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1974-09-10 第73回国会 参議院 決算委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年九月十日(火曜日)    午前十一時三分開会     ―――――――――――――    委員異動  八月二十二日     辞任         補欠選任      渡辺  武君     加藤  進君  九月九日     辞任         補欠選任      木内 四郎君     玉置 和郎君      加藤  進君     立木  洋君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         前川  旦君     理 事                 橋本 繁蔵君                 松岡 克由君                 田代富士男君                 橋本  敦君     委 員                 岩男 頴一君                 河本嘉久蔵君                 玉置 和郎君                 温水 三郎君                 望月 邦夫君                 工藤 良平君                 小山 一平君                 佐々木静子君                 須原 昭二君                 和田 静夫君                 峯山 昭範君                 立木  洋君                 田渕 哲也君    国務大臣        外務大臣     木村 俊夫君    事務局側        常任委員会専門        員        佐藤 忠雄君    説明員        警察庁警備局長  山本 鎮彦君        防衛庁防衛局長  丸山  昂君        法務省入国管理        局次長      竹村 照雄君        公安調査庁次長  渡邊 次郎君        外務省アジア局        長        高島 益郎君        外務省アメリカ        局長       山崎 敏夫君        外務省アメリカ        局外務参事官   伊達 邦美君        外務省欧亜局長  大和田 渉君        外務省経済協力        局長       鹿取 泰衛君        外務省条約局長  松永 信雄君        外務省国際連合        局外務参事官   野田英二郎君        外務省情報文化        局文化事業部長  堀  新助君        文部省学術国際        局ユネスコ国際        部留学生課長   五十嵐耕一君        通商産業省産業        政策局国際企業        課長       見学 信敬君        会計検査院事務        総局第一局長   高橋 保司君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和四十七年度一般会計歳入歳出決算昭和四  十七年度特別会計歳入歳出決算昭和四十七年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和四十七  年度政府関係機関決算書(第七十二回国会内閣  提出) ○昭和四十七年度国有財産増減及び現在額総計算  書(第七十二回国会内閣提出) ○昭和四十七年度国有財産無償貸付状況計算書  (第七十二回国会内閣提出)     ―――――――――――――
  2. 前川旦

    委員長前川旦君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る八月二十二日、渡辺武君が委員辞任され、その補欠として加藤進君が、また昨九日、加藤進君及び木内四郎君が委員辞任され、その補欠として立木洋君及び玉置和郎君がそれぞれ選任されました。     ―――――――――――――
  3. 前川旦

    委員長前川旦君) 昭和四十七年度決算外二件を議題といたします。本日は外務省決算について審査を行ないます。  この際おはかりいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して本日の会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 前川旦

    委員長前川旦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  5. 前川旦

    委員長前川旦君) それでは、質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 和田静夫

    和田静夫君 IPUへの韓国の出席問題というのはどうなりましたか。
  7. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) これは御承知のとおり、IPU及び国会においてお考えいただくことでございますので、政府としては一応関係なしに考えております。
  8. 和田静夫

    和田静夫君 アジア局長韓国の動きはどうなんですか、この問題についての。
  9. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 私どもIPU東京会議への韓国の出席問題については、特別に何も聞いておりません。
  10. 和田静夫

    和田静夫君 北朝鮮代表団入国許可になりましたですね。これは何らの条件が付されていないと理解をしていますが、それはそれでよろしいですか。
  11. 高島益郎

    説明員高島益郎君) いずれにいたしましても、このIPU会議政府関係のない会議でございまして、ただ、北朝鮮のほうでどういう方を送られるのか、そういう点につきましての情報はございますけれども、まだ正式に入国問題としては何も聞いておりません。
  12. 和田静夫

    和田静夫君 じゃ、入国許可をされたのはどこですか。
  13. 竹村照雄

    説明員竹村照雄君) まだ入国許可をするという段階じゃなくて、ただ、この会議が行なわれるにつきまして、あらかじめ国会事務のほうの方からどういう手続があるかという御相談があって、それに応じて、基本的には入国は認めるという方針はお伝えしてあります。けれども、まだ具体的に許可する、しないという問題ではございません。で、北朝鮮の方は、われわれの知っておる範囲では、モスクワへ行かれまして、モスクワにある日本の大使館で渡航証明書を申請され、それを得られて入ってくるという段取りになっております。
  14. 和田静夫

    和田静夫君 けさ新聞に一斉に報道されています韓国側の強硬な態度に、政府はどうおこたえになりますか。きょうの閣議あるいは閣議後、田中総理との間で何か外務大臣、おきめになりましたか。
  15. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) きょうの閣議のあとで田中総理と少時間会ってお話しいたしましたが、その内容は、この数日間における韓国側のもろもろの情報について私が報告をし、田中総理がそれを聴取したという事柄でございます。
  16. 和田静夫

    和田静夫君 田中総理からは、外遊を前にして、この問題について何か一定見解外務大臣に述べられましたか。
  17. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 田中総理も当然、最近における日韓関係が非常に正常を欠いておるという点を憂慮いたしまして、何とか自分外遊前にこの正常化と申しますか、収拾をはかりたい、こういう意見を述べておりました。
  18. 和田静夫

    和田静夫君 その「何とか」というのは、具体的にはどういうことですか。
  19. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) まあ、外交ルートを通ずるいろいろ措置もございましょうし、また、いろいろ考えております中には、確かに先般の金国務総理の親書に対する田中総理の返書ということもございます。
  20. 和田静夫

    和田静夫君 何かこの特使を派遣をするというような形のことはおきめになったわけですか。
  21. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 韓国側からいろいろ希望は出ておるようでございますが、先ほどの田中総理との会談の中では、そういうことについて何らきめておりません。
  22. 和田静夫

    和田静夫君 政府は、この日韓関係打開金浩竜朝鮮総連大阪本部生野西支部政治部長逮捕を準備していると聞き及びますが、これは事実ですか。
  23. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 現在、そのようなことは考えておりません。
  24. 和田静夫

    和田静夫君 これは私の調査によれば、罪名は拳銃の窃盗教唆――警察庁はそういうことが絶対にないと断言できますか。
  25. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 現在の段階では、そのようなことはございません。
  26. 和田静夫

    和田静夫君 警備局長、もし私が指摘をしたような形になった場合に、いまないとあなたが言われるとすれば、責任問題が起こる可能性もありますけれども、これはほんとうにありませんか。ほんとうにないと、私たちが確信をあなたの答弁によって持っておいてよいですか。
  27. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 現在の段階では、そのようなことは全く捜査として考えておりません。
  28. 和田静夫

    和田静夫君 現在の段階、そういう形の結論をつけていないし、考えていない――そうすると、想定的な捜査というものとでもいいますか、調査とでもいいますか、そういうものは行なわれているわけですか。
  29. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 想定的な捜査――とういう意味かちょっとわかりませんが、現在までの捜査段階では、そのような容疑は出てきておらないということでございます。
  30. 和田静夫

    和田静夫君 現在までの捜査段階ではそのような容疑は浮かんでいない、したがって、現在においてはそのような逮捕ということはあり得ない、こう理解をしておいてよろしいですか。
  31. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) そのとおりでございます。
  32. 和田静夫

    和田静夫君 目下来日中の西ベルリン音楽大学教授尹伊桑さんが、七年前に西ベルリンからKCIAの手でソウルに強制的に連行された際に、それが羽田経由で行なわれたということ、それが最近の記者会見などで御本人から述べられています。この件について、当時、日韓間で何かの外交折衝があったわけですか。
  33. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 私の記憶する限り、何もございません。
  34. 和田静夫

    和田静夫君 尹さんは、こう言っていますね。羽田でも出口に官吏はいましたが、パスポートは要求せず、ついている人がまとめて出し、自分が話す機会もありませんでした、これは、法的にはどういう措置がとられたということになりますか。
  35. 竹村照雄

    説明員竹村照雄君) 私どものほうの当時の記録で現在保存されているものは、出入国カードでございます。それ以外に記録がございませんが、この新聞記事並びに週刊朝日記事に基づきまして捜査をしたんですけれども、この出入国カードによりますと、尹氏の氏名がございません。氏名がないということは、正式に入国許可した形跡がないということでございます。この記事と、それから、そういう正式に入国許可した形跡がないということを総合して考えますと、私ども通常の過程では上陸禁止をいたすことがあります。上陸禁止をいたしますと、この入国カードというものがなくなるわけでございますから、おそらくこれは入国禁止をしたのではなかろうかと思われます。  ところが、この記事にはちゃんとホテルへ一泊したということで、その間はどう説明するかという疑問が当然わくと思いますが、これもまあ推測を出ませんけれども本人パスポートを持っておったと言われますが、私ども通常上陸禁止措置をとるケースの一番基本的な形というのは、パスポートを持ってない場合、韓国は当時、われわれが通常旅券と認めるあの一定の形式を備えた旅券のほかに、旅行証明書という簡単な証明書を出しておりました。この証明書は、当時は私どもとしては旅券と認めていなかったものですから、そういう証明書を持って日本に来た韓国の方については、上陸禁止措置をとるという例はあったと聞いております。この場合、あるいは本人パスポートと言っておりますけれども、そういう単なる証明書であったために、入国管理事務所のほうでは上陸禁止措置をとったということがまず考えられる。  次に、上陸禁止措置をとりながらなぜホテルに泊まれるかという問題なんですけれども、たとえば船で来た場合は、上陸禁止措置をとっても船の中に宿泊設備がございますから、そこで上陸しないままで一昼夜を過ごせる。ところがその場合、これも推測ですけれども日本に到着して次に出て行く便がなかったのだ、だから一泊せざるを得なかったんだ、そういう場合は、これは現在でもそうやっておりますけれども上陸禁止措置をとった上でこの空港に一番近いホテルを指定してそこに一泊させる、この場合、逃亡その他の禁止の義務というのは、入管令の五十九条を根拠にいたしまして運送業者が負うことになっております。ただ入管としては、そういうホテルを指定した場合は当然警備官を――逃亡しないように警戒はするというたてまえでございまして、したがって、この場合はおそらくパスポートを、正式の旅券を持っていなかったために上陸禁止措置をとって、そして、しかし、次の便が出るまで一泊ホテルで過ごしたという経過ではなかろうかと考えております。  以上でございます。
  36. 和田静夫

    和田静夫君 八月二十八日の午前七時のNHKのニュースは、尹さんが西ドイツ、ハンブルグから羽田、そして一泊、二、三人と一緒になって翌日羽田パスポートもないのに自由に韓国へ拉致された、こういうふうに報じました。その後一連――いま言われるような新聞週刊誌なとで、最近になってずっと当人の記者会見という形や、あるいは対談という形で出だしているんですがね。そうすると私は、この尹氏の拉致事件羽田通過にあたっても、金大中事件と同様に、韓国による重大な主権侵害があった疑いが非常に濃いと思うんです。外務大臣はこの点についてどうお考えになりますか。
  37. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 私自身まだ事実関係について最終的な報告を受けておりませんので、報告を受けた上で検討いたしたいと考えます。
  38. 和田静夫

    和田静夫君 大臣、いまの私と法務省とのやりとりなどをお聞きになっていて、明確にわが国に対する主権侵害というものがこの場合もあったと、こう私たちは判断するんですが、いまのやりとりの中から大臣はどういうふうにお感じになりますか、どうお考えになりますか。
  39. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) いま承っておりました質問、また応答の中から、主権侵犯の事実ありという断定はまだいたしかねるという考えでございます。
  40. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、いまの私のやりとりをしたことについて調査をされて、一定見解木村外務大臣、御発表になりましょうか。
  41. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 事実関係をよく検討した上で考えたいと思います。
  42. 和田静夫

    和田静夫君 時間がきょうは非常にないものですから急ぎますが、田中フォード会談では当然、こうした日本のいわゆる防衛力の増強と極東米軍の縮小、あるいは削減問題というものがテーマになるというふうに実は考えるんですが、そういうことはございませんか。
  43. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 御承知のとおり、二十一日に田中フォード会談が行なわれますが、きわめて少時間でございます。まあ、日ごろから日米首脳がひざを交えて間断なき対話をするということは、日米友好上きわめて有意義であるという観点におきましての会談でございます。したがいまして、いま御指摘のような問題についての話し合いは、おそらく二十一日の会談の中ではあらわれてこないという考え方でございます。
  44. 和田静夫

    和田静夫君 アメリカベトナム戦争後に兵器のマーケットが狭まって、そして、ドル防衛ともからんで各国に兵器の買い付けを強く求めていると言われます。最近では、よほどの機密がないかぎり最新鋭の兵器さえ売り込むほどだと伝えられていますが、日本が無理やり頼んで設定をしたふしがある今日の田中フォード会談で、いわゆるアメリカ余剰兵器の購入をしいられることは絶対にない、そう断言をされますか。
  45. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) そういうような話し合いが行なわれることは、私ども予想しておりません。
  46. 和田静夫

    和田静夫君 今回のこの田中フォード会談で、天皇の訪米について話し合われることはありますか。
  47. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) その問題も今回の会談では話し合われないだろうと、こういう予測をしております。
  48. 和田静夫

    和田静夫君 フォード大統領の訪日はいつですか。二階堂官房長官は、一昨日のテレビでは十一月ということをはっきり言ってましたが、これは十一月の上旬ですか、中旬ですか、下旬ですか。
  49. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) ちょうど午前十一時に官房長官から発表いたしましたが、十一月の十九日から三日間、こういうことに決定いたしました。
  50. 和田静夫

    和田静夫君 そこで今度の一連田中さんの外遊問題に戻って、時間の許す限り若干の質問をいたしますが、田中外遊外遊目的というのは何ですか。
  51. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 御承知のとおり、わが国はいろいろ国際的な地位が上がってまいりました。しかしながら、わが国国際社会で今後生存し発展していくという道は、私ども考え方といたしましては、やはり海外依存度の非常に大きなわが国の国柄でございます。国際社会における協調と対話の中で多角的外交を展開していかなければならぬ、また同時に、国際社会における応分の責任と役割りを果たしていくべきだ、こういう認識のもとに立っております。そういう基本的な考えからすれば、できるだけ広くわが国外交の水平と申しますか、それを広げることが必要である。したがいまして、できるだけまた国際間におきましてそういう政府首脳同士対話機会を多くいたしまして、それによって間断のない対話を通じまして相互理解を深めていく、これが今後のわが国国際社会で生存かつ発展していく上においてたいへん重要な考え方であろうと思います。そういうような基本的な考え方に立ちまして田中総理は、一昨年日中国交正常化を実現いたしまして以来、昨年からことしの一月にかけましてアメリカあるいは西ヨーロッパ、ソ連、東南アジアを歴遊いたしまして、今回参りますのは、まず第一回としまして九月十二日からメキシコブラジルカナダの三カ国を訪問いたします。その途次におきましてワシントンに立ち寄ることは先ほど御説明したとおりでございます。次に第二回目といたしまして、十月の二十八日からニュージーランド、オーストラリア、またビルマを訪問いたします。こういう国々とはお互いに今後きわめて近接、緊密な政治的、経済的な関係を維持発展していかなければならぬ国でございますが、そういう国々を訪問することによってお互い相互理解を深め、また政治的、経済的意見お互いに交換し合うことによって今後の日本の進むべき国際的地位を向上していこう、こういう考え方でございます。
  52. 和田静夫

    和田静夫君 昨日の夕刊に田中総理外遊日程の詳細が掲載をされていましたが、この二十一日の日程についてさらに詳細にお示しをいただきたいのです。それは、田中総理の乗った日航機は一体何時にどこに着いて、フォード大統領との会談は一体どのくらいの時間行なわれるのか。その辺のところを詳しくお示しください。
  53. 山崎敏夫

    説明員山崎敏夫君) 田中総理は二十一日の早朝、サンパウロを立たれまして、同日の夕刻ワシントンに到着されますが、詳しい日程はまだ先方との間で詰まっておりません。大体のところは、同日の五時半から田中総理フォード大統領との間で会談が行なわれることになっております。これも一時間になりますか、一時間半になりますかまだきまっておりません。それからその会談が終わりましたら、総理はすぐバミューダに向かわれる予定でございます。そして、その日のうちにバミューダに着かれることになっております。
  54. 和田静夫

    和田静夫君 そこなんですよね。私も新聞発表された日程では、二十一日の午後「ワシントン着フォード米大統領会談」とだけあるわけですね。アンドリュース空港ホワイトハウスを自動車で往復する時間を差し引きますと、田中フォード会談なんというのは、首脳会談の価値を持たないような時間的な設定にしかならぬじゃないですか。まさにかけ込み的にはかられた日米会談という、そういうにおいが非常に強いんですがね。これ、外務大臣いかがですか。全く儀礼、やあこんにちは、さようならですか。
  55. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) いまの時間的な調整から申しますと、約一時間ないし一時間半ということになっておりますが、まあできれば一時間半という会談時間にいたしたいと思っております。いずれにしましても今回の田中フォード会談というものは、いずれ十一月十九日からフォード大統領が来日されることでもございますので、この二回にわたる会談を通じてできるだけ日米首脳間の非常に自由かつ率直な話し合いを行ないたい、こういうような考え方で一時間半の、短いようでございますが私は有意義なものがあると、こう考えております。
  56. 和田静夫

    和田静夫君 その一時間から一時間半になる時間的な日程を教えてください。そんなことになりますか、これ。
  57. 山崎敏夫

    説明員山崎敏夫君) 現在の予定では、田中総理をお乗せした日航特別機アンドリュース空港に着きまして、先方がそこでヘリコプターを用意することになっておりますので、ヘリコプターでございますと十五分もあればホワイトハウスに着けるわけでございます。それから、ホワイトハウスからアンドリュース空港に戻られる場合にも、同様ヘリコプター先方が提供することになっておりますので、一時間ないし一時間半の会談時間は十分とれると考えております。
  58. 和田静夫

    和田静夫君 田中さんのときどきお乗りになる不時着するようなヘリコプターじゃないからだいじょうぶだろうということですね。  ある人がこう言っているのですね。いま日本フォード新政権になってから、だれが言ったのか知りませんが、外務省が言ったのかジャーナリズムが言ったのか知りませんが、対米間で間断なき対話をやるということが言われている。しかし、間断なき対話などというものは首脳間でできるものではない。これはおそらく事務レベルとか、大使のレベルとか、経済界レベルとかで間断なき対話をやるということでしょうが、首脳間のこととしてこれから必要なのは、まさにタイミングよき対話だと思う。その意味から言うと、なぜ急いで今度フォード大統領に会いにお行きになるのか。日本のほうから言えば中南米訪問外遊プログラムはすでにできていた。そこに無理やりこの会談を割り込ませている。またアメリカ側から言えば、フォード大統領はいま非常に忙しいんですよ。ニクソン氏が放てきした内政問題で、インフレーションの問題失業問題等処理でたいへんなんです。外交問題はその処理の上に位置づけられているのであって、その一つとして日本の問題もあるわけで、いまの時点で、アメリカにとつて日本の問題はそう差し迫った問題ではないわけです。しかも向こうはこれから来てくれるとも言っている。これは非常にいいことだと思う。いままでのニクソン氏のやり方同盟国軽視やり方だったと思うが、そうではなくて、今度は日本米大統領が来てくれるという環境もある。日本側のほうにも向こう側のほうにもそういう環境があるわけです。そうしたときに、玄関先まで来たのだから素通りするのは申しわけないという日本的発想かどうか知りませんが、アメリカかけ込み的に立ち寄るというのはちょっといただけない。せっかく日本多元的外交をやっていこうというときに、新聞記者の報道でも何でも、メキシコへ行ったりカナダへ行ったりブラジルに行ったりということよりも、アメリカに立ち寄ることへの関心が高まっている。そのことによって本末が転倒し、今回の外遊意味が薄れることにもなりかねない。せっかくゆっくりしたりっぱな機会があるのに、いまあわてふためいてアメリカになぜ行かなければならないのか、こういうふうに述べているのですがね。これはだれが述べたのか、外務大臣御存じのとおりです。外務大臣、この点はどうお考えになりますか。
  59. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) まず、いま承った御意見の中で、間断なき対話、確かにその方がおっしゃるとおり、これは政府首脳だけの間断なき対話ではありません。もちろん広い国民層の中における間断なき対話、これが最も重要だろうと思います。しかしながら、やはり政府首脳同士対話がきわめてひんぱんに行なわれること自体は、これは私は国民間の間断なき対話を最も有効ならしめる一番大きなポイントだろうと思います。そういう意味において私は、政府首脳間の対話というものは常にそれが必要あるごとに、また、その機会あるごとに行なわれることが望ましいということは、これは否定できない問題であろうと思います。  次に、いま御意見の中にありましたかけ込みということばは、私はたいへん望ましくないことばだと思います。決してかけ込んだわけではございません。日米両国政府間でお互いにそれを有意義と感じ、必要と感じて行なわれる会談でございますから、そういうような性格の会談ではございません。
  60. 和田静夫

    和田静夫君 いまの発言は、これは御存じのとおり、元アメリカ大使朝海外務省顧問が日曜日の政治座談会で述べたのを私がテープにとったものです。これをよく聞きますと、せっかく事前にきまっていた日程を動かされて、いらいらしている外務省の官僚の皆さんの声が実は聞こえてくるのですよ。私は、外務省事務当局の人たちというのはたいへんいら立っているのじゃないかと内心気の毒に思っていますがね。  重ねてそこでお聞きをしたいんですが、今度の総理アメリカへの、ここの表現でいえばかけ込み訪問、外交の専門家からさえ批判の出るこの訪問の目的というのは一体何なんだろうかというのを実は非常に疑問に思うんです。したがって、時間の関係もあったから前後いたしましたが、この問題の冒頭に外務大臣にああいう質問を私はいたしたわけですよ。ここで一体、外務大臣、もう一ぺん聞きますが、何が話し合われるんですか。
  61. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) この日程がつくられましたのは、決して外務省がいらいらしておるような環境でつくられたものではございません。できればバミューダで御休息を願う日程でございましたので、たいへん総理としては勉強していただくことになったわけでございます。そこで、いまおっしゃいましたこの田中フォード第一回会談と、私どもはこういう考え方でおります。すなわち、一時間半にわたる中で、ニクソン政権からフォード新政権にかわりました中で、日米関係が不変であるということは当然といたしまして、フォード新政権がこの日米関係について、もちろん継続性ということもさることながら、いかに日米関係を重視しておるかということを当然フォード大統領から述べられると思いますが、そういう意味において、きわめて詳しい長い時間にわたる第二回目の会談のまずそれの第一回目である、予備とは申しませんが、第一回目であるというような考え方でとらえております。
  62. 和田静夫

    和田静夫君 先ほど私は、田中フォード会談では当然日本防衛力増強やあるいは極東米軍の縮少、削減問題がテーマになるんじゃないかというふうに、ずっと一連のものを読みながらそういう感じをとっているんですが、その実は根拠の一つに、去る七月二十九日に、アメリカの下院の歳出委員会が日本防衛力増強問題をあらためて提起しましたね。そうしますと、このことのフォード政権に与える影響というものは、先ほどの答弁ではありますが、外務大臣としてはどのように御判断になっていますか。
  63. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 米議会の歳出委員会という性格から申しまして、当然歳出について削減ということは歳出委員会のたいへん重要な任務であろうと思います。しかしながら、これが米議会における全体の決定になり得るかどうかということは、これは米議会のことでございますから論評を差し控えたいと思いますが、米議会とまた米政府とのいろいろな関係から申しまして、私どもは、この米議会の歳出委員会で話し合われたことが、また決定されたことが、これがアメリカ政府の決定として日本に対して何らかの影響を持つとは毛頭考えておりません。
  64. 和田静夫

    和田静夫君 こういう決定に基づいてフォード政権が一定の影響を受けていて、そして田中さんが立ち寄られた機会に、二回目の会談といわれる表現をそのまま受けとめたとして、かなり来日をされて論議をされる機会があるわけですから、話し合われる機会があるわけですから、そこへの事前的なものの要素を含みながら、日本防衛力増強などというものについて私は触れられない保証はないと、こういうふうに思いますがね。触れられた場合において、そのようなことについてはいま考慮をする余地がないという基本的な姿勢でお臨みになる、こういうふうに見ておいてよいですか。
  65. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) もちろん日米間には日米安保条約というものが存在いたします。しかしながら、日本の防衛をどう一体考えていくか。特に、おそらくその中で御指摘になると思いますが、防衛の負担、防衛分担ということについて、米政府といえども日本に対してそういう要求は絶対あり得ないというような前提でございます。
  66. 和田静夫

    和田静夫君 最後に、一番最初の問題に戻りますが、日韓の問題とのかね合いにおいて私は、もっと強い外交姿勢というものが要求をされなければならない。金大中事件に伴って政府がおとりになった姿勢というものが韓国に非常な影響を与えながら、韓国外交というものが日本に向かってある意味では理不尽な、ある意味では強圧的な、そういうような外交日程というものがのぼってきている、こういうふうに考えざるを得ないのですが、この機会にやっぱり私は日韓の経済援助そういうものを断ち切る、あるいはわがほうの金大中事件を中心とするところのいわゆる要望に一向にこたえようとしなかった、そういうようなものを振り返ってみて、今日、大使の召還までを含んだ強い姿勢というものが必要ではないだろうか。いみじくも手さんはいろいろの記者会見などで、私の生命を救ってくれたものは西ドイツ外交の基本姿勢であった、こういうふうに述べています。私は、たとえば早川君、太刀川君の問題を日本のいわゆる政府として、日本国民として責任を持って明確に救っていくという、そういう形のことを考えた場合にも、もっといま述べたような基本的な姿勢というものが日本外務省によってとられるべきだと実は考えているのですが、外務大臣いかがですか。
  67. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) わが国にとりまして、日韓友好関係の維持発展ということは、日韓基本条約成立の当時から一貫して変わらない方針でございます。そういう意味におきまして、私ども日韓の友好関係を保つということがきわめて緊要だと考えております。しかしながら、お互いに両方の対等的な立場を尊重いたしまして、冷静にかつ理性的に今後の日韓問題を処理していかなければならない、こういう考え方は変わっておりません。したがいまして、一言でいえば今後の日韓関係を長期的に正常化し、これを維持するためには、やはりその中に折り目正しいことが必要であるという考え方を持っております。
  68. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは私から、先ほどの和田委員質問に続けて韓国問題について若干お伺いさしていただきます。  いま外務大臣から折り目の正しい韓国関係ということのお話がございまして、私も、実にこの日韓関係というものは、まず折り目を正し、筋を通さなければほんとう意味日韓関係の改善はできないのではないかというふうに基本的に考えているものでございます。  時間もございませんので、実は先ほど、昨日の法務委員会でも問題になりましたこの警察庁に対しましての質問で、さらに質問を重ねたいと思う点がございますので、先に質問をさしていただきます。  これは昨日も申し上げましたように、去る八月二十一日のこの韓国日報に、朝鮮総連の最高幹部がその主治医に命じて文世光を仮装入院させ、その間に朴大統領暗殺の計画を指示し、その実行を教えたということが、日本の大阪府警の捜査によって明らかになったということが、大阪府警が発表したというかっこうでこの韓国日報に報ぜられている。御承知のとおり、韓国日報は韓国で第一の大きな新聞でございますので、このようなことを韓国国民の方々が読めば、反日的な気持ちが盛り上るというのは、これは当然のことではないかと思うわけです。  またさらに、あとを追うように、これも韓国の大新聞であるところの東亜日報が去る九月の五日の日に、韓国民族統一協議会の首席議長であるところのペ・ドンホ氏ほか一名が文世光と、それから先ほど来問題になっております朝総連の生野区西支部政治部長の金浩竜氏とを初めて紹介して、この朴大統領狙撃のための仲立ちをしたという、このことが警察庁から発表されたと、警察庁の調べによってはっきりしたという報道がトップに報ぜられている。このことについて昨日、私別の委員会で警備局長にお伺いしましたところ、そのような事実は日本の警察は全く発表もしておらないし、捜査の結果、そのような事実をもちろん確認はしておらないというお話でございましたが、それは間違いございませんね。
  69. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) そのようなことはわれわれ発表したり、確認したことはございません。
  70. 佐々木静子

    佐々木静子君 それで、昨日御当局の御答弁とすると、最もいい方法で善処をしたいというお話でございましたが、やはりこういう問題は誤解があってはいけない、また緊急に解決を要する問題ではないか、この方々の人権はもとより、このことが一日でもおくれることによって誤った報道が韓国国民に流布されるということは、これはこのまま放置しておいたら、これだけのことが日本捜査ではっきりしているのに、なぜもっと捜査を進めないかと、これは立場を入れかえて考えればだれしも思うことで、いま外相もおっしゃるように、日韓ほんとうの友好、いまの興奮した、ホットな空気を冷静な気分に取り戻すためには、まず、こういうふうな間違ったことを正さなければならないのじゃないか、そういうことで具体的に警察庁は、まあきのうは申し上げてすぐのことでしたので、適切な処置というものについての的確な御答弁が得られなかりたわけだと思うのでございますが、具体的にどのような方法でこの問題を解決されるか、具体的にお答えいただきたいと思うわけです。
  71. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 昨日御質問がありましたので、これは韓国語であったもので、翻訳を命じまして、けさ私、しさいに読んだわけでございますが、けさ読みましたところによりますと、韓国日報のほうの記事は、大阪府警の特別捜査本部の調査によればということで書いてあって、最後に、「ということ」だという表現になっているわけですね。そうすると、一般的にいいますと観測記事のような内容になっておるわけでございます。それから、東亜日報についても、警察庁という翻訳のあれでございますが、警察庁ということは全然使ってないわけでございまして、「日本警察は」と主語になって、ずっとまいりまして調査中であることが明らかにされたと、次のも日本警察はと、ちょんちょんになっていて、「ないかとみている。」というように、発表ということばは全然使っておらない。われわれ日本にもこういう記事がありもし、出るわけでありますが、観測記事あるいは推測記事というように判断されておる表現が多いわけでございまして、この点けさほど、いまただいま見たばかりでございますが、もし発表ということがはっきり書いてあれば、これはそういう事実はございませんので、直ちに訂正をするというような処置をとろうかと、きのう先生にお答えしたわけでございますが、発表という表現はいまのところずっと見てないものでございますので、やや、その点正式にこれを取り上げて直ちに云々というのは、まともに取り上げることがどうかというふうにも考えられますので、この点いましばらく文言等を検討して対策を考えたい、このように思っているところでございます。
  72. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは発表ということばが使ってなくても、警察の話ではそうだといえば、それじゃ日本の警察官の中でそのようなことを韓国新聞記者に話した人がいるんですか、私はそのことを大阪府警にも確認したんです。そうすると、大阪府警の警察官の中には単独で、府警を正式に通さないで、責任者を通さずにそのような捜査の経過を発表する人間は一人もおらないし、また事実、大阪府警でそのような捜査を全くしておらないという回答だったわけです。その点はいかがなのですか。
  73. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 大阪府警は全然そういうことを発表しておらない、これも事実でございます。それで、個々の警察官がそういうことを発表する立場にもありませんし、そんなことを言っていないということでございまして、いかにもこれは警察から聞いたようには書いてありますけれども、やはり一種の観測記事ではないかというふうに思われます。
  74. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは先ほど来、韓国の世論というものが、非常に不当にわれわれの気持ちと反した方向に世論が進められている。捜査協力ということを非常に強く打ち出しているわけですが、われわれは捜査に――日本政府は、国内法の許す範囲内で協力していると思うんです。ですけれども、このような記事を野放しにしておくと、これは立場をかえて、われわれが韓国民であってこれを読んでおれば、これはなぜもっと捜査をしないのだと、これは日本政府を攻撃するのは当然の心情だと思うんです。そこら辺についていま非常に――まあ私ともから見ると、韓国新聞側に有利な、非常に常識からはずれた御解釈じゃないかと思うんでございますけれども外務大臣はいかがですか。ほんとうに反日感情というものを押えて日本の真意をわかってもらうためには、日本の警察の捜査の結果はこのようなことは全くないんだと、また事実、このような捜査ができようはずもないし、また、しておらないんだと、そういうことはやはりはっきりと知らす必要があるんじゃないでしょうか。ただ、日本語に訳した場合に、発表ということばが出てこないから、日本捜査当局は、全く捜査してない事柄についていろいろ次々警察の名前をかたって韓国の報道に流されてもほっておくんだというんじゃ、これじゃ折り目正しい外交というものはできないと思いますが、外務大臣はいかがお考えですか。
  75. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 警察当局の行なっております捜査の結果につきましては、逐一韓国捜査当局に対して正確に通報されておりますので、先方捜査当局自体が日本の警察当局の捜査活動について誤解をするということは、私はないと思います。  新聞の内容につきましては存じませんけれども新聞が一般に観測記事を書くことまでを問題にするということはいかがかと私は考えております。
  76. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまの御答弁は、全く私の問題と食い違っておると思うんです。何もソウルの警察がそのように発表したと言っているんじゃないんです。韓国の大新聞の記者が日本へ来て、そして、日本の大阪府警とか警察庁捜査の結果はこのようであったと――発表という翻訳は使っておりませんが、警察の話ではこうだということを、これを大きく報じているわけですね。朝総連の最高議長がこの文世光に対して暗殺を指示したとか、あるいは民族統一協議会の首席議長のペ・ドンホ氏がこの問題を指示したとかということを、一面記事で大きく報道しているわけですね。日本の警察が捜査の結果このようなことを、発表ということばは悪ければ、確認したということで記者に話したとすれば、それなら、なぜもっと捜査をしないか、あるいは犯人の身柄を引き渡さないかということ、これは当然韓国としたらそういう世論が起こるのはあたりまえのことですよ。これを放置しておくと、こういう世論をつくるのに日本政府は協力しているというふうに見る以外に方法はないと思うんですが、その点外務大臣いかがですか。
  77. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) まあ、すべて客観的事実に基づいて報道されるのが望ましいと、したがいまして、いささかもそういう点について間違った記事等がありまして、それが日韓国民の誤解のもとになるということでは、私どもはきわめて望ましくないという考えを持っております。
  78. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは基本的に、今度親書をお渡しになって、もうとりあえずのこのいまの韓国国民の方々の気持ちを静めるということにいま外務省は全力をおあげになる。私、そういうことであれば、まず全く日本の警察が関知しておらない事柄について、日本警察の名前をかたって報道されている。これもごく地方紙というのじゃなくて、日本の三大紙に匹敵するような韓国の大新聞がトップ記事として、こうして一度ならず扱っている、日本の警察名で。こういう事柄についてやはり外務大臣は、この事実の間違っていることを正式に先方政府指摘して、そしてこのような間違った記事を早く訂正さして、正しい事実を韓国国民にもわかってもらうようにするということが、これがまず第一の前提条件じゃないかと思うんでございますが、いかがですか。こういうふうなことを放任しておいて、親書親書でくさいものにふたを締めるような状態にしておいたところで、私は何ら日韓問題は解決しないと思いますよ。どうですか。その点具体的にどういう方法をおとりになりますか。
  79. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 警察当局はもちろんのこと、外務省としても、いま先生御指摘の問題は、十分慎重に検討しました上で善処したいと思います。
  80. 佐々木静子

    佐々木静子君 せっかくのなんですが、私、御答弁とすると非常に不十分だと思うんです。慎重に検討していただいている間にもまた次々こういう問題が起こる。そうするとますます世論は反日的なほうに傾いてくる。ですから、すみやかにこうした問題の誤りということをはっきりと指摘していただきたい。まあ外務省が慎重になさるのはけっこうでございますけれども、やはりもう少しこういう問題は早く取り組んでいただきたい。  先ほど和田委員からも御質問のございましたこの尹教授の不法拉致事件の問題にいたしましても、これは一年前の法務委員会でも、やはり西ドイツから三十名の方々が拉致誘拐されて、羽田経由でソウルへ送られた。これはその当時の韓国情報部長の金炯旭氏が自分の自伝としてその時の経過を全部書いて、しかも出版していられるわけですね、「大地の架橋」という本。それを現物を持ちまして、私、大臣はお越しじゃなかったけれども、この問題について日本政府はどう対処なさるお考えかということ、これ、去年の八月に伺っているわけですね。それについて、大臣はおかわりになったけれども外務省として何らそのことについて検討なさっていないとすると、これは非常に私、失礼ながら怠慢じゃないかと思うわけです。この問題についても、もっときっちりした外相自身のおっしゃる折り目の正しい解決ということを考えていただかないと、これからの外交において日本は世界にばかにされるのじゃないかと思うわけです。  それから、まず伺いますが、この八日の新聞にも出ておりますように、後宮大使が帰国して外相らとの協議におきまして、大統領狙撃事件捜査協力問題で、外務、法務両省と警察庁とで具体的に協力できるものとできないものとの仕分け、今後の協力方法などの検討をしているというふうに報ぜられておりますが、この協力できるものとできないものの仕分けというものはどのような仕分けをされたのか、具体的に御回答いただきたいわけです。
  81. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 新聞報道で、わが捜査当局が今回の事件に関連いたしまする捜査について、協力できる範囲と協力できない範囲について仕分けするという表現を使っているそうでございますけれども、そういうことを私ども発表した、あるいは新聞に伝えた覚えはございませんで、一般的に当然国内法の範囲の中で捜査活動は行なわれているわけでございますから、その国内法の解釈あるいは国内法の適用、そういったものについて当然捜査当局あるいは法務省、それぞれの主管官庁のほうで正当に判断して、そうしてできるもの、できないものについての日本の態度というものをはっきり韓国政府のほうに示すべきであるということで、いままで事務的に打ち合わせをしてきておるということでございまして、事こまかに仕分けしてどうこうということではございません。
  82. 佐々木静子

    佐々木静子君 この国内法の範囲でございますけれども、具体的――いま私、具体的と申し上げたんです。いま国内法の範囲内で具体的にできることといえば何があるわけですか。
  83. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 現在論議されておる問題は、拳銃の窃盗の関係ですね。この関係は、まあ、文が自分で盗んだと言っておりますが、しかし、共犯者がいるかも知らぬという疑いもまだ残っているということで、この関係でやっております。それから吉井美喜子と文が香港に行ったと。この際、旅券を吉井の主人の名前で取ったという形での旅券法違反、出入国管理令違反の幇助ということで吉井美喜子を取り調べた。これはまあ起訴になった。さらに本年の八月にも韓国に行くという形で、同じような形で旅券を取りまして、密出国したという形でも、これも起訴になったということ。これが現在までの具体的な国内法違反という形で取り上げられた問題でございます。
  84. 佐々木静子

    佐々木静子君 この吉井美喜子は御承知のとおり、もうとうに起訴になりましたですね。ですから捜査の対象としては、これはもう裁判に管轄は回っていると思うんですね。そうすると、文世光が自供しているピストルの問題で、警察は共犯関係があるという線で捜査を進めているということでございますか。それ以外は何もないでしょう、いま国内法でできることといえば。
  85. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) ただいま拳銃のほうは共犯がいるという断定ではございませんが、まあ単独犯であるかどうかということについて、まだ捜査の詰めをやっているという段階になっておるわけでございます。その他の点については、これからの捜査に待つという形でございます。
  86. 佐々木静子

    佐々木静子君 これからのことというのは、どういうことがあるわけですか。
  87. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 韓国のほうの文の陳述の要旨ということによれば、はっきりしておりますけれども、吉井夫妻がやはりこのことを全般的に知っていたんじゃないかというようなことを言っておりますし、それから、香港に行く場合も金浩竜の指示で行ったというようなことを言っているわけですね。まあそういうような点、いろいろと陳述の内容にある点ではっきりさせなければならない問題がまだかなりたくさんあるということで、そういう問題を明確にする必要があるということだけでございます。
  88. 佐々木静子

    佐々木静子君 あまり夢物語みたいなことをおっしゃっていただきたくないですね。いま文世光の供述がまともなものだと思っている日本国民は百人のうち一人もないんじゃないですか。第一、殺人事件――きのうも伺いましたけれども、殺人の現場検証調書も送ってこないような捜査を信頼して、それの言うことをいろいろ裏づけをとるとか何とかいうばかなことは、あまりにもふざけているじゃないですか。これは日本韓国だけの関係じゃなしに、日本が世界の笑いものになると思いますよ。これはもう私が指摘申し上げるまでもなく、今度の朴大統領狙撃事件について、アメリカ新聞がどのように評価しておるか。ニューヨーク・タイムズにしてもワシントン・ポストにしても、ロサンゼルス・タイムズにしても、あるいはイギリスの各紙にしても、やれ、本気になってあの供述を取り上げているようなところはどこの新聞だってないですよ。これは朴政権自身が招いたことであると。日本政府なり日本人を非難した記事も何もないんじゃないですか。そこら辺のところ、韓国に追随するのはけっこうですけれども、そのために世界からばかにされるような、日本は近代国家であるということを少しぐらいは示していただくような気概をこの際、はっきりと持っていただかないと困りますね。これは、もちろんいまあなたのおっしゃったことは、日本の憲法上も刑事訴訟法上も全く是認できないことですし、これがいかに政治的な意味とはいえ、日本の法律で、国内法で許されるといっても、私はいまのような、文世光の自供をもとにした捜査というようなものが日本の国内法で許されるはずがないと思うのですけれども、そのようなことをすることによって、日本がどれだけ恥ずかしい思いをしなければならないか。前に指摘申し上げましたが、これはアメリカ国際法律家協会代表の弁護士で、アメリカのウィリアム・バトラー氏が今度の国連にも提出しておりますけれども韓国の政治犯に対する捜査、人権侵害による捜査というものがどんなものすごい人権侵害によって自供を取っているかということ、政治犯をさかさづりにして、炎でからだを焼きながら調書を取るというようなことを、こまかくこれ、国連に報告しておりますよ。このような状態の中で、文世光の自供がどうのこうのと寝ぼけたようなことをあまりおっしゃると、これは日本韓国と同じ程度の近代国家だ――近代国家と言えないような国じゃないかということを世界に評価されるだけのことじゃないですか。日本が近代国家であるならば、日本の国内法で、近代国家の国内法で許された捜査をやるのが、これがいま外相の言われた折り目の正しいことだと思うわけですけれども外務大臣、そのあたりについて折り目の正しい解決というようなことをどのようにお考えになっていられるのか。こんなむちゃくちゃな事柄でも無理やりにして、だれか犠牲者を出してでも、韓国にみつぎものをしてでも、何とか日韓関係をとりあえずの是正をしなければならないというふうな状態に日本はあるのかどうか。一度外務大臣の所信を述べていただきたいと思います。
  89. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 現在この事件は、韓国内におきまして韓国捜査当局によって行なわれております。これについて政府のほうで論評するのは差し控えたいと、こういうふうに考えております。
  90. 佐々木静子

    佐々木静子君 さらにこれは追加して伺いますが、この間の朴大統領の殺人の現場に日本政府を代表して後宮大使がおられたわけで、後宮大使は、その場で目も見えなく、耳も聞こえなくなったらしくて、その場にいたけれども何一つわからなかったということですので、ですから、光復節に参加された、在日韓国人、三百五十一名ということでございますが、その方々の帰国を待って事情を私どもも可能な限り聞き及んでいるわけでございます。そのうち、大阪から百八十人の人が代表で行ったということを入管の御当局から伺っているわけですが、その代表の団長であるところの沈載寅――沈むと、それから載せると、それから干支の寅という字ですね。この大阪民団のかなりの大物でいらっしゃる方ですが、この方は大阪で大きな事業をしていられるので、早く帰らなくちゃならないということで、八月十三日の日にソウルに立ったのに、いまだ足どめをされて帰っておらない。聞くところによると、文世光と思われる男と――当日、韓国の劇場の警備員か文世光を問いただしたときに、文世光が日本語しかわからないのでだれか通訳ができないかと、日本語のわかる者と言ったときに、この沈氏が名のりをあげて、そして通訳をした。まあそういう事柄から韓国政府に足どめをされてどうも帰ってこれない状態にあるらしいという情報が入っているんですが、そのあたり外務省はどのように確認されておるか。また、捜査当局はそのことを探知しておられるかどうか。
  91. 高島益郎

    説明員高島益郎君) いま先生の御指摘のような事情については、私ども承知しておりません。
  92. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 私どもも全く承知しておりません。
  93. 佐々木静子

    佐々木静子君 私も時間がないので、るる申し上げるつもりはありませんが、その文世光の供述を多少ともでも信用なさるなら、もっとしっかりと――何を聞いても関知しておらぬじゃなくて、もう少し本気になってお考えになるべき事柄だと思う。肝心の日本政府の後宮大使が現場にいて何にもわからなかったというような殺人事件について、単に文世光と称する男がこのように言ったという韓国側の供述たけを信用して――これを信用する、しないは、これは内政干渉になるから私どもどうのこうのと申しませんが、それに日本捜査権力が振り回されて、そして多くの人たちが不安な思いで暮らさなければならないというようなことは、これは日本政府にとっても何らメリットのあることじゃない。そういう事柄について口状ももちろん許されないことですから、捜査当局もいま外務大臣の言われたように、き然とした態度でこの問題について善処していただきたいということを重ねてお願い申し上げたいと思います。この事柄について非常に日韓問題について木村外相御苦労なさっておられますし、また、御就任当時から韓国問題について種々、私どもももっともだとえりを正したいような御意見も伺っておるわけでございますが、最後にその御所信を伺いたいと思います。今度の特に親書を持っていくということについて、どういう意味で、折り目正しいという御主張をなさっていらっしゃる大臣が、私どもから見ると、全く折り目の正しくないと思われる親書を持ってでも、いまとりあえずの問題を解決なさろうとしておるのか、そのあたりについて。実は外務省の一般の職員の方々に伺いますと、別に日韓閣僚会議はもとより、貿易委員会も何も急いで日本としたら開く必要はむろんないのであって、これ以上関係がまずくなるということはもちろん望ましいことではないけれども、筋を曲げてまでともかくのいまの世論を押えるために、何とかくさいものにふたをするというかっこうで親書を持っていくということは、私の聞き及んでいるところでは外務省内でもあまり歓迎しておらないと聞いておるわけでございますが、大臣があえてそれに踏み切られる、そういう御所信はどういうわけなのか、その点を述べていただきたいと思います。
  94. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 日韓関係が非常に異常な、たとえば決裂のおそれのあるような状態になることは、きわめて望ましくない事態でございます。そういうことにならないように、お互いに冷静にこの事態を処理するという考え方で、いませっかく政府も努力中でございます。
  95. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、この問題についてはわが党のほかの委員からも質問もございますので、このあたりで打ち切りまして、次にフィリピンの問題について若干お伺いさしていただきたいと思います。  これはいまもお越しになっておられるアジア局長にも再々に申し上げにも行ったことでございますが、この日本の企業が進出して、フィリピンの開発のために役立っているのであればともかく、フィリピンの住民との間に相当摩擦を起こしているような問題をいろいろと聞くわけでございますが、特にフィリピンのマルコス政府ができましてからいま相当日数がたっておるわけで、日本の企業というのは大企業でも五十種類以上がフィリピンに進出しているというわけでございます。その中で特にいま問題になっておりますのは、マニラの郊外のナボタスというところで、マニラ湾のしゅんせつ工事を請け負っている日本の大阪に本社がある東洋建設という会社が、フィリピン政府の工事を請け負って工事をした。この東洋建設が工事をしているこのナボタス地区は、フィリピンの中の郊外のうちのわりに貧民の方々がたくさん住んでおられる、三千人ほどの方々がそこで生活をしておられるわけだけれども、そのしゅんせつ工事で水びたしになってたいへんに困っておられる。  まあそういうことから、日本のまず宗教家の方々が人道主義的な立場からほっておけないということで視察にいったときにも、この十月から五月というフィリピンでは乾季、雨の降らない時期であるにもかかわらずに、この工事のために水がもう一ぱいに一階は全部浸水してしまって、みんな二階を継ぎ足してそこで生活をしている。八歳ぐらいの子供が板をかけて家を出入りするのに、足を踏みすべらすと肩まで水の中につかる。そういうことで、子供たちがたいへんに危険な状態であるし、その水にはイタチやらネズミの死体まで浮かんでおって、疫病がはやってたいへん困っている。そういう状態が非常に続いているために、マニラ市民の反発を強く買っている。そういう事柄から、フィリピンの政府にもこのナボタスの市民の方々が何度か陳情に行かれたけれども、これは東洋建設が工事をしていることだから、日本の企業のやっていることだからということで、それで日本の東洋建設のほうへもこのナボタスの住民が何回も交渉に行ったけれども、なかなか会ってくれないし、誠意のある態度を示してもらえないということで、結局は「ナボタス住民と連帯する会」という日本人の会ができて、そして外務省にもいろいろとお話しをし、現地のフィリピン大使館でもいろいろと御尽力いただいて、やっとのこと砂を入れて水がだいぶ引いたという状態にいま立ち至っているようでございます。  こういうふうに事柄が、これはナボタスの例は一例でございますけれども、ずいぶんいろいろ起こっているらしいのですが、外務省とすると、このナボタスの問題について、まずどのような行政指導といいますか、外務省の責任においてどのような事態の改善に努力されてきたのか。われわれ見ると、非常にこのやり方が緩慢なような感じがするのですが、その点いかがでございますか。
  96. 高島益郎

    説明員高島益郎君) ただいま先生御指摘の工事は、日本の東洋建設という会社が、フィリピンの政府の公共事業省の発注を受けて行なった工事でございます。この土地はフィリピンの国有地でございまして、フィリピン政府のほうでは、そういう不法占拠者の要求は聞くべきでないというような態度をとっております。しかし、わが在フィリピン大使館のほうといたしましては、本質的に、そういうフィリピン内部の、国内問題ではありますけれども、やはり施工者と十分協議して、この東洋建設が排水ポンプを提供し、また盛り土も行なうというようなことによって本件のこの問題を解決するということになったわけでございまして、フィリピン政府としては、そのような東洋建設の排水ポンプの提供とか、盛り土の工事につきまして、特にこれを、このようなことに対して異議を申し立てない、黙認するということでもって本件の解決のほうへ進んでおるというふうに見ております。
  97. 佐々木静子

    佐々木静子君 通産省おられたら伺いたいのですけれども、この件に関して、いま外務省からも経過の話がございましたけれども、こういうことをやると、東洋建設自身はこのフィリピン政府との請負契約によってかなりの収益があるでしょうけれども、住民から見ると、日本人のためにたいへん苦しめられた、あるいは水びたしになって、そのために子供が疫病で死んだ、日本人のために殺されたのだと、そういう印象を一般にみな受けているわけです。外務当局も努力をなすったようでございますし、また、良識ある日本国民も及ばずながら、このナボタスの市民と連帯してこの問題を解決したわけですけれども、これはしかし、いま外務省は解決したとおっしゃるけれども、物理的にはある程度解決したでしょうけれども国民感情とすると全く解決しておらないわけです。実はついこの間の八月末にも、私の友人がナボタスへ参りまして現地の声を聞いてみると、これはやはり日本のために、日本人のためにたいへんな目にあった、いまも一応砂はほうり込んでもらったけれども、まだ海岸の砂浜のところに住んでいるような状態で、いつ家がどうなるかわからないということで、たいへんに不安だということで、日本に対する悪感情というのは全くなくなっておらないわけですね。このような企業の、エコノミックアニマルの、もうけさえすればあとはどうでもいいというこの東洋建設のやり方に対しては、まあ私どももこの建設会社との交渉を伺って、実は驚いたのでございますが、通産省としてはどのような行政指導を海外に進出する企業に対してされておるのか、また、当該この事件についてはどのような責任を感じておられるのか。
  98. 見学信敬

    説明員(見学信敬君) 本件につきましては、事案が港湾の埋め立て工事ということでありまして、当省の所掌の事務ではとりあえずございません。したがいまして、一般論でまずお答えしたいと思いますけれども国際事業活動というのは、比較的最近において非常に急速に伸びておる、それに伴いましていろいろな国際的な摩擦問題が生じております。当省の所掌物資、事業に関しまして、かなりの問題をかかえております。私どもとしましては、昨年、民間投資でございますので、民間業界の動きとしまして、民間の五団体がひとつコード・オブ・ビヘービアみたいなものをつくろうではないかという動きがございまして、それを受けまして非常にそれはよいことであるということで、昨年の六月にコード・オブ・ビヘービアができ上がりまして、そのビヘービアにもこういった問題につきましては、特に地域社会との融和の問題につきまして、一項目とりたてて書いてございます。そういった観点から個別問題に関しても、私どもも十分指導しているつもりでございます。
  99. 佐々木静子

    佐々木静子君 それはいろいろ努力なすっていらっしゃることはわかりますが、この東洋建設はいまフィリピンのマニラのしゅんせつ工事も請け負っている。工事のうちで一番大きな工事ではございますけれども、そのほか台湾でもしゅんせつ工事、同様なものをやっている。シンガポールでも新たにしゅんせつ工事に着手している。マレーシアでも桟橋の工事をやっている。これは私は、この一つ一つについては知りませんけれども、このナブォタスの件一つを見ましても、もうけんかなという姿勢であって、この住民との感情の摩擦ということについての配慮に非常に欠けておる。これは単にこの一企業の問題だけではなしに、これはいま申し上げたように、日本というものに対する住民の評価になることを考えますと、長い目で見たときにどれだけこういう企業のあり方が日本の今後の将来について害をなしているかということ、これは通産省とすると、もっと積極的に責任を持ってこういう問題を起こしている企業というものについては強い行政指導に臨んで、場合によるとそういう企業が後開発国に進出して種々な大企業を請け負っていくということについてのチェックをしていくということも考えなければ、日本の将来にとってマイナスになるのではないか。その点はどうお考えになりますか。
  100. 見学信敬

    説明員(見学信敬君) 先ほど申しましたように、東洋建設自体の問題につきましては、たまたま私ども不案内でございますが、同種の案件が相当ございます。そこで、一つは民間団体を通ずるチェックと申しますか、一つのコードをつくっていただいているほか、現在検討中なのはジェトロを通じまして、ひとつ現場における指導体制というか、助言体制等も、ことしたとえば予算要求に織り込んでございます。そういった形で地域社会との融合を前向きに、むしろうしろ向きの解決だけでなくて、前向きにいくような体制をとりたいと思っております。
  101. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは、東洋建設のことについては不案内だとおっしゃったけど、あなたが所管官庁でしょう。所管官庁はどこなんですか。そのことについてそういう行政指導を担当している方はこの中におられないのですか。だれが担当するのですか、現実に。
  102. 見学信敬

    説明員(見学信敬君) 埋め立て工事、港湾工事でございますので、あるいは運輸省の所管かと存じますけれども
  103. 佐々木静子

    佐々木静子君 あるいはじゃなくって、私がきのうこの問題について質問すると言ったら、所管はあなたのほうだと通産省の政府委員室から来て言っていられるのですよ。そして質問するとなると、また担当が違う違うで逃げるんじゃこれは話にならぬですよ。あなたがその気であるならば、具体的なことは知らぬがじゃなくって、具体的なことをちゃんと調べて間違っている企業は正してもらわないと困りますね。これはドイツの例をあげますと、やはりこのナブォタスのすぐ近くのトンドというところでやはり港湾工事をやったわけですね。それについてドイツの企業がやはり地元の住民とトラブルがあった。すると西ドイツ政府はそれを聞いてすぐに、これは西ドイツ政府の責任でこの工事をもう中止させているのですよ。それに対してあなたのほうはそれじゃだめですよ、所管がどうだと言っているようじゃ。これじゃ日本がドイツと比べてどのような評価を受けるということだけははっきりしているじゃありませんですか。外務大臣、いかがですか、そういうことについて。これからの日本とフィリピンなどの現地住民との間の親善ということを考えたときに、このように――外務省の所管であるのかないのか知りませんが、お互い外務省に聞くと通産省だと言う、通産省に聞くとやれ何だと言う。これは私はいきなり言っているのじゃなくって、この間からこのことを伺うということを言っておるわけですよ。それで所管の方に出てきてくれと言って出てきていただいている。で、質問すると自分のほうは所管じゃないと、わからない、そういうふうなことではこの西ドイツの場合と比べると話にならないじゃないですか。ほんとうにフィリピンの住民との友好をお考えになるならば――フィリピンでも反日感情はいま非常に強い。また、これもこういう状態を放置しておくと第二の韓国になることは火を見るよりも明らかだと思う。失礼ながら外務省の職員がマニラでセックス観光に一役買っていたというようなことも昨日の新聞に載っておりますね。そういうふうな、これはごく一部の例外であろうとは思いますけれども、やはりこれは外務省としても今後の日本とフィリピンの友好というようなことを考えた場合に、第二の韓国のいまの状態にならないようにするためにはもっと真剣に考えていただかないと困る。外務大臣いかがお考えでございますか。
  104. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 経済協力、また企業進出と申しますか、お互いにその国における企業の問題にいたしましても、やはりその国の国民理解を得られないとほんとう意味の経済協力の実はあがりません。そういう意味において住民の反発を食うようなことが企業のビヘービアにありとすれば、これは単にその企業だけでなしに、私ども外交面におきましてもたいへんなマイナスになりますので、今後は関係各省とよく連絡の上、こういうことがないように努力をしたいと思います。
  105. 佐々木静子

    佐々木静子君 善処していただけることを約束できますね。  それでは、次はインドネシアの問題を若干伺いたいと思いますが、この正月に田中総理がインドネシアを訪問されて、そしてそこでたいへんに反日デモを受けたというような問題がありますが、そのときに田中総理が、この日本の悪い点は正すが、同時にインドネシア政府も外資をどう使い、民生安定のためにどのように役立たせているかということを国民の前に明らかに示してほしいということを要望されておるわけですね。このことについて日本からの資金援助というものがどのようにインドネシアで使われているかということの正式な報告というものが日本政府にきているわけですか、どういうことになっておりますか。これは関係省庁はどなたになりますか。
  106. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) いま先生の御指摘になりました問題につきましては、事実関係は次のとおりでございます。田中総理がスハルト大統領と会われた際に、田中総理のほうから、いろいろ日本とインドネシアとの間には経済協力の関係があり、日本からいろいろインドネシアに援助が行っているけれども、この援助がインドネシアの国民生活の向上に寄与するということでなければならないので、この実際日本がやっている援助はインドネシアの国民生活の向上に寄与していると思うけれども、どうぞインドネシア政府のほうでも、インドネシアの国民に対して日本の援助がインドネシアの国民生活の向上に寄与しているということを十分説明することを日本側としても期待するという発言をなさったわけでございます。したがいまして、日本の援助がインドネシアでいかに効果をあげているかという報告をスハルト大統領に求めたわけでございませんので、私どもといたしましては、別にインドネシア側のほうからそういう報告が来るということも期待しておりませんし、実際インドネシアのほうは、田中総理の発言を受けて、そしておそらくそういうふうにやっておられると思うのでございますけれども、別に報告というものをわが方に提出している事実はございません。
  107. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは田中総理がそう言われるのももっともで、このインドネシアに対する経済援助を調べてみますと、ボーナスエクスポートを調べてみましても、この日本が一九六六年から六八年までの間の承認額を見ても断然トップである。非常にたくさんの額のこれは現物供与のようでございますけれども、そのほかにまた非常に多くの、いまのインドネシアの経済というものはもう一つふるわないようでございますが、ほとんど日本経済に負っているところが多いんじゃないかというふうに思われるわけでございますけれども、それにもかかわらずこのインドネシアの住民から日本は歓迎されておらない。これは明らかな事実でございますね。そこら辺のところについて、これは外務省及び通産省あるいは経済協力局などがどのような姿勢で臨んでおられるのか。これは実は私はインドネシアでいまどのようなことが起こっておるかということを、これは実はイギリスの弁護士あるいはアメリカの弁護士からいろいろな事実の報告を受けたわけです。これは私は内政干渉になりますので、いまのスハルト政権をどうだ、こうだと批判するわけじゃないんですけれども、ただこれも弁護士の方々も全くノンセクトの立場で、このいまのスハルト政権のもとでおびただしい政治犯が出ている。そうして、特にこのインドネシアの一番東にあるところのブル島というところには、反体制側の国会議員とかあるいは学者とかその他知識人の方々が、これはちょっと前の調査ですけれどもブル島で一万人収容されている。この方々は裁判で有罪判決を受けて収容されているんではなくって、ただつかまえられて収容されていて、裁判を待つでもなく、もうそのまま政治犯として収容されておる。あるいはその家族もおるし、子供もついて行って親が死んだけれども、子供はもう政治犯の子供ということでそのまま収容されたままにいるのもいて、全部で一万人いる。そのほか、さらに別の島にまた一万五千人ほどの人が収容されているが、近々この人たちもブル島へ移転させられるような模様であるということで、実はいまオランダでアムネスティの世界大会が開かれておるわけでございますが、これがアメリカやイギリス、オランダなどの各国の弁護士の人たち、その他宗教家など人権問題を扱っている人たちが、この人権侵害という問題をいまテーマにして非常にこのことが問題として取り上げられつつあるわけでございますね。こういうようなことを外務省は直接関係ないかもしれませんが、まあ世界的にもこれは南朝鮮あるいはそれ以上に人権侵害がいま起こっているんではないかと、世間の良識ある近代国家の方々から批判を受けているブル島に、この日本の企業がいま進出しようとしているという事実、その事実を経済協力局は御存じでございますか。
  108. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) いま先生の御指摘になりました問題に、私どもとして直接関係があると思います事柄を御説明申し上げます。  六月十五日付のオーストラリアンという新聞が、インドネシア政府の開発プロジェクトには多数の政治犯を労働させておって、この日本が協力しているセメント工場もその一つであるというふうに報道したことがございます。そこで、われわれこれ事実を調べ、またインドネシア側に問い合わせた結果、そういう事実はございませんで、もちろんそのセメント工場の建設に対しまして日本の企業が参加するという計画は進められておる地域がございますが、政治犯をそういう労働に使っているという、その段階まで、ともかく労働者を使うという段階に来ておりませんので、まして政治犯を労働に従事させている事実はないわけでございます。そういたしまして、インドネシア側にもこの事実を問い合わせましたところ、六月二十四日国防治安省が、インドネシア政府は人道的に政治犯を取り扱っているものであり、強制労働をさせている囚人は全くないというふうに公式に発表しているわけでございますので、われわれとしてはそういうことは起こっていないというふうに承知しております。
  109. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは経済協力局ももう少し広い視野からものを見ていただかないと困りますよ。インドネシア政府、いまのスハルト政権に反対する人たちを何万人も収容しているところですからね。スハルト政権がそのことを率直に日本政府に言うはずはないですよ。また事実そういうことがなければ、アメリカやらイギリスやらヨーロッパの法律家やらあるいは宗教家の方々が立ち上がろうはずがないわけなんですね。いま世界会議でこれが問題になろうとしているわけです、ブル島の政治犯に対する虐待の問題が。ところが、事もあろうにそのブル島に日本のセメント業界での大手であるところの小野田セメントがまた三井物産と提携して、ここへ経済協力の一環として経済進出を始めた。そして、この囚人達を考え得るところの最低の賃金で酷使して、これらのセメント工場を建てようとしている。そういう計画が進められているということが、インドネシア政府からの報告はなくってもほかの国々の人たちはそのことを言っているわけです。ですからね、こういうことになれば一体どういうことになるんですか。このインドネシアのブル島というところはセメントの原材料のたくさん産出するところなんですね。で、伺っているところでは二百五十億円の工事の予定ということで、三井と小野田とが提携していまその大進出を始めておる。こうなると、これこそ日本は笑いものになるんじゃないか。囚人を酷使して、そしてその低賃金の上に日本の大企業が進出していくということになれば、それこそ日本はまさに近代国家ではないと、世界じゅうの嘲笑を買うのではないかということを私どもたいへん心配しているわけです。  経済協力国として、もう少し前向きの姿勢でこういう問題を対処なさらないと、これはここでもまた第二の韓国問題あるいはもっとひどい反日問題が起こってくるのではないか。しかも、インドネシアの問題だけではなしに、欧米からも日本は近代国家でないと見放されてしまうのではないか。私はこれ非常に憂慮するわけですが、経済協力局としていかが今後の御指導を考えておられますか。
  110. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) 先生御指摘のように、小野田セメントと三井物産とがインドネシア側の合弁でセメントの工場をつくるという計画があることを聞いておるわけでございますが、いまのところ計画の段階でございまして、今後どういうふうになるのか、これは当面は小野田セメントなり三井物産とインドネシア側との間で話が進められておりますので、その企業自体に対しましてはわれわれとしては直接関係ないわけでございますが、先生の御指摘になるような問題がかりにありとすれば、これはやはりわれわれとしても考えなければならない。工場を建設する場合にその地域社会とうまくやっていくということ、特に工場の労働力を得る場合にそこの社会的な条件とマッチしなければならないことは当然でございますので、われわれとしてはどういうふうなことで計画が進んでいるのか、これは私どもとしても関係各省なりあるいは当事者である民間の業者とも当たってみまして調べてみたいと思っております。
  111. 佐々木静子

    佐々木静子君 じゃあ、もう時間がないですので、インドネシアとの友好問題などに関して外務大臣から最後に御意見を伺っておきたいと思います。
  112. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) いろいろ例をあげて御指摘がございました。すべて日本の進出企業がその国において行動いたしますことが、その国の住民に対していろいろ大きな影響を与えます。それがひいてはその国と日本との外交関係にまたまずいことになりますので、進出企業自体の問題にしろ、それが住民の利益に反するとか、あるいはいま御指摘のような明らかに人道主義に反したようなことがありますれば、当然政府におきましてもそれについて十分な注意を与えたいと、こう考えております。
  113. 前川旦

    委員長前川旦君) それでは午後一時五分から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時三十九分休憩      ―――――・―――――    午後一時十四分開会
  114. 前川旦

    委員長前川旦君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  午前に引き続き昭和四十七年度決算外二件を議題とし、外務省決算につきまして審査を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  115. 須原昭二

    ○須原昭二君 去る七日、後宮大使を召還されまして、木村外務大臣はじめ外務省幹部が御協議をいただきました。その中で、これ以上在ソウルの日本大使館乱入事件を問題にしない、こういうふうに確認されたということでありますが、一連日韓関係諸問題が山積をしておる段階で、この問題だけ処理をされた、結論を出されたということについて、そうなのか、実はどのような決定をされたのか御意向のほどを承っておきたいと思います。
  116. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 先日の在韓日本大使館への乱入事件につきましては、当然、国際慣例上とるべき抗議手段を文書をもってとったわけでございますが、それに対しまして韓国政府はそれに応ずる陣謝、また責任、犯行者の処罰また賠償等の当然これに伴う諸措置につきまして誠意を示したというのが事実でございます。
  117. 須原昭二

    ○須原昭二君 去る八月の二十四日の金鍾泌韓国首相の親書に対する返書の問題でありますが、先ほども少し触れられておったようでありますが、今日の日韓関係の悪化をこれ以上ひどくさせない解決の糸口にされようとされておりますが、さきに六日でしたか、閣議では、返書の内容は朴大統領夫人への弔意を表する、あるいは国内法でできるだけの捜査を行なう、捜査に協力をする、友好増進に協力をする、こういったいわば抽象的かつ一般的なものにする方針をきめられまして、しばらく事態を静観する考え方であったと私たちは仄聞をいたしております。  しかし、後宮大使の報告で、これでは解決にならない、きわめてきびしい韓国の状態、これに対応できない。何とか韓国側で受けとめやすいものにしようと現在模索をされておるようでございますが、国内法をゆがめてまで韓国の一方的な言い分に追随するといいますか、歩み寄るわけには私は日本国民としてまいらないと思います。日本の自主的な立場をくずすわけにはまいらないと思うのでありますが、その点はどのようにお考えになっておりますか。
  118. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) まだ親書の内容は固まっておりませんし、親書の性格上、受け取り人に届くまで、その内容について申し上げることは御容赦願いたいと思います。  ただ、考え方の基本問題といたしましては、ただいまお話しのとおり、朴大統領狙撃事件をきっかけにいたしまして、たいへん韓国内で反日感情が高まっております。日韓関係が非常にむずかしくなってまいりましたので、この事件のために日韓関係が非常に危殆に瀕してはならない、かかる事態を避けるために両国間でできるだけの努力を払うべきであるというような観点から、田中総理から親書を出すということになっておるわけでございます。もちろん、その親書の内容にいたしましても、韓国に対応するわがほうの政府としての態度におきましても、当然、国内法をゆがめてまでやるべき筋ではございません。
  119. 須原昭二

    ○須原昭二君 この日韓関係の悪化は、何か私たちが見ておりますと、ひとり日本の一方的責任のように韓国政府に見られている節があると思います。これに対して、政府外交姿勢もきわめて何か弱いような感じを私たちは受けるわけです。  たとえば金大中事件あるいは民青学連二学生の裁判問題、大統領狙撃事件日本大使館乱入事件等々と課題が続いておるわけでありますが、先ほども申し上げましたように、一つの問題は一応解決をした、こういうふうにいわれておりますが、日本だけが韓国の無法な要求に歩み寄るのでは日本国民の感情は許さないと思います。したがって日本大使館乱入事件はこれ以上問題にしないと、この点については譲るといたしましても、金大中事件、二学生の問題等々、韓国政府の不明瞭な処理でははっきりしためどがついてないと実は思うわけです。したがって政府はこの事態をどうお考えになるのか。金大中事件、二学生問題、これらについてこれ以上政府として韓国に追及するなり要求するということはしないのか、この点は明確にしていただきたいと思います。
  120. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 政府といたしましては、韓国側のいろんな要請がございますが、当然受け入れるべきものは受け入れる、受け入れるべきではないものは受け入れない、こうしたはっきりした態度をもって対処しております。  もともとこの大統領狙撃事件金大中事件その他とは性格の違う事件でございます。金大中事件について昨年の十一月にとられましたいわゆる外交的決着の後に残っておりますフォローアップすべき事項は、今後も、政府といたしましてもこれを進めていくという考えでございます。
  121. 須原昭二

    ○須原昭二君 いかなる手段をもってこのようなことを折衝されていくんですか、この方途についてお尋ねしたい。
  122. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 当然、外交的ルートをもってこれを進めていくということでございます。
  123. 須原昭二

    ○須原昭二君 この点は特に要求をいたしておきたいと思います。  田中親書を金鍾泌首相に手渡すのではなくして朴大統領に直接送るようにと、しかもその親書を携える者はまあ政府首脳クラスの大ものを特派大使にしてこいと、こういう韓国側の要求は何を意味するのか、この点はひとつ外務省見解を尋ねておきたいと思います。
  124. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) そういう韓国側の要望があることは事実でございます。しかしながら、それに対していま私ども考えておりますのは、いずれにいたしましても韓国側のそういう要望についての推測は避けたいと思いますが、私ども考え方といたしましては、どういう方法をもって親書を届けるべきか、何が一体一番適切な方法かについても、先ほど申し上げた基本的な考え方に立って目下検討中でございまして、まだ結論を出すに至っておりません。
  125. 須原昭二

    ○須原昭二君 田中総理は十二日に外遊に出発されるということですから、あす一日しかないわけです。この点の時間的なめどはいつになされるのか、いま外務省当局としてはどうお考えになっているのか、今日時点の問題としてひとつ御意向を承っておきたい。
  126. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 田中総理が十二日に出発いたしますまで、できるだけ努力をいたしまして、そういう措置をとりたいと、こう考えております。
  127. 須原昭二

    ○須原昭二君 そうすると、あすじゅうということになりますね、そうですね。いま外務省として総理にこれからお話しになると思いますが、やはり外務省自身としても、もうあすに迫っている問題点をまだ今日わからないということではなくして、やはり外務大臣自身としてはこのような方途でと、こういうやはり結論はもう――いまだ持っておられないのですか。
  128. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 先ほどお答えいたしますとおり、どういう方法が一番現在のこの事態を収拾するのに適切かといういろいろな判断をいま重ねておる最中でございまして、まだそれについての結論は出しておりません。
  129. 須原昭二

    ○須原昭二君 そうすると、今日いま時点については韓国側の要望をそのまま受け入れるという立場にないということですね。
  130. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) そういうあらゆる点を踏まえまして、含めまして、いま検討中ということでございます。
  131. 須原昭二

    ○須原昭二君 じゃ後ほどこの親書問題に関連をするわけですが、その前段としてひとつお尋ねをいたしておきたいと思います。  というのは、韓国への経済援助の問題です。韓国の浦項の総合製鉄事業に関する経済援助についてでありますが、浦項製鉄所の新設は、韓国における鉄鋼製品の自給体制を強化し、その関連工業の促進をはかろうとするために粗鋼年産百三万トンの銑鉄一貫製鉄所を浦項に新設する事業ということで、わが国は、ここに持ってきておりますが、外務省経済協力局発行の「韓国第三次経済開発五カ年計画調査報告書」、これによりますと、第一次分は二十八億八千万円の経済援助を実は決定し、かつ実施については、衆議院の決算委員会に四十八年九月十七日提出した対韓国経済協力に関する資料によりますと、昭和四十六年度と四十七年度の両年度にわたって実施されております。さらに第二次分として百七億四千九百万円、並びに第三次分九億四千三百万円の経済援助についても、この資料によりますと、四十七年から四十八年七月にかけて実施されている。この点については間違いないかということがまず問題点ですが、後ほどお答えをいただきたいと思います。  ついては、外務省は、四十八年の九月十九日の衆議院の決算委員会会議録によりますと、韓国の当初計画、粗鋼年産六十万トンの製鉄所建設計画に関する世界銀行の調査が当時の世界情勢から見て経済性に疑問があるという結論であったわけですが、その後、韓国側が世界銀行の意見も勘案して年産百万トンの規模の計画に変更したものについて、韓国側の要請でわが国調査した結果、技術的、経済的に実行可能性があるという結論に達したことを実は指摘をいたしております。  しかし、この経済援助の決定の理由については違った実は説があるわけです。世界銀行からの借款が破談になったのは、一九六九年四月にパリで開催された対韓国国際借款団会議において、韓国の対外債務返済率が世界銀行の考えている一〇%の危険信号率をこえて、七〇年代後半には三〇%をこえると見られたためだといわれております。当時の朴忠勲副首相はアメリカあるいは西ドイツを歴訪したにもかかわらず、借款には成功できなかった。結局、同副首相は責任をとらされて実は辞任したということを私たちは聞いておるわけですが、これによると、世界銀行の借款不成立の理由は、浦項製鉄所の生産規模ではなくて、韓国の対外債務の返済比率にあったという実は説があるわけでありますが、外務省のこの事実関係についての認識は誤りではないかどうか、この点を明確にしていただきたいと思います。
  132. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) 最初に、浦項製鉄に対しますわが国の協力実績でございますが、私いま手もとにございますのは米ドルの表示になっておりますが、それでお答えいたしますと、百三万トンの規模の建設のための、第一期建設計画のための援助は、第一のカテゴリーといたしましては韓国との間の請求権協定に基づく有償資金がございます。その分が四千六百四十万ドル、それから同じく請求権協定に基づく無償のほうの資金といたしまして三千八十万ドル、これが請求権協定に基づく協力でございますが、その後、いわゆる一般の経済協力といたしまして、輸銀ベースによる特殊延べ払い輸出が五千二百五十万ドル、それから輸銀ベースによる一般延べ払い輸出千四百万ドル、合計いたしまして一億四千三百七十万ドルの供与をしたわけでございます。その結果、七〇年から工事が始まりました第一期の工事は七三年の中ほどで終わりまして、粗鋼年産百三万トンの規模の一貫製鉄所ができたわけでございます。  第二期につきましては、百三万トンをさらに二百六十万トンの規模へ拡張しようというものでございますけれども、これにつきましては従来からわが国と話し合っておりますが、私どものほうでは、第二期につきましては、請求権協定に基づく有償資金といたしましては四千百五十二万ドル、これは請求権協定に基づくものでございますので、いわば協定の履行ということできまっているわけでございますが、さらに韓国側から輸銀ベースの延べ払い輸出を百二十億円の供与方要請がございまして、それに対してはそれに協力するということをすでに意図を表明したわけでございますけれども、具体的な条件についてはまだ話が進んでおりません。  それで次に、先生の御質問の中の世銀の評価はどうであったかということでございますが、世銀は、一九六九年の四月当時のことでございますが、当初の五十万トンではやはり規模が小さいということで、スケールメリットがないという判断をいたしまして、それからまたインフラ及び付随の投資が多いこと等によりまして、場合によっては製品価格が国際価格を上回るんではないか、すなわち、前と同じことでございますが、本体のスケールが小さいのに比して、製鉄所をつくるといたしますれば、当然ある程度のインフラストラクチュアや付随投資がかかるわけでございまして、そういうことで五十万トンでは国際価格に匹敵するような製品が出ないという指摘をいたしたわけでございます。で、その指摘に基づきまして韓国側は当初の五十万トン程度の計画を修正いたしまして、規模を百三万トンに改めたということでございますので、これでわがほうとしても十分国際価格に匹敵し得る製品ができるという見通しを得ましたために、これに対する協力を決定したわけでございます。
  133. 須原昭二

    ○須原昭二君 そういたしますと、百三万トンにすれば価格が成り立ってこの返済ができると、こういう認識の上に立ったということですね。
  134. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) はい。
  135. 須原昭二

    ○須原昭二君 じゃ、そういうことであるならば、さらに続けていきたいと思うんですが、世銀から借款ができなかった当時の韓国政府は、一九六九年八月二十六日から二十八日にかけて開かれた第三回日韓閣僚会議を通じて、政治援助に踏み切ってくれそうな当時の佐藤内閣に対してこの件を実は要請をいたしてきたのであります。その当時、外務省、通産省の事務的ベースでは、米国や西ドイツの企業や世銀さえ断わった不合理なものという理由で難色を示したわけです。  ところが財界が積極的に動き出して、韓国は第三回の日韓閣僚会議以前の八月の十一日に日本鉄鋼連盟に計画書を提出して、検討が始められている。さらに日本鉄鋼連盟が計画書を受け取る前に、すでに富士製鉄を中心に八幡製鉄あるいは日本鋼管、この三社が実は積極的協力の方針をきめておる。三菱商事の藤野社長によると、積極的に動いた財界の顔ぶれは、そのほかにこの間爆弾事件で問題になりました三菱重工あるいは三菱電機、日立製作所、東芝、石川島幡磨重工などがあります。このような財界の積極的なバックアップがあって初めて佐藤総理は、第三回日韓閣僚会議の中で、とにかく実施計画を進めることが大切であり、資金の問題はおのずから道が開かれるであろう、当時の大平通産相とよく話し合ってほしい、日本としても可能な限り協力をするという実は発言をしております。この佐藤総理のいわばツルの一声で外務省、通産省両省の事務レベルにおける異論は消えたと私たちは解釈するわけですが、その点は間違いありませんか、簡単にね。
  136. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) いまの御質問に対しましてお答えいたします。  先生のおっしゃるように、第三回の日韓定期閣僚会議で、先ほど申しました百三万トンの第一期工事に対する協力を約したということはそのとおりでございます。  ただ、その理由につきまして、特に日本が有利であるという点が二つございます。それは先ほどの説明でもおわかりいただけると思うわけでございますけれども韓国に対する、浦項に対する援助の中には、請求権協定に基づく有償と無償の分がございます。これはすでに日韓正常化のときに約束している分の中でございまして、その分はいずれは日本として韓国側に資金を協力すべき金額であったわけでございますけれども、それが一方では無償であり、一方が三分五厘という低利になっているという点がほかの国よりは有利な資金供与ができるという事情にあったわけでございます。  それから第二に、日本はまあ韓国に近いわけでございまして、日本の製鉄会社は技術的な援助を与えるにも便利でございますし、また初めてつくる韓国の製鉄所に対しまして、原料炭なり鉄鉱石を運んでくる場合に双方日本韓国にも有利な取引ができるわけでございまして、その点でも日本としては西欧の企業に比べると有利な地位にあったということが言えると思います。  それから第三に、そういう日本だけの条件ではなくて、先ほど申しましたように世銀も百三万トンというふうに拡張するならば十分国際価格に匹敵し得るような製品が出せるであろうというフィージビリティーの見方をしておりますし、それから韓国経済がそのころになりますと第二次五カ年計画の結果非常に伸びまして、そしていずれ第三次五カ年計画につながるちょうど成長期にあったわけでございまして、そういう韓国の経済状態からいいましても、浦項に対する協力は十分実績があがるという判断に基づいて閣僚会議で援助を約束した次第でございます。
  137. 須原昭二

    ○須原昭二君 続いてお尋ねしたいんですが、浦項製鉄所の総合製鉄事業に対する経済協力の決定に伴って、実は、その当時その資金をどこから出すかが問題になったことを私たちは記憶しております。韓国側は対日請求権の有償、無償協力を希望しておった、有償協力は七千六百万ドル、無償協力は一億ドル残ってはいるが、その使用計画はほとんどきまっているわけです。これを総合製鉄事業に回されれば、農業あるいは水産業の施設近代化だとか、あるいは一般中小企業の振興などに回す金がなくなる。そうでなくてさえこれまでの借款政策の進行の中で、韓国の中小企業の半数以上が休業したり、あるいは廃業に追い込まれている。農家の負担率は一九六一年の実は四倍になっていると報道関係も伝えておるわけです。  このような経済協力の決定の影響の実情について、外務省はどのように掌握をされておるか、現況はどうなっておるか。
  138. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) 先ほど私が御説明しましたとおり、第一期の工事に対しましては、請求権に基づく有償、無償の分のほか、輸銀の延べ払い輸出がございまして、それがさらに特別な条件のものと一般の条件のものとに分かれております。  で、韓国との話し合いにあたりまして、もちろん先生のおっしゃるように、有償、無償につきましてはいろいろの計画があったわけでございますので一その計画を変更することの当否、それからかりに有償、無償だけでやれば製鉄所は非常にコストが安くできるわけでございますけれども、ほかの農業その他のもの、あるいはインフラストラクチュアその他に対する協力が制限されるわけでありますので、その問題。それからかりに製鉄所に有償、無償の請求権に基づく条件のいい分を制限いたしますと、延べ払い輸出という条件の高いものがいくわけでございますので、それをミックスした場合にはたしてコストが合うかどうかということを十分検討いたしまして、両国の協議の結果、これで韓国に対する、一般経済に対するわが国の援助としても均斉のとれたものであり、また製鉄所に対する資金援助も十分合理的なものであるという結論に基づいて、先ほど私が申しましたような配分の資金援助をやったわけでございます。
  139. 須原昭二

    ○須原昭二君 その計画変更ということでありますが、韓国政府の「韓日会談白書」、これは昭和四十年九月に出ておりますが、韓国政府日韓条約締結時に請求権資金の使用方途について五つの原則を打ち出しております。  その冒頭に、第一、資金の恩恵が全国民にくまなく行き渡るような用途に優先に配分をする。もちろんどのような事業であっても直接または間接に国民全体の利益につながるものであるが、この資金が持つ特殊な意義に照らして、特定の個人や集団はもちろん、どの地域にも偏重することのないよう特別な配慮をする、こう実は韓国自身がいっているわけです。  しかし、そういう方針からいうならば、これは非常に大きく曲がっておると言わなければならないわけで、もしも総合製鉄事業に対する経済援助が中小企業や農業の経済協力財源に食い込む形で行なわれたとするならば、それは特定のものを偏重する経済協力であって、韓国全体の国民のための経済援助にはなっておらないのではないか、こうわれわれは判断をせざるを得ないんですが、その点はいかがですか。
  140. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) そういう問題点について、私どもといたしましても十分検討いたしましたし、韓国側とも協議したわけでございますが、先ほど私が言扱いたしましたとおりに、第二次五カ年計画が非常に好調でございまして、六六年から七一年まで、これが第二次五カ年計画でございますが、韓国は非常にいい国際環境もありまして、経済が高度に伸長いたしました。で、第三次五カ年計画、これは現在行なわれている計画で、七二年から七六年まででございますが、この計画をあとで計画によって補足すれば七六年の末までには自立の見通しが立てるというような見通しになったわけでございます。したがいまして韓国の経済政策もこの辺でやや積極的になったわけでございます。  その評価は、先ほど先生が御指摘になりました第三次五カ年計画に対する調査団のレポートにも出ておりますが、鉄鋼製品が国内自給できるようになる、そのために外貨の節約もできるということでございまして、また鉄鋼が国内で生産されるために関連事業が開発されるというふうな経済効果が十分期待される。したがって、これは韓国国民の福祉にもつながる、経済開発を進めることによって韓国民全体の福祉にもつながるという判断があったわけでございます。
  141. 須原昭二

    ○須原昭二君 さらに質問を続けていきますが、一九六一年朴大統領は実はクーデターによって軍事政権を樹立した後、大統領三選を禁じた憲法を実はぎめております。しかし一九七一年の大統領改選期を前にして、朴大統領三選のための今度は逆に改憲の方向に政局を動かしたと実はいわれておる。  このことについては、実は藤島宇内さんの「第三次日米安保体制の開幕」、この著書の中の「危機を生む対韓「経済協力」」、こういう項目の中でこういっております。政局を動かすための膨大な「政治資金の出所は経済援助からひねり出すよりほかないぐあろう。」と実は断言をし、かつ「朴大統領の命運がかかっているものとして浮かんだのが、」いまいわれておるこの「東海岸に建設を予定する浦項製鉄所問題である。」といって実はおるわけです。  はたして大統領三選と浦項製鉄所経済援助との関連について、外務省はどのような御認識に立っておられますか。
  142. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) 私どもは浦項の製鉄所を純粋に韓国に対する経済援助として観念し、検討し、韓国側とも協議して実行に移したわけでございまして、その効果は十分にそのとおりにあがっていると信じております。で、いま先生のお話にありましたような問題はないのだということの一つの証左として、韓国に対する援助の従来の経緯を申し上げますと……
  143. 須原昭二

    ○須原昭二君 いや簡単でいいよ、明瞭簡単に。
  144. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) 請求権協定ができましたのは六五年でございます。それで有償、無償、この協定に基づく援助を続けていたわけでございますが、これは要するに六五年にきまったことを年々分けて資金供与をしていたわけでございまして、その後、普通の新しい経済協力をいたしましたのは七一年に入ってからでございますので、その間新しい援助というものはやっておらないわけでございます。そういうことでもございますので、先ほど申しました韓国のいろいろな政治の動きがあった時期には新しい援助のアクションがとられなかったということが言えるのではないかと思います。
  145. 須原昭二

    ○須原昭二君 昭和四十七年の第六回日韓定期閣僚会議において、韓国側は生産規模を二百六十万トンにするという第二期工事計画に関する経済援助を日本側に実は申し入れてきております。政府はその調査団を派遣されて、その調査が終わったばかりであると実は昨年の九月十九日の衆議院決算委員会で答弁しておられます。  この調査の結果がどうなったのか、さらに第二期工事に対する経済協力の実情はどうなっているのか、簡明にひとつ御説明をいただきたいと思います。
  146. 前川旦

    委員長前川旦君) 鹿取局長、答弁は簡明にお願いいたします。
  147. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) 七二年で五カ年計画がすでに発足しているわけでございますが、この計画の一環といたしまして第二期拡張工事という計画が韓国側から出まして、日本側から調査団を出したわけでございます。  その結果は、やはり第二期設備計画は必要である、すなわち百万トンでは足りない、むしろ二百万トン以上にすることによって――二百六十万トンでございますが、これによってさらに採算がよくなるという結論を出しております。で、それに基づきまして韓国側と資金供与の話を始めたわけでございますけれども、一番初めに申しましたように、請求権協定に基づく分のほかはまだ具体的に話は進んでおりません。
  148. 須原昭二

    ○須原昭二君 この調査の結果は一応文書になっておりますか。なっておれば、あとでまた資料をひとつ出していただきたい。この点を委員長を通じてお願いをしておきます。
  149. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) 報告書そのものはやや機微な点もございますが、その抄録、肝心なところはお出しできるわけでございます。
  150. 須原昭二

    ○須原昭二君 ぜひお願いしておきたいと思います。  どうも私は、対韓経済協力というものは謀略的な疑念のある事件を契機とする外交交渉の過程の中で、結果的にはこれとの関連において決定をされておるようなふうに見受けられていたし方がないわけです。  昨年八月、金大中事件が発生をして韓国側によるわが国の主権の侵害の問題が実は起こってまいりますと、同じ十月、韓国金大中氏の自由回復声明を実は出しておる。そしてわが国の批判にこたえるポーズをとりました。そして十二月の第七回日韓定期閣僚会議において対韓経済協力が決定されたあと、思いもよらない金大中氏の自由回復は実際上実現されておらない措置がとられております。この事実の過程を見ますると、対韓経済協力を確保するためには、韓国側国際的道義を無視した措置をとる、いわば目的のためには手段を選ばないというていを呈しておるといっても私は過言でないと思います。  したがって私は、この金大中氏の自由回復の問題は経済協力があるというこの前提の上に立って実はうやむにされてしまって、わが国から言うならば何か裏切られたような感じになっている、国民はそうひとしく実は感じているわけです。したがって外務大臣金大中事件と第七回日韓定期閣僚会議の経験を踏まえていかに評価されるのか、裏切られたというお気持ちはないのか、この点を明確にしていただきたいと思います。
  151. 前川旦

    委員長前川旦君) ちょっと須原君、さっきの資料の提供ですけれども、いまの答弁で新たに提供すると、それでよろしいんですか。
  152. 須原昭二

    ○須原昭二君 はい。
  153. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 韓国に対する経済協力は、私ども考え方といたしまして、特定の政権に対するてこ入れをするものではない、韓国国民の民生安定と経済繁栄のためであるというような基本的考えを持っております。そういう意味におきまして、この金大中事件とは直ちにこれをからめて、関連させてこれを考えないという立場でおりますので、いま御指摘のような考え方は持っておりません。
  154. 須原昭二

    ○須原昭二君 どうもわれわれ側面的にこれを見ておりますと、実は十月にそういう回復声明を出しておいて、そしていい顔をしながら、十二月の閣僚会議で経済援助が決定をされると、今度は自由回復は実際上やらない、こういう状態を見ますると、われわれ日本国民の立場で言うならば、日本政府は彼らに裏切られたといいますか、策に乗ぜられた、こう言っても私は過言でないと思うわけで、そういう見方を国民は非常に根強く持っているわけです。  その点はひとつ十分にわれわれは答えていただかなければならないわけで、ただ信頼をするというだけで、あるいはまた金大中の問題とは関係ないというだけでは実は了承できないわけで、八月、十月、十二月のこの三つの関係から言うならば、疑惑が出るのは当然ではないかと思うんですが、あらためて御答弁をいただきたいと思います。
  155. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 先ほど申し上げたとおり、経済協力と一連事件、これは私どもはからめて考えてはおりません。  しかしながら、やはりこの日韓間の経済協力にいたしましても、お互い相互において理解が基礎になっております。また友好親善というものの上に立たれなければなりません。そういう意味において、今後、そういう経済協力を行ないます際の政府としての考え方は、今後とも慎重な考え方でいきたいと思います。
  156. 須原昭二

    ○須原昭二君 まあ友好親善をしなければならないということはよくわかります。しかしながら韓国側は自由回復をするんだと言っておいて、経済援助を、あたかも同じ時期でありますが、するということを決定をすると、今度は自由回復をしない、これはまさに友好親善、信頼には基づかない措置であると言わなければならないわけで、したがって金大中事件の問題についてはさらに追及をしていくんだ、こういうお考え方を冒頭にいただきましたけれども、われわれは日本政府外務省に対して、もっと国民理解する方途をとっていただきたい、この点は特に強く要望しておきたいと思います。  そこで、去る八月の十五日の朴大統領狙撃事件、その前に発生をした民青学連事件などによって朴政権に対する内外の批判が高まってきている状況のもとで、八月二十三日、突如として大統領緊急措置一号及び四号が解除されました。この解除の行為については、朴政権は外交的な孤立を懸念して、国民の望む民主化と生活の安定をどう進めていくか、こういうことについて必死になっているのだという評論が多く出ておりました。このことは、第七回の日韓定期閣僚会議の経験から考えると、韓国日本の経済協力を強く求めている一面であると私には思われます。  したがって、そういう点から言いまして、金大中事件と第七回の定期閣僚会議の関連、その点を踏まえて考えますと、今度、あす、あさって行なわれるところの田中親書の背景に再びこのような経済協力の取引が行なわれるのではないかという私たちは疑念を持たざるを得ないわけです。そういう親書の内容は相手の先へ届くまでは何も言えないということをおっしゃいますけれども、この点について私は大きな疑念を持たざるを得ないわけですが、その点について明確にお答えをいただきたいと思います。
  157. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) そういう考えは一切ございません。
  158. 須原昭二

    ○須原昭二君 さらに、私は、この際、ないということなら、しかと私たちはそのように踏まえておきたいと思いますが、どうも政治的疑惑がこの日韓経済協力の中には多くあるように私たちは疑念を持たざるを得ません。したがって、その疑念を持たないように、日本国民理解をするような適切な方途をひとつとっていただきたいと要望しておきます。  さらにまた、第七回の日韓定期閣僚会議の共同声明によりますと、第八回の定期閣僚会議はことしじゅうに両国政府が合意する時期を選んでソウルで開催をするということをもうすでに共同声明で約束をしております、合意をしております。したがって、このように日韓問題が複雑になっておる険悪な状態の中でこの見通しをどうお考えになっておるのか、やるのかやらないのか、この点について明確にしていただきたいと思います。
  159. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 先ほど申し上げましたとおり、日韓定期閣僚会議の開催、これはやはり日韓の友好親善という雰囲気の中で行なわれなければならぬと思います。御承知のごとく、現在、そういう雰囲気ではございません。したがいまして日韓定期閣僚会議の開催よりも、日韓定期閣僚会議を開催するに足る雰囲気の改善ということが先決であろうと思います。そういう意味で、現在、日韓定期閣僚会議の具体的日程を検討するような段階にはなっておりません。
  160. 須原昭二

    ○須原昭二君 いずれにいたしましても、どうも日韓関係を見ますると、韓国に追随したような、こちらから歩み寄ったような、何か日本の自主外交路線が曲がっているような、そういうことを私たちは非常に憂慮するわけです。き然とひとつ衝に当たっていただくよう要望しておきたいと思います。  この際、まだ時間がございますが、カンボジア問題についてちょっと御見解を尋ねておきたいと思います。  カンボジアの情勢は、私たち情報では、カンボジア王国民族連合政権いわゆる民族解放勢力は領土で九〇%以上、人口で七百万のうち大体八五%内外、これを実は解放しております。ロン・ノル側はプノンペン、コンポンチャム、バッタンバン、コンポンソム、この四都市の中に包囲されて、かろうじてアメリカ空軍の空輸によって延命をしておると実は聞いております。  政府は、今日の現在のカンボジアの情勢についてどのように掌握をされておりますか。
  161. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 不幸なことにカンボジアにおきましては内戦が依然として継続しておりまして、最近戦闘状態そのものにつきましては全般的に膠着状態を示しておるということでございまするけれども、それぞれの当事者がどの程度のパーセンテージの領土あるいは支配地域を持っているかという点については、私たち具体的には承知いたしておりません。しかし、いずれにしてもプノンペン――首都を現在のロン・ノル政府は支配しておりまして、そういう実態については変わっておらないというように承知しております。
  162. 須原昭二

    ○須原昭二君 政府はプノンペンに大使館を持っているのでしょう。だったら現地の情報というのは的確に掌握しているはずですが、その点はどうですか。
  163. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 全体に内戦の状態にございまして、そういう状況のもとで具体的に支配地域はどうこうということは大使館としては承知する手段がございません。
  164. 須原昭二

    ○須原昭二君 大使館は何をやっておられるかわかりませんけれど、そういう妙なところは早く引き揚げたほうがいいと私は実は思います。  実は、戦争の解決の方向に向かっていることを私たちも知っております。たとえばベトナムあるいはラオス、カンボジア、このインドシナ三国の問題については、たとえばベトナムは戦争の終結の問題については当事者だけではなくして国際的な舞台で話し合いが行なわれております。ラオスの場合については当事者だけで話をしている。カンボジアの場合は、ロン・ノルは実は無条件で話し合おう、こう言っております。しかしながらカンボジア王国民族連合政府はロン・ノルとは最後まで戦う、もし話し合うなら戦争さしておるところのアメリカとわれわれは直接に話し合う、こう実は言っております。  そういう情勢に対して、政府はどのように対処されるのか、御見解を承っておきたいと思います。
  165. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 私たちは、カンボジアの国民が外部の介入なしに平和的に話し合いをすることによってカンボジアの内戦をできるだけすみやかに解決するということを基本方針としておりまして、先ほどロン・ノル政府の側から無条件で平和的な話し合いをしたいという提案に対しては全面的に支持の態度をとっております。  国連におきましてもカンボジア問題というのがことしも議論されることになっておりまして、これにつきましても、いろいろそういう観点からできるだけ早い平和的解決へ向かうことを希望するという方針で対処しております。
  166. 須原昭二

    ○須原昭二君 大臣、プノンペンにロン・ノル政権との間の外交関係を保つために大使館を置かれておりますが、どうもいま二、三の質問で聞いても、現実を、実態を掌握されておらない。こういうことでは私は日本の世界外交を展開することができないのではないか、この点は明確にしておかなけりゃならないわけで、その点について御見解を承っておきたいと思います。
  167. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 先ほど局長から御説明いたしましたとおり、目下小康状態を得ておりますが、戦闘が行なわれておるさなかでございますので、現在のところ、このプノンペンを支配しております現在のロン・ノル政権を正統政府として承認いたし、したがって首府としてのプノンペンに大使館を設置しておるわけでございますが、しかし状況は刻々と変化するでしょうし、また今後国連の中でどういうふうに両当事者が話し合いをしてまいりますか、また国連の中のいろんな動き等もございますので、そういう点を把握いたしまして、今後、わが政府としても誤りのない外交措置をとっていきたいと、こう考えております。
  168. 須原昭二

    ○須原昭二君 どうもプノンペンに大使館を置かれておりまするが、情報をキャッチされておらない。あげて何かアメリカからの情報にたよっておるのではないかというような憶測を持たざるを得ないわけであります。そういう自主的外交ができない状態を非常に遺憾と思います。  したがって、その点は後ほどまた機会を改めて指摘をいたしたいと思いますが、いずれにしても近く国連総会が開かれるわけであります。今度の国連総会では、もう言うまでもない朝鮮民主主義人民共和国、これとこのカンボジア王国民族連合政府の加盟承認問題が一つの大きな課題になることを私たち承知をいたしておるわけですが、いまの日本政府はこのカンボジア王国民族連合政府の加盟についてはどうお考えになっておられるか。  この点は後ほどお尋ねをするとして、特に昨年、七三年の国連総会ではカンボジア王国民族連合政府は五十二対五十票で加盟問題が一年たな上げにされております。このたな上げにしたという、アメリカの手先になって工作をしたのがほかならぬ日本政府であるといわれております。当然、この加盟問題は今度の国連総会の大きな焦点になっていくでありましょう。現在すでにカンボジア王国民族連合政府を承認する国は六十二カ国に実はふえております。七三年九月アルジェで開かれました第四回非同盟諸国の首脳会議におきましては、八十数カ国の非同盟諸国が集まりましてカンボジア王国民族連合政府をカンボジアにおける唯一の合法政権として承認をする決議をいたしておるわけです。世界の大勢はカンボジア王国民族連合政府の承認を求める方向に大きく動いておるわけでありますが、政府は依然としてアメリカに追従をして非承認の態度をとっていくかどうか、この際、明確にお答えをいただきたいと思います。
  169. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) カンボジア両当事者の話し合いを通じまして今後国連の場においてどういうような措置をとりますか、まだ私どもといたしましては検討中でございますが、アメリカ政府とは当然緊密な話し合いをしなければなりませんが、当然これはわが国政府として自主的に決定すべき問題だと考えております。
  170. 須原昭二

    ○須原昭二君 昨年の国連総会で一年間たな上げにすると、この加盟問題については。これについて非常に積極的な働きをしたのが日本政府だといわれておりますが、その理由はどういうことなんですか。
  171. 野田英二郎

    説明員野田英二郎君) お答えいたします。  昨年の総会におきまして代表権の問題が出たわけでございますが、わがほうといたしましては、カンボジアにおきまして紛争が行なわれておる、この状況におきまして、国内におきます当事者同士の話し合いがつく前に、国連の場において決定を行なうということはむしろカンボジア問題の解決に資するものではないのではないか、むしろ当事者同士の話し合いということによりまして国内の問題が国内の問題として解決された後のほうがいいではないか、そういう考え方に基づきまして一年延期案に賛成いたした、こういう次第でございます。
  172. 須原昭二

    ○須原昭二君 今度の国連総会の大勢はカンボジア王国民族連合政府の国連加盟支持が多く、実は過半数をはるかに上回るという国際的な見方が強いわけです。最近、アメリカはこの情勢を見てとって、この際ロン・ノルをひとつ国連からはずしてしまおう、そのかわりカンボジア王国民族連合政府も加盟させないという、いわばカンボジア空席論といいますか、カンボジア空席論を指向しておるというふうに私たちは聞いております。  日本は、さきの国連における加盟一年たな上げの協力関係からいって、またアメリカに従って空席論をぶつのか、これを支持するのか、この点をひとつ明確にしていただきたいと思います。すでにアメリカ日本、イギリス、オランダ等々に実は折衝をしておるといわれておりますが、この点の話し合いがあったのかどうか、この点を明確にしておきたいと思います。
  173. 野田英二郎

    説明員野田英二郎君) ただいま先生がおっしゃいました両方とも空席にしていくというような考え方が、特に公式の場でそういう話が出たというようなことは聞いておりません。  現在、国連におきましては、先生御案内のとおりに、昨年に引き続きまして同じ議題でございますので二十五番目という番号がついておりますが、この代表権の問題が議題にのっておりまして、その問題が討議されるという状況でございますけれども、どういう状況になりますか、まだ実は私どもも的確な情勢判断をいたしかねておる状況でございますが、しかしながら私ども政府といたしましては、基本的にはやはりこの問題は当時者間の話し合いによりまして一刻も早く解決することが望まれる、当時者間の真剣な努力が望まれる、こういう基本的に昨年と同じ態度で処してまいりたいと考えております。
  174. 須原昭二

    ○須原昭二君 当時者間だけの話し合い、これを中心にしてやっていくんだ、こういうお話ですが、もしアメリカからカンボジア空席論が出て支持を要求された場合に、日本は自主的に判断をして、これに協力をするのか協力をしないのか、空席論に反対をするのか賛成するのか、この点を明確にしていただきたいと思うのですが、いかがですか。
  175. 野田英二郎

    説明員野田英二郎君) この問題は、いずれにいたしましてもカンボジア自身の問題でございますので、カンボジアの政権あるいはカンボジアのいわゆる当事者というものの意向を中心にいたしまして、情勢が動きましたときに、その場合にまた……。
  176. 須原昭二

    ○須原昭二君 双方の意見が違うんだよ。双方の意見が違うのに一致するかい。カンボジア同士の意見に従うといったって、意見が二つ違ったという場合にどっちをとるのですか。そういうことを言っているのだよ。
  177. 野田英二郎

    説明員野田英二郎君) 私どもといたしましては、両当事者の間の話し合いが望まれるという基本的立場に立って情勢を見てまいりたいと思っております。
  178. 前川旦

    委員長前川旦君) 須原君時間がありません。
  179. 須原昭二

    ○須原昭二君 答弁になっていないんだよ。カンボジアには二つの意見があるにきまっているじゃないか。どちらをとるんですかと言っている。一致すればそれにこしたことはない。一致するはずがないじゃないですか。それをどちらをとりますかというお尋ねをしているわけです。外務大臣……。
  180. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) これは、先ほどからお答えしておりますとおり、両当事者話し合いということが中心でなければなりません。しかしながら、国連の場はやはり国際的調整の場でございますから、そういう国際的調整の中における両当事者の意見というものを十分尊重して、ある場合にはわが国として自主的な決断をするということでございます。
  181. 前川旦

    委員長前川旦君) 須原君時間がきておりますので……。
  182. 須原昭二

    ○須原昭二君 はい、どうもすみません。  いつまでもやはり私はアメリカ外交に追従することはやめて……、アメリカと友好的だということと追従するということとは別なんです。やはり自主的に外交を展開をしなければならないと思います。だからカンボジアの両関係者が――当事者が話し合う――一致する要件はないわけです、ともに戦うと言っているのですから。一致することはないんですから自主的にやはり日本政府がきめなければならない要件が迫ってくると思うのです。その場合に、アメリカに追従するのではなくして、日本本来の自主的外交を敢然と展開をすべきである。さらにまた、カンボジア王国民族連合政府を認めていく、これが世界の大勢であるから、日本外交が孤立をしないようにひとつその点は留意をされたい。この点を要望して終わりたいと思います。
  183. 松岡克由

    ○松岡克由君 限られた時間なので簡単にひとつ質問をします。  日韓問題、特に外交の姿勢に対して――姿勢ということは抽象的なことであるのですけれども、この抽象的なことというのは具体的なことと同様に私は大事であると思いますので、また素朴な観点から質問をいたします。なぜならば、私はその答えをテレビ、ラジオでまた一般大衆に報告するという約束をしているし、またそれを私に期待して投票した方が大ぜいおりますので、ぜひ皆さんにはわかりやすくお願いいたします。  あの例の朴大統領狙撃事件というのは、非常に遺憾なできごとであったと私は思う。また皆さんもそう認識していらっしゃると思うのですが、事件発生の当初外務省は、日本政府には法的にも道義的にも責任がないと、こういう見解、立場をとっていました。ところが、韓国側がこうした日本政府見解というものがよくないと態度を硬化さしてくると、今度は、道義的に責任がないというのは不適当だと日本の道義的責任を認めるような発言を、たしか政務次官の山田さんですかがしておりました。その道義的責任というものは一体何なのか、具体的にひとつ大臣説明していただけませんでしょうか。
  184. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) もともと国際法上から申しますと国に道義的責任ということばはあまり当たらないと思います。したがいまして、正確に申し上げれば、国には法律的責任があるかないかという問題が主たる問題になります。そこで、この狙撃事件について、わがほうに法律的責任はないということを申しております。しかしながら、こういう一国の、しかも友好国の大統領に対して狙撃が行なわれまして大統領令夫人がなくなられるというようなきわめて不幸な事件が起きましたときに、その狙撃の準備行為がわが国内で行なわれたということは、これは私どもといたしましてはきわめて遺憾であるということを表明いたしました。この遺憾であるという表明が、もし道義的に責任を感じておるというふうに受け取られればまさにそういう意味に受け取れぬこともございませんが、もともと国に道義的責任というものがはたしてあるかないかというようなことにさかのぼりますと、必ずしも道義的責任があるかないかということばは適当ではない。ただ、この問題、狙撃事件について、わがほうとしてもそれだけ私どもも確かに精神的苦痛を感じております。またたいへんそれについて遺憾であるという意見も表明しておりますから、そういう意味でお受け取りを願いたいと思います。
  185. 松岡克由

    ○松岡克由君 そうだと思います。気を使っているんだと思います。ただその気を使っているということが、私はこれは事国際的な問題になるとはたしてそれで通るのか。私はフィーリングで通らないで、やはりロジックで判断されてしまう、その辺に非常に誤解を招いている部分があるのではないかということを懸念するわけなんです。で、そのときに東郷事務次官は、金駐日大使に、この事件日本国内で準備されたことは事実であり、遺憾である、こう言っています。またきょうの新聞でも、田中親書でも、そのようなことをたしか申し述べるというようなことも出ておりました。で、私はどうも釈然としないということは、これは当然政府は関与していないわけですからね。もっとざっくばらんにわかりやすく言うと、電車の中で犯罪を計画した、その犯罪が成立した、したからといって国鉄の総裁がはたしてあやまるか、私はこういう素朴なたとえ話が通用するのではないかと思うということが一つです。  それからもう一つ、遺憾の意を表するということは、残念であるということですね。残念であるということにも何にも私は事前に防ぐ手だてというものはないなかったのだと私は思います。ですから日本においても韓国においてもこれは突発事件でありますから、ですから何か東郷事務次官の発言によると、日本が注意をすると何かそこに防止できたとか、または未然に防げたというような印象をわれわれは与えられている。そうすると何か日本に責任があるようになってくる。私は責任がないのだと、それは精神的な苦痛を伴うと大臣はいまおっしゃいましたけれども、そのぐらいのある程度の強い法的な態度というものをもっと押し出していいんじゃないでしょうか、どうでしょう。これは二点どうですか。
  186. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) 法律的な問題としてお答え申し上げたいと思いますが、法律的に責任があったかということは、この事件につきましては国際法上の問題としてこれを考えますと、日本政府が相当な注意を払っていたにもかかわらず事件を引き起こしたということでございますれば、日本国際的な責任の問題というものは発生すると思います。しかしながら具体的にそれがどういう場合かと申しますならば、今回の事件について言いますならば、これは仮定の問題でございますが、かりに日本政府がそういう事件、テロ行為の準備が行なわれているということを知っていてこれを放任していたというような事実がもしあったならば、それは日本政府が相当の注意を怠ったということになり、国際的な責任が発生するということになるだろうと思います。しかしこの事件につきまして、事件の発生に至るまでの過程の問題として見ますならば、日本政府が事前にこれを知っていて、そしてそれを防止しなかったというようなことは全くないわけでございます。したがってそういう意味におきまして法律的な責任は発生はしないというふうに考えておるわけでございます。
  187. 松岡克由

    ○松岡克由君 そういうことです。ですからその言い方があまりはっきり一般に伝わっていないのではないかということですね。一般大衆、皆さんに。そんな気が私はするのです。またそれを疑問に思ったらちょっとセンスが上過ぎるのではないか。もっと下々に至る感覚を理解せにゃいかぬと、私は思うのです。遺憾であると認めているんですからね。ある意味で認めるようにもとれる。現に外務大臣はそういった苦痛があるからこそこういうことばもしかたがないから使っているというような感じにとれますんでね。それをはっきり言い切るなら言い切るのはいいけれど、最後まで言い切ってくれと。言い切っていない。やっぱりこういう中間をとる。非常にフィーリング的にものを言う、日本人というのは。それがどれだけ誤解を招いているかということをやっぱり私は頭のどっかに入れておくべきではないかと、この質問の趣旨はいまのところそうなんでございますけどね。だけど道義的責任というのは、たとえばわれわれ自身が言われてもわからない。あなたわかりますか。道義的責任が君にはあると言われた場合、わかりますか。私はないんじゃないかと思うんですがね。
  188. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) 道義的責任ということばになりますと、先ほど大臣が言われましたように、まず道義的責任とは何かという定義の問題が問題になってくるんではないかと私は思います。そのことによって道義的責任を感ずるとか感じないとかいう問題になるんではないかと思います。道義的責任というのは、これはまあ実は先ほど大臣が言われましたように、法律上の問題ではないわけでございますね。まあ、ごく常識的に社会通念的に考えますならば、省みて恥ずるところがあるかどうかというようなことではないかとは思いますけれども、しかし、今回のこういう事件につきまして、道義的責任があるとかないとかいうことを議論するのは私ははなはだ適当でないという感じを持っております。
  189. 松岡克由

    ○松岡克由君 一口に言えば、道義もモラルもないですよ。責任があるならあるですよ。ないならない。これが人と人、まして国と国との外交ですよ。それを、道義的なあれがあるから遺憾だなんだって――日本では通用するかもしらぬ。日常会話でやってますよ。どうもどうも、いやどうも、きのうはどうも、いやどうもどうも、どうもどうも、全くわからないけれど、われわれはわかる。こんなもの、国と国とでもってそんな――あなたそっぽ向いてますけどね、そんなもん通用しやしませんですよ。それはやっぱりはっきりしてくれなきゃ困る。問題にしたいのは、外務省見解が事実の進展でなく、向こうの態度によって変わっているということですね。つまり、最初は責任がないと言ったけど、向こうがおこったから旬日ならずして責任を感じると言っているんですね。非常にこういうことはやっぱり相手の不信を招くことになる。向こうの言うとおりになったとして、向こうは喜びませんからね。何だ、こんな程度かと、非常に不信を抱くもとになる。これがたいへんにわれわれ理解できない、この変わっていくというのがね。変わり身の早さが外交の身上じゃないでしょう。やっぱりはっきりとしたこっちの一本線というのがないような気がする。向こうの状態によって左右される。こんなばかなことはないと思うんですがね。あってはいかぬと思います。事実あるわけですね。この辺を簡単明瞭にひとつ。
  190. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) 私からお答えいたしますのがはたして適当であるかどうか、私自身はっきりいたしませんが……。
  191. 松岡克由

    ○松岡克由君 それがいけないんだ。適当であるかないか、はっきり言わなくちゃ。
  192. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) しかしながら、それならば、このようなテロ行為が日本において準備されていいのかという反問がございますれば、そんなことはあってはならないと思います、私は。
  193. 松岡克由

    ○松岡克由君 それはそうですよ。
  194. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) したがいまして、こういうことが起こったということはきわめて遺憾だと考えるのは、これは当然のことではございませんでしょうか。
  195. 松岡克由

    ○松岡克由君 かみ合わないんだよ。はっきり言えないところにその答弁の、あなたの頭のよさがあるのかもしれませんが、やはりよろしくないですよ。向こうの態度によって変わっているんですから。それはそうでしょう。だって最初日本は責任ないといっているんですから、これ。そしたら向こうがそんな言い方があるかといったら、いや責任を感じるといってきたんですよ。こんな外交て、責任がないなら、――だったらかりに、向こうによって変わるべきだという意見もあるかもしれませんですよね、状態によって。だったら、あまりにも見通しが甘いんじゃないですか。何だかわけのわからないうちにものをあやまったり、または居直ったりしている。これが不信を招く状態になるから私は注意せいと、こうあってはいかぬと言っている。私の意見は間違っていますか。
  196. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) 私が了解しておりますところでは、韓国政府におかれても、この事件が発生に至ったということについて、日本政府の法律的な責任があるという立場はとっておられないというふうに私は了解いたしております。
  197. 松岡克由

    ○松岡克由君 伝えられるところによりますと、韓国側が反朴運動とかまたは朝鮮総連ですか、あの取り締まりを要求しているということを聞いているんですが、事実ですか、日本においての取り締まり。
  198. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 今回の事件に関連いたしまして朴大統領、金外務部長官等からいろいろ後宮大使を通じまして日本政府に対して申し入れがございました。その中の一環といたしまして、日本におけるいわゆる犯罪分子の破壊的活動、そういうものについての厳重な取り締まりを要請するというようなことでございまして、あからさまに朝鮮総連そのものを解体するとかなんとかいうような正式な申し入れというものはございません。
  199. 松岡克由

    ○松岡克由君 そうでしょう。だからわが国としては法律として国内法に違反しない限り取り締まるわけにいかないわけですからね。それは要するに自由体制のたてまえとしてそういうことを言われても無理だと一かりに言われてもそういうことは無理なんだということを相手に知らせていますか、どうですか。
  200. 高島益郎

    説明員高島益郎君) それはもう明瞭に知らしてございます。
  201. 松岡克由

    ○松岡克由君 なぜこういうことを聞くかといいますと、つまり事件認識が向こうとこっちが全く違う。韓国側にとっては当然ながらこれはもう高度の政治事件です。そうですね。政治犯罪ですね。これがつまり彼らの前提認識となるわけです。ところが、日本においてはこれは一般犯罪で関係ないわけですね。文世光がピストルを盗んで、人妻をだましたかどうしたか、旅券を手に入れて、要するに窃盗事件旅券法違反ですね。私はこの差というものをはっきり知らせてないのではないかという気がするんですね、向こうに。だからこそこんな大きな誤解を生じてくる。御承知のとおり、向こうでは、北側の人間と話をするだけでも政治的な犯罪になる。日本はこうやって共産党の方と仲よくやっているんですから、完全に根本的に違う。その辺を私は――この辺がとうなのかな。たいへんに私はこの食い違いというものがあるんではないかと、なければこんな大きな誤差が出てくるわけはないんですから。大臣、いかがでございましょう、事件の差というもの。
  202. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 確かに私は、御指摘のとおり、日韓両国間には政治的体制、また社会的な仕組み、また、特に大きいのは、韓国は朝鮮半島においてああいう陸に接して北鮮がおります。そういうようなたいへん韓国にとりましてはいろいろ脅威を感じておるような状態でおる国でもございますし、また、従来わが国の朝鮮半島との歴史的ないろんなからみ合いもございまして、わが国の中にはいまだに六十万をこす朝鮮の民族の方がおられます。そういうことからして、どうも普通の外交関係でない、いろんな面がこの日韓関係にはあることは、これはもう事実のとおりでございますんで、そういうような背景におきまして、なかなか日韓両方のそういう制度的な仕組みの違いと、あるいは両方、日韓関係の感情的な屈折というものがすべて日韓関係のこういう事件の際にきわめて明確な解決を困難にしておるということは、御指摘のとおりであると思います。
  203. 松岡克由

    ○松岡克由君 私は、それを調整するのが外交であって、それがなければ、外交なんぞはなくたっていいとは言わぬが、無用の長物になってしまう。ぜひその辺をひとつ――差があることは事実ですから、ひとつその差をなるたけなくするように、理解をさせるように、一番隣国で大事な国の一つでございますから、お願いをします。  過日、外務大臣、北の脅威はないと発言をしておりましたですね。私は、それは南北の軍事的なバランスから見て、北の軍隊は攻めて来ようにも南の力がそれを許さないと、私はこう解釈しているんですけれども大臣の発言を。事実確認として、ちょっと関係ないですけれども、そう解釈しておいてよろしゅうございますか、北の脅威がないと言ったことは。
  204. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 先般この同じ委員会で、これは小谷議員からの御質問だと思いますが、北からの脅威はあるかという御質問に対して、私は、それは第一義的に韓国自身が判断すべき問題であるというお答えをしておきました。次に、参議院の外務委員会における田議員の御質問に対して、また私は、第一義的には韓国自体が判断すべき問題である。しかしながら、国際認識といいますか、一般的に国連を含むそういう国際的認識を客観的に申せば、いま御指摘のように、韓国におきます国連軍の存在、また米韓防衛条約、また韓国軍の強化、あるいは国連その他国際情勢を取り巻く情勢の変化、特に南北における一昨年の一種の対話の開始等、これを動的にとらえますと、客観的に見て、北からのそういう朝鮮動乱が考えられるような大きな軍事的脅威はない、こういうような意味で実は申し上げたんですが、ことばが、説明が不足のためにいろいろ誤解が生じたわけでございます。
  205. 松岡克由

    ○松岡克由君 話は変わります。  田中総理が朴大統領夫人葬儀に出席しましたが、これは韓国民にとっては、責任を感じての謝罪訪問であると、こう受け取られていますね。この点、どうでしょう。どなたでも……。
  206. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 確かに友好国の大統領夫人がなくなられたことに対して、国際慣例から、形から申しますと、一国の総理がその葬儀に参列するということはやや重きに過ぎるという批判はあると思います。しかしながら、当時のいろんな日韓関係の特別な立場、またこの狙撃事件のよって来たる由来等を考えまして、特にこれは田中総理大臣の決断によりまして直接みずからその葬儀に参列したわけでございます。そういう意味におきまして、私は謝罪のための葬儀参列ではないということは申し上げなければなりませんが、事この特別な関係におけるきわめて丁重な弔問であったと、こういうふうに感じております。
  207. 松岡克由

    ○松岡克由君 理屈を言うと始まりませんが、そうすると、こういう友好を結んでいる国の元首の、またはその大統領の、首相の夫人がああいったことになると常に行くのかと、こういう井戸端会議に進展してしまうんですね。ニュージーランドの首相が死んだときにはたしか伺わなかったはずですね。だからこういうことが重きをなしたと言うが、逆に言えば非常に軽々しい行為であるということが言えるので――私は何もあやまっていけないとは言っておらぬ。あやまるべきところはあやまるべきだと、私はすなおにわびたらいいと思います。それがそうでなくて、こっちはそのつもりで行ったのに、向こうはそうじゃないと、この食い違いですよね、このあいまいな態度が非常に私は無用な誤解を生じ、またはこういった大使館どうのこうの――焼き打ちまていってませんか、ああいったものに私は進展してくるような感じがするんです。  それから一般感情ですね、われわれの感情を言いますと、もしあの犯人がアメリカに住んでいる韓国人だとしてあれをやったとしたら、私はアメリカの大統領は謝罪するかということですね。それは遠いと言えばそれっきりかもしれませんですがね、遠いからといって別に何も飛行賃がないというわけじゃないでしょうしね、私はだからといってアメリカ政府がピストルというのを自由にいま売買できるという状態になっているこのアメリカの制度というのを非常に遺憾だと思うと私はあやまらぬと思うんですがね。この辺の食い違い――私はあやまらぬと思いますよ。それともあやまると思いますか。それともあやまらなかったら、その差というものはどういうところにあるんですか。ただ近いからだけですか。そんなものですか。どうですか、大臣
  208. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) これは地理的遠近というものではなくて、日韓関係と米韓関係のきわめて歴史的また現事態における政治的、経済的関係、もろもろの関係考えた上での差異だろうと思います。
  209. 松岡克由

    ○松岡克由君 そうとしか言いわけがつかないだろうと思うんです。そうでも言わなきゃしようがないもの、行っちまったことは。でも私はちょっぴり軽率というんですか、そのためにどれだけ誤解を生じ、どうもわからない部分が出てくると、この意見があったということを田中の先生にひとつよろしくお伝えくださいまし。  さて、先月の二十八日の韓国の外務委員会で対日五項目の決議を――御承知だと思います、その中で日本の言論機関が非常に偏向報道だと、これは日韓のつまり国民感情を悪化させているから日本政府に適切な処置をとるように要求しろと韓国政府に決議案として言っているわけですね。これね、たしか現在日本新聞には、私はたいへんマスコミを含めて疑問もあるし、はたしてこんなんでいいかなと、ずいぶん不満もあります。たいへんに不満を持っておる。大不満を持っておる一人なんですけどね。だからといって、これを私は取り締まれなんということは自由体制の自殺行為であると、そんなことは私的な会話で言ってもいいけど、言うけども、公的なところでは発言しやしない。たとえばアメリカのニューヨークタイムズでも、あるいはワシントンポストでも、日本の書き方が非常に悪いと、この委員会で決議して、政府でもってアメリカに抗議しろと、こんなことがきまったら、私はアメリカの世論は沸騰すると思いますね。これ非常に内政干渉だと思いますがね、どう受けとめていますか、この事実を、この事件と言ってもいいでしょう。
  210. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 先ほど御指摘の外務委員会は、これはどうも調べてみますと、決議として採択されたものでないと、ただ、外務委員長がいろんな議論を要約して五点にまとめ上げたということを聞いております。いずれにいたしましても、松岡さんがいろいろこの国会で議論されること、これはもちろん自由でございますけれども政府といたしましては外国の国会における審議に対して論評をすることは差し控えたいと、こう考えております。
  211. 松岡克由

    ○松岡克由君 それ、まあ来ないだろう。来ないからいいでしょうけどね、たいへんなやっぱり私どもは内政干渉のような気がする。正式にきまってないといういま意見なので、それは私はわが先輩として信じることにして、これはとにかくこの際どういうふうに進展するかたな上げしておきましょう。  まあ決議で非常に日本やり方が、捜査が非協力だと言っていますけれども、非協力ですか。どうですか、一言でいいです。協力していますですよね。
  212. 高島益郎

    説明員高島益郎君) わが捜査当局は、本件につきまして最大限と申しますか、十分に協力しております。
  213. 松岡克由

    ○松岡克由君 それを非協力であるなんという意見が、かりに決議が決定するかしないかともかく、出てくるということに対して、やっぱり外交を通じて知らせる私は義務、責任があると思います。  私、外交というのは、最後に注文することは、相手のあることですからなかなか苦労がある。しかし、やっぱり誠意を持ってやるということが大事で、誠意ということは原則を持てということです。その一点に私は返ってくると思う。責任を感じてあやまるところはあやまる。ただ、日本人が言っているとおり、行けば済むだろう、すみません――さっき言うフィーリングたけては処理してもらいたくない。それが証拠に、二、三年前のテルアビブの岡本公三の事件もそうで、あれ、早い話が日本政府にとっては敵ですよ。日本政府がやれと言ったわけでも何でもない。やるなと言っているのをやったんだ。それをああやって、どういうつもりだか知らないけど、謝罪特使を派遣して、見舞い金を出した。あれは、アラブはおこりますわ。わあわあおこる。そうして日本は親イスラエルになってしまった。それはそれでいいでしょう、筋を通すんならそれでいい。ところが、今度石油で締め上げられると、今度はがらっと変わって、向こうのほうへもみ手をしていくと。それも一つのあきんど的な発想からとしてはいいかもしれないが、やっぱり日本の政治、外交のするべき道ではないと私は思いますんで、こういうことを含めてひとつ、日本がやはり世界的な信用も得られなくなって、国際的な孤児に――さっきも須原先生おっしゃいましたけど、孤児になる可能性を私どもも感じる。どうぞひとつわが大臣はそういったことがないように、くれぐれもよろしくお願いをしますが、一言でけっこうでございます。
  214. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) その考えで進みたいと思います。
  215. 松岡克由

    ○松岡克由君 北方領土の問題について触れます。  私、韓国の問題もさることながら、日本人としてやっぱり一番大事なのが、いま最もみんなが考えなくてはならないことが、私は北方領土だと、こう思っております。過去幾らも取り上げてきました。数度、再度、再三当たってやってきた。しかし、実際には返ってきてないんですから、何度も私は、重複するようですけれども質問をしたいと思うんです。  昨年の、総理がソビエトを訪問した際、共同声明で、第二次大戦のときからの未解決の諸問題を解決して平和条約を締結すると、これが合意されたと。また一九七四年、ことしですね、適当な時期に両国間で平和条約の締結交渉を、つまり継続することとなったと。で、政府国会で、未解決の諸問題というのは領土問題も含まれていると答弁してきましたですね、未解決の諸問題の中には、これは問題確認のためですが、間違いありませんですね。
  216. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 間違いございません。
  217. 松岡克由

    ○松岡克由君 たしかことしの五月、田中総理のコスイギン首相あてに出した親書では、平和条約とシベリア開発と両方に触れていました。そうすると、肝心の向こうからの返書です、七月にたしか田中総理のところに手渡されたはずでございますね。シベリア開発には触れているけれども、平和条約のほうはあまり言っとらぬですね。全く触れとらぬ。つまり日ソ共同声明では、ことしじゅう、七四年じゅうに平和条約締結の交渉をするということがうたわれているにもかかわらず、具体的には何にも進展してこないということです。これはどういうことなのかと、たとえば田中総理がひとり合点だったのか、つまり諸問題、残った未解決の諸問題、つまり領土問題というのをもう全部解決した上で平和条約を締結する約束をしてきたのが自分のひとり合点で、向こうが違ったことを言っていたのか。それとも国民をだますと言うと悪いですけども、おいしいことを言うつもりで自分の創作なのか、それとも向こうがうそをついて田中さんをだましたのか、または向こうが途中で変わってきてしまったのか、この四点以外に考えられないんです。この四点のうちどれをとりますか。
  218. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) そのいずれでもございません。
  219. 松岡克由

    ○松岡克由君 いずれでもない。じゃあどういうことですか。
  220. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) したがいまして、平和条約の交渉はこの年内に継続して行なうということは依然として続いておりまして、今後どういう……
  221. 松岡克由

    ○松岡克由君 返事がないですね。
  222. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 具体的な日程その他はまだきまっておりませんが、今後継続するということで両方の意思が合致しております。
  223. 松岡克由

    ○松岡克由君 それは確かでございますね。
  224. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 確かでございます。
  225. 松岡克由

    ○松岡克由君 ところが、私何か共同声明ではソ連の首脳の訪日を向こうがたしか受けてはいるけども、何か北方領土を出されると、私は何かそれが困るとかおそれるとかというところで何か決定していない、ところが過日訪問するというのを参議院の委員会でたしか田渕先生でしたな、質問に対して外務大臣が行くというようなことを言っていました。これ具体的な見通しというものをもう明らかにしていい時期ですね。
  226. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) まだ具体的な見通しを立てる時期ではございませんが、まあいずれにいたしましても、ソ連の三政府首脳の中のいずれか一人の方ができるだけ早く日本を訪問するということはわれわれから強く向こうに対して、先方に対して申し入れをしております。したがいまして、その三首脳のうちのいずれかの訪日以外に日ソ間の定期外務大臣協議もございますし、そういう機会をとらえてこの日ソ平和条約の交渉も展開できるような段階になろうと思います。
  227. 松岡克由

    ○松岡克由君 そうすると、われわれ国民は北方領土問題を含めた残された未解決の諸問題について進展する会話があると期待して胸をふくらましていてよろしゅうございますね。――いや、うんと言ってくれればいいですよ、こうやって。――ええ、それでけっこうです。  私はこれ懸念するのは、八月十八日のプラウダなんです。これはまあ私のブレーンに読んでもらったんですが、こう言っているんです。日本の反動勢力はいわゆる北方領土問題をめぐり依然として排他的愛国主義を鼓舞している。日本が古い立場にこだわる限り、日ソ平和条約の締結は不可能と述べているんですね。と、古い立場、これはスポーツ紙じゃありませんからね、プラウダというのは、御承知のとおり日本新聞よりもっと公的な面を持っている新聞ですからね。と、この古い立場ということは何かというと、日本が北方領土問題を問題にするということを言っているんですね。これを非常に反動的だと言っているんですね。だからざっくばらんに言えば、日本が北方領土を返せと言っている限り平和条約の締結はないという論調なんですね。そうするとね、いま大臣のおっしゃったことも、田中さんの言ってきたこともほご同様になってしまうみたいな、これは八月十八日付ですけどね、どうなんでしょう、この後進展しているんですか、どうなんですかね。
  228. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 確かに北方領土問題についてのソ連の態度は非常にきびしいものがあるということはよく存じておりますが、いま御指摘のプラウダ紙のその記事、まず間違っておるのは、その問題が日本国民の一部の反動分子によるものであると、もう全然われわれと考えが違っておりますし、またプラウダ紙は確かにソ連の有力紙ではありますが、ソ連政府自体ではございませんので、われわれはそれを信じておりません。
  229. 松岡克由

    ○松岡克由君 信じていないと言ってくれないと困る。また信じていないのはけっこうですが、それがやっぱり政府ではないけども政府の機関紙であるところで言っていることに私は問題があるので、言い切ってしまうのはけっこうですが、それが少なくも妨げになったり汚点になる一部になるという可能性も当然外交だから考えなくちゃいけない。そのために私は、向こうが間違っているとここで言い切るのと同様に、事あるごとに向こうにも、あなた方違いますよと、それはおかしいじゃないですかという姿勢は当然あると解釈してよろしゅうございますね。
  230. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) プラウダ紙のそういう見解に一々われわれはコメントはいたしませんけれども、われわれの相手はソ連の政府でございますから、ソ連の政府はそういう誤った見解はいまだ持っておらないということでございます。   〔委員長退席、理事橋本繁蔵君着席〕
  231. 松岡克由

    ○松岡克由君 プラウダは間違っているということですね。
  232. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 少なくともプラウダのいまの見解の中に誤った部分があるということは、先ほども申し上げましたとおりでございます。
  233. 松岡克由

    ○松岡克由君 そうすると私たち、まあ同じことを繰り返しているようで申しわけないんですけれども、北方諸問題、北方領土を含めた未解決の諸問題とシベリア開発問題と別に分けた。分けたけれども、その分けたこの一方の諸問題、要するに平和条約の締結のための問題というのを一切話をしないで、このシベリア開発のみ向こうからくるということになると、全く向こうは虫がいい。ただ、もちろんシベリア開発、向こうはのどから手が出るほどほしいんですからね、そういうような態度をとってくるような私は感じがしているし、それは否定していらっしゃるけれども、ぼくの感じのほうが合っているんじゃないかと思うことすらありますので、どうぞひとつその辺は――きっかりといまそう言ってらっしゃいましたので私は安心しておりますので、平和条約締結、北方領土が返ってくるような努力――こんなことはもういまさら繰り返すまでもなく、サンフランシスコ平和条約で千島と南樺太を放棄したけれども、どこがどこに帰属するということはさまってないし、それからこの千島列島でなくてですね、歯舞、択捉、色丹、国後ですか、これはもう北海道の属島であるということは、歴史を見たって確かなんで、これはもう当然要求してもいい。できれば千島の全部を返還する権利が私たちは当然あると思うんです。  私は、何もこの質問は北方領土が返ってくればいいという、そういうだけでなくですね、たとえば少なくも第二次世界大戦のときの連合軍の戦争目的は、ファシズムに対するやっぱり民主主義を守るということですわね。そうですね。結局、カイロ宣言を私なりに解釈しても、連合国は領土拡張の意思はないとはっきり言ってますし、戦後の日本というのは、ポツダム宣言とかカイロ宣言、これによって出発したわけで、ところが連合軍が、つまり平和的に話し合いをした、机の上で平和的にソビエトの千島、樺太の交換をやった、これまで取ってしまうというと、彼らの理念が全然違ってくるんではないかと、何がファシズムに対する平和を守る戦争なんだと、強いやつが勝ちゃあいいんじゃないかと、持ってっちゃったらそれっ切りじゃないかと。そうなってくるとね、私はね、弱みにつけ込んでやるなら、こっちもそれをやらざるを得ないじゃないかと。ただ泣き寝入りをするか、取るか取られるかと、これしかないじゃないかと。だから私はね、島が返ってくればいいという問題でなくて、やっぱり国際平和追求の一環だと、私はたいへん高いところからものを判断するんですけれどもね。それに対して、私はね、そういうものを含めて断固としてこれは返してもらわにゃいかぬと、机の上の論議でむずかしいでしょうけれども、外務当局は腹のすわったそういった上の広い意味での覚悟がありますか。あるでしょうけどね。
  234. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) いま先生のおっしゃいましたことばの中に、南樺太及び千島という問題がございましたが、われわれの考え方といたしましては、これらの島はサンフランシスコ条約によって日本が権利、権原を放棄しているという前提に立ちまして、いわゆる北方領土問題というものは国後、択捉、歯舞、色丹、この四つである、この四つに関してはいかなる意味からも、歴史的にもまた法律的に見ても日本の固有の領土である、したがってこれは当然無条件に日本に返ってくるのは当然である、こういう考え方でおります。
  235. 松岡克由

    ○松岡克由君 ええ、だから百歩譲ってその四島にしぼっても私はいいです。しかも、譲らない場合は全部を含めてもいいんだという考えも当然成り立つわけです。国民感情として、また歴史的な事実を見ても。私はね、その決意と言うんですけどね、では具体的にソビエトのことはいざ知らず、日本人として、日本政府として、北方領土返還のためにどういう行為が必要か、どういうことが必要なのか、こっちだけの問題でもけっこうです、聞かせてくれませんか、大臣
  236. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) これはやはり国民的背景において政府がねばり強く努力することだと思います。
  237. 松岡克由

    ○松岡克由君 そのとおりです。これはやっぱり世論の喚起、統一、運動の盛り上がり、それをバックにしたねばり強い、非常に抽象的な言い方かもしれませんが、私は交渉だと思います。たとえば昭和四十年の八月、当時の佐藤総理が占領下の沖繩に行きまして、沖繩の返ってこないうちは戦後は終わってないんだという、あれ歴史的な演説でございますね。なぜ歴史的かというと、占領下に行ってあれだけのことを言ってきたという、ぼくはそれはたいへんにすばらしい歴史的な行為だと思っております。これがあったからこそ、当時沖繩はわき上がり、そして日本人もそうみな決意をし、ぐんぐん盛り上がったものをアメリカ側が見て、私はある程度そういった運動を認めたということを、政治的なばかりでなく、沖繩はもはや基地として必要ないから返したという、ごく単純なことばかりではないと思うし、また、かりにそうであっても、その人間の盛り上がってくる気持ち、北方領土になるとそれがないような気がするんです。歴代の大臣が納沙布岬に一人でも行きましたか。行かなくてもここでやりゃあ済むと、机の上でも十分だ、だいじょうぶだという意見があるかもしれない。私は行くべきではないかと思う。そういう行為が私は非常に大事だと、これからどっかの大使と会うのも大事だろうけども、私はやっぱり向こうへ行くというのはね、来てくれちゃ困ると言ってないです、来てくれ来てくれと言ってるんです。私はあの岬へ立って向こうを見ると、これは談志――談志じゃない、松岡の顔を見ているよりも、先生やっぱり様子が違ってくると思いますよ。そういう皮膚から感じるもの、これを軽べつしちゃいかぬです。皮膚から感じるものが庶民が最も大事にしているもんなんです。それを私、頭に入れて、机の上の論議、これはたいへん大事なことです。日本の私は役人の皆さんというのは優秀だと信じております。また思っております。どうぞひとつ、私は、それをやると、やっぱり内外から盛り上がってくるのではないかと、こういう非常に感情的かもしれませんが、最も日本人が感情として持っているこの気持ちを無視しては困ると思います。どうですか、納得したらやるというくらいの勇気があったら発言してくれませんか。
  238. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 私は外務大臣になる前に行ってまいりました。
  239. 松岡克由

    ○松岡克由君 なってから行ってください。
  240. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) これから、まだ、なってから間もないことですから、そのように心がけたいと思います。
  241. 松岡克由

    ○松岡克由君 心がけるだけだからな――。大体時間もあれですので、皆さんが削っているので、私も非常に時間的に譲歩しているというこの心情を……。  最後にちょっと伺いたいですが、ソ連の漁船の拿捕、答えを聞いてもいいんですが、いま七十九名抑留中、こんな資料が来ていますが、これよろしゅうございますか。
  242. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) ただいま実は手元にその資料持っておりませんのでございますが、抑留漁船の問題につきましては、抑留され、また釈放されるということでかなり時点によって数字の差があると思います。約六十名見当現在抑留中だと了解します。
  243. 松岡克由

    ○松岡克由君 その釈放の見通し交渉というのはどうなっておりますか。これはもう短く、あと私、持ち時間二、三分ですので。
  244. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) これは先方の言い分を申しますと領海侵犯、あるいは不法漁労というようなことでございますが、わが方としましては、もともと北方領土は日本の領土なので、その周辺においては決して不法漁労ではない、あるいは領海侵犯をやってないという主張を繰り返して申しております。最近の実例では大体返してよこすというのが例でございます、一応先方は取り調べはいたしますけれども
  245. 松岡克由

    ○松岡克由君 その問題について、また機会があったらゆっくりこまかいこと言います。  それから墓参りなんですけどね、北方領土に対する。これは申し込みが多いんですか、これが一点。満員なんですか、さばき切れていますか、一言答えてください。
  246. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) 実はさばき切れないくらいに希望は多うございます。ただ、それを厚生省及び現地、つまり北海道庁当局と相談いたしまして、ある程度にしぼらざるを得ないということでやっております。
  247. 松岡克由

    ○松岡克由君 向こう許可次第ということもあるんでしょうね。ですから、これはなるたけ希望をかなえてほしいということです。  それから、なぜこんな問題を持ち出したかというと、問題もさることながら、何でこの抑留といいますか、された人たちが、この間も、ことしの四月ですか石田博英代議士が訪ソしまして、ブレジネフ書記長と会ったときに十一名の釈放がきまったんですね。何か代議士が出かけて行っちゃ、北方領土を返さんから、そのついでにこれでも持って帰れと、抑留した人間でも。それをおみやげに意気揚々と帰ってきているようなきらいがあるんです。これはまあ返ってこないより返ってきたほうがいいだろうけどね。逆に言えば、そのために幾らかでもつかまえておこうじゃないかと、北方領土のかわりの人質にと、そんな漫談が成り立つんではないかと思うくらいの私は懸念をしているんです。これはいいことですよ、返ってこないより返ってきたほうが。しかし返ってくりやいいというもんじゃない。これはやっぱり外交ベースでぴしっとしてくれないと困ります。また、代議士が行って口きいたから返してよこすというのも何だか変な話でね、おみやげつき何かみたいな感じがしますがね。私はちょっと疑問ですが、こういう事実、代議士が釈放を頼んでくるという事実、悪くはないでしょうけれど、あまりよくもないですがね。外務大臣サイドとしてはどうですか。
  248. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) その各代議士の努力によって帰ってきたことは、これはもう大いに評価しなきゃいかぬと思います。ただ、すべてそういうことをひとつ外交ルートでぱきっとやることも、当然日ソ間のこれからの外交正常化と――もう正常ではありますが、今後ともそういう正常化をはかっていきたいという考えです。
  249. 松岡克由

    ○松岡克由君 大体わかりました。どうぞひとつ日本と、これは韓国の問題も、その差というものを、非常に大きな問題になって、新聞マスコミに書き立てられているこの事実を直していく役目、それがまだまだ努力が足らぬではないか。それともう一つは、こっちの態度というものを、あるいは場合によっては悪人にされてもかまわない、一つのやっぱりぴちっとした、フィーリングでなくて敢然とした一つの態度がないような気がするので、それを私は質問をしたわけでございます。あと北方領土に対する、ひとつ、なろうことならば、木村先生御大みずから出かけていってやってください、私もお供しますから、そのときはひとつ。それをお願いして、質問を終わります。
  250. 玉置和郎

    玉置和郎君 大使館に掲げられておりました国旗が、デモ隊の一人によって引きおろされました。そして、写真で見る限りにおきましては四つに引き裂かれてありました。私は、前にインドネシアで国旗が引きおろされたときに、政府がインドネシア政府に対して厳重な抗議に欠くる点があると思いましたので、私が発起人になりまして、六人の同志とともに、スハルト大統領に対して陳謝の要求をいたしました。それは外務省のほうからインドネシア大使館を通じてやっていただきました。そうしたら、インドネシアの私の友人――たいへんな高官でありますが、彼は、こう言ってきました。自国の国旗の尊厳性というものを強く主張しない国家というものは私たちは尊敬しないのであるということを言ってきました。その意味において、私たち国民の一人がとったあの暴行というか、非行というか、まことに残念なことであり、申しわけないことでありますと、こう言ってまいりました。そうして、数日を出ずして大統領の特別の使いが、ベンチェさんという方が私の部屋に大使を伴ってやってまいりました。そうして陳謝の意を表しました。その陳謝の方法もいろいろありました。一つは、儀仗隊を並べて、そうして儀仗兵の吹奏する君が代の中で国旗日の丸を掲揚して、そうして世界に向かってインドネシア政府の態度をはっきりさせたい、どうか了解してほしいという誠意のこもった回答でありました。私はそのことだけでけっこうでございますと、もうそれだけやってもらえばけっこうだと、インドネシア政府の国旗に対する心がまえというのをよくわかりましたといって、これは高島君がたしか知っておりますが、当時の担当課長を通じまして、私たちの抗議文を取り下げたのであります。今日、韓国におきまして、その背景はいかにともあれ、ああいう事態が引き起こされたということは残念しごくであります。それに対して外務省としていまのような態度でいいのかどうか、これが一点、もう一つはその引き裂かれた国旗のあとにどういう措置をされて再び国旗、日の丸が掲揚されたのか、その二点についてまずお伺いします。
  251. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) ソウルのわが大使館に暴徒が乱入いたしまして国旗の尊厳を侵したということはきわめて遺憾なことでございます。さっそく在韓後宮大使を通じまして厳重に韓国政府に対して抗議を申し入れました。それに対しまして韓国政府は金東柞外務部長官より陳謝の意を表明いたしました。同時にこれに伴う国際慣例上の糾罪措置等をとりました。また別途金永善在京大使が私のところへ参りまして、本国政府の訓令により心から陳謝の意を表明したわけでございます。
  252. 玉置和郎

    玉置和郎君 ぼくらはぼくらなりに韓国に政治家の友人を持っておりますので、強く抗議をいたしました。責任ある政府の方が私たちにこう答弁しました。引き裂かれた国旗、あれを見ましたので、いま大臣が言われたようなこういう措置をとったと同時に、韓国政府が持っておりますいわゆる日韓閣僚会議等で使う国旗、日の丸というものを、日本の国旗というものを直ちに大使館に持っていきまして、そうして引き裂かれた国旗のかわりにいま韓国政府が持っておる国旗を差し出して、日の丸を差し出して、そうして直ちに掲揚していただくようにということでお願いをしてまいりました、おそらくその国旗が大使館の屋上にあがっておると思います、どうかわれわれのそういう微意をくんでいただいて了解をしてほしいということばがありましたが、これは真実ですか。
  253. 高島益郎

    説明員高島益郎君) いまの事実は承知しません。
  254. 玉置和郎

    玉置和郎君 これが高島さん、これは承知しなかったら、――これはもしそれが事実かないならないと教えてください。あって報告してないといったらこれはたいへんな問題だ、これは。国旗の尊厳というものに対して、後宮君が帰って来ておってそういう事実関係について報告がないということは、自国の国旗、日の丸に対して一体何を考えておるかということであります。私はこれ、なんで大臣、この質問の冒頭に言うかというと、さっきあなたが答弁をされておりました道義的なということ、法律的な責任云々があっても道義的なことはないんだということであります。条約局長もそういうような似たようなことを言われた。これはとんでもないことです。いま私は国会図書館で私の秘書を走らせてこれ調べてきた。道義というのはこれは道徳上の筋道のことでありますと、ちゃんと書いてある。国会図書館に書いてある。それから道義的国家ということば、これについては対外的に国際信義を、もしくは道義を重んずる国のことであると、こう書いてある。あるんですよ、これは。法律以前の問題です、これは。法律はこの道義の上に立って法律がつくられるんです。だから法律的責任がもし回避をされても、道徳的な問題、筋道の問題からいったならば、国民が――日本の国の旅券を持ってそうして日本のこの婦人が協力をしたというこの事実関係からしても、これはわれわれは道義的責任はないと言えない。私はその辺の認識の誤りが今日の日韓関係を悪化さしておる大きな原因だと思うんです。  もう一回聞きますが、道義という問題、これは中国語にもあるんです。中国人も非常にこれ大事にするんです。これからあなたはこの北京との外交を進めていかれるし、また国交は切れておっても日台関係を進めていかれる、民間交流というものを進めていかれるという立場からするならば、この道義という問題を無視して私は成り立たないと思うんです。中国語でこれはタオイというのです。大事なことなんです、これは。このタオイがあらゆる問題の原則の中心になっておるんです。そのことがあなたにも局長の頭にもないということであったら、これはもう論外ですよ。だから道義という問題についてもう一回あなたの見解を聞きたい。
  255. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 私が先ほど申し上げたのは、国際法上の問題としてそういう考え方を申し上げました。しかしながら、法律以前の問題としての道義、これが国家間の信義というものの基礎をなす、これは当然のことでございまして、国家間の信義がなければ国家間の友好、あるいはすべての国際法的規制がゆらぐということはこれは当然でございます。
  256. 玉置和郎

    玉置和郎君 きょうは防衛庁来ていますか。――あなたにちょっと聞きますけとね、二月十五日、ことしの二月十五日ですが、韓国の西海岸の公海上で韓国の漁船が一隻砲撃によって沈められております。そして一隻が拿捕されております。十三名が行くえ不明になって十五名が拉致されております。また六月二十八日には韓国の警備艇一隻を、これはまた北朝鮮のほうでありますが、奇襲してこれは撃沈をしております。七月十九日になりまして武装スパイ船、これは韓国領内に侵入して途中で発見されて韓国の警備艇によって撃沈されておる。われわれの調査しておるところでは本年に入ってこうした武力衝突というか、韓国に対する領海侵犯というか、こういうふうな事件が十件ばかり起こっておりますが、これは承知しておりますか。
  257. 丸山昂

    説明員(丸山昂君) 大体承知しております。
  258. 玉置和郎

    玉置和郎君 大体承知しておるということは、あったということですね。
  259. 丸山昂

    説明員(丸山昂君) はい。
  260. 玉置和郎

    玉置和郎君 これはアタッシェからの報告にもありますね。
  261. 丸山昂

    説明員(丸山昂君) アタッシェからの報告、それから私どもその他のソースによって知り得たことでございますが、ただいま先生御指摘のように、私どものほうでは本年に入りましてからおもだったもので約八件ございます。
  262. 玉置和郎

    玉置和郎君 公安調査庁に今度は聞きます。一九七〇年から最近まで、大体この六月ごろまでですが、日本を基地というか日本を発進地にして、そうして韓国に迂回侵入しておるこの北朝鮮のスパイ――工作員、これが韓国で発見をされております。ちょっと読み上げます。七〇年に六件、十五名、七一年に二十九件、三十二名、七二年に十九件、二十一名、七三年に三十四件、三十九名、ことしに入って十二件、そして十五名すでに六月までに検挙されております。これをトータルいたしますと約四年半で百件、そして人数は百二十二名にのぼっております。この事実はどういうふうに認識しておりますか。
  263. 渡邊次郎

    説明員(渡邊次郎君) ただいまの数字それ自体はちょっとここに用意してきておりませんので照合できないのですけれども、たぶんそういう事実があったことは事実でございます。
  264. 玉置和郎

    玉置和郎君 今度は国連の問題なんで、外務省に聞きます。協定違反事項として国連が認めておるもの、これは「休戦日より」というのは、一九五三年七月二十七日の休戦日より本年の七月二十日までの協定違反、これは地上におきまして二万三千七百十七件、空中におきまして九十件、海上において八十二件、合計二万三千八百八十九件のこれは協定違反事項が引き起こされております。その中には旅客機の拉致、これはだいぶ前の話であります。国連の歩哨所の奇襲、それから境界線の不法侵入、殺害事件、米軍の巡視兵の襲撃事件、こういうふうなものがたくさんあります。こういう事実はどう認識しておりますか。
  265. 高島益郎

    説明員高島益郎君) いま手元にそういう件数、その他、内容についての資料がございませんけれども、そういう事実は従来ずっとあるということを承知しております。
  266. 玉置和郎

    玉置和郎君 大臣、そのほかに――これは大臣に聞くよりもう一回防衛庁に聞きますが、最近ソウルの上のほうで、いわゆる軍事分界線のすぐ北で北朝鮮のほうが飛行場をつくった。それともう一つは旅団編成であったものを師団編成に編成がえをして、あの軍事分界線の北側で兵力増強をやっておるという事実、これについてどのように防衛庁は認識しておりますか。
  267. 丸山昂

    説明員(丸山昂君) 飛行場につきましては、本年の六月二十五日に朝鮮戦争勃発二十四周年記念に際しまして、国防部長官が記者会見を行ないまして、その際の発表の中に海州と谷山でございますか、この飛行場を簡易飛行場から戦闘用飛行場に拡張をして、空軍力を前方に移動したと、こういう発表がございます。この辺につきまして、事実関係については、ただいま私どものほうでは確認するすべがなく、確認に至っておりません。  それから、同じくその声明の中で歩兵旅団を師団に昇格をしたという発表がございますが、これにつきましては二十四個師団と四個旅団というふうに発表されておりますので、これは在来からミリタリーバランスで出ております二十一個の歩兵師団とそれから三個の戦闘師団、飛行師団ということで出ておりますので、特別に昇格をしたということは確認されておりませんが、大体これに近い師団が整備されておるということは間違いないことだと思います。
  268. 玉置和郎

    玉置和郎君 大臣、ここであなたにお聞きしますが、いまお聞きのとおりでありまして、いまの飛行場は三分以内でソウルを攻撃できるんです。ソウル攻撃を最大目標にしてつくられたこれは飛行場なんです。そしてまた、いまの編成がえをしたこういう陸上兵力というものも、ソウルを短期にこれはとってしまおうということのための戦略に基づいてつくられた私は陸上部隊であると、これはいまの韓国情報じゃないんですから、北朝鮮自身が演説をしておるんですから、発表したやつですから、これは間違いがないんです。あなたの言われるような北の脅威がないという判断、私はさっきから聞いておりましたが、あなた自身は、これは北の脅威が云々というのは朝鮮動乱のごときものではないと、こう言われる。そんなことあったらたいへんですよ、これは。日米安保発動ですよ。そうでなくて、私たちがあなたに判断を求めるものは、それはもちろん北の脅威というのは韓国が判断すべきものであっても、これはこの前に言ったように、安全保障戦略というものを常に外交戦略の代弁として考えなければならない、この外交の基本からするならば、常にいまのような状況というものをあなた自身が腹におさめておらなければならない。あなたは南北の会談が始まったと言う。南北の会談が始まったことは確かです。統一による会談が始まったのは確かです。しかし、その会談はすぐにこれはやめたではないですか。たとえば、これは昨年の八月二十八日に一方的に対話の中断を宣言したのは北朝鮮です、われわれの理解しているところでは。そうして一月十八日の朴大統領の提唱によるところの不可侵協定というものの提唱も、北朝鮮が全く黙殺したではないですか。そうしていま言うような、飛行場をつくってそうして陸上部隊を強化をして、これで一体北の脅威がないなんという判断はどこから出てくるのか、私はそれをまず聞きたいのですよ。一緒に聞きましょう。  そこで問題になってくるのは、私は日米共同声明だと思うのです。日米共同声明の中に、ここにいま資料を持ってきておりますが、もう読まなくともあなたわかっておると思いますが、   〔理事橋本繁蔵君退席、委員長着席〕 「韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要であると述べた。」と、これはちゃんとこう書いてあります。そうして「朝鮮半島の平和維持のための国際連合の努力を高く評価し、」というのがその前提に入っている。それであるならば、ここで聞きますが、あなたは、こういう共同声明が日米の間で出されておりながら、この事実認識というものが、あの時点と今日では大きく変わったと、私のいまのことばを聞いてまだそういうように思いますか、一回その点をはっきり聞きたいと思います。
  269. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 南北間にいま玉置さんがおっしゃったような軍事的緊張状態があるということは、これは事実そのとおりだと思います。これはしかし、私が先ほど御説明しましたとおり、それが、そういう緊張状態が、かつての朝鮮動乱のような事態に発展することは、まずいまのところ客観的にはないというのが、国際的に行なわれておる一般的常識、認識であるということを申し上げたわけです。したがいまして、そういう事態になれば、それこそ国連軍に対する敵対行為が行なわれるわけですから、また日米安保体制の問題も起こり得ましょうし、そういう事態が発生すれば、これはたいへんな事態でございますから、それがないように、抑止力としていま現在、韓国において国連軍も存在するいろいろな面を考えての客観的な、国際的に行なわれておる一般認識を私は申し上げたにとどまります。  また、いまの韓国条項の問題ですが、これはいつも申し上げておりますとおり、その当時における日米首脳間の現状認識でございます。したがって、その現状が国際情勢、また朝鮮半島を取り巻く情勢の変化によって、これが新しい展開をする、その新しい展開に伴いまして、すでに田中ニクソン共同声明であらわれておりますとおり、の安全は当然日本にとっても緊要かつ重大関心事であることは、これは変わりはございませんが、それに加えて朝鮮半島全体の安全と平和というものが、わが国にとりましても、またアジア、極東の平和と安全にとりましてもきわめて緊要であるということは、そういう情勢認識が、現状認識がそれだけ広がりを見せたということをあらわしておるというふうに私は解しております。
  270. 玉置和郎

    玉置和郎君 端的に聞きますけれども、いまあなたのそばにおられる政府委員が、それぞれの立場で私の質問に対して肯定をしました。私はその肯定をした範囲におきましては、韓国に対する北朝鮮の脅威はあると見ておるのです。あなたも言われたように、国連軍が存在をして抑止力として働いておるということ、それは脅威があるからこそ国連軍があそこにおって、自由と民主主義政治体制を守ろうという、この国連の主張、それに基づいてあそこに配置されておるのですからね。だからここであなたのその北の脅威というものに対しては第一義的に韓国自身が判断するものである、これは私はわかるのですよ。しかしそのあとの、大きな視野で、世界的な視野でもって考えていった場合に云々という、そのこととの説明の間にどうもやっぱり国民が判断に苦しむ点がある。私はむしろ言わぬでもいいことを言ってしまったなあという感じがするんですよ。だからこの辺でやっぱり韓国との関係をちゃんとせにゃいかぬというんであったならば、特に今度の親書の問題の中で私はそれに触れない限りは韓国はなかなか承知をしないと思います。やっぱり韓国のいまの国是というものは、この前も申し上げましたように、反共民主主義なんですよ。そうして自分たちの首都ソウルがいつでも、ちょっと息を抜いたら攻撃をされるという状態にあるというもとにおいて韓国のいろいろの政治体制が組まれておる。それであるならば、私はやっぱり友好関係を続けようとするならば、そういう韓国自身が認識をしている事態に対して、いまここで言ったように、政府委員が答弁をしたような、そういう事態だけでも北朝鮮の脅威はあるんだという認識の上にあなたは立てないですか。
  271. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 脅威ということばの態様がいろいろございます。したがいまして、脅威があるから国連軍が存在するということもございましょうし、また国連軍が現実に存在するから脅威はいまのところ考えられない。私の言う脅威は朝鮮動乱のような大規模な軍事的な侵入ということを意味しております。そういう意味で私はこの脅威の態様をどうとらえるか、また脅威があるから云々というような、これはまあ一つの循環論法になりますが、その意味で申し上げたのであります。
  272. 玉置和郎

    玉置和郎君 そうすると大臣、ことばを変えて聞きますが、いま言ったようなことがみな政府委員が肯定をするということであれば、韓国のいまとっておるこういう政治の体制というものはやむを得ない措置だというぐらいの認識はできませんか。
  273. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 私は各国がそれぞれみずからの政治体制というものをどう選ぶかということは、それは第一義的にもまた当然その国の選ぶ体制でございますから、それについてとやかく申す筋合いではないと、こう考えております。
  274. 玉置和郎

    玉置和郎君 あなたそこまで言うんだったら、この前のあなたの答弁は言わぬでもいいことを言ったなあという感じがするのですよ、私たちは。  そこで、それならことばを変えてもう一回聞きます。日本外交の基本というものは三つあるということをわれわれも承知しておりますが、これは間違っておったら教えてください。一つは国連中心主義、次は、二つ目は日米協調、そして三番目はアジア外交の協調、アジア諸国との協調、こういうことにわれわれは承知しておるのですが、これは間違いないですね。
  275. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) と同時に平和主義ということでございます。
  276. 玉置和郎

    玉置和郎君 大臣に聞きますけれどもアメリカの世界戦略というののどう認識しておりますか。アメリカの世界戦略、アメリカの世界に対する基本戦略です。
  277. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) どうもばく然とした……
  278. 玉置和郎

    玉置和郎君 いや、ばく然としてません、アメリカがこれを文書で出してますよ。
  279. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) まあ、それは私ども政府かち一応論評だけは差し控えたいと思います。
  280. 玉置和郎

    玉置和郎君 いや、そんなことはない。それはとんでもないことですよ。これは私が前に大平さんにも聞いたんですよ。これはアメリカの世界戦略、ちゃんと文書になってます。これはね、そんなこと言ってたら大臣、もの笑いになりますよ。アメリカの基本戦略の第一は、アメリカの国がよって立つところの自由と民主主義、この体制にある国に対してはこれはずっと支持をしていくというか、友好関係を続けていくということ。それと同時に、この自由と民主主義というものに対して反対をする、たとえば全体主義国家、権力主義国家に対してはアメリカはやっぱりきびしい批判をしていくという、これがやっぱりアメリカの基本戦略になってるはずです。これはもうずっと前に出されて、それでその自後修正がされていないので、私はその認識において間違いがないと思うんです。  まあこのことで議論しておってもしかたがないから次に進みますが、いまのこの三つの柱――平和主義という四つの柱、そうすると、一番最初にある国連中心主義という考え方からするならば、あなたがこの前言われた「北の脅威がない」、そういうことになって、国連軍の存在というものは、これは国連の決議に基づいて、国連憲章の精神に基づいて国連軍があそこに配置されとるはずですよ。それを日本が、日本外務大臣がかってにそういうことについてのよしあしについて言及することが国連中心主義になるんですか、ならないんですか。私は少なくとも国連中心主義の範囲を逸脱しておると、こういうふうに思うんです。  第二番目、日本協調というのが日本外交の大きな柱である、二本目の柱であるとするならば、アメリカの世界戦略に基づいて、アメリカの国の方針に基づいて、そうして韓国のいろんな情勢はあっても韓国に協力をしておる、軍事的に、政治的に、文化的に、人事の面においても。そういうときに、アメリカの方針が行き過ぎであるぞよ――というふうなことを言ったわけてはございませんが、とり方によってはアメリカ韓国に対するやり方はこれは少し行き過ぎじゃないかというふうな判断もできるようなあなたの言辞というものは、私は日米協調の線から少しこれも逸脱してるんじゃないかと思う。  もう一つ、三番目のアジアの国と仲よくしていくという観点からするならば、私はあなたのほうの高島君のアジア局かも資料をもらったんですが、このアジア諸国における共産党の扱い、これは、共産党というものを合法化しておるのはこれは中国と北ベトナムとモンゴル。条件つきで合法化しておるのは大体まあバングラとスリランカとラオス。インドとカンボジアはこれはいまこういう法律では予防拘禁法及び国防法により規制をすると。それからまたカンボジアのほうは国内法上の政治結社の自由を認めてるが、事実上共産主義活動はないということ。これからするならば、これはやっぱりあなたのほうのアジア局の所管である二十幾つかの国の中でほとんどの国が――多くの国が非合法化されておる、共産党の活動というのは。だから、日本がこの北朝鮮という共産主義を国家の基本理念としておる、こういう国に対して、しかもまだ国交も開いていない国に対してあなたのような言辞をされるということに対しては、はなはだ快く思っていないと私は思うんです。これは私はかつて台湾問題があったときにASEAN五カ国に飛んで、そしていろいろ聞いてきた。ことにインドネシアのあのアリムルトボだとかウィットノだとか、そういう連中の考えは非常にきつかった。タイにおいてもそうだった。そういうことを考えてみますると、これまた第三のアジアの各国と協調関係を結んでいくという立場からするならば、少し行き過ぎた発言じゃなかったか。平和主義というのがね、大臣、これはやっぱり力の均衡をどこかが破ったときには、平和主義はこれは放てきされるんです、なくなっちゃうんですよ。いまその力の均衡というものを、日本が何を好んで手を出さなけりゃいかぬのか、そうして破らなきゃいかぬのかというのが私たちの認識なんです。この辺におけるあなたのこの基本的な考え方、これをひとつぜひお聞かせ願いたいと思います。
  281. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) まあ第一番目の御質疑、私は実は理解に苦しむところでございます。国連中心主義はもう当然わが国の基本的な政策でございます。この朝鮮問題に対する国連のここ十年以上にわたる決議等に見られますとおり、確かに朝鮮半島における平和と安定を維持するために国連軍の存在を安保理事会で認めておると、これはもう当然でございまして、それであるから朝鮮半島の平和と安定が保たれておる。そこにもし脅威があれば、国連安保理事会としてはこれを放置できないという観点からそういうことを決議しておるわけでございます。簡単に北よりの脅威を私が云々と申しておられますが、私のその発言にはそれだけ、確かに用意周到を欠いた点があるかもしれませんが、私の真意はよく理解していただけると思います。  第二の問題、日米協調は当然第二のわが国の基本的な外交方針でございます。この問題について、かつ対韓政策について日米間には何らの対立もございません。その点についてはどうぞ御安心いただきたいと思います。  第三の点につきましては、これはアジア諸国との協調と申しましても、わが国の基本的な国内的な方針を曲げてまで協調すべきであるかどうかということは、私はそれには賛同できません。したがいまして、わが国の国内政治、社会すべての体制を自主的に決定した上でのアジア諸国との協調でなければならぬと、こういうことを考えております。
  282. 玉置和郎

    玉置和郎君 私は、一番の国連軍が云々されまして、この国連軍というものは必要だというあなたの認識、これはもう一回確認しますけれども、大事なことだから。あなたはそんなら国連軍はいまの段階において、三十八度線に沿ってしかれておる軍事分界線に展開をするということは必要だという認識に立つんですね。これはっきりしてください。
  283. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) そういう立場に立てばこそ国連においてそういう決議にわれわれは賛同しておるわけでございます。
  284. 玉置和郎

    玉置和郎君 二番目の、この日米関係に何らこれは波乱がないということであります。これは非常にうれしいことです。しかし、私はもう一回大臣にお願いしておきますが、こういうことを発言されるときには、何らかの方法でアメリカと相談をなさっていただくほうがこれからいいんじゃないですか。私の認識しておる範囲におきましてはあなたが相談をしておるということはないと思います。なぜそういうことを言うかというと、アメリカがいままであやまっておるんです。これはゴ・ジン・ジェム、いわゆるベトナムにおきますあのゴ・ジン・ジェムをたたき出したとき、ロン・ノルの政権の問題、こういったときには必ずアメリカが要らざるをちょっかいをしておるんです。そうしてみずからが苦境におちいっていっておるんです。韓国でもその二の舞をするかもわからぬ。アメリカ人というのはね、こういう状態、東南アジアのこういう問題については非常にうといんです。そこで日本が大事なんです。しかし、私はアメリカに追随せいと言うのじゃないのです。いま上のほうでこうせせら笑っておったですがね、記者の人が。そんなこと言うんじゃないです。アメリカの方針を間違えさせたらいかぬというのが日本の立場なんです。日本がそういう立場でアメリカにものを言わなきゃならぬのです。それを言っておるんです。韓国問題にしても、私はある人に頼んで、ある有力な政治家に頼んで、三十日の午前、アメリカの新任大使に対して、アメリカ韓国問題で誤ってはならぬぞよと、ベトナムやカンボシアのような、ああいう誤ったことをしちゃならぬよと、そうしてCIAが自分の功名を焦ってアメリカ全体の判断を誤らすようなことが再び韓国に起きた場合には、それこそ日米関係は悪くなるぞということを警告してもらったんです。私たちは、私なりに議員外交というか、議員の立場で国の安全保障政策というものをどういうふうに確保していくかということで努力をしてきた。それだけにどうかこのアメリカとの関係というものを、そういう立場からアメリカのこの行き方を誤らせない、少なくともアジアにおいては誤らせないというこの立場からアメリカと相談をしていただきたい。そのためには自分たちが発言をするときにはやっぱりちょっと耳打ちをするというこの配慮、これがないとなかなか肝心なときに言うことを聞きません。私はそれを言っておるのです。  それで、三番目でありますが、これがね、私ちょっと理解に苦しむのです。国内政治の上に立ってそれで自主的な何じゃかんじゃと言うんですが、これはどういうことですか。具体的に言ってください。
  285. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) わが国がどういう政治制度また社会制度を選ぶかということはこれは国民が決定することでございます。それに基づいて決定された政治制度あるいは社会制度に基づいてわれわれは政治を行なうと、当然のことでございます。したがって、その制度を曲げてまでアジアにおける協調ということを行なうことはこれは私は考えられないということを申し上げておるのであります。
  286. 玉置和郎

    玉置和郎君 国民が決定するということは、現在の国会の大体この編成というか、構成を見ればわかることですね。世論政治、選挙によって国民の意思というのはある程度表現されるのですよ。こればかりじゃありません。こればかりじゃありませんが、私は大体の方向として民主主義国家というものは大体議会主義をとる、そうしてこういうふうな構成になっておるということから考えますと、やっぱり日本国民の大多数は自由と民主主義というものを、これをやっぱり尊い犠牲を払ってかち得た宝であるという考え方を持っておると思います。それだけにいまのようなあらゆる国と仲よくするということで共産主義国家とでもべたべたべたべたしていくようなやり方というものに対しては、私は素朴な感情を持った日本国民というものはほとんどこれは眉をひそめておる。もう少しその辺の認識というものを私たちはあなたに強調したいのですよ。だからきょう立ったんです。もう何回もこんなところに来ませんよ。私は私なりにやることがある。しかしどうしても来て言わなくてはならぬというから私はここへ来たんです。私の良心が許さない。――まあ次に行きます。  そこで、どうもね、大臣、今度テヘランのアジア大会を見ていましてね、私の入っておる情報では、イラン当局が日本人をチェックし過ぎるのじゃないかと思うのですよ。これは私たちは体協関係、スポーツ関係からも聞いておるんです。日本人に対してもう過剰なチェックする。なぜだろうと言うんです。まあ私の友人ですから、どっちかというと保守的な考え方を持っておる。これは日本外交の誤りじゃないか。日本外交姿勢のくずれからこうきておるのではないかというふうなことを言ってきておる。これは大臣、どういうことが背景になっておるか、これは高島君よく聞いてみなさい。これはね、やっぱり日本というのはどうもテロ分子を養成するこの根拠地らしいと。そうでしょう、考えてみなさい。テルアビブで岡本がああいうことをやった。今度パリでもああいう陰謀があった。そうでしょう。それからシンガポールでもああいう事件を引き起こした。またそれは韓国籍でありましても永住権を持った、日本で生まれ、日本で教育された青年がああいうテロ事件を引き起こした。そうして韓国日本に対していろいろ要求してくるような状態というものが、後段で述べますが、やっぱりある。こういうふうなときに、私はパレスチナゲリラと同じとは言いませんが、日本がどうもそういうテロ分子というものを放任しておるんじゃないか、日本人は警戒せにゃならぬという、こういう空気が世界にあるという事実、これはいまアジア大会の一つのこの事実をもってあなたに言うわけですが、この認識はどう見ますか。
  287. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) どうも私はそのような原因に基づいて日本選手をチェックしているとはちょっと考えられません。
  288. 玉置和郎

    玉置和郎君 テヘランのほうはいいですけれども、それじゃいまの全体的な各国における、諸外国における日本の若者のこういった動きに対して、あなたはどう考えますか。
  289. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) それがテロ行為にわたることですから、これはもう世界共通の問題としてきわめて忌むべき問題だと思います。
  290. 玉置和郎

    玉置和郎君 それじゃ日本人がそういうことをやっておるということについては、あなたはやっぱり残念だということですね。――はい、けっこうです。  そしたら次に移ります。  これはいまの韓国の政権をぶっ倒そうというねらいを持っておるのは北朝鮮であるということ、さっきからいろんな脅威を肯定しました、政府委員は。それだけに、この反朴政権の基地化という問題についての認識を、どの辺が一体――あなたにもお聞きしたいと思いますが、その前にお聞きじますが、ここにぼくは、朝鮮語で書いた朝鮮総連の学習提講というものを持っていますから、あとであなたに差し上げます。全部これ朝鮮語です。これを一読しましたら――これは知ってますか。高島さん、知ってますか、これ。――知らない。アジア局長が知らぬで、これはナンセンスよ、高島さん。それはあんた、これを見たら、これは北朝鮮の指令に基づいて、金日成指令に基づいて朝鮮総連が日本でこういう計画でもってやっておるということ、これを知らないで韓国への捜査協力だとか何だとかやっておりますと言ったって、これはナンセンスですよ。こういう実態を知らないで、大臣、これは捜査協力ということに私はならないと思いますよ。読んでください、これを。  それで、この前言いましたように、朝鮮総連の韓議長の年頭の辞というものを私は読みましたね、一部だけ、この前の外務委員会で。これは三千九百十六語からなっておって、金日成元帥をたたえることばがそのうちに二千三百四語ある。三十六カ所に出てくる。しかも、その中で出てくるのは、私は残念でたまらぬのは、総連は、また日本当局が朴正煕走狗と結託し、必ず成立させようとした悪名高い出入国法を四回も廃案に追い込んだと書いてある。そして、この追い込んだ朝鮮総連の中に――これは自分たちがこう言っとるんだから間違いない、こういうことだと。日本政府提案の法律を自分たちの力で廃案に追い込んだと書いてある。四回も追い込んだと書いてある。これは正式な文書です。そして、その朝鮮総連の中に、この学習提講の中にありますが、朝鮮労働党の潜在党員が、公安調査庁ではこれは何万ぐらいになっておる、この朝鮮労働党の党員というものは。ちょっとそこで聞きますが。
  291. 渡邊次郎

    説明員(渡邊次郎君) 朝鮮総連の中には労働党の党員はいないと思います。
  292. 玉置和郎

    玉置和郎君 冗談言うな。何言っているのか。それじゃ警察のこの見解間違っておるのか。  警察庁からもらった資料の中に、五月十五日だったか五日だったか、名古屋においてスパイ事件逮捕しましたね。そうして実刑十カ月打ちましたね、名古屋地裁で。その本人が私は朝鮮労働党員ですとはっきり言っておるじゃないか。私は朝鮮労働党員であると自供しています。そうしてこの連中は何と言っているかといったら、日本のことを敵地区と言っておるんですよ。敵性区と言っておるんですよ。敵区の地下党をつくろうと言っておるんですよ。これはれっきとした本人の自白じゃないか。どこに朝鮮労働党員がおらぬのか。そういう認識でどうして公安調査庁が活動できるか。警察庁はちゃんとそう書いておるじゃないか。私のもらった資料の中に書いておるじゃないか。そうして「焦点」の中にも書いておるじゃないか。「焦点」という警察庁が出しておるこの資料の中にちゃんとあるじゃないか。この資料はそして外に掲載してもけっこうですといっておるじゃないか。公安調査庁はそういうことの認識ないのか。
  293. 渡邊次郎

    説明員(渡邊次郎君) ただいまの御指摘事件については、朝鮮労働党員ではあるが朝鮮総連の構成員であるとは承知しておりません。
  294. 玉置和郎

    玉置和郎君 これは労働党員であって朝鮮総連の中にずっとあっちこっち寄宿して回っておるんですよ。あんたもし言うなら、私が朝鮮総連の中に党員がはっきりあるということを立証した場合、あんたどうするか、責任とるか。法務委員会でも立証するか、私は。はっきり答えなさい。
  295. 渡邊次郎

    説明員(渡邊次郎君) 現在の私ども調査ではそういうことになっておらないという実情を申し上げたわけであります。
  296. 玉置和郎

    玉置和郎君 ぼくの認識しておる範囲では、大臣、これはあんたの、公安調査庁の連中の中で言っておることばにもあるんですよ、ずっと前に。これは一万人からおるんです。そうしてこの日本を基地にして、さっき言いましたように韓国に間接進入というか、そういうことをやっておるんです。私は、そういうことになって日本韓国に対する、こういう北朝鮮の政治意図を達成するための基地になるということは、これは非常に残念なことですよ。いまかりに中立国になるとする。それで中立国を介して中立国を有利にこっちに引き寄せたほうがその国の政治目的を達成するとする。そうした場合この中立国は両方からいつもがたがたがたがたやられておるという状態のもとにおいては、片一方の国と国交を開いておってもこの友好関係が続けられぬじゃないですか。大事なことですよ、これは。  今度の親書の問題は、私はそういう問題に触れなかった場合に親書の価値がないということをあんたに言いたいんですよ。それは単に日韓関係を回復するということだけではなしに、日本の国の治安、日本の国が自由と民主主義政治体制というものを望むならば、そういうものに対してはわれわれは断固とした力でもって排撃せねばならぬ。  出入国管理令の第二十四条にずっと書いてありますが、「法務大臣日本国の利益又は公安を害する行為を行ったと」認めた場合は国外退去を命ずることができるんです。私は、単なる刑事事犯としての、あるいは住居不法浸入だとか、拳銃盗難だとか、旅券法違反だとか、そういうことでなしに、もう少し高次元の日本国の安全保障、戦略上どうあるべきかという問題、そういう上に立ってこの問題を考えてもらいたい。いま北朝鮮とわれわれ、国交が開かれていない。この韓国が、大韓民国がこれは昭和四十年十二月十八日に発効した日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約、この中で「大韓民国政府は、国際連合総会決議第百九十五号に明らかに示されているとおりの朝鮮にある唯一の合法的な政府であることが確認される。」、こうなっています。この条約が無効にならない限り、われわれは現在の憲法において、あなたは国務大臣として、われわれは国会議員としてこれを忠実に順守するという義務がある、この点を最後に確認をして、これを忠実にあなたが順守するのか、しないのか、その点をはっきり確認をして私の質問を終わりたいと思います。
  297. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 政府日韓基本条約のその第三条を順守することは、当然のことでございます。
  298. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私はきょうは特に日ソ問題、それから日中問題、それから留学生の問題、こういうふうな問題を中心に質問をさしてもらいたいと思います。  先ほどから日ソ問題等についても話がございましたので、多少ダブる点もございますけれども、実は私たち決算委員会の同僚議員と一緒に、先日、三日ほど前ですけれども、北海道へ行ってまいりました。北海道へ行ってまいりまして、もちろん根室とか釧路とかへ行ってまいりますと、やっぱり日ソの問題が相当地元から出てまいります。私たち代表が向こうに参りまして、いろんな陳情も受けました。そういうことも含めまして、先ほどもちょっと質問ございましたけれども、多少ダブる点もございますが、さらに込み入った問題もございますので、質問しておきたいと思います。  初めにそういうような関係から、きょうは日ソ問題から入りたいと思いますが、先ほどもちょっとございましたが、昨年総理がソ連へ参りまして、そして日ソ共同声明というのがなされたわけでございますが、その第一項の中でも、先ほどもちょっとございましたが、本年――ちょうどことし「一九七四年の適当な時期に両国間で平和条約の締結交渉を継続することに合意した。」、こういうふうにございますが、これは先ほども答弁がございましたが、実際問題として大臣は、ことしというのがございますので、もうきょうは十日でございまして、これから列国議会等もございます。また、もうほんとうに日にちがないわけでございますがね。先般から新聞等にもこの問題については来年に延びるんじゃないかなんという予想記事もございますが、そういうことも含めまして、先ほどことしじゅうというふうな意味の答弁もございましたが、この平和条約の交渉について、大臣は実際問題としてどうお考えなのか、ちょっともう少し進めて御答弁いただきたいと思います。
  299. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) ことしじゅうに平和条約の交渉を継続しょうという合意は、依然として変わっておりません。ただ、その具体的場所、時期等についてはまだ未決定でございますが、ことしじゅうにそれを継続するということだけは、お互いに確認し合っております。
  300. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ことしじゅうにやるということはお互いに確認をしておる、ということは、大体この場所とか日程についてはどこら辺のところでこの検討をされるわけですか。
  301. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) まだその点については折衝中でございますが、しょせん先方から三政府首脳の一人が来られないうことにもなれば私がモスクワへ参りますか、またグロムイコ外相が東京に参りますか、いずれかのことになるだろうと思います。
  302. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうしますと、外務大臣が行かれる定期会議の問題もあとで質問しようと思ったんですけれども、結局その交渉の窓口はグロムイコ外務大臣向こうからこっちへ来るか、大臣がこちらから向こうへ行かれるかどちらかだと。実際問題として外務大臣はソ連のほうへ行かれる予定といいますか、日程といいますか、とれる可能性ばあるんですが、ことし。
  303. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 具体的時期についてはまだきめる段階でございませんが、ぜひそうしたいと思っております。これは私がもし参ります場合のことを言っております。
  304. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 実は当決算委員会はこれはいま閉会中の審査を続けているわけですけれども決算委員会大臣が出席できにくいところから順番にやろうとかいうことで、外務大臣はどうも決算委員会に出席ができにくいほうの何番目かに入っておるんだそうでございましてね、それで非常にお忙しいんだそうでございますんで、非常に――総括が終わってすぐに外務省決算の審議に入ったわけでございますけれども、そういう点から考えてみましても、大臣が行かれると、できるだけ――いま話ございましたけれども、今後は逆にグロムイコ大臣がこちらへ来るという可能性はどうなんですか。
  305. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) その可能性も含めて具体的時期、場所等について折衝中でございます。
  306. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうすると、時期、場所、これはなかなか押し問答で、どうもそれを交渉するのは大臣だというんでしょう、それでなかなかこれはむずかしいですね、実際問題、これ。大臣どうなんですか、時期、場所、なかなかこれから日程を繰っていきましても九月というわけにはいきませんでしょう、大臣。そうしますと十月は列国議会等がいろいろございますね、そのときに何とかという話は、これはどうなんですか。
  307. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 十月IPUの総会がございますが、これは国会レベルのことでございますが、あながちそういう時期が絶対的に不能とは言い切れません。
  308. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうすると、不可能とは言い切れないということは可能でもあるということにもなるわけですが、これは非常にむずかしいですね。いずれにしましてもこの問題はことしじゅうということでございますから、一つのめどですね、大臣、これはめどについてはいつごろまではっきりさせなくちゃいけないという、いつ行くか行かないかとか、場所をどこにするかということはこれは別にしまして、これはやっぱりいつごろまでに決着をつけなくちゃいけないということは大臣の腹の中ではある程度あるんじゃないかと思うんですが これはどうですか。
  309. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 残念ながらその腹のうちをお打ち明けする段階ではございませんが、時期等については、九月は無理としても十月、十一月、十二月、まだ選ぶべき時期が残っておると思います。
  310. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 九月がだめというのがはっきりしてきまして、少しずつあれしてきましたけれども、いずれにしましてもこの点につきましては地元の人たちも相当いろんな希望がございましたので、十、十一、十二と三カ月選ぶ日にちがあるということでございますけれども、いずれにしましてもこの点については政府も相当力を入れてやってもらいたいと考えております。  さらに、大臣から答弁がございましたけれども外務大臣のいわゆる定期閣僚会議というのは、先ほど大臣から御答弁がございましたけれども、本来なら、何といいますか、ことしもっと早く開かれていたはずなんですね。それが何か延び延びになっているようでございますが、ここら辺のいきさつはどうなんですか。
  311. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) 外務大臣の定期会議につきましては、一九六七年に第一回が行なわれまして、その後一九七二年に第二回が行なわれております。それからさらに昨年の十月総理訪ソの際に、両国外務大臣の間で第三回の外務大臣定期協議が行なわれております。したがいまして、その間の間隔が必ずしも正確に一年ごとということは言えないと思います。
  312. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 過去の経過はよろしいんですけれどもね、ことし開くということについては一応概略両国とも合意されていたんじゃないですか。これはどうなんですか。
  313. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) 一昨年グロムイコ外務大臣が参りましたときに、双方で少なくとも年に一ぺん開くということに合意しておりますので、われわれといたしましては本年中に開くというふうに考えておりますし、そのわれわれの考え方先方に伝えてございます。
  314. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いつ開くということを先方に伝えているんですか。ことしじゅうに、先ほどのあれじゃないですけれども、日にち、場所等は全然未決定でいつかやろうと、そういう何じゃないんでしょう。やっぱりある程度何月というような一つのめどもつけてこれは申し入れているんでしょう、どうなんですか。
  315. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) 時期につきましても日本側の希望というものは伝えてございますが、先方の都合もございますし、また心ずしも日本の申し入れた時期について合意してはまいっておりません。したがいまして、先ほど大臣が仰せられましたように、その問題も目下調整中というふうに御答弁申し上げたほうが一番正確であろう、こう考えます。
  316. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 こちらの都合はいつがいいと先方に申し入れているんですか。
  317. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) その点につきましてもまだ折衝中で、いま申し上げましたように、先方は必ずしも当方の申し出の時期が都合いいとは言ってきておりませんのですが、こちらの提示した時期について明示することは差し控えさしていただきたいと思います。
  318. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうすると、こちらとしてはいつが都合がいいということは先方には申し入れしてあると。けれども、いつという日にちはいまは言えないと。しかし、こちらが言った日にちについては、先方は都合がその日はどうもぐあいが悪いと、いいと、いろいろどちらかだと思うんですがね、そこら辺の返事はまだないんですか。
  319. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) こちらの都合がいいという日について、先方がその日が都合がいいという返事をまだよこしていないということでございます。
  320. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 どうも抽象的でわかりにくい。もうちょっと具体的に数字を、たとえば日本は何月幾日ごろがいいと、いいがあなたのほうは御都合はいかがでしょう、やっぱりそういうぐあいに言ってるわけでしょう。これはどうなんですか。
  321. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) まだ交渉中の案件でございまして、こちらの言った日が向こうが都合が悪い、あるいは都合がいいと言ってこないということは事実でございますが、そのこちらの提示した日をいま申し述べるのは先方との関係もあるので差し控えさしていただきたいということでございます。
  322. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうすると年内に開くということは、これはどうなんですか。
  323. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) 先ほど御弁申し上げましたとおり、少なくとも年に一ぺん開くという合意をしておりますので、したがいまして年内に開くということは確認されている、こうお考えになっていただいてけっこうだと思います。
  324. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 どうも外務省の皆さんとお話しするのは非常にむずかしいですよね、これは。  それじゃもう一つ、この間の共同声明の中にもございましたけれども、ソ連の三首脳日本に招待する、これは約束をしてきておりますが、先方も了解したと、これらの招待は謝意をもって受諾されたということで共同声明の最後にございますけれども、この問題もこれは今回アメリカフォード大統領の訪日もきまったことでございますけれども、ここら辺のところはどうなんですか、大臣
  325. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) その共同声明にもいつ三政府首脳のいずれかが来るということの時期の明示はもちろんでございません。したがってもっぱら三政府首脳のいずれかの訪日し得る時期ということでこれから詰めていく段階でございます。
  326. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣、私は何でこんなことを何回も何回も言うかと言いますと、今回私たちが北健道へ参りまして陳情の趣旨は二つございました。一つはやっぱり何と言いましても北方領土の問題でございます。それからもう一つは安全操業の問題でございます。この二つに対してもう地元では相当強烈に陳情がございました。私たちも話を聞きましてほんとにもつともだと思いました。そこでそのために私たちできる限りのことはやっぱりしないといけないとそういうふうに私は感じて帰ってまいりました。そのためにも、いま三点申し上げましたけれども、この平和条約の問題にいたしましてもまた外務大臣の定期会議の問題にいたしましても、それからソ連の三首脳の訪日の問題にいたしましても、これは外務省として相当力を入れて私は取り組まないといけない問題ではないかと思っておりますのですが、これはどうでしょうか。
  327. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 全くお話しのとおりでございまして、私どもとしましては最大限の努力を用いたいと考えております。
  328. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣、もうこれ以上申し上げませんが、最大限の努力というのを私は信じて具体的にその内容はお伺いしませんけれども、ほんとに真剣に取り組んでもらいたいと思います。  そこで、まず具体的に話に入りますけれども、まずことしに入りまして、特に安全操業の問題でございますが、拿捕されたいわゆる船の数ですね、及びそれから船員の数、これはどういうふうな実情になっていらっしゃいますか。一ぺんその点を先にお伺いしておきたいと思います。
  329. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) 本年に入りまして二十三隻拿捕されました。漁夫の員数は百九十四名でございます。
  330. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そのうちことしに入りましていわゆるこちらへ帰ってまいりました方ですね、何人ぐらいいらっしゃるのか、現在抑留されている方が何人いらっしゃるのか、そこら辺のところ。
  331. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) そのうち帰ってまいりました船が九隻でございます。員数は百五十六名でございます。現在抑留されておりますのは昨年来から抑留されている方を含めまして五十八名でございます。先ほど松岡委員の御質問に対して約六十名と申し上げましたが、この資料を正確に調べましたところ五十八名でございます。
  332. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 先ほど私はあの質問を聞いておりまして、この拿捕される原因ですね、これは何ですか。
  333. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) ソ連側は拿捕する理由として申し述べておりますのは、領海侵犯及び不法漁労というのが大部分でございます。
  334. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 外務省としてはソ連側が言っているこの二つの問題についてはどうお考えでございますか。
  335. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) 日本政府としましては、この拿捕されている船がほとんどは北方領土周辺で事件が起こっております。で、われわれといたしましては、北方領土は日本の固有の領土であるので、したがって領海侵犯という事実は起こらない、それからしたがいまして、また不法漁労ということも起こっていないはずである、ソ連側が言う二つの理由はわれわれにとっては納得できない、したがって、不法に拿捕された船舶及び人員は即刻返してもらいたいということをそのつど抗議しております。
  336. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうしますと、日本政府としてはこの拿捕された人たちが、ソ連が言うような二つの理由というのはこれ全く理由にならないと日本政府は判断をしておると、そういうことでございますね。  そうしますと、要するに正規に働いて正規に漁業を営んで、そして自分の責任でなくていわゆる外国に拿捕された、そういう場合その家族の皆さんとか、そういう方々に対するいわゆる措置ですね、これはどうしていらっしゃいますか。
  337. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) その問題につきましては、あるいはきょう見えているかどうか存じませんが、水産庁が直接担当しております。外務省といたしましては、これらの家族の方々については十二分の同情は申し上げておりますが、具体的な措置につきましては水産庁のほうでお考えになっていると了解しております。
  338. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 きょう水産庁来てないですね。  これは大臣、十二分の同情はしているとおっしゃっていますけれども、先ほど大臣からお話ございましたけれども、とにかくやっぱり大臣大臣になる前に向こうへ行かれたという話がございましたけれども、やっぱり一回行かれて、そして地元の人たちほんとうの声というのを聞く必要があるんじゃないか、こう思うんです。これは拿捕された船員の皆さんの家族というのはもうほとんどが生活ができなくなっちゃうわけですね。ですから今度は拿捕されると同時にそういう家族の皆さん方はもうかせぎ手から送ってこないわけですから生活保護を受けないといけないということになるわけですね。それも自分の責任じゃないわけですよ、これはね。しかもそのうち船も全然没収されてしまう。ことしに入ってさえ二十三隻のうち九隻しか帰ってこないというんじゃ非常にこれは大へんなことだと私は思うんです。ですから、ここら辺のところは水産庁のこれは管轄かもしれませんけれども、ここら辺のところはやっぱり日本の国の政府として本格的にこの問題については取り組んで、そしていわゆる留守家族の皆さん方の生活という問題も含めて、やっぱり考えていかないといけないんじゃないかと思うんですが、ここら辺は大臣どうですか。
  339. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) これは政府全体の責任でございます。また、私がそういう関係者の方々の切実な声を聞くということも当然私はこれを考えたいと思っております。
  340. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この問題につきましては、私、非常に重要な問題だと思いますので、さらにもう一点だけお伺いしておきたいんですが、現在ソ連に抑留されている邦人で帰国を希望している人が何人ぐらいいらっしゃるのか、この点もちょっと一ぺんお伺いしておきたい。
  341. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) 現在九十六名、家族の数字を入れますと合計いたしまして三百八十四名でございます。
  342. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それらの方々がことしの一月の二十二日に出された外務省の資料からしますと、家族を含めて四百八人であったのが三百八十四人に減っておりますから、幾らかは帰ることができたんだろうと思うんですが、要するに帰国できない、いわゆる帰国が困難である理由というのはこれは何でございますか。
  343. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) 昨年総理が訪ソされましたときにその時点において判明しておりました邦人であり、かつ日本国への帰還を希望している方々のリストをブレジネフ書記長に出しまして、先方もそれについて好意的考慮を約束したわけでございます。その後先方から中間的に報告がございまして、日本側のリストのうちすでに死亡している者、あるいはどうしても住所がわからない者というものも合計十名ございました。またその後帰ってきた家族もございます。実際に帰れない理由と申しますのはいろいろあろうかと思いますが、幾つかの理由の一つは、ソ連の制度といたしまして出国税という税金が課せられるわけでございます。その税金が家族の員数との関係で十分払えないというようなことも理由の一つかと思いますし、またソ連中央、つまりモスクワから現地への連絡が必ずしも十分いかない、手紙、郵便が必ずしも正確に時間どおり届かないというような問題もあろうかと思います。
  344. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 その出国税という話がございました。まあその帰国できない大部分の理由はやっぱり出国税の問題らしいんですね、私たちが調べたところによりますと。そうしますと、これは大臣ちょっとやっぱり考えなくちゃいけない問題じゃないかと私は思うんですがね。出国税というのは実際一人当たりどのくらいなんでございますか。
  345. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) 日本人の場合は一人当たり四十ルーブルでございます。
  346. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 四十ルーブルというのは日本円に直して幾らですか。
  347. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) 約一万六千円でございます。
  348. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 その一万六千円のその出国税というのがネックになっているというのは、いわゆる現地に抑留されている邦人の特に帰国を希望されている方々はそれがネックになっているということは、それが払えないということでございますか。
  349. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) そのとおりでございます。
  350. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは大臣、いま一万六千円という話がございましたけれども、これだけのお金が払えなくて抑留されているなんていうのはもう人道的問題だと私は思うんですよ。ですからこの出国税の問題については少なくとも政府がこれは全面的にこれはやっぱり対処するという考え方じゃないといけないと、私思うんですがね。まあ私が聞いたところでは一万六千円じゃなくて十六万円という話も聞いたんですが、ちょっと金額については多少違うかもわかりませんが、一万六千円ならなおこれは考慮の必要がある、私、そう思うんですが、大臣、これはどうですか。
  351. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) たいへん失礼申し上げました。私四十ルーブルと申し上げましたのは四百ルーブルの誤りで、先生のおっしゃる十六万円が正確でございます。  なお出国税だけがネックではないわけでございますが、それに対しまして政府がそのめんどうを見てやるということをわれわれ検討しております。ただ先方政府がそれをどう見るかという問題も含まれていると思います。
  352. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは先方政府ということはソ連でございますね。ソビエトでございますから、当然私はそういう問題もあると思いますけれども、こういう問題も含めてやはり大臣検討していただきたいと、私思うんですがね。こういうふうなお金で解決できるものは何もそういうふうな問題だけじゃない。複雑な問題もあるんでしょうけれども、いまのお話の中でもやっぱりこの出国税という問題が問題になっているとすれば、こういうような問題で帰国できないでいるというんじゃほんとうにかわいそうだと私は思うんです。現実に地元でもこういう話が出てきました。とてもこれだけのお金を調達するのは不可能であると。で、帰りたくても、とてもじゃないけど帰れないんだという話を具体的に耳にしました。ですから私は言っているわけでございますが、この点についてはこういう面も人道的な面からも含めまして検討すべきであると思うんですが、大臣どうですか。
  353. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 具体的に検討を進めたいと思います。
  354. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それじゃ以上の問題については、大臣、特に人道的な問題もからんでおりますので慎重に検討をお願いしたいと思います。  次に日中問題についてちょっと二、三お伺いしておきたいと思います。先般から平和条約の問題が相当議題に上がっております。新聞等もこの問題についても相当取り上げてございますが、平和条約の問題について、これは大臣、当然予備折衝も年内に始まるんじゃないか、そういうぐあいに言われておりますし、報道も私たちもお伺いしているわけでございますが、これはどうですか。
  355. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 基本的には、なるべくすみやかに交渉を始めたいという考えでございます。
  356. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 基本的にはとおっしゃっていますが、何かネックはございますか。
  357. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) これはやはり日中両国政府で合意の上始めなければなりません。そういう点をさしております。
  358. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 合意を得るべく努力はされていらっしゃいますか。
  359. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) まあ予備的にはいろいろ先方話し合いをしておりますが、いずれの時期にどういうレベルで始めるかということにはまだ至っておりません。
  360. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これもまためどでございますが、大体年内には始められる意向でございますか。
  361. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) いろいろ考え方もございまして、御承知のとおりいま海運、漁業両実務協定もまた交渉中でございます。できますれば日中平和友好条約の前にこの二つの実務協定がなるべく早く妥結になるということがきわめて望ましい形だと思いますが、そういう見通し等もあわせまして、これから日中間で話し合いを進めていきたい、こう考えておりますが、まだ年内にこれが始まるかどうかという具体的な見通しについては、この際まだ触れないほうがいいと思います。
  362. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうしますと、海運協定とそれから漁業協定ですか、この問題についても前々から、いま大臣おっしゃいましたけれども、この二つの問題が解決してそのあと平和条約という、それが一番いいと、そういうプロセスが一番いいんだろうと私思うんですけれども、並列してやってもいいという話も出ておりますが、これは並列してやってもいいという意向は大臣は持っていらっしゃるわけでございますね。
  363. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 先ほど申し上げた事の運び方は、望ましいということでございまして、この実務協定の交渉がきわめておくれるようであればこれと並行して進めることも考えられると。まあ一にかかって日中両国政府の合意いかんによります。
  364. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この二つの両協定につきましては、現在中断しているんでございますね。
  365. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 必ずしも中断ということばが当たりますかどうですか、たとえば海運協定でありますれば、いままで東京におきまして実務者間の交渉が進行しておりました。今後はむしろ外交チャネルを通じて、しかも舞台を北京に移してこれを始めるということでございますので、中断という、事実関係では中断という形はとっておりますが、交渉は依然として継続中ということでございます。
  366. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは前にちょっとお伺いしたんですが、この間のカラカスで行なわれた海洋法会議ともからんで、そこら辺の結論も出てからということで、その結論待ちという話も一ぺん聞いたことがございますんですが、実際問題としては具体的な結論何にも出なかったわけでございますが、実際は現在中断していると、しかしその場所を北京に移してという話がございましたが、そこら辺のところはどうですか。
  367. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 漁業の規制に関する問題でございますので、もちろんカラカス会議の全体の空気というものは当然関係がございます。しかし、そういうことと離れまして、われわれとしましてはできるだけ早い機会に日中漁業協定の腹案を定めまして交渉を再開し、妥結に持っていきたいと、こう考えております。
  368. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この平和条約と両協定、いずれにしましても非常に重要な問題でございますし、ぜひとも早急に解決をしてもらいたいと考えております。  次にもう一点ちょっとお伺いしておきたいんですが、外務大臣の就任のあの記者会見の席上で日台航空路線の再開の問題が出てございますが、この問題、現在でも心境は変わりませんか。
  369. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) できるだけ早く日台航空路線が再開されることを期待しておるという態度は変わりません。
  370. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 再開するとすれば、やっぱり再開するためのいろんな問題があると私は思うんですが、そのプロセスについてはどうお考えですか。
  371. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) もうすでに御承知のとおり、これは民間取りきめでございまして、政府が直接関係することができないという立場でございますので、政府といたしましては、そういう民間取りきめがなるべく早い機会にいろんな実務的パイプを通じてこれが実現するということを強く期待しておるという態度でございます。
  372. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 現在船田さんが台湾に行っておられますが、これは、こういう問題について話し合われるのかどうか私具体的には知りませんが、大臣どうですか。
  373. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 船田先生が台湾に行かれましたのは、これはもう政府と全然関係なしに個人の資格で行っておられます。したがいまして、どういうことが台湾で話し合われるか存じません。
  374. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣は、この日台航空路線の再開の問題について話し合われるということを期待されますか。
  375. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 私からそういう希望はもちろん申し上げてありませんし、またそういう問題が今回の船田先生の訪台目的であるかどうかも存じませんので、そのことについては何とも申し上げられません。
  376. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、もうちょっと具体的にお伺いしておきたいと思います。  日台航空路線の停止によりまして日本側が受けるいわゆる収益の減少額というのがあると思うんですが、これは外務省はどの程度であると推定されていますか。
  377. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 私ども承知しておりません。
  378. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは運輸省の管轄でございますか……。  まあしかし、承知してないというその、全く承知してないというんじゃなくて、やっぱり、どういうふうなあれであるのか多少は頭の中に入れてやっていただかないと困るんですけれどもね。いずれにしましても、この航空路線が、共同声明の第三項で、台湾が中国の領土の不可分の一部である、これはもうはっきりしたことでございますし、また中国のほうも、日本と台湾との関係については過去の経緯についてもすでに理解を示しておるところでございますね。そういう点からいっても、将来は日中航空路線に組み入れられるであろうと私は思うんですけれども、民間取りきめであっても運航が再開されるということは、これは非常に重要な問題であろうと思います。そういう点から考えてみましても、ぜひともこれは、一日も早く再開されましてそして正常な状態にしていただきたいと考えておるわけですけれども大臣の所信をもう一回お伺いしておきたいと思います。
  379. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 日台路線の再開、当然これは、いまお話しのように、日中国交正常化の基本的ワク組みの中で行なわれるべきでございます。また、日台航空路線の再開は、これは実務者と申しますか、実務的に民間取りきめで行なわれるべきものでございますが、政府といたしましてもその再開を強く期待することに変わりございません。
  380. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは次に、留学生の問題についてお伺いしたいと思います。  特に私が留学生の問題を取り上げますのは、……きょうは文部省のほうも……留学生の方が日本に勉強に参りまして、特に私は心配しておりますのは、いわゆる日本で勉強して反日感情を持って帰ったというような具体的なこともございますので、それではやっぱり困ると、そういうような観点からこういうふうな人たちの処遇の改善という問題に外務省、文部省ともに取り組んでいただきたいと、そういう趣旨で質問をいたします。  初めに留学生の現状について一点、文部省からですか、お伺いしたいと思います。
  381. 五十嵐耕一

    説明員五十嵐耕一君) ただいまの日本に参っております留学生全体の数がどのぐらいであるかということから申し上げたいと思います。  現在、日本に参っております留学生の数は約五千人でございます。この留学生の中には、文部省が奨学金を出しております、これを私どもは国費留学生というふうに呼んでおりますが、その留学生が約九百人ございます。それから留学生自体が自費あるいは自国の政府の奨学金を受けて参っております留学生が約四千百人ございます。これが現在参っております留学生の全体の数でございます。地域別に見ますと、留学生の圧倒的多数はアジア地域から参っておりまして、約七八%がアジア地域から参っております。その次に多い地域と申しますのは北米地域でございまして、北米地域から約一一%参っております。そのほかヨーロッパから五%、中南米から三%というような数になっております。国費留学生につきましては、この制度ができました昭和二十九年以来数の増加をはかってまいっておりまして、現在申し上げましたような数字になっております。それから国費留学生につきましては、私ども奨学金の増加というものをはかっておりまして、現在留学生の中に大学院レベルの留学生、これを研究留学生というふうに称しておるわけでございますが、これの基本的な奨学金といたしまして、現在八万九千円というものを支出しております。それから学部留学生でございますが、これにつきましては、現在六万円の奨学金の支出でございます。それから当然往復の交通費といいますものが全部国費留学生の場合には支出しているというような現状でございます。そのほか、留学生の宿舎問題というのが非常に問題になっておりますので、そういう宿舎につきましても、たとえば私どもの所管しております日本国際教育協会というところで東京地区におきましては二百八人、関西地区におきましては百三十二人、合計三百四十人の学生を受け入れております。それから私費の留学生に対しましては、医療費、これが一番、留学生が病気にかかった場合には非常に心細いということがございまして、医療費につきましては実費の八割五分を国費私費を問わずに支出しております。大体以上が留学生の現状でございます。
  382. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ちょっとこまかい質問をうんとするつもりだったのですけれども、時間の関係もございますので、簡単に申し上げますが、まず初めに、国際学友会の昨年の一昨年の補助金の金額と、それからその使途内容、大体大まかな決算ですね、これはどうなっているのか、一点お伺いしたい。
  383. 堀新助

    説明員(堀新助君) 国際学友会は外務省から補助金を出しておりますので、私から御説明申し上げます。  補助金金額は四十七年度におきまして一億四千六百九十一万円、四十八年度は一億六千四百八十万九千円でございました。この補助金は、国際学友会の人件費、事業費、施設費のそれぞれに対して出しております。御必要であればそれぞれの金額を申し上げますが、事業費と申しますのは、主として最初に日本へ参りました留学生に日本語教育をやる事業でございます。
  384. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それじゃもう少し具体的に申し上げますが、そこに入った寮生からこれは何か費用を徴収しているんですか。そうしてもし徴収しているとすれば、これはたとえば寮費が幾らとか、食費が幾らとか、そういうぐあいに徴収しているのかどうか、そこらのところをちょっとお伺いしてみたい。
  385. 堀新助

    説明員(堀新助君) 寮生から費用を徴収いたしております。まず入館金というものがございます。それから毎月の寮費、これは部屋によりまして、また東京、大阪、京都によって違うわけでございますが、東京の一例をあげますと、古い建物は月七千円、比較的新しい建物が八千円になっております。食費も実費に当たる程度の金額を徴収いたしております。
  386. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは非常に重要な問題だと私は思うんですけれども、寮費が七千円、八千円というのは、この中にはたとえば食費とか光熱費とか、そういうふうなものは含んでないんですね。いまの七千円、八千円というのはこれはいわゆる家賃ですね、言うたら。これはどうですか。
  387. 堀新助

    説明員(堀新助君) 七千円、八千円と申しますのは、館費と称しておりますが、つまり家賃プラス光熱費、水道料などが込みでございます。食費は別でございます。
  388. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大体食費はどれぐらいかかるもの.ですか。
  389. 堀新助

    説明員(堀新助君) 食費はそれぞれのメニューによって値段が違うわけでございますので、少し例をあげることにいたしますと、ポークカツレツが九十五円、チキンスープが七十五円、そういうことになっております。
  390. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 月どのぐらいかかるか。
  391. 堀新助

    説明員(堀新助君) 月は、これは彼らの非常に節約する人はパン二十円とミルク一ぱいで朝御飯を済ます人もおりますので、ゆで卵を食べない人もおりますので、ちょっと個人個人によって違いますので、計算がしがたいと存じます。
  392. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いま聞いたメニューは非常に安いようですけれども、これはおいしいんですか。
  393. 堀新助

    説明員(堀新助君) おいしいかどうか、食べる方の好みの問題もあると存じますが、私たちといたしましては、これは実費と申しますのは材料費だけの実費でございまして、光熱費、それから料理人の賃金などは別途出しているわけでございますから、非常に安い、きわめて安くなっていると考えております。
  394. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いまのお話はそのまま一応受け取っておきます。  それでさて、先ほど病気の話が出ましたけれども、病気のときのいわゆる治療のやり方ですね。たとえばそこに入っている人たちをたとえば看護してくれる人がいるのかどうか、これが一つ。  まとめて言いますけれども、それからそこに入っている人たちの日常生活のたとえば掃除とか洗たくとか、そういうようなめんどうを見てもらう職員というのは、実際問題として何名ぐらいいるのか。たとえば何人に一人ぐらいいるのか、そこら辺のところはこれは十分行き届いているんですか。
  395. 堀新助

    説明員(堀新助君) まず看護の問題でございますが、東京の宿舎の例で申しますと、学生課というものがございまして、この人たちがしょっちゅう学生のめんどうを見ておりまして、病気の場合には必要な医者に連絡して医者に行かせる、医療費の支出は文部省のほうでめんどうを見ていただいております。  それから掃除、洗たく、人数はちょっと私、資料を繰らないと数字はいますぐは申し上げられませんが、十分な人数があると考えております。掃除は、建物自身があまりきれいでないのでございますけれども、そのわりには掃除はきわめて行き届いておると考えております。
  396. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 非常に私も入りたいようなすばらしいとこで入ってみたい感じですが、その掃除とか、そういうふうなものも非常に十分である、また建物は古いけれども掃除は行き届いておる、そういうことですね。それでさらにあれしておきますが、病気のかかった費用の実費の八割はめんどうをみてくれる。たとえば看護というのがありますな。要するに、外国から来ているわけですから、一人、部屋にいるわけですね。または同僚と一緒にいるわけですね。そういう場合、たとえば看護、めんどうをみるのは十分だとおっしゃいましたけれども、そこら辺のところは十分なんですか。そういうところの費用というのはどこから出るんですか。
  397. 堀新助

    説明員(堀新助君) 入院いたしました場合の看護料につきましては、文部省所管の医療費で支払うわけでございますが、入院しないで寮にいたままの場合のことと存じますが、これは学生課の人たちがめんどうを見、友人が見るわけでございますけれども、それでほんとうに十分かということになると、個々のケースについて当たらなければいけないと思いますけれども、入院をしない程度の病人でございますので、非常な不行き届きがあるとは考えておりません。
  398. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それはそれとしまして、次に、それでは食べるのは十分であると、寝るほうも十分、病気になっても大丈夫と、何が不満で……この留学生の中にはいろいろ不満に思っている人たちというのはずいぶんいるらしい。具体的に私はこれから言おうとしているわけですけれども、どこかに何か問題があるんじゃないですか。こういうような方々は、実際問題八割の、先ほどもお話がございましたように、七八%の人たちが東南アジアからおいでになっているわけです。そして、こういう方々が、しかも、国費の人たちが五千人のうちほんのわずか、その大部分の人たちがいろいろ分散をして、こういうところにも入っていらっしゃる。どういう部門の人たちからやっぱり一番不満が多いんですか、どういうところに問題があるんですか。
  399. 堀新助

    説明員(堀新助君) おっしゃるとおり、留学生の中には多数不満の方々がございます。それはただいま私が学友会の寮につきまして、食事それから寝ること、看護、掃除、まあ完全に十分というわけでございませんが、かなりのことをやっておりますが、しかしこれに入れない人が実は大多数でございます。先ほど、留学生課長が申しましたように、約五千人の留学生がいると、ところが国際学友会の施設は三百十九人しか入れません。そのほかに文部省の日本国際教育協会のつくっておられる寮で、先ほど申しましたとおり、それからさらに民間の団体によります寮の設備、これを全部合計いたしましても千百六十五人分しかございません。したがいまして、約四千人の者がまず第一にこの寮に入れない。この寮はまだまだ不十分ではあろうけれども、寮費も安い、食費も至って安い。ところが、それに入れないというのが四千人近くもおるということが第一でございます。  それから、さらに留学生の不満は、自分の希望したとおりの大学に進学ができないという場合がございます。  第三に、せっかく日本へ来て、いろいろ日本人の人と接触をしたい、日本人の家庭も訪れたいという希望を持っておりますが、残念ながら日本ではそういうふうな習慣が西欧諸国とは違って発達しておりませんので、そういう面から不満を持つ、あるいは日本人の友だちがつくれない、それから学校の勉強が日本語でございますので非常にむずかしくて所定の四年間で学士号が取れないと、そういった問題が多々あると存じます。
  400. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうしますと、一番の問題は、やはりその五千人の留学生の中で三百十九人しかそこへ入れないと、しかもそのほかいろんな設備を合わせても千百六十九人あると、そうしますと、そういうところへ入れない留学生がずいぶんいるわけですね。これはやっぱり非常にぼくは大事な問題だと思うんです。そういうふうな人たちに対しても私は万全の対策を講じなきゃいけないと思うのが、これは文部省当局かもわかりませんが、まず一つです。  それからもう一つは、その三百十九人入っている新宿の学友会の寮も非常に何といいますか、敷地も狭いし、建物ももう古くなってきている。これは非常に中途半ぱな補助金で、私は、食費が非常に安いというのはいいかもしれません。しかし、安いからいいとは限らないと私は思うんです。ですから、私は担当の部長さんは一ぺん行ってこられて、その内容も確認をしてこられる必要があると思いますよね。それも前もって予告して行くのじゃなくて、予告して行くときっといいのをつくりますからね。ですから、やっぱりきちっとそういう点も万全の策を講じないといけないんじゃないか。しかも私はこういうふうな日本の国に来ている留学生の諸君、これはいま語学の問題とか、いろんな難点もありましょうね。やっぱり自分の思ったところへ行けないという問題もあります。しかし、実際問題としてこういうふうな学生の大部分の方々は、何年かおりまして自国へ帰りますと、また四、五年すると、その国の指導者階級に育っていくわけです。そういう点から考えてみましても、ぼくはこの留学生の問題については特に力を入れて、これから本気に取り組んでいかなきゃいけないんじゃないかと思うんですが、この点どうですか。
  401. 堀新助

    説明員(堀新助君) 私自身、東京の新宿の寮はもちろん、京都、大阪の寮もすでに数回視察をいたしております。念のために昼食を食べてもみました。外務省の食堂よりは安くておいしいことも身をもって発見いたしました。しかし、一般的にただいま先生のおっしゃいましたとおり、留学生はもともと国費留学生であれ、日本を選んで日本で勉強しようということで来た人々であり、かつ四年以上滞在して、帰ってからも指導者になると、したがいまして、寮の設備それから大学進学その他の問題につきましてできるだけのことをすべきであるというので、文部省と外務省と協力して一つ一つの問題から改善をはかるように努力をいたしておりますし、今後も努力していく所存でございます。
  402. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それじゃもう一点だけお伺いしておきたいと思うんですが、ことしの八月から従来の技術協力事業団と、それから移住事業団、これが発展的に合併をいたしまして国際協力事業団というのができたわけでございますが、この点についてもちょっとだけ、いまの留学生の問題と同じ意味でお伺いしておきたいと思います。  当然、これは発展途上国から相当いろんなケースで日本にいらっしゃっていると思います。現実に、私はきょう時間ございませんでしたので、大阪の吹田のほうに、あるところへちょっと行って見てまいりましたんですけれども、非常に、日本に技術の修得へまいりまして、やっぱりいろんな不満があるわけですね。これは特に発展途上国からまいりまして、大阪のいろんな鉄工所へ訓練に行く、そうすると何といいますか、待遇が悪いわけですね。やっぱりもっともっと私たちはこういうふうな人たちに対する考え方というのを、その国の実情を理解してあげるという点もありますし、いろんな観点から私は取り組んでいかなくちゃいけないんじゃないかと、こう思っています。  そこでまず、特に技術修得に来ております人たちのいわゆる何といいますか、そういう人たちの実情ですね、これは大体どうなっているのか、一ぺんちょっとお伺いしておきたい。
  403. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) 技術協力の中で政府べ-シスの、いま先生のおっしゃった研修生の受け入れ事業につきましてはずいぶんと実績があるわけでございます。過去の総数を申し上げますと、技術研修員としてOTCA、先ほど先生のおっしゃった国際協力事業団の前身が引き受けました技術研修員の総計は一万九千八百十五名でございます。そのうち、東南アジア九カ国からの受け入れ数は八千六百六十名でございまして、全体の四三・七%に達しているわけでございます。昨年一年の実績を見ましても受け入れ数二千七十八名のうち東南アジアからは八百二十三名がきておりまして全体の三九・六%、やはり四〇%近いということで研修生の受け入れ事業もやはり東南アジアを中心としてやってきたわけでございます。
  404. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 やはりこういうところのいわゆる何といいますか、会館、宿舎みたいなところ、吹田のほうにありますね、一カ所、私もそこへ行ってまいりましたけれども、本だなはあっても本がないとか、それで設備はものすごくいいみたいですけど、非常な不満がある。予算面の措置とかいろんな面で不足しているんじゃないかと私は思うのですがね。そういう点はやっぱりもっと本気で取り組んでいただかないといけないんじゃないかというのが、まず第一点。  それからもう一点は、これはかって技術協力事業団で幹部職員があんまり天下りしてくるものですから、それに抗議して職員がストライキしたということがありましたですね。これはやっぱり今後こういうふうな事業団のあり方として考えなくちゃいけない問題だと私は思うのです。これは部長さんや皆さんがお答えする問題じゃないかもしれませんが、これは大臣になるかもわかりませんが、いずれにしてもこういうふうな技術協力事業団、そういうのがなくなって今度一本に統括されたわけでございますけれども、こういうふうなものが天下り機関の、何といいますか、そういうようなものであってはやっぱり困るわけです。本気でこういうふうなことに取り組む機関でなくちゃいけないと思うのです。この二点を、まずお伺いしておきたい。
  405. 鹿取泰衛

    説明員(鹿取泰衛君) 研修生の待遇改善の問題でございますけれども、これはわれわれといたしまして非常に重視しておりまして、年々の予算の要求に当たりましては研修生の数をふやすことも必要でございますけれども、むしろ重点を待遇改善ということに置いて努力しております。先生にごらんいただきました大阪の研修センターのほかに現在東京、名古屋、神戸、神奈川、茨城県合計六つのセンターがございますけれども、この待遇、施設の改善並びに研修生に与える給付金の改善について今後とも努力するつもりでございます。  それから第二の問題点、これもわれわれとして非常に努力しているところでございますが、これは何せOTCAができましてから十二年でございますので、OTCAにそもそもお入りになった方はまだ十二年ということでございますので、普通でございますと管理職になかなか届かない。最近課長になれる方がずいぶん出てまいりましてどんどん課長に採用するように外務省としても指導しておりますが、部長以上になりますと経歴その他で若干不足している次第でございます。したがいまして、当初は天下りということばはございますけれども、各省の専門家をある程度活用しておりますけれども、これがだんだんとプロパーの方が育っていくにつれてそういう各省からの人よりもプロパーの人にどんどん管理職になっていただくという方針でやっていくつもりでございます。
  406. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは最後に大臣、特に留学生の問題並びにこういう技術修得に参りました東南アジアの発展途上国の皆さん方の問題というのは、私は今後非常に重要な問題になってくると思います。特に私は、もうちょっとこまかい問題もずいぶん調べてきたんですけれども、きょうは時間の関係でもう言いませんけれども、そういう人たちの処遇の問題やら食事の問題やらいろいろなこまかい問題があります。こういういろいろな不平不満というのもあります。一ぺん大臣もこういう問題も関心を持たれて、一ぺん特にこういうふうな留学生並びにこういうふうな方々の処遇改善についても努力をしていただきたいと思います。大臣の所信をお伺いして私の質問は終わりたいと思います。
  407. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 確かにそういう面のことが非常に大事な問題でございまして、私も実は衆議院の外務委員長をやっておりましたときにこの問題を取り上げまして、外務省にみずから要求したこともございます。そういう立場におきまして、今後その問題については真剣に取り組みたいと思います。
  408. 立木洋

    立木洋君 まず日韓の問題についてお尋ねしたいと思います。  御承知のように、いわゆる狙撃事件があってから、韓国側がこれを最大限に利用して反日感情をあおるというような事態も感ぜられますし、またこういう狙撃事件日本のせいで起こったというふうなことすら言われております。その後、六日にはソウルの日本大使館襲撃事件が発生いたしましたし、また昨日は外相から後宮大使に対する謝罪的な特使の派遣の要求というような強硬な態度が出てきて、異常な事態が続いておるわけです。それで、後宮大使に対しましてこういう田中総理の親書は朴大統領あてにすること、また大物の特使を派遣してほしいということ、また朝鮮総連に対する規制対策の強化を行なってほしいというような問題が出されておるというふうに聞いております。もともと一国の総理である田中総理が親書を出す場合に、事前に相手の意向を聞くというふうなことは私としてはきわめて不見識であるというふうに思うわけですが、こういう幾つかの韓国側の要求に対して大臣は妥当なものだというふうに考えられるのかどうか、その点を最初にお尋ねしたい。
  409. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 日韓関係についていろいろトラブルも生じておりますし、また韓国側からいろいろルートを通じまして要望もきておりますが、しかし結論的に申せばわれわれのほうで受け入るべきものは受け入れる、受け入れることのできないものは受け入れないという基本的態度は変えておりません。
  410. 立木洋

    立木洋君 去る三日の日に、韓国の金駐日大使が日本側に対する申し入れの文書の中で要求されている内容について、日本の現行法のワク内でまず朝鮮総連をコントロールし、次いで解体へ持っていってほしいということが述べられておるわけですが、この事実は承知なさっておるでしょうか。
  411. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 私ども韓国政府のほうからいろいろな要望があることは事実でございますけれども、いま先生のおっしゃったように、朝総連を解体してもらいたいというような要望は受けたことはございません。
  412. 立木洋

    立木洋君 これは四日の日の新聞にすべて報道されております。そういうのをごらんになっていないとしたらきわめて遺憾なわけですが、去る五日の日の衆議院の外務委員会で、韓国側が朝鮮総連の解体を要求してきたらどうするかという質問に対して、大臣がいやしくも内政干渉にわたるようなことを韓国政府考えているとは思わないというふうに述べられておるわけですが、朝鮮の金大使が解体に持っていってほしいということを公然とした記者会見で発表されておる。この事実について大臣自身はどのようにお考えですか、先ほど述べられた外務委員会での答弁との関連においてどうお考えですか。
  413. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 私はいまもなお韓国わが国の内政干渉にわたるようなことを要求するはずはないと、こういう考え方でございます。
  414. 立木洋

    立木洋君 そうしたら、その金大使が述べておるということについては、そういうことが事実であったとすればどういうふうな対処をされますか。
  415. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 私は、金大使の発言としてそういうことを日本政府に要求したということは聞いておりません。
  416. 立木洋

    立木洋君 そういうような内政干渉的な要望が出されてきたならば、明確にそれに対して遺憾の意思を表明するということで了解していいんですか。
  417. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 私は遺憾の意を表する前に、わが国の内政干渉にわたることについてははっきりと拒否しなければならぬと思います。
  418. 立木洋

    立木洋君 それでは捜査の協力について要望が出されてきていると思うのですが、この点について警察のほうではどのような協力をされるお考えなのかお尋ねしたいと思います。
  419. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 具体的にいろいろな問題があるわけでございますが、いままでの捜査の中では犯人が使った拳銃が日本の警察官から奪った拳銃で、それでやったというような関係の事実関係調査の要望、それから犯人が昨年の十一月吉井美喜子というのと一緒に香港のほうに旅行した。また、今年八月韓国に入る際にも同様な形で日本人の吉井行雄という名前で旅券をとっている。それで入ってきたというような事実関係はいかがかと、そういう形で文世光のこれまで自供した内容について日本の警察当局の調べについて協力の要請があったということでございます。
  420. 立木洋

    立木洋君 それじゃ拳銃の件といわゆる旅券の件、それ以外の捜査協力ということはないというふうに考えていいわけですね。
  421. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) そうではないのでありまして、いま具体例をあげたわけでございますが、全体として見てそういう文世光なる犯人がここかなりの期間にわたって朴大統領を暗殺するという形でいろいろと準備をしておったという、そういう一連の経緯について、韓国でもこういう形で捜査をしている、その面についていろいろと日本警察の協力を得たいということでいろいろな事実関係についてこちらとしては国内法で許された範囲内でこれに協力していこう、協力しようと、こういう態度でございます。
  422. 立木洋

    立木洋君 いろいろ聞くところによりますと、国内法のワク内での協力ということではなまぬるいというような反発がだいぶ出されておるようでありますけれども、そういう場合にも毅然としてその点は貫くということですか。
  423. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) もちろんさようでございます。国内法の刑事法規に違反するものでなければわれわれとしては強制的な捜査はできないということは十分承知しております。
  424. 立木洋

    立木洋君 それじゃ、朝鮮総連に対してさらに在留の管理を強化するだとかその他の措置を行なうということは全然考えられていないわけですね。
  425. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) そういうことは警察の権限にはないので、考えておりません。
  426. 立木洋

    立木洋君 じゃ、同じ質問ですが、大臣のほうからお答えいただきたい。
  427. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) これはむしろ法務省の管轄でございますから、外務省からお答えする筋ではございません。
  428. 立木洋

    立木洋君 警備局長にお尋ねしたいのですが、「特別捜査本部はまた、吉井行雄が文と夫人美喜子との間の共犯関係事件前より知っており、吉井自身が北傀、朝総連系分子と接線したという嫌疑もつかんでいる。」というふうなことは事実ですか。
  429. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) その特別捜査本部というのは韓国捜査本部のことだと思いますが、私のほうではそういう事実はつかんでおりません。
  430. 立木洋

    立木洋君 大阪府警内の大統領狙撃事件に関する特別捜査本部……。
  431. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) われわれのほうはそういう事実はつかんでおりません。
  432. 立木洋

    立木洋君 ないというわけですね。
  433. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) そういうことでございます。
  434. 立木洋

    立木洋君 もう一つは、「朴大統領狙撃事件捜査中の日本警察は、狙撃犯文世光の背後に朝総連だけでなくいわゆる「民族統一協議会」主席議長であり、「民団民主守護委員会」顧問である裵東湖と韓青の前委員長・郭東儀が介入したものと見て、捜査中であることが五日明らかにされた。」ということは、そういうことは事実ですか。
  435. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) これは東亜日報に報道された記事だと思いますが、そういうことは全くわれわれは関知しておりません。
  436. 立木洋

    立木洋君 それで先ほどは局長が大阪府警の発表という、「発表」ということばを使われていないと言われましたけれども、明確にここには、文章の中にはないですよ。局長が言われたように。だけれども、文章の見出しに「大阪府警発表、朝総連系分子と接線の嫌疑北傀工作船乗船、北傀指令可能性も。」、「大阪府警発表」ということが明確になされておりますし、もう一つの文書では、「日本警察調査中」というのが見出しに明示されておりますが、その事実はどうですか。
  437. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) ちょっと、出典の関係でございますが、韓国日報のほうは「大阪府警調査」と見出しはなっておりますけれども、内容的にいいますと大阪府警特別調査本部調査によればということだという表現になっておりますね。先生のおっしゃるのはどちらでございますか、東亜日報のほうと二つありますが。
  438. 立木洋

    立木洋君 韓国日報です。
  439. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 韓国日報のほうでございますね。ただ見出しにはたしか「大阪府警調査」と書いてございます。
  440. 立木洋

    立木洋君 「発表」。
  441. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 「発表」じゃございません。「調査」です。それは間違いじゃないかと思います。
  442. 立木洋

    立木洋君 ここに「大阪府警発表」とあります。これはちゃんと字引で引いても「発表」という字ですよ。間違いだなんて言われたら困りますね。
  443. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) それは何日でございますか。私のは韓国日報の八月二十一日付のが入っておりますが。
  444. 立木洋

    立木洋君 八月の十七日の韓国日報です。
  445. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 私のほうは八月二十一日付で申し上げたのでございまして、十七日付のはわれわれ見ておりません。
  446. 立木洋

    立木洋君 先ほども佐々木委員が要求されましたけれども、こういうふうに「大阪府警発表」ということが明確に題目に出されておる。しかも出されておる内容というのは先ほど局長が事実とは違うということを明確にされたわけですから、この問題についてはこういうふうな記事に対して明確に訂正を申し入れるとか措置をとるという考えはないんですか。
  447. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) これは韓国で発行されている新聞でございますし、やはり外務省と相談してどういう措置をとるのが一番よろしいか、まあ外交問題といいますか、日韓両国にわたる問題でございますので、われわれの意見外務省に申し上げますが、最終的には外務省の判断で適切な措置をとるべきだと、こういうふうに考えております。
  448. 立木洋

    立木洋君 同じ質問ですが、大臣のほうのお考えはいかがですか。
  449. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 先ほど佐々木先生の同様の御質問にお答えしたとおり、警察当局とよく御相談した上で善処いたしたいと思います。
  450. 立木洋

    立木洋君 そういう問題というのは明確にやるべきだと思うのです。向こうから申し入れられたことを、できないことはできないと明確にすると言って、いま大臣が言われたばかりですし、間違いがある問題を明確にしないでそのまま放置しておるということがやっぱり事態を解決する上で重大な問題を引き起こしている原因になっているんではないでしょうか。  それで大臣にお尋ねしますが、昨年でしたか、読売新聞の記者の方が韓国から追放されました。そして支社は閉鎖されました。さらに昨年の十月以降朝日新聞韓国に対する輸入を禁止するという措置がとられています。また、韓国入国する場合には新聞や雑誌その他のチェックがきわめてきびしいということも言われておりますが、こういう事態についてどうお考えですか。
  451. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 具体的には昨年のいわゆる読売事件については、まず特派員の身辺保護、これは八月二十三日に韓国治安局に要請しております。また、報道の自由を尊重する立場の宣明を同二十四日に官房長官記者会見で述べております。また、支局再開の希望を表明して同日韓国側に申し入れをしております。このような具体的措置をとっておりますが、いまの現状に変化ない限り、政府といたしましてこれ以上関与する考えはございません。
  452. 立木洋

    立木洋君 そういう申し入れについて、韓国側はどういうふうな回答なり釈明なりがありましたでしょうか。
  453. 高島益郎

    説明員高島益郎君) この申し入れに対しまして韓国のとった措置についての説明があっただけで、その後特別な進展はございません。
  454. 立木洋

    立木洋君 これらの問題についてはやはりよく検討する必要があると思うんですよ。  先ほども申し上げましたが、向こう新聞において堂々と大阪府警発表ということで、大阪府警が全く関知していないということが報道されておる。このことはすべてこれが朝総連と関係があると、それが日本において行なわれたということがすべての韓国新聞によって報道されている。日本からの報道というのは、新聞を見る機会というのが韓国の人々にはないというふうな事態になったら、今日日本において、狙撃事件日本のせいによって起こったというふうな問題を考える場合に、その一因になっているんではないかというふうにも考えられるわけですが、この問題については早急に措置をする必要があるんではないか。問題の解決の上との関連でもう一度はっきりとした御答弁をいただきたい。
  455. 高島益郎

    説明員高島益郎君) この問題になっています韓国側新聞記事そのものについて、警察のほうとよく御相談した上で適当な措置を構じたいと思います。
  456. 立木洋

    立木洋君 きわめてそういう答弁というのは私は不満なんですが、こういう――つまり先ほど大臣が言われましたように、向こうから要求があってもわれわれの方針にそぐわないならば明確にそれを拒否する、いわゆるそういう場合では協調の態度がとれないということを言われたわけですし、さらには私につけ足して言わしていただくならば、言うべきことはやはり明確に述べると、こちらから要求すべきことはきちんと要求するということがやはり外交の姿勢としてはきわめて重要だと思うんですが、そういう問題がいままであいまいにされてきたということが今日の重大な事態をもたらす結果になっておると思うんです。  金大中事件の問題についてお尋ねしますけれども田中総理は、当初、真相を糾明して筋の通った解決を行なうということを言明されてきました。八月の十四日に韓国政府から捜査中止、金東雲の容疑に関しては何ら根拠も示さずそれを否認、捜査本部の解散ということを通告してきたわけですが、これについて日本政府当局としては是認をされるのかどうか、もう一度お尋ねしたい。
  457. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 金大中事件については、われわれはこれまでの行なわれた国内の捜査において、金東雲一等書記官がこれに関与した疑いが濃いと、その他幾つかの点で捜査に自信を持っておるわけでございまして、それに対して一方的に嫌疑がなしというような形ではこれは納得できない、きわめて不満であるという考え方を持っておりまして、これまで外交ルートを通じて被害者の陳述なり参考人の陳述なり、こういうものを求めておりまして、それから金東雲一等書記官のこまかい捜査の結果を求めております。そういうものを相変わらず要求してほしいということを外務省にもお願いをいたしておりますし、また一方、われわれとしても捜査本部というものをこちらは解散しないで、やはり新しい情報ネットの開拓なり、新しい観点からする捜査を進めていくと、こういう姿勢で何とかしてこの問題を解決したい、こういう意欲でやっておるわけでございます。
  458. 立木洋

    立木洋君 そういう要求をされても相手側の捜査本部というのはすでに解散してしまった。そういう時点でもっと具体的に対処していく方法を検討されておられるのかどうなのか、その点についてはいかがですか。外務省……。つまりいまのままずるずるといくんではないかということなんでしょう。要求しても、相手は捜査本部を解散してしまっている。こちらが要求しても向こうから何も示されてこない。示されてこない示されてこないといってまた何年かたっていくんではないか。具体的にこの問題を解決するという考え、めどをどういうふうに考えておられるのかということをお聞きしたい。
  459. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 先ほど警備局長から御答弁申し上げたとおり、わが捜査当局はきわめて不満であるという意思を表明しております。そういう観点から私ども外務省におきましても、この金東雲元書記官の捜査について今後新しい捜査データが出てまいりましたときには、この追加情報をぜひこちらが取ること、報告をしてもらうこと、またさらに詳しい説明を韓国に対して要求することを保留しております。そういう意味において、決してこれが韓国の外務部長官のことばにもありますとおり、一応捜査は中止――サスペンドということばを使っておりますが、これで全体の捜査関係が打ち切られたとは私のほうでは考えておりません。
  460. 立木洋

    立木洋君 金東雲がKCIAではないかという疑いがきわめてあるということが言われてきたわけですが、この点についてはその後の調査でどのように確認されておりますか。
  461. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) そういう関係は、現在においてもわれわれとしてははっきりした形でつかんでおりません。
  462. 立木洋

    立木洋君 本人がKCIAであるかどうかという点については、韓国政府側に問いただしてみましたか。
  463. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 私ども、この大使館の館員の中にそういうKCIAの人がいるというようないろいろ質問がございまして、その質問に基づいて韓国政府に聞いたことはございます。韓国の制度上、大使館の館員として来る場合に、その前身がどのようなものであろうと現在の職務としてはあくまでも大使館の館員である、したがって、そういうことで現実に現在大使館の館員であり、同時にKCIAの職員であるということはあり得ないという回答しかいただいておりません。これ以上われわれとしては追及することはできないわけであります。
  464. 立木洋

    立木洋君 一般的に韓国大使館の館員がどうかということでなくて、金東雲自身がKCIAであったかどうかという事実を問い合わせされたのですか。
  465. 高島益郎

    説明員高島益郎君) これは金東雲の容疑が確定する前の、一般的に大使館の館員の中のそういうKCIA職員との関係についての質問でございまして、したがって、これによって先方の態度はきわめて明白であろうと思います。
  466. 立木洋

    立木洋君 それじゃ金東雲がKCIAであるかどうかということは韓国側に照会していないということですね。つまり、この問題が主権侵害かどうかということをきめる重要なかなめになっているんです。日本の問題、日本外交責任者としてはこういう問題を明らかにする場合に、それを韓国側にどうして照会しないのか、何か照会をしたら都合の悪い事情でもあるんですか。
  467. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 韓国政府の立場は要するにKCIAの職員そのものが職員として大使館の館員としていることは絶対にないということでございます。
  468. 立木洋

    立木洋君 先ほどは金東雲の事件が発生する前に聞いたということでしょう。事件が発生した時点で金東雲の問題について問い合わせていないということじゃなかったですか。それならば、いまあらためて金東雲がKCIAであったのかどうかということを明らかに韓国政府についてそれを照会を要求すべきではないでしょうか。問題をはっきりさせる上でもこのことは重要だと思うんですが、あらためて要求すべきだという点についてはいかがです。
  469. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 私どもはその必要はないと思います。
  470. 立木洋

    立木洋君 この問題、金東雲の問題を解決する上で重要な問題について聞く必要がないと言われるわけですか。それならば、いまの時点でさらに向こう側については何らこちら側の確証ある根拠に対して反証を示さないで、そして金東雲は全く容疑がないということで捜査本部を解散してきた。あの時点で大臣が身柄引き渡しを要求する意思はないというふうに言われましたが、今日の時点の中ではその点については大臣考えいかがですか。身柄の引き渡しを要求する意思は依然としてないのかどうなのか。
  471. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) その当時も身柄の引き渡しを要求した事実もございませんし、現在もそういう考えでございます。
  472. 立木洋

    立木洋君 そうしたら、結局いま国民の感情としてこういう金大中事件というのがどうして起こったのか、一体どうなるのかということについては、たいへんな不満がありますし、今後再びこういう事件が起こらないという保証はないではないかということすら言われているわけですが、こういう事件が絶対に今後起こらないというような保証はあるんですか。KCIAが日本にまだ存在しておると、事件の解決もめどもはっきりしない、再びこういう事件が起こったならば一体どうするのか、そういう防止する保証というのはあるんですか、お尋ねしたいと思います。
  473. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 韓国の金鍾泌国務総理が昨年十一月に日本へ参りまして、田中総理との会見の中で、このような事件は今後再発させないということを約束しております。
  474. 立木洋

    立木洋君 そういう政治的な解決が問題をこじらしてきているのですよ。事実を明らかにして完全な防止措置ができるという体制がとられない限り問題が起こることになるということは明らかだと思うんですよ。つまり、こういうような金大中事件に関しましてもKCIAかどうかということすら確認する必要もないと、さらには金東雲自身の問題についても身柄引き渡しを要求する考えもないと、今後起こらないという保証は韓国側で起こらないと保証すると言っているから起こらない、こういうようなことではだれ一人日本国民は納得しませんよ。こういうような問題を明確にしようとしない態度、なぜそういうことが明確にできないのかということについてはたいへん疑問を感じるわけですが、こういうことが今日の事件を異常な事態にまで引き起こしている経過として私ははっきりあると思うんです。  次の点で、お尋ねしますが、二学生の問題について、先般二学生が公訴されたときに、日本政府にその事実について連絡がこなかった。このとき、外務大臣が遺憾の意を表明されたということですが、それについて韓国側からは何らかの釈明なり意思表示があったのでしょうか。
  475. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 特にございませんが、その後金永善大使とほかの問題で会談いたしました際にその点について金永善大使が触れておりました。
  476. 立木洋

    立木洋君 この二学生の問題については向こう側で起訴状も発表されておりますが、この起訴状どおりであるというふうにお考えですか。警備局長にお尋ねをしておきます。
  477. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) この二学生の日本における行動は国内法に触れるわけでもございませんのでわれわれとしては捜査もしておりません。したがって、それが事実かどうか、そういうことはわれわれとしては全く関心がないといいますか、そういうことを調べたこともございませんし、われわれとしては、確認する方法もないわけでございます。
  478. 立木洋

    立木洋君 それは私はたいへんなことだと思うんですよ。日本の国内で起こった問題として幾つかの事例があの起訴状の中に出されていますね。日本に帰ってきて、いわゆる早川公二氏あるいは何と言われましたか、内田静江さんですかに対して暴力革命の報告を行なっただとか、あるいは日本共産党二名から転覆の活動の指示を受けた、こういう問題があるわけですね。そういう現に日本で起こった問題に関して、これが二学生が犯罪になるかどうかという重要なきめ手にされている、その二学生の問題を――救出してほしいという多くの国民の要求が出されておるときに、それはわれわれとしては関係がないから調べてもおりませんし、事実どうかもわかりませんということでは私はきわめて怠慢だと思うんですが、その点についてはいかがですか。
  479. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 警察は犯罪が起こり、犯罪が起こるおそれがあるという場合はこれは国内法の手続に基づいていろいろと捜査をするわけでございますが、この件についてはわれわれとしては日本国内においてそういうような犯罪に関係するようなことを行なったということも全く承知いたしておりませんので、そういう捜査はいたしておりません。
  480. 立木洋

    立木洋君 スウェーデンやデンマークの政府はこの韓国で起こった知識人の弾圧、学生の弾圧の事件に関して、つまりきわめて遺憾であるという抗議の声明を発表しております。これは日本政府の場合にはその当事者が、二学生というのは日本人なわけですね。ほかの外国ですらこういう事態についての抗議声明を出しておるというのに、こういう問題について日本政府当局が全く放置しておると、起訴状の事実に対して、日本の国内のそういう犯罪の事件、犯罪の内容としての起訴状の中にその根拠があげられているわけですから、これが明確に違うならば違うということを相手に通告する、そういうふうなことの処置をとるということは当然のことだと思うんですが、今後でもそういうことを直ちにとるというふうなお考えはないのですか。
  481. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 先ほど申し上げましたような理由によってそういう考えはいまのところございません。
  482. 立木洋

    立木洋君 これまたきわめて遺憾だと思うんですよ。先ほどの金大中事件についてもそうですが、この二学生の問題についても、日本のいわゆる当局、政府当局がこの問題について解決すべき事実を明らかにし、それに基づいて言うべきことは言い、誤りは正していくというようなやり方をやっていないと。それはどうしてできないんですか。
  483. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 海外の問題については外務省を通じていろいろと連絡があった場合はこれはいたします。本件の二学生についても本人について犯罪歴があるかどうかとか、そういう点については外務省を通じて依頼というか、調査がございましたので、これはそれぞれ調査して回答をいたしておりますが、その他の点についてはそのようなあれもございませんし、先ほど申し上げたような理由によってわれわれとしては現在そのようなことを調査するという気持ちがないわけでございます。
  484. 立木洋

    立木洋君 先ほど外務大臣日本考えている方針までをも曲げて協調するというふうなことは考えていないと、他の議員の質問に対してこう答弁されましたし、やはり言うべきことは言うと、われわれの側、日本側として要求すべきことは要求するということは、私は事態を解決する上できわめて重要だと思うんですが、この点についていかがですか。大臣のお答えをいただきたいと思います。
  485. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) それはもう基本的に私どもの態度でございます。
  486. 立木洋

    立木洋君 先ほど来述べておる問題ですね。金大中事件に関してKCIAかどうかという問題、さらに今日の時点まで事態が解決しない場合に最終的には身柄引き渡しさえ要求する。二学生の問題については起訴状に述べられている事実が反している点については明確に向こうに通告し、それを改めさせる、そういう措置を今後とも行なうべきだというふうに考えますが、いかがですか。
  487. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) そういう面になりますと、必ずしも私は立木さんの御意思に沿うことはできません。と申しますのは、たとえば二学生の問題のごときはやはり韓国の国内において韓国の国内法に違反して起こされた問題でございますから、第一義的には韓国の司法手続によって処理されるべき問題であると、こういう考え方をとっております。
  488. 立木洋

    立木洋君 だけど、それは二学生の問題については韓国の国内法だということですし、金大中事件に関してはこれはこちらから捜査を引き続いて依頼すると。しかし向こう捜査本部を解散しておる。こういう状態ですから、実際には事態というのは解決していかないと思うのですよ。問題は、先ほど言われたようにやはり言うべきことを言い、明らかにすべきことは明らかにするということをやらない限り、問題は解決しない。私はこの点については日本政府というのは何らかの意味でこういう問題を解決することを避けておる。明らかにすることが明らかになれば困るという韓国側の意向もくみ入れて明らかにすることをいまの時点で避けておるというふうに考えざるを得ないような考えまでするわけです。  次に質問しますが、外務大臣が先日朝鮮半島全体の問題に関しまして北からの脅威がない、客観的に見れば北からの脅威がないというふうなお話がございましたが、その後の発言では全面的な戦争が起こるというような意味でというふうに内容が後退されたように感じるわけですが、去る六日の内閣委員会で山中防衛庁長官が、南北朝鮮休戦ラインをはさんでトラブルが起こっていることはただごとではない、異常な事態が起こっていることは注目すべきだというふうに述べておられますが、この差については大臣はどのようにお考えでしょうか。
  489. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 私もその発言の際に、必ずこういう問題は第一義的には韓国自身が判断すべき問題であると、こういうことを述べておりますので、この点山中防衛庁長官とは意見が食い違っておるとは考えません。
  490. 立木洋

    立木洋君 それは意見の食い違っておるということではないと言われますけれども、しかし北からの脅威がないということが、先日の外務委員会の質疑の中でも、緊張緩和が全体の流れだというふうな意味から大臣が述べられたと、しかしこれは異常な事態であるということとは全く事情が違うと思うのですが、しかしこの点については後日さらに質問することにしまして、韓国側からのいろいろな日本側提出される情報に関しては外務省以外に防衛庁としても直接向こうから情報を提供してもらうというような形になっているんですか、どうでしょうか。
  491. 高島益郎

    説明員高島益郎君) ソウルの大使館には当然防衛庁の人も行っておりますし、防衛庁の人は先方の軍関係の人との意見交換等を通じていろいろな情報を得ているというふうに考えております。
  492. 立木洋

    立木洋君 去る三十日に韓国の国防省が全国主要指揮官会議を開いて、日本が最近北の対南工作の基地化しておるというような件について会議が開かれたという報道がありました。その開かれたあとに久松久郎一佐――武官に個人的に通告するという形で話がなされたというわけですが、これは事実でしょうか。
  493. 高島益郎

    説明員高島益郎君) 八月三十日に韓国の合同参謀本部からの求めによりまして、久松久郎書記官、これは防衛駐在官を兼ねておりますけれども、同部の情報局長からメッセージを受けたということは事実でございます。
  494. 立木洋

    立木洋君 こういう問題に関しては大使に直接通告されるというのが私は常識だと思うのですが、こういう話し合いというのはどういう性格の協議になるのでしょうか。話し合いになるのでしょうか。
  495. 高島益郎

    説明員高島益郎君) これは韓国の国防部とのいろいろな事務的その他の連絡は当然防衛駐在官の人がやっておりまして、そういう関係での連絡にすぎません。話し合いというようなものではございません。
  496. 立木洋

    立木洋君 先ほど来質問してきたわけですが、つまり、事実上主権が侵されておるというふうに重大に危惧される問題について明らかにすべきであるという点についても十分な対処がなされてこなかった。そして、反証すべき内容もあるにもかかわらず、それが韓国政府に通告されていないというような事態で結局今日の狙撃事件を見ますと、次々と相手側からは要求がなされてくる。そして、いま日本の方針に反する内容については協力をしていかないというふうなことが述べられていますが、今後の事態の進展ではその点についても私はきわめて疑わしいと思う、いまのような状態で考えるならば。ほんとうに、つまり政府がいま考えておる日韓友好というのはどういう状態を言うわけですか、大臣にお答えいただきたいと思うのです。
  497. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 九年前になりますか、日韓基本条約に基づきまして日韓の友好関係の維持、発展を目的としてまいることがわが国の対韓政策の基本でございます。しかしながら最近における日韓関係の状態にかんがみまして今後はさらにお互いに双方におきまして冷静に、理性的な考え方で、お互いに対等の主権を尊重し合っておつき合いをしていきたいと思っております。
  498. 立木洋

    立木洋君 つまり、いままでも問題にされてきましたが、今日の事態というのは大使館に対する襲撃事件、国旗事件という事態まで起こってきているわけですし、この問題はきわめて重大だと思うのです。それが先ほど述べましたように、一方的な報道によってその事実が明らかにされるという努力が日本側からなされないままに、ますます向こう側韓国政権のもとで反日感情があふり立てられてこういう状態になってきておる。こういうような状態になって重大な事態にまで至った今日、なお引き続いて経済援助をやっていくという考えなのか、こういう経済援助というのはいまの韓国の政権、韓国の人民に対する弾圧を事実上擁護する、それに援護するという形になるのではないかというふうに私たち考えるわけですが、経済協力というのは今後ともこれとは無関係でやはり進めていくというお考えなのかどうなのか、大臣にお尋ねしたい。
  499. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) たびたび申し上げておりますとおり、韓国に対する経済協力は、特定の政権にてこ入れするという目的で行なっておるのではございません。したがいまして、韓国国民の民生安定と経済繁栄のために行なっておるという視点から申しまして、いろいろ事件も起きておりますが、今後も経済協力を打ち切ることは、好ましくないという考えでございますが、ただ現実に申しまして、ただいま韓国から新たなる経済協力の申し出は出ておりません。
  500. 立木洋

    立木洋君 この問題については最後に次のことを要求してこの点の質問を終わりたいと思うのですが、つまり、今日の事態を考えますならば、日本側としては述べるべきことも明確に述べず、要求すべきことも要求されていないという状態の中で、韓国政府のほうからは次々と狙撃事件の問題に関しては、日本の内政干渉に値するかのような要求すら行なわれてきている。こういう事態を今後放置しておくということは、先般の木村大臣が言われました朝鮮の平和的、自主的統一を願うという立場に立っておるんだということを言われましたけれども、事実上南北朝鮮を分断して、一そうその分断を固定化する、こういう韓国政府の意図に協力するものになるというふうに思うわけです。この点で、やはり基礎になっているのは、われわれの主張してまいりましたつまり米・日・韓の、いわゆるきわめて正しくない同盟関係日韓基本条約という問題をもう一ぺんよく考え直して、今日の時点で対朝鮮政策を根本的に転換すべきである、日韓条約は破棄して、経済援助の問題についても改めるべきである、中止すべきであるということを、最後にこの質問では要求したいと思います。  次に、チリの問題に関してですが、チリのアジェンデ政権が、いわゆる転覆されてから一年が経過したわけですが、アジェンデ政府が憲法に基づいて、選挙で選ばれた、適法的に成立した政府であったということは明らかであるわけですが、これを武力で転覆するということはいかなる理由があっても許されないというように私たち考えるわけですが、日本政府としても当然同じような考えであると思うが、その点いかがでしょうか。
  501. 伊達邦美

    説明員(伊達邦美君) お答え申し上げます。  日本とチリとの間は伝統的に御案内のように友好関係を保っておりまして、その政権がアジェンデ政権でございましょうとも、あるいは現在の政権でございましょうとも、日本の立場といたしましては、引き続き政治、経済、文化、万般にわたりまして円滑な関係を維持してまいりましたし、また今後とも引き続いて円滑な関係を維持していけるという立場で臨んでおります。
  502. 立木洋

    立木洋君 じゃ武力の転覆ということを肯定されるわけですね。端的にお答えいただきたい。
  503. 伊達邦美

    説明員(伊達邦美君) いまの御質問は、外国の国内の問題のように思いますので、それに対しまして私どものほうからとやかくの論評は差し控えたいと存じます。
  504. 立木洋

    立木洋君 昨日の新聞に一斉に報道されていますが、コルビー米中央情報局長官がアメリカ下院の秘密聴聞会で、「CIAはアジェンデ政権を統治不能に陥らせるため、ニクソン政権から一九七〇年-七三年の四年間、八百万ドル以上の予算を得て秘密活動を行った」と証言した旨発表されたと、報道されたということが伝えられておりますが、この点については承知されておりますか。
  505. 伊達邦美

    説明員(伊達邦美君) おっしゃいました新聞等で承知しておりますだけでございまして、公的にはまだ確認した情報としては承知しておりません。
  506. 立木洋

    立木洋君 これが事実であるとするならば、他国の政府の転覆活動を行なったという明らかな犯罪行為であるわけですが、これに関して日本政府としては、国際政治上こういうことが許されるというふうにお考えなのかどうなのか、お答えいただきたいと思います。
  507. 伊達邦美

    説明員(伊達邦美君) やはり事実等をよく承知いたしました上で判断さしていただく問題だと考えます。
  508. 立木洋

    立木洋君 大臣に一言そこでお尋ねしたいんですが、これが事実であるということが明確になったならば、日本政府としてはこの問題についてどういう見解をお持ちになりますか。
  509. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) どうもまだその事実関係がはっきりいたしませんので、お答えのしようがないんですが、そういう事実がはっきりした段階で検討してみたいと思っております。
  510. 立木洋

    立木洋君 じゃこの問題に関しては、どうせまた国会図書館にでも資料が参るでしょうし、その時点ではっきりとしたお答えを準備しておいていただきたい。  で、今日、つまりチリにおきましてはたいへんな拷問が行なわれておる、大量の人々が虐殺されておるということが報道されておりますし、憲法も停止され、議会も解散する。さらには政党活動も禁止され、労働組合も解散し、言論の自由もない、集会も禁止されると、こういう事態になっているわけてすか、前回――ことしの春でしたか、衆議院の外務委員会で問題になった場合に、そのとき日本政府の答弁としては「民主的な政権というふうに見ております。」というふうに言われておりますが、今日これほど事態が明らかになった中でチリの政権についてはどのようにお考えですか。
  511. 伊達邦美

    説明員(伊達邦美君) やはり先ほどのお答えのように、よその国の政権をどういうふうに見るかということでございますので、これは軽々にと申しますと語弊がありますが、論評をすべき立場にないというふうに考えます。
  512. 前川旦

    委員長前川旦君) 立木君、時間が参っております。
  513. 立木洋

    立木洋君 すみません、あと一問だけ。  この問題に関して、日本政府はいままでこういう人権侵害の中止も要求しようとしていませんし、そればかりか、六月には資源開発を目標とする政府ベースの調査団を送り、積極的に経済協力を進めるという立場をとっております。また、軍事政権下で銅資源への外国資本進出第一号が政府の承認を受けた日本鉱業社とチリの銅開発基本協定の締結というふうになってあらわれております。日本政府としてはこのようなチリの軍事政権から経済協力あるいは援助の要請を受けたのか。受けたというのであるならば、どういうような形でその援助の要請を受けたのか、その内容について述べていただきたいと思います。
  514. 伊達邦美

    説明員(伊達邦美君) ただいまおあげになりましたこととちょっと離れますですけれども、御案内のように経済関係と申しますか、チリの困難な経済を救済いたしまして、チリの安定につとめるという点では、債権の繰り延べという措置を債権国の間で最近いたしましたわけでございますが、そのように純実務的なものということで合理的な解決をはかることがわれわれの国益にも合致するという考え方から私ども政府は対処してきております。
  515. 立木洋

    立木洋君 この点というのは、先ほど述べたようにチリの軍事政権は事実上人民を弾圧しておる、こういう状態を援助する内容になっておると思うんです。こういう援助の協力内容というのは政府側の資料によって私はいま示したわけですが、今後こういう自由と民主主義をほんとうに守るという立場に立って、このような外国のアメリカ政権がてこ入れして転覆をさしたと、しかもその軍事政権によって人民が重大な被害と打撃を受けておる、こういう政府に対して、日本政府はチリの軍事政権に対する承認を取り消して経済援助の中止、こういうことを私は強く要求して質問を終わります。
  516. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は日台航空路線再開の問題について外務大臣にお尋ねをしたいと思います。  日中の航空定期便の一番機が日中国交回復ちょうど二周年目の来たる九月二十九日に飛ぶことになったわけであります。この点は私も非常に喜ばしく思うわけでありますけれども、それにつけても思うのは、断絶されたままになっておる日台路線の問題であります。日中の国交回復にあたって共同声明の中でわが国は中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを認めたわけであります。しかしながら、中国は台湾と日本との実務関係の継続は了解していたはずであります。こういう基本的な方向に従ってこの航空協定の交渉を行なわれたとするならば、私は日台路線が断絶のやむなきに至ったというのは、まことにこれ残念であるし、また外交的に見てもあまり思わしい成果ではなかったというような感じがするわけですけれども木村外務大臣はこの点についてどのように評価をされておられるますか、この点についてまずお伺いをしたいと思います。
  517. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 日台航空路線が停止されたということ、これはたいへん残念なことでございましたが、しかしながらこの再開につきましては、いま御示しのとおり日中国交正常化の基本的ワク組みの中で行なわれるべきであるということは明らかでございまして、また、そういう意味においてこれは民間取りきめであり、かつ政府が直接関係することのできない点については御了承のとおりでございますので、私どもといたしましては、この日台航空路線が早期に再開されることを強く期待しておると、こういう態度でございます。
  518. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は日本外交政策として中華人民共和国の政府を合法政府として選択したわけです。その方向についてはわれわれも支持をしたわけですから、こういう方針に従って今回の日中の航空協定の交渉の過程で日台路線が全力を尽くしても断絶がやむを得ない、不可避である、こういうことならばわれわれもこれは容認せざるを得ないと思うのです。   〔委員長退席、理事橋本繁蔵君着席〕 しかしながら、この間の交渉の経過を見てみますと、私はわが国外交戦略がやはり周到さを欠いたような気がします。またもう一つは、自民党内部の党内事情というものが災いした面もあったのではなかろうか、だから外交政策的に見て、極言するならばこれは大きなミスであり、失敗であった、このように思うわけですけれども、この点についての大臣見解はいかがですか。
  519. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 私はその点についてわが国外交措置について誤りはなかったと確信しております。
  520. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は一ぺん断絶されたものを再開する努力、またその困難さというものは、この断絶を防ぐための努力や困難さよりもはるかに大きいと思うのです。こういう点から考えても断絶というのは日本と台湾双方にとって非常に大きな不利益であり、不幸である。私が申し上げたいのは、やはり台湾との航空路線が断絶になった理由として、一つは、日台間には正規の外交関係はなかったわけでありますけれども、しかし、それにかわるべき交流協会と亜東関係協会という交渉機関があったわけです。また自民党内部においてもいわゆる親台派といわれますか、台湾とはきわめて親しい人物もおりますし、政治的な交流もあったと思います。それにもかかわらず最後まで台湾の意図をつかみ得ないまま見切り発車といいますか、こういうことにならざるを得なかった。私はここに台湾と日本との意思疎通を欠いた、また日本の台湾に対する認識の甘さがあった、こういう点はやっぱり反省すべきだと思うんです。  それからもう一つは、自民党内の親台派の人々の言動が逆にこういう交渉にプラスになるのではなくて、逆に足を引っ張ったといいますか、こういう人々の言動が台湾側の判断を誤らした、こういうことが言えると思いますけれども、こういう点に対するやはり正当な評価なくして私はこれから日台路線の再開といってもなかなか困難ではないかと思いますが、この点についてどう思われますか。
  521. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) いろいろ御批判のあることはよく承知しておりますが、私どもにおきましては、そういう最大限の努力にかかわらず、日台航空路が停止されたということはきわめて遺憾であると、こう考えております。
  522. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 もちろん当時の外務大臣は大平さんですから、いまの外務大臣の責任ではないかもわかりませんが、木村外務大臣は就任当日の記者会見で日台路線の復活を強く希望しているというふうに述べられておるわけでありますけれども、今後こういうことをやるその衝に当たる大臣としてやはり何らかの見通しなりそういうものがなければならないと思います。  そこで、お尋ねをしたいわけですけれども、この日台路線断絶の原因はどこにあると考えられますか。
  523. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 台湾には台湾の考え方がございます。また、その当時、四月二十日の台湾外交部長の声明等にそれがあらわれておりますとおり、私ども外交措置がもちろん私はこれが正当であったと思いますが、台湾の考え方に従って台湾の判断のもとにこれを停止したと、こういう受け取り方をしております。
  524. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 日台路線を復活するための条件として何が必要と考えられますか。
  525. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) これは先ほど申し上げましたとおり、日中共同声明の基本的ワク組みの中で行なわれるのは当然でございますが、今後民間取りきめのことでございますから、民間の間におきまして日台間の民間的実務関係のいろんなルート、パイプを通じましてできるだけ早くお互いに実務上の不利益を克服しようという努力が前提となると思います。
  526. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、台湾側が一月十八日に、張亜東関係協会理事長から板垣交流協会理事長への回答がきているわけですけれども、この中にやっぱり断絶の理由というものがはっきり出ているように思うわけです。もちろんこの国旗の問題とかあるいは名称の問題というものが大きな問題だと思いますけれども、しかしこの文章を読んでみますと基本的に流れておるものはいわゆる中華人民共和国が台湾と日本との間のことについて干渉する、中国の干渉によって日本と台湾との関係が左右される、こういうことについて非常に大きな反発を示しているように思うわけです。それから中国側も非常に当初の条件から見たら譲歩してきております。これもやはり日本と台湾との間の路線を現実的には認めていこうという姿勢のあらわれだと思いますし、また台湾側も現実にはかなり大きな柔軟な姿勢を示し、譲歩をしておるわけです。こういう中で原則としてお互いにぶつかり合うものがあるわけですけれども、この文面を見てみますと、中国の干渉で日本と台湾との関係が左右される、それが非常に大きく国の権威といいますか、台湾の権威といいますか、メンツをやはり傷つけたと、この辺にあると思うわけです。だから私はその外交交渉のやり方いかんでこれは断絶せずに済んだような気がするわけです。この辺はどう思われますか。
  527. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 当然日台航空路の再開は外交交渉では行なうことができませんので、あくまで民間の取りきめとして民間の実務者同士の間の合意によってこれが再開されるということを期待しておるわけでございます。
  528. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 再開についての見通しはどう思われますか。できるだけ早いほうがいいにこしたことはないと思いますが。
  529. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) そのような性格の交渉でございますから政府においてその見通しについてかれこれ申すことは差し控えたいと思います。
  530. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 七月の八日から行なわれていた日中の海運協定交渉が双方の調整がつかず、一時中断されたわけですけれども、これでネックになっておる点というのはどういう点ですか。
  531. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 先ほどもお答えいたしましたとおり、中断ということでもございません。従来実務者関係で行なっておりました交渉が、一応技術的、専門的な面を終えまして、今後は外交ルートを通じて交渉に移ろうということで、今後は北京において交渉を始めようという段階でございます。
  532. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 新聞等の報道によれば、台湾政府の青天白日旗の撤去をめぐっての問題があるというふうに伝えられておりますけれども、この船の場合の旗というものは航空機の場合と違って、いわゆる標識ではなくて船舶の旗は国籍を示す国旗であるというふうになっております。だからこの問題の解決は、航空協定のときよりも一そう困難ではないかと思われますが、この点はどうですか。
  533. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) まだ具体的交渉の中ではそのような問題は出ておりません。ただ、航空と海運、非常に業態も違っておりまして、海運につきましてはもう御承知のとおり、国際海運、また海運の自由の法則というものが国際的に通用しておりますので、その問題についての取り扱い方については多少私は差異があったと、こう考えております。
  534. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 海運協定の交渉によって、この青天白日旗の扱い方がどのようになるかわかりませんが、これがさらに日台路線復活に影響が出ると思います。この点についてはどう思われますか。
  535. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 私は、この日台路線の復活の問題と海運協定交渉に、かりにそういう問題が出てくれば、国旗の問題とは直接つながりはないと、こういう考えでおります。
  536. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は台湾側が日台航空路線を打ち切ってきた理由の中には、やはり青天白日旗に対する、日本の認識に対する談話がありまして、これがやはり原因になっておると思います。こういう点から考えますと、私は海運協定の交渉におけるこの青天白日旗の扱いが日台の航空路線の復活に影響がないとは言い切れないと思うのです。それだけに海運協定の交渉のタイミングと日台路線の復活のタイミングというのは非常にむずかしいと思うし、また相互に関連があると思うのです。だから大臣のように全然別だというふうには言い切れないと思いますけれども、どうですか。
  537. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 私ども政府といたしましては、そういう意識のもとに交渉は行なわないと、こういう立場でございます。
  538. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 それから日中の定期航空路の開設に伴って、中国機が大阪に寄港することになっておる予定でありますけれども、大阪空港は騒音問題で御承知のように発着回数に制約があります。運輸省は日台路線停止によるあきワクをこの日中の定期航空路の便数に充当するということを言っておりますけれども、これは今後の日台路線の復活に水をさすことにならないかどうか、この点はいかがですか。
  539. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) これはむしろ運輸省のほうからお答えするのが適当だろうと思いますが、中国機の大阪乗り入れというものが、わが国航空機の上海乗り入れと見合うものでございまして、当初からわがほうの立場は明らかにしてきております。したがって、また中国機の大阪乗り入れと日台航空路の再開というものを、この問題二つを関係づけて考えることはあまり適当ではない、こういう考えでございます。   〔理事橋本繁蔵君退席、委員長着席〕
  540. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 十月末に日台の協力委員会の合同会議が開かれる予定になっております。これに岸元総理が出席される予定と聞いておりますけれども、ここでは日台路線復活について話し合われる予定になっておるかどうか、お伺いしたいと思います。
  541. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 日華協力委員会は民間の団体でございますので、政府としてこういう委員会の開催についてかれこれ申し上げる立場にはございません。
  542. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 終わります。
  543. 前川旦

    委員長前川旦君) 他に御発言もないようですから、外務省決算につきましてはこの程度といたします。  次回の委員会は明十一日午前十時から通商産業省関係を行なうこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時五分散会      ―――――・―――――