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1974-10-31 第73回国会 参議院 内閣委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年十月三十一日(木曜日)    午前十時四十五分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         寺本 広作君     理 事                 林  ゆう君                 上田  哲君                 鈴木  力君     委 員                 岡田  広君                 戸塚 進也君                 中村 太郎君                 野田  哲君                 太田 淳夫君                 峯山 昭範君                 河田 賢治君                 内藤  功君     国務大臣        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)       小坂徳三郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  山中 貞則君    説明員        人事院総裁職務        代行人事官    島田  巽君        行政管理庁行政        監察局長     大田 宗利君        防衛庁防衛局長  丸山  昂君        外務政務次官   山田 久就君        外務省アメリカ        局長       山崎 敏夫君        外務省条約局長  松永 信雄君        大蔵政務次官   柳田桃太郎君        運輸省鉄道監督        局国有鉄道部長  杉浦 喬也君        日本国有鉄道理        事        山岸 勘六君    参考人        日本放送協会営        業総局総局長  市原 嘉男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○派遣委員報告に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○国家行政組織及び国家公務員制度等に関する調  査  (国家公務員給与に関する件)  (国鉄保安管理体制行政監察に関する件) ○国の防衛に関する調査  (国の防衛問題に関する件)     —————————————
  2. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  この際、派遣委員報告に関する件についておはかりいたします。  先般、当委員会が行ないました国の地方出先機関公務員制度及び自衛隊の実情等調査のための委員派遣については、各班からそれぞれ報告書が提出されておりますので、これを本日の会議録の末尾に掲載することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  4. 寺本廣作

  5. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) この際、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  ただいま議題といたしました調査のため、本日、日本放送協会役職員参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 御異議ないと認めます。     —————————————
  7. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) これより質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 鈴木力

    鈴木力君 時間がありませんから、簡単に総務長官公務員給与の問題、問題というよりも、もりこういう経済情勢になっておって、特にことしは、人事院のほうはそういう情勢配慮して、特別に勧告も繰り上げるなど、いろいろ細工をしてくれたのに、いまだもって放置をされておる。私はきわめて遺憾だと、こう思っているんですけれども、具体的に政府はいままでどういう取り組みをしてきて、おくれている原因は何だと、それから今後どうしようとしているのか、まとめてお答えいただきたいと思います。
  9. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) お答え申し上げます。  人事院勧告に基づきます公務員給与改定につきましては、われわれの基本的な姿勢は今日まで一貫しておりまして、人事院勧告を尊重して完全実施するということでございます。この点につきましては、いささかも従来と考え方は変わってはおりません。しかし、今回の勧告に際しまして、特に問題点となりましたのは大幅の賃上げでございまして、その財政措置等につきまして、現在総需要抑制等を進めておりまする関係もございますので、この財政措置及び財源問題につきまして、政府内部においてもいろいろと検討を重ねる必要があったわけでございます。しかし、私といたしましては、人事院勧告をなるべく早く早期実施をしていくことが、公務員もやはり給与生活者でございますし、生活をしておって現在の物価情勢等の中においてはだれだって苦しいということはよくわかるわけでございます。そうしたような要求を踏まえながら努力をいたしましたが、なかなか財政的な問題等で審議が進まなかったことはたいへん残念だと思っております。もちろん鈴木委員も御承知と思いますが、人事院勧告ができました直後にいろいろとお話し合いをいたしました。あのときにお話し合いをしたような、早期実施をきめていくという考え方は、私はそれ以来捨てておらなかったわけでございますが、国会関係と、それと同時に、ただいま申し上げました財政措置等関係からおくれたということは残念に思いますが、十月の二十二日に閣議勧告完全実施決定いたしまして、現在、一般職並び特別職に関する給与改定作業を進めておるところでございます。今後の方向といたしましては、法案国会提出国会情勢によりますし、いつ開かれるかということにも関連いたしますが、われわれのほうといたしましては、極力給与法改正作業を進めておりまして、いつでも間に合うようにしたい。同時にまた、今回は補正予算と同時に給与法改正国会に提案いたしたいというふうに考えております。
  10. 鈴木力

    鈴木力君 いま、いろんなことばの上でのやりとりは、あまりもうする必要がないと思いますけれども、ただ、私はいまの総務長官の御答弁の中で、財源問題と国会都合でおくれておったと、こう言う。しかし、国会意思は、公務員給与をあの臨時国会にかけるなという意思はなかったと思います。問題は、総理所信表明をしなかったというところに国会がころがらなかっただけの話でして、まあそれはそれとして、財源問題の見通しがつかなかったために閣議決定ができなかったという意味は、私は、これを非常に心配するのは、人事院勧告を基本的な姿勢としては尊重するんだとおっしゃるけれども、場合によれば勧告どおりやらなくてもいいのだという姿勢がやっぱり政府の中にあるのと違うんですか。でなければ、少なくとも人事院勧告給与法の今日までの関係でいえば、十月実施から始まってだいぶいろいろな経過を経てきて、やっと勧告どおり完全実施ということが実現をしたばかりのときですね。そうすると、少なくともいま私は総務長官の口から期待する答弁は、財源問題で決定がおくれたということではなしに、勧告を受けたら財源をつくる努力政府責任ですべきであるという態度を私はちょうだいしたかったのです。その考え方はどうですか。
  11. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) 私はいま鈴木委員のおっしゃいましたことに反論する何ものもないわけでありまして、決して、政府はこの財源をととのえるということに消極的であった事実はございません。しかし、概算二兆に達するであろうと予測された今回の給与改善、御承知のような財政状態であるし、全般の総需要抑制等もありまして、この完全実施のためには相当に根回しが必要であるという私は財政当局考え方も首肯し得るわけでございまして、そうしたいろいろな積み上げと努力の結果、たいへんおくれたことは遺憾でございますが十月二十二日に完全実施決定したわけでございます。ようやくこれで軌道に乗ったわけでございますので、御了承賜わりたいと思います。
  12. 鈴木力

    鈴木力君 結果的には完全実施という御決定をなさった。しかし、総理府にも統計があると思いますが、私はきょうきっちりした統計は持ってきませんけれども総理府で発表した物価指数数字だけを見ましても、四月からもう九月までに八%か九%になっているじゃありませんか、消費者物価指数の値上がりのものが。それは数字がどれだけになっているのかは別としましても、もうおくれたということが公務員給与の手取りがそれだけ目減りをしたということが目に見えておるわけであります。私がいま心配していますのは、どういう事情であった、どうだったということを短時間で言ったり言われたりしておってもたいした意味はないのだけれども、こういうことを繰り返しているということが、いまの公務員給与制度の基本的な問題とどうも関係がある、将来いろんな問題が派生してくるおそれがあると私は思うのです。せっかく、この人事院勧告を受けて政府がこれを早期実施をしてくるという、この軌道に乗ったものが、公務員の側から言わせれば、いろんな都合でとにかく投げられておる。今度は、御存じと思いますけれども地方公務員だってそうですよ。ほとんどの地方人事委員会は、それぞれの府県の給与勧告がもう済んでおります。そういう準備ができておるのに、政府がおくれておるということから地方公務員もおくれておる。全部の公務員が、四月時点からやるべきものが今日なおまだ実施されていないし、国会召集がいつになるのかわからないというような状態でいらいらさせられておる。こういう点の解決策というのは、私は根本的に解決をする必要があると思う。  同時に、長官あとのお時間に予定があるそうですからもう一つだけ私は申し上げておきたいが、これは将来の検討も含めて、要望も含めて申し上げるのですけれども、そういう、もしもどうにもならないような事情があった場合に、いまのその公務員要求に対してこたえる手を別に考えてみることができなかったのかどうかということです。たとえば、大体人事院勧告が出たと、ある程度の数字は見えておるわけですから、そういたしますと、こういう情勢に対応するためには、たとえば共済組合の資金を通じて一時先に貸し付けをしておいて、内払い的な貸し付けをしておいて、そしてあと法案ができたときに清算払いをする、こういうことだって一つ考えられる方法だと思うんですね。まあいま申し上げて、いまからやったってこれはもうどうにもならぬことですけれども、将来の問題として、そういう形にすることによって、今度は、暮れに一時に公務員にその差額が支給されたというような経済に及ぼす力というものもある程度は防ぐ、そういうことにもなり得るのではないか。いろんな点から、そういう配慮をすることがあって、私は、この公務員給与制度といういまの制度が具体的に精神としても生かされてくる、それによって公務員というものも一つの希望を持てると、こう思うのですが、こう投げられておると、どうしたって、これは人事院勧告があったっていつくるかわからない。そうすれば政府に直接いう形にどうしてもなると思う。それならそれで、その方向へもう給与制度を変えることを検討しなければいけない。いずれ、私はことしのようなあり方というものが、そういう形での制度検討に入るべき時期にもきているような気がするので、もう一度だけ長官の御答弁、いま私が申し上げたようなことについても御答弁いただきたいと思います。
  13. 小坂徳三郎

    国務大臣小坂徳三郎君) ただいまの鈴木委員の御提案でございますが、私はいまの現時点におきましてそのような別途の方向を考えるということが、特にことしは御承知のように一割を前払いをしているという特別措置をしておりますし等の、初めから相当にこれは私は変わった形になってしまったと思うんでございますが、そのような関係の中で、現在鈴木委員の言われたような、むしろ人事院の存在というものについての疑義も生まれているようにも承っておるわけでございますが、私は、本質的には人事院制度をもちろん尊重し、また人事院の専門的な知識と今日まで積み上げられたいろいろな実績を高く評価しておるものでございまして、今後はこのような事態、たとえば、ただいま申し上げたように、勧告の時日と閣議決定の間に相当の時間的な差異があったとかいうようなこと、及び特に法案が、国会がいつ召集されるかわかりませんが、その時期がちょうど年末にぶつかるというような、ことしは私は一種の異例な事態ではないかと考えるわけでありますが、その異例な事態が今後常態化していくということは希望するものじゃございません。したがいまして、今年は今年の問題として考え、来年はまた来年としてもっとスムーズな形での勧告政府の対処という形がなされていくことを期待をいたしております。しかし、御注意の点につきましては、なお事務的にも考えてまいりたいというふうに思っております。
  14. 鈴木力

    鈴木力君 私は、基本的にはこれはもう政府政治姿勢の問題だったと思うんですね、ほんとうは。いろいろな、技術的にどうこうするということよりも、公務員給与は投げても、総理が穴の中に入って出てこなかった。そういうようなことから始まるずっと一連政治姿勢の問題だと思うんです。だから、きょう実は官房長官においでいただいてこのことを申し上げたかったんですけれども、御都合がつかなかったそうですからやめますが、私、実はきょう急にこんなことを申し上げたのは、ことしの勧告で、なくなられた佐藤総裁が病を押してまで、この経済情勢に対応する勧告ということであんなに努力をされた。その総裁が生きておられる間に対応もできなかったというような、私は人事院としてもこれは非常に遺憾と思っていられると思いますし、こういう扱いを今後も繰り返すということになったら、人事院としても何かを考えなきゃいけないだろうと思いまするが、人事院人事官の御所見もひとつ承りたいと思います。そうして、今後の公務員給与あり方というものを、私どもは私どもなりにまた新しく追求していかなければならない面があるのではないかと思いますが、御所見をひとつ承りたいと思います。
  15. 島田巽

    説明員島田巽君) ただいま先生から故佐藤総裁努力についてお述べいただきまして、私どもといたしまして非常に感銘深い感がございます。八月の九日に、本委員会に故佐藤総裁が参りまして勧告趣旨説明をいたしましたのが、国会に出る最後の発言になったことを私ども銘記して、その遺業を遺憾なく継ぎたいという気持ちで一同でがんばっておるところでございます。  いまお話のございました人事院勧告権をめぐる問題でございますが、私どもとしまして、やはり国家公務員処遇改善人事院勧告によってのみ可能である——のみと申しては言い過ぎてございますけれども、主として人事院勧告によらなければならないという線で、私ども、その代償機能を発揮するという点について非常に強い責任感を持っているわけでございますので、ですから、そういう意味におきまして、勧告完全尊重、そしてまた、早期実施について特段の御配慮をお願いして、七月勧告それ自体もできるだけ早い機会に実現して、この異常な経済情勢の中におきます公務員生活を、できるだけ早く、一日も早く楽にしていただきたいということが私どもの切なる願いでございます。  以上でございます。
  16. 戸塚進也

    戸塚進也君 最初に、きょうに予定されておりました国鉄のストライキが、労使双方努力で未然に防がれた。非常に国民の一人として喜びにたえません。一刻も早いダイヤの正常化を祈るものであります。  そこで、最初に私ども委員会所管である行政管理庁当局にお尋ねをいたしたいと思います。  今年度の「行政管理庁重点施策要旨」というのがございます。その中の今年度の「行政監察及び特別調査重点」、その第一項になっているのは何でございますか。
  17. 大田宗利

    説明員大田宗利君) 第一項は、人命の安全に重点を置いて監察をするということでございます。
  18. 戸塚進也

    戸塚進也君 ただいまお話しのようなことでございますが、その「行政監察重点人命安全に置き、次の事項に関する行政監察実施する。」とありまして、その第一にあげられているのは何でございますか。
  19. 大田宗利

    説明員大田宗利君) 三項目ございまして、第一は「陸上交通安全対策」でございます。
  20. 戸塚進也

    戸塚進也君 それでは、ここ七月以来特にでございますが、異常に発生しております国鉄並びに新幹線のあの故障あるいは一連事故、こういう問題については、行政管理庁としてはもう十分過ぎるほど重視してこの問題を考えていなければならないはずでありますが、いかがお考えでありますか。
  21. 大田宗利

    説明員大田宗利君) 当面の重点施策をつくります場合には、陸上交通における特に自動車交通事故事故件数死傷者数は、年間七、八十万人に及んでいるということで、当初は自動車安全対策というものを中心に置きまして監察実施したいという予定でございました。ところで、最近まあ国鉄故障発生件数というか、頻度は非常に高いということで、もしこれが人命その他に影響を及ぼすというおそれがある場合には、陸上交通安全対策の中に取り入れたいという考え方は持っております。陸上交通につきましては、特に人命の安全というものを第一に優先すべき問題だと思いますので、国鉄事故につきましても重大な関心を持っております。したがいまして、そういうことで、当面運輸省のほうから国鉄当局に対しまして緊急な対策が要請されております。特に総点検事項がいろいろ指示されておりますので、現在のところでは、そういう成果を見きわめまして、いかに対処すべきかということで検討いたしておる段階でございます。
  22. 戸塚進也

    戸塚進也君 行政管理庁も重大な関心を持っておられる、こういう見地から、若干国鉄問題は運輸委員会所管に属することでありますけれども、いまの御答弁にもありましたような角度から、やはり国の行政機関全体をつかさどる当委員会の一員といたしまして、最近の国鉄新幹線等一連故障事故等の問題について、当局考え方を伺いたいと思います。  その前に、私は決して国鉄運輸省関係当局をいじめるというようなつもりは毛頭ございません。むしろ大いにがんばって、ひとつ国鉄の本来の使命をがんばってもらいたい。一兆五千億と言われるような膨大な赤字に苦しみながら、しかもまた、非常にむずかしい世相の中で労使問題等に取り組んでいる当局、これは私はその努力は十分に認めるものであります。ですから、きょうの御答弁の中でも、困っている問題があって、こういう問題があるから事故が起こるんだ、故障が起こるんだというなら、ざっくばらんにお話しを願いたいと思っているところでありますが、しかし、最近のこの一連状態を見ますと、私もせんだって、この委員会にいらっしゃる上田委員とともに新幹線の中に閉じ込められた一人です。私はその後も何回か閉じ込められた。そうして明け方の三時、四時ごろ東京駅へ着いた。ほんとうに一国民として考えてみて、この状態はあまりにもひど過ぎるではないか、またこのままでは単に国鉄不信ではない、政治不信につながるおそれもあるのではなかろうかというようなふうに私は考えるわけであります。なおまた、国民の一部には、新幹線が十年たったらあの状態になった、この状態であるならば、一体これから先どんな重大事故が起こるかもしれない。あるいはまた、いま全国新幹線網という計画も現に着々と進んでいるわけでありますが、どんどん全国にその新幹線網が広がった場合、ほんとうにこの安全の確保ができるのかどうかというふうなことについて、非常な実は疑問、また不安、疑いを持っている人たちが多いわけであります。こういう点について、私は率直にひとつ当局から御答弁をいただきたい。  そこで、本年の当初からの国鉄並びに——国鉄といいますのは、国鉄の全線あるいは新幹線故障などによる列車の混乱状況、そしてその主要原因、同時にまたその対策、なお、国鉄がこの事故故障等において受けた損失の額、またこのことによって国民多数が受けたと思われるような損失を、一体当局はどのくらいに考えているか、これは時間の関係でこまかくお話がしていただけませんから、あらかじめ資料をお願いしておきましたから、委員の方に必要なら配付していただいて、簡単明瞭に御答弁をいただきたいと思います。
  23. 山岸勘六

    説明員山岸勘六君) この七月以来、東海道新幹線の相次ぐ故障事故によりまして、たいへん御迷惑をおかけしたことをまずおわび申し上げたいと思います。  昭和四十九年度に入りまして、国鉄故障あるいは事故の概況でありますけれども在来線につきましては、大体現在まで、上半期が過ぎた時点におきまして昨年度よりも若干いいという状況ではないかと思います。しかしながら、在来線につきましては、七月の豪雨以来、東北線はじめ数線区におきましていろいろとお客さまにも御迷惑をおかけしているわけであります。この点を反省しつつ下期の事故防止に邁進いたしたいと考えているところであります。  新幹線につきましては、昭和四十七年度より事故件数が増加いたしまして、昭和四十七年の末におきまして大臣から総点検を命じられた。四十八年度、一年、一生懸命がんばったのでありますけれども、件数的には減少を見ることができず、ようやく昭和四十九年に入りまして四、五、六の第一・四半期において、その効果があらわれたかに見・える状況を呈しまして、新幹線運行状況におきましても、比較的平静な運行ができたと思っているわけでありますが、七月に入りまして、豪雨故障、それから部内のことで申しわけありませんけれども、一部サボタージュも重なりまして、たいへん大きな御迷惑をおかけし、八月に入りまして再度大臣から御注意をおもらいした次第でございます。以来、私ども新幹線につきまして応急対策、とりあえずのやるべきこと、それから今後新幹線ほんとうにじょうぶにする、いわば、非常に簡単に申しますと、新大阪−岡山間につきましては、過去十年の伝統を取り入れまして、非常に事故件数も少ないりっぱな新幹線をつくっているわけでありまして、東海道新幹線と比較いたしますと、まあ歴史は新しいと申しながら格段の相違があるわけであります。そういう、いわばじょうぶな新幹線、いままでの勉強を生かした新幹線に生まれ変わりをさせるというのが恒久対策の一環になっているわけであります。  この新幹線の七月以来の運行状況の悪化を見てみますと、ほんとうに申しわけないことでありますけれども、少しくエクスキューズを言わしていただきますと、一つは七月の大雨であります。この大雨は、私ども想像を絶する雨でありまして、道床、橋脚をはじめ、あらゆる機器の湿気の浸透というようなものが、われわれの想像以上であったわけでありまして、その時点において、明確なその状況の把握のしかたが、若干私どもとしておそかったのじゃないか。しかしながら、この困難性と申しますのは、たとえばトランス、私どもブースタートランスと呼んでおりますけれども、こういったトランス故障というようなものを見てみますと、雷によって強大電流が一時に流れる、それによって絶縁劣化を来たしているのでありますけれども、単にあけて見たというだけではその判断がつかないというような状況でありまして、これらがその後数日、数週間の後にパンクをするというような故障も相次いだわけであります。  それからもう一点言いわけをさしていただきたいと思いますのは、山陽新幹線のいわゆる博多開業というものを控えまして、中枢神経でありますCTC関係あるいは輸送手配上必要になってまいります新大阪駅の大改良工事というようなものを並行して現在行なっておるわけでありますが、ちょうどそれが最盛期にかかりまして、中枢神経でありますCTC山陽線をつないでいく、あるいはまた、これをより正確なものにするためのいわゆるコムトラックというようなものをCTCとつなぐ、こういうような、いまだかつて他に例を見ない新しい工事を施工中でありますけれども、これに伴う手違いが、実は、たとえば十月を見てみましても、今月大きな輸送障害を四件やっております。四日大きな輸送障害をやっておりますけれども、そのうちの三日間はこれらに付随した問題であるというような状況でありまして、私ども技術の未熟であるというふうに認識もいたし、またそのように言われた場合には何の言いわけもないわけでありますけれども、しかし、非常にむずかしい問題と取り組んで日夜一生懸命やっているということを申し上げさしていただきたいと思うのであります。  これら一連の問題によります損害ということでありますけれども、先生からお話をいただいてなお時間短小のために、相対的にどのくらい国鉄として上げ得べき収入がダウンしたかというようなことにつきまして、いまだ計算が出ない状態でまことに申しわけないのでありますけれども、私ども、汽車がどのぐらいおくれたら、国民の皆さまにあるいは日本としてどのぐらいの損失と申しますか、一般的に国家並びに御利用なさる皆さんに御迷惑をかけるかというような点からの見方をよくしているわけでありますけれども、たとえば、新幹線、大体四月からのおくれを見てみますと、すべての列車を平均いたしますと、終着駅で大体平均五分ないし六分というところでございます。したがいまして、お客さんは終着駅、列車の長さに対しまして三分の二ぐらいのところで平均の乗車距離になっておりますから、四分ぐらいかと思います。平均いたしまして、新幹線のお客さんに対しまして、四分ぐらいの御損失をおかけしたということに相なろうかと思いますが、これを一日四十万人ということで計算いたしますと、約、一日につきまして千数百人目ぐらいの損失をおかけしているというふうに把握しているわけであります。しかしながら、私どもの目標といたしまして、新幹線のおくれがどの辺までは御容赦願いたいという目標もまた持っているわけでありますけれども、大体平均いたしまして二分ぐらいのおくれまでは何とか御容赦を願いたい。その辺の以内で常に新幹線運行できるという体制を早く確立いたしたいと、このように考えて努力をいたしておるところでございます。先生の御質問の中で私の答えが十分でなかったかもわかりませんけれども、一応ここで終わりたいと思います。
  24. 戸塚進也

    戸塚進也君 二分ぐらいはかんべんしてくれと。二分ぐらいなら文句ありませんよ。このごろの状態——参考資料を出してくれということは、私のところへはいただいていますからいいですが、各先生方にも、またあとでこの新幹線等の六十分以上おくれた状態、正常な運転と正常でない日の、ことしに入ってからの状態など一ぺん差し上げてみてください。  それから、国鉄においても親方日の丸的考え方じゃなくて、やはりこれだけの事故故障等があったらこのくらいの損失があるのだということぐらいは、きちっと計算できるように、これから十分民間的な考え方も取り入れてひとつ考えていただきたいと思います。  そこで、ただいままでお話のありましたような新幹線故障国鉄一連事故等に対して、国鉄では、一言に言って重大な事態であるという御認識であるか、まあこのくらいは通常な状態に毛のはえた程度であってというふうにお考えなのか、この点をずばりひとつ一言でお答えいただきたい。またそれに伴って、指導される運輸省当局は、この問題をただいま申し上げたような角度からどのように認識して国鉄に指導しておられるか、この点を伺いたい。なお、今回の問題について、機構、組織あるいは人事、そういう面で何か欠陥があるからこうなるんだというようなことについて十分検討されたかどうか、以上伺います。
  25. 山岸勘六

    説明員山岸勘六君) 七月以来の事態につきましては、私どもは重大な状況であるという認識のもとにこれに対処しております。  なお、機構その他の反省でありますけれども大臣にも恒久対策等を申し上げ、一体これらを確実に推進するためにいまの状態でいいのか、あるいはまた新幹線のデーリーワークの推進にいまの状態でいいのかという点からの反省を十分いたしまして、まず新幹線の技術調査委員会を設置いたしまして、必要がある場合に部外の先生方も入っていただくというふうなことで、先般二十八日に発足をいたした次第であります。  なお、新幹線総局以下の組織、要員につきましては、山陽新幹線博多開業という問題をとらえ、現在の状況と、それから博多開業への移行という問題をとらえまして十二分に反省をし、ただいままで、たとえば博多には新幹線九州管理部というような組織をつくって、その準備に当たっているというようなことも含めまして、東海道線も反省をしているところでありますけれども、東海道線のほうにつきましては、現在、現状でできないことはないという判断をいたしております。  なお、将来問題につきましては、新幹線がだんだん延びてまいりまして、はたして新幹線総局というところで、それで事が足りるのかどうかということになるわけでありまして、この問題につきましては、根本的に現在審議中でございます。
  26. 杉浦喬也

    説明員(杉浦喬也君) 安全の問題につきましては、鉄道を行なう主体としまして、やはり最大の使命であるというふうにわれわれ認識をいたしておりまして、常日ごろから国鉄を指導してまいっておるところでございます。しかしながら、先生御指摘のように、最近非常に新幹線等におきまして事故が多発しており、国民の皆さま方に非常に御迷惑をおかけしておるわけでございまして、この点につきまして、われわれはやはり一つの重大な問題であるというふうに認識をいたしまして、先般八月でございますが、運輸大臣から異例の警告を国鉄に発しております。緊急対策及び恒久対策を早急に確立して報告することという異例の警告を発しました次第でございます。これに対しまして、国鉄は九月の三日に一応の応急対策報告をしてまいりました。その際にも、運輸大臣から引き続き抜本的な恒久対策を早急に樹立するようにという指示をいたしております。これに対しまして十月の十五日に、国鉄から、抜本的な恒久対策、車両の取りかえ、線路、電線の強化、こういうものを年次的、計画的に実施するという恒久対策が提出をされました。われわれ一応その内容は評価をいたすわけでございますが、これらの対策は確実に今後実行されなきゃいかぬという観点から、今後とも十分に指導をしてまいりたいというふうに考えております。さらにまた、その際、保守点検の体制の強化につきましても、大臣から引き続き検討するようにということを指示いたしました。これに対応いたしまして国鉄では、すでに御案内かと思いますが、新幹線の運転を半日運休いたしまして保守点検を行なうというような、従来にない新しい体制をも今回考えたわけでございまして、われわれは一刻も早く新幹線事故がなく、国民の皆さま方が安心して乗れるような状態に戻したいということで、今後とも国鉄を指導してまいりたいというふうに考えておる次第であります。
  27. 戸塚進也

    戸塚進也君 時間がないのでなるべく早く進みます。  次に、労使問題のことについて。これに関連をして、労使問題がこじれた等の結果から故障事件等が多く起こるのではないかというような疑問、これはある大新聞が、現在国鉄についてずっと連載ものを続けているわけですが、この大新聞の中にこういうことが書いてあるのです。内部告発の問題で、「ある新幹線修理工場で働く職員からこんな〃内部告発〃が寄せられている。」と、「「一部の者は減産闘争を名目に、銅板の摩もうに気がついても、わざと見逃している。これが原因不明の架線事故にいかに結びついていることか」、また、ある電気所の話だが「故障個所は放置し、予防措置もとるな、給油もするな、などという指示がだされている。いわば手抜き作業のすすめをしているわけだが、このために起きる故障は、合理化のためなんだ。合理化のシワ寄せなんだと問題を転嫁していく、そんな戦法もとられているのが実情だ」という声も聞かれる。」と。これは大新聞ですよ。もちろん新聞に報ぜられたことが全部ほんとうだとかどうとかいうことじゃないんですが、少なくともこういうことが報ぜられるということは、国民に、国鉄の労使問題によってわれわれの大事な命を預けている国鉄故障事故が多くては困るじゃないかという怒りというものは非常に多い。この真偽のほどについてひとつ簡単明瞭に御答弁願いたい。
  28. 山岸勘六

    説明員山岸勘六君) たとえば、ただいまの銅板というのは、パンタグラフのすり板のことかと存じますけれども、すり板が薄くなったために——いわゆるすり板というのは、たとえば四ミリまで使用限度がきめられておりますけれども、四ミリを割ったから故障が起きたというようなものはほとんどないわけでありまして、私承知している限りではございません。先般、このすり板が割れましてたいへん大きな御迷惑をおかけした事故がありましたけれども、このすり板も四・二ミリということでありまして、使用限度内に入っておったわけでありますけれども、四・二ミリで安心していられるかどうかということ、この点につきまして現在さらにデータを求めて、使用限度四ミリというものについていいか悪いかの検討をいたしているわけであります。そのようなわけで、私どもといたしまして、その新聞のそういう言い方に対しまして全面的に否定するということはいたしかねるかと思います。と申しますのは、たとえて申しますと、実は車両からの落下物等があるわけでありますけれども、これらの落下物が、一時、管理者の手に渡らないで組合で一部保存されて隠されてしまう。そして別の場所で、たとえばテレビの番組の中でそれが紹介されるというようなこともございまして、私どもたいへんこれらについては、われわれ自身の管理のあり方について反省をいたし、一品一品吟味をし、また統計をとっていくシステムをつくったわけでありますけれども、そういう意味で、決してわれわれの管理姿勢、管理体制が十分であるとは申しませんけれども、そこに報ぜられるようなことがまた全面的に真相であるということは、とうてい私どもとしては考えられないのであります。なお、この点につきまして、われわれの管理姿勢、管理体制につきまして一そう努力をしてまいりたいと、このように覚悟しておるところでございます。
  29. 戸塚進也

    戸塚進也君 決して組合をいじめろとか、組合を弾圧しろとか言うんじゃないんです。国鉄当局が、ひとつもっと人間的に組合の人たちとも触れ合って、そうしてこういう記事が出ないような形にしていただきたい、これが私のお願いでございます。  次に、新幹線の総点検をおやりになる、これは私けっこうだと思います。一カ月半前に、この委員会で私はこの問題をやろうとしたときにこれを言おうと思ったんです。そうしたら、そのうちにおたくのほうが先手をとられたから、たいへんいいと思う。しかし、来年一月、二月だと。これは単に国民から、あるいは世論がまずいのでちょっとおさめるためにおざなり的に総点検をやるんだという非難の声もすでに上がっていますよ。ほんとうに総点検を直ちに重大な問題だと思って受けとめるなら十一月中に、この十二月、一月の年末、新年の輸送体制を十分に確立するためにこの状態点検するというのが、ほんとう意味の安定対策の総点検ではないかと思うんです。その意味当局に伺ってみると、何か修学旅行とか、そのほか団体のお客さんを前からだいぶたくさんとってありますからとか、あるいは何か試験車か何かを走らせるについてスケジュールがいっぱいとかいうお話がありますけれども、たとえば、この間のように修学旅行生を積んでおいて夜中の二時、三時まで閉じ込めるというふうな、そのことのほうがよっぽど不親切じゃありませんか。この際は、そういう人たち国民に、このいまの安全を確保する場合にはどうしても早く総点検を休んでやらなくちゃいけないんだと、こういうことをよく納得いくように説明して、早くやっぱり総点検をすべきではないか。かりにこのまま放置しておいて、年末から新年にかけての安全輸送体制について当局責任持てますか、この点についてひとつ明らかにしていただきたい。
  30. 山岸勘六

    説明員山岸勘六君) 点検の計画が一月にずれたわけでありますけれども、私ども、ああいう大きな組織の中で新幹線というものを運営しているわけであります。新幹線といいましても非常に各分野にわたって、そして基本的には、デーリーワークの中で基本的なダイヤを守っていくというのが、あくまでこれは基本姿勢であります。しかしながら、夏の先ほど申し上げましたように雨以来、いろんな臨時的な作業がそれにプラスされているわけであります。そういうわけで、たとえば総点検をやるべきじゃないかと、こういうふうに一言で皆さまから言われるわけでありますけれども、一体そういう総点検というのは、何を具体的にどうしていくか、それによって新幹線をどうするかということに相なるわけでありますが、私ども、やはり何をどういうふうに見るんだと、何しろ岡山までの新幹線、大阪まででも五百十五キロであります。それに伴う諸機器、その中でも最もこの際時間をかけて丁寧に見なきゃならない、見た以上は直さなきゃいかぬという場合も出るかもしれないというふうに考えてまいりますと、とても一日では——要するに、一時的に長い時間をあけたからいいというものではないのでありまして、今回の計画は、たとえば六時間汽車をやめさしていただくわけでありますけれども、そうしますと、ちょうど保守間合いというのは十二時間になります。日ごろであれば五時間ないし六時間という保守間合いが十二時間になるということでございまして、これは相当の時間であります。私ども、いまだかつてこういう措置をしたことはないわけでありますけれども、大体このぐらいのものが四回、要するに今回はどこを見るんだ、何を見るんだと、あるいはまた、今回は場所的にどうなんだというような区別があるわけであります。そういう意味から、大筋それを検討を詰めてみましたところ、十二月十七日ぐらいではどうかということが一日だけ出てきたわけでありますけれども、やはりさらに仕事を詰めてみると、十二月十七日でも無理であるというような結果から、最初の日が一月のたしか二十九日だったと思いますけれども、この日に移ったわけでありまして、私どもといたしましても早く見たい、やるならば早く見たいということは本音であります。しかしながら、有効に見るにはそれだけの期間が必要であるということ。  それから年末年始の輸送問題でありますけれども、私ども十二月から一月にかけまして、全国的に事故防止強化期間を実施して、本社もできるだけ現場へ出てまいりまして、そして第一線の人々ともに何をやるべきか、何が足りないかというようなこと、本社の施策ではほんとうに不可能なものがないのかというようなことを含めまして、十二月から一月にかけましてやってまいりたい、このようにいま計画段階であります。その一環の中で、新幹線につきましても年末輸送を無事完遂するよう十分な点検と手配をやってまいりたい、このように考えておるところであります。
  31. 戸塚進也

    戸塚進也君 これは時間さえあればもっと議論したいのですが、あと十分しかないんですよ。ですから私は、ともかく総点検をやる、汽車をとめてやるならば、これは十一月中に年末、新年の体制を考えながらやるべし、そういうことを申し上げておきますから、ひとつよくもう一ぺん考えていただきたい。なおまた、年末から新年の安全輸送については責任を持っていただく、こういうことをひとつお願いしておきます。  そこで、もう個々にお話しできませんので一括してお尋ねいたしますから、ひとつ当局も簡単にお答えください、要点だけ。  新幹線の開業十年の間において連続する事故が起こったという、こういう現実を見て私はいろいろ考えてみなければならぬ点があると思ったんです。その中で、今後特に全国新幹線網を建設していくという当局の計画と、現に工事が進んでいる、そういう中で、いろいろ現線も含めて改善をし、検討していく余地がないか。まず、過密ダイヤが大きな原因だというふうな御説明も当局から事前に伺いました。確かに開業当時から見たらたいへんな倍率にふえているんですよ、新幹線が。その過密ダイヤの中でやりくりするんですから当局はたいへんだ、わかります。国民が、その利便を受ける側からいえば必ずすわっていきたい、そういうことを確保するためにもいまの本数をふやすことはわかります。だけど、それによって事故が起こるとするならば、国民の協力を求めて無理のない範囲のダイヤに改めていく必要があるのではないか、一点目。  二点目は、いま二百キロとか百六十キロで走っておりますけれども、はたしてその運転速度というものに無理がないのかどうか。  三番目、この「新幹線の安全確保に関する対策」というのが、運輸大臣からおこごとがあって十月十五日付で出ていますね、国有鉄道総裁から。これを完全に実施する場合には経費がどのくらいかかり、また完全実施の見通しがあるのかどうか、自信のほどを。  四点目、新路線の建設の場合、今回のような一連事故等について十分な反省をし、そのことによって技術的、構造的な改善をはかるという計画があるかどうか。  五番目、新路線の建設を現に進めている将来計画があるわけですが、このような事故が多発する中でわれわれが考えるには、決して要らないというわけじゃない、将来はもちろん全国民がひとしく新幹線の恩恵をこうむることはたいへんにけっこうだ。しかし、この状態の中で考えるなら、むしろ従来の路線建設計画を少しスローダウンさせても、安全の問題というものを最優先して考えるお気持ちはないかどうか。  次、事故発生で途中に停車した場合に、列車に閉じ込められたお客さんはいわば陸の孤島に三時間も五時間もいるようなものなんですよ。あそこからおりることもできないんですよ。こういうような状態というものに対して、緊急時、たとえば地震だ、爆発が起こった、あるいは今度のような問題だというふうなとき、避難設備というものを一体考慮しているのかどうか。私が知っている限りでは、どうも何かそういう避難設備がない、おりないほうが安全でございますなんていうお話じゃ、どうも納得がいかないのです。  その次は、異常時体制というもの、いまのこの対策の中の一番最後に「異常時体制の確立」というのがある。この異常時体制の確立というのは非常に大事だというふうに思うのですけれども、特にその場合に、お客さんですね、閉じ込められているお客さんへの情報の体制あるいは十分なお客さんに対する配慮ですね、これがなかったら、へたすれば暴動が起こりますよ、あの中で。私は自分が何日か閉じ込められてみてほんとうにそういう感じがした。ですから、私はあそこの東京のセンターに行きました。なるほど確かにりっぱな機械があって、どこに新幹線がとまっていますとか、ちゃんと一目にわかりますよ。その横に情報センターみたいな列車との間に連絡をするようなところがあって、まあそこで車掌さんにいろいろ情報を流したり指令したりするようなところがあるが、あれなんか全体の施設から見たら非常にちっぽけじゃありませんか。もう少しあそこに人的な——あれは全国の指令所なんでしょう、もう少し人的にも機械的にもふやして、——中の専務車掌さんなんか一生懸命になって汗かいてあやまっているんですよ。だけれども情報が何も伝わってこない。何もは極端だけれども、あまり伝わってこない。どうなっているのかわからない。こういう中でお客さんに責められるのは車掌さんですよ。この状態を考えてみたら、もっとあの体制をひとつ完全に改善をするというふうなことが必要ではないか。  以上、簡単に伺います。あと五分しかないんです。
  32. 山岸勘六

    説明員山岸勘六君) 第一番目に、過密ダイヤじゃないか、したがって、必要があれば国民の了解を得てダイヤを減らすべきじゃないかという御指摘でございましたけれども、私ども、現在最高一時間に八本の列車を新幹線では運転いたしておるわけでありますが、私どもとして、八本程度の列車、一時間に八本でありますから、しかもダイヤは在来線と違って非常に単純化したダイヤでございますから、これをお守りできないようではほんとうに私どもは恥ずかしい状態にあるわけであります。決して私は過密であるという認識は持っていないのでありますけれども、しかし問題は、やはり多客期におきます、多数お客さんの殺到する時期というものは、新幹線でも身動きがならないというような乗り方をしていただいたところもあるわけでありまして、これらにつきまして、やはり私ども、もっとPRをし、あるいはまたもっと根本的に考え直してみる必要があるんじゃないかということで、目下担当常務が関係者を集めて検討しているところでございます。  なお、将来につきまして、新幹線は一体どの程度延びるんだろう、どこまで東海道新幹線というものはお客さんを運べるんだということにつきましても、やはり先ほど申し上げました新幹線技術調査委員会の中で検討を進めていくことにいたしておる次第であります。  それから、速度に無理があるんじゃないかということでありますけれども、現在、営業線、東海道新幹線におきまして、運転士に運転させております最高速度が二百十キロまででありますが、ダイヤを書く上におきましては最高二百キロで書いているのでありまして、また、性能的にも二百六十キロというようなところを十分試験をいたしました中で二百キロのダイヤを設定いたしているわけであります。私どもはこの速度に性能的に無理があるという判断をいたしておりません。  それから、運輸大臣に御報告申し上げました恒久対策につきましては、平常状態のほかに大体千百億ぐらいかかりますということを大臣に申し上げ、大臣のほうからも努力するというおことばをいただいておるわけでありまして、そうでございますので、私どもとしては十二分に自信を持ってこの対策を遂行してまいるつもりでございます。  なお、新しく新線建設する場合に、技術的にはどういうふうに考えているかという御質問が四番目でありますが、これは新幹線新大阪−岡山間を見ていただきましてもわかりますように、あるいはまた岡山以西につきましても、順次新しくなれば、私ども一日も技術を休んでおりませんので、技術の進歩を追求してまいりますので、したがいまして、当然新しい線区のほうが過去のものよりも技術的にすぐれたものになっていくということは、私当然ではなかろうかと思うのであります。  なお、今後の問題として、やはり一番むずかしいのは雪害地区の、新幹線の雪害対策ということではなかろうかというふうに思っております。この点につきましても勉強中でございます。   それから、新幹線建設をスローダウンしても、いわゆる現在走っているところをじょうぶにしていくべきではないかという御質問ではなかったかと思うのでありますが、これは新幹線建設が、現在線の安全対策を十二分に施すために人手、金等の問題でスローダウンせざるを得ないということになれば、その時点でまた運輸省とよく御相談をさせていただきたいと思うわけでありますけれども、本来、東海道新幹線につきましては、いわゆる在来線の全体の中での修繕、工事費の中で運営させていただいておりますので、何に重点的に使っていくかということにも相なろうかとも思いますので、とりあえず新線建設費をこちらに回すという考えは持っていないわけであります。  なお、異常時におきます列車にお客さんが閉じ込められた場合の緊急措置につきまして、過去において多々至らない点があったことをおわびいたしますが、私どもといたしまして、まず異常時におきましては、列車を中間に置かない、トンネル内に置かない、特に鉄橋の上には置かないというようなことで、できるだけ早急に駅へ持っていくことを最重点にいたしております。なお、それが他の列車の関係上きわめて困難な場合には、たいへん失礼な話ではありますけれども、下り列車から上り列車へ渡し板で渡っていただくというようなことも過去においてやっていただいておるわけでありますが、御指摘のとおり、列車の中に閉じ込められるという状態はやはり人間らしからざる状態にお客様を置くことでございますので、私どもといたしまして、最大の努力を払って、さらに今後とも研究を重ね、あるいは救護班等も設置いたしておりますけれども、これらの設置方についても反省を含めて万全を期してまいりたいと思います。  で、なお、情報網の設定につきまして御指摘があったわけでありますけれども、今後、駅に自動的に列車のおくれが出る装置とか、また同時に、それが車掌へも伝播されるようなシステムというものにつきまして、早急に開発、実施してまいりたい。新しい山陽新幹線につきましては、きわめて簡単にこれができるわけでありまして、やるようにいま工事を進めているところであります。情報網につきましては、ほとんどこれは限界がないわけでありますけれども、現在の状態で十分であるとは考えておりませんので、今後一そう努力を続けてまいりたいというふうに思います。
  33. 戸塚進也

    戸塚進也君 時間が余りましたので最後に、NHKさんに来ていただきましたのは事故とは直接関係がないんですが、最近、新幹線の沿線の人たちが、テレビがちらちらして見えないと、前から問題があって、そうしてだいぶNHKさんでも技術的な指導も真剣にしていただいているようです。私どもの県で住民の声を聞いたんですが、新幹線がどこかへ行っちゃってくれるということはないから、生涯新幹線のあの音とともに暮らさなければならない、たいへんな被害者だけれどもそれはがまんしよう、しかし、せめてテレビぐらい人さま並みに見たいんだ、通るたびにざあざあときて見えなくなるのはほんとうに悲しいという話があって、NHKでも指導してくれて、これはたとえばアンテナを特別なものに変えなければだめだとか、こういうことで指導はしてくれた、国鉄のほうでもこれに対しては相当前向きに、テレビが一般の他の地域と同じように見れるような措置も十分しましようということで、いま鋭意やっていてくれているというのですが、その事実の有無と、それからその方針について。  そして、最後に行管に伺いますのは、先ほど、行管として今年度の第一の重点目標が人命尊重、しかも陸上の交通輸送という、この問題を取り上げている以上、国鉄当局でもこれは重大な事態ですと言われているような状態の中で、行政管理庁としても、これを事前に防止し得なかったというのは、ある意味では行管も一端の責任があるかもしれない、飛ばっちりのようですけれども。やっぱり、これは未然にそうならないように指導されるのがやはり行管の仕事ではなかったか。しかし、こうなってきた以上、これをこれ以上重大な事故にしたりなんかしないように、行管としても、十分今後監察や指導その他適切な措置をとられることがいいのではないかと思いますが、これについて最後にお伺いをし、国鉄当局には十分なひとつ今後の安全輸送対策について万全を期せられるよう要望して、質問を終わります。
  34. 市原嘉男

    参考人(市原嘉男君) ではお答えいたします。  新幹線のテレビ障害対策につきましては、四十年に第一次の東海道新幹線が走って以来、そのつどNHKと国鉄の間に覚え書きを結びまして対策を進めてきております。現在は、東海道の再対策といいますか、第二次対策につきましては、一応経費の大部分は国鉄が負担し、調査業務はNHKが行ない、と同時に、維持費問題について、ここ一年ぐらいの間、住民と国鉄の間の話し合いがつかないで工事がおくれてきたわけですけれども、この原因というのは、郵政省のテレビジョン難視聴の調査委員会の結論待ちというムードもありましておくれたわけですが、幸いにして暫定的に話がつきまして、ここのところ急速に対策が進んできているということになっております。特に静岡県下につきましても、先生御指摘のようにアンテナ対策と、それからテレビジョンの共同受信対策と、二つを併用しまして、現在地元と話が進んでいる地域については来年の一月あるいは三月までにある部分を完成いたしますし、また話がこれから進むところにつきましては、なるべく早い時期に工事を完了したいと考えております。で、一般論につきましては、原因責任主義ということで、その他の受信障害問題が処理されておりますけれども国鉄との間で、福岡までの問題につきましても、あるいは今後できるであろう新幹線問題につきましても、早急に技術的な対策を進めるということで話はついております。
  35. 大田宗利

    説明員大田宗利君) 行政監察を予防的に実施して未然に防ぐというお説に対しましてはそのとおりだと思います。ただ、すべての行政につきまして、われわれが全般的に予防的な監察をするということは事実上非常に困難であるというふうに考えております。また、こういう事故につきましては非常に高度な技術も必要である。また第一次的には、やはりこういう陸上交通機関の責任者であります国鉄、あるいはそれを御指導なさっておる運輸省が的確な指導をなさるということがやはり一番必要であろうと思います。ただ、われわれといたしましても、先ほど御説明いたしましたとおり重大な関心を持っております。したがいまして、ただいま総点検という事態もございますので、そういう結果を見きわめまして、重大な問題が発生する可能性があるという場合にはわれわれとしても何らかの措置をとりたいというふうに考えております。
  36. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 本調査についての本日の質疑はこの程度にとどめます。     —————————————
  37. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 次に、国の防衛に関する調査議題といたします。  これより質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  38. 上田哲

    上田哲君 十六日間にわたってアメリカの軍事情勢の視察をされて防衛庁長官が帰国されました。訪米に先立つ九月三十日の当委員会では、訪米について長官は対話が必要であるということでありました。個別な問題は後にお伺いするとして、どのような対話が米側とかわされたのかということを、骨子簡明にひとつまずお伺いしたいと思います。
  39. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) お話にもありましたように、安保条約を私ども政府の立場としては締結いたしておりますから、その安保条約に関する、ことに第二条の実務に関して日本とアメリカの——日本の場合は防衛庁でありますが、軍事の責任者同士が、対話が欠けている時間が長ければ長いほど誤解が生じたり、あるいはまた無用の摩擦を起こしかねないと思います。でありますので、前の中曽根長官訪米以来四年間とだえておりましたことを、私としては正常ではない状態と考えておりましたので、まず対話することが必要である。ことにアメリカ側も、レアードさん以来三代目にその間わたりますので、新しいキャラクターの持ち主とも伝えられているシュレジンジャー国防長官と私と話をすること、そのことが両国にとってきわめて有意義であるということであったわけであります。  話しました内容は、アメリカの国際戦略というものがほぼその中心であります。したがって、それに関連して、アメリカから考えている日本との安保条約のあり方について等の問題等にも当然話を進めたわけでありますが、一々こまかな問題は私の同行者にも一切メモをとることも禁じておりますし、声明もあるいは発表も何もいたしておりませんから、これはお話しできない部分も当然含まれておりますので、御質問によってそれぞれ皆さまに知っていただいておいたほうがよろしい、賛否は別にして——という問題について答えられる限りいまから御説明をしていきたいと存じます。
  40. 上田哲

    上田哲君 ぜひそのように質疑をかわしていただきたいと思うのですが、伝えられるところでは、シュレジンジャー長官との会談の中心となったものは、あるいは成果は、安保条約の円滑な運用の確認であったと、こういうことであります。私の理解するところでは、もし安保条約の円滑な運用をはかろうとするならば、今日、日米間の最大の問題となっている、まあ言うところのラロック証言に表明されるような核問題の扱い、この点について双方からの突っ込んだ討論と合意がなければならぬと思うのであります。加えて、国民に対する理解を求めるべきであると思いますが、そのことはしばらくおくとして、そのような議論が両長官の間に行なわれなかったと報ぜられていることは、はなはだ円滑な運用をはかったとは言いがたいと私は思わざるを得ません。一体、全くそのことが出なかったのか、出なかったとすればどうなのか、この安保条約の円滑な運用という点についてひとつ御見解を伺いたいと思います。
  41. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私どもはお互い実務者同士であります、いわば。しかし、安保条約あるいは協定その他の諸取りきめ、これはいずれも日本政府を代表しては外務省、外務大臣、アメリカを代表しては国務省、国務長官というものが署名しあるいは合意したものを両国がそれぞれ承認したものでありますから、それらの協定の運用、条約の運用等にあたって、その内容がそれぞれの国策に合致しているかどうかどうか、あるいはその取りきめに沿っているかについては、これはやはり外務省ルート、国務省ルートの話であるべきだと私は思っております。でありますので、事実関係としても、私がワシントンに着きますまでには、すでに外務省ルートを通じて安川大使、インガソル国務副長官との間において、双方の外交的な話し合いが、外務省段階においては最終的になされていたということも客観的な事実でありますが、これは出発前から私はその問題については、私のほうから聞くつもりはない、向こうから出るかどうかはわからないが、おそらく出ないだろうということを言っておりましたが、予想どおり向こうからも出ませんし、したがって、私のほうからも、もっぱら外務省ルート一本にそれはゆだねまして、その話はしなかったということであります。
  42. 上田哲

    上田哲君 ちょっとひっかけて話をするようですが、いまのお話の中に二点あると思うんです。一つは、外交ルートで、たとえば外務省、国務省というルートでこの問題が討議をされているとして、ならば、それは国防総省並びに防衛庁長官議題となることじゃないとしても、まあその下を受けてですね、実務者というお話がありましたけれども、安保条約の円滑な運用ということは両国間の軍事面における共同作業ということが当然入るわけですから、その中に、核をどのように運用するのか、あるいはそれに対してどのような除外例をつくるのか等々、これが議論がなされねば私は円滑な運用を期しがたいと思うんです。その点について、少なくとも第一外交ルートとしての国務省、外務省ルートの話は別としても、当然実務者として、私はその議論がなされないとすればはなはだ遺憾であったと思わなければならない。これをいかがお考えになるかが一点。  それから、いまのことばじりをとらえるようになっては恐縮ですけれども、すでに、防衛庁長官が国防総省へ行かれるについて、第一外交ルートとしての国務省、外務省の間では、ラロック証言によって引き起こされたこの核問題の取り扱いについての討議は進められていたということをいまお話しになったように承るのでありますが、そのように理解してよろしいですか。
  43. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 第一点は、確かにこれは問題の接点であろうかと思うのです。私のほうが話をするならば、主として軍事戦略の面、戦術の面からこれを議論すべきでありましたでしょうし、しかし、反面また、先ほど申しましたことを繰り返しませんが、国と国とが合意したルートは何かということを考えれば、それはお互いにアメリカの国策もあるだろうし、日本の非核三原則に代表される国策もあります。あるいは憲法上の制約もあります。そういうものについては、やはり正規のルート、外交ルートというものにおいてそれは首尾を一貫してやってもらったほうがよろしい、混淆を避けるべきであるということが第一点です。  それから第二点の、私が着いたときには現実問題としてと申し上げましたのは、着く前に日本の外務省、それを代表して安川駐米大使が、向こうの国務省のインガソル副長官との間において、アメリカ側の最終的と日本側は解釈した回答を受け取っておるということで、安川大使も、私の着く前に記者会見で、外交的にこの問題はもう終わったということを言ったあとでありますから、そのルートについては、客観的にその事実があったということを述べただけです。
  44. 上田哲

    上田哲君 わかりました。  念のために外務省に伺っておきますが、いわゆるラロック証言によって引き起こされた問題について、日米間の見解のそごを調整するための話し合いを行なわれた、ということとして、いまの長官発言は受け取ってよろしいですか。
  45. 山田久就

    説明員(山田久就君) これは、従来のわれわれのこの問題についての政府、また先方との了解、それを諸般の情勢から確認するという措置が適当であると考えて、処置をとったということでございます。
  46. 上田哲

    上田哲君 新たなズレではないという立場ですね。後にこのことはもう少し聞きます。  話をもとに戻しますが、長官は、この一連の会談のあと、現地の記者会見で、日米間に核に関する秘密協定は存在しないと言明したというふうに伝えられております。これは、もしそのような言明がなされたのが事実であるならば、それはいかなる確認によってなされたのか、あるいは何らかの話し合いがあったのか、そうでないのか、具体的にお聞かせいただきたいと思います。
  47. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) そのような話し合いはありませんが、その発言の前に私の知っている限りにおいて——ということは、日本国防衛庁長官として、当然外務省の取りきめの問題の内容についてはすべて知っていなければなりませんから、それらについては、私の知っている限り存在していないということを言ったのでありまして、何もアメリカからその確認をとって、私が確信を持って言ったということではありません。
  48. 上田哲

    上田哲君 アメリカへ行くと似るようですな。論評せずみたいな、否定も肯定もしないなどというような論法で、歯切れのいい長官がアメリカナイズされては困るんで、これはひとつ不確かな発言は、この際非常に問題を起こしますから、もう少し事実に基づいて議論をしていただきたいのですが、念のために一般論を先に進めます。  また、沖繩の米軍基地に収用されている民有地の問題についての話し合いが行なわれて、その返還の優先順位を明示した山中メモを提示すると、ぜひこれで検討してもらいたいということが申し入れられ、これが日米協議委員会で取り上げられるということが期待されておるというふうに伺っております。山中メモは出したのですか、いつ出すんですか、どういう内容ですか、見通しはどうですか。
  49. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 初めに、私が答弁しました安保条約第二条と言いましたけれども、安保条約第五条と置きかえておきます。私の間違いです。  いまの山中メモの問題は、これはシュレジンジャー国防長官との会談において、この問題は、日本本土においては、これは主として国有地が大部分であって、あるいは民有地であっても合意の上に提供されたものである。しかし、沖繩においては、アメリカが戦闘遂行のために取得したほとんどの民有地というものが、現在の提供の米軍施設になっているという特殊事情があるので、したがってこの問題は、極東・東南アジアを担当しているように分担がされておると聞きましたクレメンツ国防次官、そして昨年の訪日の際に、ヘリコプターで沖繩の基地を全部見た、自分で確認しておりますクレメンツ国防次官と自分との間で詰めることにするということで、シュレジンジャー長官の了解を得て、そしてクレメンツ国防次官の部屋に行きまして、沖繩の米軍作製にかかわる地図、いわゆる陸・海・空・マリーンに分けた地図、さらに、その後自衛隊が若干入っておりますから、それも加えました日本で複製——複製と申しますか、追加補正した地図をクレメンツ国防次官に直接手交いたしました。私から説明をして、いずれ山中メモというものを提出をする、それに従ってクレメンツ国防次官と私の間において最終的に合意しようではないか。その手続は、これはもう御承知のとおり、私ども防衛施設庁において、私の命ずる地域についてのメモの作成の作業をさせまして、そして外務省と相談の上、おそらく一月になるでありましょうが、例年のごとく行なわれる日米安保協議委員会の場においてその合意を見たいものであるということで、作業を急ぎたいと考えます。
  50. 上田哲

    上田哲君 山中メモの内容についてはいかがですか、いま少しく。
  51. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私の頭の中には、いつも、沖繩のすでに返還されたところ、あるいは将来返還されるであろうがリロケーションを伴うところ、それの大体達成の時期、あるいはその他残された懸案の場所であって、たとえば先般グリーンベレー部隊が引き揚げたことに伴って返還が行なわれましたような、そういう可能性のあるところ、あるいはまた、黙認耕作地等でアメリカが軍事基地をそこにかりに確保しておきたいと願っても、そこを使わなくてもいいではないかという面積等、いろいろありますから、それらのものをいつも整理はしておりますが、あらためて山中メモの形にして提出をして、向こう側と突き合わせたいということでありまして、クレメンツ国防次官は、ケース・バイ・ケースの取り扱いとして歓迎する、喜んで討議に応じようということでありましたので、きわめて明るい見通しを得たように考えております。
  52. 上田哲

    上田哲君 ちょっと、さらにこだわるようですが、沖繩の収用用地の問題というのは、いまおそらく——民有地の吸い上げの問題というのは、当時の総務長官としての山中長官の非常に長い懸案として今日も続いていると思うんです。そこに山中メモの精神があるというふうに私は理解をしたいわけですが、そういう意味では、明るい見通しということは、この際、相手があることだということだけではなくて相当進んだものだ、つまり抜本的に返還領域が広がっていく、パーセンテージで示してくれといえるかどうかわかりませんけれども、そういう見通しはまさに長官の腹案そのもので進められるわけですから、いま一歩聞けませんか。
  53. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) たとえば、私が説明しましたことばの中に、その地図を示して、北部の国頭村の森林地帯は別ですが、本部半島、名護から南、そして先般返りました知念あたりに至るまで、要するに沖繩で一番利用できるわずかな場所、しかもそこに沖繩の百万の人口の七十万が居住しておる、その中で基地の面積が占める比率がこのような色合いに分けられたとおりの面積を占めておる、このことは沖繩の個々の地主対軍用地の問題をさらにこえて、沖繩の新しい発展のために大きな問題を提起しているんだということも申し添えておきましたので、そのような観点から作業を進めていきたい。ただ、これは相手のあることでありますから、しかし、空気としては歓迎するということばを得ましたので、これに対する、いままでのように身がまえて少しでも打撃を少なくしようとする態度から前進したものと私は受け取っております。
  54. 上田哲

    上田哲君 たとえば嘉手納、嘉手納についてもその可能性ありと考えていいですか。
  55. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 現時点においては、嘉手納空港そのものは困難であろうと思います。
  56. 上田哲

    上田哲君 嘉手納について、七五%かつての村有地をとられている、村有地といいますか、村の区域をとられているところがございますね、北谷なんというところ。そういう部分についての修正といいますか、取り扱いの可能性があるかというような意味です。
  57. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 北谷、読谷、新しい沖繩市、こういうところについては当然配慮重点になると思います。しかし、現実の問題として、嘉手納空港というものそのものの機能を阻害するような要求というものを出してみても、おそらくのみっこあるまい、賛否は別です。現実はそういう見通しがありますから、そういう配慮を持ちながら現実的な処理をなるべく進めていきたいと思っております。
  58. 上田哲

    上田哲君 山中メモにはそういう踏み込みがあるものだと期待をしておきます。  そこで戻りますけれども、先ほどのお話の中にも、アメリカ国防総省とのお話の主たるポイントの中には、アメリカの国際戦略というようなことばがございます。私どももさきの委員会でもそうした問題についてかなり議論をしたわけでありますし、これは長官のひとつ宿題であったとも私は思っているわけです。メモをとれなかったという部分の解明も含めて、一体アメリカのいわゆる国際戦略がどのような変更をいま来たそうとしているのか、とりわけ日本列島軍事施設のその中でどのような位置づけに変わっていくのか、この点についての御説明をいただきたい。
  59. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) メモがとれなかったのではなくて、私がメモをとらせなかったということです。少なくとも、私の随行を命じた者は、その会談が頭の中にたたき込めないような程度の人物の者は連れて行っておりませんので、メモを禁止いたしました。したがってそれぞれの頭の中にたたき込んで帰ってきております。  さて、アメリカの極東戦略ですが、概略して申しますと、念頭には——これはわれわれの立場じゃありません、アメリカです。アメリカの戦略というものは、もっぱらソ連との間における大陸間弾道弾に関する戦略がその中枢を占めておるということが一言にして言えば言えるかと存じます。
  60. 上田哲

    上田哲君 一言にして言われてしまうと、これはメモ要りませんよ。そこでひとつメモをとらなかったコンピューター頭脳でぜひ説明していただきたいのは、たとえばアメリカの防衛戦略線というのは後退をするだろうと、グアムの線云々、もう繰り返す必要ありませんけれども、そういうふうになっているわけですね。そういうアメリカ戦略防衛線の後退ということと、日本の軍事的位置づけというものが議論されねばならなかったはずだと思うんです。もっと言うならば、後退することによって日本の軍事施設が薄くなるということが結論づけられるのか、後退した分だけさらに大きな宿題が背中に乗せられるのか、いろいろあるだろうと思いますけれども、そういう意味での明らかにアメリカの防衛戦略線の後退に伴う、お話しのようなABM以来の戦略検討点にいま立っているわけですから、その点をどういうふうに御理解になったのか。
  61. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) なかなか微妙なところに入りますから、アメリカの軍事戦略のシークレットの部分については私も国際礼儀上避けることにいたしますが、なるべく日本の国会の皆さんには、与野党ともに知っていただきたいようなことについては申し上げます。たとえば、アメリカの場合においては、大陸間弾道弾重点の戦略構想というものがすべての前提である、ニクソンドクトリンというのは確かに現在も継承され、なお変更はないものと思います。しかし、それは大陸間弾道弾、ICBMあるいは潜水艦からのSLBMというようなものに関してではなくて、それは経費節減の意味での中間司令部の省略であったり、あるいはまたタイからの撤兵であったり、ベトナムからの引き揚げ完了であったりという現象なのであって、地球儀というものを私どもは日本列島を中心にして見ますが、アメリカの戦略地図においては、北極を強く押えつけて平らにした地図というものがアメリカの戦略の中心に地図として置かれておるというふうに考えると、おおむねおわかりだろうと思うんですが、その意味では、ソ連とアメリカの距離というものは、日本が考えているものとはるかに違う考えが浮かんできます。アンカレッジ経由でアメリカに行ったほうがなぜ近いのかというのは、われわれは実感的にはわきませんが、北極をまん中にして押えつけて地図を広げてみるとわかる。その場合には、日本列島ははるか遠く遠く南のほうに並んでいる島のように戦略上は見られておるわけであります。それと、問題はやはり第一次SALTについての評価の問題それと、それを踏まえての第二次SALTの交渉の、いわゆるデタントをも含めた、諸般の政治情勢も含めたデタントの傾向を踏まえながら第二次SALTへの進み方の問題について一番大きな問題を提起しているのは、やはり最初一次SALTで合意したランチャー数において約五百基近い相違がある、ソ連の優位がある。潜水艦についても相当な開きの優位をソ連に許しておる。しかしその背景は、質においてはアメリカはすでにMIRVの実験展開を確信を持っているということがあったのですけれども、しかし最近、私の留守中もミッドウェーの北に撃ち込まれましたMIRVは、出発前のことしの二月十九日等に行なわれましたソ連のMIRVは、弾頭は三でありましたけれども、今回の場合は八個というふうに非常に著しい進歩を遂げつつあります。これらのことは軍の専門家の立場としては、質において追い上げられてきた場合に、制限基数においてABMについては一基地百基ずつでありますから、これはもう両方とも実際上はこれ以上つくったってしょうがないと、金もかかるしということでやっているのでありましょうけれども、その他の戦略については、やはり質の問題でどこまでソ連に追い上げられてもだいじょうぶなのかという問題がきわめていまアメリカの軍事戦略の大きな論点の一つになっているのではないかという気がいたします。
  62. 上田哲

    上田哲君 対ソ戦略というところに、米ソ戦略構想あるいはまた逆に裏返してのSALTの意味があるというのは、これは基本的なことですから変わりもないだろうと思うし、それはそれでいいです。しかし、少なくともいまここで長官が、米ソ間を一番メインな問題としてアメリカ戦略が、国際戦略が構成されているのだと強調されるとなると、それはたとえば、かりそめにもアメリカにおける対中戦略ということがあり、そしてその対中戦略の中で日本列島の軍事的意味ということを構成していた、そういう時期からのある種の卒業が、終了が意図されているというふうに理解していいのでしょうか。
  63. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは、そういう議論をしておりませんから、私の推測と申しますか、感じですけれども、アメリカは中国についてはその意味において戦略上の脅威をいまだ感じていないということですね。そういうことは確かに言えると思います。一方、いま二次SALTでは問題にされるのでありましょうが、運搬手段の問題、ミサイルでない、たとえばB52からB1にかわっていく、ソ連のほうはバックファイアの開発が進んでいるというようなこと等に対する問題も二次SALTにおいての議論の背景をなすであろうという感じがいたしました。すでにアメリカは、私が去りました後でありますが、B1の公開試験等を開始いたしておるようであります。したがって、これらの問題が、さらに二次SALTの実質の論争の中には入っていくのではないかという感じがしましたが、中国の問題は、アメリカとしていま言った核戦略の問題からはややわきに置いておる。ということは、現実に米大陸について中国が脅威ではないということを意味するのではなかろうかというふうに思いましたけれども、これは実は質疑も何もしておりませんから私の推測であります。
  64. 上田哲

    上田哲君 そのとおりだと思うのです。アメリカが軍事的、純軍事的な側面として中国に対して軍事的脅威というものを前提とした戦略配備をしていないというふうにお感じになったことで私はいいだろうと思うのですが、しかし、そうでありながら、たとえば中国封じ込め戦略というようなことの中で、相手の脅威がなくてもこちら側の軍事的レベルを高く確保しておくというあるいはポーズが必要だった時期がある。その中で日本列島が一定の役目を負わされた時期もある。こういう、簡単に言えば冷たい戦争、冷戦構造ということの一つだったと言えばそれまででしょうけれども、それが意外なことにニクソン訪中によって全く頭越しを含めて土手っ腹に穴があいた。こういう状況からすれば、実質的にも形式的にも対中封じ込め政策ということはあり得ないし、そういう面での軍事的影響というのは十分に出てきた、あるいは虚飾をかなぐり捨ててもいいというところがいみじくも出てきたと思うのです。そこで、いまこの時期に長官がアメリカに行かれたということは、曲がりなりにもとにかく、ちょっとアブソリュートな感じがするけれども不意に変わりそうな感じすらしないではない。ニクソンのあとを継いだたいへん堅実実務家といわれるフォード政権の軍事戦略というものがそこでどういう変化をもたらすか、これは私はいまのお話を聞いていると、純軍事的な視点に立って、アメリカの後退戦略の中にいるわけですから、そういう中では対中問題というのは非常にこれまでのニクソン政権の軍事戦略を受け継いだものだ、中国に対して大きな軍事的かまえをとろうという立場は全くないと、全く米ソ間に問題をしぼってきたという連続の中で見てよろしいということでいいですね。
  65. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 少し違う点があります。それは中国に対してアメリカが封じ込め政策をとっていたのかどうかという問題ですが、それは米華安全保障条約というもののもとにおける台湾というものが、一方においては大陸中国というものとは全く門戸は開かれなかったということなんですね。しかし、現実には、お話しのように政治的に中国大陸との間に門戸が開けたということであって、台湾の問題は兵力の引き揚げその他やっておりますが、あるいは金門、馬祖両島についての国会決議等の取り消し、廃止等について大統領の署名等もあったようでありますから、そういう方向は確かに徐々に進んでいっていると思いますが、その意味において、初めからアメリカが中華人民共和国というものに対して軍事的に意識して包囲をしておったというふうには実は私は考えないんですけれども、そこらの点が少し感触が違うかと思います。
  66. 上田哲

    上田哲君 そこはしょうがないでしょうね。これが一致すれば、わがほうにおける連立政権の可能性があるわけですから。これはまあその辺のところは別としまして、いずれにしても、とにかく現時点におけるフォード政権の軍事戦略というものはニクソン以来の方向を変えるものではないというふうに理解をしていいんだろう。その象徴的な表現として、長官は中国に対して軍事的脅威を感じておらぬと、それがアメリカの国際戦略の基本の認識であるというふうに言われたと理解をいたします。それでよろしいですね。  そういう立場に立って、しからば、日本列島の軍事施設の意味づけというものも、やっぱりきちっと整理されていく可能性も出てくるわけで、九月三十日の論議の中にもありましたけれども、在日米軍基地の運営費の問題あるいはアメリカの下院歳出委員会で問題になった自衛隊の増強の問題こうした問題は、そうした路線からするならば出てくるはずはないし、これは議論されなかったし、今後とも必要ないというふうに考えていいと思いたいんですが、いかがですか。
  67. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 事実出ませんでしたし、そういう歳出委員会の議論も出ませんでした。むしろ、シュレジンジャー長官のほうから、日本のほうでは基地を提供し、そして地主には賃借料を払い、あるいは交付金その他自治省の関係も含めて、いろいろと配慮をしてもらっておるというようなことで、さらにそれを、下院歳出委員会の表現にあるような防衛分担とか、まあ分担経費でしょうが、そういう問題とかについては全く話はありませんでした。もちろん私どもも出すわけがありません。
  68. 上田哲

    上田哲君 わかりました。これは今後とも出てこないものだということが、単に両当事者の話し合いの問題ではなくて、アメリカ世界戦略の中で今後ともこの問題は出てくる可能性を持たぬというふうに私は理解をしておきます。  最後にもう一つ四次防の問題。四次防の進捗状況について、向こうは相当強い関心を持っておるのはレアード以来当然のことでありますし、第七師団に御苦労さんと言ったアメリカの国防長官、レアードですが、いたわけですから、そういう意味で四次防の進捗状況はアメリカにとって非常に重要な関心事であるでしょう。そのおくれをどのように長官は説明をされ、そしてまた、その後の防衛構想についてはどのような議論があったか、ここはひとつ微細に伺いたいと思います。
  69. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは微細に申し上げるもとがないんです。向こうのほうは意外にも、現国防長官は日本の四次防の達成その他について全く質問も疑問も呈しませんでした。
  70. 上田哲

    上田哲君 長官はそれについて触れなかったわけですか。
  71. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 触れる必要を感じません。
  72. 上田哲

    上田哲君 日米連帯のきずなをここで切るわけですか。
  73. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 日本の防衛は、日本の国会を含めた最終承認に基づく日本の防衛体制というものであって、それを踏まえて日米相互安全保障条約というものの実務が行なわれるわけでありますから、アメリカ側についてはいろいろ希望もありましょう。しかし、それが全然出なかったということは、アメリカ自身も、非常にインフレによる建艦コストとか武器の調達コストに頭を痛めているようですね、そういうことがわかっているせいかもしれませんけれども、日本に対して特別にそういう意見も要望も何も出さない。ということは、やっぱり自分たちも困っているからよくわかっているんじゃないでしょうか。ただ一言、最近の日本における米軍雇用の労務者の賃金の値上がりは頭が痛いんだと、このことは言っておりました。これはもうオープンになっていることですから特別そう秘密なことでもありません。
  74. 上田哲

    上田哲君 これまで日本の防衛庁長官がアメリカへ行ってそうした問題について触れなかった、ペンタゴンとそういう話はしなかったという例はなかったと私は理解をしています。かつては、アメリカへ行くことによって百六十億ドルの四次防の概算が決定をされた。現に、日本国会では議論されずアメリカでの記者会見でその数字が出たというようなことすらあったわけでして、自衛隊は、われわれは税金を払っちゃいるけれども実際にはアメリカとの共同戦略の中にあるということは、これは認識の問題ですが、そういう意味では、この四次防というものがこういうふうに行き悩んでいるというときに長官が向こうに行かれて話には出なかったということは疑義を感ずる次第です。まあしかし、お話を受けますと向こうもたいへん火の車なんで語る余裕もなかったというのであれば、それはそれだけでもけっこうなことですし、ぜひひとつ、アメリカとのそういう連関の中で四次防の進捗状況決定ないしは新防衛構想の確定ということにならないように、これは要望しておきたいと思います。  さて、長官の十六日間はもっとじっくり伺いたいわけですけれども、全く微細な部分がないなどというようなお話もあるんで、後の問題にも譲っておきますが、ひとつ外務省の御出席も含めて、ラロック問題について伺いたいと思います。  私は思うんでありますが、ラロック証言が報道されましてからかなりな時日が経過しております。今時点においてそのことをもう一ぺん考え直してみるしかないわけで、こうも政府が知らぬ存ぜぬ、関知せぬという話をされているんでは、核弾頭はこれだと思っても、ここへ持ってきて爆発でもさせる以外には証明の方法は全くないということにならざるを得ません。したがって、そういう即物的な方法じゃなくって、心証の量的形成によって真実に迫るということが国会の中で議論されなければならぬ。軍事的ではなく政治的にもこの問題がそういう立場で解明をされていく方途を国会というところが持たなければならぬと私は思います。そういう意味でお伺いをするんですが、そのように考えますと、ラロック証言があった、それからたくさんの実務者の証言が相次いだ、ミッドウェーその他、そしてそれを裏づけるように秘密協定報道というのがたくさん相次いだというふうに考えていくと、どうも甲論乙駁、白を黒と言い合うような言い方というのはあると思うんです。しかし、ここまで時日が経過したところで逆に考えまして、元来、そういう日米間における核弾頭の運用についての見解の相違が前提となっておると、その前提の中で、彼は秘密協定と十分に呼ぶべき外交慣例の上に立ってのある種の確証もあり、われはそうは思わぬけれども、少なくとも両方の関係路においては秘密協定という——取りきめか協定かなんということばがよく外務省で使われるわけですけれども、少なくとも、カッコちょんちょんでもいいけれども、そういうものの存在を裏づけるような状況が生まれてくる。そういう状況に基づいてたくさんの実務者の証言が、たとえば、おれは扱ったという水兵のことばが一ぱい出てくる。そういうことを当然な認識として米議会の中でラロック証言が出てきたと考えると、これはきれいに一本筋が通るんです。これがきれいに一本筋が通る。逆に見ている限りはわからぬけれども、これだけ時間がたってきてみると私はそういうふうに思えてならぬのです。少なくとも、こういう幾つかの、それがルーマーであってもたくさん出されてきた、少なくとも両国間の常識のズレというものを起点として起こっているさまざまな問題の上に立っての疑惑、これはナショナルな疑惑だと思うのですけれども、このナショナルな疑惑を解こうとするのが政治の姿勢でなければならぬと思う。たいへんどうも抽象的な言い方をしたのでありますけれども、そういうナショナルな疑惑が今日高まっているものを解こうとするのが政治の姿勢でなければならぬという一点について、哲学的な回答でもけっこうです、政治姿勢の基本に関してひとつお答えをいただきたい。   〔委員長退席、理事林ゆう君着席〕
  75. 山田久就

    説明員(山田久就君) 問題は、日米の安全保障条約というものは国の安全に関する相互の国際約束ということで、元来高度な両国の信頼関係というものを前提にしなければ成り立たない問題であるという、この点の、そしてまた、今日までこの安全保障条約というものが、少なくとも過去長い間においていろいろな疑惑、中傷、非難というものにあったにかかわらず、現実としてその目的というものが達成されて今日に至っておるという、この厳粛な事実というものを踏まえて考えるべき問題じゃないかと私は考えます。  いま上田先生からいろいろお話がございましたけれども、事両国政府、つまり責任ある政府というものの関係においては、今日まで繰り返し申し上げておりまするように、そこにズレというものは存在しているわけではないのでございまして、ただ、まあいろいろ話が出ておる、秘密協定の問題なんかも出ておるわけでありまするが、秘密協定についての話がどういうことで生まれてくるのか。私自身も当時安保条約についての責任次官としてやってまいっておりまして、そういうものは全く存在しておらないわけで、政府責任ある形においてはそういうズレがない。そして、アメリカが高度の政治的な立場から、日本のその意思というものに反した行動はとらないのだという、この線によって行なわれているという事実、この再確認、それを疑うべきものはないという立場で今日に至っておりますし、今後においてもその立場に立つのがこの問題の基本的な筋であるとわれわれは了解しているわけでございます。
  76. 上田哲

    上田哲君 政府考え方は、あるいはこの問題についての対処のしかたは、これまで何べんも聞いておりますから、それはもう繰り返していただくのは時間のむだであるのみならず国民の疑惑をさらに増すものであるということを御指摘申し上げて、これはひとつ御遠慮をいただきたい。  私が申し上げたいのは、いまおっしゃったことばをあえて使うならば、両国政府間には何のズレもない、疑惑もないとおっしゃる。両国政府間にズレがないけれども政府間と国民との間に大きなズレが起きているという現実を御認識になるかどうかということを言っているのです。これを、どういう疑惑があるかということを御認識になるかどうかということはおいでおいでもよろしいです。あえて基本姿勢として伺いたいのは、事実認識や具体的な手順ではない。今日明らかに両国政府間の間にどのような合意と確認が行なわれていようと、そのラインとは全然違った大きなナショナルな疑惑が拡大をしている。その疑惑があるから秘密協定ということの問題もいろいろと風評のみにとどまらないといういろいろな思い当たりになっていく。ここまでは考えられるはずなんです。だから、私は政治の基本姿勢として伺っておきたい。もし疑惑ありとすれば、その疑惑を解くための努力をすることは政治の基本姿勢ではないか、このことを聞いているのです。具体的にどうしろこうしろということを言っているのではありません。いままでがどうだということを言っているのではありません。その姿勢がないならば、これはこの政府頼むに足らずということになっていくしかない。政治というのはそういうものではないかということを、たいへん回りくどいけれども伺っているのです。いかがでしょう。
  77. 山田久就

    説明員(山田久就君) 基本的な点についてズレがないかというふうに考えておったにかかわらず、いろいろなことが出ているということから、あらためてこの点について米国政府に対して、従来の立場、またラロックという者についての認識、性格というものを再確認するという措置をあえてとったような次第でございます。まあ日を追うてというお話がございました。それはいろいろ認識、見解の相違ということに相なるかもしれませんけれども、しかしながら、核の持ち込みというようなものについては、当時藤山・マッカーサーの口頭了解というものが存在して……
  78. 上田哲

    上田哲君 いや、そんな事実、関係ないですよ。基本姿勢を聞いておるんです。政治は疑念があったら晴らすべきではないか、これだけですよ。
  79. 山田久就

    説明員(山田久就君) すでにその措置が、いま申し上げたように、日本としては必要と認める措置を政府としてはとりました。したがって、これを……
  80. 上田哲

    上田哲君 そんなことは聞いてないです。私は、イエスかノーかという話だけで、一番基本的なことを聞いているんです。あと、それから先の第二ページをめくるかめくらないかは自由です。国会というものが果たさなければならない機能とは何かという論点において、両国政府が信頼をしているということはそれでいいでしょう。どんなに強いきずなの中にあったとしても、そのきずなに対して大きな疑惑が生じているということを見ることができなければ、目がない、耳がないということになる。政治は最もそれに対して敏感でなければならぬではないかという観点において、その疑念があれば疑念は晴らそうとすることがほんとうではないかと聞いているんです。そうだと言うのが政治家ならあたりまえの話で、そうではないということをいろいろ言うんだったらおかしいことになってくる、それだけですよ。
  81. 山田久就

    説明員(山田久就君) その範囲についてはすでにわがほうで措置をとったし、今後これによってその理解が……
  82. 上田哲

    上田哲君 そんなこと言っちゃおらぬ。
  83. 山田久就

    説明員(山田久就君) 国民の間の疑惑や何かが鎮静してくるであろうとわれわれは考えております。
  84. 上田哲

    上田哲君 鎮静してくるであろうということを裏返せば、すでにそういうものがあるということだけははっきりお認めになっているわけです。鎮静しないかもしれない。鎮静しなかったらどうするかという話になってくるわけですけれども、これは鎮静するはずはないんですよ。明らかにそういう疑惑が、疑念が国民の間に存在しているということは、いまの御答弁の中で明らかになった。これは認めなければ議論にならない。これは目と耳と鼻があればわかる程度の話です。そこで私は、きめ手がないですよ。ぽかんと爆発させるかして、それでこれが核だったということ以外にはどうにもしようがないでしょう。そんなことはできる話じゃないです。あとは完全にその責任ある実務者、担当者が、そうだと言う以外には実証のしょうがないのだが、それはどういう発言があってもそうではないと言っているんですから、これはどうしようもない。だから、そこのところはいい。具体的に、何かの取っ手を持ってきて、これがそうだというようなことを言おうというのではない。これだけ疑惑が高まっているという量は晴らさなければならない努力要求してくるではないか、その中心に立つのが政治のあり方ではないかということを具体的にひとつ言いたいです。  その一つは、これほどたくさん出てきている実務者の証言ですよ。これだけたくさんの実務者の証言がある。たとえば、ミッドウェーだけにしぼってもいい。ことしの八月十三日にハモンド一等水兵が、このミッドウェーの後甲板の上に核弾頭がちゃんとあるんだということを具体的に証言していますね。あるいは十四日のワシントン・ポストは、特殊弾薬庫には先端を赤く塗った白色あるいは銀色の核爆弾が格納され云々ということを証言をしている。そのことをワシントン・ポスト特派員が打っていますね。私は、たとえばこれを打ったドン・オーバードーファー記者と会いましたよ、十八日に。ニュースソースを明らかにするということは、われわれにとっては当然のやはり大事なモラルですから、本来ならばニュースソースを明らかにしないで私の確認していることを明らかにすべきですが、それは艦艇に踏み込んで、つかんて持ってくる以外には——持ってきても違うと言われればしょうがないんだから、そのことはできないから私は逆な立場をここでとらざるを得ない。ドン・オーバードーファー記者が語った内容については触れずに、その名前を明らかにするしかない。私が彼と話をした中では、十分に普通の常識を持つならば、ミッドウェーに核があるということを認識せざるを得ない確信に立ちましたよ、人間の常識において。たとえば、彼はこう言いました。単に、私は東京駅から横須賀線に乗って、二百何十円払って横須賀へ行ったんだと、そしてそこにいる水兵に会って話を聞いたのだと、きわめてスムーズな、きわめて当然な、ナチュラルな証言であったし、私はそのことの確信の中ですらすらと書いただけだ。常識だということですよ、別のことばで言えば。私はどう考えても——その話の中で、こまかい内容については彼が記事にした以上のことをここで申し上げる自由は、彼の利害のために持ちません。しかし、どう考えたって、私はこの記事を疑いようがないという心証をそこで十二分に、さまざまなデータを手にして、これが核だと、この手でつかむこと以外は確認をしましたよ。それが、たとえば十月十四日のワシントン・ポストでしょう。十月十九日には、突発事故に対する防止訓練がこのようにして行なわれているという証言も行なわれているではありませんか、あるいは十月二十四日には、社会党の岡田代議士が、そうした問題について具体的に、ミッドウェーの水兵に会ってSASSについての話をしっかり聞いてきている。これだけ具体的に、すべてが符合するような話がずっと並んできているんですよ。よろしいですか、新聞記事をかざして聞いているのとは違いますよ。私たちも、そういう接近してみました、いろいろのその中で、どう並べてみたってこれが普通の人間ならば、普通の人間ならば信ずる以外に道がないと。それを政府姿勢に対しては、疑惑ということばをわれわれは使わざるを得ないわけだけれども、そういう事態がここにあるんですよ。だから、政府が確かにミッドウェーには核がありました、またほかのいろんな、たとえばウォーデンがどうだとか、あるいはある新聞社に水兵の録音が寄せられたとかという報道もありますけれども、まあそうしたところへ話を広げなくても、少なくとも、ミッドウェーに核がありましたと政府がおっしゃらぬでもいい、言えないでしょうから。私が言いたいのは、ここで、これだけの疑惑があることだけは認めなければならないだろうと、この疑惑をなしとはさっきはおっしゃっておらぬわけだから。この疑惑の量というものは、かなりなナショナルな高さになっているんだということは、これは政治をつかさどる者として、当局者として認識をしなければならぬことだと私は思います。こうした一連の事実、データについて、そういう疑惑を持たれているだけのことはあるというところまでは御認識になりませんか。
  85. 山田久就

    説明員(山田久就君) いろいろそういうことが出ているということは、それはまあ事実でしょう。ただしかしながら、より根本な、日米の信頼関係ということについての保障、これこそが、より重要な根幹になっているというのも、これは最も重要な点じゃないかとわれわれは考えております。より大きなものが棄損されるということがもたらす、そのほうの関係のことが、日本自身、国民の根本的な利害から見ればさらに重要だといったたてまえで、やはりこの問題に対処すべきだというのが私どもの立場でございます。
  86. 上田哲

    上田哲君 はい、わかりました。次元が全然違うわけで、より大きな保障さえあればそれらの疑念はしかたがないのだという論理ですから、それはあなたの御見解だからけっこうだ。しかし、より大きな保障であるかどうかは別にして、それに対応するものとしてのたいへんな疑惑が、これだけ疑惑という名に値するだけのものが高まっているということだけはお認めになったわけですね。それ以上の保障力があるんだからいいじゃないかといまおっしゃった。それ以上の保障かであるかどうかは別として、そういうような疑惑がナショナルに、社会的に国民的に広がっているということについては御認識になった、そういうことですね。
  87. 山田久就

    説明員(山田久就君) いろいろ出ておる事柄については、むろん米国側の責任のある立場において否定されているところの事実も多々あるわけでございます。
  88. 上田哲

    上田哲君 否定しているから、そっちを信頼するんだと、おれはこっちのほう、AとBがあるが、Bのほうを信頼するぞというお話であって、それはAのほうを否定するのではないということが、議事録の上ではっきりなりました。  さらにもう一つは、そういう中でさまざまな証言、権威筋、有力消息筋というところの証言、報道というのがなされておりますね。先ほど来、日米間とおっしゃったけれども、日米の極小政府の間ではそうかもしれぬが、あえて言うならば、日本国全体とアメリカの報道機関を含めた、その極小部分以外のところの、何といいますか、予期せざるコンセンサスとしての疑惑が高まっていると言いたいぐらいに、いろんな報道がなされている。ラロックの前でも、七一年の四月のニューヨーク・タイムズは、アメリカが一時的に核兵器を日本に持ち込むことができるという秘密協定があることを報道しております。あるいは今月の八日のニューヨーク・タイムズは、ペンタゴンの当局者が、米艦隊では核武装のまま日本を含めて外国に寄港することは秘密ではなくて、日本政府にも知らせてあるということを述べたと報じております。また二十三日には、アメリカ軍事問題の権威筋が、米統合参謀本部が核を積んだ船や飛行機の日本への一時立ち寄りが事前協議の対象にならないとの解釈をとっているということを明らかにしている。さらにニューヨークタイムズは、十三日付で、秘密協定について報道し、さらに二十七日付で、例の通過協定が五九年から六〇年にかけて結ばれたという話を裏打ちをしている。あるいはさらに、問題のサイミントン議員が、この二十一日国連に出て、こんなことはもはや秘密でないと言い切っている。  これらのことはどう考えても、言うならば、権威ある報道機関あるいはそういうものが一斉に筆をそろえている、権威筋、外交筋というものの評価、社会的認識というものをすべてくつがえすにあらざれば、否定しがたいこの核問題の疑惑をさらに一歩進めることになる。私はこれに対して非常に強い疑念を持つので、この疑念は、あなたはそれよりも高い保障力によって包含されるのだからしかたがないとおっしゃるが、そのことはそれで、議論は別にしましよう。そういうもので疑惑が高まっているということだけは、これは否定しがたい実情であるということはお認めになりますね。
  89. 山田久就

    説明員(山田久就君) いろいろあげられておるその事実、それについても、たとえば秘密協定があったんだと、これは事実が全くないんですね、全くないんです。それからまた一時通過の問題、これは口頭了解をごらんになればわかることであって、結局この安保条約の適用される軍隊というものの中には、通過というものも適用になるということは、両方の理解をもってされている事柄であるから、したがってそういう話があるのはおかしいと、一々そういう点については反論できるし、指摘され得ることであって、それを全部疑惑というたてまえにとられるのは、私はやはり、少なくとも事実に反するのじゃないかと。大事なのは、そういう正確な事実関係ということに基礎を置かれなければならないということであります。これらの違った点については、それぞれわれわれのほうでは否定しておるし、先方もそういう点の言明をしておる。また、国会にもそういう点は御説明申し上げてまいってきたとおりでございます。
  90. 上田哲

    上田哲君 政府から、大体外務大臣代理が出てこないのも全く横暴としか思えないけれども、これは他党からきびしい議論があるようですからそっちへ譲っておきますけれども、まあそれは別としても、政府から、秘密協定がありましたと、ここで言ってくれるなどと甘い観測は持ってはおりませんよ。そのレベルで一生懸命防戦つとめられずに、もう少し常識の話をしていただきたい。政府自身がいまお認めになっているように、私はそう思わぬよと言っているだけの話であって、いやいや、政府はそう言うけれども、今日この政府発言を認めることはできぬじゃないかという断定するすべはなくても、大きな疑惑が安保条約締結以来、これ以上の疑惑があったかと思えるような大きな疑惑が音を立てていま渦巻いているという事実を認識されているのはやぶさかじゃないと思うんです。そのことを言っておるんです。そうだそうだと手をたたくわけにいかぬでしょうから、そのことばをぜひとも取りたいとは言わない。先ほどのお話は、論理的にそうならざるを得ないし、そういうおことばもあったと思う。私が聞きたいのは、あなたは違うとおっしゃる、それは議論しない。違うと言うのは議論しないけれども、少なくともそれだけの疑惑がなぜ生じたのか、なぜこれたけ水兵か——もし間違っているなら水兵はそんなに陸続として、首をかけて——ドン・オーバードーファー氏に聞いてみた。名前がわかったらどうなるか、その水兵は軍事裁判にかけられるだろう、彼、言いましたよ。そういう危機をおかしながらみんながなぜこんなに核だ核だと言うのか、ちょっと頭の変わった人間だけが飛び出してくるという事象ではもうない。ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストを、私はあの新聞社をたずねたこともありますからよく理解をしておりますが、そんなにヨタを飛ばすことを連続するようなところであるはずがない。少なくとも、リチャード・ニクソンを追い込んだだけの力量はある、ペンタゴン・ペーパーを出しただけの力はある、そういう立場のところを、すべてあれはうそだよと言うのは御自由だ。しかし、そういうところがこれだけ日本政府の主張と全く違ったことを報道してくるということの疑惑はどこから生ずるとお考えなのか。
  91. 山田久就

    説明員(山田久就君) どこから生まれてくるか、それは事実を隠しているからだというようなあるいは立場からの考えを持っておられる方もおられるかもしれないけれども、私はそうじゃなくて、事実全く存在しないのにそういう話が出てくるという原因ですね、必ずしも簡単じゃないと思う。私はその事実は、ここでこういう理由でということを申し上げる段階にはありませんけれども……
  92. 上田哲

    上田哲君 かまいません、どうぞ。
  93. 山田久就

    説明員(山田久就君) まことにちょっと了解しがたい面もあるようであります。
  94. 上田哲

    上田哲君 そこを明らかにしなければならぬと思うでしょう、政府としては。
  95. 山田久就

    説明員(山田久就君) 明らかにというか、そういう点はですね、どこにそういう全く反したような議論が、事実に反したような議論がなぜ生まれてくるのかというようなことは、われわれとしてもその原因は調べてみたいと考えております。
  96. 上田哲

    上田哲君 とすると、幾つかの思い当たりがあるんじゃないか。たとえばですね、この核弾頭持ち込みの定義について日米間に私はズレがあると思うんですよ。たとえば、だれかがためにするんじゃないかとか、と思っている人がいるんじゃないかなんて、そんなごまのはいみたいな議論はここではしませんから、どうかそういう語彙は捨てていただいて、もう少し実務的に詰めていただきたい。私が申し上げたいのは、日米間の核弾頭の持って行き方についての、運搬、持ち込みについての理解のズレがあるのではないかということを申し上げたいんです。幾つかありますけれども、たとえば六〇年の安保改定当時、つまり事前協議というものが生まれたとき「装備における重要な変更」というのは、当時は核戦略ということ、つまり戦略核というものが想定されての事前協議であって、最近の原潜積載のサブロックとか、艦艇積載の地対空ミサイル、タロス、あるいは航空機積載の核爆弾などというようなものは当時予定されていなかったんじゃないか、この中にはそういう理解のズレがあるんじゃないか。だから、その後出てきたサブロック、タロスその他のそうした核弾頭については、戦術核弾頭についての持ち込みは、これは別なんだという認識がアメリカ側にあってあたりまえではないか、そう思いませんか。
  97. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) 安保条約の六条の実施に関する交換公文で「装備における重要な変更」というのは、核弾頭及び中長距離ミサイルの持ち込み及びそれらの基地の建設ということが、当時の交渉当事者でありました藤山外務大臣とマッカーサー大使の間で、口頭で了解されているわけでございまして、政府はこの問題に関しまして、安保国会以来繰り返し述べております。そうして、したがいまして、核弾頭の問題に関しましては、それが一時立ち寄りでありますと、あるいは日本に配置されておるといなとを問わず、あらゆる核弾頭について、それがわが国の領域内に持ち込まれる以上は事前協議の対象となるというふうに述べてきておるわけでございまして、この点についてはアメリカ側も知っておる次第でございます。
  98. 上田哲

    上田哲君 アメリカ局長に聞きますがね。具体的に一つ一つ聞きますよ。六〇年安保のときは戦略核だけが想定されていたんでしょう。
  99. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) 当時の口頭了解は核弾頭ということでありまして、それは戦略核兵器を意味するか、戦術核兵器を意味するかというふうなことは了解されておりません。
  100. 上田哲

    上田哲君 はい、それでいい。つまり戦術核はなかったんだから、主流じゃなかったんだから、あるものしかなかった。戦術核というのが主体となってきたというのは今日なんだ。ズレがありますね。
  101. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) 私は、ちょっと軍事知識において乏しいのでありますが、当時においても戦術核という問題は、軍事的には問題になっておったと了解いたします。詳しい点はあるいは防衛庁にお尋ね願いたいと思います。
  102. 上田哲

    上田哲君 サブロック、タロスはいつから。どっちでもいい、事実関係のみでいいんだから。
  103. 丸山昂

    説明員(丸山昂君) サブロックは、アメリカの発表によりますと、三十八年に核兵器として開発したということを発表しております。
  104. 上田哲

    上田哲君 タロスは。
  105. 丸山昂

    説明員(丸山昂君) ナイキにつきましては、御存じのようにナイキハーキュリーズ、これは非核両用でございまして、これは一九五〇年代の末期において出てきておるということでございます。タロスはアメリカの上院、議会の発表によりますと、一九五七年に就役の開始をいたしております。
  106. 上田哲

    上田哲君 サブロックをもう一ぺん言ってください。
  107. 丸山昂

    説明員(丸山昂君) サブロックにつきましては、ただいま手元の資料ございませんので、明確なことが判明いたしておりません。
  108. 上田哲

    上田哲君 昭和三十八年と言っております。違うんですか、それは。違うんですか。
  109. 丸山昂

    説明員(丸山昂君) 失礼いたしました。サブロックにつきましては、三十八年の十二月でございます。
  110. 上田哲

    上田哲君 昭和ですか。
  111. 丸山昂

    説明員(丸山昂君) 昭和三十八年でございます。
  112. 上田哲

    上田哲君 西暦に直すと何年ですか。
  113. 丸山昂

    説明員(丸山昂君) 西暦に直しますと一九六三年でございます。
  114. 上田哲

    上田哲君 そうでしょう。安保はいつですか、事前協議ができたときには。それまで答えてもらおうとは思わない。六〇年でしょう。六〇年と六三年じゃないですか。  外務省に伺う。サブロックについては、その後この事前協議の上で含めるか、含めないかの具体的な話し合いがあったんですか。
  115. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) 先ほどからも申し上げておりますように、核兵器の問題に関しましては、六〇年の藤山・マッカーサー口頭了解がすべてでありまして、それにおいてわれわれは明らかになっておると考えておったわけであります。
  116. 上田哲

    上田哲君 もう一ぺん、くどいように聞くが、そのサブロックについての話し合いは事前協議の中であったかというんです。なかったんですね。
  117. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) 御質問の趣旨を必ずしも十分把握しておらないかと思いますが、サブロックの持ち込みが云々というような話はアメリカ側との間にいたしたことはございません。
  118. 上田哲

    上田哲君 明らかになったじゃないですか、全部当たっていけばそうなっていくんですよ。時代の流れがあるんですよ、兵器の変遷があるんですよ。だから、事前協議制が、もう頭を振らなきゃ思い出せないような古い外務大臣と向こうの責任者が話し合ってきめた、その時期の想定の範囲というものと今日の核兵器展開の実態は変わってきておるんです。そして、重点はどっちに移っているかと言えば、そういうものについてアメリカがいま核戦略体制、さっきもお話があった第二次SALTというものの中で決して減らしてはおらぬのですから、バランスは重要視しても。その中でこの核配備ということを、ラロックによれば七千九百四十個こっちに来ておると、こういう状況の中で、この配備について日本をエクセプトするなんてばかなことは考えようがないわけです。明らかにこれは違うじゃないですか、明らかにその意味ではこの十四年間話し合いが行なわれておらぬのですよ。だから向こうはそう考え、こっちはこう考える。こっちがとにかくサブロックといえど何だろうと、どんな核弾頭だって全部入れないんだという理解をしていたというところは百歩譲って認めるとして、アメリカはそうは考えておらぬ。あのときはなかったんだから、あれは戦略核の判断だというふうに思っていたとなれば、さまざまなズレの上からいろんな報道が出てくる、向こうの認識の違いがあっけらかんとしてわれわれのほうに報道されてくるということは出てくるじゃないですか。そういうズレはあり得るということ、お認めになりますね。
  119. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) 六〇年当時においては、核弾頭と申しました場合に戦略核が主であったろうということは、その当時の戦術核兵器がそれほど発達していなかったということから言えば言えるかもしれません。で、その後戦術核兵器が発達してまいったことも事実でございますが、わが日本政府としましては、核弾頭と申します場合にすべての核兵器を含むという考えでおったわけでございまして、その点については、国会において終始一貫そのように御答弁申し上げておるわけでございます。したがいまして、一つ一つの問題についてアメリカ側と話し合ったことはございませんけれども、日本政府考え方は一貫しておったということを申し上げたいと思います。
  120. 上田哲

    上田哲君 はい、わかりました。それで非常によくわかったんです。日本側はそう主張し続けてきた、日本の主張と向こうの理解とは違っていたということが、核兵器の展開の中で変わってきていると、これは確かめねばならぬことなんです。これが一つ明らかになりました。  もう一つは、どうもアメリカの理解は、日本領土あるいは日本領域に核を持ち込んでくるということが、ちょうど、どこの領土の上を飛行機が飛んでいても、飛行機が地上を離れて飛んでいるときはたばこもウイスキーも無税であるというのと同じように、アメリカの艦艇に載せて持ってくるときには、それはアメリカ領土の中の船の上だと、こういう理解があるんではないですか。むずかしいことばを使うといろいろあるから、もうわかりやすく時間を省いて申し上げるんだが、そういうことなら、日本の船に載せれば許しがたい持ち込みかもしれないが、アメリカの船に載せてくるんなら、たとえばミッドウェーは横須賀を母港とすることを日本政府によって認められているんなら、アメリカ領土の一部であるミッドウェーの中にどんな核弾頭を載せてこようと、これは持ち込みということには相ならぬという理解がアメリカでは一般的になっていると私は理解をする、あるいは疑っている。だから、そうなれば議論としては、まあ横須賀のミッドウェー母港化ということの意味が非常に重要になってくるわけだけれども、まあまあそこはひとつしばらくおいでおいで、そういう理解のズレはありませんか。
  121. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) まあ、アメリカ側が軍艦が領土の延長であるというふうに考えておるだろうと言われますが、その点はわれわれは、アメリカの海軍がどう考えておるかとは別に、日本側としましては、日本の領域に入ってくるあらゆる核弾頭は当然核の持ち込みとして事前協議の対象となるという認識を持っておる次第でございます。
  122. 上田哲

    上田哲君 アメリカの海軍がどう考えているかは別にとあなたはおっしゃった。別にと言うよりほかに道はないんだ。アメリカ海軍がどう考えているかということを確認しなかったら事前協議は成り立たないじゃないですか。向こうがどう考えていようと、おれのほうは考えてないんだという話が事前協議という協議の名に値しますか、そんな外務省が日本にあったんじゃこれはもうとんでもないということになる。疑惑はそこに立ちますよ。これは第二点であります。  時間がないからもう一歩先に進みましょう。たとえば、いま問題になっております中南米核兵器禁止条約ですね、一九六七年二月に中南米諸国の調印したものです。これはアメリカ政府の条約批准にあたって、統合参謀本部の主張によって、核積載可能な米艦船、航空機の域内通過を認めさせるために各当事国との個別に取りきめを行なう権利を留保する、これが明らかになっていますね、これはムーラーが言っているところの一つでありますけれども。アメリカはそういう非核地帯の設定にもかかわらず、核の通過、いわゆる持ち込み、このことについては非常に敏感な配慮をしているわけです。それが日本に対してのみ例外である。七千九百個も展開したと言いながら、日本に対してはそのことが例外として全くないということは理解しがたい。この条約の存在、この留保事項の存在一つだけを取り上げても、明らかに日本が全く世界の驚くべき例外規定をアメリカが持っている。戦略的に全く意味のないところなら別ですけれども、最も戦略的な価値を持つ日本列島の核配備についてそういう例外を持っているとは信じられないではないか。これは私は答弁求めたところで、これとあれとは別ものだと言うに違いないと思うんだけれども、時間は節約したいが、一ぺん聞いておきましょう、あとのために。
  123. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) 先ほどの私の答弁で、米海軍はどう考えているかは別としてと申しましたのは、核についてというよりは、軍艦のステータスについて彼らはどう考えているかということは別にしてということでありまして、核の持ち込みについては日本間に——日本側の解釈は一貫しておるわけでございます。  それから、ただいまの御質問の点でございますが、ラ米核兵器禁止条約において、その第二議定書で、アメリカ側が一種の解釈宣言をしていることは御指摘のとおりでありますが、それがはたしてどういうふうにラ米関係国に受け入れられておるか、またその解釈がどうなっておるかということは、われわれもつまびらかにいたしておりません。また、これはう米とアメリカとの特殊な関係の問題でございまして、これを世界的な一般論として適用があるというふうにはわれわれは考えておりません。
  124. 上田哲

    上田哲君 まあ、そこはそういうふうに答弁するしかないでしょうけれどもね。少なくとも、アメリカがラテロルコ条約の中で示している核兵器の通過、持ち込みに対する非常に強度な姿勢というものは、これは外交当局が、明らかに核問題が重要視されている日本の戦略配備の中で大きな参考事項としなければならぬことだけは間違いないでしょう、そうですね。そんなことがわからないんだったら外務省やめてもらわなければならない、当然なことでしょう。そういう問題も、きちっと整理しなければならぬということ、幾つかありますよ。私はここでもう一ぺん申し上げる。戦略核と戦術核というものが、時間的に事前協議制が形成されたときの事態とは違っているんです。明らかに、それ以後のものについて協議もしてないと言っているんです。ならば、向こう側と日本側との見解のズレ、これは当然に起こってくるではありませんか。答弁しているアメリカ局長は、その問題についての軍事的な知識もありませんなどと言っておる。この程度のことが知識がないというのでは話し合いはできないではないですか、防衛庁の軍事官がいつもそこへ出るんですか、そうじゃないじゃないですか、そういうことはさせないことになっているじゃないですか。ならば、あなたはそのくらいの知識がなければならぬじゃないですか。あげ足をとるつもりは全然ないけれども、これは全くその協議がうろ抜けているということは確かですよ。そういう中で事前協議なんていうことは有名無実になっていることは、全くこれは事実関係として明らかになってきておる。そういう問題を、サブロックについてはどうお考えなのか聞くのがあたりまえじゃないですか。こっちがどう思っているかなんていうことは百万べん聞いても耳にたこができるからごめんこうむりたい。こっちがどう思っておるかということで、向こうに対して、サブロックはどうするんだと、すべての核弾頭の持ち込みは、あの六〇年の事前協議を確定したときの解釈とは違う事態が発生しているんだから、それらについてはどうだということを一つ一つつぶしていくんでなければ、現に六七年のこのラテロルコ条約ができていて、アメリカはちゃんと中南米にはその留保条項を確保しているんだ、だから日本にもそうだとムーラーが言っているじゃないですか。そういう状況の中で、疑うほうがあたりまえでしょう。だから、そういう話し合いというのは始めるべきですよ。これは算術的に明らかだ。またさっき言いました、まるでウイスキーやたばこが飛行機の中ではノータックスになるように、明らかに向こう側の艦船の中では、それをアメリカの領土の延長とみなしている。特に母港化となったという認証の中では、ミッドウェーが横須賀の港に自分のからだに核を積んで入ることは一切事前協議の対象から除外されるという認識を持っているという、重要なアメリカ側の認識が報道されておるじゃないですか、伝えられておるじゃないですか。このことは、そうじゃないというなら、打ち消すだけの外交努力をするのがあたりまえじゃないですか。こういう点において、明らかに話し合いをすべきだ。一体事前協議の中にこれが入るのか入らないのかということを実務的にさらに話し合いをすべきだ。そうでなければ疑惑は晴れぬ。これは当然の私は論理を申し上げておるんで、もしそれまでやらないというのであれば、これはもうその疑惑は当然なことである、やればぼろが出る、外交任務を放棄するという以外には論理的にはこれはあり得ない。当然おやりになるということになると思うが、そのところを明確にひとつ伺いたい。
  125. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) 上田先生のおことばの中に、ムーラー議長が日本にも適用があるということを言ったということでございますが、その点はわれわれは承知しておりません。  それから、たとえばサブロックその他について一々やるべきではないかというお話がございますが、御承知のとおり、アメリカ側の最高政策として核の所在については否定も肯定もしないということを言っておるのでございまして、われわれはアメリカの核抑止力に最終的に依存しておる以上、その点については理解を示す必要があると思います。他方、今回のラロックの発言にも関連しまして、アメリカ側は、事前協議に関する従来のアメリカ側の約束を守ってきたし、今後も守っていくということを言っておるわけでございまして、われわれはそれを信頼したいと存ずる次第でございます。
  126. 上田哲

    上田哲君 だめだそんなめちゃくちゃなことを言っていたら。これだけ事を分けて具体的に言ったじゃないですか、ズレがあるじゃないですか、何がアメリカの最高政策ですか。日本の最高政策はどうなった。アメリカ国務省日本外交部か、君たちは。少なくとも対等の外交権においてこれだけの具体的な疑念を晴らしなさいよ。どうして協議ができない。協議しなければ、これはずれているではないですか、明らかに。そんなことすらこの第一列で答弁もかなわないようなことであって、それでなおかつ断固としてアメリカの言うことを聞いておることがわれわれの外交でありますなんという外交が通りますか。ことばを荒げて議論するということではこの問題は解決しないと思うから、そういう立場で言うのではない。論理性において恥ずかしくないか。明らかにこの程度の具体的なズレか出ているのに——こういう幾つかのズレはまだ指摘したい、これからも。こういうズレがあるから、これだけたくさんの、私は日本のマスコミのこうした努力も買いますよ、信じますよ、ワシントン・ポストもニューヨーク・タイムズも、私はその意味で理解をしなければならぬと思いますよ、民主社会で。それを、すべてその疑惑を解消するという努力をしなければ、一番初めに次官が言われたように、疑惑を解くのが政治姿勢だということに戻るじゃありませんか。そこのところを私はしっかりしていただきたいと思う。  これは属僚ではだめだ。次官で足りないなら大臣を呼ばなければ話にならぬが、大臣がいられないから、必ず名代をするといって来られた次官、そうでなければ政府を代表される国務大臣としての山中長官答弁で最後に締めくくっていただいて、ここのところだけはきちっとこれは話し合いをしなければ疑惑がとれぬだろうと。そのための努力は当然すべきであると。それは、政府姿勢としては今後検討するということがあったとしても、その程度の姿勢は今日明らかにしていただかなければ国会の議論を進めるわけにはいかない。
  127. 山田久就

    説明員(山田久就君) ちょっとその点には誤解があるんじゃないかと、こう思うんですけれども、先般も、あらためてその点は、従来からすでに了解されている、合意されている問題であるけれども再確認するという措置をとったことは御承知のとおりでございます。しかもその中で、一九六〇年の岸・アイゼンハワー了解コミュニケ第二項に含まれている制約、これは誠実に順守されてきたし また引き続き誠実に順守されることを再確認するということを先方は言っているわけです。しかも、しからばその適用されるというのはどういう米軍に適用されるのかという点は、先ほども私が申し上げましたように、日本に安保条約の適用を受ける合衆国軍隊、これは日本に配置されている軍隊、わが国の施設・区域を一時的に使用している軍隊、領海、領空を通過するなどわが国の領域内にある軍隊、これが適用範囲の対象になっているという安保条約締結当時からの話し合いになっているわけです。その問題をあらためて今回確認することによって、私は、いまのおっしゃっておられる点、明らかじゃないかと、こう考えております。
  128. 上田哲

    上田哲君 だめですよ、それは。全然議論にならないです。それでは信を失いますよ。田中内閣に対するほうはいたる国民の怒りの声が高まっている今日、あなた方の発言が田中内閣の凋落をさらに強めるという責任を負わなければなりませんよ。なぜ日本国民の疑惑を解くために政府要路は努力をしませんか、そんな三百代言が通るようなすでに事態ではない。アメリカが笑っとる。これは私は、政府にその問題についてはもう少しく十分な責任をとるべき方がいらっしゃらないならば、議論をしていただくことをあとに留保しておきます。そんな答弁国会と言論機関とに一体通るとお考えですか。おそらくこれはもう大笑いになるだろう。具体的に詰めもせず、詰めないことが信頼だなんという信頼関係の上に日本の安全保障をゆだねることができますか。演説じゃないから、それ以上は言わない。具体的にその話をせよと、事前協議をどうしろこうしろとは言っていない、少なくともこの段階では。こうした具体的に実質的な疑念が出てきたんだから、この三点については明らかにしなさい、向こう側と話をしなさいと。なんでばかみたいに話をしないしないってがんばるんだ。これはひとつまとめて防衛庁長官から国務大臣として政府姿勢、政治の姿勢は何かということを聞きたい。  私は、ついでにひとつ防衛庁長官にお聞きをしたいんだけれども、事は日米間の問題だけではなくて、風聞としてお尋ねをします。風聞としてお尋ねをするが、防衛大三期生の二佐、たぶん一選抜でありましょうが、このレベルの七、八名のグループが日本の核弾頭兵器操作の訓練を受けているという事実が横須賀でありませんか、風聞としてお伺いします。
  129. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) ありません。
  130. 上田哲

    上田哲君 ついでに答えてくださいよ、国務大臣政治姿勢。内閣の責任問題ですよ。これはもう総理が帰ってこなければいかぬという話になるんですか。  それでは、最後にこの一点は明確にしておきたい。来るか来ないか、どうなるかはわからぬけれども、風前のともしびの総理大臣が、フォード大統領の来日だけは何とかして実現をするとおっしゃっておられる。その実現の可否をここで議論するのではありませんが、そのフォード来日については、明らかに政府の見解としても、日米首脳会談で核討議をする、日米会談で田中総理のほうからそういう立場で国民の疑念を晴らすような議論をフォードと行ないたいという意向があるというふうに伝えられております。私は、フォード訪日に賛成するのでも何でもないし、その可能性がどうかということの議論はあるだろうが、それはおいて、もしそのような事態があれば、これは外交ルート、国務省、外務省というようなところのルートでは話が詰められない事情があるのかもしれぬ。少なくとも一国の責任者が一堂に相会してこの話ができないということでは政治の責任をその段階において失墜することになるでしょう。その段階では明らかにフォード、田中総理との間で、この問題が誠実に議論をされるのだということは、私はしっかり伺っておきたいと思う。それがないならば、そのことはしないのだということをはっきりしておきたい。どっちでもいい、国民に向かって明らかにしていただきたい。
  131. 山田久就

    説明員(山田久就君) 日米関係において重要なのは安全保障の問題でございます。その安全保障問題については、十分意見の交換が行なわれるということは当然だと考えております。いま御指摘の点については、ここでは何とも申し上げられません。
  132. 上田哲

    上田哲君 これでやめようと思ったけれど、だめだ。ここでは申し上げられないというのは何ですか、国会がほかにあるんですか。あなたは外務大臣の代理でないんですか。もうフォード来日というのは国民的課題じゃありませんか。ここで申し上げられないとは何ですか。当然にこれは国民——政府に対する好意的立場からして、ここではせめて話し合いをしてもらいたいと思っている意見を私は誠意をもって聞いておる。黒白の立場で議論をしてないんですよ、きょうは。事前協議はいかに空洞化されておるか、いかに核のかさというものが有名無実のものであるかということについての認識の議論は私はきょうはしておらぬ。実務的に、論理的に詰めておる。当然に疑惑が生ずるという論理性を明らかにして、それを解除するのが政治の姿勢ではないが、ならば、その頂点にある総理と大統領がそのことに対して触れるという努力をするのが政治の姿勢ではないかと私は言っておる。ここでは答えられない、何ですか、それは一体。やらないならやらないとおっしゃい。外務省ではそのことを検討しておるのか、しておらぬのか、このことだけはお答えいただきたい。
  133. 山田久就

    説明員(山田久就君) 現時点においてはですね、むろんそういう問題は検討される事柄であるが、現時点においては、まだ申し上げられる段階ではないということでございます。
  134. 上田哲

    上田哲君 検討をしておるのか、していないのかという質問ですよ。
  135. 山田久就

    説明員(山田久就君) いろいろの他の重要な問題の一環としては、検討事項一つとしては考えられていようかと思います。
  136. 上田哲

    上田哲君 検討していると理解をします。ぜひそのことは、最低限の政治責任として、その検討を前向きに進めて、国民の疑惑を晴らすような努力をしていただきたい。このことを強く申し入れて終わります。
  137. 林ゆう

    ○理事(林ゆう君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後二時十分再開することとし、休憩いたします。    午後一時二十三分休憩      —————・—————    午後二時十一分開会   〔理事林ゆう君委員長席に着く〕
  138. 林ゆう

    ○理事(林ゆう君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  国の防衛に関する調査議題とし、休憩前に引き続き質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  139. 野田哲

    ○野田哲君 まず、山中防衛庁長官にお伺いしたいと思いますが、先ほどの上田委員からの質問に対して、アメリカにおけるシュレジンジャー国防長官との話の中では、今回、いま日米両国間で非常に問題になっているいわゆるラロック証言、これに関連した話は一切なかった、こういうふうにお答えになったわけでありますけれども、平素私どもが知る山中防衛庁長官というのは、国務大臣としても国政全般について非常に積極的な発言をされるというふうに評価をされておる。その長官が、特にこのラロック証言に盛られている問題というのは日本の防衛問題についてもきわめて重要な関連を持っている、その問題について、しかもこれは九月三十日の山中防衛庁長官が渡米される、その渡米にあたっての防衛問題についてのここで審議をやったその際にも、すでに秦委員のほうから、まだ公表前に、ラロック氏の考え方、こういうふうに述べて、この問題にも触れて長官の見解をただした。そのときには、長官は、外交チャンネルの問題だということで触れられておりませんけれども、これだけ世間で大きく問題になったこの問題を、たまたまそのアメリカの最高責任者である国防長官と話をしたときに、出なかった、これはやはり私どもとしては奇異に感じざるを得ないと思うんです。当然私どもは、これは両長官の間で対象にされているものだと、そういうふうに思っておったわけですけれども、ことさらにこれを話題にしなかった長官考え方としては、それはどこら辺に意図があったのか伺いたいと思います。
  140. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) あるいはそういうふうに私のふだんの言動から見てお考えになるのも私はわかります。しかし、事外交取りきめの問題についての実行の確認、あるいはそれらの疑問の解明というものは、やはり外交チャンネルというはっきりしたものでやっておかないといけない問題であります。したがって、出発前から、私は、この問題については自分からは持ち出さないし、外務省ルート、国務省ルートの間で話が行なわれるであろう、向こうから持ち出されたとしても、それは私自身は国務省レベルで話してもらいたいということで話はしないつもりだということを明確にしておきました。それはいわゆる、表現はおかしいですが、軍事同盟でありますから、安保条約は。その意味において、これはどのようなアッパーリミット、あるいはどの程度の箱と申しますか、規模というようなものかは、これは外交チャンネルできまる問題、そのきめられた中において私どもは完全にそれを果たしていくということでありますから、それについて私どもの立場からどうあるべきであるとか、あるいはそれは反対であるとか賛成であるとかというものは、まず外務省のルートによってきまったものについてわれわれは忠実にそれを行なっていくということであります。  それから、秘密の問題は場合によっては伏せさせていただきますということを上田委員答弁しましたが、この問題は、これは天地神明に誓って秘密の問題でも何でもなくて、向こうからもなく、私からも持ち出していない、このことは明確な事実でありますから、その点は事実問題として明らかにしておきます。
  141. 野田哲

    ○野田哲君 そういたしますと、先ほど上田委員の質問に答えて、アメリカの国防長官との話は一切メモにしないで、公開をはばかるものははばかるということで、すべてを頭の中に、同席したスタッフ、長官、たたき込んで帰っている、こういうふうに言われたわけですが、この中にもこの問題はないと、こういうことを確認をして次に進めたいと思うんですが、山中長官は九月三十日の委員会上田委員の質問に答えて、今度のアメリカの国防長官との話の主題としては、一つは、先ほどもお話がありましたが、両国の防衛責任者が長い間会って話をしていないので、ここで対話が必要である。二つ目には、アメリカの下院の歳出委員会防衛分担についての日本の肩がわり、こういう意向が出ているけれども、そのような話が出てもこれは受けない、乗らない、こういうふうに言われています。それから三つ目は、わが国の防衛計画は、日本の憲法の制約、経済情勢、社会情勢等の制約の中で立てられるべきであって、それを乗り越えることはできない。それから四つ目には、四次防については、昭和五十一年度が最終年次であるが、ポスト四次防の計画の策定についてはまだ流動的で、結論的なものは持っていない、こういう立場でシュレジンジャー長官との会談に臨むんだ、こういうふうに要約されていると思うんですが、大体そういう範囲での話であったというふうに了解してもいいわけですか。
  142. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 第二番目の問題を除いては、ほぼほかの三項目はおっしゃったとおりでございます。第二番目の問題は、これは私はそのときの答弁を覚えておりますから、速記録ごらんになれば正しく合っていると確信しておりますが、あれは下院歳出委員会の全会一致の決議とか、あるいは政府に対するそれが下院の意思とかいうものではないと、一九七五米会計年度軍事予算の可決にあたって出されたレポートにすぎないと、したがって、それは下院の意思でもなければ歳出委員会の全体のまとまった意思の結集でもないし、したがって、アメリカの行政当局、ことに軍当局あるいは国務省等を拘束するものではない、そういうふうに自分は思うと、したがって、その問題については自分は触れる意思はない、ということでありましたし、結果として向こうのほうはそういう話は全く出ませんでした。
  143. 野田哲

    ○野田哲君 では、最後に一つだけ具体的なことを伺っておきたいと思うんですが、基地の返還の問題について、日本側からの要請について山中メモ、こういうもので話を進めた、こういうふうなお答えがありました。いま沖繩で非常に問題になっているのは、今度返還される予定になっている読谷にある使用していない飛行場、このあと地の利用計画について、県や、それから関係の町村のほうでは、ここに沖繩の経済発展のための工業団地等の計画を策定をしておる。ところが、これについて新たにアメリカ側のほうから、沖繩市内にある米軍の住宅地をここに移しかえる、こういう計画が持ち出されて現地で非常に混乱をしている。こういう状態になっているわけでありますが、この問題についても、このやりとりの中で、あるいは山中メモの中で何か触れられているかどうか伺っておきたいと思います。
  144. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは御理解願いたいのは、山中メモはこれからつくるわけです。ですから、山中メモを提出するからそれに基づいてクレメンツ国防次官を最終責任者として話を詰めるからという次官の了解と長官の了承をとって、これから作業を始めますということです。読谷飛行場については、いまおっしゃったような米側の意向等もあり、また地元の振興開発計画等もございますから、これらの問題は、今後沖繩県の意思を聞きながら、地元の意思を聞きながら、そうしてまた、リロケーションの対象先の問題も当然また検討の対象として、どこかに移さなければならぬわけですから、そういう問題をひっくるめてどうするかの問題も、これはやはり検討をしていく課題の一つであることは間違いありません。  なお、せっかくのちょうどいいチャンスでございますが、本日付でもって、読谷陸軍補助施設の総面積十二万一千九百五十六平米、これは大体荒蕪地でありますが、読谷村にとっては非常にのどから手の出るほどほしい地域であったところが、本日付で返還の通告がありました。その点は報告をいたしておきます。
  145. 野田哲

    ○野田哲君 それでは、引き続いてラロック証言に関係する問題について外務省の関係者に伺いたいと思います。  今日まで、政府のほうでは、いわゆるラロック証言について終始一貫、一私人の単なる発言、こういう受けとめ方をして、先般行なわれた十月十四日の衆議院の外務委員会あるいは十月十八日の参議院における外務委員会でも、終始一貫そういう答弁を行なっています。しかし、この一私人の単なる発言という受けとめ方は認識を根本的に誤っているのではないか、私はこう思うんです。このラロック証言の行なわれた通称サイミントン委員会、このサイミントン委員会が、かつてラオスやベトナムにおいてアメリカの軍事行動に対してとってきた行動、実績あるいはその他の幾つかの今日までのサイミントン委員会の行動を見てきても、今回のラロック氏の証言を求めた意図というのは、サイミントン委員会の論議の性格あるいは核戦略の基本にかかわる性格を持っていると思うんです。そうしてまた、先ほどの上田委員の質問にもありましたように、このサイミントン委員会を主宰をしている委員長のサイミントン氏が、先般アメリカにおいて、いわゆる国連総会でアメリカの代表としての演説を行なっております。この演説の内容を見ると、サイミントン委員会でラロック氏が述べたと同様の基調に立って国連でアメリカの代表としての演説を行なっているわけであります。そういう意味から言えば、このサイミントン委員会の持つ重み、そして、その中で行なわれたラロック氏の証言の持つ意味というのは、日本の政府が言っているように一私人の単なる発言という認識では根本的にこれは認識を誤っているんではないか、こういうふうに私どもは受けとめるわけでありますけれども、外務省としては、今日依然として、あれは単なる一私人の発言、こういう認識に立っているわけですか。
  146. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) ラロックがいろいろな発言を行ないましたのは、九月十日の原子力合同委員会軍事利用小委員会という場でありまして、従来いろいろ日米関係について証言が行なわれた米上院軍事委員会の小委員会とは別の場所であります。サイミントンはその両方の委員長をしておったわけであります。そのことをちょっと申し上げておきます。しかしながら、いずれにしても、その上院の一つ委員会においてこういう発言が行なわれたことは事実でございまして、われわれも、そういう場で行なわれたものでもあり、一人の人の発言ではございますけれども、アメリカ側にあらためて米国政府の見解を照会したわけでございます。その見解の中で、米国政府の見解として、この小委員会において行なわれた諸言明は一私人によってなされたものであり、米国政府の見解を何ら代表し得るものではないということをアメリカ側は言っておるのでございまして、これは単に日本政府が言っているということだけではなくて、米国政府がこういうふうに申しておる次第でございます。
  147. 野田哲

    ○野田哲君 ラロック氏は、現在は単なる一私人であることは間違いないと思うんです。しかし、このラロック氏が証言を求められて原子力合同委員会の中の軍事利用小委員会発言をした、その背景あるいはまた、その証言を受けた委員会を主宰をしているサイミントン氏が、国連に臨むアメリカの代表の一人にもなって、サイミントン委員会でのラロック証言と同じ基調に立った演説をしている、そういう経過から見て、確かにラロック氏は、現在は一私人であるけれども、その背景や、その後の問題の展開という点では、当初この問題が発表されたときに、木村外務大臣が、あれは単なる一私人の発言だ、こういうふうな軽率な評価をしておりますけれども、その評価は今日では外務省自身としても変えなければならないような情勢になってきておるんじゃないか、そこのところを聞きたいわけなんです。
  148. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) ただいま申し上げましたように、一私人の発言であるということは、わが政府だけが言ったわけではございませんで、米国政府が正式に表明いたしました見解の中でも言っておるわけでございます。しかしながら、この問題が当時国民の間で大きな反響を呼んだことも事実でございましたので、われわれはそういう一私人の発言ではあっても、   〔理事林ゆう君退席、委員長着席〕 米国政府の見解をあらためて求め、そして、アメリカ側としてはああいう見解の表明になったわけでございまして、日本政府としましても、この問題についてはそれだけのものとして取り扱い、米国政府の見解を求めた結果、御承知のとおり、アメリカ政府は事前協議に関する日米間の約束は従来も守ってきたし、今後も守るということをあらためて言明しまして、そして、このラロック証言の性格について先ほどから申し上げたようなことを言っておる次第でございます。
  149. 野田哲

    ○野田哲君 いまの答えの中で出たように、単なる一私人の発言という評価が、そうではなくて、外交チャンネルを通じてこの証言の持っている性格や意味等について照会をせざるを得ない、こういう重要な重みを持っているんだというふうに答えられたと思うので、私どももそういう認識に立ってこれから進めてまいりたいと思うのですが、今日まで、この問題は衆議院の外務委員会と参議院の外務委員会、そうして本日国政の場で審議の対象になっているわけですが、政府側の態度は、今日まで国民の疑惑を晴らすものには全くなっていないと思うんです。先ほどの上田委員との質問の繰り返しを見ても何ら疑惑を晴らすものになっておりません。政府がただ唯一の手がかりにしておるのは、いまアメリカ局長からも何回も述べられておりますが、アメリカ政府の回答、全く抽象的なもの、これしか政府は答えていないわけでありまして、これは、今日の国民の疑惑を何ら晴らすものになっていないと思うんです。そのあと新しい事態が、先ほど上田委員が指摘をしたようにたくさん新聞報道等でも指摘をされて、逆に疑惑はますます強くなってきているわけでございます。すでに上田委員からも指摘をされておるところでありますが、ワシントンからの報道でも、アメリカの政府は、核積載の艦船が日本に寄港する場合には日本政府との事前協議の必要はない、こういうふうに了解をしているというような外電あるいはアメリカの外交筋の言明、こういう報道がなされてきております。ニューヨーク・タイムズ等では、核積載の航空機、艦船の日本への寄港については秘密合意がある、こういうふうに報じておるところであります。で、特に具体的にアメリカの上院外交委員会筋で触れていることは、一九七〇年の一月二十六日の米安全保障協定・対外公約分科委員会で、日本、沖繩問題に関する聴聞会での当時のジョンソン国務次官の声明、こういう点に触れています。こういう新しい事態に対して外務省では一体どう考えているのか、特に、具体的に一九七〇年一月二十六日の、ジョンソン氏が対外公約分科委員会の中で述べたという、聴聞会で述べたという内容がわかっておればここで報告をしてもらいたいと思います。
  150. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) まず、ニューヨーク・タイムズがだびだび報道いたしております、通過に関して日米間に秘密協定があるんではないかということにつきましては、先ほど山田政務次官からも申されましたように、そういうものはございません。それから上院外交委員会筋という報道がございますけれども、それの中で引用されておりますのは、ジョンソン次官が、安保条約に基づいてアメリカの艦船が横須賀、佐世保両港への入港ないし離港は自由にできると、これは通常推進力、原子力推進双方の艦船に適用されるということでございまして、これは、そういう施設・区域であります横須賀とか佐世保などに米国の艦船が入る場合には、安保条約及び地位協定の関係規定に基づいて入港できるということを述べたまでであります。なお、この原子力推進につきましては、御承知のとおり通常の原子力推進の潜水艦につきましては、安全の見地から二十四時間前に、事前に日本政府に通報があることになっております。そういうことをただ述べただけでありまして、核兵器の通過だとか持ち込みということに関連した言明ではございませんで、その意味でこの引用は正確を欠いているんではないかと思います。なお、われわれはこの点、一体どういう人が言ったのかということで問い合わせもいたしましたが、上院外交委員会関係者に当たった限りにおきましても、そういうことを言った者はいないというふうに聞いております。
  151. 野田哲

    ○野田哲君 ただいまの問題について、あとでまた機会を見て具体的な私どものほうの資料と合わせてさらに見解を承りたいと思うんですが、日本の政府は、日本への核の持ち込みについては事前協議の対象になる、そうしてその場合には非核三原則によって断わる、こういうふうに何回も国会の場でも述べています。この事前協議の問題について、昭和三十五年一月の当時の岸総理大臣、そうして、ハーター国務長官との間の交換公文があるわけでありますが、この交換公文について、アメリカ側では議会にも提出をされていない。むろんそういうことでありますから、両国間を拘束をする二国間の公式な文書としては扱われていないのではないか、こういうふうな疑念が持たれるわけでありますけれども、この交換公文のアメリカ側での取り扱いは一体どのようになされているのか、その点について伺いたいと思います。
  152. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) 私が了解しておりますところでは、ただいま御指摘がございましたように、アメリカはこの交換公文を議会に、その締結について承認を求めるという手続をとっていないと考えております。しかしながら、そのことと日米間の国際約束として締結されましたこの交換公文の効力、法律的な効力と申しますか、日米間において拘束力を持つ効力との間では何ら関係はございません。私どもは、この交換公文につきましては他の国際約束一般と同じように両国を法律的に拘束する国際約束の一部を構成するものであると考えておるわけでございます。
  153. 野田哲

    ○野田哲君 あなたのほうはそう考えておられるでしょうけれども、アメリカ側の扱いが両国を拘束する正式の文書としては扱われていないのではないか、そういう疑念が起こっておるので、アメリカ側がどう取り扱っているのか。議会に提出されていないということはいまお答えになったわけですけれども、文書の性格として、両国を拘束するものとして扱っていないのもではないか、こういう疑念が持たれているわけで、その点どうですか。
  154. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) どういう国際的約束の文書をその国の立法府の承認の対象として求めるかどうかということは、それぞれの国内法によってきまるわけでございます。で、そのことの結果、国際法上の法的な拘束力の効果が異なってくるということはあり得ないことでございまして、このことはアメリカ側においても十分に承知しているところでございます。したがいまして、私どもとしましては、交換公文とその他の国際約束との間に、その効力に関する限り何ら差異がないということについては私ども全く疑いを持っていないわけでございます。
  155. 野田哲

    ○野田哲君 事前協議の問題について、ここであらためて、私は木村外務大臣あるいは代理をつとめている大平国務大臣に直接承りたかったわけでありますけれども、残念ながらきょう出席をされておりませんが、外務省に、事前協議というものについて一体私どもはどう理解をすればいいのか、この点について聞きたいと思います。  この事前協議というのは、アメリカ側からの一方交通のものなのか、それとも日本側から申し出があれば事前協議が行なわれるものなのか、こういう点について明確にお答えをいただきたいと思います。いままでの国会審議の経過をずっとたどってみると、そのつどつど政府答弁が異なっております。昭和三十五年の四月二十八日の衆議院の安保特別委員会で当時の藤山外務大臣が答えている内容は、これはアメリカ側から申し出てくるのが当然だと、こういうふうに言われています。昭和三十九年の二月十八日の衆議院の内閣委員会で当時の大平外務大臣、これは当方からも申し出ることができると理解をしている、こういうふうに答えています。昭和四十三年一月十八日の衆議院の内閣委員会で当時の東郷局長、これは米国側から持ち出された場合に限られるんだと、こういうふうに言っています。昭和四十三年の一月三十日に、これは防衛庁の関係でありますけれども、当時の増田防衛庁長官は、これは日本側からも持ち出されるんだ、こういうふうに言っている。それから、昭和四十四年六月十七日の衆議院の内閣委員会、六月十八日の参議院の沖繩特別委員会、ここで、なくなられた愛知外務大臣は、基地の使用に制限を加えたのを解いてもらいたいのはアメリカであるから、その協議のイニシアチブはアメリカ側にあるんだと、こういうふうに答えています。さらに愛知外務大臣は、昭和四十四年の六月十七日の委員会においては、事前協議の性格は、法律的にいえば日本として発言権を保留をしている、ケース・バイ・ケース、日本の主体的な判断で国益に合致するものということで適正に運用するんだ、こういうような発言をされています。そのつどそのつど、この事前協議というものについて、ある人はアメリカ側から持ち出された場合に限られるんだと、こう言い、ある人は日本からも当然申し出ることができるんだと、こういうふうに言われているが、一体この事前協議というものについてはどういうふうに考えていいのか、外務省の見解を承りたいと思います。
  156. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) 事前協議につきましては、条約第六条の実施に関する交換公文にもございますように、これこれの事項については、「日本国政府との事前の協議の主題とする。」と書いてございます。私どもは、このことから事前協議についての発議と申しますか、申し出は、アメリカ政府のほうから行なわれるたてまえであるというふうに考えているわけでございます。ただ、他方御承知のごとく、安保条約第四条におきまして、「締約国は、この条約の実施に関して随時協議し」云々という規定がございます。したがいまして、安保条約の実施に関しまして日米双方いずれからも随時に問題を提起して協議するという道は開かれているわけでございます。ただ、具体的な事前協議の手続というのはどういうふうに行なわれるかという御質問でございますれば、それはアメリカ政府のほうから発議をして日本政府に同意を求めてくるというのが条約のたてまえであるというふうにお答え申し上げたいと思います。
  157. 野田哲

    ○野田哲君 ただいまの条約局長答弁ですと、そうすると、いままで何回か言われている、たとえば大平外務大臣昭和三十九年の二月十八日に衆議院の内閣委員会で述べた、当方からも申し出があれば開くことができるんだ、こういう発言、あるいはまた、なくなられた愛知外務大臣が述べられた、日本の主体的な判断で国益に合致する、そういう立場で運営していくんだと、こういうような点や、あるいは増田防衛庁長官が述べられた見解、こういうふうに、日本側からも当然申し出を行なって開くことができるんだ、こういう解釈をとって何回か国会発言され、公に発言されておる、これは間違いだということですか。
  158. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) いま御指摘がありました政府側の御説明につきましては、ただいま私が申しました随時協議と申しますか、条約実施の全般に関しまして起こります問題について両国はいずれの側からも随時に協議を提起することができるたてまえになっておりますから、その随時協議の形態として協議をするということは可能であろうと思います。ただ、事前協議というものの手続ということになりますると、その内容は三項目ございまするけれども、いずれもアメリカ側の行動、これこれの行動をとるにあたって日本政府の事前の同意を求めるという仕組みになっているわけでございますから、具体的な、そういったアメリカの行動につきましてのイニシアチブと申しますのは、アメリカ側のほうからとられるというのがたてまえであるということを申し上げたわけでございます。
  159. 野田哲

    ○野田哲君 いや、もっと端的に答えてもらいたいと思う。私が聞いておるのは、事前協議というのは、アメリカ側からしか事前協議の運用については求めてくることはできないということなのか、日米双方、両方どちらからでも必要があれば求めていく、こういう性格になっているのか、そのどちらなのか。こういう点を事前協議という問題についてもう一回はっきりさせてもらいたい、こういうふうに言っておるんです。
  160. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) くどいようでございますけれども、事前協議という制度から見ますると、たとえば、そこに掲げてあります第一の項目でございます、アメリカの軍隊の「配置における重要な変更」ということが行なわれます場合には、アメリカ側からその協議が行なわれるというのが、この事前協議の交換公文に書いてありますところの事前協議制度というものから見ますと当然のたてまえであろうと思います。ただ、先ほど来お答えいたしておりますように、条約の実施全般につきまして起こります問題については、いっでも、いずれの政府も協議を提起することができるというたてまえになっていることは先ほど御説明したとおりでございます。
  161. 野田哲

    ○野田哲君 私は事前協議という問題について聞いておるわけです。安保条約の運用全般の問題を言っているんじゃないんです。事前協議というものに限定をして言っておるわけなんです。ですから、いまの条約局長の説明によると、いままで事前協議という問題についで国会の場でやりとりがあった、あるいは記者会見等で公に発言されている、日本側からも申し出をして行なうことができるんだという何人かの大臣発言が、国会審議の場でも行なわれておる、これは間違いなんですねというふうに聞いておるわけなんです。これは条約局長よりも山田政務次官のほうで答えてもらいたい。
  162. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) 私は、先ほど先生お取り上げになられました愛知大臣等の御答弁が間違っているとは全然思いません。すなわち、事前協議がどうやって行なわれるのかという御質問であれば、それはアメリカ側から申し出があるだろうと、しかし事前協議に関連して生ずる問題について、日本政府から、随時協議の条項でございますが、これを根拠としてアメリカ側とその協議をするということは何ら差しつかえないだろうと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  163. 野田哲

    ○野田哲君 とにかく、はっきりしてもらいたいんです。事前協議というものに焦点をしぼって、いままで国会で審議をされているあれがあるわけですよ。この中にも当時のあれが載っているわけなんです。事前協議というものは一体どちら側から行なうものなのか、日本からでもアメリカ側からでも必要があれば申し出てやることができるのか、あるいはアメリカの必要によって起こったときしか事前協議というのは開かれないのか、この点について、双方から申し出があれば開かれるものなのか、アメリカ側からの要請がある以外には開かれないのか、そのどっちなのかということなんです。いまの条約局長の回答ではどうも意味が明確でないと思うんです。
  164. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) 私の御説明が非常に不十分で御理解いただけないとすればたいへん申しわけないと存じますが、事前協議は、これこれの項目について実施するにあたっては日本政府と事前に協議しますと書いてあるわけで、したがいまして、それはアメリカ側から問題が提起されてくるというのがたてまえであるのが当然だと思います。ただ、事前協議に関する問題を、では日本政府は全くアメリカに対して問題を提起し得ないのかと、協議を申し入れることができないのかといえば、それはそうではございませんで、条約実施上の問題として日本政府はアメリカとの協議を申し入れることができるということも申し上げておるんです。
  165. 野田哲

    ○野田哲君 それはわかっておるんです。じゃ具体的な事例で伺いますと、たとえば今度のミッドウェー、これが十月の十日に横須賀に入港している。その直前にラロック証言によってミッドウェーには核兵器が搭載をされているという疑惑が持たれたわけなんです。そういう場合でも日本側から事前協議を求めていくという手続はあなたの説明ではとれないわけですね、そうなんですね。
  166. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) 事前協議の手続ということでは、私は問題にならないと思います。
  167. 野田哲

    ○野田哲君 そうすると、いまの事前協議というものについての外務省の考え方といいますか、安保条約、それに基づく、前提となっている交換公文、それから事前協議を定めている交換公文、こういうものについて、日本の政府は、アメリカからの核の持ち込み、これについては当然事前協議の対象になるんだし、それは日本の場合には非核三原則というものがある、したがって、そのような核を搭載した形でのこれを了解してくれという事前協議があったときには、当然事前協議が行なわれることがアメリカから申し出があるし、その場合には非核三原則で断わるんだ、こういう何回も繰り返して説明をしておるわけでありますけれども、アメリカ側が、いわゆる核の所在については明らかにしないというトップシークレットの政策を持っている。したがって、アメリカ側からこれを具体的に、ミッドウェーならミッドウェーが核兵器を搭載をして入港するから了解をしてほしいというような申し出はあり得るはずはないわけなんです。日本側から、その疑惑が持たれても事前協議が行ない得ない、こういうことになれば、全くこれはアメリカが自由に出入りができる、こういうことにしか考えられないじゃないですか、  一体どうなんですか、その点は。
  168. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) この事前協議と申します制度は、そもそも安保条約の根本的な前提であります日米関係の信頼、日米の信頼関係の上に成り立っているものでございまして、向こうが脱法的に、してこないんではないかという議論はわれわれとしては成り立たないと思います。また、実際問題といたしまして、前から御答弁申し上げておりますように、アメリカ側が、この日米間の約束であります事前協議を、ことに核兵器に関しましてくることを妨げたり禁ずるようなことはないということを言っておるのでありまして、米国の最高の政策として核の所在は明らかにしないとは申しておりますが、ほんとうに日米間の条約上の義務を履行するにあたって、向こう側が、核兵器の問題について日本側に事前協議を申し入れなければならぬと考えるときには当然できることになっております。
  169. 野田哲

    ○野田哲君 事前協議の問題について、岸・ハーター交換公文、この口頭了解事項の中で核問題について触れられておるわけですが、核弾頭、それから中長距離ミサイルの持ち込み並びにこの基地の建設、こういうふうになっています。これを文字どおり読むと、核兵器を搭載をした艦船や飛行機の立ち寄りについては何ら具体的に触れられていないわけです。そうして、このことと関連をしてといいますか、符節を合わすように、先ほど上田委員の質問にもありましたけれども、ジーン・ラロック氏が、アメリカの海軍では艦艇内は自国の領域の延長という社会通念を持っている、したがって、核装備をしたアメリカの軍艦が日本に寄港する場合、あるいは領海の通過については、そういう通念があるので事前協議の対策とは考えていない、こういうふうに一般的にアメリカの海軍は思っている。こういうふうにラロック氏が語っているというふうに報道がされています。あるいはまた、ワシントン共同による報道では、岸・ハーター交換公文による事前協議の対策は、通過や一時立ち寄りについては該当しないというふうに指摘をしておるという報道もされているわけであります。先ほど中南米問題について上田委員からも質問がありました。中南米諸国での核兵器の禁止条約に関連をしても、アメリカが、この議定書の批准にあたって非常に抵抗をして、立ち入りを含まないんだ、こういう声明を出して、そのことを関係各国が承認をした上で初めて批准をしたという経緯がある。こういう一連のことを考えてみたときに、この岸・ハーター交換公文では、立ち入り、寄港、いわゆる核兵器を搭載をして寄港するが、これを軍艦からおろさない限りは、上陸をしない限りは、陸揚げをしない限りは、これは了解をするというふうになっているんだという疑いを一連の事例から持たざるを得ないと思うんです。こういう点について外務省はどう考えていますか。
  170. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) 装備における重要な変更というものの意味につきましては、先ほどから申されておりますように、藤山大臣とマッカーサー大使との間の口頭了解があるのでありますが、それは、核弾頭及び中長距離ミサイルの持ち込み並びにそれらの基地の建設と言っておりますけれども、これは核弾頭及び中長距離ミサイルというものを両方合わせたものとしての持ち込みという意味ではなくて、核弾頭の持ち込み及び中長距離ミサイルの持ち込みという意味でございまして、核弾頭の持ち込みは一つのものとしてとらえられておるわけでございます。そして、政府もかねて申しておりますように、わが国の領域に入ります核弾頭については、事前協議の対象となるというふうに了解しておる次第でございます。  それから、中南米のその核兵器禁止条約の問題に関しましては、その条約の規定の意味する禁止の範囲が何であるか、さらに、それに関する米国政府の解釈が何であるかということにつきましては、これは当事国間の問題でありまして、私たちとしてちょっと有権的な解釈は申し上げかねます。
  171. 野田哲

    ○野田哲君 最後に一言だけ。最後に山中長官国務大臣として質問したいと思います。時間がありませんので、いろんな注釈はもう抜きにします。  一つは、これだけ国民の間に大きな疑惑を持たれているわけですから、核搭載可能な艦船については、一切この疑惑が国民的に納得ができるまでアメリカに入港を断わる、こういう措置を日本政府としてとる、このことについて国務大臣として総理大臣に進言をする意思はないか。もう一つは、これだけ疑惑を持たれている問題を解明しないままに、田中総理大臣とフォード大統領との会談が行なわれる、このことについては延期をして、この問題についてもっと国民的に明快になる措置を外交的にとっていく、こういうことを進言をする意思はないか。この二点、端的にお答えをいただきたいと思います。
  172. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 承っておきます。
  173. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、午前中から核の問題について相当いろんな角度から質問がございました。私は、初めにラロック証言の問題をやりたいのでございますが、それに関連をいたしまして、その中身の問題についても二、三やりたいと思っております。  そこで、きょうは初めに、これはできるだけ、何といいますか、国民にわかりやすく説明をすると、そういうふうな意味で現在の日本の政府の見解をお伺いしておきたいと思うんですが、まず核実験の問題についてちょっと山中長官の御意見をお伺いしておきます。  日本政府は、いかなる国の核実験についても、これは非常に、何といいますか、遺憾であるという見解を持っていると私は思うんです、核実験には反対と。こういう基本的な見解といいますか、考え方というのは変わらないであろうと思うんですが、この点どうですか。
  174. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは日本国民の願望であり、たしか国会の決議もあると思いますし、政府は一貫して、行なわれるつど、いずれの国たるとを問わず、それに対して遺憾の意を表明し、今後やらないように願うというアピールをしていると思うんです。しかし、それはしょせん今日の状態ではごまめの歯ぎしりみたいなものであるという気持ちもしておりますが、しかし、これはしつこく唯一の被爆国日本、また福竜丸の被害を受けた日本人というものにしか持ち得ない特殊な感情、これは諸外国の者にぜひわかってもらいたいし、全地球上の人類が平和で暮らしたい、これからも平和でありたいと願うならば、その日本人のみが持ち得る、持っている気持ちというものを諸外国にわからせる努力をあらゆる機会にすべきである、無力感にとらわれるべきではない、そういう気持ちがしております。
  175. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 まず、それじゃ、いま長官のほうから話がございましたが、核実験に対する考え方、これは核実験だけではなくても、核について当然、私は日本国民は、いましつこくとおっしゃいましたが、確かにこれはしつこく明らかにしなくちゃいけない問題だろうと私は思います。  そこで、当然外務省当局はラロック証言につきましては、このラロック証言が問題になりましたより以前に、もうすでに証言された時点から、外務省はこのラロック証言の内容等について検討を始めておられて、そして、問題のあの発言があって、新聞でも相当報道され、非常に問題であるという御認識に立って、そしてアメリカの政府に問い合わせをした、こういうことでございますか。
  176. 山田久就

    説明員(山田久就君) 大体そういうような方向でございます。
  177. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、大体というのは何か違うところがあるんですか。
  178. 山田久就

    説明員(山田久就君) 私が申し上げたとおりでございます。
  179. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、このラロック証言の中に、これはラロックの発言じゃありません、サイミントンの発言の中にこういうのがあります。「カナダはきっと、インドに対しては十分な禁止条項をつけてあるから、核弾頭を作るのは不可能なはずだと考えていただろう。だがインドはそれでも、作るのに成功しましたね。」、こういう発言があります。これはどういうことですか。
  180. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) そういう発言があったことは私も読んでおります。カナダは、もちろんインドのああいう核実験を支持するつもりで原子力協力をしたのではなく、平和利用のためにやったのであると存じますが、セーフガードと申しますか、保障措置について十分でないところがあったものと思われますけれども、インドがああいう実験をやったということであると存じます。
  181. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 アメリカ局長ですね、できるだけわかりやすくすぱっと言うてほしいんですよ。何となくあとで変なことを言われるんじゃないかと思って勘ぐって答弁をしないで、すぱっと言ってほしいんです。それと、われわれにもわかりやすく言ってもらいたい。この問題は、少なくともカナダがインドに対して、いわゆる原子力発電の原子炉を売った、そのときにいろんな禁止条項をつけておった、平和利用のために利用するんだということで禁止条項をつけておったけれども、実際にはカナダとしても核弾頭をつくるのは不可能であると思っておった、ところが実際問題は、インドがあのいわゆるカナダの原子炉を中心にして核兵器、核実験を行なった、それに至るに至った、こういうことでございますね、どうですか。
  182. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) インドの問題に関しましては、私所管ではございませんで詳しくは存じませんけれども、私の承知しております限りでは、インドが核弾頭をつくって爆発さしたというふうには報じておりませんし、インド政府も、これはあくまで平和目的の核爆発であるというふうに言っております。しかし、それはそういうものを可能ならしめたのにカナダの原子力の協力がある程度あずかって力があったといいますか、その援助を利用したということは事実のようでございます。
  183. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 きょうは私は、外務省の皆さんですね、政務次官、ちょっと目をあけて起きていてください、ちゃんと。
  184. 山田久就

    説明員(山田久就君) 起きていますよ。
  185. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 目をあけてちゃんと見ててくださいよ。さっきから居眠りしているような感じです。感じ。ですから、政務次官ですね、きょうは私は、もうこれは言うまいと思っておりましたけれども、大平外務大臣代理に出てもらいたいということで一週間も前から何回も言っているわけです。にもかかわらず、きょうは政務次官が全面的に大臣の代理をするということであなたにそこにすわってもらっておるんです。しかもきょうは局長は、何か質問すると、私の担当じゃございませんからなんてね、そんなこと言うことはできないですよ、きょうは、外務省当局は。委員長、そうでしょう。どうなんですか委員長、これ。外務大臣に来てもらわぬと困りますよ、あんなことを言ったら。私はきょうは所管ではございませんからなんて、そんなことを発言できるような状態じゃないんですから、もう少し真剣にやってもらいたい。それじゃいまの問題はそのくらいにしておきますけれども、いずれにしても、インドが核実験をやった根源はカナダにあるということは、これはもう国際的にも明らかな問題であります。  それから次にこのラロック証言の中にもありますが、次に核を持つ国、これはこのラロック証言の中によりますと、「エジプトとイスラエルが核兵器を保有するようになるのは時間の問題にすぎない」、こういう発言がありますが、この点は読みましたか。
  186. 山田久就

    説明員(山田久就君) それは読みました。
  187. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 どうしてこういうことになるんですか。どうしてエジプトとイスラエルが核兵器を保有することになるのは時間の問題なんですか。
  188. 山田久就

    説明員(山田久就君) これはちょっと彼の意見でございますからね。私のほうからそれをちょっと推測するわけにはいきませんけれども
  189. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そんなことを言っていると、あなたね、こんなこともう常識じゃないですか。ニクソンが中東を訪問しまして、そして当時のニクソン大統領がエジプト、イスラエルに対して原子炉と濃縮ウランの供与を約束した。そして、これが核拡散防止条約とは、核拡散を防止するということとは逆の方向に進んでいるということは、これはいろんなところで述べられています。そういうふうないろんな論調から考えても、私はエジプトやイスラエルが核を持つようになるということは、これはもういろんな角度から考えてみても、もういま世界的に常識的なことになっていることをラロックがさらにこの証言の中で述べた、それにすぎないんじゃないかと私は思う。そこで、こういうふうな事態、いわゆる、その核実験あるいはこのインドのような事態、こういうようなことに対して日本は、核の被害を受けた世界唯一の国としては、こういうことについては少くなくとも協力してはならないと私は思うんですが、政務次官どうですか。
  190. 山田久就

    説明員(山田久就君) それはわれわれの方針でございます。
  191. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それじゃ、ここに明確な事実がある。カナダが韓国へ原子炉を輸出しよう、こういうふうな事態が現在起きています。カナダが韓国へです。これはカナダの原子力公社が韓国電力から発注を受けまして、その発注の内示を受けて、そして韓国の馬山地域で重水炉タイプの原子力発電の建設が行なわれようとしています。それを受注するというのが日立製作所です。そして、丸紅を通じて本格的分業生産の協力をすでにもうカナダのほうへ申し入れをしておる。しかも、その日立の受注総額は二億五千万ドルである。これは大蔵省当局になると思いますが、この二億五千万ドルのいわゆる対韓国の借款ですね、その借款を前提にしてこの建設が進められようとしております。一体これについて、カナダに対してすでにもう技術者の派遣なんかも行なわれようとしている。こういうふうなことが現実にあるわけですけれども、この問題についてはどうお考えですか、大蔵、外務両次官、所見をお伺いしたい。
  192. 山田久就

    説明員(山田久就君) 本件につきましては、さらにもっと具体的にあれをつかんでからお答え申し上げることといたしたいと思います。
  193. 柳田桃太郎

    説明員柳田桃太郎君) 本件につきましては、去る十月十八日の日本経済新聞に載っておりましたので、関心を持っておりますけれども、正式に外務省当局にも、また大蔵省にも、さような資金の関係の申し入れもございませんし、どういうような商談が進められておるということも承っておりませんので、まだ政府として答弁申し上げる段階ではないと考えております。
  194. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうすると、政務次官、非常にあいそのない返事ですけれどもね、もしこういうふうな話が具体的に出てきたら、あなたどうします。これは仮の話じゃない。現実にこういう話が進んでいるわけです。こういう話が出てきても受け付けないという政府の基本的な考え方でなくちゃいけないと思うが、両次官どうです。
  195. 山田久就

    説明員(山田久就君) おそらく、内容はもう少し調べてみなきやわかりませんけれども、平和的の目的のためのものであろうかとも思いまするけれども、われわれの根本方針からいって、それが妙なことに発展しないように、その保障措置その他のことがどういうふうになっているか、いろんな点のやっぱり確認、措置を待ってみて、それでこの問題について見解を表明するということになろうかと思います。
  196. 柳田桃太郎

    説明員柳田桃太郎君) 十分なる調査を遂げて、核拡散防止につながるような行為でないことが望ましいのでありますから、そのときになりまして十分検討いたしたいと思います。
  197. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 まず、外務政務次官、これはあなた平和目的のためなら云々、あるいは十分なる保障措置をつけてと、こういう答弁をいたしました。現実にカナダの場合、当時は十分なる保障措置と思っておったんです、現実に。現実に十分なる保障措置をつけて、禁止条項もつけておったというんです。ところが現実にはそれがあとで十分ではなかったということになっているわけです。あなた、これは保障措置をつけようとかつけまいとか、そんなことよりも、こういうことは根本的にわれわれ日本はもう関係しないほうがいい、そういうような基本的な考えに立たないといけないんじゃないですか。大蔵省ももう一歩、十分なる調査——十分なる調査というのはこれは当然でしょう。当然ですね、それは。しかし、このラロック証言に見られるような現実にカナダという国はそういう前科があるわけです。われわれ日本の国は、先ほども大臣がおっしゃったように、核という問題について深刻にならなくちゃいけないという基本的な問題がある。これは韓国が核を持つという問題だけじゃなくて、それに日本が全面的に手をかしているということになります。現実にはカナダのあれがつくるんじゃないですよ、日本のいわゆるメーカーがつくるわけです。こんなことを許しておっちゃいけないと私は思う。あらためて答弁もらいたい。
  198. 山田久就

    説明員(山田久就君) われわれの方針は、いま先生のおっしゃったような基本方針は持っているわけですけれども、しかし、もっと具体的な内容をしっかり知った上でこれについて見解を申し上げることが至当であろうかと考えておりまするので、そういうことを申し上げておるわけでございます。
  199. 柳田桃太郎

    説明員柳田桃太郎君) いまさきの私の答弁を訂正しますが、核拡散にならないように、核拡散にならないことが前提でございますから、そういうような前提で原子力平和利用が行なわれるというはっきりした見通しがない場合には、わが国は、国としてこれに手をかすということには非常に危険があると考えております。
  200. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 わかりました。まあいずれにしましても、いま大蔵政務次官のほうから核拡散にならないようにということでございますから、これは非常に抽象的な問題ではぐあいが悪いんで、現実にこれは核拡散になっているわけですね、こういうようなことは。これは、たとえばいまのカナダがインドに対しての問題だけじゃなくて、そのほか、エジプトにしましてもイスラエルにしましてもこういうような問題が必ず出てくる。これは要するに、われわれ日本の国はそれに手をかしているということになるわけですね。ですから、そういう点では、いずれにしてもこういう問題が出てきたときには、その日本の基本的な姿勢に立ち返って検討してもらいたいと思うんですが、政務次官の答弁をもう一回。
  201. 山田久就

    説明員(山田久就君) 先ほど申し上げましたように、われわれの核問題についての基本方針があるわけです。にもかかわらず、エネルギーというものの昨今の状況からいって原子力問題というものもあるわけですから、そこら辺のかね合いや実情、そういうことも、われわれが実態を承知しないでそれで一般的に申し上げることもできかねるという点があるんじゃないかと思うのでございまして、その点は御了承いただけるかと思います。
  202. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いずれにしましても、政務次官、あなた実態がわからないと。もしわかったら、あなた実態を明らかにしますか。わかっても、いま現状では明らかにしないというのが現実の姿じゃないですか。  これはもう一つ、最近の外務省の姿勢というのは、非常に私はよくないと思う。とにかく、たとえば私の手元に、ここに国防白書というのがある、アメリカの国防白書。政務次官、国防白書は、これは毎年アメリカの基本的な政策として出ているわけです。私は国防白書を一ぺん見せてもらいたいと、防衛庁長官会ってきた人の国防白書です——一ぺん見せてもらいたいと言って資料要求したら、出てきたやつがこれですわ。全部英語で書いてますよ、これ。これは、日本語で書いたやつを一ぺん出してくれませんか。
  203. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) 米国政府は、種々の問題に関しましていろいろな白書をつくっておりまして、きわめて膨大なものでありまして、もちろん国防白書はその一つでございまして、われわれも勉強はいたしておりますけれども、日本に直接の関係のあることが書いてあるということでもない限り訳すということはいたしておりません。分析し、勉強はいたしておりますが、日本訳は正直のところつくっておらないのでありまして、それを全訳して出すということはちょっとごかんべん願いたいと思います。
  204. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は、局長ね、あなた方は日本訳はしていないなんて言いますけれども、現実に日本訳したやつがあるんじゃないですか。そのコピーです、これは。こっちはしたほうのやつです。コピーしか私はもらってこなかったんですけれども、現実にあるんじゃないですか。あなたがた、ないということはないです。あるんですね。現実に手に入っている人もいる。いるんですよ現実に。にもかかわらず、あなた方はこういうふうなものを見せて、そして国会の審議の資料なんて言ったってまずいんじゃないですか。われわれが真剣に資料要求したら、それに基づいてやっぱりそういうふうな資料、この翻訳された資料を提出する義務があるんじゃないですか、少なくとも。政務次官どうですか、これ。
  205. 山田久就

    説明員(山田久就君) 先ほど申し上げましたように、外務省としては翻訳はつくっておりません。きっと、ごらんになったのは、特にそのほうに関心のある向きでつくられた翻訳じゃないかと、こう思いますので、全般についていろいろな点、これは親切であることは全く私も願うわけでございまするけれども、全部ということにもまいりませんので、その点はひとつ御了承を得たいと思います。
  206. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いずれにしても、あなた方が国防白書をなかなか出さない根源は一体何か。これはもう防衛庁長官、アメリカへ行ってこられてわかったんだと思うんですが、午前中の質疑の中でアメリカの世界戦略の問題が出てまいりました。そういうふうな中で、私は、今回のこのシュレジンジャーの国防白書ですね、いわゆる明らかに世界戦略は変わってきたんじゃないかと思われる点が幾つかあります。これは大臣、特にその中で、先ほど午前中にも少し問題になりましたけれども、核の戦略が変わってきたんじゃないか、こう思います。大臣は、そこら辺の問題については今回は議論なかったですか。
  207. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 議論があったかなかったかという質問にはちょっと答えかねます。しかし、アメリカの核戦略の基本が変わったのではないかということであるならばお答えできると思いますが、それはシュレジンジャー長官になりましてから、いままで大都市あるいは軍事産業等に向けられて、相互一億人の報復殺傷能力、確実破壊性ということを長い間ICBMを中心とする戦略の基本に据えておりましたものを、それに一方がちゅうちょを感じた場合において核を他方が行使する可能性なしとしない、そのリスクを埋めるためには、その核のほこ先と申しますかね、要するにそれの指向する先を多様化すべきである。すなわち、相手方の核のサイロその他軍事基地というものにも多目的に核の目標を展開しておくべきである。それが、相手方がちゅうちょするであろう、すなわち一億相互殺傷ということにちゅうちょを感ずるであろうということにおいて発し得るリスクというものを除く、すなわち、どんな小さな核の使い方でも、それは明らかな報復殺傷というものが具体的に行なわれるという変更が行なわれたことは、戦後におけるこれは米側における核戦略体制の大きな変化である、そのことは私は確かに言えると思います。
  208. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ただいまの大臣答弁について、外務省当局は、その問題について国防白書の中に明快にうたっているわけでありますが、外務省はどう受けとめられますか、この問題について。
  209. 山田久就

    説明員(山田久就君) 外務省として、その点についてどう受けとめるかというのはなかなかむずかしい問題でございます。アメリカのほうの戦略の問題でございますので、いまその方面の責任を持っておられる防衛庁長官のおっしゃられる、まあそういうラインのことかというふうに考えるほかないと思っております。
  210. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これはね、委員長、話になりませんで、実際問題。国防白書の中に、いま大臣がおっしゃったことは三カ所も四カ所も出ている。これは先ほどから、事前協議の対象の中で口頭了解事項というのは相当問題になった。違う角度から質問をいたしますが、まず、アメリカ局長、核の問題の、このいわゆる事前協議の問題の中で、特に口頭了解事項というのがあります。これが、現実に口頭了解事項としてわれわれ国民の前に明らかにされたのはいつですか。
  211. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) この口頭了解事項につきましては、安保国会以来、政府はおりに触れ国会で御説明申し上げておりますが、紙にした形におきましては、昭和四十三年四月二十五日に資料として提出しております。
  212. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この問題は、現実に正式に国民の前に明らかになったのは、文書として出たのが昭和四十三年四月二十五日です。そうですね。現実に国会で問題になったのが昭和四十三年の三月、昭和四十三年の二月、大体、昭和四十三年じゃないですか。そうでしょう。口頭了解事項は、現実にこれができたのはいつですか。
  213. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) 安保条約は昭和三十五年に締結されたわけでありますが、その以前の交渉段階においてこういう口頭了解が成立いたしまして、それが安保条約を審議する国会において政府側から説明されておった次第でございます。
  214. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 あなたね、ちょっと、ややこしい言い方をしないでください。少なくともこの交換公文がかわされたのが一九六〇年一月ですね。一九六〇年というのは昭和何年ですか。
  215. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) 先ほど申し上げましたように、昭和三十五年でございます。
  216. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 昭和三十五年でしょう。昭和三十五年の交換公文をかわすときに、このときのいわゆる六〇年安保のときに、いわゆる口頭了解というのはできたわけでしょう。そうすると、われわれ国民の前に出てきたのは実際七、八年から十年近くたってからですね、これ。そうでしょう、違いますか。
  217. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) 私どもの説明が不十分であったかもしれませんが、そういうふうな紙の形にして出たのは昭和四十三年でございますけれども、先ほどから申し上げますように、昭和三十五年に安保条約が締結されましてから、これを審議いただきました国会の場において政府側はこの口頭了解の内容を御説明申し上げておった次第でございます。
  218. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それはいつの議会のいつの会議か詳細に言ってください。
  219. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) 安保条約を審議いたしました国会は非常に長期間にわたり非常に詳細に審議されましたので、いろんな委員会その他において説明申し上げておると思いますが、その点はもし御必要でございましたら議事録その他を当たりまして、資料として提出いたします。
  220. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は、少なくともこの口頭了解事項として大臣答弁をし、正確にこういうふうなデータとしてきちっと出てきたのは、少なくとも五、六年たち、十年近くたってからだと思うんです、実際問題ですね。それ以前に、現実に昭和三十五年の検討のときに具体的にどういうぐあいに出ておったのか。もし、それがどういうぐあいに出ておったかということがはっきりしなければ——これは私は前々から出ておった、そうします。そうすると、それじゃ先ほどの問題とからんで、その点はあと会議録をちゃんと調べて教えてもらう、そういうぐあいにします、議論を進める上からそうします。  そこで、先ほどの核弾頭の問題で、アメリカの核戦略が、もうことしの国防白書を見ても十分変わってきた、いままでの、いわゆるこの中長距離ミサイルでばんばんやるという、そういうような、もちろんそれもあるわけです。あるけれども戦術核が中心になって、相当いろんな、確実な破壊ですからね。そうしますと、先ほど上田委員の質問の中で、この問題が含まれているのかどうか、この核弾頭の中にいわゆる戦術核は含まれているのかどうかということについては、その後協議をしていないとおっしゃっていました。これは確かに協議してないということであれば協議すべきであると思うんだ、私は。上田委員とこの点については同じです。いずれにしてもこの点は早急に検討し、そしてそこら辺のところも詰めてもらわないと困ります、やっぱり。これはアメリカを信用しろというだけでは困るわけです。その点どうですか。
  221. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) 先ほど上田委員にもお答えいたしましたように、サブロックはどうであると、そういういろんな問題について向こう側に問い合わしてどうのこうのということはいたしてはおりませんけれども、核弾頭ということはすべての核弾頭でありまして、戦術核兵器も含むことは明らかでございます。その点は当初から明らかでございます。
  222. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、もうちょっと詰めてお伺いしておきたいと思います。この核の持ち込みの問題ですけれども、持ち込みということは、これはどういうことですか。
  223. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) この点につきましては、前々から御説明申し上げておりますところでございますけれども、核兵器の持ち込みと申しますのは、核弾頭及び中長距離ミサイルの持ち込み並びにそれらの基地の建設ということでございます。持ち込みに当たります以上、それがたとえどんな短期間のものであっても、持ち込みであるということはこれまた安保国会以来繰り返し御説明申し上げているところでございます。
  224. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それはわかりましたけどね。その持ち込みというのは、さらに船とか飛行機とか、そういうようなものに積まれたものが日本の港へ立ち寄る、これはどうですか。
  225. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) 船なり飛行機に搭載しまして日本に持ち込んできますという場合には、もちろんこれはそれに該当するわけでございます。
  226. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 もうちょっと詰めておきますけれども、要するに船に積まれたものが日本の領海に入ったら持ち込みですね、これはどうですか。
  227. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) 領海内に持ち込んでまいります場合は、当然事前協議の対象になるわけでございます。
  228. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうすると、これはここでいう、この装備の重要な変更の中の核という、この持ち込みの認識について、この核の持ち込みの認識について、これがアメリカと日本と食い違っておる。これは先ほどアメリカ局長ですね、アメリカの軍艦の地位の問題についてアメリカ軍がどう考えているかわからないけれどもとあなたおっしゃいました。アメリカ海軍の軍艦の地位というものは一体どういうふうに考えておりますか。
  229. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) 軍艦に関しましては、国際法上一つの地位を持っておるわけでございまして、不可侵権とか、そういうものは持っておると思います。
  230. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 おっしゃるとおりですね。おっしゃるとおり不可侵権なり、それぞれこれは国際法上アメリカがどう考えよう、日本がどう考えようという問題じゃなくて、軍艦の地位というものは国際的に一応確立されたものだと私は思うのですね。そうしますと、アメリカが当然、自分のアメリカの領土で積んだ核が日本の港に入ってきて、ところがアメリカがこれは事前協議の対象じゃないんだと、こういうふうに考える可能性が私はあると思うのですが、条約局長どうですか。
  231. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) 軍艦が一国の領土の延長であるという考え、そういう考え方については私はアメリカはどう考えているかわからないと申し上げたわけでありまして、軍艦が国際法上の不可侵権を持つということは言えるということでございます。
  232. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうすると、ここのところは一ぺん聞いてみてくださいよ。これはやっぱり詰めてもらわないとわかりませんよ。あなた方は、まあ条約局長いまおっしゃったように、要するに核を積んだ船なり飛行機なり何でも日本の領海に入ってきたら、これは事前協議の対象になる、こういうようにおっしゃいました。しかし、アメリカはそう考えてないかもしれません。自国の軍艦に積んだ核が一々領海に入ったからといって、それが事前協議の対象となるんじゃ困るとアメリカは考えているかもわからない。ここら辺のところはどうなんですか、一体。
  233. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) 先ほど条約局長答弁申し上げましたように、軍艦に核兵器を搭載して日本の領海に入る場合には事前協議の対象となるということは、政府が当初から一貫して申し上げておるわけでございまして、この点は明らかでございます。そして、そういうふうなことを日本政府が言っておるということはアメリカも承知しておるわけでございます。したがいまして、この点についてあらためてアメリカに問い合わせる必要はないということも、この前、木村大臣答弁いたしたとおりでございます。
  234. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そんなこと言ってると、これはあなた方日本国民のためにやってるのか、どこのためにやってるのかわからないですよ、ほんとうに。  それじゃ、山中長官ですね、これはこんなことを言えるかどうかちょっとわかりませんが、アメリカの現在の——これはラロック証言の中にこういうのがあるのですよ。アメリカの現在のいわゆる軍隊の兵力の問題ですね、アメリカのいわゆる戦略の中で、特にこれは現在のアメリカのいわゆる艦隊ですね、これは通常兵器を持たない核戦略という話があるのです。これは現実に具体的な例をあげて述べておられますが、これは、要するに一つのエピソードを書いておられます。大臣も読んだかもわかりませんが、これはこういうふうな、現在アメリカのいわゆる軍隊あるいは軍艦——海軍も空軍も含めてですが、そういうふうなものの主力兵器というのは、最近はもうほとんど核になりつつあるというのが、このラロック証言から私は感じ取れるわけですけれども大臣はここら辺のところは、そうだと思いますか、そうではないであろう、やっぱり通常兵器のほうが多いと思いますか、どうですか。
  235. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) ラロック証言と関係なしに、純軍事的に申し上げますと、極東において戦術核というのはあまり考えられない。しかし、NATOにおいては、もうすでに明らかなように、ヨーロッパ正面のNATOでは七千発、もうそれは何年か前ですけれども、その際ワルシャワが七千五百発、合計一万五千、おおむね。それだけの戦術核の展開をすでに終わっているというようなこと等はすでに明らかになっているわけでありますから、地上兵器としてのそういう戦術核というものはもう大体において軍事戦略、戦術上から普遍的なものになりつつあるであろう。これはもうアメリカであろうとソ連であろうと、あるいは受け入れているNATOの国々であろうと、そう思います。しかし、極東については、私については、私は戦術核を必要とするかどうかについての若干の疑問が、常時持っていなきやならぬかどうかについての疑問は、NATOとはやや違うだろうという感じを持っております。
  236. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣からいま答弁ございましたけれども、これは少なくともラロック証言のあれからいきますと、これは戦艦には少なくとも核は積んでいるであろう。大臣も否定はされていらっしゃらないですね。純軍事的な考え方、装備的な考え方からいってそうじゃないかと、まあNATOはそうだ。極東においてそれは必要であるかどうかはわからない。しかし、この証言の内容から見てますと、少なくとも核積載能力のある艦にはすべて核が積載されているのであろうことは、それはわれわれとしては推察できる。その問題について、これは当然私は外務省としてもこの点については、先ほど大臣が核の問題についてはしつこくとおっしゃっていましたけれども、ほんとにしつこくこれはやらないと、ほんとうのことを言ってくれませんので、やっぱりちゃんとしつこくやる必要がある。ですから、私はお伺いするわけでございますが、いずれにしてもこの問題、これはもうちょっとはっきりしてもらわないと困る。積載能力のある船が現実に日本の港へどんどんどんどん入ってきている。どんどんて、まあ私が言うようにどんどんかどうかわかりませんが、いずれにしても入ってきていることは事実であります。そういう点から考えてみましても、この点については再度私は外務省当局答弁をお伺いしたい。
  237. 山田久就

    説明員(山田久就君) いまの戦術核兵器の現実がどの程度にどうか、なかなかわかりません。あるいはある程度にいっておるという推察もそれである場合があるかもしれません。この点については、にもかかわらず、日本とアメリカとの基本的な信頼関係——何べんても言いまするけれども、そういうこともございまするので、この問題についてのいろいろ話し合い、確認というような点の手段、方法というようなことは、なかなか私は機微な問題があろうかと思います。十分検討さしていただきたいと思います。
  238. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 政務次官、いずれにしてもこの問題は、いまの政務次官の答弁だけではどうしても私納得できない。  それじゃ、さらにもう一点話を進めてまいりますけれども、これは当然のことでございますが、無害通航権という問題があります。これは要するに秘密協定の云々の問題とからんでいるわけでございますけれども、ここで無害通航権という問題について、ただ単純に考えてもらって御答弁をいただきたいと私は思うんですけれども、無害通航権というのはこれは一体何ですか。
  239. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) これは一般国際法上の問題でございますが、公海から公海に通ってまいります船が領海を通過することについての国際法上の制度でございます。
  240. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうしますと、端的にお伺いをいたしますが、核を積んだ船が日本の領海を通過または一時停留するというのですかね、一時寄港、その場合は、これは有害通航ですか無害通航ですか。
  241. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) これにつきましては、過去の国会の御審議におきまして、なかんずく領海に関する条約の御審議を国会でいただきました際に問題になりましたが、その際に、ポラリスその他の核搭載艦の領海通過は無害とは認めないという解釈で御説明申し上げております。
  242. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それは国際海峡の問題がありますけれども、これはいかなる事態になってもやっぱり無害通航とは認めないということは、有害通航であるということでございますね。これは間違いありませんか。
  243. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) そのとおりでございます。
  244. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうすると、これはアメリカのいわゆる軍艦が領海を通過する場合でも、いかなる事態の場合でもこれは有害通航である、こういうわけですね。
  245. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) 無害通航に該当しない場合には無害通航の権利を主張することができないということでございます。
  246. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いまの、もう一回わかりやすくちょっと言ってくれませんか。
  247. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) 無害通航がどういうものであるかということは、沿岸国の主観的な判断と申しますか、御決定によってきめることができるということが現在の国際法上のたてまえになっております。したがいまして、その沿岸国がこれこれの場合は無害通航に該当しないということを決定しております場合に、よその国の軍艦が、そんなことは無視して、おれはこれは無害通航だと主張して入ってくることはできないということでございます。
  248. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 どうも回りくどい言い方でわかりにくいのですけれども、要するに沿岸国が有害ときめた場合は、沿岸国が核を積んだ船は有害だと、こうきめた場合に、その国の船は、いや、うちは無害なんだと、こう言って入ってくるわけにはいかないと、こういうことでありますか。
  249. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) 具体的に申しますれば、自分は無害だと思うということで入ってきた船を、その領海のところで差しとめるという権利が沿岸国にあるということでございます。
  250. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうすると、その国に入ってくる軍艦なり船が、核を積んでいるか積んでいないかということについての確認はどうするんですか。もうちょっと言いますとね、一般的に考えて、アメリカの軍艦はもう核を積んでいるであろうことは、もうこれは常識なわけですね。そういうような場合に、いや、私のほうのあれは核を積んでいません、いや、そんなこと言ったってもう常識じゃないですか、積んでいるはずじゃないですか、こういうぐあいになりますね。そのときにわが日本の国というのは——核を積んで入ってくることま有害と認めた場合ですよ——認めているわけですから、現実にもうそうおっしゃっているわけですから、こういうような場合に外務省は一体どうするのかということです。
  251. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) ちょっと御質問の趣旨、私取り違えているかと思いますけれども、たとえば、ポラリス潜水艦の場合には核兵器の搭載とは切り離して考えられないということが明白でございます。そういうような場合は、したがってポラリスの潜水艦が日本の領海内に入ってくるということになりますれば、その場で直ちにそれは無害通航の権利が主張できないということが言えると思います。ただ、核兵器の積載可能な艦船ということだけでもって核兵器を積んでいるという断定はできないだろうと思います。
  252. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうすると、積んでいるという断定はできないけれども、積んでないという断定もできないわけでしょう、これはどうですか。
  253. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) 理論的にはそのとおりだと思います。
  254. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 理論的であろうと、実際問題そういうことができた場合、どうするかということです。
  255. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) それはそのときに疑いを持てば、事実関係を照会するとか何とかいうような、いろいろな方法があるかとは思います。しかし、先ほどお話に出ましたように、軍艦についての不可侵権ということがございますから、沿岸国が、その場合に乗り込んで行ってこれを確認するというすべはないわけでございます。したがって、これは法律論として申し上げますと、究極はやはり信頼関係ということにならざるを得ないだろうというふうに私は考えております。
  256. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは局長、現実にこれは日本の国民が非常に不信を持ち、そして非常に核の不安を覚える、これは現実にあり得るわけですよ。そういうふうな場合に、あなたね、信頼関係なんて言ったってね、いま日本国民がアメリカをほんとうに信頼しているかどうか、国民投票をやってみなさい。信頼してない人が多いかもわかりませんよ、これは。大多数の人は不信を持ってます。そんなときに現実の問題としてどうするかというような、ここらのところをもうちょっと詰めておいてもらわないと困る。不信を持てばと、一体だれが不信を持つというんです。これはやっぱり日本国民不信を持つから、やっぱりそこら辺のところは確信しないといけないわけでしょう。ですから、そこのところはもうちょっとやっぱりきちっとしてもらいたいと思いますね、どうするのか。
  257. 山田久就

    説明員(山田久就君) 確認問題についての措置が、いろんな政治的な考慮からどういうことが一番より目的に達するかという、いろいろな配慮があろうかと思います。ただ、領海という問題になりますというと、これはアメリカとは条約関係があるわけですけれども、しかしソ連なりその他の国とは条約関係がないわけでございまして、他の一般的な国際法の原則で処理するしか方法がない。その場合には、結局治外法権を持っている軍艦に対しては、先方のほうの証言、先方からの態度というものを無視してこれに対して強制措置を講ずるということはできない。むろん、できないわけじゃないだろうけれども、それはより大きな重大な問題を伴うというようなこともございまするので、一応先方の態度ということでやっていくほかないという、たいへんいろいろ複雑な問題が介在しておるということも一つ十分考慮に入れて対処しなければならない問題かと思っております。
  258. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この問題は、いずれにしましても非常に重要な問題であります。これは、これから領海の問題がいままでの三海里ですか、これが十二海里になり、木村大臣が先般演説をいたしておりますように、日本の非核三原則という問題から考えても非常に重要な問題であるとおっしゃっておりますが、そこら辺からの認識は、次官どうお考えですか。
  259. 山田久就

    説明員(山田久就君) 先般も木村大臣が言われたように、そういうさらに全般的な問題との関連を十分考慮しながら対処しなければならない問題であろうかと存じております。
  260. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いろいろと質問してまいりましたけれどもですね、そこで、もう一点お伺いをしておきたいと思うのです。これは核の四政策というのがございますね。これは現在でも何ら変更はございませんか。
  261. 山田久就

    説明員(山田久就君) 変更がないというふうに御了解願っていただいてさしつかえないと思います。
  262. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 特に、この中のアメリカの核のかさに依存するということですね、これはやっぱり非核三原則の持ち込ませずという問題とは予盾するんじゃないですか、どうですか。
  263. 山田久就

    説明員(山田久就君) この点については同じような御質問がございましたわけで、これに対して、われわれ各般の角度から考えて事実上矛盾しないということで、たてまえとしても、実際問題としても対処し得るということで御答弁しておりまするので、さよう御承知いただきたいと思います。
  264. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 何で矛盾しないのかね。これはやっぱりもうちょっとわかりやすく言ってください。これは核のかさに依存するということは、これはどういうことですか。
  265. 山田久就

    説明員(山田久就君) アメリカの核戦力の抑止力に主として依存すると、こういう考え方でございます。
  266. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それをもうちょっと具体的に言うとどういうことですか。
  267. 山田久就

    説明員(山田久就君) まあ、場合はいろいろあろうかと思います。しかしながら、まあ先ほど、防衛庁長官からもお話がございました、たとえどんな形においても、核兵器の使用ということが、つまり全般的なトータルウォーに通ずるかもしれないという現在の状況であるという、そういう状況においては、つまりそのこと自体が、非常に大きな、現在のつまり大国がこの核戦争だけはどうしても回避しなきゃいかぬ、あるいはそれにつながるものはローカルなものであっても極度に慎重でなければならぬという全般の情勢は御承知のとおりでございます。そういう点につながって、この抑止力というものが非常に広い範囲、根本的な範囲で考えられるということも申し上げられると思います。
  268. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 とするとですね、次官、十年前と現在とはもうずいぶん違うわけですよね。十年前と現在とは核の実情が違ってきています。ことしの国防白書によりましても、アメリカのいわゆる核についての考え方が変わってきているわけですよ。そういう中にあってですね、これはいままでと同じような考え方ではやっぱり困るわけです。これはほんとうに非核三原則を堅持するのがたいへんだという考え方、木村大臣そうおっしゃってるんです。これはそこら辺のところはもうちょっとわれわれ国民に納得できるようにしてもらいたい。ただ単に核のかさに依存していることがほんとうに日本の安全なのかどうか、日本の将来のためにそういう必要があるのかどうか、これは抜本的に検討をやり直さなければいけない問題であると思う。もう一回答弁をお伺いしたい。
  269. 山田久就

    説明員(山田久就君) 先生の言われる点ですね、これは、やはりたての両面からいろいろ議論ができるんじゃないかと思いまするけれども、もしもですね、こういう核戦力というものの抑止力に依存する、たとえば日米安保条約というようなもの、これをつまり根本的にもう一ぺん考え直せというような考え方であるならば、われわれはそういう考えをとるわけにはいかない。少なくとも、現在は何といっても集団安全保障、一国ではこれがやり得ないという基本原則は国連憲章にも言っておるところでありますし、かつまた、拒否権というようなものがあるときに、この地方的な取りきめというようなものにたよっていくことがより確実な方法であるという、そういう検討の結果いまとっている方針でございまするので、この点は引き続きそういう考え方でわれわれはいきたい、そういうたてまえに立っているわけでございます。
  270. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私の持ち時間がもう過ぎたようでございますからこれ以上あまり言いませんけれども、もう一点だけお伺いしておきます。これは一九六〇年五月の安保国会で、高橋条約局長が第七艦隊のことをおっしゃっています。第七艦隊の無害通航はいわゆる事前協議の対象にならない、こういうような答弁をしております。しかし、これは非常に重要な問題を含んでいると私は思います。それでまず第一点は、これは現在もこのとおりであるのかどうかですね、その点一つ。  それからもう一つは、これは政府が先般から横須賀を第七艦隊の母港としているわけですね。母港という意味は、これ一体どういうことですか。普通の港とどういうぐあいに違うか。ミッドウェーの家族の人たちも横須賀に現実に住んでおります。そういう点から考えてみると、私は非常にいろんな問題が出てくると思います。さらに一九六〇年の安保国会で、これは当時の加藤防衛局長が、第七艦隊は一時的寄港で施設・区域を提供するものではないから編成上在日米軍に入らないと。当時は要するに常駐とか母港とかいう考え方ではなかったわけですね。しかし現在では母港となっているわけです。ですから、そういう点から考えてみてもだいぶこれは事情が違ってきているわけです。ですから、今日は横須賀は母港である、まあそういう点から考えてみると、当時とはもう百八十度変わっていると言ってもいいんじゃないかと私は思います。そういう点から考えてみると、当然このミッドウェーの装備の問題については、これは事前協議の対象にしなくちゃいけない、そういう問題も出てまいります。また、ただ単にこの一時通過とか無害航行とは違う。それは、あなた方はミッドウェーに核が積んでないと判断すれば、それは従来の考え方でいいかもわかりませんが、しかしそうではないと私は思う。現実にこういうような問題については先ほどからいろんな証言もございました。そういうような観点からこの問題について再度お伺いしておきたい。  そして、もう一点は、母港にするということについては、これは私は基本的な文書なんというのは何にも知らないんですけれども、母港にするにあたってはその条件なり何なりが、これは米軍との間でかわしていると思うのですけれども、そこら辺は一体どういう条件になっているのか、どういう考え方のもとに母港にしているのか、そこら辺のところは一体どうなっているのか、さらに安保条約の上ではどうなるのか、そこら辺のところを明らかにしていただきたい。
  271. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) 私からもこれはいま御指摘がありました第一点、すなわち高橋条約局長の安保国会における答弁について御説明申し上げます。  第七艦隊が日本の領海を通過する場合には事前協議の対象にならないというたしか高橋、当時の条約局長答弁がございます。これはそのとき実は問題が提起されましたのは、いわゆるその配置の変更という観点からの問題の提起がございまして、配置の変更に関連しまして第七艦隊が日本の領海を通過していくということであれば、それは配置の変更に——やはり配置における重要な変更に該当するものではないので事前協議の対象にはならないということを御答弁しているわけでございます。その他の点につきましてはアメリカ局長のほうから答弁します。
  272. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) ミッドウェーの問題に関しましては、これは実際の現実に着目してみますと、その乗り組み員の家族が横須賀の基地とかその周辺に居住するということでありまして、それ以上のことではないわけでございます。したがいまして、先生のおっしゃいます母港ということの意味が、横須賀がミッドウェーの活動上の本拠地であるという意味でおっしゃるのであれば、ミッドウェーは横須賀を母港とはしていないと思います。  それから、ミッドウェーの、そういう家族を横須賀及びその周辺に居住させる問題について、何か市と公文書をかわしたかということでございますが、これはそういうふうな実態のものでございますから、普通の話し合いはしましたけれども、そういうふうな公文書をかわすような性格のものではございません。
  273. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いずれにしても、外務省のあれは非常に秘密主義というのかね、何というのか知りませんけれども、これはもうちょっと、私はアメリカ局長、われわれ国民に、やっぱりわかるように、どんどん私は秘密文書なんというのじゃなく公表してもらいたいと思うのですね。そうでないと国民の不安は除くことができないと思うのです。  最後に、きょうは大臣と政務次官に申し上げますが、特にこの核の問題については、少なくとも国民の不安というのは、政務次官はさっき鎮静するという話がございましたけれども、鎮静しているのじゃなくて、国民はますます不安を私は感じていると思うのです。そういうふうな意味で、少なくとも政府は、アメリカに対して問い合わせした、アメリカを信用せいというだけじゃ国民はますます不安を感じます。そうじゃなくて、政府自身が、国民に対して一体どういうふうにその核に対する不安を解消する、いわゆる施策ですね、何にもやっていないじゃないですか。やっぱりここら辺のところを政府自身は本気で取り組んでいただきたいと私は思います。この点を私最後に答弁をお伺いすることとしまして、以上で私の質問は終わっておきたいと思います。
  274. 山田久就

    説明員(山田久就君) 国民にできるだけ正しい理解をより深くするために努力するのはもとより政府の任務であろうと思います。引き続きそういう点については、まだ至らぬ点があろうかと思いまするけれども努力いたす所存でございます。
  275. 内藤功

    ○内藤功君 私は四つの点について質問をいたしたいと思います。  第一は、山中長官の訪米の問題です。二番目には、いわゆる核持ち込みと領海通過の問題、三番目は、安保条約五条に関する日米間の協議、そして四番目に、日米共同対潜訓練、この四点につきまして、政府の御見解を伺いたいと思うのであります。  まず防衛庁に、特に長官にお伺いしたいのは、今度の長官の訪米というのは、時期的に非常に重要な時期に行なわれたわけですね。長官の出発なさる数日前に、このラロック証言というものが、日米両国をはじめ全世界の耳目を聳動させた。長官の滞米中は、ニューヨーク・タイムズによって、次々とこの日本政府と違う見解、記事が、権威ある新聞によって書かれている。こういう状況下で、日本の国民は山中防衛庁長官が軍事責任者として、軍事の責任者として、このラロック証言の問題について、あるいはアメリカ側の日本に対する核持ち込みの問題について、軍事の責任者の立場から——私は外交の責任者としての責任はあなたに負わせようとしない。軍事の責任者としてシュレジンジャー国防長官その他のアメリカ軍部の要路者に対して、事実の正確な問いただし、確認というものを行なってくるということを期待しておった人が多いと思うのであります。しかるに、午前中の上田委員に対するお答えによると、全くラロック発言その他——この核の問題についてもという意味でありましょうが、質問をなさらなかった、聞いておらない、聞く必要がないから聞かなかったという御答弁のように伺ったんであります。これは私としては、まず、聞かなかったということにまだ率直に言って信じられない気がする。山中防衛庁長官が聞かなかったということにまず大きな疑いを持つ、持たざるを得ない。さらにまた、もしほんとうに聞かなかったとすれば、これは防衛庁長官として、はたしていまの日本の閣僚として、非核三原則を持っておる、また憲法を持っておるいまの日本の閣僚の一人として、これで一体いいんだろうかという気がするわけであります。したがって、くどいようですが再度この点についてお伺いをしたい。
  276. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) それでいいんです。それでなけりゃならぬ。閣議の席で、たとえば憲法上許容されると思われる戦術核であっても日本は持たないということまできまっておるわけですから、国の基本的な施策というものについて、それは議論はします、意見も言います。しかし、一国を代表して外国に行ってものを言い、行動する場合において、おのずからその権限分野というものが明確でなければなりません。出発前にあたって、総理大臣あるいは外務大臣等から、この問題についてあなたがちょうど行かれるから、総理及び外務大臣の意向を受けて聞いてきてくれという依頼でもあれば、あるいは権限を私が授権されてでも行っているんならば、これはやります。別段逃げているわけじゃありません。しかしこれは、その出発前に外交チャンネルでもって話をするし、外交チャンネルでもってやるという方針がきまってそれで実行されておりますし、そのとおりまた事実進んでおりますから、むしろ私のほうはその問題は触れるべきでないのが正しいのであって、触れなかったのに疑問を持たれるのはあなたの御自由であります。
  277. 内藤功

    ○内藤功君 問題点が二つあると思いますね。一つ防衛庁長官というものは一切このアメリカとの外交、条約の運用、あるいは条約の解釈についてはタッチをしないと、これが望ましいんだと、こういう御見解であります。しかし、同時にこのラロック証言、ラロック発言の問題は、条約の解釈とか、適用、運用という側面を持つと同時に、これは同時に日本の自衛隊の運用、管理にも関する問題であります。たとえばあとでお聞きしますけれども、海上自衛隊と米海軍の共同訓練というのが数十回行なわれておる、この海上自衛隊の当の訓練のパートナーともいうべきアメリカの艦隊がどのように核を装備しておるのか、どんな核をどの検度装備しておるのかという問題は、たとえば防衛庁が訓練の実施をされる場合においても、またあなたの部下である海上自衛隊の方々のこの生命安全というものを考える場合においても、たとえばまあ一つ例をとって言えば、聞く必要がないことでありましょうか。私はこのような問題について、権限論をたてにさっきから言っておられるようですけれども、やはりこれは聞くべき問題であったんじゃないか。くどいようですが、再度、防衛庁長官として、軍事責任者としてこれでよかったのかということを、くどいようですがお伺いしたい。
  278. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これでよかったし、そうであるべきであると思っております。
  279. 内藤功

    ○内藤功君 私は、日本の防衛庁長官が、実際にアメリカに行って、国防長官とどういうふうにこのラロック発言の問題について問いただすかということを、実は半分は期待をしておりました。特にこの山中長官は、なかなかどこへ行っても率直にものを言われる性格の方だし、私は、外交交渉をしてくるべきだというんじゃない。条約の解釈は、あなたが何もアメリカへ行ってきめてこいというそんなことを言っているんじゃない。これはどうなんですかと、たとえばラロック発言の中で、さっきもほかの野党の代表が言ったように、ある日赤い矢じるしのついたミサイルが、防空ミサイルの上に誤ってかま首をもたげたというのですね、こういう事故がしょっちゅうあるという問題。こういう軍艦と日本の海上自衛隊は訓練をしておるし、また将来訓練するかもしれない、こういう関係にあります。さらにこのラロック発言の中には、いまのアメリカの核積載能力のある軍艦であって、実際、核を積載する能力があるのに載っけてないというのは、むしろきわめておかしいんだという発言もある。ここらあたりについて、まあ防衛庁長官は自分でわかっていると言うかもしれないけれども、どうなんだと、特に、あなたは防衛庁長官であると同時に、政府の閣僚の一人でありますから、こういう時期に渡米する閣僚であります。しかも、相当偉い人と、国防長官以下の要路者と会うわけですから、そこでやっぱり聞くべきではなかったか、交渉すべきじゃないかと言っているんじゃないのです。しかし、私はこの問題は繰り返しても、お答えはおそらく予想するに同じでありましょう。先へ進ましていただきたい。  私は最後に一つだけ確認をしておきますけれども、これはいままで、たとえば日本のある大臣とアメリカのある大臣が合って、帰ってきたときの国会報告では、何にも話しませんでした、ありませんでした、そういう点はございませんと言っておきながら、何年かすると、もちろん本人は否定するけれども、いやあのときこういう話があった、あのときこういうメモがあった、あのときこういう密約があったと、秘密協定があったというようなこともいままで絶無ではございません。こういう意味で最後にあなたにお伺いしたい。非公式にもまた秘密裏にも、一切今度の訪来でアメリカ国防長官その他当局者と、このラロック発言や核の問題について話はしなかったのですね。
  280. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 絶対にしておりません。
  281. 内藤功

    ○内藤功君 私は日本の国民の一人として、特にこのいまのお答えについて非常に遺憾だと思います。この時期においてやはり防衛庁長官、私どもは党の立場はもちろん自衛隊については異なる立場をとっているけれども、渡米した以上はいまの状況、あなたの職責から見て、このラロック発言その他の核の問題について問いただすべきであったという点で遺憾であるということを表明をして、先の質問に移りたいと思います。
  282. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 委員長ちょっと。  遺憾であるのはあなたの党ないしあなたの御意見で自由でありますが、どうしても、それを日本の外交当局が向こうの責任者と会ってたださなければならぬということであれば、外務大臣が飛ばれるべきだったと私は思います。しかし、そうでなくて外交ルートでもって駐米日本大使館、安川大使を通じて日本の外務省、おそらく総理も外務省、外務大臣と相談しての上のことでありましょうから、そのルートで話が進められて、そのルートで回答も出ておるということであれば、私がそれにたまたま行っているからといって——これはなるほど表裏一体の関係にあるんですよ、安保条約とその運営の問題ですからね、ありますが、そこのところはきちんとしておくべきことである、私は自分でそう思いましたし、出発前においても先ほど申しましたとおり、何らこの問題についての授権を受けておりませんから、その問題については外務省ルートにおまかせをしておいたということであります。
  283. 内藤功

    ○内藤功君 そこで外務省にお聞きしたい。  まず、いままでの核論議は私なりに承知をしておりますけれども、間違いがあるといけないので。第一ボタンをかけ間違うとあとが全部こういう条約論議、解釈論議は狂ってくるから、最初にわかりきった質問で恐縮ですけれども、いわゆる事前協議の主題となるところの装備における重要な変更、その中の一つである核弾頭の持ち込みということにしぼって聞きますから。いままでいろいろ議論された、この核弾頭の持ち込みという中には、アメリカの艦船が核を積載して日本の領海を通過をする、これは核弾頭の持ち込みという事前協議の主題の、その核弾頭の持ち込みに当たるのか当たらないのか。何回か御答弁なさっていると思うけれども、まずその点を外務省のほうからお答え願いたい。
  284. 山崎敏夫

    説明員(山崎敏夫君) 核弾頭の持ち込みは事前協議の対象でございますから、核弾頭を積載して米艦が日本の領海に入る場合は事前協議の対象となると思います。
  285. 内藤功

    ○内藤功君 ことばじりをとらえて恐縮ですが、なると思いますという表現はいかがなのでしょうか。たとえば、そういうことはないと思うけれども、条約局長が思いますと言うんではだめなわけですね。したがって、そのようなものが法律解釈として、条約解釈としてはどういう公権的な裏づけをされているか、もうおわかりの答弁と思います、念のために伺いたい。もっとわかりやすく聞きましょう、思いますという根拠です。
  286. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) ただいまの核弾頭に限ってという御質問でございましたけれども、それに限定して申し上げますと、先ほど来御説明申し上げておりますように、装備における重要な変更というのは、核弾頭というものに限って申しますと、藤山・マッカーサー間の了解によりまして核弾頭の持ち込みということが書いてあるわけでございます。これがその根拠と申しますか、論拠であるわけでございます。で、その先に、アメリカ合衆国の軍隊の、というのがくっついておるわけでございます。でございますから、これが陸上部隊であろうと艦船部隊であろうと、あるいは航空部隊であろうと、それを問わないということは私どもは明白なことだろうと考えておるわけでございます。
  287. 内藤功

    ○内藤功君 そうすると、持ち込みという中に領海の通過も入ると、一切の例外なしに。こういうふうに言い切ってよろしいんですか。
  288. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) 持ち込みということでございますから、それについて一時的なものであるといなとを問わず、あるいは配置されたものであるとを問わずということだろうと思うのでございます。そこに意味は何らの限定はないわけでございます。
  289. 内藤功

    ○内藤功君 そこが、さっきから峯山さんとあなたの議論を聞いていると、持ち込みが一時的か一時的でないかという議論で終わっているんですね。たとえばあなたのさっきの答弁を聞いていると、アメリカの軍艦が領海に持ち込んだ場合はと、最後に持ち込みということばを使っている。私はくどいようですが、持ち込みの中に通過が入るとさつき答弁された、これはもうそのとおりと伺っていいか、これから議論を進める上の前提として。持ち込みの中には通過は入ると、一切ただしなんて例外はつかずにそれでよろしいかどうか、それだけ聞いているんです。持ち込みが一時的かどうかというようなことを聞いているんじゃありません。持ち込みの中に通過が入っているのかというそれだけの質問でありますから、よく考えて答弁してください。
  290. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) あるいはその御質問にまともにお答えすることにならないかもしれませんけれども、持ち込みという概念があるわけでございまして、それが、その通過とか寄港とか、あるいは長期的な貯蔵であるとかいうようなことによって変わってくるんではないんじゃないかと、持ち込みということばがあるわけでございますから、それが通過によって左右されるものではないんではないだろうか、したがって法律的に申しますと、持ち込みの中には通過は含まれ得るということだろうと思います。
  291. 内藤功

    ○内藤功君 含まれると言わないで含まれ得るとおっしゃる、これはたいへん大きな違いになるんですね。含まれ得るというのは、持ち込みの中に含まれる通過と、それから持ち込みの中には含まれない通過があるという意味ですね。通過の中でも核弾頭の持ち込みになる場合もあるし、持ち込みにはならない場合もある、こういうことですね、お答えは。
  292. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) どうも私はぴんとこないんですけれども、通過というのはまあいろんな場合があるんだろうと思います。でございますから、核の持ち込みでない通過というのも当然これは法律的な理論的な問題としてはあるのじゃないか、そういう意味で私は、法律的に申しますならば含まれ得るとお答えせざるを得ないのじゃないか、こう考えるわけでございます。
  293. 内藤功

    ○内藤功君 ですから、さっきからの議論はすぐにもとへ戻るのですね。どういうわけか、逃げるわけです。私の聞いているのは、あくまでも冒頭の質問で言ったように、アメリカの艦船が、よろしいですか、核を積載して日本の領海を通過する場合、これはすべて持ち込みに当たるのかということであります。そういう質問です。その場合でも、含まれ得る、こういう答弁ですね。要するに、例外があるのかどうか、核を積んだ船が領海を通過すれば、これは全部持ち込みで事前協議の対象になるのか、あるいはそういう対象になる場合もあるしならぬ場合もあるのか、これは大事な点ですから少し時間かけますけれども、きっちりと詰めておきたいと思います。そうしないと質問が先に進まぬ。
  294. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) これは、従来から政府見解というのが明らかにされておりますけれども、核兵器を搭載して持ち込んでくる場合には事前協議の対象になるということだろうと思います。それは通過であろうといなとを問わないと、こういうことではないだろうかと思います。
  295. 内藤功

    ○内藤功君 そうしますと、いま早口で言われましたけれども、核弾頭を積んで、核を積載して、そうして軍艦が日本の領海を通過すればそれはすべて持ち込みになる、こういうことですね、そうですか。イエスかノーで答えられる質問じゃありませんか、答えやすいように聞いているんだから。
  296. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) 事実を前提といたしますればそのとおりであると思います。
  297. 内藤功

    ○内藤功君 いま言われたような解釈は、これまた逃げるといけないからもう一ぺん繰り返して言うと、核弾頭を積載してアメリカの軍艦が日本の領海を通過する、これはすべて核の持ち込みだ、こういう解釈ですね。この解釈は、できればいつの国会と言っていただければいいけれども、何年からの政府の解釈ですか。
  298. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) 私、前の国会の論議を全部知悉しているわけではございませんので、一つの例として申し上げますと、四十四年四月二十四日、参議院の外務委員会におきまして、政府委員東郷——これは当時のアメリカ局長だと思いますが、その答弁としまして、「かりにB52が核を搭載して日本の領空を通過する、あるいはポラリス潜水艦が核を搭載して日本の領海を通航するということがありました場合には、それは配置の問題ではなくして、いわゆる核の持ち込みという観点から事前協議の対象になるということでございます。」という答弁をしております。
  299. 内藤功

    ○内藤功君 いまのその答えは、例をあげて出しているものですから聞くんですが、外務省の見解としては、政府の見解としては、ポラリス潜水艦とかB52のような常時核を備えつけておると認められるような艦船、航空機、これに限った答弁というふうにそれを理解されるか、あるいはすべての艦船、たとえばほんとうなら核なんか積まない輸送船なんだけれども、たまたま核弾頭積んできたというような場合にも全部その見解が適用されるという考えか、その点を聞きたい。それは、たまたま質問がポラリス潜、それからB52というような、核が常備されていると思われるものだったからそういう答弁になったんではないのか、あるいはもう一般的答弁として見てよいのか、そこを聞きたい。
  300. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) これは、ただいま御指摘がありましたように、ポラリスについて言いますると、ポラリスは常時核装備をしているから、したがってポラリスが入ってくることはすなわち事前協議の対象であるということだろうと思います。
  301. 内藤功

    ○内藤功君 そういう観点だと思う……。
  302. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) はい。
  303. 内藤功

    ○内藤功君 それでは先へ進みますが、私はいまの政府の法律、条約解釈論の最大の欠陥、矛盾で、収拾つかない矛盾を持っているのがこの事前協議の核持ち込みと通過についての関係だと思うんですよ。これはもうたいへんな問題に発展するとぼくは思うんです。  で、まず最初に聞きたいと思うんですが、昭和三十五年五月の、さっき峯山委員が引用した衆議院安保委員会での高橋条約局長答弁、手元にありますか。これにはこういうふうに言っているんです。「国際法上の一般原則として、無害通行というのがございます。インノセント・パッセージ、これは、そういう場合には、この問題の対象ではないわけでございます。」、つまり事前協議の問題の対象ではない、無害通航は。「この前申し上げた通りでございます。それは現在の国際法上、領海を単に通過するだけ、これはほかの外国の一般艦船でも同じでございます。」、領海通過については、これは事前協議の対象になっていないという答弁があります。  もう一つ、これだけだと弱いですからもう一つ私は追加して、たくさんあるけれども非常にはっきりしているのが昭和四十三年四月十七日の、これは非常に重要でありますが、衆議院外務委員会の議事録、これはお持ちですか。これに、当時の外務大臣は三木さんでありますが、三木外務大臣相当具体的な答弁をしております。これは非常に明確であります。その一六ページ、上から二段目、まん中辺、三木国務大臣答弁、「通航の場合は持ち込みとは考えていない。港へ入ってきたときにはもう核兵器の持ち込みである。ただ通り抜けるような場合は持ち込みとは考えていない。だから、核兵器の持ち込みを認めないという政府の基本政策に抵触するものではない。いまこれは、私はここに十四条の」——これは領海等に関する条約、「十四条の規定から申し上げておるので、通航する場合、核兵器の持ち込みではない。」、通航の場合は核兵器持ち込みではない、こういうことを答弁しておる。そうして、いろいろこの論議された経過は省略するが、最後に次のように三点の確認をしておるんです。  一つは、外国軍艦の領海の通航については、いわゆる国際海峡を除いて、政府は「事前通告制度をこれを実施するように考慮いたします。」、事前通告制度をやるというんじゃないんです。「実施するように考慮いたします。」、非常に底が抜けています。二つ目、「ポラリス潜水艦その他核兵器を常備しておる軍艦の航行は無害通航とは考えない。」、そこで終わればいいんですが、その次が抜けている。「原則としてこれを許可しない権利を」しかも「留保したいと思います。」となっています。そうして第三点は、「この条約は戦時には適用されない条約であると考えております。」、この三点を外務委員会の終了直前に確認しておるんですね。これはごらんのとおり。  そうすると、いま私が読み上げたいままでの政府見解、三十五年の高橋外務省条約局長答弁、それから四十三年四月十七日、外務委員会での外務大臣三木さんの答弁並びに最終確認、このどれを見たって、領海を軍艦が核を積んで通過する場合は、これは事前協議の対象にはならないんです。なってないですよ。特にその三木さんの最後の答弁を見ると、将来事前通告制度実施するよう考慮しますというのであって、将来考慮するということはいまはないということだ、論理的には、いまはない。事前通告制度も協議制度もその対象になっていないということなんですね。私は、ほかにまだ何か御答弁あれば別ですよ、私どもの常識的な日本語の読み方としてはそういうふうに見ざるを得ない。  そうすると、さっきあなたが言った、この一貫しております核の持ち込みという事前協議の対象の中には、そういう核を積んだ軍艦が通過するというのはみな事前協議の対象ですと、私が念を押したのはそれなんです。例外はないか例外はないかと言ったら、いろいろ迷っていたんだと思うけれども、最後は例外はないと、こう言った。そうすると、いままでの政府の見解、少なくとも——無理は言わない。四十三年四月十七日の三木見解までの考え方と、いまここで条約局長が代表してお答えになったその見解とは違う。とすれば、いつ違ったのか、いつこういう解釈が変わったのか、いつ変わったのか。変えるとすれば、こういう条約の運用の解釈だから相手と合意して変えなきゃならない。これはもう条約論、法律論、国際信義論、何からいったってあたりまえだ。そういうことになるわけなんですね。この点についてどうですか。
  304. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) 過去の国会の審議の過通におきましていろいろな答弁が行なわれたことは私も承知しております。それぞれにつきましては、やはりその前後のいろいろな関係等も踏まえまして十分検討しないといけないんではないかとは存じますけれども、その四十三年の四月十七日の締めくくりにおきまして、当時の三木外務大臣が、いわゆる統一見解と申しますか、まとまった見解としてただいまおあげになりました諸点を説明されたのはそのとおりでございます。私どもは、この三木大臣の統一見解が、やはり正しいものではないかというふうに考えているわけでございますが、これはただ、このときの審議の記録をお読みいただきまするとわかりますが、当時国会に提出されておりました領海に関する国際条約の審議の過程において出てきた問題でございます。そこで、その領海条約で無害通航に関する規定というものが第十四条にございますので、その関連において提起されてきた問題でございまして、第一点の「事前通告制度を考慮する」ということは、これは、一般論としまして外国の軍艦の通航については事前通告の制度というものを考えたいということだろうと思います。これは、その領海に関する条約が実はジュネーブにおいて討議されましたときに、その条約の中に、沿岸国は事前通告の制度を設けることができるという趣旨の提案が行なわれましたけれども、それは、結局においては採択されないで、条約の中では規定されないで終わったという状況がございます。で、事前通告の制度を、したがって採用するかどうかということは、各沿岸国がそれぞれ主観的に判断をして処理をするというたてまえになっているわけでございまして、そういう実際上の必要があるかどうかをひとつ考慮したいということであろうと思います。それから第二点につきましては、「ポラリス潜水艦その他類似の常時核装備を有する外国軍艦の」「通航は、」「無害通航とは認めない。」と、「したがって、原則としてこれを許可しない権利を有する。」と。それから第三点は、「本条約は戦時には適用されない。」というのは先ほど御説明のあったとおりでございます。
  305. 内藤功

    ○内藤功君 きわめて不十分な、また洞察力のない答弁であります。およそ政府委員なり大臣答弁は、もちろん前後の事情を勘案して真意を確かめるべきでありますけれども、ここには明白に、事前通告制度実施するように考慮をする、それからポラリス潜水艦と核兵器を常備しておる軍艦の航行に限って無害通航と考えない、しかも原則としてこれを許可しない権利を留保したいというように言っておるわけであります。そして、もし安保条約の事前協議の対象となるというあなた方の見解を当時政府が持っていたならば、政府委員がそばにいるわけでありますから、必ずこの答弁の中に安保条約の事前協議の問題も当然ここに含まれて答弁されてなければならないはずです。それがないということ、このことは、もう四十三年四月十七日現在の時点において安保条約の事前協議の対象の核持ち込みの中に核積載軍艦の一時通過というものはもう問題にされていなかった。だからここに議論がないんだと、こう見るのが当然だろう。あなた方の前後の文脈を見て理解すればそう見るべきであります。さらにもう一つ、私は理由をつけ加えておきたい。一六ページのまん中ごろ、さっき私が読み上げた三木国務大臣答弁、ここではっきり核兵器の持ち込みという点から見て、これは通航は核持ち込みではないんだ、通航は核持ち込みでないということを三回言っているんです。三木さん、三回もくどく言っているんです。こういう点、さらにその前の、さかのぼっていくと三十五年のいわゆるさっきから問題になっている安保国会当時の外務省条約局長答弁、こういうふうに一貫している動きというのは、事前協議の対象に通過はもう入らないというたてまえで出ているんです。さらにさかのぼれば、もう一つ言うならば、安保条約締結前のこの昭和三十三年十月には、いま問題の藤山外務大臣、こう言っておるんです。アメリカの軍艦が、かりに何らかの形で核武装してくることがあっても、日本を目的としてこないというのであれば必ずしも核兵器を持ち込まれたというふうに解釈するには当たらないと思う、こういうふうに述べているんです。いま、あなた方はとっさの答弁で、前後の文脈を見ると、そしてこれは事前協議の問題ではないというふうに一応答弁されたけれども、この点について後日明確な政府の統一見解、いま一番問題になっているのは通過なんですから、ここで幾らでも私は議論できますけれども、ほかの質問もありますから、この点について政府の明確な見解をお出しになる用意があるかどうか、これだけ伺いたい。
  306. 山田久就

    説明員(山田久就君) あらためて政府のその点についての見解をお出しするようにいたしたいと思います。
  307. 内藤功

    ○内藤功君 事は重大であります。私はそう言われたのに追い打ちをかけるわけじゃないけれども、三木外務大臣答弁は正しいと条約局長は言われた。そうして、これが私どもの言うように、日本語で正確に見るように事前協議の対象にならないという答弁であるならば、事前協議の対象になるという今日の政府答弁は間違っている。どっちかが間違っている。三木外相の答弁が間違っているか、いまのが間違っているか、どっちかはっきりしてもらいたいということを重ねて山田政務次官に要望申し上げておきます。よろしいですか。
  308. 山田久就

    説明員(山田久就君) よろしゅうございます。
  309. 内藤功

    ○内藤功君 それでは、遺憾ながら時間の関係で次の質問に入りたいと思います。  その前に、この統一見解をいつごろまでに政府はお出しになれるか、この点を伺っておきたい。
  310. 山田久就

    説明員(山田久就君) いまできるだけ早く出したいと思いますが、時間の確定の点だけはこの場ではちょっと御猶予いただきたいと思います。
  311. 内藤功

    ○内藤功君 もう一つ要望しておきたい。この統一見解が出た場合に、統一見解の出方、ぼくは二つしか考えられない、論理的には。通過は核持ち込みに当たる、だから全部事前協議する、そういう見解の場合には、前の三木さんの答弁や高橋条約局長答弁というものとつじつまの合うように説明しないとこれは大問題です。もう一つは、事前協議の対象にはもうならない、こういう見解だった場合には、いままでここで答弁しておった答弁は撤回されなくちゃいけない。そして、いずれにしてもどっちかの政府見解が出たらば、その政府見解をひとりよがりで、この国会の中だけで——日本の国内は国会たけていいですよ。しかし、国会の中だけじゃなくて、当の相手国である、よろしいですか、アメリカ合衆国の政府に対して、こういう見解でいいかどうかということを——これは防衛庁に聞くんじゃない、外務省がまさにその役目だと防衛庁長官も言っておるわけですから、外務省が当然その統一見解に基づいて国会報告し、かつ適当なルートを通して、手段はぼくらが指示する立場じゃないですから、外務省において最も適当な手段を通して、アメリカ合衆国政府に対して日本政府の見解を通告して回答をもらう、これを要望したいと思いますが、政務次官いかがですか。
  312. 山田久就

    説明員(山田久就君) この点についての日本とアメリカの最高の政治的了解があり、この事前協議の問題も含めて日本の意思、それに反した行動はとる意図がないということを繰り返し言明しているところでございます。今日までのわがほうの措置は、この基本的な了解に基づいてやっている次第でございます。したがって、いま申された点についての問題は、われわれで、適当と認めるわれわれの考え方で対処してまいりたいと思います。
  313. 内藤功

    ○内藤功君 政務次官に伺いますが、適当と認めるわれわれの方法というのはさっぱりわかりませんから、国会議員であるわれわれに教えていただきたい。
  314. 山田久就

    説明員(山田久就君) 外交的ないろんな措置についてはいまここで申し上げるわけにまいりませんけれども、それはわれわれのいろいろ考えるところによって善処したい、それ以上のことはお許しいただきたいと思います。
  315. 内藤功

    ○内藤功君 いまのお答えについても私は一言申し上げたいが、その前に、山田さんの言われた解釈ですが、これはおそらく岸・アイゼンハワー共同声明、これを言われたんですね、そうでしょう。その中に、「大統領は、総理大臣に対し、同条約の下における事前協議にかかる事項については米国政府は日本国政府意思に反して行動する意図のないことを保証した。」、これはもう国会答弁でいつも外務省が言うことばなんですね。しかし、よく読んでごらんなさい。これは落ちついてよく読んでごらんなさい。気持ちが落ちつかないと間違うんだ。「事前協議にかかる事項については」なんですよ、そうでしょう。事前協議にかかる事項については日本政府意思に反して行動しない。しからば「事前協議にかかる事項について」というのは何か、これがまさにアメリカと日本で食い違ういろんな現象が起きている。また私は繰り返さない。さっきからの質問に出ている。そういう場合に、何が事前協議にかかる事項なのかという、この点が日米でこういうふうに食い違っておったら、尊重するも意思に反するもへったくれもありゃしません。ですから、事前協議にかかる事項についての意思の統一、解釈の統一をはかるように、適当な方法を通してアメリカ政府に対して——アメリカというとすぐにしり込みする人が多いようだけれども、そんなことじゃいけません。行かなくちゃいけない。そして交渉をして解釈の統一をはかるという努力をすることについて、いいですか、検討しますか。
  316. 山田久就

    説明員(山田久就君) 事前協議の主題となる事項、これについては、藤山・マッカーサー口頭了解がその主題となるべき事項の内容と御了解していただいて差しつかえありません。
  317. 内藤功

    ○内藤功君 あげ足をとるんじゃありませんが、このいま言われた交換公文、コミュニケには、核持ち込みの中に通過が入るか入らないかということが書いてありますか、読んだことあるんですか。これはないんですよ、残念ながら。いまあなたの言った、頭で覚えておっしゃったその交換公文とかコミュニケというものには、ぼくがいまここでさっきから鋭く追及した、通過が核持ち込みに当たるかどうか書いてない。私はもうそれ以上追及しませんが、誤った答弁は困るんですね。その点、よく確認しておいてほしい。それで私の聞いた質問ですが、そういうことをひとつ検討してください、いかがですか。
  318. 山田久就

    説明員(山田久就君) 私が先ほど申しました、この主題となる事項ということの中に、これはいろいろな場合、一々全部あげてあるわけじゃありませんけれども、広い意味においてこのことが含まれておる、そういうつもりでこの了解事項はつくられたものでございます。当時この問題を処理した責任者の一人としてその点を申し上げておきたいと思います。
  319. 内藤功

    ○内藤功君 それでは、あまりやっていますとほかの質問ができませんので、山田政務次官、そのお立場でこの問題を検討することを御約束された趣旨だと理解をして先へ進みたいと思います。  防衛庁にお伺いしたい。これは局長でも、長官がお答えになってもけっこうです。今度の訪米に先立って、安保条約の五条に関する協議の問題、これをアメリカ国防長官と詰めていきたいというお考えで長官はアメリカに行ったんですか。
  320. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 特定の目的を持って行ったわけではなくて、対話することを目的として行きました。
  321. 内藤功

    ○内藤功君 きょうの御答弁で、最初長官は安保二条と、これはお間違いになった。あとで五条と御訂正になりました。五条について、つまり日本国の施政下にある領域において、いずれか一方の当事国に対する第三国の武力攻撃があった場合、共同して共通の危険に対処することを宣言する、これですね。この五条の運用というか、解釈というか、およそ五条に関して何かお話があったかと聞いていけないのであれば、何か感じたところがありましたか。
  322. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) もちろん、その問題について話をしたわけです。しかし、お答えするわけにはまいりません。
  323. 内藤功

    ○内藤功君 防衛局長にお伺いしたい。一緒に行きましたね、長官と。長官がシュレジンジャー長官と実質的なお話を、中身のあるお話をなさった時間、それからあなたが、防衛局長が、それに対応する、アメリカの次官になるかどなたになるかわからぬが、それと中身のあるお話をした時間は、延べでいいから大体どのぐらいですか。
  324. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは局長をわずらわさなくとも私が話したんですが、シュレジンジャー長官と一時間四十五分です。クレメンツ国防次官と食事をはさみ、その後の沖繩基地問題等を含めて約一時間半、それからブラウン統合参謀本部議長と約三十分、以上です。
  325. 内藤功

    ○内藤功君 メモのない話で頭にたたき込んであると、およそメモのない話である場合には、きょう聞いておかないと、先へ行って記憶が万一お薄れになるといけないので、少し詳しく聞いておきたいんですよ。  長官は、渡米される前の九月六日の衆議院内閣委員会で、こういうふうにお答えになっております。アメリカの核抑止力にたよるとか、弾薬の量が一体どれくらい持ちこたえられるのか、どれくらいの規模のものに対して日本が一人で対処し得るか、そのあとはどうなるか、燃料は、物資は、こういうような問題について、私は率直に言ってアメリカと思い切った詰めた議論がいままでなされていなかったような気がする、しかし、これもまたおのずから限界があるところでしょうというようなお話。さらにずっとそのあとのところで、防衛庁長官がアメリカのその衝にある国防長官と話をする時期にきておる、そのように考えて、率直な意見交換をしたい。これが渡米に先立っての、もちろん御記憶になっていると思うが長官の御答弁です。したがって、いま私が読み上げたような長官お話について、かわされたかどうかという点を伺いたい。
  326. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 一つ一つについては申し上げませんが、さらにそのほかにも、聞くところによれば新長官は極東の各国には地上兵力は派遣をしないという意向の持ち主でもあるようである、うわさによれば、というようなことも確かめることの一つに加えて言ったつもりであります。たしか速記録にそう載っていると思う。しかし、その一つ一つをどうであったかについては御説明いたしかねますが、全般的に話し合いの末、アメリカとの間における安保条約の私どもの立場からする信頼性は確固たるものであるということについての確証を得たということであります。
  327. 内藤功

    ○内藤功君 そこで少し議論を進めますが、いま私が読み上げたような、たとえば核抑止力にたよる、たよれる、たよれない、こういうような問題弾薬の量はどのくらい必要とされるか、これもいろいろ防衛界で論議された問題、それから、どのくらいの外部からの武力攻撃に抵抗し得るのかというような問題、それから、いわゆるアメリカ軍がどのくらい極東に出てくるのかという問題、燃料は、物資は、こういうような問題は、日米間で問題を詰めるとすれば、これはどうですか、安保条約上は五条の共同行動に関する問題、それはたしか——この解釈間違っておったら直してもらってけっこうですが、四条によって協議をしていく、こういう問題になると思うんですが、どうですか。つまり、長官が渡米の前に、こういうことを詰めたいんだと言ったですね。まさにその問題は安保条約五条の、いわゆる五条に関する協議、これをいまやる時期にきた、こういうお考えですか。
  328. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これはずっと、当然そういう協議はなされていなければならない。しかし、両国の責任者同士が四年も会っていない。ということは、その間において誤解や、あるいはまた不必要な摩擦や、あるいはまた対話のないことによって生ずるいろいろのマイナス面が生ずるかもしれない、生ずるおそれがある、したがって会うことが目的である。どういうことを考えて行くんだということでしたから、大体第五条の中身といわれるような、そういう問題について中心になるでしょうということを言っておるわけです。
  329. 内藤功

    ○内藤功君 五条の中身について、防衛庁長官とアメリカの国防長官が、いわばトップレベルで話をする。そのほかに、たとえば安保協議委員会というのがいまありますけれども、その協議委員会の専門部機構としての何というかね、軍事問題委員会とか、あるいは防衛問題委員会とかいうような機構は、現在私はあるという答弁はまだないですけれども、こういったものについて、さらに整備をしていく、詰めていくという考え方はあなたお持ちですか。
  330. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) そういうものを特別にやらなくとも、大体両国の首脳の間において、相互信頼と確認ができれば、おのずからそれに対して日本は日本の列島防衛、日本の独立と平和を守るための防衛の戦略手段というものは、日本なりにいろいろ立てておるわけでありますから、それに対応して、アメリカ側が日本がどのような事態になったときに加勢をしてくれるのか、してくれないのかというような確証を得るだけの話でありますから、そういう常時の話し合いの技術的な問題の必要性を認めておりません。
  331. 内藤功

    ○内藤功君 昭和四十七年の六月六日に、同じこの参議院の内閣委員会で、いま施設庁長官やっておられる久保さんが当時防衛局長でした。このときの答弁にこういうふうに言っておる。五条の協議ということについての委員会、これについて制服部内に四条、五条の問題も含めて、そういう協議委員会をつくるべきだという意見があるけれどもできていない。それについて「若干制服のほうでは不満があると申してもよろしいと思いますけれども」云々という答弁があります。四十七年六月六日現在、この時点では、制服組の中には安保五条に関する協議委員会というか、そういうものをつくるべきだという意見が相当有力にあったようにうかがえるんですが、その後、今後の訪米にあたってあなたは安保五条の中身を長官お話しになった。そこにいままでの段階とまた一段変わった安保五条についての運用のしかた、もう少しアメリカと詰めてみたいというお考えは持っていないのかどうか、この点をさらに伺いたい。
  332. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 当時の久保防衛局長がどういう背景でそんなことをしゃべったのか、どうも制服にそういう不満があるなどということをしゃべっているとすればそれはしゃべり過ぎでありますけれども、それは当然日本の場合、軍と言っちゃいけませんけれども、行動は軍事行動ということで表現してもそう非難は受けないと思うんですが、実質はそういう場合において打ち合わせというものが望ましいことは申すまでもありませんが、しかしそれはわれわれが年次防衛計画その他でもって毎年やっておることであって、それに対してアメリカの的確なる、信頼できる担保、保障、信頼性、確実性というものをトップレベルにおいて確認をしておけば、私どもは私ども作業を続けていけばよろしいということでありまして、その意味で特別に制服組が不満であるというようなことは私は承知しておりません。
  333. 内藤功

    ○内藤功君 そうしますと、現在の段階で、きょうの答弁で、安保条約の五条の中身になる事項について国防長官と話をしたと、この程度で伺っていいのか、どうですか。
  334. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これはむしろ小さい問題のほうに属するぐらいで、一番大きな議論をしましたのは、やっぱり世界の人類の破滅か、あるいは生き延びるかという問題につながる米ソのミサイルを中心とした世界戦略、ことにそれをアメリカ側からの戦略というものを中心にして、アメリカもまた戦争を願うものではなく平和を願うものであることもまた確認しましたし、それらの全般を踏まえてわれわれがいわゆる俗に核のかさの下といわれておる、アメリカ側にそれを依存して日本は持ち得ない力でありますから、そして日本に許された憲法その他の諸制約の中で自衛力というものを持って、そして日本の独立と平和と安全というものを守れるかどうかということについて、それを私が確証を得たということにむしろ尽きるかと思います。
  335. 内藤功

    ○内藤功君 小さい問題と御謙遜なさるけれども、日本国の防衛庁長官ですから、それは世界人類の問題もいいでしょうよ。アメリカ、ソ連の問題もいいけれども、あなたはまず足元を見なくちゃだめですよ。足元はやっぱりラロック発言だし、核積載艦の問題だし、大きいこともけっこうですよ。しかし足元のやっぱり日本の安全の問題を考えなくちゃいけません。そういう点で、いまいかにもこの五条問題が小さな問題と言われたけれども、少しふに落ちないところがある。  そこで、日米間の協議機関の問題は、いまの御答弁でそういうものはつくらないと、制服の一部にそういうものがあっても日米間にそういう軍事委員会のような、協議委員会のようなものは一切山中長官としてはつくる必要ないと、つくらないと、こういう方針であるかどうか確認しておきたい。
  336. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私は、第五条を小さな問題と言ったのではなくて、もっと大きな立場からの議論ということを言ったわけです。私ども日本にとっては、この第五条はきわめて大きな問題でありますし、あなたのいわゆる、自称される鋭い追及に対して私は自分の脚下はきちんと照顧して把握しております。したがって、みずからが把握している、制服も含めた防衛庁、日本の防衛責任の立場にある者として、そのことはきちんと掌握の上で話をしておるのでありますから、すなわち、アメリカに対して、そのわれわれの立っておるゆえんの前提は確かであるかどうか、これを確かめることはわが国にとっては言われるまでもなくきわめて重要なことである。これは私も同感です。  それから、制服組の間でと言われますけれども、これは軍人は軍人同士でいろいろと陸海空それぞれ親密の度合いも違うようでありますし、いつも話し合いもしておりますし、アメリカや外務省も含めて安保運用協その他もやっておりますけれども、そういう話し合いまでないという意味ではありません。しかし、軍事戦略という問題で常時アメリカ側とそういう打ち合わせをしなきゃならぬということは必要はない。しかし、それは少なくとも一年か二年に一ぺんは相互の首脳というものが、ことに日本のほうの立場から見れば、アメリカの日本の持ち得ない力のもとに依存をして日本の防衛基盤というものが成り立っているわけでありますから、絶えず確認をする必要があるということのために私としては今回渡米したということに尽きるかと思うのです。
  337. 内藤功

    ○内藤功君 なお、最後にこの点について伺っておきたいのですが、いわゆる安保五条の俗に共同作戦、条文のことばで言うと「共通の危険に対処する」行動ですか、いわゆる共同行動についての米側と日本側の指揮権の問題、あるいは特に海上自衛隊に見られる、何というか、防衛分担の問題、こういった問題についても論議がかわされたと、こういうふうに伺ってよろしいかどうか。
  338. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) それは論議が実はかわされておりませんし、もうこれはいままでずうっと明白になっておりまして、第五条の発動によって実際上日本が防衛出動をし、アメリカが第五条によって共同作戦を展開する場合であっても、指揮はおのおの日米それぞれの系統に分かれて、連絡はもちろんし合いますけれども、いずれか一方が指揮官の立場に立ってその隷下にいずれかが属する、たとえば、いまの韓国の軍隊と米軍との関係とは違う、日本は並立的にその場合においても指揮系統は別であるということは明白であります。また、それらの問題について話し合ったかということでありますが、それはもう、それらに付随する問題も含めて全然話をいたしておりません。
  339. 内藤功

    ○内藤功君 時間が迫ってきましたので最後に一点だけ聞いておきたいと思います。  先般防衛庁のほうから、資料要求をいたしまして御回答のあった件ですが、日米共同対潜訓練の問題についてお伺いしたい。  一番最近の対潜訓練ですが、四十九年の五月二十五日から二十九日まで行なわれた伊豆諸島の御蔵島東方海面における演習です。これにアメリカの第十五駆逐隊が日本の第一護衛隊群と共同訓練をしております。この第十五駆逐隊、ものの本によっては第十五駆逐戦隊というのもあるけれども、これは第七艦隊所属、あるいは太平洋艦隊所属、どういう上級の指揮系統から指揮されている部隊であるか。
  340. 丸山昂

    説明員(丸山昂君) 第七艦隊所属でございます。
  341. 内藤功

    ○内藤功君 その駆逐艦四隻が参加していますが、パーソンズ、ローワン、アンダーソン、それからウォーデン、このウォーデンという船はラロック証言のころ佐世保におって核ミサイル艦だと言われた軍艦ですが、これらの軍艦に、四隻の駆逐艦にそれぞれアスロック、それからウォーデンの場合にはテリアが積載されておることはお認めになりますか。これはジェーン年鑑その他で確認できると思うのです。
  342. 丸山昂

    説明員(丸山昂君) ウォーデンはテリアのミサイルとそれからアスロック、これを搭載する能力を持っております。それからパーソンズ、ローワン、アンダーソン、これはそれぞれアスロックを搭載しております。御存じのようにアスロックは非核両用でございますので、核も搭載する能力を持っておると、こういうことでございます。
  343. 内藤功

    ○内藤功君 時間が来ましたので私の質問を終わりますが、このように日米共同軍事体制というものは、単に領海の中において核を積んだ軍艦が事前協議の対象にならないで通過をする、それからおそらく事前協議なしに、ラロック証言が言っているように、核持ち込みもやられている疑いがきわめて大きい。こうして日本の領海が危険なだけじゃない、領域を出た場合、これは事前協議も何もありません。領海を出た公海においては、日本の海上自衛隊は、いま防衛局長答弁されたように、テリア、これも両用だと思うんです、御答弁なかったけれども。アスロックは両用である、核、非核両用。核積載能力のある第十五駆逐戦隊と伊豆諸島の沖で訓練をしている。私は後日またこの点については質問をしたいと思うけれども、このように核を持った部隊と共同訓練をしておる。これはいまの日米安保体制が非常に危険な事態にきていることを示すものだと思うんです。  なお、きょう聞けなかったけれども、この次、聞きたいと思うんですが、これらの海上自衛隊の船には放射能洗浄装置がある。これだけひとついかがですか。
  344. 丸山昂

    説明員(丸山昂君) 当然のことながら、放射能洗浄装置は持っております。
  345. 内藤功

    ○内藤功君 こういうように放射能洗浄装置を持っているということは、核戦闘、これを予想していま訓練をしているということであります。こういうことから、いまの日米共同訓練について、今後とも私どもはこの実態を明らかにして、日本国民の安全の立場から究明をしていくつもりですが、時間がないものですから、残念ながら、これで私の質問は終わりたいと思います。
  346. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) ちょっと。言いっぱなしで終わられては困るんで、これは日米安保条約を結んでいる以上、日米海軍、と申しては、わがほうは海上自衛隊ですが、共同訓練をするのがあたりまえであって、しなければ私は怠慢だと思うんです。相手が核積載能力があるからやっちゃいかぬとかいいとかいう議論は別にして、これはそれぞれの能力のあるアメリカの艦艇とわがほうが、たとえば原潜などは持たないわけでありますから、そういうものに対する攻撃の方法とか何とか、いろんなことは、日本の海上自衛隊と、安保条約を結んでいる相手国との間で絶えざる訓練が行なわれることがあたりまえであって、これはあなた方の党にはたいへん気にさわると思うんですけれども、私たちの安保条約を結んでいる立場からはそれをやらなければならないんだという立場でおります。
  347. 内藤功

    ○内藤功君 一言だけ。  核積載能力のある船に対して、この船とは一緒に訓練やりませんと、おそらく、防衛庁長官もいままでチェックなさったことは一度もないと思います。私は、いまあなたがいみじくも言われたように、いいですよ、訓練やるのは。訓練やる場合に、相手のアメリカの軍艦が核積載能力があるかないか、やはり、これはきちっとして確めていくということも、ぼくは最低の責任があると思いますよ。これはあなたに対する質問じゃないです。言いっぱなしになるかな。またやれば私はやりますよ。
  348. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) それは、わが国は核兵器は先ほど申したように、持たない、憲法上許容される戦術核であってもこれを持たないという政策を国会決議まで含めて持っておるわけでありますから、したがって、われわれの持ち得ないものというものでほかの国では普遍的なものである兵器というようなもの等に対して、先ほど申したとおり、やはり洗浄能力を持ってもおりますし——そういう核戦闘訓練はやっておりませんよ。しかし、相手方が持っており、世界じゅうの国もおおむね備えておるというもので日本は将来とも持ち得ないという場合においては、相手が核装備能力のある船だから共同訓練やっちゃいかぬという、これはさっきの持ち込み論争とやや異にする問題ですから、そのことはひとつ明らかにしておきたいと思います。
  349. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 本日の調査はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十四分散会      —————・—————