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1974-08-02 第73回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年八月二日(金曜日)     午後一時三分開議  出席委員    委員長 有田 喜一君    理事 石井  一君 理事 水野  清君    理事 河上 民雄君 理事 堂森 芳夫君    理事 松本 善明君       足立 篤郎君    奥田 敬和君       田中 龍夫君    三原 朝雄君       石野 久男君    勝間田清一君       土井たか子君    三宅 正一君       瀬長亀次郎君    渡部 一郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 木村 俊夫君  委員外出席者         防衛庁防衛局長 丸山  昂君         外務大臣官房審         議官      杉原 真一君         外務省アジア局         長       高島 益郎君         外務省アメリカ         局長      山崎 敏夫君         外務省経済協力         局長      鹿取 泰衛君         外務省条約局長 松永 信雄君         郵政省電波監理         局周波数課長  松元  守君         外務委員会調査         室長      亀倉 四郎君     ――――――――――――― 委員の異動 八月二日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     奥田 敬和君   小林 正巳君     三原 朝雄君   金子 満広君     瀬長亀次郎君 同日  辞任         補欠選任   奥田 敬和君     加藤 紘一君   三原 朝雄君     小林 正巳君   瀬長亀次郎君     金子 満広君     ――――――――――――― 七月三十一日  一、千九百六十七年七月十四日にストックホル   ムで署名された世界知的所有権機関を設立す   る条約締結について承認を求めるの件(第   七十二回国会条約第一一号)  二、千九百年十二月十四日にブラッセルで、千   九百十一年六月二日にワシントンで、千九百   二十五年十一月六日にへーグで、千九百三十   四年六月二日にロンドンで、千九百五十八年   十月三十一日にリスボンで及び千九百六十七   年七月十四日にストックホルムで改正された   工業所有権保護に関する千八百八十三年三   月二十日のパリ条約締結について承認を求   めるの件(第七十二回国会条約第一二号)  三、千九百十一年六月二日にワシントンで、千   九百二十五年十一月六日にへーグで、千九百   三十四年六月二日にロンドンで及び千九百五   十八年十月三十一日にリスボンで改正された   虚偽の又は誤認を生じさせる原産地表示の防   止に関する千八百九十一年四月十四日のマド   リッド協定の千九百六十七年七月十四日のス   トックホルム追加協定締結について承認を   求めるの件(第七十二回国会条約第一三号)  四、千八百九十六年五月四日にパリで補足さ   れ、千九百八年十一月十三日にベルリンで改   正され、千九百十四年三月二十日にベルヌで   補足され並びに千九百二十八年六月二日にロ   ーマで、千九百四十八年六月二十六日にブラ   ッセルで、千九百六十七年七月十四日にスト   ックホルムで及び千九百七十一年七月二十四   日にパリで改正された千八百八十六年九月九   日の文学的及び美術的著作物保護に関する   ベルヌ条約締結について承認を求めるの件   (第七十二回国会条約第一五号)  五、国際情勢に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 有田喜一

    有田委員長 これより会議を開きます。  この際、木村外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。外務大臣木村俊夫君。
  3. 木村俊夫

    木村国務大臣 一言ごあいさつを申し上げます。  私は、昨年十二月一日本委員会委員長に選任されました。本委員会皆さま方の御協力を得まして、その職責を全うするよう努力いたしてまいりましたところ、今回、はからずも外務大臣を拝命いたしました。  内外の情勢多様化の度を加えまして、わが国外交もきわめて困難な局面を迎えております。国民皆さま方の御支持を得て、微力ながら全力を尽くして外交の衝に当たる所存でございます。持に本委員会皆さま方には、従来からわが外交につきまして格段の御指導と御鞭撻をいただいておりますが、今後も何とぞよろしく御指導、御協力を賜わりますよう、切にお願い申し上げる次第でございます。      ――――◇―――――
  4. 有田喜一

    有田委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。水野清君。
  5. 水野清

    水野委員 木村外務大臣につきましては、私どもは、長い間外務委員長として本委員会を円満なる運営をしていただきまして、たいへん感謝を申し上げております。また、このたび先生の外交に関する識見が買われまして御入閣をなさいましたことを心からお祝いを申し上げます。  実は、木村外務大臣が御就任なさいましてから、新聞は日中問題について最近いろいろ伝えておりますが、その傾向について、私ども新聞に伝えられることがほんとうでございますといろいろ心配なことが出てまいりますので、二、三これから御質問を申し上げたいと思います。  この新聞内容につきましては、真偽はわかりませんが、たとえば八月一日の読売新聞朝刊に、台湾機の旗を国旗と認めないという前大平外務大臣談話がございまして、これが日中航空協定締結に対して大きな問題になったということは御承知のとおりでございますが、外務省筋では三十一日、この大平前外相談話はすでに過去のものだと述べている云々、その内容については先刻御承知だと思いますから詳しく申し上げませんが、そういう記事が出ております。あるいは七月三十一日の、これも読売新聞朝刊でございますけれども台湾にあります現在の交流協会台北事務所長大使級に格上げするというような記事も出ております。あるいは、これは外務省自身のことではございませんから外務大臣の御責任ということではないと思いますが、船田前議長が近く日本台湾との間の航空路再開のために訪台をされるというような記事も伝えられております。  私は、日台間の航空路再開ということについては、これは木村外務大臣にもぜひ御尽力をいただかなければいけないというふうに思っておりますし、当然これから御尽力をなさることだろうと思うわけでございますが、これらの新聞記事だけでございませんので、木村外務大臣が御就任になったあとから、何となくこれまでの日中国交正常化基本路線がだんだんずれてきて、むしろ日台間の緊密ということだけに力点が置かれていくというような感じのムードといいますか、そういうものがマスコミやその他言論界で行なわれておりますので、この際、外務大臣日中間外交について新しい方向をお求めになるのか、あるいは田中内閣成立以来の基本方針というものはそのまま続くのかということについて御見解伺いたいと思うわけでございます。
  6. 木村俊夫

    木村国務大臣 いろいろ報道についてお話がございましたが、私の就任にあたりまして、私、いろいろ記者会見等で申し上げておりますとおり、一昨年九月二十九日に日中間正常化に際して発出されました日中共同声明、このワクは堅持してまいりたい。いささかもその基本路線に変更はございません。
  7. 水野清

    水野委員 さらにそういう路線の上でのお話を少し御質問申し上げたいのでございますが、御承知のように日中の正常化以後、日中間に横たわっている幾つかの実務協定というものを積み重ねていって友好平和条約というものにいずれは到達しようというような路線が、前大平大臣はじめ外務省関係者からこれまでも説明がございましたし、当委員会でもそういうようなお話があったと思います。その第一弾として日中航空協定というものが成立をしたわけでございますけれども、御承知のように、現在漁業協定あるいは海運協定というものの交渉が行なわれたり、あるいは漁業協定は一時休憩になっているようでございますが、これは先ほど御質問申し上げたことと今度はやや角度が違うのでございますけれども、この実務協定というものをこれまで着実に積み上げて、その道程の終着として友好平和条約というものを議論してきたように思うのでございますが、最近、ある方面からは、むしろこういう実務協定というものを飛び越えてでも友好平和条約というものを早急に結ぼうという動きやあるいはそういう議論もまた展開されております。この点について木村外務大臣はいかがお考えでいらっしゃるか、お話を承りたいと思います。
  8. 木村俊夫

    木村国務大臣 あとに残りました二つ実務協定海運漁業でございますが、この交渉は依然として継続中でございます。日中間平和的処理をいたしました日中共同声明の場合と違いまして、非常に現実的な実務面利害関係が錯綜しておりますので、お互いの主張、見解もございまして、なかなかはかどってはおりませんが、これもお互い意見を調整し合いまして、あまり遠くない機会にこれが実現することと私は確信をしております。  また、この実務協定日中平和友好条約との締結を一体どう考えるかというお尋ねでございますが、ごく自然の形におきましては、もうすでに締結をいたしました二つ実務協定、また交渉中の二つ実務協定、四つの実務協定を積み上げたしかる後に日中平和友好条約交渉といいますか、そういうものが着手されるということがきわめて自然な形ではなかろうかと私は思いますが、しかし、それに何ら論理的な、また明確な順位をつけるべき筋合いでもない。したがいまして、この実務協定が、かりに最悪の場合を考えまして、非常におそくなるということになれば、これは中国側考え方もあろうかと思いますが、自然な形で、それではひとつその前に日中平和友好条約の予備的な交渉も始めようではないかという機運が起こるのも自然かと思います。  しかしながら、それは私はいま予測の範囲を出ません。いまの経過では大体先ほど申し上げたような順位でこの交渉が行なわれることを私どもは予測しております。
  9. 水野清

    水野委員 これで質問を終わります。
  10. 有田喜一

  11. 石井一

    石井委員 昨日の参議院外務委員会日韓問題に関しましてかなりの論議がされたようでございますが、私から重ねて別の角度から数点まずお伺いをいたしたいと思います。  現在日韓関係が非常に重要な段階に来ておるという認識は、与野党ともに共通しておると思うのでございますが、そういう意味で筋を正すべきものは正し、理解の不足のものは補って、大臣仰せのとおり、折り目正しい外交を推進すべきである重大な局面である、こういうふうに思うわけであります。過去あまりにも了解事項が未解決のまま残っておる、これに対しては大臣は遺憾の意を表明されておるわけでございます。私たちも新大臣にこの諸般の問題についての解決、これをどうしてもやってもらいたいという強い希望があるわけでございます。遺憾の意の表明というのは日本政府基本的な姿勢表明として非常に高く評価をいたすわけでございますが、時間も、金大中事件で一年を経過しておる。二学生の問題にいたしましてももう判決が出て、行くところまで行っておる。これに対し今後新大臣としてはどういうふうに対処されようとしておるのか、まずここのところからお伺いしていきたいと思います。
  12. 木村俊夫

    木村国務大臣 日韓間の友好関係、これは私はわが国外交政策基本一つであるという考えでございます。しかしながら、不幸にして日韓の間にはいま仰せのとおり、特に二つのなかなか解決しがたい問題が生じております。これを早期解決しなければ日韓間の友好関係に非常に悪い影響があるということは、私ども国民皆さん方とともに否定できないところだと思います。  そういう意味で、私ども政府におきましては、この二つの問題について極力韓国政府にも働きかけをいたしまして、すみやかにこの解決をはかってまいったわけでございますが、何せよ金大中事件、もうすでに一年になんなんとしております。また韓国における二学生事件もたいへんその裁判処理がむずかしくなりつつございます。そこで、この金大中事件韓国における日本人の二学生事件とは性格が違う事件だと私は考えておりますが、しかし、いずれにいたしましても、こういう問題を早期解決することはどうしても日韓の長期的な友好関係に必要であるという観点から、今後も強くわが国政府立場を申し入れようと考えております。  しかしながら、御承知のとおり、金大中事件は、金大中事件以外の別件の過去の選挙違反裁判処理がすでに進行中でございまして、これについて、昨年十一月に金鍾泌総理がもたらしました日本韓国との了解事項を実現させるには、いささかどうも時間がおくれるのではないかというようなことを憂慮しておるわけでございます。したがいまして、この選挙違反裁判処理段階が終われば、私どもは昨年の日韓間の了解事項にのっとって、金大中氏の出国も含めた自由という完全な状態がそこに実現するということを強く期待しております。  また、二学生事件、これは第一義的には韓国国内法に違反した事件でございまして、第一義的に考えまして、私ども韓国におけるこの事件裁判的処理に公平さを欠くことがあっては困るという立場から、韓国に種々申し入れはしておりましたが、御承知のとおりいまやこの事件控訴段階に入っておりますので、この控訴がどの程度の期間において終了するか、こういう問題も含めて、私どもはできるだけ早い機会裁判処理段階が終わって、日韓友好立場に立つ韓国政府の政治的な好意ある措置が実現しますことを強く期待しておるわけでございます。
  13. 石井一

    石井委員 相手があることですし、将来の見通しというものも含めておりますので、非常にお答えにくい面もあろうかと思いますが、私は、いまの答弁でも、これまで過去の経過を見ておると、多少まだなまぬるい点があるという感じがいたすのです。一言で言いますならば、外交ルート処理ではもうこれはむずかしい段階がとっくに来ておるのではなかろうか。今後もひとつ着実に意欲的に解決をしていく、こういう御答弁であったと思いますが、具体的には、金大中事件に関しましては、この大統領選挙違反という国内問題が終わるまでは、それじゃこのことに関しては政府としては要求ができない、こういうお立場なのか、それとも昨年十一月の時点に両首相合意に達したのはそういうことでなく、そのことには関係なく出国というものが自由に許されておるのだという姿勢で臨まれるのか、この点まことに恐縮ですが、ひとつお答えいただきたいと思います。
  14. 木村俊夫

    木村国務大臣 私どもは昨年の了解事項早期に達成するということは、依然としてその考え方を変えておりませんけれども、しかしながら、その当時私どもが予想しなかった金大中氏の過去の選挙違反事件裁判にかかるということに相なりますれば、その裁判処理が終わるまでは、これは韓国の内政問題でございますから、それについて了解事項違反であると直ちに断ずることはできない、こういう考え方でございます。
  15. 石井一

    石井委員 ただそれを黙認して、国内事犯だということであれば、これは延々と何年かかるかわからぬというような事犯だと思います。少なくとも十一月の時点にその問題は提起されておらなかったし、日本側は関知しておらなかったのだ、またこれは日本で起こっておる問題だというふうな認識のもとに、そのこと自体に対しても非常に高いレベルでの話し合いが必要ではないか、そのことに対する解釈自体に対して、もう少し突っ込む姿勢が必要ではないか、私はこのことをあえて申し上げさせていただきたいと思います。  それから、二学生の問題でございますけれども控訴に対しては軍事裁判ですから、そんなに時間はかかりません。そこで相手側の反応を見られると、こういうことでございましょうけれども、前にも特使と申しますか、向こうの首相がやってきたというふうなこともございまして、私はその時点かなり政治的な、強力な積極的なアプローチというものが必要だと思いますが、そういうことはお考えになりませんか、いかがですか。
  16. 木村俊夫

    木村国務大臣 ただいまの段階ではそういうことは考えておりません。
  17. 石井一

    石井委員 そこで、日韓問題を解決していきますのに、アメリカ立場というものが、これは無視できない一つ立場であります。軍事的その他でささえておるのはアメリカである。経済的にささえておるのはアメリカであり、日本である。そうしますと、日韓のバイラテラルな関係だけで受けとめるのでなく、いわゆる日米韓のトライアングルの形で、これは日韓間のぎくしゃくした問題だということでなく、極東の平和という問題にも関係があるわけですし、アメリカ対外政策極東全般に対する問題でもあるわけであります。  御承知のように、日本のわが与党の中にも、こういう形での積極的なアプローチをするべきだという動きがあることは、大臣も御承知のとおりであります。政府日韓に起こっておることをアメリカに頼んでいくということはできませんけれども、私はこの段階で非公式にもそういう形での意見の交換ということも必要だろうと思いますし、それから、さらに自主的にやっておる議員外交と申しますか、そういうことに対しましても、一体政府はどういう御見解を持っておられるか、この日米韓のマルチラテラルな形の中での日韓関係ということに対するコメントがあれば、ひとつお伺いしたいと思います。
  18. 木村俊夫

    木村国務大臣 韓国におけるいろいろ政治的な動きについては、アメリカも非常に関心を持っておることは私もよく承知しております。しかしながら、この日韓間の事件につきまして、私ども政府米政府に対して何ら協議する筋ではない、これはあくまで日韓間の問題として解決すべき問題である、こういう立場でございますが、ただ、米議会はじめ米政府内のいろいろな動きにつきましては、重大な関心を持って私は見守っております。  ただし、政府間の問題でなしに、たとえば議会人同士あるいは民間人同士のそういう、これのたいへん円満な解決と申しますか、それについての御活動があれば、政府といたしましては、非公式ながら、それを歓迎するものでございます。
  19. 石井一

    石井委員 この韓国問題で常に問題になってまいりますのは、北からの脅威というものがほんとうに存在しておるのかどうか、朴政権が不安定なのかあるいは北からの脅威というものが非常に激しいのか、これは非常に判明のしがたい客観的事実でございますけれども、いま国際的にはそういうイデオロギー的な対立というものは緩和方向にいっておりますし、常識的にはそれが少なくなっておる国際情勢であることは確かである。しかし、世界の一番の焦点としてそういうものが存在しておるということも、当然韓国側が主張しておることも理解できる節もありますが、北からの脅威というものが存在するのかどうか、この点は外務大臣はどうお考えになっておりますか。
  20. 木村俊夫

    木村国務大臣 北からの脅威ということについては、韓国が主観的にそれを考えておるということは承知しております。しかしながら、私ども日本政府として、韓国における北からの脅威ということについては論評することはできない立場にございます。ただ、朝鮮半島の安全ということは、これは私ども極東の、特にアジアの安全を非常に重視する立場として、当然常に考えなければならぬ問題であることは間違いございません。
  21. 石井一

    石井委員 そういたしますと、わが国北朝鮮に対する外交的なアプローチ、今度国連会議も来ておるわけでございまして、これは当然問題になるわけでありますけれども北朝鮮に対して今後どういう政策、何かそこらに新しい外務大臣としての抱負か何かがおありですか。この点はいかがですか。
  22. 木村俊夫

    木村国務大臣 特に私がかわったからといって北朝鮮に対する政策が変わるわけではございませんけれども、ただ、国際情勢まことに流動的でございますし、また、アジア、特に朝鮮半島における緊張、最近の状況とは変わって、一昨年あたりのあの状況を見ますと、またいっそういう緊張緩和情勢朝鮮半島に訪れぬとも限りません。そういう情勢を見ながら、適時適切に対処していくというのが基本的な考え方でございます。
  23. 石井一

    石井委員 いま世界焦点になっておりますのは、やはり国連でも取り上げておるように、朝鮮半島だと思うのです。ここを何らかの形で問題を処理しなければ、わが国の平和、安全というふうな問題にも非常に大きな脅威のある問題でありますから、外交としては一番火のついている問題だと思いますが、長期的なビジョンでもけっこうですけれども外務大臣は、この朝鮮半島を、どういう形になるのが一番極東の平和という意味からもいいというふうにお考えなのか。これは具体的な問題、少し抽象的な問題でもけっこうですけれども基本的な見解をひとつお伺いしておきたいと思います。
  24. 木村俊夫

    木村国務大臣 私どもが長期的に展望と申しますか考えますのは、南北朝鮮の平和的、自主的統一でございます。その姿が最も望ましい形である、こういう考えでございます。それに至るまでの道程と申しますかプロセスといたしまして、これは南北両朝鮮、韓国北朝鮮との考え方がまず当然先立つべきではございますけれども、それまでの一つプロセスとして、国連同時加盟のような形になることが、むしろ南北両方の期待する、希望する、南北の平和的、自主的統一への有効な一つプロセスになるのではないか、こう考えております。
  25. 石井一

    石井委員 それでは、最後に、今後新大臣として積極果敢にいまのこの具体的な二問題の解決に対処されるわけですけれども、これまで大平外務大臣のときと同じような姿勢が続き、この問題の解決ができないという状態の場合、やはりわが国はきびしい決断をしなければいかぬ時期が来るというふうに考えるわけですけれども、私は、まず政策を転換せい、そういうことによってこの問題を解決せいという議論と、そうじゃないのだ、やはりまだ未処理の問題があるのだから、それを解決して、その事態を見守るのだ、日韓関係は非常に重要なのだ、こういう見方があると思うのですけれども、やはり事態かなり経過しておるわけですけれども、今後もこういう状態が続けば、わが国の対韓政策というものはやはり検討する時期が来る、そういう御決意でこれに臨まれようとしておるのかどうか、この点はいかがですか。
  26. 木村俊夫

    木村国務大臣 私はあくまで日韓関係友好が続くようにあらゆる手だてを尽くしていきたい、こういう考えでございます。
  27. 石井一

    石井委員 それでは、日韓関係はその程度にいたします。  先ほどわが党の水野委員が聞いておりました日中関係についてほんの少しお伺いをしますが、昨日、海運協定話し合いが突然とまった、この理由はどういうところにあったのですか。
  28. 高島益郎

    高島説明員 七月八日から、約一月足らずでございますけれども、東京におきまして先方の代表団と当方の代表団との間で非常に熱心な会合を重ねてまいりましたけれども協定本文かなり部分につきまして実質的な合意はできましたけれども、残りの部分につきましてはなおそれぞれ少しの猶予を置いて再検討する必要があるという結論になりまして、当分の間そういう会議経過を反省し、今後の対策をきめるための時間的猶予を置く必要があるというふうに双方認め合いまして、昨日最終的な会合を持ちまして一応中断するということになったわけでございます。
  29. 石井一

    石井委員 抽象的なお答えでございますけれども外務大臣の先ほどの御答弁にも、残っておる二つ実務協定は早急にやるのだ、こういうことなんですが、漁業協定のほうは、いまの海洋法会議動きを見ましても、なかなかむずかしい問題がどんどん提起されてきておる。それから特に、この海運協定に関しましては、仄聞するところによると、青天白日旗あるいは二つ中国の入港その他の、そういう問題が非常に大きな問題で決裂したというふうな感じを、静かに見守って、今後前向きにいく、非常に平和的に終わっておるのだという感じを受けないのですけれども、この点もう少しちょっとわかるようにひとつ説明していただきたい。
  30. 高島益郎

    高島説明員 現在なお交渉を継続中でございますので、内容を具体的かつ詳しくお話しすることができないのが非常に残念でございますけれども、いま石井先生がお話しになりました台湾の問題が議論の中に出てきたことはもう間違いない事実でございます。しかし、それが理由で交渉が中絶したというようなことでは決してございません。そういう問題も含めまして、やはりここのところそれぞれ少し間を置いて交渉再開するほうがお互いのためにいいという結論に達しまして、昨日中断した次第でございます。
  31. 石井一

    石井委員 中国問題でもう一つわが国の民間訪中団が先月訪問いたしましたときに、張香山中日友好協会の副会長が平和友好条約の予備会談を早急に開きたい、こういう非公式の発言があったようですが、このことに関して外交ルートで何らかのそういう希望事項の表明がありましたかどうか。
  32. 木村俊夫

    木村国務大臣 張香山氏の発言、私も承知しておりますが、外交ルートを通じてのそういうお話はございません。
  33. 石井一

    石井委員 実務協定二つが一応とんざしておる――とんざしておるといってはあれでございますけれども、そうすると、この予備会談の要望というものが公式に申し入れされてきたという段階には、やはり平和友好条約の推進ということから、実務協定はたな上げしてもこれを推進していくという御姿勢なのか、いま中絶しておるこの二つ実務協定をできるだけすみやかに解決した後にこれに臨みたいというのか、この予備会談の申し入れということに、仮定の問題ではございますけれども、そこまで話がいっておるわけですけれどもこれとの関連についてどういうふうに外務大臣はお考えですか。
  34. 木村俊夫

    木村国務大臣 まだ、いま申し上げたとおり、予備会談の申し入れとは私ども受け取っておりません。そういうような中国側のある要人の発言があったということは承知しております。  ただ、先ほど水野委員にお答えいたしましたとおり、どうもやはりいままでの経過から申しますと、実務協定の積み上げの上に立って日中平和友好条約を結ぶほうが自然ではないかということは私ども考えております。また、私、はっきりそれを察知しておりませんけれども中国側においてもそのような考えがあるのではないかということも察知しております。  したがいまして、そういう意味で、私どもは、やはりこの実務協定を急ぐことが先決である、ただし、急ぐにいたしましても、やはり時期的の問題がございますから、そういうこともあわせて今後見守っていきたい、こう考えております。
  35. 石井一

    石井委員 最後に、ちょっとアフリカの問題について二、三点お伺いをいたします。  きょうの報道では、政府はギニア・ビサウを承認された。これはヨーロッパの諸国が承認していない前に先手を打たれたということで、われわれのような資源のない国といたしましては、何か問題が起こってからせっせせっせとにわかごしらえの外交をするということは極度に避けなければいかぬということは、オイルショックなどを見ても、私たち深く認識をしたところでありますが、アフリカ外交に対する何か前向きの姿勢というものがあればお伺いをしたいと思ってこの最後の質問をしておるわけです。  大平前外務大臣はアフリカ訪問を計画されておったわけですね。そして新大臣のもとでは、まあ御多忙でもあろうから延期をされたわけなんだが、そういう形でのアフリカ外交、これは少し時間をおいて積極的にそういう形で対処していこうというお考えなのか、この点、この承認というふうなことにも関連いたしまして、何かアフリカ外交に対する意見がありましたらお伺いしたいと思います。
  36. 木村俊夫

    木村国務大臣 私ども、これからアフリカに対する外交を強めていかなければならぬ、これは基本方針として考えておりますが、大平前外務大臣が計画をしておられましたアフリカ訪問ということは、実はその後、私もこれを引き継ぐ考え方で先方といろいろ折衝しておりました。ところが、先方の数カ国で、あいにくその時点においてその政府首脳が不在であるというような客観的理由でこれが不可能となりましたので、残念ながら私も延期せざるを得なくなった。ただし、関係各国政府には、双方の都合がつかないために見送らざるを得ないが後日できるだけすみやかに訪問したいという意思は伝えてございます。  また、いま御指摘になりました昨日のギニア・ビサウの独立承認、これはまだポルトガルが独立承認をしていない時期にこれを断行したわけでございます。私どもはギニア・ビサウが資源を持っておるから承認を急いだという立場ではございません。御承知のとおり、アフリカにおける反植民地主義、反人種主義というものにたいへん私どもとしては、日本としても、政府としても大いに理解を持たなければならぬというところから、実はこれを断行したわけでございます。そういう意味におきまして、私は今後、アフリカのみならず、いわゆる第三世界と称せられております発展途上国に対する日本外交のあり方というものは今後とも一そう強めていきたい、こういう考えでございます。
  37. 石井一

    石井委員 要するに、この間の日本商社のローデシアにおける貿易に関連してのアフリカ機構の排日運動であるとか、やはり日本との関係が非常にいろいろの問題が起こっております。このときに新外務大臣が訪問を延期されるということは、いま申されたような理由がわからずに、何と申しますか、アフリカ軽視だ、こういう印象を与えますと私は非常にまずいという面がありますので、この点については、先ほどの御答弁がございましたので、私は今後も積極的なこういう国に対する外交をもひとつ期待いたしたいと思います。  私、これで質問を終わります。
  38. 有田喜一

    有田委員長 堂森芳夫君。
  39. 堂森芳夫

    堂森委員 新外務大臣に二、三の点、許された時間で質問を申し上げたいのでありますが、まず、すでに水野さんあるいは石井さんのお二人からもお尋ねがあった日中関係の問題でありますが、近く日中議連の議員の諸君が多数中国を訪問される、それからまた公明党の竹入委員長中国政府の招待によって訪問されるというようなことが報道されておるのであります。このようなわが国の政治関係者の重要な人たちが中国を訪問すれば、当然のごとく日中共同宣言によって予想されるべきである日中友好平和条約実務協定、こういうものについて話題が及ぶことは当然だと思うのであります。私は、この両国関係の平和友好条約等について、さっき同僚議員お二人がお聞きになっておったのでありますが、重ねて、問い方を変えた形でお尋ねをしていきたい、こう思うのであります。  ただいまも水野さんの質問に対して外務大臣は、従来大平前外務大臣がとってきた態度である四つの実務協定が次々と両国間で締結されるということを済まして、その上に立って友好平和条約というものが結ばれていくというのが自然の姿であると考えてきました、いまもそういう考え方を持っておられるというふうにも私は承ったのであります。  ところが、実務協定が現在難航しておる。さっき石井さんの質問に対して、アジア局長答弁を二度されましたが、どうも私、頭が悪いからわからぬのでありますが、大部分の点で話は妥結してきたが、この辺で中断したほうがいいという意見になったのでそういうことになったのだ、こういうような意味答弁でありますが、その点、この辺で中断したほうがいい、大部分の点では話は了解に達したが、幾つかの少ない問題で何か話が了解ができないような意味答弁にとれたのですが、どういう点について具体的に話がついていないのか、了解に達し得ないのか、その点まず御答弁を願いたい、こう思います。
  40. 高島益郎

    高島説明員 先ほども石井先生の御質問にお答えいたしましたけれども、現在の時点におきまして、たいへん残念ですけれども、詳しく、具体的に、どういう点でどうなっているということをお話しできませんけれども、残りました若干の協定本文の条項は実はやはり一番むずかしい問題で、そうたくさん残っているわけじゃございませんけれども、この問題についてこれからさらに交渉を続けましてもすぐには妥結が望めないという判断に立ちまして、そういう観点から一応この辺で少し中休みを置いて、さらによく態度を再検討した上で再開に臨むほうが適当であるという結論に達したわけでございまして、どういう点でそういう点にぶつかったのかということが言えないのはたいへん残念でございますけれども、それが現状でございます。
  41. 堂森芳夫

    堂森委員 やはりわからぬのですね、どういう点で話がつかないのか。それはあなたの答弁によれば、なかなか容易には了解に達することが困難であるというふうに考えられる問題である、こういうことだけはわかったけれども、具体的にどうだということはわからぬのであります。  そこで、新聞で報道されておるところを見ますと、海運協定については政府はなかり安易な、イージーな考え方で臨んでおった。たとえば青天白日旗の問題、これがデッドロックに来た大きな原因であるのだと新聞は報道しておるのですが、あなた方はそういうことは答弁されぬわけですが、従来日本の港には青天白日旗を掲げた台湾の船、それから中国の船が一緒に入っておったということが現実にずっと続いておったから、海運協定はそういう意味からもわりあい早く合意に達するのではないか、こういうふうに考えられておるのであります。  そこで、幾らお聞きしてもアジア局長答弁しないでありましょうから、いま両国間で公式に協議中の重要な問題であるからあなたは答弁できぬ、こういう意味答弁でありますから、外務委員会でこれ以上聞いてみてもあなたは言わないでありましょうが、とにかくそうすると実務協定が、漁業協定にしてもそれから海運協定にしてもこれがむずかしい段階で、容易に短時日では話がつかない、こういう状況にあるとするならば、そういう実務協定あと回しにして、しかも平和友好条約というものが結べるという、そういう見通しを外務大臣はお持ちでございますか、それはやはり実務協定ができなければだめだ、こういうふうにお考えでありますか、これをまず承っておきたい、こう思います。
  42. 木村俊夫

    木村国務大臣 先ほど来お答えいたしてまいりましたのは、やはり自然な形で実務協定を済まして、日中間の永久な友好関係を規定する日中平和友好条約でございますから、お互い考え方を突き合わせて、ゆっくりじゃございませんけれども、ひとつ慎重にやろうという態度はとりたいと考えておりますけれども、かりに万一最悪の場合にこの残った実務協定二つがたいへんなデッドロックに乗り上げる、このデッドロックに乗り上げるいろいろな原因はもうすでにお答えしないというようなことでお答えいたしましたけれども、そういうようなことになれば、私どもといたしましては、最々悪の場合、この日中平和友好条約の予備的な話し合いということも開始されてもいいではないか、こういう弾力的な態度をとらざるを得ない時期があるいは来るかもしれない。たいへん回りくどい表現をいたしましたが、あまりそうかたくなには考えてはおりません。その点について御了承願いたいと思います。
  43. 堂森芳夫

    堂森委員 それでは外務大臣、もう一ぺんことばを変えてお尋ねしますが、外務大臣は、二つの残った実務協定ですね、漁業協定海運協定というものは大体どれぐらいで妥結し得るであろうという外務大臣としての見通しをお持ちでございましょうか、この点を承っておきたい。
  44. 木村俊夫

    木村国務大臣 御承知のとおり、交渉ごとでございますし、これは精神的な問題でなしに、なかなか現実の利害が錯綜している問題でございます。たとえば漁業協定にいたしますれば、わが国の水産業というものが、零細な漁民を含めてどういうふうに生活が成り立つかということも含んでおります。これは互譲の精神は当然必要でございますが、あくまで国益の立場に立って交渉を続けるということでなければならぬと思います。  そういたしますと、タイムリミットを区切ってこれを妥結に持ち込むということは、国益判断上必ずしも私は適当でないという考えから、できるだけ早い機会に妥結に持ち込みたい気持ちは変わりございませんけれども、タイムリミットをいついつまでにこれをやるという見通しがあるということは、これまた交渉相手中国にもいろいろ悪い感じを与えることでもございますので、この点についてはできるだけ早く結びたいという気持ちを再度申し上げて、お答えにいたしたいと思います。
  45. 堂森芳夫

    堂森委員 外務大臣、それではさらにまたお尋ねいたしますが、私は、実務協定が妥結できない、いまむずかしい、いま急速にはできない、こういうことは、やはり基本的な共同声明のいろんな精神が、文章だけ見まするとぼやけておる、ぼやけておると言うとちょっと表現がまずいかもしれませんが、はっきりしていない点がやはり共同声明にはあると思うのです。  具体的にいいますと、台湾の問題ですね。中華人民共和国は、台湾中国の不可分の領土であるということを主張した。これを日本政府は理解し、尊重し、そして最後には、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。これで台湾中国のものだということをはっきり日本政府表明したということは解釈できますが、やはり中国の領土である、日本もそうだ、こういうふうに明快に立場表明したという表現では私はないと思う。  そしてその後、航空協定の経過をずっと見ておりますと、またあなたの党の自民党の総務会ですか、いろんな役員会等において行なわれた議論等を見ておりますと、私はやはり台湾の帰属というものに対するわが国におけるほんとうの明快な態度がないといいますか、そういうところに私は実務協定というものがデッドロックにきたという原因があるだろうし、今後こういう状況でなかなか、友好平和条約を結んでいく場合にも、やはり同じくそういうような難点としてこれが表面に出てくるということになるのではないか、こう思うのであります。  外務大臣ははっきりと、実務協定がむずかしい、なかなか妥結しないときでも、友好平和条約を結ぶような予備交渉をしようというようなことになるかもしれない、こうおっしゃいましたね。しかし、そういうような考えをお持ちであるとすると、日中友好平和条約についての基本的ないろんな構想がなければならぬ、こう思うのですね。ただ予備交渉が始まったからといって、何も構想なしに外務大臣が臨まれるということは私はないと思うのです。あなたが初めから予備交渉に加わるかどうか、これはあなたの下の人たちがおやりになるでありましょうが、それにしても、やはりあなたが構想をお持ちにならないと予備交渉にも応じていくというようなこともないのじゃないか、外務大臣としてあり得ない、そう思うのでありますが、友好平和条約交渉を、予備交渉にしてもおやりになるときに、もうすでに構想がなくちゃならぬと思うのですが、台湾の帰属というようなものについては、友好平和条約については、共同声明とは違ってもっとはっきりした姿にして、規定を盛っていくというふうにお考えでございましょうか。ちょっと回りくどくお尋ねしましたが、御答弁願いたいと思います。
  46. 木村俊夫

    木村国務大臣 日中共同声明条約的な解釈については、条約局長にでもお答えさせたいと思いますが、ただ基本的な理念としましては、今後長く日中関係の平和友好関係を規定するものは、一昨年九月二十九日に発出された日中共同声明である、これについてのわが国基本政策は変えるべきではないと思います。  ただ、それから生ずるいろんな今後の友好関係堂森先生が御指摘になりました日中平和友好条約内容というものは、私ども政府部内におきましても、まだまだそういう具体的な構想は持っておりません。ただ、平和の処理ということについては、もうすでに一昨年の日中共同声明で尽くされておる、達成されておるのであって、今後日中間交渉をしなければならぬ日中平和友好条約は、むしろ今後における日中間の長い間の友好関係を規定する基本法であるというような観点から日中平和友好条約内容考えていきたい、こう考えております。
  47. 堂森芳夫

    堂森委員 外務大臣のおっしゃることは、また蒸し返しみたいになりますが、あの共同声明の三項ですか、三項は、台湾中国の領土の不可分の一部であることを表明し、これに日本は賛意を表した、そしてポツダム宣言の八項に基づく立場をかたく守るのだ、こういうことであります。今後外務大臣として友好平和条約を結んでいかれる基本的な態度はやっぱりなくちゃいかぬと思うのですが、その場合台湾の帰属というものを、こういう表現ではなしに、簡明に、台湾中国の領土である、こういうような表現でおやりにやるということはないのでしょうか。そうなるのでしょうか。
  48. 木村俊夫

    木村国務大臣 先ほどお答えいたしましたとおり、平和処理というものは、すでに日中共同声明のいま御指摘のありました第三項でもうでき上がっておる。したがいまして、日中平和友好条約内容は、まだこれは中国側とも何ら予備折衡の段階にも入っておりませんが、また政府部内でも結論をもちろん出しておりませんし、また、話し合いもしておりませんが、私のただいまの考え方といたしますれば、むしろそういう平和処理の事項でなしに、今後日中間の永久の友好関係を規定するに必要な基本的な規定というものを内容にするものにしたい、こういう考えでございます。
  49. 堂森芳夫

    堂森委員 外務大臣、私はこう思うのです。実務協定二つが難関に逢着してきたということは、やっぱり台湾の問題に重要な関連があることは明らかなことなんです。その認識が、あなたの党の中の考え方に大きな原因があると思うのです。もちろんあなたは、あなたの党の出身の大臣であるから、党の意見を尊重されるでありましょう。しかし、その台湾に関する認識というか、そういうものに原因をして日中航空協定もああいうような非常にむずかしい場面を迎えた。現在の二つ実務協定がうまくいかないという原因も私はそこにあると思うのでありまして、それ以上私申さなくとも外務大臣御理解願えると思うのでありますが、この点について今後やはりき然たる態度をもって臨んでいかれるのが必要でないかと思うのでありまして、これはそういう意見を加えて申し上げたいと思います。  そこで、いまの水野さんの御質問に対して、私はわからぬのですが、大平談話は過去のものであるということ、台湾青天白日旗に関する大平声明は過去のものであるという外務省見解が発表されたというふうに報道されておるのでありますが、過去のものであるというのは私よくわからぬのです。しかも外務大臣は、大平発言の内容はかたく守っていくのだ、こういま答弁されました。そうすると、過去のものであるという規定ですか、位置づけですか、そういうものを外務省がしたのですか、しないのですか。したとするならば、それはどういう意味なんでございますか。過去のものであるということはもうなくなったもの、死文であるという意味もありますし、どういうことですか。もうあれは一回きりで終わったという意味ですか、どういうことでありますか。あるいはそういうことは外務省が規定したことはないのだということなら、それでもまた尋ね方は違いますが、いかがでございますか。
  50. 木村俊夫

    木村国務大臣 どうも過去のものであるという表現が私も非常に解しかねるわけでございます。したがいまして、あくまで重ねて申し上げますとおり、わが国中国との関係、これは共同声明の内容で尽きております。それ以上のものでもなければ、またそれ以下のものでもないということでございます。したがいまして、その当時、日中航空協定締結に際しまして外務大臣談話が出ておりますこと、これはもうその当時日中航空協定締結に際して出されたものであって、これを取り消すとか取り消さぬとかいうものではないという意味で、過去のものという表現がもしありとすればそういう意味で御承知を願いたいと思います。
  51. 堂森芳夫

    堂森委員 大平発言は過去のものであったということは、そういう規定を外務省がしたのですか、してないのですか、どうもわからないのですが……。
  52. 木村俊夫

    木村国務大臣 いま私の御説明のしかたが悪かったと思いますが、過去のものであるという言い方ではないのでありまして、その当時出されました外務大臣談話は、日中航空協定締結に際して出されたものであり、それを現在取り消すというようなことは考えられないものであるというもので過去のものという表現がもし使われたとすれば使われたと思います。
  53. 堂森芳夫

    堂森委員 条約局長おられますが、どこでそんな規定がされたのですか、発表されたのですか、あるいは新聞等が推定して報道したものですか、どういうことなんですか。よくわからぬですね。
  54. 高島益郎

    高島説明員 私ども新聞では承知しておりますけれども外務省のいかなる人も、いま先生のおっしゃったような過去のものということを言った人はないということははっきりしております。
  55. 堂森芳夫

    堂森委員 どうもよくわからぬですが、どうしてああいう過去のものであるというような記事新聞に出てきたのか。きのうも参議院の外務委員会でこの問題について質疑が出たのでしょう。そういうことはだれも言わないなら言わないでいいけれども、しかし、どうしてああいう記事が出たのか。とにかくそういうことは外務大臣はあり得ないんだ、大平前外務大臣表明した談話の趣旨は守っていくんだ、こういうことであります。これは当然でございましょう。  そこでもう一つ友好平和条約内容等について、日中共同声明の第一項で、「日本国と中華人民共和国との間のこれまでの不正常な状態は、この共同声明が発出される日に終了する。」これは戦争状態がなくなったということだと、これは絶えず外務省あるいは外務大臣はそういう答弁をされてきましたですね。今後友好平和条約が結ばれるときには、外務大臣としては戦争は終わったのだという簡明な表現でそういうことをされていくことになるのでしょうか、そういうことはないのでしょうか、お尋ねしたいと思います。
  56. 木村俊夫

    木村国務大臣 先ほどからの私のお答えが足りなかったと思いますが、そういう戦争の終結というような不正常な状態を停止するということは、すでに一昨年の日中共同声明の中にあらわれておりまして、それはもう日中平和友好条約内容にはする必要はない、こういう考えでございます。したがいまして、もうすでに正常化された、平和が回復しました後の日本中国間の、これは永久に続く関係でございますから、その友好関係に何らかの基本的な規定がなければならぬ、そういう日中間を律する友好一つの大典としての日中平和友好条約というものを考えていきたい、そう考えておる次第でございます。
  57. 堂森芳夫

    堂森委員 それから、当然わが国は平和憲法を持っており、国連外交を中心にして外交を進めていくという立場を言っておられるわけですから、外国を侵略するなんというようなことはあり得ないことである、これはもう当然でありますが、外務大臣としては、この日中友好平和条約が結ばれるときには、たとえば相互が侵略をしない、不可侵である、こういう立場友好平和条約の中に挿入していかれるべきだと私は考えるのですが、外務大臣はそれはもういいのだというお考えでございますか。いかがでございましょうか。
  58. 木村俊夫

    木村国務大臣 そういう日中間基本的な政治関係と申しますか、そういうものにつきましては、もう十分日中共同声明の中にあらわれております。私は日中平和友好条約内容は、先ほどから重ねて申し上げますとおり、今後の友好関係を規定する基本的な原則をうたったらどうか。  もちろんその締結に際しまして、私ども日中間でいろいろ出します共同声明なり、あるいはその前文というものには、当然そういうような趣旨の精神規定もなければならぬと思いますけれども友好条約の規定そのものの内容は、私は必ずしもそういうものを入れる必要はない、むしろ私は今後の日中という一つのバイラテラルな関係のみにならず、日本中国が手を結ぶことによってアジア極東に対する平和を一体どういうふうに招来すべきかというような、そういう大きな観点からの考え方を、日中平和友好条約締結に際して、お互いに胸襟を開いて語り合いたい、こういう考えでございます。
  59. 堂森芳夫

    堂森委員 時間がありませんので、日中関係についてもう一点、大事な点でありますので、外務大臣にお考えを聞いておきたいのです。  日中友好平和条約というものは、当然そうだと思うのでありますが、今後両国間の友好関係を増進、促進していく、これに主体が置かれるべきものであろう、従来のような、両国間に戦争があって、そうしてその終わったあとの講和条約というようなものではなかろうと思うのですが、外務大臣はどういうふうなお考えでございましょうか、この点も承っておきたいと思います。
  60. 木村俊夫

    木村国務大臣 全くおことばのとおりでございまして、私ども日中間友好を維持し、これを一そう増進するという考え日中平和友好条約交渉に臨みたい、こう考えております。
  61. 堂森芳夫

    堂森委員 すでに共同声明が発せられましたときには田中総理大臣大平外務大臣が、ことしの初めには外務大臣の大平さんが行かれた。   〔委員長退席、水野委員長代理着席〕 すでに二回、そうした総理大臣外務大臣外務大臣、こういう中国訪問があったわけですが、ちょうどことしの九月には航空協定が実を結んで両国の航空機がお互いに行ったり来たりするということになるだろうと思うのでありますが、こういう時期に、外務大臣は御自身で向こうを訪問される気があるのかないのか、それからまた向こうから、たとえば姫鵬飛外務大臣――ちょうど去年の十月当外務委員会の有志が北京に行きましたときも、姫鵬飛外務大臣は、ぜひ行けるように――ということは航空協定であったと思うのですが、そういう約束ができたときには行きたい、こう言っております。あるいはそのときに鄧小平氏に会ったときも、日本を訪問するようになる時期をと、まあこれは外交辞令もありますが、そういう意味で、中国の要人をこういう時期に呼びたいという考え方をお持ちでありますか、いかがでありますか、これも聞いておきたい。
  62. 木村俊夫

    木村国務大臣 私も機会があらば、また必要に応じて中国を訪問したい気持ちは十分ございます。また、中国外務大臣機会があって日本を訪問されることを、これまた強く望んでおります。  ただこの九月二十九日、まだ技術的に多少詰めなければならぬ点があるようでございますが、幸いにして日中間、北京と東京間に第一便が飛ぶことになれば、私はその機会に北京を訪れるということは一応考えておりませんが、もっと広い範囲の国民の代表である方々がこの第一便によって日中間のもっと幅広い友好を強めていただく、広めていただくということは、適切ではないかと思います。  したがって、私自身といたしましては、そういう機会でなしに、もっとフリーにもっと必要なときにいつでも中国へ飛んでまいるという考え方でございます。
  63. 堂森芳夫

    堂森委員 時間もありませんので、もう一点だけ日中関係についてお尋ねしておきたいのですが、この友好平和条約締結の際に、たとえば大陸だなの問題等が日中間で非常なトラブルを起こすというような傾向の問題に発展したことは、外務大臣承知のとおりであります。   〔水野委員長代理退席、委員長着席〕 これは領土と言えるかどうか、大陸だなの問題とか、まあ台湾の問題は、これは当然のことでありましょうが、そういうふうな両国間のトラブル等が起きないような、そういうふうな何か協議を行ないまして、妥結さしていくということも当然盛り込まなければいかぬと思うのでありますが、その点についていかがでございましょうか。
  64. 松永信雄

    ○松永説明員 日中間には大陸だなだけでございませんで、ほかにもいろいろな解決しなければならない、話し合いをしなければならない問題があろうかと存じます。これらの問題を一つ一つ平和友好条約の中で取り上げて処理をするということは必ずしも適当ではないだろう。先ほど大臣が言われましたように、日中間基本的な関係を規律する指針なり原則なりを持つ内容条約であるべきだというふうに考えております。
  65. 堂森芳夫

    堂森委員 時間がありませんので、もう一つの点について簡単にお尋ねします。  日韓関係の問題であります。これは私、新聞報道で見たのですが、きのう参議院の外務委員会において、韓国に対する経済援助について、政府は従来とは違った立場をとるべきではないかというような意味質問でございますかに対して、外務大臣は、経済援助は民間の経済界がやることだから政府とは――これは新聞で見た私の感じですよ、政府とは関係がないのじゃないかというような意味答弁をされたのでしょうか。その点承っておきたいと思うのです。もし、そうだとするとたいへんけしからぬ。
  66. 鹿取泰衛

    ○鹿取説明員 昨日の参議院の外務委員会で社会党の田先生から御質問がございまして、日本政府としては今後韓国との経済協力問題は、一応閣僚会議から離して事務的に検討するという方針のようだが、これではその内容国民の前にかえって明らかにされないということにはならないかという御質問がございました。これに対しまして私は、事務的に話し合いをいたすにしましても、政府間の借款の問題であれ、技術協力の問題であれ、またいわゆる民間べースの経済協力と言われます輸出信用とか投資というようなものも、政府で全貌をつかめるわけでございますので、その全貌を国民に対して明らかにすることはできますというお答えを申し上げたわけでございます。
  67. 堂森芳夫

    堂森委員 どうも私、ちょっと新聞をよく読んでなかったものですから、あるいは――しかしいまの答弁と私の聞いたこととはまるで違うことでありまして、ちょっとあれであります。まあ外務大臣に私聞いていきます。  現在韓国朴政権の政治というもの、あの姿というものは、外務大臣はどのような御認識でおられるのでありましょうか。ばく然たる質問のしかたのようでありますが、私はこれが基本だと思うのでありまして、従来たとえば田中総理大臣は本会議の席上で、あたかもデモクラチックな政権のような答弁をされて、本会議で失笑を買ったことがあったのですが、外務大臣朴政権の政治は一体どういう政権であるとお考えでございますか。その性格ですね。独裁政権であるのか、民主主義を守っておるような、そういう民主主義の道を歩もうとする努力をしておる政権とお考えでございますか。これはやはり大事なことである。どういう御認識でございましょうか、外務大臣としてのお考えを承っておきたい。
  68. 木村俊夫

    木村国務大臣 たいへん恐縮でございますが、政府として他国の国内政治体制をとやかく批判することは差し控えたいと存じます。
  69. 堂森芳夫

    堂森委員 それはおかしいと思うのであります。そうでないでしょうか。たとえばソビエトロシアの政権は共産党の政権である、これはもうそうおっしゃると思うのです。じゃアメリカの政権はどういう政権であるか、こうお尋ねしたら、こうこうだと御答弁になると思う。朴政権というのは、じゃ、民主主義の道を歩む、一生懸命そういうやり方をしておる政権とお考えでございましょうか、いかがでございましょう。
  70. 木村俊夫

    木村国務大臣 まあ民主主義、わが国のような民主主義もありますれば、またアメリカのような民主主義もございましょうし、また民主主義の仕組みを持ちながら、ある客観的な事情あるいは主観的な事情のために、それを暫時別の形態に切りかえざるを得ないという国もございましょう。そういうようないろいろな国々がございまして、現在その政権が一体民主主義をとっておるかどうかということは、ただその形だけでもわからないときもございましょう。  そういう意味で、私どもは、現在ある国が非常に緊急体制をとっておるからといって、その国が民主主義の国でないということを断定するのは、これはやや、少なくとも政府としては軽率ではないかと思いますので、先ほどお答えしましたとおり他国の政治制度については、もちろんそれに非常に重要な関心を持って注視することは当然でございますが、明らかにこれを批判するということは差し控えたいと存じます。
  71. 堂森芳夫

    堂森委員 時間がありませんから、残念でありますが、私は、外務大臣がそのような答弁をされることについて、そのお気持ちはわかりますけれども、やはり大いに問題があると思うのです。そして、現在のその認識をはっきりお持ちになるか、そして田中内閣はそういう認識を持って外交考えているかどうか、そこにやはり原因があるのでありますから、私は、これは非常に重要な問題であると思います。  もっとき然とした態度で――前外務大臣の大平さんの当時からわれわれ主張してきました、金大中事件に対してもっとき然たる態度をとってもらいたい、とるべきであると。それから今度の二学生事件についての韓国政府のやり方、その後金大中事件について、田中総理大臣韓国の総理大臣が約束したこともほごにするとか、いろいろな問題等あるわけでありますから、もっとき然たる態度をもって韓国に対して臨んでもらいたい。少なくとも、現在あなたが非常な遺憾の意を表明しておられるような韓国の事情等について、外務大臣が理解、了解されるような段階にこない限り閣僚会議なんかやらないような態度で今後臨んでもらいたいと思う。そして韓国朴政権をささえておるのはアメリカの武器援助と日本の経済援助ですよ。そしてあのファッショ政権をささえておるのは日本の経済人であります。そんなことをもっとはっきりさして日本外交をやってもらいたいということを、私はいろいろ申し上げたいのですけれども、時間がありませんから、これで質問を終わります。
  72. 有田喜一

    有田委員長 河上民雄君。
  73. 河上民雄

    ○河上委員 木村大臣に、韓国の問題とそれから最近起こりましたOTHレーダーの問題につきまして、許された時間で御質問をしたいと思います。  木村さんは、昨年の八月八日、韓国の政治家金大中氏、当時日本におられたわけですけれども、この金大中氏と会見をする予定であったというふうに伺っております。たまたまその日金大中氏があの拉致事件に遭遇して、ある意味においては、ひょっとすると歴史的な会見になったはずのこの約束が永久に流れたようなかっこうになっているわけですけれども、今回外務大臣になられまして、まず最初に当面する問題として日韓関係が起こっているというのも、これも一つの奇縁ではないかと思うのでありますが、そういうような非常に個人的にもある意味では痛切な体験をお持ちになっております大臣は、この金大中事件あるいは太刀川、早川両君の事件についていまどのような心境でおられるか、まず初めに伺いたいと思うのです。
  74. 木村俊夫

    木村国務大臣 金大中氏に会う約束でございました昨年の八月八日、私はまだきわめて自由な立場におりました。いかなる方にもお会いする考えで実は予定しておったわけでございます。その後こういう事件になりまして、私は、金大中事件または日本人の二学生事件、この両事件を通じまして、たいへん困ったことになったという考えは率直に持っております。  しかしながら、両国政府間の問題でございますから、ただ困ったことになっただけでは済まされない。したがって、政府としては当然なすべきことはなし、主張すべきことは主張する。しかしながら、いまのわが国政府立場としては、当然これは外交ルートを通じるいろいろな申し入れであり、また働きかけでなければなりません。したがって、そこに対等の外国政府同士の一つの基準ないしカテゴリーというものがございます。その中で最大限の力を用いていま私どもは努力をしておるわけでございます。  ただ、私は、もっと長期的に日韓関係考えれば、この日韓関係に不幸にして起こっておりますこの二つの、あえて言えば不正常な事件、これを早く解決することが、日本韓国関係のみならず、韓国自身のためにも私は非常に必要ではないかという、一つのたいへんいら立たしい感じを持っておることを率直に申し上げたいと思います。
  75. 河上民雄

    ○河上委員 いま大臣から率直な御感想を述べられたのでありますけれども外交交渉ではございますけれども、やはりそうした交渉に当たる原点は、そういう、ある意味における率直な感情、エモーションにあるのだと思いますので、それを大切に持ち続けて、そこから適切な行動を進めていただきたいと、こうまず初めにお願いをいたしたいと思います。  日韓関係の問題につきましては、いま堂森委員より大局的な御質問がありましたので、私は幾つかの問題について、その線に沿って御質問をしたいと思うのでありますが、まず第一に、私、五月の八日、第七十二国会の外務委員会におきまして、当委員会でございますが、高島アジア局長と質疑応答をいたしました。太刀川、早川両君の事件についてでございます。そのときに高島局長は、ここに私は議事録を持っておりますが、要約いたしますならば、太刀川、早川両君の日本国内における行動が起訴の対象になるはずはない、もしそのようなことがあるならば、これは主権の侵害とまではっきりことばは使っておりませんけれども、主権の侵害になるというような意味の御答弁を申されたのであります。ところが、その後韓国の軍事法廷におきまして正式に出されました起訴状あるいはその後の論告あるいは判決におきましては、一貫して、指令は朝鮮民主主義人民共和国、いわゆる北鮮のほうから日本を経由してソウルに届けられたのだ、そしてその日本における太刀川、早川両君の一つの経緯というものが、この両君が媒介者となってそれが伝えられたという、この論理で一貫しておるわけであります。  そうなりますると、高島局長の御答弁からいいますると、これは明白なる日本の主権に対する侵害であるというふうに、外務省の御見解からいってもなるのではないかというふうに思うのであります。そしてまた、そのようなことはあり得ないと、再三再四ここにおられる土井委員質問にも重ねて答弁されておる。  そういう点から見ますると、私は、当然この点について日本政府としては韓国政府に対し、少なくともこの部分について抗議をすべきではなかったか、実際に抗議をされたのかどうか、現在の御見解並びに抗議をされたかどうかについてお尋ねをいたします。
  76. 高島益郎

    高島説明員 ただいま河上先生御引用になりました私の答弁基本になっているようなので、誤解を避けるためにもう一回読ましていただきます。私がお答えいたしましたのは、「韓国に限らず、いかなる外国との関係におきましても、日本における言論、それは当然日本の法令に従ってのみ判断される問題で、この日本における言動を根拠にいかなる外国もこれを処罰する、その他法令の適用下に置くということはあり得ないことでございます。その点は、韓国政府に対しましても念を押してございまして、そういう点は絶対にないという確言を得ております。それから、今回の事件に関連いたしましても、たとえば早川氏は共産党員であったということになっておりまして、そのことがいかにも事件関係あるかのごとく聞こえましたので、わがほうとして特に念を押しまして、そういう事実と今回の容疑事実との関係を特に確認いたしましたところ、先方ははっきり、韓国側としては、両名が韓国内でどういうことをしたかという点だけが問題となっているという点を回答いたしてきておりまして、この点については何ら誤解はないと私ども確信いたしております。」こういう答弁でございまして、主権侵害等のことは私は一言も言った覚えがございません。  それから、ただいまの御質問でございまするけれども、その後、これは六月でございますが、裁判がございまして、裁判の過程におきましても、こういう点について非常な関心を持って注目してまいったわけでございまするが、検事の求刑におきましても、また第一審の判決におきましても、両名の韓国内における行動のみを処罰の対象としているということがはっきりいたしております。  もちろん、起訴状あるいは判決文の中に、いま先生がおっしゃったようなこと、日本におけることについて書いてはございます。しかし、そのこととそれが処罰の対象になっているということとは全然別個なものでございまして、処罰の対象になっているのは、もっぱら韓国内における両名の行動であるという点が弁護士を通じてもはっきりいたしておりますし、また韓国政府からもそういう点ははっきり確認をいたしております。
  77. 河上民雄

    ○河上委員 その辺は解釈が違うかと思うのですが、たとえば郭東儀氏と会ったという太刀川君の日本における行動、あるいは早川君の日本における過去の経歴というものが、やはり今回の容疑事実の非常に重要なポイントになっている。確かに事件韓国で起こったことを対象にしているわけですけれども、それをいわゆる北鮮の指令に基づいてやっているのだということを裏づけるためには、どうしても両君の日本国内における行動ないしはその過去の経歴というものが絶対必要だという論理構造になっているのですね。その点こそ実は高島局長が申されておりますように懸念があるので、何度も問い合わせざるを得なかったのじゃないかと思うのですが、その点はいまの御答弁ではちょっと私納得がいたしかねるのでございます。  ここで何度も押し問答をいたしましてもいかがかと思いますけれども大臣、こういうような問題につきましてどのようにお感じになっておりますか。
  78. 高島益郎

    高島説明員 繰り返しになりまするけれども、両名の韓国内における行動が実際に処罰の対象として考えられておるという点はきわめてはっきりいたしておりますので、私、これ以上お答えする必要はないかと思いますけれども、その点につきましては政府を御信頼いただきたいと思います。
  79. 河上民雄

    ○河上委員 その点が私どもも不安であったし、また外務省においても懸念されたからこそ何度も念を押されたと思うのでありまして、ここで非常に限られた時間で何度も質疑応答をいたしましてもいかがかと思いますが、私としてはこれは今後非常に重大な問題として残る。  これは単に太刀川、早川両君のみならず、六十万にのぼる在日朝鮮人の運命にも非常な、生活と人権にかかってくる問題だと思うのでありまして、日本国内において合法的に滞在を許され、また生活をしておる外国人あるいは日本人の問題としてこれは非常に重要なことだと思いますので、そこははっきりと線を引いておかれないと、今後またやはり似たような問題が起こったときに、いまの御答弁あるいは政府の態度というものが非常に不幸な結果を招くおそれがあるというふうに私はその懸念を表明して、この点は先に進ましていただきたいと思います。  それでは、政府は、両君の具体的な行動について、つまり処罰の対象になった具体的な行動について、韓国政府に対し正式に問いただしたか、証拠をあげること、挙証を求めたかどうか、その点をお伺いいたします。
  80. 高島益郎

    高島説明員 今回の事件に関連いたしましての両君の韓国内における行動については、これは現に裁判係属中でございますし、裁判の過程において本人から、また弁護士から、あるいはこれに対する証人及び証人に対する反対弁論、そういったものを通じて明らかにされるべきものであって、私たち、現在の過程におきまして、政府政府関係で、この事件関係する両君の行動について一々韓国政府に問いただすということはするべき筋合いのものではないというふうに心得ております。  いままでのところ、第一審までにおきましては、もちろん両君が否定したこともございますし、また是認したこともございますし、いろいろそういう過程におきまして両君の行動が挙証されてきておるというふうに考えております。
  81. 河上民雄

    ○河上委員 それではいまのところ、韓国政府から伝えられることをそのまま一応信じて対処しているということになるわけですね。
  82. 高島益郎

    高島説明員 韓国政府ではなくて、韓国政府のつくりました軍事裁判のもとで、その裁判の過程で明らかにされつつあるということで、政府から聞いているわけではございません。
  83. 河上民雄

    ○河上委員 そうしますと、具体的に政府からは何の連絡もないけれども裁判の報道を通じて知っている、こういうことでございますか。
  84. 高島益郎

    高島説明員 はっきりといたしておきますけれども、いままでの過程で、もちろん裁判に直接政府は関与するというわけにいきませんので、ただ政府が関与している部分は、たとえば起訴状を入手するとか判決文を入手するとか、あるいは間接的ですけれども、弁護士といろいろ接触して、弁護士を通じて日本政府の懸念していること、日本政府が聞きたいことを法廷を通じて確めてもらうというふうなことはやっております。それ以上に政府が出ていくということは不可能でございます。
  85. 河上民雄

    ○河上委員 それでは太刀川、早川両君への面会が拒否されておるという事実について、政府はどのように考えておりますか。
  86. 高島益郎

    高島説明員 家族のこの両名に対する面会につきましては、再三再四しつこいほど政府から先方に要請いたしてきましたけれども、現在までのところ実現いたしておりません。その点はきわめて遺憾でございます。  ただ、弁護士につきましては、たしか本日早川氏につきましては弁護士が面会をしているはずでございます。
  87. 河上民雄

    ○河上委員 今度の事件では弁護人まで逮捕されているというようなケースもあるわけですが、面会もほとんど許されておらぬし、両君の弁護を受ける権利というものがこのように不当に拒否されたりあるいは制約されているという事実に対して日本政府は抗議すべきだと思います。また抗議する以上は何らかの一種のペナルティーといいますか、それに対する抗議がいれられない場合の何らかのペナルティーを伴うべきだと思いますけれども、そういうような強い抗議をされるべきだと思いますけれども、いかがでございましょう。
  88. 高島益郎

    高島説明員 たとえば今回のような事件におきまして、一般的にのっとるべき準則が日韓政府間にございますれば、その準則に従って面会を要求し、しかもそれがいれられないということであるときに初めて抗議ということがあるかと思います。またそれ以外に、たとえば国際的な基準があって、こういう場合には一般的に当然面会を許すべきであるということでございますれば、これも可能かと思います。  けれども、はっきりしたそういう国際的な基準も必ずしも明確でございませんし、また現実に韓国では、ほかの被告につきましては弁護士がやっと一回程度面会を許された程度にすぎませんし、家族はもちろんのこと公判係属中は一切認めないというたてまえだそうでございまして、少なくとも他の被告との間に差別待遇は全くない、のみならず、わがほうの二人につきましては弁護士は三回ないし四回いままで面会を許されておりまして、むしろ優遇されておるという面もございます。  ただしかし、先生のおっしゃったような家族の面会については、いままでがんとしてこちらの要望に応じてくれないという点は、先ほども申しましたとおり、抗議とかなんとかという問題以前の問題といたしまして非常に遺憾であるというふうに考えております。
  89. 河上民雄

    ○河上委員 非常に遺憾に感じておられることはわかりましたが、いまのところ具体的な行動にはまだ出ない、こういうことでございますね。今回の事件につきまして、どういう態度で臨むかということは、われわれ日本人として非常にむずかしい問題だと思うのでありますけれども二つ大体態度はあると思うのです。  一つは二人の日本人の学生のみを救い出すためにいろいろ努力をする、またそのためにいろいろ代償を用意するというような考え方一つあると思うのです。もう一つは今回五十五名の方に判決を下したこの裁判、いわゆる民青学連事件についての裁判そのものに遺憾の意を覚え、怒りを覚えて反省を迫るといいますか糾弾するというか、そしてこの不当な裁判そのものから五十五名の方を救い出すという、こういう態度と二つあると思うのであります。  前者の場合でございますと、もしかりに何らかの意味でそういうことが可能であったといたしましても、この事件そのものは一体のものでありますから、その場合にどういう問題が日本人として起こるかということは、われわれとしては非常に重大な問題だと思うのです。大臣といたしましては、この問題について、この二つ考え方について、どういうふうな見解なり心境を持っておられるか、伺いたいと思います。
  90. 木村俊夫

    木村国務大臣 当然のことですが、政府といたしましてはいま御指摘の二つの場合、これを画然と区別をせざるを得ない立場にあります。したがって、韓国人被告を大部分とする五十五名のこの事件、これは政府として韓国の内政問題にかかわる問題であるので、これに対して公式な批判は差し控えたい。ただし、国際世論の中にいろいろ出てくるであろう傾向は、これを重大な関心を持って見守るという態度でございます。
  91. 河上民雄

    ○河上委員 外交するにあたりまして、一つの権力だけを対象にするという外交、いわゆるオーソリティーだけを対象にするという外交もあろうかと思うのですけれども、しかしそれ以外に、やはりそこに住んでいる、生きている民衆に対する、それを念頭に置いた外交、当然そこにあるヒューマニティーというものを大事にする外交、そういうものはやはりあってしかるべきだと思うのです。ことしの一月、田中総理がインドネシアに行かれたときに、あのような激しい反日デモが起きました。これは決してインドネシア政府日本政府との関係が悪いわけではない、いまの政府同士の間にですね。しかしあのように民衆は立ち上がっているのであります。  そのことを考えますときに、韓国問題であっても、ただいわゆる現存するオーソリティーだけを、その権威だけを対象にする外交では、いま東南アジアに起こっておる問題ですね、日本政府というものはその民衆のヒューマニティーというものを大事にしないのだという、そういう印象を世界に広く与えるということは、広い意味における外交をみずから放棄することになると思うのです。私は、国際間という一つの制約もあろうかと思いますけれども、そこはやはり忘れてならぬということを強く申し上げたいのでありますけれども大臣はその点どういうようにお感じになっておられますか。
  92. 木村俊夫

    木村国務大臣 私もその点については全く同感でございまして、国同士の外交といえども、やはり人間と人間とのおつき合いでございます、触れ合いでございますので、そういう意味外交というものはどうしてもなければならぬ。しかしながらオーソリティー同士の問題になりますと、しかく簡単にはまいりません。したがってこれからの外交というものはもっと幅広い、すそ野の広い国民的基盤に立った外交でなければならぬという点については私も全く同感でございまして、そういう面について、単に政府のみならず、国民全般のそういう面についての御協力が願わしい、こういう考えをしております。
  93. 河上民雄

    ○河上委員 あまり時間がございませんので次に移りたいと思いますけれども、いま政府あるいは与党周辺からしきりに言われることは、高度の政治的解決というようなことばであったわけです。最近あまりそういうことを言いませんけれども、一時そういうことが言われておりました。その内容というのは、国外退去という措置を期待しているのではないかと思うのでありますけれども、一体そういうことが外務省認識どおりになかなかいかないのじゃないかと思いますけれども、その点、外務省はいまどういう見解をお持ちですか、それを伺いたいと思います。
  94. 高島益郎

    高島説明員 いま第一審が終わりまして、これから第二審が行なわれる。第二審の次にさらにまた第三審まで上告するかどうかということは御本人のことでございますので、政府としてとやかく言う筋合いではございませんが、私どもといたしましては、できるだけ早く両名が国外退去になって日本に帰ってこれるというような事態になることを希望いたしております。
  95. 河上民雄

    ○河上委員 それではもうあまり時間がございませんが、もう一つの問題でございますが、OTHレーダーの問題について二、三お尋ねしたいと思います。  四十二年の二月に米軍から外務省に通告があったといいます。そしてまた外務省はその点について防衛庁に通告することを忘れたというような答弁をしているようでありますけれども、これはアメリカのいうことは何でも聞くという外務省の習性を再び暴露したものではないかと思いますが、この怠慢についてどう考えておるか。また防衛庁のほうはほんとうに通告を受けていなかったのかどうか。
  96. 山崎敏夫

    ○山崎説明員 アメリカ側がこの施設を設置するにあたりまして、いまお話がありましたように、昭和四十二年二月わがほうに事前に通報いたしております。この点につきまして、アメリカ側が日米安保条約上の義務を履行いたしますにあたって、日本にあります米軍の基地内に設けます装備の一つ一つにつきましてわがほうに通報があるわけではございません。ただ、この問題につきましては、ただいま申し上げましたように、昭和四十二年の二月にその設置の計画の概要につきまして口頭で外務省に通報してきたわけであります。その当時この通報を防衛庁に伝達しなかったという点につきましては、政府部内の連絡が十分でなかったという意味において遺憾に存じます。
  97. 河上民雄

    ○河上委員 レーダーということでありますから、これは周波数の管理の問題かどうなっていたかということを非常に疑問に感ずるのでありますが、昭和二十七年六月の日米合同委員会合意されたところによりますと、「米軍の必要とする電波の取扱い」が協議されております。それによりますと、「米軍の開始する新業務に対する周波数の分配は、米軍の要請により、且つ、そのときに日米間で合意するとおりに行うこと。」というような協議がございます。それからまた「国際電気通信連合に対する通告、登録は米軍が行うこと。」というような取りきめがあるわけですけれども、いま問題になっておりますOTHのレーダーにつきましては、このときこのようなことが十分に行なわれたのかどうか伺いたい。
  98. 松永信雄

    ○松元説明員 お答えをいたします。  いま先生のお説のとおりでございまして、米軍の使用周波数につきましては、合同委員会の下に日米周波数分科委員会というのがございまして、そこで米軍の使用いたします周波数等につきまして、その使用、調整、管理について検討いたしまして、これを合同委員会に勧告するということになっております。  ただ、日米周波数分科委員会で扱います周波数につきましては、特にそれを利用いたします目的等について、この目的にこの周波数を使うというような協議ではございません。したがいまして、いまOTH用にどういう周波数の協議があったかというような御質問でございますけれども、私どもそれにもろにお答えするようなものはございませんけれども、すでに米軍が使用いたしております周波数の中で、協議済みのものを使用しているというふうに理解をいたしております。
  99. 河上民雄

    ○河上委員 そのOTHに使用する周波数は何であるか、周波数がどれであるかということを、日本側は全然管理していないわけでございますか。それとも、もしわかっているならここではっきり言っていただきたいと思います。
  100. 松永信雄

    ○松元説明員 御説明申し上げます。  OTHと申しますのはいろいろ方式がございまして、主としてわが国で使っておりますOTHと申しますのは、周波数の高いほうでございまして、いわゆるマイクロ波に近いほうの周波数でございますが、新聞等の記事で拝見する限りにおきましては、今回問題になっておりますのはかなり低いほうの周波数であるということであります。ただ、協議の内容といたしまして、これをOTH用に使いますというような協議はございません。
  101. 河上民雄

    ○河上委員 もう非常にあいまいでございますけれども、あいまいだということがわかっただけのことで非常に残念ですが、もうすでに時間が参りましたので私はこの辺で質問をやめますが、今回のOTHの問題は、これが全地球的な米軍の安全保障のために行なわれているものであることは非常に明らかであります。そうなりますと、日米安保条約の第六条の規定というものは、昨日の参議院における外務省答弁でほとんどくつがえされてしまっている、空文化してしまったということをもっと重大に考えなければいけない、私はそのように考えております。ここで大臣の御答弁をいただくと、また時間を越えてしまうのでありますけれども、私はそのことを強く大臣に、きのうの答弁が非常に重要な意味を持っているということを認識していただくことを特にお願いいたしまして、私の時間がいま過ぎようとしておりますので、これで終わりたいと思います。
  102. 有田喜一

  103. 土井たか子

    ○土井委員 新大臣就任の初質問に、ひとつ端的にお伺いしたいことがございます。  それは、ただいまベネズエラの首都カラカスで開かれております国連第三次海洋法会議で問題になっております領海十二海里が設定されるということになりますならば、わが国の場合、国際海峡と称される海峡が領海内に一体幾つ、それはいずれの個所にあることになるのか、これは御確認なすっていると思いますが、ひとつそれからお答えいただきたいのです。
  104. 杉原真一

    ○杉原説明員 お答えいたします。  現在カラカスでの海洋法会議で、領海十二海里説がきわめて有力になっているということは御指摘のとおりでございまして、その結果、日本が持っております海峡のうちに、幅員が十二海里プラス十二海里でございますから二十四海里以下の海峡であって、従来の領海制度でございました三海里時代の領海制度に服する海峡の幅六海里をこし二十四海里以内であるという海峡の数は、非常におも立ったものだけで――沖繩の方向かなりたくさんそういう海峡があるのでございますが、現在のところ国際通航に使用されている海峡でそのような海峡というのをあげてまいりますと、次のようなものがあります。  まず、宗谷海峡、これは二十海里でございますから当然入ります。それから津軽海峡、これが一番峡いところで十海里でございます。それから対馬海峡の西水道が二十三海里、東水道が二十五海里それから、これは海峡の名前が書いてございませんですが、鹿児島と種子島の間にございます海峡が十六海里、それから種子島の西にございます海峡が十二海里、それから北海道の国後と本土との間にございます海峡が九海里、このように国際航路に使われております海峡で、新しく領海が十二海里になりますと、これに影響を受けてくる可能性のある海峡がございます。  あと、国際航行にはひんぱんには使われておりませんですが、幅員だけをはかりますと二十四海里以内の海峡というのは、特に南西諸島方面にあるように伺っております。
  105. 土井たか子

    ○土井委員 いま日本においてもたいへんに指摘をされている個所が問題になりつつある国際海峡について、この自由航行というのが今回の海洋法会議焦点一つになっているようであります。先般来、外務省を中心に各関係省庁が政府の中で協議をなさいました結果、この国際海峡の自由航行について原則的に認めざるを得ないのじゃないかというふうな方向が打ち出されているやに聞くのであります。  そこでお伺いしたいのです。自由航行と申しますのは、たとえば潜水艦などは浮上しないで、潜水したままで海中を航行して、したがって、かつその旗も掲げないで航行できるということになるのじゃなかろうか。この点は端的に、自由航行ということに対して政府はどういう態度で臨まれるかということが一つ。それから、いまたとえばと申しましたけれども、潜水艦のごときは一体どういうふうな航行のありさまが自由航行ということによって認められることになるのか。この二つお答えいただきます。
  106. 杉原真一

    ○杉原説明員 ただいまの御質問のうちの自由航行説というものが、海峡問題を論ずる際の一方の有力な説であることは申すまでもございません。それに対抗いたしますものとして無害航行説派というものがございます。現在までのところ、この問題についての各国の発言というものはまだあまり出ておりません。  先般私が帰ってまいりますころ、すなわち会議が始まりまして約四週間を経過したころ調べましたところでは、会議に参加しております百四十カ国ぐらいのうち五、六十カ国がこれについて意見表明しておりまして、それも自由航行派、世界海運の隆盛をはかるためには、たとえ海峡が二十四海里以内であっても、その国際航行は自由でなければならないという主張をいたすものは約三十カ国。これに対抗いたしまして、海峡が二十四海里以内であれば、それは沿岸国が自分の国の安全保障あるいは汚染問題等の見地から、場合によっては一方的な規制権も行使することができるという無害航行派と称するものが約三十カ国。と申しますと、まだ七、八十カ国は意見表明していないというのが現状でございます。  御質問ございました自由航行の場合に、潜水艦は浮上して旗を掲げて通る義務があるかないかという点につきましては、自由航行派に属する考え方、あるいは諸提案の中にも、もちろん基本的には、軍艦と一般商船とを区別せずに、すべての船舶はそのような海峡において自由な通航の権利を有するという基本的な原則を定めておりまして、潜水艦につきましても、したがいまして従来どおり海中を潜水したまま通航できるという規定を含んだ提案が幾つか出ております。  しかしながら、この点につきましては、自由航行派に属する諸提案と申していいと思うのでございますが、従来は米ソがきわめて強烈な自由航行説を盛り込んだ提案をいたしておりましたが、その米ソすら、ここ二週間ばかり前に改定版を出しております。さらに、同じように自由航行派に属するイギリス提案というものにつきましても、これをさらに発展途上国との利益の調和をはかったよりいい案にして、世界的に受け入れられるような案にしようという努力も背後で行なわれておりまして、具体的に自由航行派といえばこれであるということはまだ言い切れない状態で、潜水艦の通航につきましても、米ソの原案がそのように書いてあったことは確かでございますが、今後どういうふうにこの議論が展開してまいりますか、にわかには断定できないと存じます。  はっきりお答えしていないかもしれませんですが、その点御了承いただきたいと思います。
  107. 土井たか子

    ○土井委員 私は、先ほど来コメントを求めているのじゃないのです。わが国政府としてはということをお伺いしているわけですよ。この国際会議において米ソがどういうふうな態度で臨んでいて、それがやや変質しつつあるとか、各国がどういうふうな対応のしかたでこれに臨んでおる、そんなことはけっこうであります。そんなことはけっこうです。  それは日本立場として配慮なすった上で御決定なさるということもあるかもしれぬけれども、ただいま私が質問しておるのは、日本政府として、一体自由航行という問題に対してどういうふうにお臨みになるのかということが一つと、自由航行に対してわが国政府認識はどうであるか、この二点なんですよ。何らお答えをいただいておりません。もう一度お願いいたします。
  108. 杉原真一

    ○杉原説明員 日本は、国の存立そのものを船舶の運航にかけていかざるを得ない国柄でございまして、船が従来自由に通航できた海峡を、従来どおり自由に通航できるということに対しては、至大の関心を持っておるわけでございます。したがいまして、このような点を踏まえまして、同時にわがほうが、日本自身の安全保障上の要請にも必要な考慮を払うということは当然でございますが、そのような両要請を踏まえて、自由航行を基本とした考え方をとっているということをお答え申し上げることができると思います。
  109. 土井たか子

    ○土井委員 自由航行について、今回十二海里ということが設定されるということになるならば、わが国の領海内にあるところの国際海峡について自由航行を認めるという態度でお臨みになる、その自由航行ということの中身についてはどうなんですか。私が先ほど申し上げたことについて答えてください。潜水艦の場合、どういうふうな航行のしかたを自由航行としてお認めになりますか。何べんも同じことの質問を繰り返し繰り返しやらされては、これは時間の制約がありますから、質問に対してはっきり、端的にお答え願いたいのです。
  110. 杉原真一

    ○杉原説明員 具体的提案がいろいろあるということは先ほど申し上げたとおりで、日本の持っております海峡における自由通航の制度が、したがってどの提案に基づく規制に服することになるかをいまお答えすることはできないわけでございます。しかしながら、自由航行の制度というものは、先ほど来申し上げましたように、基本的に潜水艦は従来どおり潜水航行が可能であるという制度でございますので、そのようなラインを支持いたします以上、そのような基本線に基づく提案ができ上がった場合には、そういうふうな新しい海峡制度というものが、日本の十二海里の領海拡大によって、この制度に服することになる海峡に適用されるということになるわけでございます。
  111. 土井たか子

    ○土井委員 さあ、それならばたいへんなことになりました。これは実は五八年第一回海洋法会議においてきめられた領海及び公海条約に関するこの国会の質疑応答、昭和四十三年四月十七日、外務委員会において当時の三木外務大臣答弁がここにあります。その中身で、いまここにお伺いしたい部分だけ申します。ポラリス潜水艦その他核兵器を常備しておる軍艦の航行は無害通航とは考えない、原則としてこれを許可しない権利を留保したいと思います、はっきりこう述べられているのです。いま申しているのは自由航行の問題ですね。無害通航の問題じゃないのです。しかしながら、無害通航という場合においても、ポラリス潜水艦というのは認めないというのですよ。ましてや自由航行に対して認められるはずはないのです、こういう論法からいくと。問題にならない。  しかし、いまおっしゃった――これはポラリス潜水艦とはまだ具体的に申しておりません、いま初めて言ったわけでありますが、潜水艦については、潜水をして、しかも旗を掲げないで航行できるようなありさまで、自由航行というのを認めざるを得ないであろうという御趣旨の御答弁でありました。したがって、今後ポラリス潜水艦に対しての取り扱いというものは、こういう御答弁がすでに四十三年四月十七日の外務委員会を通じての政府答弁として、外務大臣答弁としてあったわけでありますから、この点に対してどういうふうにお考えになるかというのは非常に大きな問題になってこようと思います。いかがですか。
  112. 杉原真一

    ○杉原説明員 ただいま先生が御指摘になりました無害通航権と申しますのは、一般の領海に対して適用される制度でございます。したがいましてそれと、私がいま申し上げております国際海峡における自由通航制度というものは、たとえ幅が二十四海里以内でございましても、領海に一般的に適用される無害通航の制度とは全く異なる特殊の制度として自由通航制度というものがいま国際的に議論されているというのが現状でございます。  したがいまして、先生の御指摘になりました御質問に対するお答えとしては、無害航行制度が適用される海域における問題としては、現在でもその御答弁政府見解であろうかと考えるわけでございます。
  113. 土井たか子

    ○土井委員 私の質問をよく聞いていただきたいのです。無害通航の場合でも、無害か有害かということが問答の対象からはずされる、つまりポラリス潜水艦というものが有害であるという認識によって通航せしめないということがあったのです。ましてや自由航行ということになると、これは認められないということがはっきり確認されてしかるべきだという前提で、これは質問しているのですよ。ですから、いまの領海の中にあっても、国際海峡というのは別口だという論法で逃げようといったって、そうはいきません。  ポラリス潜水艦については従前どおり無害通航とは考えない、有害だというきめ手がすでにあるわけでありますから、有害なものについて、自由航行であるがゆえにどんな航行のしかたをしてもよろしいというわけにはいかぬだろうと思います。ほかの問題とは違います、核兵器を搭載している潜水艦ですから。  御承知のとおり日本では非核三原則というのが厳然としてある。また日本国憲法第九条を国の憲法としてはっきり持っている国でもあるのです。そういう点から考えて、これの取り扱いを、外国がどうだからこうだから、国際会議のありさまがこうだからどうだから、米ソ間の話し合いがこうなったからああなったからで安易に自由航行問題を考えられたら私はたいへんな間違いだと思うのですよ。これはいかがですか。
  114. 杉原真一

    ○杉原説明員 海峡の自由通航問題と申しますのは、もちろんそれぞれの国が持っております自国の海峡についての安全保障上、それから航行の安全上あるいは海洋汚染の防止等の利益というものと、それから国際社会がそれぞれの国際海峡に持っております利益との調和の上に成り立つ規則でございます。したがいまして、自由通航という制度が世界のために必要な制度であるとして、一般の領海に適用になる無害通航制度とは異なる制度が国際的に成立した場合に、そのような制度に対してわが国がもし、と申しますよりも、現にそのような制度が国際的に成立することに対してわが国が至大な利益と関心を抱いているという立場に立ちます以上、自由航行制度というものが成立するように努力するということは国益に沿うゆえんかと存じます。  したがいまして、自由興行制度と申しましても、先ほど来申し上げておりますように、その中に沿岸国の安全保障とかあるいは汚染防止の利益とかその他に無関心で自由に航行してもいいという制度ではないのでございまして、その中にはそういうものを十分尊重しなければならないという規定が当然織り込まれるわけでございまして、各種提案の中にもその規定はございます。したがいまして、特定の潜水艦が云々ということに対するお答えにはならないかと存じますが、沿岸国の利益を害してもよいという意味の自由航行制度ではないということを現在の段階でお答えすることができるかと存じます。
  115. 有田喜一

    有田委員長 土井委員、時間が来ましたからもう一点だけにしてください。
  116. 土井たか子

    ○土井委員 たいへん的はずれの御答弁でありますから、これはいたずらに時間を空費しているような感じであります。  外務大臣、ひとつお願いしたいです。  先ほど来、国際海峡というものは領海であっても領海でないがごとき御発言で、ここは自由航行であってしかるべきではないかという趣旨にすらうかがえるような御答弁でありました。しかし、本来自由航行というのは公海において認められる問題でありまして、いかに国際海峡とはいえ、領海内にある海峡であることは確実な事実であります。そういう点からしますと、従来公海において認められたような自由航行のありさまを今回国際海峡に対してやはり認めてしかるべきじゃないか、そういう前提でいろいろとお考えになること自身が一つはおかしいのです。  もう一つ言いますと、これは従来、ポラリス潜水艦その他核兵器を常備しておる軍艦の航行については無害通航とは考えない、原則としてこれを許可しない権利を留保したいと思います、こういうはっきりした、四十三年四月十七日の三木外務大臣答弁があるのです。だからまっ先に私は、日本において領海内に国際海峡と称する海峡が幾つ、しかもそれはどこにあるかということをお尋ねしたわけでありますが、いままでいただきました御答弁からしますと、これは先ほど御指摘になった、それぞれ国際海峡と認識なさっている日本の領海内にある海峡、アメリカは言うに及ばず、ソビエトのポラリス潜水艦も潜水したままで自由に航行できることを認めざるを得ないような結論に到達いたします。  この点、私はたいへんなことだと思うのです。これは単に海が汚染される、その沿海の国家の秩序や安全を保持するという問題じゃないのです。軍戦略、核戦略体制からして非常に大きな意味を持っておる原子力潜水艦、ポラリス潜水艦の航行であるということは言うまでもないのです。  この問題に対してどういうふうにお考えになり、また海洋法会議に対してどういう態度でお臨みになるのか、その点、ひとつはっきり御答弁をいただきたいと思うのです。
  117. 木村俊夫

    木村国務大臣 私もその海洋法会議内容についてまだつまびらかにしておりませんが、いままでのいろいろな御意見を拝聴いたしまして、どうも、私どもが学校で習いました国際法以外の新しい国際法が海洋について生まれようとしておる、こういう時期だろうと思います。したがいまして、非常にぼうばくとした会議の審議の中でいろいろ出てまいります中で、特に非核三原則というものを堅持するわが国にとって容易ならざる問題が起きておるという認識を私も持っております。  したがいまして、いままでの領海、公海、この区別によって対応してまいりました私どもの非核三原則というものを、新しく生まれようとしておる国際海峡、しかも領海が十二海里に広げられた場合の国際海峡のあり方について一体どういうふうに対応させるべきかということについては、これはおっしゃるとおりたいへん重大な問題でございますので、まだ会議の途中でもございますし、日本の対応のしかたについては、それが国益に反する場合には重大なる留保をつけなければなりませんでしょうし、まだまだわが国としましてはこの海洋法会議における国際海峡の問題について結論を出すに至ってないということを御了承願いたいと思います。
  118. 土井たか子

    ○土井委員 最後にもう一問。いまおっしゃったとおりであります。非核三原則というものを堅持しなければならないというわが国立場、これをひとつ確認していただきたいと思うのです。核はつくらない、持たない、持ち込ませない、この三原則の中身を堅持するということ、これをはっきり確認いただきたいと思います。いかがですか。
  119. 木村俊夫

    木村国務大臣 これは申すまでもなく政府基本方針でもございますし、もう国会でも御決議いただいたところでございます。堅持することに変わりはございません。
  120. 土井たか子

    ○土井委員 終わります。
  121. 有田喜一

  122. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私は、最近沖繩の伊江島で起こりました二つ事件一つは核模擬爆弾BDU8Bの投下演習の件と、もう一つは伊江村出身の青年に対する米兵による狙撃事件二つについて御質問申し上げます。  大臣のお答えを正確にするために、二つの点をとりわけお話し申し上げます。  一つは、御承知のように沖繩はアメリカに占領されて実に二十五年、ほんとうに民族の悲劇を味わわされたところである。その沖繩の伊江島というところはまた典型的に二重、三重に基地の苦しみを味わわされたところである。そこにこの二つ事件が起こったということ。  もう一つは、あと十一カ月いたしますと、政府が主導して強行しようとする海洋博覧会が行なわれる。その海洋博覧会が行なわれる本部町は目と鼻の先のところにある。四キロないし五キロのところにあります。海洋博には、すでに木村大臣承知のとおり、五百万から六百万の人が動員される。これは東京の人口の約半分。三分の一以上が国際的に、各国の政府代表、あるいは大企業代表、その他が集まる。その海洋博覧会の開催地の目と鼻の先のこの伊江島でかかる核爆弾の訓練演習が行なわれ、さらに追っかけて狙撃するというふうな事件が起こっておる。  この問題は、根本的には人間の尊厳の問題になります。安全の問題になります。さらに国民主権、国家主権、この主権の原則の問題と関連し、民族の自由の問題に深く関係しております。その点を大臣、前もって頭に入れてもらって、事実関係を申し上げます。  いま、アメリカの戦術核兵器として使っているいわゆる現役に四種類の戦術核兵器がある。これはすでに御承知のとおりであります。この一つである核爆弾B四三、これの訓練用模擬核爆弾の投下訓練演習が行なわれております。日にちは、七月の二日四個、さらに同じ月の二十三日九個。投下した飛行機はF4ファントム。このファントム戦闘爆撃機は現に嘉手納空軍基地の第一八戦術戦闘航空団に所属している。  私たち日本共産党はとりわけこの点を重視して調査団を派遣しましたが、私もその中に加わっております。衆議院としては正森成二衆議院議員が加わっております。念のためこの写真をとってきましたので、委員長大臣に見てもらいたいと思います。  この写真ですが、これはこれについておるパラシュートデータであります。明らかにニュークリアウエポン、核兵器、このパラシュートのシリーズ番号は何番だということまでちゃんと書かれて、責任者のサインまで入っております。  そこで、これをわれわれが知りましたのは七月の二十六日でございます。二十七日の日本共産党機関紙赤旗にはちゃんと一面トップにこれが書かれております。さらに二十八と二十九、調査に行き、記者会見をやりまして、現地那覇の新聞には三十日にすでに大きく載っております。そして三十一日、審議ができないような国会の運営がわかって、質問主意書を出しました。したがいまして、一日のこちらの新聞にも載っておりますので、この件に対しては、投下した日時が二十三日でありますから、相当の期間たちます。  最初にお聞きしたいのは、これに対して調査したのかしなかったのか、これは大臣でなくてもいいのです。これをはっきり簡単に答えてほしいのです。
  123. 山崎敏夫

    ○山崎説明員 御指摘の事実につきまして、質問主意書もいただきましたので、さっそく米側に照会中でございます。まだ回答は得ておりません。
  124. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私が申し上げましたのはそれもありますが、それよりも、二十三日に演習をやりましたね。その前に新聞報道しておるのです。だからこれは大臣お答え願いたいのですが、核でしょう。あとで申し上げますが、いわゆる模擬爆弾も核であるということが政府答弁なんです。だからそれを調査に行かなかったという点は、狂乱物価を雨漏り程度にしか考えなかった田中総理大臣、そういったような重大な、この核模擬爆弾が投下された事実すら知らないのか。知って行かなかったとすれば、このようなことは暴風雨でかわらが飛んで雨漏りしたぐらいの程度にしか考えていないのかどうか、これは大臣答えてください。
  125. 木村俊夫

    木村国務大臣 模擬爆弾ではございますけれどもわが国民の核兵器に対する持殊な国民感情を考えますと、軽々に取り扱いすることは不適当であると思います。ただ、その際調査に参ったかどうかを私まだ聞いておりませんので、あとで事務当局から十分その点についての報告を聞きたいと思っております。
  126. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私、それを聞きますのは、事務当局が質問主意書を受け取ったのでアメリカに聞き合わしておるがということを言ったので、ははあ調査しに行っていないなと、これはすぐ感じられます。その意味大臣にお答え願ったわけなんですが、これは雨漏り程度じゃないでしょうな。いかがですか。
  127. 木村俊夫

    木村国務大臣 どうも雨漏りという比較は私あまり感心いたしません。そういう意味で、この核問題に対する政府の取り扱いということは、今後もきわめて慎重に扱っていきたいという考えでございます。
  128. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 それで、この核の模擬爆弾につきましては、第六十八回国会予算委員会日本共産党の不破議員が微に入り細にわたって質問しております。その中で、当時の福田国務大臣はこう言っております。「模擬爆弾といえどもこれは核だ、核の模擬爆弾だというようなことにつきましては、これはもう日本人はアレルギーを持っておる。そういうようなことから厳重にアメリカに申し入れをいたしたい、さように考えておるのであります。」こう答弁しております。そしてさらにそういったようなことが、祖国復帰達成後は、たとえ模擬であっても訓練はやらないように警告をし、申し入れるということまで言っておりますが、政府はその申し入れを、あるいは警告をだれが、いつ、どのような形で行ない、そしてどういう答弁があったのか、これを明らかにしてほしいのです。
  129. 山崎敏夫

    ○山崎説明員 その当時の国会においてこの問題がいろいろ論議されましたことは、私たちもよく承知しております。そして、沖繩返還の協定が発効いたします前後におきまして、これは松本先生その他から御質問があったこともよく承知しております。その問題がありました直後におきまして、政府といたしましては、たびたびアメリカ側と話し合いを行なったわけであります。その際、アメリカ側が申しましたことは、米軍の要員に関しては常に一定の技術的水準を維持させるために多種多様の訓練を行なう必要がある、そして、たとえば核攻撃を受けた場合にこれにどう対処するかという訓練とか、あるいは各種の模擬爆弾を使用する訓練なども行なう必要がある、そして、こういう訓練を行なうということについては、安保条約及びその関連取りきめに照らして、禁止されるものではないと考えているということを回答してまいったわけであります。
  130. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 しかしながら、政府としてはどう措置をとったのですか。いまアメリカの言い分をあなた言いましたね。だが、政府としてはどういう措置をとったのですか。いまあなたがおっしゃったのは、松本善明議員の七二年五月十三日提出の質問主意書に対して、十日目の二十三日に政府はあなたが言ったようなことを答弁しておる。それで政府はこれに対してどうしたか。抜けておるでしょう。  こう言っておるのです。「政府としては、わが国国民の核兵器に対する感情に鑑み、本件に関し、なお、米側との話合いを続けている。」これが締めです。そのあと質問しようと思って言わなかったのです。これは主意書に対する二十三日の御答弁でしょう。  それでは、その後どのような交渉をされたか。これは三月七日の衆議院の予算委員会なんです。ちゃんと総理大臣と福田外務大臣答弁なんですよ。復帰後は絶対にさせないようにアメリカに警告し、申し入れをする。どうしたのですか。ところが、復帰して二年ちょっとで弱まっておる事実がある。そのいきさつを説明してください。
  131. 山崎敏夫

    ○山崎説明員 先ほど御答弁申し上げましたように、沖繩返還協定の発効前後にアメリカ側と話し合いを行なったわけであります。で、向こう側のそういう答弁があり、話し合いがそれで終わったわけではございませんが、その後そういう核模擬爆弾の投下訓練というものは、われわれは聞かなかったわけであります。したがいまして、問題はあるいは好転したのではないかとわれわれも考えておったのでありますが、今回御指摘のような問題があると承知しましたので、あらためて米側に、そういう事実があるかどうか、核模擬爆弾の投下訓練をやっておる事実があるかどうかということを、ただいま照会している次第であります。
  132. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 そこで内閣総理大臣は同じ三月七日にこう言っていますね。「ただいま核の模擬爆弾でもこれは投下訓練はしない、そういう方向アメリカに問い、十分話し合う、こういうことでございます。」そこで、ほんとに警告したり要請したりしただけでこれが確約になるのかと言ったら「○佐藤内閣総理大臣 私どもは皆さんとちょっと違っておりまして、アメリカと十分話し合える、お互いに信頼し合うと、」「私どもは信頼しておりますから、お互いが信頼関係にある、それを前提にして考えるとただいまのようなことは杞憂だろう、かように思います。」  「杞憂」というのは、沖繩が復帰したらもう核の模擬爆弾の投下訓練をやりません、そういう杞憂はありませんと、はっきり総理大臣が言っている。これは杞憂じゃなしに現実の問題として実に七月の二日と二十三日に、いま言うこの同じような型の核模擬爆弾BDU8B、これは投下訓練用です。さらに積載訓練用のものはまた違った型がある。これを行なっておる。  ですから、これは相愛ではなくて、このことから何が生まれるかというと、アメリカは信頼できないなということが生まれるわけです。日本政府は信頼した。信頼したはずのアメリカは、ちゃんと日本政府の総理大臣外務大臣が言ったその信頼感を裏切ってやっている。木村外務大臣いかがお考えですか。この状態でずっと行なわれていく。もうこれでは外交というものが、そういうふうな信頼関係を現実に裏切ってしまっているわけです。これははっきり答弁がそうなされているわけなんです。
  133. 木村俊夫

    木村国務大臣 佐藤内閣当時にそういうやりとりがありましたことは存じております。その際に、わがほうの申し入れに対して、米側がそれじゃ投下訓練をやめましょうといって今回繰り返せば、これは私はまさに信頼関係を裏切っていると思いますが、それについてその後の米側の考え方も、これは安保条約及び関連取りきめに違反してないから取りやめるわけにいかぬというようなことでこれにこたえている、こういうふうに私も考えざるを得ません。  そこで、今回私が就任いたしまして後に、いまだこの模擬爆弾の投下訓練が行なわれておるという事実の御指摘に対しまして、私はあらためて米側に対して、この模擬爆弾の投下についてぜひひとつ再考慮してくれという申し入れをいたしたいと思います。しかしながら、先ほどのお話のありましたような事実に基づいて、ただいま米側に照会中でございますから、その照会に対する米側の回答をもっていま申し上げたような考え方をあらためて固めたいと思っております。
  134. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 いまの外務大臣の御答弁をまず了として、警告したり要請したりするだけでは、国会も国民も信頼できないし、安心できません。これを確約を取りつけるようにしてほしいのですが、いかがですか、もうやりませんと。
  135. 木村俊夫

    木村国務大臣 懸命の努力をいたします。
  136. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 そこでもう一つは、演習をやらぬという確約と同時に、この核の模擬爆弾の演習をやっている部隊が、現実にいま第四〇〇弾薬整備部隊というのがありまして、これが核爆弾、核兵器の操作をやっておる。さらに第一八戦術戦闘航空団、これがいまF4ファントムを持っておる。この二つの部隊の撤去を非核三原則、これは佐藤内閣総理大臣は、こう言っております。佐藤がかわろうが、非核三原則は国会でも決議されておるので、これは国の方針として変えない。ですから、その立場からも、さらに日本国民ほんとうの安全を確保するためにも、この核部隊、第一八戦術戦闘航空団、それと四〇〇弾薬整備部隊、この撤去を要求することが当然だと思います。  これにつきまして、佐藤内閣総理大臣はこう言っております。「ただいままたさらに詳しい部隊の編制等についても御注意がございましたから、そういう点はそれぞれの筋のほうからやはり米軍に十分連絡をとってみたい、かように考えております。」これはサンクレメンテ会談が済んで、そしてこの部隊は核部隊である、疑わしいどころか、アメリカの作成したデータに基づいてこれが証言されておるという事実の中から、この部隊についてどうするかと言ったときに、総理大臣はこう答えております。したがって、この点について木村大臣の御答弁をお願いしたいと思います。
  137. 山崎敏夫

    ○山崎説明員 いまお話しの中で、第一八戦術戦闘航空団及びまた弾薬部隊が核部隊であるというふうにおっしゃいましたが、われわれとしてはそう考えてはおりません。ことにこの航空団がいろいろな事態に備えて、多種多様の訓練を行ないますことは当然でありまして、またその間において、いわゆる核兵器の持ち込みを伴わない限り、そういう部隊がわが国にあることは当然許されるべきであると思います。
  138. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは大臣を含めてでありますが、私がいま申し上げました日本政府が信頼しているアメリカが、その信頼を裏切って、やらぬと言ったのを復帰後すでに行なっておる。この事実は否定しがたいものであります。さらに、それを飛び立たした飛行機の所属部隊は第一八戦術戦闘航空団である。ファントムを持っておる。これがいざという場合には、沖繩の嘉手納基地から飛んで核兵器を落とす部隊であるということ、さらにその核爆弾を操作し、修理、訓練、全部やっておるのが四〇〇弾薬整備部隊である。  この点についての議論は時間がありませんからあとに回しますが、いずれにしても佐藤内閣総理大臣自身が、こういったような疑問のある部隊に対してはそれぞれの方面から交渉をやるということを、あなた方の先生が言っているじゃないですか。木村大臣にも先生であるはずだ。そういうことを、非核三原則に関連するのだからまず何とか交渉してみようぐらいは言えませんか、外務大臣。どうですか、木村さん。あぶない部隊がいる。
  139. 木村俊夫

    木村国務大臣 いまアメリカ局長がお答えしましたとおり、沖繩には核はございません。これははっきり申し上げておきます。
  140. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 核はないのですか。
  141. 木村俊夫

    木村国務大臣 核はありません。そのほかの模擬爆弾、これはわが国民の核アレルギーに非常にまずいことにもなりますので、その点についての努力はいたしたいと考えます。
  142. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 時間が来ましたので、この問題についてはまた質問を保留して、進まなくちゃいかぬので、最後に狙撃事件について一点だけ、大臣に要請と御答弁をお願いしたいのです。  私、これを調査に行ったときに、狙撃された青年に会いました。山城安二君です。それからおとうさんにもおかあさんにも会いました。にいさんにも会いました。行きましたその家に親戚だけじゃなしにたくさん集まりまして、その当時の事情をお聞きしました。訴えたのはこうなんです。その人のおとうさん、おかあさんの土地は射爆場に取られています。それで、ないので、結局馬の草刈りをやらぬといかぬ。草刈りに行った。そして行ったら、あとからジープが追っかけてきてわあわあいうものだから逃げた。逃げたらうしろからばんと撃たれた。これが事実。  そこで、訴えているのは何かというと、われわれの土地を返してください。これの訴えでした。演習をやめてください、日本政府さま。これが訴えです。そして私のむすこをうしろから狙撃した犯人をつかまえてください。そして正しい裁判日本でやってください。これです。  そして私が会ったときに、左ですが、ギブスをはめていたものだから、こう手をとったら、ああいたいいたいとやるのですね。まだはれている、ここが。撃たれたのは十日ですけれども、私たちが会ったのが二十八日です。ですから、あの状態でいくとあと一カ月どうにもならぬ。私たちは大使館に十一日に会いに行きましたから、コバヤシ一等書記官が慰謝料を持っていったと言っておりました。うそでした。大使館のコバヤシ一等書記官はそんなことを言っているが、持ってきたか。うそです。だれもアメリカは来やしません。こうなんです。  要するに、はっきりしているのは、うしろからばんと撃ったものだから、この事実は否定できないで、結局公務中であるという証明は出しませんとアメリカの法務部長は言ってしまった。ところが政治的な配慮でもって公務中であったと言い出した。ただはっきりしていることは、日本国民が基地内であれ基地外であれ、うしろから逃げるところを撃たれたということは、アメリカの軍隊は公務として日本国民を狙撃し、撃ち殺す権利を安保条約は与えているのか。問題はここにあります。  したがいまして、あの狙撃された青年やおとうさん、おかあさんの言ったように、根本問題は、もう演習をやめさせてくれ、そして土地を返してくれ、犯人をつかまえてください、裁判日本でやってください。これです。そして賠償してください。この点を、いま日米合同委員会に最後にかかると思いますが、大臣ぜひ、日米合同委員会外務省あるいは防衛庁の代表が行かれるでしょう。がんとして日本民族の主権を守るために、さらに安全、民族の自由を守るためにぜひ、裁判権は当然のことながらここにある、ここをはっきりさせてほしいことを要望いたします。いかがですか。
  143. 木村俊夫

    木村国務大臣 いまのお話事件は、ただいま合同委員会の刑事裁判管轄権分科委員会でいろいろ調査中でございますから、その結果を待つわけでございますが、あくまで私どもはそれが、その行為が公務中でないという反証は十分自信がございます。その意味におきまして、強くその立場を主張してまいりたい、こう思います。
  144. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 終わります。
  145. 有田喜一

    有田委員長 松本善明君。
  146. 松本善明

    ○松本(善)委員 OTHについてまとめて伺いますが、まず第一に、四十二年に通報があったということについての通報内容アメリカ軍からどういうものとして通報があったかということが第一点。  それからOTHをどういうものとして政府認識をしているか。またそれの指揮系統について伺いたいのでありますが、簡明にするために伺いますが、OTHを扱っております第十四通信中隊というものは、アメリカ空軍航空宇宙防衛空軍、ADCといっておりますが、その空軍の所属の通信隊で、言うならばアメリカ本土の防衛軍の一部であると思います。そのとおりであるかどうか。  それからOTHはICBMを早期に探知してABMを発射するための施設、言うならばABMの一環をなすレーダーだと考えておりますが、こういうふうに政府認識しているか。  この三点をまず伺います。
  147. 山崎敏夫

    ○山崎説明員 第一点でございますが、昭和四十二年二月にアメリカ側がわが方にこのOTH施設の概要を口頭で通報してまいったわけでありますが、その概要は、今回新たに開発されたミサイル探知施設をわが国の所沢及び千歳に設置したいということを言ってまいったわけであります。  第二点のADCでありますが、これは御指摘のとおり米国の航空宇宙防衛軍でありまして、この第十四通信中隊は指揮系統におきまして米本土にあります航空宇宙防衛軍の指揮下にございます。  それからOTHの施設の性格につきましては、防衛庁の方に答えていただきたいと思います。
  148. 丸山昂

    ○丸山説明員 三番目の御質問のOTHがABMのシステムの中に入るかどうか、こういうお話でございますが、本年度の七五会計年度の国防省年次報告、これを現在の国防長官のシュレジンジャーが行なっておりますけれども、これによりますとICBMの早期警戒システムといたしまして三つのものをあげておりまして、一つが人工衛星でございます。それからもう一つが、OTHシステムでございまして、三番目がビミューズといわれておりますが、弾道弾の早期警報システムといわれるものでございます。  ABMのほうでございますが、ABMにつきましては、御案内の米ソでSALTIの交渉を行ないました際に、ABMシステム制限条約というものを両方で締結しております。その第二条にABMシステムの構成部分についてのデフィニションがございます。その内容を見ますと、三つから成っておりまして、一つはABMの本体つまりICBMの迎撃ミサイル、それから二番目がABMの発射装置、ランチャーでございます。それから三番目がABMに直接つながっておりますレーダーというこの三つの装置がございます。  ABMシステムといわれます場合にはこの三者をいうわけでございまして、最初申し上げましたように、ICBMの早期警戒のシステムというものと、それからABMのただいま申し上げましたシステムというものとの連絡はもちろんあると思いますけれども、システム的には別のものであるというふうに申し上げてよろしいかと思います。
  149. 松本善明

    ○松本(善)委員 ABMをアメリカ軍の中でどういうふうに扱っているかということの答弁ではなくて、このOTHでICBMを探知すれば、ABMが発射をされるというのはこれは常識的なことであります。  外務大臣伺いたいのでありますが、この通報を受けたといいます四十二年のあと、四十三年の五月十四日に、当時の増田防衛庁長官は、ABMの一環をなすレーダーは拒否をする。わが国のレーダーは二十四カ所あるが、いずれも到達距離は二百海里で、その先のものはレーダーの目に写らない。一方、おそらく数千キロ先のものをキャッチしないと間に合わないことになると思うが、アラスカとかハワイ等にABMの目を設ける、レーダーを設けることだそうである。これは明らかにOTHをさしていると思います。それ以上のことはアメリカも全然要望していないし、必要がないとはっきり言っている。また必要があって要求した場合でもわれわれは拒むということを明瞭にしておく。これが四十二年の通報があった後の四十三年の政府答弁であります。  これは文章の上からいって、明らかにOTHのようなABMを発射をするに関係をするこういうレーダー、こういうものを置かせない、アメリカも要求をしていない、こういう答弁としてなされたというふうに私は考えておるわけでありますけれども、この関係は一体内閣の中では討議をされているのかどうか。こういうものを認めるという考え方をいつきめたのか。この点をはっきりお答えいただきたいと思います。
  150. 丸山昂

    ○丸山説明員 ただいま御指摘の増田防衛庁長官の発言でございますが、防衛庁長官の発言でございますので、防衛庁のほうから御答弁申し上げますが、当時問題になりましたのは、日本にABMを配置するかという問題について、ABMのレーダーを配置するかどうかという御議論であったように私ども承知しております。そういう意味で申しますと、先ほど私が御説明申し上げましたように、ABMのレーダーというのはABMに直結しているものでございまして、ただいまお話しになっておりますOTHとは全然別ものであるというふうに申し上げてよろしいかと思います。
  151. 松本善明

    ○松本(善)委員 そういうことは詭弁というので、そういうものをABMに直結している装置を置くということになれば、日本にABMを置くということですよ。置くということになれば、これはさらに大問題になります。私はいまの答弁はまことに詭弁であるというふうに思いますけれども木村外務大臣に直接伺いたいのは、一体こういう、当然にOTHはICBMを把握すればABMが発射されるわけです。日本は当然に核戦争に巻き込まれるわけです。あるいは核戦争が始まるときにはまず最初に攻撃されるわけです。こういうものを置くことを認めるということは、一体いつの閣議できまったのか、これははっきりお答えいただきたい。そういうことは一切内閣では討議をしていないならしていないでけっこうです。
  152. 木村俊夫

    木村国務大臣 事実上内閣で討議はしておらぬと思います。その理由とするところは、このOTHなるものは、核抑止力の装置であって、先ほど来いろいろ御指摘になりましたABMに連動するシステムの一部ではない、かつ核兵器システムの一部ではない、私どもはかたくそういう考えでおりますので、そういう意味からして、内閣でこれを問題にしたことはございません。
  153. 松本善明

    ○松本(善)委員 それでは、これはこういうようなABMに直結していないということであるならば、このような種類のものは何でも認めるのか。たとえば、中国のICBMは七〇年代後半に実戦配備につくといわれております。こういうものも無制限に認めていくという方針なのかどうか、これをまず伺いたい。第一点です。  それから第二は、こういうアメリカの本土防衛のために使われるものを認めるということになりますと、これは安保の範囲が、極東とかいう範囲からはるかに越えて、世界的なアメリカとの軍事同盟に入っているということになります。安保はまた核戦争と直結しているわけで一そういう意味でこの安保の性格は非常に変わってきていると思います。いわゆる核安保とか、あるいは国際的なアメリカとの軍事同盟、そういう性格になってきていると思いますが、そういうことを政府認識をしてそういうふうに考えてやっているのかどうか。これが第二点です。  第三は、これは当然に核戦争の始まりのときには攻撃をされます。短距離ミサイルでも攻撃をされます。アメリカよりも先に攻撃をされます。そのときには安保条約の五条が発動されるのかどうか。発動されるとするならば、まさに自衛隊は、アメリカの本土防衛のための施設を日本に置いているために、日本は安保条約五条によってアメリカの戦争に巻き込まれるということになりますが、そういうことでいいのかどうか。  以上、三点について外務大臣見解伺いたいと思います。
  154. 木村俊夫

    木村国務大臣 わが国の安全を維持するためには、私どもは安保条約、その中で、特にアメリカの持っております核抑止力にたよらざるを得ないわけでございます。そういう意味で、このアメリカの持っております核抑止力を有効に働かせるための装置、これはかねて、主として米本土の防衛のためにも使われましょうが、同時にそれは、核抑止力の強化を通じてわが国の安全にも寄与する、こういう観点から私どもはこの安保条約に違反するものではない、こういう考え方をとっております。
  155. 松本善明

    ○松本(善)委員 全部お答えいただきたいのですが、私の伺っておりますもう一つは、中国のICBMが七〇年代後半に実戦配備につくが、これに対するようなものをみんな認めていくのかどうか。核兵器に直接つながらないこういう核戦争用の装備は全部認めていく方針なのかどうかという点、これはお答えがありませんので、これをひとつお答えいただきたい。  それから、安保の範囲が国際的に広がっていくわけです。そういうことでいいのかどうかという点、この点についてさらにお答えをいただきたいと思うのであります。  それからもう一つ、自衛隊の五条の発動がされるのかどうか、この点について。
  156. 木村俊夫

    木村国務大臣 中国のICBMが開発されて実戦用に配備された場合、それに対応するこういうOTH装置をどうするかという問題は、どうも私、まだ仮定の問題として承る以上、それに対するいまこの場における答弁はちょっと遠慮さしていただきたいと思います。  第二に、こういう装置が国際的に世界的規模に広がるおそれがある、特に安保の範囲が広がるという御指摘でございますが、私は、安保の範囲は安保条約で規定された範囲にとどまる、また、とどまるべきであるという立場に変わりはございません。ただ、世界的に兵器が非常に技術的に進歩を遂げまして、特に通信技術の進歩によりまして世界的規模に広がるという事実は否定いたしませんが、それによって安保条約の適用範囲が広がるということについては、私ども条約の解釈上、また実際上にも、そういう考え方を持っておりません。
  157. 松本善明

    ○松本(善)委員 最後の第五条の関係をお願いしたいのですが……。
  158. 松永信雄

    ○松永説明員 私、実は御質問の趣旨を的確にとらえてないかもしれませんけれども……
  159. 松本善明

    ○松本(善)委員 OTHが攻撃されるという危険性があるその場合には、安保五条が発動されるのかどうか。OTHの基地が攻撃された場合ですね。
  160. 松永信雄

    ○松永説明員 日本に対する武力攻撃がもしございまするならば、安保条約第五条は発動される、当然のことであろうと考えます。
  161. 松本善明

    ○松本(善)委員 これで質問を終わりますけれども、この問題は安保条約の性格を根本的に変えるような重大な問題でありまして、私は、これはいまの程度答弁では済む性質のものではない、これは今後とも私たちは徹底的に追及をするということを申し上げて、私の質問をきょうはこれで終わります。
  162. 有田喜一

    有田委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後四時六分散会