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説明員(高橋俊英君) まず、その概要の進行
状況を申しますと、独占禁止法
改正のために特別に研究会というものを設けまして、学識経験者、これはそう数は多くはありませんけれ
ども、相当私
どもとしては見識の高い方をお願いしたつもりでございまして、昨年の終わりから始めまして、相当の回数にわたりまして研究を進めてまいりました。私
どももこれに参画いたしております。そして、いまはもうまとめの段階でございまして、いろいろな理論つけ 理論の問題についてずいぶん長い時間を要しました。しかし、最近になりまして私
ども事務当局は、八月に入りましてからは具体的な案をなるべく早く提示しなければならない。そうでありませんと、いろいろ
関係するところが多くて、それらのところが具体案を見なければ批判もできない、こういうふうなことがございます。そういうことで、できればおそくとも九月中には要綱を取りまとめる、要綱の段階までいきたいというふうに思っておりますが、そうでなくても、その以前においてもしできればその骨格を示したい、具体的な骨格を示すようにしたいと考えておりますが、まだそれは完全にでき上がっておるというわけではございません。
なお、その
改正の要点でございますが、すでにある
程度御
承知かと思いますけれ
ども、第一には、やはり独占及び寡占対策。それは、その一つには、独占的業種、そういう業種で一あるいは二ぐらいの
企業が業界を全部支配しておると、
実質的にですね、競争が行なわれてない、そういうふうに認められるものについて、最終的な試案としては、いわゆる
企業分割
——企業分割というのは会社の分割ということでありますけれ
ども、しかし、その会社の分割までいかなくても、資産の一部譲渡というふうなことがあれば、これはまあそれでもいいわけですから、概してこれは
企業分割と通常称しております。これが乱用はいたしませんけれ
ども、もちろんこれはひんぴんと使うようなものじゃありません。いろいろ手を尽くして、なおかつ及ばない場合にはそういう
手段に訴えることができるように法制的な
手段を持つということが必要ではないか。
次に、そこまで至らない、まあ若干幅は広くなりますが、そういう独占的な支配下にある特殊の一定の
企業によって支配されているんじゃなくて、もう少々数は多いと、つまりいわゆる寡占でございます。寡占の体制にあるところに対しましては、これは非常に徹底した策ではありませんが、原価の公表というものを求めたい。この原価の公表を求める趣旨というのは、一般にはたいていの、これは一定の規模以上の会社でございまして、小さなものには求める気持ちはありません。ある
程度の規模のものでなければならぬし、かつ寡占であって、少なくとも
価格面での競争が行なわれてないんじゃないかと。で、同じような時期に同じような
値上げが行なわれる、でき上がった結果もほぼ同じである、こういう
企業がちょいちょいあります。そうたくさんはございませんが、そういう業種がございます。これに対しては原価の公表を求めることによって社会的な批判にさらすと。これは一つのそういった寡占的
企業が行なう隠れたカルテル、私
どもから見ればカルテルがあるとは推定されるんですけれ
ども、いずれもそれは捕捉できない。そういうものに対してこの原価を公表させるということから、あまり恣意的な
値上げ等の行動に出ることを
抑制したいということでございます。
それから、カルテル対策といたしましては、一つにはたびたび言っておりますが、カルテルで
引き上げられた
価格が、ごくわかりやすく申しますれば、これは独占
価格の一種である。みな同じように大部分、まあ一定の取引分野を
実質的に制限するだけの大部分の業者あるいは全部の事業者がカルテルで
価格を
引き上げる、主として
価格カルテルでございますが、
生産カルテルの場合でも
生産を大いにしぼることによって
価格をつり上げることも、それはできます。まあしかし、主として
価格カルテルの場合を対象に考えております。それはそのまま独占
価格が、いわゆる私の言う独占
価格がほったらかしになると、このまま放任されておるというのは遺憾なことである。これは
国民の期待にこたえるところでもない。独占対策、独占禁止法の問題としても重大な欠陥ではないかと私
どもは思っております。非常に
価格カルテルが多いのでございますから、日本の体質として特別に多いように私は思います。そういうものに対しては原状回復命令を出す。
価格介入になるのではないかという批判がございますが、私
どもはそれはそういう意見もあるでしょうけれ
ども、現実に
海外の諸国を見ますれば、アメリカは別でございますけれ
ども、
価格に介入している国は
幾つかあります。独占禁止当局がですね、独占禁止の
政策を担当している当局が
価格に介入しているという例はあります。態様は必ずしも同じでありません。そういうことから
価格の引き下げ命令を考えている。そういう権限を付せ、ただし、実情に全く沿わないような運用はしておるつもりはありません。
次に、もう一つの点は、課徴金という問題を考えておりまして、いわゆる告発によりまして、刑事罰を科するということだけではなしに、そういう方法は日本の場合にひんぴんと行なわれるような体制になっておりませんので、これを課徴金というまあ一種の制裁的な意味を含めておりますけれ
ども、不当に利得したものは召し上げるという行政処分、行政処分として課徴金をかけるという制度を考えております。
そのほかにも持ち株の制限というのがございまして、これは二つございます。持ち株の制限、分ければ第一の点は一般の事業会社でございますが、これにつきましてはいまのところまだ結論を申し上げる段階にまではなっておりませんが、何らかの方法でその保有株の制限をするということを考えております。この何らかの方法でという点がまだ実は煮詰まっておりません。そこで、ただいま申し上げるには時期尚早と思いますが、ただ
金融機関はいま一つの会社の株式を持つ場合に、特別な許可を得た場合、認可を得た場合以外は百分の十までだと。ところが、今日になりますと百分の十という
数字は高過ぎる。というのは、その百分の十に至らない範囲で、上位の株主、筆頭株主あるいは第三位ぐらいまでの株主に
金融機関が入っている例が非常に多うございます。これは私は好ましくない。一方で融資の面でも
金融機関はある
程度産業界に対しましてまあ威力は働かしております。またそういう株式保有によってもいろいろなことが、まあ
金融機関から産業界に対していろいろな力となって働くと、これをやっぱり規制する必要があるということでございます。これ以外に、罰則は非常にその時代に沿わないものになっておりますから、罰則の強化という、罰金ですと、主としてこれは懲役刑については問題でありませんが、罰金が
最高で五十万円というのはいかにも実情に沿わない。これを最低十倍以上に上げたいというふうに考えております。
また、なおこれは技術的な問題でございますが、過失責任罰というものを考えております。これはただいまあまり詳しく申し上げないほうがいいと思いますが、これは現実に事業者団体の場合にそういう規定がございます。会社の場合にはそれがない。この不均衡に対しては私
どもむしろ会社の場合こそそういう過失責任罰があってもいいのではないかというふうに思っております。
そのほかの点といたしましても、不公正な取引方法に対するいま現在の規定は多少甘くできております。罰則もありません。そういう点でこれは他の不当な取引制限または
私的独占というふうな、独禁法違反行為に対する排除
措置と同じ性格のものにしてよいのではないかというふうに思っております。
まあそのほかにも過去の違反行為に対しましては、いままで一たん過去のものとなってしまった以上は排除
措置はとれない。ところが、景品表示法のほうを見ますとああいう
措置がとれることになっております。これ、とるのもバランスでありませんが、とにかく最近の事件についてでなくてもそのすぐ前の事件については完全な証拠がある。こういう場合にも、これはどうも最近の事件を手がけておいて過去のほうも取り出すということはちょっとできないようになっております。ですから、そういうことのないように、同じような事件かこう続いてあるという場合に過去の事件も追及できるというふうにすればカルテルなんかの防止に役に立つのではないか、こういうことでございます。
以上述べました、まあ概要でございますが、これらの点についてはいろいろな理論づけ、まあたいへんむずかしい点もございますが、反対その他の意見もございますので、十分それらの批判を受けた上で練っていくつもりでございます。