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1974-11-12 第73回国会 参議院 大蔵委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年十一月十二日(火曜日)    午前十一時十二分開会     ―――――――――――――    委員の異動  十月二十八日   委員船田譲君は議員を辞職した。  十月三十日    補欠選任         斎藤 十朗君  十一月五日     辞任         補欠選任      辻  一彦君     森下 昭司君  十一月九日     辞任         補欠選任      森下 昭司君     辻  一彦君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         土屋 義彦君     理 事                 岩動 道行君                 河本嘉久蔵君                 野々山一三君                 鈴木 一弘君                 栗林 卓司君     委 員                 青木 一男君                 斎藤 十朗君                 嶋崎  均君                 中西 一郎君                 鳩山威一郎君                 桧垣徳太郎君                 藤川 一秋君                 藤田 正明君                 宮田  輝君                 竹田 四郎君                 辻  一彦君                 寺田 熊雄君                 戸田 菊雄君                 矢追 秀彦君                 近藤 忠孝君                 渡辺  武君                 野末 陳平君    国務大臣        大 蔵 大 臣  大平 正芳君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 竹下  登君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君    法制局側        法 制 局 長  杉山恵一郎君    説明員        内閣法制局長官  吉國 一郎君        内閣法制局第一        部長       角田礼次郎君        法務省民事局第        三課長      吉野  衛君        大蔵政務次官   柳田桃太郎君        大蔵省銀行局長  高橋 英明君        国税庁長官    安川 七郎君        国税庁税部長  横井 正美君        国税庁調査査察        部長       渡邊 喜一君        通商産業省生活        産業局繊維製品        課長       田口健次郎君        建設省計画局不        動産業課長    川合 宏之君        自治大臣官房審        議官       石見 隆三君        会計検査院事務        総局事務総長   石川 達郎君        会計検査院事務        総局第一局長   高橋 保司君    参考人        商工組合中央金        庫理事      馬場 一也君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件参考人出席要求に関する件 ○租税及び金融等に関する調査  (当面の財政及び金融等に関する件)     ―――――――――――――
  2. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  租税及び金融等に関する調査のため、本日、参考人として、商工組合中央金庫理事馬場一也君の出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  4. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 租税及び金融等に関する調査を議題といたします。  これより質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 野々山一三

    野々山一三君 冒頭に、大蔵大臣、改造後の初めての委員会でございますし、留任をされたわけでございますから、それでなくてもあなたは、国政全体についてたいへんな見識者でございますから、そういう意味で、まず、一般的な問題について伺いますので、率直な御意見を聞かしていただきたい。  その第一は、昨日、総理大臣外遊後初めての一時間余にわたります記者会見をやられて、全く有史以来異例な記者会見内容であるという印象を私は持ちました。それは、わけても先般来この委員会でも問題になっております金脈、金権というものの問題が、四十五分をこえるたいへんな時間で、これこそ異例なことで、私は、率直に申し上げて、田中総理総理大臣として、また実権者として、今日、国民的な決定的な疑惑となっております問題について、その疑惑を解消することを通して、国民的な政治信頼ないしは政権としての政治に対する信頼を回復する、それが今日の一番重要な課題だと考えるのは、国民すべての皆さんの期待であろうと思う。あの記者会見お聞きになりましたでしょうか。そしてあなたはあれでもって、国民的な疑惑を解消したとお考えになったでしょうか、率直な御感想を伺いたい。
  6. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) きのうの記者会見は、私も拝聴いたしました。総理会見で、いま問題になっておる疑惑が解消したかどうか、これは、それぞれ聴視された国民の皆さまの御判断によるものと思います。
  7. 野々山一三

    野々山一三君 国民皆さんの御判断だというお答えしかないんでありますが、私は、率直に言って、国務大臣として、主流派のキャップとしての大平大蔵大臣、あなたの御感想はいかがですかと聞いているんでございますけれども、あなたはどうでございますか。率直に平たくおっしゃったらいいと思います。マスコミにたよるわけではございませんが、マスコミの報ずるところ、ほとんど八、九割が、まさにこれで疑惑は解消されるなどとは毛頭考えないというような風説が一般でございますね。あらためて伺います。
  8. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) このいわゆる金脈問題、資産問題が取り上げられまして、最初に、公の記者会見で、田中総理がみずからの見解を述べられたわけでございまして、これから総理大臣が何をなされるか、何をなされないか、あの会見の中でも、いろいろ言われておるわけでございまして、私といたしましては、こういう問題につきまして、総理大臣が今後適切な措置をとっていかれて、一般にこの問題にまとわる疑惑が解明され、一掃されてまいりますことを期待いたしております。
  9. 野々山一三

    野々山一三君 あらためて伺いますけれども、先般、先月の二十二日でありますか、この委員会でこの金権、金脈問題が問題になりまして、数日後、あなたは田中総理に直接お会いになりました。みずから自分の問題であるから率直に国民の前に公開していくべきであるという趣旨のことが述べられたと伝えられています。総理大臣も、また、きのうの会見の中で、機会を見て調査をしてあらためて公開する、こういうふうに言われたのは、あなたの真意総理に伝わったのではないかと思います。そういう意味で、いまのお答えは、総理が御自分でお考えになって、何らかの処置を講ぜられるであろう、それを期待します、こうおっしゃるわけでございますけれども、この委員会で私は、いまたいへんなインフレ、物価高、国民的な、徴税に対する不信感、こういうものがあり、これが国の全体の未来経済情勢全体についてもたいへんな問題の時期だ、大蔵大臣として、総理大臣が何らかのことをお考えになっておっしゃるでしょう、こういうことでは、所管大臣として一体この経済金融、不況、インフレといったような問題について、いま一歩積極的な処置が講ぜられることが、きわめて当然のあなたの責任である。国民はまた、総理とあなたに対して最大の関心を持っていることは間違いない、こう私は考えるんでございます。そういう意味で、総理がいつか適当なことを言われるであろう、それを期待する。こういうのは非常に消極的な言い方であります。だれが、あなたを主流の三つの柱の一つだというふうに言ったかは、問題は別にいたしまして、主流派の一人である、あえて言うなら、私は、事と次第によってはポスト田中その人であるというふうにさえ、私が言うだけでなく、国民的な関心もまたそこに向いていると考えるのはひとつの話だと私は思うんです。あえてこれ以上このことについて述べません。私の真意前提にして、正しく認めていただいて、率直な御見解をあらためて伺いたいと思います。
  10. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 野々山さんの御質問は、きのうの総理記者会見についての感想を述べろということでございますので、いま率直に申し上げたわけでございます。しかし、いまの御質問は、こういう段階にあって、大蔵大臣として、あるいは政府与党責任ある立場におる者として、きのうの記者会見という限定された問題でなくて、国民関心になっておりまするこの問題の解明、そういうことについて何かしなければならぬのじゃないかというお尋ねでございまして、私も率直に、あなたの言うとおりだと思います。で、こういう経済状況も微妙な段階でございますし、国の内外たいへんきびしい環境にあります。したがって、政治は一日の偸安を許さない時期であると思うわけでございます。経済財政をあずかる私どもといたしましても、その日々の仕事に一そう精を出さなければならぬわけでございますけれども、こういうこんとんたる政治的な機構、状況にあることはたいへん不幸なことだと思うのであります。したがって、こういう問題が提起された以上は、どうしてもわれわれの職責としてなすべきことをなさなければならぬと考えておるわけでございます。課税あるいは国有財産処分等に関連してまとわる疑惑があるわけでございまするが、私ども委員会で御答弁申し上げているとおり、こういう課税問題あるいは国有財産処分問題等につきまして、田中さんに間違いがあるとは考えておりません。また、ただいままで私どもが処理してまいりましたことが、適正に処理されておるものと私は信じております。しかし、こういう問題があらためていま問われておるわけでございまするし、いろんなマスメディアでこういう問題が取り上げられてきておるということは、財政当局としても無関心でおれないわけでございまするので、あらためていままでやったことに間違いはなかったかどうか、そういうことは取り急いで調査をしなければならぬと考えまして、現にそういう仕事を急いでおるわけでございます。万万私は間違いはないと思いますけれども、もし課税漏れ等がございましたならば、それは早急に処置しておかなければならぬと、それがわれわれの任務であろうと思います。総理大臣といえども納税者でございますので、私どもとしては適正に、しかも、迅速に処理していかなければならぬと考えております。
  11. 野々山一三

    野々山一三君 適法な行為がなされているものと思うけれども、しかし、再調査をいたします、そして、違法なものがあるならば、これは当然、田中総理といえども課税しなければならない、それが大蔵大臣として、また、税を所管する大臣として当然のことである、こういうことでございますね。――わかりました。間違いないようにそれを実行していただきたいと思います。  第二に伺いたい点は、総理は、違法行為脱法行為はない。かりに違法行為脱法行為がないといえども、妥当でない――道徳的にも道義的にもまた現実的にも妥当でない行為があれば、公人たる総理としてこれは許されることではない、こういうふうに述べられたわけでございますが、そのとおりでよろしゅうございますね。その総理の言われたことば、それをあなたは所管大臣として実行する、こういうことでございますね。この二つについて、あらためて伺っておきたいと思います。
  12. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) きのうの記見会見を通じて総理が言明されたことは、総理の全人格的な見解表明でございまして、私どもそのとおり拝聴いたしております。
  13. 野々山一三

    野々山一三君 総理記者会見で述べられたことは、総理個人の問題として拝聴いたしておきますということだけではなしに、あなたが、私の前の質問お答えになったように、再調査をして、間違いがあったならば当然の課徴をいたします、こういうことを言われたわけですが、それを今度拝聴するということばに置きかえてもらったんじゃ困るわけで、そのとおりのことをやりますかと聞いているわけですから、そのとおりのことをやりますとお答えになればいいわけですから、あらためて短時間にそのイエスかノーかを答えていただきたいと思います。
  14. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私がお答えいたしましたのは、総理がどういうことをおっしゃろうと、おっしゃるまいと、私のほうの義務は果たさなければいかぬわけでございまして、きのうの御表明は、それはそれとして、私は、正しく拝聴いたしましたということを申し上げておるわけであります。
  15. 野々山一三

    野々山一三君 要するに、総理といえども一般国民といえども同じである、こういうことでございますね。――うなずいていらっしゃるので、そのとおりだと確認をさしていただきます。  その次に、地位の利用などということはしたことはない、こういうことも言われたわけでございます。もちろんそれは、地位を利用して不当な所得を得たり、不当な物を取得したり、贈与を得て、それで課税の対象にならないなんということは許されないことはだれといえども一緒でございますね。政治家といえども実業家といえども個人、市民であろうと同じでございます。あえて総理地位を利用したことはない、もしそういうことがあったならば、道徳的にも、道義的にも責任をとるのは当然であり、疑惑が晴れなければ、首相、代議士としての地位も去るのは当然である、こういうことを言われたわけでございます。私は、もちろんあなたに、この委員会でそのことを、報道機関を通して言われたことを、あなたにかわってそのとおりであるかどうかを聞くことは、やや気おくれがするわけでございます。そこで、これは大蔵大臣にも要求いたします、大蔵委員長にも要求をいたしますが、これは非常に政治家として国民の前にまさに虚心たんかい、公明かつ責任のあるものでなければならぬことは、会派を問わず政治家として当然のことでございますので、あらためて総理大臣出席を求めて、ここでその事実を確認をしたいと思います。これはひとつ委員長おはかりをいただきたいし、大臣お答えをいただきたい。大臣総理大臣出席について努力をしてもらいたい。そのことについてお答えをいただきたいということでございます。
  16. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 委員会のほうから、そういう御要求がございましたならば、政府部内でよく御相談をいたしたいと思います。
  17. 野々山一三

    野々山一三君 委員長お答えをひとつ……。
  18. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) ただいまの野々山委員の御発言につきましては、理事会にはかりまして協議したいと思います。
  19. 野々山一三

    野々山一三君 このあとは一般的に、あなたも先ほど政治的不信感疑惑国民的な分野において蔓延していることはたいへん不幸なことである、そういうふうに言われたわけです。これはあなたも私も皆さんも、全く同感であろうと思います。ぜひ大蔵大臣として所管いたします諸般行政政治的分野に関しまして、この政治的疑惑不信、そういうものを解消するために最大限協力をしてほしい。最大限疑惑を解消するための諸般調査及び関連する資料、これは最善を尽くしてこの委員会に提供してほしい。これをあえてあなたに伺います、その考え方について。  いま私があえてこのことを申し上げるのは、後ほど具体的な問題で伺いたいんですけれども一般的に言うところの守秘義務というものをたてに、さらに、個人のプライバシーというような議論前提にいたしまして、憲法を振りかざして、これを公開しない。それはひいては国政調査権というものを無視し、否定し、軽視する、こういうことがあっては、田中総理自身も言っていらっしゃるように、議会制民主主義危機に、そして国民主権者主権もどこかへ吹っ飛ばされてしまって、より日本的な危機、こういうものを倍増していくことになることは当然のように思います。  そういう意味で、国民的な疑惑解消、そしてあなたの仕事といえば、直接的なこの常任委員会としての任務からいえば、徴税の公平をはかることによって、国民的な信頼を得て、日本の未来の発展、安定のために尽くすことがきわめて当然の哲理だと思います。私の見解を率直に述べながら、簡単に一言あなたの見解を承りたいわけでございます。
  20. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 国家公務員、やはりこの場合は、税務官吏守秘義務について、おまえはどう思うかということでございますが、これは、現行の税制を公正に執行してまいる上から申しまして、とりわけ国民の自発的な申告を前提として成り立っておりまする税法の執行を保障する意味におきまして、私は、この守秘義務は尊重しなければならぬと考えます。しかしながら、同時に、国会が税その他国政につきまして、御審議をされる場合、行政府といたしまして、これに対して御協力申し上げるのは当然と思います。さらにあなたが言われたように、国会には国政調査権をお持ちでございます、それは尊重しなければならぬことば当然だと私は思うのであります。このいずれが優先するかということは、私は、いずれが優先するときめられないと思うのであります。問題は、いまいみじくもあなたが言われたように、国会の御質問に対して、あるいは国会要求される資料に対しまして、この守秘義務との関係におきまして、どの程度まで政府が応じられるかという問題は、ケースバイケース個々の事案によりまして判断すべきものと思うわけでございます。この判断にあたりましては、私は、当委員会、たとえば、当委員会理事会等におきまして、政府国会のほうでよく御協議をいただくということを通じまして、私といたしましては、行政の円滑なる執行について、それを保障しようとする政府立場というものを、国会に対しては御理解をちょうだいいたしたいと思います。と同時に、政府も、国会審議に対しまして、最大限の御協力を申し上げるのは当然と思っておるわけでございまして、そのことをどう実行するかは、個々案件ケースバイケース、具体的に御相談申し上げて、それで実行してまいる、今日までもそのようにしてまいったつもりでございますし、今後もそういう手順を踏みながら、双方の理解をもって審議を深めていただくし、私どもも、公正な行政執行を保障してまいるということが、両立できるようにいたしたいものと思います。
  21. 野々山一三

    野々山一三君 具体的な問題については、後ほど私及び関係皆さんから指摘をいたしますので、ぜひいまおっしゃられた最大限提供することによって国民疑惑を解消することにつとめますと言われたことを、ひとつ十分銘記していただいて対処していただきたいということを希望しておきます。  次に、率直にひとつまことに言いにくい話ですけど、あなた個人のことで、私のところへたいへんな投書がきておりますので伺いますから、率直に教えていただきたいんですが、実は、練馬区の高級住宅地の中に、大平正芳名義なる土地建物がございました。五月の暮れまであなたの名義で、五月の暮れまでずっときて、七月あなたが大蔵大臣になられた当時に、あなたの秘書の――名前は言いませんけど名義にかえられたものがある。通称価格的には、土地建物を含めて五千万ぐらいというんですから、たいへんべらぼうなものじゃないですね。目白の総理のお屋敷みたいなそんなものじゃございません。とにかくそれが秘書のところへいっちゃったわけです。これが一つ。そういうことがあったのかどうか。  それから、そのために五千万といわれているんですけれども名義秘書名前になったときに、香川県に本社を持つ地方銀行でございます。名前はあえて言いません。あなたからひとつ言っていただきたい。一億三千万ほどの融資がされ、これが返されておるということ、そうすると、どうもこれが、いつのまにやら五千万ぐらいのものが一億何千万というものになり、それが地方銀行の、あなたの郷里の選挙区の地方銀行から金が出ているという事実があるかどうか。そしてそれは、どういう担保があって、そういう金が動いたのか。それから、名義が変わったというんですから、ただくれたというなら、これは贈与でございますな。法律用語はよくわからぬけれども贈与でございますな。すると、税金はどうなっているんでしょうか。七月のことですから、まだこの年末の関係かもしれませんが、ほんとうはいま取られるべきですね。そういう税関係はどうなっているのか、売買の譲渡なのかどうか、これをひとつお答えをいただきたいと同時に、資料をいただけませんでしょうか。あなたいま最大限とおっしゃったことを、何もたてにとるわけじゃございません。天下大蔵大臣大平正芳なる人がこういうことがあるということが、どんどんどんどんと私のところにいま投書が参っておる。これは私にすると、大平大蔵大臣にしてそんなことはないだろうと、たいへん信頼をしておるだけに。しかし、こんな疑惑が起こったんじゃ、幾ら私らがあなたと一生懸命税の徴収などなどについて議論をしてみたって、大平さんがああじゃないかと言われればおしまいでございますね。これもあなた天下政治家としてのたいへんな政治信頼にかかわる問題ですが、いかがでしょうか。端的にその事実があったかどうか、いま申し上げたようなことを述べていただいて、なおそれを立証するような資料を出していただけませんか、こういうことでございます。
  22. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 練馬土地を持っておりまして、秘書をそこに住まわしておきましたことは事実でございます。で、長い間たちましたので、これを秘書に譲ってやろうという決意をして手続をとっておりますことも真実でございます。したがって、それに関連いたしました一連の事実関係は正確に理事会のほうに私は提出いたします。
  23. 野々山一三

    野々山一三君 ぜひこれは、先ほど、一般論といたしまして、総理の問題について私が申し上げたその直接のあなたですから、あなたはたいへん事実をお認めになり、率直に資料を提出いたしますと言っていただいたことについては、たいへん今日的には敬意を表するわけでございます。一日も早くそれを提出していただくことをお願いしておきます。  次に、参議院法制局長お見えでございますか――国会法百四条に基づきます国税滞納処分により差し押えられた物件の明細書の提出を要求するという可否について、昭和四十一年二月十四日の参議院法制局意見記録としてございますと思いますが、この意見はどういう経緯で出され、どういう性格のものでございましょうか。私の手元にはその記録がございます。そこで、あなた御自身局長時代じゃないように思いますが、そのことについて一言意見はどういう経緯で出されて、どういう性質のものかをお答えを願います。
  24. 杉山恵一郎

    法制局長杉山恵一郎君) 参議院法制局は、御承知のように、法制に関して議員の補佐をいたすわけでございますが、立法その他、修正その他もいたしますが、そういう問題につきまして、たとえば、このように委員会意見を求められたり、個々的に議員さんから意見を求められましたりいたしまして、それに対してお答えをいたしております。で、百四条の問題につきましても、前々から委員会意見を述べたり、また口頭で述べたり、あるいは文書で述べたりいたしたものがたくさんございますが、この問題も、これはやはり特殊な問題について百四条との関係でどういう問題があるかということで御質問を受けましたので、それに対して口頭意見を申し上げたということなんでございますが、そこに出ております文書は、その私たちのほうの職員が、依頼されました議員に対して口頭で報告をする場合の手控えとしてつくっておったものでございます。  そういったような性格のものでございますので、二つの問題がございまして、問題が、百四条全体について普遍的にお答えをいたしておりませんで、質問をされました特殊な問題に特に焦点を当ててお答えをしております関係で、一般的な問題については省略がされておるというふうなことが一つございます。  それからもう一つは、それが職員のほうの手控えでありましたというふうなことで、この文書を見れば質問者がおわかりいただけるというふうには、文書が書いてございませんで、答えをするほうが、質問に対してどういうふうに答えたらおわかりいただけるか、どこの点に問題をしぼってお答えしたらいいかという点の、職員側のほうの立場でものを考えておりますので、したがって、答えなんかもきわめて直截に、それからまた、総論的なことは省略をして、自分のほうでわかるように書いてあるというところが一つございますので、したがって、この書類をお読みいただく場合には、そういう点を御考慮の上お願いしないと、御理解に支障を生ずるのではなかろうかというふうに思っておるわけでございます。  こういう書類は前から持っておりますが、この問題についてもいろいろ各議員さんから御質問をいただきましたが、こういうものを手控えにしておいてお答えをいたしておりまして、で、この書類は、ほかの方には出したことはございませんで、ただ、質問のときにはこれを骨子として、さらにいろいろの問題をふえんしながら御説明を申し上げておるということでございます。  たとえば、総論的な問題について言いますれば、これは国会法百四条の問題である、したがって、成規の手続としては、委員会で決議をして、それで参議院規則第百八十一条でもって、議長の名前でもってした場合にはこうなるのだというふうなこととか、あるいは百四条では、要求をしたら一般的に何でも応じなきゃならぬように書いてあるけれども、議院における証言法との対比の関係で、たとえば、本人あるいは縁故者の処罰に関係するようなことだとか、医師、歯科医師なんかの場合には証言が拒否できるということ、あるいは公務員の場合には、職務上の秘密だといった場合には監督庁の許可が要るとか、監督庁は理由を疏明して拒否することができるとか、そういったような証言法との対比において何かしらやはり制限があるであろうというふうなこととか、あるいは百四条で要求をしても、向こうが提出しなかった場合、それに対する罰則はないとか、そういったようなことは、この文書には書いてございませんけれども、それはうちの職員が答えるための手控えですから、当然、職員が知っているものという前提でつくっておりまして、それらは質問一般に対してお答えをする場合に、いろいろにふえんをして説明をするということで省略させてもらっておるということを御承知願いたいと思うわけでございます。
  25. 野々山一三

    野々山一三君 わかりました。しかし、あなたにお願いしておきますけれども、聞かぬことまでしゃべらぬでもいいですから、そうすると、私も割り当て時間の中でオーバーしてくるので、委員長にしかられますから、あなたがしゃべっている間に委員長にしかられるようなことになったら、あなたも法制局長としてそれが客観的に公平かどうか、よく考えてごらんなさい。あまりなめたりというようなことはしないでください。そういうのを公務に忠実ではないと言うんだよ。どうしますか。
  26. 杉山恵一郎

    法制局長杉山恵一郎君) いまこの書類の性格はどういうことですかという質問でございましたので、その性格はこういうふうな趣旨のものでつくられているのであるということを申し上げているつもりなんでございます。ことばが足りなくて失礼でございましたら、お許しをいただきます。
  27. 野々山一三

    野々山一三君 ごく簡単に聞きますけれども、それじゃ、その意見というものは、法制局長責任において参議院法制局の諸君が、百四条というものに基づいての理解はこうすべきであり、こう議員の諸君に答えるべきであると、こういう意味でつくったものである、当然その見解意見というものは、いまもなおあなたといえども局長といえども、継続してこれはもう当然その解釈は存在するものだと、こういうふうに受けとめてよろしゅうございますか。
  28. 杉山恵一郎

    法制局長杉山恵一郎君) さようでございます。
  29. 野々山一三

    野々山一三君 その意見の中で、私が先ほどちょっと大きい声をしたのは、言わぬでもいいことまで言うてということを言ったのは、これからずっと具体論について聞きたいから言っているわけですよ。これからひとつ頭に置いて答えてください。  その意見の中で、「その要求が適法な国政調査権の行使としてなされるものである以上は、単に公務員が職務上知り得た秘密事項であるという理由だけでは直ちに拒否することはできないものと解される。」というふうに書いてありますが、そのとおりでございますか。
  30. 杉山恵一郎

    法制局長杉山恵一郎君) そのとおりでございます。
  31. 野々山一三

    野々山一三君 そのとおりですね。
  32. 杉山恵一郎

    法制局長杉山恵一郎君) そうです。
  33. 野々山一三

    野々山一三君 それじゃ、公務員が、職務上知り得た秘密事項が「例えば人の営業上の信用にかかわる事項等であったとしても、もとより変るものではない。」と述べられているわけです。それでは、国税庁の職員が――先ほど大蔵大臣ケースバイケースというふうなことばを使って、ここで使う必要はないかもしれませんが、一例として、国税庁の職員が税務調査に関して知り得た秘密事項が、個人の資産状況ないしは営業上の信用にかかわる事項等であったとしても同様であると考えていいかどうか。あえて言いましょう。先ほど大蔵大臣は、それは田中角榮なる名前の内閣総理大臣であると、市民であると、だれであるとを問わず、対等平等で同等である、こういうふうに言われたわけでございますが、ここに書いてある個人の資産状況ないしは営業上の信用にかかわる事項といえども当然であると、こういうふうに記されていますが、参議院法制局としては、その考え方は全く同様と考えていいかどうか、こういうことです。
  34. 杉山恵一郎

    法制局長杉山恵一郎君) 国政調査権の行使をする場合でも、もちろん、国会は人権の保障その他利益について十分な考慮を払うということは当然だと思いますが、結論的に言えば、さっきも申しましたように、その文書としては、結論だけを直截に言っていますので、結論を言えば、いま申し上げたとおりだと思います。
  35. 野々山一三

    野々山一三君 結論的に言えばということなんですけれども、結論にいくまでにはいろんなことがありますな。いろんなことがなければ結論が出ないわけですから、いろんなことということばで言いますけれども、それも当然であると、こういうふうに解するのは、これまたきわめて当然であると、こういうふうに言えるわけです。結論的になんていうところをえらい大きい声をするけれども、過程及び結論を言えばということになるでしょう。
  36. 杉山恵一郎

    法制局長杉山恵一郎君) 私がいま申しましたのは、たとえば、国政調査権の行使でやる場合にも、たとえば、秘密会でやるとかいうふうないろいろな手段があって、できるだけ個人の秘密、個人の利益を守るように御配慮なさることは当然だとは思いますが、それでもなおかつ、国政調至上必要であるとすれば、そういう不利益があっても実施することは当然だと、こういうふうなことを申し上げようと思ったわけでございます。
  37. 野々山一三

    野々山一三君 わかりました。つまり、いろいろな手続や機関や機会があろうとも、それを含めて当然である、こういうことですね。
  38. 杉山恵一郎

    法制局長杉山恵一郎君) そうです。
  39. 野々山一三

    野々山一三君 わかりました。これからの運営上非常に重大なところですから、ひとつお忘れなく、法制局長として、委員部、調査室の諸君にも、あなたの言ったことが間違いないように協力させるよう指示してください。そうしなければ、あなたは、参議院法制局長として、国政調査に対して忠実に職務を執行しているものではない、こう言われてもしようがありませんよということを念を押しておきますから。お答えください。
  40. 杉山恵一郎

    法制局長杉山恵一郎君) 私のほうは、直接、委員会の運営その他については口出しをする立場にございませんで、議員さんからいろいろ意見を聞かれれば、法律の解釈上はこういうことになりますと言うわけでございますので、直接の運営にはうちのほうは関係してございません。
  41. 野々山一三

    野々山一三君 もちろん参考ですわい。あなたが決定する権限はあるわけじゃないんだから。国会を決定する権限はないんだから。その意味では、あなたの言うことは、その限りにおいて了解します。  そこで、次に、その意見の中で、第十国会ですから、昭和二十六年の三月二十六日ですか、参議院の決算委員会におきまして、個人名義による預金口座元帳の写しの提出の要求がなされ、これが提出された先例がある、こういうふうに述べられていますね。これは会議録を見ましてもそうなっていますが、間違いございませんね。
  42. 杉山恵一郎

    法制局長杉山恵一郎君) 委員会の先例録にも載っておる事柄でございまして、間違いないと思います。
  43. 野々山一三

    野々山一三君 これは、繰り返すようですけれども、本件審議にあたって、ずうっと継続的に問題になりますから、ひとつ、いま言ったことを重視してください。私どももあなた方の知恵を十分に尊敬しながら見守ってまいりますからね。あのときはこうだったなんということは言わぬようにしてくださいよ。くどいようですけれども、念を押しておきます。  その次に、この意見の中で「その担保手段の有無、軽重は問うところではない」、というのがございます。これは罰則の有無という問題が中心だろうと思います。そういたしますと、ここで次にもう一つ続けて伺いますけれども一般職の国家公務員には国家公務員法による職務上知り得た事実の秘匿が担保されているが、特別職の公務員である国務大臣については、職務上知り得た事実の秘匿は担保されているのかどうかということが伺いたいわけなんです。これは、一般的には、公務員法による一般的公務員、一般公務員は、公務員法によるきめによって、当然、その知り得たことをどうするか、こうするかの取りきめがございます。罰則もございます。そこで、官吏服務紀律では、特別職たる国務大臣というものにかかわる部分だけが残っているような気がするわけでございます。そういう意味で、先ほど申し上げた「担保手段の有無、軽重を問うところではない」ということの意味は、どういう意味か。それから、国務大臣というのは、職務上知り得た事実の秘匿は担保されているのかどうか。そういう意味では罰則的な条件がないわけですから、公務員の守秘義務というものと、大臣の、官吏服務紀律による秘密、事実の秘匿はどういうふうに担保されているか。罰則がないんだから、当然、国政調査権の観点から、守秘義務たてに、これを拒むということはできないだろうと考えるのは当然じゃないかという意味で付随してお伺いいたします。
  44. 杉山恵一郎

    法制局長杉山恵一郎君) 特別職に対しましては官吏服務規律の中でやはり守秘義務が規定……
  45. 野々山一三

    野々山一三君 え、わからぬ。
  46. 杉山恵一郎

    法制局長杉山恵一郎君) 官吏服務規律の中で、国務大臣といえどもやはり守秘義務が規定されておるという意味では、秘密を守らなければならないということになっておる、その点は先生がおっしゃったとおりでございます。そういう意味では、国務大臣にも守秘義務がある。しかし、守秘義務があったにしても、守秘義務ということを理由としては拒むことができないというのは、先ほどから申し上げているとおりだと。
  47. 野々山一三

    野々山一三君 わかりました。要するに大臣、ひとつよく覚えておいてください。参議院法制局ではそういうふうなものであるということなんです。あとでまたいろんな人に伺いますけれども、念のために申しておきます。  それでは、その担保手段の軽重を問うところではないというふうに述べられている以上、国務大臣守秘義務といえども国政調査権の前には応じなければいけないのだと解するのは当然だろう、こういうふうに思います。そこで、単なる一般的――一般的ということばは抽象論かもしれませんが、国公法など、各種の法律に定められている公務員の守秘義務といわれるべきものとは違いまして、国政調査権との関係において特別職たる国務大臣は罰則がない。当然言わなければならない。聞かれれば言わなければならない。求められれば応じなければならないというところにおいて初めてバランスがとれる。国政調査権行政権との関係においてバランスがとられるべきものであると考えられる筋だと理解するわけです。そういう点についてはどういうふうに、先ほど申し上げましたように、国政調査権の前では譲歩せざるを得ないと考えるのですが、どうですかということを伺っておきます。
  48. 杉山恵一郎

    法制局長杉山恵一郎君) ここで担保手段の有無、軽重のいかんを問わないといっていることは、それに罰則があっても、罰則が重いとか軽いとかということがあっても、あるいは罰則がなくても、その点は、国政調査権との関係では問題を論ずることは必要ないので、国政調査権でいった場合に、守秘義務があるからというふうなことを理由としては、いずれの場合でも断われないということをいっているのだと思います。
  49. 野々山一三

    野々山一三君 それはそのとおりです、わかりました。  あえて申し上げておきますが、たとえば、私は、法律的にあまり知恵がないのであなたに聞きたいのだけれども国会内で、国会議員発言した行為については、これは免責されるような規定がありますね、それと同じように、行政府が、国政調査権に対して罰則が担保されていないという意味は、担保されているといなとにかかわらず、応じなければならないという意味において一致点が見出される。そこに三権分立の憲法上の立場がある、こういうふうに解するのは至当だと思いますが、いかがでございましょう。
  50. 杉山恵一郎

    法制局長杉山恵一郎君) そのとおりだと思います。
  51. 野々山一三

    野々山一三君 次に、職務上の秘密に該当するものについては、手続が議院証言法に移行した場合には、究極的には「その証言又は書類の提出が国家の」ここが問題でございますけれども、「国家の重大な利益に悪影響を及ぼす旨の内閣の声明」があったときにのみ「証言又は書類を提出する必要がない。」とされているわけです。つまり、内閣声明というものがなされるというときだけ、提出をしなくてもいいというふうになっているわけですが、これはそのとおりですね。つまり、一言で申し上げると、百四条を規定する国会法から、議証法に発展をした段階で初めてこれを拒むというのは内閣声明との対比である、こういうことだと……。
  52. 杉山恵一郎

    法制局長杉山恵一郎君) 国家公務員に対しては、証言法では、その公務員が職務上の秘密であるということを申し立てたら、監督庁の許可を得なければいかぬと書いてある。そして監督庁は、理由を疎明して拒否することができるけれども、その拒否を委員会がだめだとおっしゃれば、最終的には内閣声明を出さなければ、その提出を拒むことができないということになっているということは先生おっしゃるとおりでございます。
  53. 野々山一三

    野々山一三君 私は、この問題は、あえて官房長官にも来てもらいたいということで要求しておりまして、官房長官あえて、あと数分後にいらっしゃるわけですけれども、すでにいままで参議院法制局長との間の議論でだいぶ法律的に実体的にわかってきたわけですけれども、何かこう見ると、内閣法制局長官は、私が要求しているんですけれども、何の理由もなく出てこないということはどういうことなんでございましょうか。漏れ聞くところ、あいさつ回りなどもこれあり、こういうことばがあるんだが、そのあいさつ回りと、国政調査権とはどういう関係になるのか、ちょっと大臣大蔵大臣、答えてください。
  54. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは、国政調査権というものは、先ほど私が御答弁申し上げましたように、政府として尊重しなければならぬことでございます。内閣側におかれても、その精神に変わりはないものと思います。いま置かれておる状況で、こちらにおいでいただけないような事情は、そういうことに対する見解が違っておるからというのじゃなくて、物理的な事情だと私は判断いたしております。
  55. 野々山一三

    野々山一三君 物理的というのはいろいろございましてね。しかし、あなたにこんなことを、ほんとうにばかげたことでして、こんな公の席では言いたくないのですが、政府委員諸君が、あいさつ回りなどもございましてということで、この委員会というのは、もう十五日も前からきまっておるんですよ。政局がどうあろうと、こうあろうと、物理的事情というのはどういうこと――うんこしにいったの。いやらしいから言っておるのです。しかし、公にはあいさつ回りなどございましてと言う。それじゃ私、そこを百歩譲って、角田法制局の第一部長、いま参議院法制局長との間にいろいろ聞いたことに対して、あなたは政府を代表して責任を持って答えられますか、そのことについて。
  56. 角田礼次郎

    説明員角田礼次郎君) 私は法制局の第一部長でございますので、政府を代表してと言われますと、ちょっと政府を代表する権限はございませんが、法制局を代表して法律的な面でお答えする権限は持っております。
  57. 野々山一三

    野々山一三君 それじゃ、あなたの言われる法制局を代表してというお話ですから、まあ一ぺん聞いてみます。むだだったら、すぐやめますがね。  これまでの参議院法制局長との質疑応答で、国政調査権との関係では守秘義務など問題にならぬ。つまり守秘義務たてに拒むことはできないということ。そういう国政調査権の発動によっても明らかにできないのは、最終的には、議院証言法の第五条によって、内閣がその政治生命をかけて出す内閣声明の場合だけであることが疑いもなく明らかになったと思います。  そこで次に、この「国家の重大な利益に悪影響を及ぼす」ということについて政府質問をしたいわけでございますが、官房長官お見えのようですから、あなた、申しわけないが、ちょっといままでの経過がわからぬと答えられぬから、少し、十分なんというメモがきておるけれども、これはだめだと覚悟してくださいよ。これは覚悟してくださいよ、いいですね、あなた、おいでの途中ですから。頭を縦に振っていらっしゃるから間違いないと思いますが、覚悟してくださいよ。  そこで、政府が内閣声明を出すような事態とは、政治的には内閣が、解散か総辞職かという重大なときと理解をしていいか、こういう端的な聞き方をしますが、第一部長答えてください。
  58. 角田礼次郎

    説明員角田礼次郎君) 国の「重大な利益」ということにつきましては、かつて国会においても、いろいろこの法案が審議されたとき、あるいはその後論議されております。で、参考人として呼ばれた学者もいろいろ意見を言っております。最終的には、非常に定義がされていないんで、一義的にはきめがたいという答弁がされております。はっきり申し上げにくいということを申し上げます。そういうことを前提として申し上げますが、国の「重大な利益」と書いてございますから、相当重大な利益でなきやならぬということだけは言えると思います。ただ刑訴法だとか、民訴法にも同じような――失礼しました、民訴法にはございませんが、刑訴法にはございます。刑訴法などにも同じ文句がございますが、運用などについては、たとえば、ある秘密の武器といいますか、そういうものの使用方法なども、これを公にすることが国の治安維持に非常に重大な影響を及ぼすというようなことで拒否している例もございます。しかし、いずれにしても、国の存立あるいは秩序の維持というものに非常に重大な関係のあるものであろうということだけは言えるだろうと思います。
  59. 野々山一三

    野々山一三君 どうもやっぱりあなたがああいう意見もある、こういう意見もある、何とも言えませんということが、どうも第一部長たる格のあなたのようですが、これは委員長にも要求しますが、私の言っていることは、これは法制局長官がこないと、公権的な政府としての法律的な議論はできないと思いますので、この部分だけは留保いたします。それであとで長官を呼んでください。これはあらためて伺わなければ議論が合わないですわ、その点はひとつあらためて伺います。――委員長のもとに善処するということですから、あなたのあれは、どうもたいへん聞きにくいんでございます。  そこで、竹下官房長官にあらためて伺いますが、先ほど――私がもう一回繰り返しますから。いままで官房長官――まず、長官になられておめでとうございます。たいへんでございますが、ひとつ大きなからだですからがんばってください。  そこで、これまであなたがお見えになるまで、参議院法制局長から、国政調査権守秘義務との関係について、いろいろ具体的な問題について伺いました。そういうことの中で、国政調査権との関係では、守秘義務などをたてに、諸般の議会の要望、要求を拒むことはできないというふうに、こういうふうに答えられたわけでございます。  そこで、国政調査権というものをたてに、国会諸般のものを要求する、つまり、国政調査権を発動して――現に発動されておると思いますが、要求しても明らかにできないのは、結局、二年前ですか、あなたとだいぶ議論をいたしました議院証言法第五条による、内閣がその政治生命をかけて出す内閣声明の場合だけであるということが明らかになったわけなんです、参議院法制局側としては。それで、もちろん二年前にあなたと議論いたした際も、そういうことである。そういうことが、行政府と立法府との接点であるということが一致したわけですから、あなたはそれを十分御承知なので来ていただいた。そういうものは疑いなくなった。  そこで、この「国家の重大な利益に悪影響を及ぼす」ということが記されているわけでございますけれども、それに対して、あなたに、政府、まあ行政府の官房長官として伺うわけでございます。その内容は、政府が、内閣声明を出すような事態というのは、証言法にいう――政治的には、内閣が、解散ということを、国会、衆議院の解散をするか、あるいは内閣総辞職ということをするかという重大なときと理解していいかということでございます。で、いま第一部長のお話しでは、ああいう場合もあります、こういう場合もありますと言うんですが、証言法が発動されておりますのは、造船疑獄における場合、昭和二十九年、ついに解散か総辞職かという観点から、具体的な例として解散に至ったわけでございますけれども、それは昭和二十九年十二月三日に内閣声明が出されまして、そうして総辞職はその三日後、昭和二十九年十二月七日に解散をしたわけですね、これが具体例でございます。たった一ぺんの具体例、たった一ぺんの大事な経験、たった一ぺんの現実でございます。そこで、そういう二つ、つまり解散か、総辞職かという例しかないというふうに考えていいかどうかということです。
  60. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まず、ごあいさつを最初申し上げさしていただきます。たった一言でございますが……。  昨日、内閣官房長官を拝命いたしました竹下登でございます。どうぞよろしくお願いいたします。   いまの野々山委員の御質問でございますが、確かに二年五ヵ月ぐらい前でございましたか、野々山委員と、当時の内閣官房長官でありました私との間で、国政調査権守秘義務問題等につきまして、なかんずく外交機密文書というものを対象にして、幾たびか御意見を拝聴し、私の答弁も残っておるわけであります。ただ、その後、二年数カ月、党に帰りまして雑務、雑用をいたしておりましたので、ちょっとその間の経過がいささかとぎれておりますので、もう一ぺん野々山委員の著書をもまた読み返さしていただきまして、その上で少し整理さしていただかぬと、どうも二年数カ月とぎれ過ぎておりますので、その点はまず御了解をいただきたいと思うわけであります。したがって、証言法の問題の内閣声明という問題、当時の私の理解では、内閣声明というものは、解散とか、総辞職とかというものは、その瞬間にきまるべきものであって、それを前提における状態のもとに行なわれる法律的行為では必ずしもない、こういうふうに当時私は理解しておったと思うんであります。したがって、この声明そのものの問題が、俗に外交交渉等におけるデクレアーとかいうことでなしに、一般的な、例として必ずしも適切ではございませんけれども、官房長官談話とか、あるいは総理大臣談話とかという問題を、閣議議定書の議定を得た場合にのみ、これを声明ということばでもってあらわしておるというふうに私は当時理解をしておりました。したがって、法律的知識の乏しい私でございますが、この内閣声明の問題が、そういう要素を帯びたときにのみ発せられるものであるというふうには、今日の段階では理解をいたしておりません。ただし、最初申しましたように、二年五カ月のブランクと、継続性に欠けておりますので、その点は、本日、正確な私の答弁として野々山委員を説得するだけの自信は必ずしも持っておりませんので、いまの段階で、とっさの場合、二年数ヵ月前を想起してことばをつづった程度であるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  61. 野々山一三

    野々山一三君 私も、正面言えばあまり、あなたの言うように専門的に二年何カ月やっておったわけじゃないので、あなた一番議論の対象になっておったお人でございますね、あの当時。これ、こういうのがありますが、一ぺん貸しましょうか。全部、これは私だって見ていますよ。私も頭悪いけれども、あんたのほうが頭がいいと思うな。これは認識論だから水かけ論はしませんがね、時間がないからかんべんしてくれと、それはだめですわ。それならこんなことやることないのだから。じゃ、私、委員長要求しますけれども、何時間待ったらあなたはそれを答えられるようにしてくれますか。それによってこの委員会でこの問題を全くあらためてやろうと何だろうと、きちんと答弁していただけるようにしなければ事が進まないんですよ、実際にね。そういう意味で何時間待ったらいいんでしょうか、お答えください。何時間待ったら全部読み返してきちんと答えられるというふうに言われるのでしょうか。これがまあ一つです。  それからもう一つ、あなたも忙しいようですから聞きますけれども、先ほど触れられたものの中に、昭和四十一年でございましたか、次官会議申し合わせというのがありますね、四十年ですか。それに基づいた秘密に関する内閣の決定がございますね、申し合わせが。それを二年有余前に長時間にわたって議論をいたしまして、実定法上から言うならば、国益国損にかかわる重大な影響のあるものについては機密、極秘、秘密云々以下の分類をするということがございましたね。これは覚えてらっしゃいますか、覚えてますか。
  62. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 覚えております。
  63. 野々山一三

    野々山一三君 覚えてますね。それが四十七年の五月に、実定法上から言うと、機密と秘密しかないわけでございますから、二種類にするということをお約束をされて、次官会議決定というものをなされて各省庁、政府関係機関に内閣官房から通達を出されたわけでございますね。そこで二つほど。一つは、次官会議決定というものが四十七年の五月、いままでは機密、極秘、秘密以下とこうなっておった。それを機密というのは実定法上二つしかないわけだ。外務公務員法とアメリカとの防衛条約に関する法律、二つしかない。そこで、二つしかないが、実定法上機密というのがある。あるから、あとは秘密というものしかないわけなんですね。そこで、二つに改められたわけですね、そうでしょう。極秘というものはなくなったわけでございますね。それで通達が出されたはずでございます。ところが、その次官会議決定というのが、実は、私はこんなことを申し上げて相済みませんが、委員会であなたのほうからこういうふうに改めますということが言われたわけです。そこで、そのことの是非、内容的な機密内容、基準、及び指定権者、管理責任者というところまで及びまして、私は具体的なものを提案いたしましたね。いま、あなたは著書と言われたが、著書かどうかは知りませんが、論文を出しました。それを前提にいたしまして、あなたはこれをさらに精査いたしまして、継続的に再検討して適正を期しますということを言われたわけでございます。それも御記憶でしょうね。  ところが、官房長官、困ったことが起こりましてね、あのときの次官会議決定というものが私のところにあったわけでございますね。私、あるとかないとか言いませんが、官房のほうへ聞いてもありませんと、どこへ聞いてもありませんと、こう言うわけでございます。そして官房通達のほうは、四十七年五月二十六日の官房通達だけが資料として出されたわけです。これは理事会に出ただけでございますね。委員会にはまだ出ておりませんが、委員会にも出してもらいたいと思いますけれども、そういうことで途中がないわけでございます。そこで、あなたに出て来てもらって、事実を確認をしたかったわけです。事実を確認していただいたようですから、その資料を全部出してください。そうすれば、当然のことのように、今度問題になっております大蔵省関係、大蔵省及び国税庁守秘義務にかかわる機密の基準、指定権者、管理責任者、その執行の規定、こういうものがあるわけでございますから、それをすべての資料を、大蔵大臣にも当然のこととして要求いたしますが、それを全部出してください、資料として提供してください、そういうことを申し上げる。その二つについて。
  64. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  65. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記を起こして。
  66. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) このいまの野々山委員の御指摘の中で、率直に言って私も記憶を呼び戻しながら伺っておる、これはお許しいただきたいと思うのでありますが、たしか昭和四十年の四月十三日における事務次官会議申し合わせと。これはございまして、いま野々山委員がおっしゃいました四十七年の五月二十六日というのは、内閣官房参事官室の首席内閣参事官名でもって各省に通達した文書であるというふうに思っております。これはまあかなり「例示」とか「秘密にする理由」とか、詳細なもので、資料でございますか、資料としてお出ししているんじゃないかと思います。そのほかは一切ないというふうに私も思っております。
  67. 野々山一三

    野々山一三君 あなた何か三十分に何とか引き継ぎがあるそうで、これはとてもいまの――何時間後にここへ出て来てくれますか。
  68. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) ちょっと何時間後といいましても、いま明確にお答えする状態にございませんが、この野々山委員と、まあ当時の内閣官房長官の私との一問一答を記憶を呼び戻しながらいまお答えしておりますが、これは私なりにも何時間後というような具体的なお話はできないにいたしましても、あの書物の読み返しも必要でありますし、それは野々山さんがその後二年六カ月ばかり、こればかりやっていらしたとは思いませんけれども、少なくともあなたは著者でございますから、著者のほうが読者よりも詳しいのでありますから、当時の記憶を呼び戻すだけでなしに、いま少し私の頭を整理した上で、それは適当な機会と、こういうことで野々山委員との議論は続けなければならないではないかというある極の使命感を感じておることを申し上げまして、まあお答えにかえさしていただきます。
  69. 野々山一三

    野々山一三君 いまの、大蔵大臣
  70. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 国税庁の文書取り扱いの規程でございますが、提出いたします。
  71. 野々山一三

    野々山一三君 長官と大臣両方にお伺いしておきますが、先ほどあなた答弁なかったけれども、縦に頭振っていらっしゃったけれども、その機密と秘密ということしか、二つしか実定法上ないわけでございます。そこで、極秘なんというものはやめにするということを確認されたというわけでございますね、先ほども。ところが、大蔵大臣にも申し上げておきたいと思いますけれども、ここに配られておりますが、私がかねて要求しておりました中に、大蔵省の文書管理規程、これにも、大蔵省文書管理規程の抜粋ですけれどもね、この中にやっぱり機密文書ということばがあるんでございますよ。国会で、機密なんということばはなしにいたしますということを二年前にも約束し、いまも確認をされたのにかかわらず、機密文書という名前があるんです。いや、極秘文書、極秘文書。これはだめですね。やっぱりその秘密という、守秘権というものを実定的に国会で約束され、改正しましたと旨いながら、それが実行されていないということはだめですね。これはすぐ直してください。いかがですか。官房長官自身があのときも、このときも、いまも約束をされたことがやられてないなんという、そんなばかなことが、全く都合のいい田中内閣ですね。あの時分は田中さんじゃなかったかな。田中さんじゃない、佐藤さんのときです。どっちにしても自民党内閣ですねということが端的に言えますね。官房長官それだけ答えて、ちょっと時間を貸しますから。
  72. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 御指摘のとおり、四つあったのを極秘と秘に整理をして、これを原則として……
  73. 野々山一三

    野々山一三君 機密と秘密。
  74. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いや、極秘と秘であったと思います。
  75. 野々山一三

    野々山一三君 いやいや、機密というのは、ちょっと発言しますけどね、先ほど申し上げた外務公務員法に機密という文言がございます。それからもう一つ、正確な法律名は忘れましたけれど、アメリカ合衆国との安全防衛何とかに関するそれを実行するための法律がございますね。この法律の中に機密というのがございます。それ以外は実定法上機密というのはないんですよ、私の知る限り。ささいな法律勉強ですけどね。そこで極秘なんというものはやめますと言ったのが、あなたの先ほどそうですと言われた事項です。ところが、こっちのほうには、やっぱり極秘文書という極秘ということばがあるわけです。これは国会で約束をされたことが実行をされてない。それが何かというと、四十七年の五月二十六日付の文書、官房通達、これが問題になるわけなんです。ここにも「「極秘」「秘」のほかに、「部外秘」又は「取扱注意」の区分を設けている省庁がみられるが、実質上秘密文書として取扱うことが適当な内容のものについては、今後「部外秘」又は「取扱注意」という区分を廃し、申合せ第2項による「秘」によることとすること。」と、こう書いてある。これ日本語でしょう。日本語でしょう。日本語でしょう。そんならあなた、そんなへんてこな日本語がよそに出てくるというのはおかしいじゃないですか。これの事実一つをもってしても、ほかにも明らかに守秘義務とか機密というものを乱用している節がある。だから、お忙しいあなたに出てきてくれとこう言う。そしてあなたは先ほどそのとおりですとおっしゃったわけ。にもかかわらず、また、ぞろ極秘と秘密なんて、何だか機密とあれでしかないわけですからね。これが非常に内閣官房通達もおかしい、じゃ、国会議論することといったら何だかわけがわからなくなりますよ。これいまお答えできないならひとつお答えができるようにしてください。もうこれ以上この問題は打ち切りますから。これ委員長、正式に委員長からいま問題になった問題を明らかにしてもらうために、あらためて時間をつくると、そのために、内閣としてもきちんとした見解を整理してくるということをあなたから確認してください。これは理事会でどうのこうのの問題じゃない。これ連日、官房長官、ここ数日来、連日、内閣官房なり何とか何とかで話が毎日違うんでございますよ。だから、あなたと私がそのときの張本人ですから、あなたと私とここで対決する以外道はないと言ったら、あなたは忘れたから時間貸してくれと、今度逃げということばでしょう。そんなふうに、あなたを責めるつもりはないけれどもね、いかがでしょう。
  76. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) いま、野々山委員の御発言にもありましたように、私も当時のことをいま記憶を呼び戻しつつ答えるという程度でありまして、そしてあの書物も読んでおりますし、そのことを整理した上で、そしてこの数日間にしろ、野々山委員政府関係者との間にあった質疑応答も整理した上で、私としてお答えする機会は持たなきゃならぬと、みずからもそれはそのように思っております。
  77. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) ちょっと速記をとめて。   〔午後零時三十六分速記中止〕   〔午後零時五十分速記開始〕
  78. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記を起こして。  参考人としておいでいただきました商工中金の馬場理事さんには、たいへん御迷惑をおかけいたしましたが、どうぞよろしくお願いいたします。  ただいま理事会で協議の結果、野々山委員質疑を一時中断し、次に、辻委員質疑に入ります。
  79. 辻一彦

    ○辻一彦君 私、きょうは柏崎原子力発電所における土地問題を取り上げたいんですが、しかし、参考人をお願いしておりますので、その問題だけ先に触れて次にいたしたいと思います。  まず第一に、大蔵大臣にお伺いいたしたいことがありますが、それは、きょうの新聞等によって、経済の今後の運営について、通産大臣は総需要をかなり抑制を緩和をしていく方向をニュアンスとして出されておるし、大蔵大臣のほうは、いままでの路線を守っていくという、そういうニュアンスのかなり開きがあるように受け取ったわけでありますが、その真意はどうか、その一点をまずお伺いいたしたい。
  80. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 政府一つでありまして、経済政策も部内でいろいろ打ち合わせながら統一した経済政策を推進さしていただいておりますことは御案内のとおりであります。通産当局と大蔵当局は絶えず緊密な連絡をとっておるわけでございまして、その間にそごのないようにいたしてきましたし、今後もいたしていくつもりでございます。いま御指摘の中曽根さんの発言というようなものを私よくまだ承知しておりませんので、もしお話しがございますならば御意見をよく承りたいと思います。ただ、きょう、マスコミを通じて承知したところによりますと、物価が安定したならば、いま堅持しておる総需要抑制策も緩和の方向へ持っていかなければならぬのじゃないかというような意味のことを言われておりまして、物価が安定し、経済が安定していければ、こういう御不自由かける必要はないわけなんでございます。特段思想に私は相違があるとは考えておりませんけれども、直接御本人からまだ御意見承っておりませんので、よく聞いた上で判断さしていただきたいと思います。
  81. 辻一彦

    ○辻一彦君 私、時間の点もありますので、今日の全国的な不況の中で、特に深刻な状況にある繊維不況に対してどういう財政金融対策を政府としてとっているか、このことについて若干お伺いいたしたいと思います。  まず第一に、ちょっと前段として、通産省のほうにお伺いをいたしたいと思いますが、通産おられますか――。  いま、各繊維産地は、ぎりぎりの自主減産をやって、あるいは発注、注文が非常に少なくて、もう当然減産にやむを得ず追い込まれていると、こういう状況にありますし、発注減少、加工費がどんどんと下がる、そうして赤字操業をやっていると、こういう状況が続きますと、全面倒産の繊維産地における状況もありかねないと、こういう中で、産地でいま減産資金や在庫凍結をやって在庫の荷を動かそうとするいろんな取り組みが行なわれておりますが、これに対して通産当局はどう対処しようとしているか、この点をまず最初に伺いたいと思います。
  82. 田口健次郎

    説明員田口健次郎君) 先生御指摘なさいましたとおり、ただいま繊維の中小企業というのは不況が深刻化しつつあるわけでございます。そこで、いろいろ対策を目下講じておるわけでございますけれども、中でもこの在庫凍結と申しますか、在庫保有と申しますか、非常にもう注文がなくて仕事がない、しかし、最低の仕事は維持しなきゃいかぬ、そうなりますと、中小企業の組合としてもどうしても在庫が残る、この金融の手だてをしなければいかぬ、こういったような検討がいろいろな産地で行なわれておるわけでございます。一部の綿布産地あたりはもうスタート、発足し始めておるわけでございますけれども、通産省としても全体の不況対策の一つの重要な一環として、この在庫保有、在庫凍結の施策についてはできるだけ前向きに、積極的に対処してまいりたい、このように考えております。
  83. 辻一彦

    ○辻一彦君 あまり詳しくもやれませんから、要点を伺えばいいと思いますが、産地はいま在庫が過剰、いまにも倒れそうだと、しかも、年末という状況を控えて現実はたいへんきびしい状況にあります。そこで、減産をやりたい、しかし、はたしてこれをやった場合に、この政府関係における融資の手当てがほんとうに行なわれるのかどうか、こういう点の不安が非常に強いので、早く減産や在庫凍結についての融資等のワクをきめてほしいという、こういう声が各産地に非常に強いんですが、いまかなりその問題は煮詰まっているように伺っておりますが、ほぼいつごろそのワクがきめられるか、その点をお伺いしたい。
  84. 田口健次郎

    説明員田口健次郎君) 産地によりましてだいぶ進行状況が違いますが、綿布の三つの組合につきましては、すでに金融のめどもつきまして、在庫凍結を発足しつつあるところでございます。たとえば北陸の福井とか石川等の地域におきましても、在庫凍結あるいは減産資金を非常に必要としているというふうに伺っております。具体的に在庫凍結のしかた、方法等を現在非常な業界としても詰めておられます。私のほうもお手伝いしておるわけでございますが、そういった細目がきまったところで、まあ資金の金額の点もきまってくるのじゃないかということで、不況乗り切りのためにできるだけ早くこういった細目がきまるということを私ども切望しておりまして、それほどおそくはならないと思いますが、業界の中で、やはり三千とか四千とかいった企業を中でまとめなきゃいかぬということで、若干の時日を要するんじゃないか、何日かはちょっと申し上げかねます。
  85. 辻一彦

    ○辻一彦君 手おくれにくれぐれもならないように、ほんとうに倒れてしまってから、もうこれは死んであとではおそいので、手おくれにならないようにやってもらいたいと思います。  そこで、きょうは商工中金の馬場参考人においでいただいておりますから、二、三お伺いしたいと思います。  いま産地がそれぞれ要望している減産資金等について、この産地組合が組合として借りて転貸をやりたいという、こういう方式をとりたいということを強く要望をして取り組んできたんですが、事態はなかなかそういうように進んでいないようですが、中金としては転貸を、まず第一に産地の組合に対する転貸を認めないのかどうか、その点いかがですか。
  86. 馬場一也

    参考人馬場一也君) お答え申し上げます。  従来から繊維関係につきましては、いろいろドルショックでございますとか、あるいは繊維の日米協定等がございました際に、いわゆるうしろ向き資金を特別に融資をいたしておるわけでございます、何回も。特に福井の産地につきましては、いま御指摘のように、非常に業者の方が多いわけでございますが、これはそれぞれ産地の中でも何十かの組合をつくっておられます。私ども個々の企業の何千という方に個別に融資申し上げますよりは、やはり、特に、商工中金の場合には組合金融が主体でございますので、組合のほうで需要をまとめていただく、それに対して店と交渉いたしまして、額をきめまして組合に御融資をして、組合から各企業に転貸をしていただくという方式で従来も大体やってきておりまして、今回の件につきましても、なるべくそういう転貸方式と申しますか、そういう方式で進めたいというふうに考えます。
  87. 辻一彦

    ○辻一彦君 各産地全体としてその転貸方式でどのぐらいのワクを見通しされておりますか。
  88. 馬場一也

    参考人馬場一也君) 福井につきましては、ただいま通産省の原局の課長から御答弁がございましたように、私どもつい最近、先週でございますか、年末のかなり大幅の追加財投をお認めいただきましたので、これを各支店に配分をいたしまして、これは繊維に限りませんが、各業種の緊急な需要に対応するわけでございますが、特に、繊維の場合には、かなり産地ごとに大幅の、大型の融資申し込みがあるだろうと思いますので、ただいま課長の御説明ございましたように、各産地ごとにどういうふうな体制でいかれるのかという、業界の体制の整うのを待ちまして、それに伴う資金の需要にできるだけひとつ優先的に応じてまいりたいと思っております。ただいまのところ福井に幾らとか、金沢に幾らとかいうワクは特にきめておりません。これは業界の具体的なお話を伺いまして優先的に対処してまいりたいと思います。
  89. 辻一彦

    ○辻一彦君 いま御発言がありました年末の資金等も、各全国の支店にそれぞれ割り当てられると思うんですが、全体が非常に不況であるということは、もう事実ですが、その中で繊維は特に不況がきびしいと思います。私の産地のことになってたいへん恐縮ですが、たとえば、福井での五万二千台の織機、機があって、二万台がとまっているということは、これはたいへんな状態だと思うんです。そういうことなので、各全国における深刻な産地や業種ということを十分検討されて、一律という意味でなしに、かなり弾力的な配慮をされるべきじゃないかと、こう思いますが、その点についての御見解はどうですか。
  90. 馬場一也

    参考人馬場一也君) 一律ということではございませんで、先生、御指摘のように、特に繊維の各産地ごとにそれぞれ需要が違うわけでございますから、私ども、それぞれの産地の実情に応じまして、ひとつ大切な資金を重点的に使ってまいりたいと思っております。
  91. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 関連でちょっとお伺いしますけれども、現実、貸し付けをするときに、非常に選別規制が強くやられていますね。そういう産業立地条件に応じて、どういうところに一体限られた資金を重点的に融資をしていくのかと、こういう点については政策とか、何か方向はきちっときまっているんですか、そういう点はどうなんですか。これは年末融資ということに限定されておるわけですから、あるいは繊維の関係ですと、いま辻委員が言ったように、おおむね幅がきまっているんですけれども、これは多種多様の業種が同じ業種でもあるわけでしょう。そういう場合に、資本金の何ぼ以上については六割程度やろうとか、こういうことに非常に選別規制、きびしくやっているでしょう。だから、そういう点を実際貸し出すときに、どういう弾力的な運用方式でやっているのか、そこらあたり実は非常に問題になっているんじゃないかと思うんですが、その辺はどうでしょうか。あわせてお願いしたい。
  92. 馬場一也

    参考人馬場一也君) 先生、選別規制ということの意味私、よくわかりかねますが、特に、これから十二月にかけましては、これは繊維に限りませんで、各業種とも一般に非常に不況でございますし、特に年末には、そういう年末を越しますための、いわゆる広い意味の年末資金というのが一番たくさん要る時期でございます。こういう時期に十二月までの資金につきましては、そういう一番緊急な資金をどの業種に限りませず、それを優先的に考える、それ以外の、たとえば、工場の新設の資金でありますとか、そういうものはむしろさておきまして、年末につきましては、年末に一番緊急に要るものを最重点に考えるということで、私ども運営しておるわけでございます。  それから、資本金の額によって差等をつけるというようなことは、組合金融でございますから、特にしておらないわけでございますが、各組合ごとに組合員がたくさんおられますから、組合の中で委員会等つくられまして、各組合員の実際の需要というのをまとめていただき、それに対して交渉の結果、御融資をすると、こういうことでやっておるわけでございます。
  93. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 現地ではたいへんな減産、休業、そういうことでいろいろ縮小してやっているわけですね。いま一番防がなくちゃいけないのは、何と言っても倒産だろうと思うんですね。これは業者にとっては死命を制すると、そういう重要な段階ですから、そういうことになると、百万や二百万運転資金があれば、何とか半年ぐらい持ちこたえると、こういう業者が相当あるだろうと思うんですよ。だから、倒産というものを最低限に置いて融資配分というものを十分配慮していただかないと、実際、業者としてはたいへんじゃないかと、ですから、そういう意味合いでの選別規制というものをどういう重点方法でやっているのかと、こういうことなんですが、それ、もし具体的な例があったらちょっと聞かしていただきたい。
  94. 馬場一也

    参考人馬場一也君) 私どもこれから特に年末にかけまして、特にまじめに経営をやっておる方が、ごくわずかの金がないことによって倒産をされるというような資金が、最も緊急な資金繰りでございまして、先生のおっしゃるとおりでございますから、そういう緊急なものに重点的にひとつ資金を配分してまいりたい、かような方針でやっておるわけでございます。これは特に繊維ももちろんそうでございますが、各業種につきまして、そういう方針で対処しておるわけでございます。
  95. 辻一彦

    ○辻一彦君 大蔵大臣一言お伺いしたい。  いま減産資金の問題も出ておりますが、たとえば、減産資金のワクが地方銀行に入りますと、いま地方銀行なかなか金がないというのですが、なぜかといいますと、年末を控えて、県とか市ですね、こういう自治体が年末の手当てのために金を借りたい。銀行のほうは、県や市を断われば、これは支店扱い、何かいろいろまた差しさわりもあると、こういうことで、これはできるだけ組み入れていくと、そうすると産業資金のワクの中にかなり食い込んで、実際に金が十分手当てができないという、こういう動きがいまありますが、私は公共、自治体ですね、これらの必要な融資は別にこの手当てをすべきじゃないかと、こう思いますが、この辺についての御見解どうですか。
  96. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 総需要抑制策というのは、全体として需要を押えて需給の緩和をはかって、物価の鎮静化を招来したいという目的でやっておるわけでございまして、公共金融であるから特別に配慮すべきであるという考えはとらないわけでございまして、民間の金融であろうと、公共金融であろうと、やはり不自由をしのんでいただかなければならぬと考えておるのです。したがって、特別のワクを設定して云々というようなところまで私は考えるべきでないと思っております。現実に、地方行政当局と銀行との間で、金融機関との間で、あなたが言われるような問題があると承知しておりますけれども金融機関のほうも、また公共団体のほうも、それぞれこういう局面でございますので、節度のある態度で終始していただきたいと私は念願いたしております。  なお、事務的には銀行局長から答弁させます。
  97. 高橋英明

    説明員高橋英明君) 大筋はただいま大臣からお答えしたところでございますけれども、まあ、金融の引き締めがかなり長期にわたっておりまして、十-十二のワクというものがすでに配付になっております。ここにきて公共団体関係の融資、あるいは不況産業からの融資といったようなものがきておりまして、全体としてワクを広げるという態度はとっておりませんが、日本銀行当局におきまして、若干地方銀行の、最初に示したワクというものをはみ出てもやむを得ないというような態度はとっておるようでございます。ただ、その場合に、はみ出したのは、何ではみ出したかというようなことは当然追及されるとは思いますけれども、まさに倒産寸前の企業に対して、緊急融資をした結果はみ出したのであるといったような場合には、大目に見るというような態度に変わってきておるというふうに聞いております。
  98. 辻一彦

    ○辻一彦君 私は、大筋は大臣の言われる辺だと思いますが、しかし、具体的な点の配慮は、かなり深刻な状況になっておるということを頭に入れて、ひとつ日銀当局もしかるべき助言といいますか、その点をぜひ当局のほうからお願いしたいと思うのです。  もう一つ、年末の資金で、勤労者のほうの融資のために、県が労働金庫を通して大蔵省に起債の別ワクをかなり要請しておりますね、大きな金額ではないのですが、各県ごとに言えば。結局、県が起債を受けて労働金庫にこれを預託をして、労働金庫がこれを勤労者に貸し出しするという、こういう方法をとっておりますし、昨年もかなりの実績が幾つかの県においては出ておりますね、全国的に。いま繊維関係の産地では失業も出ますし、それから、年末に向かって給与の欠配や遅配という、こういうことが現実に起こりつつあるし、これからずいぶんあり得るんじゃないか、こういうことが懸念をされますね。そこで、そういう従業員、勤労者に対して労金の融資というものはかなり大きな救いになると思いますが、深刻な不況にある産地に対してこういう起債のワクを、昨年にもありますが、できるだけ特に配慮すべきでないかと、こう思いますが、これは銀行局長からひとつ御見解を承りたい。
  99. 高橋英明

    説明員高橋英明君) 実は、資金運用部の資金の問題、あるいは地方債の問題は理財局なんでございますが、現在、来ておりませんので私お答えします。  昨年までそういうことをやってきておったことは承知しております。それから、ことし地方団体から非常に、同じことをやってくれというようなことで、しかも、金額がたくさんになってきておるということも聞いてはおります。おそらく理財局では前向きに検討しているんではなかろうかと思います。
  100. 辻一彦

    ○辻一彦君 いや、銀行局の中小金融課がいろいろな窓口をやっておられると聞いたので、私はあなたにお伺いすればいいと思ったんですが、そうじゃないんですか。
  101. 高橋英明

    説明員高橋英明君) 地方債の問題あるいは運用部の問題は理財局が所管でございます。ただ、先生、おそらく、私のほうが労働金庫を担当しておりますので、窓口のほうがそういうことになりますが、ファンドのほうは私のほうでございませんので、そういうことになっておるわけでございます。
  102. 辻一彦

    ○辻一彦君 まあ、時間の点もありますから、これは、きょう、質問の通告が十分してなかったのでやむを得ないと思いますが、理財局とも検討されて、連絡をとっていただいて、かなり給料の遅配、欠配が起こりかねない深刻な状況がありますから、十分配慮してもらいたい、この点をひとつ申し上げておきたいと思います。
  103. 高橋英明

    説明員高橋英明君) 帰りまして理財局長によく伝えます。
  104. 辻一彦

    ○辻一彦君 じゃ、参考人の方、ちょっと時間を私急ぎますので、それでありがとうございます。  第二に、私は、この柏崎――いろいろ問題になっております原子力発電所の土地買収につながる幾つかの問題についていろいろお伺いをいたしたいと思います。  この問題は、かなり前からの問題であります。ごく概要を申し上げますと、昭和四十年の十二月に、いまの総理田中さんが与党の幹事長時代に田中談話を新潟でやられて、自衛隊を新潟に誘致する必要があると、こういう御発言があった。その直後、柏崎の荒浜地区では土地の買い占めがひそかに進められていた。そして、転売無が何回か繰り返されて、例の室町産業がこれにからんで、昭和四十一年九月九日、三十二筆十五万六千坪の土地が所有権が移って登記をされている。そしてこれがまた転売されて、最後は四十六年十月九日、東京電力に所有権が登記をされている。当初、坪七十円ないしは百円といわれた土地が最後は二千六百円。だから、千五、六百万程度の土地が三億九千四百九十五万円、まず、四億円に最終的には売られて登記をされた、これがごく概要であります。  そこで、まず私はお伺いしたいのは、室町産業が、新潟地方法務局柏崎支局に柏崎荒浜のいわゆる所有権登記をした四十一年の九月九日に、この室町産業は不動産取得税を税務署に払っているかどうか、このことをまず国税庁長官にお尋ねをしたい。
  105. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) ただいま不動産取得税の御質問がございましたが、これは実は自治省のほうでございまして、国税でないものでございますから、私、承知いたしておりません。
  106. 辻一彦

    ○辻一彦君 これは、きのう通告で、税金関係が一体どう払われているかということを調べておいてもらいたいと、こう知らしておいたんですが、だから、国税でなくても、税関係のほうはそちらのほうで一応わかりませんか。
  107. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) まことに申しわけございませんが、私どものほうの国税庁では地方税、特に不動産取得税の関係はちょっとわかりかねます。御了承願いたいと思いますが……。
  108. 辻一彦

    ○辻一彦君 まあ、地方税ですから、国税庁長官にそれをまあ無理に問うのもどうかと思いますが、私の調べた点では、税務署にはやっぱりこの地方税関係はこれは払われていないということが明らかにされております。  そこで、これは問題があるんですが、法務省のほうでそれではこれについての所有権移転の状況等を確認をすれば、私の問題が明らかになると思います。で、法務省おいでいただいてますか。――じゃ、四十一年八月から四十六年十月に至る、十五万六千坪、三十二筆のあの荒浜の土地がどういうように所有権が移転をしていったか、このことをまずお伺いしたい。
  109. 吉野衛

    説明員(吉野衛君) いま御質問土地は、当初新潟県の刈羽郡刈羽村の大字割町新田五十四番地の木村博保さんの所有でございまして、それが四十一年九月一日付売買で室町産業に売られております。それを原因といたしまして四十一年九月九日の受け付けで登記所に所有権移転登記がなされております。しかしながら、その売買が錯誤であったということで、四十二年一月十三日受け付けで所有権移転登記の抹消登記がなされております。で、その後、四十六年の十月九日一万七千八百六十三号受け付けで木村博保から東京電力株式会社あてに四十六年十月八日付売買を原因といたしまして所有権移転登記がなされております。
  110. 辻一彦

    ○辻一彦君 その問題はもう少し私は詳しく伺いたいと思いますが。  国税庁にちょっとお伺いしますが、この錯誤であるという取り消しが行なわれておるんですから、当然この場合は、売った買ったという関係の法人税は室町産業は払ってませんね。
  111. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) 一般論でございますが、不動産等の売買で登記面でいろいろ移動が行なわれるわけでございますが、私どものほうの、国税のほうの課税関係では、その登記された名義そのものではなくて、実体に応じて課税をいたす、こういうことにいたしております。そこで、ただいま御質問の不動産の売買につきましては、適正な課税が行なわれておると、こういうふうに私聞いております。
  112. 辻一彦

    ○辻一彦君 その税金は、一番最後の東京電力に売られた問題であって、いま、室町産業が関係したその点について私はお尋ねしておるんです。いかがです。
  113. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) その段階におきまして適正な処理が行なわれております。
  114. 辻一彦

    ○辻一彦君 錯誤抹消ということがなされて所有権の移転がなかったんだからと、だから、税金を払わなかったのは当然だと、こういうことですか。
  115. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) 最初申し上げましたように、錯誤抹消があったかどうかということではなくて、実体に応じてその売買が行なわれたかどうかということに着目をいたしまして私ども課税をいたします。
  116. 辻一彦

    ○辻一彦君 それじゃ、法務当局にもう一度お尋ねをして、税務当局にお尋ねをしますが、具体的にどなたからどなたへ四十一年の八月から四十六年の十月にかけて所有権が移転をしたか、このことをひとつ明らかにしていただきたい。
  117. 吉野衛

    説明員(吉野衛君) 登記所のほうといたしましては、登記所に提出されました申請書によって形式的に審査いたしまして、却下事由がないということであれば受理、登記をするというたてまえをとっておりますので、実際、具体的に木村博保さんから室町産業に具体的な売買が行なわれたかどうか、あるいはその売買が当然無効であって抹消されるべきものであったかどうかということについては審査しないたてまえになっております。本件の問題につきましても、所有者木村さんから室町産業株式会社に売られた場合の登記は両者共同申請できておりますから、申請書類に瑕疵がなかったので受理し、登記をしたということになっています。ところが、その後、四十二年一月十三日付でまた両者がその移転登記が錯誤であったということで登記の申請をしています。この申請については司法書士が代理人となって登記を申請しておりますが、そういう申請がございますと、登記所としては、当事者が双方がいるということで、そのとおりの登記をして抹消をしたということになっています。その後、四十六年十月九日に、今度は木村さんから、東京電力株式会社に所有権移転についての申請が両者が共同申請できておりますので、そのとおり登記したということになっていまして、はたして真実に売買があったかどうかという点については登記所としては審査しないというふうになっております。
  118. 辻一彦

    ○辻一彦君 私は、ここに、いまあなたが御説明になりました四十一年八月十九日に木村さんが土地登記をされたわけですね。それから、九月九日に室町産業に所有権が登記をされて、三十二筆五十万平方メートル、十五万六千坪、そして四十二年一月十三日に木村さんが所有権いわゆる抹消、錯誤による抹消である、こういうことで登記をされて、そして四十六年十月九日に東京電力に所有権が登記をされている。新潟の地方法務局でその写しを全部取ってみた、もらってみました。ここに二十数通の――三十二のうち、時間的にいって全部はとれませんでしたが、二十数週の写しがありますが、これを見ると全部、この中に、所有権が木村さんに移った、それから所有権が移転をされている、室町産業に。そして四十二年の一月十三日に全部、所有権抹消、原因錯誤としてこれだけのものが全部ありますが、三十二筆十五万六千坪という、こういう膨大な土地が、間違いがあったから所有権を取り消すとか、そういうことであなたはそれを――あなたがやったわけじゃないけど、法務当局としてそれを見て、いや、それは審査の対象外だと、こういうことで済ましておったんですか、その点どうなんですか。
  119. 吉野衛

    説明員(吉野衛君) 御承知のように、不動産登記法のたてまえを申し上げますと、実体的な売買が行なわれた場合には、それに応じて登記の申請をすることによって登記がなされるわけでありますが、その場合に、はたして真実の売買が行なわれたかどうかという点については、申請書を形式的に審査いたしまして判断するというふうにしておるわけであります。本件につきましても、所有権移転登記の申請書類として、申請書類が完備しておるということであれば、そのとおりの登記をいたしますし、それから、一たん所有権移転登記がなされましても、その後、売買が当初から無効であったということで、錯誤を原因として抹消登記の申請がなされますと、権利者、義務者両方が申請している以上、一応その申請は間違いないということで登記するというたてまえを不動産登記法はとっておりますので、さような申請がなされた場合には抹消をするというふうになっているわけであります。
  120. 辻一彦

    ○辻一彦君 その申請の写しもここにあります。登記の目的としてここにずっと書かれて、登録税が三百円と、それから事由は錯誤による所有権移転と、こうあって、控えがありますが、以下三十二筆全部同じですね。いままで法務省のほうで、錯誤抹消によるいろんな手続が事実各地にあったと思うのですね。しかし、こういう膨大な、三十二筆十五万六千坪に及ぶこういうような大量な、これが間違いがあったというような、そういう例がいままでありましたか。
  121. 吉野衛

    説明員(吉野衛君) そういう例がいままであったかという御質問でございますが、ちょっと調査しておりませんので、お答えできません。
  122. 辻一彦

    ○辻一彦君 少なくも法務当局としては、これだけの、だれが見ても常識的におかしいと思われるような、こういう不当なというか、それは法的に手続を踏んだとすれば、それで済むのかもしれないけれども、内容から見れば、これはもう一筆や二筆が間違ったとか、文字が違ったとか、その日付が違ったとかいうならいいけれども、これは三十二筆、十五万六千坪もこれだけのものに全部間違いがありたといって登記の所有権抹消、錯誤であるとやっている、こういうことについて不審を持たれなかったんですか、何も。
  123. 吉野衛

    説明員(吉野衛君) そういう点につきましては、先ほども申しましたように、登記官は形式的な審査権限しかございませんから、そういう点についての、審査をしてはならないし、また、その点をしんしゃくして、あるいは却下したりするというようなことはできないたてまえになっております。この四十二年一月十三日の受け付けで錯誤を原因とする抹消登記の場合には、抹消登記の申請書と、それから申請書の副本、それから登記義務者の権利に関する登記済証、そういうものを添付して、登記権者が木村博保、登記義務者が室町産業株式会社ということで登記申請がなされた場合には、登記所としてはそのまま受理せざるを得ない。これは不動産登記法の四十九条で規定がございますが、その規定に該当しない限りは却下できないというふうになっておりますので、さような申請がなされた場合にはそのまま受理するというふうに言わざるを得ないのであります。
  124. 辻一彦

    ○辻一彦君 まあ、法律の登記法というか、その手続は私はあなたの言われるようになっておるでしょう。しかし、これは常識的にいってもとうてい納得のできるような内容ではないと思うのです。  で、問題をちょっと変えて、じゃ、この登記料というのは錯誤抹消やった場合には幾らなんですか。
  125. 吉野衛

    説明員(吉野衛君) 登録免許税法の規定によりますと、不動産一個につき五百円の登録免許税を納付することになっております。
  126. 辻一彦

    ○辻一彦君 錯誤による所有権の抹消の場合も同じですか。
  127. 吉野衛

    説明員(吉野衛君) さようでございます。
  128. 辻一彦

    ○辻一彦君 錯誤抹消をやれば一筆に五百円で済むと。しかし、これを固定資産税の台帳に記載をして、そしてこれに対する土地の評価額に応じて登記料を払うとすれば、これは千分の五十なんでしょう。違うんですか。
  129. 吉野衛

    説明員(吉野衛君) 抹消登記の場合は、すべて一個につき五百円でございますが、これを抹消ではなくて、真実にまた買い戻したとかという移転登記の場合でございますと、有償による所有権移転ということでございますので、不動産価額の千分の五十ということになるわけでございます。
  130. 辻一彦

    ○辻一彦君 まあこれはあなたのほうの権限では、そういうものを調査をしたり審査をする権限がないと害われるのですから、法的に言えばそこまでなんでしょう。しかし、ある総合雑誌にも、これはちょっと前に書かれた雑誌ですが、そこにも何でそんなことをやるのかというと、抹消の登記をやれば五百円で済むと、一筆ですね。しかし、これを財産移転で登記料を払えば、これは千分の五十払わなければいけないと、だから、安上がりという点からいっても、こっちのほうが安いんだと、こういう発言があったということも載っておりますが、しかし、これは私が確認したわけじゃないですから、非確認のものでありますが、そういうことも出ておる。私は、こういう問題について非常におかしいということで、どこらかの機関、場でこういう実態についての何らかの調査ということが考えられなくてはほんとうはならないんじゃないかと思うんですが、法的に言えばその場合調べずに済むかもしれないが、このような不当なというか、不審が持たれた場合に、どこの機関でこういう問題については検討することになっておりますか。
  131. 吉野衛

    説明員(吉野衛君) どこの機関でと言われますと、私ちょっと答弁できにくいのでございますが、要するに、不動産登記法のたてまえによりますと、当事者間で売買が行なわれたということで、当事者がそろって登記の申請をしてくれればそのとおり登記するし、間違っておるということで当事者がそろって登記申請すればそのとおりやると。登記官について、実体的な売買があったか、あるいはなかったかというようなことを調査する権限を与えることになりますと、たとえば裁判所がいろいろ証人呼んで調べて、そのとおり間違いないというようなことでやるのと同じような権限を与えますと、登記が非常におくれる、不動産取引の迅速を害するというようなことで、わが国の不動産登記法のたてまえからいたしますと、そういう実体的な審査を、一切登記官に認めませんで、形式的に処理するようにしているわけです。したがって、通常の場合は、その間の事情を一番よく知っているのは両者、つまり取引の当事者だけでございまして、その間に争いが出てくる。それで訴訟になって裁判所に訴えを起こされるということであれば、裁判所がその関係について審査し、判断するということになろうかと思いますけれども、そういう訴訟も起こらない、当事者で二人とも納得しておるということになりますと、一応はたして売買があったかどうかということは登記の面から、あるいは取引の面からとらえるということはおそらくわからないのではなかろうかと思います。先ほどのお話では、不動産取得税の問題も議論されていましたけれども、税金は実質課税でございますから、その点で実質的にはたして売買があったかどうかとか、あるいはそうでなかったかどうかということは、あるいは審査することは可能かとは思いますけれども、それは法務省の所管ではございませんので、確答することはできません。
  132. 辻一彦

    ○辻一彦君 地方税の関係は、私、昼の間にほかの担当の出席を求めて午後ただしたいと思います。  そこで、こういう事実がありますが、この経過を見ますと、四十一年の八月の十九日に所有権が登記をされて、四十一年九月の九日に、いわゆる二十日後に室町産業が所有権を登記している。その直後、四十日あとですから、十月の二十日に衆議院の予算委員会で信濃川河川敷の買い占め問題が取り上げられて問題になっている。このときに、簡単ではありますが、柏崎原発の土地問題が触れられておると思います。国会でこういう問題になったあと八十日後に、いわゆる所有権が錯誤であったということで抹消されている。私は、これは非常に国会の追及が伸びてきた、このためにこれを避けるために行なわれた中身でなかろうか、こういうふうに思いますが、法務当局のほうは法的にこれを調査する権限がないとすれば、それは別として、非常に不当なことが事実としてなされておったのでないか。  そこで、伺いたいことは、この室町産業は、前回も国会で決算委員会等で、田中ファミリーといわれる幽霊会社であるというようなことがずっと取り上げられてまいりましたが、明らかに私は、不動産登記法の裏道をくぐった悪用をやっているのじゃないか、こういうふうに思いますが、この不動産登記法の悪用であるかどうか、これについて法務省の見解はどうですか。
  133. 吉野衛

    説明員(吉野衛君) そういう悪用かどうかという点は、先ほど申しましたように、登記官は審査しないというたてまえをとっておりますので、わかりかねます。
  134. 辻一彦

    ○辻一彦君 権限外であると言われるから、審査できないというわけですが、これはもう私は、明白にそういう法の抜け穴を使った悪用した一つの例じゃないかと思われます。  そこで、建設省に伺いますが、見えていますね、建設省。――宅地建物取引業免許の問題について建設省の出席要求してあったんだけど、見えてないのかな。
  135. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  136. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記を起こして。  午前の質疑はこの程度とし、午後二時十五分まで休憩いたします。    午後一時四十三分休憩      ―――――・―――――    午後二時二十三分開会
  137. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) これより大蔵委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き租税及び金融等に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  138. 辻一彦

    ○辻一彦君 じゃ、午前に引き続いて若干質問したいと思います。  建設省見えておりますね。――午前の法務当局の答弁からして、登記の手続からすれば、売買は事実上はなされていない、成立していない、こういうことに私はなると思います。しかし、これだけの大きな土地と筆数が単に錯誤によって、そして間違ってると、こういうことは、これはいろんな角度から問題をのがれるために意図的にやられたものじゃないかと考えますが、そこで、建設省に伺いますが、こういう売買をこの四十一年前後にずっとやっておる室町産業は、これは土地売買を業とするものであると考えるかどうかですね。この点いかがですか。
  139. 川合宏之

    説明員(川合宏之君) お答えいたします。  四十一年の室町産業の売買の実態を私どもまだよく把握いたしておりませんが、宅地建物取引業法によりますと、建物の用に要する敷地は宅地ということになっております。原子力発電所の用地が宅地であるかどうかにつきましては、実態をもう少し私ども勉強いたしませんと、直ちに宅地であるとはここで、断定いたしかねると思います。
  140. 辻一彦

    ○辻一彦君 いや、私はね、この原子力発電所の土地は、登記の面からいって確認できなければ、これは所有権錯誤による抹消が行なわれているわけですから、確認ができないとすれば。これをさしているのじゃなしに、四十一年前後におけるいろんな土地売買ということがなされておったと思うんですが、そういうものは一つの業として認めるのかどうなのか、この点をお伺いいたしたい。
  141. 川合宏之

    説明員(川合宏之君) 業として認められるためには、不特定多数の相手方を相手としまして、継続または反復しまして売買行為あるいは仲介行為などをやることが要件になっております。したがって、室町産業につきまして、どの程度の売買をやっておりましたか、私ども全然わかっておりませんので、その点もここでお答えはいたしかねる実情でございます。
  142. 辻一彦

    ○辻一彦君 いま建設省は、いろいろな角度から私は調査をやっておると思うのですが、具体的に調査されておりますか。
  143. 川合宏之

    説明員(川合宏之君) 調査を始めております。
  144. 辻一彦

    ○辻一彦君 いつごろその調査は大体やれますか、完了できますか。
  145. 川合宏之

    説明員(川合宏之君) いつまでとはっきり申し上げるのはむずかしいと思いますが、実は、室町産業は電話帳で調べましても電話帳に載っておりません。それから、会社の実態も御存じのとおりで、(「御存じじゃないから聞いているんで、まじめに答えなさい」と呼ぶ者あり)失礼しました。本塩町に参りましても実態がわからないような状態ですので、したがって、期限を切りまして、いつまでに調査ができるというふうに申し上げる自信はちょっとないような次第です。
  146. 辻一彦

    ○辻一彦君 みんな御存じのとおりの室町産業の実態であるということは、幽霊会社だということをみずから言われておると思いますが、この室町産業が東京都知事の宅地建物取引業者としての認可を受けたのは四十二年三月二十日、それから失効したのが四十五年三月二十日、だから、四十一年前後におけるいろいろな宅地や建物等の具体的な取引が売買があったとすれば違法であるということは言えますか。
  147. 川合宏之

    説明員(川合宏之君) まず、宅地であったかどうかという判定と、それから、業として不特定多数の者を相手としまして反復継続して行なったかという二点を調べませんと、土地売買が、免許のないときにあったからといって、直ちに違法とは言えないと思います。
  148. 辻一彦

    ○辻一彦君 コンニャク問答のようになりますが、それでは建設省は、具体的な事実として四十一年前後における土地建物等の売買の事実を調査をして国会に具体的に提出しますか。
  149. 川合宏之

    説明員(川合宏之君) 実は、現段階では、会社の責任者に全く接触できない状況ですので、土地の売買の実態を建設省として必ず調べますという答弁は少々自信がない次第です。
  150. 辻一彦

    ○辻一彦君 これだけ問題になっておるのに、どこにその代表者がおるのかわからないし、接触もできないし、調べる自信もないと、これは私は、行政府として全くそういうことを言うなら怠慢という以外にないんだけど、どう思うんですか。
  151. 川合宏之

    説明員(川合宏之君) 建設省といたしましても、無免許営業の疑いがあるからには実態を当然調べなければならないと存じております。できるだけ調査を進めてまいりたいと思います。
  152. 辻一彦

    ○辻一彦君 課長に出ていただいて私はそれ以上いろいろ御答弁を聞くことは無理と思いますが、大蔵大臣、お伺いしたいんですけれども、あなたは大蔵大臣であると同時に、田中内閣の支柱として全般をいつも見ておられると思うんですね。その点から言って、いまのようなこういう幽霊会社は代表者と接触することもできないし、電話をかけても反応がない。どこにいるかわからない。そして、調査をしたいが、しようがない。こういうことで、私は、国民の大きな不信ということを絶対ぬぐえないと思いますが、大蔵大臣であり、内閣の支柱としての大平大臣立場からどうお考えになっているか、ひとつお伺いいたしたい。
  153. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 田中さん並びに田中さんと関連があると言われておる法人につきまして問題が提起されておるようでございます。したがって、こういった問題がすみやかに解明されて疑惑が解消いたしますことを私は期待したいと思います。
  154. 辻一彦

    ○辻一彦君 その解消されることを期待したいとおっしゃるけれど、行政責任である建設省が相手と接触もできないし、行くえ不明でわからないと、こういうことでは解明のしようがないんですが、それを具体的にどういうふうに接触をして実態を調査するか、どういうお考えを、大きく考えてお持ちになっておりますか。
  155. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 建設省におかれても調査してみたいという希望を表明いたしておるようでございますから、そのラインに沿って調査がすみやかにできることを期待いたします。
  156. 辻一彦

    ○辻一彦君 あと、私、時間がもう切れかかっておりますから、これで一応打ち切りたいと思いますが、いずれにしても、これだけの筆数の土地が実質的には売買をされ登記をされながら、しかも、間違いだったというようなことで取り消されて、そしてそのために、当然これは登記が正式に行なわれれば、買った場合には法人は、室町産業は登録税の登録免許税五%、資産評価の。それから、不動産取引税三%、これは当然納めなくちゃならない。こういうものが事実所有権の錯誤抹消によって全部ひとつうやむやにされておる。それから、この前後に起こったいきさつといいますか、前後ずっと見てみると、ちょうど十月の二十日に衆議院予算委員会で信濃川河川敷とあわせてこの問題が取り上げられておる。そして、一月の、それから三カ月後の一月十三日にこの抹消錯誤が行なわれている。これらを見ると私は、国会の論議の中でだんだんと追及の手が伸びてきた、そういうことを免れるためにこのような意図的な不動産登記法を全く悪用して、抜け道を悪用したと、こうしか思えないんですね。それから、もうこれは言うまでもないことですが、一回、二回と土地を転売する。ころがして地価をどんどんとつり上げていく。さらに発電所がここへ出てくる。こういうことを想定して情報を早く入手して、そして、この地価が上がることを見越しでのいわゆる買い占めをやっている。ずっとこれら一連のあれを見たとき、非常に私は、この法を悪用した遺憾な行為であった、法律的に違法というようにきめつけるには、登記の点から不十分であるが、きわめて不当なことが行なわれておる、こういうふうに思いますが、この実態を私はすみやかにひとつ明らかにして、いま建設省御答弁のようにきっちりひとつ実態を把握して国会にきちっと出していただきたい。このことを内閣のまあ副責任者としてのひとつ大平さんに確約いただいて、私、質問終わりたいと思います。いかがですか。
  157. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 問題になった案件をすみやかに解明いたしまして、疑惑を一掃するという必要を痛切に感じます。で、それに対しまして、政府といたしまして、最大限の努力をいたしまして、できるだけの措置を講じなければならぬと考えております。
  158. 辻一彦

    ○辻一彦君 終わります、時間の点がありますから。
  159. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 税務当局の守秘義務と、国政調査権の関連につきましては、午前中野々山議員の御質問がありまして、大臣は、そのいずれを優先させるか、その調節がむずかしいんだ、ケースバイケースで話し合いでやっていきたいという、まあ最高裁の判例のようになかなかうまいことをおっしゃったんだけれども、これは前の、先月の二十二日の税務当局の御答弁と比べますと格段の進歩が見られます。しかし、私は、その後国会図書館でこの問題に関するいろいろな文献を調べてみたんですが、この問題に関する唯一の研究というのは、税という雑誌があります。その税という雑誌の昭和四十二年の十二月号に、日本大学教授の忠佐市氏の論文があるきりのようであります。これは大蔵省で税のほうを専門に担当しておられた人でありますので、おそらく国税庁長官の先輩になる人だと思いますが、この人の論文を読んでみましても、結局、この所得税法二百四十三条、これは地方税法の二十二条にも同一の規定があるわけですね。この規定の立法趣旨というのはどういうふうに理解したらいいか。この規定は、明治以来盲目的に受け継がれてきたので、あまり深い検討がされておらないようだけれども、その立法趣旨を突き詰めていくと、結局、納税者のプライバシーを守るということが主目的だということがいわれておりますが、これに対する大臣の御理解いかがですか。国税庁長官でもよろしいが。
  160. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) 租税につきましては、その性格上、納税者の私的な経済活動あるいは全くの私生活と密接な関連を有しておりますので、私どもの税務行政が公権力をもちまして、納税者の私生活の領域に立ち入ることも税法によって許されているわけでございます。したがいまして、そういった公権力をもって納税者の私生活に入ります以上は、その当該税務職責が、職務上知り得ました秘密を世間に開示するということは、ただいま御指摘ございましたプライバシーといった国民の基本的人権を侵すという危険をそこにはらんでいるわけでございます。常に危険を侵しているということではございませんけれども、そういうようなおそれを多分に持っているわけでございまして、私どもは、したがいまして、調査権の発動ということについては、常日ごろから非常に慎重な態度をとっているわけでございます。ところで、これを調査を受けますところの納税者の側から見てまいりますと、たとえば、税務の調査を受ける、その結果、その個人あるいは法人の取引先の相手方が知れる。そうしますと、当該取引の相手方の法人等は、どこそこに物を売っているのか、いや、ほかの取引先があるのにかかわらずどうして売ったといったような、その取引先の法人の営業上のいろんな問題も実は関連して取引上の困難が生ずる、そういう問題がございます。したがいまして、さような調査の結果知り得ました私の秘密、あるいはそれに関連いたしまして私どもの税務行政上の職務上のいろいろ仕事上の秘密というものにつきましては、私どもは極力これを秘匿いたしまして、よってもって、他の非常に多くの税務調査に際しまして、一般納税者の方が安心していろいろ自主的に協力していただける……
  161. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 簡単にお願いします、時間が……。
  162. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) こういうようなことを実は考えまして、十分その秘密の開示については慎重な態度でまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  163. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 結局プライバシーだということでございますね、そういうことになるでしょう。
  164. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) 私人のプライバシー、確かに一つございます。  それから、ただいま申し上げましたことの中で、そのプライバシーと表裏一体をなしまして、私ども仕事上の秘密ということがまた重なっておる場合もございます。その二つございます。
  165. 野々山一三

    野々山一三君 質問の途中でございますけれども法制局長官何か時間的制限があるようですから、先ほど来の継続問題を先に聞かしていただきますので御了承いただきます。  前提は、参議院法制局長からけさほど各般の問題について伺いましたが、それと、――それは参考的な意見だと解していいと思います。問題は、内閣法制局としての見解が一致するかどうかというところにポイントがあるわけでございます。  そこで、その、質問の前に、昭和四十年四月十五日「次官等会議申合せ」という「秘密文書等の取扱いについて」というのがございますね。これは内閣官房が中軸になってやられたことなんでございますが、御存じですか。
  166. 吉國一郎

    説明員吉國一郎君) 当時私も、内閣法制次長といたしまして、事務次官会議のメンバーになっておりましたので、そういう事実があったことを承知いたしております。
  167. 野々山一三

    野々山一三君 その際、四十七年五月二十六日付で、内閣官房参事官室首席内閣参事官の名において各省庁に「秘密文書等の取扱いについて」というものが出されていることは御存じですね。
  168. 吉國一郎

    説明員吉國一郎君) 承知いたしております。
  169. 野々山一三

    野々山一三君 その際、四十七年五月十三日に、秘密文書等の取り扱いについての次官会議決定というものがございますが、御承知ですか。
  170. 吉國一郎

    説明員吉國一郎君) 四十年にあったことはいま記憶でも明らかでございますが、四十七年の決定というのは、ちょっと記憶いたしておりません。
  171. 野々山一三

    野々山一三君 ちょっと念のために申し上げますが、四十年四月十五日の次官会議の申し合せは、「昭和二十八年四月三十日の次官会議の申合せ「秘密文書等の取扱規程の制定について」により実施されてきたが、さらに遺憾なきを期するため、今後は次の要領により処理することとする。なお、昭和二十八年四月三十日の次官会議申合せは、廃止する。」、こういうふうになっている。以下文書になっている。  そこで、官房から五月二十六日に文書が出ているというのは、五月二十六日でございます。五月十三日のものは知らぬということは一体どういうことでしょうか。あなた、知らぬなら知らぬでけっこうです。――なければおかしいんですよ。かつてのものは廃止するんだと、この文書は。それから新しくこういうふうにするという通達が出ている。その間に五月十三日というものが歴然として存在しているわけだ。知らぬなら知らぬでけっこうですが、これは知らぬでいいことではないんですよ。知らぬということばを利用されたんでは、論理的に、体系的に公文書が途中がないということはおかしいわけで、私があえて五月十三日というものを申し上げるのは、五月十三日という日にちが存在するし、事実が存在するからなんだ。あなたでわからなければ、この話は、当時、官房長官が先ほども来ていらっしゃって答えたことなんですけれども、官房長官も、よく思い起こしてみますと、こういうわけなんです。何で五月十三日という日があるんでしょう。何で、知らぬだったらこんな公文書が出るんでしょう。これが第一です  第二に、あなた、四十七年の四月十二日以降四十七年の九月二十八日までの参議院法務委員会の会議録、これをごらんですか。これが第二です。  第三、実定法上、MSA協定に基づく特別措置法、それから外務公務員法、この二つ以外には機密という実定法上の用語はございません。ございません。それは確認されたわけでございます。そこで、いままでは機密ということ、極秘ということ、秘密ということ、部外秘ということ、取扱注意ということ、人事秘ということ、すべてが、これが秘密であるとして国政調査権を否定しておったわけです。それを、それではいけませんということになりまして、機密ということと、秘密以外は秘密ではありませんと、こういうことになったのは、会議録をごらんいただけばそのとおりです。  ところが四十七年五月二十六日付の官房通達、これには依然として機密、秘密極秘、人事秘などなどというやつがあるわけです。これは、内閣法制局として時の官房長官以下関係各省大臣全部が、私が指摘したとおりに直しますと言明をいたしたものが実行されていない。これが第三。  ところが、実行されているところもあるんです。大蔵省は、国税庁は実行していません。ところで、実行されているところがある。電電公社に、公然たるMSA協定に伴う通信何々というものは機密文書という文書がありました。これは改正されまして、四十七年七月一日に電電公社の管理規則が改正されまして、機密という文書は一切抹消されました。大蔵省のものは、作目資料として出ましたが、機密文書という文書が歴然として残っておるわけです。  国政調査権という立場から国会で言明され確認されたことが実行されていないことについて、法制局長官として一体、いいことですか悪いことですか、知っていることだとか、知らないことだとかいうことを別にして、論理的にいかがですか。
  172. 吉國一郎

    説明員吉國一郎君) ただいま御指摘の事務次官等会議の申し合わせあるいは内閣官房からの通達等の処理は、これは内閣官房において処理をいたしたものでございまして、もちろん私も、昭和四十年当時は事務次官会議のメンバーでございますので、その相談の席にはあずかったわけでございますが、内閣法制局の所掌事務として処理をいたすたぐいのものではございません。これは、内閣官房において、内閣の所掌のもとにある各省庁に対しまして、その行政の適正を期するという意味において機密文書等の取り扱いについても、従来の取り扱いの区々に行なわれていたことを改めて、これを各省斉一にして、そしてできるだけ民主的な行政を実現しようということで、内閣官房において取りまとめをいたしまして、内閣官房参事官及び首席内閣参事官の名前をもって各省に通達したものであると存じます。内閣法制局立場をもっていたしまして、これに対して先ほどの御質問につきましてお答えすることは、法制局の所掌事務ではございませんけれども、この次官会議の申合わせによって決定をせられ、また、内閣参事官室からの通達にたがうようなことがあることは、各省庁の行政態度としては適正ではない、そういうことだけは言えると思います。
  173. 野々山一三

    野々山一三君 手続的に自分所管の事務ではない、そのことはわかります。問題は、法律上各種のことが議論をされまして、国政調査立場から調査権が発動されて、そのとおりにいたしますと言明をされたものについては、それがある分野においては実行され、ある分野に実行されていないということは、内閣法制局として法論理上それが適法であるかどうかということを伺っているわけです。あなたのお話によれば、当然やられるべきことがやられることはあたりまえである、やられてないことは遺憾である、こういうふうに言われたと解しますが、それは追ってあとで質問をいたしますけれども、現実問題として、国政調査権というものの存在価値が実行されていない、行政的に。実行されてないということは、法制局という内閣の法律の番人として適当ではないではないんですかということを伺っているわけです。適当ではないというお答えがあればそれでいいと思います。  その次、時間がありませんから伺います。大蔵大臣並びに国税庁長官に伺いたい。私が申し上げたように、実定法上二つの用語しかない。それが六種類ある。それはいけないから二種類にいたしますと確認されたことをなぜ、電電公社などなどでは実行されているのに、大蔵省や国税庁ではなぜ実行されないんでしょうか。これは改めると言われるべきであろうと思いますが、いかがでしょう、二つお聞きしたい。法制局のほうから。
  174. 吉國一郎

    説明員吉國一郎君) 先ほど、私に対しまする御質問に対して、先にお答えいたしたいと思います。  国会が、国政調査権を発動されまして、内閣の行政に対していろいろ調査をされ、その結論として一定の意思を表明される、その意思に対して、内閣の行政は、いわば一義的に申せば国会の監督のもとにあるわけでございますので、国会の示された意思に従って行政が行なわれるべきことは当然であろうと思います。御指摘のような事実は、私、まだ具体的な事実については存じませんが、国会国政調査権の発動のもとにおいて示された国会の御意思にたがうようなことはことに適当ではない、遺憾であると存じます。
  175. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) 国税庁におきます文書取扱規程におきまして現在、極秘、秘、という二種類に分けております。これは先ほど御指摘がございましたように、四十七年の五月に出されました内閣官房参事官室からの大蔵省あての通達に基づいて出したわけです。その通達は極秘、秘という二つの区分によれと、こういうことになっておりますので、私ども、つまり、国税庁あるいは大蔵省自体の取り扱いも内閣の通達そのものによっておりますので、その通達そのものが変更になりますれば、当然私どものほうもそれに従いまして変更をいたします。
  176. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いまの御指摘の点につきまして、国税庁につきましては長官からお話がございましたけれども、大蔵省につきまして私、事実について検討いたしまして、もし御指摘のように適当でない個所がございましたならば、訂正しなければならぬと思います。
  177. 野々山一三

    野々山一三君 大蔵大臣、率直に申し上げておきますが、当時の外務大臣福田さん、そうして大蔵大臣水田さん、この段階で、先ほど二年半前の議論をいたしまして、外務省文書取扱規則、これは世界じゅうで日本だけが秘密でございまして、それがオープンになりまして、改正をいたしておるわけです。なのに大蔵省はいたしてない。したがって国税庁も通達がないからいたしてない、こういう段取りのようでございますが、これではいけないわけですね。そこで、いまあなたのように精査して直すべきは直すということですが、おそ過ぎるので、すみやかに直すというふうに私は受けとめてもらいたいと思います。  あえて言いましょう。法律用語の中に実定法上、極秘ということばはありますか。ありませんよ。私も法律は知りませんが、ありませんよ。ないからないとしておるんですよ。そのことを重視をして、いまおっしゃる趣旨を実行してください。外務省などは全部やりました。そして内容も縮減いたします、条件もつけますということで、これは官房長官が帰られちゃったからあれですが、私は私なりに提起をいたしまして、内閣官房でやったことですけれども、正しくないものは、なお、趣旨に従って善処いたしますということになって、宿題になっておる過程で、二つに分かれたわけでございます。端的に言うと、実行したところと、実行いたしてないところということに分かれたその代表的なものが大蔵省である及び国税庁である。これが守秘義務にかかわる問題であるという観点からいたしまして、法制局長官が言われたように、国政調査立場から結論が得たものについては、それは当然行政的に忠実に実行されることが正しい。こう言われた趣旨に基づいて実行してください。それはあらためて、その結果について、順次過程を含めて状況及び資料を提出してください。このことを言っておきます。いいですね。――御確認なさったものと考えます。  その次に、法制局長官、けさほどあなたいらっしゃらない間に、参議院法制局長と私との間に詳細な質問が出された事実を、一言でいえば、参議院法制局長が先ほど参考意見といいますか、しかし、法律論として指摘されたことはそのとおりですというなら、それで三秒で済むわけでございますけれども、いかがでしょう。お聞きになり、かつ、参議院法制局長が言ったことはそのとおりであるということであるかどうか、そのことをお聞きします。
  178. 吉國一郎

    説明員吉國一郎君) 午前中私どものほうの第一部長出席をいたしておりまして、第一部長から聞き取りました限りにおいて申し上げなければならないのでございますが、問題の参議院法制局で、今回、参議院法制局から参議院大蔵委員会に御提出になったわけでございますが、昭和四十一年二月十四日の参議院法制局の部内の文書、この文書に書いてございますこと自体は、私どもまことにそのとおりであると思います。ただ、これにつきまして野々山委員からいろいろ御質疑がございまして、それに対して参議院法制局長が御答弁になりました事実、その事実につきましていろいろ発言についてニュアンスの問題などございますので、全面的にそのとおりであるということはもちろん申せませんけれども、結論として申し上げるならば、私ども考え方では、国会法の第百四条、さかのぼれば憲法第六十二条に基づく国政調査権、これは国権の最高機関であり、唯一の立法機関である国会が、その国会としての権能を行なうために憲法上保障された権能である。したがって、その権能に対しては、第百四条にございますように、内閣、官公署はもちろんのこと、その他の機関においてもこの国政調査権を尊重して十分に報告をなし、あるいは記録の提出をしなければならないということは当然のことであろうと思います。ただ、これと一般の秘密保持義務というもののからみ合いの問題につきましては、一義的にいずれが高いとか、あるいはいずれが優越するというような問題ではなくて、個別の場合につきまして、どこまでその守秘義務を解除をして秘密の開披をしなければならないかどうかということについて検討をされるべきものではないかと思います。その趣旨は、この参議院法制局の文書の中にも、「単に公務員が職務上知り得た秘密事項であるという理由だけでは直ちに拒否することはできない」、これはそのとおりでございまして、職務上知り得た秘密事項であるという理由があれば、秘密の開披を拒み得るということはできないということは当然でございまして、その国政調査権によって開披されようとする秘密、その秘密が開披されることによって全体の公共の利益がいかに増進されるかということ、他方、また、その秘密が開披されることによって失われる利益はいかなるものであるかということによって個別、具体のケースに応じて判定されるべきものである、かように考えております。
  179. 野々山一三

    野々山一三君 あなた、いまのようなお答えですと、あらためてけさほど来相当時間をかけて質疑をいたしましたこととは相当ズレがあるし、具体的な面でかみ合わないというふうな印象を私持ちました。  そこで、あなたは、二時半から三時までという条件みたいなことで御出席なされ、もうすでに三時を過ぎてしまいました。  そこで、この参議院法制局内閣法制局との間に相当の――相当のかどうかわかりませんが、法律論上の違いがある。それはまあ参議院法制局は事務的な――事務的なと言っては悪いですけれども、悪いかもしれませんが、国会に従属する法制機関、検討機関。そこで、国会と内閣という立場からいえば、当然私は、あなたのほうとの間に細部にわたって議論をかわさなければ、今日問題になっているその守秘義務との関係も、守秘義務国政調査権、こういうものがかみ合わないまま――問題の中心は現実的問題です、事実問題です、そいつが解明できない。それが、国民的な疑惑を解消することができないでしまえば、政治不信というものにそのままつながり、エスカレートするわけです。  そこで、これはあなたにも聞きますけれども、いまからこの問題を議論するためにあなたは時間をさくことはできないのでしょうか。理屈上のことならば、私も理屈上のことを言います。あなたの配下の諸君だと思うが、公に問題にしましょう。  昨晩来、私のところへ、あいさつの都合もあり、出席はできませんと、こういうことを言われたが、あいさつの都合と国政調査権関係についてあなたはどう考えるか。いまから三時までしかいられないというのを引っぱるのは――帰らなければいけないのですか。帰るなら帰りなさい。そこのところをはっきりしなさい。  それから、委員長にも要求します。そういうような条件で、そっちの都合のいいときに出てきて、自分の時間がなくなったら帰るということを前提にそういう抽象論で答えることが、国会というものに対する、内閣行政府の一員として正当な姿勢でございますか。委員長、これはちょっと私は許しませんよ、そして単なる時間割りとかなんとかということでは許しませんよ。そんな、こっちの思うとおりの時間に出て来てやってくれるならいいですよ、それは常識的に私はやりますけれども、これは委員長、公平な委員長として、いまの私の議論についてどうお考えになりますか、あなたの見解を承りたい。その二つを、私はお断わりして――私は理事ですけれども理事会で云々なんていうことばでは、これは委員長という権限があるにもかかわらず、その職権を、単に理事会にということでもって云々されることでは、実はお断わりという意味に通ずるように思います。あなたをおどすわけじゃありません、正常に質疑応答することでなければならぬ。これはやはり国政調査権というものを基本的に理解しなければならぬので。
  180. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  181. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記を起こして。
  182. 野々山一三

    野々山一三君 おそらく、これはまことに各会派の皆さんに申しわけないし、質問予定者にも相すまぬのですけれども、こういう状態ですから、私はあらためて、公式にきょうは目安が六時までにということで時間割りをしておりますし、社会党としては、大体三時ちょっと過ぎまでの時間ということが目安できております。けれども、問題の本質でございますので、あらためて私は理事として、委員として、きょうは六時なら六時としても、あるいはもう少し時間を延ばすかは後に協議をするにしても、きわめてすみやかに、明日なり明後日なり委員会を開くということを公式に問題にしてもらうということが条件ならば、私は一定のところで質問を終わるということによって時間を合わせます。これは公式な問題として、私は問題にしたいと思います。これはいかがでしょうか。皆さんにも相談なんですよ。国政調査権の根本問題に触れているんで、私のかってな見解ということではございませんつもりです。(「委員会たくさんやることはいいんですよ。賛成します。」と呼ぶ者あり)委員長、言明してもらわないと、これは。
  183. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) ただいまの問題は、理事会において協議さしていただきます。
  184. 野々山一三

    野々山一三君 それじゃ、まあ引き続いて申し上げますが、理事会でこの私の趣旨をぜひ各会派の皆さんに了解の上で進めていただきたいと思います。  そこで私は、この際、まだ具体的にたくさん聞きたいことがあるわけですが、しかし、もう時間がないようなんで、私の問題はこのまま保留いたします。したがって、理事会でこの留保した時間を確保するような配慮をしてもらいたいということを前提にいたしまして、そこで、いま中断されている寺田君の質問を若干の時間を延長していただいて、補完さしていただくことが願えないかということを公式に要求いたします。
  185. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  186. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記を起こして。
  187. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 法制局長官が、お時間があるようですので、寺田さんの前に私がやらせていただきたいと思います。  いまの御答弁聞いていて「単に公務員が職務上知り得た秘密事項であるという理由だけでは直ちに拒否することはできない」、こういうことについて「単に」ということから、私たちが感じているのは、先ほどの参議院法制局長の答弁から見て、国政調査権というのは、いわゆる守秘義務のために刑罰を受けなきゃならない。漏らした場合刑罰を受けなきゃならないというようなことさえも、国政調査権を拒否する何ものでもないという、オールマイティ的にこの文書はなっております。それをいまの話だと、「単に」ということだけで、公益のために得る利益と損する利益と両方を考えているんだからということで、守秘義務が膨大な壁になってきているような感じがする。ここにいっている「単に」というのは、いわゆる議院証言法でいっている「国家の重大な利益」という問題だろうと思うのですね。そのことをさしているのに、いまの長官の答弁だと、すごく解釈が広がってしまって、とにかく国税関係についても、あるいはそのほかのことでも、国家の重大な利益でないようなことまでが、ことごとく公益上ということばであらわされているんじゃないか。その点ではとってもこれは納得ができない。国政調査権に対する法制局の考え方、政府、内閣の考え方というのが、ものすごく国政調査権というものを狭めようとしている。憲法六十二条あるいは六十三条でも、はっきりと内閣総理大臣国務大臣出席が拒否できないぐらいまで強制力を持っているくらいです。そういうふうに保障されている国政調査権に対してのことばとしては納得ができないのですが、その点どうなんですか。
  188. 吉國一郎

    説明員吉國一郎君) あるいは先ほどお答え申し上げたことの繰り返しになる部分もあるかとも存じますが、この四十一年の二月十四日の参議院法制局の文書、このほぼ中央ぐらいにございますが、この文書の――初めからちょっと申し上げますが、「国税徴収事務が純然たる行政権の範囲に属し、従って国政調査権の対象となり得ることは疑いを容れない。」これはもう当然のことでございまして、国会の権能を正々と行なうために、国政調査権というものが認められている以上、行政事務の全般に対して国政調査が行なわれることは憲法上、また、国会法上当然のことであろうと思いますのでここに書いてございますことは、全くそのとおりでございます。そして、国会法第百四条による報告または記録の提出の要求国政調査権の行使の一手段だということを書きまして、それから、「国会地位ないしは国政調査権の重要性、」さらにこの規定の前身である議院法の規定を援用した上で、証人であるとかの、刑事訴訟法あるいは民事訴訟法上の証人の証言拒否等の規定を配慮いたした上、「その要求が適法な国政調査権の行使としてなされるものである以上は、単に公務員が職務上知り得た秘密事項であるという理由だけでは直ちに拒否することはできないものと解される。」と書いてございます。これは法文ではございませんので、この文章の解釈をするというようなことになってはまことにおかしいんでございますけれども、この趣旨といたしましては、公務員が職務上知り得た秘密事項であるということを申し立てて、いわば形式的にこれは秘密事項でございますと言って、国政調査権に対してあるいは報告をし、あるいは記録の提出をすることを拒んではならないということをここは書かれたものであると思います。先ほど私は、二つの利益の調整というようなことばを使って申し上げましたのは、国政調査権というものは、もちろん憲法六十二条に縁由して、国会の権能を適正に正々と行なうために認められた権能であって、きわめて重要なものであるということは申すまでもないということと、それから、守秘義務というもの、秘密保持義務というものはなぜ認められておるか、これは、先ほどの御質問にもありましたように、一定の理由、税務行政を適正に執行するため、及び個人の、あるいは営業上等々の秘密を保持するためという立法上の理由があるわけでございます。その二つの、これはいずれも公益を実現するための、公共の利益を全うせんがための規定であると思いますが、その両方の規定のねらっている公益の調整をはかって、その間において回答を見出すべきだということを申し上げただけでございまして、秘密保持義務というものがあるから、国政調査権によって、あるいは報告を求められ、記録の提出を求められた場合に、それを拒めるなどということは全く考えておりません。  繰り返しますが、憲法及び国会法の規定によって、国会に認められた国政調査権の発動に対しては、内閣としてもあとう限りこれにこたえるべきものであることは当然のことでございます。ただ、そこに若干の例外がありまして、議院証言法によりましていろいろ手続が、最終的には内閣声明に至るまでの手続が――手続と申しますか、段取りが用意されておりますけれども、それと同様な法理が第百四条にも働くのであるということを申し上げただけでございます。
  189. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いまのでは、私はどうも納得ができない。これは参議院法制局長の答弁ずっと聞いておりまして、またこの文章を見ていても、いわゆる職務上知り得た事実の機密を担保するために刑罰があるけれども、そういう担保手段があろうとなかろうと、それが重かろうと軽かろうと、国政調査権を拒む理由にはできないし、犯すことはできないようになっていますね。当然のことだと思うんです。そういう点では、いまの得る利益、失う利益という、まあ利益の問題です。この議院証言法の第五条の中にある「国家の重大な利益」、こういうことがありますね、影響の問題、あるいは刑事訴訟法にも国家の利益が出てきます。その国家の重大な利益ということは、私は一番大きな問題になってくる、それがあれば内閣声明で云々と、こうできるわけですから、拒否ができる。これは、昭和二十九年十月十一日の衆議院の決算委員会、このときにこういう証言がございます。国家の利益についての答弁が出ておりますけれども、それを見ますと、「国家が対外的に信用を失うとか、あるいは対内的に、政治上そういう事件が起ったために――ある暴動が起きるとか、あるいは暴動というのは少し言い過ぎかもしれませんが、ある騒動が起るとか、ある政治的変革が起るとか、そういうことを意味するのだろう」、こういうことを当時参考人として出た京都大学の総長の滝川さんがおっしゃっておられます。私は、そういう点から見ましても、これは、いわゆる国家の存立を危うくするような、あるいは国家形態を危うくするようなことだけが国家の重大な利益であって、それ以外のことはこれは拒否をする何ものも、国政調査権を拒否するものはないんじゃないか、こういうふうにしか考えられないんですけれども、その点については、いまの決算委員会のときのこの参考人意見やなんかとあわせてみていかがお考えですか。
  190. 吉國一郎

    説明員吉國一郎君) ただいま御引用になりました京都大学の滝川教授の参考人としての意見の陳述は、昭和二十九年十月十一日に衆議院の決算委員会において行なわれたものであろうと思います。私も、その滝川参考人が述べておりますような場合は、この議院証言法の第五条第三項の国家の重大な利益に悪影響を及ぼす中に入ることはもちろん賛成でございます。ただ、この滝川教授があげておられますような場合だけに限るものではない、それじゃどういう場合があるかということになりますと、非常にむずかしゅうございますが、たとえば、現に問題になりました昭和二十九年当時の調査守秘義務の遂行に重大な支障を及ぼすようになることは、やはり国家の重大な利益に悪影響を及ぼすということを内閣が声明をいたしましたのでもわかりますように、重要な行政義務が正々と執行されないことによって、国に対して重大な不利益をもたらすというような場合、具体的にはどういう場合であるかということは、先ほども申し上げましたように、個々具体のケースによって判定をしなければなるまいと思いますので、抽象的にしか申し上げられませんが、日本国というものの存立に影響が、あるいはその安全に影響があるということがむろんこの一例として入ると思いますけれども、それにとどまるものではないというふうに考えております。
  191. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そうすると、今回この委員会において、あるいは決算委員会においても、いろいろ国税関係あるいは国有財産関係資料要求がなされておりますが、いまのお話ですと、国家の行政に重大な損失といいますか、そういうものを与えるとか、あるいは国の存立を危うくするというようなことが重大な利益であって、これが議院証言法でもはっきりと言える重大な利益、そういうことになると、それから、考えてみましても、当然いま申し上げたような要求されている税等の資料については存立を危うくするというような、その重大な利益といいますか、国家の利益というものを損なうようなものではあれは考えられない、これは当然提出されるべきもの、こう解さざるを得ませんね、その点はいかがですか。
  192. 吉國一郎

    説明員吉國一郎君) いま、現に要求されておりますものがどういう資料であって、それを開披することによっていかなる国家に不利益を生ずるかということについては、私、具体的には承知をいたしておりませんので、にわかに答弁することはできませんが、要は、その証言法の規定に関する限り申し上げまするならば、第五条の第一項におきまして、まず、各議院あるいは委員会が出頭した証人が公務員である場合あるいは公務員であった場合におきましては、まず、当該公務所が職務上の秘密に関するものであることを申し立てますと、当該公務所またはその監督庁の承認がなければ、証言または書類の提出を求めることができないという制度に相なっております。この承認をいたしまするならば、それで証言または書類の提出が行なわれる次第でございます。これに対して、当該公務所またはその監督庁が承認を拒んだ場合には、その理由を議院なり委員会において疏明をいたさなければなりません。その疏明をいたしますと、議院もしくは委員会は、その理由が納得し得るかどうかということを御検討になるわけでございます。それで議院あるいは委員会において、その理由が受諾できないという場合には、さらに議院あるいは委員会等は、その証言または書類の提出が国家の重大な利益に悪影響を及ぼす旨の内閣の声明を要求をいたしまして、その声明があった場合には、証言または書類の提出の義務が解除されるわけでございます。前項のその要求があった後十日以内に内閣声明ができない、内閣としても国の重大な利益に悪影響を及ぼすということは言えないということになった場合に、初めてまたもとへ返って、要求された証言をしたり書類提出をしなければならない、かような段取りでずっと進んでいくようになっておるわけでございます。したがって、いまの段階で、これが内閣の声明を要するようなものであるかどうかということを、ここで判断することは、まだ早い段階ではないかと思います。先ほど私が申し上げましたのは、あくまで抽象的に「国家の重大な利益」ということを申したつもりでございまして、ただいま具体のケースになっているような書類なり、あるいは抽象的な事柄について証言をするようなことが、どういう事柄として国の行政の中に位置を占めておるか。その行政と申しましても、先ほど申し上げましたように、行政全般ではなくて、行政の中でも、特に重要なものについて、当然かような「国家の重大な利益」ということは、かかわってまいるわけでございますので、重要な行政のどの部分において、いかなる影響があるかということは、よほど慎重に検討してみなければ判定できない問題ではないかと思いますので、いま直ちにここで該当するとか、該当しないと申し上げることは差し控えさしていただきたいと思います。
  193. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いま直ちにできないならば、すでに当委員会等で要求されているわけでありますから、それを調べていただいた上で、重大な利益に該当しているからこういうことなんだというなら、その点のことをはっきりと出していただきたいと思います。
  194. 吉國一郎

    説明員吉國一郎君) いま申し上げましたように、まず第五条の第一項によりまして、「本人又は当該公務所から職務上の秘密に関するものである」ということを正式に申し立てをいたしますと、それに対して監督庁の許可、承認がなければ答弁できない、証言あるいは書類の提出をしない、つまり「書類の提出を求めることができない。」ということになりますので、まず、その段階においてその証言をするかしないかの理由について、議院なり委員会なりにおいて御納得になるかどうかということをおきめいただいた上で、さらに、次の段階に入るということになりますので、いま直ちに五条三項の「国家の重大な利益」に悪影響を及ぼすかどうかという判定は差し控えたいということを申したつもりでございます。
  195. 野々山一三

    野々山一三君 ちょっと、法制局長官、しまいまでおるかどうか、確認してくれよ。
  196. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記をとめてください。   〔速記中止〕
  197. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記を起こして。
  198. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 法制局長官、あなた、いま、田中総理の所得の問題を報告することが、直ちに国家の安全をそこなうか、国家の利益をそこなうか、にわかに断定しがたいということをおっしゃったですね。これは、国税庁長官もそういう御意見だと思うけれども考えてごらんなさい。いいですか。この所得税法のいまの守秘義務に関する二百四十三条の規定というのは、元来、その一番中心の立法趣旨というものは、やはり、納税者のプライバシーを守るということにあるわけでしょう。ところが、田中総理がきのうマスコミの方々に発表されたところを、あなた、お聞きになったですか。私の所得に関しては、全く違法なものはないんだ、と同時に、妥当でないものもないということを言われたでしょう。だから総理が、自分自身が、違法でもない、妥当でないものでもない取引で金をもうけているんだというならば、それを発表することがどうして総理のプライバシーに触れるでしょうか。プライバシーというのは、のぞかれては困る私生活のことなんですよね。だけども、いま私どもが求めているのは、総理のベッドルームをのぞくというのじゃない。総理が、どうしてその金をもうけたのか、そのさいふの中をあけてみろということなんです。それが、どうして国家の安全をそこなうとか、あるいは国の利益を害するとかいうことが言えますか。そんなこと、言えないことはわかり切っているでしょう。  それからもう一つ、あなた方が考えていただかなければいけないのは、司法権と抵触する場合どうかという問題があるわけですよ。つまり、国家公務員が職務上知り得た秘密を裁判上それを明らかにすることを求められた場合、つまり司法権とぶつかった場合どうか。これもやはり刑事訴訟法の百四十四条、百四十五条に規定がありましょう。それは、やはり司法権が優越するわけですね。ただ、いまお話ししたように、国の利益を、しかも、最高の利益を害するという場合にだけ、その証言の義務が免除せられるわけでしょう。それから、いま長官のおっしゃった議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律の第五条についても全く同じですね。それからもう一つ規定があるんです。それは何かというと、国家公務員法の第百条第四項、これは、人事院が求めた場合には、公務員が職務上知り得た人事秘密でも、これは人事院の求めによって明らかにしなけりゃいけない、証言しなけりゃいけないということになっているわけです。つまり、その守秘義務というものは、司法権にも圧倒される、それから、人事院の権限にも圧倒される。それならば、立法機関である国会国政調査権の前にそれはやはり後退せざるを得ないと考えないと、何か国会国政調査権というものは司法権にも劣るもんだ、あるいは人事院の権限にも劣るもんだという結果を生ずるわけですよ。  このことを考えても、あなた方が、総理の所得の内容を明らかにすることができないとか、あるいはこれが国の利益を、重大なる国の利益をそこなうとかということが言えないことは明らかでしょう。ですから、もう一ぺん、国税庁長官法制局長官、その点を明らかにしてください。簡単でよろしいから結論だけ……。
  199. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) 第一点でございますけれども、プライバシーが守秘義務の中心である、私もそのように思います。ちょうど総理の話が出ましたが、総理の所得、あるいはその所得の申告書、あるいはいろいろの法人の申告書ということでございますが、私どもは、まず、守秘義務と申し上げておりますのは、そのこと自体の開示によりまして、直接にいろいろ影響する部分――営業上のいろいろ支障というものをもちろん考えます。  しかしもう一つは、先ほど来申し上げておりますように、税務職員というものが知りました秘密が、比較的容易に開示されるということによって、今後その他の大ぜいの納税者が税務署の調査に対しまして非常な不安感を持つ、あるいは私の自発的に言うことが簡単に外に出るんじゃないかというような不安感を持ちますと、税務調査が非常にやりにくくなる。したがいまして、公正な税務の執行がなかなかできにくくなる、こういうような問題も実はあろうかと思うのであります。ですから、私ども守秘義務として感じておりますポイントというのは、そういうような直接の問題あるいは間接の大きな税務行政執行の問題、こういうものがあることをひとつ御承知願いたいと思うのであります。私どもはそういうふうに考えております。  それから第二は、御本人が、昨日テレビを伺っておりまして、違法なことはないというようなお話をしていらっしゃいました。脱法かどうか、これは私のほう関係がないと思うんですけれども、違法のことはない、したがって、違法のことはないと申しますのは、おそらくは所得税法とか法人税法を適用してそごがない、こういうことだと解しますけれども、それだけでは、実は私どもが所得税法あるいは法人税法の規定によりまして、守秘義務ということが自動的には解除をされない、こういうふうに考えております。Aという方が、私のほうは絶対に違法なことはないとおっしゃったことによりまして、そういう違法性はないんだということで、私ども守秘義務は自動的には解除しないんだ、こういうことだと思います。さらに、申しますと、私の、これはただいまのお答えになりますかどうですかわかりませんが……
  200. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 簡潔にお願いしますよ。
  201. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) 御本人が全部その所得の内容をすっかりお話しになる、世間にオープンに全部されるという、法人の内容をオープンにされるといいますと、それはおそらくある意味で秘密でなくなってくるかと思います。したがいまして、私どもは、全部御本人が明らかにされれば、私ども守秘義務というのは非常に薄れてまいる。しかし、それは同時に、もう御本人が開示されましたから、私どもも申し上げる必要もない、こういうことになろうかと思うのでございます。  それから、司法権あるいは百条四項につきましては、ちょっと私どものほうの直接関係がないように思います。司法権の場合には、私ども税務職員が裁判所にいろいろ証人等で呼ばれます。こういうことを開示しろというお話がございます。それは上司の許可がなければいけない、こういうことでございます。上司というものは……
  202. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それは条文にあるからわかってます。
  203. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) はい。そういうことでございますから、それは、そういう開示することによりまして、どの程度私どものほうの税務行政に支障があるかどうかというような若干高度の、高次元の判断を、言ってみれば、大臣にいただきまして、そういう御判断があれば、私どもは、裁判所に対しまして開示できる。また開示することによりまして、いろいろ将来税務行政に支障がある、こういう御判断をいただきますれば、それは開示できない、こういうふうな規定かと思います。ですから、そのこと自体の中には、大事なことがあるから実際開示できないとか、できるとかいうことは、その規定自体から実は生まれてまいらない。手続的には逐次上がってまいりまして、課長部長あるいは長官あるいは大臣というふうに上がってまいりまして、そういうような高次元の判断によって開示ができる、こういうような制度になっているかと思います。
  204. 吉國一郎

    説明員吉國一郎君) いま国税庁長官からお答え申し上げましたことに私としてつけ加えることは何もないと思いますが、ただ、国家公務員法における人事院の権能、こういうものと対比をされまして、人事院の権能よりも、国政調査権が弱いように見えるではないかというようなお話がございましたが、決してそんなことはないのでございまして、この第五条の定めるこれだけ厳重な手続でございますので、内閣声明が出るなんということは、従来の実例から申しましても、非常にまれなる場合でございます。人事院は、一般的に国家公務員の人事について監督をしているわけでございまして、たとえば、大蔵省なら大蔵省の中の人事の問題についても、人事の秘密だから、人事院で審査を行なう場合に開披できないということは言ってはならない。人事院は、いわば人事行政の総監督機関である、まあ、国家公務員法に関する限りでございますが。そういう意味で、大蔵省内の人事秘密であろうとも、人事院に対しては開披して、その人事が適正、適法に行なわれているかどうかを監督するという趣旨のものでございまして、本件の場合とはまた場面を異にするものであると思いますが、いずれにいたしましても、国会国政調査権というものが、憲法に縁由する重大な権能であって、内閣としても、あとう限りこれにこたえるべきものであるという信念を持っておりますことは、私どもここではっきり申し上げてよろしいと思います。
  205. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  206. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記を起こして。
  207. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いまの国税庁長官、それから法制局長官、このお二人の答弁は、非常に私の質問の中心というものをそれた答弁なんですが、つまり、守秘義務というものは、中心はプライバシーの擁護にあるんだから、だから、田中総理自身が、おれの所得には全然違法なところも妥当でないところもないんだと言っている以上は、それを全部あけっぱなして国民の前に示したって、ちっともそれはプライバシーを侵害することにならぬじゃないか。ましてそれが、国の重大な利益をそこなうなんということは考えられないんじゃないかということなんです。しかし、これはもう当然わかり切ったことなので、委員長におかれて、やはり私ども要求をこれからいたします田中総理の所得の内容、それからその税額、それから、いま、これから申し上げるのですが、田中総理がその所得の隠れみのに使っていると思われる新星企業株式会社、それから、室町産業株式会社、東京ニューハウス株式会社、この三つのやはりこの十年間における所得、その所得の内容、税額等についてぜひ報告をさせていただきたいと思います。もし、これをどうしても、あくまでも報告をしないというならば、やはりこの三つの会社の代表取締役を証人として当委員会に喚問していただきたいということをお願いして、この法律問題については一応私はこれで時間の関係がありますので終えて、あと事実問題だけについて申し上げたいと思います。  と申しますのは、田中総理の四十六年度の所得、これは国税庁長官、七千三十七万円になっております。それから、四十七年度が八千五百七十九万円、四十八年度が七千七百九十七万五千円、これを、われわれが所得税及び住民税を計算をして、給与所得、配当所得などにそれぞれ税率を適用してみますと、手取り額は、四十六年度が二千二百八十八万四千九百三円、それから、四十七年度が二千五百八十五万三千六百九十二円、四十八年度が二千三百万八千九百二十五円ぐらいになります。これは所得の内容によって多少の誤差はありますけれども、大体、こういうふうな手取りになるだろうという見当はつくのです。ところが、田中さんが、四十七年に軽井沢で八千九百五坪の別荘地を買い入れていると言われるわけです。私ども、若干登記簿謄本を取ってみましたが、それに大体相応する事実があるように思います。ただ、その三分の二の五千九百十一坪は東京ニューハウス株式会社名義で、残りの二千九百九十四坪が田中さん御自身が買い入れたということになっております。これらの購入資金を、坪五万円と最低に見積もっても、これは一億四千九百五十万円、坪十万円とすると、その倍額になりますね。田中さんがどうしてこれだけの手取り額なのに、四十七年にこういう不動産を購入することができるか。そういうやはり資金を税務当局は調査したのかどうか。また、所得税法の第二百三十二条の規定によって、田中さんが提出したはずの財産債務明細書には、この点が明らかになっているのかどうかという点をまず伺いたいんです。と同時に、これは公明党のほうも発表しておられるようですが、目白の田中さんの私邸の敷地が、東京ニューハウス名義が三千三百二十六・四八平方メートル、室町産業株式会社名義が五百三十四・八三平方メートル、田中さん御自身名義が四千五百十一・四九平方メートルになります。この目白の私邸の三むねの家屋があるのですが、その中で、木造平屋建ての居宅七十五・二九平方メートルがやはり東京ニューハウス名義であります。  それから、新星企業、室町産業が、登記簿上新宿区本塩町二十三番地にあることは、あなた方お調べになっていらっしゃると思うんですが、これは高梨建築事務所というわずか五、六坪の一室であります。これは高梨勝重という人の建築事務所で、そこには高梨さんがときどき出勤されるほかは、益城弥生という設計見習いの女子職員が一人おるだけですね。ところが、その中に、いま言った資本金十億円の室町産業、それから、六億円の新星企業と、もう一つ、これはいままでにあまり言われていないんですが、軽井沢商事株式会社という資本金二億円の会社がおるわけであります。つまり、わずか五、六坪の一室に、資本金十八億に達する大法人がひしめいている。その大法人が、電話を一本も持っていない。従業員も一人もおらない。だれもそこにいない。そこへ電話してその女子職員に聞いても、これは名ばかりであって、私どもではさっぱりわからないんだと、こう言うわけですね。だから、さっき建設省の課長さんが調査のしようがないと言った。われわれがもしこういうような脱法的な隠れみのをやったら、これは税務署は断じて許しませんよ。とても通るもんじゃありません。これが田中さんという、行政権を一手に握っている人だからこそ、こういうような幽霊会社なり資本金十八億もの会社を持って、そしてその隠れみのになって田中さんの財産というものがふえていっているわけです。だから、われわれは脱税の疑いがあると、こう言っているわけです。だから、そういう疑惑を晴らさない限りは、これは国政調査権は、どうしても最後までこの問題を追及せざるを得ないわけです。いかにこれがあなた方が守秘義務を言うても、こんなに大きな疑惑を残しながら、国会がそれを調査できないということは、これは御承知のように、日本人の道義的感覚の欠除というものを疑われてもしようがないでしょう。あるいは国会議員の道義感の欠除といってもいいかもしれません。それをおそらく全世界の人々からは笑われるだろうと思うんです。だから、どうしてもこれは、われわれとしては明らかにしなければいけない。そういうことでわれわれはこの問題を提起しているわけです。  最後に、いま私が申し上げたように、そういう幽霊会社が、田中さんの私邸の中にたくさんの土地を所有している、あるいは三むねの中の一むねさえも、その人の名義になっている。そのほか軽井沢の田中さんの別荘と言われるものも、そういう幽霊会社が取得している。あるいは越後交通という株式会社の株式なども、やはり同じ問題があるんですが、これは時間の関係で私はきょうこれで打ち切りますが、こういう点について、今後税務当局はメスを入れる決意があるかどうか。この間、国税庁の次長は、単に所得の内容が秘密だということだけじゃなくして、それを追及していく税務当局のプロセス、それまでも隠そうとしたわけでしょう。これなどはもう守秘義務の非常な乱用で、きょうは守秘義務の乱用について法務省の刑事課長さんにもきていただいているんだけれども、もう時間がないから、国税庁長官、あなたは、ともかくこれからそういう田中さんの脱税の容疑をわれわれが提起しているわけだから、真剣にこれに対してメスを入れていく決意があるかどうか。また、すでに過去においてこういう点にメスを入れたことがあるのかどうか。その二つについて簡明に答えていただきたい。
  208. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) ただいま御指摘の今後調査をするかどうか、かつてまた調査をしたかどうかの点につきまして、いろいろ範囲あるいは深浅等については差がございますけれども、これまでも申告書等が出ました際には、それぞれ必要と認められる調査はいたしてきております。
  209. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 その幽霊会社についても……。
  210. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) 幽霊会社かどうか、これはいろいろございますけれども、いろいろ世上名前がのぼっております会社についても、私どももいろいろな方法でもって調査いたしてきております。  それから、ただ私ども調査一般について、これは御理解願いたいのは、そのときどきにおいて、なかなか一〇〇%までまいりません。そこで時効というものがございますから、一ぺん調査を終わりましても、新たな資料とか情報がありました際に、さらに、追加の調査をするとか、補正をするとかいうことはしょっちゅうやっております。そこで、本件につきましては、いろいろ問題が世間に広がりましたので、現在そういったような再度すでにいたしましたものについても、見直しをやって、適正に処理されたかどうかということを十分私どもが心証を得るようにいまやっておる最中でございます。それを申し上げておきます。  それから、少し時間いただきまして、いまお話がございまして、過日の委員会でやはり総理の所得につきまして、国税庁の磯辺次長が調査したかどうかは、もう実は答弁いたしかねると、こういう答弁をいたしたと思いますが、結論的に申し上げまして、これはちょっとその答弁が慎重過ぎまして、いささかかたい解釈であったというように私思っております。と申しますのは、私ども調査には、いろいろ方法とかやり方とか度合いとかたくさんございまして、中には、たとえば、査察調査のように、全く秘匿を要するものもございます。  それから、また、調査されたということによって、その方の信用状態が変わってまいるというようなこともございますし、また、第三者のところに伺うこともございますから、調査の態様によっては、その人のプライバシーもございますし、信用状態の関係がありまして、調査したかどうか申し上げられないような調査もございます。しかし、中にはそういうことを申し上げても差しつかえないような調査も実はあるわけでございます。で、ございますから、磯辺次長がすべてそういうことは申し上げられないと言いましたのは、少し慎重過ぎるのでございます。
  211. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 訂正されますか。
  212. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) 私は上司でございますから、その当時の磯辺次長の答弁は訂正をいたします。きょう申し上げましたところで、訂正ができたというふうにおとりいただきたいと思います。
  213. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 了解しました。
  214. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 先ほど寺田委員から御要求のございました資料の提出につきましては、政府側は出していただけますか。御回答願います。
  215. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) 所得とか税額とかというものが、資料として提出できますかどうか十分検討してまいりたいと思います。先ほどのお話でございまして、できるだけ国政調査権を尊重いたしまして、できるだけ私ども守秘義務に抵触しないように考えてまいりたいと思っております。
  216. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) それから、証人等につきましては、後刻の理事会において協議いたしたいと思います。
  217. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 私は、昨日公明党といたしまして発表いたしました田中総理の、目白の私邸の問題について、いろいろ疑義がございますので、これを中心に質問をしたいと思います。その前に、大蔵大臣にちょっと資料を……。(資料を手渡す)  ただいまも寺田委員のほうからお話がございましたのは、二枚目の表2というところの「目白邸の所有者別分類」ということであります。ここで、現在の田中総理の私邸といわれておる目白の邸宅の中で、田中総理自身名義になっておるのは、パーセントで言いますと、五二・二%でありまして、その残りが東京ニューハウスが三八・八%、室町産業が六・二%、長岡ビルディングが二・八%、こういうふうになっております。それで問題は、これは国税庁長官にお伺いしたいんですが、この三つの会社名になっておる土地を、田中総理自分の私邸で借りておるわけですね。こういうことになりますね、もしそこを使ってあれば。この三つの会社がそこで事業活動を現実に行なっておった場合は問題ないと思うんですが、そこの土地田中総理の邸宅あるいは田中総理がそこを使っておるとなれば、田中総理がこの三つの会社からその土地を借りておると、こういうことになるわけですね。これはどうですか。
  218. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) 田中総理がお使いになる態様については、ただいまのところよくつまびらかにいたしませんが、お使いになる方法が、たとえば、使用貸借あるいは賃貸借ということになれば、そういうような貸借関係が成立するものと思われます。
  219. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 で、貸借関係が成立した場合は、それに対して賃貸契約があり、賃借料が支払われるのが原則でありますね。どうですか。
  220. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) その通りと思います。
  221. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 もしこの場合、この三つの会社が好意的に田中総理にただで貸す、貸した場合は、今度は田中総理自身が、それに対して土地使用という経済的な利益を受けたと、こういうことで、田中総理は受贈益として申告をする義務がそこに生じてくるものと私たちは考えますが、その点はいかがですか。
  222. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) 民法上の使用貸借あるいは賃貸契約というものがございまして、そういう場合も多いと考えられますけれども、その使用の態様によりまして、税務上問題があるかどうかということを私ども考えます。結局、その実態と申しますか、どういう形で使用されていらっしゃるかということが実はポイントになってくるかと思います。
  223. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 その点については現在調べられてあるのか、すでに調べられたのか、その点はいかがですか。
  224. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) いままでもそれについては税務署のほうで調べておりますし、なお、先ほど申し上げたように、いま見直しという意味でさらに念を入れて調べております。
  225. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 そうすると、いずれは結果は出てくるわけですね。それについては発表されますか。
  226. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) 結果は当然に出てまいると思います。結果につきまして発表するかどうかは、先ほど来いろいろ議論がありました私ども守秘義務と、国会国政調査権とのからみ合いによりまして、この重要性を判断していただく、かように相なるかと思います。
  227. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 それでは、これは次に、自治省のほうになりますが――大蔵大臣はあとでまとめて聞きますので資料をよくごらんいただきたいと思います。これは、私たちの資料でいきますと表6になります、一番最後から二枚目でございますが、家屋課税関係であります。これはどういうことかと申し上げますと、この田中首相の目白邸の中に、昭和四十一年の八月に事務所ができたわけであります。床面積二百十四平方メートルで事務所が新築をされました。ところが、この事務所が新築をされておりながら、固定資産税が支払われたのは、といいますか、このことが決定されたのが昭和四十四年の十一月二十九日に決定をされまして、納税義務が決定をされまして、さかのぼって昭和四十二年から、この表にあるように、三百四十二万三千三百円、昭和四十二年に払われておるわけです。ということは、昭和四十一年につくられた、この場合は当然建築確認の申請も、竣工届けも出さなければなりませんし、完成をすると同時に、不動産取得税の申告がされるはずです。それから、自動的に固定資産税というものが賦課をされるわけでありますが、この昭和四十四年の十一月二十九日に納税義務が決定されたということは、三年間の間、脱税をしておったということになるのかどうか、その点はいかがですか。
  228. 石見隆三

    説明員(石見隆三君) 御答弁申し上げます。  ただいまお示しの資料につきましては、私ども詳細承知をいたしておりませんので、具体の中身につきましてお答えを申し上げるわけにはまいらないと思うのでございますが、と同時に、いまお示しの資料、これ御案内のとおりすべて地方税でございますので、東京都が持っておりますところでございます。したがいまして、その点につきまして、具体的なお答えを申し上げるわけにはまいらぬわけでございますけれども一般的にお答え申し上げたいというふうに存ずるわけであります。  いまのお示しの点でございますが、四十一年八月に取得されたともしいたしますれば、御案内のとおり固定資産税につきましては、一月一日現在の所有者に対して課税をいたすことになりますので、四十一年八月に取得されたものでございますといたしますれば、四十二年度分からの固定資産税の納税義務が生ずるということに地方税法上相なっておるわけでございます。ただ、お示しのように、その課税が四十四年度に課税をされ、それが四十二年度からさかのぼっておるというふうな御指摘であったわけでございますが、御案内のとおり、たとえば、不動産取得税につきましては、土地、家屋等、不動産取得税の対象になりますものを取得いたしました場合には、地方団体にその旨申告をいたすことになっておるけでございます。何ぶんにも、法律上申告をいたすことになっておるわけでございますけれども、なかなかこの申告が、東京都ばかりではございませんで、非常に納税義務者の申告というものが少ないわけでございます。地方団体といたしましては、本来は申告に基づいて課税物件を把握するというたてまえにはなっておるわけでございますけれども、いま申しましたように、事実上申告がなかなかされてこないというようなことから、土地台帳でございますとか、あるいは登記簿でございますとか、その他いろいろな方面からの調査をいたしまして、実際上把握をして、発見した時点で課税をするというふうな実態があるわけであります。東京都の、いまお示しの点につきまして、どういう経緯で、もしそういうことがあったといたしますれば、どういう経緯でそうなったのかという点は、その辺詳細その時点では私ども承知いたさないわけでございますけれども一般的にそういう形で課税がされたのではないだろうかというふうに推測いたすわけでございます。
  229. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまのお話だと、建ててすぐ申告するのがたてまえであるけれども、現実問題としてなかなか申告をしてくれない。したがって、地方自治体はそれを一生懸命さがしまくって、そして申告をさせておると、そういう実態であると、こういうふうに簡単に言うと受け取れるんですが、それでよろしいですか。
  230. 石見隆三

    説明員(石見隆三君) 本来、御案内のとおり、固定資産税も不動産取得税も申告納税制度ではございませんで、賦課課税制度のたてまえをとっておるわけであります。その課税資料として、納税者の申告という、協力を仰ぐという形をとっておるわけでございます。しかし、現実の事実を申し上げますと、先ほど申し上げましたように、東京都はじめその他の多くの団体におきまして、なかなかそういう納税者からの協力と申しますか、申告が得られないという実態はあることは事実でございまして、私どもといたしましては、そういう納税義務者の御協力をいただくということを、地方団体としてはあらゆる機会を通じてお願いをするということを指導はいたしておりますけれども、現実問題としては、そういう御協力が十分得られていないという向きもあるということは事実だろうと存じております。
  231. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いまのお話を伺っていますと、申告に一応なっておるけれども、なかなかやってもらえない。だから、二、三年おくれであとから追徴金を取るということが多いんだと。だから、田中総理のこの私邸の、脱税ですわな、はりきり言って。脱税もしようがないと、一般的事項だと、こういうように私は受け取れるんですがね。そう解してよろしいですか。
  232. 石見隆三

    説明員(石見隆三君) おっしゃいました御趣旨、いまのお示しの点、私、冒頭申し上げましたように事実を承知いたしておりませんで、一般論としてお答えさしていただくことをお許し賜っているわけでございますけれども、脱税であったかどうかという――脱税ということばの中身も私、問題があろうかと、まあ十分いろいろ取り方もあろうかと思っておりますけれども、少なくともいまのような事実があったといたしますれば、そういう取得された後に、地方団体としては申告を得たか、あるいはまた何らかの調査によって発見したか、いずれの方法かによって確認をされ課税したものであろうというふうに考えるわけでございます。
  233. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 申告だからなかなかやってもらえぬとおっしゃいますけれども、実際これは申告がなかったわけです。昭和四十四年になって発見をされて、そしてさかのぼって納められたのが実態なんです。これは私たちつくったのじゃなくて、ちゃんと都税事務所に行ってきちんと調べてきて、公になっている書類なんですね。別にこれは秘密でも何でもないわけです。  それで、私が言いたいのは、いま事実を承知していないからと言われますけれども、もしかりにこれが――かりにじゃなくてこれ事実なんですよ。あなたが確認していないだけであって、私たちは都税事務所という……、これ公文書なんですよ。ただ写してきてあるだけでして、そのものになっておりませんけれども、ちゃんと行って調べてきたわけです。これは東京都に問い合わせをしていただければはっきりいたしますので、あとで問い合わせをしていただいて、この書類をきちんと正式に提出をしていただきたいと思いますけれども、要するに、申告されてなかったわけです。きのう、総理記者会見で、私は、違法行為はしていないと、脱法行為もしていないんだと、こう言われていますけれども、かりに、いま申告をしなくて、三年間たってばれてから、これもあとであっ、しまった、忘れておったと、三年間忘れたんだと。そして自主的に出されたんじゃなくて、ばれたからやったわけなんです。そういうことですから、やはりこれは、脱法行為違法行為――脱税とはいろいろ問題があると言われましたけれども、脱税でなくても脱法行為違法行為の範囲に入ると私は思うんですが、これはいかがですか、税法上。
  234. 石見隆三

    説明員(石見隆三君) ちょっと事実が、先ほどから申しておりますように十分承知いたしておりませんので、御答弁いたしにくいわけでございますが、賦課をしておらなかったということは、先ほどのお示しの数字でございますれば、結果としてそういう事実であったんだろうと思っております。その間、納税義務者にお願いをしております申告といいますものが、あるいはなかったかということによって、漏れたと申しますか、賦課がおくれた。いずれにいたしましても、賦課をいたしました時点で、確認をして、さかのぼって課税するという扱いがなされたんだろうというふうに存ずるわけでございます。
  235. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 なかなか、総理という偉い人だから弁護されていると思えまして、歯切れ悪いんですけれども……。  で、ここで伺いますが、地方税法の第七十三条の二十のところに、「道府県は、不動産の取得者が第七十三条の十八の規定によって申告し、又は報告すべき事項について正当な事由がなくて申告又は報告をしなかった場合においては、その者に対し、当該道府県の条例で三万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。」と。こういうのがあるわけです。また、第七十三条の二十九には、「詐偽その他不正の行為によって不動産取得税の全部又は一部を免かれた者は、三年以下の懲役若しくは五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。」と、こうなっておりますね。これは不動産取得税ですが、もう一つ確認しておきたいのは、私、先ほど言いましたように、固定資産税を追徴されたということは、不動産取得税を納めていない疑いがあると、四十一年のできた時点で。建物ができたときは、でき上がると不動産取得税を払わなくちゃなりませんね。それを怠っておるということに通ずるわけです。たとえ、この四十四年の時点で払ったとしても、四十一年のできたときには不動産取得税を納めていない疑いが出てくるんですが、その点はいかがですか。
  236. 石見隆三

    説明員(石見隆三君) 不動産取得税がいつ賦課されたかということでございますが、この点につきましても私ども承知いたしておりませんので、詳細わかりかねるわけでございますけれども、不動産取得税につきましても、先ほど申しましたように、同じく納税者の御協力を得て、徴税令書を発付して、そこで課税が行なわれるというたてまえをとっておりますので、具体の徴税令書がいつ届いて、課税権と申しますか、納税義務が発生したかということが問題であろうかと存じます。御案内のとおり、いずれも固定資産税も不動産取得税も同じようなたてまえをとっておりますので、徴税令書の出た時点で、具体の納税義務が発生するということに相なるわけであります。  いまのお示しの事例につきまして、不動産取得税が課税がされたかどうかということにつきましても、承知いたしておりませんので、一般論として、いま申しましたような扱いになるということで御了承賜りたいと思います。
  237. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 ちょっと私よくわからないんですが、私の聞いているのは――もう一回聞きますよ。要するに、不動産取得税を建物ができた段階で――逆な話をしますよ、今度は。かりに私が家を建てました。で、不動産取得税を納めました。それで固定資産税の申告をしないで三年間も放置されることはあり得るのかということです。そういうことは私はあり得ないと思うんですが、どうですか、一般論として。
  238. 石見隆三

    説明員(石見隆三君) お答えいたします。  先ほどから申しておりますように、不動産取得税につきましては、賦課課税たてまえをとっておりますので、徴税令書が出ました段階で具体の納税義務が発生をいたします。したがいまして、もし、発見と申しますか、課税事実の把握がその時点でできてないという場合には、いま御指摘のような事態があり得るというふうに考えております。
  239. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 そういうことはあり得るというのは、相当これは作為的になってくるんですね。違いますか。そんな、抜け目のない日本の税務署とか、地方税務署にしても、これはきびしいですよ。私も、大体、最近、特にこういう事態ですから、いろいろなところから、いろいろなことを言われてきますけれども、やっぱり、なかなか、税務署さんというのは厳格なものですわ。家を買った、どこから金が出てきたか。株券が出てきた、どこから買ったのかと全部調べられて、かなりシビアですね。不動産取得税だけ納めておいて、固定資産税を三年もほったらかしておくのを見のがすような、そんなとんまな税務署は私はないと思うのです。理屈の上からはあり得るかもわかりませんよ。現実にここにあるかわかりません。これはないか私は確認しておりません。だけれども、常識論として、不動産取得税を払ったら、そこでちゃんと固定資産税全部きていますよ。私、自分のことを言ってもそうですが、皆さんおそらくそうだろうと、ここにいらっしゃる方で、自分で固定資産税納めていらっしゃる方は、みんな不動産取得税と同時に、ちゃんと払っていますし、もしそれを払わないとしたら、いま私が最初に読み上げたこういう脱税にかかる違法行為に完全になる。これは忘れたとか、やりませんでしたとか、何かの事情で三年おくれましたでは済まないと思うのです。この点いかがですか。この事実とは逆の話をしていますけれども
  240. 石見隆三

    説明員(石見隆三君) 先ほども御答弁申し上げましたように、納税義務者の方には、不動産を取得されました時点での御協力をお願いしているわけでございますけれども、いまお話がございましたように、忘れておったとか、あるいはまたその他うっかりというようなこともございましょうし、そういう税がかかるということもあるいは承知してなかったというふうな、いろいろな方も中にはあるようでありまして、現実としましては、なかなか申告という御協力が得られてないということは事実と思っております。この点につきましては、そういう形で申告という手続を経まして御協力いただくということをたてまえにいたしておるわけでございますけれども、都におきましても、一般論といたしまして、都もそうでございますが、他の地方団体におきましても、課税客体の把握ということについてはいろいろ努力はしておるわけでございますけれども、何ぶんにもそういうような状況で、特に、不動産取得税等につきましての協力が得られてないということもございます。今後とも自治省といたしましてもそういう納税義務者の方の御協力なりPRということを十分いたすように指導してまいり、できるだけ課税客体の把握については十分にやってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  241. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 私は、一般論をぐだぐだ聞いているのではないですよ。簡単に答えてくださいよ。私が聞いたのは、たとえば、善意か何か知りませんよ、忘れたか手続か何か知らぬけれども、不動産取得税を納めて、固定資産税を三年間納めなかった場合、これはただ追徴金だけでいいのか、あるいは今度は逆に、不動産取得税は――固定資産税をこの場合は納めていなかったわけです。納めていないということは、やっぱり不動産取得税も納めていないということに私はなると断定したいわけなんです。これは事実ですよ。そんな一つだけ分離されることは絶対ないわけです。だから、そういった場合、この不動産取得税の納めなかったことに対する追徴金なり、あるいは罰金の問題ですね、この辺はどういう場合にそれでは適用されてくるのですか。ただ忘れました、済みませんと、その程度ならかんべんするわけですか。じゃ、この罰則の適用はどういう場合ですか。不動産取得税を納めなかった場合の情状酌量は、どの程度の範囲の場合行なわれるのですか。いまのお話だとだいぶゆるいようなんですけれども
  242. 石見隆三

    説明員(石見隆三君) 追徴金というおことばが出たわけでございますが、ただいまの御指摘の場合には、具体の徴税令書がまだ発せられていなかったのではないかというふうに一応推察するわけであります。具体の徴税令書が出ておらない限りは、具体の納税義務が発生いたしておりませんので、追徴金という問題は生じないわけでありまして、具体の徴税令書が出ました段階で、もし過去に賦課漏れがございますれば、過去にさかのぼってのあわせて徴税令書を出して賦課するということになろうかと思います。で、徴税令書が出ましたあとで税を滞納したという場合には、御案内のように、延滞金その他の追徴金的なものが課されるわけでございますけれども、御指摘のような例でございますれば、まだ徴税令書が出ていなかったのではないかということではないかというふうに理解するわけでございます。  なお、地方税法の七十三条の二十の不申告等に対しまする過料という規定でございますが、これはまあ、過料でございますので、刑罰ではもちろんございませんですが、納税者の御協力をいただくということで、こういうような行政的な措置を地方団体の条例によって設け得る余地を条例――ここにも書いておりますように、条例によってということになっておるわけでございますが、東京都の場合、この七十三条の二十によります根拠条例がはたして制定されておりますかどうかということにつきましても、ちょっと承知いたしておりませんが、少なくとも現時点で一般的にこの不動産――もしこの条例がございましても、不動産の不申告に対しまして、このような過料が適用されたというふうな事例は非常に少ないのではないか、むしろあまりないのではないかというふうに一般的に存じておるわけでございます。
  243. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これはいまの自治省の答弁とからんでくるのですけれども、先ほど不動産取得税の申告の問題がございました。申告すれば自動的に追徴される。で、おそらく忘れたのではないかとかいろいろな話があったのですけれども、四十一年八月に――大体東京都の場合には、通常ですと、不動産取得税の申告書を出さなくても登記をしたときに書類が回るというのが普通のようですね。私は、そういうように承知しているんです。とにかく、これはおそらく、文京区か何区だか知りませんけれども、その区へ出したのだろうと思いますけれども、不動産取得税の申告をしなくても、登記をすれば自動的に回るというのが普通じゃないかと思うのです。そうすると、四十一年八月に御新築をなすっているとすると、登記のほうで忘れたのか、書類がどこかで回すのを忘れたのか、一体その辺は通常どういうふうな指導をしているのか。先ほど非常につかまえにくいのもあるというような話があったのですが、完全に捕捉しようとすれば、当然登記をしたときから回ってくるというようなつかまえ方をなさらなければならないはずであると思うのですけれども、その点で自治省としては指導はどうしているのか。  もう一つは、そういうような漏れのないようにするには、一体どういうような方法をとっていこうとしているのか、そこをちょっと聞きたいのです。一体、どこでこれがおくれたのか、善意なのか悪意なのかわかりませんから、それを聞きたい。そういう点を聞きたいためにお伺いします。
  244. 石見隆三

    説明員(石見隆三君) 一般的には、先ほども御答弁申し上げましたように、納税義務者の方から申告をいただくということによって、課税客体を把握していくということに努力をさしておるわけでございますけれども、なかなか現実問題としまして、申告というのが非常に出にくいというような状況を踏まえまして、現時点では、その他のできるだけ課税、客体の把握という観点から、たとえば、新しく家が建てられましたような場合には、建築確認のための資料でございますとか、あるいはまた不動産移転の登記の関係資料でございますとか、そういうような行政機関内部で把握し得ます資料等をもとにいたしまして、できる限り課税客体の把握につとめるようにという指導をいたしております。ただ、それぞれの、三千三百の市町村でございますので、どういう方法で具体的に把握の方法をやっておりますか、具体のものは十分承知しておりませんが、一般論としましては、第一義的には納税義務者の御協力を得、あるいは行政部内で調製し得ます資料等がありますれば、それによってできるだけの把握に努力をするということの指導をいたしておるような次第でございます。
  245. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 この場合は東京都で、一つの区だと思いますけれども、何区だか知りませんけれども、その区のほうで全部扱っているか、あるいは都税事務所かどっちかだと思いますけれども、どういうようなふうでこんなふうになってきたのか、その経緯をあとでいただきたいと思いますけれども、いかがですか。
  246. 石見隆三

    説明員(石見隆三君) この点につきましては、東京都のほうでその辺の経緯は承知しておることであろうというふうに私は存じております。ただ、私どもとしましては、具体的に当該物件がどういう形でそういうことになったのかということは調査をいたしておりませんし、承知をしておりませんが、課税をいたしております都なり、あるいは都税事務所におきましては、その辺の経緯というのは承知をしておるんではないかというふうに考えるわけであります。  ただ、この点につきまして、これらについてお示しをいたしますことにつきましては、内容がどういう内容になってまいりますか、この辺、先ほどから御議論になっております、御案内のように、地方税法におきましても、二十二条におきまして、税務職員に対しまする調査に関して知り得た秘密を守る義務があるわけでございます。その辺とのかね合いもあるわけでございますので、この点につきましては、今後私のほうで検討さしていただきたいと思います。
  247. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 大臣一つだけ、先ほどから、例の内閣法制局長官とやりましたね、あの議論を聞いていて、いろいろおわかりになったと思うんですけれども、この委員会でも、また決算でも、内閣総理大臣田中さんに対しての資料の提出を求められておるわけです。それの守秘義務の問題と、先ほどの国政調査権、その国政調査権が「国家の重大な利益」云々というのでなければ拒否ができないだろうと私たちは考えたわけです、いろんなことから引いていっても。その点については、これは何度も何度も同じことの御答弁で申しわけないんですけれども、どうお感じとりになられたか、ここで伺っておきたいと思います。
  248. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) けさほど野々山さんからの御質疑に対しましてお答え申し上げましたとおり、国会国政調査権、あくまで政府として尊重してまいらなけりゃならぬことは当然と思います。また、国会として国政調査権の御発動に踏み切られる前に、国会の御審議を通じて、国政について広く深く御審議をいただくわけでございますので、それについて行政府として十分な御協力をしなけりゃならない立場に私はおると思うのであります。一方、税法上の守秘義務が規定されてありますことも御案内のとおりでございまして、そのときにも申し上げましたとおり、いずれが優先するかというようなことは、いずれともきめにくいと、同じ立法府がきめたことでございますので、きめられませんけれども、これをいろいろ詰めてまいりますと、要するに、重大なる国益が失われるという、いわばそういうことがない範囲内においてというような、抽象的なことになってくるんじゃないかと思うんです。しかし問題は、個々の具体的なケースにあたりまして、何が一体重要な国益なのかという判断が、それこそが問題であろうと私は思います。それで、具体的ケースは、ただいままでも行政府国会の間でいろいろ、普通の御審議あるいは調査権の発動、そういうようなケースを通じまして、具体的な御相談がございまして、折り合いがついてきたことと思うのでありますが、今回の場合におきましても、私は、そういう意味で、行政府立場についても御理解を得ながら、国会調査権あるいは審議権というようなものを十分御尊重申し上げる立場でお互いに御相談してまいりますと、私は、結論が得られないはずはないと、そう確信いたしております。
  249. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 最後に、大蔵大臣にお伺いいたしますが、私は、きょうここでいろいろ質問いたしましたのは、すべて国会へ持ち込むものですから、責任を持って調べてきた資料の中からやったわけでありまして、まだ政府として、あるいは自治省として調べていないからわからないと言われておりますが、これは事実のことなんです。  そういたしますと、昨日総理記者会見で、私は、違法というようなものはしていない、妥当性のないことはしていないんだと、あるいは脱法行為のようなことはしていないと、もし、そうしたら責任をとると、こういう意味発言をされておりますね、今回の問題は、一番、その中心が総理の財産形成ということが一番大きな問題になってきているわけですけれども国税庁あるいは大蔵省というのは大きくその責任担当所管になっておるわけですけれども、非常に大蔵大臣としても責任が私は出てくると思います。きょうの私の質疑を通じて、違法行為脱法行為をお認めになるかどうか、また、その線でこれからきちんと調査をしていただいて、きちんと私たちの要求しておる資料を提出いただけるのかどうか、また、きのうの総理発言に対して、きょうの私の質問を踏まえた上で、大蔵大臣は今後どういうふうにやっていかれるのか、その点をお伺いして、時間が参りましたので質問終わりたいと思います。
  250. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 課税問題について、私に答えろということでございますので、政治立場から答えさしていただきたいと思います。  まず、総理大臣が、自分は違法なことはしているつもりはないんだとおっしゃったことは、私は確かに伺ったわけでございまして、私は、きのうの記者会見におかれて総理が申しましたことは、総理大臣として全人格的な見解を述べられたものと思うのでございまして、そこにうそ偽りはないと確信いたします。ただ、総理も人間でございまして、あるいは忘れておられたことがないということは、私は保証しがたいと思うんでございます。したがって、自分もよく調べてみるということでございますし、役所のほうもいままでの調査調定にあやまちがないか、念を入れて調べておるわけでございまして、万一――万々間違いがないと思いますけれども、万一遺漏がございましたならば、それは是正してまいらなけりゃならぬと思います。要は、総理大臣であろうと、どなたであろうと、納税者に甲乙はないわけでございまするし、税務の執行は適正でなければならぬわけでございまして、私ども、そういう精神でこのことに当たってまいりたいと思います。  それから、国政――国会の御審議ないしは国会調査権と守秘義務との関係につきましては、先ほど鈴木先生にお答え申し上げたとおりに心得ております。
  251. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 まず、国税庁長官にお伺いいたします。  株式会社の場合に、他人の名義を借りて株式申し込み書を作成して、行使して、そうして会社の設立または増資をした場合、そういうことが判明した場合に、国税庁としてはどんな態度をとるのかという問題であります。また、私ども常識的に判断しまして、まず、実質的な所有者を調査し、確定をして、そうしてその者がそれだけの出資をなし得るかどうか、そういたところから始めていくと思います、そう理解してよろしゅうございましょうか。
  252. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) 若干、商法の手続等の技術的な問題がございますので、直税部長をしてお答え申し上げさしてよろしゅうございますか。
  253. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 簡単でいいですよ。
  254. 横井正美

    説明員(横井正美君) 直税部長の横井でございます。  会社の調査にあたりましては、私ども設立後の調査あるいは増資後の調査におきまして、株主の構成、それも調査をいたしております。その場合におきまして、株主が単なる名義人でございまして、他に実質の権利者がいるということが明らかになりました場合におきましては、当該法人または株主にかかります法人税あるいは所得税につきまして実際の権利関係に基づきまして課税をするというふうになっております。たとえて申しますと、御承知のように同属会社の判定というような問題がございますが、当該法人が非同属会社であるということでまいっておりましたものが、名義上の株主がございまして、これを実際の状況にあわせますと、当該法人が税法上同属会社であるというふうなことになりますと、御承知の留保金課税の適用になりまして、一定金額以上の留保金があれば課税を受ける。また配当につきましても御同様でございまして、実際の株主に配当課税を行なうというふうなことになっております。
  255. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 いま一般的に聞きましたが、たとえば、その場合に、本人の同意を得てその人の名義にした場合と、全く同意を得ないで本人に黙ってその名義にしてしまった場合、そういうことが判明した場合には、税務当局としますと、一そう脱税の疑いあるいは同属会社を隠そうとする意図、その他悪意あるものと判断をして、よりきびしくそれを追及する場合が多いと、こういうぐあいに理解してよろしいでしょうか。――国税庁長官、答えてください。
  256. 横井正美

    説明員(横井正美君) 一般的には同意を得て行なうというふうな場合が、こういう場合には多かろうかと思いますが、いずれにいたしましても、私どもは、全体的にこういう出資がだれのものであるかということに基づきまして、実際に合わせた課税を行なうというふうにいたしております。
  257. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私が聞いた場合には、一般には同意を得るのが普通ですが、同意を得ないでやってしまったような場合には、やっぱり財産隠しとか、脱税とかそういう意図があるんじゃなかろうか、そういう疑いを持つかどうか。この場合ですね、田中さんのことをあまり頭に置かないでいいですよ。一般国民を相手としてどうなのか、そういった角度から端的にお答えいただきたいんです。  もう一つ。そういう株式の場合と同時に、一挙に資本金を何倍にもした、三倍にも四倍にもした、それから同時に、増資とあわせてその法人が土地を取得したと、こういう場合、そういう場合には、一そう脱税の疑い、または財産隠しの疑い、そこについて一般の場合にもより一そう注意をして調査をすると、そういうふうなものだと思うのですが、その点についてお伺いしたいと思うのです。
  258. 横井正美

    説明員(横井正美君) 最初の御質問の点につきましては、法律的に申しますと、同意を得た場合、それは共同というふうに言っておりますが、そうでない場合は単独であるというふうなことでございましょうが、私どもの取り扱いといたしましては、一般的に同意を得なかったから、それは特定の特に重い行為であるというふうには考える必要ないのじゃないかと、さように考えます。  それから、あとの問題でございますが、多額の増資がございますという場合でございますが、一般的に、多額の増資があるということは、会社側からいたしますというと、何らか新しい事業をしようということでございます。で、また、出資者から見ますというと、そのように多額の資金を要するということでございます。したがいまして、私どもといたしましては、多額の増資がございましたような場合におきまして、その資金がどのような目的に使われるのか、あるいはまた、その資金の出資にあたりまして、課税上の問題がないかどうかということを調査をいたすというふうにいたしておるわけでございます。
  259. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 ところで、具体的問題に入りますが、田中ファミリー企業の一つ、幽霊会社の一つといわれております関新観光株式会社が、昭和四十七年五月十二日に増資をしたわけでありますが、この際に、他人名義をかってに使った可能性がたいへん強いわけであります。私ども確認したところ、この会社は最近合併をしておるわけでありますが、その合併のための総会の通知も来ていない。そんなところへ投資するのだったらばほかへ使うという、こんな回答も実際あるわけでありますけれども、そういうことが、実際疑いがあるわけであります。で、この会社は、資本金は五千万円から一挙に二億円と、四倍になったわけであります。要するに、一億五千万円の増資があったわけでありますが、その中でかなり多くの架空の名義株主が存在する。しかも、この増資と全く同じ日に、ですから、四十七年五月十二日に、ここでまた田中総理をめぐる疑惑土地として有名な、また、国会でも何度も問題になりました鳥屋野潟ですね、新潟県の。この土地が新星企業から、この関新観光株式会社へ譲渡の手続がされている、こういう動きがあれば、当然税務当局としては、それに対する調査を開始するというぐあいに考えるのがいままでの答弁から推測をされるわけでございます。で、実際、この件について税務当局として、調査をしたことがあるかどうか、これについて御答弁を願いたいと思います。
  260. 渡邊喜一

    説明員(渡邊喜一君) 関新観光開発株式会社につきましては、現在まで、先ほど長官からも御答弁申し上げましたように、私どもとしては、適正な調査課税を行なっておるというふうに聞いております。なお、必要がありますれば、あらためて念を入れるということも考えるということであろうかと思います。
  261. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 その中身またあとで伺いますが、今度大蔵大臣にお伺いします。昨日の首相の記者会見の中で、この幽霊会社の問題を質問されまして、こう答えておられます。幽霊会社とかいろいろなことを言われておるが、本社があって人が一ぱいいないと会社でないというのは、日本的な考えである。全くの法人組織でいろいろなものを保有することはあるし、持ち株会社は人はそんなにいない。幽霊会社でもうけていると言うなら、問題は、うんともうけているかいないか、査察を受けているかどうか、適当な税徴収をしているかどうかというような、いわば幽霊会社を是認するがごとき発言があったわけであります。  そこで、大蔵大臣にお伺いいたしますけれども大蔵大臣を経過して総理大臣になった者が、幽霊会社についてこういう認識でいいのかどうか、これをまずお伺いしたい。  もう一つお伺いしたいことは、大平大蔵大臣自身が、これまですでに問題になっているような、田中ファミリーのような、こういう幽霊会社をお持ちかどうか、この二点についてお伺いしたいと思います。
  262. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) きのうの総理の御発言は、先ほどもお答え申し上げましたように、総理の人間としての御率直な見解表明であるということで承ったわけでございます。幽霊会社というのはどういう会社を申しますのか、私、田中さんに関係があられると称せられているいわゆる会社法人、そういったものの実態を詳細に存じませんので、とやかくコメントすることは遠慮したいと思います。私自身そういうことをいたしたことはございません。
  263. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 とやかくコメントする気持ちはないとおっしゃるんですが、ただ、昨日のこの発言は、明らかにだれが見ましても幽霊会社を是認する態度ですわね。となりますと、総理大臣が幽霊会社いいんだとなりますと、今後たくさん出ますよ。そして田中さんのようなやり方でどんどんころがしましてもうけるという手口もどんどん出てきます。そんなことがあって、大蔵省そして国税庁いいんだろうかと、そういう立場から、要するに、国の財政をあずかる立場から、幽霊会社を是認するような、そしてその間で土地をころがしてもうけをするような、また電話もない、事務所も小さいところへ幾つも入っているという、しかし、それが大きな取引をし、かつ大もうけをしているという、そういうようなことがいいのかどうか。それについて、これは遠慮なさらずに、国の財政をあずかる大蔵大臣としてどう考えるか、これを聞いているんであります。
  264. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 具体的ないまあげられているケースの実態について究明して、自信を持ってお答え申し上げられるような知識がございませんので、一般論として近藤さんのおっしゃることに対してお答えをさしていただきたいと思います。  自由社会におきましても、おのずからルールがございますように、その根底にはやはり深い道義が確立していなければならぬものと思います。そういうことがあって初めて法秩序、経済秩序、社会秩序というものが維持されていくものであろうと思いますし、政治にとって非常に大事な眼目であると私は思っています。
  265. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 どうもあんまりはっきりしないんですがね。いいのか悪いのかはっきりしないのですが、しかし、これはこれからの質問の中で、幽霊会社の実態がどんなものか、私も国会で明らかにした上で、その認識を持ってもらった上でもう一度聞きたいと思いますので、これはこの点で留保いたします。  お手元に資料いっておりましょうか。資料のIIをごらんいただきたいんですが、先ほど申し上げました新潟県の鳥屋野潟の土地が、その図にあるように、まず蓮池と同時に房総観光が買い、これを田中さんが社長をしておった日本電建が蓮池のほうを四万坪を九千百七十二万円で買い、さらに鳥屋野潟のほうは二十五万七千坪を一億十二万円で買った。これがさらに蓮池のほうは、新潟県と新潟市のほうに昭和三十七年九月に、倍と申しますよりも、買った全額に相当する二億一千三百万円で売買された。また一方の鳥屋野潟のほうは、新星企業によってさらに関新観光へ、そして現在は浦浜開発になっている。この途中までの経過につきましては、もうすでに何度も国会の場面で議論されております。いままで議論されてなかった面というのは、これが税金上どうなんだろうかという点があまりなかったわけでありますので、その点についてお伺いいたしますが、まず、日本電建から新星企業への譲渡が、これは安過ぎやしないかという問題が一つあろうかと思います。なぜならば、片方の蓮池のほうがわずか一年間で買い値の倍。にもかかわらず、鳥屋野潟のほうは約三年たった後に金利にも満たないごくわずかの上乗せをされた一億三千万円で売られているというこの点がまず一つ疑惑であります。  それからもう一つ、新星企業から関新観光、ここへの譲渡であります。この譲渡はどれくらいかということは、一応先ほど申し上げた一億五千万円の増資、これにほぼ当たるのではなかろうかというぐあいに考えるわけであります。ここもまた安いんじゃなかろうか。この面について故意に価格を安く見積って、それにかかる税金を免れたと見られる節がありはしないかどうかという問題出てまいります。そこで、この面について調査したことがあるかどうか、調査をしたとすればその結果はどうか、これについて御答弁を願いたいと思います。
  266. 渡邊喜一

    説明員(渡邊喜一君) いま、御質問の譲渡関係につきましては、それぞれの企業の当該年度の申告の際に一応の調査は行なっております。
  267. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 ですから、一応の調査をしたことは、それはわかっておるんですが、調査をした場合に、比較しまして、安過ぎるという疑いを持って調査をしたことがあるのかどうかというのが質問なんですよ。これだけ大きな不動産の動きがあれば、これは当然調査されるのはあたりまえの話です。ですから、その点を御答弁願いたいと思います。
  268. 渡邊喜一

    説明員(渡邊喜一君) 売買価格が適正であるかどうかというふうな点につきましては、なかなかきめ手がないむずかしい問題でございます。一応売買対価が、通常の他の類似の例から見てどうであろうかという観点からの考慮も入れながら調査をするということでございます。
  269. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 質問に対してそのままお答えいただきたいんですけれども、私の場合には安過ぎやしないかという疑いを持って調査をしたかどうかということなんですよ。その質問にまともに答えていただきたいんです。
  270. 渡邊喜一

    説明員(渡邊喜一君) 私どもが聞いております範囲内では、一応そう不適正な対価ではないということであったと聞いております。
  271. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 もう一度聞きますと、そう不適正ではないと、それほど不適正ではないということですね。そうしますと、これは少しは疑わしいかなという考えがちらっとしたけれども、しかし、どうも田中さんがかんでいるので調査やめてしまったと、そんなことはないでしょうか。
  272. 渡邊喜一

    説明員(渡邊喜一君) そういうことではございませんで、絶対的な適正価格とは何かということは非常にきめ手のない問題でございますので、そういうふうに申し上げたわけでございます。
  273. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 まあ次に移りますが、御承知のとおり、この日本電建は田中総理が代表取締役であった会社でありますし、また、その株式もほとんど所有されて、後に小佐野氏に譲渡されたというたいへんいわくつきの会社であることはすでに御承知のとおりでありますが、また新星企業というものは、設立時に田中総理の自宅に本店を置き、また、その内容におきましても、田中総理と最も近い関係にある会社である、これもすでに公知の事実でありまして、また、関新観光もこれも深い関係にある。このこともだんだん明らかになってきたわけであります。そしてそのことは、国会の答弁からも明らかになりましたね。たとえば、昭和四十七年十一月七日に、衆議院予算委員会におきまして、共産党の松本善明議員が、この土地をめぐる疑惑について質問いたしました。これに対して田中総理はこう答弁しております。「これは私は去年買ったとか、おととし買ったとかいうなら別ですが、そうじゃないのです。十年も前に買ったのです。買ったというよりも、どうにもならず整理を頼まれてきたという、地元の代議士がいろいろなことを持ち込まれる、その例なんです。私は、それを転売して利益を得ておりませんし、そういう問題をよく理解していただきたい。私は、それをほんとうにあなたがあっせんしてくださるなら、寄付してもけっこうです。」、共産党にあっせんしろというんですから、おそらく国に寄付しようというんでしょうね。となりますと、この中にもありましたとおり、十年も前に買った。これはおそらく日本電建の時代に買ったことを意味していると思うんです。そして日本電建の全支配力を田中さん持っていたわけでありますから、となりますと、これは自分が買ったつもりなんでしょう。そして転売して利得を得ていない、そしてそれを寄付してもけっこうだと、こう述べておりますと、この段階では、世間が承知しておったのは新星企業じゃないかと思っておったんですが、これは実際には関新観光に、先ほど申し上げたような経過で譲渡されております。となりますと、この土地について、田中総理が実質的な支配力を持っておった。そうでなきゃ国に寄付するなんてとっても言えません。そして関新観光開発株式会社には、先ほど申し上げたとおり名義株が相当見られる、そしてこの国会発言。こうしてみますと、この会社も、田中総理が直接支配力を持っている会社ということができるんじゃなかろうかと思うんです。ところが、これまたすでに明らかになっておりますとおり、田中総理が国に寄付してもよいとまで言っておったこの土地が、四十八年七月三十一日、浦浜開発株式会社と合併することによって所有権が浦浜開発に移っているわけであります。こういう経過を見てみますと、何か疑問があるんじゃなかろうか。こういう傾向を見まして、実際、国税庁どう理解するのか。これは合併の形式による不動産売買、したがって、脱税または脱法行為、こういう問題が出てくるんじゃなかろうか、こういう問題出てまいります。ですから、この点を、いまずっと私が述べたような経過の中でごらんになって、そういうぐあいに見られるのかどうか、これについての今度は国税庁長官見解を賜わりたいと思います。
  274. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) 関新観光、浦浜開発という、これが合併したことによりまして、土地の所有権が名義上移転しております。これがイコール脱税があるとか、あるいは税を回避すると、私はこう考えておりません。いろいろの資産を持っている法人が世間にたくさんございます。それが合併、吸収合併あるいは対等合併いろいろやります。そうしますと、その所有しております資産は、当然どちらかの存続する法人に移りますが、それが、言ってみれば、売買を仮想したとか、あるいは売買に伴う税金がそこで抜けたということには私はならないと思います。いずれにいたしましても、そういうようなプロセスを通じまして、税の負担が軽減されるということはあり得ないだろうと。合併いたしますと資産を引き継ぎますから、次の機会には全部の税金が取れてしまう、そういうことでございますから、それで税が抜けるということは私はないと思います。
  275. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 いまの御答弁は、浦浜開発が他に転売することを予測した答弁ですね、そうでしょう。
  276. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) 予測はいたしておりませんが、税というのは、その瞬間瞬間で正確に取れるというものではございせまん。やがて時の経過によっていろいろ資産が移転する、それによって課税の均衡というのが保たれる、こういうシステムをとっております。  たとえば、所得税でもって年々の累進課税がございますけれども、なかなか累進課税では負担の均衡が修正されません。そこで、死亡時に相続税というような高い税率でこれをならします。だけれども、所得税というのは必ずしも人は死ぬんだという前提に立っていない。やがてそういうことがきて、全体としてバランスがとれると、こういうことでございますから、この浦浜開発という具体的な会社が、将来どこかにそれを売り払うということを私は言っているのではないんです。そういうようなプロセスを通じて、もし売れば当然税金がかかってくる。しかも、持っていればそのままでございますが、しかし、それは経済的に意味がないことでございます。ですから、当然経済行為の推移としてそういうことがあれば、必ず税金は取り戻してしまうと。決してそれによってその中間が抜けるということには相ならぬ、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  277. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そうしますと、ここでまた田中総理に見習って、国民の多くがこういう会社をつくって、いわば幽霊会社をつくって、その幽霊会社をまた合併しまして、こういった形でどんどんどんどん土地を取得し始めますと、まさに土地の実質的な所有者の動きがたくさんありましても、結局課税できない。これは、財政上たいへんな損失になると思うのですが、そういったことを放置しておくのかどうか、その点について御見解を賜わりたいと思います。
  278. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) 課税ができるかどうかという点で基本的に申し上げたいことがございますが、その譲渡という売買、つまり売買あるいは譲渡ということの具体的な事実がなければ、いまの税法上その税金をかけることができません。その事実が起きるまでわれわれじっと待っておるわけです。それは税法ではいたし方ないことでございます。もし、おっしゃるとおりとするならば、それは別の法律等をもって手当てをされる必要があるかと思います。
  279. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そうしますと、田中総理に見習ってこんな問題が方々に起き始めた段階で初めて、立法措置等によってこういう方法による実質的な売買を整理する、そういう御趣旨ですか。
  280. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) ただいま申し上げたような税法の一つのシステムというものが、そういうような行為を誘発するかどうかという点だろうと思います。私は、そういうふうには必ずしも相ならぬと。こういうような状態で置いておきまして、経済的に意味がない。少なくともそのいろいろな資金、それを保有しておる資金というものは、ある意味で金利がかかってくる。増資の払い込み資金あるいは銀行の借り入れ金、いろいろございましょうが、それは世間一般の金利水準によって金利の負担がかかってくるわけです。それはロスとして、あるわけです。ですから、そういうような経済的なことというのは、無限に行なわれることではございませんし、それは当然ブレーキがかかってくるわけです。したがって、こういうことがあるといっても、つまり、譲渡が行なわれるまで課税という面が留保されておりましても、それによってこういうような行為が頻発するというようなことは必ずしも私はないと思います。
  281. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そうしますと、もし万が一、田中さんにまねてこういったことが起きたら、それについては、あなたはこの責任を負わなければいかぬことになるけれども、それはよろしいかということですが……
  282. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) 委員長
  283. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 それはそれでおきましてね、それは答弁はいいですよ、次の質問をしますから。  そういう問題が起きるわけでありますが、私が聞きたいのは、いまの答弁を聞いておりますと、結局、関新観光と浦浜開発の合併については、それほど疑問を持っていなかったので、それが一つ脱法行為というような観点からは、特別の調査をしていないと、こう理解していいのでしょうか。
  284. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) 第一点でお答えいたしたいのは、私は、その関新観光、浦浜開発ということ、その具体的な事実でいまの税法の仕組みを御説明したのでございます。これは、田中さんが具体的に関係していらっしゃるかどうか私にはわかりませんけれども、この具体的な事例がいいとか悪いとかいっているのではございません。  それから第二は、何かもしそういうようなことになってこなかったらば、つまり、こういうような保有がずっと行なわれておりまして、譲渡課税ができないということについて、私に責任をとれと。私は、責任とる立場にございません。これは、ただいま申し上げたように、いまの法人税あるいは譲渡に関します課税の仕組みを御説明いたしましたので、しかも、その課税の仕組みで経済的にどうなるかというと、それは金利や負担があるから、無限に課税の延伸が行なわれるものではないと、こういう経済的な仕組みを御説明しているわけです。それについて、もしそういうような将来いろいろ経済的な事情の変化がございましょう、あるいはそういうこともあるかもわかりません。しかし、それは、私がそう考えておるから、そういうふうになったということには相ならぬと思います。
  285. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 まあ、責任をとる立場にないからということは、四角にものを言われては困るのですが、いまあなたは、田中さんが関係したかどうかわからないとおっしゃったわけですが、しかし、すでに先ほど申し上げました国会の答弁で、私は、寄付をしてもいいと言っているのでしょう。そうでしょう。そういえば具体的に田中さんが支配をする土地なんです。その土地が別の会社の名義、または合併という方法ですが、なった。そのことに一切疑念を持たずに調査もしなかったのか、これが私の質問の趣旨なんです。
  286. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) 私どもはいかにして適正な課税をするかという立場からものを見ております。したがいまして、それが田中さんに関係するかどうかということは、この税の目をもちまして十分念査しなければいけない問題でございまして、その点については現在の時点として私はまだ十分自信をもってお答えできません。そういう意味でございます。  それから、先ほどの答弁で、何か国税庁調査していないんではないかというような気がすると、こういう御趣旨でございますけれども、そんなことはございません。
  287. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 まあ、いまの場合には、実質的な譲渡があったのを隠しているのじゃないかという観点でお聞きしたのですが、もう一つ考えられますね。と申しますのは、この浦浜開発株式会社も田中総理と深い関係がある。となれば、実質的な所有権の移転ではなくて、いわば田中さんがその法人名義土地を持っているにすぎない、法人の名前を借りたにすぎないという面もあるわけでございますね。そういうことをうかがわせる一つの事実がございます。  と申しますのは、四十九年一月二十四日に、この浦浜開発株式会社の代表取締役に就任いたしました前田実さんという人は、先ほど来名前が出ております田中総理とたいへん関係の深い新星企業の取締役を四十四年十月以降しておった人であります。そんなような事実、そしてまた実質的な売買という面が、もしそういう可能性をしているとなれば、やはり田中さんがいろいろ疑惑のある土地を、実際、自分のところからなるたけ遠くへ離そうという形で行なった一つの措置じゃないか、そういうぐあいに見られる節もあるわけであります。現に、この動きを見まして、多くの人々の間に、実際、この土地は時価百億円、どう安く見積もっても五十億円だというような評価もされておるわけでありますので、ただ同然に手を入れた沼の底を五十倍にも百倍にもしてかせいだと、それじゃあまりえげつないという、そういうのを避けるために、なるたけ多くの会社をずっと回しまして、そして田中さんの関係を世間の目から薄れさせるひとつの擬装じゃなかろうか、こういうぐあいに見る向きが私だけじゃなくてたいへん多いわけであります。この点についてどうお考えか、御答弁を願いたいと思います。
  288. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) どうも私よくわからないのですが、ただいま近藤委員、なかろうか、こう思われるというような御表現でございます。私どもそういうような仮定の御質問じゃどうもお答えにくい。私どもは、現実にあります税法に照らしまして、課税の条件が熟した事実というものを見つめて仕事をいたします。したがいまして、なかろうか、そうではなかろうか、思われるがどうか、こういうことにつきましては、国税庁長官といたしましては、どうもいかんともお答え申し上げかねます。
  289. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私は、そういう態度では、五万人とおる実際の国税庁関係の現場で働いている職員ですね、こういう皆さんをほんとうに指導できるのかどうか。実際現場で働いている皆さんは、少しでも脱税を見のがせないということで、どんな動きに対してああじゃなかろうか、こうじゃなかろうか、あらゆる可能性を考えて、少しでも疑わしい点があればすぐ調査に乗り出す、そういったことでこういう脱法行為、脱税を防いでちゃんと税金を集めているわけですね。いま言ったように、単に仮定の答弁で答えられないということでは、私は、そういう指導はできないんじゃないかと思います。  そこで、もう一度伺いたいのは、私が先ほど言ったような、可能性を全然考えないのかどうか、そういうことなんです。
  290. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) いろいろ国税庁吏員が仕事をいたしますときには、実にあらゆる可能性というものを考えましてやります。でございますから、そういう御趣旨で、こういうようなことがあるのじゃないかというように、まあ要素というのは、百ありますか、二百ありますかよくわかりませんが、その中の一つの要素としてということならば、それは考えられることだと思います。そういう意味で、要素の一つに勘案して、ここでそうであるかどうかということを確かめて、そうでなければ、さようでない課税をするとか、そういう意味ならば、そういうことは税務職員というのはしょっちゅう考えている、そういう意味でいま私はお答えいたしました。
  291. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 となりますと、あなたとしても、先ほど申し上げた関新から浦浜に移ったその件についても、私が申し上げたような可能性というのは一応考えられると、国税庁長官としてもそういうことはお考えになるかどうかなんですね。それで、先ほども言ったとおり、実際の税務署の職員は一生懸命可能性を考えていますね。国税庁長官だけがその点ぴたっと思考を停止してはならないと思うんで、当然私は考えると思うんですが、いかがでしょう。
  292. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) 再度申し上げますけれども、私どもはあらゆる可能性というものを考え仕事をいたします。それはもう全く事実でございます。そういう意味で、われわれしょっちゅう、ぱあっと頭を流動的にいたしまして考えております。したがって、国税庁長官自身も、常に思考をやわらかくいたしまして、弾力的に考える、それは事実でございます。
  293. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そこで、次に、やはり同じ田中ファミリーの幽霊会社の一つであるといわれている東京ニューハウスの不動産取得について伺いたいと思います。  先ほども目白台の邸宅の問題で、この東京ニューハウスの名前出てまいりましたが、この東京ニューハウスに限らず、この田中ファミリーの関連の会社の増資の時期をずっと見てみますと、この増資の時期と、それから、不動産を購入した時期とがきわめて一致する、これがしばしば見られるのでございます。たとえば、すでに私が指摘しました昭和四十七年五月十二日の関新観光開発の四倍の増資と全く同じ日に鳥屋野潟の土地を取得しているという事実。また、東京ニューハウス株式会社につきましても、たとえば、先ほどの目白台の田中邸にいたしましても、昭和四十二年三月二十一日に、一千二百五十万円から三千七百五十万円に増資をしたときに、その直後に目白台の土地を二千九百三十七平方メートル購入しております。また、四十七年四月四日、この三千七百五十万円を一挙に一億五千万円に増資をする、四倍以上に増資をしたその直後に、これまた大問題になっております軽井沢の旧徳川邸の別荘を購入したわけであります。これは一万九千五百九平方メートル、こういう経過を見てみますと、関新観光も、そしてまたこの東京ニューハウスも、そしてまたその他の多くの企業も、田中総理個人資産を隠し、そして持つための会社である、こう考えるのが私は合理的だろうと思いますけれども、こういう観点から調査をしたことがあるかどうか、これについて伺いたいと思います。
  294. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) 直前の私の答弁、新星企業、関新観光、浦浜開発、私ども税務職員はいろいろな可能性を考え調査をいたします。しかし、同時に、これらのいろいろ法人につきましては、かねてから、申告当初から私ども調査をいたしております。現在までのところのデータによりますと、先ほどの近藤委員が、まあ仮定であるがと、こういうお話でございますけれども、さような事実は私どもとしてどうもないようである、したがいまして、これまでの課税処理でほぼ適正に処理ができているものと、かように考えております。ちょっとつけ加えておきます。  それから、ただいまの土地のこまかい日付でございますが、調査査察部長のほうから答弁いたさせます。
  295. 渡邊喜一

    説明員(渡邊喜一君) 御質問にありました年度において、それぞれの増資が行なわれておるということは私どもも承知いたしております。いずれの年度におきましても申告、それから、法人税法適用上の処理等は適正に行なっておるというふうに承知をいたしております。
  296. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私、具体的に聞いたのは、増資の時期と、実際にだれが見ても、田中さんの屋敷であり、別荘と見られる不動産を買った時期と一致しているんじゃないか、こういうことを聞いておるんです。ですから、答弁、いま欠けておったのは、その直後に不動産を買った事実をお認めになるのかどうかということです、この企業が。これが一つ。  そして、さらにお答えいただきたいのは、そのことは、田中総理個人資産を隠し持つための会社という疑いをきわめて濃くするものじゃなかろうか。これは先ほど公明党のほうからも田中邸の所有についていろいろ質問がありましたし、すでに四十何%も企業が占めておるわけですね。となれば、そういう疑いを持つのがごくあたりまえです、企業というのはもうけるためにできているんですから。そうでしょう。高い金で買って、安い金で貸しておったのでは、これは採算合わないのです。屋敷のために、そんなに高い賃料を取れないのは普通ですから、となりますと、田中邸に提供したということは、会社独自の立場から見ますと背任ですよ。そうでしょう。土地を高い金で仕入れて、たいして入らない賃料のために、住宅のために宅地を貸したなんということになれば、それは取締役がまず特別背任の責任を追及されます、株主から。この場合には、株主がずっとたぐっていきますと田中さんになっていきますからね、田中さんが田中さんを追及するということはおかしなことになるから、やらぬかもしれぬけれども、一面ではそういう問題があるんです。私の聞いたこと、まず、その時期に不動産の売買があったかどうか、土地購入があったか、そしてそのことは、全く田中さんのために土地を持つ企業だと、そういう認定をする論拠がきわめて大きいのじゃないか、この点について御答弁を願いたいと思います。
  297. 渡邊喜一

    説明員(渡邊喜一君) 御質問の、増資によって取得した資金需要といいますか、用途はどういうことであったかということでございますが、調査の内容にわたりますので、この段階で私から御答弁するのは遠慮申し上げたいと思います。いずれにいたしましても、田中総理のために買ったのかどうかとか、そういう点にまで私ども調査は立ち入っていないんではないか、そこまでまた立ち入る必要もないんではないか、適正に所得が申告されておれば、それで税務調査としては十分ではないかというふうに考えております。
  298. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 正直に調査に立ち入っていないと思うということですね、そういう御答弁があったわけでありますけれども、それは、調査に自発的に立ち入らなかったのじゃなくて、立ち入れなかったのじゃなかろうかという疑いが一つあるわけです。それは、田中総理の邸宅であるために立ち入れなかったのじゃなかろうかという、そういう問題が一つあります。  それから、それは、資金の用途目的についてのことだから、それについては答えられないということでありますけれども、しかし、私が先ほど聞いたのは、そういう疑いを持って調べたかどうかを聞いているんですよ。その結果、どうするかというのは、またあとで聞きますけれども、そういう、少なくとも田中さんの邸宅を持つための会社であるという疑い、ということは、実質的にはそれは田中さんがこの土地を買ったということですね。世間、言われているとおり、これは田中さんが土地を買ったんだと、だから、田中さんがその資金源をどこから持ってきたのかという、そういう捜査が及ぶかどうかということです。そこへつながっていくんですが、そういう疑問を持って調査をしたかどうか、これが私の質問なんです。先ほど来、長官も答弁されまして、そして前回の委員会調査したかどうか答えられないということは、そんなことないんだということがありました。これは必ず答弁していただかなければいかぬことです。
  299. 渡邊喜一

    説明員(渡邊喜一君) 先ほど一般論として直税部長のほうから申し上げましたとおり、増資に関する税務調査といたしましては、その増資の資金需要というものはどういうものであるか、それから、増資に応じた株主等の資金は一体どういうところからどうしてきているものかというような点にまで調査が及ぶというのが一般的な調査のあり方です。
  300. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 ですから、私の聞いたのは、具体的なこの事例において、田中さんの屋敷を買うための会社であるかどうか、別荘を買うための会社であったかどうか、すなわち、田中さんが実際出したのかどうかということです。そういう面を調査したかどうかということが私の質問なんです。あなたが立場上答えられなければ、ひとつ長官、お答えをいただきたいと思います。
  301. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) 最後の、田中総理が買うためにそういう会社の増資をしたかどうかということ、それは必ずしも因果関係はっきりいたしません。先ほど申し上げましたとおり、税務職員は十分な調査をいたします。したがいまして、いろいろな可能性は当然頭の中で考えておる。まして、これにつきましても一般の例でお答え申しましたとおり、いろいろ調査をいたしました。今後とも必要があれば、また補足的にいたしましょう。しかし、そういうような因果関係というのは、どうも私どもの税務調査という中でははっきりいたしません。
  302. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そうしますと、いままでの調査、実際に行なったかどうかわかりませんけれども調査ではっきりしない。しかし、きょう私の指摘がありましたので、その点について、今後このような土地が実際、田中さんが実際は金を出して、企業名で買ったかどうか、これについては今後調査をなさるという、そういうぐあいにお聞きしてよろしいでしょうか。
  303. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) 再三御答弁を申し上げておりますように、私どもいろいろな可能性というものを考えます。そういう意味では、今後もいろいろな機会、あるいは具体的な事実、情報というものがございましたら読み直す、調査をするということはあり得ます。
  304. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 実際そういう調査をなさるという決意を表明されたので、私は具体的に指摘したいと思います。  この東京ニューハウスの四十七年の四月の増資は、すでにお手元にお示ししてある登記簿のとおりであります。表 III、これは実際の登記は七日になっておりますので、七日であらわしました。   〔委員長退席、理事岩動道行君着席〕 これをごらんいただきますと、このときの登記、一億一千二百五十万の増資によって、これは軽井沢の旧徳川邸を買ったということが時期的にも私ども予想できるわけでありますが、このときの出資は、田中角榮さん一人で七千五百万円、実に、全増資額の三分の二であります。そうしてそのほかの親族、そこに三人並んでおりますけれども、この親族の分を合わせますと四分の三、そうしてそのほか残りの株主も、これをごらんいただければ、しばしば田中ファミリー、幽霊企業に名前を出してくる人々です。いわば田中さんの下働きをしている人々ですね。となりますと、これも田中さんのところから出た可能性があります。そして現に、この株式申し込み人の住所をごらんいただきますと、田中利男さんの住所は、文京区雑司谷川の十六の六、その次の遠藤昭司さんの住所は、豊島区雑司谷一の十六の六と、おそらくもうこれはだれが見ましても、本人に関係なくさっさ書いたために間違ってしまったんだと思うんです。本人が実際、自分が株式を引き受けするつもりでやれば、こんなことないと思うんですね。これだけの事実があれば、このほとんど全部を田中さんが金を出し、そして自分で買ったんでは、その七千五百万円だけじゃなくて、一億円にも及ぶこの金の出所を、これはどうしても追及される、そこでこれを免れる意図をもってこういう会社名義で徳川邸を購入した、これはごく普通の論理上出てくる結論であります。こういう事実がはっきりした以上、いま私が申し上げているような、田中個人が、徳川邸を買ったという疑いが当然出てくると思うんですが、いかがでしょうか。
  305. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) 先ほど、直前の御答弁で申し上げたとおりでございます。なお、直税部長が私どものほうの税務調査の態様で申し上げましたとおり、増資等ができましたらば、どういう名義でありましょうとも、その資金のいろいろよってきたゆえん、これはどういう名義でありましても、一人にかたまっておりましても、それがいろいろな方の名前になっておりましても、それは当然私ども調査の対象に入る、こういうことをしょっちゅうやっておるわけでございます。
  306. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 いまの答弁はあまりよくわからないんですが、これだけ田中個人がほとんど出したと見られる出資ですね。そして、その直後に徳川邸を買っているという、この因果関係、これはよほどの事情がなければ違うということは出てこないんです。この因果関係を切断するだけの新たな事実が出てこなければ、さて税金をたくさん取ろうと思って一生懸命やってる税務署の皆さん、あるいは国税庁皆さんはまず見のがすはずはないんです。普通の人がこんなことやりましたら、しかも、これは同族会社ですから、特別にこれは注目されて、財産隠しじゃないかと、こういうことを言われる、そして同時に、この一億の金の出所をこれは追及されるんです。ですから、私がお聞きしたいのは、当然これは、税務署わかるわけでありますから、こういう株主の各払い込み状況を事実見て、その結果、私が申し上げたような疑いを持って調査したかどうか、まずこれを伺いたいんです。
  307. 安川七郎

    説明員(安川七郎君) 実際に、調査いたしますのは署あるいは局の調査官でございます。先ほど来再三申し上げましたように、こういうような調査官はいろいろな可能性を頭に浮かべまして調査を進めてまいる、それから、真実を発見する、こういうプロセスになるんでございます。私が御答弁申し上げたいけれども、五十も百もいろいろ可能性があって、当該調査官の頭脳の中で考えておることでございます。はたしてそういうようなことに一点にしぼったかどうか、これはいまの私としては、そういう調査官がそういう意思を持っておったかどうか、的確にお答えできません。しかし、再三申し上げておるように、あらゆる可能性を考えてやっていることだけは事実でございます。
  308. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 あらゆる可能性のうち、この中身を見ますと、九九・九%は田中個人の金で徳川邸買うべきところを、東京ニューハウスの名前で買ったという、そういう推論が成り立つのが論理的結論なんですね。そして、それを否定するような事実は何かあったのかどうか、これが問題なんです。それで私は、長官は直接調査されなかったので、むしろそれにもっと近い課長でもどなたでもけっこうです、こういう観点から調査をしたかどうか、また、この株式の状況を知っているのかどうか、それについてお答えをいただきたいと思います。
  309. 横井正美

    説明員(横井正美君) 最初に御答弁申し上げましたときに申し上げましたごとく、一般論といたしましても、またこのような会社の場合におきましては、通常出資がそのとおりに行なわれておるのか、名義株主ではないかというふうなこともあわせて調査をしていると聞いておるわけであります。現在までのところでは適正に処理されておる。ただ、いろいろ新しいお話があるわけでございますので、先ほど長官からも申し上げましたように、あらためて見直し調査をして出す、こういうつもりでございます。
  310. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私が聞いたことに答えていないんです。私が聞いたのは、この東京ニューハウス株式会社の昭和四十七年四月四日ないし七日の増資の各株主の払い込み 状況をあなたが知っているのかどうか、これがまず第一問ですよ。そしてそれを知れば、当然、私が先ほど指摘しているとおり、田中個人が買ったと同然じゃないか、それを否定するような事実がない限り、そう推定するのは、これはあたりまえじゃなかろうか、そういう観点から、田中さんのこの一億にも及ぶ出所を調査したのかどうか、これが私の質問なんです。その二問に対して的確に答えてください。
  311. 横井正美

    説明員(横井正美君) 私自身が知っておるわけではございません。私自身調査をしたとか、知っておるということではございませんで、通常そのようなことをいたすということでございます。で、四十七年のことでございますので、その課税関係はまだ続いておるわけでございますから、今度出ておりますような情報等に基づきまして、もう一度見直しをいたしたいと思います。
  312. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 まあ、時間もきましたので、それ以上押し問答になりますから申しませんけれども一言お答えいただきたいのは、この事実を見まして、この株主の各株の状況を見まして、田中個人が別荘を買ったということを否定するような論拠があるんだろうか、もしほかにあったらそれを教えてもらいたい。いかがでしょう。
  313. 横井正美

    説明員(横井正美君) 私どもからいまの段階でこれがお話のようなことであるのかどうか、はっきり申し上げる段階ではわれわれないと思っております。
  314. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 もう先ほど、午前中に、国税庁長官が調べたらどうか、それはこたえぬわけにはいかないのだと言ったばかりでしょう。そうでしょう。あなたはその長官のあれほど誠意を持って述べた答弁に反するのですか。言えないんですか。あるいはまた言っちゃいけないと言われているんですか。
  315. 横井正美

    説明員(横井正美君) 長官が申し上げましたとおり、見直し調査をいたしておるわけでございまして、その結果どのようになるかはいまのところまだわからないわけでございますが、いずれにいたしましても見直し調査をいたしておるということでございます。そこで、いまの段階で御指摘のようなことであると申し上げる段階にはないということでございます。
  316. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 いつまでやってもしかたがないからこれで一応打ち切りますけれども、私が申し上げた観点から、これは積極的な調査を進めて、その結果はぜひともこの委員会に報告するように求めます。  これは、大蔵大臣にお伺いします。田中総理の昨日の記者会見の中でこういった場面がありました。記者団のほうから、総理になってからは土地や別荘は買っていないのか、こういう質問があったと思うのですね。これは、テレビで田中さん一瞬ぎくんとしましたね。そして答えたには、軽井沢に一つあるかもしれない、買ってくれと言われて引き取ったのがあるかもしれないと答えております。しかし、いまの質問の中で明らかになったとおり、これは、総理になる直前、いわゆる大平さんも含めて総裁選挙に各候補者がしのぎを削っているその時期である九月二十三日に、この徳川邸を買収しているわけであります。また、すでに指摘されているとおり、新星企業の名で四十七年九月二十六日時価四億から五億もするという松ケ枝という料亭も、これまた田中さんが新星企業の名で買っております。総理になるこういう前後にこのようにばく大な資産をたくわえているところに、国民はたいへんな疑惑を持っているわけでありますが、同時に、田中さんずっとやってきたように、土地のころがしによって土地がどんどん上がってくる。そのために庶民は、わずかなささいな土地も手に入らなくなる、これがいま国民の怒りとなっているわけであります。そこで、大蔵大臣にお伺いしたいんですが、こういう疑惑の中で、私が具体的に指摘したようなさらに大きな疑惑が出てくる。これを積極的に解明していく意思があるかどうかということ、これが第一点であります。  それからもう一つは、いまの言われている中で、先ほどはおわかりにならなかった幽霊企業は何であるか、これもだいぶ御理解いただいたと思うんですが、こういう観点から大平さんとしてどうお考えになるか、大平さんならば、こういうこんな会社をつくってそこへ自分の金を出して、そして金をかけて財産を隠すようなことをやるのかやらぬか、大平さん自身の問題も含めて、かつ政治家、特に総理そのものの道義の問題としてどうお考えになるか、この点について大蔵大臣としてのお考えを聞きたいと思います。
  317. 岩動道行

    ○理事(岩動道行君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  318. 岩動道行

    ○理事(岩動道行君) 速記起こして。
  319. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 じゃ、これもお手元にいっておりますけれども、これは大蔵委員会へぜひとも出していただきたい資料です。  一、田中総理昭和三十五年以降の1、確定申告書及び財産債務明細表など確定申告にかかる付属書類一切。これは所得税関係であります。  右にかかる国税局または税務署の調査事績簿。  2、贈与税、相続税にかかる申告書とその付属書類。  右調査にかかる国税局または税務署の調査事績簿。  3、昭和三十五年以降の資産の移動にかかる「重要資料せん」と、その活用事績書類。  二、田中総理関連企業、これは後に申し上げますが、の昭和三十五年以降の1、確定申告書及び法人決算報告書など確定申告にかかる付属書類。   〔理事岩動道行君退席、委員長着席〕  右にかかる国税局または税務署の調査事績簿。  2、右各企業の資産の移動にかかる「重要資料せん」と、その活用事績書類。  3、特にいわゆる幽霊会社について、昭和三十五年以降の株式の払い込みに関する国税局または税務署の調査報告書。  そこで、関連企業と申しますのは、田中土建工業、三建企業、国際興業、理研ビニニール工業、新星企業、東京ニューハウス、浦浜開発、田盛不動産、日本電建、越後交通、ニューエンパイヤモーター、室町産業、関新観光開発。  三、といたしまして、田中総理大蔵大臣に就任したとき以降の田中総理及び関連企業に対する国有財産の払い下げ状況。  その取得者、取得年月日、国有財産の所在地、面積、取得価格、その他の条件等。  理財局管轄に関するもの、関東財務局管轄に関するもの一切。  四、田中総理及び関連企業の不動産、有価証券、その他の所有財産一切を公表すること。  以上の資料要求をし、いま申し上げた大きな問題について大臣の御答弁をお願いしたい。
  320. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 田中さんの課税問題につきましては、ただいままで国税当局の報告によりますと、適正に処理されておるという報告でございます。けれども、ただいま新たな情報がございますので、そういうことにかんがみまして再調査をいたしておるところでございまして、万々遺漏はないと思いますけれども、万一遺漏がございましたならば、適正に調定すべきものと私ども考えております。  それと、政治家のモラルの問題でございます。これは田中さんに限らず、各政治家それぞれが、みずからモラルを踏まえて行動されることと存ずるのでございまして、私自身も、一政治家といたしまして、私なりに自戒してまいりたいと考えております。  第三に、ただいま資料の御要求があったわけでございまして、国会の御審議につきましては、政府も極力御協力を申し上げてまいらなけりゃならぬと心得ておりますが、守秘義務との関係等もございまして、どの程度これにこたえられますか、私どもとしましてよく調査をいたしまして、こたえるべきものにつきましては提出しなければならぬと思っておりますが、ただいま公示された所得金額以外のものについては御提出がたいへん困難でなかろうかと判断いたしております。
  321. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 じゃ、残ったやつはあしたやらしていただきます。
  322. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 まあ同工異曲のお尋ねをすることになるわけです。田中総理がおやめになるまでこんなことを繰り返しているのかと思うとたいへんやりきれない気がするのですけれども、あまりに大きな問題ですから重ねてお伺いをしたいと思います、ただ、時間がもうありませんので二点だけお伺いします。なるべく簡潔にお答えいただきたいと思います。  最初お尋ねしたいのは、いま問題になっている大きな疑いといいますか疑惑というのは、一つは、田中総理個人の金づくりにからむ問題だと思うのです。しかし、この問題点はここでとどまらないで、見のがすことができないのは、この例のいわゆる文春問題をきっかけにしながら、大かたの国民が受け取っている気持ちというのは、公権力の行使というのが公平に行なわれていないのではないかという不信感徴税調査が平等に行なわれているかどうかという点について従来にない不信感が高まっている。これは田中総理個人の金づくりの疑惑以上に大きな問題ではないかという気がするんです。それを大蔵省としてどうやって晴らしていかれるのか。先ほど来の御答弁なり、また、大臣見解を伺いましても、従来の処理に誤りがあるとは思わないし、一応念のためにまた再び調べているというお答えなんですけれども、疑われている――ことばを選ばないで言えば、疑われている人が、再び調査をすることによってはたして国民はだいじょうぶだと思うんですか。この疑惑の晴らし方というのは、やはり真剣に考えてみなければいかぬ問題じゃないかと思うんですけれども。この点について大臣としてはどういうことを考えながら徴税という公権力行使が公正に行なわれているという確信を国民に与えようとなさるのか、まず、これをお伺いしたいと思います。
  323. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) わが国の徴税当局は、十数兆の国税を日夜最善を尽くして調査、調定に当たっておるわけでございます。国の存立の一つの重要な柱である財政権の行使におきまして、異常な熱意と非常にしっかりしたモラルを踏まえてやってきておるわけでございまして、私は、その点わが徴税当局の労苦を多といたしておりますし、また、深い尊敬も持っておるわけでございます。それで、その場合、わが徴税当局が、あなたの言われるように、徴税上公正を疑われるというようなことがあったらたいへんだと思うわけでございます。その点につきましては、るる申し上げておりますように、総理大臣であろうと、だれであろうと、納税者といたしまして適正な調査と調定をしていかなければならぬものと考えておるわけでございます。  したがって、田中さんのこれまでの御申告につきまして、田中さんは田中さんなりに注意されて御申告になっていることでございましょうし、申告漏れは万々ないものと私ども考えておりますが、しかし、税務当局といたしましては、どういう情報であれ、直接、間接の情報が与えられますならば、さらに、先ほど長官も申し述べましたように、いままでやったことにあやまちはないかという点で念査していくのが当然と心得て、現にそういう調査を進めておるわけでございます。この調査を通じまして、もし漏れがございますならば、それはいち早く是正していかなければならぬものと思います。そうすることによって、課税の公正さ、信頼をつないでいかなければこれはたいへんなことでございますので、その点につきまして、わが徴税当局を御信頼いただきたいと思うのであります。
  324. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 結局、いまのを伺っても、信頼もちろんしたいわけですけれども、ほんとうにそうなんだろうかという疑惑が一ぺん生まれてしまうと、やっぱり手段を尽くしてもう一度徴税当局を信頼してもらいたいということをしませんと、なかなかいま大臣がおっしゃっただけでは信頼感というのは回復してこないんじゃないか。  たしか、きのうの田中総理記者会見でも、先ほど全人格的な表明だと大臣言われましたけれども違法行為は一切犯しておらぬとおっしゃるわけです。おっしゃりながら、しばらくして何と言うかというと、たしかこういう趣旨のことを言われたと思うんです。いままできちんきちんとやっておけばよかった、その後ひた走りに走って何もしなかったために、まとめてどかっとやられた、このきちんきちんを何を言っているか別ですよ。ただ、こういった話と、いまいなくなった人を引用して悪いんですけれども、同じ行政の中の建設省が、室町産業について代表者もわからぬと聞かされますと、一体、じゃ、徴税どうなっているんだろう、とめどもなくやっぱり疑惑は広がる。したがって、そのためには、何がしかみんながもっと納得できるような手だてを尽くさなければいけないんじゃないか。お伺いしていることを時間の節約で申し上げますと、おそらくそんな気持ちから大平さんとすると、田中総理に、みずから一般に説明をしなさいということを言ったんだろうと思うんです。一つは、田中さんみずからが、自分疑惑を解消するための釈明をしなければいけませんし、これも一つの手段だと思うんです。ただ、徴税事務に対する公平感の確保というのは放置していい問題では決してない。そう考えますと、田中さんの釈明に対して、いつなのか、幅はどこまでやるのか、具体性をどこまで持たせるのか、そこにやっぱり大蔵担当大臣としての所見がなければいけないんじゃないかと思いますので、お伺いします。
  325. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 田中さんが、いつどういう姿でみずからの財産について天下にものを申されるのか、それは私は存じません。それは田中さんの判断で、信念に基づいてやられることでございますので、徴税当局としてそれを云々するという筋合いのものでは私はないと思います。
  326. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 それは田中さん個人の問題だということになると、一応それはおことばどおりおくとします。それ以外に公正な事務を執行しているんだという、信頼確保のための手段を何に求めておいでになりますか。というのは、大臣なり大蔵省の人がやっているんだと言っても、みんな、あれっと思っているときには、それだけでは疑惑は解消しないんじゃないか。際限なくいろんな材料を持ってきては、どうなんだという、このうっとうしい議論を続けていかなければならぬ。したがって、そのためにどういう手段を、田中さんが、これはあの人がみずからきめることだとおっしゃるんなら、考えておいでになりますか。
  327. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私ども、五万の徴税に従事いたしておりまする公務員を御信頼いただいていると、国民信頼していただいていると思うんです。これだけの要員を持ちまして、十数兆の税金を秩序正しく国庫に納めさしていただいておるということは、非常に私ありがたいことと思っております。現に、世界のどの先進国に比肩いたしましても、私は劣らないと思っております。したがって、徴税当局として、いままで調べたことには適正だと思っておる、しかし、新たな情報を得たので、さらに再調査して、もし万一遺漏があれば正したいということを申しておるんでございますので、どうぞ国会におかれましても御信頼をいただきたいと思うのであります。田中さんに対する、くれぐれも申し上げておりますように、総理大臣であろうと、どなたであろうとやっぱり一納税者なんでございますので、私ども御遠慮は申し上げるつもりはないわけでございますし、また、田中さんをかばわなきゃならぬということは考えていないわけでございます。
  328. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 繰り返しのやりとりですから、少し話題を進めながらまいりますと、この徴税一般を含めて、それを監督している機関が二つある、一つ国会だと思うのであります。そこで、その監督をしている機関の権威においておっしゃった五万の税務職員の仕事ぶりも含めて公正にやっておりますということを担保していくことは――この疑惑がないとはいかに何でもおっしゃれないでしょうから、それを晴らすためにはしていかなきゃいけないんじゃないか。その意味で、守秘義務議論ここで深くするつもりはありません。ありませんけれども国会国政調査権というのをむしろ、先ほどは尊重してと言われたんですが、積極的に活用しながら、公正な徴税事務を行なっているんだということを国民の胸に深く焼きつけていく、印象づけていく。その意味で、尊重するではなく、むしろ積極的に活用しながらということを、国会ということであれば、やはりお考えいただくのが筋道ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  329. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 国会調査権があるから、私どももこわいから一生懸命にやるわけじゃないんです。政府がやるべき当然のこととしてやっておるわけでございます。しかし、国会国会として、国権の最高機関として調査権をお持ちでございますし、御審議にあたって御趣旨の意見を持たれておるわけでございますから、政府は、それに対しまして最大限の御協力を申し上げるのは当然だと考えておるわけでございます。ただ、私は、国会にもお願いいたしたいのは、行政府としての立場徴税機構をどのように維持していくか、公正な徴税をどうして維持していくかということについて御理解を賜わりながら、私どもの御審議に対する協力をお受けいただきたいということをお願いいたしておるわけでございます。
  330. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 政府政府として、みずからの職責を果たすことをまず考えなきゃいかぬというおことばをそのまま受け取ったとして、では、会計検査院おいでになっていると思いますから伺いますけれども、内閣と独立した機関であって、憲法上も明確にその立場、権限、役割りが保障されている会計検査院として、いま先ほど来の話しに、どういう役割りを果たしていこうとお考えになりますか。
  331. 石川達郎

    説明員(石川達郎君) ただいまお話しのございましたように、会計検査院は独立機関でございます。したがいまして、検査の方法、手段等につきましても、これは私ども自主的に考えて検査を行なっているわけでございます。  そこで、ただいま田中総理課税問題につきまして、いろいろな情報があるわけでございますが、これらの情報をもとにいたしまして、現在われわれが保有いたしております資料を十分活用して、過去五年間の田中総理の課税関係あるいは関連企業の課税関係につきまして見直しを職員に命じている次第でございます。もちろん、これらの各種の資料は、税務当局におきましても、これは徴税上重要な資料であろうかと思いますし、先ほど来のお話で、税務当局におきましても、これらを材料といたしまして慎重な調査をされるように伺っておりますが、われわれはわれわれといたしまして、これらの資料を十分活用いたしまして、検査に遺憾なきを期したい、かように考えております。
  332. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 平たく伺いますけれども総理並びにその関連する広がりに対してこれまで調べたのですか。
  333. 石川達郎

    説明員(石川達郎君) まず、所得税でございますが、これは各税務署に行きました際に、高額所得者から検査を行なうわけでございます。そこで、田中総理の所得を管轄する税務署はたしか小石川税務署でございますが、小石川税務署には毎年行きましてこれらの調査をしている次第でございます。また、関連企業につきましても同様でございまして、損益検査の証拠書類の提出には、非常にこれ事務量も多くなりますし、検査体制との問題もございまして、一定限度以下のものにつきましては提出を省略し、税務署に出向きました際に、これを検査するという方法をとっているわけでございますが、これらの企業につきましても、従来検査は行なっている次第でございます。
  334. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 会計検査院の頭数から言うと、全数の検査はとてもできないんですね。ほんとうはそれを最初にあなたは言わなきゃいけないんだろうと思う。いまのようにあたかも検査しているようなことを言うと、これまでの田中さん並びに関連する部分について、あなたの太鼓判を押していくことになるわけですから。ほんとうに検査をしたんですか。しなくても、しないからけしからぬということを言うつもりないんですよ。いまの陣容ではとてもできない、重点をきめながらやるわけですから。ほんとうにしたんですか。
  335. 石川達郎

    説明員(石川達郎君) 実際検査の具体的な内容に関するものでございますので担当局長から答弁させます。
  336. 高橋保司

    説明員高橋保司君) ただいまの田中総理関係の所得税なり、あるいは世間でいわれています田中総理に関連する会社につきまして、実際検査をしたかどうかという御質問でございますが、先ほど総長から御答弁申し上げましたように、田中角榮氏個人の申告所得税につきましては、毎年小石川税務署に出向きまして、これは実地検査と申しておりますが、その席で、まあ高額所得着でございますので、その間の説明というものは聞いて検査を終えております。  それから、関連企業でございますが、先生も御承知のように、対象となる法人というのは非常に多うございます。それで必然重点的に調査をするということになりますので、書面検査の上で、つまり歳入の証明として出されてきておる書類の上では一応検査を了しておりますが、それにつきまして特別その疑問を持って深く立ち入って検査をしたというところまではいっておりません。これが実情でございます。
  337. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 会計検査院法ですと、一条に、内閣からの独立性が明らかにうたってあります。で、二十四条では、書類提出を要求する権利があるんですね。二十五条では、実地検査もできる。三十一条では、検査の対象の公務員等に対して懲戒処分要求もできる。三十三条では、犯罪行為があった場合には検察庁への通告をしなければいけない。さらに全般を見ながら三十六条では、法令、制度、行政の改善処置要求することができる。きわめて強力な権限を持った存在なんですね。だから、憲法九十条にちゃんと書いてあります。いま問題になっているのは、田中総理個人の金の集め方の問題もありますけれども、この深い政治不信からどうやってわれわれが抜け出していったらいいのか。公権力の行使に対する国民の不安感をどうやって消していくのか。それを会計検査院として取り組むとしますと、大蔵省で見直しやってますから、わがほうでもじゃなくて、せめて特別調査班ぐらいはおつくりになるべきではないんですか。当然会計検査院だって守秘義務があるわけです。だけども国会には報告をする義務も同時にあるわけですから、新しい角度でわれわれの調査の結果こうこうです、詳細は言えませんけれどもということでも、明らかに特別調査班というものを編成した上で取り組んでいただければ納得のしかたもあろうかという気がするんですけれども、その重要性、私、非常に強く感ずるんですが、いかがでしょう。
  338. 石川達郎

    説明員(石川達郎君) 御指摘のとおりでございまして、会計検査院は独立機関でございます。したがいまして、従来もそういう心がまえで検査をいたしてきたわけでございます。先ほど申し上げましたように検査の実地検査も行ないますし、あるいは書面検査を行ないます場合に、個々の会計経理の心証を得るためにどのような書類を徴するかということは、これは会計検査院が独自できめて、相手方から提出をさせているわけでございます。したがいまして、そういった面で十分検査も行ないますし、また、検査の結果につきましてこれを不当と認めました事項につきましても、これは会計検査院が何者にも制肘されないで、われわれ自身判断でこれを検査報告に掲記する次第でございます。そういうような心がまえで検査をいたしているわけでございますが、田中総理の問題もございますけれども、これにつきましても、従来、ただいま申し述べましたような考えで検査を行なうということに変わりはございません。  それから、特別班等を編成したらどうかというような御意見もありますけれども、まあ、それは特別班というような形式でやるか、あるいはその他の方法でやるか、いずれにいたしましても、現在鋭意、先ほど申しました、過去のものにさかのぼりまして十分な見直しを命じている次第でございます。
  339. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 特別調査班というかどうかはいいわけですけれども、会計検査院が動いておりますということを国民にわかる形にしていただきたい、この点はよろしいですか。
  340. 石川達郎

    説明員(石川達郎君) 動いているということをどういうふうにして周知させるかどうかは、いろいろお考えもあろうかと思いますけれども、先ほど申しましたように、この問題につきましては十分な関心を持って検討を進めている次第でございます。  先ほど来再三申し上げておりますように、われわれはあくまでも自主的に検査を行なっているわけでございますが、その間におきまして投書とか風評等もいろいろわれわれの耳に入るわけでございますが、それらも適宜われわれの検査の参考といたしまして検査をいたしてきましたし、その中には、不当事項として検査報告に掲記されたものも二、三にはとどまらないと考えております。今回のこの問題につきましても、従来にも増して十二分な関心を持って検討をさせるよう、さらに、職員を督励してまいりたいと考えております。
  341. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 お答えが長いんであれなんですが、要するに、積極的にやるということですね。で、国民にわかるようにというのは、中でこもって仕事をされますとなかなかわかりませんから、こうやってやっておりますとか、こうしますということを言っていただいたほうが国民のわかりはいいんです。そういうきらきらした存在でいいはずじゃないですか、検査院とは。ということを実は申し上げたかったわけです。  時間がもうなくなっちゃいましたから、二番目の質問は遠慮しますけれども、ただ大臣一つだけ、聞きたかったことでお答えだけお願いしたいと思うんですけれども田中さんがどういう釈明をするかは知りません。知りませんけれども、きのうの記者会見聞いていましても、いわゆる問題になっている幽霊会社について、あれは田中個人と法人格が違うんだという趣旨で説明をされていたと思うんです。確かにいまの法律では、どういう怪しげな会社であっても、一つの法人格を持っていたら田中個人とは別になる、したがって、法律的にばらばらなんだと言っても通用していくのかもしれない。通用していくのかもしれないけれども、見かけはばらばらの法人であっても、実体とすると、非常に緊密な人間関係で連結されている企業集団というものに対して、しかも、そこで、非常に中心的力を持っている人が政権の座に着いた場合に、これを法人格が別だからということでほうっておいていいのか。もし、法律は満足しているんだということで言うんなら、法律を直していかなければいけない。  時間がないんでこまかくお伺いできないんですけれども、この手の問題についてどうお考えになりますか。  私の意見として言いますと、だからといって、その特定の関係集団だけを別扱いというわけにもいかないと思う。それを法律で、一般的画一的にきめるということはなかなかむずかしいでしょう。だったら、総理あるいは閣僚になる人は、自分を中心にした関連企業についての公表義務、その関係企業について公の、一般の企業以上の監査の光を当てる。せめてこれぐらいのことをしないと、法人格が別だから、あれは関係ないんだという話にならないように、どうしてもそこまで今回の田中総理の金脈問題というのは進めていかないと、政治的解決にならないんじゃないかと思いますので、この点についての大臣の所見だけ伺っておきたいと思います。
  342. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) われわれの人間社会いかに精緻な法律、制度ができましても、それを構成する責任のある主体である個人が、ちゃんとしたモラルを踏まえてなすべきことをし、なすべからざることをしないということでないと、りっぱな秩序は保たれませんし、活力のある運営は私は不可能だと思うのであります。問題は、あなたのおっしゃるように、政治的なモラルの問題であり、政治的な姿勢の問題であり、こういう問題の政治的解決の道をわれわれが考えなきゃならぬことと思うんでございますが、田中さんは田中さんとして、非常に人格的にいま対応されておると私は思うのであります。で、そのことに対する評価は、それぞれの方が持っておられるでありましょうけれども田中さんは田中さんとして、私は、全力をあげてみずからの政治責任にこたえられろべく心がまえておられると思うのであります。私は、お互い政治家といたしまして、やはり終始自戒の念を持って、公私ともに当たっていくべきであると考えます。
  343. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 本件に対する本日の質疑はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時十七分散会