○正森委員 この問題は、本来は
田中総理が、御
自分が聞き、それは違う、それはこうだということでお答えになるのが本筋だと思いますから、いかに
法務大臣とはいえ
一定の距離があるというのはわかります。
しかし御参考に、
田中総理が四十七年十一月十一日に、囲みで書かれたのがあるところでちょいと大きくなって、それから順番に大きくなって、つまり全く事実無根だというのが違うという証拠の
一つとして、八月二十日に「ゆうぎり」というところですか、そこで懇談をされたという内容を、全部読みますと相当長くなって小一時間もかかりますので、各項目ごとに、こういう趣旨のことを言われたのだということをなまの
ことばで引用して、だからかってにつくったものではないのだということを御参考までに申し上げておきたいと思います。
キッシンジャー氏との会談のあとでございますから、「キッシンジャーとの会談について」というのが第一の主題でございます。ここで言われているのは、
意味はよくわかりませんが、二十億円台になるかどうか、当時わがほうが大幅に黒字だというようなところがございましたから、それを減らすという主題だったのだろうと思いますが、そういうことについてずっと言われているのですね。その関係でこういう
意味のことを言っているのですね。そこで「オレは、日米関係はきょうだいみたいなものだ、
家族なんだ。きょうだいならおとうとが二十億円台にするよう全力をあげて努力するというのだから、それを見守ってくれるのが日米間の友情だ。でなきゃどうするということでは絶対いかぬといってやった。向こうは繊維でも三年間といわれずるずるになった、日
本人の
考えがわからないといった。」ということになっておって、それで「オレは、日本は大いに努力してるんだ、政府は憲法違反で二つも訴えられるほどやったんだといったら、向こうは、日
本人は憲法をいつの間にかこなして
自分のものにし、それが
自分たち」というのは米国のことですね、「米国のほうへ逆のたてになってきているというので、それはきみ
たちが日本につくりあげてきたんだ。日
本人はそれを
自分のものにしただけだと言ってやった。」云々というようになっているんですね。もっと長いんですよ。しかし、全部言うと時間がなくなりますから。そういうようなことをずっと言っておるのです。
その次の主題が「中国問題」であります。たしかこれからいよいよ中国へ出かけるという直前ですね。「いつも十日間ぐらいゴルフをやれば必ず八十五になったんだがことしはどうも成績がよくならぬ。また
軽井沢へ来るさ。九月は忙しいな。十月に来よう。台湾はむずかしいよ。」こう言っておられるわけですね。つまり、九月に行くということを間接ににおわしておられるわけですね。
次に「北ベトナム問題について」出ております。「北ベトナムは二、三カ月のうちに手をあげるよ。北爆と港の封鎖がきめ手になった。中国やソ連は家庭の事情でそれどころじゃない。北ベトナムは弱っている。北爆は日本が無差別爆撃で降伏したようなものだ。非核や必要悪じゃなく人類のエゴイズムだな。」こう言っておられる。このお見込みはみごとに狂ったわけですね。ベトナムはがんばり抜いて、そしてあの和平協定をかちとったわけですから、先見の明があまりないということですが、こういう内容のことを言っておられる。
その次に「戦車、四次防問題」が出てきます。これについては、「日米関係はきょうだいだが、戦車を騒いでいる連中は、それだけやってもアメリカはおこらない、手を引かないという前提でやっているだけだ。もしアメリカがおこって手を引いたらたいへんだ。」云々、こういうことです。
その次に「進退について」という問題が出てまいります。「いまオレは、いつまで(
総理を)やろうかと
考えてるんだ。六十までだな。」こうなりまして、そのあと非常に微妙なことを言われているんですが、私生活に関連することも出てまいりますので武士の情けでこれは省略いたします。しかし、進退についてということで、あの人でなければ言えないことをおっしゃっている。
その次に出てくるのが「教員派遣について」であります。「十万人派遣を、おチャラカシだといってるが、オレは本気だよ、なにいっている。来年に五万人、再来年に五万人を送る。外国をざあっと見てくりゃ国際感覚は高まるし、気の狂ったこともなくなる」というようなことをずっと言っているんですね。これも時間がないから省略します。
その次に出てくるのが「難病対策」です。ここで例の「オレは法律だ」ということとばが出てくるのです。この難病対策についてちょっといいことを言われて、「オレにできないことはない。オレは法律だ。法律をつくってやる。半年でやる。」こう言っておられるのです。ですから
田中氏もいいところがあるので、見ますと、悪いことをどんどんやってやるという音一味ではなしに、ここで言われたのは難病対策なんかについてたまたま出た
ことばなんですね。しかし、
考え方の一端が出ている。「オレにできないことはない。オレは法律だ。法律をつくってやる。半年でやる。」こう言っておられるのです。
その次に「日本列島改造について」というのが出てきます。「オレはまず北海道をやるよ。」こういうことを言われて、そのあとで、「オレは
軽井沢にもいっぱい
土地がある。箱根だって、どこにだって
土地は何万坪もあるんだ。けど
土地が値上がりするようなことはオレとは関係ない。
自分の利益なんて
考えたことはない。人間というのはやっぱり大地が必要だ。オレは池田さんのとき、
軽井沢は性に合わんといったことがある。しかしオレが長生きするには
軽井沢の気候が必要だとわかった。オレの
土地なんかみんなに分けてやる。オレはちゃんとやってるんだ。別荘だって君
たちに見せたいが、まだ整っていないから見せないだけだ。池のコイだって女にもらったものばかりだよ。」こうおっしゃっているんですね。
「マスコミについて」ここと、その次に「
田中番について」といわれているところが、渡辺さんが
質問されたところなんです。これについては大体渡辺さんの言われたとおりですからあまり詳しく申し上げませんが、しかしこう言うているのです。「いま自民党が悪口をいわれるが、政権を持っている理由がわかるか。それはマスコミなんだ。日本のマスコミほど発達しつくしているのは世界に例がない。オレはいま日本をどんな方向でも持っていける。オレはマスコミの内情を知りつくし、全部わかっている。郵政相のときから、オレは各社全部の内部を知っている。その気になれば、これ(首をはねる手ぶり)だってできるし、弾圧だってできる。オレはしたことはないがね。西山のときは、オレは爆弾を落とした方がいいといったんだ。キミ
たちが
記事を書いて、原稿を送ったあとでも、やめさせようと思えば、やれる。」途中省略。「だからオレは佐藤や福田や池田と違ってマスコミはちゃんとなっているんだ。」こう言っているんですね。
その次は、最後に「
田中番について」。「ハコで最後にヒネるのがいかん。あれは絶対いかん。もっと率直に見てくれよ。」「ゴルフだっておれは
自分の健康のためにやってるんだ。オレがなにをしようとしているかはオレの静養先を見てくれればわかる。オレがいま一番恐ろしいのは一線のキミ
たちだ。あとは部長も社長もどうにでもなる。オレが最近やってることはキッシンジャーと会った以外は全部キミ
たちを意識してやった
ことばかりだ。な、つまらんことは書くなよ。ひねったり、オチャラカシはいかん。
田中番は四交代というのはいかん。それでは顔も名前もわからん。二交代で名簿を出してもらう。東京へ帰ったら社長にいおう。ぜひこれはやらなきゃいかん。名簿を出してキチンとしてからオレはなんでもしゃべる。一対一で会いたいといえばオレはいつでも会う。ただしオレは商売人とは絶対相手にせんぞ。オレはお前とは話さないとはっきりいう。社の方とはオレから会わない。だからキミ
たちも協定を守ればオレはキミ
たちと
軽井沢へくるし、どちらも得じゃないか。」
こう言って各社全部について、内部と関係がありタッチした
ケースを列挙して、○○
新聞の品川の移転、○○
新聞について
テレビの免許の例というようにずっとあげて、「オレは
権力の中枢にずっといたんだ。全部わかっている。
田中番の
ことばとにかくちゃんとしよう。ひねったり、つまらんことはやめだ。わかったな。」「つまらんことは追いかけず、ちゃんとすればオレも助かるしきみらも助かる。」こうなっているのですね。
こういうものを全部見ますと、ハコに初め書かれたからちょっと長くなって、それがどんどん長くなったというものじゃなしに、まさに八月二十日に
軽井沢で何人かの
田中番の記者を相手にブランデーを飲みながら、キッシンジャーが帰られた翌日だということで非常に気を許されたのかもしれないけれ
ども、こういう
意味のことを言われたということはもう間違いがないという心証を受けるのです。これはきわめて重大なことであります。
しかもそのあとも、これは砂防会館の事務所でのことのようでありますが、全部のことは省略いたしますが、「この男はあぶないと見れば、各社ともみんなツーカーだから、排除するぐらいはわけはない。
総理になって二カ月、おれも無我夢中でやってきたが、やっと落ちついてきた。
田中番のことは近く各社に申し入れてはっきりさせるつもりだ。」こう言っているのです。つまり一度ならず二度言っている、こういうことなんですね。
私は、こういうような事こまかな内容が実は
ほんとうでないことを願うのです。しかしこういう
資料を見ますと、それは事実であるというように思わざるを得ないし、それと同じようなことは当時
文芸春秋が書き、そして週刊現代がお書きになった。それのさらに詳しいものを入手したということになるのです。
ちょうど時間が参りましたのでやめますが、私がこういうことを申し上げるのは、現在、月刊
文芸春秋で二つの論文が出ており、
国民全体が、われわれが困っているときに、どうして内閣
総理大臣はこういうことをかりにやっておったとしても、政権の座におれるんだろうか、われわれは乏しい収入で
税金をちゃんと払っているのに、これだけたいへんなものを買って
税金をそんなに払わなくていいんだろうかというような疑問を持っているのです。
ところが、それをただされなければならない方が、こういうようにマスコミについて圧力をかけることを平然と、いかにブランデーを飲んだところとはいえ、記者諸君に言われるという心境であるならば、われわれは閉会中審査や臨時国会等で
国民のために理非曲直を明らかにしたいと思います。国
会議員には圧力はかけられないと思いますけれ
ども、しかし報道機関その他に圧力をかけて、議会制民主主義の根本である
新聞や報道機関をまずものもいえないような状況にしていくという性癖、志向性を持っておられる方じゃないかと思わざるを得ない。そうなるとたいへんなんですね。昔の憲法なら、大臣が一人やめるといえば総辞職です。いまは、それじゃどうぞやめてくだ
さいといって任免権を行使されたら終わりですけれ
ども、しかし日本の将来を
考え、議会制民主主義を守ろうとされる限り、やはり限度を越えたことについては、政党政派を越えて行き過ぎは敢然として是正しなければならないと思います。
私はそういう問題点を
指摘して、本来
田中総理がお答えになることで、
法務大臣としてなかなかお答えにくいかとは思いますけれ
ども、私の
質問を終わらしていただきますので、もし何か御発言がございましたら御発言をお聞きして私は
質問を終わりたいと思います。