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1974-11-12 第73回国会 参議院 建設委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年十一月十二日(火曜日)    午前十時十七分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         小野  明君     理 事                 大森 久司君                 古賀雷四郎君                 増田  盛君                 松本 英一君     委 員                 上田  稔君                 遠藤  要君                 上條 勝久君                 坂野 重信君                 柴立 芳文君                 沢田 政治君                 前川  旦君                 田代富士男君                 上田耕一郎君                 春日 正一君    事務局側        常任委員会専門        員        村田 育二君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○建設事業並びに建設計画に関する調査  (派遣委員報告)     —————————————
  2. 小野明

    委員長小野明君) ただいまから建設委員会を開会いたします。  建設事業並びに建設計画に関する調査を議題とし、先般当委員会が行ないました中国地方並びに北海道における建設事業実情調査につきまして、派遣委員から順次報告を聴取いたします。中国班増田盛君。
  3. 増田盛

    増田盛君 御報告申し上げます。  第二班は九月二十四日出発、二十七日、用向きを完了いたしまして帰京いたしました。  第二班は、増田、秋山、三治の各委員が参加し、兵庫岡山両県下の建設事業及び地域開発実情について調査してまいりました。以下そのおもな事項について概略報告いたします。  第一は、兵庫県が都市計画事業として実施しております阪神電鉄連続立体化事業武庫川流域下水道事業についてであります。  前者は、阪神間の密集市街地を横断している阪神電鉄線高架化をはかろうとするもので、すでに神崎川の橋梁を含めた区間大阪湾高潮対策事業として高架化が完了していますが、これに接続して、尼崎市内の約五千メートルの区間高架化し、十三の踏切を解消しようとするものであります。本区間は、住宅商店工場等が混在している市街地電鉄線東西に横断し、一日の通過本数が七百五十本にのぼり、あかずの踏切となっていることに加えて、国道四十三号線が近距離で並行して走っているため交通上著しい障害が発生しており、地域住民から本事業促進方が強く要請されております。密集市街地内の工事であり、施工上安全の確保等むずかしい点もありますが、一日も早く完成されることを期待いたします。  後者は、武庫川上流宝塚伊丹両市市街化が急速に進行し、加えて下流の尼崎西宮工場排水等によって武庫川の汚濁が激しく、また四十五年に指定された水質の環境基準を達成するためにも早急にその実施要請されていたものであります。  四十四年に基本計画決定されておりますが、排水区域宝塚伊丹尼崎西宮の四市にまたがる五千ヘクタール、処理人口九十三万人、汚水処理量が一日当たり七十六万立方メートル、総事業費千三百九十一億円、昭和六十年完成予定という大規模事業であります。  右のうち、現行五カ年計画に該当する部分については鋭意事業が進められておりますが、現在処理場を含め順調に進められており、来年度から一部が稼動するとのことにて、その成果期待されます。県では、本年から補助率が引き上げられたが、なおかなりの財政負担は避けられず、また上流市街化の進行にあわせて事業を繰り上げて実施する必要があるので、国において現行五カ年計画を繰り上げ、大幅な改定に踏み切り、本事業促進のため必要な措置を講じていただきたいとのことでありました。なお、補助対象率の拡大、起債充当率引き上げ等についても要望がありました。  第二は、芦屋浜海浜住宅都市建設事業についてであります。  本事業は、兵庫県が大阪湾広域港湾計画に基づく阪神整備の一環として実施している芦屋地先埋め立て地海浜住宅都市建設するものであります。その概要は、埋め立て地百二十五万ヘクタールに住宅六千戸、人口二万人の緑地文化環境に恵まれた国際文化都市芦屋にふさわしい海浜都市建設するもので、現在第一工区の埋め立てを完了し、第二工区を埋め立て中でありました。本事業が、中央部予定している高層住宅ゾーン住宅群建設について、パイロットプロジェクトを公募する工業化工法による芦屋浜高層住宅プロジェクト提案競技という方式を導入し、今後の住宅生産工業化近代化モデル事業となっており、すでにその入選作決定し、その成果期待されております。なお、建設される住宅の大半を分譲住宅予定している点について、その譲渡価額都市勤労者資金入手限度を越えたものにならないかとの疑問が出されており、なお一そう工業生産化による徹底したコストダウンの努力をいたすよう要望します。  第三は、中国縦貫自動車道についてであります。  本自動車道は、大阪吹田市と山口県下関市を結ぶ国土開発幹線自動車道でありますが、すでに兵庫県下で吹田宝塚間及び西宮北福崎間が完成供与中であり、現在、岡山落合までの第一次施行命令区間で全面的に建設工事実施されております。宝塚落合間を全線にわたって調査いたしましたが、そのうちおもな二、三点について報告いたします。  まず、青葉台地区騒音等理由とした地域住民反対で約百二十メートルの区間工事が中断されているため供与区間が分断されている点でありますが、問題の早期解決のため道路公団から防音壁をひさし型に取りつけ、騒音が五十ホンをこえないようにするとの新提案を行ない、兵庫県、西宮市を加えて地域住民代表との間で最終的な詰めを行なっており、来春の落合までの全線開通に間に合わせる目途がついた旨の報告がありました。  いずれにしても本地区工事再開吹田落合間の全線開通のかぎとなっており、一日も早い解決が望まれます。大阪建設局が担当しております福崎以西県境杉坂トンネルに至る区間は比較的工事が順調に進行しており、用地交渉のおくれている一部区間を除いて舗装、仕上げ等最終工程に入っておりました。山崎地区では山崎断層といわれる古い断層帯があり、工事施工にあたって非常に苦労しているとのことでありました。道路のり面でこの断層帯の悪い土質による崩壊を防止する補強工事実施されておりました。多少経費増加しても開通後の防災面を考慮すれば完全な補強工事実施しておく必要があると思われます。  兵庫当局県内陸部を貫通する本自動車道にかける期待は大きく、福崎インターチェンジでは県南・県北地域を結び、将来はさらに延長されて日本海と太平洋を結ぶ予定播但連絡有料道路と連絡させており、中国縦貫道中心県内二時間交通実現のため主要幹線道路網整備を積極的に進めているとのことでありました。また、中国縦貫道内陸部田園地帯を貫通していることから、この道路を緑の回廊とすべく約二億円の県費を支出し沿線の植樹運動を展開しておりました。その成果期待されます。  岡山県下の建設工事は、岡山県をはじめ地元市町村の積極的な協力を得て、一部地区工事関係公害問題が発生したが、すでに円満解決の見通しがつき、計画どおり順調に進行しており、目下最終工程に入っておりました。  岡山当局は本年末までに落合までの第一次施行命令区間全線開通することを期待しており、兵庫県下の工事のおくれのためこれが不可能となった場合でも、工事が最も進んでいる美作−落合間については本年十二月中に部分供与を開始するよう強く要請しておりました。公団側でも、供与開始後の管理経費上の問題もあるが、県、地元市町村熱意にこたえる意味からも部分開通に踏み切る予定であるとのことでありました。なお、津山落合間は当初暫定車線予定しておりましたが、地元要望をいれ、四車線施工することが認められ非常に喜んでいるとのことでありました。落合以西についても全線車線工事施工すべきと考えます。  岡山当局から、落合までの全線開通を控えて、これに接続する中国横断自動車道岡山米子線のうち、すでに整備計画決定されている米子川上間に引き続いて、川上落合間及び落合岡山間の整備計画を早急に決定してほしい旨の要請がありました。中国縦貫道を経由して山陰地方と短距離で結ぶためにも川上落合間の整備計画が一日も早く決定されるべきと考えます。なお、中国縦貫道関連して、その開通後、津山岡山間を結ぶ国道五十三号線の交通量の著しい増加が予測されており、国道五十三号線の第二次改築、特に現在でも交通渋滞の激しい津山岡山市街地に入る地区バイパスが強く要望されておりました。両地区バイパス計画岡山国道工事事務所目下具体案検討中であるとのことでありましたが、その実現方を強く要望いたします。  第四は、国道二号線岡山バイパス建設工事についてであります。  主要幹線である国道二号線の交通量の伸びは著しく、各所で交通の停滞を来たしておりますが、特に岡山倉敷両市市街地での混雑は激しく、交通上著しい障害となっておりました。これを解決するため、二号線の第二次改築事業として、本バイパス計画されたのであります。総延長三十八・三キロメートルで、四十四年から用地買収に入り、現在倉敷市内で一部用地買収が終わっていない部分があるものの工事はかなり進行しており、現在暫定車線で総延長の七割程度が供与されておりましたが、暫定車線供与ということで交通規制等に問題があり、予想される交通量増加にあわせて一日も早く全区間の四車線化に着手すべきと考えます。本バイパス全線開通すれば、東は現在県営有料道路として建設が進められている東備西播開発有料道路に接続し、また、西は直轄工事が進められている玉島、笠岡両バイパスにつながり、その効果はきわめて大であります。  第五は、本州四国連絡橋児島坂出ルートについてであります。  本州四国連絡橋は、各ルートについて昨年秋その起工式が総需要抑制政策理由延長されて以来、本格的な工事着手に入ることができず、陸上部分路線決定橋梁部分構造細分決定等作業と、海上作業を開始するための各種実験が行なわれているにすぎませんが、われわれは瀬戸大橋架橋予定地海上から視察いたしました。すでに陸上部路線予定地では一部地区公害問題を理由とする地域住民反対の動きも出始めており、さらに海上部では漁業補償等解決されなければならなく、本格的な工事着手前になすべきことが多い。本州四国連絡橋公団では岡山に第二建設局を設置し、慎重に各種準備作業を進めているとのことでありました。  われわれの現地滞在中に、長野岡山県知事前川香川県知事が会談し、本四架橋の促進について意見の一致を見たとのことでありましたが、政府においてもできるだけ早期着工に踏み切るべきではないかと考えます。  第六は、勝央中核工業団地建設事業についてであります。  津山市を中心とする岡山中北部内陸地帯過疎化に悩んでおり、中国縦貫道開通を機にこの地域振興をはかるべく、その中核となるべき事業として勝央町に中核工業団地建設することとなり、四十八年九月、県と勝央当局から当時の工業配置公団中核工業団地造成要請し、本事業実施がきまったのであります。計画面積百ヘクタールと比較的小規模工業団地計画でありますが、中国縦貫道沿い丘陵地帯である地の利を生かして緑の多い工場公園をめざし、目下そのマスタープランを検討中であるとのことでありました。すでに用地は県によりほとんど買収が終わっており、年内にも基本計画決定し、早急に工事に着手したいとのことでありました。  本工業団地完成すれば、関連企業を含め約五千人の雇用効果が発生し、現在人口一万余りの勝央町に新たに約六千人の人口増加をもたらすであろうと予測されております。そこで勝央町は、この工業団地で働くことになる人々のための住宅団地造成も同公団実施することを期待しており、その実現方要望していました。検討の上善処せられたい。  第七は、津山市とその周辺地域開発状況についてであります。  岡山北地域拠点都市である津山市は、古くからの城下町で、山陽、山陰を結ぶ交通の要所として栄えたところでありますが、中国縦貫道建設関連して内陸型工業中心とする地方中核都市候補地にあげられているので、その開発実情調査いたしました。  津山市は、現在都市計画事業として東西南北に走る幹線街路建設をはじめ、大規模区画整理事業実施しており、また、院庄インターチェンジに隣接してすでに工業団地造成を終えており、急速に近代都市への衣がえが行なわれておりました。このような状況を反映して、県北の各市町村がいずれも過疎化に悩んでいる中で、津山市だけは微増ながら人口増加の傾向にあるとのことでありました。中国縦貫道開発効果に寄せる地元期待は大きく、広域市町村圏の指定を行ない、道路網整備を軸に地域振興をはかるべく、目下県で開通後の総合開発計画を作成中であるとのことでありました。  しかし、内陸工業都市として必要な工業用水都市用水確保目途がついていないことが問題点として指摘されなければなりません。これは吉井川上流奥津地区建設予定されているダム地域住民反対でここ数年にわたって着工できない状況にあるためであります。津山市長から本ダム早期着工と国の水行政の一元化が強く要請されました。国土庁の発足を機会に強力に水行政総合調整実施されるよう要望いたします。  現在、津山周辺における民間企業による大規模開発計画は四十三件、四千四百五十九ヘクタールにのぼっており、また造成中のゴルフ場が十件以上にのぼっているとのことでありました。県では無秩序な開発による自然破壊生活環境の悪化を防止するため、昨年、県土保全条例を制定し、一ヘクタール以上の大規模開発はすべて知事許可制とし、極力その抑制につとめ、今後ゴルフ場等造成は原則として認めない方針であるとのことでありました。県土保全条例国土利用計画法との運用上の調整等が残されておりますが、適正な土地利用の確立が望まれます。  第八は、建設業が当面している問題についてであります。  総需要抑制政策の影響を受けて深刻な状態にある建設業界、特に地方中小建設業実情について、兵庫岡山両県の建設業協会代表から陳情を受け、特段の配慮を要望されました。  次に、そのおもな事項を掲げますと、  一、総需要抑制策を一部緩和し、公共工事の適正な発注量確保するとともに、国民生活に直接関連する住宅下水道等事業を選別して発注すること。  二、公共工事に依存する率が高い地方中小建設業者手持ち工事が減少し、資金繰りに困窮して、いるので、政府において緊急融資措置を講ずるとともに、地方公共団体工事前払い金の率を国と同率まで引き上げるため必要な措置を講ずること。  三、その他、積算単価改善スライド条項適用基準改善とその方式簡易化公共建築工事における諸経費率適正化、必要な安全経費確保等について所要の措置を講ずること。等でありますが、政府において善処されることを期持し、報告を終わります。
  4. 小野明

    委員長小野明君) 次に、北海道班田代富士男君。
  5. 田代富士男

    田代富士男君 第三班の御報告を申し上げます。  大森理事春日委員及び私田代は、去る十月八日から四日間にわたり、北海道における建設事業実情調査してまいりました。  北海道開発は、明治二年以来、独自の体制の中で計画的に進められてきましたが、特に戦後は国民経済復興発展をになう施策として位置づけられ、百年の歴史とともに今日に至っているのであります。  戦前の拓殖計画は内務省の解体で中断され、戦後は北海道開発法により北海道開発庁発足昭和、一十七年以降は北海道総合開発計画に基づいて、資源開発とともに社会基盤生活基盤整備が進められてきたのであります。しかし、高度成長のもとで策定された現行の第三期北海道総合開発計画(以下第三期計画)は、その後の社会情勢の変化の中で、物価土地環境等の問題に直面しており、現に北海道知事諮問機関である北海道総合開発委員会は、第三期計画の総点検を中間報告しているのであります。開発世紀目を迎え、新たな課題に対処しようとしている北海道は、まさにわが国の今後の発展にとって大きな意義を持つものであります。従来の蓄積を基礎としながらも、人間優先基本に据えた北海道づくりの新施策が着実に推進されることを期待するものであります。  かかる視点から、建設事業実情問題点に触れ、あわせて地元要望について述べることといたします。  第一は、大規模工業基地開発についてであります。  第三期計画の主柱をなす苫小牧東部工業基地開発は、国土利用の再編成とわ郷国経済の伸展に寄与する国家的プロジェクトとして昭和四十六年に開発基本計画が策定されたものであります。  開発計画概要は、苫小牧東部勇払原野約一万ヘクタールを工業基地として開発し、臨海性工業コンビナート関連工業を配置するとともに、周辺地域をも含めた一大工業都市圏建設をはかろうとするものであります。施設中心となる港湾は二十五万トン級の船舶の出入りを可能とするほか、港外に超大型タンカー用のシーバースを建設する計画であり、昭和六十年代の最終規模における工業生産額は鉄鋼、石油化学非鉄金属石油精製中心に三兆三千億円と推定されているのであります。  工業基地関連する施設整備としては、一つ、将来の計画区域人口が約七十五万人と想定されるため、三十万人規模の新都市建設するほか、数万人規模の新住宅地三カ所を開発すること、二つ、工業地区住宅地区及び現在の苫小牧工業地帯等との連絡道路を配置するとともに、北海道縦貫自動車道一般国道との機能的な連結をはかること。三つ、工業用水上水道用水新規需要は一日約二百万トンと見込まれるため、広域的水利用により沙流川、石狩川等の水系から一日二百万トン以上の供給を確保すること等であります。  当該地域都市計画の手続を完了し、北海道庁による用地買収も七五%と進んでおりますが、具体的な事業としては、昭和五十三年の工業生産額を四千三百億円と想定し、そのための企業立地動向調査基盤造成調査を進めている段階であります。北海道開発庁北海道庁は、公害のない工業基地をキャッチフレーズに、区域内の三〇%に及ぶ緑地帯配置等きびしい環境目標を設定し、また初の環境アセスメント手法を取り入れてはおりますが、すでに地元民の一部には、既設の工業基地公害実例に照らし、環境問題への不安、開発行政への不信を高めつつあるのが実情であります。これからの大規模開発地元民の理解と協力なしにはその実現は不可能であります。今後開発基本計画具体化にあたっては地元開発計画との調整をはかり、地元民の意思を十分に取り入れるとともに、事業実施に要する経費については地元負担を極力軽減するよう特別の措置を講ずることが必要であります。苫小牧東部開発株式会社も設立されており、国、自治体と並行して民間投資も進められるわけですが、こうした視点から公共施設先行整備に万全を期すことが環境保全要請にこたえる上で、また真の地域開発を進める上で不可欠の前提だと思うのであります。  第二には、都市関係についてであります。  北海道の各都市は、経済発展に対比して都市施設整備が相対的に立ちおくれており、生活高度化都市化が一そう進む中でそれらに対する需要が増大しているのが実情であります。北方風土のきびしい気象条件にあって、都市施設の中で特に特徴的なものは、快適な生活環境確保するための暖房施設集中系統化であります。都市過密化に伴い、各戸の暖房施設から排出されるばい煙等大気汚染は著しく、札幌市の場合を見ても全市平均の数倍に達している状態であります。いわゆる地域暖房方式は、こうした大気汚染防止に役立つのみでなく、生活環境向上熱エネルギー有効利用にも大きな利点があることは明らかであります。現在地域暖房整備は、公社、民間企業により、札幌市の既成市街地の一部、大規模住宅団地等限られた地域事業化されているにすぎないのでありますが、今後は都市計画に直結した公共的な施策として、事業費大幅融資はもちろんのこと、補助事業としての採択、さらには直轄による事業促進をはかることが必要だと痛感したのであります。  北海道の各都市に共通する都市交通の面での問題点は、市街地中央鉄道路線が縦貫しており、平面交差街路が切断されていることであります。特に札幌市では函館本線のため市街地南北に分断されており、発寒川から豊平川間約八キロの区間における十八カ所の踏切はほとんどあかずのありさまで、南北市街地の均衡ある発展のため大きな隘路となっているのであります。建設省発寒川から西八丁目間四キロについてのみ立体交差事業を認可、来年度より事業実施を目ざしているとのことでありますが、残された区間を含めて早急に事業促進をはかることが必要だと思われました。  なお、北見市では三・三キロにわたる延べ十カ所の平面交差の解消をはかるため、総額三十七億円をもって鉄道部分を単線で地下に埋設する工事実施されておりましたが、せっかくの企画でもあり、将来の輸送需要に対処するため複線方式を採用すべきではなかったかと感じたのであります。その他の各市では立体交差必要性は認めながらも事業費負担等の問題で行き詰まっているのが実情であり、強力な行政指導が待たれておりました。  北海道における公園緑地整備状況は、都市計画区域内人口一人当たり八・四平方メーターで、全国平均の三倍弱となっており、整備率において全国一を記録しているのであります。確かに各都市は緑豊かな都市づくり目標に制度を乗り越えた独自のアイデアを具体化しており、その熱意には打たれるものがありました。  旭川市では駅前の商店街から車を遮断し、ベンチ、花壇を置いた買いもの公園が誕生、美幌町ではメーンストリートを緑化、遊歩道化して生活道路に模様がえ、帯広市では市街地周辺に五百から千メートルの「帯広の森」を配置する等、これらは人間都市への実行の試みであり、今後の都市行政の方向を示唆するものでありました。こうした地方色豊かな都市づくりにあたり、建設省行財政面で思い切った指導が必要だと感じたのであります。  第三は、住宅関係についてであります。  北海道住宅事情は近年の旺盛な住宅建設によって質量とも全国平均を上回りつつありますが、生活水準向上開発進展等に伴って今後とも住宅需要は増大するものと見込まれています。数年前に完成を見た札幌郊外真駒内団地、江別市郊外大麻団地は落ち着きのある閑静な市街地として定着しており、また旭川郊外神楽岡ニュータウンは坪三ないし四万円で宅地分譲が行なわれ、一部で住宅建設が進められておりました。北海道住宅建設はきびしい気象条件に対処してさまざまな問題点に直面しておりました。公的住宅建設はすべて防寒構造とすることが法定化されておりますが、最近では民間住宅においてもこの構造が一般化されているとのことであります。したがって、物価高騰防寒構造部分工事費にも大きく影響しており、本州都府県に比較して住宅建設費が著しく割り高となっているのであります。また、建設工期は積雪のため四月中旬から十一月中旬とされておりますが、公営中層住宅の場合を見ても約七カ月が必要であり、年度予算決定設計過程を経て五ないし六月に発注しても工期降雪期にかかることとなり、工事費割り高なものとならざるを得ないのであります。さらに労務費につきましても、ほとんどの建設工事工事適期に集中するため労務者の稼動が偏在化し、労務者の不安定、労務費の増高を助長しているのであります。  こうした事情が物価高騰と相まって、特に公営住宅建設にあたって標準建設費を大幅に上回ることとなり、いわゆる超過負担による自治体財政の圧迫が北海道の場合特に顕著となっているのであります。住宅供給の中心となる公営住宅の戸数の確保と質の向上をはかるため、北海道の特殊事情を勘案し、実勢に見合う標準建設費を早急に設定することが緊要であると痛感したのであります。  第四は、道路関係についてであります。  北海道道路は、明治以来基幹的な路線から重点的に建設が進められ、地域開発に大きく貢献してきましたが、いまなお道路密度、整備率ともに全国平均より低位にあり、さらに積雪寒冷の気象条件により冬季交通はかなりの制約を受けているのが実情であります。  国土開発幹線自動車道につきましては、昭和四十六年以降、千歳−札幌間、小樽−札幌間が供用開始をしたほか、施行命令区間は室蘭−千歳間、札幌旭川間、基本計画区間は函館−室蘭間、旭川−名寄間、千歳−名寄間、清水−釧路間、本別−北見間となっており、幹線自動車道建設が道央に集中している傾向にあり、全道の均衡ある開発のためその他の地域早期着工が必要であります。国道、道道の整備は、改良六五%、舗装五一%とおおむね順調に進んでおりますが、未開削区間の早期開通を含めた一次改築はもちろんのこと、今後の交通量の増大に対処してバイパスの新設、車道の拡幅、立体交差の設置等二次改築促進し、道路の質的向上をはかることが必要であります。特に工事中の札幌バイパスの早期完成苫小牧旭川帯広等のバイパス計画具体化が望まれておりました。総延長五万四千キロにのぼる市町村道の整備は、改良一七%、舗装四%と著しく低く、全国に比較しても立ちおくれが顕著であり、幹線中心道路行政の片りんがうかがわれました。  道路は、幹線とそれに接続する末端の道路網整備されて初めて機能を発揮するものであり、農山漁村の生産物の搬出をはじめ生産機械の移動等のための生活道路整備促進は、地元民の最も要請するところでありました。広大な市町村区域のため、市町村道の延長が極端に長く、また除雪等のため道路幅員を大きくとらざるを得ず、こうした事情が自治体の単独事業としての財源負担を困難にしており、特別な財源措置を講ずる必要があると痛感したのであります。なお、これらの措置と並行して、幹線的地方道の国道への昇格、広域営農地帯等における開発道路の指定、市町村道における冬季交通確保交通安全施設整備促進等は、地元民生活安定と地域格差の是正をはかる上から積極的に取り組むべき事項であると思われました。  第五は、河川関係についてであります。  北海道の河川状況は一級河川に十三水系、二級河川に百八十水系の指定が行なわれておりますが、二千余にのぼるといわれる河川の大部分はいまだに原始河川の状態であり、流域における土地利用の拡大に伴って、融雪、台風等による洪水の被害が増大する傾向にあります。地域社会の発展に対応して、こうした災害を未然に防止するとともに、産業の活発化、都市化の進展に伴う水需要の急増に対処して、安定した水供給をはかることは河川事業に課せられた今日的課題であります。  石狩川上流の上川町大学平地点に建設中の大雪ダムは、こうした両面の要請にこたえるもので、昭和四十三年より着工したわが国最大のロックフィルダムであり、本年度中に概成し湛水を開始するとのことでありました。堤高八十六・五メートル、堤長四百四十メートル、総貯水量六千六百万トンのこのダムは、石狩川の洪水調節をはじめ旭川周辺のかんがい用水、上水道用水、電源供給等の多目的効果を約束するものであり、現在は管理施設、補償道路等の最後の工事が進められておりました。北海道の水利用状況は現在一日千七百万トンといわれておりますが、第三期計画では、昭和五十五年にはさらに一日六百万トンの新規需要が見込まれており、こうした大規模ダムによる水資源開発がますます要請されているのであります。河川流域の開発に伴って、河川の水質汚濁も深刻な状態となっておりました。  石狩川の中流空知地区は、内陸産業基地を含む中核都市として発展期待されているところでありますが、北海道庁はこうした事情を踏まえ、初の流域下水道を計画、本年度より事業実施しておりました。事業計画概要は、処理区域八市三町、一万六百七十七ヘクタールに及び、計画人口四十九万人、計画処理水量一日四十万トン、総事業費四百十六億円でありますが、ばく大な事業に直面している自治体の財政圧迫はきわめて深刻なものがあり、事業の円滑な実施をはかる上からも補助率の引き上げ、補助対象範囲の拡大、さらには直轄施行の制度を確立する必要があると痛感されました。  なお、阿寒湖の水質汚染防止対策につきましては、本年度建設省により事業調査が行なわれましたが、当該地点が都市計画区域外の人口二千人、戸数七百戸の小温泉郷であること、また国立公園内であることなどにより、都市計画としての下水道事業決定が困難とされているのであります。しかし、観光客は増加の一途をたどりつつあり、このまま放置するならば天然記念物マリモに与える影響はもとより、阿寒の持つ自然美をも失うものと懸念されるのであります。建設省はいわゆる予算措置としての特定環境保全公共下水道事業を来年度予算で要求中でありますが、どんな手法をとるにせよ、早急に防止事業に着手することが必要であります。  第六は、需要抑制下における地元建設業の現状と対策についてであります。  北海道建設業は公共事業に依存する度合いが高いといわれておりますが、需要抑制策で公共投資が押えられたことにより、上昇傾向をたどってきた建設需要は大きく停滞し、経営は困難をきわめているのが実情であります。本年八月末までの建設業の倒産は、企業数で二百十六件、負債額で百七十七億円にのぼっており、全産業に対する割合も三五%と顕著でありますが、積雪寒冷期に向けて倒産件数、負債額ともさらに増加することが予想されているのであります。  すでに北海道庁は、建設業のこうした窮状を打開するため、適期発注と受注機会の確保、積算の適正化とスライドの実施、融資制度の拡大強化、公共工事前払い制度の採用拡大等について対策を講じているとのことですが、建設省においてもこれらの諸点について財政措置を含めての十分な配慮、指導を早急に実施する必要があると痛感したのであります。  以上が調査事項概要でありますが、最後に、北海道開発の方向について触れておきたいと思います。  冒頭に述べました第三期計画の総点検中間報告では、北海道開発について「環境が保全される範囲内での開発」という原則が提言されておりますが、これは環境破壊の開発を拒否することと同義であり、開発行政を進める上での基本姿勢だと思うのであります。従来の開発計画経済優先のワク内で組み立てられており、開発の名のもとに自然破壊、環境破壊が繰り返されてきましたが、今後は環境の保全それ自体を大きく位置づけるよう発想の転換を促すものだと思うのであります。中間報告を受けた北海道庁は、新規開発計画の策定に踏み切る意向だと伝えられておりますが、現時点における北海道開発の意義と国民的要請を十分にきわめ、豊かな北海道づくり基本路線が策定されることを祈る次第であります。  以上で報告を終わります。
  6. 小野明

    委員長小野明君) 以上で派遣委員報告は終わりました。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時一分散会