運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1974-10-24 第73回国会 参議院 決算委員会 閉会後第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年十月二十四日(木曜日)    午前十時二分開会     ―――――――――――――    委員異動  十月十四日     辞任         補欠選任      喜屋武眞榮君     野末 陳平君  十月二十二日     辞任         補欠選任      橋本  敦君     星野  力君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         前川  旦君     理 事                 鈴木 省吾君                 松岡 克由君                 小谷  守君                 田代富士男君     委 員                 岩男 頴一君                 遠藤  要君                 河本嘉久蔵君                 小林 国司君                 世耕 政隆君                 永野 嚴雄君                 温水 三郎君                 案納  勝君                 小山 一平君                 須原 昭二君                 二宮 文造君                 峯山 昭範君                 加藤  進君                 星野  力君                 田渕 哲也君                 野末 陳平君    国務大臣        厚 生 大 臣  齋藤 邦吉君    事務局側        常任委員会専門        員        佐藤 忠雄君    説明員        公正取引委員会        事務局取引部長  後藤 英輔君        大蔵政務次官   柳田桃太郎君        厚生大臣官房企        画室長      中野 徹雄君        厚生省公衆衛生        局長       佐分利輝彦君        厚生省環境衛生        局食品化学課長  宮沢  香君        厚生省環境衛生        局水道環境部長  福田  勉君        厚生省医務局長  滝沢  正君        厚生省医務局医        事課長      手塚 康夫君        厚生省薬務局長  宮嶋  剛君        厚生省社会局長  翁 久次郎君        厚生省児童家庭        局長       上村  一君        社会保険庁年金        保険部長     河野 義男君        通商産業政務次        官        楠  正俊君        通商産業省産業        政策局商政課長  原田  稔君        会計検査院事務        総局第三局長   本村 善文君    参考人        医療金融公庫総        裁        山本 正淑君        環境衛生金融公        庫理事長     坂元貞一郎君        ホリディマジッ        ク全国被害者対        策委員会会長   堺  次夫君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和四十七年度一般会計歳入歳出決算昭和四  十七年度特別会計歳入歳出決算昭和四十七年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和四十七  年度政府関係機関決算書(第七十二回国会内閣  提出) ○昭和四十七年度国有財産増減及び現在額総計算  書(第七十二回国会内閣提出) ○昭和四十七年度国有財産無償貸付状況計算書  (第七十二回国会内閣提出)     ―――――――――――――
  2. 前川旦

    委員長前川旦君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十月十四日、喜屋武眞榮君が委員辞任され、その補欠として野末陳平君が、また十月二十二日、橋本敦君が委員辞任され、その補欠として星野力君がそれぞれ選任されました。     ―――――――――――――
  3. 前川旦

    委員長前川旦君) 次に、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  昭和四十七年度決算外二件の審査中、化粧品販売に伴う諸問題に関する件について、本日ホリディマジック全国被害者対策委員会会長堺次夫君の出席を求め、その意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 前川旦

    委員長前川旦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  5. 前川旦

    委員長前川旦君) 次に、昭和四十七年度決算外二件を議題といたします。  本日は、厚生省とそれに関係する医療金融公庫及び環境衛生金融公庫の決算について審査を行ないます。  この際、おはかりいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 前川旦

    委員長前川旦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  速記をとめてください。   〔速記中止
  7. 前川旦

    委員長前川旦君) 速記起こして。  それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 小谷守

    小谷守君 サリドマイド訴訟が去る十三日和解の合意に達したわけでありますが、大臣はじめ関係者の御苦労を多とするものであります。しかし真の解決は、現在中学に在学している被害児の今後における進学問題、卒業後の社会生活をどうやっていくか、これからの対策にかかっていると思います。その対策具体化はこれからいろいろ詰めていくわけでありますが、これはあとの機会に譲ることにして、ただ何にも増して大事なことは、このような薬禍薬害が再び生じないための対策であります。それについてきょうは薬事行政姿勢についてお尋ねをしてみたいと思うんです。  サリドマイド児の発生に関して薬事行政責任が問題になった昭和四十三年五月の本院社会労働委員会の記録によりますと、当時の園田厚生大臣は、国が承認した薬によって生じた事態については製薬会社だけでなく、国にも責任があると答弁をされている。ところが事務当局は、大臣の言う責任道義的責任であって法的責任ではないと、したがって国は補償責任を負うものではないという補足説明をして国の責任をあいまいにしてきたわけであります。  そこで大臣に伺いたいのは、今回の和解に調印したことは、これを契機として薬事行政における責任のあり方、責任体制が改められたと国民は受け取っておると思いますが、そのように理解してよろしいかどうか。
  9. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 医薬品につきましてはその安全性を確保することが一番大事な問題でございまして、製造承認許可の際にそういう点を十分判断していかなければならぬ問題であることは当然でございます。政府製造承認して販売をしておる以上、政府において何らかの責任を負うということは私は当然だと思いますが、その責任の負い方についてはいろいろ問題が私はあると思うんです。責任の負い方についてはやはり相当個別に判断をしなければならぬ問題があると思います。と申しますのは、サリドマイド事件のようなことになりますと、その薬そのものずばりが問題になっておるわけであります。しかし、そのほかの医薬品につきましては、医薬品を与える方法、そういうところが一つ問題の点があるわけであります。医薬品投与方法、あるいはそれの投与を受ける患者状況、さらに医薬品品質、こういうふうに各般にわたる問題について具体的に判断をし、その政府責任が問われなければならないと考えておるものであります。したがって、責任はありますが、責任の負い方についてはいろいろなやり方がある、こういうふうに私は理解をいたしております。
  10. 小谷守

    小谷守君 新薬承認は、申請された薬品の中に申請どおりの物質が正確に一定量入っているという品質保証であって、それの有効性とか安全性についてはすべて医師自由裁量にまかされておる、こういう解釈厚生省から述べられてまいりました。薬がきくかどうか、安全かどうかは、とても個人の医師判断でやれるものではない。有効性安全性を前提として医師は処方をするだけであると思います。まして薬理作用を判定する能力を持ち合わせない一般国民判断をすることは不可能であります。薬には副作用が伴うものであることは常識でありますが、その副作用が取り返しのつかない障害を伴う、いわば薬禍薬害にまで発展することは、国が承認するのだからよもやあるまいという、国民はこういう信頼を持っておるのであります。そこで、新薬承認という国の行為、その行為は、有効性についても、安全性についても国が責任を持って保証するものだと、こう理解してよろしいかどうか。
  11. 宮嶋剛

    説明員宮嶋剛君) 新薬につきましては、先生御存じのとおり、薬事法に基づきましてその成分とか、あるいは分量とか、用法とか、効能等につきまして、その時点その時点におきます最高の科学的な水準と申しますか、そういうものから厳重な審査を加えまして決定をいたすものでございます。その段階におきまして、ただいま先生もちょっとお触れになりましたけれども薬そのものにはときに副作用もあるわけでございまして、全体として当該医薬品についてこれが当該疾病についてよくきくものかどうか、有効性の問題同時にそれが俗にいいます副作用と申しますが、安全性の問題から言って害があるのかないのかという点の両方を見まして、両方を比較考量いたしまして、若干の害はあるけれども国民の保健のためにどうしても必要であると、そういう有効性が優先しますという判断があるならば、そこで国民、公共のための有用性ということに着目しまして許可をいたすわけでございます。ですからただいま先生がおっしゃいます有効性安全性両方について保証するのかとおっしゃいますわけでございますが、実際上は審査段階におきまして、有効性についてはもちろんでございますけれども安全性につきましては、場合によりその害の生ずることもあると、だから使用上これこれしかじかの注意を要するという条件を付して認めることがあるということでございます。ただ一般的に厚生省において、薬品新薬許可をいたしますにつきまして、もちろん有効性保証はいたしますし、安全性につきましては、その内容をつぶさに、若干の害はあります場合には、害があると使用上の注意というものを添えて条件つき許可をするということを明確にして出すという意味におきまして有効性については十分な保証をやると、安全性についてはその状況をつまびらかにするということでその時点その時点における科学的な水準に応じまして最大限慎重な判断をして、そういう決定をするということでございます。
  12. 小谷守

    小谷守君 安全性保証につとめても医療の過程で薬害が起きることを全く回避することはむずかしいと言われるわけでありますけれども、そこで不幸にして生じた薬害が個々の医師の経験だけにとどめられてそのまま個人的な知識として埋没してしまうのでは、国民患者はより大きな不幸をつくることになる。ですから害作用に関する情報が完全に集められて早く医療機関に周知させる機構が必要でございます。厚生省は四十二年三月から副作用モニター制度を発足させてこの要請にこたえようとされておるわけでありますけれども、ところが現在八万の医療機関があるのに、指定されたモニター医療機関は二百六十二しかない。そのために年に平均四百件ぐらいの報告しか吸い上げられていないという、これでは日常診療の多くがいわゆる開業医のもとで行なわれておるというのに、そこでキャッチされた害作用は依然として埋没してしまうことになっておるのではなかろうか。副作用情報は全医療機関から報告を求めるようにすることがこの際ぜひ必要ではなかろうか。そうして報告された副作用製薬メーカーから、あるいは厚生省から医療機関にダイレクトで知らせていく方法をとるように万全を期すべきではないか。また薬事法には一たん承認した薬については、その取り消し回収を命ずる法的根拠が不明確である、改正案を用意されるおつもりはないか。そういう点について局長の御見解を承りたいと思います。
  13. 宮嶋剛

    説明員宮嶋剛君) 医療機関からする医薬品副作用に関するモニター制度につきましては、ただいま先生がおっしゃいましたように、全国国立病院、それから大学付属病院、あるいはまた県立病院といったところ約二百六十カ所でございますが、それからモニタリングをやっているわけでございます。ただいま先生指摘のように、数をもっとふやせ、モニター機関をもっとふやせというお話でございますが、そもそもこの制度が始まりました四十二年におきましては、わずかにその数は当時百六十カ所でございましたけれども、その後そういう要望もございまして二百六十カ所にふやした経緯もございます。副作用のこのモニターの仕事をお願いするのにつきましても、医療機関につきましてもなかなかたいへんな作業でございますし、これを全面的に及ぼすことはなかなか困難かと思いますけれども、今後ともモニターの量をふやす、あるいはまた制度を高めるという意味におきまして、その増加につきましてはなお今後検討さしていただきたいと思います。  なお、御参考までに申し上げれば、実は本四十九年度におきまして、ただいまこれまた先生が御指摘になった点でございますけれども、そういう得られた情報が各医療機関に伝えられていないんじゃないか、埋もれているのではないかという御指摘もございまして、本年度より全国医師に対しまして、直接ダイレクトメールでこれまで得られました副作用情報の概況につきましてこれを御案内申し上げるということを本年から始めましたし、また、これはドクターレターと、こう申しておりますけれども、このレターをいただかれたドクターのほうから当該得られた、わがほうから出しました情報に関してこれまで当該医療機関におきまして得られたいろんなデータ、あるいはまた情報があるならば折り返しそれもお伝え願いたいということではがきを同封するというふうなこともことし始めておりますけれども、今後ともさらにいろいろまた検討もいたしまして、そういう面での何と申しますか、情報量増加あるいはその制度の向上ということをはかりたいと思っております。  なお、先生の後段の御意見は、現在薬事法の中にはそういう問題があった医薬品が発見された場合において、その製造許可を取り消すとか、あるいはまた現物を回収するとか、そういう根拠規定がないのではないか、これは問題であろうという御指摘でございますけれども、私ども従来から薬事法の条々の解釈といたしまして、たとえば新薬許可というものがあれば、これは厳密に申せば行政法上の警察許可と申しまして特別の条件のもとに許すわけでございますから、そういう中身を満たさない状態があれば、直ちにその許可行為撤回する、行政法上の撤回と申しますが、そういうことはもう当然できるということで、従来、言いますならばこういう行政法規における一つ条理解釈の問題として当然できるんだからということで当該規定が入っておりません。しかし、いま申しますようなそういう解釈でございますので、当然許可取り消しなり、あるいは撤回ということができるわけでございますけれども、ただいま先生申されるように、法文上それを明確にすることが望ましいという気持ちもまたわかるわけでございます。その点につきましては、今後とも私ども検討の時間を与えていただきたいと思います。
  14. 小谷守

    小谷守君 ドクターレターは全部の開業医にも届いておりますか。
  15. 宮嶋剛

    説明員宮嶋剛君) 実はこれは本年度予算につきまして、現在、中で各医療機関に出しますその中身の照会の内容のレベルの問題あるいはまた、具体的に先ほど申しましたドクターのほうからのはがきによる情報連絡、これはアンケートと申しておりますけれども、そのアンケート分にかかるその記載の内容等を吟味しておりまして、ただいま医療機関に出すについて準備を進めておるという段階でございます。御参考まで申し上げれば、一応私どもといたしましては、全国病院及び診療所、それに保険薬局と、これにつきましてはすべて出したいと、かように存じております。
  16. 小谷守

    小谷守君 本年度予算は四月にきまっておりますね。六カ月も準備にかかっておるなんということは非常に、そういうスローモーションはいけないと思う。しかしこれを早めて十分な成果があがるようにひとつ早急に御努力願わなきゃいかぬと思います。なお、現行法でも解釈上、承認した薬についてその取り消し回収を命ずることができるんだということでありますが、これは大臣一つお伺いしたいんですが、私はやっぱりサリドマイド事件一つ契機にして薬事行政姿勢をもっときびしく、確認書にもありますようにこれを契機としてえりを正していただかなけりゃならぬと、そういう意味からも明確な法改正はぜひ必要であると、こういうふうに思いますが、大臣いかがですか。
  17. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) いま局長から御答弁申し上げましたように、現行法解釈として、承認撤回とか回収とか、それはもう当然だと、こういうことができておるということを私も承知しておりますが、しかし、やはり安全性の確保の問題とかいろんなふうな問題がありますし、いまお述べになりましたように、こういうサリドマイド事件というものを契機として安全性の問題について、もう少し厚生省は真剣に取り組んだ姿を示す必要というふうなことから考えてみまして、あるいは必要でないかなあと私自身もそう個人的には考えておりますので、十分ひとつ検討さしていただきたい、かように考えます。
  18. 小谷守

    小谷守君 サリドマイド事件和解に到達するには、被害児が出生してから実に十五年を経過しておる。また、訴訟が提起されてから十一年を要しておる。大日本製薬が弁護団に支払う費用は二億三千万円だという。こうした長年月、多額の費用を犠牲にしなければ解決できなかったという点に私どもは言いようのないいら立ちを感じます。厚生省では研究会を設置して薬害補償制度検討してこられたようでありますが、拠出金をめぐる業界拒否反応にあって暗礁に乗り上げたのではないかと、こういううわさを耳にいたしております。これはどうなっておりますか。局長からひとつ。
  19. 宮嶋剛

    説明員宮嶋剛君) ただいま先生指摘副作用被害者救済制度に関しましては、昨年来研究会を設けまして、専門家の手をわずらわしていろいろ御論議をいただき、私ども研究に参加しながら勉強をいたしております。ただ、ただいま先生がおっしゃいますように、業界のほうで費用負担をめぐってそこにいざこざがあって難渋をしているということはまだございません。そういう段階でございません。そこでは法律専門家、あるいはまた行政専門家、あるいはまた薬事法に関する専門家等が集まられまして、言いますならば、これは世界にも例がない制度でございますので、基本から始まりましていろんな論議があるわけでございます。ここで、救済をする被害の範囲というのをどう考えていくのかということから始まりまして、だんだんその被害中身によりまして、また関連して負担の問題にもなってくる。だれが負担するのか、どう負担するのか、あるいはまたこの実施部門についての機構をどうするかとか、運用をどうするかとかいろんな問題がございます。ただいままでのところ、全体としていろんな意見、これはなかなかむずかしい問題でございますので、いろんな御意見がございますが、一応全体的にいろんな角度からいろんな意見を出していただいて、それについてすべての問題点もさらけ出してみた、そこら付近から整理を始めようというので、現在その整理に着手をしたというふうな段階でございます。言いますならば、全く外部的ないろんな声は別として、そこに専門家が集まられて、全く理論的にあるべき姿をひとつつくって見ようという御論議をなさっておられるわけでございますので、ただいま先生が御指摘ございましたように、関係メーカー側におきましてすでにもう費用負担の問題で、もめ始めたというふうなことではございません。まだそういう段階まで至っておりません。そういう状況でございます。
  20. 小谷守

    小谷守君 このサリドマイド事件に関連してでありますが、現在国が医療事故補償する唯一の制度として、四十五年七月三十一日に閣議了解で設けられた予防接種事故に対する措置があります。そこでは予防接種による後遺症が一級、二級、三級に分類されて、それぞれ十八歳未満の場合一級が四百九十万円、二級が三百六十万円、三級二百四十万円が一時金として補償されることになっております。今回のサリドマイド後遺症については同じく三段階に分けられておりますが、A級は四千万円、B級は三千三百万円、C級は二千八百万円の補償がきめられておる。十倍近い差があるように思います。  予防接種は、申し上げるまでもなく、法律によって受けることを強制されておるものであることを考えますと、補償必要性はより大きいと思われるのにこれではあまりにも開きがあり過ぎるのではなかろうか。現在もたくさんの乳幼児が予防接種を受けつつありますが、確率から申しますと毎年かなりの事故者が今後も予想される。そのまま交通事故補償と同じ考え方に立った従来の措置を放置することは許されないと思う。再検討の御用意があるかどうか、これをお伺いしたいと思います。
  21. 佐分利輝彦

    説明員佐分利輝彦君) この問題につきましては、ただいま伝染病予病調査会制度改善特別部会において検討をしていただいております。なお、後遺症一時金につきましては、四十八年度から毎年労働省の毎月勤労統計賃金指数に基づいてスライドをいたしておりますし、また四十八年度からは、学齢に達しました児童障害等級一級のものについては、毎月一万二千円の後遺症特別給付金を差し上げておる次第でございます。
  22. 小谷守

    小谷守君 大臣、どうお考えになりますか。開きが大き過ぎると思うんです。いま局長が言われたような、ぼつぼつ改善考えようということでありますが、それが私は悪いとは申しませんけれども、強制的にこれやっておるんですよ。大臣の率直なお考えをひとつ伺いたいと思います。
  23. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) この予防接種事故に対する補償と申しますか、これは一つ後遺症等に対する救済的な考え方で、当時閣議決定によって行なってまいったわけでございます。今日まで、いま局長が述べましたように多少賃金物価等の上昇に応じたスライド的な考え方増額はしておりますが、サリドマイドとは多少違う点はあると思いますが、いまのような金額でいいかどうか私も実は考えなければならぬ問題であると考えております。したがってこの救済措置については、まあ損害賠償という意味ではありませんけれども、いまの額で適当であるかどうか私はやっぱり考えなくちゃならぬ問題だと思っております。したがって、明年度予算編成に際してそういうふうなことを頭に描いて増額方要求もしておりますが、一応要求はしているんですが、あの要求の額だけでいいのかどうか多少私も疑問がありますので、予算編成時までに十分検討をいたしまして増額のために努力をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  24. 小谷守

    小谷守君 これはひとつぜひ御努力願いたいと思います。  時間ですからこれで……。
  25. 小山一平

    小山一平君 昨年は石油危機が発端となりまして、きびしい冬の季節において日用生活物資の買い占めとか、売り惜しみとか、便乗値上げとか、そういうものによって狂乱物価と言われる物価の暴騰を招きました。そのために国民生活は深刻な不安と混乱に陥ったのでございますが、特に生活保護世帯、年金生活者、社会福祉施設等々におられる弱い立場の人々が最も大きな打撃を受けたのでございます。ことしはまた総需要抑制によりまして次第に不況現象が深刻化しておりますけれども、その中にあってもなお物価の上昇が続いておりまして、ことしもまた社会不安が増大をいたしております。去年の冬には養護老人ホームあるいは心身障害者施設その他の社会福祉施設におきましては、激動する事態に国の施策が対応することができなかったために、暖房とか入浴は制限のやむなきに至り、食事も質を落とすという事態になりました。ことしもまた間もなく寒い冬を迎えるわけでございますが、去年のようなことがことしも繰り返されはしないかという心配がございます。ことし、今日段階におきまして、こういう点についてどういう措置が講じられておりますか。そのことについてお伺いをいたします。
  26. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 私ども昨年来の物価状況というものを非常に憂えておりまして、これに即応した低所得者に対する援護ということについてはできるだけの努力をいたしてまいったつもりでございます。すなわち、昨年においても、昨年の十月にはすでに扶助基準を――措置と申しますが、この措置費の引き上げを行ない、年末においても一時金の増額を行ない、さらに今年の三月におきましては一月、二月、三月の物価動向を勘案いたしまして一時金の増額を行ない、それからさらに本年の四月においては前年度に比較して二〇%の措置費の増額、さらに六月からはその二〇%にさらに六%の上乗せをし、さらにこの十月から米価の関係がありましたので三%の上乗せをすると、こういうふうに物価の動向に即応しながら扶助基準並びに養護老人ホームその他の措置費の増額をはかってきておるわけでございます。そこで、一応私どもは最近における物価の動向においてはこの程度でごしんぼういただけないだろうかなあと、こう考えておるわけでございます。私はやっぱり今後とも物価動向に即応した臨機応変の措置は講じていきたい、こういうふうに考えておるものでございます。その措置費というのは、すでに御承知のように、飲食物費あるいは燃料費、全部それも含んでおるわけでございまして、したがって昨年からことしにかけまして、措置費は数回実は引き上げ、引き上げてきておるわけでございます。常にそれは物価の動向をにらんでやっておる、こういう姿でございまして、今後ともそういう方向、方針で努力をいたしたいと思います。さらに年末におきましても、最近の十月、十一月、十二月、その辺の動向を見ながら、それから油の関係がどうなるか、そういうことも見ながら臨機応変の措置を講じてまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  27. 小山一平

    小山一平君 御答弁によりますと、ことしはきめこまかな措置をとってきたので昨年のような不幸な事態になることはないと、こういうふうに了解してよろしゅうございますか。そしてまた、そういう危険が発生をしたときには臨機応変にそのつど措置をすると、こういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  28. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 私どもは、いま申し述べましたように、まあまあこれでしんぼういただけるんではないかといったふうな程度にまでは引き上げてまいってきておりますし、今後とも、特にこれから冬になりますから、私は一番心配しているのは灯油なんです、実は。灯油がどういうふうになっていくのか、これは実は非常に心配しております。そういうふうなことで今後とも臨機応変な措置を講じてまいりたい、こう考えております。
  29. 小山一平

    小山一平君 ただいまの時点で養護老人ホームあるいは特養、心身障害者施設などですね。実際的な生活措置費は金額でどのぐらいになっておりますか。
  30. 翁久次郎

    説明員(翁久次郎君) 軽費老人ホームの例で申し上げますと、現在事業費にいたしまして一人当たり月一万七千五百円、それから事務費にいたしまして二万三千七百円、総計四万一千二百円、十月一日現在でかかっておるわけでございます。なお、これの御本人の負担額につきましては、現在一万八千九百円ということで軽費老人ホームについては行なわれておるわけでございます。  また、養護老人ホームについて申し上げますと、四十九年の現時点におきまして総計で七万九千三百円、月でございます。これにつきましては、お入りになる老人の実態に即応いたしまして徴収はいたしておりません。  なお、資料がただいま手元にございませんので正確な数字は申し上げにくうございますけれども、特別養護老人ホームにつきましては、さらにこの上に寮母の増、あるいは特別な御老人の実態に即した経費の上乗せがある、かように御了承いただきたいと思います。
  31. 小山一平

    小山一平君 生活保護費の場合ですね、たとえば一人暮らし、おおむね老人でございますが、老人における一人暮らしの生活保護費は幾らになっておりますか。
  32. 翁久次郎

    説明員(翁久次郎君) 生活保護につきましては現在級地が四つに分かれておりますので級地別に数字が異なりますけれども、一級地で六十五歳以上の御老人の場合、大体月額にいたしまして二万二千円程度と承知しております。
  33. 小山一平

    小山一平君 これらの措置費の中で食費をどのぐらいに見込んでおりますか。
  34. 翁久次郎

    説明員(翁久次郎君) 食費につきましては、大体一万四千四、五百円とかように承知いたしております。
  35. 小山一平

    小山一平君 わかりました。そういたしますと、百の食費は大体――そんなになっていますが。
  36. 翁久次郎

    説明員(翁久次郎君) ただいま私御答弁申し上げましたのは、食費並びに生活に直接かかる費用でございまして、生活保護上では一類基準と申しておるものでございます。その中で食費ただいま正確な資料を持っておりませんので、幾らかという正確な数字については後ほど恐縮でございますけれどもお知らせ申し上げたいと思います。  なお、先ほどあわてて参りましたために若干資料の読み違えをいたしまして、私が申し上げました七万九千三百円は特別養護老人ホームの一カ月当たりの経費でございます。おわびいたしまして訂正いたします。
  37. 小山一平

    小山一平君 私の調査の範囲では、それぞれの施設の内容によって違いますけれども、おおむね一日の食費が三百六十円ぐらいから四百円ぐらいの間で実施されておるというふうに出ておりますが、大体そんな見当でよろしゅうございますか。
  38. 翁久次郎

    説明員(翁久次郎君) 先生の御指摘、大体そのとおりだと思います。
  39. 小山一平

    小山一平君 国が建設をして社団法人厚生団に委託をしている厚生年金老人ホームというのがございますが、この運営についてはどのような指導監督をされておりますか。
  40. 河野義男

    説明員(河野義男君) 厚生年金の老人ホームにつきましては、厚生年金の受給者を主として対象といたしまして、その福祉事業として国が老人ホームを整備いたしまして、その運営につきましては財団法人厚生団に委託しておるわけでございます。で、この有料老人ホームにつきましては、独立採算のたてまえをとっておりまして、入居者にかかるいろいろな経費につきましては、必要な入居料を徴収して経営をいたしておるわけでございます。
  41. 小山一平

    小山一平君 その厚生年金老人ホームの食費が幾らであるか御承知ですか。
  42. 河野義男

    説明員(河野義男君) ただいま申しましたように、厚生団にその経営を委託しておりまして、その食費その他いろいろなサービスに要する費用の詳細なデータはいま手元にございませんが、そのかかる費用につきましては、独立採算というたてまえから入居者に費用負担していただいておるわけでございます。最近の状況物価の上昇あるいは人件費の高騰等によりまして、非常に経営は苦しくなっておりまして、最大限の経営の努力をいたしておりますが、相当な赤字が見込まれると、こういうことでございます。
  43. 小山一平

    小山一平君 それじゃ私のほうから教えてあげます。一日の食費が現在二百七十円ですよ、二百七十円。養護老人ホームにおいてもあるいは生活保護の場合においても少なくとも三百六十円あるいは四百円の食費によってまかなわれているのに、この老人ホームはわずか二百七十円である。それを厚生省が委託をしてあるからそういう内容については知らないということでは無責任な気がしますが、いかがですか。
  44. 河野義男

    説明員(河野義男君) 入居者の処遇につきましては、食費もその大きい要素でございますし、入居者のコンセンサスを得て料金について御納得をいただいておるわけでございます。全体について申し上げますと、最近老人ホームが二十五カ所ございますが、それにつきましては総トータル経費-が三億三千万かかっておりますが、これにつきまして、相当最近の食事その他に対する経費が増高いたしまして、厚生団の全体の収益事業の中から約六千万補てんしていると、こういう状況でございまして、入居者の食事その他の処遇について費用負担はできるだけ押えまして充実していきたいと、こういうことで運営されているというふうに承知しております。
  45. 小山一平

    小山一平君 それはそれといたしまして、現在このホームにおいて一日の食事代が二百七十円である、この現実をどう思いますか。
  46. 河野義男

    説明員(河野義男君) そのいま一日の食事の材料費が二百七十円であるという御指摘でございますが、その点につきまして、現在私ちょっと資料を持ち合わしておりませんが、食事の内容その他の処遇につきましては、先ほど申しましたように、皆さんの御希望、御要望も十分加味いたしまして、しかもできるだけこれは有料老人ホームでございますので、経費の負担も押えていく、こういう運用をしておるわけでございます。
  47. 小山一平

    小山一平君 現実に現在二百七十円でまかなわれている。一体この二百七十円という食事費がいまの時代にどうであるか、こういう見解を私はお聞きをいたしておるわけです。
  48. 河野義男

    説明員(河野義男君) 実はこの十一月から物価の上昇あるいは人件費が高騰してまいりましたので、入居料につきましても改定をお願いしておるわけでございます。その中で改定額は三千円でございますが、そのうち、給食材料費につきまして一日約三十円の増額をお願いしておりまして、そういうことによりまして給食の内容も現在の水準を維持してまいりたい、こういう措置をとっておるわけでございます。
  49. 小山一平

    小山一平君 私の申し上げているのは、養護老人ホームであろうが、身障者の福祉施設であろうが、生活保護の場合であろうが、現在三百六十円から四百円の食費でまかなわれている。しかし、これとても四百円でいま二千カロリーを確保することはこれは困難です。そういう中にあって二百七十円という食費でまかなわれているこの厚生年金老人ホームが、一体二百七十円でいいのか悪いのか、それが人間として遇する措置であるかどうかということについての見解を求めているわけです。
  50. 河野義男

    説明員(河野義男君) 食事についての処遇の問題でございますが、これはその入居しておられる皆さん方の嗜好とか、あるいはその質、栄養士も置いて栄養的な観点からの管理もしておりまして、常に入居している皆さん方の御希望、要望なども念頭に置きまして、しかも栄養士という専門職の人も置きまして管理いたしておるわけでございます。で、最近の物価の上昇等に見合いまして給食材料も上げる必要があるということで今回その処置をいたしまして、これにつきまして入居者について十分説明いたしまして、今後の給食内容改善につきまして処置をいたしてまいっておるわけでございます。今後もそういった運営によりまして食事についての処遇をはかってまいりたい、かように考えております。
  51. 小山一平

    小山一平君 私の言いたいのは、今日二百七十円の食費というものはまさに人権を無視した金額である、これではとうてい最低の生活も保持することのできない数字ではないか、こういうことを申し上げているわけです。二百七十円で、今度三千円値上げができれば三十円増して三百円にする、そんなことで生活保護の最低基準にも及ばないような現実をどう思いますか。
  52. 河野義男

    説明員(河野義男君) 給食につきまして、その単価からの見方もございますが、栄養その他からの見方もあるわけでございまして、現在、老人ホームにおきますカロリーは千九百三十カロリー、これは平均でございますが、そういった内容の食事を支給しております。これは栄養審議会の基準で考えますと、千七百五十カロリーから千九百三十カロリーという基準になっておりまして、そういった観点から入居者に対する食事のサービスを支障のないように運営いたしておるわけでございます。
  53. 小山一平

    小山一平君 そんな言いわけを一々聞いていても始まりませんから、一体一日二百七十円という食事はどういうものであるか、ここに資料があるから一、二申し上げます。いいですか。これは昭和四十九年九月九日、予算単価二百七十円、実施実績二百七十六円、朝食、タラノコ、つくだ煮、みそ汁、つけもの、たいへんけっこうな献立でございますが、タラコ一人当たり二十八円、三十グラムです。このタラノコは一キロ千円、普通皆さんが家庭で消費されるタラノコは一キロ少なくも千六百円から千七百円です。ですから、このタラノコはこわれたくずなどを集めて売ってもらって苦心をしてタラノコをこの老人たちに供しているのですよ。その値段が何と二十八円、切りイカ三十八円、みそ汁、ワカメ一円、つけもの、梅づけ一個一円、合計六十八円です。みそ汁の中にワカメ一円入っている。つけものは梅づけ一個一円、こういう献立です。  お昼、ごもくうどん、これもたいへんけっこうです。ところが、その内容は肉が二十グラム十六円、皆さんがお上がりになる豚肉は、上物は百グラムが百八十円から九十円です。この肉は何と百グラム八十五円、どういう肉だと思いますか。これはほんとうの捨てる一歩手前のくずの肉です。こういう肉をこの施設は苦心して集めて二十グラム、ここへ使っているのです。鳴門巻き二円、ネギ一円、卵四円、卵四円というのは、いま卵の値段は一個二十二円から二十三円ぐらいです。これは中くらいの大きさですよ。それが四円だということは一個の卵が五人前に使われるということです。こういう献立しかできないのですよ。  夕食、これはツボダイ三十九円、大根八円、レンコン四十円、カボチャ七円、こういう献立で米が三十五円かかる。玉うどんが二十円だ、みそが七円だ、これで二百七十円の献立がようやくできるのです。あなた、いま嗜好を考えたり、あるいは苦心をして大体の食事ができているようなことを答えているけれども、これはまさに人間として生活をするために供される献立だとは私は思えない。もっとここにあります、ありますけれども、一々それを申し上げる必要はないと思いますが、二百七十円という食事は、こういうきびしいものである。子供でも見向きもしない一円玉がこの施設においてはどれほどの重みを持っているか、こういうことがこの献立表の中ではっきり読み取ることができます。どう思いますか。
  54. 河野義男

    説明員(河野義男君) この厚生年金の有料老人ホームにつきましては、最初申し上げましたように、有料老人ホームでございまして、給食その他にかかる費用は入居者に原則として負担していただくと、こういうたてまえでございます。そしてこの入居されている方々は経済的に必ずしも楽な方ばかりではございません。そこでその費用と御負担関係も両々、できるだけ経営努力によりましていいサービスを提供して、しかも費用を低く押えたいと、こういう努力をしてまいっておるわけでございます。  いま御指摘の給食の内容につきましても、最近のそういう給食材料費が値上がりしておりますし、そういった観点から若干の値上げをお願いしておるわけでございますが、今後できるだけ費用負担との関連を考えながら給食その他のサービスの内容の向上をはかるよう厚生団を指導してまいりたいと、かように考えております。
  55. 小山一平

    小山一平君 率直に、なるほど二百七十円という食事はあまりにもこれはひど過ぎる、ですから厚生団を指導をしてその改善を早急にはかりたい、なぜそういう答弁ができないんですか。
  56. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) だんだんの御質問、よく拝聴いたしました。特別養護老人ホームでも四十九年の十月以降三百四十二円、これは材料費ですね、飲食物の。そのほかに日常生活諸費三百八十五円、これはちり紙その他の金ですけれども、必要によってはそれも材料費に回せると、こういうわけでございますね。したがって、特別養護老人ホームで三百四十二円の材料費、これははっきりきまった材料費ですね、それがなぜ――有料ということですから、特別養護老人ホームに入らぬ上の階層の人ですね、その人たちがよく二百七十四円の食事でほんとうにやっていける――私も聞きながら、ちょっと低いな、私率直に思います。それはもちろんこういう経費でございますから、人件費その他有料でございますから入居料をいただくという問題もありますけれども、どうも聞いているとあまり低い材料で、よくもやっておられるなあと感心するほど実はびっくりしておるわけでございます。したがって、こういう問題は私はやっぱりその人たちの生活、健康にも影響する重大な問題ですから、私も聞いた以上は厚生団を呼びまして、何でこんなものでやれるのかということから始まりまして、厳重に督励をいたしまして、その給食の改善に努力いたします。
  57. 小山一平

    小山一平君 先ほどもお話がございましたように、この老人ホームにおきましていま利用料金の引き上げが行なわれようといたしております。なるほど他の有料老人ホームに比較をいたしますと、この厚生年金老人ホームの利用料金は非常に低い水準でございますけれども、その値上げがこの十一月一日から三千円、暖房費が二倍、二千円から四千円、こういう引き上げが行なわれ、その中から三十円の食費のアップが行なわれると、こういう計画になっておりますが、実はこの値上げに対する反対運動が起きているホームがございます。そして特に食費については、料金をたくさん出さなければ食費の改善ができないということであれば、われわれ貧乏人はやむを得ない、暖房も二千円が四千円に上がるようであるならば、寒い冬は来るけれども、暖房を少なくも十一月はがまんしてみよう、もしその実績によっては十二月も辞退をしよう、こういうことがいま叫ばれております。このことについてどう思いますか。
  58. 河野義男

    説明員(河野義男君) いま御指摘がございましたように、暖房につきましても重油の値上がりがございまして、相当な値上げをせざるを得ない事情に立ち至ったわけでございまして、従来冬季の暖房につきまして二千円であったものを倍額の四千円にする、こういう改定をお願いしておるわけでございます。その理由は、いま申しましたように重油の購入価格が非常に上がったわけでございまして、四十八年の三月にはA重油一キロリッターが一万三千円であったわけでございますが、それが四十九年の三月におきましては二万九千百円とさらに販売業者からは上乗せの金額を要求されております。約二・三倍以上になっておりますが、そこで今期につきましては四千円お願いしてあとはいろいろくふうをいたしまして経営をしていきたい、かような趣旨から冬期暖房用についても値上げのお願いをしているというふうに承知しております。
  59. 小山一平

    小山一平君 この厚生年金老人ホームの位置づけというようなことにも私は問題があると思うのですが、電気料金もいわゆる社会福祉施設の場合には皆さんのお骨折りで減免措置が講じられております。私は少なくもこの老人ホームにおいても他の施設と同様に電気料の減免措置ぐらいは取りつけるべきではないか、こう思いますが、いかがですか。
  60. 河野義男

    説明員(河野義男君) いま御指摘ございましたように電気料とかあるいはガス料金につきましては、いわゆる福祉料金としまして来年の三月まで旧料金に据え置くというような措置が講ぜられておるわけでございますが、この厚生年金の有料老人ホームは社会福祉事業法の第二条に規定しております第一種社会福祉事業ではございませんし、たてまえがその費用は入居者に負担していただくと、こういうたてまえをとっております関係上、この福祉料金の適用は困難かと思うわけでございます。
  61. 小山一平

    小山一平君 そのことはまたあとでと思いますが、この厚生年金老人ホームの入居者が他の有料老人ホームと同じように十分な支払い能力を持っているとお思いですか。
  62. 河野義男

    説明員(河野義男君) この厚生年金の有料老人ホームは最初に申し上げましたが、厚生年金の受給者の福祉施設として経営されておるわけでございまして、その入居されている方々は必ずしも裕福な方とは限りません。しかし、現在厚生年金につきましては五万円年金、この八月からはスライドによって金額がアップいたしまして六万円年金というような年金の水準になっているわけでございまして、非常に諸物価高騰して苦しいとは思いますけれども、厚生年金有料老人ホームの制度の趣旨からは入居者にこの程度の御負担はいただけると、かように考えているわけでございます。
  63. 小山一平

    小山一平君 この老人ホームは本来が厚生年金の積み立て金によって建設をされ、そして老齢を迎えて厚生年金を受け取り、その厚生年金をもってこの施設を利用するということが終局的の目的でしょう。ですから、今日のようにまだこの厚生年金というものがきわめて低水準である、こういう段階におきましては五万円年金、六万円年金といいましても、私が調査した長野の信和荘というこの厚生年金ホームにおいて厚生年金を受けている者が十六名おります。その中で月五万円に達している者は三人、三万円未満の者が七名、三万円からようやく四万円以内という者が六名、こういうのが実情でございます。やがて何年かたって、そして多くの人々が五万円あるいは六万円の年金をもらうことができるようになれば問題はないのでございますけれども、ただいまのように三万円未満の年金受給者が一番多い、こういう段階にありましては、家族から足りない分はもらえばいいじゃないか、私は簡単にいまの国情の中でそうは言えないと思うのです。ですから私が申し上げたいのは、この厚生年金老人ホームの位置づけというものが、不幸にしてひとりで暮らさなければならないはめにはなったが、財政的には恵まれているという人々と同列に扱うことがそもそも間違いである、こういうことを指摘をしたいんです。これは厚生年金は御承知のようにその大部分の人々が民間企業の労働者です、そうして三万円未満の年金をもらってこの施設に入る。足りないものが家庭から何の心配もなく送られるなんという恵まれた人はそう数多くいるわけではありません。ですから私は他の社会福祉施設に準じて電気料ぐらいは減免してもらう努力を払うべきではないか、また大臣が通産大臣とひざをつき合わしてこの内容をお話くだされば、これぐらいのあっせんの労はとっていただけるはずだと私は思うんですよ、いかがですか。
  64. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) ことしの春電気料金さらにまたガス料金の引き上げの承認政府がやりますときにこの問題がやっぱり問題になりまして、どの程度の範囲ということにするかということでございました。一応私ども政府の金においてめんどうを見ておる社会福祉施設について料金の据え置きをお願いしよう、こういうことにいたしたわけでございます。そこで法律論的なへ理屈にあるいはなるかもしれませんが、有料老人ホームはある程度の所得のある方であり、社会福祉施設と言えるのかどうか。これは御承知のように、社会福祉法に基づく制度じゃございませんので、一応有料老人ホームは除くということにいたしたわけでございます。しかし、今後いろいろやはり問題は私は起こってくると思います。そういう点についてはいろいろ考えなければならぬ問題があるとは思いますが、一応はやはり全国的な筋として考えるならば有料老人ホームは一応除外する、こういうことが適当ではないか、こういうふうに考えたわけでございます。
  65. 小山一平

    小山一平君 実はいま申し上げております長野の信和荘には老齢福祉年金を受けている者が十一名おります。老齢福祉年金七千五百円を受けられる者は所得の制限を受けない範囲の方であることは明らかでございますから、さっきから申し上げているように、この厚生年金老人ホームというものは他の有料老人ホームと少し違った位置づけをすべきではないか。本来ならば軽費老人ホームが一番いいんです。これがいま足りません。したがって、この施設は軽費老人ホームの代役を部分的につとめている、こういうことが言えると思うんです。現在養護老人ホームは充実してきましたが、養護老人ホームの数と軽費老人ホームの数がおわかりでしたらお聞かせ願いたい。
  66. 翁久次郎

    説明員(翁久次郎君) 養護老人ホームの数は約九百ちょっとオーバーしているかと思います。なお、軽費老人ホームの数は現在八十二でございます。
  67. 小山一平

    小山一平君 一つも軽費老人ホームのない県というのは幾つありますか。
  68. 翁久次郎

    説明員(翁久次郎君) ちょっと事務が資料を持っておりませんので……。
  69. 小山一平

    小山一平君 それはあとでけっこうです。  そこで、いまも数字で明らかなように、養護老人ホームは全国にかなり行き渡ってきたけれども、軽費老人ホームがこのように足りない、そのためにこの厚生年金老人ホームなどの位置づけが重要であると、こういうことがおわかりになったと思います。  そこで、この厚生年金老人ホームを皆さんが厚生団に経営委託をいたしているわけでございますが、その中で四十八年度決算を見ると、さっきもお話があったように、総支出が三億三千二百六万円何がし、人件費が一億七千三百八十三万何がし、おおむね人件費が五三%となっておりまして、かなりの苦しい財政事情でございます。国はこの人件費についてどれだけの負担をいたしておりますか。
  70. 河野義男

    説明員(河野義男君) この厚生年金の老人ホームにつきましては、経常費につきましては、創設期のある一定期間、まあ定員が直ちに満ぱいになるというふうには考えられないわけでございまして、創設のある一定期間につきましては費用の一部を負担しております。四十八年度が一千万、四十九年度が二千四百万というふうに相なっております。
  71. 小山一平

    小山一平君 ここに「厚生年金老人ホーム経営委託契約書」というのがございますが、この三条には、「老人ホームの経営は、乙の責任において行ない、それに要する費用は、次条の負担額を除き乙が負担するものとする。」となっております。そして、その次条である三条の二においては、「甲は、老人ホームの経営に必要な経費のうち、人件費について、当該経費にかかる当該年度の国の歳出予算額を限度として実支出額を負担するものとする。」とここに書いてあります。これは空文ですか。
  72. 河野義男

    説明員(河野義男君) 御指摘のように、第三条の二に、いまお述べになりましたような条項がございます。これは、先ほど申しましたように、新しく設置された場合に直ちに入居者が一〇〇%入られるというようなことは考えられないわけでございます。しかしながら、必要な要員は配置しなきゃならぬ。そこに経営上相当経費が当然出てまいるわけでございます。その点に着目いたしまして、創業期のある期間につきまして国庫によって経費の負担をしようという趣旨でこの条項を設けたわけでございます。で、その主たるものが人件費でございますので人件費というふうに掲げまして、実際の中身につきましては当該年度予算できめようと、こういう趣旨でございます。
  73. 小山一平

    小山一平君 当該年度予算額できめるのは当然でございますが、これはわれわれ一般社会においては、予算額という逃げ道はつくってあるにもせよ、「実支出額を負担するものとする。」と書いてあるからには、この予算額というものは実支出額を展望して、そして予算の編成がなされるのが当然のたてまえだし、これは社会の常識です。違うのですか。
  74. 河野義男

    説明員(河野義男君) その三条の二の規定は、予算額を限度として実質計算上の金額ではなしに実際に支払われた-二重に制限をかぶせているわけでございます。最近人件費も上がっておりますし、四十八年度に比べまして四十九年度におきましては倍額以上にふやしておるわけでございます。これは金額は、ただその年度に新しくできる施設の数にもよるわけでございますが、できるだけそういった創業期の経費につきましてはめんどうを見ていきたいということでこの規定を運用いたしておるわけでございます。
  75. 小山一平

    小山一平君 先ほども申し上げたように、今度の三千円の値上げでさえもなかなかそれでは困るという、こういう入居者の悲痛な叫びが上がっている中で、それがまた円満裏に認められたとしても食費は三百円である。せめて他の社会福祉施設に準じた食費にこれをするとすればそれだけでもさらにまた二千円ぐらいの費用を要すると、こういうことでございますので、私は、せっかくこういう契約条項があるんだから、そしてこの年金老人ホームというものの性格が、有料ではあるけれども軽費老人ホームの肩がわりを一面背負っている、こういうような事情にかんがみて、この条項に基づいて二千四百万円なんてけちなこと言わないでもう少しこれを増額をして、当面、やがて年金の充実とかあるいは軽費老人ホームの建設とか、そういうような条件の整う間暫定的に国である程度の助成をすべきであると思いますが、いかがでございますか。これは大臣にお聞きしたいと思いますが。
  76. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) よく話を承りましたが、有料ということでありますと、やっぱりある程度の、こういう情勢下でございますから値上げをせざるを得ないとは思います。しかしまた、お述べになりましたように、その入っておられる入居者の方々は有料ホームというよりも軽費の老人ホームに入るのが適当な方々もおられるようでもありますし、やっぱりその辺はもう少し、個別の独立採算制に執着するばかりがいいわけでもないでしょうから、厚生団全体の総合的な判断ということも必要でもありましょうから、その点は十分考えてみたいとは思います。総合的に判断をするということを考えてみたいと思いますが、しかし、たてまえはやっぱり独立採算制ということだけは私はこれはくずしたくないんです。これは有料であるならば独立採算制というものは貫いていく、これが私はやっぱり大事だと思います。しかしその中に入っておられる入居者に事情があるならばこれもまた考えてあげるということも必要であろうとも思います。したがって、いまのところ何とも申せませんが、十分ひとつ具体的に検討さしていただきたいと思います。
  77. 小山一平

    小山一平君 ぜひこれは、私は、なるほどおっしゃるとおり有料というたてまえですからある程度の値上げを進めていくということはこれは避けられないことだと思います。しかし、いま申し上げたようなさまざまな要素があるので、ひとつ大臣のいまのお答えのように、そういう実情を十分配慮をされてできるだけ援助措置をとりまして、少なくとも、本人たちが食事はこれでけっこうだからといって、こんなみじめなことで甘んじているというならそれもやむを得ないというわけには私はいかぬと思うんです。そこで、少なくとも世間並みの施設ぐらいの生活が保障されるような、そういうひとつあたたかい配慮をぜひお願いをいたしておきたいと思います。  それから次は、いまもございましたように、こういう問題が発生するのも、軽費老人ホームというものがあまりにも少ない、養護老人ホームの一〇%、こういうことでいま一番望まれるのは、この軽費老人ホームだと思います。そこで、その建設の促進についてひとつお伺いをいたしたいと思うんですが、この軽費老人ホームをもう少し各県に、少なくとも一つの県に二カ所や三カ所の軽費老人ホームはつくっていくというような、そういうお考えがいまあるかどうか。
  78. 翁久次郎

    説明員(翁久次郎君) 御指摘の点まことにそのとおりであると存じます。現在、軽費老人ホームで先ほど御質問がございました設置県が三十三県ございます。未設置県が十三県。したがいまして、せっかくこういう制度が、仕組みがありながら、ない県もございますので、厚生省といたしましては、機会あるごとに関係部長会議等で、この建設方について強力に指導してまいりましたけれども、先ほど来いろいろ御指摘がございますように、若干のその軽費ながら費用負担ということが、やはりある程度設置者側にいたしますと、将来の経済情勢の見通し等のために不安な点があって進み方がおくれていると、かように思います。しかし、国のほうといたしましても、養護老人ホームあるいは特別養護老人ホームと回しように、軽費で負担できる階層の御老人のための施設として、この整備について今後格段の努力をいたします。
  79. 小山一平

    小山一平君 その認識が違うのですよ。なぜ各県は、この軽費老人ホームの建設に積極的でないかといえば、その建設においてあまりにも超過負担があり過ぎる、そのためなんです。建設されてしまってからの運営費というものについては、これはいろんな問題があるにしても、そう県財政の中でもめんどうなことではないんです。ところが、この施設の建設にあたって、基準単価などがあまりにも低過ぎる。いわゆる問題になっている超過負担というものが多過ぎる、こういうところにこの軽費老人ホームの建設がおくれている最大の原因があるんです。皆さんもそのことをはっきり認識をしていただかないと、ほかの原因で――そのほうは問題はないけれども、ほかの原因でこの事業が進まないなどという認識では、今後ともこの問題解決はおくれます。そこで私は、この軽費老人ホームを計画的に建設が進むことのできるように、この事業に対する超過負担というものを大いに軽減をはかっていく、こういう措置をとっていただくことが必要だと思います。このことについていかがですか。
  80. 翁久次郎

    説明員(翁久次郎君) 確かに御指摘のように、社会福祉施設一般についてそういう問題があることは承知しております。したがいまして軽費老人ホーム、主として市当局がおつくりになるケースが多いと思います。そういった場合のいわゆる単位当たりの費用負担、こういったものについても今後十分配意してまいりたいと考えております。
  81. 小山一平

    小山一平君 この超過負担解消の問題は厚生省にとどまらず、各省にかかわり合いのある問題で、いまおそらく大臣の立場でもこの問題は検討されていることだと思いますが、大臣の立場からしてぜひこの基準を引き上げて、そして超過負担の軽減をはかることによって、おくれている軽費老人ホームの建設の促進ができるように、格段のお骨折りをお願いをしたいと思いますが、大臣、さっきからのお話を聞いていておわかりのように、軽費老人ホームというものが非常におくれている。そのためにいろいろいま論議のあったような問題があるわけでございますが、これから、この軽費老人ホームの建設促進ということについて、大臣のひとつ見解をお聞かせおき願いたいと思います。
  82. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 実は老人対策としての施設としては、特別養護老人ホームの建設に実は非常に力を入れて今日まできたわけでございます。しかしながら、軽費老人ホームの建設もこれなおざりにできない問題でございまして、この問題につきましては、お述べになりましたような超過負担の問題があるいはあると私も思います。そこで私どもは、この老人ホームばかりじゃありません、全般的な、社会福祉全般について超過負担を解消するようにということで努力をいたしておりますが、特に、最近の物価上昇というこの傾向において、なかなかこれ解決しにくい状況にあります。しかしながら、いまのような状態で投げておくわけにもまいりませんので、来年度予算編成にあたりましては、超過負担の解消ということを旗じるしに、適正な単価というものをきめてやっていくというやり方に全力を尽くしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。したがって、その一環として軽費老人ホームの問題も取り上げて進めてまいるようにいたしたい、かように考えます。
  83. 小山一平

    小山一平君 ぜひそのようにお願いをいたしておきたいと思います。  最後になりましたけれども、次は、佐久広域行政事務組合というのがございまして、ここで広域事務組合の事業として、ごみの焼却施設の建設をしようと、こういうことになっておりますが、その候補地が野菜指定産地のどまん中で、その周辺が土地基盤整備、畑地かんがい、あるいは集出荷の整備、低温処理施設といったように、野菜中心の農業地帯であるために、地域の農民の猛反対で、いま紛争が実は起きているわけでございます。先日、十月十四日、この広域行政組合は、そういう反対がある中を朝の四時に請負業者を動員をし、事務組合の職員を動員し、事前に警察に連絡をとって、三十人の警官を配置をして、強行立ち入り禁止の措置を講じようとして、あわや流血の惨事になろうといたしました。二人ばかりのけが人が出ましたが、大事に至らず、一応仲裁者が入っておさまったんです。そしてこれはやはり厚生省において、そういう紛争の中では補助金とか起債とかそういうものの決定をしない。円満解決の上で初めて補助、起債を決定をすると、こういう基本姿勢を示していただくと、円満裏な解決の話し合いの促進ができると思います。そこで厚生省といたしまして、こういう紛争の場合の補助や起債の決定について、どういうふうな見解をとっておられるかということをお聞きをいたしたいと思います。
  84. 福田勉

    説明員(福田勉君) ただいま先生お尋ねのとおり、まあごみ焼却場等の廃棄物処理施設の設置につきまして、これは地域的に見ますと非常に必要な施設でございますけれども、最近具体的な建設場所決定をめぐりまして、その段階で設置反対運動が生じているという事例があるわけでございます。  ただいまお尋ねの、佐久地域広域行政事務組合が設題を予定しております二市七町七村にまたがります焼却施設についても御指摘の問題があるわけでございます。私どもといたしましては、廃棄物処理施設の設置につきましては、まず第一に適正な計画と手続が必要でございますけれども、それには当然住民の合意と協力が最優先になるというふうに考えておるわけでございます。施設そのものには十分な公害防止施設とかあるいは維持管理、もちろんこういうことも必要でございますけれども、住民の合意と協力がなければ、やはり施設の設置運営というものはいたしかねますので、こういうような方向に沿いまして、地方公共団体を指導しているわけでございます。具体的に佐久の問題につきましても、長野県と協議を重ねているところでございますけれども、国庫補助につきましては、これらの点を十分調査いたしまして、そういう点が解明されない限り、決定できないということでございます。そういう方針でまいる所存でございます。
  85. 案納勝

    案納勝君 私は厚生大臣に、今日政府が新年度予算の編成期にあるし、すでに厚生省は概算要求提出している段階にありますから、そういうものを踏まえながら、社会福祉政策の基本問題について幾つかお尋ねをしたいと思います。  昨年来、政府の経済財政政策の失敗から、狂乱状態を招きました。そして十月に入って、いまも小山同僚議員から言われましたように、消費者米価の値上げ、国鉄運賃をはじめとする公共料金の一斉値上げが行なわれた。すでに昨年一月、タクシーや電気料金の値上げ、あるいは私鉄、ガス等の値上げが行なわれた。十一月以降はさらに、再度タクシーや医療費の値上げやあるいはバス、地下鉄、郵便、電信・電話等の公共料金の値上げが一斉にメジロ押しの状態です。これらの一連の公共料金の値上げは、今日国民の生活にたいへん深刻な影響を与えることは大臣も御存知のとおり。経済企画庁の計算によって、今回の国鉄、米価の引き上げによって、消費米価の引き上げ等が消費物資にはね返る分は二・七%程度上昇すると、こう言っています。しかし、十月から十二月にかけての消費物価の前年比の上昇率は、ことしの一月から三月にかけて狂乱といわれた二四・五%を上回ることは、いまやもう確実になっている。一般の国民の家庭生活の実情は、もう消費物資は五〇%以上の引き上げをはだで感じているというのが現状じゃないでしょうか。つまり、今日一世帯の貯金の目減りというのが、一年間に三十万円から五十万円、非常な減額をされているというような実感がはだに感じているというのが現実だと思うんです。このことは、特に高齢者世帯あるいは母子世帯あるいは生活保護世帯など低所得者層、社会的弱者に対しては、より過酷な生活をしいられているということは、もう言わずもがなであります。この国民生活自体が、昨年から引き続いて危機に瀕していると同時に、今日の社会保障福祉政策というものの制度、仕組み自体も実は危機にきている。まさに成り立たない状態にきているのではないか。今日インフレを収束をして国民生活を守っていくというのは、もう政治に何といっても急務です。  ここで私はインフレ論をやろうと思いませんが、このインフレは、今日までの自民党内閣の高度成長政策の中における経済効率一辺倒といいますか、優先の政治にあったことは間違いない。しかし、今日何らかの財政面からの手直しは行なわれています。しかし、この高度成長政策、要するに経済効率優先の政治をほんとうに質的に、国民福祉を優先させるという質的な転換をいまこそやらなければ、国民の生活は全く破壊されてしまうという現状じゃないでしょうか。需要抑制の長期化と、すなわち成長制御の中で従来の高度成長政策の経路、これと訣別する、そういう上に立って事業項目を再検討して福祉増大につなげるということ、フローを押えてストックを拡大をするということ、こういうのが質的に転換をされなくちゃならぬ時代じゃないか。国民の生活の将来に展望を持たせるというのが、今日私は政治のあり方だと思います。  ここで齋藤厚生大臣にお尋ねしたいのは、このような今日の破局的なインフレ、国民生活の危機に立って今後の社会保障福祉政策をどのように指標し、どのような理念で進めようとされているのか、その点を第一点お伺いしたい。
  86. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) すでに御承知のように、昨年来私どもは福祉優先の政治を望む国民の声を受けて、福祉政策に全力を尽くすということで努力をいたしてまいったつもりでございます。特に昨年の春、経済企画庁においてきめた経済社会発展計画に基づいて、五十二年度までに振替所得、国民所得と振替所得との関係において、現在よりもさらに高めて八・八、社会保障給付費については約一〇%程度引き上げ、そして西欧先進諸国並みの福祉社会を築こうではないかと、こういう計画を立てて進めておるわけでございます。そうした考え方に基づいて、昨年皆さん方の御協力もいただいて、いわゆる五万円水準年金法というものの改正を行ない、さらにまた医療保険においては、労働者の家族の給付を五割から七割に引き上げる、こういうふうな軌道を敷いてまいっておるわけでございまして、基本的にはお述べになりましたように、福祉政策の充実一本やりに進んでいこうではないか、それが国民の声である、そういうことを十分考えて努力をいたしておるわけでございますが、そういうふうな基本的な福祉充実の路線を貫くと同時に、何といっても当面一番大事な問題は、インフレ下にある経済的な弱い人々の生活をどうやって守っていくか、これであると考えておるわけでございまして、そうした方向で昨年来、特に昨年の後半以来努力をいたしてまいったつもりでございます。  すなわち、例を引いて申しますれば、生活保護世帯に対する扶助基準、あるいは養護老人ホームあるいは母子寮、こういったふうな施設に入っておられる方々の措置費につきましては、昨年四月に相当、一四%ですか上げまして、さらに十月から五%引き上げ、年末における一時金の増額、さらにことしの三月、年度末における百何億という金を支出するというやり方を行ない、さらに本年度においても当初四月において二〇%の扶助並びに措置費の引き上げを行ない、さらに六月からは六%の引き上げを行ない、さらにこの十月からは三%の措置費の引き上げを行なう、こういうことを現実行なってまいりました。さらにまた拠出制の老齢、厚生年金等についても、これは皆さん方の御協力もいただいて、法律の改正を行なって支給の三カ月繰り上げ、こういうことも実はやっておるわけでございまして、私どもはインフレ下において、物価の動向に即して臨機応変に生活に苦しんでおる人あるいは老人あるいは年金の受給者、そういうものについて努力をしてまいったわけでございますが、そうした方針は来年度予算編成においても、厚生省は全力を尽くす考えでございます。いま扶助基準あるいは措置費の基準がどの程度上がるかということについては、予算編成時点における物価の動向をにらみ合わしてきめなければなりませんが、あくまでも物価動向に即応して扶助基準の改定を行ない、さらにまた年金受給者についても、物価動向に応じたスライドを実施していくと、こういうやり方で臨機応変、インフレに対処して弱い人々の生活を守る、これに最重点を置いて来年度予算編成もあたりたい、かように考えておるような次第でございます。
  87. 案納勝

    案納勝君 いま臨機応変に最も社会的弱者を中心に進めていくという御答弁がありました。これに触れるやつは後ほど触れますが、第二点として、厚生省が五十年度の概算要求ですか、すでに提出をされ、新聞記者その他にも発表をされています。この中では、三兆七千億で前年比三〇%の伸びというふうに見られます。しかし、いま大臣指摘をされたように、今日の事態は異常な状態にあるということは言っても言い過ぎではない。それだけに弱者に対する福祉政策の必要が叫ばれているこの時代に、この時代的な要請からしても私はまだ十分ではない、こういうふうに考える。昔からよく国会の中でも論議をされてまいりましたが、日本の社会保障費が国家全体の予算の中で占める割合というのは、四十九年度で一七%、四十六年度ごろから推定をしてみましてもそう伸びはないのです。アメリカの場合は国家全体の予算の中で占める割合というのは三五・六%、イギリスの場合は二二・七%、西独の場合は二九・九%というふうに、これに比べてみても満足をすべき内容ではないのです。この内容で見ますと、私は高福祉社会の実現はおろか、今日のインフレ下で社会福祉政策が体をなしていないのではないか。大臣が先ほど言われましたが、大臣の言われた経済社会基本計画というものが中心にして進められてきていることについてはわかります。ただこれは、今日のような異常な事態を想定をしない前につくられたものだ。しかも、この中に幾つか大臣指摘をされた問題がありますが、いま今日まで次々に経済計画が書き直されている今日であります。この経済社会基本計画、大臣が言われたやつについてもすでに今日の時点に合わないものが出てきている。その意味で再検討をされている内容である。そういう中で私はいま大臣から御答弁ありましたが、今回の五十年度の新しい政策予算決定するに当たって、いま言われたように弱者を中心にしてもっと先ほど小山議員からも言われましたが、社会福祉施策が体をなしていない危機にある今日、これを増額をしていく、こういう決意と、それについての取り組みが私は必要だと思います。この辺について御見解を承りたいと思います。
  88. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 社会保障の充実については私は非常な決意を実は持っておるわけでございまして、昨年きめました経済社会基本計画の中で、最近における経済の動向、さらに物価の動向にかんがみて相当の部分、私は手直しがされる必要があると思っているのです。しかしながら、社会保障の、私が先ほど申し上げました振替所得と国民所得との関係において五十二年度に八・八%まで持っていくというこの方針だけはこれはどんなことがあっても実現しなければならぬと思っているのです。そしてまた、そういうふうなやり方でいきますと、社会保障給付費が五十二年度末に約一〇%こすと思うのです、五十二年度末。この方針だけは私は貫いていかなければならない。よその部分についてはある程度の私は手直しを、特に公共事業などは行なわれることは必至だと思うのです。しかし、社会保障だけは五十二年度八・八という振替所得、これだけはりっぱに貫いていかなければならない、こう考えておりまして、大体いま厚生省の中で関係各方面の有識の方々にお集まりいただいて、社会保障長期計画をつくっております。近く中間報告を発表するつもりでおりますが、大体その見通しから言いましても五十二年度にはその経済社会基本計画できめた八・八という振替所得は大体実現できるという実は見通しに立っておるわけでございます。ただ問題は、そこにインフレ下における目減りという問題がありますので、それをどうやって調整していくか。これがやっぱり今後の大きな残された私は問題だと考えております。  いずれにせよ、一昨年、四十七年度までは社会保障の一般予算において占める率もわりあい低かったのですが、四十八年度、四十九年度、これはもう数字をごらんいただけばおわかりのように、ぐんぐん実は四十八年から伸びているんです。  おそらく来年度も、これは三〇%増の予算をいま出しておりますが、その中には先般の医療費改訂による一六%の医療費の引き上げ、これはお医者さんのふところに入るというふうな考え方ばかりじゃなしに、医療従事者の待遇改善なんですね、実際この中身は。そうなんです、これは。開業医はなるほど自分のところにいくでしょうが、病院その他はみんな従業員にいくんです、これは。要するに三二・九%という春闘の影響を受けて、それらの方々の給与の改善をはかる、こういうわけでございますが、それはそれとしまして、それを入れますと、これは三〇%で済まないのです、実際。これは医療費の分は除いた三〇%なんです。おそらく、私はそういう結論になることを望んでおりますが、私はやっぱり四〇%近い引き上げの数字になるんじゃないかと思っているんです、医療費なども相当なものでございますから。というわけで、これは御鞭撻をいただいてまことに私も感謝にたえませんが、社会福祉の充実には私は全力を尽くす考えでございます。
  89. 案納勝

    案納勝君 それでは三〇%、前年度比事実上四〇%ぐらいになる、こういう決意でございますが、十月の七日に総理府の社会保障制度審議会が当面の社会保障施策について異例の意見書を出しました。これはまあ、御存じのとおりですね。この審議会はもう繰り返すまでもありませんが、先ほど私が申し上げましたように、一そうの危機的な様相を呈していることを今日指摘をして、社会保障の持つ所得再分配機能というものが諸外国より一そう尊重されなければならない、この上に立って、なおかつインフレに直面をしているのだから、その役割りはますます重要だと述べて、幾つか指摘をしています。たいへん重要な課題がありますが、たとえば老齢福祉年金、いわゆる無拠出制の年金ですが、これは一種の経過年金ですね。支給対象が五十一年度をピークにして毎年減っていく、自然消滅をする、そういった面から見て、しかも年金制度が成熟していない今日、これらについての思い切った引き上げ等を具体的に提起をしています。したがって、これらの社会保障制度審議会が答申をした全体について厚生大臣はどのように受けとめられ、これについて五十年度の中にどのように実行されようとしているのか、この辺について承ります。
  90. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) お述べになりましたように、十月七日の社会保障制度審議会の建議は、私は非常に具体的な内容を含んでの建議でございます。しかもこういう異常なインフレ下における社会保障として考えなければならぬ大きな問題が具体的に述べられておるわけでございます。いまお述べになりましたような老齢福祉年金の引き上げの問題、それからスライドの繰り上げの問題年度当初から予測値を頭に描いてスライドしたらどうだ、もう非常にこれは実は具体的な御建議をいただいたわけでございます。私どももずばり指摘を受けたわけでございまして、この内閣にあります社会保障制度審議会の建議は十分尊重しなければならない、かように基本的に考えておりますし、尊重をいたしたいと考えております。  しかし、いろいろ考えてみますと、なかなかむずかしい問題がたくさんあるんです、実は。スライドについては、御承知のように、先般の国会において法律の改正を行ない、皆さん方の御協力によって三カ月繰り上げの修正をいたしたわけでございます。厚生年金ですと十一月実施を九月実施というわけで三カ月繰り上げてやったわけですが、これは事務的にはたいへんな保険庁の職員に犠牲をしいたやり方でやったわけでございます。それをさらに予測値をもとにして四月まで繰り上げろとこういうわけでございまして、このやり方をどういうふうなやり方が適当であろうか、実はいま慎重に検討をいたしております。やり方をどうやるか。さらにまた老齢福祉年金、これは来年は一万円に引き上げるということをすでに政府の公約として約束をしておるんですが、その一万円の大幅にと、こういう建議が出たわけでございます。その大幅にという程度については何もありません。しかしその中にまたもう一つ問題のありますのは、生活扶助との調整もはかれと書いてあるんです。この辺が非常に実はむずかしい問題でございます。  こういう機会ですから私も一言だけ述べさしていただきますが、生活扶助は、先ほど来もいろいろ御質問ございましたが、最近における扶助は一級地において一人当たり一万五千円くらいになっているんです。一万五千円が生活扶助、すなわち資産のない方々の最低生活が一万五千円。それから老齢福祉年金というのは経過年金でございまして、まあ一応ある程度の資産があると考えていいわけですね。だからある程度資産のある方に対する老齢福祉年金を扶助よりも多くするというのはちょっとむずかしいじゃないかと、こういう問題があるんです、やっぱり。そこで大幅といいましても、どの程度が一体大幅にと言うておるのか、その扶助との調整をどうやってはかっていくか、これはやっぱりむずかしい問題だと思うんです。そういうわけで、率直に申しますが、このスライドの問題と老齢福祉年金の額の問題については、この建議を受けてどうするかということについては、いま具体的に申し述べる段階には至っておりません。しかし予算編成までにはこの社会保障制度審議会の建議、御意見は十分尊重しながら、できるだけそうした方向で努力をいたしたいということをきょうの段階では申し上げさしていただきたいと思います。
  91. 案納勝

    案納勝君 昨年から齋藤厚生大臣たいへん御苦労をされてきていることはよくわかるんでありますが、いまの御答弁に関係をして、それじゃあ、いま五十年度の概算要求厚生省は出していますが、この十月七日の総理府の社会保障制度審議会の答申を受けて、先ほど言われたように、スライドの問題についても確かに事務的にたいへん犠牲をしいたこともあるでしょう。しかしそれだけ緊急性があるだけに実は行政府としてやらなくちゃならない、そういう意味で犠牲をしいられたと思うんです。また、今日、先ほど小山同僚議員から言われたように、全く国民の生活、特に谷間にある人たちの生活がしいたげられている今日でありますから、このやり方をどうするかということを検討していくという御態度、あわせて一万円引き上げの問題について、要するに老齢福祉年金についても予算編成段階までには検討するというお話をいただきました。これは概算要求を出しているけれども、さらに五十年度政府予算編成の中に来年度、五十年度には、スライドを昨年三カ月ないし四カ月引き上げたように、あるいは額そのものについて老齢福祉年金の最低保障額についての引き上げを実行していくという決意で取り組まれておるのかどうか、この辺あわせて……。
  92. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 八月末に大蔵省に概算要求要求をいたしましたときにはいまの二つの問題は全然入れてないんです、これはもう御承知のとおり。すなわち、年金のスライドについては来年の十一月からとか、あるいは老齢福祉年金は一万円と、それっきり出してないんです。しかしその後社会保障制度審議会の建議が出ましたので、予算編成する時点においてこれをどう処理するか、そこまで十分検討を続けていって、その時点において必要なものは追加要求をする、そして前の要求と追加要求と合わせて予算編成に当たる、こういう仕組みで努力をいたしたい、かように考えておるわけでございます。そこでどういうやり方がいいか、いま慎重に検討を続けておる段階でございます。
  93. 案納勝

    案納勝君 これはことしの五月二十一日、社会労働委員会で、年金法一部改正の際にも附帯決議が出されている問題です。したがっていま大臣が言われたように、これらについては新たな問題としてやるということですから、ぜひひとつ実現をしていただきたいと思います。  そこで、次いで質問をしますが、大臣が四十九年九月二十七日、福島県庁で記者発表された。厚生、国民年金は狂乱物価から年金生活者の生活を守るために、来年度は年金支給額を二二%アップして七万円年金を実現する。ところが五十年度厚生省の概算要求の中には、年金スライド改定は九・六%引き上げと、この二二%引き上げもしくは九・六%のスライドという概算要求関係、この数字、根拠、那辺にあるのか、どこに根拠があるのか、これらについて承りたい。  そしてあわせまして、時間がありませんから少し急ぎますが、これらの概算要求の中で出されているスライド自体を見ても、確かに五年年金、十年年金を含めて若干のスライドが行なわれております。しかしたとえば十年年金の場合のスライドは二千二百五十四円、あるいは五年年金の場合にもこれと変わらない。各種年金についてもほんのわずかの二千円から三千円程度の額の引き上げしかなってない。こういう状態で、はたして先ほど言う最低生活というものが、老後の生活が確保できるという最低の生活すら私は確保できないんじゃないか、したがってこの際、先ほど私が社会保障制度審議会の答申について質問をいたしましたが、これと関連して三万円程度の最低保障というものを各年金について考慮する、こういう今日の緊急な事態だけに、私は考えあってしかるべきじゃないだろうか、こういうふうに考えます。先ほど申し上げました福島県庁での二二%アップの問題とあわせて、これらの問題についても御見解を承りたい。
  94. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 概算要求でスライド分はたぶん九・六%になるであろうという数字で出しておるんですが、それは一応まあ経済見通しを九・六と判断をして出しておるわけでございまして、これは五十年度予算編成の際において、四十九年度と四十八年度物価上昇がどう変わっていくか、その比率によってそれは直すわけでございます。そこで四十九年度と四十八年度物価の上がりはどのくらいになるであろうかということでございますが、大体来年の三月ごろの消費者物価指数が前年同月の物価指数に比較して一五%で押えられるとしても、四十九年度年度間の消費者物価指数の四十八年度に対する比率は、大体二二%か二一%になるという予想がいまあるんです。そのことを福島県庁で行なった記者会見において、最近における動向から見ると、来年の三月の消費者物価指数が一五%程度におさめられても、年度間の四十九年度の消費者物価指数の年率の伸びは四十八年度に比較して二二%ぐらいになるではないかと、そうなれば二二%のスライドが行なわれますと、こういうことを申し上げたんです。と言いますと、昨年の九月末に成立いたしました五万円水準年金は、ことしの九月から一六・一%のスライドをしておりますから、水準としては五万八千五百円になるんです。五万八千五百円になっているんです、現在。その五万八千五百円に二二%上がりますと、七万円水準を越す年金になると思いますということを言ったんです。七万円水準年金をすぐつくると言ったんじゃない、スライドすれば七万円水準になりますということを実は申し上げておるわけでございます。ですから、予算編成時点においては、そういう水準の二二%になるか、二一%になるか、あるいは二三%になりますか、それはちゃんとスライド分の予算はつくるわけでございます。これは間違いなくつくるわけです。それを今度繰り上げるのをどうするかというのは別問題として検討しなければならぬということを申し上げたわけでございます。そういうわけで、来年二〇%スライドということになると、ほんとうに七万円水準になるはずでございます、まさしく。手取り額も相当ふえてくると、こういうことになるわけでございます。  そこで、それはそれで御理解いただきたいと思いますが、最低保障をつくるという問題でございますが、これはやっぱりいろいろ将来考えなければならぬ私は問題だと思っているんです。これについては厚生年金ばかりの問題じゃなくて、公務員その他の共済年金との関係もみんなあるわけでございまして、やはり将来――私は三万円かいまの時点においていいとは思いませんけれども、ちょっと高いような気がします、率直に言うて。率直に言うて三万円は高いと思いますが、私はやっぱり制度としてある程度の年限をつとめた方々についての最低保障年金額というものはつくる必要があるんじゃないか、こういうふうに私は考えております。そこでこの問題は、厚生年金、あるいは国民年金、あるいは共済年金全部を包括的にひっくるめた何か研究班をつくって前向きに私は検討をしていきたい、こう考えております。
  95. 案納勝

    案納勝君 時間がないので割愛しますが、私は、これはお答えいただかなくてもいい、意見としてお聞きをしていただきたいのです。  いま大臣から答弁ありましたが、厚生年金及び各種共済年金においての四十七年度の統計を見ても、地方公務員共済の場合、これが最高ですが、四万三千円というのが平均値で最高になっている。これでは、先ほどから繰り返して言っているように、とうてい生活ができないことは明らかですね。今日定年退職者の場合、厚生年金の受給資格が六十歳なんですね。ところが、六十歳で四万八千円以上の収入があると六十五歳までお預けになる。それで国民の中に、あるいは定年退職者の中にこういう意見があるんです。六十五歳までに死んじまう人が多い。特に地方公務員、国家公務員、あるいは公共企業体共済組合の場合、現業官庁につとめている人が定年退職した場合には、死亡率がきわめて実は高い。で、新しい職場にかりに定年退職をして就職をしても、年収は三分の一程度。その意味では給料と年金の併給ということを行なうべきではないのか。もっと一歩進んで一いま言ういまのシステム、仕組みから一歩進んでそのことまで踏み切るのが今日の時点ではないかというふうに考えます。  で、現実に六十五歳までやってもらう者は、積み立ててきたってこのインフレで減価されてしまって、はたしてどうなるものやらという不安が国民の中にたくさんあります。だから、先ほど大臣もある程度答えられましたが、当面厚生年金及び各種年金についての一本化、二本化という統合の問題があるとしても、勤続二十年で退職する人たちにはせめて最低保障ができるという基準を早急につくる。たとえば国際的には西ドイツやフランスやイタリアで七五%保障がされている。日本の場合には六〇%ぐらいの保障というのは私はあっていいんじゃないか。こういう面から、今日の各種年金の最低保障というものを、今日のような緊急事態、異常な事態だけに私はもっと積極的に進めてもらいたい、こういうふうに大臣に強く要望をしておきたいと思います。  そこで、次に質問に入りますが、いま言ったようなそれぞれ年金の積み立て金がインフレの中で月ごと、年ごとにどんどん価値が下落をしていきますが、価値の高いお金で保険料を払い、価値の減った金で年金を受け取る。これは全く実は、一般の年金を掛けている人たちにとって、国民にとっては、もう詐欺にもひとしい行為、こう言われてもしかたがない今日の現状です。私は先ほどから最低保障額やスライド制の問題について大臣の見解をお伺いしてきましたが、今日、この年金制度の充実というのが社会的緊急の課題として要請されている今日でありますだけに、いままでとられてきた修正積み立て方式から、年金の金は年金のために使うという賦課方式に転換をしていくという思い切った私は措置をとるべきじゃないのか。  これについては今日まで多く論議をされてきました。政府の中では二階堂官房長官、自民党の橋本幹事長も、これらの検討について言及をされました。しかし二転、三転、焦点定まらぬというのが今日の現状です。私はこの賦課方式の移行についてたいへんむずかしい困難な問題が幾つかあることは承知しております。しかし、これらについて厚生大臣は、今日の時点で賦課方式移行についてどのように考えられているのか、あるいは移行がむずかしいとするなら、どこに問題があるといま理解をされているのか、この辺について大臣の見解をお伺いしたいと思います。
  96. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 最低保障年金の問題については先ほどもお答えいたしましたように、私はつくる必要があると思っているのです、実は。しかし、各年金間のいろいろな関係がありますから、いますぐつくるというわけにはいかぬと思いますが、私はこの研究班をつくってそうした問題に取り組みたいということをお答え申し上げておきます。  それから二番目のお尋ねは、現在の修正積み立て方式を賦課方式にという問題、これはもう昨年法律改正の際に非常な論議をされたわけでございまして、結論的に申しますと、現在の積み立て方式も実は完全積み立て方式じゃない、修正積み立て方式でございます。そこで、私も、この修正積み立て方式というのは、老齢者の方々の数が老齢化社会が実現してある一定の定常化した段階においては、私は賦課方式になっていくと思います。これは自然になっていくと思います。しかし、そればいろいろな保険数理で計算しますと、三十年先になるわけでございます。そういうことは私はやっぱり適当でない。これは政治の力において三十年後そうなるといっても、これを二十年後に詰めるとか、十年後に詰めるという努力は、私は政治の場において努力すべき問題である、こういうふうに考えておるわけでございます。  そこで、いますぐということになりますと、私はこれはなかなかたいへんだと思っているのです、実は。たいへんでございますが、厚生年金と国民年金というものを二ついまリンクしてやっておるわけです、これ両方とも。二つを一緒にやるということは、これは国民年金の側はとてもできないと思うのです。現在国民年金の納めている保険料というのは、この一月から月千百円に実はなるのですが、五万円水準年金を完全積み立て方式でいきますと、これは四千円くらいにほんとうは上げなければいかぬのですよ。ところが、現在国民年金は九百円しか取ってないのです、この一月からは千百円。ですから、かりに賦課方式に切りかえるとなると、国民年金の負担というものは一躍ものすごいものになるはずでございます。ものすごい数になるはずです。現在ですらよけい取ってないのですから、これを現在保険料を納める方々に、全部老齢者の方々の年金を、五万円年金をめんどうみなさいということになったら、これはたいへんな金額の保険料を納めなければならぬことになります。ですから、私は、切りかえるとすれば、厚生年金のほうは切りかえが楽でございます。ある意味から言うとまだ楽でございます。国民年金はいまとてもできません。現実問題いまの保険料の千百円を一挙に四千円も五千円も上げるということはとても――積み立て方式ですら四千円くらいに上げなければならぬ計算になるのを千百円きり納めていただいてないのです。ですから、国民年金をいま直ちに賦課方式に切りかえるということになったら、現在のすでに保険料を納めている方々の保険料を一挙に何倍も上げなければならぬ、これはできないと私は思います、実際問題。で、厚生年金のほうは、ある程度の積み立て金を持っておりますから、切りかえはやろうと思えば早くやれると思います。  しかしながら、これには私は問題があると思うんです。一つの問題は、十年後、二十年後になったときにその時代の保険料を納める方々の負担がやはり非常に重くなるということがあります。非常に重くなりますが、国民年金の負担増額に比べりゃこっちのほうがまだ低いです。これは低いです。ですからこっちのほうは多少わかります。しかし、一面また考えなくちゃなりませんのは、現在保険料を納めておられる被保険者の方々は、自分たちの老後のためと思って修正積み立て方式で保険料を納めているんです、現在の被保険者は。将来、何十年か先にぼくらは年金もらえるんだ、その一部として保険料を納めているんだという考えが全被保険者の考えだと思うんです。それを、いやもうそうじゃないんだと、いままでの積み立てた金もことしから納める金も全部現在の老人にだけあげるんですということについて、被保険者の方々の全面的合意を得られるかどうか、これは私はやっぱり非常にむずかしい問題だと思います。しかしながら、そういう合意を得られるならば私は十年先だなんて言わなくても切りかえることは私は可能ではないかと思います。  でございますから私どももこれは検討しなけりゃならぬ問題だと思いますが、こういうことは、やはり問題は、これは財政の運用の問題でございまして、財政方式の問題です。ですからそういう財政方式の問題よりは、年金水準を何倍にするかということが私は先だと思うんです。年金額をいまの六十五歳以上の老人の方々に五万円年金では足りない、あるいは六万円の年金にすべきだ、七万円にすべきだという水準額をきめることが先であって、その水準額に見合って財政方式を考えていくというのが筋ではないか、こういうふうに私は考えておるものでございまして、財政方式には私はそうあまりこだわっておりません。こだわっておりません。必ず将来は賦課方式になるものである。しかしながら、いますぐやるとこれはたいへんな混乱を起こすのではないかということを申し上げておるのでございまして、要は五万円水準年金額をどの程度の年金額に上げることが適当であるという国民の合意を得られるか、これが先ではないだろうか、こういうふうに考えておるものでございます。したがって、財政方式について私はそうこだわっておりません。研究しようと思えばやれないことはありません。しかしながら、いま申し上げましたように、世代間の負担の不均衡をどうするか、それから現在保険料を納めている方々、さらにまたそういう方々が積み立てた金が直ちにもうことしからは全部いまの老人にだけいくんですよということについての被保険者の諸君の合意が得られるかどうか、その辺がむずかしい問題ではないか、こう考えております。
  97. 案納勝

    案納勝君 全く時間がなくなったので年金問題はあと一点だけにしほりますが、いま言われた賦課方式の問題に関係をするんですが、今日の修正積み立て方式でいった場合に、大臣の言われる幾らの年金にするかが先決だと言われるように、生活ができる年金にいつするかというのが先決だと思う。そのために賦課方式というのは私ども提起をしているわけですが、そのような年金、生活が維持できる年金が支払われる時期はいつになったら可能なのかということがいままで明らかにされてきてないんです。  私がここでお聞きしたいのは、今日年金給付額がわが国の場合GNPに占める割合は〇・四から〇・五ぐらいだと、推定でいきますと。国際水準では五%ぐらいいって、すなわちわが国に比べたら十倍ぐらいの開きがあるわけです。これが今日厚生省事務当局に言わせると、制度の未成熟だと言われるゆえだと、こう言われるんです。私は、国際水準並みになるのは今日の修正積み立て方式を移行した場合いつになるのか、どのように考えられているのか、あるいはさらに成熟のテンポを速めるためもっと具体策をもっていってしかるべきだと思いますが、これらについて、もちろん賦課方式を検討するかたわら今日の修正積み立て方式をとっているだけにこれについての見解を伺います。  それから最後ですが、賦課方式を検討するため、制度上の問題についてはあまりこだわらぬと言われています。が、私は、たとえば掛け金の問題についても、あるいはいま各種年金の統合の問題についても問題がその中にあると思います。これらについての討論はいずれ社労内でさらに続けるといたしまして、いま大臣が四十八年から私的諮問機関として賦課方式問題等を中心にして、民間の学者やその他を含めまして懇談会を発足されておると思いますが、私は大臣がそこまで今日四十八年度から検討されているならば、かりにそれが私的機関であろうとも、この国会の場に、これらの経過について中間的であろうとも、あるいはむずかしい問題があるということは私どもわかっていますが、どこに問題があるというふうに整理をされているのかといった問題私はこの際明らかに報告をしてもらうということが今日国民の期待にこたえる道の一つだと思いますが、大臣はそういうことについてどうお考えになっておられるかお伺いしたい。
  98. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 昨年皆さん方の御協力をいただいて成立いたしました五万円水準年金というのは、標準報酬の六割というのを基準として五万円水準年金というものをきめたわけでございます。この額というのは西欧諸国に比較して劣っておる金額ではないと思っております。ILOの最低保障の条約においても、平均賃金の幾らとなっております。日本は標準報酬でやっておるわけです。標準報酬の六割です。ということになりますと、ILO条約の平均賃金のあれは四五%。ということになりますと、日本の五万円水準というものは、向こう並みの平均賃金と比較いたしてみますと、ひとつも劣ってないということを私ははっきり申し上げることができると思います。  ただ問題は、物価スライドということをやっておりますために、物価の上昇分だけを見ますね。そこで賃金関係をどう見るかというのが一つそこに問題があるわけなんです。すなわち標準賃金の六〇%、標準的な基本的な標準報酬の六〇%、その中に賃金の動向をどう今後加味していくかという問題があるわけでございます。それは財政再計算を五年ごとにやるということになっておりますが、五年ごとにやるということは最近における物価上昇の賃金の上昇の激しいときには、これは私は適当ではない。五年ごとにやるというのは繰り上げてやるべきである。私は個人的に考えてみますと、大体五十一年度の冒頭にはやはり賃金等も加味した財政再計算をやるべきである、こう私は個人的にいま考えておるわけでございます。  そこでそういう問題はありますが、それ以上のことは申し上げませんが、そこで賦課方式の問題でございますが、これは私ども十分検討しなければならない、検討もいたしております。そこで社会保障長期計画という私的懇談会においていろいろ御検討願っておりますが、特に年金問題について一番なかなか結論をすぐ出せない問題は、将来の日本の経済の動向がどう変わっていくか、物価がどう変わっていくか、賃金がどう変わっていくか、この辺の見通しが五十年、五十一年、五十二年、これは三カ年を通じて経済成長がどの程度になるのか、物価がどの程度に動いていくのか、賃金がどうなっていくか、これがなかなか見通しが立たない。そういうところに一番の年金については問題がある、こういう御指摘をいただいておるわけでございます。しかし、いつまでも見通しが立てられぬというのもどうであろうかということで、ある程度の腰だめで将来の経済成長は六%かな、七%かなというふうなことにして積み重ねて近く中間報告をしようかというところまで来ておるわけでございます。年金についての一番の難点は経済の見通し、物価の見通し、賃金の見通しについていまの時点で確たる数字を出すということは非常に困難ではないか、これが一番の難点と承知いたしております。
  99. 案納勝

    案納勝君 それじゃ、もうこれで終わりますが、いま言われた中間報告が出れば、その中間報告について私どもに提起をしていただけますね。  そこで最後ですが大臣にお願いをしたいのは、きょうは時間がなくてこの程度に年金問題はしましたが、どれ一つとっても、私は今日の段階では緊急な課題であり、しかも今日のような状態を続ける限り、私は社会ニーズに追いつけないだろう、こういうふうに考えるのです。政治がテクノクラートの集団の積み上げを追認するだけでなくして、もうこの段階では政治決断の段階だ、こういうふうに思います。そこで、先ほど大臣にいろいろ所見をお伺いした中で、五十年度の新しい予算を編成する、あるいは政策を決定する段階に、今日までの概算要求、これにとらわれずに、私は社会保障制度の充実のために全力を尽くしていただきたい、こういうようにお願い申し上げまして、年金問題を終わります。  次いで、時間がありませんが、四頭筋短縮症の問題について、幾つかお尋ねをしたいと思います。  もうすでに、厚生省の場合には、四頭筋短縮症についてのある程度の検討が進んでいるとは思います。今日あまり全部は申し上げませんが、厚生省は今日までどのような実態を四頭筋短縮症について把握をしておるのか、原因は何だと理解をしているのか、そして、これらについての責任の所在をどう考えるのか、この三つについて、まずお答えをいただきたいと思います。
  100. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 実は四頭筋短縮症につきまして実態の把握について示せということでございますが、これにつきましては、この診断基準というようなものがやはり公にこの疾病の存在を把握するためには必要でございまして、若干時間がかかりましたけれども、最近都道府県に対しまして診断基準をお示ししたわけでございます。そのほかにも、特定な医師団等が検診等をお進めになっておりまして、その中から、約五千人ぐらい、あるいは一万人というような数字が出ておりますけれども、その診断基準に基づくところの把握のしかた、たとえばしり上がり現象の中の角度をどこにとるか等のことで、今回はまあ六十度という角度を示しましたが、これは考え方によっては、九十度でも、この患者なりあるいは障害のある者と見なすべきだというようないろいろな見解がございます。けれども、われわれといたしましては、研究班の最終的な御意見に基づいて、今回の診断基準では、まあ一例でございますが、六十度というような角度を基準としてお示ししたわけでございます。このようなこともございますので、正式な意味の実態把握は本年度一ぱい、都道府県において、それぞれのお立場で検診を実施した結果把握できるものと思っておりまして、現状におきましては、個々の山梨県、富山県等の御報告のある、現状で一部把握した御報告の数字程度でございまして、先生の御要望の実態としてお答えするには、まだ把握していないというふうなのが正式なお答えになろうかと思います。  それから、原因の問題につきましては、大体四頭筋短縮症という名前と、拘縮症という新聞記事などといろいろございますが、われわれが学者の意見を徴しますと、短縮症というのは従来学界としては、外国などでは比較的多い先天性の疾患に対して短縮症という名前を使ってきたので、今回のように注射が原因であると思われるケースについては、拘縮症という名称を学界としては使うのが正しいというような御見解がございます。したがいまして、先天性のものは一部にもありましょうけれども、わが国はむしろこの問題については、二十年来学界の発表等もございまして、注射がその原因であるというようなことについての御見解はほぼ統一されたものと思っております。ただ、注射という行為だけでなく、最近特に新しい見解として、注射液の問題等の御指摘もございます。それから具体的には、抗生物質等の多用されるような時代になったことによる発生の多発という傾向についても御指摘がございます。あるいは専門的には、抗生物質と解熱剤とを混合するということによって起こり得る可能性の御指摘等もございまして、そのほか山梨の例などでは、大体同じような注射を受けたケースの四人に一人ぐらいの割合で発生しているということから、いわゆるたとえばやけどをしたあとなどが、皮膚が固まってくる人と、わりあいなめらかになおる人と、これをケロイド体質というようなことばで呼んでおりますが、その受けるからだの体質というような問題についても議論がございまして、先生の御要求の原因について、端的に注射が原因であるということについては、大かたの見解が統一されておりますけれども、細部にわたってのこまかい原因論については、今後の検討に待たなければならないと思っております。  それから責任の問題でございますが、これにつきましては、医療中身の個々の医療の問題でございますので、たとえばいま申し上げました原因論にまつわるもろもろのところに何か具体的な責任の所在の問題が出てくれば別といたしまして、現在においては、われわれの見解としては、個々の医師患者医療内容ということにかかわった問題点でございますので、にわかに責任の所在というものを端的に固定的にこれをきめつけるわけにはいかないというような考え方に立っておりまして、この問題については、原因究明の関係等もあり、今後の問題点であろうと思っておる次第でございます。
  101. 案納勝

    案納勝君 私のところへ厚生省の指導の今日国がとった対策について連絡をいただきました。いま御指摘をされましたが、この原因が注射であることはほぼ間違いないというのは、医師会の見解の中にも明らかにされている、また溶血性の抗生物質の薬、これらについての指摘も今日あるやに聞いております。しかしいまあなたが答弁をされましたが、二十年来この四頭筋問題については、わが国の中には出てきていたわけですね。今日ほど社会的問題にはなっていませんでした。そして今日言われるところの自主検診のお医者さんや、あるいは子どもを守る会の皆さんたちの運動というのがたいへん広がっています。この中で、あなたが言われているように、都道府県で調査をして、ことし一ぱいに把握をすると、こう言われる。そしてその責任の所在は、これは個々の医師にかかわる内容であると言われる。しかしこれはあくまで、時間がないから、私も残念ですが、医者のつくった注射によって出てきた病気であることは間違いない。したがって、それであるとするなら、現在でも同じように、かぜを引いた、下痢をしたというだけで、今日国民の間に注射が行なわれ、幼児に注射を行なって、こういった症状の患者が、あなたが調査をしている間に続出をしているということだってあるかもしれない。私は、この責任の度合いというのは、こういう医者がつくり、あるいは実際に治療をする今日の保険制度医療制度の中の乱診あるいは乱療の中から出てきた病気である、こう断定せざるを得ない。厚生省は、そういう状態、国民の健康を守る厚生省が、いままで放置をして、さていまごろになって、ことし一ぱいにかけて各都道府県で実態の調査をしてもらいますなどということは、私はまさにその責任をどう考えているのか、こう言いたいんです。まずとらなくちゃならないのは、いまこの原因がきわめて乱診乱療の中に出てきている医療制度の欠陥で出てきた病気であるとするなら、直ちにこれについて全国の医者に対して厚生省行政指導をやる。たとえば診療指針や、あるいはここにありますが、通達等によって直ちにこれらについて差しとめなり、これらの状態が起こらない措置をするのが今日とるべき手段じゃないでしょうか。そして、しかもこの中に厚生省が指導した中で、いま保健所において乳幼児及び三歳児の一般健康診断において、これらについての検診を行なえということです。私が持っているカルテの中では現実に、幼児というよりも十歳、十二歳、こういった少年期に入っている人たちにこういう症状を持っているのが多いんです。言いかえるなら二十年間あったんだから、いまの成年男子や成年者の中にもこういう症状を持って、歩くのも苦痛、なかなか飛んだりはねたりもできない、数多くの症状で苦しんでいる人たちがいるわけであります。私は厚生省は直ちにこれらについての原因が、いま言われたとおり、主要な原因が明らかなんだから、全国の医者に対して、これについて直ちに行政指導、医療指針を出すと同時に、これらの検診については、国が責任を持ってすみやかに全国で一斉に行なう。それらについては広報活動やその他によってできるだけの措置をとって行なうということが、いま具体的にされなければならないんじゃないですか。いまあなたの言われているものを聞いている限り、あるいは私のほうへ説明をされている省の行政指導を見る限り、そういった健康を守っていく厚生行政としての私は熱意と誠意がないと思いますが、この辺についてどう考えますか。
  102. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 先生の主要なる問題点は、注射をやめさせるというような一つの指針を、通知を出すことが必要だというようなことでございまして、私もこの問題につきまして、いろいろの御質問もあり、交渉、あるいはお話し合いがあった中で検討いたしましたが、本症の原因が非常に先ほど申し上げましたように、まださだかでない。この問題については当然研究班として研究を続けまして、これらの見解が当然、医師注意を促す必要のあるかなり共通的な問題点として指摘される事項が出てまいりますれば、この点について積極的に検討いたしたい。たとえば医療の個々の問題について過去に通知を出した例は、ペニシリンのショック問題が起こったときに、ペニシリンを打つ際には、少量のまず試験テストをしてから、本人にアレルギー現象がないことを確かめてから打ちなさいということについて当時通知が出ております。それから、医師法二十四条の二で、一般医師の守るべき事項といたしまして、輸血の問題につきまして、一定の守るべき準拠が厚生大臣から示してございます。これ以外に個々の医療の問題でございますと、たとえばたいへんな多くの注射を打っているというようなケースで、ぜんそくの子供などが注射以外には効果のないようなケースもあるかもしれません。そのようなことで、個々の医療はその時々刻々における医師判断において行なわれておるものでございまして、今回の研究班の結果、共通的に医師注意を払うべき事項等が確認されますならば、これに基づいて従来と同様の行政的な通知を出すことについては、私は検討しなければならないと思っておりますが、現状、ただ乱用をするなというような一般的な通知では、われわれが行政通知として出すものといたしましては、それぞれ個々のケースによっての対応のしかたがある医療中身の問題といたしましては、慎重に考えなければならぬというふうに思っておる次第でございます。
  103. 案納勝

    案納勝君 もう時間がないけれども、ちょっと最後に。
  104. 前川旦

    委員長前川旦君) 案納委員、時間が経過しております。一問ですか。案納君。
  105. 案納勝

    案納勝君 あなたは、原因が出てまいりますならばと、こう言われる。しかし、一般的にいって、幼児でかぜや下痢の患者、注射を、平均注射――ここに私は資料があるのですが、これは山梨ですが、五十六本打っている。こういうことが正常な状態で考えられますか。また、ここにカルテがありますが、二百本、五百本という人だっているんです。そして、あなたが言われるように、注射が主たる原因であることは、いまも指摘されたとおりですよ。それならば、いま研究をしまして、そうしていまからその結果が出れば指導しますじゃないんだ。こういう患者が今日全国で推定される六カ月前の状態でも十九万四千名おると言われているのです、最近の状態で。これほど社会的――しかも責任は、私は医者の個々の責任についてとかくいま言っているのではない。厚生省の、健康を守らなくちゃならない行政機関が、でき上がって調べてまいりますまではできませんなんという答弁でやっているところに私は問題があると言うんだよ。直ちにあすからでもそういう気があったら注射を差しとめをするなり、具体的な措置を即刻とって、そうしてその過程の中で国民の健康を守る最も正しい道筋を考えていくのが厚生行政のあり方じゃないですか。私はこのことについて多くを申し上げたいのですが、たとえば検診についての医療費の全免、これを国が全部見るということくらい――いまこのサリドマイト患者の問題でもあれだけ問題になって、スモン患者の問題でも今日たいへん社会的問題なんです。そういう点について常にお役人根性でやろうとしているんじゃないですか、あなたたちは。国民の健康をどう考えているのか。すみやかにこの措置についてとるよう要望して、厚生大臣のこれらについての見解を最後に承って終わります。
  106. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 先ほど来医務局長がお答えいたしましたように、個々の医療内容にも触れる問題でございますから、私はやっぱりある程度慎重にしなければならぬだろうと考えております。しかし、私はやっぱり医療専門家でございませんから、十分専門家意見も承って、必要な措置は、必要であるというならばとらざるを得ない、私はさように思います。
  107. 前川旦

    委員長前川旦君) それでは、午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時三十八分休憩      ―――――・―――――    午後一時三十一分開会
  108. 前川旦

    委員長前川旦君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  午前中に引き続き、昭和四十七年度決算外二件を議題とし、厚生省とそれに関係する医療金融公庫及び環境衛生金融公庫の決算について審査を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  109. 松岡克由

    ○松岡克由君 厚生省に美容整形についてお尋ねしたいと思うんです。  まず初めに、美容整形外科の発展と医療体系における位置づけということを問題にしてみたいんです。御承知だろうと思うんですが、近ごろ病気というものになってから医者にかかるということでなく、美容整形に見られるように美しくなりたいというところから手術をする。昔、いまから十年ぐらい前ですと、女優だとかモデルが自分の商売上そういったものが必要、美というものが金銭に換算できるということから始まったんですが、いまやそれが一般的にまではやりになってましてね、特に水商売などの女性というのは、大臣などあまりそういったところへ行ったことがないと思うんでございますがね、ほとんど整形をしていると言っていいくらいの状態なんです。私はわりと詳しいので、一見するとこれはどこの病院でやったとか、これはだれの医師にかかったというのがわかるくらい私は知ってるんです。  そこでですね、大体都内にいま幾つぐらいこういったものを対象としている病院ですね、たいへんふえていますが、どれくらいあるか把握していらっしゃいますか。
  110. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 診療科名としての標榜が整形外科だけがその範囲として許されておりまして、おそらく整形外科の標榜の中でございましょうが、お尋ねのどのくらいいわゆる美容整形をやる医師がいるかは実態はつかんでおりません。
  111. 松岡克由

    ○松岡克由君 ざっと調べたところによると、この東京の中に、それも繁華街、三十五から四十という数字がある。たいへん多い数字なんです。全国で大体百二十ぐらいですから、そのほとんどがこの都市に集まっているわけですね、東京というこの繁華街の中に。  そこで、素朴なことを伺いたいのですけれども、美容整形というのは、整形というのは、内科、外科または小児科、眼科というような独自の診療科目になっているのですか。
  112. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) なっておりません。
  113. 松岡克由

    ○松岡克由君 人間の生活というのが非常に多様化してまいりますと、いろんなふうに発展してくる。たとえば衣類一つとっても、これは防寒具だけでなく、一つの自分を飾るというふうに転化する。まして食事もそのとおりで、飢えを満たすだけでなく、豊かな豪華なまたは楽しい食事というように変わってくるから、人間一つの美しくするという、美に対する美的欲求と言いますかね、これは当然で、現に外国などはたいへん盛っておりまして、特に米国などはこれはもうたいへんな隆盛を見せているわけなんでございますね。だから私は、厚生省がどう考えていようと、これはどんどんどんとん予想に反する――予想していらっしゃるかもしれませんが、急激なテンポでふえていくということは当然考えられるのですね。これを私は皮肉な言い方をするようですけれども、あまり把握していらっしゃらないんではないか。悪く言うと野放しにしているんじゃないか。だから、どんどんどんどんふえていくということを考えられる美容整形の、整形界とまでいきませんが、整形のほうの動向をどう考えてこれからどういうふうに対処していくか、その基本的な意見をちょっと聞かせてください。
  114. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 先生のおっしゃるような人間の欲求が、医療行為を求める範囲においてもかなり拡大していくことは私も先生のおっしゃるとおりだと思います。そういう意味で、美容整形というものを将来わが国の医療の中でどう位置づけしていくかということがたいへん問題だと思いますが、実はその周辺の関連として、たとえばやけどのあとの皮膚を復元する、できるだけもとの状態に戻す、あるいは奇形で生まれた兎唇ですね、そういうようなものの手術をする。こういう各科、外科から耳鼻科、眼科にまたがる各科にかなり前からそういう分野の専門的なものが出て、大体医療大学の講座の数にして約二十、わが国の病院にして約四十の病院が形成外科という診療の担当をきめておるその姿が出てきております。この形成外科というのは、御存じのような整形外科――運動機能を主とした整形外科とは違いまして、いまのような人体の復元を主たる目的としたこの分野の方々がやがて専門的な医師としての認定制度をつくろうというようなことを学会が検討しておられるように聞きます。  そのときに、私の耳にしている点では、美容整形というものは基本的に狭い従来考えておった医療行為であるかどうか、こういう議論も含めまして学会の中では、形成外科学会の中で美容整形、従来先生のおっしゃる美容整形というものをその分野に入れるかどうかということについて議論をしているようでございますが、私の受ける感じではやや否定的である。外国などでも国際形成外科学会では美容整形というものを独立させようという運動もあったようでございますが、まあ中に取り込んで、一応国際的には美容整形外科というものについて、取り扱いについては独立した考え方でなくていっているようでございます。いま申し上げた形成外科学会が将来この分野をどのように取り上げるか、いわゆるからだに障害があったものの復元ということであれば、明らかにこの従来の概念の医療行為でございます。確かに先生のおっしゃるように、医療行為というものの範囲、医療の概念というものの範囲というものは広まっていくということは否定しがたい問題でございます。われわれとしては、この正常のからだの美容のためにこれに医療行為を加えるのは医師でなけりゃならぬということはこれは間違いないと思いますけれども、これをどのように今後取り扱っていくかということは非常に学会等の動きともからんで検討しなけりゃならぬ問題だというふうに思っております。
  115. 松岡克由

    ○松岡克由君 そうすると、いまのところ見守っていこうというようなことに受け取れますわね。見守るというのは一つの処理方法かもしれませんが、見守っていけないような状態が、どうしても取り組まなければならないような状態にいやが応でもきてしまっているこの事実をどう対処していくかということなんです。たとえば医師に言わせると、美容整形外科なんというのは軽べつするんです。したがって、やっぱり一緒にしていきたくないと。整形という、交通事故や何かで顔が曲がった、いわゆる生まれたために不幸であった、三つ口だ、やれあざが出て生まれたというのをなおすということにいなやはないが、根本的に違う。要するに鼻を高くせい、二重まぶたをつくれ、胸を豊かにせいというのとは違うと、それは確かにわかるんです。片やもう必要に迫られているのと、そんなことしなくったっていいじゃないか、親からもらったからだになぜそんなものをつけ加えるんだという根本的な精神的なものが加わりましてね、どうしても軽べつしている事実があるんです。あるけれども、こんなふえてきているこの現実を把握していかないと、やはり美容整形というものはどんどんどんどんふえてくる。これはあとで述べますが、これはやはり把握してある程度予想を立てて処理していくような気概がないともっともっと私は混迷してくると、いまのうちにある程度のものをつかんでおかないと処理のしょうがないわけだ。しかたがないからいま外科の中に組み入れているようなもののね。  たとえば、本論に入りますけれども、美容整形を受ける者は、早い話がからだに欠陥がないわけですからね、そうですね。だから、結局いま言うとおり、鼻を高くしたい、二重まぶたにしたいという、つまりこういう欲望が前提になるわけですね。早い話が五輪五体満足な人なんです。ところが、現在の医療法第一条の病院診療所の定義によりますと、診療を受けるのは「傷病者が」とこうなっておりますね。そうすると、この美容整形を受ける者は傷病者でないことはいま言うとおり明らかだ、五輪五体満足なんですから。それは当人にとってはコンプレックスあるかもしれない、とにかく満足なんですから。これを美容整形を病院でやるということになると、この医療法にこれ触れるんではないか、抵触するんではないかというんですが、この辺の厚生省の見解はどうなんでしょう。
  116. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 確かに医療法の第一条では、病院の機能として、「傷病者が」「適正な診療を受けることができる便宜を与えることを主たる目的として組織され、且つ、運営されるものでなければならない。」と規定されておるのでございますが、これも条文の解釈にはいろいろあると思いますけれども、先ほど申し上げましたように、医療の概念というのは健康診断的な、自分としてはまあこうだとある程度思いながら病院で健康診断をしてもらうという卑近な例も含めまして、医療というものの概念がリハビリテーションとかあるいは精神医療の範囲などともなりますというとかなり広範なものになってまいります。一部にはいろいろの病院機能というものを――この規定は最小限の一つの基準というものを示したのであって、したがって傷病者の取り扱いでないものまで取り扱うのはおかしいということでなくて、やはり医療の概念というものは拡大されてきたものである。したがって、この美容整形というものも狭い意味医療行為であるかどうか、いろいろ議論あるところだと思いますけれども、現状において病院許可を受けたような施設で行なうことがあっても、これは違法性があるとまでは断定することはむずかしいんじゃないかと思います。
  117. 松岡克由

    ○松岡克由君 断定しにくい立場にあると思います。現行があるんですからね。しかし、鼻を高くしてくれというのと、二重まぶたにしてくれと来ることと、どっかからだに悪いところがあり不安を感じるというものと私は根本的に違うというのは心情的にわかるでしょう、それは。だから、これが一つの根本的な原因にこれから広がってくるわけなんですのでね、後ほど意見を言いますが、その参考として、やっぱりいずれは分けていかなきゃならないような、独立したものをつくっていかなきゃならないような羽目に来るんじゃないかと。意見をこれから展開させますから、ひとつその上でものを考えてほしいし、厚生大臣はあんまりわからないから聞き手に回ると言ってましたからあえて質問しませんが、ひとつ聞いていてほしい。居眠りぐらい少しぐらいけっこうでございますから、あんまり寝込まないようにひとつ聞いていただきたいと思います。  次に、医療法第七十条ですね、診療科名の規定がありますが、その中に「外科、整形外科、脳神経外科」とこうなっているんですが、これは私の調べたり記憶したりしているところによりますと、当初これ外科一本だったじゃなかったですか。そうでないですか。つまり整形外科というのが独立したのはいつごろなんですか。最初から独立してたんですか。
  118. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 整形外科は昭和八年に旧医師法が改正されて、現在のような標榜科名の制度ができた当初から認められておったというふうになっております。
  119. 松岡克由

    ○松岡克由君 まあ、それはそれとして、ことばがダブリますけれども、整形外科というものは、いま言うあざだとか、それから三つ口の方なんかがある、それから耳の小さく、あんな生まれてしまった不幸な――それから交通事故による骨折、要するに治療を行なうことであって、その対象はやっぱり傷病者とこれはもう言えますわね。完全に治療を受けに来る人だと、だれが見ても、第三者の普通の人が見ても、ああこれは整形外科にいくもんだなというのわかるし、そういう状態になったらすぐ整形外科に親も連れていくでしょう、友だちも連れていくということでもって納得できる。ところが、私は、しわを取りに来たり、近ごろまあ隆鼻術ですね、それから乳房の拡大だとか、場合によっては処女膜の再生なんてのが非常に盛んになっているんですがね。こういった美容整形が入ってきたと、これは根本的に私は差を認めざるを得ないんではないかと。もっと露骨に言うと、交通事故でもってけがをなおしてくれというのと、曲がってしまった鼻をもとへなおせというのと、銀座のホステスが鼻を高くしてくれというのと私は根本的に違うというのはどうしようもないんじゃないかと。私はそういうところが一緒になってきていることに今日の医療体系の混迷があって、行政をしにくい面が出てきているのではないかということを心配するんですけれども、どうでしょうね、この際いろんな障害、あとから言いますけれども、弊害など、美容整形外科というのを独自な科目につけ加えざるを得ない状態にやがてなるような気がするのです。だったら、いまからもう考えていたほうが行政指導がしやすいと思いますが、これ、やりとり聞いていて、厚生大臣、どうですか。
  120. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 美容整形を現状において診療科名に採用することについては、私はやはり広がっている範囲、担当し得る医師の数その他からいって、歴史的に見ましても診療科名の標榜の医療法改正による手続というものからの従来の概念からいって現状では無理だと、ただ将来の問題について、外国などでは美容の関係の外科というようなものを独立させておるケースもなしとしません。したがって、わが国の診療科名の標榜の問題が基本的に実は検討する必要があるという問題のほかに、かなり細分化されている外国の例と、それから医師があまりに専門、細分化されることに対する逆に弊害が外国の医療の中にも出てきております。そのようなことを踏まえまして、現状近々のうちにこれが標榜科名として認める方向というものは私は困難だ、従来の行政判断からいって困難だと思いますけれども先生のおっしゃるように、医療要求の多様化、そういうようなものを踏まえて、しかも形成外科、これに非常に関連の深い形成外科の学会が、自分たちがちょうど麻酔医と同じように厚生大臣許可を得て標榜するという七十条の手続のうちの特定なものでございます。従来はこの医療法の改正を国会等でいたしまして、診療村名を、ただいま問題になっているのは神経内科というのが問題になっておりますが、そういうような七十条のところに書き込むことだけで済むものと、もう一つは特定な認定制度を設けて厚生大臣がその標榜を認めるというのがあります。これの唯一の現在行なわれているのが麻酔医でございます。形成外科学会は、この麻酔医と同じように学会の意見を聞いて厚生大臣の定める認定制度の中に、この形成外科学会――整形ではございません、形の成る、形成外科学会のほうの要望が出てまいっておりまして、これはわれわれも行政的には検討いたしております。そのものとの関連で議論することが最も当面の場としてはよかろうというふうに考えております。
  121. 松岡克由

    ○松岡克由君 そのいま言うとおり形の成る形成外科ですね。これはまあこの新しい分野をつくろうという動きは調べてみるとなかなかあるんですね。東京の警察病院長の大森清一氏ですか、これはこの人なんか積極的なその提唱者であって、つまり復形といいますか、もとの形になおす手術と、それからいま言う美しくなりたいというものを満たす美容整形外科ですか、これを統一して、いま言う形成外科というのをつくろうというのがある。いま困難ではあるけれども、将来やはりやっていかなきゃならないというようなおそらく展望はあると思います。その展望がなかったら全く困るのであって、その展望の事実がもう一ぱい、いま言った三十五もありましてね。そういう外科が、あとで述べますが、その外科に行って外科の手術頼んだってやってくれないんですわ。やりゃせぬです。書いてありますよ、いろいろ眼科だとか、やれ小児科と書いてありますが、そう言って目をなおしてくれって、なおしゃせぬですよ。全部鼻を高くしたり、まぶたをなおしたりする医師ができ上がっている現状ですね。それが全部違反を犯している。後ほど言いますが、全部違反を犯しているんです。これを押えていくためには、行政指導するためにはどうしてもつくっていかないとならないんではないかと、こういうことです。  それからいろいろ弊害が実際に出ているんですけれども、ところがなかなかこれ出にくいんですわ、氷山の一角になってしまう。ということは、変な例ですが、性病と同じようなもので、あんまり自慢のできるものじゃないんですからね、隠したがる。まして対象が若い女性であるということになりますと、なかなか出ないんですなあ。プライドというものもありましてね。したがって、あんまり出てこないだろうから把握してらっしゃらない分もある。それは同情するとして、どのくらいの美容整形における費用状況出ているか、ちょっとそれどういう情報の収集をしているか聞かせてほしいんです。出ておりませんか、被害が。
  122. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 一般的に医療事故なり被害の問題というのは、事故の明らかなものについては行政処分等の関係もございましてこれは上がってまいりますけれども、一般に医師患者の信頼関係の中で行なわれて、そこにトラブルが起こってきたというような問題については話し合いで解決されるようなケースがございます。これは行政的の情報として把握することは困難でございますし、現在つかんでおりません。まして先生指摘のように、美容にまつわる医療行為からのトラブルについてはわれわれとしては情報はございません。
  123. 松岡克由

    ○松岡克由君 ことしの八月なんですが、これは東京のさる病院と言っておきましょうか、H整形外科と言っておきましょうか。これは患者が手術の結果死んじゃっているんです。これ、情報把握しておりますか。把握してないわけですね、いま言うとおり、八月に。これ、調べて資料提出してもらえますか。ささいなことかもしれませんが、どうですか。
  124. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 先生情報を明らかにしていただければ、東京都を通じて、医療の問題でございますと大体の法律の体系が都道府県知事となっておりますので、そのような実態について先生から具体的な御要求があり、具体的な病院名、患者氏名等が明らかになれば東京都と相談いたします。
  125. 松岡克由

    ○松岡克由君 いままでも裁判ざたになったのがずいぶんありまして、ちょっと調べたところで、昭和三十八年の二月九日、これはある女性なんですが、都内の整形外科病院で乳をふくらます豊胸手術といいますかね、胸を豊かにする手術をやったんですね。これはワセリンを注射するらしいんですね、注入するんですがね、この注射針が血管に入ると血液中に異物が挿入されて大事故になるということは医学上これはもう常識なんですけれども、それにかかわらず、この医者というのが注意を怠ったんでしょうな、血管内に多量のワセリンをほうり込んだと。もちろんこれ二時間後にショック死ですわ、この二十三歳の女性がですね。これ、渋谷の簡易裁判所では業務上過失致死事件ということにしまして、被告医師に五万円の支払いを命じているんですね。  それから四十六年の四月の十九日、これは大阪の地裁の判決によるものですけれども、これは某女性が、奥目といいます、大阪弁で。あの目の引っ込んだ方の整形を目的でやったわけですね。で、これ、整形病院でオルガノーゲンという、こうふやふやした物質、あれを両眼に入れたところが、これはまぶたが炎症を起こして不自然にはれ上がっちゃったと。で、これをまた出す手術をしたら、今度は成功しないで、かえってこれが醜いあかんべえしたみたいな状態になってしまったんですね。これが阪大の医学部へ飛んで行きましてね、それで手術をあとでやったら、何といいますか、注入物を取り出してあとをなおすというのをやったんですが、炎症はなおったんですが失明状態になっちゃったんですね、注射後に。それで注射液の誤りか注射方法の失敗かその辺はともかくとして、はっきり断定はできないんです、判断できないんですが、とにかく医師の過失によるものであるというので、医師すなわち阪大ですから国の責任を認めまして五万円余の支払いを命じたことがあるんですね。  私は、この裁判でいろいろ問題になっているこをこう調べたり感じたりしているものは、医師患者の手術契約というのは委任契約か請負契約かということになるんですが、普通はだれですか、我妻博士ですか、言うように、委任契約説というのをとっているわけなんですがね。それで一方においてはこの請負契約というのも考えてやっている医者もいるわけでございますがね。私は、どうなんですか、この美容手術の場合というのは、これはもう請負制度といいますか、請負式と言うんですかな、これにすることがたいへんにいいんではないか、それによって裁判所の見解というのが非常に明らかになってくるんじゃないかという気がするんです。まあこれは直接の問題でないかもしれませんけれども、どうでしょう、この美容整形というのが現にある事実における、またはこれは復元するほうでもいいですよね、美容とまでいかなくても復元のほうでもいいですけれども、私はこれは請負にするほうが処理しやすいと思います。この意見に対してどうでしょう。
  126. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 法律の担当の医事課長に答えさせていただきます。
  127. 手塚康夫

    説明員(手塚康夫君) 先生のおっしゃることはよくわかるんでございますが、確かに一般の診療行為、これは契約であることは確かでございます。その契約がどういうものであるかということについて、学問上いろんな学説確かにございます。しかし、その辺ちょっとお考えいただきたいのは、まず実態があるわけでございます。そこに法律ができる、それで法律関係ができます。その法律関係というものを学者が分類整理していく、これが学問上の分類でございます。したがって、その分類、帰納的に出てくるわけですね。それでもって演繹的に何でも、たとえば委任となったからまずこうだと、請負ならこうだということになるわけじゃございません。  私事務的に申しますと、一般に多数説でいきましても診療行為は契約のどれに当たるかというのはだいぶ問題がございまして、準委任契約をとっている。請負説はきわめて少数でございます。ただ、先生もおっしゃっているように、美容整形については若干感じが違う。相手が患者ではない、合意で望んでくるという点でいけば確かに請負的な性格が強いと思います。しかし、だからといって、請負としてしまえばすぐそれですべての場合が請負かということになれば、たとえば三つ口の復元ですね、これは医師として完全になおすという請負はできません。したがって、最大限の努力をするということでございます。したがって、一般的に請負契約として、それから今度は演繹的にどうだという点は多少疑問があると思います。
  128. 松岡克由

    ○松岡克由君 美容整形というのは、聞くところによると、なかなかこまかいテクニック、高度の技術を必要とされるらしゅうございます。で、医者であればだれでもできるというものではないんですわれ。ただ根本的な相違というのは、普通の病気の場合はもとのようにそれをなおす、もとに近い状態にすれば成功であると。マイナスをゼロに引き上げればいいんだと。ところが、美容整形の場合、またはそうでなく交通事故なんかの場合で整形外科の場合に当てはめてもいいかもしれませんが、これは幾らかでもプラスにしていかなければいかぬ。まあ交通事故の場合はむしろマイナスでもいいですね。ところが、美容整形の場合は、完全に美しくなったという、事実高くさえなればなったということなんですから、プラスにしていかなければならぬという、ここに私は根本的な患者の立場――患者と言っていいか、五輪五体満足なんですから。またはその医師の立場の、普通の医者と根本的なプラスマイナスの違いというのがあるような気がするんですね。これが根本的な問題になっていて、いろんな諸問題が出てくる一つの原因ではないかと。ですから、こういうことを根底に考えてほしいということ、それについて質問を三点ばかりにちょっとしぼってみたいんですがね。  こういう根本を踏んまえた上で認定医制度を美容整形にとるという展望、または先でもいいし今日でもいい、そういう設ける考えはないかということが一つ。  それから医師関係の試験制度ですね、教育制度の中に美容整形というのを入れる必要はないのか。  それからもう一つ、専門学会、美容整形専門学会はいまあってもなきがごときみたいなもんですがね、まあ個々の病院検討している医師間のあれはあるらしいんですけれども、こういったものを、専門学会みたいなものを訓練させるような、助成するような考えはないかと。この三点について手短くひとつ答えてもらいます。
  129. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 認定医制度につきましては、先ほどお答えいたしましたように、これと非常に密接な関係のございます形成外科学会のほうにこの要望が出ております。で、この形成外科学会、美容、いわゆる先生のおっしゃる美容外科のほうを、美容整形をこの中に取り入れるかないかという問題の論議はこれは学会の問題になりますので、この点を踏まえまして、麻酔が認定制度も行なわれておりまして、形成外科がこの要望が出ておりますのでわれわれ行政検討いたしたい。そのとき学会が、美容整形の問題がその中に取り入れられるかどうかこの推移を見たいというふうに思っております。  それから医師の教育制度あるいはこれにまつわる国家試験等の問題についての美容整形の問題は、私は将来、長き将来はともかくといたしまして、現状では、医師の教育は基礎的な臨床につきましてもかなり基本的な問題を中心に講座が設けられておりますので、特定な大学で今後の発展によってはそのような講座の生まれる可能性は否定できませんけれども、現状の教育制度、まして国家試験制度の中にこれが取り入れられることはすぐにはなかろうというふうに予測いたすわけでございます。  学会等に対する助成制度は、ほとんどの学会には国からの、国際学会の開催等一つの事業に対しての助成はございますが、学会一般活動については助成策は通常はございませんので、この点についても同様に考えたいと思います。
  130. 松岡克由

    ○松岡克由君 そうすると、いまの答えから聞いていますと、この状態で続けてみていくよりしようがないということですね。そういうことですね。この現状に対して別に、頭の中では考えているだろうけれども、とにかくこの状態で静観せいと、こういうことですな。
  131. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 先ほど来申しましたように、形成外科学会がこの問題を議論することの中に、美容整形というものの医療の中における取り扱い、あるいは、まして医療法の中における取り扱いということに対してわれわれが学ぶものが出てまいろうというふうに思っておりますので、決して単なる傍観というのじゃなくて、それだけの機会は近くあるものと、そう遠くない機会にそういう場が設けられて、われわれもその見解を聞き判断できる時期があるだろうと、こういうふうに思っております。
  132. 松岡克由

    ○松岡克由君 そうなったときがなるたけおそくないことをその学会にわれわれ祈るよりしようがないんですけれどもね。ところがなかなか、さっきも言ったように、その美容整形というものに対する一つの軽べつ――軽べつばかりじゃなく嫉妬もありましてね、収入的なね、なかなかまとまらぬではないかという、やっぱり厚生省サイドのある程度の意見等、または行政指導ができなければ、一つのある事実を指摘しながら、こういう事実があるからこういうのがどんどん出てくるんだよと、私が指摘しているようなこともひとつそちらのほうでもやっぱり指摘していかなきゃならないときが来るんではないかと。そんな例を二、三これから申し上げますがね。  話はちょっと変わるのですけれども、欠陥医の問題、この間も二、三日前の新聞にも出ていたのですけれども、これは美容整形に限らずですがね、ミスをおかした場合、外国では非常にその責任というものに対してきびしく追及されていく、その辺たいへん寛大なような気がするんですけれどもね、どうなんですか。ここにこの間も、十月の二十二日ですか、この二、三日前ですね、これはごらんになったと思うんですけれども、かように悪徳医に甘い処分が、全然どしろうとに三十人ぐらいの盲腸の手術をさしてみたり、ばくちはやるわ、ばくちをやることは医者と関係ないといってもよくはないですわな。これ読んだらわかるけれども、たいへんに医者という、あんな芸人がばくちをやるのともっと違いますからね。やっぱり社会的には最も信用があるのがこれをやっていると、しょせん免許取り消しまでは無理だと、事件後の更生を誓うなんと言っているけれどもね。私は子供が自転車なんかに乗っかってぶつけたのと違って決定的なことをしているのだと。こういうものを含めまして、いままでに免許を取り消したという事実はあるのですか、この三年ぐらいでもけっこうでございますけれどもね、件数はどのくらいあるのですか、ちょっと知らしてください。
  133. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 免許取り消し処分は四十七年に一件ございますほかは、停止処分、戒告等だけでございます。
  134. 松岡克由

    ○松岡克由君 それから同じこれ七条ですか、医師法の。医師としての品位を損する行為があったとき免許の取り消しをするということになっていますけれどもね。品位というのは非常にモラルの問題ですから、やれどこであばれたの、けんかしたの、失礼なことを言ったの、ということは、なかなかこれはむずかしい問題なんですけれどもね。私は新聞か何か読んでいると思わずふき出したくなるような、笑ってもいられないような事件が出てくる。根本的なミスをおかしている例、幾らもあるんですね。この間、浦和の地検に起訴された――これは違うか、手術用のはさみを入れたまま縫っちゃったなんというのがあるんですね。こういうばかばかしい初歩的なことをやっているのですね。  笑い話にありますよね。はさみ入れて縫っちゃって、いけねえって、今度やったら、今度はガーゼを置いてきちゃって、またやったら、今度はメスを置いてきちゃって、また縫おうとしたら、患者が、先生今度はチャックにしてくれと言ったという話があるけれども、これは笑い話じゃなくて、ほんとうにこういったものが出て、腹の中にはさみを忘れてきた。ひどいもんだね。これは埼玉県の三郷病院ですがね。これ、胃の中のものを出そうとして吸引パイプですか、中にこれをやったんですな。ところがこれ、噴出用をつけたので、胃に穴があいて死んじゃった。だけれども、これはこういう事実、こういうのもやっぱり初歩的な医学の品位を損するところに入ると思うな。こういう事実がけっこう出ておるのですね。これがけっこうそのまま通ってしまっているという、一番卑近な例がさっき言う業務停止――免許取り消しまでいかない、わきへいっちゃまたすぐそこで忘れられちゃう、すぐ次にまたできるというような状態になっている。非常に医者の甘やかしみたいな現状を厚生大臣はどう思いますか。
  135. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) まことに遺憾なことでありまして、むしろ私は厳罰に処すべきものだと思います。
  136. 松岡克由

    ○松岡克由君 やっぱり人の命を預かっておる医者ですからね。いまほんとうに救急病院に行ったら助からぬよというような話があるぐらいでね。夜行った日にゃ酸素吸入のやり方も知らないような留守番を置いておくようなのがざらにあるんですよ。現にそこでアルバイトをやっていたというのが私のところに来たことがありましてね、談志さん、よしたほうがいいですよ、救急病院に行くのは。うちにいたほうがまだいいですよという話が堂々とまかり通るぐらいひどいんですわ。厚生大臣が事故があったときはいいところへ連れていくからだいじょうぶだと思いますけれどもね、一般はこれはえらい目にあっておるので、その辺をひとつもっとやっぱり厳重にして私は決して間違いないと思います。どうですか、厳重にせいという一言に対して。
  137. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) いままでの例に引かれましたように、明らかな過失等による事故につきまして刑事事件等において処分がなされた場合、行政処分としてこれを取り扱い、しかも医道審議会という審議会がございまして、そこの御意見によって厚生大臣行政処分をいたすことに定められておるわけでございます。これに対して形の上で一カ月あるいは二カ月程度ではおかしいんじゃないかという御意見も確かにございましたが、中にはすでに行政処分を受ける前の段階で非を悔いまして、僻地等あるいは離島等で診療に従事し、村民あるいは知事からも陳情が参りまして、この処分はやむを得ないけれども、なるべく軽くして、情状酌量してくれというような実態も踏んまえながら、医道審議会は、事実を申し上げますけれども、処分をきめていただき、それに従ってわれわれも行政手続をとっておるわけでございます。そういう意味で、その医師の個々の行為なり、あるいは絶対避けられないと申しますか、毎日のように全国で行なわれておる医療の中で過失というようなものを絶無にすることは困難な現状であろうとは思いますけれども、ただ、故意であるとか、あるいは非常に医療の事故以外の社会的な評価をこうむるような医師行為に対して処分を厳重にしろということについては、私は心情的にはその方向が正しいと思いますけれども、ただ、その間にいろいろの非を悔い、実情はこのような実態であるということで都道府県の知事、医師会長等の御意見を徴することになっております。これ等を確かめた上、医道審議会にはかって処分を決定いたしておりますので、われわれとしても今後処分は適正に実施するように努力いたしたいというふうに考えております。
  138. 松岡克由

    ○松岡克由君 たいへんおりこうさんな答弁で、私も向こうに回ったらそういうことをきっと言うんじゃないかと思っておるんですけれども、しかし、やはり事実こういう悪徳な、どう考えても、麻薬の横流しはするわ、にせの歯医者を置いといて、そこでやらせるわみたいなものが大量に出ておるのに、これを読んだ人はやはりこれが――いまの新聞というのはあまり事実でない分もずいぶんありますけれども、これはすなおに読んだらちょっと納得いかぬという事実があるということをひとつ頭の中に入れておいていただければけっこうでございます。  それから広告の問題をちょっと聞きたいんですがね。医療法の第六十九条、七十条で医業の広告制限または診療科目の規定というのがあるわけですね。これはやっていいとか、これはやってはいかぬということですね、わかりやすく言うと。これ、ちょっとこの間さる人が持ってきたんですけれども、これ週刊誌ですわ。「週刊明星」としてあります。これ一冊の中に何と整形外科がこんなにあるんですね。一冊の中ですよ。たかがこんな薄い、百科事典じゃないですよ、こんな薄い中ですよ、こんなにあるわけですね。全部これが整形外科の広告なんですね。それで美容整形とすると、これ違反でございますわね。それは書かないんですがね、一見見ると美容整形だというのがわかるようになっておるんです。これはかりにここに、遠目でもけっこうですけれども、「4つのラッキー」というのがある。それでまず「毛深い手足が15分で美しくなる」というんですね。それで以降、「ぬってバッチリ」――「ぬってバッチリ」ですな、縫うんじゃなくて塗るんでしょうね、「魅惑の二重瞼に」なる、「太い足・胴がすんなり!ぬって15分」でなおるなんていっておるんです。これは全部医者じゃないですね。いわゆる美容関係とかなんとかということで、それで最後に持っていって「五反田整形」なるものがあるんです。そうすると、これはだれが見ても外科の宣伝とは思わぬです、「4つのラッキー」といっておるんですから。こういう広告を堂々と出してくるんですね。だから、こういう事実ですよね、これはだれが見たって、どんな者が読んだって、これ美容整形の宣伝だと思いますわね。厚生大臣、これ、はなはだ遺憾であるでなくて、困りますな、どうですか。
  139. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 確かに先生のような具体的な御指摘からいきますというと、美容整形という文字が使ってございませんでも、広告全体から判断して医療法に抵触するというふうに認められる場合については、われわれとしては取り締まっていかなければならぬと思っております。ただ、その具体的ないまの例示については、確かにその整形という字句が、これは完全に美容につながっておる整形だという宣伝に理解できるという解釈と、なかなか議論のあるところだと思いますけれども、一般的には、われわれとしては単なる文字が使われている、いないじゃなくて、広告のあり方において、それが迷わすような考え方に立つならば、この点についてはすでに通知も出しております。ということは、豊胸術が数年前に問題になりまして新聞等で指摘を受けましたときに、都道府県に、雑誌等の広告についても具体的な事例については指導するように通知は出してございますけれども、その後具体的にこのような事例が出てまいるということであれば、この点について十分検討いたしたいというふうに思っております。
  140. 松岡克由

    ○松岡克由君 そんな失礼な。あなた、なに言ってるんだよ。「4つのラッキー」とまで書いてあって、これは三つのラッキーならまだいいですよ。完全にこんなもの、これ。だったら、世の中、法律にさえ触れなきゃ、見つからなきゃ何したっていいということになりますわね。そんなばかな。よくないです。もっと素朴に考えていいですよ。あなたのマイナスになりゃせぬです。よくないですよ、こんなもの。うそですもの。小さいことかもしれませんが、やっぱりこれ外科一般的な問題になりますので。こういうことですよ。  それから、それに加えまして、これは名称というのですか、これもそうなんですけれども、整形外科の中に「皮フ科、耳鼻科、眼科、泌尿器科」と書いてあるんです。これはおかしいんですが、整形外科の中に眼科の整形もやる、小児科もやるというんでなくて、どれ見たってみんなそうなんです。整形外科とあって、こういうふうになってるんですね。これは私は違反だと思いますがね、どうでしょう。
  141. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) いま申し上げましたように、字句が使ってない場合であっても、明らかにそれが医療法の広告制限に抵触するというふうに思われる、先生の御指摘の、整形外科を大きく表に出して、そこにある眼科、いろいろとあるということは、眼科とかそういうものの整形をやるんだというふうに受け取れるという御指摘についてはこれは否定できないと思います。したがいまして、広告の具体的なあり方の中で、表現等につきましても従来はこまかい指導は実はあまり具体例としてはいたしておりません。一般的に注意はしてきておりますけれども、具体的な表現についてはこれはどこまでが抵触するかいろいろ検討しなきゃならぬと思いますので、具体的なそのような例示でございますので検討さしていただきます。
  142. 松岡克由

    ○松岡克由君 けっこうですよ。だから、整形外科のほかに眼科や何かがあるという考えじゃないですからね。整形外科の中に眼科や何かがあると。早い話が、もっと具体的に言いますと、これ、飛んでいって、すみません、トラホーム――トラコーマと言うんですか、目が悪いんですけれども、なおしてくれませんかと言ったら一蹴されますよ、ここへ出かけていって。行ってごらんなさい。眼科って書いてあるから目をなおす、耳鼻科というからちょっと中耳炎――なに言ってるんですかって言われちゃう、事実。だから、まず一般常識としては、ここへ、つまり婦人科もあるから、お産をしに行くのはいないですよ、整形病院に。まずいないです。みんななおしてもらうのですよ。こういう事実を、幾ら抵触してないというような判断もできるだろうからといって、ほっといてはいかぬのです。いま局長いみじくも行政指導するように、注意するように言ってありますので、ぜひその結果に私は期待したいと思うんでございます。  それから近ごろ私これはちょっと気がついたことを言うんですけれども、テレビのコマーシャルでも何でも、医者は悪いのをなおすんでなくて、非常に不安を逆に与えているコマーシャルだとかが多いんですね。たとえば、あなた、どきどきしませんか、あなた、朝起きると目まいがしませんか、こういう状態になりませんか、これはここが悪いんです、この薬をどうぞ、みたいなことを言うんですね。だから、非常に医師医療ということが、なおすことのあり方が逆に不安を与える状態にしておる。なおすんじゃないんだ。それも確かに大事かもしれません。知らないうちに――病気というのは何を対象に病気というか、自分に自覚があるのを病気というか、わからなくても病気の場合があるのです。その辺はたいへん微妙な問題で、それをわからせることも必要かもしれませんが、ときおり、おひまなおりでけっこうですから、テレビだとかああいった広告を見ると、そういう部分がずいぶんふえているんです。こういったものをひとつ頭の中に入れていただいて、ついでのときというよりも、必要なときにはぜひひとつ注意をするようなことを願っておきます。  それから美容整形というのは、これは当然のことだが自由診療でございます。だから、非常にこれ高いんです。鼻が幾らの、おっぱいが幾らの、目が幾らのというもう相場があるくらいで、またその先生によって個人差もあるんですけれどね。だから、たいへんにもうかる商売なのです。だから、わりと華麗に遊び歩いております。それがいけないとかと言うのじゃないんですよ。まあもうかったから――そんなことはどうでもいいって言えばそれっきりですけれどもね、たいへんにこれはいいんですよ。だから、なりふりかまわずこんな広告ができるのです。こんな、できやしませんですよ、これ、ただじゃないですからね。それでどんどんどんどん金を使って、自分も新聞だか週刊誌のスペースを逆にもらったりしてまでやる、つまり甘い味がそこにあるわけですね。それでいま言うとおり、若い女性が対象になりますから、なかなか事故があっても表へ出てこないということですよね。この辺に非常に彼らの言う甘さ、要するに甘い汁があるわけなんでございますね。だから、これに対して心ある医師は何とかしてほしいと言っているのです。そのいい例がさっき言った大森先生ども私はその一人ではないかと思うんでございますがね。大森院長ですね、警察病院の。私はこういうことになってきますと、やはりこういう人がふえてきていることに対してちょっとほうり出しておいたんではないかと。この際ひとつ美容整形というものにも、いいほうに進むように、私は美容整形をつぶせと言うのじゃない、世の中多様化していますから、どんどんどんどん美しくなりない人けっこう。ひとつもうちょっと目を光らせてほしいと、これ、約束してもらえませんか。
  143. 滝沢正

    説明員(滝沢正君) 先生のお取り上げになりました美容整形の問題につきましては、先生の御指摘のようないろいろの問題点を含んでおります。ただ、われわれとしても、また私としても、きょう美容ということばを先生とのやりとりの中でそれをことばとして使っておりますけれども、問題はこういうものが本格的に議論されるとなりますというと、医の倫理の立場からいいまして、若い女性が美しくなるというようなふうに概念的にとるということも含めて、美容というような、これは訳語というふうになるのか日本独特のことばということになるのかいろいろ御見解はあろうと思いますが、そういうことも含めまして、先生指摘医療の幅が広がっていく中で現実にいろいろの場面があるということを踏まえて、医療行政の中で今後どのようにこれに取り組み、対処していくかということについて、たいへんいろいろ内容を含んだ御質問をいただいて、またわれわれもこれに、それぞれの場面あるいは行政の従来の経過、学会の御意見等もございますから、早急にどのような結果とかということはむずかしいと思いますが、いずれにしても、日本の医療の中のこのような、しかも医療の周辺に属する健康者のこのような問題が医療の中で行なわれ、医療の場で行なわれていることに対する認識を深めて行政上も対処してまいりたいというふうに思っております。
  144. 松岡克由

    ○松岡克由君 ただ、その先の問題と言うけれども、現実には出てきているから質問しているんで、全く現実になければ幾ら先の問題でもそうなかなか質問をしにくい。現にある。私は十年たつかたたないうちに絶対に問題が出てくるだろうという認識の上に立っている。おそらく局長もそういったこともはっきり言えないだろうけれども、その意見もわかるからこそいまのような返事も出てくるのだと私は思います。したがって、頭の中にこの美容整形が野放しになっている、一口に野放しですから、野放しになっているという状態を把握してほしいし、またその把握はしても、ついそういったものがどこに属していいかわからない、なまけ者じゃないけれどもあっちへ行ったりこっちへ行ったりしている、それから両棲動物みたいなもので、あっちへくっつきこっちへくっつきしているところに処理のしょうがないという事実がきっと出てくるのが心配です。それから私の想像によると、やがては――まあ医学というものは人間のしあわせのために尽くすのですから、美しくなりたいという欲望をキャンセルする必要もない、それは大いにけっこうだと思います、大いにけっこうだと思います。したがって、これも美を追求する医術、あってもいいと思います。これがやっぱり私は保険みたいなものにもやがて扱わせるみたいなことになってくるんではないか、ちょっとこれ飛躍しているのかもしれませんがね、なってくるような気がするのです。まあそこまでおそらく考えていないでしょうけれども、将来これを保険にするとかしないとかまでは考えていないでしょうけれども、やがてそういった問題がかかってきます。どんどんどんどんひとつ先に進むと、心配して別にマイナスになる分もないと思いますので、この美容整形、いま現実に若い女性の間でもって最も問題になっていることなんです、美しくなりたいというのは、最もその根底にあるものは。  ただ、なぜやらないかというと、何かやったら恥ずかしいというだけで、ところが、恥ずかしさを取っ払ったやつはほとんどやっちゃうのです。また、相談に行くともののみごとに恥ずかしくないようにするんです。いまこれいかにひどいかというと、若い男が試験を受けに行くのだと、試験を受けに行くんだけれども顔が青白いからやいてくれというのです。毛ずねがないから毛ずねをはやしてくれませんか。どうしました、いや、はやかしましたよと言っているのです。この間驚いたのは、うちのせがれは整形しましてね、なんていばっている親がいるんですね。ぼくらの感覚にとっては、自分の顔を、男の顔は履歴書なんていう文句があるが、三十には三十の、四十には四十の顔があるというのがわれわれのモットーだったんですが、そういうことは何ら当てはまらない。これがすべてとは言いませんが、まして若い女性にとってはとにかく美しくなりたいというその一点にしぼられているので、どんどん問題が広がるのを一つつけ加えて質問を終わりたいと思います。
  145. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 きょうは厚生省の管轄のあれでございますが、特に不良化粧品の販売等についてというテーマでございますけれども、きょうは特に最近マスコミ等で問題になっておりますいわゆるホリディマジック社、いわゆるマルチ商法について質問したいと思います。  そこで、特にアメリカのカリフォルニア州に本社を持っております訪問販売化粧品会社でありますホリディマジック社、昭和四十七年の夏に外資導入の申請をいたしまして大蔵省の認可を受けたわけでございますが、初めにきょうは、特に大蔵省のほうから認可したいきさつについて詳細にお伺いしたいと思います。
  146. 柳田桃太郎

    説明員柳田桃太郎君) お尋ねはホリディマジック社の件だと思いますが、この会社は昭和四十七年の五月十日にアメリカのネバダ州に資本金二万六千ドルで設立されましたホリディマジック・ジャパン・コーポレーテッドという会社が全額出資で日本にホリディマジック会社を設立したいという認可申請が出たのでございます。その事業目的は化粧品及び化粧用具の輸入販売ということになっておりまして、販売方法については特段の記載はなかったのでございます。当時、化粧品の輸入は個別審査案件となっておりましたので、通産省、大蔵省両省が審査をいたしまして、化粧品及びその用具の輸入販売であれば差しつかえはないということで、通例の条件をもって日本ホリディマジック会社の設立を昭和四十七年六月二十八日に認可をいたしまして、会社は四十七年の八月二十八日に設立されたものでございます。
  147. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ただいまの営業の目的でございますが、これはただいまの話ですと、化粧品及び化粧用具の輸入販売ということになっておりますが、通産省当局にもお伺いしたいんですが、これはこれだけなのか、それ以外の業務も何かほかにあるのか、ここら辺のところはどうですか、通産省当局もこれは調査していらっしゃると思いますが、どうですか。
  148. 原田稔

    説明員(原田稔君) 主体は化粧品の販売でございます。ただ、それに関連いたしまして、これは特異な販売組織を用いて販売をいたしております関係からいたしまして、たとえば販売員の研修、そういったようなことも実施いたしておるようでございます。
  149. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 課長、私がさっき聞いたこととは違うことをいま答弁になったわけですが、この関連するいろいろな業務の問題について、先ほど大蔵省のほうからは化粧品及び化粧用具の輸入販売、これだけだという話があったわけです。いま課長の話ですと、この認可の段階でこの会社がいわゆる販売方法について特異ないわゆる販売業態あるいは営業状態ということをちょっといま課長おっしゃいましたが、いわゆる昭和四十七年のこの段階でそういうような特異ないわゆる販売業態をとるということが初めからわかっておったのかどうか、これはどうですか。
  150. 原田稔

    説明員(原田稔君) それはわかってなかったわけでございます。
  151. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 しからば、わかっていないものを、その時点の違う答弁をしちゃ困る、いま認可の話をしているわけですからね。あなた方がもし初めからわかっていたとすればこれは大問題だ。いま私がこれから取り上げて問題にしようとしている問題を前もって、いわゆる通称いわれているマルチ商法、これが初めからわかっていてこういう認可をしたとすれば、これはもうほんとに大問題です。しかしながら、初めはこういうことはわからなかったんであろうと私は推察しておるわけです。そしてしかも認可されたというのは、要するに化粧品あるいは化粧用具の輸入販売ということのみで認可がされたんだと思うんですが、同じ質問で申しわけないが、再度この点を大蔵政務次官、もう一回確認しておきたいと思います。
  152. 柳田桃太郎

    説明員柳田桃太郎君) 全くそれに相違ございません。それ以外の事業目的を追加する場合には事前承認を受けるというようになっているのでありまして、これはこの会社に限ったことではなくて、認可の対象が変わってくるわけでありますから、必ず事前承認を受けなければならぬわけであります。
  153. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ただいま政務次官のほうから、目的以外のことをやるとすれば事前承認を受けなくちゃならない、これは通産省のほうもそのとおりだとお考えですか。
  154. 楠正俊

    説明員(楠正俊君) そのとおりでございます。
  155. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうすると、まず第一点の問題点としては、政務次官、私の手元にホリディマジック社の登記簿の謄本があります。ところが、この謄本の中にはいまいわゆる大蔵政務次官がおっしゃったこと以外のことを書いてある、これは事前承認があったかどうか、これはどうですか。
  156. 原田稔

    説明員(原田稔君) 申請の段階で要するに認可の対象となっていた仕事以外につきましては、私その後事前承認をしたという経過は聞いておりません。
  157. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうすると、ホリディマジック社は、いわゆる外資法に基づいて認可を受けたこと以外のことをやっているということが明快ですね。この中にも、もうすでにいわゆるマルチ商法そのものが、これが認可の条件以外のことに私なるんじゃないかと思うんです。その点もまず第一点として頭に入れておいていただきたいと思います。  そこで次に、認可後この会社はどういうふうな商法をやってきたのか、現在まで。そして通産省にお伺いしますが、ホリディマジック社はどういうふうな化粧品を――一つ一つあげるのはたいへんでしょうから申し上げませんが、一体化粧品をどのくらい輸入しているのか、あるいは国内でこれは生産をしているのかどうか、ここら辺のところはどうですか。
  158. 原田稔

    説明員(原田稔君) 国内で生産はしていないわけでございます。全部輸入品でございます。
  159. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうすると、どのくらい輸入しているかという問題これどうですか。
  160. 原田稔

    説明員(原田稔君) 輸入額はちょっといまつまびらかじゃございませんが、販売状況はわかっておりますので、大体これにほぼ見合う額ということで申し上げますと、本年の一月が三億六千万円、それからやや飛びまして三月が六億四千六百万円、五月が九億五千二百万円、七月が十一億四千百万円、九月が八億七千七百万円というような状況になっております。
  161. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いまの金額は、これはホリディマジック社だけですか。
  162. 原田稔

    説明員(原田稔君) はい、そのとおりでございます。
  163. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いまのを合計したら幾らになりますか。
  164. 原田稔

    説明員(原田稔君) ちょっといまつまびらかじゃありませんが、昭和四十八年の四月からのデータがここで集計してございますので、それを申し上げますと、昭和四十八年四月から本年の九月まで、したがいまして約一年半ぐらいになりますが、その合計では九十三億六千百万円という数字が出ております。
  165. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 もう一回確認をしておきますが、この輸入した金額は、これはホリディマジック社一社のみの輸入金額ですか。これは間違いないかどうか。
  166. 原田稔

    説明員(原田稔君) はい、そのとおりでございます。
  167. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 わかりました。それじゃこれはまずそこへ置いておきたいと思います。  そこで次に、特に最近このホリディマジック社の化粧品、並びにこのマルチ商法について被害の実態というのが相当マスコミ関係でも大きく報道されております。通産省にも厚生省にも、きょうは公正取引委員会にもそれぞれ来ていただいておりますが、それぞれの皆さん方のところに被害者の方々から訴えが行っていると思います。その実態についてそれぞれの省庁から、具体的にどういうふうな訴えが行っているのか、それを具体的にお伺いしておきたいと思います。
  168. 原田稔

    説明員(原田稔君) 私どもに来ております訴えと申しますか、被害者という、要するにホリディマジックの関係で訴えが出ておりますのは、一つは商品がなかなか手に入らない、したがってそれだけ商売ができない、これを何とかしてほしいというような訴えが一つ。それからもう一つは、この商品を消費者に販売したところが気に入られない、どうも品質があまりよくないというような訴えが一つ。それからさらに、これは基本的に一番大きなお訴えでございますけれども、この組織、一定の販売組織があるわけでございますが、その組織に入る前の段階では、非常にこの組織に入るともうかる、非常に経済的な利益が大きいということで入ったところが、実はそうではなくて、なかなか販売その他もうまくいかず、当初に投じた資金の回収がなかなかむずかしくなっている、こういうような訴え、まあ大体このぐらいが主体であったように記憶いたしております。
  169. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 じゃ、厚生省
  170. 宮嶋剛

    説明員宮嶋剛君) この十月の八日でございまするが、全国被害対策委員会の会長のほうから私どものほうに陳情書が参っております。特にわがほうの関係では、その一つの部門としまして、不良粗悪化粧品の販売について取り締まってほしいと、こういう要望がございました。中身は、同社はアメリカ、カナダ、オーストラリア等の別々の国から三流化粧品を持ってきて、それを売っておるけれども、その品物が粗悪で苦情が絶えない、それでこれにつきましては直ちにこの同社の営業を停止するとか、あるいは現品の回収措置をしてくれと、こういう要望がございました。
  171. 後藤英輔

    説明員(後藤英輔君) 公正取引委員会のほうには、被害者の方からは被害同盟の代表ということで、ことしの夏ごろ、独禁法による不公正な取引方法として規制できないかと、先ほど通産省のほうから被害状況についてお話のありました、非常にもうかるというような広告的な誘引でもって入ったところがもうからない、こういう方法自体が不公正な取引方法に該当しないかということで取り締まりということを言ってまいりました。さらに十月の八日、先ほど厚生省局長から御答弁があったようなその被害者の方から、また具体的にそういうことについての規制の要望がございました。
  172. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私の手元にも実は――それぞれきょうは大臣、政務次官お見えになっていただいておりますが、特に今回のこのホリディマジック社の場合いろいろな問題がたくさんあります。きょうはその幾つかを申し上げたいと思うんですけれども、化粧品が手に入らない、先ほど通産省当局のほうから話がございました。なぜ入らないのか、これは非常に私は大きな問題があると思います。実際問題、この会社が化粧品の販売をほんとうにまじめにやっているのかどうか、こういう問題があります。実は私の手元にある人のこれは手紙が意見書という形で送られてきております。これを一ぺんちょっと読んでみますと――実はこれだけじゃないわけです。実はこれに類するやつがあまりにも多い。だから、私はこれただ一通だけだとこれ読みません。けれども、これに類するものがあまりにも多いから私は申し上げます。  これは実はこの方、こういうふうに書いています。この方は食堂を経営していらっしゃいます。そうして開業資金返済のために年じゅう無休で食堂をやっている。時間的にも余裕がなく、また私自身も化粧品の販売などとうていできない相談であった。しかしながら、自分の知り合いの人がこういうぐあいに言ってきた、化粧品は売らなくてもいい、後任のマスターは心当たりがあるからすぐつける、ゲストを紹介してくれれば一切のめんどうを見る、年内に家内ヘダイヤの指輪、そして正月には家族じゅうがハワイで過ごせるよう責任を持って金もうけをさせる、こういうぐあいに言っている。しかも私はそれ自身信用しませんでした。しかし、多額の小切手のコピーやらいろいろなものを見せられて、だんだんだんだん信用するようになった。しかし、自分がお金を出そうにも出資金がない。手持ちのお金がないから兄弟に相談をしたら反対をされた。そしてやむなくすべての掛け金――これは売り掛け金です、この食堂のですね。そういうようなものをかき集めて、さらに開業の返済の積み立て金、あるいは自分の次男坊の事故の見舞い金、そういうようなものを全部かき集めてようやく資金を調達した、こう言うのです。それはいろいろ一ぱいありますけれどもね。それで非常に問題なのは、今回のこの問題についての被害者の大部分が、いわゆる一つは家庭の主婦です。それからもう一つは、比較的若いサラリーマン、こういう人たちがたいへんな思いをしている。しかもいまの手紙にもありましたように、これはただ単にこの人の手紙だけじゃない、もっともっと具体的にたくさん申し上げてもいいのですが、時間がありませんからよけい申し上げられませんが、最近はこのホリディマジックの商売をするようになってから密室で特訓を受けた、そのために精神病院に入院した人も現実にいる。しかもそれだけじゃない、最近は死者まで出ている、こういうふうにたいへんなことになりつつあります。現実に死んだ人というのは、まことにこれは申しわけないのですが、非常にりっぱなある会社のサラリーマンです。りっぱな会社ですから土曜、日曜は休み、したがって土曜日曜が休みだからサイドビジネスでこれやろうというわけです。ところがこれ引っかかっちゃったわけです。ところがどうしようもない。ついには自殺をせざるを得ないところまで追い込まれてしまった。先ほどの精神病院に入ったというのは、岐阜県の岐阜市ですが、この方もやっぱり講習を受けてノイローゼになって、現在でもすでにその市内の精神病院に入院中である。こういうぐあいでありまして、これはたいへんな実情にあるわけです。その根本の原因は商品を売ろうというのじゃなくて、いわゆる化粧品という名前に隠れた、これはいわゆるネズミ講ですね、ネズミ講そのものだと私は思う。こういうふうな問題について、きょうは厚生大臣もお見えになっていただきましたが、いわゆる化粧品という名前に隠れた、私はこれは非常に悪質なネズミ講だと思うんですね。この問題について、きょうは厚生大臣並びにそれぞれ政務次官お見えになっておりますが、一言ずつでけっこうですが、感想をまずお伺いしておきたいと思います。
  173. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 化粧品について非常に不良な化粧品だと、こういうふうな訴えがありましたので、東京都においていろいろ立ち入り検査をしている段階であるということは私も承知しておりますが、その化粧品を利用してのネズミ講ということであればまことに遺憾なことだと思います。
  174. 柳田桃太郎

    説明員柳田桃太郎君) あとで発見をいたしましたが、昭和四十六年からアメリカの連邦公正取引委員会では、これが違法の商売ではあるまいかということで調査を続けておったようでありますが、四十八年の五月に事務局の一つの案としてこれは違法であるという審決案をつくっておるようでございます。まだ結審にはなってないようであります。したがいまして、これはわが国でも一つの商品を販売する行為としてそれとネズミ講とがからみついておるものでありまして、これがどういうような違法措置であるかということの判定がかなり困難なために今日までペンディングになって、非常に社会的害悪を流すというように見られながらその法的な措置がまだとられないでおると思うのでございますが、いずれにいたしましても、大きな社会的な害悪を流すということが明らかでありますならば、法律に照らしてこれを適法の処分をすべきであろうと考えております。まだ現在におきましては検討中でございまして、これをどうともはっきりとした判断を申し上げる段階ではございません。
  175. 楠正俊

    説明員(楠正俊君) このホリデイマジック社の問題を含めまして、このマルチ商法と呼ばれるものが非常に問題があるということは全く御指摘のとおりでございまして、通産省といたしましてはこの問題をとらえて昭和四十八年十一月産業構造審議会の流通部会、その中に特殊販売委員会というものを設置いたしまして、先ほども申しましたホリデイマジック社を含めたマルチ商法につきまして、いま答申を願っておるところでございます。この十一月の末ぐらいをめどに答申が出ましたらば、それにのっとって適切なる対処をしたいと、こう考えております。
  176. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ただいまそれぞれ大臣から答弁ございましたが、大蔵政務次官がおっしゃったように、確かにアメリカでは連邦公正取引委員会が、公正取引委員会同法第五条の「商業における不公正な競争方法及び不公正または欺瞞的な行為または慣行はこれを禁止する。」、この法律と、クレートン法第二条「価格差別、組織の各段階で異る卸値の格差」に違反するということで組織拡大の禁止命令が出されております。確かに出されておりますが、まだ最終的に結審にはなっておりません。しかし、もうすでにアメリカではこういう公正取引委員会法律で禁止しようという動きがもう明快に出ているわけです。そういう点から、私はきょうはこれからもう少し深く立ち入ってこの問題を明らかにしておきたいと思います。したがって、この問題についてはさらに私の手元にもう非常にたくさんの投書やらアンケートやらが山ほど送られてきております。きょうはその一部分を持ってまいりましたが、先ほども話がございましたように、あとでこれ大臣の皆さんに私のアンケートを見ていただきたいと思うのですが、特にまず第一点は、まじめに商品を売ろうとしようにも品物がない、これはもうそういう訴えが圧倒的に多いわけです。しかも悪質なのは、このアンケートの中にもございますのですが、会社へ一生懸命電話を入れる、私のいわゆる商品がなくなった、どうこういう品物がほしい、こう言って会社へ問い合わせをすると、商品はあるという返事が返ってくる、あるというんです。それで、あるんならすぐ行かなくちゃいけないというんで商品を仕入れに行くと、ない。要するに非常に会社が欺瞞的なんですね。私の手元にこの問題に対してはテープも送ってきている、テープを。現実に会社がそういうふうに言っているというのはもう明快なんです。こういうふうな非常に欺瞞性のある会社ですね。しかもきょう私の手元にありますこのアンケートをちょっと一ぺん、被害者の皆さんがどういうふうに感じていらっしゃるか、しかもその契約の状況はどういうふうな問題があるのか、二、三読んでみます。  ある人はこういうことをおっしゃっています。「契約する前と、お金を支払い契約したあとでは話の内容が違う。さらに一週間の訓練を受けて一人静かに考えて、何か自分が詐欺師にならなければこのビジネスは達成できないのではないか疑問を持つ。また翌日訓練所へ行くと、今度は自分があすにでも億万長者になるような気分になる。結局会場の雰囲気と催眠状態に置かれた自分自身の錯覚であることに気づくまで時間を必要とした。」、これが結局実は私のもとへ参りました被害者の皆さんのもう実感ですね。このとおりですわと言うておるんです。しかもこういうようなものが一ぱいあるんですよね。  もう一つのものを読んでみますと、「ホリディマジックが化粧品だけで普通の化粧品会社と同じように販売しておればよいのですが、化粧品の目的よりも」――これはちょっとえげつないですけれども、これはこのとおり書いてあるから読みますけれどもね、「人を売ったり人身販売のようで、肝心の化粧品は品不足とか、商品そのものもあまり値段ほどの効果はないようです。弟を加入させてしまったのでその責任を感じています。」と、これは全部署名捺印入りです。  しかも、こういうのもあります。「先輩が私を誘ってくれなければとつくづく思う。私がこのビジネスに参加するまでは先輩から毎日のように電話があり、一たん私が疑問を持ちこの会社を怪しむようになると連絡はほとんどなし。いまでは自分しか信用できない。数人の外国人に多くの日本人がだまされたことに私は怒りを感じる。外人コンプレックスがあるのかもしれない。八月現在でもまだ多くの参加者がいると聞く。新聞紙上に載っても参加者の多くがまだ疑いもしないと聞く。早く目をさましてくれ、日米関係の大事なときにこのことで日米関係を悪くしたくない。だまされるほうも悪いかもしれないが、だますほうがもっと悪い。日本人よ、立ち上がろう。」、こんなに書いてある。たしかにこういうふうな――大臣一ぺんアンケートをぜひ全部見てもらいたいのです。私がかってに読んでいるのじゃなくて、厚生大臣、これはいろいろずっとありますので、全部一ぺん読んでいただきたい。化粧品のことが全部書いてありますから、一ぺん少し目を通していただいて、よろしく御検討――あとで見ていただきたいと思います。
  177. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 拝見します。
  178. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは大臣に回し読みしていただいている間に、次の問題に移っていきたいと思います。  それでは、きょうはたいへんお忙しいところを被害者同盟の会長であります堺さんにも参考人として御出席をいただいております。それで、きょうは参考人の方にも実際上契約のときの実態等についてもお伺いをしたいと思っております。そこで、まず初めに、やっぱり契約自体からが非常に問題なわけですね。私の知っている限りでは、大体夜の六時ごろから講習が始まる。この間、先ほども話がございましたように、この講習は全く密室で、しかもかん詰め状態でそういうような中で応募者に百万円とか一千万円とかいうような膨大な単位の金額がすぐにでももうかるような話をずっと熱っぽくするというのです。そして、そのあと二時間、三時間続いたあと、夜もふけてきます。そういうふうな夜もふけて、時間もなくなった段階でいわゆる契約が始まるということは、ほんとうに一人当たりの契約時間なんというのはせいぜいわずかな時間になってしまう、こういうぐあいに思うのです。きょうはここに、私の手元に契約書の写しなんかもたくさんありますが、参考人の方に、きょうは堺さん、契約のときの実態、そのときの雰囲気等についてどういうふうにして契約をされるのか、またどういうふうにして勧誘をしていくのか、そこら辺のところを二、三お話ししていただければ幸いだと思います。
  179. 堺次夫

    参考人(堺次夫君) 当対策委員会で現在被害者を取りまとめておりますが、実際未成年、十九歳の方々から六十五歳の方々までがひっかかっている状態です。その方々をまとめてみますと、勧誘される方法といいますか、パターンは大体三点あります。  まず一番は、その話を持ってくる人がいわゆる自分の懇意にしている知人、あるいは取引先の業者、それから同業者、それから上役、兄弟、長年つき合っている親友、そういう方々がこの話を持ってくるわけですから、その方々が話すということは、その人間を信用していれば内容はあまり調べずしてこれを信用してしまうということがあります。ですから、その方々がたとえばうまくいかなかったらお金をそっくり返してあげようと、とにかく書きなさい、契約をしなさいといって誘う場合があります。これがまず第一点。  次は、ビジネスプレゼンテーションと呼ばれる、これが先ほど説明にありました説明会ですが、週に大体三回ほどありますが、この説明会に化粧品会社の販売員を求めているのだということは全然言いません。とにかくいい話があると、この話を聞くとあなたはすごい金持ちになれるということを教えます。とにかく一度出てみなさい、たかだか二時間ぐらいのことだ、すぐ出てみなさいというわけです。この話を持ってくるのも先ほどのいわゆる自分が信頼している人間が多いわけです。で、この話に出てみますと、密室状態で大体二時間、まずわけのわからない映画を見せられます。やたら愛とか成功とかチャンスとかいうことばが出てきます。そのあと化粧品を見せまして、これは自然化粧品であるとか、植物性であるとかいってこの化粧品というものは、大体業界の中では一番利益幅が大きいものであると、化粧品を売っただけでも相当にもうかると、おまけにその勧誘方法をやればますますあなたはもうかる、一年間で二千万、三千万も夢ではないと、車がない人は車が買える、家がほしい人は家が買えると、たくみに欲望を誘われます。そのようなことで誘われるのがこのビジネスプレゼンテーションと呼ばれる説明会です。その説明会では先ほど映画ということを言いましたけれども、映画の中では化粧品の工場も出てまいりませんし、それから化粧品そのものも映画の中では出てこないわけです。とにかくやたらめったら数字の羅列で、あなたはたとえば何人勧誘すればこれだけもうかるということを言うわけです。化粧品はオスカー賞を受賞しているとか、それから世界二十六カ国でたいへん好評を博しているとか言われるわけですが、大体あとで調べるとそれはみんなでたらめであるわけです。ところがその間中その話を聞いておりますと、まるでほんとうに催眠術にかかったみたいに、すごくあすにでも金がすぐにも入ってくるような気がするわけです。その熱がさめないうちに契約をさせられることがあります。その契約書を読む人はほとんどおりません。契約書の字はたいへん小さなもので、その契約書を読む時間も与えませんし、それからその契約書を大体渡す前にその個人がいいことばっかし、勧誘する人がいいことばっかし言っておりますので、その個人を信用していれば内容を調べずしてサインをすることが多いわけです。おまけに自分の信頼している人がもうかっているのだからと、たとえば小切手なんかをちらつかせて、たくみに勧誘します。そういうのを見ると、何かいま現在すぐこのサインをしなければ、バスに乗りおくれてしまうのじゃないかと、そんな意識を抱いてしまうわけなんです。そのような勧誘方法です。  それからたとえばそこである程度疑問を持ったとしても、そのあと六万円の講習というものがあります。コンシューマー・セールス・セミナーと呼ばれるものですが、これに出ますと大体ビジネスプレゼンテーションで疑問を抱いた方でも、九割方がサイン、捺印してしまいます。これが六万円払って受講に行くわけですが、この場合でも、あなたは六万円以上の価値が得られると、とにかくこれを受ければあすにでもまたまたそのお金の話が出てまいりまして、六万円以上のものがすぐ返ってくると、たとえあなたがその六万円の価値がないとわかればあとで返してあげようというような誘われ方をします。この略称がCSSというのですが、これに出ますと、朝九時から夜九時まで連続で三日間あり、そのあと夜六時から九時までという日にちが二日間、計五日間の講習があるわけです。その講習、朝から晩まで、中で説明することは、要するに金もうけの話ばっかりです。いかにしたらもうかるか、それからいかにして勧誘するか、いかにして、極端に言いますと、嘘を言うかということを教えるわけです。ですからこれは詐欺師の養成所みたいなものなんです。これに出ますと、新聞を読む時間もありませんし、それから人に相談する時間もありません。朝九時から夜九時ですから、帰ればもうすぐ眠くなります。ぶっ通しなんですから、帰れば寝ることになってしまいます。考える時間というものは与えません。その上に契約ということがあるわけです。ですから先般自殺がありましたが、これは今月のCSSの最中に起こったことです。新聞を見るひまがあればと、たいへん悔やまれてなりません。勧誘方法というのは大体以上三点です。
  180. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ありがとうございました。  大体まあその契約の状況やら、そういうのはわかりますけれども、実際問題、堺さんこのこまかい字で書いた契約書を、これは先ほど読んでないということでしたけれども、まあ読んでないというのは、これは読まぬほうが悪いんで、ほんとうはそうなんですが、読まないでサインするという雰囲気ですね。これはどういうことなんですか。
  181. 堺次夫

    参考人(堺次夫君) 実は、契約書を渡されて自分が書き込んでいくという例はたいへん少ないんです。話の合い間に、あなたはいま自家用車を持っていますか、もしくは家を持っていますか、というようなことを質問で聞いていくんです。その聞く人が、すでにその契約書を書き込んでいるわけなんです。で、最後の時点で、じゃあサイン、捺印しなさいというように渡されるわけです。ですから、自分が最初から目を通していってサインをする例というのは少ないわけです。
  182. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 わかりました。  私の手元に契約書のコピーがございますので、これも一ぺん大臣に見ておいていただきたいと思います。(資料を示す)いずれにしましても、このやり方がほんとうに合法的なものであるかどうかはわかりませんけれども、密室で非常に長時間にわたって特訓をする。それで、そういうような中で――大臣見てわかりますように、こまかい字で書いてあります。その非常にこまかい字で書いた契約書を薄暗いところでやらせる。しかも、そのときにあり金の中で、先ほどもちょっと話がございましたが、いわゆる持ち金の中の幾らかを手付として入れてしまう。そうしますと、そこからもどうしても、もうのめり込んでしまうわけですね。そういう雰囲気の中でそういうような契約をさせるということ自体にも私は――これは公正取引委員会も問題がございますが、いわゆる不公正な取引になるんじゃないかと、非常に私は疑問に思うわけであります。一つは、やっぱり会場そのものが全く密室状態であるということ、あるいはその応募者がサインする会場がかん詰めの状態の中で、しかも何と言いますか、非常に、百万円、一千万円が直ちにもうかるような話を聞く。そういうふうな中で勧誘することということが、これが公正な取引になるかどうか、非常に私はこの点は疑問があります。この点についてはあとで公正取引委員会のほうから最終的な見解としてお伺いしたいと思っております。  そこで、次に問題点を幾つかずっと取り出していきます。その次に、先ほどもちょっとございましたいわゆる幹部教育の訓練です。この問題があります。これは、先般もある新聞に報道されましたが、いわゆるしごきの教育ですね。幹部のしごき教育ということである新聞に報道されたわけでございますが、これはもう非常にたいへんな教育なんですね。実際、これは常識的にこんなことが許されるのかどうか。これは非常に私は疑問に思うわけであります。実は私の手元に、「あらゆる権利と請求権の包括放棄同意書」――いわゆる訓練を受けるときに、まあ私が訓練を受けるときに、あらゆる権利と請求権の包括的放棄に同意するというような、いわゆる同意書をとっています。この同意書というのが、これはちゃんとサインして私のほうに写しがあるんですが、これは中身を読んでみますと、こういうふうなことがいわゆる現代の世の中で許されるのかどうか、これは非常に私は問題だと思うんです。これは特に通産政務次官にお伺いしたいと思うんですが、まず一つはこういうことが書いてあります。  「署名者は、」――これは同意書てすね。この人は、いわゆるこのDLDプログラムという訓練の様式ですがね、「DLDプログラムへの全面的参加、クラス、講義、グループ・セクションへの出席とこれに関する施設、設備の使用によって生じる危険を、充分に承知しておりその危険に対して自ら進んで責任をとるものである。」、要するに、どんな危険があってもいわゆる会社には請求しない、そういうことですね。さらに、「署名者は、上記プログラムを開始し、参加することに伴なう危険を充分に知悉しているものであり、上述のプログラムが行なわれる場所の内外及び周辺で、署名者が右のプログラムに参加している間において、署名者に及ぼす可能性のあるあらゆる種類の損失、損害又は、身体、権利、名誉又は財産に対する侵害を含め、尚これ以外の損失、損害又は侵害のあらゆるリスクを、ここに自ら進んで引き受けるものである。」――これは一ぺん、とにかく自分のもう権利一切を放棄する。どんな障害を受けても、どんな恥ずかしめを受けてもかまわないというような、こういうふうなことに同意させる。ということは、逆に言いますと、これに同意して本人は署名しているわけだ。ということは、こういうものに署名をするような雰囲気に持っていって署名しているわけですね。これが、こういうようなものがほんとうに許されるのかどうか。これは私は、考えれば考えるほどたいへんなものだと私は思うんです。この点について政務次官の所信をお伺いしておきたいと思います。具体的にはあとでこれは見ていただいてもけっこうでありますが。
  183. 楠正俊

    説明員(楠正俊君) いま聞いて非常にびっくりしたのでございますが、そういうことが事実行なわれておると存じますが、かりにそういうことが事実だといたしましたら、これは通産省の問題というより、むしろ私は刑法上の問題になってくるのではないかという気がするのでございます。
  184. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 確かに、そういうふうな非常にたいへんな問題だと私は思うんです。これが常識で、こういうものが実際問題にされているとすれば、非常に大きな問題であろうと思います。  そこで、この問題もひとつおきまして、――もうあまりにも問題たくさんありますので、次の問題に移りたいと思います。まず次に、今度は厚生省関係で、特に今回の化粧品ですね、これは大臣はこの化粧品を見たことございますか。(資料を示す)
  185. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 見たことございません。
  186. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 実はきょう化粧品を持ってきておりましてね、一ぺんお見せしたいと私は思っておりまして、いろいろあるんですけれども、ほんとうにげっぷが出そうなんでみんな持ってくるのをやめたんですけれども大臣のところへ一ぺん持っていきましょうか。(資料を示す)これ、一ぺん大臣見ていただいて、あとで説明はいたしますけれども、特に被害が出ているやつはこれとこれですね。まあいろいろあるんですけれども、一ぺん見ておいていただきたいと思います。  これは大臣、いまのアンケートでも見ていただいたと思いますけれども大臣はこの化粧品見たことがないという話でございましたが、一つずつ、これはアンケートの中にも、先ほど見ていただきましたのであると思いますが、ラズベリーマスク、大臣、それですね。そのラズベリーマスクにより皮膚障害を起こしたというんてすね。――ずっと順番に読んでいきます。それからその次に、妹にすすめたところ、ミントアイス、ナイトクリームを使用したときは皮がむけて、白くかさかさになりました。それから、キューカンバーで洗うと、顔がかさかさになって油分がとれてしまいました。それから、お客さま二人ほどぶつぶつができました。無料で使ってもらったからあまり不満はないが、追加注文はない。金を出して買う人はあまりいないらしい。いろいろこうありますけれども、ストロベリーによる皮膚障害、そういうぐあいにしましてこれはアンケートを見てみますと、大臣、これは非常にたくさんの人が皮膚障害を起こしてますね。そういうふうなところからその化粧品を一ぺんふたをあけてにおいをかいでもらいたいと思うのです、私はね。これはもう非常にたいへんなにおいがしましてね、大臣、私も先ほどにおいをかぎましたけれども、これがほんとうに化粧品かと思うようなにおいがするわけです。これはちょっとひどいのじゃないかと私は思うのですけれどね。  そういうふうな観点から見ましても、ぜひとも厚生省としましてもこういうふうな化粧品の取り締まり、分析は先ほどやっているというお話はございましたが、大臣が持っているやつはアイシャドーというやつですね、目につけるやつですな、つかないアイシャドーというやつはそれであります。それで、非常にこれは問題でございまして、これは皮膚障害を起こしたりいろんな問題が起きておりますし、持に被害状況も大きゅうございますので、一日も早くこういうふうな問題の取り締まりといいますか、分析とかそういうふうなものを早く結論を出して早く対処していく、ぜひともそういうぐあいにしていただきたいと思うのですが、大臣いかがでございましょうか。
  187. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 先般もお答えいたしましたように、それらの品目については集計をいたしたものがございますので、ただいま東京都の衛生研究所において分析その他検査をしております。検査の結果を急いで出させるように督励をいたしたいと思います。
  188. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣、いまのその東京都の衛研の検査の話、私もお伺いしていますんですが、これはいつごろ結果が出る予定でございますか。
  189. 宮嶋剛

    説明員宮嶋剛君) できるだけ早くということで話してますが、早ければ十日前後で結論が出るんじゃなかろうかと申しております。
  190. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは局長、そうするとその結果は公表される予定でございますか。
  191. 宮嶋剛

    説明員宮嶋剛君) わかりましたら御連絡申し上げると思います。
  192. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 連絡じゃなくて、公表していただけますか。
  193. 宮嶋剛

    説明員宮嶋剛君) わかりました。それでは公表してもけっこうでございます。
  194. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いずれにしましても、この問題につきましては早急にこの問題に取り組んでいただきたいと考えております。  さらにもう一点通産省に今度はお伺いいたしますが、まずホリディマジック社の問題につきましては、通産省としましてもこれはもう相当前からこの問題に取り組んでいらっしゃるわけです。実際問題、現実に要するにこのホリディマジックにいわゆる入っている人たちですね、全体でどのくらいいらっしゃるのか。そこら辺のところはどうでございますか。
  195. 原田稔

    説明員(原田稔君) 四十九年の四月、要するに本年の四月末現在で私どもの推計値でございますが、約五万二千名強程度の者が入っておると聞いております。
  196. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私の手元にありますデータによりますと、大体最近はもっとふえていまして東京や大阪、名古屋そういうおも立ったところからだんだんだんだん地方都市へ広がっていく傾向にあります。しかも、もっともっとふえていく傾向にありますので、しかもそういうふうな中で私の手元に入っていますデータによりますと、大部分の人が大体七十万から九十万、そのくらいの人、そのくらいの金額というのはざらでございます。多い人は百五十万前後、大体この程度の人が非常に多くあるわけです。それで五万二千名という話がいま課長からございましたが、このうち実際に被害を受けていらっしゃるといいますか、非常にたいへんな実情にある方はどのくらいあると見ていらっしゃいますか。
  197. 原田稔

    説明員(原田稔君) その辺の数字になりますとつまびらかでないわけでございますが、私ども新聞報道等で聞いているあるいは見ている数字では、千数百名とか、いろいろな数字が出てございます。
  198. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それじゃ、きょうはこの問題については被害者同盟の会長さんであります堺さんが御存じだと思いますので、五万二千名の会員がいるそうでございますが、これはアメリカの実情等について堺さんがよく御存じでございまして、アメリカの場合でもけっこうでございますから、このうち大体何%の人が元を取り、何%、どのくらいの人がばく大な損害を受けるのか、そこら辺のところを概略でけっこうでございますから、教えてください。
  199. 堺次夫

    参考人(堺次夫君) 実はこれは勧誘方法――リクルートと呼ばれますが、これがいまもし停止されれば被害者は激増いたします。現在進行段階ですから、潜在被害者といいまして、私は被害者であるという意識を持たない限りは被害者とは言えないかもしれませんが、アメリカの例においてはいわゆるリクルートが停止された時点で九七%が被害者、元を取ったのが三%ということになっております。元を取ったのが三%ですから、実際にもうけている人たちはその三%のうちのまた何十%かということになります。ですから日本の場合でももしいま勧誘方法が停止される、あるいは商品の販売が停止されるということになれば、やはり九十何%かが被害者になると考えられます。
  200. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それは通産省当局、これは現実の問題として現実にこれからこれ以上広まってもらって、そうして被害者が多くなるというのじゃ非常に困るわけです。そういう点から考えてみましても非常に重大な問題であります。ですから実際元を取る人が何人いるかということを考えてみますと、非常にわずかな人になってしまうと思います。  そのでまず第一点は、先般の新聞報道によりますと、ホリディマジック社の菊池総務部長さんが、これは新聞報道でございますから正確かどうかちょっとわかりませんが、「通産省から三十億円程度の現金を保証金として積むように指導があったので用意するつもりだ。」、こういうぐあいに語ったというのが談話として載ってございましたが、こういうふうな行政指導なり何なりをされたのですか、どうですか。
  201. 原田稔

    説明員(原田稔君) 三十億という数字かどうかははっきりしていないわけでございますけれども、いろいろ問題も多い現状にかんがみてそういった手当てをすべきではないかということで指導をしていた事実はございます。
  202. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは要するに通産省はどういう法律に基づいて、どういうつもりでそういう指導をしておられたのか、この点もちょっとお伺いしておきたい。
  203. 原田稔

    説明員(原田稔君) これは法律は何もないわけでございます。しからばどういう契機をとらえてそういう指導を始めたかということでございますが、話がやや長くなって恐縮でございますが、ホリディマジック社が香港にある、これは要するにアメリカのホリディマジックの関係会社でございますが、香港にある会社の株式を取得する、したがって海外への送金が必要になるわけでございます。その送金の許可の申請、これを米国為替管理法にいま基づきまして政府に申請をしてきたわけでございます。本来はこれは自由化されている案件でございますから、したがいまして、日銀の窓口限りで処理をされる案件でございます。いま私申請をしてまいりましたと申し上げましたが、そういう申請をしたいという話が出てきたわけでございます。本件につきまして大蔵省から通産省は連絡を実はちょうだいいたしましてすでにいまホリディマジック社のこういう販売状況等につきまして非常に問題が多いという現状でございましたので、この外貨の送金の申請の機会をとらえましてそうでないとなかなか指導する契機がないものでございますから、したがいまして、そういう海外送金をすることは、ひいてはホリディマジックの財産の減少につながると、これは万が一のことがあった場合にこの販売組織に参加している個人の方々、あるいは一般消費者の方々、そういった方々に被害が及ぶ可能性があるわけでございますから、もしそういうことをするならば一定の金額を積んで何らかの保証をやはりすべきではないかというような指導をしてきたわけでございます。ただしその後その話はそのままになっております。
  204. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 課長、これは非常に重要な問題だと私は思うんです。最近、このホリディマジック社は社長以下全部退きました。で、日本人の社長に交代をされたということを聞いております。しかし現在までの海外におけるやり方、これは、パンガール社長というのはもともとカナダのホリディマジック社の社長でした。それですでに向こうで問題になって、引き揚げてきたはずであります。また、日本でも大体問題になってきて、海外送金という問題は非常に重要な問題です。いま課長がおっしゃったように、こういうふうな魂胆を裏に隠してのことであろうかということは推察されるわけです。そういう点からも、これは非常に重要な問題であり、かつ日本国内に被害者が相当充満していると私は思うんです。そういうふうな意味からもこの際、何にもなしというんじゃ非常に困るわけです。特に、通産省は先ほどから産業構造審議会の答申ということがございますけれども、これは答申答申といいましても、なかなかこれは非常にもうむずかしい問題です。これは日本の国にネズミ講の問題が出てまいりましてから相当たっていますが、そういう点から考えてみましても、ぜひとも私は、実は二年ほど前に通産大臣、当時の中曽根通産大臣がやはりわが党の黒柳議員の質問に対しまして、この問題については、とにかく立法措置なり、規制措置なり何なりの措置をするという答弁を前に一回したことがあるわけです、現実に。ところがその後この問題については、先ほど産業構造審議会に諮問をしていま答申を待っているという段階でしょうけれども、一日も早くこの問題については結論を出して何らかの立法措置をしてもらいたいと、私は考えておりますが、通産政務次官どうですか。
  205. 楠正俊

    説明員(楠正俊君) 先生のおっしゃるとおり早急に、もちろんこれは答申を待ってのことでございますが、答申の出次第、至急そういった問題に対処していかなければ被害が続出するということを、私いま痛感をいたしておる次第でございます。
  206. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは公正取引委員会のほうにお伺いしたいと思います。  先ほどからずっと、特に今回のホリディマジックの問題について話を進めてまいりましたが、特に私は非常に問題が多いと思います。こういうふうな問題をぜひとも早急に取り締まれるのはやっぱり公正取引委員会じゃないかと私は思っているわけです。そういうふうないろいろな観点から、先ほども、これはアメリカの場合についても大蔵政務次官からも話がございました。そういうふうないろいろな観点から何らかの措置がとれないのかどうか、公正取引委員会の所信をお伺いしておきたいと思います。
  207. 後藤英輔

    説明員(後藤英輔君) マルチ商法と申しますのは、商品の販売でこの商品を売るとたいへん利益があるという、普通の商取引の利益誘引だけではございませんで、そこに新しい参加者を募集することで、それによる利益、つまり直接間接に報酬をこういう形で受ける、こういうシステムを利用した商法で、問題は、新しい参加者を勧誘する際に、本来だったらば、こういう利益を得られるような参加者と申しますか、潜在的参加者は有限であろうはずであるのに、いかにも限りなく無限にあるような、そういうようなことを前提とした誇大な利益をいろいろな形で心理学まで使って広告をしてつると、こういう商売と思います。それで、これに似ておりますような商売は幾つかの商品にやはりございます。たとえば、ほんとうにいい、相当いい品物を売るというために利益が多いと、その際の補助的な手段としてそういったようなネズミ講式なものを補助的に使う、こういうような場合もございまして、なかなかこの商法のやり方というのは巧妙でございます。ただ、先ほども申しましたような有限な潜在的参加者が無限にあるようなことで利益があるんだと、たいへんな利益があるんだという、そのところに問題がございます。これはアメリカでは、先ほどもお話のございましたように、連邦取引委員会でもってかなり長期間にわたって問題を調べまして、そして一応、連邦取引委員会法の規定並びにクレートン法の規定でもって問題があるということで、昨年の五月にイニシアルデシジョンというものが出されております。ただ、アメリカの法体系は、その点につきましては非常に抽象的な英米法的な体系で柔軟的な体系になっておりまして、一応その柔軟な法解釈をかなり広げた解釈であろうかと思いますけれども、たとえばこの問題については一つのくじ的な、要するにはっきりと利益があるということがわからないように、くじ的な方法を使って誘引をしているというようなものをこの解釈の中に入れて、一応FTC法なり、クレートン法の問題に取り上げておるというのが実情のようでございます。  私ども、独禁法の立場でも、これは実はいろいろ検討してまいっております。一つの問題は、このマルチ商法の募集の際の表示問題であろうかと思います。それからもう一つは、会員に対していろいろな、先ほど先生指摘がありましたような非常にきびしい拘束をつけております。その二つの点が一つ問題になるのではなかろうかということで検討してまいっております。それで現在のところ、最初の表示の問題につきまして、現行法でいまある、公取が運用できる法律で何とかならぬかということで検討してまいりますと、一つは景品表示法の誇大広告、不当表示、この規定がございます。それからもう一つは、独占禁止法の公正取引方法の規定というものがございます。現在、指定されているものの中で何とかこれを取り締まれるものはないかということで検討しておりますけれども、日本の法律は、かなりアメリカの法律よりも具体的に書いておるために、なかなかずばりこれてといける――いまの体系ではむずかしいようでございます。ただ、それならばもう一つ、独占禁止法の法律の中に不公正な取引方法という概念を定義してございます、したがって、この定義の中に、これはかなり抽象的な定義でございますので、この定義の中でこういうふうな全体的に欺満的な、まあアメリカでいっているようにくじ的なと、こういう判断をしているようなものをつかまえる方法はないものだろうか、もしもそれがあるならば、それに基づいた指定というようなものを、新しい指定をするということにつかまえられないものだろうかということを、いま一生懸命検討いたしておるところでございまして、これはできるだけ早く何とかその結論を出したいと、そのためにはあアメリカの法律の適用の問題なんかも、かなり非常に膨大なものでございますために分析しなくちゃなりません。できるだけ早くその点を考えてみて、もしも独禁法自体の中に、定義の中に該当するものがあるならば、それを根拠にして何とか指定をして取り締まるという方法ができないかということを検討しております。  それから第二の各種の拘束の問題でございますけれども、これは商品の取引の際に、たとえば再販価格の指示というようなものがあるのじゃなかろうかと、それから契約を解除する際に、非常にきびしい不当な条件がついているんじゃなかろうかというような点、これは取引の内容を内部からくずすような、全体的につかまえるというよりも一つ一つのこまかな点をつかまえることによって全体に効果が及ぶということで、こういう点からの規制が、公正な取引方法としての規制ができないかという点もつめてございます。このためには、かなり事実を詳細につかまなければならないという点がございます。  しかし、いずれにいたしましても、こういう商法はこれからもしもこれがまかり通るということであれば、非常にやっぱり問題があるし、普通の常識からいいましても、こういう不公正な取引方法がまかり通っていいのかということは当然考えられますので、私どもの現在の法律、あるいはまた、この法律をもとにした運用でもって何とか取り締まれないものかということもぜひ検討いたしたい、そう思っております。
  208. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 非常に詳細に説明をしていただきましたけれども、結局要するにこういうふうなマルチ商法、こういうような商法というもの、こういうものがまかり通っては非常に問題であると、だから何とか現行のいわゆる独禁法の範囲内で取り締まることはできないか、そのどこかにひっかかるところはないか、言うたらば、端的に言うと取り締まる方向で検討しておるということでございますか。
  209. 後藤英輔

    説明員(後藤英輔君) そういうことでございます。ぜひ何とか独禁法の体系の中でもって取り締まる手がかり、方法をつかみたいということでやっておるわけでございます。
  210. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、ぜひともこういうふうな問題が全国に蔓延いたしまして、非常に庶民の、零細な家庭の主婦やあるいはサラリーマンの方々の被害を少しでも少なくするために、これはそれぞれわれわれの機関が、行政機関の中でできるだけの力を注いでいかなければいけないと思うんです。  そこで、きょうはいろいろと質問をやってまいりましたが、きょうはたいへんお忙しいところを被害者同盟の堺会長においでいただきましたので、最後に、何か本日出席していただいた所信なり何なりありましたら一ぺんお伺いしておきたいと思います。
  211. 堺次夫

    参考人(堺次夫君) 実は、私近ごろ町を歩いておりまして外人にぶつかりますと、これもまたホリディマジックの関係者ではないかと思いまして、たいへん腹が立ちます。私だけではありませんで、たとえば被害者の皆さんがほとんど人間不信におちいっております。離婚とか、それから会社をやめざるを得なくなった人、あるいは故郷を離れなきゃいけなくなった人、それから親戚間とまずくなった人、ありとあらゆる人間間の問題が起こっているわけなんです。で、現在はこれが地方に広がっておりまして、地方のあの人情味豊かな、何と言いますか、地方独特のあたたかさとか、やさしさとかいうものが、それを信用できないというようになっているわけです。人間は信ずるものあるいは何と言いますか、人を信じなければいけないというような定義がくつがえされております。金がまず第一番だと、金至上主義ということをホリディマジック社は教えているわけでして、そういう方式がいまもこのまま地方に広がりますと、地方の人を疑うことの知らない人たちはほとんどの方がひっかかってしまうような気がします。それで、最終的にはそのような人間不信、人間破壊が行なわれるわけですので、いまこうやって委員会が行なわれているこの最中にもある人は勧誘されておりますし、ある人はまた契約していると思うんです。一秒一刻ももういまは惜しまれてなりません。こんなに問題になっていながら、その話をもってくる人が自分と長年つき合っている人であるというがために説明会に参加してしまうということがあるわけでして、この説明会そのものを一刻も早く何とかしてこれを規制しない限りは、まだまだ被害者はふえると思うんです。ホリディマジックだけではありません。ほんとうにこれが金の問題だけで済めばいいんですが、金じゃなくてそのような人間間の不信、そういうものが増大しますと一体どうなるんでしょう。正直者がばかをみるような、こんなばかげたことがあるでしょうかしら。とにかく一秒一刻も許せないと思うんです。何とかして皆さん方のお力で私たちを、それからまたこれからひっかかる人たちを防ぐために一刻も早く法律規制を強く強くお願いしたいと思います。
  212. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、最後にきょうは私はいろいろと質問をやっておりまして、自分でも強く感じているわけでございますが、私が実際に被害者の皆さんから実態をいろいろお伺いいたしました。またいろいろな文書やそういうようなものでも送ってまいりましたんですが、きょうは大臣や皆さん方にほんとうにわかっていただいたかどうか、私自身非常に、私が考えていることの十分の一もやれなかったような気がいまいたしております。しかし実際問題としては非常にたいへんな実情にあるということをぜひともわかっていただいて、そしてこういうふうな不公正な取引が日本の国内から一日も早くなくなってもらいたいというのが私の念願であります。そういうようないろいろな観点から考えてみまして、きょうは、きょう御出席いただきました大臣並びに政務次官の皆さん方の御感想を最後にお伺いをいたしまして私の質問は終わりたいと思います。
  213. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 化粧品販売員という表の名前で、実際はネズミ講、先ほども申し上げましたが、まことに遺憾な商法だと思います。厚生省においては先ほどもお答えいたしましたように収去いたしました化粧品の品目について一日も早く結論の出るように督励をいたしたいと思います。  しかし問題は、これ化粧品の問題じゃなくて、やはり商行為の問題だと私は思います。こういうことが日本で行なわれるということは私はまことに遺憾しごくなことだと思います。
  214. 楠正俊

    説明員(楠正俊君) おおむねのことは私もわかっておったのでございますが、いまのアンケート等を拝見いたし、また先ほどの何と言うのですか、非常に生活権すべてを預けるというようなお話を承りまして、これは非常に悪質なものだというように私感じておりまして、早急にこれは取り締まるような体制に答申を待って持っていきたいということを強く感じておる次第でございます。
  215. 柳田桃太郎

    説明員柳田桃太郎君) いろいろお聞かせを願いまして非常に私どもも思うところがあったと思いますが、大蔵省としては外資法に基づく会社の認可の点だけでございますけれども、これは会社設立認可についても今後十分警戒を要する問題があるということを深く反省をさせられておりますし、なお本件につきましては、国内法によりましてすみやかに合法的な措置がとられるように希望してやみません。
  216. 二宮文造

    ○二宮文造君 ちょっと関連して……。  関連で一言お伺いしたいのですが、私いま参考人として御出席になった堺会長が、いまこの瞬間にでも地方の純朴な都市で契約をし、被害が拡大していることを思えばほんとうにもう胸が迫ると、こういう御発言をされましたことが非常に気にかかります。と言いますのは、すでにもう状況を各省が掌握をされてこれは問題があるというふうに認識をされながら、じんぜんと二カ年も時を経過してきた。さらにまた、いまお話を伺いますと、少なく見積っても五万二千人の被害者がある、潜在被害者を加えればそれ以上になる、こういう様子でございますと、いまのお話のように一人当たり百万円としますと、五万二千を掛けますと何と五百二十億円になります。これはまだ私の単純な算術計算ですから、それがそのまま被害ということは決して申しません。しかし膨大な額に達するということは容易に推定がされます。  そこで、問題になりますのは、いま大蔵政務次官は、私らの関係は外資法の関係だけだ今後外資法の認可に当たっては慎重にやると。――しかしそれで被害者は救われません。先ほどお話がありましたように、外資法の認可を受けますときの申請は化粧品並びに化粧用具の販売、こういうことで、もしその目的を変更するときには事前承認を得る、こういうお話です。しかしいま厚生大臣がいみじくもおっしゃったように、この問題は化粧品の問題ではなくて商法の問題だと、こういうふうになりますと、外資法に認可申請をしたその化粧品並びに化粧用具の販売そのものがいまここで問題になってまいります。したがって、大蔵省当局とすれば関係者を呼んで、やはりその外資法で認可したのですから、どういう販売方法をやっているんだ、あるいはまた大衆に迷惑はかけてないか、それぐらいのことは事情聴取されてもよろしいのではないか。また商法について疑問があるならば、こういう悪質な――悪質と言わざるを得ません、いままでの説明のとおりであるならば、事情のとおりであるならば。こういう会社に対しては、やはり認可した主務官庁として、それだけの事情聴取なりあるいは行政指導なり、そういうものをなさるべきではないか。またこれは外資法による会社ですから、国税関係は一体どうなるんでしょうか。あるいはその二重課税の防止法等で国内課税を免れておるかもわかりませんけれども、しかし私の認識では、こういう会社でも法人格を日本で得ればやはり国税の対象になろうかと思います。ならば、国税庁の関係で一体どういうふうな企業の運営になっているんだろうか、税の申告はどうだろうか。そういう面からも政務次官としては、この会社の行政指導をまっとうにやるように私は要望し、それが直ちに会社の姿勢の変更にもなりましょうし、あるいはまたやめたいという被害者に対するいわゆるマスターとしての保証金の積み立てたのをお返ししましょうというきっかけになるかもわかりませんし、こういうことで被害者の皆さんが救われるように、大蔵省も認可をした主務官庁としてのそういう動きをしていただきたい、これはお願いであります。あとでまたお考えを承りたい。  それから厚生省のほうは、何だか化粧品の問題ではなくて商法の問題だと、こういうふうに結論づけられましたが、しかしなるほど化粧品は厚生省のいわゆる認可の品目ではないかもしれません、しかし要するに顔につけるものでしょう。先ほどの説明のように、かわいてしまっただとか、荒れてしまっただとかいうふうな話があります。そうしますと、これはやはりこれも一年も二年も、そして何かお話を聞きますと、もう間もなく答申が出てくるとふうなことでありますが、人体に被害を与えている問題ですから、もう少し積極的にこの取り締まりといいますか、いわゆるよき化粧品を販売させる、こういう立場に立って、人体を守るという立場に立って積極的な姿勢をお願いしたい。  さらに通産省にお伺いしたいのは、先ほど商政課長は、昨年の四月から今年の九月までに輸入実績が九十三億円、こういうふうにおっしゃいましたが、これは通関統計、これなんかでごらんになったんでしょうか、あるいは会社からの報告を得られたんでしょうか。さらにまた、確かに私も、厚生大臣がおっしゃるように、これは化粧品販売の問題ではない、商法の問題である、要するに出資金をかき集めるのがその会社の主体であって、化粧品を売ることが主体ではない、こういう会社であるように私は認識をいたしました。だから九十三億円というのは、一体どういう内容のものなのか、それをおつかみになったのかどうか。さらにまたこのアンケートを見ますと、どなたもが商品が入らないということを書いていらっしゃいます。これは先ほど政務次官がおっしゃったように、確かにこれは刑法上の問題にもなろうかと、政務次官は先ほどそう答弁されました。これはゆゆしき問題です。政務次官が刑法上の問題になるんではないだろうかと示唆されるような問題を、この委員会の発言だけにとめることは私はよろしくない。要するにそれだけの答弁をされたわけでありますから、取り締まり官庁――警察庁なりあるいは検察庁なり、そういう部面に政務次官の認識を率直に訴えられて、まあいわば通産行政の一環ですから、そういう意味でも政務次官の認識を訴えられて、そして取り締まり官庁からこの問題についてその真相を明らかにする。現にすでに被害者同盟が共同訴訟という問題にも出ておりますが、しかしそれと、これからそういう現状を把握するということ、それがまた被害を食いとめるということにもなりますので、この点ひとつそういう御意思があるのかどうか。要するに、お役所の仕事でこの問題を扱っていったのでは被害者が広がる一方だ。もう一つ、そういうふうに時をかしますと、いまの会社の財産が散逸してしまいます。そうしますと、いまの被害者の方は被害にかかりっぱなしで、結局何にも、アブハチとらずになってしまう。これを私は防ぎたい。会社の財産を散逸させないためには、一日も早くこの問題を解決する必要がある。こういう点から、そういう御意思があるのかどうか、お伺いをしたい。  それから、公正取引委員会、たいへん少ない陣容できびしいお仕事をなすってらっして、まだまだそこまで手が伸びないのかもわかりませんが、いろいろ項目、法律、規則、そういうものにかかるかどうかということで、要するにおかしいという発想のもとにどの規制に該当するかというのをいま手探りでなすってらっしゃるのだろうと思います。しかし法律を扱う方は一番法律の盲点にひっかかるのでして、いまここでいろいろな話を聞いたここにいらっしゃる皆さんは、おかしいということはだれしも思うわけです。そのおかしいと思うことに、どの法律にひっかかるかということで時をかすのが能ではありませんで、不当表示の問題もありましょう。たとえばつけて被害が出ているという、いわゆる品物が悪質だという問題もありましょう。あるいは今度はその品物が入らないという問題もありましょう。出資金を返してくれと言っても返さないという問題もありましょう。そうしますと、これはもう直ちにその具体的な事実の中から、会社から事情聴取をしたり、あるいはまた、それなりの公正取引委員会としての御判断をこの業者にぶっつけることも私はできるのではないか。そういういわば急を要する処置を私はお願いをしたい。そして、先ほどの、アメリカでは公正取引委員会で、要するにもう違法であるという結論が出た、そこまでの事情を御承知なら、アメリカではどれくらいの被害があったかということをお聞きになっておりますか。アメリカでどれくらいの被害があったのか、これも私、参考のために聞かしていただきたい。  以上、要するに、先ほどの参考人の堺会長のみずからの体験を通して、一日も早く犠牲をなくしたい、こういう御発言で、時間をいただきまして関連質問さしていただきました。それぞれ御答弁をいただきたいと思います。
  217. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 表面的には化粧品の販売でございますから、先ほど来申し上げましたように、いま東京の衛生研究所で成分その他をやっておりますから、できるだけ早く結論が出るように督促をいたします。
  218. 柳田桃太郎

    説明員柳田桃太郎君) 大蔵省といたしましては、先ほど申し上げましたように、事業目的が化粧品及びその用具の輸入・販売、それから前号に付帯関連する一切の業務ということが事業目的でございまして、これに対して会社の設立を認可しておりますので、やはりこの関連の仕事をしているのだということでありますから、認可を取り消すというのには、国内法によりまして、これはこの事業目的を逸脱をしておるということが法的にも明らかになることによって措置いたしたいと思いますし、一方的に大蔵省だけの解釈でごり押しすることはできません。もとより社会的な被害を拡大しないように、そういったものの内容については直接間接によく調査をいたしまして、関連機関とともに善処方をわれわれのほうとしても努力をいたしたいと思います。
  219. 二宮文造

    ○二宮文造君 国税庁の問題どうですか、国税の問題どうですか。
  220. 柳田桃太郎

    説明員柳田桃太郎君) 国税関係の調査につきましては、ただいま担当者を帯同いたしておりませんので、後刻またそういう御説明をいたしたいと思います。
  221. 楠正俊

    説明員(楠正俊君) 私の理解が間違っておったのかもわかりませんが、私が、刑法上の問題であって、これは通産省の問題というよりはむしろそちらのほうの問題であろうと申し上げたことは、商品があるべきところにないという問題ではなくて、あの契約書の内容がたとえば身体に危害が加えられた場合でも何ら文句を申しませんというような、そういった問題に関してはむしろ通産省の問題ではなく、刑法上の問題になるのではないだろうかと、こう申し上げた次第でございます。
  222. 二宮文造

    ○二宮文造君 だからどうするというのですか。
  223. 楠正俊

    説明員(楠正俊君) したがってそういったものにつきましては、私のほうから警察庁なり関係官庁に御連絡申し上げまして、早急に手配をしていきたいと、こう考えております。
  224. 原田稔

    説明員(原田稔君) 私が先ほど申し上げた数字でございますが、あれは小売りの販売額でございます。この販売額は会社から聴取をした数字でございます。
  225. 後藤英輔

    説明員(後藤英輔君) 私どものほうといたしましても、できるだけ現行法でもって調べられる範囲のことはさっそくでも調べてみたいと思っております。  ただ、何ぶん人手の関係もありまして、そこらの点でもって実情を調べなくてはいかぬと思いながらもおそくなっておりました点は、これはおわびいたしますけれども、できるだけ現在の法律の中でできると思われるものはやってみたいと思っております。  それからアメリカの被害の点でございますけれども、これは現在ここに手元に持っておりませんけれども、アメリカにこの膨大なイニシアルデシジョンが出た資料がございます。その中には書いてございますが、いまそれを持っておりませんので……
  226. 二宮文造

    ○二宮文造君 膨大な額ですか。
  227. 後藤英輔

    説明員(後藤英輔君) 額もちょっといまわかりませんですけれども、これはいずれ別の機会に先生のほうに御報告さしていただきます。
  228. 前川旦

    委員長前川旦君) 参考人の方にはお忙しい中をたいへんに御苦労さまでした。退席していただいてけっこうです。  ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止
  229. 前川旦

    委員長前川旦君) 速記を起こしてください。
  230. 星野力

    星野力君 私は、保育所設置にかかわるいわゆる摂津訴訟について、まず大臣にお聞きいたしたいのです。  この問題について、厚生大臣は十月九日に摂津市長に五項目を提示して理解を求めたと報道されておりますが、それについて大臣から直接御説明願いたいと思います。
  231. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 摂津市の市長さんに先般お目にかかりまして、私の保育所に関する考え方、基本的な問題を話し合ったわけでございます。  まず第一に、私は、厚生省の社会福祉施設のうち国民の非常に要望の強いのは保育所である。したがって今後とも住民の生活に直結しておる保育所の問題には非常な重点を置いて今後努力をしたい、こういうことがまず第一であります。  それから第二番目には、保育所に対する国庫補助でございますが、摂津訴訟が起こった当時の問題、すなわち昭和四十七年ごろ、六年、七年、そのころは保育所に対する補助は百万円とか百五十万円とかといったふうな低額の補助であった。しかし、その後昭和四十八年度からは定員別、定数別、さらに建物の構造別にそれぞれの単価を引き上げてきておるわけで、今後ともそういうふうなやり方において努力をしていきたい、こういうことを申し上げ、同時に過年度分の補助金、すなわち昭和四十七年度、六年度、それぞれの手続によってやっておる補助金でありますから、過年度分の補助金については、単年度予算主義でありますから、それを支払うことは困難でありますということを申し上げております。  それから、今後、保育所については計画的にその増設を進めていかなければならぬと考えておりますと。そこで補助の単価についても充実をはかるようにただいま三省合同の調査をいたしておりますので、その結果を待って努力をして、いわゆる超過負担などというもののないように今後努力をしていきたいものであるということを申し上げておいたのであります。いずれにせよ今後とも保育行政はきわめて重要な問題でありますから、保育行政の推進に当たっては地方自治体の意見も十分承って、そして住民に喜ばれるような保育所が建設されるように今後とも努力をしたい、こういうふうな趣旨のことを申し上げておるわけでございます。
  232. 星野力

    星野力君 これは新聞報道でございますが、各紙とも大体同じように五つの項目をあげておりまして、ただいま大臣が御説明なさったことがここに含まれておるわけでありますが、その際に、今後の問題として、補助単価の実勢価格への引き上げとか、保育所の起業面積の拡大、こういうことについてもお話しになったでしょうか。
  233. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) これは保育所だけではありませんが、社会福祉施設全般についてその建築の補助単価、これは昨年の石油危機、石油を中心とした物価の問題、それとの関連において今日まで数回実は補正をしてまいってきております。したがって今後とも建築補助単価につきましては適正な実勢価格に近づけるように今後とも努力をしていきたい、こういうことを申し上げております。さらにまた、一人当たりの坪数単価等についても児童福祉審議会等の意見も十分承りながら、適正な一人当たりの坪単価になるように今後とも努力をしていきたい、こういうことも申し上げてございます。
  234. 星野力

    星野力君 なお、いままでの御説明の中に含まれるのかもしれませんが、摂津市の訴訟の問題提起は首肯できると、こういう御発言もあったようでございますが、そうでございますか。   〔委員長退席、理事小谷守君着席〕
  235. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 訴訟そのものを首肯するということを申し上げておりません。訴訟中身であるところの背景である、いわゆる超過負担解消、これがまあ中心の背景でございますから、超過負担解消というその趣旨については私は首肯さるべきものであると理解しておると、こう申し上げております。
  236. 星野力

    星野力君 わかりましたが、と申しますと厚生省関係としては少なくとも今後地方自治体に対して超過負担はさせないと、こういう御方針をお示しになったと理解してよろしゅうございますか。
  237. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) これは今回初めて申し述べたばかりではありません。春の国会においても超過負担というものはないように、適正なる補助単価というものになるように今後とも努力をしていきたい、これはもう私の一貫した方針でございます。そこで現在でも三省合同調査をやって実際の建築単価がどの程度になっているかということの調査もし、そして超過負担のないように努力をしなけりゃならぬ、これは私の一貫した方針でございます。
  238. 星野力

    星野力君 自治体が行なういろいろの施設の建設単価について、国の認めておる価格が異常に低い、それが超過負担の大きな原因になっていることについては、地方組織あるいは個々の自治体から私たちのところへも陳情や要望がおびただしい数が寄せられております。  保育所の場合、国の基準単価が四十九年度は鉄筋で一平方メートル当たり東京都、大阪府が六万八百円、福島県が五万七千八百円、これに対して全国市長会は全国百六十七市に対して行なった調査に基づいて平均十二万円という額を示してきております。実に二倍であります。大臣の方針としては、今後、基準単価を実勢価格に大体合致させる、こういうことでございますか。
  239. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 先ほども申し上げてありますように、三省間においていま合同調査をいたしておりまして、来年度予算編成までに間に合うようにいたしたい、かように考えております。  建築補助単価は昨年においても、昨年の十月、ことしの二月というふうに二度改定をしております。さらにまたこの四月においても改定をしておる、こういうわけで当初から私ども物価の変動に伴って単価が非常に苦しくなっているということは十分承知しております。そこで、さらに現在三省で合同調査をやって、そして合同調査に基づいた適正な建築補助単価というものをきめるようにしていきたい、こう考えております。その結果、もちろんそれにはすでに御承知のように自治体がつくって現実に支払ったものみんなというのではなくて、それぞれの基準がありますから、その基準に基づいた適正なる補助単価、こういうことで、言うなれば、こちらのきめた基準の坪数、定数別規模さらにまた構造別規模、そういうふうなものに応じて適正な補助単価というものをきめて、その部分に関する限りは超過負担のないようにしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  240. 星野力

    星野力君 昨年の年度途中からすでに現在までに三回この基準単価の引き上げをやっておると、こう言われるのでありますが、そのような引き上げをやっても、先ほどの数字のように、国の基準単価と実勢価格との間には倍もの開きがあるという結果になっておるのですが、そういうことをこれから繰り返していったのではこれはあまり意味がないと思うのでありますが、まあ三省の共同調査に基づいてというようなお話でございますが、三省共同調査ということはこれまでもおやりになったのではないかと思いますが、今度はどういう方法で、いままでのようなやり方でなしにどういう方法で、たとえば今度は大きく引き上げる、新聞ではたとえば三〇%ぐらい引き上げる、倍にもなっておるのに三〇%引き上げてもまだ高くなっておるのに、これでは追いつきやしませんよ、いままでの引き上げとこれはちっとも変わらないわけでありますから。そういうことも、これは大臣のおことばのようにもとれる書き方をしてありますが、これは児童家庭局長の御発言とかという話も聞きましたが、そういうことではいけないと思うのですが、その辺のことをもう少し御説明願いたい。
  241. 上村一

    説明員(上村一君) 三省合同調査と申しますのは、御案内のように四十八年度実施いたしました事業について、特別養護老人ホームそれから身体障害者の施設そのほかに保育所ということで、書面調査では全施設を、それから実態調査では保育所の場合に二分の一ぐらい調査することにいたしまして、実際に調査いたしますのは、どのくらいの工事費が要ったかとか、それからその標準仕上げの内容とか、それから補助単価と実施単価の差額がどういうわけで起きておるのかとか、それから地域別に単価の差があるのはどういう状況であるかというふうなこまかいことを調べるわけでございます。それに基づいて今後どうするかということを検討するわけでございますから、いま直ちに来年度何%までということまでは具体的に申し上げられないような状況でございます。
  242. 星野力

    星野力君 児童家庭局長でございますね、あなたの御発言として三〇%程度の引き上げということが言われたので、そのようなことになったのじゃ、その程度のことで終わらせられてはたいへんじゃないかということで言っておるのですが、そういう意味でお聞きしておるのですよ。
  243. 上村一

    説明員(上村一君) 私、約三〇%程度ぐらいになるだろうと申しましたのは、その時点で申し上げておりまして、ただその前提として三省合同調査を踏まえということを申し上げておりますから、その数字は流動的なものとお考えいただきたいと思います。
  244. 星野力

    星野力君 あの十月九日の段階においてそう言ったのだ、きょう何日ですか、十月二十四日ですよ、半月しかたっておらぬ。だからその時点時点でこの単価をきめていくなんといういままでのやり方じゃだめだと言っておる。  大臣が先ほど三省の合同調査の結果に基づいて来年度の単価を出していくと、こういうお話ですが、四十九年度においてすでに自治体はこの問題では大きな超過負担を出しておるのでありますが、四十九年度分についても手直しをするというお考えはないのでありますか。
  245. 上村一

    説明員(上村一君) これは単に保育所、まあ社会福祉施設だけの問題じゃございませんで、一つ検討課題であることは確かでございますが、いまこの段階でどうこうだとまではちょっと申し上げかねます。
  246. 星野力

    星野力君 四十九年度分については保育所だけじゃないかもしれませんが、保育所について言っておるわけでございますが、手直しはしないということではないのですね、検討して、その結果によっては手直しをする、あるいは手直しをする考え検討する、こう理解してよろしいですか。
  247. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 先ほど来申し上げていますように、三〇%云々ということでございますが、来年度予算の概算要求をするに当たって、まあ本年度よりも三〇%程度上がるのではなかろうかという数字で概算要求をしているだけなんです。その金額が何ぼになるかは予算編成時点においてきめていく、こういうことであることを御理解いただきたいのであります丁概算要求のときに三〇%増くらいでいまは要求はしております。しかしそれは実際どの程度にきまるか、それは予算編成を終わるその時点においてきめ、さらにまた保育所の予算等についてはいつも国会において予算が成立しましたあとにさらにもう一回見直す、こういうやり方をしているのです。そういうことでお考えをいただければけっこうと思います。
  248. 星野力

    星野力君 四十九年度分のことを聞いている。
  249. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) それから四十九年度の分にどうなるか。幸いに卸売り物価等については最近に至ってやや上がっている面もありますが、まあまあ横ばいの姿になっております。したがって、いまのところ具体的にいつ補正しなければならないかということについてはさだかではございませんが、将来物価の動向に応じて補正をしなければならぬということであればする考えでございますが、いまのところそういうことを言う段階ではない、かように考えております。
  250. 星野力

    星野力君 四十九年度分については、いまの大臣の御答弁をお聞きしておきます。  三〇%引き上げるという問題について、大臣、言いくるめたような御答弁じゃないかと思うのです。各新聞その点ではみんな一致しておりますが、それらの新聞報道が間違っておるのでない限りは単価を三〇%ぐらいアップすると、こういう発言になっておるんであります。これはまあいいです。  それから先ほど、大臣は、摂津市の訴訟内容である超過負担の支払い要求に対しては、これはそれぞれ単年度で済んでおる問題であるから、さかのぼってそれを支払うことはできないと、こういう意味の御発言だったと思います。が、十月九日の摂津市長との会談のあとで記者会見をやられて、それを説明されたんだろうと思いますが、そのときの記録では、支払うということはむずかしいと思うが、しばらく検討さしてほしいと、こう言っておられる、しばらく検討さしてほしいと。これは検討なさるということだろうと思うんですが、その点はいかがでございますか。
  251. 上村一

    説明員(上村一君) 保育所の整備に関する国庫補助につきましては、いまの御質問の中にもございましたように、私ども訴訟におきましても、補助金適正化法に定める手続を終えて年度ごとに決着がつけられたものでございますから、数年たったあと、その差額を補助金として出すことはできない性格のものであるということは明確に申しております。ただ、摂津市が過年度に行なった保育所の建設には相当の負担をしたことは事実でもございます。一方、他の国庫補助事業を含めまして過年度分の事業の超過負担の取り扱いが全般的な問題になっているという事情もございますので、何かいい方法がないか考えてみたいというふうに私は申し上げた、こういうことでございます。
  252. 星野力

    星野力君 しばらく検討さしてほしいということは、そういういま御答弁のように何かいい方法を探求するために検討するということでございますので、それはお聞きして先へ進みます。  訴状によりますと、摂津市では四十四年から四十六年の間に四つの保育所を建設したのでありますが、国の補助対象になったのは二つだけであります。これは児童福祉法から申しますと、どういうことになるのでありましょうか。まあ私が申し上げるまでもないことでありますが、二十四条では市町村長はその必要がある子供、いわゆる保育に欠ける児童がある場合には保育所に入れなければならない。そして三十五条三項で市町村は知事の認可を得て保育所を設置できるとなっておりますし、五十二条によって国はその費用に対して、政令の定めるところにより、その二分の一を負担する義務を負っておるわけでありますが、摂津市の場合も、知事の認可を得て建てられた四つの保育所は法のとおりならば全部四つとも補助の対象にならなければならないと思うんでありますが、そこのところはどういうことで二つしか対象にならないのかということをお聞きしたいのです。
  253. 上村一

    説明員(上村一君) 児童福祉法では、いまお話しになりましたように、地方自治体が設置した児童福祉施設に対して、国が二分の一なり三分の一負担するというふうに書いてございますが、この五十二条というのは、地方団体が設置しました保育所について、地方団体が福祉施設を設置すれば当然そのすべてについて国が負担しなければならない趣旨であるとは私ども解しておりません。  要するに、児童福祉法の中では、教護院は別でございます、教護院は設置を義務づけられておりますから教護院は一応別としまして、本来は地方自治体の任意という形になっておるわけでございます。そういったその地方公共団体が任意に設置されたものについて、無限に国が負担をするというのも制度としていかがかというふうに思っております。したがって設置されました保育所の全部について補助する義務は私どものほうにはない。ただ、この問題はその摂津訴訟の争点になっておる点でございますので、私どもはそう主張しておるということを申し上げたいと思います。
  254. 星野力

    星野力君 どうも私法律にしろうとのせいか、厚生行政にしろうとのせいか、いまの御答弁ではさっぱりわからないんでありますが、年々、全国の市町村から一千件くらいの補助の要請があるにもかかわらず、その半数ぐらいしか実際には補助対象にされておらないというふうに聞いております。その上、四十八年十二月二十六日、昨年ですね、児童福祉法施行令の一部改正が行なわれて、厚生大臣が認めた保育所建設だけにしか補助しないということが政令によって明文化されております。摂津市の場合はそれ以前からでありますが、この政令の改正というのは、法の趣旨からしてどうもおかしい、全くおかしいというふうに私は考えるんであります。  市町村長は保育所を必要とする客観的な事態が存在するから建設するんであります。何も気ままかってに保育所趣味があって保育所を建てるわけではございません。それを必要とする客観的な事態があるわけです。だから建てる。国は、当然、それらすべてに対して費用負担の義務を負っているはずであると思うんでありますが、どういう根拠に基づいてそのような政令の変更を行なわれたのか、わかるようにひとつ御説明願いたいと思うんであります。
  255. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 私からお答え申し上げますが、四十七年、四十八年までずっとでございますが、保育所の設置は義務づけられておりません。保育所の設置は任意です。  そこで、従来、補助のやり方というのは、毎年、毎年保育所の予算の総ワクがきまりますと、本年度はこの程度の補助金を出しましょうと。すなわち昭和四十六年、七年は定額で百万円なら百万円、坪数これだけならば百万円、百五十万円なら百五十万円、こういうふうな補助金を出しますから、この要綱に該当した方は申請をしてください、こういうことで次官通達によって毎年、毎年の基準をきめておったんです。ところがそれではどうもあんまりはっきりしない。そこで政令でより具体的にはっきりしようじゃないか、従来のやり方は通達でやっておったのを政令で明らかにしまして、厚生大臣が定める保育所整備計画、その計画に基づいて、そして厚生大臣の定める基準に従って補助を出しましょうと、こういうことにしたわけでございます。すなわち任意につくる保育所に対する国の基準を、いままでは次官通達できめておりましたが、この政令の改正によって厚生大臣がきめる、きめた整備計画に基づいて厚生大臣が定める基準に従って補助を出すようにいたしましょうと、次官通達でやったことを政令で明らかにしたというものにすぎないものであると、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  256. 星野力

    星野力君 理解できないんでありますが、保育所は義務づけられてはおらないと、こう言われますけれども、二十四条によってそういう子供がおったら保育所へ入れなければならぬ、保育所がなけりゃこれ入れるわけにいかないんだから、二十四条の義務というものの当然の結論として保育所は建てなきゃならぬし、建てたらまた法律によってその二分の一の負担を国がやると、これは義務ではないかと思うんであります。  どうも大臣の御答弁を聞きましても、私は行政のかってな法解釈で法を曲げておるというような理解しか得られないわけであります。国会でつくった法律というものが国会の外で骨抜きにされる、そういうことでありますとこれは非常に重大な問題であります。また実態から見ましても千件の要請があって半分しかやっておらぬ。それは国の福祉政策の、いまのような解釈でもって実際保育所の設立というものを押えていくということになれば、しかもそのために政令まで変えておる。いままでやってきたことだからこれはもっとはっきり政令でもってやったほうがいいと、こういう考えで政令まで変えておる。私はこれは国の福祉政策の後退である、福祉優先と言いながらそれに逆行する方向に法律をねじっていってしまっておる、こういうふうにしか考えられません。  そういうやり方がされるならば、せっかく基準単価を実勢に合致させる、あるいは近づけても、今度は補助対象の数をしぼればいいということにもなります。そういうやり方を今後もおやりになるのか、半分ぐらいに減らしてしまう、要請に対して。実際つくったものにも半分しか補助をしない、そういうやり方を今後も続けられるのか。それでは摂津市長に対してなされた五項目の口上ということとも矛盾すると思うんでありますが、いかがでございましょう。
  257. 上村一

    説明員(上村一君) いまのお話でございますけれども、現実にその保育所の整備のために国が助成しました予算額を申し上げれば、御心配は御無用だろうと思うんでございます。  四十四年度、摂津訴訟が問題になったときの保育所の施設整備費というものは五億でございましたが、四十五年には七億になり、四十六年には十五億になり、四十七年には三十六億になり、四十八年には六十六億になっておるわけでございます。そして補助対象の施設数も年を追ってふえておるわけでございまして、この政令改正、先ほど大臣申し上げましたように従来行なわれていたことを政令で定めただけのことでございまして、これによって保育所の整備を押えるということは全く考えておらない、むしろ積極的にこれから保育所をどんどん整備していきたいというふうな考えでございます。
  258. 星野力

    星野力君 まあ従来やってきたことをさらにはっきりさしたと、こうおっしゃるんですが、従来やってきたことが法の趣旨からすれば後退したことなんです。それをさらに政令によって一そうはっきりさせるということは私はおかしいと思うんです。福祉政策の後退だと、こう言うわけでありますが、一体、どういう基準で選別されていかれるのか。いろいろたくさんある要請の中から、これとこれは補助対象にしてよろしいというふうにどういう基準で選別されていかれるのか。  たとえば規格に合わないということがあるのかもしれませんが、それなら規格に合うように計画を修正させればいいわけであります。摂津市の場合は知事がちゃんとこれ認可しておる――まあ要請があるのはみんな知事が認可するんでありましょうが、規格に合わないものが半分もあるなどということは考えられないんです。児童福祉法の定めておる必要度に応じて、法の定めるところに基づいて国が負担するというんでなしに、まあ予算ということもあるでありましょうが、行政の都合において補助対象をきめていく、選別していく、これではよくないと思うのです。私は政令をもう  一度改めるべきであると思うのでありますが、いまの選別の基準と、あわせて政令を改めるお考えはないかどうか、御答弁願いたいと思います。
  259. 上村一

    説明員(上村一君) 私ども保育所の補助をどうするかにつきましては、まあ一つは県知事の意向というものも聞いてみております。それから具体的な例を申し上げますと、たとえば保育所の全然ない市町村というのがまだ日本に二百何十あるわけでございます。そういったところは当然優先的に割り当てなければならないし、いわゆる保育に欠ける子供が多いと想定されるところについては優先的に考えなければならない、そういうふうに個々の町村の実情を考えながら補助をしておるわけでございます。  それから、いま政令を改正するつもりはないかという第二点の問題につきましては、前からも申し上げておりますとおり、変えるつもりはございません。
  260. 星野力

    星野力君 大臣、自治体が要請する半分も保育所が建たないということを一つは心配しておるのでありますが、その点について、もう一度今後どうするかということのお考えを聞きたい。それから政令の問題についても大臣としてのお考えをお聞きしたい。私はこんな政令をつくったことは福祉政策の後退だ、こう申しておるのでありまして、それについて大臣のお考えを。
  261. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 保育所は地域住民が非常に要望しておる施設であり、児童の保育のためには絶対になくてはならぬ制度でありまして、現在百六十万程度の子供を収容しておるわけでございますが、最近における県市町村の動向から見ますと、やはり二百万をこすようなところまで保育所を増設していかなければならぬであろう、こう考えております。そこで、目下、社会保障長期計画において検討しておりますが、今後、保育所を計画的に増設していく、二百万をこす程度に増設していくという計画をつくり、進めてまいりたい、こう考えておるわけでございます。  それから昨年の暮れに改正いたしました政令は、従来やっておりました次官通達なんというもので毎年、毎年やっていくというやり方はむしろおかしいということで、政令で、いま私が申し上げましたような二百万にするなら二百万にするという保育所整備計画に基づいて、そしてそれぞれ定める審議会の意見等も聞いてきめるところの基準、そういうものによってやっていこう、こういうわけですから、後退などと私は全然考えておりません。いな、むしろはっきりしない点をはっきりさせる、非常に明確化することによって保育所行政を伸展させることができるのだ、こう考えておりますので、せっかくのお尋ねでございますが、これを改める考えは現在考えておりません。
  262. 星野力

    星野力君 この問題は、きょうはそこまでにいたしておきます。引き続いてもっと大臣厚生省当局にお聞きする機会を得たいと思っております。  生活保護の問題についてお聞きしたい。いまの日本は田中内閣の治世のもとですさまじいインフレの中に置かれております。インフレは少数の富める人々をますます豊かにする反面に多数者を貧しくしていく、国民の中における貧富の格差を拡大する、そういう作用を持っておるわけでありますが、特にインフレの影響は生活困窮者、低所得者層に最も重くのしかかってきております。そういう情勢の中で現行の生活保護基準はあまりにも低い、早急に格段の引き上げが行なわれなければならないと思うんでありますが、そういう観点に立って具体的にお聞きしたいと思います。  なるほど、四十九年度は生活扶助基準で見ますと、当初二〇%、六月一日からさらに六%、十月一日からパーセントでいえば三・一引き上げられました。この引き上げの根拠を、簡単でよろしゅうございますが、述べていただきたい。
  263. 翁久次郎

    説明員(翁久次郎君) お答えいたします。  生活保護基準でただいま御指摘がございました本年当初におきまする二〇%、これをきめました根拠と申しますのは、四十九年度におきます消費者物価指数の伸び、大体これが四十八年度に比較いたしまして一五・六%の伸びというように試算されておりまして、さらに昨年四十八年十月におきまして、御承知のとおり四十八年度当初に対して五%の生活保護基準のアップをいたしたわけでございます。これが年度当初に換算いたしまして四・四%程度になるわけでございますけれども、いずれにいたしましても四十九年度におきます消費者物価指数の伸びというものを勘案いたしました。現在の生活保護基準は、御承知のとおり、一般の消費者の消費指数をもとといたしまして、できるだけ一般世帯の消費に生活保護を受けられる方々の支出を含めた生活内容を近づけるということを中心にはじき出しますことを基準の作成の根拠にいたしまして、そして四十九年度当初におきましては、四十八年度当初に比較して二〇%引き上げたわけでございます。  ただ、ただいまも御指摘ございましたように、その後四月、五月、六月と前年同月対比の消費者物価が二三、四%と上がってまいりました。したがいまして、その水準を下げないためにこの六月に六%のアップをいたしたわけでございます。また十月一日の、ただいま御指摘のありました三・一%は、生活保護を受けられる階層のいわゆる主食の消費量、これは一般の消費生活におきましては大体一・一%と想定されておりますけれども、生活保護階層におきましては計算いたしますとおおむね三・一%であるということを根拠といたしまして、現在、十月一日で三・一%引き上げを行なった、こういう次第でございます。
  264. 星野力

    星野力君 三回にわたって合計二九・一%引き上げられたわけでございますが、いま発表されております一番新しい消費者物価指数、全国平均は八月でございますか、八月の指数は昨年同期に比べて二五・四%上がっております。十月は消費者米価や交通費、その他公共料金の引き上げによってさらに上がるのではないかと思われます。来年三月、年度末の消費者物価指数を、政府が言っておられますように前年同期にプラス一五%というようなことはもうとうていこれは問題にならぬ、二〇%以内に押えることだってこれはとうてい不可能だと思うのでありますが、二九・一%の生活扶助基準の引き上げによって被保護世帯の暮らしを守られると考えておられるのかどうか、端的に御答弁をいただきたいと思います。
  265. 翁久次郎

    説明員(翁久次郎君) ただいま申し上げましたように、十月一日の米価の引き上げに伴う生活保護上の措置については、一応これで私どもとしてはやっていけるという判断をいたしました。  ただ、ただいまも御指摘がございましたように、この十月から十一月、特に私どもといたしまして心配しておりますのは、冬に向かっての燃料、灯油等の値上がり、あるいはその他物価の値上がりがどの程度に推移するか、このことについては今後これらの物価が総合的にどういうように推移するかということを十分見きわめながら適切に対処していかなければならない、かように考えております。
  266. 星野力

    星野力君 十月から上がりましたのは消費者米価だけではないわけであります。その他の値上がりの中でもいま申された燃料の問題これも大きな問題でありますし、また特に交通費の値上がりなどが貧乏人にはきつく響いてきております。  福岡県で、これは私行き会った例でありますが、その被生活保護者は医療券をもらいに福祉事務所へ行くのに片道三百八十円かかるようになっちまった。まあ東京や横浜ですと自治体がそういう人たちに電車やバスの無料パスを出しておるからよろしいのでございますが、そういうところは少ないわけであります。医療券をもらうのに七、八百円かかるというのなら、安い売薬で済ますとか、あるいはふとんをかぶって寝ておるとか、そういうことにもなるわけであります。  消費者物価指数のことを私も申しましたが、この消費者物価指数というのはもともと低所得者に対しては不利にできているといわれておるのでありますが、消費者物価が何%上がったから、あるいは上がるから、それに合わせて生活の扶助基準を何%引き上げればよろしいというような考えでは、このすさまじいインフレ下で被保護世帯の暮らしを守ることはできないと思います。しかも被保護世帯というのは大部分が老齢者あるいは身体障害者の世帯でありまして、当然ここには蓄積もございませんし、環境の変化などへの順応能力といいますか対応能力といいますか、これも非常に乏しいわけであります。生活が苦しくなりますと、一般消費を切り詰める、理髪料、ふろ代、雑費を切り詰めるということになりますが、それでもどうしても食費に食い込んでくる、所得の低い層ほどその点はきついのであります。  私は、学者ともう一つはお医者さんと、この二組が被保護世帯の生活実態、特に食生活の実態についてそれぞれ別個にかなりの時日をかけて調査した資料を提供されております。それらの資料は学問的にも分析を加えておるのでありますが、それについての論議はここで差し控えますけれども、二、三の例を拾ってみましても、一日二食というのがかなり出てきております。また月に二回肉を食った。これは川崎の例でありますが、二回豚肉を食った。一回は買って食べたし、一回はもらって食べた、というのはこれはまだしもいいほうでございまして、もう久しく魚を食べない、魚が食べたいというのもあります。汁の実が買えないので、みそ汁ではなしになまみそをおかずに食事をしている。こんな例が幾つかありました。こういう状態であります。  もともとの出発点で保護基準が低過ぎた。だから、ちびちび変えていっても、どこまでいっても低いわけであります。先週の閣議で、公務員給与の三二・九%ですか、引き上げがきまりましたが、それに比べまして生活扶助基準の上げ幅をどういうふうにお考えになっておるか、お聞かせ願いたいと思います。
  267. 翁久次郎

    説明員(翁久次郎君) お答えいたします。  ただいま御指摘のございましたように、国家公務員の給与についての給与改定等が決定されたことも承知しております。ただ、御承知のとおり、生活保護を受けられる被保護階層、先ほどもお話がございましたように、老人あるいは働けない人、こういう方が非常に多うございます。したがいまして、いわば一般の勤労者の生活実態をそのまま被保護階層に置き直すということはいかがであろうか。  もともと生活保護の基準につきましては、いろいろな方法を従来からとってまいりました。あるいは市場に行って一々の生活物資を買う、バスケットに入れて買って積算するというような方式とか、あるいは食費と一般生活費の対比ではじき出すいわばエンゲル係数を中心としたやり方であるとか。しかしながら、現在、厚生省がとっております被保護階層に対する保護基準の改定、これの根拠として考えておりますのは、一般の消費支出というものに少しでも近づけていくということを基礎に置いておるわけでございまして、国民の多くの人々の家庭における消費支出というものを片方に置きまして、それに被保護階層の人々の消費支出が近づいていくということを一つのめどにすることがこの基準改定にとってもよりベターであるという判断を持って今日まできているわけでございます。  したがいまして、いろいろな賃金改定というものがあることは承知しておりますけれども、必ずしもそれを一つの指標にするということではなくて、先ほど申し上げましたような内容をもって、われわれといたしましては対処していく、こういうように考えておるわけでございます。
  268. 星野力

    星野力君 いまのお話の中にもありましたけれども、被保護世帯の生活水準を一般家庭の水準に近づけていくし、それから政府がお示しになっておる数字でもそれに近づいてきておるということなんでありますが、私はそれ自体がどうも数字のまやかしではないかという考えを持っております。この問題はきょうやりませんけれども、またこれはお聞きしたいと思っております。  いま申されました働いておる公務員と被生活保護者、これを同列には考えられないというお話でありますが、この一般家庭というのはまあ農民もおりますし市民もおりましょうが、大体働いている人々、公務員だけじゃなしに、民間の労働者も大体同じ程度の給与の引き上げが行なわれておるわけであります。被生活保護世帯と比較されるところの、何というんですか、第一十分位とか第一五分位とかといういわば保護世帯以外の低い層の人たち、これはやっぱりみんな労働者ですよね、それを同列にできないということになると格差というのはむしろ開いていく、少なくとも実態としては開いていくというふうに私は感ずるんであります。  いまの公務員給与の問題でありますが、単にこれは扶助基準の上げ幅がこの給与の引き上げの幅に比べて低いということだけを私言うわけではございません。公務員給与のほうは四月にさかのぼって支給されることになると思うんであります。そうなりますと、すでに生活してしまった分に対しても一応補償がなされる、こういう形になりますが、先ほども六月一日からの扶助基準の六%引き上げについてお述べになりましたように、四月、五月に消費者物価指数が上がったから六月から上げるということでは、これはあと追いだ。四月、五月の分がここで補償をされたわけじゃございません。扶助基準の引き上げの場合はいつでもそういうふうにあと追いになっておるというところが一つ大きな違いであろうと思います。私は決して公務員なり民間の労働者がいいと言っているんではないんでありますが、生活保護が悪過ぎるということを申したいんであります。  憲法第二十五条の規定する「健康で文化的な最低限度の生活」、この権利を保障するのが生活保護法であると思います。法三条にもたしかそう書いてあるわけであります。そういう生活保護法の最も基本的な内容であるところの生活保護基準というものは、社会保障全般の基本、さらに国民生活そのものの基本にかかわるものである。当然、それは法律によってはっきり金額を示してきめられなければならぬと私たちは思うんでありますが、実際はそうなっておらぬ。厚生大臣がきめることになっているというその不合理はまことに不可解であると言わざるを得ないんでありますが、どういう理由でこれは法律できめられないような仕組みになっておるんでありましょうか、お聞かせ願いたいと思います。
  269. 翁久次郎

    説明員(翁久次郎君) 御承知のとおり、生活保護費は毎月生活に要する費用を前渡するというたてまえになっております。それからまた基準を定めます場合も、先ほども申し上げましたように、通常の場合、翌年度の消費者家計支出がどの程度伸びるか、さらにそれを上回る基準を設けることによって一般の家庭消費に近づけていくというたてまえをとってきておるわけでございます。たいへん遺憾ながら、物価の高騰によりましてそれがあとで追いついていかないというような事態に立ち至って、昨年あるいはことしの六月というようにできるだけ臨機に対応するということで十月、六月と改定をするということをしたわけでございます。  ただいま御指摘がございました厚生大臣が生活保護基準を定める、これは法律で定めるべきではないかという御質問でございますが、生活保護法の八条にございます厚生大臣が基準を定めることになっておりますのは、ただいまも申し上げましたように、こういった生活保護の基準内容というものをできるだけ実態に即して対応できるということにいたしますためには、現在のように、厚生大臣の権限において、しかも各界の方々の御意見も十分伺いながら、きめていくということが一番現時点において妥当な行き方ではないかということで、法律上、「厚生大臣の定める基準」ということになっていると承知している次第でございます。
  270. 星野力

    星野力君 時間が大体来てしまいましたから、中途はんぱでありますが、もう一問さしていただきたいと思います。  いま御説明ございましたけれども、生活保護基準を法律できめないという理由には私はならぬと思うのであります。いろいろ機敏にやらなきゃならぬというような意味も含まれておりますけれど、それならば何も生活保護の問題だけではございません。公務員の給与だって、これは機敏にきめなければならないわけでありますが、現に児童手当であるとか児童扶養手当あるいは原爆被災者に対するいろいろの手当あるいは老齢福祉年金にしましてもそうでありますが、みんなこれは法律にきめておる。きわめて重大な意味を持つ保護基準を、国権の最高機関である国会の場で十分な審議を行なって、法律としてきめるのは当然ではないかということ、この点についての大臣のお考えをひとつお聞きしたいことと、それから各方面のいろいろ意見を聞いてきめておるということも言われましたけれども、どうも見ておりますと、この保護基準の決定にあたっては厚生省や厚生大臣がいわば腰だめ式のやり方できめておられるように思われます。  そうではなしに、ほんとうにこれを権威のあるところの審議会などにかけて検討してもらって、十分その意見に基づいてきめるぐらいのことは、これは法律できめられておらない現在においても当然なさるべきであろうと思うんでありますが、それさえなされておらない。そういう方法が当然とられるべきであろうと思う。社会保障制度審議会、その中には生活保護専門委員会も設けられておりますが、こういうものに制度のあり方について一回諮問なされて答申を受けられたことがありますけれど、いま申しましたような保護基準の内容について、これをどうしたらいいかということについての検討、科学的な検討、十分国民が納得のいくような検討の場として、現にあるところのそういう審議会なり専門委員会なりも活用はされておらぬ。この点を私奇怪に思うんでありますが、その二点について大臣から御答弁いただいて、時間がなくなったそうでありますから、私の質問を終わります。
  271. 翁久次郎

    説明員(翁久次郎君) 一点について、私から御答弁さしていただきます。  保護基準の内容等につきましては、きょうも実は午後ございましたんですが、中央社会福祉審議会、これに生活保護基準についていろいろ御意見を伺う場がございました。この分科会におきまして十分御意見を伺っておる次第でございます。
  272. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 最低生活の保障である扶助基準というもののきめ方、そういうことについては局長から話のありましたように、審議会の御意見も承っておりますし、それから国会においても予算の審議の際に各方面の御意見も十分承っておるわけでございます。  そこで具体的に基準の額をどうきめるかということでございますが、これは法律によって厚生大臣に委任されております。その委任されている理由というのは、特にインフレ下においては機動的に扶助基準をきめるという必要があると思います。私ごとしの例を申し上げますと、ことしの四月の物価指数が発表になりましたのが五月の三十日ごろですね、二四・五%か九%になっておりました。四月のそれが発表になりますのは五月の末ですね。そこでこれはだいぶ上がったと、二〇%増で去年よりやってきたけれども、これではどうにもならぬじゃないか、六%上げなきゃいかぬ、これは至急に上げにゃならぬのです。そういうようなことで機動的に運営していくということを考えるならば、私は厚生大臣に授権していただいておるいまの法のたてまえのほうが適当である、こういうふうに考えております。したがって一々基準額を法律できめるという性質のものになじまないのではないか、私はかように考えております。
  273. 星野力

    星野力君 すぐやめますが、一言。  私、根本的な考え方で全く納得できないんでありますが、その点はもうきょうはやれませんが、問題の一つは、いま現に低いということですね、困っておると。大臣は機動的に上げられるためにこうなっておるんだということを言われましたが、この年度内には上げる、十分この被保護世帯の生活を守られるように上げるお考えは持っておられるんだろうと思います、その機動性を発揮して。とりあえず、そのことをお願いします。どうですか。
  274. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 先ほど来局長から申し上げてありますように、最低生活を守るための扶助基準というのは消費者物価の高騰とにらみ合わせて考える、この基本線はくずしておりません。したがって将来かりに消費者物価指数が非常に上回る、上がってくるということになれば、それは当然考えざるを得ないときが来るだろうと思います。しかし、いまのところそういう時期ではない、かように考えております。
  275. 小谷守

    ○理事(小谷守君) 速記をとめて。   〔速記中止
  276. 小谷守

    ○理事(小谷守君) 速記を起こして。
  277. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、まず、政府の人口政策について質問したいと思います。  ことしの四月に、十五年ぶりに人口問題審議会が人口白書というべき「日本人口の動向」という報告をまとめたわけでありますけれども、その中には狭い国土にすでに一億九百万を数える日本の人口問題を解決するため、静止人口を目ざすということを提言しております。  齋藤厚生大臣は、去る八月、ブカレストで開かれた世界人口会議において、世界の人口増加について量的目標が決定されることに考慮が加えられることを希望すると述べ、また日本は今後人口分野で国際協力を強化すると約束をされました。また日本の人口についてはポテンシャルとして静止人口の局面に達しているとも述べられたわけであります。  いまや人口問題は、食糧資源、環境などの諸問題と関連して、単に国内の重大問題であることにとどまらず、世界の人口問題と切り離して考えられない重大問題だと思います。そこで、まず政府の人口問題に対する所見と政策をお伺いをしたいと思います。
  278. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 私が申し述べるまでもなく、現在、地球に住んでおる人類の数は約四十億、三十年後には七十億と、こういうことがいわれております。そういうことにかりになるとすれば、資源や食糧の面においてこれはたいへんなことになるのではないかということで、国連が中心になりまして地球に住む人口という問題をグローバルな立場においてお互いに検討しようではないかと、こういうことで先般の世界人口会議というものになったわけでございます。わが国においては、幸いに戦後の国民の英知といいますか、そうしたことから大体において現在自然増加率が一・一%というふうな状況になり、静止人口に到達することもそうほど遠くない状況にあるのではないかと、こういうふうに考えられるわけでございますが、日本だけがそうなっていけばいいという性質のものではない。やはりグローバルな立場でみんなで考えてみようではないかと、こういうことであろうと思います。  そこで、人口の問題は、基本的には男女の夫婦の基本的人権に触れる問題でありますけれども政府としては、望ましいそういう姿を頭に描きながら国民の合意を得るようにつとめていくということが一番大事な問題だと考えております。そこで私どもも今日まで家族計画の問題とか、そういう問題について努力をいたしてはまいりましたけれども、今後とも人口問題に対する国民の啓蒙的合意を得るように努力すると同時に、具体的な家族計画あるいは母子保健事業、こういった方面にさらに一そう力をいたす、こういうふうに私ども考えてその方面に今後とも努力をいたしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  279. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 ことしの七月に開かれた日本人口会議における宣言の中で「〃子どもは二人まで〃という国民的合意を得るよう努力すべき」だ、こういうふうなことばが述べられております。このことに対する大臣の見解はいかがですか。
  280. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 日本人口会議においてそういうことを述べられておりますが、私としては、何が望ましいかということをいま政府として言うことが適当であるかどうかは別といたしまして、そういう人口問題というのは地球に住む今後の世界人類の大きな課題である、こういうことを十分認識し、また日本の人口増加の趨勢も頭に描きながら、こうした方向に行くことが望ましいということを申し上げることができると思います。しかし基本的にはあくまでも基本的人権を無視してはならない、こういう基本の線の上に立って望ましい姿の現出のために家族計画なりあるいは母子保健事業に努力をしていきたい、こう考えておる次第でございます。
  281. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 人口がこれ以上あまりふえないようにすることが望ましいという御見解でありますけれども、単に望ましいというだけで具体的に政策面で何らかの形であらわさなければ、これは効果があるかどうかきわめて疑問であります。もちろんこれは大臣も言われましたように、子供をつくるのは根源的に親の人権に属するものでありますから、国家権力で何名までという制限はすることはできないと思いますけれども、そういうことは別にして、何らかの具体的な方策なり政策なりというものがなければ目的は達成できないと思います。こういう点について何かお考えですか。
  282. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 具体的には、先ほど申し上げてありますように、人口問題に対する啓蒙的な国民の合意、これがやっぱり基本だと思います。それと同時に、政策的にはやはり家族計画の設定あるいは母子保健事業の推進、さらにまた人口抑制のための手段方法について情報を提供する、やっぱりこの辺は非常に大事な問題だろうと思います。まあ具体的にいろいろありましょうが、人口増加抑制のための情報の提供、これが非常に大事な問題ではないか、かように考えておる次第でございます。
  283. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 大体、いろいろな調査によりましても、客観的に見た場合、日本の人口をこれ以上ふやさないほうがいいという合意は得られると思うのです。  ところが、問題は、個々の夫婦間の問題ですから、そういう全体的に望ましいというあり方と個々の夫婦間の意識というものとは必ずしも一致しない。厚生省の人口問題研究所が四十七年六月に行なった第六次出産力調査によると、理想の子供数は三人とするものが最も多いということがいわれております。また人口動態統計を見ましても、第三子以上の出産が最近の数年間はふえる傾向にあります。現在は二人、現実には二人だという意見も多いわけですけれども、これは住宅事情とかあるいは教育費がかさむ問題とか、こういう問題から見て二人ぐらいが適当だと考えておるけれども、できるならば三人ほしいというのが一番多いということがこの統計で出ておるわけです。こういう中で、国民合意を得るように、たとえば子供は二人までというようなことで国民合意を得るようにどういう努力をされるか、お伺いをしたいと思います。
  284. 中野徹雄

    説明員(中野徹雄君) 先生指摘のとおりに、第六次の出産力調査によりますと、理想的には現状よりも子供を多く持ちたいという意見の夫婦がある程度、相当数にあることは事実でございます。また、先生指摘のとおりに、現在の実際の住宅事情等がブレーキがかかって、現在のいわば純再生産率一という静止人口含みの出産力水準にあるということも事実であろうかと思います。そこで、今後先生指摘のように、住宅問題等の改善があった場合に、人口が再び増加趨勢にならないという保証はないというのは専門家の一致した意見でございまして、そのために政府としての政策努力にどのようなものがあるか、これは専門家の間でもいろいろ議論されているわけでございますけれども一つの方策といたしましては、現実に産まれてくる子供の中に産児制度、家族計画の失敗によって産まれてくる子供が相当数いることも事実でございまして、したがって政策的努力の焦点といたしましては、そういういわば失敗による出産というものがなくなるように政府としての努力を積み重ねるという点が残されたいわば社会的にも常識ある常識的な方法であろうかと思うわけでございます。その点、家族計画の手段方法を誤りないように、さらに効果的に行なえるように啓蒙的な努力をするという点に政府の残された努力の分野があるわけでございまして、大臣のお話になりましたように、その点に今後の日本の人口政策の政策的努力の焦点が置かれることになろうかと、かように存ずるわけでございます。
  285. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 いまの御答弁に関連してですが、日本人口会議の主張によれば、ピルまたIUDの公認ということを主張しております。これについてどういう考えを持っておられるか。  また人口庁の設置及び人口研究機関の拡充ということも言っております。この両点についての政府の見解をお伺いしたいと思います。   〔理事小谷守君退席、委員長着席〕
  286. 宮嶋剛

    説明員宮嶋剛君) 最初にピルとIUDの関係につきましてお答え申し上げます。  いわゆるピルにつきましては、健康な御婦人が長期にわたって使うものでございますが、特に副作用の面におきまして諸外国でもその例がいろいろ伝えられておりますけれども、重篤な副作用が間々起こるというふうなことが言われておりまして、この安全性に関する解明ができません限り現在の段階ではピルを承認するわけにはいかないと、このように判断しております。また、御指摘の子宮内避妊器具、IUDにつきましてはこれまで種々いう論議もございましたけれども、先般、中央薬事審議会におきまして慎重な論議の末、これも体内に挿入するということで、挿入につきましては特に医師をわずらわすということで、また年間二回は医師に見てもらうというふうな使用上の条件をつけましてやればほとんど害はないということでございましたので、八月八日付をもって製造承認を行ないました。そういう状況になっております。
  287. 中野徹雄

    説明員(中野徹雄君) 先生指摘の日本人口会議の提言と申しますか、決議の中に、人口庁の設置及び人口研究機関の拡充がうたわれておるわけでございます。これを受けましての政府の態度でございますが、一つには、人口研究機関のほうにまいりますと、これは国際的にも人口情報の国際的な交換の拡充を求める声が、たとえば国際機関の一つでありますエカフェから日本に対して非常に熱心に要請がきているようなこともございまして、まず厚生省姿勢といたしましては、来年度は、厚生省所管の専門研究機関でございます人口問題研究所の国際情報の収集及び交換に関する部門の拡充を要求する態度でおるわけでございます。もう一つの人口庁――確かに、先進国の中に「人口」という名前を冠しました政府の部局がある国が多いわけでございますが、日本の場合におきましては、この人口問題は、いろいろな資源、食糧その他に関連をいたしまして政策面でも多岐にわたっておりまして、各省庁にまたがる行政を含んでおります。そこで、その観点から、この人口庁云々ということにつきましてはなお検討の時間をいただきたいというふうに考えておる次第でございます。
  288. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 次に、児童手当の問題について質問したいと思いますが、児童手当制度の目的は、家庭における生活の安定に寄与するとともに、児童の健全な育成及び資質の向上に資することとされております。しかし現状は、御承知のように支給対象は十八歳未満で義務教育終了前の第三子以降となっておりまして、十八歳未満の児童数三千万人の中の一割にも満ちておりません。しかし、諸外国の例を見ますと、この制度を実施しておる六十二カ国のうち、第一子以降支給しておるものが五十一カ国で大半を占めております。第二子以降が八カ国、第三子以降は二カ国にすぎません。この点について大臣の見解をお伺いしたいと思います。
  289. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) わが国の児童手当が昭和四十七年度から創設されまして段階的な実施をやってまいっておるわけでございます。そこで、諸外国においては第一子から、第二子からそういう例のあることは承知をいたしております。で、私も、できるならばもう少しこの範囲の拡大をすべきではないかという考えも、実は私は個人的には持っておるんです。しかし、これを、範囲の拡大をやるということになりますと、実は国・地方公共団体、それから勤労者の家庭の問題については事業主の負担も相当膨大になると、こういうふうな問題等もありますので、範囲の拡大はなかなか容易でないというふうに考えられます。そこで、私としては、範囲の拡大よりも現在支給しておりまする四千円という額の増額に力をいたすほうが順序ではないだろうかと。額を増額させ、そして一応日本において定着した家族手当制度というものの発展を期するということのほうが望ましいんではないか、こういうふうに考えておるような次第でございます。
  290. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、この人口問題との関連において静止人口が望ましい、そして静止人口を実現するためには子供はやっぱり二人が望ましい、ということになるならば、この児童手当制度においてもやっぱりそういう方向に適した制度をつくるべきではないかと思うんです。第三子以降だけに出すというのはこういう考え方とはちょっと矛盾した面があるんじゃないか。同じ財源を使うにしても、一子・二子に出す――もちろん、第三子に出してもいいわけですけれども、一子・二子に出さずに第三子以降だけ出すというのは、何か、第三子以降の出産を奨励しておるような面が若干あるんじゃないか。もちろん金額もわずかですからそれを奨励とまではいきませんけれども、政策目的としてはちょっと矛盾する面があるんじゃないかと思うんですね。この点いかがですか。
  291. 中野徹雄

    説明員(中野徹雄君) 実は先生指摘のような問題東南アジア地域において日本の児童手当制度についての批評めいたもの、そのようなこともちらほら耳にいたす場合があるわけでございます。しかし、かように御理解いただきたいわけでございますが、それは、国によりましては、人口政策に対しまして政府が非常に強力な介入をすると、その人口の動向に対して介入をするという姿勢をとっておる国が現実にございまして、そのような国の場合には、たとえば児童の数がふえれば逆に経済的にその世帯が苦しくなるというふうな、つまり何と申しますか、人口増に対して経済的なディスインセンティブということばを使いますけれども、そういうものを設定することを人口政策の方法に採用している国も現にアジア地域においてはあるわけでございます。ただし、日本の場合の児童手当制度はさようないわば人口政策の手段としての発想は本来含んでおらないわけでございまして、これは純粋にいわば一種の貧困の条件になり得るような多子現象に対する福祉的な施策ということで出発いたしておるわけでございまして、人口問題という観点のみから見ればその点先生が御指摘のようなお考えもあろうかと思いますが、趣旨としてはあくまでも児童の福祉をねらい、それが三子以降について現在機能いたしておる、かような沿革であるわけでございます。
  292. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 本来の趣旨はそうだと思いますけれども、しかし、実際問題としてこれはこういう制度ができる場合に、いまの金額は微々たるものですから、どちらにしても問題にするに足りないと言えばそれまでだと思います。しかしこれを充実させていく過程においては、政策の目的としては貧困を救助する目的であっても人口問題に対するインセンティブ的な要素も帯びてくるわけです。だから、本来の考え方がどうあれ、現実の問題としてこういう制度というものは人口に対する政策とは矛盾すると思うのです。  それから児童手当の目的にありますように、やはり児童の健康と資質の向上に資するというなら、あるいは家計を安定させるというなら、一子、二子においてもこれは当然適用すべきなんです。第三子で、そこでワクを設けるということもあまり理論的な根拠もないと思うのです。こういう点についてはどうですか。
  293. 上村一

    説明員(上村一君) いまお話ございましたように、児童手当の目的は二つ、一つは家計の補助的な機能、一つ児童の健全育成でございますが、現在の児童手当制度は、どちらかと言えば第一の目的のほうに相当ウエートを置いて考えておるわけでございます。したがって子供が多ければ家計の負担が大きいということで、児童手当を発足するにあたりましては三子以上について児童手当を支給するようにした。何と申しますか、いま人口問題との関係でお話しになりましたけれども、平均二人という場合には二人以上のものもあるわけでございますから、そして現実に二人以上、三人以上の子供を持っておれば家計の負担もかかるわけでございますから、児童手当を三子以上について出す積極的な理由はあるのではないか、こういうふうに考えます。
  294. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私はむしろ、政府はこの財源をしぼるために第三子以降に限定したと思うんです。私はこの財源そのものをもっとふやすべきだと思うんです。社会保障の中に占める児童手当のパーセンテージから見ても、日本は世界の中で最も低いランクですね。それから国民所得に占める比率を見ても最も低いランクです。私は第三子以降にしたというのは、単に財源の問題だと思うんです、これは。だから、その点の改善をやはりはかるべきじゃないかと思うんですね。来年度予算では大体六千円に上げるというような案も出されておるようですけれども、やはり第三子以降に限定せずにワクを広げるという努力を当然政府はすべきだと思うんですが、この点いかがですか。
  295. 上村一

    説明員(上村一君) これは一つ検討課題であろうと思いますが、児童手当の目的の第二である児童の福祉にアクセントを置けば、二子の、あるいは一子という議論も当然あり得ると思いますけれども、同時に国がとっております各種の児童福祉施策、一般の家庭の子供を対象にしました各種の健全育成対策あるいは母子衛生対策医療費の公費の負担等が行なわれておりますので、児童手当だけで、何と申しますか、児童の健全育成をはかることまでも考えなくてもいいんじゃないか。もちろん、いろんな議論はあると思いますけれども児童の健全育成の面に着目をすれば、いま行なわれているいろんな児童福祉施策を総合的に考えて、その中で、いま財源のお話が出ましたけれども、財源をどういうふうに優先的に割り振っていくか、いろいろ考えながら進めていかなくちゃならないんじゃないかなと考えております。
  296. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 家計の貧困救済と言われるなら、現在ほとんどのところは高校へ行くわけです。義務教育以下の年齢にしぼるということもこれは矛盾があると思うんですね。むしろ学費は高校へいくようになってからかかるわけです。したがって、こういう面でもその支給対象を拡大すべきである。十八歳未満で少なくとも高校在学者にもその支給対象を広げるべきだと思いますが、いかがですか。
  297. 上村一

    説明員(上村一君) 現在の児童手当の支給の対象になります児童というのは義務教育終了前の児童でございますが、全体として考えますと、十八歳未満の子供を三人以上持っておる世帯について児童手当を支給するという考えでございますので、何と申しますか、十八歳とは全然無縁ではない制度でございます。したがいまして児童手当を出す具体的な対象になる子供については、現在義務教育終了というふうにしておりますのは、あの年齢になれば、そこで児童手当の支給対象そのものからはずすということにしておるんですけれども、諸外国の例なんかを見ましても、高等教育との関係児童手当の支給年齢を考慮されておる制度もあるわけでございますので、他の制度との均衡を考えながら検討する問題として残しておきたい、こういうふうに思います。
  298. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 このほかにまだ所得制度の問題もあるわけですが、私は児童手当の予算増額について、単にいまのワクだけで金額を上げるのではなくて、やはり年々この支給対象を広げるという意味で拡充をはかるべきだと思います。来年は予算で、いまの第三子以降ということで六千円に上げるということだけで、ワクを広げるということは全然考えられていないわけですか。
  299. 上村一

    説明員(上村一君) いまワクを広げるという意味で御質問になりましたのは、所得制限をゆるめるとか、そういうことでございますね。
  300. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 撤廃するとかですね。
  301. 上村一

    説明員(上村一君) 児童手当の目的の、また繰り返しになるわけでございますけれども、家計に対する援助ということを考えますと、ある程度の所得制限と申しますか、要するに相当裕福な階層にまで児童手当を支給する必要はないのじゃないか、そういうふうなことで、児童手当の支給についての所得制限は私はあっても差しつかえないんじゃないかと思いますけれども、来年はことしよりもより緩和したいという方向で予算要求はいたしておるわけでございます。
  302. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 以上です。
  303. 前川旦

    委員長前川旦君) 速記をとめてください。   〔速記中止
  304. 前川旦

    委員長前川旦君) 速記を起こして。
  305. 野末陳平

    野末陳平君 ここに持ってきましたのは、厚生大臣も御存じだと思いますけれども、ファンタという飲みものでありまして、これは日本コカコーラという株式会社、コカコーラの会社ですね、そこの製品で、こらんのとおり無果汁というふうに書いてあります。表示がちゃんと無果汁と出ておりますから、これは果汁ではありませんね。ファンタグレープとかあるいはファンタオレンジとか、こう書いておりますけれども、ジュースではもちろんありません。合成着色と書いております。  そこで、このファンタグレープの合成着色、何が使ってあるか。同系のものでミリンダグレープというのもありますので、この合成着色の内容についてまず説明してください。
  306. 宮沢香

    説明員(宮沢香君) ただいま先生指摘の成分でございますが、ミリンダあるいはファンタのほうでございますが、合成着色料で赤色の二号とかあるいは赤色の一〇二号とか、その他黄色とか青色とか、そういったような合成着色料が使用されております。
  307. 野末陳平

    野末陳平君 表示が小さいので、ジュースと思って飲んでいる人がいるかもしれないんで、念のために聞いたわけです。  そこで、いまのグレープですね、赤色の二号とか赤色の一〇二号とかいう内容です。つまり、色づきの砂糖水ですね、ジュースでなくて。そこで、色素ですがね、タール系の色素、これが四十年から四十七年の間に、十三種類このタール系の色素が使用が禁止になっている。このグレープに使ってあるタール系の色素は、これはどうなんでしょうか、安全性の確認が十分あるという、そのデータに基づいて許可されているのか、それとも許可の当初段階においては、それほどのデータがなくて許可になっているのか、その辺のことを簡単にお願いいたします。
  308. 宮沢香

    説明員(宮沢香君) ただいま日本では、合成着色料としては十一種類使用しておりまして、これはいずれも安全性がWHO、FDAの原則に基づいて確認されたものでございます。
  309. 野末陳平

    野末陳平君 それでは、ここにありますグレープの着色料についてお聞きします。  これは赤色の二号と赤色の一〇二号と、それから青色の一号でしたね、ファンタグレープはそうですね。しろうとですから、これを見ていても、何が何だかわかりませんから、まあこう(ハンカチをファンタの入ったコップの中に入れる)入れまして、ブドウ色にはなりますけれども、ブドウとはもちろん関係がない。で、こう染めてみますから、要するにこう入れてみますね、そうするとこう入れれば、当然これ炭酸があわを吹いてこうなる。つまりブドウ色になりますね。このブドウ色になるのが結局タール系の色素、つまり赤色の二号、一〇二号、こういうわけですね、これ間違いないですね。
  310. 宮沢香

    説明員(宮沢香君) ええ、そのとおりでございます。
  311. 野末陳平

    野末陳平君 そこで、こうタオルが簡単に染まったんですが、このブドウ色について詳しく聞いていきたいんです。  この赤色の二号は、私のほうが調べましたらば、赤色の二号については、安全性の評価は確かにAということになっていますね、世界的ないろいろな基準で。そこで、Aにはなっておりますが、最近ソ連の学者が、この赤色二号に対して非常に遺伝の毒性があるということを実験の結果発表しているということを聞きましたが、このソ連の学者の発表について簡単な説明を、どんな毒性があるのか。
  312. 宮沢香

    説明員(宮沢香君) マウスにこの赤色を食べさせましたところが、妊娠率が下がったとか、死胎児がふえたとか、こういうような報告がございまして、先生ただいま御指摘のような、何か遺伝的な問題がありはしないかと、こういうような発表でございます。
  313. 野末陳平

    野末陳平君 そうしますと、それを人間に当てはめますと、要するに生まれてくる子供ですね、胎児に何らかの悪影響があると、こういうことになるわけですね。そうすると、人間に当てはめた場合は、大体大量投与をした場合に、人間にどういう遺伝上の毒性があると、このソ連の学者は実験の結果言っているんでしょうか。
  314. 宮沢香

    説明員(宮沢香君) ソ連の学者の警告については詳しくは知りませんが、同様の実験についてアメリカのFDAで十分追試しておりまして、ソ連で出たよりも相当大量でないとその妊娠率の低下というような現象は起こっておりません。しかしこういった遺伝学的な問題は非常に新しい学問だということで、現在はっきりその辺の証明ができるまでは、WHOとしては暫定的にこういった摂取許容量というものを、従前体重一キロ当たり一・五ミリグラムというふうにきめておったのを、半分の〇・七五ミリグラム・パー・キログラムと、こういうふうに改正をして、暫定的な基準として現在定めております。
  315. 野末陳平

    野末陳平君 繰り返しますと、つまりソ連の学者の遺伝毒性の実験の結果、一応暫定基準量を半分に落としたということになりますね。
  316. 宮沢香

    説明員(宮沢香君) はい。
  317. 野末陳平

    野末陳平君 キログラム……
  318. 宮沢香

    説明員(宮沢香君) 〇・七五ミリグラム……。
  319. 野末陳平

    野末陳平君 〇・七五ミリグラムまで落としている、暫定基準量落している――許容摂取量ですか……。  そこで、アメリカでも、いまちょっと実験なさっていると聞きましたが、日本ではこのタール系色素の赤色二号については似たような実験をやっておりますか。
  320. 宮沢香

    説明員(宮沢香君) 従前からの毒性実験については、再点検の一環としてやっておりますが、いまの遺伝学的な研究については日本ではまだやっておりません。
  321. 野末陳平

    野末陳平君 ちょっとしろうと考えですが、何かアメリカでも同じような実験をやっている、ソ連でもやっていると言われながら、現に日本では、こうやって自由に幾らでも飲めるわけですけれども、いまどのくらい飲まれているかとか、そういう点については、あとからデータで説明したいと思うんですが、日本で全然やらないというのが、しろうと考えで何となくおかしいような、日本も当然やるべきではないかと、こう思われるんですが、それは何ですか、予算関係でやっていないのか、それともやる必要ないと、日本の学者あるいは厚生省判断しているのか、その辺を、遺伝毒性についてのお考えを聞かしてください。
  322. 宮沢香

    説明員(宮沢香君) この赤色の二号と、それから赤色の一〇二号でございますが、世界各国で幅広く実験が行なわれておりまして、WHOのほうで安全性を評価する一つの原則を持っておりまして、その原則に沿って各国のデータ等を十分に検討して、このものについて、WHOの専門家の間で、一日の摂取許容量として〇・七五ミリグラム・パー・キログラムで安全であると、こういう線を出しておるわけでございます。
  323. 野末陳平

    野末陳平君 そうすると、その安全性には、遺伝毒性ということはまだあまり加味されていないということになりますね。
  324. 宮沢香

    説明員(宮沢香君) 実は遺伝学的な問題については、遺伝性が、変異原性と申しますが、強いのは発ガン作用を疑わせると、こういうようなことが、変異原性と、あるいはガンと、こういう学者の間の定説になっております、発ガンについては。ですから、発ガン作用については相当精密に見ております。また催奇形性についてももちろん見ておりますが、そういった妊娠率の低下とかいうような特殊な実験等についてはアメリカとソ連だけでやったと聞いております。
  325. 野末陳平

    野末陳平君 そこで大体わかったんですが、要するにいままでの実験で確認された安全性というものとは別の角度から、あらためてこのタール系の色素に対して遺伝毒性という面から新しい問題が提起されたということで、理解はいいですね。
  326. 宮沢香

    説明員(宮沢香君) 実は食品添加物の安全性について遺伝学的な面からもう一度見直すということば、これ世界的な趨勢になってきておりまして、私どももこの遺伝的な面から着色料であるとか、殺菌作用を持った防腐保存料のようなものについては、徹底的に研究をしてみようということで、現在そういった予算を予定しております。
  327. 野末陳平

    野末陳平君 そうしますと、赤色二号については、ソ連とアメリカだけが実験している、日本ではやっていない。それから赤色一〇二号については日本でもやっているということをちょっといま言われましたが、これは発ガン性だけのことだけですか、それとも見直しですか、それとも新しい問題提起のあった遺伝毒性、この点についての実験なんでしょうか、厚生省としては。
  328. 宮沢香

    説明員(宮沢香君) 赤色一〇二号につきましては、当初わが国だけで使用しておった色素でございます。現在はその安全性が確認され、WHOの評価も得られまして、相当多くの国で使っておるわけでございまして、わが国でいままでやっておりましたのは、いわゆる長期的な世代生涯にわたって与える慢性毒性であるとか、あるいは発ガンであるとか、そういうものでございましたが、たまたま突然変異原性というものの分野での見直しということで、色素、着色料、結局全部含めまして、保存料と一緒にその遺伝学的な検討を十分やると、こういうようなことで現在計画を進めておるわけでございます。
  329. 野末陳平

    野末陳平君 わかりました。要するに遺伝の毒性については、今後の実験なり、研究にまつことであって、現在の段階ではやられていないが、しかしそういう疑いというものは一部で持たれていると、あるいは学者、ソ連ではそれを発表しているということですね、いままでの説明をまとめますと。  そこで、赤色一〇二号について、アメリカのファンタグレープの中にはこれが使われていないと聞いたんですが、ほんとうですか。
  330. 宮沢香

    説明員(宮沢香君) 赤色の一〇二号は、先進十二カ国の間では、アメリカとカナダが使用しておりません。あとの国は使用しております。
  331. 野末陳平

    野末陳平君 これもまたしろうと考えですが、さっき言ったように、外資系の会社で、アメリカでつくっているんじゃないかと、原液ですか、そういうふうに私思っていましたから、そうすると、アメリカでこの遺伝毒性の疑いが一応持たれているようなこの一〇二ですか、この辺をアメリカで使っていないのはどうしてなんだろうと、こっちはかってに考えているわけですが、アメリカのこのファンタグレープはどういうタール系の色素を使っているんでしょうか。
  332. 宮沢香

    説明員(宮沢香君) 先ほど来ソ連で赤色の二号が妊娠率が落ちるということから遺伝的な面で危険があるんではなかろうかと先生指摘でございますが、その赤色の二号、遺伝的に問題が持たれている二号についてはアメリカをはじめ世界各国全部便っておりまして、ただ私どもはアメリカで売られているその製品の中にそのようなものが入っているかどうか、これは確認はしておりませんが、一〇二号、これは遺伝的に特に予試験の段階でそれほど確たる証明はないわけですが、これはアメリカで使用している色素にはなっておりませんので、入っておらないと思います。
  333. 野末陳平

    野末陳平君 そうしますと、アメリカのファンタグレープにはこれは入ってい、ないけども、その理由ははっきりしてないわけですね。特に毒性の問題とか、それではないかもしれないし、そうしますと、そちらでもつかんでないわけですね。何と何が成分であるか、どの部分が日本のグレープとアメリカのと違うかはわからないわけですね。
  334. 宮沢香

    説明員(宮沢香君) それはつかんでおりません。
  335. 野末陳平

    野末陳平君 そこでさっきの遺伝毒性の問題ですが、私が聞いたところでは、その妊娠率が落ちるということのほかに、大量投与すると生まれてくる胎児の重量が減少するという、そういうケースも出るというデータも出てるそうですが、それも確かですか。
  336. 宮沢香

    説明員(宮沢香君) 文献によりますと死胎児、要するに死んだ胎児がふえていると、こういうようなことを書いてございます。
  337. 野末陳平

    野末陳平君 死んだ胎児が生まれるのですか。
  338. 宮沢香

    説明員(宮沢香君) 要するに死産でございますから。
  339. 野末陳平

    野末陳平君 死産が多くなるんですか。
  340. 宮沢香

    説明員(宮沢香君) はい。
  341. 野末陳平

    野末陳平君 それがもし実験の結果そういうもうにどんどん確かだとなると、この間のAF2とかそのほかの食品添加物すべてについて非常な不安が出てくるわけなんでしょうが、この赤色の二号とそれから赤色の一〇二号、少なくもいままでは安全であった。それを確認するデータもあった。しかしこれからの、いままでやらなかった遺伝という実験では、遺伝上の毒性という実験ではまだデータがなくて今後の研究にまつ、少なくとも疑わしいと言っている人もいるということですね、いままでの話をまとめますと。日本も予算が出て次から研究しなければいかぬという状況にあることも確かですね。
  342. 宮沢香

    説明員(宮沢香君) 全くそのとおりでございまして、これは日本だけでなくて、すべて世界の先進国において非常に深刻な、たいへんむずかしい問題として受けとめておりまして、それぞれ検討をしていることと思います。
  343. 野末陳平

    野末陳平君 そこでさあ実験の結果がどう出るかわからぬからということかどうか知りませんが、現実にはこのファンタ、かんのほうですね、これはびんのほうですね、これが非常に出ているわけですよ。自由に飲める、どこでも。ある意味では野放しですよ。こういうものは当然なんでしょうが、そこでファンタのほかに、いま問題にしている赤色の二号と赤色の一〇二号はどんなものに大体使われているか、食品添加物、ざっと品目をあげていただきたい。
  344. 宮沢香

    説明員(宮沢香君) 私どもが調べた範囲で一番使われておりますのは、先生のいま御指摘のような清料飲料関係とかあるいはジャムであるとか、紅ショウガであるとか、あるいはアイスクリームであるとか、非常に幅広く使われております。
  345. 野末陳平

    野末陳平君 幅広くって言いますけれども、ぼくのほうでタラコとか、いまジャムと出ましたか、お菓子類、つまり子供がたくさん食べるものに相当使われているようですよ、現実に。またこれ(ファンタを示す)も子供が特に多く飲んでいるようですけれども全国的にどのくらい年間赤色二号、赤色一〇二号というタール系色素を日本では使っておりますか。
  346. 宮沢香

    説明員(宮沢香君) タール系の色素は国家検査の品目として指定されておりまして、私どもはこまかなそれぞれの食品についてどういう使用状況か、これは確かなことはつかんでおりませんが、四十八年に国家検査に合格した数量を申し上げますと、赤色二号が一万二千七十キログラム、それから、赤色の一〇二号が九万四千六百キログラムと、こういう数字になっております。
  347. 野末陳平

    野末陳平君 これはやはりかなり多く使われているような気もしますが、そこで具体的なところへ戻りますが、この一本の中に、これはファンタグレープとミリンダグレープと両方あるわけですから、両方言っていただきたいんですが、このファンタグレープの中に赤色二号がどのくらい、それから赤色の一〇二号がどのくらいありますか、含有量。
  348. 宮沢香

    説明員(宮沢香君) ファンタグレープの中で、私どもの調べた値では、一本二〇〇CCでございますが、赤色の二号が四ミリグラム、それから赤色の一〇二号が六・五ミリグラム程度入っております。
  349. 野末陳平

    野末陳平君 そこで、さっきの世界的な基準できめておる一日の許容摂取量、この一日の許容摂取量でもって一キログラム〇・七五ミリでしたか、この摂取量でもってこのファンタグレープを計算して、一日に何本まではこの許容量になっているのかと、もちろん算術計算になると思うんですが、一日何本は許容されているんですか、いまのを算術計算すると。
  350. 宮沢香

    説明員(宮沢香君) 実はこういった動物実験でもって全く無作用だという量に対して、WHOの基準、原則としましては、動物と人間との安全、要するに人間が動物にスライドできないということで、その違いからくる十倍の安全をみると、それから同じ人間でも病人もおれば子供もいるということで、さらに人間の間でも最も健康上弱いような人を考えて十倍の安全をみているということで、百倍以上の安全を見なきゃいかぬということになっておりまして、実は、これは先ほどのソ連のデータで百倍であったのが二百倍の安全に持っていったわけでございまして、非常にそこには安全性のアローアンスがございます。ただ、ただいま先生の御指摘の数字で数学的に割ってみますと、ファンタのグレープの場合に機械的に割りますと五・八本、これはキログラム換算でいくと体重五十キロの人でそういう値ということになるわけです。
  351. 野末陳平

    野末陳平君 そうしますと、子供の場合、かりに五十キロなら半分ぐらいと見ましてファンタグレープは五・八本がいいわけですね、許容量で。算術計算ですと二・四本ぐらいと、つまり二本から三本が許容量で、算術計算にすればそういう本数だと、これ。そういうことになりますね、そうですね。
  352. 宮沢香

    説明員(宮沢香君) この基礎となっているのは、一生涯食べ続けた慢性毒性から得られた安全量をもってこの基礎になっておるわけでございますので、先生指摘のように、生まれてから死ぬまで毎日いまの二・五本でございますか、そのくらい、おとなになれば五本ぐらいになっていくわけですが、飲み続けた場合にはそういうことが言えると思います。
  353. 野末陳平

    野末陳平君 ただ、慢性毒性のほかに、新しくいま研究の対象になりかけた遺伝毒性ということも当然考えなきゃいかぬわけですから、そんなのを含めますと、やはり非常にその幾らですか、アローアンスがあるとはいえども、しろうと考えではやはりちょっと何かいやな感じがしてくるということだと思うんですよね、大臣。  そこで私は一体これがどのぐらい飲まれているかということを、念のため農林省に聞きまして調べたんですよ。何しろ夏になりますと、子供とか若い人、たくさん飲みますからね。さっきも言いましたように、日本じゅうはんらんしているわけですよ、コカコーラとファンタというのが。しかも夜中でも飲めるし、かんなんか、もうぼんぼん入れて飲めるということで、日本じゅうで相当大量に飲まれているらしいが、どのくらい飲まれているんだろうと、こういうふうに考えまして農林省で聞きました。そうしたら日本じゅうで、生産ですから、これは消費じゃないんですけれども、日本じゅうでもって生産されている炭酸飲料の合計の三分の一をファンタが占めているわけですよ、四十八年度、約三分の一を。そこでファンタが三分の一を占め、その半分以上がグレープなんですよ。数字を言いますと、四十八年度でファンタグレープは五十九万六千キロリットルという生産量ですね。ミリンダは三万ですから、これはもう全然けたが違いますので、グレープはほとんどファンタだとみていいと思うんですが、一応五十九万六千キロリットル。それでオレンジと合計して百九万六千キロリットルということに、一応オレンジも合計すれば百九万六千キロリットルになっているんですが、問題はジュースよりも多いのですよね、これが。しかもこの一年ごとに急速に伸びているんですよ。これは商売がうまいから伸びているということですが、伸びれば伸びるほど、しかもジュース、果汁よりも人口着色のほうが圧倒的に伸びてきつつあり、しかもそれがまあ結論は出ないものの、ここで色が染まってくるタール系の色素が非常に疑わしい要素があって今後の研究に待たなければならぬということを聞きますと、まあ学者とかあるいは厚生省行政のサイドではまだまだ慎重なんだと思います。しかししろうとの考えでいきますと、やはり許容量を越えたらもうだめだとか、危険だとか、そんなことは考えませんよ。しかし少なくも許容量でいっても二、三本、いまの段階の許容量で子供に二、三本だというふうになると、神経質な人はやっぱりこれは飲んでほんとうにいいんだろうかということを思う人がいてもおかしくない。何たってAF2の例もあるわけですよ。学者の実験の発表がどんどん出るけれども、やはり厚生省としては、慎重というか、まあじっくりと実験してなかなか踏み切れませんでしたね。  そういうことで、私は子供の場合を考えた場合、二、三本飲む人は、まあ一生飲み続けるかどうか別として、幾らでもいる。ほかの食べものでもやはりタール系色素を摂取する。しかも毒性が一代限りの毒性については安全だと言われているけれども、次世代にわたる毒性についてはまだこれからが研究の段階だと、こういうふうになりますと、いまの子供が何十年これを飲んでいって次世代にはたして安全であろうかということを考える場合に、やはり毒性ありという結果が出たんじゃもうおそい。大臣にもお聞きしたいのだ。いまの段階でこのファンタグレープの野放しというのはちょっと問題があるんじゃないかと。少なくもいま厚生省から説明になったような事実を聞くと飲みにくくなってくることは確かです。そうすると、厚生省としても、これ私考えるのに、野放しにしておくのは問題なんで、どうですかね、子供に対して、このタール系色素というものはいまこういう段階にあるから飲み過ぎないようになんという、その程度の忠告と言うとちょっと行き過ぎになるかもしれませんがね、そういうデータを示して判断を消費者にまかせるというくらいの配慮がこのあたりであっていいんじゃないかと、こう思うのですけれどもね。どうでしょう、野放しには全く問題がないんだというお考えなんでしょうか。
  354. 宮沢香

    説明員(宮沢香君) 食品添加物は合成着色料も含めましてWHOの毒性評価の原則としましては、生涯にわたって飲ませるいわゆる慢性毒性試験、それから奇形が出るかどうかという催奇形性の試験であるとか、それから体に蓄積性があるかどうか――たまっていくかどうかという代謝試験であるとか、それから長期にわたった場合催奇形性とも――突然変異とも結びつくのですが、いわゆる繁殖試験であるとか、そういうような発ガン試験であるとか、そういうようなものも広くやって、その上で全部そろった段階で初めて評価がWHOで行なわれるわけでございまして、ただいま先生の御指摘のこの色素については、従来はそれはもう遺伝学者から言えば、そういう毒性実験は非常にマクロであると、もっと細胞レベルの段階で微視的にものを見なくちゃいかぬと、こういうことを指摘しております。したがって私どもはさらに精密な試験ということで遺伝学的な問題を詰めていこうということで予算を用意して研究に取りかかろうとしておるわけでございますが、少なくともいままでのデータでは私どもが安全としてよいというデータは十分にこれは満たしております。
  355. 野末陳平

    野末陳平君 問題はだからAF2のときもあったように、いままでのデータにこだわるあまり、これから出てくるデータというものを無視して、そのデータが出るまで飲むのはかってですというのは、これではたしてこういう食品添加物、まあ事、健康とか生命に関する問題なのに、これではたして行政というのはいいのだろうかというふうに考えましてね。第一、大臣厚生省の方針に添加物というのは安全性が実証されるか、確認されたものじゃなければならぬということを打ち出している。しかしその安全性の確認や実証はいままでのデータであり、今後のデータで、もう少なくも疑いが出て学者たちが研究に取り組んでいる、日本でもやらなければいけないんだというような段階になっても、なおいままでのが安全なんだからこれはまあ何ともならぬというんだと、これは後追いでちょっとどうでしょうか、怠慢じゃないか。もうちょっと神経質にこういう問題をやるべきではないかと、そういうふうに思いまして、大臣ね、これは結果を待っているというのもいいんですが、日本でもこれからこの遺伝毒性の問題をやらなければいかぬと。つまりいままでの実験あるいはいままでのデータでは解明できないような危険度が一応ここに出てきているわけですね。結果が出るまで待っているというのじゃなくて、こういう食品添加物の場合どうですか、安全性にいささかの疑いでもあったら、やっぱり使用禁止とか、一時使用を凍結するとか、それぐらいに踏み切らないと、もしこれで数年後にばたばたときて、このタール系色素が実は遺伝的に毒であると、かりにですよ、そういう結果が出て、ファンタグレープを飲み過ぎた人はえらいことだと、こうなったら、AF2でみそをつけているのですから、これが心配なんですが、厚生大臣の立場でいままでの話を聞いて、いや問題ないだろうということなんでしょうか、ちょっとそれをお聞きしたいんですが、大臣
  356. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) この赤色二号、一〇二号、これは先ほど来御説明申し上げましたように、慢性毒性それから発ガン性代謝、催奇形性、まあそういう各方面の試験を行なって、WHOが評価をして、現在まで世界各国が使用しておるものでございます。なるほど食べものでございますから慎重にしなければならぬという御主張、御意見、私はそれは十分理解をいたしております。しかしながら、現在のところ、化学的に見て、いま申し上げましたような各種の試験で安全が評価されているということであるならば、私はもうこれで国際的にも許容されているのではないか、こういうふうに思います。しかし科学の進歩というものはこれなかなか日進月歩でございますから、その遺伝性の問題については、アメリカあるいはソビエト等においてもそういう意見をなす者もあるということも承知しておりますから、研究はしなくちゃならぬと思いますが、現在の段階で行なわれておる各種試験の上ではまあ一応許されておる、こういうふうに理解していいのではないかと、私はさように考えております。
  357. 野末陳平

    野末陳平君 それだったら何かもう新たに予算を出してもらって研究しなくたっていいようなもので、何かその辺がだいぶ、まあ行政としろうととの考えが違うのかもしれませんが、じゃ大臣、あれですか、少なくもいままでの印象では、ぼくはどうも子供に飲ませ過ぎるのは好ましくないから、少なくもこれは飲ませたくないという感じをぼくは持つのですよ、神経質かもしれませんが。大臣のほうは、安全だとなれば、おたくのお子さんにはどんどんこれを飲ませて何とも感じませんかね、大臣、ほんとうにそうなんですか。
  358. 宮沢香

    説明員(宮沢香君) 申し上げます。  実は遺伝の問題は、先ほど来先生のほうから御指摘のように、世界でも非常に重大な問題と受けとめておりますわけですが、ただ、なぜ遺伝的な障害だけでその化学物質について私どもが禁止とかそういうことがとれないかと申しますと、これは普通、細胞を培養しましてそれに化学物質を触れさして、そしてその染色体に異常が出るか出ないかと、こういうよう実験がその主体でございますが、そういう実験をやってみますと、こういったいまの色素以外にも、たとえばお茶の中に入っているカフェインであるとか、あるいは天然界にも広く存在しております亜硝酸ソーダであるとか、こういうようなものがすべてそういう作用を持っているということで、はたしてこれがそのまま高等動物のそういうものに当てはまるかどうかということについて、なぜこういう作用を出して高等動物には問題があるのかないのかと、その辺のところがまさに八〇年代の科学じゃないかと世界じゅうの学者が受けとめて、それで一生懸命研究しておるわけでございます。
  359. 野末陳平

    野末陳平君 わかりました。  もう重大な問題で、一生懸命研究してどういう結果が出るかわからないけれども、結果が出るまではまあ飲んでおきなさい、あるいは使っておきなさい、こういうような非常に無責任な、冷たい考え方にも取れるのですよ。ぼくは禁止しろといっているんじゃない。だからね、大臣がそれに対してこれは一時使用を遠慮させるぐらいの強い行政姿勢を示さないと、こういう問題に対してはAF2でもそうだけれどもやはり問題になっているのに、どうもその辺がなまぬるいのですがね。  ついでに一〇四のほうも聞きますよ。タール系色素のこの一〇四のこれは遺伝学研究所でしたか、何か毒性があるというようなデータを発表しましてね、やはり問題になっていますね。これはこういうふうにいま問題にしているのは赤色二号と一〇二号ですが、同時に赤色の一〇四号についてもやはり同じような疑問が提示され、遺伝学研究所ではもう間違いなく毒性があるのだと、こう言っている。これについても厚生省のほうはそれほど深刻に受けとめないとなりますと、行政の感覚としろうとの感覚とあまりにも距離があって、何でこんなに食品添加物をイージーに考えているのか、その辺がわからないのですが、一〇四についてだけちょっとお聞きしておきます。やはりこれも実験する必要があるというのですか。それともそれほど危険ではないからまあいいだろうというのでしょうか。
  360. 宮沢香

    説明員(宮沢香君) 先ほど来申し上げておりますように、色素全部についてこれは検討することにしております。ただ、いま先生指摘の遺伝学研究所でもって発表しました一〇四は危険だというような声がちまたに起こっております。しかし、実はAF2を遺伝学的な見地から安全であるかどうかということを審査するに先立ちまして、私どもは世界じゅうのいろいろな資料等を見たのですが、まだ遺伝というものをもの差しとして化学物質の安全性を評価している国はどこにもありません。しかし、ここまで遺伝学的に問題が提起された以上、何らかの形で遺伝学的な面からも安全か安全でないかという、こういう評価の基準というものを実は遺伝学者、ガン学者、病理学者等そろったところでつくっていただいたわけです。その結果、完全ではないけれども暫定的な基準ということでそれに当てはめてAF2を判断した。その結果、現段階ではやはり使用することは望ましくないというような、こういう結論を得たわけでございますが、この間の遺伝学研究所の発表を見ますと、そういう検討をする必要があるかどうかということを、まず前段でスクリーニングする段階がそれにございます。そのスクリーニングの段階でひっかかっているわけでございまして、その段階でひっかかったものについては、いま言った暫定的な基準の中で三種類の試験がございます。これを行なってみた上で、食品衛生調査会としては遺伝的な問題を判断する、こういうふうに現在基準をつくっております。
  361. 野末陳平

    野末陳平君 いや、しかしむずかしいものなのですね。そういうふうに手間がかかって、時間がかかるとなると、なお結果が出たときの、もし悪く出たときのことが不安になりますけれどもね。まあ私が言おうとしていたのは、食品添加物に関して、そちらでは安全でないというデータがはっきり出るまではそのままにしておくということですけれども、私どもは反対に、疑わしいという、少なくも疑わしいという立場で、実験する、あるいは研究の対象となってきたものは、疑わしきは罰するというような原則を、全面禁止じゃなくても一時使用を凍結させるというくらいのことをするのが当然ではないか。食品添加物、特にこうやって遺伝の、すぐ簡単に結論の出ないようなこの遺伝毒性ということを今後研究するならば、やはりその疑いを持たれているタール系色素なんかは、疑わしきは罰する原則をここらで打ち立てるのが当然ではないか、こういうふうに思うのです。少なくも行政の立場でなくて、それを飲んだり食べたりする人間の立場に立って言うならば、疑わしきは罰してほしいというのがあたりまえだと思うのですが、大臣、もう時間もきましたから最後に、やはり疑わしきは罰しないのですか。どちらか、はっきりしてください。
  362. 齋藤邦吉

    国務大臣齋藤邦吉君) 食べもののことでございますから、慎重にしなければならぬという御意見については私は同感なんです。しかし、現在の段階において、もろもろの検査の結果、安全性が確保されている。しかもそれはWHOにおいて認められ、世界各国において認められるというならば、これは反駁する材料というものは科学的でなければならぬと私はそう思うのです。そういうことを考えて見まするならば、いまの段階では安全である。私はさように考えております。
  363. 野末陳平

    野末陳平君 最後に、それではその点は安全であるとお考えならば、いまの段階における暫定的な基準を半分に下げたと、タール系の色素について下げたわけですね、〇・七五まで下げましたね、キログラムあたり。その許容量の単純な算術計算でいった場合にでも、やはり子供たちにせいぜいこれは二、三本どまりであるというようなことぐらいは言ってもいいんじゃないでしょうか。それが決して企業に対する冷酷な仕打ちとも思えない。むしろその程度の忠告を与えるというか、その程度の知識を与えておくことが、ぼくは少なくも必要なことであると、子供に関しては、ということを最後に一つ言いたいんですが、それすらもいままで厚生省は公表なさってないから、もちろん許容量をこえたから危険だと単純に言えないというそちらの立場でしょうが、少なくも飲む立場でどうでしょうか。いままでの、いまの段階安全性というこの人体許容摂取量は、少なくもファンタグレープは子供の場合二、三本であるということも、やはりこのまま伏せて言わないで、実験の結果が出るまで待つということなんでしょうか。最後にそれだけを答えてください。
  364. 宮沢香

    説明員(宮沢香君) 先ほど来申し上げておりますように、この慢性毒性に基づいて、そうしてしかも動物と人間との差、あるいは同じ人間でも病人と健康人の差というようなことで非常に大きな差を実はとっております。したがって私どもとしましては、そういった子供に三本しか飲んじゃいかぬとかというようなことは、することは必要じゃないじゃないかと、こういうふうに考えております。
  365. 前川旦

    委員長前川旦君) ほかに御発言もないようですから、厚生省と、それに関係する医療金融公庫及び環境衛生金融公庫の決算につきましては、この程度といたします。  次回の委員会は、明二十五日午前十時三十分から大蔵省関係を行なうこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十七分散会      ―――――・―――――