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説明員(
高橋俊英君) 私はヨーロッパの
事情、またアメリカの
事情を見てまいりましたけれ
ども、時間が短いので十分その
目的を尽くせぬ点はございましたが、一般にヨーロッパでは、西独を除きましてほとんどが価格問題について政府が介入を行なって
おります。法律的な根拠に基づいて
おりますが、フランスにおきましても、たとえば一九四五年でございますから、終戦の年にオルドナンス、まあ勅令でございますが、今日なれば法律でございますが、それをもとにしまして価格規制を行なっている。その価格規制の中に、独禁法当局もその価格規制を行なう
総局の中に含まれているというふうなことでございますので、いささかその点独禁法の本来の
目的とかみ合わない点があるんじゃないかと思います。しかしながら、イギリスのごときは、これまた国の
事情としてはうまくいってない点ありますけれ
ども、それは他の政策がいろいろ欠陥が多いということでありまして、しかし、独禁法そのものについては非常に熱心であると、独禁法の強化は保守党の時代にも行なわれると、また労働党の時代にもこれは行なわれて
おります。とにかくいま強化しようという、強化していくという意欲だけは十分うかがわれますし、その中で独占を形成している業者に対して、事業者に対しては価格の引き下げ命令を実施して
おります。その基準は参考になるかどうかわかりませんが、とにかくそういう価格を引き下げることを命じておる。それからまた西独の場合も、これはむしろ寡占対策と申し上げたいんですが、寡占事業とみなされるもの、これは法律にシェアで規定して
おります。何社がどれだけのシェアを占める場合というふうなシェアで規定して
おりますが、独占ではないが寡占というものに対して十分な法律上の
制度がありまして、ただし、これについてはそれを禁止したり、まあ要するにそういうものの乱用を禁止する、市場支配的地位の乱用を禁止するという法律上の文言でございますが、これによって事実上はそれらの寡占
企業に対する価格引き下げを命じて
おります。
そういった点はアメリカにおいては全々違いまして、
考え方としても、これはあくまで裁判処理——裁判所を多く使って
おりまして、カルテルの排除に関しては。最近はFTC、連邦取引
委員会のほうも、カルテルではありませんが、独占問題に相当介入して
おりますが、従来は司法省が主としてそういうカルテルや独占に立ち向かって
おりますが、そのやり方というものは、先ほど申しましたと
おり、まず民事で訴追しそして悪質なものあるいは再販を再び行なったものに対しては刑事
事件として刑罰を求めると、こういう刑罰を厳にすることによってやる、あるいはその合併についてきわめてきびしいガイドラインをつくって
おります。それは水平合併の場合も垂直合併の場合も、それぞれ日本のいまの合併の基準に比べればはるかにきびしいものであると私は思いますが、根本的な
考え方として、アメリカ流の——これはアメリカは本家であるとも申しますが、アメリカ流の
考え方は、やはり価格に介入するという、独禁当局が価格に介入するという点については、まあまああまり賛意を表しがたいと、したがってそういうふうな
態度に出ない。ところが、ヨーロッパ——欧州のほうの
考え方は、そもそも独禁法というものは、突き詰めていえば当座の
目的、その出てくる現象に対する排除の
目的は結局価格にあるんだ、独占禁止法
違反のあらわれてくるところの結果はみな価格じゃないかと、これは生産制限をしょうが、カルテルをやろうが、独占であろうが、ほしいままに価格を上げるということが国民経済のマイナスになる、国民に対するまたマイナスになるんだという
考え方でありますから、当然独禁当局が価格に介入しても一向不自然ではないし、当然だと、それがむしろ当然だというふうな
考え方に立って
おります。このように大局的に分けまして、私はヨーロッパ流の
考え方とアメリカ流の
考え方に分かれると、したがいまして、日本の学者の皆さんにおきましてもこの両説がございます。それで私
どもは、あえて私は必要最小限度の範囲においては独禁当局が、
公正取引委員会が価格に介入することもやむを得ないのではないか、こういうふうな考えを持ってまいっておるわけでございます。