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最高裁判所長官代理者(田宮重男君) いろいろ問題を
指摘いただきましてありがとうございます。
まず、年間の事件数でございますが、主として問題になりますのは訴訟事件でございます。年間で受理している全体の訴訟事件は十八万二千三百十七件となっております。このうち、特に問題になりますのは一審の事件でございまして、地裁でございますが、地裁の訴訟事件は九万五千六百四十一件、これは民事でございます。刑事は、訴訟全体としては十三万一千八十五件、そのうち地裁でやります訴訟事件は八万八千件というふうになっております。
このうち、四十七
年度で、これは年間で受理された事件でございまして、その年間で受理された事件のうちどれだけの数が翌年に持ち越されるかという点については、その点の統計のとり方が非常にできませんので、四十七
年度から四十八
年度に持ち越された事件だけについて見ますと、地裁のほうで、刑事でございますが、四万五千四百二件、それから地裁の民事が十万一千五十二件、四十七
年度から四十八
年度に繰り越された事件がそういうふうになっております。
で、審理期間の点でございますが、これも御
指摘のように、年々若干ずつ延びておりまして、四十七
年度の一審の地裁を見ますと、民事では十五・八月、それから刑事では六・六月ということに相なっておるのでございます。全体としてはそのように若干ずつ延びておりますが、平均的に見ますと、地裁の場合では、刑事では七四・六%ぐらいは六月以内に
処理されておる。民事では、民事は多少刑事よりむずかしいものですから、一年をとりますと、一年以内で
処理された事件は六三・二%でございます。もちろん、これによって、平均的にそれだけの事件がその期間内に
処理されているということで決して満足しているわけではございませんで、これも戦前から比較しますと、かなり延びておるのでございます。
一般的にはそういうふうな状況でございますが、先ほど御
指摘のような特殊な事件になりますと、一審から高裁、高裁から最高裁ということになりますと、かなり長期にわたるような事件が最近あることは、そのとおりでございます。
その原因として
考えられますのは、まず、最近における事件の複雑困難ということであろうと思います。たとえば、民事事件におきましては、公害、医療過誤その他の特殊損害賠償事件というものが最近多うございます。このような事件になりますと、新しい法律問題を含んでおりますし、また、事実認定が非常に困難で、特に公害事件等におきますと、因果
関係の認定が非常にむずかしいというような、そういった特殊な問題がございます。それからまた、当事者も非常に多数であるといったような性質を持っております。
一方、刑事事件におきましても、大
部分の事件は、先ほど御
説明申し上げましたように六月以内に
処理されておるのでございますが、一部の事件では、被告人が非常に多数であるといったような事件、それからまた、犯罪事実も非常に多いというような事件、それから、まあ例の学生事件等になりますと、訴訟の進行に関していろいろ紛議が生ずるというようなことで、必ずしも円滑に進行しない、そのために事件が延びるといったような状況もございます。さらに、これは当事者側に存する原因でございますが、当事者代理人の訴訟進行に関する十分な協力が、必ずしも得られないといったような事案もございますので、まあそういった点が最近若干ずつ目立っておりますので、そういった
関係で、事件も長期化する原因になっているのではないかというふうに
考えておるわけでございます。
これに対する
対策ということでございますが、まず第一には、裁判官の機動的かつ適正な配置をはかるとともに、各
裁判所内部におけるところの
事務分担の適正化をはかるというようなことを推進しております。この例といたしまして、最近でございますが、京都で民事訴訟事件が非常にふえまして、未済事件が非常にふえましたので、裁判官三名を臨時的に配置いたしまして、これは他の庁から持っていったのでございますが、そういうような
措置をいたしまして、その結果、ここ二、三年の間に未済事件が半減するというふうな効果も生じておりますので、今後こうした適宜、裁判官の機動的な配置ということも真剣に
考えたいというふうに思っております。
第二といたしましては、やはり何と申しましても、裁判が
時代の要請に沿うような速度でなければなりませんので、そういった
関係から、裁判
事務の改善ということに力を入れておるのでございまして、この点に関しましても、資料を整備するとか、能率器具を整備するというようなことで、この点についても、逐年
予算の増額が認められておりまして、本
年度においても、そうした資料
関係とか器具
関係で約四千万程度で、昨年の二〇%増というふうな
予算を認められておるのでございます。次に、また種々の研修とか協議会、そういうものを実施しまして、裁判官の迅速適正な
処理能力を高めるといったようなこともいろいろ
努力してまいっておるのでございます。
まあ、いずれにいたしましても、
裁判所だけがそういうふうな体制を整えましても、必ずしも訴訟は円滑に進行するものでもございませんので、訴訟
関係人の協力という面についても、今後とも一そう
努力いたしまして、
時代の要請にこたえるような、そうした裁判にいたしたいというふうに念願しておるところでございます。