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1974-11-08 第73回国会 参議院 科学技術振興対策特別委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年十一月八日(金曜日)    午前十時六分開会     —————————————    委員異動  十月十八日     辞任         補欠選任      向井 長年君     中村 利次君  十月二十一日     辞任         補欠選任      熊谷太三郎君     中山 太郎君      林  ゆう君     高橋 誉冨君  十月二十八日     委員船田譲君は議員を辞職した。  十月三十日     補欠選任        西村 尚治君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         中尾 辰義君     理 事                 中山 太郎君                 辻  一彦君                 塩出 啓典君                 小巻 敏雄君     委 員                 高田 浩運君                 永野 嚴雄君                 西村 尚治君                茜ケ久保重光君                 杉山善太郎君                 浜本 万三君                 加藤  進君    国務大臣        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       森山 欽司君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    説明員         原子力委員会委         員       山田太三郎君         行政管理庁行政         管理局長    小田村四郎君         経済企画庁総合         計画局電源開発         官       伊藤 謙一君         科学技術庁原子         力局長     生田 豊朗君         科学技術庁原子         力局原子炉規制         課長      中村 守孝君         資源エネルギー         庁公益事業部原         子力発電課長  高橋  宏君    参考人         日本原子力船開         発事業団理事長 佐々木周一君         日本原子力船開         発事業団理事  倉本 昌昭君         日本原子力研究         所東海研究所原         子炉工学部主任         研究員遮蔽研究         室長      宮坂 駿一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○参考人出席要求に関する件 ○科学技術振興対策樹立に関する調査  (原子力発電安全性に関する件)  (原子力船「むつ」に関する件)     —————————————
  2. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) ただいまから科学技術振興対策特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十月十八日、向井長年君が委員辞任され、その補欠として中村利次君が選任され、また二十一日熊谷太三郎君及び林ゆう君が委員辞任され、その補欠として中山太郎君及び高橋誉冨君が選任されました。  また二十八日、船田譲君が議員を辞職され、その補欠として三十日西村尚治君が選任されました。     —————————————
  3. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) ただいまの委員異動に伴い理事が一名欠員となっておりますので、この際理事補欠選挙を行ないたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 御異議ないと認めます。  それでは理事中山太郎君を選任いたします。     —————————————
  5. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 次に、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  科学技術振興対策樹立に関する調査のため、本日、日本原子力船開発事業団役職員及び日本原子力研究所東海研究所遮蔽研究室長宮坂駿一君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、手続等につきましては委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  8. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 科学技術振興対策樹立に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  9. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 この前、この科技特委員会で、質問関連して私関係資料要求をいたしましたが、委員長の御配慮によりまして、このとおり関係省庁から確かに関係資料をいただいております。したがいまして、この資料に基づきましてきょうは新潟県における東電柏崎刈羽原子力発電所建設に関する立地問題等について若干の質問をいたしたいと思います。  御答弁をいただく関係の各位に、説明員に申し上げておきますけれども、いま申し上げました表題に関連をいたしまして資料をいただき、百聞は一見にしかずという、きわめて古いのでありまするけれども、しかしそういう含蓄のある中で、大きな柱を三本立てております。地質についてと、地質構造についてと、それから法三条三項に基づいて意見書というものが出ておりますのでこの扱い等々の問題に関連をして、大きな柱は三本でありまするけれども、十数項目にわたっておりまするので、わからないことはわからないと、これで弁慶の勧進帳で関所をパスするということでなくて、次回に延々として、わからないことば知ったかぶりでなくて、次に調べて答弁をいただくと、こういう配慮で進んでいきたいというふうに考えております。  それではさっそく、去る七月四日、第六十五回の電調審において、電源開発基本計画に組み入れられた東電柏崎刈羽原子力発電所発電一号の立地に関して、地域住民調査の結果、敷地内の地盤原子力発電建設には環境及び立地等について不適当であるということが明らかになったというふうに主張しております。  そこで、わが党は、十月の十八日、衆参国会議員専門家による地質調査を行なったのでありますが、結果は地元住民調査研究はやはり裏づけられておると、原理的にも科学的にも立証されておると、そういうふうに受けとめております。調査に参加した一員として見聞した経験をもとに質問をいたしまするから、さよう御了承願いたいと思います。  第一番は、地質についてでありまするけれども、十本の柱に及んでおります。第一点は、昭和四十三年一月から三月にかけて、通産省委託によって新潟県が建設敷地ボーリングを行なっております。以来、炉心予定位置が四回変わっております。また、建物の建設方向が変更されてきたが、電調審審査では、変更はいかなる理由によるものか、そういうような点について確認をしておるかどうか、この点についてひとつお答えをいただきたいと、こう思うんです。
  10. 高橋宏

    説明員高橋宏君) 通産省といたしましては、柏崎地点電調審の提出いたします電源開発基本計画検討段階におきまして、この炉心計画地点荒浜側にあるということを承知いたしましたものでございまして、それ以前の経緯につきましては承知していなかったところでございます。いま先生お尋ねの、炉心位置等が数回変更されたのはどういうことかという件でございますが、その件につきまして東京電力から事情聴取をいたしましたところ、次のとおりでございます。  発電所配置計画、特に炉心位置を最終的に決定するにあたりましては、敷地全域におきますボーリング調査を含む詳細な地質調査を初めといたしまして、海象、気象等のすべての調査を実施いたしまして総合的な検討を加えた上で行なわれるものである。ボーリング調査につきましては、地権者等関係から全面的に同時実施ができませず、調査条件の整ったところから逐次実施してきておりまして、配置計画構想につきましては、調査の進展に応じ検討を続けてきておりまして、一号炉位置は、今回の電調審段階発電所の全体計画を総合的に勘案した上で一号炉心位置荒浜地区南部に決定したと、そういうような状況のようでございます。  なお、数回変更したという御指摘につきましては、いま述べましたような調査並びに構想段階をまあ炉心位置が決定変更されたというぐあいに見られたものではないかというように言っておるところでございます。
  11. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 これは一応何月何日にどの地点からどの地点に変わっておるという詳細な資料を持っておりまするけれども、やりとりは避けて前に進むことにいたします。変わっておることの客観的な、主体的な事実だけは、いま説明員の述べられたような、そういうふうに一応聞きおきます。  二番目でありますが、昭和四十六年九月二十五日、東電柏崎、出雲崎の漁協に対して初めて正式の建設計画説明を行なっております。説明者東電東城用地部長でありますが、基礎となる西山層が、用地中央で深くなっておるので、北側サイト、言うならば大湊寄り、南側荒浜寄りにつくると説明しております。用地中央基盤が深いというのは、これはほんとう理由でないと思うのでありますが、この辺に対してどういうふうに判断をしておられますか。
  12. 高橋宏

    説明員高橋宏君) 東京電力から調査状況を聴取いたしましたところ、次のとおりでございます。  お尋ね敷地中央部西山層上限面標高標高と申しますのは、海水面を基準とした高さでございますが、これは場所によりまして約プラス五メートルから約マイナス四十メートルまで変化しております。これを地表からに換算いたしますと、二十八メートルないし八十メートルの深さとなっております。  以上でございます。
  13. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 先へ進みますが、昭和四十四年六月から八月にかけて、柏崎刈羽総合開発促進協議会、言うならばやはり会長は柏崎市長の小林さんでありますが、海岸線に沿うて二千五百メートルの弾性波試験を行なっております。基盤となる西山層では、七本の断層破砕帯を確認しておる。幅が十四メートルから五メートルに及んでおりまして、垂直方向軟弱層であるということはこれははっきりしておるわけであります。これが中央部を避けた一体理由はどういうわけであるか、東電からの報告を受けたか、弾性波試験報告書というものについて、関係省庁としてこれを目を通しておるかどうかと、そういったような問題について、簡明直截にお答えをいただきたいと、こう思うんです。
  14. 高橋宏

    説明員高橋宏君) 柏崎刈羽総合開発促進協議会が行ないました弾性波試験報告書を見ますと、ただいま先生指摘のように、中央部等におきまして幅数メートルないし十数メートルの垂直方向軟弱部分——破砕帯という表現は使っておらないのでございますが、七ヵ所見られるという報告が載っておるわけでございます。ただ、弾性波試験によります地質調査目的は、広範囲にわたります地域地質概要把握あるいは特徴的な問題の把握に使うというのが通常でございまして、弾性波試験のみで地質を断定するのは困難な場合が多いわけでございまして、さらにボーリング調査あるいは極限支持力調査といったようなことで判断すべきものでございますが、その後実施されました当該部分に対しますボーリング調査等によりますと、当該部分につきまして、工学的に特に問題になるものではないという報告も出ておるわけでございます。
  15. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 この物理的といいますか、言うならこの弾性波試験については、促進協報告書によりますというと、日本物理探鉱株式会社というのが行なっておりますが、この会社は大体権威ある会社ですか、どういう会社ですか、御存じですか。
  16. 高橋宏

    説明員高橋宏君) その道の経験も十分積んでおりますし、おっしゃるように権威のある会社というぐあいに考えております。
  17. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 次に進みますが、東電は、用地買収後の四十五年十二月以降、一万九千メートルに及ぶ物理探査を行なっておるようであります。まあAとBと分けてみると、この探査は、敷地全般に行なったものか、それとも特定サイトを集中的に行なったものか、実施期を含めて具体的にその説明をいただきたい。結果は、促進協と比較してどうかと、これは、御承知のように、県も、それから促進協のポイントは柏崎市の市長中心とした、やはり市会を構成する、そういうのが原点にありますが、こういうような点について説明をいただきたい。弾性波速度はやはり一・七キロメートルをどういう評価をしておるかと、こういったような関連の問題について、一応会社側あるいは促進協側というものを両々相配慮しながら、関係省庁ではこれをやはり十分ひとつ把握しておられるかどうか、そういったものも含めてひとつ御解明いただきたい、こう思うんです。
  18. 高橋宏

    説明員高橋宏君) まず、東京電力の行ないました弾性波試験でございますが、次のとおりでございます。試験実施期間昭和四十六年四月ないし六月でございます。それから、試験実施場所大湊地区及び敷地中央部測線全長一万六千五百五十メートルという範囲でございます。  それから、試験結果でございますが、弾性波伝播速度は主として第三紀層で見ますと、一・七キロメートルないし二・一キロメートル毎秒でございます。一方、柏崎刈羽総合開発促進協議会が実施いたしました弾性波試験でございますが、これは海岸線に近接した地区で、海岸線に並行して実施されております。泥岩層におきます試験結果は一・七キロメートル毎秒という数字で、ほぼ同様の数字を示しておると考えられます。なお、これに対する評価でございますが、これにつきましては、その他試掘坑内の載荷試験等、全体をあわせまして、審査段階専門家の方を含めまして慎重な審査を行なっている、そういうことに相なっております。
  19. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 ほぼ一致しておるようだというニュアンスの含みをしておりますが、これはかなりの食い違いがあると違いますか、その点は。
  20. 高橋宏

    説明員高橋宏君) 調査結果でございますが、砂岩層におきまして、促進協議会の行ないましたデータは一・五キロメートル毎秒、東京電力の実施しましたものが一・五ないし一・六キロメートル毎秒、それから、主として第三紀西山層におきます泥岩砂岩でございますが、これは促進協議会データは一・七キロメートル毎秒、それから東京電力の実施しましたものは三つデータが出ておりまして、一・七キロメートル毎秒、一・八キロメートル毎秒、二・一キロメートル毎秒、そういうようなデータになっております。
  21. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 そうすると、やはり数字はこれはごまかすわけにはいきませんので、大体ほぼ一致しておるというふうに判断できますね。  次に進みますが、五番目であります。五本の柱であります。四十四年の八月までに促進協は合計三十二本のボーリング調査を行なっております。その報告書によると三十二本全部の柱状図には、基盤にあたる部分に亀裂がある。一号炉地点柱状図には破砕帯報告されておるわけであります。サンプルは採取困難とあるものが多いようであります。東電はその後五百七十本のボーリングをしておるが、比較してみておるかどうか、この問題について、往復でありまするから、ひとつ簡明にお答えをいただきたい、こう思います。
  22. 高橋宏

    説明員高橋宏君) まず促進協議会が行なった結果でございますが、これは発電所予定地域、大体全域にわたっておりまして、ボーリングの穴の数三十二、サンプル数七十八につきまして試験をいたしております。その場合の一軸圧縮強度でございますが、最小値二・五九キログラム毎平方センチメートル、最大二六・二二、平均で一三・二四という値が出ております。  それから、一方、東京電力試験結果でございますが、これは大湊地区のみについてのデータで申し上げますと、ボーリングの穴の数が二十八、サンプル数三十五個につきましてやっておりまして、一一・八八ないし五五・七七、平均値が三二・九五という値を得ておるわけでございます。  なお、東京電力では、荒浜地区調査も実施いたしておりまして、現在も続行中というぐあいに聞いております。  柱状図あるいはコアの割れ方等につきましては、たとえばコアの割れ方等は斜め、縦、種々見られるようでございます。
  23. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 念のためにこれはお聞きしておきますが、わからなければよろしいのでありますけれども新潟県の依頼を受けた問題は別の問題として、数もわずかでありますけれども、この促進協物理的探査、その他ボーリング等相当に時間をかけて、これは大体柏崎という自治体が費用負担しておられるか、これはどういうようなかっこう経過をして、相当なこれは費用がかかっておるというふうに判断いたしますが、その点についてはどういうことになっておりますか。
  24. 高橋宏

    説明員高橋宏君) 詳しくは存じませんが、促進協議会が一つのこの問題についての判断材料とするために、専門会社委託をして行なった調査というぐあいに聞いております。
  25. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 六番目の柱に入りますが、促進協によるボーリングは、三十二本の土質調査結果一覧表によると、一軸圧縮強度は、地耐力をあらわす数値は、最大二六・二二、最低が二・五九、平均で二二・二四で小さいと思います。また深度と強度関係がないわけでありまするけれども、深さとその強度との関係がない。これは基盤軟弱化が深部に及んでいることを示しているのではないかというように判断をいたします。東電は五五から二〇と公表しているが、調査地点ボーリングサンプル数と、その採取した年月日が知りたいと思うのでありますけれども、したがって現在、東電ボーリング調査は六百本にも達しておるというように聞いておるが、用地内は平均してボーリングをしているのか、それとも特定場所を集中的にやったのか、大体目的別をも含めて、これは具体的に説明資料を持っておられますか、説明することはできますか。
  26. 高橋宏

    説明員高橋宏君) まず御指摘の二〇ないし五五という数字でございますが、これのバックになります調査範囲につきましては全域にわたっておりませんで、大湊地区において行ないましたボーリング数二十八、サンプル数三十五、採取年月日は四十五年の十二月から四十六年四月の間でございますが、こういうサンプルについての結果でございます。  一方、全域についてどういうかっこうでやっておるかという御質問でございますが、その点につきましては、ただいま申し上げましたように、二〇ないし五五という数字バック大湊地区でございますが、その後荒浜地区でも実施いたしておるようでございます。  なお、その辺の経緯につきましては、用地事情等がございまして、大湊地区のほうから実質的な調査が可能になったということでそちらのほうから順次ボーリングを行なってきたという経緯に基づくものと思われます。
  27. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 東電の出しておる調査概要によりますというと、たとえば四十五年十二月から四十七年三月までの間に、大湊側で百四十二本、荒浜側で百九十九本、それから海上で六十二本と、計四百三本というようなかっこうになっておるわけでありますが、このことはやはり確認しておられますか、これは東電調査概要による数字でありますけれども
  28. 高橋宏

    説明員高橋宏君) 承知いたしております。ただボーリングコアを取りまして一軸圧縮強度試験するという場合には、その全部のボーリング個所からやるんではございません。たとえば重量物が乗っかると予想される地区等につきましてやるのが通常のことでございます。たとえばいまおっしゃいました海上海岸ぷちといったようなところでは、全体のレイアウトをどうしたらいいかというようなために行なう一般的なボーリング調査も含まれておる本数というぐあいに了解いたしております。
  29. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 四十九年の四月現在で東電試験坑調査を約千二百三十メートル行なっておるようであります。大湊側は何メートル掘ったのか。現在試掘をやめておるが目的を達したのかどうか。極限支持力試験はしたのか。それはやったとするならばいつやったのか。実は私どももこれは現地に行ってまいりましたのでありますが、この試験坑は実は非常に乱雑になっておるので、先生といわれるほどの者でもないけれども新潟県は衆参議員両方合わせて九名おりますが、それから団長は衆議院の石野久男先生も含めて、地質学者としてはやはり和光大学の生越さんですか、等も含めて行ったわけでありますが、それは私ども調査権云々というようなことは毛頭も申すべき筋合いのものでもないのでありまするけれどもほんとうはこのサイドのいわゆる強度を見たかったわけでありますが、見ることができなかったわけでありますけれども、この極限支持力等々の試験についていつごろこれはやって、どういうわけで一体やめておるのか。そういう点については、一応行政の監督的な立場におられる通産省側についてはあるいはこの点はどう判断しておられますか。
  30. 高橋宏

    説明員高橋宏君) 大湊地区試験坑でございますが、これは立て坑が約三十三メートル、斜坑約九十五メートル、水平坑約三百五十三メートル、水平坑位置標高マイナス二十メートルのところでございますが、そういう試験坑を掘ってあります。極限支持力試験も行なっておりまして、三カ所行なっておりますが、その御視察のときの経緯につきましては私十分承知いたしておりませんが、この試掘坑は現在閉鎖はいたしておりませんが、保安管理入り口部を施錠しておるという状況のようでございます。御存じのように一号炉心につきましては荒浜側ということになりまして、荒浜側試掘坑につきまして現在いろいろ調査もいたしておる段階でございまして、大湊地区につきましては一応その試掘並びに極限支持力試験は終わっておりますが、保安管理上の問題もございますので入り口を施錠してそのままにしておるという状況のようでございます。
  31. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 比較対照してみますというと、大湊側はいまあなたが言ったとおりでありますけれども荒浜側斜坑が百四十メートル、それから水平は三百六十メートルと、計五百メートルということになっておるわけでありますけれども、そうすると大湊側のほうは一応これは大体において調査は完了しておる。したがって保安上これは大体いまだれも入ってもらいたくないし、入る必要もないし、またいろいろ空気等が入って風化をするというようなそういうことにそれは判断をすべきものか、その辺はどうですか。実際は見たかったのは、最初先ほど質問したとおり、第一号炉炉心位置が四回も変わっておるというような経過からいたしまして、本来は大湊側とそれから荒浜側とそれから中央部というようなそういう関連の中で数値はこういうようなぐあいに対比較してみてその辺はやはりどういうふうに言っておられますか。答えられなければ答えられなくてもいいんですけれども
  32. 高橋宏

    説明員高橋宏君) 大湊地区試掘坑を掘りましたのは四十七年の五月を中心として掘っておるようでございます。失礼しました。極限支持力試験を行ないましたのが四十七年の五月でございます。したがいまして試掘坑を掘りましたのはさらにそれ以前かと思います。  それからおっしゃったように一般的に岩石は露出させましてほうっておきますと風化をするというのが通常でございまして、そういう意味で掘りました試掘坑の中の保安管理上の問題があるということは事実かと思います。
  33. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 私が十月の十六日に本委員会で要求した資料によりますと、地盤極限支持力は最長距離二十六メートル、中心からおのおの十三メートルの三つ地点データで局部的に限られておると、その上四五〇、六五〇、七〇〇とばらつきが非常にあるわけであります。調査地点以外の他の場所で同様の数字が出ると判断しておりますか。調査地点地質を一体調べたかどうかと、そういった問題についてこの点は書類上あるいは報告書に基づいて書類審査をあるいは調査をしておられるのか。実際は現地に行ってこれを詳細に比較対照し見ておられるかどうかと、その辺についてはどういうことになっておりますか。
  34. 高橋宏

    説明員高橋宏君) ただいま御指摘のように極限支持力試験は一号機の重要構造物でございます炉心の予定位置中心として三カ所行なったわけでございます。この場合その極限支持力試験のためのジャッキをかけるわけでございますが、その位置は特に岩層のよいところを選んでやるというものでは全くございません。むしろその範囲の中でなるべくかたそうなところ、やわらかそうなところ、あるいはまん中に何か他の岩層をはさんでおるようなところ、そういうところを選んでやるというのが通例でございまして、この場合もそういう方法でやっておるわけでございまして、したがいましてかりに炉心付近の他の場所につきまして実施いたしましたと考えましても、いまあげられました数字と大幅に異なるということはないというぐあいに考えております。  それではジャッキをかけましたところの地質についてはどうかという御質問でございますが、これは東京電力からの資料報告によりまして、二カ地点につきましては新第三紀の鮮新世の硬質泥岩、一カ所につきましては新第三紀の鮮新世の凝灰岩をはさむ硬質泥岩というぐあいになっております。
  35. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 この問題に関連してあなたのほうから出していただいたこれが資料でありまするけれども、またいまあなたの答弁はこれに基づいてやっておられるのでありますけれども、これはあなたのほうからいただいた資料でありまするけれども、これは、1.2.3.というふうにずっとナンバーが打たれるべきでありますけれども、実際は私がいただいた資料は、これは3から出ているわけですが、これですよ。これあなたのほうからいただいた。極限支持力の支持方法その他こういうふうに書いておるわけでありますけれども、当然、出たほうの資料からいけば、あなたのほうでこの1.と2.は外へ出さないかというか、これは東電のほうから出てきた場合はこの3.だけであったかどうか、この点について、これはきょうは深く追及したり探査するという意味ではないんでありますけれども、ものの常識からいって資料というものにナンバーを打つ場合には1.2.3.と、私のところへきている資料は3.であって、今日ただいま質問の問題についてはあなたの答弁どおりこれと合っておりますからそれはそれでいいというふうにいたしますけれども、これ一体どういうわけですか。物理的に見ておかしいじゃないですか。
  36. 高橋宏

    説明員高橋宏君) 1.2.3.という趣旨がちょっとわかりかねて恐縮でございますが、私ども先生のところで御説明しましたのは、ここにございますが、A地点、B地点、C地点という表現を使っておりまして、A地点最大荷重六二五、B地点最大荷重四五〇、C地点最大荷重七〇〇、そういうことで場所等も地図に表示いたしまして整理をいたしたと思います。  表題の3でございます。これは極限支持力のほかに一軸圧縮強度、それから弾性波速度等につきましても御質問ございまして、それらの通し番号の一つかと思います。その部分につきましては特にその部分だけを抜き出してお届けしたものというぐあいに考えられます。別途その一軸圧縮等についての資料もまとめまして整理してございますが、そのうちの一貫番号の一つというぐあいに考えられます。
  37. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 現地調査に参加して、実は地質という問題については私自身しろうとでありますが、しろうとの判断でもとても発電所は建てられるものではない。たとえばこれを「むつ」に比喩して考えてみても、「むつ」は「むつ」なりに原子力船としての船舶構造の上に原子炉は原子炉として位置づけられておるわけでありまするけれども、つまり船はどういう構造であっても自然のやはりあおりによってピッチングもすればいろいろゆれる。日本列島全体を考えても、言うならばこの第三紀層であるところの西山層は非常に地震帯であります。いわんや新潟県から秋田について日本海岸線はずっと石油の地帯でガス地帯なんです。第三紀層で、やはりこの層は非常に弱体であるというぐあいに判断をいたしておるわけであります。  試掘坑を視察して実はサンプルを持ってきたわけであります。含水比は約四〇%以上であるということは間違いないと思います。風化するとぼろぼろであると、坑内の壁は縦割れの亀裂ばかりであって、エネルギー庁は現地を視察したことがあるかどうか。実はこれは和光大学の生越教授は専門家だと思いますが、私は手でさわって金づちで——このサンプル持ってきたわけです。風化するとぼろぼろになりますから、これはちょっとあとで見とってください。これは手でもうみんな折れてしまうというようなかっこうになるのでありますから、これは生田原子力局長も対比較して、あなたは「むつ」の状態もよく知っておられまするけれども、非常にここの層はそういうような弱体でありますが、問題は、一体エネルギー庁は関係の方々が現地に行って百聞は一見にしかずということで、行って見ておられるかどうかというような点についてですね。
  38. 高橋宏

    説明員高橋宏君) 当省といたしましては、当該地点の環境審査に際しまして、当地点の大気、温排水等の概況を把握するために本年五月ないし六月に担当者とそれから安全審査顧問を現地に派遣いたしております。ただし試掘坑内におきます調査ということはやっておらないわけです。
  39. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 慣行だとか慣例だとか、まあ言うならば、新潟県の柏崎・刈羽の東電があすこへ原子力発電所をつくろうと、しかも今日ただいまの時点では第一号炉でありますけれども、全体の計画路線は延長線上では八基、八百万キロワット、可能性を追求すれば一千万キロワットも位置づけたいと。用地についても、これはいろいろな政治的には問題がありますけれども、それは次元は別でありまするけれども、たとえば今日漁業権を東電は買っております。土地も買っております。しかし一部においてはやはり金を山と積んでもこの土地は売らぬぞというところの農民もおります。  さらに、この地域には、新潟から出雲崎を経由して柏崎へと県道も通っておるというようなかっこうであります。国有地あり市有地あります。これは建設省の認可を得なければならないか、市有地は柏崎市会の議決を得なければならないかと。さらには立ち入り権も裁判ざたも予測されるところのやはり里道というものもあるというようなかっこうで、しかも二本のやはり川が流れておる、水利が流れておる。非常に複雑でありまするけれども、今日としてはすでに電調審をやはり去る七月の四日ですか、一応許認可を得たようでありまするけれども立地的に見て、いま申し上げたとおり、いまサンプルも持ってまいりましたとおり、非常に坑内に入ってみるというと百聞は一見にしかずで、底辺は最も、やはり東電は三十万年だとか二十万年だとか言っておりまするけれども、権威ある学者の意見によると、これはまるが一つ多いというかっこうで、そういうようないろいろな論議をかもし出しておるわけでありまするから、この辺のあたりから、実はこの試掘坑に入ったのはわれわれが初めてでありまして、やはり現地を、原発の被害から環境や立地を守るために反対だと。反対のための反対ではないんだと。原理的にも科学的にも非常に情熱をもって勉強をして、柏崎を守るとかあるいは海を守るとか、あるいは立地を守るとかというような立場の人たちについて、百聞は一見にしかずだから見せてくれと、そしてほんとうのなまの資料というものを出してほしいと強い要望を筋を通しながらしても、東電は見せようとしてないというようなところにいろいろと問題があるというふうに私は私なりに判断をしておるわけであります。もちろん私はこの東電計画概要を見ましたけれども、たとえば地質の問題であるとか、安全性の問題であるとか、第一次冷却水を信濃川からこれを導こうとしておるようでありまするけれども、これは私どもは現地において非常に問題があると。相手があることでありまするから、そういう観点からいきますというと、たとえば東電はすでに福島でこの種の炉は実験炉の段階から実証の段階に入っておる、したがって、以下右へならえばこの柏崎の場合も簡単だと、決して安全性は心配ないんだというようなニュアンスで、反対側の立場にそういうようなことが受けとめられるような態度をとっておるというようなことで、現にやはり関西の美浜にしても、それから東電の福島にしても実証炉どころか機能しておるその足元からやはりいろいろとそれが外国炉であっても、これが安全性という問題については、かなえの軽重を問われておるというようなかっこうでありまするけれども、いまこの原点においては用地ができ、そしていろいろな問題が複雑騒然としておる中で、この作業がやはりもう四十九年度の電調審で、ちょうど九州の玄海ですか、それからこの柏崎とが許認可を得ておる。そういう関係でぐんぐんとわれわれが道を行くというようなかっこうで、この計画書に見れば全く一方的な、やはりこれはもう実証の段階に入っているんだというような、そういうかっこう地域住民の考え方を反対のための反対だというような受けとめ方を——われわれはやはり政治的に、政治家の立場からそういうニュアンスを受けとめておるわけであります。ただ、真実は一つしかないんですよ。この地盤は第三紀層の上に安田層があり、それから番神層があり砂丘層がありと、非常な複雑多様であります。そういうような点の中で、こういう点について、これはあなたは非常に地質についても、ただ私はこれはまだ実際に行って見ておられないということは、これは非常に遺憾だと思います。いずれにいたしましても、この点についてこれはいま生田局長もきておられまするから、所管であるなしにはかかわらず、政治的に見て、ひとつ、ついででありまするから、まあ一ぺんあなたの見解を聞くだけではなくて、きょうは別に原子の火は日本の火だといまなおキャンペーンを張っておられるような、長官おられなくてもいいわけでありますけれども、あなた、ひとついろいろな「むつ」の問題それから「むつ」の再検討の問題、原子力行政全般の洗い直しというような問題について政治的ではなくてもいいけれども、科学技術庁における原子力に関する一つのスタッフのポイントとして、ひとつ何とか言ってください。
  40. 生田豊朗

    説明員(生田豊朗君) たいへんむずかしい御質問でございますので、こういう御答弁を申し上げて御満足いただけるかどうか疑問に思っておりますけれども、先ほど来先生質問柏崎の問題につきましては、まだ原子炉設置許可の申請が私どものほうに提出されてきておりません。いずれ提出されるであろうと思いますので、その申請書が提出されましたあとにおきまして、先生の御指摘のような諸点も十分踏まえまして、慎重に安全審査を行ないたいと考えております。その安全審査を慎重に行ないますということがただいま先生質問の御趣旨に一番お答えすることではなかろうか、かように考えております。
  41. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 どうも歯切れの悪い、わかったようなわからぬような、どうも遺憾に思いまするけれども、これは時間に借金をしてしまっておるような関係でありまして、時計の針が気になりますので次に進みますが、以上の地質に関して質問をしたわけでありますが、東電が四十九年の四月に出したこの計画概要を私もずっと見たわけでありますけれども、なるほど計画概要であるとしても、スタイルはとにかく整備しておるということはさすがに専門家である、また東電東電らしい企業サイドで概要を外部に出しておられると、それをどうこう言うわけではありませんが。発電所敷地全般地質状況把握するためにボーリング調査で約五百七十本、試掘坑調査約千二百三十メートル、物理探査が千九百五十メートルを実施しておられるようでありますが、この中身は質問と一応私どもも実際に見た感覚というものを合わせかねて、ともかくも電調審で決定を見た荒浜サイド側の調査でなくて主として対象外の大湊側調査であるというふうに受けとめざるを得ないのであります。通産省はわずかに試掘坑による極限支持力数字判断しただけで荒浜サイトを決定したのではないかというふうに、私ども計画概要を見て、いまのお話等も聞いて、大体そう判断せざるを得ないのでありますが、基盤は、基盤をなしておるところの西山層というのはかなり起伏があるわけでありますよ。その中に青い灰色がかったかたまりは、これは第三紀層西山層でありますけれども、これは非常に暗灰色あり暗青灰色あり、それからこの泥岩は緻密かつ非常に硬質で、その岩質は原子炉及びA級建物の基盤としてきわめて適切であるというふうにこの計画概要は結んでありまするけれども、これは非常に一方的な主観的な東電側のやはり言い分であって、われわれは、これはオーバーでありまするけれども、国民を実はあざむいているのではないか。原子力はいうまでもなくこれは安全、そして環境、立地、さらにこれが機能すれば燃料サイクルというような問題も関連して考えてみるならば、非常なこれはあぶない橋を東電は渡って福島で成功しておる。決して成功しておるというふうにこれは歴史的にぼくは見ておりません。しかしながら、これからつくろうとする、電調審の許認可を得てこれからつくろうと、好むと好まざるとによらずやはりこの安全審査段階に入っていくのではないかと思いまするけれども、そういうような点についてやはり現在一号炉用地では、地下二十メートルの試掘坑をさらに二十メートル掘り下げで、四十メートルのところに炉の基盤を設ける計画を進めておるようであります。周辺から隔離された安全性から見て最適であるとされた中央部基盤は地下四十メートルにあるわけでありますよ。なぜ一体中央に建てられないのか。それは中央部と言わず大湊、荒浜両サイトでもすべて敷地内の地質が原子炉に不適当であるからというふうに私どもは一応推定し判断せざるを得ないと思うのでありますが、この点についてはどういうふうに判断をしておられますか。
  42. 高橋宏

    説明員高橋宏君) 発電所基盤としての妥当性につきましてはいろいろな角度からいろいろなデータをもとにいたしまして慎重に検討しなければならないわけでございますが、私どもこの地盤問題が特に地元におきましても強く関心が持たれておるという実情にかんがみまして、東京電力に対しましても科学的、技術的に資料をもとにして十分お話し合いを進めるように、なお原資料を現地等地元にも提出して、それをもとにして技術的、科学的な議論を進めるようにという指導をいたしております。私ども申請の段階でいろいろ審査がございますが、そういった地盤問題につきまして十分慎重かつ厳正に審査を行ない、安全に万全を期していきたい、そういうぐあいに考えております。
  43. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 私は何も先ばしって安全審査段階というようなものはいま考えておりません。これは客観的には新聞は、これは四十九年の十月十七日でありまするけれども、こういっておりますよ。四つの柱を立てて、耐震性——耐地震ですね——耐震性面から基礎岩盤の西山層をさらに二十メートル掘り下げ、敷地内の一番低い西山層に合わせて平面にする。二は、信濃川水系からの一次水問題が確定していない。三番目には、反対派の地盤問題追及などから、データの整備等、より慎重にする必要があるんだ。四番目には、原子力船「むつ」の問題による安全審査会の動向などをあげておるという関係で、これは新聞が客観的にとらえた柱を立てたわけでありますが。  次に進みますか、地質構造について——これで最後でありますが、簡単にやります。  地質構造についてでありますが、この地域は、日本の油田地帯の中でも唯一の活褶曲構造でありまして、荒浜の曽地の観測地点では六十年に上下二十センチメートルの移動が観測されておるわけであります。また用地に向けて後谷背斜とそれから長嶺・高町二つの背斜が内陸から海岸にかけてほぼ並行に走っておることは事実であります。これらの背斜の間には胴切り断層を伴う真殿坂断層という大きな断層があるわけであります。この断層は用地内が砂丘におおわれておるために隠されて確認はされておりませんけれども地元住民はずっと古い歴史の、地下の歴史、記録の歴史、それから科学的なデータによって、地元住民の研究調査では用地内にも延びておるんだというふうに現在の段階では推定されておるわけであります。また、十月十八日の調査団のこの試掘坑における小断層の発見は大断層に伴って起きておるものというふうに判断をせざるを得ない。調査団はやはり団という形式でありまして、私は団長ではありませんから総括的なことをここでは論議いたしませんけれども、およそ衆議院のほうでは出てくると思います。  第三紀層には地震が発生することは常識であります。このような危険な地質構造通産省はなぜ適地と判断したのか、環境審査顧問会は何を一体審査したのか、通産省調査新潟県に依頼する前に判断はできたはずだがどうか、そういったような問題について、ついででありまするから申し上げまするけれども、やはり原子力産業会議が日本列島全域に年表をつくって、特に総合エネルギーの中間報告によれば、五十五年までにこれこれである、六十年までに六千万キロワットである。だとするならば、当然日本列島全域にこの原発用地をマークされておるというふうに判断をせざるを得ないのであります。言うならば、日本列島、地震帯を持つ日本列島の上にどうして——もちろん電気の必要性、生活というものについて不可分であるという関係はよく知っておりますけれども、水力、火力もあり、そして科学によっていろいろなエネルギーを掘り起こすことはできるのでありますけれども、なぜこれをこの地域住民の納得と理解の得られぬままに、電調審を経たから強行する、走れ走れというふうに強行しなければならないかということを、とにかくまあこの点については、これは時間もありませんが、そういうふうに考えておるわけであります。この点について生田原子力局長何とか——もう長官は、来ましたけれども、言わなくてもわかっているのだ。あなたの言っている原子の火は日本の火だし、原子力に反対する者は科学に挑戦する者だということでだいぶやりとりをしておるわけですから。
  44. 生田豊朗

    説明員(生田豊朗君) ただいま先生指摘の点でございますけれども、火力、水力、その他地熱発電その他のエネルギー源を総合的に考えまして、特に今後の世界的な石油の需給の見通し等を考えました場合、原子力発電の推進はやはり日本経済の安定成長を維持し、エネルギーを確保するためには必要なものだというように考えております。したがいまして、原子力発電の推進は今後とも続け、推進していくことが必要だと考えておるわけでございますが、それと並行いたしまして、この安全性の確保につきましては非常に重要な問題でございます。むしろ、安全性の確保に十分意を尽くしますことが原子力発電の推進の足元を固めるということになると考えておりますので、先生指摘の点も十分考えまして、今後とも安全性の確保にできるだけ努力してまいりたい。それをもとにしまして原子力発電を推進してまいりたいと考えております。
  45. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 この七月四日の電調審の許認可を得ておるという既成事実はそのとおりでありますが、この既成事実を踏んまえて、地域関係住民、言うならば原子力から出る安全性、環境、立地、将来これが機能すれば当然燃料サイクルの中でいろいろな諸問題が出てくるものなのでありますが、そういうことを踏んまえてやはり法に基づいて意見申し立て書というものが出ておることはせっかく御了承のとおりであります。この申し立て書は、通産省、経済企画庁、科学技術庁、建設省、農林省に出ておるわけでありますが、この意見書の取り扱いについては一体どのように扱っておられるかというふうに、これは中を、中間を飛ばしましたけれども、この問題について、経過の概要はこれは企画庁であるか、まあ関係の省庁はありまするけれども、これはこの法律は私の不勉強かもしれませんけれども、大体電源開発促進法なるものは昭和二十七年か何かにできておると思いますけれども、とにかく請願権あり陳情権あり、そういうものを乗り越えて事この問題について意見を申し立てをしておる理由も出ておるのでありますけれども、その扱いについてこれは今日的な時点ではどういうふうに扱っておられるかということをひとつお伺いして、もうあと一点だけでやめることにしますが、その点について。
  46. 伊藤謙一

    説明員(伊藤謙一君) いま先生の御指摘になられました意見の申し出書につきましては、先生の御指摘のとおり、各行政機関の長に新潟県を経由いたしまして送達されておるわけでございます。この点につきましてはそれぞれの各省庁に関連することではございますけれども、電源開発調整審議会の庶務を担当しております経済企画庁といたしまして、各省庁とも相談いたしましてこの扱い方を協議したわけでございますけれども、電源開発促進法施行令にこの意見の申し出の相手側になる行政機関というものが規定されております。それによりますと、農業、商業、工業等事業を行なう者につきましては、その事業を所管する国の行政機関の長というふうに規定されております。それから地方公共団体の長が意見を申し出る場合には、その意見に関連する事項を所管する国の行政機関の長、その他の場合には通商産業大臣が相手側の行政機関となるというふうに規定されておるわけでございます。本件に関しましては、意見の申し出をなされた方々は、事業を行なう者としての立場を離れまして、個人あるいは住民としての立場から意見の申し出がなされておるというふうに認められるわけでございます。したがいまして、意見の申し立ての相手側となる行政機関といたしましては、通商産業大臣であろうということでございます。したがいまして、本意見の申し出につきましては、通商産業大臣が必要な措置を講ずるわけでございますが、通商産業大臣の所管以外の事項につきましては、その事項を所管する行政官庁に必要な措置を講ずるよう連絡するということにいたしておるわけでございます。そういった形で目下関係省庁におきまして、この意見の申し出につきまして検討しておるという状況でございます。
  47. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 法治国であるから法は尊重されなければなりませんけれども、歴史の流れの中で、昭和二十七年にいわゆるこの法律ができて、その法三条三項に基づいて、しかし原点は主権在民ですよ、それが企業者たる企業を推進しようとして、すでに電調審という認可を得ておる、そういう関連の中で、しかし今日的な原子の火がまぼろしの火であった時代は終わりを告げて、それが実証炉であるとか、あるいは実験炉であるということは別として、これは歴史が解決して、国民の生活というものについて電気は必要であるということの評価は何人も変わりはありませんよ。ただ、この地域社会において企業者ではないけれども、そして用地というものは取得されても、漁業権はとにかく金で買い取られても、今日的にはやはり漁民にして海はどうなっていくだろうとか、土地はどうなっていくだろうとかという、そういう人たちがやはり主権在民の立場から法に基づいて意見書を出しておる。これをさらに主体的にとらえれば請願権であり陳情権であるということについて、これをどう受けとめて、行政であり政府は扱うかという問題については、従来の慣行はともあれ非常に重大に考えていただくことが必要だというふうに考えております。いま伊藤さんですか、あなたのおっしゃったこともそれは客観的に見てあなたたちの立場はそうでありましょう。しかしこの取り扱いについて、いまの手順というものは、大体五つの省庁に出ておるから、それは大体通産省で扱うべきものだというふうな、大体それも私どもも常識的に見てわかります。当局の姿勢については、やはり長官もおられまするけれども、やっぱり私のいま言わんとするような問題についても、まあこれでやめますけれども、やはりこの国民の異議申し立ての権利というものは、それは法に基づいて言うならば三条三項に基づいて異議申し立てをしているわけだけれども、これは請願や陳情に準ずるもので、そして新潟県の県庁という窓口を通してきておるから、これはいいかげんに時をかけて県庁に返しておけばそれで何とかおさまるじゃないかというような、軽々に、過去のケースがそうであっても、そのケースがケースとしてレールが敷かれておるから、そこをとにかくコントロールしながらいけばいいという扱いであるというと、このつまり柏崎原子力発電所は陸上における「むつ」というような関係で非常に問題が起きるということは、非常に地震帯であるということになるわけであります。  ついでに申し上げておきまするけれども、この調査に当たった生越教授はこう言っておりますよ。「若狭湾、福島など他地点と比べ形成年代が新しい。また水分を多く含み、風化も激しくてボロボロ、ガタガタの地盤といわざるを得ない。まさに豆腐の上に原発をつくるようなもので危険がいっぱいだ。地層も敷地一帯は活褶曲構造で、現在も動いている。大断層が近くにあることも十分考えられるので、大規模な調査をする必要がある」というふうに、まあ生越教授というものが宇井純君と一緒に東大解体学というような論理で非常にはやっておるそうでありまするけれども、いまはやはり地質学の権威として実際は坑道の中へ入っていっているわけであります。これは余談でありまするけれども、とにかくわが党はいずれ政局の流動推移の中は別の問題として、用地問題をどうこう言うわけじゃないんですよ。この基盤が比喩的に言うととうふでありコンニャクであるような、福島やそれから玄界、それから美浜とは違うぞと、非常に軟弱地帯である、しかも地震帯であるといったようなふうに扱っているわけでありますから、そういう点も考慮して、つまりその異議申し立てに対する扱いは慎重にやってもらわぬというと非常に問題が起きる。結果として急がば回ってよかったと、「むつ」にならなくてよかったというようなかっこうのことも私は心配であるわけであります。  ついでにこれは申し上げておきまするけれども、これは今後勉強をする必要があると思うのでありまするけれども、これてやめますから——通産省地質調査所というものが、外郭かいずれにいたしてもあると思いまするけれども、これは四十六年の一月十四日、読売でありますけれども、こう書いてありますよ。日本列島の「”地震体質”の実体をさぐり、地震が起こるメカニズムを明らかにするには、この第三紀の地層にメスを入れる以外にない。」、第三紀層とはやはり西山層を言うわけでありますが、「通産省地質調査所の鈴木尉元(やすもと)氏らは、過去四年にわたって、新潟県を中心に、日本各地の第三紀層を調べてきたが、地殻に垂直方向の断裂のあるところに、地震が起きやすいことを突きとめた。この研究は、第三紀層に多い含油層を探るために大きな役割を果たすものだが、一方、地震予知の有力な手段となることも期待されている。」、これは地震の問題について研究をされるためにこういう新聞が出ておるわけでありますので、これは後越山脈の場合はこうだというかっこうで、これは本紙でありまするけれども非常に大きく扱っております。それほどに学者の目から見てもこれは非常に危険な地帯であるというふうな評価があるわけでありますが、私は以上地質構造について——そして柏崎市長なり、それから新潟県の知事はやはりここに一年半ばかり参議院に籍を置いて知事に復活しておりまするけれども、これは何にもわかりゃしませんよ、この人は。いずれにしても、すでにルートはついて、窓口を通して関係省庁に対して意見申し立て書と理由が付してきている。この扱いは時間をかけて慎重審議していただきたい。東電もなま資料を出してほしいんですよ。われわれにもなかなか資料を出しても、ようやく試掘坑の中に入れてもらったわけでありまするから、いずれ、まだこれは草もはえ、ぼうぼうとしている状態でありまするから、慎重審議をしてやってもらいたいということを強く要望いたします。  私はやはり原発男と言われるほどに執拗にこの問題を追及し勉強していくということを申し添えて、これでやめますけれども、長官もせっかく来られましたのですから、ひとつ見解なり、それから経企庁の伊藤さんひとつそういう点について、それからこれは聞いておきますけれども、この通産省地質調査所というものがあるのですか。そういうものについて関連して、もうこれで私の質問は自余に譲って、きょうはこれでだいぶ時間を食い込んでおりますからやめますけれども、どうかそういうことでひとつ、まず長官から……。
  48. 森山欽司

    ○国務大臣(森山欽司君) まずもって、本日の委員会に閣議がございまして遅参いたしましたことをおわび申し上げます。  地質の問題を中心にいろいろ御質疑があったわけでございますが、そして柏崎原子力発電所予定地についてはその点について問題ありというお考えのようでございますから、まあかねがね電力会社に対しましても、そういう心配についてあらためて調べ直して連絡してもらいたいというふうに話もしておりますし、また先ほど事務当局から話がありましたように、安全審査の対象として地質の問題は当然十分に検討して、御心配のないようなふうなやり方でやってまいりたいというふうに思っております。  原子力発電に対するお考えが、ただいまお話を承っておりますと、必ずしも私どもと同じような立場にないようではございますが、御心配の趣につきましては、私どもも最善の努力をいたすつもりでございますし、電源開発促進法に基づくお申し出等につきましても、できるだけの配慮を加えて措置をいたしたいと考えます。ただ、電源開発促進法をごらんになっておると思いますが、これは後ほど議論も出てまいりますが、審議会の委員というのは大蔵大臣、農林大臣、通産大臣、建設大臣、自治大臣、経済企画庁長官、環境庁長官も入っておりますが、科学技術庁長官はちょっと入っておりませんで、これはやっぱりこの法律がたいへん古い法律でございまして、水力電気が中心の時代の法律でございます。その後、火力発電が中心になり、火力も石炭から石油に変わり、これからつくる発電は原子力が、個所数は別にいたしまして、発電容量としては一番大きいわけでございます。そういう時代に合わなくなっておるわけでございます。そこに名前が書いてないから、私どもは、ただいまのお話をいいかげんに扱うなんという気はさらさらございません。杉山委員から格別のお話がございましたから、私どもも真剣にこの問題に取り組んでまいるつもりでございますが、制度全体が大体その時代が実際と合わなくなっておると、その意味でも、今後原子力行政、原子力行政組織というものを根本的に考え直していかなきゃならぬというふうに考えておるわけでございます。それはともかくといたしまして、ただいま御発言の趣旨につきましては、十分御心配のないように措置をするつもりでございます。
  49. 伊藤謙一

    説明員(伊藤謙一君) ただいまも長官からもお話がございましたけれども、経済企画庁といたしましても関係省庁とこの点につきましては慎重に検討いたしたいと、かように考えております。
  50. 高橋宏

    説明員高橋宏君) 地質調査所は、通産省の組織の中にございます試験所でございます。ただいまのお話、十分検討いたしまして、省内のことでございますので、地質調査所の権威者の意見も十分聴取いたしまして今後の柏崎の安全問題に取り組んでいきたいというぐあいに考えております。
  51. 杉山善太郎

    杉山善太郎君 これでいいです、またあとで勉強しますから。
  52. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 杉山君の質問は終わりました。
  53. 辻一彦

    ○辻一彦君 私は、きょうは原子力船の問題について、これは報告もありましたからお伺いいたしたいと思います。  まず第一に、森山長官から今度の「むつ」の問題を通していろいろ政府として学びとられた点が多々あろうと思いますが、これについての考え方をまず最初にお伺いをして具体的な質問に入りたいと思います。
  54. 森山欽司

    ○国務大臣(森山欽司君) 原子力船第一船の「むつ」の問題については、これはもう船体ができ上がって原子炉を中に据えつけて、そして燃料を装入して出られるばっかりになりましてから、満二年間手がつかないでおったというようなことでございますから、できるだけすみやかにこれを出港さすべきものであるというふうに私どもは考えまして、現に、ある週刊誌の冒頭第一ページに、原子力日本の象徴として「むつ」の写真が出、その次のぺ−ジには成田の国際空港も出るというようなことでございますから、これは早急に処理せにゃいかぬということで、この出港に努力したことは御案内のとおりでございます。出港いたしましてからあとの試験の推移は、当初、順調でございましたが、まあ三週間の予定が二週間ぐらいで片がつくのではないかと、こういうふうにいわれておったわけであります。ところが、九月一日の夕方、これは私の耳に入ったのは九月二日の昼過ぎでございましたが、放射線漏れの事件があったという報告を受けたわけであります。これは御案内のとおり〇・二ミリレントゲンの放射線漏れがあったと、放射性物質が表へ飛び出したということではありません。光線漏れ、カーテンを通して光が漏れてくるような光線漏れがあったということであったわけであります。それでしかも〇・二ミリレントゲンという量は、これはきわめて微量でございまして、この原子炉の上で毎日八時間仕事をして一年間やりましても、受ける放射線総量は胃のレントゲン一回分ぐらいであると、量自体はきわめて微量なものでありますが、出力一・四%の段階でこの放射線が出たということは、これはもし一〇〇%で原子力機関が通常に機能を発揮しようというときには、その出てくる放射線総量は相当なものになり得るわけでございますから、これは専門技術的に見ましても、また、私どもしろうとが考えましても、そういうふうに考えられましたので、当時、私どもは船上において十分原因を調べ、応急措置を講じてもらいたいと、すぐ「むつ」が港に帰ってくるというようなことではなくて、とにかく、そこで措置を講ずる。専門家も乗っておらないようであるから、東京から専門家も送ろうということで、これは東京から千二百海里沖でございまして、まる二日かかるわけでございますが、専門家を送って調査をさしたのは御案内のとおりでございます。この調査の結果をコンピューター等にかけて解析いたしましたものが、数日前に、その結果が発表がございました。後ほど関係者の方からそのことについての御説明があると思うわけでございますが、いずれにいたしましても、そういうことでこの問題の措置を講じたのであります。それにつきまして、安全だ安全だと言っておったにかかわらず、安全じゃなかったじゃないかということで、むつ並びに青森県の地元で漁業組合の人たちが騒ぎ出し、いままでは二十九組合中二十五組合までが、この出港に対して四組合だけが強硬に反対しておったと、あとは出港について賛成派におおむね回っておったのでありますが、状況が一変したと、また、青森県の地元一般もそういうような空気になったということがあるわけでございます。  きょうは、おそらく御質問の趣旨はそういうことに対してどういう措置をとってきたかという方面に重点があると思いますので、そのことについて、まず、お話を申し上げたいと思います。  どうしてこういうことが起きたのかということについては、現在の段階では、必ずしもこれだと言い切れる段階までというのは、まだまだ早計ではないかと思いますが、おおむねのところは、昭和四十二年ごろ詳細設計の図面をつくりました際に問題があって、そしてその問題によって設計の現実が、放射線が出てくる量、放射線量についての見通しが三けたぐらい違ったのではないかというふうに考えます。場所によっては六けたも違ったというようなところもあったようでございますが、そういうことについてこれからまあたぶんそこに問題点があると思うわけでありますが、この間の放射線漏れというのは一体何が起こったのであるかということを正確にこれからつかんでいかなきゃならないと思いますし、つかんだ結果に対してなぜそういうことが起きたかということを調べていかなければならないと思っておるわけであります。  それから今後の問題として、そういう事態についてどういうふうに対処するかということを考えていかなければならないというふうに考えております。まあこれにつきましては、科学技術庁、それから運輸省におきましても、先ほど申し上げました調査団の調査の結果の解析等に当たって、今日に至っておりますことは御案内のとおりでございますし、原子力委員会におきましても、これを製造いたしました三菱原子力工業の側からの弁明を聞きまして、それについていろいろ調査を進めておるというようなわけでございましたが、どうもこういうあれだけの騒ぎのもととなった問題でございますから、これはどうしても真相をはっきりつかんで、うやむやにするようなことがあってはならないということで、このたび政府におきましてはむつ問題の調査特別委員会を設けまして、その真相の究明に本格的に当たるという態勢になっておる次第でございます。  まあしかし私どもの現在の気持ちといたしましては、その調査結果によることではございますが、基本的には原子力船「むつ」の第一船の計画はこの際放棄するということには考えておりません。今後の原子力船の開発も、こういうことがございましたから多少足踏みをすることにはなると思いますけれども、既定方針で進んでまいりたいと思っております。  御案内のとおり、あと十五年か二十年たちますれば、大型高速船は原子力船の時世がくるわけでございまして、世界有数の海運国であり造船国であるわが国が、大型高速船の建造並びに運営について指をくわえて見ておるというようなことになりますことは、将来わが国の産業経済にとってゆゆしき大事でございますから、そのときになってからでは間に合いませんから、現在の段階において誤りない方策を立ててまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。  まあいろんな角度から今回の問題は教訓になったと思っておりますが、御質問の御趣旨の路線を私なりに想定いたしまして、一応私の考え方を申し上げた次第でございます。
  55. 辻一彦

    ○辻一彦君 まあその点については全体の質疑、今後を通してまたいろいろお尋ねをしたいと思います。おおよその考えは承りました。  そこで、せっかく長官の御意向を伺ったのですが、それにひとつ続けて触れてみたいと思うのですが、当初起きた「むつ」原子力船のいわゆる放射線漏れについて非常に過小評価の発言が政府にあったと思います。確かに言われるように〇・二ミリレム一時間当たりというのは全体の量にしては確かに一年間に計算をすればレントゲン云々の線に数字的にはなるでしょう。しかし問題はそれよりも一・四%の出力で設計基準の二倍の放射線漏れがあったということが非常に重大である。この認識が私は政府に十分されていなかったのじゃないかと思います。  たとえばこの一〇〇%出力によれば、すでにこの間数字が発表されておりますが、ハッチの中央部では四千五百倍、それから中心線上ハッチ周辺、これは問題のブザーが鳴ったところですが、四千倍というような、おおよそこの設計基準に対する数字が計算をされますですね。問題は、これをかりに一年間に引き伸ばしたとすれば、われわれの概算で百二十五レムという大量な、もしもそれがずっと続いているとすれば、被曝ということになる。これは原子力船最大事故、仮想事故、重大な事故を起こした場合に全身被曝は二十五以下に押えられるという、最大の事故を起こしても二十五レム以下に押えられるという、そういう想定を、計算をちゃんとやりながら、やっておるにもかかわらず、もしもこの出力一・四における〇・二ミリレムというのは、これを引き伸ばしてみればそういう重大さを持っている。この点について、ことさら過小に評価をして問題を押える。重大な問題であるという認識が、私は、政府部内に当初まず不足しておったのじゃないかと、こう思いますが、この点について、長官、いかがですか。
  56. 森山欽司

    ○国務大臣(森山欽司君) 私は、いささかもそう考えておりません。当時の新聞をお調べ願えればわかりますが、いま問題としては、安全性については全く心配ないことであるが、ただいま辻委員からお話がありましたようなことも考えまして、問題は重要視しなきゃならないということを私は申し上げた、新聞記者の諸君にも話もし、それが記事になって残っておるわけでございます。それだけの量を、そういう意味では、それを軽く考えちゃいかぬということははっきり言っておるわけでございますし、だから、すぐむつ港のほうに帰ってくるというようなことをしないで、現地でとりあえずの応急措置と、原因をとにかく調べられるだけ調べてくれ、こちらも直ちに専門家を送る準備をしようということで、まあ専門家を送るにいたしましても、専門家の人選もありますし、それからこの調査をする機械とかあるいは資材とか、そういうものも集めなければなりませんし、結局、出港いたしましたのは、九月の二日の午後から始めまして九月の五日の昼には東京を出発して、それから二日間かかって七日の日に着いて、八日からたしか調査を始めたというふうに私は記憶をいたしておるわけでございまして、私は、当時の措置といたしましては軽くなんかいささかも考えていないわけで、むしろ今回の放射線漏れは重要視しなきゃならぬということを私は言っておったわけであります。しかし、安全性については心配ないのだということは私が申しておったところでございます。
  57. 辻一彦

    ○辻一彦君 このハッチのところにおいて設計基準値と四千倍の開きがある。それだけじゃなしに、この第一次遮蔽と圧力容器との間には、これはもうはかる地点によっては一千万倍あるいは上部のほうでは五百万倍というように、設計で計算された数字との間に非常に大きな開きがあったということが二日前明白になりましたね。この事実と、長官がまあ〇・二ミリだから一年間すわっておっても問題はないと言われるこの間には、同じ計算ではありませんが、私は、国民の耳には、この事実とのあまりにも大きな開きについて、原子力行政に対する不信感をますます重ねたのではないかと、こう思いますが、この点についてどうお考えになっておりますか。
  58. 森山欽司

    ○国務大臣(森山欽司君) ただいまの調査結果は、当時漏れていた量のことを言っておるのではありません。これ、ほんとうに動き出したらそういうことになるぞということでいろいろな調査がされておるわけでございまして、その当時の〇・二ミリレントゲンということ自身はこれは事実であり、その放射線漏れの〇・二ミリレントゲンという量は、これはその上で毎日八時間仕事して一年やったって、その仕事をやっておった人が受ける放射線総量は胃のレントゲン一回分ぐらいと、まあ比喩的に言えばその程度の量であったことはもう間違いないというふうに考えております。ほうっておけばそれは大ごとになるような設計であったということがいまや調査の結果明らかになりつつあるわけでございますが、そういうことになる前に、未然に警報装置が鳴ってその事実を発見された。だから私は安全なんだ、前々からいつも申し上げるわけでございますね。これは御案内のとおり放射線とか放射能とかいいますものは、エックス線だとかラジウム温泉だとかということで、われわれも耳にしておったことでございますし、また、国際的にも学問的にも、かなり実態調査が進んでおりますから、国際放射線防護委員会という権威ある機関もございますし、そこから権威ある勧告がもう出ておるわけでございます。そういうことを踏まえまして、そういう放射線とか放射能に二重、三重、多重の防護措置を講じておって、そしてしかも、そういうことは実用化段階において二十年足らずの科学技術産業でございますから、技術論としては一番新しいテクノロジーアセスメントの手法というものがその中に取り入れられて、いわば放射能とか放射線とかという、いわばほっとけば公害になるようなものの先取りをやったシステムになっている。だからそういうおそれがあればこれは警報が鳴るとか、かわりの装置が動くとか、あるいはまたインターロックというふうな安全装置ができておるとか、あるいはスクラムという非常に緊急停止をするとか、そういうぐあいに、もう安全については念には念を入れたような体制になっておる。だから私どもは安全だと、こういうように言っておるのでありまして、それは人間のつくる機械でございますから、メーカーが一生懸命つくって、国がそれぞれいろいろなふうに審査もし監督もいたしましても人間がやることですから、それは万が一の故障がないとは必ずしも言い切れないわけでございますし、それから特に自主開発なんていうことになってまいりますれば、これはもうとにかくそういうふぐあいなところが起きないかということで試験や実験をやるわけでございますから、その試験や実験をやったら、そういう点が出てきたらそれであぶないなんということはない。結局そういうことがあっても、オペレーターや回りの人たちに放射能とか放射線をかけるようなことがないように安全が確保されておる。安全装置がしっかりできているんだと。そういう新しい科学技術論の上に立って新しい仕組みの科学技術産業が運営されているんだと、だから安全なんだとわれわれは言っておるのでありまして、故障がないから安全だなんというようなことは、私はまあ特に、辻委員は私が大臣に就任以来、今日まで何回も議論いたしましたが、いつもそのことが議論の対象でございましたね。ですから私は、そういう意味では安全性については全く心配ないというふうに、今度の事件についても全く思っております。それはもう前々から申し上げておるところで、きょう初めて申し上げるわけではございません。速記録を調べていただけば、もうそういう議論をずっと一年間やってきておるわけでございますから。ただ残念ながら国会の議論経過を見ておりますと、野党側の方々の中にはどうしてもその故障が起きないのが、問題が出ないのが、これが安全なんだというふうにとらえるようなお考えが、いままで散見をされておるわけでございますが、今回の事態についても私は従前どおりのことを言っておるのでございまして、どうかその点について御理解を願いたいと思います。
  59. 辻一彦

    ○辻一彦君 限られた時間でその論議はあまりやっておれませんが、私はぼやが出れば消したことがあるから安全なんだというよりも、ぼやの出ないようにするということが、原子力においては安全の大事な点であると、こう思っております。この論議はきょうはもうちょっと聞きたいことがありますから、これ以上はとどめます。そこで長官のいまの考え方については、これから具体的な質疑の中で逐次ひとつお伺いしたいと思います。  事業団にお伺いします。簡潔で答弁はけっこうです、時間が足りませんから。  原研のあのTRR−4号で、遮蔽実験については十分な実験をやったという前回の国会答弁がありましたが、大体この遮蔽の実験については十分な実験をやったと、こういうふうに大体考えておられますか。これは長い御答弁は要りません。
  60. 倉本昌昭

    参考人(倉本昌昭君) この「むつ」の設計を行ないました時点におきましては、十分なものをやったと、こういうぐあいに考えます。
  61. 辻一彦

    ○辻一彦君 宮坂さんにお尋ねしたいのですが、このすき間から中性子が漏洩するというテストについてどういう実験をやっておられたのか。これも専門的に詳しく伺ってもたいへんでありますから、要点でけっこうです。
  62. 宮坂駿一

    参考人宮坂駿一君) 一次の遮蔽実験は私は参加しておりませんので、原船団から報告されている報告書をもとにお話しいたしますが、一次の遮蔽実験は試験項目をストリーミングですとか透過とか、そういうような項目の分け方をせずに、試験体の形状によって項目を分けております。それで、現在問題になっております圧力容器と、一次遮蔽とのすき間からのストリーミングを対象にする実験は、計測孔に関する実験、DI−2という分類で呼ばれている実験で測定されております。その程度でいいでしょうか。
  63. 辻一彦

    ○辻一彦君 はい。原船の原子力第一船の遮蔽実験効果に関する報告書というのがありますね。これはかなり膨大なものですが、その報告書によれば、当時、原子炉と——この圧力容器と第一次遮蔽のすき間から、中性子が漏洩するというその分布といいますか、ピークがあったはずですが、それはありましたか。
  64. 宮坂駿一

    参考人宮坂駿一君) ピークがありましたかという御質問でしょうか。
  65. 辻一彦

    ○辻一彦君 はい。
  66. 宮坂駿一

    参考人宮坂駿一君) BF3カウンターで測定しました熱中性子の測定分布では、そのすき間部分からのピークは測定されております。
  67. 辻一彦

    ○辻一彦君 いるわけですね……。はい。  じゃ、そのすき間からいわゆる中性子がかなりわき上がってきたというか、上がってきたということは、実験的に確認されておるわけですね。
  68. 宮坂駿一

    参考人宮坂駿一君) はい、確認されております。
  69. 辻一彦

    ○辻一彦君 それじゃそのピークの中性子を、どういうように判断をしたんですか。
  70. 宮坂駿一

    参考人宮坂駿一君) ちょっと長くなりますが、水の中で中性子を測定する方法としていろいろな方法があります。で、また高いエネルギーをはかる場合と、エネルギーが熱中性子に近いものをはかる場合と測定方法がそれぞれ違います。それでこのモックアップ実験をやる前に、四号炉の遮蔽実験設備の特性測定というのを実施しております。これでプール・散乱実験室、リドタンク実験設備、そういうようなところの実験設備としての性能を測定する。同時にそれまでに、四号炉をつくるまでに世界で一般に使われています中性子の検出器、これは高速中性子も熱中性子もありますが、そういうものを全部サーベーしまして、その当時の日本で入手可能なものは全部つくってそれの特性測定をする。これはここに使える、これはここに使えないということも大体わかっております。  問題の一次の遮蔽実験は、四号炉のナンバーワンプールというプールの中で実施をしたわけです。その場合に原子炉に非常に近い半径方向では速中性子と熱中性子の両方をはかる。熱中性子は金箔ですとか銅箔とか、それからまたBF3カウンター、そういうようなものを使っていく。速中性子のほうはしきい検出器といわれる放射化法の実験測定器で測定するというやり方。カウンターの測定器も準備したんですけれども、これは原子炉を動かしますと、中性子と同時にガンマ線も出てくる。それでモックアップ実験は炉を非常に高い出力で上げなくてはならない。運転して実験しなければなりません。ガンマ線がノイズとして、検出器は必ず中性子を感じると同時にガンマ線にも感じてしまうもんですから、それでカウンターを炉の高い出力のあの場所ではとても使えないということがわかっております。それで放射化検出器で速中性子をはかるというやり方、ところが速中性子は、ニュートロンのフラックスにして大体十の四乗ニュートローンパースケアセンチ秒以上の中性子がないと検出感度に入ってこないということになります。それで問題のストリーミング部分については、原船団から出ている報告書にも、サーマルニュートロンの分布が出ていますけども、あれからも一メガワット出力に直してわかるように、大体十の三乗ぐらいのフラックスしかない。そうしますと、あそこではとてもしきい検出器を使うことができない。それで、熱中性子をはかる。ところが熱中性子をはかるというのは、水の中で熱中性子をはかるというのは、水の中での熱中性子のふるまいと高速中性子のふるまいとの関係が非常によくわかっている。熱中性子をはかれば、それは高速中性子をはかっていることになる。高速中性子をはかるカウンターにロングカウンタJというのがございますが、これは冊にパラプィンのケースをかぶせてはかる。それで……。
  71. 辻一彦

    ○辻一彦君 はい。詳しいのはまた逐次聞きますから。
  72. 宮坂駿一

    参考人宮坂駿一君) そういうことでBF3ではかって熱中性子をはかることは、とりもなおさず高速中性子をはかっていることになるということで測定したと、そういうふうに思います。
  73. 辻一彦

    ○辻一彦君 その熱中性子をはかるということは、高速中性子をはかることになると言われるけれど、結局は水の中ですから高速中性子が出てきても、減速をして熱中性子に変わる。だからその熱中性子をはかれば、高速中性子を検出することと同じことになる、こういう意味ですか。
  74. 宮坂駿一

    参考人宮坂駿一君) はい、そういうことです。
  75. 辻一彦

    ○辻一彦君 そこが非常に問題のあるところですね、おそらくこの問題としては。熱中性子が検出をかなりされたというそのピークがすき間から出てあったということはわかっておった。その熱中性子は水の中ではかっているから、結局高速は熱中性子に変わっていると考えなくちゃいけない。そこでそのバックのなるところの熱中性子、高速中性子がどういう状況であったかということについて、熱中性子をはかって、高速中性子のふるまいといいますか、動きといいますか、そういうものがかなりなもんであるというような判断が当時されておったんですか。
  76. 宮坂駿一

    参考人宮坂駿一君) 先ほど申しましたように、私は一次の遮蔽実験のほうに参加しておりませんでしたので、そこで詳しい論議がどうなされたかはわかりません。  ただ、一般的に言いまして、そういうことで熱中性子をはかれば、高速中性子がわかるということは一般的にいえます。  それからあの実験を見ますと、半径方向では熱中性子と高速中性子とをはかる。そこで熱中性子と高速中性子との関係がわかるわけです。上のほうのストリーミングについての測定分については、熱中性子をはかる。そうすればそこのある一定の関係で、上のほうでのも推定できるはずである。また、それは理論的には除去拡散理論という理論がありまして、速いほうのエネルギーの持つものを除去理論で扱って、減速したものを拡散理論で扱うという、そういう遮蔽理論のほうからも推定できるはずです。私はそう思います。
  77. 辻一彦

    ○辻一彦君 そこはたいへん私は大事だと思うんですね。原子力船の「むつ」の原子炉と、それからこの間の国会答弁では東海のJRR−4といういわゆる実験に使った、遮蔽実験に使った原子炉で実物大の模型をつくって遮蔽実験をしたと、こういうわけですが、この原研の四号炉と、原子力船に載っている「むつ」の原子炉の一つ違ったところがあるはずですね。いわゆる上に水を張っているという点が大きな違いだと思うんですが、ごく簡単に言って「むつ」の原子炉と東海四号の原子炉の一番大きな相違点は何ですか。
  78. 宮坂駿一

    参考人宮坂駿一君) まず出力が違う。それから燃料構成が違います。四号炉はウラン、アルミの合金で九〇%の濃縮ウランを使っています。それから原子炉の大きさが違います。ちょっと思いつくままに言いましたが……。
  79. 辻一彦

    ○辻一彦君 このスイミングプール型というところは一つの特徴じゃないんですか。私の聞きたいのは、いわゆる「むつ」の場合は上に水を張ってないですね、原子炉の場合は。しかし、原研四号炉の場合は上に水を張ってやっているんでしょう。その違いはたいへん大きいんじゃないですか。
  80. 宮坂駿一

    参考人宮坂駿一君) 確かに御指摘のとおり、四号炉はスイミングプール型、で、その水が冷却機と同時に反射遮蔽体にもなる。それで「むつ」の場合には水の中に原子炉が入っておりますが、その回りは圧力容器というスチールで囲んであります。
  81. 辻一彦

    ○辻一彦君 その構造から見れば、熱中性子がかなり大量にピークになってすき間から出てきた、これが確認されたときに、その背後に水をくぐってきた高速中性子、いわゆる水の中で減速された高速中性子ですね、それが熱中性子にかわっている。背後の高速中性子がかなり大量にすき間から出てきている、これが問題であるという論議はされなかったんですか。
  82. 宮坂駿一

    参考人宮坂駿一君) そこは私は聞いておりません。
  83. 辻一彦

    ○辻一彦君 これは山田原子力委員、だれに聞くといいんですか。私は内田さんは外遊中でおられない、それから安藤先生は御都合で御出席いただけない。遮蔽室長ならその問題は実験にあたっておられて一番詳しいと、こう思って参考人にお呼びしましたら——その間の事情はとなたに伺えばいいんですか。
  84. 山田太三郎

    説明員山田太三郎君) いまの先生の御指摘の点は、非常に重大な点であるんですけれども、当時の専門家が現在のしゃへい小委員会と稱するグループに相当入っておりまして、なかなかその点の究明がむずかしいんだと思うんですが、たぶん事業団あたりから横から見たといいますか、答えができるんじゃなかろうかと思います。
  85. 辻一彦

    ○辻一彦君 これは横から見ても縦から見ても科学だから同じだと思いますが、事業団、これについて熱中性子が大量にすき間から上がってきて、実験の結果とらえられた、水をくぐっていると。だからそのもとは高速中性子である、だからその高速中性子の問題が当然論議さるべきであるが、そのような論議が具体的に行なわれたかどうか、この点いかがですか。
  86. 倉本昌昭

    参考人(倉本昌昭君) 当時私は事業団のほうにはおりませんでしたので、詳細について私自身ではわかりませんが、いろいろな資料その他等で私もまだ最近就任いたしましたので、十二分には勉強をまだいたしておらないのでございますが、このスイミングプールと申しますのは、ただいま御説明がございましたけれども、これは遮蔽の実験をするための炉でございまして、「むつ」の炉は先生御存じのように、これは動力炉という形でございまして、炉が本質的には全く違うのは当然でございますが、この遮蔽の実験を行ないますときに、実際の炉でなければほんとうの効果はわからないわけでございますが、スイミングプールの場合には、実際模型に近いような形のものを、モックアップというものをつくりまして、それを水の中へつけて、JRR−4の炉心から出てくる中性子なりを使いまして、それでその遮蔽効果をはかるというような形で実験が行なわれておるわけでございまして、その場合にいまのストリーミングの問題あるいはそこで出てまいりました熱中性子と高速中性子との関係、その点について当時の時点ではどうもそこの上に出てきておりますのは中性子に変わっての高速中性子であるかどうか。それから高速中性子がどういう挙動をするかというようなことについてはあまりよくわかっておらなかったように私は聞いております。
  87. 辻一彦

    ○辻一彦君 長い説明は要りませんよ。  そのときに大量に出てきた熱中性子の背後に高速中性子が水をくぐってきた、このことについて、でないかという論議があったのかないのかということですよ。これは遮蔽材に何を使うかという材質にかかわる問題だと思うのです。だからきわめて重要だと思いますが、これについての見解が具体的にどなたからも聞けないのはおかしいが、どなたかないのですか。
  88. 宮坂駿一

    参考人宮坂駿一君) 私は先ほどから何度も申し上げておりますように、一次のグループではなかったのでその実験の結果の検討の会議またはこの報告書をまとめる段階において参加しておりませんのでどういう議論がなされたかはよくわかりません。ただ原船団の報告書、JNS−4−2の七九ぺ−ジの下から十行目、十一行目ぐらいのところですが、これは計測孔について論議したところで、そこで「逆にボイドの効果が重要になってくる。これは後方において速中性子が熱中性子束分布を決定する重要な要因となるからである。」こういうふうな記述が出ております。当然こういう議論が出て、ここに書かれていることはその当時の実験グループとしては熱中性子をはかることによって速中性子がわかる。ボイドの部分ではその後方での速中性子が重要であるということを考えていたのではないか。そういうふうに私は推察します。
  89. 辻一彦

    ○辻一彦君 宮坂さん、その高速中性子のことに論議があったでないかということですが、あまりそれが論議を十分されないままに熱中性子ならば鋼鉄製のリングでもいい。しかし、高速中性子が大量に出るとすれば遮蔽材の材質はまた違ったものであるべきである。しかし、鋼鉄リングというものを最終的に設計の中に盛り込んだには、大体高速中性子はあまり考えなくてもいいというような見解が含まれておったのではないかと私は思いますが、この点はどうですか。
  90. 宮坂駿一

    参考人宮坂駿一君) 遮蔽材に何を使うか、そういうことについては当モックアップ実験の場合には要求されていなかったと思います。そこの判断はむしろ設計関係者の判断によるものだと思います。一般的にいいまして、鉄はエネルギーの高い中性子に対しては非弾性散乱効果を期待して遮蔽材として有効かと思います。ただし、エネルギーが少し下がりまして中間のエネルギーになりますと鉄はあまりいい遮蔽体ではない。むしろ水素を含んだ物質のほうがいいということになります。また、熱中性子になりますとこれはまた鉄は熱中性子に対する吸収が大きいですから熱中性子の遮蔽材としては対象になるかと思います。
  91. 辻一彦

    ○辻一彦君 じゃ遮蔽材の材質に鉛、鉄、コンクリ、水とありますね。高速中性子を防御するためにはどれが一番材質でいいのですか。
  92. 宮坂駿一

    参考人宮坂駿一君) それはもっている中性子のエネルギーによりますが、一般的に言いまして、単一の物質では中性子に対してはあまり遮蔽の厚さを経済的にすることはできない。適当な混合物が非常にいいということになると思います。ただ、水は比較的速いエネルギーの中性子から熱中性子まで、かなりのいい減速材だということは言えます。ただ、エネルギーの高いものについては、先ほど言いましたように、かなり重い物質を中に入れてやるほうが有効である。それから熱中性子に対してはボロンですとか、リチウムとか、そういうような特殊な吸収断面積の多い物質をその中に加えてやるということが有効に遮蔽体としてきくかと思います。
  93. 辻一彦

    ○辻一彦君 現在、この間実測されたですね、高速中性子、検討されている……。それを防ぐ材質としては、今日の時点において何が一番適当なんですか。
  94. 宮坂駿一

    参考人宮坂駿一君) これは最終的には設計関係者によって構造、熱、周囲の環境条件、そういうものによってきめられると思いますが、材料の点から言いますと、これは私の個人的な見解ですが、たとえばポリエチレンですとか、鉄、コンクリート、ポリプロピレンといいますか、そういうような物質がいいんではないか。  それからもう一つは、これは原研でもそういう開発試験を少しやりまして、かなり有効だと私は思っているんですが、蛇紋岩という石があります。これは結晶水をかなりたくさん含んでいる。しかも温度が四百度ぐらいまで高温でも結晶水がほとんど飛ばない。「むつ」の場合、かなり温度が高いものですから、普通のコンクリートですと、その中に含まれている遊離水が飛ばされて中性子に対する遮蔽効果というものは悪くなる。その場合、蛇紋岩そのもの、また蛇紋岩をコンクリートに入れたようなものを使えば中性子に対する遮蔽効果というものはそれほど落ちることなく期待した性能が満足されるのではないかというふうに思っておりますけれども、これは実際の工学的な観点からもう少し設計のほうで考えなきゃいけない問題であるというふうに思っております。
  95. 辻一彦

    ○辻一彦君 蛇紋岩の中には要するに結晶水、水分があるということなんでしょう。水がやっぱり有効だということなんですね。そういうコンクリートを使うというのも、中に水分があるということでしょう。それと鉄との関係はどうなりますか。
  96. 宮坂駿一

    参考人宮坂駿一君) 大体〇・五ミリオンエレクトロンボルト以上の、鉄に対しては中性子の非弾性散乱効果を期待してエネルギーを減少させるわけです。それは物質で比重の重い物質、鉄のようなものが有効にききます。ここら辺では水は断面積が非常に小さいものですから、なかなかエネルギーを減速してくれない。で、非弾性散乱である程度エネルギーを減少させたところで、今度は水素の弾性散乱でエネルギーを落としていく。ここら辺になりますと、鉄はまた弾性散乱断面積が小さいものですからなかなかエネルギーが落ちてくれない。水素ですと数回の散乱でエネルギーが落ちます。そこまできますと、今度はたとえばボロンみたいなもので吸収してやれば有効だと。コンクリートというのはそういう重い物質と軽い物質とが適当にまざっているということで、有効な遮蔽体であるというふうに考えられるわけです。
  97. 辻一彦

    ○辻一彦君 鋼鉄製のリングを使った背景には、高速中性子を押えられると思って鋼鉄リングを使った、こう考えていいのですか。
  98. 宮坂駿一

    参考人宮坂駿一君) そこら辺の判断については私はわかりません。これは設計関係者の判断だと思います。
  99. 辻一彦

    ○辻一彦君 原研四号の原子炉は上に水があるために、そこを通ってきた高速中性子が熱中性子に減速されて変わった。そして熱中性子がかなり検出されている。だから、本来ならば、水を使えばいいんだが、しかし現実の「むつ」の原子炉等では上に水を張るわけにいかない、かわるべきものが必要である。しかし、そのかわるべきものとして鉄を使ったという判断はどういうところからきているのか、これはおわかりになりますか。
  100. 宮坂駿一

    参考人宮坂駿一君) これは全く私の個人的判断というか、印象でございます。  水を使えばたしかに中性子に対しては有効な遮蔽材だ、一般的にですね。水だけでも十分遮蔽はできるわけですが、ただ厚さというものがその中性子の強さによってきまってきます。かなりな厚さのものが必要になってくるということがあります。それから鉄は先ほど言いましたように、エネルギーのかなり高いものに対しては非弾性散乱が期待できるということでは、そういうエネルギーの高い中性子に対する遮蔽効果はある程度ある。それから熱中性子に対しても吸収断面積はかなりの大きさの吸収断面積を持っている。熱中性子に対しても遮蔽効果がある。ボロンなんかに比べては非常に劣りますが、吸収効果は、遮蔽効果は熱中性子に対してもあるということです。そういう判断が設計関係者の中にあったんではないかと思いますが、ここら辺はわかりません。
  101. 辻一彦

    ○辻一彦君 鉄が高速中性子を散乱さすことはできても、吸収をして防護するといいますか、完全な遮蔽という点ではあなたはある程度の効果はあると、こうおっしゃいましたが、ある程度の効果なんですか、完全に鉄によって高速中性子を防御できるという、そういうことなんですか、いかがなんですか。
  102. 宮坂駿一

    参考人宮坂駿一君) ある程度です。かなり厚くなればエネルギーがどんどん落ちていきまして、ついには吸収されてしまうということがあります。ただ鉄というのは断面積が十の五葉エレクトロンボルトから十の三乗エレクトロンボルトぐらいの間では断面積は非常に小さくなっています。そこら辺に高いエネルギーのものが散乱されて、そこら辺のエネルギーに落ちますと、かえって吸収されないで何回も散乱しながら表へ出ていくという性質を持っています。ですから、それを完全に熱中性子まで散乱させるためには相当の厚さの鉄が要るということになります。
  103. 辻一彦

    ○辻一彦君 それでは相当な厚さの鉄というのは、現実に高速中性子が出てくるとした場合に押えるにはどのぐらいの厚さが必要なんですか。
  104. 宮坂駿一

    参考人宮坂駿一君) 今度の場合ちょっと計算しておりませんので、はっきりした数値は申し上げられません。
  105. 辻一彦

    ○辻一彦君 私はずっとお話を聞いておって、その高速中性子が大量に出るということが、熱中性子が検出されましたが、その背後にある高速中性子がかなり見落とされておるのではないか。したがって、それを遮蔽する設計には高速中性子の遮蔽効果は散乱という点であるけれども、うんと厚くすれば効果はあるでしょうが、わりとそういう点ではある程度という表現しか使えない。ある意味においては十分な効果があげられない鉄が、高速中性子をあまり考慮に入れなかったために使われたのではないかと、こう思うのですが、そういう点についてはどうお考えですか。
  106. 宮坂駿一

    参考人宮坂駿一君) ここは設計関係者が、そこから漏れてくる中性子を熱中性子であったとか、高速中性子であるとか、またそれらのまざったものであるか、どういうふうな判断に立ったかに左右されると思うんです。
  107. 辻一彦

    ○辻一彦君 設計者は実験の結果を参考にして設計するので、その設計者の参考になるようなものを実験の結果というのは提供されなきゃ私はならぬと思いますが、ちょっとのれんに腕押しのような感じがしますから、問題をちょっとほかの角度から伺ってみたいと思います。  原子力委員会では山田さん、内田さんのかわりに安全審査の部会として私はお伺いしたいのですが、いままで、まあ前回の国会答弁、衆参両院のずっと記録を見ますと、安全審査会のいわゆる審査範囲検討範囲は、この目標数値、どれだけ以下にこの放射線をとめなくちゃいかないと、こういう数値を確認をして、それを防ぐに足る材質まではきめると、鉄を使うかあるいはコンクリを使うか、ポリエチレンを使うか。しかしそれをどれだけの厚さにするかということについてはその詳細設計の範囲である。しかし鉄を使うか、コンクリを使うか、ポリエチレンを使うか、そういうことについては検討範囲、要件の範囲であるということがしばしば答弁されておりますね。そうしますと、原子力委員会が申請者から出されたその第一次遮蔽リングに、上部のリングに鉄を使うということについて、安全であると判断をされた根拠というのはどういうことなんですか。
  108. 山田太三郎

    説明員山田太三郎君) 先生御承知のとおり、安全審査会におきましては、具体的なデザインについてはきわめて概念的な段階でとどまっております。したがいまして、その厚さとか寸法、配置といったようなものを含めまして、正確な計算をした結果わがるような事柄については、そこまでは確認いたしておらないはずでございまして、その前の段階で遮蔽設計ができるであろうという見通しを得るという段階までであったというふうに考えております。したがいまして、それの詳細につきましては、次の段階に譲っておるというふうに考えております。
  109. 辻一彦

    ○辻一彦君 いや、あなた並びに内田会長がしばしば国会で答弁された記録を見ますと、鉄なら鉄、コンクリならコンクリを、材質をどれを使うかということまでは検討すると、しかしそれをどれだけの厚さにするかということは、詳細設計の範囲であると、こういう答弁をされておりますね、違いますか。
  110. 山田太三郎

    説明員山田太三郎君) まあ基本設計という意味が問題でございますが、一応概念図が出てまいりまして、その概念図で鉄リングというものが入っておったということは、たぶん審査会としては知っておったんだろうと思います。しかしそれ以降につきましては、先ほど申し上げましたように、詳細な計算の結果出てくる段階については知られておらなかったというふうにお答えするよりほかないと思います。
  111. 辻一彦

    ○辻一彦君 いや、私のいま申し上げたように、質問に答えてくださいよ。  安全審査会の責任範囲は、この目標数値をきめて、それを押えるに足る材質を検討するまで。その厚さをどれだけにするということは、これは詳細設計の範囲であると、こういうことがしばしば答弁されておるのですね。それは違うのですか。
  112. 中村守孝

    説明員中村守孝君) お答えいたします。  材質、材料につきましても、申請書添付書類に記載されておりますので、そのようなものができると、そのようなかっこうで基本的にはものがつくられるということで審査いただいておるわけでございます。ただ、その場合におきまして、はっきり計算で確認してやるという段階にまではこの船の場合にはいっておらないと思います。
  113. 辻一彦

    ○辻一彦君 どうも答弁が的確でないですね。山田原子力委員は、前回のときにも私の質問に対してこういう御答弁がありましたですね。安全審査会が材質を検討すると、その中でどこのどれだけの厚さまではいかないけれども、しかし不可能なことを認めるわけにはいかない。だから鉄なら鉄がいいといったって、それは無制限に分厚いものをそんな船の中で考えるわけにはいかないのですから、およそ鉄なら鉄とするならばどのくらいの厚さということを、それは可能性の問題として考えなくちゃいかぬと、そういう中で材質をきめるんだと、こういう答弁がされておりますが、いまのお話によると、その材質も責任範囲外のように言われるように私思いますが、材質を鉄を使うか、コンクリを使うか。三菱はコンクリだったが、それがある段階で鉄にかわってまいりましたが、そういういきさつからどちらを使うかということは、この遮蔽の点でたいへん大事な点ですが、その材質は安全審査会の責任において承認されたのと違うんですか。
  114. 中村守孝

    説明員中村守孝君) 通常審査におきまして、申請書添付書類の中に記載されている事項の中で重大な疑義がある、あるいは誤りであるという判断審査会でなされます場合は、その変更を指示といいますか、要請いたしまして、申請者側でそういうものを変更するということになっておりますので、そういう意味からは申請書添付書類の記載事項は、当初鉄リングがあるという形で申請がなされまして、それについてその後において修正ということはなされておりませんので、一応その鉄のリングで遮蔽目的は達成できるのではないかという一応見通しを持ったということであろうかと思います。それで安全審査会の場合、特殊なケース等について、本件のように初めての原子力船のような実験を必要とするようなものは、当時原研のJRR−4を使いまして、当時のこの道の一流の専門家が研究を行なっていたわけでございます。それでこの研究の成果が詳細設計の段階で反映されるという前提でございます。したがって、その詳細設計を進めまして、遮蔽計算をしていく段階において特殊な事例が出ますと、やはりこれではものができないということであればそれを変更するという形で、あらためて許可申請の変更ということで、安全審査会でそれを審査し直すというのが通常の例でございまして、そういう新しいものについては具体的にもそういう実験段階において新しい事実が発見され、それに基づくと設計をやはり基本的な問題にさかのぼって変更しなければならないというような場合に、許可申請という形で検討したこともございます。そういう意味で一般的に当時の原子炉から出ます放射線につきまして、直接的なものと、それからストリーミングという問題、どの程度ストリーミングについての議論をしたか、ちょっと詳細はわかりかねますけれども、エネルギー分布等で特異なそういう高いエネルギーのもので、鉄ではとてもそういうエネルギーの非常に高い分布のものが出て、そういう状態では遮蔽しきれないだろうというところまでの具体的な検討はなし得なかった状態かと思います。したがいまして、そこら辺は研究結果を詳細設計の段階において設計者が十分にわきまえて検討すべき問題であり、その結果として再び安全審査のほうに立ち返って検討がなされるべき問題であったのではないかというぐあいに考えております。
  115. 辻一彦

    ○辻一彦君 そんな長い答弁しなくたって、私の聞いたことを答えてくればいいんですよ。材質をきめるのは安全審査会の責任であるかどうか、イエスかノーかどっちなんですか、山田原子力委員
  116. 山田太三郎

    説明員山田太三郎君) 基本設計に属しますので、当時の審査会の状況は詳しくわかりませんけれども、一般論としては先生指摘のとおり、基本的な意味で材質もこれではいけるんではないかという見通しを得たんではないかと思います。
  117. 辻一彦

    ○辻一彦君 あなた、同趣旨の答弁を前回の委員会で、ここでされておりますね、私に対して。「鉛というもので」、これは第二遮蔽の問題でしたが、「いけるということを承認したわけでございまして、それの寸法が何センチ何ミリでなければならぬかというようなことは、この安全審査会においてタッチしたものではございません。しかし、安全審査会といえども具体化ができそうもないことを言うわけにいきませんので、そういう内容についての検討はいたしております」云々と、こう答えられておりますね。だから、私は、少なくとも鉛であるか鉄であるかコンクリートであるかという材質を承認するということは、これは安全審査会の基本的なやっぱし責任範囲の問題に入っている、こういうことを私は確認をしておるわけですね。そうしますと、鉄を使って、それでいけるのじゃないかということを承認したということは、鉄でよいという承認を与えたと、安全審査会は。こう理解していいんですね。
  118. 山田太三郎

    説明員山田太三郎君) ただいまの問題が実は今度のしゃへい小委員会におきましても非常に重要な点になりました。それで、当時の専門家がどう考えておったかというと、先ほどお話が若干ございましたが、その中では意見が二つ分かれておりまして、当時においても、この部分に高速中性子があるということは——高速ではございませんが高速中性子から少し低くなった中性子があるのだということがディスカスされたという人もありますし、全くサーマルニュートロンフラックスであるというふうにして計算したというのと、両方ございます。  それで、鉄を使って大体計算、実験で御承知のとおり、普通の計算の方法と、それからJRR−4でやりました実験とでは約一万倍の差が出ております。したがいまして、その実験をもとにした設計をするためには一万倍のものを減らさなければならないということは、設計者は考えたはずでございます。その一万倍のものが鉄十五センチでいけるということは、これが大部分が熱中性子であるというふうに考えたに違いないと思います。しかしそれは、しっかりした議事録等がございませんので、ディスカッションについてはまだ未決定でございますが、設計者のイメージとしてはそういうふうになっておったというふうに思いますし、さらにJRR−4の実験をやったグループがどのくらい討議をしたかわかりませんけれども、その部分について、結果的には鉄リングでいけるんではなかろうかというようなことが記載されてございます。それが原子力委員会の安全審査会に反映してまいりますと、当時といたしましては遮蔽の専門家というものは、このJRR−4の実験に全部関与しておったといっていいと思います。御承知のとおり船舶技術研究所は、非常に前から原子力船の遮蔽の問題が重大であるということで研究をしておりました。その意味では専門家がおったと思います。それから原研にももちろんおったと思いますし、さらにメーカーも、その分野に関心を持って長いこと研究、調査をやっておったということがわかります。残念なことに、そのグループの中には大学の先生が入っておりません。大学の先生をエクスクルードしたというのはどういうわけかということを調べてみたわけでございますけれども、それからまいりますと、どうも当時は遮蔽という問題についての専門家は大学の先生の中には日本ではあまりいなかったということが言われております。そういった問題は、ほんとうはわれわれがじっくり調べまして、それで御報告申し上げるべきなんですけれども、現在の段階におきましては、「むつ」問題の調査会というのが内閣にできることになっておりまして、そこら辺にすべての実態を、まあいまのような推定でなく、調査が、先ほど大臣も申し上げましたように出てまいると思います。  そういうような結果が、実験結果とそれからそれを、実験結果を利用した設計というものが出てまいったわけでございます。実験は大体申請の出ます半年から一年ぐらい前に行なわれておりますので、結果もディスカスされておったんだろうと思います。そういうような意味で、ただいまの鉄でいけるであろうという説明を納得したんではなかろうかというふうに考えておりますが、これは想像でございまして、審査会自体の内部につきましては具体的には私知りませんが、いまから見ますとそういうふうではなかろうかというふうに考えております。
  119. 辻一彦

    ○辻一彦君 あなたはよく想像で前回もおっしゃって、私は一応その問題を感じましたが、きょうは、それは別として、結局安全審査会は、いま御発言のとおり、出てくる中性子は大部分熱中性子である。したがって、鉄の十五センチ範囲でも、まあ鉄でもって防げると、こういうように私は判断されたというように思わざるを得ない。いや、鉄はもっと厚ければいいと言われるかもわかりませんが、あなたの御答弁のように、安全審査会といえども、材質を指定したならば、全然この見通しのないことは言わないので、具体的な可能性を考えて言っているんだから、だから鉄であの船の上の原子炉の上に張れる厚さはおよそ限界があるわけですから、鉄でもって大体防げると、しかもそれは熱中性子であると、こういうように安全審査会も判断をして承認をしたものと私は思いますが、それでいいですか。
  120. 山田太三郎

    説明員山田太三郎君) 私は当時の安全審査会のメンバーではございませんでしたので、どのくらいのディスカッションがなされたかはわかりませんけれども、私がいまからながめてみますと、先生のおっしゃるようなことではなかろうかというふうに思われます。
  121. 辻一彦

    ○辻一彦君 そうしますと、安全審査会はやはり非常に基本的な高速中性子の動きを、問題を見落としておったということと、それを遮蔽すべき材料の質についてやはり欠陥ある鉄の材質を承認したと、こういうことに私はなると思いますが、そう認めていいんですか。
  122. 山田太三郎

    説明員山田太三郎君) 安全審査段階は、先生御承知のとおり、具体的なものではございませんけれども、原理的にはそういうことではなかったかとというふうに私も思いますが、詳細は内田先生から聞いていただけるとありがたいと思います。
  123. 辻一彦

    ○辻一彦君 詳細は別として、原理的には私の発言したものでなかろうかと、こういう御発言であります。そうなれば、この安全専門審査会が基本設計における欠陥を見落としておったと私は言わざるを得ないのですが、どうなんですか、それについて。
  124. 山田太三郎

    説明員山田太三郎君) 現在の段階から見ますと、当時におきましては、そういう部分についての計算方法その他ございませんでした。したがいまして、どういう程度のエネルギーの中性子がどのくらい存在しておるかということは、だれにもわかっていなかったんだと思います。そういう意味からいきますと、この遮蔽の専門家のグループ自身も何らかの錯覚におちいっていたんではないかというふうに考えられますし、それを十分に安全審査会においてディスカスされたかどうかは、これは私はわかりませんが、結果から言うと先生のようなことになるのではないかと思います。
  125. 辻一彦

    ○辻一彦君 私、きょう二時間のつもりだったんですが、いろんな点で時間がなくなって、あとの方もありますから間もなく終わらなくてはならないと思います。しかし、ほぼ明らかにされたことは、重大な基本設計の段階において材質の点、あるいは高速中性子の動きについてのキャッチがやはり安全審査会においてはなされずに承認をされておったということがほぼ言えるのでないかと思います。そうなると、次回に私は、この衝に当たられた責任者の御出席を求めてさらにただしたいと思いますが、この点を確認されるとすれば、当然「むつ」の安全審査のやり直しを必要とすると思いますが、この点はいかがですか。
  126. 山田太三郎

    説明員山田太三郎君) これは今後の状態いかんによるわけでございますが、この対策といたしましては、いろいろな方法がございますし、対策を講じるにはもちろん安全審査をもう一ぺんやると思います。
  127. 辻一彦

    ○辻一彦君 安全審査の再審査もあり得るということですか。
  128. 山田太三郎

    説明員山田太三郎君) 設計の変更が出てまいりましたならば審査をやると思います。
  129. 辻一彦

    ○辻一彦君 これは長官にお伺いしますがね、こういう論議を通してやはり基本的な段階における欠陥というものは認めざるを得ないという状況になっておると思います。なるほど内閣が総理直属の委員会をつくって調査されるのもいいでしょう。しかし、その真相は、まず過去何年間かこういう問題について論議をしてきましたこの国会の委員会の場においても私は明らかにされなくてはならないと思います。これが明らかにされれば、当然「むつ」原子炉についての再審査の必要をあなたは原子力委員長として専門審査会に命じられるべきであると思いますが、見解いかがですか。
  130. 森山欽司

    ○国務大臣(森山欽司君) ただいま、先ほど来のきわめて専門的な御意見を伺っておりまして、事の成り行きが実際どうなっているかということにつきまして、いま山田原子力委員も当該衝に当たられておったお立場ではございませんから、山田委員の御見解として述べられたわけであります。私は今回原子力船第一船「むつ」の放射線漏れという形で起きた問題で何が起きているかということを的確につかみたい、またその起きておる事柄についてなぜそういうことが起きたかということもしっかりつかみたいというふうに考えておりまして、それに対して対策をしたいということであります。  でありますから、この問題は、役所から申しましても、科学技術庁ばかりでなく、運輸省も関係あるわけでございますし、また当該の衝には原子力船事業団が当たっておるたてまえになっておるわけでございますから、したがって、それらの関係の省庁、事業団の立場を離れて一歩高いところから、この問題の真相究明をいたすことが政府の責任であると私は考えました。ですから、私は科学技術庁長官はいたしておりますが、単に科学技術庁の立場だけでこれを——もちろん公正な調査検討はいたすことになろうと思います。原子力委員長の立場で、原子力委員会が、その立場を離れて公正な結論を出すべく今日も努力をいたしておるわけでございますが、まあ往々にしてなかなか自分のところのことは言いたがらないというようなことになってはいかがかと思いましたので、これを内閣、実際には総理府がこの取りまとめをやるという形において調査委員会がまさに発足しようとしておる次第でございます。国会においていろいろ御論議になられることは、これは御自由でございますが、国会は、辻委員のようにそう専門的な方々ばかりおそろいになっておるわけではございませんから、国会の論議を通じてそういうことの全貌までいくのはなかなか容易ではないと思いますが、それらの問題点の真相にアプローチされることは、一向私は差しつかえないと思いますが、政府といたしましては、当然この問題について真面目に取り組まなければならないというふうに考えておりまして、そのことは単に科学技術庁とか、運輸省とか、原子力船事業団の立場を離れ、それぞれの立場において都合の悪いことが起きても真相ははっきりさせて自後の体制を確立しなければならない。結果も公開をして国民の疑惑なからしめる最善の措置をとるという心がまえで進んでいるわけであります。  辻委員から先ほどお話しになりましたやりとりは、あるいは結論的には問題そのものかもしれません。しかし、あるいは調べていくと違った、いろいろな角度からさらに調べていけば違った角度からの問題のとらえ方も出てくるのかもしれません。しかし、政府といたしましては、責任をもって真相の究明に当たり、これを天下に公表して今後の措置として誤りなからしめるようにやるつもりでございます。そして対策も御納得のいくような形でやってまいりたいと思いますが、いまの段階で、率直にいって、山田委員とのやりとりだけで安全審査をもう一回やり直すのかというようなことの結論を出すにはまだ私は早過ぎるのではないか。と申しますのは、この委員会はそんなに長い間は、何といいますか、調査をやるつもりは毛頭ございません。大体半年ぐらいの間に調査をできれば終わってこれを公表いたしたいと考えておるわけでございますが、どうかひとつ、まさにきょうあすじゅうぐらいに委員の名前もきまって、近く発足できるものだと私は考えておりますものですから、その結果をごらんになられて、ぜひその調査結果について——そう一年も二年も先のことではございませんので、調査結果によりまして政府として最善の措置をとるつもりでございますので、どうかひとつこの問題に真面目に取り組んでおる政府の姿勢については御理解をいただきたいと思う次第でございます。
  131. 辻一彦

    ○辻一彦君 これで終わります。  行管局長、御出席願っておるんですね。一言だけ、せっかくおいでいただいて時間がなくて申しわけないんですが、お伺いいたしたいと思います。それは、私長い論議をやって最後にいろんな論議の中でお伺いしたかったのでありますが、ちょっと論議が中途のままにこんなことをお伺いするのは不十分であると思います。しかし、そういう前提としてお願いしたいんです。それは原子力発電所や「むつ」等のいままでの開発の取り組みを見ましても、あるいはアメリカに私この間かなりずっと回ってみましたが、完全に開発推進という原子力の方向と、それからいわゆる安全開発という方向と、それから原子炉規制総局といいますか、そういう形で機能を明確に分離をしてそれぞれかなり強力な取り組みをやっている。こういうことを考えますと、わが国の原子力のこれからの開発のためには、開発推進とあわせてもう一つ強力な規制と安全の機能を分離をして、これに力を入れるべきではないかと、こう思いますが、行管の動きはやや消極的であるというようにも聞いておりますが、この点についての見解を簡明でけっこうですから一言伺って終わりたいと思います。
  132. 小田村四郎

    説明員(小田村四郎君) お話のとおりこの問題につきましては非常に基本的な問題でございますので、ひとり行政管理庁だけの問題でなしに、政府全体として取り組むべきであるという内閣のほうのお話がございまして、近く原子力行政全般につきましてそういうことについての研究を、原子力行政全般についての検討をする懇談会のようなものを発足させたい、こういう意向があるやに承っております。御指摘のとおり非常に基本的な問題でございますので、そういう内閣に置かれます懇談会の動向等もうかがいながら行政管理庁としては検討してまいりたいと思っておりますが、さしあたり当面の問題といたしましては、新聞記事等に行管長官の談話が出ておりますが、これは記者の質問に答えた形でございまして、基本的な姿勢といたしましては、行政管理庁としては行政機構の拡大、拡張は極力抑制したい、特に総需要抑制下でございますので、民間におきましても機構の簡素合理化、あるいは人員の運用の合理化等を行なっておる段階でございますので、国としても当然そういうものにならうべきであるという考え方を一般的にお述べになっておられたわけでございます。そういうことでございまして、一般論としてはその方針に従わなければなりませんが、この個々の問題特に原子力行政につきましては、そういう近く置かれると私は承っております懇談会等の御意見を伺いながら検討してまいりたい、かように考えております。
  133. 森山欽司

    ○国務大臣(森山欽司君) せっかくの機会でございますからちょっと私から政府の姿勢について、この問題についてお話をしてみたいと思います。  実は、先般、私は総理にお会いいたしました。原子力行政とか原子力行政組織について新聞にもいろんなことが出たわけであります。まあ新聞に出たことがどこまで自民党の考え方なのか、いろいろ問題はございますが、先ほど電源開発促進法の例でちょっと杉山委員の御発言に申し上げましたが、とにかく電調審に対する新規の原子力発電の申請一つにいたしましても、科学技術庁長官がその電調審委員の中に入っておらないということ一つ見ましても、今日の法制というものが時代おくれになっておると、ほかにたくさんあるわけであります。それは二十年近く前に、今日の原子力委員会、原子力局が、これは科学技術庁より先にできたわけですから、総理府に直属して。そして原子力の開発は率直に言って海のものとも山のものともまだわからなかった時代と、今日それから二十年近くたちまして、原子力発電は私が入閣いたしました昨年の十一月には五基百八十二万キロワット容量でございましたが、現在は七基三百八万キロワット、そしてこの年末には十基五百二十万キロワットになるわけでありまして、五百万キロワットの容量をこえるということはこれは一つの原子力発電の単位になっておるわけであります。ですから時代がうんと変わりましたから、この際、しかも御案内のとおり私が着任以後、辻委員とは何回もいろいろな問題で論議をいたしましたようにたくさん問題があったわけでございますね。原子力発電の問題はもとより、分析研の問題とか、アイソトープの問題とか、今回の「むつ」の問題とか、いずれも昭和四十八年の十一月の終わりから四十九年の一月の終わりぐらいまでにこれらの問題が表面化をしてまいりました。こういうことが起きるのはいままでの原子力行政の運用並びに組織について問題があると、その当時思っておったわけであります。さもなきゃこんなに問題が出そろうわけがない。これは石油ショックがありました。エネルギー問題の解決、本命としての原子力発電がクローズアップしたにいたしましても、こういう異常なことがよけい出るということはいままでのやり方に問題があるのじゃないかというふうに私は考えて、本来ならその段階でこれはやり方を基本的に洗い直しすべきだと言いたかったのでございますし、そう思いましたからこそ皆さまに御異論があるかもしれませんが、原子力委員の人選等については私の考え方で処置をしてまいったわけでございます。とにかくそういうことでございますから、やはり原子力行政組織、それから原子力行政のやり方並びに組織についてこれは考え直さなきゃならぬことは当然でございますから、「むつ」の問題の真相究明するための委員会の設置とあわせて、原子力行政についてこれを再検討すべき懇談会をつくるべきであるということを私から建言を申し上げまして、その翌日総理は閣議においてこの二つのものについて政府は真面目に取り組もうじゃないかということになったわけでございます。この「むつ」の問題の真相究明の委員会はすでに骨格もできて、先ほど申し上げましたようにまさに発足しようとしているわけでありますが、原子力行政についての再検討の、名前は懇談会というような形になるかもしれませんが、これはこれからいよいよ出る、まあ大体前は十一月の中旬ということでございましたが、できるだけ早い時期にこれが発足するように私どもは最善の努力を尽くしたいと思います。御案内のような政局でございまして、川島前自民党副総裁も一寸先はやみだと言っているような世の中でございますが、私は何としてでもこの問題については再検討の懇談会なり何なりをつくりまして、この問題がうやむやにならないように、私は政治家として最善の努力を尽くしたいというふうに考えております。いろんな思惑がございまして、この問題の再検討については私が申し上げたような角度で再検討を政府はいたすわけでございますので、別の角度もいろいろございますから、それはまあそれでございますが、とにかくいままでのようなやり方でやっておれないような事態になったことだけは皆さまの意見は一致しておられると思います。  そのことを政府が果敢に取り上げておるという現在の状況についてどうか御理解を願いたいと思います。目先、いま行管の局長さんからお話がありました。何しろ原子力局も、局長の下に次長が二人いて、課がたくさんあって、膨大な予算をかかえておるわけでございますから、これ、いつまでもいままでの組織でいいかどうか、だからとりあえず二つの局にしたらどうだというので、決して機構膨張なんかでわれわれ要求しているのじゃないのでございますがね、行管はすぐ何といいますか、そういう組織の主計局みたいなつもりで渋いことを言っておりますがね、そういうやり方を打破する意味におきましても、これは私のような形で機構の改革、再検討をしなきゃならないというわけであります。実はもう少し申し上げますれば、本年六月の科学技術庁改革以来の大人事異動におきまして、新たに科学審議官に——通常科学審議官というのは技術屋さんなんでございますが、その中に事務屋の人を初めから入れまして、この人に科学技術庁の行政の現実、機構、そのために法律も改正をしなきゃならないし、いろいろやらなければならない。すでに、六月以来調査を進めております。これはきょうに始まったことではないのでありまして、もう昨年就任以来、これはおかしいと私は実は思っておりましたし、六月の大人事異動で、そのための組織も、審議官一人じゃありませんよ、その下に有力なる職員を数名つけて調査を進めておるわけでございますし、いよいよその役所の局長さん——とにかく何か違った行き方になりそうだということを認めざるを得ないようなところに、まあそういうことになれば考えましょうというような——なかなか世の中が変わっても、昔ながらのやり方で行管はやろうとしておるわけでございますから、そういうことがないように、その面からもこの現状打破のために積極的努力をしておるわけであります。いままでいろいろ辻委員とは議論をいたしましたけれども、そういう形で締めくくっておるということについて、どうかひとつ御理解を願いたいと思います。
  134. 辻一彦

    ○辻一彦君 わかりました。
  135. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 最初に長官にお尋ねいたしますが、前回の委員会に長官欠席されましたのでお尋ねしますが、今回の「むつ」の一連の事件を通して、科学技術庁長官として、どのような点を反省をしているか。私はこれからの原子力行政の転換の上からも、やはりどういう点を反省をしているかということが非常に大事じゃないかと思うわけであります。先ほど辻委員の同様の質問に対する長官の答弁では、私は全然反省をしていないんじゃないかと、こういうような感じがしたわけでございます。その点を承りたいと思います。
  136. 森山欽司

    ○国務大臣(森山欽司君) 何か反省しなければならないようなお話でございますが、どういう点を問題とされるのか、その問題とされる点をお伺いいたしましてから、私からお答えいたしたい、こう思います。
  137. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 先ほど辻委員質問に対して長官は、今回の設計値よりも、異常の放射線漏れがあったということは、これはそういうことはもうあるんだと、そういうことでだんだんだんだん一つ一つ改まっていくわけですから、だから今回のこういう放射線が設計値よりも異常に高く漏れたというようなことは何ら問題ではないというような感覚の御答弁だったわけですけれどもね。私は、そういう考えのところにやはり一つの今日までの原子力行政の改めなければならない根本点があるわけでありまして、そこのところをやっぱり改めてもらわなければ、結局前には進まないんじゃないか、こう思うわけです。
  138. 森山欽司

    ○国務大臣(森山欽司君) 御指摘のその点は幾つかいろいろな問題があるのであります。一つは、安全性の問題でお話があったと私は思います。私は安全性というものは、その原子炉を操作するオペレーターとか周辺の住民に対して放射能の障害を与えないということが安全性の基本であるというふうに考えておるわけでございます。原子力船「むつ」の舶用炉というものは、これはいろいろな経過で自主開発で始まったわけでございますから、そして自主開発でなくったって、いままでアメリカで実証をされたといわれる発電用原子炉にいたしましても、これはつくる人は一生懸命つくり、それからそれに対して関係官庁は安全審査、監督等をやり、それでそれじゃ完ぺきなものができるかということは、人間がやることでございますからね、それは万が一のふぐあいなところというのはあるのであります。故障というのはあるのであります。しかしそれはないにこしたことはございませんよ。けれども、そういう万が一の故障がございましても、それがオペレーターに心身の放射能によって障害を与える、あるいは回りの人たちにそういう放射能の害が及ぶというようなことがあったらたいへんでございますから、したがってそういうことについて、先ほど来申し上げましたように、この前々からわかっている放射線とか放射能とかいうもの、エックス線とかラジウム温泉とかわかっている。そのために権威ある学会もあり、権威ある勧告も出ておるというものに対して、二重、三重、多重の防護措置を講じておる。したがって、ちょっとでもそういうことについて問題がありますれば、これは警報装置が鳴る。よく国会の議論なんか聞いておりますと、警報装置が鳴ったって火事は云々なんていう御論議があります。ところが火事にならないうちに、要するにぼやにもならないうちに注意の信号が鳴るわけでありまして、何かすでに火事になったとかぼやになったとかいうのとこれはわけが全然違うのでございまして、警報装置が事前に鳴るとか、かわりの機械が動くとか、あるいはまた最悪の場合にはスクラムで、緊急停止で原子炉がとまる、それからまた安全を確保するために、インターロックといって、一つの中に入ろうと思う際に、最初に入ったドアのかぎを締めなければ次のドアがあかないというように、安全には念には念を入れたような安全確保の仕組みになっておる、だからわれわれは安全だというふうに言っておるのであります。「むつ」の問題も、御案内のとおり、〇・二ミリレントゲン、そのことは出力一・四%の段階で出たことは、これは一〇〇%出力の場合、問題でございますよ、そのままほうっておいて。しかし一・四%の段階でそれがわかったから、これはもうすぐ原因を調査して対策を講じなさい。こういうふうに言っておるわけでございまして、また専門家も行ってその対策を講じておる。それ以上かまわずに、一〇%出力、二〇%出力といってどんどんやっていたら、あなたのおっしゃるような問題がございますけれども、これはもう原子炉をとめて調べなければいかぬということでやっておるわけでございますからね、安全性の問題というのは私は全く心配ない。ですから実際問題として今回の問題で、オペレーターにいたしましたって、回りの船員の人たちにしたって、だれ一人放射線の障害なんか受けておりませんよ。全く安全なんです。にもかかわらずこの問題を取り上げて、わあっとした騒ぎが起きたことに私は大きな問題があると思っている。安全性の問題で不確かなことがあったじゃないかなんて私は思いませんね。特にいわゆる実用化された原子力発電炉とは違いまして、日本がいろいろな関係で自主開発をやらなければならなかったこの問題が——大体開発なんというものは、あなた、そういうふぐあいなところがないか、あるいはそういうことについての故障が起きないかということを心配だから試験をし、実験があるのでありますから、ふぐあいなところが出たり故障が出たら、じゃああぶないのだというなら、これはそもそも試験や実験はできないことになります。だから、そういう本質的な事柄についてどうかひとつ、安全性の問題については、私はそのように考えておる。それはないにこしたことはありません。先ほど辻委員から、これは一体何が起きたのか、どうして起きたのだということをたいへん勉強されて御質問ございました。また、それがある程度私は真相にアプローチしつつある問題であるということも考えます。しかし、あらゆる角度からこの問題をやはり真相を詰めていかなければなりませんから、政府も、先ほど申しましたように、異例の調査委員会をやってこの問題を明らかにしようとしておるわけでございまして、それはああいうことがないにこしたことはございませんが、いまから七年前でございまして、昭和四十二年ごろの図面をつくるときのことで、私も実はそのころまだ何も関係ございませんから、ちょっとほんとうに何が起きたかについては実は確信のあることは申しがたいので、先ほど申し上げましたように、しかし、どうも図面のできに問題があったようですなと。それがどういうことで、たとえば設計をする委員会の研究が足りなかったとか、あるいは設計をする会社側のミスがあったとか、あるいはまたそこまで、初めから炉をつくるなら、世界でどこの国でも陸上炉をつくってやっておるが、それをやればよかったんじゃないかとか、あるいはそれじゃ陸上炉の問題はどうしてやらなかったのかと、いろんなことがあったと私は思いますよ。だから、そういうことを全部調べてみてから議論をしたいということを先ほど来申し上げたのであって、安全性の問題は、これは私がいまのように考えて、安全性については心配ないと、事実心配なかったんですから、これはそのことは私が申し上げていいのではないかと思います。ですから、この問題についてどうかということでいろいろ御質問がございますれば、一つ一つ感想を申し上げます。どうぞひとつ続いて御質問願います。
  139. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 やはり私は、いわゆる専門家が見て、あるいは安全という場合もあるかもしれません。しかし、これからの原子力行政においては、やっぱり国民の合意というものを得られる方向でなければ、幾ら科学技術庁長官一人が安全だ、安全だと考えておっても、結局今回のこの事件を通して、それでは前へは進まないわけでありまして、やっぱり国民の皆さんの合意を得られるように、やはり段階を踏んでやっていかなきゃいかぬということを私は言っておるわけなんですよ。そういうわけで、もちろん人間のやることですから、多少の計画と実際の違いということはあることは、まあやむを得ないと思うんですけれどもね。ただ今回の場合は、先ほどから話がありましたように、遮蔽実験をJRR−4号炉についてやって、そして実際にやってみたところが、最初の計算値よりも百倍もの放射線漏れがあった。しかも先般の結果の報告によりますと、それだけではない、局部では予想の一千万倍も、こういうような違いがあった。こういうようなことをやはりわれわれが新聞で、国民の皆さんが新聞で見た場合には、それじゃいままで安全だ安全だといっておる科学技術庁あるいは原子力委員会、あるいは事業団の皆さんの言っていることは、ほんとうに当てにならないではないかと、こういうことになってくるわけでありまして、だから、やはり科学技術庁長官としても、このようなことがあっていいんじゃなしに、やはりないようにやっぱり努力をしていかなくちゃならぬ。こういう立場から、それではどういう点に手落ちがあったんだと、そこに反省があるわけでありまして、だから科学技術庁長官としても、こういうような事件があってあたりまえというんじゃなしに、ないほうが好ましいと、だからこういうことのないように安全審査にもっと力を入れて万全を期していかなくちゃならぬと、こういうやっぱり反省は持っていらっしゃるわけでしょう。そこをお聞きしたいわけです。
  140. 森山欽司

    ○国務大臣(森山欽司君) 先ほど来申し上げましたように、これは今度の事件の真相を究明して、それに対して的確な体制を立て直さなきゃならない。それにつきましては、たとえば私どもは、科学技術庁長官の立場にございますが、科学技術庁や原子力委員会にとってつごうの悪いことでもはっきりさしてもらうために、私どもは自分のところで調べないで——自分のところで調べろという話があったんですが、これはやっぱり政府でやってもらう必要があるということを私どもは申し上げまして、今度の調査に進んだわけでございますから、どうかそういう意味では、この結果調べたことで、たとえば科学技術庁におきまして、たとえば運輸省におきまして、あるいは原子力船事業団におきまして、改善しなければならない点はもう果敢に改善する。どういう点に問題があったかということについてはっきりさせて、「むつ」で何か放射能が飛び出して、いまにもたいへんな事故が起きたように騒ぎ立てたような、ああいう火事場気分じゃなくて、ほんとうにこの問題の真相を見きわめて、そうして対策を立ててまいりたいということでございますから、その意味の反省は今回の委員会の設置ということで十分ひとつお考えを願いたい、御理解をお願いしたい。  ただ、一つ、いまお話しありました、国民の合意を得てというお話でございました。私はそのことは必要であると思います。まさに必要であると思いますが、どうでしょう、日本の国のように言論の自由でかってなことを言える国は世界じゅうそうございませんね。そうでございましょう。そういたしますと、このわが国のような国情のもとにおいて、百人のうち九十人、九十五人がいいと言ったら、これはやっぱり合意を得たと考えていいんじゃないですか。五人、十人の人たちが最後までがんばる、反対するだけじゃない、腕ずくでもがんばると、こうやられたときに、ほんとうならば私は、国をつくっているなら、もう少しそういう点、しゃっきり腰が立ってなければいかぬのじゃないかと私は思っておるわけです。残念ながらそういう問題についても足りないためにああいう事態になりました。が、どうでしょう、私どもが多数の合意を得るための努力をしなかったかどうか。いたしました、実際のところ。御案内でございましょう。四十七年の九月に、とにかく船が出るばかりになったわけでございますが、御案内でしょうが、四十二年に「むつ」の港をつくるときに、第一船だけではなくて、第二船、第三船まで引き続き母港にしてくださいよということを申し出てあるわけでございます。向こうからの、青森県の知事さんから、当時の原子力委や科学技術庁長官にそういうお話がありました。それから五年たって、昭和四十七年の九月、満五年たちました。その間に世の中変わったわけでございますけれども、しかしとにかくそれは、そういう意味で世の中も変わっていろいろ変化があったことに対して、原子力事業団はもとより、科学技術庁も運輸省も少しぼやぼやしておったんじゃないかと、感度が鈍かったんじゃないかと私は思う節も実はございます。が、しかし、ともかくいよいよものになってきたホタテガイ漁業に害があるからということで、漁民の方がこれに対して異議を申し立てられたわけであります。それに対して、とにかく原子力船事業団では通常エンジンで出港するというようにいたしたわけですね。どこだって舶用炉の出力上昇試験は二〇%出力ぐらいまではどの国だって岸壁でやっている、いままで。アメリカだって、ソ連だって、ドイツだってやっておるんです。ところが日本の場合は、そう言われましたから、はいはいといって、いろいろな経過があったようでございますが、真相がちょっとはっきりしない面がございますが、普通エンジンで出港するという、世界で初めてのことをやったわけですね。よくいえば洋上実験でありますが、よく考えると、原子力機関が動いている間は通常機関は動きませんから、漂流実験ですよ。世界に類例のない漂流実験まで譲歩をいたしたわけでございます。それで出してくれるのかと思ったら、なかなかうんというふうな地元から声が出ませんものですから、どうなったのかと申しますと、どういうわけだかということで、実は私の代になってから本格的に詰めたわけでございますが、色をつけろということでございまして、電源三法成立後は、これに類推解釈をいたしまして、いわば開発利益の地元還元というような形で、とにかく懸案の道路をつくる、あるいはまた有線放送電話設備を設ける、あるいは体育館をつくる、漁業組合に対しては三年間に一億五千万円の補助金を出す、それから魚価が下がった場合、ホタテガイの値段が、放射能じゃなくても、うわさだけでも下がった場合には、それを買い上げるための金として一億円の金を預託するというようなことをやったわけです。これはいまになればああいう結果でございましたから何でもないようでございますけれども、その当時はこれは青森県知事だってそれからむつの市長だって銅像が建つぐらいの一仕事だったわけですよ。
  141. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それはいいですよ、時間ないから簡単にしてください、簡単に。
  142. 森山欽司

    ○国務大臣(森山欽司君) だからそこまでやって、合意を得て二十九の組合のうち二十五の組合がうんと言って四組合がどうしても言うことをきかないという状態でございました。その四組合もその海上警備当局の話でございますともう腕ずくで阻止することはないということで政府は出港に踏み切ったわけでございますから合意を得るために最善の努力をいたしたのでございまして、何か腕ずくでもってめちゃくちゃやったなんということは全くないのであります。どうかひとつ合意を得るためにいままでも努力いたしましたし、これからも努力をいたします。どうか御支援をひとつお願いいたしたいと思います。
  143. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それで私がお聞きしたのは今回のようなこういう予定値よりも百倍も、あるいは一千万倍もこういうようなことのないようにやはり安全審査に全力を尽くせと、こういう方向は長官も当然のことでしょう。そのことを申し上げておるわけですから、そういう方向でやってもらいたいということ、そういうことを言っているわけであります。
  144. 森山欽司

    ○国務大臣(森山欽司君) ちょっと、一言だけ。まさにその点につきましてはこういう事故がないようにいままでもやるべきであったと思います。そして今回こういう問題が起きたということにつきましては、よく真相を究明して先ほど来申し上げましたように万遺憾なき体制をつくるように努力をいたしておるわけでございます。どうかひとつその御趣旨については全く異存はございません。ただ、どういうところに問題があるかというつかみ方につきましては、先ほど辻委員も非常に御熱心に言われになりましたけれども、かなりアプローチしておられると思いますけれども、まだまだ調査を進めなきゃならない点があると思いますので、どうかひとつ今度のことはもう政府部内で包み隠しなく調べて、調べた結果を公表してそれに対して対策を立てるつもりでございますから、どうかひとつそういう点について御理解をお願いしたい、こう思います。
  145. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それからやはり国民の合意を一〇〇%得ることはこれはできない場合もあるでしょう。しかし私は今回このような安全に対する——安全と申しますか、最初の計算値よりも異常な放射線漏れがあったと、こういうようなことで結果的には青森県の漁業組合もまた県知事も出港のとき以上のこういう状態になってきたわけですし、またいま国民の皆さんの原子力船あるいは原子力行政に対する非常に不信感というものも非常に増大をしてきているわけですから、そういう点でやはり国民の合意を得るためにはやはり安全に万全を期していかなきゃならない。こういうことを私は主張しておるわけであって、これには長官としても異存はないと思うわけでありますが。  そこで今回先般小委員会の結論が出されまして、これはまだ今後ずっとさらに深い検討がなされるわけで、このこまかい点についてはきょうは質問はしないことにいたしたいと思いますが、新聞の見出しなどでは「やはり設計ミス」と、こういうようなことを書いてあるわけですが、現段階において設計ミスと判断しているのかどうか、その点まだ結論が出てないのかどうか、これはどうなんですか。
  146. 森山欽司

    ○国務大臣(森山欽司君) 先ほども再三申し上げましたが、たぶん詳細設計、要するに図面を仕上げる際に問題があったと思います。その問題は、ミスと申しますと一つの故意とか過失とかいういろいろなことになりまして、どこに原因があったということになりますと、これはこれからよく実相を調べてみる必要があるんじゃないかと、こういうふうに思っておりますので、いま私から何といいますか、どういうわけでそういう問題が起きたかということまでは、ちょっと論及することは差し控えたい。しかし、とにかく真相は明らかにするべく努力をいたします。  まあ率直に言って、七年も前に設計段階で起きたことで、まあ一番率直に言って閉口したのは個人的には私でございましてね、これはどうしてもほんとうのことを明らかにしなければならないという熱意に、個人的にも私は燃えておるのでありますし、また公的にはもちろん科学技術庁といたしまして当然やらなければならぬ。ですから政府がやりますけれども、科学技術庁の立場からも、これは運輸省と科学技術庁と両方の事務当局が協力をして、真相究明に当たるということになっております。それは、両省庁にかりに都合の悪いことでも、これははっきりさせることははっきりさせなければいかぬ、そういう気がまえをもって臨んでおるわけでございますから、どうかひとつ御了承をお願いしたいと思います。
  147. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 お尋ねしますが、これ基本設計を原子力委員会の安全審査会が妥当と結論出したのは、たしか四十二年の十一月だったと思いますが、いま言われましたように七年前ですね。七年前といまでは、だいぶいろいろな点で変わっておるわけでありますが、現在の立場から見て、はたしてそのときの審査が妥当であったかどうか、こういう点の検討はすでにしたのかどうか、あるいはやっておるのか、あるいはこれからやろうとしているのか、あるいはそういう必要はないのか、その点はどうなんでしょう。
  148. 生田豊朗

    説明員(生田豊朗君) ただいま先生の御質問のようなことを、今回総理府に設置いたします調査委員会でやるわけでございます。先ほど大臣からお答えいたしましたように、当然その安全審査の問題にも及びまして、その問題点を洗い直すということで進める予定でございます。
  149. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この「むつ」のいわゆる問題になりました放射線漏れにつきまして、いわゆる一〇〇%出力時に〇・一ミリレントゲンパーアワーであると、こういうことが最初計算されて、それに対して非常に異常に高かったと、こういうことが問題になったわけでありますが、この〇・一ミリレントゲンパーアワーの放射線が一〇〇%出力のときに漏れるという、この計算を出したのはどこなんですか、これは。
  150. 生田豊朗

    説明員(生田豊朗君) この原子炉の設計者でございます三菱原子力が設計いたしまして、それをこの事業者と申しますか、原子炉の設置者でございます原子力船開発事業団が認めたものでございます。
  151. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は前回の委員会でも質問をしたことなので、これだけちょっとお聞きしておきたいのでありますが、いわゆるJRR−4号炉で遮蔽実験をしたその結果においては、たとえば水平方向における放射線の漏洩というものは大体これは計算できると、しかしいわゆる上方、斜め方向のいわゆる放射線の漏れについては、なかなかそれを設計する数式がみつからないと、まあこういう結論が遮蔽実験の結果であったように私はこの前聞いておるわけでありますが。だから、実際はその計算がなかなかできない。〇・一ミリレントゲンパーアワーなんていう計算はなかなか出しにくいというのがこの遮蔽実験の結果だったと思うんですけれども、それがどうしてこういう結果になったのか。先般の小委員会の結論、これ私はまだ全文読んでないわけで、新聞の記事では、いわゆるストリーミング、すき間から漏れていく、こういう放射線漏れは計算に入ってなかったんだと、そのために非常に低い計算値になっておる。このように私、この新聞の記事では拝見をしたわけでありますが、もしそうであるとするならば、これは先ほど長官の言われたように、われわれ人間として最高の努力をしてもなおかつ防ぎ得ないそういう問題ではなしに、これは明らかに設計段階におけるミスと言わざるを得ない、こう思うわけです。その点はどうなんでしょうか。
  152. 生田豊朗

    説明員(生田豊朗君) ただいま先生指摘のように、当時としては上方へのストリーミングにつきまして計算が十分できなかったという点はございます。したがいまして、当時の考え方といたしましては、竣工後、完成検査に至りますまでの過程におきまして、先ほど大臣の答弁にもありましたような実験の積み重ねによって修正すべきものは修正していくという考え方だったと理解しております。
  153. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そうすると、〇・一ミリレントゲンパーアワーという、その中にはストリーミングの結果、漏れる放射線というものは計算に入ってなかったように、これ書いてあるんですけれども、その点はどうなんでしょう。
  154. 生田豊朗

    説明員(生田豊朗君) 問題は上方へ出ます中性子が熱中性子か高速中性子か、先ほど宮坂さんの御説明にもありましたような、そこの問題であろうかと思います。そこの点につきまして、当時の予測が実態に照らしまして不十分であったということが一番問題であろうかと考えております。
  155. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この点はじゃ、もう少し、はっきり結論は出ていないと、そう考えていいわけですね。私がいま言ったのは、いわゆる上方向へのストリーミングというものはなかなか計算はしがたい。それを〇・一ミリレントゲンパーアワーという予定値を三菱原子力がきめたわけで、そこは実際には計算しかないのにきめるというのはどういう根拠できめたのか、その点ははっきりしているんですか。はっきりしなければはっきりしないでいいんですよ。
  156. 中村守孝

    説明員中村守孝君) お答えいたします。これは遮蔽計算に当時関係した人から事情聴取した範囲内のことでございますけれども、当時先ほどから話が出ておりますように、高速中性子が多量に出るということについての評価がなされてないで、熱中性子中心で設計がなされたということは、どうも設計者のほうから見れば事実のようでございますので、そういうことで今回差が出てきたと、外が〇・一ミリという計算をしたのは、計算できないはずじゃないかといういまのお話ございますが、そうでございませんで、炉心中心から出ます放射線につきましては、これは高速中性子も含めまして計算方式、計算式がございますので、その計算をいたしましたものが新聞紙上に出ております計算値でございます。それのほかにストリーミングによる計算をどう評価するかということでございますが、ストリーミングによる計算の評価については、計算式についての有効なものがございませんでしたけれども、実験結果等を踏まえて、設計者としては中性子が主体であるので、そこから出るものが全体の遮蔽を大きく左右するようなものにはならない。十五センチの遮蔽リングで十分とまるのではないかということでしておりますので、表面の〇・一ミリレントゲンの計算値につきましては直接の寄与はないという計算になっております。
  157. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 〇・一というのはストリーミングは含んでいないと、そういうことですね、結局、計算値出したのは。
  158. 中村守孝

    説明員中村守孝君) ストリーミングはあるということですが、結果的には計算にはそれが大きく寄与していないということでございます。ストリーミングの効果は、計算上は大きく寄与していないということでございます。
  159. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そうすると、今回、異常に計算値よりも非常に高い値が出たのはストリーミングではなくして、これはいわゆる高速中性子を計算に入れなかったため、ストリーミングのためではなしに、高速中性子のことを計算に入れてなかったためにそれが異常に高く出たのだと、こういうことになるわけですか。
  160. 中村守孝

    説明員中村守孝君) 遮蔽計算いたします場合二に炉心、あるいは炉心の周辺から直接に出る放射線と、それからいまお話ございますストリーミングと二通りございますが、炉心からの計算は、これについては高速中性子も勘定いたしておるわけですが、ストリーミングについての評価、ここに高速中性子といいますか、エネルギーの高い中性子についての評価が甘かったということでございますので、今回、原子力研究所及び船舶技術研究所のほうで、いろいろ計算等によって確認しますと、かなりストリーミングの中に高速中性子の分が含まれている。そのストリーミングの中の高速中性子が今回大きく寄与したということでございます。
  161. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 その点は今後さらに厳密に究明をしていただいて、今後の原子力の安全審査の大きな反省、安全審査の強化への道をたどるようにひとつ努力をしていただきたいことを要望しておきます。  それで安全審査につきまして、この環境・安全専門部会ですね、これがいろいろ現在の安全審査会の安全審査体制の強化とか、あるいは行政機関における安全審査機能の強化、それから調査研究機関における安全審査補佐機能の強化、あるいは原子炉安全行政の一貫性の強化、こういうようないろいろ提案をいたしております。これは話に聞きますと、「むつ」の問題が起こる前に結論が出ておる問題でありまして、これが「むつ」の事件があったあとに発表されたと聞いておるわけでありますが、この内容を見ますと、非常に現在の機能では十分な安全審査ができない。これは言うなれば、原子力委員会の内部からの告発と申しますか、そういう意見ではないかと思うわけです。私はこのようになるまでほうっておいたことは政府の責任であると言わざるを得ない。これは先ほどの話では科学技術庁長官だけの責任ではなしに、行政管理上の責任があるかもしれませんけれども、政府として責任があると思うわけでありますが、もちろん今後どういう方向に原子力行政を改めていくかということは、先ほど申しました懇談会等でもいろいろ論議をされていくと思いますが、やはり何といっても根本は担当者である科学技術庁長官の一つの方向というものが私は大事じゃないかと思うのですけれども、こういう安全審査体制をもっと強化をして、いろいろ一つ一つの独自の調査データを集めてそのデータによって検討する。ただ、今回のこういう三菱原子力工業等から出されたデータをそのまま信頼するんではなくて、それをチェックしていくぐらいの、そこまでやはり強化をしていかなければならぬと思うのでありますが、こういう点についての考えを聞いておきたいと思います。
  162. 森山欽司

    ○国務大臣(森山欽司君) 先般の環境・安全専門部会の報告書でございますが、御説のように、「むつ」の問題が起きる前におおよその路線は敷かれておったわけでございまして、私は、大筋といたしましてはまさにこれはそうあるべきものだと思っております。ただ口先であるべきものだと思っているわけではございません。昭和四十九年度の予算においても具体的にこういう線で予算要求をし、五十年度もこういう線で予算要求をやっておるわけでございますから。しかし、これを、やはり人は日々新たでございまして、人間のやっていることは完全なことはないんですから、きょうはきのうよりも一歩前進し、あすは本日よりも少しでもよくなるというふうになっていく。日々これ新たに仕事をしていくのがわれわれのあるべき姿勢であると思っております。したがって、こういう意見が出、しかもそういう意見はたいへんもっともであるからということで、予算要求の面でも——口先だけではございませんよ、具体的に取り上げてやっていることでございますから、   〔委員長退席、理事辻一彦君着席〕 何か内部告発であったとかいうような御表現はいかがなものでございましょうね。それは私はそんなふうに考えておりません。もうこういう線で実際やってみてこういう問題がある。——私が申し上げたでしょう。私が昨年の十一月二十五日に着任して、すぐ、前の大臣からの引き継ぎで「むつ」を出港さしたいというお話もございましたし、原子力発電の立て直しが問題になりましたし、年を越えて一月の終わりには分析研の問題が予算委員会で問題になりましたね。その前日には行管からアイソトープの取り扱いについて問題だという勧告もございました。わずか二ヵ月間に、こんなふうにいずれもどの一つをとっても重大な問題が出るということはおかしいじゃないかと、これはもういままでのやり方にはなはだ問題があるぞと、まあ私は率直にいって考えたのです。けれども、それじゃ基本問題が解決しなきゃほかの問題はすべて解決せぬというような、評論みたいなことをやっておりますと、かっこうはいいですけれども実際は何も仕事をしないことになりますから、したがって私は、科学技術庁長官としては、この四つの問題に一つ一つまっ正面から取り組んだわけであります。ですから、問題によりましては、これはいろいろなお立場があっても、まあようやったという人もいますよ、私はもうそう思っておるわけでございますけれども、しかし基本的には、いままでのやはりやり方というものは考え直していかなきゃならない、原子力行政は考え直していかなきゃならない、原子力行政組織はこの際再検討する必要があると私は思っておりました。しかし、去年のいまごろそんなことを言っておりましたら、結局そういう議論ばっかりして、かっこうばっかりよくして、結局何にも仕事をしないということになりますから、そういうことについてはっきりした姿勢を、体制をつくらなきゃならぬということを気にしておりましたところ、このたびようやく原子力行政の再検討の懇談会等が政府に設けられて進むようになったわけでございますから、どうかひとつ、——内部告発だなんておっしゃられると、——私どもはその方向でずっと進んできた、——それはもちろん満点じゃこざいませんよ、なかなかそこまで頭が回らない問題もございますしね。それからわれわれに足らざる面もあったわけでございますから。しかし、そういう向きで努力をいたしておったということだけはどうかひとつ御理解を願いたいと、こう思います。
  163. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 内部告発ということばがあまりよくなければ訂正いたしますが、まあ内部からそういう意見が出たという意味ですから。私は、こういうような意見をほんとうに尊重して、やはり安全審査に一生懸命がんばっている皆さんが憂いのない審査ができるように、それだけの体制をつくらなければ、人間の能力というのは限界があるわけですから、これから政府の方向では六十年までに六千万キロワットの原子力発電所をつくると、まあこういう方向は私は非常にいろいろ問題はあると思うわけでありますが、よしんばそれを認めたにしても、それだけのいろいろな申請も出てくるわけですから、それに対処するものがなければと、そういうことで申し上げたわけであります。  それからもう一つ、いわゆる沸騰水型の炉におきまして一次冷却水のパイプにひび割れが生じたと、アメリカにおきましてね。それが各地に出たために、日本の国内においてもこの同型の炉については運転をストップして全部点検をさしておったと、このように聞いておるわけでありますが、この結果がどうなったのか、そして、なぜ、一次冷却水にこのようなクラックが生じたのか、この原因は明らかになったのかどうか、その点、できるだけ簡単にひとつ。
  164. 中村守孝

    説明員中村守孝君) お答えいたします。  ドレスデンで発見されまして、そういう情報が入りましてから、私どもとしてはできるだけ早く原子炉をとめて点検、チェックするようにという指示をいたしました。その結果、現在まで浜岡原子力発電所、島根原子力発電所、福島原子力発電所につきまして結果が終わっております。それで、あと、敦賀の原子力発電所につきましては、現在停止して調査中でございます。これらの検査にはすべて通産省の検査官が立ち会って調査をいたしております。結果は、福島第一発電所の一号機にピンホール状のものが一カ所発見されました。そのほか、二号、三号につきましては何らの異常もございません。それから島根原子力発電所についても何らの異常も発見されておりません。あと、浜岡原子力発電所につきまして超音波探傷を行ないました。そのほかに液体浸透法という検査をいたしましたが、その検査では何ら異常はありませんでしたが、超音波探傷試験で疑わしき影が見出されておりますので、これらについては切断して中の金属組織等を調査しなければ欠陥であるか欠陥でないかわからないわけでございます。いずれにしましてもこういう疑いのあるものは切り離して取りかえようじゃないかということで、浜岡原子力発電所のその疑いのある部分と、それから福島原子力発電所のピンホールのありました部分につきましては取りかえることにして、作業の準備を進めております。原因につきましては、これはやはり金属の問題がございますので、切り離した後に金属組織等を調べませんと何とも結論は出しかねているというところでございます。
  165. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この一次冷却水のパイプに穴があいて漏れた場合ですね、これはどういうことになるのか。ある学者の説によりますと、一次冷却水がなくなりますと炉はからだきになると、そして、そのときに緊急炉心の冷却装置が——これもアメリカにおいて非常に問題になっておりますので、まあ一次冷却水が漏れて、しかもその緊急炉心を冷却する装置が働かなかった場合は、炉がからだきになって放射——死の灰が飛び散る危険性はある。こういうことを言ってる人もいるわけでございますが、この一次冷却水のパイプに穴があくということは——穴があいて水が漏れた場合、どういうことになるんですか、これは。
  166. 中村守孝

    説明員中村守孝君) パイプ——一次冷却材喪失事故につきましては、メインの大きな、直径二十六インチ以上という非常に大きなパイプが瞬間的に破断をしたという場合には、急速な冷却材の喪失ということになります。その場合には、ECCSがもし万一働かないというようなことになれば、燃料が破損するというような現象も起こりかねないわけでございますが、これらは全く可能性としては、現実的な問題としての可能性というのはない、技術的にはないのではないかと言われているものでございます。今回のはそういうような大きなパイプに生じたものでもなく、四インチのパイプでございまして、しかもピンホール程度ということでございます。その欠陥そのものはほとんど問題になりませんし、四インチのパイプ程度でございますれば、多少大きな破断が生じてもその流出量というのは、時間的にもそう大きいものではございません。いろいろ問題にされておりますような冷却材喪失事故のように、中に蒸気が充満して外から水が入れられないというような状況になるものでは全然ございませんので、特にそういう意味では心配ないとともに、それからこのような現象というのは、いわゆるちょっと英語を言って恐縮ですが、リーク・ビフォア・ブレークということがよく言われておりますように、破断の前には必ず微少な漏れがあるということもございます。そういうことで微少な漏れの段階でそういうものを発見いたしますし、それから定期的な点検においてもそういうものを検査して発見するというようなことで、十分にそういう破断が広がらない段階で検出するということで十分安全は保たれるものと考えております。
  167. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 ひとつこういう問題も私たちはよく一時冷却水のパイプにクラックが入っているとこういうことになりますと、やはり非常にどうなるのか心配でありますし、ある人は原子力というのは、ほんとうに安全だ、安全だという人がやれば非常に心配だ。むしろ心配だと思う人が、危険だという人がやれば、かろうじて安全である。こういうことを私、だれかが言っているのを聞いたことがありますが、やはりこういうことは非常に大事じゃないかと思うんですね。そういう点できょうは時間もきたわけでございますが、今後のやはり原子力行政においては、ただ安全だ、安全だということをやっぱりPR——ことばだけでPRしてもこれはいかぬわけで、常にそういう危険であるという立場に立っていくことが、私は事故を防いでいくんじゃないかと思うわけで、結局今回の「むつ」のようなことを起こさないことが、これはほんとうのやはり国民に対する信頼を得る道になるわけですから、長官をはじめ担当者の皆さんも常にそういう立場に立って今後の原子力行政に臨んでもらいたいと、このことを要望いたしまして本日の質問を終わりたいと思います。
  168. 森山欽司

    ○国務大臣(森山欽司君) たいへんありがたいお話をいただきまして御趣旨に沿うように努力をいたしますが、安全性の問題につきましては、どうか何が安全性が確保されているというのであるかについて、どうかひとつあらためて御理解をお願いをいたしたいと思いますと同時に、どうもあんまり安全性の問題について問題がないにかかわらず、問題があるような考え方も往々にして見るものですから、原子力発電は反対なんだけれども、反対というといまどき、じゃエネルギー政策でどうするんだと言われると実際は返事ができないのです。そこで、原子力発電のことはおれは反対しないが、安全性に疑念があるからと言って、それであぶない、あぶないという方が多うございますもんですから、反対論者の中には。それで私は安全性のことについて、安全性とは何であるかということを過去一年間私は科学技術庁長官として力説をしてまいったわけでございます。しかし御説のとおり、もうとにかく大事をとって慎重に薄氷を踏む思いでやっていかなきゃならない。たかをくくってはいけないということは全くそのとおりだと思います。事実私は今度の「むつ」の七年前の設計図面の問題など見ておりまして、これはそのころはまだそこまで何といいますか、知識が進んでいなかったのかもしれませんし、あるいはまた少しみんなでみこしかつぐようなつもりになってふわふわしておってこんなことになったのか、これからこれ調べてみなければ私はわからぬと思いますが、とにかく大事をとって事に臨む、慎重に事に処さなきゃならぬというのはもうまさに御説のとおりでございまして、その点はけんけん服膺いたしまして、けんけん服膺しましてということは、私が申しませんでも、今度のことで関係者はもうほんとうに深刻な体験を得たわけでございますから、どうかひとつそういう点につきまして十分心して進むつもりでございますから、どうかその点について御理解をお願いいたしたいと思います。どうもありがとうございました。
  169. 加藤進

    ○加藤進君 私は、あと小巻委員質問いたしますから、その前にほんの一、二の点について質問したいと思います。  十一月の五日の日に中間報告が出されました。この中間報告が出された段階でおそらく原子力局首脳部の諸君も、あるいは科学技術庁の長官自体も深い反省をされたのではないかと推測するわけです。  そこで、お聞きしたいのは、森山長官たびたびいろいろ発言をされておりますけれども、原子力委員会の安全審査にパスしたから絶対安全だ。この点は取り消される用意があるかどうか。「むつ」の原子炉は世界的に安全性が証明されておる原子炉だ、実証炉だ。こういうことばも出ておりますけれども、こういうことをこの機会にお取り消しになるのかどうか、いや従来どおりそれはほんとうだ、正しいんだ、こう言われるのかどうか、その点まずお伺いしたいと思います。
  170. 森山欽司

    ○国務大臣(森山欽司君) いまそういうお話ございましたが、前のほうはどこで私がしゃべったことか、ちょっと出所を明らかにしていただきたいと思います。  それからあとのほうは原子力発電炉につきましてはそういうふうに言ったと思いますけれども、「むつ」の炉についてはそういうことは申していないと思いますので、その辺はどこでどういうふうにしゃべったのか、ちょっと文書をいただきたいと思いますが。
  171. 加藤進

    ○加藤進君 この最初のほうは議事録です、国会における。そういうことですから、私はいま言われたように、これは真意を伝えたものでないと、こういうふうに言われるなら言われるでけっこうですよ。だが、こういうことを言った覚えはないとか、これは真意を伝えておらないとか、誤解だとか、これならけっこうですよ。そういうふうに理解していいですか。
  172. 森山欽司

    ○国務大臣(森山欽司君) 安全性については私は先ほど申し上げました。それから私のこの考え方はきょうに始まったことではございません。大臣就任以来今日までずっと同じようなことを言っておるわけです。でございますから、そういう発言をしたことがあるのかどうか。先ほど来申し上げましたように、メーカーが原子炉をつくります。それに対して政府機関が審査をしたり、監督をしたりして最終的にでき上がるわけでございますね。それだけやりましても、人間のやることでありますから、これは万が一の故障がないとは言えない。これは自主開発なんかの場合につきましてはまさにふぐあいなところがあり、故障する場所があるかもしれませんから、ないにこしたことはございませんよ、先ほど塩出委員からお話のとおり、まさにそういうことがないにこしたことはありませんが、自主開発なんかの場合にそういうことがあり得るからこそ実験をしたり、試験をしたりするのでございますから、ただ、どうも私がそういうことを申し上げたとするならば、何月何日のどの速記録でそういうお話をしたかということを御示し願えれば私も御返事申し上げたいのでございますが、その何か話の中のその部分だけとらえちゃ困りますよ、前後の関係から、そういう安易な私は発言はしておらないと思いますが、もしそういう点がございますれば、私が先ほど来申し上げますような趣旨でずっと安全性の問題は議論しておると、こういうふうに御理解をお願いをいたしたいと思います。加藤委員も御案内のとおり何回もいろいろこういうことでやりとりいたしましたから、私が言わんとしているところは御理解願っていると思いますので、御賛成願えるかどうかは別でございますけれども、どうかひとつそういうふうに御理解願いたい。
  173. 辻一彦

    理事(辻一彦君) 政府委員の皆さん、時間が非常に限られておりますから、簡潔にお願いします。
  174. 加藤進

    ○加藤進君 ともかく「むつ」の原子炉は安全だと絶えず宣伝もされ、強調されてきたわけでございますから、この期に及んでもなおかつそれを強調されるのかどうかは、とにかく最初に確かめておきたい、こういうのが私の質問の真意です。  そこで、今度の中間報告の中でいろいろ指摘されておりますけれども、とりわけ私から見て重要な指摘というのは二点強調、指摘できると思います。その一つは、漏れた方向は上部だけではなく下部の方向にも大きな漏れが起こってきている、こういうことであります。これは、私はすでに前回の質問におきましても下部の漏れは重要視すべきだと強調したにもかかわらず、原子力局関係、科学技術庁諸公はこの点についてこれをあまり重視しない、できる限りこれを軽く見る。こういう傾向がありましたけれども、これは私たちの指摘が正しかった、こういうことを現にこの中間報告は証明していると思う。もう一つは、漏れた中性子が高い速度の中性子だという問題であります。こういう点についても、現在の原子力専門家の諸君からいうなら、高い中性子漏れが起こりそうにないと判断してつくられたとなれば、これは一体原子炉内における放射線の発生のメカニズム自身に対して基本的な、理論的な欠陥ある理解だと、理論的な理解のあやまちがある、こういうことが指摘できるということはもう明らかであります。  第二点の、下方漏れがあるという点についても、鉛と鉄鋼だけで遮蔽してあるという状態のもとで下から漏れないはずはないと私たちは強調していたわけでございますけれども、その点についてもきわめて軽く見ておられました。今回それがあえて強調されたのは、下方漏れについても従来よりも一そう重要な意味を持っておるんだということが指摘されたと思いますけれども、その点についてこういういわば基本的なあやまち、基本的な欠陥がこの原子炉に存在したという点については、事柄は単なる技術上の問題ではないと私は考えるのでございますけれども、その点いま長官もおっしゃいました、人間は決して完全ではない、あやまちはある、だから実験に実験を重ねて、積み重ねた上でやっていくと言いました。実験やられなかったですか、いままで。何度も何度も十数年にわたった実験がやられたんじゃないですか。やられたにもかかわらずこういう欠陥炉ができ、欠陥原子力船が出たんでしょう。だとするなら、実験そのものにあやまちがあるのではなく、実験に取り組まれるための基本的な条件があやまっている、こういうことが言えるんじゃないですか。  私はその点でこの中間報告が出たときに直ちに思い起こしたのは、だからこそ金が、十分に予算がなかった、時間の制限がございましたから十分に実験ができませんでした、こういうことを現場の技術者諸君が公然と論文に発表している。こういう船に原子炉をつけるという問題ならこれは理論計算だけでも実は不確かなものだ、理論計算そのものの基礎がきわめて不十分だ、実験値といったって炉自身を実物大の炉で実験すべきだとわれわれが強調しておるにかかわらず、そのような実験はやられなかった。現実ですよ。そういう数々の基本的ないわば手抜き、基本的なものごとについてしっかり対処する態度がなかったということがこのような事態を生んだのではないか。私はあえてあらためて指摘したいわけでございますけれども、もし異論があるならば申し述べてください。
  175. 森山欽司

    ○国務大臣(森山欽司君) いや、私がどうも言いたいようなことを加藤委員が言っていただいたので、私もひとつこういう結果になったんですからそのぐらい強く言いたいのでありますが、しかしいまの私の立場というだけではなくて、やはり真相を究明するためにはあらゆる角度から調べてみませんと、早とちりは禁物だと私はみずから戒めまして、それでこの問題について先ほど来聞いておられてちょっと少しなまぬるいような御印象を受けたかもしれませんが、もう私は、気持ちとしてはいま加藤委員がおっしゃったとおりに、どうしてこんなべらぼうなことが起きたのかと実は思っております。思っておりますが、しかしながら、やはりこうなることにつきましては何が一体一番問題なんだということについてもまだちょっと詰めてみなきゃならぬ問題ありますし、こうなるについての成り行きについてもいろんなことがあったと思うんです。よく調べて、そうして先ほど来の調査委員会を設けて調べまして、そうして、これはもう先ほど来申しますように、関係省庁に都合が悪いことだって、事業団に都合悪いことだって、もうとにかく全部表へ出して、そしてその調査の結果を表に公表して、そうして次の対策を立てようということは先ほど来も再三申し上げてあるとおりでございますから、どうかひとつ結論が出ますまで、しかも、先ほど申しましたように一年も二年も先に出るわけじゃございません。とにかく半年ぐらいをめどにして結論を出していかなきゃならぬと、こう考えておりますので、どうか、お気持ちとしましては加藤委員と私は立場は違うけれどもかなりに気持ちが近いんでございますから。そういう意味では、どうかひとつ暫時の御猶予を願って、この結論の出ることについて御協力をむしろお願いしたい、こういうように考えておる次第でございます。  それから、ちょっと……
  176. 加藤進

    ○加藤進君 時間がありませんから詳細な点はけっこうですよ。長官の所信でけっこうでございます。  そこで、気持ちは大体近いということなのでございますからあえて申し上げたい点があります。その一つは……。
  177. 森山欽司

    ○国務大臣(森山欽司君) 立場は違いますよ、立場は。
  178. 加藤進

    ○加藤進君 立場などということは問題じゃありません。こういう事態の真相を究明していく、改善の方向をお互いに努力して見出していくということでございますから、イデオロギーじゃないですよ。立場じゃないですよ。  そこで言いますけれども、一番あなたたちが、たよりにしておられる原子力研究所の技術者、研究家の諸君、この諸君どう言っていると思いますか。私たちは基礎研究のことについては参加さしてもらった。しかし詳細設計の内容やあるいはその他のデータについては全く公開してもらっておりませんと、こう言っているんですよ。こういう諸君にまで公開もしないでおいて衆知を集めてやったやったなどということは、およそ私は国民を欺瞞するものである、こう言わざるを得ないと思う。だから私は、長官がそれなりの決意をしておられるなら、主観的な単なる決意でなしに、その決意を実際上の体制の上でも保障してそうして真相の最終的な究明もやり、今後どう原子力行政を立て直していくのか、あるいは原発の問題についても抜本的なかまえをしっかりして進めていくのか、こういう点を私はぜひともしっかり検討してもらいたい。  そういうことのために申し上げたいのは、すでに科学者の諸君からいろいろな意見が出ております。学術雑誌についても私たちの目で調べた範囲においても数々出ておるほどでございますから、日常そのことを担当しておられる原子力局の諸君が知られないはずないです。これを見過ごしておる。こういういわば良心的な科学者、技術者の諸君の衆知をいかに結集していくのか。事態を公開してそしてみんなの意見を聞く。反対の意見を聞く。反対の意見もあるかもしれぬ、あるかもしれぬけれどもその意見をくみ上げる。こういうことでなければ、森山長官、私は、ほんとうに熱意をもって取り組みますと言われたって、その熱意がどちらの方向にいくのか非常に私たちは心配せざるを得ないわけでございます。  そういう点で私は、政府部内においても日本学術会議という機構がございます。長官はあまりそういう学術会議のことばを出すとお好みにならぬようでございますけれども、それこそ立場やイデオロギーの問題を介入さしたのでございまして、そういうことを抜きにしてすなおにこういう側からの意見を聞く。そういう点で、今回起こってきておるこの事態について、中間報告についても、あるいは今後出てくるであろう最終報告につきましても、これが出た段階においてこの学術会議にも諮問する、見解を求める、そうして原子力行政そのものの立て直しに資する。これくらいの覚悟を持っていただかなくてはならぬと思いますけれども、その点について長官いかがでございますか。
  179. 森山欽司

    ○国務大臣(森山欽司君) どうもときどき国会ごとにそういう御質問を加藤先生からいただいております。しかし、私は毎々申し上げますように、学術会議に関係のある学者だから相手にせぬなんて申しておりませんよ。学術会議に所属しておる学者の中にも信頼すべき人がおいでになりますから、私はそういう人たちとは——人によって御相談をしておりますが、また学術会議、このほうの専門の委員会だとか、全体として引きずっていく、全体としての御意見とかになってまいりますと、なかなか注意しなければいけませんね。  いまの開発方向については基本的に反対であるというような御意見も前出ておりましたし、それが変わったということは私どもは別に聞いておらないわけでございます。  それから、言っておられる御議論を伺いますと、やっぱりあげ足取りが多くて、技術論のような顔をして政治論をやるんですよ。だからそういう御意見を聞いておるというわけにはまいりませんしね。それから……
  180. 加藤進

    ○加藤進君 わかりました。
  181. 森山欽司

    ○国務大臣(森山欽司君) それからですね、ことし総会で何やら御意見、表明がありましたが、これも春の総会と同じようなことを言っているんですね。それでたとえば民主、自主、公開の原則なんていうのは、やっぱり政府としては政府の立場で民主、自主、公開の原則を運用しておりますことは先生も御案内のとおりです。ただ御承知になるかどうかは知りませんよ。しかし学術会議は学術会議で自分のところ独特の民主、自主、公開原則を立てて、そしておれのほうに相談しろと言われましても、ちょっと私は、これは結局トラブルの種にこそなれ、いまのままの姿勢ではなかなか前進することは容易ではないのではないかと、こういうふうに考えておりますので、先生の言われようとする点につきまして、それは先生のお立場と私の立場は違いますから必ずしも先生のおっしゃるとおりでありますとは申しがたいのでございますが、しかし私どもの立場からすれば、やはりやり切れるようにこの問題については対処しておるわけでございますので、どうかひとつそういう点について御理解を願いたい、こう思います。
  182. 加藤進

    ○加藤進君 最後に——。いや、立場立場ということを強調されるからあえて申し上げたいんです。なぜか——。あなたたちの立場を固執されたから今度のような事件が起こったんでしょう。立場が問題なんですよ。だから、そういう固定的なかたくなな立場ではなしに、もっと衆知を集めなさい。何も政治論をこれに介入させろなどと言っておるわけじゃないんです。専門家の意見を聞きなさい。専門家の立場から見てもこれはおかしい、こうあるべきじゃないかという積極的な意見が出ている。しかも、「むつ」号に乗り込んでいって学者諸君の意見も徴してみると、いままで科学技術庁長官のあまり好まれなかったような諸君の意見が実はほんとうだったと、かつて警告を受けたことがほんとうだったということを今回あなたたちも感じられたでしょう。この点から見て、もしいままでどおり、原子力行政も科学技術行政も、従来どおりのワクの中で、自分たちの好みに応じた諸君ばかり、立場の同じような諸君ばかり集めて研究もやりあるいは開発もやるなどということになったら、結局それは、やったやったと言いながら、本質的には同じものが起こる、同じ欠陥が起こる、同じ今後の重大な問題が起こるであろう。これを私たちは警告しておるわけでございまして、その点十分に含めて御理解いただきますかどうか。
  183. 森山欽司

    ○国務大臣(森山欽司君) 毎々のことでございますが、御意見として伺っておきます。
  184. 辻一彦

    理事(辻一彦君) 以上で加藤君の質疑を終わります。
  185. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 私は、今度の中間報告書、特に調査委員会が別途設けられるということになれば、中間と言い条この委員会としては私は最終的な報告ということになるんじゃないかと思いますので、これについてお伺いしたいというのが趣旨でございますが、長官、ただいまの答弁聞いておりまして、前回の委員会状況などとかね合わせて懸念も感じますので、一、二長官にただした上で入りたいと思うわけです。  前回、十月十六日のこの委員会は、二カ月の漂流を終わった「むつ」号がそのときまでは母港として指定されておったあの港に帰りたという、こういう状況下で開催をされたわけであります。長官は、たまたまあつき病を得られて床に伏せっておられて重要局面に出てくることができなかったけれども、現地ではスムーズに進んだ。鈴木総務会長が行って、いろいろ国民に対する公約としてのむつ市民との取りきめ、特に漁民との取りきめをやってこられた。このときに若干この委員会でただした問題がございますので確認をしておきたいと思うんです。  あのときに、鈴木総務会長から、文書における協定とは別に記者会見において、今後の原子力行政の見返りを条件にして帰港を認めるという、漁民にこたえて口頭で約束をした問題がございます。今回の苦い体験をかてとして真剣に根本からの再出発をする、このくらいの心がまえで当たる、こういうような内容であったと。この点については、長官も同様に確認をされるものかどうか。イエスかノーかを一言お伺いしておきたいと思います。
  186. 森山欽司

    ○国務大臣(森山欽司君) 先ほど申し上げましたように、先ほど申し上げましたようなまた経過におきまして、原子力行政並びに原子力行政機関の再検討を行なうために政府は総理直属の懇談会を設け、まさに出発しようといたしておるわけでございますから、これは鈴木総務会長が現地でただ言われただけではございません。もうすでに行政——政治よりさらに下の行政段階においてまさに手をつけようといたしておる次第でございます。
  187. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 それじゃ関連してお伺いをしますが、あの時点で政府がむつを母港として放棄をする、すでに施設もつけて二十五億円ぐらいが投下されたと聞いておりますけれども、こういう状況。それから九月からテストを終わって前進するはずであった「むつ」は、もうこれは修理をして使うのかそれとも使わないのか今後の検討にまたなければわからないと。これは予定からすれば大きな停滞であって国費の大きな損失であって、これは政府の重大な責任があると思うにもかかわらず、あの時点でむつを放棄をし今日のような状況に至っている、こういうことがあるわけです。それならばこそ沈痛な趣きのある確約がなされたと私は把握をしておるんですが、この漂流中において森山長官は各界の——まあどの範囲で出されたか承知しておりませんが、各界の方々に、一つの講演のシリーズの出版物と、それから九月の日の入った文書を出しておられるわけですね。この中に書かれておることは、「むつ港への帰港を地元が反対しているため、「むつ」は海上漂流中であります。」「無理が通って道理がひっこむようなことがあっては、断じてならぬと信じております。」と、こういうふうに書かれてあります。この前文からの趣旨によれば、むつは母港として何ら差しつかえなく安全にも差しつかえなく当然継続されるものというような趣旨になっておりますけれども、いまもなお、これらの政府のとった処置は無理が通って道理が引っ込んだものだというふうに考えて、そのように言明されるのかどうか、このことをイエスかノーかで承っておきたいと思います。
  188. 森山欽司

    ○国務大臣(森山欽司君) 先ほども申し上げましたとおり、私は強行出港をしたというふうにも考えておりませんし、安全性に問題があったとも考えておりません。不幸にしてああいう事態になりましたから、最終的な締めくくりはそれは理想論からいえば非常に問題がございましょう。しかし、現地において鈴木総務会長が政府の与党を代表して骨身を削る苦心をされたわけでございますから、その結論につきましては、そしてその結論になった事項の実行につきましては、これは私の個人的な気持ちを離れてこれを実施するつもりであるということは国会において申し述べておるわけでございます。しかし、事はやはり原子力船「むつ」というものと乗り組み員をいわば人質にしてでの結論でございましたから、私は、日本のある日刊紙に書いてありますような強いことばは使いませんけれども、その点につきましては、非常にまあ、無理が通って道理が引っ込んだと、その点は私考えておりますよ。
  189. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 そうすると政府は道理を曲げて無理をのんだのだと、ここで言われたものと承知してよろしいな。   〔理事辻一彦君退席、委員長着席〕
  190. 森山欽司

    ○国務大臣(森山欽司君) 先ほど申し上げましたように、私は個人としてそういう感じを持っておると、きまったことについてはこれはやむを得なかったし、それは政府の立場としてはちゃんと実行するつもりであるということは先ほど申し上げたじゃないですか。しかし個人としては私はそういう感じを受け取りますということを申し上げたわけなんです。
  191. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 長官が自分もサインをした問題について、これは国は行なうべきでなく、無理を通したことであり、たくさん金をかけたこういう施設を本来使うべきだけれども、道理を曲げて約束をしたんだと、そして自分もそれに従うのだと言われることは非常に問題だと思うのですね。そういう状況でなおこういう位置にあって長官を続けていかれるというようなところは、私にとっては理解に苦しむところでありますけれども、この問題は確認しておきます。このとった政府の処置は少なくとも長官の信念としては道理を曲げたことだと、こういう答弁がここで行なわれたということを確認をして進みたいと思います。
  192. 森山欽司

    ○国務大臣(森山欽司君) 政府の一員といたしましては、鈴木総務会長の骨身を削った結論を尊重し、これを実行するという方針には変わりございません。しかし、先ほど申し上げましたように、私の個人的な考え方からすれば先ほど申しましたような考え方を持っておるということは、これは率直のところでございます。どうかひとつそういうふうに御理解をお願いをいたしたいと思います。  それから、進退についてというお話でございますが、いろいろな御意見が出まして、最初共産党の方からやめたらどうだという御意見も出ました。社会党からも、おまえがやめなきゃ解決せぬぞと言われました。しかしまた、人によっては野党の中で、やめて片づくものじゃないぞというお話もございました。まあいろいろ意見ございますから、私は、こういう現在の立場と私の性格がございまして、それはそちらのおっしゃるように簡単にそういうふうにやれば一番何でも気楽でございますが、やはりこの問題はひとつまあ十分あと始末をつけなきゃならぬと思って鋭意努力しておるわけであります。
  193. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 私は、私人としてはあれこれの考えはあるけれども、あの措置を公人として大臣の位置にある長官としては署名をし忠実に実行し、そのことを正しい措置とすると言われるなら取り消されたらどうですか。無理が通って道理が引っ込む行ないであるというような言い方は取り消されたらどうなんですかね。
  194. 森山欽司

    ○国務大臣(森山欽司君) 個人としてはそのように考えております。
  195. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 大臣としてはどうなんですか。
  196. 森山欽司

    ○国務大臣(森山欽司君) 大臣としては、先ほど申し上げましたようにこれを尊重し、かつその結論を実行していくつもりでございます。このことはあの直後から天下に宣明をいたしております。
  197. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 こういう人ばかりがやっておるのであれば、将来の問題も非常に気づかわれるというふうに私も思うし、国民も、あるいはむつの漁民もそう思うだろうと、私はそのように考えます。しかし、まあこれは質問でありませんから、お答えいただく必要はないんです。  なお、あなたの出されたこの文書にはさまざまな問題があります。たとえば二八ページには「原発反対運動の性格」というようなことで、これは私人の立場か公人の立場かわかりませんが、かってにこの分析化学研究所の問題などについても触れて、これを野党のすさまじい攻勢というふうに表現をし、「日本共産党、日本科学者会議、あるいは日本学術会議、労働組合の一部」——労働組合は一部であります。日本共産党はあげて、科学者会議はあげて、学術会議があげて、原発、分析化学研究所、原子力船「むつ」のことなどで、次々と手をかえ品をかえ、一糸乱れぬ攻勢などと書いておるわけですね。こういう姿勢で行政を行なわれるのかということですね、問題は。特に分析化研の問題、わが党が追及をしなかったらそのままあの状況が続いていったんでしょう。攻撃を受けずに続いたほうがよかったわけなんですかね、この問題については。私は、共産党は国のことを考えるものなら礼を言ってもらう筋合いのものだと思いますけれどもね、自分で発見することはできなかったんですからね。事務官に仕事をやらせておくとああいうことになるというようなふうに反省しておるようだけれども、自分の好きな者を任命すればよくなるのだというようなことをやっておりますけれども、これ違うじゃないですか、議会であなたが分析化学研究所の問題のときに答えた態度と。議会で答えることと文書で出すのは別々なんですか。食言じゃないですか。この点について答えてもらいたいです。
  198. 森山欽司

    ○国務大臣(森山欽司君) 原子力が時代の脚光を浴びまして、与野党からいろいろ論議の種に過去一年間なったことは、御案内のとおりでございます。そういう意味におきまして、たとえば日本分析化学研究所の問題につきましても、これは特に共産党の諸君がこの問題を取り上げて、政府攻撃の一つの何といいますか、(「攻撃じゃないよ、反省を求めたんだ」と呼ぶ者あり)種とされたことは事実であります。しかし、そのことは私はいい悪い言っているんじゃないんですよ、そこには。そこには、とにかく日本共産党、それから日本科学者会議、それから学術会議、労働組合の一部でございまして、学術会議の一部という意味でそれを申し上げておるのでございまするから、とにかく、そういうところが手をかえ品をかえしてやってきた攻勢はまことにみごとなものがあったとほめているんですからね。ですから、必ずしもそれはけなした文章じゃないのでございまして、敬意を表したのでございますから、どうかひとつそういう御理解を願います。
  199. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 まああれこれでたらめな答弁をするから、この点はここではおきますけれども、「イデオロギーや政党の立場を固守して、話しても分かろうとしない人々」、これが国会ではこういうふうにやってくるというふうに書いてあるんですから、そういうほめ方はいただきたくないものだと私は申し上げておきます。  続いて中間報告書の問題に入るわけです。すでに新聞紙ではいろいろ記載しておりますが、社会党、公明党の質問等を通じても、まあ大綱において、この今回の事故は基本設計段階で速中性子に対しての問題が十分に把握されていなかったところから起こっているというようなことについては、本日の答弁でも私は裏づけられているというふうに押えるのでありますけれども、まあここで特に質問並びに要請をしておきたい、この点を申し上げるわけであります。  結論があって、その結論に至るいわばデータがあの報告書においては私は十分でないように思うわけであります。そこで第一に、あのデータを持ち帰って、そうして解析をして、そうして結論を出すに至った原研と船舶技研と、それから三菱原子力工業、ここで解析されたデータをひとつ資料として提出をしてもらいたい。このことを要求をいたします。まず、それにつきまして特にここで申し上げるのですけれども、すでに前回のこの委員会で、どういう装置を持っていって計測をされたのかというようなことも答弁をもらっておるわけですが、この報告書を読みますと、この中でBF3サーベーメーターを用いた部分についてはかなり記述があって、そしてそこのところから一つの結論を導かれているという部分があるのですが、持っていかれた装置の中では前回の答弁で中性子用のTLD−サーマル・ルミネッセンス・ドシメーターというのですか、熱螢光線量計、このものをもって計測をされたデータはどのように利用したのかというようなことは一切記述されていないわけでありまして、これらで計測をされた値等についても当然あると思うのですから、それらも含めてひとつ出していただきたい。それからもう一つは、比較対照をする設計計算値があって、これと比較をするわけですが、設計計算書、これが開かれた場所に出されるのでなければこのことを全体としてながめることができない。こういうものについても提出願えるかどうか、このことを要求いたします。
  200. 生田豊朗

    説明員(生田豊朗君) 先生御要求の資料のうち解析をいたしましたのは、原研と船研の資料だけでございまして、MAPIの資料は解析しておりませんが、今回の計算に使いました資料につきましては提出いたすように取り計らいます。
  201. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 調査に行き、そしてこれにかかわってきたのは原研と船舶技研に加えて三菱もあるんじゃないですか。どうなんですか、そこのところは。
  202. 中村守孝

    説明員中村守孝君) とってきましたデータについて、コンピューターを使って解析をお願いしました——事業団からお願いしたのですが、これは船研と原研だけでございます。その資料をベースにして、それを小委員会検討をしたということでございます。
  203. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 そうすると、三菱は調査に行くだけで、その解析に対しては仕事をやっていないのですか、そういうことですか。
  204. 中村守孝

    説明員中村守孝君) しゃへい検討委員会には、そういう意味でやっておりません。それから、三菱は今回やります分析についての計算コード等も所有しておりませんで、原研と船研で開発しました計算コードを使って今回解析をしたわけでございます。
  205. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 それではこのデータを出すということですから、それをまたいただいた上で今後やっていきたいと思うわけですが、ここで一つ特にこれに利用されたコード等についてもいろいろ複雑なもので、さまざまな意見があろうかと思いますし、それから計器等についても特に中性子TLDというのは、じかにこれが私は高速中性子のほうに用いる計器であるのかというふうに承知しておるのですけれども、これらの問題は、まとめと評価、もしくはその過程の中で出てこない点なんかについては、少し御説明いただけますか。
  206. 宮坂駿一

    参考人宮坂駿一君) まず持っていきました測定器のうち、熱螢光線量計——TLDと申しますのは、リチウム6フロライドというものとリチウム7フロライドと、こういう二つの種類のものを持っていきました。リチウム7フロライドというのは、これはガンマ線に主として感じるものである。同時にニュートロンにも少し感じますが、その感じ方はガンマ線のほうが非常に大きい。それからリチウム6フロライド、これはニュートロンに主として感じる、中性子に主として感じる。それからガンマ線にも感じます。ただ、ガンマ線の感じ方は非常に少ない。これを二つ同時に中性子とガンマ線の混合している場に置きまして、照射してあとで計測器で読み値を読むわけですが、リチウム6のほうにもガンマ線が幾らかかぶっていますので、リチウム7のデータから補正をしてリチウム6の眞のニュートロンの値を読む、そういう操作が必要になってきます。それで船の上ではかってきたデータをそのまますぐにお渡しするのは、そういうガンマ線とニュートロンとがまざったデータであって、そのまますぐには皆さん方がお読みになってもそこから眞のデータは出てこないということが一つ。  それからもう一つ、リチウム6フロライド、熱螢光線量計と言いますのは、中性子のエネルギーによって非常に感じる感じ方が違います。大体高いエネルギーから中間のエネルギーまではある程度高いレスポンスを持っていまして、それから今度まただんだんレスポンスが下がってきます。十の四乗から五乗の間ぐらいで最低の感度を持ちまして、それから熱中性子のほうにいくにつれてだんだんまた感度が上がっていく、そういう性質を持っています。それで実際に船ではかったデータの読み値から人体に対するレム値に変更するためには、その場所での中性子のスペクトルがわからなければTLDの、熱螢光線量計の読み値を正確にレムに直すわけにいかない。それで、実際は船でそういう測定をしたかったわけですが、三日間という限られた日にち、それからあの中に人間が立ち入ることができない、またスペクトルをはかるためには、われわれの感じでは出力を一〇%ないし二〇%上げないととても測定できない。ところがあの「むつ」の状態ではそういう出力はとても上げられないということで、まあはかってきたデータの解析には計算で中性子のスペクトルを求める。そのスペクトルからリチウム6のレスポンスをかけて、計算でリチウム6の読み値を出す。それと実測値との比較をとって、実測値のほうを線量率に直すレム換算係数というのを求める、そういう作業をやっています。その絶対値としては格納容器の外側でも、サーべーメーターでいろいろはかっております。サーベーメーターではかった値というのは、これは船のほうで絶対値で構成されておりますので、その値は信用できる。その値とTLDで格納容器の中でいろいろはかりましたTLDの空間分布からある点の絶対値を外挿で求める。それと計算値との比較で格納容器内の各点のリチウム6の読み値をレムに換算する係数を求める、そういうようなやり方をやりました。これは小委員会でそういうやり方、それから計算コードを、一次元の計算コード、二次元の計算コード、これを使ったわけですが、こういう大きな体系について使うのは日本では初めてです。そのコードがどれだけの精度があるかどうかということについてのまず予備チェックを、JRR−4でやりましたモックアップ実験を解析することによって、コードで使っています乗数の評価、それからコード自体の評価というのをまずやる。これは非常にモックアップ実験といい位置を示して、一次元も二次元もいい位置を示したということで、コード及び乗数は非常にいい精度を持っているということがわかる。同時に約十年前にやりましたJRR−4でのモックアップ実験というのが非常に精度のいい実験であったということが、そのときに逆に確認できた。そういう予備的な解析を行なってからこの「むつ」についての二次元計算、一次元計算をやるということです。そこら辺は結果としては小委員会には御報告いたしまして、ここでは記者会見用ということで簡単なものにまとめたのですが、データはすべてお出ししたいと思います。それから私としてはこれは原子力学会のしかるべき場所報告いたしたいというふうに思っております。
  207. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 いまのお話聞いてぼくは十分に理解できていないのかもわかりませんけれども、TLDの場合には、この計測は行なってもスペクトルが十分に把握できないような状況下ではあまり役に立たなかったということを言われているわけですか。
  208. 宮坂駿一

    参考人宮坂駿一君) いえ、役に立たなかったのではありません。ただ、その読み値をすぐに皆さんがここら辺でいろいろ出ておりますミリレントゲンとか、ミリレムとかという値にすぐには直せないというだけの話です。レラティブな値としてどこからどれだけ漏れて、どこへどう分布しているかということは、十分それから読み取れるわけです。
  209. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 そうしますと、これは計測は行なわれ、直接的な値はとられておって、いままあデータの中へ存在しておるということですね。  ここで宮坂先生、特にお伺いをしたいのですが、先ほどから委員質問の中で、なぜこの設計段階で、高速中性子の問題が念頭に置かれたような状況で当たられることができなかったのかというような問題について、他の方からの答弁の中で、当時の学界のレベルが、高速中性子の問題についてはそこまで達していなかったのだと、したがってあのJRR−4の場合にもあまり関係学者が加わっていないというような趣旨の、山田さんからあった答弁じゃないかな、そういう趣旨のことがあったのですけれども、当時の学界レベルはこの高速中性子の問題については、これは全然わかっていなかったと、そういう状況にあったというふうにとらえてよろしいわけですかね。
  210. 宮坂駿一

    参考人宮坂駿一君) そうではありません。遮蔽屋にとってガンマ線と中性子というのは、これは重要な二つの線源である。中性子については核分裂で出てくる高エネルギー中性子から熱中性子までこれは当然対象になるわけです。それについての研究というのはなされていますし、常に外国からのいろいろな情報も入ってくる。われわれとしては十分それについての認識はある。ただ、これは今後の、まあ政府の委員会でも討議されることだと思いますが、この解析を通じてわかったことが一つある。それについて御報告させていただきますと、それはストリーミングというのはとにかく漏れてくる中性子である。それで、こういうスリットを非常にエネルギーの高い中性子が飛んでいくと、それはわれわれは、光と同じようなふるまいをする。ガンマ線というのは大体そういう光と同じようなふるまいをして飛んでいくわけです。ストリーミングしてくるわけです。高速中性子についても、そういう性質を持っているであろう。だから漏れていく部分からは非常にシャープなピークで漏れていく傾向が出てくるだろう、そういうふうには理解しております。ところが、今度の解析、それから船での測定を通じまして、高速中性子も低速ないし熱中性子と同じように非常に空間に広がっていく、雲のように広がっていくということが計算また実験からわかってきたわけです。これについてはちょっとわれわれもそういうエネルギーの高い中性子が雲みたいに広がるということについてはちょっと理解しておりません、というか、確認していないわけです。これは実は二年ぐらい前にパリの国際会議で遮蔽屋の専門者会議というのがありまして、そこでもアメリカがそういう計算をした指摘を行なったのですが、そのときには世界の遮蔽屋さん、かなり集まったのですけれども、そのときにはそのことについて、実感としてまだ皆さんも理解できてなかったような感じ、アメリカがそういう指摘をしたのですが、われわれもそのときにはそれほど実感としてそのことを受け取らなかった。今回の問題で、まあやっぱりあのときのあの話はそうであったかというふうに理解しております。
  211. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 当時のレベルが高速中性子の問題について念頭に置くところまでのレベルに達してなかったというようなことになりますと、ゆゆしい問題で、それはやむを得ない一つのミスと申しますか、ということを立証するということにはなろうと思うのですね。この問題を通り抜けなければつくることのできない炉を、そういうレベルで取り組んでおったということが問題になってくると思うのですね。まあ、だれかのような言い方をすれば、オーバーですけれども、けものの勇気を持って火にいどんだようなことになってくるわけですね。私は、当時からすでに言われておったように、これ開かれて、あの段階で問題が公開をされて、多くの当時の日本の到達しておる学界レベルの衆知が集め得るような状況であれば、この問題についてもっと違う道筋があったのではないかということが一つ。  それからもう一つは、やはり原型炉を陸上につくって、そしてここで実験をやれば、そこで行き当たった問題としてやはり事前チェックが可能であったのではないか、そういうふうにも考えるんですけれども宮坂先生、そこのところはどうでしょうね。
  212. 宮坂駿一

    参考人宮坂駿一君) お答えします。  当時の四号炉が完成しまして、原子力船開発事業団の共同研究で遮蔽実験を四号炉でやったわけですが、このやった当時の日本におります遮蔽研究者のほとんど全員がこの実験に参画しております。総力をあげてこの実験に取り組んだわけです。  それから陸上炉についての問題ですけれども、これはその当時当時の技術レベルによっての判断ではないかと思うのですが、まあ遮蔽の専門家ですので、遮蔽の問題ということについて、限って陸上炉が必要であったかどうかということについてお答えしますと、一般に軽水炉の遮蔽というのはJRR−4のようなスイミングプール型の原子炉の実験で十分であると、そういうふうに私思います。それは水の中での中性子というのが、先ほどから何べんもお話ししていますように、高速中性子についても熱中性子についても非常にふるまいがよくわかっている。それで、試験体の外へ出てきて水の中でのふるまいがわかれば、それを空気中に引き直すのは理論的なコンシダレーションとして十分可能だ。ただ、実験を、どういう目的の実験をやるか、それを水の中でやるわけですから、そういう実験の目的によって必要な測定器とか、どういう測定方法にするか、得られる情報は何であるかというようなことについての検討は、まあ実験にあたって必要なことだと思います。  それから、遮蔽の実験では一般的に、特にモックアップ実験でああいう実験をやりますと、原子炉という非常に大きな線源が必要になってくる。まあ原子炉の炉心から出てくる中性子、ガンマ線を遮蔽する実験ですから、原子炉と同等の線源が必要になってくる。そうしますと、それを陸上でやりますと、結局今回のようなストリーミングの問題が、陸上のモックアップ実験でやっぱり問題になるというような気がいたします。それで、どこまでそういう必要かという、イタチごっこになってくるというような気が私はするので、まあ陸上の遮蔽の実験をやるところまで考える必要はないんではないか。要するに、どういう実験をしてどういうデータを得るか、それをどういうふうに解析するかというところだと思います。これはまあ結果論になるんですけれども、設計関係者と当時の実験をやった実験者、研究者の間のコミュニケーションというのが十分あれば、事態というのはもう少し違った方向であったんではないかというふうに思います。
  213. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 なぜ起こったかという問題それから事前にチェックはできなかったのかという問題と、今後の問題も含めて、それの責任の所在はどうなっておるのか、というのは、先ほどから大臣の何回かの発言等を通じても、これは政府で調査委員会を設けて、これは半年程度はかけて解明をするというようなことが言われておるわけですけれども、私はこの委員会でもまた科技庁でもこの点については可能な限り状況公開をして、この問題を引き続き解明しなければならぬというふうに考えるわけです。しかし、それとあわせて調査委員会の問題は重要な問題だ。ほとんどきょうの決意と答弁調査委員会ということをいわばたてにして行なわれておるところからして、調査委員会についての、新聞では大体八日ぐらいに閣議で決定してつくられるというふうに書いておりましたが、この問題についてのメンバーもしくは権能、いま政府で考えられている方向なんかについてもう少し具体的に詳しく述べてもらいたいと思います。
  214. 森山欽司

    ○国務大臣(森山欽司君) 別に隠れみのにしょうなんて気はいささかもありません。しかし、科学技術庁だけでこういう問題の真相を検討することも、これは真相にアプローチする一歩ではございますけども、それが最も適当な方法であるかは問題があると思います。これは同じことは運輸省の場合も言えますし、運輸省も科学技術庁もそして原子力船事業団も、こういろいろな方面でそれぞれの立場で、言われなくたってこれは調べておるわけでございましょうが、やはりあらゆる角度から取りまとめてこの問題を公正に処理するところが私は必要であろう、こういうふうに考えております。そういう意味で、このたびの委員会につきましてはそういう角度からこの問題の処理に当たってまいりたい。ですから、委員の各位も従来原子力船「むつ」に実質的に関与しておられた方は極力御遠慮申し上げたい。形だけ関与したようなかっこうの方は別にいたしまして、実質上何らかの意味でこの問題に関与していた方は、委員の人選から御遠慮をお願いをして進めたい。そんなことで、そうなりますと原子力船、船のほうですが、それから原子炉の問題で権威の方々が当然こういうことで御相談しなきゃならない方がなかなか適任者を集めるのが容易ではない。調べてもみなきゃいけませんし、容易ではないというようなことで、今日まで人選が手間どったことのようであります。このことはいま事務ベースにのって進んでおりますから、近いうちに結論が出るものだと思っております。閣議では骨格がきまりました。おそらく人選はもう政府の立場で発表に、閣議にはかって発表するというようなことでは私はなかろうと、こういうふうに考えておりますから、いまの問題につきましては原子力局長から答弁をいたさせます。
  215. 生田豊朗

    説明員(生田豊朗君) 大要はただいま大臣が御説明したとおりでございますが、ただいま大臣から申し上げましたような観点で人選を急いでおりますが、まだ一、二御旅行中で最終的な返事をいただけない先生等がございまして、最終的なメンバーが確定しない段階でございます。大体十名内外の各界の専門家を集めましてその委員会を構成するという予定で準備中でございます。おそくも来週早々にはメンバーが確定いたしまして発表できる、かように考えております。
  216. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 新聞などでは大山委員長を含む十名というようなことがすでに報道されているような状況がありますけれども、これはそういうふうに受け取っていいのかということと、骨格という、これの取り扱う範囲なり権能なんかについても、ここで言える範囲のことは言っていただきたいと思います。
  217. 生田豊朗

    説明員(生田豊朗君) 大山先生につきましては、新聞では委員長ということで報道されておりますが、正確と申しますか、事務的に申しますと委員先生がきまりましてからその互選で委員長がきまるということになろうかと思います。大山先生もそういうことであってほしいという意見を言っておられます。ただ、委員の一人として大山義年先生にお引き受けいただいたことは事実でございます。  構成につきましては、その委員とそれから専門委員で構成するということになっておりまして、その庶務は総理府でいたします。運輸省と科学技術庁が協力いたしまして総理府でその事務を扱うわけでございます。  あと内容、その進め方につきましては、今後委員の方がきまりましてから御相談して進めるわけでございますが、一応のめどといたしまして六ヵ月ぐらいの期間をかけまして審議をするということでございますが、今回の放射線漏れの問題につきまして、その技術的な面からいろいろあるいは制度的な面まで及ぶかもしれませんが、につきましていろいろの問題点を全部総ざらいに洗っていくというたてまえでございます。
  218. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 まあ新聞辞令を何も信用するわけではないですけれどもね、あの十三人委員会のときのを思い出して、若干私はまたかと思っておりましたけどね、同時に技術面はもちろん開発時の耐性試験のやり方まで含めた調査委員会で、設計時にさかのぼって原因追及をやるんだというような報道もなされておりますけれども、それらのことは大体そういう方向で承知をしておっていいんですか。
  219. 森山欽司

    ○国務大臣(森山欽司君) 先ほど来御論議の中心になりましたその技術的なストリーミングとかそういうことのほかに、たとえば先ほどちょっと言及されましたが陸上炉の問題、そういうことになりますと予算の問題とかいろいろありますからね、したがって単に技術面だけではなくて、そういう行政面にまでこの問題の調査が及ばなければ、真相にアプローチすることがなかなか困難でございますから、そういう点までいきたいとこういうことでございます。  それから、自余の問題につきましてはもっと大きな問題になりますので、先ほど来申しましたように原子力行政並びに行政組織の再検討委員会のほうで論議がされるようになるでしょう。それは実際どういうふうになりますか、とりあえずやはり技術上の問題として起きたことでございますから、技術的解明が第一でございますが、単なる技術的解明だけでは実相把握が問題でございますから、先ほど申しましたように行政面も、またその中に財政も入るわけでございます。そういうことまで含めて検討しよう、こういうことでございます。
  220. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 もう長官お急ぎのようですしね、何ですけれども、この問題についてはやや意見にわたるかと思うのですけれども、やっぱり原子力基本法の精神がもう一ぺん見直され完全に生かされる。自主、民主、公開というのはどのように具体的に原点に帰ってこれを反映をするのかというところからやっていただくのでないと、再び同じ道を歩むというようなことについても恐れるわけであります。したがって、先ほどの話では半年ばかりたったら国民に徹底的に内容公開をして、そしてというふうなことですけれども、半年間は伏せておくというふうにも聞こえるわけであります。専門家の中では学界でもその他これに対して心を寄せておっても、意見を出そうと思っても、データが公開をされない。そういうふうなところから十分にわからない。話し合えるようにしてもらいたいものだという意見がたくさんあります。少なくともその点ではこの日本の国内で専門家の組織として最も権威を持つ学術会議を、意見が合わないからといって敵視をするというような立場をとることなく、私は進められる必要があるということを、特にここで強く要望しておきたい、こう思うわけであります。  さらにお伺いをするのですけれども、ちょっと目鼻の立たなくなったいまの「むつ」ですね、これについてはたしか船体が二十七億円ですか、それから原子炉は二十八億円というようなことで契約をされたかと聞いておるんですが、これらの支払いは全部終わっておるわけですか。
  221. 生田豊朗

    説明員(生田豊朗君) 全部終わっております。
  222. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 普通、船の場合でも進水式をやって沈んでしまってもみんな払うものなんですかね、これ。沈んだのじゃなくて、大破したりしてもですね。ちゃんと進水式をやって船になってしまってから私は船は引き渡しを受けるものと思うのですけれども、まあこういう点については国民の目から見ればこれ修理して使いものになるのか廃船になるのかと、こういう状況で、まあそれは試行錯誤があったほうがいいとは言われないけれども、試行錯誤があればいよいよ勇気りんりんふるい立つというような人は国民の中にはわずかであって、これらの問題については国民の関心も高い。そういう点は、さらにこれを修理をしてやるということになれば追加して契約をされるというふうになるのか、三菱との関係はどうなるわけですか。
  223. 生田豊朗

    説明員(生田豊朗君) 一般の船舶の場合、最終的に検査に合格いたしまして船になりました段階で最後の支払いが行なわれるというのが通常であるというように理解しております。この「むつ」におきましても契約のたてまえはそういうことになっておりますけれども、出力上昇試験の実施が非常におくれましたためにセイビングクローズがございまして、それが生きまして出力上昇試験の終了前に——終了前にと申しますか、正確に申しますと出力上昇試験の開始の前に最終の支払いが行なわれたというように了解しております。
  224. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 この問題についてはたてまえと実行が違うというのはどういうわけなんですか。
  225. 生田豊朗

    説明員(生田豊朗君) これは原子力船事業団と、船体につきましては石川島播磨重工、それから原子炉につきましては三菱原子力との個々の契約がございます。契約でございますので、あるいは事業団のほうからお答えしたほうがよろしいのかと思いますが、私が知っております限りでお答え申し上げますと、最終的な性能試験が終わるまで、つまり先生の御指摘のような時点でございますが、それか、あるいは竣工後十二カ月か、いずれか早いほうで最終的な支払いを行なうという契約になっております。したがいまして、先ほど申し上げましたように出力上昇試験の実施がおくれましたので、最終的な支払いの時点の、つまり竣工後十二ヵ月のほうが先にまいりまして、一回契約を改定いたしまして、延長したようでございますが、再度延長いたしませんでしたので、たしか本年の三月ごろに最終の支払いをしているというように理解をしております。
  226. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 私はこの三菱については詳細設計を実際上行ない、この事故が出てから、こういう欠陥が明らかになってから、ウエスチングハウス社に点検を求めた際に欠陥を指摘をされておったというようなことは国民の前には少なくとも明らかになった。そうしてこういう状況になれば間違っておるのは、これは無能であったのはJRR−4であるとかさまざまの問題で知らぬ顔になっておって、さっさと金は受け取って、そうしていままで詳細設計書は握りしめておるというような状況は何とも理解をしにくい。この際には私はここで結論的にどうこうというのを申し上げるわけではないのですけれども、今後の運用上、普通の場合であれば、船をオーナーが造船者に頼めば、それがあがってから受け取るわけですし、相当大きな設計というものをやっていてここのところで一切無傷のようなかっこうであるという点も非常にわかりにくい。しかもときには企業上秘密などというわけで、事業団を通じて行なわれる下請であって、さまざまな技術上のものを握り込む。こういうふうな状況がございますので、これについては今後また引き続いて事情を明らかにするようにしたいと思います。  まあきょうはここでおきます。
  227. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 本日の委員会はこれにて散会いたします。    午後二時五十五分散会