○藤井恒男君 最初に、日本製麻の現在起きております争議の問題について、
関係者からその考え方をお聞きしたいと思うわけですが、大臣おられますので、この日本製麻の争議というものについてきわめて概略でございますが、その概要を私申してみたいと思うのです。
日本製麻は、本社が神戸にあるのでございますが、工場が富山と兵庫にございます。同時に、タイに二つの工場を
経営しておるし、インドネシアにも現在工場を建設中でございます。なお、これまで日本製麻は、
構造改善事業として開発銀行から融資を受けておりますし、なお、インドネシアの工場建設にあたっては、海外経済協力基金を仰いでおるわけです。御承知のように、ことしも、後ほども申しますが、タイにおける初めての争議、しかも、それは日本人の
現地出向者並びに工場長を監禁するというような争議が行なわれました。軍隊まで出動してトラブルを起こし、新聞紙上をにぎわした内容のものです。
今回のこの日本製麻の国内における労働争議というのは、
会社側が富山工場を全面休止するということに端を発しておるわけでございますが、実は昨年、
会社が富山工場の労働組合と結んでおります労働協約を無視して、工場閉鎖を突如通告してまいりました。これは明らかに労働協約を無視した行為でございますので、当該労働組合は、上部団体である全繊同盟などと一緒に、
会社の提案に対してその撤回方を要求いたしました。
会社は協約違反をやっておるわけですから、結果としてこれを白紙撤回するということになったわけです。
このままであれば問題はないのですが、その後再び
会社は、富山工場の閉鎖ができないという見方をしたものか、富山工場の二交代制を昼専に移してしまう、しかも通勤バスをストップさして、事実上従業員が通勤できないようにしむける。あるいは、最近よく見られる繊維の特性でございますが、女子の従業員の中には、働きながら夜間の高校に通うという方たちが多いわけですけど、そういった女子の勤労学生に対して、富山から兵庫の工場に転勤しろという通告をする。もちろん学校に通っておるわけでございますから、せめて学校を卒業するまでは働かしてくれという希望を当然女子勤労学生は行なったわけです。
会社はそれに対して、寮をかえるとか、あるいは給食を停止するとか、入浴を禁止するというような、どちらかといえば、かつて近江絹糸の人権争議というものがあったわけなんだけど、それに類するような非道な行為をやる。もちろんこれに対して労働組合は、あり得べからざる行為であるとして、地方裁判所に対して解雇無効の仮処分か申請した。
会社は、労働協約にも地労委へのあっせんの事項があるのだから、労働
委員会にあっせんしてくれという要望を組合に出した。組合は、それなら労働
委員会でもけっこうだといって労働
委員会に入ったところ、当然冨山の地方労働
委員会は
会社に対して、これは不当解雇である、
会社のそういった行為は全部撤回しなさいというあっせん案を提示され、
会社はそれに応ずるということになったわけです。
その後、さらにまた今度は
会社は、性こりもなくことしの五月になって富山工場の閉鎖を一方的に提案してくる。したがって組合は、団体交渉で当然これは解決すべきであるということで団体交渉を行ない、労使の間で、いまの状況の中では工場閉鎖もやむを得ない面もある、したがって、職場を去る者についての条件交渉に入りましょうという提案をする。
会社は、それならひとつ地労委に頼んで、地労委のあっせんにお互い応じようじゃないかということで地労委に持ち込む。そうすると、地労委の場で
会社は前言を取り消して、一切そういうことは言っていないというようなことになり、地労委も扱いかねてあっせん不調になる。こういうようなことを繰り返しておるわけです。
現在もそういった
会社の転勤不能者、要するに、男子といえども富山県の実情が示すように半農半工という状況でございますから、おいそれと富山工場から兵庫工場へ移動もできない。適格な別な就職口をさがしてくれというわけだけど、これも無視してどんどんいやがらせをして解雇の方向へ持っていくというようなことを繰り返しておるわけです。組合はとうとうここまでしんぼうして交渉を重ねてきたのだけれど、再三再四にわたって労使で話し合っておることを全部ほごにして、あえて
会社の主張を
会社は繰り返し、しかも、なしくずし解雇を行なってくるということにたまりかねてストライキに入る。
会社はそれに対してロックアウトをするという状況になってきております。
日本製麻の人たちにしてみれば、これまでも日本製麻の業態から見て、開発途上国からの製品輸入の問題などもあり、
合理化もしなければならないといっていろいろ
合理化につとめてきておるわけです。
現実に富山工場並びに兵庫工場、それぞれ昭和四十六年四月には本社を含めて千七十八名の従業員がおったのですが、
構造改善その他に組合が応じて協力した結果、四十九年十月には三百六十人に従業員は減っておるわけです。すなわち、七百十八名というものは
会社の
構造改善という名のもとに職場を去っておるという状況にあるわけでございます。
一方、これとはうらはらに
会社は、さっきもちょっと申したようにタイに工場をつくる。そして同じような労務管理の感覚をもってタイで工場を運営しておるがゆえに
——タイには数多くの日本の進出
企業がある。その中でこの工場だけは、タイの従業員が工場長並びに日本人の従業員をかん詰めにして、そしてピケを張って糧秣を断つ。工場長以下みんな日本へ帰れというような争議が
発生しておる。
タイに進出しておる日本の
企業でも、昨年は賃金、退職金などを含む労働争議が起きておるし、ストライキに入っておる
企業もあります。しかし、それは純然たる経済闘争であって、経済問題で完全にケリがつく。ケリがついた
あとはまた正常な業態に復しておる。この工場については別です。何しろ工場長、日本に帰れというようなことで、ロックアウトして、軍隊まで連れてこなければ身に危険を及ぼすというような状況にまでなっておる。こういった労働争議が国内国外で起きておる。
私に言わすなら、きわめて悪質な不良
会社であるわけだけど、こういった工場が現在当面しておる問題を、
通産省並びに労働省はどのように見ておるか。新聞紙上なんかでも、すでに地方紙、中央紙あたりなどにおいても報ぜられておることだからよく承知しておると思うが、現在把握しておる状況をまず聞かしていただきたい。