○竹本委員 本
年度のノーベル
経済学賞をもらったスウェーデンのミュルダール博士、彼は私
どもとは
基本的にも共通する面を持っておる学者であり、私も尊敬いたしておりますけれ
ども、そのミュルダール博士が最近の
世界の
経済の現状を歎き、あるいは
心配をしながら、政治家たちの認識というのはあまりにも現状認識が甘い、彼らは大体において一時しのぎのお化粧でごまかしておるというような批判をしております。大体これも当たっておると私は思うのですけれ
ども、そのミュルダール博士が、最近、八日の日でございますかに行なわれました
アメリカの大統領フォード氏の新しい
経済政策についても批評をしております。フォード大統領は御承知のように、就任以来各方面の意見を非常に精力的に聞いて
結論を出したようでありまして、さすがにそれだけの努力がある
程度効を奏しておるようにも見受けられまして、この間の
経済演説というのは一応傾聴に値すると私は思っております。
時間がありませんので、私のほうからいろいろまとめて申し上げて、あとで一括して大臣から御答弁を願いたいと思うのですけれ
ども、ミュルダール博士の批評によれば、フォードさんの今度の
経済政策もやはりお化粧だということになるようでございますが、私はこの点についてはミュルダール博士と少し見るところを異にいたしております。というのは、
経済学者という立場ではなくて、現実の政治家として、
アメリカの国内あるいは
世界経済に対する大きな影響を考えながら、いま政局を担当し、新しい
経済政策の
方向をきめるということについてまじめに考えてみますと、フォードが議会に述べておるところは、もちろんわれわれの立場からいえば若干もの足らないところもありましょう。たとえば、彼は共和党のやはり伝統の上に立っておる、そしてまた
アメリカ資本主義の擁護の立場に立っておるということでございますから、必然的にわれわれとして不満な点もありますけれ
ども、しかしながら、現実の政治ということを考えた場合に、いまあれ以上に何ができるかということを考えてみると、私は、彼の今度の演説に述べられておる
経済政策というものはある
程度評価をしなければならぬだろう、こういうふうに見ておるのです。大臣は全体としてこのフォードの新しい
経済政策をいかに
評価されるかということが第一の
質問であります。
あとでまとめて答えてもらえばけっこうなんですが、そのフォードさんの今度の
経済政策の中身をいろいろ吟味してみますと、いま
日本でも来
年度の予算の問題、あるいは現
段階における
経済の、財政
金融のかじとりの問題等とからめて、総
需要抑制を続けるか、転換するか、修正するか、先ほど来も非常に熱心に御
議論が行なわれたわけでございますけれ
ども、フォードさんはいわゆる二正面作戦というのをとっておると思うのですね。すなわち、デフレに対して、また
インフレに対して、それぞれの対応のしかたが別個でございますから、別個のものを二正面作戦として取り上げておる。
簡単に申し上げますと、たとえば
インフレを押えつけていこうという面につきましては、思い切ってといいますか、五%のサーチャージ、増税も考えておる。
日本では、増税という問題はなかなか取り上げられないし、だれもかれでも
一つ覚えに
減税を言うのでございますけれ
ども、やはりこの際、
インフレを押えるためには増税のきびしい試練も受けなければならぬだろうと思うのです。そしてまた五%がいいか、あるいは一万五千ドルというところまで税をかけていくということになりましたので、これは少し大衆
課税になり過ぎはしないかという批判が民主党からもあがっておるようでございますが、それにしましても、第一に思い切って増税に取り組んでおるというところが
一つの大きな問題である。
次には石油の規制の問題でございますけれ
ども、彼はいま
アメリカが一日に千六百五十万バーレル、輸入だけで六百五十万バーレルというものを消費しているようでございますけれ
ども、その輸入の一五%、消費の五%の百万バーレルをひとつ節約しよう、制限していこうということを言っておる。さらに独禁法の罰則を思い切って強化しておるといったようなことから、もちろん予算も三千五十億ドルを三千億ドル以下に押えようということで、五十数億ドルの予算の節減も考えておる。すなわち、
インフレ対策としてもある
程度財政、
金融その他の面からこれを熱心に押え込む努力をしておる。
これが
インフレ対策ですが、しかし同時に、一方ではデフレ
対策といいますか、
不況対策といいますか、そういう面については、たとえば
住宅建設十万戸のために三十億ドルの金を出そう、あるいは中低所得層に対しては十六億ドルの
減税もやろう、さらに
金融引き締めはブルーデントリー、慎重にやろうということを言って、特にFRB議長の
通貨、信用の供給を十分に拡大するという点もうたっておる。さらに投資税控除の問題も、今回はあるものは四%から一〇%、あるものは七%から一〇%へと思い切って拡大をして投資活動を刺激しようという
態度に出ておる。さらに
アメリカは御承知のように失業者が五百三十一万もおってたいへんな問題でございますが、その失業率はいま五・八%である、これが六%をこえるような場合には緊急に公共事業に対する支出をあらためてやって、とりあえず十七万ぐらいの人の救済をやろうというように緊急支出を考えておる。
これが当面のデフレ
対策のおもな点でございますが、要するにこれは二正面作戦で、一方では切るべきものをどんどん切る。
インフレを押え込むために増税もやる。しかし一方では、行き過ぎた
政策のために
不況を招き寄せ、五百三十一万の失業者が六%、あるいは六百万にもなってはたいへんだというので、その場合には、
減税はもちろん、あるいは投資活動も大いに促進をする。特に緊急の社会公共事業への支出も考える。こういうことを今度の
経済政策の中でうたっておる。そういう
意味において、私がフォードを
評価するのは、すなわちプラスの面とマイナスの面、
インフレに対する面とデフレに対する面とを同時二正面作戦ということを展開しておる。これは
日本のような一本調子な行き方といっては言い過ぎかもしれませんけれ
ども、この
日本のあり方に対して非常に参考になるのではないかという
意味で、大臣の
評価を聞きたいということが第一点であります。
そこで、私は、これを大体
日本に持ってきて考えた場合に、
日本においても
インフレがものすごく進んでおりまして、御承知のように最近
物価が低落あるいはあまり急
上昇しなくなった。先ほど来御
議論のありましたように、一五%に押えるかどうかという問題が具体的な日程にのぼってきておる
段階でございますが、しかし、それにもかかわらずなお根強い
インフレマインドがありますから、これを押えるために三つほどお伺いをしたいのです。
第一は、会社臨時特別税というのはやめていこうというような考えがちらほら見える。しかしながら、これは御承知のように、もうけのないところにかけるのではなくて、利益があるときにその利益にかける臨時の税である。本来ならば、われわれの
考え方から申しますと、法人税そのものに、これ以上の利益をあげた場合には一定の高い税率がかかるのだということさえ構想すべきではないかという
考え方を持っておるわけですけれ
ども、そういう法人税なら法人税の体系をさらに再
検討して、その上でもう必要がなくなったということで会社臨時特別税をやめるのならばそれは一理ありますけれ
ども、そういう準備もないままにとにかくやめてしまおうかというような声が聞えてくるわけでございますが、会社臨時特別税は無条件的にやめる御意思であるのか、あるいは続ける御意思であるのか、あるいは法人税を改めることによってこれをやめるような
段階に取り組もうとするのであるか、これが第一点であります。
それから、第二点は石油の問題でございますが、私
どもは石油の問題につきましてはほとんど全部を輸入しておる
日本でありますから、よほど慎重にこの問題に取り組まなければならぬと思い、石油需給適正化法とか国民生活安定緊急措置法とかいう法律も御承知のように去年できまして、去年の十二月二十二日には石油緊急
事態宣言まで行なったのだけれ
ども、去る八月三十一日でございますか、この緊急
事態宣言を解除した。そのかわりに、何をやっているか私に全然わからないが、形だけは「
資源とエネルギーを大切にする運動本部」というものを内閣につくったそうである。しかしながら、石油問題というものはそんなに簡単な、あるかないかわからないような運動本部をつくれば非常
事態宣言を取り消してよろしいというような簡単な問題ではないと思うのですね。
現にいま申しましたミュルダール博士のごときは、
資源の天井に悩む
日本に同情するということも言っているし、その彼は特に
日本のために、
日本の
状況はきびしくて
日本は石油の輸入を制限する措置をとるべきであるということも言っておりますが、
日本の
政府が石油の非常
事態宣言をやめたのはいかなる理由であるか。非常
事態というのは石油の供給が三億キロリットル、去年の二億八千六百万キロリットルというものが確保できるようにという物理的な非常
事態だけが宣言をされたのであるか。その後の実態を見てみますと、現実に石油というものはやはりたいへんな問題になっておる。確かに物理的な数量は十分に入っておりますけれ
ども、その代金の支払いは一体どうなっておるかということが大問題であるはずだ。
大蔵大臣としては特に考えなければならぬと思います。
念のために申し上げますが、去年の一月から九月までと比較してことしの一月から九月までに石油の代金の支払いは百億ドル近くふえておると思うが、そうであるかどうか。その百億ドルの代金は支払わなければならぬ。その支払いのための金繰りは外為銀行が一応つじつまを合わしておるであろうけれ
ども、そのために外為の負債はやはり百億ドル近くふえておるはずだ。それは何億ドルふえておるか、具体的
数字で伺いたい。
次に、この石油の代金というものは、いままでは輸入の大体二割にならなかった。そうでしょう。二割以下のパーセンテージであったと思うけれ
ども、一昨年が四十億ドル、去年は八十億ドル前後ですが、かりにことしはそれが二百億ドルにもなるとするとたいへんな増加であって、
日本の輸入が五百億ドルあるとしても、輸入の四〇%ということになる。一体、輸入金額のうちの四割を単に石油に振り向けてよいものかどうかということは、単なる
資金繰りの問題ではない。単なる物理的な数量の問題ではなくして、
日本の
経済運営の根本に関する重大問題であろうと思うのです。何とか払っていけるからいいじゃないか、輸入が少し減りそうだ、輸出は少しふえそうだということも単なる
資金繰りの問題であって、これだけの石油代金の支払いがふえるということは、そのまま国民の
負担がふえるということである。ある場合には代金の支払いの面において、ある場合には必要なものを輸出しなければならぬという面において、ある場合には輸入がそれだけ制限されるという面において、福祉国家建設には重大なる障害を来たすと思うのだけれ
ども、一体、大臣は石油の代金というものは輸入の何割までは振り当ててよろしいというお考えであるか、それをお聞きいたしたい。
そういうことから考えると、
資源国の
アメリカでさえも石油の輸入を、先ほど申しましたように輸入の一五%は制限しようという努力をしておる。そしてフォードは、ドライブレス、ドライブをやるのも少し少なくしてくれ、あるいはスピードも落とせ、あるいはヒートレス、暖房も少し遠慮しなさい、ウエーストレス、むだは一切省くようにしてもらいたいという演説をしておるが、本来ならば、石油の輸入ショックを受けたときにわれわれは、もう少し
資源を大切にする、もう少し物を大切にするという
方向で
日本経済のあり方、
日本の国民生活のあり方というものについて根本的な反省をし、再出発をすべきであったと思うのだけれ
ども、
政府のように、三億キロリットルぐらい入りそうだ、入るかもしれぬ、もう非常
事態宣言は取りやめだ。これでは一体何のために非常
事態宣言をしたのか。
このむずかしい、きびしい
経済段階にどういう決意で取り組んでおるのか。何も決意がないじゃないか。もう少し真剣に国民にいわゆる総反省を促して、われわれの一ドルといえ
ども貴重なドルであるから、もっと有効に使うことを考えるべきであるけれ
ども、いまだにその辺に行けば、石油をちゃんと夕方にはたいて商売の宣伝に使っているところもある。銀座のネオンもついた。こういうような押えるべきものを押えないでおいて、あとで申しますけれ
ども、総
需要抑制一本やりでいこうということはおかしい。総
需要というのは全体の
需要なんですから、A、B、C、D、いろいろあるファクターのどれを押えてもいい。国民の新しい
経済秩序をつくるために最も必要な部分はふやす、そうでないものは切るという形でいかなければならぬと思うけれ
ども、その点について、石油を押えるという押え方があまりにも足らない。だらしがない。あるいは自由
経済の美名のもとに財界の言うままに振り回されておるとさえも思われるようなあり方であるが、その点はどうか。
第三点は、大臣にお伺いするんだけれ
ども、この総
需要抑制の場合において、
政府、官庁の経費、
需要を押えることが
閣議において何回熱心に取り上げられたかということが
一つであります。御承知のように、佐藤喜一郎さんであったか、もう十年ぐらい前に臨時行政
調査会をつくって、行政費にはむだが多い、この行政機構の改革から始まって行政費の支出は一割なら一割は切れるはずだ、これは真剣に取り組まなければ、今日の官界の粛正はできないという前向きの案が出ました。一体それはその後どうなっておるかということを、事務当局から
数字をあげて、人の面あるいは金額の面でどれだけの成果をあげたかを聞きたいのである。
しかしながら、大臣には、この総
需要抑制という場合に、
政府みずから先頭に立ち、官僚みずからが先頭に立って総
需要抑制のためにどれだけの努力をなすべきであるということが
閣議で何回真剣に論議されたか、これを伺いたい。
以上であります。