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1974-10-18 第73回国会 衆議院 大蔵委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年十月十八日(金曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 安倍晋太郎君    理事 松本 十郎君 理事 村山 達雄君    理事 森  美秀君 理事 山本 幸雄君    理事 阿部 助哉君 理事 山田 耻目君    理事 増本 一彦君       伊藤宗一郎君    大西 正男君       奥田 敬和君    金子 一平君       栗原 祐幸君    小泉純一郎君       野田  毅君    萩原 幸雄君       坊  秀男君    村岡 兼造君       山下 元利君    佐藤 観樹君       高沢 寅男君    広瀬 秀吉君       武藤 山治君    山中 吾郎君       荒木  宏君    小林 政子君       広沢 直樹君    竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 大平 正芳君  委員外出席者         外務省経済局長 宮崎 弘道君         大蔵大臣官房審         議官      岩瀬 義郎君         大蔵大臣官房審         議官      結城  茂君         大蔵大臣官房審         議官      後藤 達太君         大蔵省主計局次         長       辻  敬一君         大蔵省主税局長 中橋敬次郎君         大蔵省理財局長 吉瀬 維哉君         大蔵省国際金融         局長      大倉 真隆君         厚生省医務局管         理課長     木戸  脩君         資源エネルギー         庁石油部計画課         長       小津 修二君         中小企業庁計画         部金融課長   若杉 和夫君         建設省住宅局住         宅計画課長   京須  実君         自治省財政局地         方債課長    小林 悦夫君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の会計税制金融に関する件      ————◇—————
  2. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 これより会議を開きます。  国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。村岡兼造君。
  3. 村岡兼造

    村岡委員 今回、大蔵大臣アメリカにおいてIMF等総会に出席されました。日本経済は申すに及ばず、世界経済が非常にきびしい状態に直面している。その主要課題は何であると大蔵大臣は感じられたか、大蔵大臣の率直な所感をお伺いいたしたい。  また、現下の世界経済情勢の中で今後の日本経済がとるべき道について、IMF総会の場を利用して蔵相はどのような説明をなされたか、この点をお伺いしたいと思います。
  4. 大平正芳

    大平国務大臣 世界経済がたいへんきびしい状況にあるという御指摘は、仰せのとおりと私も心得ております。すでに世界通貨フロート制に入っておりまして、安定した通貨秩序がいまなお形成されていない途中におきまして石油危機をはじめとして大きな異変が起こったわけでございまするから、今日の事態は容易ならぬ事態であると考えております。   〔委員長退席松本(十)委員長代理着席〕 したがって、各国ともこういう場合に、まず、進行中でございましてそして石油危機を契機としてさらに増幅を見ました世界的な規模を持ったインフレに対して、どういう姿勢を個々の政策当局がとるか、それから国際協調をどのようにオルガナイズしていくか、これが一つの問題であったわけでございます。  それから石油危機が生んだ問題といたしまして、数百億のオイルマネー産油国に流れる。したがって、資源を持たない開発途上国ばかりじゃなく、日本も含めて先進国国際収支が大きな影響を受けて赤字を記録することになったわけでございます。したがって、そういう事態に処して、いわゆるオイルマネー還流という問題を現実的にどのように処理していくかということが第二の課題になったわけでございます。  それから第三の問題といたしましては、こういう大きなショックを受けた世界経済のもとで各国がばらばらなことをやってまいりますと、あるいは世界経済がもう救いがたい状態になるのではないか。したがって、場合によっては非常におそろしい不況を招くようなことになるおそれがあるわけでございますので、不況を回避しながら世界経済がとめどもない縮小方向に走ってまいることを防ぐ意味におきまして、どのように国際協調を仕組んでいくかという問題が第三にありまして、第四にはIMFという国際機関の増資問題、IMF自体にからむ問題が討議されたわけでございます。   〔松本(十)委員長代理退席委員長着席〕  それで、こういう提起された問題につきまして、私は日本政府としての見解を、総会を通じてあるいは各委員会を通じて明らかにしておいたわけでございます。  すなわち、インフレ対策でございますが、今日、いまのような状況のもとで安定した通貨を早急に持つということができればしあわせでございますけれども、そういうことができない以上は、ナイロビで合意された国際協調基本の約束というようなものを日本もまじめに取り上げて実践してまいるということでまいりたい。通貨改革というようなものをいま突然やることができないとすれば、当面フロート制を運営していくにあたりましても節度のあることをお互いに考えて、大きな異変世界経済に招来しないように注意していかなければならない。日本はそういう態度で、インフレを輸出することも慎まなければならぬけれども世界経済縮小方向にいくようにならないように、貿易を規制するとかあるいは輸出ドライブをかってにかけるとか、そういうようなことはしない。そういうことでインフレに対応しつつ、不況に対しましても日本政府としてやるべきことをやり、やるべきでないことをやらないということで、世界協調の実をあげていきたいという態度を明らかにしたわけでございます。  それからオイルマネー還流問題でございますが、これはすでにアメリカとかユーロ市場を通じまして各国オイルマネー取り入れをやっておるわけでございます。また、産油国側と直接取引をいたしましてオイルマネー取り入れをやっておるわけでございまするし、またIMFが、金額を限ってでございますけれども産油国から取り入れて、開発途上国にこれを振り向けるというようなこともやっているわけでございまするから、一つ方法に限らず、いろいろな方法を組み合わせて、オイルマネー還流がまんべんなく行き届くように考えたらいいわけで、日本といたしましては、オイルマネー還流について多元的な方法を支持する、一つ方法だけにたよるというようなことは危険であるということを主張いたしておいたわけでございます。  IMFの増資問題、あるいはIMFで今後討議される後進国の援助問題あるいは金問題、そういう問題につきましては、日本の立場を申し上げながら、IMFがそういう問題を討議いたしまして、来年の一月半ばまでには理事会IMF暫定委員会に答案を提案するようになっておるわけでございまして、私ども日本といたしましても、その討議に参加いたしまして誤りない国際協調の実をあげていきたいと考えておるわけでございます。
  5. 村岡兼造

    村岡委員 原油の価格の高騰に伴い、国際収支赤字傾向が続いておると思いますが、現在どうなっているか、あるいは今後の動向についてどのように見ているか、御答弁を願いたいと思います。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 去年はああいう状態でございまして、大幅な国際収支赤字を記録いたしたわけでございまして、百三十億ドルというような赤字を記録いたしたわけでございます。ことしの上半期も、貿易収支赤字でございましたし資本収支赤字でございました関係で、これまた相当大幅な赤字を記録しておったわけでございますが、六月ごろからようやく貿易収支黒字に転じたわけでございまして、その黒字の幅も、七月、八月、九月と漸次大きくなってきておるわけでございます。こういう姿でまいりますならば、ことしの下半期は、さらに大きな赤字を追加してまいるというようなことにならないようにやれるのではないかと思っておるわけでございます。  日本国際収支につきましては、少なくとも経常収支バランスがとれる状態に持っていくことが非常に大事だと思うのでございます。すなわち、貿易収支黒字が若干出て、貿易外収支で若干の赤字が出るという構造になっておりますが、それがバランスがとれる状態にあれば、あとは資本収支の管理を慎重にやれば心配ないわけでございまして、少なくともことしの下半期は、私はそういう点で心配ない状態にあると思うわけでございますが、来年以降どうなるかということにつきましては、また来年の経済がどのような状況になりますか、まだ不透明でございますので、この段階で申し上げることはできないと思いますが、慎重な経済運営を通じまして国際収支を均衡させて為替相場を安定させていくということは、あくまでもわれわれの財政経済政策基本に踏まえて、誤りなく期してまいりたいと考えておる次第でございます。
  7. 村岡兼造

    村岡委員 今度は国内的な問題で、来年度予算編成時期も迫っておりますけれども所得税減税問題でございます。ある一方には所得税減税しろ、また一方には減税すべきでない、こういう意見もあるわけでございますが、来年度所得税減税方針、あるいは来年度相続税減税の問題、あるいは不公平といわれている医師課税利子配当源泉選択分離課税、また土地譲渡所得分離課税について方針はいかがですか、お尋ねをいたします。
  8. 中橋敬次郎

    中橋説明員 来年度所得税の問題でございますが、本年度非常に大幅な所得税減税実施されました。その結果、給与は大体本年三〇%ぐらい伸びておりますけれども、税額のほうは減税効果が非常に発揮せられまして、いわゆる可処分所得としましては、かりに四十八年の年収が三割伸びたとした人の計算をやってみますと、大体可処分所得で三〇%余り増加いたしておるような状況でございます。もちろん消費者物価上昇は、現在、昨年に比べまして約二五%程度上昇しておることもございますけれども、本年の大幅な減税効果というのは、現在のところ、そういうふうに可処分所得の増加が消費者物価上昇を上回っておる、そういう事態でございます。  さらに、本年度行ないました所得税減税は、来年度年度化するわけでございまして、たとえば夫婦子供二人の給与所得者で見まして、課税最低限は百五十万円から百七十万円程度上昇することにこれは確定済みでございます。そういたしますと、課税最低限としましては、そこでは約一三%余り上昇するということになっております。課税最低限の問題として私ども物価上昇ということがやはり一番気になるところでございますけれども、いま言いました昨年から本年にかけての減税、それから来年度への平年度化効果ということから考えますと、この物価上昇は異常でありますけれどもかなり程度それを補う効果があると思っております。しかしながら、物価上昇度合いというものが一体どの程度になるかということは、なお今後十分注目しなければなりません。所得税の問題を議論いたします年末に際しましても、当然そういう問題を考えながら、課税最低限の平年度化とこの物価上昇とのかね合いがどうしてもまかない切れないという場合には、いわゆる物価調整減税としまして課税最低限の引き上げを実施しなければならないと思っております。  ただ、一般的に申しまして、本年の大幅な減税というのは異常な状態の中でもあえて行なわれたものでございます。それからまた、最近におきますところの物価をめぐりましての税制ということを考えますと、やはり物価上昇に対して調整をするという面と、物価上昇抑制するという面とを兼ね備えながら考えていかなければならないのではないかと思います。そういう意味におきまして、できるだけこの際は本年度の大幅な減税効果というものをあたためながら、そうして来年度税制改正の時期における物価動向の把握というものを考えて、最小限度の問題として考えなければならないのではないかというふうに思っております。  次に、相続税の問題でございますけれども相続税状態を見てみますと、最近の特に土地価格上昇が一番大きな原因となりまして、かなり程度課税が行なわれる事態になっております。昭和四十一年におきましては、被相続人百人の中で一・四人が相続税課税を受けたという実績がございます。それが昭和四十七年になりますと、被相続人百人の中で四・四人が課税を受けたという事態になりました。そこで、相続税課税最低限を五割上昇するということをやっていただいたのでございます。その効果があらわれてまいりまして、四十八年にはこの四・四人という数字が四・二人に下落をいたしております。  しかし、十年もたたない間に課税人員が一・四人から四・二人に上昇しておるということは、やはり一度真剣に考え直してみなければならない問題だと思っております。もちろん相続財産がだんだん水準が高まってまいりますれば必ずしも従来のままの課税水準を保たなければならないということはないと思いますけれども、やはり最近の異常な地価の上昇ということがここにあるわけでございまするから、この際は相続税課税最低限、必要があれば税率の緩和というような問題もひっくるめて研究、審議をお願いしなければならないと思います。  なお、その際に、かねてからいろいろ議論がございました配偶者相続をしました財産について、これもやはり主としましては土地の問題がからみまして、制度改正として従来二本立ての配偶者に対する優遇ということを設けていただいておりますけれども、これではなかなか現在うまく適合していないという問題がございます。この配偶者相続についてのいろいろな要望ということもございますから、こういうことも兼ね合わせながら、あわせて検討しなければならないと思います。  それからさらに、特に土地の問題でございますから、一番生産手段として土地を多く持っておる農業、農地相続税の問題がございます。これも、市街地なり都市近郊農地というものが現実には非常に高い価格で売買をされておりますから、やはりその近傍にございます農地というものが相続をされましたときの評価というのは相当高くならざるを得ません。従来からも現に相続をされておる農地評価につきましてはかなりのしんしゃくをやってきておりますけれども、とてもそれでは間に合わないくらいの価格上昇でございます。一方では、これに対しまして収益還元でもって評価をしろという要望が非常に強くなされております。これに対しましても、いろいろ相続財産評価について、はたして収益還元でいいのか、やはり現在のようにあらゆる財産について処分価格をもとにしました時価というものをもって評価するのがいいのかという問題になりますと、必ずしも高いからといいまして収益還元法則を適用するのもむずかしいのではないかと思います。  それからまた、市街地におきますところの中小企業事業用地として持っておるものあるいは市街地の中で居住用として持っておる土地の問題、こういうものについてもかなり相続税課税が行なわれておるという事態について、今後あわせましてやはり検討はしなければならないというふうに考えております。  それから、いま御指摘のように、税制の公平という観点をもっと強める意味におきまして、従来から不公平といわれておるいろいろな制度についてどういうふうに考えるかというお尋ねでございますが、私ども常々租税特別措置につきましてはその効果というものを十分見きわめながら適宜の改廃を行なわなければならないという態度を続けてまいりました。ちょうど来五十年の年末に利子配当課税特例土地譲渡所得課税特例の期限が参るときでございまするから、この年末におきましてはこの問題についてどういうふうにするかということをきめまして、必要があれば所要の改正案を御審議していただかなければなりません。これにつきましても、現在利子配当課税特例が一体いまの経済状態のもとにおいてどういうような効果を持つのか、そのメリット、デメリットを検討中でございますし、土地譲渡所得につきましてもこの制度が採用されました四十五年以来の土地譲渡実績を中心に検討いたしておりますけれども、いずれにしましても、これらは先ごろ発足をいたしました税制調査会においても十分の御議論を経て結論を出さなければならないと思っております。  社会保険診療報酬の問題につきましては、これはちょうどその制度ができまして本年で満二十年が経過いたしております。常々その改廃是正について税制調査会から答申が行なわれてまいりましたけれども、今年は具体的なものの考え方が先ごろの調査会において答申として示されました。いわゆる実際の経費率とその上に収入階層に応じて逓減します特別控除というものとをかみ合わせてこの問題を最近の所得税制の推移の中で考えてみてはどうかということでございます。私どもも、その実際の経費率が、特に収入規模におきましてあるいは診療科目におきまして若干のばらつきが見られますけれども、それを概括的に一本に法定するというときには一体どの程度の率がよろしいか、あるいは特別控除率ということを考えます場合にどの程度収入金階層についてどの程度の率を適用することがよろしいのか、それによりまして現在の七二%の適用を受けておる社会保険医の中で一体どの程度のウエートの人たちが、現在と比べてこの程度負担に変動するというようなことを見きわめて、数字を具体的に盛り込まなければならないことになっております。これにつきましても、もちろん新しい税制調査会で御議論もいただきますけれども、これもできますれば本年末までに結論を得まして、国会の御審議を仰ぎたいと思っております。
  9. 村岡兼造

    村岡委員 次に、住宅ローンについて質問をいたしますけれども貸し出し抑制方針によって、なかなかこの住宅ローンが借りられない、こう伝えられておりますが、国民の住宅への願望を考慮してできるだけ配慮するよう金融機関を指導していくべきだと思うけれども、どういう方針でございましょうか、お尋ねをいたします。
  10. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのように、住宅ローンも、景気調整と申しますか総需要抑制政策のらち外にあるというわけにまいりませんのでございますけれども金融機関を督励しまして、この総需要抑制ワク内におきましてもできるだけ多くの金が住宅ローンに回るように指導をいたしておるわけでございまするし、またそういう実績も漸次出てきておるわけでございます。今後一そう力を入れてまいりたいと思っております。
  11. 村岡兼造

    村岡委員 インフレをとめるために総需要抑制という政策をとっておりますけれども金融逼迫感が非常に強まっている。その反面、物価上昇している。また、物によっては最高時の半分の値段になった、あるいは三分の一の値段になった。それから他方では、大企業あるいは大会社の給料は上がるけれども中小企業零細企業の賃金というものは上げられない。したがって、親方日の丸のところは非常にいいのですけれども、ほんとうの零細企業のほうは総需要抑制によって物が売れなくなった。したがって相当な、首切りまでとは申しませんが、いまそういうような状況になっておる。アンバランスが非常に出ておるわけでございます。このような状況にあって、今後の金融政策、かじ取りについて、特に金融引き締め長期化で繊維あるいは建設業中小企業では不況感が強まっており、これら業種あるいは中小企業に対する金融には万全を期すべきだ、こう思います。同時に、ただ金融だけでこの状況が救えるのかどうか、こういう考え方もありますが、これらの点について大蔵大臣所見をお伺いしておきたいと思います。
  12. 大平正芳

    大平国務大臣 いま御指摘のように、総需要抑制策の浸透によりまして金融逼迫感が強まってきておることは御指摘のとおりでございます。日銀券供給量、それから預金通貨も含めてのマネーサプライの伸びが鈍化しておりますことは明らかになってきておりますし、また貸し出し約定平均金利も非常な高水準に達しておるわけでございますし、また企業の手元の資金流動性というのも、最近とみに低下してきておることも統計上明らかでございます。  こういう状況でございまして、いま御指摘のように、業界の部門によりましては相当深刻な事態が出てきておるということも私どもよく承知いたしておるわけでございます。したがって、政府としては、そういう健全な中小企業等金融引き締めの結果不当なしわ寄せを受けるというようなことにはならぬように常に配慮いたしておるわけでございまして、一般の金融機関に対しましてはこれについて御協力を求め、また御承知のように、ことしの初めから三千二百億の特別融資ワクも自発的に設定していただいて、問題の業界につきましての手当てを急いでおりますことは御案内のとおりでございますし、政府関係機関資金は第一・四半期も既定予算増ワクをいたし、九月にはさらに第二回の増ワクをいたしておるわけでございまして、この年末にかけての金融につきましては目下中小企業庁相談を始めさせておるわけでございまして、機を逸せず対策を講じていきたいと考えております。  しかしながら、そういうことはできるだけきめこまかく周到にやってまいるつもりでございますけれども、総需要抑制策という基本的な姿勢はあくまでも堅持してまいる必要があると政府は考えておるわけでございますので、その点につきましては、国会におかれましても御理解をちょうだいしておきたいと思います。
  13. 村岡兼造

    村岡委員 人事院勧告実施の問題で、いままできまらなかったわけでございますが、新聞には公務員給与の三二%引き上げ、二十一日閣議決定完全実施と、こう書かれておりますが、大蔵大臣所見を伺いたい。  同時に四十九年度補正予算規模及び内容はどのようになるか、現段階での見通しを明らかにしてもらいたい。  きょうの新聞でございますか、各地方公共団体は、小中学校のあるいは社会福祉施設工事費上昇状況にあり、超過負担の解消を非常に要望しておりますけれども補正予算軽減措置をすると大蔵大臣が指示をしたと書かれておりますが、こういうような点も含めて、二点について所見を明らかにされたいと思います。
  14. 大平正芳

    大平国務大臣 この夏人事院から寄せられました勧告でございますが、その処理がたいへんおくれておりますことは恐縮いたしております。何さま今度の勧告は高率の勧告でございまして、その実行につきまして財源その他いろいろ検討を要する問題がございましたので決定がおくれておったわけでございますが、ようやく見当もついてまいりましたので、十月二十一日の給与関係閣僚協議会完全実施方向で御相談をいただき、越えて二十二日の閣議で御決定をいただきたいと考えております。これは何さま高率高額でございますし、財源上も問題がございましたので、既定経費がどれだけ御節約をいただけるかというような問題、それからすでに政府でもきめておりますように、定員の計画的な削減という問題にどこまで真剣に取り組んでいただけるか、そういったものも固めたかったわけでございますし、また給与の支払いの方法等インフレを刺激しないように何かくふうができないものかというような点も検討いたしておったわけでございまして、そういった問題につきましてほぼ見当がついてまいりましたので、いま申しましたように二十二日には完全実施を目途といたしましておきめをいただくつもりでおります。  第二の御質問でございますが、政府補助事業負担事業超過負担の解消でございますが、これはいま自治省その他関係各省の御協力を得まして、四十八年度実績を調べてきたわけでございまして、いまほぼ出てまいりましたので、その結果を解明中でございます。したがって、その結果が解明されて、どうしてもこの際来年度を待つことなく措置すべきものがあるとすれば、これは補正予算で措置せなければならぬと思っております。  幸いに、ことしの三月をピークといたしまして建設資材はやや微落の傾向を示しておるわけでございまして、資材面からの大きな問題は私はないと思っておりますけれども、工事関係の人件費等で相当負担が重くなっておる向きもありはしないかと心配いたしておりまして、実際の実情をよく調べまして、措置すべき必要があるものにつきましては、来年を待つことなく措置して差し上げなければ済まぬのではないかと考えておりますが、いまやるべきかやるべきでないか、それからやるとして、どの程度どういう費目についてどうするかというようなところまでは、まだ詰まっていないわけでございます。
  15. 村岡兼造

    村岡委員 いまの超過負担の問題でございますが、やるべきであるかそうでないかまだ決定していない、しかし、地方においては強く要望され、そしてまた、ある県の例をとりますと、県税の税収は昨年度より二十二億円伸びた。ところが、人事院勧告実施によって、その分だけで百六十億円出さなければならない。いろいろな措置がなければ実質何も事業ができない、そういうような観点からひとつ十分にこの超過負担というものを検討していただきたいことを要望しておきたいと思います。  同時に、最後でございますけれども、来年度、五十年度予算編成基本考え方、先ほども需要抑制は堅持というお考えは承りましたが、この点と、いろいろな観点から福祉予算も極力圧縮というような大蔵省方針、あるいは新規の政策は認めがたいというような見出しで新聞には出ているわけでございますが、五十年度予算編成に対する基本的な考え方についてお伺いいたしたいと思います。
  16. 大平正芳

    大平国務大臣 五十年度の予算でございますけれども、まだ歳入面も歳出面も不確定要素がばかに多くて、一つの展望をおぼろげながらも描く段階にまで至っていないわけでございます。ただ、いま村岡さんの御質問は、基本態度はどうかということでございます。  そこで、それは申すまでもなく、われわれといたしましては予算の規模というものを極力抑制的にしぼっていきたいと考えておるわけでございます。総需要抑制策と申しましても、そのうちの一つの大きな柱は予算規模を押えていく、財政によるサービス並びに財貨を押えていくということであろうと思うのでございまして、その点は貫いてまいりたいと思います。  ことしの予算は、前大臣たいへん御苦労されて二〇%以下の規模で押えていただいたわけでございます。ところが、その後いろいろ人事院の勧告を受け入れる、あるいは食管繰り入れあるいは社会保険診療報酬といったその後明らかになりましたようなもの、それからすでに国会を通じて政府がお約束しているような当然増の経費を盛り込んでまいりますと、このまま何も新規の政策をやらなくても予算の規模は二五%をこえるというようなことになりそうでございます。これは容易ならぬことでございまして、これをさらに切り込んでいくということは非常に難事中の難事だと思っております。  したがって、あなたの言われるように、新規の政策経費をどう生み出していくか、相当老朽化した経費は御遠慮いただいて、それを新規のものに切りかえていくというようなことをどんどんやっていただけると非常にしあわせでございますけれども、一たん入りました経費というものを御遠慮いただくというようなこともなかなかむずかしい作業だと思います。したがって、これは容易ならぬことだと思いますが、できるだけ抑制的な性格のものにし規模のものにしてまいりたいと思います。  そして、できれば財政の公債依存率も下げていく方向インフレに対処しなければならぬのじゃないかと考えておるわけでございますけれども、いま申しましたように、まだ歳入歳出とも不確定な要素がたいへん多うございますし、歳入面におきましても四月、五月、六月、七月、八月という五カ月の集積だけしかまだ出ておりませんので、これだけの実績を踏まえてことしの税収はどの程度になるかという見当をつけるにはまだ時期が熟していないというようなこともございまして、大筋で間違いない展望を本委員会でまだ申し上げられないことは御了承いただきたいと思います。
  17. 村岡兼造

    村岡委員 以上で質問を終わりますけれども、来年度の予算の問題で、いろいろな国民の意見が聞かれます。労組や何かはとにかく秋闘を通じ、来年度の春闘を通じてますます大幅な賃上げという要望を掲げております。そちらのほうはそちらでいいでしょうけれども中小企業やあるいは零細企業は、来年度も三〇%やあるいはそれ以上の賃上げをされたらとてもついていけない、同時に物も売れなくなる、一体われわれはどうしたらいいのか。官公庁とかあるいは大手はいいにしても、弱小企業、こういうものの従業員あるいは企業主は一体どうしたらいいのか。相当倒産もふえておるようでございます。単に構造的な問題とかあるいはまた放漫経営だというばかりでない状況が出てきておりますので、その点も十分に考慮に入れながらひとつ来年度の予算を決定していただきたい、こういうことを要望いたしまして、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  18. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 山中吾郎君。
  19. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 大平大蔵大臣は前外務大臣で、安保体制のまま日中平和の道を開いた。二律背反的な問題を大平さん一流の行き方である意味において解決をされた人であり、また将来総理大臣への最短距離に立つ数人のうちの一人であると私は思っておるわけでありまして、また世論では、田中さんには哲学がないが、大平さんには大平さんの政治哲学がある、いぶし銀のような人柄とか、大平国務大臣に期待するものが非常に多いのではないかと私は感じておるわけであります。そういうイメージを頭に置きながら、大平大蔵大臣に総論的にまず御質問いたしたいと思うのであります。  大平さんはわれわれ議員に、これは大平派で演説をされたパンフレットだと思いますが、「新しい社会の創造 量的拡大から質的充実へ」というこれを配付して、読ましていただきました。こういう考えのもとに大平財政が具体的にどう展開するかということを私は期待をいたしております。  ちょっと一読いたしますと、現代に対する認識を変革期と認識されて、そして外交、内政についての質的な創造的な発展をはかるべきだという御認識のようであります。これからの大平財政の方向を見定めたいので、大平さんの腹中にある、これからの国際的、国内的な日本の変革の方向をどういう方向に定めておられるのか、それをお聞きいたしたいのです。
  20. 大平正芳

    大平国務大臣 日本は四つの島で一億一千万という人口が相当密度の高い経済社会の生活を営んでおるわけでございまして、しかも資源らしい資源はほとんど見当たらないわけでございまして、あるものというのはわれわれの頭脳であり、労働力であり、われわれの根性と申しますか、そういう国民の持っておる国民的活力以外に見るべき資源はないという国柄でございます。したがって、そういう日本の国柄を踏まえまして世界社会の中で名誉ある生存を維持すべきである、それよりほかに分別はないと思うのでございますが、それにあたりましては、世界に対しまして日本が平和を愛好し尊重する国民である、世界のためにいろいろ考え、はかっておる日本である、日本があることは世界のためになるのだという国として歩んでいかなければならぬと思うのであります。  それから第二に、やはり国内におきまして、そういう資源的制約、環境的な制約、その他もろもろの社会的な制約の中で、何かわれわれの分別で秩序をつくり出しましてしあわせを追求していかなければならぬと思うわけでございますが、それは民主的な各人の活発な、自発的な創意が生かされるようなそういう自由な方法において追求していくことができれば非常にしあわせと思いますし、そういう方向でわれわれは努力してまいらなければならぬのではないかと思うのでございます。  お話がたいへん大きなお話のようでございまして、どのようにお答えしていいのか、私もちょっと見当がつかぬのでございますけれども、感想を申しますとそういうことでございます。
  21. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 もう少し具体的に大平哲学を出されるかと思って期待しておったのですが、私、大平さんの配付されたパンフレットを見ますと、非常に整理をされた、わりあいに具体的にお話しされておるものですから、公の機会にひとつ大平哲学を聞きたいと思ったわけです。  この文章を見ますと、一ページに「資本主義とか社会主義とかいう既成の硬直化したイデオロギーに捉われることなく、日本日本の現実を主体的に考え始めた。」という観察をされておるわけですね。これで何か日本の第三の道を大平さんは考えられて、いわゆる硬直化した資本主義自由経済の中で所得の格差は幾ら拡大してもいいようなそういう古典的な資本主義も考えない、しかし自由を拘束するような独裁的な社会主義体制も考えない、第三の日本の道をお考えになっておるのか、文章では明確になっておらぬものですから、この機会に、次の総理大臣の最短距離にある数人の一人でありますから、ひとつ堂々とお答え願えればと思ってお聞きしたのですが、答えられますかな。
  22. 大平正芳

    大平国務大臣 私は学者でございませんので用語が必ずしも正確であり的確であるという自信はないわけでございますけれども、資本主義とか社会主義とかいいますけれども、これは理念の問題でございまして、現実の世界、現実の日本は、たとえば資本主義社会であるなどということは間違いで、必ずしも正確でないと思うのでございまして、いわば一つの混合体制と申しますか、資本主義的な要素も幅広くございますけれども、社会主義的な考え方でいろいろなことが行なわれておる混合体制だと思うのでございます。  われわれは、それは気に食わぬとか気に食うとかいうことではなくて、問題は国民の福祉をどのようにして最高度に具現していくかということを考えればいいわけで、イデオロギーに特にかたくなにこだわる必要なんかないんじゃないかという感じを申し上げたわけでございまして、国民もまた生活者として、もうむずかしい理屈はわからぬけれども、そういう現実的な福祉というものを追求しておられるのではないかと私は見ておるわけでございまして、そういう国民の欲求というものにこたえなければ相済まぬのじゃないかと私は思います。
  23. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 確かに日本列島は、人類ベース、世界ベースで考えなければならぬ問題は全部集約されておると思うのです。人口問題は世界第一の密集地であるし、資源はない、環境は模範的に破壊されておる。インフレ世界一といってもいい。食糧は外国依存で、自給体制が問題になっておる。したがって、人口、資源、食糧、環境、インフレ、いま国際会議で問題になっておる五つの問題は日本列島に集約されて、おのおの全部マイナスの模範的な姿にあるので、私は、大平大臣が現在変革期にあるということを具体的に見つめられて、いまのように第三者的表現でなくて、主観的にこうなければならぬという一つの心境のもとに表現されたのではないかと実は期待しておったのですが、そこは大平さんのいつもの慎重な表現で言われたと思いますけれども、もう少し認識を深刻に考えて、現在の日本の現状と日本の進む方向については深化をして具体的に財政に表現するようにしていただきたい、こういう期待で申し上げておるわけなんです。  同じ思想がずっとありまして、そのあとにも「土地をはじめとする富の配分その他に伴う社会正義の問題が真剣に問われるようになった。かくて我々は生産者指向に偏りがちであった従来の政策視点を生活者指向に移行させ、いわゆる生活の“量的拡大から質的充実へ”と転換しなければならなくなった。」との認識をされておるので、相当重大な決意をされておるのではないか。そしてその次に、さしあたり何よりも急務はインフレの収束であるという認識を、文章をずいぶん整理されて書かれておるのでありますが、これは大平さん自身の文章でしょう。人が書いたのではないですね。  そこで最後に、私は経済と教育というものは目標において一致させるべきだという信念を持っておるものですから、これは私にとって大事なんでお聞きしますが、「我々が目指す社会は、個人の多様な価値観を実現し得る自由な社会であると同時に、社会的公正の貫かれた社会でなければならない。また、高い福祉水準を保つとともに、すべての構成員が活力と生きがいに充ちたものでなければならない。さらに、物心両面にバランスのとれた健全さを維持する社会でなければならない。これらの二律背反的な課題を同時に解決し、調和せしめる社会は、人類の理想でありながら、かつて、いかなる国もその実現に成功したことのない課題である。」これを実現するのがわれわれ日本課題であると言われている。  そういう意味において、自由と平等というふうなものの調和のとれた何か第三の社会が大平哲学の中に柱として立っておって、いままで二律背反的に不毛の論議がされておることに対する反省と何か大平さんが政治哲学をしっかり持ってこれに書かれたと見て、公の席上でもう一度確認をしておきたいと思って一応最初にお聞きしておるわけでありますから、これは大平さん自身の世界観であり、人生観であり、政治哲学だと思うのですが、そういう立場に対してもう一度大平さんの心境をお聞きしたいと思うのです。
  24. 大平正芳

    大平国務大臣 御指摘のように、その文章は私が乏しい頭で吟味してつづった文章でございまして、全責任が私にあるわけでございます。
  25. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 文章は大平さんの人生観、世界観、政治哲学そのものでしょう。それをお聞きだけしておきましょう。  そういう立場に立って、まず大平財政が国民にわかりやすくこういうふうに変えていくのだと示すのには、税制の再検討が一番わかりやすいのではないかと私は思うのです。税金の使い方、すなわち予算はなかなかわかりにくい。使う者は指導者であり、地方自治体の首長であるし、国民自身はどういうふうに税金が使われておるかということはなかなかわかりにくい。予算よりも税金の取り方、一人一人取られる立場でありますから、国民に政治姿勢を示すのには税制のあり方が一番わかりやすいのではないかと思うのです。そして現実に政治に対する不信感は、税が高い低いではなくて、不公平だということが国民の政治不信の一番のエレメントになっており、しかもその不公平感は、大企業に、資本に有利であり、一般の市民には不利だというところにある。現在の政治に対する不信感、あるいは政権をとっておる自民党と企業の癒着といった批判はそういう不公平感から出ておると思うのです。だから税制のあり方で示されることが一番近道であると思うのですが、いかがですか。
  26. 大平正芳

    大平国務大臣 山中さんが御指摘のように、税、税制は政治のいわば柱といたしまして、私はあなたと同様に非常に高いウエートを持ち、座を与えていただいてしかるべき領域だと思うのです。そして庶民から見て現実の政治を評価する場合に、税にあらわれた正義感とか能率とかいうものをやはりよく見ておると私は思うのでございまして、そういう意味ではあなたの御指摘のとおりだと思うのです。したがって、税が公平に、税制が公平に編まれて、そしてしかも、それが公正に施行されていくことを保障することは、非常に政治の重要な任務だと私は思うのです。  そういうような観点から見ますと、私は日本はそんなにお恥ずかしくはないと思っております。これだけの巨大な税財源をともかく国民の御理解を得て、いろいろな問題はございますけれども、五万の税務職員に徴収していただいておるということは国の活動の非常に重要な柱になっているわけでございまして、ありがたいことと思っておるのでありますが、しかし、いま御指摘のように、現実の税制は非常に不公正じゃないか、あるいは大企業に偏重しているのではないかという御指摘があることも万々承知いたしておるわけでございます。しかし、これは単に観念論でなくて、この税制の歴史的な歩みの中でなぜそういう措置が税制上とられたかという背景をやはりお互いに振り返りながら評価する必要があると思うのでございまして、その時点におきましてはそれだけの役割り、任務を持った措置がとられたと思うのでございます。  しかし、一たんそういう措置がとられますと、それを是正するということは容易ならぬむずかしいことであることもまた御指摘のとおりだと思うのでありまして、すでに時代おくれになった老朽化した制度をそのまま既得権を守るために温存しておくなどということは非常に許されないことなのでございまして、そういうことが現在の税制の中であぐらをかいていやしないか、かいておるというのであればそれを除去してまいることに勇敢でなければならぬと私は思っておるのでございますが、ただ観念的に大企業偏重である、大企業中心である、大企業の利益に奉仕しておる、大企業と癒着しておるというような、そういうきめつけ方に対して、私も正直に言って若干抵抗を感じるのです。そんなにふまじめに私どもはやっておるつもりはないわけなんでありまして、もっと具体的に国会等を通じまして十分事態を究明していただきまして、もし社会的公正の立場から、そして今日の客観情勢に照らして、こういう制度がまだまかり通っておるというようなことは許されないというようなものがございますならば、やはり勇気を持って直していかなければならないと私は考えております。
  27. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 私は現在の税構造の中に、純粋の財源税でなくて、政治の基本政策があってその政策に貢献する政策税ですね、それがだんだんと多くなり、税制としてはある意味では進歩だと私は思っておるのです。きっちりした政策のもとに一つの税構造が生まれてくる。それがいままではいわゆる経済成長型の税制として進んできたのであって、結果論として大企業優遇ということになっておる批判が、企業との癒着ということばで表現をされておると私は解釈いたします。しかし現在、石油ショック、その他インフレ問題から富の格差も拡大をする。インフレのもとに不公平がだんだんふえてきておるということから、与党も、世論も、あなた自身の文章の中にも、福祉型に転換すべきだということはどこへいっても言われておる。それを具体的に、成長型税制から福祉型税制に移すということを国民が肉眼でよく見えるように出すべきときではないか、こういう意味で申し上げておるのです。  そこで、伝統的ないわゆる経済成長型という政府の目的のもとに設定された各種の税制の中に、福祉型の立場から見るとまことに不公正な税制が残ってきた、それを直ちに改正するのは非常にむずかしいことはわかります。その中で、三大不公平税制としてどこに行っても言うのは、一つは大法人の逆累進税の問題、その原因の一つ経済成長型税制の特別措置からきておる。それから第二は、いわゆる利子配当分離課税、最近そこへ土地譲渡税の分離課税も入りましたが、分離課税制。それから第三に医師のいわゆる必要経費一これが税環境を非常に悪くしておるということを、末端で苦労しておる税務署の行政官自身が、いつもわれわれが悪事をなしておるといわれる原因の三つとして訴えるものでもあり、これはもう世間の常識になっておる。  この三つの是正に着手をするということが国民に対する政治姿勢を改める一番近道であり、また福祉型税制の姿を見せるためには、この三つの問題をそのままにただ見過ごしていくということではいけないのではないか。この三大不公平是正に大平大蔵大臣は着手する決意をここで表明できますか。
  28. 大平正芳

    大平国務大臣 いままでの戦後の日本政府政策の基調には成長主義と申しますかがあったのではないかという御指摘、そのとおりだと思うのでございまして、廃墟から立ち上がり、また資本が壊滅して蓄積が全然ないところから経済の復興を始めたわけでございまして、われわれは御案内のように、二十年、三十年、四十年代を通じまして、ときにいろいろアクセントの置き方は違いましたけれども、わが国の経済の復興、曲がりなりにも骨格をつくり上げていこうということで一生懸命になりまして、税制もまたそういう観点から立案された面が相当あることは御指摘のとおりでございます。しかし、いまそういう成長主義というようなものはもう望んで望めなくなってまいりまして、資源的な制約あるいは環境上の制約、労働力の制約、その他社会的ないろいろな制約がございまして、望んでも成長はおそらく低成長なものしかできない状態になったといたしますならば、そういう状況の中で税制はどうあるべきかという点につきましてこれを洗い直してみるという必要は、山中さん同様に私も痛切に感ずるものでございます。  いま御指摘税制上の三大矛盾、それはあなたから初めて聞くのですけれども、私、そういう見方もあるのだろうと思いますけれども、それについておまえどう思うかというお話でございますが、原則として、そういうふうに時代、環境が変わってまいりましたので、税制上もそういう変わった立場から見直してみる必要があるという一般論は、私はお約束できるわけでございますが、いま言われた三大矛盾というものについて、いま具体的にお答えをする用意は実はないのです。  というのは、いま御案内のように、政府税制調査会というものをお願いいたしまして、各界の有識者にこの間検討をお願いしたばかりでございます。もちろんわれわれも部内におきまして、この御審議をその方々にお願いしてこちらはたばこを吹かしておるというわけのものでは決してないので、勉強していかなければならぬと心得ておりますけれども、まず政府といたしましては、税制調査会の御意見も十分聞かなければいかぬ。それからわれわれの与党におきましてはすでにもう討議が始まっておるようでございまして、そういう方々、そういう機関の御意見も十分私は聞いた上で、責任者といたしまして決断しなければならぬわけでございますので、いまそういう段階を経ない前にあれこれとまだ熟さない意見を申し上げますことは、私はかえって非礼だとも思いますので、一般的な心がまえは山中さんと私は共通なものを持っておるわけですが、具体的な案件についての具体的な返答というものは、しばらくいろいろな手順を踏んだあとでお願いをいたしたいと思います。
  29. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 次の新しい国会開会中に具体的な大蔵大臣の答弁が出ることを期待しておきますが、いまここで直ちには要望いたしません。  ただ、法人の累進税については、東京都の調査で逆進の結果が出た。これに対して大蔵省から、それは資料の選択のしかたから少し誇張が入っておるという異議の申し出があった。しかし、最近大蔵省からも、大法人は小法人に比べてこの特別措置の引き当て金、準備金全体を考えていくとそういう方向にいっているという具体的な資料も出ておるようであります。したがって、その上に立って大蔵省も、これ以上法人税率を上げるのじゃないのです、そうでなくて、逆累進税の姿を是正するという点については具体的資料があるはずでありますから、大臣が検討されることを要望しておきます。  それから、いわゆる医師の必要経費はすでに税調から答申が出ておる。新しい小倉税調でなくて東畑税調から出ておるのですよ。それに従って着手をされるかどうか。これをあえて私が申し上げるのは、医師会のほうからいつも政治的な圧力が加わって、いつの間にか行くえ不明になっていくので、前回の場合に本委員会で附帯決議をしている、そして税調の答申も出ておる。答申の中身その他については各論的に局長その他に次の機会にまたお聞きしたいと思うのでありますけれども、この点は実行されるかどうか、それだけお聞きしておきたいと思うのです。  いろいろむずかしい問題があると思います。私は国民の立場から言えば、医師に対する点数その他の対策について検討する厚生行政とは別に、税制としてはやはり国民の立場に立って不公正のものは是正するということをできるだけ貫くようにすべきであって、新聞の論調を見ましても、大蔵省の税制は医師の必要経費については敗北の歴史であると書いている。その点について、明確にこれだけは御答弁願えるのじゃないか。  それから、利子配当分離課税については、これも成長型税制からきたのであって、国民の貯蓄心理からいいますと、利子配当分離課税にしてもしなくてもそう影響がないということは、これも資料その他が出ておるので、この時限法で期限が切れる段階においてやはり再検討するぐらいのことは、局長でなくて大蔵大臣として御答弁してしかるべき段階にもうきているのではないか。いかがですか。
  30. 大平正芳

    大平国務大臣 社会保険診療課税特例の改善につきましては、御指摘のように、税制調査会から御答申をいただいております。しかし、これには考え方が述べられておりまして、そういう考え方に基づいた数字はまだ埋められていないわけなんでございます。したがって、政府がそれを埋めて実行するように進むように期待されておると思うのでございまして、いま私どもはそれの数字的な検討をいたしているところでございます。それで、新しい税調も先般発足をいたしたわけでございますし、そういう税調の御意見も伺い、与党側の御意見も伺いながら、年末までには結論を出さなければならぬのじゃないかと考えております。  それから、利子配当分離課税の取り扱いの問題でございますが、これは御案内のように、もういやおうなしに五十年末までの待ったなしの課題になってきておるわけでございまして、この間税調の初会合におきまして特にその点御指摘申し上げまして、急ぎ御検討をいただくことをお願いいたしておるところでございまして、これも早急に結論を得るよう御審議を願いたいと考えております。
  31. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 医師の必要経費については、これはあなたが言わないから私があえて言うのでありますが、すでに答申が出ているのですから、小倉税調に申し送ったんじゃないのですから、答申が出て、そうして東畑会長が小倉会長に譲っておるだけなんで、その辺は大臣の答弁がやや間違いなんです。その事実に基づいて、それは内容についていろいろ方法があるでしょう、具体的に当局においてはいろいろの資料を整備されておるはずでありますから、それは答申の線に沿うて実行するということだけの答弁を私は求めておるわけなんですから、具体的な方法とかなにかはその後にまたいろいろあると思います。答申が出ておるのですから、それに基づいてお答えください。
  32. 大平正芳

    大平国務大臣 それは私といたしましては、答申に盛られた考え方を尊重してまいりたいと思います。
  33. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 次にお聞きしたいことは、先般小坂総務長官のほうで、来年三月に消費者物価上昇率を大体一五%に押えるという方針を立てて閣議にはかられたが、大平大蔵大臣は、新聞の記事を見ますと、予算編成その他の方針がまだきまっていないので一五%の目標についてはちょっと待ってくれというふうな発言をされて、前年同月比の一五%については消極的な表現をされたと新聞の記事にはある。私は、インフレ抑制を第一として、そして先ほどの御答弁の総需要抑制を堅持していくという大平さんの決意の上に立てば、やはりそこに対して最大の努力を払う方針をお持ちのはずであると思うのですが、その辺の真相をひとつお聞きしたいのです。
  34. 大平正芳

    大平国務大臣 来年の三月、消費者物価を一五%以内に押えていくというようなことを努力目標といたしまして、政府、与党協力して当たろうじゃないかということは何も異存がなくきまったことでございまして、私がその場合申し上げたことは、公共料金等の処理は年度内にどうするか、それに関連して、あの段階で、政府、与党の間でそれをきめてしまうということになりますと、これから補正予算を組んだり本予算を組んだりする場合に、われわれといたしまして手足を縛られたことになるので、どうせその予算編成段階で公共料金の問題等につきましてはよく相談し合おうじゃございませんかということを申し上げて、皆さんにもわかっていただいたわけでございますので、一五%以内を目標にして努力しようじゃないかということに私が異議を唱えたわけではないんです。  私も人後に落ちず努力をしてまいる決意で皆さんと一緒にやらなければならぬことは当然でございますが、それに関連した公共料金問題は、この際そのラインに沿ってどうするかということをきめないで、それは予算編成のときにお互いに相談いたしましょうということを申し上げたにすぎないわけです。
  35. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 経済企画庁の発表によれば、あらゆる努力を払って一五%から一八%、しかし一五%はなかなか困難だ、一八%ぐらいまでという見通しで発表しておるわけですね。その前提は、十月一日に予定した公共料金を引き上げたことを前提としておる。ただあと郵便料金、それから大蔵省の塩の関係、それから麦、肥料、そういうもののコストプッシュからの引き上げのなにがあるので、そういうものを押える努力をして、とにかく一五%を考えていくという立場を大平大臣が持っておられるのか。それともその辺はどうもまだ年内の公共料金の引き上げを絶対押えるということもできないのでそういう表現をしたのか。その辺の決意がどうもはっきりしないのでお聞きしたのです。見通しは私は非常に困難と思うが、見通しについてどうか。それから、困難にしても少なくとも公共料金を年内には絶対上げないという立場を竪持されていかれるのか、どういうことですか。
  36. 大平正芳

    大平国務大臣 もう一つ、御理解いただくために申し上げておきたいのは、来年の三月一五%以内にかりに押えることに成功したといたしまして、それじゃ四月はどうあれかまわぬじゃないかという態度政府はとれないと思うのでございます。だから、公共料金問題というのは、長い目で見まして直すべきものはいずれ直していかなければいかぬ性格のものでございますので、来年の三月まではともかく全部伏せ込んでおいて、一五%達成すれば一応能事終われりである、それ以後のことはいましばらく問うまいなどということには私はあまり賛成できないわけなんでございまして、そういうことも含めまして一五%以内に大いに努力しようじゃないかということで、みんな力を合わせてやろうじゃないかということになったわけなんでございます。  公共料金問題というのは、私はいまの段階でこれをどうするこうするということをきめるのはちょっとごめんこうむりたい。何となれば、今度のは補正予算にいたしましても本予算にいたしましてもたいへんむずかしい予算になると思うのでございまして、したがって、その場合に何もかもきめられておいた上で予算を組めといったって、これはなかなか大蔵大臣としてできる相談じゃございませんので、まあそれは予算編成の場でひとつ相談しましょうということにしたにすぎないというように御承知願います。
  37. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 来年三月をめどの一五%でありますから、予算編成はそのあとに効果が出てくるのであって、私はそれは予算編成関係ない問題として考えるべきであると思う。ただ、年度末までこれ以上公共料金は上げない決意で協力するのか。郵便料金、塩も含めてですよ。それからおそらく影響するのは年末のボーナス、これをどう吸収するか。これも大蔵省の政策の中に入っておると私は思うのですが、そういうことも含めて協力をされる立場を前提としてお話しされているのかどうか、それをお聞きしているのです。
  38. 大平正芳

    大平国務大臣 公共料金を極力抑制して低目に押えていくということは政府の変わらない既定方針なんでございまして、そういうことで、ほかの物価が上がり賃金が上がりいろいろいたしましたけれども政府の関与しておる公共料金というものは非常に低目に押えてきたことは山中さんも認めていただけるだろうと思うのでありまして、これは世上では公共料金の引き上げといわれる。引き上げに間違いはないのだけれども、ぼくらから言わさしていただきますと、いわばバランスをとらしていただかなければあとで困る事態が生じますから、最小限度調整をやらしていただいておるというものでございまして、政府が意図的にこれを引き上げておるなんというようなものじゃないので、できるだけ低目に押えたくて押えたくてぎりぎりまでがんばっておることは、山中さんもお認めいただけるだろうと思うのです。そういう方針は今後も貫いていくわけなんです。  したがって、できるだけ私どもは公共料金を押えて予算が組めればもうそれにこしたことはないわけなんでございまして、そうやりたいことはやまやまなんでございますが、現実に責任者としてその場合に、よろしゅうございます、私はもうそれで予算を組みますよなんということを申し上げるほどぼくもまだ自信ができていないわけなんで、まあその問題は予算編成のときに御相談しましょうということで、もう極力押えていくという基本線は従来とも守ってきましたし、今後も守っていかなければならぬと思っておるわけです。
  39. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 それでは端的に一つだけお聞きいたしますが、私は、一五%は無理だ、努力は別にして、見通しですね、努力しても不可能に近いと考えておるのですが、どうも大蔵大臣もそう簡単にいくものでないという実感を持ってああいう表現をされておると思うのです。私はむずかしいと思うのですが、いかがですか。むずかしいと思っておりながら国民にいかにもできるようなことをいつでも言うのだが、これは言わぬほうがいいと思うので、それだけお聞きしておきます。
  40. 大平正芳

    大平国務大臣 国際物価のほうは、新たな中東事変が起こるとか地球をめぐる天候に非常に大きな異変があるとかいうようなことのない限り、まあ大きな変化がないという前提に立ちますと、ようやく世界の商品価格相場というようなものも安定を見つつあるわけでございます。  また、国内におきましては、財政金融政策を慎重にやってまいりました。九月は、御案内のように卸売り物価は〇・一%の微騰にとどまったことは最近ないことなんでございまして、私はこれから先、十一月、十二月、一月、二月、三月とどういうようになりますか、予想がなかなかつきませんけれども、精一ぱい政府が努力をしていけば、一五%はもう不可能にきまっておるというように投げてかかるという気持ちはないのです。これは不可能なことではないのじゃないか。さればこそ、それを努力目標として政府、与党、ひとつがんばってみようじゃないかということにいたしておるわけでございます。
  41. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 これは政府発表の「消費者物価指数の動き」の図表でありますが、これには「四十九年三月以降は、四十八年十一月ー四十九年二月の“狂乱物価”の様相はなくなり、基調としては安定のきざしを示している。しかし、“狂乱物価”の間における一二・九%の上昇が作用して“下駄ばき”の形をとり、高い水準に終始している。」という書き方、「下駄ばき」、そういうところまで言っておるのですから、あと五カ月の間、公共料金の値上げの波及が出たときに、一体一五%でいけるかということについては非常に至難な問題があると私は客観的に思うのです。  なぜこういうことを申し上げるかというと、もしそれが賃金の相場を押えるために最初からそういうものを政治的に出すということならば、政治としてはやはり依然としてそのときどきのごまかし数字でしのいでいくという姿勢が続いておるので、そういうことはあってはいけないのだ、政府が出すときはやはりもっと科学的に、正直に国民に訴えて国民の協力を得るという姿勢をとるべきだ、そういうことを強調したいので申し上げておるわけでありますから、結果を見ながらまた論争いたしたいと思います。  もう時間でありますから、最後に、私の持論である提案質問をしたいと思うのです。  数年前から私学関係あるいは教育関係のほうから、それからPTAの世論の中で、家計から支出する学習費の控除制度の実現がいつも要望されて、もう二、三年前から要求事項としては大蔵省にも来ておるはずだと思うのです。これについては、家計から支出する幼稚園、保育所、それから義務教育はたてまえは全額国庫負担になっているので、法的たてまえからはそれを抜くとして、幼稚園から高等学校、大学に至る学資の中で、少なくとも学校に納入する納入金、これは客観的に授業料その他受領書がみな来るわけでありますから、この分についてはいわゆる控除をすべきではないか。すべきであるというのが私の考えなので、比較的文教行政に理解のある大平大蔵大臣所見を聞いて、この問題を今後論議していきたいと思うのであります。  それについて私は、まず憲法と税制関係について根本的に大蔵大臣に理解を深めていただきたいと思うのは、新しく憲法に制定をされておる第二十五条の生存権と第二十六条の教育を受ける権利、これはいわゆる教育権というより学習権というのが正しいと思うのですが、人間の発達権だと思うのですね。その二つ、二十五条、二十六条に生存する権利と勉強する権利が保障された。そうして税制がどう反映しているかを見てみますと、二十五条の場合は医療経営者のほうの特典は出ている。いわゆる医師の必要経費というふうなものがそれに当たると思うのです。二十六条の教育の経営者のほうも、学校法人の免税制度が相当大幅にあるわけですね。今度は受ける国民の側から、二十五条の医療費についての控除は実現しているのです。しかし、学習費の控除についてはゼロであり、私が昨年もこの問題を論議しても、大蔵省の思想は、どうもこの教育控除に対して理解が薄い。これはほかの方法でとか、あるいは扶養控除の中に入っておる——これはこんな年間二十四万などに入っておりません。衣食だけで二十四万などは吹っ飛んでしまっているので、学校に納入する授業料その他のものは入るはずがないのであります。  しかし、次代の国民の養成をするこの子供の教育費というものは、私は公共的な支出とも考えてしかるべきであり、これに課税をするという思想は、この憲法からはあってはならないのだ、こういうものこそ免税すべきである。ただ、義務教育はむしろ国が全部持つ、しかし、その他のものについては完全に国は持てないが、学習する権利を国民の権利と認めておるのでありますから、せめて免税はすべきではないかというのが、憲法感覚からいったら当然の論理ではないかと思うのであります。同じ二十五条、二十六条の経営する側には税金の特典を与えて、受けるほうには税制上少しも特典を与えていない、まことに遺憾に思うのであります。そういう意味において、ぜひ学習費控除の問題を税制の問題として具体的にひとつ検討してもらいたい。これについてのいろいろの根拠、私の考えがありますけれども、きょうは総論でありますから、これについて検討することだけ大臣に御要望申し上げ、御答弁をいただいてきょうは終わります。
  42. 大平正芳

    大平国務大臣 教育費控除の問題でございますが、これは山中さんもすでに御指摘のように、大蔵省といたしましては非常に保守的な考え方を持っておるわけでございます。税制調査会の従来の御答申もしばしば指摘しておりますように、個一別の事情を税制においてしんしゃくするにはおのずから限界があるのではないかというので、適当ではないと考えておるというように私も承っておるわけでございます。一般的な扶養控除の中で対処するのが望ましいというのが大蔵省の考え方であるように承知いたしておるわけでございます。しかし、せっかくの御提議でございまして、検討いたすことにやぶさかではございません。
  43. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 午後一時半より再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時二十一分休憩      ————◇—————    午後一時三十一分開議
  44. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。高沢寅男君。
  45. 高沢寅男

    ○高沢委員 大臣、ひとつ御質問いたしますが、よろしくお願いいたします。  きょうの午前中の討議でも出た問題でありますが、総需要抑制政策に関してお尋ねしたいと思います。この政策の目的は物価を安定させる、ここに当然総需要抑制政策の目的があったというふうに考えるわけですが、結論的に言いますと、どういう状態がきたら総需要抑制政策は必要がなくなる、あるいは転換ができる、その辺のめどを大臣のお考えではどういうふうに見ておられますか、お尋ねしたいと思います。
  46. 大平正芳

    大平国務大臣 昨年来長きにわたって政府が総需要抑制策の名におきまして財政、金融両面にわたりまして需要抑制策を講じておりますことは、物価を安定させるあるいは鎮静させるということのねらいでやっておるわけでございまして、これが所期の成果をあげまして物価が落ちついてまいるということになりますならば、いつまでもこれを続けてまいる必要はないわけであると私は承知いたしておるわけでございます。ただ、ただいまの状況はまだこれをやめるとかあるいは大幅に改めるとかいうような段階ではない、そう判断いたしておるわけでございます。
  47. 高沢寅男

    ○高沢委員 もう少し具体的に言いますと、来年の春に対前年比一五%、こういう目標を設定されておる。その辺までいく、もちろんそのあともそういう線で大体推移できるというような状態がくれば総需要抑制政策としては目的を達した、こういうふうなことをお考えなんですか。あの一五%という線は、そういうある程度のめどとして出されたわけでしょうか。
  48. 大平正芳

    大平国務大臣 いや、その総需要抑制政策をはずすかはずさないかという目安は、一五%以内に物価をおさめられる状態になればというような意識をもってあの政府、与党間の申し合わせをいたしたわけではないんです。とりあえずことしから来年の春にかけてのわれわれの努力目標として、一五%以内に消費者物価を対前年度同月比におきまして持っていくことを一応の目標にしようじゃないかということにすぎませんで、総需要抑制策改廃するということと一応関係はございません。
  49. 高沢寅男

    ○高沢委員 物価が上がる原因といいますか、そういう要素の見方で、たとえば昨年の暮れからことしの年頭にかけてのあの洗剤がなくなる、あるいはトイレットペーパーもなくなる、やれセメントはない、何はない、ああいうふうな情勢のころは、いわゆるデマンドプル、つまり供給が非常に不足して需要は非常に強い、こういうことで物価が狂乱的に上がっているというような説明がなされた。その後ことしの参議院選挙のあとごろになってくると、その情勢は変わった。むしろ今度の物価上昇の要因はコストプッシュであるというような議論が行なわれていると思うのですが、私としては、物価上昇の要因をそういうデマンドプルとかコストプッシュというふうな面で分析するということはインフレ問題の本質からずれているとは思うのですが、しかし、そういう議論が現実に自民党なり政府のほうにあるとすれば、いまの物価上昇の要因、これは一体デマンドプルというふうに見られるのか、あるいはコストプッシュというふうに見られるのか、その見方によって当然総需要抑制政策というこの政策の運用も変わらなければならぬと私は思うのですが、そこを大臣はどういうふうにごらんになっていますか。
  50. 大平正芳

    大平国務大臣 現実の姿は数字が示しておりますように、卸売り物価は相当鎮静化の傾向が定着してまいりましたけれども消費者物価に至りますならば、まだ楽観を許さない状況であるわけでございまして、これがデマンドプルなのか、それともコストプッシュなのかということでございますが、私は、いまの物価高というものはこれだという、コストプッシュだけともきめ切れないし、デマンドプルだけともきめ切れないと思うのでございまして、いろいろな原因が複合してそういう姿が出ておるというように考えております。
  51. 高沢寅男

    ○高沢委員 けさの朝日新聞の報道で大臣もごらんになったと思いますが、自民党の幹事長あるいは政調会長が、来年度予算編成に関連する経済運営の行き方として、いまの総需要抑制政策の転換を考えておられる、来年度は五%から七%くらいの成長を実現するようにしたい、こういう方向を出された。その中に、成長を押えることが何も物価を押えることに必ずしもつながらぬ、成長を押えたから物価が安定するわけじゃない、こういう見方も出されているわけなんです。  そういたしますと、この物価を安定させるための総需要抑制といういまの政策の立脚の土台が、自民党の幹部の方々によってそれはそうじゃないんだという一つの見方が出てきたということになると思うのです。これはまだ党の次元の御意見であるわけですが、しかし、党と政府と一体でいままで総需要抑制政策をやってこられた。その立場から見ると、この幹事長や政調会長がそういう意見を出されたということは、ここ一番、いまの基本的な政策の土台を変えることになるんじゃないかという感じがするのですが、これは大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
  52. 大平正芳

    大平国務大臣 党のほうで現在の経済の診断、それから将来の展望につきまして、学識経験者等の力をかりましていろいろ検討はされておるということは私は聞いておりますけれども、党としてまとまった姿で政府に申し入れを受けているようなことはございません。きょう新聞を通じて橋本さんや水田さんがおっしゃったことは伺いましたけれども、これはそういう検討をいたしておるということに関連しての個人的な御見解と承知いたしておるわけでございまして、政府に申し入れを受けたわけでもないし、私どもが理解している限りにおきましては、総需要抑制政策を手がたく堅持していくという点、基本につきましては党と政府との間に何ら意見の違いはないと私は承知しております。
  53. 高沢寅男

    ○高沢委員 まだ党から政府のほうへそういう政策の転換の申し入れがないということで、これは事実そういうこととして承るとして、しかし、言われた考え方ですね、つまり必ずしも成長を押えれば物価が安定するというものじゃない、こういうふうなお考えというものを大臣はどういうふうに見られるか。物価安定のために総需要抑制でやっておられる政府の立場からすればそういう考え方は間違いだ、こういうことになるのか、あるいはそういう考え方もあり得るということになるのか。私は、これは総需要抑制政策政策運営に非常に重大な関係があると思いますので、この点を大臣はどういうふうに考えておられるか、それをお尋ねしたいと思うわけです。
  54. 大平正芳

    大平国務大臣 いま私ども、成長はどの程度であるべきであるとかというようなことを目安に置いて政策運営をやる余裕は実はないのでございまして、成長というようなことに一応かかわりなく、当面どうしても物価の鎮静化をはからなければならぬじゃな恥かということを政策の道標といたしまして、一応成長論議にかかわりなくいまやっておるわけでございまして、依然として需要は相当根強いものを持っておりますし、日本人自体、われわれの民族は非常にバイタリティーの旺盛な民族でございますから、この需要の根強さという点、われわれは決して軽く見ていないわけでございます。したがって、どうもまだいま押えをはずしていいというような安心がいかないわけでございます。そういう気持ちでいちずにいまやってまいっておるわけでございまして、一応成長論議というようなものの問題意識を持っていまわれわれは政策運営をやっておるわけではないということを御承知願いたいと思います。
  55. 高沢寅男

    ○高沢委員 しかし、ことしは大臣も御承知のとおり、鉱工業生産もマイナスのパーセントになっておりますし、成長もマイナスというような状態で、私は第二次大戦後の日本経済の成長のいままでの歴史から見て、成長がマイナスになるというようなこういう経済の姿は非常に異例な姿だというようにいわざるを得ないと思うのです。  その異例な姿というのは、つまり総需要抑制政策から生まれてきておる、このことは間違いないのです。そしてそういう政策をとられた目的は物価の安定だということでやってきたわけです。ところが、物価は安定していない。これだけマイナス成長になっていても、いまのところでは年率二五%というような物価の上がり方になっておる。そうすると、政策目的の物価安定は実現されていない、しかしその政策の副作用といいますか、結果としての成長はマイナスで非常な不況状態をつくり出しておる。こういう経済の姿としては前例のない非常に異常な姿、あるいは悪く言えば非常なちぐはぐな姿になっておる。この経済の現状というものを一体大臣はどういうふうにお考えになっておるか。これでいい、まだこれからも成長マイナスの状態でいくのだ、そしてそのいった上でもって物価の安定はいつごろどうなるかというめどは一体どういうふうにつけておられるのかということを、ここでもう一回はっきりお聞きしたいと思うのです。
  56. 大平正芳

    大平国務大臣 いま私が申し上げたのは、日本経済はこういう状況のもとでこのくらいの成長を確保してまいるのが適当であるという考え方に基づきまして政府がこれこれの政策をとっておるということではない。あなたが御案内のように、去年の暮れからことしの春にかけて異常な物価高がございまして、卸売り物価では一月は対前月比五・五%とか、二月が三・九%とかいうような状態消費者物価では十二月に比べて一月が四・四%、二月が一月に比べて三・四%、こんな異常な値上がりでございまして、こういうことではいけないから何としてもこの鎮静化をはからなければいかぬというわけで、去年からとってまいりました総需要抑制政策をもっと手がたく堅持した事態に対処したわけでございまして、幸いにいたしまして三月以降だんだんと鎮静化を見るに至ってきて、この政策はそれなりに私は成果をあげつつあると思うのでございますけれども、まだこれはここで手放しで楽観できる状態ではないので、なおしばらく堅持さしていただきたいということで言っておるわけでございます。  つまり、あるべき成長率を考え、頭に描きまして、それからこういうゆがみがあるからこれを是正してこうやるのであるという、そういう政策意識を持ってやっておるわけではない。さしあたってのこの狂乱状態を早いところ鎮静させる必要があるということでやっておるということをいま御説明申し上げておるわけでございます。  しかしながら、あなたが言われるように、一体、日本経済はいま確かにマイナス成長の状態にある、それがいつまでもそういう状態であっていいか悪いか、あるいは成長経済物価水準というような問題がどういう関係にあるかというようなことにつきましては、それはいろいろ検討しなければならぬ問題が私はあると思いますけれども、少なくともいまの問題意識は、私が御答弁申し上げたようなところでやっておると御承知を願いたいと思います。
  57. 高沢寅男

    ○高沢委員 ではこの点、もう一つだけお尋ねします。  いま大蔵省が来年度の予算の編成作業を進めておられる。この年内には予算案を決定されるというふうなことで作業が進むと思いますが、そうすると、時間的に言えばあともう二カ月ぐらいしかないわけですね。その二カ月ぐらいの間に、けさの新聞の、マイナス成長ではまずい、少なくも五%あるいは七%程度のプラスの成長にしなければいかぬ、こういう立場を党の側できめて、それでその立場で来年度の予算を組もうじゃないか、こういう議論が党のほうから出てきたとした場合、大臣はその立場で来年度の予算を組まれるのか。そうではなくて、それはだめだ、やはりことしと同じ、成長はマイナスであっても物価安定のための立場で予算を組むのだということでやられるのか、そこをひとつお答えいただきたいと思います。
  58. 大平正芳

    大平国務大臣 来年度予算編成にあたりまして、来年度経済はどういう展望に立ってやるか、政策運営の基本態度云々の問題は、これは経済企画庁が中核になりまして予算編成と並行して御検討いただくことになるわけでございまして、政府としてまだ、いま仰せになりましたような問題につきまして各省間あるいは各閣僚の間でお打ち合わせをしたことはないわけでございまして、いま企画庁のほうでもそういう問題につきましては御検討されておることと思うのであります。もとより党のほうも与党の立場でいろいろ御研究になっておると聞いておりますが、先ほど申しましたように、まだまとまった御意見を党のほうから伺っておるわけではございません。  ただ、財政当局といたしまして、来年度経済を成長経済に、もう少し気のきいた状態に持っていくべきであるという要求を受けた場合どうするかということでございますが、まだそういう話がございませんので何とも答えようはないのでありますけれども、ただ私からあらかじめお断わりしておきたいのは、そういうことのある前に、もうすでに先ほども村岡さんや山中さんにもお答え申し上げましたように、何もしなくてもいまの当然増の約束済みのものだけ積み上げても予算自体はもうことしより二五%もふえちゃうんですよ。そういう相当やっかいな事態になっておるということでございまして、財政が非常に弾力性を持っておりまして成長経済を相当促進するような弾発力を持っておるとかあるいは不況を優にこなしていくに足る非常に弾力的な財政運営の余力を持っておるとかというような状態ではなくて、非常に財政が窮屈である、非常に幅の狭い選択しか許されていない非常に苦しい状況にあるということだけは御理解を得ておきたいと思います。
  59. 高沢寅男

    ○高沢委員 私のほうも、どうもこういう問題はあまり割り切れた答えがないだろうと初めから考えちゃう悪いくせがありまして、しかし、この点は来年度予算編成の最大のポイントになるところだということは、やはり私は一応指摘しておきたいと思います。  時間の関係がありますから、質問としては次へ進みたいと思います。  それで、総需要抑制のいままでの政府のやられ方が、これは戦争のような話にたとえると非常に悪いたとえですけれども、言うならばじゅうたん爆撃のような形で、とにかく成長要因あるいは需要要因というものをすべて押えつけてしまうというようなやり方でやってこられたんじゃないかと思うのです。その結果、あのマイナス成長というふうなこと、各業界では非常な倒産が出る、あるいは人員整理が出る、操業短縮が出るというような状態になっておる。これはこれでとうていこのまま放置できない深刻な情勢になっている。つまり、物価も押さえなきゃいかぬ、不況対策もやらなきゃいかぬ、こういう状態へいまきているんじゃないかと思います。  そうなると、物価を押えるということでじゅうたん爆撃のように全部押えてしまう、これも間違い。さりとて不況対策だから全部ゆるめてしまう、もちろんこれも間違いだと思います。そういう意味においては、物価を押えるためにはそれなりのところへ集中的な一種のねらい撃ちの政策をやる、不況対策としてはまたそれなりに一番必要なところへねらい撃ちの対策をやるというような運営が必要じゃないか、こう思うのです。  そこで、物価を押える集中的なねらい撃ち対策としては、これは何といってもいまは公共料金ですね。ことしの物価が上がってきた要素の中では、やはり政府が主導的に公共料金を上げてきたということが一番大きな要因になっておる。これを何とか押えなきゃいかぬというところに一つのポイントがある。もう一つは、これは独占禁止法の改正問題がいま論議になっていますが、そういう面で管理価格、独占価格というところへぴたっと照準を定めた対策効果的に打つというようなやり方ですね。  一方、いまのこういうたいへんな不況状態の中では、私はやはりそれなりのねらい撃ちの対策、いま具体的に出ているのは特に中小企業に対する年末金融これは通産省や中小企業庁からそういう資金要求が出されておりますが、特に建設関係が非常にひどい状態にあります。私のところなんかへも地元の大工さんとかあるいは左官屋さんというふうな職人さんからいま非常に手紙が来ておりまして 何とか住宅金融公庫のワクを広げてもらいたい、あるいは銀行の住宅ローンワクをゆるめてもらいたい、それでないと自分たちは仕事がない、こういう訴えが非常に来ているわけです。  ですから、そういう点で不況対策物価対策も、ともにそういう焦点を合わせたねらい撃ち対策をいま思い切ってやるべきだというふうに考えますが、大臣の御見解を聞きたいと思います。
  60. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおりでございまして、物価対策もやらなければならぬが、同時に不況対策もやってまいらなければいかぬわけでございます。総需要抑制策をばかの一つ覚えみたいに、それだけを教条的にやっているわけじゃないのでございまして、総需要抑制策と申しましてもこれにわれわれは例外を設けたり、あるいはこのワク内におきまして金融当局なり政策当局なりが弾力的な判断ができるような土俵を与えておるわけでございますので、そういうような中におきまして、いまあなたが御指摘のような、出てまいりました問題につきましてはきめのこまかい対策も同時に講じながらやっておるわけでございますので、その点は両方の鳥を追い求めてやっておるということでございます。  ただ、公共料金のねらい撃ちでちゃんと照準をきめて、やるときはちゃんとやらなければいけないじゃないかという御指摘でございます。それは先ほど山中さんの御質問にもお答え申し上げたのでございますが、私どもとても一生懸命に、できたら公共料金を上げたくない、押さえ込みたいわけでございます。そういうことで、戦後政府が関与した料金、物価の形成には非常に慎重な態度でやってまいったわけでございます。電気料金にいたしましても、ガス料金にいたしましても、鉄道の運賃にいたしましても、われわれは非常に慎重にやってきて、もうやむにやまれないところまで追い込められたので、せめてこれだけは是正させてもらいたいという姿でやっておるわけでございまして、あなたがおっしゃるように、政府が主導的になって物価を上げていく、現に主導力で意識的にやったというようなことなどもとんでもない話なんでございまして、政府は実につらい思いでやってきたことは御理解いただきたいと思うのでございまして、その点は今後も極力押えてまいることについては精一ぱいの努力をしてまいりたいと思っております。
  61. 高沢寅男

    ○高沢委員 きょう午前中、山中先輩からも御質問した来年の春の一五%に物価上昇を押える目標のことですが、こういう前提で来年度の予算を編成されると思いますね。その予算は来年二月から三月にかけて国会審議になるわけですが、その三月の月末になって一五%という目標が達成できれば、これはこれで一応の目標が達成できたことになりますが、達成できなかったという場合ですね。その一五%という数字のきまり方は小坂総務長官の話によれば、この一五%は政治の気合いできめた、こういうふうに言っておられる。あるいはまた内田企画庁長官は、十一月はどうせ内閣改造でおれは交代するだろう、そうすると、おれの後任者になる人に一五%なんという根拠のないあやふやな数字をしょわせるのは気の毒だというふうなことを言っておられる。こういうことから見ると、この一五%という数字にはどれだけの確信ある根拠があるのかたいへん疑問だと思うのですが、しかし、ともかくその一五%ができなかったときには、その一五%を前提に組んだ来年度予算案、国会では審議の最中というふうなときにそういう結果が出てきたら、これはひとつ政府の責任、大蔵大臣の責任として、私はやめろとは言わないけれども、そのときは審議の途中であっても予算に手直しを当然加えるべきだ、こういうことでなければ経済政策運営の責任を果たしたことにはならぬじゃないか。そういう場合にはそういう措置もやるんだ、こういうお考がありますか、大臣のお考えを聞きたいと思います。
  62. 大平正芳

    大平国務大臣 政府が来年の三月の消費者物価上昇は一五%にいたしますなんということを言っているんではないのです。(高沢委員「目標にしているんでしょう」と呼ぶ)あれは言っておるわけではないんです。政府と与党の間で、来年の三月の消費者物価は前年同月比一五%以内を努力の目標としてひとつお互いに努力してみようじゃないかという申し合わせをしたわけなんです。それについては私もけっこうでございますと申し上げておるわけでございまして、一五%とか十何%とかいうようなことをきめるほど政府はそう万能ではないわけでございまして、そういう目標を持ってお互いに努力しようということは、どなたが政権をあずかってもあり得ることであろうと私は考えております。
  63. 高沢寅男

    ○高沢委員 私は、これはたいへん責任のない話であって、そういう数字の目標を出した、しかし、できてもできなくてもそれはたいしたことはないというふうなお考えでは、こういう数字目標をそもそも出すこと自体が無意味だし、また国民を欺くんじゃないかと思うのです。いまのような、これは目標としてはそうだけれども、できるほど万能じゃないというふうに言われれば、もう初めからそれはできないときの予防線を張っておられるというようなことにも感ぜられますし、私は、あれだけ閣僚の懇談会を二つも重ねた会議で確認されたということであれば、その数字に対して政府は責任を持つ、それだけの国民に対して与える経済政策の重みを持たなきゃ無意味じゃないかと思うのです。  したがって、その責任のとり方は、私は何も大臣をやめろと言うわけじゃないので、その前提で組んだ予算案はそれができなかったときはそれなりの手直しは当然やるんだということで、これが一つ経済政策の責任のとり方じゃないかというふうに私は言っているわけですよ。そこを大臣として、ひとつしっかりとした考えを示していただきたい。それがないと、この一五%というのは何のことはない、ただ来年の春闘での賃上げを押えるための数字にすぎないということに結局なるわけであって、われわれはそんなふざけた数字では政府経済政策の運営の態度としては許せない、こう思いますので、もう一度大臣の責任ある考えをお聞きしたいと思います。
  64. 大平正芳

    大平国務大臣 来年度予算編成にあたりまして来年度経済をどのように見通していくか、それから経済運営方針をどのように定めていくかは、先ほど御答弁申し上げましたように、まだ政府部内で打ち合わせをいたしていないわけでございまして、ここで御答弁が申し上げられる筋合いではないわけでございます。いずれ政府も手続を経まして、予算編成とあわせて天下に公にいたしまして御批判を仰ぐことになろうと思うわけでございます。  それで、一五%といういまの問題は、その予算編成基本方針とは一応関係のないことでございまして、いま政府といたしまして物価安定、物価の鎮静化ということを政策の第一義的な目標として追求いたしておるわけでございまして、低ければ低いほどよろしいわけでございますが、いろいろな事情から申しましてせめて一五%以内におさめられまいかという一つの努力目標を設定して、お互いに力を合わせてやろうじゃないかということなんでございます。  しからばそれは腰だめでいいかげんにやった数字かというとそうではないんでありまして、すでにいままで、政府が関与する料金についてこの十月に運賃、米価等をきめさせていただいておりますけれども、そういったすでにきめたものはそのままCPIにそれなりに影響があると思います。そうすると十一月以後、十一月、十二月、一、二とかりに前月比、月一%アップということで計算してみると、一六ポイント何がしの数字になってくるわけでございます。  先ほど、われわれは何も物価問題に全能でないと申し上げたのは、これは国際的な環境の中で経済を営んでいるわけでございますから、多数の要因が働いて物価形成に参加してくるわけでございますから、こうしてみせるなんというみえを切る立場にはないわけでございますが、まあ大きな異変がなくてせっかく一生懸命努力してまいったならばその一五%という目標は必ずしも不可能ではないんじゃないか、そういう呼吸でひとつがんばってみようじゃないかということなんでございます。  しからばその場合に、政府が今年度内に手をつける公共料金があるかないかという問題を取り上げてみると、まあ郵便料金が考えられる。あるいはたばこに手をつけるかどうかという問題もある。私はそういう問題はひとつ予算の編成の場合の御相談にしてもらいたいということで、いまはペンディングにいたしておるわけでございます。  それで、そういう問題をどうするかも含めまして、来年の三月には一五%以内に持っていくような目標でお互いにひとつがんばってみようじゃないか。これに対しておしかりを受けましたが、また絶えずおしかりを受けておるようでございますけれども政府がそのぐらいの努力目標を持ってがんばることをむしろ高沢さんにほめてもらいたいし、激励をしていただきたいと私は思うのでございまして、われわれはまじめにそういう意味で取り組んでおるつもりでございます。
  65. 高沢寅男

    ○高沢委員 大臣の主観的な努力はよくわかるのでありますが、その主観的努力が結果としてそうなったときに、あるいはならなかったときにということを私はさっきからお尋ねしているんで、若干すれ違いだと思いますが、ひとつ大いに努力はお願いしたいと思います。  時間の関係がありますから次へ進みまして、預貯金の目減りの対策の問題なんですが、これは一点だけお尋ねをしたいと思います。  日本資金の、一方では貯蓄、蓄積をする、他方資金を運用する、こういうふうな関係の中で、貯蓄する側面は個人の貯金者の預貯金が半分以上の大きな比重を占めている。今度はその資金を使う面では、これはまた六割以上の大きな比重で法人企業が使うというふうな形になっているわけですが、そういう状態の中で物価が非常な勢いで上がって、金利よりももっとずっと大きなパーセントで物価が上がる。こういうふうなことから、その預貯金の中心をになっている個人の預金額がどんどん目減りをして非常な損失を受ける。それから、それを借りて運用する立場の法人企業は、いわゆる債務者利得で、こうしたインフレ状態の中で、いながらにして大きなプラスを得ておる、このことはもう経済の実際の姿としてだれも否定できない現実の姿であると思うわけです。  そういう状態の中で、ことしの十月一日発表の企画庁の国民生活白書の中でもこの辺のところを分析しておりまして、わが国の勤労者世帯の平均の貯蓄残高は、階層別の五分位のそれは別といたしまして、平均して百七十三万円。それを物価上昇と金利との関係の貯蓄デフレーターで割り引くと、昭和四十七年の十二月末から四十八年の十二月末までの一年間に二十一万九千円、約二十二万円の目減りになっておる。百七十三万円が二十二万円の目減りになるというような数字が国民生活白書で分析をされて出ておるわけですが、私は、これは零細な預金をしている勤労者にとっては耐えがたいことだ、こう思うのです。先般〇・五%の金利の引き上げがあったわけですが、これはもうとても目減り対策という効果は全く持ち得ないということは、だれでも認めるところであるわけです。  そういうことから、この対策として、たとえばイギリスなんかでやっておる例も考慮の中に入れながら——イギリスではこういう対策をやるそうであります。老人世帯あるいは低所得世帯を対象に満期五年の公債を発行する。その公債は、五年後にその五年間の物価上昇率を公債の額面にスライドする。ですから、十万円の額面の公債は、五年間で五〇%物価が上がれば十五万円の額面にして返済するというような、そういう完全に物価上昇にスライドする公債の発行ということをイギリスは決定して、これは何か来年の五月から実行するというふうに伝えられておるわけですが、わが国の場合でも私はこういう対策が必要じゃないかと思うのです。  目減り対策として金利をどうこうという議論、これも非常に大事な議論です。ただ、この金利の議論は、全体の金融の金利体系に非常ないろいろな意味の影響を与えるということを考えれば、そういう金融の中の金利の操作と一応切り離して、これはこの目的の特殊な国債というもので、そして当然、一世帯で国債を引き受けることのできる限度をはっきりきめて、その限度を私は百万円、こういう額にすべきが適当じゃないかと思います。そしてその額に対して、たとえば五年という期限をおけば、その五年間の物価上昇率というもので額面をスライドさせる。ほんとうに勤労者の血と汗の貯蓄を、少なくも百万円という範囲ではその価値を保存する、そのことについて国が責任を負う、こういうような制度も十分考えていただく必要があるのじゃないか、私はこういうふうに考えますが、その方法はどうか。あるいは大臣のほうでそのほかにこういういい方法があるということがあれば、大臣からひとつお考えを聞きたいと思います。
  66. 大平正芳

    大平国務大臣 私は、預金の目減り論ということがやかましく論じられておることをよく承知いたしております。私は、日本経済がいまともかくここまで伸びることができた、それで世界の信用をここまで維持することができておる、これはやはり日本の国民の非常に根強い貯蓄性向が非常な力になっておるわけでございまして、その点非常にありがたいと思っておるわけでございます。そういう大事な国民の貯蓄について目減りが起こるような政治は困るじゃないか、したがって、この目減り対策を講ずべきでないかという問題意識は、これもまたよく理解できるわけでございます。  ただ、私はその場合、まずこれから目減りが起こらないようにすることが政治のあり方として一番まじめな行き方だし、当然の任務じゃなかろうかと思うのでございまして、これから目減りがあった場合にどうしていくかというようなことを前提にした政治、いま御指摘の、英国でいまそういうことが創案されておるというようなことは、私は賛成できません。政府はあくまでも目減りは起こさないように全力をあげるということを、ともかく愚直に追求していくのがほんとうの政治じゃないかと思うのでございまして、目減り対策として特に気のきいたそういうことをやることは、必ずしも預金者に対して親切な道じゃないのではないか。私は政治のあり方として望ましい姿とは考えません。
  67. 高沢寅男

    ○高沢委員 目減りが起こらぬようにするということは、要するに物価上昇を預金の金利より低い水準に押える、それしかないわけです。さっきの一五%の論議でも、とても責任を負って私は断言できませんということを言っておいて、ここへきたら今度は、目減り対策はまず目減りをしないようにすることだということで逃げられることは、私はたいへん無責任だと思いますよ、大臣。まあ私は時間がないので次に進まなければなりませんから、こういうことは大いにこれから日本の国じゅう演説をして歩くということをひとつ宣言しておきたいと思います。  それで、次の問題でお尋ねしたいのは、政府関係の特殊法人の職員の給与改定の問題です。この職員の人たちの組合は略称政労協、こういうふうに呼んでおりますが、けさも大臣の答弁にありましたが、二十二日に公務員の給与改定は閣議決定される。この政労協の人たち給与改定は、大蔵省の指導によって、公務員給与に関する閣議決定があるまで押えられておるということできているわけですから、二十二日にその閣議決定があれば、もうまさに目の前の時間の問題だということになってきたと思います。  そういう点で、まず最初に、二十二日閣議決定があれば、この政労協の関係の賃金の改定は直ちに実要れるというふうに見ていいのか、それをまずお尋ねしたいと思います。
  68. 辻敬一

    ○辻説明員 先ほど大臣からお答えいたしましたように、近く公務員給与の取り扱いにつきましての閣議決定が行なわれる予定になっておりますので、その決定がなされました場合には、ただいまお尋ねの特殊法人職員の給与改定を実施することができる、かように考えております。
  69. 高沢寅男

    ○高沢委員 それはぜひそういうふうにお願いをしたいと思います。  そこで、ただ私は、この問題は実は長年の問題であって、おそらくまた来年も同じ問題が尾を引くというふうに考えますので、この特殊法人の理事者とそこの職員との労働関係、このことで若干ここでお尋ねをしておきたいと思うのです。  この職員の人たちの組合のほうは、労働三法によって一般の民間労働者と同じような労働者としての権利が保障されているわけです。ところが、その相手側の法人の理事者側は、これは今度は大蔵省の内示に押えられて、その賃金の改定というふうな問題を実行するのは、公務員給与改定の閣議決内がなければできないというように押えられている。こういうことから、私は特殊法人の理事者側のいわゆる当事者能力をぜひはっきりとこの際お聞きしたいと思いますが、当事者能力はないのか、あるいは当事者能力はあるけれども一定の制約を受けるということなのか、そこの概念的な考え方をまずお尋ねしたいと思います。
  70. 辻敬一

    ○辻説明員 特殊法人には労働三法が適用されまして、職員の労働条件が労使間の団体交渉によって自主的に決定されるたてまえになっておりますことは、私どもといたしましても十分承知いたしております。  しかし一方、くどくど申し上げる必要もないと思いますけれども、特殊法人は業務の公共性なり特殊性にかんがみましていろいろな面で国の財政と密接不可分な関係があるわけでございます。あるいは出資によって設立されておりますとか、あるいは財投の資金を受けておりますとか、政府から補助金が出ておりますとか、そういう面におきまして国の財政と密接な関係があるわけでございます。したがいまして、給与決定につきましても主務大臣の承認を要する、その際に大蔵大臣と協議する、かようなことになっておるわけでございまして、この点、一般の民間企業とは異なった法令上の制約があるわけでございます。  したがいまして、その限りにおきましては当事者能力が制限されると申しますが、一定の限界があると申しますか、さような関係になっておるわけでございます。したがいまして、特殊法人の職員の給与の改定につきましては、基本的には公務員の給与改定に準拠して行なうのが適当ではなかろうか、かように考えておるところでございます。
  71. 高沢寅男

    ○高沢委員 特殊法人の職員の給与について主務大臣の承認を必要とし、主務大臣は大蔵大臣と協議しなければいかぬ、こういうワクがあるということは、結局特殊法人が補助金なり国の出資なり財投なりというもので運用されているという性格から、国家公務員の給与とそういう法人の職員の給与の間に、こっちがべらぼうに高いとかこっちがべらぼうに低いというような食い違いがあってはならぬ、こういう配慮から出ているというふうに理解していいですか。
  72. 辻敬一

    ○辻説明員 先ほど申し上げましたように、国の財政と密接不可分な関係がございますので、そういう関係から主務大臣の承認の際に大蔵大臣と協議するということに相なっておるわけでございます。  なお、労使交渉によって妥結できます範囲をできるだけ広げていくことが望ましいことは当然のことでございまして、その点私どもといたしましても従来から努力をいたしておるところでございます。今回の改定にあたりましても、いわゆる自主交渉ワク増ワクと申しますか、そういうこともいたしておりますし、初任給のいわゆる内示の撤廃ということもいたしておりまして、その限りにおきまして労使の交渉によって円滑に妥結できる範囲を広げてまいるという努力をしておるところでございます。
  73. 高沢寅男

    ○高沢委員 いま辻さんの説明されたそういう一定の前進があるということは私も承知をしておりますし、それはさらにもっと拡大をしていただきたいと思うわけです。  ただ、ことし九月二日の大蔵省の内示で、各法人において閣議決定が行なわれたときに実施すべき職員の給与改定についてその準備はもう進めなさい、こういうふうなことが出されておるわけですね。それによって各法人ではもう職員の給与表ができていて、いつでも実行できるというところまで現在ほとんどの法人が準備できておる。あとは二十二日の閣議決定があればそれでスタートということでもって、閣議決定はちょうど運動会のピストルのような役割りになっておるわけですが、そこまで各法人で準備ができておる給与表というものは、人事院勧告の公務員の給与改定の線とはずれた線でできておるわけじゃないわけです。二九・八八ですか、大蔵省の内示されたその線によって、プラスいま言われた自主的な財源付与のそういうワク内でもって給与表というものは作成されておる。  そうなりますと、もうこれは閣議決定によって実施される段階といまかりに実施してもその実施の内容には何らの違いがないというところまでできておる状態であるならば、そしてまた閣議決定人事院勧告の線でするということはもう間違いないということならば、閣議決定まで待たなければならぬというふうな時間的なワクはもうはずしていいのじゃないか。つまり、それぞれの法人の理事者と職員とのそういう交渉の中できまる給与改定の線が、公務員給与に関する人事院の勧告の線を基本に踏まえながら、そしてまた大蔵省内示の二九・八八という数字を踏まえてできておるわけですから、これならあえて二十二日まで待たなくとも、たとえばきょうならきょうでももう出してよろしいということになるべきじゃないか、こういうふうに考えます。  これは来年からも同じ問題が出るわけですから、そういう意味で、自主的な交渉のワクというものを広げるということであれば、こういういまの時間的な実施の点を、内容がそういう線で間違いなければ、閣議決定にあえて拘束されずにもっと早めてもよろしいというふうな線が当然出るべきじゃないかと私は考えるわけですが、辻さんいかがでしょうか。
  74. 辻敬一

    ○辻説明員 今年度に関しましては、ただいま御指摘のように、九月二日に大蔵省といたしまして協議に応じ得る基準と申しますか、それを連絡いたしたわけでございます。いわゆる条件つきの内示をいたしたわけでございまして、それに基づいてなお交渉中である特殊法人もあるわけでございます。  そこで、先ほど来申し上げておりますように、これらの特殊法人の公共性と申しますか特殊性と申しますか、そういう点にかんがみまして、やはりこれらの職員の給与基本的には公務員の給与改定に準拠して行なうことが適当と考えられますので、やはり正式な給与の改定というものは公務員の給与改定につきましての正式決定があってから行なうのが適当ではないかと思っておるわけでございます。今後ともそういうふうに基本方針は公務員に準拠しながらなお労使交渉の円滑化をはかってまいるべく、特殊法人職員の給与のあり方について検討いたし、また努力してまいりたいと考えております。
  75. 高沢寅男

    ○高沢委員 もう時間がありませんので、これはこれで打ち切りたいと思いますが、これは来年あるいは再来年にさらに引き継ぐ問題ですから、これからもまたいろいろ検討をわずらわしたいと思いますし、そういう方向でひとつ努力をぜひお願いしたいと思います。  最後に、大臣に私は対外援助の関係一つお尋ねをしたいと思います。これももう一点だけであります。  対外援助の中にはいろいろな国向けのやつがあるわけですが、たとえばその一例として韓国との関係ですね。日韓の関係でいえば、日韓条約ができてから約九年の間に無償を含めて日本から韓国に与えた借款が約十二億四千六百万ドルというような大きな金額になっております。また、日本企業が韓国に対して直接投資をした金額が四億五千万ドル、合計いたして約十七億ドルくらいの非常に大きな金額になっているわけですが、問題はこうした金額が日本の国民の税を主体とした財源によってなされておるということが一つでありますし、そして、われわれの見るところでは、この援助は韓国のあの朴政権をささえる、てこ入れをするというような役割りを果たしていることは確かでありますけれども、しかし、韓国の民衆がそのためにしあわせになっているかというと、この面でゼロ、ゼロではなくて非常な韓国の民衆の不幸をつくり出しておるというようなことになっているのじゃないかと私は思います。  九月三日のこの大蔵委員会でわが党の阿部委員からもこのことは質問が出たわけですが、たとえば韓国の馬山地区の自由貿易地域ですか、この地域へ日本企業が大量に進出をしておる。そこで韓国の労働者を雇う賃金の水準がべらぼうな低賃金、日本の労働者の賃金水準から比べれば十分の一以下というような状態とか、あるいは経済情勢によって文句なしの首切りをやっておるとか、あるいはたいへんな公害たれ流しをやっておるとかいうようなことのために、韓国の民衆はそうした日本の資本の進出、そうした日本の借款のあり方というものに対して非常な不満やまた批判を持っておる。しかし、それは朴政権のファッショ的な圧力で押えられておる。そのことがなおさら日本に対する怒りを燃え立たせるというような結果で、相手の国の民衆を不幸にして、その民衆のわれわれ日本に対する怒りをまたつくり出すという結果にしかなっていないのじゃないのか。  これはあえて韓国だけじゃないのです。田中総理がタイを訪問したときに一体どういうデモにあったか、インドネシアの訪問で、どういう暴動によって迎えられたか、御承知のとおりです。そういうところから私は、こうした援助なり資本進出のあり方を、とうていいまの状態で放置しておくことはできない、こういうふうに思うわけです。  そこで、私はこの際一つの提案ですが、日本の各界の、もちろんその中には野党を含めた政党代表も参加すべきだと思います。それからまた、経済関係の代表も参加すべきだと思います。また労働者、農民何々という各階層の代表も参加すべきだと思いますが、そういう形で対外援助、資本進出の実態を調査して、そしてそのあり方に対して、そのあるべき政策を提起する、こういう一種の調査機関といいますか、審議機関といいますかというものをつくるべきではないかと思うわけなんです。  そういうものができれば、出先で一体どういう公害対策をとっておるか、どういう労働政策をとっておるかというふうなことも調査できる。その調査の上に、日本の国内で適用される公害対策なりあるいは労働対策なりというものを基準にして、外国へ行った場合もそういう基準でやらなきゃいかぬという一つのはっきりとした線が引かれる。そういうふうな進出ならば、相手の国の民衆の幸福になるし、また喜ばれる援助、喜ばれる借款になるということではないかと思います。  また、この援助や借款の関係で非常に言われることは、黒い霧の問題です。与えた借款の何割がそのリベートになって日本の政界へ戻ってくるというふうな話が言われております。御承知のとおり、アメリカのハーバード大学のコーエン教授は、日本の歴代総理大臣はそれによって産をなしたということまで言っております。そのことについて問題があるなら、日本の各界で調査をしてごらんなさいということも相手は言っているわけです。私たちは、必要とあればそういうふうな面にも触れた調査をやらなきゃならぬじゃないかというように考えるわけですが、そういうものを調査する一つ調査機関として公正な機関をつくる、それによって日本の対外経済関係をこの際抜本的に規制する、あり方を正すということがいま何よりも政治の姿勢として必要じゃないか。いま大平大臣がそういう方向でやるべきだという態度を示されれば、私は国民の中から非常な政治の姿勢に対する支持が出ることは間違いないと思います。  そういうことで、こうしたあり方に対する大臣のお考えを最後にお聞きしたいと思います。
  76. 大平正芳

    大平国務大臣 海外経済協力は、政府レベルにおける援助の場合、あるいは政府レベルにおける貸し付け、ローンの場合がございますことは御指摘のとおりでございます。と同時に、あなたが資本進出という姿において言われたように、民間の危険負担におきまして民間が投資されるという場合等があるわけでございます。  政府レベルにおいては、日本も援助供与国の側に幸いにして立つことができているわけでございまして、DACに加盟いたしまして、多くの先進国と協力いたしまして発展途上国への協力をいたしておるわけでございまして、私どもといたしましては、DAC関係国の一応平均程度のものは、量においても質においても日本が供与できる能力を持って、しかもそれを実行いたしたいものと考えておるわけでございます。  その場合、あなたが言う受益国の政権との関係でございますが、それはそうやった場合には直ちにその国の政権の培養に役立つじゃないかという御指摘でございますが、本来そういうことを目的にしてやっているわけでは決してないことは、もうたびたび国会でも私どもが御説明申し上げておるとおりでございまして、日本政府といたしましては、そのプロジェクトを吟味いたしまして、民生、福祉の向上に役立つように、その国の経済自立に役立つようにというようなことをねらいにいたしまして援助いたしておるわけでございます。  ただ、それを取り扱う機関は、そのときのその受益国の政府が担当されるわけでございますので、その政府相談してやるということになっておるわけでございますけれども、特定の政権を助けるということを目的にしてやっておるわけではないということが一点。  それから、こういう政府レベルの援助というような点は、開発途上国のある段階までのことでございまして、その国が経済的に離陸をするというようなときになれば、もうやめていくことが当然の道行きでございまして、韓国の場合も、第三次五カ年計画が終わる段階では、こういう政府レベルの協力というようなものはもう一応お願いしないで済むようにしようということは、日韓の閣僚会議が行なわれたあとの共同声明にもちゃんとうたわれてあるとおりでございまして、なるべくそういう自立の段階を早く招来して、政府レベルの援助というようなことがないようになることが双方にとって私は望ましい状態と思っております。  ただ、現にやっておる以上は、あなたの言うように公明にやらなければならぬわけでございまして、政府並びに国会その他の機関におきましていろいろ御究明いただきまして、不明朗なことのないようにやってまいることは私は当然なことだと思うのであります。  それから、民間レベルの投資でございますが、これは高沢さんには釈迦に説法でございますけれども、わが国はOECDに加盟いたしまして、OECDのお互いに資本取引というのは自由にしようというコードを受諾しておるわけでございます。したがって、対日投資も自由であれば、日本から対外投資も自由である、それに政府がかってな規制を加えないということにおいて世界経済の拡大、流通の円滑化、交流の円滑化というものをはかっていこうといたしているわけでございます。したがって、日本がかってに海外投資はもう規制するということは、私はやや日本政府のマナーとしてよくないことじゃないかと思うのであります。  その点が一点と、それから、受けるほうの側の国におきまして、その国も独立主権国でございまして、その国の法制の中で進出企業は行動すべきであって、公害その他労働法制がいろいろその国にちゃんとあるわけでございましょうから、その中でそれを尊重しながら、その国の理解と協力と祝福を受けながらやってまいるのがほんとうだろうと思うのでございまして、こっちであてがいぶちでこうする、ああするなんというようなことは、私はちょっと行き過ぎじゃないかという感じがするわけでございます。  ただ、あなたがおっしゃるように、それはそれとしても、進出企業のマナーというものが誤解を受けないようにしなければなりませんし、指弾を受けるようなことがあってはたいへんでございますし、それについてはコード・オブ・ビヘービアというようなものを各民間におきましてもお考えになられて、お互いにこれは順守しようじゃないかということを自主的にやられていることはけっこうなことと思うのでございまして、私どもはそういう自重をしたマナーがだんだん定着していくようになることを期待いたしますし、政府としてもできるだけお手伝いはしていきたいものと思うのでございまして、いずれにしても、そういうことをやる場合に、あなたは大きな調査機関というものを設けてやったらどうかという御提言でございまして、その御提言につきましては私ども検討させていただきたいと思います。
  77. 高沢寅男

    ○高沢委員 以上で終わります。
  78. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 荒木宏君。
  79. 荒木宏

    ○荒木委員 大臣にお尋ねしますが、九月三日の本委員会で所信表明を伺いましたときに、物価安定を第一の政策課題にする、これに全力投球をする、こういうお話を伺いましたが、その後、国鉄の運賃、消費者の米価、次々に物価の値上げという事態が続きまして、国民の物価を安定させてほしい、何とか物価を下げてほしいという強い要望の中で、大臣は先日国際会議に出席されました。  たしか九月三十日にIMF世銀総会で演説をなさったと伺っております。その中で物価の問題に触れて、原油価格高騰との関係に言及された、こういうふうに伺っておるのですが、原油価格の高騰と物価関係について大臣がどのような御意見をお述べになったか、ここで御報告をいただきたいと思います。
  80. 大平正芳

    大平国務大臣 方々で触れておるわけでございますけれども、私は、石油価格の高騰が日本物価並びに日本国際収支に深刻な影響を与えたことは間違いのない現実でございまして、それに対応いたしまして政府はこういう内外にわたる政策実施して事態の克服につとめておるという趣旨のことを申し述べたと記憶いたしておりますが、具体的な文章を一々覚えておりませんけれども、趣旨はそういうことで述べたと思っております。
  81. 荒木宏

    ○荒木委員 過去の事実あるいは現在の政策、それとあわせて見通しの問題についてお触れになった。私が大蔵省のほうからいただいた大臣の演説草稿によりますと、今後もなおエネルギー価格上昇、この波及的影響が懸念される、こういうことをおっしゃっておるように伺ったんですが、これは間違いございませんか。
  82. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおりです。
  83. 荒木宏

    ○荒木委員 原油価格高騰について波及的影響が懸念される、大臣は国際会議の席上でこうおっしゃったわけですが、この原油価格の動きがどうであるか、大臣が懸念を表明されたこの事実について通産省のほうにお伺いをいたします。  九月の十三日にウイーンでOPECの総会がありました。ここで、政府収入加重平均価格といいますか、いわゆる所得税あるいは利権料の政府取り分、これについてどのような決定がなされたか、簡単にお答えいただきたい。
  84. 小津修二

    ○小津説明員 お答え申し上げます。  九月十三日のOPEC総会におきまして決定された事柄は、まず第一に、公示価格は現行どおり据え置くということでございます。  第二に、産油国政府の取り分を平均して約三・五%程度引き上げるということでございます。  第三に、そのために利権料及び税率をそれぞれ引き上げるということでございます。  以上の結果といたしまして、産油国政府の取り分の金額は、従来の九ドル四十一セントから九ドル七十四セント程度に上がるということでございます。
  85. 荒木宏

    ○荒木委員 いまの報告によりますと、政府取り分三・五%、バーレル当たり三十三セント。大臣が国際会議で懸念、憂慮される、こうおっしゃった事実が同じ月に起こっておるわけであります。アメリカでは大臣は政府当局者にいろんな形で接触をなさった、こういう新聞報道があるのですが、その内容を伺う前に、アメリカ政府がこれに対してどういう対応を示しているか。外務省お見えですね。この産油国、OPECの値上げ決定に対してアメリカ政府がどのような態度をとっているか、これをひとつ簡単に御報告願いたいと思います。
  86. 宮崎弘道

    ○宮崎説明員 米国政府考え方につきましては、フォード大統領の九月十八日の国連総会におきます演説あるいは九月二十三日のデトロイトの世界エネルギー会議におきます演説、あるいはキッシンジャー国務長官の九月二十三日の国連総会におきます演説等を通じてうかがうことができるかと存じますが、その個々の演説のこまかい内容に入りますよりも、むしろその全体を通じましてのトーンは、石油価格のみに限定いたしますと、できれば産油国事態を理解して石油価格を下げるほうに持っていきたいというトーンがあらわれております。
  87. 荒木宏

    ○荒木委員 いまトーンとお話しになったのですけれども、たとえばいまのお話の九月二十三日の国連総会におけるキッシンジャー長官の一般演説は、政治的決定で上げたものは政治的に下げることができるという新聞報道によればきびしい内容のものである。フォード大統領の第九回世界エネルギー会議での演説もありますが、また大臣も同席をされたサイモン長官の演説もありますけれども、しかしきびしい内容のものであった、こういう新聞報道が見受けられておりますけれども、そのさなかに大臣はカナダで田中総理にお会いになった、こういう報道がありました。大臣が物価の安定こそ第一課題と言われ、それとの関連で原油価格の高騰に深い懸念を表明された。その懸念を表明された事実があらわれ、それに対してアメリカ政府の反応があった。大臣が総理とお会いになった際にどのような指示をお受けになったか。これは新聞報道によりますと、指示があったというような記事があるのですけれども、この原油価格高騰と物価との関係、それについて大臣が総理からお受けになった指示の内容を承りたい。
  88. 大平正芳

    大平国務大臣 今度私が渡米いたしました任務は、IMF世銀総会日本を代表する総務として出席したわけでございます。したがって、IMFの第二十九回総会におきましておそらくこうこうこういう問題が討議されるであろう、日本としてはこういう態度で臨みたいと思うということを御説明申し上げて、御了承を得たわけでございます。その際、田中さんとしては、せっかくの渡米の段階で、こういう石油問題その他について各方面の意向というものを十分聴取してお帰りをいただきたいということでございました。
  89. 荒木宏

    ○荒木委員 いまの田中総理の意向表明によって、大臣は各方面のこれに対する反応、見解を十分認識、聴取されたと思うのですが、アメリカ政府のこれに対する反応はどのように認識をされましたでしょうか。
  90. 大平正芳

    大平国務大臣 荒木さんも御案内のように、私はことしの二月外務大臣としてやはりワシントンで国際エネルギー会議に出たわけでございまして、それから八カ月たちましてIMF総会に出たわけでございます。その間、私の印象ではアメリカ側のスタンスと申しますか、立場というものには何らの変化がない。言いかえれば、この異常な原油の値上がりということは世界経済にとってゆゆしい事態である、何とかこの事態の改善が望ましい状態である、しかし、それは一挙に果たせるものでないので、この大切な資源はまずお互い消費の節約、代替エネルギーの開発、その他一連の国際的協力を通じて改善に持っていこうじゃないかという基本的立場でございました。そういう立場は全然変わりがないということでございます。  第二に、それでは、その間アメリカ産油国と接触も持たれておることでございましょうし、石油の値下がりという問題について手ごたえを持っておるかという質問に対しましては、具体的な手ごたえというものを別に持っておるわけではない。しかし、こういうオーソドックスな石油の節約に始まる一連の政策を実行してまいることが、石油価格を合理的な水準に持っていく大きな力になるという確信は変わらないということでございました。  私は正直に申しまして、世界最大の石油の消費国であり輸入国であるアメリカがそのように決心して、みずからも、最近のアメリカの大統領の発表にもありますように、一九七五年には百万バーレルはアメリカだけで節約してみせようというようなことをやっていただくことは、世界の石油という重要な資源の需給の緩和に非常に役立つことでないかと思うのでありまして、アメリカのそういうような努力が今後も鋭意継続されること、そして、そういう石油を合理的な価格にしようという願望が大なり小なり実現していくことを期待したいと私は思います。
  91. 荒木宏

    ○荒木委員 私が伺ったのは、それぞれの消費国の国内措置であるとか、あるいは消費国相互間のいろいろな話し合いであるとか、これは国際的なそれぞれの態様としてありましょう。問題はOPECの総会で事がきまった。国連の演説でアメリカの国務長官は、政治的に上げたものは政治的に下げることができる、こういうふうに言ったといわれておりますね。大臣は昼食会でしたか接触もなさったと報道されておりますし、また五カ国の会合にも出ていらっしゃる。だから、アメリカ産油国に対して下げろとこう言っているじゃないか、そのアメリカ産油国に対する態度、認識をお伺いしたわけであります。この点について重ねてもう一度お伺いいたしたいと思います。
  92. 大平正芳

    大平国務大臣 私が受けた印象では、アメリカ産油国との間は対立した関係にあるとは思いません。十分対話を持っておるものと存ずるわけでございます。  それから、このように非常に貴重になった資源、高価な資源というものはお互いに節約して需給の緩和をはかり、価格を合理的なところにだんだん下げていくという努力はやるべきでないかということは、このこと自体は私は産油国も十分理解ができる合理的な考えであろうと思うのでございまして、われわれ消費国側がそういうことを考えても別にふしぎはないわけでございまして、産油国と対立を来たす、それを意味するものではないと思うのでありまして、私の受けた印象では、アメリカ産油国との間というものは十分対話を持っておるし、友好的な理解と信頼の間柄にあるものと思うのであります。  ただ、具体的にいついつ、こういうわけでこれだけの値下がりが期待できるという手ごたえがあるかという質問に対しましては、それは遺憾ながらない、ただこういう努力はお互いに追求していこうじゃないかということでございました。
  93. 荒木宏

    ○荒木委員 両者の関係が対話であるか対立であるか、対立でなければ対話である、対話にあらずんば対立である、こういうことでお伺いをしたのではないのでございます。対話があろうと、その中でアメリカ政府がどういう要請、要求、意向を産油国に対して示しておるか。ただ、いまの大臣の御答弁の中で、値をだんだん下げるということは、これは消費国側としては当然理解ができる、こういう話ですから値下げの意向を持っておる、こういうふうにお伺いをしておきたいと思うのです。  そこで、大臣が演説の中でおっしゃっている物価との関連で原油価格高騰の波及的影響、大臣が懸念を表明された波及的影響というのは、これは具体的にはどういうふうなことなのでしょうか。波及的影響が懸念されるというのはどういうふうな事態をお考えになってこのようにお述べになったか、この点をひとつ伺いたいと思うのです。
  94. 大平正芳

    大平国務大臣 去年、あなたも御案内のように、十月十六日に石油の公示価格の大きな改定がございまして、超えて十二月二十三日にまた重ねて大幅な改定がございまして、わずかの間に四倍もの値上がりを来たしたことは御案内のとおりでありまして、これはえらいことであったわけでございます。それが導火線になりまして、ほかの食糧にいたしましても、あるいは綿花にいたしましても、あるいは粘結炭であるとかくず鉄であるとかいうものに至るまで、大幅な値上がりがあったわけでございます。また、そういうことを受けて、春闘なんかで大幅な賃上げという状態を迎えることになったわけでございますし、人件費の増高という問題はまたさらにその後のいろんな品物の価格形成にあたりまして大きな負担になってきておるわけでございまして、波及的影響というのはもうはかり知れないものがあるわけでございまして、そういう一連の動きを頭に置きまして、憂いを込めて申し上げたわけでございます。
  95. 荒木宏

    ○荒木委員 大臣のお考えはわかりました。つまり、原油価格が上がった。もちろんそれはメジャーの手によって消費国に運ばれる。日本に持ってこられる。もしそこで食いとめられれば、メジャーが吸収して転嫁しなければ、いま大臣が深刻な懸念を表明されたあとの波及的影響はそこで一応遮断される。しかし、これが簡単に転移をされる、転嫁をされると、だんだん広がっていく。いま大臣が言われた波及的影響という中から当然そういうことがいえようかと思うのですけれども、そこで問題は今回の九月十一三日のOPEC総会決定、これに対してメジャーが価格転嫁をしたかどうかです。  通産省、先ほど御説明いただいたと思いますが、この点についてはどのような事実になっておりますか。
  96. 小津修二

    ○小津説明員 お答え申し上げます。  先般のOPEC総会決定後の状況につきましては、まだメジャーからの値上げの状況は詳細には通告されてまいっておりません。今後その推移を慎重に見守りたいと思っております。
  97. 荒木宏

    ○荒木委員 その答弁はだめですよ。あなた、きょう通産省の国際資源課ですか、それから価格動向の何か対策室がありますね、そこでちゃんと転嫁をしたと答えているじゃないですか。通産省を代表してここへ見えているのに、同じ省内で事実を認めているのに、どうしてあなたのほうでわからぬのですか。もう一ぺんその点を確認して、はっきり答えてください。
  98. 小津修二

    ○小津説明員 ごく一部につきましては値上げの通告があったようでございます。ただ、全般的に各油種等に基づきます石油の価格は違うわけでございまして、メジャーからわが国の系列会社あるいは非系列会社に対する値上げの状況は、全貌としてはまだわかっておりません。
  99. 荒木宏

    ○荒木委員 これは一言申し上げておかなきゃならぬのですが、本年の七月三十一日にわが党の上田耕一郎参議院議員が内閣に質問状を提出いたしました。八月の六日に内閣から回答書が来ました。この中で原油価格動向把握について政府はどう答えていますか。通産省、どうですか。原油価格動向把握について政府はどう答えているか、この答弁書の趣旨をひとつ言ってください。
  100. 小津修二

    ○小津説明員 通産省といたしましては、国際的な原油の価格につきましては常時その動向の把握に鋭意つとめておるわけでございます。  特に、産油国とメジャーとの交渉状況につきましても、極力その実情の把握につとめてまいっておるわけでございます。しかもわが国に対するメジャーからの値上げの通告等におきましてその価格が妥当でないというふうに考えられる場合には、適宜メジャーに対して事情の聴取あるいは内容の説明といったことを求めてまいるということにいたしておるわけでございます。
  101. 荒木宏

    ○荒木委員 それじゃ個別に伺いましょうか。  モービルの会長が日本へやってきましたね。そして記者会見をして、この原油価格の高騰についての転移の問題、これについて発表しておりますが、これはどう言っていますか。
  102. 小津修二

    ○小津説明員 モービルの値上げの通告につきましては、先般モービルの会長等役員が参りましたときに、OPEC総会決定に基づきましてモービルとしてはそれ相当の値上げを日本側にお願いせざるを得ないというふうに言ってまいっております。
  103. 荒木宏

    ○荒木委員 エクソンはどうです。
  104. 小津修二

    ○小津説明員 エクソンにつきましては、六月のキト総会の値上がりぶりについての通告はございましたけれども、OPECウイーン総会後の値上げ分につきましては、まだ詳細な値上げ通告が参っていないというふうに私ども把握しております。
  105. 荒木宏

    ○荒木委員 あなたはあまりよく事実をいまの時点で御存じないようですから、お伺いするのはその程度にしますが、モービルの会長がやってきて、これはもう上げざるを得ない、エクソンからも値上げ通告があったという報道があって、そのことは通産省の先ほど申し上げた対策室ですかが確認をしている。大体そのとおりでしょう。過去の事例から見ましても、この原油価格の高騰があったときにはメジャーの転嫁があって、さればこそ先ほど大臣がおっしゃったように、波及効果が国内に及んでどんどん影響が広がる、こういうことになってきておるわけですけれども、大臣が懸念を表明されたその事実のきざしがいままたすでにあらわれつつある。  そこで、これに対して国際会議で発言もされ、その問題で本委員会でも所信表明で触れられた大臣にその事態をどう見るか、こういうことをお尋ねしたいと思うのですが、その前に、OPEC自体はこの転嫁の問題についてどう言っているか、この点は通産省いかがですか。
  106. 小津修二

    ○小津説明員 OPECの正式の見解といたしましては、メジャーにおいて値上げ分は極力吸収することとして消費国にこれを転嫁しないようにしてほしいということをOPECとして決定しております。
  107. 荒木宏

    ○荒木委員 そうだとしますと、契約当事者の一方であるOPECは転嫁をしないでほしい、報道によればするべきではないとかいうふうなのがありますがね。にもかかわらず、すでにもう一部転嫁を始めている。大臣はそれに対して深刻な懸念を表明されている。こういうことなんですけれども、このままでありますと、国民に犠牲が及ぶことは明らかです。消費の抑制であれ、どういう形であれ、そのまま原油価格の高騰がメジャーの手を通してもろに国内に持ち込まれる。OPECじゃそれはいかぬと、こう言っているのです。  そういうときに、先ほど通産省のほうから伺いましたが、内閣からもらった公式の回答では、メジャーに事情聴取をする、実態を調べると、こう言っているのですが、国際会議でいろいろこの問題について関与をされた、ことに物価との関連で大臣はどのようにお考えになるか、メジャーのところを素通りするのか、そこのところで押えるように努力をするのか、この点について大臣のお考えを伺いたいと思います。
  108. 大平正芳

    大平国務大臣 私は石油会社の立場でございませんで、メジャーとどういう契約を結んでどのようにやってまいるか、これは石油会社がお考えになることでございましょう。私はメジャー対策というものを語る立場にございません。  ただ、私の立場といたしましては、日本がほとんど全部石油を輸入に仰がなければならぬという立場にあること、たいへん弱い立場にあることでございまするし、できるだけ有利な立場を日本はとらなければならぬわけでございますが、メジーを使うか使わないか、メジャーとの交渉においてどういうスタンスをとることが一番有利か、そういった観点でそれぞれの通産当局なり石油会社の御系統ではお考えになられておることと思うのであります。ただ、念願するところは、日本といたしましては、できるだけ有利な引き取りをできる立場に立ちたいということだけをいま考えておるところでございます。と同時に、こういう貴重な資源でございますから、一滴といえどもむだのないように注意して節約もし、活用もはからなければならぬ。それがわれわれの立場でなかろうかと考えております。
  109. 荒木宏

    ○荒木委員 ECはどういう態度をとっているでしょかね。これは外務省のほう、いかがですか。
  110. 宮崎弘道

    ○宮崎説明員 ECにおきましては、共同体の委員会の中にございまするエネルギー委員会というものを開きまして、この問題につきまして討議したようでございます。当分の間、消費者価格への転嫁を行なわないように要請もなされたようでございますが、この委員会ではいまだ結論が必ずしも出ておりませず、かつ先般行なわれました外相理事会では、本件は取り上げられておりません。
  111. 荒木宏

    ○荒木委員 いまのお話では、報道等にもよれば、ECではエネルギー担当の副委員長が、消費者のほうには転嫁させないようにする、そういうふうに共同体としても努力しよう、こういうふうに言っておるわけですが、この石油の所管がまあどこにあるかということは別にして、大臣は政治家として国際会議にも出られてこの問題でいろいろ意見交換もされ——通産大臣は行っていないんですからね。政治家として転嫁させないような努力をされるかどうか、されるおつもりがあるかどうか。大臣は、演説の中では、勇気を持って事に当たる、英知をふるって事に処する、あと残されたのは意思のみである、こういう趣旨の演説を国内でも国際会議でもなすっておる。ですから、大臣が政治家として、日本の国内にいま転嫁してこようとしておるこの再度の値上げを、たとえばECがやっておるような形で転嫁しないように努力をなさるつもりがあるかどうか、この点をひとつ承りたいと思うのです。
  112. 大平正芳

    大平国務大臣 まず石油政策当局等が全力をあげてそういう方向で努力をいたされることを期待したいと思います。
  113. 荒木宏

    ○荒木委員 外務大臣は、大臣と同じくあの五カ国の会議に出られて、報道によれば、帰ってきて通産大臣に、これはどうもたいへんなことだという趣旨の話があったということです。大臣は、この物価の問題についてこれが第一だ、こういうお話、全力投球したいとおっしゃる。一番もとは、一つはこれがあって、その波及効果心配だと言われる。そしていまここをとめればそれが食いとめられるという論理、当然です。よそもやっている。それで、大臣どうですか、こう伺っているんです。大臣の政治家としての見識、一体どういう誠意をもって努力をなさるかという、このことを伺いたいのです。よその人のことを聞いているのじゃないのです。大臣は、大臣としてこの問題について誠実に転嫁させないように努力なさるおつもりがあるか、物価関係の非常に深い、しかも重要な立場におられる閣僚の一人として、転嫁させない努力を国民に表明なされるかどうか、このことを重ねてお伺いしたい。
  114. 大平正芳

    大平国務大臣 一つの問題は、政府も国民も力を合わせて節約につとめなければならぬということでございますし、現に日本の国民も、産業面におきましても、民生面におきましても、相当節約の実績を示していただいておることはありがたいことと思うのでありまして、なお一そうそういう方向で努力せなければならぬと考えております。  それから、供給国側あるいは配給輸送機関等との間につきましては、それぞれの関係者がおりまして、最善の努力をされることを私は期待いたしておるわけでございます。  ただ、物価政策が大事だから、これを国民に転嫁することは忍びないから、財政の場で受けとめて、ひとつ結末は財政がつけますと言うまでの勇気は私は持っておりません。
  115. 荒木宏

    ○荒木委員 大臣のこの問題についての決意といいますか、それを伺ったのですけれども、結局のところ国民に犠牲をしわ寄せする、メジャーには触れない、これでは問題の解決はできはしない。  この問題はお考えがわかりましたから、それはそれとして、いま最後に触れられた財政の問題ですね。続けてお尋ねをいたしますが、波及的な影響が各方面に及んでおり、非常に深刻な——とりわけ国民各層の中でもいま不況といわれている中小零細業者、これに対する措置としては、先ほど引用しました回答書の中でもいろいろ触れられておりますが、私は先般の小委員会で返済猶予の問題について行政当局の意見をお尋ねしました。きょうは大臣お出ましですから、利子の問題、低利の特別融資の問題、これについてのお考えを伺いたいと思うのです。  いま政府系三金融機関でそれぞれきめられておる利子がありますが、初めにお伺いしますけれども、法律上、たとえば国民金融公庫のいまの利子を下げることができるかどうか、まず制度の方面からお尋ねしたいと思います。
  116. 後藤達太

    ○後藤説明員 お答え申し上げます。  法律上の問題ではございませんで、利率は業務方法書できめておりますので、法律的に可能かということでございましたら可能でございます。
  117. 荒木宏

    ○荒木委員 実際的な措置として、国民金融公庫法の二十二条の二というのがありますが、これは運用上どういうふうになっておりますか。
  118. 後藤達太

    ○後藤説明員 恐縮でございますが、いますぐ調べましてお答え申し上げます。
  119. 荒木宏

    ○荒木委員 では答弁いただくまでの間別のことをお尋ねいたしますが、たとえば、これは言うまでもないことですが、一般会計から財政支出をする、それだけ利子を安くすることができる、これはもう当然のことですけれども、ここしばらくの間に、こういう一般会計からたとえば国民金融公庫に財政支出がなされた事例がどのような形であるか、これをひとつ報告をしてください。  これもひとつ答弁を準備をしてもらって、その前にもう一つお尋ねしますが、政府として一般財政から利子補給をされた事例はいままでありますか。  あらかじめお願いをしておったのですが、それじゃその間に、国のほうではすぐに出ないようだから、自治体のほうではどういうふうにしているか、これは自治省のほうからひとつ簡潔に報告をしてください。
  120. 小林悦夫

    小林説明員 地方自治体におきますところの特別な融資制度といたしまして、富山市、西宮市、熊谷市、岡山市、岐阜県、大分県、大阪府、これらがそれぞれ特別の融資を行なっているようでございます。
  121. 荒木宏

    ○荒木委員 いま報告をいただいたのは、ごく最近の事例ばかりです。不況で、大臣が言われた波及効果の影響をもろに受けてたいへん苦しんでいる零細業者の人たちのために、自治体はそれぞれいろいろな形で特利の融資を考えている。  国の側ではどうですか。ここ最近の例としてそういう事例があるかどうか。
  122. 辻敬一

    ○辻説明員 四十九年度の予算におきましては、国民金融公庫の補給金といたしまして、四億八千三百万円を計上いたしております。
  123. 荒木宏

    ○荒木委員 それだけですか。  補給金という例がいまありました。いま言われたのは、小規模企業の経営改善資金ですね。そうでしょう。
  124. 辻敬一

    ○辻説明員 ただいま申し上げましたのは、小規模企業経営改善資金の融資補給金でございます。
  125. 荒木宏

    ○荒木委員 百億一般会計から貸し付けをしているんじゃありませんか。
  126. 辻敬一

    ○辻説明員 その小規模企業経営改善資金の融資につきましての補給金という形で、四億八千三百万円を計上しておるわけでございます。
  127. 荒木宏

    ○荒木委員 いや、一般会計予算から貸し付けをやっているでしょう。
  128. 辻敬一

    ○辻説明員 さようでございます。
  129. 荒木宏

    ○荒木委員 この貸し付けは利子なしでしょう。
  130. 辻敬一

    ○辻説明員 財政投融資のほうから七・五%ということで受けてまいりまして、七%の金利で貸し付けをいたしておりますので、その間補給をする必要がございますので、その融資の補給として、先ほど申し上げた金額を支出しておるわけでございます。
  131. 荒木宏

    ○荒木委員 四十七年度に基準金利引き下げとして十億円、四十九年度には一般会計貸し付けとして利息のつかない金を百億円、補給金として四億八千四百万円、違っていたらあとで言ってください、こういう金額を出している。これは先ほど聞きますと小規模企業経営改善資金です。  大臣ここで伺いたいのですが、政治的な御判断として、経営改善、これはそれでいいでしょう、しかし、経営救済を要する不況状態にある零細業者、経営改善のためなら金を出すけれども、救済のためなら金を出さぬ、こういうお考えなのか。いま自治体のほうでいろいろやられておる例はお聞きいただいたとおりですが、いまたとえば不況業種については、中小企業信用保険法で不況業種の業種指定があります。だから、そういった業種について救済資金として、自治体がやっておるような低利の融資制度というものを考える必要があるのではないでしょうか。  いまこの波及効果に対する影響に懸念を表明されている。そういう状態の中で、中小業者、零細業者の皆さんから利息の問題についての要望が非常に強い。私どもは全国各地で懇談会をやらしてもらいました。その中でワクはふえても利息が高ければ手が出ない。もういままで借りておって、金を返さなければならない。その利息に追われて、いまの金利ではなかなか手が出ない、こういう声が非常に強いのです。大臣はこの不況の救済低利融資、これについて、経営改善との関係も含めてどのようにお考えかひとつ伺いたいと思います。
  132. 大平正芳

    大平国務大臣 経済政策と社会政策というものをやはりけじめをつけて考えなければいかぬと思うのであります。私ども経済政策を通じて救済事業をやるということは、根本の原則の問題としておかしいと思うのでありまして、経済政策はあくまで経済政策の原理があるはずであるというように私には思えてならないのであります。  したがいまして、融資につきましても、あるいはその条件につきましても、政府機関が出す場合それぞれ千差万別でございまして、非常に政策性の強いものにつきましては、非常に低利のことを考えておりまするけれども、しかし、これはあくまでも経済政策の範疇の中で考えておるわけでございまして、救済という観念、そんな非礼な考えは持っていないものと私は承知いたしております。
  133. 荒木宏

    ○荒木委員 それでは重ねてお伺いをしますが、石油危機のときには緊急の対策として低利の融資制度をとられた。これはある意味では救済ですよ。石油ショックによって危機に落ち込んだ零細業者を救済しよう。あの時期といまと比べて、たとえばこの間もお尋ねをしましたけれども中小企業のディフュージョンインデックスはどうですか。これはこの間もお尋ねして、はっきりお答えがなかったから、きょうは言っていただけるでしょう。これは所管の方でけっこうですから、あのときといまと比べて、中小企業のDIはどうなっておりますか。
  134. 後藤達太

    ○後藤説明員 ただいま数字を調べてお答え申し上げます。
  135. 荒木宏

    ○荒木委員 いや、詳しい数字は、この間もお尋ねしてぼくのほうから言ったばかりじゃないですか。では、結果だけ言ってください。あのときに比べていいかどうか。DIはどうですか。
  136. 後藤達太

    ○後藤説明員 悪くなっております。
  137. 荒木宏

    ○荒木委員 少し悪い程度ですか、かなり悪い程度ですか。程度を言ってください。
  138. 後藤達太

    ○後藤説明員 かなり悪くなっていると申し上げていいかと思います。
  139. 荒木宏

    ○荒木委員 大臣、いまお聞きのとおりですが、以前に政府としても救済策をとられた。それに比べても、政府統計によっても悪い状態が出ている。では、いまその方向政策課題として検討される、それがやはり福祉というものじゃないでしょうか。あるいは福祉というよりも、全体としての経済発展のためにも必要なんじゃないでしょうか。大臣のお考えを伺いたい。
  140. 大平正芳

    大平国務大臣 経済状態の推移というものにつきましては、常に注視を怠らないでおるつもりでおります。そして、政府として措置しなければならぬことは、われわれの与えられた権限の中で可能な限り考えてきておるつもりでございますし、今後も考えていくつもりでございます。従来やってまいりましたことで足らない、もう少しこれは考え直さなければいかぬというようなものがございますならば、われわれ十分検討するにやぶさかではないわけでございまして、常に事態の推移に対応いたしまして、行政上誤りのないようにいたしたいと思います。
  141. 荒木宏

    ○荒木委員 ですから、いま提案をしております低利の特別融資制度、これを一般的なことではなくてひとつ検討をされる御用意はないか、こう伺っているのです。事態はもういまお聞きのとおりです。要求も非常に強く出ている。前との例を比べてみても、他との例を比較してみても、そのことを検討される必要があるのではないか。
  142. 後藤達太

    ○後藤説明員 私どもといたしましては、当面最も重要なのは量の確保のほうではないかと存じております。したがいまして、そちらに重点を置いて検討してまいりたいと思っております。
  143. 荒木宏

    ○荒木委員 大臣の政治判断……。
  144. 大平正芳

    大平国務大臣 大蔵省としても関係各省とよく協議しながら実態に即した対策を怠ってはならないと考えておるわけでございまして、いま御指摘の問題、当面量の充実ということこそが大事であるということで、中小金融につきましては、いろいろな手だてを考えて実行してまいりましたことは荒木さんも御承知のとおりでございまして、さらにそれを質的な改善をしなければならぬかということまでいまのところは考えておるわけではありませんで、当面量的な充実という点で可能な限りひとつ措置すべきものは措置したいと考えております。
  145. 荒木宏

    ○荒木委員 これははっきり申し上げて、国民、ことに当該業者の要求に政府の皆さんはこたえていない。いや背を向けていると私はいわざるを得ぬと思います。懇談会をやって実際にいろいろと話を聞いてみれば、そういう状態が切実にわかるだろう。皆さんにはわかっていらっしゃらない。いやわかっていてもやろうとなさらぬのかもしれぬけれども、この点は大臣並びに大蔵省の皆さんに深刻な反省を求めたいと思います。国民の声はそういうことじゃありません。  いま業者の問題について伺いまして時間がほとんどなくなりましたから、あと簡単に残った問題についてだけ伺いますが、けさの新聞報道によりますと、地方自治体の超過負担の問題について、本年度補正予算で措置をするようにという大臣の御意向があった、こういうふうに報ぜられておりますが、この点について、補正予算で措置をするというふうな方針をお出しでいらっしゃるかどうか。超過負担の問題について大臣のお考えを伺いたいと思います。
  146. 大平正芳

    大平国務大臣 いままで超過負担の解消策といたしましては、ある年度の実態を調べて、その調べた年度の次の年度から予算措置を講じていくというような手順でまいったわけでございます。したがって、四十八年度の実態調査をことしやったわけでございますので、その成果を見まして、もし必要がございますならば五十年度から実施する、それが従来の行き方なんでございます。だけれども、こういう変動期でもございますし、実態調査の結果、来年を待てないというようなものがかりにありとすれば、それは私は、補正予算でやることにやぶさかでないと思っておりますが、まだ実態の解明が終わっておりませんので、やるかやらぬかということをきめたわけではないわけでございまして、実態調査の解明を通じまして放置できないというようなものが出てまいりましたならば、来年を待つことなく補正予算で措置したいと思っております。
  147. 荒木宏

    ○荒木委員 これはもちろん、数量差、対象差、単価差、いろいろいわれておりますけれども、そのすべてについて実態をよく検討して、実情に応じて補正で必要なものをやる、こういうことですね。
  148. 大平正芳

    大平国務大臣 われわれがいま超過負担で対応策をとっておりますのは単価でございまして、規模等ではありません。
  149. 荒木宏

    ○荒木委員 時間がもうありませんから、最後に一言伺いますが、人勧の問題は新聞報道もあり、質疑もかわされたようですけれども、私どもはいろいろ職場を回ってみまして、いまの労働条件、非常に苦労して労働者の皆さんが働いている。それはもう例をあげれば限りがありませんが、特にきょう御意見を伺いたいのは、先般国立のある療養所へ行きました。看護婦の皆さん方が夜勤勤務をやっておる。これは俗にニッパチといって、一月に夜勤は八日以内にしてほしい、そして夜勤勤務は二人にしてほしい、こういう切実な要求があるのですが、なかなかそれが実現されない。そればかりか、夜勤手当の金額も少なくて、その上に交代制ですから、勤務の交代が夜中になる。それから療養所を出て帰るのに、交通機関が全くない。車を呼んで、それが自己負担になっている。これぐらいは幾ら何でも財政で見るべきではないか、こういう声が非常に強いのです。この問題について厚生省が見えておると思いますから、一言厚生省としてはどういうお考えかということを言ってください。
  150. 木戸脩

    ○木戸説明員 まず、夜間看護手当の増額につきましては、四十八年度に従来の一回あたり三百五十円を千円に引き上げたわけでございますが、その後におきます看護業務の複雑性ないしは困難性の増加、あるいは基礎となりました俸給額の増加等がございますので、来年度におきましては現在の千円を二千円というふうに倍額の要求をいたしておるわけでございます。  それから、夜間の車送りの経費につきましては、従来から要求をしてまいっておりますが、残念ながら実現を見ていないわけでございまして、この点につきましても来年度におきまして引き続き車送りの経費の要求をいたしているわけでございます。
  151. 荒木宏

    ○荒木委員 大臣、最後に伺いますが、いろいろありますけれども、たとえばいまのように、交代制勤務で終わったら夜中だ、それでタクシーを呼んで帰るのに、自分で金を払わなければならぬ、これが多くの患者さんを見ている看護婦さんの勤務の実態なんですね。大臣は財政全般をごらんになっておるわけですけれどもこういう職場の実情から出てくる切実な要求、これについてはひとつ、いま厚生省の話もありましたが、前向きに検討されるべきと思いますけれども、お考えを伺いたい。
  152. 大平正芳

    大平国務大臣 せっかくいま概算要求のヒヤリングをやっておるところでございまして、御要望の線、可能な限り努力してまいるべき性質のものと思います。
  153. 荒木宏

    ○荒木委員 物価の問題、原油価格の高騰からいろいろ伺ってまいりましたけれども、私は大臣の答弁の中に、はっきり申し上げて、この問題については国民に犠牲を押しつけメジャーに触れない、ここのところは、私どもの党としては、これは国民の立場からして承服するわけにはまいりません。そのことをひとつはっきり申し上げておいて、そしていろいろ総需要抑制のひずみ、被害を受けておる層の改善については、なお今後ともいろいろな機会に要望を続けていきたいということを申し上げておいて、質問を終わりたいと思います。
  154. 安倍晋太郎

    ○安倍委員長 広沢直樹君。
  155. 広沢直樹

    ○広沢委員 私は当面する情勢につきまして、二、三質問申し上げたいと思います。  まず最初に、景気対策の問題でありますが、これは午前中からいろいろ議論になっておりますけれども、私はもう少し具体的にお伺いしてみたいと思うのであります。  ある人は、今日の経済運営はあぶない綱渡りをしているみたいな状況にある、現状の経済の情勢をそう批判した人があります。確かに、約二年余りになりますこの総需要抑制政策、そういったことが次第に浸透してまいりまして、だいぶ不況色が強くなってきたということは、さきの金融委員会でもそういう感覚で情勢を報告なさっておられました。確かにいろいろな情勢分析の上から不況色というものが強くなってきておりますが、一面においてはやはり物価も、卸売り物価は先ほどもお答えになりましたように、九月においては〇・一%の微増に終わったとはいうものの、消費者物価のほうはまだまだ騰勢を強めているという気配であります。したがって、総需要抑制をさらに強めるならば、これはよく言われておりますようなオーバーキルの状態に入っていってしまうでしょうし、あるいはゆるめるならば、今度はまた物価に影響が出てくる。まさしくこのことばが至当かどうかわからないけれども、まあ正念場にあるといっても過言ではないだろうと思うのです。  そこで、いまここでどういう対策を具体的に行なっていかなければならないか、いままでとり続けてきた総需要抑制をこのまま堅持するということは、大蔵大臣もあらゆる会合で述べておられますし、基本的にそれは当然のことだろうと私は思います。年末を控えて補正予算も大型に組まなければならない、その他のいろいろな要因を考えてみますと、いままでのパターンのように、V字型に景気が回復するということは考えられない、やはり徐々に回復していかざるを得ないのじゃないか、こういうように思われるわけであります。したがって、そうなりますと、まずいま一番問題になることは、中小企業零細企業におきましても、あるいは国民においても、あらゆる業界においても、いわゆる景気の回復を判断する屈曲点といいますか、尺度、こういったものを、何を基準にどういう見当を持っていけばいいかということが一つの問題点となっているわけであります。  御存じのように、いままでのわれわれの質問に対してのお答えは、いわゆる物価が鎮静するまで、こういうことは当然のことで、これをはずしての論議はございませんけれども、さらに、出てきたひずみに対して、先ほどもお話がありましたように、部分的な手当てはしていかなければならない、それが手直しをするということが適当なことばかどうか知りませんけれども、とにかくそれに対応した手直しをしていかなければ、どっちか片寄った経済運営のあり方になってしまうのではなかろうか、こういうこともいわれておるわけでございまして、そういう景気動向を判断する尺度について、大蔵大臣引き締めを当分堅持するとはいうものの、その尺度はどういうふうに考えていらっしゃるのか、まずその点からひとつお伺いしてみたいと思います。
  156. 大平正芳

    大平国務大臣 申すまでもなく、いまの経済状況、生産は不振でございまするし、出荷も不振であるし、それに引きかえて在庫は空前の増高でございます。それから求人倍率もだんだんと落ちてまいってきておる状況でございますので、非常に典型的な不況現象が出てきておることを私は否定いたさないものでございます。けれども不況が底をついたかというと、そういう断定はできないのじゃないか。先ほども申し上げましたように、非常に活力のある国民でございまして、まだ消費需要、投資需要というようなものは相当根強いものがあるわけでございますので、この状態、もういよいよ底をついたからここで考え直さなければならぬとまでは考えていないわけでございまして、それが第一点でございます。  それから第二点、しかし、仰せのようにいろいろなところにひずみと申しますか、深刻な影響が出てきておりますことも事実でございますので、それに対しましては実情に即して可能な限りの措置は総需要抑制のフレームの中でやっていかなければならぬのではないかと考えております。総需要抑制もむやみやたらにこれを押え込んでいるわけじゃないのでございまして、前年同期に比べて今期はこの程度の融資ワクの増加で押えろ、あるいは公共事業におきましてはそれの契約をこの程度にやっていこうということをきめておるにすぎないわけでございまして、そのワク内におきまして政策当局がいろいろ弾力的な措置を講じ得る余地はあるわけでございますので、できるだけそういう英知を働かしていただいて、そのフレームの中で対応措置をとっていただくということをお願いしたいと存じておるわけでございまして、またこれをやってまいらないと、全体として総需要抑制策について国民から御納得をいただくこともできない相談でございますので、そのあたりは十分私ども配慮してまいりたいと考えております。
  157. 広沢直樹

    ○広沢委員 そこで、今日の状況は、企業の倒産にいたしましても九百件をこえる、約千件台に近づいているような状況が続いておりますし、また年末にかけてもその企業倒産というものは大幅にふえるのではないか、こういう深刻な状況にありますし、あるいは失業問題をとらえてみましても、まだまだそれが社会問題を大きく引き起こすというところまではいっていないにしても、やはりいままでと大きく変わってきている。たとえば六−七月の完全失業率が一・一%であったものが八月には一・四%になり、そして来年の三月、年度末には一・七%、約二%になるんじゃないか。確かに繊維業界においては、東洋紡に見られるように大幅な希望退職を募る、人員整理をしなきゃならぬという状況も出てきておる。こういうような状況から判断していって、やはり今日まで大蔵大臣は、総需要抑制の目標というのを、もちろん物価を基準として物価の安定するまで、これには異論はございませんけれども、いま景気を一応そういう状況の中でもう一度考え直してみなきゃならぬではないかという尺度には、やはり失業率の問題だとかあるいは企業倒産の問題だとか、そういったものを加味して手直しをする考えがあるのかどうか、もう一歩具体的にお答えいただきたいと思うのです。   〔委員長退席松本(十)委員長代理着席
  158. 大平正芳

    大平国務大臣 倒産は九百何件にのぼっておりまするし、また負債金額も相当高い記録を示していることも承知しておりまするし、失業の状態、失業保険金の支払い状況等も御指摘のように注意すべき徴候を示していることは承知しておりますけれども、そういうことから判断いたしましても、いま手直しを考える、転換を考えるというときではないと私は考えております。われわれといたしましては、既定のラインできめこまかくひとつ対応さしていただきたいと思っております。
  159. 広沢直樹

    ○広沢委員 それでは今度は物価の問題でございますけれども、いまこの総需要抑制が長期にわたっているということは、やはり物価の問題が最重点であるということにほかなりません。しかし、この背景を考えてみますと、物価がこういうような狂乱的な状況をかもし出した、あるいはずっと高度経済成長を続けている間、インフレ的な基調で物価が毎年毎年上昇していく、こういった問題もありますが、特にいま必要になってきているのは、やはり秩序ある経済活動ができなければならない。そのためにはどうしても土壌の整備をする必要があるのではないか。いままでのように、それじゃだいぶ景気を回復させなきゃならないということで手直しをしたり、あるいは総需要抑制を手直しするというような状況になったとしても、やはりそのもとになる土壌というか地盤というか、そういう状態が是正されなければ、同じような状態を繰り返さないとも限りません。  ですから、秩序ある経済活動のためには独禁法の改正をしなきゃならないだろうということがいま時の問題になっておるわけでございますが、やはりいま物価でたいへん苦しんでいるわけでありますけれども、そのもとになりますいわゆる独禁法の改正の必要があるかどうかということ、その点についての大臣の所感を承りたいのであります。
  160. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのように、自由な経済の中で経済秩序が保証されてまいることは必要だと考えておるわけでございまして、現行の独占禁止法についていろいろな論議がございまして、公取委員会中心に検討が行なわれておるということも承知いたしておりまするし、国会その他で議論が展開されておることも承知いたしておりますが、まだ政府部内で、各省レベルでこの問題を御相談申し上げていないわけでございます。私ども大蔵省といたしましても無関心でおれないわけでございますので、いまの問題点の整理検討ということは事務当局に私、命じてございますけれども、まだこの委員会で大蔵省の考え方を申し上げるというところまでの用意はできていないことは御承知いただきたいと思います。  ただ、私としては、公取においてだけ検討が行なわれるのではなくて、この問題、仰せのように経済秩序にかかわる基本法でございますので、各省関係する部面が相当多いわけでございますので、政府レベルでいろいろ検討をしていかなければいけない課題でないかと存じておるということだけは申し上げておきたいと思います。
  161. 広沢直樹

    ○広沢委員 まだ非常にあいまいなお考えのようでありますけれども、当然この背景については大臣も十分御存じのはずでありますので、こういう面については経済閣僚の一人者として積極的に取り組むべきであることを強く申し上げておきたいと思います。  次に、中小企業対策の問題についてでありますが、先ほども申し上げましたように、倒産件数がだんだんと高水準になってきている。特に十月−十二月、いわゆる第三・四半期にかけては不況色がより深刻化していくのではなかろうか、こう思われるわけであります。この資金需要が拡大していくことについても、やはり融資ワクの拡大ということを考えてまいらなければならないと思うわけでありますが、大臣は、年末にかけて資金需要が拡大することについてどういうふうに対処なさろうというお考えなのか、基本的にその意向を伺っておきたいと思います。
  162. 大平正芳

    大平国務大臣 政府関係三機関の融資ワクにつきましては、御案内のように、第一・四半期千五百億、それから第二・四半期の九月には千億追加いたしたわけでございます。けれども、年末対策というものも、時期を失せずこれは考えておかなければならぬと存じまして、中小企業庁のほうと打ち合わせに入っておるわけでございます。いまどれだけを考えているかというところまでまだ固まっておりませんので、せっかく急ぎ相談をいたさせておるところでございます。
  163. 広沢直樹

    ○広沢委員 中小企業庁の方がいらっしゃっていると思いますが、まず中小企業庁としては、この十月−十二月、第三・四半期における資金需要、特に政府系三機関の資金需要はどういうふうに推移するとお考えになっているのか、その点の見通しのほどをちょっと伺わせていただきたいと思います。
  164. 若杉和夫

    ○若杉説明員 まだ十月中旬でございます。それで、各機関への申し込み状況その他、率直にいいまして、まだ九月分ぐらいしかわかっていないわけでございまして、何ともばく然たる推定しかできないのですが、方向としては例年になくかなりふえてくるのではないかということは承知しておりますし、過去の数例からある程度のめどはつけておりますけれども、きちっと正確にこれだけということはなかなかむずかしいのでございます。特に中小政府関係機関だけが金融を分担しているわけではないものですから、市中の動向とかその他、いまその推定も含めましていろいろ見当をつけている段階でございます。ただ方向としては、かなり大幅にふえるだろうということは間違いない、こういうふうに思っております。
  165. 広沢直樹

    ○広沢委員 まず第一・四半期におきましては、前年の当初と比べましても約六〇%強の需要があっていることになりますね。先ほど大臣がお答えになりましたように、千五百億増ワクしております。ですから、四十九年の当初計画と比べても約二七%ですか増ワクをいたしておるわけであります。  第二・四半期におきましても、やはり四十八年の当初計画と比べますと、増ワクしたあとの比率は大体二割強の資金需要があっていることになりますね。これは増ワクしたのが九月の中旬以降ですが。ですから、まだ全部使い切ってはいないのかもしれませんけれども、これもまた四十九年の当初に比べてやはり一八%、約二割近くの増ワクをしなければ資金需要におこたえできない、こういう状況になっております。  したがって、大体金融当局によれば年間の資金需要というのはこの第三・四半期が一番ピークである。そして一年間の中では、全体を一〇〇とすると六〇くらいがこの年末に集中してくる。十二月期だったら約三割くらいの需要があるのではないかと試算しているところもございます。そういうような状況を判断しましても、相当増ワクをしていかなければ対応できないと思うわけでありますけれども、すでに不況業種として指定されている業態ももう明らかになってきておりますし、また今後もふえていくのではなかろうかと思いますけれども、そういう面に対して、一方では民間金融機関は窓口規制もゆるめてはおりませんし、当然これは総需要抑制の一環として締めているわけでございますし、それが第一・四半期、第二・四半期にもこうやって政府金融機関に融資の申し込みが集中してくるという結果になっているわけでありますから、当然繁忙期であります第三・四半期においては、より以上の資金需要があるのではないかと思われるわけであります。しかも、その貸し出しも、第二・四半期、七月−九月でいえば、九月の中ほどというときにきまる。ところが、第三・四半期は年末を控えての金融でありますから、通年のように十月下旬にはもう方向をきめて、きちっとそれに対応できるような体制になければならないかと思うわけであります。  ある報道によりますと、政府金融機関の年末融資の追加というのは、すでに増ワクになりました第一、第二の二千五百億ですが、それを財投で追加し、さらに年末融資として、昨年は三千四百億ですか組まれておりますが、それに対してもやはり情勢を考えてワクを増加させなければならないということで、概略考えると七千五百億円くらいになるのではないかという一応はっきりした目安の数字を出して報道されておるわけでありますけれども、その点まだまだ煮詰まっていないあいまいな状態にあるのでありますか。その点ひとつ明確にお答えていただきたいと思います。
  166. 後藤達太

    ○後藤説明員 先ほど大臣からお答えがございましたように、実は中小企業庁とつい先ごろから御相談を始めたところでございまして、数字等はこれから詰めていく段階でございます。新聞紙上等に七千五百億というような数字が出ておるようでございますが、その新聞数字のほうの根拠は私どもよく存じません。  ただ、私ども今後この数字を御相談してまいりますにあたりましては、先ほどお話の出ましたこれからの資金需要動向というようなことを第一に慎重にながめなければならないと存じますが、と同時に、昨年とは違いまして、市中の金融につきましての十−十二の窓口規制につきましては、季節性なども考慮されてワクがきめられておるところでございます。またその中で中小企業向けには特別融資ということで総ワク三千二百億を優先的にそちらに振り向ける、こういう制度もございまして、御案内のように、すでに千億何がしのものは割り当てをした次第でございます。ここらもまた弾力的に使っていくということはございますから、そういう別途手当てをしてあることも頭に置いて、これはすべての市中の分も中小企業に優先的にいくわけでございます。政府機関と同じような条件で貸し出しをするわけでございます。こういうことも頭に入れまして、数字の御相談を詰めてまいりたいと思っております。  また、時期等につきましては、これもまだ確たる見当を申し上げるわけにはまいりませんが、できるだけ早く中小企業庁とは御相談を詰めてまいりたい、こういうふうに存じております。
  167. 広沢直樹

    ○広沢委員 それでは実態に即して資金ショートを起こさないように十分におやりになるということでございますから、きょうは明確なお答えがございませんけれども、少なくとも年末金融で行き詰まったということのないように、十分なる配慮をしていただくように、強く御要望申し上げておきたいと思います。  その次に、住宅ローンの問題について若干お伺いしておきたいと思うのですが、きょうも午前中の論議の中で、大蔵大臣住宅ローンについては民間金融機関を督励してできるだけ力を入れる、こういうお話をなさっておられました。そこで若干具体的にお伺いしておきたいと思うわけでありますが、この問題につきましては、前の大蔵委員会のときにもいわゆる住宅金融公庫の問題についてお伺いを申し上げたわけであります。その節に本年度住宅金融公庫に対する申し込みと、それから当初の予算措置をした計画と大きく狂ってきた。民間の金融機関が非常に締められておる関係で、住宅金融公庫に対して予想外に大きな融資申し込みがあったということで、年間の計画は二、三カ月で全部それを消化するというかっこうなんです。まだはみ出して約七万戸に対しても足らないというような状況であったように伺いましたけれども、それに対しては十分な資金配慮をしてそれにこたえるというお答えでありました。その点が具体的にどういうふうになっているのか、まずそれからお伺いしておきたいと思います。
  168. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 実は住宅金融公庫の当初の計画十五万戸につきまして、七月二十日締め切ったわけでございますが、七万戸オーバーしたわけでございます。それにつきましては昨日資金運用審議会の議を経まして、財投追加一千七百八十六億円を行なったわけでございます。この結果、その財投の貸し付け規模でございますが、対前年五八%と非常に大きな伸びになっておるわけであります。また、この七万戸に対する融資が実行されますと、総額におきまして数千億円という追加需要が出ることになりまして、住宅建設業界等につきましても相当新しい需要が発生するじゃなかろうかと考えております。  なお、お尋ねの建設省筋等の要望もあります八万戸のさらに追加でございますが、私どもこの七万戸の追加をもちまして、さらにそれに加えまして八万戸というようなことをすることは、若干全体の総需要に対する刺激からいきましても問題があるのじゃなかろうか、こう考えておりまして、過日大蔵大臣と建設大臣がお会いしたわけでございますが、大蔵省といたしましてはこの七万戸の追加をもちまして打ち切る、こういう方針をお伝えしておるわけでございます。
  169. 広沢直樹

    ○広沢委員 それでは、建設省の住宅局からお越しいただいておりますので、一応住宅五カ年計画を御説明いただきながら、その中でいまお話がありました八万戸別ワクの追加の要求をされた根拠について説明していただきたいと思います。
  170. 京須実

    京須説明員 第二期住宅建設五カ年計画と申しますのは、昭和四十六年から五十年度までに合計九百五十七万六千戸、そのうち公的資金による住宅は三百八十三万八千戸を予定いたしております。しかしながら、最近におきまして大都市及びその周辺におきますいわゆる団地お断わりと申しますか、そういう現象が出てまいりまして、遺憾ながら公的機関が直接に建設いたします公営住宅あるいは公団住宅等の建設は非常におくれてまいりまして、すでに昭和五十年度につきましても、各事業主体の施工能力等を十分勘案しましてできるだけの戸数を要求いたしましたが、やはり公営、公団等につきましては、五十年度まで要求したもの全部をお認め願いましても、公営住宅が進捗率で約八三%、公団住宅は七二%といったような非常な落ち込みを示しております。その中にありまして、住宅金融公庫の融資につきましては非常な伸びでございまして、昭和四十九年度時点におきましてすでに八八%を達成するわけでございます。  なお、先ほどお話がありましたように、この四十九年度でございますが、五月の二十七日に受付を開始いたしました個人住宅につきましては、予想を上回る申し込みが殺到いたしました。その結果、七月二十日をもって締め切りましたが、その際でもすでに七万戸オーバー、ただいまお話があったような次第でございます。  そのために私どもとしましては、公営住宅あるいは公団住宅のかわりに公庫と申すわけではございませんが、国民の要望が非常に強い公庫融資につきまして、やはり来年度さらに大幅な要求をお願いしております。本年度内におきましても、七月二十日までに受け付けました七万戸につきましての資金繰りについてお願いをしました。これはお話のように昨日いただきまして非常に感謝しておりますが、さらにやはりまだまだ国民の住宅に対する要望はきわめて強いという状況でございますので、私どもとしましては民間住宅ローンの増加、これも大蔵省にお願いしておりますが、それと並行いたしまして住宅金融公庫につきまして八万戸の追加財投をお願いいたしまして、公庫の個人住宅の受付を再開しようと考えております。  この八万戸の根拠でございますが、もちろん総需要抑制下におきまして物価抑制ということが至上命令であることはわれわれも十分承知しております。そのために、特に公庫融資の八万戸の追加をお願いして実現した場合に物価の騰貴を絶対起こさないように、いろいろ各関係資材等の在庫量を勘案いたしまして、その際最もネックになりますたとえば製材でございますが、六月時点ですでに公庫融資八万戸を再開しましても十二分にまかなえるといったような資料がございました。そういった点から、お願いできる範囲では物価抑制心配ない範囲で八万戸ということをひとつ考えております。  その他まだ八万戸とした理由はいろいろございますが、たとえば、あまり少ない数でございますと、一度受付を再開しましてもたちまち締め切りになるといったようなことは、かえって国民に対して非常な不満を巻き起こすおそれもあろうかと考えました。  その他、公庫の個人住宅につきましてはただいま十五万戸というお話でございましたが、マンション購入等を入れますと約十六万戸でございます。御承知のように弾力条項と申しますのは、五〇%まで一応お認め願える。半数でございますので、その十六万戸の半数の八万戸といったような数字が非常によい線ではないか、このように考えました。  なお、この八万戸でございますが、総需要抑制の中での手直しをするというお願いではなくて、御承知と思いますが、今年度の四月、五月、六月の民間、公的、すべての着工戸数を見てみますと約十万戸ございます。これは昨年度までが十五万戸から十七万戸くらい。いわば前年度の六割程度にダウンいたしまして、これはいささかオーバーキルではないかと考えております。そのために、総需要抑制の中での微調整としてお願いできないか、こう思った次第でございます。
  171. 広沢直樹

    ○広沢委員 いま大蔵省の意見と建設省の意見とはいみじくも大きく違ってしまいました。いま住宅五カ年計画の上から考えていきましても、来年度は五カ年の完成の時期なんですが、公営住宅としても約八二、三%というような状況にあるし、やはり国民の住宅建設に対する期待は、特に福祉ということを強く主張している今日においては根強くあるわけでございます。しかるがゆえに、住宅五カ年計画を立ててそれを推し進めてきているわけですね。しかし、この公的住宅とそれから民間自力住宅との比率を考えてみましても、これは民間自力住宅のほうが非常にウエートが高い計画になっている。それをミックスしての先ほどの発表のとおりの計画でありますから、少なくとも公的住宅については政府が国民に約束したことが充足できるような形に持っていくということは、これは当然のことであろうと思うのです。  特に、いまお話がありましたように、この四十九年度の建築着工統計による新設の住宅戸数は、対前年度同月の伸び率から考えていきますと、民間資金によるものは半分にダウンしているわけですね。それから公的なものが、これはこの七月までしか統計が出ておりませんけれども、七月までで大幅に倍に上がっております。  先ほど大臣は、民間金融機関も督励してできるだけ力を入れて期待に沿いたいというような御答弁をなさっていらっしゃいました。確かに実態は、先日も金融委員会でもお話がありましたけれども、都市銀行においては四半期の増加額は一千億円を割り込まないように、あるいはまた、住宅ローンの増加額が総貸し出し増加額に占める割合が一〇%以下になってはいけない、こういうような行政指導をしてこれには対応していると言うのですが、まあ資金的には、十分といわないまでも、ある程度減らないように努力はしているとはいいながら、実際に毎月毎月の建設戸数から見ますと、民間ではこのように半分にダウンしている。それがやはりいま公的なほうに集中してきた。その端的な例が、わずか二カ月か三カ月で一年間の計画を大きくオーバーする申し込みになった、こういう結果になっているわけでございますし、また、いま建設省から具体的なお話がありましたとおり、やはりこれをもっと大きな意味合いのほうから考えていくべきではないだろうか、このように思うわけでありますが、大蔵大臣、いかがでございましょうか。
  172. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せになることは一々ごもっともなんですけれども、この総需要抑制策というのは、たとえば財政で申しますと、すでに国会の御承認を得てわれわれに歳出権が与えられておるものも、しかし繰り延べていく、あるいは契約を押えていくということをやっているわけなんでございます。そういうことをやらないということがまず第一の非常に優遇策なんでございますが、住宅金融公庫の場合におきましては、十五万戸については抑制措置を講じないばかりか、千七百余億の金を新たに追加いたしまして七万戸の消化をはかろうというわけなんで、前年度に比較いたしまして五八%もの増加になるということは、これは破格のことなんでございます。それでもまだ足らぬなんと言うのは住宅政策エゴイズムというもので、住宅政策ばかりのために国があるわけじゃありませんから、このあたりが私はもう精一ぱいのところだと思うのでございます。  しかしながら、建設省の言われることもわかりますし、広沢さんの御主張もわかるわけでございますので、いろいろな手を考えようじゃないかということで、金融機関にはあらゆる機会を通じまして住宅ローンをわれわれが勧奨いたしておるわけでございます。御承知のようにたいして有利な投資ではありませんけれども、幸いによくめんどうを見てくれて、融資残高でのシェアから見ましても、それから四半期ごとの融資の増加高の中のシェアから見ましても非常に分厚く出ておることは、金融機関もたいへんよく協力してくれていることを示すものと思うのでございます。そのあたりでまずことしのところはかんべんしてもらいたいものと思っておりまして、しかし亀岡建設大臣からも、やはり夢を持たなければいかぬ、どうしてもこのあたりもう一歩、八万戸全部でなくてもいいからどこか風穴をあけてくれないかという切なる要請を受けております。これはまたあげて来年の予算で相談しようじゃないかということを申し上げておるところでございまして、御理解をいただきたいと思います。
  173. 広沢直樹

    ○広沢委員 総需要抑制のしり抜けになるのではないかというようないろいろな心配をなさっているのかもしれませんけれども、ただもう一点申し上げておきたいのは、先ほど七万戸追加いたしました、破格なことをやりました、こうおっしゃったのですが、七万戸が全部申し込みのとおりいくとは限らないと思うのですね。申し込みを受け付けた、それを処理するわけでありますから、その際に結局、実際に通るものと通らないものと審査していく中には出てくると思うのですが、そういった面について、七万戸の追加をきめた以上は、七万戸分は現在申し込みを受けつけている分を処理するという意味じゃなくて、七万戸の増加を認めたということになるのでありますか、それを具体的にちょっと御説明いただけますか。
  174. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 追加要求を処理しましたときには、先生御指摘の辞退率を見込んで計算してございます。したがいまして、当初の十五万戸及び追加の七万戸、総体二十二万戸のうちの一割くらいは辞退が出てくるのじゃないか、こう考えております。
  175. 広沢直樹

    ○広沢委員 ですから、それは予算措置としては七万戸ということでありますから、そうすれば一割程度のものは新たに充足して申し込みを受け入れるという意味になるのですか、いかがでしょう。
  176. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 二十二万戸の受付でございますが、実勢では二十万六千戸くらいになろうか。そういう二十万六千戸の実勢に合わせまして財投の総規模を編成しておりますので、いまのところ、現在追加いたしました千七百八十六億で二十万六千戸を建設するということを予定しております。
  177. 広沢直樹

    ○広沢委員 なお、この問題につきましては、いまのいろいろな行き違いの話がありますので、別の機会にもう一ぺん具体的にいろいろお話し申し上げたいと思います。  時間がありませんので、簡単に次の問題をお伺いしておきたいのでありますが、五十年度の予算の問題につきまして、まず予算の性格、これは四十九年度予算がいわゆる景気抑制型予算ということで組まれたわけでありますけれども、新年度予算、五十年度予算はどういう性格の予算になるか。  これは二通りのパターンがあるのではないかと私は思うのですが、一つは総需要抑制していく、いわゆるインフレ抑制型予算とでもいいますか。それともう一つは、やはり福祉ということをある程度加味した予算編成のあり方、総需要抑制予算の中でもそういうことを加味していかなければならない、こういうことになろうかと思うわけでありますけれども、まず大蔵大臣から、予算の性格というか新年度予算をおつくりになるときの心がまえといいますか、そういった点をちょっとお聞かせいただきたいと思うのです。
  178. 大平正芳

    大平国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたように、まだ歳入歳出とも見当がつきかねておるときでございまして、明年度の予算につきましてものを申し上げる段階ではないと思うのでありますが、基本的な性格としてどういうものをつくりたいのかというお尋ねでございます。  これは申すまでもなく、総需要抑制下におきまして抑制型の予算にいたしたいと思っておりますけれども、本来ならば規模をうんとしぼらなければならないわけでございますが、人件費の増高の実態を背負っておりますし、二五%もの増加が当然増だけで見込まれるというような予算になりそうでございます。だから、抑制型と言いたいところでございますけれども、相当ずうたいが大きい予算になりそうでございます。その中でも、公債依存率がどこまで下げられるかというような問題は、確かに来年の予算の性格をごらんいただく場合に、どこまでそれが貫けたかということが問題であろうと思いまして、その点はわれわれもできるだけ努力を傾注してみたいと考えておるわけでございます。一口に言うと、相当ずうたいは大きいけれども極力抑制型のものにしなければ相済まぬのではないかと考えておるということだけを御承知願いたいと思います。
  179. 広沢直樹

    ○広沢委員 そこで、いま言われた予算の性格から考えましても、予算の規模は四十九年度の場合概算要求で前年の当初比で二二・八%、それが最終的には二〇%を割って一九・七%、こういうことになったのでいわゆる景気抑制型の予算を組んだ、こういうふうに言われておったわけでありますが、いまもお話しのように、当然増経費が今度は大きく上がってくるので、五十年度はどうしても二〇%以上の予算を組まなければならない。それと年末には、先ほどもお話がありましたように、補正予算はいままでにない大型のものを組まなければならない。当初予算に比べて補正予算の比率というものは、いままでにない一番大きな補正予算になるのではないかと思われるのですが、そういった面と新年度予算の面とを考え合わせますと、いま財政的にも金融的にも総需要抑制を続けていかなければならないとはいいながら、財政的にしり抜けになっていくのではなかろうかという面の心配があるのですが、具体的にはこれに対してどういうように対応なさろうとしていらっしゃるのでしょうか。
  180. 大平正芳

    大平国務大臣 世上よく、財政を締めて金融をゆるめていいじゃないかとか、財政がやむを得ないとすれば金融は相当締めなければならぬじゃないかとか、全体として総需要を規制して締まった経済をやっていく上におきましては、どちらが主役を演ずるかというような議論はありますけれども、正直に申しまして、いま日本はそんな選択の余裕はないわけでございまして、財政も金融も両方とも相当引き締め態度でいかないとやっていけないのじゃないか。仰せのように、補正予算、本予算を通じまして相当な規模のものになりそうでございますので、それに対しまして、金融のほうにおきましても十分対応したかまえをとっていただかなければならぬのじゃないか、さように私は考えております。
  181. 広沢直樹

    ○広沢委員 これまでの高度経済成長の過程にありましては、名目所得はふえてまいりますし、財源的にいっても年々の自然増収も大きかったわけであります。ですから、どちらかといえば予算はずんずん膨脹ぎみになってきたわけでありますが、いまのような状況の中では、当然増経費がまたいままでになく大きな問題になってきたというようなことでありますので、これからはやはり安定経済成長に向けていくということになりますと、ここに大きな屈曲点があるのではないかと私には思われるわけであります。  そういう意味から考えますと、確かに四十九年度予算よりも、総需要抑制を続けている今日においてはインフレ抑制型予算とでもいわなければならないぐらい緊縮予算を組んでいかなければならない。しかし、それは、ならないということを思っているだけでありまして、実体はいま言うように、四十九年当初と対比しても大きくならざるを得ないというようなジレンマが起こっているわけであります。このことは今後もまた財政の上においてはどんどん出てくる問題ではないかと思うのですよ。そこで、やはりこれに対応していくためには、長期的な財政計画を立てて、その中において当然増経費あるいは既定経費というものを洗い直していく。そのためにはどうしても長期的な計画で、硬直化していく財政の洗い直しということをやらなければならないと思うわけです。いままでの経済がふくらんでいく、高度成長している中で単年度だけで考えていくならば、先ほど言ったように、自然増でどんどんふえていく、名目所得もふえていくから、財政もどんどん豊かになってくるという面もありました。ですから、苦しい苦しいとは言いながら新規事業を少しでも上のせできたのかもしれませんが、現在はいま言うような状況であります。  そこで、特に私は問題として申し上げておかなければならないのは、やっと福祉予算あるいは福祉への第一歩だということで社会保障をはじめとする福祉関係に相当ウエートを置いた予算を、四十九年度において伸び率の関係においては組んでいるわけですね。それがいま言うようなことでありますと、これはある新聞の報道ですから大臣がそのとおり思っているかどうか知りませんけれども、公共事業も伸び率は押えなければならぬ、あるいは福祉関係へのしわ寄せも今回はやむを得ないのだ。しかし、そういういままでのしりぬぐいがやっと第一歩を踏み出した福祉へも影響して、それがクッションになってしまうというようなやり方は、私は問題があろうかと思うのです。特にインフレ下における弱者救済という立場から考えてみましても、社会保障をはじめとする福祉の予算というものは他に比べても大幅に組んでいかなければならない、その基調はくずしてはならない、こう思うわけでありますので、その所感を伺って、時間がありませんので終わりにしたいと思います。
  182. 大平正芳

    大平国務大臣 福祉予算をどのように配意するかということでございますが、すでに概算要求の場合に、二五%の天井をはずして要求して差しつかえございませんと、福祉予算に関する限りはそういう措置をとっておるわけでございまして、私どもとしては、最重点は何としても仰せのような福祉関係の予算の充実に置かなければならぬのではないかと考えております。しかし同時に、インフレ抑制、福祉の充実という二兎を追わなければならないわけでございまして、それがどこまで実行できますか、われわれも全力投球をしてまいりたいと思いますけれども国会におかれましても御協力を賜わりたいものと思います。
  183. 松本十郎

    松本(十)委員長代理 竹本孫一君。
  184. 竹本孫一

    ○竹本委員 本年度のノーベル経済学賞をもらったスウェーデンのミュルダール博士、彼は私どもとは基本的にも共通する面を持っておる学者であり、私も尊敬いたしておりますけれども、そのミュルダール博士が最近の世界経済の現状を歎き、あるいは心配をしながら、政治家たちの認識というのはあまりにも現状認識が甘い、彼らは大体において一時しのぎのお化粧でごまかしておるというような批判をしております。大体これも当たっておると私は思うのですけれども、そのミュルダール博士が、最近、八日の日でございますかに行なわれましたアメリカの大統領フォード氏の新しい経済政策についても批評をしております。フォード大統領は御承知のように、就任以来各方面の意見を非常に精力的に聞いて結論を出したようでありまして、さすがにそれだけの努力がある程度効を奏しておるようにも見受けられまして、この間の経済演説というのは一応傾聴に値すると私は思っております。  時間がありませんので、私のほうからいろいろまとめて申し上げて、あとで一括して大臣から御答弁を願いたいと思うのですけれども、ミュルダール博士の批評によれば、フォードさんの今度の経済政策もやはりお化粧だということになるようでございますが、私はこの点についてはミュルダール博士と少し見るところを異にいたしております。というのは、経済学者という立場ではなくて、現実の政治家として、アメリカの国内あるいは世界経済に対する大きな影響を考えながら、いま政局を担当し、新しい経済政策方向をきめるということについてまじめに考えてみますと、フォードが議会に述べておるところは、もちろんわれわれの立場からいえば若干もの足らないところもありましょう。たとえば、彼は共和党のやはり伝統の上に立っておる、そしてまたアメリカ資本主義の擁護の立場に立っておるということでございますから、必然的にわれわれとして不満な点もありますけれども、しかしながら、現実の政治ということを考えた場合に、いまあれ以上に何ができるかということを考えてみると、私は、彼の今度の演説に述べられておる経済政策というものはある程度評価をしなければならぬだろう、こういうふうに見ておるのです。大臣は全体としてこのフォードの新しい経済政策をいかに評価されるかということが第一の質問であります。  あとでまとめて答えてもらえばけっこうなんですが、そのフォードさんの今度の経済政策の中身をいろいろ吟味してみますと、いま日本でも来年度の予算の問題、あるいは現段階における経済の、財政金融のかじとりの問題等とからめて、総需要抑制を続けるか、転換するか、修正するか、先ほど来も非常に熱心に御議論が行なわれたわけでございますけれども、フォードさんはいわゆる二正面作戦というのをとっておると思うのですね。すなわち、デフレに対して、またインフレに対して、それぞれの対応のしかたが別個でございますから、別個のものを二正面作戦として取り上げておる。  簡単に申し上げますと、たとえばインフレを押えつけていこうという面につきましては、思い切ってといいますか、五%のサーチャージ、増税も考えておる。日本では、増税という問題はなかなか取り上げられないし、だれもかれでも一つ覚えに減税を言うのでございますけれども、やはりこの際、インフレを押えるためには増税のきびしい試練も受けなければならぬだろうと思うのです。そしてまた五%がいいか、あるいは一万五千ドルというところまで税をかけていくということになりましたので、これは少し大衆課税になり過ぎはしないかという批判が民主党からもあがっておるようでございますが、それにしましても、第一に思い切って増税に取り組んでおるというところが一つの大きな問題である。  次には石油の規制の問題でございますけれども、彼はいまアメリカが一日に千六百五十万バーレル、輸入だけで六百五十万バーレルというものを消費しているようでございますけれども、その輸入の一五%、消費の五%の百万バーレルをひとつ節約しよう、制限していこうということを言っておる。さらに独禁法の罰則を思い切って強化しておるといったようなことから、もちろん予算も三千五十億ドルを三千億ドル以下に押えようということで、五十数億ドルの予算の節減も考えておる。すなわち、インフレ対策としてもある程度財政、金融その他の面からこれを熱心に押え込む努力をしておる。  これがインフレ対策ですが、しかし同時に、一方ではデフレ対策といいますか、不況対策といいますか、そういう面については、たとえば住宅建設十万戸のために三十億ドルの金を出そう、あるいは中低所得層に対しては十六億ドルの減税もやろう、さらに金融引き締めはブルーデントリー、慎重にやろうということを言って、特にFRB議長の通貨、信用の供給を十分に拡大するという点もうたっておる。さらに投資税控除の問題も、今回はあるものは四%から一〇%、あるものは七%から一〇%へと思い切って拡大をして投資活動を刺激しようという態度に出ておる。さらにアメリカは御承知のように失業者が五百三十一万もおってたいへんな問題でございますが、その失業率はいま五・八%である、これが六%をこえるような場合には緊急に公共事業に対する支出をあらためてやって、とりあえず十七万ぐらいの人の救済をやろうというように緊急支出を考えておる。  これが当面のデフレ対策のおもな点でございますが、要するにこれは二正面作戦で、一方では切るべきものをどんどん切る。インフレを押え込むために増税もやる。しかし一方では、行き過ぎた政策のために不況を招き寄せ、五百三十一万の失業者が六%、あるいは六百万にもなってはたいへんだというので、その場合には、減税はもちろん、あるいは投資活動も大いに促進をする。特に緊急の社会公共事業への支出も考える。こういうことを今度の経済政策の中でうたっておる。そういう意味において、私がフォードを評価するのは、すなわちプラスの面とマイナスの面、インフレに対する面とデフレに対する面とを同時二正面作戦ということを展開しておる。これは日本のような一本調子な行き方といっては言い過ぎかもしれませんけれども、この日本のあり方に対して非常に参考になるのではないかという意味で、大臣の評価を聞きたいということが第一点であります。  そこで、私は、これを大体日本に持ってきて考えた場合に、日本においてもインフレがものすごく進んでおりまして、御承知のように最近物価が低落あるいはあまり急上昇しなくなった。先ほど来御議論のありましたように、一五%に押えるかどうかという問題が具体的な日程にのぼってきておる段階でございますが、しかし、それにもかかわらずなお根強いインフレマインドがありますから、これを押えるために三つほどお伺いをしたいのです。  第一は、会社臨時特別税というのはやめていこうというような考えがちらほら見える。しかしながら、これは御承知のように、もうけのないところにかけるのではなくて、利益があるときにその利益にかける臨時の税である。本来ならば、われわれの考え方から申しますと、法人税そのものに、これ以上の利益をあげた場合には一定の高い税率がかかるのだということさえ構想すべきではないかという考え方を持っておるわけですけれども、そういう法人税なら法人税の体系をさらに再検討して、その上でもう必要がなくなったということで会社臨時特別税をやめるのならばそれは一理ありますけれども、そういう準備もないままにとにかくやめてしまおうかというような声が聞えてくるわけでございますが、会社臨時特別税は無条件的にやめる御意思であるのか、あるいは続ける御意思であるのか、あるいは法人税を改めることによってこれをやめるような段階に取り組もうとするのであるか、これが第一点であります。  それから、第二点は石油の問題でございますが、私どもは石油の問題につきましてはほとんど全部を輸入しておる日本でありますから、よほど慎重にこの問題に取り組まなければならぬと思い、石油需給適正化法とか国民生活安定緊急措置法とかいう法律も御承知のように去年できまして、去年の十二月二十二日には石油緊急事態宣言まで行なったのだけれども、去る八月三十一日でございますか、この緊急事態宣言を解除した。そのかわりに、何をやっているか私に全然わからないが、形だけは「資源とエネルギーを大切にする運動本部」というものを内閣につくったそうである。しかしながら、石油問題というものはそんなに簡単な、あるかないかわからないような運動本部をつくれば非常事態宣言を取り消してよろしいというような簡単な問題ではないと思うのですね。  現にいま申しましたミュルダール博士のごときは、資源の天井に悩む日本に同情するということも言っているし、その彼は特に日本のために、日本状況はきびしくて日本は石油の輸入を制限する措置をとるべきであるということも言っておりますが、日本政府が石油の非常事態宣言をやめたのはいかなる理由であるか。非常事態というのは石油の供給が三億キロリットル、去年の二億八千六百万キロリットルというものが確保できるようにという物理的な非常事態だけが宣言をされたのであるか。その後の実態を見てみますと、現実に石油というものはやはりたいへんな問題になっておる。確かに物理的な数量は十分に入っておりますけれども、その代金の支払いは一体どうなっておるかということが大問題であるはずだ。大蔵大臣としては特に考えなければならぬと思います。  念のために申し上げますが、去年の一月から九月までと比較してことしの一月から九月までに石油の代金の支払いは百億ドル近くふえておると思うが、そうであるかどうか。その百億ドルの代金は支払わなければならぬ。その支払いのための金繰りは外為銀行が一応つじつまを合わしておるであろうけれども、そのために外為の負債はやはり百億ドル近くふえておるはずだ。それは何億ドルふえておるか、具体的数字で伺いたい。  次に、この石油の代金というものは、いままでは輸入の大体二割にならなかった。そうでしょう。二割以下のパーセンテージであったと思うけれども、一昨年が四十億ドル、去年は八十億ドル前後ですが、かりにことしはそれが二百億ドルにもなるとするとたいへんな増加であって、日本の輸入が五百億ドルあるとしても、輸入の四〇%ということになる。一体、輸入金額のうちの四割を単に石油に振り向けてよいものかどうかということは、単なる資金繰りの問題ではない。単なる物理的な数量の問題ではなくして、日本経済運営の根本に関する重大問題であろうと思うのです。何とか払っていけるからいいじゃないか、輸入が少し減りそうだ、輸出は少しふえそうだということも単なる資金繰りの問題であって、これだけの石油代金の支払いがふえるということは、そのまま国民の負担がふえるということである。ある場合には代金の支払いの面において、ある場合には必要なものを輸出しなければならぬという面において、ある場合には輸入がそれだけ制限されるという面において、福祉国家建設には重大なる障害を来たすと思うのだけれども、一体、大臣は石油の代金というものは輸入の何割までは振り当ててよろしいというお考えであるか、それをお聞きいたしたい。  そういうことから考えると、資源国のアメリカでさえも石油の輸入を、先ほど申しましたように輸入の一五%は制限しようという努力をしておる。そしてフォードは、ドライブレス、ドライブをやるのも少し少なくしてくれ、あるいはスピードも落とせ、あるいはヒートレス、暖房も少し遠慮しなさい、ウエーストレス、むだは一切省くようにしてもらいたいという演説をしておるが、本来ならば、石油の輸入ショックを受けたときにわれわれは、もう少し資源を大切にする、もう少し物を大切にするという方向日本経済のあり方、日本の国民生活のあり方というものについて根本的な反省をし、再出発をすべきであったと思うのだけれども政府のように、三億キロリットルぐらい入りそうだ、入るかもしれぬ、もう非常事態宣言は取りやめだ。これでは一体何のために非常事態宣言をしたのか。  このむずかしい、きびしい経済段階にどういう決意で取り組んでおるのか。何も決意がないじゃないか。もう少し真剣に国民にいわゆる総反省を促して、われわれの一ドルといえども貴重なドルであるから、もっと有効に使うことを考えるべきであるけれども、いまだにその辺に行けば、石油をちゃんと夕方にはたいて商売の宣伝に使っているところもある。銀座のネオンもついた。こういうような押えるべきものを押えないでおいて、あとで申しますけれども、総需要抑制一本やりでいこうということはおかしい。総需要というのは全体の需要なんですから、A、B、C、D、いろいろあるファクターのどれを押えてもいい。国民の新しい経済秩序をつくるために最も必要な部分はふやす、そうでないものは切るという形でいかなければならぬと思うけれども、その点について、石油を押えるという押え方があまりにも足らない。だらしがない。あるいは自由経済の美名のもとに財界の言うままに振り回されておるとさえも思われるようなあり方であるが、その点はどうか。  第三点は、大臣にお伺いするんだけれども、この総需要抑制の場合において、政府、官庁の経費、需要を押えることが閣議において何回熱心に取り上げられたかということが一つであります。御承知のように、佐藤喜一郎さんであったか、もう十年ぐらい前に臨時行政調査会をつくって、行政費にはむだが多い、この行政機構の改革から始まって行政費の支出は一割なら一割は切れるはずだ、これは真剣に取り組まなければ、今日の官界の粛正はできないという前向きの案が出ました。一体それはその後どうなっておるかということを、事務当局から数字をあげて、人の面あるいは金額の面でどれだけの成果をあげたかを聞きたいのである。  しかしながら、大臣には、この総需要抑制という場合に、政府みずから先頭に立ち、官僚みずからが先頭に立って総需要抑制のためにどれだけの努力をなすべきであるということが閣議で何回真剣に論議されたか、これを伺いたい。  以上であります。
  185. 大平正芳

    大平国務大臣 フォード新政権が先般発表いたしました新経済政策評価でございます。私といたしましては、フォード政権がこの政策を発表され、エバリー特使を日本に派遣して詳しく説明をいただいたことを多といたしております。その中でも、とりわけ落花生とか綿花とか米とかの作付制限を撤廃する、友好国に食糧の供給を行なうというようなことは、食糧供給国の責任を踏まえてとられた措置で高く評価しなければならぬと思っております。  それからエネルギー庁、ナショナル・エナジー・ボードを新設して、百万バーレルを目標に輸入を節減するとか、その他一連のきびしい石油政策を示されたこと、世界で最大の消費国であり最大の輸入国であるアメリカがそういう自覚に立って石油その他エネルギー問題に対処しようという姿勢は、それだけに評価しなければならぬと思っております。  さらに、新通商法案の早期成立を期するつもりであるということは、世界経済縮小均衡の方向でなく自由な拡大の方向に持っていくための一つのネックの除去であるわけでございまして、その早期成立の決意を表明されたことは多とするものであります。  それから、いま御指摘のように、内政といたしまして、一方にインフレに対処しながら、一方に不況に対処し、二正面作戦を巧みにやっておる、日本の場合は何か一本調子じゃないかという御批判でございますけれども日本政府も一本調子でやっているわけでなくて、二正面に対処をして、日本の国情に応じたやり方をやっておるわけでございますが、アメリカにおきましてもそういった点について新たな措置がとられるようになったこと、これはアメリカという、世界経済に大きなシェアを持っておる国でございますし、責任を持っておる国がまずインフレ対策に成功し、そしてまた不況からの脱却という点に成功いたしますことは、世界の大きな希望をつなぐものでございますので、その成功を祈りたいと思うのであります。  それから第二の点でございますが、会社臨時特別税、それから石油の非常事態宣言をやめたこと、それから石油価格の上高に伴う国際収支との関連、そういった点につきましては各局長から答弁させます。  ただ、最後に述べられた、石油につきまして閣議等で、まず政府が経費を節約するなり何なり、引き締まった討議は行なわれたかどうかというようなことについて私に対する御質問がございました。仰せのとおり、政府が国民にいろいろ資源の節約を求め、インフレの克服について協力を求めてまいるという場合におきましては、政府が率先してやらなければならぬことは当然でございまして、ことしの予算も、御案内のように編成いたします場合に、各種庁費その他につきまして八%の節約をすでにお願いをいたしてあるわけでございます。すでに相当締まった体制になっておるわけでございますけれども、今度の人事院の勧告を受けるにあたりまして、そういった点も考慮いたしまして、またさらに近く最近の閣議で新たな節約をお願いするというようにしなければならぬと考えておるわけでございまして、政府が率先して資源の節約、経費の節約ということに改めてまいるということは、仰せのとおり精力的にやってまいらなければいかぬものと私は考えております。
  186. 中橋敬次郎

    中橋説明員 竹本委員からの御指摘の会社臨時特別税の件でございますけれども、これは本委員会におきましても、今朝私から所得税の来年度税制改正の問題について申し上げたと同じような気持ちを持っております。と申しますのは、来年度税制改正におきましては、一方からは物価上昇に対応しての調整という観点もございますけれども、また一方からいえば、物価上昇抑制するという必要を重視しなければならないという二面性があるわけでございます。所得税についてもそういう態度を持たなければなりませんし、御指摘の会社臨時特別税についてもその観点を忘れてならないと思っております。  この会社臨時特別税が創設されましたときの経緯は、いろいろございましたけれども、その目的とするところは、その法文に明らかなように、最近における物価の高騰その他のわが国経済の異常な事態のもとにおいて、二年間臨時の措置として行なうということが規定をせられております。したがいまして、先ほど申しましたように、物価の高騰を抑制するという観点、そのときにおいて二年間という臨時の問題として考えられたということを、まず第一にこの税をいろいろ考えます場合には念頭に置かなければならないと思っております。  もっとも、先ほど竹本委員が御指摘になりましたように、いわば二正面作戦とでも申しますか、今後のわが国の経済の見通しというものを、やはり来年度税制改正の時点まではできるだけ慎重に見きわめていかなければならないと思っております。この税を存続することが一体わが国の経済の将来にどのようなデメリットをもたらすか、あるいはこの法文において示されましたように、異常な事態が消滅したというふうに見られるかどうか、そういう観点もその際には忘れてならないと思いますけれども、いずれにいたしましても、今後、税制改正の時点まで、あらゆる観点からこの問題を税制調査会にも御議論をしていただきますし、できるだけ慎重にその動向検討いたしたいと思っております。
  187. 大倉真隆

    ○大倉説明員 お尋ねの石油輸入量及びこれの輸入金額でございますが、四十八年、昨年の一月から九月までで三十九億九千六百万ドル、本年の一月から九月までで百三十七億六千二百万ドルでございますので、御指摘のとおり、約百億ドルの増加でございます。また年度年度で比べますと、四−九月で約七十億ドルの増加ということに相なります。  このファイナンスの方式は、竹本委員よく御承知のとおりの問題でございますが、とりあえずの形といたしまして、為替銀行が輸入ユーザンスを与えるという形でファイナンスされるのが現状では通例でございます。ユーザンスをして、そのあといずれはドル資金を調達しなければならぬではないか、それもまた御指摘のとおりでございます。  お話しの約八十億ドルぐらい債務がふえているはずではないかという点は、おそらく為替銀行の対外短期資産負債の残高を御検討になっての御指摘かと思います。その数字を見ますと、八月末までしかまだございませんが、八月末で負債超が百二十一億ドルでございまして、これが昨年十二月末は三十四億ドルでございましたから、御指摘のように約八十六億ドルの負債超の増という形になっております。  なお、年度で申し上げますと、三月末から八月末まででは約四十三億ドルの負債超過額の増加ということに相なっております。もっとも、これはよく御承知の竹本委員を前にして、若干釈迦に説法でございますが、輸入量、輸入金額とその期間の為銀負債の増減とは必ずしも直接には結びつかない。その間にいろいろな金取引もございまするし、他の国際収支項目もございますので、直には結びつかないというものでございますが、大勢を知る上にどういう数字になっておるかという点では、御指摘のとおりであろうかと思います。  それで四−九月の石油輸入額が、先ほど私の申し上げましたような数字に相なります。ということは、四十九年度の前半で石油の輸入金額が九十九億ドルでございまして、四十九年度の前半期の輸入額はIMFベースで二百七十四億ドルでございますので、おっしゃいますように、四割とまではまいりませんが、四割を若干下回るというぐらいの大きさになるわけでございます。  いつまでもそんな大きなウエートで石油に輸入の金額を使ってしまうというのは困るではないかという点は、やや長い目で見まして、まさしく御指摘のような問題がどうしても残ると思います。それは結局、日本経済をささえるために何億キロが必要であるかとか、それを削減するためにどういう手段があるかという問題になろうかと思いますが、その点は、石油問題の別の御質問とあわせまして、担当審議官のほうからお答えをさせていただきたいと思います。
  188. 結城茂

    ○結城説明員 緊急事態宣言をやめた理由でございますが、御承知のとおり緊急事態宣言は、石油需給適正化法に基づきまして、大幅に石油の供給不足が見込まれるという事態に対処する緊急的な措置として宣言されたものでございまして、石油危機後の状況を見ますと、石油の需給につきましては、第一点は、国際的に石油の需給が相対的に緩和されて、短期的にはむしろ供給が過剰というような状況にもなってきているというのが背景としてございます。  それから、わが国の輸入でございますけれども、昨年末来の石油の供給削減というのが、ことしに入りましてから供給削減も緩和されまして、その後また輸入につきましても順調に進捗して、加えまして、その結果備蓄も石油危機発生前の最高水準でありましたところの約六十日をこえるような事態になったということが第二でございます。  さらに第三点につきましては、国内の石油消費が総需要の落ちつき、あるいは国民なりそれぞれの各層における産業その他の節約の浸透によりまして、石油の国内の消費だけで見ますと、大体前年同月の水準に比べまして三%程度の減少というような事態になり、かなり落ちついた状況になってきておったというようなことを考えまして、緊急的な措置として宣言された緊急事態宣言というのをやめた次第でございます。
  189. 辻敬一

    ○辻説明員 行政機構改革関係数字について御説明を申し上げます。  御承知のように、四十三年度以降第一次、第二次の行政改革計画を策定いたしまして実施をはかってまいりますとともに、これと並行いたしまして地方支分部局の整理、再編成、第一次、第二次にわたります定員削減計画等の諸施策を行なってまいりました。さらに、本年八月に第三次の定員削減計画を閣議決定いたしたところでございます。  おもなものについて若干の数字を申し上げますと、たとえば補助金の整理、合理化でございますが、四十四年度以降毎年行なっておりますが、四十七年度におきましては四百三件、うち廃止減額は百七十七件の百三十二億円の合理化をいたしております。四十八年度は三百五十三件、うち廃止減額は百五十九件の七十五億円というようなことになっています。  審議会の整理、合理化では、実施済みのものが二十五件でございます。  地方支分部局につきましては、法務省、大蔵省、農林省の出先機関についてそれぞれ整理、統合を実施いたしております。  定員の削減につきましては、第一次は非現業二万五千三十四人、五現業一万八千六百七十四人、第二次は非現業二万四千四百七十八人、五現業一万八千六百十人、これは実績でございます。第三次につきましては、非現業一万五千六百三十八人、五現業一万一千二人の削減計画を立てておるところでございます。  なお、行政経費の節約につきましても毎年行なっておりますが、四十九年度は当初予算におきまして、二百九億円の節約をいたしているところでございます。
  190. 竹本孫一

    ○竹本委員 いろいろ御答弁をいただきましたが、特に大臣から、日本政府も二正面作戦を考えておるのだという御答弁をいただきましたので、今後その線で文字どおり二正面作戦をやってもらいたいという要望を申し上げておきたい。いま言っておられるのは、大体において政府あるいは日銀総裁は、総需要抑制をやる、しかし特定なものについてはきめこまかい配慮をやるとか、弾力的な考慮をするとかいうことを言われるけれども、それは二正面作戦ではなくて、一正面作戦プラスアルファだ。そのアルファもきわめてきめがこまかいといいますか、線の小さいプラスアルファで、そういうことであっては困ると思いましたので、私はフォードの政策の内容をいかに評価するかということを特に申し上げたのでございますから、この線で善処を願いたいと思います。  それから、会社の臨時特別税につきましては、慎重にという御答弁があったのだけれども、御承知のようにあれは二年間ということになっているのだから、文字どおり二年間ひとつやってもらいたいということと、慎重にということばはきわめて慎重な表現だけれども、慎重に右へ行くのか、慎重に左に行くのかが問題なので、方向を見誤らないようにやってもらいたい、これも要望を申し上げておく。  次に、石油の問題については、フォードの演説の中にも、これで百六十億ドルの支払いがふえているんだ、アメリカとしては一年前に比べれば百六十億ドル、たいへんな金だということで、非常な真剣味があふれておる。いまの御答弁の三%なんという情けない顕微鏡的な対策とはちょっと違う。もう少し真剣に取り組んでもらいたいということを私は要望しておく。  それから、行政機構改革についても、百億、二百億、三百億、何ぼとかいうような百億単位の話をされたけれども、十七兆円の日本の予算の中でどれたけの——会計検査院が摘発した違法なものでさえももっと多いかもしれない。われわれが言っているのは経済全体のエフィシェンシー、日本経済の再編成ということを観点として、フォードじゃないがウエーストレス、むだをほんとうに省くためにはどれだけの機構改革なり、むだな経費を落とさなければならぬかという観点で、もう少し真剣にやってもらいたい。  しかし、きょうは時間がありませんから、あと一つだけ質問なり要望なりを申し上げて終わりたいと思うのです。  いままで申し上げたことは、フォードに対する受けとめ方と、それから切るほうを思い切って切らなければ、今度は出すほうも出せないではないか、こういう意味で、税の問題にしても、あるいは石油の問題にしても、行政機構改革の問題にしても、ひとつ真剣に取り組んでもらいたいということを言った。これはアンチインフレの戦いですが、次にアンチデフレの戦いについて一言申し上げておきたい。  総需要抑制をやめろとか転換しろとかよく新聞には出ておりますけれども、私はトータルサムからいえば、やはりいま政府が、日銀も考えているように、全体を押えるということが必要であると思います。しかしながら、それはトータルサムであるから、総需要なんだから、A、B、Cとそれぞれのファクターについてどれも削らなければならぬということとは違う。  たとえば一つの例を申し上げますならば、銀行がいま貸し出しておるその貸し出し額が四十一兆円。大体都市銀行だけで九月末に四十一兆七千四百十億円の貸し出しがありますが、これは全体のトータルだ。しかしそれを商社に回して、この間のようにインフレ、物不足をあふり立たせるか、あるいは中小企業に回してこれを救済する金に使うかということは中身の問題であって、トータルサムの問題じゃないのです。同じ四十一兆円でも、使い方によって日本の福祉国家建設にプラスになる面と、逆にマイナスになる場合との二つあるでしょう。だから私は、総需要抑制ということをただ数字の上だけで言っているということはまだ不十分であって、問題は中身であると思うのですね。十七兆円の予算を二十兆円にふやせ、来年は二十二兆円じゃなくて二十五兆円にしろなんてばかなことはぼくは言いません。だから、思い切って総需要抑制をやってけっこうだ。しかしながら、その十七兆円なりあるいは二十二兆円なりの中に何を盛り込むかということが一番大きな政治の選択の問題なんだ。そういう立場から、総需要を、トータルを変えろということばかりを私は言うんではなくて、これから申し上げることは、その中身を変えてもらいたいということを言うわけであります。  すなわち、総需要抑制政策は一応それでけっこうだけれども、しかしながら中身を変えて、先ほどフォードの話もいたしましたけれども、この際これは助けなければ日本経済全体の健全な発展にマイナスになる、そういうものを助けるために、先ほど来申し上げたように、増税して取るべきもの、切り捨てるべきもの、そういうものを思い切ってやってもらいたいということを言っておるわけでございます。  そこで、最近の不況の問題を一口申し上げてお考えを承りたいのでございますけれども、アンチデフレの戦いとして、政府はいま具体的に何を考えておられるかということであります。きめのこまかい配慮をするといった抽象論ではなくて、たとえば、いま一番不況のチャンピオンになっておるのは繊維産業でございますが、繊維産業の各地域でこれは自民党さんも出席をされていま不況突破大会とかいうようなものが持たれておるので政府も十分認識をしていただいておると思うのでございますけれども、その不況突破大会あたりで要望されるその要望の前提になる問題としては、御承知のように、東洋紡が三千三百名やめてもらおう、あとで二千三百名に変わりましたけれども、そのほか敷紡も東亜紡も、いろいろのものがある。みな何しろいま繊維は、御承知のように、全体として見れば自主減産が四割から五割いっておる。にもかかわらず、在庫はどんどんふえておる。そして毛糸の相場にしましても綿糸の相場にしても、大体採算点の半分のところで市場相場がきめられておる、こういう状態でございますから、繊維産業は不況カルテルをひとつ申請しようというようなことを言っているが、私は不況カルテルというようなものは簡単に認むべきではないと思いますけれども、しかし、それならば、おまえたちは野たれ死にしてもかまわないということになるわけにもいかないでしょう。先ほど来申し上げていることは、総需要抑制という一つの線を一応認めても、その中身で、こちらの切るべきものを切って、こちらに回すべきものを回しなさいということを言うのだけれども、切るべきものを切らないで、こちらだけ押えてしまうということは、最もイージーゴーイングなやり方であろうと思うのです。そこで、この際再編成をして、同じ総需要抑制の路線だけれども、中身をすっかり洗いかえてあるということのために、思い切った英断が要るのではないかということを主張しているわけであります。  繊維の場合には、そういうような意味で今日非常な不況で、このままいけば、失業統計を見ましても、日本は六十万だ、イギリスの六十四、五万あるいはドイツの五十二、三万、それに比べればちょっと多いようだけれども、まあまあいいところだと思っていたところが、あっという間にこれが十四万ふえて七十四万になりました。これはその大部分は繊維から出ていると思いますけれども、そういう関係で、このままいけば日本の失業者が、アメリカの五百三十一万には及ばないだろうけれども、あっという間に百万に近づく危険性は十分にある。  そこで、繊維に対していかなる対策をとるということを財政面から考えておられるかということを一つ伺いたい。  二つ目は、その具体的な方法として、一体、過剰在庫をどうするかという問題が当然問題になってくると思うのです。コーヒーができ過ぎたときには海に捨てた場合がある、ミカンができ過ぎた場合も捨ててしまう場合がある。しかしながら、繊維製品を海に捨てるわけにもまいりませんので、これは一つは海外経済協力基金等で買い上げて海外援助物資に使うとか、あるいは一定期間、不況の市況が立ち直ってくるまで政府が買い上げて、ただし条件つきで、将来はまた一定の値段でこれを中小企業の連中に買い戻しをさせるといったようなことで、買い上げでも考えなければならぬように思うが、そういう対策を考えておられるかどうか。  もう一つ、かつて株が下がって困ったときに、証券市場を救済するために日銀に融資の特別ワクをつくったことがあると思いますが、今回の繊維の不況というものは、大体あのときの株式市場の恐慌的な現象に非常に似ておる。そこで、今回は証券のためというのではなくて、繊維業界のために緊急融資をする。この間から政府で考えられたことは、財投で第一・四半期千五百億円、第二・四半期千億円、合わせて二千五百億円、それも全部の不況業種を対象として考えられただけであると思いますが、そうした緊急融資についていかなるお考えを持っておられるか。  最後にもう一つ、これは繊維ではなくて建設業の場合ですが、政府のいまやっておられる公共事業の繰り延べの問題ですけれども、去年あたりは年度内の繰り延べは八千八百億円だった。これが、今度は一般会計だけでもいいが、繰り延べではなくて四十八年度から四十九年度に繰り越しになったものが五千六百十四億円あるはずだけれども、それが今日いかなる消化をされておるか、あるいは今後いかに消化するつもりであるかということもひとつ聞きたい。  同時に、今年度の財政執行の繰り延べ予定額というものは、一般会計、特別会計政府関係機関に財投まで含め、さらに地方財政まで入れると約一兆円をこすように思いますけれども、その金額はそれぞれ幾らであるか。そのまた一兆円の繰り延べについては、ただ繰り延べてさえおればいいというやり方であるのか。いま申しましたように、総需要の中身を洗って切るべきものは切るが、公共事業その他で福祉国家の建設にもプラスになるものは、この際、繰り延べでなくて、あるいは繰り越しでなくて、使っていくべきじゃないかと思いますが、それらに対するお考えを承りたいと思います。
  191. 岩瀬義郎

    ○岩瀬説明員 総需要抑制策をとってまいりましたことにつきまして、そろそろきき目が出てまいりました関係から、いろいろなきしみが出てきておる。いま御指摘の繊維につきましても、そういう現象が出てきておることは確かでございますが、需給の緩和がいま現象として出てきておりますのは、供給の増加ではなくてむしろ需要を押えておるということでございますので、需要がまだかなり根強いものがあるという背景はやはり消えておりませんので、そういう点では総需要抑制策を堅持していくというたてまえをとらざるを得ない。したがいまして、きめこまかい配慮をしながら、そのきしみをどうやって拾っていくかということであろうかと思います。その点につきましてはいろいろな、たとえば先ほど御指摘政府関係中小三機関の貸し付けワク増ワクとか、民間でも中小企業融資特別制度というようなものを活用してきておるわけでございます。  あとから繊維のことについて触れさしていただきますけれども、そういう問題を別にいたしまして、実は繊維につきましては、いま私ども考えてみますと、これはやはり構造的な問題が一つございます。もう一つは、やはり昨年思惑的な輸入を相当大きくやった、その反響によるいわば荷もたれと申しますか、在庫の増加、そういうものが現在の繊維の不況というものをつくっているのじゃなかろうかと思います。この構造的な問題もあわせてここで一挙に解決するという点はたいへんむずかしい問題でございますが、通産省も実は戦後になりましても数回繊維対策というもので国が資金を出して救済してきたわけでございますが、今回の問題につきましてはやはり根本的な対策が必要であろう。それをどういうふうに考えるかということについてはさらに時間をかけないと解決できないような問題、そういうふうにとらえておるようでございまして、また大蔵省は——御承知のように繊維対策は通産省が産業政策として中心にやっていくものでございますので、まず通産省が検討を急いでおるという段階でございます。  そこで、中小企業対策を含めてのいわゆる繊維対策に対していままで何をしたかということにつきましては、先ほどの先生の御指摘のように、第一・四半期に政府中小三機関の貸し付けワク増ワクの千五百億、これは当初五千五百十四億に千五百億を足したわけでございますが、さらに第二・四半期以後千億、これは当初の計画の五千六百十億に対して千億を加えたということでございまして、かなり大幅な貸し付けワク増ワクをやっておるわけでございますが、民間の中小企業金融特別制度につきましても、繊維につきましては約四百八億の融資をいたしておるわけでございます。特に繊維は地域産業が多いものでございますから、集中的に出てきておる地域に対しましては特に配慮をいたし、その地域の地方銀行あるいは都市銀行も含めまして、そういう中小対策ワクの中でこまかく拾っていっておるわけでございます。  ただ、最近、御指摘の繊維におけるいろいろな失業あるいは帰休制度みたいなものがだんだん大手のほうに出てまいったわけでございますが、いま私ども政府で持っております中小三機関あるいは民間の中小融資制度には大手あるいは中堅の繊維企業については乗らないような状況でございますが、これはいま構造的な問題も含めまして、通産省に基本的な対策検討してもらっておるというのが実情でございます。
  192. 竹本孫一

    ○竹本委員 時間がありませんから以上で終わりますが、先ほど来大臣に申し上げておるように、ぜひひとつこの二正面作戦というものを、一プラスアルファということでなくて、文字どおり二正面作戦にしてもらいたい。  それから、いま繊維の問題が主として答弁されて、もう一つのほうは答弁はなかったようだけれども、やりますか。
  193. 辻敬一

    ○辻説明員 四十八年度に繰り延べ措置を実施したことによりまして、結果として四十九年度に繰り越されました額は、一般会計、特別会計政府関係機関及び公団、事業団を通じまして、合計いたしますと約八千六百億円でございます。これらの繰り越された経費につきましては、この趣旨から見まして全額四十九年度において消化をすることになるものと考えております。  それから、本年度需要抑制の見地からさらに繰り延べ措置を先般とったわけでございますが、これが先ほど御指摘になりましたように、国、地方を含めますと一兆四百十五億円ということになりますが、この繰り延べにあたりましては、一律にやっているわけではございませんで、御承知のように公立文教施設でございますとか、社会福祉施設でございますとか、あるいは住宅金融公庫、中小金融三機関等については対象から除外をいたしております。  それから、繰り延べの率につきましても、原則は八%でございますが、生活環境施設等については低率の四%を適用するというふうにきめておるわけでございます。
  194. 竹本孫一

    ○竹本委員 簡単にしますが、繊維の問題等を救済をする場合に、これは私、念のために特に強調しておきたいのですけれども、もうかるときにはどんどんもうけてもうけほうだい、しかしながら、ちょっと自分たちが困れば自己反省も自己改造もやらないで、全部政府に泣きつくというような傾向が日本には非常に多いので、これは特に大蔵省としては厳重に対処してもらいたい。確かにわれわれから業界を見ておりますと、ずいぶんかってなことを言う。マナーにおいてもビヘービアにおいても全然反省がない。そして、ただ政府にしりぬぐいだけを持っていくということが少し多過ぎるように思いますから、この点は私は厳格にやってもらいたい。  しかし同時に、いま申しましたように、不況産業を拡大さしていって、日本がそれこそ収拾がつかないような混乱におちいることのないように思い切った手を打ってもらいたい。これはただ融資の問題だけではなくて、先ほども申しました過剰在庫なんというものは、一応とにかくここで原因を議論すればいろいろあります。けれども、それだけのものが大きな重圧になっておるのだから、これに対して思い切った手を打つことが必要ではないかと思います。  それから最後に、いまの繰り延べの問題でございますが、大臣、これから予算を編成されるので一言ちょっと苦言を申したいわけでございますが、予算というものは日本経済がことしの段階においてどうなるかということを考えながら組むわけですから、一兆円も繰り延べしなければならぬような予算を組むということは、予算編成の技術的良心として一体どんなものであろう。国会で一生懸命論議してみたけれども、あるいは使わなかった、余っている、あるいは残してあるということになると、国会の論議もほとんど意味がないということにもなるでしょうし、また予算編成の当局者からいえば、もう少し責任を持った、見通しを持ったものでなければならぬと思う。たとえば予算を組んで年度へ入ったらすぐこれは繰り延べだというような場合もあったように思いますけれども、はなはだ不見識である。もう少し良心的な科学的見通しの上に立った予算編成をやるべきではないかと思いますから、これは大いに気をつけてもらいたいと要望を申し上げまして、質問を終わります。
  195. 松本十郎

    松本(十)委員長代理 本日は、これにて散会いたします。    午後五時三十分散会