○林(百)
委員 時間がありませんので、いまの
企業ぐるみ選挙の問題について、先ほど不規則ではありましたが、野党の
皆さんの中からも
政府の統一的な
見解を聞きたいという声もあります。われわれも、これは憲法上この「商行為ヲ為スヲ業トスル目的ヲ以テ設立シタ」営利法人が、公然と
選挙活動ができるというこの
自治大臣の答弁は、非常に重要な問題だと思うのです。ですから、これは憲法問題として
政府の統一した
見解を、この次の機会にお聞かせ願いたいと思うのです。時間がありませんので、私はいろいろの問題を用意しましたけれ
ども、その点だけをちょっと読んでおきますから、参考までにお聞き願いたいと思うのです。
国民の世論は、いま自民党がこのたび行ないました
企業ぐるみ選挙にきびしい糾弾をしていることは、これはもう
自治大臣も御
承知だと思うのです。
企業が主体となって
選挙運動をするということ
自体が、私たちはこれは憲法で許されておらないと思うのです。憲法の十五条によりますと、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、國民固有の權利である。」
国民の権利だとあるわけです。「公務員の選擧については、成年者による普通選擧を保障する。」要するに、普通
選挙権を成年者に保障する、こうあるわけですね。
選挙の権利は、このような憲法の規定から申しましても、一人一人の
国民にこそあれ、商行為をなすことを業とする、それを目的とする営利法人にあることは
考えられないと思うのです、現行憲法の上からいって。会社等の法人、本来、会社という団体の構成員は、株主と役員なんですね。株主と役員で会社という営利法人は構成されているわけです。従業員は、会社との間では労働契約、要するに雇用契約を結んでいる関係にすぎないわけですね。会社が業務命令をもって従業員を後援会に加入させるとか、あるいは
政治活動、
選挙活動を行なわさせるとか、あるいは雇用関係を利用して、従業員に対して実質的には強権的に、あるいは利益誘導的に干渉をいろいろする、これは
自治大臣はそういうことはあり得ないのだと言っておりますが、実際に社長あるいは部長の業務命令からそういうことが出れば、今日の従業員の実情、下請の実情からいっては、利益誘導
ともなり、精神的な強圧になることは言うまでもないと思うのです。
それは憲法で保障されている思想、信条の自由に対する一方では侵害にもなると思うのです。このように労働契約による労務提供の業務の範囲を越えた労働を求めることは、これはまた憲法の十八条、また労働基準法の五条による強制労働の禁止の精神にも反してくると思うのです。
また、大企業が下請企業に対して後援会への加入、資金、票集めの依頼をその意思に反して求めたり、あるいは取引上の便宜をにおわせながら、そういうことを示唆し、誘導するという事例が続出しておりますが、これも憲法の思想、信条の自由を侵し、
選挙の自由を妨害するものだと思うわけです。
このように、企業ぐるみの
選挙は、どのような角度から見ても、これは明らかに現行憲法の、公務員の
選挙については成年者である
国民にその権利を付与するということからはずれていると思うのです。そして、この
ことば憲法で規定されている「國政は、國民の嚴粛な信託によるものであって、その權威は國民に由來し、」というこの憲法の前文に定めた
議会制民主主義の正常な発展、
選挙の公正を、金権で踏みにじることにもなり、重大な社会的、集団的な犯罪行為と言ってもいいと思うのです、
民主主義を守るという点からいっては。したがって、これをすみやかに
規制することが必要だと思うのです。
企業ぐるみ選挙の特徴のパターンを整理してみますと、こうなっているわけです。抽象的な、企業は
選挙の自由があるとかなんとかいっていますが、具体的に企業がどういう形で
企業ぐるみ選挙を行なっているか、それを整理してパターンにしてみますと、まず、従業員との雇用関係を利用してどういうことが行なわれているか。
一つは、先ほど
津金委員も言いましたように、特定
候補の支持、推薦を会社の決定という形で打ち出して、これを社員に押しつけてくる。
第二は、明示的に業務命令として指示あるいは文書通達している。
第三は、そういう明白な指示がなくても、ノルマだとか成績表を公然と掲示して、精神的な威圧を加えてくる。
第四は、特定
候補支持を社内報その他で社員に通知し、無差別に配布しておる。
第五は、電話代その他運動
費用を会社が負担したり、
選挙運動のために休んでも給与を支払うというような便宜を提供している。
第六は、以上のような干渉に対して、従業員の中では、将来のことを
考えて、いやいやながらも会社と雇用関係を結んでいるということに対するおくれた
考え方もあって、業務といわれれば、しかたがないという声があって、全体としては、内心では反発し不満を持っていても、周囲の
状況から反対の行動に出にくい。一方、会社はそうした点を巧みに利用して、やんわりと締めつけてくる、こういう実情になっているわけです。
これが、本来、
国民の思想、信条の自由、個々の
国民に与えられた公務員の
選挙の自由、こういうものを侵さないということは、とうてい言えないと思うのです。営利を目的とした法人
自体が、こういう行動をとるということは許されないことだ。こんな典型は世界にもないと思うのです。
それから下請との関係は、取引先へ、取引関係上の経済的な優位性を利用して、いろいろの圧力や、あるいは利益誘導をしてくる。それが刊事犯罪の類型的な形をかりにとらないとしても、たとえば一として、一人十票をとらないと品物はおろしません、二千五百票集めてくれれば、仕事を継続的に回しましょう、一票は鉄一トン分の注文に当たる、目標に達しなければ親会社からの注文を減らすというこ
ともあることを
考えていただきたいというようなことをいってくる。
第二は、下請、取引先などは、直接死活にかかわる問題として表面上熱心にやって、しかし内心では反発をしなければならないというような事態が起きているわけです。こういうパターンになっているわけです。
さっき
自治大臣は、そういうことをお知りにならないというように言われましたけれ
ども、そこで私たちは具体的には——これで終わりますが、やはり公選法の二百二十五条には、こういう当選を得、もしくは得しめ、または得しめない目的をもって、
選挙人に対し、雇用、取引関係を利用して
選挙人を誘導し、または威迫した者は五年以下の懲役または禁錮に処する。というような、こういう新しくパターン化してきた
選挙違反の形態を取り締まることを、やはり
考えなければならないのじゃないか。
同時に、憲法上、営利を目的とした営利法人が公然と
選挙運動ができるかどうかという点については、これは
政府としての
統一見解を問いただしたい。
時間がありませんから、きょうは問題を提起しておきますが、この二つの問題について、
自治大臣の
見解を聞いて、私の関連質問は終わりたいと思います。