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1974-10-22 第73回国会 衆議院 運輸委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年十月二十二日(火曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 三池  信君    理事 加藤 六月君 理事 佐藤 孝行君    理事 佐藤 文生君 理事 太田 一夫君    理事 兒玉 末男君 理事 三浦  久君       石井  一君   小此木彦三郎君       唐沢俊二郎君    宮崎 茂一君       山村新治郎君    綿貫 民輔君       金瀬 俊雄君    久保 三郎君       神門至馬夫君    斉藤 正男君       坂本 恭一君    石田幸四郎君       松本 忠助君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 徳永 正利君  委員外出席者         科学技術庁原子         力局原子炉規制         課長      中村 守孝君         水産庁漁政部企         画課長     板野 権二君         運輸省船舶局長 内田  守君         運輸省船舶局首         席船舶検査官  謝敷 宗登君         運輸省港湾局長 竹内 良夫君         運輸省航空局長 中村 大造君         海上保安庁次長 隅  健三君         日本国有鉄道総         裁       藤井松太郎君         日本国有鉄道副         総裁      井上 邦之君         日本国有鉄道常         務理事     山岸 勘六君         運輸委員会調査         室長      鎌瀬 正己君     ————————————— 本日の会議に付した案件  海運に関する件(原子力船むつに関する問題)  海上保安に関する件  航空に関する件(新東京国際空港に関する問  題)  日本国有鉄道経営に関する件(新幹線に関す  る問題等)  派遣委員からの報告聴取      ————◇—————
  2. 三池信

    三池委員長 これより会議を開きます。  先般、陸運海運航空日本国有鉄道経営及び港湾等に関する実情調査のため、北海道委員を派遣いたしました。  これより派遣委員から報告を聴取いたします。佐藤文生君。
  3. 佐藤文生

    佐藤(文)委員 委員派遣に関する調査結果について御報告申し上げます。  派遣委員は、三池信君、太田一夫君、斉藤正男君、紺野与次郎君、石田幸四郎君及び私の六名であります。  派遣期間は、九月二十五日から二十九日までの五日間であります。  まず、札幌市におきまして運輸省出先機関及び日本国有鉄道北海道総局業務概況説明を聴取し、さらに釧路市におきまして日本国有鉄道釧路鉄道管理局業務概況を、千歳空港におきまして道内就航航空四社の輸送状況等説明を聴取いたしました。また利尻島及び礼文島における離島の交通輸送事情調査並び利尻礼文サロベツ国立公園及び阿寒国立公園観光事情視察を行ないました。  視察のおもなものを申し上げますと、港湾関係では、苫小牧港、稚内港、鴛泊港、鬼脇港、沓形港、香深港、船泊港、網走港、釧路港の整備状況及び輸送現況空港関係では、千歳空港札幌空港稚内空港利尻空港女満別空港釧路空港整備状況及び輸送現状国鉄関係では、札幌貨物ターミナル駅の輸送現状等であります。  調査の詳細につきましては、別に報告書委員長手元に提出しておりますので、それをごらんいただきたいと存じます。  以上、御報告申し上げます。
  4. 三池信

    三池委員長 この際おはかりいたします。  提出されております調査報告書は、これを本日の会議録に参照として掲載いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 三池信

    三池委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————   〔報告書本号末尾に掲載〕      ————◇—————
  6. 三池信

    三池委員長 陸運海運航空日本国有鉄道経営及び海上保安に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。金瀬俊雄君。
  7. 金瀬俊雄

    金瀬委員 きょうは成田空港の凝固剤使用の問題について質問する予定でしたが、建設省の専門の方が出張だそうでございますので、その点を省きまして、簡単に御質問申し上げますので、ひとつ明確なる御答弁をお願いいたします。  十月三日に、社会党の成田委員長名前国際空港公団総裁に、公開質問を出しております。この公開質問厚生大臣、それから千葉県知事両方に出しましたが、厚生大臣及び千葉県知事はすぐに返事をくれました。ところが公団総裁だけはどうしたわけか返事が出ておりません。それでこの問題については私が質問した際に、やめました公団池田理事からすぐに答弁をするということでございましたが、まだきておりませんので、どうなっているか、その点について。
  8. 中村大造

    中村(大)説明員 公団に対する質問書答弁につきましては、現在公団におきまして検討をいたしておるところでございまして、できるだけ早く御答弁を申し上げるというふうにこちらからも指示いたしたいと思っております。
  9. 金瀬俊雄

    金瀬委員 十月三日に出しておりまして、ほかのほうの、先ほど申し上げましたが、厚生大臣、それから千葉県知事両方とも大臣名前返事がきています。公団のほうもこの前の質問のときにすぐに答えを出すということでございましたが、まだ出ておりませんので、いつごろ出せるか明確に答えることはできませんか。
  10. 中村大造

    中村(大)説明員 ただいま御答弁申し上げましたように、現在公団におきまして詰めておるところでございまして、いつかという日を明確に御答弁するところまで至っておりませんけれども、すみやかに結論を出して御答弁申し上げるようにこちらからも公団によく指示いたしたいと思います。
  11. 金瀬俊雄

    金瀬委員 それではその公開質問状に対する答弁は文書でなるべく早く出してくれる、少なくとも一週間以内ぐらいに出してくれるということで了解しておきたいと思います。  それから次に、「「暫定」パイプライン設置に係る根木名川横断部工事のもつ危険性について」ということで、都立大学湯浅という助教授の方が、千葉県知事に対して意見書を出しております。この意見書を読んでみますと、私どものような専門家でない者が見ても、非常に参考になる意見が書いてありますし、また将来禍根を残すじゃないかというようなことも考えられますので、この点について、少なくとも千葉県知事から意見が出た場合には公団側、この問題について検討する用意があるかどうか、その点についてお尋ねいたします。
  12. 中村大造

    中村(大)説明員 いまだその意見書等につきましては、私ども内容を承知いたしておりませんので、その内容をよく承知いたしまして、その上で千葉県とも十分打ち合わせをいたしまして、工事の再開につきましては、万全を期する、こういう姿勢でまいっております。
  13. 金瀬俊雄

    金瀬委員 この湯浅助教授は、この意見書について、運輸大臣にも近いうちに出すということでございますので、運輸省のほうでも千葉県と同じように検討してほしい、さように考えておりますが、その点について運輸省の考え方をお聞きいたします。
  14. 中村大造

    中村(大)説明員 意見書内容がどのようなものであるか、それを承知いたしておりませんので、それに対する判断につきましては御即答申し上げかねますけれども、いずれにいたしましても、この工事につきましては従来からいろいろな問題が提起されておりますので、それを解決するために現在までいろいろな試験を行なってきておるわけでございまして、われわれといたしましてはそういうふうな客観的なデータに基づきまして、安全であるということを確認して工事をする、こういう姿勢については絶対変わっていないということでございます。
  15. 金瀬俊雄

    金瀬委員 それでは凝固剤質問につきましてはこれで打ち切ります。あらためて、また問題が提起されましてから質問申し上げたいと思っております。  次に、海上交通安全法の問題について御質問申し上げます。  海上交通安全法施行されたのが昨年の七月ですので、ことしの七月で満一年を過ぎたわけでございますので、現在ではちょうど一年と三カ月になります。この法律施行するときに、私がいろいろ問題点指摘しまして、質問を何点かしたわけでございますが、その後この問題がどういうふうに受けとめられ、またどういうふうに解決され、あるいはまたいまどういうふうに解決するように努力しているか、そういう点について、東京湾を中心に御質問を申し上げます。  第一点は、第二海堡の北側から航路東京方面に来る船あるいは横浜に行く船あるいは千葉に来る船と三つの方向に分かれております。そして絶え間なく船舶航行しております。そうなってまいりますと、この航路付近では全く漁業操業というのができないわけですが、これに対して海上保安庁あるいは水産庁はどういうふうな対策を立てておるか、その点について御質問申し上げます。
  16. 隅健三

    隅説明員 お答えいたします。  海上交通安全法におきましては、一定以上の大きさの船舶航路内航行を強制されておりますために、先生の御指摘浦賀水道航路中ノ瀬航路あるいはこの分岐点あたりには航行船が非常に集中していることは事実でございます。そして巨大船通航にあたりましては、やはり漁船がこれを避航するために、相当の御協力をいただいておるということは事実でございます。
  17. 金瀬俊雄

    金瀬委員 第二点、大型船小型船航路が別であることによって、実際上東京湾の大半が航路となっておって、漁場操業区域ですか、そうしたものが非常に狭められておるということでございますが、その点について海上保安庁あるいは水産庁の方が来ておりましたら、それに対する見解を聞きたいと思います。
  18. 板野権二

    板野説明員 水産庁企画課長でございます。  交通安全法に基づきます航路が設けられまして——航路が設けられたためだけというわけではもちろんないと思いますが、一般海上交通ふくそうに伴いまして、漁業上との問題があることば事実でございます。その点につきましては、各県なりあるいは漁連を通して情報を聴取しておりますが、ただその航路の設定に伴いまして特に大きな問題が出てきておるというふうには、われわれ承知しておらないわけでございますが、ただ交通ふくそうに伴いまして漁業上との競合という問題がだんだん激しくなってまいっておりますので、その点につきましては、海上保安庁協力もいただいて調整をはかるよう指導しているわけでございますが、それに加えまして、海上交通法施行を契機に設立されました安全操業協会、これは中央と、それから関係県に設立されておりますが、そういう協会を通じまして安全操業ということについての指導を行なっている次第でございます。
  19. 金瀬俊雄

    金瀬委員 この法律施行されてから船舶航行というのはふえているのか、あるいは減っているのか、あるいは今後の見通しはどうなっているのか、そういうことについてお答え願いたいと思います。
  20. 隅健三

    隅説明員 浦賀水道東京湾航行する船舶の趨勢でございますが、現在、景気がある程度抑制をされております関係上、内航船をはじめといたしまして、あるいはタンカーは横ばいの状況でございますけれども、今後の情勢によりましては、やはり隻数はふえていく傾向にあるのではないかというふうに考えております。
  21. 金瀬俊雄

    金瀬委員 この海上交通安全法が通過するときに、漁業に重大な影響が出た場合には転業なり補償なり、いろいろな対策をするということが附帯決議になっております。で、漁業者に対する補償について、付帯条項の中でどういうことが一年たって反省して実行されたか、その点について御質問申し上げます。
  22. 板野権二

    板野説明員 海上一般船舶交通漁船との関係につきましては、両者調整がうまくとられるよう、その調整指導ということに当面最善を尽くしておるわけでございますが、ただ、船舶航行が多くなりますと、一つの問題は油の被害の問題がございます。これにつきましては、現在水産庁で、いわゆる原因者がはっきりしている場合は別でございますが、原因者がよくわからないというふうな場合の対策について、明年度以降恒久対策を講ずべきではないかということで目下内部で検討している段階でございます。
  23. 金瀬俊雄

    金瀬委員 いま東京湾の中で漁業をやっておるのは、東京漁民というのはほとんどございません。神奈川県もございません。主たるものは千葉県側の漁民だと思いますが、そうした中で、漁業制限された場合には補償するということが付帯条項の中にあるわけですよ。ちょうど一年たつから、どのくらい漁業に対して影響が出ているか、あるいは漁民に対してどのくらい水産が阻害されているかということについては、一年間の統計調査済みなわけですよ。だから、一年たってみたら幾つか付帯条項があるが、そのうちどういうことを国がやったかということをはっきり発表してくれればいいのです。こういうことをやった、ああいうことをやった、いろいろやったことがあっても、国会でこういうことをやれということが付帯条項になっているのだから、どういうことをやったかということをここで発表してくれればいいのです。
  24. 板野権二

    板野説明員 東京湾におきますそういう漁業上の問題につきましては、関係県からも事情を聴取しておりまして、交通ふくそうに伴いまして影響が若干あるということは報告を受けておりますが、ただ具体的に幾らの損害、幾ら被害というふうなことを的確に数字で把握することはいたしておりません。現在の状況であれば両者調整がまあそれほどでもないのじゃないかということで、補償というふうなことを考える段階ではないのじゃないかというふうに考えております。
  25. 金瀬俊雄

    金瀬委員 海上保安庁も同じ考えですか。
  26. 隅健三

    隅説明員 海上交通安全法に対する附帯決議が四十七年の五月十一日に衆議院の交通安全対策特別委員会で行なわれまして、この第二項で「将来法指定航路におけるふくそう増大化によりいかにしても船舶航行安全と漁業操業とが実態的に両立しがたい場合においては、国の責任において漁業者に対する補償の制度を確立すること。」というふうに決議がなされておるのでございます。海上保安庁といたしましては、現在、この点につきましての調査を慎重に行なっておるところでございまして、水産庁とも十分に御連絡いたしまして、今後の調査をさらに継続をしていきたいというふうに考えております。
  27. 金瀬俊雄

    金瀬委員 調査はどういう方法でやっていますか。水産庁のほうではあまり影響ないということを言っておりますが、海上保安庁のほうではどういう調査をやっていますか。
  28. 隅健三

    隅説明員 海上保安庁といたしましては、指定航路船舶通航実態調査を克明にいたしておりまして、その数字を現在、海交法が四十八年の七月一日に施行されてから毎月の統計をとりまして、船舶通航状況の把握をいたしております。
  29. 金瀬俊雄

    金瀬委員 私は、七月のこの施行後満一年たってから、漁業組合の人を集めていろいろ座談会をやりました。それで海上保安庁なり水産庁なり、そういうところから、漁業制限を加えられる、それから航路から排除される、そうしたことについて補償とかあるいは転業とか、いろいろなことで相談があったかと聞いたら、調査に来たこともないし、相談も何もない。千葉県側に聞いてもそういう話を聞いていない。漁業者というのは航路から締め出されてたいへんな被害を受けておる、その被害についても全然見舞いもなければ何もない、ということは事実です。逆に、大型船が通るとそのたびに片づけられているという現状です。それに対して水産庁は、影響がないと言っているけれども、どこでどういう調査をしたか、そのことを言ってみてくれませんか。あなた、いま影響はそうないと答弁したけれども影響ないとすれば、どこで調査した結果影響がないのかどうか。それで、だれを使って調査したか。
  30. 板野権二

    板野説明員 私の御説明、ちょっと舌足らずでございましてなにでございましたけれども影響はないということではございません。したがいまして、私のほうとしては県等から状況は聴取しておるわけでございますが、その県からの聴取しましたことに基づいていま申し上げておるわけでございます。したがいまして、船舶との関係漁船影響がないということはないわけでございまして、船舶航行に伴いまして漁船操業が何らかの制限を受けるということは当然あるし、そういうことが交通ふくそう化に伴ってふえてきているということも承知しておるわけでございます。  ただその間、一般船舶航行漁業との調整ということはやはりどうしても必要なわけでございまして、その点の調整は今後も十分やってまいらなければならぬ。ただ、今後の交通量の動向によりまして、また今後の状況を見て、いま先生の御指摘の点についてはさらに実情調査いたしまして、その状況によってまた検討してまいりたいというふうに考えております。
  31. 金瀬俊雄

    金瀬委員 海上保安庁水産庁で話を煮詰めていただいて、できる限り早い機会に付帯条項が実行されるようにひとつ努力していただきたい、さように要望いたしておきます。  それから航行中の船舶から海上不法投棄物が近ごろたいへん多くなっております。あきかんとか古タイヤ、油それから油のしみたぼろきれ、そうしたものをどんどん東京湾の中に投げ棄てます。ですから、それが海底に沈んで非常に汚染されています。これに対する対策というのは、いまどういうことをやっているか御質問申し上げます。
  32. 隅健三

    隅説明員 海上保安庁といたしましては、海をきれいにするという運動を毎年いたしております。やはりこれには航行船舶のモラルの問題の確立ということが一つ。それから航路に配置いたしております巡視艇からの警告と申しますか、注意喚起ということが第二番目に考えられます。所属の船主協会であるとか、あるいは内航海運組合とか、あるいはタンカー組合に対しまして、東京湾をきれいにする運動と申しますか、不法投棄をさせない、あるいはバラストを捨てないということを厳重に注意を喚起しておるというのが、現在海上保安庁がとっておるところでございます。
  33. 金瀬俊雄

    金瀬委員 そういう不法投棄をやめさせる、海をきれいにする運動に対する予算はいまどのくらいありますか。
  34. 隅健三

    隅説明員 ただいま手元に資料を持ち合わせておりませんので、さっそく調査の上御報告いたします。
  35. 金瀬俊雄

    金瀬委員 この前予算の問題について質問したとき、この次のときには必ず予算を盛るようにしますという答弁が出ていましたね。この前のときには国に予算がなくて、ギャンブルのほう、船舶振興会からもらって、それでやっているということを発表したでしょう。今度はそういうことをしなくて、自分で予算を組んでやるということを発表しているわけです。今度は幾ら組んだか、それが——わからないのですか。わからなければあとでひとつ調査して知らしてください。  それから続いて、この法律施行されてから船舶事故がどのくらいあったか。
  36. 隅健三

    隅説明員 東京湾の最近における海難発生状況につきまして、四十八年の暦年の一年間の東京湾で発生いたしました救助を要する海難船舶隻数は、百六十三隻でございます。これがほとんどいわゆる港則法適用の港内で事故を起こしておりますが、これを除きます東京湾内海域では、四十三隻でございます。また、海上交通安全法に指定されました航路における事故は、一応ゼロということでございます。
  37. 金瀬俊雄

    金瀬委員 事故のことについては、水産庁でとった事故件数と、おたくのほうの件数と、それから漁業組合で発表しているのと、県で発表しているのと、全部数字が非常に違うようです。  二十一日の朝日新聞に出ていますが、二十日の午後一時二十分ごろ木更津沖、この前と同じ金田と牛込の沖に大量に油が流れ出たことを知っていますか。
  38. 隅健三

    隅説明員 私はまだその報告を受けておりません。
  39. 金瀬俊雄

    金瀬委員 これは海上保安庁のほうから報告が出ているわけですが、朝日新聞にもこんなに大きく取り上げられておりますよ。各新聞に……。これは朝日だけを切り抜いてきたわけですが、幅百メートル、長さ一キロにわたって大きな油の流れがあった。これは昼間流れたからよかったのです。あの辺の漁民が総出でむしろを持っていって、かわいたむしろを油の上に投げて、そのむしろを回収して取り上げたわけです。これには海上保安庁、県、漁業組合、三者一体になってやったようですが、これが夜だったとしたら、漁場流れついたとすれば、いまノリが最盛期ですから、何十億という被害が出ている。昼間だから助かったわけです。この油が流れ出たときに、油の流れを発見したのは県の水産部の四トンぐらいの小さな船が発見したようです。こういう場合に海上保安庁では加害者、犯人ですか、油を流したタンカーあるいはほかの船かもわかりませんが、調査しているわけですよ。もう二日たっていますから、追跡しなければ間に合わないわけですが、それに対する対策というのは何かありますか。
  40. 隅健三

    隅説明員 タンカーあるいは貨物船からの油のたれ流しということについては、これは全国的に広く見られます。海上保安庁といたしましては、やはりタンカー動静調査と申しますか、どの船がどう動いているか、湾内は非常に多くの小型タンカーが運航しておりますけれども巡視艇によりあるいは聞き込みによりまして、あるいは届け出ということで、それぞれの地域、海域航行したタンカー動静を把握するということが第一の対策であろうと思っております。この点につきましては、千葉保安部あるいは木更津保安署におきまして、この点の割り出しと申しますか、調査を続けておるというふうに考えております。
  41. 金瀬俊雄

    金瀬委員 油の事故発生件数というものは、非常にたくさんな量にのぼっておりますが、これは県からとってきた書類ですが、あとでお渡しすることにしますので検討していただきたい。相当の量が東京湾に流されているということはわかるわけですが、東京湾汚染調査というのはどこが責任を持ってやっているのか、科学技術庁なのか、海上保安庁なのか、水産庁なのか、あるいは港湾局なのか、あるいは環境庁なのか、どこが東京湾汚染最高責任者になるのか、それをちょっと教えてくれませんか。これは瀬戸内海でも伊勢湾でも同じです、海上交通安全法に伴って規定がありますから。どこが主体になっているのか……。
  42. 隅健三

    隅説明員 この湾内あるいは瀬戸内海海洋汚染調査実施主体でございます。これは水質保全法その他瀬戸内海環境保全臨時措置法等によりまして、環境庁その他が担当するというふうに考えておりますが、海上保安庁といたしましては、やはり違反取り締まり、もちろんこれには実態のある程度の調査、これは各航行船舶あるいは巡視艇による報告等によりましての汚染調査はいたしますけれども、われわれといたしましては、やはり違反取り締まりという点に重点を置いてやっておりますので、これを総合して行なうということは海上保安庁ではやっておりません。
  43. 金瀬俊雄

    金瀬委員 海上保安庁ではやっておらないということでございますので、この問題についてはあらためてあと質問いたしますが、少なくとも東京湾汚染については、海上保安庁なり、環境庁なり、科学技術庁なり、どこかが主管して調べなければならない問題だと思いますが、主管官庁はどこなのか、これはひとつはっきりさせていただきたい、そういうことをお願い申し上げます。  それから、東京湾あるいは伊勢湾瀬戸内海でも同じですが、一年間にどの程度ずつ汚染されてくるのか、汚染度がもうとまっちゃっているのか、もうこれ以上きたなくならないということが考えられるのか、あるいはもっと汚染してくるのか、汚染度がどのくらい進んでいるかということについて御答弁願います。
  44. 隅健三

    隅説明員 的確なるデータにつきましては、海上保安庁においてはこれを持っておりません。ただ、巡視艇あるいは巡視船報告によりますと、やはり瀬戸内海あるいは東京湾なり、われわれの取り締まり相当功を奏したと申しますか、次第に透明度が上がっておるという報告を聞いたことはございますが、その詳しいデータは私どものところにはございません。
  45. 金瀬俊雄

    金瀬委員 あなたがおっしゃるようなことであればたいへんけっこうですが、東京湾なり、瀬戸内海なり、伊勢湾がだんだんきれいになってくるという話は、きょう私は初めて聞きました。いままでそういう話は聞いたことがない。だんだんきたなくなってくるという話は聞く。これについて海上保安庁のおたくの船で東京湾調査しております。これはある大学の教授が調査しています。それについて海上保安庁は非常に親切に協力しています。その結果、東京湾は昭和四十六年以来年々五%ずつ悪化しているということをはっきり雑誌にも書いてありますし、発表しております。四十六年から五%ずつよごれてきているというデータが出ているわけです。それが昭和六十年になると、この調子で進んでいけば、東京湾のアサリとか魚とかそういうものは一切死滅するとまでいわれています。そういうわけですから、ひとつ海上保安庁でも、あるいは水産庁でも科学技術庁でも、早く東京湾汚染対策責任体制というのがどこの省で取り扱うのか、それを明確にして、ひとつこれ以上汚染をしないようにやってもらいたいということを強く要望しておきます。少なくともきれいになっているという話を聞いたことはございません。それは大あらしが来たり大雨が降ったりすると、一時的に東京湾の中に水が流れ込むとか、それから外洋の水が入ってきれいになるということは聞いていますよ。それは一時的なことですよ。たとえば多摩川が欠壊して大騒ぎをやりましたが、そのかわりヘドロが流れて川がきれいになったという話は聞いています。それと同じようなことで一時的な現象としてそうなるということはありますが、東京湾が年々きれいになるという話はあまり聞いておりません。  それからもう一つ、これは全部コンビナート付近の各工場、川崎でもそうですが、千葉でもそれから東京でもそうですが、排水溝を調べると、年々三十センチくらいヘドロがふえているということです。ヘドロがふえるのは、汚水を処理しなくてそのまま海の中に流し込むということです。昔から水に流すという話がございますが、何でもきたないものはみんな海の中に流し込んでいるというのが工場の実態なんです。その調査というのは、これは港湾局ですか。工場から出てくる排水を調査して、ヘドロとかそういうものがどんどん流れてくるのを監督しているのは、どこの官庁でだれがやっているのですか。
  46. 竹内良夫

    ○竹内説明員 工業排水の規制は通産省が所管していると思いますが、港湾におきましてそういうヘドロ等がたまるという点につきましては、港湾管理者が調査をいたすことになると思います。現在そのようなヘドロ等がたまり過ぎているというようなものに対しましては、港湾公害防止対策事業という事業をもって対処していきたいというように考えております。
  47. 金瀬俊雄

    金瀬委員 これは国のほうでもっと真剣に、海洋汚染というものについてどうすべきかということについて対策を立てていただきたい、さように考えます。原子力船の「むつ」も、これは海洋汚染問題というのが一番大きな問題として取り上げられてきたわけです。そうしたことについて「むつ」の例はいい教訓を残したわけですから、海洋汚染ということについて国はもっと真剣に取り上げていただきたい、さように要望しますが、海洋汚染の防止のために新年度予算はどのくらい要望してどのくらい取れそうなのか、そのことについて大臣から率直なお答えをお願いします。
  48. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 予算の詳細な数字はいま手元にないようでございまして御報告申し上げかねますが、要求をしていることは事実でございます。海洋汚染の撲滅ということについては、私どもの立場から、予算も並行いたしまして今後もさらに努力を重ねてまいりたいと思っております。
  49. 金瀬俊雄

    金瀬委員 「むつ」の問題につきましては、時間が参りましたので、あらためて次の機会に質問することとしまして、最後に成田空港の問題で一つだけ御質問申し上げます。  運輸省の次官通達によって、成田空港の暫定パイプラインの工事を再開するにあたって観測のために井戸を掘るので地下水の水位あるいは水質がどうなっているかということを調査することになっている。その水質の検査というのは、この前の質問のときには池田理事から、水質の検査は千葉県あるいは成田市に依頼するということをはっきり答弁しています。その理由は、自分で掘って自分で検査するのはまずいから、自分では検査しないということをいっておるわけです。ところが公団は、民間機関にやらせるということを最近いっております。これは、民間機関というのは公団の指示した民間機関がやるから、幾らでもデーターを直すことができるというふうに第三者というのは誤解します。ですからもし水質検査をするとすれば、この前の答弁のように成田市とか千葉県とか、そうした公的機関に依頼することのほうがいいと私は考えますが、それに対する運輸省の考え方を……。
  50. 中村大造

    中村(大)説明員 この水質の検査につきましては、これは建設省から出されましたいわゆる暫定指針というものに従ってやっておるわけでございます。その検査機関は、いわゆる公的な機関またはこれと同等の能力を持っているようなものにやらせる、そういうことになっておるわけでございます。今回の検査につきましては千葉県ないしは成田市がみずからやるというのが非常に好ましいということは先生おっしゃるとおりでございますけれども、いずれにいたしましてもこれは相当専門的な知識と専門的な設備、機材等を必要とするわけでございまして、やはりこういうものはその能力がある機関にやらせるということではないかと思います。  それで、現実の問題といたしましては、県において従来からこれを委託しております検査機関に検査をやらせるということで、かたがた県におきましてみずから必要なそれのチェックを行なう、こういうことでやらすことにいたしておるということでございます。
  51. 金瀬俊雄

    金瀬委員 時間が参りましたのでこれで打ち切りますが、公的機関、県とか市にも検査をさせるというふうに解釈してよろしゅうございますか。
  52. 中村大造

    中村(大)説明員 県におきましても当然必要に応じましてチェック、検査、そういうものをおやりになる、こういうことでございます。それだけでは全部をカバーいたしきれないわけでございまして、それには県が従来から検査を委託いたしております、十分な能力、信用のある機関にこれの検査を委託する、こういう方法でいいのではないかというふうに思っております。
  53. 金瀬俊雄

    金瀬委員 重ねて聞きますが、県も成田市も公的機関ですから、そういうところで検査することもいいわけですか、はっきりそれだけ……。
  54. 中村大造

    中村(大)説明員 お答え申し上げます。  検査の万全を期するために、県におきましても随時みずから観測井等の検査を行なうことといたしております。
  55. 金瀬俊雄

    金瀬委員 ありがとうございました。
  56. 三池信

  57. 神門至馬夫

    ○神門委員 私は最近特に問題になっております新幹線の事故、これに関連する安全確保の問題について、さらに国鉄の将来の再建計画、これにも関連してひとつ質問をいたしてまいります。  非常に事故が続発をいたしまして、在来線あるいは新幹線に集中して事故が多様な態様で多発いたしておるのでありますが、さらにはローカル線の廃止、無人化、こういう背景もあって住民に大きな刺激を与えまして、国鉄に対する評判というものは有史以来最悪の状態ではないか、こういうふうに考えます。しかし最近、十月の十五日に出されました新幹線に対する安全確保の報告、これが国鉄総裁から運輸大臣に出され、あるいは東北本線の上野から白河間、この二十二カ所の除行、こういうようなものが発表をされまして、さらに来春ダイヤ改正のときには列車の本数の削減をするという、かつて国鉄が今日まで示したことのない率直なと申しますか、国民の不安にこたえて積極的に対処しましょうという姿勢をあらわしました。これを転機にして一切のマスコミを中心に、国鉄安全のためにはがんばれ、大胆にその対処をせよ、こういう社説を中心にしてにわかに国民の世論が盛り上がっております。これまでこの場におきましてもわれわれ同僚議員が、新幹線は危険ではないか、在来線は疲弊し尽くしてはいないか、こういうことを再々質問をしたのでありますが、常に国鉄の総裁は、国鉄の安全はまかしておいてくれ、こういうような態度でありました。ところが、御承知のとおり九月の十二日に起こりました東京運転所構内におけるATC信号異常現示、新幹線の心臓とも言うべきこの信号が異常現示をいたしました。しかも、常に低い信号現示をするというシステムが心理的に信頼されておりましたけれども、三〇現示のところで七〇を現示する、突如としてこういうATCの大事故が発生をいたしました。これを転機にいたしまして、国鉄当局が強気一点ばりの、安全はまかしておけというような姿勢から国民の心配にこたえましょう、こういうような姿勢に転換したことが、今日国民がこぞって、自分ら国民の財産、身命をまかしている国鉄が安全こそ輸送の最上の使命である、こういう立場でしっかりがんばってくれ、こういうように拍手を送っていると私は考えるのでありますが、この点について国鉄総裁はどのようにお考えになりますか。
  58. 井上邦之

    ○井上説明員 総裁ちょっと事故がありましておくれておりますので、副総裁でございますが、かわりましてお答えいたします。  新幹線に限らず国鉄全般の問題につきまして、特に最近続いております故障なり事故につきまして国民の皆さまから多大の御関心をいただき、また不安の念を抱いておられることにつきましては私ども衷心からおわびを申し上げるとともに、今後とも安全ということについて、従来も安全こそ輸送の根本問題であるという趣旨でやってまいりましたけれども、それ以上に今後とも安全問題については十分に戒心していかなくてはならないという気持ちを一そう強めたということでございます。この点は従来も変わりありませんが、さらにその気持ちを強めたということをまず第一にお答え申し上げておきたいと思います。
  59. 神門至馬夫

    ○神門委員 さらに強めて対処していきたいという決意がいま表明されたわけでありますが、ちなみに九月十二日のATCの異常信号に対して調査が大々的に行なわれました。このときには全列車を停止させる、あるいは本部に調査委員会を設置するというふうなかつてない姿勢が示されました。こういうふうな事故が起きましたときに、今後もやはり列車を一時とめてやる、こういうようなことはなされなければならないと考えますが、そのときに強気一点ばりの姿勢がやはりあらわれております。九月十二日ATC異常現示直後において発表になりました、中間発表的なものではありましょうけれども、実はATC信号機器室の係員がコードの接続を間違えたからこういうミスがあったと天下に公表された。ところがその後になって、実は関連構造物のミス、建設誤りがあった、こういうようなことが発表になっておりますが、そのときに接続ミスをしたという係員のショックというものは重大なものがあると思います。人権的なものがある。いままで国鉄のとった態度は常にこういうふうに現場の職員に終局的にはその責任があるのだ、こういう一つの措置がこのときにもあらわれておると思います。その職員が大きな打撃を受けたのでありますが、それらに対する措置というものはその後どういうふうにされましたか。
  60. 井上邦之

    ○井上説明員 事故が起こりました場合に、たとえば新聞記者諸君に対する発表などにつきましても、時々刻々経過の説明を求められるわけでありまして、初めから事故の原因がわかっておる場合には自信を持ってそれに対してお答えいたしますけれども、まだ調査中ではっきりした原因がわからないというような場合もございます。そのときにいまの段階ではこういう疑いもあるということで発表をいたしておるわけでございますが、とかく新聞なんかに出ます場合には、それが断定的なものとして出る場合もございまして、その点につきまして職員が非常にショックを受けるということは事実でございましょう。しかし私どもといたしましては発表する場合には十分注意をいたしまして、現段階ではこういう疑いもあるが、さらに問題を突き詰めて調査する必要があるということは常につけ加えて説明いたしておるはずでございます。  また、そのショックにつきましてどういう措置をとったかというお尋ねでございますけれども、まあ特別に物的な措置をもってこれにこたえるというぐあいにもまいりませんし、当方の発表でもその職員に全責任を負わせたような発表をいたしたわけでもございませんので、その点は、ひとつ同じ職員のことでございますから、お互いの気持ちで了解していただくというよりいたし方なかろうと思います。
  61. 神門至馬夫

    ○神門委員 これが最終的には他に原因があった、こういう真相が発表されたからその職員は助かったのですが、もしか真の原因が究明されないまま今日に至ったならば、その職員はいわゆる犯罪人にされていたと思うのであります。この辺が実は今日までの事故処理として国鉄当局がとってきたこのやり方、いみじくもあらわれておる、こう考えるわけです。ですからその辺についてはもう少し慎重に、一人の職員に人権問題まで及ぼすような発表というものは外部的にこのような形で表明することは避けなければならない、これはきわめて大切なやり方だと思います。これが断定的に発表したとするならば、最後まで真の原因は隠して、おそらく強弁を、その係員に責任があるとして主張せざるを得なくなる、こういうこともあり得るわけです。その点をここで強く、そういうことを繰り返さないように要望しておきたいと思います。  先ほどの井上副総裁答弁されましたように、さらに安全の方向へ向かっていきたいということであります。国鉄の経営そのものは民主的で、そしていわゆる開かれた経営でなくてはならない。これが国鉄の今日国民の疑惑に対処する、審判にこたえる道だと考えるのであります。この九月十二日のATCの信号異常現示事故その真の原因が、ATC信号機器室の隣にある新幹線の車体洗浄装置を動かす変圧器が常時、信号電流にごく近い周波数で誘導電流を発生させていて、ATCを狂わせたことが原因だ、こういうふうに発表になっております。ところが、この状態いわゆる構造関係は、実は十年間常にこのような事故を発生する同一条件に置かれていたわけですね。それで今日十年たって十一年目、いみじくも十月一日が十一年目に入るわけですが、そこで、この瞬間的異常現示、そういうようなものをもATCが発することがある、現示することがある、異常信号もまたあるということを十年目にして国鉄は初めて公表されたわけです。私は、十年たって十一年目に初めてこのような同じ構造条件、構造関係にあるところに突如として異常信号を発生するという、そういうことはあり得ないと思う。この間必ず国鉄当局に対して、その乗務員から瞬時的な信号がこういうふうに異常を示しました、ATCの異常信号がありました、こういうことが、あるときには印字される、または印字されないものは口頭で連絡をされておるはずであります。この九月十二日の事故の現場において、かつて十年間、同一のような、いわゆる同じ条件にあったことが何回もあるはずでありますから、そのようなことが何回ぐらい今日まで報告をされているのか、あるいは印字されたものがあるのか、さらにはこういうATCの異常現示が国鉄に報告されたものはどのくらいあるのか、お答え願いたいと思います。
  62. 山岸勘六

    ○山岸説明員 ATCの異常現示につきましては、印字と申しますか、先生も印字とおっしゃいましたけれども、車上におけるATC装置の中にATCの変化状況を詳細に記録いたしておりますが、これらの記録の中で記録されなおかつ原因がわからないというものは大阪運転所で一件だけ過去の記録の中にございますけれども、その他のものにつきましては、瞬時的な怪信号を現示した件数は、かりに四十八年度一年をとってみますと四百九十六件に及んでおります。しかしながら、この中で原因がよくわからない、乗務員から報告があったけれども原因がつかめない、証拠がないというものが四十二件であります。今年に入りまして、昨年からいろいろと原因のはっきりしたものについて手を打っております。今年度に入りまして総件数で百六十九件でありまして、この中でやはり乗務員から報告があったけれども証拠がない、再現性もないというのが二十五件ございます。私ども、これらの問題につきましても証拠がないからといって伏せておくという態度ではなしに、さらに原因究明につとめてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  63. 神門至馬夫

    ○神門委員 マスコミ表現をするならば、神格化されたATCの異常現示が四十八年度で五百件もあった、こういうことであります。これは、山岸さんが新聞発表されておる状況からいえば、いわゆるブレーキにまで及んでいない、こういうことばから、ATCは完全に動いているんだ、こういうような表現をされておりますけれども、これは実は私はたいへんなことだと思います。しかし、いま数字を御発表になりましたけれども、現場の乗務員に聞いてみますと、これが口頭で報告しても取り扱ってもらえない、取り上げてもらえない、何ら措置してもらえないから、近ごろはめんどうくさくなって、印字された、いわゆる記録されたもの以外は報告しないようになった、こういうようなことを言っておるのでありますが、実は鳥飼事故の場合におきましても、乗務員の報告は無視されて、山岸さんの報告によると、記録によるこの信号現示そのものを前提にすれば、油による滑走が原因だ、これとぴったりと事故原因が合うのだ、いわゆる乗務員の報告は違っている、こういうようなことを新聞発表になされている。これは乗務員に対する積極的な事故防止なり運転安全を守ろうという意思を大きく阻害することになると思うが、それらの報告に対しての措置はきっちりとおやりになっておりますか。
  64. 山岸勘六

    ○山岸説明員 私ども、乗務員から申告のあったものにつきましては、これはこういう原因だ、たとえば前の列車と瞬時的に接近するということになれば、当然その瞬間におきまして定位の信号を現示するわけであります。そういう状況は、ダイヤの実際走った状況からすぐわかりますので、その乗務員に対しては、そのような報告をするように厳重に指導しているつもりでありまして、大体ただいま申し上げましたように、乗務員の申告がなされてないというようなことは、私どもといたしてはちょっと想像できないのでありますけれども、もしそういう事実がありましたら、なお一そうその点につきまして私ども解明に努力をしてまいりたいと存じます。
  65. 神門至馬夫

    ○神門委員 いまこの異常現示の瞬時的なATC作用、それについて、四十八年度は四十二件、四十九年は二十五件というように御発表になっております。それらの原因のわからないままなこのATCに対する操作あるいはそれに対する報告者に対してどういうふうにおこたえになっておるのか、この点は、時間がありませんから別といたしまして、積極的に報告をさせ、積極的にこれに対処した措置を返してやる、これをなさいませんと、いま運転乗務員は何かしらこのATCの異常現示なれをしている、このような危険な状態にあることを一つ警告をしておきます。  それから、今回の場合、この九月十二日事故が発生しまして、そして運転休止をされました。非常に大胆な措置であり、国民の期待にこたえた措置であります。しかし、これは事故が発生したからなされた措置でありますが、われわれ国民の期待は、実は事故が発生したからそれをあと追いするのではなしに、常に事故の起こり得る可能性を予想して、事前に対処をしていく、こういう予防主義に、この国鉄の安全問題は対処していかれねばならない、こういうように思うのです。事故が発生して、突如とめられますと、皆さんが御承知のとおり、あれだけの大混乱を起こしました。まさにいま新幹線が大動脈的な、国民の生活の一部に^経済の中に大きく組まれておることは間違いないわけでありますから、この点についていま私たち社会党が大臣のほうにも申し入れております。あらかじめこの列車をとめて、そして一斉にこの点検をする、あるいは修繕のおくれておる個所は修繕をする、早く遂行する、計画どおりに進める、こういうようなやり方をしたらどうか、あるいは働いている国労なり動労のほうからも、十日に一日は運転休止して総点検、総修繕をせよ、こういう要求が出されておるということを新聞紙上にすでに発表いたしておるところであります。これを引かれて各新聞の社説に、疲れ切った国鉄は、もうこの辺でドック入りをする時期じゃないか、ドックに入れなさい、こういうことを主張いたしております。一カ月に一回、十日に一回、そういうふうな期日は別として、あらかじめ特定日を設けて、そして新幹線を一日なり半日なり休止させる、そしていま多発しつつあるあるいは世論が集中している新幹線に対して総点検をする、そして危険な場所については予防的に適切な修繕、応急措置をする、あるいは根本的な改革を進める、こういうふうなことが必要だと思いますが、それに対する考え方はいかがでございますか。運輸大臣としてはどのようにお考えになりますか。
  66. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 安全は事故の予防でなければならないと思います。この点につきましては、いろいろな需要との見合いとかいうことじゃなくて、まず大量輸送機関は安全を確保しなければその使命を全うすることができません。だんだん新幹線の問題につきましても国鉄に問題を指摘し、指示してまいったところでございますが、東北線の安全確保のために国鉄は一部の列車を間引きしてでも、運休してでもこの安全を確保するということに最近踏み切ったわけでございます。これを機会に、私は、新幹線につきましても、いま御指摘がございましたように、列車を運休しても安全確保のために万全を期してもらいたいということを厳重に指示いたしまして、国鉄で鋭意検討をさせておるところでございます。国鉄マンとしますれば、列車を運休するということばたいへんなことだと私は思います。その心情はほんとうによく——何とか運休しないでやりたいという気持ちは痛いほどわかるわけでございますが、そういうことを言っておる時期ではないと思います。運休してでもやれということを厳重に指示して、国鉄に対してその万全を期するように、その計画の報告を求めておるところでございます。
  67. 神門至馬夫

    ○神門委員 いま大臣の運休をしてでもやれというこの国会における国民に対しての答えがありました。それを受けて国鉄当局はどのように具体的な措置をお考えになっておりますか。
  68. 井上邦之

    ○井上説明員 ただいまの問題につきまして、かねがね運輸大臣から御忠告がありましたことは、私どもといたしましても十分肝に銘じております。ただ私どもといたしましては、新幹線につきましては夜間五時間ないし六時間の列車をストップしておる間合いがございます。在来線に比べますと、はるかに多量な間合いをとっておるわけでございますから、基本的な考えといたしましては、新幹線の保守体制として欠けるところはないという確信を持っております。しかし、先般来新幹線の故障あるいは事故が相次ぎまして、国民の皆さま方から新幹線に対して多大な不安の念を抱かれておるということも事実でございます。また、先生指摘のとおり、定期的に休んででも運休してでも総点検をやるべきではないかということがもはや世論となってきておるということは、私どもも十分肝に銘じてわかっております。そういう両者の——運輸大臣からの御忠告もあり、また国民の世論、国民感情、そういうものがそこまで来ておるということを考えますと、私どもも従来の列車間合いは五、六時間で十分だというようなことだけではいかないというふうな考えも私ども現在持っておるわけでございまして、この際、東海道新幹線が岡山まで延び、さらに今度博多まで延びようといたしております。博多開業を来年三月に控えております。来年三月に博多まで延びるということは、単に距離が倍になるというだけのものではございません。あるいはCTCの問題にいたしましてもATCの問題にいたしましても、一千キロにわたるこの新幹線を総合的にCTCなりATCで統御していくという非常に質的に大きな問題を控えております。この大きな問題を控えておりますだけに、もし万一のことがあってはいけない、こういうこともわれわれ十分考え合わせまして、東海道新幹線が三月に博多まで延びるその前に、一度やはり総点検するべきではないかということにこのほど踏み切った次第でございます。  さらに、詳細な計画はまだ十分ではございませんけれども、考え方といたしましては三月に博多まで延びる前に一月、二月の閑散期がございます。閑散期の中でもさらに曜日を考えますと水曜日あたりが比較的列車がすいておる、こういう事情も考え合わせまして、一月、二月の間に四回ぐらい午前中新幹線を運休いたしまして、総点検をやるということに考え方を統一いたした次第でございます。
  69. 神門至馬夫

    ○神門委員 まことに国民の世論、心配にこたえる処置を運輸省なり国鉄当局が決断をもって博多線開通までの時期と合わせてやられようとしておることについては一定の評価をいたします。これはさらに徹底的な計画をもとに、それが有効に安全確保の対策として確立するように措置をしていただきたいと思います。  さらに、東北本線が御承知のとおりたいへん劣化あるいは老朽化して危険な状態になっているから徐行、減便、こういう対策を打ち出されました。しかしこの東北本線にあらわれた現象は全国の在来線においてもいわゆる潜在的事故としてたくさんのものがある。いま国鉄当局なり運輸省のほうも御承知のとおりたいへん揺れが激しくなってまいりまして、全国的に在来線そのものも危険な状態になってきておると思うのです。  そこで一つの提案は、在来線にいたしましても何らかの時期をきめて総点検をする、そして今日保守のおくれている状況は一体どういうふうな原因に基因するのか。これは国民の目は新幹線に集中いたしておりますけれども、それぞれ在来線においても私は同等またはそれ以上に危険な状態があるというふうに考えるわけであります。それに対する総点検を幹線、亜幹線をまずやる意思はないか、この点が一つ質問であります。  それから二、三日前に動力車労組から全国会議員に配られました冊子がありますが、そこには「古河事故の隠された事実」として、あの九月の二十四日、東北本線古河−野木間で起こった事故は、実はそれ以前に線路状態が悪いということを国鉄当局に報告していた。ところがそれは十一月に線路交換の予定だからというのでそのままに放置されていた。徐行措置もとられないままあのような事故が不幸にも九月二十四日に起こった。しかし競合脱線というたくさんの原因が集中してあらわれた脱線であって、特定な事故原因というものがわからないというような発表をされた。これはまさに国鉄の責任である、こういうふうなことの重大なものが内容として国会議員に全部配付されておるわけでありますが、この総点検の意思と、東北本線徐行及び間引き運転をもしようという決意に至った九月二十四日の事故の原因を、要点をひとつお答え願いたいと思います。
  70. 井上邦之

    ○井上説明員 この際全線区にわたって総点検の必要はないかというお尋ねでございますけれども、私ども決して強弁するつもりはございませんが、線路の管理状態、これは詳細なデータを持って把握しておるつもりでございます。したがいまして、いま急に総点検をやらなければならぬという必要は私はないと思います。東北線の問題が急に新聞あたりでクローズアップされまして、突然出てきた問題のように一般に受け取られておりますけれども、そういうことでもございませんので、前々からその管理上、線路の保守状態はわかっておりますので、手を入れてやってきておったわけでございますけれども、まあいろいろの事情が重なりまして、列車の間引きもせざるを得なくなるという事態に追い込まれたことは事実でございますが、この際全線区にわたって総点検をやらなければ管理状態がわからないというものではないというふうに私は考えておりますので、いまの時点で、この場で総点検をやりますというふうなお答えはちょっといたしかねると考えます。   〔委員長退席、佐藤(文)委員長代理着席〕  それから具体的な事故の問題についてお尋ねがございましたが、これは担当の山岸常務から返答させます。
  71. 山岸勘六

    ○山岸説明員 古河−野木間におきます途中脱線事故につきましての原因でございますけれども、私どもまだ競合脱線であるということは、その疑いがあるということは気持ちに持っておりますけれども、発表いたしておりませんので、調査中でございます。こういう事故に対する調査でありますけれども、かねてから途中脱線につきましての研究成果として、あらゆるデータを、研究所のコンピューターによりまして、これは専門のコンピューターを使っておるわけでありますけれども、これによりましてシミュレーションをいたしまして、そして何がおもに原因なのかというようなところを追及いたすのでありますけれども、非常に時間がかかる研究でありまして、昨日も私その点について請求をいたしたのでありますけれども、二十五日まで待ってくれ。いままでのところでは大体四十日ぐらいかかってこのシミュレーションをやっているわけでありますけれども、今回は二十五日といいますから、ちょうど一カ月で大体シミュレーションの結果に基づいての詳細な検討会を二十五日にやらしてもらいたい、こういうような返事が返ってきておりました。それによってできるだけ真相を明確にいたしたい、このように考えているところであります。  また乗務員からの報告でありますけれども、たしか——私資料は持っておりませんが、二十一日に乗務員が機関区へ帰りましてから当直へ、あの付近の線路で動揺が激しかったというような報告があったわけでありますが、私どもといたしましては、動揺が激しいとか線路に異常があるのじゃないかというような疑いのある場合には、次の駅へ臨停しても駅長に連絡しなさい、そして駅長から保線関係への連絡というような取りきめをいたしておるわけであります。なお、それほどでもないというような判断の場合には、大体近ごろあの辺は少し揺れが大きくなってきたというような場合は、機関区へ帰りましてから報告する場合もあるかと思いますけれども、そういうようなことで取り調べてみたのでありますけれども、かねてあの付近については手入れをするという計画になっているのでというような返事が機関区のほうへ保線区からいっておるようであります。この点の全体としての仕事のやり方につきまして、私どもといたしまして指導に不十分な点があるんじゃないかというふうに考えまして、運転部長、施設部長両部長を全国から集めまして徹底をいたした次第であります。
  72. 神門至馬夫

    ○神門委員 おそまきながら、その後、そういう報告に対する対策をすみやかにやるという措置をとられているようでありますが、これはきわめて大切なことでありますから、こういうことを二度と繰り返さないように、ひとつ続けてやっていただきたいと思います。  それから、時間がだんだんなくなりますから要点をお答え願いたいと思いますが、藤井総裁になられまして、磯崎さんのときと変わった現象として、これまでの国鉄の姿勢が、最近民主的あるいは公開的な姿勢に変わってきているんじゃないかというふうに思われるものがございます。この新聞記事等を見ますと、十月四日に摂津市において石澤国鉄新幹線総局長が、公害対策のためにやっている工事がもし効果がなければ減速運転をもやろう、こういうことを初めて発表になっている。あるいは十月十五日には、新幹線の安全対策について、昭和五十二年、五十六年をめどとする車両、レール、架線の交換あるいは先ほど御発表になりました運転を休止してでも安全を守ろうという方向に画期的な方針が打ち出された。あるいは東北本線に対する徐行、減便。これは列車のスピードと赤字に追われるということで営利を追求することを第一にし続けてきたこれまでの国鉄がまず安全第一に、そして国民の世論にこたえようという大きな姿勢の転換ではないか、これは非常に喜ばしいことではないか。こういうふうに今日打ち出されつつある国鉄の一連の民主的な発言、施策、これを歓迎するのでありますが、このように受け取ってよろしゅうございますか。
  73. 井上邦之

    ○井上説明員 総裁がかわりましても、国鉄の姿勢がそう急に変わるものではございません。多少とも個人的なニュアンスの違いはあるかもしれませんけれども、基本的な姿勢がそう変わるわけではないと私は考えております。かりに前総裁がいまおりましても、おそらく同じような措置をとったであろうと思います。したがいまして、基本的な姿勢は変わりません。従来からも国鉄は安全を何よりも第一に考えてやっておったということは事実であります。安全の問題についてはさらに一そう心を入れてやっていきたい。冒頭に申し上げましたとおりにそういうことでございまして、別に総裁がかわったから姿勢が変わった、こういうことではございません。前進しておるということだけは申し上げます。
  74. 神門至馬夫

    ○神門委員 前進ということばをお使いになりましたが、変わったということはお認めになったと思います。これはそう答えられなくてはならないことである、こういうように思います。あまり遠慮せずに今日言われることがむしろ国民の期待にこたえることだと考えます。  次に、大臣でありますが、十月十八日に記者会見をいたしておりまして、先ほど国鉄から大臣に出されました新幹線の安全確保報告、これに伴って一千百億程度の金が要る。これは政府がその原資を確保しよう、あるいは今日までの国鉄の原価主義はやめて——これは新聞記事の表現ですよ。原価主義というのはちょっと表現が悪いと思いますけれども、原価主義をやめて、自動車やら飛行機のように、いわゆる固定施設については政府が負担するという、イコールフッティングというような議論がこれまであったわけでありますが、そういう対応の措置をしていこう、こういうような三つの重要な発言をしておいでになります。これも、総裁がかわったからではないが、国鉄は変わったということを、いま前進ということばで副総裁はおっしゃいましたが、大臣のほうといたしましても、十カ年計画を見直すということを、八月に大体その骨子的なものを発表になっておる。あるいは自民党の幹事長が、ただ運賃の率、回数、こういうことで交通の再建をやっていくことはもう限界に来て、抜本的な国鉄の十カ年計画をやらざるを得ない、こういうことを九月に発表になっている。これらは、非常に大きな国鉄の再建問題に対して、ひとつ根本的に考え方を変えてやっていこうという政府の意思のあらわれであると受けとめてよろしゅうございますか。
  75. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 国鉄の副総裁、なかなかうまいことを言いまして、総裁がかわったから政策が変わったというわけではございませんと言っておりましたが、私も、急遽ここで政策が変わったというわけではございませんけれども、お話の中にございました安全対策予算面というようなものは、私ども責任をもってこれを解決するということでございます。NHKの解説で、運輸省がそういうことをやったけれども、どうも運輸省の発言はきわめてなまぬるいものであってという解説をやりましたから、私はすぐNHKに連絡しまして、運輸省はそういうようなへっぴり腰で国鉄の安全対策にかかっておるんじゃない、訂正してくれということを申し込んだわけでございます。  なお、十年再建計画につきましては、五十年度には経済社会基本計画というものが企画庁において見直されるわけでございます。それを機会に抜本的に計画を立て直す、いまの十年計画を見直すというつもりでいま検討を進めておる最中でございます。
  76. 神門至馬夫

    ○神門委員 見直しということはもうすでに発表になっておりますが、私が先ほど言いましたような新幹線の安全対策の財源確保あるいは今日までの原価主義的な方針の変更、それらをも含めて見直しを検討しておる、こういうことでございますか。
  77. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 そういうことでございます。
  78. 神門至馬夫

    ○神門委員 これはもうたいへんな前進だと思います。そういう方向で国鉄再建問題を検討されない限り、今日このような新幹線の安全対策一つをも借金に追われてできないということで、これは国鉄を責めることだけでは解決できない問題でありますから、根本はそこにありますから、ぜひとも積極的に進めてもらいたいと思います。  それから、十月十五日に出されました新幹線の安全対策について、これは非常に積極的な提起であるというふうに評価はされておりますが、実はその内容について、目新しい提案ではないのではないか、こういうふうに私思うのです。それはどういうことかと申しますと、さっき申しましたように車両の交換あるいはレール、架線の交換ということが三つの桂になっております。ところが、車両の交換一つを見ましても、いま、三十九年のあの新幹線開通当時までにつくりました一次車、二次車といわれるものが三百六十両ある。これが五十三年度末に完了いたしますと、実は四年五カ月も先になるわけであります。問題は、その車両の一番しまいがどうなるかということであります。国鉄当局のほうでいっておいでになりますように、この三百六十両はいままで五百万キロ走っておるわけですね。四年半先になりますと七百万キロ以上になるわけです。在来線の場合は十四、五年は使いますけれども、キロ数で言うと四百万キロですね。そうすると、この七百万キロ以上新幹線の車を使うということ自体、実は危険な状態ではないか。それから、この車両をいまから取りかえましょうという、その出発が五十一年度からであります。そうすると一年五カ月あります。一年五カ月たちますと、これは六百万キロ近くなるのであります。いかにこの部分的な部品の交換あるいは危険個所の取りかえ等、やりくりをいたしましても、あの風圧なり速度なり、多様な、今日まで在来線で考えられないような大きな圧力というものがかかり、無理がきておるわけであります。その限界というものが、これはこの新幹線の安全確保報告で、もしこうして集中して出されなくても、それはもう限界ではないか。それ以上延ばすことは、私はできないと思う。だからむしろこれは繰り上げて、古いものから取りかえていく、こういうふうなことが必要ではないかというふうに思うのです。また、レールの問題にしても同じことがいえるわけでありますが、これも四十七年度丁から十カ年計画で今日すでに実施中であります。ところが実施中のレールの交換計画が実はいま七年、八年、二年半以上たってみても計画の半分しかレールの交換がなされていないわけですね。計画どおりにいけてない。いろいろ副総裁がおっしゃるように六時間も保守作業時間がとってあるのだから、こういうことをおっしゃっているけれども、実はその内容、きょうは触れるわけにいきませんけれども、それらの時間がなくて計画の半分にも達していないのであります。あるいはテルミットの溶接部分も、この劣化が激しくて、全体のレール故障の九〇%の、そのさらにテルミット部分は八〇%だ、こういうふうにこの報告書にも書いておいでになりますけれども、それらにいたしましても、もうこのレール交換そのものは、四十七年度から五十六年まで、それ以上延ばすことはもうできないものなのです。今日やっておいでになることを報告書の中にやはり出しておいでになる。あるいは重架線化の問題にいたしましても、今日多発する電気関係事故であります。これは線路が非常に劣化する、それで車両が老朽化する、それらの振動がそのままもろに架線に衝撃ハンマーとなってあらわれますから、今日の架線ではそれに耐久することができないわけですね。だからいま急いで何とか交換をおやりになっておるけれども、これまた計画がなかなか遂行できない。いわゆる五十二年までに風の強いところとか駅構内をやろうというふうにおっしゃっておりますけれども、それらの計画が計画どおりに進んでいないわけなのです。ここが実は問題なわけです。ちなみに、列車の本数の増加を見てみますと、昭和三十九年の開通時期には六十本であったのが、四十四年には八十五本、四十六年には二百十四本、四十七年には二百二十八本というふうに、もう四倍近くも列車の回数がふえております。それらが車両にも線路にもあるいはレールにも、そのまま大きな消耗としてその劣化を進めておる状態であります。でありますから、このようなことは実は真の国鉄の安全確保の対策にならない。これは今後運転休止をしてでもやろうという中にぜひとも取り上げていただきたいと思うのでありますが、問題は営利主義に追われて銭がない、そしてもう一つは人がないのであります。報告書にも書いてありますように、その報告書の全体の論調あるいはその報告書の体系が、新しい機器を開発しましょう、改良しましょう、設備の取りかえをいたしましょう、保守基地をふやしましょう、あるいは整備いたしましょう、職員の技術は向上いたしましょう、外注技術力の——下請ですね、下請の技術力の向上をはかりましょうというふうに、いわゆる量的、質的の設備なり技術の問題は書いてありましても、それらの機械を使う人間のことを一つ報告書というのが書いてないのであります。  最近十七日ごろから新聞論調が一斉に、機械は人間が使うものである、そして営利主義に追われて効率主義第一の人減らしのための機械化が今日新幹線のこのような事故の多発する原因になっておるのではないか、あるいは国鉄事故の多様で多発する今日の全線的傾向になっているのではないか、人的配置をぎりぎりのところにせずに、もう少し余裕をもってしたらどうかという、この論調に私は賛成をするものでありますが、それらにこたえることこそ新幹線の安全を確保する最大の問題だと思う。いわゆる車両にしても、レールにしても、架線にしても、この三本柱自体は何ら新しい新味の提案ではないのではないか、このように考えますし、先ほど申します最も大事な予算的問題は、大臣がこれに必要な一千百億程度のものは政府で確保しよう、この点を検討中だとさっき御言明になりました。それとあわせて、人的な問題についても、このぎりぎりの状態ではどうにもならない、それを何とかすべきではないか、こういうふうに考えますが、この点いかがお考えでございますか。
  79. 井上邦之

    ○井上説明員 新幹線の事故防止に対する恒久対策と申しましても、特別、手品みたいにたいへんな手が卒然としてあらわれるものではないのでありまして、従来までやっておりますことをさらに徹底的にやる、深度化してやるという以外にないのでございますから、やることは、いままでやっておることをさらにやるということで、特別目新しいものがないのは、これは事実でございます。  また、人手不足によって事故が多発しておるのではないかというお尋ねでございますけれども、新幹線関係だけについてみましても、従来の要員の配置をずっと時系列的に追ってみましても、あるときはふやし、あるときは減らす。減らすというのは、合理化をやって減らしておるわけでございます。ふやしておるときは業務量増に対応してふやしておる。これは今後もその方針に変わりはないわけでございまして、必要であれば必要な人員を配置するということにわれわれの考えは変わりはございませんので、その点は私ども、人手がないから事故が起きておるということではない、最近起きておりますいろいろな故障なんか見ましても、人手不足で起こっておるというふうには必ずしも私は考えられないと思いますので、そういう人手不足による事故の多発ではないというふうに考えております。
  80. 神門至馬夫

    ○神門委員 副総裁、手品のようなというような表現は不謹慎だと思いますよ。それは許されないことですよ。
  81. 井上邦之

    ○井上説明員 ことばの使い方がはなはだ不用意でありましたことはおわびいたします。
  82. 神門至馬夫

    ○神門委員 新しい計画でなしにこれまでの計画をまとめて長期計画を運輸大臣報告したまでのことだ、こういうふうないまの副総裁答弁であったと思う。それならそれでいいわけであります。  しかし問題は、それをどうして早めることができないかという点は、これはたくさんの問題があるわけですね。この報告書に出してあるように、レールは五十六年、架線の危険部分は五十二年、そして車両は五十三年、車両のほうは、これは工場、メーカーに発注すればいつでもできます。これは速度をアップすることができる。しかし、報告書でも書いておいでになるように、今日運転上安全でないとは認められない、それを捨てることはできないから、これは五十一年度から始めましょう、こういうことでこれは書いてある。ところがレールにしても、架線にしても、すでに今日、架線の場合は、劣化現象というものがこの報告書の中には認めておいでになる。レールにいたしましても、これはきょう時間がありませんからできませんけれども、六十キロの山陽線並みにしなかったら——確かに今日二百十キロ前提の建設基準を持つ東海道線、その経験の中にやはり不安な状態が出てきたわけなんです。いわゆる道床における細粒化あるいは噴泥状態そのものを見ましても、これは人手が足らないということに基因するわけであります。下請の人間がいなくて東北本線の今日の保守があのような事故を起こす、劣化する原因になったということは当局のほうでも認めておられる。やはり新幹線の場合にも、季節労務的なこの下請関係の労働力をもってまかなっていることが技術不足とともに今日のこのような線路の悪化になっていることは間違いないわけであります。この点は、たくさんの資料要求をいたしておりますから、それに基づいて、人手不足は全くないのだというふうにおっしゃっておりますが、それに対してまたあらためてお尋ねをしたいと思います。  ただ、大事なことは、いま大臣のほうで、原価主義的な営利第一主義、そこまでおっしゃいませんけれども、今日のようなスピードと効率第一主義で突っ走る国鉄をもって国鉄再建をしようということは限界に来て、抜本的に何とかここで手直しをしなければならない、そういう前提で新しい十カ年計画をいま見直しをしつつあるところだ、こういうふうにおっしゃっておるときに、国鉄のほうの、人手も何も十分です、合理化で生み出してまかなっておりますというこの態度は何かへつらった態度であって、許されないんじゃないか。今日このような問題を起こしておるときに、当然すなおに、やはりそれらのものを下請から直営にするとその労働力なりが安定いたします、季節労働力の多い少ないでこの保守の問題がおくれたり進んだりするという、あるいは技術力が全くなくてこれら電気なり線路の保守に当たっておるという下請関係労働者もある、こういうものを直営で安定化する、これは下請よりかさらにそのほうが次善の策であることは間違いないわけであります。それが十分であるというようなお答えは、いまの積極的な運輸大臣答弁から、それに、直接現場を監督する国鉄当局の副総裁答弁としてはいただけないと思うのですが、いかがですか。
  83. 井上邦之

    ○井上説明員 十分であるということばの使い方でございますが、私、現在の要員が余裕があるという意味で申し上げておるのではないのでございまして、必要な人員は配置しておる、したがって今後、業務量増がどんどん高度化してまいりますと、人間がふえるということは当然考えられますので、そのふえる場合には、要求すべきところには当然要求していく、その措置はとっていくという考えば持っておるわけでございます。現在で十分余裕があるというふうには私はお答えしたつもりはないわけでございまして、御了承いただきたいと思います。
  84. 神門至馬夫

    ○神門委員 総裁、磯崎体制から藤井体制になって、非常に硬直した強気一点ばりの国鉄から、国民の心配にこたえるような一連の今日の発言なり行政なり措置がされておる、こういうことを先ほど主張したところです。運輸大臣のほうも、何とか今日の国鉄の再建問題は抜本的に、たとえば自動車やら飛行機のように、下部構造は国が持つとか、そういうような点もあわせて、十カ年計画は見直しをしている、こういうことなんであります。そういう中で、いま質問をしました点は、私は、そういう再建計画の中で、無理をして人を合理化で生み出さなければならない——必要な人員というのは合理化計画の中の必要な人員であって、しかし、それに対してもうぎりぎりの、乗務員も駅員も今日の過密ダイヤの中でくたくたになっているという今日のような状態ではないか。保守の面においても、人が足らないからできるだけ下請にどんどん回しながら、ぎりぎりの職員でまかなっている、こういう状態ではないか。この点はなかなか、法律のワク内における、十カ年計画のワク内における国鉄の運営でありますから、それをばっくりはいえないにしても、いま政府のほうが何とかそれを見直しせにゃいけない時期だというときに、職員はいま十分やっております、余裕はないけれども十分ですというような答弁は、これはいただけないし正しくない。むしろすなおに大胆にいま発言されることこそ、見直しの時期がいま来ている今日の段階において、国鉄の意思を代表して総裁がここで発表されることが大切ではないか、このように思うから、総裁ひとつ、期待する総裁としてお答え願いたいと思います。
  85. 藤井松太郎

    ○藤井説明員 お答え申し上げます。  非常にむずかしい問題でございまして、御承知のように国鉄の財政再建十カ年計画ということは、端的にいえば、政府も助けてやるし国民も助けてやるから、おまえらも一生懸命で働くんだぞということが結論的になっておりまして、これは働くと申しましても、労働強化をやるとか、サービスの低下をやるとかあるいは安全度を落とすとかということは、これは能率をあげたということには相ならぬので、しからばいかにするかというと、省力化の機械であるとかなんとかそういうものを考え出し、装置をして、サービス面も安全度も落とさぬようにして、しかも人間というか経費を減らしていく以外に方法はない。これは口でいえばきわめて簡単なんだが非常にむずかしい問題でございまして、まさに先生が御指摘のように、その経営、その合理化が安全に響き、サービスに響いたらこれは一大事なんで、さようなことがないように今後も十二分に注意をしていく。(神門委員「要員の問題はどうですか」と呼ぶ)まあいまのところ私は、安全に響くとかなんとか、おそろしく労働強化しているというような、これは全体的の目でにらんで——これは見解の相違もあり得ると思いますけれども、私自身はさようには考えていない。しかし、だんだんこの合理化を進めていくと、先生が御懸念になっているような方向にも近づくこともいなめない、こういうことで、そういうことのないように十二分に注意いたします。
  86. 神門至馬夫

    ○神門委員 時間が参りました。それで、たくさんの資料要求を国鉄当局のほうにいたしておりまして、御答弁願うことにしておりますが、それは後ほどその資料をいただきます。そして、文書でも資料をもって要求いたしますので、ひとつ親切に資料を御提出願いたい。  それから、いま最終場面の要員、人的配置等の問題については、具体的な面を私いま言う時間がありませんから、それですれ違いになっておりますが、次の機会にもう一ぺん、今度は具体的にそれらの問題で、こういう状態がこのような危機状態に、安全を脅かす状態になっているという点について質問し、お答え願いたいと思います。  それではきょうはこれで終わります。
  87. 佐藤文生

    佐藤(文)委員長代理 三浦久君。
  88. 三浦久

    ○三浦委員 私は原子力船「むつ」の問題について御質問をいたしたいと思います。  九月一日の日に原子力船「むつ」が放射線漏れ事故を起こしました。これまでの政府の原子力行政に大きな批判が集中をいたしております。特に、政府が、原子炉というのは原子力委員会の安全審査をパスしているんだから安全なんだというふうに事あるごとに強調していたことが事故後の国会審議やその他によってまっこうからくつがえされました。このことは国民に大きな衝撃を与えていると思います。  たとえば、原子炉安全専門審査会第三十二部会長であった内田秀雄さんは、国会でこう言っています。原子力委員会における安全審査は、原子力船開発事業団から出された申請書をもとに基本設計を審査し、建造にあたっての注文をつけるだけだ、こう言っているのです。  また、この内田さんは、十月八日のNHKの「原子力船〃むつ〃」という報道番組で、記者の質問に対してこう言っています。安全専門審査会の役割りというのは原子炉の安全性を確保するシステムの中のほんの最初のポイントを押えているだけであって、それが通ったからといって野放しに安全というものではない、そういうものを安全という理由づけにするのはわれわれとしてはしごく迷惑です、こういうふうにはっきり言っているのであります。つまり原子力委員会の安全審査をパスしても、その後の詳細設計や工事にミスがあれば欠陥原子炉がいつでも生まれる、こういうわけであります。  今回の「むつ」の事故というのは、まさにこのことを事実で示したものだというふうに言うことができると思います。私もこの事業団の原子炉設置許可申請書、また原子力委員会の答申を読んでみましたけれども、設計ということばが持っている響きとは全然違っておりまして、要するに概念設計にすぎないものであります。そして、いわゆる基本設計なるものだけでは原子炉を製造できるというしろものでは全くありません。実際に原子炉を作製する場合には詳細設計が必要だということが言えると思うのであります。ところが、この詳細設計と詳細設計図どおりに工事が行なわれたかどうかということ、このことは原子力委員会の仕事の外であるというのですね。それじゃ原子力委員会の仕事の範囲外のことだから、原子力委員会は責任を持たないというのであれば、一体どこが詳細設計とそれに基づく工事について責任を持つのかというと、それは全部運輸省だ、こういうわけであります。いわゆる運輸省船舶検査官によって全部検査をすることになっておる、こういうのであります。それで、私は、問題をはっきりさせるという意味から、まず最初に原子炉の安全審査についての全経過が法的にどうなっているのか、このことをお尋ねをいたしたいと思います。
  89. 佐藤文生

    佐藤(文)委員長代理 だれにですか。
  90. 三浦久

    ○三浦委員 それは運輸省
  91. 内田守

    ○内田説明員 お答えいたします。  安全審査の問題は、先生御承知のように炉規制法に基づくものでございますので、むしろ科学技術庁から御答弁いただいたほうがけっこうだと思いますけれども、概括的なことだけ御説明させていただきます。
  92. 三浦久

    ○三浦委員 いやいや、それはおかしいじゃないか、運輸省関係してないのですか。
  93. 内田守

    ○内田説明員 私どもは、炉規制法に基づく安全審査につきましては、設置許可にあたりまして運輸大臣が同意をしたという面はございます。しかし、安全審査の具体的な内容その他につきましては所管する科学技術庁から御答弁いただきます。
  94. 三浦久

    ○三浦委員 それじゃ、科学技術庁にちょっと。
  95. 中村守孝

    中村(守)説明員 お答えいたします。  船舶用の原子炉につきましての一連の国の安全審査のあり方についての御質問かと思いますが、原子炉の安全確保のためにはまず原子炉等規制法に基づきまして設置許可の申請がなされます。この申請がなされますと、これは内閣総理大臣あてになされるわけでございますが、内閣総理大臣は、原子力委員会にその設置についての妥当性を諮問いたします。原子力委員会は、安全性の問題に関しましては原子炉安全専門審査会、これは専門家三十人で構成されている原子力委員会設置法に基づく審査会でございますが、この審査会で御審議をいただきまして、その御報告を受けて原子力委員会としてさらに安全以外の問題も審査いたしまして、内閣総理大臣あてに答申をいたすことになります。内閣総理大臣は、これを受けまして、その原子力委員会の意見を尊重して処理するということに相なっておりまして、実務的には科学技術庁でその処理を行なっております。  原子炉安全専門審査会で審査いたします内容は、いま申しましたように原子炉設置許可の段階におけるものでございますので、このあと、規制法で申しますと工事の認可、それから工事方法の認可、これは一連のことでございますが、そういう設計内容についての審査が行なわれ、それが妥当と認められた場合、認可をいたします。それに引き続いて、その設計書どおりにものがつくられているかいないかにつきまして、工事中においての検査が行なわれます。さらに完成の段階において使用前検査という総合的な試験を行なった上、それに合格して初めて原子炉施設として運転開始をいたすわけでございます。  それにさらに引き続きまして、運転開始をいたしました後においても定期的に原子炉施設を検査し、その安全性を確かめるということが法律的に義務づけられておるわけでございます。  ただいま申しました一連の国の安全性のチェックシステムの中で、原子炉等規制法で科学技術庁が処理いたしておりますのは設置許可の段階まででございまして、以下、詳細設計の審査以降につきます規制法の手続、これは工事認可それから使用前検査等がございますが、原子炉等規制法七十三条の規定によりまして、舶用炉につきましては船舶安全法で検査を受けるということで適用除外になっておりまして、それ以降の安全チェックについては、船舶安全法の適用を受けるというたてまえになっております。  一連のシステムについて御説明申し上げました。
  96. 三浦久

    ○三浦委員 では、その後の経過について、船舶局長お願いします。
  97. 内田守

    ○内田説明員 私どものほうは、船舶安全法に基づいて検査をやっておるわけでございますけれども、先ほど科学技術庁から御説明ありました炉の設置許可の済んだ船と申しますか、炉を持っておる船につきまして、船舶安全法に基づく検査が始まるわけでございます。私ども、先ほどちょっと申し上げましたように、炉設置許可にあたりましては同意をいたしております。したがいまして、安全審査その経緯その他については、そういう意味では十分承知しているわけでございます。そうした安全審査の内容、設置許可を踏まえまして具体的な検査に入っていくわけでございますが、御承知のように図面のチェック、それから現物の工事の検査、さらには性能の試験というふうに実質的には入っていくわけでございます。法律的な制度といたしましては、使用前でございますから、第一回の定期検査とそれから製造検査がほとんど並行して行なわれていくわけでございます。  現在、「むつ」が放射線漏れを起こしました段階は、ちょうど船でいえば効力試験と申しますか、試運転と申しますか、そういう段階でございまして、私どものほうの法的な「むつ」の立場は、現在検査中の船であるということでございます。
  98. 三浦久

    ○三浦委員 そうすると、設置許可になった原子炉については、すべて船舶安全法の規定に基づいて船舶検査官が検査をする、こういうことですね。——そうすると船舶安全法第二条第一項二号の「機関」というものの中に原子炉は入るわけですか。
  99. 内田守

    ○内田説明員 包含されます。
  100. 三浦久

    ○三浦委員 そして船舶安全法の第五条、第六条に基づいていま言った定期検査、製造検査、こういうものを行なうわけですね。
  101. 内田守

    ○内田説明員 そのとおりでございます。
  102. 三浦久

    ○三浦委員 そうすると検査の方法ですけれども、機関についていえば船舶機関規則というのがある。そしてまた原子力船特殊規則、通達、それから指示、こういうものによって検査を行なうことになるわけですか。
  103. 内田守

    ○内田説明員 正確に申し上げますと船舶安全法第二条に基づく省令は膨大に上がっておるわけでございます。原子力船の点について申し上げますと、原子力船につきましてはそれらの法令に基づく、いまお話しになりました機関規則とかそういうものがもちろん適用になりますが、特に原子力船については炉を含む災害防止等の問題等ございますので、別に原子力船にさらに加える基準といたしまして、省令でございますが原子力船特殊規則が定められておるわけでございます。
  104. 三浦久

    ○三浦委員 そうすると、原子炉についての基本設計についての審査は、船舶検査官がするのですか。
  105. 内田守

    ○内田説明員 先ほど申し上げましたように、炉規制法による設置許可を終わりましてからわれわれのほうの船舶検査に移っていくわけでございます。法律体系としては別のものでございます。しかしながら、先ほども申し上げておりますように、炉設置許可にあたりましては、科学技術庁から協議もございますし、われわれも同意いたしておるわけでございます。基本設計という抽象的な表現はなかなかいろいろ誤解があると思いますので、また後ほど御説明さしていただきたいと思いますが、そういう抽象的な出現にしろ、基本設計がもし炉規制法によって審査されるということになれば、われわれといたしましてはそれに拘束され、またそれを踏まえて検査が進められていくということでございます。
  106. 三浦久

    ○三浦委員 基本設計だけでは工事はできないと思うのですよね。そうすると当然ものをつくる、いわゆる原子炉をつくる、船をつくるという場合には詳細設計が必要だと思うのですけれども、原子炉施設の詳細設計についてはやはり安全性の見地から審査をするのですか。
  107. 内田守

    ○内田説明員 お答えいたします。  まず基本設計、それから詳細設計というのはきわめて抽象的なことばでございます。
  108. 三浦久

    ○三浦委員 しかし、あなたたちが使っているじゃないですか、国会その他で。
  109. 内田守

    ○内田説明員 ええ、使っております。これは抽象的に申し上げておるわけでございます。  で、いま申しました安全審査が終わりますと、先ほど申しましたように、その結果を踏まえまして検査が始まるわけでございますから、当然そのワクの中での詳細な図面あるいは工事のやり方等はわれわれのほうでやっておるということでございます。
  110. 三浦久

    ○三浦委員 原子炉本体についての安全性については審査を省略しているというふうに私は聞いたのですけれども、そういうことはないのですか。全部、この原子炉本体についての詳細設計についても運輸省のほうで検査をしているのですか。
  111. 内田守

    ○内田説明員 いたしております。
  112. 三浦久

    ○三浦委員 そうすると、原子炉施設の中には原子炉設備とか放射線管理設備、核燃料物質取り扱い設備それから放射性廃棄物設備とかいろいろなものがありますね。こういうもの全部について詳細設計を皆さん方はチェックしていらっしゃるのですか、もう一度お尋ねします。
  113. 内田守

    ○内田説明員 おっしゃるとおりであります。
  114. 三浦久

    ○三浦委員 そうすると、今回の事故の全責任運輸省にあるということになるのですか。
  115. 内田守

    ○内田説明員 基本設計それから詳細設計ということばで表現さしていただきますけれども、現在そういう原因等の探求をやっております。それが基本計画あるいは基本設計に問題があったのか、あるいは詳細設計あるいは工事のやり方に問題があったのかということで、おのずから明確になるというふうに考えております。
  116. 三浦久

    ○三浦委員 それはおかしいじゃないですか。原子炉のどの部分にミスがあって事故が発生をしたということかわからなくても運輸省責任——あなたのような答弁であれば運輸省に全責任があるということははっきりしているじゃありませんか。たとえば安全審査の段階でミスがあったのか、それともその後の詳細設計とか工事にミスがあったのか、それとも両方にミスがあったのか、どっちかでしょう。それはどうですか。
  117. 内田守

    ○内田説明員 おっしゃるとおりです。
  118. 三浦久

    ○三浦委員 この原子炉設置についての安全審査に関しては全然問題がないのだということをちゃんと政府が国会で答弁していますよ。  たとえば科技特の九月十日の閉会中審査の議事録ですけれども、その中で井上原子力委員委員は、ちゃんと安全審査には問題がないのだということをはっきり言っているのです。ちょっと読んでみましょうか。  これは一五ページですけれども、「全然責任がないかどうか、私は結論的に申しまして、当時安全審査会が出しました結論と申しますか、審査結果の考え方については、正しいものであったといまでも考えております。」はっきり言っている。そのあとに続いて、これはちょっと空白がありますので、いま言ったことと直接はつながらないけれども、「しかし、現行法規上におきまして、当時安全審査会が決定をされました結論というものは、今日考えてみましても正しいものであった、かように考えております。」また、次の二八ページでやはり同じ井上さんが答弁をされています。「設計が妥当でなかったかあるいは製作上のミスがあったか、この点をただいま検討をしておる次第でございます。」結局、井上原子力委員委員が政府の説明員として答弁しておることは、安全審査には全く問題がないんだ、こう言っておるのです。これは九月の十日に国会で答弁しておることなんです。  それで科学技術庁にお尋ねしますけれども、こういう考え方というのは変更になったのですか、それともいまでも維持されておられるのですか。
  119. 中村守孝

    中村(守)説明員 お答えいたします。  原子力委員の御発言でございますので、私が同委員の発言についてどうこう言う立場に実はございませんが、いま科技庁の考え方といたしまして申し上げます。  安全専門審査会で審査いたしました中身につきましては、まず遮蔽の設計の基準、これが原子炉周辺において、居室あるいは甲板上あるいは補機、制御室等における放射線レベルがどの程度におさまるように設計しなければならないか、そういう設計基準の放射線レベルというものが妥当であるかどうかということについて審査いただいております。さらに概念的な遮蔽設計図等に基づきまして、そこに使用いたします材料あるいは基本的な遮蔽構造についての考え方等についても御討議いただいております。その限りにおいて、いわゆる遮蔽計算そのものについては、安全審査の段階でそこまでの詳細な審査は行なっておりません。したがって、どの辺に今回の放射線漏れの原因があるかについて、先日船に乗船いたしまして、いろいろ測定をしてきていただいた専門家の方々が現在解析中でございますので、その結果を見て、安全審査会で考えておった材料問題等にまで問題があったのかどうか、そこら辺についても検討する必要があろうかと思っておりますので、いまの段階で、設置許可段階において全然責任がないとか、詳細設計以降のどちらに責任があるというような議論は実は差し控えさせていただきたいと思っております。
  120. 三浦久

    ○三浦委員 安全審査会の審査に問題がないとすれば、全責任運輸省にあるんだということは、これははっきり言えるんじゃないですか。大臣、どうですか。
  121. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 いろいろな言い方はあると思いますけれども、原因がどこにあるか、その原因をつかまえてみませんと、いまどこに責任があるかということは明確に出てこないということで、その原因の究明をせっかく専門家でいま鋭意追求している、こういうことでございます。
  122. 三浦久

    ○三浦委員 そんなことはいまの段階でもうわかっていますよ。そんなことと関係ない。九月十日の科技特で審議したときに、これは大臣も出席しているんですよ。そして井上さんという方は説明員として答弁されているんですよ。この発言を大臣ば訂正も何もしてないのですよ。政府の答弁として行なわれているんですよ。それで、安全審査には問題がなかったとはっきり言っているのだから。そうすると、あと、設計図上の問題、工事の問題材料の問題、ここに問題があるというごとはもう自明の理じゃないですか。それは原子炉のどこの部分のミスでもって事故が発生したかというようなこととは関係ない問題なんだ。そうでしょう。どうです。
  123. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 これはもうたびたび私も言っておることでございますが、安全という問題は、これはもう絶対というものは私はないと思います。井上委員が安全だと言われたからこれは絶対なんだという議論には、私はいささかここで同調するわけにはまいりません。だからこそ、いま原因の究明を学者の間においてやっている、その結論を見てどこに原因があったかということが明確になってくる、かように考えます。
  124. 三浦久

    ○三浦委員 じゃ大臣にお尋ねしますけれども、もう一度聞きます。安全審査に問題がないとすれば、今度の事故運輸省の全責任ですか。
  125. 内田守

    ○内田説明員 先ほど来申し上げておりますように、本船は検査中の船でございますので、今度の原因がかりにはっきりいたしましたとして、それが検査上の面からチェックできたものであるかどうか、それから検査体制に問題があったかどうか、その辺を検討した上で責任というのはきまってくると思います。
  126. 三浦久

    ○三浦委員 質問に対する答えになっていないな。  まず、いままでの国会の答弁を聞いておりますと、安全審査には問題がない、こういう方向になってきているわけです。そうすれば運輸省責任だということはもう明らかなんですね。それをいろいろ、まあ検査の結論が出ていないからというような詭弁を弄してみずからの責任をのがれようとする、こういうところに原子力行政の欠陥があるのですよ。  次へ移りますけれども運輸省自身が、いわゆる原子炉施設についてその詳細設計がはたして安全上妥当なのかどうか、そういうことをちゃんとチェックできる体制になっているのですか、そのことをちょっとお尋ねします。
  127. 内田守

    ○内田説明員 なっていたと信じております。
  128. 三浦久

    ○三浦委員 それじゃ、どういうふうになっていたのか、具体的に答弁をいただきたいと思います。
  129. 内田守

    ○内田説明員 具体的に申しますと、普通の船の場合には地方海運局長の権限で行なっているわけでございますけれども、原子力船につきましては検査はすべてまず本省みずからが行なっておるわけでございます。それからその検査の中身は、図面承認、図面チェック等を含めまして、件数といたしまして約三千二百回行なっております。
  130. 三浦久

    ○三浦委員 数が多ければいいというものじゃない。  あなたたちが検査の基準にしている特殊規則ですね、これをひとつ例にとって見てみますけれども、特殊規則の十六条、ここでは「原子力船には、放射線障害を防止するため必要な放射線しゃへい物、隔壁、甲板その他の構造物及び通風装置を設けなければならない。」こうなっていますね。そして通達によってその詳細が書かれてありますけれども、この十六条関係の通達は遮蔽物の材質、構造というようなものには何にも触れてないのです。ただどの程度以上放射線が出てはいけないということだけを規定しているわけですね。そうすると、どういう材質、どういう構造でなければならないかというようなことは特殊規則を見ても通達を見ても何も出てない。そうすると、この通達に基づく放射線の値が、どういう構造物をつくり、どういう材質のものを使ったら担保されるのかというようなことについては全然検査官は基準がなくてやっているじゃありませんか。そうすると、このことは結局検査の体制がないということを意味しているんじゃないのですか。御答弁いただきたいと思います。
  131. 内田守

    ○内田説明員 先ほど申し上げましたように基本計画、基本設計の段階でどういう形でどういう材料を使用しということは具体的にはすでにきまっておるわけでございます。そしてそういうものについて具体的にどういう寸法にしたら遮蔽効果があるか、これは計算とかいろいろありますけれども、そうして出てくる遮蔽効果を基準の内にとどめるということでございまして、省令で一律的にこういう材料でこういうようなものでなければならないという画一的な基準ではないということでございます。
  132. 三浦久

    ○三浦委員 そうすると、遮蔽物の材質、構造については安全審査の段階でもって審査されているのでそのとおりやるんだ、こういうことですか。
  133. 内田守

    ○内田説明員 そうした基本的な事項を踏まえて詳細な検討を進めるということでございます。
  134. 三浦久

    ○三浦委員 国会の論議でたとえば第二次遮蔽の問題が論議になりましたね、ポリエチレンと鉛でどうのこうのというやつ。すると、このいわゆる基本設計ではポリエチレンと鉛を使うんだということだけしか書いてないでしょう。そうすると、その第二次遮蔽の炉の一番頭部にはポリエチレンを使わない、鉛だけしか使ってなかったということですね。そうすると、ポリエチレンと鉛をどういうように組み合わせて第二次遮蔽をつくるのかというようなことは、これは全然詳細設計にまかせられているわけでしょう。どうですか。
  135. 内田守

    ○内田説明員 そのときの科学技術特別委員会で御答弁があったはずでございますが、本船のむつの問題でいま御指摘の部分については、すでに上部が鉛のみであるということは、安全審査の段階で判明しておったという御答弁があったはずでございます。
  136. 三浦久

    ○三浦委員 そういうことを聞いているのじゃないのですよ。だから基本設計と詳細設計とは全然違うものなんだということを聞いているのですよ。たとえばポリエチレンと鉛を使うのだというけれども、それをどういうふうに具体的に組み合わせるのかということは詳細設計の段階でしょう。そうするとその詳細設計が、その詳細設計どおりつくれば安全なのかどうかというような審査をあなたたちがしなければならないのじゃないのかと聞いているのです。
  137. 内田守

    ○内田説明員 いま申し上げました鉛とポリエチレンの例で申しますと、いま申しました組み合わせによって技術的にそれが詳細設計で一つの基準値内におさめることが可能である。技術的に可能である、実質的に可能であるという前提に立って安全審査は行なわれているわけでございます。しかもそのときの概念は、先ほど申しましたように上部は鉛のみで十分耐え得るという安全審査の結果でございます。
  138. 三浦久

    ○三浦委員 安全審査の段階でそういうふうに具体的な結論が出ていたのですか。
  139. 内田守

    ○内田説明員 いま申し上げましたようなことで詳細設計を進めていけば基準値におさまるように技術的に可能であるということでございます。
  140. 三浦久

    ○三浦委員 どうもはっきりしない答弁だけれども、やはりこの九月十日の科技特での審議では「格納容器の上部にはポリエチレンと鉛を使用することとなっております」これは安全審査の段階ではなっております。「それをどの部分にどのくらいの厚さのものをどういう組み合わせで使うかということまでは、基本設計の段階ではきめておりません。それは詳細設計以降の段階でございます。」こういうように生田科学技術庁原子力局長が答弁しておるのですがね。これはそのとおりじゃないのですか。
  141. 内田守

    ○内田説明員 ちょっといま資料を持っておりませんけれども、その後山田原子力委員が御答弁になっておられると思います。それからそのあとで、なお十分云々ということについては、前回の科技特で原子力委員から御訂正がございました。
  142. 三浦久

    ○三浦委員 特殊規則の第七条「原子力施設は、動揺、傾斜、衝撃、振動、圧力、自重、付加荷重、熱、放射線、腐しよく等によって当該施設の性能がそこなわれないものでなければならない。」こういうふうに書かれてあるわけですけれども、どういう構造にしたらこういう性能が維持できるのかということについては、特殊規則でも通達でも何にも規定されていないんですよ。そうすると具体的に詳細設計が出てきた段階で、それがはたして第七条でいうところの性能を持つような設計になっているかどうか、このことを審査する基準というのが運輸省にはないじゃありませんか。どうですか。
  143. 謝敷宗登

    ○謝敷説明員 お答え申し上げます。  原子力船特殊規則の七条に基づきまして、私どもは検査の心得、省令以上に詳細にわたるものにつきましては心得で処理をしておりますが、心得の段階でここに、七条に書いてございます動揺あるいは傾斜、衝撃、振動、圧力、自重、付加荷重、熱、放射線、腐食、こういったものにつきまして特に心得できめておりますのは船の場合に重要でございます動揺の問題を特に詳細にきめ、それから傾斜の問題、それから遮蔽材につきましては船体のたわみ等によって遮蔽材に損傷を生じない、あるいは遮蔽材の取りつけが応力集中を生じない、あるいは遮蔽材をできるだけ船体の強度部材に埋め込まない、要するに遮蔽材がそこなわれないということを心得でやっております。
  144. 三浦久

    ○三浦委員 原子炉の製作というのは、いろいろ未知の分野が多い問題ですね。ですから、さまざまな機関がいろいろな研究をするわけでしょう。そうして詳細設計を出してくるわけですね。そうすると、では運輸省のほうで、いろんな機関が日本の英知を集めてつくり出して、いわゆる詳細設計をつくってきた、これがかりに間違った場合に間違っていると言えるような、そういう体制になっているんですか、どうですか。
  145. 謝敷宗登

    ○謝敷説明員 お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、「むつ」は国産の第一号の原子力船でございますので、これの問題が始まりましてから、運輸省といたしましては先ほど申し上げました特殊基準の作成にあたりまして、造船技術審議会等を通じて技術的な検討を行なっております。さらに、具体的に「むつ」が基本設計を終わりまして建造の段階に差しかかります前に、特に遮蔽の問題につきましては、私どもとしても船に特有な問題もございますので、原子力研究所、それから原子力船事業団、それから船舶技術研究所が共同研究をいたしまして、原子力研究所のJRR4の原子炉を使いまして実物大の模型試験を行なっております。それによりまして計算のコードを確認いたしまして、その計算のコードの有効性を確認した上で遮蔽計算を検討した、こういうことでございます。
  146. 三浦久

    ○三浦委員 それは遮蔽計算だけですか。その原子炉全体すべての問題についてあなたたちは実験を行ない、そしていまいわゆる原子力の専門的な科学者たちよりももっと上の能力を持っていると、そういうふうにお考になっていらっしゃるのですか。
  147. 謝敷宗登

    ○謝敷説明員 先ほど申し上げましたように第一船でございまして、技術開発途上のものでございます。したがいまして、私どもとしましては研究の結果——これはいろんな研究機関でやられております。たとえば船舶技術研究所もやっておりますし、それから造船研究協会、その前の原子力船調査会等で研究をしてまいっております。それでそれらの研究結果を十分承知しながら、それをもとに計算、それから図面のチェック、主として強度上の問題につきましては、これは船舶工学科の経験者かかなりおりますので、強度上の問題を除いたほかの問題については、そういう研究結果を十分参考にしながら検査を進めていく。ただ先生にお断わりを申し上げなければならないのは、船の場合には、私ども長い間、船の検査の経験から申し上げますと、非常に激しい気象、海象の条件にさらされますので、計算の段階、あるいは設計の段階、あるいは工事の検査の段階、それから効力検査の段階、こういったものを繰り返してフィードバックしながら不ぐあいを直していくというのを在来機関にもとっておりますし、特に今回のように自主開発でやっておるものにつきましては特に念入りにフィードバックをしながらやっていく、こういう体制でございます。
  148. 三浦久

    ○三浦委員 あなたたちがそれは非常に努力をされているということは私はわかるのですよ。ただ制度上の問題として私は申し上げたいわけなんですけれども、たとえば、この昭和四十年から四十一年にかけて臨界実験というものを大宮で三菱原子力工業がやっておるわけですね。それからまた計測器の環境試験とか、炉心構造の模型試験であるとか、それから燃料集合体の模型試験、それから遮蔽効果の実験、いろんなことを、この三菱原子力工業がやっているわけだ。それからまた原子力研究所もいろんな研究をやっていますね。そうすると、そういう人たちが、もう、いまから言えばこれはもう十年近く前です、ずっと研究をしてきて、それでいわゆる詳細設計を出して皆さん方に審査を求めてくるわけですね。いわゆる原子力に関する日本の頭脳といわれる人たちが詳細設計を出していく、そうすると結果的にはそれを承認する、追認するといいますか、結局まあ検査というのは、この原子炉部分については形式的な検査というものにしか実際上はなっていないのではないか、こういうふうにわれわれは危惧しているわけですね。これはもう体制がそうなっているからしようがない問題なんです。皆さん方の能力を責めているわけじゃありません。ですから結局、いまの研究体制というものからいうと、皆さん方は原子炉については、詳細設計を実質的には審査しないで、いわゆる形式的な審査にとどめているのではないか、こういうふうに思うのですけれども、この点についてはどうお考えですか。
  149. 謝敷宗登

    ○謝敷説明員 お答え申し上げます。  確かに先生おっしゃるように開発途上の船でありますので、各研究機関あるいはメーカーの専門家、そういった方々がこの「むつ」の建造に関して直接間接に研究をしておられる、この点は非常によく私たちも承知をしております。そこで私どもとしましては、先ほどから何べんも申し上げておりますが、計算につきまして説明を受ければこれはわかります。それから構造につきましては、私どもとしては構造計算をやっておりますから、これもできます。ただ、何回も申し上げて恐縮でございますが、私どもとしては船の場合には陸上の場合とは違ってシビアな条件にありますので、効力試験を最終的にやりまして、そして技術的な計算なり技術的な設計の確実性を確かめた上で検査の合格というステップを在来船につきまして踏んでおりますが、原子力船の場合におきましては開発途上を考えますと、どうしても効力試験で最終的な計算なりそれから設計なりをその段階でチェックしながら確認をするという方法を現在とっておるわけでございます。
  150. 三浦久

    ○三浦委員 説明を受けたらわかるというんじゃ、やはり説明をした人の言うとおりにしか検査ができないということじゃありませんか。だからそれはチェックの機能というものは果たしてないんですよ。いまあなたのほうは効力試験云々ということを言われましたけれども、これはまあいまの船舶安全法の規定が原子炉などという、まだ未知の分野を検査するような、そういう法体系になっていないんですよ。たとえば原子炉等規制法であればいわゆる詳細設計についての認可、工事の着手、工法についての認可というのは、ちゃんと総理大臣の認可事項になっています。ところが船舶安全法に回ってきたために、そういう詳細設計の認可であるとか工事方法の認可であるとかいうのは全くないわけです。ですから一応詳細設計が出されてくる、そうすると、それで工事をやってみる、さあ工事をやって悪かったら手直しをする、そしてまた設計をやり直しをする、工事をやる、設計をやり直す、そういうことで、ずっと来ていくわけでしょう。いわゆるその一つ一つ段階でもって認可をするとか、そういう手続は船舶安全法上はないわけです。そうすると、いわゆる原子炉などという物騒なものを動かしてみて、悪かったら設計変更をして、また工事をやり直して、やってみてまた放射線が漏れたら、また設計し直してやるんだ、こういうような方法しかとれないような船舶安全法で原子炉の検査をするということ自体が私はたいへん間違ったことだというふうに思っているわけなんですね。で、あなたたちの立場もよくわかりますけれども、もう一点だけお伺いしますけれども、そうすると、この原子炉の中心的な部分といいますか、いわゆるノーハウの部分があるでしょう。そういうものについても三菱原子力工業から設計図を出さして検査をしているのですか。
  151. 内田守

    ○内田説明員 どの部分がノーハウであるかということは存じませんけれども、少なくとも船舶検査の途上におきまして、われわれが必要とする図面、その他の書類については、ノーハウを理由にして提出を拒まれたりあるいはそれに近いようなことがあった事実はございません。
  152. 三浦久

    ○三浦委員 そうすると、ノーハウ部分があったかなかったかおわかりになりませんか。
  153. 内田守

    ○内田説明員 船舶検査の面からは明瞭ではございません。
  154. 三浦久

    ○三浦委員 そうすると、いわゆる検査に必要な設計図というのは全部提出をさせているというお答えですね。そしたら、その設計図を全部提出していただけませんか、それがノーハウじゃないというのなら。ノーハウじゃないかどうかわからないというのでしょう。そうしたら、いわゆる原子力基本法に基づいて自主、民主、公開の原則があるわけだから、あなたたちが検査をしたその原子炉の詳細設計を全部ひとつ提出していただくようにお願いしたいと思います。
  155. 内田守

    ○内田説明員 ノーハウがないということを申し上げているのではございません。船舶安全法に基づいて提出を要求した図面は拒否されませんでしたということを申し上げておるわけでございます。なお、ノーハウを含みましたいろんなもっと詳細な図面等はあると思いますけれども、これにつきましてはむしろ船舶安全法の云々というよりも、原子力船開発事業団を監督する立場でそういう設計図等を提出すべきかどうか考えたいと思います。
  156. 三浦久

    ○三浦委員 そうすると、提出された設計図面の中にはいわゆるノーハウ部分があったかなかったかわからないというわけですか。それをはっきりさせてください。
  157. 内田守

    ○内田説明員 船舶安全法のたてまえからはそういうことでございます。
  158. 三浦久

    ○三浦委員 そうであれば、原子力基本法に基づいて運輸省としては当然その資料を公開すべきじゃないですか。資料として提出なさる意思はございませんか。
  159. 内田守

    ○内田説明員 原子力基本法に基づきまして、成果の公開ということでございますから、その成果については提出できると思います。
  160. 三浦久

    ○三浦委員 具体的な設計図面というのはこれは一つの成果じゃありませんか。いろんな研究の成果が結晶しているわけでしょう。結局そういう態度かいわゆる原子力基本法に違反をして——われわれは企業秘密であろうと何であろうと、やはり原子力に関係するものは全部公開しなければならぬと思っておるのですよ。ところが皆さんたちはノーハウ部分については出せないとか言って絶対に出さない。ところがいまの御答弁ですと、ノーハウかどうかはわからない、そういう立場なんだから、それを全部出すのが至当だと思いますので、それは強く私は要求しておきたいと思います。
  161. 内田守

    ○内田説明員 先ほど来申し上げておりますように、船舶安全法で強権というとおかしいのですが、強制法規として取り上げておるわけです。先ほど先生おっしゃいました「むつ」についてのノーハウを含めた図面その他につきましては、これは原子力船事業団を監督する別の立場がございますので、そういう面で提出すべきかどうかということは、これは科学技術庁からお答えいただきたいと思います。
  162. 三浦久

    ○三浦委員 しかし、科学技術庁運輸省も全部政府の一環なんですよ。そうでしょう。だから私は、運輸省自身がやはり原子炉に関する設計図を全部手に入れているわけなんだから、当然出すべきだと思うんですね。これは運輸大臣の権限でできることなんですから、運輸大臣どうですか。それは科学技術庁に聞く必要はないじゃないですか、われわれはいま運輸委員会で審査しているんだから。
  163. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 いろいろお話を聞いておるわけでございますが、これはやはり民主、自主、公開の原則がございます。できる限りのものは公開すべきだ。私はそのノーハウというものがどういうものかよく存じませんけれども、どのくらいの法律的に出すとか出さぬとかいうようなことに関する問題があるかどうか知りませんけれども、出せるものはやはり出すべきだろうと思います。  なお、それをいまそっくり出せという御発言でございますけれども、この点につきましては委員長等とも相談いたしまして間違いのないような措置をとりたいと思っております。
  164. 三浦久

    ○三浦委員 じゃ、私は委員長の善処を期待したいと思います。  先ほど私ちょっと述べましたけれども、いまの原子炉の検査が船舶安全法で行なわれているということ、このことについて運輸省はどういうふうに考えていらっしゃいますか。これでいいんだというふうにお考えになっていらっしゃるか、それとももっとほかの対策を考えなければならないというふうにお考えになっているのか、いかがでしょう。
  165. 徳永正利

    ○徳永国務大臣 この開発は安全が第一にやはり優先すべきだと考えております。それがためにはいろいろなチェックの機関を必要とすると思います。したがいまして、いまの詳細設計以後運輸省が受け取っておるその段階において安全のチェックが万全であるかどうかという点については、これは今後検討してまいらなければならない。いろいろな面からさらに私は検討を掘り下げていかなければならない。この「むつ」の問題を契機にそういう問題について根本的な検討を加えていかなければならない、かように考えております。
  166. 三浦久

    ○三浦委員 たとえば原子炉の設計の問題についてノーハウの部分があるということははっきりしているわけですね。そうすれば、そういう部分について詳細設計が出てきたって、これは全然チェックすることはできませんよ。その詳細設計図面どおりにできたかどうかというチェックはできても、その設計図がはたして妥当なものかどうかということを検査することはできないでしょう。もしか運輸省自身がそういうことを検査できる体制にあり、能力があるのだといえば、ノーハウはノーハウでなくなってしまうということでしょう。ですから私は、いまのいわゆる船舶安全法に基づいて設計をする、工事をする、そうしてまた見直しをする、そうしてまた設計変更をする、それで最後効力試験でもって全部見るんだ、こういうやり方はやはり原子炉の検査方法ではとるべきではないと思いますので、ひとつ抜本的な検討を加えていただくように私は要望をいたしたいと思うのです。結局いまの原子力行政は、法的にも、また制度的にもきわめて不備だということがいえるだろうと思うのです。こういう不備な体制のままいわゆる原子力の利用、開発というものを非常に急いだわけです。この急いだ理由はいろいろあるでしょうけれども、私はいたずらにただ原子力の開発、利用というものを急ぐのではなくて、やはり国民の安全というものを第一義的に考えて慎重にいわゆる自主、民主、公開の原則にのっとって研究、開発、利用をしていくべきだと考えます。原子力行政の抜本的な検討を要求して、私の質問を終わりたいと思います。
  167. 佐藤文生

    佐藤(文)委員長代理 本日は、これにて散会いたします。    午後一時三十分散会      ————◇—————