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1974-11-18 第73回国会 参議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年十一月十八日(月曜日)    午前十時四十分開会     —————————————    委員異動  九月二十七日     辞任         補欠選任      村田 秀三君     小谷  守君  十月十二日     辞任         補欠選任      立木  洋君     星野  力君  十一月十三日     辞任         補欠選任      小笠原貞子君     立木  洋君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         金井 元彦君     理 事                 稲嶺 一郎君                 高橋雄之助君                 鈴木美枝子君                 相沢 武彦君     委 員                 岡田  広君                 黒住 忠行君                 佐藤 信二君                 亘  四郎君                 川村 清一君                 小谷  守君                 野田  哲君                 二宮 文造君                 立木  洋君                 星野  力君    国務大臣        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)       小坂徳三郎君    事務局側        常任委員会専門        員        伊藤  保君        常任委員会専門        員        服部比左治君    説明員        北方対策本部審        議官       田中 金次君        防衛施設庁施設        部長       銅崎 富司君        防衛施設庁労務        部労務調査官   谷口修一郎君        沖繩開発政務次        官        國場 幸昌君        沖繩開発庁総務        局長       山田  滋君        沖繩開発庁振興        局長       井上 幸夫君        外務政務次官   羽田野忠文君        外務省欧亜局長  大和田 渉君        外務省条約局長  松永 信雄君        農林省大臣官房        審議官      中川 正義君        農林省大臣官房        審議官      二瓶  博君        農林省構造改善        局農政部構造改        善事業課長    関口  尚君        農林省構造改善        局建設部水利課        長        中島 哲生君        水産庁長官    内村 良英君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○沖繩及び北方問題に関しての対策樹立に関する  調査  (派遣委員報告)  (さとうきび価格問題等に関する件)  (小禄爆発事故補償及び埋没不発弾処理に  関する件)  (米軍射撃演習による沖繩県道一〇四号線封  鎖等に関する件)  (沖繩における地籍調査等に関する件)  (北方領土問題及び安全操業問題等に関する  件)  (北方水域における漁業者に対する援護及び旧  漁業権者等への補償措置に関する件)     —————————————
  2. 金井元彦

    委員長金井元彦君) ただいまから沖繩及び北方問題に関する特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  九月二十七日村田秀三君が委員辞任され、その補欠として小谷守君が、十月十二日立木洋君が委員辞任され、その補欠として星野力君が、十一月十三日小笠原貞子君が委員辞任され、その補欠として立木洋君がそれぞれ委員に選任せられました。     —————————————
  3. 金井元彦

    委員長金井元彦君) 沖繩開発政務次官から発言を求められておりますので、これを許します。國場政務次官
  4. 國場幸昌

    説明員國場幸昌君) このたびの内閣改造によりまして沖繩開発庁政務次官を引き受けました國場でございます。沖繩開発振興のため、微力ではございますが、小坂開発庁長官を補佐し、全力を傾注してつとめたいと思います。つきましては、本委員長はじめ委員先生方の御忌憚のない御意見を賜わりまして一生懸命がんばっていきたいと思います。御指導、御鞭撻よろしくお願い申し上げまして就任のごあいさつにかえます。よろしくお願いします。(拍手)     —————————————
  5. 金井元彦

    委員長金井元彦君) 沖繩及び北方問題に関しての対策樹立に関する調査を議題とし、先般行ないました委員派遣につきまして、派遣委員から報告を聴取いたします。  まず一班から御報告を願います。稲嶺一郎君。
  6. 稲嶺一郎

    稲嶺一郎君 第一班につきまして御報告をいたします。  沖繩問題対策に資するため、金井元彦委員長鈴木美枝子理事二宮文造委員と私の四名のほか、現地におきまして喜屋武眞榮議員の参加を得て、去る十月十四日から十七日までの四日間、沖繩県下を訪問し、復帰後における振興開発計画沖縄国際海洋博覧会準備状況及び軍事基地関係問題等調査してまいりました。  現地におきましては、沖繩総合事務局沖繩振興開発金融公庫及び那覇防衛施設局から所管概況等当面の諸問題につきまして、また沖繩県より県・市町村行財政概況海洋博関連事業進捗状況駐留軍関係離職者状況及び離島振興対策現況等についてそれぞれ説明を聴取し、さらに、嘉手納村において米軍基地爆音被害状況北部期成会中部市町村振興会及び南部市町村振興会からも当面する行財政上の諸問題につきまして説明を聴取したほか、海洋博覧会の会場、福地ダム石川浄水場、平安座、宮城両島間海域埋め立て地及び米軍石油パイプライン施設現場等視察いたしました。  復帰三年目を迎えた沖繩は、海洋博関連公共事業を中心に道路、空港、港湾、通信などの交通通信体系整備、上下水道などの生活環境施設整備などが着々と進められ、これが沖繩振興開発を推進するための社会資本整備にも大きく貢献するものと期待されておりますが、一方では、いまなお戦後処理としての未解決の問題や、基地から派生する複雑かつ困難な多くの問題をかかえ、県・市町村当局はその対策に腐心されておりました。実情説明に添えて多くの要望意見が寄せられましたが、今回の調査において、特に緊要な問題を数点申し上げますと、まず第一は小禄爆発事故被災者への早期補償埋没不発弾等爆発物処理についてであります。  本年三月二日那覇小禄における市の下水道工事現場で発生した不発弾爆発事故に対する損害補償については、八ヵ月を経過したいまもなお解決されず、被災者は借財と苦痛に不自由な生活を余儀なくされております。この爆発事故は今次大戦激戦地となった沖繩に対し、国が戦後不発弾等処理を十分行なわなかったことに起因するものとして、県は国の責任においてその人的物的損害額三億九千万円を被災者に完全補償するよう要望しております。この問題については、国においても種々検討されているようでありますが、被災者日常生活が非常に不安定な状況に置かれている点を考慮しますと、早急に対策を講ずる必要性が痛感されました。また不発弾爆発物の存在は、県民に対し戦後三十年たった現在、なお戦争の忌まわしい遺物として少なからぬ不安と恐怖を与えております。県が市町村と協力して調査した不発弾等爆発物埋没状況は、本年六月現在で二百六十三件、約五千二百発と推定されており、こうした事故再発防止の万全を期するためにも、その探査、除去及び処理体制の強化並びにこれらに対する財源措置については特段の配慮が必要と思われます。  第二は、つぶれ地補償の問題についてであります。旧日本軍米軍が、地主の承諾も所有権移転法手続も経ないまま道路建設等を行なったつぶれ地問題については、復帰対策要綱で国の責任において適切な措置を講ずることが明らかにされておりますが、つぶれ地の確定問題や地価の高騰などにより国の買い上げ計画が進展していないのが実情であります。特に市町村道については調査もほとんどなされず、ばく大な補償額は自治体の財政を圧迫し、支払いを困難にしているものであります。今次大戦に基因して発生したつぶれ地補償については、戦後処理の一環として早急に解決をはかることが必要であり、たとえば交付公債のような形で短期に完了することも要望されておりますが、国においても十分検討すべきであると思います。  第三は、いわゆる特殊地域に関する地籍確定の問題についてであります。沖繩には、戦災等により戦前公簿公図は焼失し、土地の原形も破壊されて地籍が混乱しているため、現行の国土調査法によって地籍問題を解決することが困難な特殊地域が存在し、これが土地問題特に解放後の軍用地あと地利用計画開発計画等の策定にあたって大きな障害となっております。県当局説明によりますと、復帰後本年九月末日までに地主に返還された軍用地七百八十九ヘクタールのうち、民間があと地利用した面積はわずかに二ヘクタールにすぎず、返還面積の一%にも満たない状況にあります。その原因としては、地籍が不明確であることのほか、関係市町村地主及び地域住民の意向を無視した米軍の一方的こま切れ返還のため諸計画が立てられないことなど、基地返還のあり方も問題として指摘されております。混乱した地籍問題を解決するためには、土地事情に詳しい古老等の存命中に実施することが必要であり、また地籍問題に関する行政を一元化し、早急に統一方針確立することも要望されており、国の地籍調査に対する本格的な取り組みが望まれております。  第四は、駐留軍離職者対策についてであります。沖繩県の最近の労働需給を見ますと、軍関係労働者の相次ぐ大量解雇民間会社の経営不振ないし合理化による解雇及び採用手控えなどで労働事情はさらにきびしくなり、就職率は引き続ききわめて低い状況にあります。特に昨年来解雇が増加している軍離職者の場合には、中高年齢層が多く、再就職した者は本年三月現在でわずかに一九%程度で、その他の者は失業保険就職促進手当などの支給を受けている現状であります。さらに、こうした軍解雇者に対する各種援護措置期間満了になる者が年々出てまいりますと、今後は一般失業者と同様な取り扱いとなるため、一そうその就職は困難になることが予想されております。軍解雇者の再就職を困難にしている理由としては、基地関係従業員人員整理に関する長期計画の明示や事前調整制度確立されていないこと、基地労働特殊性から一般労働市場には直ちに適応しがたいことなどが指摘されております。県としては、離職者対策を総合的に進めるため総合職業相談所を設置してこれに対処しているものの、必ずしも十分な効果が期待できない状態にあります。今後沖繩県産業基盤整備され、雇用の場が確保されるまでの間は、広域職業紹介促進をはかることが急務とされており、国においてもきめこまかい職業指導、積極的な求人開拓等職業紹介体制整備を強力に進めるとともに、駐留軍離職者技能訓練に必要な公共職業訓練施設新設等についても特別な配慮をする必要を痛感いたしました。  第五は、県道百四号線封鎖米軍石油パイプライン施設の問題についてであります。わが国の米軍基地の五三%をかかえる沖繩県には、基地に起因する問題が多く、県道百四号線封鎖の問題もその一つでありますが、これは沖繩本島北部にあるキャンプ・ハンセンで米海兵隊が一〇五ミリ曲射砲実弾演習を実施するたびに、恩納村と金武村を結ぶ県道百四号線が封鎖され、付近住民物心両面にわたって被害をこうむっているため、このような危険な演習は中止してほしいというものであります。ちょうど私ども現地視察しているときにこの問題に遭遇いたしましたが、今回で八度目といわれる県道封鎖地元住民着弾地にすわり込み、タイヤを燃やすなどの実力行動に出たため演習は中止されましたが、今後封鎖阻止のための行動がエスカレートした場合には、予想外の危険な状態が引き起こされないとも限りません。この点、国においても十分配慮の上、適切な措置を講ずることが望まれております。  また、今回視察いたしました米軍石油パイプライン施設の問題は、沖繩本島の中南部地区を約八十五キロメートルにわたり敷設されているもので、二十年余りを経て老朽化し、消防法安全基準、技術上の基準に照らしてみた場合、配管の敷設方法埋設方法施設構造等に問題があることが指摘されており、また過去にも数回の油漏れ事故が起きていることも考えますと、いつ大惨事が起こらないとも限りません。この問題は、県道百四号線封鎖問題と並んでいずれも安保条約に基づく地位協定により提供施設に含まれており、なかなかむずかしい問題でありますが、沖繩県全体安全性の確保と計画的都市づくり機能回復という観点から、早急に適切な措置がとられることが望まれております。  第六は航空機の騒音対策についてであります。米軍基地周辺爆音による被害は依然として大きく、地域によっては最近ますます激しくなっているとのことであります。今回視察した嘉手納飛行場米軍機エンジン調整爆音をはじめとするジェット機爆音に悩む屋良部落住民被害と苦悩は、復帰後といえども軽減されておりません。屋良小学校では、四十八年七月に防音校舎の竣工をみましたが、抜本的な発生源対策が放置されているため、一方で地区児童に教育上の悪影響が出ており、子供たちは教室に引きこもりがちとなり、校庭での運動や戸外での遊びをしたがらない子供が多くなりつつあるとのことでございます。精神養育面においても、意思集中力持続性の低下、忍耐力の欠如などが深刻に指摘されており、村当局では村民の健康管理の上からサイレンサーの設置あるいはエンジン調整位置の変更などの措置を求めておりますが、今後の国の具体的、効果的な施策が強く望まれるところであります。  その他海洋博の輸送、宿泊体制生鮮食料品備蓄体制及びあと地施設利用の問題、依然として多額の超過負担地方財政を圧迫していること、離島苦の解消の問題、サトウキビ価格引き上げの問題及び冷凍パイン対策等の問題のほか、ポスト海洋博について早急に具体策を立てることなど、多くの重要な課題をかかえております。  これらの点については、別に報告書委員長のお手元に提出してありますので、本委員会会議録に御掲載いただきたいと存じます。  最後に、今回の調査に御協力いただいた関係当局の方々に感謝の意を表明いたしまして、報告を終わります。
  7. 金井元彦

    委員長金井元彦君) では、第二班の御報告を願います。佐藤信二君。
  8. 佐藤信二

    佐藤信二君 第二班、御報告いたします。  本特別委員会小谷委員星野委員及び私の三名は、北方領土問題等に関する調査のために、去る十月十四日から十七日までの四日間にわたって北海道を訪問し、札幌市、根室市及び羅臼町においてそれぞれの当局者並び関係団体等からの意見要望を聴取するとともに、海上保安庁の巡視船北方領土視察を行ないました。なおこの調査には、全日程にわたって相沢理事現地で参加いたしました。  今回の調査においては、現地関係者からは、北方領土早期復帰実現及びそのための国論の統一国民世論の喚起並びに外務大臣北方領土視察実現、歯舞、色丹、国後及び択捉の四島周辺における安全操業確立北方水域で拿捕抑留された漁船員等に対する援護措置改善及び特別給付金支給北方領土問題対策協会融資事業の拡充、北方領土への墓参などについての要望がございましたが、詳細につきましては別途文書を提出いたしますので、それを会議録に掲載してくださるよう、委員長においてお取り計らい願いたいと存じます。  以上で御報告を終わります。
  9. 金井元彦

    委員長金井元彦君) 以上で派遣委員報告は終わりました。  なお、ただいま御報告がございましたが、両班から別途詳細にわたる報告書が提出されておりますので、これを本日の会議録の末尾に掲載したいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 金井元彦

    委員長金井元彦君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  11. 金井元彦

    委員長金井元彦君) それでは、これより本調査について質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  12. 稲嶺一郎

    稲嶺一郎君 まず最初に、サトウキビ問題について、農林省並び開発庁のほうに御質問をいたしたいと存じますが、御承知のように、沖繩サトウキビ作は、沖繩農業の重要かつ基幹作物といたしまして、戦前戦後を通じまして、農家経済の支柱となり、また、日本における甘味資源作物として、大きな役割りを果たしてきております。  最近の沖繩におけるサトウキビ生産の趨勢を見ますと、昭和四十年をピークといたしまして、耕作面積が減退する傾向にありました。すなわち、昭和四十年には三万一千九百七十五ヘクタールあった耕地面積が、四十八年には一万九千八百二ヘクタール、この八年間に実に三分の一、約一万二千ヘクタールが減退しておるのであります。これは価格生産費に見合わないために、農民生産意欲が減退したためであると存ずる次第であります。これはサトウキビ基幹産業といたしまする沖繩にとりましては、まことに憂慮すべき事態でございます。  沖繩におけるサトウキビは、本土における米と同様に考えるべきものと存じております。すなわち、本土が、全耕地面積に占める米の割合が四五%であるのに対し、沖繩サトウキビも四五%を占めております。それにサトウキビ亜熱帯作物であり、また、台風や干ばつにも強い。それに沖繩及び奄美大島におきましては、他に代替すべき作物がない事実を私どもは銘記をいたさなけりゃならないと存じます。  沖繩奄美大島基幹作物であるところのサトウキビ生産を、安定した農業にするためには、生産費に見合った価格にすることが大事でございます。しかしながら、現状は、生産費に見合ったところの価格だとはどうしても考えられません。これでは再生産を確保することは困難であると思量されるのであります。  昭和四十八年になりまして、海洋博等関係もあって、労賃は大幅に上昇し、今年は前年比約五五%の上昇でございます。また、物価、資材、肥料、農機具等、軒並みに上昇いたしました。それがサトウキビ作農家にも大きくしわ寄せをいたしております。  これらの状況を憂慮いたしまして、九月十日の徳安甘味資源審議会会長の答申でも、附帯決議におきまして、第一に、四十九年度のサトウキビ価格については前年を大幅に上回る適切な水準に高めること、第二に、農産物価格問題の根本的解決をはかるため、すみやかに価格算定方式価格制定確立を検討してほしいといたしております。また、甘味資源につきましては、農林省におきまして現在の二〇%から二八%へ引き上げるという政策も決定いたしております。これは庶作農家生産意欲を私は高めることによってのみ達成できる目標であると存じております。そこで、生産意欲を高めるためには価格大幅引き上げこそが最大の条件だと信ずるものでございます。それは昨年のサトウキビ価格の一万円の値上げが庶作農家にいかに影響を与えたかを見ればわかります。すなわち琉球新報十一月十五日付の沖繩県農林水産部の発表によりますと、作付面積で春植えが一千ヘクタール、夏植えが四千五百八十五ヘクタールで、昨年より大幅に増加いたしております。これは八ヵ年に減退いたしました一万二千ヘクタールの約四割に相当する数字でございます。それでまた、私どもが十分に考慮しなければならないのは、十月三十日には沖繩生産者代表一千名が上京している。それから一週間後に奄美大島から七百名が大挙して砂糖価格の陳情のために上京いたしまして関係個所を回っております。なお現在も、いまこちらに見えておられますが、サトウキビ農家代表並びに製糖関係者が、われわれの砂糖価格問題に対する審議の行くえを見守るためにいま来ております。これを見ましても、沖繩農民価格問題につきましてどういう考えを持っておるかということが、農林省においても政府においても十分理解できると思います。サトウキビ農家は一万八千円にどうしても上げてほしいという考えを持ち、先ほどの価格問題に対する本部長の山城さんもそういうふうにいま言明いたしました。これらのことをおくみ取りの上、十分検討して結論を出していただきたいというふうに考えています。  次に私、価格決定におきまして、政府において十分に留意していただきたいという問題が五つございます。これは価格問題に内包をする問題でございますが、大体この五つをひとつぜひ考えていただきたいと思います。  沖繩及び奄美大島における農家一戸当たりの耕作面積はわずかに五反でございまして、北海道とは比較にならないほど非常に面積は狭いのでございます。それから二番目には、農業基盤整備がようやくその緒についたばかりでありまして、本土の七〇%に対して沖繩の場合はわずかに七%というふうに、基盤整備がほとんど行なわれてないような現状でございます。これは過去、戦後沖繩はアメリカの占領地になっておりましたために、本格的な基盤整備が行なわれなかったということでございます。また第三番目には、機械化がおくれております。機械化がおくれているということは、省力化ができないということでございまして、したがって、これが非常にコストに大きな影響を与えておる。また地力が非常に減退している、酸性化している。これについても十分に配慮する必要がある。第五には、先進国——ハワイあたりにおいてもよく見られるところでございますが、サトウキビには水が非常に必要でございます。ところが、沖繩においてはかんがい施設整備されてないために、もっぱら水を天水にたよっているということでございまして、一たび干ばつになれば、ある場所においてはあるいは五割減産もときには起きるというふうに、まことに悲惨な状態が今日まで幾たびか宮古、八重山等においては起きております。まことにこれら五つの諸要素が互いに相作用し、またからみ合いながら、サトウキビコストアップをプッシュいたしておるのが現在の沖繩サトウキビ作現状でございます。私は、これらの問題を解決してはじめてサトウキビ価格のほんとうの解決があるのだと思っております。しかし、これらの問題の解決はなかなか容易なものではなく、長期にわたるものと考えます。その点から考えまして、政府におかれましても、まあサトウキビ価格決定にあたっては、価格問題を単に表面的に見るんじゃなしに、これが内包するところの諸問題これについても鋭いメスを入れて、サトウキビ価格の問題を考慮する必要があるんじゃないかというふうに考えております。  さらに、現在FAOにおきましては、食糧問題が強く叫ばれておりますが、まあ私どもが非常に驚いたのは、数年前におきましてはサトウキビの値段がそんなに上がるということは予想もされておらなかった。ロンドンの国際相場を見ますと、四十八年の平均が九十九・六ポンドに対し、本年に入ってから毎月のぼり続け、十一月になっては五百ポンドという、実に想像もできないような五倍の高騰を続けておりまして、これらの国際相場はわれわれにとって看過できないものであります。農民は、国際相場を見ながら政府がどういう措置に出るかということを注目いたしているのであります。庶作農民価格に対する考え方を十分に認識し、また沖繩農業のかかえている困難な諸問題を配慮し、なお国際相場も勘案の上、サトウキビ並びに産糖買い入れ価格決定してもらいたいと存じます。サトウキビ並びに産糖問題に対する政府の見解を承りたいと存じます。  もうすでに二十日には大体サトウキビに対する、あるいは産糖に対する価格決定すると言われておりますので、農林省においても、十分もう最後の結論を出しておるんじゃないかと思いますので、できるだけ詳しい政府の見解を示していただければ幸いだと存じます。
  13. 中川正義

    説明員(中川正義君) まず、当面の価格決定に関する問題から御説明申し上げたいと思いますが、サトウキビ価格決定は二十日まで、法律でそういうふうにきまっておりますし、それから甘庶糖につきましては月末までにきめるということにきまっておりますが、今回はあわせて二十日までにきめたいということで、現在部内で検討中でございます。まだ政府案というものが出ておりませんので、詳しくここで申し上げる段階ではございませんけれども、一応十五日に統計等の生産費等が出そろいましたので、それらをもとに適正にきめてまいりたいと考えております。  ただいまいろいろ御示唆がございましたように、国際糖価が非常にいま上がっておるというような問題でありまするとか、沖繩におきまするいわゆるサトウキビ生産農業生産におけるところの重要な地位というようなものは十分認識しておりますので、それらの沖繩における生産事情等、十分念頭におきまして、私ども沖繩農民要望にこたえることができますように努力をしておるところでございます。
  14. 稲嶺一郎

    稲嶺一郎君 沖繩のほうでは、今回のキビ価格を一万八千円にしてもらいたいという切実なる要望がございますが、これに対する政府の御見解を承りたいと存じます。
  15. 中川正義

    説明員(中川正義君) 価格につきまして、沖繩からの要望といいますか、一万八千円という強い要望があるということはよく承って、承知いたしております。それで農林省といたしましては、糖価安定の法律に基づきまして、パリティを基準として、それに物価あるいはその他の経済事情を勘案してきめてまいるという形になっておりまして、現在の物価の情勢あるいはその他経済的な諸事情というものを十分勘案いたしまして、沖繩におきまするサトウキビの再生産を確保することができますようにつとめてまいりたいと、このように考えております。
  16. 稲嶺一郎

    稲嶺一郎君 まあ、従来の価格においては再生産を確保することは困難だというふうに言われております。それからパリティ方式において、はたしてそれができるかどうか、かなり疑問の点もございます。その点について御見解を承りたいと存じます。
  17. 中川正義

    説明員(中川正義君) 過去の実績をながめますと、昨年の生産費と昨年の価格を比べますと、確かに実績生産費のほうが価格を若干上回っておるという結果が十五日の統計の発表で出ておるわけであります。これは沖繩におきますところの物価が全国平均以上に上がるという、非常に異常な上がり方をしておったということが一番大きな原因になっておろうかと思います。まあ、そのような点もございまして、十分そういう点も今後考慮をしてやっていきたいというふうに考えておりまして、パリティだけでまいるというような考えはございません。
  18. 稲嶺一郎

    稲嶺一郎君 従来の政府の見解は、何かパリティ方式に固執しておるような感じもいたします。ただいま審議官の御意見を伺いまして、必ずしもパリティ方式に固執するものではないという御意見をお伺いいたしまして、まあ、この点においては若干の曙光を見出したような感じもいたします。私は、政府が従来のようにパリティ方式に固執することなく、生産者の立場、十分に経費を考慮に入れながら、柔軟性のある姿勢でもって価格問題を決定いたしたいと要望するものでございます。  なお、国際相場が今日のごとく非常に上がっておりますので、この点についても十分の配慮をわずらわしたいと存じます。
  19. 中川正義

    説明員(中川正義君) ただいまの御示唆の点十分念頭におきまして、沖繩農民要望に沿うことができるような方向でできるだけ努力をいたしたいと、かように考えております。
  20. 稲嶺一郎

    稲嶺一郎君 それでは次に基盤整備の問題についてお伺いいたしたいと存じます。  先ほども申し上げましたように、沖繩農業基盤の整備が非常におくれておりまして、これがために沖繩農業生産に大きな影響を与えておる。これは戦争中に大きな破壊があり、また戦後においては長い間の占領時代が続いた。そのために、本土政府におきましては農業基盤の整備に非常な力を注いだわけでございますが、沖繩に対しては本土の手は全然伸びなかった。このために本土においては七〇%の農業基盤の整備が、沖繩においては今日なお七%というふうな状態になっているんじゃないかと思っています。しかし私は、農業基盤の整備なくして沖繩農業の今後の発展は期待できないというふうに考えておりますが、これについての農林当局のお考えを承りたいと存じます。
  21. 中島哲生

    説明員(中島哲生君) 基盤整備関係についてお答え申し上げます。  いま御指摘のように、沖繩における農業基盤整備事業、整備状態は、本土に比べまして著しく立ちおくれております。したがいまして、沖繩の自然条件、社会経済的条件など特殊事情を考慮して、まず本土との格差をすみやかに是正することにつとめてまいりたいというふうに思います。  そこでサトウキビ作について申し上げますと、やはり農業生産の安定あるいは生産性の向上を目的として三つのことが非常に重要であると思います。一つは、農業用水の確保をはかる問題であります。二番目は、圃場への機械の導入を可能ならしめる営農の機械化の問題でございます。三番目は、地力の低下に伴う問題が起きておりますので、畑地の生産力を高めるというこの三つの問題につきまして解決するために、農業用水源の開発、かんがい施設整備、区画整理、農道の整備等を中心として、客土、農地保全、それから農地排水等の各種の土地基盤整備事業を特別の助成措置を講じて積極的に推進してまいりたいというふうに考えております。
  22. 稲嶺一郎

    稲嶺一郎君 まあ基盤整備の問題について私どもとして考えなけりゃならないのは、沖繩における過去の実例でございます。復帰対策要項の一環といたしまして、恩納村の喜瀬武原の構造改善事業をやったのでございますが、これが完成した暁に現在なってみますと、どうも離農者が多くて、これがあまり効果をあげてないという実情がございます。これはいかなる理由によるか、ひとつ御意見をお伺いしたいと思います。
  23. 関口尚

    説明員(関口尚君) 構造改善事業というお話でございますけれども、恩納原の話につきましては、復帰前の事業であるかというふうに私ども承知してございます。私ども構造改善事業につきましては、四十七年度から、従来の農業投資がおくれておりましたものですから、それにつきまして緊急にこれを内地並みに引き上げるということで、構造改善事業を緊急対策事業として実施してございます。この事業につきましては、一般対策事業と、それから実験地区事業の二つに分けまして、前者の一般地区に対しましては三分の二の補助、実験地区につきましては十分の十という補助率で、これはもう特に展示的効果を明らかにするということで実施してございます。
  24. 稲嶺一郎

    稲嶺一郎君 もう一つこれに関連するわけですが、宮古のほうにおきましても模範農場を、約三十万ドルという資金を投じましてつくったのでございますが、今日までまだこれも模範農場としての役割りを全く果たしてないということを聞いております。電気料支払いの問題で県側と意見の調整がうまくいかず、ごたごたしているためとも言われておりますが、実際においては行なわれていない。せっかく国の資金を多く投じながらこういう状態であるということは、私としてはまことに遺憾でございますが、この運営についての何か御報告、御説明が願えれば幸いです。
  25. 中島哲生

    説明員(中島哲生君) 一般論といたしまして、土地基盤整備事業というものは、本来農業の経営者の経営改善に対する意欲と結びついて初めて効果が出るわけでございまして、事業の効果を十分発揮するためには、営農面での指導あるいは助成などと密接な関係がございますので、そういうものを十分やりまして、せっかくつくりました施設を活用できるようなことで努力してまいりたいというふうに考えております。
  26. 稲嶺一郎

    稲嶺一郎君 今日まで私、政府におきましても、二十数年間沖繩のほうが占領下にあったために、十分に沖繩事情について熟知されてない。また県民の、県農民の意識が、構造改善あるいは基盤整備に対する考え方が十分に理解がまだ得られなかったという点もあるんじゃないかというふうに考えております。それで、今後政府としては、基盤整備を行なうにあたりましては、十分に総合的計画を樹立して、また県農民の理解を十分得られるようにして、万全の策を立ててこの問題を進めていかれるよう希望いたしまして終わります。  次に、小禄爆発事故につきまして、総務長官にお伺いいたします。  総務長官に対しまして、私は三月二日の小禄爆発事故につきまして御質問をいたしたのでございますが、このときに長官は私に対して、五月一ぱいにひとつめどをつけようという御答弁をなさったのでございます。ところが、今日に至るまで、まだこの補償の問題についてめどが立ってないようでございますが、政府におきましても、いつこれが具体的にめどが立つのか、また今日までどうして八ヵ月間もこんなにおくれたか、これについての御答弁を願いたいと思います。
  27. 小坂徳三郎

    ○国務大臣(小坂徳三郎君) お答え申し上げます。  確かに前回のときに、委員に対しまして五月中あるいは六月早々ということをお答え申し上げたことを記憶いたしておりますが、なおこの爆発事故につきましては、非常に範囲が広範であるのと、また関係者もたくさんおりました等もございますのと同時に、県側から要求書の詳細のものが出てまいらなかったわけでございまして、これが五月末にわれわれの手元に入りまして、以来この問題についていろいろと内容を検討させてもらったわけでございます。  特に、時間が非常に要しましたのは、調査資料そのものに対して、政府側といたしましては、なお不備だと思われる点もたくさんございまして、その照会をすることや、被害者が移転してしまって、その移転先が不明であるとか、あるいはまた、長期療養を要する負傷者の方々の最終診断がなかなかはっきりしなかったというようなことも含めまして、たいへん時間を要したことは残念に思っております。しかし、ようやくこの政府内部における調整も大体終わりまでまいりまして、私らといたしましては、年内に見舞い金をぜひ支給したいということで進めておるところでございます。
  28. 稲嶺一郎

    稲嶺一郎君 この補償の問題につきましては、代表である鬼本さんが私のところにある日参りまして、あんまり政府補償がおくれるものだからえらく憤慨いたしまして、ひとつ訴訟に持ち込みたいとかいうふうな話もございましたが、私としては、先般の政府の御答弁をお聞きいたしまして、政府は誠意を持ってこれに当たるお考えだから、そう短気を起こすなということで今日まで話し合ってきたのでございます。いま長官のお話を聞きまして、大体もう調査も済んだということでございますが、大体いつごろになる予定でございますか、はっきりお伺いいたしたいと思います。
  29. 小坂徳三郎

    ○国務大臣(小坂徳三郎君) 目下最終的な詰めを政府内部でやっておりますが、被災者の方々に対する補償金のお渡しできる時期は、おそくても十二月中には必ずやりたいと、そういうような手順でいま進めておるところでございますので、御了解いただきたいと思います。
  30. 稲嶺一郎

    稲嶺一郎君 私は、十二月じゅうということを言われないで、ひとつ十二月十五日までにこれを実行していただきたい。お正月になったら、もうすっかりどうも、また金の値打ちというものも違ってきますので、これを十五日ぐらい早めるということはたいした問題じゃないと思いますので、ひとつ十五日までにやっていただくようにお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  31. 鈴木美枝子

    鈴木美枝子君 先ほど沖繩県下実情調査報告書が提出されたわけでございますけれども、その中にありますとおり、十月十四日から十七日までの四日間、沖繩県下実情調査をしておりまして、特に先ほどの報告書につけ加えて質問したいことがございますので、重複いたしますけれども、記録をするために、只今の報告書の中の八ページ十行目からもう一回読ましていただきます。「わが国の米軍基地の五三%をかかえる沖繩県には、基地に起因する問題が多く、県道百四号線封鎖の問題もその一つでありますが、これは沖繩本島北部にあるキャンプ・ハンセンで米海兵隊が一〇五ミリ曲射砲実弾演習を実施するたびに、恩納村と金武村を結ぶ県道百四号線が封鎖され、付近住民物心両面にわたって被害をこうむっているため、このような危険な演習は中止してほしいというものであります。ちょうど私ども現地視察しているときにこの問題に遭遇いたしましたが、今回で八度目といわれる県道封鎖地元住民着弾地にすわり込み、タイヤを燃やすなどの実力行動に出たため演習は中止されましたが、今後封鎖阻止のための行動がエスカレートした場合には予想外の危険な状態が引き起こされないとも限りません。」   〔委員長退席、理事稲嶺一郎君着席〕  これは、先ほど提出しました報告書の一部にすぎません。で、私どもがおりました最中の十月十六日、十七日の二日間にわたって、米軍海兵隊の実弾演習訓練を強行している最中でございました。私は、実情調査が終わった夜に、現地の恩納村、金武村の、決死隊ということばをその方たちは使っておりましたけれど、決死隊というのは命を捨ててもよいと思いながらすわり込んだということになります。その方たちに会いまして、そしてお話その他、その付近は私は存じ上げておるんですけれども、聞きました。長官は、そこのところの、決死隊の人々ですから、命を捨てようとしてやっている方たち、その実情についてあとお調べになりましたでしょうか。まず銅崎さん、現地へ行って調べたでしょうか。
  32. 銅崎富司

    説明員銅崎富司君) 私は現地に参りませんでしたが、現地の局の施設部長、局の次長が実弾射撃のときに立ち合っておりまして、一部始終、実情を把握しております。
  33. 鈴木美枝子

    鈴木美枝子君 こちらにいらっしゃって現地との関連の中でお聞きになったんですね。たいへん決死隊であぶない状態にあったというものをどうお考えになりますか。
  34. 銅崎富司

    説明員銅崎富司君) たいへんあぶない状態にありましたので、現地に参っておりました責任者は、警察とも連絡をとり、着弾地に入り込んだ人たちが退去をするまで射撃はしないということを申し入れ、現実に射撃をいたしておりません。
  35. 鈴木美枝子

    鈴木美枝子君 私がこのことを質問しようとしていることは、いま中止というのは一時的現象であるのか、これを永久的にその場所で——すべての場所で演習はされたくはないんですけれども、その場所で、決死隊まで出すということの演習をやめるかどうかという問題を含めてなんでございます。その例として、昨年、四十八年の四月十二日に、「米戦車、老女ひき殺す」という事件もございました。御存じでございましょう。この事件があった以後に、先ほどから言っております県道百四号線を封鎖するというのは、去年、老女が死んだあとにこの問題が出てくるわけなんですね。それで私はこの決死隊の問題について、中止して、「ああよかった」というだけじゃなくて、また人が死なない前に、老女が死んだあとに封鎖するというような県道のそういう問題じゃなくて、これをどう解決していくかということが死なない前に必要なんです。その点についてどうでしょうかね。
  36. 銅崎富司

    説明員銅崎富司君) 私どもも人命は尊重されなければならないと思いますから、危険な実弾演習、特に着弾地に入り込んだような場合に射撃を実施するということは絶対に避けなきゃいかぬと思っております。ただ、演習場として米軍に提供しているところでございますので、今後ずっと中止してくれということを申し入れる立場にございませんが、私どもとしては、そういう危険な射撃ですので、できるだけ演習をしないように、それから、そういう県道封鎖をしないで演習ができないかどうか、あるいは道路をつけかえるといたしまして、地元にそういう御不便なり危険を感じさせないような方法がないものかどうか、またあらためて検討をしておるところでございます。
  37. 鈴木美枝子

    鈴木美枝子君 この県道百四号線を二日間にわたって封鎖をしていた。この道路の付近の問題が出てきてないんじゃないかと、現地の人は知っていらっしゃいますけれども、皆さん東京にいて、机の前で考えているんじゃ、その付近の問題が出てきていない。これは先ほど申し上げました部落、恩納村、金武村の、その二つにまたがったところの道路でございますから、言えば県民の人が生活している道なんでございますね。簡単なことばで言ったら生活道路ということになりましょうか。生活道路封鎖しているんです。実弾演習となりますと、生活している県民は、軍事的に優先にされている道になっているというふうに言えるじゃないかと、まあ生活道路、実態を私が調べたところによりますと、この道路を通る住民が約三百五十人おります。金武村、恩納村のところです。それから、その道路の付近のところに小中学校がございますから、当然そこを通ります。通っている教員だけでも十二人ございます。そしてまた、生徒が百人ございます。それから、この地域から通学している中学校、小学校の生徒が三十八人おります。もちろん工場や会社へ通勤しているような人もいるでしょう。サトウキビの運搬人や野菜出荷人もおります。それから農業の作業をしている人もおります。この多くの人々が通勤している道路封鎖している場所を、百四号線というふうなことばで言っているわけでございますけれども、海兵隊当局に訓練中止を要求しているということは私も聞いておりました。  で、海兵隊のこの実弾訓練でございますけれども、ついでに申し上げますと、前回は六月二十五日にやっている。で、今回は、私どもが参りました十六日、十七日、これは四ヵ月ぶりにやっている。で、沖繩が祖国復帰後は、先ほど報告書にありましたように、八回目の訓練をやっている。そして米海兵隊のほうでは、こういっているんですね。「海兵隊にとって実弾射撃訓練は二週間に一回は最低限必要だ」と、沖繩では特殊事情を考察して、一ヵ月ないしは二ヵ月に一回の割り当てでやりたいんだと、こういっているわけなんです。  こちらには、銅崎さんですね、あなたが言ったことばも、新聞紙上にあったのを切り抜いておきましたから、ちょっと読ましていただきます。海兵隊としては、二ヵ月に一回はこの種の訓練を実施しなければ、米沖繩海兵隊の訓練のスケジュールを消化できない。こちらとしては、県民感情を配慮して、極力訓練中止を申し入れているけれども、日米安保条約に基づいた地位協定に従って日本基地施設演習場を提供する義務がある——「提供する義務がある」って、こう言っているんですね。だから、せいぜい訓練日の延期をさせるのが精一ぱいなんだと、これは新聞紙上で発言なさいました銅崎さんのおことばを記録させていただきました。で私は、ここで「県民感情を」ということがございますけれども、感情だけじゃないんですよ。感情だけじゃ済まされないんですよ。決死隊が出ているんですからね、命があぶないんですよ。安保条約による地位協定によって命を捨てるわけにはいかないということなんです。この安保条約地位協定の問題と県民感情——感情ということではなくて、この決死隊が出るということに対しての、この付近の住民の人の暮らしの中での実弾演習、このことについて御答弁願います。
  38. 銅崎富司

    説明員銅崎富司君) 先ほども御答弁申し上げましたが、私どもとの立場として、中止をはっきり申し入れる立場にないわけですが、それは演習場として米軍に提供しているところでございますので、ただ、その県道百四号線の住んでおられる方々、あるいは小中校の実情等は、先生がおっしゃったとおりだと、私も現地におりましたので、よく知っております。したがいまして、まあ実弾演習がよそでやれれば一番いいわけでございますので、そういうことができないかどうか。それから演習するにしましても、地元の方々が困るというか、できるだけ不便にならないように、バスの通る時間はやめてもらう、それから昼休み時間の一時間はやめてもらうということで、まあ演習を認めた上で、その演習によっていろんな不便が地元に及ばないように、できるだけ米側に申し入れてきたつもりでございますが、県道百四号線を封鎖して演習するということがないような方向で今後いろいろ検討してまいりたい、こう思っております。
  39. 鈴木美枝子

    鈴木美枝子君 日米安保条約日本を守る、極東を守るというようなことをいつも政府はおっしゃっているわけでございますから、申し入れる問題点について、県民感情というようなことばで申し込んじゃ事は成り立たないんじゃないでしょうか。アメリカがいっている日米安保条約、極東の安全ということをいっている。安全というのは、命を守る安全でございますから、ただ県民感情があれだからとか。住民が住んでいるからやめてくれ、こういう言い方じゃなくて、アメリカが安保条約について安全だと言ったら、こういう危険な場所で絶対にやらないというふうな「感情」だけじゃなく、申し入れる必要があるんじゃないか、私は現地に行っていてそう思いました。だから実弾演習は、この道路を含めた部落、つまり生活道路なんだと、老女がひき殺されてからその部分を封鎖してみても、被害と危険は続くんだということを極力申し込むということは当然なことだと私は思っております。そうして、県道百四号線、一体どんなものだ、活字だけじゃわかりません。ことばだけじゃわかりませんから、広大なキャンプ・ハンセン、海兵隊演習場をまっ二つに間を通っている道が県道百四号線なんでございますね。この県道百四号線、全延長八・三キロある。封鎖してとめているところはたった二キロなんですよ。村からの入り口、交差点から一・六キロ中へ入ったところの部落の入り口までがたった二キロですね。村全体を割っているところは八・三キロあるんです。その上を実弾でもって練習しているんですから、一たび間違えれば小学校の子供たちも全部やられることになるという状態があるわけです。そしてこの道路のいきさつについても、やっぱり記録するために、私ちょっと発言さしていただきます。  一九五三年の九月の二十八日に当時の琉球政府によって道路法第七条に基づき道路と認定された。道路というのは人間が通る道なんだ。一九五三年十月十九日に政府道として琉球政府より告示された。そして一九七二年四月の二十八日、沖繩復帰に基づいて建設省関係法令適用の特別措置法に関する政令百十五号で県道に引き継がれたという百四号線なんでございますね。だから演習場を横切る部分について、安保条約に基づき、地位協定に従って米軍への提供施設に含まれ、地料も施設局が支払っているのだという、地料、お金支払っているんですか。どのぐらい支払っているんですか、アメリカへ、米軍へ。
  40. 銅崎富司

    説明員銅崎富司君) 地料を支払っているのは、その部分の土地を所有している地主の方に支払っているわけでございます。米軍に支払っているわけじゃございません。額につきましては、いま資料が手元にございませんので、わかりません。
  41. 鈴木美枝子

    鈴木美枝子君 資料でちゃんとおっしゃってください。いまないんですか。
  42. 銅崎富司

    説明員銅崎富司君) いま手元にございませんので……。
  43. 鈴木美枝子

    鈴木美枝子君 重要なことだから、お持ちになる間待っています。
  44. 稲嶺一郎

    ○理事(稲嶺一郎君) どうですか、すぐ……。
  45. 銅崎富司

    説明員銅崎富司君) いま電話で問い合わせまして……。
  46. 鈴木美枝子

    鈴木美枝子君 その地料を支払っている——米軍じゃなくて、どこへ支払っているんですか。
  47. 銅崎富司

    説明員銅崎富司君) 土地の所有者に払っております。
  48. 鈴木美枝子

    鈴木美枝子君 所有者ってどなたですか。
  49. 銅崎富司

    説明員銅崎富司君) ただいま資料を手元に持っておりませんが、沖繩の県民の方が地主さんだと思います。あるいは金武村の村有地が一部あるかもしれませんが、ちょっと記憶がございません。
  50. 鈴木美枝子

    鈴木美枝子君 記憶があいまいじゃ困ります。時間がございませんから、いま資料、取りに行ったんですね。
  51. 銅崎富司

    説明員銅崎富司君) はい。
  52. 鈴木美枝子

    鈴木美枝子君 じゃ、おいでになりましたら、どうぞそれを発表してください。  この百四号線ですが、この間、私たちが現地調査に参りましたときに、沖繩防衛施設局からこの資料をいただいてまいりました。この封鎖している百四号線について、ちょっと読んでみます。「県道百四号線を閉鎖して行われる在沖米海兵隊曲射砲発射訓練は、昨年四月二十四日を初回として現在まで七回にわたり実施されている。これに対し、県及び諸団体から当該道路周辺住民の生活道路であり、通学道路となっているので、閉鎖は住民の生活を破壊するものであるとして強く抗議がなされている。当局としても当該道路施設・区域であるとはいえ、その閉鎖が及ぼす影響を憂慮し海兵隊に対し、発射地点の変更等を申し入れているが、ほかに適地がないため当該道路越え演習は引き続き実施されている。したがって、本件を解決するためには、これに代わるべき道路の設置が必要であると思料し、本庁と調整の結果、本年度においてう回道路建設工事の実施設計に着手し、実施設計完了後、予算措置のとれしだい本工事を実施する計画で事務手続きを進めている。」これはこの間参りましたときにいただいた資料でございます。これは防衛庁が出しているのです。時間的な経過でいいますと、米戦車に老女がひき殺されたあとに、この県道百四号線の封鎖、さっき言いました二キロ封鎖するのがあった。そうしてことしになりまして、私たちが参りましたときのこれでございますと、迂回して道路県道に使わせる。幾ら迂回してみましてもだめです。地図が大きくなくて残念なんですけれど、この切り抜きの中で迂回しましても、部落の横切ったところには違いないわけなんです。迂回してここを通っても、あぶないことはあぶないのです、実弾なんだから。だからこれをいま予算措置をとって迂回道路をつくろうとなさっても、これもだめなんですよ、絶対にここは中止しない。その点について、長官にお伺いしたいです。
  53. 小坂徳三郎

    ○国務大臣(小坂徳三郎君) いまの鈴木委員の御指摘の点でございますが、百四号線につきましても、私現地に参りましたときに、いろいろと皆さんから御意見も承っておりまして、こうしたことは、やはりいろいろと今日までの情勢があるとしても、何かもっと理性的な解決の方法はないものかということを考えています。また、そうしたようなことが、ただいまも委員のお述べになりましたような迂回路の問題となって、施設庁では真剣に検討しておるというように聞いておるわけでございます。私はそうした事務的なこととともに、沖繩の問題、先般来、静かな沖繩を提唱しているわけでございますが、こうしたような一連の米軍の軍事活動と住民との間の問題につきましても、私の権限ではないにいたしましても、もう少し、先ほど申し上げたような理性的、合理的な解決への努力を政府としてもすべきであるという考えを持っておるわけでございます。
  54. 鈴木美枝子

    鈴木美枝子君 そこの実弾演習は全面中止してくださるといういまお考えとおっしゃいましたが、その中止するという考え、そうしないとたいへん危険な状態になるんじゃないかと。米海兵隊が実弾訓練をやっているのは、沖繩、キャンプ富士、韓国、フィリピン、沖繩の現にやられている部落について、実弾射撃をやっているということは、考えようによっては、市街戦の練習をしているとも思える。住んでいる人間の上でもって銃弾が飛ぶ、着点は山のほうでございますけど、銃弾をぶつけているところは住民の上を通っているという、そういう観点がございますので、それを裏づけるように米海兵隊がこういう、これは新聞発表でございますが、「沖繩ではここ以外ではできないタイプの訓練を実施しているのだ。海兵隊としては、日米安保条約に基づいて日本及び極東の平和を維持するという任務遂行のためにも訓練を中止することはできないんだ」と、話を先ほどの答弁に戻しますけれども、極東の平和と安全のために老婆がひき殺されたり、それから決死隊で、私たちがおりましたときには三百人の決死隊、私が会った人たちは決死隊の人たちでした。アメリカが日米安保条約の平和を維持するためというなら、こちら側も徹底的に言うことができるんです。死んでからじゃ間に合いませんからね。そのくらいの強い意思で言うことができるんだということを、私は現地に行って思いました。この場所でやるということを即時中止してもらいたい。「考えている」とおっしゃいましたが、長官、中止ということばを伺いたいですね、どうぞ答弁願います。
  55. 小坂徳三郎

    ○国務大臣(小坂徳三郎君) 米軍演習につきましては、開発庁長官といたしましては予算措置、あるいはこの米軍地域内の問題につきましては予算措置も一切あげて防衛庁がやっておるわけでございますが、私は国務大臣としましていま鈴木委員の御指摘のような中止という具体的なことももちろん踏まえまして、その他百四号線だけではないんでございます。私が合理的、理性的な解決要望したいという点は、伊江島のこともありますし、あるいはまた、ダムにおける演習のこともございます。私はそういうような一連の問題につきまして、非公式ではございますが、アメリカの政府当局者に対して今日まで数度話を出しておるわけでございます。ただこれが、私の立っている立場から申しまして、政府交渉とはならないことは御理解いただきたいと思いますが、そのような努力をいましておるし、この問題がやはり非常にわれわれにとって重要な問題である。委員の御指摘、また皆さま方同じようにお考えだと思いますが、その辺は十分踏まえて行動をいたしております。
  56. 鈴木美枝子

    鈴木美枝子君 期待しております。そしてそれ自体は沖繩県民を無視したやり方だと私は思います。安保条約があり、地位協定があるからだというならば、この実弾演習は単なる沖繩県民だけの問題ではないと思います。日本国民の問題だと思っております。それだけではありません。祖国復帰以後、沖繩の人々があれだけ反対していた機動隊のことを私も存じ上げております。実弾射撃訓練を命をかけて反対している県民、あの部落の人たちにたてで暴力をふるったり、け散らそうとするならば、沖繩県民にとって二重の苦しみと、それから怒りになるんだということを私はここで申し上げておきたいと思います。新聞には出ておりませんでしたけれど、若い女性の方たちもあそこに入っていたということは、つまり単なるあそこでの演習ということばではなくて、実弾に対してどうしても防ぎたいという、長い間沖繩のアメリカの基地の中にいた人たちが、すなおに実弾の前に向かう姿だということを、そして安保条約の中にある私たちともども日本人の問題だと、そういう意味で命を大切にする問題から私の発言は終わります。
  57. 稲嶺一郎

    ○理事(稲嶺一郎君) 鈴木委員の要請した報告書は、あとで鈴木委員のほうに提出願いたい。
  58. 銅崎富司

    説明員銅崎富司君) 先ほど御要求のありました百四号線敷きの土地の所有者、金額、後ほど御提出いたします。
  59. 二宮文造

    二宮文造君 私の申し合わせの時間が三十分、十二時半までです。ですから要を得ません。したがって、私は長官が御出席の前に、われわれ現地へ参りました報告書を先ほど稲嶺委員から報告をしてもらいました。すでにそのことは関係方面にも連絡があったと思います。したがって私は、やはりこのせっかくの報告書に対して、関係の当局のほうから基本的な問題の御答弁をいただかなければならないんじゃないかと、こう思います。  すでに御承知のことで、時間もありませんから説明を抜きにしますが、項目は相当多数にわたっております。  まず第一番に小禄の爆発物の処理のこと、これは先ほど稲嶺委員が若干質問をいたしました。  第二番目には、つぶれ地の補償とそれから返還された米軍基地のあと地利用ないしは沖繩の今後の総合開発の問題としてどうしてもネックになってくるのが地籍調査の問題です。これは一体いつまでにやるのか、この点について明確な答弁がなければならないと思うわけです。  それから三番目には、駐留軍労務者の大量解雇の問題あるいは援護措置の問題、この件についての項目がございました。  四番目には、県道の百四号線、これはいま鈴木委員演習の中止を含めて人命救助という問題で質問がありました。  第五番目には、米軍の石油パイプライン、これの撤去の問題についての報告がなされました。  第六番目には、嘉手納飛行場を中心にしてあの騒音対策現地実情は惨たんたるもんです。この騒音対策を、ただ単に防音校舎を完成をしたということだけではならないと思うわけです。もうすでに広大な黙認耕作地を米軍基地として持っているわけですから、そちらのほうを活用するとか、またそういうふうに配慮をするとかによって相当程度この防音対策というものは実効があげられるんじゃないか、そういう認識のもとに報告書に書かれていると思います。  それからその他大きな問題としては、物価対策の一環としての生鮮食料品を備蓄するその対策は必要であるとか、あるいは冒頭に稲嶺議員が質問されましたサトウキビ価格の問題、冷凍パインの輸入の問題、これらをわれわれの視察報告の結論として提起をしたわけであります。ですから、この基本的な問題について項目別に当局の考え方を明らかにしていただき、そして自後の私ども質疑の基本ラインにしたい、こう思うわけです。まず関係のほうから御答弁いただきます。
  60. 井上幸夫

    説明員(井上幸夫君) 私から御説明いたしたいと思います。  第一の小禄の問題は、先ほど御答弁しました。  それから第二のつぶれ地の問題、本件につきましては、御承知のように、復帰時点におきまして国と県の管理にかかわるものにつきましては、数量はほぼ確認されております。その当時の国・県の管理にかかわるものにつきましての買収所要金額も、当時の時価では一応の算定がなされております。しかし、その後大きく地価が動いております。地価公示地点が現在沖繩において非常に少のうございますので、現在時価で全部買収処理をすればどの程度になるかということについては、正確な計算はちょっと行ない得ませんが、おそらく二千億の余という感じになろうかと思っております。この問題につきまして、御承知のように制約が二つございます。一つは予算問題であり、一つは地籍の問題であります。ただいまの措置といたしましては、地籍がはっきりしているものにつきまして逐次買収の予算措置を講じておるということで、現在でも一部買収予算がついておりますし、明年度の予算要求額の中にも、一番大きな問題になっております五十八号の那覇市内の分についての計画的な買収ということで予算を要求中でございます。  ただいまの状況は以上申し上げたとおりでございます。
  61. 山田滋

    説明員(山田滋君) 地籍調査関係につきまして私から簡単に申し上げます。  いま御指摘ございましたように、この問題がたいへん沖繩にとりましては基本的に早期に解決をしなきゃならない問題であることは重々承知をいたしておりまして、開発庁といたしましては、四十七年度から調査費を計上して、四十八、四十九と続けてまいりました。五十年度におきましては、現実に、その特定の地域でございますが、境界設定の現実の作業に入りたいと、こういう段階になっておりまして、これにつきましては、当然、県を通じまして、県に土地調査事務所というのがございますが、これを通じまして実施をいたしておるわけでございまして、まあやはり根本は、現実の地主の方々の御協力を得てその地籍を確認してまいるという必要があるわけでございまして、そういう点につきまして、いま現在のところ五十年度以降そういう実質的な作業に入りまして早急に解決をしたいと思っておりますが、何年に終わるかということにつきましては、ただいま、まだ明確には申し上げられませんが、少なくとも四、五年のうちには解決をするように努力をいたしたいと、かように存じております。
  62. 銅崎富司

    説明員銅崎富司君) 施設庁に関連いたす問題につきまして。  まず、嘉手納飛行場騒音対策でございますが、現在私ども考えておりますのは、日米合同委員会の下部機関に騒音対策分科委員会というのがございますが、ここでは現在のところ厚木と横田につきまして、飛行のパターンとかエンジンテストの時間の規制とか、一応騒音の規制を申し合わせておるわけですが、この規制を嘉手納飛行場の場合にも適用していこうということを考えて、現在米側と話し合っております。  それからもう一つは、成田空港に大型機用のサイレンサーといいますか、消音器、これが設置されると聞いておりますので、そういうデータをもとに米側に大型機のサイレンサーの設置方を申し入れております。  それから、新しい生活環境整備法が先国会で成立いたしまして、それに基づきましていろいろな緑化対策、個人防音その他の対策をとるようになっておるわけですが、そういう施策を進めていきたいと、こういうふうに考えております。  それから次はパイプラインの問題でございますが、実情は先ほどの調査報告に述べられておりますので省略いたしますが、この問題につきまして私ども、三つの点から検討が必要じゃないかと考えておるわけです。一つはパイプそのものの腐食等はどうなっているだろうかということです。一つは安全上の問題、これがいまたいへん問題になっておるわけですが、安全上の問題。それから一つは、このパイプライン道路生活道路として現地の方は利用されておるわけですが、雨が降ればどろんこになり、晴れればほこりだらけということで、生活上たいへん不便をこうむっておると悪評のある道路でございます。  このうちで、パイプそのものの腐食につきましては、米軍のほうで十月の十四日から十七日までの四日間にわたりまして腐食度等についての科学的な調査をすでに実施しておりまして、その結果を米本国に持ち帰って調査をしておりますが、その結果、取りかえる必要がある等、改善措置をとる必要があるものは所要な措置をとるというふうに聞いております。で、私どもとしましてもその結果につきまして、そういう措置が十分とられるように、米側と密接に接触いたしまして、その実施方を強く要請したいと考えております。  それから生活道路としての整備につきましては、浦添市の大部分と宜野湾市の一部につきましては、市のほうで簡易舗装が実施されておりますが、当庁では四十七年度からこの道路の両側に排水側溝をつくるとか、あるいは水がたまる所の水を抜くために横断暗渠等の整備を行なってきております。  なお、安全性の問題につきましては、現在那覇防衛施設局で安全という観点から調査を実施しておりますが、その結果を待ちまして米軍改善措置をとるように申し入れたいと、こう考えております。それからとりあえず当面の措置としましては、たいへんに危険だということで、例の那覇市と浦添市の境にかかっております内間橋がございますが、この橋のかけかえ、それからあの近くにありますバルブボックスのナンバー十七の移設、それから重量制限——六トン以上の重量をオーバーした車も通っておりますので、この重量制限の標識の設置等を申し入れて、現在米軍は標識の設置をしておりますが、引き続き米側と協議いたしまして改善をはかっていきたい、こういうふうに考えております。  労務の——駐留軍従業員の関係も当庁でございますが、私担当でございませんので、いま担当者呼んでおりますので……。
  63. 二瓶博

    説明員(二瓶博君) 冷凍パインの輸入問題につきましてお答え申し上げます。  冷凍パインは、御存じのとおり昭和四十六年の六月に自由化をいたしまして、当時はそれほどの輸入でございませんでしたが、自由化以後輸入が急増をいたしております。これにつきましては、冷凍技術の発達というようなこともあろうかと思っております。そういう面もございまして、昨年などはこの輸入しました冷凍パインを原料にいたしましてパイナップルのかん詰めが八十万ケースほど製造をされております。ところで、この沖繩産のパイナップルのかん詰めにつきましては、ただいま申し上げましたような冷凍パインを原料といたしましたパイナップルかん詰めの流通の問題、それから総需要抑制といいますか、そういう面もございまして、さいふのひもが固くなったというようなことがございまして、沖繩産のパイナップルかん詰めが、相当、八十万ケースといわれておりますが、の在庫をかかえておるのが現状でございます。この大量の在庫をどうはいていくかということになるわけでございますけれども、この在庫を解消いたしますためには、まず一つは、基本的には販売代理店等によります販売努力というのに待つところが大きいわけでございますけれども農林省といたしましては、沖繩基幹作物であるこのパイナップル、それを原料としてほとんどその九九%程度かん詰めにいたしております。そういう実情にかんがみまして、これはほっておけない問題であるということで、農林省といたしましても、この滞貨解消の措置につきましては積極的に措置を講じていくという姿勢で現在取り組んでおるわけでございます。   〔理事稲嶺一郎君退席、委員長着席〕  で、まず具体的に申し上げますれば、一つはこの冷凍パイン、これを原料といたしまして製造したかん詰めにつきましては、冷凍パイナップルを原料として製造したものであるという表示を一つ一つのかんにはっきり表示をさせるということ。それからパイナップルかん詰めにつきましては、JAS、いわゆる農林規格というものがございます。これの受検を励行をさせまして、JASに合格しないようなそういう粗悪品、これにつきましては製造を自粛するようにという指導をしていきたい。そういうことによりまして、冷凍パイナップルを原料といたしますパイかんの製造の減少を考えていくということを現在取り進め中でございます。なお、こういうような措置もございまして、現在のところ四十八年産のパイナップルかん詰め、沖繩産のパイかんにつきましては八十万ケースの在庫、こういわれておりましたものが、最近に至りまして約六十万ケースに減ってきておるというふうに一応聞いてはおりますけれども、なお今後の消化状況、需給の動向、こういうものを見きわめました上で、さらに輸入割り当ての問題——これはかん詰めにつきましては割り当てをやっております、その輸入割り当ての面について、上期のほうはもう百五万ケースというのを割り当てやっておりますが、下期はまだやっておりませんが、その辺をどう扱うか。これは農林省だけの一存でできませんので、通産省のほうともいろいろ検討をいたしております。  それからもう一つは、関税の問題がございます。現在、冷凍パインは二〇%の関税、向こうのもの二〇%ということに相なっております。したがいまして、この冷凍パインを原料としてつくられるというようなことでは問題であるということであれば、その関税の引き上げ、この面につきましても検討をすべきものであろうという立場に立ちまして、現在関税局、通産省等ともこの面につきましても検討を取り進めておる、こういう状況でございます。以上のような措置をいろいろ講じまして、結果といたしまして沖繩産のパイナップルかん詰めの消費に支障を来たすということのないように精一ぱいの努力をしてまいりたい、こういうことでございます。
  64. 二宮文造

    二宮文造君 伺いますが、いまお話のあった品質の表示とそれからJAS規格の受験ですね、これはいつごろからそういうことをされる予定ですか。あとは、輸入割り当ての問題と関税率の問題は、関係官庁とのいろいろなあれもありましょうが、指導の問題はどうされますか。
  65. 二瓶博

    説明員(二瓶博君) まず品質の表示の問題でございますけれども、これは罐詰協会のほうと話をいたしまして、十二月一日から実施をするということで罐詰協会のほうも了解をいたしまして、その面で作業をし、かん詰め業者のほうにそういう点で指導をいたしております。  それからJASの受検のほうにつきましては、これはJASの規格があるわけでございます。それを受けるようにということはやっております。
  66. 二宮文造

    二宮文造君 長官には最後にお伺いすることにしまして、若干詰めておきたい問題があるので、いまの答弁の中からお伺いしたいんですが、まず石油のパイプラインですね、パイプラインは、すでに出先の那覇施設局では米軍当局との間に内々その撤去する部分、これを合意をされたと。しかしこれはあと上の部分で、上の機関にかけて発表ということになりましょうけれども、新聞等によりますと、その内容が具体的にこういう点で合意されたんじゃないだろうかというふうな推測を含めての発表がありましたが、この点はどうなんですか。そういうふうに詰めているところは那覇から浦添までの十一キロとか、あるいはまた宜野湾を含むとか、そういうふうなところまで詰めに入ってるんでしょうかどうでしょうか、この点明らかにしていただきたい。
  67. 銅崎富司

    説明員銅崎富司君) 現在米側からそういう話が内々あると……
  68. 二宮文造

    二宮文造君 そういう話と言わないで、どういう点、具体的に言ってください。
  69. 銅崎富司

    説明員銅崎富司君) 私ども聞いておりますの  は、バルブボックスナンバーがついておりまして、バルブボックスナンバー二十号以南と、それから那覇港湾施設のPOL施設のところまでと……
  70. 二宮文造

    二宮文造君 延長何キロメートルですか。
  71. 銅崎富司

    説明員銅崎富司君) 二十数キロだと思います。はっきりしたことはわかりません。  それで、単純に無条件に返してもらうのですと非常に問題ないわけでございますが、代替施設で他の場所にタンクをつくれとか、パイプライン増設ということになりますと、これまたいろいろ米側と交渉を、折衝をしなきゃいかぬことになりますので、その辺のこまかい詰めにまでまだ本庁のほうに上がってきておりませんが、そういう提案がはっきり出ました段階で、私ども撤去するという方向で前向きに検討したいとは考えております。  それからもう一ヵ所は、あれは嘉手納から読谷にいって空軍補助施設へいっています。それで嘉手納小中学校の校庭の下を通っているパイプがございますが、これは現在使用されてないというふうに聞いておりますので、これにつきましては無条件に返してもらえるんじゃないだろうかということで、これにつきましても米側と折衝したい。
  72. 二宮文造

    二宮文造君 何キロですか、それは。
  73. 銅崎富司

    説明員銅崎富司君) これは十数キロでございます。  以上でございます。
  74. 二宮文造

    二宮文造君 それから、地籍調査はあとにしましょう。  農業の問題ですが、先ほど地元から出られた稲嶺議員がサトウキビ価格引き上げの問題にからんで、いわゆる沖繩基幹産業としてのサトウキビを含んで農業という問題を取り上げられまして、答弁はありました。答弁はありましたけれども、非常に何といいますか、ばく然とした答弁しかいただけなかったように私は思います。たとえば、先ほどの審議官じゃありませんけれども、たとえば農業用水の確保だとか、あるいは機械化の推進だとか、さらにはまた畑地の生産力を高めるとか、こういう項目を並べられましたけれども現地実情というのはそれにほど遠いわけです。すみやかに是正をされるというのが冒頭に出ましたけれども、一体そういう基盤整備の問題や農業用水の確保の問題や機械化のいわゆる省力化を進めるという問題、それを一体年次別にどういう方針を立ててこういう答弁をされているのか、答弁をお伺いしていてても従来のそういう答弁に終始して、一体それが進むのか進まないのか、お伺いしていててもさっぱり目標が出てこないんですが、この点はどうなんですか。たとえば私ども福地ダム視察をしました。福地ダムの利水計画なんかを伺ってみますと、いわゆる中部、南部の生活用水ないしは工業用水、これもたいへんな問題です。もう渇水期になりますと、いつも那覇市の水道は断水するわけですから、これも重要な問題ですが、生活用水や工業用水の確保に対する熱意に比べてみて、おっしゃるような農業用水の確保というものについては、あまり熱意が感じられないような私現地での印象が強かったわけです。ですから答弁は答弁として、これにはやはり年次計画みたいなものがなければ、ただ基幹産業サトウキビだ、畑地かんがいをよくするんだ、こう言ってみたってしようがないと思うんですが、この点はどうなんですか。
  75. 井上幸夫

    説明員(井上幸夫君) 沖繩開発庁からお答え申し上げます。  ただいまの農業水利の問題は、御指摘のようにたいへんな問題でございまして、現在私どもがやっております仕事で考えましても、御指摘のように那覇周辺生活用水自体、夏場になりますと断水が続きます状態でございますので、いままでの状況では最優先で生活用水の確保ということを考えてまいったわけです。幸いにいたしまして福地ダムが機能を、活動を開始いたしました。それから間もなくもう一つ北の新川ダムの水が利用できる状態に相なります。そういう状態考えまして、そこで農業用の水源をどうするかということをもう一ぺん考え直す時期にいまきているかと思います。ただ、御承知のような地域でございますので、農業用に大きな水、量がどれぐらい引き当てられるかということにつきましては、ただいまのところ計画は幾つかございます。しかし、水源計画は幾つかございますけれども、他の地域でやったことのないような大じかけの事業をいたしませんと予定の量の水がとれないということがございまして、時間的にはかなり先の話になるんではないかというふうに考えるべきかと思います。
  76. 二宮文造

    二宮文造君 ですからね、農林省がそんな答弁をされてみても、はたして現地実情をおつかみの上でそういう答弁をされているのかということになるわけです。農林省はどうですか。
  77. 井上幸夫

    説明員(井上幸夫君) 委員長……。
  78. 二宮文造

    二宮文造君 ちょっと待ってくださいよ。先ほどの答弁に関連して……。
  79. 井上幸夫

    説明員(井上幸夫君) ちょっと補足させていただきます。ちょっと先ほどの答弁が不十分でございましたので補足させていただきます。  たとえば石垣島のような地域につきましては、ただいまのところもうダムの具体的な計画はでき上がっております。私どもは五十年度予算において着工要求をいたしております。そういう具体的な運びのあるものにつきましては、かなり早い段階で見通しがつく、こういうことかと思います。  それから本島につきましては、ただいま申し上げました生活用水が、かなりたくさんの水源を使用いたしまして生活用水の取水をやっているわけであります。その中に非常に規模の大きいものもあれば規模の小さいものもある。そういうものを一度整理して見直して、農業用水源に充て得るものがあるかないかという勉強は事務的にはかなり早い段階で詰まり得る、それだけ補足させていただきます。
  80. 二宮文造

    二宮文造君 時間がありませんから、私二点だけお願いして終わりにしますが、たとえば土地改良事業にしましても、これは今回行ったわけじゃありませんが、石垣市の吉原部落、この土地改良事業を推進したことによって該当地域農家は三年来耕作物、いわゆる収穫皆無です。これは私もことしの三月でしたか、現地へ参りましたときに、こんな実施計画ではまたぞろやられますよと、これは抜本的にやりかえなきゃなりませんよと、こういうふうに県当局にも言いましたし、開発庁にも言いました。ところが、相変わらず従来の実施計画のままやったために、せっかく客土工事をやっても九月の雨でまた流されました。一体その間三年間も収穫皆無ですから、もはや被害の融資という問題では片づかない問題になってきた。これはもう生活を保障してあげる、こういうふうな考えに立たなきゃなりませんけれども、その点がさっぱり進んでない。事ほどさように、せっかく仕事は進められるんですけれども、何か、私これ最後に長官に申し上げておこうと思ったんですが、復帰以来の沖繩、私もたびたびそちらへ参っておりますが、目に映るものは何か化粧を急いでいる。海洋博も確かに化粧の一つでしょう、特例も化粧の一つでしょう。しかし素顔についての手入れが全くなされておりませんから、かえって化粧する部面からリアクションが起こって、物価高とか、交通難とか、こういう問題が起こって、かえって沖繩の人を苦しめている。農業の問題でもそうです。基幹産業だ、振興しなきゃならないと言いながら、やっていることはむしろ逆になっているような気がするわけです。したがって、この沖繩については二十何年間の空白があったわけですから、もう少し計画的に集中投資をし、リアクションを極力避けながら実績をあげていく、こういう基本方針がなければ、もうとてもじゃないが、いまの沖繩がかかえる問題は解決しないじゃないか。たとえば地籍調査にしても数年かかるというんでしょう、しかもそれはだれがやるのか、いまだにはっきりしない。基地内の地籍調査は一体どこがやるんだ。これだって県にやるとか、あるいは駐留軍のほうは国に要求しているとか、こういうふうな何といいますか、お互いのキャッチボールが行なわれて肝心の地籍調査が行なわれない、こういう問題があります。したがって、その地籍調査の進め方の主体はどこなのかということ、それからあわせて先ほど米軍労務者の大量解雇並びに援護措置の問題、この問題について御説明をいただき、最後に長官から沖繩開発の基本精神というものについて一言いただいて私の質問終わりたいと、このように思います。
  81. 山田滋

    説明員(山田滋君) ちょっと、先ほど御答弁が少し簡単過ぎましたのでただいま御質問があったと思いますが、現在この境界不明土地として私ども調査いたしておりますのは大体二十ヵ市町村にまたがっておりますが、大体その面積百五平方キロと思っております。そのうち八五%がいま御指摘のような軍用地関係でございまして約八十八平方キロございます。これにつきましては、防衛施設庁のほうで調査を行ない、そして現在処理をいたしておるのでございまして、その残りの十七平方キロにつきまして私どものほうで処理をいたしておる、先ほど申し上げたような方針で行なっておるわけでございます。したがいまして、その間の調整を十分とりながら、両々相まってこの調査を進め、また解決をはかっていきたい、かように存じまして、最近特に両省庁間で非常に緊密な連絡を確保いたしております。特に現地におきましても協議会組織を通じまして、その間に粗漏のないようにいたしたい、かような方針で進んでおる次第でございます。
  82. 谷口修一郎

    説明員谷口修一郎君) 沖繩におきまする駐留軍従業員の離職者はきわめて最近の状況から多くなっております。そこで、私ども防衛施設庁といたしましては、駐留軍従業員の人員整理にあたりましては、米軍当局と連絡を密にいたしまして、なるべく早くその整理の数、いわゆる雇用計画の見通しを得まして、でき得る限り九十日間の予告をもちましてこれを解雇するという方向にいたしていきたいと努力をいたしております。その間、私どもはなるべく自主的な人員整理をさせない、少なくするよう配置がえあるいはその他の事前調整というものをいたしまして、整理の数を少なくしてまいりたいというふうに努力しております。  それから、この努力にもかかわりませず、やむを得ず離職を余儀なくされる方々につきましては、御承知のとおり駐留軍関係離職者等臨時措置法というのがございますが、それを軸といたしまして、いわゆる離職対策考えております。特に、最近におきまする大量解雇にかんがみまして、本年四月の二十五日、総理府に置かれまする中央駐留軍関係離職者対策協議会におきまして、駐留軍関係離職者対策の大綱というものが決定されました。それを同月の三十日に閣議に報告されております。これを軸にいたしまして、それぞれの対策を進めてまいっております。私ども防衛施設庁は、これらの退職を余儀なくされました方々に対しましては、その中でいわゆる離対法の十五条に基づきまする特別給付金支給、あるいは同法の十条第三項に基づきまする離職前の訓練、これを従来よりもなお一そう強力に進めてまいりたいというふうに考えております。
  83. 二宮文造

    二宮文造君 ちょっと長官答弁前に、この問題ちょっと一言補足しておきたいんですが、十四日の参議院の社会労働委員会で、労働省の遠藤職安局長がこういう答弁をしているんです。いまの沖繩では百万の人口を養うことは実際上むずかしい。人口を適正規模に減らして、余剰と見られる人口を本土に移していくことが最善の根本策だと考えている。こういうふうな百万の人口は多過ぎるということを失業者対策の一環として政府のほうから漏らされるということは、これはたいへんな問題だと思うんですが、これが政府の基本的な考えなのかどうか、これを含めて御答弁いただきたい。  それから、先ほど農林省の吉原部落の生活保障の問題どうするのか。これは開発庁とよく打ち合せをして答弁していただきたい。
  84. 小坂徳三郎

    ○国務大臣(小坂徳三郎君) ただいまきわめて総括的な御質問、御意見を賜わりまして、特に私といたしましては、今回の当委員会の御報告はいずれもわれわれが現在かかえて苦しんでいる問題ばかりでございまして、まあそうした問題につきまして、きわめて端的に御指摘をいただいておりまして、われわれといたしましてはいろいろ答弁はいたしておりますが、その気持ちはここに述べられておりまする委員会の御報告、まことにそのとおりだと思う点が多々ございます。今後は、基本的に、ただいま仰せられました委員会の御報告の線をできるだけ行政の中で生かしていくという基本的な気持ちをまず申し上げたいと思います。そのために、やはりこの行政の仕組みの問題等もございますが、私はやはりある程度のタイムスケジュールを持つべきだと思います。特に沖繩復帰前から引き続いて何回も行かれた方々の一致した見方というものは、委員のただいま仰せられましたような非常に厚化粧をしたということになりますか、あるいはやや表面的な問題に走り過ぎたということはわれわれも反省をいたしておるところでございまして、基本的には御指摘のようなまず農業の振興とか、それは水だと私は思います。同時に、このようにがさがさしてしまった沖繩に落ち着きを取り戻すということは、同時にこの文化、古い伝統、そうしたものも色濃く今後の施策の中に生かしながら、落ち着いた県になってもらう。それは同時にまた、米軍基地問題等ももちろん関連ございます。万般それらの諸点を踏まえて努力をいたしたいと思いますので、今後またよろしく御指導賜わりたい。率直に私はそういう考えを持っておるものでございます。  なお、具体的にただいま百万の人口は沖繩では無理だというような見解があったということでございますが、私たちの間でまだ県からは、県の見解としては百万を養うんだという基本的な姿勢をくずしおらないわけでございますし、われわれもまた、百万の人口を養うということをあくまで基本に置いて振興開発計画を推進してまいりたいという考え方にはいささかも変更をしておるつもりはございません。ただ、現在起きておりまする駐留軍労務者の離職問題が、だんだんと基地の縮小に伴って大規模であるということは事実でございまして、これらにつきましては、緊急にこの失業対策を展開するためには、ある場合には本土との交流の中で全体の問題としてこれを取り上げていくということがあるいは解決促進するかもしれないという考え方は、非公式でございますが私自身は持っておるわけでございます。まあその点につきまして、百万の人口を養うことを放棄したというふうにおとりいただくことはたいへん困るのでございまして、むしろ解決を円滑に進めるために本土との交流というものもある時点において、きわめて短期間だと思いますが、そうしたことを展開したほうが駐留軍労務者の失業問題に対しての解決を進め得る場合もあるというふうに考えておるわけでございます。特にこの問題につきましては、先般総評の市川議長たちも私のところに来られまして、この失業問題についてのいろいろな話し合いをいたしましたが、そのときにも、ある時点においてはそうした本土との全面的な交流と申しますか、そうしたことも踏まえて検討してもらってもいいんだということも言っておりました。何も私はその発言責任を求めるものではございませんが、一つの意見としてはそのようなことも言われておることも事実でございます。しかし、われわれといたしましては、あくまでできるだけ現在の非常に景気不振の間でございますが、沖繩農業基盤やその他の生活環境を十分整備して、島を離れるということのないような、そうした基本的な施策を強力に進めてまいりたい。五十年度の予算要求等もそうした点を踏まえまして、従来やや軽視されておりました離島振興等につきまして、これはもちろん農業振興が中心でございます。そうしたことを色濃く踏まえた予算要求を現在いたしておるわけでございまして、今後またよろしくお願い申し上げたいと思っております。
  85. 二瓶博

    説明員(二瓶博君) 先ほど先生から土地改良事業、しかも石垣の具体的な関係についてお尋ねがあったわけでございますが、私農蚕園芸局担当のほうをやっておりまして、土地改良事業の関係は構造改善局でございますので、よく存じておりませんので、この件につきましては、担当の局のほうに先生の言われるところをよく伝えたいと思います。
  86. 小谷守

    小谷守君 北方問題について御質問をいたしますが、小坂長官は先月北方のご調査においでになったということであります。私どもも追っかけて現地調査に参りました。現地の皆さんの声を聞きます際に、政府の施策に対する不満とかいら立ち、こういうものがかなり強いように思いました。いら立ちというよりも、もう今日怒りに発展しておる。これは、政府がこれをなおざりにしておるということ、あるいは与党、野党も含めて、これに取り組むところの姿勢が不満であるという、こういう怒りであります。  そこで、きょうはおもなことをお伺いしたいのでありますが、まず外務省に、領土交渉はその後どうなっておるのか。昨年の十月、田中総理が訪ソされて、この問題について何か曙光が見えたというふうな幻想をふりまかれたわけでありますが、その後一向に進捗していない。一年を経過した今日、何ら交渉らしいものは行なわれていない。また、ソ連大使館筋から発表されておるいろんな談話等を見ましても、依然として日ソ双方の見解には大きな隔たりがある。  そこで政務次官に伺いますが、継続交渉の開始時期はいつか、並びにその際わが国はどのような領土主張を展開していくつもりか。従来どおり双方の見解の言いっぱなし、見解の対立ということでは一歩も問題の解決にはならぬのではないか、こう思いますが、その点はいかがでありますか。  さらに、現地の不満の第一の点は、歴代外務大臣が一度も現地を見たことがない。一体これはどういうことか、こういう不満であります。木村外務大臣は訪ソ前に現地視察される御意思があるのかどうか、そういう点もあわせて御答弁を願いたいと思います。
  87. 羽田野忠文

    説明員羽田野忠文君) このたび外務政務次官を仰せつかりました羽田野忠文でございます。よろしくお願いいたします。  小谷先生の御質問にお答えを申し上げます。  昨年の総理大臣訪ソの結果、ソ連側は北方領土問題が平和条約締結によって解決さるべき戦後の未解決の問題であるということを確認いたしますとともに、日ソ双方は本年中に平和条約継続交渉を行なうという合意がなされております。そこで、現在木村外務大臣の訪ソを含めまして、その時期等について具体的に検討中でございます。本年中にできるだけ訪ソをいたしたいということでございますが、国内のいろんな日程等もございますが、おそくとも一月までには訪ソいたしたいというつもりでいま交渉中でございます。  それからその交渉の内容でございますが、わが国のほうではあくまで四島——歯舞、色丹、国後、択捉、この四島がわが国の領土であるという点は基本的な方針として考えて進んでおります。  それから、外務大臣現地をまだ見ていないという点につきましては、外務大臣もぜひ現地を見たいというお気持ちを持っておられるようでございますし、具体的にはきまっていませんけれども、そういうことも実現されるんではないかというふうに考えております。
  88. 小谷守

    小谷守君 外務大臣現地視察は訪ソ前に、と申しましても、現地はもう雪ですからね、そういう点はありますけれども、この現地の声にはぜひこたえなければいかぬと思います。  次に、安全操業の問題でありますが、これまた昨年十月下旬、当時の櫻内農林大臣の訪ソによる主管大臣間の協議以後、さしたる進展がないように見受けられます。その後どうなっておりますか。安全操業につきましては、水域をどうするか、安全操業を確保するためのいわば保障措置をどうするか、この二つの問題があると思いますが、その後、それぞれどのような対立があるのか、またどのような歩み寄りがあったのか、そういう点を承りたいと思います。
  89. 羽田野忠文

    説明員羽田野忠文君) 本邦の漁船の拿捕という不幸な事件は、人道的な立場からも早く解決せなきゃならない。基本的には平和条約の締結によって解決さるべき問題でございますが、それまでの間も、暫定措置として安全操業確保のために昭和三十二年以来ソ連側と交渉中でございます。先ほど御説明申し上げましたように、昨年の総理訪ソの際にも、首脳会談におきまして、田中総理からブレジネフ書記長に対しまして、この問題の解決を早急にしてくれという強い主張をいたしておりますし、主管大臣間で協議を行なわせるということの合意ができました。いまお説のように、主管大臣の間で昨年の十月下旬協議をいたしまして、この協議におきまして櫻内農林大臣は、四島周辺安全操業確立する必要性があるということを強く主張をいたしたわけでございます。残念ながら、具体的な合意を得るに至らなかったわけでございます。しかし、近い時期に交渉を継続するということには合意をいたしております。今後とも、この問題の早期解決のために努力していく所存でございます。  対立点といたしましては、やはり基本問題でございます対象水域、日本側のほうでは四島周辺、ソ連側のほうではやはりそこまで至らない限定された水域というようなことで、多少意見の相違がございます。それから取り締まりの方法につきましては、日本側のほうでは、国民的感情から日本側のほうで取り締まりをするということを主張し、ソ連側のほうではソ連のほうで取り締まりをする、こういう問題の食い違いもございますが、いずれにいたしましても、早期解決という強い決意をいたしておる次第でございます。
  90. 小谷守

    小谷守君 小坂長官は、十月三日北方視察の後、羽田空港で記者会見をされた。その談話を拝見したわけでありますが、去る昭和二十七年以来設定してきた危険水域、そして出漁を抑制してきた政府の方針を再検討すべき時期に来た。また、北方問題の対ソ交渉の環境を整えるには抑留漁民、拿捕漁船をなくする必要がある。無理な出漁を解消するため、国が何らかの休業補償を用意すべきである。いずれも十月四日付の朝刊に載っておりますが、これらはどのようなことを意図しての御発言であるのか、具体的に明らかにしていただきたいと思います。
  91. 小坂徳三郎

    ○国務大臣(小坂徳三郎君) ただいまの羽田における記者会見の内容につきましては、大体大略そのようなことを申しましたと記憶しております。  まず第一点でございますが、私も数回モスクワに行った体験を通しましても、この抑留漁民と漁船の拿捕という問題と領土問題は、いつでもソ連側のバーターにひっかかっておりまして、片一方で抑留し、片一方領土問題という形であって、これはわれわれが現在企図している領土返還問題とはなかなか同じラインに走れない。問題は、やはり北方領土問題を国会の決議に基づき、田中総理もブレジネフ書記長とずいぶん話し合いをしたわけでございますが、そうしたことを前進させるためにも、いまわれわれとしては、できる限り、漁民の方々が拿捕されるような危険な操業をしなければ食べていけないんだというようなことは早く解消しなくちゃいかぬというような考えでございまして、もしも抑留漁夫の方や船舶が抑留される、拿捕されるということがなければ、もっと領土問題そのものについて十分わがほうは主張し得るのではないかという個人的な見解を持っておるものでございますが、そうした意味で、先ほどおっしゃいましたような考え方を申したことは事実でございます。それと同時に、私は休業補償というような具体的なことに触れたつもりはございませんが、私の申したいことは、漁民の生活の安定がまず必要なんだ、特に抑留、引き揚げしてきた方々の漁民の生活の安定こそ大事なんで、私がそのようなことを申したことは、その可能性をもっと政府としては追求すべきじゃないか。たとえば非常に私は印象を受けましたことは、納沙布岬と歯舞島の間に新しくできたいわゆる第二貝殻島というのがございます。これはコンブがそこにたくさんとれるようになっているわけで、そこならば日本の海域、一応限定された海域の中にできておりまして、私の参りましたときもたいへん漁民の人たちがそこでやっておりました。これは安全なんであります。問題は、やはり私は危険水域というようなものを侵してまで中に入らなければいけないような状態というものを放置してはならないし、これはやはり、漁民の方々の生活の安定というものをもっと積極的にわれわれは考えることによって、その危険性はずいぶん減らすことが可能ではないか、その可能性をひとつ追求したいという気持ちから申したわけでございます。必ずしも休業補償というようなことに限定した覚えはございません。なお、そうした問題について、帰りましてから関係各省に呼びかけて検討をしてもらうということをいたしておるわけでございます。
  92. 小谷守

    小谷守君 よくわかりました。ただ、この対ソ交渉のよりよい環境を整えるため北方水域での安全操業について云々ということであります。このあなたの談話から受けます率直な印象は、何か北方の漁民がたいへん無理をしておる、私はこの拿捕された者の中にはそういうのもあると思います。しかし、全部がそうじゃないと思います。ソ連側の取り締まりの過ぎた部面も非常に多いと思うんです。それらをひっくるめて、一がいに領土交渉のための環境づくりには遠慮したほうがいいんだというふうなことは、何か漁民の切実な気持ちに背中を向けたような、そのことの正当性を小坂長官自身が何か否定されたような印象を強く受けるわけであります。私はそういう御趣旨ではないと思いますが、そういう点に私はひっかかるものを感じます。加えて、談話の中にありました、農林、外務両省と総理府との三者で具体的に話し合うことを進めたいと言われておるわけでありますが、その後の推移はどうなっておりますか。
  93. 小坂徳三郎

    ○国務大臣(小坂徳三郎君) ただいま小谷委員の仰せられました安全操業につきましては、ただいま申し上げたように、漁民の生活の安定を進めるということが安定操業へのまた大きなしんばり棒になるというふうに考えての発言でございまして、御理解を賜わりたいと思います。  なお、先ほど申し上げましたような第二貝殻島的なもの等々を含めましての生活の安定というような問題につきまして、外務大臣並びに農林大臣等にも話をいたしまして、現在三省間で可能性について討議をしておるというところまで私聞いておりますが、さらに詳細な点につきましては、担当者からお答えさせます。
  94. 田中金次

    説明員(田中金次君) お答えいたします。  先ほど大臣から答弁いたしましたが、大臣視察を終了されまして、さっそく私どもにその旨の検討方の指示がございました。私どもといたしましては、漁民の生活安定をはかる方策いかんと、それから今後とり得る措置ということにつきまして、これは主体として農林省、水産庁のほうで御検討を願っておる問題でございますが、そういった御趣旨を水産庁のほうにお伝えいたしまして、水産庁においても、また地元の意見の吸い上げということもございますので、われわれまたその辺の努力をいたしまして、今後折衝を続けていこうということで、水産庁におかれても目下検討をなさっていただいておるという段階でございます。
  95. 小谷守

    小谷守君 安全操業の対象範囲として、現地関係者は基本的には四島周辺の接岸操業を望みながらも、当面は政府が基本線としている四島周辺の三海里から十二海里の間の水域の安全操業でもやむを得ない、こういう立場を表明しておる。ところで、四島周辺は質的にも量的にも日本漁業にとってきわめて重要な海域となっております。それだけに、地元では最近の領海十二海里、経済水域二百海里の世界的な趨勢をきわめて憂慮しておる。このような問題は、根室市周辺の漁民に限った問題ではありませんけれども北方領土問題、この安全操業問題、これらを急ぐ必要がある、打開を急ぐ必要があるということであると思います。そこで、それに加えて、私はやはり総務長官がいま触れられた点でありますけれども、いまのうちに安全操業確立しておく必要がありますと同時に、とる漁業からつくる漁業、育てる漁業への転換をはかるべきである。国家の事業としてこれらの水域に大型の魚礁を設置したり、漁場を改良、造成したり、あるいは貝類や海藻類の増養殖をはかるなどの施策を講ずることが非常に重要である。またこのことは、北海道根室地方総合開発期成会が計画しておることと一致するわけでありますが、政府はこれをぜひ積極的に援助される必要があると思いますが、いかがでしょうか。
  96. 内村良英

    説明員(内村良英君) 御答弁申し上げます。  ただいま御指摘がございましたように、わが国漁業をめぐる内外の情勢は非常にきびしいものがあるわけでございますが、その中にあって、国民生活の向上のため、水産物需要の増大に対応して水産物自給体制の確立をはかることは、国民生活のためにも非常に必要なことでございます。現在わが国の漁獲高は約一千万トンでございまして、そのうち外国の距岸二百海里で漁獲しているものが四百八十万トンでございます。したがいまして、海洋法会議の動向いかんによりましては、こういった沖合い漁業、遠洋漁業に非常に影響を受けるわけでございまして、私どもといたしましては、需要の動向から考えても、沿岸漁業の振興をはからなければならぬというふうに考えておるわけでございます。このため、前国会におきまして成立いたしました沿岸漁場整備開発法に基づきまして、沿岸漁業の振興の基盤たる漁場の整備をやろうということで、昭和五十年度から六年計画ということで第一次計画をつくりまして、漁場の整備をはかりたいと思っております。これには、先生から御指摘もございましたような、大型魚礁の設置事業あるいは幼稚仔保育漁場の造成事業、浅海漁場の開発事業等、いろいろあるわけでございますが、そういったことをやりまして、沿岸の漁場整備をはかろうと思っておるわけでございます。また、北海道根室総合開発期成会の計画につきましては、道庁からこの計画の実施についていろいろ具体案が出てまいりますので、そういった中に当然反映してくるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  97. 小谷守

    小谷守君 安全操業の問題に付随して、本年四月以来、北方水域でソ連監視船による日本漁船に対する罰金が徴収されておる事件が何件か発生しておる。この事件は、日本漁船がカニやツブガイを混獲していたことを理由とするもののようでありますが、即決で百ルーブルないし二百ルーブルの罰金を徴収された事件のようである。漁業関係者の意見を総合すると、エビかごに入ってくるカニやツブガイの混獲は事実上避けられない、こういうことを言っております。これについては、ソ連側とどのような話し合いが行なわれておりますか。いずれにしても明らかなことは、日ソカニ協定などで日本漁船に違反行為があれば、ソ連側が日本側に通報し、日本政府日本漁船に対する措置をとることと相なっておるわけであります。このことを無視して一方的にソ連が日本漁船から罰金を徴収するのは協定違反であり、明らかに国際法違反であると言わなくてはならない。したがって、この問題はソ連に対し厳重に申し入れをすべきであります。また、徴収された罰金の返還を求めるべきでありませんか、こういう点についていかがでしょうか。
  98. 羽田野忠文

    説明員羽田野忠文君) 北方の公海上でカニまたはツブを密漁あるいは混獲したというようなことでソ連側から罰金の徴収をされた。これはお説のように、本年四月中旬以降そういうようなことが発生をいたしております。このことにつきましてソ連のほうでは、ソ連邦の国内法令を適用して違法な操業であるから罰金を科したんだと、こういうふうな主張をいたしておるわけでございます。日ソ間の条約または取りきめ上には何らの根拠も見出し得ません。また、一般国際法上も認められていないものでございます。そういうことでわが国は、本年の五月二十一日、在ソ日本大使館を通じまして、こういうソ連の行為は国際法及び日ソ間の関連条約、協定に違反するものであるからということで、厳重な抗議をいたしました。それと同時に、徴収された罰金等の返還を求めたわけでございますが、これに対してソ連側は、ソ連の国内法に基づいてとった措置であるという回答をいたしております。漁船から没収した現品等については、五月三十一日日本側に返還をいたしました。お申し越しのとおり、こういう罰金徴収その他の措置、点につきましては、今後とも厳重なる抗議をいたしていくというつもりでございます。
  99. 川村清一

    ○川村清一君 関連してお尋ねしたいのですが、第一問は、拿捕抑留漁民に対する補償措置の問題でございますけれども、これは水産庁におきましては、昭和四十五年から四十九年度の五ヵ年計画で実態調査をされておるはずであります。これはことしの九月三十日で一応取りまとめたはずでございます。で、北海道漁民は長い間ソ連による拿捕抑留によって生じた被害、損害というものを、ぜひ日韓並みにこれを措置してもらいたいということを要望し続けてまいりましたし、私も国会で二、三度質問したことがあるわけでございますが、そこで五ヵ年間かけて調査した結果どうなったのか。そうすると当然明年度の予算にこの救済措置の予算が計上されるものと承知しておりますが、この辺はどうなのか、水産庁長官にお尋ねをしたい。これが一点。  第二点目は、外務省並びに水産庁に対する質問でございますが、ソ連の漁船団、これは大規模のものでございまして、一万トンクラスの母船が七隻から八隻、それに付属する独航船、トロール船、これが六、七十隻南下して参りました。ことしもまた北海道、特に太平洋岸沿岸漁民に多大の被害を与えておる。そしてこれは最近は南下いたしまして、二、三日前のテレビを見ておったら仙台湾、ここにまであらわれてきておる状況でございます。この問題につきましては、私は昭和四十四年の予算委員会で質問いたしまして、その後、農林水産委員会等におきまして数回質問をしてまいりました。一日も早くソ連との間に漁業協定を結ぶべきである。また、受けた損害に対しては補償すべきである、そういう立場で政府に対して要望してまいりましたが何ら解決されない。ことしも多大の被害を与えておる。私の調査では、北海道沿岸で今日まで三千万円の漁網あるいはなわ等の被害を与えておる。これは被害を受けた金額でありますが、せっかく網を張りなわをおろしても、また漁船団に切られるのではないかといったような心配から休漁しておる。その休漁による損害はまたばく大でございます。これらに対して、昭和四十四年以降私がお尋ねしてきて、まだらちがあいておらない。一体これはどういうことか。こういうことから資料の要求と質問をいたしますが、第一に、昭和四十四年以来今日まで、ことしまでの被害状況を年度別に、海域別に調べて提出してほしいということであります。  第二番目には、今日まで一体どんな処置をしてきたのか、具体的にどういうような処置をしてきたのか、これをお尋ねしたい。  第三番目には、今後どういう施策をなさんとするのか、いろいろ国際上の問題があることは先刻承知でありますが、漁民だけ一方的に損害を与えるということについては了承できないわけであります。でありますので、こういう事故が発生しないように、一日も早く漁業協定を結ぶべきである。それは政府間協定が好ましいが、できないとするならば民間協定でもやむを得ない。  それから外務省にお聞きしたい。領海の問題を含めて専管水域十二海里という、こういう要望に対してどういうふうな御見解を持っておられるのか。それから北海道におきましては、この漁民の救済措置として共済制度をつくって、漁民が半額、そして北海道が半額出資いたしましてこういう処置をしておるが、国においても当然出資をしてこういうような制度を設けるべきではないかと思うが、これに対する見解はどうか。それから、ことしは何せ資材が値上がりしてたいへんでございます。したがいまして、北海道におきましては、被害を受けた漁民に対しまして一つの救済措置として天災融資並みの三・五%の低利の融資制度を設けたように聞いておるが、こういうようなことを国がする考え方はないかどうか。それから、ここには網が張ってありますよ、ここにはタコなわをしてありますよ、ですからソ連の漁船は気をつけてくださいということで浮標灯を、これは国も若干お金を出しておるようでありますが、国と道とでもって漁民に対して網が設置されておるということを示すところの浮標灯をやっておるが、こういう浮標灯に対する予算をもっとふやして、そしてこういう設備というものをもっともっと拡大し損害を予防する、こういう措置をする考え方はないかどうか。関連で時間がございませんのでお答えを聞いて、これで終りますが、ぜひ資料は出していただいて、今後の措置を直ちに進めていただきたいということを要望して質問を終わります。
  100. 内村良英

    説明員(内村良英君) まず最初に、北方海域におけるわが国拿捕漁船にかかわる実態調査のことでございますが、戦後、四島周辺海域においてソ連邦により拿捕されたわが国の漁船及び乗り組み員は、昭和四十九年の十月三十一日現在千六十八隻、七千八百二十二人になっております。これらの拿捕された船主及び乗務員の実態につきまして、昭和四十五年以降水産庁は調査をしてきたわけでございます。初年度におきましては、拿捕漁船の内容、拿捕状況、拿捕漁船及び乗り組み員の抑留及び帰還状況、制度金及び制度金以外の見舞金の受け取り状況、船主の代船対策及び事件の出費状況、乗り組み員の帰還前後の被害状況につきまして悉皆調査をいたしました。その後、四十六年は拿捕された船の船主及び乗り組み員、乗員の就業状況がどうなっておるか、生活がどうなっておるかというようなことについて調べ、さらに四十七年は、拿捕にかかわる漁業種類ごとの操業及び漁獲の状況、それから漁労の整備状況等を調べ、さらに四十八年は、拿捕漁船の船主及び乗り組み員に及ぼした影響及び対応状況の各地域の実態、さらに拿捕がその漁業経済に及ぼした影響の各地域別の実態というふうなことを調べておるわけでございます。  そこで四十九年も大体四十八年と同じような調査をしているわけでございますが、拿捕された漁船について見ますと、その漁業種類はカニかご、カニ刺し網、サケ・マス流し網、タラはえなわ、コンブの採取、タラ・サメ刺し網、ホタテガイ建て網、イカ釣りなど各種の漁業にわたっております。漁船のトン数の規模から見ますと、その八二%は三十トン未満の漁船でございます。これらの漁船は拿捕後返還されたのが約六割で、残りは未帰還となっております。
  101. 金井元彦

    委員長金井元彦君) ちょっと発言中ですけれども、結論だけでいいそうですから。
  102. 内村良英

    説明員(内村良英君) はい。  結論といたしましては、私どもといたしまして、なお四十九年の調査がまとまっておりません。そこで四十九年の調査をまとめ、さらにその補足調査の必要もございますので、五十年度も予算要求をしております。  それから、結論だけを申しますと、それではこれに対する補償問題をどうするのかということでございますが、救済措置の問題につきましては、今後の日ソ間の交渉の成り行き等も十分勘案して、総合的な観点から外務省その他とも相談して必要な対策をとらなきゃならぬというふうに考えております。
  103. 川村清一

    ○川村清一君 いつとるんだ、いつ。
  104. 内村良英

    説明員(内村良英君) これはいろいろな問題もございますので、日ソ交渉の進展状況を見ましてやらなきゃならぬ問題だと思っております。  次に、わが国の近海におけるソ連漁船の進出状況及び漁具等の被害状況でございますが、この問題は先生御指摘もございましたように、昭和三十年の終わりごろから始まりまして、ソ連がわが国の沿岸で操業を開始したわけでございます。そこで、初めはあまり漁具等の被害はございませんでしたけれども昭和四十六年ごろから急激に被害が増大いたしまして、本年十月末現在までに総計百五十八件、金額にして約一億二千万円の被害があったという報告を受けております。そこで、ことしはさらに九月下旬ごろからソ連が北海道の釧路沖から日高沖にかけて操業を行ないまして、刺し網等の漁具に対して十月末現在で約二千四百万円の被害を受けているという報告を受けております。そこで最近は、先生からも御指摘がございましたように、岩手沖から仙台沖に下がってきているということで、一番最近の情報では、これは十一月十五日現在でございますが、母船一万トン級が十四隻、それから千トン級の貨物船が三隻、それから千トン以上の貨物船が九隻ついた船団が現在岩手沖から仙台沖にかけて操業しているようでございます。それからまき網漁船も一隻入っております。これらのことにつきましては、水産庁から報告制度をとりまして逐一報告を受けております。  それから、四十四年度からの以降の海域、年度別の被害につきましては、至急資料を提出いたしたいと思います。  それから、とられた措置でございますが、こういった漁業の操業紛争につきましては、協定によって処理すべきというふうに考えまして、昭和四十七年の十一月に日ソ漁業の操業協定に関する交渉を持ったわけでございます。その会議におきましては、日ソ間の見解が違いましてまとまらなかったわけでございますが、現在ソ連はノルウェーあるいはアメリカ、カナダ等と漁業操業協定を持っております。したがいまして、私どもといたしましては、またその会議を持ちたいということを申し入れておりましたところ、今月下旬、東京においてこの会議が開催されるということになったわけでございます。  そこで、今後の施策でございますが、まず最初に、ソ連と操業協定をつくりましていろいろな紛争が起こらないようにすることが大事でございます。そこで私どもといたしましては、操業協定の締結に全力を集中して何とか話をまとめ、この問題の解決をはかりたいというふうに考えておるわけでございます。
  105. 羽田野忠文

    説明員羽田野忠文君) 近年の本邦近海における多数のソ連漁船の操業によりまして、わが国の漁船の操業上の危険性が非常にふえております。また漁具の被害等が続出していると。こういうことで、政府は、ソ連政府に対しまして操業の自粛方等を繰り返し要請をいたしております。  さらに政府は、日ソ両国の漁船及び漁具に関する事故を防止して、事故が発生した場合にはその円滑かつ迅速な解決をはかる、こういうことのために、本月の下旬から東京におきまして漁業操業に関する日ソ専門家会議を開催することにいたしております。  それから、専管水域十二海里というソ連の主張に対する考え方でございますが、わが国は従来、国際的な多数意見でございました三海里という考え方で進んでおりますが、最近、海洋法会議等の経過を見ますと、十二海里という説がだんだん多数意見になりつつあります。そこで、海洋法会議で十二海里ということがきまってまいりますと、わが国のほうでもこれは尊重するという考え方で進んでおります。
  106. 相沢武彦

    相沢武彦君 時間が限られておりますので、端的に御質問申し上げますので、答弁のほうも簡潔にお願いしたいと思います。  最初に、北方領土から日本へ引き揚げてこられた元居住者に対する援護策の一つとして、北方領土問題対策協会法に基づいて現在北方領土問題対策協会に交付されている十億円の件についてお伺いをしたいと思います。  この交付金に基づいて融資を受ける資格のある対象者は、現在元居住者一万二千八百四十二人、入漁権者一千八百四十五人、定置特別漁業権者二百九十九人、合計一万四千九百八十六人になっておりますが、貸し付け金の限度ワクと利率につきまして現状を簡単にまず御説明いただきたいと思います。
  107. 田中金次

    説明員(田中金次君) 御承知のとおり、貸し付けの種別がいろいろございます。平均して申し上げますと、貸し付け限度額でございますが、事業資金の関係、設備資金の関係につきましては、百万円から三百万円ぐらいの幅になっております。それから生活資金につきましては、大体二十万円から二百万円ぐらいの幅で限度額を設定いたしております。  なお、就学資金等低い——たとえば大学で三万六千円というようなことでございますので、これは低いこともございますが、大体貸し付けの限度額はそういう形になっております。  それから金利の関係でございましたか——、金利の関係につきましては、平均的に申しますと貸し付け金利は約四%でございます。これも貸し付けの種別によりまして三%から七・五%という種別がございますが、平均して申しますと四%ぐらいということになっております。
  108. 相沢武彦

    相沢武彦君 ただいま御説明いただきましたが、これはほとんど昭和三十六年当時の算定の基準によって決定されておるように承知していますが、その間、今日までのインフレの増進というものに対しまして、現状は非常にそぐわない。現地へ行きますと、毎年、貸し付け金ワクを増加させたい、また特に、資金ワク不足のためにやむを得ず年度途中においても申し込みを中断するというようなことで、特に生活困窮者の人たちに対して非常に気の毒な現状でございます。そこで、そういった意味から、この貸し付け融資事業について再検討を行なって、十億円の基金のワクをもっと増大させる、また、貸し付け限度ワクの引き上げを行なわなけりゃならないと思うわけでございますが、これについての見通し、これについて御答弁をいただきたいと思うんです。特別立法に基づいての援護策なので、現地では、総需要抑制のワクに当てはめないで、ぜひとも貸し付け金ワクを五十年度は四億四千万以上にしていただきたいという強い要望がございます。また、特に北方問題につきまして、道また該当地の中心である根室市等は相当の財源、予算をさきまして、北方領土返還のための運動、あるいは引き揚げ者、あるいは現在漁業を営んでいらっしゃる方に対する援護策等を講じておりますが、そういった道や根室市がやっている力の入れ方、あるいは予算づけに比べて、非常に国のほうはまだまだ質が足りないんじゃないかと、こういう声もございまして、一人当たりの限度ワクをもう少しずつ上げたいということで、ぜひとも、いま申しました五十年度貸し付け資金ワクを四億四千万、この要望に対して見通しがあるかどうか、明確な御答弁をいただきたいと思います。
  109. 田中金次

    説明員(田中金次君) 先生御指摘の、基金の増額というのがどういう理由かというのが必ずしも明白ではございませんが、地元の御要求を伺っておりますと、貸し付け資金ワクの増を求めたいということからそういうお話が出ているように受け取られております。  それで、先ほど御指摘の貸し付け資金ワクでございますが、総理府北方対策本部といたしましては、地元の御要望もこれありますので、来年度予算要求におきまして、そういった目標が達成できるよう、ただいま予算当局と折衝をいたしておる段階でございます。  それから、道、市が種々の北方領土啓発に関する財政支出を行なっているということも十分われわれ承知いたしております。これにつきましては、私どもとしまして、北方領土問題対策協会というのがございます、その辺の補助金の活用をはかることによりまして、道、市の財政負担の何がしかの肩がわりということも実質上考えられないかということで、目下その辺を詰めておる段階でございます。いずれにいたしましても、来年度また地元の御要求に沿いまして努力を重ねていきたいと、かように思いますので、御了承をいただきたいと思います。
  110. 相沢武彦

    相沢武彦君 この問題に関連いたしまして、旧漁業権者への補償の問題についてお伺いしたいんですが、これは御承知のように、昭和三十六年十月三十日に施行された北方地域漁業権者等に対する特別措置に関する法律によって救済措置がとられておりますけれども、現在に至って、この法律にはいろんな不備な点、片手落ちな点が何点か出てきております。せっかく旧漁業権者や元居住者を救済する目的でつくられたこの法律が、この何点かの条項によって満足な救済ができないでいるという点はまことに遺憾だと思うんです。  そこで、この法律をいまの時点で再度検討を加えて、北方領土から引き揚げてこられていま非常に御苦労されている人たちに対して、もっと納得のいく救済をしていかなきゃならない、こういった意味で次の何点かの御質問をいたしたいと思います。  第一に、第二条二項の四号でございますが、「旧漁業権者」については、「死亡」の場合のみ配偶者、子供、両親のうち一人に継承できるということになっております。これを旧漁業権者の死亡の場合のほかに、老齢になったとか、あるいは心身障害を起こしたという場合、あるいは経営能力を失った場合も認めていくようにしていくべきじゃないかと思いますが、まずこの点から御答弁いただきたいと思います。
  111. 田中金次

    説明員(田中金次君) 御指摘の、本人死亡の場合だけでなくて、本人が就労不能になった場合でございますが、現行法のもとにおきましても、法対象者の子弟というもの、これが新たに独立あるいは継続して事業を行なうというような事態がもちろん考えられるわけでございますが、現在、法対象者が生存している場合にはそういった方たちに当然相手方として貸し付けを認めております。したがいまして、いま先生御指摘の問題が実際上何ら支障なく行なわれておるものだというふうに私ども理解しておりますし、そういう指導も行なっておりますので、どうしてそういう問題が出たのか、ちょっと理解に苦しむところでございます。
  112. 相沢武彦

    相沢武彦君 現場ではこの法律を改定しなければ実際に行なわれてない、こういう訴えがきております。その辺、現場と行政指導のほうで食い違いがあるように思いますので、私のほうも再度具体例を調べてお尋ねをしたいと思いますけれども、あなたのほうも現状どうなっているか、もう一ぺん御確認をいただきたいと思います。  それから第二点ですが、第一条二項の三号に、「前二号に掲げる者のほか、昭和二十年八月十五日まで引き続き六月以上北方地域生活の本拠を有していた者」、このようにございます。そこで、お伺いするんですが、なぜ八月十五日以前六ヵ月以上居住していた者に限ったのか、その根拠。それから第二点目は、八月十五日以前六ヵ月の二月十五日以降に住んだ居住者でも、当時北方地域生活の全財産を持って住んでいた人もいるわけでございます。その人たちは、突如としてソ連が乗り込んできたために、からだ一つで財産も持たずに引き揚げております。また、この二十年の二月十五日以降に生まれた子供さんたち、家族と一緒に北方地域から引き揚げてきた未亡人ですが、両親は北方地域の居住者の資格がありますけれども、この子供たちにはないというような矛盾したことも現実にあるわけでして、この三号の条項を改正して、いま申し上げた人たちの救済の手段を与えるべきじゃないかと、こう考えますが、この点については、これまでに現地からも要望あったと思いますが、いまだに改正されてないのはどういうわけか、この点を御説明いただきたい。
  113. 田中金次

    説明員(田中金次君) この特別措置法の制定のまず趣旨でございますが、旧四島引き揚げ者という方々は、旧四島に生活の基盤を持っておったわけでございますが、終戦という事態におきまして、その生活基盤を喪失するという不幸な事態に入ったわけでございます。そういうために、そういった方たちのその後の生活の安定をはかりたいということで、この法律ができておるというふうにまず理解しております。  そこで第一の御質問でございますが、二条二項三号におきまして、二十年八月十五日まで北方地域生活の本拠を有していた者、これは当然そういった方たちの生活の向上安定をはかるということで考えられた趣旨でございまして、当然なことでございますが、御質問は、ここでなぜ六ヵ月以上という縛りを置いたかということになろうかと思います。この点につきましては、この法律制定当時の他の法令との均衡がございまして、一応それを見たということと、それから同時に、北方地域生活の本拠を有しているという判断基準生活の本拠を有している限りにおいては、どのくらいの形の方たちが生活の本拠を有していたということになるか、そのボーダーラインの設定のしかたがいま御質問の要点になっておろうかと思います。当時の事情を勘案して、六ヵ月以上というものがまず適当であろうということで、こういうものが設定されたものだというふうに理解しております。その辺でなかなかいろいろな問題があるということで、ひとつお含みおきいただきたいというふうに思います。
  114. 相沢武彦

    相沢武彦君 もう一点お尋ねしますけれども、北方地域漁業権者等に対する特別措置に関する法律施行規則というのがありますが、この第四条の一項に規定されておる点ですが、貸し付けの対象法人に旧漁業権者等が組合員数の過半数を占めなくてはならないことになっておりますが、組合の中にはこれらの人たちが五〇%以上を占めておるところもあるでしょうし、また四〇%、あるいはぐっと少なくて三〇%台のところもあると思うんです。五〇%に満たない組合員しかいないからといってその組合を切り捨ててしまうような形では非常に不合理だと思うわけでして、特に地元関係者のほうからこの条項は即時撤廃してもらいたい、こういう声が非常に強いのでありますが、この点について当局のお考えをお伺いしたいと思います。
  115. 田中金次

    説明員(田中金次君) 先ほどもちょっと申しましたけれども、旧漁業権者の生活の安定をはかるというのが本法の目的でございます。したがいまして、御指摘の法人等につきましても、いわゆる旧漁業権者等の色彩のきわめて濃いという法人、これが当然対象になろうかと思います。先生も御承知かと思いますが、一般の株式会社あるいは合名会社等々の法人につきましては、この法律施行規則におきまして構成員の十分の九という縛りを置いております。ただ御指摘の漁業組合とか農業協同組合といったいわゆる公的色彩の強いものにつきましては、十分の九というのはきついということで、過半数というふうに下げております。だから過半数を割るということになりますと、なかなかいわゆるその色彩の濃いという意味合いにおきまして問題が生じてくるかと思いますので、その辺をすでに配慮してこの法律がつくられているという点を御理解いただきたいと思います。
  116. 相沢武彦

    相沢武彦君 旧漁業権の補償の問題でお伺いをしておきたいんですが、現在は北方領土海域の旧漁業権は補償されておりません。ところがその他の漁業権は、昭和二十四年に定置漁業権、専用漁業権の補償が行なわれておりまして、いわゆる北方海域といわれる歯舞諸島、色丹、国後、択捉、この海域に関する漁業権の問題は、日本固有の領土であるというもし政府が態度を貫いていたならば、そのとき当然これらの周辺海域の旧漁業権等も補償をされる可能性があったと思うんですが、この点、実質的に行政権が及んでない、こういうことから取り残されたままになっております。現在、昭和二十年から二十一年にかけて引き揚げてこられた島民の方たちもかなり御年配になったり、あるいは老齢のためになくなった方もおられまして、なかなか領土問題はそう簡単にいかないということで非常なあせりを感じておられまして、現在、この引き揚げ者の方たちが健在なうちに、この旧漁業権の補償というものを一ぺんここで解決すべきじゃないか、領土の返還とは別個に、旧漁業権の補償という問題をとらまえて対処すべきじゃないか、このように考えますけれども、これについてどのようにお考えになりますか。
  117. 内村良英

    説明員(内村良英君) この問題は、かねてからたびたび論議があった問題でございまして、法律論としてはなかなかむずかしい問題でございます。御案内のように、北方領土における旧漁業権につきましては、領土問題とは別に、昭和二十一年の一月二十九日付ポツダム宣言に基づくGHQ覚書による行政分離措置により、わが国の法令が適用されない状態になったわけでございます。その時点で旧漁業法に基づく旧漁業権は消滅した、こういうことになりまして、旧漁業権に対しての補償はその後に行なわれたわけでございますから、法律的に補償を行なう根拠がない、こういうことになるわけでございます。法律的に申しますとこの問題はそのようなわけでございまして、法律上の補償措置というのをとるのはなかなか困難ではないかと思うんです。
  118. 相沢武彦

    相沢武彦君 そうすると、水産庁としてはあれですか、領土返還されるまでは一切旧漁業権については対処しない、こういうふうにもう決定しているんですか。それとも、法律的な問題とは別に、現状に即した何らかの政治的な配慮を行なおう、こういうお考え方はないんですか。
  119. 内村良英

    説明員(内村良英君) 法律的に旧漁業権の補償をすることはできないというふうに考えております。  ただ、北方から引き揚げられた方々の問題、非常に困難な問題があって、生活上もいろいろ苦労しておられるということも十分承知しておりますので、北方領土問題対策協会が現在いろいろ融資措置をとっておるわけでございます。したがいまして、それらの問題、今後どうなるのかということでございますが、水産庁といたしましては、今後の日ソ関係のいろいろな進展に応じて必要な対策をとる必要があれば検討すべきではないかというふうに考えております。
  120. 相沢武彦

    相沢武彦君 先ほども川村委員からお話があったんですが、北方海域における拿捕漁船、拿捕漁民に対する救済の問題でございますけれども、私が海上保安庁からいただいた資料によりますと、昭和二十一年から四十九年十月三十一日現在までで拿捕された漁船の数が一千四百五十三隻、そのうち未帰還のものが五百四十一隻、沈没したもの二十三隻、拿捕された漁船員の数が一万二千二百四十人、そのうち抑留されて未帰還の数が十八人、死亡した人数三十二人という状況になっております。このうち、沈没した漁船の内容についてさらに調査したんですが、拿捕時の銃撃による沈没が二隻、衝突による沈没が八隻、衝突浸水による沈没が一隻、連行中座礁放棄したもの二隻、抑留中に荒天座礁放棄したものが三隻、荒天大破により放棄したものが三隻、釈放期間中に荒天で大破により放棄したものが一隻、海難によるものが三隻、こういう状況であります。また、死亡した人の内訳としましては、抑留中に死亡した人が八人、自殺した人が二人、拿捕時の銃撃により死亡した人一人、拿捕時の銃撃による沈没のため溺死した人が四人、拿捕時の衝突による沈没のため行方不明の人が十七人、以上ずっと述べましたけれども、まことに悲惨な状況なのでございます。ところが、こうした悲惨な事件を起こしております四島周辺海域における拿捕船船主や乗り組み員に対する補償等は現状行なわれていない。これの補償救済措置について、先ほど川村委員等に若干の御説明がございましたが、中国、韓国の場合は、請求権の放棄によって、拿捕問題による補償の問題は今日まで解決をいたしておりますが、こうした北方海域におけるところの拿捕による被害、船体、積載物、あるいは休業損害、乗り組み員の賃金補償、こういったものも中国、韓国の場合の補償方式にならってやるべきではないか、このように思います。それについての御見解と、現在道漁連のほうではこうした、いま申し上げた一連の被害による損害額を百十二億、このように算出をいたしておりますけれども政府としてこの北方海域における拿捕による損害額はどのように見積もっておられるか、どの程度に見積もっておられるのか、調査をして算定額を出しておるかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  121. 内村良英

    説明員(内村良英君) 戦後、北方海域におきますソ連によるわが国の漁船の拿捕問題につきましては、先生御案内のように、従来から外務省を通じまして、かかる不法行為に対し厳重に抗議すると同時に、拿捕抑留された漁船及び乗り組み員の早期釈放を申し入れてまいったわけでございます。しかしながら、拿捕による人的物的損害に対しては、損害賠償請求権を留保しておるというのがわが国の立場でございます。そういうことでソ連に対しましていろいろ要求しているわけでございますが、国内措置としては、御案内のように、拿捕漁船の損害及び乗り組み員給与の補償については、当該漁船の船主に対する漁船保険特殊保険金及び当該乗り組み員に対する漁船乗組員給与保険金の支払いを行なっているわけでございます。それから拿捕抑留が長期にわたる乗り組み員等に対する見舞い金の交付、また抑留中死亡した場合、遺族に対する特別交付金の交付等の国内措置をとっております。そこでなかなかソ連のほうは解決しないじゃないか、したがって、韓国、中国のようにすでに解決した国と同じような措置をこの際とったらどうかという御質問かと思いますが、この点はいろいろ外交上の問題もございますので、今後の日ソ間の交渉の経緯を勘案しながら、われわれとしては総合的に検討しなきゃならぬ問題だと思っております。  それから北海道関係の方々から、大体今年の九月末でございましたか、九月末までの被害は百十二億円だという計算をされておることは私どもも承知しております。その陳情を受けて十分承知しております。ただ、この損害額につきましては、単価の見方その他いろいろございますので、政府としてはまだ具体的な見積もり計算を行なっておりません。
  122. 相沢武彦

    相沢武彦君 この北方海域の拿捕問題等もこれで戦後二十九年の長きにわたって続いていることでありますし、この領土問題が解決されなければ補償できないということでは、まだまだ先に延びると思うので、たとえば昭和四十九年十月なら十月、あるいは十二月なら十二月までの時点で一ぺんそこまでの被害について補償する。そのあとは、先ほど総務長官もおっしゃいましたけれども、要するに、漁業者が危険水域に行って操業しなくても済むようなやはり生活安定のためのいろんな手だてをする、それ以降できる限り拿捕等の問題を起こさないような国内的な手だてもする、そういったことで一定の時点で打ち切って、それまでの分を一時補償する。それから以降に起きる問題——できるだけ、極力起こさないようないろいろ手だてしますけれども、起きた分はまた領土返還されてからあらためて対処する、こういうような二段がまえでこの問題を解決する、こういう方法でお考えになれませんか。それは水産庁長官。  それから最後に長官から、いろいろ論議しました、長官も現地に行かれまして現地の人たちからいろいろな陳情を受けたと思いますが、漁業者生活を保障する場合、やはりいま申し上げました拿捕問題に関する補償救済の問題もやはり解決されねばならないと思いますが、これに対して長官今後どう取り組まれるか、長官の御決意を承って私の質問を終わりたいと思います。
  123. 内村良英

    説明員(内村良英君) 水産庁といたしましては、関係漁業者の方からの陳情等も承り、事態は十分承知しております。したがいまして、まあ心情的にはなるべく早く解決しなければならぬ問題であるということは十分わかっておりますけれども、わが国の立場で請求権を留保しておると一か、あるいは現在なお拿捕が続いているというような外交上の問題もいろいろございまして、今後も外務省その他の外交機関と十分御相談しながら交渉の進展をはかり解決していかなきゃならぬ問題だと思っております。
  124. 小坂徳三郎

    ○国務大臣(小坂徳三郎君) お答え申し上げます。  ただいまの御提言、私なども、もしもできればそうしたいなという気ももちろんございます。しかし、ただいまのようなここで一応打ち切ってしまって国内的な措置だけをやってしまいますと、現在水産庁並びに外務省等々でいろいろ検討しておりますことの基本的な問題をもう少し見つめていかなければならないという判断もございまして、私といたしましても何か今日までの事態を一応ここで線を引きたいという気持ちはございますが、なお政府内部の検討及びソ連の出方、あるいは日ソ平和条約等全般踏まえまして検討しなければならぬ問題だというふうに問題意識を持ち続けてまいりたいと思います。しかし、可能な限り協会を通じての貸し付け業務を拡大をして、そしてその間における被害を受けられた方々の救済を前向きに進めていくというようなふうに考えておるところでございます。
  125. 星野力

    星野力君 条約局長来ていますか。——私は、主としていわゆる北方領土問題においてお聞きするつもりでございますが、その前に、サトウキビ価格の問題について小坂国務大務にお聞きしたいと思います。  本年産のサトウキビ価格決定が大詰めに来ております。サトウキビは言うまでもなく沖繩や奄美群島の農業における基本作物であり、その価格がどうきまるかは、連年安いキビ価格とインフレ物価高の中で苦闘してきた沖繩、奄美の農民の死活にかかわる問題であります。本年産キビ価格については、トン当たり一万八千円以上という現地農民の要求価格を支持してきました日本共産党としましては、この機会に重ねて政府に対して現地農民の要求にこたえるよう求めるとともに、いわば沖繩担当大臣であるところの小坂長官に、本年産キビ価格の問題についてどういう態度で臨んでおるのか、これはもうきょうあすに迫った問題でありますから、ひとつ率直に、簡単でよろしゅうございますから、御見解をお聞きしたい。
  126. 小坂徳三郎

    ○国務大臣(小坂徳三郎君) 本年度のサトウキビ価格につきましては、私は非常な重大な関心を持っておりますし、また先般来、沖繩の屋良知事はじめ農業団体のほうの方々皆さん来られましていろいろ御意見も承りました。私は今年度こそやはり沖繩の原状回復と申しますか、そうした面から見て、ぜひ値上げをすべきであるという考えでございまして、そうした私の考え方は農林省、大蔵省等にも十分伝えてございます。
  127. 星野力

    星野力君 値上げをすべきは当然でありますが、どこまでやられるかというそれをお聞きしたかったのです。これ以上申し上げてもお答えになりそうもないお顔色でございますから、この問題はそれとして先へ進みます。  まとめて一つの問題についてお聞きするのですが、安全操業の問題について。千島からの引き揚者家族を含めて——千島というと、このごろ現地ではおこられるのですが、いわゆる北方四島からの引き揚げ者家族を含めて根室地方の漁業関係者が当面何よりの急務として要求しておるのは、四島周辺における安全操業の問題であります。これは古い問題であるにもかかわらず、先ほど来お話もありましたが、政府間交渉というのは今日まで何の成果もあげておらない。こういうことでは現地の人たちとしても憤慨するのは当然だろうと思うのでありますが、政府は一体どうなさる方針なのか、これからこの問題を。それをひとつ、これは大臣にお聞きしたいと思うのです。  それから、根室地方の北部といいますか、根室海峡沿岸の漁業者は国後、択捉周辺の水域の安全操業、これに主要な関心を持っておるのでありますが、その海域についての交渉は、この成果のあがっておらないところのこの交渉ではありますけれども、その中にどの程度話し合われておるのか。先ほど外務政務次官の話では、対象海域についてはソ連側と多少の食い違いがある、こういう表現がされておりますが、私はこれは多少の食い違いではなしに、向こうは国後や択捉を全然問題にしておらないのではないかということを心配するのでありますが、その辺ほんとうに多少の食い違いなのか、話は幾ぶんでも進んでおるのか、これは政務次官にお聞きしたいと思います。  それから小坂長官に、先ほど出ました十月三日、羽田における記者会見のお話の中の休業補償の問題です。これは大臣の発言ということで、現地でも話題になっておりました。真意をはかりかねながらも、期待を抱いておった、こういう問題であります。先ほどお聞きしますと、必ずしもそうは言わなかったのだということでございますが、休業補償というようなことは、言わなかったならば、この際はっきりひとつ打ち消しておいていただきたい、取り消しておいていただきたい、この三点、まずお聞きいたします。
  128. 小坂徳三郎

    ○国務大臣(小坂徳三郎君) 北方領土という問題につきましては、われわれは歯舞、色丹、国後、択捉四島の返還を日ソ平和条約の基本に置くという態度、これは明確でございます。  それから第二点の休業補償ということでございますが、私は先ほど来申し上げているとおり、漁民の方々の生活の安定をはかるということが主体でございまして、先ほど申し上げましたような、私、視察をいたしまして非常に印象受けたのは、第二貝殻島という実際の効果のある施策でございますが、等々をわれわれはもっと検討をして、可能性を十分に政府として高め、確めていくという努力をいたしていくことが皆さん方の生活の安定につながるというふうに考えての発言でございました。
  129. 羽田野忠文

    説明員羽田野忠文君) 北方領土の問題につきまして、その後のどういう進行状況かという点でございますが……。
  130. 星野力

    星野力君 そんなこと聞いておらない。
  131. 羽田野忠文

    説明員羽田野忠文君) これは先ほども説明申し上げましたように、昨年の総理の訪ソの結果、ソ連側のほうでも、北方領土問題が平和条約締結によって解決さるべき戦後の未解決の問題であるということを確認をいたしております。
  132. 星野力

    星野力君 委員長、そんなことは何にも聞いておらぬ。
  133. 羽田野忠文

    説明員羽田野忠文君) これは非常に私は前進だと思います。そして日ソ双方が本年中に平和条約継続交渉を行なうという点についても合意を見ております。そこで、具体的には木村外務大臣の訪ソを含めて、時期等について現在具体的に……
  134. 星野力

    星野力君 委員長、もうこの答弁よろしいです。時間がない。
  135. 羽田野忠文

    説明員羽田野忠文君) 検討中でございます。  それから多少の食い違いかどうかという点でございますが、わが国が四島ということを主張しておるのに対して、ソ連のほうが限定された水域という、この点の食い違いが現在もございます。この点は、いわゆる多少と言えない基本的な問題だという点につきましては、私もさような問題ではないかというふうに考えます。
  136. 星野力

    星野力君 私は長官に対して領土問題がどうなっておるか、平和条約との関係がどうなっているかとお聞きしたのじゃなしに、安全操業の問題を今後どういうふうにおやりになるかということをお聞きしたわけでございます。あとでまたお聞きすることとしまして、それじゃ領土問題についてお聞きしたいと思います。  まず、平和条約というものについて、日ソ間はこれは交戦国の関係にあったのでありますから、正式に平和を回復するために平和条約を結ぶことが必要であるということは、これは一般的に考えられます。しかし^日ソ関係について言えば、一九五六年の日ソ共同宣言で、戦争状態は終わらされ、平和関係が回復された。その上に平和条約を締結する意義がどこにあるのかという一般的な問題でありますが、それについて外務省の御見解をお聞きしたい。
  137. 羽田野忠文

    説明員羽田野忠文君) 平和条約の問題は、結局、日ソ間の戦後の未解決の問題をこの平和条約によって解決するということが命題でございまして、したがって、北方領土の問題は、この終戦処理をはかるべき平和条約の非常に大きな命題であると、こういうふうに考えております。
  138. 星野力

    星野力君 そうしますと、日ソ平和条約の意義というものは主として領土問題、未解決の領土問題の処理をすることにあると、こう理解してよろしかろうと思いますが、一般に、平和条約には領土条項というのは必ず含まれなければならないものなのかどうか。また、平和条約では領土問題を最終的に処理し終わらなければならないものなのかどうか、お聞かせ願いたいと思います。
  139. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) いま現在の、先生一般論としてのお尋ねだと存じます。  通常、戦争状態が存在しまして、その戦争状態を終結させるために平和条約が結ばれます。その際に、領土の帰属の変更が行なわれるような場合においては、領土問題が平和条約において最終的に処理されるというのが一般的な形であろうと思います。いま申し上げましたように、それは領土問題の帰属が変更されるような終戦の処理が行なわれた場合ということであろうと存じます。
  140. 星野力

    星野力君 そうしますと、いまやはり問題になっておりますところの日中平和条約においても、そういう立場で臨まれるのかどうかということが一つ。  それから平和条約では、領土問題について合意できたものを条約の上で合意し、その他については、条約の中に条項を設けて自後の交渉にゆだねることにするということができるのではないかどうか。その二点お答え願います。
  141. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) 日中間の問題といたしまして、日中両国間で処理を必要とします領土の問題はないと、政府としては考えております。
  142. 星野力

    星野力君 台湾、膨湖島はこれは日本が放棄しまして、行き先を別にどうとサンフランシスコ条約ではきめておらなかったように記憶いたしておりますが、これは処理しなくてよろしいのかどうか。  それから私はもう一つ、合意した部分だけを平和条約に領土について条項に載せ、その他の部分は条項を設けて今後交渉できるというふうにすることができないのかということをお聞きしておきます。
  143. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) 台湾ないし膨湖諸島についての御質問につきましては、先生ただいま御指摘になられましたように、サンフランシスコ平和条約において、日本としましてはすでにあらゆる権原を放棄しているわけでございます。したがいまして、その件に関する面についての法律的な手当ては必要がないというふうに考えております。  それから先ほどの御質問で、私がお答えを落としてしまいまして、恐縮でございましたけれども、平和条約を締結しますときに、合意した部分だけを平和条約の中で取りきめ、その他の問題につきましては懸案のまま残して、継続交渉というような形にすることが可能ではないかという御質問でございますけれども、通常の平和条約、戦争状態を終了して領土の帰属についての変更を合意します平和条約において、ある部門だけをさらに残して交渉を継続するというような方式は、通常の場合は考えられないと思います。法律的に全く不可能かと言われますと、それは両国間の合意でございますから、そういう合意があれば法律的に不可能だとは言えないと思います。しかし、通常はそういう形の領土問題の処理というのはないであろうと思いますし、また、日ソ条約の問題として取り上げますならば、北方領土、四島の返還ということが平和条約の中で取りきめられない限り、平和条約というものは締結されないという政府の明確な立場は御承知のとおりであろうと存じます。
  144. 星野力

    星野力君 日中平和条約においては、領土条項は入らないと、こういう御答弁でございますが、私、この問題について何かまだ論理的に一貫しないものを感ずるんですが、これは別の機会にまたお聞きすることにいたします。  歯舞群島、色丹、国後、択捉、これら四島の返還が日ソ平和条約の絶対的な条件であるという意味のことを大平前外相は申されてきたんでありますが、先ほどは政務次官からも、また小坂長官からも同じ意味の御発言がございました。これら四島の返還を要求する日本政府の論拠としまして、歯舞、色丹だけでなく、国後も択捉もサンフランシスコ平和条約第二条(c)で権利を放棄した千島列島には含まれないのだと、こう主張しておられるわけであります。サンフランシスコ条約と日米安保条約の承認を求めた一九五一年の国会におきましては、政府は国後、択捉は千島列島に含まれるという意味の答弁をいたしております。それを一九六一年以来政府統一見解として、それらは含まれずということになったわけであります。おかしな話だと思いますが、なぜそのように見解を変更するに至ったのか。また択捉、国後は千島列島に含まれずとする論拠は一体どこにあるのか。実はこの問題について何度も国会の場で論議されたこと、私よく承知いたしておりますが、政府側の答弁というのは、決してこれは人を納得させるものではないと思うので、重ねてお聞きする次第ですが、その二点について御答弁願います。
  145. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) たいへん恐縮でございますが、私先ほど、先生いまお述べになりましたことの最初の部分につきまして、私のあるいは御説明がちょっと違っておったか、あるいは間違って申し上げたような印象をお与えしたかと恐縮に存じますが、私は、日中平和条約において領土問題が取り上げられることはないということを申し上げたことはございませんで、日中間におきましては、先生も御承知のように、共同声明におきまして、平和友好条約を締結するということになっております。この平和友好条約は、日中両国間で、今後長いつき合いをしてまいります場合の平和友好関係、これをいかにして規律していくかということが主眼目になるべき条約でございまして、平和条約ではございませんので、その点、念のために申し上げさせていただきたいと存じます。  なお、今度はサンフランシスコ平和条約の第二条に関連いたしまして、千島列島の中に北方領土、四島が含まれていないということについての政府考え方につきましては、これは歴史的にも法律的にも日本の固有の領土であって、サンフランシスコ平和条約で言っておりますところの千島列島には含まれていないということを政府としては確信いたしているわけでございます。
  146. 星野力

    星野力君 私は、どうしてこのサンフランシスコ条約時から一九六一年において見解を変更されたのかということもあわせてお聞きしておるんですが、その点についての御答弁なかった。また、いまの御答弁では、あの四島は千島列島に含まれない、放棄した千島列島には含まれないという論拠として、日本の固有の領土であったということを言っておられる。過去にもそういうことを言っておられるわけですが、固有の領土であったかどうかということを私はお聞きしておるんではない。固有の領土ということならば、少なくとも戦争とか侵略とか、あるいはその他の方法による拡大主義によって領有したものではないということでは、千島列島全島が私は固有の領土である、こう考えてよろしいと思うんであります。固有の領土であろうがなかろうが、サンフランシスコ条約においてこれは権利を全面的に放棄した区域に入るか入らないかということを聞いておるんです。固有の領土かどうかということをお聞きしておるんじゃないんです。そこのところをはっきりさしていただきたい。
  147. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) サンフランシスコ平和条約が締結されるに至りました経緯については、私からあらためて申し上げるまでもございませんけれども、第一に、大西洋憲章におきまして、連合国としまして戦争によって領土の拡大を求める意思はないということを明白に宣言しているわけでございます。そういう思想に基づいてサンフランシスコ平和条約というものが結ばれてきているという事実、それからさらに日ソ間の問題といたしましては、いわゆる北方四島につきまして、いまだかつてそれが日ソ間におきまして条約の交渉の案件ないしは譲渡の対象になったことがないという事実、そういう事実を踏まえまして、私どもはこの四島は平和条約第二条に言っておりますところの千島列島に含まれないということを確信しているわけでございます。
  148. 星野力

    星野力君 小坂総務長官十五分までしかおいでになれないということなんで、残念ではございますが、時間がきたら御退席願ってもよろしゅうございます。  一体、択捉、国後について、サンフランシスコ会議の結論はどうであったのか、当時のアメリカ政府考えはどうであったかというようなことを私お聞きしたいと思うんです。一九五一年の国会では、当時の条約局長外務政務次官がはっきりあすこは放棄しましたと、こう申しておられる。ここにサンフランシスコ平和会議における各国代表のその問題に関連する部分の演説のスクラップございますが、ダレス、アメリカ国務長官自身が、第二条(c)に記載された千島列島という地理的名称が歯舞諸島を含むのかどうかについて若干の質問があった、歯舞を含まないというのが合衆国の見解である、こう言っておるんですよ。このときは色丹島まで含めてアメリカは日本が放棄した千島列島の中に含まれると、こう言っておる。私各国の地図を苦労して調べてみたんでありますが、アメリカのたとえばAMS、アーミー・マップ・サービス、御承知のようにアメリカで発行されておる地図では、ことに外国関係ではこれが一番権威あるものだとされておるらしいんでありますが、それらの地図を見ましても歯舞諸島と国後島の間に千島列島、クーリール・アイランズとカッコして書かれている。それ以北がこのクーリール・アイランズであり、千島列島であるということを示しております。その辺についてもっとはっきりした見解をお聞きしたいと思うんですが、時間がきますから、私次の質問も含めてお聞きいたします。  私はこういうことを申しまして、何も地理学上の解釈論争をやることが目的ではないんです。政府の外交姿勢を問題にしておるんであります。私、領土問題については真に平和友好、そして自主的な立場で条理ある交渉をしなければだめだと思うから、こういうことを言っておるんであります。まるで千島、択捉、国後、それから行政区域からいえば色丹もこれは千島の国になる。日本の地図ではみんなこれは南千島として区分けしておった地域でありますが、南千島は千島にあらず、これは詭弁です。白馬は馬にあらずという、あれと同じような流儀のこれは詭弁であります。事実認識をことさらゆがめ、そういう詭弁的な論拠に基づいて、しかもアメリカの助けをかりながら交渉していくというようなやり方ではだめだということを申し上げたいんです。過去の世界の歴史にはそういう論法も強大な武力を背景にすれば押し通せたという事例はたくさんあります。いまはそういうわけにはまいりません。昨年七月でしたか、この委員会に参考人として出席した二人の大学教授も、ともに択捉、国後は千島列島に含まれずとしてそれらの返還を要求することは法理論から無理である、こう述べておられます。御存じだろうと思います。日ソ間の領土問題というのは国際法上の権利といったような法理論ではなしに、平和、友好、自主の立場に立っての政治折衝、外交交渉によってしか解決されないと思います。四島の即時一括返還を絶対条件とする立場で日ソ平和条約に臨んで、一体あなた方どの程度の妥結の成算を持っておられるのか。そうお聞きしますと、相手のあることであるからやってみなければわからぬ、こう言われるかもしれませんが、何の成算もなしに交渉に臨むというわけはこれはなかろうと思います。私おそれるのは、実際はあなた方は日ソ平和条約の締結ということについては成算などは全く持っておられない。そんなものは度外視しておる。何かの立場上主張はするが、実際は領土問題の進展はちっとも急いではおらぬ。実際保守派、右翼の人々には日ソ平和条約などは急ぐな、結ぶ必要もない、こういう意見すらあるんでありますが、私はいまの政府のような方針では、平和条約の締結はずっと先に延びてしまう、少なくとも自民党政府のもとでは実現しないのではないか。そうなりますと、日ソ共同宣言で約束された歯舞、色丹、これさえ返ってこない。択捉、国後は無限のかなたにいってしまう。だからこの問題に臨むには、政府の外交姿勢というものを根本的に改めなければならぬということを申し上げたいんでありますが、先ほどの論拠の問題、私、ダレスの発言その他地図のことを申しました。そういうことを含めて条約局長のほうからもっとはっきり、あるいは政務次官のほうからもっとはっきり言ってもらいたいと思うんです。あれは論拠になっておらぬ。
  149. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) 政府といたしましては、アメリカ政府が国後及び択捉が平和条約でいいますところの千島列島に含まれていないという見解を明らかにしたことは、まだかつてないというふうに承知しております。アメリカ政府の見解といたしましては、北方四島に対する日本の主権の主張は正当であるという立場をとっておりますことは、先生の御承知のとおりであろうと存じます。  御指摘がございました地図につきましては、私存じませんが、それがもしアメリカ政府の刊行にかかる地図でございますれば、一度検討してみたいと考えております。
  150. 星野力

    星野力君 こんな答弁じゃ私困ると思うんですよ。私、先ほどダレスの演説を引用いたしましたが、これ、ひとつ資料として、千島列島の範囲に関連する部分でよろしゅうございますから、ダレスがサンフランシスコ平和会議において述べたそのところのテキストを提出していただきたいと思うんです。これは私だけの問題じゃございませんし、委員会のほうでひとつそうお取り計らい願いたいと思います。  それから、地図はここにございますから、写しがございますからごらんくださったらいいのでありますが、一つだけお答えがないからもう一ぺん聞かせていただきたいのは、あなた方は日ソ平和条約、先ほど来申されるような領土要求のもとにおいてどういう成算を持っておられるか、ここだけでも聞きたい。
  151. 羽田野忠文

    説明員羽田野忠文君) これは先ほどから重ねて申し上げておりますとおりに、総理の訪ソの場合でも、この領土の問題が未解決の問題であるということを確認して平和条約の継続交渉を行なうという合意が成立をいたしておりますし、その合意に基づいて、現在木村外務大臣の訪ソを含めてその時期等が検討されておる、こういう状況でございます。順次そういう積み上げによってこの問題は解決すべき問題だというふうに考えております。
  152. 星野力

    星野力君 できると思っておるかどうかということを聞いているんです。
  153. 羽田野忠文

    説明員羽田野忠文君) これはその目的を達成させるため最大の努力をせなければなりませんし、最大の努力をすることによって必ず実現すべきものだというふうに考えております。
  154. 星野力

    星野力君 委員長、先ほどの資料の問題ひとつおはかり願いたいと思います。
  155. 金井元彦

    委員長金井元彦君) どうですか、外務省。
  156. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) 御要望のありました資料につきましては提出いたします。
  157. 佐藤信二

    佐藤信二君 私は、北方領土の返還についてお聞きしたいと思うんです。  先月の十四日から十七日の間、先ほど御報告いたしましたように、視察団として現地を訪問した一人であります。現地の引き揚げ各団体から実はいろいろな問題を聴取いたしました。その中で一番問題だったのは、何といっても返還の問題であります。昨年の十月に田中総理が訪ソされ、日ソ共同声明というものが発表されて以来、四十九年にはたいへんに進展するだろうということを現地の人は期待をしていたわけでありますが、この一年間においてあまり新しい動きがなかったように思います。この日ソ共同声明以後の今日までの動きについて、経過について御説明願いたいと思います。
  158. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) 昨年十月の田中総理訪ソの共同声明を具体的にどう実現するかということにつきまして、先方と数回の折衝を重ねてまいりました。具体的には、先方の外務大臣の来日、あるいは先方三首脳の来日ということで、東京で会議を開くということも考えられたわけでございますが、先方はどうしても時間的都合がつかないということで、むしろ木村外務大臣の訪ソということを要請してまいりました。これに対しましては、やはり平和条約締結交渉を継続するということはきわめて重要なことであるという認識のもとに、目下具体的に、かつ、前向きに検討中でございます。
  159. 佐藤信二

    佐藤信二君 いまの御答弁でありますが、あくまでも外交交渉というのは相互の信頼と、そしてまた日本側の誠意によって実現するんではないだろうか、かように私は考えます。しかるに、ソ連側からはこの問題に関して外務大臣日本を訪問してよいというふうな話があったという御回答がいまありましたが、それに関して、日本から外務大臣が行かれる時期の問題ですが、あのときの共同声明には、四十九年、「一九七四年の適当な時期に」と、こういうふうになっておりますが、この七四年もあと一ヵ月足らずでもって終わろうとしております。そうした場合に、日本側のほうがあまりにも誠意がないというふうにソ連側に解釈されるのではありませんか。
  160. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) 御指摘のとおり、一九七四年中にということで合意いたしております。したがいまして、われわれとしては七四年中のもっと早い時期に先方からの来日ということをまず提案いたしたわけでございますが、先方の都合がつかないということで、むしろ逆に、先方から招待のありました木村外務大臣の訪ソを検討中——実際に七四年中と申しますとあと一ヵ月半ほどでありますが、その間にできるだけやりたい、もしどうしてもだめな場合には、若干一月にずれ込むこともないとはいえないという感触でございます。
  161. 佐藤信二

    佐藤信二君 いまのお話しだと、共同声明にある一九七四年というのは、来年の一月まではタイムリミットがあるというふうに考えていいんですか。
  162. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) タイムリミットはあくまで七四年中でございます。ただ、双方の都合がつかないという場合に、双方が合意いたしますれば、若干ずれ込むのはやむを得ないということでございます。
  163. 佐藤信二

    佐藤信二君 また、ソ連側から木村外務大臣の訪ソということについて要請があったというふうなお話しがございましたが、いつそういう要請があったんですか。
  164. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) 去る十月に正式にございましたし、その前に、先方の大使が話題として去る八月にそのことに言及しております。
  165. 佐藤信二

    佐藤信二君 そうすると、十月に向こうから回答があったら、十一月、十二月という二ヵ月の間にソ連に行かれるという時間的な問題があったと思うのですが、外務大臣は先日からアフリカのほうだとか、またアジア諸国のほうの訪問にいま行っていらっしゃって、ソ連のほうにはおいでにならなかったということは、あまりこの問題に関しまして誠意がないというふうに国民から取られてもいたし方がないと、かように思いますが、いかがですか。
  166. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) これは大臣御自身、この訪ソの重要性ということは十分認識しておられると私了解しております。ただ、アフリカの訪問、あるいは東南アジア開発閣僚会議にフィリピンに行かれたということは、かねてからの約束ごとでございますので、それを履行するということでございまして、それが時日的には先になったという経緯でございます。
  167. 佐藤信二

    佐藤信二君 私がお聞きしたかったのは、この北方領土の返還というのは、引き揚げ者だけの問題ではなく、日本の国益ということを考えた場合、たいへんな重大な問題だと私は思うんです。そうした場合に、今後の政治的なスケジュールということを考えた場合に、いまから臨時国会の召集があり、また通常国会、そしてその場における種々の討議からまいりますと、なかなか一月に行かれるということも技術的にむずかしいのではないか、かように実は思うのであります。しかしこの問題に関しては、いま私が申しますように国益優先という思想からいけば、どのようなことが臨時国会また通常国会でもって審議があっても、ぜひソ連を訪問していただきたい、かように実は考えるわけであります。  そこで私がお聞きいたしたいのは、この日ソ共同声明における、この声明文のときにいろいろ討議をされたのでありますが、やはりこの中において最も私たちが関心があるのが領土の返還でありますが、一応この中には第一項の中に「双方は、第二次大戦の時からの未解決の諸問題」とありますが、この未解決な問題というのは領土問題だと思います。しかし、この未解決な問題という表現というのは、いままでの交渉からして前進したのですか、それとも後退したのですか。
  168. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) 領土問題のソ連との交渉の経緯をごくかいつまんで申し上げますと、当初一九五六年に交渉が行なわれまして、日ソ共同宣言が採択されたわけでございますが、その際に、平和条約締結の際には歯舞、色丹を返還するということがうたわれております。さらに同じ年に松本・グロムイコ書簡交換というのがございまして、未解決の問題である平和条約の交渉は継続するということをうたっております。その後、ソ連の態度は変わりまして、日ソ間には領土問題は存在しない、この問題は解決済みであるということを言い出しまして、われわれが交渉を継続しようとするのに対しまして、同じテーブルにつこうとしないという態度に終始したわけでございます。一九七二年、一昨年でございますが、一月にグロムイコ外務大臣日本を訪れました際に、当時の福田外務大臣から、さらにこの問題を持ち出しまして、そのときにやっと先方が合意いたしまして、一九七二年中、一昨年中に平和条約交渉を開始しましょうということを合意したわけでございます。その結果、一昨年の十月、当時の大平外務大臣が訪ソして第一回の平和条約交渉をやったわけでございます。ただ結果といたしまして、解決済みという先方のかたい態度を突きくずすまでにはいかなかったわけでございます。したがって、その問題は依然として先方は解決済みという態度でいたわけでございますが、昨年、総理が訪ソされた際に、やっと解決済みという態度を改めて、未解決の問題の中に入るということを先方は合意したわけでございます。したがいまして、従来からの経過を振り返ってみますると、やはり前進したのであるというふうにわれわれは認識いたしております。
  169. 佐藤信二

    佐藤信二君 いまのお話をお聞きして私たちはたいへん意を強くするわけでありますが、この十一月の五日の日に在日ソ連大使館筋というものがこの問題に関して発表している、こういうことが翌日の十一月六日の一般新聞に一斉に報道が実はされております。この中で朝日新聞は、日ソ平和条約は「交渉進展は望み薄「領土」で依然強硬」というふうな実は見出しを出しているし、またサンケイは、「「北方領土」譲歩せぬ」「在日ソ連大使館筋が強調」という見出しであるし、また読売新聞は、「「北方領土」固執すれば日ソ条約進まぬ」というふうな実は記事が一斉に出ているわけでありますが、いまの御答弁とこれははなはだ相反するものだと思いますが、その点いかがですか。
  170. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) 私もその新聞記事は拝見して承知しておりますが、先方大使館筋がいかなる意図のもとに、また具体的にどういう発言でしたかは存じませんけれども解決済みという態度は、先ほど私が御説明申し上げたとおりの経過でございまして、全然根拠のないことだと、こう考えております。
  171. 佐藤信二

    佐藤信二君 ところが同じ新聞の中でも、毎日新聞には、「「平和条約の交渉過程で決定」領土で柔軟発言」というふうに出ているわけであります。そうすると、実はこの新聞の記事というのは、新聞のとり方によってずいぶん違うことを報道するんじゃないか。いまのお話だと、毎日の記事のほうが非常に外務省当局のお考えというか、見解と一致しているというふうに解釈していいんですか。
  172. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) 個々の新聞の記事につきまして、私コメントすることを差し控えたいと思いますが、われわれとしては、先方は首脳会談で未解決の問題の中に領土問題を含むということを確言いたしておりますので、われわれとしてはこの問題は依然として今後解決さるべき問題であると、こう考えております。
  173. 佐藤信二

    佐藤信二君 新聞記事に固執するようでたいへん恐縮でありますが、この中で、先ほども若干話が出ましたが、結局日本には日中平和友好条約ではむずかしい問題、尖閣列島の問題は避けて通ってもよいとの雰囲気があるのに、日ソ間ではそのむずかしい問題、北方領土が平和条約の条件となっているということを向こうは言っている。こういうことでありますが、この日ソ平和条約と日中平和友好条約というものは、性格的に友好という字があるかないかでもって違うんですか。
  174. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) 日ソ平和条約につきましては、先ほど来申し上げておりますように、日ソ共同宣言に基づいて平和条約を締結するということが合意され、さらにその際に領土問題を解決するということが両国間で合意されているわけでございます。日中平和友好条約につきましては、日中共同声明の際に、同じく共同声明の中で合意されているわけでございますけれども、そこで言っております平和友好条約というのは、いわゆる戦後処理の問題に片をつけるというものではございませんで、両国間の平和友好関係の増進、発展のためにどういうことを両国間で規定をしていくべきかということが内容となる条約でございます。その意味におきまして、両条約の間には、さい然たる違いがあるわけでございます。
  175. 佐藤信二

    佐藤信二君 そうすると、話が若干飛びますが、日中間においてはこうした領土問題というのは、この日中平和友好条約のあとにおいてやはり何か条約というようなものでもって処理があるんですか。
  176. 松永信雄

    説明員(松永信雄君) これも先ほど申し上げましたけれども、日中間におきましては、戦後処理の問題として解決しなければならない領土の問題はない、ございません。したがって、それが平和友好条約が結ばれた後に、なおその領土に関する条約が結ばれるという関係は全くございません。
  177. 佐藤信二

    佐藤信二君 よく御説明でもってわかりましたが、そうすると、あくまでも日ソ平和条約の締結の際には、この領土問題というものを抜かしては締結というものができないというふうに解釈していいんですね。
  178. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) われわれもそのように考えております。
  179. 佐藤信二

    佐藤信二君 それではその問題はよくわかりましたが、私自身北海道に参りましたときに、現地でもって現地関係者の中から、墓参に行ったときに、もうすでに戦後三十年たっているので、墓地の中における日本人の墓標よりか、ソ連人の墓標のほうが数多く実は見える。ということは、それだけ北方領土というものが日本から遠くなったんだ。自分たちが生きてる間にはたして返還というか、ということが実現するんだろうかというたいへん切実な実は話がございました。これに対して、やはり非常に日本の世論というものは、はなはだ冷淡だと思うわけでありますが、どうしてこの北方領土の返還という世論が巻き上がらないか。どこに一体その原因があるのか、こういうことをお答えを願いたいと思います。
  180. 田中金次

    説明員(田中金次君) いろいろな問題が中に含まれておろうかと思いますけれども、私ども北方領土問題に対しての啓発活動を仰せつかっておる立場からいきますと、従来関係団体等の積極的な御協力をいただいて、この運動を推進してまいっておりますが、この団体相互間の連携を今後より一そう緊密にする必要があるのではないか。同時にまた、国民一人一人の方が、遺憾ながら従来ではまだ十分御認識をいただいていると言える段階にきてないと思いますが、そういった事実を踏まえまして、一人一人の方にこの問題の重要性を認識していただく、こういう点につきまして、十分今後努力をいたさなければいけないというふうに考えております。
  181. 佐藤信二

    佐藤信二君 おっしゃることは御無理ごもっともというか、よくわかるわけですが、この問題は、きのうきょう起こった問題ではなく、もうすでに戦後三十年たっているというので、いまから一人一人のいわゆる理解を深めていくというんでは、非常におそいように思うわけであります。これはやはり私は、沖繩返還の際というのは、いろんな問題があり、またこの北方領土とは大きく違う面もありますが、昭和四十年の八月の十九日に、当時の総理大臣の佐藤榮作が、沖繩那覇空港に行って、沖繩の返還なくして戦後は終わらないと、こういう話をしたのがいわゆる沖繩返還の国民的世論の喚起の導火線になったというふうに私は考えるわけでありますが、この問題に関して、歴代の総理大臣が一回も現地視察していないということは事実であります。いまの田中総理においても、北方領土視察という、また現地に行かれまして、関係者から事情を聴取なされるというお考えはお持ちなんですか。いかがですか。
  182. 田中金次

    説明員(田中金次君) 総務長官が先般地元根室をおたずねいたしましたが、その際にもやはり、根室の方たちからそういったお話が総務長官に出されたことも事実でございます。その際帰りまして、総務長官からそのお話を総理それから官房長官、さらに外務大臣にもお伝えいたしまして、地元の御要求にこたえるよう、これは国民的課題であるので、そういったことを考えてもらいたいということをお話しされたというふうに私も伺っております。
  183. 佐藤信二

    佐藤信二君 総務長官が行かれたということは、私もよく認識しておりますが、やはり総理が行くか総務長官が行くかということでは、だいぶ格が違うといっては恐縮ですが、国民的な世論の喚起という問題に対する影響力が私は違うと思うんです。そうするといまの段階では、総理大臣はまず行かれるという可能性はないと考えていいんですか。
  184. 田中金次

    説明員(田中金次君) 現在の、最近の日程において行かれるというお話は、まだ伺っておりませんが、総理といたしましても、政治日程等々の御都合がつけば、ぜひ北方を視察したいというお気持ちを持っておられるということは伺っております。
  185. 佐藤信二

    佐藤信二君 総理が行かれなければ、外務大臣は少なくともやはり現地視察なさり、そうしてやはり引き揚げ者、また島民のやはり意見というものを自分のはだでもって感じられる必要があると私は思います。外務大臣が行かれるかどうか、先ほどそういう質問もございました。現地においてもたいへん強い要望がございますので、政務次官からその点を外務大臣によく伝えていただきたい、かように思います。また同時に、やはり行かれるならば訪ソの前に行っていただいたほうが効果があるのではないか、かように私は思います。また私自身、いまの話を聞きまして、やはりこの問題というのは、超党派で解決すべきではないか。だからそうした場合には、この問題では自由民主党から日本社会党、公明党、また日本共産党 民社党、五党の間における共通点というか、五党ともやはり返還ということ、これをみんな真剣に実は考えておるわけでありますから、国会開会中でもひとつ外務大臣現地視察されることは、各党とも了解をなされると思います。そういう実はお願いを私自身ここでいたしたいと思います。  そうしてまた、私自身が一番最後にお聞きをしたいのは、先ほど返事が不明確でありましたが、来年の一月までにもし外務大臣が訪ソされなかった場合に、昨年の十月の日ソ共同声明というもの、これのやはり履行という問題でもって大きく変わってくる面がありますか。その点を一番最後にお伺いします。
  186. 大和田渉

    説明員(大和田渉君) もし何らかの事情によって来年の一月に外務大臣が訪ソができない場合に、昨年の十月の総理訪ソの際の共同声明の内容は大きく変わるかということでございますが、われわれとしては、その変わるか変わらないかというよりも、やはり何とかあの内容を実現したいという努力を現在やっている最中でございます。実際に一月に時間がとれるのか、十二月にうまく時間がとれるのかという問題を、いま現在詰めておる最中でございます。
  187. 佐藤信二

    佐藤信二君 どうもたいへん長い間ありがとうございました。私は国民の一人として、外務大臣ができるだけ早い機会に昨年のこの日ソ共同声明に基づく平和条約の交渉継続ということで行かれることをお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  188. 羽田野忠文

    説明員羽田野忠文君) 外務大臣は、しかるべき機会に北海道現地視察することを考えておられるものと思います。いま委員から御要望のありました訪ソ前の現地視察並びに早い時期に訪ソして、この基本問題についての話し合いを外務大臣がなされてもらいたいという希望につきましては、大臣にお伝えをいたします。
  189. 金井元彦

    委員長金井元彦君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、本日はこれにて散会いたします。午後二時四十九分散会      —————・—————