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1974-04-05 第72回国会 参議院 予算委員会第四分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月五日(金曜日)    午前十時二十七分開会     —————————————    分科担当委員の異動  四月四日     辞任         補欠選任      佐々木静子君     竹田 四郎君      中沢伊登子君     中村 利次君      小笠原貞子君     加藤  進君  四月五日     辞任         補欠選任      竹田 四郎君     戸叶  武君      戸叶  武君     小柳  勇君     —————————————   出席者は左のとおり。     主 査         矢追 秀彦君     副主査         細川 護熙君     分科担当委員                 高橋 邦雄君                 熊谷太三郎君                 竹内 藤男君                 内藤誉三郎君                 吉武 恵市君                 小柳  勇君                 竹田 四郎君                 鶴園 哲夫君                 松下 正寿君                 塚田 大願君    国務大臣        文 部 大 臣  奥野 誠亮君        労 働 大 臣  長谷川 峻君    政府委員        文部省大学学術        局長       木田  宏君        文部省体育局長  澁谷 敬三君        文部省管理局長  安嶋  彌君        文化庁長官    安達 健二君        文化庁次長    清水 成之君        労働大臣官房長  北川 俊夫君        労働省労働基準        局安全衛生部長  中西 正雄君        労働省労働基準        局賃金福祉部長  大坪健一郎君        労働省職業安定        局長       遠藤 政夫君        労働省職業安定        局失業対策部長  佐藤 嘉一君        労働省職業訓練        局長       久野木行美君        建設省計画局宅        地部長      大富  宏君    説明員        労働省労政局労        働法規課長    寺園 成章君    参考人        日本住宅公団理        事        秀島 敏彦君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和四十九年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十九年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十九年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) ただいまから予算委員会第四分科会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  本日、昭和四十九年度総予算文部省所管の審査のため、日本住宅公団理事秀島敏彦君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) 昭和四十九年度総予算文部省所管を議題とし、昨日に引き続き質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 高橋邦雄

    高橋邦雄君 本年度の文部省予算を見ますと、体育大学構想に関する調査費百九十一万円というのがございますが、この体育大学というのは、どのような性格を持った大学考えておられるのか、また、どのような役目をこの大学に果たさせようとするのか。まあ、私立大学にも体育学部を持った学校がたくさんあるわけでありますし、また、国立大学でも東京教育大学体育学部というふうなものがあるわけでございます。そうしたところへ今度新しい国立体育専門大学をおつくりになる、こういう構想のようでございますが、その基本的な考え、また、その大学性格、こういうこともお聞きしたいのであります。  それからまた、この体育大学はことしどのような調査をされ、いつごろその開学を目ざして準備を進められるのか、そうした順序なり、段取りを明らかにしていただきたいと思います。
  6. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 最近、教育の問題につきましては、申し上げるまでもなく、知育体育徳育、この調和のとれた人間を育てなければならない、こういわれているわけでございますけれども、最近の模様を見てみますと、体格は非常によくなったけれども、体力がなくなっているというふうな話もあるわけでございます。そうしますと、この体育の問題も、総合的な角度から考えていかなきゃならないじゃないだろうか。児童・生徒の栄養保健体育スポーツ三位一体による心身の健康を期するということが非常に重要ではなかろうか。そうすると、そういう角度から体育の問題を取り扱っていきたい。同時にまた、今後のことを考えてまいりますと、自由時間、余暇がふえてくるわけでございまして、これをどう活用するかということが人生の価値を左右すると考えられるわけでございます。そういうような面からも、スポーツレクレーション必要性需要増大が見込まれるわけでございます。特に社会体育スポーツレクレーション分野における指導者が著しく不足していることが感ぜられるわけでございますので、これらの分野につきましても研究体制を整えるとともに、指導者充実養成をはかることがきわめて大切だと、かように存ずるわけでございます。これは、四十九年度で調査をいたしまして基本構想を練りたい、かように考えているわけでございます。基本構想が固まったところで二年計画大学をつくりたい、こういう段取りで進みたいわけでございます。四十九年度で基本調査をきめる。今後の財政当局との折衝もございますけれども、そうしますと五十年度、五十一年度、二年かけて設置したい。そうすると、五十三年四月から学生を入れられるというようなことではなかろうか。同時に、国立体育研究所みたいなものもひとつ設置していきたいな、こういうようなことも考えているところでございます。  荒い話といたしましては、一つには、大学におきましては学校体育教員研究者養成を行なう。二つには、社会体育スポーツレクレーション及び余暇活用に関する専門指導者養成を行なう。三つには、養護教諭養成を行なう。四つには、学校栄養職員養成を行なう。そしてこれに、いま申し上げましたような学校保健学校給食体育スポーツ三位一体による健康体力に十分配慮して、真に知育体育徳育による調和のとれた人間形成の期せられるような附属の学校をつくりたい、高等学校中学校、小学校、幼稚園をつくりたいといったようなことも考えているところでございます。いずれにいたしましても、調査会で基本的な構想をまとめてもらおう、こう考えておるところでございます。
  7. 高橋邦雄

    高橋邦雄君 私たちのこの体育大学に寄せる期待というのは非常に大きいのでございまして、いま文部大臣のお話しのような構想に従ってひとつりっぱな大学をつくっていただくようにお願いいたしたいのであります。  いま文部大臣からいろいろ社会体育学校体育等についてのお考えのお話しございました。今日まで文部省において社会スポーツに関するさまざまの行政を行なっておられるわけでありまして、社会体育施設あるいは学校体育施設に対する補助でありますとか、助成とか、また、地域スポーツ振興でありますとか、あるいはスポーツクラブ育成であるとか、スポーツテストであるとか、非常に数多い対策が行なわれておるわけでございまして、こうした事業も年々予算も増額をされてきておる。これはたいへんけっこうだと思うのであります。これについては、予算編成の際などにいろいろ御苦心のあることは私も承知いたしておるわけでございますが、いま文部大臣からお話がございましたように、これから私どもの生活がさらに向上してくる、自由時間、余暇増大をしてくる、こうした情勢を考えます場合に、体育スポーツ関係行政をさらにひとつ積極的に進めていただく必要があるのではないかというふうに思うのであります。こうしたことは、もうずいぶんいろいろな方面から、また、しょっちゅう言われているのでございますけれども、現実は必ずしもそういっていないわけであります。その背景といいますか、原因、理由というのはいろいろあると思うのでありますけれども、こうした体育・スポ−ツ行政にさらに今後積極的に取り組んでいただきたいと思うのであります。この近代スポーツ教育の場に取り入れると、それも非常に大事な役割りをするというようなことについての認識でありますとか、あるいは今日までの歴史、伝統、そういったものがどうも欠けておるというようなことがその根本にはあるんではないかと思うのでありますし、さらに国の政策、国策というものに現在なっていない。これは、政治だけがよく言われるように悪いというふうに私思いませんけれども、何よりもまず第一に、その政治の場でそういうものを重要な課題として取り上げ、大事な国策一つとして取り上げると、こういうことが何よりも緊要じゃないかという気がいたすのでありますが、これらに対する文部大臣のお考えを承りたいと思います。
  8. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 健康で明るい国民生活を享受できるようにするということはきわめて大切なことだと考えますし、あわせて、いまちょっと触れましたように、スポーツ振興をはかることによって余暇利用施策を進めていくということも文教行政の緊急な課題になってきていると、こう存じておるところでございます。そういうようなこともございまして、一つには、施設整備していく、二つには、指導者養成していく、三つには、それぞれのスポーツ要員を拡充し、それを計画的に進めていくということではなかろうかと、かように考えるわけでございます。これらを踏まえまして、特に総合国民体育館屋内水泳プールをはじめ日常生活圏圏域公共社会体育スポーツ施設整備充実をはかりますとともに、地域住民スポーツ活動振興指定市町村補助の拡充、指導者養成確保等施策を積極的に推進してまいりたいと考えているわけでございます。  予算の面で申し上げますと、昭和四十九年度予算におきましては、体育スポーツ施設整備につきましては七十九億三千百九十五万円、対前年度比で三五・八%の増加になっているわけでございます。これを計上いたしたわけでございますが、そのうち、日常生活圏域公共社会体育スポーツ施設整備補助金は、対前年度比で五六%増の四十六億五千万円強を計上しているわけでございます。この分につきましては、四十六年度と現在と比べますと、三年間で七・六六倍になっているわけでございます。また、地域住民スポーツ活動振興指定市町村補助事業昭和四十八年度に初めて計上したわけでございますが、引き続きまして、今四十九年度は一億三千八百九十二万円を計上することにしているわけでございます。  スポーツ指導員養成につきましては、四十六年度から日本体育協会補助金を支出して体協を通じまして研修事業を行なっているわけでございます。さらに、市町村教育委員会に置かれます体育指導委員スポーツ指導委員スポーツ教室等における実技指導等につきまして、四十九年度からは市町村において謝金を出していただけるように地方交付税法基準財政需要額所要金額を算入していただけるということになったわけでございます。体育スポーツ普及振興につきましては、一段と進展を見ることになるんじゃなかろうかと、かように考えているところでございます。
  9. 高橋邦雄

    高橋邦雄君 いま御説明のありましたように、さまざまな対策が講ぜられていることは私も敬意を表するわけでございますが、一番大事なことは、やはり、ほんとうに体育スポーツの持つ意義、また社会的な重要性、そうしたものを考えるならば、国においても、重要なその国策一つとして、その対策なり方策を確立する必要があるんではないか。それから、もっと政治の中でしっかりしたその場所を与えてやる、こういうことが何よりもまあ根本であり、大事なことではないかという気がするわけであります。そういう点がどうも必ずしもいまのところ明確でない。ただ、これは政府が一人だけでやろうとしてもできないわけでありまして、地方の自治体でありますとか、あるいは民間の方々であるとか、もう一体になって取り組むというんでないと、まあ、いろいろ言ってみてもなかなか実効はあがらないと思うのでありますが、何よりも一番大事なことは、そうした体育あるいはスポーツ振興という問題を、国の政治の中でもっとしっかりした確固たる場所を与えてやると、こういうことが必要ではないかというふうに思うのであります。これはまあ西欧の先進国の例を出すまでもないわけでありますけれども、西ドイツにしましても、フランスにしましても、イギリスなどにおいても、国家的なその組織づくり、こういうことが進められておるというふうに聞いておるわけでありますし、また、今国会大蔵大臣財政演説などにおきましても、いまわが国は国民の求めているもので解決できない問題はないといっておられるわけで、私たちがそういう決意をすれば、それに対する手段——財政とか経済というものは、十分それにこたえる力を持っておると、こういうこと言っておられますし、私もそうだと思うのでありまして、こうした国策としてこの確立をすると、こういうことに対する大臣の所感、お考えをお聞きしたいわけであります。  現在、進められておりますさまざまな施策については、保健体育審議会答申等によられておるわけでありましょうが、その保健体育審議会答申の中にも、目標を明示して段階的にこれを実現する。その総合的な計画を策定する必要があるということを強調されておるわけでございますので、ひとつ、いま申し上げましたような点につきまして大臣のお考えを承りまして、私の質問を終わわることにいたします。
  10. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) おっしゃってますこと、全く私も同感でございます。また、スポーツ振興法という法律の中には、国のほうでスポーツ振興に関する基本計画を定めることになっているわけでございまして、これを漸次受けて、末端まで計画的にスポーツ振興の仕事に当たっていくということになっているわけでございます。これらにつきまして、一応事務当局のほうからお答えさしていただきます。
  11. 澁谷敬三

    政府委員澁谷敬三君) スポーツ振興法にもございますように、スポーツ普及振興に関しまして、国と地方公共団体は、国民の一人一人がその適性なり体力に応じまして、日常生活の中にスポーツを取り入れていくという、そのためのいろいろな諸条件整備するのが国、地方公共団体役割りであると思うわけでございます。そのために、そういった諸条件整備は一応文部省中心にはなりますが、自治省あるいは総理府、経済企画庁、環境庁、建設省、運輸省、通産省、関係する省も多うございまして、実は、このスポーツ振興法にございますスポーツ振興基本計画というものをつくりたいということで、昨年、各省と協議いたしまして、関係各省もたいへん賛成でございまして、いずれ近い将来閣議におはかりいたしまして、そういった意味スポーツ振興基本計画、中身は主として施設づくり環境整備、それから指導者養成確保、それからスポーツ教室その他によりますスポーツの自主的なグループの育成といいますか、そういったことを中心といたします諸条件整備の国、地方公共団体役割りを織り込みましたスポーツ振興計画を、近い将来閣議にもおはかりしてきめていただきたいと思っておるわけでございますが、現在こういう作業を事務的に進めておるところでございまして、まことに先生の御指摘のとおりだと思っておる次第でございます。
  12. 松下正寿

    松下正寿君 今度の国会におきまして、人確法——人材確保に関する法案国会全会一致で通過いたしまして、これは非常に私喜んでおりますが、方針として非常に大きな進歩であると思っております。  ただ、私らのように私学出身で、私学の経営に長い間責任を持っておった者から見ますというと、ああいう非常なけっこうな法案を通過したのを見つつ、一種の不安と、何といいましょうか、不平等というようなものを感ずるわけなんであります。というのは、あれが当然大学等にもみな影響が及んできて、国立の場合には、問題ないわけでありますが、私立のほうは当然あれで解決つくという問題でなく、むしろ、非常なむずかしい問題がありやしないか、ということは、国立の場合と違いまして私立の場合に、国立給与が改善されるわけでありますが、私立は改善しようとしたらどういうふうにして改善できるか、結局のところそういう方法がないわけです。したがって、国庫からの補助というものを、いつか適当なときにやるというようなことでなく、相当すみやかに、また、人材確保に関する法律とあわせてあれを実行するようにしないというと、私は、私学においては重大なことが起きやしないかということを心配するわけです。幸いにして、私学に対する国庫補助というものも年々だんだん改善されて、現在、四十九年には人件費専任教員に関する限りは十分の五というところまできておりますけれども、ことにこの人材確保法との関連において、そういう問題が、不祥な事件が起きないうちにどうしたらいいかということを、ひとつ文部大臣の御見解を伺いたいと思います。
  13. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 私学に対しまする経常費助成の問題になってくるんじゃないかと思いますが、四十五年から五カ年計画で始められたのが、四十九年度で一応達成するということになっておるわけでありますけれども、文部省といたしましては、それをさらに前進させたいという考え方のもとに、私学振興策のための懇談会を持たせていただきまして、近いうちに結論を出していただきたい。これをてこにして、さらに、従来の五カ年計画にプラスした新しい計画を立てたい、こう考えているわけであります。従来の五カ年計画につきましても、四十九年度の場合には、たとえば専任教員給与の半分は国が持ちますという専任教員給与の算定のしかたにつきましても、従来は前年度の五%増し金額基礎にしておりましたのを、人材確保法案等関係もございますので一〇%増しのものを基礎にするということにさせていただいたわけでございます。そういうこと等がございまして、国の場合には、経常費助成は対前年度で申し上げますと四七・五%増し金額を計上させていただいております。また、高等学校以下につきましては都道府県から助成されるわけでございますけれども、地方財政計画上の数字で申し上げてまいりますと七八・四%増し金額を上げていただいたわけでございますので、そういう意味ではある程度の配慮はさせていただいたつもりでございますけれども、なお、これを積極的に増進させていきたい。そのためにいま申し上げましたような方途を講じているところでございます。
  14. 松下正寿

    松下正寿君 文部大臣のいまのことばのうちにもありましたが、私学振興方策懇談会、これはまだ決定になっておらぬでしょうが、大体どういうような結論が出るかということについて、文部大臣のお見通し等はどうでございますか。
  15. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 現在、専任教員給与の半分ということを基礎に進めてまいったわけでございますけれども、人件費全体をとりましても二〇%ぐらいにしか当たっていないということのようでございます。私学の場合には、専任教員というよりも講師等をたくさん使っておられるし、また、専任教員という名前をつけられても勤務日数等によってこれを除外する等の方途をとっているからそういうことになっているわけでございますけれども、少なくとも、私は人件費については実質の半分は助成できるように持っていかなければならないんじゃないだろうか、さしあたりは少なくともそういう方途はいたしたいなと、こんな考え方を持っているわけでございますので、いずれにいたしましても、この懇談会は、八月までに文部省から大蔵省に予算要求しなきゃならない、それに問に合うように御答申をいただこうということで進めていただいているところでございます。
  16. 松下正寿

    松下正寿君 いまの懇談会のことについて事務当局からもうちょっと詳しくお願いできませんか。
  17. 安嶋彌

    政府委員安嶋彌君) 私学振興方策懇談会審議の経過でございますが、昨年、たしか十月でございますか、発足以来、大体毎月一回の総会をやりまして概括的な議論をお願いしておると、さらに問題を三つに分けまして、一つ行政部会、これは学校法人制度中心にする問題に取り組んでいただくと、もう一つは、高等教育部会と申しますか、これは大学短大高等専門学校に関する問題に取り組んでいただくと、第三は、高等学校以下の助成に取り組んでいただく部会、この三つを設けましてただいま鋭意検討を進めていただいておるわけでございます。助成の問題について申しますならば、高等教育部会におきましては、御承知のとおり、私立大学につきましては、私大連盟私大協会私大懇話会私立短大協会等の各団体があるわけでございますが、それぞれ具体的な案をお持ちでございます。その案を御提示をいただきまして、ただいまその案の得失について委員の間でいろいろ議論を戦わせておるというような段階でございます。それから高等学校以下の助成部会につきましては、これは発足をしたばかりでございますので、まだ具体的な方向は出ておりませんが、しかし、御承知中高連と申しますか、私立中学校高等学校連合会等もいろいろ具体的な案を持っておるようでございます。そういった意見も聞きながら、学識経験者意見をさらにそれに加味をいたしまして、全体としての調整をはかってまいりたい、こういうことでございます。しかし、いずれにいたしましても、私学振興ということはこれは目下の非常に大きなかつ緊急な課題でございますので、これを積極的に推進するという方向でおまとめをいただきたい、そういうことに相なっております。
  18. 松下正寿

    松下正寿君 管理局長のいまの御説明にありましたように、三つ私大関係団体があるわけですが、そのおのおのの立場について、私はここでとやかくと質問するつもりはございませんが、ただ一つ、大事なことは、現在のところはこの私学に対する助成金というのは専任教員に対する助成金、それでこれは私学関係でも、私がいままで関係しておりました私大連盟など、これは大きい大学ですから専任教員の率が非常に高いわけですが、しかし、私学全体から見ますというと、やはりいわゆる講師と、ほかの大学から来ていただいている数が非常に多いわけです。したがって、予算等についてもこれについて相当大きな負担になっているわけであります。これは私の希望でございますけれども、いろいろ三団体の間で利害関係もあると思いますが、そういう点は文部省で十分に考慮されるのはけっこうでありますが、特にやはり小さい私学専任講師でない専任教授はあまり置けないところに対する一つの考慮というものを相当厚くしていただきたいと、これは私学全体に対する一つ助成という点から見て、わりあいに政治力が足りませんから、私は文部大臣がその点を特に考慮していただくように希望するわけであります。  これは希望であって質問でございませんが、私一つ不満のような、また、希望のようなこともあるわけでありますが、いま私がこの問題を取り上げましたのは、手おくれにならないことを、そして私学で問題が起きる前に、もろもろのこの私学助成のことを国会なり政府なりでどんどんと先手を打ってやっていただきたいということを非常に強く私は希望しております。というのは、この現在の私学振興法律ができましたのは四十五年からですが、これが一体どうしてできたかというと、私らはこういう法律のできる十年も前から非常に強く私学に対する補助の必要ということを論じてきたわけであります。政府国会もほとんど何らの考慮を払わなかったんです。どうしてできたかというとゲバ棒が出てきたからです。日本じゅうがくずれるような学生騒動が起きて、そこで初めて国会政府も目がさめて、それは何とかしなきゃならぬなというようなことになったわけです。これは見方によれば暴力をふるわなきゃ損だと、こういう印象を国民に与える、結果としては、私よかったと思いますが、こういうような経過でできるという、これ非常にたいへんなことだと思います。それについて、どういうふうにひとつお考えくださるか、簡単でけっこうでありますから、文部大臣の御見解をお願いいたします。
  19. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 政治が先手をとって施策を強力に進めていかなきゃならないことは御指摘のとおりだと思います。私学経常費助成は四十五年度に発足したわけでございまして、そのときに百三十二億円の予算でございました。それが四十九年度は六百四十億円ですから五年間に五倍になっているわけであります。かなりの積極的な努力をしてきたということは認めていただけるんじゃないかと思います。しかし、先ほども申し上げましたように、これで五カ年計画が達成したからいいんだという気持ちは持っておりませんで、また、新しい計画をもって積極的な推進をはかっていきたいと、こういう決意でございます。ぜひ一そうの充実を期したいと、かように考えております。
  20. 松下正寿

    松下正寿君 文部大臣も非常にお急ぎのようですから、あまり長くお引きとめできないと思いますが、非常に根本的な問題で非常に残念で、もっと時間があれば私の考えを申し上げたいのですが、日本のやはり全体の問題の、やはり一番根本的なむずかしさというのは、現在の私学というものが何もしないよりかしたほうがいいにきまっていますから現在のようなやり方で一応はけっこうだと思いますが、しかし、もっと根本的に考えるというと、すでに国立、公立、私立というように、これは高校以下は別ですが、高等教育の場合には、そういう区別を設ける客観的な根拠がもうすでになくなっているんですね。これは歴史的に考えるというと、アメリカなどは、これは非常なああいうプライベートな私企業の盛んなところですから、寄付というものが非常に自由にできた。このころはよかったわけだし、また、ヨーロッパ各国などは、教会が特殊な意味での私学というものを持っておった。ところが世界全体が変わりまして、日本においては、特に、この私学というものを、国立、公立、私立というふうな区別というものを設ける客観的な根拠がなくなって、ほうっておいたら私学はつぶれるか、あるいは非常に悪い大学ができる。私は、根本において助成金を増すことはけっこうであると思いますが、また、きょうあすすぐ革命的変化ということも、これはちょっと思わしくないと思いますけれども、根本の方針として、むしろ国立、公立、私立という区別は廃して、全部一様に学校法人あるいは大学法人その他特殊法人のようなそういうことにして平等に扱って、しかもそこに、各大学の特殊性を発揮させる、こういう方策をとっていかないと、根本的な解決にならないと思います。非常に問題が大きいですから、簡単にイエスノーだけでの御返答ということは困難だと思います。感想だけでけっこうであります。文部大臣の御見解をお聞きいたしまして、私の質問を終わります。
  21. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 高等教育の問題につきましては、戦前におきましては国立役割りが非常に大きかった、こう申し上げることができると思います。戦後、私学のほうがどんどんどんどん設置を進めてこられまして、その結果が、一面においては、非常な進学率の急上昇を見ていると思います。同時にまた、国公立の比重というものは極端に小さくなってきている、その結果はまた、必ずしも地域間の高等教育機関の設置のバランスがとれていない、進学率にも地域間にかなりなアンバランスが見られる。そうしますと、ある程度国が計画的な配置を考えていくべき時期に来ているんじゃないだろうか、そうしますと、国公立の比重が従来よりも若干増してくるということだろうと思います。ただ、御指摘のように、設置形態の一体化ということになりますと、たいへんむずかしい問題をたくさんはらんでくるんじゃないだろうか。やはりいまは、国公、私立それぞれ競い合いながら多彩な高等教育を前進さしていく、こういうことになっておるわけでございますので、この中で、いま私が申し上げましたようなさしあたりの問題に対する対応策を立てていきたい。そうしますと、国公立の役割りを従来よりも相当に私は前進させなきゃならない、こう思います。反面、また私学につきましては、それなりに財政的な援助を充実していかなきゃ、なかなかやりにくいというような問題が出てきていると思うのでございます。そういうことで、すぐに御指摘のような一体化というところにはなかなか踏み切れないんじゃないだろうか、こう思っているところでございます。
  22. 竹田四郎

    竹田四郎君 私は、主として埋蔵文化財問題を中心にやっていきたいと思うんですけれども、国の埋蔵文化財に対する基本的な考え方というものは、文部大臣どのように考えておられるのか、その点をまず明らかにしていただきたいと思います。
  23. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 埋蔵文化財は、われわれの先輩の文化遺産でございます。この文化遺産を正常に将来にわたって保護し、また、保存をしてまいりますことは、わが国の過去の文化を守る、やはりよって来たったもとについての正しい理解を深めてまいりますることが、将来にわたる正常な発展への基礎になっていくんじゃないだろうかと、かように考えているわけでございまして、そういう意味におきまして、埋蔵文化財を保護し、保存していくということは、将来の日本の文化の発展のために非常に重要なことだと、かように考えるわけでございます。また、そうした趣旨は文化財保護法等に明記されているところでもあるわけでございます。このような方針に従って努力をしていくべきものだと考えております。
  24. 竹田四郎

    竹田四郎君 それにしても、文部省というのは、どうも埋蔵文化財の調査費というもの、これはほとんど出していないと言ってもいいと思うわけです。この資料を見せていただいても、調査費これは三億五千百万円ですか、という形では、とても私、埋蔵文化財の調査というものは実際できないんじゃないかというふうに思うわけです。特に、私の住んでいる地域というのは、横浜の港北区というところに私は住んでいるわけですけれども、横浜市でいままで調査して、埋蔵文化財があるというふうに思われている個所、約一千カ所以上ですけれども、そのうち実際私の地域にあるものが七百五十カ所ぐらいあるわけであります。おそらくこの地域というのは、埋蔵文化財の宝庫とさえ言われているところであります。最近においても、大きな埋蔵文化財が発見されて、四十六年度からその発掘調査をやっているわけでありますけれども、それだけではありませんでして、その一帯というのは、いま港北ニュータウン建設の住宅公団が中心になって区画整理をやり、将来、港北ニュータウンが建設される、そういう時期なわけですけれども、もう調査費がほとんど開発者負担ということ、あるいは地域負担ということと市の負担というようなことで、大体四億ぐらい計上しているわけでありますけれども、しかし、一番その埋蔵文化財の保護に当たるべき文部省というのは全然金を出していない。歴史的にどのぐらいの価値があるか、また、あとお聞きをするわけでありますが、それにしても、埋蔵文化財というのは、こわされれば二度とそのままの形で復元はできないわけです。必ずこれはやはり最小限記録だけはとって、その記録というものはとどめておかなければならないし、重要なものについては、原状保存というものをしなくちゃならないと思うわけでありますけれども、それにしても、この調査費というのがたいへんかかるわけでありまして、ブルドーザーでぱっとやるわけにはいきませんし、小さなこてなりシャベルなりで大ぜいの人間を動員してやらなくちゃならぬですが、こういうものがほとんど考古学に関心のある学者とか、あるいはそういう学者のところへ集まっている学生あるいは研究者、こういう人たちだけの労力によってやられるわけでありますけれども、結局相当な日数と相当な人員がこれはやはり必要なわけなんです。それに対する文化庁の予算というのは、もうほとんど出ていない、全然ゼロだと、こういうことでは、先ほど当初に御答弁いただいた、文化遺産というものをわれわれがそれを継承していく、あるいはそれを大切に保存をしていくという趣旨と、だいぶこれはかけ離れてしまっているんじゃないかと思うのですけれども。私は、これはこの前にも河野洋平氏が文部次官をやっているときに、これに関する膨大な資料を次官に渡して、来年度の調査費というのはもっとひとつ計上してくれなければ、こうした文化遺産が調査もされないでこわれていってしまうということで強く要請をしておいたわけでありますが、現実にはこの資料でもごくわずかだと、こういうことでは、文部大臣、口では確かに文化財保護というようなものを主張していても、全然出てこないということでは、これはこわされてしまう。原因者負担でやるといっても、その原因者は早くとにかく工事をしてしまいたいということで、なかなか待てない。いままでも業者と市の関係で待つ、待たない、こういうことがありましたし、地元の地主としても、なるべく早くこれは団地をつくってそれぞれ建物を建てるなり、あるいは売り出しをしたいという希望というのは非常に強いわけであります。そうした地主に文化財を守れと言っても、これは私ちょっと無理な話だろうと思いますが、その辺は、文部省はもう少し文化財に対する態度というものをはっきりと予算上も措置をして言わないと、ただ、単なる口頭禅に終わってしまうんじゃないかと思うんですけれども、そういう点では、もっと調査費を出していく気持ちがあるのかどうなのか。これではほとんど調査費出てこないと思うんですが、どうですか。
  25. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) たいへんごもっともな御意見だと思います。  おっしゃいますように、原因者負担ということで、港北ニュータウンの場合には、横浜市なり住宅公団なりに相当な金の御負担を願っていると思います。そうでない問題の調査につきましては、四十八年度、二億円であった調査費が、四十九年度は三億五千万円余り、そういう面においては七五%、増加率だけからいいますとかなりの大きな増加率なんですけれども、まだまだ不十分だと思います。将来とも積極的にこういう金額をふやしていきたいと思います。四十九年度は、こういう調査費をふやすほかに、調査に当たる人がなかなかおりませんで、そういう人を育てることも大切なものでございますので、埋蔵文化財センターというものをつくらしていただくことにいたしまして、そして地方公共団体が実施する遺跡の発掘調査に関しまして専門的、技術的な指導、助言、地方公共団体の専門職員の養成、研修等を行なうことにしたわけでございまして、なお、そのほか若干出土遺物等の保存等に関しまする補助などのことも考えているわけでございます。いずれにいたしましても早く調査をして、そして保存に必要な対応策がとれますように、国として積極的な役割りを演じていかなければならないと思います。調査費の問題につきましては、将来とも増額に努力を払ってまいります。
  26. 竹田四郎

    竹田四郎君 率は高くても、もとが非常に小さいんですから三倍にしたってたいしたことはないわけであります。そういう点では、もっと積極的にこれやっていただかなくちゃならぬと思いますし、最近、こういうところに住んでくる人というのは、非常に自分たちの、ここの土地はかつてどういう歴史を持っているのかということについては、そこに入ってくる人たちは非常に大きな関心があるわけであります、私どもも、ここは昔はどうだったのか、こういう質問は、そうした新しく団地に入った人々から非常に聞くわけですよ。それがないと、私は、いかに住民意識なり、あるいは国民意識を持てと言っても、やっぱり自分たちが住んだところはかつてこういうところだったというところに初めてその地域に対する定着意識というものも私は出てくるだろうと思うんです。そういう意味で、過去の歴史というものを科学的に明らかにしていく、このことはいたへん重要なことだと、こう思うわけでありますけれども、時間がありませんので、この点は、今後特段とひとつ奥野文部大臣、いつまで文部大臣をやっておられるか知りませんけれども、これははっきりと私は後継者の方にもつないでいって、そうしたわれわれの祖先がどうした生活から今日の生活に発展してきているかという経過というものは、これはやはり文部省としても私は明らかにすべきだと、こういうふうに思いますから、この点は特に強く要請身しておきます。  それから文化財の管理センターなんかできるわけでありますが、その管理費というのがまたきわめて少ないわけですね。この辺にも私は問題があると思うわけであります。そうした点で、この管理費も継続的にやはり出していくということにしていただかなければ、せっかくそうしたものを集めても、それが放置をされ、こわれていってしまうということでありますから、そうした管理費というものも、ただ単に、国宝だけでなくて、地方のものについても、私はもう少し管理費はふやしてくれなければ困る。それでなければ、だんだんとそれがこわれていってしまう、こう思うんですが、どうでしょうか。
  27. 安達健二

    政府委員(安達健二君) 現在、国が指定いたしました文化財につきましては、修理、復旧、管理というような経費に対しましての国庫補助を行なっておるわけでございます。建造物等を別といたしまして、ただいま御指摘になりました史跡、名勝、天然記念物等の、いわゆる記念物関係にいたしましては、指定地域の買い上げをするというような点、あるいは環境保全、環境整備、あるいは修理、復旧と、こういうような点、あるいは保存施設、防災施設というようなもの、あるいは天然記念物につきましては、保護増殖事業というような関係におきまして、修理、環境整備関係で、本年は四億四千万のものを明年度は五億二千八百万円というように、できるだけの増額をはかっておるわけでございます。もちろん、このほかに、史跡等の買い上げが三十七億とか、そういうものもございますが、管理に関係いたしましては、修理、環境整備というような関係で五億二千八百万円。それから今年度から新たに史跡等につきましては、保存をいたします場合に、広大な地域等になりますると、現状変更を認める地域と認めない地域というような区別をいたしまして、その史跡等の実態に即した保護をするというような面で、保存管理計画を立てるというようなことを計画的に進めることといたしまして、来年度から二千万円の経費をお願いするというようなこともいたしておるわけでございます。  さらに、実際に文化財、そういう史跡等の状況はどうであるかということを把握しなければいけないわけでございますが、それにつきましては文化庁だけではどうにもなりませんので、各県に文化財パトロールというのを置きまして、文化財保護指導員と申しますが、そういう方に見回りをしてもらうというようなことを明年度から計画いたしまして、その経費が二千八百二十万円というようにいたしまして、われわれとしても、できるだけこういう記念物等の保全に、管理に遺憾のないように努力をいたしたいというように思っているところでございます。
  28. 竹田四郎

    竹田四郎君 時間がありませんから恐縮なんですが、こういう問題について、建設省なりそれから住宅公団というのは一体どういう考え方でいるのか、特に港北ニュータウンの場合には、非常にそういうものがたくさん出ておるわけですね。住宅公団はいたし方なく調査費の三五%ぐらい負担しているようでありますけれども、三五%ぐらいでは、私は非常に少ないし、もう少し、これは出してもらわなければすぐの間に合わないと思うのですね。おそらく奥野文部大臣、来年はうんと奮発してくれるだろうと思うんだけれども、いま現実に調査に入っているわけでありますから、これについてはもう少しけちけちしないで、せっかくあなたたち将来住宅をそこへつくって、住宅をそこの住民に供給をするわけでありますから、やっぱりそれは、建物さえ与えればおれのほうの任務は終わりだというわけには私はこれはいかぬと思うのですね。やっぱり付近のそうした歴史的な問題というものは常にそれを残してやらなければ、人間というのは、ただ、そういう物質的な問題だけで生きるわけじゃないわけですから、そうした貴重なものというのは、やはり調査をし、残すべき重要なものは残して——残さないにしても、この地域はこうであったというものを想起できるような措置を私は講ずべきだと思うんですが、その辺について、ひとつ建設省なり住宅公団はどういうお考え方なのか。もうかまわないからどんどん国できめられた仕事があるんだからどんどんやっちゃうんだという形でおられるのか、そういう調査については、もっと積極的に建設省も協力をして、住宅全体のそうした有形無形な財産というようなものを守っていってやらなくちゃならぬと私は思いますからね。建設省としても、建設省だけでいくとは私は思いませんけれども、これはやはり文部省のしりももっとたたいて、そうした調査費をやっぱりもっと出すように、私は建設省も努力してもらわなければ、仕事のほうも結局おくれてしまうということになるわけですから、その辺に対する建設省の基本的考え方と、具体的に住宅公団が港北ニュータウンの最近見つかった大きな調査中の、これも私よくわからないんですが、方形周溝墓群とそれから環濠集落跡、この二つの遺跡というものは、非常に価値のあるものだというふうに私聞いております。これは文務省に聞いても、この二つのものが一体となって非常に貴重なものだというふうに私は聞いているわけでありますが、文化庁のほうでは、この遺跡については一体どういうふうなお考え、——この重要度といいますか、史跡の価値として、一体どのくらい評価されているのか、その付近をお伺いしたいと思います。
  29. 大富宏

    政府委員(大富宏君) 申すまでもなく、文化財というのは、国民の貴重な財産でございますので、宅地開発をやる場合には、そこに埋蔵文化財が存在するというようなことが予測される場合には、開発に先立ちまして関係当局と連絡いたしまして十分調査をいたします。調査結果を尊重して計画を策定する、極力文化財は保存していくという方針でやっているわけでございますが、御承知のとおり、港北ニュータウンというのは、千三百ヘクタールぐらいの非常に広大な地域でございます。現在言われております文化財が、域内に二百十八件はあるというぐらいなところでございます。これは当初から、施行主体でございます日本住宅公団が関係当局と十分相談を進めながら調査をやっているところでございまして、お述べになりました方形周溝墓群、環濠集落跡、こういうものは、非常に価値のある文化財と聞いておりますけれども、この問題につきましては横浜市の港北ニュータウン文化財問題協議会、ここが取り上げて種々協議いたしておるわけでございます。この区画整理事業でこうやっているわけでございますが、先般公告縦覧を終わりまして、近く認可の段階になって相当の意見書が出てきておりますので、こういった調査結果なり協議の結果、あるいは意見書なりというものを十分尊重しながら事業を進めるように、建設省といたしましても住宅公団を指導してまいりたいと思います。
  30. 秀島敏彦

    参考人(秀島敏彦君) お答えいたします。  港北ニュータウンの建設事業につきましては、計画にかかりました当初から横浜市の御指導を得まして文化財の取り扱いというものを御指導受けてまいったわけでございます。昭和四十二年から四十三年度までに市が埋蔵文化財の分布調査を行ないました。十分御検討願ったわけでございますが、その後、昭和四十六年から現実に埋蔵物の調査を実施いたされまして、約四億円の予算で三カ年計画ぐらいのところで現在もまだ御進行中でございますが、調査を進行しております。で、一応市の御方針といたしましては、そのうち約二百十八個所について調査をする。そのうち保存が九カ所保存してほしい、それからほかに九カ所ございますけれども、そういう市の方針が出てまいりまして、私のほうもあわせて並行して区画整理事業事業計画というものを検討してまいったわけでございます。だんだんしかし調査が進むにつれてまいりまして埋蔵文化財——それで横浜市は特にいまお話しがございましたCの7、Cの8という重要な文化財でございます。この保存対策については、横浜市に文化財問題協議会というのを設置されまして、よく関係者の御意見を聞くなり、そして市としての御結論をお出しになったわけでございます。その御結論はC7という個所は、これは原状を保存する。それから都市計画道路が途中に入りますので、それから東側の部分全体で約四分の一ぐらいの地域でございますが、これはどうしてもいじらざるを得ない、この部分は十分な調査を実施して、その記録は広く市民に公開をする。それからC7とC8史跡の周辺の建築をする計画は全部取りやめる、それから南側の斜面の保存をはかるというふうな御方針を立てられましたので、住宅公団といたしましては、その御方針に従って文化財の保存、それから管理に万全を期してまいりたい、こういうふうに考えております。調査費は四十六年度から約四億円の予算です。
  31. 竹田四郎

    竹田四郎君 住宅公団が出す分、もっとふやせないかというのです。
  32. 秀島敏彦

    参考人(秀島敏彦君) そのうち公団は約三億円ほど予定をいたしております。
  33. 竹田四郎

    竹田四郎君 三億円全部出しますか。
  34. 秀島敏彦

    参考人(秀島敏彦君) はい。
  35. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) 簡単に願います。
  36. 安達健二

    政府委員(安達健二君) これは方形周溝墓と申しますのは、弥生時代から古墳時代にかけました……。
  37. 竹田四郎

    竹田四郎君 短く言ってください。重要か重要でないのか。
  38. 安達健二

    政府委員(安達健二君) それで方形周溝墓といたしましては、ほかにもございますが、方形周溝墓とそれから環濠集落、つまり集落とがワンセットになっておるというのはこれが初めてでございます。従来非常にまれであるということで、その価値が高いと、こういうふうに考えられるわけでございます。
  39. 竹田四郎

    竹田四郎君 時間がありませんから、もう一括言いますけれども、文部省としてはこれを一体残す意思があるのか、つぶしてしまうのかどうなのか。もし残すということで、先ほど住宅公団のほうでおっしゃっていた住居分の六割ぐらいは削っちゃってあと残すという、さっき地図を差し上げましたけれども、それだけでも約三十億かかるというんですね。ところが文部省のいままでの方針というのは、いま住宅公団のほうからもおっしゃられた、その周辺部もやっぱり整備をしないと、ただそのものだけではやっぱりだめなわけですよ、くずれたりなんかもするでしょうし、あるいは景観も悪くなると、こういうことですが、文部省補助というのは、その周辺の整備のことは全然考えてくれないわけですよね。この周辺の整備というのはわりあい金かかる、思った以上に金かかるわけですが、そうするといままでの文部省のやり方だと、とにかく遺跡だけと、遺跡の周辺のことはおれは知らぬという形でやられますと、まあ八割の補助があるということで三十億かかる中で実際上は十億ぐらい。もし国がそれを国の重要文化財として指定した場合、残すという方針になった場合には、もう十億ぐらいであと二十億ぐらいは今度は地元負担ということになってしまうわけですが、それではどうもいけないんじゃないか。もしそれをそういうことにする場合には、そのもの自体でなくて、やっぱりその周辺というものもその補助の対象に考えてくれなくちゃ私は困ると思うんですけれどもね、その辺は一体どういうふうにお考えなのか。もう私の時間もほぼ来てしまいましたので、一括してその辺をお聞きしたいんですが、まず、これは残す気があるのかないのか、国として。残すとすれば、一体その補助というものはどういうふうな考え方か。いままでの考え方では、私は十分残すだけの工事はできないと、こういうふうに思うんですけれどもね。
  40. 安達健二

    政府委員(安達健二君) この環濠跡なり、環濠の集落跡なり、方形周溝墓というような重要部分につきましては、これを保存するにつきましての財政措置等も考えなければならないだろうと思うわけでございまして、それから周辺ということでございますが、この間の土地につきましては、従来住宅を建てるということで予定しておったものを、これを変えようというようなお話しもございますので、したがいまして、それはやはり公団のほうでその住宅をほかのほうへお建てになるということになって、どうせこういう意味での空地を残す必要がございますから、そういうところで差しかえてもらえばそれとしてできるんじゃなかろうかと。つまりわれわれといたしましては、こういう保護につきましては、単に文化庁、文部省というだけでなくて、やはり地元、あるいは住宅公団、こういうものとよくお話し合いをいたしまして、全体的に守れるように、周囲も含めまして守れるように努力をいたしていきたい、こういうように考えております。
  41. 竹田四郎

    竹田四郎君 大臣、これひとついまも重要なものであるということでありますからね。ひとつこれは、いつそれをやるのか。この予算に入っているのかどうかは私知りませんが、見たところ、まあことしの予算にはどうもちょっと入ってないんじゃないかという感じがするわけですがね、その辺はひとつ重要なものであるとすれば、やはり私は残していく必要があるだろうとこういうふうに思いますからね。文部大臣ひとつ残すようにしていただいて、原状を。全部残せと言っているわけじゃなくて、市も、ある程度はし方がないと、ほんとうは残さなきゃならぬけれどもし方がないと、大体そういうところは高いところにあるわけですからね。どうしてものり面とかいろいろなものの工事というのはまあかなりかかるわけですよ、実際問題としては。そういう点をひとつ、時間ありませんけれども、文部大臣、ひとつ考慮してほしいと思うのですが、どうですか。
  42. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 文化庁長官が申し上げておりますように、国としても重要な史蹟のようでございまして、将来はこういう指定が行なわれることになるだろうと、こう考えるわけでございまして、指定が行なわれた暁ににはお話しのように国としても積極的に役割りを分担しなければならないだろうと、かように考えます。
  43. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 たいへん短い時間で何ですが、私は、まあ三つの問題で、お伺いしたいと思っておったんですが、たいへん短い時間ですから、二つの問題につきまして伺いたいと思います。  御承知のように、日本の就学率というのが世界抜群になっておる。特に大学高等学校になりますと、これはもうアメリカに次いで抜群で、大学に至りますと欧州の二倍ぐらいの就学率になっておるということなのでありますけれども、この私立大学に対します、あるいは私立学校に対する国の援助というのが先進諸国に対しましてはなはだしく見劣りがする。著しく見劣りがする。四十五年から五カ年計画で四十九年で終わるわけでありますから、まあ新しいまた構想で五十年から始められると思いますけれども、   〔主査退席、副主査着席〕 それにいたしましても、いま大学の収入のおそらく七%ぐらいだと思うのです。非常に低い。もう一つは奨学金制度ですね。これがまた非常に、外国に比べてみまして著しく見劣りのする問題だと思うのです。それからもう一つは、非常に近年、国際交流の関係がやかましくなっておりますし、それぞれ政府も努力をしておられることでありますが、文教の関係でいいますと、教育国際交流、ますます高めていかなきゃならぬ、努力していかなきゃならぬというところにきておりますけれども、これもまた、いろいろな問題を歴史的に負っておりますし、また、いまもいろいろな問題を背負っておる、こう思います。この三つの問題をそれぞれ関連して論議をしなければならない問題だと思っております。私立学校に対する国の援助というのが思い切って行なわれてくるという中で、やはり奨学金の問題も論議しなければなりませんし、さらに、教育の国際交流の問題についても論議しなければならないと思うのでありますけれども、先ほど申し上げましたように、時間の関係もありますので、その中の、うしろの二つをひとつ簡単にお尋ねをしたいと思います。  まず、その奨学金制度なんですけれども、日本の奨学金制度は、もう御案内のように、国がやっておられるものと民間等でやっておられるものとあるわけですが、民間等でやっておるものの地位というのがやはり相当高いものになっておりますですね。対象人員にいたしましてもあるいは金額にいたしましても、まあ国の、四十六年が最後の調査でありますから、民間等の奨学金の場合は、三十数%、対象人員にしますと、国がやっておられる部分の四〇%になる。ですから民間等における奨学金制度が占めておる割合は非常に大きいわけであります。それにしましても、この国のやっている奨学金が質的にも、内容的にも非常に貧弱だ。  そこで、まずお尋ねをしたいのは、このいまのその貸与制度というものを給与制度に切りかえられないかという問題が一つです。その理由といたしまして、いま貸与制度ということになっておりますけれども、その事実上は相当に給与の形になっておるではないか。つまり、まあ学部なり大学院で貸与を受けておる者については、学校の先生なり等になった者についてはこれを免除するという形になっておりますですね、条件はついておりますけれども、免除することになっております。それから特別貸与についても、これはその一般貸与の分を返還したらあとは免除するという形になっておりますですね。ですから貸与という制度にはなっておるけれども、運用的にいいますと、これは相当給与並みになっておるのではないかと、まあ実際どの程度が給与になっておるのかというのをひとつ伺いたい。  それからもう一つは、先ほど申し上げました民間等が行なう奨学金制度、これは国が貸与制度というものをとっている関係もあって、それに引ずられる面も相当強いと思いますけれども、それにいたしましても、民間等の行なう奨学資金というのは、相当大きく給与に傾いていますですね。大きく傾斜しているというふうに言っていいんじゃないでしょうか。さらに、先進資本主義諸国の問題を考えますと、もうほとんどのところがこれは給与制度になっているという点等を考えますと、これはひとつ貸与制度を給与制度の方向へ切りかえるという、そういう努力を積極的にひとつなさってもらいたいと、また、すべきではないだろうかというふうに考えております。これは、私が先ほど冒頭に申し上げましたように、やはり日本の大学制度に対する、私立学校に対する国の援助という問題もからめてこれは論議しなければならぬ問題ですけれども、いまこの問題だけ取り上げまして申し上げますと、そういう努力をすべきではないだろうかというふうに思っておるわけです。  もう一つは、この免除規定の中に、まあ人材を、英才教育といいますかね、そういう面が非常に強いのですが、この国のやっておる育英事業というのは。奨学金制度というのは。学校の先生になる者を免除するというやり方は、これはいかにも文部省らしい視野の狭い話だと思いますですね。小学校中学校高等学校、そういう学校の先生になった者は免除する。あるいはその文部省が指定する試験研究機関等に入った者はこれを免除するというやり方は、これは事実上給与になるわけですけれどもね、ですけれどもあまりにもこれは文部省らしいこれは視野の狭い話だというように私は思うのです。人材を養成をしていくという奨学金制度からいいましてですね。私はそういう感じが強いと思うのです。まあ問題の焦点は、いま申し上げましたように、貸与制度というものをここでひとつ給与制度の方向に切りかえるような積極的な努力をなさっていくべきではなかろうかという点についての見解なり、先ほど申し上げたようにどのくらいが実際給与になっておるかですね、そういう点について。   〔副主査退席、主査着席〕
  44. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 将来の育英制度につきまして、いま御意見のように、給費というような考え方を導入すべきでないかということを考えてもいいと思われるような領域も確かにあろうと思います。しかし、これほど高等教育が広がってまいりました場合に、そのすべてについての奨学制度が全部給費でいいかという点もまたちょっと別の面からは考えてみなければなるまいかというふうに思っております。現在までの育英奨学制度の実態は、御指摘がございましたように、その金額にいたしましても貸与人員にいたしましても非常に少のうございます。これは将来かなり大幅な改善を近い将来に考えなければならぬということで私どもも検討を急いでおるところでございますが、やはり大学院でありますとかあるいは専門領域によりましていろいろの考え方を加えていいのではないか。そういう一面も考え、御指摘のありましたその給費制度をどういうことに導入するのがいいか、あるいは貸与制度をどういう面で考えていったらいいかということなどもいろいろと検討を急いでおるところでございます。  今日の育英奨学制度におきましては、日本育英会の担当しておりますものが御指摘がございましたように貸与額及び貨与人員について大体七割を占めております。で、これの見方でございますが、実はこれだけ高等教育の人口が多くなりました場合に、日本育英会が七割を占めているというのは少しシェアとしては大き過ぎる。もう少し違った形のものがたくさん出てきて、総体としてその育英奨学制度が活発になるということがあっていいのであろう。アメリカの大学等でやっておりますように、個々の大学自体がスカラシップを出すという考え方ももっともっと盛んになっていいではないか。あるいはイギリスの奨学制度は、ほとんどが地方自治体の奨学金で大学まで勉強しておるわけでございますが、そういうものがかみ合ってきていいのではないかというふうにも思っております。しかし日本の育英制度が現在貸与制度でやっておりますが、実質的な給与考えられます返還免除の部分が約四分の一見当かと思っております。
  45. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 大臣、その免除規定の中の奨学資金受けて学部あるいは大学院で修めた者が、これは非常に適用率も高いわけですよ。それが学校の先生になった場合は免除するという考え方は、これはどうもいただけないという気がしますですね。やはり育英金をお考えになるならば全体の人材というふうに考えていただきませんと、あまりにも文部省的で視野の狭い話ではないかと私は思っておりますが、大臣、そういう点についてどういうお考えを持っていらっしゃるかですね。
  46. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 現在一般貸与と特別貸与の二つの方式をとっておりまして、特別貸与の額が大きいわけでございますけれども、特別貸与を受けた方で御指摘のように教員とか研究者になった場合には一般貸与との差額を免除すると、たいへん複雑なやり方をしているようでございます。先生になるにつきましてはかつては公費で養成をはかっておったということもございまして、いま申し上げますような貸与金免除の仕組みをそういう人たちについてとられているようでございます。いずれにいたしましても、なおそういう範囲を広げていくという方法は私たち教育研究を推進していきたいという立場からはたいへん大事なことでございますので、今後ともどこまで御期待に沿えるかくふうはさしていただきたいと思います。
  47. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 長い間大学の一般貸し付けでいいますと三千円というのが十余年にわたって据え置かれておりましたですね。それで十余年も据え置かれてやっと昨年でありますか、三千円が六千円になったわけですね。そのときに奨学金制度というのは、私は文教委員じゃないんですけれども、やったことないんですが、これは奨学金制度というのは文部省さっぱり忘れているのじゃないかと。あるいはこういう経済の発展の中でいろんな面もありますけれども、これは埋没してしまうと、このままでは、という感じを非常に強く受けておったわけですが、去年十数年ぶりにやっと大学でいいますと一般貸与が三千円が六千円になったという形になっておりますね。で、一般貸与は六千円になったわけですけれども、それがその額が非常に小さい。こんなものは私に言わせますともう給与でいいじゃないかというふうに思うんですけれども、まあしかし、それは制度としてあるわけですから、ですから、それにしましても六千円という額はこれはもう世界各国から見ましてはなはだしく見劣りがする。けた一つ違やしないかという感じを非常に強く持っておるのですけれどもね。ですからどうにもならない、この六千円では。で、ついこの間、西ドイツがこの給費生について大幅に上げるというのが新聞にちょっと出ましたですね。それを見ますとやっぱり大学が五万に上がっておりますですね。で、高等学校の二年以上というところになりましょうが、のところが三万八千円ぐらいになるんですか、というような状況なんですね。ですから、まあそれは国情いろいろ違いますけれども、しかし日本がこれだけの大きな経済大国になっておって六千円というその額ですね。  それともう一つは対象人員が非常に少ない。まあ、高等学校でいいますと、二%ぐらいのものじゃないでしょうか、その対象人員というのは。大学でいいまして五、六%……、六%になりましょうか。まあ、大学院になりますと修士課程、博士課程それぞれ実は五〇%ぐらい、あるいは七〇%と高まりますけれども、これは人数が非常に少ないわけですから、対象人員が少ないわけですから。それにいたしましても大学の例から見て、まあ、アメリカは特殊に富裕な国ですからこれは一応別にいたしましても、欧州諸国に比べてみまして、この適用人員並びに額が著しく見劣りがすると、これではという私は気がしてしようがないわけですが、そういう問題についてどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、お尋ねをしたい。
  48. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 御指摘になりましたように奨学金の問題につきましては非常に問題がたくさんあるように思っております。日本育英会は育英というたてまえをとって法律ができておるようでございますけれども、もうそういう時代ではなくて広く奨学制度に切りかえていかなければならない、またそういうつもりでかなり大幅に人員もふやしてきていると考えるわけでございます。たくさんな人たちを対象にとらえたいということになりますと、なかなか全部渡してしまうんだということになりますと、財政当局が難色を示しているわけでございます。現在は御承知のように返してもらいますけれども、全部無利子ということになっているわけでございます。広く奨学金を貸与していきたいということになりますと、ある程度有利子であってもやむを得ないのじゃないかと私は考えるわけでございます。まあ、そういうこともございまして、ことし四十九年度から私学が自分で奨学制度をとってくれるんならその資金は国のほうから融通しますよと、事務員も補助しますよという方向をとらしていただいたわけでございます。それは卒業後は三分の利子でやっていける資金を国のほうから融通しますということでございます。あとは大学が適宜プラスしましてやってくれることはかまわないんじゃないか、こう思うわけでございます。  まあ、むしろ個々の私学がそういう仕組みをとってくれたほうが学校当局と学生との間の心が通い合うようになるんじゃないだろうか、教育的な効果も考えられるんじゃないだろうか、日本育英会一本やりというのももういかがなものであろうか、こういう気持ちで発足をさせたわけでございます。  現状で申し上げますと、四十九年度におきましては昼間部の学部学生の学資及び生活費に対する奨学金の比率は一般貸与では約一五%から二五%、特別貸与では約三五%程度と、こういうふうに踏んでおるわけでございます。将来ともこの程度では穏当でございませんので、多角的に改革を考えていかなきゃならないだろう、こう思っております。  同時に人数の点で申し上げますと、奨学生は約三十二万人、事業費総額で三百十九億円、これはまあ政府予算で予定しているところでございます。非常に進学率がふえてまいりましたので、どの程度まで奨学金の対象にするかということ、たいへんむずかしいことでございますが、現状では学部学生の八〇%の方々に貸与していくことができているわけであります。希望者の八〇%はまあまあ満たしているわけでございます。しかし、希望者もなかなかむずかしいから積極的に申し込まないということになってまいりますと、充足率は高いということになりますから、これだけでいいのかどうか問題はあろうかと思います。どちらにいたしましてもこの貸与額の水準、対象人員相互に関係し合う問題でございます。同時に研究者養成教育界の人材の誘致など、国家社会の必要とする面につきましてはやはり国として配慮していかなきゃならない。これをさらに広げていくこともこれは考えなきゃなりませんけれども、やっぱりこれはこれなりに国としてぜひ確保していかなきゃならない。同時にまた高等教育一般ですけれども、私は大学院についてより以上に国としては配慮すべきものじゃないだろうかなというようなことも考えておるところでございます。たいへん問題の多いことでございまして、御指摘いただいたこと、それぞれ非常に重要な課題だと思っておりますので、今後ともさらにいま申し上げましたような方向も踏まえまして、検討させていただきたいと思っております。
  49. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 この留学生といいますか、国際交流の。教育の国際交流の問題なんですが、これはまあ、たいへんこれから急速に重要視し、そして拡充強化していかなきゃならない問題だと思いますが、また政府としましても、いまそれぞれ非常な努力をしておられるところなんですけれども、その中の中心はやっぱり留学生制度だと思うんですけれども、まあ、昭和二十九年に国費留学生制度というのが発足いたしましてからちょうど二十年になってくるわけですね。その間にたいへんたくさんの問題があったことも御承知のとおりでありますし、いまもまだたくさんの問題がございます。ですが、いま五千人程度だというふうにいわれておりますですね、その留学生が、その中で八〇%をこす者が東南アジアの、ASEANの国々だと。日本から出る者はもう九五%ぐらいが先進諸国に行っていると、アジアじゃなくて、北米それからヨーロッパ諸国という形になっております。ですから、日本の留学制度の場合の中心はやはりどうしても、何といってもこれは東南アジア、アジアの諸国に対する留学制度ということにもなると思うのですけれども、そこでこの問題についていま約五千人ぐらいのこの留学生の中でなんですが、国際的に見てあまりにも日本のこの五千人という数字は急に大きくなってきましたけれども、アメリカに比べ、あるいは欧州諸国に比べてみまして、これも非常に見劣りのする数字なんですね。日本が文化国家としまして、平和な憲法を持っている国として、これこそ一生懸命やっていかなきゃならぬ問題だと思うんですけれども、またアジア諸国における日本のいまの状況からいいましても、それと裏返しと言うてんじゃないんですけれども、互恵平等、そして、相互理解という立場に立って積極的に進めなきゃならぬと思うんですが、ただ、いまその国費留学生というのが七分の一ぐらいじゃないでしょうか、七分の一ぐらいでしょうね。五千人の中の八百人ぐらいでしょうかね。
  50. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 五千人のうちの九百人です。
  51. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 九百人になっていますか。そうですか。四十八年には七百名といっておりましたが、それから新規に四百何名ふえていますから、そうでしょうね。いずれにいたしましても、その国費についてと私費生との間の差別というものについてもこの近年、四十六年ごろから努力が行なわれてきておることも承知しておりますが、しかし、なお非常に大きな問題があるように思いますですね。  それから宿舎の問題について何かその実際上はいまの給費生、給費生といいますか、国費生の分をまかなうこともできないくらいじゃないかというふうに思いますがね。ですから、その宿舎の問題が重要な問題になっている。  それから取り扱う機構の問題が、どうもいま国費の問題はすべて文部省で取り扱っておられるわけなんですけれども、文部省に留学生課というのがありましてそこでやっていらっしゃるわけですが、それもやはりいろんな問題がありますですね。受け入れの大学側は、これは教育をする大学ですから、その大学の側にもいろいろな問題がありますですね。いろいろな問題があるんですが、そこで二つほどお尋ねをしたいんですが、日本の国費留学生の募集要綱を見てみまして、それから外国の大使館に頼みまして募集要綱を見てみまして違っておる点が幾つもあるんですけれども、一つ二つ、非常にちょっと目に立つのは、国費留学生というのは文部大臣に誓約書を出さなけりゃならぬということになっておりますですね。外国に聞いてみますと、誓約書を文部大臣に出すと一か、外務大臣に出すとかいうようなところはないんですね。誓約書の中身が二十九年以来の問題もあってだと思うんですが、政治活動を一切してはならないとかいうような問題が入っておったり、それから今度はもう一つ募集要綱の中に、文部省大学の配置を決定すると。それを異議を申し立ててはならぬというようなことばがありますですね。これはどの大学に配置するかということはたいへんだと思うんです、いまの状況では。いまの状況ではたいへんだと思うんですが、外国ではそうでもないんですけれども、日本の場合においてはどうもたいへんな苦労をなさっておられるように思います。そのことは大学側の理解がないということだと思うんですけれども、いずれにしましても文部省がきめた大学配置について異議を申し立ててはならぬというような形になっておりますね。それがまた誓約書の中にも入っているような話が出ておりますですね。私は二つ伺ったんですが、せっかく国費留学生というものをとっておるけれども、そこにそういうようなものを入れては何にもならないと、これは。全体として、私はどうもかつて日本に中国の留学生がたくさん来ておりました。それがいずれも結論的に言いますと、結論は、それは中国共産党、中国国民党、そして汪精衛、それぞれの中の抗日、反日の指導者になっておるわけですね。そういう失敗を繰り返すような心配をしておるわけなんです。ここで、ですから私はいま二つをお伺いをすると同時に、時間がありませんので、これはこの留学制度あるいは教育の国際交流全体についての格調の高い理念というものをつくる必要があるんじゃないか。同時に機構もこれは文部省というだけではだめであって、国と大学と民間とこの三つで、ひとつ何か特殊な団体をつくっておやりになる必要があるのじゃないか。そして、ここに国費と私費生とははっきり差別がついておりますけれども、大学としては差別をするわけにはいきません、同じ大学生ですし。それで、それが帰ればこれは日本に行った留学生だということで一応の評価を受けるわけですから。そういうような面をもうここで考えるときにきておるのではないかと、二十年たってですね。これから思い切ってやはり積極的に拡充し、拡大をしていこうという段階にきておるわけですから、そういう時期に法律的な措置もし、機構的にもはっきりしたものをつくる段階にきておるのではないかというふうに思うわけです。三点ほど伺いましたけれども。
  52. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) 簡単に願います。
  53. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 端的に誓約書のお尋ねからお答え申し上げます。  留学生全般に誓約書を文部大臣が書かしておるということではございません。国費留学生としてのめんどうを見ます場合に、そのことについての誓約をしてもらっております。これは何も日本だけに限ったことではございませんで、フランスもアメリカのフルブライト等もそれぞれ学生に受け入れます際に、政治活動につきましてもあるいは大学の配置のことにつきましても、同じようにめんどう見ているところがお世話をするからそれに従ってくれと。また勉強するんだからその国の中で政治活動をするというようなことはしないようにしろということは、それぞれいっておることでございまして、日本だけの特別な問題でもございません。留学生のいろいろな取り扱いにつきましては、御指摘のように戦後国費で国が留学生を呼んできて、大学に割りつけるというようなことから戦後のスタートを切ったものでございますから、何か大学側が受け身になりまして、積極的に考えてくれないというような傾きがございました。その点では、大学自体が積極的に留学生を受け入れるという姿勢にしむけなければならない。私どもも予算を通じまして、この両三年、財政当局の理解も得て、かなり大学自体が積極的に留学生を、国費、私費といわず受け入れるという体制を整えることができるようになってまいりましたが、一段とこれは進めてまいりたいと思います。そうなりますと、また、その大学が個別にやっておったのではいけませんので、個々の大学、これは国費、私費を問わず、大学の留学生受け入れの態勢と、全国的なその連絡提携をする体系というものは、御指摘のように今後高めていかなければならぬ、当面の課題として考えておるところでございます。  また、留学生問題は、実は出先の在外公館との関係から始まってくるわけでございまして、これはどうしても国内におきましても、また外務省、法務省等との連携をとっていかなければなりませんから、それらの関係省庁間の協力は緊密に高めていくようにしたいと思っております。  いま宿舎の問題を一番気にしております。しかし、これも日本の生活環境の特殊性がございますので、一気に思うほどもまいりませんが、何とか大学が積極的に留学生を受け入れるようにしむけることによりまして、それを宿舎の面でも、いろんな面でも助けるということで、解決をしていきたいというふうに思っております。
  54. 鶴園哲夫

    鶴園哲夫君 これは時間が来ましたので、あらためてまた適当な機会に詳しくお伺いしたい、また論議したいと思っております。  それじゃ終わります。     —————————————
  55. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) この際、分科担当委員の異動について御報告いたします。  竹田四郎君が委員辞任され、その補欠として戸叶武君が選任されました。     —————————————
  56. 塚田大願

    ○塚田大願君 文部省は、去る三月十二日付で、「国民体育大会の開催及び参加について」という通知を、各都道府県にお出しになりました。私はこの問題に関連して、国体のあり方について、若干質問したいと思うわけであります。  私は国体というものは、国民体育スポーツの発展、それに役立つものでなければならない、こう考えておるわけでありますが、これは文部省としても、当然このことは前提にして考えられていると思います。ですが、この際、私は質問するにあたりまして、そもそも国が、この国民体育大会のようなスポーツ大会に、いわば主催団体となる、主催団体になっておるという、こういう問題も一つあるわけでございますが、私は、きょうは時間の関係で、この問題の是非は一応保留して、機会のあるときにまたお聞きしたいと思うわけでありまするが、そこでまず第一にお伺いしたいことは、この国体の性格の問題であります。文部省のお出しになりました「国民体育大会開催基準要項」によりますと、この国体の性格というのは、「国民の各層を対象とする社会体育の行事であり、国民スポーツ祭典である。」というふうに規定されているわけでありますが、これは、いまも申しましたけれども、すべての国民が国体に参加できる資格を持つということは、当然のことであります。  しかし一方、やはり、国体基準細則なるものを見ますと、いま申し上げた性格規定と矛盾するようなことがここにあるのではないかというふうに感ずるわけです。そしてまた、実際にそういうふうになっておるということでありますが、具体的に申し上げますと、この細則の四項の参加資格のところではこう書いてあるわけであります。「各競技の選手、役員は、日本体育協会加盟団体のアマチュア規定に定められたアマチュアであること。」と、こういうふうになっておりますね。この体協のアマチュア規定というのは、御承知のとおり、本規定のアマチュア競技者とは、本会加盟の競技団体に登録している者をいうと、こういうふうになっております。これがアマチュアだというふうに規定ではなっておるわけであります。  つまり、私がお聞きしたいのは、国民体育大会はだれでも参加できるといいながら、実際には体協加盟の競技団体に登録している者しか参加できない、こういうことになるわけであります。ですから、アマチュア規定が、体協加盟の競技団体に登録している者だけは、アマチュアと規定しているような、この基準のアマチュア規定ですな。これはやはりすべての国民を対象とする国民体育大会の参加資格にするということとは、非常に矛盾ではないかと思うのでありますけれども、その点まず第一、このアマチュア規定の問題について、文部省としてはどういうふうにお考えなのか、それをお尋ねしたいと思うわけであります。
  57. 澁谷敬三

    政府委員澁谷敬三君) ただいまと同趣旨の御質問がたしか内閣委員会でもございまして、その際、私個人としては現在のあり方に疑問を持っておるということを申し上げたことがあるわけでございますが、ただ現在の国体は開催県、体協、それから文部省の主催のもとで開催されておりますが、実際には各競技団体が主管をいたしております。各競技団体はそれぞれ国際競技連盟に加盟いたしておりまして、各国際競技連盟の規約に基づきまして行なわれるということになっておるわけでございます。その国際競技連盟の規約に基づきますと、要するに、そういうことになるといいますか、何をもってアマとし、何をもってプロとするかにつきましての判定、判断を競技団体に登録ということでいたしておるということでございまして、現在は各競技団体が競技の実施を主管いたしておりますので、そうならざるを得ないということなんでございますが、この点は体協が国体のあり方につきまして、国体委員会で二年間にわたって検討をいたした際、文部省側としては、その点につきましてはむしろ競技団体に登録しているとか、していないとかにかかわらず、プロというのははっきりわかるわけですから、いわゆるアマチュアであればすべて参加できるというふうにすべきものであるということを強く主張いたしたのでございますが、そういう国際競技連盟の規約その他のことがございまして、今回はその点が未解決になっておるわけでございます。国民体育大会が、国民の各層を対象とするスポーツの大会である、社会体育の行事であるという趣旨にかんがみまして、競技団体に登録しているいないにかかわらず、やはり参加できるというふうにあるべきものではないかと思っておりますが、そういう国際競技連盟に加盟いたしております各競技団体との問題もございますので、これは引き続き体協側と検討をいたしていきたい、将来はそういう各層が参加できるという方向にぜひ改善されるものではないかというふうに考えておりまして、検討課題だと考えております。
  58. 塚田大願

    ○塚田大願君 いま検討を加えるというお話しでありますが、もう少し私は具体的に材料を出して質問したいと思うんです。というのは、いま軟式野球というのがたいへん国民の間に人気がございます、御承知のとおり。ここに、たとえば富山県の例でありますけれども、軟式野球連盟に加盟しているチームというのは、約五百チームある。ところが、調べてみましたら、同じ富山県下にこの軟式野球チームはその約十倍、五千ある。ところが、軟式野球連盟に入っているのは、たった五百、つまり十分の一しか入っていない。でありますから、このたった十分の一の軟式野球連盟に入るか入らないかという問題が、いわば国体に参加できるかどうかということの資格になると、こういうことになるわけであります。たった十分の一しか国体に参加する資格を与えない。残りの九〇%以上がだめだ、こういうことになるわけであります。  で、なぜこういうことになるかという問題でありますけれども、とこに、この富山県のではありません、全国軟式野球連盟の規約がございます。この規約を見たら、——見て驚いたんですけれども、こういう処分規程があるんです。「本連盟に、加盟のチームおよび選手は本連盟および支部の主催、共催、後援、協賛または公認の野球大会でなければ出場することはできない。これに違反したときは規約第五十二条により除名、あるいは大会への出場停止、その他の処分をうける。」と、こういうきびしい処分があるんですね。これではとても参加できないということになって、ほとんどがこの連盟に参加しない、おかげで国体にも参加できない、こういうことになるわけです。  そこで、私が申し上げたいのは、いつまでも検討、検討とおっしゃるけれども、やはり国体が、文字どおり国民体育大会というものとして発展させるためには、この国体開催基準要項細則ですね、これを即刻に改めて、だれでも、ほんとうに文字どおり国体に参加できるというふうなものにしなければ、せっかくの国体というものが発展しないと、そういう点で、もう一度ひとつ大臣にその辺の御答弁をお願いしたいと思うんです。
  59. 澁谷敬三

    政府委員澁谷敬三君) 実は先ほどちょっと御引用されました国体に関しまして、体育局長の通知を出します際にも、その問題につきまして何か解決できないかということで、体協と話し合ったわけでございます。その後、引き続き話し合っております。その国体開催基準要項及びその細則は、体協がきめたものでございますが、文部省もその主催者の一員に入っておりますので、そういうことで、引き続き検討をいたしておるわけでございますが、そういう国際競技連盟の規約の制約があります。それと実際のこの審判員の、公認審判員といいますか、そういう問題がございます。それらのことがございまして、技術的にいろいろ問題があるわけでございますが、何とか解決できないかということで、実は何回も検討いたしておるわけでございまして、またその開催基準要項におきましても、将来は、まず市町村の段階あるいは郡市の段階でスポーツ大会をやりまして、それが県の段階、それから国民体育大会という将来像を描いておるわけでございます。そういう趣旨からも、国民の各層が参加できるスポーツの大会であるべきであると、そう思っておるところでございまして、そういう技術的ないろいろ問題がございますので、それらを何とか解決したいということで、体協側といま相談をいたしておるところでございまして、これは前からの問題であり、文部省体育局としては、登録している、していないにかかわらず、参加できるものでありたいと念願いたしておったわけでございますので、引き続き検討をいたしていきたい。特に従来は、やはりこの競技……
  60. 塚田大願

    ○塚田大願君 簡潔でいいですよ。
  61. 澁谷敬三

    政府委員澁谷敬三君) はい、そういうことでございます。
  62. 塚田大願

    ○塚田大願君 大臣にも一言……。
  63. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 国民体育大会には、広く国民各層が参加できるものでなければならないことだと思います。いま、承りまして、若干そこに支障があるようでございますので、私としても改善に対しては検討し、努力を続けるべきだと思っております。
  64. 塚田大願

    ○塚田大願君 ひとつぜひ、その点では積極的に、これはもうたいへんな矛盾なんですから、努力していただきたいと思うんです。  次に、私は国体の施設の問題でお伺いしたいわけであります。  国体を開催する場合に、各都道府県で一番頭が痛いのは、財政問題であります。何といってもたいへんな費用がかかるわけでありますが、その大半の費用というのは、施設整備費であります。たとえば五十一年開催の佐賀県の場合ですが、国体の総予算が約七十億円だと、このことをめぐりまして、地元ではずいぶん反対運動がやかましく起きているようでありますが、問題は、やはりこういう予算の問題、財政の問題があるわけであります。で、この佐賀県の場合でも、七十億のうち、競技施設を新しくつくる、または改築する費用というのは、市町村立と県立を含めて、約二十五でありますか、二十五施設、約五十億円かかると、こういうわけであります。それからさらに五十二年開催の青森県の場合は、施設費だけで九十六億円かかると。ところが一方、四十九年度の文部省社会体育スポーツ施設整備費は、四十八億円であります。いわば、一回国体をやる半分しか国の予算が出ないと、このぐらいの膨大な費用が国体にはかかる。  そこで、この問題でありますけれども、この問題には二つの問題があると思うんですね、その一つは、やはり国庫補助が非常に低いと、少ないということが、まず一つ問題だろうと思うんです。スポーツ振興法によりますと、三分の一は国庫補助するということになっておるんですが、実際には三分の一というのは、から文句になっております。たとえば、この佐賀県の場合ですけれども、五十億の施設整備費に対して、国庫補助は五億円でありますから、つまり十分の一です。三分の一どころではありません。  じゃあ、なぜこうなったかという問題でありますけれども、これはやはりスポーツ振興法施行令、あるいは文部省の各種の補助規定、これがいろいろ制限を加えております。あるいは、建設単価を非常に低く見る、この問題もございますが、とにかく三分の一補助規定というものは全く今日じゅうりんされておる形なんです。  若干、もう少し例をあげますと、たとえば屋外プールであります。これはもう何億円かかろうと——本年度の予算を見ますと、一施設二百万円ということになっておるわけですね。で、じゃあなぜこれっぽっちのものになるか——何億とかかるんです、プールは、いま。ところが施行令でプールの基準は四百平米ということになっておる。この四百平米を基準にして三百万円というのが出る。ところが、たとえば昨年やりました千葉の国体のプールはどうなのか、これは五十メートルコース、大体面積にして千二百五十平米、これがいま大体標準のプールである建設費は二億三千五百万円千葉の場合にかかっており、二億三千五百万円に対して三百万円の施設補助というのでは、これはほんとうにスズメの涙にも値しない。百分の一、こういうことでは、各地方がたいへん頭を痛めるのは無理がないわけであります。そこで、私は、やはり文部省として国体を重視されるならば、やはりこの問題を解決していただく。法律できまっている補助額も満足に出せないというようなことでは、私は主催者として名前を連ねている文部省としては、まことに至らぬことではないかと思うのですが、この補助の問題について、ひとつ大臣、どういうふうにお考えなのか、所見をお伺いしたいと思います。
  65. 澁谷敬三

    政府委員澁谷敬三君) 屋外プールにつきましてはいま二百万という御指摘ございましたが……。
  66. 塚田大願

    ○塚田大願君 三百万。
  67. 澁谷敬三

    政府委員澁谷敬三君) ことしから三百万にいたしております。  それから、いま億単位の金がかかるとおっしゃいましたのは屋内の温水プールだと思うわけでありまして、屋内の温水プールにつきましては、従来千五百万円の補助でございましたが、四十九年度予算には八千万円の補助を計上いたしております。そういうことで、逐次実情に沿うような補助単価の改善をはかっているところでございます。  それから国体の施設につきましては、特にこの通達でも強調いたしておるわけでございますが、とかくこの機会にということで、私どもの見るところ、デラックスなものをつくり過ぎる傾向がございます。私どもとしては、それがあとあと県民なり地域住民に使いやすい、十分活用していただける施設であるべきである、そういう考え方を強く持っておるところでございまして、そういう考え方のもとに、国体の開催県には補助金を優先的に配分するという方針をとっておるわけでございまして、また、体育施設協会にも依頼いたしまして、とかくデラックスにつくりがちなので、市民が使いやすい体育施設、プール、体育館その他につきまして、ことし標準的な指針となるものもつくっていただいたわけでございます。大体、そういう考えでやっておるわけでございます。
  68. 塚田大願

    ○塚田大願君 確かに、いまおっしゃったようなことが今度の通達にはございます。大いに質実にやりなさい、あまりむずかしい基準を守らなくてもいいというふうなことは確かにおっしゃっておるのですけれども、しかし、それはそれとしまして、とにかく国が三分の一の補助をするという規定をみずからつくっておるのですから、その少なくとも三分の一の補助を、私はとにかくそんなにたくさんやれと言っているわけではない。少なくともこの三分の一は、実際にかかった三分の一はとにかく守ったらどうだ。しかし、そうしないと地方の超過負担というものは、これは体育施設だけではありません、学校建設の場合でもそうでありますけれども、地方の財政負担というものを軽減することができない、そういう意味で先ほど私があげましたスポーツ振興法の施行令ですね、あるいは文部省補助規程です、こういうものは実際に実情に即して改正していく必要があると思うのですが、この点についても簡単でよろしゅうございます、一言答えていただきたいと思うのです。
  69. 澁谷敬三

    政府委員澁谷敬三君) 私どもも全くそういう考えで、この数年かなり改善されてきたと思っておりますが、引き続き努力すべき問題であると、そう考えております。  ただ、それぞれの体育施設につきまして大事なことは基準平米、それから補助単価が適正であるべきである、あまりデラックス過ぎるものはどうかと思うわけでございますが、そういうしかるべき適正な面積、それから適正な補助単価ということではまだ一部実情にそぐわない面もあると思いますので、だいぶ改善されてきたとは思いますが、引き続き努力すべきものだと思っております。
  70. 塚田大願

    ○塚田大願君 もう一つの問題は、やはりこれも大きな問題ですけれども、いまおっしゃったような大規模な競技場ですね、施設、これは非常にとにかく相当できた。ところが、いま一番スポーツ振興にとって必要なのは、日常生活圏域の中で非常に利用しやすいスポーツ施設、これが一番いま国民に求められているものだと思うのですね。たとえばげたばきで行けるようなもの、あるいは陸上もできれば野球もやれる、あるいはサッカーもやれる、こういったものですね。こういうものが、非常にいま国民には要求されていると思うのです。これはよく体育局は御存じだろうと思うのですね、いまスポーツがこれほど日本では発達しておるのですから。ところが、大会、大競技場というものは、なかなか一般の人は使えない。せっかくばく大な金を使ってつくったけれども、ペンペン草がはえておるという例もなきにしもあらず。そこでやはり問題は、そういうげたばきでも行けるような非常に身近な施設をもっとたくさんつくっていただく、これはもう当然のことで、何もむずかしい問題ではないわけでありますが、その点で、そういう観点から見まして、やはりこれからの国体のあり方ですね、つまり公認第一種競技場とか、あるいは三万人、四万人も入るスタンド、競技場でなければいかぬ、開会式、閉会式やるのにはそういうものを持てというふうな要項細則ですね、こういうあり方というものは、やはり検討さるべきだと私は考えるわけです。少なくとも、いまもう大競技場は国際的水準からはるかに進んでおるという実情でありますから、少なくともこれからは、そういう既設の大競技場をうまく運用して大会を開催していくというふうな方法も一つあろうかと思うのです。そういう点で、今日の情勢に見合った形でひとつスポーツ振興文部省としては考えていただきたい。この点を文部大臣にお伺いしたいと思うのです。
  71. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) 国民体育大会を開催するからといいまして、将来、県民の便利な利用に適しないようなものをつくることは、私も適当ではないという気持ちを持っておるわけでございます。そういうこともございまして、先般の通達になっているわけでございまして、でき得る限り、特にこの際は簡素にしていただきたいし、同時にあとあと十分に利用される施設に重点を置いてやっていただかなければならないと一かように考えているわけでございます。そういう点については、一そう配慮いたしてまいる決意であります。
  72. 塚田大願

    ○塚田大願君 じゃ、時間も非常に迫りましたから、最後にもう一つだけお伺いしたいのですが、この規程を、細則を見ましても、ここに国民体育大会委員会規程というのがあります。体育大会委員会、国体委員会です。この問題でありますけれども、私は先ほどもアマチュアの問題で御質問申し上げましたが、この国体委員会というのは体協の中の組織であります。しかし、文部省からも二名の委員が出ておる。そうしてこの規程を見ますと、「国民体育大会の開催に関する組織、実施方法その他重要事項を審議する。」とこういうふうに任務づけられておる委員会だと思うんですが、非常に重要な権限を持っております。たとえば競技場の施設などの調査あるいは点検、注文、こういう権限を持った委員会ですが、どうも私はこの委員会がほんとうにスポーツの正しいフェアなスポーツ精神あるいはアマチュア精神に貫かれた国体、こういうものとほんとうにマッチするのかどうかという点で若干疑問があるわけです。  具体的に申しますと、との国体委員会の副委員長をやられておる安田さんという方は陸上連盟の代表として参加されておる人でありますが、この方は長谷川体育施設株式会社という体育施設の会社の職員でございまして、この会社は陸上のトラックの舗装工事などをやっておられるはずであります。で、この長谷川体育施設という会社がことしの茨城大会の国体の陸上競技場などの工事もやっておるわけでありますが、どうもこのトラックや競技場をつくっている会社の職員が国体委員になっている、これはどうもちょっと納得しかねるんですね。なるほど陸上競技の代表という資格で参加をされている、しかも副委員長だ。まだしかしあるんです。同じく国体委員会の水泳連盟の代表として勝村さんという人が参加されておりますが、これは勝村建設という会社の社長さんです。この勝村建設という会社は同じく茨城国体用の水泳プールをつくっている会社である。そうでしょう、間違いないはずです。こういう施設をつくっている会社の社長さんであるとか職員がこういう重要な権限を持った委員でありあるいは副委員長であるというのはどうも納得しがたいものがあるんです。先ほど申しましたアマチュア規定の観点から見ましても業者がそういう権限を持った委員に参加をしている。これは私はやはり商業主義を否定してアマチュア精神でなければならないといいながら実際は商業主義との結合がこういう形で行なわれているというのは、そもそも私は重大な問題ではないかと思うんです。これは明らかに今日いろいろ商社の悪徳商法というのが問題にもなっておりますけれども、少なくとも私はいまここで何か癒着をし、そこに黒い霧が発生したなどと申し上げているのではありません。しかしながら、少なくともスポーツというフェアなものという考え方からすれば、少なくとも李下の冠、瓜田の履(くつ)という教訓は私は文部省としたら当然私は守ってもらわなければいけないんじゃないか。むしろ文部省であればこそそこは非常に厳正である、公正であるというふうになってもらいたいと思うのですが、この点についてはどういうふうなお考えなのか聞きたいと思うんです。
  73. 澁谷敬三

    政府委員澁谷敬三君) 御承知のように体協の役員あるいは競技団体の役員の方々はみな手弁当でやっていただいておるわけでございます。そういうことで、ただそれぞれの種目等に非常に熱心な方が選ばれているわけでございます。結果的にいろいろな会社の役員をしておられる方もあるわけでございますが、趣旨はやはり各種目につきましての学識経験豊かな人が競技団体の役員その他に選ばれておるわけでございまして、結果的にそういう方々がたまたま会社の役員もしておられるということは、たまたま起き得ると思うわけでございますが、いずれにいたしましても、それは競技団体の役員というような資格で入っておられるわけでございます。現在のところこの国体委員会の運営につきましては二年間にわたりまして国体のあり方にふさわしい御検討をいただき、相当前進いたしておりまして、現在のところ特に支障はないと、こう思っておるわけでございます。
  74. 塚田大願

    ○塚田大願君 じゃ大臣も時間のようでありますから、最後に私、はっきりさしてもらいたいと思っておるのですが、先ほど施設の問題については通達で弾力的にやりなさいと、こういうことをおっしゃっておられる。しかし、こういう競技場をつくっておる、監督しておる委員会がこういう競技場の会社であったり、プールの会社であったり、当然これは会社の論理からいえばりっぱな施設をつくりたいと、お金もたくさんいただきたいと、こういうことになるわけで、これは文部省が幾らそういう通達をお出しになっても、こういう実態では私は実際に弾力的運用なんかできないのではないか、そこにも矛盾がある、これが一つ。それからもう一つ、いま申し上げたことは、やはり商業主義というものを否定するならば、私はそこをはっきり姿勢に、その態度で示していただかなければいけないのではないか、こういうふうに考えるので、この点最後にひとつ大臣としての御所見を伺って私の質問を終わりたいと思います。
  75. 奥野誠亮

    国務大臣奥野誠亮君) いま体育局長が申し上げましたように、委員は各競技団体の代表、各都道府県体育協会の代表及び文部省の職員四十七名で構成しているようでございます。業界の代表ということで選んでいるわけじゃないのでございますが、たまたまその方が仕事もしておられる、そういうことで御疑念を抱かれたようでございますけれども、何ぶん無給、特別な報酬を出してこういう機関を構成しているわけじゃございませんし、また各競技団体の代表、体育協会の代表等を選びます場合に、そういう職業を持っておられる方々は不適当だということにも各団体で一律に私はきめにくいのじゃないだろうかと、こう思うわけでございます。したがいまして、委員になっておられる方々がその委員という職責を利用して自分たちの商売の拡張をやるというような不見識なことがあってはならないことは当然だと思います。私のほうでも結果的に悪い事態が生じているかどうか、その辺は調べさしていただきたいと思います。直ちに何か仕事を持っておられるからこの委員には不適当だという結論にはしにくいような感じがいたします。
  76. 塚田大願

    ○塚田大願君 その問題なんですがね、いまの大臣の答弁では私はどうもまだすっきり納得できないので、これはひとつぜひ調査をしていただいて、そうして今後つまり疑いをかけられるようなことのないような仕組みにしていただかなければいけない、このことだけ注文しておきたいと思います。  じゃ、終わります。
  77. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) 以上をもちまして文部省所管に関する質疑は終了いたしました。  午後一時十分まで休憩いたします。    午後零時三十九分休憩      —————・—————    午後一時十四分開会
  78. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) ただいまから予算委員会第四分科会を再開いたします。  分科担当委員の異動について御報告いたします。  戸叶武君が委員辞任され、その補欠として小柳勇君が選任されました。     —————————————
  79. 矢追秀彦

    主査矢追秀彦君) 昭和四十九年度総予算中、労働省所管を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  80. 小柳勇

    小柳勇君 労働大臣並びに関係者、春闘でたいへん御苦労でございます。  冒頭に、春闘の解決に対して労働省としてどんなに取り組んでおられるか、その問題をまずお聞きいたします。
  81. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) ただいま春闘に対して御心配いただきましたが、ありがとうございます。  春闘共闘委が山場と計画している大規模なストライキ、これがほんとに予定どおり行なわれた場合には一様に国民生活あるいは国民経済にたいへんな打撃を与えることを思って心配しているわけです。政府としましては、労働組合が国民大ぜいに迷惑をかけるような違法スト、そういうものをぜひ行なわないように自粛をいままでも求めてきたところですが、さらに自粛を求めていく考えであります。  一方、私たちといたしましては、賃上げ等の経済問題につきましては、労使が良識をもって平和のうちに解決することを望んでおりますけれども、政策問題等で組合が違法なストライキを行なうことのないように従来も反省を求めてまいりましたが、そしてまたストの回避にいまから先も一そう努力を重ねてまいりたい、こう思っているわけでございます。
  82. 小柳勇

    小柳勇君 先般、まだ数日前に春闘共闘委の事務局長の大木正吾君を国会参考人に呼びまして、この春闘を解決するにはいま最小限度どのくらいの問題を解決したらいいのかという質問をいたしました。もちろん全般的なたくさんの要求がありますけれども、これこれはどうしても解決しなければいわゆる国民春闘の解決にならぬという決心があるだろうと、そういうことを大木事務局長にお尋ねして——私はここに記録しているのでありますが、労働省として、あるいは政府として、この春闘を解決するにはどれとどれは必ず解決しなければならぬと、どれは将来の問題ですよと、何かそういうふうなものを持っておらなければ、ここ十日、十一日を迎えまして日にちがないんですけれども、どういうものを腹の中に準備しながら労働組合の組織に対処しておられるのか、大臣の見解をお聞きしたいと思います。
  83. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 総評の大木さんを含めて総理大臣が労働四団体とお会いしたことは御承知おきのとおりでございます。そのときに、政府の姿勢といたしましては、皆さんにも御理解いただいていることでございますけれども、日本は議会政治の国である、と同時に、組合と政府が団交すると、そういうたてまえではない。四団体の中にもやはり違法ストには反対という方々もありますし、そういうことからしますというと、春闘共闘の方々が、私はその後でも何べんとなく会っておりますけれども、ときに最賃の問題とかあるいは週休二日の問題という直接労働省所管のものもございます。一方また政治的な要求としてはスト権の問題もあり、さらにまた、このたびの一つの特徴は、御自分たちの地位の向上だけにあらず弱い方々に目を向けておられると、この問題が解決しなければストはやめないんだというふうな強い態度に出ておられるものがありますので、いずれにいたしましても、皆さんの国会でもいま組合の諸君が申されていることは御議論いただいておることでございまして、政策問題と経済問題は、これは区別しながらやっていかなきゃならぬのじゃないか。もちろん、大ぜいの方々がほかの方々のことまでお考えいただいていることでございますから、それは全然無視するという意味じゃございませんで、重要な参考意見として、それらを諸先生方の御議論ともどもに重大な参考としてわれわれはやっていかなきゃならぬという気持ちは持っているわけであります。
  84. 小柳勇

    小柳勇君 インフレ手当というものについては人事院勧告が〇・三出ましたね。これが約三万円ですか。それから年金スライドの問題も、この前の総括質問では厚生大臣えらい執拗に抵抗しておりましたが、きのうは衆議院の社会労働委員会で、与野党で話し合いがつくならば年金スライドの繰り上げも考えるというように若干前向きになったようです。ほんとう言うならば、私どもがこの予算委員会でかなり時間をかけて論議するんですから、ストライキの中だからやるとかじゃなくて、もっと理論的に予算委員会の中で討論をして、そうですなと言ったら、そこに予算委員会の場で譲歩するものは譲歩して、できるものなら予算を修正するというのがぼくはこの国会の任務でなきゃならぬと思う。まだ私が質問したのはわずか一週間そこそこ前に質問したのには頑強に抵抗しておって、しかも厚生年金のスライド、胸を張って厚生大臣答弁しておられた。それがけさの新聞では若干、衆議院の与野党で話し合いつくならばまかせましょうというかっこうになっていますね。きのう私は公的年金の総合調整の問題で、そればっかり分科会でやりました。総務長官ですから、担当大臣でないから気の毒だったけれども、それでも前向きに非常に発言があった。私は厚生大臣にも不満ですけれども、そう言ってもしようないが、それにしても年金制度については若干の変更がなされる見通しがつきました。いいことです。ただ、まだ根本的に解決しません。それは厚生年金だけスライド考えましても、じゃあその他の年金はどうするかという問題が残りますね。だから、前段としては年金制度の統合調整ですね、このことを急いでもらわなきゃならぬ。これは大臣もよくひとつ胸に入れておいてもらいたいと思うんです。きのうは総務長官一人だったものですから、閣僚の中に発言するということを約束されました。私は年来、ここ数年来その問題ばっかり取り上げて何回もやっています。それは外国へ行きましても、年金制度が貧弱で、ある。ばらばらです。各個ばらばらで、各省庁とも困っている問題もあります。これを統合して一本に、厚生省なら厚生省、あるいは年金庁をつくってもいいでしょう。そして一本にして、職場年金と家庭年金と二つに分けてやれば統合できないことはないと思う。しかも、このインフレの中ですから、年金積み立て方式をやめて賦課方式にして、いままで積み立ててきた財産を取りくずして、この際は、この二、三年は取りくずしたその財産でひとつ年金も一律にやりましょうと。そういうことをしますと、それは限界はありますから、たとえば生活扶助基準以下の人は全部そこまで上げましょうとか、あるいは年金ですから少し色をつけてここまでいきましょうとかいうことぐらいはやろうと思えばできないことはないと思う。したがって、そういうものをひとつ考えておりまして、厚生大臣がきのう言われましたこれだけでは納得しませんけれども、それでも少し前進しました。  あとですね、最低賃金制もいま大臣は頭の中にあるようでありますが、これも中小企業の労働者はたいへんな問題です。しかも、これは使用者のほうがいま望んでいます。中小企業の使用者は大企業に労働者を取られまして働く者がいないわけです。それかといって、下請企業ですから、労働賃金を上げたらもう商売になりませんからね、低い労働者を雇いたい。ところが、低いほうはおのずから限度がありますね。だから、この際にこそ労働省が最低賃金制をつくられますと、それに準じてみんな平等に雇えますからね、そうすると、試験をしてみんなに適正なものを採用することができる。だから、大企業そのものの賃金でやるのはこれは無理かもしれぬ。それは無理かもしれません、そういうことは理解してますから。ただし、それがありませんと今度は事業単価——あとで問題にいたしますけれども、事業単価などを設計するときに、発注するときに困るわけですね。最低賃金制がありますと、その地域におけるその相場をもって設計していけますから、発注する場合あまり浮動がないわけですね。この仕事はうんといい単価だからこれでいこうということで、いま幸いなことに仕事がありますから、労働者のほうが少ない情勢ですから、ひとつ最低賃金制の問題をもう少し積極的に労働省取り組んでもらって、だからこれをただ名目だけでなくて、これで事業単価を設計できますという最低賃金制を設定されることを期待します。  そこで、あと残ります問題は、賃金の引き上げの問題とスト権の問題であります。したがって、いま賃金の問題で大々的にこれで発表になりましたが、三公社五現業に対する賃金の問題などは、労働大臣はどういうふうにお考えでございますか。
  85. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) これはそれぞれの所管、たとえば国鉄なら国鉄総裁と組合の皆さん方のお話しということになるんでございますけれども、昨年から御承知おきのとおり政府は有額回答をするようになりました。私は、やはり国鉄なり、一つの例でございますが、郵政のような非常にもう財政が苦しいところもございますが、けさお願いいたしまして、総理大臣はじめみんなが出られて、有額回答は出す、こういう御決定をいただいたわけでありまして、そのうちにそれぞれの三公社五現業の方々から一応の案が出てくるんじやなかろうかというようなことで期待をしているわけであります。
  86. 小柳勇

    小柳勇君 もう今晩ごろ提出するんじゃないかというような意見ですが、どうですか。今晩ごろ示されるんですか、有額回答。
  87. 北川俊夫

    政府委員(北川俊夫君) いま大臣申し上げましたように、閣僚レベルで有額回答するという方針をきめましたけれども、時期についてはまだきめておりません。ただ、今晩私鉄の第一次回答があるようでございますから、そういうものを踏まえましてただいまの民間の賃金の妥結状況、それを踏まえて三公社五現業に対しても有額回答がなされるということでございます。
  88. 小柳勇

    小柳勇君 世間の人も、あるいは新聞の社説なども、これだけの大きなゼネスト的なものが計画されている、もちろんここまできますと、大きな部隊ですから簡単なことではブレーキがききませんね。それには相当の決心をした有額回答でなけりゃならぬと思うんですけれども、過去にたくさん例がありました。たとえば一回目はうんと低いところを出して打診をするとか、あるいは徹夜をして団体交渉してあと増額していくとかいろいろテクニックがありましたが、これだけの大部隊が動いているのは、簡単に一時間や二時間では事態収拾はたいへんなんです。私どもたいへん苦労してきておりますけれども、したがって初めは打診だとかゼスチュア的なものではなくて、ほんとに国民的な足を奪うゼネストはやめても、世間が、なるほどやめるはずだと、そういうようなものを初めから決心して出さなきゃならぬと思うんだが、その点がいままでの例を見ますと、間を、三日あるから第一、第二、第三なんてちゃんと計算をしましてやっているが、そういうものに対しては担当大臣としての決意はどうですか。
  89. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) こういう機会にそういうお話しなどをいただくことは非常に私はありがたい。さすが議会政治だという感じを持つんです。ですから、先ほどから言われた社会保障の問題等々も、先生あたりが予算委員会でお話しされること、あるいはほかの先生方からお話しになること、そういうものを私たちはときに考えてる上に上積みをしたり気のつかないところを気がつかしていただいたりして、そうしてそれが政策になるわけでございます。先日百三十億というものが出たが、これは足りないんだというふうなことで、やっぱり三月一日のストに入ったというふうな形になって非常に私は残念だという感じをいたします。このたびの、いま先生がおっしゃった有額回答の問題にいたしましても、これはまず有額回答するという原則を、こういう予定された四月半ばというふうなことでございますから、これは避けたいというのが私は国民的願望だろうと思います。そういうことからしますというと、そこでいまお話しのような御意見なども踏まえながら私鉄がどういうふうに出てくるか、それを参考にしながらそれぞれの当局が額を出して、もちろんそこではその額によってすぐにあと公労委のほうに調停に回していただき、その間に私はよき妥結が生まれまして大きなゼネストというものがこの際になくなる、またそういう決心をお互いも労使ともどもに認めていただいてほこを引いていただきながら平和になってもらいたい。おっしゃるとおり、なかなか大部隊があれすると、方向転換がきかない面もあるでしょうけど、そこはやはりお互い大事な責任者という方かあるいは指導者という方々の、ほんとうに国民的連帯という姿の中に対処していただきたいということを心から念願し、私たちもまたそういう覚悟の中にいささかでも努力をしていこうという決意でありますことを御理解いただきたいと思います。
  90. 小柳勇

    小柳勇君 私どもは国会議員ですから、これはこういうふうな混乱状態はあってはならぬとしんからそう思っています。ただ、世間は、けさもタクシーの運転手さんですから、まあ一部分ですよ、一億分の一の意見ですけども、この際二日でも三日でもストライキ、ゼネストやったらいいと。とにかく、もういまの政府は何やっとるかわからぬと。これが私は大部分じゃないかと思うような気がするのですよ、ほんとうは。とにかく、物価は押えると言いながら、石油の値段はどんどん、ガソリンは上がるし、また電力が上がるし、あとは私鉄が上がるそうだと。上がったものが、タクシーでも上がったけども、会社のほうが取ってしまって、われわれの労働賃金は上がっとらぬと、そう言うわけです。そういう現象はタクシーの運転手さんだけじゃないと思うんですよ、私は。労働者階級は、会社ではもうかっておるけども、われわれはちっとももうかっとらぬと。ただインフレでやられっぱなしと。そういうものが私ども国民の大多数の声じゃないかと思う。  この間、私はテレビ対談聞いておったら田中総理が、三分の二ぐらいはストライキなんか反対ですよと、だからもう、というような開き直った話でした。そういう見方が誤っておると思うんです。そんなのが今日のこの事態を私は引き起こしていると思う。この春ごろにはもう物価は上げませんと、とにかく石油も押えますと。砂糖の値段も一年押えますと、この間、ごくわずか前に農林大臣が私に言明されたのです。そのあと、ことばかわかぬうちにガソリン、石油の値段、ばっと上げちゃったでしょう。あと電力でしょう。あと私鉄軒並みでしょう。国鉄の運賃が上がる前に私鉄が上がっているんですからね、もう。そんなものを見たら、国民はもうこの際ひとつ二、三日ストライキやれと、おれたちも加勢するというのが三分の二からもうほとんど大部分じゃないかという、そういうとらえ方をして政府は対処しないと、いや三分の二ぐらいもストライキ反対しておりますよと、そんな総理がテレビ対談で放言するようじゃ、もう不見識もはなはだしいと思う。私ども政治家はそんなことやっちゃならぬと思います。そのために真剣にいまこう論議しておるわけですよ。ただ、政治を担当する者、大臣やあるいは総理はもっと深刻に事態を受けとめて、おそらく全部とまるでしょうが、いまの事態はこうだと。もっとやっぱり真剣に物価抑制の方法でも考えて、たとえば去年年末から比べて三割も上がりましたから、ここまで何とかして持っていかなきゃ生活できませんでしょうと。それにはこうすると。予算を論議しょってもいいんじゃないかというんだ。予算を少し、じゃあふやしますと、そして本会議でかけましょうぐらいのことをしなきゃ、予算委員会は無意味だと私は思う。毎年予算委員会に出てむなしいものを感じますね。私どもが誠意を尽くして話しても、その場できれいに答弁されるだけだ。そうすると、もうそれは忘れてしまわれ、翌年また速記録持ってきて、あなたは去年こう言ったではないかと言うと、ああそうですか、前向きに検討しましょうと言う。ちっとも検討してないわけだ。そういうものを、ほんとうに予算委員会のあり方も、私はやっぱりもう少し検討して、ここで論議したものは、ああ、そうだなと思ったら、メンツにとらわれず修正するだけの配慮が必要ではないかと思うんですね。そういう意味から、ここに「有額回答については、昨年までのような「前年と同額」のベアに異常な物価上昇を考慮した若干の上積みをするという基本線では一致、一万八千円台とする線で大筋は了承されている」と、こう書いてあるのですよ。あなたはいま、なに、それはほかから持ってきたものを見ますよと言っているけれども、この新聞のほうにはちゃんとそう書いてある。そういうものを私は言うわけだ。腹をざっくばらんに打ち割って話しなさいよ。私は何もよそへ行ってじゃまするというわけじゃないんだから。どうですか。
  91. 北川俊夫

    政府委員(北川俊夫君) 新聞でいろいろ想定の記事が出ておりますけれども、金額については当局あるいは労働省、財政当局、いろいろ話しておりますけれども、まだそういう金額をきめてはおりません。したがいまして、先ほど申し上げましたように、今夜出ます私鉄の回答、その他民間が刻々妥結をいたしておりますので、そういうものの情勢、さらにもう一つぜひ考えなければなりませんのは、三公五現といいましてもやはり独立採算の企業でございますので、特に経営状態の悪い国鉄、郵政、そういうものの財政事情をも踏まえて回答をすることになるんではないかと、こう考えております。
  92. 小柳勇

    小柳勇君 それでは、まあそういう点は答弁できませんでしょうから、さっき言いましたように、この第一回回答は打診じゃと、アドバルーンじゃというような考えだけは捨ててもらいたいと思うが、それはどうですか。
  93. 北川俊夫

    政府委員(北川俊夫君) 先生おっしゃいますように、このたいへん非常に労働者の生活が苦難のときでございますので、それとともにこの春闘が大荒れであるというような予測がございまして、大臣が申し上げましたように、政府としましては平和裏にストライキの回避をはかるということに最大の努力をいたすわけでございますから、その一環としまして、有額回答につきましても例年の実績をも踏まえながら誠意のあるものにいたしたいと、こう考えております。
  94. 小柳勇

    小柳勇君 その賃金の問題は、いま私が申し上げたようなことを十分考慮しておいてもらいたいが、それじゃストライキ権の問題はどうか。賃金の問題についてはこれだけ積極的に話が進んでおるのに、ストライキ権の問題は、たとえば自民党の幹事長は公労協の一部のものにはスト権を与えなけりゃなるまいと言ったら、内閣官房長官はかんかんにおこってだな、政府じゃそんな考え持つとらんと言って、おこって打ち消しておるが、ストライキ権の問題もこれはもう三年ごしの話ですね。私も何回も取り上げた。しかも、公務員制度審議会の答申が出ているんだから、それをこういうふうな大部隊でゼネスト体制がなければ政府考えないということ自体が、私はほんとに後進国じゃと思うんですよ。もっと前向きにとっとことっとこやっていけばですね、いいものはいい、悪いものは悪いものとやって、そして国民が民主的に国会でまた討論して、行き過ぎたものがあれば国会できめますよ。政府が何も大手商社や大資本の手先のような考えを持ってだな、ストライキをやったら事業が停滞することばっかり考えておるような気がするんですよ。私はストライキ権というものはそういうものじゃないと思うんですよ。それはやっぱり労働者は、もう皆さんも御存じのように、職場をほんとうに愛しているのは労働者だと思うんですよ。働くことを一番楽しんでおるのは労働者だと思うんですよ。その労働を、特に学校の先生方はかわいい子供を一日おいてストライキをやるなんということは、たいへんな決断ですよ、これは。もう苦悩ですよ。それをやらなきゃならぬというのは、やっぱり制度に対する一つの対決ね、制度を変えなきゃならぬという。だから自分の愛情を越えて決断するわけでしょう。したがって、もっと私は労働省が中心になって、公制審の答申を受けて、スト権の問題がこんな事態にならない前に、たとえばこの予算原案をつくる去年ころに、スト権を与えた場合にはこうなりますというぐらいの、制度ですけども、やはりこれ予算を伴う面もありますよ、いろいろありますからね。そういうものを考えなければ、ほんとうはこの予算を原案をつくるべきじゃないと、私、そのくらいのこと考えているんですけども、ストライキ権に対する考えはどうですか、大臣は。
  95. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) これは非常にむつかしいという問題からしまして、公務員制度審議会が三者構成で八年間もかかって、こういうものにはときにスト権について検討したらどうか。あるいはまあ検討しちゃいかぬと、三者並立の議論が八年間三者構成で議論されたわけでございますね。そうしたら、九月に答申が出て、それを受け継いで政府といたしますと、各省関係事務次官会議をもって連絡会議といたしまして、何さま予算の問題もありますし、さらにまた国会で御審議の問題もありますし、事業の停廃がすぐに国民生活に及ぼす影響等、いろいろの問題があるもんですから、昨年の九月、答申をいただいてからずうっといままで研究してきているわけです。でありますから、それをもっともっと私は充実し、諸先生方のこういう御議論、また世の中のそういう動き、それらを参考にしながら、強力に推進していくことが大事じゃなかろうかとただいまは考えておるわけであります。
  96. 小柳勇

    小柳勇君 それは当然強力に推進しなきゃなりませんが、その推進のしかたがテンポがのろいわけですよ。ゼネスト体制で交渉して十日に汽車がとまるわけですね。それにきょうはもう五日でしょう。あと五日間しかないんでしょう。賃金でこれだけ、ただもう一応の案、案とおっしゃいますけれども、すっぱ抜くとおっしゃいますけれども、これだけ賃金で書かれておって、ストライキ権の問題なんて一行もないでしょう。それでいまのゼネスト体制がおさまるとは考えぬでしょう。もう初めから言ってあるんですよ、去年から。去年の春ごろから、大会できまったとき、ことしはもうストライキ権の問題ですよと、スト権の問題決着つくまではストはやめませんと言っているんですから、それはわかっているでしょう、運動方針大会できまっているんだから。それをあなた、労働省は商売ですから、そういう大会できまったならばそれはもうたいへんなことだと。たいへんなことだからもう春闘になる前に、汽車がとまる前にスト権の問題を右でも左でも一応結論出してこれでぶつけようではないかぐらいのことは、それがほんとうに前向きの検討じゃないですか。何にも案も持っておらぬで、まだ今日の段階で、自民党の幹事長は一部を除いてストライキ権をやろうというんでしょう。官房長官に至っては、いや政府は絶対にそんなこと考えておらぬと言って幹事長のことばを打ち消すようなことでストライキはおさまると思いますか。どんなに賃金であなた方が苦労しても、はっきり大会できまっているでしょう、去年の組合大会で。来年の春闘はスト権の問題で決着つけるんだと。労働大臣はそれを把握して対処しなければ、ほんとうにその賃金の努力は買いますよ、いま官房長も一生懸命苦労しておるようだけれども。それじゃ何にもなりません。それでは水のあわですよ、その努力が。そうでしょう。大会決定というものがある。やっぱり労働運動については憲法ですからね、それは。その大会決定を去年知りながら、今日までもう五日間に迫って、いままだ大臣のそういうふうな、前向きに検討しますよと、どうしようもないですよ、それは。労働省だけでどういう検討したか報告してください。
  97. 北川俊夫

    政府委員(北川俊夫君) 公務員制度審議会の答申が出まして以来、労働省のみならず総理府、労働省その他関係省庁の事務次官レベルあるいは局長レベル、さらには課長レベルで大体二十数回に及ぶ会議を開いております。その意味では昨年の公制審の答申が出て以来政府としてはきわめて積極的に熱意を持ってやっておるわけでございますが、大臣がお答え申し上げましたように、公務員制度審議会の審議そのものが八年もかかるという問題そのもののむずかしさのゆえに、先生の御指摘の御趣旨は私たち十分理解できるわけでございますが、この春闘のたとえば十日以降の組合のストライキに合わせてこの問題の結論ということを組合のほうで要求をしておられるようでございますけれども、その時点で賃金回答のようにずばりと結論を出すというような性格、それほど、そういうことでない問題、もっともっとやはり関係者で十分詰めるべき点があるんではないかと、こう思います。
  98. 小柳勇

    小柳勇君 公制審出ましてから相当の期間たちますよ。公制審では一応の結論を出せと書いているんですよ、あれは。しかも、いまの社説、新聞の論調見ましても、ほとんどのものは、たとえば予告期間とか、たとえば総理大臣の緊急権などの発動とかいろいろ考えながら、この際はスト権を与えるべきであろうという論調が多いですよ、私ずっと見ていますけれども。  それじゃ具体的に聞きますけれども、一番これは担当の省としては労働省だから、スト権の問題で論議するのは。何かたたき台でも出してみて、そしていまおっしゃった二十数回の会合に、労働省としてはこう考えておりますがというたたき台でも出したことがありますか。
  99. 北川俊夫

    政府委員(北川俊夫君) 会議の中身につきましてはここでつまびらかにするわけにまいりませんけれども、労働省のみならず各省がそれぞれ各省の立場からこうあるべきではないかという意見は率直に述べ寄っておるわけでございます。ただ、やはり立場、立場が違いますので、まだ政府として統一見解ができない。したがいまして、その段階で労働省はこういう考え方——これは新聞等でもいろいろ伝えられておるところでございますけれども、それを申し上げるわけにはまいりません。
  100. 小柳勇

    小柳勇君 それひとつ労働省の案を出してください、それを。これは資料要求だ。でないと論議できないよ。その労働省の案を私に出すことを約束してください。
  101. 北川俊夫

    政府委員(北川俊夫君) 労働省としてまだ外に出すような案というものは持っておりません。その公務員制度審議会の答申に基づいてその場で労働省の主張をしておるということはあれでございますけれども、それはそういうものをまとめる過程での意見でございますので、政府部外に出すべきものではないと、こう考えております。
  102. 小柳勇

    小柳勇君 では、各省意見が出ているとおっしゃいましたからね、どういうところから意見が出ておるか教えてください。
  103. 北川俊夫

    政府委員(北川俊夫君) ただいま申し上げましたように、まだ政府部内としてまとまっておりません段階で、どこの省はどういう意見ということは差しつかえがあるかと思いますので、その点は御了承を願いたいと思います。
  104. 小柳勇

    小柳勇君 もう何回も繰り返しますがね、八年もかかって公制審が論議して、まとまらぬから三つの案出てきました、意見が。それはもう三つです。たくさんじゃありませんよ。だから、今度各省は受けてその三つの案を土台にして考えられることはまず考えられますよ。あとは、それではどういう方向でスト権を与えるかという、あるいは与えた場合どうするか、与えないかと、それしかないんですからね。もうあれに、公制審答申にも書いてあるとおりですよ。その三つのところで、労働省としてはこれですと持っていかなければ、どの省だってそれは主導権とらぬでしょうね。一番この問題では労働省ですもの、政府部内では、担当の省は。労働省がそんなふうで、まだ政府部内できまる段階ではありませんと言ったら、これは汽車はもう一日じゃありませんね、これはもうあなた方がスト権を提出するまで動きませんねこれは。そうきめているんだから、大会で。来年の春闘ではスト権に決着つけると、スト権決着つくまではストライキやめないときめているんだから。それをあなた方知っておりながら、いまなお、もう五日に控えて、自民党の幹事長はやはりこれは良心的だと思うよ、何とかしなければこれはもうストライキは収拾できぬと思うから言われるんだ。ところが、政府の代表である官房長官が、なに、もってのほかだと、何も政府にはないなんと言って歩いたらこれはどうしようもないですね。もし今度のゼネストが起こったとしたら、一切の責任はみなもう政府にありますな。田中内閣にありますね。その中でも一番責任は労働省でしょうねこれは。労働大臣の責任じゃないですかな。労働大臣、いまストライキ権の問題で、どうです。大臣の決心を聞いておかなければ、私はもう国民の前に演説しなきゃいかぬですからね。
  105. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 制度問題で、実を言うと、ストライキを組まれるのも私はどうかなと思っているのです。経済闘争といいますか、経済問題ならスト権もあることです。また、ないところさえもやっている。これはたいへんなことだと私は思っているのです。私は、だから、国会の御審議等々で制度問題というものはほんとうに論じていただき、また皆さん方の御意見もお伺いしながら、将来に向かって考える場合の重大な参考にしたいと、こういうことを思っておりまして、決着をつけるんだと言うて、スト権のない人々がストをゼネストというふうな形でいったならば、これは先生がよく、新聞がいろいろなことを書いているとおっしゃいますけれども、三月一日のストの問題に対する各社の社説、あるいはこの四月の順法闘争をまたやるということに対する御批判の社説、これは私はやはりこういうものも注目しなければいかぬ。それは耳にかさないのだ、やるだけやるんだというふうな形では、せっかくつくられておられる民主主義というものはくずれるというところに私は実は心配をしているわけであります。怠慢のそしりあるとするならば私は幾らでも受けますけれども、その基本の問題については、これは先ほどから申し上げたとおり、議会政治であるということと、ストライキを背景にして何もかにも自分たちの思ったとおり全部通すことが当然だと、そのためには何やってもいいんだというふうな人ばっかりじゃないんじゃないかというところに私期待もかけているわけです。そういう中からやはり御参考の意見等々をよくお伺いして研究してみたいと、こういうのがただいまの心境でございます。
  106. 小柳勇

    小柳勇君 非常に大きな問題を二ついま発言をされておりますが、一つは経済的な問題でもスト権ない者でもストライキやっているというような話ですけれども、経済的な問題で労働者がストライキやるということは、これはもう労働法以前、法以前の問題ですね。そのあとずっと追っかけて労働法ができてきました。  それからもう一つ、スト権のことをいま言って、たとえば十日前に言って国民のあれも受けないまま、あるいは審判も受けないまま、いまストライキやるというなら、それはそういうふうな意見も出ましょう。しかし、八年間もう公制審で論議してきました。その間をずっと随時交渉やってきているわけです。それから、国際的にもILOの勧告もございますね、ストライキ権の問題の勧告もあります。そういうものを受けて公制審の結論出ていますけれども、そうしますと、これはもう釈迦に説法ですけれども、労働基本権を戦い取るために労働組合の組織がストライキをやるということは、これはずっと歴史が正当性を証明していますよ。いまスト権のためにストライキをやる。しかも、それは長い一年前から国民に宣言をして、大会で組織きめてそれでやってきていますと。したがって、いま、その前には、言うならば、いままでに政府と組織のスト権を獲得しようとする者とがずっと——しかし、それは交渉してきたのと同じですよ、新聞でちゃんと宣言してきているんですからね。そしてこの段階になってなおたたき台さえ出ないということ、たとえば労働省ではこうだとか、あるいは官房長の試案はどうだとか、その試案すら出ない、たたき台さえ出ないで、そして、いまストライキやったらこれは国民が批判するでしょうなんてことは、これは法治国の政権を持った政治家の言う発言じゃないと思いますね、私は。唐突に言ったらそれは大臣の言うこと通りますよ。唐突じゃないもの。長い間の論争でしょう。しかも公制審のその答申を受けながら今日に来たでしょう。そして去年の夏、来年の春にはもうストライキ権を何とか決着つけますよと、それまではやめないストライキを組みましょうやとやってきているのは御存じなんだから。それなら、その前に、たとえばことしの正月とか、あるいは二月とか、あんなに言っとるけれども、これはこうしたいがどうかとか、いやそれじゃいかぬと、それじゃこうすりゃどうかとか、そうやるべきでしょうに。それをやらないで、ただ見とってだな、それはストライキ権を獲得のためにしゃにむににストライキやるのはけしからぬと、順法闘争けしからぬとおっしゃることは、それはもう通りませんよ。もういまの法治国家の民主主義社会の政権を担当する労働大臣としてはそんな発言はそれはもうできませんですよ、それは。おかしいですよ。官房長官は一体何と言っているんですかね。あなた、いろいろ、ここではそう言えぬだろうけれども、相当総理にも官房長官にも言っているだろう、こうしたらどうかとか。少し内容言ってくださいよ、どうしたらいいのか。
  107. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 先ほどから申し上げたとおり、皆さんのそういう御主張などをお伺いしながら私は自分で考えている。しかも、何といったって公制審のあとを引き継いで権威のある連絡会議をやっていただいて御研究願っておりますので、それをまた濃密に、そしてまたいままで手がけてない問題があるならばそういうものを拾ってまででもやってみたらどうだと。私は一つ一つ内容はわかりませんけれども、そういう問題があるならばよく研究してみたらどうだというふうに実は指示をしているようなわけでありまして、そういう姿勢の中から将来の日本の労使の正しい慣行と申しますか、そういうものが生まれるような姿勢に持っていきたいもんだという考え方を持っておることをここで申し上げておきます。
  108. 小柳勇

    小柳勇君 いまおっしゃたのは公制審にもう一回問題を返しておるということですか。公制審から出ているけれども、いま政府部内でまとまらぬから、もう一回ですね。いまおっしゃったこと、ちょっともう一回。
  109. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) ただいま公制審から連絡会議が引き継いだわけです。そこでいろいろ各省みんな広範な、八年もかかった広範な問題があるもんですから、それをいまよく洗いながら、そうしてまた気がつかない問題等々があるならば研究願いたいということにして、いままで一回やっているものを二回、三回というふうに密度を濃くしながら研究を願い、そして将来のいい慣行がどういうふうにしてできるかという、まだアウトラインも何もありませんけれども、そういうふうな意味で御研究を願っておると、こういうことでございます。
  110. 小柳勇

    小柳勇君 御研究は公制審の委員にですか、連絡会議の委員にですか。非常に具体的にしてください。
  111. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 連絡会議の委員一人一人じゃありませんけれども、労働省の諸君にはそういう意味でよくひとつほかの会議に出るような方々にもお願いするようにということにしております。
  112. 小柳勇

    小柳勇君 そうしますと、いままでの発言によりますと、このいわゆる公労協のストライキ権の問題については、十日、十一日ごろにはもう何にも、案どころか、たたき台も示されないと、もうストライキやるならやりなさいと、そういう姿勢であると理解していいですか。
  113. 北川俊夫

    政府委員(北川俊夫君) スト権の問題、最低賃金の問題、その他組合から賃金要求以外にいろいろの問題が出ております。それはかつて半月ほど前から閣僚級でもお話しになりましたけれども、事務レベルでもいろいろ現に総評等とも話しております。まだ、先生おっしゃるように、非常に日にちは切迫はいたしておりますけれども、時間が残されておりますので、そういう事務的詰めも十分いたしまして、いまの段階で政府としてはどういう態度が示せるか、あるいは組合としてはどの程度ならば満足できるか、そういう詰めば十分いたしたいと思います。
  114. 小柳勇

    小柳勇君 それでは表面まだ成案としては政府はないけども、事務レベルでは折衝しながらこのストライキを回避するためには最終的にずうっと煮詰めてまいりますと、スト権の問題も。そう理解していいのですか。
  115. 北川俊夫

    政府委員(北川俊夫君) そのとおりでございます。
  116. 小柳勇

    小柳勇君 わかりました。  それでは次の問題に入っていきます。いまの問題が私はこの一番山と思うんですね。だから、ただそれには政府部内にも言っておきませんと、自民党の幹事長は、もう一部を除いてスト権やるようなことを言って演説して歩いておるし、官房長官はいや政府にはもうそんなこと全然考えないと言いますと、ますますこれは紛糾しまして、よしやってやれということになりましょうね。そうすると、それは一切その責任は政府にあるということになります。だから、いま官房長官おっしゃいましたね、そういうような方向で一日も早く国民が納得するような線でスト権の問題もこの際決着をつけると、そういう決心で取り組むと。これは労働省だけではなかなか問題でしょう。各省に連絡をとって政府として取り組むと、そういういままでの発言の中で私はそう理解して先に進んでいきましょう。  そこで、さっきのインフレ手当の話ですけれども、公務員には〇・三の人事院勧告が出ました。ところが、それともう一つは、生活保護家庭については二千五百円、その他年金生活者については二千円とありましたが、この前私ちょっと総括質問で言いました、生活保護基準よりも低い年金生活者の年度末手当などというものは全然もうないわけですね、インフレ手当も。全然ないわけですよ。公務員には〇・三出たから、地方公務員にも出ますね。それに準じておそらく会社も出ますよ。逆にこの人事院勧告では、会社の千一事業所を調べたところが〇・四八ぐらいになっておったから、この際〇・三勧告しましょうと書いてある。そういたしますと、今度はもう老齢で年金生活などしていて、生活保護基準よりも低いような年金生活者については何にもないということですね。これは労働大臣に私言うわけにまいりませんが、これは厚生大臣でもないんですよ、ほんとうはね。したがって、たとえば高年で働いておる人もおるでしょうが、労働大臣としてはこういうものについてはどういう見解持ちますか。
  117. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 直接所管ではありませんが、先生と同じように、私も選挙区から出ております。しかも、大ぜいの方々、大ぜいの各階層の方々に接触しておりますし、いまからの社会がやはり福祉国家であるということはどういう方々も共通のテーマだろうと思います。そういうたてまえからいたしまして、私は労働省をおあずかりしながらも、最近のような非常な場合でございますから、労働省だけで勤労者を守るものにあらず、国民全体を守るものにあらず、内閣全体という姿勢をお願いしながら、ときには個別物資の値下げ、あるいは名前をあげたりして、それもあまりあがらないようにしゃべったりなんかしているわけでありまして、いまの問題などは直接所管にありませんけれども、十分心して、そういう議論、そういう場所のある場合にはいささかでも発言もし、また御協力申し上げることが当然の責任だと。しかし、具体的な問題であり、あるいは制度の問題等となりますと、相手のあることでありますから、その辺のことはよくひとつ御理解願いたいと思います。
  118. 小柳勇

    小柳勇君 それから失業対策事業に働く労働者から、年度末手当について、公務員に準じて制度化してもらいたい、こういう要求が出ています。この前は、暮れに〇・三——三日分ですね、四千五百円出してもらいました。今回人事院勧告で〇・三出たんですが、これは当然失業対策事業に働く労働者にも、準じて出すように指導され、考えておられるかどうかお聞きしたいと思います。
  119. 佐藤嘉一

    政府委員(佐藤嘉一君) 臨時の賃金の問題につきましては、先生御案内のとおり、四十六年でございますか、中高年齢者の雇用促進法の制定の際に、いろいろいきさつがあったことは御案内のとおりでございます。いろいろな御論議の末、従前どおり法律上の制度といたしまして、夏及び年末に限って法律上支給するというたてまえになっておるわけでございます。したがいまして、現在の段階におきまして、臨時の年度末手当というような形で支給することはきわめて困難でございます。そのような諸般の事情もございましたので、昨年の三月大臣の御指示をいただきまして、私ども大蔵当局とも折衝いたしまして、非常にわずかではございますが、私どもとしまして十分とは思っておりませんが、あとう限り可能な限りという観点で就労三日増の措置を講じたような次第でございます。
  120. 小柳勇

    小柳勇君 そこまではわかっておりますが、この人事院勧告でも、ただ上積みだけではないというようなことを明言してありますから、あらためて提起いたしますが、「公務員に準じ「年度末手当」を制度化し、失対、緊就、特開、開就の別なく、年度内に〇・五ケ月分を支給」してもらいたい、こういうような要求に対してひとつ前向きに検討してもらいたいと思いますが、いかがですか。
  121. 佐藤嘉一

    政府委員(佐藤嘉一君) 全日本自由労働組合の代表である中央執行委員長から、いま先生がお読み上げになりましたような要求が出ておることは私も承知をいたしております。またたびたびお会いをいたしまして、年度末手当の問題につきましては、私ただいまお答えいたしましたような線に沿いまして、制度の仕組みとして夏季及び年末しか支給できない法律上の仕組みでございますので、きわめて困難な問題であるということをお話しし、そういった観点での就労三日増の措置ということを回答した次第でございまして、制度化、あらたに今回人事院勧告が出されまして、臨時の〇・三を公務員の方について上積みをするということはけさの新聞で承知をいたしております。これの取り扱いということでございますが、私ども取り扱っております失業対策事業の就労者につきましては、先ほどお答えしたような経緯がございますので、支給日数を増加してどうこうということは現段階で非常に困難である。同じお答えでまことに恐縮でございますが、私ども勉強してまいりますけれども、現実に非常に物価が上がっておる、低所得者であるということで生活が苦しいということは私ども十分承知をいたしておりますが、いろいろな他の政府施策関係をにらみながら、今後の推移は十分関心を持って見守ってまいりたいと思いますが、御質問のございました年度末手当の制度化につきましてはきわめて困難でございます。
  122. 小柳勇

    小柳勇君 生活実態なり、あるいは賃金の問題はあとでまた聞きますが、現地は、御存じのように、副監督などは県職の人でして公務員、で、失対事業に働く労働者の諸君も気持ちの上でも、仕事ももう準公務員として考えているわけです。ただ、自分たちは就労日二十二日だと割り切って、それで労働省できめられた基準単価で仕事をしておると割り切っておるわけです。それでやはり県庁の職員なり市役所の職員と一緒に接していますから、職場では副監督一緒におりますから、片一方は〇・三を、あるいは〇・五を期末手当としてちゃんと制度化してある。にかかわらず、自分たちのほうは、ただ、言うならば、昔の日雇いに、いわゆる日雇い的な、場当たり的なというのか、そういうふうな考えを持っておるという不満もあるわけですよ。だから私は、この金額の大小よりもむしろ制度化することにむしろ意義があるのじゃないかと思うのですが、だから、インフンになったから三日分プラスしました、三日分じゃ少ないけれども、それは非常に私は善政だと思う。だから、それを制度化して、夏と冬はありましたと、ところが公務員には〇・五というのはちゃんと期末手当、年度末手当というのがあるでしょう、だからひとつ準じて、年度末手当を制度化してくれと、それは言い分としてはぼくは当然だと思うのですよ。だから、失対部長だけでは同じことで何べんも無理だろうから、あとでまた大臣に聞くけれども、どうですか、失対部長。それは言われることは、私はやっぱり理が通っていると思うのです。接しているものが、市役所や県庁の職員が来て監督しておるし、また事業は、請け負いの人は市役所や県庁へ行って入札するのだから、だから、公務員に準じて制度化してくれといわれるのは私は無理じゃないと思うのだがな。だから、同じ答弁を何回聞いてもしようがないが、もう一回ひとつ前向きの答弁があれば答弁してください。
  123. 佐藤嘉一

    政府委員(佐藤嘉一君) おしかりを受けると思いますが、法律上、緊急失業対策法十条の二でございますが、臨時の賃金を全然配慮いたしていないわけではございませんで、「夏季又は年末に臨時に支払われるもの」ということでございまして、そういうような法律上の仕組みになっておるわけでございます。先生のような制度化の御主張を、私どもお話しとしてよくわかるわけでございますが、法律改正を要する事項でございますし、きわめて困難な問題だと考えております。
  124. 小柳勇

    小柳勇君 そうしますと、結局去年の三日分と、三月の三日分インフレ手当は。それ以外にはもういま考えていない、こういうことですか。
  125. 佐藤嘉一

    政府委員(佐藤嘉一君) 原則論を申し上げてまことに失礼でございますが、先生御案内のとおり、失対事業に働いておられる就労者の皆さん方にお払いをいたしますのは賃金でございます。したがいまして、理屈の上では生計費や物価というようなものと直接リンクしていないたてまえになっているわけでございます。ただ日々の就労によりまして得ます賃金が、これが生活の糧でございますので、私どもといたしまして、昨年十月御案内のとおり、従来失対制度始まって以来例のないことでございましたが、諸般の事情を勘案いたしまして、賃金改定を年度途中でやった経緯もあるわけでございまして、私どもといたしましては、手当の問題より、私個人の見解でございますが、やはり日々就労という形で生活を営んでおられる方でございますので、私どもは賃金という問題に本来的に取り組む立場にある、かようにお答えをいたしたいと思います。
  126. 小柳勇

    小柳勇君 その問題、またあとで大臣の見解も聞いておきましょう。物価の上がり方は、貧富の差などないんですね。たとえば十万円給料もらってる人も、あるいは三万円給与を取る人も、八百屋に行って買うときは品物は同じなんですよ。だから、十万円の人が〇・三あるいは三万円の人が〇・三、金額については相当の差がありますね、生活するには、それがちゃんと看板かけてやって、安く売ってくれればいいのですがね、十万円の人にはじゃ一万円と、三万円の人には三千円と、そういうふうなことで八百屋さんが売ってくれればいいけれども、品物は同じ、しかも、インフレはこれだけひどいでしょう、そうしますと、私は逆に、たとえば公務員に〇・三あったときは、失対事業などの人も同じような金額、たとえば〇・三が三万円とするならば、失対事業にも三万円上げてちょうどインフレ手当になると思うんですよ、それは。ほんとうにインフレ手当と言うなら、物を買える手当でなければ何にも意味ないだろうと思うんですよね。率で言うのは私はうそだと思うんです、ほんとうは。こういう物価狂乱のときには、物価に見合う金を出しましょう、もう定額で。二十万円給料取る人も、三万円給料取る人も、じゃ物価手当は三万円ですと、ほんとうにインフレ手当というのは、ぼくはそんなのがほんとうだと思うんですよ。人事院勧告の〇・三というのは、どうもおかしいと思うんです、ほんとうは。そういうものを、ここで根本論を論議してもしようがありませんが。そういう意味からいいますと、低所得階層である失対事業というものを、もう少し思いやっていいんじゃないか。それは役所ですから、予算がありますから、一生懸命失対部長ががんばっている気持ちはわかるよ。予算をはみ出して、はい、私やりますと言っちゃ、それは役人つとまりませんから、ようわかるが、少しやっぱり恩情ある——大蔵省に行って、国会でとにかくやられるから、もう少し何とかしてくれと、そうやってもらわぬと、きれいに答弁してもらうと困るわけですよ。少しやっぱりどもりどもりながら、気の毒だけれども、そういうふうな答弁でないと通用せぬですよ。胸、肩を張って意気軒高として、きれいな答弁されおっては——ほんとうにそれはもう現場にいったら食えないのですよ、ほんとうに。この間も私はそれを実際調べてきて、生活保護の人の生活実態を、いま飲食費の割合などは七割ですよ。エンゲル係数は七〇%ぐらいですからね、物価が上がるものですから。そういうものを考えまして、いまの制度化の問題またあとでやりましょうが。  そこで、賃金の問題の前に、緊就、開就、特開の場合には、失対事業と少し違いまして、事業が高級な仕事をやりますね。そして請負業者が入札をしてやりますから、事業単価がいま非常にうんと上がっているものだから、資材が上がっておるから請負が入札をしたがりません。先般も某市役所で、入札がない、業者が入札せぬためにあぶれて、そしてすわり込みをやられた実績がありますが、このインフレの問題につきましては、この緊就、開就、特開などの事業単価もそれに適応するインフレ的な考慮をしないと困ります。建設省のほうでは、インフレに対して弾力性を持ちましたね。そういうものを、この事業にも当然持っていかなければならぬと思うが、いかがですか。
  127. 佐藤嘉一

    政府委員(佐藤嘉一君) 先生御指摘の炭鉱離職者緊急就労対策事業、それから特定地域開発就労事業、それから産炭地域開発就労事業、これは失対三事業とよく言われますが、これらの事業は、いずれもやはりそれぞれ高い吸収率——就労者の就労を確保するわけでございまして、一般公共事業の場合とは異なりまして高い吸収率があるわけでございます。就労者一人当りの事業費単価を設定をいたしまして、これに見合う事業を選定してやっておるわけでございます。公共事業の場合でございますというと、たとえば百メートルの道路舗装をやる場合に、いろいろな資材費の上昇等がございまして、たとえば資材費が上昇したということで八十メートルでちょん切ってそれをまかなうというようなことは可能でございますが、私どもの三事業は、就労者の吸収をしなければならないたてまえになっておるわけでございます。したがいまして、非常にそれらの点は困難な問題があるわけでございます。しかしながら、最近における資材の上昇している等の状況も十分勘案しまして、ただいま参議院におきまして予算審議をわずらわしておるところでございますが、四十九年度におきましても、予算案といたしましては、単価につきまして所要の額を計上して御審議をわずらわしておる次第でございます。先生御指摘のように、事業費単価というような観念から、田川市等におきまして若干入札でごたごたした状況がございますが、私ども現在で把握しております状況は、緊急就労事業について申し上げますと、八十本の工事中六十六本が落札をいたしておるような状況にございます。  今後の問題でございますが、四十九年度は特に事業費単価の問題がいろいろ問題になるわけでございますが、この事業は先ほどから繰り返して申し上げておりますように、就労者の実態に即応しつつ、就労者を吸収していただく事業でございますので、事業費単価に見合った事業種目の選定というようなことを強く事業主体にも指導申し上げ、円滑な事業の実施が確保されるよう努力をいたしておるところでございますが、今後の物価につきましては、政府におきましても極力その鎮圧に努力をいたしておるところでございますので、私どもその推移を見守りながら、私どもとしては、いわゆる入札ができない、落札しないために就労者の方の就労が確保できないというようなことの事態というものは絶対避けるように、関係機関と連携を密にして、臨機応変の措置は私どもなりに考えてまいりたい、かように考えます。
  128. 小柳勇

    小柳勇君 わかりました。働く意思があるのに、業者が入札をしない、そのためにあぶれになるようなことありませんように、考慮してもらいたいと思います。  それから、もう一つは、緊就、開就、特開は、もうこれはいわゆる臨時的なものであるから、いつやめになるかわからぬぞという不安がありますから、いまは三年間延長してありますけれども、そういう不安がありませんようにやってもらいたいと思います。いま各、私どもの歩道舗装など非常にいい仕事をしておられる。ずっと私も見て歩きますが、いい仕事していますから、側溝の工事とか、非常に重要な仕事をやっておりますから、もうこれはすぐ終わるんだというようなことでありませんように、それから業者もまた損しませんようにせぬと、損ばっかりしては業者はやっぱり入札しませんよ。そういうことで、ひとつ労働省——担当省はがんばってもらう。大蔵省にも、もし大蔵省から文句があったらぼくらも一緒に行って言うと、そういうことで、ひとつがんばってもらう。  そこで、賃金の問題に入る前に、大臣、この年度末手当の問題を、失対部長胸を張ってなかなかたいへんですとおっしゃいますが、その制度化を——年度末といいましても一年に一回ですよね。いいですか、来年の三月、再来年の三月だから、ひと制度化することを前向きに検討していただく。それは県庁の職員、市役所の職員、副監督は県職の人たちですよね。そんな人たちは〇・五はちゃんと年度末手当制度化してあるわけだ。だから、そういう人と同じようにという気持ちがあるわけですよ、働けるから、話を聞くから。だから、昔のいわゆる日雇い労働者的なものよりも、いまはちゃんと準公務員的なプライドを持って仕事をしているわけです。私は先週非常な老年の人たちがやっている人たちの仕事を見に行きました。たとえば盆栽とか苗木をつくっているとか、ほんとうに老人には老人の手内職とかなんとか、やっぱり仕事をしておられますよ。そういう人たちは、ちゃんともう副監督がおって、やっぱり準公務員的なプライドを持ちながら仕事をしているわけですよ。だから、一年に一回の年度末手当だから、〇・五制度化するということは、失対部長じやなかなか言えぬが、それを胸を張っていまだめだと言っているけれども、前向きに検討してもらいたいと思うが、どうですか、労働大臣
  129. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 私も小柳さんに負けないくらいに失対就労者のことは注目しているわけです。でありますから、昨年末に三日分働いてもらうワクをとったでしょう。そうしますと、なかなかありがとうと言う人が少ないのです。中に、失対就労者の方々は、お礼のはがきをたくさんくれたんです。また、北川官房長と一緒に安定所に参りましたら、そこにそういう方々があって、ありがとうと言われたんです。普通の場合は、権利要求らしいものをする方々は、手当てしていても、何のことはないんですね、戦い取ったというような感じで。でありますから、私は、ほんとうにそういう意味からしますと、年度末に、年内に、せんだってもまたやりましたが、これは生活保護の関係等々もあるといえばそれきりでございますけれども、あのとき十二万七千名の方々に三日分が出たわけです。今度また一九・二%、そういうことで、ほかの者に負けないような施策をやっていくというのが、私たち失対就労者の方々に関係している者でございます。先日も寒い冬のところを、労働省の前に皆さんがおすわりになって、何日間もすわり込んでおられました。私は思わず——しかも、年配の方々が多いですね。でありますから、かぜをひいたのではもともこもなくなりますからお大事にと、こう申し上げたら、あとで指導者の方々が役所に行って——私、大臣ということを何も言わずに言ったものですから——大臣に声かけてもらったと言うて申し出があった。そういうふうな、やっぱり心のつながりの中に、私は、行政というものをやっていく楽しみというものをそういうところに持っていっておりますので、直接、いま制度の問題等々については、直接すぐ色よい返事はできませんが、そういう気持ちで見守っているということを御理解いただいて、ひとつ御了承をいただきたいと思います。
  130. 小柳勇

    小柳勇君 わかりました。  そこで、賃金の問題ですが、この失対事業の賃金というのは一体どういうところで算出したら一番妥当であるか、そういうことをひとつこの際ですから聞いておきたいのです。失対賃金と生活保護基準というのが、いつもバランスをとりまして両輪で、これで手当も何もこう出ていくわけですよ。したがって、失対事業の賃金というのは一体どういうところが妥当であるか。したがって、現状をまず失対部長から説明を求めます。
  131. 佐藤嘉一

    政府委員(佐藤嘉一君) 失対事業の賃金につきましては、緊急失対法に規定がございますが、いわゆる民間の類似の作業に従事する労働者の賃金を考慮してということでございます。実は三十八年の法改正以前は、PW方式と申しまして、一般の賃金の八割だったと思いますが、それに押えておったわけでございますが、三十八年以降は、そういうものを撤廃をいたしまして、民間の類似の作業に従事する労働者に支払われる賃金等を考慮してということでございます。その際、どのような賃金決定の、賃金をどういう資料によりやるかということにつきまして、新しく設けられました失業対策事業賃金審議会の諸先生の御意見も聞いたわけでございますが、現在やっておりますやり方もそれと同じでございますが、労働省が毎年実施をいたしております屋外労働者職種別賃金調査がございますが、その結果のうち、建設業関係の総合工事業、失対事業事業種目に対応いたします道路工事、港湾、河川工事、その他の工事の中の、雇用形態といたしましては日雇いでございます。通勤形態といたしましては、住み込みではなくて、通勤という形で集計をいたしまして、予算ぎりぎりにその集計ができまして、毎年大蔵省当局と折衝いたしまして、就労者実態に対応いたしまして、労力費の単価を予算でおきめをいただいておるわけでございます。
  132. 小柳勇

    小柳勇君 いまおっしゃいましたような面からいきましても、現在のやつは低いですね。そこに資料をあなたお持ちのようですけれども。私も、ここに資料を持っておりますが、この物価上昇と、あるいはその地場賃金などと比べ、あるいは生活保護基準と比べ、いずれの面から見ましても、いまの現在の失対賃金は低いというようなことですが。それから社会保障研究会というのが相当の経費を使って調べています、食費とか、生活実態とか。これもすでにお持ちでしょうが。小さいのを、数字の論争をやりましても時間が足りませんが、概括的に言ってどうですか。もっと大蔵省から予算が出さえすればもう少しやらなければほんとうに働きませんと——いま街頭に立って、これから暑くなりますがね。街頭で中高年の人もいま多い。そういう人が働くには、いまぐらいのカロリーでは、食生活では無理です。あるいは休養施設も、いわゆる住居ですね、住居も、現状のようなことではやはり無理ですと、いわゆる失対事業に働く労働者という観点からすれば、いまの賃金は、食生活の面、住居の面、また、人間ですから、全然レジャーに金を使わぬでは労働の再生産もできぬでしょう。そういう面からいって、いやもういまでだいじょうぶですよと、これは一番妥当ですよと、こういう御見解かどうか、失対部長いかがですか。
  133. 佐藤嘉一

    政府委員(佐藤嘉一君) たてまえは先ほど御説明いたしましたとおりでございます。先生のお尋ねの中に、生活保護基準との関連の問題がございましたが、私ども、生活保護基準は、もう私から申し上げるまでもなく、世帯を単位といたしまして、生計費によって設定をされておるわけでございまして、労働の対価として得ます賃金と、これを比較するのはいかがかと思うわけでございますが、かりにこれを比較いたしましても、私ども毎年——昨年の十月でございますが、失対事業の就労者の世帯の状況につきまして調査をいたしておりまして、その調査の結果によりますと、失対就労者の場合、平均の世帯人員は一世帯二・二人だったと、かように承知をいたしておりますが、二人世帯というような例でとってまいりますというと、生活保護基準は、一級地におきましては四十九年度は約四万一千何がしでございます。昨年十月の私どもの調査でも、六万円というような数字が出ておるわけでございます。で、私どもは、働いていただいておりますので、生活保護基準というものと、直接比較云々すべき制度の仕組みが違いますから、そのようなことは考えておりませんが、それらのものも横でにらみながら、賃金折衝をいたしておるわけでございます。  ところで、失対賃金のいまの算定のやり方そのものはこれで十分かどうかということにつきましては、実は、失対事業を開始をされまして、かなり長い年月がたっておるわけでございます。現実に就労者構成を申し上げますというと、全国平均で五十九・六歳というような数字が出てまいっております。また、女子率が六〇%というような就労者の実態でございます。そのような実態に対応して、賃金のきめ方がどういうことがよろしいかということにつきましては、実は現在の屋外職賃というものによっては少し有利過ぎるのじゃないかというような御意見さえ賃金審議会の中では出ているわけであります。私ども今後の問題といたしましては、現実の生活の問題は別といたしまして、行政といたしまして、当然今後の失対賃金の決定のあり方につきましては、私ども勉強いたしてまいりたいと思っております。ただ、なかなかよるべきデータがございませんで、ことしの賃金決定にあたりましても、たとえば安定所の求人の実勢賃金の状況はどうであろうかということで、ある程度抽出してみましたけれども、たとえば平均年齢が五十九・六というようなところの求人の賃金というものは、決して実勢としてはなかなか高く出てまいらない。むしろ、従来審議会で御答申をいただいた屋外職賃によるほうが、私どもの立場としてはやはり就労者の諸君にまだ有利であるというような考え方をもちまして、その数字を用いまして、予算折衝いたしたわけでございます。今後賃金のあり方がどういう形がいいかということは、私ども当然勉強いたしてまいります。
  134. 小柳勇

    小柳勇君 これは大臣にお聞き置きもらいたいと思うのですが、いま言われた賃金の査定の方法がやはり不合理です、いま失対部長がおっしゃったとおり。いろいろな方法がありますが、私もずっと勉強してみましたが、たとえばいま現在やっております屋外労働者職種別賃金調査の結果によりましても、たとえば男四〇%、女六〇%として、常用日雇いが二千二百五十一円、日雇いで二千五十三円、にかかわりませず、現在の福岡の一級地は千七百二十九円、それと二級地が千六百四十八円です。こんなに差がありまして、根拠がないわけです、いまの日雇い賃金というのは。だから、いわゆる失対事業に働く労働者と、勤労者と、あるいは働く人というなら、どっかに基準がなければならぬと思うんですね。そうしますと、論争になるでしょう。一番発足のときは、まあこれは吉田茂総理大臣が、まあとにかく金をやって遊ばしておけというようなことから出発したらしい、草取りでもやらしておいて、これだけ、つかみ金でね。発足の原因も悪いと思うが、しかし、いまのやはり憲法下で、働く権利もあるし、しかも、健康で文化的な生活をする権利もあります。だから、権利の主張だけではありませんが、あの人たちはどっかで働かなければならぬですね。年金でもうんとあるなら、年金でどっか老人ホームへ行って暮してもいいはずですけれども、年金制度は未熟ですね。だからもしそういう年金制度、言うならば、もしこういう賃金上げないなら、年金制度をがばっとよくして、老人ホームへ行って年金で食って、なお働きたい人には軽作業をやらせる、それならわかります、話は。やっぱり西欧諸国そうやっていますものね。年金制度は未成熟で、しかも、失対労働者というものを、そういう晩年は国が責任持つんだという観点から働かしたとしても、この賃金は根拠がないんです、現在の賃金は。したがって、いま失対部長が言ったように、ひとつ——あんまり何しますと、何か怒っているようだけれども、やっぱり大蔵省に説明するのに困っておるようですから、やっぱり労働大臣、うんとがんばって、大蔵省にやっぱり言わんとだめなようですよ。そういうことで、これだけの差を、もう一回言いますよ、常用日雇いでは二千二百五十一円、日雇いが二千五十三円に対して、現在は福岡一級千七百二十九円、二級で千六百四十八円しかありませんから、こういうものをもう少し是正しなきゃいかぬ。  そこで、これだけの論争ではなくて、組合からは、千五百円一律上げてくれという要求が出ています。このことも御存じですね、これちょっと答弁してください、それに対して。
  135. 佐藤嘉一

    政府委員(佐藤嘉一君) まず、先ほど先生が御指摘になりましたのは、建設業全体の平均賃金でございます。失対の場合は、先ほどお答えいたしましたように、建設業の総合工事事業中の道路工事等三工事に従事しております土工、重作業員、軽作業の男女というようなところで、一般的な給与、すなわちモード値をとっておりますので、その点単純に比較できないわけでございます。  千五百円の賃金要求、物価狂乱の、これ最初は、昨年度は千円という動きが出たわけでございます。最近では千五百円に要求が変わってまいっております。そのことは承知をしながら、実は予算の折衝して、現在予算で御審議をわずらわしております賃金を決定をいたしたような次第でございます。今後とも賃金の実勢というものもございますが、私どもといたしましては、失対就労者の賃金の改善には予算を通じて努力をいたしてまいりたい、かように考えております。
  136. 小柳勇

    小柳勇君 それでは、賃金の問題が一番大事でございまして、あと最低賃金制の問題につきましてはさっき申し上げたとおりです。これは失対事業だけでありません。最低賃金制の確立によって、仕事を請負う者もちゃんと計算がはっきり出るということで、最低賃金制の確立を急いでいただきたい。  それから、地方公共団体の行なう独自の失対事業に対して十分な財政援助を行なってくれという問題がありますが、こういうものをどういうふうに掌握しておるんですか。
  137. 佐藤嘉一

    政府委員(佐藤嘉一君) 自治体の中にはいろいろな形で単独事業という形で失対事業に類似したような仕事を、   〔主査退席、副主査着席〕 ある観点では、いわゆる民生系統所管の観点でやられておるところもございますし、また失業者吸収の観点でやられておる事業主体のあることは承知をいたしております。本来ならば、私どもといたしましては、失対事業は全国的な政治でございますが、それぞれ地方公共団体の首長の御判断によってやられておることでございますので、国といたしましては、緊急失業対策法に定めます失業者就労事業につきまして、財政援助をいたすたてまえにいたしておりますので、それらの事業について財政援助をいたす考えは持っておりません。
  138. 小柳勇

    小柳勇君 いまの問題は、実態は私も十分把握してないもんですから、そういう要請だけやったということで記憶に残しておいてもらいます。  それから次の問題は、小野田化学の弗素中毒の問題と、不当労働行為の問題でございますが、先般調査を依頼しておきましたが、その結果について御報告願います。
  139. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) 小野田化学工業株式会社の門司工場におきまして、昨年の三月に氷晶石の製造作業に従事している労働者から異常を訴える方が出まして、健康診断をいたしましたところ、弗素による障害の疑いがあると診断されました。そこで、同年四月にこの工場につきまして監督指導を実施し、設備の改善、それから健康診断の実施等、十数項目にわたる改善措置を指示したところでございます。で、この結果指示事項の改善につきましては、昨年七月末までにその是正を完了させております。それから本年三月、これらの指導事項等につきましてさらに監督を実施いたしまして、弗素障害の防止につとめているところでございます。今後とも随時監督指導をいたしまして、作業環境の改善、特殊健康診断の実施等につきまして、積極的に進めてまいりたいと、こう考えております。
  140. 小柳勇

    小柳勇君 その門司の担当の監督署が是正勧告をいたしまして、相当工場に欠陥がありました。その是正勧告したものについては、抜本的に改革が、工場の改革がなされたのかどうか、いかがですか。
  141. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) 抜本的にということにつきましては、必ずしも具体的に改善の内容については把握しておりませんけれども、改善を指示した点につきましては改善されたという報告を受けております。
  142. 小柳勇

    小柳勇君 現在入院して、労災補償で入院している方があります。それからその後全従業員の検診をいたしましたが、九十三人中九十一人ぐらいは弗素中毒の症状があるということを、検診された医師が発表されたということであります。で、そうなりますと、私どもせっかく調査して監督署も改善勧告などやったにかかわらず、なお、その後の職場に働く労働者が弗素中毒的現象があるのではないかという心配するのでありますが、この弗素中毒を起こすような工場が他にもあるのではないかと思いますが、この小野田化学だけを調査して、その他の弗素が発生する工場の調査などをやられたのかどうか、答弁を求めます。
  143. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) まず、健康診断の結果でございますが、門司労災病院と山口労災病院、両所で検診を実施しております。受診者総数が九十六名でございますが、そのうちで治療を要する方が三名と診断されております。それからさらに精密検査を要する者は一名ということで、残りの九十二名の方が監察を要するということで、必ずしも障害があるとかいうことではなくて、今後引き続いて監察を要するという内容でございます。なお、山口労災病院の検診の結果によりますと、これは受診者は七十名でございますが、要検診数、精密検査を要するという方が一名、これは下請を含めまして検診をやった結果でございます。  それからもう一点の、残りの他の工場について調査なり監督をしたかという点でございますが、この点につきましては、報告を受けておりませんけれども、現地としましては、こういう問題が発生した場合には、同種作業を行なっております工場について監督を実施するのがたてまえになっておりますので、おそらく調査なり監督を実施しているというふうに考えているわけでございます。
  144. 小柳勇

    小柳勇君 わかりました。  そこで、工場の改善などは今後も注意してもらいたいと思うんですが、その発生に伴いまして、たとえば弗素中毒患者に対して見舞い一時金を二十万円支払いなさいとか、あるいは被害者に謝罪をしなさいとかという組合員の交渉があったようでありますが、それやこれやで会社としては社内から告発したもんだから、そういう、言うならば組合的な活動家をよその会社に移そうとしたと。そういうようなことで不当労働行為として地方労働委員会に提訴されたものが十数件あるわけですが、そういう事態については事態を掌握しておられますか。
  145. 寺園成章

    説明員(寺園成章君) 小野田化学の門司工場におきましての不当労働行為関係でございますけれども、四十四年以来八件にわたります不当労働行為の申し立てが福岡地労委に出されております。その中には救済命令が出され、行政訴訟に持ち込まれたというものがございますが、最近三月の定期異動に際しまして、門司工場から七名の配転者が出ております。そのうち五名は小野田工場への配転でございます。一人は名古屋の支店、一人は東京本社へという内容でございますが、名古屋支店それから東京本社への転勤を命じられました方が不満といたしまして、福岡地労委に不当労働行為の救済申し立てをされております。福岡地労委では、よく話し合って、話がつくまでは配転命令をとめろというような勧告を出されまして、それに基づきまして労使の話し合いが行なわれました結果、名古屋に転勤される方につきましては、御本人が了承されたと、東京に転勤される方についてはなお現在話し中であるというふうに承知いたしております。
  146. 小柳勇

    小柳勇君 不当労働行為の地労委に対する提訴もそうですけれども、しょっちゅう労使対決しまして、うまくいってないように思いますので、労使の交渉などについては特別な会議必要ないと思いますけれども、危険を伴うようなこの作業でもありますから、監督署もある時期をとらえて、不当労働行為的なものについても、会社にも注意を喚起しながら労使間が円満にいくように行政指導の面があれば指導してもらいたいと思いますが、いかがですか。
  147. 北川俊夫

    政府委員(北川俊夫君) 先生御指摘のように、弗素中毒その他安全衛生面でも問題がございまして、これにつきましては監督署を通じまして適正な指導を行なっております。また御指摘のように、不当労働行為事案につきましても、従来はかなり多発しておるようでございます。事案につきましては、監督署の所管ではなくて労政当局の所管でございますので、是正すべき、あるいは指導すべき点がございましたならば、適切な指示を行なうように、こちらから出先の労政機関と十分連絡をいたしたいと思います。
  148. 小柳勇

    小柳勇君 なお十三日に、衆議院のほうの社労の人たちが現地を調査したいと言っておりますので、行きましたらひとつ出先機関の協力を求め、質問を終わります。ありがとうございました。
  149. 細川護煕

    ○副主査(細川護熙君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  150. 細川護煕

    ○副主査(細川護熙君) 速記を起こして。
  151. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 私は屋外労働者の問題について少しお伺いしたいと思いますが、初めに屋外労働者についての調査をされたことがあるのかどうか、実態ですね。なければ推定をされておると思いますから、大体屋外労働者がどういった部門にどれぐらいいるのか、その点をお答えいただきたい。
  152. 北川俊夫

    政府委員(北川俊夫君) いま資料をさがしております——屋外労働につきましては、全般的な調査というのはやっておりませんけれども、たとえば保線事業とかあるいは建設労働、あるいは港湾労働等につきましては、それぞれの部門につきまして調査をいたしたのがございます。人数等につきましていま資料が出てまいりましたら答弁をさせていただきます。
  153. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) ただいま資料を取り寄せておりますので……。
  154. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 私が聞いておるのでは、まあ大体推定になりますけれども、農業が八百方人、建設業四百万人、漁水産養殖業五十万人、工業二十万人、その他官公庁の現業、造船業、清掃業、サービス業、日雇い等六十万人の、合計千三百三十万人、これが大体屋外の仕事をする人。そのうち自家営業と一部室内従事者を除きますと、室外を絶対職場とする労働者が大体五百万人とこう言われておると、こういった人たちの方から聞いておるわけですけれども、まあかなりの人数でありまして、こういった人たちが非常にいろんな悪条件の中で仕事をされておるわりにはなかなか恵まれていない面が多いと。そういうことでいろいろ声があがっておるわけですが、データはあとでいただきたいと思いますけれども、この屋外労働の災害の発生状況、これはどういうふうに掌握をされておりますか。
  155. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) 屋外労働を主とします業種別の災害発生状況について申し上げますと、昭和四十七年の一年間の災害件数は土石種採取業で休業八日以上の災害が三千八百七十一件でございます。そのうち死亡者が百九十三名おります。それから建設業では十万二千四百件、そのうち死亡者は二千四百二名、それから道路貨物運送業につきましては一万八千百九十八件でございまして、うち死亡者四百五名、それから貨物取り扱い業——これは港湾荷役業等も含みますが、一万五千七百八十八件、うち死亡者二百四名、また林業では一万三千百六十件のうち死亡者が二百十名という数字になっております。
  156. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 これは年々減っておる傾向なんですか、ふえておるんですか。傾向としてどうですか。
  157. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) これは業種によりまして減っているところもございますし、また減っていない、若干ふえているところもございますが、総体としては件数は横ばいになっていると見ております。
  158. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 次に、屋外労働者は非常にいま申し上げたように、いろんなきびしい環境条件の中で仕事をされておるわけですが、現行の労働基準法あるいは労働安全衛生法というものはどちらかというと屋内労働者を中心に規定をされておりまして、屋外労働者についてはそういった点では規定というものがないわけです。で、労働安全衛生法というのは四十七年ですか、制定されまして、それで少しは前進になったようには考えますけれども、実際、屋外労働者の立場からいいますと、まだまだこれは屋外労働者にとって、そんなにプラスになっていない。こういうことでありまして、で、実際具体的にいろいろな要求をされておりますけれども、ひとつ具体的に申し上げますと、極寒期あるいは深夜の継続労働時間は二時間以内、そして二時間ごとに三十分の有給休息を与えてもらいたい、あるいは異常天候の場合の就労は禁止すべし、それから極暑、極寒、夜間の休息設備の設置、それから大気汚染警報発令中の就労の禁止、さらに六十歳以上の重労働、危険作業の禁止、そういったこと等について、法的規制あるいは行政指導が要求されておるわけですけれども、この具体的な五つの点について、現行法の中で処理できるもの、——できない場合は、それに対してある程度の規制が加えられるのかどうか、その点まず技術的に可能なのかどうか、その点をお伺いしたい。
  159. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) 一般的にいいまして、恵まれないこの屋外労働者の労働条件の改善等につきましては、努力をしなければいけないということで常日ごろ気をつかっているところでございますが、ただいま御指摘の点につきましては、まず屋外労働者の深夜労働の規制の問題でございます。これにつきましては国民生活必要性やあるいは作業期日の要請などから一律に規制するということは必ずしも適当ではないというふうに考えられます。しかしながら、屋外労働者の健康福祉が阻害されることのないように指導につとめてまいりたいというふうに考えております。  それから第二の、異常天候の場合の就労禁止の問題でございますが、強風とかあるいは大雨、大雪等の異常天候の場合には、労働災害防止の見地から安全衛生規則等に具体的に就労禁止につきまして規定がございます。たとえば強風あるいは大雨、大雪等の際には高所作業、あるいは林業関係の作業とか、クレーンの組み立て作業、こういう作業などへの就労が法令によって禁止されておりまして、この規定に基づいて監督指導を実施しているところでございます。その他の作業につきましても必要に応じまして悪天候時の就労禁止について行政指導を実施しております。  第三点の極暑、極寒、夜間の休憩施設の設置でございますが、極暑、極寒において作業を行なう場合には、これは労働安全衛生規則の第六百十四条に規定がございますが、休憩の設備を設けるように規定されております。また、夜間労働の場合で、睡眠を与える必要のあるとき、あるいは睡眠をとる時間的な余裕があるような条件のある場合には、睡眠または仮眠の施設を設けることが安全衛生規則の第六百十六条に規定されておりまして、これらの規定によって監督指導を進めております。  それから第四点の、大気汚染警報発令中の就業禁止の問題でございますが、これは非常にむずかしい問題だと思いますけれども、光化学スモッグ問題につきましては、屋外労働等を中心として、これに関する知識の普及等の措置を従来とってまいってきております。今後はさらに光化学スモッグによる屋外労働者の健康障害の把握につとめますとともに、環境庁に置かれております光化学スモッグ対策推進会議における総合対策との連携を密にいたしまして、光化学スモッグによる健康障害の防止をはかってまいりたいと考えております。  それから第五の、六十歳以上の方の重労働とかあるいは危険作業への就業禁止の問題でございますが、労働安全衛生法の第六十二条に規定がございまして、中高年齢者につきましては心身の条件に応じて適正な配置を行なうべきことが定められているところでございます。この規定に基づいて重労働やあるいは危険作業などにはこれらの方々を配置しないように事業者に対して所要の監督指導を実施しているところでございます。  以上のように、これらにつきましてはすでに監督指導を実施し、その適正を期しているものが大部分でございますが、今後ともこれらに対する行政指導を強化してまいりたいと考えております。
  160. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いま五つ言いましたが、ちょっと一つ落としまして、感電それから墜落、触車等による労働災害防止など、作業の安全確保基準ですね。これを明確にしてもらいたいということなんですが、その点はどうですか、いま明確になっておりますか。
  161. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) 感電等につきましてはそれぞれ一つの章を設けまして、きわめて具体的に規制がされております。それから墜落、触車等につきましても、それぞれ具体的な規定を設けまして、その防止につとめているところでございます。
  162. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 次に福祉施設の件ですけれども、まあ勤労青少年には「サンプラザ」というようなものもありますし、また、出かせぎの方にもそういった福祉施設があるわけです。ところが、屋外労働者についてはいまのところこういったものがありませんので、でき得れば都道府県単位に健康診断、診療所あるいは老後生活相談室を併備したようなヘルスセンター的な総合福祉施設、そういったものの建設が必要だと思うんですけれども、この点についてはどうですか。
  163. 大坪健一郎

    政府委員大坪健一郎君) 屋外労働者につきましてはいろいろ業務の実態が違っておりますので、その業務の実態に応じまして、いま安全部長のほうからお話しがありましたような労働災害の防止でございますとか、積極的な健康管理対策の推進等をはかっておるわけでございます。なお、退職金共済制度、これは建設業等が中心に設けられておりますが、そういう退職金共済制度あるいは労働者福祉増進のためのその他の対策をなお推進いたしておるところでございます。で、私どもといたしましては、今後も屋外労働者の労働条件の向上、特に先生のおっしゃいました福祉施設充実につとめてまいりたいと存じております。お話しの総合的な福祉施設といたしましては、労災の関係では労災病院でございますとか、この一、二年急速に充実をいたしております健康診断センター、それから季節移動労働者につきましては季節移動労働者の福祉センター、それから勤労者の総合福祉センターといったものを、それぞれの所要の場所に建設をいたしまして、この利用が可能になるようにいたしておりますけれども、これを今後なお充実してまいりたいと考えております。  ただ、先ほどからお話しがございますように、屋外労働者は非常に業種が多岐にわたっておりまして、また、実態もいろいろ変わっておりますので、屋外労働者だけの福祉施設というものがはたして適当かどうかは、なおしばらく検討を続けてまいりたいと思いますが、福祉施設充実については十分配慮してまいりたいと、かように考えております。
  164. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 次に、牛乳あるいはまた新聞配達業務に従事しておる人がその業務中に、たとえば道路で転倒して傷害を受けた、あるいは健康障害を受けた場合のその労災補償の適用ですが、これはやはり一人労働、一人災害という実態でありますので、推定原因を認めて、反証がない限りは、本人の申請をもって、これを労災の適用をしてもらいたい、という希望が非常に強いわけですけれども、この点についてはいかがですか。
  165. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) 牛乳や新聞配達の労働者が、配達中に災害をこうむった場合には、業務上の災害としまして労災保険から所要の保険給付を行なっております。なお、被災労働者の立証が不十分だというような場合がございましても、これは労働基準監督署のほうにおきまして必要な調査を行ないまして、その上で業務上の判断をすることといたしております。そういうことで労働法に欠けることのないように、万全を期しているところでございます。
  166. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 次に、建設業関係ですけれども、これは雇用関係の問題ですけれども、これは現在日々雇用あるいは期間雇用が多いわけです。特に、日々雇用が多いわけでして、これはやはり通常雇用に切りかえる、通常雇用化を進める。こういった点がやはり必要ではないかと考えます。こういった切りかえを行なうためにやはり雇用関係——賃金、労働時間、労災などにつきましては、屋外労働者の雇用関係改善をはかるために審議会等を設けてそしてやっていくべきだと思いますが、こういった点が可能であるのかどうかですね。日々雇用を通常雇用に切りかえること、それから審議会を設ける問題、この二点についてお伺いしたいと思います。
  167. 佐藤嘉一

    政府委員(佐藤嘉一君) 御指摘のとおり、建設業等で働かれる方々の中には常用労働者の方もいらっしゃいますが、季節的に雇用される方、日々雇用の労働者が多いわけでございます。で、数字的に手元に資料がございませんけれども、全体に、そういった季節的雇用、日々雇用の方々は若干減少しておりますけれども、建設業という業態からいたしまして、これを全面的に全部常用雇用に切りかえるということはなかなか困難な問題があろうと思いますけれども、私どもといたしましては、季節的雇用等につきましてできるだけ通年雇用をされることが望ましいわけでございますので、従来からも通年雇用設備融資の問題であるとか、通年雇用奨励金制度等を活用いたしまして、労働者の通年雇用化に努力をいたしておるわけでございます。先生の御指摘の線に沿いまして今後とも一そうやはり常用化のための援助の手だてというものは、その推進をはかってまいることが必要であると考えておりますので、今後とも努力をいたしてまいりたい、かように考えております。
  168. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 次に、これはもう前々から問題になっておりまして、国会でもしばしば指摘されている問題ですけれども、鉄道輸送ですね、鉄道輸送の特に輸送通路の機能保全労働に従事する人たち——まあ列車の黄害あるいはじんあい、粉じん飛散、いわゆるそういったものに対する汚染です。これは非常に問題でありまして、なかなか現状としては対策が進んでいません。これは国鉄の問題になりますけれども、これで非常に具体的に問題になっていることはもうすでに御承知と思いますけれども、これにつきましてやはり労働安全衛生法第三条、そういった点から考えますと、これに違反しているんじゃないかと、現在の施設では。そういった点で提訴しようというふうな動きも、特に国鉄の施設労働組合のほうではそういった考えが強いわけですけれども、これは現在の国鉄のこういった状況は、いま言った労働安全衛生法第三条に違反するような状況なのかどうか、その点は労働省としてはどう判断をされますか。
  169. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) 屎尿を列車からたれ流すというようなことは、これはやっぱり法以前の問題でないかというような感じがいたすわけでございまして、それが保線関係の方々を汚染するとともに、また、この沿線の住民等にも被害を与える点はこれはできるだけ早く改めなきゃならない問題だというふうに存じます。これにつきましては、国鉄当局ではすでに長期計画を立てて汚物を外へたれ流しするようなことのないような施設にするように順次改善を進めているというふうに聞いております。
  170. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 実際、訴訟が起こった場合は、非常に解決に時間もかかりますし、いろいろ問題がありますので、やっぱりこれはきちっと政府のほうが責任を持って行政指導なり、特に国鉄に対して——長期計画と言われますけれども、実際現場においてはもうほんとうにたいへんな状態がまだまだ続いておるわけですから、これはぜひ——いま法以前の問題だと言わずに、これは汚物処理法の法もあるわけですから、法律としては。その点、もう少し深刻にこれはやってもらいたいと思うんですね。少なくも——いま切実な要求として出されておるのは、三カ年以内には少なくもたれ流し防除設備を完備してもらいたい、それから汚染被害による健康障害を防除するために事業者は身体の洗浄、入浴設備、洗たく設備、こういったような設備を設けてもらいたい、あるいはレールの切断や溶接に伴う鉄さび落とし、あるいは石を砕いた場合出てくる粉じんですね——こういった場合に、じん肺法に定める予防及び健康管理に準じた取り扱いを、この鉄さび落としあるいは岩石を扱っておる労働者に対して適用をしてもらいたいと、こういうふうなことが非常に要求をされておるわけですけれども、この点はいかがですか。
  171. 中西正雄

    政府委員(中西正雄君) 保線関係職員の——列車の便所から飛散する屎尿対策につきましては、一つは、身体のよごれを落とすための設備が必要でございますが、この点につきましては労働安全衛生法の六百二十五条に規定がございまして、そういう場合の汚染作業をしたあと洗身あるいはうがいをするための設備、また洗たくをするための設備を設けなければならないこととなっているわけでございます。特に、黄害に対しましては、具体的に国鉄でも衛生管理を進めておりまして、いま申し上げた設備を整備いたしますとともに、作業用の自動車に消毒液を備えつける。また特に長大トンネルとか、あるいは都市周辺では便所を使用しないようにということを車内放送等によって要請する等の措置をとりまして、改善を進めておるところでございます。  それから次の、保線作業に従事する作業員のじん肺法適用の問題でございますが、従来保線作業におきましては、じん肺患者が発生したという医学的な報告がなかったわけでございまして、じん肺法の適用が現在はされておりません。ところが、新幹線ができまして、長大トンネルが十数キロというふうな非常に長いトンネルができまして、その中における保線作業につきましては、バラストを散布するとか、あるいはマルタイ作業というような作業につきましては、非常に粉じんが多いという実態がございまして、一部軽度のじん肺にかかった人も出るというふうな状況でございましたので、さっそくこれに対しまして労働省といたしましては、じん肺法に準じた健康診断をするように指導いたしまして、本年度、関係の職員につきまして健康診断を実施いたしております。労働省としましては、この健康診断の結果を待ちまして、専門家に御検討をいただき、さらにじん肺審議会の答申を得て必要な措置をしたいというふうに考えておるところでございます。
  172. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 次に、大臣にお伺いしたいんですけれども、いままでずっとお聞きになっておっておわかりと思いますが、屋外労働者に対する対策ですね。大体現行法でいけるようなお話しですけれども、実際現場でおやりになっている方からは、やはり屋外労働者としての扱いをして、それに対する対策をやってもらいたいと。そういうことでまず基本方針というものをしっかり立ててもらいたい。要するに、屋外労働者福祉対策基本方針、そういうふうなものを立てて、そうしてその中身としては、やはり雇用関係の改善、先ほど言いましたような、日々雇用を常用雇用にしていくというような雇用関係の改善、あるいは先ほど来いろいろ問題にしました労災補償の充実、あるいは賃金の改善、それから労働の環境改善、それから労働福祉、そういった点についてきちんとした基本方針をしっかり立ててやってもらいたい。  それからもう一つは、そういったものをすべて含めまして、屋外労働者福祉法といった法律の制定をもこういった人たちは切実に要求をされておるわけですけれども、大臣としては、まずこの屋外労働者というものをどういうふうな目で見ておられるのか。  また、こういった特にこの屋外関係の労働者というのは組合も実は非常に弱い組合で、小さな組合ばかりでして、それだけに力が弱いわけですから、——実はきょうもおそらく労働省にもお行きになったと思うんですけれども、代表の方が。何も私は、大きな労組が悪いと言うわけじゃありません。もちろん大きな労組は労組として大きな国民的立場で要求をされておりますが、ともすればこういった小さな労働組合の人たちの要求というものがなかなか通りにくい面がありますので特に御配慮いただきたいんです。  いま申し上げた屋外労働者に対する大臣のお考え、並びにこういった対策の基本方針をお立てになる気があるのかどうか。さらに法律の制定、この点について所信をお伺いしたいと思います。
  173. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) 先生の御熱心な御質問、また御研究、それに対して労働省の各責任者が、安全衛生あるいはまた労働の改善の問題、福祉の問題等々に持っている法律、持っている力、そういうものを使いながら懸命にやっているところは御理解いただいているところと思います。私はやっぱり、先生がおっしゃるように、太陽の下では大きな組合も小さい組合も平等に照らされなけりゃならぬ、こういう感じ方を持っております。そういう意味からしますというと、ほんとうに業種がたくさんであり——いまトンネルの中の屎尿、黄害の話などが出ましたが、ああいう人々のことを一つ思いましても、屋外労働者の諸条件の改善ということはほんとうに考えてやらなきゃならぬことだと思っております。それぞれの実態に応じまして、努力もいままでいたしましたが、今後これを一そう、いまのようなお話しを胸の中に入れましてさらに推進してまいりたいと思っております。  御指摘のように、屋外労働者の福祉法、何かこう対策法を一本にしぼれということでございますが、これはまた複雑、多種多様であるだけになかなかこの把握のできないところがございますが、先生の常日ごろの御熱心な御研究、御主張、それらをよく拝聴いたしまして将来の私たちの推進する、ひとつ検討する問題としていきたい、こう思っております。
  174. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 まあ、ひとつ前向きでお願いをしたいと思います。  次に、これは非常に大ざっぱな質問で恐縮なんですけれども、今度の春闘は国民春闘ということで、もちろんベースアップという問題はさることながら、福祉の問題、あるいは物価の抑制ということで、非常に国民的な盛り上がりを示しておる、やっておることは御承知と思います。で、その賃金と福祉ということですね。これは私も、もっともっとその研究をしなければいけないんじゃないかと考えておるわけです。日本は、ともすれば、何でも全部買わされるといいますかね、全部自分の収入の中ですべてをやるというふうに大体されておるわけです。ふだんのわれわれの生活大臣自身も生活されておわかりと思うんです。それがヨーロッパ諸国では、福祉関係充実しておるために、それだけの支出というものが押えられてくるわけです。——もちろんそういうふうな体制であるがゆえに、よけいベースアップの要求はますます強くなり、しかも最近では賃金格差というのはますます開く一方で、非常に私は問題があると思うんです。そういった意味で、今度、国民春闘ということで、福祉というものもかなり大きく織り込まれていることは非常に私は支持をしておるところなんですけれども、そういった意味で、ただ、福祉関係は厚生省だから、というんじゃなくて、労働者のための福祉はもちろんのこと、いわゆるわれわれの生活の中におけるいわゆる生活の福祉、あるいは社会の福祉、こういった面がもっともっと充実されていかなければこれはいつまでたっても私はだめだと思うんです。  かりにたとえば定年で退職をした、老後の生活をやろうとしても、もちろん老人福祉年金というものも絶対量が少ないです。これがまず賦課方式に切りかえをして改善をしなきゃならぬことは第一です。これはもちろん私はそれをやめろというんじゃないんですよ、それはやらなくちゃいけません。ところが、そのあとの生活を見ますと、たとえばイギリスあたりでは、老人の場合、朝、図書館へ行って本を読み、家でたとえ本を買わなくても、図書館は十分あるわけですよね。それでまあ公園を散歩して帰る。日本の場合であれば、そういうことは絶対できないです。まず図書館は御承知のように受験生が占領している。それから、受験生が占領してなくても本がないわけですよね。日本に、一人当たりにしての図書館における蔵書数というのは先進国ではもう最低です。話にならぬぐらい少ないわけです。そういふうなことは、たとえ年金がふえたって、そっちのほうでまたこれ本が上がっていますし、みな日本だったら本は買わされるようにできているわけです。それから体育施設でもそうですよね。外国では公共のものが多いですが、日本では、もう最近は御承知のようにお年寄りの、まあ中年以降ですね。健康増進ということで、あれ入会金が高いですよね、何万という入会金です。それからまた、最近テニスがはやってきましたけれども、テニスだってみんなこれテニスクラブというのは相当の入会金、ゴルフに至ってはすごい金がかかる。そういった点でみんなお金がかかるようにできているわけですよ。  だからやっぱり、もちろんベースアップということは、これは一番経済の成長とともにやむを得ないし、物価も上がるしやむを得ませんけれども、もちろんそれはそれとして、この福祉という問題をこれはもっと本気にやっていかなきゃいけない。それによって私は人間の意識というものもかなり変わってくると、こう思うわけですね。だから、いろいろな各個の対策は、これはもう大いにやらなくちゃいけませんけれども、もっともっと抜本的に福祉への転換、これはもう佐藤前総理の時代からずっと言われてきているわけですけれども、一向にまだ私は転換まで行く状態ではない、少しずつふえている状態だと、こう思いますので、やっぱりこういった機会に、政府が思い切った福祉への転換、それはもう積み立て方式を賦課方式に切りかえる。これだって大きな転換だと思うんです。その他やることは一ぱいいまあると思いますが、きょうは議論する時間がありませんが、そういった点で、福祉の問題に対して、労働大臣、ただ表面的に言われるんじゃなくて、本気になって——どういうふうに具体的にいまの内閣の閣僚としてお考えになっているか、その点お伺いして私の質問を終わりたいと思います。
  175. 長谷川峻

    国務大臣(長谷川峻君) これは政府とかいう問題を離れてでも、福祉の問題はこれは当然考え、それにどれだけ力こぶを入れるかによって、その政治家あるいはその内閣の評価というものはきまる、こういう感じ方を私は持っているものでありまして、何さま福祉の期間というものは、ヨーロッパ諸国と比べて短いということ、それだけにまた急いでやらなければならぬという、そういうことがありますので、いろいろな点から御議論が出、推進の話が出ているところでございます。私はそうしたことからしますというと、やはり企業内だけでの福祉施設というふうなものを、やっぱり対社会的に大きく還元させていくことも一つでございましょう。そしてまた、私は体育関係やっておりますけれども、施設そのものも少ないですが、特に公共施設をつくっても、利用することのまた日本人がへたな面もありやせんか。かりに、イギリスの話が出ましたが、イギリスの博物館、美術館に行って、若い諸君があんなに見ていますけれども、日本の場合にそれじゃ美術館、博物館に行く者がどれだけあるか。あるいは体育施設でもそうです。オリンピックの施設をつくってあとはがらあきと、これをやっぱりメインテナンスにお互いの体力向上に使っていく、こういうくせというものも……。  ですから、先ほど御質問にもあったように、週休二日制をやりまして——勤労者も何十%くらい週休二日やっているわけです。しかし体が余ってしようがない。そういうときに、そういう公共施設を上手に使う、また、企業内の施設を国のほうなり何なり世話して使わせるというふうな、やっぱりみんなの意識——福祉をやるということと、それをうまく活用するという福祉の転換と全体の気持ちが私は必要なんじゃないか。もちろん私のほうは労働省だけでも、こういう総需要抑制のときでございましたけれども、勤労者のいこいの村とか、青少年のいろいろな問題等々は、昨年より予算をよけいもらっていることも、そういうあらわれとしていささか推進しておる。それから全体の問題として私は閣内におきまして、従来のような経済成長で出たものを、ただ勤労者が分け前をもらうという時代じゃなくして、国全体がやはり物価の問題なり、これだけの三千六百万の勤労者、この家族を入れるとほとんど八割が勤労者、そういう全体の問題を国として考えていくべきだということで、いささか御推進をしている次第でありまして、先生のおっしゃったような意見に同じ立場から大いに御協力申し上げ、いないな御推進申し上げて理想を一日も早く達成したい、それに献身やってみたい、こう思っております。
  176. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 大臣、ちょっと認識の違いがありますので、一言だけ言っておきますけれども、公共施設を使うのがへただという、博物館など、確かにそういう点はあるかと思いますけれども、実際、町の野球場なんというのは、それこそ朝五時ごろ行かぬと取り合いで、一つの面で二つ試合やっているような状況ですよね。だから、その点はもうちょっと幅広くひとつ認識していただかないと。確かに博物館というのは、これは問題があるかもわかりません。その点はやっぱり政府のPRですね、政府もいろいろ宣伝されていますけれども、よけいな宣伝費使わないで、大事な宣伝のほうにひとつ使っていただきたいと思います。以上で終わります。
  177. 細川護煕

    ○副主査(細川護熙君) それでは労働省所管に対する本日の質疑はこの程度といたします。  次回は明六日午前十時開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十六分散会      —————・—————