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説明員(高須
儼明君) 小笠原
先生の最初に
お話しございました現在の肥育経営の収支計算でございます。これはなかなかいろいろな数字のとり方もございまして、具体的な数字で、どの程度赤字になっておるかということは、計算がむずかしい問題だと思いますが、先ほど
先生のおっしゃっておりましたそうした傾向というのは、確かに実際存在いたしております、素牛の価格は、昨年の大体十一月まで棒上げに上げておりまして、たいへん高くなったわけでございます。その後、
昭和四十八年の十月が卸売り価格、生産者価格の最高値でございましたが、十一月以降、生産者価格は急落いたしております。したがいまして、これ
全国的な統計、非常に平均値化された数字でございますので、
先生のおっしゃいました数字よりは若干低目に出るかと思いますが、たとえば四十九年の八月に乳用肥育雄牛を売るといたしますと、
全国的な平均値で申し上げますと、大体素畜費が十三万八千円、えさ代が十五万五千六百円、その他の費用が一万五百円ばかりかかっておりまして、労働費抜きで
生産費が大体三十万四千円という形になっておりますが、八月の肥育牛の販売額が約二十二万三千七百円、純赤字が八万四百円というようなことでございますので、これに費やした労働費を換算いたしますと、確かに、
先生のおっしゃいますような相当の赤字になっておることは確かでございます。こうした傾向は、毎月毎月、素畜費も変動がございますし、また、肥育成牛の販売の価格も違ってまいりますので、また、高い牛を買われた方、素畜を買われた方、あるいはまた育て方によって、販売方法によって、成牛の販売額に相当の差があるというような、いろいろな個人的な差はございますけれども、全体的に平均的に見れば、そのようなことになっておるわけでございます。
こうしたことは、特に
肉牛の場合には、このような経営の赤字が継続するようでございますと、生産意欲を失わせまして、特に牛の場合、
肉牛の場合には、一たん減りますと将来にたいへんなことになるわけでございます。
畜産局といたしましても、この点は非常に心を痛めておるところでございます。そこで、あらゆる手段を使いまして、何とかこのような
状態から抜け切るような方法をいろいろな手を用いて現在やっておるわけでございます。
その第一番目は、要は市場価格を回復させなければならない、卸売り価格を回復させなければならないわけでございます。この卸売り価格が落ちてまいっております大きな
原因は、一つは、昨年異常な牛肉の物価が上昇いたしましたので、生産をきわめて刺激したと、そして、今日供給が非常な勢いでふえておるということが一つの
原因でございます。乳雄等の供給は、最近は昨年の倍以上の出回り
状況になっておる。片方、消費のほうを見ますと、昨年のオイルショック以来、節約ムードが浸透いたしてまいりまして、水産庁のほうから先ほど
お話がございましたように、いわば肉の中でも比較的ぜいたくな部類に属します牛肉の消費が減退しておるということでございます。このギャップが価格の低落ということに、特に乳雄牛の価格の低落ということに如実に反映いたしておりまして、最近では、一番昨年の十月最高値は千百円くらいのものが、現在、大体最近、七.月、八月の半ばまでは七百円という低価格で推移いたしておるわけでございます。この二つの
原因がございますので、一つは、このあふれておる牛を何とか市場から隔離しなければならないということが問題でございまして、そこで、調整保管、これは
農業団体が実施いたすわけでございますが、
農業団体を通じて市場から買い上げていただくわけでございます。これはもうすでに三月から実施いたしておりまして、第一回分といたしましては約二千トン、それからさらに続いて第二次を最近完了いたしたわけでございますが、約三千トン。それで現在までに約五千トンを買い上げておるわけでございます。このための国庫助成費は約六億円使っておりますが、頭数で申し上げますと約一万六千頭でございます。
このような調整保管をしてまいりました結果も、一つは寄与しておることと思いますが、市場価格はこの盆過ぎから逐次回復に向かっております。盆前は七百円という低い値段でございましたが、盆過ぎから急激に上がり始めまして、八百円台、それから九百円台、最高値は九百七十二円というのを八月の二十四日につけておるわけでございます。その後、若干下がっておりますが、これば乳雄牛の場合で申し上げておりますが、最近では、大体先週は九百円台で推移いたしております。今週に入りまして若干下がりまして八百九十円台と一時から見ればかなりの価格が回復してまいったわけでございます。しかし、それでもなお
生産費等を考えてみますと、とてもまだやっていけない
状況にあることを十分
承知いたしておりますので、続けましてさらに第三次の調整保管事業を直ちに開始いたしております。
それで、この第三次の目標数量はとりあえず二万頭ぐらいを予定いたしたい。さらに、それでもなおかつ、不足であればさらに追加してやってまいる。あくまでも調整保管によって市場隔離をはかりながら価格の回復をはかるということが一番の
問題点であろうかと思うわけでございます。
それから、なお第一次分、第二次分に買い上げました一万六千頭分も、これを市場に放出いたしますと、価格の回復を妨げることになりますので、これは当分の問、差しとめまして保管を継続いたします。当初四カ月の予定でございましたが、これをさらに延長いたしまして、そうして価格の回復がはかられるまで、これは継続するというような
方向で現在やろうということを考えておるわけでございます。
なお、国内からの供給はこのとおりでございますが、外国からの供給、輸入でございますが、これは御
承知のとおりの
状況でございまして、昨年の輸出割り当て
ワクの中から約四万トンは凍結をいたしておりますし、また、輸入いたしました一万トンもただいま調整保管中でございます。さらに四十九年度の
ワクにつきましては、価格の回復を見るまでは割り当てをいたさないというような
方向で現在進めております。ともかく需給を回復すること、これが一番の施策であろうかと考えておるわけでございます。幸い、最近、
状況を見ておりますと、こまかい統計等はございませんが、価格の回復を裏づけするように総支出、各家庭の支出
状況もやや上向いてきたようでございまして、肉の消費も若干上回ってきたのではなかろうか。それを裏づけいたしますように、西日本のほうから徐々に乳雄が動き始めておりますので、間もなくこうした
状況は
全国に及ぶのではなかろうかとかように考えております。
その次にもう一つ
問題点はございます。これは、このように卸売り価格が下がりましたにもかかわらず、小売り価格がそのわりあいに下がっていない、したがって、消費を促進しない、こうした一面がございますので、これは小売り段階にはいろいろな事情もあろうかと思いますが、ともかくもう少し小売り価格を下げていただいて消費していただく。ともかく滞留していることが一番の問題でございますので、これを食べていただく、消費者に食べていただくということが先決問題でございまして、このためには百グラム二百円以下の肉を売るということが一番大切なことでございます。そこで、六月以降、
農林省を
中心といたしまして、大消費宣伝を展開いたしておるわけでございますが、第二次の消費宣伝といたしましてこの十月からまた安売りの宣伝キャンペーンを始めたいというふうに、供給の側面あるいは消費の側面、両面にわたって施策を展開いたしておるわけでございます。
なお、先ほど、しからば、
農家に対しては何もしないのか、ということではないわけでございまして、赤字で苦しんでおられる
農家に対しましては、まず第一番目に、牛を売られましても結局赤字でございます。赤字でございますので、次に継続して素牛も買えないというような
状況が出ておるわけでございますので、そこで後継素牛と称しておりますが、これを和牛なら二十万円、乳雄ならば十万円の金融をいたします、という事業を始めておるわけでございますが、これは大体
全国で集計いたしましたところ、三百五十億円ぐらいな金が必要であるという話でございますので、この貸し出しをこの十二月末までに完了いたしてしまいたい。現在、各方面の御要求を取りまとめ中でございまして、十二月末までには貸し出しを完了する、これは非常に低利の末端金利四分、差額は国庫が、国から補助するという低利
融資でございます。
それからもう一つ、後継素牛よりは、ともかく赤字が出て借金で首が回らないんだというような
農家がたくさん出ておるわけでございます。この点につきましては、現在、負債の
状況を
全国にわたって
調査中でございます。九月中には大体、負債の
状況が判明いたすはずでございますので、その結果が判明次第、一体どのくらいな
資金額が必要なのか。末端金利は大体四分ともうすでに決定いたしておりますが、貸し付け
条件をどのようにいたすかというような具体的な措置を早急に取りまとめまして、赤字
——一時まあ借りかえてまいりますところの
融資措置を講じてまいるというような形で現在考えておるわけでございます。