ない事実がある。こういう問題について、いまわが国の国内でもこの両氏を救済するという運動が大きく高まろうとしているわけですが、今後どういう方針でこの二人の人権を守るかという具体的な方針、外務省何かありますか。
  261. 中江要介

    説明員中江要介君) 特に現在まで努力してまいりましたことのほかに、さらに具体的な新しい方法というものを考えておるわけではございませんけれども、これはまず裁判が公正に行なわれなければならない。これは韓国の法域内で韓国の法令に従って行なわれている裁判でございますので、まず第一義的には、その韓国の司法権の行使としての裁判が公正に行なわれているかどうかということを十分注意深く見守らなければならないということが一つと、それからもう一つは、これは人権の問題として、どこまで直接国際法に反するかどうかという法理論はむずかしい問題もありますけれども、しかしわれわれ政府といたしましては、日本人の人権の尊重というものがないがしろにされないように、これは機会あるごとに韓国側の注意を喚起していきたい。非常に抽象的に聞こえるようなことしか申し上げられなくて残念ですけれども、いままでと同じように、そういう意味では気を許さないで見守っていこうと、こういうふうに思っております。
  262. 橋本敦

    ○橋本敦君 そういう見守っていこうというような、軟弱であるし、優柔不断な状況がズルズルとこういう結果を招いておるわけですよ。これは市民運動としても、わが党の宮本委員長や社会党の成田委員長、公明党の竹入委員長も含めて、この人権問題については市民運動としても国民運動としても強力にしていくという運動を起こそうとしている。こういうときに外務省は、国内世論で人権を擁護せよということを国民の市民運動にまかせたままで、成り行きを静かに見守っていいのですか。私はいま外務省は、韓国の法令はともかく、結果としてかかる不当な人権侵害が行なわれていることについては、国連に提起するなり、国際的な世論に訴えるなり、先頭に立って人権を守るというそういう行動を起こすべきだと思うが、その点はいかがですか。
  263. 中江要介

    説明員中江要介君) 特にこの二人の人権を守るためにいろいろの分野で御努力されておられる活動については、私どもももちろん十分承知しておりますが、現段階におきまして、政府としてこの件について、いまおっしゃったような具体的な措置をとるというところまではまだ検討が進んでおりません。
  264. 橋本敦

    ○橋本敦君 検討すべきですよ。進んでいないという答弁では、国民立場として承知ならぬですよ。外務大臣とも相談をし、法務大臣とも相談をし、積極的に人権を守るという立場で検討するというように、これはお約束できませんか。
  265. 中江要介

    説明員中江要介君) 現在までのところ、政府といたしましては、とにかくこの二人の日本人ができるだけ早く帰国できるようになることがまず一番大事なことだという認識のもとに、韓国政府とは法律論を離れて政治的には話を何度もしておりまして、その点について全く希望がないわけではない。つまり、二十年とかりにきまりまして、それじゃ二十年ずっと向こうで刑に服するようなことになるのかといいますと、そういうことはなかろうというような、つまり韓国側の、これは向こうの政府の主権のもとできめられることですけれども、この二人について、しかるべきときにはある程度の配慮はあるのではないかという点について、それをさらに一日も早く実現させるというほうに目下のところは重点を置いているということでございます。
  266. 橋本敦

    ○橋本敦君 田中総理と金首相との間で、金大中の出国、これは自由だと、それはいつ日本に来るかということも確定しないまま了解をして、期待をして、結果はゼロですよ。いまあなたがおっしゃるように、二十年の判決だけれども、いつかは早く帰れるだろう、そんなことを期待しているということでは国民は不安ですよ。そうじゃなくて、即時釈放を要求するというぐらいの強い世論を国際的にも喚起すべき相手ですよ。明白な前近代的法律によって人権侵害をやっているのだから。積極的に検討してもらいたい。そのことを強く申し入れておきます。  次の質問に移りますが、今度の狙撃事件について、テロという行為は全く許しがたい、いまわしい行為であることは間違いないです。私がおそれるのは、佐々木委員も質問をされましたけれども韓国側発表がこれが著しく政治的きらいが強すぎる、この問題です。  たとえば文世光が自供したという形で発表されて、朝鮮総連の大阪の生野の金政治部長と接触があったと。これはそういう事実は全然ない。朝鮮総連も厳重な抗議の声明を出しています。これは御存じのとおりです。あるいは佐々木委員も言われたけれども、万景峰号に行ったというけれども、この事実もない。これは山本警備局長も言われたとおり。具体的に裏づけもない事実で、どんどん自白を引き出して、しかもどんな捜査をやっているか、これは心配ですよ。拷問、脅迫、あり得ることですよ。そうしていたずらに、日本における朝鮮公民の人たちの平和的自主的統一の運動を阻害するだけじゃなくて、朝鮮総連その他に対する韓国民の感情を刺激し、対日感情を刺激する、こういう傾向がどんどん進んでいる。これは心配だと私は思いますが、その点、韓国の現在までの捜査発表のしかたと内容について、そういう心配を次長はしておられますか、どうですか。
  267. 中江要介

    説明員中江要介君) これは私ももちろんそういう点は心配いたしますし、冒頭にございましたように、韓国においてもまた反日感情のデモが起きたりもしておるということで、これが非常に憂慮されるということでございます。
  268. 橋本敦

    ○橋本敦君 たとえば、文世光東京の病院で入院中にピストルの射撃訓練を受けたというようなことを向こうが報道しておる。ところが、その病院は東京の赤不動病院ではあるけれども、そこの副事務長は、とんでもないことだ、人家の密集したこんな病院で、六人の大部屋に入院をして、射撃訓練とかそういうようなことはあり得ることでない、迷惑だとはっきりこう言っています。だから、向こうがいま発表していることは何の裏づけもないことであるということは、これは明白です。そしてきのうの大使館に対するデモの基本的な向こうの主張は何かといえば、日本が共産主義者の対韓工作の基地になっている、だから日本はけしからぬ、こういう言い方ですよ。まるで根拠がない。こういうことをとめなければ日韓関係はますます悪くなるし、朝鮮総連やまじめに朝鮮、韓国の民主化や平和統一を願っている人たちの人権が重大に侵される心配がある。何かこれに打つ手がなければならぬ。その点についていま具体的に何か検討していますか。
  269. 中江要介

    説明員中江要介君) 一番大事なことは、私ども考えておりますのは、先方が正式に捜査の協力を依頼してきている、向こうでの調査の結果、捜査の結果について照会してきていることについて、わがほうの捜査当局の十分な御協力を得て、真実がどうであるかということを逐一明らかにしていくことが一番いい回答になろうかと、こういうふうに思っております。
  270. 橋本敦

    ○橋本敦君 それではおそいですよ。向こうが先にばあっと発表しちゃって、いたずらな反日感情、反朝総連感情をかき立てたあとで、真相はこうだと、これはおそいですよ。私が希望するのは、これは山本警備局長の御意見も聞きたいけれど、韓国当局に対して、こちらに捜査の依頼があった問題についてはこちらは協力する、こう言っておるようですから、こちらの裏づけなしに一方的な文世光の自白だと称する発表を、ことに日本及び在日朝鮮人人たちに関する限りやるな、こちらの捜査の協力による裏づけ、これの報告をもって客観的事実に即したものについてやれ、いままででもたいへんな迷惑だと、直ちに韓国に申し入れるべきだと思いますが、この点について次長並びに山本警備局長の御意見を聞きたい。
  271. 中江要介

    説明員中江要介君) ただいまの先生の御意見は、私捜査当局ともよく協議いたしまして慎重に検討してみたいと、こう思います。
  272. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) もちろん、捜査についてはやはりきっちりした裏づけあっての上でないと発表すべきでない。これはもう基本的な原則でありますので、この点については外務省と十分話し合って、向こうに申し入れたいと考えます。
  273. 橋本敦

    ○橋本敦君 そのことを早急にやっていただくように期待をします。  それじゃ時間がないので次の質問に移りますが、今次の選挙における買収事犯が、これが非常にはなはだしい数にのぼっているという実態が報告されておりますが、これは過去の選挙を通じて異例の状況だと思います。その点自治省の秋山選挙課長、いかがですか。秋山さんおりませんか。
  274. 田村宣明

    説明員(田村宣明君) 違反の検挙状況でございますので、とりあえず私のほうからお答えをいたしたいと思います。  従来と比べてという御質問でございますが、前回の選挙との比較ということで、ただいま手元には前回との比較がございますので、それについて申し上げたいと思います。  投票期日後、三十日後の取り締まりの状況でございますが、検挙総数は五千百四十八件、九千五百六十三人でございます。これは前回同期が三千七百五十八件、五千六百二人ということでございますので、これを比較してみますと、件数では三七%、人員では七一%の増加を見ております。それから全国区、地方区、いまの総数でございますが、この割合は、総数のうち全国区が三千九百五十件、七六・七%、人員で六千五百十二人、六八%、残りが地方区ということになっております。  それから罪種別を見ますと、買収が二千六百十九件の六千六十五人、件数で全体の五〇・九%、人員で六三・四%、それから文書違反が千七百八十五件、二千五百三十八人、戸別訪問が三百三十九件、四百九十五人、自由妨害が三百十五件、三百四十八人、その他が九十件で六十七人になっております。  それで、長くなりますので買収についてだけ前回と比較をいたしますと、今回は件数が先ほど申し上げました二千六百十九件、前回が千六百四十件でございます。それから人員が今回が六千六十五人、前回が人員が二千六百八十六人、こういうことになっております。
  275. 橋本敦

    ○橋本敦君 その中でも、決算委員会では後藤田派の違反が追及され、糸山派の違反もこれもまた追及されているわけですが、糸山派の違反についてはまさに日本列島縦断金権買収選挙、マスコミもこう書いている実態ですが、こういうようないわゆる「金のかかる選挙」とはまるで異質の、札束で票を買うようなこんな選挙が行なわれたということは、これは問題ですが、中でも糸山派について言えば、これは私のほうはテープもとっていますが、神戸における六月十四日の第一声で、糸山議員はこういう演説をやっている。「共産党に負けるくらいなら、宮本だろうと、不破だろうと、日本刀でもって刺し違え、死んだっていい決意を持っております」。まさにこういったテロを誘発する、そそのかすような演説、こういう演説をやっている事実がある。こういう事実があるということについて、政務次官御存じですか。
  276. 高橋邦雄

    説明員高橋邦雄君) いま初めてお聞きしたわけでございまして、私は全く承知しておりません。
  277. 橋本敦

    ○橋本敦君 朴大統領夫人狙撃について、憎むべきテロとして私ども哀悼を惜しんでおりませんが、いまそれが問題になっておるときに、少なくともわが国の国会議員が選挙の第一声でテロを公然と誘発するような演説をやり、しかも国民からきびしく指弾をされる驚くべき金権買収選挙をやった。こういう議員が、まさに民主主義を論じなければならない国会に座席を占めているというようなことについて、国民の批判はきわめてきびしいのですが、政務次官どう思われますか。
  278. 高橋邦雄

    説明員高橋邦雄君) 民主政治というのは平和の政治であり、したがって秩序の政治だと思います。ですから法を犯したり、あるいはまた暴力に訴える、こういうようなことは最もこれは民主主義に反することでありまして、適当でないというふうに私は考えます。
  279. 橋本敦

    ○橋本敦君 ちょっと最後が聞き取れなかったのですが、民主主義に反するということですね。
  280. 高橋邦雄

    説明員高橋邦雄君) 民主主義のたてまえに反することであるというふうに考えます。
  281. 橋本敦

    ○橋本敦君 ところで、公選法の二百五十一条の二がいわゆる連座制強化ということで議論をされて、つくられて以来長年になりますが、この連座制の二百五十一条の二の規定によって当選無効とされ、失格された事例、今日までどれくらいあるのですか。これは警察庁か、もしくは法務省の安原刑事局長、いずれかでけっこうですが、御答弁願いたいと思います。
  282. 安原美穂

    説明員(安原美穂君) ただいま手元に当選無効訴訟関係調というものを持ってきておりまして、昭和三十八年から四十九年、本年の七月三十日までの統計でございますが、それによりますと、当選無効訴訟の提起件数は、その間約十一年の間に八十四件ございまして、当選無効になったものは五十三件ございますが、これはすべて地方議員の関係でございまして、国会議員に関するものはないというのが実態でございます。
  283. 橋本敦

    ○橋本敦君 国会議員については、この規定によって失格した事例が十年の間ゼロである。問題はこれですよ。いわゆる一番いやらしい買収選挙をきびしく規制をするということで、なぜこれほど国会議員選挙について十年の間一件も事例がないのか。これは公選法が選挙の公正を目ざして連座制強化の規定をつくられたとき、現在考えてみれば、この規定が構成要件的にもきわめてあいまいであり、適用が、捜査をする捜査官の立場でも裁判所の立場でもむずかしいということに原因があるように思いますが、その点安原さん、いかがですか。
  284. 安原美穂

    説明員(安原美穂君) 突然のお尋ねでございまして、的確なお答えをいたしかねますが、御指摘のとおり、きわめてこの法の適用が実際問題としてむずかしいということは事実でございます。
  285. 橋本敦

    ○橋本敦君 総括主宰者ということの事実上の認定、これは佐々木委員も聞かれましたが、林についても断定したという新聞報道があるが、そうは言っていないということにも一つは見られる。あるいは意を相通じなければ、同居の親族であっても連座制の規定の適用がない。意思相通じたかどうか、否認すればこれはなかなか立証困難ですよ。こういう点で公選法を改正する上では連座制強化をさらに一そう国政選挙についてもやる必要があると私は思いますが、安原局長のお考えはいかがですか。
  286. 安原美穂

    説明員(安原美穂君) その点は罰則の問題と申しますよりも、選挙制度全般の問題でもございますので、まず自治省当局からお答えをいただくのが適当かと思います。
  287. 山本武

    説明員山本武君) ただいまの御尋ねでございますが、連座制の強化の問題については、各方面からいろいろな御意見等も出ております。この点につきましては、先日の公職選挙特別委員会におきましても、今度の参議院議員通常選挙の経過を考えまして、金のかからない選挙制度のあり方というものについて各政党ともいろいろと御意見、御見解をお出しになっていただいて、その各党間のコンセンサスを得て、金のかからない選挙制度へということで目下検討を重ねることになっておりますので、私どももそういうふうな状況を考えまして、慎重に論議と検討を重ねてまいりたい、かように考えております。
  288. 橋本敦

    ○橋本敦君 金のかからない選挙と現に買収選挙と、ごっちゃにしてはは困りますよ、質の違う問題だから。買収というのは、現金で票を買うようないやらしい選挙ですよ。金がかかる選挙ということとは別ですから、その点はっきり区別してくださいよ。いずれにしても、これは国会の論議を通じて検討される一つであるというように山本さんはお考えになっていることは、間違いないですね。
  289. 山本武

    説明員山本武君) ただいまも申し上げましたように、金のかからない選挙制度はどうあるべきかということを踏まえた全般の中で、おそらくこの問題も検討の一つの材料になるだろうというふうに考えております。
  290. 橋本敦

    ○橋本敦君 議論をさらに進めますけれども、最近、自民党のいわゆる政治献金の問題が国民的に議論をされ、電力会社にしろ、あるいは私鉄会社にしろ、あるいは石連にしろ、いわゆる国民協会への寄付をやめる、あるいは脱会をするという動きが国民の今次選挙に対する批判の中で生まれていることはけっこうです。そういう状況の中にあって、政治献金は個人に限るというのが、これはもう原則だというような世論形成が順次できつつあるように思いますが、政治献金は個人に限るのが、これはほんとうにそのとおり相当だというように自治省としては考えておられますか、おられませんか。山本さん、いかがでしょう。
  291. 山本武

    説明員山本武君) 政治資金の問題は非常にむずかしい問題を数たくさん含んでおります。ただいまの御質問は政治資金を個人に限るべきだというふうな御所見のように伺いましたけれども、この点については第一次選挙制度審議会の答申におきましてもそのような意見が出ておりましたが、ただ一そういうふうなのは現状から考えあわせまして若干問題があると。さらに第五次の選挙制度審議会においても、その点は個人に限るべきだという意見を基調としながらも、団体あるいは法人等についても寄付の量的制限が適当であろうという答申を出しております。したがって、この点で考えていきますと、議会制民主主議の体制をとるわが国においては、個人であると企業であると、あるいは団体であると、やはり政治的参加の自由というものを持っておりますので、ただいまのお説のように政治資金を個人に限るべきだという点については、いろいろと難点と申してはあれでございますが、慎重に検討して結論を見出すべき問題があろうかと考えております。
  292. 橋本敦

    ○橋本敦君 いずれこれは選挙制度改正で国会で議論になりますからよろしいのですが、私が伺っているのは、いま国民世論の方向はそういう方向にいっているという事実を認識しておられるかどうかということです。たとえば毎日新聞の八月十七日は明確に「政治資金は本来「個人の自由かつ自発的な意思」に基づくべきもので」企業献金などという姿こそ非常識だ。「従来の概念を基準に、理想論だ、非現実的だと性急に割り切るべきではない。いまや個人献金が本筋、という考え方が常識となっている。」社説でこう言っているわけです。こういう国民世論の動向、これを自治省としても十分慎重に検討すべきだというふうに考えるべきだと思うが、どうですか。結論だけでけっこうです。
  293. 山本武

    説明員山本武君) ただいま引用されました新聞の社説等について、そのような御意見が発表されていることは存じております。ただ、それがいわゆる世論と申しますか、国民の世論と申しますか、そういうふうなものだというふうな形には私ども理解いたしておりませんで、やはりそういうふうな一つの意見もある、こういうふうな点は、先ほどもお話しましたように、衆議院においてはそういう政治資金の規制についてということで各党持ち寄っていろいろと議論を重ねていただくというふうなことになっておりますので、そういうふうな論議の経過を踏まえて、私どもも慎重に原点に立ち返って検討いたしたいと、かように考えております。
  294. 橋本敦

    ○橋本敦君 そういうとらえ方が非民主的ですよ。社説も言い、国民世論の方向がそうなっている。このことを率直に認識しなければ、これは民主主義といえないということです。  議論はよしますが、次の問題に移りますが、今度の参議院選挙のもう一つの特徴は、金権選挙といわれたものに加えて、いわゆる企業ぐるみ選挙という問題がある。そこで、これはもうはっきりわかり切ったことだが、念のために聞いておきたいのですが、労働者というのは労働契約上、会社の首脳部が推薦をきめた候補者を支持する活動に従事する労働契約上の義務はない、これは明確だと思いますが、このわかり切った議論は間違いないでしょうね。山本さんいかがですか。
  295. 山本武

    説明員山本武君) その点に関する限りはお説のとおりでございます。
  296. 橋本敦

    ○橋本敦君 そういうことですね。  ところで、この企業ぐるみ選挙についていち早く大阪で大林組が問題になり、大阪の憲法会議、民主法律家協会その他から問題が出されるし、現に告発事件としては、企業ぐるみ選挙について三菱電機に関して告発がなされているし、あるいは神戸では新日鉄広畑製鉄所に関して告発がなされている。企業ぐるみ選挙が、いわゆる企業の労働者に対する特殊の優越的地位を利用して選挙民の自由を妨害したということで提起がされていますが、この事件の捜査はどうなっていますか。
  297. 安原美穂

    説明員(安原美穂君) 現在検察庁で受理しておりますいわゆる企業ぐるみ選挙に関する告発事件としては、私の手元では四件ございます。三件が東京地検で受理いたしておりますし、一件は神戸地検で受理をいたしておりますが、現在の捜査の状況は、現に捜査中であってまだ結論を得ておらないというのが実態でございます。
  298. 橋本敦

    ○橋本敦君 結論を得ていないのは私も知っていますよ。積極的に捜査がやられているかどうかという、検察側の姿勢と具体的状況をお聞きしたいと、こう言うのです。こんなものをゆっくりやっておれば、文書もなくなるし何もかもなくなってしまいますよ。積極的に捜査をやっているのかやっていないのか、その点はっきりしてください。
  299. 安原美穂

    説明員(安原美穂君) 先ほど政務次官も申されましたように、選挙事犯については、特に検察当局といたしましては厳正公平な態度を持しておるわけでございまして、積極的な態度でこの告発事件に対処しておるわけでございますが、問題はこの自由妨害の、特殊の利害関係を利用して威迫するという行為があったかどうかというようなことの認定について時間を要しているというのが実情であると聞いております。
  300. 橋本敦

    ○橋本敦君 それはおかしいですよ。最高裁の判例でも、この二百二十五条三号で、特殊の利害関係を利用して選挙民を威迫したという、威迫というのはこれは強制的な威迫に限らない、不安、困惑を与えるようなしかたであれば構成要件的に犯罪は成立する。これは最高裁判例に出ています。安原さん御存じですね。何もちゅうちょすることはありませんよ。私がきのう地検へ電話をして聞いたところでは、告訴人の提出する資料協力をまって捜査を進めるという検事の姿勢ですよ。限度がありますよ、こちらが提供し得る資料は。積極的に捜査をやってもらわなければ困ります。いかがですか。構成要件的に不明確なことは一つもないですよ。
  301. 安原美穂

    説明員(安原美穂君) 橋本委員御指摘のように、構成要件の解釈に問題があるということでなくて、解釈した構成要件に当てはまる事実の認定に困難を感じておるということでございまして、この点は明確にしておきたいと思いますが、おっしゃるように、告訴人の協力というものが告訴事件についてはぜひ必要なことでありますが、それをまって、告訴人の協力が十分でなく、その提供する資料が事実認定に不足すれば起訴しないというような態度であってはならないわけでありますので、重ねてこの事件について厳正な公平な態度で捜査処理するように、まず大臣を通じて最高検察庁にも御趣旨を伝えたい、かように思います。
  302. 橋本敦

    ○橋本敦君 時間があまりありませんので先を急ぎますが、大林組で告発を労働者がやった場合、それに対して不当な配転が出ている。報復的配転ではないかという問題が大阪で問題になっておりますが、山本さんお聞きになったことがありますか。また、そういうことがあるとすれば、それは先ほどあなたが、労働契約上義務のないことをやらなかったという理由で報復配転があるとすれば許されない——。当然だと思いますが、いかがですか。
  303. 山本武

    説明員山本武君) 選挙部のほうへのお尋ねでございますが、まず第一点については、そういうふうな話は私としては聞いておりません。  二番目の点については、私ども選挙部のほうでお答えする筋合いの御答弁ではなかろうかと思いますので、控えさせていただきます。
  304. 橋本敦

    ○橋本敦君 選挙部とは関係ありますよ、そういう報復的人事は会社はやるべきでない、労働契約上義務はないということは、あなた、おっしゃったのだから。それはいいです。時間がないから次にいきます。  大きく新聞に報道されたのですが、今度の企業ぐるみ選挙が非常に問題になって、そうして中央選管委員長が個人的見解の形で選挙の公正を要請する意見を表明された。大阪の選管委員長も表明された。これは異例なことですが、これに対して自民党の橋本幹事長が職権乱用だということで告発をしたということが新聞で報ぜられていますが、安原さん、こういう告発は実際橋本幹事長からあったですか。
  305. 安原美穂

    説明員(安原美穂君) 結論から申しますと、昭和四十九年七月四日、自民党幹事長橋本登美三郎氏から東京地検に告発がございました。
  306. 橋本敦

    ○橋本敦君 時間がないので結論的に政務次管に伺いますが、こういうように国民の批判と世論の中で選管委員長が公正選挙を要請する声明を出されたことに対して、これは職権乱用だというようなことで橋本幹事長が告発されたというのは、私はもってほかだと思いますが、こういう告発は取り下げるように政務次管からお話しになる意思はありませんか。取り下げるべきだというように私は要求をしたい。
  307. 高橋邦雄

    説明員高橋邦雄君) 私の立場からそうした取り下げを要請をするというふうな考えは、持っておりません。
  308. 橋本敦

    ○橋本敦君 検討願いたいと思います。  最後に国民協会の問題について聞きますが、国民協会の設立趣意書、これを見ると、真に自由民主主義を基調とする近代的な政党をつくり上げるとか、民主主義を守るとか、特に「きれいな資金を広く集め、政治を浄化する」、こういうことで設立をされた。財団法人ですから、これの設立の認可は自治大臣が主務大臣としてこれは認可をされておる。ところが、実際この国民協会は、寄付行為である第四条の目的では、自民党に政治献金をすることはこれは書いていなくて、健全な議会制民主主義政治体制をつくる運動をやる、こう言っているが、実際は国民協会は自民党と財界の政治資金のつなぎのパイプということにしかなっていない。こういう問題、この国民協会、これについて、これはもう解散さすべきである、それこそがまさにいやらしい金権選挙を断を切る一つの道だというように私は思うわけですが、国民協会の解散という動きはきょうの新聞に報ぜられているが、主務大臣として自治大臣おられませんけれども、こんな国民協会は解散すべきだということで自治省のほうで検討するという用意があるのかどうか。これを、大臣がおられませんから山本さんに一言伺っておきましょう。
  309. 山本武

    説明員山本武君) ただいまの御質問国民協会は、御指摘のような財団法人としての性格を持っておりまするし、もう一つは政治団体としての性格も持っております。したがって、政治団体が解散すべきであるとか解散されるべきであるとかいうふうな点については、政治資金規正法の主管官庁としてそういうことは一切申し上げられません。
  310. 橋本敦

    ○橋本敦君 政治団体ということについて私は聞いているんじゃないですよ。財団法人という寄付行為の目的と、現在やっていることとの実態を把握して、主務官庁、監督官庁である自治大臣、自治省として問題があるというように思われませんか、そういう質問ですよ。一言答えてください。実態を知っていますか。
  311. 山本武

    説明員山本武君) ただいまの御質問については、財団法人としての性格、政治団体としての性格、あわせ持っておりますので、財団法人としてどうだというふうにお尋ねになっても、軽々にその点についてはお答えできかねます。
  312. 橋本敦

    ○橋本敦君 さらに資料その他の提出を求めて検討することにして、時間を越えておりますので、おわびをして質問を終わります。
  313. 岩上妙子

    ○岩上妙子君 ただいま御指名いただきました岩上でございます。  私は茨城県におきまして、十数年前からいろいろなボランティア活動に参加しておりました。そのような立場から、今回たまたま法務委員会の末席を汚させていただきます機会を得ましたので、長年の間疑問に思っておりましたことの数々や、また、こうあってほしいといろいろと希望しておりましたことなど、その点についていろいろと御質問申し上げたいと思います。何しろ慣れませんで初めてのことでございますので、御当局の御懇切なお答えをいただきたいと、そう考える次第でございます。よろしくお願いいたします。  まず第一番に、今回私水戸少年刑務所、勝田市にございますけれども、そこに調査に参りました。七年ほど前に実は受刑者に講演を頼まれまして、そして一時間半ぐらい受刑者に講演をしたことがございまして、それから後、いろいろと少年刑務所の内部の教育の問題やその他給食の問題や、そのようなことをお聞きする機会もございましたし、また、いろいろとその中で教講師の方にその後お目にかかる機会、そのようなことがございましたので、そのようなことの中でひとつお聞きしたいと思います。  それは、徳性教育の一環として各方面の学識経験者の講演を依頼するとか、あるいは各宗派の教講師の宗教講話による知識向上と道徳心の涵養をはかっているとかあるいはまた勝田の少年刑務所におきましては、十二名の篤志面接委員を委嘱して収容者に対する助言や指導を行なっているということでございますけれども、その点について全く予算がない、あるいはまた講師の謝礼をすることもないし、この教講師の方々は刑務所のほうから依頼をするのでございますのに、交通費とか、あるいは車でいらっしゃいます方にはガソリン代とかというふうなものも全くの皆無であるということ、そしてまた篤志面接委員に対しても何らの報酬もなければ、交通費もないという、そういう実態を調査してまいりましたけれども、 その点は御存じでいらっしゃいましょうか、お聞きしたいと思います。
  314. 長島敦

    説明員(長島敦君) 先生から御指摘がございましたように、民間の宗教教護の諸先生方あるいは民間の篤志面接の諸先生方のたいへんな実は御協力を得ております。まあ役人ばかりでやっておりますと、なかなか矯正教育というのも行き届かない点がございまして、こういう民間の方々の御協力は非常に貴重なものでございます。  もともと、こういう方々のほんとうの御好意に出た御協力をいただいているということでございますので、何と申しますか、謝金というような点がはなはだ行き届かない始末になっているわけでございますが、予算的に申しますと、本年度宗教教護の謝金といたしまして全国で総額一千万入っておりまして、篤志面接の関係では百六十三万でございます。いずれもたいへん少ない金額でございまして、これを実際に御奉仕いただく方々に割ってまいりますと、ほんの五百円とか六百円とか、あるいはそれ以下ということになっておりまして、予算的には、実は根拠といたしまして、おいでいただく回数がもっと少ない回数になって積算されておりますが、実際にたいへん御協力をいただきまして、予算で見ております回数の何倍も実は御協力いただいておりますものですから、つい予算で足らないということになっております。  来年度の予算が近く始まりますので、ぜひこれを大幅に宗教謝金と篤志面接の謝金をお願いしたいということでお願いをするつもりにしておるわけでございまして、今後そういう御好意に報いるためにできるだけの努力はいたしたいと思います。
  315. 岩上妙子

    ○岩上妙子君 たいへんにありがたいお話でございますけれども、念のために、教誨師の皆さまのお集まりにも、また個人的にも私はいろいろな宗派の方とも御懇意にさせていただいておりますので、そのようなお集まりのときに、いま予算がいささか組まれているというお話でございましたけれども、全くいただいていないということが皆さまのお話でございました。そしてまた、回を重ねること、それもお金がどうというのではないけれども、やはりたび重ねてお伺いするということのためには、いささかなりと、あまりにも経済的負担が多いと困るというようなお話をたびたび聞いておりますので、その点重ねてお願いを申し上げる次第でございます。  また少年刑務所におきましては、収容者が二十歳から二十六歳までの青年が三百七十八名現在入っておりまして、その中で中学卒業生というのが、これはことしのではないのでございますけれども、二年ほど前ので中学卒が三百十三人で大半を占めておりますし、また高校中退というのが六十三名、高校卒がわずかに七名というような全く知識も低い状態であるだけに、施設内での社会復帰のための教育をもっともっと必要とするのではないか、そのようなことを平素から非常に考えております。  私が講演に参りますと、少年たち、まあ青年でございますけれども、非常に熱心に聞いてくれまして、それからあと、何名かの方がいろいろなことのお手紙をくださいます。あるいは感想を書いてくださいます。そのような中には、ほんとうに更生したいというそういう気持ちが十分に含まれているということを考えますときに、私はこのほんとうに罪を意識して、そして悔悟の念を持って更生できるための教育の助成ということ、そういうことを私は予算措置の点でほんとうに十分なことをしていただくということがたいへん必要であると思います。  その点について、特に私どもはお役所の方との折衝が非常に現在まで多うございまして、役人の方は、政治家の方がゴリ押しをするというようなときには、非常に御自分のお役所の態度をお守りになるということにおいてはたいへん私はごりっぱであると思いますけれども、しかし、前例にないからとか、あるいは前例を守らなければならないとかというような、そのような慣習に従うということに非常に重きをお置きになるような、そんな感じを民間人として持っておりましたことが長うございますので、教育の問題ということ、少年刑務所の中の、特に二十歳から二十六歳まで、これから社会に出て害毒を流すか、あるいは更生して社会のためにほんとうに尽くすことのできるかという境目にある方たちでございますので、私はきょうは大臣の御意見を伺いたかったのでございますけれども、特に政治的立場におありになる政務次官の御意見をここでお伺いをしたいと思います。   〔委員長退席、理事白木義一郎君着席〕
  316. 高橋邦雄

    説明員高橋邦雄君) 大臣がちょっとあいにくぐあいが悪くて入院中でございますので、私から答えさせていただきますが、ただいまのお話、いずれもまことに私もごもっともだと思うのでございます。現状は予算が非常に少ないというようなことで、なかなか御期待にこたえられないような事情にあるわけでございますけれども、確かに教育の問題、また人格を高めるという問題、非常に重要な問題だと思いますので、今後、これらに関係の予算をできるだけひとつ獲得をいたしまして、少しでも御期待にこたえられますように、せいぜいひとつ努力をするつもりでございます。
  317. 岩上妙子

    ○岩上妙子君 次に、受刑者の給食についてお伺いをしたいと思いますけれども、給食の点につきましては、私も二回ほど検食をさせていただきました。ただいま少年刑務所におきまして、副食費が一日三食で八十二円九十五銭であると伺ってまいりました。一日三食でございます。この中には、油その他の調味料が全部含まれているということでございましたし、また相当の反別の畑をつくっておりますけれども、そこでつくられます野菜等は、売ったり買ったりというような形でその八十二円九十五銭の中に含まれているという、そういうお話でございました。たくさんつくっております自分たちでつくります野菜も、ただそのままみんなの食事の中に入れられるというのではないというとき、八十二円九十五銭というものの中の非常に窮屈なことを私はしみじみと感じましたし、また米麦半々の主食は、その労働の軽重によって一等食から五等食まであるという、そういうお話も伺ってまいりました。  その地域によってだいぶお値段が違うのかなと思いましたら、大体副食費については幾ら違っても四、五円であるというようなことから考えますと、八十二円九十五銭ということが、八十五円ぐらいまでが一番多い副食費ではないかと、そんなふうに考えられますけれども、これはその地域によって相当違いますのでしょうか。やはり東京と地方では相当な違いがございますでしょうか。
  318. 長島敦

    説明員(長島敦君) 多少の違いはございますが、たとえば沖繩などは野菜その他が高うございますので比較的高うございますけれども、一般的には全国平均では、少年刑務所がただいま八十一円七十八銭が全国平均でございまして、その平均を中心にいたしまして五、六円の多い少ないがあるかと思いますが、その程度のワク内だと思います。  ——どうも失礼いたしました。ただいまのは間違いまして、いまのは四十八年度のあれでございまして、ただいま平均が九十八円九十五銭が平均値でございます。
  319. 岩上妙子

    ○岩上妙子君 そうしますと、茨城県の少年刑務所はだいぶ平均よりも安いということになりますけれども、これはやはり地方であるというような、そんなことからでございましょうか。その地域によって物価が違うとか。
  320. 長島敦

    説明員(長島敦君) 少し安いわけでございますが、これはその地域の物価の差が一つございますのと、それから、そこの刑務所で自給いたします野菜とかその他ができます場合には、その分も計算に入れますので、その関係で低くなったものと思われます。   〔理事白木義一郎君退席、委員長着席〕
  321. 岩上妙子

    ○岩上妙子君 主食が非常に多いということは御存じでいらっしゃいますと思いますけれども、一等食から五等食まであって、労働の軽重によってその主食が違ってくる。副食は一等食も五等食も、労働の軽重によって副食費というものは全く変わらないという、そういう状態であるということを調査してまいりましたけれども、カロリーの点についてはたいへんにカロリーが高いように出ております。しかし私は、その全体の七五%のカロリーというものがいわゆる米麦の糖質、含水炭素あるいは炭水化物ということばも使いますけれども、そのようなカロリーというもので七五%を占め、そして副食費からはたった二五%ぐらいであるというようなことを調べてまいりました。  私はその点について、カロリーが計算はしてございましたけれども、最近の職員の削減政策ということによって、栄養士がただいま水戸刑務所には一人もおりません。そのようなことの問題は、栄養士が一人もいないということでカロリー計算だけはしてあるということ、その辺のところがたいへんに疑問に思われましたけれども、一体毎日の食事のカロリー計算は専門家がいなくてだれがするのであろうかと、そのように考えられます。そしてまた、この職員の削減と申しますことにつきましても、公務員全体の三%削減というようなことに従っているようなことを伺いましたけれども、特殊なこういう部門について、特に四百名近くもの収容者を持っております刑務所において、カロリー計算をする栄養士もいない。ただカロリー計算の表だけは見せていただいた。この辺のところ、私はたいへん疑問に思いますけれども、お答えいただきたいと思います。
  322. 長島敦

    説明員(長島敦君) 一般の職員の削減計画が私どものほうにもかぶってまいりまして、年々矯正職員の定員が減っておるわけでございます。  栄養士につきましては、そういうわけで各施設に全部栄養士を配置するわけにもただいままいっておりませんので、その足りない点を、補いますために、手元に私一部持っておりますが、標準献立表というのがずっとできております。それを全施設へ配っておりまして、その標準献立表に基づいて調理をいたしますと、その標準のカロリーがあるという献立表ができております。そのほかに各矯正管区、全国に八つございますけれども、そこの管区には専門の栄養士がすべておりまして、それが巡回指導をいたしております。東京ですと、東京の矯正管区におりますのが、おそらく月に一ぺんぐらいは水戸へ行っておると思いますが、行きまして、その過去の一カ月間の実際の表、やったことをずっと調べまして、チェックいたしておりますし、指導もするということで、いまは、ほんとうはほしいわけでございますけれども、巡回指導と献立表ということで何とかそれを満たしておるものというふうに考えておるわけでございます。
  323. 岩上妙子

    ○岩上妙子君 次官に一言お伺いしたいと思いますけれども、ただいまの局長のお話によりますと、刑務所に一人の栄養士を置くということ、そのこともできないというような予算措置はいかがなものでございましょうか。私はやはり四百人にも近い人数を擁しておりますこの施設に、どんなことがあっても栄養士を一人置かなければいけないということ、こういうことを痛切に感じますけれども、次官のお考えをお聞きしたいと思います。それからそういうことをお感じになられます場合に、もしお感じになられましたならば、これを直ちに実行に移すような予算措置の御約束をいただきたいと私は思いますが、いかがでございましょうか。
  324. 高橋邦雄

    説明員高橋邦雄君) ただいまお話しのような施設に、当然これは私も栄養士は置かれるべきものだというふうに思います。ただ、先ほど話がありましたように、いろいろ定員、人員の節減というような問題などもありまして、なかなかどうもこちらで望むとおり、また要求するとおりにいかない場合があるわけでございますが、予算編成がもうそろそろ始まりますので、来年度の予算には栄養士の増員等も要求しておるわけででございますので、なるべくひとつその要求の実現にこれから私も努力をいたしたいというふうに思います。
  325. 岩上妙子

    ○岩上妙子君 また四十七年度から、あるいはその前からも調べましたけれども、四十七年度から四十九年度までの副食費の値上げでございますけれども、四十七年度から四十八年度までの値上げが十四円四十六銭、あるいは四十八年度から四十九年度までの値上げが十四円三十七銭ということになっておりますが、これは副食費の値上げでございますけれども、その基準は一体どういうことを基準になさって値上げをなすっていらっしゃいますのでしょうか。カロリーの点からお考えになっていらっしゃるのでしょうか。それともその他の基準がおありになるようでございましたら、それをお聞きしたいと思います。
  326. 長島敦

    説明員(長島敦君) これは先ほどから先生御指摘のように、カロリー計算だけからいきますと、これは一般の国民のカロリーを上回っておるわけでございますけれども、問題は、主食のカロリーが一般国民に比しまして非常にたくさん主食からとっておりまして、副食のカロリーが非常に少ないわけでございます。ですから毎年重点として要求しておりますのは、副食の質を改良するということでございまして、副食からもっとカロリーがとれるようにする。それには多少でも肉類、魚類、いわゆるそういうたん白質でございますか、これの量をふやすという方向で一つ努力をいたしております。  もう一つは、主食でございますけれども、主食が大体いま米麦が半分ずつの割合になっておりますけれども、これを米と麦との割合を改善いたしまして麦を減らす、あるいはパン食をもう少し導入をいたしまして、最近若い人などはパンを好みますので、パン食に切りかえるというようなことを要求しておるわけでございます。  そういう要求をいたしておりますが、実際にただいま御指摘がございましたような率で上がってきておりますが、この率はこれは想像でございますけれども、おそらくいろんな食料の値上がり分、物価値上がり分に多少その改善分をプラスしたものということで、大蔵当局の査定と申しますか、予算がきめられたものというふうに考えておるわけでございます。
  327. 岩上妙子

    ○岩上妙子君 私は医師の立場からも考えまして、含水炭素にだけカロリーをたよるということになりますと、やはり熱カロリーがすぐになくなってしまうという、そういうことになるわけでございますね。したがって、どんなに最低でも脂肪とたん白質によって一〇〇%の中の三五%はとらなければならない、そう考えるわけでございます。ただいまの少年刑務所の中の食事は二五%ぐらいとられているというそのぐらいの計算かと、私が考えましたのはそう思いますけれども、ちょうど先日検食をしてまいりました。それは昼でございましたけれども、全く少量の納豆、何もかけてない納豆、おしょうゆはちょっとかけてあるのかもしれませんが、納豆と、それからキュウリの酢のものがいささかついているという、そのような状態で、もうほんとうに主食は非常に多いのに、それに比べまして副食費の量がきわめて少ない。そしてまた担当者の方もおっしゃっておいでになりましたけれども、良質の動物性のたん白質がこの予算の中ではとることができない。非常に苦労していらっしゃる御様子を私は見てまいりましたし、二十歳から二十六歳という比較的重労働に携わっております若者たちの栄養のバランスは全くとれていないということを、医師としても私は痛感してまいったわけでございます。  そうしてやはり罪を憎んで人を憎まずという古いことばを思い起こしまして、たとえ罪を犯した者であっても、一時社会と隔絶するという、そして更生をはかるということが目的である矯正施設内での副食費の増額に対して、私は子を持つ母の立場からも、特に最近の物価上昇というこの問題から、何億何十億というお金を使って選挙にお出になるという、そのようなけた違いのお金の額が毎日のように新聞紙上をにぎわしておりますのに、忘れられた谷間にいる人の一日の副食費が、全く八十二円何がしということであることをほんとうに悲しいという気持ちになりました。  ただいま水戸市におきましての生活保護世帯の、二十歳から四十歳までの成人男子の支給額が二万二千二百三十円でございまして、この食費はどうして算定するのかと聞きましたら、その百分の七十五が食費である、そのようなことでございました。これを一日に換算いたしますと、生活保護を受けている男子でさえも五百五十五円二十銭というのが一日の食料費という、そういうことを考えてみますと、ほんとうにこの問題はやはりこの年齢の者にふさわしい、それはぜいたくなことはできませんでしょうけれども、せめて主食からのカロリー六五%、そして副食のほうのたん白質脂肪からのカロリーを三五%にはしていただくという、そのことのための増額を心からお願いをしたいと、そう思うわけでございます。  なお、トイレがまだ水洗になっておりませんで、これはたいへん不衛生であると思いました。しかし、なかなか予算の問題もあって、これは思うようにはできないということでございましたけれども、先ほど白木先生のお話の中に刑務所の移転という問題もございまして、勝田市もだんだん過密になってきて、この問題も地元ではたいへんな騒ぎになっておるわけでございまして、この機会にトイレの水洗化というような問題も、とにかく伝染病の集団発生などということを考えますときに、これは非常にもうそれこそおそろしいことだと、そう考えましたので、その辺のところのいろいろな副食費の増額、あわせてトイレの水洗化、あるいは少年刑務所の移転の問題等もよろしくお願いをしたいと思うわけでございます。  とにかく憲法の二十五条に基づきますならば、たとえ受刑者であろうとも最低生活をするという国民の権利を有するものではないかと、そのように考えますとき、私はもし政府が因果応報説というものにとらわれ、罪を犯した者はすべて制裁を加えるものであるというような考え方はないであろうと思いますけれども、もし万が一そういうことがあるとするならば、私は人権問題ということをどう考えるかということになる、そのように思うわけでございまして、それをあわせてお願いをいたしたいと思いますけれども、その点について次官の御意見をお伺いいたします。
  328. 高橋邦雄

    説明員高橋邦雄君) 矯正施設に収容されておる人たちの処遇については、あくまでもこれは人間的でなければならないというお説で、全くこれは同感でございます。  ただいま教育の問題、また食事の問題、また衛生施設の問題等についていろいろお話がございました。私どももこうしたそれぞれの面、それぞれの施策におきまして、あくまでも人間尊重の精神を実現するようにいままでも指示をしてきたわけでございますが、これからもなおそうした点を徹底し、また予算編成にあたりましては、被収容者の処遇の改善あるいは向上という問題も特に重点事項として取り上げまして、その実現に努力をいたしたいと、かように考えております。
  329. 岩上妙子

    ○岩上妙子君 次に、保護観察所における調査をいたしまして、実は私は十年前に水戸保護観察所の一日所長を拝命したことがございます。その際、保護観察所の任務について御説明を受けまして、そのときに保護司数名の方との座談会に臨みました。そのとき、民間奉仕者の情熱と行動に心から感激をすると同時に、その際、観察のための経費等に関するいろいろな実費弁償金などがあまりにも微々たることを知って、そのまま疑問のままに過ごしましたけれども、その後何回も保護司をやっていらっしゃいます方との出会い、いろいろなお話し合いの中で、だんだん改革をされているのかなと思いましたけれども、しかし、現在調べました結果におきましては、ほんとうにその措置があまりにも貧弱であるということを知りました。  ただいま水戸保護観察所の職員十七名のうち十一名が観察官の資格を持っていらっしゃいますけれども、所長さんや部長さんはその実務につくことができませんので、七名だけがいま実務についていらっしゃるということを伺ってまいりました。対象者は約千七百七十名あって、一人の受け持ちが約二百七十名もある。この点につきまして、当局ではどの程度の観察官が対象者を受け持つことが理想であるとお思いになっていらっしゃいますでしょうか、それをお伺いしたいと思います。
  330. 古川健次郎

    説明員古川健次郎君) お答えいたします。  ただいま岩上先生から水戸の観察所の実態についておしかりいただいたわけでございますが、現在全国的に見ますと、大体保護観察官一人常時、対象者百三十人を持っている状況でございます。  これは理想はどうかということになりますと、いろいろ説があるようでございますが、やはりせいぜい対象者は五十人、一人で五十人持つのがまあ限度ではなかろうかというようなことが言われております。そういう点におきまして、われわれのほうはやはり保護観察官の増員、非常に保護司さんにも御協力いただいておるわけでございますが、中心となるべき保護観察官、これの増員を大いに要求しているわけでございます。ただいま、先ほどもお話ございましたが、増員抑制という政府の大方針がございまして非常に困難な状況でございますが、毎年保護観察官の増員要求をいたしております。今後ともその活動を積極化いたしまして、保護観察効果があがるようにはかりたいと考えております。来年度も相当大幅な増員の要求をいたしております。
  331. 岩上妙子

    ○岩上妙子君 その点は特にお願いをしたいと考えております。いま局長は百三十名に一人というのが、これが平均でございますか。
  332. 古川健次郎

    説明員古川健次郎君) 全国平均でございます。
  333. 岩上妙子

    ○岩上妙子君 実際には実務につくことのできない方がいるということをお思いあわせいただきますと、水戸の場合には二百七十名を一人で持っているという、そのような状態でございます。やはりこれも先ほど申し上げました刑務所内の栄養士の問題と同じように、こういう特殊な部門についての職員というのは削減をしないという方向をたどっていただかないと、いろいろお困りになるのではないだろうかと、そのようなことを考えますので、より一そうの御当局のこれからの御努力をお願いしたいと考えるわけでございます。  次に保護司の問題について。  保護司は給与を受給しないという保護司法の規定、あるいはまた金銭問題に触れるのはとかく社会奉仕の観念に反するというような保護司の皆さまのプライドから、表にはその不満が出ていないように見受けられますけれども、私は多くの方々とお話をし合って、その実費弁償金というのが、交通費、通信費、その中には電話料というのがいまはなかなか大きな額になるようでございますので、そのようなものを含めまして、現在の千九百円、九百三十円、八百三十円という三段階に分けられて、千九百円というのが一カ月のとにかく一件について最高の額であるということをお聞きしました。  私の知人で、女性でございますけれども、非常に熱心な保護司がおりまして、その方が、あるときには水戸から府中刑務所に足を運び、あるときには水戸から小田原の少年院に足を運びながら、それこそもうあるいは水戸におります間にも食事をごちそうしたり、家庭に呼んで、いろいろなことで非常に心あたたかく保護観察をしていたのでございますけれども、行動をすればするほど、情熱を持って行動をすればするほど、やはり家庭の主婦という立場では経済力が続かないということになるという実態から、たいへんにりっぱな方でございますのに昨年辞退してしまったという、そういうことがあるわけでございまして、物価の高騰というものにはやはり奉仕活動というものにも限度がございまして、それにはついていけないという、そういうこともあることをよく御存じいただきたいと思うのでございます。私は民間の多くの保護司さんに今回もいろいろとお目にかかりましたけれども、皆さんほんとうに情熱を持って奉仕活動をしたいと思っても、それがなかなか最近は経済力というような問題もあるということも皆さんがこっそりこぼしていらっしゃるというような、そんな状態でございます。  そしてまた保護司の平均年齢が、茨城の場合には六十二歳から三歳ぐらいでございますけれども、その老齢化ということが問題であるということではございませんで、将来のためを思いますと、現在からやはり若い行動力のある方たちに御理解を願って、そしてその方たちを育てておかなければ将来困るのではないだろうか、そのようなことをしみじみ考えさせられるわけでございます。これはほかの例でございますけれども、たとえば助産婦さんの問題なども、十年も二十年も三十年も前からこれは言われてきたことでございますが、現在はもう五十歳過ぎた助産婦さんが六〇%に近いという現状で、十年後にはもう優秀な助産婦さんがいなくなってしまうのじゃないか、このようなことが産婦人科医のほうでも問題になっているわけでございますが、それと同じようなことで、老齢化という問題は次の人を育てるということ、こういうことを十分に考慮して、特に私は保護司の問題については母親の立場の女性を含めて、そういう方たちに大いに奉仕活動をしていただくということが必要なのではないかと、そんなふうに考えるわけでございますので、この保護司の実費弁償金というような問題についても、これからもう少しやはり御考慮いただきたいと考えておるわけでございます。  それに、特にボランティア依存のわが国の保護観察体系がほんとうの近代的処遇形態をとるかどうかということ、これは観察官の増員ということとあわせて、保護司へのある程度の報酬というものを支給する、その予算措置ということにかかっているのではないだろうか、そのような考え方がございますけれども、それについていかがでございましょうか。
  334. 古川健次郎

    説明員古川健次郎君) 岩上先生がおっしゃられましたように、ほんとうにボランティア活動、われわれ御協力いただきましてもう感謝のほかないわけでございますが、これに対する国の、その御努力にどういうふうにお報い申し上げるかという点につきましては、かねがねわれわれ悩んでいるところでございます。確かにいま御指摘のように、一人の非行少年を一月持って最も処遇困難な者で月千九百円。確かに一回食事すればもうそれだけでも足りないぐらいの、先ほどお話がございました府中や小田原へお出かけになる場合にはおそらく旅費は差し上げているだろうと、これも実費だと思いますが、少なくともいまのような千九百円の実費では、旅費などは別にいたしまして、食事一回でなくなる。そんなことではたしてほんとうにむずかしい非行少年の扱いができるか、われわれ非常に頭を痛めているところでございます。  しかし、現在保護司法にはそういう規定があるわけでございまして、この規定は元来保護司の方々が社会奉仕、いわゆるボランティアとして社会奉仕の精神に基づいておやりいただいているというところからそういう点が出ているだろうと思うのでございます。はたして報酬制にむしろ移行したほうがいいのかどうか、いろんな問題がございますけれども、現段階におきましては、法務省といたしましてはやはりこの実費弁償、これを何とかふやしまして保護司の方々にお報いしたい、かように考えているわけでございます。  先般、前国会におきまして調停委員制度の改正がございましたときに、附帯決議におきまして、保護司の待遇もこれに見合って改善すべきであるという附帯決議をいただきました。こういうような附帯決議も踏まえまして、本年度はさらにこの保護司各位に対します実費弁償の増額、これは大いに努力してまいりたい、かように考えております。それ以外にも、保護司の方々のいろいろ日ごろいただいております報告書などをできるだけ簡素化して楽になっていただく、あるいは栄典制度等も大いに活用いたしましてできる限り遇したい、かように考えておるわけでございます。
  335. 岩上妙子

    ○岩上妙子君 次に保護司に関連しまして、保護司会あるいはまた茨城県には保護観察協会というものがございます。この保護司会の財源も、調べてみますと国からの助成金というのは全くございませんで、保護司会の皆さまの会費と実費弁償金の一〇%を寄付金として差し上げている。そしてまた、各市町村からの補助金というのが、またこれが額が一定基準がございませんで非常にまちまちでございまして、赤い羽根募金のほうから出ているのもあれば、また戸数と二十円とを掛けているというそのようなところもあるかと思うと、戸数掛ける五円というようなところもあるし、一銭も出していないという町村もあるというような現状でございます。しかし、やはりこれについては、私は法務大臣の委嘱である保護司の会でございますので、これを何とか貧困な地方財政というようなものにたよることなく、これについても何とかいささかの予算措置でもしていただけないものだろうかと、そのように考えますし、また保護観察協会というものに対しましては、やはり補助金は県から出ております。そして国は財政的な援助というものを一切しておりません。このように、すべてのものが町村段階の、あるいは県の段階の、いわば貧困な地方自治体ですべてをまかなわせているという、そういうことでございます。  そして時間がございませんので取りまとめてここに申し上げたいと思いますことは、もちろんそれに付随していきます更生保護婦人会とか、あるいはBBS活動とかいうものに対しての予算というものも国からは一切ございませんで、これもやはり保護観察協会あるいは保護司会のほうからのいろいろな助成金でまかなっているという、そういう現状でございます。したがって、このいろいろな保護司の活動と申しますものがすべて地方で行なわれておりまして、中央では全くめんどうをみないというこの実態というものを、私はほんとうに非常に中央とは不熱心なことであると、そのように何かふんまんを感ずるわけでございます。  時間がございませんので、ここでこれに関連のございます昭和二十六年から二十四年間、月間運動として行なわれております「社会を明るくする運動」につきまして、一緒にこれを取りまとめてお話を申し上げるわけでございますけれども、これも全く県においてまかなわれておりまして、国からはただいま広報活動のための印刷物だけ、ポスターとかあるいはパンフレットとか、そのようなものが配布されるだけであるという、そのようなことを私どもはボランティア活動の中でいろいろ知っているわけでございます。二十四年間もっともっと政府が愛情を持って積極的にこの運動を行なったならば、私はこの「社会を明るくする運動」というものは民衆の中に育って、そしてその意識も高まったはずではないだろうか。それがこのような形で地方にまかせっきりというような形であったことのために、形式主義に進められた結果、知らない人もたくさんございます。皆さんに聞いてみますと、そのような運動があるんですかと言う方もずいぶんございます。そして何の反省と改革もなぐ、毎年同じことが繰り返されて行なわれてきたというような、このような現状を考えますときに、私は全くこれは「社会を明るくする運動」というのは官製運動と言われてもしかたがないではないだろうか、そのようなことを考えるわけでございます。  とにかく、この保護司会あるいは保護観察協会、あるいはまた「社会を明るくする運動」、このようなことへの国が全く何の助成もしていないという点について、私は御当局並びに次官の御意見を伺いまして、そして最後にしたいと思うわけでございますけれども、御意見を伺わせていただきたいと思います。
  336. 高橋邦雄

    説明員高橋邦雄君) ただいまの岩上委員の御指摘はまことに一々ごもっともで、たいへん私も痛い思いがしているわけでございますが、更生保護の問題につきまして、世の篤志家にたよるとか、あるいは社会奉仕の精神とかボランティア精神、こういうものにたよる、これはまことに貴重な精神でありまして、それはそれとして大事でありますし、また大いにそういうものを育てなければならないと思うのでありますが、しかし、そうしたものにだけたより切っているということについては、これはやはり問題があるのではないかというふうに私も思っておるのでありまして、いま御指摘の保護司の実費弁償金でありますとか、あるいはさまざまな更生保護の活動、あるいは活動しておる団体などについて国が何ら財源措置をしていない、こういうことでございますが、私も実は長い間地方庁におりましてそういう点を非常に痛感をしておるわけでございまするので、微力ではございますけれども、ひとつそうした予算の獲得、いままでの扱いの改善、こうした問題につきましてできるだけ努力をいたしまして、その改善につとめてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  337. 岩上妙子

    ○岩上妙子君 ただいまのおことば、たいへんにうれしいと思いますけれども、そのままになさることでなく、直ちに五十年度の予算に大蔵省のほうにその御要求なすっていただけるならばと、そのように考えるわけでございます。形式主義にとらわれることでなく、官製運動であるというようなことをいわれることでなく、私はこのような運動がほんとうにじみちに展開されることを心から望むものでございますので、重ねてそれをお願いして終わりにしたいと思います。  きょうはほんとうにありがとうございました。
  338. 白木義一郎

    白木義一郎君 最後に次官に私からもお願いしたいのですが、ただいま岩上委員から具体的な質問がございましたけれども、さらにまた次官も、非常にいまのような内容のことについて造詣が深いような御答弁がありました。この問題については、当委員会としては毎年各方面のそれぞれの矯正施設に視察にまいりまして、そのつど当委員会の意見として調査報告を繰り返しているわけですが、なかなか実現に至らないという残念なことがありますので、ぜひともひとつ次官在任中に、一歩でも二歩でも実現の方向へ努力をしていただきたいことを私からもお願いをしておきます。
  339. 多田省吾

    委員長多田省吾君) 本日の調査はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十四分散会      —————・—————