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国務大臣(内田常雄君)
三つのお尋ねでございましたが、第二番目の総
需要抑制政策をどうするかということ、これは
小柳さんと
通産大臣との間で問答もございましたとおりでございまして、多少私の
考え方がニュアンスが違うものがございます。これは、
物価問題が今後におきましても引き続き最大の
政治の
課題であるという
考え方を持ちますので、そのたてまえから総
需要の抑制、また、その一環としての金融の引き締め
政策というものは当分続けなければならないと思いますが、他の一方において
中小企業その他の
企業の行き詰まり、
経済の停滞、さらにそれから派生する雇用問題というような面がこれは世界の先進諸国でもそのとおりでございますが、
わが国におきましても、そういう様相がいろいろの指標からうかがわれておりますので、それとの調整、調和をどうするかということを私は
考えなければならないと思います。
もう
一つは、当面の景気とか雇用の問題ばかりでなしに、これから先、
日本の人口が毎年百何十万人ずつふえていくことを
考えたり、あるいはまた社会福祉の充実というようなことを
考えてまいりますと、今日、御承知のような、最近における
経済成長の停滞と申しますよりもマイナス成長というような
状況をいつまでも続けるわけにはまいりませんので、したがって、中期的の展望に立ちましても、やはりどうしても将来これだけはやっておかなければならないというような基礎的な
物資等についての
供給確保策ということも
考えてまいらなければならないという問題がございますので、それを平面に並べてみますると、総
需要抑制、金融引き締め
政策をいつ切りかえるかという、こういうたいへんむずかしい問題になりますので、私は独特の表現ではございますけれ
ども、これらの幾つかの問題を立体的に交錯させる
考え方をとるものである。総
需要抑制、金融引き締めはそのまま続けるが、さらに
中小企業、雇用の問題、あるいは
経済の縮小過程への落ち込みというようなものは、これを防ぐ所要な施策というものを立体的に組み合わせる。
将来の
経済の問題につきましても、さらにまた国際収支の問題でありますとか、あるいはまた
経済を成長させようと思いましても、申すまでもなく、
エネルギー資源の国際的な
供給の問題がございまして、
わが国の
経済のあり方、あるいは
わが国国民の生存というものは国際協調のうちにおいてのみ可能であることを
考えますと、単に開発
輸入をすればいいとかいうようなことだけでも解決しない面もございますので、これは私は
経済企画庁でございまして、
通産省とも全く同じものではございません。やはりまた、私のほうは
物価局だけを持っておるものではございませんので、それらの問題を立体的に組み合わせまして、他の
物価を落ちつけながら
経済が行き詰まりにならないように、雇用が落ち込まないようにやると、こういうことでございます。抽象的でございますが、そういう判断でございます。
経済見通しにつきましては、まず
物価の問題が第一でありますが、これは私は弁解せざるを得ませんが、昨年の十二月ないしことしの一月に立てました
経済見通しというものは、いろいろの面でたいへん狂ってきております。
第一に、国際収支の面におきましても、これは
輸入の面でも、
石油の
価格が御承知のように四倍以上に
値上がりをするというようなことは、昨年の十二月の終わりの段階ではまだ
考えられておりませんでしたし、また、食糧などの
輸入につきましても同じような事情がございまして、したがって、かなりの
輸入の支払い額がことしの元旦の
経済見通しよりもふえてまいるだろう、百億近いものが私はふえるのではないかと思います。しかし、幸い輸出も伸びておりますが、これがまたいろいろの問題がありますこと、国際的に国内を
不況にしたままで輸出ドライブをかけるということに対する国際的な反発、
批判というものもふえつつあるわけでありますので、
輸入も伸びるけれ
ども、それに比べてこの二カ月ぐらい輸出が伸び
輸入は落ちついているんですが、そういう
状況が続くとも
考えられませんが、要するに、国際収支の見方は大きく変えてまいらなければならないと思います。
物価につきましても、
通産大臣が言われたように、昨年の秋からことしの正月にかけてのようなああいう狂乱
物価の
状況というものは私は全くないと
考えます。それは先ほど来議論になりましたとおりのことで繰り返しませんけれ
ども、
石油の問題に端を発し、それに便乗とか先取りとかいうようなことがからまりまして、たとえば卸売り
物価などにおきましても、昨年の十二月は一カ月で七・一%の
上昇、前月に比べまして。一月でも五・五%の前月に比べて
上昇というような調子を、昨年の暮れから正月にかけて三、四カ月続けておりまして、これは過去の十年平均ぐらいで申しますと、一月間に三年分ぐらいの
物価の
上昇をしてしまったような
状況でございますが、現在におきましてはそういう
状況ではございません。三月以降、よく御承知のように、卸売り
物価、消費者
物価とも対前月一%をこえることもございますが、一%を割る月もしばしばございまして、たとえば消費者
物価でも東京都の八月の速報によりますと、〇・八%というような
状況でございます。
私は自分で試算をいたしましたが、三、四、五、六、七、八の過去六カ月における各月の消費者
物価の単純平均というものは一・一%あまり、一・一五%、これは単純平均であります。それから卸売り
物価につきましても、三月以降は比較的落ちついておりますので、それは毎月の対前月
上昇率が単純平均ですと〇・九%ぐらいでございます。これから先、御指摘のように十月は
公共料金の
引き上げが、医療費などの問題をも含めまして集中をいたしますが、そういうものをかみ合わせてみましても、私は、おおむね過去六カ月のいま申し上げましたようなそういうゆるやかな上がり方をもって年を明け、そして来年の二、三月、ちょうど四十九年度の終わりを迎えると思うわけでありまして、そうしますと、これは、私
どもの努力が決して成功したということだけではございませんが、たまたま昨年の
物価上昇が非常にひどかったものでございますから、来年の二、三月ごろの卸売り
物価、小売り
物価の対前年同月の
上昇率というものは、このごろ各方面で言われておりますように、消費者
物価をとりましても十数%ぐらいの
上昇でおさまる。一年前は、これが御承知のとおり二五、六%の
上昇でございました。卸売り
物価も一〇%ちょっとこえるぐらいでおさまるのではないかと、こういう見方でございますので、それに応じましたように
経済見通しの
物価な
ども修正をいたしてまいりたいと思います。
最後に、
経済成長率は、これも非常に議論がございましたが、四十九年度は年間の
経済成長は二・五%というように立てておりましたけれ
ども、どうもことしの一−三月の
経済成長はマイナスにおちいり、四月−六月がわずかに〇・六%しか上がらなかった、持ち直さなかったというような
状況、また、最近の
生産出荷等の、あるいはその他の指標をかみ合わしてみますると、二・六まで私はまずいくことは、総
需要抑制政策を続けます前提のもとにおいてはなかろうと
考えますので、これも
経済成長率ゼロを含む低率成長というふうに直さなければならないと思います。
それから三番目の
公共料金の問題につきましては、これはまあ常に口ぐせのように申しますように、極力抑制的
態度をもって臨んでおります。したがって、それは
引き上げ率におきましても
引き上げ時期におきましても押えるだけ押え、延ばせるだけ延ばせるということをやっております。米価についても、国鉄につきましても、
小柳さんは、内田君はそういうことについて過去一年間努力したことはないと、こういうおことばでございましたが、これは正真正銘私が、実は前のやめられました福田大蔵
大臣と組みまして、そして国鉄の、せっかく今回つくっていただいた
値上げの
法律を六カ月間、
法律まで直していただいて
物価狂乱中延ばしました。米価につきましても、昨年の
生産者米価
引き上げにかかわらず、消費者
物価はとにかく今日に至るまで一文も上げないということをやってまいった、その
経済企画庁の私はまあ
責任者でございますが、しかし、
公共料金というものは、いつまでも押え込んでおきますと、結局それの仕組みがもたなくなりまして、非常に大きなまたいろんな弊害を
あとに繰り越すわけでございまして、それを全部財政で吸収するということがなかなかむずかしい。
米につきましても、一年間ぐらいは
生産者米価を上げても
消費者米価は上げないで、その差額は国の財政で見さしたわけでありますが、それを続けるということは、一年間の問題ではなしに、もうこれからは、先に
政府が買い上げるお米については、毎年去年の水準でしか売り渡し
価格を上げないということでありますから、毎年それは根になって累積してまいります。その上に、もしその年の
生産者米価を上げるといたしますと、新しい要素が乗っかってまいりますので、これは何千億とか一兆とかいう断面だけの数字ではない面がございますので、それらの
配慮をいたしながら、
経済企画庁は
国民生活を守るのが役割りでございますから、
公共料金も多少無理がいっても、各省にもしんぼうをしていただくような発言を続けてまいりました。
ですが、これはまあ一言多いんですが、
公正取引委員会のように
経済企画庁長官は独立してその職務を行なうということになっておりませんので、とどのつまりは
通産大臣と話し合ったり、農林
大臣と話し合ったり、大蔵
大臣と話し合わなければならないというところにですね、
公取委員長のような勢いのいいことは私は言えないという点をお察し願いたいと思います。