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1974-04-06 第72回国会 参議院 予算委員会第一分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十九年四月六日(土曜日)    午前十時六分開会     ―――――――――――――    分科担当委員の異動  四月五日     辞任         補欠選任      森中 守義君     佐々木静子君  四月六日     辞任         補欠選任      佐々木静子君     工藤 良平君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     主 査         大竹平八郎君     副主査         加瀬  完君     分科担当委員                 原 文兵衛君                 工藤 良平君                 佐々木静子君                 峯山 昭範君    国務大臣        法 務 大 臣  中村 梅吉君    政府委員        青少年対策本部        次長       吉里 邦夫君        法務大臣官房長  香川 保一君        法務大臣官房会        計課長      住吉 君彦君        法務省民事局長  川島 一郎君        法務省刑事局長  安原 美穂君        法務省矯正局長  長島  敦君        法務省入国管理        局長       影井 梅夫君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総長       安村 和雄君        最高裁判所事務        総局総務局長   田宮 重男君        最高裁判所事務        総局経理局長   大内 恒夫君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君    説明員        警察庁刑事局保        安部少年調査官  星野鉄次郎君        法務大臣官房営        繕課長      水原 敏博君        文部省初等中等        教育局中学校教        育課長      別府  哲君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和四十九年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十九年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十九年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) ただいまから予算委員会第一分科会を開会いたします。  昭和口十九年度予算中、裁判所及び法務省所管を一括して議題といたします。  裁判所及び政府からの説明は、これを省略し、説明資料を本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は御発言願います。
  4. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、本日は法務省に若干お尋ねしたいと思うわけでございますが、まず、前回予算委員会でもお尋ね申し上げました戸籍のことについてお尋ねいたしたいと思います。  これは、かねて全国市町村長、特に私の地元でございます大阪府の市長会などから非常にやかましく要請されて、お願いにあがっている件でございますけれども、現在なお除籍簿が各市町村役場保存されておりまして、その除籍簿閲覧について、いろんな人権問題が起こってきているわけでございます。その事柄につきまして、実は一昨年の予算委員会でも法務省にお尋ねさしていただいたわけでございますが、憲法が施行されてから四半世紀を過ぎて、すべての人の平等というものがうたわれているこの時代に、族称記載されておるところの古い除籍簿でございますね、それがいまなお各市町村役場保存されて、そうして、それがいろいろな関係で、多くの国民が見ようと思えば自由に見れる状態で、必ずしも市町村取り扱いとすると、無制限というわけではないようでございますけれども、見ようと思えば見れる。そういう事柄につきましていろいろな人権問題が起こってきているわけでございますが、こういう事案についてまず総括的に、法務大臣とすると、この人権保障のお立場にお立ちになって法務行政を行なっていただかなくちゃならないお立場大臣として、現状をどのようにお考えになっていらっしゃるか、またどのような御対策というものを考えていらっしゃるかお述べいただきたいと思います。
  5. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) これは、制度戸籍は八十年間保存しなければならないということになっておりますので、保存はされておりますが、族称抹消してもよろしいという通達は出してあるのでございますけれども、なかなかこの抹消事務をやるということは、非常に多額の手間と金額がかかるようでございますので、そのままに保存されておりますけれども、現在は族称の書いた戸籍保存をしておるだけでございまして、謄本等を出す場合には記載いたしておりませんので、記載がなくてよろしいことになっておりますので記載いたしておりません。したがって、弊害はそうないのではないかと思っております。なお、こまかいことは事務当局から御説明をさせますが、現在はもうかたくこれは保存をして、外に出さないというたてまえをとっておるわけでございます。
  6. 佐々木静子

    佐々木静子君 それではまず、いま大臣から総括的な御答弁いただきましたが、民事局長に伺いたいのでございますが、現在の族称記載除籍謄本現実にどのように取り扱われているか、また、その閲覧とか、謄本交付というものの現実扱い方についてまず伺いたいと思います。
  7. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) お尋ねのように、現在市町村役場保存されております除籍の中には族称記載のあるものが相当数含まれておるわけでございます。で、これをそのまま公開いたしますことは、プライバシーの保護というような面から申しましても問題がないとは言えませんので、また、御質問にございましたような要望も出ておりますので、なるべく一般には公開しないようにということで行政上いろいろな措置を講じておるわけでございます。で、まず、謄抄本交付請求がありました場合には、族称記載は省略して謄抄本を作成せよということを通達いたしております。これは昭和二十二年以来、数度にわたってその趣旨通達を出しております。  それから、閲覧につきましては、族称記載のある除籍につきましては、市町村長が相当と認める場合にはその閲覧禁止措置を講ずることができると、こういうことを通達いたしております。これは現行戸籍法第十条一項、ただし書きの規定に基づく措置として、このような閲覧禁止をすることを認めたものでございます。  それから、さらに族称記載のある除籍の原本につきまして、この族称記載部分を塗抹する、塗りつぶしてもよろしいかという照会が各地からございまして、まあこれに対しましても、その部分については塗抹しても差しつかえない、このような回答をいたしておるわけでございます。現在とっております措置といたしましてはそのようなものがございます。
  8. 佐々木静子

    佐々木静子君 そのいまの閲覧禁止お話でございますけれども、これはどういう場合に禁止していらっしゃるのか。何か具体的な指示というものをしていらっしゃるわけですか。あるいは逆に、特別に相続登記のために必要であるとか、具体的に何かその理由を明示した場合にのみ認めて、それ以外はもう普通は閲覧はさしておらないのか、そこら辺の基準ですね、どのような御指導になっておりますか。
  9. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 閲覧禁止は、先ほど申し上げましたように、市町村長がそうすることが相当であると認めた場合にはそのような措置をとってよろしいということにいたしておるわけでございます。と申しますのは、族称記載のある除籍につきまして、たとえば相続登記を申請するというような場合には謄抄本が必要になってまいります。したがって、謄抄本交付すれば足りるわけでございまして、謄抄本につきましては、先ほど申し上げましたとおり、族称記載は省略する取り扱いにいたしております。したがって、このほうは問題ないわけでございますが、閲覧という場合には、その現物を見せなければなりませんので、そこに族称記載がありますと、結局その閲覧を通じて族称記載が公開されるということになるわけでございます。そこで、この族称記載を、特に問題にいたしておりますのは関西の方面でございますが、まあそういった族称記載を比較的問題視する地域におきまして、これを無条件に閲覧させるということは問題を生ずるおそれがあるということで、それは個々の状況を判断して市町村長が随時適宜に閲覧禁止措置をとってよろしい、こういうことにしておるわけでございます。
  10. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまのお話しのように、これは主として同和問題とからみまして、結婚調査などに、その調査営利としてやっている業者人たちが、この除籍謄本閲覧をして、特にその族称がどうなっているかということを根掘り葉掘り調べる。そのことによる被害がたいへんにいまなおあとを断たないわけでございまして、実は本年の部落解放同盟全国大会におきましても、やはりそのことが大きなテーマ一つとなって、そういう調査営利としている業者に対して、憲法の精神あるいは人権保障立場から、法務当局はもっと強い指導をしていただきたいという要望がたいへんに強く盛り上がっておるわけでございます。いまのお話で、未解放部落をかかえている地方に、特にそういうふうに強い行政指導を行なっているというお話のように承ったのでございますけれども、いまなおそういうことがたいへんに問題となって取り上げられているということ自体、徹底しておらない証拠じゃないかと思うのでございますが、そういうことに対しまして、今後さらにそうした点について御留意いただいて、前向きの姿勢人権擁護立場行政を行なっていただけるかどうか、そのあたり大臣、いかがでございますか。
  11. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 現在、お話し申し上げましたように抹消してもよろしいし、それから謄抄本を発行する場合には記載しないことになっておりますから、弊害はないと思いますが、なおこの上ともひとつそういうような点については、族称廃止が徹底しておる今日、行政上も徹底をさせるべきものであると、かように考えますので、考究、研究をいたしまして、十分な処置を講じたいと、かように思っております。
  12. 佐々木静子

    佐々木静子君 前向きの姿勢で取り組んでいただけるということで、大いに意を強くしているわけでございますが、先ほど民事局長お話にもございましたように、非常にその抹消、黒く塗りつぶすような作業手間がかかる。これは、実際、その族称欄だけじゃなくて、ここにも若干族称記載された戸籍謄本が用意してございますが、これは族称欄だけじゃなしにいろんなところにこの族称が出てまいりますから、これを塗りつぶすとすれば、これをともかく全部見ないといけない。これはたいへんな労力を要することであると思いますし、まあ非常に大きな作業になるわけでございますが、実は、大阪府におきましても、先ほど大臣並びに局長から御答弁のありましたような御趣旨で、特に昭和四十六年の九月に大阪法務局長からの、現戸籍記載されている族称処理についてという通達府下の各市町村に出されまして、それに基づいて早速に各市町村全部、その作業に取り組んだわけでございまして、すでにその作業を完了した市町村も非常に多いわけでございます。まあ大阪市のようなところは人口が多いものですから、なかなかその作業が全部完了せずに、まだ作業中であるというところもあるわけでございますが、この登記業務というのは、国からの委任事務であるので、それに要した費用というものは当然国から補っていただけるという前提で各市町村はこれを取り組みまして、相当な額にのぼっているわけなんでございますが、いまだそれらの作業に対するそれらに要した費用についての国のほうの予算措置が講ぜられておらないということで、これはほかの府県もそうじゃないかと思いますが、特に大阪府下におきましては各市町村非常に困っているわけなんでございます。そういうことで、大阪府の市町村会からも再三にわたって法務当局お願いにあがっていると思いますし、また大阪府知事などからも再三御要望申し上げていると思うんでございますが、実は本年度予算にもそのことが全く計上されておらないということでたいへんに困っているわけなんでございますが、そのあたりはどういうわけで本年度予算に計上さしていただけなかったのか、あるいはまた来年はどうなるのか、どういう御予定であるのか、局長に伺いたいと思います。
  13. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) ただいまの御質問にございましたような要望法務省に対してもたびたびなされておるということは御指摘のとおりでございます。まあ私もこの問題は非常に大事な問題であると考えておりまして、でき得るならば何らかの措置を講じたいという気持ちは持っておるわけでございますが、法制上、それから予算のたてまえなどからいろいろな問題があるわけでございます。  まず、市町村長が行なっております戸籍事務、これは国の機関委任事務であることは仰せのとおりでありまして、まあ国として市町村お願いをしているという立場にあるわけであります。ただ、その経費の点につきましては、まあ現行地方自治法あるいは地方財政法規定によりますと、これは市町村が負担するというのがたてまえになっております。そして、それに関して何らか新しい仕事を法律または政令でもって課したような場合には、これは国がその財源措置考えなければならないということになっておると思うのでございますが、そのたてまえに照らし合わせますと、この除籍における族称記載を塗抹する作業、あるいはこの除籍を書き直すという再製の作業、こういった作業に要する経費法制市町村の負担になるというふうにも考えられるわけでございまして、事柄から申しますと臨時的なものでございますから、市町村に負担させるのは酷ではないかという考え方ももちろん出てこようと思います。そこで、まあこれはいろいろむずかしい問題があるわけでございますが、市町村のそういった事務を助けるために地方交付税というのがございまして、まあ戸籍費用地方交付税の積算をいたします場合に一つの計算の基礎として加えることになっております。そういう意味で、私どもはこの全面書きかえというのは非常に金のかかる仕事でございますけれども、何らか要望趣旨に沿うような措置を講じ得る費用というものをこの地方交付税の中に含めて入れることはできないものかということで、実は前回先生から御質問もございましたし、御要望もいただきましたので、そういった方面につきましていろいろと研究をし、交付税を担当しておられるところともお話し合いをいたしたわけでございますが、不幸にしてその点のお話し合いがうまくいきませんで、特別な措置というものが講じられなかったというのが現在までの経過でございまして、この点ははなはだ遺憾に存じておりますが、まあ今後におきましてもそういったいろいろな問題点がございますので、さらに私ども研究を続けまして、何らかの措置を講ずることができるかどうかというようなことをさらに掘り下げて深く検討してまいりたいと、このように考えております。
  14. 佐々木静子

    佐々木静子君 いろいろと御努力いただいているということはよくわかっているのでございますが、ともかく大阪府下だけで七億六千万円ほどの金になっていると思うんです、立てかえ費用が。いまちょっと国との御見解違うようですが、市町村のほうでは立てかえた分と思っているわけでございますが、そういうことなので地方交付税ではたしてまかなえるのかどうか。やはり特別な予算措置を講じていただかないことには、この一府県だけで、特に多いんじゃないかとは思いますけれども、他の府県と比べると、ともかく七億とか八億とかというお金になってきますと、小さな衛星都市ではたいへんな――額とするとわずかなように見えても、衛星都市では困っているのが実情でございますので、何とか早急にこの事柄について、少なくとも来年度予算にはこうした予算も組み入れていただきたいと思うわけでございますが、いかがなものでございましょうか。
  15. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 御要望趣旨を含めまして早急に検討をいたしたいとこのように考えております。  なお、この除籍につきましては、現在保存期間が八十年ということになっております。この八十年という保存期間が適当であるかどうかというような問題もございまして、現在法務省におきましては、戸籍制度の改善につきまして民事行政審議会諮問をいたしております。その民事行政審議会におきましても、行政的ないろいろな措置につきまして御検討をいただきたい、このように考えている次第でございます。
  16. 佐々木静子

    佐々木静子君 ぜひそのように実行していただくことをお願いしまして、次のテーマに移りたいと思います。  これは実は登記所統廃合の問題につきまして、全法務労働組合からこの登記所地方住民のためにという強い要望が昨年、特に本年度出されているわけでございますが、それと同時に日本司法書士政治連盟のほうからも住民意思を無視した登記所統廃合には強く反対するということで、御承知のとおり、先日の日曜日にも全国大会を開いて、全会一致でこの点を可決し、法務当局はじめ関係省庁のほうに御要望申し上げていると思うのでございますけれども、この登記所統廃合について、どうも住民意思というものが十分に反映されておらないというような声が起こっているわけでございますが、法務省のほうとすると、この統廃合問題はどのような観点からお進めになっておられるのか。また住民なり、また一番関係の深い司法書士の方々などの意見をどのように反映して盛り込んでおられるのか、まずお伺いしたいと思います。
  17. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) まず登記所統廃合を行なう趣旨でございますが、これは御承知のように登記所というのは、大部分法務局及び地方法務局出張所でございまして、この出張所の中には非常に規模の大きいものもございますけれども職員が一人とか二人とか三人以下程度の非常に小規模の出張所がたくさんあるわけでございまして、これが全体の七、八割を占めていると思います。そして数にいたしましても千数百、全国に散在いたしておりまして、現在の交通事情から考えますと、必ずしもこれだけの数の登記所を分散配置しておく必要がないんではないかというふうに考えられることが一つでございます。  それから、特に小規模の一人庁、二人庁等におきましては、登記事務管理の面から申しましても、あるいはそこに勤務する職員の待遇の面からいたしましても、非常に問題が多いわけでございまして、これから登記所を近代化して合理的な事務処理をできるようにしていこうとするためには、どうしてもある程度まとめていくことが必要である、こういう観点に立って統廃合を進めておるわけでございます。  御指摘のように、全法務労働組合あるいは司法書士政治連盟からこの点について若干の疑義が出ております。全法務労働組合立場といたしましては、現在登記事務が非常にふえておりますので、統廃合によって労働強化を行なうという心配があるのではないか、あるいは住民に対するサービスが低下するのではないか、こういった点が主として心配されておるようでございますが、私どもは現在の登記所職員人手不足であるということは十分承知しておりますので、この点につきましては別途最善の努力を尽くしていきたい。また、住民サービスの面におきましては、この統廃合を行なって登記所を近代的な組織、機構に改めることによりまして、現在以上の良質なサービスを提供できるようにいたしたい、このように考えておるわけでございまして、組合に対してもその点の理解を求めておる次第でございます。  また、司法書士政治連盟のほうも大体同じような立場かと思いますが、特に登記所統廃合されますと、その廃止される登記所におられる司法書士の方が事務所を移転しなければならないと、こういったような問題が起きてまいります。そこで、突然ある登記所が廃止されますと、非常にそこにおられる司法書士の方が困るというような問題が起こっておりますので、そういう点につきましては十分事前に御連絡するなりいたしまして、そういった面の不都合が生じないように注意深くこの統廃合を進めていきたい、このように考えておる次第でございます。
  18. 佐々木静子

    佐々木静子君 いま住民などの意向は十分に聞いてお進めになるということでぜひそうしていただきたいと思うんですが、とかくこういうことは役所仕事になりがちじゃないかと思うんです。すでにそういうことについての批判が出ているわけでございますが、法務省のほうからいただいた登記所適正配置に関する民事行政審議会答申、これは大臣諮問に対して民事行政審議会がいろいろと意見を出しているわけでございますが、この委員のメンバー、私も拝見させていただきまして、やはりこれはあまりにも役所サイドに片寄り過ぎているんじゃないかという感じがしたわけなんです。これは全法務のほうからも、実際に登記事務を扱う人間は一人も入れてもらっておらないという要望が、少なくとも法務労働者代表を一人ぐらい入れるべきではないかと。そうじゃないとほんとうの現場の声はわからないという意見が強く出されているわけでございます。たとえば名前をあげるとたいへん失礼ですけれども、私弁護士の人が四人入っているので四人の経歴を調べますと、全部が元検事総長とかあるいは司法官僚として非常に長い経歴をお持ちの方で、たまたま定年その他でいま弁護士をしていられる。これが四人が四人ともそういう御経歴である。個人的には非常にごりっぱな方だと思うのでございますけれども、そういう事柄から考えますと、私ほかの業種の方はあまりわからない点がありますけれども、それ一つ見ただけでも非常に官僚サイドに片寄った委員によって構成されているんじゃないかという気がするのですけれども、そのあたり大臣はどのようにお考えになりますか。
  19. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) そういう見方をしますとそういうことになるかもしれませんが、この中には司法書士連合会代表とかあるいは日弁連の代表とか、できるだけ民間の人も代表者には入っていただいておるわけでございますが、問題は、いま局長が申し上げましたように、この民事行政審議会答申におきましてもかなり慎重に、廃止される登記所の者が統合される登記所への交通機関――バスとか、その他あるいは何時間、三十分要するとか、一時間要するとか、なかなかこまかく検討しておるわけでございまして、ただ問題は、廃止される登記所の所在地との関連をできるだけ緊密にして円満にやるということが一番大事なことではないかと思います。そういう趣旨におきまして、昭和四十六年に閣議決定で千数百カ所ある出張所というものをいまの時代に即応して、道路もできたし、バスもできたのだからできるだけ統廃合をすべきである、五年以内に統廃合しろと、こういう閣議決定がありまして、その趣旨に沿って民事行政審議会諮問をし、そこの御研究をいただいた成案に従って実は進めておるわけでございます。なかなかこれは円満にいくところばかりありませんで、円満にいったところがすでに数百カ所ございますけれども、まだまだ難航しておるところがございまして、できるだけ地元との理解が得られないものは理解を得られるまで努力を続けておるというような次第で、官僚的に無理にやることはできるだけ避けるようにということをわれわれも言っておる次第でございますので、御趣旨に沿うように、さりとて統合をしないわけにはいきませんし、一人庁等は非常に夫婦で出張所の番人をしなければならぬものですから旅行もできないというような法務職員立場考えてみますと不自由な地位にも置かれておりますから、できるだけ数人庁に交通機関のあるところは統合していく。ただ、やってみますると、この昭和四十六年の閣議決定より前の一、二年前とか数年前、ごく最近にその所在する市町村が、登記出張所が非常に老朽化したものだから建てかえをしなければならない。そこで、建てかえの費用市町村が持っておるというようなところもありまして、こういうところはまだ建物もできて早々でございますし、あまり無理をしてやるのはどうかというようなことでちゅうちょをしながら進めておるような次第でございます。できるだけひとつ、その地域やら、あるいは関係者の不満のないような方法で円満に進めていきたいと、こう思ってやっている次第でございます。
  20. 佐々木静子

    佐々木静子君 ぜひ住民並びにその地で仕事をする司法書士の方々などの御意見が十分反映する行政を行なっていただきたいと思います。また、いまの法務事務仕事量、たとえば登記の申請事件のような甲号事件が十年前から比べて二倍以上に上がっている。また、謄本や抄本の交付のような乙号事件が四倍ほどに数がふえているというふうに聞いておりますけれども、いま十年前と現在の甲号、乙号それぞれの数字というものはおわかりでございますか、事件数です。
  21. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 甲号事件でまいりますと、昭和三十七年に全国登記所取り扱いました件数がおよそ一千万件でございます。それに対しまして、四十七年の甲号件数は二千百二十万件余りになっておりまして、二・一倍程度に増加しておるわけでございます。昭和四十七年と四十八年を比べますと、さらに百五十万件ほどふえているという情勢でございまして、登記事務は年々増加しておるということがいえるわけでございます。
  22. 佐々木静子

    佐々木静子君 それに対して法務職員の人数はどのぐらいふえておりますか。十数%くらいしかふえてないんじゃないでしょうか。
  23. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 約十年間に一三%程度の増加でございます。
  24. 佐々木静子

    佐々木静子君 そういうふうなことで、たいへんに法務職員が労働過重におちいっている。東京の管内でも、東京法務局でも去年からことしにかけて約半数の人が病気にかかったというふうな報告も出ているわけなんでございますけれども、そこら辺でもう少し人員の確保ということでふやしていただかないとどうにもならないという要望が私どものほうにも強く出ているわけでございますが、その点は、大臣、これはふやすわけにいかないんじゃないでしょうか。いまの大臣の御答弁にもありましたように、一人庁でも見ていても非常に気の毒で、何か登記の申請に行った者まで手伝わないと見ていられないような状態で、奥さんまで子供を背負って出てきて一緒にリコピーとったりしているというふうな状態で、これはほんとうに法務職員が気の毒だと思うわけなんですけれども、この人員増加のことについて、大臣はどのように実際に推し進めていられますか。
  25. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 実は例年、人員増につきましては登記事務がこういうふうに激増しておりますので、努力をしておる次第でございますが、反面、政府の公務員の定員削減方針というのがありまして、毎年五%ずつ減らされるわけでございます。昭和四十九年度についてみますというと、増員が三百三十七名認められましたが、その中で、当然削減分が五%引かれますと、結局、純増が百八十名ということになりまして、ことしは、昨年が百二、三十名であったと思うんですが、例年よりは多くふえたんですけれども、それでもそんなような遅々たる進み方でございます。そこでいかにしてこの激務の、事務の増大しておる現状を解決するかということで、できるだけ登記所の合理化と、それから機械化に努力しまして、かなり規模の大きい登記所では機械化が進行しておるわけでございます。機械化をするにしましても、やっぱり登記所の規模が相当ありませんというと機械化の効果が出ませんので、そういう努力によってこの難局を切り抜けておるというのが現状でございます。なお、今後ともわれわれとしましては、この増員については全法務の労働組合が言っておるとおり、一そう努力をしまして、大体登記件数のふえ方が幾らかいま非常に減ってきておりますから、この段階で努力を続ければ、何とか追いつくのではないかというように考えております。
  26. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから、これも職員登記事務官の労働過重から生まれていると思うんですが、登記ミスが非常に最近多いように聞いているわけでございますが、局長の認可によるところの更正登記でございますね、これは年間どのぐらいございますか。
  27. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 仰せのとおり、最近事務が非常にふえておりますので、職員の過誤によります書き違えといったようなものが相当数ございます。昭和四十七年で申しますと、全国で約一万三千件の過誤の訂正がなされておると、こういう実情でございます。こういった点につきましては、十分注意をしておるわけでございますけれども、何分にも事件数が多いために、たとえば所有者の住所を書き間違えるとか、名前を書き間違えるといったようなことがございまして、それがあとで発見されて訂正事件になってくると、こういうケースが相当あるわけでございまして、年間の統計を見ますと、若干ずつふえているような状況でございます。パーセンテージにいたしますと、これはきわめて少ないわけでありまして、たとえば一万件のうちの六、七件程度の割合になろうかと思いますけれども、大ざっぱに申しまして、二千件に一件程度の間違いになりますけれども、何分にも全体の事件がふえておりますので、こういう過誤を生ずる件数が相当ございまして、これはたいへん申しわけないことだと思っております。
  28. 佐々木静子

    佐々木静子君 それからまた、話は戻りますが、例の一人庁で登記の出張所へ参りますと、特に開発の波の押し寄せているようなところでは、ずいぶん大ぜいの人が押しかけてきて、地籍図、原簿ですね。地籍図ですか、を見たり、また売り主、買い主、仲介人が集まって、ああだこうだと、登記所の中でいろいろそれを囲んで話をしている。一人庁だと、その職員は中の倉庫へ入って、なかなか出てこない。私が見ているときでも、たまたま行っているときでも、鉛筆やらボールペンでここはこうだとか、あすこはこうだとか、お互いにここをこれだけ買ったらどうだとかなんとか言って――あれは、地籍図はもうあの調子でいくと幾らでも書き入れられるんじゃないか、私も枝番をかってに書き入れられたケースがあって、非常に困ったのも現実にあるわけなんですが、鉛筆で横へ、売り主、買い主、仲介人が一生懸命になって話している間に、かってに書き入れて、それからこのあたりだとかいうようなことをまるをしたり、かってに線を引いたりして、見ていてもはらはらするようなことがあるわけでございます。それをゼロックスで写した場合に、鉛筆であろうが何であろうが全部同じようにとってきますので、そのために地番が変わってたいへんに難儀をしたこともあるわけですけれども、この一人庁のその地籍図の保管ですね、あるいは閲覧に対してもう少し何か措置をおとりにならないと、これはつくりかえようと思えばどんなにでもできるんじゃないか、いまの状態であれば。そのあたりはどういう措置考えておられますか。
  29. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) これは仰せのとおり、地籍図、登記所で保管しております地図は大事なものでございまして、これをかってに書き入れられるというようなことになりますと、非常に関係者の方に御迷惑がかかるわけでございます。現にそういう事件がございまして、訴訟にまで発展したものがありまして、私ども非常に憂慮しておるところでございます。最近はなるべくその地図を整備いたしまして、簡単な鉛筆では書き入れることができないようなものにするとか、あるいはその閲覧の方法を特殊な状況のもとで行なうとかいうふうにいたしまして、注意をいたしておるところもあるわけでございますけれども、なかなか登記所の数が多いし、また地図が多いということで十分に手が回りかねる実情でございます。また、閲覧の場合には、登記所職員が監視していなければならないと思うんでございますが、これも事件数が多かったりあるいは一人庁、二人庁といったような少人数庁の場合にはそこまで手が回りかねるというような実情にございますので、地図そのものの改善、非常に古い地図を新しいきれいな紙に書き写すとか、そういうこともいたしておりますと同時に、先ほど申しましたような登記所統廃合によりまして、なるべく少人数庁を統合いたしまして、そして監視体制のできるような、そういう登記所に改めていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  30. 佐々木静子

    佐々木静子君 それから話が変わりますが、この登記協会でございますね。これは一昨年にも登記協会のことについて法務当局質問さしていただいたわけでございますけれども、これは司法書士会が登記協会の設立に非常に強く反対しておったわけでございますが、いまでは五局二十二庁の出張所というものにまで広がっているということで、この登記協会に予算も計上されておるというふうにお聞きしているわけでございますが、この登記協会のことを法務省とすると今後どのようにしていかれるおつもりなのか、特に司法書士会でたいへんに御心配になっているのは司法書士の方方の業務がこれによって侵害されるのではないかということで、たいへん御心配になっていらっしゃるわけですが、その点を法務省とするとどのようにお考えなのかお述べいただきたいと思います。
  31. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 登記協会のことにつきましては、先生御承知のとおりでございます。私どもといたしましては、登記協会に手伝ってもらっております仕事登記所謄抄本作製の仕事の一部でございまして、登記簿の原本からこれを複写機にかけて、そのコピーをとるという仕事でございます。で、これを本来の登記所職員がするのが筋であろうと思うわけでございますけれども、何ぶんにも登記所職員は非常に事務に忙殺されておりまして、また最近乙号事件、謄抄本交付の申請事件というのが非常に多いわけでございます。そういった意味で、少しでも登記所手間を省き、また迅速に謄抄本交付をするということが国民に対するサービスのゆえんでもございますので、そういった見地から、現段階におきましては、こういう方法も一つの現状に対する対策であろうというふうに考えて実施しておる次第でございます。司法書士の方々がこれに反対しておられます。ごく一部の方でございますけれども、先ほど御質問のございました司法書士政治連盟の決議の中にもそれがうたってございます。私一部の司法書士の方に最近もお目にかかってこの話をいたしたわけでございますが、それによりますと、司法書士の方々はどうも登記協会の仕事が自分たちの職域を侵犯するんではないかと、こういう心配をしておられることを発見したわけでございます。というのは、わわれわれといたしましては登記協会は登記所仕事の一部を請け負っておるのであって、司法書士の業務とは直接かかわりのない仕事をしておるわけでございます。ところが司法書士の方は、何か登記協会が登記簿の謄抄本をつくるということを国民から直ちに登記協会が委託を受けてそうして謄抄本を国民につくって渡してやると、こういう疑問を持っておられたようでございます。そこで私は、そういうことは登記協会にはさしていないし、なすべきことでもないと、依頼者から謄抄本交付を頼まれてそして謄抄本交付の申請をして、その結果交付された謄抄本を依頼者に渡してやるのは、これは司法書士仕事であって、そのような一種の代理業務というものは司法書士以外の者はできないことになっておる。したがって、登記協会がこれを行なうとすればそれは司法書士法違反になるのであって、そのような法律違反の行為を登記協会にさせるはずがない、かりにやっておるとすれば、これはもう厳重にそういうことを禁止させるということを申したわけでございますが、一部には、何か司法書士の業務を侵犯するんではないかと、そういう御懸念を持っておられる方があるわけでございます。これは主としてそのような下請業務をやっていない地方司法書士の方々がそういう疑問を持っておられるようでございますので、そういった点につきましては今後ともこの下請の趣旨というものを十分徹底させまして、司法書士の方々の誤解を生じないように努力してまいりたいと考えております。
  32. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまの御答弁で司法書士の業務を侵害しないというお話でございますが、これからの実際の登記協会の運営におきましても、やはり皆さんが心配しておられることでございますので、現実にほんとうに司法書士の業務を侵害しないのであれば侵害しないのだということを実証的にもお示しいただきたい。そしていま非常に皆さんが心配なすって反対の決議をしていらっしゃるわけでございますから、その心配をほんとうにしないで済むような法務行政にしていただきたいと思うわけでございます。  それから要望いろいろございますが、特に陳情の多かったのは、いまの司法書士の手数料、報酬の関係で、たとえば千五百万円の不動産の取引をしても固定資産税の評価が百万円というふうなことが多い。そうすると司法書士の報酬は三千円になってしまう、そういうふうなことで買い主、売り主、仲介人など大勢来られて、しかも、このごろは登記業務の遅滞で何日もかかってやっと登記ができる、その間お金も書類も預からなければならないというような非常に責任の重い仕事に立っておりながら、万一ミスが起これば損害賠償を引き受けて立たないといけないような状態で、そういうふうに三千円とか何とかという微々たる手数料に甘んじなければならないということで、ぜひとも実情に合った司法書士の労働に、その責任にふさわしいだけの報酬ということも法務御当局に考えていただきたいという要望が強く出ておりましたので、その点についてどのようにお考えでございますか。
  33. 川島一郎

    政府委員川島一郎君) 司法書士の報酬と申しますか、手数料につきましては、これは会則できめるわけでございまして、その会則を定めるについては法務大臣の承認が必要である、こういうたてまえになっております。  従来の手数料改定の経過は、三年ごとに一回程度改定をしておったわけでございまして、ちょうど昨年、その改定を行なったわけでございます。ところが、御承知のように最近物価が非常に急激に高くなってまいりましたので、昨年行なった改定の直後であるけれども、もう一回やってもらいたいという要望がございまして、本年二月一日から改定を認めたわけでございます。そのような経過でございますので、いま直ちにまた再値上げということは若干問題があろうと思いますが、最近の経済情勢がはなはだ不安定でございますので、そういった点も十分見守りながら今後どのようにしていくかということを考えてまいりたいと、このように考えております。
  34. 佐々木静子

    佐々木静子君 それではほかの問題に移りたいと思うわけでございますが、入管のほうにちょっとお伺いしたいのですが、先日来、アジア卓球大会の問題などいろいろございまして、たいへんに入管当局も多事多難という状態であろうと思うのでございますけれども、北海道大学の助手をしておる金喆佑博士でございますね、金さんが、この方は在日朝鮮人で、協定に基づくところの永住権を持っておられ、日本における国立大学の文部教官として活躍しておられる学者でございますけれども、この金博士が昨年、韓国の会社から依頼を受けて韓国へ行かれたところ、陸軍CICにスパイ容疑で逮捕されて、そして一審判決で有期懲役を受けて、いま控訴審で争っている。  そういうことで、一審では、四つの項目について疑いを受けて起訴されたが、三つについては無罪、あと朝鮮民主主義人民共和国に渡航した疑いがあるという事柄だけが有罪で、懲役三年という判決が下されたわけでございますが、この再入国の問題について、金さん自身のほうから申請をしておりましたその一年の期限が、実は明日でいよいよ切れるわけでございますので、もしこの金さんの滞留について再入国の期限が切れてしまうと、かりに向こうで控訴審で争って無罪を勝ち取ることができても、日本に帰ってこれなくなるのではないかということで、たいへんに多くの方々が金さんを救おうということでいま熱烈に運動をしていらっしゃるわけでございます。  金さんはずっと日本で生活をしておられるために、日本語しかわからないし、日本人と同じ生活をしておられて、全く韓国のことばもわからないという状態であり、また現職の文部教官であり、かつ奥さんも子供も北海道におられるという状態で、このままの状態ではたいへんなことになるのではないかと憂えているわけでございますが、この再入国の問題について入管当局としてはどのようにお考えですか。
  35. 影井梅夫

    政府委員(影井梅夫君) 北海道大学の金助手が、現在韓国内におきまして、韓国人としてあのような事件が起こっておるわけでございます。私ども日本側といたしまして、この金助手の韓国内における事件が片づきました後に、再び日本に入る方法が全くないかどうかという問題としてこれをとらえております。  日本に再び入りたいという御希望がありまして、これに対して、日本に再び入る方法がいろいろあるわけでございます。その特定の方法、言いかえますと、現在お持ちになっております再入国許可、この方法によってはいかがかと申しますと、これは現行の出入国管理令のもとにおいては不可能である。しかしながら、そのほかにも方法がある。つまり一般の在韓の韓国人が日本に来たいという、この方法は依然としてあるわけでございます。  それからこの本件、金助手の場合につきましては、ただいま佐々木先生御指摘のとおりに、従来日本におきまして北大の助手としての身分をお持ちでございますし、それから御家族はやはり日本に住んでおいでになるというふうな事情がございますので、そのような手続がとられました場合には、そのような事情を踏まえまして検討する余地は、日本側といたしましてはそういう余地が大きく残っておると申しますか、そういう状況でございます。
  36. 佐々木静子

    佐々木静子君 もちろん、おっしゃるとおり韓国を出国することができるかどうかということが、まずむろん問題でございますけれども、これはここで申してもさしあたり何だと思いますので、いまの日本へ入国する方法があるという御答弁を伺って、たいへん意を強くしておるわけでございますが、ただ、協定永住権者であるところの金さんが、それでは一渡航者として入国することになるのか。そういう意味で、金さんの日本の在留資格についての身分がそのことによって変わってくるのではないか、入国できても。そこら辺の御処置はどのようにお考えでございますか。
  37. 影井梅夫

    政府委員(影井梅夫君) これは私ども日本側の取り扱いといたしましては、先ほど申し上げましたように、在韓の韓国人が新たにと申しますか、あらためて日本にお入りになるという取り扱いになりますので、再び日本に入国されますその当初から日本に永住を認めるということは、これは手続上は非常にむずかしかろうかと思います。したがいまして、手続上は一般の例に従いまして、当初、おそらく半年ないし一年ぐらいの在留期間、それからその実績を踏まえましてさらにその在留期間を長く認める、そして一定の要件を認めました場合に一般永住権を付与する、おそらくこういう手続を経ることになるかと思います。  以上、全く手続的な観点からお答え申し上げました。
  38. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、金さんの来日については心配することはない状態にあるわけでございますね、日本政府側とすると。そして日本に入国してからは、十分にいままでと同じような身分の保障というものも段階的にお考えいただける、そういうことは御確約いただけるわけでございますね。
  39. 影井梅夫

    政府委員(影井梅夫君) 現在私ども承知しておりますいろいろな事実関係その他から判断いたしますと、ただいま先生おっしゃったとおりであろうかと考えております。
  40. 佐々木静子

    佐々木静子君 ぜひこれは在日朝鮮人の方々の非常に根本的な基本的人権にかかわるものでございますので、しかも、この金さんの場合は特に日本の公務員であるというような関係もそれに加えてあるわけでございますから、ひとつ十分な御配慮を特にお願い申し上げておきたいと思います。  それでは、別の問題に移りたいと思いますが、これは矯正局にお伺いいたしますが、沖繩における矯正施設の問題でございます。  これは実は矯正施設のみならず、沖繩における法務関係の施設、これは私どもも昨年法務委員会からも出張をして視察させていただきましたが、それより前にも、復帰前からも実は私も沖繩協定委員をやっておった関係とか、あるいは弁護士会のほうでも沖繩担当委員であった関係などから、復帰前にも何回か法務施設、刑務所も見せていただいたわけでございまして、日本の、従来からの本土と比べて非常に施設的に劣っているのじゃないかということで、一体これで復帰してあとどうなるのであろうかということを少なからず関心を持っておったものでございますので、復帰後も何回も実は見せていただいているわけなんでございますが、その事柄につきまして、まず一番気になるのは沖繩の刑務所の問題でございます。  これは非常に御承知のとおり老朽化しておりまして、しかも町のどまん中にある。隣にりっぱな裁判所が、まあ特にりっぱというのじゃなくて、裁判所としては当然あのぐらいのものを持っていいと思うんですけれども、建っておりまして、そこから見れば一目に庭なり何なりが全部見える。おそらく沖繩の人がつかまって入っていると思いますので、どこそこの何々さんがあそこにおったということになるんじゃないかと、私裁判所の二階の窓から見ても、もう最初からたいへんに気にしておったわけでございますけれども、はたして去年の秋見せていただいたところでも、房舎は非常にいたんでおって雨漏りもしている。しかも水道が部屋につかないために、長いホースで水を、ちょろちょろと出る水をたよりに被収容者が生活をしているという状態を見まして、これはもう一日もほうっておけない問題じゃないかというふうに思ったのでございますが、ことしの予算を見ますと、沖繩の刑務所の建設の問題、あるいは拘置所の建築の問題などが予算に――これは半分ほど削られているんですか、そうでもないんですか、若干計上されているように思うのでございますが、そのあたりいまどういうふうなことになっておるのか、本年度の予定というようなことを伺いたいと思うわけでございます。
  41. 長島敦

    政府委員(長島敦君) 営繕の問題でございますので、営繕課長から。
  42. 水原敏博

    説明員(水原敏博君) ただいま御質問の内容が、営繕課所管の事項に関係することが大部分かと思いますので、私から御説明させていただきます。  御指摘のとおり、沖繩の法務関係所管各庁につきましては、民有買い上げ、県からの借り上げ、それから建物それ自体も非常に老朽化している等々のいろいろな問題が多くございます。そこで昭和四十七年の復帰時点から、私どもといたしましては本土の諸施設との格差是正のために、主として冷房設備をつけさせていただいたり、それから施設運営上支障がないように、そして執務環境が整備されますように、そういうことを目途に、予算の許す限り補修工事を逐次やらせていただいておるところでございます。しかし、いずれにいたしましても、法務省所管の建物というのはたいへん多うございまして、先生御案内でございましょうが、日本の官庁建物の延べ面積のうちの三分の一を法務省が所管をさせていただいております。そういうところで重点的に沖繩をやらせていただいておりますけれども、まだ先生御指摘のとおりの欠陥がたくさんございます。  特に沖繩の刑務所につきましては、大正十五年につくりましたものが主体でございまして、特に老朽化が著しくて、御指摘のとおり雨漏りもございますし、水道の設備も完備いたしておらないところもございます。新営しなければならないのでございますけれども、先ほどもお話のございましたとおり、市の中心街でございまして、あそこでの新営というのはやはり地域社会からの反対もございました。たまたまと申しましょうか、一方那覇の地方検察庁が、あれは県からの借り上げでございまして、沖繩県から最近に至りましてその返還が求められております。この際、いま申しますような沖繩刑務所の老朽の解消と、それから在那覇の法務官署の整備ということを一挙に解決いたしたいと思いまして、刑務所をほかに移しまして、そのあとに在那覇の法務官署を新営させていただく、こういう計画を策定いたしました。財政御当局の御理解をいただきまして、現在その移転候補地を物色中でございまして、まだはっきりとは申し上げられませんけれども、沖繩本島南部の地域におおよその移転候補地のめどをつけさせていただきました。  その予算は、四十八年度にすでに財政御当局の御理解をいただきまして、不動産購入費といたしまして七億二千万円余りのものをいただいております。それで不動産購入をいたしました。四十九年度は、現在御審議いただいております予算案の中に、その沖繩刑務所移転候補地の地質調査費も計上されておりますし、それから拘置支所の新営予算も計上されておりますので、その予算案がお認めいただきますならば、一つ大きな前進へ向かって移るのではなかろうか、このように考えておるのが現状でございます。
  43. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまの御答弁でずいぶん着々とお進めのように伺ったのでございますが、ともかく那覇の刑務所の実情というものは、これは一日もほうっておけない。特にいま冷房施設がどうのこうのというお話がありましたが、現実この目で見てきた刑務所では、非常に老朽化した日の当たらない、全く昔の牢獄のような施設の中で、しかも、あの暑いところで水も出ないというようなことで、全く人権以前の問題ではないか。しかも老朽の度合いがひどいから、これはもう補修するといっても建てたほうがまだましなくらいの、大々的なやり直しをしないとどうにもならない状態だと思いますので、これは一日も早く刑務所を新しくお建てにならなければと思ったわけなんです。  それと、現実にいま、私普通の刑務所を視察させていただくと、看守の方々などがみな刑務所の中にお住いになっておられる。中というか周辺に。ところが那覇の場合は、職員はみんなほとんどそれぞれの自宅から通っておるというようなお話を伺って、これは急な火災とか、何か暴動でも起こったようなときにどうするのであろうか。火事とか地震などのときに、これでは中に収容されている者は失わない命までも失わなければならないのではないかと、たいへんに心配したわけなんですが、そのあたりはどうなっているんですか。
  44. 水原敏博

    説明員(水原敏博君) 先生の御質問は、那覇の鑑別所の問題かと思いますが、沖繩刑務所につきましては、その周辺に宿舎地帯がございまして、そこで職員は居住いたしておりますから、緊急異常事態の際には直ちに出動できる待機体制がとられております。  御指摘の件は、おそらく那覇の少年鑑別所かと思います。これはお話のとおりでございまして、現在、庁舎周辺に宿舎が二月もございません。そこで、これは異常事態が発生したときに手だてが何も講ぜられないということになりますとたいへん問題でございます。宿直の職員だけではとうていまかない切れない問題が起きたときのことを考えまして、四十九年度の宿舎設置要求で、十三戸の宿舎を那覇の少年鑑別所の宿舎戸数といたしまして要求させていただきましたので、財政御当局にもその実情をよくお願いいたしまして、ぜひともこれは実現させていただきたい、このように考えております。
  45. 佐々木静子

    佐々木静子君 それからいま、刑務所が動きさえすればそのあとへ検察庁をお建てになるというふうな、まあ御答弁になかったけれども、そのように私かねて伺っているのですが、それはいつごろになるんですか。大体の予定というものを聞かせていただきたい。
  46. 水原敏博

    説明員(水原敏博君) これは財政御当局とのお話し合いをもう少し詰めさせていただかなければ、まだ予算規模がどの程度になるか、よくわかりませんが、四十九年度で土地が購入できまして、そして、そこの地質調査が完了いたしますならば、五十年度以降におきまして本体工事と申しましょうか、庁舎、舎房の新営予算を計上させていただくことになるわけでございます。沖繩の現状につきましては大蔵御当局も非常に御理解をいただいておりますので、その点につきまして、できるだけ短期間の間に刑務所の移転が完了できますような予算をお認めいただけますように努力をさせていただきたいと思います。  この年限についてどれくらいということは、ちょっといまの段階で御説明申し上げかねるのが残念でございますが、できるだけ早く御当局の御理解もいただき、実現に努力いたしたいと思っております。  なお、検察庁と申しましたけれども、一応現在予定いたしております入居庁は、那覇地方検察庁のほかに那覇地方法務局、それから那覇保護観察所、それと沖繩地方公安調査局を計画予定させていただいております。
  47. 佐々木静子

    佐々木静子君 検察庁のほうも、復帰前、一体これが検察庁になったらどうなるのかとたいへんに思っておったのですが、伺うたびに少しずつはよくはなっておりますが、しかし、あそこで検察庁というのは、いかにも仕事がしにくいのじゃないか、検察業務を行なうについてあまりにもひどいのじゃないかという感じを受けますのと、それからいまその新庁舎に法務局もお入りになるということで、特に私、法務局の訟務検事ですね、私も法務局を見せていただいて、ここに訟務検事が三人おりますということで顔を突っ込んでみたら、つい立てのロッカーの陰から三人出てこられたのには実は私びっくりしたので、何も検事だから特別いいところへいかなくちゃならないと私ちっとも申しませんけれども、幾ら何でもやはりあれではあまりにもお粗末で、十分な仕事ができないのじゃないかというふうに思いましたので、ぜひともその新庁舎を、それにふさわしいだけの仕事ができるだけの設備の実現ということをお願いしたいと思ったわけです。  それから特に、検察官の宿舎がない、しかも、かりにどこか仮住まいを見つけても電話がなかなか引けないという状態で、去年の秋には検事さん方、電話がないので仕事ができずに弱っておるというような話だったのですが、私どもの生活から比べると、そんなテンポでどうなるのだろうかと非常に心配もしたわけですが、そうしたことはいまどうなっておりますか。解消しておりますか。
  48. 水原敏博

    説明員(水原敏博君) 宿舎につきましては、四十九年度の宿舎設置要求戸数の中で、那覇の検察庁の本庁に五戸と、それからコザの支部に五戸要求させていただいております。それがお認めいただけますならば、ある程度解消するのではなかろうかと思っておりますが、電話につきましては、これは復帰直後から電話局に設置方をお願いをいたしておりますところで、いずれにいたしましても回線数がたいへん少ないのが現状でございます。優先的にお願いいたしておるのでございますけれども、いまだにまだそれがついておらないところがきわめて残念でございますので、現地におきましてもその不便解消のために努力をしておるやに伺っております。
  49. 佐々木静子

    佐々木静子君 もう時間がございませんので、拘置所の建設の問題に関して、弁護士面会所というのが非常に劣悪であったと思うのです。そして面会を待っている弁護士が、屋内で待っているのじゃなくて、戸外で時間があくのをしょんぼりと荷物を持って待っているんですね。ああいうふうなことでいままでよくきたものだと思ったんですが、これではなかなか面会にもうっかりいけないというのが実情になってくる。そうすると、ひいては十分な訴訟活動ができず、人権問題も起こってくるのじゃないかと思いますので、拘置所の建設についても、そうした点も十分御留意いただきたいということを特に要望しまして、大臣、最後でございますので、沖繩の法務省関係の諸施設について、どのように御尽力いただけるかということを最後に伺っておきたいと思います。
  50. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) ただいま営繕課長から申し上げましたように、実は着々努力はいたしておる次第でございますが、なかなか刑務所の移転先が見つかりませんで、ようやくと最近めどがつきまして具体化してまいりましたので、やれやれと思っておるような次第でございますが、刑務所の移転をまず基礎にいたしまして、そのあと地を利用して法務関係の諸官庁の合同庁舎をつくって、内地と何ら遜色のないような整備を遂げたい、かように思っておる次第で、今後とも努力を続けたいと思います。
  51. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 私は最近の少年犯罪の傾向についてお伺いしたいと思うのです。   〔主査退席、副主査着席〕  特に、最近の少年犯罪の傾向につきましては、大臣もすでに新聞等で相当報道されておりますので御存じだと思いますけれども、まず初めに、法務総合研究所というところから「犯罪白書」というのが出ておりますが、この「犯罪白書」によりますと、昭和四十八年版でございますが、この中に、まず一番初めに「少年犯罪は、量的にみると、前年に続いて、減少傾向にある。業務上(重)過失致死傷等を除いた少年の主要刑法犯検挙人員は、前年より五千三百四人の減少、同人口比は、前年より〇・三の減少となっている。」、二番目に「前年との比較において増加が目立つ犯罪は、刑法犯においては、横領及び殺人であり、特別法犯においては、毒物及び劇物取締法違反である。」と。まあいろいろありますが、こういうふうな「犯罪白書」から見ましても、従来から四十七年までの実態ですね、四十七年までは少なくとも減少傾向にあったこの犯罪が、最近非常にふえておるわけです。しかし、そういうふうな観点から見まして、この増加傾向について大臣としてどういうようにお考えか。この点についてお伺いしたい。
  52. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 御指摘のとおり、昭和四十年以降を見ますと、少年犯罪は大体漸減をしておるのでありますが、最近またふえておるような状況にありまして、われわれもたいへん憂慮しておるところでございます。ただ、近ごろの特色は、同じ少年のうちでも年長少年はずっと減っておりますが、ふえておるのは年少少年のほうでございまして、どうも年少少年のその犯罪傾向を見ますると、興味本位の犯罪とか、あるいは遊び型の犯罪とか、まあ最近の一連の爆発事件のようなものも、何か学校でいろんな実験をすると、その実験をみずから達成をしようというような少年的な意欲から起こってくる、そういうような犯罪が多いように感ぜられるのでございます。これは専門の刑事局からひとつなお詳しく御説明させますが、われわれとしましても特にゆゆしい問題と思いまして、憂慮いたしておるような次第でございます。
  53. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いま大臣おっしゃいましたように、確かに少年犯罪の中でも年少少年の犯罪の傾向が増加している。非常に私は重要なことであろうと思います。  そこで、きょうは特に法務省並びに警察庁、そのほか文部省等にもおいでいただいておりますので、それぞれ関係ございますので、関連をいたしまして質問を順次してまいりたいと思います。  そこで、いま大臣からもちょっとお話がございましたように、最近特に爆発物を使った犯罪というものが非常にふえているわけでございますが、そういうふうな犯罪の傾向及びその原因、その背景等について、まず警察庁のほうから現状、実情を御説明願いたいと思います。
  54. 星野鉄次郎

    説明員星野鉄次郎君) 本年に入りまして、少年による特異な犯罪といたしまして、二月十一日から十七日の間に栃木県宇都宮市及び真岡市におきまして、高校生六名によるダイナマイト使用による爆破事件が発生し、警察官一人に重傷を負わせた。さらに三月七日から同二十日の間、北九州市におきまして中学二年生三名によります同種の事件が発生いたしました。このほか、このあと大阪市の扇町公園において高校生が爆発物を爆発させた。さらに広島県福山市におきまして、高校生及び中学生が爆発物を爆発させた等が相次いで起こっておるわけでございます。  これらの少年によります爆破事件の内容等につきまして、私どもといたしまして、昭和四十七年以降の少年による爆破事件を起こしました少年についていろいろ検討してみたわけでございますが、この動機といたしましては、一部に仕返し等のものもございますけれども、また栃木県の場合はある程度過激派の思想に影響されたものと思われますが、小倉市の中学生の例に見られますように、世間を騒がせてやろうというようなもの、あるいは爆発物に異常な興味を持ちまして、それを動機に爆発をさせたというようなものが多いわけでございます。  また、爆発物の材料と入手方法について見てみますと、栃木県の事件はダイナマイト、これは採石場から窃取したものでございますが、大部分は爆竹、花火等を購入いたしまして、それを材料として爆発物を製造いたしております。製造あるいは保管の場所について見てみますと、ほとんどの場合が自宅の勉強部屋、あるいは家人がおりません留守等に自宅の玄関あるいは物置き小屋等で製造し、また製造した爆発物も保管しておるといった状況が見られます。  家庭環境につきましては、概括的に申し上げますと、おおむねいずれの場合も実父母がおられまして、生活程度もおおむね中流以上でございます。また両親の監護態度につきましては、いろいろ見方もございましょうが、おおむね過保護または放任の傾向が強いように考えられます。  以上のような状況でございますので、警察といたしましては、もちろん警察本来の早期検挙、あるいは火薬類の取り締まりの強化、さらには一般的な予防行為、警戒等はもちろんでございますが、少年によるこの種の事案の防止というものにつきましては、家庭における保護者の注意を喚起し、また学校における指導を強化していただきたいと考えまして、去る三月二十六日、当庁の保安部長から文部省の初中局長にこれらの点につきましてお願いを申し上げるとともに、私どもといたしましても、府県段階におきまして府県警察から教育委員会あるいは知事部局等と連絡をとり、また家庭に対しましても、この種の事案の重要性というものを認識していただき、保護者の注意を喚起していただくような機会をとらえた広報活動を行ない、また少年警察活動を通じましてこの種の問題の予防という観点から、さまざまな活動を行なうように指示をいたしているところでございます。
  55. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いま概略、経過の説明がございましたが、これは非常に私は重要な問題であると思います。特に犯罪の傾向が、従来と違って実父母があり、かつ中流の家庭である。そういうふうな観点から考えてみますと、これは非常に私たち慎重に、ここで本気になって青少年対策というものに取り組んでいかなければいけない、こういうぐあいに思います。  そこで、私はこれから文部省並びに総理府のほうにお伺いしたいと思うんですが、特に学校教育の場合、これは青少年の非行という問題についてはやっぱり第一次的には家庭ですね。家庭、それから学校、それから社会、この三者にそれぞれ責任が私はあると思いますけれども、その中でも家庭の責任というのはこれは第一次的には重大であると思います。しかし、学校教育もまた大きな責任を持たなければならないと思うんですが、文部省当局としてはこの点についてどう考えていらっしゃるか、ここら辺のところを一ぺんお伺いしておきたいと思います。
  56. 別府哲

    説明員(別府哲君) お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘になりましたように、非行の原因と申しますのは、個人に原因があるもの、その個人を取り巻く環境に要因があるものと、大きく分けられると思います。その環境に要因があるという場合に、家庭、学校、あるいはそれを取り巻く地域社会なりあるいはまた文化環境といったようなものが、いろいろ複雑にからみ合っているということがいえると思います。その中で、学校が担当しなければならない役割りというもの、これから考えてみますと、最近の非行の原因といたしましては、児童生徒が学習活動と申しましょうか、あるいは学業生活に不適応な状態になって、その結果として、その不満を外にはけ口を求めるというような形での非行というものが相当多いのではなかろうか。そういう意味において、学校におきましても一人一人の児童生徒に適応した指導を行なっていくということには十分意を用いていかなければならない。また教育内容についても、最近の社会情勢の変化というものに対応した形で常に改善をはかっていかなければならないというふうな形で、現在いろいろ考えているところでございます。
  57. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 学校教育ですね、やっぱりこれは原因は個人と環境と二つに分かれる。確かに私は個人と環境と二つに分けて考えることはできると思いますけれども、その学校における不満というのがありますね。特に学業の中での不満、これは現在の、特に中学校あるいは高校の教育は進学一辺倒というような面があるのじゃないか。要するに進学一辺倒で、進学する生徒と進学しないほうの生徒との差別、断絶というものが、やっぱりあらわれてきているんじゃないか、そういうようなところから一つの人間疎外というものが出てくるんじゃないか、そういうところにも、この大きな少年非行を生む原因がある。こういうぐあいに識者の中には指摘をしている人もいるわけですね、現実に。そういう点から考えてみましても、特にこの小学校、中学校、従来は小学校なんということはそうなかったんですけれども、最近は、この犯罪から考えてみまして、小学校、中学校ですね、特に高校まで含めましての教育の基本的な考え方というものについて、やはり遡及して検討する必要があるんじゃないかと、こういうぐあいに私は考えるんですけれども、ここら辺のところはどうですか。
  58. 別府哲

    説明員(別府哲君) 御指摘のとおりでございまして、現在、文部省でも教育課程審議会を開きまして、小・中・高等学校の教育を一貫して検討をするという作業を進めているところでございます。
  59. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 こういうような問題は、一貫して検討していらっしゃるということでございますが、これは早急にやらないと間に合わないわけですよね。特に青少年対策というのは、これは総理府のほうに青少年対策本部というのができたわけですけれども、あの当時、ものすごく青少年問題が大きく盛り上がってあれができたわけです。できちゃったあとは、こういうふうな一つの白書みたいなのを一冊出して、それで終わりというような感じになっているわけですね。そういう点から考えてみましても、文部省としても、もう少しこれは本気になって取り組んでもらいたいと私は思うんです。  そこできょうは、先ほど警察庁のほうから、警察のほうだけではどうしても手に負えないと、結局はですね。だから文部省に対して警察庁のほうから要請が出されています。まず警察庁のほうに、この要請の内容についてちょっと一ぺんお伺いしておきたいと思います。
  60. 星野鉄次郎

    説明員星野鉄次郎君) 要請の内容は四点ございまして、第一点は、この種事案の未然防止のために、学童、生徒に対して爆発物等を安易に取り扱うことの危険性を周知させるとともに、学校内外における生徒指導を強化していただきたいと、これが第一点でございます。第二点は、学童、生徒の保護者に対しまして、この種の問題に注意を喚起していただきたいと、これが第二点でございます。第三点は、警察との連絡を密にしていただきたいという点でございます。第四点は、学校における教材用の毒物及び劇物の管理をさらに徹底していただきたい。以上四点でございます。
  61. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 以上四点の要請を受けた文部省は、実際問題、これは具体的にどういうふうな処置をとったのかですね。警察庁としては文部省に対して要請するとともに、それぞれの都道府県の県警本部から、それぞれの各地の教育委員会なりあるいは校長会等を通じて、それぞれ要請はしていると私は聞いておりますのですが、実際問題、こういうふうな要請を受けて、文部省自身は――この要請書の中には具体的に九件の事件も明記されております。こういう点、考えてみますと、これは非常に、こういうふうな問題というのは敏速でなければ、これはあとになっては間に合わないわけでありますが、そういう点も含めまして、文部省としては具体的にこれはどういうふうに処置をしたのか、そこのところはどうですか。
  62. 別府哲

    説明員(別府哲君) ただいま警察庁のほうから御説明がございましたような要請書を、三月の二十六日に文部省にいただいたわけでございますが、文部省といたしましては、さっそく、翌々日三月二十八日付をもちまして、初等中等教育局長名をもちまして、各都道府県の教育委員会あて警察庁からお申し入れの事項を入れて適切な指導を行なうよう、まず第一に通知を発したわけでございます。  なお、年度当初でございますので、各種の生徒指導の担当その他の会議がこれから開かれるわけでございますので、そういう会議の席上におきましても、今度は具体的に指導を続けてまいる予定でございます。
  63. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この問題は、ただ単に通達を出したとか、それだけでは済まない問題が私はあると思うんですね。基本的に、これは従来の犯罪と違って、相当私は慎重に取り組んでもらいたいと思うんです。それで、ただ単に警察庁から来た通達をそのまま各都道府県に流したり、やるだけでは、私は済まないと思うんですが、どうですか。
  64. 別府哲

    説明員(別府哲君) おっしゃるとおりでございます。そういう意味におきましては、従来から、爆発物の問題等につきましては、機会をとらえて指導をしておるところであり、また、それに対する必要な措置というふうなものもとってきたわけでございますが、たとえば、学校には、小中学校を通じて、理科の実験に使うためにいろいろ各種の薬品がございます。それらの保管が従来適切でなくて、それらのものを使って児童、生徒が爆発物を製造するといったような事例が、過去においてあったわけでございますので、学校におけるこういった薬品の保管を適切にするために、薬品庫について、国が補助金を出してこれを整備するという措置を、中学校におきましては昭和四十七年度から、高等学校におきましては昭和四十八年度からとってまいりましたし、それらについての指導を、各教科を通じ、また生徒指導等の会議を通じて徹底をはかっているというところでございます。
  65. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 機会をとらえてやってきて、従来から減っていた犯罪が、機会をとらえてやってきたのにことしはふえているわけですよね。ですから、だんだん減ってきて、それで四十七年、四十八年に現実に薬品庫なんかの予算もつけた。ところが、実際には従来なかったものについて、機会をとらえていろいろやってきて、そして、そういうふうな点についても注意をしてやってきた、にもかかわらず現実に犯罪はふえている。ただ単に通達を出したり、ただ単に薬品庫をつくったというだけで済む問題じゃ私はないと思うんですよ。ですから、そこら辺のところにも、この犯罪というものを徹底的に分析をして、本気になってこれは取り組んでいただきたい、こう思うんですが、どうですか。
  66. 別府哲

    説明員(別府哲君) おっしゃるように、最近たいへんふえておるということは、まことに遺憾なことでございます。そこで、そういった事情は、最近のまあ社会情勢等に児童、生徒が刺激をされているという点も非常に多いのではなかろうかと思うわけでございまして、学校における指導だけで十分な効果を発揮するわけにはいかない。やはり家庭との連絡、社会一般における、こういったものに対する御配慮といったようなものが相まって効果を発揮するわけでございますので、家庭、学校、社会における連絡を、十分にこれからとっていくということについても、さらに一そう努力をしてまいりたいと考えておるところでございます。
  67. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、特に今度はこの問題について、総理府がございます。総理府のほうには、青少年対策本部というのが前々から看板をかけてあるわけでありますが、今回のこういうふうな爆弾の事件をどういうふうに考えていらっしゃるのか、そしてまた、この青少年の犯罪についてどういうふうに対策を講じていこうとしていらっしゃるのか、また、新たに何らかのくふうがあるのかですね、そこら辺のところについてはどうお考えか、総理府の青少年対策本部のほうにちょっとお伺いしておきたいと思います。
  68. 吉里邦夫

    政府委員(吉里邦夫君) 私、総理府の青少年対策本部の次長でございますが、私のほうは、青少年の健全育成あるいはいわゆる少年非行の防止等につきまして、関係各省の総合調整あるいは穴があかないように補完の仕事もやるという立場でございますが、その立場でお答えをいたします。  そのような立場から考えますと、現在までの情勢を見てみますと、犯罪の傾向が、ことしあたり年齢層が下がってきておるということにつきましては、非常な危惧の念と、心配と、と同時に責任を実は感じております。そのような意味で、われわれ今度の連発しました爆破事件を分析をいたしておりますが、このような原因につきましては、一がいにこれだと言うわけにはまいりませんけれども、われわれの一応の分析といたしましては、その直接の原因となっております、いたずら、あるいは個人に対する復讐であるとか、あるいは世間への憎悪等々が原因となっていることも間違いないだろうと思いますが、その背景に、われわれが、従来青年の意識の調査をやってまいりまして一応出ております、たとえば最近の青年に共通して言われております孤独感であるとか、あるいは疎外感であるとか不安感に基づく意識、その中で、模倣性であるとか、あるいは付和雷同というような、心配な、現在の青少年のある意味での弱い面と結びついたことではないかと思っておりまして、したがいまして、今度のような事件は、警察御当局の早期検挙、あるいは発見、その後の保護あるいは補導というものも大事でございます。しかし、根本にさかのぼって、われわれとしましては青少年行政立場でも取り組むべきだと存じまして、現在実はこの事件が起こりまして、常々考えておったことでございますけれども、私どもとしまして、すでに四日付をもちまして、私のほうの副本部長総――務長官のお許しも得まして、私の名前で、各県の青少年対策をやっております当局に対しまして、警察、学校あるいは所管の教育委員会等との連絡を緊密にしまして、早期の発見とか、補導とか、あるいは根本にさかのぼった育成活動を展開してくれということを指示をいたしておりますし、具体的に言いますと、私のほうで補助金を出しまして、学校、警察あるいは社会、家庭一体となった、いわゆる補導組織としまして、少年補導センターというのを設置を奨励いたしておりますが、この補導センター等の活動を活発に行なって、根本的な問題と同時に、具体的な個々のケースを未然に防ぐという指導をやっていただくということを指示をいたしておりますし、近々各県の会議が別な形で持たれることも予想されますので、そこでまた具体的な指示もいたしたいと存じております。
  69. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いま概略説明がございましたけれども、やっぱり総理府にあります青少年対策本部というのは、私は、総理大臣が本部長でございますし、現在の政府の、いま次長は総合調整ということをおっしゃいましたけれども、私は総合調整というのも確かに大事だろうと思うんです。しかし、青少年対策本部自体がきちっとした具体的な、いわゆる青少年対策の具体的政策というものが、その方針というものが必要じゃないかと私思うんですが、そういうふうな観点に立って、本格的にこの青少年対策というものに取り組んでいかなきゃいけない、私はそう思うんです。そうでないと、ただ単に各県のそういう担当者が集まって連絡会議を開く、みんなの意見を聞いてコミュニケーションをよくしていくというのは大事なことでありますね、しかし、政府自体が、青少年に対してこういうふうな方針でいく、あるいはこういうふうに指導方針を持っていく、やっぱりちゃんとした一つの方針なりがきまっていないと、これは各県としても非常にやりにくいと私は思うんです。そこら辺のところはどうですか。
  70. 吉里邦夫

    政府委員(吉里邦夫君) 御説のとおりでございまして、まあ総合調整ということばを使いましたけれども、その前提には、国として、あるいは政府としての一本の筋の通った、いわゆる基本的な施策の立案ということが私ども一つの責任にもなっております。その見地から、実は青少年問題審議会におきまして、四十六年の七月ごろ、具体的な、関係各省行政を横断的に見まして、総合的な立場に立った今後とるべき青少年行政の基本につきまして答申も得ておりますので、それをもとにしまして、現在四十八年、四十九年度予算――将来に向かって、長期的な展望に立った各省行政で、われわれの基本的な施策を生かす施策を講ずるように、本部事務局としても努力をいたしておりますので、その点を御説明申し上げたいと存じますが、それだけでなくて、やはり具体的な措置につきましても、関係行政庁がそれぞれおやりになると同時に、それを府県立場で、何かやはりわれわれと同じ立場で総合化する努力が必要でございますから、先ほど申し上げたような、私どもとほぼ同じような組織を各県が持っておりますので、そこへの指導をしていくという御説明を申し上げたわけでございます。
  71. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうしますと、長期的な展望というのは、それはわかります、審議会の答申等もあるでしょう。しかしながら、今回のように、これは従来の答申の中になかったような事件じゃないかと私は思うのです、傾向自体についても。そうしますと、たとえば短期的な、突発的なこういうふうな問題については、青少年対策本部としてはどういうふうに取り組んでいくんですか。
  72. 吉里邦夫

    政府委員(吉里邦夫君) 先ほど申し上げましたように、ごく最近の具体的な事件につきましては、さっそく警察庁、文部省等に来ていただきまして、その現状分析及びそれぞれの措置等につきまして協議をいたしまして、青少年問題審議会にも私のほうが御説明をし、あるいは当局からも御説明をいたしまして、先ほど申し上げたような姿勢をとったということでございます。
  73. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 先ほど、たとえば各都道府県にあります青少年補導センターの充実という話がございましたが、こういうふうな青少年補導センターとかあるいは児童相談所というのがありますね、こういうふうな、何といいますか、青少年の非行化を防止するあるいは補導するという面で必要な役所というのは、それぞれ各都道府県にあるんでしょうけれども、こういうふうな役所は、役所の役人の皆さん方はあるというのはよう知っているわけですね。ところが、実際、一般家庭のおとうさんやおかあさんの立場に立ってみると、そういうのがあるということ自体を知らない。しかも、自分の子供がたとえば非行をしたというような場合に、どこへ相談したらいいかわからない、現実にあるわけですね。そういうような場合、こういうふうなものがあるんですよということについてのPRとかいうのがありますね。こういうものは、一体現実にはどういうぐあいに行なわれているんですか。
  74. 吉里邦夫

    政府委員(吉里邦夫君) 先ほど申し上げました少年補導センターは、現在の行政の実態からいいまして、警察行政あるいは教育行政がございますけれども、先ほど申し上げましたように、少年の犯罪あるいは虞犯というもの自体を分析しますと、やはり根本は青少年の育成あるいは人格形成における段階におけるいろんな影響を与える要因の問題がございますので、たとえば、いわゆる官民合同といいますか、役所、警察、学校、それから家庭の保護者が一緒になって、そういう活動をしようじゃないかということで、少年補導センターをわれわれのほうが補助金を出して動かしておりますが、まだ全国で約四百ぐらいでございまして、御指摘のように、その活動自体も私ども満足とは言えません。また、その存在あるいは活動についての周知も、まだまだと存じておりまして、その方法としまして、われわれは実は青少年の育成国民会議というのを現実に――実は、会長は青少年問題審議会の会長であります茅先生でございますが、各県に県民会議というのもございますから、そのルートを通じての、いわゆる国民運動の一つとしての普及あるいはPRということも徹底してやらなくちゃいかぬだろうと思って努力をしているところでございます。
  75. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 こういうぐあいに考えてみますと、大臣、これは非常に青少年問題というのは重大であります。しかも私は、これはただ単に一省庁、一官庁だけの問題ではなくて、特に青少年の問題というのはたくさんの分野にまたがってまいります。  そこで私は、きょうはさらにもう一点違う観点からお伺いしたいのでありますが、特にこの青少年の矯正の問題について私はお伺いしたい。特に少年の施設がございますね、この施設の現状については現在どういうふうになっているのか、これは局長からでけっこうですから。
  76. 長島敦

    政府委員(長島敦君) 非行少年を扱います法務省関係の施設といたしましては、鑑別所と少年院がございますことは御承知のとおりでございます。鑑別所のほうにおきましては、非行化しました少年のうち比較的重大な非行を犯しました者につきまして、家庭裁判所の依頼を受けまして、その資質の鑑別をいたしております。この鑑別結果が、家庭裁制所でこの少年はどのような保護処分にするかということの一つの参考になっておりますが、同時にこの子供たちが少年院へ送られました場合に、少年院でどういう処遇をするかということの参考にもなっておるわけでございます。なお、少年鑑別所では民間との接触もいま広めておりまして、民間の御依頼がありますと、非行少年でない子供たちにつきましての鑑別の依頼に応じましたり、いろんな非行の相談に応ずるということもやっております。少年院におきましては、家庭裁判所から送られてまいりました非行少年の処遇をいたすわけでございますが、先生御指摘のように、最近新しく入ってまいります少年に新しい傾向が生まれてまいっております。そういうことでございましたので、昨年の十月に、全国の少年院長が集まりました会議が中央でございましたけれども、その際に、私どものほうから、少年院に収容されている少年に新しい従来見られなかった型が出てきたかどうか、それについてどういうような対策をとっているのか、また今後とろうとするのかということを議題として協議をしたのでございますが、御指摘のように、最近少年院に入ってまいります少年の中には、規範意識と申しますか、自分がやったことがそれほど悪いことという意識を持っていない、それから自主性が欠けると申しますか、自分は何をどうすればいいかということがわからない、非常に弱いと申しますか、依存性が強いと申しますか、自主性がない少年が非常にふえてきております。で、このことが少年院の処遇にとりまして、たいへんむずかしくなってきております。従来ですと、こちらがいろいろな働きかけをいたしますと、それに対して向こうが反応してくるわけでございますけれども、最近は非常に反応が鈍くなっております。そこで、そういう者についての新しいいま処遇をいろいろ各地で始めておるというのが現状でございます。
  77. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これから私が言うことが、もし違っているところがありましたら、あとで訂正してもらってけっこうです。実は、現職の鑑別所の所長さんにちょっとお伺いしましたら、まず少年院に入って――少年院あるいは鑑別所でもけっこうですが――に入っておる人たちを、ほんとうに私は社会にちゃんと更生をして出すということについて非常に悩むというのですね。どういう点に悩むかというと、具体的に幾つか話がございました。たとえば、そういうところには健康管理規程というのがある。その健康管理規程の中には、まず、おふろの問題がある。おふろは全国的に一週間に二回というのが大体常識になっている。そうしますと、非常におふろへ入る回数が少ないというわけですね。多いところも中にはあるらしいですけれども全国的にはこうらしいです。  それから二番目に、ちり紙の使用量、こんなのまできまっているのだそうです。一日に七枚となっている。大臣、これ、聞いていますか、一日に七枚。下痢している場合はもう少しふやしてもいいというただし書きがあるらしいですがね。これはどういうことか、どういう使い方をするのか私わかりませんが、非常に困るらしいですね。そういうこまかいところまできめられている。  しかも散髪が、一人一回の散髪のあれとして国から出るのが百二十円。したがって、大臣は幾らで散髪していらっしゃるか知りませんが、とにかくこの百二十円という金額は非常に少ない。これはみんな自分たちでやっているからいいじゃないか――現実には自分たちで、施設の職員人たちが実際に散髪している、あるいは外部の人たちの奉仕で無料でやっている。これは現実にそういうことらしいんですが、なぜそういうことをしているかと聞くと、要するに、散髪代が百二十円でとても安くてできやしないから、要するに外部の奉仕にたよったり、自分たちでやっているのだ、そういうことらしいですね。  しかも食費が安過ぎる。その中でも、一日当たりお米とか麦の主食を除いたいわゆるおかず代ですね、これが一日大体百円足らず。百円足らずというのだから、幾らか、もう少し詰めて聞けばよかったですが、百円足らずという。こんなのでは、とてもこれは食べていけない。しかもこんなのがものすごくよけいあるわけです。  たとえば、五番目に衣類が十分でない。たとえば布地を全部縫製をしろということでみんなもらうのだそうです。ところが少年の施設のほうは、自分たちで縫製できる人が少ない、そのために大きな刑務所やそういうところへ頼むのだそうです。ところが、実際自分たちのやつをつくるのはちゃんとつくっているけれども、なかなかいいのができてこない、合わないという問題があるわけですね。  それから、おふとんにもまた問題がある。綿が十年来、まあそこだけかもわかりませんが、少なくとも十年来かえてない。しかも受刑者独特のしま模様の生地がいまでも使われている。そのために、受刑者というのですか、この施設へ入っている皆さんが、やっぱりそれでは劣等感を持つ。非常にこういう点にも問題がある。しかも、まくらを仕立てる予算なんというのはとてもじゃないが考えられない、こう言うのです。  さらに、まだこんなものすごくよけいあるのです。たとえば旅費、弁当代の問題もある。旅費というのは、たとえば、その中でも特に問題なのは、十キロ未満のところへ行くときには急行券が出されていない。ところがこういうところへ入っている人たちは、鈍行でゆられてゆっくり行くと、どうもたくさんの人に顔を見られるので、一緒について行く職員が全部自腹を切って、そして急行券を出しているのだそうです。こういうふうな一つ一つの事態が問題があるわけです。  こういうふうなことで、ほんとうに、いわゆるこの鑑別所なりあるいは少年院に入っている人たちが、実際にこれは、いま、民間との接触を深めているとか、いろいろなことをおっしゃいましたけれども、民間との接触を深めれば深めるほど、こういうことはかえって重荷になるんじゃないか。私はこの実情が、どこがどういうぐあいに違うのかわかりませんが、これは合っていますか、もう少し正確に一ぺん言うてくれませんか、これ。もしこういうような実情にあるとすれば、私はやっぱり矯正というよりも、かえって、何らかそういう点で問題になるんじゃないかと非常に心配な点が多いわけですがね。
  78. 長島敦

    政府委員(長島敦君) いろいろな点、御指摘をいただいたわけでございますけれども、詳細についてはただいま判明いたさない点もございますが、入浴につきましては、これ、各地方の事情によりまして違っておると思います。多いところはもっとやっておると思いますし、それから、そのほかに、からだをふくとかいろいろなことは、もちろん毎回やっておるわけでございます。  ちり紙につきましては、一日に十枚ということで渡しておるようでございます。  食費につきましては、御指摘のように非常に低いわけでございますが、これは自己菜園と申しますか、少年院が農園等を持っておりまして、そこから出る野菜を使うとかいうようなことで、自給をある程度やっておるわけでございます。  それから衣類につきましては、これは一括いたしまして、加古川の刑務所のほうでこういった衣類を全部縫製をいたしました上で渡しております。これは全国的にそういう扱いになっておるので、御指摘のように多少縫製のしかたがまずいというような点があるいはあるかと存じます。  ふとんにつきましては、御指摘のようにしま模様にはなっておりますが、特に受刑者と同じようなものとか、あるいはそういうことで差別するためにしま模様にしているというわけではございません。これにつきましても、順次新しいものと取りかえておりますので、十年来というのは、まことに意外だと私はいま聞いたわけでございます。  その他、旅費の点は、公務員全般が国家公務員の旅費法がございますので、その旅費法の規定によりまして、百キロメートル以上の旅行でないと急行券が出ないという公務員全般の扱いでございまして、そのために急行券が出ないということになっておるということでございます。いま御指摘がございましたように、なおいろいろな点で生活の基本の処遇が十分でない点は、十分に私ども認識しておりまして、毎年予算要求に努力しております。ことに今年度予算におきましては、物価高の現状をかまえておりますので、特にこの点は努力いたしたわけでございますが、たとえば少年鑑別所につきますと、少年一人当たりの予算につきまして、前年度に比べますと一四%でございますか、アップになっておるわけでございます。そういうことで、今後も十分にこの点は私ども努力をしてまいりたいと存じております。
  79. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうしますと、大体間違いないですね、私が言ったとおりね。たとえばおふろの問題についたって、その現職の所長さんからけさ聞いたところですからね、けさ。ですからそんな違うわけないんだ、前から。ですから現実の問題としていろいろ事情はありましょうけれども、これはこういう実情になっているということは間違いないと思うんです。ちり紙が七枚から十枚になったって大した違いはありませんがね、これ。いつ十枚になったのか私知りませんが、現実に七枚と言っているわけですよ。きのう変わったんだったらちょっと話は別ですがね、そう大して変わりありませんね。食費の問題についたってそうです。それから縫製の問題についたってそう変わりませんし、それからおふとんの問題については、しま模様の柄というのは昔よりは確かに柄は大きくなったとは言っておりました。しかし、私はね、これは大臣、こういうようなのは非常に――ことしは予算が一四%アップになったそうでございますが、こういうような問題は、やっぱりできるだけ是正をして、そしてそういう人たちがほんとうに外部と相当違うというんじゃなくて、柄の問題一つにしたって、やっぱりこういう点も十分改めて、そういうふうな何ら変な感じを抱かせないように私はすべきだと思うんですよ。また旅費の問題についても、これは大蔵省が相当押えておりますからたいへんでしょうけれども、たとえば、こういうふうな鑑別所のこういう人たちを移動させる場合、こういう場合は、やっぱり普通の公務員の人たちが急行に乗っていくという場合とはやっぱり事情が違いますね。ですから、そういう特殊な移動の場合には、何らかの形でそういうふうな旅費を出してもらえるようにこれは検討する、そういう方向でいかないと、これはいつまでたっても解決しないと私は思うんです。こういうふうな問題は、非常に私はこれからこの少年の方々が、こういう犯罪もふえてまいりましたし、本気でこういう問題に至るところで取り組んでいかないと、あらゆる分野でこういう問題と取り組んでいかないと私は解決しないと思うんです。そういう意味で、きょうはこの問題を取り上げたわけでございますが、法務大臣の、青少年の犯罪を含めまして、こういう問題についての所信をお伺いしておきたいと思います。
  80. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) たいへんありがたい御質問で心から感謝申し上げます。  大体、こういうこまかい諸問題はほかにもたくさんございますが、どうしてもしわ寄せを受けて予算措置のときに手が行き届かないという傾向があるんではないかと思います。ほかの応援団のあるような予算のほうがふくらめば、すぐにこういうところに大蔵当局がしわ寄せをしてくるという危険性がありますので、こういうこまかい問題は、ほんとうに一番大事な基本的な問題でございますから、今後も十分に注意いたしまして、できるだけこういうこまかいところを充実するように最善を尽くしてまいりたい、かように思います。
  81. 加瀬完

    ○副主査(加瀬完君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  82. 加瀬完

    ○副主査(加瀬完君) 速記を起こして。
  83. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 最高裁関係の、特に裁判所関係の問題について二、三ちょっとお伺いしておきたいと思います。特に、最近裁判が非常に時間が長くかかる。この問題、非常に重要な問題でございますので、きょうはこの問題について二、三お伺いしたいと思います。  最近も、新聞でも報道されましたけれども、二日分の旅費二百円を請求する事件が最高裁まで行きまして、この間最終判決があったわけでございますが、この裁判の期間に十二年間かかっているわけでございますね。それで、こういう点から考えてみましても、現在の社会情勢の変化という点から考えてみましても、要するに、十二年もかかるような裁判というのは、これはもうどうしようもないわけですね。国民は裁判を受ける権利があるわけですけれども、こういうふうに裁判が長期間かかりますと、結局、長い間かかるということで、裁判そのものを放棄しなくちゃいけない、そういうふうな事態が出てくるわけであります。そこで、この問題について、最高裁自体はどういうぐあいに考えていらっしゃるのかということがまず第一点。  それから、裁判所は、ここ数年の間、事件をいろいろ受理していらっしゃると思いますが、この事件の受理状況はどうなっているのかというのが第二点。  それから第三点としまして、一年間に受理したその事件が、いわゆる年度内に処理をすることができなくて、いわゆる繰り越している事件がどの程度あるのか、そして、こういうぐあいに裁判が遅延している理由は一体何か。  それから最後に、最高裁としては、この問題についてどういうふうな解決策を持っていらっしゃるか、以上の点についてお伺いしたいと思います。
  84. 田宮重男

    最高裁判所長官代理者(田宮重男君) いろいろ問題を指摘いただきましてありがとうございます。  まず、年間の事件数でございますが、主として問題になりますのは訴訟事件でございます。年間で受理している全体の訴訟事件は十八万二千三百十七件となっております。このうち、特に問題になりますのは一審の事件でございまして、地裁でございますが、地裁の訴訟事件は九万五千六百四十一件、これは民事でございます。刑事は、訴訟全体としては十三万一千八十五件、そのうち地裁でやります訴訟事件は八万八千件というふうになっております。  このうち、四十七年度で、これは年間で受理された事件でございまして、その年間で受理された事件のうちどれだけの数が翌年に持ち越されるかという点については、その点の統計のとり方が非常にできませんので、四十七年度から四十八年度に持ち越された事件だけについて見ますと、地裁のほうで、刑事でございますが、四万五千四百二件、それから地裁の民事が十万一千五十二件、四十七年度から四十八年度に繰り越された事件がそういうふうになっております。  で、審理期間の点でございますが、これも御指摘のように、年々若干ずつ延びておりまして、四十七年度の一審の地裁を見ますと、民事では十五・八月、それから刑事では六・六月ということに相なっておるのでございます。全体としてはそのように若干ずつ延びておりますが、平均的に見ますと、地裁の場合では、刑事では七四・六%ぐらいは六月以内に処理されておる。民事では、民事は多少刑事よりむずかしいものですから、一年をとりますと、一年以内で処理された事件は六三・二%でございます。もちろん、これによって、平均的にそれだけの事件がその期間内に処理されているということで決して満足しているわけではございませんで、これも戦前から比較しますと、かなり延びておるのでございます。  一般的にはそういうふうな状況でございますが、先ほど御指摘のような特殊な事件になりますと、一審から高裁、高裁から最高裁ということになりますと、かなり長期にわたるような事件が最近あることは、そのとおりでございます。  その原因として考えられますのは、まず、最近における事件の複雑困難ということであろうと思います。たとえば、民事事件におきましては、公害、医療過誤その他の特殊損害賠償事件というものが最近多うございます。このような事件になりますと、新しい法律問題を含んでおりますし、また、事実認定が非常に困難で、特に公害事件等におきますと、因果関係の認定が非常にむずかしいというような、そういった特殊な問題がございます。それからまた、当事者も非常に多数であるといったような性質を持っております。  一方、刑事事件におきましても、大部分の事件は、先ほど御説明申し上げましたように六月以内に処理されておるのでございますが、一部の事件では、被告人が非常に多数であるといったような事件、それからまた、犯罪事実も非常に多いというような事件、それから、まあ例の学生事件等になりますと、訴訟の進行に関していろいろ紛議が生ずるというようなことで、必ずしも円滑に進行しない、そのために事件が延びるといったような状況もございます。さらに、これは当事者側に存する原因でございますが、当事者代理人の訴訟進行に関する十分な協力が、必ずしも得られないといったような事案もございますので、まあそういった点が最近若干ずつ目立っておりますので、そういった関係で、事件も長期化する原因になっているのではないかというふうに考えておるわけでございます。  これに対する対策ということでございますが、まず第一には、裁判官の機動的かつ適正な配置をはかるとともに、各裁判所内部におけるところの事務分担の適正化をはかるというようなことを推進しております。この例といたしまして、最近でございますが、京都で民事訴訟事件が非常にふえまして、未済事件が非常にふえましたので、裁判官三名を臨時的に配置いたしまして、これは他の庁から持っていったのでございますが、そういうような措置をいたしまして、その結果、ここ二、三年の間に未済事件が半減するというふうな効果も生じておりますので、今後こうした適宜、裁判官の機動的な配置ということも真剣に考えたいというふうに思っております。  第二といたしましては、やはり何と申しましても、裁判が時代の要請に沿うような速度でなければなりませんので、そういった関係から、裁判事務の改善ということに力を入れておるのでございまして、この点に関しましても、資料を整備するとか、能率器具を整備するというようなことで、この点についても、逐年予算の増額が認められておりまして、本年度においても、そうした資料関係とか器具関係で約四千万程度で、昨年の二〇%増というふうな予算を認められておるのでございます。次に、また種々の研修とか協議会、そういうものを実施しまして、裁判官の迅速適正な処理能力を高めるといったようなこともいろいろ努力してまいっておるのでございます。  まあ、いずれにいたしましても、裁判所だけがそういうふうな体制を整えましても、必ずしも訴訟は円滑に進行するものでもございませんので、訴訟関係人の協力という面についても、今後とも一そう努力いたしまして、時代の要請にこたえるような、そうした裁判にいたしたいというふうに念願しておるところでございます。
  85. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ちょっと横道にそれますが、いまあなたの答弁の中で、最近京都で未済事件が非常にふえたと、こういう話がありましたが、これはどういうことですか。
  86. 田宮重男

    最高裁判所長官代理者(田宮重男君) 京都地方裁判所で民事事件が非常にふえまして、昭和四十六年の末でございますが、未済事件が四千件になりまして、一人当たりの裁判官の手持ち事件と申しますか、持っている事件が三百件か四百件ぐらいになったという状況が生じました。で、結局、手持ち事件が多うございますと、その事件の回転というものがどうしてもおそくなりまして、次回期日が三カ月先とか六カ月先ということになりますので、そして、手持ち事件が多くなりましたので裁判官三名をふやしまして、手持ち事件を流すということによって、四十六年の末でそのような四千件でありましたものが、昨年四十八年の末では、これが二千五百件台に未済が減ったということで、未済が減ったということによって事件の回転が早くなるということで、事件の処理の期間もその分だけ縮まる、こうした成果があがったと、こういうことでございます。
  87. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 全国平均では、一人当たり何件くらいの未済事件というものを持っているんですか。
  88. 田宮重男

    最高裁判所長官代理者(田宮重男君) 全国的に見ました場合には、御承知のように、裁判官は地方では一人で民事も刑事も一緒に担当するということでございますので、民事何件、刑事何件というわけにはまいらないのでございますが、昭和四十七年度で見ますと、民事では、新受で七十五件でございますので、まあ、ここでちょっと未済の平均は出ておらないのでございますが、大体これの一・五倍ぐらいというふうに考えていただければよかろうと思うのでございますが、ですから、結局百件ぐらいに相なるだろうと思います。それから刑事の新受事件は六十四件ございまして、大体刑事の未済はこの半分というふうに考えていただいて、大体三十件ぐらい、まあこういうことでございます。
  89. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうしますと、非常に、京都の場合は全国的な平均と比べて約二倍近くのあれを持っていたわけですね。こういうような理由というのもいろいろあると私は思うんですけれども、これは実は私の手元にあります資料によりますと、これは昭和三十八年から四十七年の全裁判所の新受件数というのが、四月三日付でおたくのほうからいただいたんですけれども、これによりますと、これはもう相当なものでございますね。たとえば民事だけでも、これは新受件数ですから一年間に受け付ける件数でございましょうけれども、これはもう相当な、毎年十八万とか――たとえば四十五年からいきますと、民事の訴訟のほうが十八万八千ですね、四十六年十九万三千、四十七年十八万二千と、大体二十万近くの件数が毎年続いてあるわけですね、民事だけでもですね。そうしますと、これが、その他の件数というのはまた別に百万台であるわけですね。そうしますと、これはしかも、その年に解決しないものがまた約半分以上あるわけでありますから、これはずっと、たとえば四十七年から四十八年に民事で繰り越した事件が十万件と言いましたね。十万一千五十二件か、先ほどお話がございましたが、そうしますと繰り越し繰り越しで、もう相当な件数が現在たまっているということになりますがね。現在、全裁判所で一体、民事、刑事それぞれありますが、どのくらいの件数というのを裁判所自体はかかえていらっしゃるんですか。
  90. 田宮重男

    最高裁判所長官代理者(田宮重男君) こまかい集計がないのでございますが、結局、現在かかえておると申しますのは、まあ現在年度の初めでございますので、四十七年から四十八年に繰り越された事件、大体それと同じくらいであろうというふうに考えますと、全体の民事の場合には新受件数の約一.五倍、それから刑事の場合では新受件数の約半分というふうにお考えいただければ、大体数字としてはそういうことになろうというふうに考えております。
  91. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 あまり時間がございませんので急いでやりますが、いずれにしましても、そういうふうな中で、現在の裁判官の数が、これは昭和三十八年ごろから大体二千四百人前後から二千六百人、約二百人ほどふえておりますが、ほとんどこの変動がございませんですね。これは、こういうふうな裁判官の数で実際問題足りるわけですか。
  92. 田宮重男

    最高裁判所長官代理者(田宮重男君) 御指摘のように、裁判官の数は、裁判官全体といたしますと、昭和二十六年度に比しますと三百十二人、それから昭和三十年度に比較しますと三百八人というふうに増加してまいっておるのでございます。それでは事件のほうは一体どうなっておるかと申しますと、昭和二十六年では裁判官の、これは主として問題になりますのは地方裁判所でございますので、地方裁判所で御説明しますと、昭和二十六年では地裁の裁判官一人当たりの負担件数というのが、民事、刑事両方通じまして百三十七件、それで四十七年では、事件もふえておりますが裁判官もふえましたので、数字の上では百四十件ということになるわけでございますが、これは何ぶん数字の上だけでそういうことでございまして、それによって、裁判官の負担がその当時と何ら変わらないというわけにはまいらないわけで、事件の中身等複雑、困難化しておりますので、ただいま先生御指摘のように、裁判官のそうした昭和二十六年当時からのふえ方で、はたしてこれで十分であるかどうかと言われますと、事件の数はとにかくとして、内容から見ますと、なお十分検討しなければいけないのではないかというふうに考えております。
  93. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 あと二、三問。  最近の社会情勢の中で考えてみまして、先ほどもちょっと話ございましたが、公害関係の事件あるいは医療関係の事件というのが、この資料によりますと、昭和四十四年に百八十六件であった公害関係の事件が、四十五年には二百四十九件、四十六年に三百十四件、四十七年に四百九件と、毎年ふえておりますですね。それから、医療関係も同じように、四十四年二百三十一件が三百八件、三百七十六件、四百五十二件と毎年増加の傾向にあります。そこでですね、実はこういうような中で、こういうふうな特殊な事件というものに対して裁判所はどういうふうに考えていらっしゃるのか。現実の問題として、たとえばですね、現在、この間から問題になっております原子力発電所で放射能の皮膚炎にかかったということで、この間からずいぶん、いま新聞でも取り上げられております。これもとうとう法廷で争うということになりましたけれども現実に、先日国会に参考人が出席をいたしまして、その参考人の意見を聞いておりますと、まるきり反対の意見が出てくると、こういうような状況であります。そういうような中で、これは裁判官が専門の知識がなければどうしようもないという事態が、現実に私は起きてくるんじゃないかと、こう思います。こういうふうな問題というのは、相当まあ鑑定人とか、そういう制度も私あるとは思いますけれども、裁判官自身に専門的な知識なり素養というものを求められる時代に私なってきたと思うんですが、こういう点については、どういうふうにこれから対処していかれるおつもりかお伺いしておきたいと思います。
  94. 田宮重男

    最高裁判所長官代理者(田宮重男君) 先生御指摘のとおりでございまして、この種の事件は、単に法律的な知識を持っているということだけで処理できることではございませんで、特に公害事件になりますと、科学的、専門的な知識というものが必要なことはもちろんでございます。そういった面につきまして、特にそうした専門的な知識を持っている方に裁判官になっていただくということができればたいへんいいわけでございますが、現在の裁判官の資格といったような点から考えますと、単にそうした知識を持っているということだけで裁判をお願いするということもできませんので、結局のところ、裁判所の中でそうした裁判官を育成していく、育てていくということが必要なわけでございます。そういった観点で、ここ数年来、予算上の措置もいろいろとりまして、必要な基礎的知識を大学教授等の専門家の協力を得て修得する方策を考えまして、そのために必要な予算措置を講じ、大学の先生のお話を聞いて、それに対してお礼をするという予算措置も講じていただき、また研究会、協議会といったようなものを開催して、できるだけ自然科学上の専門的知識の修得をできる機会をふやすという努力をしてまいっておるのでございます。ただその点で、特にまたその専門的な教育をした裁判官だけにこうした事件を長くやっていただくというわけには一面まいらない面もございまして、特にまた専門化し過ぎますと、専門化し過ぎたということの弊もございますので、そういう点を勘案しながら必要な限度において、できるだけそうした自然科学上の基礎的な知識の修得をするような機会を設けるようにいたしたいというふうに努力しておる次第でございます。
  95. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 非常に時間的にあんまり――これで終わりますけれども、これは私は、裁判所というのは、非常に何といいますか、端的に言いますと、国民にあんまり親しまれていないんじゃないか。要するに、もうちょっと簡単に言いますと、裁判所というものが国民と断絶しているんじゃないか、こう感じるわけです。これはほんとうに国民の権利義務を守り、また法律の利益を受け、あるいは法律を順守するという、そういうふうな精神を涵養する上からも、もっと裁判所というものを理解してもらう必要があるんじゃないか。その裁判所を国民に理解してもらうためのいわゆる努力というものが、いわゆる最高裁をはじめ裁判所関係はやっているのかどうか、これは何もやっていないんじゃないかということを私は非常に案ずるわけです。そういうような意味から、やっぱり裁判所というのは、積極的に国民に裁判所の性格なり裁判所というもの、裁判というもの自体を理解してもらう必要があるんじゃないか。そういうふうな意味で、たとえば白書とか、そういうようなものを出すなり何なり積極的な姿勢というのが必要なんじゃないかというのがまず一つです。それからもう一つは、裁判官自体が非常に人間性がないわけですね。こんなことを言ったらおかしいですけれどもね、これはもう皆さんも経験があると思いますけれども、裁判官というのは、とにかく国民は非常に注目しておりますので、どこにも行けない。行く場合でも、みんな注目されていますからちょっとしたことでもいろいろ言われる。まあそういうところから人間性を阻害されておる。その端的な例としましては、たとえば裁判官が宅調というのをやりますね。書類を持って帰っておうちでやります。これ自体が非常に、子供さんが多い場合、奥さんがいる場合、非常にたいへんだと私は思うのですね。普通の人とはずいぶん違うわけです。そういうような意味からも、たとえば貴重な書類を持ち運びするわけでありますから、そういうところにも非常に精神的な負担を感ずる、裁判官自身がですね。そういう点から考えてみましても、非常に私はそういう点は、たとえば役所で十分そういう時間がある、そういうふうにしていかないといけないんじゃないか。またそういう家庭生活と仕事の分離という問題についても、もう本格的に考えなくちゃいけない時期がきている。これ以上ほっておくと、やっぱりいろんな事件が、問題が起きてしまう、こういうことに私はなるんじゃないかと思うんです。そういうふうな観点からも、やっぱり裁判所自体、裁判自体についても、これは二つの点から申し上げましたけれども、この二つの点についてきょうは御意見をお伺いしたいんですが、いずれにしても、ここら辺で何らかの手を打ってちゃんとしないと、やっぱり、これからの裁判所に対する国民の理解という点から考えてみましても、これは重大な問題になってくると思うんですが、こういう点をお伺いしておきたいと思います。
  96. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) まず、二番目にお尋ねのございました宅調の問題から発言申し上げますが、宅調と申しますのは、ただいま御指摘のとおり、裁判所で執務すべき仕事をうちに持っていって仕事をするということでございます。これは終戦後に、裁判所の庁舎が戦災で焼けたりしまして施設が非常に不足したような時期に起きた現象でございまして、峯山委員の御指摘のように本来的な執務のあり方ではないわけでございます。そこで、私どももこれを解消するために、まず施設を改善いたしまして、十分裁判所の中で仕事ができると。まあ戦後一時的なことでございましたけれども一つの机を二人の裁判官が共用している、したがって役所に来ても仕事をすることができないといったような、そうした施設上の隘路を解消すべきである。また裁判所に参りましても、自分の部屋に必要な図書がそろっておる、それによって十分――またうちにそろっているような本を役所にもそろえておるということをいたしまして、徐々にそれを解消して、まあ今日に至っております。おかげさまで、だいぶそういう状況はなくなってまいりましたけれども、まだ施設の関係などで若干残っておるところもございますが、これはただいま御指摘のように家庭生活との関係もございますし、非常に大事な問題でございますので、私どもといたしましては、引き続きこの問題をできるだけ早く解消するように努力いたしたい、かように考えております。  次に、広報関係のことでございますが、これもただいま峯山委員が仰せのとおりでございまして、まあどちらかと申しますと裁判所立場は受け身の立場にございますので、自分から進んでPRするというふうなことは、従来あまり考えなかったわけでございます。しかし、国民に裁判というものを知らせ、また法というものを理解させるということはきわめて大事なことでございますので、現在では、裁判所法務省あるいは日本弁護士連合会あたりと共同いたしまして、いろいろの機会に、また各地の実情に応じて広報活動をやっておりますが、これも決して十分であるとは考えられません。裁判に関する白書のようなものを出してはどうかという貴重な御意見もございました。私どもといたしまして、どういうふうにすればよろしいか、なお慎重に検討いたしたいと考えます。
  97. 加瀬完

    ○副主査(加瀬完君) 事務総長、何か要望に対してお答えをいただけませんか。
  98. 安村和雄

    最高裁判所長官代理者(安村和雄君) 本日は、峯山委員から裁判所にたいへん御理解のある、かつあたたかい御質問を承りましてありがとうございました。御指摘の点についての両局長からの説明で相当の程度は御理解いただけたかと思いますが、なお不十分の点は私どもこれから努力を傾けまして、御期待に沿いたいと思います。
  99. 加瀬完

    ○副主査(加瀬完君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時四十二分休憩      ―――――・―――――    午後一時三十七分開会
  100. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) ただいまから第一分科会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和四十九年度予算中、裁判所及び法務省所管を一括議題として、質疑を行なうことにいたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  101. 工藤良平

    工藤良平君 私は、法務省並びに裁判所関係につきましていろいろとお聞きをいたしたいと思います。  最初に、昨日朝鮮民主主義人民共和国の卓球の代表団が、新たに途中からではありますけれども参加をしたいという通知があったということで、それぞれの手続がなされておると思いますけれども、この点について、この卓球大会の成功のためにも、ぜひとも私は入国についてスムーズな運びをすることが大切じゃないかと思いますし、その点について法務大臣の御見解を伺いたいと思います。
  102. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) 実は事柄がスポーツでございますから、朝鮮民主主議人民共和国のように国境のはっきりしておるところは、たとえ日本が未承認の国でありましても、こういうスポーツについては特別の配慮をいたしまして、喜んで入国を承認したいのはやまやまでございますが、ただ、実は今度の横浜大会につきましては、御承知のようにほかに幾つか、日本が承認しておる国で外交関係もある国で、その国内でいろいろ紛争がありまして、その紛争の当事者であるものはやっぱり一国を名のっておるわけですが、その国名のような形を名のらせることはかんばしくないと、やはり日本の交際のある政権との国際関係もありますから、たとえばベトナムで申しますと、ベトナムの解放戦線というような呼び名ならば一つの勢力であるというだけで、一国を認めた形になりませんから、事柄がスポーツですから入国を認めることが適当であろうという判断に立ちまして、国柄の呼称について大会の組織委員会のほうと連絡をいたしまして、その呼び名をベトナム(解放戦線)というような形ならばよかろうということで話し合いがつきまして、大会のほうでも誓約書を出しまして、ベトナムやカンボジアその他につきまして話がついたわけでございますが、やってみましたら、やはりその誓約は破られてしまったという形になっておるのが現状でございます。まことに困った状況で、したがって、法務省としましては、誓約書を入れたんだから誓約どおりに是正をしてください、是正さえできれば何の異存もないけれども、是正がかなわないことは困るということで大会組織委員会のほうと連絡をしまして、是正をするという一時話でありましたが、その後一向に是正されておりません。呼び出し、あるいはプログラム等、いずれも日本語でいいますと南方共和といいますか、ベトナム南方共和ということで呼んでおるような状況にありますので、この現状は大会組織委員会側に是正方を実は求めておるわけでございます。是正をいたしますと言っておりますけれども、どうもそれは言うだけで実効が一つもあがっていないというのが現状でございますので、その誓約が誓約書どおりに実行されれば、朝鮮民主主義人民共和国については何の問題もないわけですが、たとえ大会組織委員会側が朝鮮民主主義人民共和国について自分らで一切保証しますと言ってくれても、信用のない人の保証ではわれわれのほうとしては安心できない、したがって、認めるわけにはいかないと、こういうようないまいきさつになっておる次第でございます。きょうあたり幾らかまた模様が変わっておるんではないかと思いますが、この点につきましては、入国管理局のほうで来ておりますから、入国管理局の事務当局からお答えをさしたいと、かように思います。
  103. 工藤良平

    工藤良平君 確かに入国の過程におきまして、ベトナムの問題に対する扱いについてはさまざまな問題があったようであります。また、逆に言いますと、組織委員会としても当初そのような計画で進めたようでありますけれども、しかしそれぞれの代表にしてみれば、やはり自国の正式な国名を使うという立場も私はわかるのであります。したがって、そういう面から考えまして、むしろ混乱を避けるという意味で、組織委員会内部におきましてもかなりの議論をして、やはりこのとられた措置というものが結果的にそういうことになったのではないだろうか。ですから、組織委員会と法務省との関係においては、そういう背信だという問題はあったかもわからないけれども、しかし、この会の運営のためにはやむを得ずそういう措置というものをあえてとらざるを得なかった、そしてやはり大会の運営というものをスムーズにやっていこうという努力というものが見られるわけです。私はそのように理解を実はいたしておるのであります。むしろやむを得ずそのような措置をとらざるを得なくて、もしもそれをとらなかったならばこの卓球大会というものがさらに混乱におちいったのではないかというような懸念もされておるのでありますが、そういう点に対する把握、さらにはこの問題と、もちろんこれは組織委員会に直接関係があるわけでありますけれども、今回の朝鮮民主主義人民共和国の再度の入国申請というものができるだけ可及的すみやかに行なわれなければ、卓球大会に間に合わないという時間的な制約が私はあろうと思うわけであります。そういう点に対してやっぱり迅速な措置というものを今日とらなければならない状態にありますし、そういう点についてさらに詳細に御意見を聞きたいのでありますけれども、これは時間的な問題もありますから、要約していただいて、できるだけ前向きにこの問題を解決をして、この大会がスムーズに終わるように措置をするということが、私は、これを引き受けている当事者ではありませんけれども、やはりその国の扱う機関としても非常に大切なことではないかと、このように考えますので、その点に対する再度の御見解を伺いたいと思います。
  104. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) それでは、直接その衝に当たりました入管のほうからお答えをさしたいと思います。
  105. 影井梅夫

    政府委員(影井梅夫君) 経過につきましてただいま大臣から御答弁があったとおりでございまして、現在組織委員会のほうからきわめて非公式な形でございますけれども、この是正措置につきまして私のほうに打診がいま来ております。現段階でこの非公式な打診がそのまま満足すべきものではございませんけれども、他方、私どもといたしましても、この大会が当初の誓約に従いまして円満に運営されてほしいという点はまさにそのとおりでございます。他方、私ども立場というものも明らかにいたしまして、何とか打開の道が見つかるものなら見つけたいと考えております。ただ、現在非常に微妙な段階に差しかかっておりますので、これ以上ちょっと申し上げるのを差し控えさしていただきたい、こう考えております。
  106. 工藤良平

    工藤良平君 私も先ほどから組織委員会と連絡をとりながら、この質問をすることがいいのかどうかということについても迷ったのでありますけれども、しかし、私はやはりこの大会をスムーズに進めるという前提を考えて、その最善の策というものを見つけ出すべきだと、もしもこれが混乱をするということになりますと、いついかなる、どのようなことが起こるかもわからないということを私はむしろ心配いたします。したがって、朝鮮民主主義人民共和国の入国につきましても早急にこれは結論を出さなければならない問題でしょうし、すでに代理申請が出されておる。しかし、これは受け付けられていないというような状態を私は聞いているわけでありますから、そういうことになりますと、これまたどのような混乱が起こるかわかりませんので、私は大臣に特にお願いいたしたいわけでありますけれども、この際やはりこの卓球大会をどのようにしてスムーズに終わらせるかということが非常に大事だと思いますので、その点に対するひとつ大臣の前向きの措置を私は要請をいたしたい。もちろん内容についてここでいろいろ、とやかく言うということはむしろ混乱を起こすことだと思いますから私は差し控えますけれども、できるだけ早く、でき得ればきょうじゅうにこういう問題を解決してやらないと、朝鮮民主主義人民共和国がモスクワ経由で参りますとおそらく一昼夜ばかりかかると思いますので、たいへんな問題だと思いますから、ぜひひとつそのような措置大臣としても配慮していただきたい、このように思います。
  107. 中村梅吉

    国務大臣中村梅吉君) まだ実は正式の手続は、出たけれども受け付けないんではありませんで、まだ全然出てはいないようでございます。内内の打診のようでございますが、いずれにしましても、本大会の何といいますか、大会の試合というのは、もうこれから来ても間に合わないで大体終わってしまうんじゃないかと思うのですが、あと親善試合が残りますから、ことに近くの国のことでございますから、来られて親善試合をしていただくということはまことにけっこうなことじゃないかと思いますが、ただ、いま申し上げたような誓約との関係がありますので、法務省としましては一たび正確な誓約をしておきながら、誓約を全く無視したような形は絶対に困るという態度をとっておるわけですが、どうもきょうあたり聞くところによりますと、誓約は是正をいたしますという連絡もあったやに聞きますから、こういうことが行なわれれば、是正されれば何もこだわることはありませんので、ことに朝鮮民主主義人民共和国につきましては、われわれとしてもこの大会に御参加になるということでありましたから、初めからもうほかの国は別として、朝鮮民主主義人民共和国の入国については当初から認めるつもりでおったわけです。ただ時期が、どういう事情ですか、団の派遣を取りやめになったり、今度来られるのも男のほうは来なくて、女の選手だけが来られるようなお話、内々聞いておりますが、入管当局にもよく配慮をしてもらいまして、是正さえとられれば何の異存もない、こういうことだけは申し上げられると思います。
  108. 工藤良平

    工藤良平君 私もこれ以上追及いたしませんので、ぜひひとつ前向きに、すみやかに解決するように要望しておきたいと思います。  それでは、裁判所関係について御質問をいたしますが、現在、裁判の審理の状態でございますけれども、私どもよく聞くのでありますが、一件の審理期間が非常に長いために、本来、私ども自主的に解決すればいいのでありますけれども、なかなかそうはいかなくて、やはり裁判にゆだねなきゃならぬということが非常に近ごろひんぱんになってまいりました。特に公害裁判とかそういうものを見てみますと、金のない、力の弱い者が非常に長い期間審理を行なうために財政的にも期間的にも非常にまいってしまう。そういうことからやはり泣き寝入りせざるを得ないというような状態がしばしば起こるのでありますけれども、そういった意味から、その審理をできるだけ早く促進をしていくという立場から考えまして、現在一体この審理の期間がどのような傾向にあるのか、そしてまた、その原因を取り除くためにどうしたらいいのか、そういう点についてまずお伺いをいたしたいと思います。
  109. 田宮重男

    最高裁判所長官代理者(田宮重男君) 現在、審理期間でございますが、主として御指摘の点は地方裁判所――公害訴訟等、地方裁判所に係属しておりますので、地方裁判所が問題になろうかと思いますが、地方裁判所では民事事件の審理期間は約十五カ月ぐらいでございまして、刑事事件の場合では約六、七カ月ということに平均はなっております。ただ、いま申しましたのは平均でございますので、公害訴訟、それから刑事の場合ですと学生事件、公安事件といったような事件はかなり長引きますので、長いものはそうした平均よりさらに長期にわたるという事件も多々あることは御指摘のとおりでございます。
  110. 工藤良平

    工藤良平君 この裁判というものが、やはりなるべく早く結論を出してその決着を見るということが私はたてまえだと思いますし、そのための最大限の努力をしなければならぬと思いますが、私ども聞くところによると、現在非常に裁判の件数がふえている。それに対応する一体機構的な人員配置の問題あるいは設備の問題等について万全の体制がとられているのかどうか。で、そういうことによって裁判がおくれるということになりますと、これはたいへん大きな問題になります、特に人権の問題でありますから。そういう点については、一体裁判所のほうとしてはどのように把握をしていらっしゃるかをお聞きをしたい。
  111. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 裁判を迅速にしなければならないというお話は全くそのとおりでございまして、そのことにつきましては幾ら意を用いても用い過ぎることはないわけでございます。で、私どもといたしましては、それに対処する方法といたしまして、ただいま工藤委員の仰せのとおり、人事機構を重視する、また庁舎その他の設備を改善していくということが、やはり一番大事な点であろうと思うわけでございます。で、まず人的な点でございますけれども、これは年々裁判官、職員の増員にもつとめてまいっておりまして、本年度も全体を通じまして三十名の増員をこの予算に計上して御審議をいただいているわけでございます。また庁舎の関係につきましても、毎年その改築、あるいは増築ということに努力いたしまして、戦前の木造の庁舎は、本庁に関します限り全国予算に計上されていないところはないというところまでまいりました。また甲号支部についても同様でございます。で、さようなわけでございますので、まだ必ずしも完全と申し上げるわけにはいかないかもしれませんけれども、大事な問題でございますので、引き続いて人的、物的両面について努力を継続してまいりたいと考えております。
  112. 工藤良平

    工藤良平君 本年度予算に、この説明にもありますように、人的機構の充実のための若干の経費の増が見込まれているわけでありますけれども、これを見ましても、差し引きいたしますと三十人の定員増加というような状態のようでございますが、このような状態で、いまたいへん事件が累増しつつある状態の中で審理の促進が一体はかれるのか。そういう点の見通しについては、もっともっとやはり体制を整備することによって、やはり問題の処理のための期待にこたえられるということになるのか、これで大体やれるというのか、もっともっと欲をいえば私は切りがないと思いますけれども、しかし、差し引き三十名の増員で可能かどうか、この点について。
  113. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 裁判を迅速にするために、先ほど申し上げましたように人的な面、物的な面、両方必要でございまして、まあ人的な面につきまして増員の点があるわけでございます。私ども裁判を実際に運営いたしております経験から申しますと、やはり負担を軽減する、あるいは事務能率を増進するといったような見地から、十分な能率器具でございますとか、そういったものを整備することも必要であろうと思うわけでございます。もちろんいい裁判官を多数採用しまして、そして仕事に当たるということも大事なことは御指摘のとおりでございます。ただ、裁判官の場合でございますと、一定の資格要件が必要でございます。また、必ずしも裁判官の希望者も十分私どもの期待どおりにはなっていないというふうな状況にございまして、充員上の困難性というものも、まあ努力はいたしておりますけれどもあるわけでございます。でございますので、そうした全体の問題を含めまして、やはり裁判の迅速のためにいろいろな観点から努力を継続してまいりたいと考えておるわけでございます。
  114. 工藤良平

    工藤良平君 先ほどもお話がありましたけれども、この営繕関係について、各下級裁判所における設備についてはかなりの努力が払われておるようでありますけれども、この段階でほとんど完全に、そういう点については大体申し分のないような状態というように把握しているのかどうか。
  115. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 先ほどちょっと申し上げましたように老朽、狭隘な庁舎の数は、おかげさまで非常に減ってまいりまして、まだ若干乙号支部等に戦前の庁舎が残っているといった状況にまでこぎつけてきたわけでございます。一方、裁判所の設備、特に冷房でございますとか、暖房でございますとか、そういう設備につきましても、最近はおいおい充実してまいりまして、まあただいま現在の状況におきましては、石油危機の問題等で、現在の経済状況のもとで若干足踏みせざるを得ないような状況になっておりますけれども、私どもといたしましては本年度の営繕の予算、十分裁判所の執務環境の改善に非常に役立つ経費であると、かように考えている次第であります。
  116. 工藤良平

    工藤良平君 もう少し具体的にお聞きをいたしたいと思いますが、この資料の中のこの予算の内容を検討してみますと、最高裁判所新庁舎関係経費という第四群の項目があるわけでございますが、これで新庁舎を維持管理するための経費として二億四千八百五十八万三千円という経費が実は組まれておるわけでありますが、これは四十九年度裁判所所管使途別分類表の中の庁費の中に含まれておるわけでありますか。それと同時に、この二億四千幾らという新庁舎維持管理経費というのは、初年度であるからこういう程度必要ということになるのか、今後恒常的にこれくらいの庁費を必要とするのか、その点についてちょっとお伺いいたしたいと思います。
  117. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) まず、庁費に含まれておるかどうかということでございますが、庁費に含まれております。  次に、これは経常的な経費であるか初年度分の経費であるかということでございますが、これは今後庁舎を維持管理するために恒常的に必要なる経費であると、かように考えております。
  118. 工藤良平

    工藤良平君 私、ちょっと見たときに、これは庁費全体が約三十億、その中で二億四千、約二億五千万という、これが今後恒常的に最高裁の新庁舎を維持するための経費というようになっていくわけでありますが、一見してみますと、何か奇異な感じを私受けます。先日、私は朝晩あの隣を宿舎のバスで通るもんですから、たいへん気をつけて見ておりました。感心をし、すばらしい庁舎ができつつありますので、もう近くこれは完成の予定だそうでありますけれども、見ていました。で、本日この予算の内容を見ましても、約一割近い経常経費が最高裁のこの新庁舎の維持管理のために使われる。この点については、先ほど経理局長お話がありましたけれども、まあ万全の体制が大体いろんな施設の面についても、下級審についても行なわれるというようなことでありますけれども、私一見するところ、必ずしも私どもよく裁判所に参りますけれども、十分だという感じは受けませんし、あるいは審理の期間等からいたしましても、もっともっとやはり下級審に対するウエートというものを上げていかなきゃならぬと、こういうような考え方を持っておるやさきに、これを見ますと、何かたいへん私は変な感じを受けるのであります。その点についてはどうでございますか。
  119. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) もちろん最高裁判所だけりっぱにしていいわけはございませんし、下級裁判所のためにも十分に配慮すべきであると、私どもは常にそう考えているわけでございます。ただ全体として、なお下級裁判所の庁費関係で十分でない点も実際にはないわけではないと考えられますので、そうした点につきましては、ただいまの御注意のことをよく考えまして、今後とも努力を継続していきたいと、かように考えます。
  120. 工藤良平

    工藤良平君 従来までは、最高裁判所の庁舎の維持管理のための経費というのはどれくらい使っておりましたか。年間。
  121. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 従来の最高裁判所の庁舎、これは設備もまだ全然冷房にもなっていない庁舎でございまして、主として光熱水料等であろうと思います。で、光熱水料は実際の――失礼しました、本庁舎の光熱水料が現在まで年間二千万、約二千万円でございます。
  122. 工藤良平

    工藤良平君 新庁舎に移転をする以前が約二千万ということでありますとこれは十倍以上になるわけですね一もちろんそれは、新庁舎ができて維持費がかかるということは私もわかりますけれども、私はあの庁舎を見せていただきましてまず感じますことは、非常に空間が多いということですね。これは普通のベースで考えますと、全くこれは維持費がたいへんなことだろうということは、あそこに踏み込んだときに感ずるわけです。まさに玄関からあの五階の上まで吹き抜けですからたいへんなそれは経費が要るだろうと、夏場これはどうするんだろうという私は印象をまず受けました。ですから、それを見ましたところが、なるほどそうかというような、二億五千万近い金をこれから使っていくということなんで、たいへんなことだという私は感じを受けたわけですむそこでさらに、私はこの問題についていまさら、ほとんどもう完成に近いものをあえてせんさくするつもりはありませんけれども、しかし、これからの予算を運用していく過程の中において、非常に私は参考になる点がありましたのでいろいろ調べてまいりました。裁判所というものが、もちろん三権分立のいまの日本の機構からいたしまして、国会に匹敵する建物があっていいという考え方があることも事実であります。私もそのことは全面的に否定はいたしません。いたしませんが、それなりにやはりそれに対応したいろいろな手だてというものが行なわれてまいっただろうし、そういう経緯を経てつくられたものだと思うのですけれども、しかし、なおかつ疑問を持たざるを得ない。で、ちょっとこの点を私、いろいろお聞きをしたいと思うんですけれども、この最高裁判所建設に当たっては、審議会までつくられて慎重に審議をされた。延べ面積、あるいは予算等につきましても。それが審議の答申がなされ、そして実施設計が行なわれ、予算に計上されてきた。そのいきさつについてちょっとひとつお聞かせいただきたいと思います。ちょっと私疑問になる点がありますので。
  123. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 最高裁判所庁舎の建築につきましては工藤委員の仰せのとおり、この計画を立てますために最高裁判所庁舎新営審議会というものをつくりまして、昭和四十年の九月から四十一年の八月までその審議をしていただいたわけでございます。その答申昭和四十一年の八月末に最高裁判所に提出されまして、それに基づいてその後の手続が進められた次第でございます。まず設計の公募ということが行なわれました。これは審議会におきまして、設計は全国から公募すべきである、設計競技に付すべきであるという御答申でございましたので、それを受けまして建設省に依頼をいたしまして、建設省の中にその設計競技の審査会というものを設けていただきました。また設計競技に関する事務局というものを建設省に設置していただきまして、全国から公募いたしたわけでございます。その結果応募作品が二百十七点全国から集まりまして、慎重に審査会で審査をしていただきました結果、最優秀作品が一点きまったわけでございます。その最優秀作品が、この最高裁判所の新庁舎の設計に採用されまして、そしてそれを基礎にして実施設計を行ない、実際の工事を行なうということになったわけでございます。一方、最高裁判所はそれに必要な工事費の予算昭和四十六年度に初年度として要求いたしまして、それが四十六年度予算に計上され、工期三年ということで四十六、四十七、四十八と三年でもって工事費の予算が計上され、で、一方工事が進められ、今日完成を迎える時期に相なったと、かような経過になっております。
  124. 工藤良平

    工藤良平君 その点もわかりますが、私、疑問と申しますのは、やはりものをつくるためには一つの基準があると思うのですね。その基準を一体どの程度前後するかということが私は非常に重要な問題だと思うのですね。いまお話のように二百十七件の応募があって、その中から一つを選定をされて、その間にもちろん審査のための委員会も設置をされたようでありますけれども、この最高裁判所庁舎新営審議会が長い期間にわたって審議をしてきた。それにはやはり最高裁判所庁舎の規模としては一体どれだけの程度のものが必要であろう。しかも、それは執務関係、あるいは厚生、保管、管理の各部門で、それぞれやはり余裕を見込んだ一つの目標というものが出されて、予算的にも検討した結果七十八億というのが当時の見込みとして出されてきたわけです。それと実際の応募したその作品ですね、四十六年から建築に入ったその予算との関連、私はこれを調べてみますときに、若干何か背伸びをし過ぎたような、あまりにもですよ、そういう感じを受けるわけです。そこで私は具体的にお聞きをいたしますけれども、たとえばその新庁舎の規模として出されております延べ床面積が四万二千八百平方メートル、地下駐車場幾らと――まあ地下駐車場が大きくなるというのはもちろんこれは私は十分にわかりますけれども、本館並びに事務室等について一定の将来の展望の上に立って四万二千八百平方メートルというものが一つの目安としてなされた。実施計画というのは、実際の建設のための面積というのはどのぐらいに見られておりましたか、最初は。
  125. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) ただいま仰せのとおり、審議会の答申におきまして最高裁判所庁舎の規模は延べ面積で四万二千八百平方メートル程度が妥当であろう、こういう結論になっております。  そこで、現在の新庁舎につきましてどうなったかということでございますが、先ほど申し上げましたように、全国から公開競技によって設計を募集いたしまして、多数の作品が応募されたわけでございます。そこで採用された作品がほとんどそのまま現在の新庁舎の設計ということに相なっておりまして、その面積が四万七千七百平方メートルということでございます。  これはどうしてそうなったかと申しますと、ああいう土地、敷地でございますので、集まりました二百十数点の作品といいますものは、それぞれ非常に違った特色のある設計作品であったわけでございます。ところで、採用された作品は非常に各棟に分かれておりまして、具体的に申しますと裁判を行なう裁判棟、行政を行なう行政棟、法廷のある法廷棟、あるいは最高裁判所には図書館がございますが、図書館棟といったいろいろの部門を、種別に応じていろいろの棟に分けまして、あの敷地の中に分散するという、そういう設計方式をとったわけでございます。そうなりますと、勢いそれを連絡するための交通部門というものが増大する。またそうした建物の全体設計でございますので、建築意匠上も若干の必要な――まあ見方によってはむだとも言えるデザイン上の、そういういろいろの付加的な要素というふうなものが加わるわけでございます。そうしたものが加わりまして、実際に決定されました作品が四万七千平米と、こういうふうに相なったわけでございます。四万二千八百平方メートルは先ほど仰せのとおり一つのめどでございまして、実際の出てくる作品がこれにぴったりと適合することはなく、ある程度の増減というふうなものは設計上あり得るわけでございますが、新庁舎につきましてはただいま申し上げた経過あるいは理由からして、かような設計に相なったと。これは先ほど申しましたように、あくまでも建設省で行なわれました公開設計競技の結果採用された作品でありまして、その結果がただいま申し上げたような内容になっておるということでございます。
  126. 工藤良平

    工藤良平君 そういたしますと、これは結局、公募してとったものだから、それに合わしてつくったんだからという議論になりますと、ものは簡単なんですけれども、しかし、それじゃ公募したときに、せっかく一つの基準があるわけでありますから、それに最も近いもので、最もりっぱなものをとるのが私はたてまえじゃないかと思うんです。たいへんりっぱなものであるけれども、それは面積からいっても、予算からいっても、たいへんかけ離れたものであるとするならば、それは一番優秀なものではないと私は思うんですよ、それは意匠的にはたいへんりっぱなものかもわからぬけれども。それはむしろ公的な、こういう親方日の丸式にという、ことばは悪いですけれども、そういうような税金でやるんだから幾らでも出せるじゃないかと、企業の採算性どうのこうのじゃないということになると、これはまさに公費を使った建築家の道楽だと、極端に言いますとですよ。極端に言いますけれどもね。そういうことについてはやはり国家的な大事業ですから、私はきちんとして、後世にその建築が残るということはわかります、わかりますけれども、それはやっぱり限界があるだろう。だから、一つの示された基準に最も近くて、予算的にも近い、その中で最も優秀なものをやっぱり選定するということが一番いい方法じゃないのか、私はそのように思いますが、その点はどうですか。
  127. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 先ほどちょっと説明が不十分でございましたが、ちょっと触れたわけでございますけれども、実際ふえておりますのは、先ほどのような理由で交通部門というところが非常に多いわけでございます。審議会の答申の法廷部門でありますとか、執務部門でありますとか、そういう点は、採用された作品はあまりそう違いはございません。交通部門のところで非常にそういう数字の違いが出てまいってきております。しかし、先ほど工藤委員の御指摘になりましたように、審議会の答申した面積にできるだけ近くて、そして、できるだけまたいい作品のほうがよろしいではないかというお尋ねにつきましては、全く私ども一般的には異存はございません。ただ、現在の最高裁判所の設計として採用されました作品は、先ほど申し上げましたような経過で最高裁判所の基本設計として採用されるに至ったわけでございます。その理由といたしましては、交通部門の増加や、あるいは建築意匠上の必要な部分の付加といったようなことで設計面積は増加しておりますけれども、基本的には、審議会の答申をしております最高裁判所の新庁舎のあり方としてふさわしい建物であろうと私ども考えているわけでございます。
  128. 工藤良平

    工藤良平君 どうも、その点について私もまだたくさん疑問がある。たとえば、それじゃお聞きをいたしますけれども予算的な面についても一応七十八億という目安というものが示されましたね。詳細にかなり検討しておられます。ところが、それが実際の実施計画の段階では百二十億。もちろんそれは、その後の建築費の増加とかいろいろありますけれども、これを率で見ますと、かなり大幅な伸び、背伸びをし過ぎているわけです。そんなものを、一定の基準を飛び越えて幾らでもやりなさいということになれば、それはどんなものでもできます。私は、そういうことをそんなに野放しにやっていいのかどうかという疑問をたいへん持つわけです。建設省に参りまして、私は建設省の、この最高裁の審議会が答申をした当時のいわゆる合同庁舎、いわゆる一般各省の合同庁舎の建築費の平米単価の伸び率を調べてまいりました。調べてみますと、大体、設計をした当時から、予算の編成をいたしました四十六年までの伸び率は二九%、一九%単価が上がっているわけです。ところが、この計画を見ますと七十八億から百二十億に伸びた。その設計の当初におきましても一五三%という伸びを示しているわけですね。これは、おっしゃるように廊下だけがふえたとかいうことではなくて、建築そのものについて、私は、いま維持費の問題で指摘をしましたけれども、全く一階から五階まで吹き抜けというようなたいへんな空間、しかも、裏に回って見てくださいよ。意匠として裏のほうまで非常に空間の飾りの部分が多い。しかも、それが天然石を使ったたいへんなものなんですね。建築の意匠としてはわかります。後世に残すという意味もわかりますけれども、それは、やはり全体的な問題の中で、ある程度考えるべきものではないだろうかという私は疑問を持たざるを得ないですね。この点についていかがでございますか。
  129. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 予算につきましては、当時、審議会の答申がありましたのが昭和四十一年でございまして、予算は、昭和四十六年度から計上されたわけでございます。私どもといたしましては、審議会が七十八億の予算を積算しました算式と申しますか、積算の方法と申しますか、それを十分利用いたしまして、それを基礎に置きまして、なお、採用された設計というものをそれに関連させまして、その設計による庁舎が十分建築できるような予算を要求いたしたわけでございます。したがいまして、簡単に申しますと、五年間における建築費の伸びあるいは採用された作品を建築するに十分な経費といったものを中心にいたしまして予算の要求をして予算が計上されたという結果に相なっているわけでございます。で、最高裁判所の新庁舎につきましては、外装あるいは内装のいろいろの面につきまして十分現代建築として、答申にもございますように、現代建築の最高水準のものを追求すべきであるという答申でございますけれども、法廷等の部分でございますとか、あるいは裁判等の部分でございますとか、そういった点につきましては外装もただいまお話にございましたように天然の石をもってこれを張っている。もちろん事務総局の入るところなどにつきましては普通の官庁営繕と全く同じ程度の外装、内装をいたしているわけでございます。全体として私どもといたしましては、最高裁判所の庁舎をりっぱにつくるということを心がけてまいったわけでございます。
  130. 工藤良平

    工藤良平君 私はいま経理局長がおっしゃったこと、わかりますよ。わかりますけど、やっぱりものには限度があるわけです。確かにりっぱなものをつくって残すということは、日本のいまの経済の状態からして、現在の、この当時を物語る一つの歴史の遺産として残していくということも私はわかりますよ。どこの国に行っても国会と裁判所なんというのは並行的にありますから、その意味もわからないことはないんですけれども、しかし、それはやはり全体的に下級審もあわせ考えながら考えていかないと、いま言うように、三十億庁費の経常経費を一年間にもらったけれども、そのうちの一割は最高裁判所のあすこの新庁舎だけで使いますよということじゃ、私どもからしてみるとなかなか疑問を持たざるを得ない、今後の運営においても。ですから私はその点を指摘をしているわけで、これはもうでき上がったことですから、いまさらくずせというわけにもまいりません。まいりませんけれども、将来やはり裁判を促進をし、できるだけ早く裁判を片づけて、困った人に対してきちんとした手だてをしていくということのためにも私は十分配慮すべきものではなかったのかということを、いまさらながらこの現実を見て思うわけであります。そのりっぱな建物が残っていくということは私は反対じゃありません。反対じゃありませんけれども、やはりそういう点についても十分配慮していただいて、これからのやはり特に下級審段階における施設、庁費等の部分についても万全の体制をとる、こういうことが必要ではないのか、こういうことを実は申し上げたいわけであります。その点についてはどうでございますか。事務総長、さっきからじっとすわっておるようでありますが、ひとつ、事務総長のほうからちょっとお聞きしたいと思います。
  131. 安村和雄

    最高裁判所長官代理者(安村和雄君) 本日はたいへん鋭い御指摘、御忠言と申しますか、をいただきまして、緊張して拝聴したわけでありますが、仰せのとおり下級審の裁判所のことも考え、訴訟の迅速、適正な処理のことも考えて今後あやまちがないように十分努力したいと思います。
  132. 工藤良平

    工藤良平君 本来、この問題は決算委員会でやるのが至当だと思いますけれども、決算委員会ということになりますとまた詳細にいろいろ設計の面からということになりますから、私はあえてきようこの問題を取り上げて、将来そういった意味での配慮というものをぜひお願いをしたいという立場から申し上げているわけでありますが、さらにもう一つは、これからあの新庁舎を維持していくために私は心がけていただきたいことが一つあるわけであります。  御承知のように、あの近くに私ども社会党の本部も実は横にあるわけです。たいへん見劣りするわけでありますけれども、あすこは御承知のように三差路になっておりまして、交通の非常にひんぱんなところであります。しかも高速も縦横に通っているというところでありますから、特に環境保全の面についてこの新庁舎が持つ役割りというものも私は考えてみなきゃならぬ。広大な敷地を持ち、りっぱな建物もあるわけでありますから、もう少しやはり緑を保存をする、緑をあすこに育てるという面から、隣にはりっぱな宮城の緑があるわけでありますから、あれにどう結びつけていくのかということが非常に大切だと思いますし、どうも緑に対する配慮というものを最高裁は考えていないという感じを私は率直に受けたわけです。先日、総務課長さんにはちょっと苦言を申し上げたんですけれども、これは非常にささいなことのようでありますけれども、この都心に緑を大きく育て残すということは大切だと思います。どこに参りましても、大きなよその首都ではしきりに緑を残そうという努力がなされております。あそこにもあれだけの国立劇場があり、隣にりっぱな建物ができた。ちょっと予算の使い方については問題があったけれども、なるほどこれは緑の面についてはりっぱな配慮がなされたということを、私はまあ問題はありますけれども、これはぜひ考えていただきたい、このように思いますし、これから新庁舎の維持にあたってはそういう点に十分配慮していかないと、あそこはたいへんに排気ガスの多いところでありますから問題になると思いますので、その点については今後十分に配慮していただく、こういうようなことを私は申し上げて、あとまだたくさん申し上げたいわけですが、特に人員の配置あるいは庁舎の整備等を行なって裁判の促進をはかる、こういうことを前提にひとつこれから裁判所予算考えていただく、こういうことを申し上げまして、あと時間が二、三分ありますけれどもこの程度で私は終わりたい。このように思いますので、ひとつ最後に事務総長の決意のほどを伺って終わりたいと思います。
  133. 安村和雄

    最高裁判所長官代理者(安村和雄君) 本日の御意見を十分念頭に置きまして努力を傾けたいと思います。
  134. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) 経理局長一つお尋ねしたいんですがね。  いまも地裁等の庁舎の問題についていろいろ御質問がございました。私ももう七、八年になりますが、弾劾裁判長をしていた時分に、各支所を回ったことがあるんです。そうでなくともわれわれは子供の時分から役所の建物の一番ひどいものは裁判所だというのは常識的に一般化しておる。特に私はその印象がいまだに残っているのは――これはしかしもう新築されたそうですが、福島の地裁に行ったんですよ、裁判長と懇談するために。ところが極端に言えば廊下は歩けないんですね。もう板が割れておりまして、割れ目が出たりして、端を通って行かなければ行けないという、これは極端な例ですが。しかし、その後新築されたと聞いておりますが、そういった明治、大正時代の古い木造の建物というものはまだ相当残っておるんですか。いま御承知のとおり、小都市に参りましても、電電公社なんというものは、電信局や電話局というのは、あっという間にすばらしい建物を建てるんですね。これはなかなか予算関係で、あなたのほうは希望をしていても必ずしもできなかったのが長い歴史だと思いますが、いまそういったような国宝的な建物というのは一体どのくらい残っておりますか。
  135. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 最近はおかげさまでたいへん建物の改築が進捗いたしまして、全国で戦前に建築された本庁の庁舎で木造のものは現在は一つもなくなっております。全部解消いたしました。最近までありましたものが浦和の地方裁判所であります。これは明治十年代の建物でございましたけれども、幸い新しい庁舎が完成いたしました。また、大津の裁判所、これは明治三十年代の建物でございますが、これも二年ほど前に全部新しい建物になりました。おかげさまでそういう状況でございまして、もちろん改築されました新庁舎はすべて鉄筋コンクリートでございまして、東京と並んで一番りっぱな建物と申しますと大阪高等裁判所でございますが、これも十一階建ての建物でございまして、設備その他も完備いたしております。  先ほどちょっと触れましたけれども、乙号支部などにごく若干古いものが残っている程度でございまして、おかげさまでだいぶ進捗しているわけでございます。しかし、先ほど来、工藤委員あるいは主査からいろいろと御指摘をいただいております下級裁判所の施設の問題、これは非常に大事な問題でございまして、十分に意を用いまして今後とも改善に努力いたしたいと考えます。
  136. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) それからいま一点伺いたいんですが、これは事務総長から答弁いただくか、あるいは総務局長から答弁いただくか知りませんが、今度の予算面におきまして、簡易裁判所の簡易判事、それから書記官、それから事務官等等、これは増員になっていますね。そこでいまの交通事故ですね、したがってこの簡裁が主としてやられると思うんですけれども、いまの陣容で一体あの膨大な事件の処理というものが相当迅速、簡潔に行なわれておるんでしょうか。
  137. 田宮重男

    最高裁判所長官代理者(田宮重男君) 御指摘のように簡易裁判所の事件、交通関係の事件はかなりふえてございますが、人身事故を伴いますところの事件、これは刑法犯でございますが、これは漸次減少しておるのでございます。反対にふえておりますのが道路交通法違反事件と申しまして、これはスピード違反とか無免許運転とか駐車違反といったような、われわれ形式犯と申しておりますが、こういう事件がかなりふえておりまして、四十五年に比べますと四十七年では百四十七万件ということで五割もふえておるわけです。ところが御承知のように、こうした道路交通だけの事件でございますと、いわゆる略式命令でございますので、この略式命令ですとこれのやり方についてはいろいろ御批判もございますが、かなり、一人ふやしますと相当量、相当の事件数が一日に処理できるということでございますので、今回その関係で簡易裁判所の判事以下書記官、事務官等の増員をお願いしている、こういう次第でございます。
  138. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) 一人で一日に従来どのくらい処理するんですか。たとえばどこか本所の何とかというところありますな、錦糸町か何かに……。
  139. 田宮重男

    最高裁判所長官代理者(田宮重男君) どうも手元に資料がないので非常に申しわけないのですが、これもいろいろ御批判がありますが、一件について二分ぐらいというふうな処理であるというふうに聞いておりますので、それだと一日相当量の事件が処理できると。これは略式と申しましても、昔みたいに一々書記官が書いてということではございませんで、警察のほうからのいわゆる切符という形できますので、それを見ますと該当する事項のところにしるしがついてございますので、それをざっと見ればすぐ結論がわかるということになっていますので、昔に比べると同じ略式でもかなり処理はやさしくなっておる、そういうことでございます。
  140. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) 最後に一点、総長お願いしておきたいのですが、工藤委員からも質問の中に要望がございました。それから午前中の各委員からもお話がありましたが、いまのいわゆる裁判の迅速化という問題は、これはもう御承知のとおり長い間の問題になっているわけですね。ことに民事問題なんかで三年も四年もかかるというようなことになると、それがためにやっぱり示談もしなければならぬという、そういうものにそれを当て込んだ悪質な訴訟というものが非常に多いわけなんですね。そういう意味からいいましても、やはりこの裁判の迅速というものは私は絶対的なものだと、こう思うものですから、御答弁は要りませんから、そういう点に特にひとつ御留意いただきまして、これはまあいまの建物の問題とか人だけの問題じゃこれはないと思いますけれども、どうぞひとつこれは十分お含みのほどを願いたいと思う。
  141. 加瀬完

    ○加瀬完君 これは最高裁の御担当かどうかはっきりしないので恐縮ですが、保護司とか調停委員などの待遇が非常に悪いというので、それぞれ私どもは陳情を聞くのでありますが、来年度予算ではこれらはよほど改定をされましたか。
  142. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) お答えいたします。  保護司につきましては法務省の所管でございますので、調停委員についてお答えいたしますが、調停委員の待遇、これはただいま御指摘のように、前から改善すべきであるというふうに御注意いただいておった事項でございます。最高裁判所におきましてはごく最近に臨時調停制度審議会という審議会を設けまして、そこで二年間検討していただきまして、調停制度発足以来五十年間、制度の改正というものが行なわれなかったわけでございます。制度を改正しながら待遇を、手当として待遇を改善する、こういう措置がとられてございまして、ただいま御審議いただいております四十九年度予算におきましては、一日六千五百円の手当を支給できるということで予算が計上されております。ちなみに従来は日当千三百円でございました。でございますので、制度の改正に伴いまして待遇の大幅な改善ということがおかげさまで実現できるように相なっておるわけでございます。
  143. 加瀬完

    ○加瀬完君 これはもう少し詳しくお示しをいただきたいのでございますが、いま従来の手当――日当ですか、この日当が変わるのですか、手当が変わるのですか。
  144. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 従来は日当でございまして、日当千三百円でございました。今度は手当ということに変えまして、一日の執務に対する手当六千五百円を計上しておるわけでございます。
  145. 加瀬完

    ○加瀬完君 そうすると、裁判所に調停等で当然出向きますね、その場合、執務ということになりますと、それが半日で終わっても一日かかってもいずれも執務と認めるのですか、日当ですと何か半日なら半額ということであったわけでしょう、そういうことは今度ないわけですか。  それともう一つ、調停委員というのは必ずしも裁判所の所在地というわけにはまいりませんわね。場所によっては旅費が当然かかりますわね。この旅費というのはその手当の中に入ってしまうのですか。
  146. 大内恒夫

    最高裁判所長官代理者(大内恒夫君) 旅費はこれは手当の外でございます。  それから、一日の執務かどうかという点ですが、これは先ほど申しましたように、予算的には一日の執務に対して六千五百円ということに相なっておりますので、半日執務の場合にはおのずからそれは減少せざるを得ないわけでございます。そこら辺はどういたしますか、現在まだ、十月一日からの施行でございますので十分検討してみたいと、かように思います。  なお、先ほどの日当でございますが、日当千三百円、これは半日あったから半分にするといったようなものではございませんので、千三百円を支給しております。
  147. 加瀬完

    ○加瀬完君 その執務といいましても、たとえば判事さんなら九時なら九時から五時なら五時まで何回でも判決言い渡しをしたり、あるいは裁判長としての任務を遂行するというわけじゃありませんわね。一週間のうちに何回ときまっておりますわね。調停委員一つの調停の問題が、その一日のうちの全部の執務ということにもなり得るわけですね。調停委員だけ時間で、これは半日しか執務しないから半分だというような、私はたった六千円の中で区分をするということは、ちょっとほかの裁判官あるいは司法官と比べて、ちょっと調停委員が冷遇されているということにならざるを得ないと思うのですが、これは規則できめるのですか。
  148. 田宮重男

    最高裁判所長官代理者(田宮重男君) ただいま御指摘の点でございますが、調停委員の勤務状況は、従来の実績を見ますと大体二、三時間で一件を処理される方が多いわけでございまして、特にまた午後やるという場合ですと、また午後に一件二、三時間をやられるというふうな形が多うございますので、大体私ども考えとしては、午前中なら午前中に勤務される方、午後なら午後に勤務される方というのが大半でございまして、ごく特殊な場合には午前から午後にかけて普通は二件ぐらい担当されるわけでございます。そういう方がございます。したがいまして、一応予算的には一日六千五百円というふうに計上しまして、その勤務形態が半日勤務がむしろ原則みたいな形になっておりますので、その点は通達の形でもって支給をある程度その点で加減をいたす、こういうことを考えている次第でございます。
  149. 加瀬完

    ○加瀬完君 たいへん終わりになってくどいようなことを申し上げて恐縮ですが、大体二、三時間で一件ということであれば、その一件で六千円と、六千何がしという基準をきめてもよろしいじゃないですか。大体これは裁判官ではありませんが、調停委員も内容によっては非常に裁判官と同様にいろいろ苦労の多い内容にもなるわけですから、それを一日二件ということで大体午前中に一件、午後一件、半日なら三千円だというきめ方は、私はちょっと当を得ないと思うんですよ。なぜならば、調停委員の方も職業を持っていらっしゃるとすれば、半日、午前中の執務に出頭しても、午後の執務というのには、自分の仕事というものはできなくなるわけですね。だから午前中で一件、午後で一件ということであっても、それは一件処理をするという形をとるならば、それは一日の手当と認めるというように考えていただいても私はそう不当ではないと思うんですが、その辺はそれぞれ関係の方の申し出もあるでしょうから、また、この方々は特殊な方々ですから、日当を要求したり手当が幾らでなければならないということを要求しない層の方々が多いわけですよ。だからといって、あれだけの仕事をさせて一件三千円ということでは、これは何も報酬を求めてなさることでありませんが、一種のこれは奉仕みたいなものですから、それにしても私はあまり安過ぎるんじゃないかと思いますので、この点は御検討お願い申し上げます。
  150. 大竹平八郎

    主査大竹平八郎君) 以上をもちまして裁判所及び法務省所管に関する質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時四十三分散会      ―――――・―――――