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大平国務大臣 山田さん、誤解をしないようにお願いをしたいのでございます。私
どもは、
田中さんのお
立場をかばうために
守秘義務を採用するなんというふらちなことはいたしていないつもりなんです。そんなことをしたら、あなたのほうから逆におこられる
立場なんです。
われわれ五万二千の
税務官吏が十数兆の国税を秩序正しく調定させていただいておるゆえんのものは、われわれ徴税当局に対しまして
国民が御信頼を寄せていただいておるからだと思うのでありまして、いまの
税法は、御案内のように、
納税者の御協力を得なければ執行ができないわけでございまして、公権力を行使いたしましてその
個人の
財産の増減というものを十分聞いて、
承知して、それで課税をしていくわけでございます。まず御
申告をちょうだいして、よくよくのことでない限りそれを信頼して徴税してまいるのが普通でございますけれ
ども、これに対しまして、人間のことでございますから記憶の間違いもございましょうし、つけ落ちもありましょうし、あるいは意識的に
脱税、節税を考える向きがないとは言えないわけでございますので、そういうことに対しまして五万二千の
税務職員は終始緊張した
モラルをもちまして徴税に当たっておるわけでございます。
そういう
立場でおる徴税官吏が
承知した
秘密というものは外に開示をしてはならぬというのは、この
国会できめられた
法律なのでございます。その
法律を踏み越えないと何かますます
疑惑に包まれるじゃないか、そういう
意味のことをあなたはおっしゃいましたけれ
ども、
法律は
税制の公正な執行を確保するために
守秘義務というものを
税務官吏に課しておるわけでございます。したがって、それは守らなければならぬと私は考えておるわけでございます。
それで、先ほど申しましたように、
田中さんであろうとどなたであろうと
納税者にかわりはないわけでございまするので、それに対しまして私
どもは、間接、直接の資料が入りますならば
調査をいたしまして、いままで調べたことで足りないものがあるかどうかを検討いたしまして、
脱漏があればこれを是正してまいるのは当然の
任務と心得ておるわけでございます。したがって、そのように鋭意
税法の公正な執行に当たっておりまする
税務官吏をまず御信頼していただきたい。
田中さんの場合におきましても、この方針で終始着実にやっておるわけでございますから御信頼をいただきたいということをお願いいたしておるわけでございまして、もしそうでなくて、
税務官吏のほうで
田中さんなるがゆえに
秘密をばらばら開示するということになりますと、Bの人の場合にもCの人の場合にも聞かれた場合には言わなければならぬ。そんなことをしたら
税法の執行なんかできません。ですから、私
どもは
税法の適正な執行を保障する
意味におきまして、厳正に
守秘義務は守らせていただきたいと願っておるわけでございます。
それから第二に、しかしながらあなたが言われますように
国会が
国政を御
審議になる、広く深く御
審議になるお
立場にあるわけでございまするし、
国会はまたみずからの権能をお持ちでございまして、
調査権を御発動になることも
国会に与えられた御権能であると
承知いたしております。したがって、政府のいう
守秘義務と
国会の
調査権というものをどう考えるかということが第二の問題になってくるわけでございます。これは
参議院におきましても
お答え申し上げているとおり、どちらが優先するという性質のものではないと私は思います。したがって、
守秘義務を守らなければならない
行政府の
立場に対して、
国会も十分御理解をいただきたい。それから私
ども行政府も、
国会が広く深く御
審議をいただく場合に、十分それに御協力申し上げなければならぬ
立場にあります。したがって、これは
国会と
行政府が御協議いたしまして解決できない問題ではないと私は
確信している旨
参議院でも
お答え申し上げたのでございます。
こういう問題は、
田中さんの問題があろうとなかろうとある問題でございます。
田中さんの問題もいま再
調査をいたしておりまして、いま
国税庁からも申し上げておりますように、われわれを御信頼いただきますと私
どもがきちんと
処理いたしますからということで、よし、それじゃおまえ
たちを信頼するからきちんとやれとおっしゃっていただければいいわけなんでございますが、それが私
どもが何か隠しておるんじゃなかろうか、隠すべからざるものを隠しておるんじゃないかというようにあなたがおとりでございますならば、その誤解を私は解いていただかなければならぬと思うのです。私
どもはわざわざそんなことをやってはいないわけなのでございます。適正な
税法の執行をやらなければならぬ厳粛な
責任を立法府からわれわれはいただいておるわけなんでございますから、それによってわれわれはやっておるということは御理解をいただきたいと思うのでございます。
それではこの問題についてどういう手順でおまえは
処理をしていくかということでございます。これは
田中さんであろうとどなたであろうと、先ほど申しましたように、新たな
情報が入る、直接、間接の資料が入る場合に、もう一度いままでやったことに間違いがなかったかどうかということを再
調査するのが当然の
任務だと思うわけでございます。したがって、それをいまやっているわけでございまして、その結果が判明いたしまして、私は万々間違いないと思いますけれ
ども、間違いが万一でもございましたならば、これは適当な手続できちんと処置してまいるつもりでございまして、そのことは私
どもを御信頼いただきたいと思うのでございます。
ただ、
田中さんはこの前記者会見を通じまして、
国民にいずれ自分からその
財産問題について言及することあるべしということを言われております。それは
田中総理といたしましてそう言われた以上は、いずれの時期か、どういう形か私は存じませんけれ
ども、みずからのお
立場を
国民に釈明される機会があることと思うのでございます。これは
田中さんの御判断のことでございまして、
税務官庁が、あるいは
税務当局、あるいは大蔵省、私の
立場で、そうしてくれとかそうしちゃならぬとかいうようなことを申し上げる
立場ではないと私は心得ております。