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1974-04-04 第72回国会 参議院 予算委員会第三分科会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月四日(木曜日)    午前十時三分開会     ————————————— 昭和四十九年三月三十日予算委員長において、左 のとおり本分科担当委員を指名した。                 梶木 又三君                 片山 正英君                 黒住 忠行君                 古賀雷四郎君                 中村 禎二君                 西村 尚治君                 上田  哲君                 小野  明君                 辻  一彦君                 藤原 房雄君                 木島 則夫君     —————————————     分科担当委員の異動  四月一日     辞任         補欠選任      藤原 房雄君     田代富士雄君      木島 則夫君     中沢伊登子君  四月二日     辞任         補欠選任      中沢伊登子君     田渕 哲也君  四月三日     辞任         補欠選任      辻  一彦君     戸叶  武君      田代富士男君     内田 善利君      内田 善利君     塩出 啓典君      田渕 哲也君     中沢伊登子君      中沢伊登子君     木島 則夫君  四月四日     辞任         補欠選任      上田  哲君     鈴木  強君      戸叶  武君     森中 守義君     —————————————   出席者は左のとおり。     主査          小野  明君     副主査         片山 正英君     分科担当委員                 梶木 又三君                 黒住 忠行君                 古賀雷四郎君                 中村 禎二君                 西村 尚治君                 上田  哲君                 鈴木  強君                 戸叶  武君                 塩出 啓典君                 木島 則夫君    国務大臣        農 林 大 臣  倉石 忠雄君    政府委員        農林政務次官   山本茂一郎君        農林大臣官房長 大河原太一郎君        農林大臣官房予        算課長      渡邉 文雄君        農林省農林経済        局長       岡安  誠君        農林省構造改善        局長       大山 一生君        農林省農蚕園芸        局長       松元 威雄君        農林省畜産局長  澤邊  守君        農林省食品流通        局長       池田 正範君        食糧庁長官    三善 信二君        林野庁長官    福田 省一君        建設省河川局長  松村 賢吉君    説明員        環境庁水質保全        局土壌農薬課長  遠藤  茂君        厚生省医務局国        立病院課長    山中  和君        厚生省薬務局企        業課長      金田 伸二君        通商産業省立地        公害局立地指導        課長       平河喜美男君        通商産業省生活        産業局文化用品        課長       矢橋 有彦君        労働省労働基準        局補償課長    山口  全君        労働省労働基準        局安全衛生部計        画課長      石田  均君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○主査及び副主査互選昭和四十九年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十九年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十九年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————   〔年長者中村禎二主査席に着く〕
  2. 中村禎二

    中村禎二君 ただいまから予算委員会第三分科会を開会いたします。  本院規則第七十五条により、年長のゆえをもちまして私が主査及び副主査選任につきその議事を主宰いたします。  これより主査及び副主査選任を行ないますが、選任は投票によらず主宰者の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中村禎二

    中村禎二君 御異議ないと認めます。  それでは、主査小野明君、副主査片山正英.君を指名いたします。     —————————————   〔小野明主査席に着く〕
  4. 小野明

    主査小野明君) ただいま皆さま方の御推挙によりまして主査をつとめることに相なりました。皆さん方の御協力を得てその責務を果たしたいと存じますのでよろしくお願いを申し上げます。  審査に入ります前に議事の進め方についておはかりをいたします。  本分科会は、昭和四十九年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、農林省運輸省郵政省及び建設省所管を審査することになっております。八日の委員会において主査の報告を行なうことになっておりますので、議事を進める都合上、本日農林省、五日郵政省、六日建設省、八日運輸省という順序で進めたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 小野明

    主査小野明君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。     —————————————
  6. 小野明

    主査小野明君) 昭和四十九年度総予算農林省所管を議題といたします。  慣例ではまず政府から説明を求める順序でありますが、これを省略してお手元に配付してあります資料をごらん願うこととし、その説明資料は本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 小野明

    主査小野明君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  これより質疑に入ります。御質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 戸叶武

    戸叶武君 倉石農林大臣に対して、食糧自給確立農政転換について御質問いたします。  私は、日本の国は豊葦原瑞穂の国と昔からたたえられているだけに、食糧自給は可能な国だと確信しております。それがなし得られないのは、現段階における農政貧困に原因があると思うのでございます。古来から経世の学は西洋においてもフィジオクラットの重農主義から出発し、マーカンティリズムによる重商主義から近代経済並びに政治への発展があるのであります。日本農業社会基盤としての政治というものは、古代において農をもって本となすという農本主義から出発しておりますし、中国の古代堯舜のころの民の歌も、日出ずれば起き、田を耕して米をつくり、井をうがちて水を飲む、日没すれば寝る、という形において王侯われに何の必要があるかという歌を歌っておりますが、堯舜時代においてはこれをもって天下泰平として、変な法律で取り締まったりはしなかったのであります。  問題は、この政治の基本は、東洋哲学においてうたっているように衣食足って礼節を知るで、現代政治においては庶民の生活と直結した衣食住の安定というものが一番大切なことであります。ところがこの衣食住、特に食べものと住宅の問題が今日において大きな課題になっているというのは、食糧政策住宅政策がなっていないからであります。自民党においても倉石さんは経験豊かな苦労人でありますが、ここであらためて現段階におけるこの食糧需給構想並びに将来への見通し並びに当面の対策を承りたいと思います。
  9. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) ごもっともなお話でございまして、私どももそういうことについて日夜役所をあげていろいろ勉強しているわけでありますが、最近における世界的な食糧需給状況から見ましても、国民の基礎的な生活物資であります食糧につきましてはその安定的な確保をはかってまいることはきわめて重要でございますし、安易に外国に依存すべきではないと考えております。そのような観点に立ちまして、主要農産物である米、野菜、果実、牛乳、乳製品、肉類、鶏卵等につきましてはできる限り完全自給ないしは八割以上の自給率を確保し得るようにこれに必要な施策を講じてまいりたいと思っております。特に四十九年度からは麦、大豆、飼料作物について特段の生産奨励措置を講ずるとともに、未利用地域畜産等の大規模な生産基地の建設など進めてまいりたい。  そこで戸叶さんすでに御存じのように、わが国の全体の面積の中で占める山林の割合それから可耕地、つまり耕し得る地域状況、その中にまた都市化も行なわれておるという状況の中で、わが国が必要とする農作物を全部国内でまかなうということにつきましては、御存じのように非常に困難な問題が横たわっておることはおわかりのとおりでございます。そこで、そういう国土資源等の制約から、海外に依存せざるを得ない農林産物につきましては、備蓄政策国際協力観点に立った海外農林業開発、長期輸入取りきめなどを進め、その安定的な供給を確保してまいりたい。そういうわけで、私どもといたしましては四十九年度予算に出してありますたとえば農用地開発公団構想、それから海外経済協力事業団、そういうようなものもいま私が申し上げましたような構想の一環として御審議を願っておる次第であります。
  10. 戸叶武

    戸叶武君 農林省農業白書において四十七年度の食料自給度を先般発表いたしましたが、総合自給度七三%、三十五年度は八九%、穀物自給度は四三%、三十五年度は八三%、カロリー計算による自給度五三%の数字をあげておりますが、その数字根拠の御説明を願いたいのであります。給合自給度七三%をオリジナルカロリーで換算いたしますと四三%とのことですが、ECの、ヨーロッパ共同体九カ国の穀物自給度は九〇%、カナダは一七九%と比較し、ECの中で一番落ち込んでいるイギリスですらも一九六〇年の五二%から七一年の六五%に上がっているのに比較し、日本ははなはだしく低くなっておりますが、この根拠について御説明を願いたいと思います。これはいままでの統計数字と異なって、オリジナルカロリー方式を採用し、穀物自給度五三%となったのだというふうに説かれておりますが、この数字を発表するに至るまでの農林省内でもいままでのやり方と今度の新しいやり方との間には大きなへだたりがありますので、相当の論争もあったと思いますが、ついでにそのことも説明願いたいと思います。
  11. 大河原太一郎

    政府委員大河原太一郎君) お答えいたします。  先生の御質問は数点ございますが、一つ一つについて事務の立場からお話申し上げますと、御案内のとおり農業白書におきましては食料総合自給率、これは畜産物農産物作物いろいろございますので、これも総合化する場合に価格ベースで総合しておりまして、それが先般の農業白書では価格ベースにおいては七三%、四十七年度におきましては七三%に相なるというわけでございますが、御案内のとおり畜産物等におきましてはこれはトウモロコシマイロ等輸入に依存する部分が非常に多くて、その部分の伸びというようなことを考えますと、穀物カロリーベースに換算した方式をとることが穀物等自給率を判断する上においてひとつ意味があるということが各方面から指摘されましたので、今回の白書におきましては参考といたしまして、畜産物等飼料穀物等カロリーに換算いたしまして計算いたしました数字といたしまして五三%ということに相なることを今回の白書において明らかにしたわけでございます。で、先生西欧諸国数字についていろいろお話がございましたが、ちなみに私ども資料で申し上げさしていただきますと、ヨーロッパにおきます主要農産物食用穀物自給率は、イギリスが五七、日本は六六、オランダが六一というようなところ。もちろん西ドイツやフランスは先生案内のとおり九七、八%という高い数字を示しております。ただ、粗粒穀物、えさの自給率イギリス等においては七〇%、オランダにおいても二二%、日本トウモロコシマイロ等をほとんど外国から輸入しておりますので、その自給率が六%ということで穀物自給率全体といたしましては、イギリスの六五%に対しましてわが国では四三%というようなことに相なっておるわけでございまして、まあ、本来ならばそれぞれの作物についての物量的な自給率というもので判断するのが一番確かかと思うわけでございますが、総合的に全体判断をいたす場合には、先生指摘オリジナルカロリー的なものでやるべきか、あるいは価格ベースで判断すべきか、いろいろございますが、オリジナルカロリーに換算する場合におきましても、いろいろたとえば日本の今日の食生活に重要なたん白ビタミン食品等におきましてはカロリーが非常に低い。ところがくだものなり野菜等は国でほとんど完全自給されておるけれどもカロリー換算としては非常に低い。したがって、それらのものがいかに国内で自給されても国内自給率は非常に低くなっているというようなこともございまして、それぞれの立場からいろいろ意見がございますが、従来の白書農産物価格に総合した自給率と相並べまして、参考といたしましてオリジナルカロリー数字を出さしていただいたというのが今回の経緯でございます。
  12. 戸叶武

    戸叶武君 わが国世界農産物貿易額の九%を日本一国で受け入れている状態でありまして、金額だと四十三億五千万ドル。それで農業白書によると、あの統計のときにすでに前年度の二二%増になっていると、こういうふうに前に私は申したように、政府施策いかんによって食糧自給の可能な国でありながら、このような食糧輸入国になりさがってしまったということは、政府重化学工業重点を置いた自民党内閣歴代政府が、高度成長政策に狂奔して、戦後においてはアメリカ救援食糧関係の、救援物資MSA協定、そういうことによってアメリカの安い食糧を買って、加工貿易によって、日本はこの国際収支のアンバランスを是正していくんだというような形でいままで政策をやってきましたが、今日は安い食糧が高い食糧になってしまった。石油ショック資源のない、特に石油その他のエネルギー資源のない国のみじめさをあらわに暴露して、今度は石油ショックよりも深刻な食糧ショックにのってゆすぶられようというところへきておるのでありますが、この財界並びに日本自民党政府アメリカ陽動作戦による国際分業論ベースにはまり込んで今日のような醜態を演ずるに至ったのでありますが、ここで、まあ日本人というのは敏感な感覚を持ってショックには強いようですから、ニクソンショックドルショック石油ショック食糧ショックというショックに袋だたきになってこの食糧自給というものをまじめに考えなけりゃならな、エネルギー資源確立食糧自給確立ということが当面の急務だというふうに国民も感じ、政府も感じたと思いますが、政府はなかなかそういう点は鈍感で危いのですが、倉石さんなんかなかなか敏感のほうだから、ひとつどういうふうな形でそれを受けとめているか、それを承りた  いと思います。
  13. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) おっしゃったお話につきましては、なかなかこれむずかしい問題でありまして、一がいにこうときめることのできない問題、非常に重要な問題をたくさんいまのお話の中には含んでいると思うのでありますが、私どもは一部財界の人が言っておりましたいわゆる国際分業国際分業論の中にはたとえば食管制度なんというものはやめてしまって、安いカリフォルニア米を買うほうが横浜へ到着して半値で済むじゃないかというふうな議論がずいぶんひんぱんに行なわれました。しかし、政府はそういう説には耳をかさずに食管は厳として守ってきております。私は今日のような国民石油の次は食糧だと言われるような、それは半ば事情を御存じない方はそういうことを言われればすぐに本気になる、不安をお持ちになる方もあるかもしれませんけれども食管が厳として存在しているということで、何よりもまず主食の米に安心感を持っていただいておる。私はそういう意味においては政府の方針というのは間違っていなかったと思うのでありますが、一面、わが国が今日のように経済発展いたしまして、中にはそのためにひずみも若干出てまいった、あるいは公害のたれ流しなどという問題も出てまいりましたが、それはそれで、人間知識で発明した工業人間知識でそこから出てくる害を防げないはずはないと思うんでありまして、怠ったところに罪があるんだと思うのであります。  いずれにしても、今日のように経済発展してまいりました過程においてはやはりどうしても、たとえば戸叶さんよく御存じのように、一ころの英国のように、われわれは英国ほどではありません、農村を顧みない状況が、一ころイギリスは非常にひどかった。しかし、今日では植民地を失った英国はもとに返ってあれだけ一生懸命で農業をやって、そして総就業人口の四%しかない農業人口であれだけの生産回復をいたしておるんでありまして、私どもはやっぱり過去における政府政策についていろいろな批判もあるかもしれませんが、とにかく経済をここまで持ってきたというその反面において、やはりどうしても所得の多いほうへ走りやすいものでありますから、そういう結果が私どもの任務としておる農業政策のほうに若干の影響がなかったとは申しません。しかし、いまの農村におります労働力農村から出て、協力して初めて今日の日本経済発展が行なわれたのでありまして、私はそういう意味ではこの農業というものが非常に日本条展に貢献するところ多かったと思うわけであります。  しかしそういう過去の歴史を踏まえて、現実に私どもはやはり世界的に食糧の逼迫しておる状況はいなめない。ことに開発途上国でもやはり逐次政策が安定して国民生活水準が向上するに従って、食糧に対する選好、嗜好が非常に変わってきましていろいろなものを要求する、こういう傾向が多いものでありますから、そこで食糧の問題が非常に大きくクローズアップするわけだと思うのであります。その中に立って私どもはやっぱり幸いなことに主食である米は安定している、そこで米の生産というのはやはりまだ潜在的生産力を持っておりますので、本年も調整はいたしておりますが、昨年に比べて百三十五万トンという大幅に減らして、しかも備蓄をふやしていこうと、それからして、また転換をしないで休耕しておるものへの補助金はことしからストップして、そのかわりにさらにこれらに対して生産を助長する施策を講じていく、こういう方向をとり出しておりますのも、やはり先ほど来戸叶さん御指摘のようなわが国自給度を高める、ことに畜産酪農飼料穀物等についてできるだけの生産力を増強していこうという考え方に立っておりますので、四十九年度予算に御審議を願っておるようないろんな助成策を計上いたしておると、こういう次第でありまして、いろいろ御批判はあるかもしれませんけれどもわが国農政というものはいままで一貫した考え方で、やはり可能な限り自給度を維持していこう、高めていこうと、こういう考えに立っておることは間違いないことであります。
  14. 戸叶武

    戸叶武君 ちょうど倉石さんと私は同じころイギリスに留学していたと思いますが、私は国家学政治学社会主義の研究に重点を置きましたが、ハロルド・ラスキ教授政治学大山郁夫教授政治学は、社会学的なあるいは新カント派的な進化論的なあるいはオーストリアン学派的な多元論的な国家観の上に立っておるが、経済的な政治学基盤の上に持ってきていないところに非常にもの足りないところがありますので、プロフェッサー・トーニーのような資本主義経済の実証的な発展というものをじみに見つめていた人たちから大いに学ぶところがあったのですが、私はそれ以前に一番最初に農政の問題は小農主義的な横井時敬さんの本をひもといたり、あるいはマルキシズムの実証主義的なマルキストとして名が高かったウィスコンシン大学から帰ってきた猪俣津南雄さんなんかに学びましたけれども、やはりカウッキー的な分析よりも、むしろあなたがいま課題に出したイギリスの、いまから八十年、九十年前における農村が荒廃していった時代のアイルランド問題を中心として不在地主との抵抗をやったアイルランド独立運動のオーコンナーの政治的な主張やあるいはアーサー・ペンテーのローカルギルドからいろんな点を教えられた点があるのですが、いまあなたが言っているように、イギリスがあれほど苦悩し、一九二九年と三〇年の世界恐慌のあらしの前にすでにマイナーとドック労働組合と、それからレールウェーユニオンと、この三角同盟の十字砲火の中にイギリス資本主義が、資本主義社会主義かの対決を迫られたときに、やはり一番問題になったのはこの食糧の問題。ドックのストライキがあると大英帝国植民地からの食物もとまってしまう。食糧暴動がすべての革命のきっかけになるということをずっと左のランズベリーなんかが考えてトロツキーの暴力革命説に乗らなかったのは、イギリスにおいては暴力革命という形は、これだけ近代国家が整備してきているんだから、とるべきでないという形であれをせきとめたし、またすでに、いまと同じような状況土地価格が暴騰したときに、イギリスで素朴なマルキシズムを受け入れなかったのは、マルクス剰余価値説的な分析では説明できない状況、いまの日本と同じようなイギリス正統派経済学者が模索してきたような、リカードからジョン・スチュアート・ミル、グリーンに至るまでのあの過程において不労所得説というものがすでに説かれていた。社会的関係の変化によって土地価格が暴騰していくんだ、これをどうやって社会政府がこれを吸収するかということが大きな課題である。このことが大陸の資本主義未発達な国における一個の哲学体系として、革命哲学体系としてつくり上げたマルクス剰余価値説では応じられないものがカウッキーの弟子のハインドマンのような、なかなかマルキストとしては相当な人物であるが、あれが若い連中にも入らなかった。もっと地味な青年たちが、無名な青年たちがフェビァン・ソサエティーをつくったのも、むしろイギリス資本主義発展段階を実証的に研究したカウッキーと対立したベルンシュタインのリビジョナリズムをイギリスで受け入れて、これをコレクチビズムという形においてイギリス社会主義体系をつくり上げた。この観念的なイデオロギーじゃなくて、イギリス現実の上に根ざした社会主義を模索したところに、イギリス社会主義は何だかんだといっても本もののところがある。  失礼だけれども日本社会主義マルクスがどう言った、エンゲルスがどう言った、レーニンがどう言った、毛沢東がどう言ったまではいいけれども、今度はどこでもここでも珍しいものは何でも並べるというふうな無性格な権威主義的な学問というものが帝国大学その他を中心として横行したところにプロシャ的な権力主義権威主義教育世界において真理を追求する謙虚な態度をしない。政治闘争の場においては戦争も暴力革命もやれないような時代にきても依然として旧世紀的な悪夢の中に乱舞するような状態を生んでいる。これというのは明らかに私は教育の荒廃と政治貧困から根本はきていると思うので、少し脱線しましたが、私は、倉石さんは、どうもロシア人のケンブリッジ大学のアレキサンダー・オナーブに文化人類学を習っていた時分なんで、日本人かなどうかと思って、見たことのあるような人だけど、やっぱり日本人離れした知性人だと思っていたんですが……。(笑声)これは大体セイロンのアショカ王の、宗教を政治に取り入れてインドで統一国家をつくったということが逆に破綻して絶対主義的な——日本の歴史家はアショカ王というと、たいへんに美化して見ているが、これが反撃を生んでセイロンに追い落とされた。で、セイロンがあのような仏教国にはなったけれども……。  それでやはりイギリスで一番私が見せつけられたのは、倉石さんも感じたと思うが、私そのときに、正宗白鳥という自然主義文学者と、久米正雄という当時社会改良主義的な社会小説を書いたりした、菊池寛の一派ですけれども、この二人が一九二九年に来て、われわれがスチューゲントユニオンで迎えたときに、急に正宗白鳥がマルクスの墓に案内してくれと言ったので、ぼくは社会主義はこわいから社会主義には触れないことにしているけれども、墓を見るぐらいは見ていたほうがいいと思うからって、はかない話ですが、(笑声)墓を見に行ったんですけれども、そのときに彼が言うことばがこっているんです。戸叶さん、何ですか、マルクスの墓は質素ですね、一緒に苦労した女中さんの名前まで入れて墓に埋めていますね。これに比較すると孫文の墓だとか、レーニンの墓なんかも気の毒なんじゃないですかと言っておりましたが、それ以上に彼がイギリスのゴルフ場を見て、ああ、イギリスはどこにも野っ原があって、ゴルフ場があってあれだが、日本じゃゴルフ場をつくるような余地が、耕地がすべて平地を占めておるんでないから、サッカーもゴルフも日本じゃ発達しませんねと言ったが、このごろ正宗白鳥が生きて来たらびっくりして腰を抜かすだろうと思うんですが、イギリスでゴルフ場ができたのは、大陸縦貫鉄道がアメリカにおいて貫通し、蒸気機関車、船の発達によってアメリカやカナダや豪州から安い小麦が入ってベルギーでもオランダでもデンマークでも農業国は全部切りかえをやらなければならない。穀物の価格がとにかく一〇〇に対して六〇%ぐらい落ち込んで競争にならぬ。せめて酪農でこれを維持しなければならないという抵抗がデンマークで出たのも同様ですが、イギリスで麦つくっていたやつが全部やめたんです。休耕地になったから、いまの日本と同じだから、それならあいた土地があるからゴルフ場でもという形になったので、いまイギリスがあわてて——だんだん斜陽になってきた、斜陽なわけにはいかぬというので、(笑声)今度は一生懸命で農地を耕すようなところにきたんだと思うのです。  日本はやはりイギリスがたどってきた歴史的な悲劇の中に——イギリス人は恥も外聞も忘れて非常にプラクティカルニ政治を運営している。あのいまのウィルソンの苦悩の中にそれがはっきり見られる。労働党が分裂をしようとしたときに、私が行ったのは昨年の十月、十一月の前でしたが、彼がステートマンシップを発揮したといわれたのは、左派はECには入っちゃいけないという形で彼をいじめても、彼は自分のリーダーシップでもってヨーロッパの中にイギリスは生きなければならないという形で突っ込んだ。しかし今日、ポンピドーが死んだから変わってくるでしょうけれどもECの中へ入ってイギリス食糧問題に対する混乱を招いてはたいへんだという形において一つのECに対してしりをまくって抵抗している。あれが現実政治です。  アメリカの言うなりにイエスマンになってアメリカペースでいくと、やはり私は石油でメジャーさまさまと言ったって、ニクソンとキッシンジャーの背後にはやはり世界のユダヤ資本というか、大資本、石油資本のメジャーとアメリカの利害が背景にある。食糧問題においてもあの膨大な農耕地を持っているアメリカの農民というものが大統領選挙においては左右される大きな要素になっている。いい悪いは別問題として、アメリカにはアメリカ農業政策なり何なりがある。そのことを踏まえずにアメリカさま、あなたまかせでという行き方をするならば、日本は独立国家としての面目を失っていく。せめて、斜陽の国といえどもイギリスにおけるウィルソンの持っているやはりステートマンシップ、あるいはドイツにおけるブラントの持っているステートマンシップ、そういうものが保守であろうと革新であろうと持たない限りにおいてはこの国の政治はまかせられないんです。  私はそういう意味において、この危機感の上に立って、やはりこのゴルフ場なんかというものは、もっと過ぎたらこれをかえることもできるでしょうが、もう一つはゴルフ場の問題と、倉石さんもそう言っていますけれども、山林原野をこんなばかな形で——北海道へ行って、私は十五、六年前の農林水産常任委員長の時分、三年続きの冷害を見てあきれてしまった。酸性土壊に灌木がはえて、あのカシワっ葉なんかがはえていて何にもならない。なぜあれを国の努力によって、国の施策によって広大な地域を牧草地に育て上げないのか、こういうことがされてない。個人の力ではどうにもなりません。スイスの例をあげても倉石さん、そうじゃありませんか。五六、七%の耕地があります。日本が今日は一七、八%で停滞をしているでしょう。万年雪をいただいている山とあのレマン湖のある、湖を持っているスイスにおいて氷河のそばまで牧草地をつくっている。夏季には夏季酪農をやっている。動物のふんなんかをきたないなどと捨ててない、うちの前に堆肥とともに積み重ねている。こういう農民の根性というものを失わないでいるところにスイスの農業なり果樹なり何なりが成り立っているんです。沐猴にして冠する者というが、サルまねをやっている日本イギリスにも劣り、スイスにも劣っているのは日本民族の根性を忘れてしまったのだと思うんですが、倉石さん、そういう意味において日本農業は、日本の外交をもゆすぶる、日本政治全体をゆすぶる私は震源地にいまなりつつあると思うので、そういう意味において、農業革命段階が、日本には近代農業革命段階がいま到達したと思うので、あれだけの農業白書を出した——農業白書は別の機会でまた論戦になると思いますが、大臣であるあなたが思い切って、統計には口なしですから——だけど信州は善光寺があるところで念仏はうまいところですから、ひとつりっぱな経文を述べてもらわないと、(笑声)やはりせっかくの善光寺も何にもなりませんから、ひとつ牛に引かれて善光寺参りというので、大臣もこの日本の近代農業革命段階における、イギリスにもスイスにも負けない、西ドイツにも負けない日本農業政策をどう展開するかという形を、どう模索しているかでもよろしゅうございますから、もっと具体的に述べてい、ただきたいと思います。
  15. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 同じころ外国におりました戸叶さんの御高説を久しぶりで拝聴いたしまして、目をつぶっておると往年の戸叶青年を思い出すのであります。いろいろ参考になりました。  そこで私ども、あるいは占領中、占領されておりました時代アメリカ側が日本に対してすべての政策でどういう考えを持ってきたかということは、これはなかなかむずかしい判断のところでありますが、いずれにいたしましても、やはりわが国の今日の経済発展の間における農業というものが、いろいろな意味で、農業面から見まするならば若干の支障があったということは否めないことだろうと思います。しかし、かりに占領軍がどういう政策を立てたにしろ、私どもといたしましては、必要なものをやはりやむを得ず海外から買うということ、そういうことがあって初めて貿易が行なわれ、各国との間に親善関係がよけい深くなるわけでありますので、ある程度のものの貿易が盛んになるということは、われわれがたとえばアメリカから農産物を買うということによってわれわれのほうの工業製品もそれだけ向こうに売れるわけでありますので、そういう限りにおいては私はけっこうなことであると思いますが、しかし、やはりどこの国でも自国を中心にした政策をきめていくのが当然なことでありますので、あえてそういうことを言う言わないに限らず、私どもは、国民主食であるこの食糧生活に離れることのできない食糧自給度については、できるだけこれを高めてまいるということ、それからやはりそろばんをとってみて、これはこういうものに重点を置くよりも、部分的には海外に依存して、それよりも多くの対価を貿易によって得るほうが利益だと考えられるその間の調整がなかなか国策としてはむずかしいところでありますが、そういうことを考えながら貿易をやり、そして自給度をその間において高めていくと、こういうことだろうと思うのであります。  したがって私どもは、まあ去年は、一昨年の不況等もありまして、アメリカからの輸入がなかなかむずかしい状態でありましたが、幸いなことに去年は大豊作であると、ソビエトのほうも近来まれに見る豊作であるといわれておりますので、当面私どもはそういう輸入原料については少しも心配しておりませんが、価格はやはりある程度上昇してきております。しかし、経済関係の新聞報道等、外国の情報を聞いておりますというと、その価格もやはり決して先高ではなくて、大体やや緩和の方向にきているというふうに伝えられております。そういうこともありますので、当面私どもはその意味においてはあまり心配しておりませんが、基本的にはやはりわが国はできるだけ国内生産をするということ、これは農業基本法の方向でも差し示しておるとおりでありまして、そういう方向を原則としてとってまいることに変わりはないわけでありますが、いまお話しの中にちょっと御指摘のありました林野、ことに里山等の活用については、これは林野庁も考えておることでありますが、もう少し実際の生産に必要な部門の生産に役立つことができないだろうかということにつきましては、これはもう十分私どもも考えておるところでありまして、未利用地、低利用地とともに、現在林野として存在しておるがあまり経済効果を発揮しておらないような地点に対しての経済的効率化というふうなことにつきましては、林野庁においても鋭意検討を進めておるところであります。したがって、可能な限り可耕地を拡大してまいるということのために、今度はいろんな施策を四十九年度予算でも計上している次第でありますが、突き詰めて申しますならば、国内生産の可能なものは全力をあげて国内生産をすると、やむを得ず海外に求めなければならないものはやはり多角的に輸入する方途を講ずる必要があるのではないか。地球の長期気象の変化等も考慮してみますと、一カ国に依存しておることは危険であります。そこでまあわが国に対してはたとえばブラジルあたりでも飼料穀物等についての協力の要請があります。それからまた、フィリッピンとかインドネシア等でもそういうものがありますので、そういうことをもあわせ考えまして、わが国国民食料の安定的供給には遺漏のないようにいたしてまいりたいと、こういうふうに思っておるわけでございます。
  16. 戸叶武

    戸叶武君 農林大臣が、いまのほうりっぱなしになっている林野やあるいは山林にも手をつけていかなくちゃならないと言いますが、大体日本の林野庁というものが帝国林野庁というか、帝室林野庁といいますか、何か非常に古い形で、林野庁の長官をやって押し出しのときに参議院に出れば、大体秋田や北海道の材木屋がうまい汁を吸っているのでそれが選挙費は全部持ってくれるというような慣習になって、ずっといれば——選挙違反をいつも一番出すのは林野庁の長官です。というのは、次の選挙のときに——そこにいる人はまあまじめなほうだろうと思うけれども、大体まじめといったって数はそういうことになっているんです。ぼくのところの横川君でも何でも、あのときにはやはり四国あたりでみんな自殺したり、なかなかたいへんなことがあったけれども、これは横川君なんかいいほうだけれども、もっと悪いこと、実例を一ぱい知っているけれどもそんなこと言ったってしようがない。  これはとにかく、こんなばかなことをやっていたら日本の林野行政はだめです。もうソ連もこれは林野行政は失敗しておりますけれども、とにかくカナダの山を見たり、スイスの山を見たり、西ドイツの山を見ると、はあ、われわれは怠慢だということをつくづく考えさせられます。私はソ連に対しても、ブラックの木材コンビナートへ行ってそのあと国家計画委員会の要人が来てあるところで対談したときに、あのコンビナートは崩壊しませんかと言って皮肉な質問やったら、どっからそういう情報がいったと言うから、あなたあすこへ行って見たときに、ここに集まっている青年、労働者全体の平均年齢が二十歳だと言ったじゃないか、何の娯楽機関もなければ女もいない、戦時中に戦時動員されたような形の若者をあの殺風景な世界に閉じ込めようったって、一年なら一年の期間行ったらみんないなくなっちゃうのはあたりまえじゃないか。ぼくは共産主義にけちをつけるのじゃない。やっぱり具体的な実験を通じて人間を尊重してあたたかみのある配慮をした施策が行なわれなければ林野政策なんというものは成功するものじゃない。  いまの林野行政の荒廃だってそうです。山の中へ閉じ込められて、そして給料は安くて、白ろう病ぐらいになって捨てられるというような形のみじめな姿でいる現実をとにかく見つめていないところがある。そういうところに——私はずいぶんほうぼう、四国の吉野川の流域やいろんなととろを見たが、これは林野行政の中には愛情がないな——一年の計は米を得るにしくはなし、十年の計は木を得るにしくはなし、百年の計は人を得るにしくはなしといいますが、一番中心人間ですけれども人間を大切にし、そしてやはり木でも穀物でも大切にする愛情が政治の中に流れなければうまくいかないんじゃないかと思いますが、まあ、あなたが、このままにしないでこれは何とかする、こういう具体的施策を打ち出すということだから、それはそれとして了承しましょう。  問題は、食料のいわゆる高度化につれて、食料需要が四十年から四十七年にかけて年平均六・二%も伸びた。これは需給の面ですが、これにどういうふうに対応していくかという農政が明確化されていないところにいままで——農林省か気づかないのじゃない。適地適作主義だのあるいは主産地何々の、根釧原野をこうやるのなんていろいろ言ってるけれども、大体机上プランで行ってみると徹底した政策が行なわれていない。  大体農業政策というものは少なくとも十年の見通しを持たなくちゃならない。長期的な見通しと計画性のないところに近代政治は成り立たないのです。それを依然として十八、九世紀の国家財政のもとに、議会をうまく通りゃいいんだというような調子の一年間だけのこの予算を出して、そうしてまあ国会で見てもらう。こんな旧体制のばかげたとにかく政治経済をやってるところに、近代国家は泣いていると思うのです。  そこに、ロシアでもゴスプランができたのは、——レーニンの偉さは、あのときだって、資本主義とか社会主義なんていうことばを使ってない。流通過程における戦時共産制におけるぎこちない所有権を押えるようなこっちゃだめだと。問題は、流通を緩和しなければ生産も全体に活気が出てこないというので、新経済政策の名でネップ政策をやったが、ネップマンの発生においてやみが多くなり、これでは国家体制にくずれがくるというので自由産業やゴスプランに持っていったのですが、ゴスプランの国家計画経済を正しく把握したのは、私はG・D・H・コールだと思うのです。彼は、やはり長期的な見通しと総合的な計画をナショナルガバメントを通じて行なっていかなければならない、これは国家社会主義とか何とかというもの、共産主義とか、そういうイデオロギーじゃなくって、やはりおくれているロシアが進んでいるドイツのインダストリーナショナリゼーション、アメリカのインダストザーマネージメント、資本主義とか社会主義とか共産主義じゃない、それを学びとって、それを政治の中に生かしていかなきゃならないという意欲があのゴスプランの模索の中にはあるということをはっきり認めて、そして彼は「ネックスト・テン・イヤーズ」という本も書いているのです。  そういう意味において、いまこそ——ちょうど昭和五年、六年ごろ、中野正剛が、一逓信次官だったけれども、電力国営の問題に対して、電話民営の問題に対して、G・D・H・コールの「ネックスト・テン・イヤーズ」を読んで、そして日本で新官僚というものと結んで国家計画経済をやろうというところまでいったが、それは未成熟のまま終わってしまった。その後における日本状態を見れば、巨大財閥がむしり取るがまま、ユダヤよりもひどい。こういう、国家を無計画的にしてうまい汁は財閥が吸うような仕組みになってしまったから今日の荒廃が起きてしまったのだと思うのです。これは田中さんだけの罪じゃない。歴代の無計画的日本政治のもたらしたヘドロが今日押し流されてきているのであって、日本のヘドロの最悪なるものは、教育の場の動脈硬化的な——今度のノーベル賞をもらった人でも言っている。自由がない、創意がない、独立した精神が躍動しない。そんなところに学問が伸びるか、と言ってるじゃないですか。国会で表彰する前に、ほんとうに外国に行って苦悩しながら新し、分野を開拓した、このかつて無名であった研究者の発言というものを、小野田少尉をやたらに引っぱりだこにするよりも、この声を聞くだけの謙虚さが日本になければ、私は一日本の前進はないのじゃないかと思うのです。  そこで、この高度化された農業に必要なのは、いまあなたが言ったように、この濃厚飼料はやはり海外に仰がなければならない。その点はいまのところ、当座、日本だけでやれというわけにはいかないと思います。そこで問題は、私も心配だから、去年の十月から十一月、全部、カナダ、アメリカ、この黄葉地帯、温帯地帯の、イギリス、フランス、ベルギーからデンマーク、このずっとチェッコスロバキアからバルカンに出て、トルコへ出て、そして回ってみましたけれども、とにかくカナダなり……
  17. 小野明

    主査小野明君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  18. 小野明

    主査小野明君) 速記起こして。
  19. 戸叶武

    戸叶武君 まとめます。  それではこれは、私の聞きたかったのは、あなたが言っているように、やっぱり飼料を急に日本で全部というわけにはいかぬでしょう。だけど、アメリカでもカナダでもたいへんなできばえです。しかし、できばえだけれども、やはり備蓄を持たなきゃならないというので、ソ連のを買い入れる意味はないです。ソ連と中国の危機感の中において、一番必要なのは、ソ連はエネルギー資源を持っていますからやはり食糧の問題において手を打っています。中国だって備蓄を盛んにしています。そういう意味において、なかなか簡単に、あなたの言っているようにあまり危機感を持つ必要はないが、よほどしっかりした手を打たないと、入るのは入るけれども高い値でゆすぶられる。大体去年、年越しの豆まきのときにも豆をまくことができない。三千円のやつが一万二千円から一万五千円になる。豆まきのときに、豆をまけなけりゃ鬼がはびこってくるのはあたりまえのことで、ことし大商社がみんな鬼になってしまったんだが、こういうふうな形で、やはり私たちはあなたが言っているように、自給度合は、しかし日本において、西ドイツがやっているように、七〇%程度の自給率確立する努力をやらないと笑われると思うんです。一〇〇%自給度なんということはできないと思います、それほどのことは必要としませんが、それと同時に、また、この適地適作主義をほんとうにやるならば、北海道に私は三回も四回も行ってみましたけれども、あんなところでもって米をつくっても、適するところはありますよ、適しないところが大部分です、農業共済制度でできないほうが金もらえるんだから。どうして米つくるんかといったら、米つくってりゃできなくても金がもらえるけれども、変なものをつくった日にゃ金は入らない、こういう米本位の価格と、米を中心とした保護農業という思いつき農業というものが、敗北が明らかに出ているんであって、やっぱり畜産をやっても飼料をやっても、米でやった異常な愛情を持って農民の生産力なり、所得が伸びていけるような施策をやってもらいたい。  最後に一、二点、こまかい問題を別な機会にやりますけれども、長野の農協から、あなたのくにの地元だから、あなたも答えるやっぱり責任がある、何ぞ故郷を忘るべきであり、答えなけりゃ農林大臣になってもいかぬと思いますが、段ボールが、このごろは紙が高くなったというので、長野県は御承知のように、リンゴだとかキノコだとかああいう頭脳農業でもって相当の所得を得ている。たとえばキノコなんかでも果樹よりも、リンゴよりも伸びたぐらいですよ。段ボールのカルテルによって倍以上に値段が高くなって、包装もろくにできない、出荷ができないというので、とにかく農民が生産意欲を失っているが、長野県で農林大臣が出ているんだけど、どうもわれわれは近寄れないから、戸叶さんひとつ倉石さんに頼んでみてくれないかといって二、三回電話がきたんで、それじゃこれは要請というより、当然あなたがやらなくちゃならないんだが、カルテルあるのないのといったって、公取の委員長か何かだって大体田中さんが推薦した人なんで比較的公正にはやっているようだけども、とにかく言うことは言うけどもやることはやらないというのが現状ですが、メリケン粉であろうが、紙であろうが、資本主義経済のあるところ、カルテルのないところはないです。みんな相談づくでわからないように、メリケン粉が上がるときでも十一月二十日の相談で十二月一日は上げる、かっこう悪いからあとをずらしただけで、つかまったやつが災難で、われわれが政府の統制というものをあまり過大評価できないのは、昔の淫売窟じゃないが、抜けられますという、この道が幾つにも通ずるような法網の中に抜け道が至るところにあるというような権力構成というものは、法三章で、法はあまりなくて、音をたてただけで、つまりごとの施政ができることがいいんだが、そういう意味で、私はこまかいことはあとで、段ボール問題は、あなたの御返事なり処置がなされてから、あとで予算委員会の総括のときか何かにまた御質問しますが、せめて長野の山国でもって平地農業が営めないところの頭脳農業の農民が、これから果樹栽培に従事し、キノコのあれをすると、ビニール栽培をやるビニールも高くなった。そういうようなときに、この段ボール問題、こまかい問題だから、すべて紙が高くなったからという便乗値上げでして、これはこまかいデータは私は持っていますけれども、きょうは時間がないからよけいな質問をしちゃいけませんけれども、せめて、やはりこの長野の農民が、農林大臣を出しておいてごりやくが一つあった、段ボールだけはたいしたものだといわれるような御返事をひとつお願いしたいと思う。
  20. 小野明

    主査小野明君) 簡略にひとつ答えてください。
  21. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 段ボールのことを政府委員からお答えいたさせます。
  22. 池田正範

    政府委員(池田正範君) お尋ねの問題点につきましては、確かに、全体の段ボールのほぼ半分ぐらいまで農業用でございまして、その中でまた約半分弱が青果物でございます。全体からいいますと、二割ぐらいは青果物になると思います。したがって、これらにつきましては、昨年の暮れからかなり上がってまいりまして、ただいま御指摘のように、大体、私どもの手元にあります統計でも、いま盛りのリンゴとか、キウリとかいったようなものの価格は、ほぼ先生指摘のような、高いもので二倍、安いものでも一・八倍程度に上がっておることは事実でございます。  そこで、これは主として通産省の所管との関連にもなりますけれども、私どもといたしましても、これらを確保するというふうなことから、昨年来、通産省のほうへもよく話をいたしまして、供給確保についてのいろいろな手を打っていただいておるわけでございますが、特に、生産者団体と一体化しまして、製紙メーカーに対して具体的な出荷要請というものをずっと計画的にやってきておりまして、あわせまして、たとえば電力規制なんかにつきましても、製紙業については電力規制を緩和してもらう、あるいは通産から大手の十社に対して値下げを指導してもらうというふうなことで、なかなか大幅というわけには、現在のところ、まいっておりませんけれども、現在までのところでは、ことしに入りましてからも通産の十社指導によりまして、約七%前後の値下がりも示しておりまして、量の確保につきましても一−三月はどうやら過ぎまして、まあ私ども一番心配しておりますのは、四月以降のことでございますけれども、四月以降につきましても、量の確保に全面的なウエートをかげながら、なお、価格の高騰を防ぐために、通産省との間で連携をとりながら指導していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  23. 小野明

    主査小野明君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  24. 小野明

    主査小野明君) 速記を起こして。
  25. 矢橋有彦

    説明員(矢橋有彦君) ただいま農林省から御説明のとおりでございますが、平均的に見まして、過去一年間の間に、段ボール箱の価格は約九割の値上がりとなっております。また、需給関係でございますけれども、需給関係は、最近の生産も好調でございます。その背景には電力、石油の規制の緩和といった措置をとっておるわけでございますが、生産も順調でございまして、ごく最近においては逼迫感もほとんどないというような状況でございます。  したがいまして問題は、高くなった価格をどうするかという問題でございますけれども、私ども通産省といたしまして、二月二十日の日に大手九社の箱メーカーを呼びまして値下げの指導を行ないました結果、おおむね売価の七%を引き下げるということで九社が了承したわけでございます。九社がある程度のウエートを占める関係上、もともと過当競争体制にある当業界のことでもあり、その値下がりがほとんど全般に浸透したのがごく最近の状況でございまして、統計上も一月をピークといたしまして二月、三月と、若干ではございますが、価格は低下の方向に向かっておるわけでございます。今後とも一つは、需給がタイトになりますといろいろ問題が生ずる原因になりますので、その点を一方において特に注意するということが一つと、いま一方において、今後かりに多少のコスト要因、上昇要因がございましても、中小零細企業とはいえ極力それを自己の企業努力で吸収するというような指導をさらに強力に徹底さしてまいりたいと考えている次第でございます。
  26. 上田哲

    上田哲君 緊急性のある問題でありますけれども、私は医療用のブドウ糖の問題を伺いたいと思います。一般質問で伺う予定でありましたけれども、そのときは大臣にも失礼しました。  そこで、昨年来の砂糖関係の価格動向が、暴騰ですかな、国内あるいは国外等もたいへん著しいわけでありますし、また品不足も激しいわけでありますけれども、多少このごろ安定してきたなんという言い方もあるけれども、後に触れますけれども、この製糖メーカーの問題と同時に、この業界が大商社支配というところにもきているというところにも問題がありますので、これもまあ触れたいと思います。時間の関係がありますから、私はしぼって伺いたいんでありますが、概括的にまず農林大臣から最近の価格、生産観点で最近のブドウ糖業界の状況を御説明いただきたい。
  27. 池田正範

    政府委員(池田正範君) ブドウ糖は、御承知のようにこれは例の医薬用と、それからそれ以外のものとがございまして、大体医薬用と申しますのは販売シェアからいたしますというと全体の約四割程度ということになっております。そのうちでこれは一般の医療用と、それから注射なんかに使うもの、両方ございまして、それぞれ特定の会社でつくっておるわけでございますが、私どもの手元で現在出ておりますのは十二社ほどの会社が大体つくっておりますが、そのうちで特定のメーカーに大体集約されてつくっておる傾向がございます。全体としては生産実績が——前年度の生産実績でございますが、十二万二千トン程度でございまして、その十二万二千トンのこのブドウ糖をつくりますもののもとは御承知のトウモロコシとかコーンスターチとか、いわゆるでん粉系統からつくり出すということでございます。御承知のようなトウモロコシの値段が昨年トン当たりで約二万円程度でございましたものが、ことしの二月には倍以上、四万一、二千円というところまできておりますし、また同時に、これらのもとの値段が上がったためにこれにつられまして国内産のバレイショとかカンショからつくるでん粉というものの価格が非常に上がってきたというふうなことで、あわせてコーンスターチ全体も高くなってきたというふうなことでございます。ちなみにトウモロコシはこの一年の間に約二倍程度に上がっております。それから、コーンスターチになりましてからのやつは二倍をちょっとこえるところに上がっておりますし、政府がこれを関税割り当て制度で操作をいたしておりますが、その操作をいたしておりますものも、そこまでは上がりませんけれども一・八倍程度になってきておる。  したがって、ただ問題は、ブドウ糖価格がどのぐらいになっておるかということですが、これは結晶ブドウ糖と精製ブドウ糖と医薬用と分かれるわけでございまして、結晶のほうが大体一.九倍程度に上がっております。それから精製ブドウ糖は二倍弱でございますが、医療用のほうはむしろ特殊用途ということもございまして、現在までの値上がり方は一般ほどいっておりませんで、去年の一月に比べまして一・七倍程度というのが現状でございます。
  28. 上田哲

    上田哲君 この注射用なんですね、問題は。で、特に昨年の九月以来の医療用ブドウ糖、強心剤や点滴に使われるブドウ糖注射液ですね、これはもう非常に逼迫をしてまいりまして、特に一月、二月あたりはたいへん極端であった。まあブドウ糖注射液は生来のエキスなんということばがあの世界であるわけでありますけれども、ちょっとした手術でもこの注射は欠かせない。ところが先ほど申し上げたように、九月ごろからことしの一月、二月全く手に入らないで、もう病院に行きますと、注射する人は自分でそのブドウ糖注射液を持ってきなさいと、こういう実情であったわけです。まさに命にかかわる。で、一番不足したのは一番需要の多い五%液二十CC入り、これはもうほとんど手に入らなかった。一般で入る道理はないんです。最近ではようやくちょっと手に入るようになりましたけれども、五%液でもまあ百cc入りとか二百五十cc入り、一〇%液とか二〇%液はいまでも不足しておりまして、これは蒸留水で薄めて使うとか、これがもうほんとうの実情でありましたね。で、二月を越えてから少し出始めてきたというのは、私は薬価基準の改正がひとつポイントになっていると思うんです。  これは厚生省に伺いたい。薬価基準の改正とこの激しい品不足、逼迫、それが出始めてきたという関係をどう見ていますか。
  29. 金田伸二

    説明員(金田伸二君) 先生指摘のとおり、医療用のブドウ糖の注射液は昨年の夏ごろから品不足が伝えられたわけでございます。私どもその実情を調査いたしたわけでございますけれども、やはり公害関係の問題から、アンプル——ブドウ糖の液を入れますアンプルがなかなか手に入らなくなった、あるいは価格が高騰してきておるというような事情と、それから一方医療機関側で先行き不安による仮需要というものもございまして、品不足の状況が伝えられたわけでございます。私どもさっそくこの関係のメーカーを呼びまして増産を指示いたしました。その後昨年の十月以降メーカーのほうも増産に協力してくれておりまして、特に先生ただいま御指摘の五%の溶液は点滴用に使われておりまして、もう一つ二〇%の二十ミリという小さなアンプル液がございます。   〔主査退席、副主査着席〕 これは主として静脈の注射用に使われるものでありますが、そちらのほうの品不足がまたより強く言われておりまして、私ども特にその増産を指示いたしました。その結果、昨年の十月から十二月にかけまして約三五%の増産ということになっております。それから二十CCのアンプルにつきましては一月に入りまして……
  30. 上田哲

    上田哲君 薬価基準との関係にしぼってください。
  31. 金田伸二

    説明員(金田伸二君) 五〇%ということでございます。  問題は、やはり先生指摘のとおり、原料あるいは特に容器の値上がりということから、私どもメーカー側に増産を指示いたしましたけれども、その薬価基準が二年以来据え置きになっておると、実際の実勢価格と薬価基準との非常に実態関係にそごがあるというようなことから、私ども増産を指示いたしましたけれども、メーカーのほうもこういうことで調査に協力してくれておったわけでございます。そして最終的に二月一日にこの実勢価格に合うような形で薬価基準の改定が行なわれたわけでございます。私どもといたしまして、やはり薬価基準が実態にそぐわなかったという点はあったのではないかというふうに思います。  なお、現在はこの薬価基準の改定によって品不足というのは一応解消されていると……
  32. 上田哲

    上田哲君 つまり薬価基準改定の前後で品不足の大きな変化が出たということですね。
  33. 金田伸二

    説明員(金田伸二君) はい、私どもは一応薬価基準の改定によって品不足は解消されたというふうに見ております。
  34. 上田哲

    上田哲君 そのとおりだと思うんですよ。その薬価基準の改正が行なわれた、二月に。で、いままでブドウ糖というのは安い注射液だということを言われていたし、それはおっしゃるとおり私は認めていいと思うんですよ。ただ、まあ五%二十CCが十四円から三十円、五%五百CCが百九十円から二百五十円と、これはかなり大幅というか、倍前後ですね。こういうことになったという、この値上げの幅ということになりますと、これはやっぱり売り惜しみというようなことが当然心理的にも作用してくることになる。少なくとも現象的、結果的にはこの前後でずばり大きな変動があったということはお認めになったとおりです。私はやっぱりあの危機的な品不足というのは、この薬価基準の問題をめぐっての売り惜しみということが一つどうしても出てくると思うんです。  そこで、薬価基準について伺いたいのですけれども、この大幅なブドウ糖の値上げですね。これはどういうふうな基準できめたのか。
  35. 金田伸二

    説明員(金田伸二君) 薬価基準につきましては、現在のたてまえは市場の実勢価格を調査して、それを反映させるというような形で薬価基準価格がきめられておるわけでございまして、四十七年八月の実態調査に基づきまして、その後の経時的な変動調査を四十八年に実施いたしまして、当初二月、それから四十八年の秋にまた薬価の動向を調査いたしたわけでございます。その調査結果を勘案いたしまして薬価、価格をきめたわけでございます。
  36. 上田哲

    上田哲君 いまのお話の中に非常に重要なことがあるんですね。薬価基準のきめ方というのは、薬品の実勢価格からくるんだと。それを九〇%バルクライン方式でやっていますね。それはいいですね、それで。つまり実勢価格を押えて、それから九〇%バルクライン方式でやっているんだと。そうすると問題になるのは調査時点ですね。調査時点がいま八月だとおっしゃったわけですね。その八月であることはまあしかたがないとして、そのことを議論しようとは思わないが、調査時点が八月だったということになると、これはブドウ糖の品不足の異常状態、あるいはその裏にある価格つり上げ工作ですね、これをそのまま反映しているということにならざるを得ない。私はここは非常に重要だと思うんです。これはやっぱり薬価基準のきめ方、あるいはいまの実勢価格を押えて九〇%バルクライン方式でこざるを得ないというところから必然的にこれはもうつり上げを認めるといいますか、つり上げ工作の上に乗っての薬価基準の引き上げの内容と時期になってしまう、こういうことにならざるを得ないと思うんですよ。これは非常に重要な問題としてひとつ指摘をしておきたい。  あわせて、この薬価基準を決定するときには原価計算をやるのかどうか。まあ一々はできないかもしれないけれども、標準的価格としての計算をしてなければこれは筋が通らないですね。そういう原価計算はしているかどうか。そこのところをあわせてひとつお聞きしたい。
  37. 金田伸二

    説明員(金田伸二君) ただいま先生御質問の薬価基準の決定方法でございますけれども、薬価基準の決定方法は、中央社会保険医療協議会の定めました方針に従って現在決定されておるわけでございますけれども、私どもその中医協の定めた方針ということで、それは市場価格を調査をする。年一回全品目について販売サイドあるいは医療機関サイドの取引の価格を調べる。その結果、先生ただいま御指摘のとおり、九〇%のバルクラインを引きまして、その価格をもって薬価基準価格とするという方式になっておるわけでございます。ただ、四十七年の七月でございましたか、中医協のほうで建議がございまして、その調査時点と、実際の薬価基準価格決定の間のタイムラグ等の問題がございまして、調査時点以後に経時的変動調査を実施をして、それも加味して決定するというようなことになっておりまして、今回の決定につきましても、四十七年八月の調査以後の価格の動向等につきまして経時的変動調査を実施してきめたというような次第でございます。
  38. 上田哲

    上田哲君 さっき、ちょっと農林省のほうからもお答えがあったんですけれども、いまの厚生省の話を聞いていると、この薬価基準の上げ幅がきわめて大きい。原価計算の話はどうも触れられていないので、これは後ほどデータをちょっと下さい、具体的に。いいですね。まあ一言で言えば、非常にはっきりしていないだろうと私は思うので、そこが問題だと思う。時間の関係があるからそこのところに入っていられない。そこのところを指摘するにとどめて、資料をもらいますが、結局、いまの中から出てくることは、まあ実勢価格の反映である。そうなると、あの調査時点から言ったって、九〇%バルクライン方式というような方式から言ったって、メーカー、流通段階生産抑制、売り惜しみあるいは買いだめということもあったでしょう。そういう影響があると思うんです。  そこで、問題をメーカーのほうに持っていきたいんだけれども、注射用ブドウ糖の原料メーカーはどれくらいあって、そのジェアはどうか、もう一ぺんひとつしっかりと答えてもらいたい。
  39. 池田正範

    政府委員(池田正範君) 注射用のメーカーのシェアでございますが、これは大体その九七%が東海地区にございます、東海糖業というのがございまして、それが大体九七、八%を持っておりまして、それにあと若干昭和産業等がつくっておるということで、きわめて数の少ない形になっております。
  40. 上田哲

    上田哲君 問題はそこなんですね。これが二つ目の問題です。生産指導の問題というものもありますけれども、とりわけ値段の問題になってくると薬価基準の問題がぴしっとくるので、その問題なんですけれども、もう一つ、メーカーのところへ行きますと、いまおっしゃるように東海糖業が九七%だと、こういうことになってくる。注射用ブドウ糖は医療用ブドウ糖の中でも最も純度の高い無水結晶ブドウ糖、含水結晶などを原料としておるわけで、そういう中で、東海糖業は無水結晶ブドウ糖で八〇%、含水の場合でも六七%を占める。こんな例はちょっとないわけですね。もう決定的なシェアということになるわけです。で、私の調査によりますと、これはひとつ御確認をいただきたいんだけれども、東海糖業の注射用ブドウ糖の原料である結晶ブドウ糖の生産は、全体としては例年と変わりない状態で行なわれているんだけれども、輸出用への振り向けがふえているのに、国内向けの生産が八月を境に減っていると。六月が百十七トン、七月が百トン。それに対して八月は七十七トン、九月は百三十トンだったんだけれども、十月が九十トン、十一月が八十トン、十二月か四十トンと、——よろしいですか。で、東海糖業の重油、電力の消費状況から見てみまして、全体の操業状況は四十八年度の後半ではほとんど変化はないんでありますから、どう考えても、この結晶ブドウ糖の生産減というのは理解ができないんです。ここらあたりに品不足の一つの原因があったと言わざるを得ないわけですけれども農林省の調査ではどうなっていますか。
  41. 池田正範

    政府委員(池田正範君) 私どもで握っております数字で申し上げますと、医療向けとしてのブドウ糖の四十七会計年度が四千六百十八トン。で、月平均にいたしますと三百八十五トンということになるわけでございますが、この四十八年度におきましては四月から四十九年の二月までの十一カ月で約五千八百トン、四十七会計年度が四千六百十八トン、四十八会計年度の十一カ月分だけでございますが、五千八百トン。そうしますと、月平均にいたしますと四十七会計年度においては平均三百八十五トンの出荷。それから四十八年会計年度におきましては月平均五百二十七トンの出荷ということになるわけでございます。そうしますと、単純に算術をいたしますというと、対前年比で三七%増の生産出荷ということに数字としてはなるわけでございます。  そこで、その出荷がいま御指摘のような形で一体価格の中にあらわれておらないとすると御指摘のことにつながってくるわけでございますが、いま先ほどちょっと申し上げかけましたが、少し長くなりますので省略したのでございますが、最近のブドウ糖の出荷価格でございますが、確かに御指摘の十月ごろ、例の砂糖のパニック問題が起きがけたころでございますが、そのころからこれも平均して上がっております。上がっておりますが、ちょうど一年前の一月と一月を比較いたしますというと、原料でございますコンスターチが約二・一倍、トウモロコシが一・八倍でございますけれども、医療用のブドウ糖の価格は一・七倍というのが平均価格に出ております。それから、さらに二月になりましてこれが一・八三倍というふうに少し上がりました。そのあと、先ほどの厚生省のほうの基準価格との関連はあるかどうか、これはちょっと私のほうではわかりませんけれども、一・八倍ということでむしろ最近は下落傾向にあるというのが現状でございまして、一般的な供給に対する不安感というものの中で、医療用もそのワク外たり得なかったことは認めざるを得ませんけれども、特に医療用だけが先ばしって極端な出荷をしぼったのだという形は、実は私どもの手元の数字からはなかなかわかりにくいということでございます。
  42. 上田哲

    上田哲君 それはちょっと調査不足ですね、調査してください。調査していただくようにお願いしておったのだけれどもね。私のほうももっと数字を出して当たってもらえばよかったかもしれないけれども、ちょっと残念です。結晶ブドウ糖自体の生産量というのは少ないものだし、東海糖業の操業度というものには、先ほど申し上げているように極端な変化がないのですから、注射用のブドウ糖原料の生産減をしなければならない事情があるとは思えない。しかし現実にこういう形になってきていると、ここのところをぴしっとつかまえないと説明として非常に問題が起きると思います。  そこで、生産減と同時に問題になると思うのですけれども、これはいまのような価格の問題。いまちょっと触れられたけれども、東海糖業のブドウ糖の建て値によりますと、やっぱり去年の六月ごろまでは一応安定していたわけですね。それが九月ごろから急激に上がっているわけです。いいですか、九月ごろから急激に上がっているわけです。去年の六月とことしの一月で見ますと、無水結晶ブドウ糖、含水結晶ブドウ糖はキロ当たり百七円から二百円。それから九十七円から百八十円、ほぼ二倍の値上がりになっておるのですね、いいですか。輸出用だけは、ほぼ同質の注射用ブドウ糖で建て値の上げ方は六〇%程度にとどまっている。このあたりを考えますと、たいへんさっき申し上げた生産減と歩調を合わせて非常に気になるところです。これをどういうふうに御把握になっておられるか。
  43. 池田正範

    政府委員(池田正範君) 確かにブドウ糖の価格は、先ほどから申し上げておりますように、ちょうど倍程度に上がっておりまして、上がりぐあいを見ますというとずっと九月ごろまでは安定した形で同じ価格で、十月に百三十三円のキロ当たりのものが百五十六円に上がっておるというふうな形になっております。それからはじりじりと上がっているという状態でございますから、したがって先ほど申し上げましたような一般的な砂糖の逼迫現象のような雰囲気の中で上げてきているということは、これはもう否定できないと思います。  ただ、それで一体しぼったのか、しぼらなかったのかというような問題でございますけれども、どうも全体の出荷量に関する限りはしぼってないという感じが一ついたしますことと、もう一つは一本二百五十円とか三百円の売価の中で、大体含有量というのは二十五グラム前後のものでございますから、一本の注射器にいたしますと大体五円程度のものしかコストとしてはブドウ糖が含まれていないわけでございますね。したがって、数量全体の問題もありますし、コスト全体の問題も考えますと、ブドウ糖の価格が上がったから、薬価全体が上がったり、それからブドウ糖の価格が、数量がちょっとしぼられるとべらぼうに動いたりというふうな、そういう大きな影響力を持つほどの量的あるいはコスト的な影響力があるのかどうか、これ私しろうとでわかりませんけれども、そうないのではないかという感じを実は楽観的には持っておったわけでございますが、それはあるいは調査不足かもしれません。
  44. 上田哲

    上田哲君 シェアの問題があるのですよ、それは。これはやっぱりもうちょっと——認識不足じゃ困るので、ぜひひとつその辺のところ専門的にも当たってください。それで、たとえば原材料の値上がりなんていうのは確かにあるのですよ。しかし私が調べたところではコンスターチなんかは四〇%、高いところで五〇%程度なんですね。それからまあ副資材というべきものの値上がりというのは、若干考慮するところもあるけれども影響度は小さい。材料費の値上がりなんていうことで、二倍前後の製品値上げということにはどうしてもつながってこないので、これは確かにさっきからおっしゃっているような国外の原料の値上がりとか、もう一つ砂糖全体の値上がりムード、品不足ムードですね。そういうものにやっぱり便乗した便乗値上げじゃないかと、これはどうしたって疑わざるを得ませんね。だから砂糖、特にその薬用ブドウ糖、注射用ブドウ糖だけが云々ではないのだとおっしゃることがむしろ逆に問題なのであって、そういうものに乗ってこの注射用ブドウ糖というものが非常に集中的な危機状態をつくりだしたということになるのじゃないか、となるのは、これは非常にさっきからお認めになっておられるように、極端に占有率が高いと、こういうことは市場操作を非常に有利にするわけですから、そこでその占有率の高いことを利用して生産減ということでの品不足、こういう結果便乗値上げというところに結果したのではないか。しかもまあ、そう申しては何だけれども、先ほど来の薬価基準の引き上げという方式と実勢価格への寄りかかりのあり方というようなものの中でこれを刺激することになったのだという二とはこれはどうしても疑わざるを得ない。疑う、疑わないということばではないのですかな、問題とせざるを得ない。これはほかのことはともかく、砂糖がないほうが糖尿病減るじゃないかという議論だってあることはあるけれども、このブドウ糖注射液はだめですよ。そんな理屈はつかないわけですからね、これはもっとシビアにやってもらいたいので、この辺はうんとしっかりこの機会に調査をしてもらうということをまず確認をしておいてもらいたい。
  45. 池田正範

    政府委員(池田正範君) 出荷をしぼったかしぼらないかについてのこまかいことは、私も把握をまだいたしておりませんけれども、全体の出荷量とそれから結晶ブドウ糖、精製ブドウ糖、それから医療用でございますね。医療用は主体が東海製糖であるということになりますと、これの価格の動きを見ることが一つの指針になると思うのです。それを見てみますと、結晶ブドウ糖が去年の一月にはキログラム当たりで九十三円、それからそれがことしは、最近では百八十円、そうすると大体これ一九〇%、こういうことになります。それから精製ブドウ糖は同じく去年の一月が八十九円、それがことしの三月には百八十二円でございますから、一九四%、いずれも大体二倍ちょっと近いところへきているわけです。ところが医薬用のものにつきましては、確かにさっき御指摘申し上げたような十月前後から上げはございます。したがってその上げの問題を、もっと御指示あれば分析をやりたいと思いますけれども、現段階における三月現在では二百三十九円、去年が百三十三円でずっと安定しておりますから、そうしますと倍率からいいますというと、大体一・八倍ということで特に医薬用が他の一般ブドウ糖に先がけて非常に値上げをしておるのだと、独占企業であるために非常に上げっちゃったという必ずしも感じにはならない。一・八倍に上げたことの是非という問題は、分析のしかたによってまたそれはいろいろ御批判もあろうかと思いますけれども、総体的な問題としては、どうもそういうふうに見ざるを得ない。これはあるいは分析不足と思います。そういう感じがするわけでございます。
  46. 上田哲

    上田哲君 そういうことを言ってもらっちや困るのですよ。いま私は分子を問題にしているのだけれども、分母で見れば問題ないんだというようなことを言っておったら、農林省はどっちみち砂糖とつけば名前は同じだという言い方になるかもしれないけれども、私が問題にしているのは医薬用の問題なんだから、これは命にかかわる問題なんだから、ほかの砂糖が上がっているのだから、これが上がったから問題ないじゃないかという進め方は議論にならないというのです。これは特に注射用のブドウ糖の問題にしぼって言えば、現実に激しい品不足が起こっておることは間違いないのですよ。裏切して言うなら、ほかの砂糖はまだしも、これだけはちゃんとするのだと、あるいは適正な値段で押えるのだと、これが一・八倍になったこと自体が問題であるなら話は別だがというお話があったけれども、これは非常に問題だろうと思うんですよ。そういうところは、ほかのところが上がっているんだから、目くそ鼻くそみたいな議論してもらっては困るんであって、少なくともそうなってくれば、ほかの砂糖の部分についての値上げの議論をしなければならぬだけの話であって、だからこれはいいんだとか、問題ないだろうという言い方、そういう比較論をされることは非常に困る。注射用のブドウ糖というのは、農林省は関係ないということになると思いますけれども、病院じゃ非常に深刻なんですからね。いま完全に回復されたなんという状態では全然ないんですから、そこのところをひとつよく調査していただくということ、これはきびしく申し上げておきます。  私は、この問題を取り上げているのは、第一にメーカーの操作による便乗値上げ、それから流通段階でのやっぱり何かあったんじゃないかということも含めてですけれども、特に命にかかわる注射液の問題というのは、抜き出してきちっと見てもらわなければいかぬのじゃないか、この点が足りないのじゃないかということも指摘することが一つなんだが、さらにもう一つは、東海糖業、資本金が一億五千万ですから、一億五千万程度のメーカーのやることなら、これは何だって小指の先かということになるのかもしれない。農林省の指導も全く簡単だということになるかもしれない。ところが、砂糖業界で系列支配というものが、あるいは商社支配というものが非常に進んでいる状態ですけれども、比較的系列化が進んでいなかった東海糖業、これは別にあるわけですね、この企業は。この小さいけれども系列化されずに、しかも非常に大きなシェアを、つまり注射用のブドウ糖なんてここ一つなんですからね。これがいま、名前を言うなら三井物産の系列にしっかり組み込む計画が進んでいる。まさにシェアの七、八〇%というブドウ糖注射の原料を大商社が全くこれ完全に押えようとしている。商社の悪徳商法ぶりなんということをここでもう一ぺん言う必要はないから省きますけれども、私は、やっぱり命にかかわる注射用ブドウ糖液ということになると、これは非常に大きな関心をこの際払っておかなければならないと思うんです。  そこで、農林省に伺うんだけれども、名古屋南港の臨海工業地帯、名南の大埋め立て地工業地帯の一角、食品コンビナートに東海コンスターチの工場建設、この申請が出ているわけですけれども、これはどうなっていますか。
  47. 池田正範

    政府委員(池田正範君) これは食品コンビナートとしてでなくて、一般的な石油中心のコンビナートとしてできましたものが、石油審議会の答申等もあって、途中から一部食品コンビナートに切りかえたといういきさつがあって、現段階では、東海コンスターチという会社が、この地元の知多市との間で、公害防止計画をすでにもう承認を受けまして、さらに現在は愛知県の環境部に公害防止計画の承認を得るために手続を現在とっておりまして、それが得られますと、あらかじめ三井物産と知多市長との間で、あれは四十五年でございますか、に結んでおりました公害防止協定に基づいて承認を受けるという形で、そこへ初めて、何と言いますか、工場設置の足がかりをつくるという形で、現在の段階ではまだ予定よりおくれて審査中であるというふうに聞いております。
  48. 上田哲

    上田哲君 つまり農林省ではオーケーだということですね、もう。県のほうに行っているということですね。
  49. 池田正範

    政府委員(池田正範君) 農林省のほうは、これは本来の農林省の食品コンビナートではございませんものですから、一般的な工場立地調査を——今度は工場立地法に変わりましたけれども、工場立地調査法に基づきまして特に提出がございました書類の中で、法律上に書いてございますようないろいろな環境条件を悪くしちゃうとか、あるいはほかのものを入れたほうがいいんだということが明らかな場合とかいったような消極的な列挙条件に違反しませんと、これは勧告をしないというだけの形で処理されるわけでございます。
  50. 上田哲

    上田哲君 そこのところをひとつ法律的にはっきりしてください。四十七年の二月に申請になっているわけでありまして、法律は三月三十一日で変わっているわけですね。どういう法律に基づき、どういう基準に基づいて申請を検討するのか。
  51. 池田正範

    政府委員(池田正範君) ただいま申し上げましたように、一般に食品コンビナートと呼ばれておりますものの中には、特別の法律によって形成されるものでないものが大部分でありますので、この場合は、御承知の都市計画法とか建築基準法のような、それぞれの法律以外に規制は別に受けておりません。私どもとしては、ただいまの工場立地調査法に基づく一定規模以上の工場として事前届け出を受け、これは第一次的には通産局を通じて受け、これを業種所管庁としての農林大臣のほうに回してくるという形でこれを審査をいたしまして、先ほど申し上げましたような二つの観点から、一つは、当該工場の進出により周辺一帯の工場等の立地条件が著しく悪化するおそれがあるかないか、なければいいわけです。二は、他の業種に使用するほうが国民経済上きわめて適切であると認められる場合があるのか、どうか。この二つについて必要な事項について、ある場合には勧告をする。しなければそれは受理したままにしておくということで、農林省といたしましては、これは四十八年の二月二十二日に名古屋通産局が受理をいたしまして、これを東海農政局のほうに回付をされまして、農林省といたしましては、四十八年四月十八日に東海農政局から本件の報告が本省に上がってきているというのが実態でございます。
  52. 上田哲

    上田哲君 つまり農林省がタッチするのは、いま局長があげられたような基準に触れなければ問題はないと、端的に言えば、それでよろしいと、これは。そういうことになるわけですね。
  53. 池田正範

    政府委員(池田正範君) 法律上はそういうことになるわけでございます。ただ、問題は、それを除いたほかの、一般的に、その辺にコンビナートの施設がある規模ででき上がること、その中に一体砂糖の新しい生産施設ができ上がること、それが望ましい形であるかどうかの一般的な行政対象上の監督責任はございますので、それらについては、むろん、ほかの場合と同じようにこの場合も見なければならないと思います。
  54. 上田哲

    上田哲君 見なければならないけれども、すでにオーケーなわけでしょう。
  55. 池田正範

    政府委員(池田正範君) この件につきましては、すでに農林省としては異存がないという処理をしておるわけでございます。
  56. 上田哲

    上田哲君 そうですね。そこのところが私は非常に適切を欠いていると思うのですよ。簡単に言うなら、農林省が認める際の基準というものは、過剰生産を防ぐために旧施設設備のスクラップ化を条件として、スクラップ・ビルド方式になっているかどうかを注目をする、これを満たしていたらあとは技術的に処理をしてよろしい—よろしいというか、技術的にのみ処理をしてしまう、こういうことだと言わざるを得ないと思うのです。そのスクラップ・ビルド方式をとるというのは、砂糖の過剰な設備投資が適当でないからとられる方式だということになるんだろうと思うけれども、東海糖業というこの会社自体は大きいわけではないけれども、注射用のブドウ糖ということについてならば全く完全独占企業である東海糖業を、これをスクラップして新しくつくることになる東海コンスターチ、これはつくり直すのですからね、これは人命を握っているブドウ糖注射液の原料を八〇%も握っている。これは全く規模としては資本金がどうだというようなことを言えば小さいかもしれないけれども日本国民の注射用ブドウ糖ということになれば、全くこれは小なりといえども独占的な企業です。ところが、さっきから問題になっているのは、そこに一つくるわけですけれども、国外用がふえて国内用がぐっと押えられるというようなことで品不足が起きている一因になっているわけだし、これはお認めになっているような数字があるわけです。そういうことも含めて、きわめて自由に操作することのできる商社がこれを頭から握ってスクラップ・ビルドをやるということになる、それを農林省のほうがそこまで手を入れないで大体まわりを見てよかろうじゃないか程度の、いまおっしゃるような基準でもしオーケーを出すということになると、これは私は問題があると思うんですが、どうでしょうか。
  57. 池田正範

    政府委員(池田正範君) 農林省としても、寡占化が極端に進んで、そのことが逆に価格支配の状況に推し進むことが明確であるにもかかわらず放置することは、公取でなくても許されることではないと私どもも思います。その意味で、問題は、いままでのこれは寡占化と申しましてもなかなか特殊な分野でございますから、したがって、おまえつくれと言って、はいと言ってだれでもつくれる分野でもございませんから、なかなかむずかしいと思います。
  58. 上田哲

    上田哲君 そこに問題があるのですよ。
  59. 池田正範

    政府委員(池田正範君) むしろそういう会社が適正に運営されることについて適切な行政指導をするというのが当面のわれわれのつとめだろうと思いますが、そういう面からいたしまして、新しくつくること自体についての問題よりは、でき上がった新工場がいわゆる寡占支配のもとに置かれて、価格のつり上げその他が行なわれないような行政上の指導ということが今後の問題点だと思います。  そこで、今度の新工場は、東海コンスターチというのが中心の会社でございまして、これに東海糖業というのも参画するという形になっておりますが、この東海コンスターチは、これは津という三重県の町の南ほうですけれども、そこにいま工場がある、それから東海糖業のほうは四日市のそばに工場があるということで、それぞれ離れておりますけれども、これはどうも資本系統が一緒のところでございます。ところが、いずれも、御承知の四日市は公害基準が非常に強くなりまして、とてもいまの場所で今後やっていけないという状態があるわけでございます。コンスターチのほうも同じ条件がある。そうしますと、やはりこの際名南コンビナートに出ていって、共通のやはり公害施設をつくった、設備をしたところへ引き移りたいというふうに考えたといたしましても、ほかのいろいろな条件を別にいたしますと、そのこと自体は別に非難さるべきものではないというふうに私どもも考えまして、農林省としては、この移転そのものについて別に反対はしないという態度をとってきたわけでございます。
  60. 上田哲

    上田哲君 全然わかってないんです。そんなことを言っているから、とんでもないことになるのですよ。  東海コンスターチは、あなたが御指摘のように、特殊業界ですから、ある日あるとき急にだれかがやろうったってできるものじゃないのです。たとえば三井物産が新しい会社をつくろうったって技術的にできやしないです。そこに、会社の規模は小さいけれども、シェアをこれだけずっと確保し続けてこられる秘密があるのですよ。東海糖業は向こうにあって、離れたところに新しくつくるという新会社が問題なんだとおっしゃる、新会社じゃないですよ。スクラップ・ビルドであることに問題があるんであって、まさに三井の系列支配によって移転させられるだけなんです。工場移転ですよ。こわしてつくるのですよ、全く同じものを。看板のかけかえなんです、これは。確かに東海コンスターチは資本金五千万程度の小さい会社です。問題は、親会社の東海精糖という特殊技能、技術的にも完全に握っているこれがあるから問題なんであって、その新しい計画では、四十億円もの設備投資が工場建設だけに予定されておりますよ。資本金が五千万円程度の小さい会社なんていうところに目を奪われている説明は、これはとうてい承れない。その四十億円もの設備投資は、三井物産があの商社金融の形で出すことになって去るのです。三井でなければできませんよ。しかも、三井物産はすでに名古屋支店長を重役に送り込んで人事参加している。近々増資が大幅にあることも、それから三井物産の参加があることもきわめてこれ確実であります。三井物産自身が資本参加の意思を明確にしています。たぶん五〇%をこえる参加と、こういうことになるだろうと思う。五〇%をこえれば、別なことばで言えば、これは買収であります。三井物産が新しいこの東海コンスターチを支配したら、これはいままで独占独占といったって、系列化の外にあった小さい会社によって行なわれていた操作ではなくて、これは全くわれわれのこの二カ月半にも及ぶ国会の中で明らかにされてきた悪徳商社系列、その中に何かこう細々と灯をともしてきた注射用ブドウ糖のメーカーまで完全に組み込まれた市場支配ということにならざるを得ない、これが問題だと思うのですよ。
  61. 池田正範

    政府委員(池田正範君) 農林行政の立場からいたしますと、今後、三井物産がコンスターチあるいは東海糖業、新しい新設設備に対してどのくらい食い込むかということについての問題点は、むろん一般的な問題としては、価格支配が不当に行なわれるかもしれないという限度においてはむろん考えなきゃいけないことだと思いますけれども、私どもとしては、むしろそのことよりも、そのでき上がった施設というものが、いま申し上げたようなコンビナートの中にあって、過剰投資にならないか、それから投資されたものが不効率な設備ではないか、まわりに公害を巻き起こすことはないか、それから、運転されて正常なる製品が世の中に供給されるかどうか。そういうところが農林行政としてはまず第一義的には大きな関心事であるというふうに言わざるを得ないわけでございますが、しかし、いまの段階では、これはいま御指摘がありましたので、実は私よりは先生がよく御承知のようなので恐縮しておるのですけれども、コンスターチ自身は、八名の役員の中で一人だけ取締役を御指摘のように入れておりますが、東海糖業のほうは、役員総数八名の中で三井系統はだれもいまのところは入っておりません。したがって、今後そうなるのだというお見通しなんだろうと思いますが、今後、少なくとも、御指摘になるような企業支配を通じて、貴重な衛生薬品が他の物品と同じような国民生活に背反するような形であやつられることがないように、これは厚生省ともども、私どもも十分監視をしていきたいと考えております。
  62. 上田哲

    上田哲君 指摘をしておきますが、糖業関係というのは、言うまでもないのですけれども、原材料が輸入に大きく依存をしておるというところに特賞がある。それも一般の輸入じゃなくて、国内資源の保護のため、法律に基づいて原料輸入にワクが設けられている。生産計画もある、出荷と価格の関係も法律の関与があるわけだし、そういう業界なわけですね。その中で精糖業界の原料というのは、元来、商社にがっちり握られているわけですよ。もともと。だからその砂糖問題というのは一つ前提が違うわけです。製品の販売も同様に商社が握ってるわけだし、たいへん操作の多い業界だ。  まあ、ここは一般論として議論もしたいのですけれども、もっと具体的に申し上げる。その東海糖業は、さっきから申し上げているように、目下特定商社にいまのところ全面的に系列化されているわけではない。だから原料輸入は、三井のほかに三菱商事も含めて四社ないし五社、販売も明商、日商岩井、そういうのも入っていまして、三井物産は二〇%程度の分担であります。ところがこれが三井系列になる。糖業界は一般的に、目下、三井、三菱、日商岩井、丸紅、伊藤忠、この五つの大商社が元来系列化の再編成を行なうという動きが決定的になっているわけですけれども、注射用のブドウ糖原料というのは、東海糖業、すなわち将来の東海コンスターチが大部分握っている。ここのところを三井物産、三井資本系列が握ってしまうわけであって、そうなると、原料輸入生産過程、さらに製品の販売、原料輸入生産過程と、その製品の販売を一手に三井が押えるという結果になってしまうわけです。ここのところがこれまでの状況と非常に違ってくる。元来が大商社中心の再編成が進行している状態をこれにどういうふうに強烈に、全く一社独占の、それも大企業でない特殊メーカーのところにあるものが、いま大商社の系列大支配という再編成が動いている中で、何といいましょうか、風前のともしびということになっているときに、きわめて一般論として、先ほど来の基準に触れなければまあよかろうじゃないかというふうになっては、これはたいへんなことになる。つまり注射液は外国までのシェアを含めて三井が全部握っちゃう。これは私は非常に容易ならざる問題が出てくると思うんです。農林省は、さっきからお話になっているのは、大部分認めておられるんだからそれでいいんだけれども、一つひっかかるのは、よくわかるけれども農林省には勧告をする権限がないというようなニュアンスがありました。私、調べてきたんですけれども、甘味資源特別措置法の第二十条ですか、これはブドウ糖製造業者に対する勧告権があるわけです。これは国内産糖の自給度向上や国際競争力強化のために企業合併や再編成系列化を促進する融資までもそのためにやるという法律のようでありますけれども、こういう勧告権によって十分に注意を喚起し、行政指導ができるということは、私は、あると思うんです。この辺のところを、わがほうではそこまではいかぬのでということではなしに、やっぴり実態を調査されて、ひとつしっかりメスを入れていただきたい。工場新設というのは、しかし、それはそれとして通産省の関係にもなると思うので、通産省、そこのところはどうお考えになり、どう処理されておりますか。
  63. 平河喜美男

    説明員平河喜美男君) 立地の段階におきましては、先ほど農林省からお答えしましたように、その場所を国民経済的に見て、その業種の用に供することが適当であるかどうかを検討することが現在の工場立地の調査等に関する法律の立場から必要なことと思います。私どものほうとしましては、事業所管省とも相談しまして措置することとしております。
  64. 上田哲

    上田哲君 ちょっとよくわからないんだけれども、私のほうは関係ないというわけですか。
  65. 平河喜美男

    説明員平河喜美男君) 事業の内容につきましては、事業所管省のほうと話し合って処理しております。
  66. 上田哲

    上田哲君 はっきり言ってください。わからない。
  67. 平河喜美男

    説明員平河喜美男君) 事業の内容につきましては、事業所管省のほうに御意見を聞きまして、問題がなければそれで処理することになります。
  68. 上田哲

    上田哲君 だから、農林省にまかせると言っているわけですか。
  69. 平河喜美男

    説明員平河喜美男君) 農林省と相談をしている……
  70. 上田哲

    上田哲君 通産省は何をやるんですか。
  71. 平河喜美男

    説明員平河喜美男君) 通産省は、あらゆる業種につきまして横のバランスをとるために、御相談に応ずるこういう形になっております。
  72. 上田哲

    上田哲君 全然わからぬじゃないですか。そういうことだったら、そういうことをやろうと思えば、通産省何も関与しないで済んじゃうということじゃないですか。あなたはわからぬのですか、それとも、そういうことはやむを得ないという役所としての判断をお持ちなんですか。
  73. 平河喜美男

    説明員平河喜美男君) 具体的に、いまの案件につきましては、私、内容を存じておりません。通産局のほうで農政局と相談して処理しております。特に問題はないと思います。
  74. 上田哲

    上田哲君 特に問題はないことはないじゃないですか。さっきから言っているんでしてね。私が指摘していることがもし杞憂になるというなら、杞憂になるということを証明してくれなければ困るんですよ。これから先、病院じゃ非常に困るんです。そこのところをしっかり見てくれなければいけないんで、コンビナートが公害上の問題もあるでしょうけれども、今度寡占化への問題ということをしっかり見ないでどんどんどんどんやっておるんじゃ困るんだということを言っているんです。  もう一ぺん、しょうがない、げたがそっちへ変わりましたから、勧告権の問題、一体どうですか。
  75. 池田正範

    政府委員(池田正範君) 私も別に、先生から先ほど御指摘を受けたようなことで、逃げるつもりで言っているのじゃございませんけれども、甘味資源のほうは、どちらかと申しますと、むしろこまごまと妙な生産性の低い工場のあるやつを整理をして、少なくとも生産性がちゃんと一人前通るような工場にすると、立地の条件なんかもいいところにつくらすと……
  76. 上田哲

    上田哲君 あれじゃだめですか、あの勧告権じゃだめですか。
  77. 池田正範

    政府委員(池田正範君) あれからはちょっとやりにくいだろうと思います。ですから、農林省のほうからいたしますと、むしろさっき申し上げましたように、それが非常に独占的な価格になっちゃって、非常に需給を反映しないようなものになるというようなことについての需給上のいろいろな問題から、一般的な指導権でやる以外にない。むしろこの問題はどちらかというと医薬用の問題ですから、よそに別に押しつける気は全然ございませんけれども、やはり医薬品の需給問題としてしぼってむしろやるほうが効果があがるのではないかという感じがいたしますが、私どものほうも原料の責任を持っていますから、協力は幾らもいたします。
  78. 上田哲

    上田哲君 困ったなあ。ぼくは勧告権というところでどうにかならぬかと思ったんだけれども、それじゃだめだと言われると、これは困っちゃうんですね。病人が困るんですよ。何とかなわ張りの問題じゃなくて、法律解釈というものは、そういうことのために有効にしてもらいたいと思うんだなあ。問題点はお認めになっていらっしゃるわけだから、せっかく御努力いただきたい。  時間がないので、最終的な結論をしなければなりませんけれども、農林大臣のところで締めくくっていただきたいと思うのは、大商社がずっと出てきて系列化を促進してきて、とうとうここまできたというのが実感なわけですよ。これは困る、これは非常に困る。とにかく命のところまで握られちまったんじゃ、これはしようがないわけですから、不分明だったところもずいぶんありますけれども、特に大商社の系列支配だということが問題になったおりから、これはひとつ最後に人命まで手が届いちゃったんだから、ぜひひとつつかんでいただきたいが、この東海糖業についてもう一つ問題になるのは、問題の工場をこっちからこっちへ持っていくのはさして問題はないだろうなんて簡単におっしゃったんだけれども、これもひとつ調査していただかなければならぬのは、御存じないんだろうけれども、この名南の土地というのは、実は三井不動産のものなんですよ。三井不動産のものなんです。したがって、この埋め立て地をつくった名古屋港管理組合がこの三井不動産の系列企業下に土地を売ることは禁じた契約をしているわけですよ。だから五〇%以上つかんで、株式支配をして、事実上買収をして向こうへ持っていこう、そういうことがなけりゃ、さっきからおっしゃっているように、立地条件からいったってぐあいが悪くなってきている最大メーカーの東海糖業が、結果的には、この埋め立て地に入るためにはどういったって重役を——いままでおっしゃるように、いみじくも言われたように、重役は全然外から入ってなかった何か親族会社みたいな感じなんですよね、いままでの東海糖業というのは。それがどうしても、驚くべきことに大資本三井から重役を迎え入れなけりゃならぬということをはっきり言っておるんですよ。そうでなけりゃここに行けないことになっている。三井物産はいつから土地造成屋まで、ここまで露骨にやって、名古屋港管理組合までそれだけの圧力を加えているのか、これはおそるべきものだと私は思うのだし、三井のほうは、この三井の企業参加というものをそこまで大義名分の一つにしているわけですよ。こういうがんじがらめ、土地を使うのだって三井でなければだめだぞ、そのためにはコンスターチが三井の重役を入れなければだめなんだということになり、いままで親族会社的な傾向でとにかく系列化の外にあった、そして日本の実に珍しい例だが、注射用のブドウ糖を一手に握っていたメーカーが完全にそういう形の中で、一番下から、工場の土地から、それから資本系列から、あるいは生産技術まで全部握られて、原料輸入、それから生産、販売、完全に握られるという形態がここに出ているんですよ。これはさっきあなたのほうは、農林省はオーケー出しているので、あとは地方自治体だと言ったんだけれども、まさにそのとおりで、私は中のこと調べてみたんだけれども、愛知県も同じことを言っていますよ。これは三井系列でなければだめだと言っていますよ。こういうことになっている。  もう一つの問題は、この工場移転、簡単に言われますけれども、労働組合の問題があるんですよ。労働組合はたいへんですよ。こんなことを簡単に三井のほうでだあっと重役を送り込んだ、それで持っていかれちまった、こういう形でもってすいすい吸収されて、立地条件の問題だなんて一口におっしゃるけれども、これは民族の大移動になってくるのです。これは非常に問題があるので、私は、こんな段階では、労働者保護という立場からいったって、工場移転ということをその側面からだって簡単に認めてはならない余地がもう一つ出てきていると思うのです。いま、しきりにむずかしい議論も行なわれているのですけれども、現地では。そうした問題の幾つかがあります。これは大臣もまとめてお願いしたいのだけれども、ひとつ再調査していただいて、帰するところは厚生省の問題にもなるのですから、皆さんから全部、厚生省からも一言ずつ伺いたいと思うのだけれども、ブドウ糖を守ってもらいたい、注射の。そのためには根本的に、最終的な移転なんというところまできているこの問題を、資本支配上、系列支配上の問題も含めて、おたくのほうでオーケーも出してあるのだし、何とかしなければならぬということはお認めになっているのだけれども、どうも法律上の解釈でどこがやったらいいのかということもあるようですから、そこは、たとえば農林、通産、厚生と三省で御協力になってひとつ再検討、再調査するということならそれでもけっこうだけれども、ひとつその辺のところを原点に戻って再検討するというところまでもっていっていただくようにお願いをしたい。
  79. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) いろいろ承っておりまして、労使関係の問題は、それぞれの企業で円満にやっていただく必要があると思います。  それから、いまのお話、結局、大事なブドウ糖のメーカー、これが寡占の結果、非常に出し惜しみみたいなことがあった場合の不安、こういうことは、私どもも一人の人間として感じるところであります。そのことによって出てくる弊害はほかの手だてで幾らでもあると思います。これは、いまお話しのように、原点に戻ってやり直すというのは、私ども行政の立場としてはなかなかむずかしいことだと思いますが、先ほど来の御趣旨の、やはりいま私が申し上げました一人の人間として感じる、こういう大事なものが寡占によって心酔があるというふうなことにつきましては、私どもは、やはり関連の産業でありますから、厚生省も責任もあることであり、農林省も事業には関係のあることでありますので、そういうことについては、そういうおそれのないように、もちろん行政的に指導いたすことは当然するべきだと思っておりますが、御破算にという話はなかなか、これさっきから聞いておりましても、私どものほうでも、そういうわけにまいりませんが、いま大事な点につきましてはそういうつもりでひとつ協議をいたしてまいりたい、こう思います。
  80. 上田哲

    上田哲君 調査していただけますね。
  81. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) なお調査してみますが、大体さっきから聞いておりますと、三省よくわかっておるようでありますが、寡占のおそれの問題等につきましては、これはいま時節柄大事なことでもありますので、そういうことの起きるおそれのないようにしたいと思っております。
  82. 上田哲

    上田哲君 いずれ御報告いただけますか、調査結果というのは。
  83. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) せっかくお話のありましたことだし、大事なことでありますので、みんなで寄って相談をしてみまして、そこでいまのような寡占によって生ずる危険性のないようにするにはどういうふうにやってもらったらいいかというふうなことについて、これはもう私ども相手と御相談することは当然必要なことだと思います。
  84. 上田哲

    上田哲君 けっこうです。非常に前向きに出られたので期待をいたしますが、お話を承っている中で、わかっているのだけれども法的にちょっと手の打ちようがないというようなブラインドが出てきたわけです。そこを法的に手段的に手だてを考えてみるということをひとつ含めて御検討いただくということをつけ加えさしていただきたい、
  85. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) これは、ほかの役所のことは別といたして、私どものほうでは、実はかなりこの間からその独占禁止等について、国会でもいろいろ問題になっておりますので、いろいろな関連産業につきまして勉強いたしておるつもりでありますが、いまのようなお話は初めて承りますので、なお引き続いて勉強してみたいと存じます。
  86. 塩出啓典

    塩出啓典君 それでは、最初に白ろう病の問題につきまして、非常に個別的な問題でございますが、林業の果たす役割は非常に大きい。これは水源涵養林あるいは自然保護、あるいは洪水調節、あるいは正常な空気を生産する、そういうような点で非常に重要であることは論をまたないわけでありますが、それに引きかえて、非常に山林の経営というものが、過疎地帯の労働力の老齢化あるいは人口の流出、あるいは一方には賃金の高騰、そういうことで植林計画もなかなか計画どおりいっていない、そういうような事態であるわけで、やはり国家百年の大計に立てば、林業というものは、山林の持ち主だけではなしに、国民全体の立場からやはり森林の育成につとめていかなければならない、そのように思うわけでありますが、この点は農林大臣も林野庁長官も異存はないと思います。  そういう立場から、やはり森林作業に従事する人たちのそういう衛生、安全対策というものは非常に大事だと思うのですけれども、そういう点で、まず白ろう病の問題でございますが、大体、国有林と民有林に分けて、現在白ろう病の原因と言われているチェーンソーとか、あるいはブッシュクリーナー、そういうものが何台ぐらいあるのか、そしてそれを使用している山林労働者は大体何名ぐらいおるのか、それから白ろう病の認定患者は、国有林、民有林関係で大体何名ぐらい申請をして、何名ぐらい認定になっておるのか、このあたりをちょっと御説明願いたいと思います。
  87. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 白ろう病のような職業病、ほんとうに御同情申し上げる次第でありまして、これはできるだけのことをいたさなければなりません。  いまお話の国有林におきましては、昭和四十八年十一月一日現在で、チェーンソー等振動機械等を使用いたしております職員は一万四千六百五十二名ございまして、振動障害によって公務災害として認定されております職員の累計は千四百五十一名で、そのうち退職者は百四十四名であります。  それから振動障害に対しましては、その消滅を期するという基本姿勢に立ちまして対処いたしておる次第でありますが、具体的には、まず第一に機械の改良開発を進めますとともに、機械操作時間の規制、それから防寒保温のための措置等を実施いたしております。それから、第二には、振動機械従事者の健康管理につきましては、国有林野事業衛生管理規程に基づきまして、毎年定期的に特殊健康診断を実施いたしております。第三に、治療につきましては公務上認定者に対し、医師が必要と認めます治療を行なっておりますが、特に四十八年度からは温泉療法を計画的に実施いたしておる次第であります。  そこで、それに従事いたしております人員等につきましては、政府委員からお答えいたさせます。
  88. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 国有林と民有林と分けて、チェーンソーを扱っておる人員は何人かという御質問でございましたが、現在では、国有林はほとんど一〇〇%チェーンソーを扱っております。民有林の場合もほとんど一〇〇%近い人がチェーンソーを扱っているわけでございますけれども、人数につきましては、国有林におきましては大体約一万人ぐらいと思っております。それから、そのうち先ほど大臣からもちょっとお答えありましたけれども、認定されておりますのが約千五百名ぐらいでございます。民有林の場合には、チェーンソーを扱っている人の数というのは、ちょっとただいまのところ、正確な数字を持っておりませんですけれども、台数は、導入されましたのが十五万七千台でございますけれども、これは三年ぐらいで更新しなければなりませんので、実質は大体八万四千台ぐらいだろうというふうに推定されます。
  89. 塩出啓典

    塩出啓典君 それで、私がお聞きしたあれでは、民有林の場合は大体チェーンソーが十二万台ぐらいで、それで四百八十七人申請をして三百八十六人が認定になったと。国有林の場合は、いま大臣から、また長官からお話がありましたように、大体チェーンソーが六千百三十台、ブッシュクリーナーが八千二百九十四台、両方合わせて一万四千台ぐらいでしたね。それで、四千八十九人申請をして千四百五十一人認定になったと、こうなっているわけなんですね。いまいろいろ大臣からもそれに対する対策については話があったわけでありますが、国有林の場合と民有林の場合と、認定が国有林は千四百五十一名で、民有林は三百八十六名ですから、二割ぐらいですね。民有林のほうが実際には十倍ぐらいの労働者がいるわけですけれども、十倍もいるのに、同じ労働条件であれば十倍ぐらいなきゃいかない。それが三百八十六名というので、ものすごく少ない。そういう点に非常に疑問を感ずるわけでありますけれども、民有林のほうがそれだけ仕事が楽だということは、むしろ逆のほうが考えられるわけでありますが、そういう点、これは農林省と、それから労働省も関係すると思うんですけれども、両省からこの見解をお伺いしたいと思います。
  90. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 確かに御指摘ございますように、チェーンソーを持って仕事をしておる人の割合から見るならば、国有林の場合が認定者が多くて民有林が少ないじゃないかということでございますけれども、一つの原因と考えられますことは、国有林の場合ですというと、民有林に比べまして、仕事の内容が専業化しております。つまり伐採に従事いたします者は伐採専門ということでございますし、民有林の場合には伐採もするし、あるいは集材もするし、その他の道路の手直しをするとか、いろいろの仕事の組み合わせをして仕事をしておるというケースが多いわけでございます。そういったことも一つ原因があるんではなかろうかというふうに考えられます。その他、民有林の場合におきましては、国有林の場合と違って、身分の保障ということについて一つ問題があるというふうに思います。つまり自分が白ろうにかかっておるというふうなことを言いますというと、ほかへ行って、もう使ってもらえないというふうなことを懸念して、故意にそれをあらわさないということもあるんではなかろうか、これは私の個人的な推定も入っておりますけれども、そういったようなことがあるんではなかろうかと思うわけでございます。したがいまして、民有林の場合におきましても、よく実情を調査して、それの予防とか、あるいは治療の対策を講ずることが必要ではなかろうかというふうにいま考えておるところでございます。
  91. 塩出啓典

    塩出啓典君 労働省はお見えになっていませんか。
  92. 山口全

    説明員(山口全君) ただいま農林省のほうから御説明がありましたとおりの状況とうかがえますが、民有林の場合は、従来の健康管理面でさらに検討する余地のある問題があったのではないかということでございまして、場所が山間地でございますので、巡回健診等の機会にも恵まれていない。さらには付近に適切な医療機関もなく遠いと、また、御指摘ありましたように、労災保険制度の周知が必ずしも十分でなかったというような原因が複合しまして、健康管理、さらには適正な療養あるいは給付申請というものが十分でなかったということがうかがわれます。昨年から、そういうようなことの反省に立ちまして、健康診断の促進、異常者の早期発見、さらには労災の給付請求の励行というような点について、基準局長の通達をもって各出先機関に指示をして、積極的にこの健康管理、認定請求の促進につとめております。さらには検診の項目を整備する、また、健康診断を積極的に受けさせるというような促進剤としまして、本年度中に約六千名の巡回健診をただいま実施中でございまして、それらのことを通じまして認定の申請もより強化してまいるし、健康管理も従来より増して適切化されるのではないか、かように考えております。     —————————————
  93. 片山正英

    ○副主査片山正英君) 分科会担当委員の異動について御報告いたします。  本日、戸叶武君が委員を辞任され、その補欠として森中守義君が選任されました。     —————————————
  94. 塩出啓典

    塩出啓典君 いま林野庁長官が、国有林は専業化していると、民有林は専業化していないと、だから民有林のほうがそういう白ろう病にかかる率が少ないんだとか、そういう意味のことを言われたわけでありますが、これはどういうデータに基づいて言われたのか、何かそういう調査した資料でもあるんですか。どうでしょうか、その点は。
  95. 福田省一

    政府委員(福田省一君) これは別に調査したというわけでございませんけれども、私、現地に参りまして、いろいろとそういった実情を見たり聞いたりした中におきまして、民有林の仕事に従事しておる人たちあるいは民有林の仕事を経営しておる人たちの話の中からそういうことをよく聞きますので、そういうことを申し上げたわけでございまして、正確なデータに基づいてこうであるというふうな意味のものではございません。
  96. 塩出啓典

    塩出啓典君 私は、いやしくも林野庁長官というのは、国有林野のみの林野庁長官ではないと思うんですね。やはり国の林業政策を推進していくためには、民有林の労働者の安全対策というもののやはり当然責任はあると私は思うんですけどね。そういう点で、これはどうなんですか、いままでそういう民有林に働く労務者についての健康管理の問題については、先ほど労働省の話でも、去年ぐらいからいろいろ通達を出して健康診断をやるということですが、この白ろう病が問題になったのは、もう去年やおととしやではない。だいぶ前から。もう国有林に比べれば民有林のほうが導入はおくれておるようですけれども、民有林としても昭和四十年ころにはもうほとんどなってきているわけですから、そういう点で非常にいままでほうっておかれた感がするわけなんですけれどもね。いままでそういう民有林に働いておる人の実態を調査したものはあるのかどうか。これは全国十数万台を全部調査できなくても、わずかを抜き打ち的にやればわかるわけですから、ただ、林野庁長官みたいに、行って会って話を聞いたからというような、そういう話を国会でされては困るわけでありますが、医学的にいろいろ調査をしたとか、そういうのはありますか。これは労働省でもいいし、厚生省でもいいし、どっちでもいいんですけど。
  97. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 林野庁が直接調査したものではございませんけれども、労働省におきまして四十七年の九月から十二月の間を調べたものがございます。北海道外六府県、十六の市町村の林業労働者につきまして、無作為抽出ではなくて、自覚者が多いようでございますので、そういった点でいま申し上げた六府県と十六市町村の結果でございますが、実施しました人員は五百三十五名、罹病者が二百六十九名ということでございまして、パーセンテージにしますと五〇・三%というので私たち労働省から入手した材料はございます。
  98. 塩出啓典

    塩出啓典君 そうすると、どうなんですか、五百三十五名の二百六十九名で、半分が罹病したというのであれば、これは非常に多いわけですけれども、国有林の場合はもっと多いんですか、じゃ。
  99. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 国有林の場合は、先ほど申し上げましたように、約千五百名でございます。この労働省の調査は、おそらくこれは調査する相手の取り方にあるのじゃないかと思いますけれども、その点は労働省でどのような選び方をされたか、ちょっと私どもではわかりかねます。
  100. 石田均

    説明員(石田均君) ただいまの御質問にお答えいたしたいと存じます。  ただいま林野庁長官からお話のありました点は、私どものほうで林業労働の災害防止協会というのがございます。これは法律に基づきます災害防止のための民間の団体でございますけれども、そこで振動障害の検診委員会、俗に白ろう病検診委員会というふうに申しておりますが、それを昭和四十六年の十月に設置をいたしまして、ごく最近までいろいろ活動願っておったわけでございます。その検診委員会の実際上のそういった白ろう病の疑いのある方々の健診の項目をどうしたらいいかというふうな検診材料を得る目的のために、先ほど林野庁長官からお話のございましたような実地調査をやったということでございまして、したがいまして、全く無作為に抽出してお願いしたということでございませんで、白ろう病にかかっておられる疑いのあるような方々を中心に診断をし、調査をしたということでございますから、そういった高い率が出た、こういうふうに私どもは理解いたしております。
  101. 塩出啓典

    塩出啓典君 しかし、十六市町村ですからね。全国には三千の市町村があるわけですから、その十六の市町村で五百三十五名調べて二百六十九名も白ろう病にかかっている人がいた、全国では結局いま認定を受けているのは、いま話にあったように、四百名ぐらいである。そういう点で非常に民有林のそういう林業労働者についての労務管理という点におきまして、林野庁にしても、それから労働省にしても、はなはだ熱意がない。五百三十五名で二百六十九名も出ても、あまりぴっときてない。私は、やっぱりこれは大問題だと思うんですけどね。林野庁長官や労働省の話聞いていると、あまりにもたいしたことない、そのような感じがするんですけどね。そういう点どうなんですか、林野庁長官。だいじょうぶなんですか、こういうようなことで。
  102. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 確かに先生おっしゃいましたように、率直に申し上げまして、民有林におきますこういった林業労働関係の唯一の職業病でございます。その点に対する調査なり、あるいはそれに対する対策というのは、林野庁としても非常に従来手薄であったということは認めざるを得ないと思います。特に国有林におきましては、私たちの仕事の関係は、従来林野庁というのは国有林ばかりやっておったのではないかという御指摘を受けているぐらい、内容については一生懸命やったのでありますが、率直に申しまして、民有林につきましても、白ろう病対策につきましては、国有林と同様に、ひとつ今後対策を強化してまいりたいというふうに思っております。そういう意味において、四十九年度予算におきましても、白ろう病にかかった人たちばかりじゃなくて、かかることを防止する意味において、訓練施設であるとか、あるいはいろいろと施設その他の器具についての助成も強化しているところでございます。さらに今後一そうこれを強化してまいりたいというふうに考えております。
  103. 塩出啓典

    塩出啓典君 これは関西医科大学の衛生学教室が、昭和四十四年八月から十一月まで三回、四日間にわたって京都府の北桑田郡の日吉町、美山町、京北町、これは京都の北のほうでありますが、ここの山林作業者二百十七名について特殊健康診断を実施した。その結果は、手や指の蒼白を訴える者が七十二名で三三・一%、手や指のしびれを訴える者が百五十四名で七一%、また治療を要する者がその中で八十二名三六・八%、そういうようなことを調査報告——これは七〇年の二月号「労働の科学」というのに載っていたわけで、もう四年ぐらい前でございますが、労働省や林野庁は知っていますか、このことは。これについてはどう考えていますか、労働省。
  104. 山口全

    説明員(山口全君) そのような報告がなされていることは存じておりますが、先ほど福田林野庁長官からもお話ありましたように、実は健康診断を行なう場合におきましても、健康診断の項目もどうするかとか、診断あるいは治療の面でまだ未解決の面がかなりあったわけでございます。そういうようなことから、先ほど計画課長から申し上げましたように、四十六年から、私どもとしては、専門家の会議を設けまして、昨年十月ごろに健診項目についての答申をいただいたというような経緯もございまして、御指摘のとおり、かなり立ちおくれた面がございますが、昨年末のその答申に基づきまして特殊健康診断の実施についての通達、さらにはその実施手技、具体的なテクニックについて追いかけて通達を出し、その促進をはかっておるというような実態でございます。確かにかなりのおくれがあったことは認めざるを得ない、かように考えております。
  105. 塩出啓典

    塩出啓典君 それでは、大体林野庁も労働省も非常におくれているということを認めたわけで、済んだことで幾ら言っても、これから先が大事でございますから。  それで、健康診断の問題でございますが、やはり一つは健康診断を早くして、早期発見をして治療をすること、これが大事だと思うのです。そういう点で、国有林の場合は別としても、民有林の場合は、こういう通達を出して、昨年の三月十四日ですか、から何回か通達を出されておるようでありますが、現在までの健康診断の受診率とその結果はどうなっておりますか。
  106. 山口全

    説明員(山口全君) 通達に基づくことのほかに、先ほど私申し上げましたように、特にただいま約六千名の委託健診を実施中だと申し上げたのでありますが、北海道外十二県合わせて実施中であります。この結果は今月上旬中にまとめ、私のほうに報告があるという予定になっておりますが、まだ正確な報告に接しておりませんので、その結果についてまだ御報告申し上げる段階に至っておりません。近く報告が出ると思っております。
  107. 塩出啓典

    塩出啓典君 いまの六千名の委託検診というのは、六千名のお医者さんに……。
  108. 山口全

    説明員(山口全君) 失礼しました。六千名の労働者を抽出してという意味でございます。
  109. 塩出啓典

    塩出啓典君 六千名をアトランダムに選んでやったということですね。
  110. 山口全

    説明員(山口全君) さようでございます。六千名の学働者を抽出して委託検診を実施中であるということでございます。
  111. 塩出啓典

    塩出啓典君 しかし、この三月のやつは抽出じゃなしに、三月十四日に労働基準局長が各県に出したのは、半年に一回健康診断しろというのでしょう。これは全部にやれというのでしょう。もう三月ですから、あれから一年たっておるわけですから、一回ぐらいは済んでいなきゃならぬ。それの分の健康診断の受診率は大体どの程度であるのか。それがまとまってなければ、大体いつごろまとまるのか。大体山奥にみんなおるわけですからね、どの程度済んでおるのか。その点はどうなんですかね、ただ通達の流しっぱなしで、あとは野となれ山となれでは困るんですね。
  112. 山口全

    説明員(山口全君) 三月の通達に基づいて各基準局でもって措置した事項は、個別に事情を調べておりますので、後ほど報告したいと思いますが、そのうち、先生指摘の健康診断の実施率についてはまだ把握しておりません。使用者のほうの報告義務がございますので、その結果を待てば実施率はわかるわけでございますが、ただいまのところ、私どものほうで承知しておりません。ただ、それ以外のことでどういう措置を講じたか、予防のための措置あるいはPRの措置等については、個別に各局から報告を聴取しておりますので、後ほど御報告したいと思います。
  113. 塩出啓典

    塩出啓典君 この健康診断をする予算というのは、どうなんですか。たとえば健康診断を受けるためには一日ぐらい仕事を休まなければいかぬですね。あるいは健康診断を受けるためにはやっぱりただでやってくれない、医者に金がかかる。それは個人負担になるんですか、どうなんですか。
  114. 山口全

    説明員(山口全君) 基準法あるいは安全衛生法に基づく健診は使用者の負担において行なわれておりますので、林業労務者の場合にも当然使用者負担において行なわれていると思われます。
  115. 塩出啓典

    塩出啓典君 そういう点で、やはり使用者というのは非常に理解を持ってもらわなければ困ると思うのですけれども、そういう点、山林の経営というものもそう楽ではない。そういうわけで、ひとつ労働省としても、この健康診断の通達を出して一年もたっているのだから、報告を待つのじゃなしに、やっぱりこういう大事な問題であれば、労働基準監督署にも連絡をして、一体、受診の状況はどうなんだと、そういうことはやっぱり毎日じゃなくても、せめて半年に一回とか、三カ月に一回ぐらいは聞いても私は悪くないと思うんですが、そういう点で通達の出しっぱなしで状況がわからないということは、はなはだよくない。早急に大体の状況もつかんでいただいて、何もそういう報告が私要るわけじゃございませんけれども、そうすることが健康診断の一つの促進になるんじゃないかと、そういう意味でそれをぜひお願いしたいと思うのですが、その点はどうですか。
  116. 山口全

    説明員(山口全君) できるだけ早い機会に、健診状況を含めた通達に基づく措置状況を把握してお答えいたしたいと思います。
  117. 塩出啓典

    塩出啓典君 それで、この健康診断をした場合に、たとえば症状が一であるとか、二であるとか、三であるとか、四であるとか、ただ健康診断をしても、どこをもって治療を要する人ということにするのか。これは国有林、民有林含めて非常にむずかしい問題じゃないかと思うのですけれども、こういう健康管理区分とか、あるいはそういう白ろう病に認定をする場合に、これはもう休業して治療を要する者とか、あるいはこの程度であれば休業していいとか、あるいはこの程度であれば配置転換をすればいいとか、あるいはこの程度であればチェーンソーの使用時間を一日一時間にすればいいとか、そういうのがいろいろあると思うんですけれども、そういうのはできているんですかね。これはどこに聞けばいいですかね。
  118. 石田均

    説明員(石田均君) ただいまの御質問でございますが、先ほど来お話を申し上げております林業労働災害防止協会におきます振動障害の検診委員会、こちらで健康管理区分につきましても御検討いただいたわけでございます。それで、二月の二十八日の委員会で大体の結論が出まして、ただいま健康管理区分についての報告書を私どもの手元にいただいたという状態でございます。まだ、その報告書につきましては、私どものほうで行政的にどう取り扱うか検討中でございますけれども、内容といたしましては、全く異常のない者、それから要注意の者、それから治療を要する者というふうな三つに分けるということであとの処置その他を述べておりますが、これをもとにいたしまして、今後、行政的にどう処置していくか、検討したいというふうに考えております。
  119. 塩出啓典

    塩出啓典君 いま国有林の場合は、たしか私のいただいた資料によると、約千四百人ぐらいですか、の認定をされておるわけでありますが、その場合、たとえば高知とか熊本は非常に多いわけですね、二百五十一人とか二百三十五人とか。それから青森とか、ああいったところは多いわけですけれども、そちらでは非常にお医者さんが、高知や熊本はすぐ認定するが、青森のほうはなかなか認定しないと、全国で医者によって認定の基準が違うんだと、そういうような説明だったわけですよ。こういうことは事実なのか、どうなんですか。
  120. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 国有林の場合におきましては、定期診断をやっておりまして、そのほか必要があれば臨時にやっておりまして、そういうことで予防対策を講じておるのですが、特に本人が見てもらいたいという場合には、営林局なり営林署のほうで管理区というのを指定しておりまして、そのお医者さんに見ていただく場合と、それから本人が自由に自分の選んだ医者に見てもらうという場合と二種類あるわけでございます。それで、両方の場合がございますけれども、高知と熊本が非常に多くって、秋田、青森、そういう北のほうは非常に少ないと、確かに御指摘のように場所によって非常にアンバラがあります。これはやはり非常に問題でございまして、ですから、できればこの管理区というものをできるだけ私たち普及して、レイノーに対しての診断の専門家をできるだけ早く養成していただいて、そういう人たちを管理医にしていきたい、こう思うわけです。専門家でない——そう言っちゃ何ですけれども、お医者さんに見てもらった場合に、あと困りますから、それじゃということで認定する場合があるいはあるかもしれませんけれども、それはやはり問題がある。先生指摘のように、認定の基準がまだ確立されていないというところに問題があると思います。ですから、まずこの認定基準を早く確立しなければならないと、急がなければならないと思っております。  それから、一ぺん認定されますと、今度いつまでも——なおったというまて、その間に今度ひとつ治療基準というものがございますが、治療基準というものがやはり確立される必要がありますが、これは労働省、人事院のほうでいろいろ検討をせられております。最後になおったという基準、これがどうしても必要だと思います。このいま申し上げました三段階あるわけでございまして、このまず認定基準、それから治療基準、それから治癒基準というものを確立すれば、そういったようなアンバラは出ないというふうに考えております。
  121. 塩出啓典

    塩出啓典君 そうしますと、いま労働省のほうで、審議会で検討しているいわゆる認定基準、治療基準あるいは治癒基準、そういうものは大体できたわけですか、いつごろできるのですか。それができれば、当然これは林野庁の国有林のほうにもあてはめて、国有林と民有林が基準がばらばらじゃおかしいわけですから、両方にも適用されるものと判断していいわけですか。その点どうですかね。
  122. 山口全

    説明員(山口全君) 労働省のほうで行なっております検診委員会のほうでは、先ほどお答え申し上げましたように、健診項目が確定をした。それから先生ただいまお尋ねの健康管理の基準についての報告を受けておりまして、そこまでは一応答申も得たし、行政ベースに乗るわけでございますが、残る問題として、ただいまお尋ねの認定の基準と、それから治療基準、こういう問題に入るわけでございます。実は四月以降治療の内容についての検討を開始するという予定になっております。健康管理の区分をいただいておりますので、認定の基準についてはできるだけ早い機会に確定できると考えておりますが、治療の内容あるいは治癒の判定、それについてはまだ若干の時間が要ると思います。いずれにしても、農林省の研究班がございますようですので、それとの連携を十分保っていきたい、かように考えております。
  123. 塩出啓典

    塩出啓典君 これから認定するわけですね、きめるわけですね。いままでは何で認定しておったのですか。
  124. 山口全

    説明員(山口全君) いままでは個々の医師の医証によりまして、保険給付申請があれば、その医証に基づいて認定をする。しかし、先ほど林野庁長官からお話がありましたように、専門の医師が乏しい関係もございまして、私どもとしては、判断に困る場合には、労災病院を指定しまして、それを通じて認定をしていたのが従来の実態でございます。今後認定基準が確定できれば、広くそれを普及して、容易に認定がし得るようになろうかと考えております。
  125. 塩出啓典

    塩出啓典君 そうしますと、ともかく早く認定基準とか、治療基準をつくってもらいたいと思いますね、早く。これは結局林野庁と労働省が連携を保ってやると、できたものは両方とも同じ基準でやると、そのように判断していいわけですね。それはひとつ早くお願いします。  それから治療の、やっぱりこういう病気というのはなかなかむずかしい病気であると思いますが、その治療の研究とか、そういうものはおそらく厚生省の管轄になると思いますが、厚生省は、一体、どれくらいの予算で、どういうレイノー病の病理的な研究をやっているのだろうか、この点はどうですか。
  126. 山中和

    説明員(山中和君) 白ろう病の本体は、先生のいまおことばにございましたように、レイノー病でございます。したがいまして、ただいまの認定基準という問題もございましたが、そのレイノー病の診断というのは、これはレールブーフにも載っておるような診断ということはできるわけですが、これが白ろう病ということばになりますと職業との関係ということになりますので、そこで純臨床医学を離れた認定という問題が出てくるわけでございます。したがいまして、その診断が一応医学的な診断というのはできる状態でございますので、いままでの治療方法というものは、現在、臨床医学では外科サイドでやっておるわけでございます。いまこの本体がまだはっきりいたしませんので、多くの場合、対症療法になります。これは一般には温湿療法、局所浴ということで、非常に温泉が使われるわけでございますが、そのほか薬物療法がございます。疼痛を伴った場合の鎮痛剤とか、自律神経の遮断剤とか、また手術的な療法も場合によってはあるわけでございます。しかし、現在までこの治療に関しまして、実は医療研究助成金というのが厚生省にございますが、労働省と協力いたしまして、特に四十六年、四十七年にはそれぞれ百万ずつで、労働衛生サービスセンターの久保田先生にお願いいたしまして、治療基準に関する研究をしていただき、その結果、一度、二度、三度の分類とか、症状固定の定義とか、あるいは神経症状を残道した場合どうするか、そういう基準をつくりまして、それで治療といたしましては従来の臨床上の治療を続けるという、こういうことに相なっております。
  127. 塩出啓典

    塩出啓典君 それは四十六年に百万円、四十七年百万円、それだけで終わっているんですか。
  128. 山中和

    説明員(山中和君) 医療助成金といたしましては、白ろう病に関しましては四十一年、四十二年とそれぞれ治療を——特に慢性化いたしますので、リハビリテーションの部類に入るわけでございまして、特に治療とリハビリテーションの関係ということで四十一年、四十二年行ないまして、さらにただいま申し上げました四十六年、四十七年に治療基準に関する研究をいたしたわけでございます。これから四十九年度になるわけですが、四十九年度も現在検討いたしております。
  129. 塩出啓典

    塩出啓典君 いずれにしても、百万の金額が多いか少ないかはわかりませんけれども、全国に十何万人もそういう労働者がいて、それも半数近くがかかっている病気であれば、非常にこれは大問題じゃないかと思うんですけれども、それにしてはちょっと厚生省としても百万、百万ぐらいで、いろいろと研究もされたんでしょうけれども、そういう治療について研究が足りないんじゃないか、そういう気もいたしますもので、そういう点はひとつ厚生大臣とよく相談をしていただいて、もっと力を入れてやってもらいたいと思います。その点、要望しておきます。  それから農林省のことしの予算で五千五百九十万円、林業労働安全衛生確保特別対策費というのが今年度新たに組まれておりますが、これは民有林の労働者の対策であると、このように聞いたわけですが、これは大体どういう内容なんでしょうか。
  130. 福田省一

    政府委員(福田省一君) ただいま御質問ございました五千五百万は二つの事業費でございまして、一つは振動障害緊急対策費というので三千三百九十七万七千円でございます。これは振動障害の予防対策を緊急かつ効果的に実施する場合に必要なシュミレーターの模擬訓練施設を都道府県単位に設けようというものでございまして、三カ年計画でございまして、四十九年度は十六県の予定でございます。補助率は二分の一でございます。もち一つは労働安全衛生施設整備費というものでございまして二千一百九十二万三千円でございます。これは都道府県全部につきまして、五カ年計画でございますが、一定の要件を具備しました森林組合との協業体、一都道府県につきまして一協業体を選んでおりますけれども、これが林業労働の安全衛生に関する機械器具、たとえば防振装置つきのチェーンソー等でございますが、こういったものを助成対象といたしまして、それに対して三分の一を補助する、こういう内容のものでございます。
  131. 塩出啓典

    塩出啓典君 この問題につきましては、大臣からも一番最初にそういう農林省としての対策のお話もございましたので一ひとつその線に沿っていただいて、できるだけ患者を発見することも大事ですけれども、患者が出ないように、いろいろな機械の研究とか、あるいは労働時間を、労働作業を改めるとか、そういうような両方の面が大事じゃないかと思うんですけれども、そういう点、農林省としても、国有林のみならず民有林についても熱意を込めて、ひとつ人命尊重の立場から推進をしていただきたい。このことを要望しておきます。  最後に一つだけ、もう一時になりましたので、環境庁、それから農林省にそのことを聞きたいんですが、これは四十七年の四月十日の予算委員会で公明党の小平先生も取り上げ、昨年の九月ですか、の農林水産委員会でも取り上げた問題でありますが、いわゆる土壌汚染防止法による砒素の問題ですね。いま銅とカドミウムは認定をしておるわけでありますが、まだ砒素が認定になっておりません。具体的には、島根県笹ケ谷鉱山等は、もう二十年前から砒素のために稲が非常にできが悪いと、ほんとうに極端に出ると、そういうことがありながらまだ対策が組まれてないわけでありますが、昨年の予算委員会では、大体環境庁としては、四十八年度末までにはこの砒素を土壌汚染防止法の項目に指定をすると、こういう話でありますが、まだこれは指定になってないと思うんですけれども、大体いつごろ指定するのか、これはどうですか。
  132. 遠藤茂

    説明員(遠藤茂君) 昨年の農林水産委員会で、私から、ことしの三月末までに指定をしたいということで、お答えを申し上げました。現在、砒素の有害物質の指定を検討中でございます。  御理解をいただくために、検討の中身を若干申し上げ御了解いただきたいと思いますが、全国的な一律の指定基準を実はつくりたいということで、代表的な汚染の基準地域のデータを四十七年産米については実はいろいろ統計解析を進めてきた過程で、非常に理解しにくい現象が起こっております。その原因を農林省の技術試験所、農事試験場その他の研究者の方々といろいろ御相談をいたしましたところ、どうも分析注に問題があるということのようであります。したがって、その辺の詰めをやっておりましたので若干延びておりますが、おおむねめどがついてまいりましたので、それを基礎にしまして四十八年の産米についてのデータをそれらを踏まえて統計解析を行なって、全国一律の基準を指定したいということで現在検討をいたしております。非常におくれておりまして、現地の農家の方々に対して申しわけがないというふうに思っておりますけれども、現在そういう検討をいたしておりまして、できるだけ早く基準をきめるよう努力をいたしたいというふうに考えております。
  133. 塩出啓典

    塩出啓典君 その点、そういう理由があったんでしょうけれども、ひとつすみやかにお願いしたい。  それで、農林省にお願いしたいんでありますけれども農林省は、環境庁がそういう認定をすれば、すみやかにそういう作業をしていただく、かようなお話でございますが、実際、そういう試験場におきましては、客土をすればいいというような試験をやっているわけですね。これは試験完了したのかどうか。完了してないなら、いつ完了するのか。  それからもう一つは、本年度の土壌汚染防止対策事業、農林省予算はだいぶ去年から減っているわけですね。これはいろいろ国全体の予算が減ることはやむを得ないにしても、やっぱり農業の問題については国全体として方向転換しなきゃならぬ。こういう公害防止対策の予算が減ったということは、ちょっとこれはおかしいじゃないかと、これは農林大臣の努力が足りなかったんじゃないかと思うんですけれども、その点はどうですか。なぜ減ったのか、その二点だけちょっと。
  134. 松元威雄

    政府委員(松元威雄君) まず、前段の土壌汚染防止対策費で、基礎的なデータを得るために、客土をすれば被害が防止できるかということにつきまして、実は、これは御案内のように、四十六年から調査をいたしておるわけでございますが、大体のめどは出ておるわけでございます。しかしながら、その場合、客土の厚さ、あるいはまた土壌改良資材の購入のしかた等によって、もちろん、防止法があるわけでございますが、ただ、その場合に、客土の厚さだけではございませんで、栽培方法にも影響される。たとえば冠水栽培、湛水栽培、特にこの地域は少し問題がございますのは、砒素のほかにカドミウムの問題がございまして、かなりの違いがございます。そういたしますと、やり方や栽培方法も、砒素の場合とカドミウムの場合と、たしか栽培方法に相違がございます。その辺をどう調整していくか、栽培方法いかんで違いが出てまいります。それから客土をする土壌の性質も違うわけでございます。そういうことで、四十六年から調査いたしておりますから、大体のめどは出ておりますが、最終完了という段階に至っておりませんのでございますが、大体めどは出ておりますから、引き続きましてこの試験を継続すると同時に、もちろん、最終的にぴしゃり完了するのを待っておるんでございますので、大体のめどは出ておるんでございますから、それの試験を継続しながら、先ほど申しました基準設定をされますと、今度は指定要件がきまりまして地区の指定が行なわれる。そういたしまして、農用地土壌汚染対策計画をつくる、その場合に間に合いますように、引き続きましていまの研究を継続してまいりたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから公害防止の土地改良事業でございますが、その予算につきまして、ちょっと私、直接ではございませんが、金額の減ったというお話ございましたが、おそらく、そんたくいたしますのに、所要の事業は充足されたはずだと思いますし、将来のことはわかりませんが、実際に必要な事業には支障はないであろうというふうに考えております。
  135. 片山正英

    ○副主査片山正英君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後二時三十分まで休憩いたします。    午後一時七分休憩      —————・—————    午後二時三十五分開会
  136. 小野明

    主査小野明君) ただいまから予算委員会第三分科会を再開いたします。  分科担当委員の異動について御報告いたします。  本日、上田哲君が委員を辞任され、その補欠として鈴木強君が選任されました。
  137. 小野明

    主査小野明君) 休憩前に引き続き、農林省所管質疑を行ないます。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  138. 梶木又三

    梶木又三君 私、きょうは、利根川の下流の農業水利の問題について、具体的な問題若干お伺いしたいんですが、その前にひとつ、大臣おいでになりませんので、政務次官でけっこうですが、畠近、御承知のように、大きな河川で各種用水が締合しまして水不足を来たしておりますわね。特に昨年以来たいへんな水飢謹であったわけなんですが、とかく農業水利が最近相当圧迫——圧迫というと、少し言い過ぎになるかもわかりませんが、飲料水、まあ上水道ですね、上水道、これはもうほんとうに人間の飲み水ですから、一番大切なことは私もよくわかります。しかし、それに隠れてどうも農業水利というものが非常に困惑を来たしておる、こういう事態があちらこちらであるんですがね。それに対して既得の水利権を農業は持っておるわけなんですが、これは御承知のとおりだと思います。これに対して農林省としては、既得の農業水利権、これを今後どのように守っていくか、こういうことについてひとつ農林省の基本的なお考えをまずお述べいただきたいと思います。
  139. 山本茂一郎

    政府委員山本茂一郎君) 用水は、申すまでもなく、農業者といたしましては、生産要素としまして、土地とともに用水というものが大きな問題になると考えます。それを確保するためには土地の改良事業を実施する等いろいろな対策を講じて今日まできておるわけでございます。また、最近各種の水の需要がだんだん増大をしてまいりましたので、それに対抗するために水資源開発計画というものを立てることにして既得の農業水利権との競合が生ずるようなおそれが出てまいったと思うのであります。これらの水利権に支障を生ぜないように、水資源開発計画について関係の行政機関と十分に協議をし調整を行なっておるところでございます。  今後におきましては、既得の農業水利権を持っておる方々の農業経営が円滑に行なわれるようにわれわれはつとめてまいる所存でございます。
  140. 梶木又三

    梶木又三君 農林省としてそういう基本的な態度を持っていただくのは当然だと思うわけなんですが、いま御答弁ございましたように、各種機関とのいろいろな調整はやっていただいておるんですが、いろいろな条件があると思うのですよ。なかなか不可抗力な条件もあると思います。調整をずっとやっていただいておるのだけれども、不可抗力以外に、やはり調整不十分といいますか、そのために既得権を持っておる者が困っておる事態があるんですよ。これは後ほど申し上げます。  そこで、建設省の河川局長にちょっとお尋ねしますが、二十三日の日経に「渇水調整協議会を常設」というのが出ておって、私、これを拝見したのですが、「常設」ということ、それから中身を読んでみますと、「おもな水系ごとに常設の渇水調整協議会を設けるよう各地方建設局に指示した。」、それからずっとこうありまして、「特に二十九の水系について渇水のおそれが強いとしており、設置を義務づける方針である。」、こういうことも書いてあるのですよ。それからまた、次に「利害が対立して協議が整わない場合には地方建設局に対し調整案を提示するよう指導して万全の措置をとらせる。」と、このような記事が出ておったのですが、前に河川法が改正されたとき、私も中身を詳しくは知りませんが、若干関係しましたので知っておりますが、五十三条に、一項、二項はこれは当然なんですが、三項に「河川管理者は、第一項の協議が成立しない場合において、当事者から申請があったとき、又は緊急に水利使用の調整を行なわなければ公共の利益に重大な支障を及ぼすおそれがあると認められるときは、水利使用の調整に関して必要なあっせん又は調停を行なうことができる。」と、こうあります。これはもう御承知のとおりだと思うのですよ。これと日経に出ておる記事が事実とすれば、私、相当な行き過ぎじゃないかと、失礼な言い方だけど。河川法は、これはいろいろな事業法がある中において、相当強力な権限を持った法律なんです。その河川法でさえもいま読んだように、整わないときに限っていろいろあっせんすると、こうあるわけなんです。ところが、これが義務づける、あるいは常設すると、こうあるのですが、もちろん、これにも先ほど読んだように「利害が対立して協議が整わない場合には」と、こうあるのだけれども、これを地方建設局に対して調整案を提示して指導、万全の措置をとる、少し行き過ぎじゃないかと、このような気がするのです。この日経の記事のとおりであるかどうか、これについてひとつ御答弁願いたいと思います。
  141. 松村賢吉

    政府委員(松村賢吉君) ただいま梶木先生から御質問ございました渇水調整協議会の件、これにつきましては、実は私どものほうといたしましては、最近におきまして、各河川の水利、これに対しまして異常渇水的な事態がひんぱんに起こっておるということから、これの調整問題というのがわりあいに頻度多く起こってきておるわけでございます。そういうことから、この調整を実は円滑にしたいということから起こったわけでございますが、この新聞の記事にはちょっと行き過ぎな書き方がしてあると思います。たとえば、この二十九河川に義務づけると、渇水調整協議会の設置も義務づけるというような表現がしてありますけれども、われわれのほうとしては、決して義務づけるというようなことはしておりません。ただ、各種のこういうような河川についてこのような協議会を、関係機関、それから都道府県あるいは利水者等と話し合って、できるものならつくるような方向に持っていってもらいたいという指導をしておるわけでございます、この点につきまして。決して義務ではございません。  それで、この渇水調整協議会をつくりました意義につきましては、先ほどちょっと触れましたが、その渇水が起こったときに関係のその措置をどうするかというと、利水者間においてその水利の使用の協議をして、それを整えなければならないとすることにしておるのは河川法できめてあるわけでございます。それで、この協議が円滑に行なわれるようにこういう協議会を常備しておいて、ふだんからこういう問題についていろいろ意見を交換しておいたらよかろうということでございます。これについて協議が整わない場合にあっせんができる規定がございますけれども、まず協議することが先決でございまして、これをあっせんするといいますか、これを地建において直接直ちにやろうというような意思ではございません。当然、協議を先に進めて、協議が円満に整うようにしようというのが趣旨でございます。そういう趣旨でこの協議会を発足しておきたいということでございます。それからまた、この渇水協議会につきましても、これは実は仮称でございまして、必ずしもこの渇水調整協議会というような名前に実は固執するものでもございません。要するに各使用者と、それから出先機関、それから都道府県、こういうものと河川管理者と集まって話し合いの場をふだんからつくって、常にそういうような渇水のときにもどう措置するか、これを話し合っていこうということが趣旨でございます。
  142. 梶木又三

    梶木又三君 それでは、二十二日に指示したといって出ておるのですが、何か正式の通達か何か出されたのですか、これは。
  143. 松村賢吉

    政府委員(松村賢吉君) 建設省の河川局長名で、各地方建設局長あてに渇水対策の推進についてという通達を出しております。
  144. 梶木又三

    梶木又三君 いまの局長お話とこれと若干ニュアンスは違いますわね。だから、いま通達を出されたというお話ですから、これを資料としてひとつ提出してください。
  145. 松村賢吉

    政府委員(松村賢吉君) 提出いたします。
  146. 梶木又三

    梶木又三君 それじゃ、この問題は資料を出していただきまして、私のほうで勉強さしてもらって、また後刻一ぺんお互いに——これは農業用の水利だけを私はよくすると、こんなけちな根性は毛頭持ってないですよ、もういまの時勢だからね。水というものはもう万人が、国民全体が有効に使う、これはもう当然なんですが、やはり農業水利の既得権の保護という立場も忘れていただいたら困るわけなんだから、その出された通達を資料として今度もらいまして、この問題またお互いに勉強しましょう。これはそのぐらいにしておきます。しかし、この記事を構造改善局長は読まれたですか、この日経二十三日版。
  147. 大山一生

    政府委員大山一生君) 新聞では読んだわけでございますけれども、いまお話のありました通達が出ていたことは初耳でございます。
  148. 梶木又三

    梶木又三君 いまの新聞で読まれた範囲、限り、あるいはいま河川局長が御答弁になった範囲内において、この新聞の限りでもいいです。これを読まれたときに、構造改善局としては、どういうふうにお考えになられたか、ひとつ。
  149. 大山一生

    政府委員大山一生君) いまお話を伺っていまして、渇水時におきます治水対策、実は異常渇水時における利水者相互の取水調整対策、こういう話から少し出て、異常渇水時じゃなくて、ただ渇水時というようなかっこうでの問題になっているような感じがいたしますけれども、いろいろお話を承っておったわけでございますけれども、これは初耳でございますので、今度、建設省のほうに、異常渇水時、渇水時という使い分けの問題も含めまして、本来的には利水者相互間でまず調整すべきものであろう、こういうふうな感じを持っておりますので、ひとつ建設省のこの通達を出した趣旨なり考え方なりを聞きまして、その上で両省の間で十分調整協議していかなければならぬだろう、こういうふうに考えております。
  150. 梶木又三

    梶木又三君 それでは、ひとつ具体的な問題に入りますが、利根川の下流の十七の土地改良団体の九千二百七十九ヘクタールの代表が、干潟土地改良区の理事長の高木さんが代表になっておるのですが、国会に請願が出たんですよ、黒部川淡水化導入事業ということでね。それで、これ、私は紹介議員になっておるんですが、この請願が——まあ非常に塩害で困っておるという陳情は、おそらく私は、建設省でも農林省でも受けておられると思うのですよ。で、正式に請願が出たということは両局長御存じですか、この請願が出たということは。
  151. 松村賢吉

    政府委員(松村賢吉君) 内容は詳しく知りませんが、請願が出ているという事実は知っております。
  152. 大山一生

    政府委員大山一生君) 千葉県内の市町村、あるいは土地改良団体で組織しております黒部川淡水化導入事業受益者団体連合会から、四十九年の三月に利根川河口ぜきに関しまして、かんがい用水等の取水確保と水質保全、特に塩害防止ということのために、河川流量の確保、あるいは河口ぜき操作の強化を望むというような趣旨で出されていると理解しております。
  153. 梶木又三

    梶木又三君 まあ結局そのとおりなんですよ。一万町歩に及ぶ耕地が去年からだいぶ塩害に悩んで、とてもじゃないということで、これは私だけじゃないんですが、千葉県選出の三人と、私と小林国司さんと、この五人が紹介議員になりまして三月十五日に受理されたわけなんです。そこで、請願にあるとおり、だいぶ大利根用水とか、非常に塩害で困っておる。利根川の河口ぜきができれば塩害は防げるのだと、こういうことで非常に楽しみにされておったのですよ、事実、大利根土地改良区なり干潟土地改良区の方々はね。ところが、一向に塩害が防止されない。それで、利根川の基本計画にあるごとく、東京都のほうへもうすでに十トン持っていかれた。それで布川流量七十五トン維持するんだと、こういうことになっておるんですが、なかなか七十五トンも流れておらない、こういう実態なんですよ。  それで、資料をいただいたんですが、グラフになっているのでよくわからないんだが、河川局長、去年でもいいし過去二、三年でもいいですが、布川地点で七十五トン切った日数、まず、それをひとつ教えてください。
  154. 松村賢吉

    政府委員(松村賢吉君) いま詳しい資料は調べますが、私のいま手元にある資料でいきますというと、過去十カ年でもって七十五トンを切った、継続した記録が、実は昭和四十年の三月二十日から四月十八日までのこれ三十日間、これが一番多い記録でございます。それは以前の記録でございまして、今回、十一月二十七日以降におきまして、この低水流量と申しますのが七十五トンですが、この低水流量が約七十日間続いております。それで、それ以前の記録を破ると申しますか、この秋から冬にかけての渇水は、まあ異常な渇水ということが言えると思います。
  155. 梶木又三

    梶木又三君 それからもう一つ、あれは何か三者で、だれだったかちょっと忘れましたが、千葉県知事と、阿玉川地点で五〇〇PPMを切らないようにするのだと、こういう覚え書きができていますね。
  156. 松村賢吉

    政府委員(松村賢吉君) 昭和四十六年三月に、建設省の関東地建、それから千葉県、茨城県、それから水資源開発公団、この四者でございますが、この四者につきまして、五〇〇PPMを割らないようにするという覚え書きができております。
  157. 梶木又三

    梶木又三君 四者ですか、水資源も入っておるのだね。五〇〇PPM程度と、こういう規定をしておると私も聞いております。ところが、阿玉川の閘門地点で、この覚え書きによる五〇〇PPMを切った日数がここ二、三年の間に相当あると聞いておるんですがね。たとえば四十六年には十四日、四十七年度には十五日、四十八年度には実に五十七日と、このように私、聞いておるのですが、これはどうですか。事実かどうか。
  158. 松村賢吉

    政府委員(松村賢吉君) 五〇〇PPMをこえた日数でございますが、これはかんがい期間における日数ですが、四十六年が十一日、四十七年が十六日、四十八年が四十四日ということになっております。
  159. 梶木又三

    梶木又三君 四十八年度は私が聞いたのと若干違いますが、まあいいです。このように四十四日もかんがい期間中に五〇〇PPMを確保できなかったと、これはやはり農業者側にとっては深刻な問題だと思うのですよ。  それで実際問題は、水があっても、取水して田んぼに入れた結果かえって悪かったと、こういう事態も起きておるわけなんです。これに対して河川局あるいは構造改善局としてどういう見解持たれますか。これはもうやむを得ぬ、天然災害だと、こういうお考えか。これは何かそこに私は人為的な欠陥があると思うのですよ。その辺の見解を両局長からひとつ。
  160. 松村賢吉

    政府委員(松村賢吉君) 河口ぜきの設置の大きな目的が塩害防止ということにあるわけでございます。したがいまして、こういうような事態がこれからもしょっちゅう起こるということは、この目的につきましても非常にまあ満足できないことでございます。したがいまして、河川局といたしましては、現在までのこの塩分濃度が上がった事態、これについての過去のせきの操作方法、その他についていろいろ検討している次第でございます。それでこのせきの操作、それからまたせき、上流の塩分濃度をいろいろ操作するときに使いますが、こういう施設の増設等を考えまして、こういう事態ができるだけなくなるように研究、検討いたしまして進めていきたいというふうに考えております。
  161. 大山一生

    政府委員大山一生君) 水公団の施設管理規程からいっても好ましくない事態でございますので、われわれといたしましても、今後さらに十分に監視する中でひとつ問題を詰めてまいりたいというふうに考えるわけでございます。で、何と申しましても、操作のしかたというものと塩分濃度との間にやっぱり何らかの関係があるような感じもいたしますので、そういったデータをお互いの間によく見せ合う中でもって、改善されるものは改善していく、あるいは必要あれば、それ以外の操作のしかたということも考えねばならぬ事態もあるんではないかと思いますけれども、いずれにいたしましても、操作のしかたによって改善することはする。しかしながら、操作によって改善できぬものがあるならば、この規程というものとの関連で何らかの措置を講ずるということまで必要になろうかと思いますが、当面といたしましては、まず、操作のしかたと塩分濃度との相関関係を観察する中で改善されるように、関係機関の間で協議してまいりたい、こういうふうに考えております。
  162. 梶木又三

    梶木又三君 私は、河口せきの操作か操作規程に基づいて——それを完全に破って無法な操作をしておったとは申し上げません。操作規程に基づいてやられておるんだと思うんですよ。ところが、大利根の方々あるいは干潟の方々、農民の方々ですよ。こういう方々は、河口せきができれば、水の少ないときはぴしゃっとしまってしまうんだと、こういう素朴な考えを持っておられたんですよ。ところが、若干あれは漁業補償の関係であいておりますね。これは私は漁業補償にばく大な金が要るから、それはもうぴしゃっと必ずしも締めなければいかぬとは申し上げません。しかし、操作規程によってやられたとは思うんですが、やはりこれ人間のやっていることであるから、どうしてもそうしょっちゅう人がついておるわけじゃない。その間にやはり不十分な点もあったんじゃないかと思うんですよ。  まあ、直接管理されておるのは水資源公団ですね、あれは。きょうは水資源公団から呼んでいませんから。それでまた私も、どういうふうに操作されておるかというこまかい点まで調べておりませんから何とも言えませんから、きょうはそれは申し上げませんが、やはり何か不十分な点もあるんじゃないかという気がするんですよ。だから、あの操作規程に基づいて、おそらく私は、先ほどお話した阿玉川の地点で五〇〇PPMという数字は、こういう操作規程で操作すれば阿玉川の閘門地点では五〇〇PPMだと、おそらくそういう相関関係のもとで出されたと思うんだけれどもね。もしかそれがそういう相関関係成り立たないなら、操作規程を変えるとか、あるいは布川の流量をどうするとかということを、これは真剣に建設省でもお考え願わなきゃならぬと思うんですよ、そのとおりいくんなら。じゃ、いままで人為的に操作がまずかったんだと、操作さえきちっとやれば、いまの数量で全部いいんだと、こういうことであれば、私何にも申し上げません。しかし、操作をうまくやっておっても五〇〇PPMは確保できなかった、こういうことであれば、何か根本的に考えていかなければならぬのじゃないかと、こう思うんですよ。これについてひとつ河川局長の見解。
  163. 松村賢吉

    政府委員(松村賢吉君) 先生の御意見のとおりでございますが、現在、今回非常に塩分濃度が上がったということの原因についても、いろいろ実は検討しております。それによりますというと、やはり流量がある程度あったときの話でも、塩水くさびが相当上のほうまで上がることはあります。その上がった場合に、その上がったこと自体は害はないわけでございますけれども、そのために川の中に非常にくぼみと申しますか、低いところがある。そういうところに塩分がある程度残留するおそれがある。それで流量が減ってきますというと、その塩分がたまったのが累積すると申しますか、こういうことでたまっているわけですが、それが風浪等によりまして非常に撹拌されるということによって、塩分濃度が上がるおそれがあるということも一つの原因として考えられているようでございます。したがいまして、これのフラッシュの方法、今回も実は二月になりましてから退潮時を利用しまして、流量はふえた段階でございますが、フラッシュをいたしまして相当効果を上げておりますけれども、そういう方法、あるいはまた、管理規程そのものの変更ではございませんけれども、その内部のさらにこまかい操作でございますね、こういうところにさらに研究すべきところもあると思いますので、こういう点もさらに十分研究して、また、塩分濃度の分布等もさらに調査を進める必要があろうということで、この操作が完全なものになるように、大いに検討いたしまして進めていきたいというふうに考えております。
  164. 梶木又三

    梶木又三君 いま河川局長お話しになったやつ、実は私、おたくのほうから資料をもらって、このグラフのやつを拝見したのですよ。そうすると、なるほど二月、三月にフラッシュやられたのですか、二月の十五日ごろからうんとこの塩分濃度が下がっておるのですわ。もう四〇〇PPMあるいは二〇〇、三〇〇、こういうのが出ております、確かに。ところが、昨年の十一月、十二月、ことしの一月、二月、そのいまのフラッシュをやられるまでは、もうほとんど五〇〇PPMをこえておる。それで、これやはりうまくできておると思うのですよ。私は、だからさっきのお話で、河口せきの操作よりも布川の七十五トンが、ちょうど布川地点の流量七十五トンと、この五〇〇PPMとの間に相関関係があるような気がするのですよ。これはなかなかやはりおたくは専門家だけあってよく考えられていると思うのだ。というのは、この資料をもらうと——わずか半年間ほどの資料ですが、塩分濃度が下がっておるときは必ず布川流量は百トンとか、うんと多いですわ。布川流量が七十五トン切ったときにやはり塩分濃度が高くなっておる。ずっと出ていますよ。それで、この二月にいまお話しのフラッシュをきかざれたというお話ですけれども、これはやはり流量がずっと七十五トンをこえておるのですよ。どうですか、これ。河川局長、あなたのほうが私らよりずっと専門家だから、おわかりと思うのだけれども、やはり私は七十五トンとその五〇〇PPM、これは相当な相関関係があるような気がするのだね、それで、このフラッシュをきかされて効果があったというお話なんですが、私は、やはりこの七十五トンを何とか確保する対策に、東京都の十トンですか、これはどうしても持っていけないし、われわれがこれ飲んでおるのだから。もちろん十トンの送水は、これはもう基本計画に出ておるのだから、それはやっていただかなければいかぬけれども、あれはやって、なおかつ河口せきができれば七十五トン確保できるということになっておるのだから、そうでしょう。この点についてどうですか。
  165. 松村賢吉

    政府委員(松村賢吉君) この河口ぜきを計画した際の計画対象年、そういうものがございますが、こういう対象年に対しまして河口ぜきができて、それに伴う水利権等を全部付与いたしまして七十五トンは確保できるという計画になっておるわけでございます。ところが、最近の渇水と申しますのは、その対象年を上回ると申しますか、という渇水がことしあたりはなっておるというようなことでこういう現象が起きているわけでございますので、この七十五トンをことしは確保できなかったときがあるわけでございますが、平年ですと十分確保できるような状態でございます。  それから布川流量と塩分濃度の関連、これは、まあ必ずしもこまかい意味の、正確な意味の相関があるかどうかというのは、さらに検討しなければわかりませんけれども、ただし、一般傾向といたしまして、流量が下がってくると塩分濃度が上がるということは、これは当然なことかと思います。それで、これらの関係、それからまた部分的なフローとの関係、こういうものをさらに精密に検討いたしまして、この辺の結論と申しますか、操作に生かしていきたいというふうに考えております。
  166. 梶木又三

    梶木又三君 私は、農業水利の立場に立てば、いまお約束になっておるとおり、この基本計画で定められておるとおり七十五トンというのは布川で確保していただきたい。これは私は、私自身は、農業水利を守る立場の男ですから当然の要求なんですが、しかし、私も農業用水オンリーで、それじゃ東京都の一千万人の人口の飲み水はどうでもいいんだ、そんなことは毛頭申し上げません。だから、七十五トンが確保できないときもそれはあるでしょう。あると思いますよ。それを無理して七十五トンどうしても流さなければいかぬ、東京都のやつを犠牲にしてでも七十五トン流さなければいかぬ、そんなことを申し上げるのじゃなくって、できるだけ七十五トンは確保していただきたいが、切れるときもある、そのとき五〇〇PPMを割りますから、何かそこで河口ぜきの操作なり、あるいはまた河口ぜきだけでなくても、黒部川等の利用によって、何とか農業水利に不安がないようにしていただきたい。これは私のほんとうの願望なんですよ。  それで、建設省のほうで黒部川の——大体、黒部川の淡水化導入事業という、こういうことで請願が実は出ておるんですが、その黒部川の淡水化ということで何か調査をされておると聞いておるんですが、どういう計画か、それでどのぐらい進んでおるかということについて、ひとつ具体的にお話しを願いたいと思います。
  167. 松村賢吉

    政府委員(松村賢吉君) 河口ぜきと関連いたしまして、黒部川から大利根用水あるいは銚子市の上水道、これらが十数トン取られておるわけでございます。それで現在、渇水時の塩分濃度が高くなるということでただいまの問題が起こっているわけでございますが、これはわれわれのほうといたしましては、河口ぜきの操作ということをさらに極力改善するということによって一応の解決をしたいと思います。しかし、これのみで十分であるという保証もいまはないわけでございますので、やはり黒部川の淡水化と申しますか、ということは当然必要かと思います。  それでまた、黒部川自体について言いますというと、単に淡水化ということだけではなくって、やはりこの黒部川自体の河川改修と申しますか、非常に内水対策の必要とされているところでございます。それで、これの内水面の対策上のいろいろ問題もあります。また、黒部川を一つの調整池と申しますか、こういうことによってさらに利水面の強化をやろうという構想も千葉県あたりで持っておるようでございます。それで、この構想全体といたしましては、現在は千葉県が主体になりましてこの調査をやっておるわけでございまして、建設省といたしましては、一応のこの千葉県の結果、これを見まして、われわれのほうとしてこれをどういうふうに進めていくか、この態度をきめていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  168. 梶木又三

    梶木又三君 そうすると、いま千葉県が調査をされておる段階で、建設省にはまだ上がってきてないと、こういうことなんですね。ところが、先ほど申し上げておる十七の土地改良区ですね、それから、それだけでなくて今後まだ——この間、基本計画で新規利水入りましたね、下流で。ああいう方々は、やはりこの黒部川の事業を早くやっていただいたら、何もかも円満に解決するのだという、こういう気持ちを持っておられるのですよ。私はしょっちゅうそういう話を聞いておるのだ。私は、黒部川のどういう工事をやられるかはいま初めてお聞きして、いまお聞きしたけれども、具体的にどうやられるのかというのは、あまりまだわからんけれども、まだ十分私理解できないのですけれども、とにかく、あれさえ建設省が早くやっていただいたら、下流の各種の水利は円満にいくのだという強い希望が出ておるのですよ。だから、いま千葉県の構想だというお話なんだけれども、ひとつ早く建設省で取り上げていただけないかと思うのですが、その点どうですか。ひとつ局長の決断いかがか。
  169. 松村賢吉

    政府委員(松村賢吉君) ただいま千葉県で調査している段階でございますが、これの内容につきまして、まだ公式のはっきりしたまとまりはもちろんないわけですが、まあ部分的にはこうしたらどうかという構想等については、内々相談も受けておるわけです。それで、これの一応の一つのまとめがいつごろになるか、おそらくまあ目標としては、ことしの夏ぐらいまでを目標にしてやりたいというような意向かと存じますけれども、はたしてまとまるかどうかはっきりしませんけれども、こういうものと関連いたしまして、われわれのほうとしてもこの目標をどういう形でまとめていくか、これを結論を出してやっていきたいと思います。もちろん細部の点については、その後さらに調査する点があると思いますが、基本方針をきめていきたいというふうに考えております。
  170. 梶木又三

    梶木又三君 大事業ですから、ぱっぱぱっぱ簡単に割り切ってできるものじゃないということ、これは私もわかります。ひとつ何とか早く県のほうから話を聞いていただいて、これは利根川だから、事業をするのはやはり直轄事業でやっていただかなきゃならぬのじゃないかと思うのだけれども、それはおたくできめられることだけれども、いずれにしても、ひとつ早く意見を聞いていただいて、建設省としてのこれは方針を出していただきたいと思うのです。黒部川のこの淡水化事業をやれば、水利用がもっともっとうまくいきますよ。利根川の水をむだにすることなくやるためには、やはりこの事業をやっていただいたら非常にいいんじゃないかと、こういう気がするのですよ。  それから最後に、いままでお話ししたように、河口ぜきをつくったと。そういうことであると、河口ぜきの直上流の住民は、先ほど申し上げたように、もう河口ぜきさえつくってもらったらわれわれは塩分から救われるのだという、みんなほんとうに素朴な気持ちを持っておるのですよね。その気持ちがこわされたら非常な反発が出てくるのですよ。それで、いま建設省では大きな河川にだいぶ河口ぜきを計画されておりますが、私は、これはほんとうに水利用から見ればたいへんいい仕事だと思うのだ。だから結局は、その漁業補償等でいろいろ問題があるからということで、当初のぴしゃっと締め切るというようなことができないとか、いろんな原因のためにこんなことが起きると思うんですよ。それはそれでやむを得ないと思いますが、しかし、いずれにしてもみんな、くどいようだけれども、河口ぜきつくってもらったほうが、私どもは塩害が救われるのだというような気持ちをほんとうに持っておるのだから、この気持ちをそこなわないように、ひとつ御努力願いたいと思います。それから、それについて今後やられるもので、どういうふうなお気持ちでやっていただくか、ひとつ御見解を。
  171. 松村賢吉

    政府委員(松村賢吉君) 河口ぜきをつくりまして皆さん方に喜んでいただくということが、一つの私どもの使命でございますので、これにつきましては、やはり地元の既得水利権者でございますか、こういうものの御意見も十分尊重いたしまして、管理規程その他にも反映さしていきたいというふうに考えております。ただ、問題になりますのは、この河口ぜきそのものが、いわゆるこれによって既得権益を侵害するというものではなくて、プラスの面でございますので、これは権利侵害ということではないと思いますけれども、ただし、これによって農業取水と申しますか、農業取水に限りませんが、既得の水域を有効に使うということが河口ぜきの大きな目的、唯一と申しますか、治水上の問題ございますけれども、利水面の一番の目的でございますので、ぜひこれが完全になるように、努力をさらに進めていきたいというふうに考えます。
  172. 梶木又三

    梶木又三君 ぜひひとつそういうふうにやっていただきたいと思います。  そこで最後に、冒頭申し上げたように日経の新聞、私は、失礼な言い方だけれど、こういうお気持ちであれば、このとおりであれば、あなたのさっきの話は違ったけどね、義務づけるとかなんとかいうような、お役所がこういうお気持ちだったら、各種利水の円満な調整というのは私は絶対にできないと思う。やはりもう少し既得権者等の気持ちをそんたくしていただくだけの謙虚な気持ちと雅量を持っていただきませんと、これはもうほんとうにむしろ旗立ててでも反対しますよ。この間も言ったんだ、これ。このまま建設省がいままでどおりのことでやるなら、米運動だけじゃない、一万町歩のわれわれは全部むしろ旗立てて水資源建設省にどなり込むんだと、ほんとうにやったんだよ。私らとめとるんだからね、そんなばかなことはしなさるなと。だから、ますますこういう記事を農民が読めばカッカきますよ。  私は、これは後刻やるんだが、先ほど約束どおり、この資料いただいてから私、別の機会にやらしていただきますが、やはりもう少し農業水利も上水道もいろんな利水の者の立場を、気持ちを尊重していただいてやっていただきたいと、こういうようなものをつくっていただいて、もちろんおたくは河川管理者だから、それからまた非常事態が起きると思います、非常な渇水時期にね。それはおたくで調整してもらいませんと調整できません。それは十分私もわかる。しかし、その調整するという気持ちの中にも、気持ちの持ち方で、ほんとうに心からその調整に従うか、問題はそこなんですよ、私の言いたいのはそこなんだ。そういうつもりで進んでいただきたいと思います。  最後に、それについて、今後どういうお気持ちでこの河川法の五十三条の三項、一項、二項でだめだったときに三項ね、あれをどういうふうに運用されるか、これについてひとつお気持ちを伺いたい。
  173. 松村賢吉

    政府委員(松村賢吉君) 五十三条の第三項というのは、いわゆる非常規定でございます。あくまでも一項、二項、こちらのほうで利水者相互間の協議と申しますか、これによってものごとを解決していこうということでございますので、われわれといたしましても、この協議でもって話をまとめていきたいということに変わりございません。後ほどまたいろいろと御議論になると思いますが、渇水調整協議会という趣旨も、その協議を進めていきたいということで一つのその場をつくるということが主体でございます。
  174. 梶木又三

    梶木又三君 河川局、けっこうです。
  175. 小野明

    主査小野明君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  176. 小野明

    主査小野明君) 速記を始めて。
  177. 梶木又三

    梶木又三君 若干時間がありますから、今度は構造改善局長にひとつお尋ねしたいのは、この予算説明の三十八ページ、自然休養村の整備の中で説明の中の後段のほうに、「自然休養村の整備については、第二次農業構造改善事業の一環として、事業内容の拡充等を図り、これを推進する。」と、こうあるんですがね。それでまあ今度だいぶん積極的に取り組んでいただいたわけで、非常に私けっこうだと思っておるんですが、何か具体的に、というのは、自然休養村はいままで指定だけだった。そうすると、各町村で指定していただくのもありがたいと思っておるんですよ、みんな感謝している。ところが、指定だけで事業が伴わない。これじゃあ十分じゃないわけなんですよ。それで前々から、私、去年もだいぶんお願いしたんだ。今度やっとやっていただくようになって、私、喜こんでおるんですが、中身、どういうふうなことをやっていただくのか。
  178. 大山一生

    政府委員大山一生君) いままで自然休養村に指定いたしました場合には、二次構造のワクの中で、多少の運用の中で整備をはかってきたわけでございますが、今度は自然休養村の整備事業の内容を充実いたしまして、二次構造改善事業の一環というかっこうで積極的に実施してまいる。簡単に申しますならば、二次構造改善事業という庭の中に別むねとしての自然休養村という家が建った、こういうふうな趣旨でございます。自然休養村事業としての内容といたしましては、補助三億、それから単独融資一億、平均いたしまして四億というワクで、全体として二百地区について実施してまいる、こういうふうなことでございまして、内容的には、現在いろいろと詰めているわけでございますけれども、要するに、農山漁村の生産基盤、あるいは近代化施設の整備、あるいは環境の保全、こういったようなことによります農山漁村地域の整備、あるいは農山漁業用の資源の多目的活用といいますか、農家あるいは山林家が自分の持っている資源をみずから供出するかっこうで多目的に活用してまいる、こういったようなことを内容として今年度から実施をいたしたいと、こういうふうな内容でございます。
  179. 梶木又三

    梶木又三君 次は、細かい問題を若干次々に聞きますが、予算説明の三十五ページ、農村地域への工業導入なんですがね、これも私、昨年だいぶんいろいろと御質問申し上げて、積極的に取り組むという御答弁いただいたんですが、ことし、この総需要抑制の中で、昨年が六億八千万に対してことし十七億八千万と、非常に伸ばしていただいて喜こんでおります。これはほんとうにいい仕事なんですよ、もう言うまでもありません。ところが、最近の経済状態、だんだん不況の波が押し寄せてくるという、こういう事態で予定どおり——私は、ほんとうはこういう事態になればなるほど、こういう事態であればあるほど、むしろ農村に対して収入の機会を得るように日本全体の経済構造を変えろという、こういう時代だからやってもらわなければならないと思っておるんですが、しかし、現実にいま、いろいろ会社もみな不況で困っておると、むしろこっちの会社をつぶしていなかへ持っていこうと、こういうことで、あるいはまた、新設して農村に工場をつくろうというような余裕がいま工場にあるかどうか、私よくわからぬのだけど、そこで相当伸ばしてもらったんだが、この十七億はうまく消化できるかどうか、この見通しなんですがね。
  180. 大山一生

    政府委員大山一生君) 御指摘のように、農村工業導入というものが農業の就業構造の改善というようなことのために、あるいは農家の出かせぎの解消、あるいは過疎に悩む地帯の振興と、こういうことから、農林省といたしましては、今後とも積極的に進めてまいらなければならぬと、こういうふうに考えているわけでございます。  ところで、最近の経済情勢の変化というようなことから、若干、農村工業地帯の導入についての動きが低調になっているんではないだろうかというような私たちも心配を持っております。そこで、農村工業導入センターというのがございまして、これは民間資本といいますか、国からも金を出しておりますが、いわばそこに出ようとする業者のほうが自由に相談に来ることができる、こういうかっこうでセンターがございますが、センターに対します問い合わせ、あるいは調査依頼と、こういったような件数においてはあまり変わらないというような現状でございます。したがいまして、われわれがそういう点から見て、そういうことも踏まえ、それからまた、いままで農村工業を導入されております地帯というのが、東北でありますとか、北陸でありますとか、比較的電力事情の豊かな地帯であるというようなこともありますので、そういうような立地の有利性ということも利用する中で、今後とも農村工業の導入の積極的な推進ということをはかってまいりたいというふうに考えておる次第であります。
  181. 梶木又三

    梶木又三君 まあよろしくひとつお願いします。  最後に、今度は三十九ページ、農山漁村の同和対策事業なんですが、これは構造改善事業だけでなくて、公共事業全般が横並びのときに、昨年二十二億が今回三十三億と、一四五%の伸び、相当な伸びを示しております。しかし、特に兵庫県では、いま同和対策の基盤整備が非常に多いんですよ。それで、あと五年間でこれがなくなるわけですね、同対の事業が。そういう関係もあって、非常に要望が多くなってきて、それでこちらをやればこちらが要求する、こちらが要求すりゃまたこちらが要求すると、こういうかっこうで、町村長がいまほんとうに困っておるんだ、要望が多過ぎて。それでもうものすごい突き上げを受けておるわけなんですよ。それでことしは、これはもうきまったことですから、これ以上どうもできませんが、ひとつ来年は、あともう五年しかありませんので、来年からはもう少し伸ばしていただかないと、町村長が困るんだ、非常な突き上げで。それだけまた仕事がいいということなんですよね。同和のおくれた地帯を引き上げるための非常に要望の強い仕事なんですよ。だから、五十年度の予算、これに対してもう鬼は笑わないんだ、来年のことでもこれは。笑うどころか、鬼がやれやれ、やれやれと言ってきておるんだ、いま私のところへ。これに対してどういうお考えか、ひとつお尋ねして終わります。
  182. 大山一生

    政府委員大山一生君) 四十四年に同和対策の長期計画、これを五十三年までというかっこうでつくったわけでございます。その場合の補助対象事業総額としては六百九十三億、こういうふうなかっこうでいっておるわけでございます。過去の伸びから見ますと、いままでに大体三割ぐらいが済んでいると、こういうふうな状態でございまして、四十九年度予算で申し上げますと、公共事業その他が非常に総需要抑制というような環境の中にある中で一四五%の伸びと、こういうふうなかっこうで、まあ非常に伸びは相対的には高いわけでございます。いずれにいたしましても、この伸びでいくならば、五十三年におきます長期計画の総事業量、これは消化するのに十分ではないだろうか、こういうふうに考えるわけでございますが、いずれにいたしましても、最近、非常に需要の多いというようなことを踏まえまして、来年度の予算につきましても、ことしと同じように伸びの上昇ということにつとめたいというふうに考えております。
  183. 梶木又三

    梶木又三君 一言だけ。  それはわかるんだ。いまの計画でいけば、五十三年で全部終わるということはわかるんですよ。ところが、私は将来落ちてもいいと思うんだ、いま出ておるんですよ、いま。だから、こういうふうに上げていただくんじゃなくて、ぼーんと上げて、あとはもうダウンしてもいいと、これはどうかという——むずかしいかね、むずかしければ、答弁けっこうだけれども、希望だけ何しておきます。
  184. 大山一生

    政府委員大山一生君) 御意見として承っておきます。
  185. 鈴木強

    鈴木強君 私は、農林関係の物価問題と、それからお米と、それから競馬の関係ですね、少しお伺いしたいと思います。  実は、先般農業白書を拝見しまして、私も農村の出身ですから、いろいろと心を打たれることがたくさんございました。いま、農村に行ってみますと、おじいさん、おばあさん、若手の人がほとんどその姿を消しておると、こういう現状を思うにつけましても、いまここで、農政に対する抜本的な対策を樹立する必要があることを痛切に感ずるわけです。特に僻地なんかに参りますと、過疎化現象の中ではどうにもならないですね、畜産をしても、あるいは養豚にしてみても、養蚕にしてみても、それはもうどうにもならないです。若い青年が農業に対してもう希望を失っているような現状がございます。で、私はこのまま放置すると、たいへんなことになると思うんでございます。いま、石油危機のために、日本重化学工業、たいへんな打撃を受けておりますが、もしこれが食糧であったらということを私は非常に感ずるんです。自給率を見ましても非常に悪い。したがって、できるだけアウタルキーのできるような方向へ日本農政というものを急速に進めていく必要があると思うのでして、こういった基本的な政策の問題についてもきょうはお伺いしたいんでございますけれども、時間が制約されておりますから、大臣から、自給度農林省のほうも少し強めていこうという、そういうような方針もあるようですし、世界的なこういう気象現況による農産物の不作というようなこともありまして、いろいろと長期展望に立っての御研究もなされておるようでございますが、現状、農業白書を出されておりますけれども、まだまだ筋金が入っていない点が幾つかにございます。ですから、基本的にもう一回農村というものを見直して、それで一大抜本策を打ち立てていく必要があると思うんだが、そういうところについて、ひとつ大臣の基本構想だけ聞かしてもらいたい。
  186. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) お話のございましたように、わが国農業、これ、なかなかむずかしい問題もたくさんかかえておるわけでありますが、基本的には、やっぱり国民食糧のできるだけ安定的な供給を国内生産でまかないたい、これがまあたてまえであります。そういうたてまえで、一昨年十月、五十七年を目当てに長期見通しを立てたわけであります。そういう計画を立てましても、今度はそれから昨年に至って、世界的な天候異変等で、わが国が当然目当てにいたしておりました酪農、畜産の飼料価格が高騰してきたといったようなことで、いろいろむずかしい問題が出てきております。しかし、国内生産自給度につきましては、これは御承知のように米はああいう状態、だいじょうぶでありますが、しかし、これもいざというときのいろいろな用意のためには、できるだけ生産調整も少なくいたしまして、備蓄をやってまいるという考え方でやっておりますが、そのほかくだもの、野菜、肉類、鶏卵、そういうものを大体一〇〇%ないし八〇%の自給度を見越して、それに合わせる政策を進めていこうと、こういうことで努力をいたしておるわけでありますが、しかし、よく話に出ますように、われわれが酪農、畜産をやるにいたしましても、それを育成していく飼料作物、これが十分ではありませんことは、もう申すまでもないことであります。  しかし、私どもといたしましては、国土をできるだけ活用することに最大の努力をいたしまして、その自給度をぜひ高めてまいりたいというような考え方から、四十九年度予算でも、その手始めにいろいろ小麦その他のものに対する、草地作物等に対する助成を予算化して、そうしてそれの自給度を高めてまいると、こういうことをやり出しておるわけでありますが、それと併行いたしまして、国内生産できるものにつきましては、さらに自給度を高める努力はいたすと同時に、やっぱり不足であって、どうしても海外に依存せざるを得ないようなものについては、なるべく多角的に仕入れ先を求めるということが必要であるというふうなことで、海外協力事業団というふうな構想をもちまして、安定的に一定価格でわれわれの需要を満たすようなことを計画をいたしたということであります。そういうことと両々相まって私ども食糧自給、それから、国民の消費を安定的に供給できるようにという最終的目標に向かって全力をあげて邁進していくと、こういうことで農政を進めてまいるつもりでございます。
  187. 鈴木強

    鈴木強君 これは御所見を承るたいのがたくさんあるんですけれども、果てない論議になりますから、これはこれにしておきますが、大臣のお話の中に、自給度を高めていこうと、そういうお考え方がございますので、私も意を強うしたわけですけれども、いままではどうかすると、外国で余ったような食糧をどんどんどんどん持ってきて、そして、農村地の米を中心に米作農家というのがどうにか維持されているというような、そういう考え方重化学工業のほうにどんどん農村人口が流入していったというようなことも事実だと思うんです。ですから、ここでひとつ発想の転換をしていただいて、大臣のおっしゃるような方向にぜひひとつ強力にやっていただきたい、これをお願いしておきます。  それから、四十九年度の農林予算の中に、物価安定のための予算というのは幾ら組んでおりますか。
  188. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 事務当局からお答えいたします。
  189. 池田正範

    政府委員(池田正範君) 物価対策の中に込める予算の範囲というのはなかなかむずかしゅうございまして、企画庁は企画庁で別の試算をやっておるわけでございますが、私ども一応生鮮食料品の対策を中心にして来年度提出中の予算の中のものを集めますと、総額で四百六十億二千七百万円、対前年比で一二七・二%ということになっております。
  190. 鈴木強

    鈴木強君 それは具体的にはどういうことをやろうとするんですか。
  191. 池田正範

    政府委員(池田正範君) 具体的に申しますと、一つは生鮮食料品の対策でございまして、野菜とか、果実とか、肉とかいったものの生産と価格対策が中心でございます。それから牛乳、乳製品等の酪農対策、水産物の対策といったようなものの五つが生鮮食料品対策の柱になっておるわけでございます。  それから次は、流通機構の整備の問題でございまして、これは卸売り市場、これは中央、地方ございますけれども、卸売り市場の対策、さらに中間の流通段階、たとえば小売りセンター等を含める問題とか、あるいは新しい流通機構の開発といったような問題がこの次に入ってまいります。  それから三番目の柱といたしましては、消費者保護対策の推進というのが三番目の柱でございまして、これについては消費者に対するいろいろなPRの問題、あるいは規格をやっていくJASの問題とか、その他いろいろともろもろのものが入っているわけでございます。  あと、その他は流通、情報の問題等を含めまして、若干その他の部分が含められまして、大体合計いま申しました約四百六十億というふうに考えて、おる次第でございます。
  192. 鈴木強

    鈴木強君 それはほんとうに抽象的でわからないですね。あとでこれは時間の関係がありますから、資料として具体的に、野菜について物価安定のためにこうするのだという、そういうものを示してくださいよ。毎年毎年同じような抽象論だけを並べられて、一向に野菜が安くならない。けさも私トマト一つ買いましたら、このくらいの小さい、現物を持ってこなかったけれど、百七十円ですよ、トマト一つが。キャベツだって、このくらい小さいのがやはり百五十円ですよね。驚くですね、実際消費者の側から見ると。だから、ちょっと二、三人の家族で二千円ぐらい持っていかなければ、野菜とちょっとした肉でも買えば足りないぐらいに高くなっている、だからもう少し四百六十億というわれわれの税金を使うわけですから、なるほど去年から見てこういう成果があったという、そういうことを国民に示してもらわないと納得できないですよ。たとえば、四十八年度に盛った予算の中で、具体的に野菜対策としてこういうメリットがありましたというのがあったらひとつ示してもらいたい、具体的な例で。
  193. 池田正範

    政府委員(池田正範君) 野菜対策につきましては、全体の柱といたしまして生産対策とそれからまん中の価格対策、それから流通機構の問題、さらには消費の問題とこう分かれるわけでございますが、ただいま御指摘のように、野菜というのが非常に例年フレが大きいわけでございますので、したがって、何と申しましても価格の安定をさせることが第一でございます。そこでこの価格の安定をさせますためには、まず、生産されましたものが計画どおり出荷できるような形に整えるということで、野菜の指定産地というものの制度を昔からやっておりますけれども、この指定産地をどんどんふやしてまいりまして、来年度は全体で約八百カ所前後の指定産地を指定することにいたしております。  それからさらに、その指定産地から出荷をいたします先が指定消費地域ということになるわけでございますが、指定産地と指定消費地域とをうまく結びつけて、そうして、指定消費地域に入ってまいりますところの出荷が計画的に入ってまいりますようにするというのが、この制度の仕組みのみそでございますけれども、この入ってまいります指定消費地域、これは従来から十一地域でございましたのを、さらにもう一地域追加いたしまして、それから指定消費地域だけでなくて、この指定出荷地域から生産者団体の共同出荷によって指定消費地域に入ってまいります野菜、その割合をどんどんふやさなければいかぬ。ふやすことによって入ってまいりますものが暴落をいたしました際には、これを下ざさえするという価格安定制度に結びつけるということを考えております。したがって、今回も前年度に引き続きまして、さらにその対象野菜の数量をふやすということを考えておるわけでございまして、指定産地から指定消費地域に入ってまいります野菜の中で、この価格安定対策のレールに乗りますものの割合を漸次ふやしまして、大体現在の段階では六割程度をカバーする、将来的には七五%までそれをカバーさせよう、こういうふうな計画的な進め方で現在考えておる次第でございます。  それから、これらの大きな筋道とあわせまして、実は産地がだんだん都会地から遠ざかりまして、これは地価その他の関係もございますけれども、端境期におきますところの近郊蔬菜の供給が非常に不安定になってきておるわけでございます。そこで、いわゆる大きな集団産地というものだけを対象にいたしておりますと、産地が非常に不安定になりますので、したがって、来年度からはいわゆる大きな、一団地五十ヘクタールといったような団地でなしに、もっと小さい近郊の既成産地というものを経過的には助成金をつないでつないでいくとか、あるいはさらに新しい新産地を育成していくといったような予算も、実はこの中に入っておるわけでございます。さらに、いま先生指摘のトマトにつきましては、たとえば加工用トマトの需要が非常にふえておるというようなことで、加工用トマトのための緊急生産対策のための予算を新しく見込むといったような諸種のことがございますが、項目が非常に多岐にわたりますので、あとで御指摘のように中身のわかるような資料にして先生にお届けいたしたい、そういうふうに考えます。
  194. 鈴木強

    鈴木強君 それで、昨年投機防止法が国会で成立しましたね。それで、あなたのほうでは七月の十四日に食用油と、それから同日に合板、それから四十九年二月一日に精製糖、それからしょうゆと、これが生活関連物資として指定されたわけですね。そうですね。——それで、特に七月十四日食用油、それから合板ですね、これについての立ち入り検査その他法律の定めるところによって行政がどう動いたか、そういうことをひとつ教えてもらいたい。
  195. 池田正範

    政府委員(池田正範君) 昨年来、いま御指摘の食用油及び合板につきましては、買い占め法の指定をいたしまして以来、買い占め法に基づきますところの、当初は三条調査を実施いたしました。特に本年一月の十七日から約一カ月間にわたりましてこれらただいま御指摘のような品物に加えまして、しょうゆとか砂糖とかいったもの全般にわたっての在庫調査を一斉に実施をいたしたわけでございます。その結果、大体現在まとまっておりますが、実はきょうその資料を持ってきておりませんけれども、大体のところを申し上げますと、どれにつきましても、特にむしろ年末にかけて在庫が急速にふくらんだという形ではなくて、むしろ非常に価格が買い急ぎと申しますか、実需と申しますか、これは何も消費者だけのことじゃございませんで、末端の需要者層のことを言っておるのですけれども、そういった実需の高まりということに対応してかなり急速に品物が動いておる。逆に、回転が非常に価格の高騰とともに早まったという形が出てまいっておりまして、むしろ滞貨して、それを押え込んでもうけるという形よりも、逆にどんどんつくってどんどん高い値で売っていったという形態が出ておったのが、私どもの調べました形としては、一つの特徴であったように思うわけでございます。  それから、ただ問題は、その物によりまして、たとえば同じものでございましても、合板のようなものは、これはほとんど問屋の段階では手持ちをしないというような従来からの——ああいう非常にラフなかさばるものでございますから、したがって、そういう形のものは予想どおりのことでございましたけれども、逆に、たとえばしょうゆとみそなんかを考えてみますというと、ものによっては、逆にみその段階では、これは卸段階で持っておる手持ちというものが比較的多くて、小売り段階で流すのが比較的少ない。それから、しょうゆはその逆の形をとっておるというふうな、それぞれの物別の消費段階における在庫という姿はあったわけでございます。それから、これらはいずれも通常の行政調査によってやったわけでございますけれども、そのほかにも一、二たとえば伊藤忠でこれは野党側からも御指摘いただいた経緯もございますけれども、これは通産省の調査と共伺いたしまして、私どもも伊藤忠の在庫調査の中で、この合板あるいは油といったような対象物については、これは五条の立ち入り調査をいたしまして、一応検査をいたした実績もございます。また、その他関西方面で幾つかの、二、三の営業倉庫等に対しましても、これは大阪などでは合板でございますが、それから兵庫県において食用油といったようなところについても、五条調査をいずれも実施いたしております。  大体、現在までの状況かいつまんで申し上げますと、そういうようなことでございます。
  196. 鈴木強

    鈴木強君 買い占め、売り惜しみ防止法が公布されたのが七月六日ですね。それから、同法の施行令が出たのが七月十四日、そして、七月十四日にたとえば食用油と合板が指定物資になったわけですね。いまここにちょっと私資料をいただいたのがあるのですが、ことしの一月三十一日までの実施状況というのがございます。それを見ると、それぞれ立ち入り調査をしてもらっているんですけれども、一体これはいつやったのか。一月三十一日までですから、二月やったのか一月やったのかよくわかりませんけれども、これ、食用油と合板は少なくとも昨年の七月十四日に指定されたわけですから、食用油の場合、関東で十一カ所、十五人と、それから東海で六カ所、九人、近畿が十三カ所、十六人、それから中国、四国が一カ所、三人、九州が六カ所で六人と、合計三十七カ所、四十九人を動員して立ち入り検査をやっておられるんですが、これはいつやったのですか、昨年度中にやったのは幾つありますか。
  197. 池田正範

    政府委員(池田正範君) 食用油の調査につきましては、先ほど御説明を申し上げましたように、一月から約一カ月間に実施をいたしたものが、ただいま先生のお手元にいった資料でございます。
  198. 鈴木強

    鈴木強君 私が聞きたいのは、一月半ばからやったんでしょう。その前にやれなかったのでしょう、どうして七月十四日に指定されて、やっぱり何だかんだ言ったって、食用油が足りないし、国民はたいへん迷惑したわけですよ。だから、当時一生懸命これやってくれば、よくやったとわれわれ推賞してあげるのですよ。ところが、一番大事なときにやらないでおいて、一月の中ごろ、もうそろそろ需給の調整ができたころになって、このこの立ち入り検査してみたって、そんなものはおまじないみたいなもので、ひとつも行政の妙味というものはないですよ、これは。そこを私は言っているのだ。合板の場合もそうですよ、一月半ばごろからやって何の効果があるんですか、しかも、これは三条、五条の問題もありますけれども、行政指導としてもあれでしょう、どうして昨年できなかったのですか。
  199. 池田正範

    政府委員(池田正範君) 食用油は、これは実は大豆とともに昨年の七月に指定をしたわけでございますけれども、そのときの背景になりましたのは、去年の春の御承知のとおりの大豆、とうふ騒動に端を発しまして物不足というものの先がけをつくったために、どうしてもこれは買い占め法の中でまっ先に指定しようということで、したわけでございます。しかしその後、実は政府が五万トンの放出をするといったような思い切ったこともやりました関係もございまして、急速に大豆の値段が鎮静化し、他の食品の価格の値上がりもとまったわけでございます。ただ、その後思いがけなくアメリカの大豆の輸出規制というのが夏場に行なわれた。そこで一ぺん上がりましたけれども、これも八月の終わり解除ということと同時に下がってきたということで、現実にこの大豆の値段が上がり、それにつれて大豆油の値段が急激に上がり始めたというのは、実は砂糖よりももう一カ月ほどずれておりまして、十一月の末から十二月にかけて実は上がり出したわけでございます。  そこで、私どもといたしましては、それらの状況を行政指導でつないできたわけでございますけれども現実に在庫状況を調査しなければいかぬというんで、一月の半ばに調査に乗り出したというのが実態でございまして、これは総理府の小売り物価調査等をごらんいただきますと、大体この十一月の水準までは食用油のごときは、千四百グラムのポリびんに入りましたものの通常の品物でございますけれども、ほとんど百円ないし百一円程度のところでずうっと低安定をしてきております。むしろそれが急激に上がり始めましたのは十二月からあとでございますので、私どもといたしましては、御指摘のように、もう少し早ければなおよかったという気持ちはむろんいたしますけれども、全体としてやはりそれまでは、夏場とか、あるいは秋口はまだそれをやる必要がなかったというふうに考えておったわけでございます。
  200. 鈴木強

    鈴木強君 それは重大な発言ですよ。少なくとも大豆にしても、大豆油にしても、大豆油かすにしても、七月十四日に買い占め売り惜しみ防止法案によって指定物資として指定したんじゃないですか、これ。あなたが言うようなことであったら指定する必要ないんだよ、これは。指定する必要があったから指定したんでしょう。とうふがなかなか食えないこともありましたよね。そうでしょう。あなた方がみずから緊急生活物資として指定しておきながら、いま話聞いてみると、指定したことも間違いでしょう。指定するには、指定するだけの買い占め、売り惜しみ防止法に必要があったから指定したんでしょう。そうであれば、あなたのいまの説明は納得できないですよ、これは。やっぱしその品物の流通についても絶えず監視していただいて、必要があれば立ち入り検査もしていくという態勢になきゃいかぬでしょう。それを一月の半ごろまでになって、関東だけでも十一カ所、さっき申し上げたように全国三十七カ所、四十九人を動員して一月の半ごろやっているんですよ、これは。だから、そういう点はやっぱり行政上のこれは姿勢の問題もあるだろうし、いろいろいきさつもあったかもしれませんけれども、われわれから見ると、あの大手商社がああいう反社会的な、犯罪的な行為をしたときに、これを取り締まる法案がありませんからと言って政府は逃げた。だからわれわれはその法律をつくったんですよね。つくって、それによって指定した物資について、何ら一度もやらなかったというようなことはおかしいじゃないですか。もし、あなた方がその必要がなければ、なぜ指定したかと私は逆に聞きたい。それはだめですよ、あんた、そんな答弁じゃ。
  201. 池田正範

    政府委員(池田正範君) 必要がなかったと申し上げたわけではございませんで、必要は大いにあったわけでございますが、必要ありましたけれども、あの段階で私どもとしては、全体の流通段階から消費実需段階まで集めまして大豆の需給協議会をつくりまして、そして、油なりかすなりというものの値段が不測に上がることを防ぐというふうな形の行政指導を徹底的に行ないました。そのためにアメリカの大豆輸出規制というものの非常にむずかしい問題があったけれども、この秋口まで値上がりが大きくせずに済んだということを申し上げたわけでございまして、決して指定をする必要がなかったというふうに申し上げたのではなかったわけでございますから、御了承いただきたいと思います。
  202. 鈴木強

    鈴木強君 ですから、秋口になって、たとえば十二月に値段が上がってきたと、やっぱりこれは買い占め、売り惜しみの傾向ですよ、正直に言って。値段をつり上げるためにどこかの倉庫に眠らせるというような、そういう方法をとったわけなんです。だから、それはその時期にどうして立ち入り検査をしてくれなかったんですか。一月の中ごろになってやったというのはどういうことですか。その一番困った時期にどうしてやらなかったんですか。これは行政の怠慢じゃないですか。
  203. 池田正範

    政府委員(池田正範君) 一月の半ばから実施をいたしましたが、調査の対象といたしましては、十月、十一月、十二月のそれぞれの末の時点におきまして、対前年で通常在庫に比べてどの程度の変動があったかということを、全部実は立ち入り調査をいたしました。その結果、先ほど申し上げましたように、在庫そのものについては大きな変化は見られなかった、通常在庫よりも減っておるという形が逆に出ていたと、したがって、価格の値上がりについては、あの時点において、むしろメーカー段階でかかえ込んだためにこの価格がつり上がったという形ではなくて、先ほど申し上げましたような、かなり急激にふくらんだ仮需要というものに対応して、かなり思い切った値段で売り込んでいったというのが、どうもあの時点における実態の姿であったというふうに私どもも想定をしておるわけでございまして、実は、その時点におきますところの月別のデータもございますので、御入用があれば差し上げたいと存じます。
  204. 鈴木強

    鈴木強君 それは言いのがれというものですよ。あんた、一月の中ごろ行って、九月、十月の在庫がどうあったかなんて調べてみたって、それは向こうは上手なんだから、あなた方よりも。そういう責任のがれでなくて、やはりその時点に立ち入り検査ができませんでしたのはこういう事由でありますと、調査官というかな、その価格調査官というのは何人いたんですかね。その人たちがやはり手分けをして、そういうときに、やっぱり法律をつくったんだから、値段が上がったら行って調べてみるというのはあたりまえじゃないですか。そのためにつくった法律でしょう。それを忠実に履行していないじゃないですか。これは私は小さいことのようですけれどね、やっぱり法律というものがなければないと言って責任のがれのようなことを言ってしまう。つくれば、この法律を忠実に実施してくれない。それじゃ何のために法律をつくったかということをわれわれは言いたくなるわけですよね。だから申し上げているんで、これはもう行政上いろんな問題があったかもしれませんけれども、やっぱり非は非としてちゃんと認めていくべきですよ、これは。これはしょうゆだってそうだよ。これは大臣どうだね。
  205. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) お話のとおりだと思いますが、実は昨年、とうふの問題が起きまして、そのときに私どものほうで——それはまあ政府ではありませんが、私、まだ政府に入る前でありますが、これはやっぱり油の関税の減免措置を講ずるということが必要だというふうな声が一方において出てまいりました。そのとき、食用油のメーカーが協力してくれまして、とりあえず二万トン出してくれました。そのとき、さらに必要であるというので、五万トンの用意をまたいたしたことがありますが、結局、とうふ屋さんを集めて聞いてみると、消費し得たものは二万トンで済みましたと、まあそういうようなこともございましたので、私は農林省に来ましてから、流通局長は——そのころちょうど田中総理も、立ち入り検査をして現物を突きとめるようにという指令を出しておられた最中でありますので、農林省の流通局長も、そういうことにつきまして私にも相談があったのでありますが、私は、もうしばらく様子を見て、行政指導でやってみたらどうかということを言った記憶があります。で、結局、最終的に、その現物につきましてはたいした間違いはありませんでした。やはりどうも特別な買い占め、売り惜しみのようなものもございませんでした。一時油が非常に影をひそめてきたことは事実でございます。  そういうことで、たいへん発動がおくれたんじゃないかという先ほどのおしかりは、実は、流通局長は私にもっと早く申し出たんでありますが、その前の年に二万トンの豆を出してもらいたいと言ったのに五万トンも出した人たちだから、こういう情勢であるからして行政指導でいいんじゃないかというふうなことを言っておったのは私の責任でありまして、そういう点で少し流通局長は不満のようでありましたが、若干おくれたという次第でありまして、その真相をざっくばらんに申し上げて御了解を得たいと思います。
  206. 鈴木強

    鈴木強君 局長にちょっと私ことば過ぎるくらいのことを申し上げて、いまの事情を聞いてみるとたいへんすまなかったような気もするんですけれども、これはあなた少なくも農林省の親玉である大臣が、せっかく局長が法律に基づいてやろうというその意欲をそぐようなことをやられたことは非常に遺憾ですよ。ただ、ざっくばらんにあなたがここで言うから、今後もそういうことのないように、やっぱり法律をつくったからにはその法律を忠実に施行してもらわないと、履行してもらわないと国民は納得しませんよ。何かカモフラージュして、いまになってからやってやろうなんという、その数だけふやして資料を出しているようなそういう印象を受けるもんですからね。  今後、これは大事なところですから、これからいろいろと石油が上がり、電力がまた上がってくる、私鉄が上がってくる、いろんなものが上がってきまして諸物価に相当影響してくると思うんです。確かに三月の卸売り物価なり消費者物価を聞いてみますと、若干鎮静のきざしはございますけれども、まだまだ安心できない。それだけに今後農林関係においても、それは通産もそうですし経企もそうですけれども、やっぱりよく連携をとっていただいて、価格調査官も何か七百三十九名に全省合計するとふえて、専任も百七名になったそうですから、ひとつ機動的な運営によって、少なくとも三つの法律に反して、反社会的な、あるいはもうければいいんだというような、そういうやり方をするものについては、徹底的な取り締まりをしていただくようにお願いしたいと思うんです。これは大臣の責任だな。
  207. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) いまのお話の、つまり大豆のあとは、これはやはり局長諸君の進言をそのまま実行するほうがいいんだなということで、いまは私自身がもうその方針で部内は一致結束してやっておりますが、農林物資に関しては大体ただいまのところうまくいっていると思いますが、なお今後十分そういう点についてしっかりやってまいるつもりであります。
  208. 鈴木強

    鈴木強君 それから行政指導をされる場合に、たとえばこんな例があるんですね。  とうふの値段の問題で、とうふが五十円で油あげが二十円という値段だったのですが、それを少し下げなさい、こういう行政指導をしていただいた、これはけっこうなんです。ただし青森県なんかですと、実際にその当時四十円のとうふだったのですね、ところが五十円に——五十円が四十円というようなところと、逆のところとあるわけですから、安いところは逆に今度五十円に高値安定みたいな形で行政指導が反作用するような、そういうところも出てきたわけですね。ですから、ここのところは非常に御苦労が要ると思いますよ、全国画一的なことでないですからね。その地域地域で違うでしょうから御苦労がありますけれども、この辺はもう少し県段階などとも十分連絡をとっていただいて、せっかく四十円で安値で売っているところが五十円で売るような、そういう形にならぬようにくふうをしていただきたいと思います。これは一つの参考として流通局長も今後それをやる場合に実情を把握してもらいたいと思います。
  209. 池田正範

    政府委員(池田正範君) とうふにつきましては、実は、ただいまも御指摘のように、とうふの大きさがまことに全国まちまちでございまして、値段を言っただけでは高いのか安いのか実はわからない。そこへとうふの、これは俗に言えば濃さということになるんでしょうが、水分の含有量がまたまちまちでございまして、しかも水分が少なければ喜ぶかというと東京の人なんかはあんまりばさばさしたとうふは食べない。北海道へ行くとまたばさばさしてないとうふじゃない。こういうことがございまして、どうも価格の水準をほとんど通常ではきめにくいほどの差がございます。  したがって私どもといたしましては、通常の水準で実はそれを示しました。そのことが逆にあるいは御指摘になったような混乱の一つ、地域的には問題が起きていると思いますが、いまより上げていいという指導をした覚えはございませんので、そこいらは十分気をつけて指導してまいりたいと思います。
  210. 鈴木強

    鈴木強君 それで時間がもうなくなりましたから、もう少し私はお伺いしたい点があったんですけれども、また別の機会に譲りたいと思います。  そこでお米のことですけれども、自主流通米制度ができてから、あの当時食管との関連で米が高くなるんじゃないかとわれわれ心配したんですけれども、実際は、多いか少ないかは別として、やっぱり上がりぐあいになっているんですよ。最近、標準米と自主流通米がどのぐらいの値段で東京で売られておりますか。できたら自主流通米制度ができてからの各年ごとにどういうふうに値段が推移しているか、それも一つ教えてもらいたい。
  211. 三善信二

    政府委員(三善信二君) 自主流通米の消費者価格の推移でございますが、御承知のように自主流通米は四十四年の九月から発足したわけでございます。四十四年ごろの価格、十一月、十二月ごろの価格をとってみますと、大体千八百円ぐらい、これは精米十キロでございますが、千八百円ぐらいになっております。それから四十五年に入りまして千八百円から千八百三十六円というようなことで推移をしております。それから四十六年が大体千八百七、八十円から九十円までということになっております。それから四十七年でございますが、四十七年には政府の売り渡し価格を上げましたので、そういう関係もございまして二千百円程度になっております。それから四十八年、これも御承知のように政府の買い入れ価格を上げましたし、それに伴いまして自主流通米のコストアップもございまして、大体二千百円から二千二百円、二千二百九十円、十二月は二千二百九十一円という数字も出ております。それからごく最近でございますが、四十九年になりましてからは大体二千三百円、二千三百二円とか三百八円とか三百十一円とかということで、一、二、三月は大体横ばいで、あまり変化はございません。  御承知のように標準価格米は、物統令がはずれましてからで、現在、大体千六百円で全国ほとんど動かず、価格は変わっておりません。そういう状況になっております。
  212. 鈴木強

    鈴木強君 私の調べたところによりますと、標準米は大体千六百円で、これは大体いいですね。ただし自主流通米の場合には二千二百円というのと、それから二千四百円、それから二千七百円、それから越後米といっている米ですが、これが二千八百円という値段になっていますよ、これは間違いないですよ、現実に調べた値段ですから。いま長官が言われたような値段はどこの値段かよくわかりませんけれども、私の言ったのは東京の最近の値段なんです。最近といっても二十日ぐらい前ですけれども。ですからやっぱり物統令がはずれて自主流通米になった場合に値段はやはり高くなっているということは事実ですよ、これは認めなきゃならぬでしょう。ですから皆さんが、いやそんなに上がらないと言ったのはやっぱり見通しの誤りじゃなかったですか、何とかこれをひとつ安くしてもらいたいですね。
  213. 三善信二

    政府委員(三善信二君) 全国平均でいま申し上げましたが、たとえば県によりまして生産県、消費県、それはおのずから違うだろうと思います。一  たとえて申しますと、最近の変動価格でございますが、東京は消費県の最たるものでございますが、一月ごろが二千四百四十八円、それから二月が二千四百五十円、あるいは三月になって二千四百五十三円ということで、これは自主流通米の上米のほうでありますが、こういうことになっておりますが、たとえば秋田等の生産県におきまして、上米の十キロ当たりの価格は大体二千百六十円程度で推移しております。で大阪は、これはもう消費県でございますし、大体二千三百六十円程度で一応推移しているということで、最近は非常に安定をしておりますし、やはり自主流通米と申しましても、政府の買い入れ価格が上がりますとそれに伴いまして当然コストアップ等もありますし、その辺のところはやむを得ないということで、最近は非常に落ちついていると私は一般的に言っていいんじゃないかと思います、その価格は。
  214. 鈴木強

    鈴木強君 ただ、標準米の千六百円というのがあるわけですからね。ですから食管制度そのものがずっと生きておれば、大体千六百円が多少上がってもその辺でよかったんじゃないだろうかと思うんですね。それはやみ米的なものは金を出せばいいやつがきたことは事実です。事実だけれど、自主流通米というふうになりますと、もう堂々と二千二百円なり二千四百円なり二千七百円なり二千八百円のものを札をつけて売るわけですからね。こういうことから見ると、お米そのものがやっぱり日本人主食の最たるものですから、その支出は家計に相当響くわけです。  ですから標準米千六百円というもの、しかもこれは一番下等な、悪いようなやつだな、これは。いいものはみんな自主流通米に回っているわけですよ。だからそういう点からいっても、やはり一回これは再検討してみて、どうしたらできるだけ標準米のほうに値段を近寄せるかという、ひとつくふうをする時期に来ていると思うんです。四十四年からだから五年近くたっているわけですから、どうですかな、これは。
  215. 三善信二

    政府委員(三善信二君) 御承知のように、自主流通米を始めましたときは、国民生活の向上やらあるいは多様化、それに米の需給というのが非常に緩和してまいりましたそういう時期で、国民の方々はやはり良質米、ある程度高くてもいい米を食いたいというような希望が非常に強かったわけでございます。そういうことを背景にしてこの自主流通米はつくったわけでございまして、で物統令の適用を廃止しました四十七年四月のときも、先生御承知のように、あのころ物統令で画一的に米の値段をコントロールしておくということは、どうしても国民のそういう良質米に対する選好、そういうものに対する一つのブレーキになるというようなこともございまして、そういう意味で自主流通米等も始め、また物統令等も廃止したわけでございますけれども、そのかわり標準価格米は必ず米屋さんには置いておけということで、これは価格も特別に安くして必置をさしているわけでございます。  そういう一つの何といいますか、国民の選好とか、あるいはそういういい良質米は多少高くてもそういうのを望んでいくというような一つの雰囲気、空気、そういうのを反映してやっておりますものですから、ただ極端に自主流通米が——去年の国会のときでございましたか、あるところで何か三千円ぐらいのが出てきたということで多少おしかりを受けたんですが、それはまあ極端な例でございまして、そういうのは極力押えるように努力をしております。現に、私ども、精米の価格指導につきましては、標準価格米以外のものにつきまして、やはり便乗値上げとか、そういうことがないように各県知事に十分指導をして、指導価格みたいなものをつくらして、それでひとつ安定をさしていこうということでいまやっております。そういうことで自主流通米もこの程度の価格であれば決して高いということじゃないというような感じで私たちはいるわけでございます。
  216. 鈴木強

    鈴木強君 高いと思わぬというのはちょっと問題だと思いますね。やはり米屋さんの良識もあると思いますけれどもね、中には、標準米というのがなくて自主流通米ならございますよというような、そういうことを言って米を配達しているところもあるわけですね、これはわずかなところだと思いますけれども。  ですから、やっぱり高くないという要するに食糧庁長官のそのものの感覚だな。あなたが標準価格的なものをつくって指導していこうという指導価格、そうおっしゃるんですから、だからできるだけ標準米に近寄せるようなことを考えて、そしてやってほしいですよ、これは。どうでしょうかね。
  217. 三善信二

    政府委員(三善信二君) それと、もう一つは、言い忘れましたけど、千六百円のこの標準価格米というのは政府が幾ばくかの財政負担をしてやっているわけでございますね。で自主流通米の場合は、そういう逆ざやの負担というのはあまりございませんし、したがって国民の方がうまい米を食いたいということで、多少高くてもと、その辺のところは私はやむを得ないし、まあ先生そうおっしゃいますけど、米の売り渡し価格、米の値段というのは一番安定しているし、そう高くないんじゃないかというふうに思うんでございますけどね。
  218. 鈴木強

    鈴木強君 じゃ、その指導価格的なものをやるというのは、それはどういう意味なの。
  219. 三善信二

    政府委員(三善信二君) それは、先ほど申し上げましたように、まあ大体安定をしていると、しかし便乗値上げ的に極端に、たとえば二千七百円とか八百円とか、そういうのがたまに出ないとも限らない。そういうのはこれは押えて、大体現状の価格でその水準を保っていくように、そういう指導をしておるわけであります。で都道府県知事が食糧庁と協議をいたしまして、上米はどの程度、中米はどの程度ということで、都道府県の実態に応じた指導をしてもらいたいということでやっているわけです。
  220. 鈴木強

    鈴木強君 まあいいです。あんたがそういうふうに高くないと、こうおっしゃるんだから。まあそういうことをよく皆さんに私は言っておきますよ。食糧庁長官はいまの自主流通米というのは高くないと、こうおっしゃっているということをね。  だけど、私はやはりくふうをこらして、日本の家庭にとっては主食は米ですから、そういう意味からいったら、少しでも安くしてあげるということがこの物価高の中では当然農林省としてなすべきことじゃないですか。その辺のものの考え方ですね。  食管でわれわれが負担する負担しないというのは別ですよ、問題はね。こういう時代ですから安定価格でやっていこうというその精神からいえば、できるだけ安く消費者の中に入るというのは当然でしょう。そういう心がまえがちょっと違うな、私たち国民とあなたとずれているよ、それは。高くてもいいから二千八百円でも使おうというのはそうないですよ。やっぱり多数の子供をかかえて、四人も五人も育ち盛りの子供をあんた持ってごらんなさいよ、おとなより食べるんだから、米を。ぼくらもびっくりするぐらい食べるんですよ。そういうところから見れば、やっぱり相当な負担になるわけだから。だから、ものの考え方として、いまのあなたの長官としての発言だとすると、これは私はちょっと問題があるように思うんですが、まあそういうことで、それでいいならいいですよ。
  221. 三善信二

    政府委員(三善信二君) いま上米の自主流通米——大体、上米でございますが、上米の価格の全国的な各都市、生産県等の価格を申し上げましたが、中米などは大体千九百円から二千百円ぐらいで最近推移をしているわけでございます。  それから標準価格米につきましては、大体数量にしては三百万トン、全体の四三%から五%ぐらいの標準価格米は全国に用意して、必ず消費者が希望されるときはそれを売り渡すようにというきびしい指導をしておりまして、その点は大体守られておるわけでございまして、そういう意味で安い標準価格米はなるべく必置して、いつでも入手できるようにちゃんと数量も相当多く準備してある。  また良質米については、多少高くてもそういう良質米を好まれる方は、それはそれでひとつ対処をしていく。あまり極端に上がらないように品質の問題あるいは価格の問題等についても食糧庁としては都道府県と協力してその指導をしてまいりたいということを申し上げているわけでございます。
  222. 鈴木強

    鈴木強君 じゃ、それはもうそれで一応おきます。私と見解が違いますが、それはおいておきます。  競馬のことですけど、大臣ね、昭和四十八年三月十二日に、競馬懇談会というところから当時の櫻内農林大臣に対して中間報告書が出ておるんですけれど、これをお読みになったと思いますが、「競馬に対する見解」というものがございまして「競馬が〃軍馬充足の至上命令のもとに刑法賭博に関する罪の例外として公認されたものとする〃というかっての見解はもはや今日の通念としては通用しない。しかしなお、現在においても概ね次の如き三つの見解がある。」、一つは、社会風教上罪悪である、したがって、やめろということですね。それから二つ目は、「社会通念の変化、大衆レジャー多様化拡大化の趨勢からみても競馬は多少の弊害を伴ってもできるだけ自由に伸ばすべきである。」、これが二つ目。それから「前二者の中間的な見解であって、大衆娯楽としてその健全化をはかるべきである。もっとも競馬には長短があるからできるだけ短所を是正しつつ長所を伸ばすべきである。」  こういうふうな大筋の中間報告がなされているのですけれど、特に最近競馬に対していろんな批判が出ているときですから、こういう中間報告に基づいて農林省としてはひとつ早急に悪い点を是正していくような方法を考えてほしいと思うんですけれど、その基本的考え方についてお伺いしたいんです。
  223. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 農林省といたしましては、ただいまお話の競馬懇談会中間報告も出ておりますし、国営競馬運営全般の基本的な検討と並行して、当面対策の具体化が急がれておる混雑緩和とか、調教師その他厩舎にかかる諸制度の改善、それから賞金体系の合理化等いろいろ問題があるわけでございまして、逐次、これらの問題を研究いたして具体化をはかって競馬の適正、円滑な施行とその健全化をはかるというつもりでまいりたいと、こう思っておるわけであります。  競馬懇談会の中に専門委員会を設けまして、いまも検討を進めておるわけでありますが、農林省といたしましても、いまお話のこの中間報告等もございますので、いま申し上げましたような態度でひとつ善処してまいりたいと思っております。
  224. 鈴木強

    鈴木強君 時間が来ましたから、あとはまた別の機会に。   〔主査退席、副主査着席〕
  225. 木島則夫

    木島則夫君 私は当面する森林政策についてのごく基本的な問題をお伺いをしたいと思うんです。  まず最初に、一般の林政についてお伺いをしたいんですけれど、日本経済は急速に高度成長を遂げた、いろんなひずみが国民におおいかぶさっています。生命を脅かす、健康を脅かす、いろんな公害人間疎外、そして最近一番ひどいのは狂乱物価であります。また貴重な緑の森林が破壊され、国土保全上大きな問題を生じているわけです。水資源の醸成であるとか、あるいは自然休養、環境保全など森林の公益的機能を重視する政策がさらにさらに強化されなければいけないと私は考えております。  そこで、政府の基本的なお考えをただしたいのでありますけれど、森林の伐採、開発などの強い規制、制限を行なうために保安林制度の拡充をはかるお考えはないか。特に北海道、東北地方の保安林の指定を拡大をされること、それから関西地方の民有林を国が買い入れて保安指定林とするなど、積極的な取り組み方をしなければいけないと思います。つまり私が言いたいことは、保安林の指定拡大、再配置をきちっとしなきゃだめだと、こういうことですね。まず簡潔にひとつ伺いたいと思います。時間の関係です。
  226. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私から基本の考えを申し上げまして、あとは林野庁のほうから申し上げたいと思います。  お話のように、わが国の森林、林業につきましては、経済社会発展に伴いまして森林の持つ公益的機能の発揮に対する国民的要請が一段とただいま高まりを見せておるわけでありますが、一方、木材の安定的供給をはかることが大きな課題となっております。  政府といたしましては、このような森林、林業をめぐる諸情勢の変化に対処いたしまして、先般、森林資源に関する基本計画、それから林産物の需給に関する長期の見通しを改定いたしたわけでありますが、これに基づきまして森林の有する経済的公益的諸機能を総合的かつ高度に発揮させるために、保安林制度の運用の強化、それから森林法の改正による森林の乱開発の防止等に関する措置を講じますとともに、林業生産基盤の整備、林業経営構造の改善等の施策を積極的に推進してまいりたい、こういう考えのもとにもろもろの策を講じておるわけでありますが、あとは政府委員のほうから申し上げます。
  227. 木島則夫

    木島則夫君 ごく簡潔にひとつ時間の関係でお願いいたします。
  228. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 保安林制度を拡大し、また国の買い上げ制度を考えるあれは持ってないかという御指摘でございます。  現在、保安林が全森林の約二七%で、これをさらに国土保全、水資源の涵養、環境改善のために拡大してまいりたいと考えておりますし、それから買い入れ制度につきましても特に御指摘の西の地帯におきまして重点的に拡充してまいりたいと思っております。そのための保安林整備臨時措置法がことしの四月末で切れますので、これをさらに十年延長したいということで国会に提案しまして御審議を願うことにいたしております。
  229. 木島則夫

    木島則夫君 北海道、東北地方の保安林の指定の拡大、お触れになりませんでしたけれど。
  230. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 北海道、それから東北地方、特にこの地帯は国有林が多いのでございますけれども、国有林は比較的保安林の比率が高うございます。しかし特にこの地帯におきましては、保安林の機能はいろいろございますけれども、しの拡大についても検討してまいりたいと存じております。
  231. 木島則夫

    木島則夫君 たいへん前向きな姿勢でけっこうです。  私はこう思いますね、私も東京の世田谷に住んでおります。もう過密で公害でひどい。やはり縁は生命の源泉だということが大前提だと私は思う。そういう意味で都市周辺の民有林で近郊緑地あるいは公園など都市環境保全、それに防災のための重要なものですね、乱開発の対象となるようなものは、これは国が積極的に買い入れて緑の保全をするなどの措置を講ずべきであると思いますが、どうでしょうか。  特に都市周辺の保安林については国有化を進めてもらいたいということ、このためにはいろいろ具体的な方法はあると思います。資金の一般会計繰り入れなど、買い入れ制度も完全なものに整えていかなければいけない。こういうひとつ建設的な方向でお考えをいただくことはできないでしょうか。
  232. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 都市近郊につきましては、特に環境保全の意味で保安林の重要さが増しております。環境保全と申しましても具体的に申し上げますと、保健保安林のようなものでございます。若干、そういった制度がいまございますけれども、さらに都市近効につきましては、大都市近郊、中都市近郊含めてでございますけれども、拡充してまいることで、それぞれ具体的に検討をいたしております。
  233. 木島則夫

    木島則夫君 若干いまやっていらっしゃる、それは私も認めるのですけれども、ほんとうにそれじゃ微々たるものですね。つまり命の源泉であるという、そういう立場に立てばやはりもっともっとこれはもう積極的におやりにならなければいけない。  その証拠には、昨年の七十一国会において、これはわが党の小沢議員でありますけれども、民有林を含め、総合林政を確立し、公益部門への大幅な財政措置をとってほしい、こうただしたのに対し、前の櫻内農林大臣、中尾政務次官、林野庁長官もそうでありますけれど、総合林政は時代の要請であって、積極的に取り組む、こういうふうにはっきりと御回答になっておりますけれど、その後、一年を経過している。政府は具体的にどういう対処をされたか、またさらに四十九年度に実施すべき具体的な事項について伺いたいわけであります。  なるほど、いまあなたがおっしゃったように、都市周辺の民有林の買い入れ、あるいは森林の巡視であるとか緑化センターであるとかやっていらっしゃいますよ。やっているけれど、総合林政というからにはきちっとした哲学がなければいけませんね。そうしてそれを裏づけるものは積極的な政府の財政措置である、こういうふうに私は思いますけれど、いかがでしょうか。
  234. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 確かに御指摘のとおりでございます。  一応、いま先生お話ございますように、従来の木材生産以外に、総合と申しますというと、具体的に申し上げますれば、公益性を重視した森林計画を立てなければならぬ……
  235. 木島則夫

    木島則夫君 公益性を重視した、そこのところはとても大事だと思う。
  236. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 公益性と申しますと、たとえば国土保全の問題、水資源の涵養の問題あるいは環境改善の問題でございます。そういう意味で、ただいま保安林行政の強化について申し上げたわけでございますけれども、保安林以外の普通林につきましても、やはりそういったような措置が必要であろうと思います。  そういう意味で、ただいま森林法の改正案を提出して御審議を願っておりますけれども、その中でたとえば乱開発規制であるとか、あるいは森林経営というのは普通の工場生産とか作物生産と違いまして五十年、百年を単位とする計画でございますので、やはり基本計画の中でこれを改善していかなければならぬ、考えていかなければならぬと思うわけでございます。そういう計画制度の強化、それから、それのにない手でございますところの森林組合、それの強化策ということを含みまして、森林法改正案の中で、ただいまそういった先生指摘考え方を盛り込んでおるわけでございます。  また財政的な措置といたしましても、公益性を重視するという意味におきまして、たとえば国有林の公益部門の財政負担につきましては、一般会計からの導入をお願いする、代表的なことでございますが、治山治水事業でございます、これは大部分を一般会計からお願いするということで四十八年から始りましたけれども、四十九年度もその強化をお願いいたしまして、主として治山事業につきましては一般会計の負担をお願いしたい。  また公益的な森林を維持管理するための問題いろいろとまた公益性を維持するための企業部門以外の経費負担につきましては、さらに拡充してまいる必要がございます。そういった点につきましても、四十九年度以降さらに計画的にこれを運営してまいりたいと思っております。
  237. 木島則夫

    木島則夫君 ちょっといまのところ、拡充とおっしゃったのですか。
  238. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 一般会計の公益部門の経費負担についての拡充でございます。
  239. 木島則夫

    木島則夫君 ひとつ積極的に、ことばではなくて、それを裏づけていただかなければ、森林行政というのは死んでしまいますから、ひとつお願いをしたいと思います。  時間がないので、私も少しはしょりますから、お答えはできるだけ簡潔にお願いしたい。  水資源、森林、レクリエーション、治山治水など、森林に対する国民的要請というのは今日ほど高まっているときはございませんね。森林の持つ公益性、さっきから何べんも私も繰り返してあなたもお繰り返しになった。公益性というものは国の予算に匹敵すると公表されているほどであります。が、残念ながら今日の林野行政は国民の要請と負託に十分こたえているとは私には思えない。日本経済発展の中で、ひとつ林業というものは斜陽化の一途にあると言っていいでしょうね。こういう現状をどう考えるか。国の財政上の援助がきわめて少ないのです。総合林政推進の立場からもこの財政措置について抜本的に改善し、強力な林政というものを推し進めるべきであろうと思いますけれど、いまのお答えと多少重なるかもしれない、決意を一言でけっこうです、お願いをしたい。
  240. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) いまお尋ねの問題は、政府もかねがね考えておりましたことを御指摘に相なったわけであります。  私どもは、森林の公共性という、公共性の中にはいろいろ先ほどお話がございました、そういう立場からも林政というものには特段の力を入れるという決意でおります。
  241. 木島則夫

    木島則夫君 次に、森林レクリエーション事業というものは、国民の健康、文化、社会教育上からも積極的に拡充をしていかなければいけないと思いますね。政府の基本的な態度をまず明らかにされたいのであります。  さらに、現在、国有林野を活用して自然休養林であるとか、民有林野を対象に県民の森があって国民の保健、休養の場として活用されている、たいへんけっこうなことだと私は思いますが、この程度ではまだまだほんとうに国民のものとなっていないと思います。したがって何というか、これを大いに拡大してもらいたい。そうしてそのやり方は具体的にどういうふうに進めていったらよろしいか。  さらに、次の時代をになう青少年のいこいの場として、あるいは林間学校とか研修施設を設けるということで国有林野の中に青少年を対象としたレクリエーションの場、これは仮称でありますけれども、たとえば青年の森というような名前でこれを整備する方針はございませんか。これは観光事業としてではなく、さっき私が申し上げました健康的な立場からも、国民生活上、文化的な立場からも考えなければいけない、いかがでしょうか。
  242. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 国有林におきましては、現在、自然休養林の制度がございまして……
  243. 木島則夫

    木島則夫君 確かにやっておりますね。
  244. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 将来、百カ所ぐらいにしたいと思っております。ただいま四十九年度の計画を入れまして大体七十カ所ぐらいやっております。そのほかにスキー場であるとか、これも十体百カ所近くあります。あるいはキャンプ場であるとか、これも五十カ所ぐらいやっております。こういったものを拡充してまいりたいと思っておりますが、少しもっと大きな考え方を持っております。それは森林レクリエーションエリアといたしまして、いま先生お話しになりましたものを総合した一つの総合のレクリエーション地域というものを全国に十五カ所ぐらい国有林の中で考えたい、こういう構想を持っております。現在、二カ所ぐらい着手いたしております。  そういうことの中身をいま代表的に申し上げましたけれども、それはやはり青少年教育の場として最も適切な場であるというふうに考えております。将来の森林のにない手である、あるいは青少年の保健の問題を考えますというと、やはり青少年対策というのは非常に重要でございますので、たとえば文部省と連絡いたしまして学校林のようなものを設定して研修の場にするということも考えております。
  245. 木島則夫

    木島則夫君 学校林ですか。
  246. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 学校林でございます。そこで学生が実習をするとか、あるいはいろいろとそこで研修をするとかいう場を国有林の中で提供している場合もございます。学校がそこに寮をつくりまして研修施設を設ける、そこでいろいろ森林の勉強をし、また保健のことも実施するということでございます。  それから民有林におきましては、いまお話の県民の森というものがございます。これは国有林のいま申し上げました自然休養林とダブっている場合もございますが、これも相当数ただいまふえております。国有林、民有林を通じまして、特に青少年対策には力を入れてまいりたいというふうに考えております。
  247. 木島則夫

    木島則夫君 いまこういう荒廃した時代ですね。そういうときにやはり緑の自然の中で休養をしレクリエーションをとり、そうして勉学の場にする、これはたいへん大事なことだと私は思うのですね。  具体的にいま、私が仮称ですけれど、青年の森なんていうのはどうですか、こういう考え方は。
  248. 福田省一

    政府委員(福田省一君) まことに私も同感でございます。御趣旨をくみまして今後検討してまいりたいと思っております。  実際に、林業のにない手をしております山村地帯の青少年を対象としまして特に青年の山、これは実際につくるわけでございますが、山持ちの子弟の若い人たちでございます、そういうことに対する助成もいたしております。また森林の勉強をする林業教室という制度もございまして、それに対する助成もいたしております。  しかし、これは山村地帯における、主として山林を持って経営されておる人たちの二世でございますが、先生指摘の点は、もう少し広げて一般の人にやったらどうかという御指摘であると思います。そういうこともあわせ考えて拡充してまいりたいと思っております。
  249. 木島則夫

    木島則夫君 確かに林業のにない手としての次代の青年だけではなく、そのワクを拡大して、一般的に広い意味での青年を対象にしてもらいたいということを私は強く要望しておきたいと思います。  それから四十七年の十二月の二十二日、林政審議会が国有林経営改善策について答申を行なっておりまして、政府はそれを受けて国有林の経営改善策を検討しているようでありますけれども部分的には出てはいるんですけれど、全体の構想というものはよくわかりません。したがって今日の段階での具体的方針、今後の見通しについて具体的にひとつ明らかにされたいと思いますが、いかがでしょうか。
  250. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 国有林の経営改善につきましては、先生いまおっしゃいましたように、四十七年の十二月に改善の案をいただいたわけでございます。それをもとにして国有林の改善計画というものを着々と進めてまいっております。  一つには、四十八年の三月に「国有林野における新たな森林施業」、こういう指導方針を出しまして、国有林を八十の地域に分けて具体的に実は施業計画をつくっております。これを地域施業計画と申します。その中にこの考えを織り込みまして、改善指導を立てております。  これをちょっと具体的に申し上げますというと、従来、木材生産を主体として大増産に力を入れておったわけでございますが、そういう考え方を修正いたしまして、ただいま御指摘がございましたような公益性を重視した森林経営に転向するということから、従来、もちろん森林の中にそういった公益機能があるわけでございますが、皆伐する場合にしても小面積を皆伐する、しかもこれを分散さしていく、でき得れば亜高山地帯等におきましては禁伐ないしは択伐、抜き切りでございますが、そういう施業方針をとるということにいたしまして、大面積皆伐をずっと縮小したわけでございます。したがいまして伐採率というのは相当減るわけでございまして、最盛期から見ますというと三割ぐらい減少いたします。しかし、そのあと地をしっかり造林するという考え方に変えたのがこの新しい森林施業方針でございます。  また、これをさらに具体化しますために、四十八年の七月に「国有林野事業改善の基本的な考え方」というものを出しまして、それをもとにしまして、また同じ四十八年の九月には「国有林野事業業務改善方針」という具体的な一つの方針を出したわけでございます。そして四十八年の十二月に、四十八年度を初年度とします経営基本計画というのがございますが、これは十五年の長期の計画でございます。これは実は閣議で五十年の森林の施業方針をきめるわけでございます、国有林、民有林を一緒にしまして。その中での具体的な国有林としての経営の基本の計画でございます。これは十五年計画を五年ごとにつくるわけでございます。そういった内容にいま申し上げたようなことを織り込んでございます。  結論的に申し上げますというと、木材の生産は大事でございます。そのための森林の内容を改良いたしますけれども、特に公益性を重視した水源涵養、国土保全それから環境の保全というふうな考え方を織り込んだ森林の経営方針を織り込んだものでございます。こまかい内容につきましては省略させていただきたいと思います。
  251. 木島則夫

    木島則夫君 そういう経営改善方針というものがまだはっきり部分的には出ているものの全体としてよくわからないんでありますけれど、政府の考えているところを推測しますと、国有林に働く労働者の大幅縮小、組織の統廃合の上に経営改善を遂行しようというような考えのようでありますけれど、これは私は本来転倒だと思いますね。  したがって経営の近代化あるいは合理化にあたっては、労働者に対するそれなりのメリットというものがなければいけませんし、また働く者に意欲を盛り上げるような施策でなければ、これは私はほんとうに魂が入ったものじゃないと思いますね。こういう点を考えて政府の基本姿勢をもう一度伺いたいんです、この辺にスポットを当ててひとつ伺いたい。
  252. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 確かに経営の合理化というのはとかく組織を縮小するとか、あるいは人員を減らすということが主目的であるかのようにとられがちでございますが、基本的な考え方はただいま申し上げたとおりでございます。  いずれにしましても国有林の経営の基本姿勢としましては、森林内容を充実するため、木材の生産のみならず、いろんな森林そのものの機能を充実するという方針のもとに、いま申し上げた八十の経営計画に具体的にどういう仕事をどの程度やるかということをすべて計画いたしております。そうしますと、それに必要な職員なりあるいは現場で働く作業員の方がどれくらい必要であるかということが出てまいります。しかし国有林の仕事は民有林と同じでございますけれども、非常にむずかしい問題は、季節的な仕事でございまして、特に先ほどおっしゃいました東北、北海道、この地帯におきましては冬の仕事はないわけでございます。できるだけ冬の仕事をする、たとえばいままでやってなかった伐採の仕事もある程度は能率が落ちるかもしらぬけれども、つとめて伐採の仕事をして、夏に造林をしたり、その造林したあとの手入れが必要でございます、その夏の期間の労働力が非常に多く要るわけでございます。ですから夏働いてあと冬は来なくてもいいぞというわけにまいりません。できるだけ年間働けるようにしてあげるということがやはり雇用の安定をはかる上に必要なわけです。それがまず雇用の安定の基本的な考え方であるということ。  それと同時に、今度は労働の条件をいろいろよくしてあげるためには、賃金の水準であるとか、あるいは手当の制度であるとか、あるいは休暇の問題、これは事務をとっております職員に比べて非常に現在劣っております。こういった人たちの処遇の改善をしてあげるということを実は具体的にいろいろ詰めまして、林野庁ばかりでなくて反省にまたがる問題もございます、そういった各省ともいろいろ折衝いたしまして、労働条件につきましては労働組合と話し合いしながら改善に現在努力しているところでございます。
  253. 木島則夫

    木島則夫君 現在お考えになっているのは、要するに定員内職員一万三千人の縮小であるとか、日給制作業員の高齢者、これは六十歳以上になっておりますけれど、七千人以上の削減を打ち出しておられるわけですけれど、いまお話を伺いますと、前向きに建設的に考えるということでございます。  したがって非常に素朴な言い方をさしていただければ、たとえば営林署を地元の了解なしにやめてしまうとか、地元の林業団体やあるいは地域住民の反対とか、労働者が反対をしていることを無視しては絶対にやらないということ、そこには必ず労使の協議制、話し合いづくで建設的な方向を目ざすということ。要するに、お確かめしたいのは、働く者や地域住民の犠牲の上に立った経営改善では絶対にないということは確認してよろしゅうございますね。
  254. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 御指摘のとおりでございまして、特に国有林それぞれ、東北あるいは南、違いはございます、この配分につきましては。しかし、いずれにしましても地域の住民の方々の御協力なくしては仕事はできないわけでございます。  たとえば最近非常に山火事がある、さあたいへんだということで、営林署の職員だけで消せませんから、やはりそういった場合には地元の住民の御協力が必要ですし、それから木を植えます場合にも、職員だけでできぬ部面は地元の人に手伝ってもらっております、実際は。そういう意味では地元の協力が絶対必要でございます。でございますので、営林署のたとえば統合の問題とか、そういったようなことは過疎地帯に大体大きい営林署があるわけでございますから、地域の市町村の御意見を無視して一方的にこれを廃止するというようなことはできないわけでございます。いずれにしましても道路事情等が変わりましたので、青森県の北とか秋田県の北のほうに、もう隣りの営林署に二、三十分で行けるところもございます。しかし、そういう事情はあるけれども、そこにつとめている人たちは学校教育も受けられるし、病院も近いということは現実でございますから、よく地元の市町村の方々と話をしてみて進めてまいりたい、そのほうが市町村のためにもなるということである、かように私は思っておりますから、一方的なことは考えておりません。  労働条件については、これはもう組合とも十分に話し合って処置してまいりたいと思っております。
  255. 木島則夫

    木島則夫君 たいへん前向きなお答えでけっこうだと思います。つまり働く者や地域の住民の犠牲の上に経営改善というものはないんであるということを確認をさしていただいたわけであります。  労働条件の問題については、もう少しあとで一まとめにして伺いたいと思うのでありますけれど、私はいま非常に心配をしておりますことは、今日、国有林の職場というものが北海道をはじめ九州など暴力的な職場、破壊が行なわれ、非常にまじめに働こうとする職員は何か身の危険を感じて安心してその職場で仕事ができない、こういうことがいろいろな形でひんぴんと行なわれている。一体、これに対して林野庁はどう対処されているのか、具体的にお伺いをしたいんであります。  結局、私も逓信の関係で郵政の職場などと対比をして見ますと、いろいろ問題点があることは私もわかるわけであります。管理者の事なかれ主義であるとか、非常に法を犯した者に対する処置が手ぬるい、管理当事者能力がないとか、まあまあ主義であるとか、いろいろ原因があると思いますけれど、とにかくまじめな者が国民立場に立ってほんとうにその仕事をしようとするような仕事の場が、暴力とか破壊とかによって身の危険を感じるようなことでは、これはもう森林行政というものはとてもできようはずがないわけでありますね。これにどう具体的に対処をしているか、お伺いをいたします。
  256. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 毎年、特に春闘の時期になりますというと、それぞれいろいろ労使の話し合いが正常な域を越えるというような現象が出ることがたまたまございます。特に全般的に見まして、最近の情勢を見ますと、一部の営林局ないしは一部の営林署でそういったような傾向があることは確かにございます。  これにつきましては、やはり原則的には労使話し合いの上できめるべきでございますけれども、いま御指摘ございましたように、まじめな職員が仕事にもつけないような状態が出てくるということになりますれば、林野庁と営林局、営林局と今度は営林署と連絡をとりまして、厳重にそれぞれ注意を喚起しているところでございます。できるだけ、いま私は、警察等といったものを導入しないで、労使間の話し合いで十分納得づくで解決してまいりたいという基本姿勢をとっております。行き過ぎがあった場合、たとえば暴力事件が出たとかということでございますれば、そういったものにつきましては、関係機関とも十分打ち合わせをいたしまして厳正な行政処分をしてまいっておりますし、今後も、そういった態度で臨みたいというふうに考えております。
  257. 木島則夫

    木島則夫君 四十九年四月一日の熊本日日新聞にも、いま言った暴力問題に関する記事が非常に大きく載っておりますね。  いまの基本姿勢については私も異存はないんです。しかし、なかなかそのとおりに現場で処理をされていないというところに問題がありましてね。これは労働組合間の問題であるとか、いろいろ言われている。しかしそんな組合とか何かの問題をもう一つ通り越して、私はやっぱり人間の問題に帰着すると思いますので、その姿勢は絶対におくずしにならないでいただきたいと思うんです。  ところで、私は、林政、いわゆるこういった問題については専門家ではございません。私も急遽いろいろ勉強したんですけれど、担当区に主任さんというのがいるんだそうですね、そうですね、これ間違いありませんね。
  258. 福田省一

    政府委員(福田省一君) ございます。
  259. 木島則夫

    木島則夫君 担当区に主任さんというのがいるんだそうですね。で、この主任さんの仕事というものがどういうものであるかということを私いろいろ聞いてみたらば、担当区の主任さんは森林司法警察官の職務を行なう責任があるとはっきりと書かれているそうです。間違いございませんね。
  260. 福田省一

    政府委員(福田省一君) そのとおりでございます。
  261. 木島則夫

    木島則夫君 間違いありませんね。ところが林産物の盗伐を監視したり、犯人を逮捕することのできる、こういった立場にある大事な人が、みずから公労協できめられた争議行為、たとえば違法ストに参加をするということはどういうことになるのか。  一方で法のつまり執行者であると同時に、片方では法律を犯してそういうことをしている。その法律が気に食わないならば、しかるべき私は手段、手続を経てこれを変えていくということならばわかるんですけれど、これが気に食わないということでそれを無視する。一方で法の執行者であるわけですね、そうですね。たとえば木を切って盗んでいった、そういう者に対しては監視をしたり逮捕もできるという、そういう権限を与えられているわけでしょう。ところが一方ではいわゆる違法ストに参加をするという、どうも私はこの辺が釈然としない。これはもう民主主義じゃないと私は思う。目的のために手段を選ばない、独善じゃないかと思いますけれども、私は政府、林野庁当局のこういうものに対するやはりけじめというか、こういうものがきちっとしてないと、幾ら林野行政を推進してもらいたい、あるいはこれでいいんですかと言ったって、これは私はこの辺からこぼれていく、そういうくずれていく感じをいなめませんので、あえて強くお伺いをしたいのです。
  262. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 司法警察官の職務を執行する者は、いま御指摘ございました監督主任、営林署長、それから営林署の次長に相当します管理官、それから庶務課長、そういった人たちが司法警察官の職務、主として盗伐であるとか、その他の取り締りをいたしているわけでございます。  確かにいま御指摘ございましたように、そういった職務を執行する者がストに誘われて参加したとかいうことがあるとはなはだ問題でございますし、従来も、そういったストの問題につきましては、そういう傾向があれば厳重に林野庁長官のほうからそれぞれ警告を発しているところでございます。また、そういう事実がございますれば厳重に注意するとか、事前にそれを防止するとかというふうに指導してまいっておりますけれども、なお今後とも、その点につきましては綱紀粛正を厳重にしていく必要は、特に森林経営の場合には、先ほどから公益性を重視しなければならぬというようなことで口やかましく言っている段階でございますので、十分に注意し指導してまいりたいと考えております。
  263. 木島則夫

    木島則夫君 たとえば北海道の営林署に対する地元の評判というのは、聞いてみるとまことに悪い。つまり庁舎の内外——まあ内の中はいいでしょうね。いいとは言わない、私は。きょう写真も持ってきたんですけれど、これはいま時間がないからお見せしませんけれど、庁舎内外にべたべたほんとうに紙を張りめぐらす。大体、あなた森林行政に携わっている者というのは環境美化ということ、環境をこういうふうに害するということ自体が私は非常に問題だと思う、はっきり申し上げて。そういうことが平気でやられていて、一体森林の育成とかそんなことができようはずはありませんね。みずから環境をこわしている、これは。まあ一例をとるとそういうことです。で地元の評判は非常に悪いんですよ。  で国有林といま言った道有林とを比較して、国有林はたいへんな荒れようだと同僚議員からも聞いておりましたんでありますが、地域住民から見放されるような管理経営ではお話にならぬと私は思いますね。これは根本的にこういう考え方があるからだと私は思う。国民から預かった国有林を——国有林というのは国民から預かっているわけですね、これは。これをりっぱな山として育てようという使命感がおありになるのかどうか。特に林野庁首脳部、末端管理者にこういうものがきちっとおありになるのかどうか、私は疑わしいというふうに申し上げたい。  一番いけないのは事なかれ主義ですね、この事なかれ主義の労務管理体制、言って悪いけれど親方日の丸主義の無責任な経営体制を刷新することが私は急務だと思います。政府、林野庁の基本的な姿勢を伺いたいと思います。こういうものがきちっとなっていないと、幾ら口で、あるいは作文の上で森林資源を確保し、いわゆる環境保全のためにと言ったって、これは絵に書いた作文だと私は思いますね。一番根本の土台の問題だと思うから、きょうは特に私はこの辺を強調したい。いかがですか。
  264. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 確かに一部の局、一部の署に行き過ぎがあることは私も承知いたしております。  たとえば組合の掲示というようなものは場所を指定して出すことにいたしております。おっしゃいますように国有林は一億国民の山であるという意識は十分私も持っておりますし、常時、管理者のみならず職員全般に徹底させることにつとめておるところでございます。決して職員の山とかあるいは一部の組合の山であるとか、そういうクローズドショップと申しますか、そういう考え方ではいかぬ、こう思っておるわけでございます。先ほども申し上げましたように地域住民の御協力を得てはじめて全体の山は経営することができるわけでございます。  そこで確かにその問題につきましては、庁舎の中にいろいろとポスターを張る問題あるいは特定のポスターに何かいたずらをするとかそういった問題であろうと思います。そういう行き過ぎがあったことも最近ございましたので、厳重注意いたしましたが、なお、こういう管理体制の強化ということにつきましては特に人事配置の問題も重要でございます。それらの点も配慮いたしまして定期異動の際に十分御趣旨をいれるような管理体制の強化をはかってまいりたいというふうに考えております。
  265. 木島則夫

    木島則夫君 特に環境問題、環境保全ということですから、そういう美意識のない、環境意識のない人たちがこういう仕事に携わっているということ自体私はたいへんな問題だと思いますね。  この問題とは一緒にならないかもしれないけれど、国電に乗る、前もって切符を買う、お金を払う、乗った電車はきたない、ペンキで塗りたくってある、これは商法違反ですね、いってみれば。契約違反ですよ。それでも最初から自動何とか機にお金を入れたからもうお金は戻ってこないのですよ、しょうがない。だから、こういうことはやっぱりき然たる態度でやっていただきたいと思います。  私がこう言うからといって、何でもかんでも権力主義で上からがちんと押えつけろなんて、そんなことを言っているのじゃありませんよ。まじめに働いている者が正当な評価を受ける、そしてその人たちが安心して国民から委託された森林行政に従事するという、そういうきちっとした環境をおつくりになる上での管理体制をきちんとなさい、こう言っているわけですから、そこのところはひとつ誤解を——木島がああ言ったから得たりや応と、こういうことじゃいかぬと思います。そういうことを言っているんじゃない。とにかく、そういうことはひとつはっきりさせていただきたいと思います。  さっきお話に一部出ましたのですけれど、労働条件の問題というのはほんとうに私は大事なことだと思いますんで、最後にお伺いをしたいと思います。  今日、農山村の過疎化というのは全くひどい状態だと思います。で、現在、林業労働者は十九万人に減ってしまった。労働条件もほかの産業に比べてはなはだ悪いですね。国有林の労働者も私はそのとおりだろうと思います。こうした中で、六十五国会でしたか、林業振興に関する決議、あるいは昨年の七十一国会における参議院内閣委員会の決議、つまり林野における非常勤職員の雇用条件について実情に沿って検討することなど、いろいろの決議がなされているわけでありますが、政府は具体的にどのように実施してこられたか、その経過を御説明いただいて、あわせてこれからどう対処していかれるのか、この辺たいへん大事な問題でございますから、より具体的にお答えをいただきたいと思います。
  266. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 具体的にという御質問でございますので、少し詳しく……
  267. 木島則夫

    木島則夫君 けっこうでございます、あと十五分ありますから、その範囲でひとつ。
  268. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 国有林野事業に従事しております作業員の処遇の改善につきましては、従来から常用化、それから雇用期間の長期化によりまして雇用の安定をはかる、いま申し上げましたとおりでございます。  で、林業振興に関する決議の趣旨を踏まえまして、四十六年度以降、まず第一に、新賃金の仲裁による引き上げの際に月給制職員の引き上げの分を若干上回る上積みをいたしております。ということは、定期昇給制度がございませんので。それから第二点は、振動障害の賃金補償額、レイノー現象、白ろう病と申しますあの振動障害による賃金補償、休んだ場合でございますね。それから通勤の手当、夏期手当、そういったいろいろ八つの手当があるわけでございますけれども、それの引き上げをいたしたわけでございます。これは引き上げでございます。それから第三点は、振動障害によりまして公務災害の認定を受けました者の休業の特別給、そういったようなもの約三手当を新しく新設したのでございます。それから国民の祝日、その他の有給日数をふやしたということでございます。それから生理休暇、忌引き休暇など、六つの休暇の有給化をはかっております。いま申し上げておるのは全部、常勤職員、定員内職員と比べて劣っているところをこういうふうに直しているということをお話ししておるわけでございます。それから伝染病隔離、天災による交通遮断、こういったことを理由とする休暇、この五つの休暇の賃金支給額の引き上げを行なっている、ずっとこう差別があったわけでございますので。  それから次に、今後とも期間的な作業員の処遇につきまして——期間的な作業員と申しますのは、一年間ずっと働いておる者と、それから一年のうち半年ないしは十カ月とか区切って来ている方がおります。そういった人たちで、しかもどうしても林業労働に必要な者、これを期間的作業員と申しておりますが、その期間的作業員の処遇につきましては、その雇用及び勤務の態様などから常勤職員との均衡を考慮しまして改善したいと考えておりますが、これはやはり経営改善計画の進展に合わせまして財政事情の許す限度において逐次実施するように努力しているところでございます。これは林野庁限りでできぬ問題もございますので。
  269. 木島則夫

    木島則夫君 そうですね。
  270. 福田省一

    政府委員(福田省一君) なお、昭和四十九年度におきましては、公務災害とかあるいは生理休暇、忌引き、妊婦の保健休暇、臨時休暇、冬営手当等につきまして、さらに一そうの改善措置を講ずることで、いま具体的に検討いたしております。一応、昨日まで労働組合といろいろと話し合いの段階できまったものを含めて、以上のとおりお答え申し上げておきます。
  271. 木島則夫

    木島則夫君 特に非常勤の人たち、この人たちに対する手当ってたいへん大事だと思うのですよ。  それで、お話を伺うと、数年のうちに常勤職員並みの処遇をするということだそうでありますけれど、私はこれは並みじゃだめだと思うのですね。並みではだめだと思う。それから数年のうちというのは、やっぱりこの辺もちょっとあいまいですね。だからこういうものを即刻というか、可能な限り早く、すぐに、まあすぐでしょうね、この並みとすぐに、どうでしょうか、この辺ちょっと問題だと思うのです、私は。いま忌引きの問題とか、いろいろ年次休暇の問題、非常に前向きに御検討になっていただいておるわけでありますけれど、いま言ったように、数年のうちに常勤職員並みの処遇をする——並みと数年というのはこれちょっとひっかかるのですがね。
  272. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 林野庁限りで決定できます事項については、できるだけもう即刻に改善してまいりたいと思っております。  それで経営改善の進展と合わせてと申し上げましたのは、たとえば現場で働いておる方々の中には六十、七十という方もおります。この辺が一つ問題があるわけであります。それから仕事量に合わせた先ほど申し上げました期間作業員というものを設定する必要があると思います。そういう経営改善計画の中におきまして、できるだけ早い機会に処遇の改善を、並みどころではなくて、むしろ同列、しかし、ものによってはそれ以上になってもいいと思うわけでございますけれども、そういうふうに改善していきたいと思います。  なぜ数年かかるかと申しますというと、予算の関係以外に、たとえば退職手当等なんかは法律改正なんかの問題もございまして、大体、農林省以外に五省に関係する問題が処遇改善にあるわけでございます。大蔵省のほかに、たとえば行政管理庁、それから総理府、労働省、人事院等に関係するいろいろな問題がございまして、各省といろいろ話し合いの上でこれを解決していかなければならぬ、中には法律改正あるいは政令改正の問題もございますので、早くこれを改善してまいりたいと思いながらも、ほかの林野庁以外の働く人たちに影響する問題でもございます、それらをあわせて検討いたさなきゃならぬので若干やはりかかるわけでございまして、それで数年と申しました。数年でもやはり二、三年と五、六年とどっちかということでございますけれども、私はできるだけ早いほうの数年でいきたいと思っております。
  273. 木島則夫

    木島則夫君 ほんとうにできるだけ早いほうの数年ですから、一年でも数年でしょうね、二年でも数年ですから、ひとつそこら辺はうんと前向きに一ほかとの関係があることは私もよくわかっています。しかし、ほかを説得して強力にそれを推進方をお願いをしたい、こういうふうに思うんです。  もう時間がございませんので、あと一つ、二つお伺いをして結びたいと思います。  それともうらはらの問題で関係することでありますけれど、政府は林業労働者の労働条件改善に努力をされていること、いま前向きに非常に検討されているということでたいへんけっこうなことでありますけれど、いま国会に提出をされている雇用保険法というのは農林水産業の労働者にとって私は大改悪の法案じゃないかと思う。労働条件改善と方針と矛盾するんじゃないだろうかと思います。これは大臣に基本的な考え方をお伺いをし、どう対処されようとするのか、  私どもは、この法案について基本的に反対でございます。言ってみれば、一切の既得権を侵害しないよう対処すべきであるということは当然でございますね。今後の講ずべき措置、姿勢というものをあわせてお伺いできれば幸いでございます。
  274. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 失業保険法というのを論じ始めますと、これは私は非常にたくさんの問題が伏在していると思います。短い期間でなかなかあれができませんけれども、大体、世界各国おもな国を見まして、農業労働者というのはございますけれども、そのほかに単なる労働者という立場でない人まで入っております保険の取り扱い方というのは珍しいんではないかと思っております。  で、私ども大ぜいの人が保険制度の恩典に浴されることはけっこうなことだと思いますが、わが国は非常に広範囲にやってまいりまして、いま既得権というお話がございましたが、農業労働者だけでなくて、この林野関係だけでございませんで、ほかのほうにもありますが、今度あの保険法というのを雇用保険法と改正いたしましてやってまいりますということについて、実は、農林省といたしましては、私どものほうの職場に働く人々に影響がありますので、立案の途中でもずいぶん担当省と当方とは打ち合わせいたしましてやったんでありますが、一時金の制度というものにつきましては、これは大体職員、従業員の方々も理解されてきたんではないかと思うんでありますが、ただ、支給される期間等については若干の問題があるようであります。そういうことで専門的には林野庁のほうで取り扱っておりますが、法律それ自体としては筋の通った改正案、雇用保険法としては筋の通ったものだろうと思うんでありますけれども、私どものほうに影響のある分については実はあんまり喜んでばかりおれないというととなんで、その辺の調整につきまして、たいへん骨を折ったという現状であります。あとは、こちらのほうから申し上げさせます。
  275. 木島則夫

    木島則夫君 年間雇用の問題にもつながりますし、これを実施するならば国有林の労働者は除くとか、いろいろありますわね。そういう問題も含めてひとつ具体的におっしゃってください。
  276. 福田省一

    政府委員(福田省一君) いま大臣からお話ございましたように、強制加入ということになりまして、これはずっと広く均てんすることはまことにけっこうだと思いますけれども、特に従来の実績を下回るということになりますと与える影響がが大きいわけでございますので、そこで詳細は省きさすけれども、国有林の作業員につきましてはこれを下回らぬという条件を付して一応関係省庁と話し合いを進めております。そういうことはぜひ主張してまいりたいと思っております。  民有林につきましてはやはり強制加入になりますからけっこうですけれども、やはり負担が非常に重くなるという問題もございます。いろいろ問題ございますけれども、とにかく実績を下回らないようにしてもらいたいということを私たちは最後まで主張してまいりたいと思う次第でございます。
  277. 木島則夫

    木島則夫君 それじゃ最後にもう一問だけお尋ねをいたします。  国有林の労働者の賃金は一般公務員と比べて七千円以上ですか、大きな格差を生じている、特に日給制作業員の格差是正もこれは急務という問題だと思います。四十九年度の賃金について大幅な引き上げを行うとともに格差是正を行なうべきであると思いますが、長官の所信を伺って、私の質疑を終わりたいと思います。
  278. 福田省一

    政府委員(福田省一君) 月給制職員との差は、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、毎年ベースアップのほかに定期昇給の問題がございますので、したがいましてベースアップだけしていると定期昇給の分だけがだんだん開いていくわけでございます。そこで、従来、定期昇給の分を是正する措置をベースアップの際にそれぞれ講じてまいっております。しかしこの率が大きくなるに従ってだんだん絶対値が開いていくという問題がございますので、関係の官庁とも相談し、この是正をよく詰めるように、特にことしは相当問題がございますので、率だけでいきますというと開きが大きくなるということを私懸念しております。関係官庁とよく打ち合わせしまして、この格差をなくするように、究極はそういうところにございますから、努力しておるところでございます。
  279. 木島則夫

    木島則夫君 とにかくことばではなく、ほんとうにこれはかかって実行、決断だと私は思いますので、そのことを御要望して私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  280. 片山正英

    ○副主査片山正英君) 以上をもちまして農林省所管に関する質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十八分散会      —————・—————