○
説明員(大倉真隆君)
野々山委員から御質問の諸点は、非常に広範にわたっておりまして、時間の
関係もございますので、恐縮でございますが、できるだけ簡単に全体について
お答え申し上げたいと思いますが、御質問の御趣旨は、今回のIMF総会でどういう問題があったかということ、また今後金利の取り扱いはどうなるんだろうか、あるいは国際収支の見通しをどう考えておるか、外貨準備との関連で、現在の為替銀行の借り入れなどはどうなっておるんだ、あるいはまたいわゆるリサイクリングというようなものについては、
大蔵省はどういう
立場をとり、何をしようとしておるのかというような非常に広範な諸点にわたっております。
IMF総会におきまして話題になりました
中心は、やはり石油問題をどう考えるか。これに伴いまして、金融的には産油国に当面少なくとも非常に多額に集まるであろう余剰資金をどうやって先進消費国、中進国、開発途上国に回していけばよろしいかというリサイクリングの問題でございます。同時にまた、同じぐらいのウエートで
インフレ抑制が大事か、デフレの危険はないかという点にも議論が集中しておりました。あわせまして、石油危機以後非常に苦況におちいっておる開発途上国について援助をどうやってやるかという問題もう
一つは、実は、昨年のナイロビ以来では、国際通貨制度をどうするかということが、一年間非常に議論されたわけでございますが、石油危機以後ややその現実味が遠のいてしまいまして、理想的な将来の制度をつくるのには時間がかかる、当面何をすべきかというほうにむしろ問題が集中しておったという
感じでございます。
リサイクリングについては、後ほどまた申し上げますが、
インフレ抑制が大事か、デフレの危険がこわいかという問題につきましては、国ごとに若干のニュアンスの差はございますけれども、当面
インフレ抑制に全力をあげないと、各国の
国民はとうていこのままのような
インフレの持続には耐えられないということを言っておる国のほうが多いという
感じでございます。しかし、一部の国におきましては、やはり失業率を
中心にこれ以上の冷やし過ぎには問題がある。三十年代の
世界的な不況を再現しないように各国で十分
意見交換をしながらうまくかじをとっていかなくてはいかぬではないかという声も強く出始めておるということも事実でございます。
金の問題につきましては、今回の総会で採択されました通貨制度改革概要の中で、将来の制度としては、金の
役割りは漸次低下すべきであるということについて共通の認識が得られておりますけれども、さて具体的にそれをどうするかということについては、金を持っております国、持っておりません国、それぞれにいろいろの
考え方がございます。まだ具体的な方策がはっきりと打ち出されるというところまできておりません。しかし、この問題は、今回でき上がりました暫定委員会という二十人の
大蔵大臣の会合が今回正式にきまりました。第一回も開かれました。次回は一月の中旬にまたワシントンで会合をいたしますが、それまでの間に、理事会でIMFの増資の問題にからめて、金の問題も議論しておいてくれということになっておりますので、逐次いろいろな議論が出され、基本的に将来の
役割りを減少する、減らしていくという線に沿いながら具体的な案が練られていくということになろうかと思っております。
外貨準備、国際収支の
関係は、ごく簡単に申し上げますと、六月以降やっと貿易収支が黒になりました。漸次黒字幅が拡大しておりますが、貿易外収支が最近は月率で大体五億五千万
ドルぐらいの赤字という構造になっておりますので、なかなか貿易の黒で貿易外の赤を消して、経常が黒になるというところまで持っていくのはなかなかたいへんでございます。しかし、八月、九月は幸いに経常収支で若干の黒字になっております。先行指標を見ますと、貿易面は年内はほぼこの基調が続いてくれるんではないかと期待しておりますが、来年一月以降につきましては非常にまだ不透明な点が多うございます。決して楽観を許されないという
感じでいま見ております。経常収支がそういう
状態でございます上に、長期資本収支が、まあ諸般の施策を講じておりますので、かなり顕著に改善はいたしておりますけれども、まだ赤字の基調がかなり続くというふうに見ておりますので、来年、来年度ともに、国際収支の見通しには決して楽観を許さないという
感じて見ております。
外貨準備は、御承知のように約百三十億
ドルという水準にございますが、これに関連いたしまして、為替銀行のユーロ市場からの借り入れ、あるいは
アメリカからの借り入れというものは一体公表できないのかという御質問を受けておりますが、これは他の委員会の御質問もございまして、申しわけございませんが、ちょっと
政府としては公表を差し控えさせていただきたいということを申し上げたことがございます。と申しますのは、それぞれの取引先は、もちろん自分の取引相手のことはよく知っておりますが、
日本全体としてどうなっておるかということは、だれも知らないわけでございます。だれも知らないので、私どもは報告をとっておりますから、大体の姿は知っておりますけれども、各国とも
政府当局がこういう数字を公表はいたしておりません。なぜかと申しますと、やはり各市場からの借り入れの総体がわかるということは、ある時点でわかれば、次の時点でまた公表いたします、その間の動きもわかりますから、最近のような情勢でございますと、信用不安という危険が非常にございまして、依然としてなくなっておりませんので、たとえば、七月ごろに、これまたおしかりを受けるかもしれませんが、一部の
新聞が
日本の借り入れ、ユーロ借り入れについての観測記事を流しまして、百数十億
ドルという多額にのぼるという記事が出ましたら、即日ロンドンにそれが打ち返されまして、ユーロ市場に非常な混乱を来たしたということもございます。そういうこともございますので、恐縮でございますが総体の数字、市場別の数字につきましては、公式の場所での言及は控えさせていただきたい。ただ、資料といたしましては、為替銀行の短期の資産、負債の残高を月別に公表いたしております。これは御要求ございますれば資料としても御提出できると思いますので、この数字を見ていただきますれば、それが借り入れそのものではございませんけれども、大体の傾向はお察しいただけるのではないかと、そのように考えております。
リサイクリングの問題は、IMF総会でもイギリスから提案がございましたし、先ほど申し上げました暫定委員会でも、この問題を理事会で協議し、一月の会合に何らかの案を出すように勉強してくれということになっております。
日本の
立場は再々
大蔵大臣がいろいろな
機会に申しておられますように、あらゆる可能性を広げておく、開いておきたい、多様化を求めたい。それが同時に、産油国側も非常に巨額の資金を持ちました場合、自分の資産の運用を多様化する、貸し先も、地域も、形も、すべて多様化していくということを当然に考え始めるはずでございまするので、私どものほうもそのような
態度でまいりたい。どれか
一つの方法に非常に大きく依存するということは適当でないだろう。で、あらゆる方法を抱いております。それらが
相互に補完し合うということで臨みたいと考えておりますので、今後の国際的な
会議におきましても、その基本線に基づきながら、しかし中進国、開発途上国の要請も十分考えて、何らかの国際
機関によるリサイクリングというものを研究してまいりたいと、かように考えております。