○小松
説明員 新聞に書いてございました十六項目の公開質問状というのは間違いでございまして、私
ども文書によりまして公開質問状を公取に
出したことはございません。この点あらかじめお断わり申し上げておきたいと思います。
ただいま大臣の御
答弁がありましたように、私
どもも産業政策の重要な一環といたしまして競争政策につきましてはかねてから研究いたしておるわけでございますが、このたびの独禁法改正試案骨子につきましては、最近二回ばかり事務ベースで趣旨の
説明を受けました。その際、当方といたしましては、現実に産業
行政、
経済行政を担当しておりますものとしての具体的な立場からいろいろな質問をいたしたわけでございます。
まず第一に、改正の趣旨でございますが、現行独禁法では対処できないような独占、寡占の弊害がいかなる産業においてどういう形で具体化しておるのか、実証的な資料をもって
説明をしていただきたい。それにつきましては、資料はないというお話でございました。第二、今回の改正は物価対策にどの程度貢献するのか。つまり今次のインフレは海外の要因や国内の需給要因による物不足を中心とするものか、それとも独占、寡占の弊害が出て、それが中心として上がったものであるか、どちらかということにつきましては、今回の改正案は物価対策とは直接結びつかないものであるという御
説明がございました。第三点、自由、公正競争を促進する立場にある
公正取引委員会がマーケットに直接介入するような統制方式をなぜ採用するのか。つまり独禁政策の範囲をこえておるのではないかという質問をいたしました。それにつきましては、不完全競争のもとでは介入することもやむを得ないという
答弁がございました。
第二に、企業分割でございますが、企業分割を必要とするような寡占、独占の具体的な弊害は何か。現実に企業分割をすぐ考えてないというお話もございましたが、現存しない弊害に対してなぜ急いで規制を行なう立法をする必要があるのか。この点につきましても
お答えをいただいておりません。それから次に、まじめに成長した企業に対してなぜ企業分割をもって臨むのか、自由
経済の根幹に触れる問題であるのでその辺をゆっくり承りたいということにつきましても明確な
お答えはいただいておりません。その次に、特許独占などの結果、成長拡大した企業も分割できるということにすることは、無体財産権の行使と認められる行為を適用除外しておる現行法二十三条との
関係で論理的に合わないのではないかということにつきましても明確な
お答えをいただけませんでした。次に、企業分割の基準が不明確であって裁量の範囲が大き過ぎるのではないか、裁量の範囲が大き過ぎると企業は自由な競争をしにくくなるのではないか、特にシェアが五〇%以上も過ぎておるとかあるいはそれに近づいておるような企業は自由競争を逆にやめるのではないか、こういうことにつきましても
お答えをいただいておりません。第五番目でございますが、分割規定を置くことば、いま申し上げましたことと
関連いたしますが、かえって全般的に企業の競争意欲を阻害して、自由競争の促進と矛盾してくるのではないかという問題もございます。第六番目に、分割にあたっての手続はどうするのか。たとえば商法などとの
関係はどうなるのか。また、労働組合をどういうふうに分けるのか。また、企業は
地域別にいろいろな工場を持っておるでしょうが、それをどういうふうに分けるのか。また、分割の結果、分割された企業の
一つが倒産するというふうな場合には責任はだれが負うのか。こういう問題につきましても煮詰まった
お答えはいただいておりません。
次に、原価公表でございますが、原価公表があればなぜ自由かつ公正な競争が促進されるのか。そもそも自由競争と原価公表がいかなる
関係にあるのか。これにつきましても
お答えをいただいておりません。次に、企業の秘密であります原価を公開させ、世間の批判で
価格を決定するということが
価格の公正さを担保することになるのかどうか、これにつきましても
お答えをいただいていないわけであります。また、技術的な問題になりますが、原価と一口に申しましてもいわゆる総合原価と個別原価との
関係をどうするのか。個別原価の場合には一般管理費の振りかけをどういうふうにするのか。企業によりましてはもうかるものもあればもうからないものもある、売れ行きのいいものもあれば悪いものもある、それをどういうふうに原価公表の段階で振り分けさせるのか、これにつきましても
お答えをいただいておりません。
それから、原状回復命令でございますが、過去のやみカルテルで排除措置を講じましても
価格が下がらなかった原因は何か。つまり過去のやみカルテルで、排除措置を講じましてこれを厳重に取り締まるべきことはもちろんでございますが、それでも
価格が下がらないという場合に、その原因が物不足にあるのかあるいはコストアップにあるのかあるいは引き続いて地下のやみカルテルがあるのか。コストアップあるいは物不足ということであれば別の対策が要るわけでございますが、地下のやみカルテルがあったに違いないと推定されるような案件がどのくらいあったのか。これにつきまして、も
お答えはいただいておりません。次に、
公正取引委員会か
価格に介入することの是非。需給対策などで
価格対策を講ずるのが一番大事なことでありまして、物を余らせるのが物価対策の要諦だと思いますが、そうじゃなくて
価格に介入するということの是非いかん。この点はほとんどの
経済関係の近経学者も反対のように承っております。また、
価格引き下げ命令と原状回復命令との差は何か。
経済的に見ますと全く同じものであるというふうに考えるがどうかということにつきましても明確な
お答えはございません。
次に、課徴金でございますが、やみカルテル対策として公取が告発をどんどんすべきではないか。検察庁にその能力がないというお話もあるわけでございますが、検察庁にその能力がないから告発をやめて課徴金にするという
考え方が正しいのかどうか、その辺につきましても私
どもよくわからないわけであります。また、刑罰と課徴金との
関係いかん。つまり刑罰と課徴金との併科がいいことなのかどうなのか、この辺は主として法務省の問題になりましょう。
次に、株式保有制限でございますが、総合商社などの現在の株式保有が競争阻害要因となる具体的な事例と、また規制をこのように行なう理由、つまり現行法の十条でも競争の実質的制限となる場合の株式保有は
禁止されておるわけでございますが、それをもって対処できない理由もあわせて伺いたいと思っているわけでございますが、
お答えをいただいておりません。次に、具体的な基準といたしまして資本金百億円、総資産二千億円以上の事業会社が、資本金あるいは純資産額の二分の一をこえて株式を保有するということがなぜ競争制限的になるのか、これより多くてはなぜいけないのか、少なくてはなぜいけないのか、何ゆえにこのような基準をとったのか、その基準を明確にして、そのねらいとするところ、また期待しておる効果を明らかにしていただきたいということにつきまして
お答えをいただいておりません。次に、規制によります総合商社などの株式放出につきまして、商社などに
中小企業の非上場株がかなり持たれておるわけでございますが、それをどう考えるのか。
中小企業に対して非上場株を引き取らせる以外にないわけでございます、売れませんから。それについて
中小企業への影響をどう考えるのか、経常不安定をもたらすのではないかということにつきましても
お答えをいただいておりません。なお、この規定でいきましたら相当数の株が放出されることになるわけでございますが、株式市場の
混乱は起こさせないというお話を承りましたけれ
ども、いかにして起こさせないのか、公取がその株式市場の
混乱を起こさせないと保証するということが、国の
行政のあり方としていいことか悪いことか、この辺につきましても
お答えをいただいておりません。
そのほか、こまかい技術的な問題はたくさんございますが、おもな点につきましては以上のような問題がまだ私
どもにはわかりませんので、残念ながらきちんとした意見が申し上げられない、こういう段階でございます。そのうちに事務局のほうからもさらに詳細な資料をいただき、正確な御
説明をいただけるものと期待をしておる次第でございます。