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1974-08-19 第73回国会 参議院 決算委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年八月十九日(月曜日)    午前十時三分開会     —————————————    委員異動  八月十七日     辞任         補欠選任      加藤  進君     星野  力君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         前川  旦君     理 事                 鈴木 省吾君                 橋本 繁蔵君                 松岡 克由君                 小谷  守君                 田代富士男君                 橋本  敦君     委 員                 岩男 頴一君                 小林 国司君                 永野 嚴雄君                 望月 邦夫君                 案納  勝君                 工藤 良平君                 小山 一平君                 佐々木静子君                 須原 昭二君                 和田 静夫君                 峯山 昭範君                 星野  力君                 田渕 哲也君    国務大臣        外 務 大 臣  木村 俊夫君        大 蔵 大 臣  大平 正芳君        運 輸 大 臣  徳永 正利君        郵 政 大 臣  原田  憲君        建 設 大 臣  亀岡 高夫君        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    町村 金五君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       内田 常雄君         —————        会計検査院長   白石 正雄君    事務局側        常任委員会専門        員        佐藤 忠雄君    説明員        内閣官房副長官  大村 襄治君        公正取引委員会        事務局長     熊田淳一郎君        警察庁警備局長  山本 鎮彦君        行政管理庁行政        監察局長     大田 宗利君        外務大臣官房領        事移住部長    穂崎  巧君        外務省アジア局        長        高島 益郎君        大蔵省主計局次        長        田中  敬君        大蔵省主税局長  中橋敬次郎君        農林大臣官房長 大河原太一郎君        中小企業庁次長  小山  実君        運輸省航空局長  中村 大造君        建設省河川局長  増岡 康治君        会計検査院事務        総局次長     鎌田 英夫君        会計検査院事務        総局第一局長   高橋 保司君        会計検査院事務        総局第二局長   柴崎 敏郎君        会計検査院事務        総局第三局長   本村 善文君        日本専売公社総        裁        木村 秀弘君        日本国有鉄道総        裁        藤井松太郎君        日本電信電話公        社総裁      米澤  滋君    参考人        住宅金融公庫総        裁        淺村  廉君        新東京国際空港        公団総裁     大塚  茂君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十七年度一般会計歳入歳出決算昭和四  十七年度特別会計歳入歳出決算昭和四十七年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和四十七  年度政府関係機関決算書(第七十二回国会内閣  提出) ○昭和四十七年度国有財産増減及び現在額総計算  書(第七十二回国会内閣提出) ○昭和四十七年度国有財産無償貸付状況計算書  (第七十二回国会内閣提出)     —————————————
  2. 前川旦

    委員長前川旦君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る八月十七日、加藤進君が委員を辞任され、その補欠として星野力君が選任されました。     —————————————
  3. 前川旦

    委員長前川旦君) 昭和四十七年度決算外二件を議題といたします。  それでは、昭和四十七年度決算、すなわち一般会計歳入歳出決算特別会計歳入歳出決算国税収納金整理資金受払計算書政府関係機関決算書につきましてこれより概要説明を聴取いたします。大平大蔵大臣
  4. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 昭和四十七年度一般会計歳入歳出決算特別会計歳入歳出決算国税収納金整理資金受払計算書及び政府関係機関決算書会計検査院検査報告とともに前国会提出し、また、昭和四十七年度の国の債権の現在額並びに物品増減及び現在額についても前国会報告いたしたので、その大要を御説明申し上げます。  昭和四十七年度予算は、昭和四十七年四月二十八日に成立いたしました。  この予算は、わが国経済国際経済との調和をはかりつつ、国民福祉の向上をはかるという基本方針のもとに編成されたものであります。  さらに、その後における人事院勧告実施等に伴う公務員の給与改善等について措置するほか、経済情勢の変化に伴い、特に緊要となった経費について所要の措置を講ずるため、昭和四十七年十一月十三日補正予算が成立いたしました。  この補正によりまして、昭和四十七年度一般会計予算は、歳入歳出とも十二兆千百八十九億四千九百十三万八千円となりました。  以下、昭和四十七年度決算についてその内容を数字をあげて御説明申し上げます。  まず、一般会計におきまして歳入決算額は十二兆七千九百三十八億七千三百六万円余、歳出決算額は十一兆九千主百二十一億七千二百八万円余でありまして、差し引き八千六百十七億九十八万円余の剰余を生じました。  この剰余金は、財政法第四十一条の規定によりまして、一般会計昭和四十八年度歳入繰り入れ済みであります。  なお、昭和四十七年度における財政法第六条の純剰余金は二千八百五十七億三千九十二万円余となり、この純剰余金の二分の一を下らない金額は、財政法第六条第一項の規定によりまして、公債または借り入れ金償還財源に充てることとなるわけであります。  以上の決算額予算額と比較いたしますと、歳入につきましては、予算額十二兆千百八十九億四千九百十三万円余に比べて六千七百四十九億二千三百九十二万円余の増加となるのでありますが、この増加額には、前年度剰余金受け入れ予算額に比べて増加した額三千百二億千百五十七万円余が含まれておりますので、これを差し引きますと、昭和四十七年度歳入の純増加額は三千六百四十七億千二百三十五万円余となるのであります。その内容は、租税及び印紙収入における増加額六千三百九十六億四百四万円余専売納付金における増加額百五十二億千三十万円余、官業益金及び官業収入における増加額三億七千九百七十一万円余、政府資産整理収入における増加額三百三億九千九百五十九万円余、雑収入における増加額三百九十一億五千四百九十万円余、公債金における減少額三千六百億三千六百二十万円となっております。  一方、歳出につきましては、予算額十二兆千百八十九億四千九百十三万円余に、昭和四十六年度からの繰り越し額九百五億三千五百六十四万円余を加えました歳出予算現額十二兆二千九十四億八千四百七十七万円余に対しまして、支出済み歳出額は十一兆九千三百二十一億七千二百八万円余でありまして、その差額二千七百七十三億千二百六十九万円余のうち、昭和四十八年度に繰り越しました額は千八百六十五億九千九百八十三万円余となっており、不用となりました額は、九百七億千二百八十五万円余となっております。  次に、予備費でありますが、昭和四十七年度一般会計における予備費予算額は千百億円であります。その使用額は千九十九億五千四百八十五万円余でありまして、その使用につきましては、別途前国会提出予備費使用承諾案について御審議をいただきましたので、説明を省略させていただきます。  次に、一般会計国庫債務負担行為について申し上げます。  財政法第十五条第一項の規定に基づき国が債務を負担することができる金額は四千七百六十一億二百二十六万円余でありますが、実際に負担いたしました債務額は四千五百八十三億七千二百九十五万円余でありますので、これに既往年度からの繰り越し債務額四千三百六十四億七千四百十七万円余を加え、昭和四十七年度中に支出その他の理由によって債務が消滅いたしました額三千三百九億七千六百六十万円余を差し引きました額五千六百三十八億七千五十二万円余が翌年度以降に繰り越された債務額になります。  財政法第十五条第二項の規定に基づき国が債務を負担することのできる金額は三百億円でありますが、実際に負担いたしました債務額は二百九十五億九千九百九十九万円余でありますので、これに既往年度からの繰り越し債務額百四十八億七千八百九万円余を加え、昭和四十七年度中に支出その他の理由によって債務が消滅いたしました額百四十八億七千八百九万円余を差し引きました額二百九十五億九千九百九十九万円余が、翌年度以降に繰り越された債務額になります。  次に、昭和四十七年度特別会計決算でありますが、同年度における特別会計の数は四十一でありまして、これらの決算内容につきましては、特別会計歳入歳出決算によって御了承願いたいと存じます。  なお、これらの特別会計歳入歳出決算額合計しますと、歳入決算において二十二兆五千六百七十二億五千四百九十七万円余、歳出決算において十九兆三千六百九十七億二千七百二十六万円余であります。  次に、昭和四十七年度における国税収納金整理資金受け入れ及び支払いでありますが、同資金への収納済み額は十兆三百二十六億六千三百三十五万円余でありまして、この資金からの歳入への組み入れ額等は十兆五十一億四千五百七十三万円余でありますので、差し引き二百七十五億千七百六十二万円余が、昭和四十七年度末の資金残額となります。これは、主として国税にかかる還付金として支払い決定済みのもので、年度内に支払いを終わらなかったものであります。  次に、昭和四十七年度政府関係機関決算でありますが、日本専売公社日本国有鉄道及び日本電信電話公社決算内容につきましては、別途それぞれの主務大臣から御説明申し上げる予定であります。  また、その他の政府関係機関決算内容につきましては、それぞれの決算書によって御了承願いたいと存じます。  次に、国の債権の現在額でありますが、昭和四十七年度末における国の債権総額は十兆九百八十八億千四百二十三万円余でありまして、その内容の詳細につきましては、昭和四十七年度国の債権の現在額総報告によって御了承願いたいと存じます。  次に、物品増減及び現在額でありますが、昭和四十七年度中における純増加額は千六十四億四千九百二十万円余でありますので、これに前年度末現在額六千九百十億八千八百十九万円余を加えますと、昭和四十七年度末における物品総額は七千九百七十五億三千七百四十万円余となります。その内訳の詳細につきましては、昭和四十七年度物品増減及び現在額総報告によって御了承願いたいと存じます。  以上、昭和四十七年度一般会計歳入歳出決算特別会計歳入歳出決算国税収納金整理資金受払計算書政府関係機関決算書等につきまして、その大要を御説明申し上げた次第であります。  なお、昭和四十七年度予算の執行につきましては、予算の効率的な使用経理の適正な運営に極力意を用いてまいったのでありますが、なお、会計検査院から、百七十六件にのぼる不当事項について指摘を受けましたことは、まことに遺憾にたえないところであります。  これにつきましては、今後一そう経理改善に努力を傾注いたす所存であります。  何とぞ御審議のほどをお願い申し上げます。     —————————————
  5. 前川旦

    委員長前川旦君) 次に、昭和四十七年度国有財産増減及び現在額総計算書並び昭和四十七年度国有財産無償貸付状況計算書につきまして、その概要説明を聴取いたします。大平大蔵大臣
  6. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 昭和四十七年度国有財産増減及び現在額総計算書並び昭和四十七年度国有財産無償貸付状況計算書を、会計検査院検査報告とともに前国会報告いたしましたので、その概要を御説明申し上げます。  まず、昭和四十七年度国有財産増減及び現在額総計算書概要について申し述べます。  昭和四十七年度中に増加しました国有財産は、行政財産五千七百二十億八千五十万円余、普通財産九千六百四十三億九千十一万円余、総額一兆五千三百六十四億七千六十二万円余であり、また同年度中に減少しました国有財産は、行政財産二千百十一億五千八百二十五万円余、普通財産三千七百十七億五千三百七十四万円余、総額五千八百二十九億千二百万円余でありまして、差し引き九千五百三十五億五千八百六十一万円余の純増加となっております。これを昭和四十六年度末現在額九兆八千三百五十七億八千六百四十四万円余に加算いたしますと十兆七千八百九十三億四千五百六万円余となり、これが昭和四十七年度末現在における国有財産総額であります。  この総額内訳分類別及び種類別に申し上げますと、行政財産においては公用財産四兆五百四十六億五百六十万円余、公共用財産千六百四十九億七千四百三十五万円余、皇室用財産千七百二億九千九百四十七万円余、企業用財産一兆五千五百六十七億四千二百六十三万円余、合計五兆九千四百六十六億二千二百八万円余となっており、普通財産においては四兆八千四百二十七億二千二百九十八万円余となっております。なお、この普通財産のうち三兆九千三十六億八千二百八万円余は政府出資等となっております。  また、国有財産総額内訳区分別に申し上げますと、土地三兆五千五百八十二億三千七百十八万円余、立木竹六千二百八十八億八千九百三万円余、建物一兆三千四百四十億九千六百二十六万円余、工作物九千五百二十七億五千六百二十八万円余、機械器具九億八千五百六十五万円余、船舶二千百九十三億二千五百五十九万円余、航空機千七百八十九億千八百二十九万円余、地上権等六億九千二百七万円余、特許権等十七億六千二百六十万円余、政府出資等三兆九千三十六億八千二百八万円余、合計十兆七千八百九十三億四千五百六万円余となっております。  次に、国有財産増減内容につきまして、その概要を申し上げます。  まず、昭和四十七年度中における増加額を申し上げますと、前述のとおりその総額は一兆五千三百六十四億七千六十二万円余であります。この内訳を申し上げますと、第一に、国と国以外の者との間の異動によって増加した財産は一兆五百三十三億千三十八万円余でありまして、このうち購入、新営工事、政府出資等歳出を伴うものは八千八百十九億二百三万円余、現物出資交換寄付等歳出を伴わないものは千七百十四億八百二十五万円余となっております。  第二に、国の内部における異動によって増加した財産は四千八百三十一億六千三十三万円余でありまして、このうち各省各庁または各省各庁の部局等の間における財産移管等調整上の増加は四千四百四十三億二千九百六十九万円余、土地実測立木竹の実査等整理上の増加は三百八十八億三千六十三万円余となっております。  次に、減少額について申し上げますと、その総額は五千八百二十九億千二百万円余であります。この内訳を申し上げますと、第一に、国と国以外の者との間の異動によって減少した財産は千百八十二億三千百七十五万円余でありまして、このうち売り払い、出資金回収等歳入を伴うものは四百三十三億二千九百八十七万円余、交換譲与等歳入を伴わないものは七百四十九億百八十七万円余となっております。  第二に、国の内部における異動によって減少した財産は四千六百四十六億八千二十四万円余でありまして、このうち各省各庁または各省各庁の部局等の間における財産移管等調整上の減少は四千三百三十二億七千四百十万円余、土地実測立木竹の実査等整理上の減少は三百十四億六百十四万円余となっております。  以上が昭和四十七年度国有財産増減及び現在額総計算書概要であります。  次に、昭和四十七年度国有財産無償貸付状況計算書概要について申し上げます。  昭和四十七年度中に増加しました無償貸し付け財産総額は百七十六億百三十万円余であり、また同年度中に減少しました無償貸し付け財産総額は九十七億七千三百五十七万円余でありまして、差し引き七十八億二千七百七十二万円余の純増加となっております。これを昭和四十六年度末現在額千七百四十一億千四百七十七万円余に加算いたしますと千八百十九億四千二百五十万円余となり、これが昭和四十七年度未現在において無償貸し付けをしている国有財産総額であります。  この増減の主なるものを申し上げますと、増加したものは公園の用に供するもの百七十二億千八百九十九万円余、生活困窮者収容施設の用に供するもの一億三千六百十五万円余等であります。  次に減少したものは、公園の用に供するもの九十三億五千二十万円余、生活困窮者収容施設の用に供するもの一億九千八百二十六万円余等であります。  以上が昭和四十七年度国有財産無償貸し付け状況計算書概要であります。  なお、これらの国有財産の各総計算書には、それぞれ説明書が添付してありますので、それによって細部を御了承願いたいと存じます。  何とぞ御審議のほどをお願い申し上げます。     —————————————
  7. 前川旦

    委員長前川旦君) 次に、昭和四十七年度決算中、日本専売公社決算につきまして概要説明を聴取いたします。大平大蔵大臣
  8. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 昭和四十七年度日本専売公社収入支出決算につきまして、その概要を御説明いたします。  まず、事業概要について申し上げます。  たばこ事業におきましては、製造たばこ販売は二千五百五十三億本余、金額にして九千八百五億二千六百四十一万円余であり、当初の予定に比較いたしますと七十七億本余、金額にして二百六十八億六千四百八十一万円余の増加となっております。  また葉たばこの購入は十九万九千トン余、金額にして千三百八十八億三千八百四十九万円余であり、当初の予定に比較いたしますと二万一千トン余、金額にして百二十億三千九百十万円余の減少となっております。  塩事業におきましては、塩の販売は、七百七十四万トン余、金額にして四百二十一億二千四百五十二万円余であり、当初の予定に比較いたしますと百四十九万トン余、金額にして五十三億千八百八十六万円余の減少となっております。  また、塩の購入は、国内塩八十万トン余、輸入塩六百九十二万トン余、金額にして合計二百九十三億五千二百二十万円余であり、当初の予定に比較いたしますと百五十四万トン余、金額にして八十億百九十四万円余の減少となっております。  次に決算内容について申し述べます。  まず収入支出につきまして御説明いたします。  昭和四十七年度における収入済み額は一兆二百六十七億七千四百三万円余であり、収入予算額一兆六十億千三百八十四万円余に比較いたしますと二百七億六千十八万円余の増加となっております。  また支出予算現額は七千二百二億九千二百五十六万円余でありまして、そのうち支出済み額は六千八百七十一億四千二百四十一万円余、翌年度に繰り越した額は九十三億千百四十二万円余でありまして、差し引き不用額は二百三十八億三千八百七十一万円余となっております。  次に、損益計算について御説明いたします。  総収益一兆三百二十三億八千四百三十七万円余から総損失六千六百二十八億百六十七万円余を控除した純利益は三千六百九十五億八千二百七十万円余であります。このうち日本専売公社法第四十三条の十三第三項の規定により積み立てる利益積み立て金三百二十八億六千四百二十五万円余を控除した専売納付金は三千三百六十七億千八百四十四万円であり、当初の予定額三千百四十億千七百三十七万円余に比較いたしますと二百二十七億百六万円余の増加となっております。  以上が昭和四十七年度日本専売公社決算概要であります。  何とぞ御審議のほどお願い申し上げます。     —————————————
  9. 前川旦

    委員長前川旦君) 次に、昭和四十七年度決算中、日本国有鉄道決算につきまして概要説明を聴取いたします。徳永運輸大臣
  10. 徳永正利

    国務大臣徳永正利君) 昭和四十七年度日本国有鉄道決算書国会提出いたしましたので、その大要を御説明申し上げます。  昭和四十七年度における日本国有鉄道運輸成績は、対前年度比、旅客輸送人員は一%増、旅客輸送人キロは四%増、貨物輸送トン数は六%減、貨物輸送トンキロは四%減となり、収入においては、旅客収入において対前年度七%増であったのに反し、貨物収入においては、対前年度四%減少いたしました。  以下、収入支出内容勘定別に御説明申し上げます。  まず、損益勘定におきましては、収入済み額は一兆四千百三十億四千八百五十八万円余、支出済み額は一兆三千九百一億一千二百八十六万円余でありまして、収入支出を超過すること二百二十九億三千五百七十二万円余でありますが、これは予算上の区分による収支決算の結果でありまして、いわゆる損益計算上では昭和四十七年純損失は三千四百十五億四百三十四万円余となっております。  この決算額予算と比較いたしますと、収入予算額一兆四千八十三億六千百二十一万円に対しまして四十六億八千七百三十七万円余の増収となっております。これは運輸収入四十五億四百八十三万円余の増加雑収入百二十六億八千二百五十四万円余の増加に対し、助成金受け入れで百二十五億円余の減少によるものであります。  他方支出予算現額一兆四千六百六十三億六千三百八万円余に対しまして、支出済み額は七百六十二億五千二十二万円余下回っておりますが、そのうち六百二十三億七千八百九十五万円余は翌年度への繰り越し額であり、残額百三十八億七千百二十六万円余は不用額となっております。  次に、資本勘定におきましては、収入済み額は一兆四百四十六億二千百十三万円余、支出済み額は一兆四百二十五億九千二百七十六万円余であります。  この決算額予算と比較いたしますと、収入予算額一兆五百四十八億円に対しまして百一億七千八百八十六万円余の減収となっております。これは資産充当三百六十九億四千三百七十万円余の増加に対し鉄道債券及び借り入れ金で四百七十一億二千二百五十六万円余の減少によるものであります。  他方支出予算現額一兆九百二十四億七千二百七十四万円余に対しまして四百九十八億七千九百九十八万円余下回っておりますが、そのうち四百八十八億七千二百六十五万円余は翌年度への繰り越し額であり、残額十億七百三十二万円余は不用額となっております。  次に、工事勘定におきましては、収入済み額は五千八百三十一億四千五百六万円余、支出済み額は五千五百九十三億二千六百六十二万円余であります。  この決算額予算と比較いたしますと、収入予算額五千九百四十五億九千二百四十六万円余に対しまして百十四億四千七百三十九万円余の減収となっております。これは資本勘定からの受け入れが少なかったことによるものであります。  他方支出予算現額六千九百五十六億四千六百十五万円余に対しまして一千三百六十三億一千九百五十二万円余下回っておりますが、そのうち一千二百九十二億八千二百三十三万円余は翌年度への繰り越し額であり、残額七十億三千七百十九万円余は不用額となっております。  この工事勘定内容に関連して主要施策の実績について申し上げますと、将来の総合交通体系に占める役割りに対応する輸送力の増強、業務運営の能率化及び定全の確保をはかるため、昭和四十七年度におきましては、通勤輸送七百五十七億四千九十四万円余、新幹線二千四百八十六億五千二百四十三万円余、幹線輸送力増強一千二百九億四千七百六十五万円余、合理化・近代化等一千百三十九億八千五百五十八万円余、合計五千五百九十三億二千六百六十二万円余を投資いたしました。  最後に、昭和四十七年度予算の執行につきまして、会計検査院から不当事項として指摘を受けた点がありましたことは、まことに遺憾にたえないところでありまして、今後さらに予算の効率的運用に一段の努力をいたすよう指導監督してまいりたいと考えております。  以上、昭和四十七年度日本国有鉄道決算につきましてその概要を御説明申し上げましたが、詳細につきましては、さらに御質問のつど御説明申し上げたいと存じます。  何とぞ御審議のほどお願いいたします。
  11. 前川旦

    委員長前川旦君) 次に、昭和四十七年度決算中、日本電信電話公社決算につきまして概要説明を聴取いたします。原田郵政大臣。
  12. 原田憲

    国務大臣(原田憲君) 昭和四十七年度日本電信電話公社決算書類を会計検査院検査報告とともに国会提出いたしましたので、その概要を御説明申し上げます。  昭和四十七年度における日本電信電話公社決算は、同公社が経営の合理化をはかり、経費の節減に努力したことなどにより、前年度の赤字決算から黒字決算に転ずることができました。損益計算上の総収益は電話収入の伸び悩み等のこともありましたが、一兆四千六百二十四億五千六百六十七万余円となり、これに対する総損失は給与その他諸費、利子及び債務取り扱い諸費等の増大もありましたが一兆四千五百二十九億九千五百十三万余円にとどまり、差し引き九十四億六千百五十三万余円の利益を計上しております。  また、建設計画につきましては、一般加入電話増設三百八万三千加入をはじめとしてデータ通信及びその他の主要工程はおおむね予定どおり実施いたしております。  以下、決算内容勘定別に、御説明申し上げます。  まず、損益勘定におきましては、収入済み額は一兆四千三百四十五億四千百六十七万余円、支出済み額は一兆四千三百十億三千二百六十九万余円でありまして、収入支出を超過すること三十五億八百九十七万余円となっております。  この決算額予算と比較いたしますと、収入済み額予算額一兆四千四百五十八億四千六百七十七万余円に対し、百十三億五百十万余円下回っておりますが、これは電信収入及び雑収入を合わせて三十三億二百七十三万余円の増収があったのに対し、電話収入及び専用収入を合わせ百四十六億七百八十三万余円の減収があったことによるものであります。  他方支出済み額支出予算現額一兆四千四百六十九億三千九百五十四万円に対し百五十九億六百八十四万余円下回っておりますが、この差額は、十億四千九百五十二万余円を翌年度繰り越し額とし、残りの百四十八億五千七百三十二万余円を不用額としております。  次に、資本勘定におきましては、収入済み額は一兆二千九百九十七億二千二百三十六万余円、支出済み額は一兆二千七百十二億三千八百十五万余円でありまして、収入支出を超過すること二百八十四億八千四百二十一万余円となっております。  この決算額予算と比較いたしますと、収入済み額予算額一兆二千四百七億五百九十四万余円に対し、五百九十億一千六百四十二万余円上回っておりますが、これは、それぞれ予算に対し、損益勘定より受け入れが三十五億五百十五万余円増、資産充当が百六十億一千六百八十三万余円増、設備料が百六億五千四百七十八万余円増、電信電話債券が二百八十八億三千九百六十四万余円増となったことによるものであります。  他方支出済み額は、支出予算現額一兆二千七百十八億四千四百七十万余円に対し、六億六百五十五万余円下回っておりますが、この差額は、四億百二十九万余円を翌年度繰り越し額とし、残りの二億五百二十五万余円を不用額としております。  次に、建設勘定におきましては、収入済み額は一兆八百五十八億二千七百九万余円、支出済み額は一兆七百五億三百二十七万余円でありまして、収入支出を超過すること百五十三億二千三百八十一万余円となっております。  この決算額予算と比較いたしますと、収入済み額予算額一兆五百五十億円に対し、三百八億二千七百九万余円上回っておりますが、これは資本勘定により受け入れ増加したものであります。他方支出済み額支出予算現額一兆一千二百五十一億一千二百六十三万余円に対し五百四十六億九百三十五万余円下回っておりますが、この差額は全額を翌年度繰り越し額としております。  なお、昭和四十七年度日本電信電話公社の電信電話拡充第四次五カ年計画の最終年度にあたりまして、電話の積滞解消に重点を置くとともにデータ通信等をも含め施設の整備拡充をはかりましたが、一般加入電話増設が三百一万五千加入の予定に対し三百八万三千加入、公衆電話増設が四万一千個の予定に対し三万九千個を実施するなど、おおむね予定どおり進捗し、その他電話局建設、市外電話回線増設、データ通信施設増設等の工程も、ほぼ予定どおり実施いたしました。  最後に、昭和四十七年度予算執行につきましては会計検査院から改善事項の一件の指摘を受けましたが、これにつきましては、できるだけ早く改善をはかるとともに、今後とも業務の適正な実施につとめるよう日本電信電話公社を指導監督してまいりたいと考えております。  以上をもちまして、私の説明を終わります。     —————————————
  13. 前川旦

    委員長前川旦君) 次に、会計検査院より昭和四十七年度決算検査報告並びに昭和四十七年度国有財産検査報告に関する概要説明を聴取いたします。白石会計検査院長
  14. 白石正雄

    会計検査院長(白石正雄君) まず、昭和四十七年度決算検査報告に関する概要について御説明申し上げます。  昭和四十七年度歳入歳出決算は、四十八年十月十三日内閣から送付を受け、その検査を終えて、昭和四十七年度決算検査報告とともに四十八年十二月十日内閣に回付いたしました。  昭和四十七年度一般会計決算額歳入十二兆七千九百三十八億七千三百六万余円、歳出十一兆九千三百二十一億七千二百八万余円でありまして、前年度に比べますと、歳入において二兆八千二百三十億千三百八十万余円、歳出において二兆三千七百十億四千八十七万余円の増加になっており、各特別会計決算額合計額は歳入二十二兆五千六百七十二億五千四百九十七万余円、歳出十九兆三千六百九十七億二千七百二十六万余円でありまして、前年度に比べますと、歳入において二兆九千三百九十八億六千八百三万余円、歳出において二兆五千六十一億三千四百万余円の増加になっております。  なお、国税収納金整理資金収納済み額十兆三百二十六億六千三百三十五万余円、歳入組み入れ額九兆七千七百七十億七千二百五十万余円であります。  政府関係機関昭和四十七年度決算額の総計は収入八兆五千九百七十九億九千四百二万余円、支出八兆千三十二億四千七百六十五万余円でありまして、前年度に比べますと、収入において一兆四千四百五十六億八千九百三十七万余円、支出において一兆三千二百七十九億二千六百四十万余円の増加になっております。  検査の結果について申し上げます。  昭和四十七年度歳入歳出等に関し、国及び政府関係機関等から提出された計算書二十三万余冊及び証拠書類六千二百八万余枚につきまして書面検査を行ない、また、三千余の局所等につきまして四万余人日をもって実地検査を行ないました。  このようにして検査いたしました結果につき、その概要説明いたします。  まず、不当事項について申し上げます。  不当事項として検査報告に掲記いたしましたものは、合計百七十六件でありますが、これを収入支出等の別に分類し、態様別の金額を概計いたしますと、次のとおりであります。すなわち、収入に関するものとしては租税収入の徴収額が不足していたものなどが十億三千五百万円、保険料収入の徴収額が不足していたものが四千八百万円、支出に関するものとしては工事の施行及び物品の調達の計画が適切でなかったため、不経済になったものが千二百万円、工事費及び物品購入費の積算が適切でなかったため、契約額が割り高になったものが二千五百万円、保険金等の支給が適切でなかったものが五千七百万円、補助事業の実施及び経理が適切でなかったものが二億三千八百万円であり、以上のほか、物品の管理が適切でなかったため損害を生じたものが五百万円、職員の不正行為による損害を生じたものが二千百万円ありまして、これらの合計額は、十四億四千五百万円になっております。これを前年度の十五億四千七百万円に比べますと、一億百万円の減少になっております。  これらの不当事項は、租税、工事、物件、保険、補助金、不正行為の項目に分けて検査報告に記述してありますが、特に、工事及び物件並びに補助金に関するものにつきまして説明いたします。  工事につきましては、不経済になったと認められるなどの事例を毎年度指摘しておりますが、四十七年度におきましても、農林省及び日本国有鉄道におきましても、工事の施行に際し計画が適切でなかったため不経済な結果になったと認められるもの、工事費の積算が適切でなかったためひいては契約額が割り高になったと認められるものが見受けられ、また、物件につきましても防衛庁及び文部省におきまして、物品の調達に際し仕様が適切でなかったため不経済な結果になったと認められるもの、物品購入費の積算が適切でなかったためひいては契約額が割り高になったと認められるもの、物品の管理が適切でなかったため損害を生じたものが見受けられます。  補助金につきましては、その経理が不当と認められる事例を毎年度多数指摘して注意を促してきたところでありますが、四十七年度におきましても、農林省、建設省などの公共事業関係のものにつきまして、工事の施工が不良になっているものなどがまだ少なからず見受けられますし、また、その他の補助金につきましても、補助の目的に沿わない結果になっているものなどが見受けられます。  次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について説明いたします。  四十七年十二月から四十八年十一月までの間におきまして、会計検査院法第三十四条の規定により意見を表示し是正改善の処置を要求いたしましたものは十一件であります。  この内訳は、文部省の病理解剖にかかわる経理に関するもの、運輸省のしゅんせつ工事の予定価格の積算に関するもの、日本国有鉄道の軌道保守用機械の活用及び今後の導入に関するもの、しゅん功図及び保守台帳の作成に関するもの、日本電信電話公社のRDワイヤの撤去費の積算に関するもの、日本住宅公団の団地住宅の給排水等屋内衛生設備工事の予定価格の積算に関するもの、道路舗装工事の予定価格の積算に関するもの、日本道路公団の高速道路のアスファルト舗装工事の予定価格の積算に関するもの、首都高速道路公団の高架橋工事等における鋼製支保工費の積算に関するもの、日本鉄道建設公団のしゅん功図の作成に関するもの、動力炉・核燃料開発事業団の動力炉等の建設事業にかかわる建築、土木工事の予定価格の積算に関するものであります。  以上をもって概要説明を終わります。会計検査院といたしましては、機会あるごとに関係各省庁などに対して、適正な会計経理の執行について努力を求めてまいりましたが、なお、ただいま申し述べましたような事例が見受けられますので、関係各省庁などにおいてもさらに特段の努力を払うよう、望んでいる次第であります。  次に、昭和四十七年度国有財産検査報告に関する概要につきまして御説明をいたします。  昭和四十七年度国有財産増減及び現在額総計算書及び昭和四十七年度国有財産無償貸付状況計算書は、四十八年十月二十三日内閣から送付を受け、その検査を終えて、十二月十日内閣に回付いたしました。  四十六年度末の国有財産現在額は九兆八千三百五十七億八千六百万余円でありましたが、四十七年度中の増が一兆五千三百六十四億七千万余円同年中の減が五千八百二十九億千二百万余円ありましたので、差し引き四十七年度末の現在額は十兆七千八百九十三億四千五百万余円になり、前年度末に比べますと九千五百三十五億五千八百万余円の増加になっております。  次に、国有財産無償貸し付け状況について申し上げますと、四十六年度末に千七百四十一億千四百万余円でありますが、四十七年度中の増が百七十六億百万余円同年度中の減が九十七億七千三百万余円ありましたので、差し引き七十八億二千七百万余円の増加をみまして、四十七年度末の無償貸し付け財産総額は千八百十九億四千二百万余円になっております。  検査の結果、昭和四十七年度国有財産増減及び現在総額計算書に掲載されている国有財産に関して不当と認めた事項あるいは意見を表示しまたは処置を要求した事項はございません。
  15. 前川旦

    委員長前川旦君) 以上で昭和四十七年度決算外二件に関する概要説明の聴取を終わります。  速記をとめてください。   〔速記中止〕
  16. 前川旦

    委員長前川旦君) 速記を起こして。
  17. 前川旦

    委員長前川旦君) それではこれより総括質疑第一回を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  18. 小谷守

    ○小谷守君 大蔵大臣から四十七年度決算概要の御説明をいただいたわけでありますが、四十七年度という会計年度は、考えてみますと、今日国民を悩ましておる悪性インフレ、物価高、病気にたとえますとこういう重症に至ったきざしがもう四十七年度中に起きておる、今日の国民の不幸の種は多く四十七年度中にまかれておったのではないか、こういう気持ちがしてなりません。大平大蔵大臣は、当時は所管の大臣ではなかったわけでありまして、四十七年度の前半は水田さん、後半は愛知さん、こういう御担当であったと記憶いたしますが、役目柄大平大蔵大臣にお伺いする以外はありませんが、四十七年度の財政運用を振り返って、どのような御反省をお持ちになっておるか、こういう点をひとつ最初にお伺いしたいと思います。
  19. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) わが国が戦後営々として経済の復興に努力してまいりまして、そろそろわが国としても、いわば生産中心の経済から生活中心に、言うところの福祉経済に移行すべしという国民的な要望も非常に強かったし、また事実その方向で経済政策、財政政策を運営できる条件も漸次整ってまいりました、ちょうどそういう転換期であったように私は思うわけでございます。したがって四十七年度の財政経済の運営にあたりまして、御案内のように社会資本の整備、社会保障の充実によりまして、国民福祉経済に転換していく姿勢を明らかにいたした年であったと思うのでございます。一方、当時日本の国際収支が非常な黒字を記録してまいりまして、その中核になっておりまする日米貿易収支が大きく日本の黒字に傾斜してまいりまして、アメリカからもこのインバランスを是正してもらいたいという要請が強かったことは御案内のとおりでございます。したがって、そういう要請にもこたえるために、いわば経済の国際的な均衡をはかっていく上におきましても、国内の政策の転換ということを考える国際的な環境にあったように思うのでございまして、政府として当時そういう選択をいたしたことは必ずしも間違いではなかったと思います。しかしながら、ちょうど四十七年度の前の四十六年の八月にいわゆるニクソンショックを受けたわけでございまして、わが国はもともと国際経済の消長には非常に敏感な国柄でございまするし、当時それでありながら過去二十何年間一ドル三百六十円というレートが経済全体にビルトインされておりましたときにこのショックに見舞われたわけでございますから、この状況に大きな衝撃を受けたことは争えないことと御理解いただけると思うのでございます。したがって、ドル安、円高ということがどこまでくるのかと、円高に大きく傾斜するということになりますと国内の不況が懸念されるということでございましたので、政府として当時そういう福祉経済への選択、国民の強い要望に沿いまして国際収支の黒字幅を減少させて福祉経済への転換をはかっていこうというようなことをにわかに変えてまいるということにちゅうちょを感じたことも理解できないことではないのであります。ただ小谷さんも御指摘のとおり、すでに国際的な大きな変化が起こっておったわけでございますので、四十七年度におきましていち早くそれだけの身がまえをすべきでなかったかという御指摘は私も十分まあ御指摘として受け取りたいと思いまするし、事実四十八年度に入って本格的な引き締めに移った時期がややおそきに失したんじゃないかという御指摘は、私はある意味において正鵠を得ておる御批判であろうと思うのであります。日本銀行当局にしてもすでに四十七年から相当窓口で規制を始めておりましたけれども、一連の総合的な引き締め政策は四十八年度に入ってから本格化いたしたわけでございまして、その間の時期的なズレという点につきましては私どもも反省していないわけではないのであります。ただ、その当時冒頭に申し上げましたような内外の状況でありましたということにつきましてはそれなりに御理解願いたいものだと思います。
  20. 小谷守

    ○小谷守君 私は、四十七年度の財政運用の誤りについて具体的に三つほどのことを指摘して大蔵大臣の御所見を伺いたいと思います。  その第一は、言い古されておりますけれども、やはり田中総理の列島改造論、これがインフレマインドの引き金になったと。二つ目は、四十七年度の見境もない超大型補正予算、これが災いの大きな原因になっておる。三つ目は、累次にわたる公定歩合の引き下げであります。四十六年十二月、四十七年六月、各五%の引き下げをやった。引き締めるべきときにこれをゆるめて、ずるずると放漫な金融政策を続けたのではないか。このことがばく大な過剰流動性というものを生んだ。そうしてこれによって企業が土地や商品の買いあさり、買い占めを始めた。これが狂乱物価といわれるインフレを招いた大きな原因ではないか。  ちなみに物価状況でありますが、四十七年の一月から七月までは大体前月比、日銀の調査によりますと、卸売り物価で〇・一%ないし〇・二%の微騰の状況であったんです。田中内閣が誕生した七月を境にして、八月は〇・八%、十二月に入りますと一・六%と、急ピッチで上昇してきた。これはいま申し上げました三つの原因と符節を合わせるものである、このように思われてなりませんが、この点については大蔵大臣の御所見はいかがでございますか。
  21. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほども申し上げましたとおり、わが国といたしまして、戦後まあわれわれが鋭意追求してまいりました経済の成長、拡大、生産中心の経済政策というようなものをもうここらあたりで大きく転換すべき時期が来たと、また転換できるのではないかというように考えて四十七年度予算が組まれたことはいま申し上げたとおりでございまして、その考え方自体は私は間違いではなかったと思うのでございます。しかし、その後の国内外の状況の変化に対する対応が十分でなかった、あるいは時期を失した、そういう御批判は、いまいただいておるわけでございますが、それは率直に御批判として受けとめてわれわれは反省いたしておるわけでございます。  で、いまあげましたことを、田中さんの列島改造論——私はまあ一つの考え方をお示しになったことと思うのでありまして、日本列島に改造の必要がないとだれも考えていないと思うのでございますが、問題は、それはどういう時期にどういう条件、で、どういう条件を整えた上でどういうテンポで実行してまいるかという問題こそが問題の本質であって、田中さんが列島改造を提唱されたこと自体は別に罪悪ではないと思うのであります。しかし、時あたかもたいへん社会的な心理状況がデリケートなときでございまして、そういうことを最高責任者が提唱いたしますと、大きな波紋を描くということはあり得ることでございますが、事柄自体は冷静に国民においてもお考えいただき、吟味に値する提唱であったのではないかと考えておるわけでございます。  公定歩合の数次にわたる引き下げというようなことは、先ほども、大きなニクソンショックのあとを受けて、国内で大きく円高に傾斜するというようなことで大きな混乱が起こる、あるいは不況が招来されるというようなことになった場合の懸念もいろいろ考えて、その当時としては政府当局がいろいろ考えたことと思うのでございますが、いまになって判断すると仰せのような御批判が成り立たないわけでは私はないと思うのでございますが、その当時政府としては精一ぱいおやりになったことと考えておるわけでございます。
  22. 小谷守

    ○小谷守君 その当時はいいと思ってやったけれども、あとから振り返ってみると悪かったという御意向のように伺えますが、そういう歯切れの悪いことでなしに、人間のやることですから間違いもあると思うんです。いま国民の政府不信は——まずかったことは率直に国民に向かってわびて、そして新しく発足すると、こういうことが必要なんじゃないでしょうか。きょうは総括の第一日ですから、また大蔵省の審査を近くやりますからその際に詳しくこういう問題をめぐって議論をいたしたいと思います。  そこで、大蔵大臣に重ねて伺いますが、前任者の福田蔵相は、昨年末以来総需要抑制ということを、このインフレ鎮静の旗じるしとされてまいりました。大平大蔵大臣も御就任早々これを継承するということでありましたが、私はどうも総需要抑制というのは決して善政であると思っておりません。やむを得ない——やむを得ない措置であると、このように理解をいたしておりますが、それにいたしましても、これを機械的に続けることについてはいろんな副作用が起きておるのではないでございましょうか。前福田大蔵大臣はたしか通常国会終末の大蔵委員会において、大体この秋ぐらいには中小企業に対する金融の緩和、さらにはまた庶民の一番要求しておる住宅ローン、これに対しては緩和をしたいと、こういう御趣旨の発言をされておるように記憶をしておりますが、いま中小企業の状況はたいへんだと思います。これはまた詳しくお伺いしますが、概括的に総需要抑制政策を堅持する基調に立っていま申し上げましたような点についてのお考えはいかがであるか、簡略にひとつお示しを願いたいと思います。
  23. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まあ仰せのように総需要抑制政策というのはやむを得ないでとった措置でございまして、こういう状況であるからやむを得ずこういう政策をとるということでございまして、本来ならば経済のことでございますから、価格のメカニズムが円滑にこういう細工をしなくて働くということが望ましいことは申すまでもないことでございますが、今日の経済の状況を診断した場合に依然として需要というものにまだ根強いものがございまするし、物価の観点から申しましてもコストプッシュの傾向が強うございますわけでございますから、せっかくいま進めておりまする総需要抑制政策というものはそれを堅持していくという姿勢は、私は変えちゃいけないと考えております。ただし、このワク組みの中で各政策当局なり金融機関なりがそれぞれ事態に応じて機動的に弾力的に措置できる任組みになっておりますので、英知を働かしてこのワク内において事態に対処していただくということが望ましいと考えております。  いまこの政策のワク組みをそれではいつまで堅持するかということでございますが、いませっかく春から夏にかけましてさしも荒れ狂いました物価の状況、卸売り、小売りとも鎮静化のきざしを見せてきておりまするし、ヨーロッパ、アメリカ等の先進国に比べまして日本の鎮静化の足取りはより健全な足取りをとってきておるわけでございますから、いまわれわれの頭にありますことは、これは精一ぱい続けていきたいということがいまわれわれの考えにあることでございまして、この総需要抑制政策をいつごろになったらどうしようかなんというまだ余裕は持っていないのでございます。
  24. 小谷守

    ○小谷守君 経済企画庁長官、先般企画庁から経済白書が発表されました。これに対してはいろんな評価が出ておるようでありますが、今回の白書は二十八回目の白書である。日本経済の歩みの重要な転機に際してそれぞれユニークな発想を述べてまいったのでありますが、われわれもこれを大きく参考にしてまいりましたが、しかし今度の経済白書に限って言うならばまことにむなしい内容ではないか、その理由は何かという点でありますが、第一は、何といっても政府の政策に対する評価や反省が足りないことである。むしろ政府の経済政策に対する政治責任をぼかしているかのごとき印象はぬぐえません。もっと客観的なものの見方、考え方を貫くべきではなかったか。特に現在の狂乱物価、インフレ要因の分析などについて国民の納得のいくような分析、評価をすべきものではなかったか、こう思われてなりませんが、長官の御感想はいかがでありますか。  さらに、一つ、二つの問題を指摘しますというと、この経済白書の中でインフレ弱者に対するところの分析がきわめてあいまいであると、この点はいかがでございますか。  さらに、総需要抑制政策について中期的と申しますか、長期的な考え方の基調に立っておられるように拝見をいたします。総需要抑制策を掲げた前福田大蔵大臣は当時盛んに短期決戦ということを、短期的な措置であるということを強調されたのでありますが、その辺の食い違いはないか。  さらに、経済企画庁としては公共料金の抑制政策というものについて熱意がないのではないか。公共料金はずるずるずるずる上げていくということではせっかくの総需要抑制政策もしり抜けではないか、こういう点について長官の御所見を伺いたいと思います。
  25. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 先般経済白書を発表いたしましたが、小谷さんにお読みいただきまして、いまお述べになられましたような観点もさることながら、広い観点から御批判をいただきますことは、私どももああいうものを出しましたその目的が幾ぶん達成せられたものだと私は満足をいたすわけであります。しかし、政府の出すものでありますから、まあ小谷さんのお立ちになる見地から、政府のやったことはこういう点が全部悪かったということの見地に立つこともできませんけれども、私どもは、経済企画庁というものはまた政府の中でも特別な地位を持っておるものでございますので、公正に、淡々とした記述の中にも、小谷さんから御批判をいただきましたような点にも実は触れておるつもりでございます。  御指摘がございました第一点の、今日の物価高、あるいはまたいわゆるインフレというようなものの事態に立ち至ったことについての政府の施策のおくれと申しますか、あるいは政府の責任の所在とかいうようなものについて、私どもは全然触れていないということでは全くございませんので、最近における、まあ私ども主としてエコノミストの立場から専門的なことばを使いますと、供給の成長率と需要の成長率が近年かなり離れてきておる。その間に、経済構造がかなり変わってきておりつつあることに対する政府の施策が総括的に言えば立ちおくれておりましたことにもそのまま淡々と実は触れておるものでございます。ただ、今回の記述が四十八年から四十九年への白書でございますために、主として四十八年度にこれらの物価高等に対応してとりました金融上の施策でありますとか、あるいは財政上の施策とかいうものについて回顧をして述べておるところが多いものでございますので、これらの物価高に対して政府が、たとえば日本銀行の公定歩合の引き上げを昨年の四月以来五回にわたりましてやった経緯とか、あるいはそれに先立って昨年の一月から預金準備率の改定に着手をいたしましたこととか、あるいはまた公共事業予算執行につきましてその契約率を押えてまいってきたというようなことがいろいろ述べてございますので、四十八年度の記述を中心といたしますといかにも弁解がましいことが書いてあることもまた私は否定できないと思います。いずれにいたしましても、最近の日本経済というものが、両三年前までの経済成長をささえた構造とはなはだしく違ってまいってきておることに立脚をいたしまして、私どもは今後もそれに対応する有効なる政策をとらなければならないということは十分心得まして、今後の経済施策につきましても、副題に述べてありますように、いままでのような成長経済を超えた、違った見地からの経済運営を進めるべきであるということを強調いたしておりますこともお読みくださったところと存じます。  それから第二番目のお尋ねでございましたが、最近の物価高、いわゆるインフレなるものは、経済的弱者と申しますか、これはことば、私はいいことばとは思いませんが、いわゆる低所得者でありますとか、あるいは物価高に追いつくような旺盛な稼働力を持って所得をふやしていくことができないような一部の方々、たとえば母子家庭でありますとか、あるいは老人家庭でありますとか、身体障害者等に対しましては一番これが大きな影響を与えますし、またその辺が私は社会的な不公正をつくり出すものであるということにも着目をいたしまして、特に一章を設けましてその点のことにつきましてこれも淡々と述べてはございます。厚生省の白書のようにそれにはなはだ深く立ち入った記述はいたしておりませんけれども、私がいま申し述べましたようなことにつきまして、世の人々の認識を深めていただけるようなそういう章も設けてございます。これはお読みいただいたと思います。  第三番目には、総需要の抑制でございますが、私どもはこの白書に述べておるばかりではなしに、他の政府部内の閣僚の方々ともお打ち合わせをいたしてまいりましたが、また現在そう思いますけれども、総需要の抑制というものは私はやはり物価問題が落ちつくまで、あるしかるべき期間はこの施策のたてまえというものは全体としてはくずすべきではないと考えるものであります。前の大蔵大臣、福田さんが言われました短期決戦ということは、総需要なり金融引き締めを短期でやめるということでは必ずしもありませんで、物価対策というものが最重要の政治課題であるので、まず多少ドラスティックな政策をとっても、物価の鎮静を短期に最も優先して片づけると、こういう意味のことを述べられておったはずでございます。したがって物価が鎮静状態になれば、また御批判が先ほど来ございますように、昭和四十六年から七年にかけての国内の金融政策、財政政策と同じような状態に戻してもいいんだということを前の大蔵大臣は言っておったものではございません。私は、新しい大蔵大臣とも、前の大蔵大臣とも、通じて、ともに閣僚として現在の地位におりましたので、福田前大蔵大臣とも、またいまの大蔵大臣とも打ち合わせをいたしながら、経済企画庁といたしまして政策の調整もいたしておるものでございますが、これは福田さんも、また大平さんも、また私どもも、また大平大蔵大臣からただいま御答弁がございましたが、総需要抑制政策なり、金融政策なりということにつきましては、そのワク組み、仕組みとしては、やはり中期的と言っても、三年も五年もということではございません。少なくとも五十一年度くらいから全く新しい安定した基礎のもとに、また日本の政策が前向きで進められるようになるまでの間は、やはり財政政策とか金融政策とかいうものも含めて、総需要対策というもののワク組みは無条件ではずしてしまうべきではないと私どもは考えております。しかしながら、これも御指摘がございましたように、これは私どもの一番心配しなければならないところでございますが、総需要抑制、金融引き締めをいつまでも同じ調子で続けてまいりますときには、倒産とかあるいはエンプロイメントの問題もこれは積極面でも消極面でも起こってまいりますので、総需要抑制のワク組みの中の適応の態様といたしましては、いろいろ臨機の施策を講じてまいるということに打ち合わせをいたしておりますことももちろんでございます。  最後に、公共料金の対策についてのお尋ねがございましたが、これはこれまでの間、私が就任をいたしてまいりましたころからとってまいりました公共料金についての施策と同じ施策をとってまいるつもりであります。つまり、これはできるだけ、公共料金というものは国民生活のために欠くことのできない手段の対価でございますから、でき得る限りそれの料金の改定につきましては抑制的な想度を続けてまいるのが私はいいと思います。しかし、それも中身におきましても、あるいは抑制の時期におきましても、ある限度を越えるということになりますと、その事業そのものに対する資源の配分、——これは物的あるいは金融的、人的資源の配分というものを申すまでもなく全く破壊をすることにもなるわけでございますので、その辺を勘案しながら、でき得る限りの抑制的な措置をとる。しかし、そのぎりぎりの場合にはぎりぎりのこれは価格の改定も認めなければならない。−まあ隣に大蔵大臣がおられますから、それはでき得ることならば財政がこれに介入して、財政的措置をもって公共料金を押えるということもこれは一つの理論としては考えられることでございましょうけれども、一方、財政の立場ということを考えてまいりますときに非常に広い範囲の公共料金について財政、言いかえますならば国民の税負担をもってこれをささえてまいるということにも非常に大きな制約がございますので、その辺をも考えながら公共料金の施策というものを現実的に抑制的に進めてまいる、こういう考え方でおるわけでございます。
  26. 小谷守

    ○小谷守君 また各省審査のときに詳しくお尋ねをしたいと思います。  きょうは総需要抑制政策の中で起きておる矛盾、二つばかりあげてその解明を求めたいと思います。通産省、中小企業庁おいでになっていますか。  中小企業の金繰りたいへんだと思います。特に零細下請企業は困り抜いておる。零細下請企業の困惑の状態は金融引き締めのあおりで三月には一千件の倒産があった。その後も九百件台から下らぬと、こういう状況のようでありますが、下請零細企業の資金繰りについて非常にきびしい環境である。中小企業庁としてはどういう対策を進めておいでになるのか。下請企業の悩みは、第一に金融問題第二に取引条件、第三に求人難、三つの大きな悩みにいま呻吟しておるわけでありますが、特に代金支払いについては約八割が手形である。その手形の支払いもずいぶんルーズである。百二十日以内、あるいは九十日以内、こういう標準手形期間がきまっておるわけでありますけれども、またそれを事実上こえておる状況も非常に多い。中小企業庁としてはこういう実態についてどういう対策をおやりになったか、簡単でよろしいから。
  27. 小山実

    説明員小山実君) 第一の中小企業の資金繰りの問題でございますが、これにつきましては、総需要の抑制等の影響が健全な経営を行なう中小企業に不当に資金面のしわ寄せがされることがないようにということで政府関係中小企業金融機関の貸し出しワクを適時弾力的に運用いたしておりまして、たとえば、この三月には五百億追加いたしまして、それから五月には四−六の分といたしまして千五百億増額をいたしまして、資金繰りが著しく困難となっておる業種に対します運転資金の貸し出しに重点を置きながら中小企業向け金融の円滑化をはかってまいっておりますが、今後とも実態をよくウォッチいたしまして、機動的、弾力的にこの三機関の貸し出しワクの運用をはかってまいりたいと、こういうふうに考えております。  それからもう一つの取引条件の問題でございますが、これにつきましては下請代金支払遅延等防止法に基づきまして親企業等から定期的に状況報告を求め、違反のおそれがある場合には立ち入り検査を強化するようなことで下請代金支払遅延等防止法の厳正な運用を行なってまいっております。また、親企業に対しましては下請企業の取引につきまして、たとえば注文を減らす場合に特定の下請にしわ寄せをしないような特段の配慮を行なうように指導をいたしております。また、注文の足りない下請企業に対しましては、下請企業振興協会の受注あっせん業務の強化等について指導を行なっております。こういうような施策を今後とも一段と強化してまいりたいと、こういうふうに考えております。
  28. 小谷守

    ○小谷守君 公取、お見えになっておりますか。——この下請遅延防止法の発動は、手形問題について発動されたかどうか。  さらにこの法律についての解釈についてはいろいろ疑義があると思いますが、第一は、下請代金は現金で支払うべきだという原則を確認すること、これを親事業に対して徹底指導をすべきではないか。第二は、本来ならば九十日や百二十日の手形期間は長過ぎるので、納品から六十日以内に支払い日を定めることというこの法律に問題がある。六十日以内に代金の支払いをすべきである、こういう解釈はできないのか。現行規定の第二条の二というのはそういう意味ではないか。これをしろうと流にそう解釈しますし、また今日、下請中小零細企業の悩みを救うためには特にそれが望ましいのではないか、こう思われますが、いかがですか。今日の実情は百二十日という手形期間、それ以上のもの、俗にお産手形——二百八十日から三百日、台風手形——二百十日、こういうものはもう論外でありますけれども、百二十日にしても長過ぎるんじゃないか、こう思われますが、この遅延防止法をどのように発動しておられるか、そういう状況とあわせて御説明を願いたい、簡潔に、けっこうです。
  29. 熊田淳一郎

    説明員熊田淳一郎君) 公正取引委員会といたしましても中小企業庁と協力いたしまして下請法の厳正な運用につとめてまいっております。ただいま先生おっしゃいました長期手形の問題につきましても公正取引委員会といたしましては、従来勧告をし、あるいは指導でこれを是正させるということを現実にやってきております。これは四十八年度の例でございますが、公正取引委員会が長期手形の点から勧告をいたしました件数が八件、それからそれを含めまして指導いたしました件数が二百三十六件というような件数にのぼっております。先生おっしゃいました下請法の原則からいって現金支払いが当然ではないかということでございますが、私どもも原則的には支払いは現金で行なうべきであるというふうに考えますが、しかしながら、これはやはり従来から商慣習がございまして、また金融の緩慢な時期、あるいは逼迫する時期によりまして必ずしも現金だけで支払うということは困難な状況にございます。これはまた企業によっても差があるわけでございますが、私どもはできるだけやはり現金で支払うようにということを従来から指導をしてまいっております。しかしながら、遺憾ながら、従来の状況を見ましても、この現金支払いの割合と申しますものは、これは業種によって差がございますけれども、平均的に申しますと、現金と手形と大体半々というような現状にございます。で、私どもはできるだけこれを、現金支払いの割合をふやすように今後も指導をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、その六十日以内に支払いをすると、これは確かに下請法の二条の二に書いてございます。しかしながら、これは六十日以内に支払うということは、必ず現金で全額支払わなければならないというふうには私ども従来から解しておらないわけでございまして、と申しますのは、四条の二項の二号に、手形で支払う場合、一般の金融機関による割引を受けることが困難であると認められるもの、これはいかぬというふうに規定をしてございますが、この規定との関連におきましても、必ずしも六十日以内に現金で全部払わなければならぬというふうには解釈をしておらないわけでございまして、六十日以内に割引困難でない手形で支払いをいたしますれば、その六十日以内に手形を割り引いて現金化することができるわけでございますから、そういう意味で、そういう手形で支払う場合には、これは合法的であるというふうに私どもは解釈をいたしております。で、この点は十分に御理解をいただきたいと思います。  なお、私どもといたしまして、従来中小企業庁と共同でこの標準手形期間、繊維業につきましては九十日以内、その他の製造業につきましては百二十日以内という標準手形期間を設けて指導をいたしておりますが、この指導をさらに強化するということにつきましては、中小企業庁とも今後協議をいたしまして、前向きに強化の方向に検討をしてまいりたいというふうに考えております。
  30. 小谷守

    ○小谷守君 住宅金融公庫、それから建設省住宅局、おいでになって御苦労いただいておるわけでありますが、時間がありませんので、この問題はストレートに大蔵大臣にひとつお伺いをしたいと思います。  大蔵大臣、住宅金融公庫の一般個人住宅の申し込みが殺到して、いわゆる住宅金融公庫はパンク現象を起こしておる、こういう状況を御承知だろうと思います。これは民間金融機関が住宅ローンを引き締めた、それと逆に公庫側の貸し出し条件が従来の二百五十万円の融資限度から三百五十万円に引き上げられた、こういうこともありまして、マイホームを夢みる庶民が住宅建設の唯一のよりどころとしてこれに殺到した、無理からぬ点でありますが、そこで住宅金融公庫は七月にこの募集を締め切った、こういうことのようであります。そこで、これはひとつ財投のほうで何とか緩和策は考えられないものかどうか、小さい問題のようでありますけれども、庶民にとっては切実な問題であります。大蔵大臣のいい答弁を願いたいと思います。
  31. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほどからもるる御説明申し上げでおりますように、ここ、経済が微妙な段階でございますので、総需要抑制政策というものは堅持してまいりたいという基本の方針を政府としては堅持しておるわけでございますが、したがって、住宅政策たいへん大事でございますけれども、総需要抑制政策のワク外に置くという考え方はもともとないわけでございます。しかしながら、住宅建設の重要性は政府も十分認識しておることでございますので、住宅公庫の四十九年度事業計画ワクにつきまして、前年比三七・六%の増をいたしまして、一兆二百四十億円という大きな規模を予定いたしておるわけでございます。上半期の契約抑制措置の中にございましても、住宅公庫につきましては格段の配慮を払っておりまして、第二・四半期の契約額は、前年度同期の二千四百四十二億円を四四%、すなわち千八十一億円上回る三千五百二十三億円認めておるわけでございます。以上のように総需要抑制策のもとにおきましても、住宅公庫融資につきましては、特段の配慮を払ってきておるということは御了承いただきたいと思います。しかしながら、物価動向の現状にかんがみまして、総需要抑制策は引き続き堅持しなければならないけれども、いま財投の追加が考えられないかということにつきましては、各方面から強い御要望がございます。私どもとしては、今後さらに建設省から十分御説明を聴取いたしまして検討はしたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、住宅公庫の事業ワク追加につきましては、今後の景気の動向、全般的な総需要抑制策との関連をよく見ながら慎重に対処してまいりたいと考えております。
  32. 小谷守

    ○小谷守君 外務大臣に伺いたいと思います。  去る十五日、韓国で突発した朴大統領狙撃事件に関連してお尋ねをするわけでありますが、事件については犯人が在日韓国人であること、日本人名義の旅券を使用したこと、使用したピストルが先月十八日大阪市内の派出所で盗まれたものであること等が今日まで明らかになったことではなかろうかと思うのであります。申すまでもなく、テロは民主主義の敵でありまして、最も憎むべき犯罪であると思います。そしてこのためになくなられた大統領夫人、女子学生お二人の犠牲者、たいへん痛ましいこと、お気の毒なことと思います。しかし、暗黒政治とテロというものが表裏の関係にあることも歴史の教訓であると思います。私どもは、十五日の事件をテレビで見ました瞬間、お気の毒であるという気持ちの反面、何か起こるべくして起こったということを直感いたしました。それは韓国の政治社会情勢の異常事態に原因があるのではなかろうか。一昨年の憲法改正以来、最近の大統領緊急措置の発動に見られる韓国の政治状況であります。現権力が望めば永久権力が可能な体制、一切の政治批判、体制批判は許されない。批判者はすぐさま軍法会議で重刑に処せられる。市民や学生のデモも同様である。詩人が体制批判、政治批判の詩をうとうただけで極刑になる。このような極端な言論の統制が無暴なテロ行為を生む素地となったと考えられるのでありますが、外務大臣の御所見はいかがでございましょうか。
  33. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) まことにこのテロ事件はいまわしいことでもございますし、またそのために痛わしい犠牲者も出しております。しかしながら、韓国における政治体制、それがいま御指摘のようなものであるかどうかということは、これはいろいろ意見もございましょうが、私ども政府の立場といたしましては、韓国の政治体制についていま自由にこれを論評することは差し控えたいと思います。
  34. 小谷守

    ○小谷守君 この事件が起こりました直後、韓国の捜査当局が第一に発表しましたことは、犯人は日本人ではないか、こういうことが発表された。これはあとで誤報であったということが明らかになりましたが、そうしてソウル駐在の日本大使館に対して抗議があったやに報じられておる。後宮大使はすぐさま遺憾の意を表明されたと聞いておりますが、そのことが韓国のテレビ、ラジオではすぐさま日本大使が謝罪をしたと、こういうことで大きく宣伝をされた、こういうふうに承知をいたしておりますが、私は韓国のマスコミが報道されることをとやかく言う所存はございません。ただ、駐韓大使後宮さんがあまりにも軽率ではなかったか、事件を十分確かめもしないで、あなたの訓令を受けられたかどうか、それも定かではありませんが、非常に軽率であったと、こういう気がしてなりませんが、御所見はいかがでありますか。
  35. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 後宮大使が金外務部長官に会いに行きましたのは、その当時いろいろ流説がございましたので、その事実を確認しに参ったわけでございます。したがって、私の訓令によって参ったものではございません。その際に、いま御指摘のとおり、金外務部長官から、どうも犯人は日本人のようだというような事実の説明がございましたので、その場におきまして、もしそれが事実なればたいへん悲しむべきことで、その面についてはその犠牲者の方々に心からおくやみを申し上げるということのごあいさつでございます。
  36. 小谷守

    ○小谷守君 私は事実をあまり確かめもせずに、軽々にそういう日本国を代表する大使が遺憾の意を軽率に表明するというふうなことはそれこそ遺憾ではないか。そのことが因となってたいへんな誤解を韓国の民衆に与えておるということではありませんか。その点についての御所見はいかがですか。
  37. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 後宮大使は、金長官に対して、それじゃ事実なりやという確認を求めたわけでございますが、また後ほど金外務部長官が、日本人でなかったということの事実が明らかになりましたので、再び金長官に会いまして、もしそれが、金長官が言った事実が間違ってありとすれば、それは先ほど申し上げました後宮大使が遺憾の意を表したことはこれは撤回するという申し入れをしております。
  38. 小谷守

    ○小谷守君 そういうことがおかしいですよ。  おとといからきのうにかけて、韓国は日本に対して、日本は反朴運動の基地になっておると、こういう趣旨の抗議と申しますか、この捜査の問題に関連して日本政府に対してそういう趣旨の申し出があったやに仄聞をしますが、事実でございますか。事実とすればその見解に対して大臣はどういう御所見をお持ちでございますか。
  39. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) まだそういう申し入れば受けておりません。
  40. 小谷守

    ○小谷守君 これはきのうきょうの新聞、テレビでしきりと報道されておる点でありますが、日本が反朴運動の基地になっておると、まことにいわれのない理不尽な言いがかりであると言わざるを得ません。公式な申し入ればないということでありますが、こういう考え方に対してどういう御所見をお持ちでございましょうか。
  41. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) まあ、わが国はわが国で政治体制が韓国と当然異なっております。したがいまして、わが国では思想の自由、また言論の自由はきわめて自由に行なわれております。そういうわが国の政治体制の中で、わが国の法令に違反しない限りにおいては、そういうような申し入れがあったとしてもこれを受けるわけにはまいりません。
  42. 小谷守

    ○小谷守君 このことに関連して在日韓国人の民主的な行動、何らかの規制を求めてきたというふうなことが伝えられておりますが、国家公安委員長としてはどういう御所見でございましょうか。言論の自由、思想の自由を認めておる日本憲法のもとにおいてそういうことがあり得べきことではないと思いますが、国家公安委員長の御所見を伺いたいと思います。
  43. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) 申し上げるまでもございませんけれども、わが国におきましては、どんな団体なりあるいは個人の活動でございましても、それが合法的なものである限りにおいては自由であり、これに対して制限をし、あるいは介入をするというような考えは全くございません。
  44. 小谷守

    ○小谷守君 公安委員長に伺いますが、伝えられるところによりますと、この犯人と目される在日韓国人の日本における捜査のために、捜査員の相互派遣を認めたというふうなことが伝えられておりますが、捜査協力ということについてどうお考えになっておるか、その限度はどのようなものであるべきと心得ておいでになりますか、こういう点をお伺いしたい。
  45. 山本鎮彦

    説明員(山本鎮彦君) 現在、捜査員の派遣というようなことは全然問題になっておりません。  それから、捜査協力ということについては、向こうから若干の事実の解明について、たとえば、逮捕された文という男はどういう身分的な男であるかというような質問は来ておりますが、そういうものについては適当な範囲内で協力をしてやりたい、このように考えております。  その他の問題については、われわれとしてはどこまでも、われわれに与えられた国内法の範囲内における具体的な捜査は自主的に進めていきたい、また、その範囲内における協力は、向こうの要望があればしていきたい、このように考えております。
  46. 小谷守

    ○小谷守君 外務大臣にお伺いしますが、外務大臣も御就任早々たいへん頭の痛いことだと思うのでありますが、日韓問題のもつれのもとは、これは何といっても金大中問題だと思うんです。また、国内で確かに韓国批判のいろいろな運動が高まっておることも事実でありますけれども、その根源はやはり金大中問題ではないか、これに対する折り目をきちっとつける解決こそが日韓問題処理の一番の起点である。また、あとで起こりました二人の学生の問題等もありますが、私は今度の狙撃問題とこの金大中問題をごっちゃにするような、そういう負い目を日本政府は感ずるべきではない、これは筋道を通してまず解決をすべきである、こう思われてなりませんが、御所見はいかがでありましょうか。
  47. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) これはおことばのとおりでございまして、金大中事件、その他の事件の処理、それに対する外交的交渉と今回の大統領狙撃事件とは全く別個の観点から筋道を立てて解決をしたい、こう考えております。
  48. 小谷守

    ○小谷守君 いろいろお伺いしたいことを用意しておきましたが、時間がありませんので、田中総理の外遊の計画、これがまた発表されておりますが、田中総理は何か外遊とゴルフがたいへんお好きなようであります。これに関連しまして、外交官OB——外交の消息に詳しい方が、最近の日本の首脳外交と称する総理の訪問外交は常識を越えるような報償費を使っておる。報償費、これは設宴費——おみやげ代、これはかえって相手方の侮りを受けるのではないか、こういう批判をしておる声を聞きますが、札束で相手の歓心を買うようなそういうことはやめてもらわなければならぬと思います。そこで調べてみますと、報償費は四十七年の中国訪問が四千百七十万、昨年のヨーロッパ訪問が七千九百七十八万余円、東南アジア訪問が四千三百万余円、報償費ですよ、飛行機のチャーター料などは除いて。これは外務省にお伺いするのは筋じゃないかもわかりません。官房副長官お見えになっておりますか。——こういう湯水のように税金を使う札束外交をどうお考えでありますか。  さらに加えて、もう嫁入りをしておられるお嬢さんを伴っておられるようであります。新聞やテレビで拝見しますと、トップレディーのようにふるまっておられる姿を拝見するわけでありますが、どういう資格でお連れになっておるのか。相手方の招待は夫人同伴ということではありませんか。なぜ夫人を同伴されぬのか。末婚のお嬢さんの場合には外交慣例上ままあることのように存じます。しかし、すでに他家にとついでおる人をなぜそういうことをされるのか。吉田さんの場合ですね、麻生和子さんですか、これは奥さんがなかったからということでありますけれども、田中総理は奥さんあるじゃありませんか。(笑声)何でこういう異例なことをされる。その辺も含めてひとつ御答弁いただきたい。
  49. 大村襄治

    説明員(大村襄治君) 総理の外遊における報償費の額についてでございますが、ちょっといま先生の言われました数字と少し違いますので、念のために申し上げます。  中華人民共和国訪問のときの報償費は二千七百九十八万一千円でございます。アメリカ訪問のときの報償費は八百九十七万円でございます。西欧諸国並びにソビエト連邦訪問のときの報償費は四千五百十三万円でございます。東南アジア諸国訪問のときの報償費は一千六百十六万五千円でございます。これはそれぞれ訪問国の数あるいは所要日数、その他の状況によって金額には相違がございますが、これまでの事例あたりに比べまして、特に多いということは言えないのではないかと私ども考えている次第でございます。  それから、総理外遊の際における同伴者の範囲につきましては、特に基準はございません。訪問の目的あるいは必要性に応じて、そのつど同伴者の範囲を決定することとされているものでございます。なお、一般的に申し上げまして、一国の元首または首相が外国を訪問する場合には、夫人を含め家族、その他随員を同伴するのが通例とされているわけでございます。田中真紀子氏が総理の令嬢であることに基づき総理の随行を依頼されて外国に行かれたと、私どもそのように承知しているわけでございます。
  50. 小谷守

    ○小谷守君 えらい事もなげな御答弁ですね。  それでは伺いますが、いやしくも一国の総理が直接外国を訪れて外交案件の処理に当たるというふうなことは、これはよほど大きな外交案件のあるときに限られる。田中総理のあれは、まあ資源問題を話し合おうとか、あるいは今度のあれでも、新聞で予定を拝見するというと、在留邦人との懇談会をするとか、友好を深めるとか、そういうことがうたってあるわけでありますが、これだけ国内の問題の山積しておるときに、伝えられておるようなことであるならば在外公館で足りることでありますし、外務省がまずやるべきことであります。大騒動してたいへんな国費を乱費してやることはどうか。お嬢さんの同伴の問題については、国民はおかしいことだなと思っておりますよ。外国でもそう思っておるのじゃありませんか。ほんとうに今度のあれでもそういう総理じきじき出向いて処理しなければならぬ重要な外交案件があるのかどうか。どうですか。
  51. 大村襄治

    説明員(大村襄治君) 最近の国際情勢はとみに多極化、多様化の傾向にあることは御承知のとおりでございます。このような情勢のもとで、首脳外交の必要性はますます顕著なものとなってきている点につきましても御案内のとおりでございます。そこで、田中内閣成立以来、中国、アメリカ、そしてヨーロッパ諸国、並びにソ連、さらに東南アジアと、それぞれこれまでも歴訪されまして、大陸間のきずなを深め、対話と協調の外交を推進してきました点は御承知のとおりでございます。今回訪問される諸国の多くはわが国と伝統的友好関係にあり、今後とも協力関係に立つ国々でございます。これら諸国との間にはすでに密接な経済関係は存在しますが、今後は経済関係だけではなく政治的関係をも一そう深めていく必要があり、そのためにはまず総理が直接関係各国の首脳と会い、相互理解を深める必要がある、このような認識から総理の外国訪問が今回計画されているのであり、その意味におきまして、大きな意義を持つものと私どもは考えているわけでございます。  なお、総理令嬢の随行の問題でございますが、これは先ほども申し上げましたように、元首または首脳の外国の訪問の際のこれまでの国際慣行から見ましても、多く見受けられる例でございまして、決して御指摘のように、外国のほうからどうかと思われているというような事実はないと承知いたしております。
  52. 小谷守

    ○小谷守君 あなたの立場で意味のないことだ、無意義なことだというふうなことは言えぬと思いますけれども、考えてみなさいよ、まあ、この訪問外交で一番意義があったとわれわれも国民も思うのは、四十七年の中国との国交回復のための御苦労、あれはりっぱです。それ以外は恥のかき通しじゃないですか。ソ連では妙なミスがあったり、東南アジアではたいへんなデモで田中帰れ——ここらで一ぺん一服して考え直したらどうです。まあ、あなたに質問してもそれ以上の答弁はないでしょうから、これで終わります。
  53. 佐々木静子

    佐々木静子君 関連質問。  木村外相にお伺いしたいのでございますが、先ほど、例の朴大統領狙撃事件について小谷理事から質問があったわけでございますが、そのことにつきまして、私、若干関連して質問をさしていただきたいと思います。  と申しますのは、この狙撃事件の犯人としてまず最初に全世界に報道されたのは、日本人が犯人であるということでございますが、そのことについて、これは先ほど来お話があったように、後宮大使が、まあ謝罪というかお悔やみというか、まだなくなっておらなかった段階ですけれども、訪問しておられるわけですけれども、これは正式に韓国政府が日本人が犯人だと発表したわけでございますね。その点は外務省とするとどのように確認しておられるわけですか。
  54. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 先ほど申し上げましたとおり、後宮大使がとりあえず金東作外務部長官にお目にかかりましたときは、どうも旅券その他からいって犯人は日本人らしいというような情報がございましたので、その事実の確認を求めにいったわけでございます。しかしながら、その当時の捜査当局の知る範囲では、どうも吉井行雄さんなる日本人らしいということがまだ情報としてあったわけでございます。その時点で後宮大使が、もしそれが事実なればたいへん痛ましいことでお悔やみを申し上げたいと、こういうようなお見舞いのようなことで会見をしたわけでございます。
  55. 前川旦

    委員長前川旦君) 佐々木委員、関連ですから……。
  56. 佐々木静子

    佐々木静子君 簡単に二、三問。  この吉井行雄さんですね、これはすぐに判明しましたように、大阪の泉州にある労働組合の職員をしているわけでございまして、そして、全く自分の知らない間に全世界に自分が殺人犯人であるというふうに報道されたということで、これは本人はもとより、この勤務先である泉州労働組合の人たちも全く青天のへきれきでびっくりしたわけですが、事実本人は自宅にいるわけですね。なぜ日本政府は、ばかみたいに韓国の政府に飛んでいく前に、住所もはっきりしている、電話だってあるのですから、まず、どうしてこの吉井のうちに電話一本かけて確認しないのか。むろん政府のほうは、吉井が韓国に行っていると思われたのだろうとは思いますけれども、しかし、吉井の家族だっているのですし、何らかの方法で日本としてまず確認すべきじゃないか。まるでよそのうちから、おたくの子供がたいへんに悪いことをしたと文句を言われて、親がすっ飛んでいってそこのおうちにあやまりにいっている、子供はおうちでおとなしく勉強している、とんでもないヒト間違いだということじゃないかと思うのですけれども。私は、日本政府というものは、日本の国民のことをもう少し考えてくれないと困ると思うのです。まあこれは正直なところ、吉井さんはびっくりして、実は私のところに、たいへんなことに自分はしかけられているらしいということですっ飛んできたわけなんです。こういうことに対して、政府はどうしてもう少し強い姿勢で臨めないのか。私は、この後宮大使の今度の行動というもの、大臣からの訓令ではないというお話でございましたけれども、はなはだ遺憾に思うわけなんです。こういう弱腰外交ですね、この弱腰外交が続く限り日韓問題というものはこれは解決しないと思うわけなんですけれども、まずその点についてもう一言、その後宮大使がすっ飛んでいかれた——もうこれは謝罪でないかもしれませんけれども、どうして日本内部の確認をしないですぐに飛んでいったのか、そのあたりのところをもう一つ、大臣としての責任ある答弁をいただきたいわけなんです。
  57. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 御承知のとおり、非常に混乱の中で、しかも数時間の間の問題の経過でございます。したがいまして、吉井行雄さんにはたいへん御迷惑なことになりましたけれども、しかしながら、当時の模様としましては、後宮大使としてそういう情報が、これは外国で行なわれたことでございますので、日本との情報の交換もまだ完全でない時点におきまして、まず後宮大使が金東作外務部長官のところへ参りまして、その事実を確かめるように求めたことは、これは私は、当然大使としてもあり得ることだと思います。しかしながら、その後二、三時間を経まして吉井行雄さんがまあ家庭の事情もいろいろあるようでございまして、本人はそのとき不在でございましたようですけれども、日本の警察当局もあらん限りの努力をいたしまして、その確認を急いだと思います。そのわずか数時間の間のギャップがあったということは、これは否定できません。
  58. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから、実はこの本件の……
  59. 前川旦

    委員長前川旦君) 佐々木委員、時間のみんな約束したあれがありますよ。ですから簡略に。
  60. 佐々木静子

    佐々木静子君 そういうことで、いま理事との間で、時間内でやっているわけです、事前に話し合いで。  文世光という人ですね、これは、日本の大阪の韓青に所属していたこともございますので、日本人あるいは在日韓国人で知っている人も非常に多いわけでございますけれども、一見非常にこれは年も二十二歳、たいへん若い方です。当日、ほんとうにそこの場所におったかということを、外務省とするとどのようにして確認していられるのか、これは日本大使館の方も同じく招待されておられる。  それから、非常にうわさされておりますことは、文世光はそのときに警備員からたくさんのたまを受けた——文世光とおぼしき人ですね、言われておる人。新聞報道によっても、おなかの中をたまが突き抜けて、たいへんに重体だという報道もあった。その文世光がはたしていま生存しているのかどうかということすら非常に問題とされているわけなんですが、そのあたりについて外務省はどのような確認をしていられるわけですか。
  61. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) この問題は、韓国の内部で在日韓国人によって行なわれた犯行でございますから、現在のところ韓国の捜査当局が捜査を進めております。したがいまして、私どもは韓国の捜査当局から直接その事実を聞くような立場ではございません。したがいまして、韓国の外務部から外交ルートを通じて事実の確認を求めておると、こういう状況でございます。
  62. 前川旦

    委員長前川旦君) それでは、午後一時に再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時二十三分休憩      —————・—————    午後一時九分開会
  63. 前川旦

    委員長前川旦君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  午前に引き続き、昭和四十七年度決算外二件を議題とし、総括質疑を続けます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  64. 工藤良平

    ○工藤良平君 まず最初に、私は大蔵大臣にお伺いをいたしたいと思いますが、先ほど小谷委員からも四十七年度決算、特にその後半における経済の状態についていろいろと御質問がございましたが、私もその点についてもう少し踏み込んで検討してみたいと思うわけであります。  それと申しますのも、結局その四十七年度決算、経済の動向というものをある程度見きわめながら四十八年度予算というものが組まれなければならないと、こういうように私は考えておったわけでありますけれども、そこら辺のいきさつというものをこの際ひとつ解明をしながら、特に総需要抑制の現在の状態の中で、一体五十年度予算というものにそういう教訓をどう生かしていくかということが非常に大切な問題であろう、このように思いますので、その点をまずお聞きをいたしたいと思うわけです。  具体的にお聞きをいたしますが、四十七年度予算編成の当時の経済見通しと、決算の段階における状態の変化といいますか、それを具体的にお聞きをいたしたいと思うわけですが、まず概略、その点を大蔵大臣として御説明をいただきたいと思います。
  65. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) ただいま御質問の経済全般の、四十七年度予算編成のときと、決算におきますところの経済の実勢がどのように変化したかという御質問でございますが、いまここにございますのは、租税に関しまして資料がございますので、一応それで御説明を申し上げたいと思います。  租税及び印紙収入につきましてでございますけれども、四十七年度一般会計で申しまして、当初予算額は八兆八千四百八十五億円でございました。これを積算いたしますにつきましては、もちろん例年のことでございますけれども、経済企画庁がお立てになります経済見通しというものを基礎にいたしまして税収を見積もるわけでございます。ただ、税収は、たとえば法人税でごらんいただきますとおわかりいただけますように、時間的なズレがございます。一年決算、六カ月決算にいたしましても、それぞれ事業年度が済みましてから二カ月たちまして申告し、納税をしてまいりますから、国庫に入ります収入としましては、経済のいわゆる進行とは若干ズレが出てくるということはございます。そういう点はございますけれども、一応経済見通しを根拠にいたしまして、あるいは課税実績をそれに補足いたしまして、租税及び印紙収入の見通しを立てるわけでございます。そういうことで立てまして、その後、四十七年の十月の下旬でございますけれども、補正予算提出をいたしました。そのときに二千八百二十億円の税収のいわば増を補正いたしたわけでございます。それが決算になりましては九兆七千七百一億円ということになりました。それで、当初予算に対しまして九千二百十六億円、率で申しますと一〇・四%のいわば増加収入があったわけでございます。  それば一体どういうふうにして出たかという内訳でございますけれども、あとから振り返りまして、一つには、何といいましても法人収益が当初予算を立てましたときに比べまして非常に伸びたというわけでございます。もっともこの四十七年度の法人税の見積もりにあたりましては、四十六年末、あるいはもっと前の夏のいわゆるニクソン・ショック以来、四十六年の十二月におきますところの円の切り上げ問題がございました直後でございましたので、はたして来年度の景気見通しがどのように動くか、それに伴いまして税収がどのように動くかということは、実は非常に予測に困難を感じたわけでございます。そこで、非常に落ち込むという予測もございましたし、それほどでもないというようなことも勘案いたしまして、法人税収の基礎になりますところの法人の所得は大体横ばいで推移するだろうということで、法人税収を見積もったわけでございます。  それから、所得税の中でも源泉所得税につきましては、賃金、利子、配当がそれぞれ経済見通しを根拠にいたしまして、これくらい伸びるだろう、あるいは申告所得税がこれくらい伸びるだろうということに見込んだわけでございますけれども、結果から申しますと、賃金、利子、配当は当初の見積もりを上回ってもちろん伸びましたし、したがって、それに伴いますところの源泉所得税は増収になりました。それから申告所得税につきましても、いわゆる譲渡所得の部分が非常にふえたわけでございます。これは例の土地の長期譲渡所得につきましての分離課税の申告にあたりまして、当初の予測に非常に超過をいたしまして譲渡所得の税金がうんと入ったというようなことがございます。そういうことを総合いたしまして、先ほど申しましたように約一割余りの税収が当初の予算に比べて入ったというような状況でございます。
  66. 工藤良平

    ○工藤良平君 いま税収を中心にしたお話がございましたが、四十六年度の税収の伸び率と比較をいたしますと、かなり四十七年は伸び率が急速に伸びたような気がするわけですけれども、その点についてはどうでしょう。
  67. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 決算額でそれぞれ対比をいたしまして、前年の四十五年に対しまして四十六年度は、一般会計の租税及び印紙収入が八・七%伸びております。それに対しまして四十七年度は、四十六年度決算額に対しまして二三・二%伸びたわけでございます。  この八・七%と二三・二%の伸びの違いでございますけれども、四十六年度と申しますのは、実は当初からあまり景気のいい時代ではございませんでした。若干七月ぐらいからやや上向きになってくるなという期待を持たれたところに、例の八月のニクソン・ショックがあったわけでございまして、非常な、まあ初めてのことでございますし、かなり経済についても上向きになる情勢のところは押えられたということがございます。そういうことが反映いたしまして八・七%になったわけでございます。四十七年度は、四十六年末の円の切り上げの新しい体制に適応いたしまして、日本経済がかなり伸びたということで、この二三・二%の決算額の伸長になったと思います。
  68. 工藤良平

    ○工藤良平君 税金の問題は、あとでもうちょっとまた詳しくお聞きをいたしたいと思いますが、この「昭和四十七年度決算説明」、四十八年の十二月に主計局から出ましたものですが、これによりましても、四十七年度当初におけるわが国の経済状態の見通しというものは、かなり不安定ではありましたけれども、四十七年度は、景気上昇といういろいろな施策がとられようとしていたことは事実であります。ところが、いまお話しのように、四十七年後半にかなり景気のてこ入れがききまして、結果的に見ますと、やはり実質成長率というものはかなり大幅な成長を示したと、このようなことが総括として出されてきておるわけであります。そこで私は、それ以降四十八年にかけてのインフレ要因というものがそこらあたりにかなりひそんでいたような気がするわけでありますけれども、この決算報告の中にあります、最後の五八〇ページに、「昭和四十七年度の経済見通しと実績」という数字が出されております。この中で、特に四十七年度の実績として大幅に伸びた幾つかの項目があるわけでありますけれども、これをながめてみますときに、四十七年度の後半、すでに石油のパニック以前の問題として、日本の経済政策の中にインフレ要因を含んだきわめて重要な問題が私はひそんでいたような気がするのであります。決算そのものが昨年の暮れに出てくるという状態でありますから、容易に把握はしにくいような日数的な問題はありますけれども、やはり大きな経済の流れというものを把握をする場合に、私はそういう把握を一日も早くやるということはきわめて重要ではないか。この決算内容を見ましても、これを一通り見てみましても、かなりそういう要素というものが出てきているのではないか、このように思うのですが、この点について大蔵大臣どうでしょう、これを概括していただいて一この四十七年度の経済見通しと実績という、この比較対照表を見ても私は問題が提起されておるような気がするのでありますけれども、その点どうでしょうか。
  69. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) まあ、当時輸出は好調でございまするし、国際収支も大幅な黒字を更新するような状態でございまして、それが国内の流動性の増幅に寄与するというメカニズムがそのまま働いてきたこと、これは仰せのようにおおい隠すことができない経過であったと思うのであります。で、問題は、国内の流動性が増しますと景気の刺激になるということは当然予想されることでございまするから、それに対しまして時期を失せず手を打つということで事態に対処すべきであったというのが先ほどからの小谷さんの御指摘でもあったわけでございます。しかし、その当時はちょうど、私も申し上げましたとおり、円為替の行くえというものが国内にどのように衝撃を与えるかという懸念もございますので、政府が断固としてそういう措置に出られなかった事情も御理解をいただきたいということを申し上げたわけでございますけれども、そういう経過は遺憾ながら認めざるを得なかったと思います。  しかし、その当時、今日見るような、石油をはじめとする資源のいわば常識をはずれたような大きな値上がりというようなものを予想しておったかというと、残念ながらまだそこには至らなかったわけでございました。それは四十八年度になりましてからの年度途中から顕著になってまいりました現象でございまして、これはわが国政府としていかようにも手に負えない事態であったと思うわけでございますが、その当時四十八年度の後半に起こるような事態を予想していなかったというとがめは確かに甘受しなけりゃならぬと思います。
  70. 工藤良平

    ○工藤良平君 私は具体的な数字を見ながらいま御質問を申し上げているわけです。これは大臣じゃなくても、局長でもけっこうでございますけれども、この四十七年度の経済見通しと実績という表を見て、この中にすでに物価上昇のやはり底流というものがあったのではないか。これは当初の見通しからいたしましても、この国民総生産を見ても、四十六年度実績見込みに対して四十七年度実績見通しが一一二%、四十六年度実績に対して四十七年度実績が一一七%と、当初予想からいたしますとかなり大幅な上昇をしているわけですね。しかも、この経済見通しの内容というものを見ると、どこに一体問題があるのかということもこの計数の上からおおよそ見当がついてくるわけですね。それを受けて、それじゃ四十八年度予算はどうならなきゃならぬかということに私はなってくるだろうと思うのですが、これを見たときに、すでにインフレ気がまえがあった。本来であるならば、これは経済の法則からいうならば、石油やあるいは食糧の価格上昇というものが他の商品への需要を圧縮するはずであるから、いわゆる生産過程においてはできるだけ便乗値上げを押えて原価を安くということにいくのが私は現在の経済の法則だと思っている。  ところがそうではなくて、便乗値上げというものをごんごん起こしていったということは、インフレ基調というものがあった。したがって生産過程における原材料費とかそういうものを圧縮し、あるいはできるだけそれを押えていこうということではなくて、インフレの気がまえがあるものですから、ぐんぐんそれを押し上げていくということが、現にこの四十七年度の後半に出てきている。政府は景気のてこ入れをやった——これも数字は出ていますね。政府の財貨サービスの購入につきましてもかなり大幅な上昇を示しております。あるいは民間住宅につきましても、ただ単に、これが庶民住宅ではなくて、マンションとかいうものが圧倒的にこの段階から建設がひんぱんに行なわれていた。それが現実に、いまはマンションができたけれども入り手がないという現実が起こっている。材木の問題にしたって、きょうあたりのニュースを見ても、非常にいまは売れ行き不振で困っておるという、極端から極端が出てきているという要素があるわけでありまして、私はこの決算の見方、しろうとでありますけれども、こういうものをながめてみたときに、この段階からインフレの要因がはっきり出ていた、こういう把握に立つことが決算を見る場合に非常に大切ではないかと、このように思っているわけであります。  大臣もう一ぺんお伺いをいたしますけれども、ここに幾つかの項目がありますけれども、百三十何%、あるいは一四五%とか百二十何%というこのような景気刺激というものが、すでにその当時からインフレというものが予測されておりながら、ちょっと野放図のようなてこ入れというものが行なわれたのではないか。その反省というものを私はこの際きちんとやっておく必要があるのではないか。さっき小谷委員に対する説明の中にもその点は若干は出ておりましたけれども、私は計数的にこれをながめたときに、確かにそういうことがあったのではないか、このように思うのですが、その点大臣どうでしょうか。
  71. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 経済活動は将来を予想いたしまして今日の態度をきめるものでございまして、今後事態がどうなるかという展望に立って今日の時点の経済活動がきめられると思うのであります。したがって当時といたしまして、わが国の経済政策がこのように転換が行なわれて国内の福祉充実と国際経済との均衡というような点に選択が行なわれたわけでございまするし、外貨も当時十分あったわけでございますから、全体として楽天的な展望を立てて、生産をはじめといたしまする経済のもくろみをいろいろお立てになったことも理解できると思うのであります。しかしいま御指摘のように、その当時すでに世界の状況は基本的な変化のきざしを見せておったわけでございまして、われわれが描いておるような国の内外の経済がバランスのとれた状態において充実を見るということに対する各種の制約が加わってくるきざしがすでにあったことは御指摘のとおりだと思うのでございます。しかし、それはわれわれの努力で克服できる程度のものでありたいと望んでおりましたし、また過去の経験から申しまして、そういうことではなかろうかと考えたことも無理でなかったと思うのでありますが、しかし去年起きました事態というのは、全く想像を絶した規模であり速度であったわけでございまして、そのあたり根本的に展望が狂ってしまったということは神ならぬ身のわれわれの非力を暴露するものであると思うのであります。  したがって、いま工藤さんの言われる当時インフレのきざしがすでに出ておったじゃないか、危険信号がすでに出ておったじゃないかというその評価でございますが、それはわれわれの過去の経験からいたしまして、克服できる性質のものであると考えておったが、事態はそうではなかったというところに狂いが生じたのではないかと私は考えております。
  72. 工藤良平

    ○工藤良平君 これは基本的な問題で、若干意見も違うところがあるかもわかりませんけれども、確かに昨年十月以降、石油の問題あるいはもっとさかのぼれば昨年の二月あたりから非常に食糧問題が危機的な状態の中で大幅に上昇するという事態が起こりました。もちろんこれは国際的な問題であることは間違いありません。しかし石油や食糧は、それ自体インフレというものではないと私は思っているわけですね。急激に加速的に上がってきた、そういう傾向はありましたけれども、それはやはり一回限りのものであって、経済基調にインフレというものがあれば、それがインフレをさらに激圧さしていく契機となるということはあるだろうと思うのですね。ただ根本に、私はインフレ傾向があるということ自身が非常に大きな問題であろうと思います。  いま大臣もおっしゃったように、確かに国際的な混乱の時期だということも言えると思います。いわゆる高度成長というものの行き詰まりというもの、そういう時期に田中さんという高度成長のチャンピオンが出てきた。全くこれは相反する政策を行なう。ほんとうからいうと引き締めなければならないときに高度成長のチャンピオンがおくればせ——たいへんおくれて出てきたわけなんですから、たいへんな混乱が起こることは当然のことなんですね。国際的な問題だというけれども、じゃどうか、卸売り物価の上昇率を見ても、日本がことしの二月で三七%です。アメリカが二〇%、イギリス一三%、西ドイツが一〇%、フランスが二一%ということですから。それじゃドイツは石油が自分の国にあるかというと、やっぱり九五%輸入しているわけでしょう。飼料だって八〇%、日本以上に輸入しているわけでしょう。そういう国で卸売り物価は一〇%以内に押えているということ、これは一体どういうことを意味するのか。日本だけが三七%、なぜそういうような状態にあるのか。これはやはり経済政策の大きな見誤り、いま大臣がおっしゃったように、予測をあやまったということ。  しかしそれは、予測をあやまったと、ことばでは簡単に言うけれども、その犠牲はだれが受けたのかというと、これは国民多数が受けているわけでありますから、やはりそのような経済的な政策の失敗というものを操り返してはいけないという反省に立たなければならぬと、このように私は実はこの決算を見て思うわけでありまして、そういう観点に立って、たいへん古い二年前の話をいまごろやるわけですから、これはとぼけたようなもので、どうも私、決算のやり方についても問題があると思っているのですが、しかし、これはそういう傾向をつかむ必要があると思いますから、一応は見てみたいと思います。そのようなインフレの要因がありながら、景気のてこ入れだ、上向いてきたにもかかわらず四十八年度予算を見ると、これは私が申し上げるまでもなく、一般会計予算で十四兆二千八百四十億円、国民総生産にして一六・四%——約百十兆円という目標を立てて、それで推し進めていった。  しかも、それが石油パニックというものがさらにインフレの加速という状態をつくり出していくという結果をもたらしてきたと思っているわけでありますけれども、この点については、それじゃ大臣、当時の主要な外務大臣として、閣僚として国政に携わってきたわけでありますけれども、この点について大臣はどのようにお考えでございましょうか。これは五十年度予算を組む一つの経緯として、私は大臣の考え方を伺っておきたいと思うのです。
  73. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 先ほど申し上げましたように、四十六年の夏のニクソンショックが日本に与えた衝撃は、その振幅は非常に大きかったと思うのでありますが、二十何年間もなれておったところに大きなストームが訪れたわけでございますから、政府も国民もあわてたことは理解できると思うのであります。  その場合われわれとしては、この混乱を最小限度にとどめなければならぬし、それによってわが国に不況が訪れ、あるいは失業が起こるというようなことは極力避けなければならぬという意味で、不況対策がとられたということは、政治の責任ある立場から申しまして無理からぬことであったと思うのであります。同時に、田中内閣ができたのは一昨年の七月でございましたが、ちょうどそのころ四十七年の対米貿易収支の赤字が米国の統計によると四十一億ドル、あるいは二億ドルに及ぶというようなことが指摘されて、適正なバランスを望む強い要請もございまして、元来日本といたしましても、不当に大きな黒字が出る、不当に大きな赤字が出るなんていうことはよくないことでございますので、対米貿易収支をはじめといたしまして、貿易収支自体につきましても、大きな黒字も赤字も出ないという状況に日本の経済を持っていくべきではないか、そのためには、たまたま従来から経済政策の質的転換、方向の転換を考えなければいかぬという声が国会からもございましたし、国民からも強くあったわけでございますので、ここらあたりで量より質へ転換しよう、福祉経済に変えていこうというようなことを考えて、四十八年度予算にはそういう具体的な答案をもってこたえようというようなことを考えたわけでございます。  それも先ほど申しましたように、その限りにおいては私は間違った選択ではなかったと思うのであります。しかし、その間に輸出の好調を発火点として、国内流動性が大いにゆるんできておりまして、それが国際的なインフレと連動するという形にその後展開してまいりましたことは、非常に不幸なことであったと思うのであります。したがって四十八年度予算は、ニクソンショックのあとを受けた日本経済をどう処理するか、あるいは国際的なバランスを日本経済としてどういうふうにかじをとっていくかというところから、経済政策の転換を遂げて、ああいう福祉経済への転換点を画する一つの予算になったわけでございます。そのこと自体は私は間違いでなかったと思うのでありますが、国内外の状況から見て楽天的に過ぎて、起こるべきインフレへの予防的な対応策において、われわれが十分事前に対処することができなかったことは責められて当然のことと思うのでございます。
  74. 工藤良平

    ○工藤良平君 どうもはっきりわかりませんけれども、さっき大臣は、四十七年から八年にかけて異常な物価高をつくり出してきた、その原因というものが、日本経済の問題だけではなくて、世界の先進資本主義国、資本主義経済の全体として直面している問題だということをおっしゃいました。その要素ももちろんあると私は思いますけれども、じゃそれは一体、端的に言ってその原因は一体どこにあるのか、どういうことを私たちは問題としてとらえていけばいいのか、それを解明をしていかなければ、依然としてこの混乱というものは、ある場合には非常に金融をゆるめる、もう全く野放図な状態で経済の極端な成長というものをつくり出して、四十八年からことしの初めにかけて、さあたいへんだということでいま引き締めにかかった。極端から極端を進むということは、これはたいへん大きな犠牲を伴うものだと私はしろうとなりにそのような感じがするわけです。  経済というものはそういうものであっていいのか。経済政策というものはやはり均衡のとれたものでなければ、極端から極端を歩くことによって極端なやはり犠牲が出るということ、それではいけないという気がするんですけれども、それを解消するために、やはり経済政策、金融政策というものが私は非常に重要になってくる。その誤りというものはたいへん取り返しのつかないようなものになってくるんではないかという気がするんですけれども、そういう意味からもう少しわかりやすく、いまの世界の先進資本主義経済が迎えている一体危機というものはどういうものなのか、それをきちんとわきまえた上で、それじゃ五十年度予算というものは過去の経緯の上からこうしなきゃならぬということが私は出てくるのではないかと思うんですが、そういう点もう少しわかりやすくできれば御説明いただきたいと思います。
  75. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) そういうことを申し上げる能力があるかないかは別にいたしまして、おまえどう考えておるかということでございますから、率直に私が考えているところを申し上げますと、私はまず二十二年間一ドル三百六十円で経済が国の内外動いておったということの根底には、やっぱりドルが安定した信認を世界的に持っておったことだし、それとそういう形においてリンクすることによって日本経済の軌道が、かたい軌道が用意されておったと思うんでございます。したがって国際経済の前途につきましても、そのドルの信認がゆるがない限りは大きなあやまちをおかすことなく展望ができたと思うんでありますが、ちょうど二十二年たちまして、四十六年にドルが完全にゴールドオフしてしまったということでございまして、それから世界経済はちょうど火が消えたような暗夜行路になってしまったと思うんであります。  したがって資源保有国、食糧にいたしましてもその他の重要な石油その他の資源保有国あるいは産出国は、安定した増産計画を実行し、そうして安定した価格で国際的に供給するというような従来のルールについて疑問を持ち始めたのも無理はないと思うんでございまして、食糧危機であるとか、あるいは石油危機であるというのは、根底にはやっぱりドルの危機の切れ目の間に咲いた花のような感じがしてならないのであります。したがって今日一番大事なことは、世界経済の基盤がしっかりしないと考えようがないわけでございますので、いまは通貨もフロートした状態でございますし、それがどういうところで安定のメドがつくのかというようなこともはっきりしないことでございますから、全くちょうちんを持たずに暗夜を行くようなものでございまして、各国の経済政策当局、通貨当局といたしましては、全く手探りで非常に薄氷を踏む思いでやっていかなければならないと思うのでありまして、明日はこうなるからこうするんだという明確な展望が持てない世界になってしまっておると思うのであります。  したがって今後の経済の運営は、国の内外にわたりまして非常に用心深くならなけりゃならぬということ、非常に憶病にならなけりゃならぬということ、計画的に明快に順序よくやってまいるなんということはなかなか望み得なくなったわけでございますので、全神経を振りしぼって、破局は回避しなけりゃならぬわけでございますので、その点については用心深い態度でいかなけりゃならぬのだということだけがいま頭を去来しておることでございます。
  76. 工藤良平

    ○工藤良平君 まあこの問題については、私どうも納得できませんけれども、もっとこれは時間をかけてやるべきことだと思いますし、特にIMF体制の崩壊以来日本の経済というものが混乱し、さらにさっきお話のように、ドルの流入に伴う国内の過剰流動性というものが、非常に現在のインフレの速度を増していったというようなこともいわれているわけで、私はそのようなことから現在の日本の経済政策というものがやはり大企業優先の、大企業に癒着をした、その言うなりの政策に終始しているところに最も大きな原因があるような気がするわけでありまして、こういう点についてはぜひ——ちょうどいま政治資金の問題等も巷間重要な問題として議論をされておるときでもありますし、私は五十年度予算編成にあたっては、大蔵大臣に基本的な問題について十分な議論を進めていただいて、国民に安心した、安定したやはり経済政策がとられるようなひとつ予算編成を望みたいと思っているわけであります。  で、さらに、それに関連をいたしまして、これは前後になりますけれども、経済企画庁長官にお伺いをいたしますが、四十九年の七月二十三日に、当面の経済政策のあり方ということで、簡単な文書でありますけれども、方針が出されておるようでありますが、この中で総需要抑制に対する方策、この中には総需要抑制を堅持していくんだということをおっしゃっているようでありますけれども、この点ひとつ概略を御説明をしていただいて、時間もあまりありませんから、あと私は具体的な一、二の問題について質問を続けていきたいと思いますので、まず経済企画庁長官からその点をお聞きをしておきたいと思います。
  77. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) お尋ねの件は、ちょうど大蔵大臣もおかわりになりましたし、また七月から八月にかけまして国内の政治社会経済情勢にもいろいろの動きが見られたときでありまして、巷間政府の経済政策が変わるのではないかというような想像もしばしば一部にございましたときでございましたので、私が経済政策の調整を担当する役柄といたしまして、ここにおいでの大蔵大臣、また通産大臣やらその他の経済大臣、さらに内閣官房長官等とその点につきまして、あっさり申しますと、いろいろの考え方が世上にあるようであるけれども、総需要抑制とか、あるいはまた物価対策優先というような政府の姿勢は変えないんだというような線をもって考え方をまとめていこうとした、その際の若干の考え方の項目をおさしになっていることと思います。いま私が申しましたように、また工藤さんもおおむね新聞等でそのことを御理解いただいていると思いますけれども、あの会合、また経済企画庁としてたたき台として持ち出しました数項目の考え方につきましては、政府の経済閣僚同意でございましてああいうふうにきまったわけであります。  その内容はここで申すまでもなく御承知のとおりでございますけれども、総需要の抑制、金融引き締めとか、あるいは設備投資の抑制とかいう姿勢は全体としてはその仕組みと申しますか、組み立て方は変えるものではない、しかしまた昨年の暮れから七月ぐらいまでの間にいろいろの個別対策——小手先の対策はやってまいりましたけれども、三月ぐらいから個別の物価あるいは全体の物価が鎮静の方向にあります状況に対応して小手先の個別物資対策というものをいつまでも続けることについてはこれまた問題があるので、経済の動きの実態に即応して経済の動きのメカニズムを破壊しないような措置をとるというようなことを申し合わしたわけであります。  さらにそれらを通じて今日私どもがいま持っておる考え方は、まだ物価は鎮静はいたしましたけれども、今後若干の公共料金等の問題もございますし、また米価の問題もございましょうし、また心理的に国民がこれから先また物価は上がるのではなかろうか、こういう憂慮の気持ちを持っておる状況でございますので、やはりあらゆる経済施策の中で物価対策というものを優先さしていくとするならば、総需要の抑制なり、あるいは経済の成長政策などということについてはいまここで転換させる時期ではない、むしろそういうものは従来の政策をここしばらくは続けていって、そして物価やまた世上でいわゆるインフレの基調というようなものが全く憂いがなくなったときからさらにその経済政策の新しい前進を進めるつなぎの時期というものがここしばらくはあってしかるべきだ、こういうふうに考えておるわけでございます。その線に乗っておそらく来年の予算編成につきましても、また今後の金融政策につきましても、また一部に手直しをしなければならないような若干の分野のことが起こりましても、それはそういう若干の手直しのことは心におきながらも、全体としては私はやはりここ当分はいままでの大筋としては姿勢を続けていくんだ、こういうことで政府の考え方もこれは私のみならずまとまっているもの、このように了解をいたしているところでございます。
  78. 工藤良平

    ○工藤良平君 いま概略の御説明がありましたが、これは過去の大蔵大臣あるいは経済企画庁長官の演説をずっとさかのぼって見てみますと、ほとんど同じように、福祉の向上、物価の安定、国際収支の均衡と、こういう三本の柱を立てて言ってきているわけですね。ところが、私は現実に見てみますと、福祉の向上、物価の安定と、こう言いますけれども、一方で非常に極端な高度成長を進める、高度成長と一体福祉の関係というのはどうなるのか。もちろん高度成長の中で福祉を高めますと、こう言うんですけれども、どうもいままでの経緯を見てみると、成長と福祉というのは二兎を追えないというような気がいたします。そうすると、いま伸び過ぎた日本の経済にブレーキをかけなければならないそのときにこそ私は、最も基本的な問題であるべき福祉の向上なり、あるいはあとで私は特に大蔵大臣にこれはお聞きをしたいと思っておるんですけれども、最も基本的な農業の基盤と、こういうようなものにいまやはり力を入れるべきではないのか、そういうことを考えてみると、この総需要抑制策の堅持というものをある程度弾力的に運営というものがなされていかなければ、特に長期的な展望に立たなければならない問題等につきましては、将来にたいへんな禍根を残すような実は気がするわけであります。これはあとで具体的に議論をしたいと思いますけれども、そういう気がいたしますが、基本的にはいま長官お話しのようなことになると思いますけれども、私はそこら辺をもう少し御見解を伺っておきたいと思うんです。
  79. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 基本的には私も工藤さんの考え方と全く同じでございます。  まず第一に、経済企画庁という役所は物価庁ではございませんで、物価の安定さえ期すれば、社会福祉やあるいは将来日本の人口が増大をして、労働生産人口というものもふえるのに対応して、それらの人々のエンプロイメントのことも考えて、そして将来に向かって最も適切なる経済政策を立てるのが私どもの仕事だと私は考えておるものでございます。しかし政府の方針をここで繰り返すまでもなしに、そういうことを考えるにあたっても、何と申しましても、やはりこれはいま工藤さんのおことばにもありましたけれども、物価がとどめもなく上昇をして、そうして、いわゆるインフレ懸念が続くということでは、私どもが期待をいたしておりまする物価以外の政策というものも、これは常にあと追いあと追いになる。あるいはまたあと追いでなしに、せっかくそういう計画を打ち立てましても、物価高によってそれが薄められたり消されてしまうと、こういうことにもなるわけでございますので、やはり物価の問題なり、いわゆるインフレ対策というものをまず先に考えながら社会福祉の問題や雇用の問題やらをそれにおくれないように取り上げていかなければならない。  中小企業の問題にいたしましても、あるいは食糧の問題にいたしましても、今日国際の状況を考えてみまするときに、またことしあたり、これは国際的に供給がいろいろ窮屈になるような情勢もなきにしもあらずということを考えますときに、いま工藤さんがおっしゃるような食糧の増産とか備蓄とか輸入とか、あるいはそれらに対するいろいろの組み合わせの問題も当然考えてまいらなきゃならないということを私は考えます。  しかし、それはいずれも私がこのごろ使っておることばで、ディレンマあるいはトリレンマばかりでなしに、国際収支の問題をも含めますと、いわゆるクワルトレンマと申しますか、四重矛盾、四重苦悩の問題でありますので、平面的にはいずれも成り立たない問題でありますけれども、私はそれを立体的に組み立てて、ちょうど高速道路と一般道路との関係のごとく、立体的に組み立ててやることこそ私どもの役目だと、こういうふうに考えまして大蔵大臣にもいろいろ御注文を申し上げたり、また農林大臣を激励したりしてまいらなければならないと思っております。
  80. 工藤良平

    ○工藤良平君 それでは私はもう少し、さっきちょっと税金の問題が出ておりましたから、これをあと回しにしてしまったわけですけれども、このように非常に異常に物価高が進んでおるときにこの減税の問題を一体どう考えるか。特にサラリーマン減税ですね。いまの税の徴収の状況というものを見ますと、ことし私、何月でしたかその問題で決算委員会で議論をしたわけですけれども、その際に捕捉率の問題が出ました。サラリーマンの場合には源泉徴収で全部取られますけれども、他の一般事業の場合には捕捉率の問題が非常に問題になってきておるわけですけれども、特に先般このサラリーマンの税金の問題で必要経費を認めろということで大島訴訟判決というのが出まして、問題を提起をしているわけですけれども、非常に近ごろ減税をやったやったと、こう言うんですけれども、いままでの経緯というものを見てみると、たとえば賃金労働者の中の納税者の比率というものは年々増加している。あるいは、たとえば新規学卒者の年間給与と課税最低限の比較というものを年次別に見てみても、必ずしもこの税金が安くなっていない、そういう傾向というものがありますね。以前はほとんど税金がかからなかったというのがだんだん高卒にかかるようになり、近ごろでは中卒までも全部税金がかかるというような状態になってきて、賃金労働者中の納税者の比率というものが年々増加している。決してこれは減税になっていないんじゃないか。一番正確に取られていくこのサラリーマンの税金というものが、必ずしも減税になっていないというような統計が出ておるようなんですけれども、一体こういうような時期に思い切った減税というものはやれないのかどうか。  さっき四十七年度決算を見ましても、当初の収入見込みからいたしますと、かなり大幅な、倍以上の収入実績があがっているというようなことから考えてみると、当然その翌年、四十八年度、昨年の予算では大幅なやっぱり減税というのがなされるべきではなかったのかと思うんですけれども、それはあまりなされなくて、四十九年度はかなりなされたようですけれども、そういうようなことが私は何か表面的には非常に減税ということがたやすく言われますけれども、実際問題としてはそうなっていないんじゃないかという気がするんですが、この点はさっきちょっと税金の問題が出ましたので、傾向としてちょっとお聞きをしておきたいと思うんです。それとまた、このサラリーマン減税に対する考え方ですね、その点をお聞きをしておきたいと思います。
  81. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) ずっとこれまで累次にわたりましていろいろ税制改正をやっていただきましたが、何と申しましても所得税にその重点があったことは過去の実績が示すとおりでございます。ただ、そういう減税をいろいろやりました結果でも、なお給与所得者の中で納税者のウエートがだんだんふえておるではないかと、あるいはその中でも特に中学卒業者あるいは高等学校の卒業者がすぐさま課税になるウエートが高まっておるではないかというような御指摘でございますけれども、確かにそれはそういう実績になっております。ただ、それは実は二つの面からの理由があると思われます。  一つは、むしろ税金よりは給与が非常に高くなってきたという結果でございます。雇用者所得が全体的に非常に伸びが高いという中でも特に中卒者、高卒者の初任給の伸びというのは、私が申すまでもなく最近は非常に高くなってきております。それを追っかけ追っかけ課税最低限のほうで、税制のほうでいかに対処するかということでございますけれども、確かに従来の課税最低限の問題を考えます場合には、ある時期においては確かに独身者の課税最低限を従来と比べてより多く引き上げるということをとった時期もございますけれども、なべて申せば実は私どもは、やはり何と言いましても家族持ちの課税最低限を引き上げるということにかなり努力をしてきたことは事実でございます。これは特に夫婦及び子供二人ないし三人の課税最低限というのは、その家族構成の中でも高く伸びてきたということは御了解いただけるだろうと思います。  そういう中で、独身者の課税最低限の伸びとそれを上回る初任給の増加ということから、どうしましても、先ほど御指摘のように、新卒者の課税のウエートが高まってくるということでございます。これに対しましては、実は常々心にはかげながらも、特に四十九年度の改正におきましては、私が申すまでもなく、非常に大幅な所得税の減税をやっていただきました。その中でも特にいわゆる給与所得控除の引き上げというのを大幅に認めていただきましたおかげで、この独身者の課税最低限というものは、これはもうここ何年来にない飛躍的な引き上げになったわけでございます。これはもう国際的に言いましても、夫婦子供二人の課税最低限はもとより、独身者の課税最低限も、これを比較しますればまず世界では一番高い部類に属するようになってまいりました。それは一に、先ほど申しましたように、従来家族構成の中でいわゆる扶養親族をたくさん持っておる人たちにより重点をかけてきた、その課税最低限の引き上げ方が、基礎控除のほかに配偶者控除、扶養控除というものも考えながらやってまいりましたのを、今回は特に基礎控除の引き上げに加えまして、給与所得控除の最低額を一挙に五十万円に引き上げたということで、この問題にかなりの解決を生み出したのではないかと思います。  いまお話しのように、給与所得控除がまだ経費を引き足らないのではないかというような御疑問があるやに承りますけれども、実は私どもは給与所得控除といいますのは、給与所得者のいわゆる必要経費を補って余りあるものを実は見ておるつもりでございます。中には、もちろん裁判になりましたように、御自分が必要経費と思っておられるものの中で引いていないものもありますけれども、これは実は非常に御本人のいわゆる消費生活の中に入るものと、それから給与所得を得るための必要経費となるものと、その分別がそれぞれ意見が違うところによるものでございまして、いわゆる給与所得控除は必要経費と、そのほかに先ほどいろいろな御指摘がございました給与所得者に伴いますところのいろいろな配慮というものを組み込んでおるつもりでございます。  しかも今回、先ほど申しましたように、大幅に引き上げましたということは、そういう点も十分勘案しての引き上げでございますので、最近見られますように、中学校、高等学校の新卒者がまあそれ以上に初任給が上回るということがございますれば、これはまた別でございますけれども、その課税最低限を上回って第一年目から課税されるというような事態は、昨年以前に比べまして飛躍的に改善されたものだと思っております。  今後私どもといたしますれば、やはり所得税というのは、常にいまのような課税最低限をそのまま引き上げることによりまして納税者の数とか、あるいは負担とかいうものを考えていくのがいいのか、いまや世界で最も高いような課税最低限を独身者から家族持ちの世帯に至るまでなった段階におきまして、一体それを続けていくのがいいのか、あるいはまた今後の物価の動向によりまして、いわゆる課税最低限の物価調整減税が必要なのかという点につきましては、なお今後の検討を待ちまして、いずれ来年度の改正のときにまた御批判を仰ぎたいと思っております。
  82. 工藤良平

    ○工藤良平君 必要経費の問題については、今度の大島訴訟判決の内容を見てもかなりえぐった議論がなされておるようであります。私はきょうその問題を詳しく議論するつもりは毛頭ありませんけれども、ただ確かに給与所得が上がった、最低限が上がった、したがって税金もかかるようになるのだということは、そのとおりだと思います。しかし国民総生産からいたしましても、とてつもない大きな段階になってきておるわけですね。ですから当然給与所得の最低所も上がってきておる。しかし、いまのように異常な物価高の中で、そう単純に言えるかどうか。むしろ私は憲法を引き出すわけじゃありませんけれども、やはりいま私たちが最低の生活をする場合に、一体どういう程度のものが必要なのかということから検討してみると、必ずしもいまの給与所得者に対する私は税金というのは、そう軽いものではないという判断が出てくるわけで、この点については、いま局長お話しのように、やはり今後の十分な検討課題としてぜひ進めていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  時間があと二十分しかありませんから、もう一つ農業の問題で、私はいつも必ず農業の問題を申し上げるんですけれども、これだけは言っておきたいということを大蔵大臣にしっかり聞いていただきたいと思います。  いま、日本の貿易収支の中で石油と食糧という問題ですね、これはたいへんな問題になってまいりました。いま農林省の官房長いらっしゃいますけれども、大体四十八年度で一体どの程度の食糧の輸入をなさっているか、そしてまたこれは近い将来一体どの程度ぐらいまで輸入するものだろうか、外貨をどの程度必要とするものだろうか、非常に私は不安に思うわけですけれども、この点が一つと、さらに農産物の日本の輸入量が世界農産物貿易に占める一体シェアというのはどういう程度で、さらにその傾向はどうなるのか。近ごろ、八〇年代における国際的な食糧事情という問題が大々的に出てきておりますけれども、特にこの食糧という問題は一年や二年の問題ではなくて、やっぱり十年、二十年という長期にわたった見通しを立てていかなければならない非常にむずかしい問題でもありますけれども、基本的な問題でありますから、この点を、私は過去の四十七年、八年という予算の編成を見ながら、やはり五十年に向けてのいまのこの総需要の中における一体こういう基礎的な問題についてどう私たちが対処していったらいいのか、そういう議論をちょっと時間のある限り進めてみたいと思いますので、その点まず貿易関係からお聞きをしたいと思うんです。
  83. 大河原太一郎

    説明員大河原太一郎君) 御指摘の農林水産物の総輸入額に占める割合でございますが、これは農産物、水産物、林産物それぞれございますが、総計といたしまして四十七年度では六十七億三千四百万ドルでございまして、総輸入の二九%ということに相なっております。ちなみに農産物では一八%程度ということでございます。で四十八年度は、先ほどのお話にもございましたように、国際農産物価格等が高騰いたしまして、名目の金額は百十八億八千百万ドルということに相なるかと思うわけでございますが、石油製品その他原材料価格の高騰もございまして、総輸入額が三百八十三億千三百ドルということになっておりまして、その総輸入額に占める農林水産物のシェアは三一%程度と相なるかとわれわれは計測しておるわけでございます。  次に、農産物の相当大きな輸入国である日本の世界農産物貿易に占めるウエートはどうかというようなお話でございますが、これにつきましては、それぞれの産品によって差があるわけでございますけれども、おおむね一割というのが世界農産物貿易に占めるウエートというふうにわれわれは数字としてつかんでおるわけです。
  84. 工藤良平

    ○工藤良平君 いま官房長のお話しのように、約百二十億ドル、いま一ドル三百円として計算をいたしましても三兆幾らというたいへんな食糧の輸入という状態でありまして、これは現在の予測からいたしますと、さらに大幅に進んであるいは二百億ドル程度にもなるんではないかというような予測までも言われておるたいへんな問題であります。したがって、私は、この食糧という問題を一体今後どのように考えるのか、経済合理性を徹底的に追求していく品目として食糧を見ていくのか、そうではなくて、やはり食糧問題を明らかに資源問題として転化をしなければならない時期に来ている、そういうたいへん重大な時期に来ていると私は理解をしているわけですね。  で、先日、FAOのベルマ事務局長は、日本は国内の耕地を休ませて世界の食糧を買いあさっている。したがって日本の豚や鶏がアフリカの諸国民の食糧を奪っているんだという極端な議論までも出てきておる状態であります。もちろん私は全部日本の国内で自給せよということは主張いたしません。できるだけ可能な限りということで表現はやわらげたいと思いますけれども、しかし、やはり根底にはこのような二百億ドルといいますと六兆円ということになりますから、たいへんな食糧輸入をしなければならないという不安な状態ではたいへんなことでありますから、この点を、特にいまくどくど申し上げません。日本の農村の状態がどうかということは口をすっぱくして言っておりますから、大蔵大臣も十分に御承知だと思いますから、それは申し上げません。  私が繰り返して申し上げたいことは、やはり食糧問題はいまや資源の問題として日本が真剣に取り組まなければならない問題になってきたんだと、したがって、そのためにも、まずやはり国内における食糧を確保するというたてまえを堅持していただきたい。しかし農業というものは三年や五年のサイクルでは容易に解決できない問題、これは十五年、三十年という長期の展望に立たなきゃなりませんから、一時的には悪い状態もあろうけれども、それは進めていかなきゃならぬ私は基本的な問題ではないか、このように思いまして、昨年の暮れ、福田大蔵大臣にも私はその点を非常に主張いたしまして、福田大蔵大臣も非常に総需要抑制という状態ではありましたけれども、やはり畜産、特に牧野改良を中心にして大々的なそういう面についても積極的な施策を打ち出そうということを実行していただいたわけですけれども、ことしの場合、より一そうそのことが私は強調されなければならない状態に来ておる、このように思うわけでありますが、その点、大蔵大臣としてどのようにお考えになっているか、基本的にぜひ前向きの御意見をいただきたいと思います。
  85. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) わが国の食糧需給問題、これは農業政策の領域ばかりでなく、国政全体から見まして最重要な課題の一つであると思います。したがって、わが国の国内における農業政策につきまして特段のくふうをしなければならないことも工藤さんが御指摘のとおり考えております。  しからば、どういう考え方でどういう部面に何をやるか、また何をやらないかというようなことにつきましては、私ども最重要課題の一つとしてとくと検討していきたいと思いますけれども、まず農林省御当局のほうでいろいろ御腹案をお持ちになって御相談をいただけると思っておりますが、相ともに真剣な検討を通じて国民の期待にこたえなければならないと考えております。
  86. 工藤良平

    ○工藤良平君 その点、もう少し私具体的に大臣に申し上げておきたいと思いますけれども、やはりかつて四十万人という新規労働者が農村に定着してくれたわけです。ところが、いまは一万九千人——二万人を割った新規労働者が農村に残る人たち、私たちはこのとらの子をどう守るかということ、この人たちによって日本の食糧を確保させるという基盤に立たなければならないわけなんですね、そういう追い込められた状態にある。  しかし、それは私はやり方はあると思うのですね。そういうにない手、後継者に一体おれたちはいま何をやらなければならないかという目標を与えるということ、これが非常に大切であります。  今日まで日本農業の規模拡大をするということに努力をしてまいりました。しかし、それは私たちの希望とは違った方向に行ってしまった。これも解決をしなければならぬ問題であります。生産力をどのようにして増強していくか、そのための土地基盤整備を徹底的にやらなければならぬということも非常に大事であります。あるいはまたいま裏作を含めて土地利用率が一〇三%にまで低下してしまった。この狭い日本の国で、食糧が足らないところで、かつては一五〇%の利用率であったものが一〇三%になった。これはどこに起因しているのか。非常な高度成長の中で町へ町へと引き出されていった、そのような状態というものがこのような実は悲劇を生んでおるわけであります。それはやはりいまの穀物生産をどのようにして私たちが立て直すかということを真剣に考えなければならぬ問題にも立ち至っているわけですね。ですから私は、そういうもろもろの問題をいまこの時期にこそ国が積極的に乗り出して対策を講ずるべきだ。経済合理性を追求するあまり、かえって長期的な展望を見失うということがいまの農政にあるのではないか、財政的なそういう関係からのゆがめられたものがあるのではないかという気が私は実はいたすわけでありまして、その点について特に大臣に申し上げておきたいと思います。  それから、最後の問題として、これはごく最近出たようでありますけれども、大蔵省が消費者米価の引き上げについてということでPRを始めたようでありますね。これはもちろん財政当局としては私もわかります。一万四千百五十六円という、そういう生産者米価がきまった。これによりますと、実は逆ざやも逆ざや、結局半分ずつ、国が半分、消費者が半分ということでたいへんなことになってきたから、これはたまらぬからひとつ消費者にも負担をしていただこうという議論ですね。もちろんそれは財政当局としては私はわかります。全くこれを据え置きにしてしまえということ——私に言わせるならば、ある一定の部分は、これだけは絶対に見ますよというものをむしろ打ち出すべきだろう、私はそのように考えておるのですけれども、ただ、ここのこの文書の中で一つ気になりますことは、この消費者米価の引き上げをやりませんと、農林予算がかなり圧縮を受けますよという何か脅迫的な考え方が出ているのですね。これは私はひとつぜひ考え方を改めていただきたいと思うのです。  確かに一兆二千億なんという食管に対する繰り入れをしなければならぬということになりますと、全体的に農林予算が約九%から一〇%ぐらいでいま進んでおりますけれども、これだけ取られますと、他の農業予算というものは相当圧縮を受けますから、それじゃ困るわけなんですね。ですから、やはり米の問題は私は全然別個の問題として考えるべきだと思うのです。いま言ったように半分を消費者のために、もちろん全く消費者のためだけじゃありません、生産者のほうにもこれは恩典はあることは事実なんでありますけれども、しかし農林省の四十二年の積算の方式をとりますと一万七千六円という積算が出るそうでありますから、そうすると一万四千円なんというのはまだ低いということに実は計数的にはなるわけでありますから、それはきょうは論外といたしましても、食管制度の問題については、これは全然別個の、別ワクとして考えていただく。  むしろ、私がいまさっき申し上げましたように、基本的に農業を資源としてとらえるという考え方の上に立って農林予算を組む、これは私が農業出身という意味合いではなくて、大きな日本の立場から考えてみても、私はそのことは非常に大事だと思うのです。  しかし大蔵大臣はたいへん実力者でありましょうけれども、そう一気に農林予算だけをということにはまいりませんでしょうけれども、しかし、私は、画一的な平均的な総需要抑制という立場でいま農業というもののこの大切な基盤の整備をすることを怠るということは、今後二十年、三十年たった将来においてたいへんな禍根を残すということを心配するがゆえに、この中に書いてあるような考え方はひとつ一掃していただいて、率直な意見を大蔵省が出していただくということであれば、私どもこの問題についても十分に議論を前向きにしたいと思っているのですが、大蔵大臣の真意をひとつお聞かせいただいて、もし私の意見とまっこうから対立するような御意見があれば、もう少し時間をかけて議論をしたいと思いますが、私はそう大きな違いはないと思いますし、ぜひ大蔵大臣の真意のほどもお聞かせいただくし、食管制度に対する考え方あるいは農業予算に対する考え方を、最後に率直な前向きの御意見をいただきたいと思います。
  87. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 大蔵省の任務は、資源の公平なかつ適正な配分を予算案という形を通じて実行してまいることだと思うのでございます。したがって農林省予算とか、米価、食糧管理予算とかいうような狭い視野に立ってものごとを考えたら判断を誤ると思うのであります。  したがって、われわれといたしましては、今日食管会計が置かれている立場、その運営上のいろいろな技術的な支障等ももちろん考えなければなりませんし、国全体から考えまして、米あるいは米食というものの位取りをどのように評価したらいいかというような点も考えて、できるならばこういった片寄った資源の配分というようなことを適正に是正してまいるのがわれわれの任務ではないかと思っているわけでございます。  しかし、これをどのように是正していくかということにつきましては、財政当局がその職場の都合によりましてこうすべきであるなんということは考えるべきではないと思うのでありまして まず来月に入りますと農林省のほうで審議会をお開きいただいて、御意見をいろいろ御聴取いただけることになっておると思いますが、そういった点、出されました御意見も十分拝聴しなければなりませんし、また、ことしの補正予算から明年度予算を通じまして、資源の配分をこういう条件のもとで精一ぱい考えていくにはわれわれ財政当局としてはこうあるべきだという点につきましても、十分国民の皆さんの御判断を仰がなければならぬと思っておりまするし、また工藤さんが御指摘のように農林予算の分野におきましても、資源の使い方自体といたしまして、こういう姿のものがいいのか、それともあなたの言われる土地基盤整備等を中心といたしました長い展望に立った政策に資源の充当を考えるのがいいか、そういう問題もおのずから私は出てくるのではないかと思うのでございまして、そういった点、十分お話を伺いながら適正公平な配分を考えてみたいと思います。  もっとも、いずれにいたしましてもこれは容易ならぬ問題でありまして、必ず大きな論議を呼ぶに違いないと思うのであります。みんなを満足させることができないばかりか、みんなを不満足に追いやるような結果にならないという保証はないと思うのであります。しかしながら、そういう場合におきましても、現在よりは少なくとも改善になったということにはしなければ責任上申しわけないと思っております。
  88. 工藤良平

    ○工藤良平君 時間が参りましたからこれで終わりますが、私が私なりに考えているのでは、日本のような零細農業の場合に、確かにいまのような状態では価格的な補償の中で農家の生活をささえてやるということは非常に大事だと思うんです。しかし私は本来的にはこの価格問題というのは付随的な問題であって、やはり農家が農業生産によって食べられるということが原則である。そのような環境をどうつくってやるかということが今日まで日本の農業の中に非常におくれておったということが国際的に日本の農業の立ちおくれというものを来たしているというふうに私は理解しているわけでありまして、おくればせながら、それをいまやらなければならぬ。それをやらなければいまどんなに小手先の価格問題で補償してみたところで、それは問題の解決にならない、こういうような気がするわけで、農業のある限り、私は、人がかわろうとも、大臣、これはスッポンのようにつきまとって予算要求を徹底的にやりたいと思っておりますので、ぜひひとつ五十年度予算の際にはそういう点を御考慮に入れられまして、大臣の良識に訴えて、私はこれからの対策を要求して、この質問を終わりたいと思います。
  89. 松岡克由

    ○松岡克由君 質問に入る前に、先月の十七日に日航のジャンボ機がニアミスをしているんで、それについてちょっと運輸省または大臣にお尋ねしたいんですけれども、このニアミスの事件というものの概要、これをひとつ簡単明瞭に、どなたになりますか、事件を説明してほしいと思います。
  90. 中村大造

    説明員(中村大造君) お答え申し上げます。  七月十七日、千歳の空港から東京に向かっておりました日航ジャンボの五二四便、それから二十一時五十六分に東京を出発いたしましてホノルルに向かっておりました日航ジャンボの六二便、これがいずれも東京ターミナルレーダー管制所のレーダー管制を受けまして、それぞれ六千フィート、五千フィートの高度を指示されておったわけでございます。両機の飛行コースは千落の上空で平面的に交差することになっておりますので、レーダー管制を受けております場合でもその千フィートの高度間隔を保持する必要がございます。したがって、そのような指示をしておったわけでございます。  で、両機はレーダースコープ上では八マイル及び三マイル、それぞれ接近した地点でそれぞれの航空交通情報の提供を受けまして、それから二十二時一分ごろになりまして相互に交差をしたわけでございます。その直後に日航の五二四便、東京に向かっております便でございますけれども、これが六千フィートで飛行するようにという管制指示に反しまして四千フィートに降下したこういう報告がございました。したがいまして当直の管制官はそこで何らか両機間にふぐあいが生じたのではないかというふうに懸念したわけでございます。その時点では両方の機長から当局に対しましてはいわゆる異常接近という報告提出されていなかったわけでございます。で、とにかくそのような状況で両機がクロスいたしましたので、東京ターミナルレーダー管制所は日航の五二四便が管制指示違反の疑いがあるということで調査を行なったものでございます。  現在までに判明したところによりますと、日航五二四便のフライトレコーダーの記録は八千フィートから四千フィートまでの間、連続的に毎分二千フィートずつ降下したことを示しておるわけでございます。したがいまして管制官が指示いたしましたような六千フィート、千八百メートルで水平飛行をした、こういうふうな模様はないわけでございます。以上が当日の発生いたしました事柄の概要でございます。  これにつきましては、当局といたしましては、管制指示違反の疑いが非常にあるわけでございますので、目下、慎重に調査をいたしておるわけでございます。
  91. 松岡克由

    ○松岡克由君 端的に言いまして、ニアミスの原因というものは羽田へ着く機長、五二四便ですか、この機長が聞き間違えたのであるか、それともまたほかに理由があるのか、その辺明らかになっているとしたら答えていただけませんか。
  92. 中村大造

    説明員(中村大造君) 現在、私どもは会社を通じまして当時のフライトレコーダーの記録を調査いたしておるわけでございますけれども、それによりますと——これは現在まだいろいろ調査か必要でございますけれども、管制官の指示いたしました六千フィート、こういう指示を聞き違えた、これはどういう状況で聞き違えたのか、機長が聞き違えたのか、あるいは副操縦士が聞き違えたのか、この辺がこれからの調査でございますけれども、とにかく聞き違えて、その指示どおりの行動をとらなかったということはほぼ間違いない事実であるというふうに承知いたしております。
  93. 松岡克由

    ○松岡克由君 まあそういったことがあるからニアミスということになって、聞き違えてなければ別に何でもないことなんですが、その聞き違えるということは、これはもう芸人の舞台の間違いと違いまして、命がかかっておる間違いでございますので、これはたいへんなことなので、おそらくいま判明しているところ、まあ新聞などの報道によると、いま答えたとおり機長または副操縦士ですか、間違いであるということ。  この間違いは間違いとして後におきまして、これは七月十七日にたしか事故、これの新聞発表が八月十五日、ほぼ一カ月おくれている。これはどういうところに原因があるんですか。日航同士のミスだから内々に済ませようとしたというような勘ぐりはあるんですが、どうでしょう。
  94. 中村大造

    説明員(中村大造君) 特に発表をおくらせたという意識的なことはございません。  これは先ほども申し上げましたように、通常ニアミスが発生いたしました場合には、それに関係いたしました航空機の機長、そのどちらか一方がニアミスがあったということを機長報告書というかっこうですぐに当局のほうへ報告をすることになっておるわけでございます。で今回の場合、これが客観的に見てニアミスであったかどうか、どの程度両機の間隔があったのかどうかということをこれから調べなきゃなりませんけれども、少なくともその報告が当局のほうには来なかったわけでございます。したがいまして通常のいわゆるニアミスとしての措置をすぐさまとるということができなかったわけでございます。  ただ管制官が認識いたしました限りにおきましては、それから両機の高度、位置等から考えますと、しかも先ほど申し上げましたように八千フィートから四千フィートに二千フィートずつ降下してきておる、こういう状況から考えますと、ちょうど両機がクロスした地点におきましては両機の間隔が相当接近しておったのではないかというふうな疑いが持たれるわけでございますが、これにつきましては、当該五二四便だけではなく、ホノルルに向かって飛んでおります六二便、これのフライトレコーダーにつきましてもやはり調査いたしませんと、この辺の事実関係がわからないということでございます。  とにかく本件につきましてはそういうふうな疑いがございましたので、直ちにその内容につきまして調査をいたしたわけでございます。そしてそれに対しまして日本航空株式会社のほうから八月十三日付で回答がきたわけでございます。それは日本航空株式会社といたしましても社内で調査した結果、管制指示違反の疑いがある、こういうことを認めて十三日に回答をしてきた、それで一応発表した、こういうことでございます。したがいまして意識的にそういう事実が判明したものを、ニアミスの事実があったものを発表を怠った、こういうことではございません。
  95. 松岡克由

    ○松岡克由君 そうおそらく答えるだろうと思ったのですけれども、意識的にやられたらたまったものじゃない。しかし、いま通例になっているわけですね、そういったことが。  かりにそれがミスであるかないか調べていたから、まだ判明しないからおそらくなったというのは、これは私はすなおに考えて怠慢だと思う。ミスであるかないか、それは主観、客観いろいろあるし、おそらくニアミスだと思うから新聞もこう取り上げてくるわけなんで、これはあとに至ったら要するにミスでありますから、ほとんど八〇%ミスである、それをわからなかったから、まだ結論が出ないからというのはまさか子供にあめしゃぶらせるのじゃあるまいし、こんなのは日航側にも返事にも何にもなりゃせぬですよ。それは運輸当局としてもやっぱり厳重に、これからもあることで、一口に言うとぶつからなかったからまあまあというようなもんみたいな気がします。これはぶつかったらもうたいへんなことなんですからね。ぶつかるぶつからぬというのは紙一重で、またこのニアミスなんというのは聞いてみるとたいへんにあるべからざることなので、とまっている車にうしろからぶつけるみたいな全く初歩的なもので、飛行機関係に言わせると言語道断のことである、こういうことなんでございますね。  だから、この辺のやっぱり発表なりをもっともっといろんな意味で深く追及して、どんどんどんどん発表していかないと痛くもない腹をさぐられる。日航側はそれでいいかもしらないけれども、それを放置しておいた運輸省にも責任があるんではないかと、最高責任者として大臣一言答えてほしいと思います。
  96. 徳永正利

    国務大臣徳永正利君) ニアミスの問題は近時いろんなところから取り上げられて、また起きておる問題でございまして、もうまことにこういうことは遺憾のきわみでございます。  特に、いま御指摘のございました問題につきましては航空局長が御説明申し上げたとおりでございますが、お説のように問題がなかったからこそでございますけれども、これはもう許される問題じゃございません。日本航空に対しましても、またその他の航空会社に対しましても、そういうことのないように、これはいろんな原因があると思います。そういうものを一々拾い上げまして厳重に警告し、再びこういうことのないように注意をしてまいりたいと思っております。
  97. 松岡克由

    ○松岡克由君 その答えでけっこうでございます。  やっぱり何らかの方法でこの事故の原因を公表し、そして責任はおそらく機長なり副操縦士に私はあると思う。またその一個人に押しつけないで、自衛隊のそんな事件もありましたですね。やはり日航の責任として所在をはっきりさせることをひとつ大臣よろしくお願いを申し上べて、次の問題に入ります。  航空行政についてなんですけれども、これは小さな事件のようですが、意外に大事だと思うので取り上げてみたいのですけれども、この六月の末から七月の初めにかけてアメリカのフランク・シナトラという、これは有名な歌手でございます。これが羽田に着陸したときに、これは一般的な問題にもなったのですけれどもね、まあ御承知のとおり有名な俳優であり有名な歌手であるわけですが、これは来日目的というのは、外務省、どういうことで来ているのですか。
  98. 穂崎巧

    説明員(穂崎巧君) フランク・シナトラの来日の目的は公開興行が来日の目的でございます。
  99. 松岡克由

    ○松岡克由君 そうすると要するに一般ということですね、そうですな。公用でなく一般ということですね。
  100. 穂崎巧

    説明員(穂崎巧君) いま公用とおっしゃいましたが、公用ではございません。
  101. 松岡克由

    ○松岡克由君 そうですね。と、まあ私的旅行と解釈してよろしゅうございますね。
  102. 穂崎巧

    説明員(穂崎巧君) そうでございます。
  103. 松岡克由

    ○松岡克由君 その私的旅行である外国の一歌手が白昼堂々と自分の飛行機、自家用機ですね、ジェット機を羽田空港に乗りつけるということは、一般、われわれ大衆演芸を通して大衆と同じサイクルで生活しているつもり、だれしも、よほどのファンならやんやと言うかもしれないけれども、どうも奇異に感じる。これは精神的なものですから、感覚的にそう思うのはおまえのかってだと言うかもしれませんが、これは法律的に許されている根拠をちょっと簡単に説明してくれませんか。
  104. 中村大造

    説明員(中村大造君) お答え申し上げます。  これはわが国及びもちろんアメリカも加入いたしております国際民間航空条約でございますが、ここの第五条で、いわゆる定期航空機以外の航空機が他の条約締結国の空港に、これは指定された空港に限りますけれども、それに着陸するということは条約上権利として認めておるわけでございます。ただ、着陸する場合には、その着陸空港の空港の管理権に基づきますいろいろな時間帯とか、あるいは航空法上のいろいろな法令の順守義務とか、こういうものはございますけれども、指定された空港に通常の航空路を通って着陸する場合にはこれを認める、こういうことになっておるわけでございます。
  105. 松岡克由

    ○松岡克由君 そうすると、一口に言って、その航空条約を結んでいる国の人間ならば、たとえばオナシスだろうがアラン・ドロンだろうが、そうなっていればどんどん着いていいということですね。
  106. 中村大造

    説明員(中村大造君) 御指摘のとおりでございます。
  107. 松岡克由

    ○松岡克由君 そうなってきますと片っ端から着いたらえらい目にあいますわな。ですからこそいまちょっと言ったように、まあ支障がなければと言外にそう言っていましたですよね、そういうことでしょう。支障がなければいいと、やっぱり一ぱいになっちゃったら、われもわれもとこう来たらどうしますか。これはかまわないですか。
  108. 中村大造

    説明員(中村大造君) 御承知のように、現在、羽田につきましては一日の発着機数を制限いたしております。したがいまして、当然、そういう全体の制限のワク内に入るという前提、それからもう一つ、各時間帯ごとに、たとえば三時間なら三時間を通じて何機というふうに、そういう時間帯ごとの制限も課しておる、こういうことでございまして、したがって向こうの着陸希望時間が空港のそういうふうな制限に合致しない場合にはもちろんこれは着陸を拒否する、あるいは着陸時間を変更させる、こういうふうな措置を講ずることになることと思います。
  109. 松岡克由

    ○松岡克由君 いまあなた方からいただきましたここに同氏のスケジュールですわね、これは六月二十七日サイパン島より来ておりまして、十二時に東京に着いている。一時三十分に東京を出て名古屋へ一時間後の二時半に着いているんですね。これは間違いないですね。
  110. 中村大造

    説明員(中村大造君) ええ。
  111. 松岡克由

    ○松岡克由君 そうすると、おかしいのは、十二時に羽田に着いた飛行機が一時間半後には名古屋に行っているんですね。でシナトラ氏自身はそこでおりているんですね。と、ぼくら素朴に考えると、羽田ではパーキングの余地がないんだと。あればそこに置いておけばいいんですから。東京に用があるんですから。だけど、そのパーキングの余地がないから名古屋へ行ってくれと、こう当然考えますね、どうですか。
  112. 中村大造

    説明員(中村大造君) 当時のフランク・シナトラ氏の日本でのスケジュールは、東京及び名古屋におきまして興行その他用事をする、こういう旅行目的であったようでございます。で確かに先生おっしゃいましたように、シナトラ氏は東京に着きまして、東京で用事をいたしまして、その後名古屋空港に向かっておることは事実でございますけれども、確かに東京羽田空港は、先ほど申し上げましたように、発着回数はもちろんのこと、駐機場その他につきましても非常に混雑いたしておるわけでございますので、シナトラ氏も名古屋へ行く用事があったわけでございますけれども、先に航空機を一時間三十分後に名古屋のほうに向かわせた、こういうことでございます。
  113. 松岡克由

    ○松岡克由君 違うんだ、それは。シナトラは東京でおりちゃっているんですよ。それで飛行機だけ名古屋に行っているんですよ。ということは、素朴に考えると東京はもう一ぱいなんだと。一ぱいだから名古屋へ行ってくれと。東京に用があるなら名古屋から引き返したってかまわないんですよ、二時間で来られるんですからね。で飛行機が強引におりちゃって置くところがない、しようがないから名古屋へやったんだと。なら、はなから名古屋へ行きゃいいんだ。ところが、あれは帝王とか言われましてね、いろいろ政界につながりがあるとか、またはうわさによるとマフィアといろいろ関係があるという、まあうわさであってほしいのですが、そういったことがあると。彼のわがまま、彼のメンツ、東京つまり日本の首府のどまん中におりてやろうじゃないかという、こういう一個人の圧力に私はわがままを許してしまったような気がするんです。そうでなければあそこでおりる必要は全くないんです。名古屋に用があったら名古屋に行きゃいいんです。そうじゃないんです、彼は東京におりたかった、東京に必要があった。名古屋に行ってないんです、それから。まあかりに行ったとしても、こんな満ぱいのところにおりてくる、一歌手が。  いままで来ている——そちらからいただいた個人の飛行機を使って来ている人たちですね、これはそうそうたる人たちが来ていますね。少なくともそれは人気者かもしれない、それはすばらしいアーチストかもしれないけれども、やっぱり一国家ということになるとそんなにかかわりがあるという人間じゃありませんで、やれ石油関係だ、それから米国の農務長官だ、こういった人たちに比べて、こういう人たちがある程度無理をしても、国益ということでもってやるなら差しさわりないけれども、これを許してしまっているこの事実ですね。あのシナトラという人はたいへん評判の悪い人で、その後豪州でもえらい騒動を起こしたという記事を私読んでいますね。何かこういったものに対して少し甘いのではないか。この事件を、いま私がしゃべった、または答弁したことを聞いていまして、運輸大臣どうお思いになりますか。
  114. 徳永正利

    国務大臣徳永正利君) 私、その点まだつまびらかにいたしておりませんが、もしシナトラ氏が強引に東京空港を願、また東京空港当局がそれに応じたとすれば、お説のようにまことに遺憾な事件でございまして、こういうことのないようにしなければならぬと思っておりますが、その辺をさらによく調査してみたいと思っております。
  115. 松岡克由

    ○松岡克由君 それから、もののついでなんですけれども、着陸料とか、それから何といいますか航行援助施設利用料またはパーキング料ですね。これはたまたま話があったからこれを基準として言うんですけれども、二十六トンのジェット機で飛んできまして、これは羽田の着陸料が一万五千九百円というんですね。名古屋が五千四百円というんです。同じく名古屋で航行援助施設料というのが四十円。これもいろいろとレーダーや管制塔の世話になることも含めて四十円というんですね。私はこの四十円というのにひっかかりましてね、いま地下鉄で一区間行ったら帰ってこられないぐらい、四十円では。で彼は八日間いたんです。八日間のパーキング料が一万八千六百四十円。一日三千円なんですね。私は、こういうのを見て、何な抜け穴というか盲点があるのではないか。——まあ安いのにこしたことはないと言えば言えるけれども、四十円、一日あれだけの飛行機がとまっていて三千円のパーキング代。へたすれば自動車でも取られますわね。何かちょっとこの辺まで行き届いてないんではないか、そんな気がしますが、この意見はおかしいですか。
  116. 中村大造

    説明員(中村大造君) 確かに四十円という価格といいますか、値段は非常に安いと思います。  ただ、この利用料のきめ方でございますけれども、これは現在のきめ方は、大ざっぱに申し上げますと、いわゆる国内相互間の航空機で、しかもそれが自家用の場合には四十円という非常に安い額にきめておるわけでございます。したがいまして自家用というものについてのワクのきめ方がいいか悪いかということは別といたしまして、今回の場合に当てはめますと、このシナトラ氏の乗った飛行機がサイパンから羽田に飛んでまいりましたときの、その場合の航行援助料というものは八万六千四百円ということで取っておるわけでございます。ただ、それが国内相互になりますと、これは日本の飛行機でも同じでございますけれども、自家用の国内相互間ということで四十円というふうにきめておるのでこうなったというので、このきめ方自身がいいか悪いかということにつきましては、もう少し全般的に検討をしなければいけない、こういうふうに思います。
  117. 松岡克由

    ○松岡克由君 それでけっこうでございます。  さて、こういう問題というのは、意外に一般大衆というのはこまかいというか、専門的なことはわからない。しかしシナトラみたいな、そういったどっちかというと陰を感じるような一個人に堂々と羽田を占領されるというイメージにつながるんです。非常に大衆というのは、それはファンならいざしらず、ファンはやんやと言うかもしれない、しかしその反面、私たちはひどいじゃないかと、一体どうなっているんだと、そういう感じがする。したがって質問をしてみたわけで、これは日本のやっぱりメンツということにかかわりのあることですから、こういった小さなことかもしれませんか、大きなことにつながる一こういうことを大事にしないから自民党の票が減るんじゃないかと反省もしているんですけれどもね。  次に、成田空港の問題なんですけれども、いま羽田がたいへんなラッシュでございますね、御承知のとおり、とにかく満ぱいの状態ですと。で、これ最初の見通しではたしか四十六年の四月、それが今日に至るまで何にも開港の予定が立たないというそのおくれというのは——ちょっと私は三十分しか時間がござんでんでね、手短にひとつ答えていただきましょう。
  118. 中村大造

    説明員(中村大造君) おくれの原因でございますけれども、当初四十六年の四月、これが開港目標であったわけでございます。ところが第一段階でございますその用地の取得、これが予想以上に困難をきわめまして、賛成派の住民とは合意に達したわけでございますけれども、反対派については非常に困難をいたしまして、結局、四十六年の二月と九月の二回にわたりまして代執行を行なう、こういうふうな非常手段によって当面開港に必要な第一期工事分の五百五十ヘクタールを確保した、こういうことで、まず用地の取得に時間が手間どったということでございます。  その後、その用地内に施設の建設が順調に進んでおるわけでございますけれども、次は、その燃料を輸送するためのパイプライン工事につきまして、千葉市内を通過する部分につきまして、道路等を横断する地点で工事が非常に長期間を要するということがその時点でわかったということ。それから、そこで地元の非常に反対が起こりまして、中断のやむなきに至ったということで、結局四十七年の八月に至りまして、とにかく暫定的な燃料輸送方式を採用しようということになりまして、その後いわゆる暫定パイプラインというふうになりまして、現在その工事を進める段階に至っておると、こういうことで、そういうふうないろいろな困難が重なって開港の遅延ということになったんだろうかと思います。
  119. 松岡克由

    ○松岡克由君 用地買収——買収といいますか買う。それからパイプラインと、こういったことです。で、最初たしか三つの時期を明らかにしているわけですよね。最初が四十六年の四月、それから四十七年の六月ですが、それから昨年の三月ですね。一番おくれても四十八年の三月には何とかなるだろうという予定だった。人間のやることですからいろいろと遅速——おくれたり速くなったりすることはあると思うんですけどね。私は何かいまになってこんなことは言っても始まらぬ、死んだ子の年を数えるようですけれども、ぼくは予想の甘さ、たいへんな甘さがあったんではないか。たとえば最初調べたところによると、結果論ですけれども、木更津だとかまたは霞ケ浦とかいろいろ案があった。いまになってみると木更津沖のほうがかえってよかったんではないかと、そんな気もする、このパイプラインの問題について言いますとですね。いまさらそんなことを言っても始まらないのでございますけれどもね。私はやった以上当初の計画について進むより手がない、これはもうそのとおり、これは空港が必要でないというなら別ですけれどね。やっぱりどう考えてもいまの羽田の過熱ぶりといいますか過密ぶりを見ると、空港が必要ではないという意見は成り立たないと私はこう思います。だから、それは乗らない人にとっちゃ、おれは乗らないからいいやと言かもしれません。少なくとも飛行機を利用する人にとっては、あの状態を少しでも理解できたら、または知ったら、冗談じゃないと、ひとつ空港を——成田とは言わないでも空港をつくんなきゃいけないと、これだけは私は事実だと思っているのですね。  まあ、日本人というのはどっちかというと器用ですから、ラッシュをさばいていきますから、何とかなるだろうと思って今日まで来ているのだろうけど、私はいまの一番の問題というのは、間違って事故があるかもしれないというのじゃないのだな、当然事故が起きるだろうと思われているのですね。こんな状態にいると当然事故が起きるんではないかと、だれもそう言っているのです。それが間違いならいいですよ。間違いならいいけども、一般的には当然事故が起きるだろう、これじゃ。またそれが新聞にも出ています。一回、何時間かの間にシャッターを切った新聞があったんですよ。すごいんだ、全部飛行機になってね。それからまた私は何かの映画の予告で見た。最初見ているとすごく投げやりなんですよ。管制塔でね、あっ、あぶないあぶない、やっ、あぶないなんてやっているわけ。これも飛行機はあぶないというPRのあれかなと思ったら、エアバス時代来たるというような宣伝なんだ。あれ見てぞっとしましたですがね。東宝系の洋画の私は映画の前で見たんですけどね、何でしたら調べることば可能なんですが、そんな感じのものすごさ、だからこれは当然ある。当然事故が出るんではないかと予想されている状態にいるというのは、幾ら日本人は事故になれているといいながらこれはひどいもんですね。  もちろんあれがこれ以上外国から来る、何といいますか、向こうに与えるスペースがないと、こっちから向こうのあれがもらえないというあれがありますね。やはり航空協定の、航空の、国の益にもならぬだろうという、こういう当然の見方も私はできるわけでございますよね。で、不思議なことに、この空港問題のおくれている中に大臣が五人もかわっていますわね。読み上げてもよろしゅうございますが、橋本登美三郎さん、以下、丹羽喬四郎、佐々木秀世、新谷寅三郎、それにこれに鎮座まします現大臣と。そうすると、これの連中が成田空港の責任をとってやめたという話は聞かないんだな。何かやめているだけなんだね。だから、どうでしょうね、そういうことをするとやっぱり下の連中の士気にも影響してくる。この際政治生命をなげうっても、おれ、徳永運輸大臣はこの成田空港問題を引き受けると、どうでしょうね、ひとつそのぐらい大事なときに来ているんではないかと、大衆の代表としては、どうです。
  120. 徳永正利

    国務大臣徳永正利君) たいへん御激励をちょうだいしまして恐縮しておりますが、こういった特に大規模な空港の建設等につきましてはいろいろな問題複雑な問題を含んでおることは先生御承知のとおりでございます。したがいまして、今日までもそれぞれに努力をしてまいったところでございますが、思わざるいろいろな支障のためにいまだに開港にこぎつけていないことはまことに残念でございますし、申しわけないことだと思っております。私もその責任を痛感しております。このたび公団の人事も一新いたしまして——それがためじゃございませんけれども、心を新たにして、いま御指摘のございましたような点を十分踏まえまして今後一日でも早い開港に努力をいたしてまいりたい、かように考える次第でございます。なお、羽田の過密の状態はいまおっしゃったとおりでございます。私どももほんとうに憂慮をしつつ薄氷を踏む思いであるわけでございます。  先ほど御指摘のニアミスの問題も、おりられないもんですから、しばし上空を飛ばせる、時間待ちをやる、その間にいろいろな聞き違いも出てきたというようなことのようでございますし、そういうような事故にもつながる問題でもございますし、私どもはいろいろな困難な問題はございます。今後もそれぞれにむずかしい問題があると思いますけれども、御協力を得まして、政府一体となって一日でも早い開港に努力を重ねてまいるつもりでございます。
  121. 松岡克由

    ○松岡克由君 そのことばをすなおにひとつ受け取って、参議院から大臣が出たけれどもやはり価値があったのだとひとつ批判に耐えてほしいと私は思うのでございますけれども、今度全部総入れかえになってしまいましたね。空港公団が。あれ、いま言いましたけれども、責任をと言って、いやそういうわけではないけれどもと言い直しておりましたですけどもね。これははっきり言って真意は何なんですか、やっぱり任期が来たからですか、それとも新しくすると、いろいろな理由があるでしょうけども、どういうことでかわっているのか。なぜならば、今井さんは、前総裁は一番機の飛ぶところまでやりたかったと、私はそういう記事を読みましたので、その辺、じゃ結局やっぱり責任をとれなかったのであるということに考えてしまう、どうしても。その辺をちょっと明らかにできる範囲でけっこうです。
  122. 徳永正利

    国務大臣徳永正利君) それは全く思い過ごしだと思います。先ほどおっしゃいましたように、それぞれの立場におる者は、せめて一番機が飛ぶまではおれがやりたいというのは、そのくらいの熱意でみんなやっているわけなんです。私もその熱意でやりますけれども、私の任期中にできるかどうか非常に問題もあろうと思いますけれども、みんなつもりとしてはそういうつもりでやっておる。今度交代いたしましたのはそういうわけではございません。公団等の人事に関しましては、大体二期で交代するというのが政府の一つの方針でございまして、その方針にのっとりまして交代していただいたわけでございます。  なお、前総裁、副総裁は公団の顧問として、いままでいろいろないきさつやら、あるいは御努力いただいたルート等も詳細に御存じでございますから顧問として心よく残ってひとつ協力しよう、そういう体制でいま進めておるわけでございます。
  123. 松岡克由

    ○松岡克由君 新総裁になりました大塚総裁、何の因果かたいへんな役を引き受けまして、これはたいへんだと思います。いま私の任期中にできるかできないかなんという率直な意見が聞けるくらいで、一生懸命やったんだけどできなかったというような、これはそのとおりには違いないけれども、間違ってはいない。間違ってはいないけども、事実ではあるけども、何か私は真実にはほど遠いような気がする。たとえて言うならば、金を使って選挙をしちゃいけないとはだれでも言える。だれでも言えるけども、じゃそう使わなければならないという現実をどうしてくれるのだというこの現実ですね。現実の答えをある程度引き出したいと私は思うのですが、たいへんな役を引き受けておそらくいろいろ苦悩なさると思うのです。それだけにまたできたときの栄光もすばらしいと思います。抱負を短い時間でけっこうですから聞かしてください。
  124. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) 先般総裁を拝命いたしました大塚でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  羽田の過密状態といいますか、それにつきましては先ほどお話のあったとおりでございまして、国際信義上にも問題を起こしているというような状況でございます。私どもよくその状況を承知いたしておりますので、できるだけ早く新空港を開設をするということが私に与えられた使命でございます。そういうことからいろいろの事情で遅延をいたしてきておりますけれども、私といたしましては、まず公団の中の総力を結集をいたしまして、そして地方自治団体、地元、その他関係の向きの協力をできるだけ得て、一日も早くこの開港にこぎつけるべくいろいろの困難な問題を一つ一つ着実に解決をしてまいりたいというふうに考えております。そして開港をいたしましたならば、さらに第二期工事に直ちに着手をいたしまして、大国日本の表玄関としてふさわしい空港をつくり上げ、またそうした運営をいたしまして内外の航空需要に適切にこたえてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  125. 松岡克由

    ○松岡克由君 抽象的な意見はそれでけっこうです。具体的な話をしましょう。  たとえばパイプラインの問題です。パイプライン、私はこれは空港公団の仕事ではないと思うのですが、早い話がタンクローリーで運んできたっていいわけですね。だけれども、より安全な方法ということでパイプをやるということです。パイプはパイプでいい、聞くところによると、大阪はタンクで運んでいますね。危険があるというのだろうけれども、私は現に大阪でそういうことをやっているのを見ると何か本末転倒しているような気がする。飛ばすことが目的であって、つまり開港することか目的なのであって、安全な——これを安全じゃないということがいいとは言いませんよ。私は何もそこばかりでなく、なろうことなら二手で攻めてもかまわない、とりあえずタンクローリーで運んでみて週に一便でも二便でも飛ばしてみたらどうだ、私はそのほうがいいのではないかと思う。あくまでもパイプラインが通らないからだめ、通らないからだめ、通すための努力、これはもちろん安全なんですからけっこうですよ。けっこうだけれども、大阪の例もあるとおり、それぐらいのひとつ蛮勇をもって、どうだひとつタンクローリーで一発飛ばしてやろうじゃないか、そのぐらいの発想はわきませんか。
  126. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) ごもっともだと思います。しかし、一日大体四千キロリットルの油が要るわけでございまして、これをタンクローリーで運ぶということになりますと、非常にたくさんのタンクローリーが一日に往復をするということになります。実は暫定輸送の計画の中には、最初は空港から約七・八キロばかり離れた成田市の土屋というところに公団の資材取りおろし場がございます。そこまで貨車で運びまして、それからはタンクローリーで運ぶという計画だったのでございますが、それと七・八キロの間のタンクローリーの輸送さえも地元の反対でできないということになりまして、その間はパイプラインで油を運ぶ、こういうことにせざるを得ないという状況でございます。
  127. 松岡克由

    ○松岡克由君 大体、おくれによる公団の金利負担というのは一日どのくらいですか。
  128. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) 約二千万円でございます。
  129. 松岡克由

    ○松岡克由君 たいへんな金なんで、私もほしいと思うぐらいの金です。これからそのつけが国民へ回ってくるわけでございますから、私はその民間の関連事業、それぞれ私はマイナスになっている。日航は九十億なんということも聞いておりますし、現にもっと具体的に言うと、その空港のビルを、またはウインドーを借りたのが始まらないでえらい目にあっている。中には倒産するという現実もこれ目の前にあるわけでございますね。私は損害がこれほどはかり知れないなら、もう世論に訴えても、もちろん反対もあるが、反対はけっこうです、世論に訴えても私はこれはやらなければしようがないということをもっともっとアピールして、どうでしょう、はっきりやはり明示すべきではないのかと、こう思うのでございますがね。おくれました、おくれました、仏の顔も三度、三回もおくれている。またおくれました、一生懸命やっているけれどもだめだった。それじゃあどうしようもない。どうでしょうね、これは言いにくいだろうけれど、何月何日にやると、何年までには開港をすると、そのガンはこれなんだと、これさえこうなればこの日になるとできるのだと。私は自分たちだけで一方的に言うと誤解があるといけませんから、これを開港するためのガンと言うとまた反対側から文句が出るかもしれませんが、開港するためのガンはこれなんだと、そういったものをはっきり私はどんと出したほうがいいと思う。そうすると国民の支持というものはまた違った形で出てくると思いますがね、どうでしょう、大臣、成田さんとしてはひとつ。
  130. 徳永正利

    国務大臣徳永正利君) 開港時期を明確にして、しかもそのよって来たるべき内容を明示して国民世論に訴えろというお話でございますが、私どももそういう方向でいまいろいろ問題点のあるところを詰めておるわけでございます。いまもお話がございましたように、タンクローリーという問題も考えられたのでございますけれども、とてもこれはタンクローリーにおいてやれる仕事ではないというわけで暫定的な燃料輸送方式に切りかえた、そうしていま鋭意その問題を一つ一つ工事をやろうと思ったところが、御存じのように固めるやつが人体に影響を及ぼすというのでこれまた中止になり、それが裁判になり、いろいろな問題を引き起こしつつ前進を、それでもいろいろ前進をはかっているわけでございますが、なお今後におきましても、四千メートルの滑走路の南側には二基、二つほど鉄塔があるわけでございます。そういうものも取り除かなければなりませんし、そういうような諸般の十分その見通しと準備を進めた上で関係方面と積極的にひとつ協議し、協力を得て、一日でも早い時期に一番機が飛べるようなということで、いま鋭意実は努力をしている最中でございます。
  131. 松岡克由

    ○松岡克由君 おおよそ大臣の頭、これはまあ想像でいいです、どのくらいかかりますかな。
  132. 徳永正利

    国務大臣徳永正利君) いつそれでは飛ばせるかというお尋ねでございますが、そういうようなことも、いま申し上げたようなことを一つ一つつぶしていかなければならない問題がございます。具体的に解決のめどを一つ一つにつけていかなければ問題があるわけでございますから、いまそういう問題について、公団あるいは運輸省航空局あげてその問題に取りかかっております。したがいまして、いま、いつそれでは開港できるかということを、およそでもいいから言えということでございますが、ただいまのところ一日も早く開港したいということでお許しを得たいと思います。
  133. 松岡克由

    ○松岡克由君 いつごろになったら、いつ開港できるということも言えませんか。
  134. 徳永正利

    国務大臣徳永正利君) 大体あと、今月は、もう八月の終わりでございますから、三、四カ月のうちにはそういうような具体的なめどを立てたい、かように考えております。
  135. 松岡克由

    ○松岡克由君 ありがとうございました。たいへん言いにくいことを言っていただいて感謝します。二、三カ月後には、いつになったらめどがつくということを言っていただけるということを約束しましたので、どうぞひとつ新聞記者の皆さん、その辺をひとつよろしく。(笑声)別に私が言ったということでなくてけっこうですから。ですから、早い話が、どう考えても、とにかく一日も早く開港すべきであるということだけはこれは私は事実で、それは反対はいる、反対は反対だけれども、空港が不必要だという結論は私はどう考えても出てこないと思うのです。名前を出してたいへん失礼ですが、反対派のリーダーの戸村一作さん、あの人も中国へ行くときは船でなく羽田から飛行機に乗っているわけで、その羽田がこの過密状態ですよと言ったら、どっかに空港をつくるべえとおそらく彼も言うのではないかと、げすの勘ぐりかもしれぬですが。現に羽田がパンク状態であるというこの事実、私はこれが一番大事なんで、問題は二つ、つくらなければいけない、なぜつくらなければいけないか、こんなのは子供の論理でもわかるとおり、いま一ぱいで、事故が起きるだろう起きるだろうと思って起きる、これは笑いのほうからいうと喜劇と言うのですよ。悲劇というのは、全くないだろうと思うところへどたんとくるとこれ悲劇なんですよ。まさかこの天井が落ちてこないだろうと思っているところへ落っこってきた、これを悲劇と言いますがね。落ちるだろう落ちるだろうと思って落っこって、ああやっぱりつぶれたって——これは喜劇なんですよ。現在の羽田は喜劇なんですな、これ。頭なぐられたら痛いと思って、自分でトンカチでこーんとなぐって、ああやっぱり痛かったって——これは喜劇、全く私の商売じゃないけれども、お笑いみたいな感じがする。何とかまだ悲劇ならあきらめもつくが、喜劇じゃあきらめがつかないというのがわれわれ一般的な、非常に一般的な意見かもしれませんですが、どうぞひとつきょうの私のつたない質問ではありますが、答えてくれた運輸大臣の、二、三カ月後にはある程度言えるめどがつくだろうと、これをたいへんな私なりの大きなみやげとして質問を終わらせていただきたいと思います。何か一言ありましたらどうぞ。別になければこれでけっこうでございます。
  136. 前川旦

    委員長前川旦君) 速記をとめてください。   〔速記中止〕
  137. 前川旦

    委員長前川旦君) 速記を起こして。
  138. 田代富士男

    田代富士男君 きょうは決算の総括質問でありますが、総括質問といたしましては非常に時間が短うございます。一時間で全部これをやろうとしましてもたいへんな問題でございますから、まとめていろいろ質問をしていきたいと思います。   〔委員長退席、理事小谷守君着席〕  最初に、予算の監査につきまして、決算に対する基本姿勢から入っていきたいと思います。御承知のとおりに、予算は、最初は計画の段階において予算審議という形で統制が加えられまして、執行段階で行政庁自体の統制が加えられ、執行が終わって決算の段階で会計検査院の統制を受け、最終に決算審議の形で国会で統制を受けることになっております。で、民主主義財政の要望は、これらの各段階の統制が必要にして十分、そしてスムーズに行なわれて、各統制機関の連携が十分満足に行なわれることを期待しているものと考えられるわけなんですが、私はこの予算執行段階の統制全般にわたりまして概括的観察を行ないましてどのような問題点があるか、まず政府の意向をただしてみたいと思います。特にけさも説明がございましたが、予算が最近のように膨大となりまして、その施行に当たる政府関係機関、あるいは公社、公団等の数も膨大になってきた今日であります。いままでのような予算監査でよいのかどうか、またマンネリ化状態ではないのか、時代の進展に即応した監査体制を整える努力が行なわれているのか、監査機関相互間になわ張り根性のようなものがありはしないか、まあこういう点もただしてみたいと思います。そういう意味から最初に大蔵省についてお尋ねしたいと思います。  大蔵省に尋ねますが、会計制度の近代化ということはきわめて重要なことであると思いますが、最近大蔵省の行なってまいりました会計制度の近代化の施策としてどのようなものがあったか報告をしてもらいたい。また、同様に将来どのような姿の会計制度を考えておるのか、未来図も含めて報告をしていただきたいと思います。
  139. 田中敬

    説明員(田中敬君) お答え申し上げます。  国の会計事務の処理にあたりましてわれわれが常に念頭に置かなくてはなりませんことは、そもそもこの会計の財源が国民の税金であり、あるいは国債財源であると、公的なお金であるということから、まず第一に厳正であり、かつ適正な正確なものでなくてはならないというのが第一の目標であろうと存じます。と同時に、会計事務を処理いたしますのも公務員でございますし、行政事務の効率化をはかって行政能率をあげるということもまた大きな目標であろうかと思います。そういう点から会計制度の改善という点につきましては、ただいま申し上げました二つの目的をどういうふうに調和していくことが大事であるかという観点から制度の改善を進めていくべきであろうと考えます。  これらの観点に従いまして、昭和四十三年の十月に第一次行政改革として定められました閣議の決定事項がございますが、この中に会計制度の改善に関しまして三十七項目の事項があげられておりますが、政府はその決定に従いまして、本年までに三十七項目中三十四項目の改善をいたしております。たとえば債権管理事務と歳入徴収事務を一元化するということでございますとか、あるいは会計事務についての代行機関制度の創設をいたしまして会計職員の責任の分担をはかり、かつ能率を向上するとか、あるいは国庫金の送金関係の事務につきまして、日銀あるいは国庫金の請求をいたします官署が重複して作成しております書類を複写式に改めるとかいうことによって事務の能率をはかる等、約三十三項目の実施をいたしておりますが、今後の方向といたしましては、最近銀行でもオンラインシステムというようなものが行なわれておりますが、国の会計事務につきましてもこれをいかに電算化できるかということを検討の対象といたしまして、ここ数年来予算を計上し、大蔵省の中にプロジェクトチームをつくりまして、国の会計事務の電算化についてただいま鋭意検討中でございます。将来の方向といたしましては、各省庁の三本官、いわゆる支出官あるいは歳入徴収官、支出負担行為認証官、これらの行ないます事務、報告、記帳というようなものを電算機に乗せますと同時に、各官署の電算機とできますれば日本銀行の国庫金との間に電算機をつなぎまして、出納事務も電算化できればというような方向で検討を進めております。  大体以上のようなことでございます。
  140. 田代富士男

    田代富士男君 ただいまも説明がありましたが、銀行などの収支決算でコンピューターによりますオンラインシステムがきわめて近代的なものになっておりますが、それを国の予算の執行あるいは決算の集計においても対処しようという意向でございますが、これは決算の早期提出という問題とも関連いたしますから、これは大事なことじゃないかと思いますね。  そこで、決算提出とともに大蔵省より提出されます「決算説明」という資料がございますが、これはまあ非常に貴重な内容が盛り込んでありますが、今日でも金銭的計数で予算あるいは決算の結果が表示されておりますが、もっと物量的に実績の表示をなさるべきであるとの指摘がこの決算委員会においてもなされてまいりましたが、なかなかその要望に沿ってないというのが偽らざる事実じゃないかと思うわけなんです。そういう立場から大蔵省として、ただいまも答弁にありましたが、各省を監督してそのような実績批判がなされやすい資料となるよう努力されておりますけれども、今後そういう点については、いまのコンピューターシステムとあわせましてどのように努力されるのか、簡単でけっこうでございますから。
  141. 田中敬

    説明員(田中敬君) 御指摘の点につきましては、昭和三十三年以来、国会の御要望もございまして、ただいま御提出申し上げておりますような「決算説明」という書類を参考資料として提出したわけでございますが、数次にわたりまして、ただいま先生から御指摘をいただきましたような物量的な表示、あるいはもっと読みやすい、わかりやすいものにという改善の御要望にこたえまして、実は昭和四十二年に初めて主要な長期計画の実施状況、あるいは可能な限り国の直轄事業等につきましては個所を明示するとか、あるいは最初予算の御審議のときに御提出いたしました「予算説明」という文書に掲げられました計画とそれから実績とがどういうふうになったかと、決算上どうなったかというような対比をいたしますような書類作成の方法に改めますと同時に、数次にわたりまして、改善を踏まえて、本年度におきましても、物量的なものの表示といたしましては、社会福祉費にかかります施設の数、収容定員、措置人員等を予算と実績とを対比いたします表でございますとか、住宅対策費にかかりまして戸数を明示するとかいろいろくふうをこらしております。御指摘のように電算化が進み、あるいは予算の執行状況の情報の把握が早期にできることになりますと、御提出申し上げます資料につきましても担当精緻なものができると存じますので、御要望に沿いまして、なるべく物量的な表示を多くし、御認識いただきやすいように改善をしたいと思います。
  142. 田代富士男

    田代富士男君 大蔵大臣にお尋ねいたしますが、予算執行に対する大蔵大臣の監査のことについてでありますが、会計法の第四十六条第一項並びに同第二項の条文で、大蔵大臣は各省庁の予算執行に対しまして強力な監査機能を与えられておりますが、この条文に基づく予算執行状況に対する実地監査というものはあまり最近は行なわれておりません。言うなれば伝家の宝刀となっているような状態でありますが、しかし、このようにいま申し上げました四十六条の一項、二項にも、会計法で規定された実地監査を大蔵省が最近やっていないということは問題ではないかと、私はこのように思う次第です。やはり規模は小さくてもときどきこの伝家の宝刀を抜きまして各省に監査を行なうことが財政執行の責任官庁としての大蔵大臣の責任ではないかと、このように思うんですが、大臣いかがでございましょうか。
  143. 田中敬

    説明員(田中敬君) 事前に事務的に御説明申し上げたいと存じます。  いわゆる四十六条監査でございますが、私ども会計法の四十六条の規定ができました当時は、新たな財政法、会計法というものができまして、予算の執行状況が従来の執行方法と比べてだいぶ変わったという点がございましたので、主として、これら制度の運営につき、これを監査してみたいということで当初は始めたわけでございますが、その後これらの制度も一応各官署におかれても習熟されましたので、その意味での監査というものは最近やっておりませんでございますが、実は大蔵省の司計課、いわゆる決算を担当いたします課に監査係というのがございまして、毎年監査計画というのを立てて実態の調査をいたしております。  御指摘のように昭和二十八年度当初につきましては、その調査の名称を零細補助金監査というような監査という名前を使うものと、それからいろいろ生活保護費、医療扶助実態調査というような式で、調査という名前と二つの名目で調査をいたしておりましたが、最近におきましては、この監査という名目のものはいたしておりませんけれども、実態監査と同じものでございますが各種の調査をいたしております。本年度におきましても約十数項目の監査調査事項をあげまして、たとえば義務教育費国庫負担金の実態調査というのをその中の一つとしていたしておりますが、これは各府県から提出されますいわゆる学校の教職員の給与が府県ごとから本省に提出されますが、その実態がそのものであるかどうか、現地に、県の学校あるいは市町村に参りまして職員の給与の実態を調査し、予算の執行が十分予算どおり行なわれておるか、あるいは大蔵省の義務教育費の国庫負担金の予算単価の積算というものが誤りないかというような調査をいたしております。そのように四十六条の監査という名前ではございませんが、四十六条に基づきまして調査をいたしまして、予算の執行の適正あるいは後年度における予算編成の向上のために役立たせるよう、現状も実態は同じようなことをいたしております。ただ、そういうことで調査ということはいたしておりますけれども、やはりこれがある程度の四十六条の強権を持った監査ということに切りかえる必要も、あるいはある段階では必要があろうかと存じますので、調査に出ます職員には、いわゆる身分をあかす監査証票というものを持たせまして、いつでもそちらに切りかえられるような形で調査をやっておるのが実態でございます。
  144. 大平正芳

    国務大臣大平正芳君) 私といたしましては、広範複雑な予算でございますので、まず所管の大臣におかれてその所管の予算の厳正な執行に御責任を持っていただくことが第一だと思います。しかしながら、各省庁いずれも神さまではございませんから御指摘のようにマンネリ化する傾きがないとは言えないわけでございますので、今後ともその時勢の進展に応じまして重点を定めまして効果的な監査は忘れてはならないと考えております。
  145. 田代富士男

    田代富士男君 次に、大蔵省と会計検査院との間ではどのような連絡をとりつつなされていらっしゃるのか、この点が一点。それから同じく行政管理庁とは財政執行の監督という見地からどのような連絡がなされているのか。この点をまとめて簡単に御説明願います。
  146. 田中敬

    説明員(田中敬君) 大蔵省と会計検査院との間におきましては年間春夏——春と夏の二回に分けまして定例的な会合を持っております。この会合の趣旨といたしましては、春三月の段階では国会に御審議をいただいております予算概要につきまして大蔵当局から会計検査院に御説明を申し上げ、その年におきます会計検査の実施に当たっていろいろ御参考となるべき資料なりわが方の御意見を申し上げる。特に新しい予算の計上等につきましては、本年度はこういう変わった経費が計上されておるので、この点についてはこういう観点からよく検査をお願い申し上げますというようなたぐいの連絡をいたしております。と同時に、夏には、会計検査院のほうで第一四半期におきまして全国の実地検査をなさいました結果を私どもに御報告をいただきまして、そしていろいろ不当な個所あるいは現地で検査をなさった上でお感じになった御意見を承って九月以降の予算編成の参考にさしていただく、こういうことで昭和四十年以来毎年二回定例的な会合を開いております。  それから行政監察でございますが、行政管理庁とはただいま申し上げましたような特例の定例的な会合、会議というものは持っておりませんが、行政監察報告から出されました結果を踏まえまして、これを後年度予算に反映していくという努力をいたしております。たとえば昭和四十二年におきまして、下水道の終末処理問題が建設省と厚生省との間で所管の問題につきまして行政管理庁から御勧告をいただきましたが、その御勧告の趣旨に基づきまして終末処理の予算を一括一元的に計上するとか、あるいはまた行政監察の結果、法務省担当の矯正保護所におきます監視事務につきまして、もっと監視用テレビを多く導入したら監視事務の効率化がはかられるのじゃないかというように行政監察報告をいただいたことがございますが、これに基づいてテレビ予算を計上するとか各種こまかい点で配慮をさしていただいております。
  147. 田代富士男

    田代富士男君 次に、会計検査院のあり方につきましてお尋ねしたいと思います。時間がありませんからまとめてお尋ねをしたいと思います。  で、会計検査院は検査院法にも「内閣に対し独立の地位を有する。」——これは院法の第一条にありますけれども、これは仕事の面では政府の制約を受けないで仕事をするということが重要な要素であろうと思われますが、その他に機構的にも政府の制約を受けないことを意味していると考えられるのじゃないかと思うのです。そこで、二つの点について現在の検査院のあり方がこの独立性の原則に沿っているかどうか疑問がありますのでお尋ねをしたいと思います。  第一に、財政法第十九条によれば、独立官庁としての会計検査院歳出見積もりを減額した場合、その詳細を予算に付記することになっており、国会が修正する場合の必要な財源について明記することになっているが、修正時における財源の明記はどのようにされているのか、金額まで明記されているのかどうか伺いたい。  それから第二番目には、予算を作成した大蔵省側から検査官が出ていることは、予算執行の批判的任務を持つ検査院側の陣容として若干の疑義なしとしない。内閣との独立をたてまえとする検査院としてのこのあり方は問題なしとしないか。  この二つの点に簡単にお答えを願いたいと思います。
  148. 白石正雄

    会計検査院長(白石正雄君) 田代委員御指摘のとおり、会計検査院は国の収入支出等の検査という職務の重要性からしまして、他からの制肘を受けることなく独立不覇の立場で厳正公平に執行できるよう独立の立場を与えられているわけであります。このような会計検査院の独立性は、会計検査院が職務を遂行するにあたって政府等によってその使命の達成が不合理に妨げられることのないように保障されなければならないことは当然のことであります。そして財政当局が行なった予算の減額によって会計検査院の意図する機能発揮ができないと会計検査院が判断したような場合においては、減額した政府及び要求した会計検査院両者の意見をともに提示して国会の最終的判断を仰ぐという趣旨から財政法第十九条の規定が設けられていることは御承知のとおりでございます。ところで、現在までのところこの規定の発動を見た前例はございません。と申しまするのは、会計検査院といたしましても、国費を使用して仕事をしておるわけでございまするので、なるべく節約を重ねて事務の執行に当たらねばならないということは当然のことでございまするので、大蔵省との間において予算の折衝を重ねまして、十分意のあるところを尽くして、予算の最終的な閣議決定には同意を与えておるわけでございます。もし同意せられないような、会計検査院の職務の独立性を奪われるような削減を受けるというような事態がありまする場合におきましては二重予算の作成ということを検討いたしたいと考えるわけでございまするが、現在までのところ幸いにしてそのような事態の発生は見ていないわけでございます。  第二の、予算を作成した大蔵省側から検査官が出ていることは会計検査院の独立性上どうであるかという御質問でございますが、これは大蔵省出身の私がお答えすることははなはだどうもむずかしいような感じがいたすのでございまするけれども、御質問にしいてお答えいたしまするならば、田代委員御承知のとおり、検査官の任命につきましては、会計検査院法の定めるところによりまして衆議院、参議院の同意を得た上で内閣が任命することになっておりまして、国会で内閣の人選に同意を与えるべきかいなかを御審議なさる場合に、検査官の職務の重要性にかんがみ厳正公平な判断を期待できる人材であるかいなかということで判断しておられることと考える次第でありまして、国権の最高機関のこのようなチェックを経て任命される検査官を迎えるわけでございまするので、私どもといたしましては、検査官の選任によって会計検査院の独立性が脅かされるというようなことはないであろうと考えておる次第であります。ことに検査院の独立性ということは、むしろ検査官の身分保障という点に重要性があると考えておるわけでございまして、内閣の意に反するような検査報告が出されるようなことがありましたにいたしましても検査官は身分保障を有しておるわけでありまして、一定の事項に該当せざる限り罷免せられる心配はないわけでありまするので、このような意味におきまして検査院の独立性はむしろその身分保障によって保たれておる、かように考える次第でございます。  さらにまた、蛇足かとも思いまするけれども、大蔵省と会計検査院とは、先ほど大蔵省の次長から御答弁がありましたように、その業務上密接な連絡を保って行なっておる次第でございまして、いわばその予算の適正妥当なる執行ということにつきましては共通の目標を持っておるわけでございまするので、そのような意味におきましても、ごうまつも大蔵省出身であるがゆえに独立性を脅かされるというようなことはなかろうかと考える次第でございます。
  149. 田代富士男

    田代富士男君 次に、いまいろいろお述べになりました点についてお聞きしたいこともありますが、これは省略をいたしまして次に進みたいと思います。   〔理事小谷守君退席、委員長着席〕  けさも報告がされました検査報告内容ですけれども、その検査報告内容が、最近不当事項の数が少なくなりまして処置要求や改善要求の事項がふえていることは、いまもいろいろ侵されないということが言われましたが、検査院のきびしい権威の発揚がやや薄れているように考えられるおそれがないわけでもないじゃないかと私はこのように思っております。この不当事項には政府側の責任がはっきりとられることが要請されるが、他の処置要求や改善要求では責任の追及が不明確になっているわけなんです。その点、政府の財政執行の姿勢を正す意味でソフトムードが漂っていると言えないことはないじゃないかと、私はこのように思うわけですが、不当事項とすべきものが罪一等減じまして改善要求に格下げされるようなことはないのか。いまさっきもいろいろ話しましたが、この点がまず第一。  第二番目は検査院と国会の関係についてであります。アメリカの会計検査院国会の付属機関となっておりますが、わが国はそのようにはなっておりません。しかし、憲法上会計検査報告が、けさも行なわれましたとおりに国会提出されるようになっておることは、もちろん国会との密接な関係を物語っていると言わなければなりませんが、このことは、言いかえれば、その報告書が国会で論議されることによりまして報告の権威が増してくると言えるのではないかと思うのであります。このような観点から、検査院として、常に国会の論議、特に決算委員会の論議に耳を傾けまして、その動向に鋭敏な触覚をもちまして事後の検査活動の参考にいたしまして、特に衆参両院の勧告事項につきましては事後の検査指針の重要な参考とすべきであるかと思いますが、実際どのように扱われているか。これが第二点。  まとめて質問いたします。第三点は検査院と政府の内部監査機関の能率発揮についてであります。検査院が毎年決算につきまして  きょうも検査の結果の報告がございました。計算書が二十三万余冊、証拠書類六千二百八万余枚につきまして書面検査を行なったと申されておりますが、全体の官公署の七%ぐらいの個所しか検査できないじゃないか、これが実情じゃないかと思うのです。検査院だけで検査の万全を期するわけにはいかないじゃないか。そういう意味から各省の持っている内部監査機関をフルに動員してその能率化をはかることが大事ではないかと思います。この意味で検査院が政府の内部監査機関の能率発揮に常に目を光らせることが必要ではないかと思います。かつて検査院は、三十六年度におきましては郵政省に対して、最近四十六年度におきましては公害防止事業団に対しまして、不適切な事態を生じた原因が内部監査機構の不備にあると改善事項として指摘したことがありますが、これは適切な指摘ではなかったかと思います。こういうことから、最近の検査報告を見て、毎年同じような補助金の支出について同じような不当事項の繰り返しが見られるわけなんですが、いま申し上げましたような指摘をすることによって内部監査機構の奮起を促す必要があるのじゃないかと思いますが、検査院当局の見解はいかがでございましょうか。簡単に御説明を三点についてお願いいたします。
  150. 白石正雄

    会計検査院長(白石正雄君) まず、第一点でございますが、会計検査院検査報告に掲記いたしました不当事項は、過去におきましては一年に千件を上回る多数であったこともございましたが、今日のように減少いたしましたのは、国会におきまする決算審査の充実とそれによる国民全体の決算に対する関心の高まり、本院の検査活動とが相まちまして、財政執行関係者の自覚が高まってきたことによってもたらされたものではなかろうかと考えておるわけでございまして、このような現象は国家的な見地から見ましてはまことに好ましいことであると考えておる次第でございます。しかしながら、不当事項減少がもし検査院の怠慢あるいは努力の不足というような点に基づくものがありといたしますれば、これははなはだ申しわけないことでございまするので、そのようなことのないよう万全の努力を傾注いたしておるということは、ここで申し述べさせていただきたいと考える次第でございます。  ただ、このようにして不当事項につきましては漸次減少いたしてきておる次第でございまするが、検査院法の定めるところによりますると、「会計検査院は、常時会計検査を行い、会計経理を監督し、その適正を期し、且つ、是正を図る。」ということに相なっておりまして、単に不当事項の指摘のみならず、経理改善、是正をはかることがまた一つの重要な目的と相なっておる次第でございます。したがいまして、究極的なその目的が会計経理の適正を期し、かつ是正をはかるということにありますることから、不当事項を指摘するにとどまらず、将来に向かって是正、改善をはかることにも深く意を用いておりまして、この一面からの検討にも積極的に力を注いでいるわけでございます。一例をあげますと、工事の発注や物件購入の契約の際の予定価格算定の基礎となる積算基準が不適切であったり、経理執行や内部監査の体制に不備があったりしているなど、不合理な会計経理を発生させる何らかの欠陥があることが明らかとなった場合に、その欠陥を改善して将来の不当経理発生を防止することを求めるといったように、不当経理発生の根源の閉塞という観点から改善処置要求を行なうことにもつとめているわけでございまして、両々相まって経理の適正をはかるということに相つとめておる次第でございます。  第二点の検査院と国会との関係でございまするが、これは田代委員の御意見まことにごもっともでございまして、会計検査院といたしましても、国権の最高機関である国会のとりわけ決算委員会における論議につきましては、常に大きな関心を持ちまして耳を傾けておるわけでございまして、私どもが毎年の初頭に行ないます検査計画の策定の際にも、過去における両院決算委員会の各種御論議の趣旨を十二分に取り入れておりまするし、また検査活動の過程におきましても国会の御論議を常に把握いたしまして、これを適時適切に取り入れて検査を実施し、その結果、検査報告不当事項として掲記あるいは改善の処置を要求して検査の実をあげてまいっている例も少なからずある次第でございます。今後におきましても、国会における御論議は十分に把握し、これを十分尊重して検査活動を行ない、ますます効果的な検査を実施して国民の期待にこたえたい所存でございます。  次に、検査院と政府の内部監査機構との関係でございまするが、政府はそれぞれの目的に応じまして内部の監査機構を有しておって監査をいたしておるわけでございまして、会計検査院の行なう検査とは別個独立のものでございまするけれども、しかしながら、ただいま御指摘もありましたように検査院の能力にも限界がありまするので、内部監査機関が十分その機能を発揮するということは検査院の検査にも円滑なる影響を及ぼすという意味におきまして、内部監査機構の充実ということにつきましてはかねがね深い関心を持っておる次第でございまして、郵便局における不正行為防止対策、あるいは農林漁業金融公庫貸し付けの適正化、公害防止事業団の貸し付け事業における貸し付け金の経理等につきまして改善処置要求をいたしておりますが、いずれも不適正な経理発生の一因が内部監査機構の不備にあるとして、その改善を求めた実例はあることは御指摘のとおりでございます。  御質問の補助金についてでございまするが、これはなるほど監査機構を充実するということも必要かと存じまするけれども、何ぶん補助事業というものは非常にきわめて多数にのぼっておりまして、これに監査機構を置くということは予算上の制約、人員増加等の関係、どうもこれはどうかと思いまするので、なかなか直ちに監査機構の充実をせよという勧告まではまだ踏み切っていないわけでございまして、こういうことにつきましては直接に事業を執行する事業主体の自覚と認識の高揚を期待することが最も肝要と考えられまするが、去る四十年十一月に農林省及び建設省の公共事業関係補助事業につきまして改善の処置を要求し、その中におきまして国及び都道府県の行なう竣工検査を徹底するよう求め、その後相当に不当事項の件数が減少したという実績もあるわけでございまするので、今後とも十分な関心を持って不当経理発生の根源を検討し、効果的な改善の方策を見出すべくますます努力を続けたいと考える次第でございます。
  151. 田代富士男

    田代富士男君 次に、行政管理庁の業務についてお尋ねをいたします。これも時間の関係でまとめて質問をいたします。  行政管理庁が持っております監査機能によります財政統制の機能はたいへん重要なものを含んでいるようでありますが、いわゆるお役所仕事に対する目付役として果たしてきている役割りであるかと思います。特にいままでの監察業務の中でたびたび行なわれてきました——いまも話が出てまいりましたが、補助金を中心とした財務行政監察あるいは国有財産の管理及び処分に関する行政監察等は直接決算内容を含んでおりまして、その内容は、国会はもちろん政府、会計検査院においても参考とすべきものがあるように思われますが、行政管理庁は豊富な地域組織を持っておられますし、その実地に根ざしての監察というものは特徴的なものが含まれておるんじゃないかと言えますけれども、行政管理庁としては将来もこのような財政運営の実績批判を監察目的とした監察に力を注ぐ意向があるかどうか伺いたい、これが第一点。  次に、行政管理庁は、行政官庁が会計検査院から指摘を受けないよう事前に行政運営に改善をはかることをたてまえとするといわれておりますけれども、行政管理庁と会計検査院との間には業務上どのように関連があるか、これが第二点です。  次に、官房長官はきょう……、それで行政管理庁の勧告は立法上の参考事項を含む場合もあり、政府部内のみにとどめず国会にも正式に報告されるべきであるとの意見があるが、どのように政府としてお考えになっているか、これが第一点。  第二点、行政管理庁の監察結果は政府部内で相互に通達するのみで、勧告結果のアフターケアのごときもおざなりになっているのではないかという批判があります。行政監察といえば事柄の性格上、内閣のトップマネージメントの一環でなければならないと思いますが、もっと閣議ベースで慎重に取り組まれるべきであると思いますが、政府としてどのようにお考えになっているのか。また、行政管理庁としても勧告のしっぱなし、ないしは現業官庁の報告を徴するのみで事足れりとするのでなくして、勧告内容の実施状況について可能な限り追求的掌握につとめるべきであると思いますが、これは行管にお尋ねしたいと思います。  時間の関係でまとめて質問いたしますが、簡潔に最初行管から、それから官房副長官のほうから御答弁お願いしたいと思います。
  152. 大田宗利

    説明員(大田宗利君) 第一点の将来従来どおりの監察に力を入れるかどうかという問題でございますが、先生御案内のように、行政管理庁では国の行政運営につきまして、基本的な問題、あるいは補助金、あるいは公社、公団という監察を実施しております。行政監察の対象はきわめて広範囲でございまして、そのすべてにつきまして手を回すということは非常に困難でございます。したがいまして、毎年年度初めにその年度の重点というものをきめまして、その中で監察を実施するという方法をとっております。毎年財務的なあるいは補助金行政的なもの、そういうものを二、三本入れまして全体的に監察を実施しておるということでございます。現在でも国鉄の固定財産につきまして監察を実施いたしまして、それの結果について取りまとめ中でございます。こういう姿勢でございますので、今後の補助金の適正あるいは補助金の廃止統合というものにつきましては積極的に計画の中に織り込みたい、そのように考えております。  第二点の検査院との関係でございます。会計検査院は御承知のように憲法上内閣と独立した機関でございます。行政管理庁は内閣の一員でありまして、その中で政府の反省の機能といたしまして監察を実施しておるわけでございます。したがいまして、会計検査院と行政管理庁との間で関連は特にございません。ただ、補助金その他行政運営の監察をやります場合に、やはり業務実施全般について見ます関係もありましていろいろな財政的な問題もございますし、そういう点もございますので、会計検査院検査報告書を参考といたしまして計画を策定するという状況でございます。  それから第三番目のアフターケアの問題でございます。これは勧告をいたしましたあとに回答をいただきます。その回答をいただきまして、その六カ月後にその中の未改善事項につきましてもう一度回答をいただくということにしております。そしてその六カ月後の回答の中でまだ未改善のものがございますと、これを一括まとめましてそのあとに推進監察というものを実施いたしまして、勧告の改善の推進をはかるという方法をとっております。また、重要な勧告につきましては閣議に報告いたしまして、関係省庁の協力を得て実施という方法をとっております。  それから勧告を国会報告することでございますけれども、行政管理庁はあくまでも政府内部におきまして一つの反省機能でございます。したがいまして、国会報告をいたします前に、やはり現在の法令の制度では、政府部内で改善するということが行政管理庁の目的であり、あるいは機能であろうかと思います。したがいまして、現在の方法といたしましては、勧告をいたしましたあと当委員会にも勧告を報告、配付いたしまして、そして御批判をいただいておるということでございます。また、勧告事項につきましては、これは公表いたしまして国民からも御批判をいただくというふうな方法をとっているところでございます。
  153. 大村襄治

    説明員(大村襄治君) 私のほうに対するお尋ねの第一点は、行政監察局長がすでにお答えいたしましたから、それでよろしゅうございましょうか。——行政監察結果を政府の部外に報告することは、行政管理庁の設置法のいまの規定の上からは予定されていないものと考えておるのでございます。行政監察は行政管理庁が内閣の責任において行なう政府の部内監察であり、本来政府内部で終結すべきものであると考えられますので、国会報告することは考えておりません。  それから第二点の相互調整と申しますか、その点でございますが、これまでもしばしば重要な監察結果は閣議に報告されまして、内閣全体の責任で実現をはかっているところでございます。今後もそういった運営によって御趣旨を実現するようにいたしたいと考えているものでございます。  以上でございます。
  154. 田代富士男

    田代富士男君 ただいまは基本姿勢につきまして一通りお聞きいたしましたが、そのような基本姿勢で臨んでいるということは間違いないかと思いますが、実際にはどういうことが行なわれているかと、今度は場面を変えまして、実際の問題で、事実の問題でお尋ねしたいと思います。  これは具体的な問題として一級河川の淀川関係を中心にいたしまして質問をいたします。淀川関係で河川法二十条、二十七条を適用して許可を受けまして事業をされている個所が、建設省からいただきました資料でも豊里地先、八雲地先、十三地先、海老江地先と、このように建設省から資料をいただきまして事業場所の報告を受けておりますが、高水敷復元工事は四十九年度についてはどのようにされる方針なのか、まず大臣からお答えを願いたいと思います。
  155. 増岡康治

    説明員(増岡康治君) お答えいたします。  いわゆる二十条、二十七条に基づきます許可の関係につきまして、四十九年度の高水敷の復元工事につきましては、一般の捨て土から出てきます高水敷の復元工事はございません。ただ、現在施行しておりますのは第二十六条でございますが、第二十六条と申しますのは、御承知のとおり阪神公団が淀川を当たっておりますが、その工事から出てくる土量を河川敷へ持ってきて行なっておる工事が本年度継続中でございます。  以上でございます。
  156. 田代富士男

    田代富士男君 いまの建設省のあれはおかしいですよ。これは私が正式機関を通じまして第一回目にどういう工事がされているかという質問をしたときに出された資料です。もっとあるだろう、そういう意味で私が資料要求を求めた資料があるわけなんです。あなたのいまの答弁は、この建設省からもらった資料以外の話じゃないですか。これはどういうことなんですか。この建設省からもらった資料というものはそういう漏れた資料なんですか。こういう私が資料をたびたび要求をしまして、これは正式機関を通じてもらった資料以外のあなたは答弁を、いま答えがはね返ってきているけど、これはこういうことなんです。——ちょっと待ってください。委員長、私はこれは正式資料です。まして建設省関係は都市局の屋外広告物のときにおきましても資料の不備な点がありました。注意をしました。厳重に注意をして、もらった今回の資料。いまの答弁はこの資料でないような答弁なんです。これは厳重に注意していただきたいと思うのです。委員長からちょっと注意してください。
  157. 前川旦

    委員長前川旦君) いまのような、そのとおりの事実ですか。事実ですね。
  158. 増岡康治

    説明員(増岡康治君) いま先生のおっしゃるとおりでございます。先生から資料提出要求がございまして、いろいろ現地の近畿地建あるいは近畿の関係の協会のほうから取り寄せまして精査して出したつもりでございましたが、二十条と二十七条に非常に現場のほうがこだわっておりまして、それでいろいろと追及しておりますうちに、私どものほうも精査をいたしまして、第二十六条の阪神公団の性格の違ったものが出てまいりまして、あとから御訂正を申し上げたわけでございます。どうも失礼いたしました。
  159. 田代富士男

    田代富士男君 あなたね、いいかげんなことを言うのはやめてくださいよ。こちらから言ったのは、二十条、二十七条に限るということを言っておりませんよ。淀川河川に関係のあるものは全部と、たびたび言っているのです。あなたの答弁は、けさの段階で、私の会館のところへ来て、こういう事実があるじゃないかと、私がその事実をあなたに提示したでしょう、建設省に。それであなたのほうから出た書類にはそういう事実はこれには載っていない。載っていないということは、現場では仕事をされておりながら、本省は掌握していないということは、少なくとも不法投棄をやっているということじゃないですか。けさの段階で私が提示したからその問題が出てきているじゃないですか。これは真実でしょう。委員長、こういうような資料の提出をやるならば、私は建設大臣に言いましたように、屋外広告物の問題からやり直さなくちゃならないですよ。この点どうなんですか。屋外広告物のときから私は注意しております。どうなんです、これは。この資料は正しくないのですか。政府機関から出された資料というものは抜けていたというのですか。それは私がけさ提示したから追加してきたのです。この点はっきりしてください。本省では掌握してなかった、いまやっているところは不法投棄だと、そういうことでしょう。大臣からお願いします。
  160. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) 確かに国会からの資料要請に対しましては、現実を一〇〇%あるいはそれ以上の実態を把握した資料を提出するのがこれは政府の責めでございます。たまたま御指摘いただきました資料につきまして、現地と本省との間におきまして十分な調査が行なわれる時間的余裕があったかどうか、私その点つまびらかにしておりませんが、いずれにいたしましても、いかなる理由があるにいたしましても、現場との連絡が十分でないためにあとで追加資料を出さなければならないというような事情になったようでございまして、この点はまことに恐縮に思う次第でございまして、要求された資料については実態が十二分に把握できるものを国会に出すように今後十分注意をしていきたいと考えておる次第でございます。
  161. 田代富士男

    田代富士男君 私は、建設省に対しては、こだわるわけじゃないですが、屋外広告物のときにも、それは言っております。けさ私が帰ってきてから、これやってるじゃないですかと言っております。この資料はこれで正しいです。私の秘書も何回も建設省に——これ以外はありませんですと。しかし、いまおっしゃったとおりに姫島地先の工事はやっているのです。いま建設省としてやっておりますということですが、あなたの、やっていると言うならば、私はあえて言うけれども、時間があまりありませんから私が全部しゃべってしまいますが、この姫島地先の工事は許可期間が四十八年の十二月から四十九年の三月——工事を実施する期間が四十八年の九月から四十九年の三月までとなっております。この書類があります。そうしますと、四十九年三月までで終わっているわけなんです、許可基準は。ところが、にもかかわらず現在もその工事が行なわれている。いま私は、この建設省の書類が正しいとするならば、私から言われて追加をしているのです。これね、どうしてこういうことで、いま大臣は地方と中央との連絡が悪かったと言うけれども、少なくとも何回にもわたって私は連絡して、これ、ないということは、本省は掌握をしていないのです。その現地がかってにやっていると言わざるを得ませんよ。まあ小さなその辺でやっている工事ならいざ知らず、大きな工事です。実施期間も過ぎて現在もいまだにやっているのです。この事実をどうするかというのです。大臣、いかがでございましょうか。期限を過ぎております。これ、どうしますか。
  162. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) 先生御指摘のような点は、私、万、いいころかげんなことをしているということはないと、建設省職員の仕事の実態を信用したいわけでございます。と申しますのは、私も就任以来、やはり国家公務員としてそれぞれの与えられた三万一千人の建設省の職員が法律並びに政令、条文に従って、国民の奉仕者としての責めを果たすようにということを機会あるごとに申してきておるわけでございます。もしそういう事態が事実存在するとすれば、まことに遺憾なことであるわけでございまして、この点は私のほうとしても十分調べさせていただきたいというふうに考えるわけでございます。
  163. 田代富士男

    田代富士男君 大臣、建設省内が、大臣が就任されて鋭意努力をしているとおっしゃいます。これは大臣が建設大臣に就任される前です。ここに承認申請書が出ております、地建に対して。これは場所は、四十六年の一月二十六日の受付印があります。この申請場所は大阪市西淀川区西中島町地先から大阪市西淀川区十三南之町地先までのこの工事をする面積です。これに対する承認書がここにあります。建設省からもらった写しです。これが一年過ぎまして再びこの承認申請書が四十七年の一月の十一日に受け付けられております、地建に。これは場所はどこになっているか。大阪市西淀川区西中島町から大阪市西淀川区十三南之町までとなっています。私は大阪に住んでおります。西淀川区西中島、西淀川区十三南之町というのは、ここに私は大阪の地図も持ってきました、どこにも見当たらないのです。実際、西淀川区西中島町、西淀川区十三南之町という町名の仕事をやる申請をしている、これ、ありますか、大阪市へ問い合わせしてください。少なくとも大阪市の、これは四十七年の申請。いまの地図はだめだから、四十七年の地図、あて名ありません。これは一体どこの西淀川区西中島、西淀川区十三南之町——ありますか、これはどうです。教えてください。
  164. 増岡康治

    説明員(増岡康治君) 私のほうもそこまでよく調べておりませんけれども、本省といたしましては、いわゆる淀川の平面図におきまして、十三場所というのはこの付近であろうということでいままで考えておったわけでございますが、さらに調べさせていただきます。
  165. 田代富士男

    田代富士男君 さらに調べさせてもらいますというよりも、あなたのほうからいただいた資料ですよ。これは承認申請の用紙ですよ。さらに調べますよりも、住所がないと言うのです。この住所がないにもかかわらず、これに対する承認書がおりている、これは。われわれが役所へ行きます、一般市民が、書類の一字一句違ったら書類が通りますか。このような大事な西淀川区西中島、西淀川区十三、こういう場所があるかと聞いているのです、私は。調べますよりも、あなたのほうがこれを承認しているのだから、大臣、いかがでしょう。
  166. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) 先ほど申し上げましたとおり、その地図にある町名並びにその番地の土地そのものがどこにあるかということについては、今後の調査にまたないとはっきりしたこと申し上げられないわけでございます。よもや架空の所番地を……
  167. 田代富士男

    田代富士男君 まあ大臣、お見せしますよ。(資料を示す)
  168. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) ……を使って申請したとも思われませんので、その点については申請者の……。
  169. 田代富士男

    田代富士男君 これは大臣、見てください。これが四十六年です。これはおたくからもらった資料ですよ。四十六年一月二十六日のこれは大阪市西淀川区西中島町地先から大阪市西淀川区十三南之町地先までとなっています。これに対する承認書はこれです。これに対して再び出されました承認申請書がこれです。西淀川区西中島地先から西淀川区十三南之町まて——西淀川区西中島町というのはないのです。あっさりこれはお認めになったらどうですか。このように書類が、いま私が建設省からもらった資料というものが完ぺきな正式機関を通じてもらった資料にもかかわらず、けさ私が言った時点で追加されてきた、いや、やっているという、これは過去の承認書です。承認書ですら、このようなずさんであるということは、大臣すなおにこれはお認めになったほうがいいんじゃないですか。
  170. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) 確かに田代委員御指摘の点あるわけでございますが、ここで私がそのようなずさんなものであるかどうかということを、私には判断する何ものも実はないわけであります。田代委員からいま指摘を受けただけでございまして、先ほど申し上げましたように、そういう架空の地名をもって申請書が出されたということになりますと、これはたいへんな問題を含むわけでございますので、それだけに私としてはやはり自分の部下のやった仕事に対する責任というものも考えるわけでございますので、この点はいましばらく調査の時間を与えていただきたいと考えるわけでございます。
  171. 田代富士男

    田代富士男君 これはもう大臣、調査の時間とか何かよりも、私が大阪に住んでいて、その書類を見て、番地のないところということは、いかに書類がずさんであるかということを私は提示したのです。  時間がありませんから次に移りますが、そこで残土の選別について、不適当なものであるならばこれは河川敷に対して投棄させない、こういう規定になっていると思いますが、しかし、いま私が指摘いたしました姫島地区のこの場所には基準に合わないいろいろなものが捨てられています。時間がありませんから申し上げますけれども、産業廃棄物が捨てられている、こういうことは許してよいのか、大臣いかがでしょうか。
  172. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) 先ほど来申し上げておりますとおり、やはりお互いに取りきめをした問題につきましては、その取りきめどおり実施を指導してまいるというのが公務員の責任でございます。そういう点について、申請書にいろいろきめた条件を逸脱するようなことに関しましてはやっぱり厳重注意をして、そういうことのないようにしていかなければならないと考えておるわけでございまして、もし先生ただいま御指摘のありましたような点がございましたら、それは厳重に本省のほうから地建に対して注意を喚起していきたいと考えております。
  173. 田代富士男

    田代富士男君 私は昨日その現場へ行ってきました。河川敷に対して——ちょっと出してください。ここにですね、これは大臣、鉄のかたまりです。これを大臣見てください。(資料を示す)いたむかわかりませんが、それを全部持ってきてください。これはガラスのかたまりです。それから産業廃棄物が全部、これが鉄のかたまりから全部。注意をするとかそういう——私は昨日行ってきました、現実に。これだけのものが大量に水ぎわにこれが波打っております。河川の管理者は河川法第九条によりますと建設大臣が管理する。ガラスのかたまり、鉄とそれから産業廃棄物、これが一帯にわたって捨てられている。私は調査をするとかなんとか時間がないから現物を持ってきました。これだけやっていたならば、これを回収さすべきだと思いますが、どうですか。
  174. 増岡康治

    説明員(増岡康治君) 私のほうからひとつお答えを申し上げます。  現地に、ここに置いてございますものが水ぎわにたくさんあったとおっしゃっているわけでございます。もしこういう事実がございましたら、河川管理者の立場から直ちにこれを停止をいたしまして、河川管理上十分なひとつ手当てをしたいと思っております。  なお、私どもはちょうど現在二十六条でやっております区間はいま工事を一時中止いたしまして、現場と阪神公団の間で仕事の立場から九月までやるということになっているようでございますし、まだそういう実施期間のことでございますので、その間のことでございましたならば、こういうような一般に見ましていま先生おっしゃるような第九条の問題でございます。きれいにひとついたしたいと思っております。
  175. 田代富士男

    田代富士男君 そこで、いま言うとおりに、姫島地先は建設省の書類にはない。これは私がもらったあとで追加された、私に言われて。なおかつ期限が切れているにもかかわらず投棄がされている。投棄がされている内容が、いま持ってきた産業廃棄物等は投棄してはならないと一番きめられたものが廃棄されている。これを管理するのは建設大臣。しかし、大阪の場合は建設省の許可によりまして、ここに近畿建設協会なるものがどういう協会であるか、これも時間があればゆっくり審議をしたいと思うが、時間がありませんが、ここは元建設省関係の高級官僚によって役員も従業員もその家族、それで全部占められております。そうしてそういう捨ててはならない産業廃棄物を捨てながら、それを四十六年には一立米百円、四十七年には百十円、現在では一立米三百円の料金をこの近畿建設協会が徴収をしております。これは近畿建設協会というのは公益法人です。こういうような不法投棄をしてはならないというものを投棄し、そうしてそれからなおかつ最近においては三百円、それをなおかつ公益法人、捨てている場所は国有地、これはやってよいのかどうか、この点につきましてはどういうあれであるか。まあ会計検査院も残っていただきました。国有地です。国有地の上に捨ててはならないものが捨てられている。そうして一立米三百円の料金が取られている。これはまず会計検査院が認められるのかどうか。それから建設省から時間がありませんから簡潔にお願いいたします。
  176. 増岡康治

    説明員(増岡康治君) お答えいたします。  一般の捨て土に対しまして、私ども近畿におきましていま先生がおっしゃるような実態があるわけでございますが、実際に捨て土を川の中へ運びまして高水敷形成を行ないます場合は、いわゆる転圧敷ならし等、いわゆる仕上げの問題がございます。その他搬路をつくらなければいけません。また、途中の道路の補修もいたしませんといけません。あるいはまた途中の交通整理もせにゃいけません。あるいはまたいろいろと出来形の管理その他をしなければいけない。まあそういうことを積み上げまして、いまのような時価において積算しているというのが実態でございます。
  177. 本村善文

    説明員(本村善文君) ただいまの御指摘の点でございますが、具体的な事項につきましては実は私どもも現地を見ておりませんのではっきり御答弁いたしかねますが、いまおっしゃったようなことが事実でございますれば、これは河川管理上きわめて好ましくない行き方であると私どもは判断いたしております。
  178. 田代富士男

    田代富士男君 今計検査院としてはこれは好ましくない、こういうお立場でございます。このように一立米三百円、国有地に捨てている。過去この三年間で五千万円も利益をあげております、国有地に対して。そうして捨ててはならない、影響を与えている産業廃棄物です。このような近畿建設協会、これが元建設官僚によって占められている。この土砂の、残土の処分につきましては、建設協会を通らなければ捨てられない。地下鉄の工事、ビルから掘り出す残土、これは、建設協会の発行されているこのチケットがなければ、だれが行ってもやってくれないです。これがチケットです、建設協会の。(資料を示す)これは利権じゃありませんか。国有地の上に元建設官僚のOBが利権を持って、一立米三百円、これが公益法人、五千万円というばく大な利益。そしてこの建設協会は、自分の手を全然よごしておりません。トンネル会社です。チケットを発行するだけ。あと土砂の積みおろしからすべてのものは全部下請の業者にやらして、チケットの販売だけで五千万円もうけている。このような近畿建設協会を、このまま河川管理者である大臣は放置されてよいのであるか、この点を明確にしていただきたい。  それから、この決算書を見てみましたら、この三年間に百八十一億二千万円の事業をしております。公益法人ですから、公益事業としてどのくらい支出されているか、これを調べてみますと千六百五十四万円、三年間の全事業、あげました実績の〇・一%に満たない。これで公益法人でございますということは、どういうことでしょうか、大臣。また、来年度への繰り越し余剰金が二千九百万円も残っております。これは、私、専門家の人に決算書を見てもらいました。公益法人じゃありません、模範的な株式会社ですよと、こういう意見を言ってくれました。これに対して、少なくともそういう疑惑があるならば、そういう業者に対して、国の委託事業の形にするならば、このような利得は直接国に帰属しまして、そういう残土においても、産業廃棄物等がなされないような、そういう監督もできます。責任の明確化もできると思いますが、大臣、これを改善し、そのような姿勢でいくべきだと思いますが、いかがでございましょう。
  179. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) ほんとうに親の心子知らずとでも申しますか、懸命にわれわれ本省職員が努力をいたしておるさなか、こういう事実をあげての御指摘でございます。まことに恐縮いたしておるところでございまして、また近畿建設協会というものは建設業認可の公益法人であるわけでございまして、もしただいま御指摘を受けたような点を包蔵しながら仕事をやっておるということになりますと、ほうっておくわけにもまいりませんので、十分事実調査をしていきたいと、そうして改善をしたいと、こう考えておる次第でございます。
  180. 田代富士男

    田代富士男君 もう時間がありませんが、これまで、大臣、事実を示しておりますが、この近畿建設協会なるものが、いまは近畿だけですが、これを全国に広めようという動きがあるんです。こうなったらどうなりますか。この段階でそういうような芽を断ち切る、そして第九条の精神にのっとって建設省みずから国の委託事業の形にするならば、こういうことは避けられると思いますが、この点については今後どう取り組んでいただけますか。もう時間が過ぎたと委員長から通告が来ておりますから、大臣まとめてその点について。
  181. 亀岡高夫

    国務大臣(亀岡高夫君) その点につきましては、以後十分検討をいたしまして改善をしていきたいと考えておるわけでございます。
  182. 田代富士男

    田代富士男君 じゃ時間が来ましたから。
  183. 前川旦

    委員長前川旦君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  184. 前川旦

    委員長前川旦君) 速記を起こして。
  185. 星野力

    星野力君 日韓問題についてお聞きをいたします。  日本の対韓外交がいまきわめて重大な局面を迎えておることは申すまでもございません。金大中問題や早川、太刀川両氏の事件などをめぐって、国民の大多数が政府の対韓外交に大きな不満を抱いておることはよくおわかりのことと思います。国民が不満であるというだけでなしに、これまでのような対韓外交では、日韓の支配層の間の妥協や協調ははかられましても、日朝両国国民の間に不信と反目をつちかうことになると思うのであります。韓国の朴正煕政権がどんな反動支配、弾圧政治を行なおうとも、また日本国家に対して日本国民に対してどんな理不尽な態度をとろうとも、あくまでも朴政権を支持し、援助していくというのが日本政府の方針であるとしか思われないのであります。そのような方針の根底には、朴政権というものの安定的な存在が日本の支配層にとって政治的にも経済的にもきわめて好ましいという考え方、反共の韓国の存在が日本のいわば防波堤であるという認識があるからだと思うのでありますが、大臣の御見解いかがでございますか。
  186. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 日本と韓国、たいへん地形的に近接しておりまして、この日本と韓国が永続的な友好関係を持つことは、これは日韓双方のみならずアジアの平和維持上きわめて大切なことであると思います。そういう意味におきまして、わが政府といたしましては、韓国で合法的に樹立されておりますいまの朴政権に対しまして、いろいろな交渉の場合におきましても、この朴政権を交渉の相手としてまいりますことは、これはもう当然のことでございます。したがいまして、いろいろ韓国内の政治体制の中で行なわれております諸現象につきましても、私どもは韓国国内の政治体制については、私どもの政府の立場といたしましては、これに一々論評することは差し控えたいと、こう考えておるわけでございます。
  187. 星野力

    星野力君 日本政府の対韓外交は、一九六九年の日米共同声明、あの中におけるところの韓国問題についての日米間の了解事項、「韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要である」云々という、いわゆる韓国条項に基づいて遂行されておると、こう思うのでありますが、そのように理解してよろしいかどうか。
  188. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 当時日米共同声明で表現されましたいわゆる韓国条項、これは当時におきます日米双方政府首脳の認識を表明したものでございます。したがいまして、その後におきまして国際情報、なかんずくアジアにおける緊張緩和が非常に進んでまいりました。また朝鮮半島におきましても、現時点におきましてはその後変化も起きておりますが、一昨年の七・四声明におきます南北朝鮮の非常に対話の進んだ点等を考えますと、確かに韓国における安定というものは、もちろん日本にとって影響はございますが、むしろ朝鮮半島における平和と安定というものは、当時これはわが国においても非常に関心を持たなきゃならぬ。こういう意味におきまして、朝鮮半島における平和と安定がわが国にとってきわめて緊要なことであるということを私ども考えております。
  189. 星野力

    星野力君 大臣の御答弁は、一九六九年の日米共同声明のいわゆる韓国条項というものは、その当時における情勢認識をあのように表現したものであって、その後の情勢の変化の中であの韓国条項というものは色あせてきておる、韓国の安全が即日本の安全である、日本の安全にとって緊要である、こういう認識は今日はとっておらないと、こういうふうにお考えになっているというふうに理解してよろしいのですか。
  190. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 日韓関係から申しますと、やはり韓国の安全はもちろんただいまにおきましても日本にとってきわめて大きな関心を持たなきゃなりませんが、その当時における南北間の非常な対立状態、その当時の認識を日米共同声明でうたったわけでございますから、その後における南北朝鮮の対話の進行、あるいは朝鮮半島における現在の状態から考えてみますと、むしろ朝鮮半島における全体の安定と平和ということが目下私ども政府にとりまして、日本にとりましては緊要なことである、こういうふうに解釈をしております。
  191. 星野力

    星野力君 どうもはっきりいたしませんが、その後における朝鮮半島における南北の対話、あるいは一見それまでの冷たい関係が解けたかに見えた、そういう情勢があったから考え方も若干変わってきておるんだというふうにもとれますけれども、朝鮮半島の情勢、南北の対話というのは、現在ではすっかりもう凍結してしまって、また冷たい風が吹いておるというのが現状じゃないかと思う。そうしますと、やはり日本政府は、一九六九年の韓国条項、これに基づいて朝鮮半島に対するあるいは韓国に対する政策を進めておると、こう理解するほうがわかりやすいように聞こえるのですが、いかがですか。
  192. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 私はそうは考えません。そのようなまた南北間の対立が激化するとか、あるいはきわめて後退したというふうには私ども考えておりません。したがいまして十五日に行なわれました韓国の光復節の式典における韓国大統領の演説にもございますとおり、現在におきましても多少の曲折はございますけれども、いま南北朝鮮は、今後における南北の朝鮮の自主的平和的統一をやはり目ざしておる、そのために対立を——何とかまた回復したい、そういうようなムードの中で、ただいろいろお互いの国内政治体制の問題もございましょうが、総じてまた大局的に見ますとそういうような方向で進んでおる、こういう認識をもっております。
  193. 星野力

    星野力君 アメリカ政府のほうは、今日まで、一九六九年の日米共同声明の線ないしは昨年夏、一九六九年の共同声明を再確認したというよりも、それを一そう積極的に発展させて、両国政府がこの地域における平和と安定の促進のために貢献する用意があることを確認し合った田中・ニクソン共同声明、この線で行動してきておると思うのであります、アメリカ政府のほうは。たとえば去る七月三十日に開かれましたアメリカの下院の外交委員会小委員会の韓国問題公聴会におきましてアブラモウィツ国防次官補代理がこう証言いたしております。「対韓軍事援助は必要であり、それは日本の安全保障とも密接にかかわり合っておる」、こう述べておるのでありますが、これを見ても、アメリカ政府のほうは、ずっと一九六九年の韓国条項、あの線に沿うて、そして韓国の安全ということと日本の安全保障というものを密接に結びつけながら政策を進めてきておる、こういうふうに考えられますが、いかがでしょうか。
  194. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 米政府の見方、これも一つの認識だと思います。したがいまして御承知のとおりアメリカといたしましては韓国に対する米韓条約に基づく軍事援助をやっております。その点はわが国と立場が違うわけでございますが、しかしながらかつて国連決議におきまして国連軍が韓国に駐留しております。こういう現状から見ますと、米政府は米政府なりの見方をしておる、また米政府としての立場を堅持しておるということは私どもよく理解できるわけでございます。
  195. 星野力

    星野力君 先ほど大臣ちょっと発言されておりましたけれども、私は日本の安全にとってもアジアの平和という観点からも、朝鮮が平和的に統一されて、統一されたところの朝鮮と日本が善隣友好関係を維持するということが一番望ましいと思いますが、外務大臣の見解はいかがでございましょうか。
  196. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 当然私どもも南北朝鮮が平和的、自主的に統一されて——その時期は私どもいまだ予測できませんけれども、そういう時期が来て、その統一された朝鮮とわれわれが国交を結ぶということが将来あり得る仮定として私どもは望ましい形であると思います。
  197. 星野力

    星野力君 そういう立場から当然朝鮮の平和的自主的統一ということに対して日本は協力するという立場が必要だと思います。これまでは日本政府は、そのような朝鮮の平和的自主的統一に逆行する政策をとってきたとしか思われない。アメリカ政府もそうでありますが、たとえば韓国政府に対して一方的にこれを支持し、援助するというやり方ですね。朴政権のとどまるところを知らない反動弾圧の政治というものは朴政権の強さを示すというものではなくて、逆にその不安定のあらわれと見るべきでありましょうけれども、そういう情勢の中で、アメリカの議会や世論の中には、アメリカ政府の対韓政策に対する反省が、批判やそれからそれに対する国民としての理解、反省というものが強くなってきておると思うのであります。昨年二月の上院の朝鮮問題についての報告にもそれはあらわれておりますし、先ほど言及しました七月三十日の下院外交委員会の小委員会公聴会でも、民間人証人の多くは、在韓米軍の撤退、軍事援助の削減を主張し、議会の大勢もその方向に向かっておる、朴政権を強く非難しておると見られるのであります。  そこでお聞きしますが、ことしに入りまして朝鮮民主主義人民共和国を新たに承認した国の名前、それから現在朝鮮民主主義人民共和国を承認しておる国の数、これを述べていただきたい。
  198. 高島益郎

    説明員(高島益郎君) ことしになりましてから北朝鮮を承認した国は八月一日現在でございますけれども九カ国ございまして、まず一月二十九日ガボン、一月三十日リビア、二月十日コスタリカ、三月十六日ギニア・ビサウ、五月十五日ネパール、五月十八日ガイアナ、七月五日ヨルダン、七月二十五日ラオス、七月三十一日オーストラリア、合計九カ国でございます。その詰果、八月一日現在におきまして、韓国を承認している国の数九十五カ国、北朝鮮を承認している国の数六十七カ国でございます。
  199. 星野力

    星野力君 七月三十一日にオーストラリアが朝鮮民主主義人民共和国を承認しておるわけでございますが、オーストラリアに続いてニュージーランドが朝鮮民主主義人民共和国を承認するのも時間の問題ではないかと思われます。ところで、それらの国は朝鮮戦争ではいわゆる国連軍に参加して出兵した国々であります。そういう国が朝鮮民主主義人民共和国を承認するに至った。これは大きなやっぱり情勢の変化ではないかと思います。アメリカ議会の動向については先ほど述べましたが、たしか北欧三カ国も政府自身が政府として朴政権の弾圧政治に抗議しておると思います。こういう一連の最近の動きを見てみますと、一九四八年十二月の国連総会決議、日韓基本条約の中でうたわれておる国連総会決議第百九十五号三でありますが、それから朝鮮戦争時の国連決議、日韓基本条約もそれらの延長線上のものといってよろしいと思いますが、それらのものによってきめられたところのこの国連の朝鮮問題処理のワク組みがすでに破産したことを示しておるのではないかと思いますが、外務大臣いかがお考えになりますか。
  200. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) その後におけるいま御指摘のような変化はあらわれておりますが、しかしながら、依然として国連軍が韓国に駐在しておることでもございますし、また、休戦協定に基づく組織、機構というものが存在しております以上、まだその大ワクがくずれたというような認識は私ども持っておりません。
  201. 星野力

    星野力君 国連軍で駐留しておるということを言われましたが、実際に駐留しているのはアメリカ軍です。ここから国連軍という帽子がはぎ取られるのも時間の問題だと思われます。いろいろ言われますけれども、朝鮮をめぐる情勢というものが大きく動きつつあるという認識は、外務大臣実際に持っておられないのでしょうか、いかがでございましょうか。
  202. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 先ほど申し上げましたとおり、いろいろ屈折はございますけれども、大きな流れとしましては、私は朝鮮半島における情勢は逐次変化しつつある、こういう認識を持っております。
  203. 星野力

    星野力君 そういう情勢を踏まえて、日本政府が朝鮮民主主義人民共和国に対する政策を転換させる、朝鮮民主主義人民共和国承認の方向へ踏み出すべきであると思うのでありますが、その辺についての御見解を承わりたいと思います。
  204. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) わが国といたしましては、韓国を朝鮮における合法的政府と見ておりますので、現時点におきましては、いまだ北朝鮮を承認する考えはございません。
  205. 星野力

    星野力君 現時点と言われたが、どういう時点、どういう状態になったら承認するというふうに心がまえしておられるのですか。
  206. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) これは大きく国際情勢、特に朝鮮半島における情勢が変化したとき、その時点においてわれわれがそれを至当と認めるその時期でございます。
  207. 星野力

    星野力君 何か禅問答みたいになりましたが。韓国を日本が承認しておるから北を承認することはできない。オーストラリアもそういう立場にありながら北を承認したわけでありますが、なぜ朝鮮民主主義人民共和国を承認できないのですか。単に韓国を承認しておるからというだけでなしに、もう一つ立ち入った実質的な理由があろうと思いますが、お聞かせ願いたいと思います。
  208. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 先ほど申し上げましたとおり、現時点におきましては、現在におきましては、朝鮮における合法政府としての南の部分を支配しておる代表政府としてわれわれは韓国を承認しておりますが、まだ北につきましてこれを承認するには時期尚早である、こういう考え方でございます。
  209. 星野力

    星野力君 なぜ時期尚早かということをお聞きしておるのでありまして、いまのお答え、あれですか、韓国政府というものを朝鮮半島全体におけるところの合法政府として日本は承認しておるからと、こういう御認識に基づいて発言なさっておられるのですか。韓国政府をあそこの政権として承認しておるから北を承認できないとか、この意味、もう一つ正確にしていただきたいと思うのです。
  210. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 韓国は南の部分を支配している、代表している政府でございます。北についてはそれには触れておりません。御承知のとおり日韓基本条約で北の部分については白紙というような状態でございます。
  211. 星野力

    星野力君 だから、南の韓国政府を承認しておっても、北の政府を承認してよろしいじゃないかと、それがなぜできないのですかと、こうお聞きしておるのです。あなたは、時期尚早だと、こう言われておる、なぜ時期尚早なのか、どうなったら時期尚早じゃないのかと、もう少し具体的に言っていただきたいということを言っておるのです。
  212. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 他に南北両方を承認した国がございますが、それらの国と比較いたしますと、日本と韓国との関係というものは、たいへん違った、非常に複雑、また近接な関係にございます。そういう過去のいろいろの経緯もございまして、まだ北を承認するに至らない、こういう現状であると思います。
  213. 星野力

    星野力君 日本にとって一番望ましい状態であるところの朝鮮の平和的統一という見地からしても、いまこの時点において日本が朝鮮民主主義人民共和国を承認するということが朝鮮の平和的統一を促すゆえんであると、こういうふうにお考えになれぬのですか。
  214. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 先ほどから申し上げましたとおり、朝鮮半島における平和と安定、これはやはり結局において南北朝鮮が自主的、平和的に統一を実現することであるとこういう認識は私ども常に持っております。しかしながら、そこまでまいりますまでにいろいろ経過もございましょうし、私どもが、韓国を承認しております日本といたしまして、北朝鮮をある時期に承認することがあるいは見通しとして可能かもしれませんが、現時点におきましては、むしろそのほうがある意味において朝鮮半島における安定を害すると、こういうことにも結果するのではないかと、こういう認識のもとに私どもは時期尚早と考えております。
  215. 星野力

    星野力君 そこのところを聞かしてもらいたいというんですね。現在朝鮮民主主義人民共和国を承認することが朝鮮半島の安定にとって害があると、こういういま御認識を述べられたんですが、その理由をひとつ聞かしていただきたいということなんです。
  216. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 先ほど申し上げましたとおり、やはり北を承認した国ももちろんふえておりますけれども、国連全体としてはまだ朝鮮半島におけるいままでの大きな仕組みというものを変えておりません。したがって、そういうような国際的調整の中で、ある時期がきまして、そういう点が変化すれば、わが国もそれに向かってまた考え直すべき時期があろうと、こう考えます。
  217. 星野力

    星野力君 なぜ北を承認することが朝鮮の安定に逆の作用を及ぼすかということをお聞きしておるんですが、外務大臣はことばをはぐらかしてお答えになっておられぬ。さらにお聞きしたいんですけれども、私の持ち時間、たった四十分、ここに踏みとどまっておりますと先へ進みませんから、一応その問題はがまんいたしまして、まあいろいろの問題ございますが、日本政府としてはあの問題をかかえておるところの朴政権というものを、これまでどおり、あるいはこれまで以上に経済援助などで支持していく方針なのかどうか、経済援助を続けていくのかどうか。端的でよろしゅうございます。
  218. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 韓国に対する経済援助、これは特定の政権にてこ入れするというような考えではございません。韓国国における国民の民政安定、また経済開発に寄与するという点から経済援助をやっておりますので、そういう関係で私どもは、いろいろ事件が発生しておりますが、その事件にかかわらず経済援助は続けていきたい。ただし、今回の新規の経済援助についてはまだ韓国から申し入れがございません。
  219. 星野力

    星野力君 経済援助は特定の政権、朴政権を支持強化するためのものではないと、こうおっしゃいますけれども、世界があなたのおっしゃることとは反対の見方をしておる。アメリカの国民は、アメリカ政府の軍事援助だけでなしに、あらゆる援助について、これは特定政党、あの反動的な朴政権をてこ入れするものだということで反対しておるんです。国民もそういう立場で——日本の国民ですよ——経済援助を朴政権に続けることに対しては反対しておる。多くの国民がこれに不満を持っておる。そういう国民の不満、反対を押し切ってもそのような外交をやるというお考えなのか。また、やれると思っておられるのか。その辺のお考えも聞きたい。  それから朴政権というものをいまなお自由と民主主義を目ざす政権と、こういうふうにお考えになっておるのかどうか。政府は、韓国の憲法の前文に書いてあるあのことばを見れば、韓国は自由と民主主義を目ざす国である、政権であると、こういうお答えをしてこられた。しかし、だれも知っておるように、韓国の憲法なんていうものは事実上もうこれはたな上げされてしまった。朴正煕自身が憲法のようないまの韓国の情勢であります。そうしてどういう所業をやっておるかといえば、世界最悪の反動政権と言われるようなことしかやっておらぬ朴正煕政権でありますが、あれはやはり自由と民主主義を目ざす政権というふうに現在でもお考えになっておられるかどうか、もう一度お聞きいたしたいです。
  220. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) お尋ねの第一点でございますが、これは米政府内でなしに、米議会及び米国の世論でそういう考え方が非常に盛り上がっておるということは私ども認識しております。これはまあ当然アメリカは、わが国と違いまして、軍事援助もやっておりますし、また対外援助法という法律もございます。そういう点でわが国とはやや趣が異なっておると思います。  また、第二点の、いまの朴政権が独裁政権かどうか、民主政権でないではないかという御意見でございますが、自由人としてのいろんな論評は別といたしまして、私ども政府の立場といたしましては、ある国の政治体制をどう選ぶかということは、その国の国民のきめるところでございまして、その体制がいかようなものであるかということは、われわれとしては論評することは差し控えたいと、こういう考えでございます。
  221. 星野力

    星野力君 さすがに現在の朴政権を自由と民主主義を目ざす政権だというふうにははっきりおっしゃらない。論評をする限りでないと、こういうふうにお逃げになった。これはまあ半歩ぐらい前進したのかもしれません。  次にお聞きしますが、韓国政府は、十四日に日本政府に対して、金大中事件の決着を通告してまいりました。金東雲元一等書記官は容疑を立証する証拠はないから白である、ほかにも犯人はだれ一人わからぬ、金大中事件の捜査はこれで打ち切るというものであります。日本政府としては、これで金大中問題は決着した、ないしは解決したというふうにお考えになりますか、どうですか。
  222. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 昨年十一月二日の日韓了解事項というものがございます。これで一応外交的決着をつけたということになっておりますが、しかしながら、その了解事項には、その後においてフォローアップすべき問題がございます。その一つとして、金東雲元書記官の捜査結果の報告を求めるということがございます。先般、韓国政府から、この問題についてこれで最終結果であるという通告がございました。しかしながら、ここに警察当局もおいでになりますが、警察当局といたしましても、これはまことに意外であり、納得できない、したがって、韓国側に対しさらに詳しい説明を求めたいという意向であると聞いております。したがいまして、そういう意味におきまして、われわれ政府は、この警察当局のこの見解に基づきまして、今後さらに新しい事実が出てくればこれに対する追加情報を求める。また、韓国政府におきましても、後宮大使との会談におきまして、新しい捜査データが出れば後ほどまた報告することがあるというようなことも言っておりますので、私どもはこれによって金東雲元書記官の捜査データその他が全部完備したと、したがって、満足すべき報告であるとは考えておりません。今後もこの面について新しい捜査データが、あるいはわが国の捜査の結果新しい事実が出てさましたら、これに基づいてさらにその報告を求めるつもりでございます。
  223. 星野力

    星野力君 大臣のいまの御答弁、どうもおかしいんじゃないかと思いますが、先方は捜査は打ち切ったということを通告してきておる。捜査はやらないんだ。新しい何か事実が判明したら通告すると、こういいますけれども、どこかからひょっとまぐれに新しい材料、情報でも入ってくれば別問題ですけれども、もう意識的に捜査はやろうとしておらないんですから、そういう可能性というのは非常に薄いと思います。そういう事態に対して、日本政府、外交を担当しておられるところの外務大臣として、積極的に何をしていこうと、あるいは何ももうやらないのか——やらないならそれはいたしかたがないんですが、いまの御答弁だと満足はしておられないようでありますが、そうしますとどういうふうにやっていこうとするのか、それからまた次に、金大中事件というものはどういう状態になったら解決したというふうにお考えになっておるのか、その二点をお聞きしたいんです。
  224. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 私どもは決して満足しておりませんので、今後も韓国に対しまして先ほど申し上げましたさらに詳しい説明を求めるべく申し出をいたしたいと思います。  また第二点でございますが、これは当然金大中事件の外交的決着は一応つきましたが、その時期におきましてフォローアップすべき事項がございます。いま申し上げました金東雲元一等書記官の捜査結果の報告と金大中氏の出国を含めた自由の回復ということでございます。これが達成できて初めてフォローアップが完備されまして、金大中事件はここで完全に解決する、こういうような考え方でございます。
  225. 星野力

    星野力君 いま言われたそういう解決を見るまで日本政府としてはあくまでも追及していく、外交ルートを通じても要求していく、こういうことかどうか端的にお答え願いたい。
  226. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 政府としましては当然そういう立場をとっていきたいと思います。
  227. 星野力

    星野力君 国家公安委員長にお聞きしますが、八月十四日の韓国の捜査打ち切り報告について御見解をお願いしたいと思います。
  228. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) 警察といたしましては、これまでの捜査の結果というものについては相当の自信を持っておるわけでございます。したがって、このたびの韓国側の回答が捜査の結果容疑の事実が発見できなかったので本件の捜査を中止をする、こういう意味の回答が参ったのでありまして、この点は警察当局としてはたいへん不満に存じておるところでありまして、納得をいたしていないのであります。具体的に申し上げますれば、韓国側の回答には、金東雲元一等書記官の指紋の問題だとか、あるいは劉永福元副領事の所有いたしておりました車の当日の使用状況といったようなものには何ら触れるところがないわけであります。したがって、警察といたしましてははなはだ不満でございまして、今後とも外交ルートを通じまして上記の問題等を含めましてさらに詳細な具体的な回答を求めていきたいというのが今日の警察の立場でございます。
  229. 星野力

    星野力君 いま国家公案委員長の御答弁がございましたが、その御答弁からしても金東雲元一等書記官これを犯人の一人として警察では断定したというふうに理解してよろしいんだろうと思いますし、またホテルグランドパレスから金大中氏の連行に使われたのが横浜領事館の劉永福副領事の車であったということも断定しておられるんだろうと思います。そこで日本の警察としましては、この事件について今後とも独自の立場で捜査を続けられるのだろうと思いますが、その点どうかということ、捜査を続けられるとすると、事件一周年を迎えて特別捜査本部を大幅に縮小してしまわれた、あれは一体どういう意味なのか、今後の捜査ははたしてやるのかやらぬのか、もう政治的な観念から捜査をやめるんじゃないかということも懸念されるわけでありますが、その辺のこと、また捜査を続けるとすると、どういう方針、どういう目標で警察としては今後の捜査をやられるのか、あわせて御答弁願いたいと思います。
  230. 町村金五

    国務大臣(町村金五君) 先ほどもお答えを申し上げましたが、警察といたしましてはさらに捜査を続けてまいるという考えでございます。先ほど、捜査本部を先般縮小をしたということは、何かこの問題について警察としても今後の捜査を打ち切るという考えであったんではないかというお尋ねのようでございましたが、すでに警察といたしましては調べるべきものは相当に調べが終っておるわけでございます。したがって、いままでのような大きな陣容をもってする必要は必ずしもない、しかし、当然捜査本部は依然としてこれを継続をし、今後の捜査に当たるという態度でございます。
  231. 星野力

    星野力君 外務大臣にお聞きしますが、田中総理がきょう朴正煕夫人の葬儀に参列するためにソウルを訪問された。どういう意図からこのような異例とも言える措置をきめられたのか御説明願いたい。
  232. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 確かに大統領夫人の国民葬でございますから、これに政府の最高首脳が出ますのはあるいは国際慣例上は異例に属するかもしれません。しかしながら、隣国の元首の夫人がああいう痛ましい事件にあったということもございますし、また、日韓友好の見地から申しますと、そういうような外交慣例を離れて、これに心から哀悼の意を表するのは私はごく自然のことではないか、こう考えております。
  233. 星野力

    星野力君 総理のソウル訪問の機会に日韓の首脳会談が開かれるだろうということも報道されております。ところで、当面日韓の最大の問題は、これは言うまでもなく金大中事件の解決であります。金大中事件の捜査打ち切り、犯人不明というようなことを前提とした政治的解決を国民は絶対に承服するわけにはまいらぬと思うんであります。金大中問題と早川・太刀川問題の取引などということがあってはならないと思います。早川・太刀川両氏は、明後日から行なわれる控訴審の判決後、あるいは最終判決の確定した後において国外追放にする、そのかわり金大中事件のほうはうやむやにすることに目をつぶるなどということは許されない。先ほど国家公安委員長もお認めになっておられるように、韓国の二人の外交官が金大中氏の拉致事件に関係しておることはこれは明らかである。犯罪事実もきわめて明白であります。これを主権侵害と断定しないのがおかしいわけであります。韓国政府が犯人を明らかにできないのも、主権侵害の権力犯罪、言いかえれば、韓国政府みずからが犯人であるからではないかと思いますが、その点はあくまでも日本の政府として明らかにしてもらわなければいけないと思います。  それから金大中事件は日本のこれは主権の問題であります。同時に、主権の問題であるだけでなく、さっき申しましたような政治的取引で金大中氏を見殺しにするようなことになっては、これは日本の政府が金大中氏をファッショ政権に売り渡すような結果になるわけであります。これは国際正義に反することであり、日朝両国民の間に長い不信をつちかうことにもなると思います。早川・太刀川両氏にしても、またその家族にしてもそのような解決を望んでおらないに違いない。家族のそういう考え方が新聞にも報道されております。早川・太刀川両氏もそのような解決は望んでおらないというふうに私は確信いたします。そういうようなことになることを国民の多くが非常に懸念しておる。そうはさせないということを外務大臣は責任を持ってお答えいただけるでしょうか、どうでしょうか。
  234. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) まあ今回の田中総理の訪韓というものは、先ほども申し上げましたとおり、最高の弔意を表するためでございまして、まさに表敬弔問と申しますか、その意味で朴大統領にも会いますけれども、これなもう純然たる弔問であって、そこにいささかの政治会談も含まれないということになっておりますので、いまお話しのように、これによって金大中事件その他の解決等を政治的に取引するというような考えは毛頭ございません。
  235. 前川旦

    委員長前川旦君) それでは、本日の質疑は一応この程度にとどめます。  次回の委員会は明二十日午前十時三十分に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十二分散会