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1974-10-22 第73回国会 参議院 大蔵委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年十月二十二日(火曜日)    午前十時四十六分開会     —————————————   出席者は左のとおり     委員長         土屋 義彦君     理 事                 河本嘉久蔵君                 野々山一三君                 鈴木 一弘君     委 員                 嶋崎  均君                 中西 一郎君                 鳩山威一郎君                 桧垣徳太郎君                 藤川 一秋君                 藤田 正明君                 宮田  輝君                 吉田  実君                 大塚  喬君                 竹田 四郎君                 辻  一彦君                 寺田 熊雄君                 戸田 菊雄君                 矢追 秀彦君                 近藤 忠孝君                 野末 陳平君    国務大臣        大 蔵 大 臣  大平 正芳君    説明員        大蔵政務次官   柳田桃太郎君        大蔵大臣官房審        議官       岩瀬 義郎君        大蔵省主計局次        長        辻  敬一君        大蔵省主税局長  中橋敬次郎君        大蔵省証券局長  田辺 博通君        大蔵省銀行局長  高橋 英明君        大蔵省国際金融        局長       大倉 真隆君        国税庁次長    磯辺 律男君        国税庁税部長  横井 正美君        労働省労政局労        働法規課長    松井 達郎君        日本専売公社企        画開発本部副本        部長       石井 忠順君        日本専売公社生        産本部本部長  佐々木幸雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○租税及び金融等に関する調査  (当面の財政及び金融等に関する件)     —————————————
  2. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  租税及び金融等に関する調査を議題といたします。  これより質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 野々山一三

    野々山一三君 最初に、大臣大蔵であると同時に、外務をやっていらっしゃいましたし、対外的な事情も十分御案内でしょうから、ちょっとそれるかもしれませんけれども、一般的な意味で聞きたい。  その一つは、アメリカフォード大統領来日されるわけですけれども、一体どういうことを目的として大統領日本へ来られるのか。それから、受けて立つ日本の側として、一体どういうことを話し合おうとしており、どんな目的があるのかということを率直に伺いたいわけです。大臣大蔵立場からいたしまして、世界的なインフレというものはたいへんなものであることはもちろんでございます。わけても、アメリカ中心にし、日本もまたその範畴にあって、まさに歴史的な経済不況とでも申しましょうか、そういう時期でありますから、そういう経済面では一体どんなところを問題にして、どんな話をする目的であるのか。  その次に、日本アメリカという観点から見まして、例のラロック証言に伴う疑惑というものは非常なもので、核搭載可能な船舶、航空機というものは、日本へ、例の三原則に基づいて、持って来ない、置かない、つくらない、という立場がありますが、一体そういうことについて国民的な疑惑は非常なものがあります。内外へ、持って来ないと言ってながら、日本には現実的にはラロック証言によって、積まれていたんですと言われているわけでしょう。そういう問題について一体どんな話がされることなのか、これは国務大臣としての立場からも、私はそのことについてはっきりと伺いたいわけです。  これは申し上げるまでもなく、日米間の関係というものは、もう不安定な要素が一ぱいになってきておる。そこで、こんにちは、いらっしゃい、日本に来ましたというような、形上の外交的なものだけでこの事態が乗り切られてしまうなどと考えるのは、いわば逃べとでもいいましょうか、外交上の問題点を提起して、本質的な問題を避けて歩こうというような、そんな印象さえもあるわけです。これはひとり私だけの見方ではないだろう。こういうふうに考えるわけで、もっと積極的な言い方をするならば、大統領日本へ来る、そのことに対して、日本はかくかくしかじかの対策を持って臨みますということが、いまや言われておかれるべき時期ではないか。これが私の第一の立ち向かい方とでもいいましょうか、対応策とでもいいましょうか、日本というものはどうあるべきかという観点から考えるべきことではないだろうか。  この二つを中心点にして、この際、フォード大統領来日という問題について、政府としての見解をお伺いしたいと思います。
  4. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いまお尋ねの件について私が御答弁申し上げる立場にあるかないか、権威ある御答弁は、所管大臣からお願いしたいと思いますが、国務大臣の一員として、どういう感想を持っておるかということとしてお聞き取りをいただきたいと思います。  最近、御案内のように、地球が狭くなったと申しますか、交通通信機関が発達いたし、情報が多量になり、その交流の速度が速くなってまいりまして、人を中心にした外交、とりわけ首脳外交時代を迎えておると思うんでございます。出先の機関は、この首脳外交補佐機関という性格を持っておりまして、各国の首脳間の相互訪問意見交換ということが非常にひんぱんになってきておるわけでございます。日米間の首脳がひんぱんに会って、こういう濃密な両国の間柄にあるわけでございまするから、意見交換がたびたびあってしかるべきであって、むしろないほうがふしぎなんでございます。私は、日米間の首脳相互訪問ということは当然の道行きだと思いまするし、アメリカ大統領が今日までお見えになる機会を持たなかったことがふしぎだとむしろ考えております。  それから第二に、野々山さんの考え方、私は、非常にきちょうめんなかたい、おかた過ぎるんじゃないかというような感じがするんです。というのは、お互いのおつき合いにあたりまして、こういう目的でおまえのところへ行くんで、それじゃおまえが来るんなら、おれはこういう受けとめ方をするなんというおつき合いは、ちょっとこれはかみしもを着過ぎておるんじゃなかろうかと思うんでございます。事があろうがなかろうが、ときおりおたずねするというのが心憎いことなんでございます。したがって私は、フォード大統領をお迎えするにあたって、日本はかみしもを着て当たるなんという態度をとるべきでないとむしろ考えております。  それから第三に、しかしあなたがおっしゃるように、核問題でございますとか、インフレ問題でございますとか、食糧問題でございますとか、もろもろの切実なる課題があるわけでございます。これはフォードさんが来られなくてもあるわけでございます。したがって、今度お見えになったからといって、突然それが問題が起きるわけじゃないわけでございますから、現に起こっておる問題につきまして、田中さんとの間で隔意のない意見交換を遂げられてしかるべきじゃないかと思うんで、むしろこの機会は、そういう意味相互意思疎通のいい機会を恵まれるものと考えるんでございまして、私は、大国民として、日本国民友好国であるアメリカの元首を節度ある態度でお迎えいただけることを心から念願しております。
  5. 野々山一三

    野々山一三君 いま大臣お答えでは、日ごろ仲よくしておれば、そこから、恒常的な外交友好というものが生まれるじゃないか、だから、目的を持たないでもいいじゃないかというお話ですけれども、ゆうべも十万、二十万という諸君が、例の、核を持ち込んでいるのではないかということをめぐりまして、たいへんな、核はないんだ、持ち込まないんだということを明らかにしなさいという立場大衆行動が全国的に起こっていますね。これは、ある意味でいえば、ほんとうのことが、うそだと言われればうそだったということになってしまうような関係が、日米間に存在しているということじゃないでしょうか。これがラロック証言によって、いまやたいへんな日米不信感というものが存在している、これが一つ。  数日来の新聞で、田中総理自身の財産問題が「文藝春秋」でですか出ておりましたものが、アメリカ新聞ではもう全部トップでこう問題にしている。一体何という日本だ、こういうふうに言われていることが報道されている。さてどっこい、田中総理がこの間訪米などされたことなんというものは、あちらの新聞では、もう小さな記事でちょこちょこっと載っているというのが現状ではありませんでしょうか。そういうものを比較的に対照してみまして、一体、日本という国はという角度からいったらどういう国なんでしょうか。これは、大臣自身が国際的な意味における日米間の日本というものはどういうふうに認識されておるのだろうかということを、この際伺っておきたいんでございます。  おそらく大臣は、君の言うような問題があるので、仲よく何でも、目的を明らかにしないでかみしもを着ないでつき合ったほうがいいではないかということで逃げられる。——逃げられると言っちゃ悪いけれども、お答えになるのじゃないだろうかと考えながら、なおかつ私はそこを問題にするわけでございます。いわば——結論を先に言いましょう。こんなにごたごたしているときに、首脳会談が必要ではないとは言わぬか、大統領が来るのをやめてもらうとか、あるいは延ばしてもらう、そしてその間のコントロールをしてみるという外交姿勢というものがあり得ていいんではないか、これが結論なんです。その理由、日本はもっと日本らしい日本というものを明らかにしていくべきときではないでしょうか、これが第一です。その大きな問題の一つに、安保条約はしょせんは核のかさのもとにおける日本として存在しているが軍備は持たないということに、日本というものはつまりそういうかさのもとにありながら、平和を愛好する日本だという態度、それでなければ困る。それが日本なんだという立場から軍備放棄立場をとったんでござんしょう。そういう意味で、いまや日本世界に対して経済的な面からいうと、エコノミックアニマルということばで全部総称されて、商売、金の日本、ものを売ればいい、こういう日本だというイメージを与えているんじゃないでしょうか。あなた方も、通産大臣も、外務大臣も、総理も、おそらくそこにいま頭を痛めつつも、なおかつしかしいままでの道を歩んでいらっしゃるというような感じがするわけです、総論的な意味で。いま私は大事なことは、日本といえば福祉の日本だ、こう言われるような、あるいは、日本といえば平和を愛好する日本だと言われるようなイメージ世界に確立する、そういうメッセージが必要なときではないでしょうか。もしどうしても、あなたが言われるように、ふだんかみしもを着ないで、日本というものが経済的にも外交的にも平和的にも仲よくするための交際が必要だ、いつでも必要だと言われるならば、そのときこそ、日本日本をつくり上げる、そういう日本政治というものが必要ではないかという意味で、確たるメッセージを持つということが必要じゃないでしょうか。  そこで、経済面でいえばドルの問題、資源面でいえば油の問題、食糧の問題などを持って、たいへんな苦境に立っているインフレ日本というものが、世界のチャンピオンとも言われるべきそのアメリカ大統領というものを迎えるというならば、目的を明らかにしてやることなどはしないほうがいいと言われながらも、私はやはり、筋道立った話し合い首脳会談であればあるほどに必要だと考えるのは、市民の、国民の要求だ、願望だ、常識だと、こういうふうに考えるのは間違いでしょうか。決意を持ってこれに対応するのは当然なことだと私は考えるので、あらためてお伺いします。
  6. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 世界の中の日本日米関係の中で、日本はどういう姿に映るかという第一の御質問でございますが、私は、日本に対する評価世界の中でいろいろまちまちにあることを承知いたしておりまするし、あるいは日本に対する批判もあり、あるいは嫉妬もあり、あるいは日本に対する相当な評価もあり、場合によってはある種の尊敬を持っておる国もあると思うんでございます。それは、それぞれの立場で取り方が違っておると思いますけれども、客観的事実といたしまして、今日日本経済大国として世界社会の中で大きな役割りを果たし、大きな責任を持つに至ってきておることは間違いないと思うんでございます。  それから第二に、これはエコノミックアニマル的な日本人がそういう性質を持っておって、そういうものが力になって、しからばそういう状態を招来したかというと、私はそう考えないのであります。日本人は、私は、元来エコノミックアニマルではないと思うんです。むしろ欧米人のほうがエコノミックなデンケン、実践にきびしいものがございます。日本人はどちらかというと、経済的じゃないんです。比較的情緒的です。お互いにそうじゃありませんか。花鳥風月をめでてあきらめも早いし、てんたんなんです。私は、何も日本人エコノミックアニマルなんて考えませんで、日本の今日の経済大国たる実力を培養した基礎は、何といいましても、日本人がすぐれておったからと思うんでございまして、経済的、エコノミックアニマル的根性ではなくて、日本人技術日本人のすぐれた高い労働生産力が、日本の立地、日本人の持っておる非常に高い貯蓄性向、それから、世界全体が平和で技術、物資の交流か非常に自由であったというような点、海運の自由が恵まれた、そういったいろいろ要素がかみ合って、日本がこのように伸びてきたわけでございまして、日本人エコノミックアニマルであるからそうなったなどと私は考えていないんです。もっと日本人は上等だと私は考えております。  それはともかくといたしまして、フォード大統領のせっかく来日を迎えるんであれば、ちゃんとしたかまえで首脳会談であればあるほど、き然とした核問題、平和問題、経済問題、ちゃんとした受け答えをして、国民がより理解を得れるようにすべきじゃないかと、私は、おそらく首脳会議が持たれるわけでございまするし、四日間日本で御滞在になるということでございますから、その間そういう一般的な友好親善の雰囲気をつくることに非常に寄与すると思いますけれども、田中総理との話し合いの中で、いま問題になっているようなことにつきまして、ごくフランクな話し合いが行なわれて相互理解が進むことを私は期待いたしておりますし、そういうことをはずれては、わざわざおいでになりましても、そういうことは話題にしないようにしようじゃないかなどということは、おそらくされまいと確信をいたしております。
  7. 野々山一三

    野々山一三君 この問題を深くやっておれば論争になりますから、結論づけたいと思いますが、そうすると、大臣のおっしゃるのは、フォード大統領が来ることは当然のことである、こういう考え方ですね。そこでフランクに一般的親善友好外交立場で話し合うと一言いながら、平和的に平和外交、核問題、経済問題というものが話し合われることを期待する、こうおっしゃるわけですから、結局フランクとはいうもののそこに中心が置かれるということはこれはもうはっきりしている。  そこで、私は、第一の問題は核問題。これはラロック証言で明らかになっていると考えたほうがいいと思いますが、ともかく日本国民全体はたいへんな、核問題で、持ち込まない、させないというふうに日本政府は言っているにもかかわらず、核は持ち込まれていると考えられるような疑惑は一そう拡大しているので、この核問題というものの疑惑を解消することを通して、友好親善というものがあるならばあるということで考えるべきである、そういう話が行なわれるべきである、こういうふうに考えていらっしゃるんだと受けとめていいかということが一つ。  それから、目的を持った首脳外交というものはかたくな過ぎてよくない、こう言われながらも、田中総理はここんところ何回も海外へ出張していらっしゃる。あるときには資源外交である、あるときは油をめぐるものである、あるいはあるときは経済外交なんだ、こういう立場を明らかにしながら行ってらっしゃる。かみしもを脱いで行ったと言っていながら、実際は、目的ははっきりしていると考えるのが常識じゃないでしょうか。そこで、おっしゃる第二の経済問題というものを、インフレドル資源というような問題について、日本としてはこう考えるという立場を持って話し合われるということがなければ、期待すると言ってみたって、やみ夜で何かをさがすようなことを言ったって、それはそんなことはつかまるはずはないんです。これ常識論です。そうでしょう。そういう意味で、そういうことをお話になるんですね、というのが第二点。  第三は、それを総称して、日本というのは平和な日本なんだというイメージを明らかにする、そういうメッセージを持つ、そういう意味首脳外交なんだ、首脳会談なんだ、こういうふうにあなたはおっしゃられたんだ、こう受けとめてよろしゅうございますね。そして私は、しかしそれにはバックラウンドがまだ十分でない、だから、ちょっと延期してくれ、こうしてその間にもっと現実的な友好バックラウンドというものを形成するということを考えることが当然じゃないか、こう言っているわけですけれども、大臣は、いやそんなことはないんだ、来てもらうことはいつでもいいんだ、こういうふうにおっしゃられているんだと受けとめざるを得ないんで、これは残念ですけれども、そういうことですか。この三つについて端的に答えてください。
  8. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 核問題につきまして答弁する、私、立場にございませんけれども、いま問題になっているようなことは当然首脳会談でお話し合いになられることと期待いたします。  で、経済問題でございますが、総理外遊が、時に資源目的であるとかいうようなことをよくいわれるわけでございますけれども、それは誤解のないようにお願いしたいのですけれども、私が外務大臣時代総理大臣に、非常におっくうだけれども、おこといことだけれども、どうぞひとつこういう国々はぜひお回りいただきたいということをお願いしたわけです。これは資格がほしいからというようなさもしい根性じゃないのです。われわれは、やはりどの国とも信頼友好をつないでいかにゃいかぬわけでございまして、まず、そのことが第一でございまして、そのことができなければ、ほかの経済外交文化外交政治外交もできるはずがないわけなんでございます。  総理外交総理外遊というのは、基本的にその国と特にひとつ理解を深めてもらいたい。総理がおたずねするとなると、外務大臣がたずねる場合と違いまして、向こうの取り上げ方が大体違います。新聞がさく紙面も違うわけでございます。国民歓迎動員数も違うわけでございます。だから、非常に有効な外交手段だと私は思っておるのです。しかし、これは、田中さんが行くについては、ブラジルへ行く、メキシコへ行く、今度は近く豪州、ニュージーランドをおたずねするということですから、これは資源外交に違いないと新聞のほうが書くわけです。そういうさもしい根性はないのです、政府のほうは。まず、友好親善を深めておいて、その中から資源文化理解もできてくるわけでございますので、まず、それをつちかっていこうということなんでございます。でございますから、おそらく今度フォードさんが日本に来られる場合も、こういう目的で行って、ひとつこういうえさをつってやろうなんて、そんなお気持ちは私はないだろうと思うのです。やっぱり日本という友好国との間で、理解親善が深まるようにということをまず期待されてお選びになったことと思うのでございまして、私は曇りない気持ち歓迎申し上げるのが筋だろうと考えておるわけです。したがって、あなたの言われたように、ちょっと待て、こっちの家庭の事情もあるから、いろいろ対応する都合もあるから、いまちょっと待ってくれなんということは、かえって非常に非礼になるのじゃないか、すなおに御歓迎申し上げるのが一番いい筋道じゃないかと私は考えております。
  9. 野々山一三

    野々山一三君 そうすると、私がさっき二、三並べました核問題、あるいは日本アメリカとの不信感というものが増大しておる、あいしはエコノミックアニマル日本というようなことじゃない日本だ、こう言われながらも、みんな向こうへ行ったら歓迎してくれるんじゃないかというけれども、インドネシアはどうだったのですか。タイはどうだったのですか。あれは歓迎ですか。あるいは、この間、つい最近オーストラリアで、自動車日本から持っていって、あんな自動車揚げてやらぬぞというわけで、港でそのまま自動車もおろせない状態になっているじゃありませんか。それはやっぱり日本技術の国だ、やれ歴史をたっとぶ国だといいながら、銭金世界にのしてきゃいいのだ、こういうことに対する反感がやっぱり国際的にあるということは間違いないと思う。そういう話は一応前提にいたしましても、これ以上議論いたしませんが、日米間における核問題の疑惑、それから、日米間におけるそういう疑惑を延長するような、たとえば、文春問題におけるアメリカ国民日本田中総理というものの持っている本質などがたいへんな目で見られて反日感情が高まっておるなど、そういう核問題、経済的な疑惑問題、友好的なといわれる観点から見る不信感、そういうものが解消される目的が結果的に果たされるということの話し合いが、フォード大統領来日によって結論づけられると期待している、そういうことなんだということでありましょうか、これはことばでは、そういうことだ、うん、そう思うと言われればそれまでかもしれぬが、ほんとうかどうかあとでわかるということになりますがね、そういうことでしょうか。たいへんきついようなやわらかいような言い方をしてますからね、あなたも答えにくいような顔つきなんでよくわかる。そこがいかぬのでよ。問題は、これはもう正直に、あることはあること、ないことはないことということにして、初めて信頼というものが生まれるのじゃないでしょうか、そこに友好というものが生まれるのじゃないでしょうか、仲よしというものはそこに存在するのじゃないでしょうか。それが社会世界の哲学じゃないでしょうか。それを前提にしてもう一言だけ簡単に、私の言っているようなことは解消される、そういう目的、結果的目的でいいでしょう、これがフォード大統領来日田中総理との首脳会談の結果形成されるのだ、こういうことを、きょう大臣が核問題は所管外だと言われるなら、あなたは国務大臣として答えてくださいよ、それなら。昔外務大臣やっていたけれども、そのことはすぐ言うけれども、ほんとうの話になると、おれの所管じゃないなんて、そんなことで逃げるのはやめましょうよ。そしてきょう国会議員の皆さんに、そういう疑惑は解消するんです、こういうふうにするんです、されなければ困ります、されることを期待する、こういうふうに率直に言われたらいかがでしょう。
  10. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど、私申しましたように、日本に対する、これはアメリカばかりじゃございませんで諸外国の見方というものは、日本というのはいやな国だという見方もございましょうし、非常に勤勉な民族だという見方もございましょうし、平和的だと見る見方もあれば、いやいや、しかしあれは相当ミリタントだという見方を持っている者もありましょうし、あるいは日本の経済進出というものを歓迎している向きもあれば、これに対して抵抗を覚え、あるいは嫉妬を感じておる向きもある。私は、アメリカだっていろいろな思いを日本に持っておると思うんです。だから、あなたが言うように、対日不信が全部がこれで解消できるなんて甘く見ないんです、私は。いつまでたっても、これは百年たっても二百年たっても千年たっても日米間の信頼が完全に無欠になるなんていうことは私はそう楽観をいたしません。必ずいろんな評価が入りまじるわけでございますが、その中で、少なくともあなたが言われる理解、いいことはいいこと、悪いことは悪いこと、その理解が進む。それからその底に、この国はもう約束したってだめな国だとか、ちっとも当てにならぬ国だとかいう不信が基本にあっちゃだめだと思うんです。やっぱり信頼が基本になけりゃならぬ。信頼理解がどの程度まで進むかという、それは人間のやることでございますから、神さまや仏さまばかりやっておるわけじゃないのだから、私は、その間にまあ五十点取れますか、六十点取れますか、そういうところが現実の外交の姿だと思うのです。で、今度の首脳会談も、そういう長いおつき合いの中の一環として、日米間の理解信頼が一歩進むということを期待するという意味でございまして、いろんな問題が、核問題はじめいろんなことが、もう日米間にわだかまっておる問題がこの際一切清算されて、もうからっと晴れて何も問題なくなったというような、私は、そんなぐあいに簡単にはいかぬだろうと思いますけれども、理解信頼が一段と進むことは間違いなかろうと、そういうことは期待したいと考えております。
  11. 野々山一三

    野々山一三君 一〇〇%完全な合意が得られるなんていうような信頼感なり、疑惑が解消するなんていうことを私は言っているわけじゃないのです。その方向に一つ一つ積み重ねられていくということの中心的課題として三点を指摘したわけで、これはもうお答えはこれ以上求めません。少なくともあなたも閣僚として、しかも、外交関係を長い間やっていらっしゃった人であり、いま大蔵大臣として国際経済社会の中で生きていらっしゃる人なんですから、総理に向けて、その国民の期待しているものが一歩でも二歩でも三歩でも充実する、そして少なくとも基本的な疑惑が解消されるんだなという期待が持たれるような結果を招来するように、最善の努力をしてほしい、これを注文しておきます。  その次に、時間があれですから端的に伺いますけれども、補正予算問題で伺います。一つは、自然増収は一体幾らぐらいいま見込んでいらっしゃるのだろうか。その上で補正予算というのはどの規模なんだろうかということを端的に伺いたいのです。一時は三兆円だといわれ、あるいは順次漸減してきて、いま二兆強というようなところだという。片っぽうでは大蔵省は二兆円規模の大型補正予算というものを考えているというふうに伝えられているのですけれども、それは一体どのくらいの数字を見込んでいらっしゃるのか。どの規模での補正予算を編成しようと考えていらっしゃるのか。  その次に、いま総需要抑制ということで、全体的に金融面でも事業面でも抑制をしていらっしゃるわけですね。これはインフレ対策だろう、こう思いますが、さて具体的に繰り延べというやつが相当強調されているわけです。しかし、実際は大型規模のプロジェクト、あるいは公共事業というものは繰り延べイコールそのまま残されていく。俗っぽく言えば、積み残されていくかっこうになっていくし、その結果、国民的な規模、零細中小企業など、あるいは国民的な生活要素というのは、このインフレの中でたいへんな、圧迫ということばがいいかどうか知りませんが、弱い者いじめになっているわけです。  そこで、税金、金融という問題にからむわけですが、こまかいことは別にいたしまして、今年度予算編成の過程でも、私ども二兆五、六千億から三千億円の自然増というものが見込まれるであろう。高度成長の中でとってきた結果というものはそういうふうになっていくだろうと。したがって、税金面で言うならば、年度内減税というものを考えたらどうだということを、大蔵委員会なり、あるいは予算委員会でもやかましく言ってきたところですが、それらは一体どういうおつもりなのかということを、総論的に一ぺん伺いたい。
  12. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 結論から申しますと、まだ歳入、歳出とも不確定要因が多過ぎまして、補正予算はどのぐらいの規模になるかということを本委員会で申し上げる段階に至っていないわけでございます。歳入のほうは、八月末までの実績を私の手元に持っておるわけでございますが、なるほど法人税、所得税の収入は非常に順調でございまして、八月末までの予算に比べての収入の達成率というものは、去年に比べまして数%上回った状態にあることは御案内のとおりでございますが、間接税などというものは若干伸び悩んでおるといいますか、予算に比べての達成率が去年よりやや鈍い状況にあるわけでございます。  で、八月までの五カ月を延長しまして、十二カ月の見積もりを立てるというのは少し乱暴なんで、もう一カ月ぐらいの時間的余裕を与えていただきたい。とりわけ九月の決算の様子など一応頭に置いて見るためには、もうしばらく時間をかしていただきたいと思っております。しかし、歳出のほうでございますが、歳出のほうはそれにかかわらずどんどん内容が漸次固まりつつあります。一番大きい大口の人事院勧告の処理でございますけれども、きょうの閣議でおきめをいただいたわけでございまして、完全実施さしていただこうと。これはそれだけの財源、非常に巨額な財源でございますけれども、補正予算にもう計上するという決意をここでしたわけでございます。  それから、生産者米価、消費者米価はいろいろな御批判がございましたけれども、すでにきまって実行に移しておるわけでございまするし、社会保険診療も十月から改定をいたしましたし、そういったものが一つ一つ固まりつつあるわけでございますが、まだ確実にこの程度になるだろうというつかみ切れない費目もございまして、歳入、歳出ともいま一体幾らぐらいの見当になるかというのは、正直のところ私の脳裏にまだ描くことができないわけでございます。しかし、これもいつまでも大事を踏んでもっとあとにしてくれ、あとにしてくれというわけにもまいりませんので、補正予算をやがて組まなければならぬわけでございまするので、もう一カ月ぐらい私待たしていただきたいと、その間に相当固まった数字を、見当を申し上げられるのではないかと考えております。
  13. 野々山一三

    野々山一三君 この新聞をたよりにするわけじゃありませんけれども、言うなら、二兆円予算というものでだんだん固まっていくような、これは日本じゅうに広がっていくわけでしょう。この数字は、これも見当がつかぬ数字なんでございましょうか。かってに新聞が書くんで困ると先ほどおっしゃったけれども、新聞がかってに書いたものでしょうか。テレビやラジオがかってにしゃべるものでしょうか、いかがでしょう。
  14. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) その新聞に書いた数字に私は責任を持てないわけでございます。
  15. 野々山一三

    野々山一三君 じゃ、まあ、おっしゃることを、責任が持てないということは、かってに書いたのだからおれは知らぬと。あれはかってに書くやつだと、こういうことだというふうに、むずかしいことばわからぬものだから、だれでもわかることばで、こんなことばじゃねえかと、そうですがと聞きますから、いかがですか。
  16. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 新聞社のほうでは、いろいろ取材をいたしまして、御自分で記事をおつくりになっているんだろうと思いますが、少なくとも大蔵省からそういう数字を出したことはございません。また、事実いま申し上げましたように、私の頭にもまだないわけで、つくれないんでございますから、私ども関係のない数字であるということをひとつ御了承いただきます。
  17. 野々山一三

    野々山一三君 これまた水かけ論になりますけれども、根も葉もない話が話として天下の新聞に出るというのはおかしな話ですね。大臣が知らぬのか、わからぬのか、うそを言っているのか、新聞うそを言っているのかはっきり。まあわしらもこれ参考までに見ているわけですが、これがほんとうのものだとは思いませんけれども、根も葉もない数字、おれの頭にもない数字というふうに言われると、ちょっと気がかりなんでね。まあ、あとに聞くことを一番先に、そのことをもう一ぺん答えてください。その次にまた答え方によっちゃそこに戻ってきます。そういうことを頭に置いておいて、答えられますなら答えてください。
  18. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま申しましたように、公務員給与はこういう財源計算になって、これはもう補正予算に計上する決意をしたという、診療報酬はこういうように改定した、米価はこういうようにきめたというような数字を集めまして、ことしは比較的いつもより災害が多かったから、災害費もこのぐらいになるだろうとか、それは新聞社のほうはいろいろ、何でしょう、そういうようなことから見当つけておられるんだろうと思いますけれども、いやしくも権威ある国会におきまして申し上げる数字などというのは、よほど私ども固めてからかからないきませんので、まだ一切固まってもおりませんし、固まらないまま、こうなりそうだなんということをぞんざいに申し上げる不用意なことはやらないつもりでおります。
  19. 野々山一三

    野々山一三君 一つ一つは固まりつつあるんだけれども、トータルしたらこのぐらいの数字になるだろうということは、なるだろうという程度のことさえも無責任だから言えないというふうに言われると、そんなら何でこんなところで正直議論しておるんだという話になりまして、簡単に聞くけれども、あなたは国会をどう思っているんですか、開き直りますよ。あなたは、そりゃあ国会議員であるとともに政府の人でしょう、行政府の人でしょう。国会なんか要らぬということですか。そんなものは意見も聞く必要もない、見当もつける必要もない、おれらが言ったことが言ったことだ、こういうわけですか。そうでないなら、そういうような傾向にあるが、最終的な数字はまだ確定をいたしません、手直しするところはあるでしょう、検討するところはあるでしょうと述べられるのが、行政府が国政調査権を持っている国会に対する答え方ではないでしょうか。それが国民の意思をまとめていくという場所ではないでしょうか。そういうやわらかい話は別として、おたくがほんとうにそう言われるなら、私はこれ別の機会にひとつ時間をあらためてやりますよ。いかがでしょう。おれのほうがやることはおれのほうがやることなんだから、おまえらのことは言わねえわ、おれのほうが判こ押すまでおれはそんなことなんか知らぬわいということですか。繰り返しますよ、あらためてもう一回聞きます。何時間でもやらざるを得なくなりますよ、答えてください。
  20. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私の申し上げたのは、国会で私どもが答弁するという場合に、立法府と行政府との関係でございまして、非常に重大だと考えておるわけでございます。ここで答弁したことに間違いがあったりしたらたいへんだと思うわけでございます。いいかげんな腹づもりで国会で答弁するようなふらちなことは私はいたしたくないわけでございます。したがって、ここで申し上げておることは、きわめて正直に申し上げておるわけでございます。国会で答弁することは、政府として責任を持って御答弁申し上げることであるという厳粛な立場におるわけでございますから、国会をどう考えておるかというと、国会での答弁をおろそかにしちゃならぬという、そういう気持ちで一ぱいでございますから、申し上げておるわけでございます。むしろ逆に、いいかげんな見当の答弁をして、そのあと固まった数字を申し上げて、何たるぶざまなことをするやつだといって、あなたからおしかりを受けるに違いないと思うんです。ですから、固まった上は、まず、国会に私は申し上げるつもりでおります。
  21. 野々山一三

    野々山一三君 固まった上での数字はきちんと国会へ出す、これはまあ当然のことで、その間に諸般の累積的数字、ないしは傾向的数字というものが、おおむねこの方向に向かっているんですかと、聞きながら言うわけですよね。そのことを何もそっちの、前者のほうが非常にかたい話、かたい話って、きちんときまった話。後者のほうは、いまこれから私いろんなことを質問したいので、それにはこういうことをやったほうがいい、ああいうことをやったほうがいい、こういうことはいかがですかと聞こうと思っているのに、そんなことは言えねえと言われるなら、これ、聞くなという話になるわけですね。聞いたって言えねえと、言えねえから聞かぬほうがいい、聞くやつはばかだと、こういう話になると、行政府と立法府との関係は一体どういうことかというつながりになるわけですね。だから、その点はあなたも先ほどの新聞の話と一緒で、あいつらかってに書きやがっておれは知らぬ、おれの知らざることをかってに取材して書いたんだから知らぬ、これも言うならば、これは事実関係の問題ですからね、新聞の人がおこるかどうか知りませんよ、ほんとうにこれ何のために忙しいのにここへ来ていらっしゃるのかねという、たいへんに楽しい人ですねということになっちまうと困るから言っているわけです。そこの話の段階というものは、私だって多少のことは知っている、ばかだけれどね。だから、やわらかくいこうというところはやわらかくいったらいい。まあそういうことをあなたに忠言申し上げますわ。そしてやっぱりこの委員会でもフリートーキングをやったりなどしていることを考えてみれば、国会と行政府というものが、もっともっと真剣に国の問題を考えるということが必要だから、この委員会なども開かれておるということを考慮の上でこれに対処していただきたい。これは強く希望しておきます。  そこで、予算のことがはっきりしないものですから何とも言いにくいのですけれども、いま総需要抑制というものを続けていくという考え方に変わりがないようでございますけれども、それはそれでいいと思うのですけれども、結局それが、一般論として言うならば、弱い者といわれるような一零細中小企業や、あるいはインフレの影響下にあって国民の生活というものはだんだん詰まってきておる。企業はどんどんつぶれているところがふえている、倒産がふえているというような傾向を見てみると、ここでいま第二の問題として伺いたいのは、長期財政計画というものは、一体どこにあるのか、どういうプランを持っていくならば、この日本の経済事情というものを克服していけるのか。一例を言うならば、大型の投資、こういうものを押える、そうして零細企業分野というものを助けてやる、助けてやるということばは悪いかもしれませんが、ここらに配慮を十分にしながら、弱い者をささえていくということがなければ、今日のインフレ下における事業、生活、社会関係、こういうものがよりよくなっていかないというふうに考えるわけです。そこで、この補正予算を組むに当たって、それらをどういうふうに考えていらっしゃるのかという予算編成の考え方とでもいいましょうか、方針なんていうと、すぐ四角い話はいかぬと言われるから、方針というよりは、考え方はいかがですか。そしてそれをお述べになることを通して、国民信頼を得ていくということが必要じゃないかと思います。  その次に、物価問題物価対策、インフレ対策でも考えるのですけれども、この間、経済企画庁が九項目の処方せんを出して、これで物価抑制を考えていきますということを言われたわけですね。御存じでしょう。これなんかを見てみますと、言うならば中小、零細だけがチェックされている。たとえば、石油はどうする、やれ生鮮食料品はどうするというような九項目をあげられていますね。これまた新聞しかわからぬものだからね。あれはかってに書いたと言われると困っちまうけれども、ここに九つ書いてありますね。「米価と外食代については国、都道府県およびモニターなど消費者による価格等の監視、調査を実施する。」以下、九項目ありますね。これなんか非常にぼくの印象で言えば、ちょうど体が悪いのに、指先だけなおしているというような感じですね。手がしびれているからここへこう薬を張るというような、そんなことでは解決にならぬではないかという卑俗的な言い方ですけれどね、そんな感じがする。そこで、大型なものというようなものを押える、あるいはそういう強いものはちょっと待ってくれ、弱いものをささえるということによって、国全体のバランスを考えるということは常識である、こういうふうに考えるなど、そういうことを予算的にどういうふうにお考えになるだろう、あるいは施策的にどういうふうにお考えになるだろうということが聞きたいわけです。
  22. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 政府が去年から総需要抑制政策というものを政策の柱にいたしておりますことは、野々山さん御承知のとおりであります。で、これは需要を抑制することによって需給関係を緩和させた上で、物価の安定をはかろうというわけでございますので、財政におきましては、まず、政府が大型の財政を組みまして、政府による財貨サービスの購入が多くなるようなことになると、需要を喚起することになりますので、まず、予算は抑制型にしようということでございまして、ことしの予算は二〇%以下、たいへん御無理して、圧縮した、予算にしていただいておるようでございます。しかも、そういうようにきめた予算でありながら、その中で景気刺激的な公共事業につきましては、四半期ごとの契約率を押えていこうということを実行いたしておるわけでございます。したがって、この政策を堅持する以上、私ども補正予算におきましても、本予算におきましても、抑制型の予算を組んでいかなけりゃならぬと。そして、できたら公債に対する依存率も低目に持っていくように努力しなければならぬと考えておるわけでございます。したがって、どういう予算を組むつもりかということは、そういう方針でいくわけでございますけれども、いま御指摘のように、それは弱い者いじめになってはいけないじゃないかということでございまして、ごもっともでございます。したがって、その総需要抑制政策というものを考える場合に、財政、金融を通じてやっているわけでございますけれども、金融面におきましては、中小、零細企業に対する融資につきましては、予算を、既定予算を削るどころじゃなくて、既定予算の上にさらに四半期ごとに増ワクを考えてやっておるわけでございまするし、また市中金融におきましても、特別な融資ワクを御設定いただいて協力をしていただいているわけでございまして、つまり、何でもかんでも、もう仮借なく押え込むというんじゃなくて、総需要抑制政策それ自体のワク組みの中で、中小、零細に対する配慮はきめこまかくやっておるつもりでございますし、政策当局ないし金融当局が、そういうワク内におきまして、なお一そうきめのこまかい周到な配慮を加えていただくことを私ども期待しておるわけでございます。したがって、全体として需要を抑制しようという大きなフレームはくずすことはございませんけれども、中小、零細、弱い面につきましての配慮は、周到にいたしてまいらなけりゃならぬということを心得ていくつもりでございます。
  23. 野々山一三

    野々山一三君 そうすると、まあ端的に、一般論ですけれども、中小を抑圧するというようなことはしないと、できるだけこれはめんどうを見ていくと。あるいは端的に言うと、このごろ繊維だとか、建築関係というもの、ああいうものは非常に不況に立っているわけですね。金融面あるいは仕事の面で非常にこう無理がかかっている。そういうようなものが、総需要抑制という総ワクの中ではあるけれども、そういうものについては、端的に言えばめんどうを見ていくというやり方を通して、この危機を乗り切るような策を考えていくと。弱い面はめんどうを見る、こういう考え方なんだということですね。——わかりました。  その次に、先ほどちょっと触れましたけれども、年度内減税というやつですね。たとえば、サラリーマンなどこの際思い切って三万円ぐらいの減税を年度内でやったらどうですかということが私の言い分なんです。金がないということがきっと必ずつくだろうけれども、この際、たとえば所得ですね。その中でも、端的に言えば、この土地の分離譲渡課税方式あるいは利子などなど、こういうものについて考えていくという。分離を認めない、総合でやっていくということにすれば相当違いますね。これは変な人の名前をあげちゃいかぬけれども、長谷川万治という人は、去年、四十八年度で五十一億の譲渡所得を得た。この人は八億円納めただけですね。総合でいけば三十八億納めてもらわなければいけない。あるいは二分合算でやれば十八億納めてもらわなければならない。一番得したのはいまの税、所得の方式がこの人たちがもうけてしまうというか、得をしてしまうということになってしまうわけですけれども、人のことは別といたしまして、こういう税体系というものを変える、租税特別措置法を変えるというようなことなども、この際、抜本的に考えていったらどうかということを私考える。そうすれば、財源的に、先ほど二兆円という数字がわかったようなわからぬような話だったけれども、少なくともそのくらいの数字があって、そしてさらに措置を考えれば、五千億や八千億ぐらいのものを年度内減税をやってみるというところが、今日的な事態に即応した政策的姿勢の本質ではないかというふうに私は考えるんですけれども、そう長いこと言わぬでけっこうですから、そういうことをやるならやると、そんなことをやるのはばかだというのなら、ばかでもけっこうですけれども、はっきり答えてください。私、ちょっとこっちのほうが弱いものですから、どうぞひとつ遠慮なくずばっと答えてください。
  24. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 本年度所得税の大幅な減税をやっていただくことができました。そのおかげで、申し上げるまでもなく、夫婦子供二人の給与所得者で、課税最低限は、昨年に比べまして三四%余り増加したわけでございます。独身者ではこれは約六〇%増加をいたしております。しかも、おっしゃいますように、最近の消費者物価といいますのは、昨年に比べて約二五%伸びておりますから、そういう点から、年内にあるいは年度内に減税をさらに追加しろというようなお話がございますけれども、私どもといたしますれば、ことしの大幅な減税というのは、実は数年来にない、最近にない非常に大幅なものでございまして、先ほど申しましたように課税最低限というのは非常に大幅に上がっております。  それからまた、本年の春闘以後給与のほうも約三〇%伸びております。これは物価と一体どういう関係になっておるかという計算でございますけれども、かりに三〇%昨年の年収が上がったというふうに計算をいたしまして、そこに税金、所得税が一体どういう関係になっておるのかということを計算をいたします。昨年に比べて年収が三〇%上がって、ことしの所得税の大幅減税が行なわれた結果を見てみますと、可処分所得で、やはり昨年に比べて三〇%余り増加しておるという傾向がございます。そういうように本年の大幅な減税という効果が非常に大きかった、この可処分所得の増加が三〇%を上回っておるということは、最近におきますところの消費者物価が、昨年に比べて約二五%伸びておるということと比べましても、やはり本年の所得税の減税ということがかなりこれをカバーし得たと思っております。  それからまた、一体いまの経済情勢のもとにおいて、所得税をさらに減税をするのがいいのかということになってまいりますと、私はやはり、この際には、ことしの当初におきますところの大幅な減税という効果を評価いたしまして、ここではやはり消極的に考えざるを得ないんじゃないかと思っております。  それからまた、先ほど御指摘の租税特別措置についてのいろいろな問題、特に利子・配当とか、土地の分離課税の問題というものについては、実は来年末に期限がまいります。これをどうするかということは、年末におきまして、来年度の税制改正の中の一環として検討しなければなりませんし、私どもとしますれば、常に租税特別措置全般につきましては、その効果を洗い直しながら、慢性化しないようにという態度でやってまいりましたから、その中の一環として検討いたしたいというふうに思っております。
  25. 野々山一三

    野々山一三君 年度内減税はしない、所得は流い直す、こういうことですね。
  26. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 年度内減税については消極的でございます。それから、所得につきましては、期限が到来いたします。特に先ほど御指摘のような利子・配当・分離課税、土地の分離課税は来年が期限切れでございますから、本年の年末にやらなきゃなりません。そのほか期限の到来するものにつきましては、もちろん本年の年末におきます税制改正で検討し直すということでございます。
  27. 野々山一三

    野々山一三君 まあ別な次の機会にこの議論をさしてもらうことにいたしますが、所得などについては、毎年三月までで期限が切れるんでね、そうでしょう、そういう形のことを同じように言われておってもちょっと困るんで、あらためていま申し上げたようなことについては、私どもとしては、私どもの言っているほうでという言い方をすると、かどが立つかもしれませんが、国民的な批判、意見というものを考慮の上で積極的に見直してみる、洗い直してみるという立場を貫いてくださいということを希望として申し上げておきます。  それから次に、物価問題が先ほどのお話でも出ておるんですけれども、政府は、一五・八%の物価上昇で三月末までにそこまでをやりたいと、こういう考え方のようですね。これは経済企画庁が発表しているものであり、関係閣僚会議もこれを了承しておるということですから、これはきまった話ということになるでしょう。一体いまの経済事情のもとで月々平均大体一%弱ぐらいでいける見通しというものか、そういうものがあるんでしょうか。物価安定というものを一体どういうふうに考えていったらそうなるのかという、物価安定という概念というものをちょっと教えてもらいたいんです。で、その根拠はこうこうこうこうこういうふうにやっていったならば、一五%の物価上昇で乗り切れるという考え方があったから、これはおきめになった話ですから、そういう根拠があっての話でしょうから、根拠をひとつ教えてください、これが端的な聞き方でございます。で、いまのところ、実際はまさに、これも繰り返しのようですけれども、弱い者いじめになっているんじゃないでしょうか。先ほどの物価安定策の話の九項目を処方せんだというふうな書き方で出ているものを見てみましてもそういうふうに思います。で、肝心な大企業の製品価格、これが市場に流れてきた、こういうものは一体どういうふうにお考えになっているんだろうか。あるいは公共料金なんというものは、野放しと言うとちょっとしかられるかもしれませんが、まあ野放しですね。そっちが上がっちゃっておるのに、一般的なものはこの九項目でずらっとこう並んでいますけれども、一体どういうことなんでしょう。そこらを前提にしながら考えてみるということが必要。そこで、大企業だとか、公共料金などは、片っ方は製品価格は全然押えられていない、公共料金は野放し、こういうことになりまして、見えみますと、物価安定ということで、一五%強のむのを柱にして考えていくというんですけれども、結局はいかがでしょう、私の感じで言うならば、インフレマインドというものを刺激して、年末から正月を越える時分にはまたぞろ狂乱物価ということばがはやるほど急騰するんじゃないでしょうか。そういう心配があるもんですから、一ぺん、どこが悪いから、どういう原因があるから、どういう考え方でいったら、これだけでいけるんですということをひとつ、これは非常にむずかしい話かもしれません。しかし、おきめになったわけですからね、それに私らは期待するもんだから、ほんとうかいなという角度から、ほんとうの話をほんとうに聞かしてもらいたい、そうすればほんとうに信用するかもしれぬ、これが国民的な気持ちだと思う。そういう意味で景気、物価展望、その根拠、概念、そういうものを示してください。
  28. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 去年の暮れから、ことしの春にかけてはまさに狂乱的状態でございまして、卸売り物価、消費者物価が異常な高騰を見ましたことは御指摘のとおりでございます。その後政府は手がたく総需要抑制策を堅持することを軸にいたしました物価政策を進めてまいりましたわけでございますが、幸いにいたしまして、三月以降卸売り、消費、両物価がだんだんと鎮静化の歩みを示してまいったわけでございまして、九月になりまして卸売り物価が前月比〇・一%上昇にとどまったということは、われわれに対して非常に勇気を与える数字だったと思うんです。しかし、これも十月に入りまして上旬が〇・四の値上がりになっているということでございますから、楽観はできませんけれども、春以降少なくとも物価は鎮静化の方向に向いてきたということでございます。しかし政府は、いろいろな御批判がございましたけれども、米価にいたしましても、国鉄運賃にいたしましても、診療報酬にいたしましても、いろいろ若干の公共料金なるものの改定をさしていただいたわけでございます。そういういままできめましたものが全部CPIにどういうように影響するかということを一応読み込みまして、十一月以降、毎月前月比一%以内の騰貴にとどまるということに成功いたしますならば、来年の三月という時点におきましては、一六・数%ぐらいの消費者物価の上昇という勘定になるわけです。で、われわれは、卸売り物価が相当な鎮静の度合いを示してきているところに勇気を持ちまして、さらに総需要抑制策を手がたく進めてまいり、国民の御協力を得られれば、これは一五%以内に持っていけないことがないかもしれない。そこで、この間、政府・与党は協議いたしまして、一五%以内に三月時点において持っていこうじゃないかということを努力の目標にいたしたわけでございます。で、その場合、いま野々山さんが御指摘のとおり、それでは今後の公共料金はどうするんだということが直ちに問題になるはずでございます。私は、いまとりあえず問題にありますのは、郵便料金というのはどうするかという問題をかかえているわけでございます。それから、たばこ、塩というものの価格をどうするかという問題もあるわけでございまして、この間政府・与党の打ち合わせ会におきましては、私は、これはこういう目標を達成するためには、こういうふうなものに手をつけないようにしようということをきめるのは待ってくれとお願いしたわけでございます。というのは、三月末で、ある一五%以内という数字がかりに出たとして能事終われりじゃないじゃないか。四月になってまた新たな問題が出てくるようなことをやっておったのでは申しわけないわけでございますから、われわれは、ことしから来年、来年から再来年にかけて長期的な展望を持ってだんだん物価をおさめていかなければいかぬわけでございますから、三月末がもう勝負のときであるという気持ちはわかるけれども、そこにすべてをかけるというわけにはいかぬじゃないかということが一点と、それから、郵便料金にいたしましても、いつまでもそれをそのまま押え込んでおれるかどうか、これはよほど吟味せにゃなりませんので、これは予算の編成のときに相談しようじゃないかということにしていただいているわけでございます。したがって、公共料金は今度は政府はこんりんざい手をつけないぞ、手をつけませんということをお約束するわけにはまいりませんけれども、この公共料金というのは、いままでも非常に抑制ぎみでやってまいりましたことは御案内のとおりでございまして、ほかの物価、料金が上がりましても公共料金を押えて押えてきたわけです。よくもまあ政府は押えてきてくれたというおほめのことははないわけでして、今度は上げるとそれはけしからぬというておこられるわけでございますけれども、これは御理解いただきたいのでございますけれども、ほんとうはいろいろやりくり算段しながら押えてきたという努力はそれなりに評価していただきたいと思うのでございます。今後もそれをできるだけ押えて押え込んでいくように努力いたしますけれども、予算編成にあたりまして、そういう料金問題は、その場面でひとつ総合的に考えさせてくれぬかということにいたしておるわけでございまして、来年の三月はそういうように目標をきめたから、もう公共料金は手をつけないということをいまここでお約束するわけにはまいりません。できるだけ抑制的にはがんばってまいりますけれども、いまそれは手をつけるつもりはありませんということを申し上げられないわけでございます。そのことを御了解得ておきたいと思います。
  29. 野々山一三

    野々山一三君 あと二つだけ端的に伺います。  住宅融資の問題ですね。たとえば、住宅公庫を締め切って後、融資残が約七万戸あるわけですね。建設省は何か新しくこれに融資をしたらいいじゃないか、大蔵省はそれはだめだと、こういうことになっているようですね。実際、この住宅ローンなんというものの融資というのは抑制しないと言ってきたわけでありながら、実際公庫がああいうぐあいですから、少し財投資金など回したらいかがでしょう。そして思い切ってやったほうがいい。これは建設業者なんかはいま非常に困っていますね。一番不況のどん底にある部類の一つの業種ですから。この間沖縄へ行ってきましたけれども、沖縄なんかで四十八年度需要に対する融資比率は六割なんです。残りはどこへやったんだ、産発、産業開発のほうにみんな回してしまったんだと、こういうわけですね。ところが、現地の金融機関はもちろん、それから市民、業者、これらの人たちは、もう需要がどんどんふえている、だけれどもワクがない、こういう現実の問題にぶつかっている。たいへんなこれが企業の危機につながってきているわけです。これは何も沖縄だけじゃない。したがって、私も一年間建設のほうの分野を担当しておりまして、大臣ともいろいろお話をした経験から見ましても、いまここで個人住宅分野の融資ワクを拡大していくということは当然の常識だろうと思う。先ほど弱いところには総ワクを総需要抑制政策をとりながらめんどうを見ていく、こういうふうに言われた分野から見ましても端的な例ですね。これはどうです。これは一言で、それは拡大していくというふうにお答えになったほうがいい。非常にわかりやすく言えばそのほうが当然である、こういうふうに感じるわけですが、いかがでしょう。これが一つ。  それから、物価抑制にからみまして、話が戻りますけれども、独禁法の問題です。公取では独禁法改正の試案をお出しになったわけですね。私ども、あれは全面的にこれで万全だとは言い切れませんけれども、前向きであり、当然独禁法の改正というものをやるべきであるという観点から、公取が持っておる試案などは重視し、かつ、評価をし、あれをやっていくべきだという方向で対処するべきだと思います。ところが、また新聞の話をして悪いんですけれども、次官会議などではけんけんがくがく、対立をしておること。これが一つ大蔵省は、あんなものは力を弱めちゃったほうがいいというようなことが書かれたり、聞かされたり、見させられたりしておるわけなんですけれども、いかがでしょう。この独禁法改正というものを政府はつぶそうとしていると、こう考えていいんですか。独禁法改正はやらぬほうがいい、公取の出しておる試案なんかはとても問題じゃないから、あんなものはつぶしてしまうんだと、大蔵大臣閣下、お考えなんでございましょうか。これは、いやそんなことはないと言うなら、そんなことはないというふうに答えていただけば非常に簡単で、いやだ、やる——どっちか、二つに一つお答えをいただきたい。時の問題ですから、それをお伺いをしておきたいと思います。  それから三番目、実は、国際金融の問題で、私考えておりましたことを国際金融局長などと話し合っておりまして、私が聞きたいことというのはわかっていらっしゃるわけでありますから、ここであらためて聞きませんから、総論的にひとつ国際金融の問題について、それからユーロダラー、それからオイルダラーの関連の問題、そういうことなどについて一ぺん総論的につけ加えて答えていただきたい。この三つで終わります。
  30. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 住宅金融についてのお尋ねでございまして、住宅公庫につきましては、ことしの当初十五万戸計画を、七月二十日までに受理いたしました二十二万戸まで認めることにいたしまして、その結果、貸し付け規模は、当初の八千五百七十六億から一兆二百十四億になるわけでございまして、対前年比五八・一%の増加になるわけでございます。建設省はさらに八万戸ふやすように考えてくれということでございますけれども、気持ちはわかりますけれども、それはまあ来年の予算の編成の相談にしようじゃないか、ことしはこれで精一ぱい大蔵省もふんばったんだから、これでしんぼうしてくれぬかと申し上げておるところでございます。  それから、第二の独禁法の問題でございますが、高橋公取委員長中心に、公取でもいろいろ御検討をされておるように聞いておりますし、私どもも事務の諸君に、公取の考え方もよく承って、われわれはわれわれなりに勉強しようじゃないかと申し上げておるところでございますが、政府が経済関係の各省集まりまして協議したことがまだないんです。近く経済企画庁あたりに音頭をとってもらって、政府部内で少し意見の調整をしたらどうかと考えております。まだ単独で意見を申し上げるほど私も勉強しておりませんで、いま政府部内で寄り寄り検討中であるというふうに御承知をいただきたいと思います。  それから、国際金融の問題につきましては、国際金融局長からひとつ御答弁をいたさせます。
  31. 大倉真隆

    説明員(大倉真隆君) 野々山委員から御質問の諸点は、非常に広範にわたっておりまして、時間の関係もございますので、恐縮でございますが、できるだけ簡単に全体についてお答え申し上げたいと思いますが、御質問の御趣旨は、今回のIMF総会でどういう問題があったかということ、また今後金利の取り扱いはどうなるんだろうか、あるいは国際収支の見通しをどう考えておるか、外貨準備との関連で、現在の為替銀行の借り入れなどはどうなっておるんだ、あるいはまたいわゆるリサイクリングというようなものについては、大蔵省はどういう立場をとり、何をしようとしておるのかというような非常に広範な諸点にわたっております。  IMF総会におきまして話題になりました中心は、やはり石油問題をどう考えるか。これに伴いまして、金融的には産油国に当面少なくとも非常に多額に集まるであろう余剰資金をどうやって先進消費国、中進国、開発途上国に回していけばよろしいかというリサイクリングの問題でございます。同時にまた、同じぐらいのウエートでインフレ抑制が大事か、デフレの危険はないかという点にも議論が集中しておりました。あわせまして、石油危機以後非常に苦況におちいっておる開発途上国について援助をどうやってやるかという問題もう一つは、実は、昨年のナイロビ以来では、国際通貨制度をどうするかということが、一年間非常に議論されたわけでございますが、石油危機以後ややその現実味が遠のいてしまいまして、理想的な将来の制度をつくるのには時間がかかる、当面何をすべきかというほうにむしろ問題が集中しておったという感じでございます。  リサイクリングについては、後ほどまた申し上げますが、インフレ抑制が大事か、デフレの危険がこわいかという問題につきましては、国ごとに若干のニュアンスの差はございますけれども、当面インフレ抑制に全力をあげないと、各国の国民はとうていこのままのようなインフレの持続には耐えられないということを言っておる国のほうが多いという感じでございます。しかし、一部の国におきましては、やはり失業率を中心にこれ以上の冷やし過ぎには問題がある。三十年代の世界的な不況を再現しないように各国で十分意見交換をしながらうまくかじをとっていかなくてはいかぬではないかという声も強く出始めておるということも事実でございます。  金の問題につきましては、今回の総会で採択されました通貨制度改革概要の中で、将来の制度としては、金の役割りは漸次低下すべきであるということについて共通の認識が得られておりますけれども、さて具体的にそれをどうするかということについては、金を持っております国、持っておりません国、それぞれにいろいろの考え方がございます。まだ具体的な方策がはっきりと打ち出されるというところまできておりません。しかし、この問題は、今回でき上がりました暫定委員会という二十人の大蔵大臣の会合が今回正式にきまりました。第一回も開かれました。次回は一月の中旬にまたワシントンで会合をいたしますが、それまでの間に、理事会でIMFの増資の問題にからめて、金の問題も議論しておいてくれということになっておりますので、逐次いろいろな議論が出され、基本的に将来の役割りを減少する、減らしていくという線に沿いながら具体的な案が練られていくということになろうかと思っております。  外貨準備、国際収支の関係は、ごく簡単に申し上げますと、六月以降やっと貿易収支が黒になりました。漸次黒字幅が拡大しておりますが、貿易外収支が最近は月率で大体五億五千万ドルぐらいの赤字という構造になっておりますので、なかなか貿易の黒で貿易外の赤を消して、経常が黒になるというところまで持っていくのはなかなかたいへんでございます。しかし、八月、九月は幸いに経常収支で若干の黒字になっております。先行指標を見ますと、貿易面は年内はほぼこの基調が続いてくれるんではないかと期待しておりますが、来年一月以降につきましては非常にまだ不透明な点が多うございます。決して楽観を許されないという感じでいま見ております。経常収支がそういう状態でございます上に、長期資本収支が、まあ諸般の施策を講じておりますので、かなり顕著に改善はいたしておりますけれども、まだ赤字の基調がかなり続くというふうに見ておりますので、来年、来年度ともに、国際収支の見通しには決して楽観を許さないという感じて見ております。  外貨準備は、御承知のように約百三十億ドルという水準にございますが、これに関連いたしまして、為替銀行のユーロ市場からの借り入れ、あるいはアメリカからの借り入れというものは一体公表できないのかという御質問を受けておりますが、これは他の委員会の御質問もございまして、申しわけございませんが、ちょっと政府としては公表を差し控えさせていただきたいということを申し上げたことがございます。と申しますのは、それぞれの取引先は、もちろん自分の取引相手のことはよく知っておりますが、日本全体としてどうなっておるかということは、だれも知らないわけでございます。だれも知らないので、私どもは報告をとっておりますから、大体の姿は知っておりますけれども、各国とも政府当局がこういう数字を公表はいたしておりません。なぜかと申しますと、やはり各市場からの借り入れの総体がわかるということは、ある時点でわかれば、次の時点でまた公表いたします、その間の動きもわかりますから、最近のような情勢でございますと、信用不安という危険が非常にございまして、依然としてなくなっておりませんので、たとえば、七月ごろに、これまたおしかりを受けるかもしれませんが、一部の新聞日本の借り入れ、ユーロ借り入れについての観測記事を流しまして、百数十億ドルという多額にのぼるという記事が出ましたら、即日ロンドンにそれが打ち返されまして、ユーロ市場に非常な混乱を来たしたということもございます。そういうこともございますので、恐縮でございますが総体の数字、市場別の数字につきましては、公式の場所での言及は控えさせていただきたい。ただ、資料といたしましては、為替銀行の短期の資産、負債の残高を月別に公表いたしております。これは御要求ございますれば資料としても御提出できると思いますので、この数字を見ていただきますれば、それが借り入れそのものではございませんけれども、大体の傾向はお察しいただけるのではないかと、そのように考えております。  リサイクリングの問題は、IMF総会でもイギリスから提案がございましたし、先ほど申し上げました暫定委員会でも、この問題を理事会で協議し、一月の会合に何らかの案を出すように勉強してくれということになっております。日本立場は再々大蔵大臣がいろいろな機会に申しておられますように、あらゆる可能性を広げておく、開いておきたい、多様化を求めたい。それが同時に、産油国側も非常に巨額の資金を持ちました場合、自分の資産の運用を多様化する、貸し先も、地域も、形も、すべて多様化していくということを当然に考え始めるはずでございまするので、私どものほうもそのような態度でまいりたい。どれか一つの方法に非常に大きく依存するということは適当でないだろう。で、あらゆる方法を抱いております。それらが相互に補完し合うということで臨みたいと考えておりますので、今後の国際的な会議におきましても、その基本線に基づきながら、しかし中進国、開発途上国の要請も十分考えて、何らかの国際機関によるリサイクリングというものを研究してまいりたいと、かように考えております。
  32. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 公務員のベースアップの問題につきましては、先ほど大臣からきょうの閣議で人勧どおり全額支給することをきめていただいたという御答弁がありましたね。それは当然のことではありますけれども、たいへん私どもはけっこうなことだと思うんですが、問題は、その支給時期なんです、実施の時期なんですけれども、と申しますのは、いろいろな公務員の方々にお会いしてみますと、上は最高裁判所長官から、下は私ども選挙区の普通の公務員の方々、みな一体いつ支給になるんだ、早くしてくれということを異口同音に希望します。これはおそらく国家公務員全体の願望ではないかと思うんですね。いつ支給するのか——いま大臣お話では、もう一カ月ぐらいすれば補正予算、総額が幾らになるかめどがつくとおっしゃったでしょう。一体、もう全額支給をするということがきまったんであれば、財源のめどがついたんでしょうから、いつ支給するというのか、この支給の時期、実施の時期を明確にしていただきたいと思う。これは臨時国会の召集の問題とも関係しますから明確にお答えいただきたいと思います。
  33. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 公務員給与の改定につきましては、きょうの閣議で関係法案を補正予算とともに国会に提出するということをきめたわけでございます。と申しますのは、本年度国会から付与されておる歳出権の範囲内で、この改定を行なうことはできないわけでございます。新たな歳出権をちょうだいせにゃなりませんので、どうしても補正予算を必要とするわけでございます。補正予算は、いま公務員給与の所要額は、補正予算に計上しようということを決心いたしたわけでございます。その他の歳出項目をだんだん特定してまいりまして、一方こちらの歳入のほうの見当をつけてまいりまして、ことしどの程度の補正になりますか、一カ月もすれば大体具体的な見当がついてくるだろうということを先ほど申し上げたわけでございます。  補正予算案を組みまして国会に御提案申し上げて、それで国会の御承認を得たあと、支給に相なるわけでございます。したがって、私どもといたしましては、年内にはぜひ、四月にさかのぼっての実施でございますので、差額がお手元に届くようなことにしなければならぬとは考えております。
  34. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 年内の支給というのは、私たちから見れば当然の常識なんですね。何かこれが、特に大蔵大臣として努力したというような口吻でおっしゃられるというと、われわれとしては非常に不満なんですけどね。大臣としては、もう閣議で、いま臨時国会の召集時期をいつにするということは論議になっておるんでしょうか。なったことはあるでしょうか。どうなんでしょうか。
  35. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まだ論議になっておりません。
  36. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 これはどうせ支給するということがきまったものであれば、できるだけ早期に支給するように、すみやかに臨時国会を召集していただきたいと、まあ希望だけをここで申し上げておきます。時間の関係上あんまり一つの問題について言うことできません。  次は、公共料金と物価の問題についてお尋ねするわけでございます。いま大臣は、野々山さんの御質問に対して、政府は、公共料金を極力押えているんだ、ほめてもらわにゃいかぬというような御趣旨で答弁なさったんですが、われわれから見ますと、大臣のおっしゃることと、実行なさることとが非常に食い違っているような印象を受けるからです。大臣は、私が八月二日にこの当委員会で質問いたしましたときも、「公共料金の値上げということがいかに合理性を持っておりましても、そのことが社会心理的にどういう波及的な結果を及ぼし、ほかの物価あるいは料金等にゆえなく」——ゆえなくというのはどうかと思うという注釈をつけておられましたが、「心理的な波及効果を持つというような非常に微妙な状況でございますから、そのあたりは十分時期や程度、方法等におきましては、政府も十分配慮していかなけりゃならぬことだと思うのであります。」というようにおっしゃっているんですね。私は、公共料金の値上げについて、大臣が、インフレマインド、心理的な波及効果というようなものを非常に考慮しておられると思っておったんです。ところが、現実は非常に違ったものになりまして、その後一カ月いたしますと、消費者米価の三二%の値上げがありました。しかも新聞紙上では、大蔵大臣が、六七%の引き上げを主張したということがいわれているわけですね。もしこれが真実だとすれば、大臣のおっしゃることと、なさることとはまるで正反対でしょう。経済企画庁などの必死の防戦の結果、やっと三二%になったというんですから、ほんとう大臣が公共料金の引き上げを抑止して、物価の高騰を食いとめようとする熱意がおありになるのかどうか。大臣は、物価の高騰を食いとめるのに全力投球するとおっしゃったでしょう、この間。またこれが今日の経済政策の根幹だというふうにおっしゃっておられるわけですね。そのお気持ちがあるならば、いま郵便料金の値上げの問題、それから、たばこ、塩の値上げの問題等があるということをおっしゃった。それに対しても自分はこれを値上げしないとまでは言えないというふうにおっしゃったんですがね、現在のインフレが、需要超過によるインフレの段階をもう通りこしている。デマンドプルインフレーションじゃないんだ、コストプッシュインフレだということは、経済企画庁の月例報告にもそういう思想が盛られているわけですね。それではあなたのおっしゃるような、総需要抑制一点ばりの対応策では、全く効果がないんじゃないでしょうかね。やはり政府の手中にある公共料金の値上げというものを、あなたがなさらぬという決意を持っていかないと、いまのように総需要抑制一点ばりで、しかも、公共料金は引き上げるんだ、その半面賃金だけは押えていこうというような気持ちが、どうも政府にはおありのようですけれども、非常に片手落ちの問題だと思うんですが、もっと公共料金の引き上げという政府の手中にある武器をお使いになって、これを引き上げないんだ、そして物価の高騰を防ぐんだという熱意をお持ちになっていただきたいと思うんです。この点どうでしょう。先ほど大臣ほんとうにおことばどおり熱意を持ってこの問題に取り組む気持ちがおありなのかどうか、お答えいただきたいと思います。
  37. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま非常に微妙な状態で、物価問題もひとり経済的考慮ばかりでなく、社会心理的な波及効果も頭においてやらないとあぶないということを、私はそのように理解いたしておるわけでございます。したがって、公共料金の改定の程度、それから、改定時期、そういうものを判断する場合に、そういうことが波及が必要最小限度にとどまるであろうような時期を選んで考えておるわけでございます。十月にいろんな改定をやらしていただいたわけでございますけれども、こういうことを十月にやらしていただいても、物価に非常な大きな異変が、物価情勢に大きな異変が起こるということは避けられるのじゃないかということでやらしていただいたわけでございまして、十分その点は頭に置いてやっているつもりなんでございます。しかし、ただ寺田さんおっしゃるように、公共料金政策というものは、政府の持っている武器なんだから、それはこういうときはフルに活用して、上げないことが望ましいんじゃないかという御意見、私はもっともだと思うんです。そういうことでいければ、それも一つの方法なんでございますけれども、そういうことをやっておいて、後年度になりまして、一挙にせきを切ったような姿で後遺症が出てくるというようなことになりますと、決してこれは健全な状態と言えないわけでございますが、公共料金——政府が管掌する公共料金にいたしましても、できるだけ合理性を持たしておかなければならぬと考えておるわけでございます。で、そういう公共料金政策を考えながら、しかも、物価を安定さしていかなきゃならぬところに、物価政策のむずかしさがあるわけでございまして、何でもかんでも物価安定第一でやって、あとは野となれ山となれでは困るんで、私どもそういう意味で手がたくやってまいることが消費者のためでもあるというように考えておるわけでございますので、その点は御理解いただけるかどうかわかりませんけれども、むしろこちらの苦心のあるところはあえて御理解をいただきたいと、こう思います。
  38. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 ちょっと理解できませんね。大臣は、そういうふうに公共料金を引き上げていかないと、将来一ぺんにそれを引き上げなきゃならぬとおっしゃるんですけれども、一ぺんでなくても、財政技術的にそれを十カ年計画で埋めていくことも可能ですし、どうしていま、この狂乱の物価高を再現するかもわからぬという非常にきびしい時期に、公共料金を引き上げることが消費者のためになるんでしょうかね。むしろ、物価急騰の引き金になるかもしれません。ということは、大臣をはじめそこにいらっしゃる大宮人の皆さんは、あまり一般の庶民とのおつき合いはない、会社の社長とか銀行の頭取とか、そういう上層階級の方々とばかりおつき合いになるから、いかに庶民がいまこの物価高に困っておるかということはおわかりにならぬでしょう。また、この米価の引き上げがどんなに町の食堂のいろいろな食費を上げているかということもお知りにならぬのじゃないでしょうかね。駅弁も百円上がったでしょう。ですから、一般の大衆のそういう生活にあなたがたもうちょっとお考えをいただいて、公共料金の引き上げということに対して、あまり財政技術的に片寄った——いまここで上げなきゃ、将来たくさんの一般会計からの繰り入れが必要になるというような、そういう財政的な考慮だけで、国民生活を無視するような施策をとらないようにしていただきたい、大臣どうでしょう。ほんとうに自分たちが公共料金の引き上げを極力押えるんだという気持ちを、あなたの権限の中で施策に生かしていただくお気持ちがおありですか。もう一ぺんお伺いしておきたいと思います。
  39. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほども御答弁申し上げたように、公共料金を全然いじらないで、あとの問題にするということは、あとで後遺症がふき出まして、かえって消費者のためにならないと私は考えるわけでございます。しかしながら、あなたのおっしゃるように、公共料金の改定の幅とか、時期とかいうものは十分こういう状況でございますので慎重にやらなけりゃならぬわけでございまして、その点は非常にもう、財政技術あるいは財政上の都合などというものよりも、非常にその判断には力点を置いて考えておるわけでございまして、今日まで米価の問題等やったわけでございますけれども、いろいろな御批判をちょうだいいたしておりますけれども、私といたしましては、ひとり財政エゴイズムに走ることなく、そういった配慮を十分可能な限り加えたつもりでございますので、まげてひとつ御理解をいただきたいと思います。
  40. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 財政技術的な見地だけじゃなくて、消費者のことも十分考えて、公共料金の問題を取り扱っているとおっしゃったのですが、先ほどもちょっと申し上げましたように、大臣は、たしか消費者米価の引き上げの場合でも閣内で六七%の引き上げを主張したということ、これは新聞紙上だけでなくして、物価等対策特別委員会、これの議事録を読んでみましても、経済企画庁長官が答弁で言っているわけですね。ですから、大臣ほんとうに消費者、国民生活のことを考えて公共料金の引き上げの問題に対処しておられるかどうか、ほんとうに疑問なんです。これはやはり口頭禅だけでなくして、良心的に対処していただきたいという希望を申し上げて、これは一応時間の関係がありますから質問終わります。  それからその次に、新価格体系の問題で、大臣は、去る八月二日のこの委員会の私の質問に対して、まだ、その新価格体系が安定した形ででき上がるのはいつか、またそれがどういう水準のものか確答する自信がないということをおっしゃったわけなんです。あれから約二カ月半たっております、現在。と申しますのは、私があのとき非常に懸念しておりましたように、公共料金はじめ物価をどんどん上げちゃって、そのうんと上げた時点で安定をはかるのじゃないだろうかという懸念を持っておったものですから、それで御質問いたしたわけです。ところが大臣は、そういう気持ちは毛頭ございませんということをそのときおっしゃったのですが、しかし、その後公共料金をはじめとして灯油なども非常に上がっております。私ども至るところで一般の市民からその苦情を受けます。しかも、いまの大臣お話では、来年の三月時点で、前年比一六%の値上がりで押えられるだろうということをおっしゃるわけですね。そうすると、一体いつの時点で、そういう安定した形の新価格体系というものができ上がるというお見通しなのか。現在の時点で大臣のお見通しを承りたいと思います。
  41. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 世界の中で日本の経済が営まれておるわけでございまするし、多くの資源を海外に仰いでおるわけでございますし、市場は海外に求めておる日本でございますので、国際的な資源、食糧等の需給状態、あるいはその価格がどうなるかという点が、物価がどういう水準で落ちついてくるかという場合の第一の関心事でございます。幸いにいたしまして、石油その他、石油の危機勃発を契機といたしまして、食糧にいたしましても、綿花、羊毛にいたしましても、あるいはくず鉄等にいたしましても、二倍、三倍あるいは四倍というような値上がりを見たわけでございまして、そういうような状況のもとでは、日本が幾ら力んでみましても安定した価格水準を想定するなんということはできないと思うのでございますが、この春以来だんだんとそういった国際商品市場相場が落ちつきを示してきております。また、砂糖のように、波乱含みのものもございますけれども、ロイター商品相場を見てみますと、一時、三月ごろより若干落ちついた徴候を示しておるわけでございますから、大きな天候異変とか、大きな事変、戦争というようなものがない限りにおきましては、私は、ほぼ国際的にも落ちつきを示してきておるように思うのでございます。したがって、国内的に、かつてわれわれが非難を受けましたように、国内流動性を潤沢につくるというようなことをしないで、できるだけ締まった財政金融政策を実行してまいり、国民の御協力を得られるということになってまいりますならば、少なくとも大きな狂乱的状態というようなことは私は考えません。それから、漸次落ちつきを見せてくる。それで来年、再来年というような展望におきまして、できたら安定した状態をつくり出さなければならないのではないかと、それはやり方によって不可能なことではないじゃないかと、みんなで努力をしようじゃないかといま申しておるところでございます。
  42. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 どうも大臣のおっしゃることが不明確なように思うんですね。私としては、大臣がいまのこの物価高、また騰勢の激しい物価事情のもとでは、新価格体系はいつでき上がるか、どういう水準のものかということをお答えできないというふうに承っていいわけてしょう。——まあそういうふうに承っておきましょう。ただ、私ども国民がどうもそれでは非常に政治をおまかせするという点で不安を感ずるということだけは申し上げておきます。  次に、ことしの三月でしたか、国税庁が非常な意気込みで札つきの企業をくまなく捜査するローラー作戦を展開するんだ、大法人の脱税をあげるんだというような、そういう御計画があるということが新聞紙上にたいへんにぎやかに出されました。そのローラー作戦なるものの結果がいま現在どういうことになっておるか、そのことをお答え願いたいと思います。
  43. 磯辺律男

    説明員(磯辺律男君) ただいま先生御指摘のとおり、大体ことしの三月ごろから四月、五月ごろにかけまして、昭和四十七年末からの木材あるいは大豆、繊維、そういったものの価格騰貴、それからまたさらに昨年末の石油の供給削減にかかりますところの物価騰貴、そういったことに関連いたしまして、特に多額の利益を得たと思われる企業を選定いたしまして、その調査を重点的にいたしました。大体調査対象になりました企業は二十六業種でございまして、調査いたしました法人数は、その企業のうちの資本金五億円以上の大法人でございますが、約二百三十法人程度でございます。そういった結果、一応四十九年一月期までの申告にかかる調査はほぼ終わっております。その調査結果につきましては現在取りまとめ中でございまして、近くその作業を終了するということに相なっております。
  44. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 その結果、当初の意気込みによるあなた方の札つき企業の脱税というようなものは相当あがったわけですか。具体的におっしゃっていただきたいと思います。
  45. 磯辺律男

    説明員(磯辺律男君) ことしの三月以降の調査でございますので、たとえば、いわゆる石油の削減等によりましてかなり価格が騰貴いたしたと言われますけれども、当該時期についての申告の時期がまだ到来してなかったというふうなことがございまして、昨年の暮れ以降の石油危機に関連する企業につきましての所得というものは、その申告がほとんどことしの三月以降に到来するというふうなことでございます。したがいまして、重点的に調査になりました対象といいますものは、それ以前の日だということになっております。  調査の結果は、必ずしも、石油削減に伴う超過利得といいますか、価格騰貴に伴いますところの超過利得、そういった時期は把握されておりませんけれども、大体、大ざっぱに申しまして、たとえば、前年同期比で五〇%以上の利益を計上した会社であるとか、あるいは三〇%以上利益を計上した業種であるとか、そういったのはかなり把握しておりまして、それは、いずれ近いうちにその資料を取りまとめまして、何らかのかっこうで発表いたしたいと考えております。
  46. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それから、これは福田大蔵大臣時代に、反社会的な企業には、政府関係金融機関からの融資を停止する、すでに貸し出した資金の引き揚げというようなことをおきめになりまして、そのための基準を三つほどつくったというようなことを承っておりますが、その基準というのはいまでも生きておるんでしょうか。  それから、最近、日商岩井の脱税事件、これは東京地方裁判所で罰金五千五百万円になって確定したようですね、この二、三日前。それから、通産省では、アメリカからの原木の輸入を三カ月間ストップするということを指示したという記事が新聞に載っておりますが、こういうような大商社が公然と脱税をやったというようなことは、当然それに該当するんじゃないかと思いますが、どうでしょう。この二つの点お答えいただきたいと思います。
  47. 高橋英明

    説明員(高橋英明君) 著しく国民の利益に反する悪質な行為を行なった企業に対する政府関係機関の融資をとめたらどうかというようなことが問題になりまして、それに対しまするルールというものが、四月の十六日にきめられてございます。それは、一応、石油危機以後の行状というルールになっておりまして、当時、商社で、ややそういうものに疑いがあるんではないかというので、融資の申し込みがありましたのに対しまして、融資の実行は留保されておりましたのが四社ほどございました。関税法違反といったようなもので一応とめられておりましたのが三社でございまして、これは石油危機以前の問題であり、それぞれ当該法律で処罰を受けるということで、これは解除になりました。それから一社は、石油危機に便乗して在庫を分散したとか、あるいは在庫隠しをやったというようなことで、一応融資がとめられておったんでございますが、このルールによりますと、それを所管しております主務官庁が、そういう事態があったかどらかということを調べまして、あの場合はそういう事実がなかったということが通報されてまいりまして、これも融資の留保は解除になりました。したがいまして、商社に対するルールの適用事例というのはございません。  それから、ルール自体はまだ生きております。
  48. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 最後に、田中総理の所得査定の点でお尋ねしますが、これは、最近、「文藝春秋」の十一月特別号に、立花隆氏か「田中角榮研究——その金脈と人脈」という、たいへん詳細な精力的な論述をなさっておられるわけです。それを読みますと、ハーバード大学のコーエンという教授が指摘するように、たえへん日本政治がよごれているという印象を受けます。また、あれが事実だとすると、ずいぶんこれは悪い人間だということの印象を受けます。その中でも特に、私ども政治の一翼の中におる者としましては、自民党の国会議員に十億から十五億円のお中元を配ったというような記事があるわけです。これなどはどう考えましても、個人的な財産から出る以外には、われわれの常識からして考えられないわけです。ところが、田中さんの所得の決定というのは、いつも七千万程度のものでしょう。その財産も非常にばく大なものだということをいわれております。これはアメリカなどでは、当然、総理大臣みずからそういう国民疑惑に答えるために、財産の公開をするということが国民政治的な常識になっているわけです。ところが、そういうことも全然ありませんし、この立花氏の論文に対しても、別段何の反応も示さない。その論文をずっと突き詰めていきますと、室町産業であるとか新星企業であるとか、あるいは東京ニューハウスですか、そういうような何か特殊な法人を利用して、たいへんばく大な利益を得ておられるという印象を受けるわけです。その会社の本店が、目白の田中さんの家の中にあったというようなこともあったようです。そうなりますと、個人の所得と見られるべきものが、法人の形で何かごまかされているのではないかというような印象を受けるわけです。こういう点についてわれわれは非常な疑惑を持っているわけです。私だけじゃないと思うんです。ですから、国税庁田中総理の個人所得と、そういう隠れみの的な存在と目せられる法人の所得との関連というものを十分洗っているのかどうか。それから、田中さんの個人所得というのはどういうものからでき上がっているのか、そういう点について調査をなさったことがあるんでしょうか。ありとすればその内容をちょっとお知らせいただきたい。
  49. 磯辺律男

    説明員(磯辺律男君) ただいまの御質問の点でございますが、国税庁といたしましては、総理大臣といいましても、やはり一納税者でございますから、一般の納税者と同じように調査の必要のある場合には調査をいたして、そして適正な処理をいたしております。  また、田中角榮氏の関連する会社というふうに通常いわれておる法人もございますが、これも同様に一般の法人と同じように調査をいたしております。
  50. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 私どもが家などを建てますと——私、現実に自分の例を申し上げるんですが、国税局ですか、税務署ですか、一週間ぐらい私の法律事務所にがんばって、私の所得の調査をするわけです。私はもう全部ありとあらゆる資料を全部見るにまかせて、結局、ほとんど所得の異同はない。終わったわけですが、田中さんの場合にも、やはりあなた方はその程度の精力的な調査を現実にやっているんでしょうか。たとえば、一匹百万円ものコイが何百匹もうようよ泳いでいる。あるいは一つが百万円もするような庭石がごろごろしているんだというのですよ。そういうものは、一体——われわれの場合は他人から贈与を受ければ贈与税を取られます。田中さんの場合は、それがほんとうに個人財産から買ったものなのかどうか、そういう点のこまかい調査をあなた方、現実にしておられますか。
  51. 磯辺律男

    説明員(磯辺律男君) 必要の場合にはもちろん、田中総理御自身についてお聞きすることはございませんけれども、その関係者について質問をして適正に処理されておるということをお答え申し上げます。
  52. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 あなた、いま、必要な場合とおっしゃいましたが、田中さんの場合には、国民がそういう調査がなされることを必要だと感じていますよ。あなた方はお感じになったのかどうか、現実の歴史的な事実をお尋ねしているわけです。必要と認めた場合という仮定をお聞きしているんじゃないんですよ。
  53. 磯辺律男

    説明員(磯辺律男君) 一般に、だれについてどういった調査をしたかとかいうことについては、やはりこれは私たちの職務上の問題ございますので、こういった席においてお答えいたすのはいつもお許し願っておるわけでございまして、ただいま御質問の点につきましても、やはり同様に私たちのほうで職務上の問題でございますから、あえて調査をしたかしなかったか、どういう調査をしたかという具体的な御質問に対して御答弁申し上げるのは御遠慮さしていただきたいと考えておるわけでございます。
  54. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 どうして調査したかどうかという事実をあなたがおっしゃることが許されないのですか。なるほど、その中身が、どういう所得の構成だというようなこまかいことは、あるいはあなた方の立場として言えないということはあるかもしれませんよ。しかし、そういう厳密な調査をしたかどうかというような事実を、あなたが言えないというのはどういうことでしょうか。言っても何でもないでしょう。それから、ことに田中さんの総所得については、あなた方発表していらっしゃるわけですね。どうしてあなたが厳密な調査をしたかどうかを——ことに非常にいま疑惑があるわけですよ。全国民が疑いを持っていますよ。ですから、もっと明確に答えていただきたいし、これからも厳格に、厳密な調査をするということをお約束していただきたいと思う。どうですか。
  55. 磯辺律男

    説明員(磯辺律男君) 国税庁のほうで必要と見た場合にはもちろん厳格な調査をいたします。
  56. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 あなた、必要と認めた場合とおっしゃったが、それじゃ、いまあなた方は必要を認めないという趣旨なんだろうか、その点どうですか。
  57. 磯辺律男

    説明員(磯辺律男君) 必要と認めた場合には調査いたしますということをお答えいたしますが、やはりその前には、いろいろとその周囲の事前調査とかそういった点がございますから、そういった資料を総合した上で、実地調査をする必要があると認めた場合には調査いたしますし、あるいは書面審理等で十分その実態が解明できると思われるときには、もちろんこれは机上で処理するということもございます。
  58. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 あなたの御答弁を伺うと、いままでに必要を認めたことがないような印象を受けますよ。これはまあ、大臣にもぜひあなたにお考えいただきたいと思うんですが、あれがどの程度日本政治の腐敗、日本総理大臣の道徳性の否定につながるか、これはおわかりになるでしょう。いかに日本政治がよごれているか、いかにわれわれの総理大臣というものは悪いことをしているかという印象を、われわれ受けざるを得ないわけですね。ですから、そういう場合には、もっとあなた方自身が疑いを晴らすべきですよ。官僚の方々はもっと自分の行為に責任を持って調査すべきでしょう。アメリカの例をごらんなさい、あなた。ニクソンにしろ、それからアグニュー副大統領にしろ、アメリカの国税局は完膚なきまでにこの不正を摘発したでしょう。強いものにだけ頭を下げて職務を怠るようなことをなさらぬように、もっと自分の仕事に責任を持ってあなた方やってもらいたいと思う。大臣もぜひそういうことを指導していただきたい。大臣いかがですか、あなたの御決意を承りたい。
  59. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) よく注意してまいりたいと思います。
  60. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 関連。  大臣、いま寺田委員が言っていることは、やはり信義上として、当然税法上から言ってもやるべきことじゃないか。ですから、そういうものをいまここでただしているわけですから、そういうものに対して明確な回答をいただかなければいけないんじゃないかと思う。新聞等の報道によれば、幹事長その他自民党の首脳は、その「文藝春秋」の一件については黙殺をする。黙殺というのは、言ってみれば、それは信憑性は認めるということの裏返しになりませんか。そういうことで税務署が、国税庁が適切な手を打たないということが——これは委員長にお願いするけれども、この問題については取り扱いをどうするか。田中総理を呼んで真相を追及するか、そういうことになっていくと思うんです。だから、そういう問題について、国会でいま寺田委員が取り上げているんですから、明確な取り扱い方法をひとつあとで理事等ではかっていただいて、その取り扱いを明確にしていただきたいと思います。
  61. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) ちょっと速記を止めてください。   〔速記中止〕
  62. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 速記起こしてください。  ただいまの問題につきましては、理事会において協議をさしていただきます。どうぞ御了承を願います。
  63. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 最後に。  いまの問題は、まあ理事会におまかせいたしまして、最後に一つだけお尋ねしますが、会社臨時特別税の問題です。  これは、経済大国の中では最も低い法人税負担をとっておるわが国のもとでは、かろうじて税負担の公平を望んでいる国民感情を満足させる唯一のものと言ってもいいんじゃないかと私は思っている。しかも、これは期間二年の限時法であります。ところが、財界はこれを、このわずかなものでさえもじゃま者扱いにして、二年の期限を一年に短縮してほしいというようなことを政府に迫っておるということを聞いております。私どもは、はなはだ国民感情を無視した不当な要求だというふうに考えておりますが、これに対して大臣の御所見はいかがでしょう。
  64. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 会社臨時特別税が創設されましたときには、その法律の中で、「最近における物価の高騰その他の我が国経済の異常な事態にかんがみ、臨時の措置として、」設けたということで、二年間行なわれるという原則がうたわれております。したがいまして、その当時は二年間を限ってやる臨時の措置としての考え方がまず第一に表面的にあるわけでございます。もっとも、その際に、先ほど申しましたように、異常な事態が消滅したと認められるに至ったときは、この二年以内におきましても、これを廃止するものとする。ということになっております。したがいまして、この年末時点におきまして、最近におきますところのわが国の経済情勢から、ここにいっておりますところの異常な事態が消滅したと認められるかどうかという判断をいたしまして、そこで、この税金の原則どおりに二年間存続をいたしますか、あるいは二年以内においても廃止する措置をとりますかということを検討いたしたいと思っております。
  65. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 じゃ、まだ検討中で結論を得ていないというふうにうかがってよろしいですか。
  66. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) そのとおりでございます。
  67. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 私どもとしましては、これは当初の目的どおり二年間はむしろ短きに失すると。税負担の公平をはかるかろうじて法人税の場合は唯一の施策だというふうに考えますから、この点を十分お考えいただきたい。そういうことを希望して、委員長、終わります。
  68. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 時間がだいぶ迫っておりますので、総論的なものは先ほど野々山委員のほうから出されましたから、その他のことについてお伺いをしたいと思いますが、一つは、今度相続税、贈与税、こうしたものを改正をしていこうと、こういう動きのようでございますが、一体、先ほども大蔵大臣としては、国際的な食糧事情の緊迫というものについてはたいへん深い関心を示さなければならない、こういうようなお話がありましたけれども、その農地の相続税、まあこれは実はたいへんなものであります。特に、私、横浜でありますけれども、神奈川県あたりを見ますと、固定資産税の評価額の五十倍から百倍、あるいは百倍以上というふうな事態なわけです。ですから、一町歩の農地を持っている者は、その三分の一の農地を売らなければ税金を納められない、こういうことであります。また、いまの民法上の均分相続問題もありますので、まさにそうした点では、農地の細分化ということが一方でされ、そうして税金でどんどんと相続税を持っていかれてしまう。これでは農業をやれったって農業できない。青果物の価格の安定だとか、あるいは飼料の増産だとか、こういうようなこともだんだんだんだんできなくなってくるんじゃないですか。一般的な相続税を千八百万円から三千万円に上げるということは、何か政府のほうでも検討しているようでありますけれども、こうした形で農業をそのままおくということになれば、これは農業というのはおそらくつぶれてしまうんじゃないか。しかも、世界的に見れば、いままで政府考え方は、国際分業という形で、そういうものは外国から入れればいいじゃないかという形であったけれども、最近の小麦にしたって、大豆にしたって、あるいは家畜の飼料作物にしたって、これはたいへんな値上がりです。こういうふうに考えてみると、やっぱり日本の農業というものをもう一回見直してみなければいかぬじゃないか、こういうふうに思うんですけれども、これはひとつ大蔵大臣に伺うんですが、少なくとも農民のほうは、農業がやっていけるような、そういうものにしてくれ、また農業がやれなくなった場合には、あるいはその土地を農地としてでなくて宅地として売った、そういう農業を放棄したときには、まあそれはひとつもとに戻ってもいいから、それは相続税払ってもいいよ、こういう趣旨のことを言っているわけですね。ですから、今日の農業から得られる収益を還元して、そうして地価の評価をしてくれ、こういうことがこれから農業をやっていこうとしている若い人たちの要求です。私のところにもそういう意味で、この相続税の問題については、はがきで実に農民か三千枚、私のところへ書いて——このくらいになっているのですよ。この点については大蔵大臣どう考えますか。もういままでのままの評価のしかたでいいのかどうか。固定資産税の百倍くらいの評価をしている。どうしても農地として売らなくちゃならないという、農地以外には売れないんだということにしても、七十倍、八十倍の評価をしている、どうですか。
  69. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) まず、農地の評価の問題で、非常に技術的な問題でございます。私から先にお話をさしていただきます。  いま竹田委員がおっしゃいましたように、農家の相続税につきましては、確かに最近、非常に各方面から論議が出ております。過去におきますところの農家の相続税を受けました、課税を受けました事例を調べてみますと、その約九〇%ぐらいは都市あるいは都市の近郊に所在する農家でございます。純農地といわれておるものにつきましては、約一割の課税が行なわれております。しかも、その一割の農家の相続税の課税の事例を見てみましても、農地を持っておるだけで課税をされておりません。農地のほかにその他の財産があるということで課税をされております。したがいまして、いま御指摘の点は、確かに竹田委員がおくにでごらんのごとく、問題は、主としまして市街地なり、市街地周辺の農地の評価の問題でございます。そのときにおきますところの固定資産税の評価は、おっしゃいますように、非常に低いことは事実でございますが、これはまた別途の施策といたしまして、昭和三十九年来ずっと据え置きになっておるわけでございます。一方、相続税は一体どういうような評価をやったらいいかという問題でございますけれども、やっぱり相続税を課税いたしますところの相続財産というものは、財産の総体の価格でございますから、やっぱりそれを売ったときには一体どれくらいの財産になるのかというのが第一義的に考えてしかるべきものでございますし、わが国ではずっと昔からやっぱりそういう処分価格を相続財産の評価の基本としてやってきたわけでございます。もちろんその際にも、現実に売買実例がございますから、それを相続財産にどういうふうに比準をしてきたらいいかというやり方がございます。現在もかなりのしんしゃくをやっております。もちろん、隣でかりに売買実例がありましても、それよりも相当低いかた目の中値というのをまずとります。それから、それも限界的な価格によっておるところが非常に大きいものですから、それの修正をやっております。しかし、何しろやっぱり市街地なり市街地周辺の農地というのは、現実に高く売られておるわけでございます。農家でありますけれども、現実に高い価格で隣近所で売られておる土地を持っておるという、それを財産の評価でございますから、やっぱり都市の中に住んでおる人たちから見れば、その農家はかなりの財産があるということに解せざるを得ないわけでございます。その際に、一体それを軽減するために、もちろん、今回、年末には相続税の問題というのが真剣に討議をせられると思いますけれども、課税最低限の引き上げ、税率の緩和ということでは、なかなかこの都市近郊の農地の問題、農地の相続税の問題というのは、私は、おっしゃいますように、簡単に解決しがたい問題であると思います。しかし、それだからといいまして、農地だけにつきまして特例を設けるということは、やはり総体の相続財産の多寡の問題でございますから非常にむずかしい。しかも、収益還元法則というのをこの際ここに導入をしまして、ことさらに農地の評価を実際に処分をせられておる価格、しかも、それにかなりのしんしゃくを加えました現在の評価よりももっと低くするということが、はたして全体の相続財産の評価の問題として適当かどうかということは、私は非常に今後問題にしなければならない点だと思っております。いずれにしましても、この問題は、年末までに相続税全体の問題として検討したいと思っております。
  70. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま、主税局長からるる御説明申し上げましたように、結局この問題、課税最低限をどのように考えるかと、そして負担の緩和をはかるかということになってくるのではないかと思うのでございます。で、先般政府の税制調査会が発足するにあたりましても、相続税の問題といたしまして御審議を願っているところでございますので、来年度の税制改正の中の一つ問題点といたしまして鋭意検討をいたしまして、妥当な結論を生み出したいものと思っております。
  71. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 大蔵大臣、あなたは一般の普通の相続税のことを言っているんだよ。そんな課税最低限を引き上げたら、この問題が解決するなんて、そんな問題じゃないんですよ。あなたも高松周辺のことは十分御承知のことだと思うんですよ。高松周辺だって同じように起きているんです。農業やっていけないんですよ。一町歩持っていたのが一回相続すれば、三反歩の土地を売らざるを得ない、そういう評価を国はしているんですよ。そうしたらそれによって相続税だけで三分の一取られる。またあと各個人の均分相続とかなんとかという要求がくればまた売らなきゃいけない。そして土地の値段を押えなくちゃいけないと言っていながら、こういうことやったら土地の値段は上がるばかりじゃないですか。売るほうはなるべく土地の面積は少なくして、土地を高い価格で売りたいというのがこれは当然の要求じゃないですか。このままでやっていったら日本の農業つぶれちゃうですよ。新鮮野菜の供給なんかできなくなっちゃうですよ。大蔵大臣がそういう認識だというのは私は全く驚きました。もう一回——あなたわかっていないんじゃないですか、この問題。わかっているんですか。そういうお話を聞いたことないんじゃないですか、あなた。どうなんですか。
  72. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 農地の評価につきましての相続税は、私が先ほど全体の相続税の課税を受けておる農家の中で約一割はいわゆる純農家でありますし、その九割は市街地あるいは市街地の周辺の農家であるということは申し上げたとおりでございます。なぜそういうことになっておるかというのは、確かに農地の評価が非常に高いということでございます。しかし、現実に相続税の評価が地価をつり上げておるのではございませんで、現実にその農地が、その近隣におきまして高い価格で売られておるわけでございます。それはあに市街化区域だけでございませんで、市街化調整区域でありますとか、あるいは農振の農用地の場合におきましてもかなり高い価格で売られておるのが現実でございます。実際に売られておる価格がそこにありますときに、一体その近くにある農地をどういうふうに評価したらいいかという問題でございますし、私は先ほど来申し上げておりますように、それをそのまま横に持ってきてはおりません。非常にしんしゃくを加えて中値というものをとり、それにさらにしんしゃく率を加えても、実際に売買されておる農地の価格が高いもんですから、評価額としてはかなり高いところにおさまらざるを得ない、そういうのが現実でございます。それはおっしゃいますように、課税最低限の引き上げだけでガバーはできないかもしれません。その場合に、一体それでは農地だけそういう特例を設けていいのか、現実に市街地の中に住んでおる人たちは、やっぱり市街地周辺の農地というものが非常に高い、あるいはそれを持っておる農家の財産というのは相当あるという認識がやっぱりあるということを、相続税の課税を考えます場合には忘れてはならないところだろうと思います。
  73. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 ただ、農地というのは、農地があればそれによって何でも買えるというもんじゃないでしょう。土地が現金化されて、所得になって初めて買えるんでしょう。そこで農業をやっている者にとっては、われわれが生活していて、自分の四十坪か五十坪の宅地に住んでいるのと同じですよ。そうでしょう。生活保護世帯だって、自分の土地を持っていれば、生活保護を削るというのと同じですよ、これは、だから、評価が高いから、それを農地として相続をしたときに、それに対して高い税金かけるといったらもう農業というのはできなくなるでしょう。これが工場の用地として売られるとか、宅地として売られるということになれば、それは私は高い評価で売られると思います、当然。そういう場合には高い譲渡税を取るなりなんなりするということは、これは必要だと思いますよ。しかし、農地として、相当長期間にわたってそれが農地である以上は、私は、そういう高い税金を取るということは農業つぶすことだと思うんですよ。売るならいいですよ、売ってそれが宅地になり、工場の用地になるならいいですよ。買った農民だってたいへんですよ、それ。おそらく買わないでしょう、そんなもの、高いものを、安くなければ。そういうことになれば、農地をどんどんどんどんつぶしていく、農家経営はどんどんどんどん零細になって、そして第二種兼業になり、そして農地を捨ててしまう、こういう方向にいかざるを得ないんじゃないですか。農業というものを一体どう考えているのか、そこに疑問があるんですよ。で、農民の人たちも、農地でなしに、ほかの土地に転用するために売った場合には、そのものまで安くしろと言っているわけじゃないんですよ。それは高く取っていただいてけっこうだと言っているんですよ。十年間にさかのぼって取られてもいいんですよ、こう言っているわけです。だから、そのくらいのものは、私は、当然ひとつ考えてもらわなければ、日本の農業つぶすことだと思うんですよ。農民の問題だけじゃないですよ、その周辺に住んでいる都市の消費者にとっても、私は、この問題はたいへん重要な問題だと思う。たとえば、実際には評価なんかも見てみますと、畜舎や温室等までこれは宅地並みの評価をしているわけです。農地じゃなくて宅地並みの評価もしているわけです、現実に。そうなってくれば、これは都市への食糧供給という問題から、私は、非常に大きい問題になると思う。やっぱり消費者とすれば、新鮮な野菜なり、新鮮な卵なり、こういうものを当然要求していくでしょう。しなびたキュウリを朝鮮かどこかから持ってきたってこれはしようがない問題です。だから、もう少しこの問題は検討をしなければならない問題だと私は思うんです。どのくらいの評価が適当かということは今後いろいろあるでしょう。それから、収益還元方式そのものがいいかどうか、そのものでいいかどうかは、これも若干問題があるでしょう。しかし、いずれにしても、検討せざるを得ないという段階に入っていることは間違いないと思う。その辺を大臣どうですか。
  74. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) で、ございますから、私は、税制調査会の発足にあたりまして、まずこの地価が高くなったということと、相続税との関連に焦点を当てて、特にことしは精力的な御審議を願いたいと申し上げておるわけです。で、竹田さんがおっしゃるように、営農を都市周辺において継続してまいる上におきまして、相続税で大きな課税が行なわれて、その何割かを売却しなければ払えないというようなことになりますと、営農上支障があることは私もよくわかります。しかし、それは程度の差こそあれ、中小企業にも言えることでございまして、一つの工場を経営しておるという中小企業の場合におきまして、その所有を分散しない限り払えないというケースもあり得ることであろうと思うんでございまして、問題は、この都市周辺の農地だけが相続税の領域におきまして聖地を主張して、特別を認めろということはちょっと私は問題があるように思うわけでございますが、といって、あなたがおっしゃるように、この問題は簡単に課税最低限を若干調整するというようなところだけで済まされるものかどうかという点につきましても……
  75. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 だめですよ、そんなこと言ったって。
  76. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 確かに検討を要する問題だと思います。いずれにいたしましても、ことしの税制改正の一つの焦点といたしまして十分検討させていただきます。
  77. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 どうも大臣、よくわかっていないようだから実に困るんですがね。一般的な相続税の課税最低限を少し上げればそれで解決するというような認識、それでは解決できないからこういう要求が起きているわけです。  これは、主税局長、この農地相続の問題は、今度の税調にかける御意思があるんですか、ないんですか。
  78. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) ただいま大臣からもお話がございましたように、相続税の問題は、本年の税制改正では非常に大きな問題だと思っておりますし、その際に、一般的な課税最低限、税率の問題、配偶者の問題、そのほかにあわせまして農家の問題、中小企業あるいは市街にありますところのサラリーマンの宅地の問題までひっくるめまして、年末までに真剣に討議をしていただく予定でございます。
  79. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 主税局長の話だと、何かほかのものとごっちゃにして税調にかけるというような感じがするんですがね、私は、ほかの問題とちょっと違うと思うんです、現実に。それはいま中小企業の話が出されましたけれども、中小企業等の土地からあがってくる収益、この問題だって違うわけです。そういうわけで、この問題はこの問題として、私は、税調の討議にのぼすべきだと、こう思うのですが、どうですか。やっぱりほかのものとごっちゃにして、なるべくわからぬようにして、ごちゃまぜにして出そうということですか、どうですか。
  80. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 私は、相続税の問題に関しましていろいろ列挙しましたのは、決してその一つ一つを、おっしゃいますようにごちゃごちゃにするというつもりはございません。いま非常に相続税の問題は、御指摘のように土地をめぐりまして、いろいろなところに地価上昇を反映して問題が出てきておるということを申し上げたかったのでございます。その中でも特に、御指摘のように、農業におきましては非常に広大な、ほかにはちょっとない広大な土地を所有しておるというところに特異の問題がございます。しかもそれが、市街地の、特に近くにあるものにつきましては、非常に高騰しておる地価を反映しておるというところで、独特の問題を含んでおるということは十分承知をいたしております。
  81. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 この問題だけやっていると、日が暮れちゃいますから、この辺でこの問題は終わりたいと思いますがね、いま日本の農業の置かれている状態というのは、ここ二年くらいの、いわゆる狂乱物価の時代において生産性格差、インフレの問題がずいぶん議論されているわけです。その一つが農業問題なんです。そうでしょう。そのためには経営規模を大きくして、スケールメリットを何とか生み出していくことによって、国民の食糧であるそうしたものの価格が上がるのを防ぐ、場合によればこれを下げていく、こういうのが日本の農業政策のいまの基本でしょう。それに相反することを税制でやろうとしているのだ。これじゃ、先ほども物価の話が出たんですけれども、こういう考え方で、むしろ生産性の格差を広げていく、そして小規模の農家をたくさんつくっていく、こういうことであったら、それは私は農産物は下がらないと思う。ますます物価は上がっていくわけです。公共料金だけの問題じゃないと思う。この点をひとつよく検討していただいて、ぜひこの問題は、私は、将来の問題じゃないと。いまのうちにそれをやっていかなければ、日本の食糧問題それ自体に非常に心配する材料がふえてくるわけです。この点を強く要望しておきます。  それから、続いて税金のことですが、国税通則法の六十七条にありますね。これについて、納期限を過ぎた場合には五%の不納付加算税というのがつきますね、これは大企業であれ、中小企業であれ、その期間が一日であれ一年であれ、同じ五%ですね。そのほかに延滞税がつきますが、まあ延滞税は、言うなれば、これはお金の使用料でありますから、利子でありますから、ほかで借りればそれだけに近い——もちろんそれと同率じゃありませんけれども、近い金の使用料がつくわけです。延滞税というのは、処罰的なものじゃなくて、むしろ金の利子分だというふうな私は理解でいいと思う。ところが、小さなところでは、このような、今日のような資金の需給がきわめてきびしいというようなときには、たとえば、源泉所得税を納めるのはまあ翌月の十日、九人未満の事業所の場合には半年後の十日ですね。これを納めればいいことになっているんですね。小さいところは大体金繰りで非常に困っているわけですね。これは政府でもそうでしょうし、一般の会社でもそうですけれども、給料を払うときには、銀行から金借りるのは、税金分までは借りてはこないですね。現実に支払う金額だけ借りてくるわけですね。そしてあとはあとでまたやっていくわけです。そういうやり方をこれはどこでもやっている。税金分を十日なり、あるいは十五日分なり、事業所の金庫に寝かしておくなんという、そんな余裕はいまますますないわけです。そういうときに、一日おくれても、小さな企業で一日おくれても、不納付加算税を取る。一年おくれても不納付加算税は同じ五%取る。これは、先ほども中小企業はいじめないと、こういうことを盛んに言っていたですけれども、現実には、私はこの問題は中小企業をいじめると思う。確かに納期までに納めないということは、これは問題があるでしょう。しかし、大きな企業でも小さな企業でも同じ、一年でも一日でも同じだと、こういうのは私はおかしいと思う。そして、あなたのほうにそういうことを聞けば、正当な理由があればそれは納めなくてもいいですと、こう言うわけです。じゃ一体正当な理由とはどういう理由を正当な理由とあなたのほうはしているんですか。ただ単にあなたのほうのその窓口の人が、主観によってああここは正当だ、ここは正当じゃない、田中角榮さんはこれは正当だ、竹田四郎はこれは正当じゃない、こういうことで、田中さんには不納付加算税は取らない、竹田四郎には一日おくれたために不納付加算税を取る、こういうような、そうした基準というものは、私は非常に不明確だと思う。あなたのほうは、そういうものを課する場合の具体的な正当な理由の基準というのはどういう基準を置いているか、できたらそういう基準という項目を明確にしてもらいたい。
  82. 横井正美

    説明員(横井正美君) ただいまお話がございましたように、期限後に納付があったという場合におきましては、通常は一〇%、例外的に告知等予知いたしませんで単におくれたと、こういう場合におきましては、五%の不納付加算税を取るということにいたしておるわけでございます。その場合におきまして、御指摘のように、正当な理由がございます場合は、これを免除をするということでございますが、この取り扱いにつきましては、私ども次に申し上げますようなことで局署を指導しております。  正当な理由に当たる場合といたしましては、災害が発生したような場合、それから、金融機関のミスによりまして期限内に納めたにもかかわらず、期限後の扱いになったというふうな場合、それから、税務署の誤った指導によりまして期限後になった場合、それから、納税者が誤った解釈をするということにつきまして相当な理由があったと思われる場合、そのほかそれに準ずるような場合といたしまして、小企業等でございまして、税法、経理の知識が不十分である、また、税務署もこれに対して十分な指導を申し上げてない、かつ初めての期限後の納付でございまして、その遅延の期間もごく短いというふうな場合におきましては免除すると、正当な理由に当たるということで免除するというふうな考えでございます。ただ、先生から例示がございました資金繰りが苦しいからということになりますと、御承知のように、期限内に納める納税者とのバランスの問題、それから、特に源泉所得税、これは給料を支払いました場合に、従業員から預かった税金、これを滞っておると、こういう問題でございますので、まあお話しのような資金繰りに著しいから不納付加算税は免除してほしいということに対しましては、私どもちょっと御賛成いたしかねると、こういうふうに存ずるわけでございます。
  83. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 いま、あなたから口で言われたから、正確に記録されているかどうか私わかりませんけれども、あなたがこれは正当な理由だと思われるような、いま言った中ですよ。そういうようなことでどんどん課税しているじゃないですか。私が知っている例でもそうですよ、いまの正当な理由に入っている、入っているけれどもどんどん課税しているじゃないですか。しかも、ちょっとの期間やったのと長い期間としかも同じだ。私、全然かけるなとは言ってないですよ。やっぱり納期限までに税金は納めるべきだというそういう思想、これはやっぱり必要だと思いますよ。しかし、何でもこれ同じ割合でやっていくのは、これはちょっと不公平じゃないですか。それは金があり余ってどんなにでも、すぐにでも金の融通がつくというような時勢なら別ですよ。今日のような非常に金繰りが、あとでも申し上げますけれども、金繰りが非常に苦しいという事態の中で、私はそういうものはもう少しかげんをしてやって、ほんとうに税金は早く納めるべきなんだというような思想というものを、ただ単に罰金さえ取ればいいんだという形じゃなくて、ある程度段階をつけるとか、こういうようなことをやっぱり考えていかなければ、税金に対してむしろ憎しみが出、おそれが出るだけであって、納得の上で税金を進んで納めようという意識というのはなくなるだろうと思うんです。そういう意味で、主税局長、どうですか、少しこれは検討を、私はすべき時期に来ていると思う。金があるときはいいですよ、高度成長で何でも金がどんどん入ってくるときはいい。これからはおそらくマイナス成長かゼロ成長も続くという、そういう事態ですよ。金融だってぐんと詰まっている事態です。同じように考えるということは、さっきどなたかがおっしゃった中小企業いじめにしかならないです。また、そうした企業では、事業主が金融のことも考えなけりゃいかぬし、常業のことも考えなけりゃならぬし、人集めのことも考えなくちゃならぬし、銀行のことも考えなくちゃならぬし、税金のことも考えなくちゃならぬ、公害のことも考えなくちゃならぬ、そういう事態の中で、それは故意とは私——私の知っている例でも、故意ではないですよ。そういう形で若干おくれたもの、こういうようなものと、故意にやったものと、あるいは期間的にも短い期間、あるいは半月だとか、あるいは一年のものと若干差をつけて、善意のものに、その人のどうも努力が十分でなかった、あるいは努力したけれども成果を得られなかったという場合と、ほったらかしている場合と、やっぱり私はその率も考えるべきだと、そういうふうに検討をするべきだと、こう思うんですが、どうですか。
  84. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 不納付加算税と申しますのは、申告すべき人が申告しない場合の、無申告加算税に実は対応しておるものでございまして、源泉徴収をしました税金を、本来は申告をして納めるというような制度をとってもよろしゅうございますけれども、そこにはもう申告制度というのを必要ないとしまして、徴収してもらいました源泉所得税を納めてもらえればそれでよろしいということになっておりますから、ある一時点を納めないで過ぎたということは、いわば確定申告書を出さなければならない人が、ある一時点を出さないで過ごしたというときと、実は税法上から申せば同じことなんでございます。しかし、両方ともその場合に、おっしゃいますように、いろいろ情状酌量すべき事由がある場合には、正当な事由としてそれを取らなくてもよろしいという現定がございます。で、その正当な事由を一体どういうふうに設けていったらいいのかということで、国税庁としますれば、全国の税務署を指導いたしております関係上、やはりある程度の画一性を持って基準をつくり決定をいたしておるんだろうと思いますが、なお、いまおっしゃいましたような非常に善意であるとか、その金額が少ない場合であるとか、たまたま初回としてそういうことをついうっかり忘れておったとか、そういうような例として、画一的に何か求められる基準をできるだけ設けまして、現在の正当な事由ということで、法文上十分でございますれば、その執行面の問題として処理をいたしたいと思いますし、おっしゃいますように、期間によりましてその率を変えるということは、先ほど言いましたように、申告すべき人がある一時点を過ぎたとき、源泉徴収税を徴収して、納付しなければならない人がある一時点を過ぎたとき、同じようにやはり過ぎたということで無申告加算税を取り、その加算税を取っておるということからいいまして、ちょっとむずかしいのじゃないかと思いますけれども、いずれにいたしましても、よく検討いたしてみたいと思います。
  85. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 時間がありませんから、これだけやっていてもいけませんから、次に、中小企業金融の問題についてお尋ねしたいと思うんですが、中小企業金融として政府関係機関から最近かなり財投資金をこれに充てているということ、こういうことはわかるわけですが、大蔵大臣はおそらく金融方面でも、これは抑制型でいくんだろうと、こういうふうに私は思います。大きな企業に対する金融というのは、やっぱり引き締め基調でいくんだろうと思うんですけれども、こういうことも日銀等からお聞きしたかったのですが、時間がありませんので聞けませんでしたけれども、最近こういうことを私は非常に耳にする。銀行の代理貸しというのは、大体政府関係機関にあるわけですね。中小企業金融公庫、これだって県に一つぐらいしか支店はございません。結局、各銀行を通じて代理貸しをやるということをやっている。ところが、その代理貸しをやった金融機関が、これは一般の銀行ですね、そのまま中小企業にその金がいかない。これは中小企業金融でありますから、当然金利が安い。金はそういうことで取っておいて、そして自分のところの高い金利の金を押しつける、そして代理貸しの充てられた金は銀行が自分で高利のところへ運用している、こういうことを、私はたいへん最近耳にするわけなんです。だから、代理貸しの政府の金融を得ようと思って行ったって貸してくれない、その銀行の高い金利を押しつけられる、こういうことを耳にするんですが、どうですか、これは銀行局長
  86. 高橋英明

    説明員(高橋英明君) 中小公庫などが自分の店が少ないために民間の金融機関に代理貸しをやっておりますことは御指摘のとおりでございます。現在、中小公庫の貸し付け資金の残高の中におきましても、むしろ代理貸しのほうが五五%を占めておりまして、そちらのほうが多いぐらいでございます。したがいまして、中小公庫におきましては、代理店というものを非常に指導いたしまして、いま先生のおっしゃいましたような無法なことといいますか、むちゃなことが起きないようにということでやっておりまして、そういうことにつきましては、四十六年の七月から非常にやかましいことをいたしております。最近そういうことはなくなったと聞いておるわけでございますけれども、八百以上の代理金融機関がございまして、一万以上の店がございますので、あるいはそういうことがあるのかもしれません。しかし、そういうことはないようにということで、中小公庫のほうでも監査をいたしましたり、あるいは四半期に一度代理店の連絡会議というものをやっておるわけでございます。もちろん、そういうことが過去にもございましたし、そういうことがあれば直ちにそれをやめさせる、あるいは代理店の貸し付けのワクを削減するとか、あるいはひどい場合には代理店契約を破棄するといったようなことで指導してきておるところでございます。昔、耳にいたしたのでございますが、最近は中小公庫などからの報告によりますと、そういうのは非常に減ってきておるというふうに聞いておるわけでございます。
  87. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 減ってきているということなんですが、私はそういうことをよけい耳にするわけです。そういうことをやらせないようにやらなければならぬと思うのですが、じゃ一体、それに対する検査体制できていますか。公庫の人員はどうですか、足りないでしょう。もう審査に追われるだけで、そんなところを監督指導するなんということはない。特に、いま中小企業に対する資金要求というのは非常にあるわけです。いままでは一カ月で審査をしてもらっておりてきた金が、いまでは二カ月から二カ月半ですね、金がおりてくるのは。とてもじゃないけれども、そんなところに人をやっていたんでは、少なくとも支店関係ではないですよ。神奈川県の商工中金にしたって、中小企業金融公庫にしたって、国民金融公庫にしたって、そういう余分な人はありませんよ。本社にそれだけの人を備えてありますか、ごくわずかでしょう。一体だれがそれを実際監査をして、少なくなってきたというのですか。銀行同士の話し合いで少なくなったというだけにすぎないじゃないですか。こういう点はもう少しきびしくやってもらわないと、幾ら財投で安い金利の金を中小企業に出したって、その辺でまずごちゃごちゃになってしまう。だから、幾らたくさん出したって、下の人は、そうした安い、中小企業をバックアップしてやるための金融というのは手につかないわけです。相変わらず高い金利の金を借りざるを得ない、こういうことですよ。この辺はひとつもう少し厳密にやってもらわなければならぬし、これは大蔵大臣にひとつお願いをしたいのですが、中小企業の金融をいまのままでやったって、これは、お金は中小企業のところにはいかないのですよ。お金は渡るかもしれない。ところが大企業が大体ついています。独立してやっているというのは少ないです、系列化されてきていますから。そうすると中小企業に金がいったということになると、大企業は手形サイトを延ばす、百二十日のものは百五十日、百五十日のものは二百十日にする、こういうことで手形サイトを延ばす、あるいは検収を延ばす、そういうことで中小企業にいったはずの金が、現実には大企業がそれによって非常な利益を受けるのです。下請代金の支払い防止法ですか、これには代金は六十日以内に支払わなければならないと、こう書いてある。書いてあってもやりやしない。それをもしやっているようだったら、買い占め、売り惜しみなどという、ああいう不道徳はできないはずです。現実にはやっているわけです。だから私は、どうしても支払い遅延防止法の六十日も、やはり罰則か何かつくらなければいかぬと思う。それがなければ、国民は安い金利で貯金をする、安い金で厚生年金に払い込む、その金が結局大企業のほうの利益に結びついていく、そこの輪を絶っていかなければ、幾ら金を出してやっても、それは中小企業のプラスになるようなことにはならぬと思う。その辺をひとつ組み合わしていただかなければ、中小企業金融に幾ら出したって、中小企業の利益にはならぬ、この辺をひとつ洗い直し、見直して組み直す、そういう必要を私は痛感するのですが、大蔵大臣、どうですか。
  88. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いいお話を伺いました。私どものほうでよく検討してみます。
  89. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 検討するということですが、時間もありませんから、私は、ひとついい成果をいただきたいと思います。  もう一問で終わりたいと思いますが、年末の日本の資金事情というのは、おそらくたいへんきびしくなる、こういうようにいわれております。おそらくいままで日本銀行が、国債や、あるいは手形のオペをやることによって、ある程度そういう面での資金需要には応じていくだろうと思いますけれども、日銀の統計を見ましても、あるいはその他の統計を見ましても、そうしたオペをやっていくという玉といいますか材料、そうしたものは非常に最近少なくなってきております。そうなると、そうした年末の資金需要に応ずるということになると、これは窓口規制をやってきているところのクレジットラインですか、これを臨時的に引き上げるか、あるいは他の手形の買い受けをやることによって資金を供給していくというようなことに、私はなると思うんです。  最近一部に、先ほども商社の税金あるいは融資の問題が出ましたけれども、いままでその商社の手形については、これはオペの対象にしないということできていたと思うんです。しかし、それでは資金需要ができないし、クレジットラインを臨時的に引き上げることもできないということで、商社の振り出した手形をオペの対象にしようとする動きがあると思います。これについては商社のいままでの行為に対する融資規制と同じように、私どもは、それはオペの対象にするべきではないと、こう思うんですが、これはどうですか、銀行局長
  90. 高橋英明

    説明員(高橋英明君) 年末の金融市場の繁閑に応じまして、資金は非常に窮迫しているだろうということで、日本銀行がどういう形でその資金不足を埋めるかということについて、まだ実は日本銀行と話したこともございませんし、聞いてはおりません。  それから商社の手形を買わないと、これはある一定限度以上買わないということをやっておりますが、これはそのワクをふやしましょうというような提案はまだ受けておりません。ですから、日本銀行がそういうことを考えておるかどうかいまのところ私は存じないわけでございます。
  91. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 もしそういう話が出たらどうしますか、それは銀行局としては、大蔵省としても。
  92. 高橋英明

    説明員(高橋英明君) その場合にどれほどの資金不足があり、あるいは資金不足をオペで埋めるか、クレジットライン、貸し出しでふやすか、あるいは手形の買いオペをやるかというような全体の額、あるいはそのときのオペの玉を何にするかといったようないろいろ総体的な問題になってくるだろうと思いますので、現在単に商社の手形をふやすことはよくないだろうというような感じは持っておりますけれども、いまはまだそこまではっきり私、断言できないわけでございます。
  93. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 時間がありませんからきょうは質問いたしません。ただし、次回まで、財政の施行繰り延べと財投の問題で質問をいたしたいと思いますので、資料四点ほどひとつお願いをしておきたいと思います。  第一は、過去五年間、四十八、四十七、四十六、四十五、四十四年と、四十四年以降四十八年までの財政投融資対象機関別の月別、四半期別の年度計ですね、貸し付け額。この資料をひとついただきたい。  もう一つは、同じ財投対象機関別の年度別の年度途中の追加額ですね、これが一つ。  もう一つは、同様の年度別の繰り越し額と、それから不用額。  それからもう一つは、繰り越し額の翌年度月別の消化実績。  この四点を資料として早い機会にひとつ御提示願いたいと思うんですが、その点委員長にお願いしたいと思います。
  94. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) どうですか、その資料提出について。
  95. 岩瀬義郎

    説明員(岩瀬義郎君) ただいまの担当の理財局が参っておりませんので、後ほど先生のほうに直接御連絡を申し上げましてお答えいたします。
  96. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 出すように話をしてください。
  97. 岩瀬義郎

    説明員(岩瀬義郎君) はい。そういうようにいたします。
  98. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 午前の質疑はこの程度とし、午後二時三十分まで休憩いたします。    午後一時五十五分休憩      —————・—————    午後二時四十四分開会
  99. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) これより大蔵委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、租税及び金融等に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  100. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 時間が二十分しかございませんので、簡単に質問を行ないますので、明快に答弁を願います。  初めに、補正予算に関しまして、生活保護費の問題を取り上げます。補正予算については、午前中の大臣の答弁でまだはっきりしたことはおっしゃいませんでしたが、かりに補正予算が非常に大きくなった場合、特に、これが大きくなるという理由で、現在物価高の最大の被害者である低所得者対策がなおざりにされるのではないかと、こういう心配がございますが、これについてはいかがですか。
  101. 辻敬一

    説明員(辻敬一君) 生活保護の問題でございますが、生活保護世帯等に対しましては、御承知のように、本年四月から生活扶助基準などを二〇%引き上げたわけでございますが、その後の物価動向あるいはまた米価引き上げ等の事情を勘案いたしまして、六月から六%、さらにまた十月から約三%それぞれ追加的に引き上げ措置を講じているわけでございまして、これによりまして、生活保護世帯等の生活は確保されている、かように考えているところでございます。
  102. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 ということになりますと、当初予算で生活扶助基準を二〇%引き上げた、いまおっしゃったとおりですが、その場合は、その前提となったのは、あくまでも消費者物価の上昇率が九・六%であると、したがって、一〇・四%だけ生活をよくするということが配慮されておったわけです、当初。その後物価が上がってきたので、いま言われた二つの点が上乗せになりまして、それでもまあ九・一%、両方足しますとなるわけです。ところが、現在の見通しでまいりますと、二三%程度消費者物価が上がってしまいますので、そうなりますと、この一年間トータルいたしますと、改善分は六ないし七%ぐらいに落ち込むわけです。当初、約一〇%の向上が見込まれておったのが、六ないし七になってしまうと。そういうことで、生活改善分というのは大きくしぼんでしまうわけです。それに対しては全然配慮がいまの答弁だとなされないと、こういうことになるわけですがそれでいいのかどうか、その点大臣のほういかがですか。
  103. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私ども予算編成にあたりまして、公共事業費をはじめといたしまして非常に御不自由をみんなに願っておるわけでございますが、福祉関係につきましては、この困難な状況のもとにありましても、できるだけの配慮はしなけりゃならないと考えておるわけでございます。したがって、年度の途中であるにもかかわりませず、生活保護費等につきまして改定をいたしたところでございますので、こういう状況のもとで政府が行ないました措置は、一応ぎりぎりの措置でございまして、直ちにこれをこの補正予算でさらに再改定を考えるというところまで私は考えておりません。
  104. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 となると、私先ほど申しましたように、まあ一番困っておるこういった生活保護世帯の人は、結局まあ本年では非常にわずかの改善、といっても、もともとからわが国のそういったことに対する政策というのは諸外国から比べておくれておることは御承知のとおりです。その上に、この物価高でまたそれが打撃を受けるということになってしまうわけです。非常にこれはまあ残酷であると思うわけです。いま政府としてはぎりぎりの線をやったと言われますけれども、福祉型予算ということに大きく転換をされて、特に、この本年度の最初においては、さっき申したような一〇%の向上ということを言われたのを、この段になってできないということになると、これはあまりにも残酷である。一般の生活の安定しておる人たちであれば、それはまあ少々の無理をがまんをしてもらうということは政府としては言えるでしょうけれども、こういった非常に、まあ経済的に弱い立場の人、低所得者、これに対しては、私は、何よりも優先をしてやらなければならぬと、こう思うわけでありますが、いま大臣が非常にそっけない答弁でございますが、まだ予算の規模等についてもきまっていない段階でございますから、ひとつこの補正で、この低所得者に対する配慮というものをぜひ強力に実施をしていただきたい、ぜひ検討していただきたい。あくまでも検討の余地も何もないと、こうおっしゃるわけですか。その点重ねてお伺いしたい。
  105. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) すべて各項目にわたりましてわれわれは検討を怠ってならないわけでございます。生活保護費等重要な費目でございますから、今後の物価の状況の推移、生活状態等につきましては常に検討を怠らないつもりでおりますが、いまの時点でどうするかということをお尋ねをいただいた場合に、いままだこの改定について考えていないということを申し上げたわけでございまして、もとより検討を続けてまいることは当然のわれわれの責任であると考えております。
  106. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、教員の給与の問題についてお尋ねをいたしますが、十月二十一日の朝日新聞の朝刊によりますと、第三次の教員給与の一〇%アップは、来年度の予算化見送りという記事が出ておりますが、この真意はどらでありますか。
  107. 辻敬一

    説明員(辻敬一君) ただいま御質問の新聞報道については、私どもといたしまして承知しておらないわけでございまして、この問題につきまして大蔵省として正式に態度をきめたという問題ではございません。ただ、義務教育教員の給与改善についての内容、あるいはその計画的実現の内容につきましては、いわゆる人材確保法の趣旨にのっとりまして、人事院勧告を待った上で決定されるものであると、かように考えておるところでございます。  四十九年度予算におきましては、予算策定時にまだいわゆる人材確保法案が成立していなかったのでございます。人事院勧告による教員給与改善の実績もございませんでした。そのために、とりあえず四十八年度と同様の方式によりまして、財源措置額を予算計上いたしまして、政府としての姿勢を示したわけでございます。したがいまして、すでに人材確保法が成立をいたしました段階におきましては、そしてまた四十八年度の第一次改善の勧告、その実施という実績が確立いたしました現在におきましては、人事院の勧告を待たずに、単なる見込みで財源を措置するということについては、慎重に検討する必要があるんではないかと、かように考えておるところでございます。  なお、今後の教員給与改善につきましては、国、地方の財政状況、あるいはまた類似をいたします職種、たとえば看護婦でございますとか保母でございますとか、そういうものの給与への影響でございますとか、あるいはまた公務員給与全般に及ぼす影響、そういうものを考慮いたしまして、今後とも慎重に検討してまいりたいと考えておるところでございます。
  108. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いま慎重に検討すると言われましたけれども、御承知のように、この人材確保法については、これは大蔵当局といろいろ論争があったやに聞いておるわけです。  この附則の中の第二項に、「国は、第三条に定める教育職員の給与の優遇措置について、計画的にその実現に努めるものとする。」、こういう一項が入っておるわけでありまして、やはり財政上計画的にやっていかなきゃならぬと思うわけですが、いまのお話だと、まだまだそういった点がむずかしいのではないか。やはりへたをすると、この新聞記事のような結果におちいらないとは絶対言えないと、こう思うわけです。そういった点について、この附則の第二項について大蔵省としてはどうお考えになっておるか、その点を明確にしていただきたい。
  109. 辻敬一

    説明員(辻敬一君) そういう人材確保法の趣旨にのっとりまして、四十八年度と四十九年度におきましては財源措置を講じたわけでございます。しかし、先ほどもお答え申し上げましたように、やはりどういう内容を実現するかということにつきましては、人事院の勧告を待って措置をいたすことになっておるわけでございまして、すでに本年の三月でございますか、第一回の人事院勧告がございまして、それに伴って実施をいたしたわけでございます。第二回目の勧告については、まだ出ておりませんし、どういうことになるか私どもわかりませんので、やはり人事院勧告を待って措置をするという考え方もあるわけでございまして、そういう問題を含めまして、今後どうしてまいるか、五十年度予算をどうしてまいるかということにつきまして、先ほどお答え申し上げたような諸点を含めて検討いたしておるところでございます。
  110. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 大蔵大臣、重ねて伺いますが、この法律の趣旨に沿って、いま人事院の勧告が出てからと言われておりますが、その点はだいじょうぶですね。人材確保法というのは、ほかの公務員とのいろんな問題もあったと思いますが、やはり、教職員に有能な人材を集めるという非常に現在せっぱ詰まった段階で、関係各方面で非常な努力をされてつくられた法案です。私たちも非常に反対もいたしました。五段階給与という問題もございましたので、反対をいたしましたけれども、一応成立をしたわけでありまして、この趣旨については守っていただかなければ困るわけでして、こういった、新聞の観測記事かもわかりませんが、出ることは非常に教職員の関係の方はショックを受けておると思うんで、その点について大臣のはっきりした方針を伺って次の質問に入りたいと思います。
  111. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) いま事務当局からお答え申し上げましたように、四十九年度につきましては、今後、人事院勧告がございますならば、それを尊重して措置しなければならぬと考えております。五十年度以降の問題につきましては、国、地方の財政事情、この種の公務員の給与に及ぼすいろんな影響、その他それから人材確保法の趣旨等いろいろ考えて慎重に検討しなければいかぬと思っております。
  112. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 次に、宝くじつき預金についてお伺いをしたいと思います。  この宝くじつき預金は、私たちは、経済的に弱い立場の方たち、あるいはまた預金者の保護に対する対策にはならないのではないかと、こういうふうな非常に批判的な考えを持っておりましたが、政府としては、現在この制度で預金者は十分に保護されたとお考えになっておりますかどうか。まず最初にその点をお伺いしたい。
  113. 高橋英明

    説明員(高橋英明君) 割増金付貯蓄は、一応、貯蓄手段の多様化を通じて貯蓄の増強に資するためということで、臨時措置として行なわれたわけでございます。第一回、第二回などは非常に預金が伸びたわけでございますが、三回目ぐらいからその伸びは落ちてきております。  預金者の保護ができたかというお尋ねでございますが、そもそもねらいとしましては、貯蓄手段の多様化、貯蓄増強に資そうということでございますので、そういう目的は達しておるものと思っております。
  114. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いま、少しおっしゃいましたが、第一回から今日まで、いま、たしか四回目の募集が始まったと思いますが、この宝くじつき預金の売れ行きを回数ごとに、また、金融機関ごとに分けて数字を明らかにしていただきたい。いますぐ出せなければ、あとで資料でもけっこうですが、大体の傾向でもわかれば……。
  115. 高橋英明

    説明員(高橋英明君) 金融機関ごとと申しますと、都銀、地銀、相銀云々という、そう全部で申し上げますと非常にこまかくなりますが、一応募集期間の違います信用金庫を除きまして、都銀、地銀、相銀、信用組合、農協、漁協、信託、労働金庫といったようなところの合計のトータルの数字で申し上げます。  個別的にはまた別途差し上げてもよろしゅうございますが、第一回が四月−五月ごろ募集したわけでございますが、その場合には一兆九百八十、それから第二回が六−七月でございますが、これが一兆一千七百七十、第三回が八−九月でございますが、ここへきまして売れ行きが落ちまして五千六百七十、現在第四回、十−十二を募集中でございますが、これは、ですから、まだ計画の段階でございますが、四千七百八十という計画でございます。  そのほか、信用金庫は期間が違いますが、現在まで、第一回が、これは三カ月で募集しておりますので三千五百八十、それから、第二回が二千七百、第三回が現在募集中ですが、二千二百三十、こういう数字になっております。
  116. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 いま言われたように、第一回目は爆発的な売れ行きをいたしましたが、二回、三回と回を重ねるに従って売れ行きは落ちてきておるわけです。非常に募集難となっておりまして、しかも、これは当せん番号をきめる必要もありますので、売り出した宝くじ預金は、全部売れないと非常に困ると、こういう制約もありまして、最近では金融業界でもこの取り扱いに非常に苦慮をしておる、こういうことも聞いておるわけです。したがいまして、この宝くじつき預金については、これからもこのままお続けになるのですか、あるいはこの法律にあるとおり期限までおやりになるのか、その辺の方針は大蔵大臣、どうでしょうか。
  117. 高橋英明

    説明員(高橋英明君) 二年の時限立法でございますので、一応二年間やってみようかと思っております。ただ、無理に募集する必要はございませんので、私ども計画を見て、無理でないと判断されるところ、あるいはまたやっていきたいというところはやっていけばよろしい、まあ、やめたいというところはやめてもよろしい、そういう態度でいこうかと思います。
  118. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 実際、始まってわずか四回目で、いま局長言われたように、もうやりたいところはやってけっこうですと、やりたくないところはいいんですと、せっかく二年間の一応時限立法ということでできたわけでありますのに、もうすでにたった四回で、そういういいかげんな無責任な態度ではたしていいのかどうか。だから、私たちは、こういったことには批判的であって、あくまでもこういう当せん者だけに有利で、しかも、当せん者はそれが得られるけれども、せんに漏れた人は、貯金の目減り以上の——要するに意味かないわけでして、実際、それよりも定期預金なり普通預金の利息を上げるほうが非常に効果がある。むしろそれが効果があるというので、いまそっちへ流れて、結局この宝くじは買わない。いま言われたように、だんだんやめていけばいくほど、先ほども言ったように、全部これ売れないと当せん番号が、それだけ当せん者が減るわけです。当せんしておっても買ってないというのが出てくることが十分考えられますので、ますます意味がないものになってくるわけです。こうやって物価がどんどん上がってくればくるほど、またこういうものに対しても遠のいてくると、こう考えるわけでありますが、これは早急に、法律ができてすぐやめてしまうのも、メンツがあるから、そういうふうな態度でおられるのだと思うんですが、それはひとつもう少し検討をしていただきたいと思います。大蔵省としては計算されていると思いますけれども、この目減り防止にこれは役立ったのかどうか、その辺計算はされておりますか。貯金の目減りの防止に役立ったのかどうか。その辺は、最初ちょっと特に詳しくはお触れになりませんでしたけれども、その点はいかがですか。
  119. 高橋英明

    説明員(高橋英明君) 当初から目減り防止というような意図を持って行なったものではございませんで、   〔委員長退席、理事河本嘉久蔵君着席〕 貯蓄手段の多様化の一助にするということから始められたものだと思います。初めこの法案が国会で御審議いただいておりますときに、これで一体どのくらい集まるのかというような、御質問があったと思いますが、このときわれわれのほうでは、これで一兆四、五千億でございましょうかと、こう言っておったわけでございます。ところが、それは第一回目にそれだけいってしまいまして、むしろ、私どもが当初予想しておりましたのは、年間一兆四、五千億じゃないかというようなことを言っておったのが、少し人気が出たといいますか、一、二回で二兆幾らというような数字になって、実は驚いた次第でございまして、現在四、五千億というようなところで推移しておりますことが、   〔理事河本嘉久蔵君退席、委員長着席〕 必ずしも私どもがねらっておったところとはずれて、非常に不人気になったというものではないんじゃないか、というふうに私は了解しておるわけでございます。
  120. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 そうしますと、聞きますけれども、回数別に集まったお金がどれぐらいで、金利として支払った金額はどれぐらいで、当せん者に支払った賞金はどうなっているか、その辺の数字を、できましたら募集期間別に明らかにしていただきたいのです。ここで出せなければ、傾向だけでもけっこうですから。
  121. 高橋英明

    説明員(高橋英明君) 現在その数字手元に持っておりませんので、ちょっと申し上げられないんでございますが、調べて報告いたします。
  122. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 先ほど目減り防止の目的はなかったと、あくまでも預金の多様化なんだと、一つの預金の方法をふやしただけなんだと、こういうふうに力説をされておりますけれども、いま非常に国民の中で問題になっておるのは、やっぱり目減りの防止ということでありますので、だから、金利の引き上げということは強い要請があるわけです。やはりそういったこともあるので、私は、最初やはり国民も飛びついたと思うわけです。で、いまそれは目的でないと言われているということは、預金者の預金の目減り防止には全然貢献をしていなかったと、私はきめつけていいと思うわけです。したがって、あとは預金の多様化なんだということであるとするならば、実際、そう意味がなかったのではないかと。いま四、五千億ありゃそれでいいんだと、それだけでもプラスだと言われますけれども、もしこれがかりになくても、これぐらいの預金は、金利の引き上げによって十分吸収できたのではないかと、その辺の判断はいかがですか。
  123. 高橋英明

    説明員(高橋英明君) 金利を上げればふえたであろうという数字と、これをやらなかった場合の数字というのをちょっと比較ができないわけでございますが、確かに純預金がふえたという印象は、各金融機関の窓口で持っておりますので、これが無意味であったということには言えないと思います。
  124. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 これからも金融引き締めは続けていかれると思うわけでありますけれども、いま非常にこういった物価高の中で、やはりどうしても預金を奨励しなきゃならぬとするならば、これも一つの手段として意味があったといま言われますけれども、やはり預金利子の引き上げが最優先されなきやならぬと思うわけです。まず、この問題について大蔵大臣はこれからどういうふうに今後考えられておるのか、このままでいかれるのか、現行で。ヨーロッパ諸国はもっと日本よりうんと高いわけですから、その点が一つと、いままでの議論を聞いておられまして、大臣はやっぱり二年間はいまのように、どうぞ御自由に、やめたいところはやめなさいと、やりたいところはなんなさいと、こういういいかげんな姿勢を続けられるのかどうか、その点をお伺いしたい。
  125. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 金利政策たいへんむずかしい問題でございまして、これは企業の経営、財政、家計全体を通じて問題であるばかりでなく、金融機関の各段階を通じまして、経営上も非常に大きな問題で、貸し出し金利との関係において非常にむずかしい問題でございます。そこで、ただしかし、あなたがおっしゃるように、それは先進諸国と日本と比べた場合、日本が比較的に低金利であるということは、御指摘のとおりでございます。日本としても、資本はほしいわけでございまして、日本が非常に低金利に終始するということも得策でないわけでございまして、やっぱりある程度高金利時代には高い金利政策を採用しないと、資本が日本にとどまるという、定着するということにも支障を来たすわけでございますので、私どもといたしましては、あまり非常識に高いのはいけないと思いますけれども、ある程度高くしなけりゃならぬ時期であるということは感じておったわけでございます。したがって、せんだって以来〇・五%の引き上げを実施いたしたんでございますが、この場合は、各金融機関が、その経営の合理化を通じまして、できるだけ吸収していただいて、貸し出し金利にできるだけ影響が少ないように配慮をして考えてまいったわけでございます。で、ようやくこの事を成し終えたわけでございまして、いまちょっと一服しておるところでございまして、これからさらに預金金利をもう一度また見直すというところへはまだいっていないわけでございます。いまの状況の中で、ぎりぎりやるべきことは一応やったという感じがいたしておるわけでございます。  それから、割増金付の預金の問題でございますけれども、これはもともと強制しているわけじゃないわけで、やらなければならぬという性格のものではないわけでございまして、銀行局長から申し上げましたように、各金融機関の自主的な選択にゆだねられておる問題でございます。特に、奨励してまいるという必要は私はないのでないか。といって、特に、このあたりでディスカレッジせにゃならぬというようにも考えていないわけでございます。今後の金融状況を見ながら、この始末をどうするか考えさせていただきたいと思います。
  126. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 重ねて伺いますが、いまの宝くじつきの預金ですけれども、いま大臣言われたように、最初から奨励もしてなかったと言われますけれども、政府から提案されて、国会でもこれ通過して、やっぱり国民はそれなりに期待をするのがあたりまえだと思うんです。それをいまになって、もともとこれは強制的なものじゃないんだと。やっぱり一つの宝くじですから、ギャンブルとまではいきませんけれども、商品ですよね。国民から見りゃ当ててよかった、当たらぬでだめだったと。そういう政府が思いつきでいいかげんなギャンブルめいたことをやっておいて、いまになって人気悪うなったからあと知りませんと、適当にこれからのぐあいを考えてやめるか、やめないかきめますと、まだ一年もたたないうちにそういうことをやる。最初の原点から考えて、非常に私はよくないと思うんです。国民をだましたとは私は言いませんけれども、そこまでは。それに近い線だと、私は思うんですよ。それについてどうお考えになっているか。国民に対して、どう申し開きをするのか。その点もう一言お伺いして終わりたいと思います。
  127. 高橋英明

    説明員(高橋英明君) 四月に始めたばかりでございまして、半年たったところでございますが、私ども現在の五千億程度の売れ行きというものが、無理して集めているということでもないとしますと、そのぐらいでコンスタントにいっていいんじゃないか。初めの一兆をこえたというのが、これも金融機関の見込みなどでは、初め設定をしておりましたのが、またたく間に売れて、またというようなことになって追加したということで、むしろ一回、二回というほうが、言うなれば、異常に人気が出過ぎてたんではないかというふうに思うわけでございます。半年でございますから、もうしばらく推移を見守っていきたいというのが、私の現在の考え方でございます。
  128. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いまの問題のちょっと最初、例の宝くじつき預金、いわゆるギャンブル預金は、例の夏のボーナスを吸収しようという、総需要抑制の一環として生まれた感じがあったんですね、あのときに。それがいまのようにだいぶ人気としてはそうよくない。下降状態であると。これから先まだ総需要抑制策は続行しなきゃならない。そうすると、これから先のボーナスあたりの吸収策、そういう個人消費をどう押えるかということが一つの大きな課題だろうと思いますけれども、大蔵省としては、これにかわるものを何か考えるということになるんでしょうか。その辺はいかがでございますか。
  129. 岩瀬義郎

    説明員(岩瀬義郎君) いま先生がお聞きになりました宝くじ定期が、ボーナス定期と初め考えられておったのが、変わったのではないかという御指摘がございましたが、これはやはりそうではございませんで、先ほど銀行局長お答えいたしましたように、貯蓄手段の多様化ということで、特に、こういう時代でございますから、なるべく国民のニーズ、いろいろの多様化したニーズにこたえて貯蓄を考えていくということで生まれたものでございます。したがって、時の変遷とともに若干ずつそのニーズが変わってくる、あるいはあきられてくるものも中にはあるかもしれませんけれども、そうたくさんの多様化という意味においても、やはりこれは国民のお金を預かっていく貯蓄の手段でございますから、やはり安心のいく、しかも、これはあとから振り返ってみても、あのときのニーズに合ったものであるなという納得のいくものでなければならない。そうしますと、そうたびたびいろいろな新しい手段が出てくるという性質のものではないのではないか。ただ、物価はこのように動いておりますので、若干国民の中に長期の預金というのがやはりどうもなかなか浸透しにくい。この前出しましたボーナス定期が、わりかし人気がございましたのも、六カ月というようなところで非常に人気があったんだろうと思いますが、そういうこともある程度考えて、ボーナス定期が二回にわたって出されたのも、ニーズにこたえたという意味でございますので、ただ、年末にあたりまして相当のボーナスの資金が出てまいりますが、これは新しい手段を講じるまでもなく、国民の皆さんが貯蓄に励んでいただくということによって、個人消費があまり大きく刺激的に伸びていかないことを政府としても考えて、新しいからいつでもどうこうとらなければいかぬというふうには考えておりません。
  130. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 その問題はそれぐらいにして、お酒の表示の問題できょうはちょっとお伺いしたいと思います。  先日の新聞で見ましてわかったんですが、消費者連盟からお酒についての表示の問題を何とかしろというのがありました。それを受けて公正取引委員会が、来月五日の日には、一つの公正競争規約をつくるための連絡会を消費者団体、学識経験者そういうものを集めて日本酒についてはやりたい、こういうことがいわれておるわけです。これは当然所管庁はいままで国税庁でございますから、当然のことですけれども大蔵省になるわけです。消費者から見ると、確かに銘柄酒というようになっていても、本醸造と書いてあっても、それがそこの産地だけのものではない。伏見の酒といわれていながら、タンク買い、一おけ買いといいますか、そうして持ってきたほかの酒がまざっている。それが何%入っているかさっぱりわからない。有名な銘柄でありながら、その会社は小さくて、ほとんどがほかのつくり酒屋から買ってきた酒であるなんというのもあるわけです。それはもう完全な表示の上ではごまかしですから。そういうのを見ると、これはどうしてもやはり何かの手を打たなければならないのは当然だと思います。もう一つは、アルコールを添加して二〇%、二五%と入れる、五〇%以下ならいいということになっておりますから。そういうふうに入りますと、それにブドウ糖が入るということになる。もうほんとうに醸造されたというよりは、混合されたような酒ですけれども、それがアルコール度が少なければ、添加したアルコールが少ない場合には天然醸造とか、あるいはそのほかの自然の酒みたいなふうなレッテルで出てくる。こういうことで、酒造界のほうもいろいろの対応策を考えているようですけれども、この点について、一体いま政府としてといいますか、大蔵省として、国税庁として、主管の官庁としてどういう考え方を持っていらっしゃるか、そこのところをひとつ伺いたいと思います。
  131. 磯辺律男

    説明員(磯辺律男君) ただいま鈴木先生から御指摘のとおり、従来ややもすると清酒につきましてはいろいろのそういった表示の適正化ということが問題になっておりまして、公正取引委員会のほうからの指導を受けまして、過日酒造組合におきましては内部規約、申し合わせいたしまして、清酒の表示に関する基準というのをつくったわけでございます。これは今後設けられます酒類に関します公正競争規約のほうに移行する前提であると、私たちは了解しておりますが、その中身といたしましては、たとえば、原材料の表示であるとか、それから製造年月日についての表示、それから製造方法の表示、それから他の酒類との比較であるとか受賞あるいは推奨等の表示、それから産地の表示、そういった点につきまして内部的に一つの基準を設けたわけでございます。  ただいま先生の御指摘のございました産地表示の問題でありますが、これは灘の酒というふうな、あるいは伏見の酒というふうなことで売っておりますけれども、しかし、実体は必ずしも灘もしくは伏見だけでつくった清酒ではなくて、いわゆるおけ買いいたしました清酒をまぜまして、灘においてブレンドしたのも同じように灘あるいは伏見として販売されておるわけでございます。こういったことについていろいろと議論がございまして、このたびの内部規約におきましては、産地表示の基準といたしまして、その地域の醸造にかかる清酒に限り使用できる。つまりおけ買いした酒がブレンドされておるような場合には、灘の酒あるいは伏見の酒というふうな表示をしてはならないというふうな規約をつくりまして、これは来年の四月一日を最終期限といたしまして、逐次実施に移すということを申し合わしたわけでございます。
  132. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 産地の表示はそうすると四月一日からということで、産地だけのものでなければいけない。それはパーセンテージがあるんですか。何ぼか、幾らかはおけ買いでやったのが入っていても乗るんですか、それとも一〇〇%産地でなきゃいけないのかということが一つ。  それから、アルコールの表示の問題なんです。アルコールを二〇%とか一〇%とかと、こう書かなきゃいけないことになるようですけれども、アルコールと書かないで酒精と書くと。酒精がいいのかアルコールがいいのかって——まあわれわれで言えばアルコールのほうがわかりやすいわけです。そういう点はどういうことになるわけですか。
  133. 磯辺律男

    説明員(磯辺律男君) それは、そういったのが少しでも入っておればそういった表示をしてはならないということになっております。
  134. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 アルコールの件は。
  135. 磯辺律男

    説明員(磯辺律男君) アルコールというふうに書くようになっております。
  136. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 何かこの間のでは、酒精ということにえらくこだわって、アルコールと書くと、メチルという心配があるからというふうなことが言われていたので、その点聞いたんです。  こういうようなお酒自体、私たちが一番なきゃならないものですね、国民の中の最大の潤いになるものですし、あしたの活力になるようなものが、いままではずいぶんとごまかされてきたということです。こういう行政の行き方は、これからはほんとうにまずいと思うんですね。これはお酒だけに限らず、いろんなものに出てくるだろうと思うんですけれども、そういう点、大蔵省に関係しておるものがほかにあるかどうかわかりませんけれども、日本酒だけじゃなくていろんな、ウィスキー類についてもいろいろ今後はそういう問題を起こさなきゃならないだろうと思います。その点については大臣どうお考えか、ちょっとこの点の締めくくりでお伺いしたいと思います。
  137. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは清酒で、まあそのような試みがいまなされようとしておるわけでございますから、その模様を見せていただきまして、なおくふうすべきことがあるかないか勉強をさしていただきたいと思います。
  138. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 酒税法等によればアルコールのパーセンテージが一つずつきまっておりますからね、添加できることになっているのもありますので、その点は法律にのっとっても表示ははっきりしていただきたいと思います。  その次は、たばこの問題で、先ほどからの大臣の答弁では、たばこの値上げあるいは塩の値上げ等については、来年の三月以降あるとも言わない、ないとも言わないんですが、まあないとは絶対言えないというような話でしたから、われわれにとっては、あるとしかとれないわけですけれども、このたばこの値上げがだいぶいわれていて、公社の基本案等が九月九日の日に記者会見でも出てきております。こういう葉たばこの値上げそのほかがあることから、値上げの問題が起こっているようなんですけれども、これは一体どうなっていくんでしょうか、いまのところの現状はどうなのか、その考え方をまず伺いたいと思います。
  139. 石井忠順

    説明員(石井忠順君) 専売公社の石井でございます。  御承知のように、葉たばこをはじめいろいろな原材料、人件費等がたいへん高騰してまいりまして、たばこ事業の益金率と申しますものがたいへん悪くなってきております。そういう状況の中で、ここ数年来大体たばこ事業の益金率というものが六〇%台で推移してまいったわけでございますけれども、四十八年、昨年度あたりから六〇%を割りまして、昨年で五八くらい、今年は五四%そこそこぐらいになるかと思います。そういう状況でございますので、公社といたしましては、もちろん企業努力をすべきことは当然でございますけれども、企業努力だけではカバーできませんので、定価の改定をお願いをしたいと考えておるところでございます。
  140. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 その定価の改定をお願いしたいということになると、当然法律の改正ということで、これはじゃ通常国会のときには法律改正案が出てくると、まあこういうふうに心得てよろしゅうございますか。
  141. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) これは、来年度の予算の編成によりまして、たばこの値上げをお願いすべきかどうか、お願いするとしてどの程度お願いするか、そういう点を検討いたした上で予算案、法律案を考えるべきものと思っておりまして、いまのところまだわれわれとしては白紙でおります。
  142. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 公社のほうは、白紙じゃなくてお願いをしたいと言い、大臣は、白紙と言う。——まあ結局は上がると思わざるを得ませんけれども。  時間がありませんから、ここで特に生産者の問題ですね、たばこの葉っぱは今回八五%値上げの要求があって、最終的には四四・三三%生産者の葉たばこの値段が上がったわけですけれども、大体一反で二百六十から二百四十キロぐらい、まあこれだけとれる。大体二十四、五万というのが、これは栃木県のあるところでありますけれどもそのぐらい。ですから、いろいろ入れても一反三十万円以下程度ということになります。ところが、いろいろ農家のほうへ聞いてみますと、人件費についても、公社のほうの算定では反当五十人ないし五十五人という見方であり、実際には、七十人分かかるという、こういう差から、どうしてもこれではやり切れない。六十万円あればこれは問題ありませんけれども、そこまでの値上げができないにしても、今回こういうふうに改正になったばかりでありますけれでも、やはり後継者の育成を考えると、四十万なり以上なければ、今後たばこをつくる者はなくなるだろうという空気があるわけです。一方で優等、一等、二等、三等、四等、五等とあったのが、優等がなくなって一等以下になりました。そういうことから、いい葉っぱをつくっていたところは恩恵もない、しかも、後継者については、もうからない仕事では後継者はできませんし、そういう点で、国内のたばこをつくっている農家の方々が収納価格の引き上げということを、これでは、上げたばかりでありますけれども、非常に足らないというものすごい不満があります。こういう点についてはどういうように考えますか。ぜひとも改定があるということであれば、さらにまたこの収納価格の引き上げを明年も考えるべきじゃないかと思うんですが、その点についての考えを聞いておきたいのです。
  143. 佐々木幸雄

    説明員佐々木幸雄君) お答えいたします。  葉たばこの収納価格につきましては、たばこ専売法の中で「生産費及び物価その他の経済事情を参酌して、耕作者に適正な収益を得させることを旨として定めなければならない。」と、こういう規定がございます。で、専売公社のほうは、この法律に基づきまして、生産費を補償するということを軸にいたしまして、その時期の農村の物価、労賃の動向、それから、国内産葉の需給の関係、こういうものをしんしゃくしながら、大体需給に見合う、耕作者の希望に見合う、そういう価格ということにきめるということを基本にしてやっております。御存じのように、価格をきめます場合には、そういう事情をしんしゃくしまして、公社の総裁が耕作審議会にはかりまして、その結論を得まして、実施をするということになっております。先生のお話のように、本年は前年の価格に対しまして、四四・三三%の引き上げということで価格を決定いたしまして、現在葉たばこの買い入れを実行しております。で、先生のお話の中で、現在の葉たばこ業界が、こういう価格では不十分だという声があるということでございますが、全国農村によりまして、いろいろな差はございます。で、公社といたしましては、葉たばこの需給がおおよそ耕作者の希望に見合うという趣旨に沿いまして、そうした価格をきめておるわけでございますが、今度の審議会で特に問題になりましたのは、この生産費の中で、耕作者の労賃をどう見るかということが一番問題になりまして、従来は、農村の臨時雇い賃金というものをとっておりましたが、本年は、そうした議論の中で、製造業労賃というものを導入するというかっこうで価格をきめまして、本年いろいろ物価上昇が大きい年ではございましたが、政府関与物資の中で、葉たばこの引き上げが非常に大きいと、目立つぐらい大きいというようなかっこうでございます。将来に対しましては、先ほど申し上げましたように、需給に見合う価格をどの時点で求めるかということで価格を決定いたしたいと、こういうように考えております。
  144. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これで最後にしますけれども、これは大臣、たばこの問題で、農協そのほかへ行っていろいろ聞いてみますと、たばこはもうかるからやれというところは一つもないんですね、ありません。むしろそういうものより、もっともうかるものをやったらどうかという指導しかできないわけです。いままでは、いわゆるたばこの主産地、葉たばこの主産地でも真剣になって奨励をされたところも、現在ではもう採算割れをしているという、こういうことで奨励もできないというかっこうになってきている。そうすると、だんだんだんだん輸入の葉っぱだけになっていっちゃうということになりますよ、これでは。やはり食糧の需給だけの問題じゃなくて、まあたばこ自体、害があるかないか、そんなことは別としても、やはりきちんと国内で一生懸命やっているところについては、めんどうをもう少し見る必要があると思うんですね。そういうのがほんとう政治の姿じゃないかと思うんです。これは公社としての、計算の上から何でも審議会の言うとおりやればいいということが出るかもしれませんけれども、政治の姿としてはかんばしくないと思います。そういう点についての大臣としての感覚、それをお伺いして終わりたいと思います。
  145. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 葉たばこの国内生産の維持について御心配をいただいて恐縮に存じます。私といたしましても、こういう国際収支の状況でございまするし、できるだけ国内で葉たばこの供給が確保できるように望みたいわけでございますけれども、御指摘のように、最近とみに耕作者が減ってまいりましたし、今後これを維持していくということは、よほど気をつけないと期待できない状況であることは私もよく承知いたしております。したがって、ことしの四四・三三%という数字は、私にとっては全く破天荒な数字でございまして、何日も苦吟をいたしたわけでございますが、ついに国内生産の維持をお願いする意味におきまして、高いがけから飛びおりるような気持ちできめたわけでございます。この点は、私は、各全国の耕作者の方々もおわかりいただけると思うのであります。しかし、これで決して十分償い得たと思っているわけでは決してないのでありまして、今後の需給状況、それから今後、特にとりわけ農村における物価、労賃等の推移は十分注視しながら適正な価格水準、収納水準を考えていかなければならないと思っておりまして、御注意の点は十分気をつけてまいるつもりでございます。
  146. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 お昼前の大臣の答弁では、総需要抑制策を進めたことによって物価を鎮静化させた、そのことに勇気を持っておるというたいへん気分のいい話でありましたけれども、はたしてそうなんだろうか、そういった点からお伺いしたいと思います。  いま必要なことは、本年に入ってからの金融引き締め政策が、物価対策上有効な引き締めになっていたのかどうか、また物価対策としての効果があったかどうか、これを正しく判断することが必要だと思います。で、こういった観点から、まず、都市銀行、そして大企業というこの融資の関係、この関係ほんとうに引き締めになっておったのかどうか、このことであります。引き締めの効果をあらわすマネーサプライ残額、これを見てみますと、確かに四十八年七月から九月平均三二%、同年十月から十二月平均二一・三%前年比という結果に比べまして、本年に入ってからの一月から三月、この前年比は一六・七%、四月から六月については一二・五%、こういうことが日銀の調査月報からも明らかであります。しかし、この数字だけを見て金融引き締めかどうか、その効果があるかどうかを見るべきではなくて、実際の鉱工業生産額、実際から申しますと、GNPの前年比との比較をしてみる必要があろうかと思います。この点から見てみますと、四十八年七月から九月、それの実質GNPは前年比九・四%という伸び、それから、四十八年十月から十二月期でも五・七%の伸びであったわけでありますが、ところが本年に入りますと、一月から三月期の実質GNPはマイナス四・二%ですね。さらに、本年四月から六月期は、やはりマイナス二・八%という、こういう数字が出ております。こういう実際の生産の状況、これとの比較から見ますと、本年一月から三月期の総通貨の伸び、それが一六・七%、さらに四月から六月の伸び一二・五%というのは、これは実質的に見ますと、かなり高い通貨量の伸びではないか、この点、まず第一点であります。  それから第二点で、鎮静化されたというその物価でありますけれども、実際、卸売り物価は、四十九年一月から七月まで前年同月比三五%、これはまさに高騰であります。また、前月比で見ましても、六月は一・三%、七月は一・一%と、まさに上昇している、こういう傾向がありますし、消費者物価でも、対前年同月比二一から二三%台の上昇を示しております。前月比でも七月は二・二%の大幅上昇、こういう数字を見てみますと、少なくと数字の上を見た場合には、結局金融引き締めが物価安定に役立つほどには引き締められてはいなかったのじゃなかろうか、また、物価対策上ほとんど総需要抑制ということでは効果がなかったのじゃなかろうか、これは数字が示すところではなかろうか、この点についてまずお答えいただきたいと思います。
  147. 岩瀬義郎

    説明員(岩瀬義郎君) いま先生が御指摘のいろいろの指標でございますが、これはたとえばマネーサプライに例をとりましても、いろいろの見方がございます。私どもは、しかし、いま御指摘の指標だけでなく、あらゆる指標を見まして、現在、特に私ども、七月以降の、参議院選以降の景気の指標というのは、明らかに生産活動は停滞をしてきておりますし、総需要抑制を私どもは目標としております、いわゆる最終的な目標の物価の鎮静化にはかなり効果をあげてきているのじゃないか。しかし、卸売り物価、消費者物価は対前年から比べてまだ十分じゃないのじゃないかという御指摘がございますけれども、鎮静化の傾向はもうすでにあらわれておる。ただ、これからやはり私ども、いま巷間いろいろ経済評論家等が言われます中には、すでにもう総需要抑制の手直しをすべきではないかとか、あるいはもうゆるめないと不況が非常に激しくなって、経済が、もっとこれ以上落ち込まさせると、再び浮上するのに相当苦労が要るのじゃないかというような御指摘があるわけでございますけれども、やはり依然として、その面では、先生の御指摘の需要が完全に冷え切っているとは必ずしも言えない。いわば総需要抑制をかけているために、需要が落ちているという形において、需給の緩和が行なわれているという点がございますので、総需要抑制策を続けていくという、堅持していくという基本方針を変えずに、一方においてはやはり長く総需要抑制をかけておりますので、出てきておるきしみに対してきめこまかい配慮をやっていくということの両方を、財政面でも金融面でもとっていかざるを得ない。で、もしここでまだ総需要抑制の効果がないのだということで、もう一ぺんもう少しプラスしてプレッシャーをかけていくかどうかということの、それほどの状況では私もないと思っておりますけれども、何か手直しをするとか、あるいはきしみを直していくというようなことを言いますと、それはもうすぐ何か緩和につながるというような面がございまして、特に私どもは、そういう非常に微妙な段階にきておる物価問題をいまから攻めていきます上において一番心配な点は、むしろそのちょうど山場にさしかかって、この十−十二月が非常に大切なときに、政策を誤ってもいけませんし、また誤解されてもいかぬので、その辺を慎重に扱っていくというのが、いまのお答えでございまして、各指標だけをごらんいただきますと、ある面からは締め過ぎではないか、ある面から見ればまだゆるいのじゃないかというようなものも出てきておると思います。その辺は全体的なお答えとしてお許しいただきたいと思います。
  148. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私のほうは、特に都市銀行、大企業の関係でゆるめろという立場から質問しているわけではないので、むしろ逆な立場でありますので誤解をいだかないようにしてもらいたいのですが、その関係さらに聞きますと、たとえば、都市銀行の場合、貸し出し残額の前年比、この比率の伸びですが、これは四十九年、まず、貸し出しのほうですが、四十九年の一月から三月が一四・九、四月から六月が一二・七、六月が一二・四、七月一一・九という、こういう数字が出ているのに対して、預金残額のほうですね、まあ同じところに出ておりますが、それの前年同期比は貸し出しの伸びよりも著しく低い、こういう数字が明らかであります。これも数字で見てみますと、四十九年一月から三月が七、四月から六月が五・三、六月四・八、七月五・二と、こういう数字になっておりまして、そして実際この実質預金の伸びが低いのは、法人預金の大幅な取りくずしによるものだ、このことも明らかでございます。そうして見てみますと、本来ならば、実質預金の伸びが低下すれば、それにつれて貸し出しの伸びも同じ程度に低下する。しかし、まあ実際そうでなくて、実際には、日銀のほうから都市銀行のほうに買い入れ手形等で金が出ていくという、こういうのが実情のようであります。で、その結果、都立銀行の資金ポジションが悪化して、都市銀行の外部負債は八兆一千七百四十九億円、これが七月末の数字でありますが、こういう状況になっておりますし、しかも、貸し出しの内容は、これはうしろ向きの在庫資金手当てなどである。こういった状況を見てみますと、この数字から言えることは、結局、在庫過剰にもかかわらず、在庫資金融資によって、大企業の製品の高価格を維持している結果ではなかろうか。ですから、値を下げて放出するというようなことをしないで済む大企業の資金的な裏づけが、ここにあるのじゃなかろうかと思いますし、さらに、日銀からこれだけ金が出ていることによって、これはインフレの要因となりはしないか。さらに、こういう資金ポジションが悪化しているということは、それは銀行の経営の不健全化を意味しているのではなかろうか、こういった点について、大蔵省としてはそのまま放置しておいていいのかどうか、この点について伺いたいと思います。
  149. 岩瀬義郎

    説明員(岩瀬義郎君) いま御指摘の点は、金融機関の実質的な預金の伸びが、確かに個人預金はふえておりますけれども、法人の預金は、確かに金融——窓口を日本銀行締めておりますから、取りくずして貸し出しをやらざるを得ない、こういう形で預金が減ってきております。これは総需要抑制をかけて、窓口を締めているわけですから当然の結果でございまして、その関係で、資金ポジションが悪くなるということも、これは現在においてはしかたがないことであろうかと思います。ただ、それが銀行の貸し出し面において、何かもっと下がるべき物価を、下がるべきものを助けているのじゃないかという御指摘でございますけれども、これは在庫並びに在庫指数などを見ていただきますとわかりますように、売れないために在庫はたまっていく。それで結局、いまはどちらかというと企業に、業種によって違いますけれども、在庫を何とかして整理して調整していくというようなことをやって、生産を落としながらその在庫調整というのをやっている。その間においてやっぱり相当金が要ります。そういう在庫調整、あるいはまた売れないために、在庫投資を求めなくてもやらざるを得ない在庫というか、そういう形でかかえざるを得ないというのも、これもやはり総需要抑制をかけているために、全体の需要が落ちているというところからきていることでございまして、何か銀行を助けるということよりも、企業の——大企業だけじゃございません、中小企業に至るまでやはり同じような金融の面において非常に苦しい面が出てきておるために、そういう現象があることは確かでございますけれども、何か特別に都市銀行と大企業というような結びつきでごらんになるのは、私どもとしては、適当じゃないのじゃないかと考えております。
  150. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 外部負債の増加はやむを得ないということでありますけれども、しかし、考えてみますと、これほどもう都市銀行の外部負債が多くなっているということは、回り回って考えますと、国民全体の犠牲の中で、銀行が利益をあげる結果になるのじゃなかろうか、そういう面はないんでしょうか。
  151. 岩瀬義郎

    説明員(岩瀬義郎君) 銀行自身が置かれております立場というのは、資金を、預金集め、あるいは日本銀行から資金の供給を仰ぎ、そして貸し出しを行なうわけでございますが、その貸し出しにつきましては、日本銀行からの窓口指導もございますし、大蔵省からの指導もございまして、放漫な貸し出しというものをやっておるわけじゃございません。ただ、その結果、銀行の利益の上において、預貸の関係で利益があがってくる。これはいつの時代でもそうでございますが、そういう仕組みに一応なっておるわけでございます。しかし、その中でできるだけ、こういう時勢であるから、金融機関がもうかるのだという形でないように、金融機関としてできるだけ応じられるだけの預金、たとえば今度〇・五の金利を上げましたのも、やはり預金者に対して、目減り補償ということじゃないけれども、このインフレ下において何がしかでもこたえられるものがあればというような形で、預金金利につきましても引き上げを行なってみたり、それから、過度の貸し出しを行なわせないようにするというような指導を行なっておるわけでございまして、ただ信用をあずかる金融機関と申しますのは、やはり何と申しましても、信用の土台となる経営内容というものは、一応安心のいくような状況に経営をされておきませんと、これは預金者保護の立場から言っても心配でございますので、そういう点を考慮に入れながら、健全なる経営ということを主眼として、特に、いまのような経済的な社会的ないろんな要請にこたえながら、健全な経営をやってもらうという立場を貫いているわけでございまして、このどさくさの間に、金融機関がもうかるとかいうようなことがもしあるとすれば、それは行政の面において当然取り締まらにゃいかぬ。しかし、それは、そういう金融機関立場として存在する営業上の問題というのは、これは当然に許されてしかるべきだと思います。
  152. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 時間がないので、この問題は次に進みたいと思います。  最近の新聞報道によりますと、この年末の資金需給逼迫を乗り切るために、日銀が貸し付け限定額を臨時に約二百億円ふやすとか、こういう話もありますし、さらに外−内外債の問題ですね。こういった問題もあるということは、結局、大企業の関係では、年末に向けてある程度の資金繰りが可能になってくるのじゃなかろうか、こういった問題についてどう考えるのかという問題と、もう一つは、一方中小業者の金融逼迫状況、これはもうたいへんなものであります。一々例をあげるゆとりはありませんが、これは八月二日の当委員会で大平大蔵大臣は、それほどひどい状況にあるかどうかについては、私とは見解を異にしたわけでありますが、しかし、現状は、この二カ月半余りの間にたいへんな状況に進んでいるわけでありますが、こういう中小業者が、大企業に比べて格段の金融逼迫状況にある、こういう事実をお認めになるかどうか、この点について伺いたいと思います。
  153. 岩瀬義郎

    説明員(岩瀬義郎君) 総需要抑制をやっております上において、特に、大企業に有利に、中小企業はおいとくというようなことは毛頭いたしておりません。むしろ、私ども指導方針といたしましては、大蔵大臣もたびたびここでお答えになっておられますように、中小企業対策こそ、むしろわれわれとして、これは金融の全体あるいは総需要抑制の施策を全体としてゆるめるんじゃないかと思われるぐらい、錯覚を起こさせるぐらいに、私どもとしてきめこまかいことをやりますやりますとこう申し上げておる。現にまたそれだけのことをやってきておるわけでございます。したがいまして、大企業をゆるめて、中小企業をいじめているような結果になるということを、われわれとしても一番、それはそういうことにならないように気をつけておるわけでございます。  ただ、誤解のないようにしていただきたいと存じますのは、この大企業ということで、お金というものはそこでとまってしまうものではございませんで、それは中小企業に至るまで一つの資金の流れとしてあるわけでございます。したがって、そういう流れを考えますと、大企業であるがために、必要な資金も流さないというようなことでございますと、それは結局中小企業にも及ぶわけでございますから、そういう下請の払いがうまくいっているかどうかというようなことこそ、われわれは注意して見るべきなんであって、大企業に資金がいったから、それはもう大企業のためだと、中小企業のためにならぬというふうに私どもは考えておりません。むしろ、その資金の流通の上において、中小企業がいかに最終的にいまのような引き締め下において、きめこまかくめんどうを見てもらっておるかどうかということを注意しておるわけでございます。  ただ、こういう総需要抑制策というものを堅持していけばいくほど、そういうきしみが出てまいりまするので、先生指摘の問題は、随所に出てくるかと思いますが、それを押し切っても、やはりわれわれとしては、物価が大切であるがゆえに、その方針を堅持しておるということを申し上げたいと思います。
  154. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私のお聞きしたうち、年末に向けて臨時に約二百億円の貸し出し限度の増ワクをするかどうかという問題と、それから、外−内外債を回収するかどうか、こういうような問題は、結局、大都市銀行それから大企業向けの通貨供給となることは、これは制度上明らかであります。そのことが物価再上昇の引き金になりやしないか。これが私の質問の趣旨であります。
  155. 高橋英明

    説明員(高橋英明君) いま、先生の前段のほうの二百億ふやすというのは、ちょっと何のことかわからないのでございますが。
  156. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 二千億円です。十月十九日の日経。
  157. 高橋英明

    説明員(高橋英明君) 二千億円ですか。それはおそらくこういうことではないかと思います。現在、日本銀行におきまして窓口規制というのをやっております。十−十二について一兆二千七百億円の、これは都銀の段階における貸し出しの増加額ですよという指導をしております。ですから、その問題は、それが二千億円ふえるとかふえないとかという問題じゃないんです。そこは一兆二千七百億円を守っていただきますということには変わりはないと思うのです。ただ、先ほど先生が御指摘になっておりましたように、都市銀行の場合、まあ銀行全体の場合でございますが、これからいろいろ預金の取りくずしとかあるいは預金のふえ方が悪い。それで一方では一兆二千七百億円貸さなければならぬとかというような、そういうことのしりが金融市場に出てまいります。その場合には、日本銀行は、各銀行に対しましてあとを見てやらなければいけません。そのあとを見てやる、末端の一兆二千七百億円がふえるんじゃございませんで、銀行の中の金繰りがつかなくなった場合に、日本銀行が銀行の金繰りを見てやる。こういうところが、一応いままで都市銀行に対しましては一定のクレジットラインというものがありまして、日本銀行が貸し出しをしてやるというのは、いま日本銀行の中で内規できめておりますラインがございます。これは公になっておりませんけれども、それで足らなくなるんじゃないか、その場合には、いままでは何千億ということでやっておったものを、その限度を払って、たとえば、上乗せして貸してやることにするか、あるいはそれはやめて有価証券を持っていらっしゃい、それで銀行のしりを見てやるかといったようなことが、現在検討されている段階に入ってきたというようなことだろうと思うのです。したがいまして、その二千億、日本銀行が貸し出しを都銀にふやすことによって末端が二千億ふえるという問題ではございません。
  158. 大倉真隆

    説明員(大倉真隆君) 御質問の中の外−門外債の件でございますが、本年に入りましてから外債発行を認めることにいたしましたけれども、御承知のとおり、調達資金を海外で使うという、いわゆる外−外だけをいままでのところ認めておりまして、外−内につきましては、電力会社と公共的なものというものに限っております。新聞に外−内を全面的に認めるというような報道があったことは私承知いたしておりますが、大蔵省としてそういう意思決定をいたしたわけではございません。ございませんが、現状を申し上げますと、各国ともまあアメリカ市場、スイス市場、ユーロ市場、それぞれ起債市場は非常にダルでございまして、幾ら出したいといいましてもそう簡単に出るような状況ではございません。しかし、これから先、短期金利がややゆるむ傾向にあるかと思いますので、これにつれまして起債市場も漸次復活してくることは考えられます。その場合にケース・バイ・ケースに外−内のものも認めてもいいんではないかという考え方が当然に出てまいると思います。外−内につきましては、現にインパクトローンがそうでございますように、入れます限りにおいて、国内の金融にそれだけ追加的に金が入るということはもう御指摘のとおりでございますが、いまのような状況でございますから、外−内を認めたからといって、急に非常に大量の金が入るというようなことはとうてい期待できないと思います。まず、量的に、いわば全体の国内金融の量から見ますと微々たるものである、当面は。しかし、方向としましては、やはりノーマルな状態に戻って外での起債もできる、さらには進んで外国で、日本での調達を期待するところには、日本の市場をあけるというところまでほんとうは持っていく、方向としてはそういうことを考えるべきだと思っておりますので、いずれケース・バイ・ケースに外−内を認める時期は来ようかと思います。その場合でも、現在インパクトローンについてやっておりますのと同じように、私どもの中で申せば、銀行局さらには日銀と十分相談をいたしながら、ほんとうに必要な資金であるかどうかということも見ますし、その結果の国内金融のはね返りも十分注目してまいりたい。ただ、外−内は大企業のためかという御指摘は、私ども政策意図としてそういうことは全く考えておりませんが、しかし、外で起債をいたしますときには、どうしても知名度の高い、一流の企業でないと出せないというのもそれは事実でございます。
  159. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 では次に進みたいと思います。  次は、大臣にお伺いしたいと思いますが、このように金融が逼迫してまいりまして、どうしても日本経済の中における金融機関の重み、これはどうしても重くなってくることは、まあ時日の経過上当然だと思うのですが、その際に、これは銀行としますと、融資をする際、また、融資をした後も、その企業の経営状況、あるいは社内の動き、また生産状況、販売状況というのは、常に相当の関心を持って見守っている、これはまあ当然だと思う。これはいま銀行当局者に聞きましても、預金者から預かった大切な金を扱うんだから当然だと、こうおっしゃるんですが、ただ実際上、現実の経済の動きの中では、そういう金融上圧倒的に有利な力をむしろ悪用して、実際に、本来銀行としては立ち入るべき分野でないところまで立ち入っている、企業内の問題についてですね。その一つといたしますと、たとえば、労使問題にまで介入して、労使問題についての紛争がありました場合に、むしろ銀行と経営者とが相談をして、そしてたとえば首切りはこれだけ、そして賃上げは認めない、また一時金もストップ、そういうようなことをきめて、それを労働組合がのまなければ、これは一切金融をしない。経営者は労働組合にそう言いますし、また、銀行もそう思っておる、実際そう行動するという、こういう状況が現実に各地に起こり始めているようであります。こんなことがはたして許されていいんだろうか、こんなことになりますと、まさに金融機関である銀行が、日本経済をあらゆる面で支配するという、そういう結果さえ出てくるんじゃなかろうか、これについて大臣の基本的なお考えを聞きたいと思います。
  160. 高橋英明

    説明員(高橋英明君) 銀行が、会社、企業に融資をいたしまして、その融資の管理あるいは保全上常に相手企業に対しまして重大な関心を持ち、また、相手の企業の財務状態あるいはその他もろもろのことについて関心を持ってもらわなければ困るということは言えるわけでございます。これは当然のことでございます。で、いま先生が御指摘の、労使問題に介入していいのかというお尋ねでございますが、企業がうまくいくということを銀行は望むわけでございますから、労使の間もうまくいってほしいのでございますし、それから、企業がつぶれてしまってはもちろん債権は返ってきませんが、それ以上に、会社そのものがつぶれるという悲劇もございますので、できるだけ企業が健全になっていくようにという注文をつけるということ、それは会社の経営者との間で相談をしながらやっていくということは、私は、行き過ぎではないのではないかと思うのでございます。問題は、その労使問題に介入したかどうかという程度の問題でございますが、それはどうも私、個別の場合にわからないものでございますから、一がいにお答えできないということではないかと思います。もちろん強者の地位を利用し過ぎて入り過ぎるということは戒めなきゃならぬことだと思います。
  161. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 じゃ、具体的にお伺いします。  本年の四月でありますが、協和銀行金沢支店長が、金沢市にあるオリエンタルチェーン工業株式会社と協議して、再建に伴う労使の協議事項というものを労働組合に提案いたしました。その中身は、労働組合に対して、賃金ストップ、それから夏期賞与の支給停止、従業員約四十名の希望退職、それに達しないときには解雇するという、こういう協定案を示しまして、内容を一字一句も修正は許されないということですね。そしてそれを認めなければ、銀行としては、要するに労働組合はそれをのまなければ、四月二十日の一億一千万円、四月末の一億二千万円の手形決済を行なわない、このことを強行し、かつ労働組合に対してもそのことをはっきりと説明し、かつ労働組合は、それでは困るから、賃上げをほんとうにわずかでもいいから認めてくれというようなことにも一切応じられない。こういうことを言明したために、労働組合としてはもう全く不本位ながらこの協定をのまざるを得なかったし、この協定をこういう段階でのみますと、労働組合としてはもう全く組合員から信望を失ないますし、全く労働組合としての存立にかかわる重大な問題にまでなっている。こういう事実が現実に存在するわけでありますが、この点についていかがお考えでしょうか。
  162. 高橋英明

    説明員(高橋英明君) 協和銀行とオリエンタルチェーンでございますが、これ、私ども実は知りませんでしたので、昨日、銀行から事情を聴取いたしまして、銀行では、その銀行側の言っているところによればということになるんで、多少水かけ論になるかもしれませんが、経営が悪化してきたので、再建計画を樹立してくれということを求めたことは事実である。しかし、その人員整理、賃上げ停止といったようなところまでは言ったことはない、こう言っておると、こういうわけでございます。したがいまして、その点は、先生のいまの御指摘と、私どもが銀行から聞いた分と違うわけでございまして、そこは、ある意味では水かけ論かと思います。現在、何といいますか、銀行は営業不振におちいったその会社の融資者として、再建をお願いしておるわけでございますので、銀行の立場をわきまえた範囲内で行動しているんではないかと私は思いますけれども、その点が十分わかりません。ただ私どもといたしましては、銀行としてはなるべく社会通念上、違法とか不当であったというようなことはないものと信じますけれども、まあ、社会通念上、あまり深入りしないほうがいいんじゃないかというような指導はしていきたいと思います。
  163. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 労働省は見えていますか——労働省としては、いまの問題をどのようにお考えか。
  164. 松井達郎

    説明員(松井達郎君) いま、銀行局長から御指摘がありましたこの争議の経緯、先生が質問なさいました争議の経緯でございますが、この点につきましては、八月の末にこの問題が石川県の地方労働委員会に提訴されております。で、私ども九月の初め、石川県の労政課から、大体争議行為の概要について聴取し、その後も連絡を受けているところでございます。それを見ますと、銀行局長が申されましたように、事実関係についてはだいぶ争いがあるようでございまして、たとえば、先生がおっしゃいましたその賃金のストップとか、あるいは一時金の問題とか、希望退職の問題とか、こういう点につきまして、組合側のほうではそういう話が出たと言います。それから、銀行側のほうからはそういう話は出ないと言う。一種の水かけ論でございますが、この点自体も、不当労働行為の中の一つの争点になっておるわけでございます。私ども、こういう問題を考えますにあたりましては、やはり労使間の問題と申しますのは、労使の間で交渉すべきものであり、交渉の結果につきましては、これは労使がその結果を、責任を持ってそれぞれ引き受けるべき当事者であるというような心がまえのもとに、労使としては双方の話し合いによって、この問題については誠意をもって解決していただきたいと、こういうふうに思う次第でございます。もちろんこの間に、たとえば、融資先のほうから、あるいはその他大口の利害関係のある人々から、それぞれ利害関係の度合いによりまして、いろんな発言はあるかと思いますが、いずれにしましても、先ほど申しましたように、この労使の当事者といたしましては、最終的に責任を持って解決しなきゃならないのは労使の当事者である。こういう立場でもって、労使の当事者が解決に努力されることを期待しておるものでございます。
  165. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そういたしますと、大蔵省といたしますと、銀行の言い分を信用すると。それから、労働省といたしますと、それは第三者としてなかなか介入範囲の中に、それに対しての判断はできないという、こういうことですが、しかし、これは労使間の間で片がつくような問題ではないわけですね。労使間が全く対等、平等の立場で、しかも、全く圧力のないところで、そこで交渉し、かつ行動するならばまさにそのとおりです。しかし、この場合には、会社がのまなければ銀行が金を貸さないと言われれば、だれだってこれはのんでしまいますよ。こんなことがいま全国各地に行なわれたら、日本の労働運動は、これは絶対にもう守れません。そうしますと、これは労働省の存在にかかわるような大問題です。  それから、大蔵省に申し上げたいことは、はたして銀行の言い分をそのまんま信用しただけでいいんだろうかということです。と同時に、これはいまのところ銀行だけの意見しか聴取しておりませんから、それを信用されておるようですけれども、むしろ仮定の問題として、こういった問題があった場合にどうお答えになるのか。先ほど田中総理大臣に対して、まさに仮定の問題で調査しないというのですね。総理大臣に対しては仮定の問題で調査もしない。この問題、まさに仮定の問題で答弁してもらっていいんじゃないでしょうか、どうでしょう。そういう問題、私が指摘したような問題があったらば、銀行としては行き過ぎかどうか。それについての大蔵省の見解を示していただいていいんじゃないでしょうか。
  166. 高橋英明

    説明員(高橋英明君) 再建計画を立ててこなければというようなことを言うのは、私はかまわないと思うんです。その再建計画の中に、経営者と労働組合の間で話し合いをして、そして、たとえば、一時昇給ストップするとか、あるいはそういったようなことが含まれておったとしても、それはその会社が再建するために必要なものであるという場合であったならば、それほどひどいあれではないんじゃないかというふうには思いますけれども、実態を聞いてみませんとよくわからないわけですが、現在のところは、まあ、銀行というものが、どこまで介入したらいいのかという、その辺については、あまりはっきり私もよくわからないと申し上げるよりしかたがございません。
  167. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そうしますと、大蔵省の態度は、実際、銀行の幹部よりも後退したものだと私は思うんですが、私が、協和銀行の常務取締役その他責任者に会って、労働組合のこういう問題には関与することはまずいことでしょうかと、こういう質問をいたしますと、それは銀行の社会的な立場から見ましても、労働組合との事情についてお聞きする程度であって、一切そういう問題には関係もしませんし、銀行のそういう態度や見解を労働組合に申し上げることをしない。それはまずいことだ、ちゃんと銀行の幹部はそう言っておるんですよ。それに対して大蔵省のいまの見解ですね、そういったことも認められるような見解ですと、今後、銀行全部やりますよ。銀行が全部やりましたら、もう日本の中小、特に中小企業の労使問題というのは、全く銀行の言いなりになってしまう、それでいいかどうか。この点の見解をお聞きしたいんです。それがまず第一点です。  それからもう一つ、銀行の報告は大きな偽りがあります。と申しますのは、私が調査に参ったときに、こういった事実があるかと言ったらば、組合の委員長とは話をしてないと言う。それが銀行の答弁でありました。私は、すかさず、会ってもいないのかと言ったら、いや、あとで委員長がいることがわかったと。委員長はいないつもりで、会社と内輪のつもりで話をしておったのだと、こういう答弁ですね。私があとで調べた結果、委員長は、ちゃんと会って名刺ももらっているわけですからね。名刺ももらっているという、こういう事実を指摘したところ、その後、答弁変わりまして、銀行側は、事前に会社のほうから、組合の委員長と一緒に行くのでよろしくという電話があったと言うのです。そういたしますと、一番発端の問題、会ったか会わなかったか、話をしたかしなかったかという、こういう問題についてこれほどもう答弁が変わっている。ということは、銀行の報告をそのまんま信用できないという面は、むしろこれは客観的な評価だと思うのですが、そういう事実も前提にしまして、もう一度答弁を伺いたいと思います。
  168. 高橋英明

    説明員(高橋英明君) その労働問題に介入してよろしいということを申し上げておるのではございません。ただ、企業が再建計画を立てて、財務状況について銀行発言するということはあり得ることであるし、当然のことではないか。その中には、抽象的に労使関係の問題も含まれるんではないか。ですから、それまで配慮してという必要はないんじゃないかというふうに申し上げたわけです。しかし、直接銀行が労働問題について具体的に指示することというのは、あるいは行き過ぎじゃないかと思います。  それから、いま、あとのほうの、銀行のことだけ信じてはいかぬのじゃないかというようなことですが、銀行も、最近はといいますか、きのう聞きましたところによりますと、労働組合の委員長とも会っておるということは言っております。それから、私も、銀行の言い分を一〇〇%、それだけで、あとはほかの人の言うことは信用しないということを申し上げておるんじゃございません。きのう銀行から聞いたところによると、こういうことでございますということを申し上げておるわけでございます。そして、また実際、そういう労使間の紛争のようなものは、現在は地労委のほうに移されて、そこで事実関係が明白になるという手続が進んでおるようでございますから、私どもはそれを、その結果を待っていようということでございます。
  169. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 時間がありませんのであまり申し上げられませんけれども、労働委員会の結論を待っておったら、中小企業ももちろんそうですが、労働組合もこれはなくなってしまうんですよ、こういう銀行の、こんなことが許されていますとね。ですから、私が申し上げたいことは、本件のような場合、労働組合の委員長と会って、そして実際銀行の立場もはっきり明示して、組合の要求には応じられないという、そこまで言うようなことは、これはやはりまずいことと思うんです。その点について今後銀行全体に注意をし、こういったことがないようにする意思があるかどうか、これを聞きたいと思います。で、それを申し上げるのはなぜかと申しますと、たった一つの事実を申し上げましたけれども、こんな事実はいまたくさんあるんです。私が最近調べただけでも、たとえば、同じ協和銀行ですが、川崎市にある日本通信機、ここでは歴代の専務に協和銀行の支店長を送り込んで、そして労務対策をかなり中心にやって、しかも、いままであった協定をどんどん変える、また組合の運動の中に相当入っているという、こういう事実も現にあります。また、福井銀行の例ですが、これは堀田製作所という会社ですが、この会社が倒産をしたんです。まあ擬装倒産だという話がありますが、しかし、その場合に、銀行の職員がその労働組合員の間を回って、もうこの会社はだめだから、解雇反対闘争をやっても会社は再建されない、で、全金という組合を脱退して、退職金をもらったほうがいいと、その金を福井銀行に預金すれば仕事を世話すると、ここまで言って、そして結局労働組合としては相当脱落したという、こういった事実も実際あります。これはその最後の協定には、福井銀行も当事者として参加しておりますから、これは間違いないことだと思いますね。さらに幾つも例ありますけれども、こんなぐあいに全国各地に同じような例が進んでいる。となりますと、いままさに注意をしておきませんと、今後ますますこういう問題が起きるんじゃなかろうか。そこで、そういう意思があるかどうかについて伺いたいと思います。
  170. 高橋英明

    説明員(高橋英明君) まあ、いろいろ場合があったようでござますが、そういうことを私は承知いたしておりませんが、要は、銀行が、まあ、社会通念といいますか、良識の範囲内で行動していただくということを銀行にお願いするという……
  171. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 いや、私が、指摘したような場合が良識に反するかどうかということが問題ですから、それについて明確に答えてもらいたいんです。
  172. 高橋英明

    説明員(高橋英明君) いや、その点は私もまだ事実を承知しませんので、まあ、何とも申し上げられないと、こういうことでございます。
  173. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そうしますと、総理大臣の場合には必要と認めた場合という、これは仮定のことで行動しておって、国民立場、これについては、まあ私のほうは仮定の答弁を求めているんですがね、一歩譲歩して。一歩譲歩して仮定の答弁を求めているにもかかわらず答弁できないと、そういうことになりはしませんか。——じゃ、お答えないようですから次に進みます。  しかし、社会良識というだけじゃ、なくて、労働組合の運動に影響をもたらすことがないように、そういう強い指示をするようにこれは強く求めます。  最後に簡単に申し上げますが、先ほど申し上げたとおり、中小企業はたいへんな状況でありますが、特に、年末に向けて一段ときびしくなると思うわけです。そこで、大臣、今後中小企業の金融状況、これをどのように分析し、そうしてどう対策を立てていくか、これは第一点であります。  それからもう一つは、政府系中小三金融機関の融資ワクをどれだけ増ワクしていくかという問題、それから、さらに先日、国民金融公庫、商工中金など貸し出し金利が〇・五%引き上げになっております。特にこれは、中小企業向けの金融逼迫状況からしますと、この〇・五%の引き上げというのは、かなり大きな問題だろうと思うんですが、こんな点今後どう考えていくんだろうか、以上の三点についてお伺いいたします。
  174. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 中小企業の金融逼迫状況をどう認識しておるかということでございます。これは各金融機関を通じて、あるいは政府機関を通じて私どものところに事情が通報、報告されまして、そうしてこれに対する金融的な対応策を考えてまいるわけでございます。この対策は、時期を失せずやらなければならぬと考え、今日までそういうつもりでやってまいっておるわけでございます。年末につきましては、いま中小企業庁と話し合いをさせておるわけでございまして、どういう対策を政府機関を通じてやりますか、なるべく早く時期を失せずきめたいと考えておるわけでございます。
  175. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 たとえば、金融機関の特に十月−十二月にかけて増ワクを考えないかどうか、特に三機関に。さらに、金利の〇・五%引き上げ、これについて、これはたいへん影響が大きいだろうと思うのですよ。これについてどう考えているのか、こういうことです。
  176. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 年末対策につきましては、いま中小企業庁と話し合いいたして、時期を失せずきめたいと言っているわけでございますが、それで御承知願いたいと思います。  それから〇・五%預金金利が上がりまして、政府関係機関の金利も当然〇・五%貸し出しのほうを上げていただきたいと、私ども考えていますけれども、まあ関係各省と折衝中でございまして、ただいままで話ついたのもございまするし、まだ話がつかないものもありますけれども、できるだけ早くきめたいと思っております。資金コストがそれだけ高くなったわけでございます。お金がそれだけ高くなったわけでございますから、中小企業といえどもその点については御理解をいただきたいものと思います。
  177. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 最後に、いまの点、特に、金利の問題はたいへん影響が大きいし、それから、今後ぜひ考慮してもらいたいということを要求しまして、質問を終わりたいと思います。
  178. 野末陳平

    ○野末陳平君 きのうあたり何か一般の市民による「銀行を告発する会」というようなものができたような話で、銀行のあり方がかなり批判されているんですが、きょうは私は、銀行の良識に反する——いまもちょっと問題出ていましたけれども、良識に反するあり方について疑問をただしたいと思います。  まず、証券局長に聞きますけれども、最近銀行株の動きを見ていますと非常におかしい。これはちょっと株に関心がある人ならば当然おかしいと思うと思うんですが、これをずっと見ていれば動きがおかしいのはわかるわけですが、どうも銀行株全般的に言えます。いまに始まったことではなくて、慢性的のようにも思いますけれども、いずれにしても、この銀行株の足取りを見ておりますと、正常な動きをしているとは思えない、証券市場のほかの動きに比べて、銀行株はちょっと不審な動きをしているというように思いますが、証券局長はどういうふうに見ていますか。
  179. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) 銀行株がときどき雑誌やあるいはルーマーというようなものでおかしいんじゃないかというような声を聞くこともございます。野末先生御質問があるということで少し勉強してみましたんですが、都市銀行のおも立ったものの株価の推移をここ数年、二、三年ぐらいとってそれの動きをながめてみますと、私は、大局的には一般の株価水準、ダウであるとか、あるいは東証の指数であるとかというものと、大局的には似たような動きをしていると思います。たとえば、現在の株価は過去において、四十八年の初め、あるいは四十七年の終わりごろが一番高い水準であったわけでございますが、このおも立った都市銀行の株価もおおむねそういう形になっておりまして、また昨年の夏以来全体的に低迷を続けてきておって、昨年の十二月の石油ショック時にかなりの急落を示しております。その後一般的にやや持ち直しながらことしの夏から現在に至るまでかなり下げてきている。この大局的な動きは、都市銀行につきましても大体同じような動き、もちろん個別の銀行によりまして増資をはさんでおりまして、増資の前にはやや小高くなっておりまして、当然のことながら権利落ちによって価格がダウンする、こういう動きはございますけれども、まあ、大局的に見て自然な動きではないか、こういうぐあいに考えております。
  180. 野末陳平

    ○野末陳平君 かなり大ざっぱにおっしゃったわけで、証券局長がそういう大ざっぱな言い方をするとは思わなかったんですけれども、最近、ことしになってからの動き、まあ一月ぐらいからでもいいですけれども、動きを見まして私はおかしいと思っています。証券局長は、おかしいと思っていないようですが、じゃ、そちらでは、この銀行株について、売買状況の調査とか、あるいは東証に何らかの報告を求めるとか、そういうようなことは一切やっていないということになりますね。
  181. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) ただいまは都市銀行のおも立ったところについての動きを申し上げたところでございますが、ときどき、先ほども申しましたように、銀行株が安定し過ぎているというようなことも紙面で見ます。また、ややルーマーもあったというようなこともありまして、これは私あとから聞いたことでございますが、東証の監理官が私どものほうにおりますが、銀行株の動きについて十分注意をするようにということを東京証券取引所のほうに言っております。東京証券取引所では、御案内のように、売買審査室というのを設けておりまして、一般に株価の動きについて不自然な動きがないかどうかということに目を光らしているわけでございますので、言わなくてもやっておるのではないかと思いますが、特に、そういう情報もありますので注意をしておる、こういうことでございます。
  182. 野末陳平

    ○野末陳平君 結局、不自然な動きがあるわけでしょう。大局的に見ておかしくないといっても、部分的に不自然な動きを認めていて、まあ証券局長は安定ということを言いましたけれども、株価を安定させる、何か人為的な動きかどうかそれは別ですよ、とにかく雑誌の話とかうわさとか、そんなことを言ってるんじゃないんですよ、証券局長立場として、銀行株の動きというものを常に見ていれば、おかしいのはわかり切っているんだから、いまおっしゃったように、監理官からの報告がちょっとあったというようなお話でしたけれども、しろうとがちょっと関心を持っていればわかるんだから、それを大局的に見ておかしくないというようなとほけた答えをしてもらっちゃ困るんですよ。で、監理官はどういう不自然な動きに対して注意をしたのか、その辺もうちょっと詳しく説明してください、局長の知る範囲で。
  183. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) これは、ばく然とした指示といいますか、注意でございます、聞くところによりますと。何も具体的な動きがあってそういうことを言っているわけではなくて、雑誌にそういう記事が掲載してあったとか、あるいはときどきうわさを耳にするから、まあ一般的によくやっておることだと思いますけれども、注意を怠るなということを言っておるわけでございます。
  184. 野末陳平

    ○野末陳平君 いや驚いたね。だけど、あれですか、じゃ、雑誌に出てておかしいというと注意するんですか。つまり、雑誌に出ていた、それを見て、なるほどそのとおり不自然だと思ったから注意をするんじゃないんですか。あるいは雑誌とは無関係に、どう考えても銀行株の動きはおかしいからといって注意するんじゃないんですか。何か局長お話だと、とにかく出ていたと、雑誌か何かに。だもんで、ばく然と注意したということに聞こえて、それじゃしろうとだって、子供だって注意する。そんな程度の注意だったんですか。あるいは証券局長はその程度の認識しかこの銀行株の動きに対して持っていないんです。
  185. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) 正直に申しまして、私、個別の銘柄の毎日の動きをしさいに実はしょっちゅう点検はしておりません、申しわけないかもしれませんが。  それから、先ほども申しましたように、売買審査室は本来そういうことが職務上といいますか本来の仕事でございますから、東京証券取引所では目を光らせておるわけでありますが、具体的におかしいからということばかりではなくて、まあ、監理官は何でも目を光らせておるといいますか、取引所を監督する前線の立場にあるわけですから、やはり、町の変なうわさでも、それがうそかもしれないと思っても、それは念のために注意をするということはしばしばやっておると思います。
  186. 野末陳平

    ○野末陳平君 それでは、ぼくの考えていることをもう少し説明しまして、というのは、もうちょっと敏感というか、もう少し神経質に、あるいは本気で証券局というのは株価の形成について関心を持っていると思ったのですけれども、ぼくのほうから疑問を出していきます。  何で銀行に甘いというか、特に、銀行だけじゃないかもしれませんけれども、少なくもいままでの答えを聞いておりますと、かなり怠慢というか、何かまるで証券局なんていうのは、何のためにあるかわからないような気がしますから言いますと、ぼくは、銀行株、特定のじゃなくて銀行株の全般に関して言えることですが、地方銀行も入れまして言えることなんですが、株価を安定させるための人為的な工作をしているという疑いが濃厚だと思っているわけです。ですから、そちらがいろいろ調査をなさればかなりわかるのではないか。最終的な立証は非常にむずかしいですよ。立証はむずかしいけれども、しかし、それは立証するのが目的でなくて、こういう不自然な動きを正させるのが目的ですから、私は、あえて疑いが濃厚だということで疑問をただすのですが、もし株価安定工作でもしていれば、これはもちろん証券取引法にも違反しますし、天下の大銀行がこういうことをやるというのは、とんでも一ないことだと思います。少なくも誤解を生むような、銀行株が何らかの工作をしているのではないかという誤解を生むような動きがあることは、これは確かだと思うんです。銀行局長、ちょっと場違いで申しわけないけども、そういう少なくも誤解を生むような動きをしていると、銀行株、特に最近。そんな感じはしませんか。これはほんとうおかど違いで申しわけないようなもんですけど、元証券局のこともあるんですから、ちょっとそういう話……。
  187. 高橋英明

    説明員(高橋英明君) いや、うかつでございますが、個々の銘柄の動きというのをそれほど見ておりませんので、はっきり申し上げられません。  それから私は、これもうかつとおしかり受けるかもしれませんが、銀行の株というのは何か昔から動かない、動かないのが常態であるのかなというようなつもりでおりましたので、どうもいま動かないのはおかしいじゃないかと言われると、はあそうかなというふうにいま思った次第でございます。
  188. 野末陳平

    ○野末陳平君 まあ、銀行は確かに安定株主多いですけれども、ですから、ほかの株のように、はでには動きませんけども、しかし、逆にいえば、安定株が多いから工作もしやすいわけで、その辺のことを私は関心持ちまして、実はもうかなり前から、今月に入って証券局のほうに、とりあえず代表的な銀行のほうがいいだろうと思いまして、大手が姿勢を正せばほかも見習うと思いましたから、住友とか富士とか、そういうところの買い手口を出してくれと実は頼んだんですよ、大蔵大臣。疑いがあるから、疑惑が濃厚だから、そのほかにもその根拠があるから、疑う根拠が。だから、それを資料を出してくれって頼みましたら、証券局のほうで電話で断わってきたですよ。そういうものは出せない、守秘義務だから出せないと電話で断わってきた。そうなると、こちら疑問持っているんだから、しかも、簡単な疑問でもって言っているんじゃないんだから、これ出せない、守秘義務だという壁にぶつかったら、これ以上その疑問は全然解明できない。電話で断わってきてる。そんなばかなことはあるかと、こうぼくは思うんですよ、大蔵大臣。  そこで、あらためて大臣がいらっしゃるからあれするんですが、どうでしょう、買い手口を、私は、どこの何月分というふうに具体的に指定しますから、そうしたら、これ資料を出していただかないと困るんですが、出していただけるでしょうかね。これも守秘義務で絶対だめなものか、大蔵大臣立場でちょっと協力してくださいよ。
  189. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 個別銘柄の売買手口は、おそらく私企業の取引でございまして、それを調べて公表するということは適切でないということになっているんだろうと思います。しかし、御疑問を持たれましてお問い合わせいただく場合におきまして、政府としてはできるだけ御審議に御協力せにゃいかぬ立場でございますので、可能な限り御協力申し上げたいと思います。
  190. 野末陳平

    ○野末陳平君 その可能な限りが非常に微妙ですけども、まあ御協力していただけるということですから、後ほど委員長にもお願いしますけども、一応この件に関して買い手口を、どの法人が、あるいはだれが買ったというところまでは、そこまででなくてもいいですよ。証券会社の段階でもいいですよ。しかし、それだけじゃ十分でありませんから、買い手口をひとつどうしても私だけにでもいいから教えていただきたい。肝心なことになると、守秘義務だという壁がきたんじゃ、これは国政調査権も何もない。国会で何も言えなくなっちゃう。ですから、その点大臣の協力得られるということですから、あらためて理事会でもお願いしたいと思います。  そこで、そちらでもって資料は出さないとおっしゃるんで、私のほうからやむを得ず出さなきゃならない。ですから、出しますから、そこで、その事実の確認をあらためて証券局長に求めるわけです。私が、証券局にさっき大銀行の資料をと言ったときに、何しろ膨大である、膨大だからたいへんだと言われたんで、これは非常に膨大でないような、もう少し出来高の少ない、わりと資料が簡単に入るようなところを例にあげますからね、それに対してそちらでも、私は、きのうこれをそちらで用意しておいてくれと言っておきましたから、突き合わしてほしいと思うんです。で、突き合わした上で、こういう動き、こういう買い手口はどう考えてもおかしいではないかというような感触を確認したいと、こう思うんですよ。そこで一番株価が動かないという意味で、これは安定工作しているかどうか、これは別ですよ、この疑問はあとからやりたいんですが、三井信託株の八月の動きについて、買い手口について証券局長にお伺いしますが、わかった範囲でけっこうですから、どの程度の買い手口、ちょっと教えてもらえますか。
  191. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) 具体的に名前をあげられまして、御質問の通報がございましたので、特に、証券取引所で調べてもらいました。三井信託銀行の八月、九月の買い付け高でございますが、八月は百九十一万六千株、九月は百七十八万七千株の取引があった、こういうことになっております。
  192. 野末陳平

    ○野末陳平君 証券会社別の手口を聞かなきゃ、そんな、それだけできたなんというのは、そんなのどこへいったってわかるんだから、証券会社別の買い手口でもせめて教えてもらわなければ、全然資料にも何にもならないでしょう。もうちょっと詳しく、これしかわからないんですか、それとも……。
  193. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) これの売買、特に、買い付けの委託を受けた証券会社別は、具体的な名前はいささか差しさわりがあろうかと思いますんですが、大体において分散されておるようでありますが、もっともこれは八月中の内訳といいますか、証券会社ごとのやつは八月のしか調べがいっておりません。まだ証券取引所のほうでそこまでしか計算をしていないという話でありますから、それで名前を伏せてちょっと申し上げますと、八月の百九十一万六千株のうち、全部でA、B、C、D、E、五社が買っております。A証券は八十万六千株、B証券で三十万株、C証券で六十五万三千株、D証券で十一万七千株、E証券で四万株、合わせて百九十一万六千株、これだけの報告を受けております。
  194. 野末陳平

    ○野末陳平君 日々の買い手口が問題なんですよ。合計しただけで、分散されていると局長はおっしゃるけれども、五つに分かれていますね、いま。A、B、C、D、Eだ、そのうちの三社はクロスをしているわけだ、大口の、八月二十四日と八月二十七日に三井信託株の場合。だから、分散しているといっても、これはクロス商いですから。あと三社だ、これが日々どういうふうに買っているか、ここを調べてくれなくちゃ。これがわからないとちょっと、つまり値動きと、買いの証券会社と、この辺が明らかになると、八月がこう、九月がこうと、あるいは住友信託の場合はこうだ、銀行株というのはみんなパターンが似ているわけだ、買い手口。その辺をぼくのほうはわかったから、どう考えてもこれは資料が必要であると、証券会社の買い手口がわかって、でき得るならば、どの法人が買っているか、委託者はほとんど法人ですよ。個人はないんですから、はっきり言って。だから、この委託者の名前までわかれば、銀行がはたして人為的に、意図的に安定工作をやっているかどうか、あるいはそれは全然私の疑問は全くその根拠はないか、それがわかるわけですよ。で、この日々の足取りのほうはどうですか、おもに。いまのところはクロスのほうは言いましたけれども、大体八月からどういうふうに三井信託株あるいは住友信託のどこでもいいですよ、そちらがわかる範囲で。幾らでどのぐらいできて、そこはどこが買っているか、三十日並べてごらんなさい。絶対によその手口とは違いますよ。
  195. 田辺博通

    説明員(田辺博通君) 私どものほうでは、毎日の取引の内容をまだつぶさに調べておりません。いま申し上げましたのが調べた内容でございます。  ただ、聞くところによりますと、従業員持株会というものが、自社株のかなり積極的な推進をはかっている。それが相当の恒常的な買い方になっているらしいということは聞いております。
  196. 野末陳平

    ○野末陳平君 だから、その従業員ならば、個人の名前が買い手口に出てこなきゃおかしいし、その辺はそちらが調べてないんだから、いま何を言っても始まりませんけれども、これ、調べりゃわかるわけですよ。日々の手口はわかるわけでしょう、委託者は。オープンにしろというんじゃないですよ。委託者がだれだということは調べればわかる。証券会社の買い手口は当然わかる。だから、それを合計でどのくらいとは言わずに、一日一日見れば不審だとぼくのほうは言って、この月とこの月のどこそこと具体的に言っているんだから、そういうところを調べてもらわなきゃ困るんですよ。ぼくのほうが幾ら言ったって、そちらで全然まだ調べてないと言われたんじゃ、これは話にならないじゃありませんか、大蔵大臣。これ、私は疑問を出している。これがそのとおりかどうかをこれから究明しなきゃいけないわけですよ。それなのに、そちらが調べてないとか、資料がないと言われちゃうと、これはどうにもならぬでしょう。だから、ぼくの言うような疑いはないと、銀行はそんなことは全くしていないのだと言うなら、それでいいですよ。あるいは調べていったらどうもそういう動きもある、ときどき不自然に——三年も五年も大局的に見れば不自然じゃないかもしれぬけれども、ときどき目立って不自然な動きがあって、それは何らかの工作をしているのじゃないかというような結果が出るかもしれない。その辺のことを、大蔵大臣、この調子でもっていったらいつになったって、こちらには資料がないから確認のしようがない、ただ疑いっぱなしだ。雑誌に出たとか、うわさだとか、そんな雑誌とかうわさなんというものは、そんなもので動くほどお役人はそんな甘いものじゃないでしょう。さっきから、どうですかあなた方の答えは、雑誌に出たのはうちと関係がない、新聞に出たのは全然違うと、そればかり言っているじゃないですか、問題は違っていましたけれども。雑誌や新聞に出たって、あなた方は全然そんなもの気にもしない。それなのに今度は、雑誌に出たから注意したとか、そんなばかなことを言ったって、ぼくはそんな適当な根拠でやっているわけじゃないんだから。ひとつ、もう時間も来ましたから、大蔵大臣、さっきの協力していただけるということですがね、こういうことなんです、ぼくの言いたいことは。銀行株が非常に不審な動きをしているのですよ。そこで大蔵省はやっぱり、調査とかそんなのじゃない、検査しなきゃいけない。このままでほっといてはいけない、この動きを野放しにしておくのはよくないと思っているのですよ。だから、個人株主をふやそうなんといったって、これは銀行株買いたいといったって買えっこないですよ。何よりもいけないのは、やはり市場本来の自然の需給関係で株が上下するというような、こういう動きを銀行株が拒否している、銀行が自分の企業メリットのためにそういうルールを曲げているんだと、ぼくの疑いはですよ。だから、それについてやっぱりあまり銀行に甘くしないで、どうですか、株価の動きについてもう少し具体的な資料を出して、これオープンにするのが困るなら困るでもいいですから、この問題を究明しなければいかぬと、こう思うのですが、大蔵大臣、さっき協力と、でき得る可能な限りというようなあいまいな答えでしたけれども、どうでしょうか、具体的に私は銘柄をあげまして、何月何日の買い手口を出してほしいと言った場合にはやってもらえますか。守秘義務でだめですか。どっちですか。
  197. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 調べるようにという御要求をちょうだいいたしましたならば、われわれのほうで検討をいたしまして、可能な限り御協力いたします。
  198. 野末陳平

    ○野末陳平君 最後。  まあ可能な限り御協力で、また同じになっちゃったんですが、その可能なところをどこで一体だれがきめてくれるか、これは大蔵大臣が言ってくれなければ困るのですが、じゃ、時間も来ましたので、これはこれ以上できませんので、次回に譲りますが、いずれにしても、その資料の件を理事会にひとつはかって、出るようにお願いします。
  199. 土屋義彦

    委員長土屋義彦君) 本件に対する本日の質疑はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。   午後四時五十六分散会