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政府委員(松下
廉蔵君) お答えいたします。
第一の被害者の意見を聞くという問題、これはやはり
大臣から初めに申し上げましたように、今後起こるべき被害に対する救済制度を制度化することと別に、現在すでに被害を受けておられる方についての何らかの形での救済制度をまず発足させるということは、やはり緊急の要務だろうと思います。そのためには、被害者の方の御意見を十分聞き、また、その御意見を反映させて、できるだけ役に立つような制度をつくるということは、つくります以上は
考えなきゃならぬ点でございまして、その点は、先生御
指摘のように、率直に申し上げまして、いままで研究会の
検討事項が非常に基本的なものであったというようなこともございまして、私
どもといたしましても、被害者の方方の御意見を十分拝聴することにつきまして多少不十分な点があったかと存じます。この点は十分に反省いたしまして、いま先生の御
指摘のような点について、さらに、十分な話し合いをいたし、私
どもの
考え方なり、問題点ということも、こちらからもよく御説明して、御
理解を願いまして、ほんとにためになるような制度ができるように
努力をいたしたいというふうに
考えております。もちろん、現在の研究会は、そういう学問的な研究会でございますので、その御意見をいただきましても、先ほど
大臣から申し上げたように、そういう案につきまして、さらに、広い方面の御意見を拝聴した上で、制度化するという形のものでございますので、そういった段階におきましてもさらに十分な話し合いをいたしたい、そういう気持ちを持っております。
それから受忍すべき副作用の問題でございますが、これはいろいろと制度的な議論をいたしております段階で、いろんな段階、いろんな方面で出てくる議論でございまして、医薬品は、その
性格といたしまして、食品と多少違うと申しますか、異質の点がありますのは、どうしても異物が人体に対して相当強い作用を期待するわけでございますから、その段階で、その効能を期待いたしますためには、多少の副作用は免れないという場合があるわけでございます。で、そういったものまで副作用被害として救済の対象にするかどうか、これも
一つの大きな制度化に対する問題でございまして、日弁連の御意見などは、そういったことについても、社会保障のたてまえからやはり救済の対象にすべきだという御意見のあることも
承知いたしております。ただ、やはり医薬品の効能、効果は、その安全性とのバランスで
考えるべきものでございますので、その期待する効能、効果に比較いたしまして、その起こる副作用というものが非常に軽微であるとか、あるいはどうしても忍ばなければならない。いま先生おっしゃいましたように、そのためには、まずそれを使用いたします段階での医師の十分な説得と説明ということがなきゃならぬだろう。これは、一般的な医療事項との
関連におきましても、現在の医事法制におきましては、だんだん確立されておる理論であろうと存じます。将来、制度化いたします場合にも、こういった受忍すべき副作用の範囲というようなものは、いま申し上げたようないろいろな制約を加えまして、いたずらに、患者の切り捨てになるというようなことはもちろん許されないことでございますので、学問的な面での詰めを十分いたした上で取り扱うべきものというふうに
考えております。
それから治療法の確立の問題でございます。これも、いろいろと医薬品の副作用が多岐にわたっておりますので、その
一つ一つにつきましての治療法をそのつど追っかけていかなきゃならぬ。その点は、これは
専門家に待つよりしかたのないことでございますので、たとえば、先ほど申し上げましたようなスモンの治療方法、あるいはクロロキンに起因するガン障害、クロロキンに起因いたします障害、そういったものについて、それぞれ研究費を支出いたしまして御
検討願っておるところでございますが、こういった問題につきましては、今後やはり金銭的な給付だけが救済の全部であってはなりませんので、要は、できるだけ健康を回復していただくということであろうかと存じます。そういった意味では、今後の制度化、あるいはそれと切り離しましても、こういった治療法の研究、確立ということは重要な課題であると
考えております。
この点は、医療
関係を担当いたしております医務局とも十分相談をいたしまして、できるだけ積極的に進めることができるように
努力をいたしたいと思います。
それから最後の自由化の問題でございますが、これはおそらく、特にアメリカあたりでは大きか医薬品企業が、その医薬品事故に備えて損害保険をかけておるということに関する御
指摘であろうかと存じますが、この点は先日FDAの長官が参りましたときに、いろいろ議論をいたしましたのですけれ
ども、アメリカにおきましては、先生御
指摘のように、医薬品の事故につきましては国は一切責任々持たない。責任があるとすればすべて会社であるというふうな割り切り方をしておるようでございます。ああいう国でございますから、訴訟も非常に簡単にたくさん起こされるということで、幾つかの医薬品会社が保険をかけておることは
承知いたしております。ただ、そういった保険も相当やはり多額になってまいりまして、保険会社はむしろ受けかねるというような話もございまして、むしろ、日本でも
検討されておりますような救済制度に近いような基金をつくったらどうかというような動きもあるようでございます。
で、実際問題といたしまして、向こうから入ってきた医薬品の場合は救済が十分になされる、それから日本の医薬品については、そういう制度がないからできないと、そういうことではございませんので、アメリカでもやはり訴訟を起こし、その訴訟に負けた場合に、その保険で支払うというシステムをとっておりますようで、ただ、訴訟の態様が違いますために多少の違いがある。したがって、自由化に伴って日本が不利になるというようなかっこうにはならないであろうと存じます。