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1974-09-11 第73回国会 衆議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年九月十一日(水曜日)     午前十時二十二分開議  出席委員    委員長 小平 久雄君    理事 大竹 太郎君 理事 小島 徹三君    理事 谷川 和穗君 理事 稲葉 誠一君    理事 横山 利秋君 理事 青柳 盛雄君       井出一太郎君    塩谷 一夫君       橋本龍太郎君    山下 徳夫君     早稻田柳右ェ門君    日野 吉夫君       正森 成二君    山田 太郎君       安里積千代君  委員外出席者         警察庁警備局長 山本 鎮彦君         防衛施設庁総務         部長      安斉 正邦君         法務政務次官  高橋 邦雄君         法務省民事局長 川島 一郎君         法務省民事局参         事官      古館 清吾君         法務省刑事局総         務課長     筧  榮一君         法務省刑事局刑         事課長     根岸 重治君         法務省刑事局公         安課長     俵谷 利幸君         法務省矯正局長 長島  敦君         法務省保護局総         務課長     横山精一郎君         法務省入国管理         局次長     竹村 照雄君         公安調査庁次長 渡邊 次郎君         外務省アジア局         次長      中江 要介君         最高裁判所事務         総局刑事局長  千葉 和郎君         法務委員会調査         室長      松本 卓矣君     ————————————— 委員の異動 八月二日  辞任         補欠選任   佐々木良作君     安里積千代君 同月二十九日  辞任         補欠選任   安井 吉典君     上原 康助君 九月九日  辞任         補欠選任   上原 康助君     安井 吉典君   安里積千代君     佐々木良作君 同月十一日  辞任         補欠選任   野呂 恭一君     山下 徳夫君   保岡 興治君     橋本龍太郎君   佐々木良作君     安里積千代君 同日  辞任         補欠選任   橋本龍太郎君     保岡 興治君   山下 徳夫君     野呂 恭一君   安里積千代君     佐々木良作君     ————————————— 七月三十一日  一、裁判所司法行政に関する件  二、法務行政及び検察行政に関する件  三、国内治安及び人権擁護に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政検察行政及び裁判所司法行政に関  する件      ————◇—————
  2. 小平久雄

    小平委員長 これより会議を開きます。  法務行政及び検察行政並びに裁判所司法行政に関する件について調査を進めます。  おはかりいたします。  本日、最高裁判所千葉刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小平久雄

    小平委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  4. 小平久雄

    小平委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲葉誠一君。
  5. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 きょうは法務大臣が病気で欠席ということ、それから刑事局長がヨーロッパですか、会議に、おり悪くではなく、おりよく出席したのかもわかりませんが、そういう関係もありまして、あまり政治的な問題ではなくて、技術的なことをお聞きをするのにとどめたい、こう思います。  最初にお聞きをしたいのは、文世光、これに関連をしているのかしていないのか、吉井美喜子という人が起訴されたわけですが、この起訴された経過あるいは事実についての概略の説明をお願いをしたい、こういうふうに思うわけです。
  6. 俵谷利幸

    俵谷説明員 御指摘吉井美喜子関係処理状況について御説明申し上げます。  吉井美喜子は、本年の八月十六日に大阪府警本部逮捕されまして、八月十八日に大阪地検に送致されております。八月十九日に勾留請求がなされまして、八月の二十八日身柄拘束のまま大阪地方裁判所に公訴が提起されております。  その起訴事実の要旨でございますが、被告人は、韓国人文世光が、被告人夫吉井行雄名義旅券を不正に取得して、これを便って不法本邦外出国する意図であることの情を知りながら、文世光昭和四十八年十一月及び四十九年七月の二回にわたり、大阪府庁外務大臣あて香港韓国等渡航先とする一般旅券発給申請書氏名欄吉井行雄生年月日欄昭和二十五年八月二十五日、本籍地欄に高松市扇町一丁目五十九番地等必要事項を記入して、文世光写真四葉を添付した吉井行雄申請名義一般旅券発給申請書四通を、同人戸籍謄本など必要書類とともに一括提出し、同人名義旅券を交付されたい旨虚偽の申し立てをし、外務大臣発行名義香港韓国等渡航先とする日本国旅券、二通でございますが、これに申請のような不実記載をさせて、そのころ右各旅券の交付を受けた上、昭和四十八年十一月十九日及び四十九年八月六日、大阪国際空港において入国審査官に対し、右不実記載旅券をそれぞれ真正なもののように装って提出して行使し、有効な旅券出国の証印を受けないで、同空港から本邦外の地域である香港及び韓国に向け不法出国した際、昭和四十八年十月三十一日及び同四十九年六月二十七日の二回にわたりまして、大阪市内において、右文世光に対し旅券発給申請に要する吉井行雄名義戸籍謄本及び住民票各二通を手交し、文世光の右の犯行を容易ならしめてこれを幇助した、こういうものでございます。  罪名でございますが、免状等不実記載幇助、同行使幇助、これは刑法百五十七条第二項、百五十八条第一項、六十二条第一項、これに当たります、それから出入国管理令違反幇助、同令の七十一条、二十五条第二項、それから刑法第六十二条第一項、これに当たります。  以上でございます。
  7. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、いま言った八月二十八日に身柄拘束のまま公判請求したわけですが、そのときに勾留延長、おそらく十日間だと思いますが、請求して却下をされ、準抗告してそれも却下されて、そして夜おそく身柄拘束のまま公判請求をした、こういうふうに、いまあなたは説明しないけれども、新聞紙上その他で伝えられておるわけですが、そうすると、なお十日間の勾留延長請求をしたという具体的な理由はどこにあるわけですか。
  8. 俵谷利幸

    俵谷説明員 原庁検察官におきましては、この事件につきまして、吉井美喜子が自分の夫である吉井行雄名義戸籍謄本等を渡しておるということでございましたので、その関連状況等につきましてさらに明らかにする必要がある。それから本犯でございます文世光韓国におります、こういう事情もございまして、なお入念に捜査をする必要がある、こう判断した上で、さらに捜査の必要を認め、勾留延長請求をした、こういうふうに承知しております。
  9. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 勾留延長請求をして却下されるということは、率直にいって起訴にまだ煮詰まっておられない、こういうふうに考えられるので、普通の場合だったら処分保留のまま釈放して、なお継続的な捜査をして、そして起訴、不起訴をきめる、一般的にはこういうのが普通の行き方ですわね。それを、身柄拘束したまま公判請求したということは、率直にいってそれだけの必要性というかあるいは価値というか、身柄拘束をして直接公判請求しただけの起訴価値本件にあるというふうに検察庁では認めたのだ、常識的に見てこういうふうに思うわけですね。そうすると、それは身柄拘束して起訴するだけの価値本件においてはたしてあったのかどうかですねてあったとすれば、どういう点からしてあったというふうに判断をするのかというのが一つですね。  それから二つ目は、この身柄拘束のままの起訴について、最高検なり法務省なりに大阪地検から指示というか報告というか——法務省に対して指示というのはおかしいかもしれぬ、最高検に対してはいいかもわかりませんが、そこら辺のところがどういうふうな経過なのかということですね。
  10. 俵谷利幸

    俵谷説明員 この吉井美喜子処理につきまして、勾留の十日満期に際しましてどのような考え方をいたしたかにつきましては、これは検察庁、特に大阪地検、それから高検あるいは最高検で協議がされたことと思いますが、私どものほうで特にこの事件につきまして指揮をしたようなことはございません。それ以上のことは、事件公判にかかっておりますし、捜査の問題でございますので、詳細な御説明は差し控えさせていただきたいと思います。
  11. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、文世光が本犯——本犯という意味は、旅券法なり出入国管理令違反のほうの本犯、こういう意味ですね。  そこで、ちょっとよくわからなかったのですが、そうすると、勾留延長請求した段階あるいはその後の段階において、検察庁としては文世光を何らかの方法て取り調べたい——取り調べることについてのいろいろな法律的な問題事実上の制約は別として、乞ういうふうな考え方は、その当時あったのです畑、あるいはいまでもあることはあるのですか。
  12. 俵谷利幸

    俵谷説明員 本犯に当たります文世光取り調べの容疑の問題につきましては、この事件内容なり態様等によってきまると思いますが、本件につきましては、文世光申請をしたというようなこと、それから旅券に貼付されている写真文世光本人写真であること、こういったところから相当に明らかであり、またほかの証拠からもそういう認定ができると思いますので、どの程度に必要であったか、おのずから常識的な線があったろうと思いますが、その辺については詳しい報告は受けておりません。一般的な感じで御説明申し上げますと、旅券法関係につきまして文世光についてどの程度取り調べの必要があったか、こういう点についてはお答えを差し控えたいと思いますけれども、おそらくいろいろな警察等の、ICPOその他の線からの協力、情報といいますか、そういうものも入ってくる余地があって、そういうものも参考にしながら捜査を進める、こういう体制であったのではなかろうか、かように理解しております。
  13. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、身柄拘束して起訴したということから考えられるのは、これが旅券不実記載だ、やれ出入国違反の法理だとしても、率直にいって、かりに、文世光が行ったけれども何にもなかった、あったかどうかわかりませんよ、いまの段階でわからないんだけれども、何にもなかったとすれば、それはあなた、この事件については第一警察が立件しないでしょう。立件したって、検事のところで不起訴かあるいは罰金の事件じゃないですか。だから、よくわかりませんけれども、朴大統領狙撃事件があったというそのこととの関連において、その間のいろいろなものがあるかもわからない。あるいは痴情の点とか、いろいろあるかもわかりませんが、そういう点が中心となって、そういう点を将来取り調べたいということで勾留延長請求をし、身柄拘束のまま起訴した、こういうふうに、常識的かどうかの判断は別として、考えられるのではないですか。ちょっと質問が微妙な点で、あるいは答えにくいかもしれませんけれどもね。
  14. 俵谷利幸

    俵谷説明員 この事件は、御案内のように、文世光出国を助けた、容易ならしめた、そしてその文世光外国で重大な事件を起こしたという点が考慮にあったことは否定できないところであろうと思います。しかし、この事件につきまして特に例外的に扱ったということではなかろうと思います、といいますのは、同種の旅券法違反事件につきまして身柄拘束のまま処理をした、こういう案件もかなりの数にのぼっておりますし、実際に公判請求いたしまして懲役刑に処せられるというものも相当数あるわけでございます。その点からいきまして、特に異例な扱いをしたというふうなことではない、かように理解しております。
  15. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは、主犯と目される人が具体的に何を犯すであろうかということの十分な認識か、ある程度認識か、あるいは未必かわかりませんけれども、そういうふうなものがあったという場合の話で、そこがはっきり切れてしまっているものならば、それは法益の侵害はあったかもしれぬけれども、何も身柄拘束して起訴するほどのことはないのであって、そこら辺のところで、そうするとどういうふうになりますかね。これは公判に進んでいきますね。公判に進んでくるというと、その点がやはり事実の認定あるいは量刑というか、そういうふうな問題の中で大きく争われてくるんではないでしょうか、結局事実としてね。これは全く一般論として聞くんですよ。一般論として聞くということであり、それから法律論というか、そういうものとして聞くわけですから誤解をされると困るのですが、そこで、日本の法廷へいく前に、検察官としては捜査段階で、名前をあげるといけませんからしないとすれば、外国にいる、あるこの事件主犯ですね、旅券法なり出入国のほうの主犯と目される人を調べるということは、日本検察庁としては可能なんですか。
  16. 俵谷利幸

    俵谷説明員 外国にあります者につきまして検察官取り調べをするという場合には、外国司法権の侵犯と申しますか、それに抵触する問題が出てくるわけでございます。したがいまして、その当該国の了承といいますか、了解が要るであろうかと思います。
  17. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それはもう当然ですわね、主権の侵害になりますから。  そこで問題となってくるのは、韓国のほうから、よくわかりませんが、文世光関連をしての、同人がしゃべったということの要旨ですか、あるいは向こう警察なり検察庁に対する供述調書ですか、そういうふうなものが日本に来ているのですか、どうですか。まずそれをお聞かせ願って、その内容についても明らかにしていただきたい、こういうふうに考えるわけです。
  18. 山本鎮彦

    山本説明員 向こうのほうから、文世光陳述要旨というものは外交ルートを通じて私のほうに送られてきております。その内容はかなり広範にわたるわけでございますけれども、凶器に使った拳銃をいかにして窃取したかという一連経緯でございますね。それから、いまお話しになりましたような、吉井美喜子幇助によって吉井行雄名前旅券を入手して香港に行った経緯、それからさらに、ことし韓国に入国した経緯、そういうもの、それから金浩竜なる人物ですね、朝総連の生野西支部政治部長といわれる金浩竜からのいろいろな指示、それとの連絡、そういうこと。それから金をもらったとか、そういう一連日本における殺人のためのいろいろな準備行為、そういうようなものが述べられているということです。
  19. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは、よくわかりませんけれども、本人署名捺印がある供述調書そのものが送られてきたというのとは違うわけですか。ただ報告ですか。
  20. 山本鎮彦

    山本説明員 本人署名捺印というのではなくて、陳述要旨ということで取りまとめてあるわけです。
  21. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、いま言ったその陳述要旨というものは、一体日本刑事訴訟法でどういう形式的な証拠能力があるわけですか。たとえば逮捕のときの疎明資料として使えるものなのかどうか。それから、勾留請求のときはちょっと問題だと思うのだけれども、まあそれもどうかというような点ですね。それをどういうふうに理解するかということですね、あとまたそれから質問しましょう。
  22. 俵谷利幸

    俵谷説明員 御指摘の点でございますが、これは一般情報程度のものに当たろうかと思います。したがいまして、警察官のつくります、あるいは検察官のつくります捜査報告書等内容に引用もできることであろうと思いますし、それと同等程度のものとして逮捕等の疎明資料になり得る、かように考えます。
  23. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 逮捕等の疎明資料になり得るという話でしたが、では厳格に分けますと、本件吉井逮捕のときにそれは疎明資料として使われたんですか、第一点としてですね。  それから、いま逮捕等ということばが出てきたんですけれども、勾留請求のときに一体それは疎明資料になり得るのですか。また本件の場合、なっているのですか。
  24. 山本鎮彦

    山本説明員 逮捕のときの疎明資料には使っておりません。
  25. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、そうすると韓国警察官本人を調べた供述調書というものが将来出てくるわけですね。ことにピストル事件については日本国内法の問題ですから、これはあとで聞きますけれども、その問題が出てくるんじゃないかと思うのですがね。一体それは、日本刑事訴訟では形式的な証拠能力がそのままの状態であるのですか、どうなんですか。
  26. 俵谷利幸

    俵谷説明員 この問題につきましてはまだ具体的に上がって問題になっているわけでございませんので、確定的な御説明は控えさせていただきたいと思うわけでございますが、一応刑事訴訟法条文等を読んでみますと、日本の場合には供述書につきましては厳格な証拠能力の制限がございます。これらを勘案しまして考えますと、刑事訴訟法の三百二十一条一項三号の書面には当たるのではなかろうか、かように考えております。
  27. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、そうすると、それが被告人なり弁護人のほうで、出た場合に不同意になったときはどうするのですか。
  28. 俵谷利幸

    俵谷説明員 この問題はまた仮定の問題になろうかと思いますが、公判維持上どの程度にその者の供述書を必要とするかということによりまして決定されるだろうと思います。たとえばその供述者を直接証人として取り調べる必要がない、こういうことでごさいましたら、それ以上の証人調ぺをすることなく終わるということになるのではなかろうか、かように考えます。
  29. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 ちょっとその条文そのものを検討しているわけでございませんけれども、その供述調書をとった人が外国に行ってこちらに出てこられないという場合には、書面がそのまま証拠になるわけでしょう。それに該当するわけですか、いまのような場合でも。外国検察庁がとった外国人に対する供述調書でもそれに該当するわけかな、そうすると。日本においてじゃないですよ。
  30. 俵谷利幸

    俵谷説明員 その点につきましても一応該当するのではないか、かように考えております。
  31. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、問題をまたあとに戻します。あとでもう一ぺん質問いたしますが、警察のほうでは、向こう狙撃があったときに、日本から行っておった人がありますね。二百名から三百名ぐらいともいわれておるわけですが、その人がいまは日本に帰ってきておるわけですね。この人について、そのときのいろいろな状況等警察のほうとしては聞いておるんでしょうか。そこはどうでしょうか。
  32. 山本鎮彦

    山本説明員 まだ聞いてはおりませんけれども、いま聞く準備をいたしております。ぼつぼつ帰ってきておるようでございます。
  33. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 ぼつぼつでなくて、だいぶ帰ってきて報告会なんかやっているらしいですが、それはそれとして、ぼつぼつ聞く状況だというのですけれども、なぜそれを聞く必要があるわけですか。
  34. 山本鎮彦

    山本説明員 犯行現場状況、こういうものもしっかり把握したいということでございます。しかし一万、現場犯行のこまかい状況については、韓国政府当局に対しても、詳しい状況を送ってほしい、こういうことはかねてから要望しております。
  35. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それでは、また話がちょっと変わるというか、ピストル警察官が盗まれたしそのピストルがこの犯行に使われたというようなこと、これは警察としては当然、日本国内における事件ですから調べなければならぬわけですね。これはあたりまえの話。そうすると、そのピストルを盗んだのがだれであるかということ、そのことについて、ピストルとの連関等で現在警察のほうでは把握をしておるわけですか。
  36. 山本鎮彦

    山本説明員 文世光が使った拳銃については、韓国のほうから連絡がございまして、それの写真、ナンバー、型式等は送ってきております。それから試射弾丸を撃って、それも五発送ってきております。それらを検討いたしますと、去る七月十八日に大阪府の南警察署高津派出所盗難にあった拳銃の一丁であるということは、これは間違いございません。また、それから発射された弾丸であるということも間違いございません。  それからもう一丁の——二丁盗まれたのでございますが、もう一丁の拳銃は、文世光の自宅を捜索したところ、二階の床下から発見されております。  それから、拳銃と同時に帯革とか付属品盗難にあったということでございますが、これは文世光自供ということで、通報によりますと、奈良県の大和川のこういうところに投棄したという通報がございまして、これも捜査しておりますが、これはまだ発見に至っておりません。  それから、文世光国内に残しておった車、友人に寄託しておった車でございますが、この車の中を調べたところ、その中で、自動車の工具がございますが、プライヤーですか、この工具派出所のかぎをこじあけた痕跡と一致しているということもはっきりいたしております。それから状況的に見て、ライトバンの車を使って彼がいろいろと交番、派出所等を見て歩いて、そして高津派出所が一番侵入しやすいというような判断をしたという彼の供述があるわけですが、そのライトバンらしいものが当日現場付近におったというような証言もあります。  ただ、現場に残した指紋とかあるいは掌紋、足跡痕ですね、そういうものとの一致という点は出ておらないわけでございますが、供述内容その他から見て、文世光単独犯であるという可能性は強いのでございますが、まだ単独犯であるという断定はいたしておらないので、関係方面捜査は続けておるという状況でございます。
  37. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 これは日本国内における犯罪ですから、日本警察が当然調べなければならないことですね。そうすると、調べる過程で、結局警察としては文を調べなければならぬわけでしょう。——よく注意して聞いていてくださいよ。文を調べなければならぬわけですね。そこのところをまずどういうふうにするわけですか。
  38. 山本鎮彦

    山本説明員 現在韓国のほうからは、拳銃の窃取についての文の自供というものがかなり詳細に来ております。それから、こちらからそういう疑問点についても尋ねており、それについての回答も来るというような形で、かなり密接な連絡がとれておりますので、現在の段階で特に文を調べるために行かなくても立件できるのではないか、こういう判断でいま進めておる状態であります。
  39. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 しかし、そのピストル大統領なりを狙撃する目的で盗まれたのかどうか、こういうふうな点だとか、実際にそのピストル狙撃によってこういう事故が起きたのかというようなな、動機というか事情というか、そういうふうなものを調べなければ、本件としてはあなたのほうで立件をして送検をされても、送検されたほうは困ってしまうのではないかと思うのです。そこで質問するのは、あなたのほうはピストル窃盗事件を立件してどこへ送るのですか。どこへ送るといったって、これは大阪地検にきまっているけれども、それであと検察庁に聞きますけれども、送られた大阪地検はこの事件をどうするのか。本人不在のまま処分するのですか。あるいは韓国に移送するというのもおかしな話だけれども、そんなことができるのかどうかも知らぬけれども、これはどうするのです。——まあそこまでにしましょうか。まず警察のほうから。
  40. 山本鎮彦

    山本説明員 大阪地方検察庁に送致するつもりでございます。
  41. 俵谷利幸

    俵谷説明員 拳銃窃盗事件等につきまして送致があった場合、被疑者日本にいるかいないか、あるいはどういうふうな状況になっているかということを判断して、検察庁において中間的な処分あるいは最終的な処分ということがあろうかと思います。具体的にいえば、中止処分とかというようなことでございます。
  42. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、警察としては送ればいいわけですね、送ればいいということばは悪いけれども。そうすると検察庁のほうでは、外国にいてこっちに来る可能性がないからということで中止にしてしまう、大体こういうふうな筋書きになるわけですか。それで、いろいろな処理のしかたがあるかもわかりませんが、そうすると検察庁なり警察なりは、実際にどういう状況でこの狙撃経過をたどって行なわれたということについては、これはます警察としては関心がないというのか、調べる必要がないというのか、あるいは調べる必要があるというのか、そこはどういうふうなんですか。どういうふうに考えておるわけですか。
  43. 山本鎮彦

    山本説明員 それは、犯行現場状況等は詳細に知りたいと思っておるわけでございまして、これについてはかねてから韓国のほうへ、具体的に詳細にその犯行現場の事実を通報してもらいたいということを依頼しておりますが、まだ現在までそういう通報に接していない現状でございます。
  44. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 犯行現場状況を詳細に知りたいというのでしょう。外国で起きた犯罪で、日本にいる韓国人がやったと考えられているのでしょうしこの人がやったかどうかわからないのですよ。としても、同こうでのことで、殺人そのものについては日本警察権なり何なり及ばないんじゃないですか。それを詳細に調べたいというのは、どういうふうな根拠から調べたいというんでしょうか。ということは、一つは、たとえばいまのピストル窃盗事件があるでしょう。この事件については、それがどういうふうにどこで使われたかとか、あるいは当初から使われる目的であったかということで、これは非常に事情が違うわけですね。そういう点を調べるためにも、この狙撃がどういうふうに行なわれたのかということを調べる必要があるだろう、私はこう思うのですが、どういう点で警察として大統領のその狙撃がどのような状況で行なわれたかを調べたいわけですか。どこへひっかかってくるのですか。
  45. 山本鎮彦

    山本説明員 拳銃でございますが、拳銃大阪府警の南警察署高津派出所から盗まれたものと間違いないと思うのですが、どういうような形で発射されて、それが一発目がどうして、二発目がどうして、三発目がどうというような、現場状況によって、その拳銃の使われた状況と、それによってどういう行為が起こったかということは、やはりわれわれとしては拳銃一連捜査上必要であるという判断でその点を知りたいということでございます。   〔委員長退席、大竹委員長代理着席〕
  46. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 知りたいはわかるのです。それはぼくらも知りたいわけだけれどもね。知りたいというのは、どこに結びつくのかというのですよ。警察のいまやっている事件の何に結びつくのかということ、文のピストル窃盗事件に結びつくのかということです。これは結びつけるのか、つくのか、いろんな点であれだと思うのですが……。ちょっと質問もしにくいものだから、考え考えぼくもしゃべっているものだからあまり迫力がないのですがね。  そこで、問題はこういうことでしょう。では、こういうふうに聞きましょうか、韓国から文の供述要旨というものが来た。それについて、これは一〇〇%コレクトだ、正確だ、あるいはそうでないとか、あるいは部分的にどうであるとかああであるとか、少なくともその報告要旨なるものにあなたのほうとしては疑問を持っておる、と言ってはこれはまた話があれになるかもわからぬけれども、検討を要するものがあるということは考えているわけですか。
  47. 山本鎮彦

    山本説明員 その陳述要旨は、まあ本人陳述したことは間違いないと思いますが、その内容について正確であるか不正確であるか、事実に反するかとか、これはこれから一つ一つ事実に当たっていかなければならない問題でございます。たとえて申し上げますれば、最初のあれによると、文は、拳銃は二丁盗んで、一丁は大阪の港の第三突堤に捨てたということを言っておったのですが、こちらの捜索によると彼の自宅から発見されたという形で、これは確かに事実が、どういう理由か知りませんけれども、間違っておったわけです。その他、これまでの調べによっても事実的に一致しない面もございます。また一致している面もございます。そういう意味では、一つ一つしさいに十分調査して真実をきわめたいという観点でその調書を見ているわけでございます。
  48. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 本件の、たとえばなぜ文があの警戒の厳重なところに入れたんだろうかということですね。大使館員だと言ったというのですが、大使館員の席は二階だというのですがね。下はそういう席はないというのです。リボンをつけて区分けしているから入れなかったのじゃないかという説もあるし、ビザが簡単に手に入ったとか、そういうふうなこととか、いろいろな問題点が本件についてはなぞというか、かぎとしてあるわけですね。こういうふうな点については警察としてはどうなんでしょうかね。どうもふしぎだ、そういう事実もはっきり知りたい、それがピストルの発射に最終的につながるわけですから知りたい、こういうふうに考えておられるのでしょうか。
  49. 山本鎮彦

    山本説明員 私どももやはり、彼が金浦飛行場からどういう形で拳銃の検査を受けないで入ったか、それからホテルに泊まってどういう形で犯行日まで過ごしたのか、それからどういう形で会場に入ったのか、どこの席にすわったのか、そういう点も詳細に知りたいことでございますので、この点を向こうのほうに要求しているわけですが、まだ現在まで返答に接していない状況でございます。
  50. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 何か、文世光という人のにいさんがおられて、それが、去年のことですか、本人を呼んだりなんかして集まって、本人大統領をどうとかするという話をしたとかしないとかいうことから、しかりつけて、そしてそのにいさんたちが、大阪韓国総領事館かにも知らせたり何かしておるというようなこともいわれているわけですね。これが一つですね。それからもう一つ、何かそのときに大阪警察、おそらく西成警察じゃないかと思いますが、よくわかりませんが、そこへもそうした事実を知らせたことがあるというふうなことも伝えられているのですね。この点についてはどの程度わかっておるわけですか。
  51. 山本鎮彦

    山本説明員 そういうことが報道されましたので、にいさんに来ていただいて聞いたところ、当時そういう話を弟から聞いて、いろいろと説得したけれども、それを警察なり韓国の総領事館に連絡したということはないという供述を得ております。
  52. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 八月の二十一日ですか、外務省と法務省警察庁、内閣法制局ですか、これが本件関連をして合同会議を開いたということが伝えられておるわけですね。そして、伝えられておる中で、国内法適用の当否を検討したということらしいのですが、このときの会議というか、その内容、どういうふうなことが検討をされたのかということを、これは法務省のほうにお聞きをしたい、こういうふうに思います。
  53. 俵谷利幸

    俵谷説明員 御指摘の点につきましては、警察庁と外務省の担当課長並びに私どもが出席いたしまして、法務省で話し合いをしたことがございます、法制局が参加したようなことはございません。  その会議のおもな目的は、当時、事件内容等、マスコミ等で報道されておったわけでございますが、私ども必ずしも正確な情報を得ていないということから、情報の交換をしたし警察が外務省から受けておるような情報内容等につきまして、その説明を受けて、その情報等に基づきまして若干の問題を話し合ったということで、主としして情報交換の会であったわけでございます。
  54. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると警察としては、いま大体話の中でも出てきましたけれども、文世光という人の要旨ではなくて供述調書向こう検察庁のとった供述調書というものをこちらに送ってもらいたいというふうなことは、これは当然考えておるわけですか。あるいはこちらからも、向こうの了解を得て、行って調べなければならないというふうなことも場合によってはあり得るということも考えられる、こういうことでしょうか。
  55. 山本鎮彦

    山本説明員 現在向こうに要望している点は、こまかい事実行為についてどうかということを、先ほど話したような点について送ってほしいと言っております。それが供述調書になって来るものか、あるいはさらに詳しい説明のような形になって来るかわかりませんが、われわれとしてはその内容によって判断をしたいと思っております。それから捜査官の派遣ということですが、現在まではそういう形で向こうからかなり詳しいものが来ておりますし、それから次々とこまかい点の連絡等もできておりますので、現在の段階ではその必要はないという判断でございます。
  56. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで警察にお伺いをしたいのは、今後国内でやる捜査というのはどういう点が残されているということでしょうか。
  57. 山本鎮彦

    山本説明員 拳銃の点は、さっき申し上げた形でまだやるべき点があるわけでございますしそれから一連関係文世光なる犯人がどういう形でこの犯行を決意して、過去一年か一年半にわたって準備をして、その過程であるいは香港に行き、あるいは、その供述によりますと東京の病院に入院しておった、それからいろいろな人からいろいろな援助なり示唆を得たというような、一連陳述要旨の一つ一つを克明に捜査、検討していきたい、真実をはっきりさせたい。そういう過程で、もし国内法に触れるような問題があれば、これは捜査をしていくという考えでございます。
  58. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、現在進行中の事件ですし、そのことに関連をしてあまりいろいろなことを聞くのもどうかと思いますので、この問題についてはこの程度にしたい、こういうふうに思うのですが、そうすると、いま言ったように、ピストル事件については、それは向こうのほうの起きた事件と比べると、率直にいうと軽い。軽いから事件としては中止処分にしてしまう、こういうことを前提として結局捜査を進めているというふうに理解してよろしいのですか、あるいはそういうふうにせざるを得ないのですか、そこはどういうんですかね。
  59. 山本鎮彦

    山本説明員 拳銃のほうの捜査の結果がどうなるかということ、そういうことの予断によってわれわれは捜査を左右しているわけではございません。われわれは、捜査としてやるべきことをきちっとやりたいということでやっているわけでございます。
  60. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それから、これは入管のほうにお聞きするのですが、本件事件あとに、韓国側からいろいろな肩書きで人が入ってきておる、こういうことが伝えられておるわけですねしその中には、肩書きはいろいろあるけれども、KCIAというか、そういうふうなものに所属する人もいるというふうなことがいろいろ伝えられておるわけですね。それは率直にいって、この事件後、韓国から日本にどういうふうな人が一日に何人ぐらい入国をしておるか、こういうふうなことは入管としてはわからないんですか、わかっているんですか。
  61. 竹村照雄

    ○竹村説明員 入国につきましては、すべて出入国港において入国カードを提出させておりますので、その記録がございます。したがいまして、そういう記録に基づきまして調査する体制にはございます。
  62. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 だから、八月十五日か十六日以降、日本韓国から毎日どういうふうな人が何人ぐらい入ってきているかということは、現在の状態ではわからないんですか。
  63. 竹村照雄

    ○竹村説明員 いろいろな角度から調査をしようとすればできないことはないということでございます。ただ、絶えずそれを把握するだけの体制といいますか、たとえば何月何日に韓国から同名入ってきたかというふうに個別に聞かれますと、それはこういうふうでございますということはすぐ答えられると思います。しかし、全体的に、たとえば職業がどうであるかとかいろいろなことになりますと、それは相当の時間を要するということでございます。
  64. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そうすると、全体としての統計というものはいつごろまでのものがいま日本ではできておるわけなんですか。
  65. 竹村照雄

    ○竹村説明員 実は、私どもの入国カードというものは、各出入国港において取りまとめまして、逐次本局に送られてきております。たとえば伊丹を例にとりますと、伊丹空港で入国した者の入国カードというのは現在八月三十一日までの分が本局に来ております。これを現段階では電算機に入力するわけでございますけれども、電算機に入れているのは八月の十日ごろまででございます。したがいまして、八月十日ごろまでにつきまして、あるデータのもとでこういったのはどうかということになれば、電算機にかけてすぐわかりますけれども、それ以降の分につきましては手作業で一枚一枚繰ってやらなければいけないということでございます。なお、電算機に入力しましても、これを今度はいろいろな問題、たとえば職業別はどうなっているかとか、在留資格別はどうなっているかといいますと、これには一定の期間を区切りましてプログラムをつくってやっております。したがいまして、新しいデータでこういったことを調査しろといわれますと、電算機に基づく限りは、新しいプログラムをつくるのに相当時間がかかり、それに基づいて電算機にやるということになりますとまた時間がかかるという問題はございます。
  66. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 一応いまのその関係は終わりというか、あれにしておいて、この前沖繩へ当法務委員会で視察に行ってきたわけです。そのときに特に米軍関係の犯罪、これらを中心にして調べたわけなんですが、最初集まったときに報告を受けた際に、結局アメリカ人の犯罪、ことに、公務の場合は別として、そうでない、日本裁判所で裁判する場合のやり方ですね、このことを私も聞いたわけですが、そうしたら、アメリカ人の被告人に対してアメリカの法務官が立ち会うというような説明があったわけです。私が立ち会いかと聞いたら、いや、これは傍聴ですというようなことになってきたわけですが、法廷を見たら、法廷の中の傍聴席ならばこれはいいわけですが、そうでない。法廷の中、弁護人席、被告人席のすぐうしろのところですが、そこに机があって、いすが二つあるのですね。何だと聞いてみたら、これがアメリカの陸軍、海軍の法務官が立ち会う席だと、こういうわけです、私も疑問に思って地位協定を調べてみた。初めは立ち会うことができるのだというふうに聞いていたんですが、地位協定の十七条の九項ですか、この(g)のところを見ると、これは立ち会うことができるではなくて、立ち会わせる権利があるように書いてあるわけですね。これはそういうふうなことに私もなれてないから非常にびっくりしたのですが、もちろん立川の事件のときなんか、八王子でもそういうふうになっていたということのようなんですが、これは一体どういう経過でこういうふうな地位協定ができて、そしてその運用はどういうふうに行なわれているのですか。もう八王子では実際には立ち会ってないということも聞いたのですが、何のためにこういうふうな地位協定ができて、どういうふうに運用をされているわけですか。
  67. 根岸重治

    ○根岸説明員 お答え申し上げます。  どういうような過程で、どういう議論が繰り返されてこういう規定が入ったかについては詳しく存じませんけれども、外国の軍隊が他の国にあります場合に、その軍隊は軍隊としての裁判権を通常持っておるようでございまして、結局日本側の裁判権と軍隊としての裁判権とが競合する場合もございますので、種々の場合を想定いたしまして、その調和をはかるために外交関係によります条約といいますか協定が結ばれまして、その一つとしてただいまのような規定が入ったものというふうに聞いております。
  68. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 それは公務の犯罪だったら向こうが裁判するというのもやむを得ないかもしれませんが、そうじゃなくて、全く公務外の事件で、日本裁判所で、当然裁判権が及んで裁判するのでしょう。これはあたりまえのことでしょう、そこへ外国人というか、外国の法務官がそこに席を設けて立ち会うというのは何の意味だかよくわかりませんが、監視しているのでもない、圧力を加えているわけでもないと思いますが、三十五年当時はしようがなかったかもわかりませんが、いまになってみればこれはおかしいんじゃないですかしこの立ち会いの人は、法務官というのは何を実際はやっているのですか。
  69. 根岸重治

    ○根岸説明員 まず、立ち会いの実態でございますが、結局事実上は傍聴と変わらないようでございまして、全然発言権もございませんし、もちろん裁判官の合議に関与するものではございませんし、ただその場所にいるだけと理解しておるわけでございます。したがいまして、合意議事録におきましても、この立ち会いの権利というものは、公開の裁判に関する日本国の憲法の規定を害するものではない。言いかえますと、公開の裁判の禁止の理由があるときには、理論的にはそれへ立ち会わせないことができるということも入念的に書かれておるわけでございます。結局は、米国側におきまして自分の軍隊の構成員等の裁判について重要な関心を持っておって、いわゆる弁護人をつける権利その他と並べて、特にその裁判に傍聴的立場であっても、もし被告人の保護に必要な措置がとり得るならばそういう措置をとる等の保護手続を万全に整えるための一つの方法としているというふうに考えておるわけでございます。  なお、これはついででございますが、日米の地位協定だけの問題ではございませんで、この種の基本的な類型とされておりますいわゆるNATO協定におきまして全く同種の規定があるようでございまして、いわば国際的なこういった形のモデル的なものと全く一致しておるというふうに聞いておるわけでございます。
  70. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 私が聞いたのは、八王子では、初め立川に基地があって、最初のころはやはり立ち会っていたのでしょう。いまはもう立ち会っていないんじゃないですかということが一つ。  それから、立ち会わせるというのは、これは裁判所司法行政の問題かわかりませんが、なぜ法廷の内部に立ち会わせるのですかし傍聴席にすわっているなら話がわかるけれども、弁護人席から被告人席のうしろに特別のいすを設けてやっているわけでしょう。それを見て奇異に感じたのはぼくだけかな。率直に、悪いことばでいえば人をはかにしているなという感じがします、まるで従属国扱いのような印象を私は持ったのです。そこへきて、被告人のすぐうしろのところにすわっているのですし話をすることもあるのかもわかりませんが、具体的にはこの人たちは何をしているのですか。何か、本国なり部隊へ帰って、日本の裁判がどういうふうに行なわれているかということの報告をするんじゃないですか。  それから、刑務所へ行ったら、陸軍法務官と書いた札が下がっているのです。アメリカ人の法務官が面会に来るのです。もちろん公務の者は入っていませんから、公務外の者ですよ。日本の刑務所に未決で入っているんだから。そこへ面会に来る。自由に面会さしているのかどうかわかりませんが、面会さしている、陸軍法務官という札が下がっている。ぼくは何だと思ったのです。  現実にこんなことが行なわれていて、日本としては安保条約があるのだからしようがない、こういうのですか、どうして傍聴席じゃなくて中へ置いてあるのですか。
  71. 根岸重治

    ○根岸説明員 その立ち会いをしております法務官がどういうような報告を後にしておるかというようなことについては、私つまびらかにしておらないわけでございます。  それから、これはもちろん法廷の構成員ではございませんので、立ち会わなければ裁判できないというわけじゃありません。米軍側でこの事件については関心を持って、立ち会いたいという場合には立ち会うことができるというだけの問題であるというふうに考えておるわけでございます、  なお、法廷のどこにどういう席を設けるかということにつきましては、各地によってちょっと違うようでございますが、これは私のほうからお答えすべきことではないので……。
  72. 千葉和郎

    千葉最高裁判所長官代理者 いま根岸課長からお話がありましたが、各地によっていろいろでございますが、私どもとしては、やはり起訴された米軍構成員である被告人の権利として条約上規定されておりますので、その権利としての保障を与えようということで、米軍のほうで立ち会わないと言わない限りはその席を設けるような扱いになっております。その場所をどこにするかということは、最初この協定ができた当時に協議したと思われまして、合衆国政府の代表者が立ち会う場合の座席は弁護人席の後方あるいは弁護人席の横にするというような通達が以前から出ております。この協定ができた当時の協議の結果によってそうきまっているのだろうと思います。
  73. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 くどいけれども、立ち会って実際に何をやるのですか。私の聞いた範囲では、裁判の模様を報告するそうですね、本国に報告するのか軍に報告するのかわかりませんが。それは安保条約があるのだからしようがないといえばしようがないかもわかりませんが、ぼくはあまりにも何か従属的な感じを受けるのですね。おかしいじゃないかという気がするのですが、おかしくないといえばおかしくないかもわからぬけれども。八王子ではもうやってないのですか、このごろは。
  74. 千葉和郎

    千葉最高裁判所長官代理者 ほとんどやってないということではないようでありまして、特に立ち会わないということを言ってきた場合に立ち会わないということのようでございます。ほとんど逆で、むしろ立ち会っておるほうが多いのではないかと思います。
  75. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 どうも私は、地位協定全般について、これだけじゃありませんけれども、たとえば強制執行の場合でも、基地に入って強制執行できないわけでしょう。相手方に委任するのですか、相手方の任意の履行に期待するとかという形になるのですが、地位協定全体がもう十五年もたっているのですから再検討する必要があるのではないか、こういうふうに思うのです。これは法務省や何かに聞いてもあれだし、外務省なりに聞く必要があることだと思いますけれども、どうも全体として、安保条約がそうだから従属的かもわかりませんが、地位協定そのものにどうも納得いかないという感じが私はするので、これは別な機会ですけれども再検討をするようにしたい、こういうふうに考えておるわけです。いまのときも、何か法廷で検事が最初に紹介するのだそうですね。ただいまアメリカの法務官のだれだれが立ち会っておりますと裁判長に報告するのだそうですね、最初にしそれで裁判長が、権利だから許可するわけじゃないのでしょうけれども、それを認めるのか認めないのか知りませんが、そういう形のやり方をしておるそうですね。日本の裁判の独立を害しておるわけではないだろうけれども、害しておるような印象を与えられるので、非常に遺憾に思うので、いろいろな形の中で地位協定全般を再検討するように、これは別の機会に具体的な事実などあげてよく要請をしたい、こういうふうに考えるわけです。  そこで、沖繩に行って、これは防衛施設庁関係になりますか、アメリカの車人なり軍属なりその他の者が日本人に対して、業務上過失致死だとか傷害だとかあるいは強盗だ何だと、いろいろありますね。そういうことに関連して損害賠償が現実に行なわれているのかどうなのか。そのまま未解決の状態になっておるのも相当あるらしいというのですねしその資料を要求しても、沖繩の弁護士会の人は防衛施設庁のほうでは出さないとか言っておりましたけれども、具体的に復帰前のもので未解決のもの、それから復帰後における事件でまだ未解決のものというのはどの程度あるわけですか。
  76. 安斉正邦

    ○安斉説明員 お答えいたします。  沖繩におきます米軍関係の事故でございますけれども、全般的に問題をお話し申し上げますと、四十七年の五月十五日に沖繩は復帰したわけでございます。それからことしの七月三十一日まで、二年半ばかりでございますけれども、この間に起きました事故がトータルで四千四百六十件でございます。これは復帰前、昭和四十三年、四年、五年、六年という四年間の全体の平均に比べますと、月平均にいたしますと半分以下、四七%でございますが、半分以下に減っておるというのが事実でございます。  そこで、この復帰後の四千四百六十件、これの中身を見ますと、交通事故が八六%、それからその他のものが、刑事関係と申しますか、それが一三%というようなことになります。したがいまして、大部分が交通事故であるということが言えます。  そこで、この事故が起こりましたときの処理のしかたでございますけれども、事故が起こりますと、警察なり市町村なりが直ちに発見をするわけでございますが、防衛施設庁のほうに通報がありまして、係官も現場に急行するということになります、ただ、わりあいに大きな事件になりますと参りますけれども、一般の交通事故の場合には警察だけでお願いしているというのが事実でございます。  そうして、これの処理でございますけれども、これを性質別に分けまして、公務上と公務外とに分けられるわけであります。公務上というのは、地位協定の合意がありまして、こういうものが公務であるというような合意があるわけでございますが、特別の場合は争いがありますけれども、通常は、これは公務である、公務外であるということはすぐにはっきりするわけでございます。  そうして、公務上になりますと、防衛施設庁としてはその申請を受け付けまして、被害者とよく話し合った上で支払いになるわけですが、その間に米軍と十分話し合いをいたします。したがいまして、一般国内的な事故の処理よりは時間がかかると思いますが、通常は、公務上の場合、三ないし三カ月半ぐらいで平均的には処理が済んでおります。ただ、特異なものはなかなか長引くというものがございます。  そのほか、公務外になりますと、これが非常に多いわけでございますが、先ほどの四千四百六十件を公務上と公務外に分けてみますと、公務上が九百八十九件、公務外が三千四百七十一件、こういうふうになります。したがいまして三対一ぐらいの率になるわけですが、公務上は九百八十九件、この復帰後の全体の中で、すでに解決しておりますのは七百三十五件ということでございます。  それから、公務外になりますと、これは先ほど申しましたように自動車の衝突とかいうようなことでございまして、示談といいますか、当事者間で話し合いがついてしまうというケースが多いので、施設庁のほうにはあがらないというケースがございます。  施設庁といたしましては、この事故につきましてはすべて手紙——往復はがきでありますけれども、被害者側にこれを出しまして、申請主義ですから、問題がありますならば申請してくださいということで出しますが、返答のありますのが三〇%ぐらいしかない。あとのものは来ない。ということは……(稲葉(誠)委員「どっちから来ないのですか」と呼ぶ)被害者側から返答が来ません。ということは、おそらく示談その他で解決されているのではないか、あるいは申請をまだ出さないでいろいろ考えていらっしゃるか、そういう状態ではなかろうかと思います。  そして、全体に申しますと、ただいま手持ち案件の数は、申請書が来ておりましてまだ解決してないとか、話し合い中というのが現在百十七件でございます。したがいまして、これはもちろん公務上も公務外もございますけれども、この百十七件についても処理を進めております。先ほど申し上げましたように、大体三カ月ないし四カ月で終わるのですけれども、非常に特殊なものだけはだんだん処理がたまっていってしまうという傾向にはございます。非常に長いもので、かなり昔のものが相変わらず解決しないというのが確かにたまっております。しかし、通常のものは三カ月ないし四カ月でケリがつくというのが現状でございます。  次に御質問の復帰前の状態でございますけれども、御承知のように、いわゆる施政権下と申しますか、講和発効から復帰に至るまでの、昭和二十七年の四月二十八日から昭和四十七年の五月十四日までがいわゆる施政権下にあったわけでございます。この施政権下におきましてのこのような事故につきましては、いわゆる外国人請求法というのがございます。この外国人請求法によりまして米軍が処理をしていたわけでございます。これによって大部分が処理されていたということになるわけでございますけれども、なお不十分であると申しますか、却下をされたとかいうような案件がございまして、琉球政府当時、琉球政府に申請がありましたが、アメリカ側から却下をされて補償がなっていないんだというような案件があるようでございます。私のほうの手持ちにはただいま琉球政府当時の資料があるわけですが、その資料につきまして施設庁といたしましてはこれを調査をしまして、いずれは補償の方向に持っていくべきものは持っていくわけですが、はっきり申し上げまして、復帰前の人身事故関係、財産関係についてのいわゆる請求権問題と申しますか、復帰協定の四条にあるわけでございますが、この請求権問題につきましてはまだ国の中で処理すべき所管がはっきりきまっておりません。当面防衛施設庁で調査はする。しかし、調査の結果に基づくこれの処置については、内閣審議室でいまどちらでやるかというような検討をしておるというのが実情でございます。
  77. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 いまの未解決百十七件というのは、これは復帰後ですが、それは事故を起こした人が帰ってしまうということで未解決なものも相当含まれておるわけですか。これはどうなんでしょうか、どういう理由で未解決なんですか。
  78. 安斉正邦

    ○安斉説明員 ここに私、百十七件のそれぞれの案件についての詳細のデータは持ってまいりませんのであれでございますが、おっしゃるとおり、いわゆる損害額について争いがあるというか、そういう問題もあります。それから、確かに本国に帰ったという問題もございます。しかし、いわゆる十八条の六項にありまするところの、本人が支払うのでなくて、外国人請求法によって、米軍が本人にかわってこういう損害に対して見舞い金を支払うという制度が地位協定十八条六項にあります。それの場合には、本人日本にいようといまいと関係なくそれは処理ができるわけでございます。しかし問題があって、ここに持っておりませんけれども、やはり内容的になかなか話し合いがつかないというものが多いというふうに承知しております。
  79. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 ではその百十七件の問題の内訳ですね、あまりこまかいことはいいですけれども、内訳を資料としてあとでいただきたいと思うんですが、どういう理由で未解決なのか。損害額が折り合わないとか、本人が帰ってしまってどこへ行ったのかわからないとか、いろいろな理由があると思うのですが、大体大ざっぱに理由別に分けていただきたい、こういうふうに思うわけです。
  80. 安斉正邦

    ○安斉説明員 いまの御要望でございますけれども、ある程度類別的なあれでございまして、個々の問題に入りますと個人的な問題も入っておりますので、その辺は御了承いただきたいと思います。
  81. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 そこで、驚いたんですが、たとえば沖繩の裁判所へかかる全刑事事件の二五%がアメリカ人というか、アメリカ人ばかりじゃありませんが、外国人の犯罪でしょう。拘置所なんかでも大体四分の一ぐらい、五十人か六十人いましたね、外国人が入っているわけですね。あまり多いのに私驚いたんですが、これはまたあれですが……。  そこで、いま問題となっておる一つに伊江島の事件ですね、信号銃で撃ったというのがございますね。この事件の事実関係は大体わかっていますからいいんですが、現在どういうふうになっているかということが一つと、日本のほうで公務外だと主張する根拠、それから将来の見通しですね、これをひとつ説明を願いたい、こういうふうに思います。
  82. 筧榮一

    ○筧説明員 ただいまの伊江島の米兵発砲事件でございますが、先生御承知のとおり、七月三十日の合同委員会におきまして本件を刑事裁判管轄権分科委員会に付託されまして、その後分科委員会を現在まで五回にわたりまして開きまして、現在なお協議を続行中でございます。  それから第二の点、日本側が公務外であるという主張の根拠でございますが、米側が公務中と申しますか、公務執行中における作為または不作為によって生じた犯罪であるという主張をいたしております。これに対しましてわがほうは反対の証拠をあげて、そうではないといういま主張をいたしておるわけでございますが、現在その点について双方で証拠を出し、論拠をあげて交渉中でございますので、当方の主張の内容につきましてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。  それから将来の見通しでございますが、交渉でございますので確たることは申し上げられないと思いますが、日米双方ともできるだけ早く結論を出したいという気持ちは一致いたしております。できるだけ早く結論を出したいと考えておりますが、いつごろまでにということにつきましては、ちょっと確たることは申し上げかねると思います。
  83. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 その事実関係、それから従来の経緯、それらから見て本件は公務外の事件だということについて、日本側は、法務省になると思いますが、確信を持っている、こういうふうに承ってよろしいでしょうか。
  84. 筧榮一

    ○筧説明員 私どもといたしましては、あらゆる証拠を検討いたしまして、これは公務外であるというふうに認めましたので、その主張を現在続けておるわけでございます。   〔大竹委員長代理退席、委員長着席〕
  85. 稲葉誠一

    稲葉(誠)委員 大体時間も来たようですし、なお検討しなければならない問題とか残された問題については別な機会に譲りたいと思いますし、それから現在進行中の事件についての質問ですから質問もなかなかやりにくい点があって、十分でなかったというふうに思いますが、質問は一応これで終わります。
  86. 小平久雄

  87. 横山利秋

    横山委員 いま同僚委員の質問並びに答弁を聞いておりまして、ポイントになりますところから入りたいと思いますが、文世光という人は今日まで警察あるいは公安調査庁の調査の中に浮かび上がったことがあるか、せられておった人であるかどうか、それをまず伺います。
  88. 山本鎮彦

    山本説明員 これまで警察調査捜査関係で出てきた人物ではございません。
  89. 横山利秋

    横山委員 私の手元にあります一つの情報でございますが、民団の生野、ここが今回一番問題になる地域なんでありますが、生野の南支部長で安衡淑という人がおります。この安衡淑という人がほかの人と語っておった内容なんでありますが、文世光をずっと尾行してきた。しかし一週間くらい行くえがわからなくなってしまった。新聞を見ると、その間に文がソウルに行って狙撃事件を起こしたことがわかった。自分も光復節に参加する準備をしておって、八月十日出発の予定が、突然民団中央から八月十九日に延期すると連絡があった。予定どおり八月十日に離れておれば、光復節式場て文世光をつかまえ、その場て——不穏当なことばでありますからちょっと省略いたしますが、その場でなにしてしまったであろう、こういうことを言うておるそうであります。この安衡淑という人はだれの指示文世光の尾行をずっとしておったのか、よくさだかではないわけでありますが、文世光韓国へ行ったということを知り、自分も行く予定になっておったところが延期を命ぜられたというのでありますから、この情報がかりに事実であるとするならば、民団のほうでは文世光状況について安衡淑氏に尾行をさせるほどよく把握をしておったと見られる筋があるわけでありますが、民団側がそういうように注目をしておった文世光が、日本側で、公安調査庁でも警察庁でもほんとうに文世光という名前が今日までいろいろな過程で上がらなかったものであるかどうか、私は少し疑問を持つわけでありますが、どうでございますか。
  90. 山本鎮彦

    山本説明員 繰り返すことは恐縮ですが、われわれのほうとしては、これまで彼についてそういうような特別な視察をしたり注意したことはございません。
  91. 横山利秋

    横山委員 わかりました。  では文世光のおかあさんの陸末蘭という人の問題なんですが、この点につきましては、この文世光のおかあさんの陸という人と高春奉さんという人が八月十四日午後三時、KAL便で伊丹の空港におりた。文世光が例のライトバンで出迎えておる事実については、警察はこの間確認をいたしましたね。
  92. 山本鎮彦

    山本説明員 八月十四日でなくて八月四日だと思います。そういう事実はございます。
  93. 横山利秋

    横山委員 八月四日に文世光のおかあさんと高春奉氏が伊丹へおり立った。そこへ文世光ライトバンで出迎えたという事実を警察は確認をした。  そのおかあさんの陸末蘭という人が四年前、韓国式のキャバレー、安川某の経営のときに従業員であった。三年前、安川が韓国式の料亭秘苑を経営してからは共同経営をしているといわれておる。この経営がむずかしくなってから、神戸生田区居住の金鐘九と、日本名吉田憲一というそうでありますが、昨年三月から十一月ごろまで共同経営をしていたという、こういう事実は御存じでございますか。
  94. 山本鎮彦

    山本説明員 若干、事実関係はわれわれの調査とは違っておるように思いますが、いずれにしろ文の母親がキャバレーの経営に参加したことは事実でございますが、ただ、そのキャバレーはもう昨年の春ごろから経営不振ということで営業しておらないようでございます。それから本人も、その共同経営者と意見が違いまして、出資金は全部引き上げてそれから身を引いたというふうに承知いたしております。
  95. 横山利秋

    横山委員 この安川何がしという者が朝鮮名で安といって、例の金大中事件のアンの家というものと同一ではないかといわれておる事実はどうお考えですか。
  96. 山本鎮彦

    山本説明員 当時、朝鮮名で安というということで情報がございまして調べたわけでございますが、本人はアンの家というような家に住んでおるわけではなくて、その当時すでに岡山のほうに引っ越しておりまして、当事大阪にいたような事実は、われわれとしては把握いたしておりません。
  97. 横山利秋

    横山委員 この安川が韓国式の料亭を経営していたころ、その料亭の名前は秘苑であるということは御存じでございますか。
  98. 山本鎮彦

    山本説明員 そのように承知いたしております。
  99. 横山利秋

    横山委員 その秘苑というものがKCIA関係のたまりであったという事実は御存じでございますか。
  100. 山本鎮彦

    山本説明員 その家が韓国の総領事館の付近にあったために総領事館の者が出入りしたということは聞いておりますけれども、KCIAの者であるかどうかということは、われわれは存じません。
  101. 横山利秋

    横山委員 ごもっともでございますね。そうするとあなたも、領事館の近くにある秘苑であり、領事館の人間がずいぶん出入りをしておる料亭であることはお認めのようであります。そしてまた、その領事館の中に、日本韓国の公館の中にKCIAの人が多く存在しておるという客観的事実もお認めでございましょうね。
  102. 山本鎮彦

    山本説明員 総領事館の中にKCIAの者がいるかどうか、その点は私のほうとしてはわからないと申しますか、関知いたしておりません。外務省その他のほうであるいはそういうことは調べておるかもしれません。
  103. 横山利秋

    横山委員 外務省はどうですか。
  104. 中江要介

    ○中江説明員 御指摘の点につきましては、金大中氏事件が起きましてから、そういう疑問がありましたために何とか外務省でも調べましたところ、韓国側の制度といたしましては、過去KCIAに属していようが外務省以外の役所に奉仕していようが、外交官として正式に通告を受けている以上は外交官としての扱いで、それ以外の活動はしないというたてまえになっているという回答をいただいているだけで、その中にKCIAの関係者がいるかいないかについては、事実はわからないという現状でございます。
  105. 横山利秋

    横山委員 少なくともいまの質疑応答の中で、文世光のおかあさんが働いておったところ、秘苑、その秘苑というところは領事館の人が出入りするところであるということ、そして領事館の中にKCIAの人がおったかおらないのかわからない、おったところではっきりしないという御返事でありますが、金大中事件経過の中で明らかなように、韓国高官の中にKCIAの人たちがかなりいるということは、客観的にも認められるところではないかと私ども思うわけであります。  このおかあさんが八月四日に伊丹の飛行場におり立ったときに同席をしておる、一緒におった高春奉という人の問題なんでありますが、この人は大阪東成区の北中通り一丁目で貿易商をしておる人だそうでありますが、南朝鮮にも本年の七月二十五日から八月四日までにわたって滞在をしておって、ぞしていろんな意味においてうわさをされる関係にある人だそうでありますが、高春奉という人はどんな人で、どういう経歴を持っておって、何のために南朝鮮に行っておったか、警察では御存じでございましょうか。
  106. 山本鎮彦

    山本説明員 私のほうはその点、調査をいたしておりません。
  107. 横山利秋

    横山委員 どうも本件につきましてはずいぶんミステリー的な要素が非常に多いのでありまして、そして表通りだけで、ああ、文世光が撃った、ああそうか、ああそうかというふうには首肯しがたいさまざまな問題があり過ぎる、私どもはそう思われてなりません。出発をする前におかあさんと、うわさの人の高春奉が韓国へ行っておって、帰ってきて出迎えて、そして日ならずして文世光が今度は韓国へ出発して朴さんを撃った。  今度はその撃つについて、先ほども御指摘があったように、まず第一に招待状がなかった。それから韓国語が話せなかった。それからその劇場においては最大の警戒体制がしかれてあった、にもかかわらず文世光は、招待状もなく、韓国語もできず、厳重な警戒体制の中で、大ものがすわる席の近くへ行くことができた。そして、少なくとも民団大阪、民団生野の人々が警戒すべき、尾行を常にしておった人物であったという文世光がどうして一体、招待状もなく、韓国語もできず、そして厳重な警戒体制の中で入れて、大もののすわる場所のそばまで行って、そして朴大統領を射撃することができたのかということになりますと、私どもには全くわからぬのであります。  それで、あなたが先ほどおっしゃった、供述調書が来たと、こう言う。供述調書にはいろいろなことが書いてあるらしい。——供述調書てはない、何か向こうから陳述要旨ですか、陳述要旨が来た。それについて客観的にごらんになって、いま私が言った面を含めて、どういうところに疑問がある、日本警察当局としてはどういうところがこれは納得できないということでありますか。その分析の結果をひとつ聞かしていただきたい。
  108. 山本鎮彦

    山本説明員 いろいろとこまかくなりますが、拳銃捜査関係では、最初は、二丁盗んだ、一丁は大阪の港に捨てたということですが、これが捜索の結果本人の家から出たという点では、これは確かに矛盾があったわけでございます。それから、香港に行ったというのでございますが、最初は十一月のたしか二十六日から三泊というような形になっておりましたが、実際のこちらのほうの吉井美喜子の調べでは、たしか十一月十九日からと、日付が違っておる点がございました。それから、万景峰号という船に大阪で五月五日に乗船したということになっておったわけですが、また変えてきまして、五月四日というふうに日付が違ってきておるようでございます。  そういう点、こまかい事実関係で、いま申しましたような形では矛盾なり相違している点もございますが、また一方、そういう香港に行ったとか、あるいは韓国に入る際に吉井美喜子を通じて吉井行雄名前で入ってきたというようなこと、あるいは拳銃を窃取した、そういう状況等、また信憑性のある内容も持っておるわけでございまして、一がいにわれわれはこの陳述要旨をそのまますべて正しいと見るわけでもございませんし、また全部正しくないと見るわけでもなくて、一つの参考として真相究明の資料にしていきたいというふうに考えております。
  109. 横山利秋

    横山委員 私も何も全部が間違っておるだろうと言っているわけではない。しかし、私どもの調査いたしましたところからいいますと、随所におかしな点が多い。  いまあなたはことばを避けられたようでありますが、私が指摘した現場における諸問題、射撃現場における諸問題については、この陳述要旨の中にありましたか。またそれについて矛盾点がありましたか。
  110. 山本鎮彦

    山本説明員 陳述要旨の中には書いてないのでございます。
  111. 横山利秋

    横山委員 先ほども質問が出たのですが、今度は文世光のおにいさんの文根洙ですか、文根洙は日韓会談当時、反対闘争の当時は大阪府の韓学同の副委員長、民主派に属す人だったそうでありますが、朴狙撃に使うこと等の話を聞いて、その旨を領事館や警察当局に通報した、最初はそういうことになっておった。ところが、この問題が新聞に報道されるや、先ほどあなたがお話しのように、府警の警備部長が、いや、そういうことはないと言い、文根洙も弁護士を通じて、いや、そういうことを言ったことはなかったと、弁護士を通じて言うた。ところがこの問題は、私が調査したところ、大阪府警での新聞記者みんな、あとになって取り消したということから、最初の事実をみんな信用しておるわけであります。  なぜ、そういう事実がない、なかったのだ、違っておったのだと言わざるを得なかったかということなんであります。この文世光のおにいさんが、文世光がそういう意図があり、そういう傾向がある人間であるということを知り、大阪警察当局や領事館に通報した瞬間から、うそであろうとほんとであろうと、その文世光名前警察当局のリストの中にあがっておるべきではなかったか。それが、そういう事実がほんとうになかったのであろうか、私はそこに疑問を持つわけであります。正直にいって疑問を持つ。その点はどう思います。
  112. 山本鎮彦

    山本説明員 そういう、にいさんから警察のほうに当時通報はございません。全くございません。それから、弁護士を経由してでなくて、御本人自体が来て、そういうことを警察なり総領事館のほうに通報した事実もない、こういうふうに言っておりますので、われわれとしてはそういう事実が誤って報道されたのではないかというふうに考えております。
  113. 横山利秋

    横山委員 疑問の残るところだと私は思います。少なくともこの文世光という人が、いままで全然何の活動もしなかった人間ではない。どういう意図で、どういう面で表に出てきておったかどうかは知りませんけれども、全然しらふの人間ではない。この民団のほうではもうマークをつけておった人間である。ところがその人間が、警察当局の全然リストの上へあがってきていない人間であるという点について、私どうも釈然としないところがございます。  大阪の民団の某幹部であります、ちょっと名前を公表するのはこの際避けたいと思うのでありますが、今回大阪から約百人ぐらい光復節の慶祝に参加をした中の一人であります。その参加をした一人の人が言うておることなんでありますが、当日会場は三階で、二階へおりてきたときに警備員が文世光に対してだれかという質問をしておった。何のために来たのかと言うて尋問をする、そういう現場に層合わせた。そこで文世光が朝鮮語ができないので通訳をこの人がしてやった。そのときの最初の彼の言い分によれば、文世光が、私は丸紅飯田の社員である、後宮大使と会場で会う約束であったのでたずねてきておる、こういうふうに言うた。それで通訳してやった。そこで警備員が一階のロビーに行けというので、文世光にそれを伝えた。それでこのことについてはワシントンポストの新聞記者もそれを確認をしておるというのであります。これ以上はちょっと私も言いにくいわけでありますが、要するに、先ほど私が指摘をいたしましたように、何といっても文世光が会場に堂々と入れたことについてはほんとうにわからぬ。ちょうど大阪から行った民団の幹部が、文世光が三階から二階におりてきたところで見つけて、何だというふうに、話がよくわからぬものだから、韓国語がしゃべれない文世光にかわって通訳をしてやったということは、一体どういうふうに考えたらいいのであろうかと思うわけであります。こういう事実について御存じありませんか。
  114. 山本鎮彦

    山本説明員 われわれとしては本人からまだ確認はいたしておりませんけれども、そういうように会場の中で文世光なる人に会って、通訳をしたという情報は入っております。ただその場合、その場所で、われわれの聞いている範囲内では、文世光ではなくて、日本から来た韓国人だけれども日本語が話せないので、その人物の通訳をしてやった。あと写真を見せられたら文世光であったということがわかった。その場では文世光とわからないで通訳をしてやった、こういうふうにわれわれのほうに情報が入ってきておりますが、間接情報なものでございますので、まだ確認をいたしておらないので、はっきりした点はわかりません。したがって、当日どういう形でそういうことになったのかよくわかりませんので、先ほどお答え申し上げましたように、詳細にわたってその会場での彼の行動については、韓国政府に事実調査の結果の通報を求めておる段階でございます。
  115. 横山利秋

    横山委員 一人の青年が飛行機で韓国へ行って、そして朴大統領を射撃しようとする。招待状もなく、韓国語も話せない韓国人が、ピストルをポケットに入れて、そしてだれの援助もなく、厳重な警戒体制の中へ行って、そして朴大統領の目の前付近まで行ってこれを射撃するということが、一人の青年である文世光単独犯行であるということを常識的にあなたには考えられますか。
  116. 山本鎮彦

    山本説明員 事実関係を私はっきり把握いたしておりませんので、どうこういうことを正確に申し上げられませんけれども、確かに警備はかなり厳重にやっておったと思いますけれども、その間隙を縫ってそういうことが行なわれたんじゃないかという推定だけでございまして、詳しく事実を認定しないと、そのほかに共犯がいたかどうか、そういうことまで私としてはこの場合言う立場にないわけでございます。
  117. 横山利秋

    横山委員 しろうとじゃあるまいし、あなたも多年この種の仕事を担当してきて、たとえばこの国会へだれかが入ってきて、だれか幹部を殺すということについても、そう簡単にできることじゃないですよね、例は悪いけれども。それを、飛行機に乗って行って、そして韓国へ着いて、そしてホテルへ住まって、ホテルもまた豪著なホテルへ入ったらしいのですが、そこでは二人、彼一人ではなかったという情報があるのを御存じかと思うのですが、彼一人ではなかった。会場へ行くのも豪奢な車を使った。そしてチップもかなり払ったということもあなたは御存じだと思うのですけれども、そうして、さて会場へ着いてから、韓国語が話せない人間がどうやって招待状もなく中へ入れるか。それは調べてみなければ単独犯行でないかあるかわからないなんということを……。あなたも専門家としたならば当然意見があるべきだと思いますが、どうなんですか。
  118. 山本鎮彦

    山本説明員 韓国捜査当局の発表によれば、単独犯であるというふうに公式に発表しておるということは承知いたしております。したがって、どういう経過でそういうことになったかということを現在韓国請求をしておるわけでございまして、その結果によって判断をいたしたいと思っております。
  119. 横山利秋

    横山委員 韓国政府が文世光単独犯行であると言うておることは私も知っています。私も知っていますけれども、しかし、もうこれだけの客観的な事実からいうと、とてもそんなことは考えられないではないか。きわめて常識的に考えられないではないかということを私どもは考えるが、あなたは専門家として、韓国政府の言っていることをまさかうのみにしているわけではなかろう、こういうことを言いたいわけなんであります。  それから、何か、文世光は初めの一発を撃ったのが空砲であって、その撃ったあと拳銃を落としたという話——実は私はこの事件のあったときソビエトにおったものですから、帰ってまいりましていろいろ調べたわけでありますが、当時の雰囲気というものを新聞なりテレビで直接受けていないものですから、あとでいろいろ調査した中からでありますが、あなたのほうに入っております情報はどうでしょうか。
  120. 山本鎮彦

    山本説明員 情報としてはいろいろと入っておるわけでございますが、われわれはどこまでもきちっとした形で現場を探査した正式な報告書に基づいて判断をしたいと思いますし、それがもうじき届くと思われますので、それまでは、いま不確実な情報について判断するのは差し控えたいと思っております。
  121. 横山利秋

    横山委員 とにかく、外務省にしてもあるいはその他の役所にしても、本件についてどう日本政府としてはあるべきかという一番根底になりますものは、事実はどうであったかということだと私は思います。いろいろな外交上の問題にも、巨大な問題に発展しているわけですけれども、その問題の所在は何であったか。その事実が、いまやりとりをする中であなたもさだかにお答えにならないことばかりなんでありますが、事実があいまいもことして、常識的にどうしてもわからぬ。こんなばかげたことがどうして起こり得るかというようなことが起こっている上に積み重ねられて外交折衝が行なわれておるということは、私はたいへん遺憾な間違った結果をもたらすと思うのであります。  いま一般的に考えられることは、本件によってこの文世光が朝鮮総連生野支部に関係があり、その示唆を受けてやった行動であり、朝鮮総連はその意味においては朴政権の転覆をはかる機関であり、そしてその根拠地が日本であり、それで日本においてゆうゆうとその仕事をしておるのはけしからぬことであり、したがって韓国政府は日本政府に対してこの朝鮮総連についての規制をせよと追っておることである。それを日本政府はなかなかうんと言わない、したがって日本政府はけしからぬ、韓国国民はあげて日本政府はけしからぬ、日本国民はけしからぬ、こういう方向にエスカレートしておるわけです。一番その根っこにある事実というものがどうであったかということが十分さだかでない上に組み立てられた楼閣で、最後のその棟は、日本政府がけしからぬ、日本国民がけしからぬ。その日本国民、日本政府は韓国に、朴大統領に親書を出して、大ものが行って、そしてあやまれ、こういう問題にいまや焦点が注がれつつあるということなんであります。たいへんこれは、まあ一言でいえば、私どもにしてみれば迷惑千万だと思うのであります。そこで、その迷惑千万論について外務省はどうお考えでございましょう。
  122. 中江要介

    ○中江説明員 隣国の大統領狙撃事件、その結果として大統領夫人がなくなることになった、この事件そのものは日韓両国にとって非常に不幸な事件でございましたわけで、その事件の中で、現在までのところ少なくとも客観的に明らかであるといわれてきておりますのが、その場で逮捕された犯人が在日韓国人であったということ、それからその犯人が日本から韓国に渡航するにあたって、日本旅券法違反した日本旅券を取得して行ったということ、それから狙撃に使われたピストル日本で盗まれたピストルであったというようなこと、そういうことだけから見ましても、日本と全く関係がない、日本としてかかわり合いのない事件だというわけにはいかない点は明らかだと思うのですけれども、そうかと申しまして、この事件について何もかも日本側に責任がある、あるいは日本側の何らかの落ち度によってこの事件ができたのであるから何でも日本が悪いというふうにもしとられているといたしますと、そういう判断をする以前に、いま先生がおっしゃいましたように、客観的な事実をまだまだ明らかにしなければならない段階があるというふうに、この事件に関しては私どもは考えておるわけです。他方、この事件をきっかけといたしまして、韓国において反日ムードというものが異常に高まってまいりまして、あげくの果てがわが国の大使館に暴徒が乱入する、また屋上に掲げられている日章旗を引きずりおろして引き裂くというような事件が起きまして、そういうふうな日韓間の関係が、正常化以降九年余りの歳月の中で最悪の事態になっている、これを何とか打開しなければいけないということで、この狙撃事件のためだけではなくて、いま一歩誤れば日韓間の破局を招くかもしれないといういまの危機を乗り切るための方策という観点から、政府としてはいろいろの外交的な方策を考えている、これが実情でございます。
  123. 横山利秋

    横山委員 確かに、処置を誤ればたいへんなことになるという点については同感であります。しかし、短期的なものの考え方をここで持って、おそらくそうではなかろうと思うのでありますが、朴大統領に対して親書を、そして大ものが行っておわびを、そしてそれによってデモを鎮静するよすがにしたいというような短期的な、日本があやまれば一応何とか済むであろうというように短期的にものごとを考えたならば、ますます取り返しのつかぬことになるのではないか。私が先ほど分析したように、いろいろなはっきりしない事実を積み立てていって、結局は日本日本国民が悪いんだ、そこに全部をしわ寄せさせるような結果に対して、ああ悪かったというふうな問題の処理のしかたを短期的にしたならば、これはもう取り返しのつかぬことにむしろなるのではないか、私はこう思います。  その点で、先ほどこの質問の中に一つありましたが、事件が発生したあと韓国から急に日本へ渡航する人がふえているのではないかという指摘に対して、入国管理局ではそういうことは調べようがございませんという返事でございます。これも、私の想像も含めて、また私の調査した事実をも含めてなのでありますが、急速に増加しておることなのであります。それは韓国政府としてもあるいはKCIAとしても、この生野支部を中心にいたしまして日本におけるこの種の事案、事件の発端がどうであったかということについて調べたいという気持ちになったのは当然でありましょう。したがいまして、おそらく第二の金大中事件が公然ないしは非公然として起こる可能性を私は予期しています。第二番目には、この間起こりました生野西支部事件、総連と民団との衝突という問題がこういう形をもって起こる可能性が第二番目であります。それから第三番目は、警察当局なりあるいは外務省なりに対して、日本における朝鮮総連なりいろいろなことについての調査について向こうから協力を求めておるだろうと思うのであります。そういう韓国政府の公然としての調査協力ないしは非公然のKCIAの日本に対する独自の調査というものが、私はいま現に行なわれておると推定をしておるわけであります。この点についてどうお考えであるか、どういうふうに対処しておみえになるか、それぞれ関係のところから伺いたいと思います。
  124. 山本鎮彦

    山本説明員 第二の金大中事件というような表現でおっしゃいましたけれども、特定の人に対してある特殊な団体がああいうような犯行をするというようなことになるとこれはたいへんなことでございますので、われわれとしては十分情報を収集するという形で、事前にそういう問題が起こらないように対処していきたいと思っておりますし、それから民団と朝総連との対立抗争、先週の夜行なわれた、承知いたしておりますが、そういう形で両派のいざこざが起こらないように、これも事前に十分警戒につとめまして、そういうことの起こらないように具体的な処置をとっていきたいというふうに考えております。
  125. 横山利秋

    横山委員 現場において起こらないようにするということと、韓国政府並びにKCIAがしないようにする、させないようにする、受け入れさせないようにするということと二面があると思う。  そこで、きょうは大臣もおりませんけれども、外務省にお伺いしたいのは、いま、総理からの親書の中で、朝鮮総連に対する規制を文章に入れるか入れないか、あるいは口頭で約束するかしないかということが一つのポイントになっておるようでありますが、事実でございますか。
  126. 中江要介

    ○中江説明員 親書は、申すまでもないことでございますけれども、総理がお書きになる手紙でございまして、これは通常、先方に渡るまでは明らかにできない性質のものでございますし、またその内容についてこまかく先方と話をするというような性質のものでもないというふうに私ども了解しております。先方は、この親書の中に書くとか書かないとかということではなくて、この事件の背後に朝総連との関連があるのではないかということを先方の捜査報告その他の中でも言及しておりまして、それに関連して、日本における朝鮮総連の扱いというものが問題にはなっておりますけれども、先ほど御質問のように朝鮮総連そのものについて調査してもらいたいというような要求は外務省にはございません。この事件との関連で朝鮮総連をどう見るかという点は、客観的事実、先方から提供されます証拠その他に基づきまして、本件捜査に対する協力の限りで必要があれば、日本の体制上可能な限度でやることはありましても、いまの段階ではまだそういう話は具体化していない、こういう実情でございます。
  127. 横山利秋

    横山委員 知らぬ人が聞けば、そうか、しからんと思うけれども、ここ、きのうきょう、朝刊にも夕刊にもテレビにも堂々と、向こうから総連についての規制の要求があり、それについて日本政府、外務省や関係当局がどう考えておるかということがマスコミの焦点になっておる。それはもちろん、親書の内容にどう書くか書かぬかということはここであなたが答弁される限りではないにしても、文書の中に総連の規正問題をうたうか、うたわぬか、あるいはまた文書に書かずとも、だれか大ものが行ったときに、いやわかりました、総連を何とかしましょう、法律のワク内においてでも何とかしましょうとか、そんなことはできませんとか言うことが一つのポイントになってきたという事実をあなたはお認めでございますか、どうなんですか。そしてそれを承知をするのかせぬのかということを明白にしてもらいたい。
  128. 中江要介

    ○中江説明員 種々報道がございますので、いま先生がおっしゃいますようなことが問題ではないかというふうに思われるのもそれなりのあれだと思うのですけれども、私ども実務をやっております立場では、ものごとは先ほど申し上げましたような基本的な考え方に基づいて総理が最終的に親書をしたためられるわけで、その基本的な考え方の中には、朝鮮総連というものについてこの事件との関連韓国側が重大な関心を持っているということは承知しております。それについて日本政府がどういうことができるかという問題は、この事件との関連で必要に応じて日本の体制のもとでできることは協力する必要があろう。しかしできないことはそもそもできない、その辺は最後まで筋を通していくという姿勢には変わりはございません。
  129. 横山利秋

    横山委員 だからそれを聞く前段として私がいま、起こりそうなことを三つの側面としてあげたのですよ。文書に書くか書かぬか、ことばで言うか言わぬか、日本政府のその態度いかんによって第二の金大中事件が起こる可能性、第二、第三の生野事件が起こる可能性、そして警察が協力をしなければならない、かなり向こうの言い分を聞いて警察力を行使しなければならない可能性、そういう問題、つまり内政干渉といいますか、われわれの国の主権を阻害されることを約束をするという可能性がここで生じてきますよ。まさかそういうことを腹に置いて応諾なさることとは思わないけれども、返事のしようによっては第二の金大中事件、第二、第三の生野事件、そして警察力が韓国の要望に応じて動くという問題、公安調査庁を含めて、この問題が動くという、問題になるということを私は心配をしておるからくどく言っておるのです。私の言うような心配がありません、そうさせることはいたしませんと、あなたにそんなことを詰め寄ってもどうかとは思うのですけれども、その点はどうなんですか。
  130. 中江要介

    ○中江説明員 ただいま先生がお述べになりましたような心配は私どもも持っておるわけでございまして、将来に災いを残すようなことにならないようにしようという努力は当然やっております。
  131. 横山利秋

    横山委員 総理大臣がもうすぐ出発するときに、一生懸命に、だれが韓国へ行くか、その内容はどうするかということを日本でやっておる。一方、韓国では毎日一万数千人のデモが続いておる。そういう状況を考えてみまして、私は、何をあわてるのか、事実もまだはっきりしないのに。私が先ほど若干調査をした事実問題から、私は結論を下してはおりませんけれども、少なくとも私が質問した意味というものは、この狙撃事件というものは単純明快な問題ではなかろうということを私は言うておるわけであります。一人の人間がいきなり鉄砲を持っていって、そして撃つという単純明快な問題ではどうもなさそうだということを私は暗に言っておるわけでありますけれども、それで今度は逆に日本及び日本国民が悪いんだということで、デモが大使館に押しかけて、外務大臣の人形が燃やされるということになり、そこへ日本の大ものが総理大臣の親書を持っていって飛び込むということは、全くわれわれがみんな悪かったということを韓国民に、事実のいかんはともかく、われわれが、日本が悪かったんだということを全く事実で確認してしまうという結果になりはしないか。何をそうあわてるのか。たとえ文書の内容がどうあろうと、おわびに行くという結果にほかならないでは、ないか。あなたの言うように、十悪いのじゃない、三しか悪くないのだけれども、三分だけおわびに行くという理屈はこの際通らぬのですからね。行けば、三しか悪くないのだけれども十みんなひっかぶるという結果になるわけでありますから、何でそうあわてて行かなければならぬのかと思うのでありますが、その点は、大臣もおらぬときに何でありますが、あなたは何でそうあわてて行くんだと思っているんですか。
  132. 中江要介

    ○中江説明員 最高の責任の地位にある方がどう考えておられるかは別といたしまして、私個人は、決してあわてているつもりはないのでございまして、ただ、事態はそう時間的余裕を見てじっくりかまえていていいようなものではない。つまり、東京で考えておりますよりも韓国における事態は相当深刻である。深刻であるということの意味は、この事件についてどうこうということよりも、一九六五年に正常化して以来九年余りのこの日韓関係が、一歩誤ればすべてだめになるくらいの大きな影響が出るかもしれない、そういう危機感を持っておるわけでございまして、外交の事務当局といたしましては、そういうものを最後の瞬間まで何とか避けるために努力をしなければならない。この日韓関係の破局を避けるための一つの努力として取り組んでおるわけでございまして、この狙撃事件について事実もはっきりしないうちにすべてを何とかする、そういう、先生のおっしゃいますような短期的な考えというものではなくて、いままでの日韓関係、それから将来の日韓関係を見まして、直接の隣国である大韓民国との関係を、できることなら破局にまで追いやることは避けたい、こういう気持ちでやっておるわけで、決してあわてているという感じではないわけでございます。
  133. 横山利秋

    横山委員 こんな近いところにおりながら、日本韓国とは飛行機で一時間で行けるような近いところでありながら、常に日韓関係の中で基本的な問題になりますのは、日韓両当事者が会う、会って意見が違う、けれども文書だけは整理しておく、その文章の解釈については、おまえはおまえのほうで都合のいいように言ってくれ、おれはおれのほうで都合のいいように言う、そういうやり方がいつも行なわれておったのではないか。それの一番いい例が、日韓条約の、唯一の政権であるという例の木村発言である。あんなことはあたりまえのことである。私どもから言うならばもっとシビアに考えるべきことなんで、あたりまえのことだ。そのあたりまえのことを言っただけで木村さんは自分の人形を燃やされる。けしからぬ、日韓条約の解釈は間違っておるといって。そんなことは日韓条約をつくったときに当然の解釈としてあり得ることなのであって、いまさら新しいものではないことは言うまでもありませんね。何でそれがいまごろになって、間違った解釈をした木村大臣だといって自分の人形を燃やされなければならぬか。去年の金大中事件の外交的妥結の解釈につきましても同じことが言えるのじゃないか。こっちはこっちでかってに都合のいいように解釈して国会工作、国民に対する説明をする。向こう向こうで、「羅生門」じゃないけれども、同じ事実を向こうの都合のいいように解釈する。それを双方とも了解をするというやり方が日韓の外交の基本的姿勢ではなかったか、私はこう思うのであります。どうなんですか。
  134. 中江要介

    ○中江説明員 ただいま韓国側で問題になっております木村外務大臣の、韓国の合法政府であるという問題に関連する批判というものは、私どもの見ておりますところでは非常に不幸な問題の取り上げ方になった、こういうふうに思うわけでございまして、日韓基本関係条約の第三条というのは、締結されましたときからいままで一向に変わっておりませんし、その中に引用してございます国連総会決議百九十五というものもそのままでございますから、あの条文を読みますとその解釈はだれが読んでも明らかなようになっておったわけでございますし、現在も明らかなわけでございます。  そのことを木村外務大臣が御説明なさったのが韓国側に伝わる際に、あたかも大韓民国政府が朝鮮半島における合法政府でないというような印象で伝えられたために、それは違うと言っていきり立った。なぜそういうふうに誤解されるといいますか、妙にこじれた取り上げ方がされるかというその前提といいますか、基盤といたしまして、先ほどから申し上げておりますように、いまは非常に異常な神経の高ぶりというものが韓国側に見られまして、通例ならば冷静に受けとめてもらえるものも非常に違った受けとめ方がされ、それがエスカレートして、この数日というものが非常に危険な状態にまで高まってきている、こういうことでございまして、私どもは、そのまず高まった感情を押えていただいて、冷静に話し合いができるようになれば誤解も解けようという考え方で、たとえば、いまの日韓条約第三条の解釈につきましても、在京の金永善大使を通じまして、またソウルの後宮大使から先方外務部に対しまして、その正確な答弁の説明を、すべてコピーを渡して説明をして、先方は納得しているわけです。しかし、それは頭では納得はしておるのですけれども、燃え上がっておる韓国国民の対日批判のいまの動きというものは、平素なればすぐにおさめられるものも、いまは非常に異常な状態になっておるということでございますので、私どもはまずそのほうを押えて、それから冷静に話し合って日韓間の関係を正常にしていきたい、こういう考え方でございます。
  135. 横山利秋

    横山委員 それはおっしゃるように、いまの韓国の雰囲気が異常である、だからことばづかいに気をつけなければいかぬという点については私も認めましょう。だけれども、この日韓条約の解釈の違いというのはどうもいまに始まったことではないんではないか。金大中事件にしたところで、日韓両当事者の話し合ったことは、向こう向こうの都合のいいように国内に話す、こちらはこちらの都合のいいように国会や国民に話すという習慣といいますか、そういう雰囲気が日韓には常につきまとっているのではないかということを私が言いたいわけです。  それから、私も国会議員として、いまいろいろな質問をしておるけれども、この私とあなた方との質疑応答というものが、いまの状況で不必要に韓国を刺激しないようにという気持ちは私も頭にありますよ。ありますが、しかしひるがえってみて、いま町へ行って、私ども日本の国民が町の中でこの問題をどういうふうに評価しておるか。田中内閣の対韓外交について、金大中事件以来どういうふうに評価しているかということを、あなたも少し町の雰囲気を、町でみんなが言っていることを頭に置いておかなければとんでもない間違いを起こしそうですよ。金大中事件以来、一連韓国日本との問題について、日本の外務省なり田中内閣がどんな行動をとり、それを国民がいまどう思っておるかということ——あなたの頭には、韓国の異常な雰囲気だからそれを頭に入れてやらなければいかぬというお気持ちはわからぬではないけれども、日本国民がこの問題についてどう考えておるか、ここまで書いたいけれども、まあ、いまそれを言うと不必要に韓国を刺激するといかぬので言わぬけれどもね。しかし、国民が何を言いたいかということを少し頭の中へきちんと置いて、き然として誤りなき行動をしませんとだめですよ。それ以上あまり言うても、今日の事情、適当であるかどうかわかりませんから申しません。また大臣がいらっしゃるときに、少し別な角度で外交政策について私の意見を申し上げることにいたしまして、きょうは私の質問を終わります。
  136. 小平久雄

    小平委員長 正森成二君。
  137. 正森成二

    ○正森委員 私は、本論に入ります前に、一昨日、沖繩北方特別委員会で小禄における旧海軍の機雷の爆発事故について伺ったのですが、そのときに時間の関係で質問を詳細にできなかったのですけれども、このままでは黙過できない、これでいいだろうかという答弁を政府説明員がされましたので、それについて民事局長の御見解を伺いたいと思います。  まずその部分を読みますと、「まず、いまの旧海軍の改造機雷の所有権の帰属の問題でございますけれども、これは昭和二十年の四月から五月ごろにかけまして、旧海軍が敷設したのでございます。これは戦闘中に敷設したものでございますから、この機雷の物理的滅失を目的として敷設しておるというふうに考えられるわけでございます。そういたしまして、その後ここで激戦が行なわれまして、当時旧海軍の軍人が全滅しているという事実がございます。そういうように考えてまいりますと、この機雷の所有権でございますけれども、これは敷設した当時、あるいは激戦で全滅した段階で所有権が放棄されたと同じように見てもいいのではないかというように脅えられるわけでございます。」こう言っておるわけです。  これは非常に重要な発言であります。小禄の事件について国賠法の一条ないし二条あるいは民法を適用するについては、いろいろ意見があろうかと思います。それについては一昨日、小坂総理府総務長官も、ほぼ結論らしきものが部内で出ておるということで答弁されましたので、われわれは大いに不満ですけれども、すみやかに救済を待っておるわけですが、しかしその過程において、こういうことが公然と古館政府説明員から言われるというようなことになりますと、こういう見解を一つの重要な根拠として政府で結論を出されたということになると、われわれは遺憾にたえない。  まず第一に、機雷というのは物理的滅失を目的として敷設しておるから、これは敷設した当時所有権が放棄されたと同じように見てもいい、こう言っているのですね。あるいは激戦で全滅した段階で所有権が放棄された、こんな議論ができますと、これは戦前のことになるわけですけれども、天皇が統帥しておった軍隊がぶっそうな機雷を敷設してしまったら、もう所有権を放棄したのだ、だから、それに対して敵軍のみでなしに、日本の人民がそれを踏もうがどうしようが、そんなものは全然関係ないのだという議論になる。一体、日本国はいつからそんな無責任な国になったのです。一たん機雷を敷設したら、陸上ですからそこを日本の住民も当然通るけれども、それは所有権を放棄したものであって全く責任がない、そういう議論に通ずるようなことを言うとは何事ですか。  それからまた、「あるいは激戦で全滅した段階で所有権が放棄された」こう言う。いつから旧日本軍はそれぞれの部隊が兵器を私有するようになりましたか。旧憲法の十一条でも天皇が統帥権を持っておる。この間二十何年ぶりに帰ってきた横井庄一さんでも、恥ずかしながら横井庄一、帰ってまいりました、陛下の三八式小銃は持って帰りました、こう言っているじゃないですか。   〔委員長退席、谷川委員長代理着席〕  兵器というのは日本国のものであり、天皇が統帥しておったものです。それを、現地の一部隊が全滅したらそれでもう所有権は放棄したのだ、そんなばかな議論で国賠法のことを考えられたらどうなりますか。そして、そういうことだからこの機雷は無主物というふうに考えるべきではなかろうか、こう言っているのですね。国賠法が適用できないという理由づけについて、管理の責任があるとか公務員のだれの責任だとか、ほかの議論で言われるならまだしも——それについてもわれわれは意見を持っておりますけれども、こういうような議論で責任がないというように言われることには断じて納得できない。これはほんとうに法務省の正式な見解なのかどうか、それを訂正なさる意思があるかどうか、民事局長から答弁していただきたい。
  138. 川島一郎

    ○川島説明員 お答えいたします。  一昨日の特別委員会での正森委員の御質問に対して古館参事官からお答えしたという点につきましては、その後、私、報告を受けております。それで、やや弁明的なお話になるかと思いますけれども、私の部内でこの問題についていろいろみんなで相談をいたしたわけであります。そのときの一つの問題として、一体この爆弾の所有権はどうなっているのだろうということをみなで話し合ったことがありますが、そのときに実は意見が二つに分かれまして、もう戦争で使ってしまったものだからそれは無主物同様になっているのではないかという意見と、いやしかしそのままの形で残っておるんだからやはり国の所有権が残っているのではなかろうか、こういう意見と、いろいろ出たわけでございます。そのときに、先ほどお読み上げになりましたような、機雷を敵前で敷設したという場合は、たとえば敵地に爆弾を飛行機から投下するとか、大砲から発射するとか、それと同じように考えれば、もうその後の所有権というものはなくなってしまう、そういう考えとも同じに評価できないであろうか、こういう意見も出たわけであります。ただあの場合は、敷設されまして、それから実際に爆破されることなく残ったわけでありますから、そういう意味では、はたしてその議論がどこまで通用するかという点に問題はもう一つ加わるわけでございますが、とにかくそういう評価のもとに無主物となったという意見もあったわけでございまして、もちろんその意見に対して反論がありまして、民事局なりあるいは政府なりでその点についてのはっきりした結論というものをきめたわけではございません。  先ほど、国家賠償の、あるいは民法の損害賠償の問題とからめてお話があったわけでございますが、私どもは、爆弾の所有権が国にあるかあるいは無主物となっておるかということには、必ずしもこの損害賠償の問題はからめて考えていないわけでございます。御承知のように、国家賠償法二条で規定しておりますその責任が、公の営造物、これは国のあるいは公共団体の所有に属するものに限るかどうかという点につきましては、多くの学説といいますか、判例もそうだと思いますが、所有には関係ない。管理といいますか、管理しておるということがむしろ中心となるので、所有権についての帰属がその損害賠償責任に決定的な影響を及ぼすというような解釈はとっておりませんので、私どもといたしましてはそれは一つの派生的な議論とし考えておったわけでございます。したがって、損害賠償の問題はそれとは別個に考えているということもつけ加えてお答えさせていただきたいと思います。
  139. 正森成二

    ○正森委員 いま川島民事局長からそういう答弁がありましたけれども、その関係部分だけ——まだ速記録が印刷されておりませんから、写してきた段階では、これは国賠法を適用できないという前提としての一番基礎的な問題として答弁がされておるわけですね。公の営造物というのは、何も国の所有に属するものに限らないというのはあたりまえでありまして、他人のものでも、それを借りて公の行政作用に供しておるという場合には、これは公の営造物であることは明らかであります。それは国の責任を拡大して認めるという前提でそういうことを言われておるのですけれども、説明員からの答弁はそうじゃなしに、そもそも無主物で、国が所有権もないし、何も責任がないのだという一番前提的なお答えとしてなされておるのです。ですから、川島さんは部下をかばうためにそういう答弁をされましたけれども、私は、この答弁の全趣旨はそういうようにはなっておらない、こう思うのです。  また、かりにその議論を別に置いたとしても、いまの答弁を聞きますと、部内でいろいろ議論されたときにそういう議論もあり、反対論もあるということであったとするならば、答弁のときに、こういう議論も部内にはございます、他方こういう議論もございます、しかしそれを総合しても、結局所有権については、管理責任とかいうようなもののほうがより国賠法を適用するについては重要でございますからというような話でもあればまだ別ですよ、一部の意見であるということになれば。しかし、法務省を代表して、これが法務省全体の見解であるというような形で述べられておる。そうすると説明員としては、おそらくその無主物であるという意見を主張したのが古館説明員であろうと思われますけれども、幾ら自分の意見であっても、それが一部の意見である場合に、それを国会において法務省全体の答弁というようなかっこうで言うのははなはだ僭越ではないか。それについては局長どう思いますか。
  140. 川島一郎

    ○川島説明員 おっしゃるような御趣旨もよくわかるわけでございますが、私、前に正森委員が特別委員会法務省の民事局の浦野参事官に御質問なさった、その記録も読んだことがございます。そのときにはむしろ、浦野参事官のほうは国の所有と認めざるを得ないのではないかと思う、そういう趣旨のお答えをしておったように思います。この点につきましては、先ほど申し上げましたように、内部の意見がまとまっておりませんでしたのでたいへん不手ぎわな御答弁になりまして恐縮に存じ、また遺憾に存じておる次第でございますけれども、私が後ほど古館参事官から事情を聞きました限りにおきましては、先ほど私が申し上げたような趣旨で言ったので、ことばが足りない点があったというふうに思われますので、その点はこの際ここでおわびを申し上げたいと思います。
  141. 正森成二

    ○正森委員 いまそういう局長からの答弁がありましたから、これは沖特で質問をした問題でございますから、あらためて全部を蒸し返してやりますとほかの質問に差しさわりがありますからこれでやめたいと思いますけれども、要は、小禄の事故というのは少なくとも被害を受けた人には全く責任がないのです。そして旧軍が埋めた機雷がたまたま工事のときに爆発して、そしてあの惨事を引き起こした。だからわれわれとしては、これが昔の第二次世界大戦での日本国の戦争行為にからむ後遺症として起こったのだ、だから法律の解釈が許すなら、許される範囲のぎりぎりまで考えて被害の弁償をしてあげるのが当然だというように思っておるのです。そういう趣旨で私は沖繩及び北方問題特別委員会でも二回にわたって質問をしたのです。そのときには与党の議員てさえ——さえなんて言うたらいけませんけれども、非常にその趣旨には賛成だということを委員会の内外で言うておられるぐらいなんです。そのときに、法務省がいろいろ政府の態度をきめるにあたって、一たんは国の所有権と認めざるを得ないということを答弁しておきながら、あとには無主物だということを言い、その議論の一環として。機雷というのは大体爆発するものだから埋めた時点において所有権放棄だというようなそんなむちゃくちゃなことを言うてみたりする。そんなことを言うていたら、埋めた時点で所有権を放棄しておるのだったら、あとだれか行って取ってきたってそんなものはしょうがないということになるし、まして一部隊が全滅したらそれで所有権がなくなったというようなことを言えば、日本国というのは統率されたもとでの軍隊組織をなしていないということにもなるわけで、これは委員会の席におられた野党の委員が全部おこっておるのです。そういう答弁を代表で出てくる者がしたらやはりよくないです。  なお、この問題については小坂総理府総務長官が、被害の査定をして、できるだけ公正に、見舞い金という形だけれども、地方公共団体と一緒に弁償すると言っておられますから、その政府の態度をわれわれは見守りたいと思います。しかし、その被害者にお渡しになる額やあるいは割合等についてあまりに問題がある場合には、われわれは法務委員会なりあるいは沖繩北方特別委員会で質問する権利を留保しておきたい、こう思います。  それでは次の質問に移ります。  まず、警察庁に伺いたいと思いますが、金大中事件について、八月十四日にソウル地方検察庁部長検事から、金東雲には拉致事件に加担したという資料がないので、本件内査というのですか、これを中止するという通知が来たことは新聞に報道されているとおりであります。そして、これによって田中総理と金鍾泌首相との間の約束はもう履行されたというように言っておるのですね。わが国警察が、関係者がいないという非常に不利な状況の中で金東雲の指紋を発見され、あるいは連行車についても劉永福の車がまだ消されていないというような、どうしても容疑を解くに足るだけのものはない、むしろ容疑があるということを発表しておることはわれわれも承知しているところであります。  そこで、このソウル地方検察庁部長検事から送られてきた、金東雲には容疑がないという決定に対してどう思っておられるのか。依然として、金東雲の指紋その他でわが国警察庁の捜査については自信を持っておられるのか、それを伺いたい。
  142. 山本鎮彦

    山本説明員 私は、といいますか、日本警察は、この金東雲一等書記官が本件に介入して、この犯罪行為に参加した疑いが非常に濃いということについては、現在においても自信を持っております。したがって、ソウルのあのような通報についてはきわめて不満であり、納得できないという立場でございます。
  143. 正森成二

    ○正森委員 そういう態度を伺って、私たちは韓国側の捜査結果というものについては不満である、日本警察捜査に対して自信を持っておるという答弁でありますが、なおこの問題については、非常に困難な中ですけれども、鋭意捜査を続行していただきたい、こう思っておるのです。  私は外務省にも言いたいのですけれども、田中・金鍾泌会談で政治解決をして、そして結局日韓閣僚会議を再開したというようなことがありましたために、もう取るだけの実は取ったということで、この捜査について、日本警察の指紋その他近代犯罪捜査では動かすことのできないものについて何ら触れることがない。私がこの決定書を読みましても、私でさえ納得できないというようなもので、もうこれで終わりだ、一国の総理と総理との間の約束はもうこれで履行したのだというようなことを言うと思うのですね。それについて外務省は、金大中氏は出国も含めて自由である、そして金東雲は韓国において捜査するというようなことを信頼されたのかもしれませんけれども、そのいずれもが、現在のところ、見るもむざんな状況になっておるということについてどういうぐあいに考えておられるのか。特に日本国民に対してどういうぐあいに責任をとろうとしておられるのか、それを伺いたい。
  144. 中江要介

    ○中江説明員 昨年の金大中事件の国際刑事事件としての捜査の進捗状況はそれといたしまして、外交的決着を見た内容について十分な履行があると思うかと聞かれれば、十分な履行はないと、遺憾ながら言わざるを得ません。その点については私どもも非常に強い不満の意を持っておることは捜査当局と同じでございます。
  145. 正森成二

    ○正森委員 非常に遺憾の意を持っておる、不満の意を持っておるというのは捜査当局と同じである、こう言われましたが、肝心の、外務省のああいう決着をつけるに至った経過にからんでの責任についてはお答えがなかったと思いますが、私はそれについてはなお二学生の問題や狙撃事件を聞きますから、それに関連して質問をしていきたい、こう思っております。  そこで、早川君、太刀川君の問題について警察庁に伺いたいと思いますが、あの起訴状やあるいは判決、それも正式のものがわれわれのところに入っておりませんので、外務省から正式のものではないという断わり書きのもとにいただいたものしかないわけですが、あれを見ると、早川、太刀川両氏が日本国内においてさまざまな人から指令を受けたということになっておるわけですね。それについては韓国側としては何らわが国のそれらの人に確かめるすべもないし、万一直接やったとすればそれは主権侵害になる。これは当然だと思うのですね。そこで、それらを証拠固めするためには、ICPOなり何なりを通じてわが国に司法共助といいますか、捜査依頼をしなければならないと思うのですが、そういうわが国内での韓国側の言っておる指示だとかあるいは教唆だとか、もろもろのことについてそういう要請はありましたか。
  146. 山本鎮彦

    山本説明員 そういう要請はございませんでした。
  147. 正森成二

    ○正森委員 そういたしますと、そういう証拠はない。それで、われわれが新聞紙上で報道されておるところでは、本人たちもそういうように国内において指示をされたというようなことは否定しておるわけですね。接触したということは、これは取材目的だとかなんとかで肯定しておりますけれども、そうすると、早川君、太刀川君については、あの大統領緊急措置の一号なり四号なりに非常に不当なものがあるという問題をはずしても、あの判決の中に書かれておることが証拠なくして認定されておる。何にも証拠がない。捜査協力さえ言うてきておらない。言いっぱなしだ。政治的効果をねらったということにならざるを得ないと思うのですね。これは法律家の常識としてそう言えると思うのです。そういうことに対して、外務省は何らかの形で韓国側に意思表示をしておられますか。
  148. 中江要介

    ○中江説明員 外務省といたしましては、裁判が最終審まで結審しておらない段階で裁判の実質について論評することは、これは差し控えなければならないという考え方で、裁判の判決その他の実質的内容については意見は明らかにしておりません。
  149. 正森成二

    ○正森委員 そういうことだそうでありますが、しかしあなた方は、早川、太刀川両君に対して外交保護権を場合によっては行使しなければならないという責任が外務省にあるということは、これは認めざるを得ないと思うのですね。その場合になすべきことは、早川君、太刀川君が、いわゆる国際標準主義に基づいて、文明国家が享受し得るようなそういう基本的人権が保障されているかどうか、それがもし保障されずに、証拠なくして裁かれ、そして、あとで触れますように、刑事罰の不遡及の原則、そういうのに違反してやられておるという場合には、それについて注意を喚起するというのは当然だと思うのですね。それをやらなければ、事件が済むまでなんて言っておったんじゃ、何もできないうちに韓国側の一方的な行為が行なわれてしまうということになると思うのです。  私は伺いたいわけですが、あの大統領緊急措置の一号、四号がその後廃止されたということは事実ですね。そうでしょう。私は法務省の方に伺いたいのですが、一般的に、法令が廃止された場合に、わが国の裁判所ではどういうぐあいに判決を言い渡しますか。
  150. 筧榮一

    ○筧説明員 一般論としてお答え申し上げたいと思います。  刑が廃止されました場合に、原則としては免訴の判決があるということでございますが、先生御案内のとおり、刑を廃止します法令の場合に、附則等で経過措置を設ける場合がございます。経過措置によって、その刑を廃止する法令の施行前に行なった行為については「なお従前の例による」と設けるのが通常の例でございます。そういう経過規定があります場合には免訴の判決はないということになります。なお、例外的な場合として限時法の場合もあろうかと思います。
  151. 正森成二

    ○正森委員 いま総務課長は、「従前の例による」というのは通例でございますと言いましたけれども、その「従前の例による」というのは通例だとは言い切れないですよ。むしろ「従前の例による」ということをつけるのは、一般的な刑罰法令では例外の場合だって幾らでもあるんですよ。たとえば、日本で新憲法が施行されてから、昭和二十二年の十月二十六日に刑法の一部を改正する法律ということで、実質上刑が廃止されたんですね。そのときには、特殊な例外を除いては全部「従前の例による」なんということはないんですね。ですから、「従前の例による」というのは通例だというような答弁は、これはわが国のいままでの法律のあり方からいっても言い過ぎではないですか。  それからさらに、刑法の一部を改正する法律の場合には、「この法律施行前の行為については、刑法第五十五条、第二百八条第二項、第二百十一条後段、第二百四十四条及び第二百五十七条の改正規定にかかわらず、なお従前の例による。」こういうのはあるのです。しかし日本刑法の場合は、この「従前の例による」というのはある意味では被告人保護のためなんですね。五十五条というのは連続犯ですけれども、たとえば二百八条の第二項というのは告訴を待って論ずる、こういうことで、告訴がなければ暴行罪は昔処罰されないということで、告訴があってから初めて処罰されるというほうがこれは被告人被疑者にとって有利なわけですね。二百十一条の後段というのは、重大なる過失の場合にはこれはやはり処罰するということ、それが新たに加わったわけですけれども、これはやはり前はなかったのだからそういう扱いをする。二百四十四条と二百五十七条というのは親族相盗などの免責の場合で、昔は、大家族制度といったらおかしいが、家族制度だったから、「同居ノ親族」のあとに「又ハ家族」というのが入っておったのですね。それを今度は削除するのだけれども、従前の例については家族であってもこれは免責規定があるということで、全部有利なものはこれは「従前の例による」こうなっておるのです。それ以外は、天皇に対する不敬罪であろうが姦通罪であろうが、全部、刑法の一部が改改正されて刑罰が廃止されたときには何ら留保はないのですね。ですからそういう意味からいうと、「従前の例による」というのがつくというのが一般であるということではなしに、それはつく場合もつかない場合もあり、むしろわが国ではこういう刑法のような基本法の場合には原則としてはつけなかったのだ、つける場合は被告人の利益保護のためだということが言えるのじゃないですか。
  152. 筧榮一

    ○筧説明員 先ほどの私の答弁、ちょっとことばが足りないで申しわけございませんでしたが、私が申し上げたかった趣旨は、原則として、刑の廃止があった場合には免訴になる。しかし場合によっては経過措置が規定される場合がある。その場合には先ほど申し上げましたように、「なお従前の例による」という表現をとるのが通常であるという趣旨で申し上げた次第でございます。それぞれの法令の内容によりまして、経過規定を設けるべきかどうか、従前のものを処罰すべきかどうかが判断されることになろうかと考えます。
  153. 正森成二

    ○正森委員 そういう御答弁の趣旨なら了解いたしました。法令が廃止されて以後は刑罰が適用できなくなるということは、現時点においてはそれだけもうその違法類型について処罰する必要性がなくなったということに一般的には解釈されておりますね。  そうすると、私は、韓国で行なわれた日本人である外国人の行為について、日韓条約の第四条でしたか、国際連合の憲章に基づいて相互の福祉のために努力するという点から見ますと、国際連合の憲章というのは人権宣言なども一般的にいったら含まれるわけですけれども、そうするとそこには基本的人権の尊重とか刑事罰の不遡及の原則というのはこれはちゃんと掲げられているのですね。そうしますと、早川君、太刀川君の場合に、四月三日の夜の十時に法令を発布してそれ以後のものについて適用する、しかし四月八日までに自首してこなければずっと前のことだって全部適用するという形で、これは刑事罰不遡及の原則を免れることをやったということは、前に安原刑事局長は、これは罪刑法定主義の一番大事な刑事罰不遡及の原則、これに事実上違反するものであり、一般的に文明国はそういうことをやらないんだという答弁はあったところであります。そうすると、一方ではそういうむちゃくちゃな法律で処罰しておき、その後はそれを廃止して、廃止すればもう免訴の言い渡しができるのに、いや、裁判中のものはやはり残すということで、これは言ってみれば二重、三重に、どうしてもこいつだけはやらなければいけないということで、日韓条約にいう、国際連合憲章に基づいて相互の国民の福祉とかいうような、そういう条約規定を実際上守っておらないということさえ言えるのじゃないですか。外務省はどう考えます。
  154. 中江要介

    ○中江説明員 御指摘のように、日韓基本関係条約で、両国は国際連合憲章の原則に従って、両国間の友好を、相互理解を進めなければならないという指針が規定されておることはそのとおりでございますし、また私どもも、そういう姿があるべき姿だ、こう思っておるわけでございます。   〔谷川委員長代理退席、委員長着席〕 そのあるべき姿から見ましていまの事情はどうかといわれますと、いろいろ問題がある。この問題のあるところをどういうふうに解決するかという場合の、本件に限って申し上げますと、韓国国内法制を云々するという方法、あるいは早川、太刀川両人の人権を擁護するという立場からのアプローチ、いろいろございますが、政府がいままでとっております態度、つまり日本人を保護するという見地からとっておる態度というのは、韓国の法制をことあげするものでなくて、早く帰国できるようにすることということで、そういう観点から、この逮捕に至るその逮捕以前の状況、つまり、二人が取り調べを受けた段階から、早期に帰国が実現できるようにということで一貫して要求し続けておるわけで、その場合には、この法律が非常に緊急な事態で突如として行なわれた法令で、それに外国人である日本人が韓国に渡ってそれをすべて知り尽くしていることが想定されるとしても、それは非常にむずかしい面があるではないかというような点だとか、またこの二人についてはそれぞれに人権の面から考慮しなければならない面もあるというようなことも含めまして、早期に出国できるように適切な配慮を願いたいということで一貫してまいっておるわけでございまして、いままでのところ私どもが得ている感触では、これはかりに二十年という判決が最終審までいって確定いたしましても、その三十年という刑に服するということよりも、それ以前に、相当早い機会に政治的な配慮といいますか、適切な配慮というものがなされるのではないかという期待が高まっておったところで、ただいまのようなまたさらに重なった異常事態になっておりまして、ここのところをどういうふうに見きわめるかというのは、これは事態が冷静になりまして、私どもも全面的に検討しなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  155. 正森成二

    ○正森委員 外務省のいまのお話でございますけれども、外務省は、韓国国内法についていろいろ言うよりも、早くともかく出すということで、二十年の刑が確定しても、政治的にそれより早く出られるということを期待しておったんだ、それが今度のことでどうなるかという趣旨のことがありましたけれども、配慮も、し過ぎるとこれは日本国民の権利擁護にとってずいぶん不十分なことになってしまう。  国際法のものの本を読みますと、現在の人権を尊重するという世界的な風潮の中では、基本的人権があまりにも侵害されておるという場合には、それはもはや一国の国内問題ではなしに、これは国際的な問題である。その場合に、一定のことを当該国に対して言うのは、それはもちろん限度にもよりましょうが、内政干渉の批判を阻却されるという説が国際法では有力になっておるのですね。まして、わが国では考えも及ばない、中村法務大臣のかつての答弁によれば、わが国では考えられない、そんな法律をつくろうと思ってもつくることのできない法律でございます、こう言っているのですね。そういうものでわが国民が二十年も処罰されようとしておる。しかも、その後、こんなもの要らぬようになったのだといって刑の廃止をしながら、なお従前の例によるということであくまで処罰しようとしておるというようなことに対して、われわれは政治的な配慮を求めるだけでなしに、法律的にも主張すべきことは主張するということが、ひいては政治的な配慮を引き出す上でも有力な根拠、手がかりになるのではないかということをわれわれは考えるのですね。第一、四月五日ですか、つかまったときに、あの法律では四月八日までだったら申告すれば処罰されないのですね。その一番大事な時期、その大事な時期に外務省は事を公にしないで、いや、たいしたことがないからだいじょうぶだ、だいじょうぶだというのにひっかかってというか、人がよいからそれについていってというか、それで事をこんなに大きくしてしまったということは否定できない事実なんですね。初動捜査が悪かったというか、初動弁護が悪かったというか、そういうことはやはり指摘せざるを得ないと思うのです。したがって、もう少し法務省警察庁のそういうことに詳しい方の意見もよく聞かれて、外務省はなすべきことをき然としてされるのがやはり日本外交にとって当然じゃないか、私たちはこう思うのですね。いかがですか。
  156. 中江要介

    ○中江説明員 この二人の日本人が最初に捜査を受けたといいますか、取り調べを受けた段階で私どもが韓国側の言っておったことを信じて、これは事実を調べればたいしたことはなくて事は重大になることはない、本人たちもいまのところは公にしないでくれと言っているからというのを信じて、その方向への解決の努力をしたけれども結果としてはそうはならなかりたという点については、私どもは反省しております。  それから、韓国に対する主張の根拠に、いろいろの専門的なあるいは法律的なあるいは国際法上の論点のあることも、私どもも私どもなりに検討いたしました。それで、基本的人権の擁護というものは、いまや国際社会ではますます成文法化に向かっていろいろな努力が重ねられてきている。それに対しては、日本政府も国連の活動でもその方向に協力しているわけでございますけれども、いままでのところでは、これはあるいは条約局長あたりの専門的な答弁があったほうがいいのかもしれませんけれども、私どもが承知しておりますところでは、人道に基づく関与というものは、現段階では、ちょうど南ア共和国の人種差別のアパルトハイトについて国連が介入しているように、国際連合としてその人道というか、人権擁護のために介入するというところまでは事実上行なわれておるのでございますけれども、一国と一国の関係で、人道による関与が先生がおっしゃいますように内政干渉の違法性を完全に阻却するところまで国際法が熟しているかという点については、まだ疑問があるというふうに私どもは見るものですから、そういう点でまた別な争いをするということによる対韓アプローチよりも、いまのところは両人の早期帰国という一点にしぼってやっていこうというのがいままでの態度でございまして、今後どういうふうに本件を扱うかにつきましては、先生の御意見も十分考えさしていただいて、筋の通った扱いにしたい、こういうふうに思っております。
  157. 正森成二

    ○正森委員 それでは次の問題に移りますが、韓国側が、大もの特使を派遣して親書を朴大統領あてに持ってきてもらいたい、その内容についてはこれこれ、これこれが必要である、新聞紙上の報道によればそういうことを言っている。それがもし事実だとすれば、これはわれわれとしては重大な内政干渉だと考えざるを得ないというように思われるわけですね。その中の黙視できないものが二つあって、一つは捜査協力という名でいろいろ言うてきておられる。もう一つは在日朝鮮総連の制圧ないしは規制ということを公然と韓国外相が言っておるということですね。  そこで、これについて伺っていきたいと思うのですが、一体韓国側は捜査協力ということで何を言っておるのか。われわれが新聞紙上から考えておるところでは、金浩竜吉井行雄吉井美喜子の三人を狙撃の共犯として逮捕その他で調べる、あるいは場合によっては犯罪人として引き渡してもらうということまで要求しておるように報道機関からでは見えるのですね。それについて、そういうことを外務省あるいはICPOを通じて警察庁に言ってきておるのか、それについて伺いたい。
  158. 山本鎮彦

    山本説明員 私どものほうにはそういうことは来ておりません。
  159. 正森成二

    ○正森委員 しかし、捜査協力、これをやってほしい。最近の新聞報道を見ておりますと、国内法の範囲内でというのが国内法の許す限りとなって、範囲内と許す限りというのはだいぶニュアンスが違うわけで、範囲内というのは範囲内だけど、許す限りというのは少々はみ出ても許される限りという意味かなというように勘ぐるわけですけれども、許す限りというと相当なことまでやるのか、こう思います。  それに関連して、もし捜査協力ということで、単に拳銃の窃盗やあるいは出入国管理令違反以外に朴大統領狙撃、それから陸英修夫人の殺人、こういうものの関係者として捜査するとすれば、わが国の刑法一条から三条までの総則規定がありますね。それについて一体どの条項に基づいて、何罪で捜査できるというように考えておられるのか。これは法務省になりますか、伺いたいと思います。
  160. 筧榮一

    ○筧説明員 お答え申し上げます。  ただいま朴大統領狙撃事件関連してというお話でございますが、そういう点、まだ具体的に私ども現実の問題として考えておりませんので、お答え申し上げますのはあくまでも一般論と申しますか、まさに理屈の問題として現時点でどう考えておるかという答えになろうかと思います。具体的事案が起こりました場合には、さらにその事案に即して検討がなされるということになろうかと思います。あくまでも一般論ということでお聞き取り願いたいと思います。  いまの御設例を抽象的に翻訳いたしますと、外国人外国である犯罪を犯した場合に、それの共犯が日本国内で、日本人の場合あるいは外国人の場合、教唆とか幇助行為が行なわれた場合に、その日本人あるいは外国人に対して日本刑法が適用されるかどうかということになろうかと思います。この点につきましては、まずいろいろ説があることは先生御承知のとおりでございますのでその詳細は省略させていただきますが、日本人につきましては、第三条で日本人の国外犯として規定されております犯罪につきましては刑法の適用があるということになろうかと思います。それから外国人の場合におきまして、これも外国人の国外犯の規定にあります場合には、当然二条によって適用があるということがまず言えようかと思いますが、それのない場合にどうかということでございます。これにつきましては、積極、消極説もあり、判例も若干あるようでございますが、現在私どもの考えておりますところでは、その教唆、幇助なりの客観的行為が国内で行なわれた場合には国内法の適用の余地があるというふうに考えております。
  161. 正森成二

    ○正森委員 非常に抽象的にお答えになりましたので、それで本件関連させながら、しかも一般的に質問するのがなかなかむずかしいのですけれども、そこは具体的な事件でと聞くとあなた方も答えにくいでしょうから、本件を想定しながら、なおかつ抽象的、一般的に質問しますから、そこは以心伝心できちんと答えてもらいたいと思うのです。  まず、共犯といってもいろいろありまして、まあ厳密に法律的に言っておるわけじゃないですけれども、教唆、幇助というような従属的共犯といわれるものと、それから共謀共同正犯といわれる意味での共犯というのでは、刑法総則の一条から三条を適用するにあたってうんと違ってくるのじゃないかというように思うんですね。たとえば、あなたが言われた、外国外国人が殺人を犯したとして、刑法の二条によると、「日本国外ニ於テ左ニ記載シタル罪ヲ犯シタル者ニ之ヲ適用ス」こうなっておりますけれども、その中には殺人罪は入っていないんですね。殺人罪が入っておるのは三条で、「本法ハ日本国外ニ於テ左ニ記載シタル罪ヲ犯シタル日本国民ニ之ヲ適用ス」こうなっておるわけです。そうすると、実行行為がどこで行なわれたかということと非常に密接に関係してくるわけですけれども、もし日本国内におる人物を、外国で実行行為が行なわれた殺人事件関連者として何らかの関係で処罰するということになりますと、一条に「本法ハ何人ヲ問ハス日本国内ニ於テ罪ヲ犯シタル者ニ之ヲ適用ス」と、こうなっておるでしょう。ですから、たとえば刑法の百九十九条や二百条ではなしに、御承知のように、二百一条には殺人の予備罪というのがありますね。この殺人の予備罪の場合には、予備そのものが日本国内日本人において行なわれておるという場合には刑法の一条でも適用できるということは解釈上成立するのですか。あなた方はそうお考えですか。
  162. 筧榮一

    ○筧説明員 予備罪で処罰するといいますか、予備行為が日本国内で行なわれ、それが殺人予備罪の構成要件を満たします場合には、当然一条で適用があろうかと思います。
  163. 正森成二

    ○正森委員 それからもう一つ、三条では「日本国外ニ於テ左ニ記載シタル罪ヲ犯シタル日本国民ニ之ヲ適用ス」とあって、その場合には百九十九条や二百条が入っておるわけですね。ですから、もし三条で処罰しようと思えば、これは殺人罪の共謀共同正犯というかっこうで処罰するのですか。そういうことも考えられるのですか。「日本国外ニ於テ左ニ記載シタル罪ヲ犯シタル日本国民ニ之ヲ適用ス」とあるでしょう。どういうぐあいに解釈していますか。
  164. 筧榮一

    ○筧説明員 共謀共同正犯の成立いたします場合には、いまの三条で適用になろうかと思います。
  165. 正森成二

    ○正森委員 幇助の場合は……。
  166. 筧榮一

    ○筧説明員 幇助並びに教唆の場合、これは外国人日本人を含めてお答えいたしたいと思いますけれども、刑法第一条にいっておりますところの犯罪地、これをどう解釈するかということに帰着しようかと思います。これにつきましては、先生御案内のとおりいろいろ説があるわけでございますけれども、正犯実行の地といいますか、いまの場合で申し上げますと、教唆、幇助につきましても、外国、これが犯罪地であるという説がありますと同時に、その場合には結果発生の地といいますか、正犯が実行行為を行なった地のほかに、当該教唆あるいは幇助行為が行なわれた土地、これも刑法一条にいうところの犯罪地に該当するんだという説がございます。私ども、先ほど申し上げた結論は、その説が現在とるべきではないかという結果でございます。
  167. 正森成二

    ○正森委員 そうしますと、これはあなた方が、仮定の問題といいますか、現実の問題には答えられないと言っておられるから質問のしかたが非常にむずかしいのですけれども、かりに日本国内韓国の今回の事件について、窃盗やらあるいは出入国管理令違反以外の、殺人に関連することで捜査ができるということになるとすれば、あなた方はどれならできると思っておられますか。
  168. 筧榮一

    ○筧説明員 具体的、抽象的と、いろいろ混乱いたしますが……
  169. 正森成二

    ○正森委員 だから私は特定の個人の名前をあげてないのです。
  170. 筧榮一

    ○筧説明員 その教唆あるいは幇助行為、それが国内でどのような形で行なわれて、それが客観的な幇助行為あるいは教唆行為と認められる限りは国内法の適用があるということでございまして、前提の事実が明らかでございませんのでそれ以上はお答えいたしかねるわけでございます。
  171. 正森成二

    ○正森委員 殺人の予備罪というようなもので捜査ができるというような考えはとっておらないのですか。第一条の問題になりますね。
  172. 筧榮一

    ○筧説明員 具体的な事案によりましては殺人予備罪の適用がある場合もあり得ようかと思います。
  173. 正森成二

    ○正森委員 そうしますと捜査協力、現在は文世光の足取りを詳細に警察が調べる、あるいは拳銃出入国管理令違反等について現実に逮捕が行なわれたりいろいろ調べられておるということ以外に一歩進もうと思えば、日本刑法総則の一条から三条までで、抽象的、一般的にですけれども、できないわけではない。あとはそういうことを認定する証拠があるかどうかということになるような大体の答弁ですね。  そこで俵谷さんにお伺いしたいのですけれども、先ほど稲葉議員の質問に対して、韓国側から捜査についての要約書が来ているということについて、これは三百二十一条一項三号の書面に当たると思いますという趣旨の答弁をされましたね。それはそう伺ってよいですか。
  174. 俵谷利幸

    俵谷説明員 御説明申し上げます。  私はそのようにお答えしたわけではなくて、ある人の供述調書といいますか、署名、押印のあるものが送られてきた場合、そのものの証拠能力はどうかと、こういうお尋ねに対しまして、三百二十一条一項三号に当たるのではないか、かように思いますというふうに申し上げたのです。韓国側の外務省を通じて来ております陳述要旨なるものは、調書でもなければ何でもない、単なる情報程度のものではなかろうか、かように御説明申し上げたわけです。
  175. 正森成二

    ○正森委員 それはそうだと思うのですね。三百二十一条では、供述者の署名もしくは押印がなければ、幾らその人間が国外にいるというような場合でも、これは三百二十一条一項三号の書面にならないわけですから、だから韓国側の外務省を通じての捜査要約というものはこれには該当しない、一つの資料あるいは情報である、こういう見解ですね。  それはそういうぐあいに確認してもらったらいいのですが、しかしあなたは、かりにそうだとして、それは逮捕状を請求する資料にはなり得るという意味のことをおっしゃいましたね。それはやはりそういう御見解ですか。
  176. 俵谷利幸

    俵谷説明員 これは疎明資料の一つになり得る、かように考えております。
  177. 正森成二

    ○正森委員 山本警備局長に伺いたいのですけれども、そうしますと非常に微妙な点になってくるのですが、総務課長の答弁では、これは殺人罪あるいはその他についてもわが国内刑法上処罰し得る場合があり得る。それから、韓国からの捜査の要約書というのは三百二十一条一項三号の書面ではないけれども、逮捕状の発付を求めるこれは疎明資料にはなり得るということになると、これはいろいろなことができるということになってくるのですね。しかし百九十九条で逮捕するというような場合には、条文の「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」がなければならないのですね。そこで山本警備局長に伺いたいのですが、あなた方は韓国からのそういう捜査の要約が、あるいは要約のみで「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」、これは金浩竜氏とかあるいは吉井夫妻について当てはまるわけですが、そういうように考えておられるのか、あるいはそうではない、日本側の独自の捜査というものがなければ、「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」こういうことで裁判官に逮捕令状の発付を殺人罪等で、拳銃じゃないですよ、請求できないのだ、こう思っておられるのか、どちらですか。
  178. 山本鎮彦

    山本説明員 韓国側の陳述要旨だけで事件処理するというつもりはございません。
  179. 正森成二

    ○正森委員 私はそうあるべきだと思うのですね。金大中事件について私はだから最初にお聞きしておいたのですけれども、われわれが——われわれがと言うとあれですが、日本警察が指紋というような重要な証拠、目撃者、そういうもので捜査結果を自信を持って言ってもそれを否定するというものについて、韓国側の捜査については不満である、日本側の捜査に自信を持っておるというように言われた警察のたてまえからすれば、その韓国側が文世光自供、その要約というようなもので連絡をしてきても、それだけで「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」ということで逮捕令状を請求するということは、これは非常に軽率であるということは言えると思いますし、警察庁がそういう態度であるということは当然だろうと思うのですね。  そこで、そうだといたしまして、いま話題にのぼっている三名について、私は三名に関係する人から、新聞でも発表されておりますが、非常に尾行されるとか、ふろに行っておる間も警察が外に立っておるとか、いろいろなことがいわれておるわけですけれども、警察は現在本件について、文世光の足取りを詳細に調べて、文世光関連する範囲内でその人がいかなる役割りを持っておったかということを調べるのはある意味では当然として、それを越えて、ある人をすでに被疑者もしくは被疑者の疑いがあるということだけで調べるということは、これは捜査権から逸脱したものであり、許されないし、そういうことはなさるおつもりもないと思いますが、いかがですか。
  180. 山本鎮彦

    山本説明員 御意見のとおりだと思っております。
  181. 正森成二

    ○正森委員 そういう答弁を伺ったのですけれども、そこで私は、現実にはどうもそうでないようなことを訴えてくる人もおりますので、厳重に、いかに韓国側から捜査協力という要請があっても、国内法のたてまえ、あるいは憲法や刑法刑事訴訟法で定められているワクを越えていろいろな行動をとられることのないように強く望んでおきたい、こう思うのです。  韓国側が大統領狙撃事件について被疑者文世光陳述内容というものを送ってきておりますね。これは警察へ来ているものよりはずっと簡単なものであろうと思うのですね。外務省から、本文とは照合してないからその点について暫定的仮訳であるという注もついておりますから。しかし、そういうものを見ますと、たとえば去年の十一月十五日ごろ金浩竜より、旅費と拳銃購入費用として五十一万円を文世光は受け取ったという意味記載があるのですね。しかしわれわれの調査によりますと、この五十万円というのは、これは金浩竜氏などから受けたものではなしに、他の議員も質問をされましたけれども、陸末蘭というのですか、文世光の母、この母が五十万円を融通するということで融通したものであるということは、これは広くいわれておるのですね。またわれわれの調査によりましても、単にこの五十万円だけでなしに、文世光がその母あるいは親類との間で相当なお金を借り、そうしてまた返すということがあったというように承知しておるのですが、文世光が陸末蘭を含む親類に相当多額のお金を十一月以降借り、あるいはその一部は返すという事実があったということは警察は認めておられますか。
  182. 山本鎮彦

    山本説明員 資金の関係本件捜査の一つのポイントでございまして、すっと関連して調べておることはおるのでございますが、まだ全貌をつかんでおりませんので、断片的にこれがあったとかないとか言ってもなかなか真相に近づけないことでございますので、その点についてはいまここで述べるのは控えさせていただきたいと思います。
  183. 正森成二

    ○正森委員 詳細についてはお答えできないにしても、陸末蘭を含む親類との間で金銭の貸し借りが去年以来、あるいは去年に限定されないかもしれませんが、あったということだけは、これは事実でしょう。
  184. 山本鎮彦

    山本説明員 そのように考えております。
  185. 正森成二

    ○正森委員 そうだとすると、大統領狙撃事件で、いつ、何万円、金浩竜からもらったということになっておりますけれども、これはわが国内での捜査の裏づけがなければ直ちにそのまま措信できないということも事実ですね。
  186. 山本鎮彦

    山本説明員 おっしゃるとおりでございまa。
  187. 正森成二

    ○正森委員 先ほど同僚議員からニュー秘苑というものについてお尋ねがありましたけれども、たまたま、ニュー秘苑というのは大阪市西区の新町南一丁目一九四の二にあります。これは私の選挙区であります。非常に近くですから、行ってこういうぐあいに写真も写してまいりましたけれども、ニュー秘苑というところで、西区のわりといい場所にあるのですね。その近くに韓国領事館があるということも事実であります。少し大写しにしてきましたけれども、その店の前にはこういうように、キーセンといいますか、韓国女性の写真が十数枚張られておりまして、だからこれは普通の一ぱい飲むというようなところではなしに、こういう方がエンターテイナーとしてか、あるいはどういう種類の人としてか知らないけれども、出入りをしておられるものであるということは事実であります。  また、山本警備局長は、昨年の三月ころから経営不振になって、それで資金も陸末蘭は共同経営者から回収されておるというように承知しておる、こう同僚議員横山さんの質問に対してお答えになりましたけれども、私が警察を通じて伺ったところでは、あらためて昭年四十八年の十一月二十八日にカフェーという名目で風俗営業の許可が行なわれておりますね。ですから、去年の春ごろにもう経営が不振になって、それでだめだというのじゃなしに、経営はなるほどあまりはやってないようでありまして、私の調査では去年の暮れないしことしの初め以後はあまり客が寄りつかなくなったというようには聞いております。しかし問題の十一月前後の、非常に微妙な十一月二十八日に、またまたあらためて文世光の母である陸末蘭が申請名義人になってカフェーの営業許可をとったということは事実であろうと思うのですが、いかがですか。
  188. 山本鎮彦

    山本説明員 陸末蘭さんから聞いた内容ということでございますが……(正森委員「私はそうじゃなしに警察から聞いたのです」と呼ぶ)警察はこの人から聞いて報告したと思いますが、その根拠から申し上げますと、昨年の二月から三月ごろ、ニュー秘苑の経営者の橋本さんが経営不振で店を締めるという話を聞いた陸末蘭さんが、知人の朴長春さんという方と相談して、この店を引き継ごうということで、お互いにお金を出資し合って店内を改装して、昨年の五月ごろ開店した。そして八月九日にカフェー・ニュー秘苑の営業申請をしておるわけです。それがおくれて許可になった、そういうことでございますが、その後、その陸さんと朴さんが、経営者が意見が相違しちゃって、出資金はもう返そうということで、お互いにまたもとどおりにしてしまいまして、去年の八月中旬ごろからはもうその店に行っていない、そういうふうに陸さんは言っておる。申請したあとで許可がおりたというふうに聞いております。
  189. 正森成二

    ○正森委員 そうすると、許可がおりたときにはもう営業不振で、出資金などを返してもらっていたということになろうかと思うのですが、しかし、そうしましても二、三月ごろから出資金を出し合って、そういう営業をし、意見が合わなくなって、八月ごろですか、出資金を返してもらうというところから見れば、西区の新町南というと相当高級なキャバレーやクラブのあるところでありますから、その額も百万や二百万のはした金ではなしに、少なくとも何百万円以上のものであるはずなんですね。そうすると、関係者にこういうお金を持っておる者がおったということは、韓国へ行く費用とかあるいは香港へ行く費用というのは、何も第三者からもらわなくても、その親類相互間のやりくりでも十分できるということを十分示唆しておるわけで、そういう点はもちろん警察当局はいま伺いましたように十分調べておられると思いますが、私が法務省から警察に順次聞きましたように、万々が一にも逮補状の発付などが軽軽に行なわれないように、韓国側から捜査協力ということで国内法の許される限りなんて、範囲内からさらに一歩踏み出そうというような状況のもとで、厳にき然とした態度をとっていただきたい、こう思うのですが、それはよろしゅうございますか。
  190. 山本鎮彦

    山本説明員 私どももそのような覚悟でこの捜査を進めております。
  191. 正森成二

    ○正森委員 時間が参りましたので、私は最後に二、三確かめておきたいと思うのですが、外務省に伺います。  現在私どもが新聞で承知しているところでは、他の議員の質問ではわりとまだあいまいになっているようですが、椎名副総裁が特使として行かれて、そうして田中親書を渡されるということが新聞でも再々報道されておるんですね。  私はこう思うのです。まず第一に、現在大使館というのは、九月の六日に韓国側の多数のデモ隊が乱入をして、そして日の丸をちぎるとかあるいは大使館の表札をめちゃめちゃにするとか、中の器具をめちゃくちゃにするというような、国際法上広く認められておる公館の不可侵、また相手国政府はそれを厳重に保護する責任があるものに違反した状態が発生して、これはわが政府も抗議したところであります。きのうの新聞を見ましても、一万人からの人が大使館に突入しようとして、催涙弾をおそれずに突入してきておるというような状況があるわけです。こういうようにわが国の公館が乱入され、それに対する保護というものが十分に行なわれない、あるいは行なおうとしてもそれが完全に実現しないような状況のもとで、わが国の特使が早急に出かけていくということは、これはわが国の威信の上からいっても、また国際法の通常の冷静な雰囲気からいっても、いい効果をあげることができないような状況ではないか。むしろ、打ち続くこういうことに対して——きのうの報道によりますと、大きな鏡を持ってきて、それで大使館に太陽光線を当てて目つぶしを食らわせておるということが広く報道されておりますね。そういうような状況のもとでなおかつ特使を派遣するというその時期の問題ですね。内容についてはまたあとで言いますが、それが第一不適当ではないかというように思います。まずそれについて答えてください。
  192. 中江要介

    ○中江説明員 現在ソウルにあります日本の大使館が、この前の襲撃事件のために、従来のように十分活動できるように修復できているかどうかの点につきましては、領事部のところは一部破損が大きかったので少し手狭になっているということでございますが、あとの修復は、韓国側があの日の夜、突貫工事で一応執務のできるところまでは回復している。しかし、にもかかわらず、デモが御指摘のように連日相変わらず大使館をねらってやってきている。そういう状況で特使を派遣することがいいかどうかという点でございますけれども、新聞に報じられておりますように、まだ話が具体化しているとは私どもは聞いておりません。それで、もちろんその時期の問題は、特使を派遣するということにきまりましても、慎重に検討されなければならないと思いますが、ただ、先ほども私申し上げましたように、いまの状態はちょっとほっておけない面があるので、その点は相当重大な関心を持って見守らなければいかぬという要請が他方ありますので、その辺からどのタイミングでどうするかということは、これから政府首脳の間で慎重に検討されるものと私どもは期待しておるわけでございます。
  193. 正森成二

    ○正森委員 法務省に伺いたいと思うのですけれども、要求の一部の中に、朝鮮総連の制圧とか朝鮮総連の規制とか、とんでもないことを言っているんですね。それはとんでもないことだと思いますけれども、あなた方は、そういうことが現在の事実関係の中で、日本国憲法のもとでできると思っているのかどうか、それについてお答え願いたい。政務次官の高橋さんからでもけっこうです。
  194. 高橋邦雄

    ○高橋説明員 朝鮮総連につきましては、これはたびたびの機会に申し上げておるわけでございますが、わが国の法律の適用を受けることは言うまでもないことでございます。その活動がわが国の法律に違反しない限り、その活動について特別な法的な規制を加え、措置をとる、こういうことはできないというふうに考えておるわけでございます。その考え方はいまも変わりないわけでございます。
  195. 正森成二

    ○正森委員 政務次官には非常に失礼ですけれども、わが国の法律に違反しなければそれは規制できないというのは、これはあたりまえのことであります。それにもかかわらず、韓国側がそういう要求をしていることについて、現在そんなことができるのかどうかということも私は伺っているわけですね。そこで事務当局にも伺いたいのですが、朝鮮総連の制圧とかあるいは——制圧といえば、もう消滅させるというか、解散させるということでしょうね。そういうことを言う場合に、参議院でも聞かれたそうですけれども、わが国にそんなことができる法律があるんですか。
  196. 筧榮一

    ○筧説明員 私の所管ではございませんが、先生御案内のとおり、破壊活動防止法がございます。団体の規制に関しましては破防法がわが国におきます法律でございますが、この点につきましては公安調査庁のほうから、現段階で解散とか規制はできないという趣旨の答弁が参議院でなされたわけでございます。
  197. 正森成二

    ○正森委員 所管でないから非常に簡単なあれですが、われわれは第一破防法自体が、これはわが国の憲法体系で許される法律とは認めていないけれども、しかしそれでさえ、おたくの公安調査関係の人が、国外におけるいろいろな政治的目的での種々の行為については適用できないということを言っているんですね。たしかそうだったでしょう、新聞報道によりましても。そうすると、現在の韓国政府の要求というものは、できないことをやれと、こういうことを言うということは、法律の新しい制定を求めるということなんです。しかも、単に法律の新しい制定を求めるということであるだけでなしに、まだわが国において証拠上、在日韓国人あるいは在日朝鮮人について捜査権なり警察権を発動すべき段階には至っていないのに、その段階でなおかつそういう団体を制圧するとか解散させるということは、新しい法律をつくってもできないことなんです。わが国の憲法における結社の自由あるいは思想、信条の自由というものを踏みにじらなければ、そういうものまで制圧するような法律はできないわけです。ですから、私どもはある自由民主党の与党の議員と委員会外で懇談をしたときにも、この韓国側の要求は、ただに法律を適用して取り締まれというだけでなしに、法律の制定、さらにそれは憲法に違反する法律の制定、憲法に違反するとすれば憲法を改正せよという要求まで含むものだ、言語道断であると言っているのですね。与党の議員でも言っているのですよ。そういうことに対して政府はき然とした態度をとるのはあたりまえだと思うのです。高橋さん、いかがですか。
  198. 高橋邦雄

    ○高橋説明員 先ほども申し上げましたとおり、日本国内における団体の活動は、日本の法律の規定によって、その法律の範囲内であればそれに対して何ら特別な処置をとることができないことは明らかであります。またいまの法令のほかに何らかの特別なものをつくるこういうことを考えておるわけではございません。
  199. 正森成二

    ○正森委員 終わります。
  200. 小平久雄

    小平委員長 日野吉夫君。
  201. 日野吉夫

    ○日野委員 私は、いままで緊急事案の審議であったのですが、これは緊急性を持つかどうかわかりませんが、人道上の問題として、死刑囚として八十二歳になった平沢貞通君のことについて伺いたいのです。  実は私は仙台でございますので、仙台の刑務所におるこの人に対するいろいろの救援運動や話を受けているわけです。いろいろのことを聞いておる。それで手紙も何回かちょうだいをいたしております。私どもの周囲には、何とかこの問題を解決しようと、救援会の諸君も大ぜいいて、いろいろの運動にも参加している。場合によっては救援運動に幾ばくかの資金を提供するというような関係にありますが、最近非常に老齢化が目立って、健康が非常に悪くなっている。そういうことで、とにかく仙台の刑務所に来て死刑囚としての服役二十六年にもなる、こういうようなことでございますので、各地で非常なこの救援運動がいま起こっているわけであります。  こういう事情で、健康の状態が非常に悪いと私聞いておりますが、こちらの関係に新しくその後健康上の状態や何かありますならば一応伺って、その上で二、三お伺いしたい、こう考えるのでございますが、担当は矯正局長ですか、ひとつそこらをお聞かせ願いたいと思います。
  202. 長島敦

    ○長島説明員 ただいま先生から御指摘がございましたように、御本人はただいま八十二歳という高齢でございまして、そのために老化現象と申しますか、そういうような現象が相当進んでおりますし、消化器系統が少し弱っておるという状態でございます。七月二日に脈の結滞がございまして、非常に心配したのでございますけれども、これはその日のうちになおりました。その後の状況でございますが、その後は、一般的に非常に老化現象はございますけれども、一応元気が回復いたしまして、食欲も一応良好な状態経過しております。  本人につきましては、老齢でもございますし、ただいまのような状態もございますので、刑務所の内部で、ここは医療センターということで相当医者をかかえておりますけれども、主治医がついておりまして慎重に見ております。そのほかに、外部の大学その他いろいろな病院から専門のお医者さんに相当ひんぱんに来ていただきまして、診療を受けておる状態でございます。現在のところそのような状態で、血圧、脈搏その他の点には一切異常はございませんで、これと取り立てて申し上げる病状はないという状態でございます。
  203. 日野吉夫

    ○日野委員 私のところに入った情報だとだいぶ違っている。こちらでいま局長が言われたことではだいぶ軽く見ておられるようですが、何せ八十二歳の老人ですから、老化現象のあることは仰せのとおり。われわれは、いま当局から話された程度の病状よりもっともっと深刻じゃないか、こう考えるのであります。とにかく二十六年間拘置所生活をしておって、心身が極度に疲労している。もともと低血圧のところ、最近では心臓が弱り、さらに悪いことに上下合わせて三本しか歯がなくて、流動食で栄養を保っているというような状態で、このまま放置していたらこれは重大事態が考えられるのでございまして、この状態は刑の執行上全くむごたらしい状態だといわなければならないのでありまして、このまま放置しておくことは人道上どうかと思うのです。  ことに、いま言われた監獄法の問題がありますね。病院移送の問題があり、仙台にはたくさんいい病院がそろっているのです。刑務所の病院が一切の管理をやっていると言うけれども、この状態の病人では、刑務所の設備とあの状態では十分やっているとは言えないのではなかろうか。監獄法という法律があるんですからね。これは合法的なあれとしてやはり移してやったらいかがなものでしょうか。これはできないのでしょうか。その必要がないと言われるのでしょうか。
  204. 長島敦

    ○長島説明員 ただいま先生がお触れになりました条文は監獄法の四十三条という条文だと思いますが、これによりますと、「精神病、伝染病其他ノ疾病ニ罹リ監獄ニ在テ適当ノ治療ヲ施スコト能ハスト認ムル病者ハ情状ニ因リ仮ニ之ヲ病院ニ移送スルコトヲ得」「前項ニ依リ病院ニ移送シタル者ハ之ヲ在監者ト看倣ス」という規定がございます。  この規定の実際の運用状況を申しますと、かなり重い病気にかかる、あるいはその監獄自体の医療設備では十分でないというような場合には、近所の、外部の専門のお医者さんがおられるところへ移送しまして、そこで治療を受けてから、なおりますれば連れ戻すということがございます。問題は、具体的なその病状と、それから病院の能力と申しますか、設備、医者その他の状態を見まして、監獄におります医者の判断に主としてかかるわけでございますけれども、外部の病院で治療させたほうが適当だ、逆からいいますと、監獄で適当な治療ができないというふうな医者の意見が出てくるということになりますと、その具体的な状況を刑務所長等が判断いたしまして、移送するかどうかをきめるというのが運用でございます。本件につきましても、この運用の基本の考え方は違わないわけでございます。
  205. 日野吉夫

    ○日野委員 これは適当なお医者さんに見せて、その必要なしという判定が出ておるのですか。
  206. 長島敦

    ○長島説明員 先ほども申し上げましたように、現在外部の非常に高名と申しますか、その道の専門のお医者さんにも来ていただきまして、ときどき診療を受けておるわけでございます。刑務所側のお医者さんの現在の判断では、現状におきましては施設内で十分にまだ治療ができるという判断であると聞いております。
  207. 日野吉夫

    ○日野委員 これは本人申請やそうしたものがなく、一方的に刑務所だけの判断でやられることでしょうが、しかしこれはあまり酷じゃないかと思いますので、このことについてはあとで私も意見を申し述べたいと思うのです。問題は、合法的なそういう規定もあるのだから、それでもって移送させて、病人を移せばあるいは気分的にもいいかもしれません。私、このごろ方々の老人の会に出る機会がございまして、いろいろ老人諸君からの意見も聞きましたが、できるだけわがままにして生活していきたい、これは事情の違う諸君でございますが、そういうことが老人の願いなんです。いま拘束されて長いこと、二十六年という歳月ですよ、この間、監獄生活をしている人にはそれはとても耐えられない生活です。心機一転して、別な設備の整った病院にでも行ったならばもっと気がおさまるのじゃなかろうか。八十二歳の高齢でもあり、何とかこの機会にそういう処置をとれるものならとってもらえないかというのが私たちの願いなんです。そのことを、人道上の重大な判断でここらはやってもらえないのか。  ことに、この病人はいろいろ問題はありましたが、帝銀事件ですから、これに対する問題を残したまま、いまだ死刑の執行ができないでいるという実情——これはほかにも七人とかあるはずですがね。これについて国会でもいろいろ特例法をつくろうと、神近市子さんなどが中心になってだいぶ話を進めて、その法律をつくらなくてもいまのあれでやれる、こういうことでそれは取り下げになっているはずです。そのままこれは中央更生保護審査会ですか、ここにかかっておるのですが、一向に進んでないんですね。こういう事情もあり、私どもはこれをひとつ進めて、できれば恩赦にでもかけていただいたらほんとうに喜ぶであろうし、そのことが人道的な取り扱いでないか、こう思っているんですが、審査会の委員が何かかわったとかなんとかいう事情があるんですか。そのことをひとつ。
  208. 横山精一郎

    横山説明員 中央更生保護審査会におきまして、委員の構成は委員長一名と委員四名でなっております。そのうち委員二名が昨年来かわりまして、そういうことで慎重審議しておりますけれども、記録が膨大でありますことや、再審係属中で、記録も見るのに裁判所のほうとこちらのほうと、いろいろ分けて読むという関係もございまして、慎重にしかも迅速にやらなければならないというたてまえでやっておりますが、いますぐに結論を見ることができないというような状態でございます。
  209. 日野吉夫

    ○日野委員 こういう環境に置かれて、この人たちはほとんど無実の罪であるという無実を主張して、今日まで長いこと監獄に入っているわけですね。いろいろ問題がある。その点をはっきりして、そして早くそれらの事務的なことを進めて、恩赦にでもかけていただけば幾ら喜ぶかわからない事態でございますので、何とかひとつここらは法律のしゃくし定木な解釈だけじゃなしに、この事態をひとつ解消するように取り計らってもらいたいというのが一つのお願いなんです。  いま各地で大学の教授やいろいろ、大ぜいの人が救援運動に立ち上がっている。平沢貞通さんの署名運動に知名の士が三百六十名も連署している。このごろ二十日間で署名をとるこの新しい運動に千二百六十九名ですか、二十日間でできたという大きな一つの社会運動にもなっていくと私思うのです。昔の人の歌に、「落ちぶれてそでに涙のかかるとき人の心の奥ぞ知らるる」という歌がありますが、ほんとうにいまここでこういう状況に置かれる人が、あなた方のちょっとした親切に感激してどんなに喜ぶかわからぬ。しかもこの諸君は、おれは罪人じゃない、自分でやった罪じゃないんだ。何かの、占領治下における一つの不明な事態によって犠牲になっているんだという観念もあるので、そういう観点から、ひとつ人道的な問題としてこの問題を処理して、とりあえず重態な病人であるならば新しい気持ちのいい病院に移してやるというような一つの処置は、これは合法的にできるのですね。あなた方の考え一つ、もしあなた方にそこまでやっていただくというならばどれほど喜んで、みんな年もとっていますから、世を終わられるかしれない。そういう事態に対して、あなた方国として、横山務課長ですか、恩赦課長もやられた経験もあり、ここらのところを何とかやっていただけるお気持ちがおありでないかどうか。何かここであなたの気持ちを聞かせてもらえば私たち非常に嬉しいのですが、いかがですか。
  210. 横山精一郎

    横山説明員 恩赦につきましては、先生御存じのとおり、中央更生保護審査会でこれをおきめになることでございまして、ここで私がお答えするというわけにはまいりませんが、先生のいま申されましたその御意向は、帰りまして十分に伝えたいというふうに思っております。
  211. 日野吉夫

    ○日野委員 それはいますぐできない、やっぱり審査会があることですが、長島局長に伺いますが、この病院等の問題は、何か局内にも、移送さしてもいいというような議論もあるかに私たちも承っているのです。あなたの考え方一つで病院の移送ぐらい、いま経費も何もかかるわけないのでしょう。七十歳以上の老人には医療無料の制度もしかれてある。何か重大支障でもあるがごとき印象を受けますが、そうでなく、これぐらいは何とかひとつやって、当面、病院移送ぐらい大したことでないように思うのですが、何かこだわりがあるような気がするのですが、できないでしょうか。
  212. 長島敦

    ○長島説明員 私自身、先生のお気持ちも十分わかっておるつもりでおります。人道的な処遇ということを私も標榜しておる一人でございますが、問題は費用とか何かの問題じゃございませんで、監獄法の趣旨から申しまして、刑務所の中で十分に医療ができるという体制がございますと、中で治療するというのが監獄法のたてまえでございますので、これは具体的な病状その他を慎重に私ども見ておるわけでございまして、また万全の措置をいま講じておるわけでございますので、その点はおわかりいただきたいというふうに考えます。
  213. 日野吉夫

    ○日野委員 監獄の機関を過信しておられるようですがね。私、仙台なんですが、あなたの言われるような、仙台に完全な監獄の施設があるとは私は考えておりません。いまここに局長とだいぶ違った見解のなにが出ておりますが、こっちのほうが真実であろうと思います。なおひとつこの点をお調べ願えませんか。局長が入手している病状と、いま現実に八十二の老人が苦しんでいる、苦悶しているこの病気の姿がだいぶ違うんじゃないかと思うのです。ここらをひとつ十分、もしあれなら行って見てこられるなりしたら、あなたが信じておられるようなことでないと思う。まあ部下のあれをそんなに批判するわけにもいきませんでしょうけれども、見てこられるなり、状況をもっと詳しく調べて、できるならばひとつ早急にそのことぐらいは私やってもらいたいと思う。いま申された、費用はかからないというのは、そのことは監獄のたてまえですから、費用の問題でないことぐらい承知いたしておりますが、とにかくこういう事情を何とか早急に解決する一つの手配をあなたがもしやってくださるならば、本人たちはあなたに対してほんとうに感謝し、そして、よし、ほんとうに今後の生活を喜んで暮らせるというような事態がくると思う。私は、このままほっておいたならこのまま殺してしまうのじゃないかというようなことを心配する。そのことがいわゆる人道的な問題になろうかと思うので、どうぞひとつそこらをお願いし、こういう状況ですから、何とか人道的な立場から、このことについての御意見があれば、高橋政務次官に最後の締めくくりの答弁をお願いしたいと思います。
  214. 高橋邦雄

    ○高橋説明員 ただいま矯正局長が御説明申し上げたわけでございますが、確かに本人につきましてはたいへん高齢でありまして、弱っておるようでございます。私どもといたしましては、健康の管理につきましては細心の注意を払っておるわけでございまして、ことしの三月から八月の間にかけましても、七回も外部の専門医に来ていただきまして見ていただいたり、また毎日医師や看護婦に部屋を見させたりしておるわけでございます。いまいろいろお話がございましたが、十分なる健康管理をいたしておるというふうに考えておるわけでございます。しかし、いろいろお話もございますので、さらにひとつその点は細心の注意を払うようにいたしたいと思います。
  215. 日野吉夫

    ○日野委員 なおひとつこのことについては私も個人的になお調査するところもありますからまた申し上げますが、時間がありませんからここらで終わっておきますが、とにかく中央更生保護審査会ですか、この結論が早く出て、これらがほんとうに喜んで服役してもらえるような状況、これができれば恩赦が成り立つのですから、それを待っているこれらの諸君に対して一刻もすみやかにこのことを決定するよう御尽力願って、私の質問を終わっておきます。
  216. 小平久雄

    小平委員長 次回は、来たる十月十八日金曜日、午前十時理事会、午前十時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後二時三十三分散会