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説明員(
中橋敬次郎君) 先ほど来
農地は
生産手段であって
財産ではないのではないかという
お話がございましたけれ
ども、私
どもから見ますれば
生産手段も
財産でございます。もう
生産手段といえ
ども相続税を
考えます場合にはその対象となる
財産の中の尤たるものでございます。それがたとえ
土地で非常に目に見えるものであっても、またあるいは工業施設等を株式という形で分有しておる場合にありましても、これも
生産手段をそれぞれが私有しておるわけでございます。同じように
財産の一種として同じレベルで
考えざるを得ないのでございます。その場合に、かなり大きな
財産価格を
相続時に
相続人が受け取ったという場合に、
財産の再
分配をしなければならないという命題が働くならばやっぱり
相続税は
課税されざるを得ないのであります。それを一体どこからかけたらいいかということは、先ほど来申しました点でいろいろ勘案しなきゃなりませんけれ
ども、そういうレベルを越えるというときにはやっぱり
相続税の
課税対象になるわけでございます。
それから先ほど冒頭に御質問がございました、その
均分相続になるという
お話がございましたけれ
ども、この点に関しましては
相続税は
昭和三十三年にこの問題を
検討いたしまして、現在の制度といたしますれば、均分あるいは
相続人数人でもって
相続いたします場合と、子供の中の一人が
相続いたします場合とは
相続税の総負担は変わらないというふうに組み立ててございます。したがいまして、
相続税の側からこの
均分相続を促進するということはあんまりないのではないかというふうに私
どもは
考えております。
それから
土地については、労働を投入しましてその価値を高めるということは確かにそうでございましょう。しかし、そのときに、たとえば
相続人が被
相続人と一緒になってその労働を投下しておるからこの分についてしんしゃくをすべきではないかという
お話がちょっとあったようでございますけれ
ども、これはあるいはそうかもしれません。特にいま配偶者の問題として、これは
相続税としましてもかなり前から取り上げておる問題でございますけれ
ども、配偶者という形ではかなりそれはできるんでございますけれ
ども、子供が一体どの
程度その
相続財産の価値を高めるについて寄与したかということになりますと、なかなかその分を
相続財産の中で、これは
相続財産でない
相続人自身が積み上げた分であるということを摘出することは事実上むずかしいんではないかというふうに
考えております。
それで、それではそういう
財産で、私
どもは
財産と
考えております
土地の、
農地の評価の問題でございますけれ
ども、これを先ほど来お
示しのような法案の
考え方などによりまして、いま
農地として収益をあげておるから、その分に限って
相続税財産——相続税の
課税財産として
考えていっていいではないかということでございます。それも確かに
一つのお
考えでございますけれ
ども、私は問題は、
農地が
農地としてずっと続いていくかどうかというところに実は最近におきますところの大きな
農地の
相続税の問題があるんであろうと思います。先ほ
ども御
指摘のように、
農家の
相続税の問題というのは確かに
課税人員もふえております。全体的には、サンプル調査でございますけれ
ども、また四十六年の実績でございますが、
課税されておりました被
相続人の中で
農家であるというのが約三割でございます。三割ありました。しかし、その中で非常に
課税が多いというのは、何といいましても市街地の周辺
農地でございます。いわゆる純
農地につきましてはそんなに
課税は行なわれておりません。約一割ぐらいでございます。しかもその純
農地を持っておるだけで
課税になっておるという人は非常に少なくて、やっぱりそのほかに山林でありますとか
農地以外の
財産をかなり持っておる人が
課税になっておるわけでございます。したがって、いろいろ
お話のございましたのは、むしろ市街地あるいはその周辺にある
農地の
相続税の問題、その評価の問題になると思います。
そうなりますと、確かに
生産手段としてこれまで
農業として営まれておった
土地でございますし、あるいはこれからも営むんだということでございましょうけれ
ども、私
どもは一体それがどういう評価を持っていったらいいかというと、やっぱり同種、同等、同地域の
農地が一体どんな
価格で最近売られておるのか、現実に売られておる売買
価格というのはどんなものであるかということによらざるを得ないわけでございます。現にまたそういういわゆる高い値で売られておるんでございます。その面について、もちろんそれをそのまま
相続税課税の評価のときに引っぱってくるというだけじゃございません。かなりのしんしゃく率を加えてございます。それでも現実に売買されておる
価格というのは非常に高いものでございますから、幾らしんしゃく率をかけましても、おっしゃいますように高い
価格になってしまう。そういうところがやっぱり
農地、しかも容易に
宅地に転換し得るそういう地域にある
農地の評価問題というのは、一般
農地の
お話でなかなか律しされない独特の問題を含んでおるというふうに
考えております。