○枝村委員 全日建はそういういろいろは事情がありまして、総評を中心に独自な追跡
調査を行なってまいりました。わが党に対してもそれを示しまして、いろいろ協議いたしました。三百二十一件の
事故についてそういう追跡
調査を行なって、現在までにその中の三十七件が明らかにされてきておるわけでありますが、それによりますと、いずれも特徴的に言えることは、
一つには法違反の
事故が非常に多いということです。特に安全衛生法に違反しておる。
それから二番目には、被災者扱いについて法違反が目立っておる。これは基準法やじん肺法に違反ということです。これははっきり言えば、使い捨ての実態が明らかにされたということになるわけであります。
三番目には、ほとんどが被災することによって生活の道が閉ざされている。これにはいろいろ理由がありましょうが、中でも今日の休業療養補償が実態に即していない。
それから、治癒になっていないのに途中で退院をさせられたか、したか知りませんけれども、そういう状態がある。
それと、いなかのほうへ行きますと、医療設備なんかが整っておらないということもありましょうが、発見が非常におくれまして、なおるべき負傷も手おくれのために死に追いやるおそれのあるような状態もときどき出ておる、こういうことが明らかにされたわけです。
それから四番目には、とにかく業者が
災害にかかったことを非常に隠したがる、いわゆる隠し
災害が多いということがあります。このような特徴が追跡
調査によって明らかにされておるのであります。
そこで私は、きょうはその中の一、二の事例をあげまして、労働省の猛省と、今後のこれに対する厳重な措置をひとつお願いいたしたいと思います。
まず初めに、山陽
新幹線の安芸
トンネルで、四十五年九月二十四日発生いたしました
土砂くずれによって、右足ひざ下切断をされました一文字村雄さん、四十三歳、所属しておる会社は奥村組、この方に対するいわゆる法違反があります。それとこの人に対して、この重傷を負う前に起こりましたじん肺の罹患を会社が知っておりながら隠して、そして坑内に入れて
作業さしたという事実が明らかになっております。そのためにその病気が非常に悪化していった。こういう二つの問題を含めた一文字さんの事件であります。
これなどは、危険
防止措置を行なわなかったことということで、安全衛生法の二十一条、二十五条と、安全衛生規則の三百八十二条、三百八十四条、三百八十五条、これにいずれもが違反しておる。それと、二番目に申し上げました、病気の者を就労さしたということは、同様安全衛生法の二十二条、六十八条、同法の百十九条にも違反しております。そうして、業務上被災と疾病による減収を補償の
基礎にしたなど、労働者保護目的を著しくそこねているということが明らかになった。これは
労働基準法の十二条と七十六条に明らかに違反しておる。違反ということばを使いましたけれども、疑わしいということに私は言っておきます。そうして、死傷病
報告を遅滞なく届け出ねばならぬというのに、これに違反して、疾病届けもしないということが明らかにされておりますので、これも安全衛生規則九十七条に違反しておりまして、これは死傷関係者の措置としてはきわめて悪質なものだといえると思います。
それで、
先ほど申し上げましたように、危険
防止を行なわないで
事故を発生さしておるということと、じん肺患者でありながら坑内の
作業につかせ、使用者の故意及び過失の法違反による減収に対し、法定補償の要件さえ欠いている、こういうことをまとめてみますと、これは明らかに会社も悪いのですけれども、監督官庁である労働省の基準局あるいは監督署が、これらをなぜ放置さしたか、何らかの時点でこれを
調査してやるような手だてはなかったのか、そして、その後発見したあと、これを再申請するとか、そういう手続について適切な指導をして補償を完全にさせるような方法はなかったのか、こういうふうにいわれてもしかたがないと私は思います。
それともう
一つは、
先ほど言いましたように、これはじん肺法の十二条、六条、七条、九条にそれぞれ違反しておるのでありまして、これは
一つの一文字さんの事件だけではなく、これと同様なケースがたくさんあることを思いますと、あなた方の今後のき然たる態度をこの際強く要請せざるを得ないということになるわけであります。
もう
一つ、岩井
昭和、この人の例を申し上げます。
岩井さん、四十四歳は、大成建設。これは上越
新幹線の大清水
トンネルで四十七年十二月二日右肩裂傷を負った事件であります。これは、ダイナマイト設置中に停電したので懐中電灯を使用してそのダイナマイトを回収中に、落石によってそういう
事故にあった、そして会社側は労災死傷病届けを行なわずに放置しておる、本人が監督署におれの措置はどうなるかと問い合わせて初めて明るみに出た、こういう問題であります。これはさらに休業補償は法定補償を行なっていない。その他入院に伴ういろいろな諸雑費、諸費用を全然支給されていない。さらに驚くべきことは、
新聞にも載っておりましたけれども、社会党のわれわれの
調査団が
災害調査資料を請求いたしましたので、それに対して
提出してまいりましたものが全く虚偽のものであったということが明らかにされました。賃金台帳でそれは明らかにされました。本人は入院中にもかかわらず、半月を一日八時間、残業二時間までしてつとめておるというような虚偽を台帳に記載しておる、それをわれわれに示す、こういうことをしておるのであります。
法定補償を行なわなかったということ、そして休業補償を九十九日で打ち切って、死傷病
報告を出さず労災を隠蔽した、隠し労災、こういうことをやったということは、これは明らかに法違反であるということがいえると思います。いまのわれわれに対する虚偽の
報告も、これは刑法による私文書偽造に当たるのではないか、そして賃金台帳にそういうふうに虚偽の記載をしておるということは労組法の違反にもなる、そして
事故の
原因については
先ほど言いましたとおりでありますが、これは安全衛生法の二十五条に違反しておる、それからはだ落ち
防止について何らの措置もしていないということは労働安全衛生規則の三百八十二条あるいは三百八十五条に違反する、こういうふうに私どもは
指摘するのであります。そのほか楠木忠一さん、これも大清水
トンネル工事に携わっておる人でありますけれども、これが会社の命令で東京電力のほうに雪かき
作業に強制的にやらされて、その
作業中あやまって落ちてけがをするという
事故もあります。それから池亀信一さんという人も危険
防止措置を行なわなかったために落磐
事故によって負傷する、こういう事例があります。また中川俊夫さん、それから大江満雄さんという方についてもそのような法違反によって負傷
事故を起こしておるということなどが今回の追跡
調査で明らかにされました。その他
先ほど申し上げましたように三十七件もあります。
いま現在までわかってきました事件もいずれも大同小異の内容であります。私はこのようにあえて御本人の名前を明らかにして申し上げましたけれども、だれが見ても悲惨なこの労働
災害の事実について労働大臣は一体どう思うか、お答え願いたいと思います。