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説明員(高橋俊英君) 新聞情報には今週中にもとありますが、必ずしも時点をそういうふうに限ったわけではございません。できるだけ早い機会に
公正取引委員会としてのたたき台といいますか、試案のようなものをつくりまして
関係方面といろいろ折衝するのに役立たしたいと思っているわけです。
簡単にその要旨を申し上げます。一つには、独占あるいは寡占の
対策としまして企業分割という制度を法律の上に設けること、
原価公表を求めることができるようにすること、こういう二点でございます。
要するに独占の弊害を規制するということは独禁法本来の目的でありまして、もともとは発足当時の独禁法には企業分割の規定が入っておりました。それが二十八年に至って削除されましたが、その後の
日本の経済の動向からしますと、一たんいろいろ集中排除法等によって分散させられた企業が再び相寄って集中化の方向をとった。これには
日本経済がどうしてもたどらなけりゃならなかった国際競争力の強化という面が多分にあったことは私も否定できません。しかし現段階で言いますと、そのほうにおいては相当競争力の充実もある。一方において、このまま放置すれば
——私は現在直ちに企業分割に該当する企業があるとかないとか申したくありませんが、相当に企業集中度の高いものが生じておりまして、これは単に寡占とはいえない、独占的形態にある、こういうふうに言えると思いますが、そういうものについては、いろいろ方策を講じてはみるといたしましても、それでうまくいかない場合には、やはり企業を分割するというところまで考えておかなければならないだろう。そういう備えはいますでに必要な
状態にあるというふうに考えます。したがいまして自由な競争がほとんどない
状態、完全に硬直化した独占的な
状態から、いわゆる流動的な競争を再現する、自由競争の再現ということを目途としてこういうことを考えたい。
原価公表につきましては、これは独占を含めますけれども、独占的な
状態ばかりではなくて、寡占的なものに対しまして、その中で競争が十分に行なわれていると考えられる場合には問題がないのです。寡占でありましても常に寡占の弊害が出ているとは限りません。寡占でありましても競争が行なわれていることが見えているものはいいのです。そうでなくて、少なくとも
価格の面において過去の動向等を見ますと
価格競争はないんじゃないか、こういうふうに認められるものが幾つかあります。そういうものに対して、これはカルテルであれば証拠によってカルテルの排除ができますが、カルテルであるという証拠が把握できない場合があるわけです。そういうものについて、いろいろ外国、たとえば西独では非常にきびしい措置がございますけれども、私どもとしては、いまのところは
原価を公表してそれを一般の批判にさらすということによって、恣意的な、つまりその業界が暗黙の行為のうちにかってな値上げ等をする、それも不当な値上げ等をするということを抑制するのがねらいでございます。どれだけの効果があるかは別としまして、そういうものの選び方については、十分過去の
実績その他の事情を勘案してやりたいということでございます。何でもかんでも
原価が公表されていいという考えではありません。
次には、やはりカルテル
対策として、いまの
対策がしり抜けといいますか、ほんとうの押えになっていない。だからカルテルは次から次へと発生する、こういう非常にきびしい批判も受けております。つまりカルテルに対する破棄命令、これは審決をもって行ないます。勧告であれ審判を経たものであれ、審決をもって行ないました結果がカルテルを破棄させるといいましても、それは協定を破棄いたしましたという広告をすれば終わりだというふうなかっこうになっておる。結局、
価格はカルテルによって引き下げられた一種の独占
価格だと思いますが、それが少しも動かないということは破棄の実質的な効果があらわれないというととではないかということでありますので、これに対する解決策として、一つの方法としては
価格をカルテル前の
価格に引き戻すということを命じ得ると、ただしこれは私はどんな場合でも機械的にもとの
価格に戻れということを強要するつもりはありません。これはいかにも
価格に対する介入として好ましくないという
意見もありますが、なるほどアメリカは
価格介入しておりませんが、西欧諸国は何らかの形で独禁当局が
価格に介入しているという場合のほうが多いわけでございます。
次には、カルテルに対して課徴金を課する。どのような課徴金を課するかということは最終的に案がきまっておりませんのでいま申し上げられませんが、要するにカルテルをしてももうからない、カルテルによって業界が不当な利得を得るということを課徴金で召し上げてしまえばそれは得にならないということでありまして、いま現在の措置としては告発によらなければならないということでありまして、これは実は
日本の現状ではあまりみだりに使えない
——使えないわけではございませんが、やはり行政処分としての課徴金制度というものがあったほうがはるかにいいのではないかという感じがいたします。これは刑罰ではございません。
次に、株式保有の制限につきましては、金融機関の場合にいま一社の株式を百分の十をこえて持ってはならぬというふうな制約がございますが、これでは現状を見ますと、ずいぶん当時の二十八年の改正によって百分の五から十に引き上げられたんですが、実情に合わないんじゃないか。というのは会社それ自体の規模が大きくなる、いろいろなことがございますが、金融機関が全体として見ましても発行株式の三分の一を持っておる、上場会社について見ますと。その結果、小当たりに見ましても、一つ一つ個別に見ましても上位の株主を占めている、筆頭株主から第三位ぐらいまでに入る場合が非常に多い、これは好ましくないという考えでありまして、もっと分散することはいいんですから、百分の十を引き下げるほうがいいんじゃないか。
一般会社につきましては、一般会社と申しましても、これはすべての会社じゃありません、規模の比較的大規模なものを選びまして、そういうものについては株式の保有について何らかの制限を設ける。何らかの制限と申しましても、まあこれを個別に一つずつ百分の十とか五とかいうふうなやり方ではたいへんでございます。現在すでに相当の額を持っておりますから直ちにそういう大きな変革を求めることはどうかと思いますので、いろいろ実態を調べた上で一定規模以上の大規模の会社は総額を規制したらどうか、保有総額をまず規制するということが必要ではないか。この中にはもちろん一番大口のものとして総合商社が含まれます。総合商社といわれているものが
——商社といってもいいんですが、これは保有額が割合が高いので、全体的に見た場合に多いので、これらに対して規制を設けることが適当であると、これはいろいろな観点からでございます。
なお、一般会社の場合に、自己と競争
関係にある会社の株式の保有についてだけは特に規制をする必要があるんじゃないか。つまり総額規制だけではなくて、競争会社の株式を持つ
——ただし、これは絶対的な禁止にはいたしません、いたさないつもりでありまして、当然持っても差しつかえないようなものについては、これは別であるという
考え方を持っております。
その次に刑事罰の強化でありますが、現状、罰金については五十万円というのが最高でありまして、三十万円、二十万円というのが最高額になっております、他は。これはもちろんほかの法律ではすべて最高五百万円というふうなのが普通になっております。五百万円になりましたのもだいぶ以前でございますから、まあ相当の引き上げをしたほうがいいんじゃないかということを考えますし、それから行為者責任というか、
日本の刑法の本則のたてまえからいって行為者を罰するということから責任者を罰するという点がどうも弱い。現状では、私どもの規定には会社の場合にはございません。事業者団体の場合にはそういう責任罰がございます。ただし、これは何も知らなかった場合には罰せられることはない。事情をよく知っておった場合、それに対して何の手も施さないといいますか、当然とめるべきである、違法行為とわかっているんですから。とめるべきであるのにとめてないというふうな場合に責任罰
——これは罰金だけでございます、そういう制度を設けたらどうかということです。
その他に、不公正な取引方法を、現在の規定は若干規制の方法が弱くできておりますので、これをほかの独禁法違反行為と同
程度に規制できるというふうにしたい。それから過去にすでに一応終わった形になっている違反行為でも、これはいろいろ私どもの実務上の体験から申しまして、排除措置が加えられる、景品表示法には過去の既往の違反行為に対しても排除措置を命ずることができるという明文がございます、で本体のほうの独禁法にはそれがございませんためにバランスを失するというケースも少なくありません。景品表示法以外の不公正な取引、これにはそういうことが景品表示法でないためにその規定がないということでありますので、経験的に見ましてそういう規定を設けたほうがいいんであろうと、こう考えておるわけであります。
大体の荒筋を申し上げますと、こういうことです。