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1974-08-20 第73回国会 参議院 決算委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年八月二十日(火曜日)    午前十時三十分開会     —————————————    委員異動  八月二十日     辞任         補欠選任      星野  力君     渡辺  武君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         前川  旦君     理 事                 鈴木 省吾君                 橋本 繁蔵君                 松岡 克由君                 小谷  守君                 田代富士男君                 橋本  敦君     委 員                 岩男 頴一君                 木内 四郎君                 永野 嚴雄君                 前田佳都男君                 案納  勝君                 小山 一平君                 須原 昭二君                 和田 静夫君                 峯山 昭範君                 渡辺  武君                 田渕 哲也君    国務大臣        外 務 大 臣  木村 俊夫君        大 蔵 大 臣  大平 正芳君        文 部 大 臣  奥野 誠亮君        厚生大臣臨時代        理        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       内田 常雄君        通商産業大臣   中曽根康弘君        運 輸 大 臣  徳永 正利君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    町村 金五君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       二階堂 進君         —————        会計検査院長   白石 正雄君    事務局側        常任委員会専門        員        佐藤 忠雄君    説明員        公正取引委員会        委員長      高橋 俊英君        警察庁刑事局参        事官       佐々木英文君        警察庁警備局長  山本 鎮彦君        大蔵省主税局長  中橋敬次郎君        大蔵省銀行局長  高橋 英明君        大蔵省国際金融        局長       大倉 眞隆君        文部省体育局長  諸澤 正道君        厚生政務次官   石本  茂君        厚生省薬務局長  松下 廉蔵君        厚生省保険局長  北川 力夫君        建設事務次官   高橋国一郎君        自治大臣官房長  山本  悟君        会計検査院事務        総局次長     鎌田 英夫君        会計検査院事務        総局第一局長   高橋 保司君        会計検査院事務        総局第二局長   柴崎 敏郎君        会計検査院事務        総局第三局長   本村 善文君        日本専売公社総        裁        木村 秀弘君    参考人        全国銀行協会連        合会会長     佐々木邦彦君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和四十七年度一般会計歳入歳出決算昭和四  十七年度特別会計歳入歳出決算昭和四十七年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和四十七  年度政府関係機関決算書(第七十二回国会内閣  提出) ○昭和四十七年度国有財産増減及び現在額総計算  書(第七十二回国会内閣提出) ○昭和四十七年度国有財産無償貸付状況計算書  (第七十二回国会内閣提出)     —————————————
  2. 前川旦

    委員長前川旦君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、星野力君が委員を辞任され、その補欠として渡辺武君が選任されました。     —————————————
  3. 前川旦

    委員長前川旦君) 次に、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  昭和四十七年度決算外二件の審査中、銀行大口融資規制及び中小企業緊急融資等に関する件について、本日、全国銀行協会連合会会長佐々木邦彦君の出席を求め、その意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 前川旦

    委員長前川旦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 前川旦

    委員長前川旦君) 次に、一昭和四十七年度決算外二件を議題とし、本日は総括質疑第二回を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 和田静夫

    和田静夫君 まず、町村自治大臣お尋ねをいたしますが、さき参議院選挙の最中に堀米中央選管委員長が、企業ぐるみ選挙は投票の自由を阻害するという見解を発表されました。この企業ぐるみ選挙について、自治大臣はまずどういう見解をお持ちですか。
  7. 町村金五

    国務大臣町村金五君) 先般の参議院選挙に際しまして、いわゆる企業ぐるみ選挙ということがたいへん世上の問題になったということはただいま御指摘のとおりでございますが、私どもは申し上げるまでもなく、国民といたしまして個人もまた企業もともに選挙に参画をする政治的な自由を持っておるものと、かように考えておるわけでございます。したがって、いわゆる企業ぐるみ選挙と申しましても、その内容は千差万様でございますので、企業ぐるみ選挙ということだけをもって直ちにこれを違法なものであるというふうには考えていないのであります。要は、その企業ぐるみ選挙と言われておるものの内容がどういうものであるか、それが法に違反をしておるというものであれば当然これは処罰をしなけりゃならぬということは申し上げるまでもございませんけれども、単に企業ぐるみ選挙というだけで現在の公職選挙法等に抵触するものだと、かようには私は考えておりません。
  8. 和田静夫

    和田静夫君 金権選挙と言われたんですね、今度の参議院選挙は非常に残念なことですが。しかしこれを契機としまして、自民党の一部にも現在の政治資金のあり方について批判の声があがっております。で、業界筋からは政治献金の自粛の動きというものが電力やガスなどという形で続々出ています。そういうことが顕著になっているわけですが、政治資金規正のいわゆる行政当局者ですね、自治大臣は。で、こういう現象をどう判断されますか。
  9. 町村金五

    国務大臣町村金五君) このたびの参議院選挙に際しまして、金権選挙であるというような世上批判がたいへん大きく流れたということは、私どももよく承知をいたしておるところでございます。元来、選挙というものに対しまして、金で選挙を進めていくというようなことは、これはまことに許されがたいことだというふうに私どもも考えておるわけでございます。ただ御承知のように、現在の選挙制度のもとにおきましては、たとえばこれを全国区に一つ例をとって考えてみましても、全国区から立候補される方は、当然全国区に対しましてあらかじめ立候補の用意のあるようなことを広く周知せしめることによってはじめて選挙に臨み得るということに相なるのでございまして、現在行なわれておりまする選挙の事前におきまして御承知のようにかなり全国的にビラが張りめぐらされるというようなことを一つ取り上げて考えてみましても、実はこのためにばく大なお金がかかるということはこれはあらためて申し上げるまでもございません。したがって、そういうような事態、いわゆる全国区という制度、あるいは全国区におきましてやはりいまのような程度のことをやらなければならぬ、そうでなければ新人はなかなか選挙に臨みがたいというようなことでございますと、当然お金が相当にかかる、したがって、これをこのままに放置しておきまして、ただ金のかかるのはけしからぬと言うておるだけでは真の問題の解決のゆえんにはならないんじゃないかというふうに私どもは考えておるのでございます。これらの問題は、やはり金のかからない選挙制度というものを真剣に取り上げてこれを実現するという問題を解決いたしませんと、単に金がかかる、けしからぬと言うだけでは容易に私は問題の解決にはならないのではないかというように考えておるところでございます。
  10. 和田静夫

    和田静夫君 大体あなたのお考え方というのは、それぞれ読んでそういう答弁だろうと思うのですが、この際、やはり自治大臣として政治資金規正法の改正を、いまのような考え方じゃなくて、選挙制度改革と切り離してやる、そういうことを断行しなければならないと思うんですが、そういう意思はありませんか。
  11. 町村金五

    国務大臣町村金五君) 私ども選挙にばく大なお金がかかるという現状は、何とかしてこれはすみやかに解決はしなければならないきわめて重要な問題だというふうに考えておるわけでございます。したがって、いま和田議員指摘になりますように、これを選挙制度全般改革といったようなものと切り離してやってはどうかという御所見でございます。この点も私どもはさらに検討をいたさなければならぬ、こうは考えておりますけれども、しかし何と申しましても選挙それ自体に金がかかるような状態にあることをそのままに放置しておきまして、片方だけを抑制しょうといたしましても、なかなか実は実効があがってこないのではないかというふうに考えてもおるのでございまして、この点はひとつさらに十分検討をさせていただかなければならぬことであると考えております。
  12. 和田静夫

    和田静夫君 第八次の選挙制度審議会を開く意思をお持ちですか。あるとすれば、それはいつごろになるわけですか。
  13. 町村金五

    国務大臣町村金五君) 御承知のとおり、第七次選挙制度審議会におきまして最終の答申を得るということはできなかったのでございますけれども、第七次の選挙制度審議会はかなり精力的に各般の問題を取り上げていただき、相当な成果をあげた実は中間的な報告が出ておるということは私が申し上げるまでもなく、御承知のところでございます。しかもその実現について強い要望もしておられるというのが第七次選挙制度審議会状況であったわけでございます。したがいまして、私どもはそういった報告等もございまするので、今後選挙制度全般の問題を取り上げてまいりまする場合に、これをこのままにしておきまして、ただ、直ちにすぐ第八次の審議会を開催するということに踏み切るかどうかということにつきましては、なお政府部内におきましては最終の結論をまだ出すまでに至っておりません。今後、この点もひとつあわせて早急に検討をいたしたいと、かように考えております。
  14. 和田静夫

    和田静夫君 次に国家公安委員長に尋ねますが、さき参議院全国区で糸山英太郎氏の選挙違反新聞紙上をにぎわしています。そして、警察はこの違反事件については再三記者会見などをされている。報道にたいへん協力をしている。その陰に徳島地方区における後藤田派選挙違反が何か隠れてしまっている感じであります。  そこで、お尋ねをしますが、後藤田派検挙者の数は何人ですか。そのうち逮捕者あるいは指名手配者の数はそれぞれ何人ですか。
  15. 町村金五

    国務大臣町村金五君) 政府委員からお答えさせます。
  16. 佐々木英文

    説明員佐々木英文君) お尋ねの件お答え申し上げます。まず検挙の合計でございますが、八月六日現在、検挙件数が百四十九件で、検挙人員が二百六十六名でございます。そのうち逮捕が二十四名となっております。その内訳でございますが、買収が百四十五件、二百六十二名、このうち逮捕が二十二名でございます。この買収内訳でございますが、現金買収が百十四件、九十二名、逮捕者が十二名、こういうことでございます。お尋ね指名手配につきましては、現在三名を指名手配中でございます。
  17. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、この買収に使われた金額というのは大体幾らと踏まれたのですか。
  18. 佐々木英文

    説明員佐々木英文君) 買収に使われました金額は、私どもで把握いたしておりますところでは二百四十三万五千三百五十円でございます。
  19. 和田静夫

    和田静夫君 糸山派の場合には実際に警察がつかんだ買収金額と、それに基づいて警察が全体として幾らと踏んでいるかという金額と、両方が新聞に発表されてますが、この後藤田派についてはそういう形でちょっと示していただけませんか。
  20. 佐々木英文

    説明員佐々木英文君) どのくらい買収に使われたかということにつきましては、私ども現在把握いたしておりません。
  21. 和田静夫

    和田静夫君 国家公安委員長は前警察庁長官選挙に出られて、こうして大きな選挙違反を起こした、これについてはどういう感想をお持ちですか。
  22. 町村金五

    国務大臣町村金五君) 選挙違反というようなものは、その候補者がだれが行なうにいたしましても、まことに遺憾千万のことであるということは申し上げるまでもございません。したがって、警察としては選挙違反取り締まりには常に厳正公平に、その人の地位なり経歴というようなことには何らかかわりなく不偏不党に対処するという態度をもって常に臨んできておることは申し上げるまでもございません。ただ、御指摘後藤田派のごとき、かつて警察最高首脳部にあり、こういった問題については特にきびしく違反等のことは取り締まりをするという総元締めにあった方が、こういった事件を起こしたということは、われわれとしてはまことに遺憾なことであったと、こう考えておるのでございまして、したがって、そういう立場の方でございましても、私どもとしては厳正な態度をもって臨んでおるんだということを申し上げておきたいと思います。
  23. 和田静夫

    和田静夫君 かつて柏村警察庁長官が、警察という取り締まりの任にあった者は選挙などというはでなことはやるべきではないという、そういう意思を披瀝されたことがありますが、今日の状況における選挙というものの実態、それは先ほど大臣のほうが答弁をされたような実態ですね。それを考えながら、この五月十三日に後藤田さんがたとえば徳島県警本部長室にのこっとあらわれる。で、会議は中断をされる。そういう問題が徳島県議会で問題になって取り上げられていますが、前警察庁長官といった方が実際問題として警察が完全にいまの答弁ではありますが、第三者として扱うことは困難だ、扱えない。そういった問題を一方で踏まえて、大臣はこういう点についてどういうふうにお考えになりますか。
  24. 町村金五

    国務大臣町村金五君) たいへん微妙なお尋ねでございますが、確かにかつての自分らの上司であったという者が、たまたま選挙戦に出る。しかも、違反の事実があらわれたということになりますれば、その取り締まりの衝に当たるものとしてはたいへん実は気持ちの上では苦しい状況になるであろうということは、私どもも重々察しておるところでございますけれども、しかしそれは個人の私情であり、選挙違反に対して厳正な態度をもって臨むというのは、これは警察本来の職務でありますので、私は徳島県警察というものはそういう点のけじめをきちんとつけて厳正公平にやってくれておる、かように信じております。
  25. 和田静夫

    和田静夫君 六月二十七日の徳島県議会総務委員会で、選挙にからんで最近有力な暴力団の幹部が徳島市内に続々と集結しているとのうわさが聞かれるが、その目的や人数をつかんでいるのかという質問に対して、徳島県警田中刑事部長は、暴力団の出入りが激しくなっているとの情報はすでにキャッチをしている。で、恒常的な暴力団摘発選挙違反との両面から鋭意内偵中だと答えたわけです。そこで、その後の調査結果をここで報告をしていただきたいと思います。
  26. 佐々木英文

    説明員佐々木英文君) ただいま御指摘いただきましたように、六月二十七日に開かれました徳島県議会総務委員会におきまして、板東荘次委員からただいま御指摘のような御質問がございまして、当時、徳島県警田中刑事部長がそういうふうなうわさは確かにある。したがって、暴力団取り締まり、それから選挙違反取り締まりという両面から捜査をやってまいるという御答弁を申し上げているわけでございます。その後、選挙が終わりますまで継続して鋭意この問題につきまして捜査いたしたわけでございますけれども、そのような事実はなかったということが明確になっております。以上でございます。
  27. 和田静夫

    和田静夫君 自治省官房長にちょっと聞きますがね、この徳島久次米健太郎激励夕べというのが五月の二十二日にあった。で、その五月二十二日という日を選んで、あなたが徳島市長自治省に呼んだいきさつ、これを聞かせてください。
  28. 山本悟

    説明員山本悟君) ただいまの御質問の件でございますが、田中総理が五月の中旬に徳島へ行かれました際に、山本徳島市長から地方行財政問題等につきましての陳情があったようでございます。その内容等につきまして自治省所管関係であろうから県から事情を聞いておくようにということが自治省のほうにおりてまいりましたので、私のほうの、自治省のほうから徳島市に対しまして、市長都合のよいときに、上京をされたおりにお立ち寄り願いたいと、こういう電話連絡をいたしたわけでございます。  そういたしましたところが、二十一日の、たぶん午前中であったと思いますが、徳島市長のほうから私のほうに対しまして、連絡を聞いたので二十二日の三時ごろに参りたいと、こういう御連絡を承っていたわけでございます。ところが、その後、二十二日という日はいろいろな事情があって、その日でなきやならないのかということが他の方面から御連絡がございましたので、御連絡と申しますか、お尋ねがございましたので、こちらは日時を特定しているわけではないから、御都合のよいときでけっこうでございますという旨を申し上げ、かつその点をもう一度徳島市のほうにも御連絡をいたしました。その結果、ただいま御質問のございました二十二日には市長は参られませんで、後、六月七日に上京をされた際に自治省に参られまして、徳島市の行財政問題について各種の陳情があった、かような事情でございます。  以上でございます。
  29. 和田静夫

    和田静夫君 かなり時間がたっているから、私も選挙中だったからそのときにいろいろ聞くわけにはいきませんから、だんだんだんだん話が変わってきているんですが、私の調査に基づけば、あなたの電話は、東北出張帰りにという言い方が明確に入っていた、結果として五月二十二日に日時を指定するという形にあのときはなった。徳島市長東北出張に行くということをどこであなたは知ったわけですか。
  30. 山本悟

    説明員山本悟君) 私ども電話をいたしました際に出ていらっしゃった、たしか助役さんだったと思いますが、市長は現在いない、先日より出張中であると。それならばお帰りのときにでもお寄りになるのならお立ち寄りいただきたいということでございまして、あくまで日時等を指定した事実はございません。
  31. 和田静夫

    和田静夫君 総理、そしてどこどこ省の次官、そして官房長、こういうルートで指示が出て、自治体の長に連絡をするということ、呼び出すということ、これはよくあることですか。
  32. 山本悟

    説明員山本悟君) よくあるかと仰せられますと、必ずしも常にやっておりますということではございませんが、そういうルートでやっておかしいこととは思っておりません。
  33. 和田静夫

    和田静夫君 おかしいことだと思っていないと言っても、あなたはある週刊誌に、たいへん異常なことだと発言されていますよね。
  34. 山本悟

    説明員山本悟君) 常にそういうことが、毎回毎回総理が行ったときに会っているのかという御質問でございましたので、それは常にそういうこととは思っていないというような意味で申し上げたと思います。
  35. 和田静夫

    和田静夫君 建設省事務次官来ていますか。——建設省事務次官にお聞きをしますが、自治省の場合はいま言ったように、官邸から次官連絡があって、こういう形でもって官房長と、こうなっていますね。いまあなたは事務次官ですけれども、当時は建設省技監であられたわけですね。そこで、あなたの場合は直接どうも連絡があった、総理から、官邸から。それはなぜだとお思いになりますか。
  36. 高橋国一郎

    説明員高橋国一郎君) 御指摘のとおり、日ははっきり覚えておりませんが、五月の中旬ごろ総理徳島を訪問されまして、徳島市長がマイクで市民を代表して陳情されたそうでございまして、文章でございませんので内容は詳しくは覚えていないが、建設省所管の問題が非常に多かったから、建設省おりを見て、いつでもよろしいということでございましたが、おりを見て徳島市長実情をよく聞いてくれないかと、もし善処できるものは善処してやっていただけないかということを秘書官から電話がございました。  以上でございます。
  37. 和田静夫

    和田静夫君 そのときに徳島市長あてに打たれた電文を読むだけ読んでください。
  38. 高橋国一郎

    説明員高橋国一郎君) 徳島市長に打ちました電文は、「御協議いたしたい件あり、建設省技監室迄御出頭願います。」、以上でございます。
  39. 和田静夫

    和田静夫君 で、日時はどういうふうに指定になったのですか。
  40. 高橋国一郎

    説明員高橋国一郎君) ただいま電文読み上げたとおりでございまして、日時は指定しておりません。
  41. 和田静夫

    和田静夫君 そこで一あなたはある雑誌で、この電報は二十一日の朝に徳島へ届いたと思うのですが、そのとき、日も時間も指定しなかったのです。そうすると先方の秘書課長から電話があり、いつ出頭したらいいかと言ってきたので、二十三日と二十四日は出張でいないので、二十二日か二十五日ではどうかと言ったら、向こうでそれでは二十二日の夕方にしてほしいと言ってきたのです。で、その日の午後四時半としたのです、とまあ述べておられますが、この事実に全く相違ありませんか。
  42. 高橋国一郎

    説明員高橋国一郎君) 間違いございません。
  43. 和田静夫

    和田静夫君 私が徳島市役所秘書課長に問い合わせた際の回答と若干これは異なるのですね。あなたは徳島市長東北出張の途中、二十一日に上野に着くということを知った上で、二十二日には在京するということを知った上でああいう電文を打ち、電話でも話したのではないですか。
  44. 高橋国一郎

    説明員高橋国一郎君) 全く出張の日程は知りませんでした。
  45. 和田静夫

    和田静夫君 これ、自治大臣というか、選挙を担当する大臣として、いま一連のこのやりとりの中でおわかりのとおり、五月二十二日というのは、まあ私は地方行政委員会委員長もつとめられたし、なじみも深いわけですが、決算委員会にも同席を長くしました久次米健太郎さんという一人の政治家、この一人の政治家国会報告などというような形のものをまあまじえながらのおそらく激励夕べでしょう。その日に、地元では、最も、現役の市長でありますから影響力をお持ちになっている徳島市長を、総理から各省、自治省建設省に対して、五月二十二日焦点を合わせて呼び出させる行為というものを行なった、これは国家公務員法の百二条一項ですね、に抵触をする行為、そういうある特定の政治家に対して不利益を誘導する目的を持って、いわゆる高級公務員政治的中立性を侵させるようなそういう形のものを田中総理が行なった、こういうふうに考えなければならないと思うのですがね、いかがですか。
  46. 町村金五

    国務大臣町村金五君) 私は実はその問題についてはほとんど詳しい事情承知をいたしておりませんので、たいへん確たるお答えを申し上げにくいわけでございますが、いま和田議員関係省の係との間の御質疑を伺っておったわけでありますが、和田議員によりますれば、そういった久次米議員の政治的な大会に、市長さんを出させないための一つの手段がそこに講ぜられたのではないか、こういう感じを持ってのお尋ねのように伺いましたが、私ほんとうの実情をよく承知しておりませんために、あるいは私のお答え、必ずしも適正を欠くかもしれませんけれども、いま関係の両省の係官の答弁を聞いておりますると、どうもそれほど私は深い意図を持って行なわれた特別のそこに策謀のようなものがあったというふうには実は私は感じなかったわけでございます。
  47. 和田静夫

    和田静夫君 自治大臣は、時間ですからあと三問くらいでやめますが、自治体のいわゆる超過負担の解消についてですがね、これは自治大臣と大蔵大臣と両方から聞きたいのですが、今次予算編成でどういう態度をおとりになりますか。
  48. 町村金五

    国務大臣町村金五君) 今日地方自治体のいわゆる超過負担問題ということは、申し上げるまでもなく、きびしい地方財政の中におきまして、きわめて重大な問題であることは申し上げるまでもございません。したがいまして自治省といたしましては、できるだけこの超過負担を解消する必要があるという立場に立ちまして、すでに、特に超過負担が大きいと目されておりまするような事業、たとえて申しますれば公共文教施設であるとかあるいはまた公営住宅の問題であるとかあるいは保育所であるといったような、特に超過負担が多いと言われておりまするようなものにつきましては、これをできるだけひとつ解消をしたいということで、目下その調査を急いでおるわけでございます。その調査に基づきまして、関係省庁とこの調査についてはもとより、関係省庁と共同してやっておるわけでございますから、関係省庁との間に合意に達しましたものについて、これは大蔵省に要求をしてまいる。そして、超過負担をできるだけ解消したい、こういう考えで臨んでまいりたいと考えております。
  49. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 御指摘の超過負担問題につきましては、従来からこの解消につとめてきたところでございます。昭和四十二年、三年及び四十七年度におきまして実態調査を行なって、超過負担解消のための所要の是正措置を講じてまいりましたことは御案内のとおりでございます。また超過負担を新たに発生させてはならないという点を配慮いたしまして、四十八年度における建設資材の異常な価格の高騰に対処するために、四十八年度中に三回にわたりまして単価の是正をはかってまいりましたことを和田さん御承知のとおりでございます。  四十九年度でございますが、これは地方自治体のほうから実施見込み単価というものが出ておりますが、これとわれわれのほうの補助単価とを対照いたしますと、相当顕著な聞きが見られるわけでございます。そこで自治省関係各省と協力いたしまして実態調査を目下行なっておりますので、その結果、解消すべき超過負担があることが明瞭になってまいりましたならば、従来と同様所要の調整措置を講じなければなるまいと考えております。
  50. 和田静夫

    和田静夫君 全国革新市長会の代表が、去る十日に自治大臣に会った際に、この超過負担解消について国と地方自治体との間で協議委員会を設ける。そういうことについて検討を約束されました。この点について自治大臣並びに大蔵大臣見解を承ります。
  51. 町村金五

    国務大臣町村金五君) 先般、革新市長会の関係者の方々がお見えになりまして、超過負担を解消するためには地方自治体の市長を中心とする一種の単価委員会といったようなものを自治省につくってもらう。そして、その補助金決定に参画をさせてもらうというようなひとつ委員会のようなものをつくってもらえないか、こういう御陳情があったことは確かでございます。  で、私はまあ初めての御提案でございますので、ひとつ検討いたしてみようというふうに申したわけでございますが、御承知のように自治省という役所は、そういったいま超過負担が起きておりまするようないわゆる補助負担事業というものの補助金を主管をいたしておりまする役所ではないわけでございます。したがって、超過負担の問題については関係省実態をよく把握をし、実勢単価と補助単価が一致するようにしてもらわなきゃならぬという、私は責任を関係省が持っておるものとかように考えておりますので、そういった事柄につきまして自治省がそういった委員会を設けていくと申しましても、自治省には実際上の権限がその点についてはないわけでございます。そういった委員会を自治省に設けましても、それは実効が必ずしもあがるというわけにはまいらないのでありまして、むしろ私は関係省におきまして実態を十分に把握をしてもらう。そして要は超過負担が起こらないようにするためにはどうあるべきかということについて、今日の物価の上がっておる時期でございまするので、従来以上に各関係省はこの点をひとつ真剣に御努力を願う、大蔵省もまたこれに対処していただくということが、実際には超過負担を解消していく上において一番私は必要であり、また適切なことではあるまいか、かように考えておるところでございます。
  52. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 先ほどもお答え申し上げましたように、大蔵省といたしましては、常に必要に応じて実態調査を行ない、その結果に照らして単価の是正と超過負担の解消という方向で努力をしてきておるわけでございまして、今後も、関係各省庁と十分協議いたしまして、このラインで努力を続けてまいるつもりでございまして、自治体側とあらためて協議の場を持つという必要を私は感じおりません。
  53. 和田静夫

    和田静夫君 これは来月の五日に地方行政委員会でもう一ぺんゆっくり超過負担問題、あなたはきょう時間がないようですから、見解だけ承っておきます。  最後にあれですが、けさ報道によりますと、山中防衛庁長官も田中内閣にたいへんな不満を持ってやめるという発言をされていますが、自治大臣というよりも国家公安委員長として、今度の朴大統領狙撃事件の問題について後ほど引き続いて外務大臣といろいろ論議をいたしますが、あなたは席をはずされますので一言だけここで承っておきたいのですが、いわゆる使われたところのピストルが日本の警察から盗まれたものであった。こういう形なんですね。私は昨日田中さんが韓国に行かれた、昨日の論議もありましたが、異例な状態というのはたいへん首をかしげているんですが、とにかく外交的な問題として盗まれたピストル、そしてそれの所管大臣、こういう関係においての処理のしかたというのは、もっと違った形で田中内閣はあるべきだったろう。私は町村自治大臣が田中内閣をおやめになる、辞職をされる、そういう形のことが今日の外交問題の処理においては、ある意味では的確なやり方ではないだろうか。内閣は個別にこの問題を処理をする。金大中事件は金大中、狙撃事件は狙撃事件、あるいは太刀川君などの問題はそれというような見解のようでありますが、いまの私の見解について町村国家公安委員長はどういうお考えをいまお持ちですか。
  54. 町村金五

    国務大臣町村金五君) このたびの朴大統領狙撃事件、そして夫人の殺害事件というまことに重大な事件が起き、しかも、それに用いられました凶器の拳銃は、大阪府の警察官の所持いたしておったものであるということにかんがみまして、私どもも実は非常に申しわけなく重大な責任を感じておるところでございます。したがって和田議員によりますればこれによって私が引責辞職すべきだと、こういう端的の御指摘でございます。確かにそういう方法もあるいはあり得ることと私も考えておりますけれども、当面私といたしましては、そういった責任のとり方をいたしませんで、事態の究明に全力をあげる、そしてこの事態が御承知のようにいろいろなところに非常に重大な影響をもたらしておりますが、私どもはまずもって事件の究明にひとつ全力を尽くすということをもって当面私のとるべき態度である、かように考えて今日に至っておるところでございます。
  55. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっと自治大臣、一問。いま官房長官からお聞きをしますが、その前に自治大臣、人事院勧告に伴う地方公務員の給与改定に際してその完全実施については当然責任を負うべきだと思うのですが、それはよろしいですね。
  56. 町村金五

    国務大臣町村金五君) 私が申し上げますまでもなく、地方公務員の給与引き上げにつきましては人事院勧告のいわゆる国家公務員に準じて行なうということになっておりまするので、現在地方団体におきましてはその財源にことを欠くというところが相当にあるわけでございまして、しかも相当大幅の金額になっておりまするので、この処理のためには相当の措置をしてあげなければならぬということに相なっておりまするので、目下そういった点につきましては大蔵省とも相談をいたしておるという段階でございます。
  57. 和田静夫

    和田静夫君 そこで官房長官、人事院勧告についての閣議決定がおくれていますがね、完全実施をする御意思ですか。
  58. 二階堂進

    国務大臣(二階堂進君) 従来も政府は人事院勧告の取り扱いにつきましては完全実施をやってまいっていることは御承知のとおりでございます。ことしの人事院勧告を受けまして政府といたしましてはそういう立場で完全実施をするという方向で、まあ財源も相当必要なものでございますから、大蔵省、自治省との関係においてもいろいろ協議を願っておりまして、そういう方向で一生懸命検討をいたしておるという段階でございます。
  59. 和田静夫

    和田静夫君 そこで給与担当の総務長官が公務員共闘会議の代表と会った際の約束として、十六日ごろに総務長官が給与関係閣僚会議の招集、これを早急にやるべきであると思うのでということで責任者としての官房長官に申し入れを行なったと、これはいつ開かれますか。
  60. 二階堂進

    国務大臣(二階堂進君) 先ほど申し上げましたとおり、また自治大臣も先ほど申し述べましたが、財源が相当必要なわけでございまして、大蔵省を中心といたしましてその財源の問題等についていま真剣に検討をいたしておる段階でございますが、そういう関係もございまして、別に他意があって延ばしておることではありませんが、今月中にはぜひ関係閣僚会議を開きましてそして政府の方針をきめたい、こういうふうに考えております。
  61. 和田静夫

    和田静夫君 外務大臣お尋ねをしますが、政府は、朴大統領に反対をしてアメリカに亡命をしている林昌栄あるいは金元韓国国連大使、元ソウル市長夫妻の入国査証、この発給をおくらせているそうでありますが、どういう理由によってですか。
  62. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) もちろん故意におくらせているわけではございません。ただ両名が現在入国申請中でございますが、韓国の有効な旅券を持っておりません。したがって無国籍の扱いでございます。通常無国籍の場合にはその審査に相当な日数を要するのが常でございます。そういう意味でおくれておるわけでございます。
  63. 和田静夫

    和田静夫君 政府は同じくアメリカへ亡命中のジャーナリスト文女史が金大中事件一周年記念に東京で講演をしようとしたのを入国目的違反だとして中止させたそうですが、これについて韓国の筋から何かの圧力が加えられたんではないですか。
  64. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) さようなことはございません。これはもう法務省の立場でそういうことがあったわけでございます。
  65. 和田静夫

    和田静夫君 この文女史が二、三日前に出された雑誌で金大中氏の事件に触れて、「「金氏を殺してはならない」これはたしかにアメリカ政府の意向であった。だが、これを単に無電だけでなく、快速艇船上にヘリコプターを送って強力に説得した役目を引き受けたのは誰か」ということに触れてですね、「アメリカ政府筋によると、驚くべきことだが、このヘリコプターは、自衛隊所属のものだったのだ。」と述べているんですがね、こうした事実はありましたか。
  66. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) そういう事実は聞いておりません。
  67. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) そういう事実全く承知いたしておりません。
  68. 和田静夫

    和田静夫君 金大中の問題に入るんですが、金大中氏事件で昨日いろいろ論議がありましたが、一つ確かめたいのは、警察としてはどんな調査をやっているんですか、国内的な問題としては。どういうことになっているんですか、そのほうは。
  69. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 金大中事件は昨年の八月八日発生いたしまして、その後麹町署に特別捜査本部を置きましてかなり多数の人員をかけて、犯行現場からどのような形で脱出したかということ、特にこれは金大中氏の韓国治安当局に対する陳述要旨、これが外務省を通じて送られてきておりますので、そういうものに基づいて捜査を進め、したがってそれによりますと、関西方面から出国したということでございますので、その東京から関西に至るルートですね、それに使われたと思われる自動車の路線、それからアジト、それから連行した船舶、船舶までいく間にモーターボートを使っているということでございますので、その方面については特に関西関係警察の努力を促しまして、警視庁と協力して過去一年間にわたって捜査を続けてきております。  具体的に申しますと犯行の現場にいた疑いが非常に強いということで当時の韓国大使館の金東雲一等書記官の任意出頭を求めたわけです。これは御承知のような経緯によって外交特権もあり、当時日本にいなかったということで現在まで出頭を見ていないわけでございます。ただ連行車両は横浜領事館におった劉永福副領事の車がその疑いが非常に強いということで、これも事実の再確認といいますか、こまかい情報を韓国当局に求めておりますが、これも回答がないということになっております。それから船舶の関係も当時韓国に出航した船の百三十数隻について調べております。その非常に疑いの濃い船舶についても韓国当局に再三にわたって韓国内における取り調べの状況について報告を求めておりますが、これも満足するような回答が得られないというような結果になっております。それからアジトについても関西で約二千カ所について調べまして、大体これじゃないかというのを二、三しぼってきておりますが、まだはっきりした立証という段階までも至っておらないわけでございます。  そういうようなことで、一年間かなり広範な捜査を展開いたしたわけでございますが、いま言ったように、何といいますか一つのやむを得ない障害というような形で捜査が伸びないという点もこれあり、また、多数の捜査員を続行して行なうだけの材料も現在ではなくなってきたということで、まあ八月初旬、警視庁のほうは捜査本部を若干縮小して、今度は長期捜査体制というふうに切りかえてはおりますけれども、依然として基本的な捜査員は残しまして、さらに情報の分折、新しい情報の収集、そういうものにつとめております。  さらに、韓国のほうは、先般一応捜査はこれで打ち切るというような趣旨を連絡をしてまいりましたけれども、われわれとしてはその内容についてきわめて不満でございます。これまでの捜査に自信を持っているということで、さらにその内容について検討して、外務省と相談して、また詳しい点について韓国側に回答を求めるという姿勢でございますが、これからまた何らかの新しい情報、韓国側からの通報があれば、さらに捜査体制を拡充して捜査する、こういう体制でいま長期体制という形で捜査を続行しているという状況でございます。
  70. 和田静夫

    和田静夫君 非常に優秀だと言われる日本の警察が、脱走経路も今日まで約一年たってわからぬというところですね。さっき私が言ったように、文女史が、ヘリコプターはアメリカ筋の発表によれば自衛隊機だった、こう言っているんですね。このことについてお調べになりますか。時間がありませんから端的に一言だけ答弁を願います。
  71. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 文女史の、どういうふうな内容で言っているのか私、承知いたしておりませんけれども、その内容を文書を見まして、その上で検討いたしたいと思います。
  72. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、金大中氏事件の捜査を韓国側が一方的に打ち切ってきたということで、木村外務大臣は一応不満と遺憾の意を昨日も表されまして、同時に、今度の措置によって金大中事件に関する外交交渉が打ち切られるとは考えていない、あくまでも捜査の中断であって、今後も新しい事実が出れば追加して捜査を続けるだろうと述べ、このことは昨年十一月の田中・金了解事項に直ちに違反するものではない、そういう考えを明らかにされました。韓国側にはすでにもう捜査を続ける意思はない、これで金外務大臣はケリをつけることにしたとはっきり言ってます。そうすると、この点はどういうことになりますか。
  73. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 金外務部長官の説明によりましても、捜査は一応打ち切りだが、まあ英語で言えばサスペンドということばを使っておるようでございますが、ただ新しいデータが、捜査事実が出てくればこれを通報することはいたしますと、こういうことでございます。したがいまして、打ち切りと申しましても、今後一切取り合わないという態度ではないと私どもは認めておりますので、したがいまして、昨年十一月の了解事項のフォローアップ事項がまだ完全に達成はされていないが、しかしながらその段階におきましては、一応われわれとしてはその通告を受け取ったという形でございます。
  74. 和田静夫

    和田静夫君 あなたは、日本政府の再捜査要求に韓国側がまじめにこたえてくるとまじめにお考えになっておりますか。
  75. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 私は、韓国政府のそういう通告の内容及びまた金外務部長官の後宮大使に対する説明を信用しております。
  76. 和田静夫

    和田静夫君 とにかく金東雲は白だという言い方の中に、すでに韓国政府が常識的な外交交渉の相手ではない、みずからその態度を示したことだとわれわれアマチュア、一般国民はみんなそう思っているでしょう。日本の政府の、しかもたいへん有能な新外務大臣がいまのような態度を心底からお持ちになっているとはとっても考えることはできませんがね。一般的に考えていることのほうが常識的じゃありませんか。
  77. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 私は、政府の立場で金外務部長官のそういう説明を信用する以外にございません。
  78. 和田静夫

    和田静夫君 ここで日本は、私は、韓国に対する外交姿勢を変えなければならぬ。外務大臣も、日本の外交措置がこれまでと変わることは十分あり得る、考えられるですか——そう述べられました。これは、変わることが考えられるという、外務大臣、あなたの述べ方で想定されるものはどういうことですか。
  79. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 現段階で、そういう変化を具体的に予測するつもりはございません。ただ、日韓両国の関係でございますから、そのときの情勢、韓国の態度、またわが国のいろんな世論の動きその他を考えまして、そのときに具体的に検討すべき問題であると、こう考えております。
  80. 和田静夫

    和田静夫君 あなたが対韓外交措置の変更をとにかく将来にわたって構想をされるという場合に、そこでまず対韓経済援助を取りやめることを含めて考えられていますか。
  81. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 昨日も御質問に答えたんですが、御質問に答えたとおり、わが国の対韓援助というのは特定の政府にてこ入れするような意味では行なっておりません。したがいまして、日韓両国の国民同士の友好関係等もございますし、わが国といたしましては、韓国の民生安定に寄与するための経済援助、これは依然として続けてまいりたいと思います。
  82. 和田静夫

    和田静夫君 たとえば、後ほども触れますが、日本の二人の青年なら二人の青年を、ああいう状態にするために結局韓国に私たち国民が税金を納めたものを援助するなどというような形のことを日本の国民というのはだれも考えてはいませんよ。どう言われたところで、結果的にはそうなっているわけですね。したがって、この辺は、打ち切るという行為のほうが至当だと思うのですがね。
  83. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 私は依然として日韓両国民間の友好というものは必要であると思いますし、また、具体的に、ただいまのところ韓国から新規援助の申し出はきておりません。まだ検討しておる段階ではございません。
  84. 和田静夫

    和田静夫君 ことしの日韓閣僚会議はどうするおつもりですか。
  85. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) まだその時期などについて検討しておらない段階でございます。
  86. 和田静夫

    和田静夫君 時期は検討していないが、基本的にはやるというかまえですか。
  87. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 今後のいろんな推移を見まして、これを開催するという方針に変わりはございません。
  88. 和田静夫

    和田静夫君 いまの朴政権を相手にする限り、日本政府は、対韓経済援助の中止といった強い態度を打ち出さないならば、この事件の公正な解決といいますか、金大中氏の救出はあり得ないと実は考えるのです。これは私は常識だと思う。アメリカはフォード政権になってますます強硬に朴独裁政権による人権抑圧を非難していますね、警告を発しています。日本政府になぜそうした強い態度がとれないんですか。木村外務大臣、あなたは、いま発売されていますエコノミスト誌上で韓国の友邦としてそういう強い態度をとることがあってもいいという趣旨のことを述べられているじゃありませんか。なぜそうした強い態度を、エコノミスト誌上ではあなたは述べられるがこの委員会では述べられない、政府の外務大臣としては言わないのですか。
  89. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 私も、エコノミスト誌上の私の発言を一々記憶はしておりませんが、そういう意味で言ったわけではなしに、金大中事件、二学生事件その他について、当然政府のとるべき措置はとるという意味のことばを申し述べたわけでございます。
  90. 和田静夫

    和田静夫君 私、きのうの論議をちょっと聞いておってあれなんですがね、たとえば北朝鮮を承認することをしないのは、いわゆるすることによって自主的平和的統一の促進を阻害するからというふうな答弁でした、きのうは。あるいは国連全体がまだその方向に向かっていないから、現時点で——現時点と言われたわけてすね——承認は時期尚早だという見解でした。私はじっくりあそこを聞かせてもらいましたが、しかしそのことを聞きながら、日本が承認することによって国際世論を喚起するということが、いま朝鮮半島に最も近い日本として必要なことじゃないんですか。新外務大臣としては、そういう国際世論を喚起するということにつとめられるのが常識的ではないですか。そういう意味で、北朝鮮の承認というものを急がれるということのほうが至当じゃないですか。そういう世論形成、国際的な世論形成にとにかくちゃんと加わっていくといいますか、その先導的な役割りを果たすといいますか、そういうことがいま一番必要じゃないですか。
  91. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 昨日も御説明いたしましたとおり、わが国としてはいまだ北朝鮮の承認ということについては考えておりません。
  92. 和田静夫

    和田静夫君 いやいまの私の見解についてはどうですか。
  93. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) まあいろいろ御意見はあると思いますが、私が昨日申し述べましたことは、やはり最終的には朝鮮半島における南北の平和的自主的統一が実現されて、その統一体とわが国がある外交関係を結ぶということがきわめて望ましいということは申し上げました。しかしながら、いまお話しのように、北朝鮮をわが国が承認することによって、国際世論の喚起に役立つという御見解は、これは一つの御見解としてあろうと思いますが、わが国の日韓関係における特別な従来のいろんな関係、歴史等から申しまして、わが国が先ばしってそういうことをやることは、必ずしも朝鮮半島の安定に益するものではないと、こういう見解を持っております。
  94. 和田静夫

    和田静夫君 まあ、いまあれがありましたがね、ほんとうになぜ益しないんですか。
  95. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 従来の日韓関係の推移及び北朝鮮と——南北の現在におけるいろんな関係それがまだ私どもは、わが国が北朝鮮についてそういう考えを持つまでには成熟していないと、こういう認識でございます。
  96. 和田静夫

    和田静夫君 今回のいわゆる大統領狙撃事件ですがね、あらゆる反政府的な言動が封殺されている、そういう体制下でテロは容易に起こり得るということですね。昨年二月に出されたあのフルブライト報告書をにわかにもう一ぺん読み返してみたんですよ。そうすると、いわゆる朴大統領はみずからの手で破壊の道をつくった。彼が権力から退く道というのは、彼が死ねことか、自発的にやめることか、革命しかないと書いていますよ。ああいう体制下でテロが起こることはある程度予測できる。われわれとしては、テロを誘発する体制をこそ問題にしなきゃならぬのですよ。  一昨日のジャパンタイムズによりますと、金永善在日韓国大使が、今度の朴大統領狙撃事件を政治的に悪用するつもりはないと言いながら、そのそばから、文世光が金大中氏救出運動の中核である在日韓国青年同盟の元同盟員であったことをとらえて、したがって金大中氏の出国を認めないという言い方をしています。ソウルにおけるこれ発言なんですがね、これこそ今度の事件の政治的悪用以外の何ものでもないと私は読みましたが、外務大臣はいかがお考えになります……。
  97. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 韓国政府の一部のそういう発言も私承知しておりますが、それに対して、私ども政府としてはかれこれ論評するのは差し控えたいと思います。
  98. 和田静夫

    和田静夫君 韓国の政府部内にあるいはその周辺というのが正確か知りませんが、太刀川・早川両君の事件を岡本公三君のテルアビブ空港におけるライフル乱射事件になぞらえようとしている、そういう傾向があると聞きます。岡本公三のテルアビブ事件について日本政府は陳謝をし、賠償金まで支払った。これはおよそ西欧的感覚では理解し得ないことであった。当時世界の多くのところで、そういうふうに書いていた。今度の場合も、また韓国側がピストルは日本の警察で盗まれたものだ、犯人を偽造査証で出国させたのも日本のせいだという言い方で、要求がましくなっていくでしょう。そうした中でなぜ田中総理は外交慣例を破ってまで訪韓したのだろうか。あすこに行ってきた田中さんが何をやってきたかはよくまだわからぬが、朴大統領がおれの女房は死んだ、殺したのは日本のピストルだ、犯人はおまえのところの旅券でやってきたんだ、陰に陽に迫るであろうことは想像にかたくない。そうすると田中総理はこれに対してどう答えてきたんだろうか。日韓閣僚会議を直ちに開いて、経済援助をさらに続けることを約束してきたのではなかろうか、あるいは金大中氏の出国について以後云々しないと約束をしたのではなかろうか、太刀川・早川両君の扱いについて朴大統領に一任したのではないだろうか、疑惑は次から次とわきますよ。在日韓国人のいわゆる反朴組織の弾圧を約束したのではないだろうかなどと、まあ疑惑がわくんですがね。そんなことは決してありませんか。
  99. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) さようなことは決してございません。
  100. 和田静夫

    和田静夫君 これは少し時間をかけて、おいおいわがほうも調査する以外にないでしょう。こういう発言をしたということさえ記憶をしておいていただければ、おいおいそうしたことは事実となって私はあらわれてくるとみますが、私は田中総理がそうした約束をしてきたような気がして実はならないんだけれども、そうした約束をすることをみずからの利益とし、その利益のために外交慣例を破ってまで田中さんは韓国に渡ったというふうに考えるのですが、たいへん常識的だろうと思っているんです、私はこの考え方は。  そこで追い詰められた独裁政権は何をするかわかったものじゃない。今度の事件で、たとえばふに落ちない点が端的にいって幾つか新聞を読んでいるだけでもわいてくるんですね。金大中事件以来の一連の韓国政府の態度に照らして、今回のテロ事件についての韓国政府の発表というものを、そのままうのみにするわけにはいかぬと思うんですが、外務大臣うのみにされますか。
  101. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 韓国からいろいろ情報は外務省にももたされておりますが、そういう情報をどう評価するかということは、もっぱらわが国の捜査当局が判断すべきものである、こういう考えでございます。
  102. 和田静夫

    和田静夫君 それじゃ警察から……。
  103. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) この間の韓国側の犯人の自供についての内容、ただいま検討いたしておりますが、きわめて何といいますか簡単な内容でございますので、個々の点についてさらに詳細に報告を求めているという段階でございますので、直ちにこれを評価することは差し控えたい、このように考えます。
  104. 和田静夫

    和田静夫君 時間がないんであれですが、たとえば文世光はピルトルを四発打ったとあるんですね。一発は不発だった、一発は大統領夫人に当たった、一発は演説中の大統領を狙撃した、一発は自分の大腿部を撃った、そうして少女もたまに当たって死んでいる。どうみてもこれは一発多いわけですね。そうなってくると、大統領夫人に当たったたまが、確実に文世光のものだったのだろうかどうかさえ疑問になってくる。けさある新聞では大きな写真が、アメリカのだれかがとった写真が載っていましたがね。逆に警護の諸君もピストルを、発射したかしないかは別として、かまえているという状態の写真が出ていますね。そうすると、こういうような疑問というものを警察庁はどう考えられます……。
  105. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) いま具体的に拳銃の発射の四発の弾丸のことですが、これらについても一発ずつそれがどこに発射され、そのたまがどこに当たったかというようなことについても全部一律に向こうに照会しているわけですけれども、まだ返事が来ておりませんので、具体的に申し上げることができないのを残念に思っております。
  106. 和田静夫

    和田静夫君 韓国側は文世光が元在日韓国青年同盟員であることを問題にしているようです。文は在日韓国青年同盟の、テロなどは絶対にやらない、大衆の民主的な力で韓国を改革しようという、そういうやり方にもの足りなくて脱退をしたわけですね、青年同盟を。警察当局はこのことを確認して、韓国が何と言ってこようと、金大中氏救出運動の中核的組織であるこの在日韓国青年同盟なりその加盟団体、韓国民主回復統一国民会議の正当な活動の自由というものは保障すべきだと考えますが、よろしいですか。
  107. 山本鎮彦

    説明員山本鎮彦君) 在日韓国人の各種団体のいろいろな政治活動その他については、わが国の法規を順守して行なわれる限り、われわれとして問擬する気持ちは全然ございません。
  108. 和田静夫

    和田静夫君 七月八日から外務省で行なわれていた日中海運交渉が八月一日をもって中断をされましたが、この間の経緯といいますか、今後の見通しといいますか、簡単にちょっと述べてくれませんか。
  109. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) いままでは日中海運協定の交渉は実務家の間で行なわれておりました。そこで今回ステージを変えまして、次は北京で外交ルートを通じて行なうという段階でございます。
  110. 和田静夫

    和田静夫君 航空協定の際に最大の問題であったいわゆる旗の問題をどう処理されますか。
  111. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) まだそういう問題には触れておりません。
  112. 和田静夫

    和田静夫君 中国の外務大臣の年内訪日が伝えられていますが、日中平和条約の締結はスムーズにいきますか。
  113. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 姫鵬飛中国の外務大臣が年内に訪日されることは私ども非常に強く期待しております。ただ、その際に日中平和友好条約の締結の予備交渉が行なわれるかどうかについては、まだ何らお互いにその点の連絡はございません。
  114. 和田静夫

    和田静夫君 フォード新米国大統領が日本にやってくるということですね。これはもう確定をしたことですか。そして外務省の見解としては、これと天皇訪米問題というのは別の問題だということになっているんですが、天皇の訪米というのは計画どおり進められているわけですか。
  115. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 御承知のとおりフォード大統領が年内に訪日をしたいという意思を伝えてきております。その具体的日程につきましては、目下両国政府外交ルートを通じていま詰めつつあるところでございます。  ただ、この際にそれに関連いたしまして、天皇陛下の御訪米があるかないかという問題につきましては、これは御承知のとおり相互訪問という形をとっておりませんので、それとは別個に慎重に今後検討していきたいと、考えたいと思います。
  116. 和田静夫

    和田静夫君 訪米をするということで考えるということですか。
  117. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) これにつきましては皇室の御都合もあるでしょうし、いろいろな関係を総合的に判断いたしましてこれから慎重に考えていきたいという段階でございます。
  118. 和田静夫

    和田静夫君 外務大臣は、アメリカの水兵によるミッドウェーの核兵器持ち込み証言のあった八月十三日のアメリカ海軍の横須賀基地の特別軍法会議を確認されましたか。
  119. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) まあ確認ということばはどうかと思いますが、少なくとも公開の席で行なわれましたこの軍法会議については私どもいさい承知をしております。
  120. 和田静夫

    和田静夫君 翌日の読売新聞にはこうあったのですがね。「「ミッドウェーは核兵器を日本に持ち込んだ」と断言したハモンド一等水兵は、このあと続けて「ゼネラル・クォーターズ・ステーションのとき、私の部署はナンバー1・フォックストロットと呼ばれるところだった。それは後ろ甲板の近く……」と事情説明を進めようとした。だが、これを聞いた裁判官は顔を真っ赤にし、突然大きな声で「ストップ」と証言を中断させた。そして「自分の経験に基づき証言するのか」と質問。これに対してハモンド一等水兵が「イエス」と答えると、同裁判官はいきなり「休憩」を宣言、」この描写とあなたの確認とに何か違いがございますか。
  121. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 違いはございません。
  122. 和田静夫

    和田静夫君 事態がこの描写どおりで違いがないわけですから、やはりミッドウェーが日本に核兵器を持ち込んでいたと考えるのが自然です。事前協議がなかったということだけをもってアメリカが核を持ち込んではいないと主張する外務省の態度というのはそろそろ改める時期に私は来ているのではないかと考えますが、いかがです。
  123. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 私どもはアメリカの軍法会議の裁判の進行について何らいろいろ口をはさむ余地はございません。しかしながら核兵器のわが国への持ち込みというものはこれはもう事前協議にかかっておるわけでございます。したがいましてわが国との事前協議なしに核兵器がわが国に持ち込まれておることはあり得ないと考えます。
  124. 和田静夫

    和田静夫君 私はもうやはりここまで来ていて態度を変えられないというのはおかしい。あり得ないと考えていますと言う。しかしながら事前協議なしにやっているという具体的な裏づけがそろそろ出だす、こういう状態になってきているわけでしょう。私は直ちに米軍施設区域に対する査察権を主張する交渉にもう入るべきだと実は考えるのですよ。いかがです。
  125. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 日米安保条約は日米両国の信頼関係に立っているわけでございますから、そういうことは考えられませんし、またそういう軍艦に対する査察とかあるいは検閲とかいうことはこれはもう国際法上当然軍艦不可侵でございますからそういうことは考えておりません。
  126. 和田静夫

    和田静夫君 それでは時間がないから文部省に移ります。  まず、会計検査院に尋ねますが、国または国が出資をする公的機関が発注する工事で業者が何らかの手続を経ることなく契約書類としての仕様書あるいは設計図どおりでない工事をやることは許されますか。
  127. 柴崎敏郎

    説明員(柴崎敏郎君) 国の機関の場合も同様でございますが、特殊法人等におきましても設計図面あるいは仕様書、それに従った工事をやるということが当然でございまして、それに反した工事がありますれば、私どもといたしましてはそれを不当の行為ということで指摘をしております。
  128. 和田静夫

    和田静夫君 言うまでもなくこうした工事発注の基本にかかる問題で、昭和四十六年四月から四十七年六月にかけてなされた国立北競技場の新築工事においてこの基本が破られているのですね。そこで文部省、事実を確認をされますね、もう時間がないものだから簡単に聞きますが。
  129. 諸澤正道

    説明員(諸澤正道君) ただいま御指摘のとおり四十六年の三月十七日に北競技場の入札をいたしまして、フジタ工業株式会社、これは結局は数回入札をいたしまして落札しませんので随意契約によったわけでございますが、フジタ工業株式会社と請負契約を結びまして、四十七年の七月三十一日に工事を完了したわけでございます。  なお、この際の工事の監理につきましてはこの工事を設計いたしました株式会社中山建築設計事務所に監理一切を委任をいたしました。そして最後の工事完了の検収も中山建築設計事務所において行ないまして、これを国立競技場が受け取りました。こえて四十八年の六月十八日から会計検査院の検査がございまして、ただいま御指摘のように工事につきまして一つはサッカー場の石積み擁壁の工事について適切でない点があるという御指摘、もう一つは鉄筋コンクリートのあばら筋及び帯筋の緊縛工事についての仕様書と違った点の二点の指摘がございました。それに対し、国立競技場のほうに会計検査院から照会があったわけでございます。そして競技場といたしましては実情を徴しました結果、前段のサッカー場の石積み擁壁の工事につきましてはこれを全面的に改修工事をすることを業者に命じました。その改修の工法につきましては改修工事の試験工事を三回にわたって行ないまして、第三回目の石積み補強工事に際しましては会計検査院の立ち会いの上これを行ないました。その工法を承認いただいた上で補強工事を行ないまして、ことしの五月二十一日から工事が始まりまして、七月十八日に工事を完了したと、こういう経緯でございます。
  130. 和田静夫

    和田静夫君 文部大臣、とにかくいまいろいろ言われましたが、ともあれ文部省が所管する特殊法人国立競技場の工事発注において工事発注の基本が破られた。これはもう間違いないんですが、このことを大臣どうお考えになりますか。
  131. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 御指摘の問題の中で石積み擁壁工事、仕様書と違った工法がとられたわけでございまして、その際に途中で変更ということがあるわけでございますから、工事の施工者と設計を行ないました者との間の話し合いが十分なされなければならない、それが必要だということで、変更承認が行なわれれが格別でございますけれども、そうでないままに進められたということはまことに残念な事態であったと、かように考えております。
  132. 和田静夫

    和田静夫君 時間がないですから速口でやりますが、非常にけしからぬのはこのサッカー場のスタンドの土どめ工事の蓄積で仕様書あるいは設計書では安山岩を使用すべきことになっているのに花こう岩を使った。そのことを会計検査院から指摘されたのは昨年の十月。これに対してこの工事の設計、施工管理、監督を請け負った株式会社中山克己建築設計事務所は安山岩よりも高い花こう岩を使ったんだからいいんだという言い方なんですよ。特殊法人国立競技場はここまで業者を甘やかしているわけです。何か甘やかさなきゃならぬ理由があるのですか。
  133. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) 設計事務所に設計だけじゃなしに監理も委託をしたわけでございまして、そのことは特段とがめるべきことではないと、こう思っておるわけでございます。しかしながら、いま御指摘のありましたように必ずしも監理業務が適正に行なわれたとは言いがたい面が、あとからわかったわけでございますけれども、出てまいった。こういうことになりますと、国立競技場が監理業務までをまかしたとはいいながらも、この建築事務所に対しましてもっと積極的な接触あるいは注意を喚起することを怠るべきでなかったじゃないだろうかという問題は私は残っていると、こう考えているわけでございまして、将来十分こういう点については戒めていかなければならない、こう思っておるところでございます。
  134. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっと疑問に思うのは、たとえば実際に工事をやったのはフジタ工業、したがってフジタ工業の関係があるから甘やかしたということはありませんか。
  135. 奥野誠亮

    国務大臣(奥野誠亮君) そこまで考えたくないわけでございますけれども、しかし監理行為が十分でなかったことは事実でございますから、その点は十分とがめらるべき問題だと、こう思っております。
  136. 和田静夫

    和田静夫君 フジタ工業自身には問題ありませんでしたか。
  137. 柴崎敏郎

    説明員(柴崎敏郎君) 当然のことでございますが、施工監理について委託を受けてこれを指導しておる建築設計事務所、この手落ちもありますけれども、何といいましてもこの工事はいわゆる施工不良の工事でございまして、これを請け負って実際に施工いたしました請負業者、これのずさんな工事の施工ということで当然請負業者にも問題があるわけでございます。
  138. 和田静夫

    和田静夫君 これ、あなた方からいただいた資料なんですが、昭和四十八年十月十二日に会計検査院から国立競技場側に指摘があった。これを受けた国立競技場は中山設計事務所に問い合わせた。これに対して設計事務所のほうから回答があった、まあそういう形なんですね。それで、もう時間がないと責められておりますから読みませんけれども、とにかくけろっとしているんですよ、中山設計事務所というのは。たとえば「材料費としては一割以上の割高になりますが、工事費増額をすることなしに変更することにしました。」。けろっとしているんですよ。しかし、会計検査院の指摘は——指摘になったでしょう、こう、いわゆる「極度に不足しているものなどがあり、」そうすれば、こういうことがあるから落石があったわけです材料をいいものを使ったからということは理由にならぬわけでしょう。そういう形で、ただ安山岩を使うべきところを花こう岩を使ったというのではないわけですよ、これはもう。花こう岩の雑石で、あるいは著しく小さいものや板状のそういうくずまでまぜて使ったということが問題なんですね。それで、何が一割以上も割高だといってのほほんとさせておくのだ。こうしたことを文部省から説明に来られた人もそう言っている。高いいいものを使ってくれたんだ、と。そんなことで済ましてしまった。で、国立競技場は国の財産を預かっているわけですから、この大きな工事を施工する施工者としての資格が問われるのではないだろうか。これが一つです。  連続的に質問しますが、まだあるんです。この石積み擁壁工事をやり直すことになった、これが四十八年十月三十一日の国立競技場側の会計検査院の回答書にもあるんです。ここにあります。で、そのやり直し工事はいつやられたかといったら、何と驚くなかれ、ことしの七月ですよ。で、私がこの問題をキャッチしたことを知ってあわててやった節すらあるんです、実は。決算委員会をもっと早くやっておればこれはやりおおせなかっただろうと思うんです。こういう業者をそのままにしておくつもりなのか、何らかの制裁を加えるべきではないかと考えているのですが、これが二つ目。  このときの特殊法人国立競技場の理事長が文部省のいわゆる調査局長であった田中さんです。まあいまもそうでしょう。特殊法人の国立競技場は会計検査院に対して会長の本田弘敏さんの名前で「責任を感じおります。」と書いてある。その責任をどうとったのか、これが三つ目。  それから、会計検査院に指摘をされて……
  139. 前川旦

    委員長前川旦君) 和田君、時間がないので……。
  140. 和田静夫

    和田静夫君 質問だけ。  会計検査院に指摘をされて「責任を感じおります。」というだけで済むなら、会計検査院の指摘の意味にどれだけのものがあるかと言いたくなるのですが、これは検査院どうですか。  それから文部省ですが、問題のサッカー場の隣に八面のテニスコートがある。これが排水などで非常にできが悪い。これは同じ業者ではありませんか。  さらに検査院、この問題を通じて私が非常に奇異に感じたのは、問題は、ポイントはここなんです。民間の設計事務所コンサルタントが公的な仕事の施工管理、監督までやっているということですよ。こうした例は多いのですか。また今後もこういうことを続けられるつもりですか、続けさせるつもりか。  そこで、最近の過去二年間について、工事名とそれを請け負った建設コンサルタントの資料、これを提出してもらいたいと思うんです。これはお約束できますか。  検査院はなぜこの指摘を国会に報告をしなかったのか。これは院長から  これは非常におかしいんですよ、昭和四十五年度決算検査報告に、公害防止事業団がやはり建設コンサルタントに施工管理、監督までまかして、そして同じ問題を起こしていることが報告されている。しかも、こうしたケースが、将来とも、一つの問題をはらんでいるというか、多くの問題をはらんでいる以上、今度の問題を決算報告書に載せなかったというのは、検査院の姿勢としてたいへん問題だと私は思う。  聞くところによると、文部省が大蔵省を通じて工作をしたんだといわれているんですが、事実ですか。それが事実かどうか。  そして普通、指摘事項を検査報告書に載せるかどうかというのは、三人の検査官の会議できまるのが慣例なのに、今回は例外的に局長のところでこれが決定されたのはどういう意味を含んでいるんですか。
  141. 前川旦

    委員長前川旦君) 和田君、時間ですから……。
  142. 和田静夫

    和田静夫君 はい。  最近、指摘事項でも、国会に報告をしないものが非常にふえている、年々、ふえている。これは決算委員会として私は決算委員の皆さんに呼びかけたいんですが——許すことができない。検査院は、公式文書をもってした事項は、今後は法律どおりすべて検査報告書に載せるべきだと考えますが、どうですか。まとめて答弁してください。
  143. 柴崎敏郎

    説明員(柴崎敏郎君) まず第一点の、民間のコンサルタントに設計なり、施工監理を委託するということが非常に多いと、多い傾向になっていると、これに対して検査院はどう考えるかという御質問でございますが、これにつきましては、特殊法人の場合のみならず、国の機関の場合におきましても、これは会計法にその規定があるわけでございますが、特別に「必要のあるとき」には、国以外のものに工事の監督なりあるいは検査なりを委託して行なわせることができると、こういうような規定がございます。この特別に、「特に必要があるとき」ということが問題でございますけれども、これははしょって申しますと、専門的な知識なり技能を必要とするような場合とか、あるいはその工事を施工する機関に余力がないような場合、そういう場合には特別の扱いとして民間のコンサルタントなりに設計なり監督の委託を、あるいは検査も含めまして委託を行なわせるという道が開かれているわけでございます。ということで、この特例が乱用されるということは、私どもの立場として感心いたしませんので、そういった点については注意をして見てまいっておりますが、現在まで設計の委託あるいは監理の委託ということを民間に行なわしている例は、最近も例として多くなっておりますが、それにはそれぞれの、ただいま申し上げたような事情があるということで、それもやむを得ないことであろうと、このように考えております。  そこで、ただいま先生お取り上げになりました国立競技場の例の場合でございますが、これにつきましては、先ほども文部当局のほうから御説明がありましたとおり、この国立競技場はもっぱら、国の現物出資によって与えられました施設を運営していくというのが従来のやり方でございます。したがいまして、そのスタッフもそういうことでその向きの職員しかかかえていない、技術面の職員を擁していないというような事情があったようでございます。
  144. 前川旦

    委員長前川旦君) 答弁者、答弁簡潔に願います。
  145. 柴崎敏郎

    説明員(柴崎敏郎君) はい。  そこで本件につきましては、先ほどの御説明のとおり、設計の委託あるいは監理の委託、さらには検査の委託までやっているわけでございます。その事情につきましては、私どもといたしましてはこれを了といたしております。  そういたしまして、その場合に競技場の立場でございますが、先ほど、設計なり、あるいは使用なりに反した工事があった場合に、検査院はそれをどう見るかという一般的なお尋ねでございましたので、それにつきまして、私、先ほどあってはならないことであって、これは不当と見ると、このように申し上げましたが、本件の場合について申し上げまするならば、ただいま申し上げたような特殊な事情がございまして、国立競技場には能力がなかったと——そう申しては失礼ですが、能力がなかった、こういう事実がございまして、言ってみますればすべてをまかせてしまった、そのまかせたことに、言ってみれば手落ちがあったかどうかということでございますが、これはやむを得ない事情があったと。  それからまかせた業者についてでございますが、これについては、これも記録によって私ども確認いたしておりますけれども委員会の機構を設けまして、それによって業者の選定を検討してもらい、それによって、まあ言ってみますれば名の聞こえた建築設計事務所に委託をし、それから請負についても一応名の通った業者に請け負わせた、こういうような諸般の事情を勘案いたしまして、この工事につきまして、私どもの検査対象である国立競技場に特に手落ちがあったというふうには私ども判断いたさなかったわけでございます。したがいまして、検査報告への掲記ということもいたさなかったわけでございますが……。  さらに第三の御質問で、この件について関係筋からの陳情等があり、それによって検査報告の掲記をとどめたというようなお話しでございますが、これにつきましては、絶対そのようなことはございません。私どもは検査にあたっては常に厳正な検査、私どもに与えられました独立機関としての厳正な検査をやっておるわけでございまして、したがいまして、この件につきましても、私ども検査をし、正式の、公式の文書でその是正方を国立競技場あて、うながしているくらいでございまして、ただ、最後の判断といたしまして、先ほどから申し上げたような事実を踏まえまして、これを施工した国立競技場自体の経理上の手落ちというもの、これについては、これを不当として検査報告に掲記するまでのことはなかろうと、このように判断をいたしたわけでございまして、決して陳情等によって曲げたということではございません。この点は、ひとつ十分御了承をいただきたいと思います。  それからこれを局長限りで処理をしたのではないかということでございますが、これは私どもの組織の検査報告の処理の手順といたしまして、事務局で、該当するものにつきましては検討いたし、それを検査官会議に上程をするということでございますが、検査のつどつど、こういう事態があったと、この本件についても同様でございますが、これについては逐一検査官会議報告をいたしております。そういうことで、検査官会議に上程はいたしませんでしたけれども、本件を検査報告に掲記しないということについては、検査官会議の御了承も得ているものでございます。  ということで、重ねて申し上げますが、決して外の力とか、陳情とか、そういうことによって検査報告に掲記をやめたというものではなく、私どもは常に厳正な検査をしているということを、重ねて御理解いただきたいと思います。
  146. 前川旦

    委員長前川旦君) 答弁簡潔にお願いしますよ。
  147. 諸澤正道

    説明員(諸澤正道君) はい。  文部省にお尋ねのありました点について、簡単に申し上げます。  第一点の、工事の施工者の資格についてどう考えるかというお話しでございましたが、これはただいま検査院のほうからもお話がございましたように、設計者及びこの工事施工者につきましては、建設省の官庁営繕部長等を含む学識経験者による選考委員会を設けまして、そこにおいて審査を願ったわけでございまして、工事の競争入札に参加した会社は十五社ございますが、ただいま申しましたように、能力においてこれを遂行するに足ると判断をした十五社でございます。結果的にフジタ工業に依頼することになったわけであります。  それから次に、検査院の指摘があってから工事が終わるまでに時間がかかり過ぎやしないかというお話でございましたが、検査院の指摘がありましてから実は四十九年の一月八日から二十三日までに第一回の試験工事を実施し、四十九年の三月十三日から十八日までに第二回の試験を実施し、同じく三月二十六日から四月八日までに会計検査院立ち会いのもとに第三回の試験を実施しまして、この工事の工法を承認を受けた上で最終的に補強工事にかかった、そうして七月二十五日に終了したということでございますので、その間の試験等の期間を見まするならば、決して遅滞をしておったわけではない、かように考えるわけでございます。  第三点の、この問題についての競技場側の責任の問題でございますが、確かに監理を中山設計事務所にまかしたわけでございますから、そういう意味では、法的な責任はともかくとして、公の財産を守る立場において、競技場の理事長から検査院の二局長に文書でお答えしましたように、責任を感じておるということでございますので、私どもといたしましても、その一切の監理についての十全を欠いた点について、今後さらに一そう適切な監理をしてもらうように厳重に注意をいたしたわけでございまして、競技場といたしましても、その趣旨に沿って関係の職員に注意を促すという措置をとったように聞いておるわけでございます。
  148. 和田静夫

    和田静夫君 検査院長、答弁が抜けている。今後のすべての取り扱い、検査報告書に載せますか、法律どおり
  149. 白石正雄

    会計検査院長(白石正雄君) ただいま局長から御答弁申し上げましたような事情によりまして、本件につきましては検査報告に載せなかったわけでございまするが、将来の問題といたしまして、同種の事件が起こりました場合におきましては、慎重に検査官会議において検討いたしまして、報告するかどうかということを決定いたしたいと、かように考えておる次第でございます。
  150. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっと済みません、一つだけ。  どうしてこれ、法律どおりに検査報告書に載せないんですか。あなた方言ったように理屈言っていたって、そんなもの通用しませんよ。ちゃんと明記されているんだから、すべてそのままやってもらったらいいじゃないですか。何で隠さなきゃならないんですか。
  151. 柴崎敏郎

    説明員(柴崎敏郎君) この工事自体の悪さ、これについては十分私どももこれを悪いとして、したがいまして公式文書で是正方を促したことでございます。  ただ、私どもが院法にございます、これを不当と見るかどうかということの判断の場合には、あくまでも私どもが検査をいたしておりますのは、検査対象の行なう会計経理、これに不当があるかどうか、つまりそこに手落ちがあるかどうか、こういう判断で検査報告を考えております。  したがいまして、本件の場合は、工事そのものは非常に悪かったわけでございますが、国立競技場自体にしからば手落ちがあったかということの判断におきまして、先ほどから御説明申し上げましたような判断を私どもとしてはいたしたわけでございます。
  152. 和田静夫

    和田静夫君 管理・監督の能力がなかったんだといっているんでしょう、あなたのほうは。
  153. 前川旦

    委員長前川旦君) それでは、午後一時に再開することとし、暫時休憩したします。    午後零時十四分休憩      —————・—————    午後一時七分開会
  154. 前川旦

    委員長前川旦君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  午前に引き続き昭和四十七年度決算外二件を議題とし、総括質疑を続けます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  155. 須原昭二

    ○須原昭二君 私は昭和四十七年度の財政運営の根本的反省といいますか、そういう視点に立って、きょうはお尋ねをいたしたいと思います。  最近のインフレに対して、財政当局においても反省の発言を私たちはよく聞きます。しかし、われわれから見ますると、どうしてもどうもその反省が中途はんぱのような感じがしてならないのです。ここに持ってきております「エコノミスト」七月十六日号でありますが、この二〇ページを見ますると——高木事務次官はきょうはお見えになっていませんから、御本人からお話を聞くことはできないわけですけれども木村禧八郎さんと高木次官との対談でも、高木次官は「実はときどき集まって反省するのですが、ここ二カ年間の私どものやったことはたいへん誤りであった。いちばん誤りであったのは四六年八月一五日のニクソン・ショックから四七年の四八年度予算編成までの期間です。」こう言って述べておるわけです。その後このお話の中で日本列島改造論とインフレの関係を否定いたしております。こうした態度ではほんとうに反省したことにはならないと私は思います。  ニクソンショックから四十八年度当初予算の編成までの財政路線は、私たち野党も拡大基調を一応支持してまいりました。それが大きく間違っていたとは思えません。誤りは田中総理が登場いたしました四十七年夏以降、いわゆる秋の補正予算の列島改造論からではないかと私は思うのでありますが、それについて深刻な反省が要求されていると思います。その点についていかがですか。
  156. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) きのう小谷委員の御質疑に対しましてもお答え申し上げたんでございますが、四十七年度の状況は、わが国といたしまして、国民の要望といたしましても、そろそろ経済の量的拡大から質的な充実の方向に行くべきであるといううつぼつたる要望が出てまいりましたわけでございまするし、また当時、非常に大幅な黒字を記録いたしておりました貿易収支の状況につきましてもアメリカはじめ各国からの批判が出てまいりまして、国際収支のバランスを維持して国際的な節度を守ってほしいという要望もありましたわけでございます。したがって国の経済の内外にわたる均衡を維持してまいるという意味におきまして、当時、外貨もたくさんあったときでございますので、輸入は拡大してまいる、国内の社会資本の充実、福祉の充実という方向に経済政策を切りかえていくべきではないかという状況でございました。したがって当時の内閣がとりました政策的選択は、その限りにおきましては、私は間違ったものではなかったと思うのであります。  しかし、問題は、その後の内外の状況がそういうことを許す条件に恵まれなかったわけでございまして、そのことについての洞察力がなかったのじゃないかという御指摘に対しましては甘んじてお受けしなけりゃならぬと考えておるわけでございます。つまり政策的な選択それ自体は私は方向として間違っていなかった、しかし内外の条件の読み方自体につきましては深い反省が御指摘のように要ると考えております。  列島改造論ということを特記して言われたわけでございますけれども、政府としては、いま私が申し上げましたような意味の政策的な選択を予算に具体化しようと精一ぱいつとめたというように御理解をいただきたいものと思います。
  157. 須原昭二

    ○須原昭二君 現在の時点で私たち判断いたしますと、景気というものは四十六年の十月から十二月を底に回復に転じておったのでありますが、したがって四十七年度の大型財政で十分であったはずだと私は思います。四十七年に入ってから、五月に公定歩合をかつてないほどの水準に引き下げるとともに、田中内閣成立後、列島改造論ということで大型な補正予算、形式で七千六百六億円、節約を除く実質増六千五百十二億円、このような大型な補正予算、さらに財投追加を行なったわけであります。これは明らかに田中総理の責任である、こう断言してもいいわけです。  というのは、当時の新聞報道によりますと、大蔵省は九月十八日に公務員給与、災害復旧、義務的経費等、約三千億円の補正予算をということで大体の案をまとめて、そして自民党に説明し、与党の了承を得たということであります。ところが九月二十二日に至って田中総理が補正予算の大型化を指示して、一躍一兆五千億円の構想とやらで補正、財投ともに大型になってしまったということであります。こうした事実から判断をいたしますと、大蔵省としては景気判断を誤っていたわけではないが、田中総理の暴走を押え切れなかったところに失敗があったと反省すべきだと思うんですが、その点はいかがでしょう。
  158. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) いま申し上げましたような状況のもとで、田中総理といたしましては、国の内外の高い水準における経済の均衡を維持して、国内におきましては福祉の充実をはかっていこうという、そういう願望を強く持たれておったと思うのでありまして、そのことは善意であったと私は思うのでありまして、それは野望というものではなくて、政治家としての善意に出発されたことと思うのでありますが、その後、状況は、しかしながらそういう楽観的な見方を許さないような状況が出てまいりましたので、当田中内閣といたしましても、次々に事態に応じた対応策を講じてまいったことは須原さん御承知のとおりでございます。
  159. 須原昭二

    ○須原昭二君 善意であろうが——悪意ということはありませんけれども、やはり失敗をしたことば事実ではないかと思うわけです。  それから、もう一つ、お認めいただいたのですから、当時の財政当局の体制にも私は問題があることを指摘をしておかなければなりません。当時すでに上昇傾向を示していた卸売り物価などの動向を警戒して、われわれ社会党をはじめ野党はすべてインフレを懸念して反対したわけです。日銀などでも財政規模の拡大に批判的であったことはすでに皆さん御承知のとおりです。こうした一般的な警戒心があり、大蔵省自身も理論的にはそれを認めていたと思われるのに、それが田中総理のツルの一声で、これは善意とおっしゃいますけれども、簡単にくずれ去ってしまったところに深い反省が必要だと実は思います。こういうことを考えますと、どうしてとめられなかったか、ここに一つ問題点があるわけです。  当時を振り返ってまいりますと、大蔵大臣は植木庚子郎さんだったと思いますが、植木庚子郎さん個人のことを申し上げて恐縮でありますが、この方は田中総理の派閥的均衡人事で浮かび上がったといわれる大臣だと私たちも風評で聞いております。かつての主計局長も時勢のおもむくところを知らず、予算編成期の大臣説明でも、現在の常識的財政用語の用語説明すら二度も三度もさせられて困ったと、主計局の課長連がささやいていたことも私たちは知っております。まさに弱将のもとに勇卒なしと申しますか、事ほどさように同僚議員になられました鳩山さんを申し上げるわけではございませんが、鳩山事務次官、まさにりっぱな人でございますが、当時はデノミで頭が一ぱいで適切な手が打てず一さらにまた相沢主計局長は将来の政界進出を夢見て、自民党幹部の顔色をうかがっているというような状態であったと私はいま思い起こすわけです。  そういう点から考えますと、こうした財政当局の体質の弱さがやはり田中さんを暴走せしめてしまった、そういうところに私は問題があるのではないかと思うのですが、その点についての御見解を伺っておきたいと思います。
  160. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 政府は一つでございまして、大臣も官僚もないと思うわけでございまして、当時の財政の責任は、やはり当時財政をあずかっておられた大蔵大臣の御責任であると思うわけでございます。総理大臣と大蔵大臣との間柄でございますけれども、それぞれ一つの省をあずかり、一つの城をあずかっておるわけでございまするから、そこで最善を尽くすのが内閣に対する厳粛な責任でありまして、植木先輩におかれましてもそういう責任感で対処されたものと私は信じます。
  161. 須原昭二

    ○須原昭二君 どうも歯切れが悪いわけですが、その体質の弱さというのはやはり私はこの際厳粛に警告をしておかなきゃならない。この点はひとつ要望しておきましょう。  そこで時間の関係がございますから、続いて質問を先へ行きますが、ここで公債発行減額のおくれについて実は指摘をいたしておきたいと思うわけでございます。  特に公債発行がインフレにつながるとして反対したわが党の主張に対して、当時、適切に運用すればインフレにつながらない、こう言明をされました。そして大量の公債発行を強行したのが皆さんの自民党政府であります。三十年代に比べて国債発行した四十年代の物価上昇のベースが一段と高まっている事実から見ましても、国債発行がインフレにつながった、もしくは少なくともインフレを加速したことは明らかであります。  四十七年度の財政の場合、当初予算ですでに一兆九千五百億円の公債金収入を見込んでいたことも問題でありますが、補正予算でさらに三千六百億円を追加し、計二兆三千百億円とかつてない規模を予定したために、租税の年度内自然増収が九千二百億円あったにもかかわらず、公債発行の減額はおくれてしまって、六千四百二十億円の新規剰余金を出してしまったことは御案内のとおりです。税収等について年度途中で的確に掌握いたしておれば、現実には公債発行は一兆九千五百三十九億円だから、三千六百億円の公債減額ではなくして、さらに六千億あるいは七千億円まで減額をふやせ得たはずであります。  こういう点から考えますと、どうも体制の不備を私は申し上げましたが、主税とやはり理財局との間の連絡不足によって起きた政策ミスではないか、こういうふうに断定せざるを得ないと思うんですが、その点はどのような御所見でおみえになりますか。
  162. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 税の見積もりということはたいへんむずかしいことでございまして、補正予算を作案してまいる時点におきまして、その当該年度の税収がどの程度に達するであろうかということを的確に判断することはたいへんむずかしいことでございます。したがって政府としては補正予算を組む以上、歳入欠陥を来たすようなことのないように処理すべく三千六百億の公債発行を予定いたしましたことは御指摘のとおりでございます。しかし、その後の事態は予想以上に税の収入が多くなってまいりまして、結果として三千六百億は発行しないで済んだわけでございます。  問題は、主計局と理財局との間の事務の連結がうまくいくいかぬの問題ではなくて、補正予算をつくる段階において、当該年度の税収というものをまだ的確に掌握できる段階でなかったというように御理解を賜わりたいと思うんであります。
  163. 須原昭二

    ○須原昭二君 それに関連をして、今年度の問題について私はお尋ねしておきたいんですが、ことしの六月の時点の税収から推定をいたしますと、今年度の当初予算に比べて二兆五千億円ぐらいの年度内自然増収が出ると計算されます。今後法人税の伸びが急激に落ちるようなことがあっても、一兆五千億ぐらいはかたいのではないかと思うんですけれども、その点はいかがでしょう。  そうであるとするならば、種々の歳出要因はあるといたしましても、公債減額に回す余裕はあるはずだと私は思うわけです。四十七年度の轍を踏まないように、公債減額は早目に踏み切るべきではないか。私たちが聞いておる範囲においては、いつも大体毎年十月ごろだというふうに聞いておりますが、この際、自然増収の見込みをあわせてひとつ大蔵大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  164. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 四十七年度におきまして補正予算額に対してかなり決算の剰余額が税収で出たじゃないかという御指摘でございますが、これはまさにおっしゃいましたとおりでございます。これはまたそれで私どもその時点におきましては実は正確を期して見積もったつもりでございます。これは先ほど大臣からもお話がございましたように、決して理財局と私どものほうの連絡が不十分でそういう結果が出たというわけではございません。  四十七年の十月の下旬に補正予算を提出したわけでございますけれども、その時点におきまして、実は、まだ九月決算の状態が確たる数字としてつかみ得なかったということとか、あるいはそれまでにおきますところの源泉所得税の収入の状況というのが、なるほど春闘におきましてはかなり伸びましたけれども、雇用の状態がそんなによくなかったとか、源泉所得税全体の収入が前年に比べましてそうよくないというような状況でもって、結果としましては確かに決算剰余額が出ました点、これは御指摘のように私どもは毎年毎年の反省事項と思っております。  それでは、本年度の自然増収が一体どのくらいになるかという御質問でございます。先ほどまさにおっしゃいましたように、六月までの収入におきましては前年の対決算で、同期においてどのくらい入っておったかというのと比べますと、三・七本年は確かによろしゅうございます。しかし、いろいろなまた別に考えなければならない要素もございます。たとえばこの三・七いいという中には、予算の段階においてはまだはっきりとしておりませんでした例の会社臨時特別税というのがございます。これが三月決算、四月決算におきまして六月末においては約七百億円収入に入ってございます。そういう要素を除外いたしますと、三・七いいというのは実は三・二いいということになります。  その中で一体何がよかったのかというのは、一つは御指摘のように法人税の収入が非常によかったということでございます。これは三月決算、四月決算がこの収入の中に入っておりますから、これは申すまでもなくあの当時の好況を反映いたしまして法人所得が非常に伸びた、したがいまして法人税収が非常によかったということの反映でございます。  それでは、一体、今後の法人所得が同じように今年一ぱいの収入に対応する部分がいいのかということになりますと、これは非常に私どもはいままだ確たる自信を持っていいと申し上げる段階でございません。むしろ非常に九月期の動向、それ以降の趨勢というものについて若干の心配を持っておることは率直に申し上げなければならぬと思います。  それからもう一つは、源泉所得税はおっしゃいますように非常に好調でございます。これは利子、配当もさることでございますけれども、やっぱり何といいましても給与に対しますところの源泉所得税が非常によろしゅうございます。かなり春闘あるいは公務員のベースアップ等で、減税が大幅に行なわれましたけれども、収入は好調でございます。これはかなり今後もそういう情勢は続くだろうというふうに見通しができます。  他の税目につきますと、これは実は間接税全般について六月までまだ非常に総じて四分の一ぐらいしか収入が入っていない段階でございますけれども、間接税につきましてはこの六月末現在でやや心配な兆候が出ております。といいますのは、物品税、酒税その他の間接税におきましては、昨年に比べましてやや鈍化の傾向が見られます。  そういう状態もあわせて考えなければならないということでございまして、単に先ほど二兆五千億という数字をお出しになりましたけれども、おそらくこれは六月末におきますところの三・七ないしは三・二というものを同じようにずっと伸びていくということから御推計になったものじゃないかと思いますし、一兆五千億という数字もまた同じような数字をもとにしておはじきになったと思いますけれども、私どもといたしますれば、先ほど申しましたように、いろいろ今後におきますところの法人所得の趨勢、それから給与、特に年末におきますところのボーナスがどういうふうに動くであろうかという問題、それからもろもろの間接税がこのままの状態で推移するのか、あるいはもう少し消費が上がってくるのかというふうな問題を考えなければ、なかなかいまの段階で実は本年度の自然増収額を見通すとおっしゃいましても、四十七年において十月の末におきまして提出しました予算でかなり狂っておるということの反省といたしますれば、なおさら私どもとしましてはより慎重にならざるを得ないというのが現状でございます。
  165. 須原昭二

    ○須原昭二君 きょうは御意見だけ承っておきたいと思います。  そこで、昭和四十七年度の経済政策、私たちから言うならば失敗の、その中にはいわゆる過剰流動性の処理についての失敗があるわけでありますが、この問題に関連して都市銀行の大手商社に対する融資のし過ぎが商社の投機行為を招く遠因である、こういうことが明らかになっております。  大蔵省は、都市銀行と商社との癒着というものについては金融機関の健全性という意味からも問題があるとして、いわゆる大口融資を規制する方向で検討されているやに私たちは聞いておりますが、その具体的な内容について、この際、お話を伺いたいと思います。
  166. 高橋英明

    説明員高橋英明君) 銀行が特定の企業に集中して貸すということ、これは銀行の健全性からいって好ましいことではないということで、まあ昔からといいますか、これは非常に古い問題でございまして、銀行条例時代あるいは現在の銀行法ができましたころからそういう面で指導はしてきております。ただ、日本の場合に、資本市場の未発達とかあるいは企業の財務体質といったようなもの、これはもちろん原因、結果になるのでございますけれども、うらはらをなしておりまして、企業の借り入れ依存というものの傾向が高いという事実で推移してきていることは確かでございます。  私ども、何らかこれを規制しようではないかというようなことで、戦後、昭和二十年代から始まりましてずっと通達その他でやっておりますし、それからかつては金融制度調査会でオーバーローンといったようなもの全体を取り上げまして、昭和三十八年でございますが、そのときも大口融資というのはいかにあるべきかというようなことでやったことがございます。ただ、何ぶんにも現実が進んでおりまして、大きな変革を急激に与えることはむずかしいということで今日までやってきております。  で、その場合の視点は、先生もいまおっしゃいましたように、大体、銀行のサウンドバンキングというような姿勢でやってきておったわけでございます。最近になりまして、それだけの問題ではなく、企業銀行からたくさん金を借りて市場支配したり、そういう悪事をなしておるのではないかというような企業批判の一環として、まあ問題として取り上げられてきておるという新たな要素が出てまいりました。したがいまして、私どもは従来やっておりましたことでいいのかという反省は当然いたしまして、前の国会でも福田大臣もこれは前向きに検討するというようなお約束をしたと思います。で私どもこれは金融制度調査会におはかりして、そしてそこで一定の結論をちょうだいして実施したい、そういうふうに考えております。金融制度調査会は毎年八月は休むものでございますので、九月早々に金融制度調査会を開催して、そこで御検討いただいて、これは数回の御討議で結論が得られると思います。そういうことで結論を得てから実施したいと思っております。  現在、私どもが具体的に何か案を持っているかというと、そういう案はいろいろ事務的には検討いたしておりますけれども、金融制度調査会の意見をしばるというふうな結果になってはまずいと思いまして、一切まだ私のほうでこういう案だというのは持っておりません。
  167. 須原昭二

    ○須原昭二君 じゃひとつ実態についてお尋ねいたしますが、衆議院予算委員会で大口融資の規制問題が取り上げられたことは御案内のとおりです。その際に、前の銀行局長ですか、吉田さんが、かりに自己資本の二〇%までを基準とすればという前提において、当時この基準をこえる大口融資は二十七件、十二件である、うち九社が大手商社、残りは鉄鋼メーカーなど、こう具体的に数字をあげられておるわけですが、この自己資本の二〇%という基準をこえて融資した都市銀行、これはどこですか、そして融資を受けられた商社はどこなのですか、ひとつ御答弁をいただきたい。
  168. 高橋英明

    説明員高橋英明君) 都市銀行と言われておりますのは十三行でございます。東京銀行も含めまして。その中で二〇%をこえる貸し出しを持ってない銀行一つでございます。これは抜けるほうが埼玉銀行でございます。それ以外は、いわゆる都市銀行は全部二〇%以上のを持っております。  それから商社のほうは、いわゆる十大商社と言われている中で日綿だけが抜けます。あとは鉄鋼が二社、それから地方団体が一つでございます。
  169. 須原昭二

    ○須原昭二君 参考人お見えになりますか。全国銀行協会の連合会の会長さん、佐々木さん、御苦労さまです、御足労かけました。  ちょっとお尋ねいたしますが、現在のインフレの原因は、私たちから言うならば田中内閣の政策の失敗であると思っております。しかし過剰流動性をかかえた時点でとった銀行の貸し出し競争もまたその責任の一部であると私たちは思います。従来、前に——いま二〇%の基準の問題についてまだ具体的な案はできておらない、答申を受けてからとおっしゃいますけれども、すでに金融制度調査会で指摘を受けておるわけですね。それにもかかわらず実施されていない大口融資規制は、個々の銀行としては受け取りがたい点があるかもわかりませんが、銀行の協会連合会として、やはり社会的責任上、これは受け入れるべきではないかと思うんですが、銀行業界の見解はいかがでしょう。
  170. 佐々木邦彦

    参考人佐々木邦彦君) お答えをいたします。  大口貸し出しの問題につきましては、ただいま銀行局長から御答弁がございましたけれども、私も全く同感でございます。預金者保護のためには銀行は健全経営を貫かなければなりませんし、そのためにも貸し出し金の危険分散ということは当然必要であろうかと思います。そういった意味でこの問題は古くからも取り上げておられた問題でございます。そこに御承知のようにいろいろな問題が起きまして、先ほどこれも銀行局長からお話がございましたように、一体、限られた資金配分の面から大口集中貸し出しもよく検討してみなきゃならぬじゃないか、それからまた取引先との癒着、こういった面からもいろいろ検討してみなきゃならぬじゃないか、これは私ども全く同感でございます。  で、ただいま局長からお話がございましたように、かりに自己資本の二〇%というところに線を引きますと、それにひっかかりますのは十二社、そのうち九社というお話がございました。商社の一昨年来のビヘービアにつきましていろいろ批判がございましたし、そういったお行儀の悪いやり方を商社ができるについては、それに必要な資金を銀行が、金融機関が出しておった点にも問題があるんではないかと、そういった面からまたこの大口貸し出しの問題がクローズアップしてまいりましたわけでございます。  ただ、御承知のように、昨年の春以来、非常な金融引き締めが行なわれておりますし、これは量的な引き締めだけでなくて、同時に質的な引き締めも行なわれておりまして、商社に対しましては、たとえば富士銀行は四半期ごとに商社全体でこれだけしか貸し増しをしてはいかぬと、そういった非常にきびしいワクが日本銀行から示され、われわれ銀行はそれを守っておりますわけでございます。したがって、はっきり申せますことは、昨年の四月以来は、それまでも私どももある意味では自粛をいたしておりましたけれども、特にひどい貸し増しが行なわれておるということではございません。  それから、いま一体十二社はどこかというふうなお話がございましたが、御参考までに、これは全銀協ということでなくて、お話をわかりやすくいたしますために申し上げますと、富士銀行の場合は、商社は三井物産と丸紅、メーカーでは新日本製鉄と日本鋼管、この四社が、かりに二〇%に線を引くといたしますと、それ以上の貸し出しになっております。そこでもう一つ申し上げておきたいと思いますのは、先ほど銀行局長から資本市場の未発達、その他の理由で企業が非常な借り入れ過多になっておるというお話がございましたけれども、これらの企業につきましても、そのことが当てはまるわけでございます。  ただ、私が申し上げたいのは、これも銀行局長がおっしゃいました、これからどういったふうに大口貸し出しを規制するかと。つまり白い紙の上にこれからどういう絵をかくかということであれば比較的問題は簡単かと思いますけれども、すでにある現実ができ上がっております。いま私は丸紅についてこれが二〇%の線をこすということを申し上げました。世間では丸紅等に対しては富士銀行かメーンだというふうに——まさにメーンということは言えると思います。そういうふうに世間が丸紅については富士銀行がメーンだとおっしゃる陰には、丸紅にああいうお行儀の悪い行ないがあったけれども、その丸紅の銀行借り入れの中で、相当大きな部分を富士銀行の貸し出しが占めているんであろう、こういうふうにおそらくはばく然とお考えになっておるんではないかと思います。いま申し上げましたように、丸紅については私のほうがメーンでございますけれども、私のほうの占めますウエートは一四%程度でございます。つまり企業が非常な借り入れ過多でございますから、丸紅としては六十行以上の借り入れ先を持つ、そのうちの一行。そういった現実を十分にらんでいただきまして、この問題は局長がお話しになりましたように、金融制度調査会で十分検討していただきたい。検討していただきますことにつきましては、もちろん異議も何もございません。
  171. 須原昭二

    ○須原昭二君 まあ制度調査会の答申待ちというお話ですが、その前提要件として、いま巷間この自己資本二〇%という基準がまあ大口融資規制一つの方法のような形でささやかれておるわけでありますが、その他その一部適用除外、どういうことが適用除外かわかりませんが、いろいろと各般から意見が出されております。  問題は、たとえばこの二〇%の基準で過剰流動性の失敗の要因となった銀行の貸し出し競争が是正されるかどうか、この点は私は非常に疑問だと実は思っておるわけです。すなわちその自己資本の二〇%という基準は、銀行経理の健全性という観点からは必要な規制ではありますけれども、問題の発展から見ると有効とは言えないと思うのです。というのは、むしろ巨大銀行でメーンでない銀行の場合、中位銀行のメーンの立場を奪ってしまうような形が私は出てくるのではないかと実は思うわけで、貸し出し競争それ自体は何らなくならないと私は思うわけです。その点はひとつ、まあ仮定の論議になりますが、銀行局長から御見解お尋ねしておきたいと思います。
  172. 高橋英明

    説明員高橋英明君) 大口融資規制のやり方いかんによって何か貸し出し競争が激化するのではないかというような、御質問の御趣旨がよくわからないんでございますが、それはたとえば中位行がメーンであったのが二〇%の制限で頭打ちになって、まあ上位行がかりに余裕があるからメーンがシフトするのではないかというような、そういう御質問でございましょうか。——まあそういうことは理論的には起きるわけでございます。  で、したがって現在いろいろな形ででき上がっておる秩序に対して、これはその秩序を破壊するような動きになることはやむを得ないんではないかと思います。ただ、貸し出し競争とかメーンの奪い合いというような次元の低い話で銀行融資が行なわれるというようなことは困りますので、そういうことは厳に戒めてやっていきたい、こう思っております。
  173. 須原昭二

    ○須原昭二君 その点が一つと、もう一つは巨大銀行の抑制の必要性が私は生まれてきておるのではないかと思うわけですが、大蔵省は効率化行政ということで銀行の合併、その他銀行の基盤強化をはかってきたのでありますが、たとえば合併した第一勧銀はもとより、富士銀行、住友、三菱などは国際的にも巨大な銀行の域に達しておると思います。したがって効率化よりも巨大化抑制、弊害除去が問題点ではないかと思うわけです。  しかるに、その大手都市銀行の、あれは佐賀支店の閉鎖でしたか、その失敗から効率化行政の若干の手直しはなされておるということでありますが、巨大銀行のこの弊害にメスを入れるという考え方には至っておらないわけです。今度の大口融資規制でも一律に自己資本を基準にすることで、かえって先ほど申し上げておるように上位銀行に有利な条件が出てしまうことを見のがしておる、こう思います。なるほどまだ仮定の論議でありますから、ここで根本的な論戦をすることができないことを残念と思いますけれども、このように銀行の場合も上位銀行数行についてはこれ以上の巨大化を抑制する必要が迫っているのではないかと思うのですが、その点は大蔵省はどうお考えになりますか。
  174. 高橋英明

    説明員高橋英明君) 巨大銀行——現在、第一勧銀が一番大きさとしては大きくて、これは全世界で十二番目だというようなことですから、かなり大きなことにはなっておると思います。ただ、日本の場合、日本国内で見ました場合に、第一勧銀が約五兆円ぐらいの資金量を持っておりますけれども、これが日本の銀行市場といいますか、そういう中で占めるシェアというのは一割にも達してないということで、まだそう巨大であるとか寡占であるとかという現象にはなってないと思います。  ただ銀行全体として見て、金融界の力は非常に大きいじゃないかというような点、これは私も痛切に感じおります。で私ども行政としてその効率化ということは、これはやはり国民の大事な資金を預かり運用する立場でございますから、金融業全体が効率化していって、なるべくその資金の提供者には高い金利をやり、資金の使用者には安い金利でということができるようにするということは変わらないことだと思います。  ただ、ただ大きくなればいいとか、そのためになりふりかまわず業容拡大主義とかあるいは併呑主義といったようなビヘービアを持つことは厳に戒めておるということでございまして、まあ何か大きくなれ、合併しろういうような、そういう形で私ども行政はやっておりません。
  175. 須原昭二

    ○須原昭二君 特に巨大銀行の抑制については、これは留意を払っていただかなければならないと思います。  そこで、昨日も同僚の小谷委員から指摘をされておりましたが、中小企業金融のワクの拡大について若干関連をしてお尋ねをしておきたいと思うんです。  全般的な金融引き締めの影響を一番ひどく受けるのは、何といっても中小零細企業です。さきに若干の追加融資をきめられたようでありますけれども、中小企業の金融をゆるめても、それをいいことにして大手が取引関係の優位性を利用して、いわば手形期間を延ばすというような措置をとれば、実際には役に立たなくなるわけです。かえって大企業の金融をゆるめる結果と同じことになってしまうわけでありまして、このようなことにならないように適切な手を打つ方法はないものかどうか、これが一つ。  一千億といわれておりましたんですが、新聞の報道によりますと。一千億といわず、それを上回って追加するつもりはないのかどうか。  まとめてお尋ねをいたしますが、さらに同じく小谷委員から御指摘がありました住宅金融公庫の融資の追加の問題でありますが、ここ二、三年前から住宅金融公庫の融資の方法が抽せん制をやめて、常時申し込み制となっております。この点は御案内のとおりです。ことしはすでにワクが一ぱいになってしまって、もう貸し出しができないような状態だといわれておりますが、秋ごろ建てようと思っておった人々は大きな痛手になっているわけです。したがって財政の弾力条項によって追加する考えはないのかどうか。郵便貯金の伸びなどによって資金運用部資金には資金的余裕があるというふうに聞いておりますが、その点はどうなのか。  まとめてひとつ、時間がございませんから、簡明に要領を得て御答弁をいただきたい。
  176. 高橋英明

    説明員高橋英明君) 初めのほうでございますが、中小企業に金を出して、そしてそれをいいことにして大企業がサイトなどを延ばしたり、現金比率を下げたりするのはけしからぬじゃないかということですが、それはまさにそういう事実があればけしからぬことでございます。このことはむしろ私どものほうよりは例の下請代金支払遅延等防止法とか、あるいは中小企業庁の指導といったようなものにまつところが非常に多いわけでございます。ただ、中小企業と大企業といいましても、お互いに共同で仕事をしておるわけでございますので、中小企業のほうに潤沢に出せば、大企業のほうが、といいますか、親企業のほうが現金で払ってたのを手形で払うというような形になるのもある程度やむを得ないことだと思います。ただ、それにつけ込んでというようなことはしないように、これは中小企業庁、公取といったところと連絡を緊密にしながら、ひどいことにならないようにしたい、こう思っております。  それから、追加千億ということでございますが、これはおそらく七−九の政府三機関の話かと思います。四−六には千五百億を追加しまして、第二・四半期も昨年に比べて九百億ふやしてスタートはしておるわけです。ここにきて少し詰まってきておるようなものですから、これは中小企業庁とも相談して、様子を見て、弾力的に取り計らっていきたいと思います。ただ金額的なことは理財局でございますので、私としてはこの程度でございます。
  177. 須原昭二

    ○須原昭二君 大蔵大臣、いかがですか。
  178. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 御案内のように、第一・四半期、第二・四半期それぞれ措置いたしたわけでございますので、事態の推移をウォッチしまして機動的に対処することは当然のことと考えておるわけでございますけれども、いま直ちに措置しなければならぬ事態であるというような判断はまだいたしておりません。
  179. 須原昭二

    ○須原昭二君 これはきょう押し問答をいたしておりますと、大蔵大臣何か御都合があるようでありますから、先へ進ましていただきます。  大蔵大臣、お引き取りいただいてけっこうです。  そこで佐々木参考人にまたお尋ねをいたします。  七月十六日の全国銀行大会における大会所信というものがあるようでありますが、それを読みますと、第二項目目に「貯蓄優遇策の一層の推進」こういう課題が実は出ております。もう文案を読み上げることを避けたいと思いますが、いわゆる預金の目減り対策、銀行が預金者に責任を感ずる必要があるのは私は端的に言って預金の目減りである、こう断定してもいいのではないかと思います。預金の目減り対策というと預金の金利の引き上げ、そして貸し出し金利の同じような引き上げ、こういうのが銀行各行のパターン、反応のようでありますけれども銀行の資金運用の中にはいわゆる有価証券もあり土地もあり、その評価益というものを考慮すれば、貸し出し金利に直結しない対応も可能であると私は思うのですが、その点はいかがでしょうか。時間の関係もございますから簡明にひとつお願いします。
  180. 佐々木邦彦

    参考人佐々木邦彦君) お答えをいたします。  確かに一部はございます、そういった力が。ただ、その力はまことに残念でございますが、そんなに大きなものではございません。したがって、たとえば貸し出し金利を上げないで全部の預金金利を上げたらどうかというお話になりますと、これは非常に困難なことでございます。そういたしますと、預金の一部の金利を上げたらどうか。たとえば個人預金だけ上げたらどうか、あるいは個人預金の中の個人の定期預金だけ上げたらどうか、いろいろな案が出ようかと思います。そういったものは十分検討に値をする、こういうふうに私は思います。
  181. 須原昭二

    ○須原昭二君 一昨日の夜、テレビの「あまから問答」を見ておりましたら、大蔵大臣も定期預金の金利はより高くしたほうがいいんじゃないかということを言明されておりました。したがってこういう問題点は前向きでひとつ御協議をいただきたいと思います。要望しておきます。  さらにいま一つは、銀行の貸し出し金利においては、大企業に低く、そして中小企業には高いというのがいままでの原則です。従来はそれでよかったのでありますが、電力料金だ水道料金だ、大口を高くする必要が出てきておるわけですね。資源に限界が出てきた経済の動きなんです。金融界としてもこの動きに対応するために、大口融資は資金の浪費であるという観点から、むしろ大口の融資金利を高くする考え方を私は導入すべきだ。その点のお考えはいかがですか。
  182. 佐々木邦彦

    参考人佐々木邦彦君) お答えをいたします。  つまり貸し出し金利の引き上げなしに預金金利の引き上げは限度があるだろうから、それをもう少しふやす意味でも貸し出し金利を上げたらどうか、その中でも大口貸し出し金利をと、こういうお話だろうかと思います。私はそれは一つの確かにアイデアであるとは思いますけれども、実際問題としては非常にむずかしい幾つかの技術的な点があろうかと思います。  第一には、大企業と中小企業関係でございますが、いろいろな取引関係が錯綜いたしておりますので、大企業の貸し出し金利を上げますということは何らかの形で中小企業にこれがはね返っていくのではないか。  第二番目には、適用の金利を差別いたします場合、どこで線を引くかということが非常にむずかしい面があろうかと思います。中小企業基本法に申しますいわゆる中小企業、ここで線を引くのが妥当かどうかということについてなお検討してみる余地があろうかと思います。  それから三番目には、銀行によりましては大企業との取引が非常に少ない、したがって、そちらの金利を上げましても預金金利を上げるほうに回せる力はそんなに出てこない、そういった問題もあろうかと思います。  また、電力料金とかそういった公共料金は一律にきめることができますけれども銀行の貸し出し金利は企業の信用状態とかその他いろんな条件を勘案いたしまして決定をいたしますので、ただいま申し上げました諸点から、実際問題としてはなかなか困難であろうかと思います。  それからちょっとつけ加えさせていただきますが、先ほど私は個人預金あるいは定期預金と預金をある範囲にしぼれば預金金利の引き上げもいまの銀行の力でできないことはないと申し上げましたけれども、これは、それがそれぞれその他の全般の金利体系に影響いたしますので、その面をどう考えるかという大きな問題がひとつ残っておりますこと、これは当然のことでございますが、つけ加えさしていただきたいと思います。
  183. 須原昭二

    ○須原昭二君 いま私が申し上げたのは、私だけの個人考え方ではなくして、一般の一つの世論に定着しつつあるという視点を銀行協会の連合会もひとつ重視していただきまして、この点についてより検討を続けていただきたい、この点は要望しておきます。  そして、ついでと申しますと非常に恐縮でありますが、この際、明確なひとつお答えをいただきたいと思うんです。というのは、銀行における自民党への政治献金の問題であります。去る七月の十六日の全国銀行大会の「所信」の中にも、第三に「変化する社会の要請に応える銀行経営」「経済、社会の急辺な変化にともない、銀行に対する社会の要請はますます多様かつ拡がりをもったものになってきている。われわれはこのような社会の要請に対し銀行の公共的使命を自覚し、経営の効率化を一層推進しつつ、真に顧客の立場に立った金融サービスの充実と金融慣行の確立につとめ、もって社会の負託に応えていく所存である。」、非常にりっぱな所信が発表されております。  これに基づきまして、このことはいわゆる銀行というものは私企業ではないんだ、私企業とはいうものの社会的役割りが大きくあるんだという、いわゆる銀行側の自覚した発言だと私は理解をいたします。そういたしますと、それと並べて考えなければならないことは、銀行は巷間伝えられるところによりますと、電力、鉄鋼と並んで自民党の政治献金の御三家だといわれております。そうですか。——うなずいておられますから、そうだと思いますが、その御三家だという世の批判、世の風評にこたえて、私は重大な段階に来ていると思うわけです。銀行協会として政治献金をこの三年間、もしデータを持っておられましたら、ひとつどれだけ献金をされておるのか、支出額を明確にしていただきたいと思います。
  184. 佐々木邦彦

    参考人佐々木邦彦君) お答えをいたします。  いま御三家だというお話がございましたけれども、これは世間ではそう申して——まさにそのとおりだと思います。自民党への政治献金につきましては、これは経団連ということではございませんそうですけれども、実際問題といたしましては、経団連から割り当てが各業種にまいります。銀行協会に対しましても割り当てがまいりますが、それは従来は電力と鉄鋼と金融機関、この三つが同じようなパーセンテージでございます。そういった意味で御三家ということは当たろうかと思います。  ただ、ここで私はお断わり申し上げておきたいと思いますのは、銀行協会と申しますけれども、これは全国銀行協会の問題ではございません。幾ら寄付をしたかという問題は、これは官報に出ておりますので、はっきりいたしております。ただ官報に出ております金額は、いま私は全銀協ではないということを申し上げましたけれども、東京銀行協会と、こういう名義で寄付をいたしております。それは具体的には都市銀行十三行とそれに長信三行を入れました十六行、それが企業規模その他を参酌いたしまして一定の割合で分担をいたしまして、東京銀行協会の名義において国民協会に寄付をいたしておりますわけでございます。そのことを御承知いただきたい、全銀協の問題ではございません。
  185. 須原昭二

    ○須原昭二君 そういたしましたら、直接はわれわれは関与しておらない、しかし全国銀行協会連合会として、国民協会に各銀行政治献金をされておる、その額は集計をされたことがございますか、または知っておられますか、いかがですか。
  186. 佐々木邦彦

    参考人佐々木邦彦君) お答えをいたします。  私が承知をいたしておりますのは、いま申し上げました東京銀行協会名で十六行がいたしました寄付金額は官報に出ておる、それを承知いたしております。その他、地方銀行協会あるいは信託銀行協会、その問題につきましてはタッチをいたしておりません。東京銀行協会として寄付をいたしましたのは、これは官報に掲載をされておりますように四十七年の十二月の衆議院選挙には四億円拠出をいたしております。
  187. 須原昭二

    ○須原昭二君 私は銀行への預金者は必ずしも自民党支持者だけではないと思います。さらに、その大会所信にも明らかになっておりますように、いまや銀行は大衆化路線——私たちのことばで言うならば大衆化路線を踏まえなければならないと明記をしておるんですから、旧財閥銀行とは本質的に違うわけですね。そういう点からするならば、たとえば最近経団連の会長は割り当てをしない——このことばに端を発して、東京電力等でこの問題に対処する画期的な発言がなされております。東京電力などいわゆる九電力会社が、公共事業であるから企業政治献金をやめるという方向で踏み切られたのでありますが、銀行業界としても、先ほど申しましたように社会的使命を自覚し、そして大衆化路線を歩もうとするその銀行の立場、すなわち同じ公共事業であると言って、断定してもはばからないわけでありますが、したがってそういう立場に立つならば当然それにならうべきではないか、こう私は思います。そういう点でひとつ全国銀行協会の連合会の会長としての御所見を承っておきたいと思います。
  188. 佐々木邦彦

    参考人佐々木邦彦君) お答えをいたします。  実は、いままでも申し上げましたように、私がタッチをいたしておりますのは全銀協の問題東京銀行協会、それからまた全銀協といたしましてこの問題に正式にまだ討議をいたしておりませんので、お答えをいたしますことは全銀協会長として、個人というふうに非常にあいまいでございますが御了解をいただきたいと思いますが、あの東電の決議が行なわれましたときに、新聞記者諸君から、これは銀行協会長としてどう思うかという質問を受けまして、私は選挙にもあまりに多くの金がかかり過ぎることは好ましいことだとは思わない、特に前回の参議院選挙を機会に反省が出てきてこのためのいろんな改革案が検討されておることはけっこうなことだと思いますと、こういうことをその発言の一部に入れております。  そこで、いま須原先生からは、東京電力、これは公益事業だというふうに申しておりますが、銀行も公共性の非常に強い公益事業——法律上は公共事業ではないかもしらぬが、公共性の強い機関だから東電にならったらどうかと、こういう御指摘でございますが、私はいま全銀協個人といたしましては、非常に先ほどから申し上げておりますように重大な立場にございますので、この政治献金の問題についての客観情勢がどういうふうに推移していくか、それを十分注視しながら慎重に検討いたしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  189. 須原昭二

    ○須原昭二君 客観的な情勢の推移を考慮しつつこれに対処するというお話です。しかし会長さんに失礼な言い方をするようですが、大勢はこれは廃止すべきだ、打ち切るべきだ、こういう方向へ向かっていることはもう会長さん個人でも御自覚をされておるのではないか、それを推移いかんによってと、こういうことではその前提の認識が違うと思うんです。その点についてはあまりシビアに考えられておらないのではないかと実は思うんですが、この問題点についてはまだ検討されておらないということですが、いつ検討されますか。当然銀行協会というものは、やはりおのおの銀行の指導的と申しますか、意見を集約して、そして各銀行が足並みをそろえていくという一つの指導機関だと私は思います。そういう点からいうならば、当然この問題を早く検討されて指示するとか、意見の統一を見ることが当然ではないか。そういう点でまだ検討されておらないということであるならば、いつ検討され、いつまでに結論を出されるのか、その点を明確にしておいていただきたいと思う。
  190. 佐々木邦彦

    参考人佐々木邦彦君) お答えいたします。  実は私のいまの腹づもりでは来月の三日に理事会を聞くことになっておりますので、その席上で皆さん方の御意見も聞いてみたいと、こういうふうに思っております。ただ、その席上で銀行協会としての意見が、結論が出ますかどうかわかりませんけれども、一応一番早い機会といたしましては、来月の三日にこの問題をおはかりしてみたいと、こういうふうに考えております。
  191. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっと関連。  一言だけ聞きますがね、大蔵省からいわゆる第三分類、第四分類という分類された融資の中にも政治献金的性格のものがある、これはどうですか。
  192. 佐々木邦彦

    参考人佐々木邦彦君) お答えいたします。  銀行が自民党に融資をしているかと、こういうお話でございますか。——それは率直に申しまして、融資もいたしております。ただ、その金額とかその他につきましては貸し出し金の具体的な内容にわたりますので、この際答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
  193. 和田静夫

    和田静夫君 これは大蔵省のほうが私は一番よく御存じだと思うんですが、銀行局長どうですか。この辺で蛮勇をふるって、いわゆる大蔵省から第三分類、第四分類に分類された融資の中に政治献金部分的性格のものがあると公表される、そういうおつもりはございませんか。私は強く公表を求めます。
  194. 高橋英明

    説明員高橋英明君) 政治献金的なものが分類されたかどうかということ、私存じません。  それから検査の内容を公表するということはいたしておりませんので、ちょっとむずかしい問題ではないかと思います。
  195. 須原昭二

    ○須原昭二君 佐々木参考人、いまのお話は九月の三日に理事会を開いて各銀行の意見を聞かれると、こういうことでありますが、その会の運営にわれわれは介入するという気は毛頭ございません。ただ、この際お尋ねをいたしておきたいことは、富士銀行の頭取さんでもございますから、したがって佐々木参考人個人としてのお気持ちでは出すべきか出さぬべきか、打ち切るべきか打ち切るべきでないか、個人的な意見だけはお聞きすることも参考としていいのではないかと思うのですが、会長個人としての御意見はいかがですか。
  196. 佐々木邦彦

    参考人佐々木邦彦君) お答えいたします。  私個人といたしましては、理想はやはり個人献金ということに限るべきだと思います。ただ従来からのいろいろないきさつもございますし、ここで企業献金は全部やめる、富士銀行はしないというふうにいま結論を出す気持ちは持っておりません。経済界全体がどういうふうに動くか、今度の東電のとった行動に対しまして自民党側からもある程度のいろいろ調査会、委員会その他で御検討なさるようでございますから答えが出てまいりましょうし、その辺の問題を慎重に判断をいたしましてその上できめたい、こういうふうに考えております。
  197. 須原昭二

    ○須原昭二君 企業献金はいけない、個人献金とすべきだと、こういう御意見だと聞きますが、経団連のある幹部のお話を聞いても、企業としての献金はやめても社員が個人献金すれば穴埋めはできるはずだと、逆な論理から展開をさせております。性格の問題は別といたしましても、社長の陣頭指揮のもとで管理職を勧誘することがあっては私はならない。すなわち管理職の政党支持の自由を束縛するのではないかというおそれがあるわけです。そういう点、個人的な献金とおっしゃるのはどういう意味をさしておるのですか。
  198. 佐々木邦彦

    参考人佐々木邦彦君) お答えいたします。  私がいま申し上げましたのは、最終的には個人献金だけで自民党の党費がまかなえるようになることが望ましい、企業献金はなるべく避けたいということを申し上げましたけれども、それは最終的にでございます。過渡的には企業献金もある程度やむを得ないんじゃないか、個人的にはそう思っております。  それから個人献金の問題でございますが、いま須原先生おっしゃいましたように、私個人といたしましては、かりに富士銀行企業としての献金額を減らすとか、あるいは最終的に廃止するという方向に向かいますにいたしましても、銀行といたしまして管理職その他含めまして行員に個人献金を強制する考えは毛頭持っておりません。
  199. 須原昭二

    ○須原昭二君 やはり最初に申し上げましたように、銀行の社会的使命、その自覚の上に立って、しかもまた預金者は自民党支持者だけではないというその前提に立って、この点は九月三日に理事会を開かれるようでございますが、これは前向きで客観的な情勢を云々と言われておりますが、客観的な情勢は廃止の方向に進んでいることはもう言うまでもないことでありますから、英断をもってひとつ処理をしていただくように要望して質問を終わりたいと思います。どうも御苦労さまでした。
  200. 前川旦

    委員長前川旦君) 佐々木参考人に申し上げます。きょうはたいへんお忙しいところをわざわざ本委員会に御出席いただきましてありがとうございました。また貴重な御意見をいただきまして感謝を申し上げます。どうぞ退席をしていただいてけっこうでございます。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  201. 前川旦

    委員長前川旦君) 速記を起こして。  委員長から一言注意いたしますけれども、予定時間どおりに政府は出席するように今後十分な御注意をいただきます。
  202. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 きょうは私は特に厚生省の薬務行政全般についてお伺いしたいと思います。  初めに特に薬務行政の中でもきょうは添付の問題について私は取り上げて質問をしたいと思います。この添付の問題につきましては相当前から医薬品の乱売とかそういういろんな問題の中で、相当何回も取り上げられてまいりました。これは昭和三十年代に相当問題になりましたけれども、その後厚生省からいろいろな通達が出ております。その通達によりますと、もし医薬品で添付が行なわれたということがはっきりした場合には、その医薬品はいわゆる薬価基準からはずすと、こういうふうなきびしい通達も何回か行なわれております。ところが実際には、私の知る範囲ではそういうふうな具体的に薬価基準からはずしたというようなことはまだ一回も行なわれてないんじゃないか、こういうぐあいに思います。そういうような観点から、私は現在の薬の乱売あるいは薬務行政の基本的な姿勢あるいは現在の薬価基準の定め方のいいかげんさ、そういうふうないろんな角度から相当これは深い問題であります。そこできょうは時間的な関係もございまして、特にこの添付の問題にしぼって話を進めてまいりたいと思います。  そこでまず初めに、もしこういうふうな添付が行なわれているということがはっきりした場合には薬価基準からはずすというような通達が出されておりますが、この問題について、まず保険局長のほうから中央薬事審議会の答申に基づいて薬務局長に対して通達が出されております。その内容について保険局長のほうから初めにお伺いしたい。
  203. 北川力夫

    説明員(北川力夫君) ただいまお話がありました件は四十五年の十二月に中央社会保険医療協議会が開催されまして、そのときに添付が行なわれている医薬品については薬価基準から削除すべきであるという決定がありまして、この趣旨を受けまして当局はこの決定に従って必要な措置をとることとしたのでその旨を御了知願いたい、こういう趣旨の連絡を保険局長のほうから薬務局長のほうに出しております。
  204. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 薬務局長はただいまの保険局長の通達に基づいてそれぞれ関係部署に通達を出していると思いますが、その内容について、詳細に一ぺんその通達の内容を読み上げてもらいたい。
  205. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) いま御指摘の保険局長から薬務局長あてに発出されました文書に基づいて、薬務局長名をもちまして関係団体に通知をいたしました文書を朗読いたします。   薬発第一一四三号   昭和四十五年十二月十五日        厚生省薬務局長   医薬品の販売に伴う添付について今般、保険局長から薬価基準収載の医薬品の削減について別添のとおり連絡があったので、薬務局においては、添付が行なわれている医薬品を常時調査把握し、これを保険局に連絡することとしました。   上記の措置に伴い、医薬品の添付を廃止することはもちろん、医薬品の販売姿勢について、さらにその適正を期されるよう要望します。   なお、本件については、貴会各会員の部内において早急に周知徹底するよう、すみやかなご連絡をお願いいたします。  以上でございます。
  206. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 再度確認をいたしますが、同様の通達が昭和四十七年八月三日、昭和四十八年の七月二日の合計三回にわたって出されておりますが、これは事実かどうか。
  207. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) ただいま手元に正確な資料を持っておりませんので日付は記憶しておりませんが、そういう二回にわたりまして通知をいたしましたことは間違いございません。
  208. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そこできょうは端的に問題を出しますが、日本ルセルという会社がございます。これはどういう会社ですか。
  209. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 日本ルセル株式会社は昭和三十四年に設立されました外資系の会社でございまして、親会社はフランスのルセルユクラフ社、資本金は一億五千万円、その株式はルセルユクラフ社が六〇%、中外製薬株式会社二〇%、帝国酸素株式会社が二〇%、従業員は約二百三十名、年間売り上げ高が二十二億六千万円となっております。決算状況といたしましては、これは欠損会社でございまして、四十五年から四十八年までずっと赤字を計上いたしております。四十八年度の赤字額は三千三百四十四万円でございます。それから同社は昭和四十八年十二月にルセルメディカ株式会社という新会社を設立いたしまして、営業部門を独立させております。
  210. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 当ルセルの問題につきまして、薬務局にすでにこういうふうな添付が行なわれているという訴えがあったはずですが、これはあったかどうか、どうですか。
  211. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 日本ルセルの元社員から日本ルセルが添付行為を行なっておるという投書——初めに電話連絡がございまして、引き続き投書が厚生省に参っております。この投書によりまして、日本ルセルの関係者を呼びまして事情を聴取いたしましたところ、これは元社員が会社に無断で同社製品を持ち出しまして添付類似行為を行なったことが判明したために、会社の方針にこれが反するということで解雇をしたという申し立てがございます。で、同社の提出いたしました資料によりますと、営業方針として、添付あるいは添付類似行為はしないということを社員に指導しておりまして、この問題は同社員が個人的に無断で行なったものであるという事情でございますので、厚生省といたしましてはそのように処理をいたしております。
  212. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は事実関係だけを明らかにしていきます。  それでは初めに、この会社の一従業員が個人的にしろ、あるいは無断であるにしろ添付をしたということは、これは認めていらっしゃるわけですか。
  213. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) いままでに私ども調査をいたしました限りでは、それは先生御指摘のとおり事実だと考えております。
  214. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、あなた方の手元にも、こういうふうに具体的に添付が行なわれたという相手の領収証つきであなたの手元にも到着しているはずですが、これはどうですか。
  215. 前川旦

    委員長前川旦君) 答弁してください、松下薬務局長
  216. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) いままでのところ、どこへどの程度に出したというような資料は来ておるようでございますが、領収証は私どものほうには来ていないというふうに承知をしております。
  217. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 局長ね、いいかげんなことを言っちゃいけない。全部ついているんだ。私が持っている資料とあなた方のところにある資料は同じなんだ。私のところにはきちっと領収証も全部ついてある。こういうぐあいに添付が行なわれたという詳細な資料が私の手元に着いている。あなたのところにもコピーである。私は見してもらった。あなたのほうの経済課長さんから見してもらった。ないわけは絶対ない。そんなばかなことはないですよ、局長。  具体的に申し上げますとね、具体的に添付が行なわれた。実は私の手元に、私がきょうこれから読み上げる分はほんの一部です、ほんの一部ですよ、まだそれ以外にもたくさんあるけれども、あんまりたくさん読み上げるとこれは問題があるので私は言わないんですが、大阪の城東区のA中央病院、これは三〇%の添付、二五%の値引き、百貨店の商品券。もう先方の受け取りがきちっとついてある。それだけじゃない。東成区のB病院、これは十万錠買って四万錠の添付、此花区の同じくC診療所では一万錠買って一万錠の添付、そういうぐあいにしまして、住吉区のE病院では一万八百錠買って添付が一万五千八百四十錠だ。添付のほうが多い。  こういうふうな、これは全部で六つ私はここに持っていますけれども、これだけじゃないんです。こういう添付が具体的に行なわれたという資料があなた方の手元に着いているはずです。  これは事実かどうか、これだけ認めてもらえばけっこうです。
  218. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 申しわけでございませんが、現在、その元社員から私ども提出されました資料はこちらに持ってきておりませんので、至急取り寄せまして確実なお答えを申し上げたいと思います。
  219. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それじゃ担当の課長を呼びなさい、すぐ。
  220. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 担当の課長は参っております。ただ先日人事異動があったばかりでございまして、先生がお会いいただきました課長は異動できょう参っておりませんので、そのときの事情はちょっと課長は存じておりませんので、お許しをいただきたいと思います。
  221. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 こういうふうなことを局長、きちっと、課長がかわったからっていうことで終わらしちゃ困る。これはあとで早急に、この委員会で私が一時間質問いたしますからね、それ以内に確実かどうかを確認してもらいたい。——よろしいですね。  さて、そこであなたは、これは……
  222. 前川旦

    委員長前川旦君) 峯山君ちょっと。  いまの、よろしいですね、局長
  223. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) ただいま至急資料を取り寄せておりますので、時間内に届くことと思います。なお至急電話をもって照会いたしまして、いまの領収証の件はさっそく確認するようにいたします。申しわけございません。
  224. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは大臣聞いてもらいたいんですが、非常にこれはすごい。もうひど過ぎる。というのは、私が指摘をいたしましてから、この元社員を懲戒解雇にし、そしてこういうふうなつくろった形跡がある。大臣、先ほど局長は、これは元社員が個人的に無断でやったんだと。しかも本人は懲戒解雇にしたという話だったですが、そのとおりかどうか、確認します。
  225. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 私どもが会社の幹部から徴しました報告によりますと、そのように承知をいたしております。
  226. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それじゃ大臣、私の手元に、この本人の現在の、いわゆる会社のほうでは、厚生省に対しては要するに懲戒解雇である。私の手元にもその懲戒解雇であるという資料が来ております。懲戒解雇でありかつこんなに悪いことをしたんだというルセルのほうからの厚生省に出した写しが私の手元に届いております。  ところが実際は大臣、これは大臣だけに見せますけれどもね、現在その懲戒解雇したはずの本人が給料十七万二千五百円で雇われている。これはどういうことですか。局長どういうことですか。
  227. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) その事実は私承知いたしておりません。
  228. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 一ぺんこれは大臣見てもらいたい。(資料を示す)これは昭和四十九年五月一日から四十九年十二月現在です。(国務大臣内田常雄君「非常勤」と述ぶ)ええ、非常勤ですね。しかもこんな給料ですよ。しかも、それだけじゃない。円満退職ですよ。前の前の話ですけれども、これは営業部長です。  こういうふうな、これは薬務局長ね、片方ではこういうふうに一社員に全責任をかぶせてそして添付を事実やっておりながら、片方では、あんたすまぬなと、まあ一時首になってくれと。しかし裏ではちゃんとめんどう見るから。まあこういう感じですね。こんなことがあっていいんですか、これは局長どう思います。
  229. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) その点は、私ども調査をいたしました限りでは、先ほど御答弁申し上げたとおり実情だと承知いたしておりましたので、いま先生がお示しいただきました契約書等は私全然承知をいたしておりませんので、そういう事実がございましたならば、私どももう一度調査をいたしましてしかるべき処分が必要ならば処分をいたしたい、そのように考えております。
  230. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは薬務局長に私はしかと申し入れたいんですがね、この問題が起きましたときに、こういうふうな問題が起きてたいへんなんじゃないか、おかしいんじゃないか、こういうぐあいに私は薬務局のほうへ申しました。そうしましたら、あなた方厚生省の役人とメーカーとはツーツーじゃないですか。私がね、ルセルという会社はこういうふうな悪いことをしているんじゃないですかとこういうぐあいに聞いた場合に、どう処理をすべきですか、あなた方は。どこどこのこういう議員がこういうぐあいに言っているよと会社に直接私の名前を言って、それであなたは私が納得するように会社のほうへ説明しなさい、まあこういう感じの厚生省の行政指導ですね。そんなことないですか。
  231. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) おしかりを受けましておそれ入りますが、厚生省といたしましては、まず初めに厚生省にその情報を提供いたしました者が、先ほど申し上げました大阪支店の元課長と称する人物でございます。で、私どもも二千数百の企業を対象といたしておりますと、会社の中のトラブル等を直接厚生省に持ち込んでくる例もときどきあるわけでございまして、そういった調査に関しましては、私どもとしてはまず会社の責任者にも実情を聞くということは、これは手続の一つとして必要な場合があるわけでございまして、そういった意味で会社の幹部を直ちに招致いたしまして実情を聴取いたしました。もちろん問題が問題でございますので、同時にこの当該医薬品につきましても、いろいろな方法を用いまして、ほかのところにおいてもこういう添付行為がないかどうかというようなことも並行して私ども調査をしておるわけでございますし、それからその後におきましても、この会社の添付の状況あるいは販売姿勢等につきまして調査を続けておるわけでございます。  そういったやはり全国的な企業になりますと、ほんとうに一職員の判断によって行なったものか、あるいは先生御指摘のような、会社が擬装することによってひとりに責任を負わせて会社の責めを免かれておるものかどうかということは、やはりかなり範囲の広い、かつ期間をかけての調査に待ちませんと、なかなか正確な結論が出にくいという意味で、おっしゃるような形でまず会社の幹部からも意見を聞いたという事実はございますけれども、その際にもし先生が御指摘のようなことを厚生省が申したというふうに会社のほうが受け取っておるといたしますと、それは私どもの指導の誤りでございまして、そういったことは私ども通常考えておりません。ただ、いろいろ事情を説明いたします際に、あるいは先生のお名前が不用意に漏れまして、会社はそのように受け取ったかもしれませんが、その点はおわびを申し上げたいと思います。
  232. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 局長ね、あなたはいろいろおっしゃってますけれども、そうじゃないんだ、実際は。もう会社のほうから私のところへ直接手紙が来てます。手紙のしょっぱなにどう書いているかというとですね、厚生省薬務局経済課より弊社ルセルの販売方針あるいは販売姿勢に問題があるとの御指摘が私からあったと。そこから始まっているんだ。私が指摘したということをすぐ先方へ連絡して、先方からすぐ私のところへ来る。しかも、それだけじゃない。あなたのほうの経済課長は私のとこへ来ました。そしてどういうぐあいに第一番目に発言したかというと、あれは一課長のやったことでございまして、薬価基準からはずすことはやめましたとこう言うのです。ああそうか、それは一体どこの決定なんだと。一個人であるかどうかという判断はどこでやったんだと。私の手元にはあなた方の手に入ってないのが一つある。会社の営業方針というのがこの分厚い資料である。こんな営業方針の中に、あなた方が指摘した一課長がやった問題じゃない。しかも、その領収証やそういう中身を見ても、一課長が個人的にやったのじゃないということはもう明らかである。営業課長ですから課員がおります。課の自分の部下がやったのも自分で背負っておる。こういういろんな問題をからめ合わせてあなた方はこの問題についてどう対処するのか、もう一回局長見解を聞きたい。
  233. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 最初に保険局長から原則的に御答弁を申し上げましたように、四十五年の十二月の時点におきまして中医協から添付をしたものについての処理についての御意見が出ております。通常の商取引の慣習を越えたものについては薬価基準から削除すべきであるという御意見でございました。私ども考えまするに、その添付という行為、これは当時といたしましてはまだ相当企業に営業上の余裕がございまして、相当激しい競争が行なわれておった。その一環として同種の商品について自社の製品のシェアを拡大いたしますために、相当の添付あるいは値引き、あるいは景品の贈与というような、いわゆる不適正な取引行為が行なわれておったわけでございます。  特に添付につきましては、一つば添付することによって実質的な医薬品の価格が下がる。それによって薬価基準の策定というものが実勢価格を上回って策定されるということが一つと、それから医療機関が必要とする以上の医薬品が医療機関に納入されますために、医薬品の過量使用を促すおそれがある。その二点に着目いたしまして、添付というものが特に社会的な問題として保険財政の面からも国民医療の面からも非難されまして、先ほど申し上げたような方針が決定されたわけでございます。  したがいまして、この添付行為によるその薬価基準からの削除というのは、あくまでこれはメーカーに対する制裁的な行為で、そういう反社会的な行為に対する、メーカーとしてその医薬品に対する、まあ皆保険でございますから、通常、医療用の医薬品が薬価基準から削除されますと、ほとんど販売ができなくなるわけでございます。そういう制裁的な効果をねらっての行為でございますだけに、やはりその会社全体の責任においてそういう行為が行なわれたという立証がございませんと、なかなかこれは削除するということは影響があまりにも大きいということで、これは企業の指導も担当いたしております、医薬品の安定供給ということを一つの所管事項といたしております薬務局としては、なかなか軽々に行ないにくい面がある。そういう前提でものを考えます場合に、先生御指摘のような、あるいは私ども調査能力に限界がございまして、調査をした中で先生が持っておられますような資料が手に入らなかったために、一課長の独断的な行為というふうに私ども判断したわけでございますが、そういう判断を行ないました場合には、やはりいま申し上げたような原則に照らしまして、薬価基準からの削除ということを行なうのは現段階では適当でないという判断をいたしました。  ただ、そういった行為が実際に行なわれたことは事実でございますので、そのあとそういうことが行なわれていないかどうか、やはり追跡的な調査も行ない、また会社に対する販売姿勢を正すという指導も十分行なうということを主たる方針として指導を進めてまいっておる。いままでのところはそういう段階でございます。
  234. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 局長ね、あなたの答弁聞いていると、ほんとうにぼくは、まずあなたが前段でおっしゃったような事情があればこそ、こういうふうな通達が出された。それで、あなたの話を聞いていると、要するにそれじゃ添付というのはこれは幾ら行なわれてもいいということになります、会社全体の責任でなければ。ところが一つの営業課長ですからね、一つの。営業課長がやっているんです。あなたね、普通の会社でそれじゃ営業課長以外の人というのは一体だれ二がやるんですか。添付なんて、あなたの見解だと、あなたの薬務局の通達によりますと、添付が行なわれている医薬品については薬価基準から削除すべきである。何の条件もないじゃないですか、薬務局長、これらの見解はどうですか。
  235. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) いま申し上げましたように、その添付が行なわれた場合に削除するということは、原則的には仰せのとおりでございます。また私ども業界なり都道府県を指導いたします場合に、いま申し上げましたような前提を初めからつけて指導いたすということは、指導方針といたしましてはこれは甘きに失することになりまして、姿勢を厳正にいたしますためには添付については削除するということを指導するのが妥当だというふうに考えて、そういう通知を出したわけでございますが、現実の問題といたしましてはやはり企業間の競争等もあるわけでございまして、会社の責任に帰すべきものと、そうではない、たとえば卸段階だけの添付というような行為もときとして見られるわけでございまして、そういうことを全部メーカーの責任に帰せしめるということは、やはり自由経済界における医薬品企業につきましては酷に失するという判断を私どもとしてはいたしております。  それからもう一つ当時の実情といたしましては、先ほど申し上げましたように四十五年からいま御指摘の添付が行なわれました時点における医薬品の販売というものは相当過当競争がございまして、添付の目に余るものがあったわけでございます。
  236. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 わかっておるんだ、そんなことは。
  237. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 昨年の石油問題以来、相当資材の高騰等もございますし、また一面……
  238. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そんなことは聞いてない。
  239. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 医療機関の経済状況等もございまして、現時点におきましては、そういった添付による拡売ということも、業界の事情がかなり変わってきておる、そう添付を安易に行ない得る事情ではないということも、やはり現時点においては考えなければならぬ問題ではなかろうかと存じております。
  240. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 委員長ね、局長答弁、あんなのだめですよ、全然。これは全然話になりませんな、ほんとうに。そんなばかなことないです。  私は初めから言ったはずです。この通達には何の条件もありません、政務次官どうですかこれ、何の条件もありませんよ。いまみたいな局長考え方なら、幾ら添付をしたって厚生省の薬務行政はゼロです。このままでは、過去こういう通達を出しながら、ただの一回も削除したことないじゃないですか。裁判になり、いろいろな問題が出たのがたくさんあるじゃないですか。資料一ぱいありますよ、私の手元には。ただの一回も削除したことないんじゃないですか。あなたのような主張だと私は納得できませんよ。あなたのやり方だと削除なんて一回もあり得ません、これは。会社全体の責任で添付が行なわれたなんて、そんなばかなことをやる会社は一軒もありませんよ。大臣、どう思いますか、これ。
  241. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 私は、健康保険制度運営のワク内において、添付という制度は、これは薬務局長も述べましたように、いろいろの面でぜひ排除しなければならない悪弊だと思います。でありますから、昭和四十五年の段階でこうした通達が行なわれたことはきわめて適当なことであると考えますので、その悪弊是正のために有効な行政的の措置を進めることはぜひ必要であると思います。したがって、この件、具体的の件でありまして、私は直接存じておるわけではありませんけれども、峯山委員からこの決算委員会において御指摘をいただいたことは、厚生省のとるべき行政態度について非常に有益な御示唆であると私は判断をいたしますので、本件の取り扱いにつきましては、実態に即して最も有効なる措置を引き続いて考えさせるように、私からも、厳に関係の担当者、関係の機構に申し入れをいたしたいと思います。
  242. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 薬務局長がそういう姿勢なら、私はいま大臣から答弁がありましたからあれですけれども、添付に関するこういうふうな問題が問題になって、昭和四十五年の通達が出た前提というのは、埼玉県でこういう汚職があった、知ってますかあなた。埼玉県でこういうふうな汚職が問題になった、当時。そして、こういうふうな添付や汚職や飛行機での招待や、いろいろな問題が大きな問題になった、そのためにこの通達が出された。そしてあなたは、ここに書いてあります、先ほどあなた読んだでしょう、「医薬品を常時調査把握し、これを保険局に連絡することにしました。」「薬務局においては、添付が行なわれている医薬品を常時調査把握し、これを保険局に連絡することにしました。」——あなたは常時どういう調査をしているんですか。
  243. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) この調査につきましては、添付は、先生御指摘のように、いろいろなやり方によりまして隠密裏に行なわれるということで、表面からの調査はなかなか困難な点がございますので、いろいろな方法によりましてそういった情報を収集いたしまして、同時に、都道府県に設置されております適正化委員会を通じまして実情調査する、そういう方法によってこの添付につきましても調査をいたしております。
  244. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 大臣ですね、局長はほんとうにもういいかげんなことばかり言っているのですよ。常時調査する、そればいろいろあるけれども、いろいろは言わなかった。各都道府県に適正化委員会をつくって、こういう話はいまやりました。局長、適正化委員会というのは、私は先ほど埼玉の例をあげました、埼玉県にできていますか、あなた。それもわからないんだよ、埼玉県にあるかないかも。
  245. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 四十六年の四月に設置されております。
  246. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それは事実ですか。私はきのう電話した。埼玉県当局はそういう委員会は設置されておりません、こういうことだ。どうなんですか。それで何回開いている……。
  247. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 埼玉県におきましては四十七年……
  248. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 間違いないか、埼玉県ですよ。
  249. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 失礼いたしました。メーカー、卸、病院等に対しましてのヒヤリング、いわゆる聴聞は行なっておりますが、委員会としての開催はいたしておりません。
  250. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私の調査では埼玉県には設置されてない。神奈川県も同じだ。しかも設置されたところでも、問屋からのヒヤリングだけです。こんなところが監視しているなんて、そんなばかな話ないじゃないですか。これがあなた方の言う常時監視しているということですか。
  251. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) この適正化委員会の活動は、いま御指摘の添付あるいは不公正な競争の問題のみでなく、特に昨年度以降につきましては、先ほど申し上げました景気変動調査、繁用されます、あるいは値動きの激しい医薬品の追跡調査も同時に行なっておるわけでございまして、そういった意味では、この適正化委員会の活動の大半は、いま御指摘のようなやはり問題のあるところのヒヤリングというようなことに集中されておるのは事実でございます。
  252. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 先ほどのあれ、来ましたか、連絡
  253. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) たいへん申しわけございません。訂正さしていただきます。先ほど先生の御指摘になりました資料は、確かに厚生省に送られております。
  254. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 送られておりますだけじゃなくて、それで実際にそういう添付が事実行なわれておったのかどうか、これはどうなんですか。
  255. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 初めに御答弁申し上げましたように、添付がなされておったという事実は会社のほうも認めておりまして、その点は私ども関係のところにも調査をいたしまして間違いないものと考えております。
  256. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうすると、これはこれからの行政として非常に重要な問題です。添付が行なわれたということもこれは事実であることがはっきりしました。そうしますと、今度はその責任が会社の責任であるかどうかということです。一個人がかってにやってというんじゃこれはどうしようもないということです。しかし私は先ほどから資料を大臣にもお見せいたしました。こういうような資料の内容から、これだけじゃありませんよ、さらに営業方針ということも一つあります。営業方針の中に添付しろなんて、そんなことは書いておりません。書いてありませんが、それに類することは書かれている。しかも、それだけじゃありませんよ、あなたが事実持っているという、この資料をよく見てみなさい。これは営業課長一個人がやったのではない。その中身を全部読んでみればわかりますように、要するにいわゆる一つのグループで、組織でやっているわけでしょう。これははっきりしていますよ。  ここまでいろんな資料がそろっておりながらね、私はここにテープも持っている。あなたの、薬務局の経済課長さんと直接取引いわゆる電話でやりとりしている、電話のやりとりのあなたの課のそっけないこと。一生懸命、こういうような問題が起きている、これはたいへんだといって訴えているにもかかわらず、そういうことは厚生省へ直接言ってもらっては困る、保健所へ言うてくれ、こういうふうな応対のしかたです。こんなんでいいんですか、あなた。しかも、こういうふうなそれは保健所へ言ってくれというような問題はこれは枝葉ですけれども、これだけ問題がそろってきたんです。これからさらに調査して、現場も行なわれているかどうか。そういうことが、そこまで判断をして添付から、いわゆるこの薬価基準から削除する。これでは私はいつになっても削除は行なわれないと思います。やはり私は現在の製薬業界、薬務行政をぴしっとさせるためにも、やっぱり厚生省がきりっとしたところを出さないと私はだめだと思うんですがね。政務次官どうですか。   〔委員長退席、理事小谷守君着席〕
  257. 石本茂

    説明員(石本茂君) 峯山先生のおっしゃるとおりだと思っております。
  258. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いずれにしましても、もうこれ以上言いませんけれど、これは内田厚生大臣代理ですね。いまは代理ですけれども、あなたも大臣をやっておられましたですね、何年か前ですけれども。あなたの大臣の時代の問題もやっぱりあるわけです。そういう点から考えてみましても、ぼくはこの問題は決して一会社の問題じゃない。ほんとうに薬務行政全般にかかわる問題だと私は考えています。そして、こういうふうな問題を一会社の実情を聴取して、そうしてすぐそれをうのみにして、そして、それを厚生省の見解として発表する。これはやっぱりまずいと思うんです。薬務局長は会社の実情は聴取したといっていますけれども、もう一人の訴えてきた相手の人にはあなた会ったんですか。
  259. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) この訴えてきました方につきましては、これは担当者が会いまして、その前に電話があったようでございます。で、電話がありまして、それじゃそういう資料をお持ちならば送っていただきたいということを電話で申し上げまして、その後何カ月か連絡がなくて、送付がなかったということで、その後だいぶたちましてから資料の送付がございまして、たしか直接もお会いしておると思いますが、厚生省へお見えになっておられます。いや失礼しました、これは郵便で送ってこられまして、御本人は厚生省にお見えになっておられません。したがって担当者も会っておりません。
  260. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これ少なくとも公正に判断するとすれば、両方の意見を聞いてというのがあなたの姿勢でなければいけないんじゃないですか。現実には私はきのうこの話をする前に本人にも会ってきましたけれども、本人はだれにも会ってない。資料を送ったのも、厚生省から頼んで送ったんと違う。一生懸命何とかしてと思っている。しかもあなたがたが私に言ってきたときのやり方というのは、あの男はもう極悪非道の人みたいな言い方でやってきた。それは何でかというと、会社の厚生省に対する報告書にそんなに書いてある。その書いてあることがまるっきり逆ということになってくるとこれは問題じゃないですか。会社の姿勢そのものも先ほど大臣に見せたあの資料だって問題でしょう。これが結局厚生省の現在の姿勢なんですよ。  ですから、ここら辺のところを根本的に私は改めていただかないと、いわゆる薬務行政そのものが改まっていかない。先ほどから政務次官からも、おっしゃるとおりという話がございましたので、この問題については、私は削除という方向で検討してもらいたいし、そうでないと私は納得できません。薬務局長どうですか。
  261. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 先ほどお答えいたしましたように、私ども調査いたしました限りでは、会社の責任で添付が行なわれたという立証ができませんでしたために、現在まで削除を行なっていないわけでございまして、きょう先生から御指摘のありました二つの資料につきましては、私どもいままで調査の手が及ばなかった問題でございます。したがいまして、きょう御指摘がありました点をさらに考慮に入れまして、再度調査をさせていただきたいと思います。
  262. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ぼくはもうちょっと詰めておきたいんですけどね。再度調査をしてなんてあなたおっしゃっていますけれども、あなたの手元に全部あるんですよ資料が、最後の一点を除いては全部あるのですよあなたの手元に。資料がありながら調査の手が行き届かなかったなんてそんなばかなことないですよ。わざわざ送ってこられてあなたの手元にあるんです。ある資料をいいかげんにほってあるんです。調査が行き届かなかったといいますけれども、そういうものじゃないんです。あなたの手元に全部あるんです。ある資料を詳細に検討すれば全部わかることです。それをやらなくて私がきょう指摘をしたら、これからというんじゃ困るんです。これからこういうような問題が起きてきたときに、国民の皆さん方からどんどんどんどん訴えがあったりした場合手が届かない、回りかねるということもあるかもわからない。わかりませんが、そんなによけいある問題じゃない。ですから私はそういう業界を引き締めるためにも、また薬価基準、薬価そのものにも問題がある。ですからそういう点から考えて、本気でこの問題に取り組んでもらいたいと思うんです、よろしいですか。
  263. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 先生御指摘のとおりでございまして、私どもといたしましても、先生御指摘の私どもの手元にあります資料で添付が行なわれたという事実は、これは明らかになっておるわけでございます。責任の所在がどこにあるかということは、私ども、いままでの資料では必ずしも分明でないという判断をいたしておりましたわけで、特にその訴え出ました方の処遇について、きょう先生が御指摘になりましたことは、私ども全然知らなかった事情でございます。そういう事情があるとすれば、御指摘のような会社の責任を疑わせるに足るさらに新しい問題でございますので、そういう意味で、そういうものを含めてもう一ぺん検討さしていただきたいということを申し上げたわけでございまして、私どもといたしましても、医薬品の供給の適正化ということは、これはもとより所管として最も大事なことでございまして、ただ先ほど申し上げましたように、ほんとうに会社に責任のあるものは厳重な処分をするということによりまして、こういった不適正な行為がほかの会社でも起こらないように、厳正な姿勢をとらせるということが事の趣旨でありますために、御指摘のような、あるいはその歯がゆいと、慎重過ぎるというようなお考えもおありかと存じますけれども、基本的な態度といたしましては先生のおっしゃった点と変わっていないつもりでございます。その点につきましては、今後ともさらに厳重な調査あるいは指導をするということははっきりお約束申し上げます。
  264. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 保険局長にちょっと一点、もう一回お伺いしておきたいんですが、先ほどの添付の問題と、もう一つ添付にかえてこれに類するような販売方法というのがありますけれども、これは一体どういうことをお考えなんですか。
  265. 北川力夫

    説明員(北川力夫君) 先ほど先生のお尋ねにもございましたような薬そのものを添付をするということではなくて、何かいろいろな恩典のようなものを考慮するというようなこと。たとえば景品のようなものを提供いたしますとか、あるいは旅行に招待をするとか、そんなようなことがその当時行なわれておったように聞いております。そういったことも含めまして、過去には添付そのもの及びそれにかわると申しますか、それに類すると申しますか、そのようなもの。そしてこのような三とを書いたようなわけであります。
  266. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 リベートという問題があるんですが、これはどうですか。
  267. 北川力夫

    説明員(北川力夫君) それもこの中に含まれると思います。
  268. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは薬務局長、私がこの質問をするにあたって薬務局に対していろいろ質問をいたしまして、あなたのところから資料が出ている。非常にこれはもう不親切きわまりない資料なんですよ。ほんとうにこれはどうしてもう少し真剣にちょっとやってもらえないのかね。たとえば添付の問題についても、これは要するに、各都道府県から添付があったという報告がいままで一回もなされてない、だから要するに、そういう削除というような決定はしてないと、そういうふうにとれるような簡単な文章なんです。実は、こういうふうな要するに各都道府県に対しての指導なんてものは、これは実際上なされているなんてものじゃないと私は思うんです。これは実際、ここら辺の監視体制というのは非常に貧弱なんじゃないですか。どうですか。
  269. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) 私どもといたしましては、初めに申し上げましたように、四十五年の中医協の決定、それに伴います保険局からの連絡を受けまして、地方に対して適正化委員会を設置させる等の指導をいたしましたわけで、ただ、率直に申し上げまして、先生御指摘のように、現在の医薬品の販売行為は、これは自由企業でございます。したがいまして、こういったものの調査につきましては、私どもも一般の薬事監視とは違いまして、その権限行使を行なう立場ではないわけでございまして、そういう意味では不良医薬品、あるいは不正表示医薬品の取り締まりのような厳重な監視体制をしいておるとまでは申し上げられないわけでございますが、ただ、医薬品の適正な供給というのは、皆保険下におきましては、品質の問題に劣らずこれは大事な問題でございまして、指導方針といたしましては、できる限りそちらのほうにも目を向けて厳重な指導調査するようにということば、毎回言っておるわけでございます。御指摘のような不十分な点がございましたならば、さらに今後強い指導を続けてまいりたいと考えております。
  270. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは局長、実際問題として、各都道府県でそれぞれ設置されてはおりますけれども、実際名前があって実がないみたいな感じですね。それで、それぞれの部課長が名目上そういう委員会をつくってやっているけれども、まあ一番よくやって問屋の人を呼んでレクチャーを受ける、そのくらいでございまして、現実にそう言うているわけです、何カ所かの人たちはですね。これでは私は、全然あなた方が通達したその意味なんていうものはもうまるきしない、こう思います。  それから、さらに最後に、リベートの問題についてもこれは書いているんですけれども、あなたの答弁は、厚生省としてはその詳細は承知していない、千差万別でわからないというようなことですよ、これね。それじゃやっぱり実際は困るわけです。現実にそういうような行なわれた問題もありますし、いろんな問題があるわけです。そういうような問題にやっぱり積極的に取り組んでいくという姿勢がなければ、これはもうこれからこういう問題が出てきた場合に解決するめどがない。そういうような意味では、やっぱりこういうふうな一つ一つの問題点について、もっと真剣に取り組んでいく姿勢というのが必要じゃないんですか。
  271. 松下廉蔵

    説明員(松下廉蔵君) ただいま申し上げましたように、取引の実態というのはかなりまちまちでございまして、特にリベートの問題に関しましては、まあこれは医薬品の業界だけではございませんが、問屋とメーカー、あるいは問屋と取引先というような関係におきましては、いろいろな業界でリベートということが行なわれておるわけでございまして、それがただ通常の商慣習として容認される程度のものか、あるいはそれを越した不正なる取引条件ということになるかというような点が非常に判断がむずかしいという意味で、文章にいたしますとたいへんおしかりを受けましたが、実は私どもその程度の言い方しかできないわけでございますけれども、そうかといって私どもはこれを決して問題視していないわけではございませんので、要するに、薬価基準の策定の基準になります薬価調査をいたします際に、そういったいろいろな取引条件がどのようにすれば反映させることができるか、実勢価格ができるだけ正しく把握できまして、そのリベートなるものも価格の中に反映されておれば安くなりますから、それはそれで一つの役に立っておるわけでございますので、その点は今後薬価調査の方法等につきましてもできるだけ努力をいたしまして、通常の商慣習を越えるようなものは場合によってはそういった薬価調査に反映させる、あるいは場合によっては保険局長から申し上げましたように、添付類似の行為といたしまして何らかの措置をとる、どちらかの方法によりまして規制をするということを考えたいと思っております。
  272. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 もうきょうは時間がございませんので、私はこの薬の問題については、これから継続して質問を続けていきたいと思っております。  まず一つは、いまおっしゃいましたけれども、薬価の問題、非常に大きな問題があります。それで、具体的に指摘をしたいんですけれども、きょうは時間がございませんのでこれでやめますけれども、薬価の問題、薬価の調査の問題、いろんな問題が相当あります。それでやっぱり、もっともっと本気でこの問題についても取り組んでもらいたいと思っております。  それからさらに、この日本ルセルも含めてその会社のいわゆる副作用の問題とか、いろんな問題が相当起きています。あなた方の資料の中にもずいぶんあるはずです。こういうふうな問題も、これから私は当委員会を通じていろいろ質問をしてまいりたいと思っております。きょうは特に添付の問題一本にしほりましたけれども、最後に大臣、きょうのこの質問を通じましてこの添付の問題については、先ほどから政務次官や皆さんからも答弁がございましたけれども、特にきょうのこの問題については、私は結論を出してもらいたいと思いますね。そうでないと、調査しますとか、真剣にどうこうやってみますというのじゃ困るわけです。やっぱり私は、こういうふうな四十五年から何回も、同じ通達を三回も出したということ自体が問題なんです。第一回目のときから守られてないから第二回目を出し、第二回目で守られていないから第三回目、一年おきに出しているんです。これ自体がおかしいわけです。ということは、現実にそういう同じ通達を三回も続けて出さなければいけないというのは、やっぱりそういうふうな業界にそれだけ守られてないということに私は通ずると思います。そういうふうな観点からきちっとこの業界を引き締めて、そして薬価そのもの、あるいは添付やそういうものが行なわれないでほんとうに薬が安く、そして有効に使われるといいますか、そういう正常化していくためにも非常に重要な問題だと私は思います。そういうふうな観点から、この問題にぜひとも決着をつけてもらいたいと思いますし、先ほどから聞いておりましても、こういう添付をした事実は明らかですし、さらに会社自身がやっているということもこれは明らかでございます。そういうふうな観点から、最後に大臣答弁をお伺いしたいと思います。
  273. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 峯山さんのお話は私も十分傾聴をいたしました。実は白状いたしますと、四十五年の添付廃止の措置というのは、私が厚生大臣をやっておりましたときに断固実は取り上げた措置でございますので、それが今日に至るまでも形式だけで、だらだらと添付排除の実があがっていないということは、私もまことに残念に思うところでございますので、きょうあなたのお話を私も局長その他の担当者と一緒に承りましたので、本件のみでなしに、添付一般の排除のための施策として、さらに突き進んだいろいろな措置も講じてもらうようにいたしたいと思います。なお、本件につきましては、これで私は、直ちにこの会社の製品を添付から削除するということをここで申し上げられませんのは、私が具体的な案件につきましては詳細を知りませんから申し上げようがありませんけれども、これはこの件の実態に応じて先ほども申し上げましたように、最も有効であると考えられる措置をとらせるように進めてまいる所存でございます。
  274. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 どうもありがとうございました。  以上で終わります。
  275. 小谷守

    ○理事(小谷守君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  276. 小谷守

    ○理事(小谷守君) 速記を起こして。
  277. 渡辺武

    渡辺武君 私は、総需要抑制政策などを中心として、当面の経済情勢について関係大臣に伺いたいと思います。  八月十一日の日に、OECDの対日経済審査報告書が発表されました。私、まだこれの成文を見てはおりませんけれども新聞報道などで読みました限りで、次のようなことがここに書かれているようであります。短期見通しという項目の中で、「まず予測の前提として、総需要管理政策が一九七五年初めの数カ月までは抑制的となるが、その程度は七四年末までにいくぶんゆるめられると仮定する。」ということが書かれてあるようであります。このOECDの対日経済審査は、これはたぶんこの四月ごろに行なわれて、そうして、その結果を日本政府当局とすり合わせの上でこういう報告となって出されたという経過があると思いますので、おそらくこの報告については日本政府も了承しているというふうに見て差しつかえないと思います。これに加えて、八月十四日に経団連が、総需要抑制政策の部分的な緩和、手直し、これを大蔵大臣に申し入れたということも伺っております。このような事態を踏まえて、政府はこれまで総需要抑制政策を続けるということをたびたび言明されてきたわけでありますが、いま申しましたような事態を踏まえて、このOECDの審査報告にも述べられておりますように、七四年末までに幾分ゆるめるというおつもりがあるかどうか、この点をまず伺いたいと思います。
  278. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 総需要抑制と申しましても、財政面、金融面、それから産業政策広範にわたっておるわけでございます。それで、最近一部業種において不況現象が出てきた、あるいは先行きの供給不足に備えて、これから設備投資をしておかなければならないという議論がございまして、総需要抑制政策についての手直し論というものがありますことは私も承知いたしております。しかしながら、御案内のように、まだ需要面におきましては根強い動きもございまするし、コストプッシュの懸念というようなものを大きくかかえておる現状でございまするので、総需要抑制政策というものをいま手直しをするというような考えは持っていないわけでございます。で、この各金融機関なり政策当局がそういう現実の必要に対応して、判断して対処する余地がいまのワク組みの中で全然ないわけじゃないわけでございまして、そういう与えられたワク組みの中での判断によりまして、機動的な措置がとられることを期待いたしておるわけでございます。言いかえれば、ワク組み自体をいま変えるというようなことは考えていないのであります。
  279. 渡辺武

    渡辺武君 いまおっしゃったその抑制のワク組みですね、これはそうすると、今後きびしくするというふうに理解していいんでしょうか。また一体、期間はどのくらいまで続くというふうに考えられますか。
  280. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) これから経済の先行きがどのように推移していきますか、注意深くわれわれはウオッチしていかなければいかぬと思うわけでございますが、いまこれをゆるめるつもりもございませんが、特にこれを強めなければならぬとも考えておりません。しからば、こういう体制をいつまで続けるつもりかということでございますけれども、これもこれから先の状況にかかるわけでございまして、いつまでという時限を頭に置いておるわけではありません。
  281. 渡辺武

    渡辺武君 日本銀行総裁に。やはり、金融の問題が一番日本銀行の直接的な政策によるところが大きいと思いますが、どうお考えでしょうか。——見えてませんか。
  282. 小谷守

    ○理事(小谷守君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  283. 小谷守

    ○理事(小谷守君) 速記を起こして。
  284. 渡辺武

    渡辺武君 そうしますと、OECDのほうは年末までゆるめられるだろうということを予想し、大蔵大臣のほうはゆるめもしなければきびしくもしないという趣旨の御答弁のようですけれども、私はそういう政策上の違いですね、この背景には、現在の経済情勢についてのやはり認識の違いが伏在しているんじゃないかという感じがいたします。特に経済企画庁の七月十二日付の月例経済報告、これを拝見してみますと、当時の時点ですでに景気は底をついた、今後は底つき横ばいで推移するだろうというふうに述べておられるわけですけれども、先ほど申しました経団連の申し入れは、今後、不況はむしろ本格化するというふうな判断に立っての申し入れだというふうに理解しているわけですけれども、現在、政府はどういうふうに見ておられるのか。
  285. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) まず、OECDの日本の経済調査に対する御指摘の見方でございますが、これは渡辺さんも御承知のように、昨年の暮れからことしの二月ぐらいまでにかけての異常な物価上昇が、三月以降、三月、四月、五月、六月、また今日に至るまで、非常にいいぐあいに鎮静化している傾向が出ておりまして、それは、わがほうからOECDにも報告をいたしておりますので、そういうことを材料として見るならば、OECDとしては、おそらくそれは今年のある途中までは総需要の抑制は続けられるであろうけれども、その後はそういうものをゆるめても経済をもっと動かすような方向をとるだろう、こういうこの春の物価の鎮静の状況を基礎としての一つの判断でありまして、あるいは想定でございまして、それはそれでもっともだと思いますが、しかし、私ども考え方は、いま御言及がございました最近の月例経済報告に見ますように、経済の動き方というものは、生産にいたしましてもあるいは出荷にいたしましても、あるいは個人の直接消費というようなものにいたしましても、むしろ非常に引き締まりの方向にきておりますので、景気はかなり低いところにきておりますけれども、しかし、これから先、これも御承知のように公共料金の引き上げ等、かかえている問題もございますし、あるいはまた、春闘における大幅賃上げの影響というようなものが、コスト並びに購買力の両面にわたって出てきつつある様子もございますので、私どもは、政策当局といたしましても、ここで総需要の抑制解除あるいは金融の緩和というようなものをまだやる時期ではない、そういたしますと再び物価の問題が憂慮される。つまり、私は、景気は決していま高原景気にあるなどとは考えておりませんけれども、たびたび申し述べておりますように、物価の問題と景気の問題が一つのジレンマと申しますか、二重苦の状況にありますけれども、この際、私どもとしてはいましばらくやはり総需要、金融の抑制、あるいは財政編成の面におきましても同じ態度をとりまして、そして物価を安定させたその基礎において、景気の上昇というような方向をとることがこの際としては一番いい、こういう判断に立ちまして、関係閣僚とも打ち合わせを進めておるわけでございます。
  286. 渡辺武

    渡辺武君 いまの経済情勢をどう見ていらっしゃるのか、その点どうですか。
  287. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) これはまあいいことばではございません、全くいいことばではございませんが、わかりやすく申しますと、インフレとデフレが同居しているといいますか、潜在的な物価上昇要因と、それから経済の停滞が同居をしている状態でございまして、これを立体的に解決しなければならない時期にあると、かように考えます。
  288. 渡辺武

    渡辺武君 いま大臣は、総需要抑制政策をとるのは、物価の高騰がまだ続いているからというような趣旨のことをおっしゃったわけですけれども、私は、現在物価問題に加えて外貨事情が非常に重要になってきた、ここに総需要抑制政策を政府が依然としてとらなきゃならぬと考えている一つの重要な原因があるんじゃないかというふうに思いますが、その点どうですか。
  289. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) これは専門の大蔵省から大臣関係局長もお見えでございますので、そちらからも御答弁があるかと思いますが、やはり国際収支の問題、貿易収支あるいはまた長期資本投資の問題というものは、これは二、三年前までとは全く趣を異にいたしておりますことは申すまでもありません。昨年ぐらいまでに蓄積した外貨の半分近くというものは、昨年からことしの春にかけてまたもとへ戻してしまった、こういう事情もございますので、海外投資つまり直接投資の半面をゆるめるということは、これらの外貨事情に大いに影響があることでもございますので、外貨の事情ということも総需要抑制政策を続けることについてにらんでいかなければならないことだと思いますが、直接的には、国際収支だけのために総需要抑制政策を進めるということには私は考えておりません。しかし、これも私は最近あっちこっちで述べてまいりましたけれどもさきのジレンマ、二重苦のほかにもう一つ国際収支を加えて三重苦、トリレンマ、もう一つ実は四重苦ぐらいのクアドリレンマと申しておる課題がありますが、とにかく外貨事情というものも、これもいまの経済の進め方をきめていく上において、あちら立てればこちら立たず、こちら立てればあちら立たずと、平面的基盤においては。そういう状況にありますので、立体構造の上においてこれは解決すべきだと、こういうふうに考えております。
  290. 渡辺武

    渡辺武君 大蔵大臣、この問題についての御見解いかがですか。つまり、総需要抑制政策を、先ほどワク組みは変えないでいくんだとおっしゃったその基礎に、現在の外貨事情の重大化、この問題があるんじゃないかと思いますが、どうですか。
  291. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 申すまでもなく、国際収支をいかなる場合におきましても、バランスをとって経済の運営をやってまいらなけりゃいかぬわけでございます。したがって、今日も国際収支事情というものにつきましては、私ども不断に注意を怠らないでおるつもりでございます。問題は、長い中長期の展望におきまして、わが国の国際収支が非常に困難な事情にあるかと申しますと、私はそうは考えていないわけでございまして、われわれが注意深く対処してまいりますならば、国際収支から経済が破綻するというようなことは万々あるまい、また、そういうことを起こしてはならないということで、今日やっておるわけでございます。ただ、総需要抑制、あなたが言われるように、したがって、今日外貨事情がこういう事情なので、その手段として総需要抑制政策をとっておるという意味ではなくて、われわれはたびたび申し上げておるとおり、政策の軸はあくまでも物価の鎮静化という点に軸を置いて、こういう広範な政策を御協力願っておるわけでございますので、その結果外貨事情におきましても、ノーマルな運営が可能であるように結果としてなることを期待いたしておるわけでございまして、目的をそこに設定いたしまして、その手段として総需要抑制政策を採択しておるということとは、若干理解が違うと思います。
  292. 渡辺武

    渡辺武君 大蔵大臣少しのんき過ぎるんじゃないかと、失礼ですが思います。私はいまの外貨事情というのは、なかなかこれは深刻な状況だというふうに思いますが、いまの外貨の事情を、これをちょっと御説明いただきたいと思います。
  293. 大倉眞隆

    説明員(大倉眞隆君) 渡辺委員お尋ねの外貨準備の現状でございますが、お手元にあるいは資料が参っておるかと思いますけれども、申し上げますと、四十八年末で百二十二億ドルであったわけでございます。本年に入りましてから一月末の百十五億ドルが底でございまして、それ以後漸次増加をいたしております。六月末で百三十四億ドルになっておりましたが、七月中に二億二千万ドルばかり減少いたしまして、七月末では百三十二億四百万ドルということに相なっております。
  294. 渡辺武

    渡辺武君 その外貨準備が一番多かったときはいつですか、それはどのくらいの額でしょう。
  295. 大倉眞隆

    説明員(大倉眞隆君) 一番多くございましたのは、四十八年二月の百九十億六千七百万ドルでございます。
  296. 渡辺武

    渡辺武君 そうしますと、いまおっしゃった四十九年一月の百十五億六千六百万ドルまで約一年間の間に七十五億ドルの外貨準備の減少と、こういうことになりますね。その後、おっしゃったように、六月まで六月の百三十四億二千九百万ドルまで若干ふえた、この間十八億六千三百万ドルふえたことになりますが、ところがそれが七月には今度は減少に転ずる、こういう状況ですね。私はこの七月の外貨準備の減少ということの背景には、無視できない非常に重要ないろんな問題が伏在しているというふうに考えます。  その前にちょっと伺いたいんですが、八月、九月、さらにこの外貨準備は減少するんじゃないかというふうに思われますが、その点どう考えていらっしゃいますか。
  297. 大倉眞隆

    説明員(大倉眞隆君) 渡辺委員承知のとおり、ずっと前の集中制度のころと違いまして、外貨準備の増減は市場との関係できまってまいるというのが現在の仕組みでございまするので、八月中あるいは九月中にどういうことになるかというのは、市場におけるドル需給とのからみできまることになろうかと思います。まあ日々変動するような要素もございますけれども、八月は若干は減少するかもしれませんが、あまり大きな減少にはならないんではないかというふうに、いま私どもとしては考えております。
  298. 渡辺武

    渡辺武君 九月はどうですか。
  299. 大倉眞隆

    説明員(大倉眞隆君) 九月につきましては、まだちょっと予測をするのにデータが不足の感じでございますが……。
  300. 渡辺武

    渡辺武君 いまおっしゃった集中制度をとっていないと、したがって、外貨準備高として公表された数字以外に国内に外貨がある、いわゆる隠し外貨と言われていますね。この隠し外貨、特にその主力である為替銀行に対する外貨の預託額、これはいま現在高はどのくらいになっておりますか。
  301. 大倉眞隆

    説明員(大倉眞隆君) 渡辺委員の御指摘でございますが、実は私ども隠し外貨ということばは必ずしも適当ではないんではないかと思っておりますのですけれども、まあその点はともかくといたしまして、政府なり日銀の保有外貨、対外資産の中、その運用で本邦にございます為替銀行に預けておる金額、これは流動性の見地からいたしまして外貨準備には計上いたしておりません。ずっと従来から計上いたしておりません。ただ、その額につきましては、やはりそれが幾らであるか、どう動いたかということは、市場にいろいろな影響をもたらしますものでございますから、恐縮でございますがその公表は差し控えさせていただくということになっております。ただ、従来から申し上げておりますのは、四十七暦年中に二十数億ドルふえまして、それから四十八暦年中にも若干ふえましたということを申し上げておったと思いますが、四十九年に入りましてからは、いままでのところでは結果として若干減っておるというように御理解いただいていいかと思います。
  302. 渡辺武

    渡辺武君 これはやはり、いまの経済情勢を判断する上で非常に重要な数字だと思うんです。これはあとから資料としてぜひお出しいただきたいと思う。委員長、この点をぜひおはかりいただきたいと思います。
  303. 小谷守

    ○理事(小谷守君) ただいまの資料要求よろしゅうございますか。
  304. 大倉眞隆

    説明員(大倉眞隆君) 申しわけございませんが、先ほど私が申し上げましたような事情がございますので、資料として公式にお示しすることはごかんべん願いたいと思うんでございますが……。
  305. 渡辺武

    渡辺武君 これは何も隠すことはないと私は思うんですよ。いま申しましたように、いまの政府の経済政策の一つの中心になっているんですね、総需要抑制政策というのは。それの可否を判断する上でもこれは欠くことのできない重要な数字です。そういう上でぜひ私はこれは出していただきたいと思う。重ねてお願いします。これはひとつ理事会で検討していただきたいと思うんです。
  306. 小谷守

    ○理事(小谷守君) ただいま渡辺武君の御要求の資料の件につきましては、後刻理事会でおはかりいたしたいと思います。
  307. 渡辺武

    渡辺武君 それでは質問続けますけれども、先ほど、七月の外貨準備が百三十二億四百万ドルになったと、こういうことをおっしゃいましたけれども、いただいた資料で調べてみますと、四十六年九月、これが百三十三億八千四百万ドル、その水準まで下がったということですね。ところで、四十六年から現在まで輸入物価指数はほぼ二倍近くに上がっている。政府の発表する輸入物価指数を見てみますと、昭和四十六年を一〇〇にして四十九年の六月、ことしの六月が一九二・四、二倍近くになっている。ですから、四十六年九月の水準までいまの外貨準備が戻ったからといって、この外貨準備のいわゆる対外購買力は四十六年九月の水準とははるかに下がって半分近くの購買力しかないと、こういう状況になっていると思う。これを逆に私は裏づけるものとして伺いたいのは、現在の年間輸入額に対する外貨準備の比率は一体どのくらいになっているか、これを伺いたいと思うんです。
  308. 大倉眞隆

    説明員(大倉眞隆君) 一番新しい時点で申し上げますと、四十八年の、これは暦年でございますが、総購入額が三百二十五億七千六百万ドルでございまして、四十八年中の年中平均の外貨準備高は百五十六億二千六百万ドルでございますので、これ単純に割っていいかどうかというような問題もございますが、年末の百二十二億ドルを分子といたしまして、かりに、で申し上げました三百二十六億ドルを分母といたしますと、三八%ということに相なろうかと思います。御指摘の四十六年の同様の数字を見ますと、これは九七%という状態でございました。
  309. 渡辺武

    渡辺武君 ことしの一−六月の輸入高が発表されておりますが、これを年間まあ二倍になるというふうに、かりに、して、そうして百三十二億四百万ドルの外貨準備、これは大体何%くらいになりますか。
  310. 大倉眞隆

    説明員(大倉眞隆君) 一月から七月までの輸入額が三百十億ドルでございますので、年間幾らになりますか、まだ計算わかりませんけれども、大ざっぱに六百億ドルがらみということにかりに置きますれば、六で割りますから二二ぐらいになるわけでございます。
  311. 渡辺武

    渡辺武君 二〇%ちょっと上回るという程度ですね。これは現在、国際的に国家的破産状態になったのじゃないかと言われているイタリアの外貨準備高、これを輸入額と比べた数字とほぼ近いわけですね。イタリアが一九七三年輸入額に対して外貨準備高二〇・七%と、こういう数字が出ます。ですから、その意味からしても、いまのわが国の外貨準備の状況というのは非常にこれは危機的な状況に来ているのじゃないかというふうに思いますが、その点どうですか。  なお、時間を節約するためにあわせて伺いますけれども、いまこの原油価格の引き上げ、国際的なインフレーションの高進、こういう状況の中で金の価値蓄増手段としての機能、役割り、これが見直されていると思うのですね。先ほど申しましたイタリア、これは、この外貨の危機的な状況、これから切り抜けるために手持ちの金を、これを担保として外国から金を借りるという道を切り開いて、何とかこの破産状態を切り抜けようとしているわけですね。そのイタリアの金準備、これは三十四億八千三百万ドル、外貨準備高の中の五四・一%を占めているというのが公式に発表されている数字であります。日本は一体どのくらいの金準備を持っておって、外貨準備の中でその金準備の割合が何%くらいになっているか、それもあわせてお聞かせいただきたい。
  312. 大倉眞隆

    説明員(大倉眞隆君) 先ほどのイタリアとの比較の数字でございますが、お取りになりましたのがいわば日本で申せば四十八年でございますので、実は石油価格の高騰後の姿としましては、先ほど私が日本について計算いたしましたようなかっこうで御計算をいただくということのほうが、比較としてはいいのかもしれません。ただ、全体の絵といたしまして、やはり先進工業国がグループとしてある程度の経常黒字を生み出して、それを援助とか経済協力という形で開発途上国のほうへ資金を流していくという形がすっかり変わってしまったわけでございまして、現在の姿を絵として申し上げますれば、一部の国を除きまして先進工業国はみんな石油消費国として軒並み赤字になってしまったと、で、開発途上国の中に非常な黒字国と、そうでなくて一そう困るであろう国と出てきたという状況でございまするので、先進工業国の中で石油消費国としての日本が自分ひとりだけで非常に外貨を積み上げていくということを性急にやるという国際的な環境ではない、そのように思います。したがいまして、先ほど大蔵大臣も申し上げましたように、国際収支をやや中期的な目で基調的に改善の方向に鋭意持っていくと、ただ、非常に短期間にドラマティックに変えてしまうということは期待すべきでもないし、むしろそれをやれば別の意味での国際経済に対する撹乱要素が出てくる危険があると、そういう現状ではなかろうかという気はいたします。  なお、御質問の第二点の金でございますが、これはいろいろな経緯によりまして、御存じのとおり、日本の金保有は総体的に少のうございます。先ほど申し上げました百三十二億ドルの中で金の保有高は九億ドル弱、八億九千百万ドルという姿でございまして、比率といたしましては七・三%にとどまっておるわけでございます。  ただ、御質問の中で、金の流動化をはかりたいという動きがあるということ、これは御指摘のとおりでございますが、将来の国際通貨制度を議論しておりました御承知の二十カ国蔵相会議、今度IMFの総会に報告が出るはずでございますが、やはり基本的には金を廃貨する方向でみんなやっていこうやということが国際的な合意にはなっておるわけでございます。
  313. 渡辺武

    渡辺武君 伺ったことについて端的にお答えいただきたいと思うんです。時間がないし、伺った焦点からはずれたことをずるずる言っておられるようでは、これは困るのです。  重ねて伺いますが、いまの、私は外貨準備を急激にふやせなんということを伺っているわけじゃないんですよ。いまの外貨準備の状況は非常に危険な状態じゃないかということを一点伺っている。  もう一点は、いま答弁がありましたから、それについての評価はまたあとで言いますが、その点どうですか。
  314. 大倉眞隆

    説明員(大倉眞隆君) 先ほど大臣も申し上げましたように、やはり一番中期的に大事な問題は、日本の国際収支をどう持っていくか……。
  315. 渡辺武

    渡辺武君 現在ですよ。
  316. 大倉眞隆

    説明員(大倉眞隆君) それを直していくことでございますから、それについての努力を重ねながら考えてまいるといたしますれば、いまの金外貨準備の総量が非常に不足しておる、危機的であるというふうには私ども考えておりません。
  317. 渡辺武

    渡辺武君 どうも伺った趣旨がわからぬようですね。とにかく一時は百九十億ドルをこえておった外貨準備が、これが若干の変動はありましたけれども、ずっと減って、いまは百三十二億ドル、四十六年九月の水準まで戻っているんです。ところが、その四十六年に比べて輸入物価指数は二倍になった。外貨準備のいわば購買力なるものは、これは四十六年の当時に比べて半分に下がっているんですよ。そうでしょう。一体、こういう状況で、しかも、四十六年の当時に比べてみれば輸入高に占める外貨準備の割合というのもこれも三分の一程度——もっと下がっていますか、四分の一以下に下がっている。こういう状況でしょう。しかも値段の高くなった原油その他を買わなきゃならぬ。まさにこれは非常に危険な状況じゃないですか。しかも、さらにそれに加えて申し上げると、イタリアは外貨準備の半分以上も占める、かなり多量の金を持っておって、そうして外貨事情が危機的な状況になった場合に、これを担保にして外国から金を借りるという手段、これをとって切り抜ける道を考えている。日本はどうか。九億ドルにも達しない金準備しか持っていない。インフレーションが高進して、そうして外貨準備の実質的な価値が下がっているのにもかかわらず、その手当てさえいままで十分にしていない。イタリアのような切り抜けの道も日本には残されていないというのが実情じゃないですか。その点どう思いますか。
  318. 大倉眞隆

    説明員(大倉眞隆君) なるべく簡単にお答えいたしたいと思いますが、結局本年中ないし本年度中の赤字をどれくらいと考え、それをどうファイナンスしていくかという問題でございまするので、本明年を通じましていまの外貨準備が非常に危機的であり、それを大量に補強するための手段をいま直ちに講じなくてはならないという状況ではないというふうに考えておるわけでございます。
  319. 渡辺武

    渡辺武君 それじゃ伺いますけれども、あなた方は、昨年からことしにかけて、この外貨準備を何とか減らさないためにかなりの努力をしてこられたと思う。おそらく、あなた方の積極的な推進によってだろうと思いますけれども、為替銀行が昨年からことしにかけてユーロダラーを大量に取り入れたということは、私は否定すべくもない事実だと思う。国際収支表を見てみますと、金融勘定の為替銀行部門というのがある。これはユーロダラーその他の短期資金の取り入れの状況を示すものですが、これを見てみますと、四十八年一年間に三十九年億七千三百万ドルの純増——純粋増加、四十九年の一月から六月までは八十四億七千二百万ドルの純増、一年半の間に合計して百二十四億四千五百万ドルの純増。ばく大な短期資金を取り入れている。しかも、そのほかに、国際収支表の「誤差・脱漏」という項目、これは輸出前受け金などがこれに計上されると申しますけれども、四十八年一年間二十五億九千五百万ドルの純増、四十九年に入っては、一月から六月までの間に五億七千六百万ドルの純減になっておりますが、しかし、それを差し引いて、この一年半の間に二十億一千九百万ドルの純増と、こういうことになっている。両方合わしたらどういうことになります、百四十四億六千四百万ドルという数字になる。現在の外貨準備が百三十二億ドルでしょう。それをはるかに上回る短期資金の取り入れをやって、そうして、やっと外貨準備をいままで保持してきたというのが実情じゃないですか。その点、どうですか。
  320. 大倉眞隆

    説明員(大倉眞隆君) 非常に詳しく分析になっておられますので、数字的なことを繰り返し申し上げませんが、姿として、一四十八年度の総合収支の百三十四億ドルの赤字をどうやってファイナンスしたかということを振り返ってみますと、まさしく外貨準備が五十七億ドル減り、金融部門で債務の増加が七十七億ドル近くあり、それで一年度をまかなったと。今年度はどういう姿でまかなうことになろうか、そういう問題であると思います。その過程におきまして、為替銀行の部門におきまする短期負債がかなり顕著に増加しておる。それについては、やはり私どもは、それが基調的にいつまでも続くということは必ずしも望ましいことではないと、そのように考えております。ただ、いままでのところは、御承知のとおり、いわゆる量的には、オイルマネーの環流のほとんど大部分がアメリカの市場なりユーロの市場を通じて国際的に行なわれておったわけでございますので、それが、結果的には為銀部門における短期債務の取り入れという結果を招いたと。いつまでもそれでいいかという点は、御指摘のようにいろいろ問題があると思います。したがいまして、産油国側でも漸次累積していきます対外資産を、運用配分といたしまして、やはりあまりに短期のものだけに集中したくない、中長期にも使いたいという気分は出てきておるように思いまするので、先方の事情と当方の考え方と合わせまして、今後の問題といたしまして中長期の引き方を、民間であるか政府部門であるか、いずれかでどのようにあんばいしていったらよろしいかということは私どもとして検討すべき問題であると、そのように考えております。
  321. 渡辺武

    渡辺武君 まあ、認められたからこれ以上追及しませんけれども、伺いたいのは、ユーロダラーの取り入れ残高、これはいまどのくらいあるのか。それからアメリカ銀行からの短期の借り入れ、これの残高がどれくらいあるのか。それから輸出前受け金、これの残高はどのくらいあるのか、これをおっしゃっていただきたい。
  322. 大倉眞隆

    説明員(大倉眞隆君) またおしかりを受けるかもしれませんが、実は、市場別の取り入れ残高は、それを公表いたしますとそれなりにまたいろいろの問題を巻き起こしてしまいますので、そういう形でのお答えは差し控えさしていただきたいと思うんでございますが、為替銀行のサイドからながめていただきますれば、たとえば、毎月末の資産、負債並びにそのネットの残というものが出ておりまするので、その数字でごらんいただきますれば、四十九年一月にはそれがネットの四十七億ドルの負債超。それが六月末では百十八億ドルの負債超でございますから、この増額分が、全部ではございませんけれども、かなりの部分がユーロ取り入れ及び米銀借り入れというように御了解いただいていいと。年度間でどうなるかというのは、先ほど御指摘のございました為銀金融部門という数字の動きでごらんいただきたい、そのように思うわけでございます。
  323. 渡辺武

    渡辺武君 その為替銀行の純増——差し引きの額では実際の額はわからぬのですよ。新聞記事などでは七月末のユーロダラーの残高は百六十億ドルじゃないかと、米銀借り入れの残高は七月末で百三十億ドル、八月にはおそらく百六十億ドルこすだろうというような記事も出ている。おそらくどこからか取材して書かれたことだと思うんです。やはり国会であなた方はそう秘密にしないでこういう問題もはっきりと述べていただきたい。そうでなければ、いまの外貨準備の状況がどうなのかと、そうしてまたそこからくる政府の経済政策、これの適否はどうなのかと、審議のしようがないじゃないですか。私はこれは出していただきたいと思うんです。ユーロダラーの取り入れの残高、米銀借り入れのいまの現在の残高、輸出前受け金の残高、正確に出していただきたい。
  324. 柴崎敏郎

    説明員(柴崎敏郎君) 先ほど私御質問の中の輸出前受けの数字を申し上げるのを忘れまして、まことに申しわけでございません。  月中の前受け額というのは概数では把握をいたしております。ことしに入りましてから、一月が二億七千六百万ドル、二月三億六千四百万ドル、三月四億四千八百万ドル、四月三億四千八百万ドル、五月三億八千五百万ドル、六月四億九百万ドル、七月が、まだ締まり切っておりませんが、おそらくは四億一千七百万ドルぐらい、八月に入りましてからいままでで大体二億ドル弱ということではなかろうかというふうに把握をいたしております。  それからもとに戻りまして、市場別の取り入れ残を公表をすべきではないかという御指摘でございますが、実はこれは出し手の側にも日本の取り入れ総量というのはわからない、したがって取り手側が公表して初めてわかる数字でございます。新聞はいろいろな記事を書いておられますけれども、それはおそらくは特定の銀行の数字を聞いたり、それの全体のシェアで逆算してみたりというようなことをなすっているのかもしれません。しかし、各国ともそういうことは公表いたしておりませんし、やはり日本全体としてどれだけをどの市場から取り入れておるかということが公表されますと、それなりに——公表が一度ではなく、二度、三度続きますればその間の動きも当然にわかるわけでございまして、やはりいろいろに影響いたしますので、この点はひとつぜひごかんべんをいただきたいと思います。
  325. 渡辺武

    渡辺武君 この点も私はどうしても必要だと思いますんで、これはやはり理事会でどうぞ検討していただきたいというふうに思いますのでよろしく。  それから時間が参りましたので、あとだいぶいろいろ伺いたいことがあったんですが、答弁がどうも的確でないんで時間が思わずたってしまったんで、もう二、三問やらしていただきたいと思うんです。いまおっしゃった短期資金の差し引きの現在高、それを合計しただけでも現在の外貨準備ははるかにこえているという状況ですね、額としては。これは輸出前受け金を除けば、大体二カ月もの、三カ月ものが多いわけでしょう、ユーロダラーにしても、米銀借り入れにしても。そういう短期の資金、これの運用の上で初めて日本の百三十二億ドルという外貨準備が維持できているというのが私は実情だと思うんです。だから期限が来ればしょっちゅう借りかえる、借りかえる上に輸入代金は払わなきゃならぬ、こういうことがいま累積している。それがうまくいかなくなって、七月には日本銀行が平衡介入をやって外貨準備の取りくずしをやった、そうしてやっと収支のつじつまを合わしたというのが私は実情じゃないかと思うんです。きわめてこれは危険きわまりない状況に置かれていると見なきゃならぬと思う。その点重ねて伺います。どうですか、端的に答えてください、もう時間がないんだから。
  326. 大倉眞隆

    説明員(大倉眞隆君) 短期負債の見合いは圧倒的に短期運用でございまするので、その意味では資金調達が順調にいっております限りは、それはそれでいいわけでございますけれども、まさしくおっしゃいましたように、七月の中ごろに、六月末のドイツの銀行の破綻をきっかけといたしましてユーロ市場が非常に神経質になって資金ショートが起こったということがございました。そういうときにはいろいろ心配しなくてはならない、これはもうおっしゃるとおりでございます。そういう心配をあんまりたびたびしないでいいようにするということは確かに必要だと思っておるわけで、先ほどのような答弁を申し上げたわけでございます。
  327. 渡辺武

    渡辺武君 そうしますと、非常に外貨準備が重大な事態に来ているということはもうおわかりいただいたと思うんですが、通産大臣、せっかくおいでになって、質問もしないでお帰りいただくのも失礼でございますけれども、ぜひ伺いたいことは、七月十九日の、総理大臣の諮問機関である貿易会議が今年度の貿易見通しを出されました。これによりますと、IMFベースで輸出が五百三十七億ドル、輸入が五百三十六億ドル、ですから貿易収支の黒字は、これは今年度はわずかに一億ドルという見通しを立てておられるわけですね。私はこれを見て、これはことしの輸出の状況、輸入の状況、したがってまた貿易収支の状況、きわめてこれは深刻だというふうに考えているわけですけれども、いまの外貨事情、特にいままで取り入れてきたこのユーロダラーなり、それから米銀からの短期資金の借り入れなり、すでに限界になって、そうしてジャパンレートといわれる異常な高金利が現出していると。しかも先ほど申しましたように、もう七月末で収支のつじつまがつかなくなって外貨準備も取りくずさなきゃならぬというような事態になってきている。こうなってくれば、今後の貿易の事情、特に貿易収支の見通しということが非常に重大な問題になってくると思いますが、通産大臣、その点どういうふうに見通しておられるか。
  328. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は外貨準備の問題についてそれほど憂うべき事態にあるとは考えておりません。いままでおやりになっているやり方というものは、国際的に大体各国がとるような外貨準備対策、これは各国が大体常識的に認めておるいろいろなテクニックを使いながらアジャストをやっておるのであって、日本もその範囲内において、わりあいうまくやっているだろうと私は見ておるところでございます。  それで、基礎になる輸出輸入につきましては、大勢観察といたしまして、輸入が次第に鈍化しつつある、そして輸出はかなり強気になって旺盛になりつつあります。上半期から今日に至るまでの趨勢を見ますというと、そういう事態になりつつありまして、必ずしも悲観すべきような事態にはございません。  計数的に申し上げますと、大体通関ベースで一−六月が輸出が二百四十・六億ドル、これは前期に対して四八・六%増、輸入が三百七・一億ドル、これは八四・〇%増、いずれも輸出入伸びていますが、輸入が非常に伸びを示しておったわけです。しかし、最近の数字を見ますと、輸入が頭打ちになって輸出がかなり伸びてきております。大体十月以降一貫して輸入が次第に減りつつあると、こういう大勢観察が言えると思うのでございます。  しかし、将来における原油の輸入金額の増大とか、あるいはそのほかの情勢を見ますというと、食糧の値段等の問題も考えてみまして、やはり注意は要する段階である。したがいまして、やはり総需要抑制ということは、これは単に外貨準備のためのみの政策ではございませんけれども、経済全般の基調として必要ではないかと、こう考えております。
  329. 小谷守

    ○理事(小谷守君) 渡辺君に申し上げます。  時間がかなり超過しておりますから、その点をお含みを願います。
  330. 渡辺武

    渡辺武君 はい、わかりました。  いま、通産大臣の御答弁ありましたけれども、これは私非常に失礼ですけれども甘い見通しじゃないかというふうに考えます。たとえば四−六月の輸出実績、これは前年同期と比べてみますと、日本の主力市場であるアメリカ、これは三七%の増加、ECは四七・七%の増加、東南アジアは五六・三%の増加、これに比べて中近東、中南米その他は九〇%以上、八〇%以上という大幅な伸び、つまりいまではオイルダラーなんかが入ってくる中近東その他、日本の主力市場でないところにはかなり急速に伸びておるけれども、まさに日本の主力市場である東南アジアその他、これの伸びが非常に悪いということがこれは特徴だと思うのです。しかも今後、いまや卸売り物価指数が急速に上がって日本の国際競争力というものは衰えている。しかも先ほどもお話があったけれども、全世界的に原油価格の値上がりの影響で赤字になっている国が非常に多いわけですから、したがって国際競争も激化せざるを得ないという諸事情もあって、今後の輸出の先行きというのはかえって暗いのじゃないかというのが私はほぼ妥当な見方じゃないかと思う。しかし、その点について重ねて御答弁はいただきませんけれども、私はそういう実態を踏まえて経済企画庁に最後に伺いたいのですけれども、先ほど申し上げました底固め、なべ底論、これは六月段階の経済見通しだったと思う。ところが、その後七月段階になって外貨事情の先ほど指摘したような非常な深刻な状態が生まれてきている。この段階に立って底固め、なべ底論、これを変更するお気持ちがあるかどうか。  そうしてもう一つ伺いたいのは、いままで金融引締め政策、これは戦後、外貨が減れば引き締め、外貨がふえてくればゆるめるという形でずっと過ぎてきて、一九六〇年代の半ばころまでは引き締め政策の根源にあるものは外貨事情だといわれておった。六〇年代の半ば以降外貨がふえ始めて、外貨問題そう気にする必要がなくなった。そこで引き締めをやるか、ゆるめるか、これは卸売り物価指数の上下が一つのメルクマールになってきたと思う。私は現在この二つが重なり合って、そうして引き締め政策、総需要抑制政策をやらざるを得ないというきわめて深刻な事態になってきているというのが実情じゃないかと思う。すでに第一回の公定歩合を昨年の四月に引き上げてから一年四カ月たった。それにもかかわらず、なお大蔵大臣答弁によると、総需要抑制のワク組みはくずさないで済むのだという、戦後異常な長期の引き締めが続いているという事情はそういうところにあるのじゃないかと思う。この点どう思われるか。  この二点と、最後に、本年初めに四十九年度経済見通し、これを出されました。すでに当時の政府の輸出見通し、輸入見通し、もう完全に狂ってきている。また、経済成長率、これもおそらくずいぶん狂うだろうというふうに考えられる。これを訂正されるお気持ちがあるかどうか、また訂正されるとすればどういう点を訂正されるのか。この三点を伺いたいと思います。
  331. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) まず、最後の経済見通しの改定の問題でございますが、これは貿易の見通しということもさることながら、物価の見通しが、これはいわゆるげたと称する昨年度中の物価の値上がりが基礎になりまして、四十九年度の物価の引き上げの基礎数字になる数字がはっきりいたしてまいりました。そういうことを取り入れてみますると、当然その卸売り物価も小売り物価も修正をしなければならないと思います。そのほかに若干手直しをすべきところが当然ございますので、これから先もうしばらくこれらの不安定な要素を見きわめをいたしまして、そうしてしかるべき時期に私はこれを改定をいたしたいと思います。そうすることによって、また今後の財政上の課題とか、あるいはまた国内における経済運営の課題にも誤りなきを期し得ると私は考えます。  それから最初の点でございますが、景気変動のいかんによって金融引き締めやあるいは需要の抑制政策というものを御指摘のようにもとは変えておりました。その中にはもちろん国際収支の状況、したがって保育外貨の天井というようなものも考慮に入れまして経済運営の施策を変えてまいりましたけれども、今回は全く事情が私は違うと思うわけでありまして、国際的にも、それがまた影響する国内的にも経済の構造というものが変わらざるを得ないところに来ておりますので、その新しい経済構造への適応というようなことを十分に考えながら景気指導政策、すなわち金融政策でありますとか総需要の抑制政策というものを私はとってまいるべきだと思います。これは私ばかりでなしに、日本銀行の総裁も、また政府の他の経済各省でも同じような考え方でございますので、現在が、景気が、おっしゃるおことばによりますと、なべ底状態にあるし、またそれをあらわすような諸指標があらわれているからと申して、従来のような手法によりましてここで景気政策を転換するということはいたさないほうがよろしい、こういうふうに考えておるわけでございまして、したがって月例経済報告における結論、また私どもがきょうのこの会議におきましても申し述べてまいりましたことば、それはその姿でいくことがよろしいと私は考えておるものでございます。
  332. 小谷守

    ○理事(小谷守君) 速記をとめて。   〔理事小谷守君退席、委員長着席〕
  333. 前川旦

    委員長前川旦君) 速記を起こして。
  334. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は政府の独占禁止政策について若干質問をしたいと思います。  まず初めに公取委員長並びに通産大臣にお伺いしたいと思いますけれども、現在公取委員長は独占禁止法強化の方向で法の改正について検討されておられるようでありますけれども、わが国の独禁法は昭和二十四年並びに昭和二十八年それぞれ緩和の方向で改められたことは御承知のとおりであります。今日この独禁法の強化ということが問題になっておりますけれども、これはそれなりにその背景となる経済情勢の変化というものがあったと思いますけれども、この情勢の変化ということについてどのように見ておられますか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  335. 高橋俊英

    説明員高橋俊英君) ただいまの御質問に対しましては簡単に要旨だけ申し上げます。  御承知のように、昭和二十年代あるいは三十年代までと申してもよろしいのでございますが、一般にわが国は敗戦のところから立ち上がるところの復興経済、復興のための経済政策、あるいは同時にそれは国際競争力の強化ということを中心とする経済政策、それを必要とするような経済事情であったと思います。それがまあ主としては四十年代と申し上げたほうがよろしいと思いますが、三十年代の中途から相当程度に日本の経済も寡占化の傾向が強まってまいっておる、また同時に国際競争力の面におきましても、これは為替レートのいかんにもよりますけれども、一般に競争力が相当程度に強化されておる。こういう点でありまして、したがいまして、問題はそういう企業の寡占化あるいは企業の集団化の傾向さえうかがわれるような情勢になったと、こういう点は二十年代の法律が弱体化された時代とは相当趣を異にするする点ではないかと考えます。
  336. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 過去二回における独禁法の改正は、占領下または独立直後に占領軍の著しい影響のもとにつくられた日本の独禁法というものを日本の国情に合うように手直ししたというのが私は実態ではないかと思います。その後日本の企業は非常に成長いたしまして、企業が大型化する、あるいはさらに消費者側の非常に熾烈な関心がわいてきておる等々、確かにわれわれはここでいままでの情勢を反省してみる時期に到達したと、そう考えております。
  337. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、現在のこの独禁法の改正ということが問題になっておるわけでありますけれども、法の改正ということも必要かと思いますが、一つは、この法の運用の面においても、過去二十年代から三十年代にかけては公取委員会そのものがきわめて弾力的な運用をされたということが言えるのではないかと思います。たとえば昭和三十三年の雪印乳業とクローバー乳業の合併の問題、あるいは三菱重工系三社の合併、これは昭和三十九年度でありますけれども、さらには昭和四十五年の八幡、富士の合併の問題、こういう問題を認められてきたという問題。それからやみカルテルに対する刑事制裁は、独禁法制定以来ことしの二月十五日の石油業界のやみカルテル告発まで一度も発動されなかった。これは言うまでもなく公取が告発されなかったからであります。こういう点を考えてみますと、法改正の必要性もさることながら、公正取引委員会の法運用にもこれからより厳正な態度が望まれるのではないかと思いますが、この点についてはどう思われますか、公取委員長にお伺いします。
  338. 高橋俊英

    説明員高橋俊英君) 仰せのとおり、独禁法をいかに運用するかによりまして現行法のもとでもかなり変化があるということは、昭和三十年代、特にその半ばごろにおけるカルテルその他の摘発件数がわずかに二件あるいは三件という年間わずかですね。そういうふうな時代もあったわけでございまして、それが逐次ふえてまいりました。昨年度におきましては六十数件という、これは全部合わしてでございますが、違法違反事件の排除を行なっております。そういうことでありまして、まずその取り上げる取り上げ方につき問題がございます。で、私どもとしては、現行法上許される限りの最大の努力を払って排除につとめておるつもりでございますが、しかし、なおその法律上の不備といいますか、もの足らない点がございまして徹底を期することができない、つまり詰めが足らないということになります。  仰せのとおり、告発というふうな手段を使うことは有効な手段であり、告発におびえてこれに非常に警戒するということは十分わかります。そういう点ではアメリカは告発を日本に比べればずっと以前からはるかに多く用いております。告発といいますか、むしろ司法省が、アンタイトラスト部の反トラスト部が、起訴といいますか、しているわけでございますから、その点では日本とは歴史も違いますが、これを受け入れる裁判所側におきましても、それ相応の独禁法に対する十分な理解があり、インタレがあると。そういう歴史的な背景がありますので告発が多用されております。もっとも、多く使われると言いましても、そう数十件も年間やっているわけではございません。それに対しまして私のほうは、御承知のとおりカルテルに対して行なったのは本年度一回だけでありまして、この点については確かに御指摘の点のとおりでありますが、まあ私どもとしてこの告発を多く使い、刑事事件として刑罰を科するという点につきましては、今後もなお一そう、徐々にではありまするが、これを用いるべきであるというふうには思います。しかし、にわかにそれを多く使って全般に効果的なブレーキをかけるようなふうにするためには、若干いまそれを受け入れるほうにも、わがほうにも十分な体制が整っておらないという点もございます。さればと言って私は告発を今後もめったにやらないと申すのではありません。そういうことを申すことはむしろ有害だろうと思いますので、その現行制度の運用につきましてはできる限りのことをやってまいりたいと思いますが、しかしまあ、まず法律の改正を行なってカルテル等の防止に役立てるということのほうが有効適切ではないかと、こういうふうに考えております。
  339. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 公取委員長は先日海外の諸国の独占禁止政策の状況視察に行かれましたけれども、その結果感じられたことといいますか、特にわが国と比べて外国の例はどうかという点、あるいはわが国の独禁法改正の上で取り入れたらよいと思われる点、こういう点についてもしお伺いできればお答えいただきたいと思いますが。
  340. 高橋俊英

    説明員高橋俊英君) 私はヨーロッパの事情、またアメリカの事情を見てまいりましたけれども、時間が短いので十分その目的を尽くせぬ点はございましたが、一般にヨーロッパでは、西独を除きましてほとんどが価格問題について政府が介入を行なっております。法律的な根拠に基づいておりますが、フランスにおきましても、たとえば一九四五年でございますから、終戦の年にオルドナンス、まあ勅令でございますが、今日なれば法律でございますが、それをもとにしまして価格規制を行なっている。その価格規制の中に、独禁法当局もその価格規制を行なう総局の中に含まれているというふうなことでございますので、いささかその点独禁法の本来の目的とかみ合わない点があるんじゃないかと思います。しかしながら、イギリスのごときは、これまた国の事情としてはうまくいってない点ありますけれども、それは他の政策がいろいろ欠陥が多いということでありまして、しかし、独禁法そのものについては非常に熱心であると、独禁法の強化は保守党の時代にも行なわれると、また労働党の時代にもこれは行なわれております。とにかくいま強化しようという、強化していくという意欲だけは十分うかがわれますし、その中で独占を形成している業者に対して、事業者に対しては価格の引き下げ命令を実施しております。その基準は参考になるかどうかわかりませんが、とにかくそういう価格を引き下げることを命じておる。それからまた西独の場合も、これはむしろ寡占対策と申し上げたいんですが、寡占事業とみなされるもの、これは法律にシェアで規定しております。何社がどれだけのシェアを占める場合というふうなシェアで規定しておりますが、独占ではないが寡占というものに対して十分な法律上の制度がありまして、ただし、これについてはそれを禁止したり、まあ要するにそういうものの乱用を禁止する、市場支配的地位の乱用を禁止するという法律上の文言でございますが、これによって事実上はそれらの寡占企業に対する価格引き下げを命じております。  そういった点はアメリカにおいては全々違いまして、考え方としても、これはあくまで裁判処理——裁判所を多く使っておりまして、カルテルの排除に関しては。最近はFTC、連邦取引委員会のほうも、カルテルではありませんが、独占問題に相当介入しておりますが、従来は司法省が主としてそういうカルテルや独占に立ち向かっておりますが、そのやり方というものは、先ほど申しましたとおり、まず民事で訴追しそして悪質なものあるいは再販を再び行なったものに対しては刑事事件として刑罰を求めると、こういう刑罰を厳にすることによってやる、あるいはその合併についてきわめてきびしいガイドラインをつくっております。それは水平合併の場合も垂直合併の場合も、それぞれ日本のいまの合併の基準に比べればはるかにきびしいものであると私は思いますが、根本的な考え方として、アメリカ流の——これはアメリカは本家であるとも申しますが、アメリカ流の考え方は、やはり価格に介入するという、独禁当局が価格に介入するという点については、まあまああまり賛意を表しがたいと、したがってそういうふうな態度に出ない。ところが、ヨーロッパ——欧州のほうの考え方は、そもそも独禁法というものは、突き詰めていえば当座の目的、その出てくる現象に対する排除の目的は結局価格にあるんだ、独占禁止法違反のあらわれてくるところの結果はみな価格じゃないかと、これは生産制限をしょうが、カルテルをやろうが、独占であろうが、ほしいままに価格を上げるということが国民経済のマイナスになる、国民に対するまたマイナスになるんだという考え方でありますから、当然独禁当局が価格に介入しても一向不自然ではないし、当然だと、それがむしろ当然だというふうな考え方に立っております。このように大局的に分けまして、私はヨーロッパ流の考え方とアメリカ流の考え方に分かれると、したがいまして、日本の学者の皆さんにおきましてもこの両説がございます。それで私どもは、あえて私は必要最小限度の範囲においては独禁当局が、公正取引委員会が価格に介入することもやむを得ないのではないか、こういうふうな考えを持ってまいっておるわけでございます。
  341. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 すでに独占禁止法研究会の中間報告というものが発表されております。これは成案は九月に出るということでありますけれども、中間報告によりましても、企業の分割を命令する権利、それから価格引き下げ命令、さらに原価公表制度、課徴金、それから持ち株の制限、こういう五つの項目があげられておりますけれども、公取委員長としては、現在の独禁法を改正する場合に、この五つの項目が諸外国と比べた場合、日本の場合にも必要であるという判断に立たれますかどうか、お伺いをしたいと思います。
  342. 高橋俊英

    説明員高橋俊英君) これらの独占禁止法研究会の中間結論は、中間的な報告というものは、私どももそれにはある程度相当程度の参画しております。全員の合致したものもあるし、また必ずしも全員合致とは申せないものもございますが、公正取引委員会としましては、これらの項目をすべて今回の改正に織り込むと、他にもおそらくもうそれ以上必要であるというものがあるかもしれませんが、しかし私たちとしては、まずとりあえずは中間発表において会長が発表いたしました項目を全部改正項目として取り上げたいと考えております。
  343. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 この五つの項目に対して、もうすでに財界等からかなりの反対があるわけでありますけれども、財界に限らず通産省あたりからも反対が予想されるわけでありますが、公取委員長としてはどの程度の決意を持って臨まれますか、お伺いをしたいと思います。
  344. 高橋俊英

    説明員高橋俊英君) いろいろくどくは申しません。ぜひとも今度の通常国会において何らかの形でこれらの項目が法律改正として結論を出していただくように最大の努力を払いたいと考えております。
  345. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 なお、公取委員長は、独禁法改正について財界とも積極的に論議をして合意を得たいということを言っておられますけれども、もちろんこの財界と話し合うということも必要でありますけれども、財界と意見が対立しておる消費者団体の代表とも同時に話し合うべきだと思いますが、この点はいかがですか。
  346. 高橋俊英

    説明員高橋俊英君) 私どもはいま財界と直ちにお話しするということじゃなく、自然にたとえば二の独禁法改正の研究会の会長をしておられる方が経団連の幹部と会って話をするというふうなことについてはけっこうなことだと思います。私自身としましては、もう少しこのわれわれの案を煮詰めた段階でなければ、いろいろこまかな問題についてやはり十分な話し合いができませんので、まあ雰囲気づくりには努力したいと思いますけれども、まだまだ十分な話し合いを行なうには私どもの準備が若干不足しております。しかし、それは長いことではありませんので、いずれある程度の成案を得次第、経団連の方とも話をするという機会を持ちたいと思いますが、消費者の側といいますか、これはもちろん私ども消費者を何も軽視するわけではありませんけれども、たとえば独占禁止懇話会というふうなものがございまして、これは研究会以外に、別に消費者代表も中小企業代表も入っておる厳然たる私的諮問機関であります。そういった機会に独禁法改正についての御理解を得るように努力したいと思いますが、それぞれの利益代表というふうな形でこの問題を取り上げていくというやり方についてはちょっと問題があろうかと思います。やはり産業界、財界というほうの側から言わせれば、どんな意味においてもこの改正には賛成する方は、あまり心底から賛成する方はないでありましょう。そういうものに対しては特に私どもは説得を試みたい。消費者の側としては、おそらくこれらの改正に対してはむしろ初めから賛成という考えを持っておられるんじゃないかと私は思いますが、そのほうの説得よりも、そのお力はもちろんかしていただいてけっこうでございますが、やはりまあ反対を表明しそうであるという方について、単純に自分たちの個々の利益からこういう問題を考えるべきでないんだということをわかっていただく、こういう緒をつかみたい、こういうことに努力したいと思います。
  347. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 若干具体的な内容に入りたいと思いますが、基本的なお考えだけでもけっこうですからお聞きしたいと思います。  独占禁止法研究会の中間報告では、企業分割の必要性について、独占に近い市場構造が存在し、企業の業績あるいは市場行動の面で、競争政策上具体的な弊害か生じている場合——このように規定しておるわけでありますけれども、この具体的な判断の基準をどこに置くか、こういう問題が一つあろうかと思います。  それからこの場合の市場の範囲をどう見るか。経済の国際化の今日、この市場というのは、国内市場について見ればいいのか、あるいは海外市場も含めて考えるべきか。  それからもう一つは、企業の合併等によらず、正当な努力によって大きくなった企業の分割がはたしてできるのかどうか。これは旧独占禁止法の八条でも、これは困難だという見解もあるようでありますけれども、今回の改正にあたってこの点はどう考えるのか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  348. 高橋俊英

    説明員高橋俊英君) 最初に、この分割について、基準という問題はまだ実ははっきりとは詰まっておりません。ただし、抽象的にはもちろんおわかりと思いますが、一社の場合だったらこれはいわゆるガリバー型寡占と申しますが、非常に独占に近い状態でございます。ただ、三社独占ということもこれはあり得る、理論上はあり得るわけでございます。三社独占といいますか、二社でほとんど全部を占めているような場合でも、これはやはり対象になり得るんじゃないかと思います。ということでありまして、旧八条の場合には、一社だけがおそらく解釈上、次の社との企業力の格差が大きくなり過ぎた場合、この場合には分割の対象になるということになっておりますね。ただし、旧八条と違うところは、私どものうちで、そういう独占的地位、市場支導を行なっておる事業者の行動が多少は、ある程度何らかの実害を経済界に及ぼしているんだということが認められるような場合でなければ発動しないのが原則であろうと、こういうふうに考えます。こういうことでございますが、国際化の問題国際化といいますか、国際競争力の問題につきましては、いまのところ私どもとしては当然原則として考慮に入れるということでありまして、国内だけのそのもののシェアだけで見るわけにいかない、国際競争力ということも考慮した上でやるべきであろうというふうに考えておりますが、しかし、その点はこれはある程度、程度の問題でございまして、独占であぐらをかいている場合にはかえって競争力がないが、分割によって競争を国内でせるようになった場合、国内市場が相当大きいという場合ですね、こういう場合にはやはり国際競争力の点では多少疑問があってもやはり分割の対象にならざるを得ない場合もあり得るという程度でございまして、したがいまして、ここではいま断言して申し上げることはできません。  それから自然に企業努力で大きくなったものを、独占的な立場になったからといって分割するのはおかしいじゃないかということになりますと、これに対しては反論でありますが、およそ独占化といいますか、独占に近い状態に達するということは、いずれの場合も企業努力を伴わないものはないわけでございまして、それはたとえばIBMの例をとりましても、それ相応のたいへんな技術開発その他に対する企業努力、それから経営の充実というふうなことがあって初めて世界的なたいへんな企業にのし上がったということも言えるわけでありまして、企業努力がなければこういう独占的な企業になるわけはありません。したがいまして、それはしたがって自分の努力で大きくなったものを分割するのは酷ではないかということになりますと、およそその独占禁止法の目的である独占を排除すると、独占を排除し、その他これに近い行動を抑止していくという法律の目的からいいますと、たいへんな矛盾を来たすことになります。要するに、私どもはその経過はどうであれ、独占というふうな状態に近い立場になって、それが国内経済あるいは国民経済から見て有害であると認められる場合には分割に踏み切ったほうがよいのではないだろうかと、こう考えておりますので、その点は人情論ではなくして、別にかなりクールに判断しなければならない問題じゃないかと思います。
  349. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 公取委員長が海外視察から帰られて後の記者会見あるいはその他いろいろの発言を見ますと、やはりあくまでも自由経済の機能を維持するためにこの独占禁止法の改正が必要だと、こういう判断に立っておられると思いますけれども、私はやはりこの際問題があると思うんです。一つは、スケールメリットの非常に大きい産業の場合に、企業の分割をした場合にそのメリットがそこなわれることが考えられる。そういう場合には分割をして自由な競争を保持できる状態にしたほうがいいのか、あるいは分割せずに社会化といいますか、極端にいえば国有化の方向を考えて社会的な規制を強めたほうがいいのか、あるいはそれに対する対抗勢力を育成したほうがいいのか、いろいろ選択の余地があろうかと思うんです。したがって、あくまでも自由経済を原則としてこの独占禁止法の改正を考えるということでは若干無理が出てくるのではないかという気がいたします。たとえば原価公表制度の採用にしましても、これも一つ企業に対する介入であります。だから、この原価の公表制度とか、あるいは価格引き下げ命令権、こういうものにしましても、国が企業に対して何らかの監視を強めるということになるわけで、それ自体自由経済から見れば矛盾することになろうかと思います。こういう点から考えるならば、この独占禁止法の改正ということが、公取委員長の言われておるように、あくまでも自由主義経済を守るためのものだというふうに割り切れないんじゃなかろうか、こういう気がしますが、この点についての見解をお伺いしたいと思います。
  350. 高橋俊英

    説明員高橋俊英君) 私が自由主義経済と申しました場合、もちろんこれは自由放任経済ではございません。そういう経済はまあ各国どこをさがしてもまずないだろうと思います。その自由であるということはい自由主義経済であるということはいかなる場合も国が関与しない、介入しないということではないんで、そもそもこの独占禁止法自体が、ほうっておけば自由主義経済のもとで生ずるであろうところの一つの障害、まあ弊害ですね。わかりやすく言えば、その自由経済が必然的にもたらすような自由放任の場合に、こういうかってなふるまいはやはり自由主義経済のもとでも許されないんであるということを規定したものであります。そのほかにも私はいろいろ、これは各省それぞれのあれによりまして、法律をもって規制すると、経済を規制するということは当然許されています。法律なしに規制するということについては私は反対でありますけれども、法律をもって規制するということは、国会の承認を得た上で、国民的ないわば合意の上で、みずからそういう規制に服するということを定めるわけでございますから、私はこういった企業分割というふうな多少ドラスティックな手段にいたしましても、これを乱用するようなことは公取当局は当然慎むべきでありまして、分割することについてのメリットがどれだけあり、デメリットがどれだけあるかということを総合的に判断した上で決定するわけでございますから、私はいまの御指摘ございましたけれども、国有化というふうなものとは絶対違うと。  国有化の問題につきまして私イタリアでよく話を承ってまいりましたが、重要産業、主要産業の二分の一が国有化されている。さらに国有化を進めているような状態でありますが、それに対しても自由なストライキ権がある。縦横十文字にスト権があるというようなことからきわめて能率が低いという話を聞いてまいりました。それは一面的な見方かもしれませんけれども、そういう点に問題があると。イギリスも国有化をどちらかというと労働党は進める方向にあるし、保守党はそれを阻止する方向にある。まあ国有化についてはいろいろ議論がございましょうが、私は国有化によってこういう自由主義経済から生ずる独占に対する対策をどうするということについては十分考えさせられるものがあって、どちらかというと、私個人としてはそういう手段はとらないほうがいいのじゃないかと。むしろ新規に、新しく参入ができるような環境をつくり、競争状態か一もちろん無制限ではありませんが、競争の状態が復活するというふうなことを期待して企業分割を行なうべきであって、それにかわる政策もそれはないとは言いませんけれども、国有化等につきましては私は十分考えさせられるものがあると、かように考えます。
  351. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 次に、持ち株制限について若干触れたいと思いますが、現在法人の全発行株の約三分の二は法人が持っております。それから個人の所有は三分の一と。これは十年前から見ればその比率は逆転しておるといわれますけれども、特に法人の持ち株の中で、そのうちの約三割は銀行が所有しております。言うならば金融資本主義ともいいますか、銀行が産業を支配するという傾向が非常に強くなっておるわけです。現在金融機関は一〇%という持ち株の制限がうたってありますけれども、もっとこれを強化すべきではないかという考えをわが党は持っているわけです。少なくとも五%ぐらいまでに引き下げることが必要ではないか、こう考えておりますが、この点について公取委員長の判断はどうか、また大蔵大臣はどう考えられるか、お伺いをしたいと思います。
  352. 高橋俊英

    説明員高橋俊英君) 金融機関の持ち株の制限、現在は一社当たり一〇%以内と、こうなっておるやつを引き下げる、これはつまり規制の強化でございますが、それはすでにもう十分私ともも考慮しておりまして、大体そういう方向で、具体的な数字は決定には至っておりませんが、銀行の持ち株規制を強化するという考え方には全く同感でございます。
  353. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) 金融機関の持ち株規制につきましては、いま公取委員長もお話がございましたが、公取におかれて独占禁止法改正の一環として御検討を進めておられると聞いております。大蔵省としてはその結果を待って検討いたしたいと思っております。
  354. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 それから次に、最近は多国籍企業の進出が著しいわけでありますけれども、多国籍企業の市場支配あるいは価格操作等に対する対策も必要になっておると思います。また、諸外国においてもこういう対策が進められておると思いますけれども、わが国の独禁政策の場合には、こういう面に対する対策はまだ足りないということも聞いておりますが、こういう点についてどう考えられますか、公取委員長にお伺いします。
  355. 高橋俊英

    説明員高橋俊英君) お説のとおりでございまして、多国籍企業に対する独占禁止法の、独禁政策上の立場からの対策は、実はヨーロッパのように、アメリカ系と申しますか、多国籍企業が非常に多く進出して、しかもその国の立場のかなり重要な部分を占めておるというところにおきましても現実にはまだ対策そのものが発揮されておりません。つまり十分に出ていない。私どももいまのところ非常に重要な分野で大きく支配を受けておるものがありませんけれども、たとえば清涼飲料水とかその他それほど重要部分でない、何といいますか国民生活には関係深いのですけれども、いわゆる重工業、重化学工業の分野で多国籍企業とみなされるものについては、完全に一〇〇%ぐらいじゃない、ただ、石油の場合には外資系と称するものが多いのですけれども、こういうものを多国籍企業と扱うかどうか、扱ってみても独禁法上なかなかむずかしい問題だと思います。  しかし、一般にヨーロッパではそういう多国籍企業の進出のために非常に悩みを多くかかえておる国が多いのでございまして、この結果、私が先日参りましたときにOECDの、わかりやすく申しませば独禁法部会、独禁政策部会があるんです。その総会が年二回あるんですが、最初の総会がパリで行なわれました。そのところに私も少しは出席したのですが、そのときの議題が多国籍企業について独禁政策の、競争政策の立場からどのようにメスを入れていくかということが、それを議題として取り上げたというふうなことがございまして、また西独のカルテル庁は、特にこの問題について、長官以下が、多国籍企業をいかにすべきかというところが次の大きな課題であり、またアメリカ系の石油メジャーなどに対して独禁法上からどのように対処するかというようなことを申しておりましたが、したがいまして、私どもも現在は、まだIBMの将来を考えると、日本のIBMの将来についてどう見るかという問題はございますが、それ以外の分についてはさほどの段階ではありませんので、まだどのようにするかということについて研究を進めているとは申しがたいのでありますが、今後私ども外国の、そういうヨーロッパで現実に被害を受けていると、こう思っているものとの協調をはかりながら、わが国としても備えは十分にしておくべきである。独禁法上の対策もいまから考えておく必要がある、こう考えております。
  356. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 公取委員長から独占禁止法の強化の必要性ということをお伺いしたわけですけれども、通産省は独禁法の強化の方向での改正ということにどう考えておられるか、お伺いをしたいと思います。
  357. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 独禁政策は非常に重大な問題でございますし、この秋におきましては大きな問題点として政治的にもあるいは国会の上におきましても登場するという予想はなされております。したがいまして、通産省としては、いままでの過去の政策をいろいろ点検いたし、企業実態等も調べ、また海外に調査員を派遣する等のことを行ないまして、いま御指摘になりました五点、そのほかの諸点等につきましても鋭意調査をしてこの検討を加えているという段階でございまして、いまここで、まだ独禁当局においても雰囲気づくりとか、必ずしも政策が万全に備わっている状態ではないという事態でもございますから、私がここでとかく申し上げるということは差し控えて、われわれのほうも十分検討した上で御返答申し上げたいと思っております。
  358. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 ここでも一つ従来の行政指導という問題があるわけですけれども行政指導で、言うならば国際競争力の強化とかあるいは不況からの企業の救済とかいろいろ目的があると思いますけれども、競争制限的な政策が出されておるわけです。そうして一方では、公正取引委員会をはじめとして、競争促進を叫んで独禁法の強化というようなことが出されておる。問題は百八十度違う政策をどこでバランスをとるか、このかね合いが非常にむずかしいと思いますけれども、この点について、行政指導の持つ面と、それから公取委員会の持つ機能と、これの矛盾といいますか、あるいはバランスというものをどう考えられるか、公取委員長並びに通産大臣にお伺いをしたいと思います。
  359. 高橋俊英

    説明員高橋俊英君) 私ども独禁法を扱っている立場といたしましては、やはり先ほど申しましたような経済情勢の変化のもとにおきましては、これからいたずらに競争制限的な政策によって国際競争力の強化だけを目ざす、結局そういうことは何にもならない。そういう司際競争力の強化につながるようなこと、あるいはそのほかにも合理化ということがあるでしょうけれども、いずれにしても私はそういう従来の型に入るということに解するわけでございます。そのほかにはまたいろいろほかの行政指導もあるでしょう。カルテルにつながるような行政指導は、私どもとしてはこれは全くごかんべん願いたいという感じでありますし、そういう点では行政指導のすべてが独禁法に私は抵触する、独禁法に矛盾するとは思っておりませんけれども、いま申しましたような競争制限的な、あるいは価格を同調させるというか、カルテルを招きやすいような、そういう種類の行政指導はぜひやめていただきたいと思います。独禁当局としては、やはり競争政策というのは、何でも過当競争すればいいんだというような主張ではありません。しかし、それは要するに将来の寡占化につながる、あるいは現在すでに寡占化されているものをさらに独占に近いような、二、三社の独占というような形に持っていくことが至上命令であるというように考えていかれなくとも、そうでなくとも私は規模のメリットというような問題についても、かなり大部分の分野においては解決済みではなかろうかと、その規模のメリット以外の問題がすでにある、そういうことはわかります。しかし、業界によってこれはみな違うわけでございまして、それぞれの対応を見た上でなければ、一般論としてはなかなか言い尽くせない何がございますけれども、原則論を申しますればそういうようなことでございます。
  360. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は私的独占禁止法というものを読んでみまして、第一条に規定しているこの法の目的は非常によくできているんじゃないかと思うんです。この考えに非常に共鳴しておるものであります。つまり企業活動における集中とかあるいは制限とか拘束を排除して、そして公正にして自由な取引を徹底して行なわせるようにしながら、かつ企業の創意、活動を活発にして、そして消費者を守り、国民経済の福祉に貢献すると、こういう構成になっております。そういう意味からすると、やはり公正取引、それから自由競争を徹底させると、そういうやり方によって消費者のために値下げを行なわさせると、そういう形が望ましいし、そういうことで独禁法というものはいままで機能したし、高橋さんも一生懸命おやりになっておるんだろうと思います。だから、そういうことを徹底的に保障するという形の方向に行くのがいいんではないんだろうか。独禁当局が行政当局まがいの行政行為に類似したような形をとることがはたして消費者の利益につながるだろうかどうか。たとえば価格をある程度指示するとかいろんな考えもあるようです。これらはわれわれ検討すべき問題点であると思いますが、なかなかわれわれこれ実際行政指導価格というのをやってみまして、そうやってみるというと、これがややもすれば価格が下がるのを下ざさえする結果になってきているということもあります。それから企業を見ているというバルクラインというようなものも出てくるというと、これまたある程度の企業は生かしてやらなきゃならぬというようなところにもなって、民族系と外資系との関係というようなことになるというと、また政策的にいろいろ問題が出てまいります。むしろ独禁当局というものは爆発力、破壊力というようなことであって、行政行為類似のようなことをやるのは適当ではないという感じがし、もしやった場合に、はたしてこれが消費者の利益につながることになるだろうかというようなことも実は感ぜられる節もあります。あるいは鉄鋼の問題なんか見ましても、あるいは飲料の問題等見ましてもプライスリーダーというものがあります。これはかなり力のあるものです。それは値をどんどん安くしていくと。これは消費者は非常に恩恵を受けるわけです。  しかし、これがある程度プライスリーダーの力がなくなってきたりするというと妙な雰囲気が出たりしてきて、そして下げようという力が衰えるという危険性もある。シェアをうんととろうとすることは結局安く売るという形になってきまして、それは消費者の利益になると。だが、これ妙なことになるというと、下げる力が衰える、それが消費者の利益につながるだろうかというようなこともあります。というような問題で、実際生きた行政をやってみますというと、ほんとうに消費者の利益に長期的に見てなるやり方というものはどういうやり方であろうか。私はやっぱり公正にして自由な取引を徹底的に行なわさせると、そういうこと以外に自由経済を基本にしつつ考える基本はないんではないかというような感じが実はしておる。これは従来独禁法を私賛成してきて、支持してきた考えの上に立つものでございますが、その上にさらにどういう改革を行なったらいいのであろうかという点は、いま調査研究さしておるところでございまして、いままで持っておった私の感じを申し上げる次第であります。
  361. 前川旦

    委員長前川旦君) 田渕君、時間が経過しております。
  362. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 それじゃ時間がありませんので、最後に一問だけ。これは大蔵大臣並びに公取委員長にお伺いをしたいと思います。  ビールが八月の初めに価格凍結品目からはずされましたけれども、とたんにこの年内値上げのうわさが出ております。ビールは御承知のようにガリバー型寡占の典型とも言うべきものだといわれていますが、このビールの値上げに対し、今後大蔵省はどういう行政指導をされるか、また公取委員長としてはどういう態度をとられるか、お伺いしたいと思います。
  363. 大平正芳

    国務大臣(大平正芳君) まだビールの値上げの話は伺っておりません。
  364. 高橋俊英

    説明員高橋俊英君) これはある一つ新聞にそういう予測が出たと、そういうことは承知しております。ただ、ほかの新聞には何も出てないので、一体業界が考えておるかどうか、私どもまだ業界と接触しておりませんので何ともいま申し上げられません。しかし、もしあのようなことだとすれば、そう仮定した場合に、はなはだ好ましくないということだけは申し上げておきます。しかし、そうは申しましても、いま私どもの独禁法の立場として、ビールに対して、いままでもそうでございますが、有効な手を打てないようになっている。今後たとえば原価公表とか企業分割とかいうことが法律上認められた場合には、それ相応の対応策がとり得るんでございますけれども、いまのところはわれわれ独禁当局としては、かりにどのようなことを行なっても、カルテルがあるという証拠をつかまない限りはなかなか対処できないということだけを申し上げておきます。
  365. 前川旦

    委員長前川旦君) それでは本日の質疑は一応この程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時六分散会      —————・—————