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1974-04-08 第72回国会 参議院 予算委員会第一分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月八日(月曜日)    午前十時七分開会     —————————————    分科担当委員の異動  四月六日     辞任         補欠選任      峯山 昭範君     藤原 房雄君  四月八日     辞任         補欠選任      岩動 道行君     熊谷太三郎君      工藤 良平君     佐々木静子君      佐々木静子君     前川  旦君      藤原 房雄君     小平 芳平君     —————————————   出席者は左のとおり。     主 査         大竹平八郎君     副主査         加瀬  完君     分科担当委員                 小笠 公韶君                 原 文兵衛君                 佐々木静子君                 前川  旦君                 小平 芳平君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        国 務 大 臣        (環境庁長官)  三木 武夫君    政府委員        防衛施設庁施設        部長       平井 啓一君        科学技術庁原子        力局次長     生田 豊朗君        環境庁長官官房        長        信澤  清君        環境庁長官官房        審議官      橋本 道夫君        環境庁長官官房        会計課長     竹谷喜久雄君        環境庁企画調整          局長       城戸 謙次君        環境庁自然保護        局長       江間 時彦君        環境庁大気保全        局長       春日  斉君        環境庁水質保全          局長       森  整治君    説明員        経済企画庁総合        計画局電源開発        官        伊藤 謙一君        沖繩開発庁総務        局企画課長    亀谷 礼次君        沖繩開発庁振興        局振興第一課長  加瀬 正蔵君        文化庁文化財保        護部記念物課長  古村 澄一君        通商産業省機械        情報産業局次長  野口 一郎君        資源エネルギー        庁公益事業部開        発課長      小野 雅文君        運輸省航空局飛        行場部長     隅  健三君        建設省道路局有        料道路課長    高橋  力君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十九年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十九年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十九年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) ただいまから予算委員会第一分科会を開会いたします。  昭和四十九年度予算中、環境庁所管を議題といたします。  政府からの説明はこれを省略し、説明資料を本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  それではこれより質疑に入ります。  質疑のある方は御発言願います。
  4. 原文兵衛

    原文兵衛君 最初に、財団法人日本分析化学研究所はその後どうなっているかということについてお伺いしたいと思います。  過般、新聞紙等でも大々的に報道されましたが、日本分析化学研究所では、測定を行なわないで行なったふりをして最終報告値を出しているとか、いろいろなことを、われわれ常識的には考えられないようなことをやっておったと思うのです。あるいは詐欺、背任というようなことにも該当するようなことをやっていたと思うのですが、この日本分析化学研究所はその後どういうふうになっているのか。まずその点についてお伺いしたいと思います。
  5. 生田豊朗

    政府委員生田豊朗君) 分析化学研究所の問題につきましては、まことに申しわけない問題でございまして、監督官庁といたしまして、科学技術庁といたしましても深く反省しているところでございます。  ただいま先生指摘の最近の状況でございますけれども、すでに国会での論議でも明らかにされましたように、米国の潜水艦入港に伴います放射能調査につきましては、特に昭和四十七年度分の分析調査につきまして相当部分に捏造があったということで、その分につきましては信頼性が全く失われたというように解釈しておりますので、とりあえず委託費返還請求をしておりまして、ただいまその手続中で、すでに返還請求の通告はいたしましたので、近く返還されるものと考えております。それから科学技術庁関係のその他の委託調査につきましても現在詳細を調査中でございまして、その実態が判明し次第、委託費返還請求その他必要な措置をとる予定でございます。  それら主として経理関係措置が一段落しました段階認可取り消しをいたす予定でございます。認可取り消しを早くやったほうがいいという考え方もあるわけでございますが、その経理関係措置が一段落することが必要でございますし、それからただいま先生から御指摘がございました警察当局の捜査もそれと別個に行なわれておりますので、それらの様子を見まして最終的には認可取り消しを行ないたいというように考えている次第でございます。
  6. 原文兵衛

    原文兵衛君 分析等業務はその機能をもう停止しているのでしょうか。
  7. 生田豊朗

    政府委員生田豊朗君) 新しい業務につきましては事実上停止しております。停止しておりますと申しますのは、科学技術庁につきましては、すでに四十八年度契約分につきましても年度終了以前に業務の停止を命令しておりますので、事実上新しい業務については停止していると考えております。ただ、科学技術庁だけじゃございませんで、各省とも残務整理の形、あるいは民間からの契約にいたしましても総点検、たとえば電力会社につきましても電力会社委託しました放射能調査の総点検をやっておりますので、そういうあと始末の形の業務は現在も継続しております。
  8. 原文兵衛

    原文兵衛君 日本分析化学研究所についてはいろいろと質問したいこともあるのですが、きょうは公害関係だけの質問にとどめたいと思いますので、公害関係の問題だけに限定したいと思います。  そこで、日本分析化学研究所では、その業務として、水質とか土壌あるいは大気等公害関係分析も行なっていたと思うのですが、環境庁もこの分析研水質あるいは底質土壌というようなものの分析委託していたと思いますが、その点お伺いしたいと思います。
  9. 信澤清

    政府委員信澤清君) 直接環境庁分析研委託いたしておりましたものといたしましては、四十六、四十七、四十八年度年度につきまして、農薬残留対策調査ということで、作物中の農薬分析、あるいは土壌中の農薬分析、こういう委託をそれぞれ委託分析をいたしております。そのほか、私どもが直接委託をしたわけでございませんが、都道府県委託をいたしました分析の一部につきまして県の分析能力をこえるというような部分について分析研に再委託をしたと、こういう部分が若干ございます。この中では、特に昨年水銀あるいはPCBの問題が大きく取り上げられまして、かなりの数の検体を県がこなしたわけでございますが、いま申し上げました府県分析体制が十分でないために一部分析研委託をしたと、こういうことがございます。
  10. 原文兵衛

    原文兵衛君 直接委託していたものもあるし、あるいは府県にやらせるものでその能力をこえるものを委託していたということもあるということですし、また民間からの委託もずいぶんあると思うのですが、そうしますと、分析研分析結果についてはあるいはうそ報告もあったのじゃないかという疑いが持たれるわけですね。そういうものに対してどういうふうに対応しているか。あるいは点検をするとかいろいろな方法があると思うのですが、その対応のしかたについてお伺いしたいと思います。
  11. 信澤清

    政府委員信澤清君) お話しのような問題があるかと考えられるわけでございます。そこで、いま申し上げましたように、一つは、私どもが直接委託いたしましたのが農薬残留調査、それから再委託したものはいろいろございますが、当面問題になりますのは、昨年のいわゆる九水域中心とする水銀汚染調査、この二つでございます。特に後段の九水域の問題は、直接国民生活に大きな影響を与える、また国民の不安をかり立てる大きな問題でございますので、そこで環境庁といたしましては、分析を依頼しました部分につきまして府県と御一緒に立ち入り検査をいたしまして、そうして所要の分析記録等を全部引き揚げてまいりまして、これについてのチェックをいたしたわけでございます。また、私どもが内部的にいたしますのではいろいろさらに疑惑を招くおそれもございますので、専門家によります検討委員会というものを設けまして、そこで最終的には御判断いただくと、こういう体制をとってまいったところでございます。検討委員会につきましては、やはり、いま申し上げましたように、水銀問題というのがまず一番大切であろうと、また早く国民の疑念を解かなければならないと、こういうような御意見もございましたので、取り急ぎ九水域水銀の問題について分析検討を行なったわけでございます。  その結果、ああいうどさくさの時期でございましたので、一部分析結果をあらわしますチャートが紛失をして見当たらないと、こういう例もございました。それから転記ミス等分析自身なりあるいは数値のごく一部分が間違っておったと、こういうものもございましたが、総体的に申しますれば、まず信用するに足りると、こういう結論でございます。  なお、私ども、この種の調査をいたします場合には、全部についてはなかなかむずかしゅうございますが、一部については必ずクロスチェックをする、こういうたてまえをとっておりますので、分析委託いたしました検体につきましても、一部県の検査機関その他でクロスチェックをいたしております。それとの相関関係等を見ましても、まずこの数値については問題がないと、こういう中間的な結論を得ている段階でございます。
  12. 原文兵衛

    原文兵衛君 環境庁から直接委託した分以外のものについて、いまの点検はどういうふうに行なわれていますか。
  13. 信澤清

    政府委員信澤清君) 私の御説明が不十分でございましたが、府県と私ども一緒になって再チェックをやる、結論につきましてはただいま申し上げました環境庁に設けました検討委員会最終結論を出すと、こういうたてまえでやっております。
  14. 原文兵衛

    原文兵衛君 公害関係分析研に対する委託の量の何%ぐらいが民間から委託されていたか、それはおわかりにならないですか。
  15. 信澤清

    政府委員信澤清君) 手元資料がございませんので、民間からの委託状況についてはわかりません、十分承知いたしておりません。後刻資料によって、わかります範囲で御説明申し上げたいと思います。
  16. 原文兵衛

    原文兵衛君 それをお伺いしたのは、正確な何十何%でなくてもいいんですけれども環境庁なりあるいは府県からの委託については、いまのような点検検討委員会も設けてかなりきびしい点検が行なわれるようになっているんですが、民間から委託されたものだって、同じようにうそ報告がずいぶん行っている可能性があるわけですね。それに対して、それはもうそのまま見過ごしてしまうのかどうか、その辺のことをちょっとお伺いしたいと思ったのですが。
  17. 信澤清

    政府委員信澤清君) 民間からの委託状況は、十分手元資料がございませんので御説明いたしかねますが、お話しのような問題があろうかと思います。したがいまして、適当な方法でそれの再チェックをやるということも考えなければならないと思うわけでございますが、先ほども申し上げましたように、私どもとしては、やはり去年の水銀騒動というのが一番大きな問題でございますので、とりあえずこれについて早くチェックをいたしたいということでただいままで努力をしてまいった経緯がございますので、ややおくれておりまして申しわけございませんが、いまもお話しのような問題についても早急に検討いたしたいと思います。
  18. 森整治

    政府委員森整治君) ちょっと私から補足してお答え申し上げます。  いま先生の御指摘の点、大体分析研の約半分が民間から委託されております。ただ、いま官房長が申し上げましたように、詳細な調査というのは、非常に膨大でございまして、むしろ私どもがそこまでやるべきかどうかという問題が実はございます。ただ、いま官房長が御説明申し上げましたように、分析研がはたして何かやっておりはせぬかということの傍証といたしまして、われわれ自身分析研全体がどれだけ分析をしておったかということを実は検討委員会でも詰めろということで詰めております。それで、その中から、大体項目別に、どういう分析をしておって、どういうピークがあって、そのときにどういう人員が配置されてどうなっておるかということを実はただいま詰めておるわけでございます。で、先生方も行って、その心証といいますか、実際にできるかできないかということを詰めておる。それを待ちましてから総合的な判断をわれわれはいたしたいと、こういうふうに考えております。
  19. 原文兵衛

    原文兵衛君 財団法人認可官庁は、これは科学技術庁ですね。科学技術庁にちょっとお伺いするのですが、この分析研業務内容のうちのいわゆる放射能分析、それからいまの一般公害関係分析、どっちのほうにウエート——ウエートというよりも、業務の量はどっちのほうが多かったのか、そのパーセンテージが大体のところわかれば、それをちょっとお伺いしたい。
  20. 生田豊朗

    政府委員生田豊朗君) 分析化学研究所は、先生御承知のとおり、一番最初は、私どもホール・アウトと言っておりますが、いわゆる放射性降下物核実験によりまして降ってまいりますいわゆる死の灰でございますが、死の灰放射能分析をするためにつくられた研究所でございまして、その後、その放射性降下物に加えまして潜水艦入港関係放射能分析業務を始めたわけでございますが、特に最近になりまして公害関係分析業務も引き受けるようになってまいっております。大体放射能関係が六〇、それから公害関係が四〇ぐらいの比率に最近はなってきたように承知しております。
  21. 原文兵衛

    原文兵衛君 私はなぜこんなことを質問しているかというと、確度の高い分析といいますか、あるいは分析の結果の正確性ということが、水質汚濁大気汚染土壌汚染というようないろいろな公害を認定するとき、あるいはまた、その公害に対する対策を立てる場合も、すべての基本になると思うのですね。したがって、その基本になるものが非常にあやふやであったり、信頼されなかったりというようなことになると、これはもうたいへんなことになると思うので質問しているのですけれども、そこで、これは環境庁のほうにお伺いするわけですが、現在わが国には公害に関する分析機関といいますか、そういうようなものがどのぐらいあるのか、その点についてお答えを願います。
  22. 春日斉

    政府委員春日斉君) 公立とそれから民間二つ種類があるわけでございますが、最初公立公害関係試験研究機関状況について御説明申し上げますと、公害関係検査分析業務は新しい行政分野でございますので、仕事が始まりました当初は、衛生研究所でございますとか、工業試験所あるいは農業試験所というような試験検査分析担当部門が担当してきたわけでございます。しかしながら、公害関係法令整備公害現象が非常に複雑化してまいるに伴いまして、公害にかかわります検査分析業務専門に行なう機関必要性が高まってまいりまして、漸次、公害研究所あるいは公害センターというような名前で公害関係試験研究機関都道府県整備されてまいったわけでございます。現在、都道府県及び九大市につきましてはほぼ組織整備されておりまして、技術担当職員大気関係で五百九十四名、水質関係で五百十八名が中心となっております。また、これらの機関におきます分析用機器整備されつつございまして、国でも機器整備の助成を行なって推進をはかっておるわけでございます。九大市以外の政令市におきましても、二十五市に公害分析機関が設置されておるわけでございます。  続きまして、民間分析測定機関状況でございますが、公害関係法令整備されまして、ばい煙汚水排出規制が行なわれます。また、企業においては公害防止組織整備でございますとか、あるいはばい煙汚水等測定の義務づけがつけられてまいりまして、公害関係測定分析をやはり業として行なうものが要望もされておりますし、またその要望にこたえて急速に増加していることも事実でございまして、現在全国でちょうど三百ばかりの民間分析測定機関があるようでございます。
  23. 原文兵衛

    原文兵衛君 実は、私、この分析測定機関、これがやっぱり特に東京近辺だとかあるいは中京地区、近畿、北九州地区とか、そういうようなところではまだまだ足りないし、また、優秀なそういう機関がなくてはいけないということから、ぼくもその辺一骨折ろうかと思っていろいろやりかけたこともあるのですけれどもね。そうすると、いまおっしゃった民間分析測定機関が、まあ三百前後ですかというようなことかもしれませんが、あるいはもっとあるかもしれないと思うのですが、ピンからキリまでというか、ひどいのになると六畳一問でもってやっておるというような感じ機関があるんですね。だから、一体、現実の分析機関、特に民間分析機関というのは、その規模とか能力がどの辺になっているのかということについてお調べになったことがあるかどうか。大体のことでもおわかりになっていたらお答え願いたいのですが。
  24. 春日斉

    政府委員春日斉君) 三百の民間測定機関規模人員等についていろいろ私ども詳細な集計を現在行なっておるわけでございますが、大体いままで私どもが把握いたしたところでは、先生指摘のように、十人未満の非常に零細な機関が約五〇%ございます。それから四十人以上のかなり大きな、場合によりましては都道府県公害研究所以上の能力規模を持っておるようなものが一〇%というようなことでございまして、たとえば二十人から十人の間のものが二四%、三十人から二十人までの間が九%、三十人から四十人までが七%、こういうような状態でございます。
  25. 原文兵衛

    原文兵衛君 いまのわりあいに人数もそろえ、あるいは分析測定の設備も十分な分析測定機関というのは、ぼくはほとんど企業が持っているものじゃないかと思うのですけれどもね。そうじゃなくて分析測定だけを専門にやっておるのは、ほとんどが非常に零細企業的なものじゃないかという、まあ私も直接全部調べたわけじゃないですが、そういう感じがするんですけれども、その辺どうでございましょうか。
  26. 春日斉

    政府委員春日斉君) 御指摘のとおりでございまして、大企業がみずからの公害分析のかたわら他の一般分析業務についても委託を受けて行なうというのが、いわば一番整った施設それから人員を持っておるわけでございまして、零細企業と申しますか、十名以下の五〇%を占める小さい、いわば検査屋さんというのが今後の一番大きな問題である、われわれもその点につきまして十分指導並びに監督をしていかなければならないと、かように考えておる次第でございます。
  27. 原文兵衛

    原文兵衛君 現在は、工場などばい煙とかあるいは汚水を排出するものについて、そのばい煙とか汚水測定を義務づけられていると思うのですが、これはまあ大気汚染防止法なりあるいは水質汚濁防止法によって義務づけられていると思うのですけれども、実際に義務づけられている測定をだれがどのようにしてやっているのかという点が問題だと思うのですが、それについてお答え願いたいと思います。
  28. 春日斉

    政府委員春日斉君) 御指摘のとおり、非常に大きな問題であろうと思います。現在、大気汚染防止法及び水質汚濁防止法におきまして、それぞればい煙を排出する者及び排出水を排出する者が、ばい煙の量とか、ばい煙の濃度、あるいは排出水汚染状態測定しなければならない、そしてその結果を記録しておかなければならないということは、先生の御指摘のとおりであるわけでございます。そのチェックは、私ども都道府県あるいは政令市が立ち入り検査を行ないますときにこの測定記録につきまして十分な点検を行なわしめております。それからまた、実地に使用しております燃料油とか排出水、こういったもののサンプリングを行ないまして、私どもの、私どもと申しますか、それぞれの都道府県ないし政令市研究所測定分析クロスチェックとしていたしてみる、そして照合する、そしてこの記録信頼性チェックさせるように指導いたしておるわけでございます。
  29. 原文兵衛

    原文兵衛君 そこが、都道府県などでそういう立ち入り検査したり、あるいはサンプリングしてクロスチェックするということはわかるのですけれども、それぞれの工場でいまの排出水あるいは排煙測定して記録するように義務づけているわけでしょう。
  30. 春日斉

    政府委員春日斉君) はい。
  31. 原文兵衛

    原文兵衛君 それぞれの工場における測定する人は、どういうような人が充てられているのですか。
  32. 春日斉

    政府委員春日斉君) これは、一定の公害あるいは工場環境、そういったものに訓練を受け、それから特定の資格ではございませんけれども、それぞれの工場で特に指定し、訓練を受けた者に行なわしめておるわけでございます。ただ、現在のところ、公害測定士でございますとか、あるいは公害計量士というようなかっこうで正式の資格というものがまだ付与されていないというところは問題であろうと考えております。
  33. 原文兵衛

    原文兵衛君 そうすると、くどいようですが、大気汚染防止法なり水質汚濁防止法で義務づけられている測定は、それはそれぞれの工場自体で全部できるのか、工場ではやっぱりやれない工場があって、他の測定分析機関のほうに委託してやっているのもあるのか、その辺をお答え願います。
  34. 春日斉

    政府委員春日斉君) そのとおりでございまして、大企業につきましてはみずから行なっているわけでございますが、中小、ことに零細企業に属するようなところでは、みずから測定記録する能力がございませんので、先ほど申しましたような民間業者委託をしているのが現状でございます。
  35. 原文兵衛

    原文兵衛君 そこで、私は先ほども申し上げたように、工場自体に相当な能力があるところもあるけれども、やっぱり多くの工場はあまり能力もないだろうし、民間委託もしなくちゃならないということですが、そこで、いまちょっとお答えの中にもあったようですけれども分析あるいは測定技術者ですね、これの資格とか条件とかいうようなものが何か特別なものがまだ設けられていないように伺ったのですが、この資格条件については何にも基準がないのでしょうか。その辺のところをもう少し詳しくお願いしたい。
  36. 春日斉

    政府委員春日斉君) これは計量法の立場で通産省のほうでいろいろ御検討になっていることがございますので、通産省のほうからひとつ……。
  37. 野口一郎

    説明員野口一郎君) お答え申し上げます。  ただいま先生が御指摘になりました点でございますけれども先ほどからるるお話がありましたように、公害あるいは環境汚染状況等計量分析測定をやる機関の問題でございます。いま御指摘にありましたように、民間機関につきましてはいままでは法的規制はございませんでした。ところが、これではいかぬということは先ほどからここで先生がお述べになったとおりでございまして、そういう世論の動向等を考えまして、通産省におきましては昨年から、計量行政審議会というのがございます、そこで民間のそういう測定分析機関はいかにあるべきかということにつきまして審議をいただいたわけでございますが、その中間答申を昨秋いただきまして、その趣旨を受けまして今度の国会に計量法の一部改正法案を提出してございます。その中におきまして、公害防止あるいは環境汚染防止のための分析測定機関のあり方につきまして法的規制を加えることにいたしたわけでございます。これは、公害防止あるいは環境分析測定を行なう機関につきまして、都道府県知事の登録制を強化するということにいたしました。どういうものが登録を受けられるかということにつきましては、一定の資格条件を定めまして、たとえばそれはちゃんとした事業所がなければいかぬというようなこととか、法で定める分析のための計測設備を持っていなければいかぬ、あるいは一定の計測を行なう分析測定技術者を持っていなければいかぬ、それからその機関の運営については都道府県知事に届け出して、そのクリアを受けたところの事業規程を持っていなければいかぬというような趣旨の内容を盛っておりますところの法律案の改正案を提出しております。これによって今後の民間環境測定分析機関の姿勢を正してまいりたいというふうに考えております。
  38. 原文兵衛

    原文兵衛君 分析測定技術者を持っていなくちゃいけないというそ技術者資格、これは国家試験か何かでもって資格を付与するようにするのですか。
  39. 野口一郎

    説明員野口一郎君) さようでございます。計量を行なう専門技術者といたしましては、このたび——別に計量法の中では国家試験を受けて資格が定まります計量士の制度がございますが、その中にそういう濃度その他公害に関係深い物象の量を測定することを任務とするところの計量士という制度を設けます。ただ、この分析測定機関に置かれますところの技術者につきましては、全部その計量士でなければいかぬというわけにはまいりませんので、主として計量士でございますが、及びそれに準ずる者、これをその置かなければならない技術者として定めております。
  40. 原文兵衛

    原文兵衛君 私、不勉強でいまの計量法の改正案を研究していないのでたいへん申しわけないのですか、そしてまた同時に、こういう技術方面のことがよくわからないので、何かたいへん的のはずれた質問になるかもしれないのですが、常識的に考えて、計量法というと、何か度量衡のあれをきちっとするためにできた法律のようにぼくら感ずるのですけれども、そこで、いわゆる公害関係測定あるいは分析をする資格者をその法律の中でもってきめるのがいいのか。やっぱり、これは、むしろ環境庁などが所管する何か新しいそういうものが必要なんじゃないかというような感じもするんです。たとえば、すでに特定工場についてはいわゆる公害防止管理者制度が設けられていて、これはみんな国家試験を受けてその資格を付与されるようになっているのですね。これは環境庁のほうの所管じゃなかったかと思うのですが、そうじゃないですか。そうですが、これは通産ですか。通産の所管ですね、やっぱり。そうですが。その辺がどうもはっきりぼくもよくわからなかったのですけれども、これは、あれですか、計量法の改正によっていまの測定分析技術者資格等についての条件等をきめるについては、環境庁あたりも十分協議されておるものと思うのですが、どうなんですか、その辺。
  41. 森整治

    政府委員森整治君) 十分通産省とも連携をとりながら協議をいたしております。
  42. 原文兵衛

    原文兵衛君 大臣がお見えになっていらっしゃるので、大臣に最後に私の意見を含めて申し上げたいのでございますが、いまの分析問題ですね、これはことに分析化研の問題が出てきてから世間的にも大きな関心を持つようになったのですが、私自身は、実は昨年から、この分析機関というものをもっとしっかりしなくちゃいけないのじゃないか、もっと非常に整備された、しかも信頼度の高い分析機関をつくらにゃいかぬのじゃないかということで少しかけ回ったことがあるので特に関心が深いのですが、基準を設けるとか、そういうものについての法律は非常によく整備されてきたんですよ。そして、かなりきびしくなってきた。ことに、何というか、いま大気汚染防止法の改正でもって総量規制基準というようなものまでだんだんと設けるように非常にきびしくなってきたと思うのです。私は、そういう意味で、日本の公害関係の法律は、規制なりあるいは基準のきびしさ、それから非常によく整っているという点では、むしろ国際的に世界的に見ても非常に進んでおるほうじゃないかと思うのです。ところが、そういうものは進んでいるのだけれども、現実に分析したり測定したりするそれが規則だけ設ければそれでもうできちゃうような感じでもって、実際のものがどうなっているかという点がまだ不十分な点があるのじゃないかと思うのです。ことに分析のような問題については、私はこれからももっと信頼度を高めていくということが、公害の問題を解決する、あるいは公害対策を進める上において、あらゆる場合の基本になると思うわけでございます。  そこで、私は、実はこの分析あるいは測定機関というものは、いまのように計量法で基準などを設けるということはけっこうなことで、それはぜひやらなくちゃいけない、おそ過ぎると思うのですけれども、それを設けてやらしても、大企業の付属機関とかあるいは公立、国立ならばできるけれども民間では私はこれは事業として成り立たないのじゃないか、ペイしないのじゃないかと思うのですよ。そんなに高額の分析測定の手数料というか、料金を取るわけにいかないと思うのです。実は私もある程度調べたのですが、たとえば名古屋のほうには、これは通産局が指導してつくったと思うのですが、財団法人東海技術センターという、私も現地に実際に行って見てきましたが、かなり施設も設備もりっぱだし、人もかなりよく集めている機関がございます。あるいは大阪には関西産業公害防止センター、まあ同様なものがあります。しかし、これも、それをつくり、また維持していく上において、やはりかなり無理して賛助金を集めたり、あるいは賛助会費によって維持していかないと、分析測定を依頼してくる者からの料金だけじゃとてもできないのですね。また、将来も私はそうじゃないかと思うので、そういうところにやっぱりごまかしがあると思うので、あるいはまた、非常にいいかげんな方法でやって答えだけほんとうらしく出すというようなことが行なわれがちである。そうなると、信頼性というものが失われる。分析測定の一番土台となるものに信頼性が失われたら、これはあらゆることに響いてくるのですね。たとえば、新しく工場を立地するとか、あるいは発電所ができるとかいうような場合に、これはだいじょうぶなんだということに対してもう疑ってかかられたら、これは日本の将来に非常に心配な点が多いと思うのですね。そういうようなことで、私は、非常に権威のある、できればいま言ったように経営の経済的な問題でも非常に困難なので、まあ国でやるというぐらいの気持ちで国立の分析機関というようなものをつくる必要があるのじゃないかというふうに考えておるのです。  そこで、私はちょっと自分で考えたのですが、国立公害研究所というのがいよいよ発足するわけですね。この国立公害研究所分析機関というもののかかわり合いをまず検討して、何かこれとの関係においてそれに付置する機関とかいうような感じでもって分析測定機関をつくることができないかという一つの考え方を持っているのですけれども、それで、まず国立公害研究所というものについて、ここではそういう分析などは、まあもちろん研究のための分析はやるのでしょうけれども、いわゆる分析の結果を知らしてもらうための民間からの委託だとか、あるいは都道府県からの委託による分析測定というようなそういうものはやらないのでしょうね、国立公害研究所は。その点どうでございますか。
  43. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) 国立公害研究所でございますが、三月の十五日に発足いたしまして、まだ十分整っておりません。ただ、考え方としましては、先生指摘のように、まず計測技術に関する研究、これが中心になるわけでございます。そのほかに、特に高度の計測技術を必要とする分析を行なう。これは施設そのものが非常に高価なもの、あるいは非常に専門的な技術を要するもの、いろいろな場合があると思いますが、そういう分析をも行なうということ。それから地方公共団体とか民間機関が行ないます日常の分析業務につきましての技術的な指導と、こういうことが中心でございまして、経常的な試験検査というのを大量にこなしていく、こういうことを中心には考えておりません。
  44. 原文兵衛

    原文兵衛君 そこで、私は、これは最後に大臣に意見をまじえて申し上げてお伺いしたいのですが、先ほど来申し上げましたように、分析測定機関というものが、非常に権威のある、しかも施設なり設備なりあるいは人員なりの整備されたものが、私は日本の必要な適当な個所に何カ所か置かれる必要があると思うのです。もちろん、先ほどお話しのように、都道府県でそれぞれ公害技術センターとかあるいは公害研究所とか、いろいろなものがあることはあると思うのですけれども、しかし、それが都道府県にあるのも私は知っています、現実に行って見ていますが、いわゆる実務的な分析測定をやるところではないのですね、やっぱり。一部民間から委託を受けているところもあるけれども、これはきわめて一部分なんです。そうすると、やはりそういう実務的な分析あるいは測定をする、非常に整った、しかも権威のある機関都道府県が設けるなり、あるいは国が設けるなり、都道府県が設ける場合には当然国のほうでもってそれに対する助成もしなくちゃいけないと思うのですが、そういう機関が必要じゃないかと思うのです。私はそれについて、もしこういうことが可能ならば一番いい方法じゃないかと思うのは、せっかく国立公害研究所ができるわけですから、国立公害研究所の付置機関として、たとえば分析測定のセンターというようなものをつくり、そしてその支所を全国の適当な個所に置いて、そしてそこで十分分析あるいは測定業務をやるということ、これはまあ国がそういう民間業務をやっていいかどうかということもあるかもしれませんが、普通の国立の病院だって何だってみんなそれはあるわけで、同じような考え方で私はやって差しつかえないのじゃないかというふうに思うわけでございます。  いずれにいたしましても、こういうすべての公害問題の基本になる分析なりあるいは測定というものを権威づけるために、そういう機関をこれから設置する必要があるのじゃないかと思うのでございますが、それについての大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  45. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 原議員が御指摘のように、分析測定ということが環境行政を裏づける一つの基礎になるわけでありますから、これに対して信頼性が高いということが絶対に必要なわけです。日本分析化学研究所の不祥事件があったことは、公害行政を推進する上においても非常に不幸な事件だと思っておるわけでございます。  そこで、いま御指摘のような国立公害研究所の付設機関として分析センターを設置したらどうかという御意見なんですが、これは非常に傾聴に値する一つの御提案だと思うのでございます。国立公害研究所は、計測技術に関する研究を推進していくほか、高度の計量技術を必要とする分析業務というものはこれがやったらいいと思っておるわけです。また、地方の公共団体の分析測定の技術というものもこれは指導する必要があるわけですから、こういうことは国立公害研究所がやったらいいという意見でありましたが、日常の業務もその付属機関としてのセンターでやれということは、これは十分に検討してみたいと思います。今後環境保全のためには分析業務というものはふえる一方ですから、これに権威を持たすためには、いま御提案になったようなことも一つのやっぱり方法だと考えられますので、十分検討をいたしてみたいと考えます。
  46. 原文兵衛

    原文兵衛君 最後に、くどいようでございますが、実は私がその付置機関というようなものでやったらいいのじゃないかという意見を持ちましたのは、ことに水質の問題のとき、予想しないような複雑な水質が新しくどんどん公害関係において出てくるのですね。そして、それの分析をやり、またそれを測定する上において、それの対策、新しい方法がやっぱり研究されていくと思うんですよ。ですから、国立公害研究所においてもそういうものの委託を受けていると、自分たちが想像もしないようなとんでもない汚水というものがあるいはあるのじゃないかという、そういうものによって公害研究所の研究もまた新しいそういう対象が出て進んでいくのじゃないかというようなことも考えられるものですから申し上げたわけでございます。したがって、国立ということでもしいろいろ問題があれば、あるいは特殊法人にしてそれとタイアップしてもいいと思いますけれども、その方法はいろいろあろうかと思いますが、いずれにしても、最も基礎的な最も基本となる大事なものでございますので、環境庁あるいは通産その他関係省も関係するかもしれないと思いますが、十分御検討をいただいて、前向きでひとつ進めていただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  47. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) 答弁はいいですか。
  48. 原文兵衛

    原文兵衛君 けっこうです。
  49. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  50. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) 速記をつけて。
  51. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、環境庁に対して質問させていただきます。  この四十九年度予算を拝見させていただきますと、さすが大物の大臣がいらっしゃるだけに、環境庁予算が非常に四一・五%の増加率ということで、まあ国民の期待にこたえるだけの環境行政をぜひやっていただきたいと思うわけでございますが、いま原委員の御質問の中にもありましたように、実は環境庁の御所管というものがなかなかはっきりしておらずに、実は、私も、常時別の委員会に出ておりますせいか、こちらの不勉強のせいか、環境庁でやっていただけることということでお尋ねいたしますと、いえこれは運輸省の所管だ、いやこれは法務省の所管だ、いやこれは厚生省だと、何だか結局環境庁は何をやっていただけるのかと非常に心もとない感じが実はしたわけなんでございます。  まず基本的に、いま私弁護士をしておりますけれども、本来行政の中で処理されるべきであるところの問題が、住民の欲求が十分に満たされずに、いろいろな公害訴訟というものがいま法廷に持ち込まれている。そういう事柄に対しまして、何とかこの機会に環境庁さんにしっかりしていただいて、法廷闘争まで持ち込まないでも十分な行政が行なわれて、住民が満足するような、心配しないで暮らせるようなことになっておれば、こういうことはしないでも済むのではないかと私かねがね思っているのでございますけれども、まず長官に、本年度この大幅の増額に伴いまして、基本的に環境行政にどのように取り組んでいく御方針か、御所見を簡単に述べていただきたいと思うわけです。
  52. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 高度経済成長に伴っていろいろと、あまりにも速度が速かったために、環境とのバランスを失しておる面があるわけです。したがって、そういう高度経済成長の期間が相当長きにわたっておりましたがために、たとえば海域とか水域に対しての汚染というものが、蓄積されておる汚染がある。こういう汚染物質をまず除去したい、過去の汚染の蓄積を取り除きたいということで、環境調査を全国的にして、ある一定の基準をこえて水銀とかPCBとかいうものが蓄積されておるものは、これを除去していきたい。過去の汚染の蓄積を取り除くということ、これ以上日本を、日本の環境を汚染しないためにはやはり規制を、環境基準あるいは排出基準というものを次第に強化していきたい。その上に総量規制というものも取り入れて、濃度を薄めたらいいというような抜け道はできないようにしていきたい。また、自動車などによる、いろいろな排出ガスなどによる大気の汚染については、これを相当にきびしいいわゆるマスキー法というようなものを五十年度から実施をして、そして大気の汚染を防止していきたい。また自然環境については、全国的に環境調査を行なってるわけです。そして自然環境の重要の度合いというものを全国的に調査をして、これだけのやはり自然環境というものはそのまま残さなければいかぬとか、あるいはこの地域を開発するためにはこういうことを条件にせなければいかぬとか、まあ自然環境の保全にもそういう面から総合的に検討していきたい。さらに、だから過去の汚染を取り除く、これ以上よごさないようにする、よごさないようにするばかりじゃなしに、これをもっと美しくする、水質もあるいはまた大気ももっときれいなものにしていこう、そういうためにはだんだんと環境基準とか排出基準を強化していって、高度経済成長の初期の状態ぐらいまで日本の環境を取り戻したいということがいま考えておる目標でございます。
  53. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまの大臣の御答弁のように、ぜひそのようにしていただきたいと思うわけでございます。  これは環境庁がお出しになっていらっしゃる四十七年度版の環境白書を拝見させていただいても「環境管理への道」ということで、国民の幸福増進を求める経済発展そのものが非常に優先したために、その大前提となるところの環境保全の確保を十分はからなければほんとうの意味の経済発展を遂げることはできないから、今後は環境汚染などを未然に防止する、そしてこれから将来起こるべき環境破壊といいますか、被害を未然に防止するというふうな方向に環境管理を進めていかなければならないということを環境庁自身が、いまの御答弁と同様におっしゃっていただいているわけでございますけれども、ところが、私どもの周辺に起こっておりますところでは、いまもおっしゃったように、過去から現在につながるところの環境破壊が山のように山積しており、かつまた、このままいけば将来どのような環境破壊によって環境権なり、あるいはわれわれの人間としての健康なり生命なりあるいは生活が脅かされるかわからないというふうな、もうそのことだけははっきり目に見えているという状態が山積しているわけでございます。  それで、実はきょうはちょっと環境庁のほうに理屈っぽいことをお伺いするようでございますけれども一般のわれわれ国民の頭の中には、住民の方々は環境を守る権利、環境権というものが当然にあるんだというふうに、これはしいてアンケートをとったわけではございませんけれども、これは訴えられる住民自身は、もちろん環境権があるんです、われわれは環境権を守らなければならないというふうに、これは百人のうち九十五人ぐらい思っていらっしゃるような状態なわけなんでございますが、実は明文上は環境権というものはまだ法文化はされておらぬわけでございますが、たとえば日照権などのような問題は、明文上は日照権というものがなくて、一番最初日照権ということばは、これは法律実務家、主として弁護士がやむを得ぬ必要から日照権ということばを使い出したのじゃないかと思うのでございますが、それがもう積み重ねられて、いま日照権というのは法文にはどこにもないけれども、日照権に基づく訴訟なり、これは本案でも仮処分でも幾らでも日照権をめぐる判決も出ておりまして、事実上日照権というものはもうほぼ確立されてきているのじゃないかと思うわけなんでございます。  これに対して環境権については、いままで御承知のとおり判決例ではあっちこっちで環境権を是認された判決が出ておるわけでございますが、この間の大阪国際空港の判決では、人格権は認められたけれども環境権は認められておらない——人格権というのももとより法文上の規定は全然ないわけなんでございますが、まあそういうのもございますが、やはり大阪で起こった藤井寺ナイターの観光公害に対する住民の環境を守るための環境権などというのは、裁判所ではっきりと是認されて、ほぼ一〇〇%認められている。それのみならず、環境権の判例上はかなりに大幅にここ一、二年の間に、一、二年というよりもここ半年、一年の間にかなりに認められてきておるわけでございますが、環境庁とすると、環境権というものの性格ですね、これはどなたに伺ったらいいんですかね、企画調整局長になるんですかね、性格とか定義ですね。住民の方々が環境権、また訴訟上も環境権、判例にも環境権ということば使われておりますが、環境庁自体とすると環境権というものをどのように考えておられるか。
  54. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 良好な環境のもとに生活するという権利は、ばく然としてはあると思います。しかし、これを内容を、それならばどの範囲が環境権の中でカバーする範囲内だと、法体系としての位置づけというものはどういうものになるかといいますと、まだ熟していないわけですね。だから、大気の汚染とか水質の汚濁であるとか騒音であるとか、いまお話しになった日当たりの問題であるとか、そういうふうな問題は、まあ具体的な問題としては処理されるわけです。しかし、環境権という一つの法体系としてやるためには、もう少しやはりいろいろと検討をしなければばく然とし過ぎておる感がありますので、われわれとしても、政治の理念としては環境権はある、しかし、まだこれを法体系とするのには不明確な点があるので検討を要するということが基本的な考え方でございます。
  55. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは実は私の所属しております大阪弁護士会が、環境権の問題についてこの間日本評論社から同僚集まって出版したのでございますけれども、その環境権の御研究を環境庁も鋭意進めていらっしゃると思いますし、またこれは法務省ともいろいろとよく検討していただかなくちゃいけない問題だと思うのでございますが、御承知のとおりアメリカなどにおきましては、環境権はかなりはっきりした権利として確立されておって、環境権に関する判例集などというものもたくさん出ておるわけでございます。それが日本にも相当翻訳されて入ってきているわけでございますし、また、この間のストックホルムの人間環境会議においても、その宣言の中に環境権の確立というような趣旨のことがうたわれているわけでございますが、これは環境庁とするといま御検討中というのは、いわばどのような角度でどのように御検討を進められているのか、その大まかな現在の状態あるいは将来の見通しというようなものを教えていただきたい。
  56. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) 環境権、いま大臣から御答弁申し上げましたように、現在まだ非常にはっきりしないものがたくさんあるわけでございます。先生がいま御指摘になりました「環境権」という著作の中におきましても、はしがきの中に、やはり十分市民の期待にこたえるほど理論的成熟を遂げてはいないということもあわせて述べられいるわけでございまして、私どもとしましては、公法上の問題、私法上の問題含めましていろいろ検討いたしておりますが、非常にまだむずかしい問題があると思います。特に私法上の問題につきましては、今後十分判例、学説等を検討すべきものと思っておるわけでございます。法務省とも近くその辺のいろいろ問題点の分析をしてまいりたいということで御相談をしている、こういう段階でございます。
  57. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはぜひ前向きの姿勢で取り組んでいただきたい。と申しますのは、その前提となる環境権というものについて、いまも大臣もおっしゃったように、環境権というものは否定しないが、その範囲なり、どういうものであるかというような定義づけというところまでは至っておらないというお話でございますが、私ももちろんきっちり固まったものができているというようなことは、まだはっきりした概念というものは、打ち出す段階にまでは熟しておらないのじゃないかというお考えもごもっともだと思うのでございますが、やはりいま環境庁自身がお示しになっていらっしゃる環境管理というようなことを進めていこうと思うと、その前提となる環境とは何ぞや、住民の環境を破壊しないでくれという権利とは何ぞやという前提がわからなくては、どうもこれは進めようがないのではないかというふうな感じがしないでもございませんので、ぜひ鋭意この問題についてお取り組みいただきたいと思うわけです。  それから、この環境行政について、私最初にも申し上げましたように、環境庁の機構上のことについての私の不勉強によるものだとは思いますけれども環境庁のお仕事というものがどうも国民のサイドから見ると消極的過ぎるのではないか。いっときは、環境庁ができたときには国民をうちょうてんにさせたものでございますけれども、どうもいまの段階では環境庁に頼んでもあまり十分やってもらえないのじゃないかということで、これはもう裁判の力を借りてやる以外にしかたがないというので、国際空港のこともやってくれば、大気汚染もやってくれば、新幹線公害もやってくる。ともかく周辺の環境破壊に関することはみんな弁護士のところに持ち込まれてくる。そして、事実上環境が破壊されていることを行政面でぴたっとチェックしてくれれば訴訟に持っていかなくてもいいのに、国際空港の問題にしても、今度の新幹線公害にしても、やれ何にしても、みんな裁判所へ持ち出して、裁判上すったもんだともめたあげくに司法的な解決によってそれを差し止めるとか、あるいはその被害を救済するというふうな方法によらざるを得ないし、またその傾向がたいへんに強くなってまいりまして、これは公害事件を担当する弁護士はもうてんてこ舞いをしている。  私どもの同僚などもいろんな法律以外の勉強を山のようにしなければ、とても国民要望にはこたえきれない。それからまた裁判所の側も、人員も裁判官なり職員が少ないのに、これは本来の法律ばかりじゃない、いろいろな自然科学の勉強もしないといけない。また住民訴訟になると原告の数が二百人、今度の新幹線公害など五百何十人ということになると裁判所自体が予想しておらないような大訴訟ということになって、法廷自身も、当事者も弁護人もはいれない、超満員ですし詰めに押してもはいれないというような非常に変わった予期せざる状態が起こってきているし、ますます今後これが起こりつつあろうと思うわけでございますが、その点において、次々にこういう問題が司法的に解決される以前の段階で、何とか環境庁でしっかりとチェックしていただきたいと思うわけなんです。  これが環境庁がごらんになって環境破壊になっておらないというのであればともかく、新幹線の公害の問題にしても、国際空港の問題にしても、そのほかいわゆる四日市公害にしても、公害が発生していることは事実なんですね。これが公害が起こっているか、起こってないかということが争点になるのじゃなくて、起こっているのに、それに対して行政的な手が打てないために訴訟になっているわけですから、こうした訴訟をやるということ自体、被害を受けている住民にとってたいへんな負担なわけでございますから、そこら辺を訴訟までしないでも満足できる状態に、ひとつ大物大臣の間にそういうふうな方法をぜひ樹立していただきたいと思うわけでございますけれども、そうしたあたり、長官はどのようにお考えでございますか。
  58. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 今後、環境に対するアセスメントというものを十分にやることによって公害の発生を防止したい、また新幹線とか空港に対しては環境基準は相当きびしいものを制定することによって、全体としての新幹線あるいは空港に対しての騒音とか振動の防止をはかっていきたいと考えておるわけですが、その人格権とか物権に対する損害賠償あるいは差し止め請求というようなものが裁判所に出るわけですね。こういう問題に、損害賠償のような訴えに対して環境庁がそれを取り扱っていくということは、環境庁としても、そこまで損害賠償というようなことに対して環境庁も中へ入って話をつけるということには、なかなか役所の性格としてなじまないものがあって、だから内閣の中に調整の委員会があるわけですね。いろいろそういうふうな面で持ち込んでくれば、これを調整する委員会ができている。この国会でも法律の改正を伴って、こちらのほうから出向いていってそしてそういう問題の調整をしたり、向こうから調整を依頼されたことはもちろんでありますが、こういうことで内閣の中にある調整の委員会の機能を強化することによって、いま御指摘のような裁判へいかなければ問題が解決できぬという行政に対する批判に、そういう形でこたえていきたいということを考えておるわけでございます。
  59. 佐々木静子

    佐々木静子君 ぜひ環境庁としたら積極的に、むろんいまの一人一人の損害賠償のところまではタッチできない、ごもっともだと思いますが、その損害賠償原因になるような公害を、もとになる原因を何とか早く除去していただきたい。損害賠償してもらって喜んでいる人はないのでございまして、もう泣き泣きせめて賠償でももらわなくちゃしかたがないということでそうなっておるわけでございますので、ぜひとも前向きの姿勢で取り組んでいただきたいと思います。  そして、これはちょっと資源エネルギー庁あるいは経企庁にも関係すると思うのでございますけれども、これもいま住民の側からもうまかせてはおけないということで、昨年大阪地方裁判所に提訴されている事件で、これは住民対国のサイドの事件じゃなくて、関西電力に対して大阪の多奈川地区の住民が訴訟を起こしているケースでございますが、関西電力が多奈川第二火力発電所の建設計画を三年前に明らかにしてから、全国の火電の紛争のはしりといわれた住民運動が起こってまいりまして、そして南大阪の堺あるいは泉北のコンビナートをかかえたこのたいへんに公害の激しい、全国第二位といわれるところの公害の町にまた巨大な火力発電所が新設されたら、もうわれわれの生活はどうなるのか、大阪の空はどうなるのかということで、電力供給の必要性と、それから住民の生活あるいは健康、生命にかかわる問題としてたいへんに大きな住民運動が起こってき、そしてついに昨年、訴訟を提起するに至った。  これも環境権に基づく差し止め請求事件となっているような問題でございますが、これはちょっと手続的にお伺いしたいのでございますが、関西電力のほうは、まだ鋭意多奈川地区に二百四十万キロワットの大きな発電所を増設したいというふうな申請を本年もまた続けて通産省のほうに行なっているようでございますけれども、まず、この電力の施設を増設しよう、あるいは新設しようという場合のその手続を簡単に資源エネルギー庁のほうから御説明いただきたいわけなんです。
  60. 小野雅文

    説明員(小野雅文君) 手続のほうでございますが、まず年度、その年の始まる前の年度のうちに、翌年度分のこういうふうな電源開発を行ないたいという施設計画というのを資源エネルギー庁のほうに届け出てもらうことになっております。多奈川についてはその施設計画の中に一応含まれております。それからそのあとから、今度は電源開発調整審議会というのがございまして、それは経済企画庁のほうで所管しておられます。そちらのほうで電源開発の基本計画というのがございまして、その中に多奈川なら多奈川が具体的な開発計画として組み込まれるという手続がまず必要でございます。それからそのあとで今度は電気事業法に基づきまして、第八条でございますが、施設計画の変更の許可がございます。そのあとで、今度は電気事業法の四十一条に基づきまして、その施設が安全であるかどうかといったような、主として施設に着目いたしました審査の認可がございます。手続としてはそのようなものを経るようなかっこうになっております。
  61. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまの問題の関西電力の多奈川発電所については、いま手続はどういうことになっているわけですか、具体的に。
  62. 小野雅文

    説明員(小野雅文君) いまの手続でございますが、施設計画の中には一応含まれておりますが、まだ電調審のほうの基本計画にも入っておりません。したがいまして、電気事業法に基づきます許可、認可の申請も一切出てきておりません。
  63. 佐々木静子

    佐々木静子君 電調審のほうに伺いたいのでございますけれども、これはまだ全然一度もきていないわけでございますか、電調審のほうには。これは昨年もその前にも出していると思うのでございますが。
  64. 伊藤謙一

    説明員(伊藤謙一君) お答え申し上げます。  多奈川第二発電所の計画につきましては、われわれのほうの電源開発調整審議会の事務当局といたしまして検討したことが過去二度ございます。それは昨年度、四十八年度の電源開発基本計画を策定いたします際に、昨年の秋でございますが、それと、ことしの二月と、六十三、六十四と二回の電源開発調整審議会を開いたわけでございますが、その際に原案といたしまして、通商産業省のほうから私どもに声がかかりまして、それを受けまして各省の連絡会というのがございましてそこで検討し、いま幹事会で検討して、電源開発調整審議会での付議を行なうという形になるわけでございますが、その各省連絡会の場に二回協議を申し上げたことがございますが、なお地元等におきます検討状態が十分でないということで、その段階では幹事会にも上げられない段階になっております。
  65. 佐々木静子

    佐々木静子君 この多奈川発電所の場合は、これは地元の調査によりますと、第二火力発電所総出力二百四十万キロワットというので、これは国の環境基準がいま一日平均〇・〇二PPMとなっておるところが、多奈川発電所を設置する岬町においては、もしこれが設置されたならば二倍から三倍の——現在これを設置されない間においても、すでに第一火力発電所四十六万二千キロワットの発電所が設置されているだけでも、国の環境基準の二倍から三倍の日が断続的に続いておる。むろん二倍にも達さない日もあるけれども、ほとんどの日が二倍から三倍、そして多いときには八倍にも達しており、また五倍以上の汚染にかかっているときもあるということで、公害病の指定地域でもあるところの堺市のすぐ近くで、しかも堺市にまさるような公害が発生する可能性がきわめて多いということで、たいへんに地元のほうは心配しているわけなんでございますが、電調審のほうにこれが回されたときには、この電調審の中のメンバーに環境庁はもちろん入っていらっしゃるわけでございますね、電調審に回ってきているとすれば、この大気汚染について環境庁もこの調査なり、何らかこの審議に関与していらっしゃる、そういう状態でございますか。
  66. 春日斉

    政府委員春日斉君) 先ほど経済企画庁のほうからお話があったとおりでございまして、関西電力が多奈川地区に新たに大規模な火力発電所を建設したいという希望を持っていらっしゃることは重々私ども伝え聞いておるわけでございますが、本件についてまだ電源開発調整審議会の審議にかけていらっしゃらないわけでございますので、したがいまして、環境庁としてはその審議会のメンバーではあるわけでございますけれども、正式にかかってないということでその内容について正式には承知していないと、こういうかっこうでございます。したがいまして検討する段階ではないということでございます。もちろん私どもも、そうは申しましても大阪地区で非常に大きな問題になっていることは十分承知をしており、その概略につきましては検討をいたしておると、こういうふうに言えようかと思います。
  67. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはもちろん大阪府における非常に大きな問題として、正式ではないけれども検討いただいていると。大阪府の公害審議会ではもう何年も前からこの問題に取り組んで、鋭意検討を進め、非常におそるべき公害施設ができるのじゃないかということで、いままでこれはむしろ住民の生活を守るという線で、大阪の府政もそういう姿勢で取り組んできているようでございますが、環境庁が非公式といいますか、現地から探知していらっしゃるようなこれだけ住民が心配していることでございますので、環境庁としてもこれは住民の要望にこたえるためにほっておけないのではないか。何らかの環境庁としての、非公式にしろ御調査なり何なり御検討を進めていらっしゃるようなことはないのでございますか。
  68. 春日斉

    政府委員春日斉君) 多奈川火力を建設いたしましたならば、その予定地周辺にどういうふうに大気汚染状況が波及するかというようなことにつきまして、先ほど先生が多少お述べになったのでございますが、あれはおそらく窒素酸化物のことであろうと思います。硫黄酸化物ではないのではないかと思いますが、四十七年度におきます大阪府の測定結果を私どもが調べてみましても、南大阪地域の泉大津の測定局、これが府の測定局でございますが、二酸化硫黄についてみますると、一日平均値〇・〇四PPMという環境基準なんでございますが、それ以下の日数の割合は九二・五%、残り七・五%は環境基準をこえている日があるということでございます。それからまた二酸化窒素について申しますと、一日平均値が環境基準の〇・〇二PPM以下の割合は二三・八%でございますから、環境基準をこえている日は七六・何がしと、こういうことになろうと思います。オキシダントの問題についても環境基準をこえている割合が約五・八%もある。こういうのがバックグラウンドでございます。  ところで、そういたしますと多奈川火力というものが、現状汚染がある上にさらにできたならばどうなるかという問題でございますが、これは大阪府全体でお考えになっております環境保全の計画とリンクするわけでございまして、大阪府全体としてその地域の改善をはかっていく、すなわち大阪では環境管理計画、ビッグプランというものをお立てになっておりますが、そういったものでどんどんどんどん大気汚染というものを減らしていくという前提があって、しかも多奈川火力というものが非常な大気汚染に留意した施設であるということになると、場合によればつくってもいいかもしれない。これは現在、私何回も申しておりますが、環境庁といたしましてはとりあえず大阪府の検討結果をまちまして、本問題が電調審にはかられる段階で、環境保全の観点から慎重に検討して結果を出したいと、こういうことでございます。
  69. 佐々木静子

    佐々木静子君 いろいろと御検討いただきまして心強く思っているわけでございますが、いまも局長からお話がありましたように、多奈川住民がもうたいへんに心配していることでございますし、それからこの堺臨海工業地帯の公害というものも、これは個々の工場から出るところの公害というものはわかりませんけれども一般公害に悩んでいる住民の感覚とすると、やはり何といっても一番の元凶は関西電力の堺発電所、あるいは三宝地区の発電所によって、こういうことが一番の大きなウエートを占めておるというふうにみな頭の中にもう入り込んでおりますので、そして現に多奈川の現在の第一発電所だけでも相当苦しめられておる、公害病患者が続出しておるということで、何とかして第二火力発電所の、しかも既設のすべての発電所をはるかに上回った大規模の発電所の建設だけは、もうこれは現在の自分たちの命のためにも、子供たちの生命のためにも何とか思いとどまっていただきたいというのが住民の切なる願いでございますので、これは環境庁のほうにおきましてもぜひとも鋭意、住民の気持ちを組み込んでいただいて御尽力いただきたいと思うわけでございますが、長官、その点について。
  70. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) この件については、大阪府でいま大気への影響あるいはまたそれの公害防止の対策検討を加えておりますから、大阪府の結論を待って慎重に検討をいたす所存でございます。
  71. 佐々木静子

    佐々木静子君 ぜひとも一地元住民の意見を尊重していただきまして、住民が納得する行政を行なっていただきたいと、特にお願い申し上げます。  それから話題は変わりますが、いま大阪の南部地区の公害の話をお願いしたわけでございますけれども、これはむしろ先日判決がありまして、原告であるところの住民側からすると非常に納得できない裁判だということで控訴に踏み切っている、国側も納得できないというようなことでいま控訴審に持ち込まれております大阪北部の大阪国際空港の騒音事件でございますが、この問題につきましても、これは国が一部勝訴の判決ということで、もっと大幅な差し止め請求を当然に認めてもらうべきだったと、これは一般の区民は率直にはそういう意見を漏らしているわけでございますが、運輸当局とするとずいぶんこの裁判には気も使われて、また事実判決が出てからは、判決のワク以上に減便などの計画を立てていただいているようでございますけれども、やはりいままでの運輸行政に対する住民の不信といいますか、そういうふうなことから、運輸省の立てている減便政策というようなことについても、やはり地元で相当反対意見が出ているわけでございます。まず運輸省がこの国際空港事件の判決後にお立てになった減便計画、これは飛行場部長も毎度のことで恐縮ですが、簡単に運輸省のお立てになっている減便計画、お述べいただきたい。
  72. 隅健三

    説明員(隅健三君) 現在大阪国際空港の発着回数を制限いたしておりますのは、総発着回数のワク、これは定期便、それからジェット、それから普通の不定期、新聞社の飛行機を含めて四百五十、そのうちに、地元の皆さまとのお約束でジェットを一日二百六十に押えるということでございます。先日、三月の二十三日運輸大臣が発表いたしましたのは、総発着回数を四百十、うちジェットを二十便減らして二百四十を当面の発着回数制限とするということでございまして、その後地元の御理解を得て、エアバスを入れた際にはさらに便数を減らすということになっております。なお、二月の二十七日の判決、それから四月ダイヤでわれわれが組みましたのは、先生も御存じのように、夜の九時から十時までの一時間の定期便の制限は、日本航空では三月に比べまして二便、全日空では一便減らしまして、現在のところ国内線は夜の九時から十時までの間は一日九便、三月に比べますと三便の減便をいたしております。
  73. 佐々木静子

    佐々木静子君 この中で一番問題になっておりますのは、減便は非常にけっこうだけれども、暫定的な措置なのでさらに減便計画をお立ていただけると思うのですが、二百回ぐらいまで下げてもらわなければ困るというのがまず住民の強い要望でございますが、そうしためどはいま運輸省の中に立っているわけですか。
  74. 隅健三

    説明員(隅健三君) これもたびたび地元とお話をいたしております。現在の大型の、ワイドボデーと申しますか、エアバスの音の静かなものを入れまして需要をまかないますと、大体ジェット機総数で二百二十に減るであろう、それからことしの暮れに山陽新幹線が福岡まで開通いたしました段階では、先生ただいまお話のございました地元では最大限ここまでという二百便には、われわれは大型機を就航して、かつ新幹線が開通して、二百便に押え込みたいというふうに考えております。
  75. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまのエアバスの問題でございますが、これがまた非常に地元との間で調整のつかない話でございまして、エアバスというものに対する不信感、これはまた牢固として抜け切らない。地元のほうではエアバスというものの就航を非常におそれて、かつ反対しているわけでございます。それに拍車をかけるようにこの間のトルコ航空の事故などもございまして、大阪のような密集した地域にあのような惨事が起こったならば一体どれだけの人命が失われるであろうかというようなことを考えますと、これはもう単なる恐怖症というようなのんきなことで考えられるような問題ではなくて、たいへんに切実な問題になってくるわけなんですが、このエアバスというものがほんとうに運輸省の言われるように騒音や振動の少ないものか。  私はエアバスのテスト飛行のときにお伺いできなかったわけですが、ずうたいだけ見ますと非常に大きくて、ともかく今度の空港周辺の整備計画で、多少空港のすぐ近くの住民は移転その他で解消されるかもしれませんけれども、いまのジェット機でもほんとうにものすごい、怪物が空をおおったような感じがするわけでございますので、それより大きなエアバスが今度就航するとなれば、その威圧感だけでもたいへんにおそろしいのじゃないか。これはオーバーに言っているのじゃなくて、あそこの現場におりますと、飛行機というものはこれほど大きいものかと、自分が乗っているときはそれほど思わなくても、飛行機が頭の上をほんとうにすれすれのようなところで通過しますと、こんなに巨大なものであるかということにふるえ上がる思いがするわけですけれども、それがエアバスにとってかわられると、もっとひどいことになるのじゃないか。  そのあたり、ほんとうに公害がないという保証ですね、これは前にダグラス機を入れる場合に、そのときにも非常にこれで公害はなくなるんだというふうに、地元は運輸省の御説明を聞いて安心しておったら、ところがあらわれてきたものはとんでもない、公害の元凶機であったというようなことから、いままでの長い歴史的経過を経て非常に不信感を持っているのですけれども、そこら辺、住民の側を納得できるような公害がないという保証は、運輸省のほうはそれだけの証明がつくのでしょうか、どうなんでしょう。
  76. 隅健三

    説明員(隅健三君) 先生のおっしゃいますとおり、たしかDC8を大阪空港に乗り入れましたとき、これは大型であるからということでお話をいたしましたが、その後の需要が非常に出てまいりましたので、やはり増便のやむなきに至ったという事実は、住民の方も十分その点は御承知おきになっております。この点は、われわれはこういうことはもう二度といたさないということは、再三繰り返しております。需要があるから航空機の便数を増加するということは、もはやそういう事態ではない。やはり地域社会との調和ある飛行場であるという考え方を持つべきだと思います。  それでエアバスにつきましては、確かに威圧感が非常にあることは事実でございます。着陸態勢に入りましたいわゆる豊中市の勝部地区あたりで上を見ておりますと、確かにもう地上すれすれで入ってまいります飛行機の大きさは確かにございますけれども、このエアバスの安全性あるいは排気ガスにつきましては、アメリカのメーカーにおきましても、いままでの宇宙技術を十分に取り入れて最大限の安全策を施しておりますし、この検査の結果についてはわれわれも十分自信を持っております。現在、沖繩それから福岡、千歳便で日航はジャンボを、747SRを飛ばしております。全日空ではロッキード一〇一一も飛ばしておる。この結果が、必ずや騒音の低さあるいは排気ガスの点について地元の御理解が得られるのではないかというふうに考えておりますし、また大気汚染その他につきましても、エアバスの排出します大気汚染につきまして、環境庁にも十分お願いをいたしまして、第三者の公平なる機関においてこれを調査検討してまいりたいというふうに考えております。
  77. 佐々木静子

    佐々木静子君 エアバス乗り入れについては地元の承諾がないとできないというふうに、文書をもって運輸省と地元との間の意思も確認されているようでございますが、その件について環境庁のほうは、いまエアバスについていろいろと運輸省からも御相談をお受けになり、また環境庁独自でもいろいろと大気汚染その他について御検討になっていらっしゃると思いますが、いまの研究データではどういうことになっておりますか。
  78. 春日斉

    政府委員春日斉君) いわゆるエアバスと申しております主としてロッキードとそれからいわゆるジャンボSRと称するもの、これにつきましては、理屈としては便数を減らすことに貢献できると思います。それからエンジンの排気ガスの問題につきましても、確かにエアバスの排気ガスというのは、少なくともDC8あるいはいままでのYS11等のエンジンに比べますと、COあるいはHCあるいはNOxというものについては単位当たりの排出量は少ないようでございます。しかし威圧感ということになりますと、これはまた大気保全という問題とおのずから別でございまして、現在おそらくエアバス問題で中心になっておるのは威圧感、それから安全性、墜落の危険性に対する恐怖感というようなものであろうと思いますので、この点は環境庁といたしても何とも申し上げようがないと、こういうところでございます。
  79. 佐々木静子

    佐々木静子君 時間がありませんので、次の新幹線公害のことについて若干伺いたいと思いますが、この新幹線、特に名古屋地区における振動、騒音の公害が非常に顕著であるということで、これもまた原告五百何十名という大型訴訟がいま名古屋地方裁判所に提起されている実情でございますけれども、この件につきまして、環境庁がこれは訴訟提起よりもすでに以前に、四十七年の十二月でございますか、環境庁長官からこの騒音の防止について勧告があり、国鉄は、いま申し上げた四十七年の十二月にこの音源対策中心にいろいろと措置をとってきたけれども、それでとてもかばい切れるものじゃなくて、こういう訴訟になるに至ったというわけでございますけれども、この環境庁のほうがいままでとってこられた騒音に対する環境の基準ですね、これが非常に手ぬるいということで、訴訟の段階ではこれをもっときびしいものにしなければ、とうてい人間の、住民の安全な生活は守れない、健康も守れないということで、もっとほんとうの意味のきびしい基準というものを要求しており、環境庁も、これは暫定基準であるから、もっときびしい基準を年末にも出したいというような談話を発表されておるわけでございます。そこら辺の騒音についての新幹線の基準ですね、これを環境庁のほうから御説明いただきたいと思います。
  80. 春日斉

    政府委員春日斉君) ただいま先生お話しになりましたように、昭和四十七年の十二月二十日でございます、環境庁長官から運輸大臣あての勧告をいたしまして、新幹線騒音の緊急対策指針を設けたわけでございます。その中で、われわれ暫定基準という呼び名で呼んでおりますが、既設の東海道新幹線及び大阪から岡山までの山陽線につきまして暫定的な基準を与えたわけでございます。それがいわゆる八十ホン、それから住宅専用地以外は八十五ホン、こういう基準でございます。ただ、私どもは新幹線全体の騒音に関する環境基準というものを中公審にただいま諮問いたしております。先ほど先生の御指摘のごとく、本年中にはその環境基準というものを示すことができるだろうと考えております。したがいまして既設の新幹線に対する基準よりは、当然きびしい基準になることは疑いのないところだろうと考えております。
  81. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは私お聞きしているところでは、四十六年度、閣議できめた道路に面した住宅地の基準は六十五ないし四十ホン、愛知県の公害防止条例の規制基準が七十五ないし四十ホン、そういうことから比べると、暫定とはいえ環境庁の基準というものがたいへんなまぬるい。そういうこともございますので、ぜひ鋭意御検討の上、ほんとうに住民が安心して暮らせる、私も新幹線のすぐそばのところで一昼夜過ごしましたけれども、これはやはりたいへんだということは、これはだれしも感ずることだと思いますので、やはり現状に合った環境基準というものをぜひ御設定いただきたい。そして住民の生活の安全ということをお考えいただきたいと思うわけです。  そして、もう時間ございませんので、最後に、いまお話のあった環境基準と、それから新幹線にしろ電力会社にしろ、あるいは国際空港にしろ、公共事業との関係でございますけれども環境基準をこえる飛行機騒音の被害は大阪で百七十八万人、東京で三十一万人、福岡十六万余りというふうなたいへんな数になっておりますし、自動車騒音は、全国で七百八測定点のうちで、基準をパスしているものがその一割にも満たないというのが環境庁のお調べでございますし、また新幹線のいまの騒音などというようなことは、もう新幹線の沿線ではどこも暫定基準を突破しているというふうなたいへんなありさまでございますので、これを全部訴訟で解決するなどというようなことになれば、これはもうたいへんなことでございます。また、これは一つの事件が片づけば、住民の方が全部訴訟をやってくれといえば、これはもう全部やれば全部認められる可能性が多いわけでございますので、ここらあたりで環境庁とすると抜本的な手を打っていただかなければ、全員が訴訟を起こしたことだけによっても国家財政はつぶれてしまうのじゃないかと思うわけで、私は何も訴訟起こすのがいかぬとはちっとも言っておらないわけですが、むしろ逆な立場で、この段階で早く前向きの環境行政に取り組んでいただかなければ、すべてのものが成り立たないくらいの大きな損害が起こって、もう何もかもがだめになってしまうのじゃないかというふうに私憂えるわけでございます。  そういう意味におきまして、最後に大臣に、こうした環境権と公共事業との関係について環境庁がどのように断固たる措置をとっていただけるか、御所信を述べていただきたい。
  82. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 日本のような領土の狭隘な地域で、新幹線にしても高速道路にしても、市街地を通っていくのに対して騒音対策というものは非常に無理があると思う。だから立地の当初から、やはり新幹線の場合でも高速道路の場合でもいろいろ考える必要がある。騒音とか振動というものを頭へ入れて、今度も国鉄ではレールの両わきに十五メーターぐらいの緩衝地帯を設ける。その地域にある家は買い上げて、移転をしてもらうというような案を打ち出そうとしておるようですけれども、そうやって新幹線ができたあとで移転というのはたいへんなことになりますから、また住民の人にも一非常な迷惑をかけるわけですから、今後はそういう計画をする当初から騒音とか振動を頭に入れた新幹線の計画を立てることと、またいろいろ音源対策としても改良を加える点はありますから、そういうことで、問題が起こってからあとでそれ補償だ移転だというようなことでは、新幹線が一局部だけでないですから、全国的な問題になるわけですから、そういう点で環境庁環境基準をきびしくしたいと思っておるわけです、いまよりも。環境基準も打ち出したい。いまのは暫定的な指針になっておるわけです。そういうことでいま検討を加えておる状態でありますが、そういういま言うような立地の当初からと、あるいはまた音源対策等に遺憾なきを期して、全国民によって新幹線が訴訟されるような事態が起こらないようにいたしたいと考えております。
  83. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十五分休憩      —————・—————    午後一時四分開会
  84. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) ただいまから第一分科会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和四十九年度予算環境庁所管を議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  85. 小平芳平

    小平芳平君 予算委員会一般質問のおりに提起された問題ですが、兵庫県市川流域のカドミウム汚染地区で発見された七人の患者について、そのときにも指摘しましたように、地元の柴田医師、それから金沢大学の石崎教授、萩野病院の萩野博士の三人の研究報告によりますと、神通川流域のイタイイタイ病患者と変わりない、疫学的にもそういうふうに証明された、そして早急に市川流域のイ病患者に対する公的救済が行なわれることを切望する、こういう報告があったわけですが、その後環境庁はどのようにされましたか。
  86. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) 環境庁といたしましては、その後大臣の御指示もございまして、さっそく県のほうの衛生部長はじめ主管課長を呼びまして、関連の県として持っている資料をすべて提出してくれということを要請いたしました。また、この研究発表なさいました石崎教授、萩野医師、能川医師、柴田医師、この四人の方に手紙を出しまして、あの研究発表の基礎となった資料をぜひともお送り願いたいということを要請いたしている次第でございます。
  87. 小平芳平

    小平芳平君 資料を受け取って、環境庁はどうするんですか。
  88. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) まず環境庁といたしましては、資料を受け取りまして、その七人の人につきまして、違う時点で別々の人によって検査が行なわれているという状態がございますので、これを、七人の人の一人一人の方に全部データーを整理をいたしたいというぐあいにまず考えております。  それからもう一つは、先ほど申し上げませんでしたが、神戸大学の病理学教室で病理解剖が、なくなられた患者さんについて行なわれておりまして、その結果が大体四月の中旬以降に出るというぐあいに聞いておりますので、その病理解剖の結果につきましても、ぜひとも出れば早急にいただきたいということを申し上げておりまして、それらの資料を整理をいたした上で、認識を非常に正確にいたしまして、それから県に参りまして県の行政当局と、また県の診査委員会の専門先生方にもいろいろ事情を御説明したり、あるいは個別にお話し合いを申し上げて、慎重な再検討要望するということにいたそうと思っております。
  89. 小平芳平

    小平芳平君 環境庁長官からも再調査ということが繰り返し発言されておりましたが、再調査するまでもなく、結局、カドミウムによる健康被害についての学者間における考え方の違いがあるわけでしょう。ですから、これは再調査されるのは、潜在患者がまだいるとかいうような点では再調査が必要でしょう。しかし、いま緊急に行政として対処すべきことは、カドミウムの健康被害に対する基本的な学者間の意見の食い違い、その食い違いによって患者救済がおくれていくということが私たちは最も憂うべき事態だと、こういうふうに指摘をしているのです。私は、きょうはそうした材料を一々説明をしていただきたいと思うんです。  まず、初期の段階でカドミウムによる健康被害を研究された機関なり発表された方は、どういう方がどういうふうに発表されておりましたか。それから当時、厚生省が公害病患者と認定した後においても、なおかつカドミウムに対する健康被害について疑問を提出する、あるいははっきりこれを否定するというような方もおられたようですが、その初期の段階説明をしていただきたい。
  90. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) まず、研究の初期の段階におきましては、最初は神通川流域の富山県の婦中町の医師である萩野医師から、本件につきまして、昭和三十二年でございましたか、萩野氏発表がございまして、三十四年ごろから鉱毒説というものをお出しになって、この研究を進められたわけです。なお、それに関しまして岡山大学の小林教授と、また農学のほうの吉岡教授もこれに関連して発表されたことがあります。  それに次ぎまして、文部省と厚生省の医療研究班によりまして、金沢大学の総合研究班が組まれました。そして昭和四十年に金沢大学の総合研究班の報告が出されまして、カドミウムが主因であるが、そのほかに妊娠とか授乳とか内分泌とか栄養というものがかんでおるというような報告がされたということでございます。そういう意味で、初期の研究発表の進め方と申しますのは、いま申し上げましたような経緯でございます。  四十三年に厚生省が厚生省見解を出しまして以降の、いろいろ違う意見が出されたのは状況はどうであるかということにつきまして簡略に申し上げますと、一つの問題は、一番本質的な問題は、じん性骨軟化症というものが、はたしてそのようなメカニズムでできるかどうかというところが一番議論が集中したところであります。この点につきましては金沢大学の武内教授が、四十六年でございましたか、研究発表におきまして、イタイイタイ病という問題につきまして、じんと骨の所見があらわれてくるこの病気の発生機序について、ほかの原因がすべて否定されたとしても、重金属であるというようなことになったとしても、カドミウムであるという断定をすることには問題があるということでございまして、完全否定の形ではございませんでしたが、断定することに問題があるという問題の提起と、また、ビタミンDの治療を大量にするということによっても問題があるのではないかというような御指摘がございました。  そのほかの問題でございますが、労働衛生の研究のほうの方々から、労働衛生で見られるカドミウム中毒と、イタイイタイ病との相違の点が幾つかございました。その相違点をめぐって、カドミウム中毒とするには非常に問題があるのではないかというような議論があったわけでございまして、さらに進行するにつれまして、老化とか、そのような病変、比較的生理的な病変、あるいは成人病というような過程とカドミウム中毒というものについては、非常にどうも明らかでない節があるというようなことにつきまして、なかなか病気のメカニズムにつきましても、鑑別診断につきましても、きわめて論議が多かったというところがいままでの経過でございます。
  91. 小平芳平

    小平芳平君 兵庫県の健康調査特別診査委員会、喜田村委員長、ここでは市川流域の健康被害について結論を出しておりますか。どういう結論を出しておりますか。
  92. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) 兵庫県の、喜田村教授として結論を出しておられるというものではないと私ども考えておりますが、このケースにつきましては、兵庫県の健康調査特別診査会のほうで昨年の八月に結論を出しておられまして、要点をかいつまんで申し上げますと、一つは、じん臓の障害というものがあるが、これは老齢化とカドミウムの影響の両方の問題があって、明らかにカドミウムの影響であるとはなかなか断じがたいという問題と、もう一つは、この骨軟化症がある、あるいはある疑いが非常に濃いというものがあったが、じん性骨軟化症ということにはなかなか認めがたいというようなところが兵庫県の研究報告の一番の主点でございます。そして、イタイイタイ病は現在発生していないし、将来も発生する危険性はないというぐあいに、昨年の八月の兵庫県のレポートは結んでおります。
  93. 小平芳平

    小平芳平君 そういうふうに兵庫県があらかじめ結論を出してしまった。そこに今回の問題があるのじゃないですか。
  94. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) 兵庫県としましては、兵庫県として検査した成績あるいは調査した成績に基づいて、兵庫県の専門委員の先生方の考える学説に基づいて昨年八月、中間報告としてお出しになったということでございまして、私どもは、あくまでもあの報告は中間報告であるというぐあいに解しております。
  95. 小平芳平

    小平芳平君 その後、先ほどの兵庫県の健康調査特別診査委員会の結論は、尿の所見ですね、尿の所見がイタイイタイ病とは違うという発表をしたわけでしょう。ところが、京大の佐野先生たちの研究によりますと、富山のイタイイタイ病患者と生野のカドミウム汚染地域住民の尿分析による比較研究によりますと、類似のものである。別のものというふうにきめるのは間違いで、類似のものであると、こういうふうに京都大学で研究発表しておるでしょう。いかがですか。
  96. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) いま先生指摘ございましたように、この京都大学の先生の御報告の中に先生のおっしゃったような報告がございます。その報告の中の一部にもう一つございますのは、非常に、老人の尿を調べてみると、中にそれと区別しがたいものもときどきあらわれるというところに学問的な問題点をはらんでおるという点がございます。
  97. 小平芳平

    小平芳平君 それからその後、慶応大学土屋教授のカドミウム作業者の十年間にわたる調査、あるいは野見山先生の、群馬大学からいまかわられたかと思いますが、糖尿、蛋白尿はカドミウム暴露を中止することによってすみやかに消失するという、この二つの研究報告が出されておりますが、これはいずれも、カドミウムの作業のほうは十年間、それから糖尿、蛋白尿のほうも期間が短か過ぎるのじゃないですか。
  98. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) いま先生の御指摘になりましたような問題は、やはり医学の実験あるいは研究にいつも伴う問題でございますが、土屋先生が労働衛生の場におきましてのカドミウムの関連を十年間の追跡をされたといいますものは、労働衛生の所見としては非常に意味があるということでございますが、イタイイタイ病の患者のほうで、何十年となく暴露されている者をすべてそれをもって律し得るかというところには、学問的に議論があるかと思います。  もう一つの野見山先生の御研究のほうにおきましても、やはり実験を主体としておやりになりましたものでございまして、野見山先生の御指摘になりましたものの中で、一つは、カドミウムがどの程度じん臓の皮質にたまるとじん臓の障害が起こるかというところにつきましては、従来日本の国内でかなり否定的な所見であったスウェーデンの学説と、ほぼ同じものを再確認をされたというようなものも中に入っております。また、野見山先生の御報告の中で、カドミウムの暴露が高まると排泄が非常に高まるが、暴露をはずすと非常に出るのが少なくなるというような御意見がありまして、また、それに伴ってじん臓の障害とカドミウムの排泄量とは必ずしもパラレルにいくものではないというような御意見がございまして、野見山先生の御意見は、必ずしも全体的に否定的な要素を持つというものとは私どもは考えておりません。
  99. 小平芳平

    小平芳平君 いや、野見山先生の実験期間は、どういう動物にどれだけの期間を使っていますか。
  100. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) 野見山先生のは、一つはウサギにつきましての研究でございまして、五十四週間というものでございます。それから、そのほかの研究におきましては、やはりウサギについての五週間の成績というものを出しておられます。それから、そのほかにやはりウサギにつきましての約三十週間の期間というものがございます。
  101. 小平芳平

    小平芳平君 いや、私が指摘しておりますことは、労働衛生としては意味があるというふうに先ほど言われましたが、その労働衛生といい、それからまた野見山先生の研究は一時的な、一時的というよりも、イタイイタイ病患者発生というような長い期間にわたる暴露ではなくて、もっと短い、労働衛生の場合は短いわけですから、そういう短い期間の実験であるということでしょう。
  102. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) 単純に期間ということをとらえますれば、先生の仰せのとおりでございます。
  103. 小平芳平

    小平芳平君 それから次に、同じく京都大学の公衆衛生の糸川先生、整形外科の田中先生たちが「カルシウム欠乏カドミウム投与ラットに発生した骨軟化症」という発表をしておられますね。
  104. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) いま先生の御指摘の研究につきましては、ここ二、三年来継続的に研究をしておられる方の報告でございまして、従来は比較的急性中毒の状態のものが多く、また本年この研究をされたケースにつきましては、私はちょっと期間が、ここにすぐ手元に出せませんが、これは比較的従来のものよりは期間の長いものでございますが、非常に低カルシウムの食事で、そしてカドミウムを五〇PPMまぜて食べさすことによって骨の病変、特に骨軟化症を来たしたというような、非常にイタイイタイ病の研究としては注目すべき研究であるというぐあいに解しております。
  105. 小平芳平

    小平芳平君 それから札幌大学の公衆衛生の岡田先生の「カドミウム分娩負荷によるラットの骨塩の変化について」、これこそまさしく経産婦が主としてイタイイタイ病にかかったという研究が、動物実験によって結論づけられたということになりませんか。
  106. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) いま先生の御指摘報告は、昨年六月日本衛生学会に発表されたものでございますが、分娩の負荷のかかっているネズミに対します研究でございまして、骨の中のカルシウムあるいは血清の中のカルシウム等をこまかく調べまして、イタイイタイ病の機序を考えるには一つの有益な示唆を与えるものというぐあいに考えております。
  107. 小平芳平

    小平芳平君 それから、これは前回の委員会で指摘しました岐阜女子短期大学の中村教授ですね、岐阜女子短期大学の中村教授の研究は、魚によって重金属が複合した複合汚染の場合特にはなはだしいということが出されておりますが、いかがですか。
  108. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) 御指摘のとおりの研究報告でございまして、これはカドミウムと銅の相乗による影響が強くなるということにつきましての報告というぐあいに解しております。
  109. 小平芳平

    小平芳平君 ですから、そこまでずっと研究成果が出ているのに、何をこれから調査研究するのですか。
  110. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) これは先ほど先生の御指摘にもございましたように、実験におきましては相当、特にここ一、二年ばかりの間急に進んできたということは事実でございますが、イタイイタイ病の本体というものにつきましていろいろの学説があることは、これまた否定できない事実でございまして、いろいろどこまで学問的にわかっておって、どこから先がわからないのかという、現在の時点での知見を一応整理した上で判断するということが必要かというぐあいに考えております。
  111. 小平芳平

    小平芳平君 城戸局長あるいは三木長官、要するに私たちが主張しているのは、兵庫県市川流域の被害ですね、早く救済すべきだと言っているわけです。それに対して、いろんな学説があるというのです。いろんな学説がありますが、初期のころの萩野先生、小林先生たちが取り組んだころから比べますと格段に、各大学の教室でカドミウムによる被害の研究発表、報告がなされているわけです。したがって、そういつまでも再調査するとか意見が分かれているからと言っている理由が一体どこにあるのか、それが納得ができないのですが、いかがですか。
  112. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) いまの橋本審議官から御説明申し上げましたように、また先生指摘のように、確かに最近いろいろな点で究明されているところが多いと思います。先般の研究集会でもいろいろな点がはっきりしてまいっているわけでございまして、私どもとしましては、できるだけ早く鑑別診断班におきまして具体的な患者についての解明をしたいと、こう思っているわけでございます。ただ、その前提としては、いまは生野の患者が問題になっているわけでございますから、資料を整えました上で現地に参りました上で、橋本審議官にいろいろおぜん立てをさせまして、その上で鑑別診断にかけるべきものはかけていく、こうしませんと、いきなり議論だけやりましても賛否の両論が出るということでは意味がございませんので、やはり学説もいろいろ出てまいった現段階で、こういう事実関係も明らかにして、その上で具体的な事例について結論を出していく、これが一番早道じゃないかと思っているわけでございまして、決して私ども回り道しているということではないわけでございます。
  113. 小平芳平

    小平芳平君 この前の予算委員会では、県から報告が来てない、まず県から被害の報告といいますか、汚染の報告といいますか、それをまず取り寄せるというふうなことも言っておられたのですが、しかし、このような研究の結果、議論の経過から見て、県では喜田村委員長の委員会、研究班が結論を出してほしいと言うし、それから喜田村委員長の研究班のほうでは、行政的なことば県のやるべきことだとこう言って、環境庁のほうでは県の報告待ちといってもなかなか——県のほうは研究班、研究班のほうは県ということを言い合っていました。そういう経過でした、私が行って直接伺ったところでは。ですから、そう県のそれを待っている必要はないでしょう。いかがですか。
  114. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) さっき橋本審議官から申し上げましたように、私ども、県のほうから責任者に来てもらいまして直接事情も聞いておりますし、また資料もいろいろ頼んであるわけでございます。なお、一番大事な解剖検査の結果が中旬に出てくるということでございますから、そういうものをそろえました上で、いまおっしゃるような、もし県と委員会のほうとでいろいろ問題がありますれば、これは十分事情を聞きました上で指導してまいりたいと、こう思っております。
  115. 小平芳平

    小平芳平君 三木長官、そういう県の研究機関と県の争い——争いでもないかもしれませんが、押しつけ合っているんだから、環境庁が直接調査しまして地域指定なり疾病指定をすべきだと思いますが、いかがですか。
  116. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) このカドミウム、あるいはイタイイタイ病にしても、これは専門的な知識を要しますから、いままで専門家による県の委員会があったわけです。ところが石崎教授その他の方々から、やはりこれはイタイイタイ病であるという学会で発表があったわけで、そしてまた解剖実験もやっておるわけです。こういうデータなどもそろってまいりますと、やはり県として再診査をしてもらって、そして県のほうとして、やはり専門家といえども、そういう解剖の結果であるとか新たな材料ができてくるわけですから、それによって再診査をしてもらうほうが、行き方としては——もう県の委員会というのは今度は信用しないのだというようなことになりますと、なかなか今後においてもそういうやり方になってくると混乱が起こりますから、そういう手続をとろうと思っておるのです。しかし、あまりいつまでも延ばすことは被害者に対してもお気の毒ですから、それで私は、ただ電話で連絡だけでなしに、橋本審議官を現地に行かせて、そしてこれを現地でどういう段取りでやるかということを打ち合わせるように私は指示しておるわけでございます。
  117. 小平芳平

    小平芳平君 三木長官、それはわかりますが、頭から県の研究班を無視してということは、将来のため考えものだということは十分わかります。十分わかりますが、先ほど指摘いたしておりますように、また橋本審議官説明しておられますように、確かにカドミウムの健康被害については、初期段階ではそれを言うのは岡山大学の小林教授とか富山の萩野先生とか、限られた人がそういうことを言っていたという感じはあったと思います。しかし、先ほどの橋本審議官の御説明にもありますように、カドミウムによる研究は、札幌大学、京都大学、そのほか各機関でカドミウムによる研究報告が出されているわけです。出されているわけですから、したがって、一応県の出方を待つとか、あるいは審議官が県へ行って話し合いをするというのはけっこうですが、それにしてももっと、環境庁に研究班があるわけですから、環境庁の研究班が全国統一的に研究すべき研究班なんですから、この環境庁の研究班で早く研究をし結論を出すべきだと、また環境庁長官としては、地域指定、疾病指定ということがこれは環境庁長官によってなされるわけですから、早くそれがなされるべきだと言っているのですよ。いかがですか。
  118. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 私はやはり県の委員会を——橋本審議官が行って、専門家の新たなるそういう提起があったわけですから、そこで再検討してもらって、そして現地の委員会との間の話をつけてからこっちのほうでやってもいいと思うのです。しかし、県の委員会を差しおいてこっちがやるということは、将来こういう問題というものが今後もいろいろ起こる可能性もあるわけですから、あまり地方公共団体のそういう機関を無視することはよくないと思うので、そこでやっぱり再検討してもらって、こっちのほうもデータを取り寄せていますから、こっちのほうとしても検討をしたいと思っておるわけでございます。
  119. 小平芳平

    小平芳平君 環境庁の研究班はすでにやっていたわけでしょう、かつて生野・市川流域につきまして。ですから、いまさら県に遠慮することはないんじゃないですか、すでにもう環境庁の研究班では取り上げてきた問題ですから。いかがですか。
  120. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) いま先生環境庁の研究班がやってきたではないかという御指摘でございますが、ことしの三月の十六日に発表されました三例のケースにつきましては、まだ環境庁の鑑別診断研究班に研究者からも県からも出されておらないというケースでございます。
  121. 小平芳平

    小平芳平君 いままで何をやってきたですか。
  122. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) 環境庁の研究班として生野をやってまいりましたのは、県の検診の結果、十三例の鑑別診断研究班に出すべきものがございまして、それを国の鑑別診断研究班に出してきたというものでございます。
  123. 小平芳平

    小平芳平君 ですから、十三名に漏れていた三名を早く追加してやればいいじゃないですか。
  124. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) その三例につきまして、先ほど申し上げましたように、県が一応いままでの段階で県自身として意見を申し述べたことはございますが、それは検査の時点が違っております。そこで、県のその後の調査の結果と、いま新しく出てこようとしています結果と、この三例の方につきまして先生方が研究発表をされたところの基礎になった結果をすべて合わせて、整理をして、先ほど局長がお答えをしたような手続で中央にあげるというような形をとろうと考えております。
  125. 小平芳平

    小平芳平君 それでは橋本審議官に伺いますが、兵庫県の研究班、要するに喜田村教授を委員長とする兵庫県の研究班のメンバーの中で、カドミウムによる専門的な研究をされている人はどなたか。さっきから審議官からもお答えがあったように、京都大学等で研究発表されておられるような、そういう方がこの兵庫県の研究班に入っておりますか、おりませんか。
  126. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) 兵庫県が設けております健康調査特別診査委員会の中で、カドミウムの研究をやってこられた方と申しますと、神戸大学の喜田村教授と、慶応大学の土屋教授と、兵庫県の公害研究所の所長と、この三名でございます。あとの方は、整形外科のほうからの専門の方あるいはじん臓障害に関してのいろいろ試験検査の面からの非常なエキスパートの方と私どもは承っております。御指摘のありました京都大学の研究発表された方々は、その中には入っておられません。
  127. 小平芳平

    小平芳平君 ですから、環境庁の研究班に入っておられる方で、兵庫県の研究委員会にこういう人が入っていればというような人はありませんか。
  128. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) いま先生の御指摘の意味を私ちょっとはかりかねて、的はずれのお答えになるかもしれませんが、環境庁の研究班の方で実際イタイイタイ病を現地で患者の調査あるいは診断に当たられた方という方は、兵庫県の研究班の中には入っておりません。研究材料としてイタイイタイ病問題あるいはカドミウム中毒をおやりになった方々が入っておられるというように解しております。
  129. 小平芳平

    小平芳平君 ですから三木長官、そういうふうに兵庫県の研究班自体も、直接イタイイタイ病そのものに取り組んできた人がいないということもあります。まあそのことについては、県のほうでつくられた研究委員会に対してとやかく申しません。とやかく申しませんから、環境庁のほうで早く専門的に取り上げ、結論を出してほしいということですが、いかがです。
  130. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 私はやはり県のこの委員会というものを第一義的には尊重することが、たてまえとしてはよろしいと思うものですから、新たなるそういう提起があったわけですから、ここでもう一ぺん再検討してもらって、それがなかなか結論が出にくいというような場合には、やはり中央の鑑別診査委員会でこれは検討をしたいと思っております。
  131. 小平芳平

    小平芳平君 よくわかりました。つまり結論がなかなか出にくいという場合は、というのは大体いつごろ。城戸局長、常識的に考えてどうですか。
  132. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) 中旬に解剖の結果がわかるということでございますから、それから橋本審議官を現地にやりまして、いろいろ意見の調整をしまして、向こうは向こうである程度の議論をしてもらった上で、ただいま申し上げましたようなことでやってまいりたいと思っております。と申しますのも、この地域は要観察地域に指定しておりませんけれども、私どもの暫定対策要領でも、結局完全に診断方法が標準化されていないから、鑑別診断研究班の意見を聞いて健康調査の評価を行なう、こういうことになっておるわけでございますから、そういう意味で私どもとしましても、鑑別診断研究班でやっている以上当然責任があるわけでございます。その点は十分県のほうと意見調整をし、指導してまいりたいと、こう思っておるわけでございます。
  133. 小平芳平

    小平芳平君 いや、城戸局長ね、そういうことで、解剖結果が出た上で橋本審議官を現地へ行かせて、とにかくずるずるとただ日にちが過ぎていくのが困るんですが、局長か長官からおよその考えをお示しいただけませんか。
  134. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) いま橋本審議官の意見も聞いたのでございますが、こういう問題でございますから、少なくとも二カ月ないし三カ月程度は時日は必要だろうと、こう言っております。
  135. 小平芳平

    小平芳平君 よろしいですか、三木長官、早く結論を出さないと、すでに七人のうち一人の方がなくなったということですね。ですから、過去にもイタイイタイ病の疑いがあるという学者の報告があったにもかかわらず、その方はもうなくなった、なくなっていた方であったとかいうこともありますので、これは三木長官が県のという御趣旨はよくわかります、三木長官が県のということをおっしゃる御趣旨はよくわかりますが、カドミウムという特殊なケースでありますので、普通の一般的な公害病患者と違いまして、ここ二、三年の間にも相当いろいろな研究報告が出されてきたという段階のケースでありますので、三木長官、ある段階では思い切って作業を進めるということを御要望したいのですが、いかがですか。
  136. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) いま御指摘のように、漫然と日がたっていくことは被害者に対してもお気の毒ですから、一応一つの段階は経ていったほうがいいと思うんですが、それで結論が出てこないということならば、中央に引き取って、できるだけ早く結論を出すことにいたします。
  137. 小平芳平

    小平芳平君 では、その問題は終わります。  これはカドミウムによる土壌汚染のことですが、岡山大学の小林教授が化学薬品、キレート剤を使って土壌中のカドミウムを抜き取るということを研究し、また新聞にも報道され、また小林先生はアメリカでこの研究成果を発表するんだというふうに話しておられましたが、環境庁のほうではこれはどういうふうにごらんになっていらっしゃいますか。
  138. 森整治

    政府委員森整治君) 土壌汚染のカドミウムの防止対策、除去対策につきましては、その技術の開発がいろいろ現在も研究が進められておりまして、先生指摘の小林先生のお話は、EDTAの六種類についての研究の発表だったということだと思います。これにつきましては、率直に申しまして研究の歴史がまだ浅いこと、広く十分なデータの蓄積がないということで、いま環境庁として直ちにその技術を採用するかどうかということは困難だと思います。しかし、今後この研究が進みまして、十分間違いないというデータが得られますれば、これにつきまして、その有用性が認められるということになりますれば当然、何か非常に安く、かつ簡便のようでございますので、そういう対策につきましても、もちろん検討をいたしたいというふうに思っております。
  139. 小平芳平

    小平芳平君 この報告はお手元に出ておりますか。私もそういうことは全くしろうとでわかりかねるのですが、小林教授は具体的に、こうした安中地区で実験をなさったという報告であります。いま局長が答弁されるように安くて簡単にできる方法だというならば、環境庁が直接やるとか、農林省とか県とか、そういう公の機関が研究に取り組もうというようなことは考えられませんか。
  140. 森整治

    政府委員森整治君) 率直に申しまして、私こういうことを申していいのかどうかわかりませんが、利点はただいま先生の御指摘のとおりだと思います。ただ問題は、広くデータが出てないということ、その裏に、カドミウムは出るのですけれども、あとで出た先で何か問題を起こしはせぬだろうかという心配が一つ。それから、土壌の中の有効成分まで同時に持っていかれはしまいか、こういうような実は心配があるわけでございます。そういうような点が一つ問題で、先ほど私そう御答弁申し上げたのですが、いまの、国なりがそれを取り上げてということになりますと、一応農林省の研究機関でやっていただくということになろうかと思います。そういうことで、きょうの御指摘の問題につきましては、十分農林省とも連絡をいたしまして、よく善処をいたしたいというふうに思います。
  141. 小平芳平

    小平芳平君 私も、いま局長指摘されるようなことがどういうふうになっているかわかりませんので、ですから、さっきイタイイタイ病は認定すべきだという主張をしておりましたが、この問題についてはひとつ御検討いただきたい。御検討いただきたいというよりも、国としてあるいは公の機関として取り上げるというか、いつ、どういう形で実験を開始するかどうかは別としまして、一応そういう報告が日本の国で出ているということで、検討すべき課題ではないかということを指摘したわけです。  それから次に、問題が違いますが、カドミウムは以上で終わりますが、振動ですね、振動の規制について、環境庁のほうから当初今国会に提案予定の法案の一つとして振動規制がありましたが、春日局長のほうからどうも今回は無理だというお話を受けました。それは規制法ができても、実際上振動が減るのでなくてはならないわけですから、今国会が無理というなら、事情はそれで了承いたしますが、私が去年の委員会で指摘いたしました金沢市の製箔団地のような場合です。この製箔団地の振動についても局長はずいぶん詳しく御存じのようですので、振動規制法は見通しはどうかということが一つと、それが延びるとなれば、箔団地のような場合どうすればよいか、ひとつ具体的な対策をお答えいただきたいと思います。
  142. 春日斉

    政府委員春日斉君) 振動規制法の提案を見送った理由、あるいは今後の見通しでございますが、それは振動規制をやっていきますために、振動規制法というような法律を今国会に提出するように私ども検討を重ねてまいったのでございますが、法案の作成に際しまして、まず第一には、鉄道振動については振動規制法の対象から除外するということで私ども検討を進めてまいっておりまして、最近の情勢といたしましては、こういった問題、特に新幹線による振動騒音公害についての基本的な考え方も今後取り入れるなり、あるいは除外するとすればどういう除外のしかたがあるか等々検討をする必要があるとわれわれは考えておるわけでございます。それが第一の理由。第二の理由としては、自動車振動の防止対策につきましても、有効な対策をさらに検討する必要がある。また三番目には、私ども中央公害対策審議会に諮問中の振動の計量単位と申しますもの、あるいは測定方法について、これは答申をいただくことになっておりますが、どうもこの答申がかなり学会等の御意見によりましてもまとまらない点がございます、おくれるという見通しがある。こういったことから私どもは法案の検討が遅延いたしておりますために、今国会に提案することは見送りさせていただくことになったわけでございます。環境庁としましては、引き続きこれらの問題点を十分踏まえまして検討の上、法案を提案することといたしたいわけでございます。  そこで昨年、たしか十一月だと思いますが、小平先生のほうから金沢の神宮寺町の製箔工場における振動についての問題、御指摘いただきました。私どもその基本的な問題につきましては、何と申しましても振動の対策のむずかしい点からいたしましても、土地利用のあり方の改善ということが第一であるということを申し上げたと存じております。  それから第二といたしましては、機械そのものの振動を防除するということが必要でございまして、まあ土地利用の問題につきましては、もともと一部の工場につきましては移転が行なわれているというようなところでございますが、周辺住民との関係がいろいろございまして、環境庁といたしましては、そういった土地利用の推進方について十一月以降県を通じて指導、要請をしてまいってきたわけでございます。それからその後、箔打ち機械の防振技術の開発につきまして、金沢市といたしましては、金沢大学の工学部の先生方、特に横山あるいは喜内教授らを中心に、いろいろ機械そのものの防振技術の開発をやって委託されておるようでございますが、環境庁といたしましてはその成果を見ながら、必要があればさらに技術的な開発が行なわれますように、関係省庁と協議してまいるつもりでございます。
  143. 小平芳平

    小平芳平君 一つは、金沢市が振動を減らす技術開発、それは環境庁としては必要があればと言われますが、環境庁として何かなすべきことがないかどうかですね。何か環境庁として、ただ金沢市が一生懸命取り組んでいるのを待っているだけかどうか。それが一つ。  それから、土地利用の問題はもっと早くから、そういう今日の結果が起きる以前から土地利用のことをやればよかったわけですよ。そういう考えが全くなく今日の結果になっております。ですからそういう点、やはりこれから緑地帯をつくるとか、あるいは公害防止事業団が何かつくるとか、そういう具体的なことを進めていただきたいと思うのです。いかがですか。
  144. 春日斉

    政府委員春日斉君) 金沢市がいろいろ製箔機械の防振技術についての研究をいたしておると申しましたが、幸いにいたしまして、金沢大学の公衆衛生の岡田教授は札幌医大から最近来られまして、この方が一番の防振技術についての権威者でもございます。私ども岡田教授等を通じまして、金沢の団地における防振技術についても環境庁としてさらにやるべきことがあると申しますか、研究班をつくるという必要があればさらに行なってまいりたいと考えておるのであります。  それから土地利用の問題でございますが、これはかつて御報告申し上げたと思いますが、神宮寺の製箔工場と申しますものは、昭和十二年から十四年にかけて移転をしてきたものでございまして、当時はレンコン畑の中に、まあいわば、いまのことばでいえば金箔の工業団地をつくったというふうに聞いております。ところが、レンコン畑であったわけでございますが、昭和三十年ごろから一般の民家がその周辺に建ち始めたというような、いわば日本の縮図みたいな、土地利用の非常なむずかしさを示しておる問題であろうと思います。そこで、さらに工場を移転させたらどうかということで、昭和四十五年ごろから福久町において第二の箔工場の団地の造成が組合によって現在も行なわれておるようでございます。すでに現在までに相当の企業が移転を完了している、こういうふうに聞いておりまして、一そうこの土地利用の問題につきましては促進するように私ども考えてまいりたいと考えておるわけでございます。
  145. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  146. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) 速記をつけて。
  147. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 四十九年度予算を拝見いたしますと、環境庁予算が四十八年度と比較いたしまして大幅にアップしておる、四一・五%アップしておるということは、非常にこれはけっこうなことだと、こう理解いたします。けれども問題は、大幅予算のアップもけっこうだが、問題は、事実解決にあたって最も大事なことは、後手を打つことなしに、常に予防の網を張って十分に問題を解決していく、こういうことがもっと環境庁のお立場からも大事なことであると思うわけなんですが、現状は、日本全国で巻き起こっておるところの公害防止の問題、あるいは自然保護の問題、裏を返せば公害たれ流し、あるいは自然破壊の問題、そこから起こっておるもろもろの問題の収拾にうき身をやつしておられる。しかも後手後手後手で社会混乱、大きな問題を巻き起こしておる、こういうことが実情ではないだろうかと、こう理解いたすわけであります。このことについて、環境庁長官としてどのような基本姿勢を持っておられるのか、その所信をひとつ承りたいと思います。
  148. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) まあ、開発を全然否定するというわけにはいかぬわけです。それは何かといえば、日本の全国的に見ても開発が行き過ぎておるところもあれば、開発が非常におくれておる地域もあるわけですから全部否定はできない。開発をした場合に、ある程度の環境に対する影響というものはあるわけですが、しかし、その影響がある中においても、重大な影響を環境に与えるような、そういう開発に対してはこれからきびしく規制をしていかなきゃならない。規制するためにもいろんな、たとえば自然の環境の保全については自然環境保全法の施行もされまして、そして自然環境保全地区というものを指定することになっておりますし、また一方、工場などの設置に対しては、事前に環境のアセスメントを行なって、環境容量といいますか、それが許す範囲内だけでしか工場の立地はできない、こういうふうにして重大な影響を環境に与えないようにこれを規制していって、そうして環境を保全しながら、必要な開発は行なうということに持っていくことが必要であると考えておるわけでございます。
  149. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いま環境庁長官基本姿勢を承りますと、基本姿勢としてはなるほど納得がいくわけでありますが、ところが、事実と結びつけた場合にどうしても納得のいかぬ、こういうことを感ずるわけであります。と申しますのは、私は去年の予算委員会においても、沖繩の環境保全、文化財保護についてただしたのであります。ところが、その後における沖繩の実情を踏まえて、いまの長官の基本姿勢と結びつけてみた場合に、全くうらはらの感じを抱くものであります。  たとえば沖繩開発の基本方向は、振興開発十カ年計画の開発計画の冒頭に明記されておるのであります。それは「沖繩の特性を生かしつつ、環境の保全を優先する」と、全くそのとおり長官のことばを裏づけるごとく明確にうたわれております。そのような意思に基づいて、沖繩県としては主体的に開発の基本方針を打ち立てたわけです。ところが、国の立場からそれを、大事な目玉に当たるこの内容が一つ一つもぎ取られておる、空洞化されておる、こういうことを私は指摘いたしたいのであります。  たとえば一、二の例を申し上げますと、県側からの、しかもこれは県民の衆知を結集してつくり上げた開発案であります。自然環境保全法の積極的活用、こういうことをうたっておることに対して、これが政府案では全面的に削除されておるのであります。二番目に、企業上の公害防止協定の締結の義務、この案に対して、これまた完全に削除されておるのであります。三つ、もし公害がそこに発生した場合に操業停止、工場の移転命令、こういうことも強くうたい上げておるけれども、これもまた完全に削除されておるのであります。四番目に、基地公害防止のための基地内の自然保全、復元、使用方法の規制措置、これもしごく当然なことでありますけれども、この内容については「防音対策その他必要な措置」を講ずると修正されておる。  このように、内容的には県民側の、しかもほんとうに公害防止、自然保護を前提にする、平和で明るい豊かな沖繩開発をモットーとする開発振興計画の基本方向としては、もうしごく当然、しかも環境の保全を優先すると、こううたい上げておるのにもかかわらず、内容的にはその一つ一つの目玉が消されておる。このことについて長官はどのように受けとめておられるか、長官のお考えをお尋ねしたい。
  150. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) いま御指摘のようなことが、計画の当初にあってはそういうことが、あるいは御指摘のような事態があったのかもしれませんけれども、われわれとしては、沖繩のいろんな経済開発というものは進めていかなければならぬわけでありますが、しかし、非常に美しい自然環境を持った地域でありますから、国立公園などに対しても、たとえば西表島とか、あるいはまた原生林であるとか、周辺のサンゴ礁の海域とかいうものは、国立公園に指定してこれを保全していこうとしておりますし、また沖繩本島には、県としても二つの国定公園も設けてありますし、あるいはまたいろんな工業立地に対しても、われわれの公害防止基本法に基づいてのいろんな規制というものも厳格にしていきたいと考えておりますので、現実の問題として沖繩に対する環境の保全をおろそかにするような政策はとっていないということでございます。  いま御指摘になった四項目は、実際にこれがきまるときには削除された、こういうそれまでの経過は私も詳細に存じておらないのでございますから、これは他の政府委員からお答えしますが、とにかくそういういきさつがあったにしても、沖繩の環境保全については十分な意を用いていきたいと考えておるわけでございます。
  151. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 開発庁にお聞きしますが、いま例をあげまして、そのいきさつ、経過についてはここでは論議する時間ないと思いますので、お聞きしたいことは、この振興計画に対しては、県の審議会あるいは学術会議、文化団体からも、環境の保全と文化財の保護については非常に強い要望が訴えられております。強化しなければいけない、すなわち再検討をすべきである、これは振興開発計画全体の洗い直しという前提もあるわけでありますが、そういった前提に立ってこの環境保全、自然保護、あるいは公害防止、こういう面からも再検討、修正すべきであるという強い要望がありますが、開発庁としてはこの要望を受け入れる態度がありますか、どうですか。
  152. 亀谷礼次

    説明員(亀谷礼次君) 先ほどの御質問との関連にもなるわけでございますが、先生指摘のように、私のほうで策定をいたしました沖繩振興開発計画につきましては、環境の保全ということを最優先にいたしまして、その中で沖繩の有するすぐれた特性を最大限に生かして県民生活の向上をはかるという基本姿勢を貫いておるものと私どもは考えております。  御案内のように計画の中でもその点に触れておりまして、先生が御指摘になりましたような具体的な個々の問題につきまして、県の審議会において当初いろいろ御論議された具体的な環境保全防止策について、それを全面的に、政府最終案に一言一句盛られていないではないか、こういう御指摘ではございますけれども、私ども基本的にそういった地元の御要望に基づきまして、われわれとしても振興開発を進める上で、自然環境の保全というものを最優先するという認識に立ったわけでございますので、たとえば計画の中におきましても、一々列挙することは差し控えたいと思いますが、生態系を破壊しないことを基本的な視点といたしておりますし、あるいは開発が環境に悪影響を与えないという範囲内において、これらの実際的な開発の実施が行なわれるべきであるということを明記しております。先生がおっしゃいましたような具体的な問題につきましては、計画の性格上、必ずしも環境保全の関連の法律との関連においてこの計画自身がそういう具体的な問題を拘束的に書くこと自身がどうかというふうな議論もございまして、私ども基本的な姿勢としては、当初県でお考えになっておりましたような原案と何ら異なるものではない、かように考えておるわけでございます。  なお、先ほど先生御質問にありましたような、今後沖繩の開発を進めていく上で、自然環境の保全あるいは文化財の損壊などが憂慮されるという点につきましては、われわれも非常にこの点に深い関心を持っているわけでございまして、こういった事態を早急に防止する必要があるということは、先生の御指摘のとおりでございます。したがいまして、これら自然環境の保全、文化財の保護等を緊急を要する地域につきましても、環境庁等関係方面の施策をお願いをしまして、自然公園法等によりますところの地域の指定の拡大、あるいはまた国の文化財の指定等の範囲の拡大等につきましても、地元の御要望を十分勘案しながら、各省庁とも十分に協議をいたしまして積極的に検討を進めるということにいたすつもりでございます。
  153. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 ぜひひとつこの現地側の、しかもこれは今日までの経過を踏まえたその事実の上に立っての再検討であり、要望でありますので、最大限にこれを吸い上げるべく前向きでひとつ受けとめてもらうことを強く要望いたします。  次に、いま沖繩で開発か自然の保護かという、いわゆる環境保護か開発かというこの争点をめぐって、具体的にいま二つの大きな問題がのし上がっておるのでありますが、それは例のCTSの問題と海洋博の問題であります。  この二つの問題をめぐって開発か保全かと、環境を守るかと、こういう二つの、しかもせっぱ詰まった問題があるわけですが、新聞紙上によりますと、財団法人統計研究会の調査団が、四月一日から一週間にわたって沖繩現地に調査に乗り込んでおるわけですが、これは環境庁と関係がありますか、あるいは委嘱でもされたのですか、また独自のものであるか、どうでしょうか。
  154. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) ただいまの件でございますが、財団法人統計研究会の委託調査研究でございまして、テーマは「地域開発と環境問題に関する学際的研究」、こういうことになっております。この調査研究は、各地域開発に際しまして環境保全が問題となっている事例が非常に多いということから、私どもとしましても、地域開発と環境保全に関する今後の検討資料として調査をお願いしておるものでございます。
  155. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 委嘱されたのですね。
  156. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) 環境庁からの委託調査でございます。
  157. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 その内容は、主としてCTSと海洋博工事の二点だけにしぼられておるのですか、どうですか。
  158. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) これはそういうような事例の解明を具体的に目的としたも一のでございませんで、一般的に地域開発と環境アセスメントの役割り、こういうことを中心にいろいろ問題点を解明していこう、しかも、できるだけ学際的な研究ということをやっていこうというために現在やったものでございます。
  159. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 その調査の結果は、どのようにこれを取り上げていかれるというのか、どういう腹を持っておられますか、お聞きしたい。
  160. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) この調査の結果につきましてはまだ手元に参っておりませんので、結果が参りました上で十分内容を検討いたし、今後の参考にしていきたい、こう思っておるわけでございます。
  161. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 これはぜひひとつ、この調査の結果をすみやかに吸い上げていただいて反映させてもらわなければいけない、非常に緊迫した状況下にあるということを私は指摘申し上げておきます。  さらに、もう一つつけ加えておきますが、北部縦貫道路、これをめぐって海洋汚染、赤土流出、そして田畑に赤土が三センチから十センチも積もって、今期の田植え、植えつけが不可能になっておる、こういう状態に対して、これはすみやかに補償するということを前の委員会で一応態度は示してもらっておりますが、ここでもさらにそのことを、環境庁長官もいらっしゃいますので、このように沖繩の開発が、ややもすると突貫工事的性格あるいは十分な配慮がなされていない。ところがこれは条件としては、そういった環境を十分に配慮する、こういうことを一応基本方針には打ち出されておるんです。ところが、もうがむしゃらに、周囲の声も聞かずに、その事実にも配慮せずに、ぐんぐんぐんぐん進められておるという、こういう状態であるということをここではっきり指摘いたしておきます。  なお、この調査の計画の中に、来年度は八重山の自然環境破壊の実態調査を行なう計画があるとか、ちょっと仄聞もいたしておりますが、そういう御計画があられるのかどうか、確かめておきたいと思います。
  162. 江間時彦

    政府委員(江間時彦君) 先生がいまおっしゃいましたような調査環境庁の自然保護局のほうで計画した事例はございません。
  163. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 ぜひこれは実現してもらいたい。  なお、調査団の派遣もけっこうでありますが、さらにこういった沖繩の開発につながるCTSの問題にしましても、海洋博の問題にしましても、これは場所が沖繩であるというだけであって、その海洋博の責任の主体は国である、またCTSの問題もこれは国の政策につながる重大な問題でありますので、専門調査班も、調査することも大事でありますが、ぜひひとつ責任ある立場から政府とされても、環境庁長官は、去年の私の要望の中でも、ぜひ現地沖繩に行かれて、はだで目でひとつ沖繩の実態を把握してもらいたいということを強く要望いたしたのでありますが、まだ実現してくださっておりませんが、この際、こういう重大な問題に直面しておられる現時点でありますので、何とかひとつこの事実を調査してもらうために沖繩に行ってもらう御意思はないかどうかですね。
  164. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 沖繩にいろいろ急激な開発が進められておるわけですから、自然環境の保全の上からいってもいろいろ問題をはらんでおりますから、私も機会を得て沖繩へ伺いたいと思っております。
  165. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 ぜひひとつ実現の早からんことを私期待申し上げておきます。  さらにCTSの問題をめぐっていま世論が沸騰しておることは御存じだと思いますが、県の方針といたしましても、これは通産省の今日までの件についてもたびたび私そのことをただしておりますが、まだあいまいもことして結論は出されておらない状態でありますが、要するにこの沖繩進出に対して、現地では県知事はじめ県議会あるいは世論、これは誘致反対の方針が打ち出されているのであります。このことを環境庁長官のお立場から、この県の誘致方針撤回に対して、これを支持なさいますか、いかがでしょうか。
  166. 森整治

    政府委員森整治君) 本件につきましては、通産省中心にいたしまして、現在流況の調査等の環境影響に関します諸調査を行なっておるわけでございまして、その企業立地に伴うアセスメントを行ないまして、その結果に基づいてわれわれといたしましては計画の是非の判断をしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  167. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 これは非常に慎重を期して、慎重に慎重を期した結果、知事はじめこのような結果に結論を出したのでありますから、どうかそのようにひとつ配慮を十分していただかないといけない問題でありますので、お含み願います。  次に、五十八号線と申しますと、この西海岸を——復帰前は軍用道路一号線といっておりましたが、いま五十八号線になっていることは御存じのとおりだと思いますが、この五十八号線の国道の条件整備のために、これはまたいま突貫工事的性格で昼夜兼行で整備されつつあるわけなんです。そういう情勢の中で、この〇を付している地点が恩納村の仲泊というところでありますが、沖繩にとってはかけがえのない貝づか群がそこからあらわれてきたわけであります。この貝づかの保護をめぐって、また開発か保全かというこういうことでいま世論が沸騰をしております。そうして県民はあげて仲泊貝塚群を守らなければいけないと、こういうことで知事はじめ、「三千五百年前の住居跡を発見」「古代生活の解明へ」「考古学会保存を強く訴える」というような、こういった文化人、考古学者をはじめこれを守るという、これをめぐっていま問題がまた起こっております。その内容については、A地点、B地点、C地点と大体三カ所に問題を含んでおるのでありますが、その三地点については環境庁は十分把握しておられますでしょうか。
  168. 古村澄一

    説明員(古村澄一君) ただいま御指摘の仲泊貝塚の点でございますが、従来から仲泊貝塚は二地点、現在言われておりますA地点とC地点が発見せられておったわけであります。したがいまして、国道五十八号線の拡幅工事ということで昨年の初めに県の教育委員会のほうに協議がまいりましたときには、現在問題になっておりますB地点というものの存在が知られていなかったということから、一応道路の拡幅はけっこうでございましょうというふうな御返答を申し上げておりましたが、昨年の十二月になりまして、その地点の雑木等が伐開された地点の現地調査を行ないましたところ、貝層があるということで、急遽ことしの二月から発掘調査にかかったわけでございます。その過程の段階におきまして、住居あと等が発見されて、現在その保存をめぐって問題になっているという点は十分承知いたしております。
  169. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 念のためにその三地点をここで確認をしていただきたいのですが、一言で仲泊貝塚群とこういいますと、A地点が国道五十八号線から二百メートル離れたところにあるわけですが、これは日本道路公団がコーラル採掘権を取得して近く採掘に入る予定ということで、まだその工事は手がつけられていない。B地点は、先ほど申し上げました、これであります。三千五百年前の貝づか時代の前期の住居あとが発見されている。で、この地点は県が用地を取得して、国道五十八号線工事施行者の沖繩総合事務局に提供している、こういう場所であります。C地点から出ましたのは、縄文時代の後期の市来土器、鹿児島県の市来貝塚との関係があって、九州とのつながりの研究に非常に重要な史跡である。ここはいまのところ破壊の対象になっておらない。こういう内容のA地点、B地点、C地点であります。  だから、私が先ほど来申し上げましたのは、常に後手後手じゃなく、そういう情勢の中でもう一部は破壊されて非常に困っております。いま手を打てば、網の目を張れば歯どめできる、こういう状態にありますので、ぜひひとつこの事実を踏まえて早く手を打ってほしい。そしてその仲泊貝塚から、去る三月の二十四日、先ほども申し上げましたが、貝づか時代前期のものと思われる住居あとと、約三百年前の石畳の道が発見されておる。こういう沖繩の文化財史始まって以来の古代のものであり、その保存を、学術・文化団体等が日々毎日これを守るためにいま必死になっておるんです。それに県当局も、守る方向で屋良知事はじめ県教育庁、委員会もいま立ち上がっておるさなかであります。  このように、一面において海洋博工事の突貫工事、一面文化財の保護と、こういった立場があるわけなんですが、こういう重大な問題に対決するにあたって、重ねてお聞きしたいことは、文化庁として、開発庁として、これにどう対処していこうという腹を持っておられるか、それをひとつお聞きしたい。
  170. 古村澄一

    説明員(古村澄一君) 御指摘のA地点の土取り工事、土砂の採取に伴う貝づかの部分でございますが、これにつきましては、県の教育委員会も従来からここの部分の開発、土取りは避けてほしいということで折衝してまいってきておりますので、私たちとしてもこれを全面的にバックアップ申し上げていきたいというふうに考えております。  それからB地点の道路の問題でございますが、一つは、新発見の遺跡であるということから非常にその保存方法がむずかしいわけでございますが、何とか県の御意見及び関係官庁とも十分御相談を申し上げて、今後の処理のしかたについてはいかんなきを期していきたいというふうに考えております。
  171. 加瀬正蔵

    説明員加瀬正蔵君) 国道五十八号線関係で御承知のようにB地点、C地点がございますが、その前に、いままで私どもとしても決して無関心でおったわけじゃなくて、経緯を若干弁明させていただきますと、一昨年の十一月に国道五十八号線の改築工事に着手するにあたりまして、県の文化課に文書で、文化財関係の県の御意向の照会を行なっております。それを受けまして、県の文化課が早速現地調査を行ないまして、仲泊の一里塚とか、あるいは読谷村の喜名番所跡、こういうところについて私どもに一応要望を提出されております。その点については現在話し合いができて仕事が進んでおるわけです。  問題の今回の貴重な文化財でございますが、おっしゃるように非常に私どもとしても貴重な文化財であるという観点から、現在県当局との調整を行なっているわけでございます。ただ、問題といたしましては、今回の仲泊の貝づかにつきましては、工事の進捗に伴って発見されたものでありまして、それまでにすでに全線にわたりまして用地買収が終わり、工事もかなり進んでおる。そこで県と相談しているわけですが、とりあえず県が記録保存のための緊急発掘を行なうということで、去る三月八日からの調査が行なわれておったわけでございます。その調査段階で、おっしゃるようにさらに石畳あと、住居あと、こういうような非常に貴重な発見があったわけでございますが、それに伴いまして、今後どういうことが可能かということを現地で詰めておるわけでございます。かりに高架構造にするとしますと、現地は片側が非常に高い山になっております。高い山になっておりますので、相当何キロも手前から勾配をとるために工事を変えていかなきゃいけない。あるいは貝づかを避けるということになりますと、海のほうにルートを振らなければいけません。その場合にいろいろ工事の手戻りとか、その他の問題もございます。あるいは工法上の可能性の問題もございます。あるいは海に出ることに伴う国定公園との関係の問題もございまして、詰めなければいけない問題が多いものですから、現在県当局と御相談をしておる、こういう段階でございます。
  172. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 現実の問題として困難な点も理解できないわけではないんですが、しかし、お聞きしますと、沖繩の文化財の中でも最も重要な部類に属するものであると、こう世論も強調いたし、また専門家も言っております。そうならば、困難ではあっても何とかすればそれを守ることについて不可能ではない、こう思われてなりませんが、直ちにこの史跡指定を行なって原形を保存すべきであると私は思います。そのためには、まず、県の文化課もその発掘調査に全力をあげていますが、文化庁からも専門官を直ちに派遣してもらいたいとこう思うわけなんですが、これはいかがでしょうか。
  173. 古村澄一

    説明員(古村澄一君) 同じ時期の貝づかといたしましてすでに史跡指定をしてありますものは、沖繩県が復帰いたしますときに三つございます。一つは石川市の伊波貝塚、そして北中城村の荻堂貝塚、それから宜野湾市の大山貝塚、大体三つが同じような同時期の貝づかで指定してございますが、いまの貝づかについての学術的な価値の重要性というものにつきまして、いまだつまびらかに御説明するところまで調査は進んでおりませんけれども先生の御提案の専門家の派遣につきましては前向きに検討したいと思います。
  174. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いや、非常に事態は緊迫しておると申し上げましたのは、実は四月二日に県の文化財保護審議会は、同貝塚の史跡指定を文化庁に要請するということは現地で決定いたしております。まあ距離が遠いためにまだ正式の文書やあるいは申し入ればないかもしれませんが、そういうことを現地ではもう決定しておる。それで私はあせりを感じてここでも申し上げるわけですが、どうかそういうことを前提にされてぜひひとつこの史跡指定を文化庁においてもやっていただきたい、こういうわけなんです。だから申し出たら検討しようとか、あるいはまだこれが正式には来ておらぬと、こうおっしゃるのではないかと実は予想しておったわけなんです。ところが現地でもうすでにそれを決定しているんですね。正式に手続をとるようになっておりますので、そのようにひとつ配慮してもらわなければいけない、また配慮すべきである、こう私思いますが、もう一ぺん念を押して申し上げるわけですが、いかがですか。
  175. 古村澄一

    説明員(古村澄一君) 先生の御意見のとおり十分配慮いたしたいと思います。
  176. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それでは次に、さっき申し上げたこの住居あと、B地点の保存のために国道五十八号線の拡張工事の変更、さっき困難ということをおっしゃったが、やる意思があればそれは可能であると私は思うわけですが、その拡張工事を変更する。で、高架式と申しますか、高架式道路への路線変更、あるいは迂回と高架式両方あると思いますが、このことについては開発庁、どうお考えでしょうか。
  177. 加瀬正蔵

    説明員加瀬正蔵君) これはもとより県御当局の御協力がないとそういうルート変更は考えられないわけですが、かりに高架にした場合に工期的にどのような問題があるかというようなこと、あるいは海側にルートを振った場合にどういう問題があるかということについては、現在検討を進めております。高架方式についてはかなり困難だということで、むしろ不可能に近いと聞いております。海側にルートを振る考え方についての最大の問題は、御承知のようにあそこの場所は海にがけが迫って出ておりまして、しかも急な悪いカーブで、見通しが悪いところでございます。そこをせっかく海洋博を契機に道路を整備するということで、八十キロ時の設計速度ということで道路をつくっておったわけでございますが、かりに海側にルートを振るという場合になりますと、視距の改善、見通しをよくしたりすることができなくなりますし、それからもう一つは、時速八十キロというデザインを六十キロ規格まで下げなければいけない、こういうような問題が出てまいります。しかも危険個所を放置するいうことになりまして、交通管理上は好ましくない、こういう問題はございますが、まあそういうことは別にしまして、どういう代替案があり得るかということについて、いま至急に設計図を引いて検討している段階でございますので、できる限りそういう御要望にこたえられるのじゃないかというぐあいに考えております。
  178. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 非常に重要な価値を持つ史跡でありますので、いま開発庁とされてもその重要性を一応認めて、そうしてこの六月の中旬まで工事をとめて調査を十分にさせる、こういう配慮はいまなされておるわけなんですが、しかし、その調査が済めばまたいまおっしゃる困難、不可能ということになりまして、結局既定方針どおりそれが破壊されるということになりますと、せっかくの調査もまた要望も意味がなくなりますので、いまおっしゃるように十分検討検討をされて、ひとつ最善の方法を見出してもらう努力をひとつ重ねていただきたい、このように強く申し入れておきます。  それから建設省にお尋ねしますが、この仲泊貝塚のA地点は、先ほど申し上げました日本道路公団が沖繩縦貫道路建設の採石のために、コーラルをとるために採掘権を取得しておる。この貝づかを全体的に再調査の必要に迫られておるというこてとは、いま先ほど来申し上げておるとおりでありますので、県がこの採石工事の中止を要求した場合、その意義の重大性を認めてこれを受け入れてもらえるかどうか、採石場の変更を受け入れてもらって再検討すべきであると、こう思いますが、このA地点に対して、建設省いかがでしょうか。
  179. 高橋力

    説明員(高橋力君) 貝づかの保存計画がきまりますれば、当然その採石計画のほうも変更して、それに合わせた計画に切りかえるべきだと思います。ただ、沖繩の縦貫道の建設につきましては、材料の見通しが必ずしも楽観できないような状態もございますので、今後この採石場の変更に伴う工事の材料確保等については、なお県当局のさらに御協力が必要かと考えております。
  180. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 配慮に配慮を重ねて、要望が実現しますようにひとつ御努力を願います。  次に、基地内の文化財保護について。御承知のとおり日本の全基地の五四%は沖繩にある。その沖繩の中でもまた二一・二%が沖繩本島内に集中しておるわけなんです。そういう特殊事情から、この基地内の文化財保護については全くもう何というか、治外法権の形で放置されておる、こういう状態であるわけでありますが、しかし、これはもう黙視できないのです。どうしても基地内の立ち入り調査を実現をして、その対策を強力に進めなければこれは守れない、こういう実情でありますが、このことについて環境庁長官、防衛施設庁、両方のひとつ御見解を承りたいと思います。
  181. 平井啓一

    政府委員(平井啓一君) 文化財とか、宗教対象物とか、あるいは重要な記念物、そういったものが安保条約に基づく在日米軍に提供する施設区域の中に存在するということは、原則としては好ましくないことであります。したがって、施設区域に提供する場合に、そういったものを施設区域から除外するということは、講和条約発効以来の安保条約に基づく施設区域提供の上の考え方になっております。ただ、どうしても物理的にそういったものが施設区域の中に含まれざるを得ないというものも従来からあるわけでございまして、そういった場合には米軍と話し合い、あるいは合同委員会の合意の内容にもそれを含めまして、十分にそれの保護につとめるということは従来からとってきたところであります。たとえば本土におきましては、北富士演習場の中にありますような文化財あるいは重要な天然記念物、そういったものの保護は使用条件等にもうたっているわけであります。  沖繩の施設区域に関しましては、沖繩復帰の際に日米間で施設区域の提供についての合意の作業を行ないました際に、残念ながら十分にそういったものの存在を把握できてなかった状況であります。明らかになっておりました記念物等につきましては、その際に除外したものも幾つかございましたが、今後、御指摘のような問題につきましては、十分現地におきましても那覇防衛施設局が県当局その他の関係機関と調整いたしまして、そういった問題のまず調査等につきましても、米軍に対して立ち入り等についての便宜その他については十分折衝を進めていきたい、そういうふうに考えております。
  182. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いま軍施設内に文化財が約六十カ所あるということが調査されています。城あととか、貝づか、遺跡、アカギ群落、このように一応六十以上もあるということが確認されています。  そこでお聞きしますが、三月十七日、沖繩県教育振興会の代表が文化庁の吉久文化財保護部長さんに要望したとき、この代表に対して、基地内立ち入り調査は米軍で検討中であり、早目に調査メンバーのリストと調査期日を提出してほしいと、こういう答弁があったということなんですが、これはこのメンバーのリストを出せば許可されると、こういう見通しのもとにそういうことを述べられたのであるか。いかがです。
  183. 古村澄一

    説明員(古村澄一君) ただいまの御指摘の点でございますが、若干事柄が、そごがございます。といいますのは、申し上げますと、前々から米軍基地内の文化財の実態調査をやりたいという県の強い御希望がございました。それと同時に文化庁におきましても、米軍内の文化財の実態調査、それからそれについての保存方策というものを立てていく必要があるということで県と御相談をしておりましたが、昨年におきまして、県の中である程度、県の総務部のほうが窓口で米軍のほうとの折衝の過程において、スケジュールを出してほしいということがあったようでございます。したがいまして、いままでのそういったルートは教育委員会から県の総務部のほうへ、そして米軍のほうというふうなルートが一応想定されるということでございまして、そういったことを聞いておりますので、県の教育委員会に、そういうこまかいスケジュールあるいは調査体制といったものを早急に固めてほしい、そういったことがいけば総務部としてもその折衝の窓口になるだろうと、そのときには文化庁としても何らか御協力を申し上げることがあれば存分に御協力は申し上げるというふうにお答え申し上げたわけでございます。
  184. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 ぜひひとつ実現の方向に努力してほしい。一日も早くこの調査が実現しますように、何かと御協力いただきたい。  それじゃ最後に、嘉手納飛行場の騒音防止についてお尋ねしたいんです。  先ごろ航空機騒音防止法の一部改正によって、民間空港周辺の騒音防止基準が大幅に引き上げられたと聞いておりますが、その法は、米軍関係あるいは自衛隊の航空基地にも適用されるものであるかどうか、それを防衛施設庁から。
  185. 春日斉

    政府委員春日斉君) 騒音は環境庁でございますから、環境庁から……。  ただいまの航空機の騒音に関する環境基準は、米軍基地に対しても適用される、こう考えております。
  186. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 米軍基地についても適用される——。
  187. 春日斉

    政府委員春日斉君) 適用されます。
  188. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 されますか。
  189. 春日斉

    政府委員春日斉君) されます。
  190. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  191. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) 速記を起こして。
  192. 平井啓一

    政府委員(平井啓一君) ただいまの御質問の、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律第二条におきましては、この法律でそれが適用されます「特定飛行場」は「運輸大臣が設置する公共用飛行場」ということになっておりまして、防衛施設たる米軍及び自衛隊の飛行場には、この法律は適用されません。
  193. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 されない——。そうすると、いまこちらは、されるとおっしゃる。どっちなんですか。意見が食い違っておるんじゃありませんか。
  194. 春日斉

    政府委員春日斉君) 私先ほどからお答え申し上げておりますのは、航空機騒音に係る環境基準の適用についてお答えしておるわけでございます。——それでよろしゅうございましょうか。
  195. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いや、その防止法の一部改正の内容は、民間だけですか、米軍それから自衛隊関係にも適用されますか、されませんかということ。向こうは、米軍や自衛隊には適用されないと言う。いわゆる民間だけである。それであなたの場合には、米軍にも自衛隊にも適用されると言う。こういう見解の相違がありますが、どっちがほんとうなんですか。
  196. 春日斉

    政府委員春日斉君) 私がお答え申し上げましたのは「航空機騒音に係る環境基準について」は、「自衛隊等が使用する飛行場の周辺地域においては」云々ということで、環境基準の中で「当該飛行場と類似の条件にある前項の表の飛行場の区分に準じて環境基準が達成され」云々ということでございますから、「自衛隊等」の中に入るものと私ども解釈いたしております。
  197. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 ちょっと待ってくださいよ。ひとつよく聞いてくださいよ。私がお尋ねしておるのは航空機騒音防止法の一部改正。どうも取り違えておられるんじゃないですか。
  198. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) よく打ち合わせて答弁をしてください。
  199. 春日斉

    政府委員春日斉君) ただいまの御質問につきましては、私いささか取り違えていると思います。  私が答えるのではなくて、私どもの法律ではございませんので環境庁が答える筋合いでなかった——おわび申し上げます。
  200. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それでは重ねてお聞きしますが、嘉手納飛行場の騒音状況、その実情について把握しておられますかどうか。
  201. 平井啓一

    政府委員(平井啓一君) 嘉手納飛行場は、御承知のとおり米空軍が管理いたします飛行場で、KC価をはじめとして各種の飛行機の離着陸が行なわれております。相当の離着陸回数がありまして、周辺における騒音の度合いも相当高いものがあろうかと思います。ただ、ただいまも問題になっておりました昨年の十二月二十七日の航空機騒音に関する基準に基づくような調査は、これから行なうことになっております。しかしながら、沖繩復帰後、防衛施設庁のほうで嘉手納飛行場周辺におきます騒音対策のために、各種学校の防音だとかその他学習等、共用施設としての防音工事等を行なっております。その際にいろいろと特定の地点におきまして調べましたデータはございます。これらを見ますと、嘉手納飛行場周辺におきましては、たとえば嘉手納飛行場滑走路の北方にあります嘉手納村屋良地区あたりにおきましては百ホンを上回る騒音、あるいは北谷村の砂辺地区あたりにおきましても同じように百ホンを上回る騒音が発生している、そういうふうに調査の結果なっております。
  202. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 予定時間がまいりましたので急ぎたいのですが、非常に観念的に沖繩の爆音騒音を理解しておるのじゃないか、こう思われてならないのは、本土におかれての爆音騒音に対する感覚で、沖繩の特に嘉手納周辺の爆音騒音はもう想像に絶するものがある。そういうことで、嘉手納飛行場のサイレンサー設置について村議会で要請が出ていることも御承知だと思いますが、その資料は五カ月間、四十七年十一月、十二月、それから四十八年の一月、二月、三月、五カ月間の毎日の統計をあげておりますが、百ホン以上が一日平均九十六回、九十九から九十五ホンが一日平均百六十二回、九十から九十四ホンが三百十六回、いわゆる九十ホン以上が一日平均五百七十四回。五百七十四回というと、もう昼夜を分かたず一時間に二十四回、裏を返せば二分三十秒に一回の割りで爆音騒音が、しかももう二十何年も繰り返してきておるというこの事実の理解の上に立って、そこから起こるもろもろの被害、心身に及ぼす影響、このことが重大であるわけなんです。  そこで、嘉手納村議会は、いわゆるこの騒音を消していく消音装置の設置工事を強く要望した。私も去年の十月に参議院の沖特委としての調査に行ったときにも、消音のサイレンサーですか、その装置を始めておるということを話しておったのです。それが完成しておるかどうか、そしてその効果はどうであるか、また、その装置の位置は適当であるか。そのことをひとつはっきりお聞きしまして、時間がまいりましたので私は終わらせていただきたいと思います。もう一ぺん、サイレンサーの問題ですね、そしてこのような実態の裏づけをどのようにとらえて、それにこたえていこうとしておられるのか、そのことを伺います。
  203. 平井啓一

    政府委員(平井啓一君) 嘉手納飛行場周辺における騒音が、御指摘のとおりたいへんであることは私どももよく承知しております。したがって、今後、嘉手納飛行場周辺の騒音対策につきましては、発生源対策として米軍の飛行時間、飛行方法等の規制、あるいは消音器の設置、また周辺対策といたしましては、現在あります防衛施設周辺整備法の運用を十分はかっていくと同時に、今国会で審議をいただいております新しい周辺整備の法律案の成立をお願いしました上で、さらに抜本的対策、たとえば個人住宅の防音等にも取り組んでいきたいと考えております。  ただいま御質問のございました消音器の設置につきましては、米軍に申し入れまして、ファントム用の消音器につきましては一基、これは基礎工事等も全部完了いたしまして、あと機械の据えつけを待って近く完成する予定になっております。さらにファントム用二基につきましては、米軍におきましても工事計画を立てておりまして、昭和五十年にはこの二基につきましても完成する予定でございますが、この場所は、実はファントムの駐機場のあります奥のほう、コザ——今度は沖繩市になりましたが、旧コザ市地域の部分にあたるところに消音器が設置されるわけでございます。  なお、嘉手納村が非常に希望しておられますのは、嘉手納村のロータリーの近くにありますKC価の駐機場に消音器をぜひ設置してほしいという御要望でございますが、これは御存じのようにKC価はたいへん大型機でございまして、大型機の消音器というものがいままでは実用を見ていなかったわけであります。最近、成田新空港等におきましてもそういったものを取りつける計画になっておりまして、これにならいまして、米側に現在KC価の大型消音器をぜひ設置するように申し入れて、折衝を現在続けております。何とかしてこれを実現したいと考えております。  なお消音器、いわゆる戦闘機用の消音器が運用された場合に、消音器なしでエンジンテストをやる場合と消音器をつけた場合とでは、従来本土にあります自衛隊の消音器等でテストしましたところでは、五百メートル離れた地点で聞きまして、消音器を使用した場合に約三十ホン以上音が軽減される、そういうデータを私ども承知しております。
  204. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) 以上をもちまして環境庁所官に関する質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、本分科会の担当事項であります昭和四十九年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算中、皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、総理府のうち防衛庁、経済企画庁及び科学技術庁を除く部分、及び法務省の各所管並びに他分科会の所管外事項に対する質疑は終了いたしました。  これをもちまして本分科会の審査を終了いたします。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを主査に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  205. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  これにて散会いたします。    午後三時八分散会      —————・—————